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1964-01-23 第46回国会 参議院 本会議 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年一月二十三日(木曜日)    午後四時十一分開議   —————————————  議事日程 第三号   昭和三十九年一月二十三日    午後三時開議  第一 国務大臣演説に関する件   (第二日)   ————————————— ○本日の会議に付した案件  一、請暇の件  一、日程第一 国務大臣演説に関   する件(第二日)   —————————————
  2. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。    ————————
  3. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。  この際、おはかりいたします。小林篤一君から病気のため二十八日間請暇の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。よって、許可することに決しました。    ————————
  5. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 日程第一、国務大臣演説に関する件(第二日)、  一昨日の国務大臣演説に対し、これより順次質疑を許します。久保等君。   〔久保等登壇拍手
  6. 久保等

    久保等君 私は、日本社会党を代表して、総理並びに関係閣僚に対しまして、外交経済及び憲法問題を中心として、若干の質問をいたしたいと存じます。  まず最初に、外交問題についてお尋ねいたしたいと思います。  昨年一年間の世界動きには、めまぐるしいものがありました。アメリカケネディ大統領の不慮の死によって、ジョンソン大統領が登場いたしました。また、これに先立ち、イギリスではマクミラン首相去ってヒューム首相となり、西独はアデナウアー首相にかわってエアハルト首相となるという、各国指導者大幅交代が見られました。反面、米英ソ三国間の部分的核実験停止条約が成立、米ソ間の非常連絡用通信線の完成、国連における大気圏内での核実験禁止決議等、平和への努力が実のある成果をあげたことは、高く評価さるべきでありまして、これを足がかりとして今後一そうの努力が強く進められなければならないと思います。  こうした背景の中から、ソ連は昨年十二月の最高会議軍事費の削減を決定し、一方、アメリカもまた、国家財政赤字克服策に大きな理由があるとはいえ、本年一月八日、ジョンソン大統領一般教書で、同じく軍事費の縮減や、濃縮ウランの減産、プルトニウム工場の一部閉鎖等を発表したことは、歓迎すべきことであります。この一月二十一日からは、ジュネーブで十八カ国軍縮会議が始められています。こうした国際情勢の中で、目下日韓会談が急ピッチで進められ、遠からず妥結を見るのではないかといわれています。  そこで第一の質問は、日韓会談についてであります。  その第一点は、何ゆえ、南北朝鮮統一を阻害し、これがさらには朝鮮半島をしてアジア火薬庫的存在たらしめるおそれのある日韓会談妥結を、こうも急がなければならないかということであります。もともと日韓会談は、今から十二年前アメリカのGHQのあっせんで始められたものでありますが、その後の交渉経過においても、重要段階にはアメリカの高官の表面的な動きが見られるのであります。これは、アメリカの反共、中国封じ込め作戦の上から、東北アジア軍事体制を確立するために、その早期妥結の要請がなされていることを物語るものであります。したがって、会談妥結は、当然日本朝鮮の南半分と軍事的な運命共同体になるということであります。昨年四月十七日、ワシントン発ロイター電が伝えるととろによれば、アメリカギルパトリック国防次官は、「米国日本太平洋西北部防衛負担をこれまでより多く受け持つことを期待している。ワシントンでは、日本がおそらく朝鮮半島の一部をも含む地域を守るために十分な監視能力を持つものと期待している。そうなれば、朝鮮にもう一度紛争が起こった場合にも、アメリカの師団の再増強はしなくても済む。日本空海防衛体制らち重要課題防空体制となるだろう。いまだ差し迫った問題ではないが、中共核戦力を持つことになれば、それに対抗するために、ナイキ、ハーキュリーズやホーク・ミサイルが必要となる、」と、かように言っておるのであります。全く日本国憲法日本国民も眼中にない言い方であります。総理は、かかる日本の主権をも侵害するような発言に対して、黙ってこれを容認せられるのかどうか、この際お尋ねをいたしたいと存じます。  質問の第二点は、政府は一体いかなる理想と展望をもって交渉を進めているのかということであります。  日韓交渉経過を見ると、韓国は、一方的な李ラインの設定による禁止区域をつくり、日本漁船の不法な拿捕事件を頻発させることによって、日本の譲歩を求める材料に利用したとも受け取れるのでありまして、会談韓国のペースで進行していると言っても過言ではありません。ざらに国内的には、先般の韓国大統領選挙にあたり、多額の資金を援助した日本の財界や、自由民主党内部の岸元総理をはじめとする日韓問題協議会のグループの突き上げによって、自主性のないまま交渉は加速度的に妥結への速度を早めているようであります。しかし、交渉は、単に日韓両国政府あるいは一部の者だけのためになされる正常化であってはなりません。両国国民、全民族の友好繁栄と、そして平和のために行なわれなければならないことは、言うをまたないところであります。ことに、南北朝鮮の生まれた事情は、東西ドイツの場合とも異なり、みずから侵略戦争をやった結果としてできたものではなく、戦後、東西冷戦の所産として悲劇的につくられたものであること等を考えまするならば、日本は、特にあたたかい同情と深い理解によって、南北統一と融和のためにその障害を取り除くことに最善の協力をすべきであります。ましてや、新たなる困難や障害となるべき条件をつくり出すごときは、言語道断と言わなければなりません。(拍手両国国民の末長き平和と幸福を念願する立場から、われわれは、日韓会談については即時これを打ち切り、あらためて日本南北朝鮮を含めた関係者間で腹蔵なく話し合い、その中から、後に悔いを残さない真の解決をはかるべきであると思います。この点、いかにお考えになるか、総理見解を承りたいのであります。  質問の第三点は、現在進みつつある会談交渉経過内容について明らかに願いたいのであります。  昭和三十七年十月二十日、大平外相金中央情報部長との政治会談で、請求権問題について、無償供与三億ドル、有償供与二億ドル、民間供与一億ドル以上で合意に達したと伝えられております。しかしながら、三十七年三月、小坂・崔会談では、日本側が支払い得る根拠あるものとして非公式に提示した額は七千万ドルであったといわれているのでありますが、当時では夢想さえできなかったこのばく大な金額の根拠について、明快なお答えを願いたいのであります。かつて政府は、われわれの強い反対を押し切って、南ベトナムに賠償を支払ったのでありますが、その相手であったゴ・ジンジェム政権は、国民怨嗟の中に崩壊し去ってしまったことは御承知のとおりであります。韓国南ベトナムの二の舞いを踏むのではないかと国民はおそれるのでありますが、そのようなことは絶対ないと断言できるかどらか、総理から所見を承りたいと存じます。  第二の質問は、中国問題についてであります。そこで、まず、質問の第一点は、日韓問題について早期妥結を急ぐ池田内閣が、戦後すでに二十年にもなるというのに、先祖伝来、あらゆる面で最も関係の深い隣国であり、そして人口七億を擁する大中国と、いまだに国際法戦争状態のまま放置していることについて、総理はいかに考えられるか、その所信を承りたいのであります。第二次大戦においては、戦火によって日本がはかり知れない深大な損害を中国国民に与えたのであります。われわれの犯した過去の深いあやまちに対し陳謝するとともに、一日も早い国交回復を実現し、心からなる親善友好の実をあげるよう、こん身の努力を払うことは、全く当然のことであります。今日のごとき状態で一日たりと放置することは、少なくとも日本国民の良心が許さないはずであります。  次に質問の第二点は、世界の新しい転換期に立って、従来の政府自主性なき盲目外交を改めるべきであると思いまするが、いかに考えられますか。池田総理は一昨年、大平外相は昨年、いずれも欧州を訪問いたしましたが、その際、フランスイギリスから、日本アジア特に中国政策について尋ねられたとき、わが国の独自の見解を示すことができず、相手を失望させたと伝えられているのであります。そして、逆に総理外相は、欧米諸国中国問題に対する関心の予想外に強いのを知って、初めてアジア重要性を見直したというのであります。このことは、今回、フランスが、高通な識見と、しかも多角的な情勢判断から、ついに自主的判断をもって独自に中国承認に踏み切ったさっそうぶりと思い合わせて、遺憾ながら対蹠的な池田内閣の主体性なき状態を認めざるを得ないのであります。(拍手)  また、最近における中国の周鴻慶送還問題にしても、政府態度のあいまいさから事態を不必要に混乱させたり、あるいはまた中共へのビニロン、プラントの延べ払い輸出にしましても、国民政府のちょっとした反対にすぐ動揺したり、まことに自主性のないたよりなさ、無定見さには、驚かざるを得ないのであります。のみならず、現に存在する大中国に目をおおう外交こそ、全く盲目外交と言わざるを得ないのであります。  次に、質問の第三点は、日本中国を直ちに承認し、すみやかに国交回復をはかるとともに、中国国連での代表権認むべきであると思いまするが、総理所信を承りたいと存じます。  おな、当面、日中貿易積極的推進をはかるため、さしあたりの措置として、政府日本中国両国にそれぞれ通商代表部を設置すべきであると考えまするが、これに対する政府所見をあわせてお答え願いたいと存じます。  昨年の秋、フランスフォール首相中共を訪問し、首脳との間で種々打診を行ないましたが、ついに今回中国北京政府国交を再開することによって、事実上中共政権承認する方針をきめたのであります。これは、フランスポンピドー首相の言う、「中共は実際に存在しており、その存在は国境の内外で明らかにされている。外国はこの事実を無視することはできない。」という、きわめて常識的で明快な理由によるものであります。総理も一昨日の施政方針演説の中で、「中国大陸が、わが国と一衣帯水の地にあり、広大な国土に六億余の民を擁しておることは、厳然たる事実であり、」と述べて、厳然たる事実は認められているのであります。そこで、私は、声を大にして、「真実の前には勇敢であれ」と言いたいのであります。政府は、アジア、ひいては世界の平和と繁栄を熱願する日本国民の高い立場から、中国との国交回復と、国連での代表権承認の方向に、勇気をもって踏み切るべきだと考えるのであります。  さらに、フランスフォール首相は、「米国極東政策がすでに時代おくれのものとなっていることは、いまやだれの目にも明らかである。」と言っているのであります。日本が、欧州米国とともに、世界の三本の柱の一つであり、大国であると自負される池田総理は、米国への友情からしても、アメリカアジア特に中国について、その政策の根本的再検討を加えるよう、堂々と直言すべきであると考えまするが、その点いかに考えられまするか、あわせて所信を承りたいのであります。  第三の質問は、ILO問題についてであります。  岸内閣以来の懸案でありますILO八十七号条約の批准問題は、すでに国会でも、開会のつど、その扱いをめぐって大きな論議を呼んでいるのであります。政府自民党関係国内法について便乗改悪態度を固守することが、一向に解決を見ない大きな原因であるのであります。その間、国際的には、ILO理事会に対する政府批准約束にもかかわらず、これを履行しないこと五年、いたずらに不信行為を繰り返す結果になっているのであります。ILO理事会もこうしたたび重なる約束違反に逆に業を煮やして、昨年の十一月、対日調査団の派遣という強硬手段を決定し、さらにこの二月十三日からジュネーブで開かれる理事会、本会議での結論に基づいて、直ちに日本政府に対して申し入れがなされることになっております。もはや事態は遷延を許しません。しかも、加うるに、ことしは、いよいよ日本経済開放経済に移行しようとしています。労働問題については相変わらずの古い時代感覚で、はたして国際社会で通用すると総理は思っておられますか。本問題解決唯一の道は、昨年春、わが社会党河野ILO対策特別委員長自民党倉石ILO代表世話人との間でまとめた合意事項結論をもって、池田総理施政方針演説最後に表明をせられた「勇断もって事に当たり」、自民党内部を統括決裁することのみにかかっていると思うのであります。自民党総裁たる総理決意を促し、答弁を求めるものであります。  第四の質問は、原子力潜水艦寄港の問題についてであります。  質問の第一点は、政府原子力潜水艦安全性審査権確保をはかる意思があるかどうかという点であります。政府はかねてからその安全性については、きわめて高い実績ありとして宣伝をいたしておるのでありますが、論より証拠で、昨年四月ボストン沖アメリカ原子力潜水艦スレッシャー号が沈没したではありませんか。幸い場所が二千数百メートルの深い海底だったところから、十万キロワットの動力用原子炉もろとも、文字どおり海底のもくずとなり、したがって事故原因調査はむろんのこと、放射能の影響そのものも何ら取り調べ得ない実情であります。アメリカ専門雑誌にも、原子力潜水艦原子力商船サバンナ号に比べて著しく安全性が低いことが指摘されているのであります。手ばなし楽観論を振り回しているのは、残念ながらわが日本政府だけであるといわねばなりません。  質問の第二点は、放射性廃棄物海洋投棄基準は、日本の定める基準によらしめる決意政府にあるかどうかということであります。冷却用水の不純物及び放射性をおびたイオン交換樹脂を海に捨てるアメリカ許容基準は、日本の場合に比べて、はなはだしくルーズなのであります。日本基準に当然よらしめるべきであるという意見は、自民党の一部にもあると聞くのであります。日本国内のことは、日本法律によるベきであり、アメリカ法律によるべきではありません。この点についてお答えを願いたいと存じます。  質問の第三点は、日本学術会議も申し入れているところでありますが、原子力委員会安全性の問題を取り上げ、科学的、専門的に検討して、その結果を国民の前に発表すべしということについて、明確な態度を承りたいと存じます。  質問の第四点は、政府が学者の科学的、専門的な立場からする意見を尊重する意思があるかどうかということであります。日本学術会議は、第三十九回総会で、満場一致反対決議を行なっているのであります。デンマークにその例をとるまでもなく、科学者があげて反対する寄港問題については、政府はこれを断わるべきだと思います。  さらに、質問の第五点は、従来池田総理は、「原子力潜水艦寄港も、それが核兵器を装備していない限り、安保条約に照らして当然である。」とか、大平外相は、「単に原子力推進力として利用しているにすぎない潜水艦でございます。それ自体、核兵器日本への持ち込みでもなければ、また、将来における核兵器持ち込みにも連なるものではない。」などと、大砲を持たない砲兵隊がいるような、ばかげた説明で、国民を愚弄してきましたが、昨年十二月四日、「核弾頭つきの対潜水艦攻撃用ロケット魚雷サブロックが近く実戦用として装備される。」と、米国海軍が発表したことによって、政府は馬脚をあらわしました。もはやサブロックを装備した原子力潜水艦は、断固断わらざるを得ない事態になったと思います。したがって、寄港問題はおのずから解消したと判断して間違いないと存じますが、総理から明確なお答えを承りたいのであります。  次に、経済問題について一、二お尋ねをいたします。  まず第一の質問は、物価政策の失敗についてであります。昭和三十五年、池田内閣が発足して以来、その一枚看板の高度経済成長政策は、確かに一部の大企業にとっては倍増以上の所得増をもたらしたようでありますが、その他の中小企業や農民、一般国民には、資金難物価高で、まことに冷たい政策であります。中小企業は、昨年、戦後最高倒産を見ております。特に最近は、金融引き締めによって一そう深刻の度を加えております。正月の松の内から倒産者が相次ぐありさまで、手形決済の集中する三月に対し、早くも三月危機が叫ばれ始めております。一般国民は、これまた物価高によって青息吐息というところであります。物価は、年々当初予想をはるかにこえて、ウナギ登りにのぼっております。本年度に入っても、政府の当初見込み二・八%から見ると、今日その約三倍にもはね上がっているのであります。総理は、昨年、一陣年と、一月の施政方針演説で、物価は遠からず上昇傾向を食いとめるとか、国民生活が脅かされないよう万全の努力を払いますと言明しながら、何ら物価は安定のきざしも見せておりません。のみならず、総理唯一の頼みとしていた卸売り物価さえ、最近は上昇傾向にあるのであります。物価政策は明らかに失敗したと思いまするが、これに対する総理の謙虚なる所信をまず承りたいと存じます。  次いで第二の質問は、明年度予算案物価との関係についてであります。昭和三十九年度予算案は、一般会計において本年度予算の一四・二%増、財政投融資において実に二〇・八%増と、物価問題懇談会の答申も無視して、予算の規模を大きく膨張さしていますが、はたしてこれで物価を刺激しないで済むとお考えになりますか。総理の一昨日の演説の中で、消費者物価については、三十九年度中に安定させると述べていますが、いかなる具体策を用意しているか。確信あるお答えを賜わりたいのであります。  次いで第三の質問は、国際収支に対する見通しと、その対策についてであります。政府は、本年よりいよいIMF八条国移行OECD加盟の実現により、完全な貿易・為替の自由化、すなわち開放経済体制をとるわけでありますが、一方においてはEEC経済圏動きあり、他方またアメリカの強力なるドル防衛に大わらわという、きわめてきびしい世界経済の中に日本が乗り出すことは、あたかも、あらしの中に裸で飛び出すようなものでありましょう。よほどの体制決意を要すると思いますが、政府は、いかなる覚悟と具体策を用意しているか、お尋ねいたします。特にアメリカドル防衛に処する具体的対策についても、あわせて承りたいと存じます。  さらに伺いたいのは、日本が将来輸出拡大振興をはかるとすれば、何としても在来の貿易構造のあり方をまず変えなければならぬと思いますが、いかがでありますか。今日まで、アメリカ市場中心西欧諸国を加えた、いわば遠い先進工業国相手として進められているのでありますが、これからは、近隣の中国、東南アジア、その他共産圏貿易積極的推進に乗り出すべきであると思うのでありますが、政府はどのように考え、どのような具体策を持っておるかをお尋ねいたしたいのであります。  次に、憲法問題についてお尋ねいたしたいと存じます。  まず第一の質問は、憲法調査会に党を代表して出ている自民党委員の諸君は、全員きわめて積極的な改憲を主張しているのでありますが、自民党総裁たる総理は、これに対していかなる見解をお持ちでありますか。また、自民党委員の主張している改憲意見内容についていかが考えられるか、所見をお聞きいたしたいのであります。  第二の質問は、先日の自民党大会できめられた運動方針によりますと、「自民党は結党以来憲法改正をその重要施策一つとして公約した。」と明記していますが、一体いかなる点を改正せんとするのか、これまた、自民党総裁たる総理から具体的な改正点を明確にお示しを願いたいと思うのであります。もしかりに、具体的に明示することができないとすれば、それは無責任なる改憲の言辞を弄して国民を惑わせさらには、これによって、まず改憲ムードをつくり出さんとする卑劣なる行為と断ぜざるを得ないのであります。(拍手国家にとって最大最高基本法たる憲法の権威を傷つけるとともに、また、憲法軽視の風潮を促すものとして、国民とともに厳重にその反省を求めるものであります。  最後に、総理が特に最近協調をしております人づくり政策について一言触れておきたいと存じます。  総理は、昭和三十七年十二月の四十二国会以来、毎国会施政方針演説の中で、人づくりについて述べているのであります。今回も演説の中で、またこれに触れておられます。しかし、総理のあらゆる美辞麗句を駆使しての力説にもかかわらず、何らの迫力も充実感もない、空虚な響きしか与えないのは、なぜでありましょうか。それは、単に精神面だけを拡大し、抽象的なことばでいかに強調してみましても、しょせん、それでは人の心を打つ力にはなりません。早い話が、昔から「健全なる精神は健全なる身体に宿る」と言われております。健全な精神を期待し、強調せられる総理は、まずその前に、健全な身体をつくる体づくり最大努力を傾けるべきであると存じます。最低生活の保障さえない社会においては精神訓話も通じますまい。池田総理が特に呼びかけておられる青少年児童体づくり政策はどうなっておるのでありましょろか。せっかくの学校給食さえ、アメリカから輸入した粉ミルクの中から、長靴や、くぎなどが出てくるようでは、児童もたまりません。栄養管理の人手も施設も考えないで、単に、ミルクとパンさえ与えておけば、学校の子供は育つぐらいに思っておるような、科学性のない栄養行政では、りっぱな国民は止まれてこないのであります。さらに、特別われわれが遺憾にたえないことは、今日まで人づくりを説くために、高い知性とか、豊かな情操、たくましい意志、愛情、敬虔な人生観、完成された人格、等々のあらゆる文句を使って、これだけ訴えておる総理が、世界に誇り得る日本国憲法の持つ高い精神について、いまだかつて、国民に、はたまた青少年に、一度も訴えたことを聞かないのであります。(拍手歴代自民党総理大臣またしかりであります。文教の府をあずかる文部大臣も例外ではございません。今日、日本社会に見られる、人間と人命軽視の象徴である事故のはんらん、凶悪犯罪の横行、少年犯罪激増等、あらゆる社会の不正と混乱は、この日本国憲法を厄介視し、無視し、曲解するところに、大きな渕源があることを率直に悟るべきであります。(拍手)道は近きにあります。人づくり国づくりも、まず総理をはじめとする政府が、この平和憲法民主憲法を忠実に守り、実践することであります。いたずらに改憲論を流布して改憲ムードをつくり上げることは、憲法に対する国民不信感と、べつ視感を醸成し、ひいては世相人心混乱社会混乱を導く結果になると思うのであります。人づくり憲法関係につき、池田総理の明快なる答弁最後に希望いたしまして、以上私の質問を終わりたいと存じます。(拍手)   〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  7. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答えいたします。  日韓会談につきましては、施政方針で述べたとおり、隣合った両国が一日も早く国交正常化をすることは両国民大多数の願望であります。また、私は選挙におきましても、この日韓会談早期妥結政策として国民に訴え、その同意を得ておると私は考えております。  また、日本防衛につきましては、第二次防衛計画によってわれわれは進んでおるので、他からとやこう言われる筋合いのものではございません。  また、中共問題につきましては、中共ばかりを見て、いまわれわれが国交正常化親善関係にある中華民国を忘れることは、われわれとしてできないのであります。したがいまして、私は、この問題は、アジアの平和と世界の平和にも関係いたします重要な問題でございますので、国連の場におきまして世界の動向を見ながら善処いたしたいと考えておるのであります。  なお、私や大平外務大臣の旅行中につきましてのいろいろの観測は間違いでございます。はっきり申し上げておきます。  また、周問題につきまして、自信がないとか申しますが、周自身が自分の意思決定がおくれたためにかくなったということをお考え願いたいと思います。  また、中共通商代表部を置くことは、いまのところ考えておりません。  次に、ILO問題につきましては、所信表明で申し上げたとおりでございます。国内関係法案とともに、今国会承認を得ることを期待しておるのであります。  また、原子力潜水艦問題は、ただいま安全性につきましてアメリカ合衆国と交渉いたしておるのであります。サブロックを備えつけた原子力潜水艦、これは核兵器を持ち込むことになりますので、これの入ることを許さないことは当然でございます。ただ、われわれの言うのは、推進力原子力でやっている原子力潜水艦を入れるというのであります。核兵器日本へ持ち込ませないことは当然のことであるのであります。  なお、物価問題につき産していろいろお話がございますが、これは所信表明で詳しく述べておりますとおり、われわれは、生産性の向上、規模の拡大、あるいは流通機構の改善等、各般の措置を講じまして、消費者物価の安定を期待いたしておるのであります。なお、卸売り物価につきましては、国際物価の上昇、運賃の上昇等で、ただいまある程度上昇ぎみにありまするが、過去六、七週間上がっておりません。先週ちょっと上がったような状態で、私は、各国のそれに比べまして、日本卸売り物価の安定は、よその国よりもよほどよく安定していると言い得ると思います。  なお、国際収支の問題につきましては、貿易の振興をはかり、観光事業あるいは貿易外の収入の増加をはかりまして、逐次改善に向かって処置いたしたいと考えております。  憲法問題につきましては、たびたび申し上げておりますとおり、私は、調査会の答申を待ちまして、そうして国民の理解が一そう深まって、国民の動向に従って慎重に処理することに変わりはないのであります。  なお、人つくりの問題として、健全なる身体が必要だ、そのとおりでございます。私は所得倍増を言い出したのも、経済の上昇、生活水準の向上によりまして、国民の健康、保健がそのもとであることは当然でございます。したがいまして、池田内閣ができまして以来、死亡率も少なくなり、あるいは青少年身体もよほどよくなったということは、統計の示すとおりであります。私は、人づくりということが政治の根本問題でございますので、その基本の健康の点にも十分留意をいたしております。いまや日本の死亡率は世界一少ないと言われおる、非常な健康な国になっておることを御了承願いたいと思います。(拍手)   〔国務大臣大平正芳君登壇拍手
  8. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 私は、補足して答弁いたします。  日韓交渉につきまして、アメリカ側から干渉とか介入とかという事実はありませんし、また、こういう意図も先方にはございません。南北の朝鮮統一してからというお話でございまするが、私どもとしては、この問題は、われわれ政府にとりまして十二年にわたる懸案でございまするし、今日ただいまあるがままの日韓の事実上の変則的な関係を改善し、朝鮮海域の安全操業を確保することを、その段階まで放置していいかというと、これまた私どもの責任として、このまま放置してよろしいとは思わないわけでございまして、久保さんが言われましたとおり、国民的な基盤の上に、その理解の上に立ちまして、平和のためにこの仕事を推進いたしたいと存じております。  それから、三億ドル、二億ドルの根拠でございますが、これは前々国会におきましても、本院におきましていろいろ御質疑があり、御説明も申し上げたわけでございまするが、私どもといたしましては、戦後二十年近くになりまして、当時の事実関係を正確に捕捉するということが物理的に不可能であるという部面もございます。また、可能なものにつきましても、それを日韓双方でどう評価するかということについて、解釈上全然見解を異にしている事情がございます。したがいまして、正確な意味において法律的に解決しようということは、事実上不可能でございます。したがいまして、日韓両国は、過去をせんさくし過去を分析するところから両国関係を打開していくことは不可能だと判断いたしまして、将来にわたりまして日韓両国が協力をいたしまして、双方の利益のためにどうすればいいかという分別を出しまして、経済協力という形でこの問題は片づけよう、こういう方向で問題を処理いたしておるわけでございまして、三億ドル、二億ドルの金額は適正な金額であり、かつまた可能な全額であると考えております。  それから、原子力潜水艦につきましての安全性の審査権でございますが、これは国際慣例上、軍艦につきまして審査権はございません。また、今まで原子力潜水艦寄港を認めておる国々の政府国民は、アメリカ側の安全性の保障に信頼を置いて、審査権を要求しておるところはどこにもございません。(拍手)   〔国務大臣佐藤榮作君登壇拍手
  9. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) ただいまの原子力潜水艦の廃棄物の許容量の問題でございますが、ただいままでのところ、アメリカ側の資料によりますと、この放射性廃棄物は、周囲の自然の放射能と比較してほとんど区別のできない程度の濃度並びに分量、こういうものに制限をしておるということでありますので、大体わが国の法令の定めるところと同じだと思いますが、その表現があまりにも抽象的でありますので、ただいま、なお私どものほうでいろいろ研究中でございます。  第二の問題でございますが、今日、原子力の平和利用が非常にやかましい際でありますので、この原子力潜水艦につきましても、軍機の制約はありますものの、その許す範囲においてその資料を求め、そうして、まとまりましたら、これを発表するつもりでございます。また、この問題につきましては、科学者の間にいろいろの意見のありますことは私どもも承知いたしております。私どもも、どこまでも科学的な立場に立ってこの問題と取り組むつもりでございますので、科学者のいわゆる科学的な見解につきましては、これを尊重するにやぶざかではございません。(拍手)   〔国務大臣宮澤喜一君登壇拍手
  10. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 物価につきまして、一点だけ総理大臣の答弁を補足させていただきます。  昨年の下半期に消費者物価の鈍化が見られるようになりまして、年度の始まりました昨年の三月の末から昨年の年末までの八、九カ月間、消費者物価の上がりが二になっております。で、これは、大きな原因は、農畜産物の価格が安定ないし低落をしてきたということにあるわけでございますが、一つは、自然的な条件に恵まれましたし、また、供給側の体制も整ってきた、あるいは、問題が言われ始めましてからかなり長うございますので、政府の施策がある程度徹底したことも何がしかの貢献をなし得たのではないかと思っておるわけであります。他方で、しかし、いわゆる被服費、これは仕立てとかクリーニングとかいうものでございます、それから教養娯楽費というようなものが、相当これは根強い上昇の傾向を示しております。これらはやはりサービスの価格が大きいわけでございまして、格差是正との問題もございますが、しかし、この面からも、中小企業の出産性の向上ということは、農業の近代化と同じように大切なことであるということを感じておるわけであります。  で、具体的なこれからの施策といたしましては、総理大臣の所信表明にかなり詳しく述べられてございます。これらを総力をあげてやっていくというのが政府決意でございますが、ただいまの情勢並びにそういろ決意その他のものを総合して考えますと、先般決定いたしました昭和三十八年度の見通し改訂並びに三十九年度の見通し、これらに述べられております消費者物価の予測、動向というものは、私は現実性があるものである、実現し得るものであるというふうに、ただいま考えておるわけであります。(拍手
  11. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 井野碩哉君。   〔井野碩哉君登壇拍手
  12. 井野碩哉

    ○井野碩哉君 私は、参議院自由民主党を代表いたしまして、総理大臣に、外交経済、治安の諸問題について、御所見を承りたいと思います。しかし、これらの問題に先立ち、まず、総論として、政治の姿勢について二つの方面に分けてお尋ねいたします。  一つは、国会に対する姿勢でありまして、政治の中心たる国会がいかに民主政治にふさわしく運営せられるかは、政治の要諦であり、これがためには国会正常化こそもっとも望ましいことであります。しかるに、現状におきましては、池田内閣誕生以来、総理は低姿勢過ぎるとの一部世評に甘んじてさえ国会正常化努力せられたるにかかわらず、依然、国会正常化されず、ついに寛容と忍耐にも限度ありと決意せらるるに至ったのでありますが、今の二大政党の姿では正常化も容易ではなく、さりとて、国政運営上国会の審議は必須でありますから、今後一そう努力をもって正常化に尽くさるるとともに、予算案法律案の審議については十分に他党と話し合い、その理解に努められたいのでありますが、それにもかかわらず、反対せんがための反対を看取された場合には、き然たる決意をもって民主政治の貫徹に尽くされたいのでありまするが、御所見はいかがでありましょうか。  また、政治の姿勢の他の面は、国民に対する姿勢であります。政治施策の重要部面が国民生活の物質的諸条件の向上にあることは申すまでもありませんが、健全なる精神的基礎を欠くに至っては、いかに物質的繁栄を誇っても、結局、砂上の楼閣にすぎないことは、古今東西の歴史が示すところであり、戦後、めざましい経済成長を続けている西ドイツにも、経済成長の陰に道義を伴わざる物質万能主義の波に押し流されておる若人がふえつつあるとの嘆声を聞くに至りましては、わが国政治家も深く憂いをここにいたし、政治の運営にあたって、この点を重視することが肝要であり、総理人づくりもここに着眼されてのことと思うのでありますが、いかがでありましょうか。  また、総理は、施政演説において、法を無視し、暴力を行使するものには、警察力の強化と法の厳正な適用により対処する方針であると述べられましたが、そのためには、単に警察官の量の増加と質の改善にとどまらず、力の充実が必要であると思いますが、総理は、現下の情勢に即応する警職法の改正をなさる御決意がありますかどうか、御所見を承りたいのであります。  次に、各論に入り、第一に、外交についてお伺いいたします。総理は、常に、わが国外交の基調を国連憲章のもとにおける自主外交に置き、アジアにおける民主主義国家との共存共栄を念願せられておりますが、いま、世界の大勢を通観しまするに、過去久しきにわたって続いた冷戦の雰囲気が著しく緩和せられ、部分的核実験禁止条約の締結にまで発展し、フルシチョフの平和共存の提唱は、西欧における米ソ関係を好転し、ベルリン問題も情勢の一変を示すに至りましたが、このために、ソ連の外交攻勢が最近、近東及び東洋方面に向けられつつあるの感を深くするものであります。したがって、この方面における国際関係は従来より一そう複雑化するものと考えられ、現に先般のベトナム問題や最近のマレーシア問題のごときは、その一端を示すものと見るべきであります。  そこで、私は総理に御所見を伺いたいのでありますが、総理は、東亜の平和と発展を希望せらるる以上、東南アジアの低開発国の援助とアジアにおける国際間の平和について、いままでより一そう積極的に問題解決に邁進せらるる勇気と決意をお持ちになられるでしょうか。総理は、もちろんとお答えになると思います。しかし、昨年、海外における新聞の論調やわが国民の間には、総理外交方針には主体性がなく、ひより見外交が多いと批評するものがあります。私は、総理が低開発国援助をわが外交の使命とせられ、平和保持のために国際紛争にも積極的に行動せられ、現にマレーシア問題についても、昨年東南アジア訪問の際、また今回スカルノ・インドネシア大統領訪日に際しても、三国間の調停に熱意を示し、主体性ある外交努力せられておるものと信じております。しかし、仄聞するところによりますと、外務省内部にはいろいろの理由から消極論が多く、党内にも失敗を憂えての慎重論があるそうでありますが、マレーシアの成立が、もともと共産主義の浸透の防止を目的とし、北ボルネオ諸地域の経済開発を促進するにその動機があり、わが国としてもその成立を歓迎する以上、失敗を考慮して逡巡することなく、一日も早く三国間の国交正常化が実現するようあっせんの労をとらるることを熱望するものであり、この際、国会を通じて、総理の主体制ある外交方針を明確に国民に示され、疑惑を一掃していただきたいのであります。  次に、私は日韓交渉に関しお尋ねいたします。日韓交渉は、しばしば断絶しながら長きにわたって行なわれ、本年こそは交渉妥結を見、国交正常化がはかられるものと期待しておりまするが、最近、漁業専門家の話し合いが停とんし、また韓国側の超党派代表団の派遣が渋滞したため、早期妥結は困難になってきたと報ぜられておりまするが、日韓国交正常化は近隣外交として最も重要な問題であり、その妥結については、ただ成り行きを静観するがごとき感を国民に与うることなく、情勢の変化に即応し、格段の努力を要望するものであり、また重要なる李ライン問題の解決にあたっては、漁業専管水域に関する十二海里の主張と共同規制水域の規制いかんは、わが水産業に影響するところ甚大でありまするから、確固たる方針のもとに交渉せしめられたいのでありますが、これらに関し総理の御所信を承りたいのであります。  次に、国民政府の問題でありますが、国府は、中共に対するわが国のビニロンのプラント輸出に端を発し、最近の周氏の中国本土帰還問題に及んで、著しく感情の悪化を来たした模様でありますが、蒋介石総統が終戦直後わが国に示された絶大なる好意は、わが国民としても決して忘却しては相すまぬものであり、この際、最善の手段を尽くして感情融和につとめられたいと思いまするが、総理は今後いかなる方針をもって臨まれるや、その誠意について御所見を伺いたいのであります。  これと同時に、中共関係も、最近、フランス承認問題とからみ、中共国連加入問題にまで発展する可能性あるにかんがみ、わが国としては、他国に追随することなく、国府との関係を十分に考慮し、主体性ある外交方針のもとに善処せられたいのでありまするが、御所見いかがでありましょうか。  次に、外交問題の最後として、外交の一元化について御所見を伺いたいのであります。  一国の外交が国際場裏において強力に発揮せられるには、民主主義政党政治国家にあっては、超党派外交こそ最も緊要であると思います。米国や英国が、国内において両政党間で種々の議論をたたかわしましても、一たび対外に臨むに及んでは、常に超党派にその意見統一しつつある姿は、うらやましいと思います。わが国においては、社会党が戦争の脅威を理由とし、中立主義を提唱し、ここに二大政党の外交政策は極端な対立を示し、外交の一元化は河清の会を待つの様相を呈するに至ったのであります。しかるに、世界の権威ある戦争学者は、原水爆が今日のように発達した時代にあっては、米ソの戦争はもちろん、原水爆保有国間の戦争は起こり得ないと断言し、フルシチョフもこの情勢を達観して、平和共存を提唱し始めたのではないでしょうか。イギリス首相は、テレビ放送において、「ソ連は力の政策を放棄したと思えるふしがあるから、一両年中にわれわれは冷戦の終結を見るかもしれない。」と述べられたともいわれております。大戦争すでになしとなれば、社会党は、中立主義に固執する必要のない時代が来たのではないでしょうか。もし、社会党がこの時代を洞察され、中立主義を修正し、外交一元化に協調し得るような外交政策を新たに樹立せられるならば、おそらく国民も、社会党への政権交代にも不安を抱かないでしょうし、ここに二大政党の本来の姿に立ち返り、国会正常化され、一石三鳥の効果を見るに至ると信じます。社会党の諸君いかがでしょうか。この提案を真剣に御研究願えないでしょうか。  そこで、私は総理に御所見を伺いたいのでありますが、総理外交一元化についてどう考えておられますか。もし外交一元化に御熱意があるならば、政府は、政党及び学識経験者中より外交の権威者を選ばれ、外交についての国論を統一するため、最高外交審議機関を設置され、これらの諸問題その他重要問題を協議され、外交一元化に努力せられる御決意はないでしょうか、明確なる御答弁をお願いいたします。  第二に、私は、経済政策中、本年の主要課題となるべき国際収支問題と物価問題についてお尋ねいたします。  まず初めに、国際収支問題についてでありますが、政府は三十八年度国際収支予想において、貿易は二億ドルの黒字になるとせられましたが、最近はこれを二億五千万ドルの赤字に修正せられ、これと貿易外収支の赤字四億一千万ドルを加うるときは、六億六千万ドルの赤字となり、国際収支悪化の情勢は、経済界に著しい不安を醸成するに至ったのでありまするが、その原因を調べてみますと、昨年の麦の不作による小麦輸入の増加や、砂糖のごとき国際原材料の騰貴が一因となったことは確かでありますが、昨年当初政府が立てられた経済見通しが、鉱工業生産増大%であったものが最近一四%となり、生産の拡大が輸入の激増を誘致したおもなる原因であったと思います。過去数年、政府経済見通しは、遺憾ながら例外なくはずれましたが、それは実際の成長が上回ったためであり、総理は、生産の高水準は経済の上昇であるとまで言っておられまするが、そのために国際収支の危機を生ずる懸念を誘致し、急速引き締め措置を講じなければならない事態をしばしば経験したことにかんがみ、経済見通しは、単なる願望や期待に基づくものでなく、客観的な現実性を持つものでなければなりません。本年の経済見通しを誤らないためには、政府は各般にわたり、最善の努力が必要でありますが、なかんずく、国際収支については、金融面、財政面より思い切った措置を、時期を誤らず先手を打つことが必要と思います。政府は、財政規模、一般会計三兆二千億円、財政投融資計画一兆三千億円は健全均衡財政なりと言っておられまするが、世間では、これが景気刺激の原因となりはしないかと懸念しておりまするし、金融引き締めのために、預金準備率引き上げや新たなる窓口規制を実施せられましたが、はたしてこれで金融引き締めの実効が期せられるかどうか、懸念なしとしないのであります。  そこで、私は、総理にお願いしたいのは、予算及び財政投融資の奥行にあたって、各省をしていままでのように総花的に施行せしめず、地域的、時期的に、また、事業の緊要度を十分に検討して実行するよう指導していただきたいのであります。また、金融引き締めについても、準備率の引き上げや窓口規制が中小企業にしわ寄せになっていることは事実であり、せっかくの中小企業対策が減殺されるおそれがありますから、むしろ貸方の規制を強化するよりは、借方の引き締めとなる公定歩合の引き上げをすみやかに実行されたほうが適切ではないかと思いますが、総理の御所見はいかがでありましょうか。  また、貿易外収支赤字の原因が、海運収支の赤字、外貨導入の利払い、特許権使用料の支払い、特需の減少、観光収支の赤字に存するのでありますが、現状のままで高成長を続ければ、ここ三、四年のうちに、貿易外収支の赤字は十億ドルにも達しますので、貿易外収支の悪化が構造的原因による面も大なるにかんがみ、海運力の強化、港湾使用料、荷役料の引き上げ、観光収入の増加、技術輸出の促進などの対策を強化する必要がありますが、当面は、当分国内消費を抑制することが最も緊要であると思いますが、御所見を承りたいのであります。  次に、物価問題についてであります。政府は、物価の上昇に対し、当初卸売り物価が横ばいであるから、経済の高度成長も物価にはあまり影響がないように説明しておられましたが、最近は卸売り物価も上昇し、ことに消費物価の上昇が八%をこえる状態にかんがみ、物価対策を重視するに至り、安定成長によりこれを緩和せんとし、先週の経済閣僚懇談会において、十四項目の対策を決定され、なかんずく公共料金の一年据え置き、流通機構の合理化等を取り上げ、各省が協力して物価問題に真剣に取り組まれたことは、まことにけっこうなことと存じます。しかし、国民の間にはいろいろの疑問があり、私自身もまた総理に伺っておきたいことがあるのであります。  総理は、総選挙において、物価は一両年後には安定すると公約されました。この目標は何を根拠として立てられたのでしょうか。詳しい数字の説明はいまは要求いたしません。予算委員会等において国民に明示していただきたいのであります。ただ、公共料金を一年ストップせられましたが、一年後はどうなるのでしょうか。本年の末あたりから赤字に苦しむ企業体が経営困難となり、その値上げ要求は殺到しくるものと思います。すると明年は値上げもやむを得ないということになれば、一両年後には物価を安定させるという公約と矛盾することはないでしょうか。私はむしろ、採算上真にやむを得ざる交通機関等の料金値上げは最小限度にこれを認め、むしろ今後一年半なり二年なり、政府物価安定策とにらみ合わせ、これをストップしたほうが適切ではないかと考えますが、いかがでございましょう。  また、牛豚等の大量緊急輸入を計画せられましたが、農村が今日野菜その他の農産物の暴落に苦しみ、わずかに牛豚から所得増加により息づいておるときに、これが大量輸入は農村に大きな影響を与えるだろうと思います。また、消費者米価を公共料金に準じ、その値上げを一年停止することは、この秋の生産者米価に影響せずには済まないと思いますし、政府は農業の近代化を一大政策として予算上も大なる考慮を払われ、農村を重視せられましたが、これらの対策は、農村労力の減少、米作偏重の是正等の根本対策であり、これらが実効を見るまでには相当の年月を要し、いまの農民は、今日の生活を憂え、米麦にしろ、その他農産物にしろ、生産費を償い得ざる価格で生産せしめられることは、生産意欲の減退となり、農民の不満の声にもなるのでありますから、物価問題も大切でありますが、これが農民に及ぼす影響についても深甚の注意を払われ、適切なる施策を立てられたいのであります。これに対する総理の御所見はいかがでございましょうか。  第三に、治安対策についてお伺いいたします。最近、犯罪の悪質化、暴力犯罪、青少年犯罪の増加が著しく、憂慮にたえないものがございます。政府はこれに対し、警察、検察、裁判機能の強化、裁判独立性の保持、警察官、検察官の資質向上と増員等に適当な措置をとっておられますが、まだ不十分なうらみがございます。また、犯罪は、単に刑罰、取り締まり対策にとどまらず、道徳教育の振興と不良環境の一掃をはかるとともに、出版物、映画、テレビ、ラジオ等の協力を求め、総合的な犯罪防止対策が必要であり、これらの問題や治安非常対策につき接しても、いろいろお飼いいたしたいのでありますが、与えられたる時間の関係もあり、これを省略して、次の一点につきお伺いいたします。  それは、治安問題として重大な関心を要する共産圏よりの平和攻勢であります。東西緊張の緩和が最近アジアに対する平和攻勢となり、わが国に対しても、思想上共産主義の浸透をはかり、その党員の拡大に努力するとともに、一部国民に対し反社会的思想の普及につとめ、すでに共産党員は、昭和三十四年には三万人であったのが、今日では十万人を数え、数年後には二十万人になんなんとする趨勢であり、過般の衆議院選挙におきましても、共産党への投票数は百六十万を突破した情勢にかんがみ、右翼活動と相まち、左翼活動の調査と、その反社会的行動の取り締まりに万全を期せられたいのでありますが、総理の御所見を伺いたいのであります。  以上、外交経済、治安の三政策につきまして、総理に御質問を申し上げたいのでありますが、これを要するに、本年は、わが国外交経済にとって、まことに重大な時機であり、八条国への移行問題、OECDへの加盟、貿易自由化の全面実施により、わが国は完全な開放経済に立たなければならず、また、東西の冷戦緩和により、東洋の国際関係は、ますます緊張を加うる年であり、他面、国際収支及び物価問題の解決いかんによっては、国民経済に重大な影響を与うる年でありますので、総理の御苦心と御努力はなみなみならぬものがあると思います。総理理想の高度福祉国家建設のためにも、私の質問した諸点に対し、明確なる御答弁をいただき、国民の疑念を一掃し、国民の協力を期待いたしたいと念願する次第であります。  これをもって私の質問を終わります。(拍手)   〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  13. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答え申し上げます。  民主政治の根本は議会政治にあることは申すまでもございません。したがいまして、われわれは、この議会におきまして十分論議を尽くす、まず十分論議を尽くして、そうして多数決の原則によるべきだと私は考えておるものであります。今後もその方向によりまして、従来にも増して十分論議をまず尽くすという方向に努力いたしたいと考えておるのであります。  なお、治安立法につきましてのお話がございました。私は、治安とは、必ずしも立法ばかりではない、やはり国民の気持ち、すなわち、個人の尊厳を確保し、そうして社会連帯の気持ちである、と施政方針に申し述べたとおりでいきたいと思います。ただ、最近の状況から申しまして、暴力取締法は先般御審議を願いましたが、今回も御審議願う考えでおるのであります。  次に、低開発国への協力の問題でございますが、私は、先般も申し上げましたごとく、日本人のとにかく世界人類に対しまする貢献、いわゆる、われわれの使命は、東西問題がいま論議せられておりまするが、いわゆる南北問題、新しい低開発国への協力、援助、奉仕、これが日本人の私は使命であると考えておるのであります。したがいまして、機会あるごとに低開発国を回ると同時に先進国も回りまして、そうしてこの南北問題で最も主役をつとめたい。私がOECD加盟を要求いたしておりますのも、また、今後開かれる世界貿易会議への日本の参加も、日本人の崇高なる使命と申しますか、低開発国への奉仕、これを私はやっていくことがわれわれのつとめであると考えておるのであります。  また、外交問題におきましても、近隣あるいは東南アジア外交を主にしておりますことは、御存じのとおりでございます。いまお触れになりましたマレーシア問題につきましても、先般の旅行を機会に、また特に私はスカルノ大統領の訪日を求めまして、そうして自分の考えを強く言ったのであります。たまたまケネディ長官も来られまして、三者お互いに話し合って、ただいまの状況では、バンコックでまず外相会議を開くという電報が参ったような状態でございます。私はマレーシア問題がいわゆる話し合い——ムシャワラエの精神でりっぱな妥結を見ることを強く期待しておる状況であります。われわれといたしましても、東南アジア親善、和平のために献身的の努力をいたしたいと思います。このムシャワラエとは、これは先般のマニラでの会談で、ツンクウ首相、あるいはスカルノ大統領、マカパガル大統領三人が、ムシャワラエの精神で行こうという決意をしておるので、私は、御参考に申し上げたのであります。これは、三国でムシャワラエの精神と申しましたら、三国の人はほとんど全部わかります。わからないのは、この方面の関心が少ないと申しますか、とにかくムシャワラエ精神といったら、もう三国すぐわかるというのでございまして、私はあえてこの機会に話し合いということで申し上げておく次第であります。  なお、日韓問題につきましては、専門家としての御質問でございますが、やはり十二海里の専管区域は、これは認めるということが私は当然であると思います。その区域外におきましても、魚族保存の立場から、また両国互恵の立場から、円満に話が進むよう努力をいたしておるのであります。  なお、中華民国との関係につきましては、遺憾の点がございますが、私は、あの戦争直後の状態等、中華民国のわれわれに示しましたあの非常な好意につきましては、十分報ゆる考えで、今後も中華民国との親善関係の増進に努力いたしたいと思います。  中共問題につきましては、われわれは中華民国という存在を前提にしておりまする関係社会党さんの言われるようなことはできないのであります。われわれは信義と約束を守らなければ外交はできないのであります。したがいまして、信義と約束を守りながら、世界の情勢、動向を見、また国連の場におきまして十分世界の平和と繁栄に貢献するような措置を自主的にとっていきたいと考えておるのであります。  なお、外交問題に関しまして、外交調査会とか、何と申しますか、挙国一致の態勢は望むところでございますが、いかんせん、どうもだいぶん考え方が百八十度違っておりますので、なかなかこれが実現は困難でございますが、私は、組閣当初に、外交問題懇談会というものを設けまして、民間の学識経験者あるいは財界の人等にお集まりを願いまして、そうして一年半にわたって十分討議を願ったのでございます。しかし、そこにお集まりいただく者は、大体われわれの考え方と同一か、話せば大体共通点が多いので、全然百八十度違っている人はなかなかおいで願いにくいのであります。そこで私は、一応の結論が出ましたからやめましたが、今後におきましても、外交問題で百八十度違っておっても話し合いをようという機運が出てくるならば、何どきでも参加にやぶさかではございません。  なお、国際収支の問題につきましていろいろお話がございました。私は、何と申しましても経済運営の最も大事なことは国際収支でございます。そうしてその点から物価問題その他もくるのでございます。国際収支の動向につきましては常に注意を払っております。で、施政方針演説でも申しましたごとく、今回の国際収支の赤字は、昭和二十八、九年、昭和三十二、三年のときとは変わっております。変わっておりまして、とにかく生産が相当伸びておる。この秋ごろ——昨年の八月ごろから実は生産が予想以上に伸びたのであります。そして、生産が予想以上に伸びますと、輸入がふえる。輸入がふえるということになりますと、ちょっと思惑が起こりまして、十二月ごろから非常に上昇してまいりましたが、しかし輸出も相当伸びております。輸出も相当伸びておりまして、私は、三十八年度国際収支につきましては、輸出が相当伸びておりますから、ある程度の見越し輸入、ある程度の生産の上昇はありましても、大体見通しのとおりにいくと思うのであります。  なお、三十九年度の問題につきましては、お話のようにいろいろな点がございまするが、私は、政府の見通しのような生産の上昇あるいは物価動きならば、あの見通しのとおりにいくと思うのであります。  また、アメリカの利子平衡税等もございますが、いままででも相当の外資、優良な外資が入ってきております。また、来年度におきましても、世銀の一億ドルの見通しもついております。また、ヨーロッパ方面の外資の導入も相当進んでおりますし、望みもあります。私は、この上とも財政金融の運営を誤らず、弾力的に、経済の情勢に即応しつつ処置し、また国民におかれましても、むだを排して、貯蓄増強にこの上とも御努力いただければ、日本経済の前途は健全であり、洋々たるものと確信しておるのであります。  なお、引き締めの問題につきまして、中小企業にしわの寄らないようにという御注意でございますが、もちろんその点は十分考えていっておるのであります。なお、引き締めの問題につきまして、準備率とか、あるいは窓口規制とか、あるいは公定歩合の引き上げとか、いろいろ御議論があるようでございますが、私は、大蔵大臣、日本銀行の総裁がともに努力をして、適正な方法をとり、急激な刺激を与えずに引き締めの効果があがるよう努力してくれるものと期待しておるのであります。  次に、物価問題でございまするが、経済理論から申しますると、公共料金を一年間是が非でもストップするということは、これはいかがなものかと思います。しかし、消費者物価というものは、理論ばかりでなくて、ムードの点もございます。しかも、これは非常に大事なことといわれておりますので、私は、公共料金は一年間抑制する、こういう基本方針をきめたのであります。で、一年たった後にはどうするか、これはやっぱり原則に返らなければならない、いけないと思う。だから、大事なここ一年間は、この上とも年産性を上昇し、そうして規模を拡大し、そうして必要な物資の増産をはかる。また、片一方では、流通機構の合理化、拡大化をやると同時に、やはり笠利を上げない、また金利をできるだけ下げるように、そういうようにしていくならば、大体企画庁の調査、またわれわれの考えておりますように、大体年度間四・二%の消費者物価でおさまるのではないか。これを具体的に申し上げますと、昭和三十九年の三月の消費者物価と四十年三月の消費者物価を比べて、大体三%程度の上昇になることを期待しております。また、この十一月あるいは十二月、一月の様子を見ますと、大体こういう方向に進んでいると私は見ておるのであります。  なお、輸入物資につきましては、やはり消費者物価の上昇、あるいは国内の農民、中小企業立場等を考えまして、何と申しますか、国内にもよく、生産者もよく、消費者にもいいよらな方法に弾力的に輸入物資のことは考えていきたいと思っておるのであります。  なお、治安対策につきまして、共産主義の浸透につきまして御心配のようでございます。私も心配しております。しかし、共産主義が違法な行動をとるならば、厳に取り締まります。ただ、私は、共産主義とたたかう道は、やはり生活水準を引き上げ、われわれの生活がよくなって、共産主義よりも自由主義がいいんだということを国民にはっきり認識してもらうことが根本問題であると思います。したがって、それにはやはり、所得倍増による生活水準の向上と、りっぱな人づくり国づくりをやることが、共産主義対策のもとであると考えて精進をいたしておる次第でございます。御了承願います。(拍手
  14. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 武内五郎君。   〔武内五郎君登壇拍手
  15. 武内五郎

    ○武内五郎君 私は、日本社会党を代表して、総理施政方針に関して若干の質問をしたいのであります。  池田内閣の掲げた高度成長政策は、所得倍増のバラ色ムードをまき散らしながら、設備投資主導型と言われるごとく、独占資本を中心とする大企業本位に進められ、いまや、その矛盾はおおいがたく、社会経済の随所に政策の行き詰まりがあらわれてまいりました。すなわち、国際収支の悪化、消費者物価の上昇、中小企業と農業の立ちおくれ、地域格差の拡大となってあらわれていることは、すでに国民の一人一人が承知しておるところであります。とりわけ農業においては、昭和三十五年の選挙に際して、「日本の農民の六割を整理しなければ日本経済の成長は達成することができない」と、池田総理みずからが述べたごとく、窮乏に追い詰められた農民の離村が相次いで、大企業繁栄の陰に明日への希望を失った農村の姿は、まことに深刻なものがあります。まさしく先進国に追いつくための無理と犠牲は、農業においてそのひずみを端的にあらわしているものであると存じます。私は、農業問題こそ、政治的にもまた経済的にも、最も重大な問題であると考え、特にこの問題を重点として政府質問をしたいのであります。  政府は倍増計画において、農業の生産性向上と所得格差の解消をうたって、すでに農基法農政も三年を経過したのでありますが、依然として農業と他産業との間の所得並びに生活水準の開きは縮まってまいりません。ますます拡大する傾向が見られるのであります。政府の倍増計画中間検討報告の作成にあたって論議されたところでは、格差是正に関する総合的な施策は実施されなかったといっても差しつかえないとさえ指摘されているのであります。政府は、高度成長政策の進行過程で、農工間の格差解消のために、一体いかなる施策を講じてきたのか、まずお伺いしたいのであります。  第二に、池田総理は、さきに臨時国会において、高度成長が不均等発展の拡大をもたらしたことを認めて、その施政方針に「農業の画期的な施策」を約束されました。三十九年度予算案においても、若干規模の拡大は見られたのでありまするが、画期的施策の内容は必ずしも明確ではありません。この際、私は、総理の画期的施策と言うのは一体何であるか、具体的にお示しを願いたいと存ずるものであります。  第三は、構造改善事業についてであります。私がたとえこの計画を善意に見ようといたしましても、その事業にはもう行き詰まりの点が多く、中には指定返上の地域もたくさん見られるようになりました。三十七年度二百、三十八年度三百、合計五百カ所の指定地域に対して、事業実施に入ったものは四百三カ所にとどまっておるのであります。との事業を円滑に推進するための展示的な拠点として設定されたパイロット地区の一つである千葉県成田市豊住地区における計画は、事業を早期に完成するために特に濃密な指導助成を行なうと、こう言いながら、あえなく失敗しておるのであります。しかもこの計画におきましては、事業の責任を何ら裏づける法的措置もありません。その当該町村並びに地元農民に経営の責任を負わせているという無責任な推進の仕方は、いたずらに町村の負担を大ならしめるばかりで、農民を混迷におとしいれているのが今日の実態であります。  さらに構造改善に関連して、土地政策についてお尋ね申し上げたい。御承知のとおり日本の農業の持つ本質的な欠陥は、零細土地所有に規制された零細規模の経営と、資本構成の貧困さに示されるところの経営基盤の脆弱な点であります。構造改善は、こうした根本的な矛盾に対して何ら手を触れることなく進められてまいったのであります。農業を近代化するという前提に立つとき、大型機械の導入も施設の整備も、今日の経営規模のままでは不可能に近いのであります。政府はこの問題の根底となる土地政策に何らの対策もなく、また、その対策を立てる勇気すらないように見受けられるのであります。ただ労働力の流出を唯一のてことして、農地の再配分を成り行きにまかせようとするかのごとくにうかがわれるのであります。政府は大型機械化による能率的な省力農業確立のために一体いかなる土地政策を持とうとするのか、お尋ねいたしたいと存じます。  さらに土地政策に関連いたしまして、固定資産税再評価についてであります。私は、政府は新評価は実施する、しかし税制調査会の答申に基づいて農地の増税は行なわないという方針を固めておるというように聞いておりまするが、しかしながら、調査会の答申はあくまでも暫定的な調整措置であり、根本対策には触れていないばかりか、評価方式については、農地に対しても新たな売買実例価格方式を適用しようとしておるのであります。さらに、たとえ農地に対する増税は行なわないといたしましても、山林、牧野、宅地等における増税は、農業に強いはね返りをもたらすことは避けられないと考えるのであります。評価基準が行政権限にまかされている今日、現行地方税法のあり方から考えましても、国民のこの問題に対する不安は一向に消えていないのであります。私は、総理並びに農林大臣のお考えを伺いたいのであります。  農林当局は、本年度農林予算について、補助金行政から融資行政への転換を画期的な特徴として、その融資ワクの若干の増加をもって、農業経営の飛躍的な体質改善を目途とするかのごとくに言われておりまするが、さきに指摘いたしましたごとき日本農業の弱い体質をそのままにしておいて、企業的農家の育成などをはかるということは、私は絶対にできないと考えている。真に構造改善を推し進め、生産基盤の整備を推し進めようというならば、政府は、この際、西ドイツなどに例がある、思い切った国費を土地改良や離農促進対策に投入すべきであるということを私は考えるのでありまするが、政府は一体どう考えるか。  次に、選択拡大、主産地形成に関する問題であります。  昨年来、牛乳の値下げで、いろいろな問題が起きてまいりました。選択拡大の大宗でありまする酪農において、生産者価格がきわめて不当に低く押えられておるという事実は、政府の選択拡大方式に対する見通しと対策を根本から疑わざるを得ないのであります。新潟県における一例をとって見ましても、生乳一キロ当たり二十八円から三十円の低価格で押えられまして、二十一頭の乳牛を共同飼育しておりまする組合が、年産十万キロの牛乳を生産して、実に五十六万三千円の欠損になっているのであります。しかも、近代化資金の借り入れや農林漁業金融公庫からの借り入れの返済に追われているのが、真の姿であります。これが今日の酪農の実態であります。ざらに、最近注目すべきことは、自由化推進のもとに多量の粉乳が輸入されて、酪農を圧迫していることであります。また、養鶏についても、外国資本の進出、あるいは外国資本と日本の食品企業との提携、合弁によって、強い打撃が見られるのであります。こうしたなしくずしの自由化による影響は、選択的拡大の危機を招くものと言わざるを得ないのであります。また、生鮮食料品の値上がりが大きな政治問題になっているかたわら、最近の中央市場では、大根一キロがわずか二円から四円、白菜がリヤカーに三台百円に下げられる。かくのごとき指定主産地における白菜、キャベツの生産安定基金さえきわめて不安定な状態であり、しかも、生産安定基金によるところの白菜、キャベツのような農産物さえも、生産価格の引き下げによって受ける損害に対する補償は何も出せない状態になってまいりました。私は、選択的拡大方式による農産物の流通価格は、一体どういう基準によって政府は安定価格の決定をしようとするものか、お伺いしたいのであります。  農業生産の安定をはかるために、総合的な支持価格制度を検討する用意はないのかどうか。外国資本や大企業の農業への進出にどういう対策を持っておるかをお尋ねしたいのであります。  さらに、私はこの問題に関連いたしまして、米価の問題であります。近年の米の需給状況はきわめて逼迫した状態がうかがわれております。国民一人当たりの米の消費の伸びもあって、基本計画の当初の見込みが違ったものではないかと考えざるを得ないのであります。私が、政府お尋ねしたいことは、第一に食糧自給方針を堅持するのかどうかということと、食糧自給方針を堅持するならば、最近の需給状況の変化に対応する需給計画を修正して、新たな観点から対策を立てる必要があるのではないかと考えるのでありますが、政府のお考えはどうか。しかも、稲作労賃の年々の値上がりによりまして、生産コストが上昇して参りました。本年度の生産者米価に対する政府方針というものは一体どうなのか。  さらに、私が、この際、消費者米価についてあわせてお伺いしたいことは、先に農林大臣が消費者米価の性格をようやく公共料金に準ずるものとしてお認めになったのでありますが、生産者米価の引き上げによっては消費者米価の値上げも、また、あり得るかもしれないような御発言があったのであります。このようなあいまいなことでは、国民は納得もしないし、安心することができないのであります。あらためて明確なお答えをいただきたいと存ずるものであります。  最近の農村における労働力の流出についてお伺いしたい。この農村労働力の流出という問題は、三十七年度においては八十七万人、これ峰前年比一四・二形の増加をみているのであります。特に流出人口の七〇%は新規学卒者を含めた若年労働力によって構成されているのであります。また、農家戸数の変動を見まするときに、兼業農家、特に第二種兼業農家が年々増加の傾向をたどってまいりました。これは、農業だけで生活が困難な農家が、土木工事や、臨時雇いのような不安定な職種に職を求めていかなければならないことを示しているものであります。特に季節労働者は、その半数が職安を通さないで、前近代的な雇用関係によって就労して、まことに劣悪な労働条件のもとに苦悩しているのであります。また、他産業からの離職帰農者が三十六年度十三万人から三十七年度十六万人へと増大していることは、これも雇用条件が不安定な事実をあらわしているものであることに注目しなければならぬと考えるのであります。今日まで、いたずらに経済の流動性にまかせてきた労働力の動向に対して、政府は確固たる対策をもって臨まねば、日本の農民も、労働者も、安定した気持を持つことができないのでありまするが、政府対策をお伺いしたいのであります。  さらに、労働力の流動化の激しい農村青年の労働力について、将来の農業のにない手となり得るすぐれた資質を育てていかなければならない必要があるのでありまするが、かつて池田総理が、農村を民族の苗しろと言ったが、青年が希望を失うような農業事情のもとでは、たくましい労働力を持った青年を農村にとどめることはできないのが今日の実態であります。池田総理の人つくりというお考えは、農村においてどういうふうにこれをやっていくのか、具体的にお示しいただきたいのであります。(拍手日本の農業は危機に立っていると言われてすでに久しいものがあります。まことに重大な問題であります。私は、今日、西欧先進工業国ほど農業の保護育成に力を注いでいる事実について、政府当局が刮目していただかねばならぬことを指摘しなければならぬと考えるものであります。農業基本法の提案者でありまする池田総理をはじめ、関係各大臣の御決意のほどをお伺いして、私の農業問題に関する質問を終わりたいと存じます。  次に、公共投資の運用について、数点にわたって大蔵大臣並びに建設大臣一にお伺いしたいのであります。  公共投資は、年々予算に大きなウエートを占めてまいりました。ところが、公共施設は大都市に集中されてまいりました。そのために、地域格差がだんだん大きくなっていく姿が公共投資を通じて強く見られるようになりました。過年度における地域別の公共事業費の配分を見ますときに、京浜地方を第一位として、東海地方、大阪、神戸を中心とする近畿地方がこれに続いて、実にいわゆる太平洋ベルト地帯に大部分が集中されておって、東北、北陸地方は、わずかにその余分を受けるというような哀れな状態であります。今回の新道路五カ年計画を中心とする道路事業計画においてさえも、その財政的な基礎をガソリン税に置く限り、自動車利用者の濃密な大都市偏向は避けられないと考えるのであります。このように、産業、文化、国民生活の基盤をつちかう公共事業が、工業ベルト地帯に優先的に進められて、豪雪寒冷地方は依然として後進停滞の状態に置かれているのであります。(拍手昭和二十五年に施行された国土総合開発法の目的は、全く死文化された状態に投げられてしまいました。産業経済の上にあらわれるひずみを是正すべき新産業都市建設にあたってさえも、道路、港湾、住宅等の公共的性格を考えるときに、その基盤の整備がより一そう強化されなければならないのでありまするが、しかもこれに対する財政的な裏づけというものは、いまだ十分に示されていないのであります。特に最近発表されました三十七年度地方財政の実態を見まするときに、赤字団体が急増してまいりまして、このような事情が地方財政に大きな負担となってあらわれることが、もらすでに心配になってまいったのであります。さらに豪雪、寒冷地地帯における産業、文化、経済の後進状態は、産業基盤整備がおくれておったことに原因があるとともに、私は、昨年雪害対策本部長として豪雪地帯を視察された河野建設大臣のお考えを、こうした公共施設の配分に関し、特に豪雪寒冷地帯に対する対策を強くお伺いしたいのであります。私は、こういうような公共投資の配分の公正さを欠く姿が、特に地すべり地帯にあらわれていると考えるのであります。昨年三月、新潟県能生町における急激な地すべりによって列車転覆の大惨事が起きた。また、数年来引き続き激しく動いております松之山地区の惨状といろものは、今日も全く手を施すことのできないような状態になっております。同町では、昨年の暮れに、その前途に希望を失った農民が相次いで二人自殺しております。地すべり地帯の町村は、実際は財政破綻の状態になっておる。住民は激動するところの土地と、崩壊していく自分の住宅をながめながら、なすところを知らないで、困窮その極に達しているのが真実であります。いまや地すべり地帯に対する抜本的な対策というものは、その被害者に対して、家屋移転費を含めた救済対策の樹立が必要になってまいりました。私は、以上の諸点に関し、総理大臣、建設大臣並びに大蔵大臣のお考えをお伺いしたいのであります。  最後に私は、高度成長政策によるひずみの谷はいよいよ深くなってまいりましたときに、池田総理が一昨日の施政方針演説の冒頭に、「国民の一人一人が働く意志とすぐれた創造力を自由に遺憾なく発揮し、豊かで平和な生活を営み得る社会をつくることは、政治の究極の目標である」と豪語されております。このことは一体、豪語と美辞をもって国民をごまかすだけではならぬのであります。また、「英知と勇断」と言っております。英知と勇断をもって国民の一人一人がほんとうに豊かな平和な生活を営み得る政治を期待いたしまして、私はこの質問を終わりたいと存じます。(拍手)   〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  16. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御質問は、経済の高度成長と農業問題を中心としてのことでございます。私は、所得倍増計画を打ち出すにあたりまして、やはりあなたと同じように、農業問題が非常に重要なことを国民に訴えたのであります。とにかく、十年で所得倍増が実現せられた暁には農家人口は半分近く減るだろうと言ったら、非常な驚きでございましたが、いまでは国民におわかりいただいたと思います。そういうことでございまして、私は、農業の生産性の向上と、農家の所得をふやすことに極力努力いたしまして、その効果は着々あがりつつございますが、私の予想以上の第二次、第三次産業の上昇がございましたので、予定どおりの格差縮小にはなっておりませんが、方向としては私の念願する方向で進んでおるのであります。問題は、御承知のとおり、農業というものは、自然的、経済的、社会的に非常な制約を受けております。また、そのためにいろいろな施策がおくれがちであることは自然の推移でございます。したがいまして、私は、農業基本法の制定を見た今日、これを極力早く多く実現に向かって進んでおるのであります。  「画期的」というのはどういうことかという御質問でございまするが、やはり、経営規模の拡大とか、あるいは生産基盤の整備等につきまして、いわゆる農村の農業改善事業をやり、機械化あるいは技術の革新をはかっておるのであります。とにかく、自然的、社会的、経済的の制約があることは、これはつきものでございます。相当時間がかかることはやむを得ませんが、私はそれを克服すべく、金融の他の面におきましても努力いたしておるのであります。この点は、施政演説で申し上げたとおりでございます。詳しいことは農林大臣からお答えいたしますが、方向はただいま申し上げておるとおりでございます。  私は、農業は民族の苗しろと申しました。また、いまもそのつもりでおります。それから、お話のとおりに、農業問題は、先進国におきましても政治の重要な課題でございます。ことに、わが国のごとく高度成長をしようという場合におきましての農村問題は、お話のとおり、最も重要な問題でございます。私は、お話のとおりに、農業のにない手を育成していかなければなりません。農業のにない手を育成するのは、農業問題に対しての教育の普及でございます。また、農業のにない手を育成するのは、農業自体が、りっぱな企業、望みある企業であるようにすることが農業のにない手をつくるゆえんでもあるのであります。私は、そろいう意味におきまして、今後とも農業基本法精神にのっとりましてあらゆる努力を傾けていきたいと考えております。(拍手)   〔国務大臣赤城宗徳君登壇拍手
  17. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) たいへん多岐にわたり御熱心な御意見質問であります。  格差是正の問題は、たいへん私も心配をいたしておるのでございます。三十七年度においては製造業あるいは他産業との格差との格差は幾分縮小されております。しかし、これで安心するような私でもございませんし、また、他産業との格差是正については一段の努力を払わなければならぬと思っております。  農業構造改善で、ことにパイロット地区等をやめるというような傾向があるじゃないかと、こういうことでございます。私から申し上げるまでもなく、いまの格差の問題やあるいは自由化の問題といたしまして、農業あるいは漁業、山村等、体質を改善しなければならぬということは、これはみずから農業者等の問題で、好むと好まざるとにかかわらず私はこの改善をしなくちゃならぬと思います。そういう意味におきまして指定等もいたしましたが、市町村等の計画などがおくれましたので、これを次年度へ延ばしてやるというような面もあります。あるいは、その計画等におきまして、はたして適当であるやいなやという問題等もありまして、そういう点等がおくれたものが次年度に残っております。構造改善事業につきましては、助成措置等も講じ、あるいは弾力的に一町村内になお構造改善をすべきものを拡大していくと、こういうような方法、あるいは、能率化といいますか、そういう方法をとって、一段とこれはどうしても指定あるいは指定されないところでも進めていきたいと、こういうように考えて推進をいたしておる次第でございます。その点につきまして、一体、日本の農業構造は零細農、これについての土地政策がないじゃないかと、こういうことでございますが、土地は現在のところ、申すまでもなく私有地でございますから、これを拡大するにつきましても、かってにやるというわけにはまいりません。そういうわけで、やはりお話のように、耕地面積は拡大したい、どういう方法でやったらいいかという問題でございますが、私は、やはり大きな機械を入れるとか、あるいは選択的拡大とか、こういう方面に進めるにいたしましても、その基盤であるところの土地がそれに向くようになっておらない。したがって、私は機械化とか、選択的拡大の方向に沿うた土地改良事業——いままでの土地改良事業も相当その点に寄与しておりますけれども、一そう選択的拡大の方面に土地改良を進めていきたい。土地改良法の改正も本国会で御審議願うことでございますけれども、すなわち、土地改良と同時に、換地処分等によって集団化する、こういうことを強力に進めていく。あるいは国有林の問題もこれに関連いたします。あるいは選択的拡大の問題で、草地の造成という問題も関連いたします。そういう点から考えまして、基盤の整備、したがって、ことしの予算等におきましても、土地改良及び土地改良の中でも圃場の整備ということに重きを置いております。ところが、今度は土地制度についてどうかと、こういうことでございますが、これは、おととしでございましたか、土地を拡大する制限を撤廃しました。あるいは農業法人の制度を設けました。あるいはまた、農協に不在地主の信託制度等も設けました。これは十分にその実効が伴っておりません。こういう面も推進しなければならないと思います。そういういろいろな面から選択的拡大へ向かえるような基盤を強く整備していきたい、こういうことで、ことしの予算等におきましても、その措置をとっておるわけでございます。  第三に、固定資産税の問題でありますが、農地につきましても、売買実例価格を基準として評価する方法ということになっておりますが、この農地の特質を考えまして、売買実例価格、実際に売買されている価格から求めた正常な売買価格に対しまして、農地の平均反当純収益額の限界収益額に対する割合、それを乗ずるということになっておりますが、むずかしくなっておりますが、正常な売買実例価格に対して約五五%ぐらいのパーセンテージを持ったものをかけて、固定資産税の評価額としたい、こういうことで進めております。その結果、農地の評価額は、従来の評価額より若干増加する見込みでありますが、さしあたり、三十八年度の税負担をこえることのないように立法措置を講ずる方針で、目下、自治省において検討中でございます。恒久的な問題につきましては、さらに答申を得て検討をいたしていきたいと思います。  それから、先ほど話が出ました選択的拡大で、せっかく酪農等を進めておるが、牛乳の生産者の価格等の値下げをされておるというようなことはどうなんだ、——まことに私もこれは遺憾に存じて、その点につきましては、業者等も呼んで、いろいろまた私のほうの意見を述べて進めておるのでございますけれども、これが十分にいかない場合の問題でございますが、これはもう御承知のように、酪農振興法の中に、当事者の紛争といいますか、話し合いがまとまらない場合には、県知事が第一次的にはあっせん調停に立つことになっておりますので、そのあっせん調停を進めるべく慫慂いたしております。しかし、これがそれだけで済まない場合には、中央の段階にのぼってきますので、農林大臣としてもこれを善処していきたいと思います。  牛乳の問題につきましては、私どもといたしましても、何といたしましても消費を増大したい、こういう面で、学校給食等につきましても、先ほどお話がありました粉乳をやめて、だんだんに減らしていって、生牛乳を学校給食に使っていきたい。本年度予算でも四十万石予定しておりますが、逐次これを拡大していって、消費をふやしていきたい。それからまた、価格の問題につきましては、畜産事業団等におきまして、昨年の暮れごろでございましたか、バター等を畜産事業団が買い上げたり、あるいは学校給食のほうに安く回したりして、価格の安定につきましても一段の努力をいたしておるわけでございます。  それから、米価でございますが、米の価格をどうするか、ことに消費者価格をどうするかという問題でございます。これは公共料金等に準じまして、昭和三十九年度におきましてはこれを引き上げない、消費者米価は上げない、こういう方針でおります。ただ、新聞等にありましたように、同じ米価でも生産者米価というのは、これはちょっと算定方式がありますかう、その算定方式からいって、これは上がらざるを得ないかと思います。どの程度になるかわかりません。あまり高く上がった場合には、実は農家等においても米は全部売って、そうして安い消費者米価で米を買うという逆ざや現象になりますというと、需給計画等にも相当影響があろうかと思います。そういう面につきましては、たいへんな変化がありましたときには検討しなくちゃなりませんけれども、現在のところ、消費者米価というものは一年間上げない、こういう方針で進んでいるわけでございます。  農業労働力が非常に外へ出て、その雇用条件等についての御心配がございました。これにつきましては、労働大臣からも御答弁があろうと思いますが、職業紹介、あるいは訓練、あるいは新しい開発等についての連絡等を、地域開発等との連絡をとりまして、転出する労働力が安心して雇用されるような方途をとりつつありまするし、またとっていきたいと思います。  農業というものをどういうふうに見ているかということでございますが、ただいま総理から御答弁ありましたように、確かに農業の基盤が固まってこそ他の産業も私は伸びていくといいますか、国際的に輸出などが進んでいるのも、農業そのものの基盤がだんだん固まってきたからだと思います。同時に、基盤が固まるといっても、農業者、漁業者等の生活がよく安定していかなければ、これはやはり農村が荒廃すると存じます。そういう意味におきましては、労働力の転出はありますけれども、少ない労働力になってもやっていけるような近代化対策を強力に推し進めていきたい。そういう意味におきまして、いま武内さんもたいへん御心配になっておりますが、私も同じ憂えをもってこの農業対策を進めていきたい、こう存じております。(拍手)   〔国務大臣大橋武夫君登壇拍手
  18. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 政府といたしましては、今後の雇用政策の推進にあたりましては、地域別、産業別に労働力需給の見通しを立て、これに基づきまして労働力の円滑な調整を進め、地域間、産業間の需給の均衡をはかってまいるようにいたしたいと思います。このために、広域職業紹介活動の推進、職業訓練、技能検定の拡充強化、労働者用住宅の大量建設、雇用促進融資ワクの拡大等につとめてまいりたいと思います。また、特に季節労働者につきまして、公共職業安定所の紹介によらない雇い入れの場合、その一部には、賃金不払いその他労務管理上問題のある事業所もあると思われますので、労働省といたしましては、季節労働者の雇用について、公共職業安定所を利用されますよう、関係事業主、及び団体、また労務者等に対して、勧奨指導につとめることといたし、全国主要地区におきまして、季節労働に関する需給調整会議を開催し、労働条件の改善等の指導、求職者の把握、並びにその需給調整を行なっているところでありますが、今後さらに農林当局とも連絡をいたしまして、これらの措置の推進をはかり、季節労働者の雇用条件の改善等につきましては、万全を期したいと存じます。(拍手)   〔国務大臣田中角榮君登壇拍手
  19. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 武内さんの御質問の中で、公共投資が、大都会を中心に集中的に投資をされておって、地方開発というような面に対して薄いというお考えを述べられました。確かに、長いこと投資効率という面から考えられて、大都会、都会に集中的に投資が行なわれてきたことは、事実であります。しかし、産業、人口、文化等が大きな都市に過度に集中をして、これからは、都市の集中排除を行なわなければならないという状態でありますので、施策もそのような方向で進めておるわけでありまして、地方の開発のための先行投資につきましては、重点を置いて進めるようにいたしております。道路やその他の公共投資の計画をごらんになるとおわかりになるとおり、経済能力のあるところは、有料道路というような状態で、融資や起債によってまかなうような制度が開かれ、だんだんそれに重点が置かれておりますし、資力のない地方の開発に対しては、財政資金を重点的に入れるという考え方で進めておるわけであります。  豪雪、地すべり対策等に対しては、御承知のとおり前向きに対処いたしております。特に豪雪に対しては、経済企画庁の調整費の中に、新しく豪雪に対する調整費を認めたわけでございます。  新産業都市等につきましても御発言がございましたが、今年度は一月、二月、三月、経済企画庁がいま指定をいたしておりますと同時に、この指定に対して、適正規模の計画を定めるわけでありまして、今年度の新産業都市に対する予算上の措置としては、三十八年度九億円の調整費を十四億五千万円にふやしております。それから、地方計画につきましては、一般地方債の計画二千九百五十億を三千七百三十二億円にふやしておるわけであります。特に、地域開発の二百六十七億円を三百四十八億円というふうにふやしております。  地方開発金融につきましては、開発銀行及び東北公庫等に地方開発のワクをつくっておるわけでありますが、四百八十億円を五百七十億円というふうに、漸進的にこれが資金の増大をはかっておるわけであります。ただいまのような御発言は、投資の方向として、政府もそのような考え方で進めておるということを御理解賜わりたいと思います。(拍手)   〔国務大臣河野一郎君登壇拍手
  20. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 大蔵大臣からお答えがありまして、大体そのとおりと思いますが、豪雪の対策でございますが、豪雪につきましては、昨年の例にならいまして、その経験によりまして、基本的なものにつきましては調査を進めております。なお、早急に用意しておかなければならぬ、たとえば現行の道路でありましても、準備さえしておけばという問題につきましては、十分準備に万全を期しましてやっております。個々の市町村につきましても、できるだけ除雪機械を備えつけるように補助金等の用意もし、順次進めております。なお引き続き万全を期する必要がございますので、これにつきましては、せっかく調査をして、万全を期したいと考えております。  その他、道路その他につきまして、公共投資が地方に薄いじゃないかというお話でございますけれども、実は、これまでは何ぶん目先に追われておりまして、御承知のとおり、すべて道路に非常に困惑いたしておりまして、それを直す、もしくは広げる、一本つけるということに、さしあたりの問題に非常に困っておりましたので、多少そういう点もございました。しかし、新しい五カ年計画等におきましては、中央地方を平均してながめまして、一方では当面の対策を立てつつ、応急策に兼ねて、基本的に将来を考えて新しい道路を建設していこうということで考えておるわけであります。特に私といたしましては、できれば道路法の改正をして、従来道路のなかったところを開発するために新しい道路をつくるというようなふうに、道路法の改正を行なってでも新しい道路をつくっていきたいと考えておりまして、お話の趣旨に沿うて将来やっていきたいと考えておる次第であります。(拍手
  21. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  22. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。  次会は明日午前十時より開会いたします。  議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十九分散会