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政府委員(
後藤田正晴君) 本件につきましては、すでに先般岩間議員が抗議団を連れて来られまして、だいぶきついお申し入れが私にございました。私は、事柄の真相を明らかにせねばいかぬということで、私
どものほうの職員を使って現地につきまた警視庁本庁につき調査をいたしたのでございます。その結果を御
報告申し上げます。
当日は、午後三時四十分ごろに、日共東部地区
委員会の宣伝カーに乗った榊原
委員長ら四名が、樽沢が経営をしております別の会社の正和自動車練習所の第二練習コースの道路上で、正和自動車の樽沢社長は、司自動車の社長となって、一日一万円の水揚げがないと首にする、運転手からしぼった金で豪勢な邸宅をかまえて労働者の敵である、樽沢社長は毎朝
暴力団を使って暴行をしている、こういったことを拡声機で放送したそうでございます。ただ、この宣伝行為を車を使ってやることは、警察の許可を受けております。道交法による許可を受けております。これを聞きましたところの練習所の職員数名が現場にかけつけまして、自動車を取り囲んで、営業妨害だ、こういうことでもって放送をやめさせようと、こうしたわけですけれ
ども、片方は放送をやめない。そこで、社内から四、五十名の男が出て来まして、宣伝車を取り囲んで引きずり出せと叫びなから車のドアや窓をあけようとしましたが、かぎが内からかかってあかない。そこで、窓ガラス等を破り、また、そこから手を入れてドアのかぎをあけた。また、マイクを引きちぎり、そして乗っておった榊原
委員長や宮崎運転手
——これは司自動車には無
関係の者で、応援の者と
認められますが、これに対して暴行を加えたのでございます。これが事実
関係でございます。
そこで、この
事件につきましては、この日の三時四十三分ごろに、一一〇番で、正和自動車練習所のところで労組の宣伝カーと歩行者の事故らしい、こういうことで、けがしている者があるようだ、こういう通報がございました。この一一〇番がありました直後に、三時四十六分、氏名を言わない女声で、正和のところで樽沢社長がなぐられている、そしてけがをしている、こういう一一〇番が入ったのでございます。パトカーは、前のときの通報で現場に行っております。警ら中の千住署のパトカーは午後三時四十七分ごろに現場に到着をして、引き続いて千住警察署の警備
交通課長以下十三名、これが現場に出動しております。さらにその後制服員三十一名、私服員五名を現場に派遣しておる、こういう警察
措置が行なわれております。最初に現場に到着しましたパトカーの乗務員は、現場におって被害者から事情を聞いたわけです。ところが、宮崎運転手が、現場から立ち去っていこうとする一団の人の最後尾についておった正和自動車練習所の専務の樽沢早人、この人を指さして、あの男が暴行をしたんだと、こういうことを申し述べましたので、樽沢について直ちにそのことを尋問をいたしましたところ、樽沢自身は、マイクで社長の悪口を放送した、業務を妨害したのでやっつけたのだと、こういうことをすなおに申し述べて犯行を
認めております。そこで、樽沢専務と、被害者である宮崎運転手及び宣伝車に乗って犯行を目撃しておりました中島君という人三名をその場から千住署に同行して取り調べを行なったのでございます。その他、第三者で目撃、会社側の
関係者等の聞き込みを行なって捜査をした結果、本
事件は樽沢専務のほか正和自動車の金谷満、青山忠靖、田中
——ちょっと字がわかりませんので田中と申し上げておきます。田中という男、この合計四名の犯行であることが明らかになりましたので、それぞれさらにこれらの任意出頭を求めて取り調べて、いずれも犯行を自供いたしております。
なお、被害者の榊原君ですが、これは救急車で病院に行ったようでございますが、治療後所在不明となって、警察としましては本人の住所及び労組の事務所等を通じて合計十回にわたって呼び出しを行なっております。これは被害者の調書をとる、こういう必要があるわけでございますが、ところがこれには応じてもらえない。こういうことで捜査がやや停滞をしたようでございますが、松本善明弁護士事務所を通じて出頭方を説得しました結果、四月二十日になって出頭して取り調べに応じてもらっております。
また、宮崎運転手でございますが、
事件当日の被害調書の作成で呼び出しをしておりますが、同時にまた診断書の提出もお願いをしましたけれ
ども、これには応じてもらえないで、被疑者の確認のための面割り、写真による面割りのために被疑者の写真を持って自宅へ行って、それを確認をしてもらいたいということを要請をしておりますけれ
ども、宮崎運転手は、組織を通じなければ写真を見るわけにいかぬと、こういうことで捜査には協力をしてもらえなかったと、こういうようなことで、実はこの
事件の結末をつけるのが私
ども常識で
考えるよりはやや日がかかっておる、これが実情のようでございます。
そこで、先ほどの御
質問の樽沢早人を早く出せと、出さないと承知せぬと、こういう
意味合いの発言を樽沢社長が、これはおやじさんのほうですが、警察で言っておったと、こういう
お話でございますが、そういう点については私
どもは承知をいたしておりません。また、本件について先般の抗議に岩間さんがお見えになったときも、何で逮捕せぬのだ、こういうこともございましたので、その間の事情もやはり私
どもとしてさらに調べたのですが、これはやはりこの連中の
一つの特徴といいますか、
事件を捜査して調べますというと、全部犯行を
認めるわけです。黙秘権を使ったりそういうことを一切しないで、調べがどんどんと済んでしまう。しかも、本人の名前ははっきりしておる。また、証拠
関係等もなくなるという心配もない。こういうようなことで、私
どもとしては任意で十分に捜査ができる、こういうことで警察としては任意の調べをやったのだ、こういうことでございます。
なお、この
事件につきましてまあいろいろな
事件があるわけですが、組合側等から警視庁あるいは千住警察署あるいは私
どものほうに、どうも警察はこういう右翼の連中に手ぬるい、こういう
お話がしばしばあるわけでございますが、私
どもとしては、組合側であろうと、あるいは右翼側であろうと、いやしくもこういった争議の際に不法行為をやるという者に対してはどんどん取り締まりをやるのだ、いささかもそこに片寄ったことはやらぬ、これは従来からのわれわれのかたい方針でございますが、その点は十分にひとつ御理解していただきたいと思うのであります。