○奥むめお君 ただいま、国際収支の悪化と物価高、この問題が、
社会の、
政治の大きな関心事になっているわけでございますが、このときに、
政府が
国民生活局を設けて
国民の
生活にライトを当てる、これは私、非常に時宜に適したものだと思うのでございます。私
たちは、
生活省を設けて、独立した省として仕事をしてほしいと願っていたのでありますが、まあおいおいに機構を拡充して、真に
国民生活向上の
ために役立つ省となることを期待いたします。
〔議長退席、副議長着席〕
国民生活の保護
行政は近年の世界の趨勢で、ドイツ、スエーデン、ノルウェーなどの
家庭省、イギリスや
アメリカの消費者委員会など、みんな
国家社会の一単位としての
家庭を重視して、買い手の
立場を倫理性を欠く営利
主義から守ろうとしているものでありまして、立ちおくれている
日本の
政治の姿勢を正す上から
考えても、大いに参考とすべきものがあると思うのであります。
今度できる
国民生活局は、消費者物価の安定、有毒食品のような
生活を脅かす商品や買い手を惑わす誇大広告などから消費者を守る、消費者の苦情処理や消費者
教育、
生活環境の整備などを行なうと言っております。いまでも現に、厚生省や通産、公取、
建設、農林など、各省がばらばらにその一部分をやっていますが、重複したり、権限、なわ張り争いが始まったりということも、なきにしもあらずですから、
国民生活局は相互間の調整をはかって構想を押し広げていくわけでありましょうと思います。ぜひ、よい仕事ができるように
考えて、慎重に進めてほしいと思うのであります。従来、業界育成の
ためのみに働いてきた官庁にばらばらに小さく置かれていた
生活関係の
行政の調整をはかるだけでも、その職責は重いのであります。従来の役所機構は、縦割りに仕事を積み上げて、法律と
予算をよりどころにして、あるときは果敢に、あるときはのろのろと働く場でありました。私
たちの慣用語で言いますと、愛情に裏打ちされた
行政、こういうものはこの中からは出てこないのであります。私は、こうした意味で、まず首相の消費者
行政についての信念と見通しを承りたいと思います。無軌道な大型の
予算が今日の物価高と高税金のもとになって庶民を苦しめているのでありますが、福祉
国家建設を説く
総理が、三十九
年度予算でいかに
責任をとろうとし、いかに
国民を守ろうとしていられるのか、具体的に例をあげて聞きたいのでございます。
故ケネディ大統領は、一九六二年の消費者の利益保護に関する特別教書の中で、「
わが国の
経済はきわめてよく消費者に奉仕してきた。どの世代も、高い収入と豊かな商品サービスを享受してきた」と言っていますが、うらやましいことであります。
消費における浪費は、
政府や業界の非能率と同様に責めらるべきであります。個人的にも
国家的にも、消費における浪費は最大の敵だと信ずるがゆえに、私
たちは、賢い消費者をつくって
生活のむだを排除し、この
社会から不良品を追放しなければならぬと願うのであります。ここに消費者
教育の必要性があるのですが、
文部省が
家庭教育、
社会教育、
学校教育の面でいろいろ働いていられる中に、消費者としての知識の涵養と
経済思想の向上につとめる必要があると思いますが、御意見を
文部大臣から承りたい。
次に、企画庁長官に伺いますが、各省ばらばら
行政のままで迷惑してきたのは
国民です。消費者
行政が各省にまたがって小さな座を占めて一いるのでは、能率があがりません。いまの機構のままでどうしたら消費者
行政の実をあげられると
考えていられるのでしょうか、承りたい。
同じく企画庁長官に、ほんの一例をあげて伺いますが、ついに東京都内のタクシーの値上げが認可されました。個人タクシーの一部では、値上げせずともやっていけると申し出たそうですが、運輸省が取り上げなかったのでありましょうか。タクシー値上げには初め反対だったという長官が、途中で妥協されたのは、なれ合いであったのかしら。
国民に、企画庁長官が、それくらい弱い、信頼できない
立場を持つとしたら心配なことだと、案じているのであります。例外の、弱い会社もタクシーの中にはありますが、資本金に対する利益率が八割、低くても五割、したがって配当も一割八分から一割を計上しています。タクシーの利用者は真にやむなき必要からこれを使うのですから、値上げは庶民に痛いことで、この点で企画庁長官の御意見を伺いたいのであります。また、これからも公共料金
関係の値上げがいつどこから始まるともわからないだけに、私
どもはこれを案じているのでございます。
思うに、今日は、婦人の時代、
家庭の時代だと言えましょう。農村でつくられる食糧はいわゆる三ちゃん
農業に依存して、共かせぎ
家庭での婦人の役割りはもとより、
家庭内に老人や病人や乳幼児を持つ母の重い任務、食べ盛り、育ち盛りの子を持つ母の心労など、みな、家事に追われながらも婦人が果たしている役目であります。このごろでは、現金のやりくりも出し入れも、婦人の手と、くふうにかかっていると言っても過言ではありますまい。新聞やテレビなどの商品広告に婦人向けのものが多い一事によっても、買い手としての婦人の地位が
社会的に大きくクローズアップされてきたことを知ります。消費者時代とはまさにこの婦人時代のことではありますまいか。こうした中で、消費者物価の高騰で、婦人がいやが上にも苦労して、重苦しい気持ちを押えているのは、暮らしのつらさは、
政治の悪さから来ると言わざるを得ません。
政治の思いやりのなさが、婦人を、母を泣かしめているのでございます。
連年大型
予算を組んで
経済成長を急いだとがめが、今日の物価高と高税であることを知りながら、黙して語らざること路傍の石のごとき組織なき大衆は、三年の間に二〇%の物価値上げという異常な
事態の中で、やりくりも、がまんも、もう限度を越えて、家計のピンチヘの忍従は、もはや
社会悪であると思うようになっているわけでありますが、世間には、エンゲル係数は確かに下がり、
生活はよくなったという人があります。しかしこれは、特に値上がりのひどかった食費を切り詰めたり、安いものに取りかえたりしてきたからで、
生活協同組合
家庭部が一年間の全
国家計
調査で見ても、エンゲル係数は
政府統計と同じにして、その食料品を栄養に直して計算すると、
日本人の必要栄養量の六八・五%しかとっていないこともわかりました。
教育費も、入学金を含めてずいぶん値上がりをし、住居費もふえました。これが食費切り詰めの直接の
原因になっています。こういうときに、
政府は物価安定
対策に強い意欲を示したのですから、これまで首相が、物価も上がったが収入も上がったぞ、苦しいのはぜいたくになったからだと言い言いしておられたころに比べますと、まさに革命的な変わりようだと思いますが、大衆は、
政府がそれを貫き通すことを心から望みながらも、実除にそれが実効をあげたあとでなければ信じられないというような顔色をしております。公共料金の一年据え置きも、かつては幾度か裏切られた恨みも忘れて、大衆は一年たってからの後はどうなるのだろうと、今から案ずるほど信頼して、実効のあがるのを期待しておるのですから、
政府はこれを裏切ってはならないと思います。しかるに、暮れには、もち米は公共料金でないといって値上げをしたし、現在でも、
医療費、消費者米価、バスなどは公共料金であるとかないとかの議論も出るほど、閣僚間にも意見と利害の錯綜しているときですから、当面の
責任者である首相が全
責任を持って物価問題と取り組んで、
国民の愁眉を開いてほしいものであります。
家庭が家族のいこい場であることが庶民の最低の願いでありますが、
政府資金投入の
公庫住宅には何十倍の競争者がありますから、はいれるものでもなく、家や部屋を借りている者は、二年目に契約を更新といいまして、新規に権利金が取られ、料金が値上げされるばかりか、子供ができるといって追い立てられております。今日の住宅
事情は、現在の
建設省の住宅
建設計画では、もう手が届かぬほど悪化しているのですから、
社会保障の一環として、国なり
地方公共
団体の
責任で充足させねばなりません。一九六一年のILOの住宅勧告が、住宅は国の
責任であり、宅地開発や住宅
建設は営利の
対象とすべきでないといっていますのに、この国では全く暴利の
対象となって、値上がりが続いているのであります。さしあたり
厚生年金、
社会保障制度にプールされている
財政資金を、もっと大幅にこの方面に融資すべきではないでしょうか。また税の取り過ぎ、自然増は六千億、おそらく一兆円にもなるだろうといわれているのですが、これらの金も、法律的に問題もあるとしても、直せばよろしいのですから、
社会保障的な面に大いに使うという建前を確立したいと思うのでございます。
管理価格、協定価格の問題も、これを取り締まり指導する役所がありながら実効があがっておりません。
生産性が上がって値段が下がらないという現実は、全く不可思議です。耐久消費財の購入は一巡して、衣料在庫も多く、倒産者が次々と出ていますが、マスコミで消費者はメーカーの宣伝する新製品の浪費攻勢にあおられても、値が下がらない限り、もう購買力はついていけないのであります。このままでは、業をやめ、
生産自身をとめ、
失業者を出すという不幸な
事態を招くでありましょう。管理価格問題はこの点でも力強く追求してもらいたいと思います。これを担当する公正取引委員会の
予算はきわめて少なくて、他の官庁からの圧力もあって実効をあげ程ないでいますのは、消費者
行政を指向する
政府としては三考を要するものと思います。
ここで首相に伺うのは、
わが国の
社会保障制度は、世界で幾番目ぐらいになっていると思っていられるかということ、
厚生大臣に伺うのは、物価暴騰と
政治の
貧困に苦しんでいる
国民に対して、広義の
社会保障の拡充解釈をもって、法律を手直ししても、栄養や、住宅や、育児や、老人、病人や、衛生や、
公害や、
環境整備などを、厚生省が推進役となって、急いで手当てする必要があると思うのですが、御意見はどうでしょうか。また、物価引き下げの力にも役立っている
生活協同組合あるいは農協、漁協の購買事業などは、この際大いに育成して、物価値下げに役立たせたいと思うのでございますが、
大臣の御意見はいかがでしょうか。
大蔵大臣に伺います。
国民個人々々には大いに貯蓄を奨励している
政府が、法人
企業に対して手厚い保護育成をしているにもかかわらず、なおかつ法人は借入金にたよって、自己資本による操業をしていません。また社用族の目に余る乱費を見逃がしています。これはなぜであるか。課税方法や投融資のあり方を改める必要があるのではないでしょうか、伺いたい。
社会保障制度がいつまでも発達していないから、
国民は貯蓄をせずにはいられない、貯蓄なしには不安で生きられないのであります。しかし、その貯蓄の伸びが落ちてきたのは、物価高騰の
ためです。ずんずん上がる物価で、
ためられなくなった階層も多いが、
ためて寝かせておくよりも物で持っているほうが賢明だという
考え方も、びまんしつつあるのであります。
大蔵大臣はこれらに対して、何と処しますか。
開放経済に入るにあたって、
日本製品の品質がよくて、値段が安くて、諸外国から喜び迎えられる、それによって初めて
日本の輸出増強はかなえられるのでありますが、輸出をもって国是とする
日本で、この
ためには、物の買い手、使い手である婦人を、消費者として
教育し、その目を肥えさせ、その使い方を誤らないようにすることが、最も近道であります。
大蔵大臣は、婦人の消費者
教育に
予算を出す必要を認めていますかどうか承りたい。
以上でございます。(
拍手)
〔
国務大臣池田勇人君
登壇、
拍手〕