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1964-06-17 第46回国会 参議院 法務委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月十七日(水曜日)    午後二時十分開会   —————————————   委員異動  六月十七日   辞任      補欠選任    鈴木 一司君  野知 浩之君   —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     中山 福藏君    理事            後藤 義隆君            迫水 久常君            稲葉 誠一君            和泉  覚君    委員            植木 光教君            栗原 祐幸君            鈴木 万平君            田中 啓一君            坪山 徳弥君            野知 浩之君            日高 広為君            丸茂 重貞君            亀田 得治君            小宮市太郎君            中村 順造君            米田  勲君            岩間 正男君            山高しげり君   国務大臣    法 務 大 臣 賀屋 興宣君    国 務 大 臣 赤澤 正道君   政府委員    警察庁長官   江口 俊男君    警察庁刑事局長 日原 正雄君    警察庁警備局長 後藤田正晴君    法務省刑事局長 竹内 壽平君    公安調査庁長官 吉河 光貞君   最高裁判所長官代理者    最高裁判所事務    総局刑事局長  矢崎 憲正君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○暴力行為等処罰に関する法律等の一  部を改正する法律案内閣提出、衆  議院送付)   —————————————
  2. 中山福藏

    委員長中山福藏君) これより法務委員会を開会いたします。  この際、委員異動について報告いたします。  本日、鈴木一司君が辞任され、その補欠として野知浩之君が選任されました。   —————————————
  3. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。亀田君。
  4. 亀田得治

    亀田得治君 本論に入ります前に、もちろん本法にも若干関係があることでありますが、法務大臣の六月十二日の広島談話につきまして一言お尋ねをしておきたいと思います。  それは、新聞でも報道されましたように、外国元首使節などの要人に対して特別の法的保護措置を講ずるように事務当局法務大臣検討を命じたと、こういう記事を拝見いたしたわけであります。大臣がそういうことを考えておられるということではなしに、具体的にそういう検討を命ずる段階になっておるのかなあというふうにこの記事を見て受け取ったわけでありますが、一体大臣は、どういう理由があってそのような考えを持たれ、さらに具体的にこの検討を命ずるというようなことをなされたわけでしょうか、この際考え方を承っておきたいと思います。
  5. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 最近、交通の発達、日本国際的地位の向上と申しますか、等の原因によって、と推測せられますが、外国元首要人等が多数日本に来られるという事態がございまして、もう以前からこういう問題に対して特別の立法が必要ではないかという説を聞いております。それで、刑法全般改正の問題もございますし、こういう問題も検討をすべきではないかという話を前からいたしております。それに関連しましたことになります。私、広島に先日参りましたときに、新聞人からそういう必要があるんじゃないかと聞かれた。必要があるという説もあると、こう考えられるかもしれぬ、よってこれは検討することになっていると、かように申した次第でございます。
  6. 亀田得治

    亀田得治君 事務当局では、一体どういう検討をこの問題についてされておるのか、これは刑事局長でけっこうです。
  7. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 大臣が御就任直後であったと思いますが、ただいま大臣からお話のありましたような、最近の国際的な交通関係等考えまして、こういう問題についても十分検討してほしいという御要望を私ども承っております。時あたかも刑法全面改正の作業を進めておる段階でございますが、この問題は昭和二十二年の刑法改正の際に削除になりました規定でございまするので、これを復活する——どういう形で復活するかということは別問題といたしまして、これを復活するということになりまするにつきましては、私ども立場といたしまして慎重に外国立法例等研究をいたしました上で結論を出すべきものだと、かように考えておりまして、鋭意資料その他の収集につとめておるのでございます。まだ結論めいたところまで参っておらないのでございまして、したがって、大臣にも私ども考え方をまだ具体的に申し上げる段階に至っていないわけでございます。
  8. 亀田得治

    亀田得治君 昭和二十二年にそういう特別な規定というものが廃止されましたのは、日本民主化憲法十四条等の精神に基づく不平等扱いの禁止、こういったような精神が基礎になってこの削除というものが行なわれておるわけです。決してこれを削除したからといって外国元首なりあるいは使臣に対して軽く考える、こういう意味のものではないわけなんで、したがいまして、現在の法規をもってして一体どこが悪いのか。これを廃止したのは、一つ理由があって廃止をしておるわけです。その廃止したのをさらに復活するよほどの理由がなければいかんわけです。だから、こういうことはきわめて私は慎重でなければならぬと思うわけでありますが、一体、そういう規定復活しなければはなはだしく困るんだというふうな事態というものがあるのか、あるいは予想されるのか、そういう点はどうでしょうか。大臣はどういうふうにお考えでしょう。
  9. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) ただいま目前に非常に困る、こういうことはございません。
  10. 亀田得治

    亀田得治君 新聞記事で拝見いたしますと、ライシャワー大使の負傷された事件というものが一つの大きな動機にもなったようでございますが、どうでしょうか。
  11. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 私のほうはそういう動機じゃないんです。質問者がそういうことを申したんです。
  12. 亀田得治

    亀田得治君 それならば、ライシャワー大使事件というものも決して動機ではないし、そうしてまた、現実にそういう以前の規定復活をしなきゃならぬというふうな事態も御答弁によりましてもないということであれば、こういう問題については特に慎重に私はやってもらわないと困ると思うわけであります。それはなぜかといいますと、そういう特別な扱いをするということは、必ず日本天皇に対する特別の保護規定不敬罪の設定、こういう問題に理論的には当然つながっていく問題であると思う。むしろ、大臣は、そういう一つ不敬罪等をつくる空気を出していきたいというふうな下心があって、しかし、それをいきなり言ったのではどうもまずい。そこで、外国元首とか使節といったようなところで発言されているのじゃないかというふうに私感ずるわけでありますが、どうでしょうか。
  13. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) そういう下心があって申したのじゃないのです。質問者がありましたから答えたのです。
  14. 亀田得治

    亀田得治君 しかし、考え方といたしましては、外国元首使節、こういう方々に特別な刑法上の扱いをするという考えというものは、天皇に対する特別な保護規定を設けるという考え方に通ずるというふうに大臣考えにならぬでしょうか。
  15. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 天皇に対しまする考え方は、外国元首使節等に対して特別の措置をとるからというばかりじゃないと思います。それぞれみな理由があり得る。また、そういう関連性考える場合もございましょう。別にその点につきましてどうという考えは決して定めておるわけではございません。前に申しましたように、きわめて慎重に事務当局研究をいたしております。
  16. 亀田得治

    亀田得治君 外国元首使節特別規定を設けたからといって直ちに天皇に対する特別規定には結びつかないというふうな意味のことも言われますが、しかし、これは少し厳密に言えば、そういうことも言えないこともないかもしれぬが、一般的にはそれは直ちに感ずることなんです。外国元首使節特別扱いしながら、国内のほうを何でそれ以下の扱いをするのか。これはそういうものを設けたいという立場の人から言えば、非常に強い理論構成になるわけでしょう。外国元首日本元首と、一体法務大臣はどちらを尊重すべきだと思っているのですか。
  17. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 私のお答えは、少し亀田委員に正確に伝わっていないと思います。関連はむろんこれは起こることもあるだろう。また、それぞれ考えは分離して独立に考える人もあるだろう。しかし、関連性も起こるということを私は否定をしておりません。関連性のみによってものごと考えないということを申し上げたわけでございます。  それから、どちらを尊重するか——尊重ということばにもよりますが、日本人ですから、日本元首を尊重します。しかし、それはいわゆる敬意を払うという意味において甲乙をつけるという意味味ではございません。
  18. 亀田得治

    亀田得治君 まあいまのお答えからも感ずることは、当然外国元首特別扱いすれば、国内においても特別の扱いという問題が爼上にのぼってくる可能性というものはきわめて大きい、だれでもこれはそう考えるわけです。  そこで、それでは端的に大臣にこの際こういう問題か出てきたときですからお聞きしておきますが、一部には不敬罪復活というふうな議論があるわけでございますが、大臣見解を聞かしてほしい。
  19. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) その見解を申し上げる研究はまだ済んでおりません。いま申し上げましたように、こういう問題が提起されて、外国でも特別扱いをしておる立法例もある。研究問題であるので研究指示しておるわけでございます。まだ感想を申し上げるまでに参りません。
  20. 亀田得治

    亀田得治君 それは、外国の方のことを心配して研究までさせておきながら、国内のほうについて大臣考えを持っておられないというふうなことは、私はちょっと受け取れないわけなんです。おそらく持っておられるでしょうが、なかなか事重大であって言いにくいというところが私はほんとうじゃなかろうかと思うわけです。ところが、そういう言いにくいところにこういう問題を放置しておきますと、だんだんいつの間にか進んでいくということを私たちは非常に憂えているわけです。そこで、事務当局で若干その点は研究に着手されているようでありますが、参考までにお聞きしておきますが、以前は、そういう元首なり特殊な方について特別な保護規定を設けるということは、日本の以前の刑法だけではなしに、諸外国にもたくさんあるわけです。しかし、そういことはやはり正常ではないのであって、だんだんそれがやはり廃止されている、これがやはり私は民主化方向だと思う。しかし、社会というものは、何も刑法なり法規だけで民主化が進むわけではありませんから、実質的に社会がどんどん民主化していって、しかしそういうなごりとしての刑法規定だけは残っているというふうな国はたくさんあろうと私は思う。しかし、大きな方向としては、そういうものは特に設けない。いわんや一たん廃止したものをさらに復活していくといったようなことは、刑法の趨勢から見るならば、私は逆行だと、こう考えるわけでありますが、刑事局長からひとついろいろ検討されておるようでありますから、最終的な判断というわけでもないかもしれませんが、見解を聞いておきたいと思う。
  21. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 私どももささいな研究の域を出ないのですけれども、私の見るところでは、必ずしもそれが逆行する方向であるとは考えていないのでございまして、国際連合のもとにおいても、この国際連合の中に入っております世界各国の中には、それぞれ国情が違っておるのでございまして、現段階における国際法規というようなものを一本にしぼれない面がたくさんあるわけでございます。特にこの外交使節点等につきましては、かなり不可侵権認める、あるいは特殊な特権を認めるというような条約もございまして、まだまだそれぞれの国情というものを無視できない現状にあると思うのでございます。そうしてまた、刑法のこれを保護しようという考え方につきましても、これらの現実を離れて一つ方向廃止方向にあるというふうにはとうていまだ断言できない段階のように思うのでございます。特に現行法において検討しなければならないと思っておりますのは、現行刑法の九十二条には、外国国旗国章等につきましての特別保護規定がございますことは御承知のとおりでございますが、日本国旗は単なる一般器物損壊と同じ扱いであって、外国国旗は特別な保護をされておるといったような扱い方につきましても、学者の中に現に議論が存しておるのでございます。それからまた、この二十二年の廃止の際につきましても、亀田先生も御存じのとおり、これが法律的にいけないというのではないが、この廃止は賢明な策であったとは考えられないというような御議論を発表しておられる学者も現にございますし、やはりその当時から問題があったのでございますし、現憲法国際主義立場をとっておりますので、そういう問題につきまして要人がひんぱんにわが国に来訪されるというこの現実を見ました場合に、一般刑法のその他の規定で十分まかなえるというだけでいいかどうか、あるいは、同じ刑でございましても特別な規定を設けているという考え方、こういうことがいいかどうかというような点につきましては、依然として各国とも国際主義をとればとるほどそういう問題につきましても十分検討をしておるように思うのでございまして、傾向といたしまして逆行であるというふうには一がいに申せないというのが私どものただいまの見方でございます。
  22. 亀田得治

    亀田得治君 しかし、少なくともそれは進歩前進だとは言えない。逆行ではないというふうなことに都合のいいような理論とかあるいは法制などをいろいろ研究なさっているように思いますが、私は、こういうことはもう少し広い視野で、長い視野でやはりやってもらいたい。それはまあ大臣がそういう命令をしますと、そのワク内で研究することになるかもしれませんが、しかし、こういう問題は一大臣の問題じゃないんです。及ぼす影響というものは非常に大きい、社会的に。必ずこれは不敬罪の問題に発展します。そのことがさらにいろいろな差別待遇の問題なんかにやはり発展していくわけなんです。とても大きいですよ、影響が。だから、きわめてこれは慎重にやってほしい。  そこで、たとえば、私いま持ってきておりますが、昭和三十六年十二月の改正刑法準備草案、この中にもそういう問題は一つも出ておらぬじゃないですか。これは法務省竹内さんもこの草案の作成には相当重要な立場でタッチされておるわけなんです。いろんな各方面学者もここへ入ってやっておるわけです。そんな問題は、あなた一つも出てやせぬです。それを急に法務大臣からそういう指示があったからということで、いやにそういうことに積極的に何か理屈をつけていこうというふうなことは、これはもう悔いをあとに残すものだと思うのです。これは何も昭和三十六年にこつ然とあらわれた問題じゃないでしょう。この草案は長い間の検討の結果なんです。その結果出ているものにそういう芽すら出ておらぬのに、法務大臣からそういうことを命令されるのは私は多少軽率じゃないかと思うのですが、もっと高い立場で扱うようにひとつしてほしい。だから、大臣のほうにもお願いしておきますが、こういう問題については、あまり自分主観でああすべきだこうすべきだというふうなことは、これは慎重にやってもらわぬといかんと思う。それは形式的には法務大臣所管の問題かもしれませんが、事は単なる法務省だけの問題ではないと私は思う。どうでしょうか、大臣
  23. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 私の主観で決してやっておりません。いやに積極的でもありません。省内でいろいろの問題でそういう話が出ましたから、それはやはり研究すべきだというのでございます。決して私は何も特別な意見を持ってやっているわけじゃございません。研究すべき問題は研究する。研究してやめるものはやめる。さらにやるという結論が出ましたら、またやり方を研究してどっちでも成案を——その精神をもってやっておりません。
  24. 亀田得治

    亀田得治君 話が出たからしゃべったという意味のことを言われますが、しかし、先ほど大臣就任早々そのことを指示したということを言われているわけなんです。だから、たまたま……
  25. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 言っておりませんですよ、就任早々指示したなんて。
  26. 亀田得治

    亀田得治君 そう言わなかったですか。(「刑事局長が言ったんだ」と呼ぶ者あり)刑事局長が言った——それはどっちでも一緒です。じゃ、あなたが言われたとおりだ。だから、それは大臣考え方なんです。たまたまここで出たというわけじゃないわけでしてね。だから、そういう問題の指示は、それは大臣は決して自分主観でやっておらぬといまもおっしゃる。まあ相当研究もされてのことかもしれませんか、しかし、それほど大臣が専門的にいろんな点を検討されているとは私は想像できないわけなんです。われわれから見れば、やはり主観なんです、何て言ったって。指示はあったんでしょう。どうなんです。
  27. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 就任早々か何か覚えておりません。刑法改正やいろいろな問題を話しましたときに、私は時期も何も覚えておりませんが、そういう問題も私はほかから聞いておりまして、それなら研究するがよかろう。別に命令書を出したわけでも何でもない。前々申し上げますように、私は法律しろうとでありますから、問題があれば研究すべし、そうして結論を冷静な研究の結果を待ちまして、私は自分しろうとであるということを——まあ抜かりあるかもしれませんが、だいぶ心得ているつもりでございまして、私は研究の結果を待つという意味、何も私は積極的に言ったのでも何でもないです。ライシャワー事件でどうだこうだといういろいろ質問がありますから、それは研究することになっていると、こう言っただけです。
  28. 亀田得治

    亀田得治君 じゃ、局長、あなたは一体どんな……。
  29. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) これは非常にかたくおとりになって恐縮なんですが、大臣がおかわりになりまして新大臣として現大臣をお迎えを申し上げました当時、私ども所管事務につきましてはいさい御報告を申し上げまして御意見等も承って指針といたすわけでございますが、刑法改正の問題は当刑事局といたしましては最も重要な事業として継続してやってまいっておりまして、その御説明を申し上げる中で、幾つかの問題点として考えられます点、現に世論がそうなっているとか何とかいう意味じゃございませんで、私どもが学問的に研究をいたしまして問題となっている幾つかの点を申し上げたわけでございますが、その際、大臣は、十分研究しておくように、こういう、まあそれを御指示と私どもは伺っているわけでございますが、軽い気持ちでおっしゃったのかもしれませんけれども、そういうふうで、私どもとしては引き続き研究をいたしているわけでございます。そのことを申し上げたわけでございます。
  30. 亀田得治

    亀田得治君 この問題であまり時間をとりますと、本論のほうに入るのがおくれますから、この程度にしますが、ともかく、刑法改正問題で問題になっていることを刑事局長お話しになるということは、これはまあ当然。当然だが、準備草案で問題にしておらぬことなんです。しておらぬことなんです。おそらく軽い気持ち刑事局長がおっしゃったのを、しかし法務大臣はその点が非常に重要と感じて、大いに研究するように、こう言われたんじゃないかと思うんですがね。あなたがそんなに重要視した問題としてそれを出すというなら、ちょっとおかしいわけなんです。日本刑法学界にあるあらゆる意見を出すというなら、それは別ですよ。刑法改正の問題として言うなら、どういう言い方をされたのか知りませんが、そんなものが出てくるわけがない。あるいは刑事局長が非常に気をきかして、賀屋さんという人はどうもこういう問題が好きなようだから、ちょっと入れておこうかというような、何か政治的な配慮をされたのかどうか知りませんが、ちょっとおかしいわけなんです。全然ここにないことなんですから。だから、大体いきさつはほぼわかったというような感じもありますが、こういうことは、軽率に法務大臣なんかにおっしゃってもらうと、はなはだ心配の種がふえるわけです。この暴力法改正以上に大問題です、実際のところ。  じゃ、本論に移ることにいたします。  昨日、米田委員から暴力団対策につきまして大臣並びに公安委員長にいろいろな角度からの質問がありまして、その中で大臣は、結局この法改正だけを暴力対策暴力団対策として考えるわけじゃないのだということまではお認めになった。そういたしますと、この本法改正問題以外に暴力団対策というものがいろいろ考えられるわけですね。この点はお認めになっておるわけなんです。しかし、本法改正以外の暴力団対策というものについての積極的な御意見というものは承っておらないわけなのです。一体、それ以外にいろいろ考えられるというが、何があるのかという点を端的にひとつお聞きをしたいわけなんです。これは私もたとえば昭和三十六年なりあるいはせんだっての政府のきめた暴力対策要綱といったようなものは、これは全部拝見いたしております。私はああいう作文をもう一ぺん読んでくれいという意味じゃないのです。一体大臣は、この法改正以外に何と何と何というものを考えておるのか、積極対策というものの中で。それをひとつ系統的でなくてもいいですから、所信を伺いたいわけなんです。具体的にこれは。
  31. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 私は、暴力団というものがなかなかたびたび申しますように、積極的につかめませんので、結局、暴力対策全体ということに主眼を置き、そうしてなお、お話のように資金源をどうするとか、特に暴力団というのは大体雲かかすみみたいなものでございますが、それでも団ということに、組織につながるということに対する方策をいろいろ考えたらいいじゃないか。法制的に申しますと、何とか資金の問題に対していい考えがないか。実は、私は、ほんとうはまだいい考えは出ておりません。それと、暴力の手段であります銃砲刀剣類等の所持とかそういうものに対して、もう少しこれを厳格と申しますか、いまなら不法でございませんが、とにかく必要のないのに不当に所持して使うようなチャンスをなくすると、こういう点を一つの問題といたしております。それ以外は、この暴力全体に対して社会的にこれをなくする根源にいきたい、これが一つでございます。  それから暴力団に比較的近い問題は、近寄せて考えられる問題は、青少年対策でございまするが、つまり暴力団の新しい人的補給青少年でございます。これの対策がまた非常な広範な問題でございますが、特に私ども関係が深い方面といたしましては、犯罪を犯した容疑でつかまりました者、それに対する、施設に収容しました間の処置、出ました後の保護観察等処置、事前における取り扱い、それにもう少し科学的にいったらどうか。昔の観念のように、いわゆる改過改悛でございますかというような、類型的一点張りで昔はあったと思います。いまごろはだいぶ進んだようでございますが、もう少し精神状態の、生理的というか、病理的の分析なども進みまして、科学的にそれに対応する処置をもっと進めていくべきじゃないか、こういうふうなことを考えております。
  32. 中山福藏

    委員長中山福藏君) ちょっと速記とめて下さい。   〔速記中止
  33. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 速記を始めて。
  34. 亀田得治

    亀田得治君 公安委員長はきのう災害のことでたいへんお疲れだろうと思って、きょうもまた本会議でたいへんあなたのなまの報告を聞きまして、そのあとこういうところに来てもらってむずかしい質問をするのはたいへん恐縮なんですが、委員長がどうしてもきょう開くと言うから、これはやむを得ぬわけですが、しかし、たいへんお疲れのようですから、質問は最小限度にいたします。災害対策関係で災害対策委員会でぜひ必要があるという場合には、ひとつ適時御連絡の上で退席してもらっていいと思います。  こまかいことは警察庁長官等に聞くようにいたしますが、ただいま法務大臣暴力団対策ということをお聞きしたわけですか、本法改正以外にいろいろな対策面があるわけですが、その面をどういうことが必要なんだ——そのほかのことも必要だということはこれはわかっているわけですが、しかし、何と何と何が大事なんだというところは積極的に聞かされておらなかったものですから、いま大臣からお聞きしたわけです。同じことを公安委員長からもひとつお聞かせを願いたいと思います。  それからもう一つは、いま大臣にお答え願った中で、大臣暴力団を雲かかすみというふうな表現でおっしゃったわけなんです。これははなはだ吹けば飛ぶような感じのするようなことになるわけですが、私はそんなものじゃないと思いますね。そこの認識の度合いでもって対策が非常に変わってくると思う。あなたは一体雲かかすみのような軽い考え方でいるのかどうか、その点もあわせて明らかにしてもらいたい。
  35. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) どういう意味法務大臣がおっしゃったか存じませんが、何かそのために御要求がありまして私に言えということでございます。私は雲やかすみとは考えておりません。なかなか手ごわい相手でございますので、先般来いろいろ問題になっておりますが、君の決心が手ぬるいじゃないかということのおしかりまで受けておるわけでありますから、私は自分を顧みて、そういった甘い考え方は持っておりません。一線の警察官諸君もこの問題だけはからだを張ってやっておるわけでありますから、いまごろやまと魂もおかしいけれども、むしろ私こそこういった危害が及ぶような場合には先に立ってやるくらいな決意を秘めておるわけでございます。そういった意味では、決して雲やかすみとは心得ておりません。重大な遊撃的ということばは悪いのですけれども、とにかく戦おうという決意を持っておることを申し上げておきます。
  36. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) いま公安委員長まで私が前に申したことを誤解せられておりますから申しますと、雲はたいへんです。雲は豪雨を降らすし、たいへんなことです。けれども暴力団とは何ぞやといって、どういう組織でどういう構成でどうだということになると、なかなかつかみにくい。雲は、そばに行きましても、なかなかここからが雲でここからはどうだということがはっきりしないということで申し上げたわけであります。そういうことを衆議院でも答弁をいたしておるのでございます。決して軽視などはしない。雲一つでたいへんなことになりますから、重大なことと心得ております。(「雲はわかったが、かすみはどうした」と呼ぶ者あり)
  37. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) この間、こう言ってははなはだ悪いですけれども、私が知らなかったことを御指摘になって、私も実は思い当たったわけでございますが、かつて数年前に民間の学識経験者等をもって、こういった暴力団対策に何か名案はないかという懇談会をつくるということを閣議で決定してありながら、これが実行に移されていない、こういう点につきまして、私はあの直後にILOの委員会に出席しまして、隣にたまたま総務長官がおられたものですから、君こういうことでしたよ、君も知らぬかもしれませんけれども、前にこういう大事なことが決定になって、そうしてこれがあなたのほうに預けられてある、たいへん私はここで恥をかいたということを言ったわけでございます。ところが、いやこういった種類の問題をたくさん預けられているので、やはり扱いがなかなか全部うまくいかなかったので、気がつかなかったけれども手落ちがあったかもしれぬという野田総務長官の話でございました。とがめられはいたしましたけれども、私の気持ちといたしましては、単に法律をそろえるというだけで、なかなか犯罪というものは絶滅できるものではありません。それにはやっぱり、いろいろの施策が陰に陽に伴わなければ、裏づけがなければ、なかなか所期の効果は上げにくいということが考えられますので、私はいまからでも当時の閣議決定を想起いたしまして、こういった措置は、早い機会にこういう懇談会をつくりまして、各界の意見を聞いて万遺憾なきを期さなければならないと、かように考えているのであります。
  38. 亀田得治

    亀田得治君 審議をひとつ進めるために、私から暴力団対策の大事な点を指摘して、それは間違っているなら間違っているというふうにお答えを願いたいと思います。  まず第一に、政治家が、しかも上に立つ政治家が暴力団に対してき然とした態度をとること、これが第一。  それから第二は、資金源暴力団が存在しておるためにはちゃんと資金が要る。その源をきちんとすること。これは、もちろん、たとえば経営者が争議などになると暴力団を使ったりする、そういうことも含めて、その資金源というものをもっと真剣に考える。  それから第三は、暴力団が違法行為をやった場合に、それを取り扱う警察、検察、裁判、それに刑務所も含めて、自己批判をしなきゃならぬ問題がたくさんある。これは後ほど各論の中で具体的にもっと指摘したいと思います。  それから第四番目は、銃砲刀剣、これを暴力団から取り上げる。これをどうしてやるかという法的な措置などはいろいろ問題があるわけですが、この点は先ほど法務大臣も御指摘がありましたが、これはどうしても必要である。  五番目は、ラジオ、テレビなどに非常な殺傷の場面などがずいぶん出てくるわけですね。こういうことについてもっと——まあマスコミの統制という意味じゃありませんが、もっと真剣な立場で問題を取り上げ、取っ組むべきだと、これが第五。  第六は、まあそういうふうに追い詰めるばかりでもいかんわけでして、暴力団の人たちの実態というものをよく分析して、どうしたらこれがきちんとした職業でやっていけるようにするのか、そういう対策をこれは真剣に考えるべきなんです。  それから七番目は、これは多少大臣が先ほどお触れになった青少年対策などに関係があると思いますが、現在の政治にほんとうの文化政策がないわけです。いわゆる高度成長政策、これ一本やりなんです。文化面とか精神面、そういったような問題が全くアンバランスになっておるわけです。その面の成長が一つもないわけなんです。それが成長しないで、ただ古いものだけを青少年に押しつけていく。これじゃとてもスムーズにいくものじゃないわけなんです。そういう面で、この数年続いておるいわゆる経済問題中心の高度成長政策、こういうものについて検討する余地があるではないか。ことばではいろんなことを言うておりますよ、ことばでは。が、確かにアンバランスがそこに大きく出ておる。経済政策だけでも、そのワク内でも、まあ藤山さんや佐藤さんに言わしゃ大いに問題があるわけですが、しかし、そのワク外の問題になりますと、これは全くアンバランスになると、これでは若い人は育ちませんよ。食糧だけで育つわけじゃないですからね。これはほんとうに総理にいずれ——委員長、総理大臣をここへ呼んでもらって、こういう点についての基本的な問題点はやはり明らかにしてほしいと思っているんです。これは七番目ですが、しかし、これが一番大事だと思っている。  まあ私なりにいろいろ暴力団対策というものを考えておるわけですが、こういうことを一つ一つ具体的に真剣に取り組まなきゃだめだ。そういうことをしないで、ただときどきいろんな対策要綱をつくってみたり、何か委員会を開いてみたり、そんなことをしておったって、委員会を開く、あるいは対策要綱をつくる前に、これとこれとこれだというものをはっきり総理大臣なり責任者が明確にして、これをあすから実行したいんだ、実行するにはどうしたらいいんだ、こういう検討でなければ、私はほんとうのものは生まれてこないと思う。また、それくらいに積極的にやるべき時期にきているのじゃないかと思うのです。私がいま指摘した問題点ですね、そんなことじゃたいしたことにならぬというようなお考えがありましたら、ひとつ自由に考え方を述べてほしい。どうですか。皆さんのほうから積極的におっしゃらぬから、私から積極的に問題点を出したわけです。法務大臣から先に答えてください。
  39. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 政治家がき然たる態度をとれ——これはお話のとおりでございます。暴力団であるなしにかかわらず、き然たる態度で行くべし。ことにそういう世間からき然たる態度をとるようにとるようにというようなところに対しては、特に注意してき然たる態度をとってまいる、全く御同感でございます。  資金源は、前に申しました。これは警察庁の長官が申されましたように、なかなかむずかしいと思います。というのは、暴力団というものは、単純な性格でありませんで、それぞれ正業についておるものもあります。そうして、その団員が常習的に暴行を働く者が相当あるという状態もあるのでございまして、それは暴行の資金でこれが正業の資金と、なかなかむずかしいのです。これは私は同感で、前にも申しましたが、資金源考えなければいけない——むろん努力はいたしますが、なかなかむずかしいということは、これはへたにすると経済流通を妨害します。人権の侵害にもなりましょう、やりようによっては。暴力団というものは、先ほど雲やかすみと申し上げておしかりを受けましたが、なかなかとらえにくいのですから、資金も、これは暴力資金これは正業資金となかなかいかぬところに苦心がございますが、この委員会でも先回申し上げましたが、私などは明らかに恐喝などというのはうんと取り締まるべきものである。しかし、これはなかなか慎重でございますから、そういう注文を事務局に出しましたが、刑事局長がお答え申し上げるように、それをいま今回の改正の対象にするのはまだまだ慎重な考慮を要するということでした。私はやりたいけれども、今度は控えておる。なお研究を重ねるつもりでございます。  それから銃砲刀剣類、これも私前に申し上げました、もう少し何というか、きびしくと申しますか、不法不当に使用されないような法制的な行き方、また、その法制を実行する警察の方面でも一そう御努力を願い、そういう努力をせられるような警察の設備を充実するということも全く御同感でございます。  それからラジオ、テレビ、これは私もたびたび衆議院の法務委員会でも申し上げまして、きわめて必要でございます。しかし、これをへたにやると、官僚統制はいかんとか、思想の自由を害するとか、これはいまの人権思想、いろいろな自由の問題と非常にからみますので、非常にそこに困難性もあり、結局、当事者、当業者の自粛にまつのが一番いいのでございます。そうすると、手ぬるいというお説も出ます。何とかこれも努力して各方面の了解を進めてまいりたい。いわゆる法制的な強権的な方法によらないでいきたい。これが政府考えておるところでございます。  自己批判は、私は非常にまじめにやっておると思います。しかし、まじめにやっておりましても、いろいろ不備なところがないとは決して申しません。後刻、御指摘がございましたら、それにつきまして申し上げることがございましたら申し上げたいと存じます。  実態分析、これは全くお話のようで、実際は暴力団というものを法の規制の対象にするのがいやなんじゃない、できないからしないのですが、できればしたい。そういうためにも実態の分析は必要でございます。なお、法の対象にしなくても、警察その他の取り締まりの上におきましても、きわめてこれは大事なことで、努力すべきものと存じます。  それから、経済成長が行き過ぎると言っておりますが、私はこれはいいことで大いにやったほうがいいと思うのです。それだから暴力団が起こるとは私は思わない。ほかの方面を進めるのは私は賛成でございます。しかし、人づくりなども、なかなか池田総理は熱心にやっておりますが、いつでもわれわれはすぐ性急に考えるのですが、じゃどんな人をつくるのかという人づくりの目標というものを考える。その方法というものを考える。ですが、また、そういうものをいわゆる官製でこういう人間の型がよろしい——そういうのはまた工合が悪いというのがずいぶんありまして、これもまた相当にうなずける議論でございまして、なかなかいま政府が思想とか考え方とかそういうものを昔の政府のように指導的に出るということは困難性がございますし、また、差し控えなければならぬ面もあるのでございます。その限りにおきまして、政府がやりますことはなかなか骨が折れるのでございます。これはしかしできるだけの努力はいたすべきものである、かように存ずる次第でございます。
  40. 亀田得治

    亀田得治君 公安委員長、どうですか。
  41. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 問題点の御指摘をいただきましたが、全くそのとおりでございまして、政治家が暴力団に対してき然たる態度をとるということも当然のことでございます。  また、資金源も、この間から問題になっておりますが、やはり資金源を断たなければなかなか組織というものはこわれないわけでありまするので、ただいま法務大臣が言われましたことは、やはり資金源と申しますけれども、その中に合法のものと非合法のものとチャンポンになっておりますので、なかなか見分けがむずかしいということを意味しておっしゃったのではないかと思います。  それから警察力を行使した場合にその態度について反省があるか、自己批判するかということでありますが、批判ばかりしておったのでは前進ができませんが、いま警察庁長官に聞いてみますと、やはり刑事面ではそのつど批判めいたことはやっておる、こういうことを申しております。そうあるべきだと思います。  また、銃砲刀剣は、これは取り上げるのはあたりまえのことでありまして、少なくともそういう危険性のある人たちに銃砲刀剣を持たしておけば、それはいいことはないのはさまっておるのでございまして、これも何らかの方法で持たさないようにしていかなければならぬと思います。  ラジオ、テレビも、これもしゅつちゅう新聞にも投書欄に出ておりますが、やはりああいう殺伐なことをやたらに子供のときから頭にたたき込めば、成長してろくな者にならぬということは容易に想像がつくわけでございます。  また、今の実態をよく分析をして、そうして更生と申しますか、正業に逐次つかせるということは、やはり暴力団と一応見られておる人たちでも、やっぱり正業へつこうという努力は一応しつつあるようでございます。私どもの町にもそういったことを言われておる人たちがありますが、最近はバラスを製造する会社などをつくってやっておりますけれども、なかなかそういうことで汗をかいて働くということがどうもおもしろくないとみえて、いつのまにか姿を消してしまったのがろくでもないことをするという実態もありますけれども、また、そういった面であたたかい保護をしながらこういった人たちの更生を求めるということは当然政治的に考えていかなければならぬことだと思います。  それから政策面で、文化的なものが抜けておるのじゃないか。これも具体的にどういう御意図か存じませんけれども、私はそのことも認めざるを得ない。  ただ、もう一つ、これは落とされたのかどうか存じませんけれども、家庭並びに学校における教育ということにもやっぱり研究しなければならぬと思います。こういうものも含めまして、私は全面的に御指摘になった点は同感であります。
  42. 亀田得治

    亀田得治君 まあ私の七つの提案を大体肯定されたようです。多少意味のとり方の違っておる点もあるようですが、たとえば、最後の点ですが、もちろん私が文化面と広く申し上げたのは、そういう社会的な家庭的な学校の教育問題なりそういうものも含めてこれは広く申し上げておるわけです。ただ、残念ながら最後の問題について若干法務大臣は異論があったようでありますが、これはもう少し具体的に現実に即した討議をやれば、大臣も納得してもらえると思うのです。私は抽象論をやっておるのじゃないのですから、たとえば、日本では高度成長政策の一つの結果として非常に建設事業が盛んに進む。しかし、そのために、民族の共同遺産であるいろいろな歴史的な古墳等が荒らされていっておるわけですね。こういうものに対して、政治がどれだけあの建設事業をやるような熱意を注いでおるか。この間も私は総理大臣にこれを聞いたことがあるが、しかし、時間がありませんから、ほんのわずかしか触れることができませんでしたが、たまたまわれわれの目に入った場合には、ともかく文明の中の非文明という現場というものを見せつけられるわけです、そういう現場に行って見ると。あるいは、日本の野鳥ですね。これはもう急速に減少しておるわけです。だから、われわれの社会環境というものは、決して池田さんの言うような経済中心にものごと考えておったって、それだけではうまくいかない。だから、そういう点を指摘して申し上げておるわけです。これはひとつ池田さんに最後にどうせ来てもらうことになると思いますから、直接具体例を示してこの議論をしたいと思います。そうしなければ、ほんとう青少年対策というものが出てきませんよ。根本的なことが忘れられておる。そういうことをほうっておいて青年に少し何かこちらがしてやるというようなことをしたって、それはなかなかほんとうのも一のにはならないと思う。  そこで、以上七つの点につきまして、ここに以下少しずつ順次質問をすることにいたします。  まず第一の政治家が暴力団に対してき然とした姿勢をとる、この必要性はお二人とも認めていただいたわけです。ところが、現実はそうはなっておらぬ、はっきり言うと。この点をひとつ明らかにして、皆さんの考え方をもっとほんとうの実態というものを明確にしてほしい。そういうことがいかんのならいかんとはっきりしてもらいませんと、特にこの政治家の問題については、内閣がおつくりになるどんな文書にも出てこない。各官庁がつくる対策の中にも一つも出てきやせぬ。おそらく、うっかりそんなものを書くとしかられるのじゃないかと思うんですがね。ところが、質問をしてみますると、それはお認めになるわけです。  そこで、順序といたしまして警察庁長官にお聞きしますが、今年の五月二十五日、関西の本多会と関東の松葉会とが神戸の某料亭で約千五百名集めまして縁結びの集まりをやったわけですね。これには政界の大物も一はだ脱いでいる、そういうふうにも承っておるわけなんです。これは一体実態ばどういうことなのか、明らかにしてほしい。一体、その大物というのはだれなのか、明らかにしてほしいと思います。
  43. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) お話のように、兄弟縁結びの親分子分の盃を交わしたということでございまして、千五百人ぐらい集まってやっております。政界の大物というお話でございますが、元神戸市長がその仲立ちに立っておるということを聞いております。それ以外につきましては、特に政界の大物というような話は聞いておりません。
  44. 亀田得治

    亀田得治君 この本多会というのは、やはりあなたのほうの名簿では暴力団でしょうな。
  45. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 一つ一つ暴力団の個々の名称は出さないことにいたしておりますので、御想像にまかせたいと存じます。
  46. 亀田得治

    亀田得治君 松葉会については、結局、暴力団ということになったわけでしょう。その相手方なんですよ。これは当然じゃないですか。想像にまかす、そんな委員会でいいかげんなことを言ってもらっては困る。
  47. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 暴力団一つ一つの団体名を申し上げない方針でおりますので、その内容につきましては申し上げてもいいと思いますが、一つ一つについてどれかというようなことは言わない方針でございます。
  48. 亀田得治

    亀田得治君 そういうことを言うから、昨日も米田委員がずいぶん憤慨したわけなんです。何かこう遠慮しておるような印象を与えるわけなんです。——それでは、暴力団と想像して間違いないですね。イエスかノーか、答えてください。
  49. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) われわれとして十分注目しておる団体であるということははっきり申し上げられます。
  50. 米田勲

    米田勲君 委員長関連質問一つだけ。
  51. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 米田君。
  52. 米田勲

    米田勲君 どうもその段階になると当局ははっきりものを言いたがらないと思うのですが、この際お聞きをいたします。この間、公安委員長の発言にからんで、松葉会の問題については、警察庁長官が、リストに載っておる五千何がしの暴力団体と目されておるもののリストに松葉会は入っておるということは明確に答弁された。そこで、もう一つの縁結びの相手の団体、これはどうなんですか、長官。あなた方が現在暴力団体だとみなされるその概念規定が私との話の中でほぼ確認されているわけで、こういう構成要件、こういう生態、こういう日常の活動を行なうものを暴力団だと言っておるということはきのう大体意見は一致したわけです。あなた方の警察庁から出ておる文書の中にそれが載っているのですから、これは一致するはずだ。そうすると、いまのその相手方の団体は、あなた方の規定をしているその条件に日常の生態や活動がきわめて当てはまる行為の多い団体だということだけは明確に言えるのではないか。単に注目をしている団体であるということでなく、その団体の現在までの生態、活動状況から判断をして、警察庁が暴力団体とみなす概念規定の中にきわめて当てはまる部分の多い団体だというまでは明確に言えるのじゃないか、こう思いますが、いかがですか。
  53. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) 松葉会について、暴力団体である、暴力組織であるということを私は答弁した覚えはございません。(「刑事局長だ」と呼ぶ者あり)間違いだと思います。それで、ただいま刑事局長がお答えしましたのは、十分注意をしている団体であるということを申し上げましたのは、再々私申し上げまするように、私たちはある種の団体、きのう申し上げましたような条件にはまる団体につきましては、できるだけの把握はいたしております。しかしながら、暴力団というものの定義が非常にむずかしいということは、るる申し上げているとおりでございまして、警察庁公認の暴力団体はどれとどれかというようなことを言う段階でない。また、言えば、その中には別に暴力行為をやらない構成分子だってもちろんあるわけでございますから、私たちは十分暴力行為をやる人間の多い団体を暴力団体として把握はいたしておりますけれども、その名前を公表しないというたてまえをとっておりますので、ただいま申し上げましたような答弁になるわけでございまして、ここで警察がこれは暴力団体だぞとかあるいはそうでないんだぞというようなことは、それはお考えによることでございますが、私は、そういう名前をここにあげるという必要はなかろう、こう考えます。
  54. 米田勲

    米田勲君 委員長、重大な発言がありましたから、この際ただしておきたい。
  55. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 亀田君、よろしいですか。
  56. 亀田得治

    亀田得治君 どうぞ。
  57. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 米田君。
  58. 米田勲

    米田勲君 いま長官は、松葉会は暴力団体のリストの中に載っているものの一つであるということは言っておらないという答弁がありましたが、同僚議員に聞くと、そのときのことを思い出すと、局長が答えている。これはそのときの状況を言いますと、赤澤さんが松葉会のことで右顧左べんしたようなあいまいな答弁をしてはっきりなさらないので、じゃどうなんですか、あなた方のほうの発表をしている五千二百何団体の暴力団体とみなされるこのリストの中に松葉会は載っているんでしょうと言ったら、明らかに載っていますと言っている。それで私はあえて赤澤大臣のその後の答弁を要求しなかった。いまになったら——これは委員長、あなたも記憶しておられると思う。だから、それを否定したいまの長官の答弁をこのままにしておくわけにはいかないわけなんです。もし局長の言う答弁を長官が否定するなら、これは政府委員としてわれわれは認めることができない。したがって、退場してもらう。そういう責任を持てないような答弁をされるのであれば退場してもらいます。どっちかはっきりしてください。   〔「速記録を調べろ」と呼ぶ者あり〕
  59. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 松葉会につきましては私が申し上げたのでございますが、実は皆さん方に差し上げてあります「警察の窓」にすでに載っておる名称でございます。したがって、あの団体数の中には入っておる。これは「警察の窓」それ自体に載っておるものですから、そういう関係から肯定したわけでございます。団体名一般については一応私どものほうとしては発表しないたてまえをとっておるわけであります。
  60. 米田勲

    米田勲君 じゃ、長官、取り消しなさい。あなたどうですか。いま局長がそう言っておる。
  61. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) 私が申し上げたことは事実のとおりでございまして、私がそういう答弁をしたのじゃないということはお認め願えると思います。
  62. 米田勲

    米田勲君 それでは、あなたはその局長の答弁を認めますか。長官、局長のこの場所で答弁をしたことを局長自身も認めたんです。大臣も知っておる。それで、長官はその答弁を認めるか認めないか、これをはっきりしてください。
  63. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) そういう答弁をしました際に私はおりませんでしたけれども、本人もそう言っておることでございまするから、そうであったということは認めます。
  64. 米田勲

    米田勲君 私の認めるか認めないかということは、言った事実を認めるか認めないかではなく、内容も含めて長官はそれを認めるかということです。その点をはっきりしてください。
  65. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) どれとどれとを公認の暴力団体だということを言わないのが方針でございます。しかしながら、すでに個々の事件に関してはそういうことを言うておるのでありまするから、個々の事件関連してはわれわれの示達の範囲内に入っておる暴力組織の名前が出てくることはこれは当然でございまして、新聞等でもちゃんとそういうふうに出てまいります。だから、ただいま日原局長が答えましたとおり、松葉会については、その組織員が数次にわたって暴力行為をやり、そういう代表的な例としてパンフレット等にも出しておることでございますから、それがこの席でわれわれの示達範囲内に入っておるものとしてわかりましても差しつかえないということを認めます。
  66. 米田勲

    米田勲君 了解。
  67. 亀田得治

    亀田得治君 それじゃお聞きしますが、「警察の窓」ですね、この二一ページに「松葉会員某は、」云々というふうにちゃんと事例が載っております。これははっきりしておる。ところが、その裏の二二ページの一番上の七行目ですね、ここには「本多会員四人は、」云々と同じように事例が載っておるじゃありませんか。おかしいじゃないですか。いまたまたま同僚の中村君がこれを示してくれたからよかったものの、私はまたこれに松葉会だけが載っておるのかと思ってごまかされる寸前だった。両方載っておるじゃないですか。けしからんですよ、そんなことでは。おつくりになった人がもうよく知っておるはずです。これは一体どうしたことなんですか。だめだ、ごまかしの答弁をしては。これを見てください。認めるものをすなおに認めぬからそういうことになる。   〔「委員長、よく注意してくださいよ」と呼ぶ者あり〕
  68. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) お話のように、松葉会がここに二、三カ所出ておりますし、また、本多会も出ております。また、具体的な事件に関する限りは実際にそういう事件は起こしたのでございますから、出し得ると思うのでございますが、ただ、全部警察が把握しております団体名をそれじゃ全部出せと次から次へ言われますと、これは私どものほうとしては部外秘の扱いをしておりますので、そういう意味で御了解を願いたいと思う次第でございます。
  69. 亀田得治

    亀田得治君 ともかく、この点ははっきりしてもらわぬと困るんですよ。あなたのほうの正規の文書に「暴力団犯罪の現況と傾向」、この題目をつけてこういうものが書いてあるわけなんです。これだけはっきりしたものを出しておって、しかも委員会において質問されて、一方が認め、一方が認めぬと、そんなばかげたことが一体筋が通りますか。これは委員長・理事のほうで処置してください。
  70. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 答弁がありますか。
  71. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) そういう題名で載せており、かつ具体の例も書いておりまするから、それによって御想像願えればいい——そういうことを私がこの席で公認することをしない方針でやっておるということを申し上げておるわけであります。
  72. 亀田得治

    亀田得治君 公安委員長、はなはだお疲れでしょうが、一体、国会の審議としてそういうふうな答弁でいいですか。私はこんなことで時間をとりたくない。たくさんある、質問事項が。だけれども、これじゃ先へ行けぬじゃないですか。警察が出した文書の中で暴力団犯罪事例としてきちんと印刷して載せておいて、それを問われて、いまのような答弁で一体いいんですか。与える印象というものは、普通のほかのことだったら軽く答えていく問題でしょう。何かこう暴力団というとこわいような感じを与えるわけですね。どうですか赤澤さん、ほかの委員会でそんなことを言って通りますか。
  73. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 私が先般の委員会で暴力団議論の中でふと松葉会という名前をあげましたためにこれだけの時間がかかるのはたいへん恐縮と思います。しかし、実は私は頭の中ではやっぱりこれはそういう性質の団体であると考えまして頭の整理をやっておったもんですから、つい名前が出たわけでございますが、しかしながら、事務当局が言わんとしておることは、暴力団松葉会ということにここできめつければ、その次は何会はどっちだ、何会は何だと、五千何百あるそうでございまするけれども、一々そのレッテルをはるということになると、やっぱり将来いろいろ暴力団絶滅ということの立場で責任を持っておる者にとっては策の当を得たるものでないと考えましたかもしれませんし、それからまた、御案内のとおりに、暴力ばっかりで食っておるわけではございません。やはり中には正業に戻ろうとしておるものもあるでございましょうし、また、正業でかせいでいる金というものを生活費に充てておるわけでございまするので、ここでこれは暴力一点ばりの団体であると銘を打ってしまうことがいかがかと思う配慮もありましょうし、これはやはり私がそういった頭で申し上げたことは、私どもはそういう頭でこの団体に対処するわけでございまするので、ここでレッテルをはるということが得策かどうかということの判断ではないかと私は考える。私も、責任ある立場においては、やはりただいま申しましたような団体であるということで私どもとしては対処をしておるということだけは申し上げることができると思います。
  74. 亀田得治

    亀田得治君 まあ公安委員長の言わんとする気持ちは多少わかりますから、一応この点はこの程度にしておきます。  そこで、もう少し確かめておきますが、元神戸市長、なかなかこれまた名前をおっしゃらぬでしょうから、時間をとっても困りますので、こうお聞きしますが、これは代議士をおやりになったことはありますね。
  75. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) お話のとおりのようでございます。
  76. 亀田得治

    亀田得治君 これは所属党派はどこだったでしょうか。(「客観的な事実だよ、他意があって聞いているわけじゃない。事実を聞いている。事実を事実として答えるだけの話ですよ」「そういうのをごそごそ相談しなきやならんというのがおかしい」と呼ぶ者あり)
  77. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 所属党派はちょっと私も存じませんのですが、中井一夫でございまして、これが特別見届け人ということになっております。
  78. 亀田得治

    亀田得治君 まあ個人名と党名とどっちを言うたほうが比較的好意的に聞こえるかということでお選びになったようでありますが、苦心のほどはわかりますから、その程度にしておきますが、しかし、それだけの経歴の人は、地方ではこれは相当影響力を持っておる人ですよ。その点をどうお考えですか。元神戸市長、六大都市の市長、大臣クラスなんです。元国会議員であることをわざわざおっしゃらなかったが、そういう人がこの見届け人というわけですか、いまの用語ですと。そうして縁結びができた。  そこで、昨年のことですが、本多会の二代目の跡目披露というものが神戸であったわけですね。その際、すでに故人になられた方でありますが、これはほんとうに大物ですよ、わざわざ出席されてそうしてごあいさつをなさったことは、警察ではちゃんと情報を握っておられますか。
  79. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 一応承知はいたしております。
  80. 亀田得治

    亀田得治君 一応じゃなしに、ともかく注目しておる団体だということは少なくともおっしゃっておるわけですから、一応も二応もじゃなしに、それはちゃんと情報をとっていると違いない。で、その大物のその会におけるごあいさつの要旨というものはどういうことだったんでしょう。
  81. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 私ども暴力団取り締まりということからいろいろな情報はとって承知いたしておりますが、それらの個々について、しかも内容を、それは直接犯罪に関係するものならば別問題でございますが、犯罪に関係しないものにつきましては、逐一申し上げることはなるべくならば差し控えたいと、かように考えるのですが、それだけではまた御答弁にならないかもしれませんが、新聞では仁侠道を説いたというようなことが書かれておるようでございますが、さような意味で私どものほうで内容を逐一申し上げることは差し控えさしていただきたいと思います。
  82. 亀田得治

    亀田得治君 新聞にかこつけて言われておりますが、それはまあ十分わかっているんだと思います。ただまあ新聞に書かれている点だけは隠すわけにもいかないのでおっしゃったようですが、新聞の書き方によりますと、仁侠の道は人の道だと、人生社会の根本の道のような感じを受けるわけですが、人道だというとり方もできるわけですね。一体、そういう評価というものがあるのでしょうかね。やくざの世界というものを人の道だ、人道に合致するものである、これはもうたいへんな評価ですよね。われわれ社会党がいろいろ運動していろいろ親切にしてみたりしたって、なかなかそれだけのおほめのことばを受けない。人の道、この点はこれは大臣は高い立場から見てどういうふうにお考えですか。これは暴力団に対しては非常な激励のことばになりますよ。どうでしょう、大臣の御見解を聞きましょう。
  83. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) どうも一向私は存じませんで、ただ、どういうことをだれが言ったか知りませんが、言ったことの一つことばでどうということは、私は全貌を知らないと、へたなことを言って間違うと困りますから、申し上げることを差し控えたいと思います。
  84. 亀田得治

    亀田得治君 赤澤さんひとつ……。
  85. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 亀田委員はいろいろこういったことは歴史その他お詳しいと思いますが、昔から日本には仁侠道なんというものもあった時代がありまして、ばくち打ちが二足のわらじをはくとか、義賊とか、賊といっても上に義の字がついていればいいのだというような講談もかなり喜ばれて読まれた時代もあったわけでございます。ところが、やっぱり日本人の中には、これは人によりますから、そういうことを重んじる人もあるわけであります。私のきわめて親しい友人で、これは亀田委員なんかよく御承知になっておると思いますが、こういう事件扱います際に、始終暴力団の頭をなでておるのがかえって町の平和のためである、自分は町のためにいろいろに尽くしておる——この一事をもってして、なるほど暴力団はその人のところへ行くと先生と、こう言う。私のところなんか義理も人情も知らざるやつである、こういうことを言うわけです。私はその学友ですから、君それは間違いだ、そのために警察というものがあるのだから、そういう暴力団の頭をなでてしいて平和をつくるというのじゃなくて、そういう者は遠慮なく警察に渡すべきであると言うのですけれども、やはりいちずに思い込んで、それが正しいという考え方をしておるわけでございます。私自身としては、やっぱり認識が違いまするので、そういう考え方はどうしても賛成はできないわけでございます。しかしながら、やっぱり人それぞれ考えがあるでありましょうし、それがそのままときどき何かの会合の席でどういう意味か口走られる人もあるかもしれませんけれども、私はそういう判断はくみさないというものでございます。
  86. 亀田得治

    亀田得治君 やっぱり赤澤さんのほうが法務大臣より年代が若いだけあって、こうすかっとしているですよ。ともかく、これはまあほとんどだれでもわかっておるわけでありますが、自民党の副総裁ともあろう人が、こういう会合に行きましてこのようなあいさつをされる、それはもうたいへんな問題なんです。ともかくそういう仁侠道なりやくざの道というものをはき違えておる人がたくさんあることも、いま赤澤さんの御指摘のとおり。しかし、これが政権を担当しておる党の副総裁の立場にある人がそういうところへ行って言われるということになりますと、これは個人の言うたことだから批判を差し控えるとかそういう問題ではないと思うんですね。政治家の姿勢はきちんとしなきゃならぬということは絶えずおっしゃる、抽象的に聞きますと。そう言うしりから、元神戸市長なり、あるいはほんとうの大物といわれる方がこういうところに顔を出すわけなんです。これはわずかの金銭を応援したとかせぬとか、あるいはいろんな事業家などが多少おどかされて金を出したとか取られたとか、そんなこと以上にこれは重大なんです、問題は。だから、池田さんに一度どうしてもここへ来てもらわなきゃいかん。こういう点ははっきりしてもらわなきゃだめだ。暴力対策要綱のどこにそれが書いてありますか。一つも書いてない。枝葉末節だけ書いてある。  それからもう一つ確かめますが、暴力団対策の法的な面からの中心である法務大臣、この法務大臣の方が暴力団の葬儀に花輪を出した、こういう問題が過去においてあるわけですね。その事例を警察のほうからはっきりしてほしい。金のことまではわからぬが、花輪の程度なら調べてあるときのうおっしゃっておるわけなんです。で、私はそれを全部ここで出してくれとは言いません。法の取り締まりの中心である現職の法務大臣でそういう事例があったわけなんです。いつだれとだれか、その点だけを明確にしてほしいと思う。言いにくいことかもしれぬが、ともかく現実にあることならさらけ出して、そのかわり今後こういうことはやはりお互い引き締まっていこう、こうならなければ、きのうもお話の出たような末端で暴力団と一生懸命取っ組んでおる警察官なんかの士気の鼓舞にはならぬです。これはどうなんです。
  87. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) いま、相当古いことであるから、いつ幾日にだれということはわからないことでございまするが、私の記憶では、これは相当——相当といっても七、八年前じゃないかと思いますが、時の法務大臣というか、総裁というかの時期に出されたというのは新聞等で見た記憶がございます。
  88. 亀田得治

    亀田得治君 新聞等で見て、ははあんというふうにすましておるわけじゃないでしょうが。局長なり事務当局ではちゃんと事実を把握しておるはずなんです。どうなんです。
  89. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) ただいま資料を持ってまいっておりませんので、日にちその他につきましてただいま長官が申し上げましたとおりでございます。
  90. 亀田得治

    亀田得治君 それじゃ、その資料を、部下の方がおられるでしょうから、すぐ取り寄せるようにしてください。資料が来た上でさらにその件をお聞きしますから。  それから法務大臣と長官にお尋ねしますが、三月二十五日に私がこの法案で参議院本会議で総理に質問をした。そのとき、花輪のことについてもお尋ねをした。総理は、その際、「こういう具体的な事実を存じませんので、よく調べまして、また適当の機会に答えます。」と、こう答えておるわけなんです。この法務委員会こそ適当な機会であるわけですが、この点だけは委員長、総理大臣に来てもらって明確にさしてほしい。要求しておきますよ。それから総理大臣はそのときそういう事実を本会議ではお知りにならなかったようでありますが、事実を調べてと、こうお答えになっているわけですが、法務大臣なり公安委員長のほうに、公安委員長もかわっておりますが、警察庁長官のほうに、そういう事実についての調査の指示があったのかどうか、この点をお伺いしておきます。
  91. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 指示があったかもしれませんが、指示があってもなくてもそれは聞いているわけでございますから、当然調べるものだと思います。
  92. 亀田得治

    亀田得治君 総理大臣自分で当然お調べになるだろうという意味ですか。
  93. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) いや、そうじゃない。調べるべき適当な機関が調べる。一々命令書が来なくても、われわれが聞いておればやるべきものだと思います。
  94. 亀田得治

    亀田得治君 いや、元法務大臣に関することですから、これは法務省にお調べ願うのが私は一番手っ取り早い問題だと思うのです。事柄の性質から言っても、しかしまた取り締まりの未端の関係から言えば、警察がそういう点に一番タッチしやすいわけでして、だから忙しい総理大臣ですから、ほんとうに知らぬのなら、これはどちらかに私は御指示があったものと思っております。だから、そういう御指示があったのかどうか。もしお二人の方にないとしたら、総理大臣ほんとうにこの答弁どおり忠実に考えておるのであれば、だれかに調べさしておるかもしれぬので、だから、お二人に対してはちょっと調べてみてくれぬかという御指示があったのかないのか、その点だけは明らかにしておいてほしい。
  95. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 私はそういうことばは聞いておりません。ただ、私が申し上げるのは、当然政府側として総理の答弁にお互いに協力していくべきものだ、かように思っております。
  96. 亀田得治

    亀田得治君 それじゃ、協力して法務大臣としてお調べになったわけでしょうか。
  97. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) これは暴力団が何であるか存じませんし、検察の問題でもございませんから、警察でお調べを願ったほうが私は適当なんだろうと思います。
  98. 亀田得治

    亀田得治君 警察はどうなんです。やはり指示はないのかね。
  99. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) 三月ですか。
  100. 亀田得治

    亀田得治君 三月二十五日に総理がそうお答えになったわけですから、それ以後ですね、それ以後に指示があればあったはずです。
  101. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) 私たちの記憶では指示を受けた形跡はございませんけれども、ただいま御指摘になっている事柄は、指示を待たずに、私の記憶では、その年月を忘れましたが、時の法務大臣と言ったかあるいは法務総裁という肩書きであったか、花村という大臣が花輪を出されたということが記憶にあります。私はおそらく当時地方におった時期ではないかと思います。
  102. 亀田得治

    亀田得治君 それで、あなたは、総理大臣が本会議でそういうふうにお答えになったからということで、そのことを総理大臣のほうに知らせたわけですか。
  103. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) 私は総理大臣の系統からそのことを調べろというお話を承っていまのことを知っているのではなしに、私の記憶として知っているのでありまして、もちろん報告はいたしておりません。
  104. 亀田得治

    亀田得治君 だから、そうなりますと、池田さんに来てもらって、一体どういうふうにあの答弁の扱いをされておるのか、これも聞いてみなければわからぬわけですが、しかし、法務大臣お話のように、総理大臣がそういうふうにお答えになれば、ほかの閣僚なり関係筋は積極的に協力すべきものだというふうな、筋としてはそういうことをおっしゃっても、何もそういうことができておらぬわけですね。まあいまあんなことを言っても、そのうち亀田君も忘れてしまうだろうくらいに軽く考えておられるのかどうか知りませんが、私は非常に重大視しているのですよ、実際のこと。だから、こういう問題を総理大臣がどう扱うか、これは非常なやはり暴力団対策として重大なことと思って実は聞いておるんです、姿勢の問題として。だから、はなはだ不満です、そういううやむやな態度では。しかし、答弁者が皆さんでありませんから、これはいずれまた明確にしたいと思います。  ところが、法務大臣は、今年の五月十九日の閣議において、各閣僚に対して暴力団などに花輪を出さないようにしてくれという発言をされておりますね。そんなことをすると暴力法の審議に悪影響を及ぼすというつもりでおそらくおっしゃったんだろうと思いますが、いずれにいたしましても、法務大臣がわざわざそういう発言をされるということは、あなた自身がいろいろな事例というものをキャッチしているからなんでしょう。何もないのにそんな発言をされるはずがないわけでしょう。どういうことですか。
  105. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 私は、閣議の内容を一々申し上げないほうがいいんじゃないかと思います。申し上げる必要があれば、これはむしろ官房長官から申し上げる。一々閣僚が閣議の内容を申し上げるのは、私は適当じゃないと思う。ただ、暴力団に対してき然たる態度をとるべしという考えは、私の本心の考えでございます。時々閣議においてそういう意味のことを申し上げることがないとは申し上げません。
  106. 亀田得治

    亀田得治君 その以前に花輪を出されたような事例というものを頭に置いてそのような発言をされておるんじゃないでしょうか。
  107. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) いま申し上げましたように、私は一々発言の内容を申し上げることを差し控えたいと思います。き然たる態度をとるべきものであるというのは私の本心でございますから、そういう本心が閣議においても談話のうちに出ることはあると思います。
  108. 亀田得治

    亀田得治君 法案審議に必要なことは、たとえ閣議の問題であろうが、おっしゃってもらって少しも差しつかえないと思います。外部に対してしばらく伏せておかなければならぬというようなこれからの政策上の問題、たとえば経済政策あるいは大蔵省関係などのそういう政策等では、私はそれはあると思うんです。そういう問題じゃないのですから、もっとざっくばらんになぜ言えないのか、はなはだ心外です。ほかの大臣だって、聞けば、差しつかえのないことはみんなおっしゃってもらえるわけなんです。どうも暴力団に関することになるとあいまいにされることが多くて、はなはだ不愉快になるわけですが、問題は次に移ります。この問題は全部終わっておるわけじゃありませんが、第二の資金源に関する部分に若干入りたいと思います。  資金源の問題につきましても、あらゆる資金源の問題を詳細にやろうといたしますと、これはなかなかそれだけで二日も三日も費やさなければ論議が尽くされぬということになるわけですが、私はその中で一つだけ取り上げていきたいと思います。それは何かといいますと、経営者が暴力団を使う、こういうことが相当あるわけですが、その経過なり事情などはおのおの違いますが、いずれにしましても、経営者が暴力団を使う、これは何といっても資金源という面から見たら暴力団にとっては一つの大きな有利な部門になるわけなんです。で、そのまた一つの例をここにあげて、一体警察なり検察庁というものがこういう問題についてどういう姿勢を持っておるのか明確にしたいと思います。  それは、東京の足立区の千住の司自動車株式会社、これは現在でもこの暴力団問題が続いておるわけなんです、すでに数カ月にわたって。もう終了してしまったような問題は、これはざらにあります。そういうものを取り上げるよりも、いま続いているやつをここでひとつ具体的に取り上げて、どういう考えかひとつ明らかにしてほしいと思います。そこで、概略私のほうから問題を提起いたします。司自動車では、今年一月から賃金の切り下げ問題が会社側から提起されてきたわけです。労働者としては当然それは困る。あたりまえですね、そういう態度をとるのは。物価が上がり、もっと賃金を上げてほしいというのはどこでもあることでして、ただその上げ方をどうするかということでもめておるのがこれは一般的な現象なんです。逆に下げてくれ、こういうことになれば、これはなかなかそう簡単にいかんということはあたりまえです。まあそういうことで労使間がもめてまいりまして、そこで三月十五日に正和自動車株式会社の社長をしておる樽澤正——名前は正だが、やっていることはあまり正しくないのですが、それは後ほどわかります。正というのが社長になりました。そうして、三月二十三日午前六時半にこの会社に乗り込んできたわけです、これからおれが社長になったからここをやるんだと。その乗り込み方は、防共青年隊という暴力団を従え、また、自分の会社である正和自動車の従業員、あるいは法律家、こういうものを多数連れて威風堂々と乗り込んできたわけです。それから、警察のほうも多数そのお供をして入ってきておるわけです。そういうかっこうになっておる。それからこういう状態が今後続くわけですが、毎日、その日だけじゃなしに、暴力団が会社にやってくるわけですね。無数の暴力行為がこの会社で起きておるわけです。暴力団にやられておるわけです。その中の一番ひどいのは後ほど触れますが、そういう暴力行為だけじゃなしに、三月二十四日には、組合の事務所を組合員が出入りできないように板べいで仕切ってしまった。会社の中に組合の事務所があるわけですが、会社の広場からその組合の事務所へ入ることができぬように板べいで仕切る。それから組合の掲示板を暴力団が撤去してしまう。三月二十七日になると、組合の旗を暴力団が引きおろす。この組合事務所自身に対する不法な攻撃を加えてきた。組合の人に対する暴力行為のほかに、こういうことをやっている。四月十七日に、東京地方裁判所がそういう組合事務所に対する攻撃はいけないということで仮処分決定が出ました。したがって、まあそれ以後は若干組合事務所に対するそういう妨害は弱まっておるわけですが、それでも旗などは夜になるとわからぬうちにおろしてしまうとか、そういうことが続いておるわけです。こういう暴力行為なり組合事務所に対する攻撃のほかに、組合を脱退させるために会社がいろんな誘惑、強制、脅迫をもう無数にやっているわけですね。付近の人たちは、毎日そういうことがあるものですから、非常に同情して、毎朝運転手さんが集まって来ると、また暴行されやせぬかということで見に来る。非常に非難の的になっておるのが現状なんです。現在でも続いておるんですよ。私もせんだって現場を見てまいりました。  そういう状態にあるわけですが、これに関連して若干問題を分析してお聞きするわけですが、この中にあらわれてくる防共青年隊ですね、これは一体警察のほうの名簿に載っておる団体であるかどうか、まず明らかにしてほしい。
  109. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) 御質問のように、司自動車の争議は、一月以来今日までどろ沼的な闘争状態を呈しております。その間にいろんな不法事案も発生しておりますが、御質問の防共青年隊というのはどういう団体か、こういうことでございますが、この団体は、昭和三十八年三月の十日に山本達雄という人物が中心になりまして、自分が勤務しています都内にある豊国交通株式会社の従業員十六名、これをもって結成をした団体でございます。この団体の綱領には、赤色の一掃、共産主義の撃滅と世界平和の達成、こういうことを掲げております。この団体は、現在中野に一つ支部がやはりあるようでございます。その後、最近になりまして防共青年隊城北支部というものが、六月の十日にまた一つ結成をされています。中野のほうの支部は構成員が二十名、城北支部のほうは構成員が現在二十五名、こういうことに相なっております。これはきわめて虞犯性の強い行動右翼である、こういうふうに私どもは断定しております。行動というのはアクションのほうの行動ですね、行動右翼、こういう断定をいたしております。  なお、防共青年隊というのは、もう一つ行動右翼の中で虞犯性の非常に強い防共挺身隊というのがございまして、この防共挺身隊の隊長は福田進という人物ですが、この者の指導を受けておるようでございまして、したがって、この両者の関係は相当緊密である、こういうふうに私どもは見ております。
  110. 亀田得治

    亀田得治君 これは暴力団ですか、あるいは暴力団と違っていわゆる右翼ですか、どっちなんですか。あなたは、暴力団ということになると、なかなか名前を警察は言わぬようでありますが、ともかくどっちの方向のものなんですか。
  111. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) 昨日も申しましたように、最近はなかなか区分けのむずかしいのが出てきつつあるわけでありますけれども、防共青年隊は、私どもとしては、一応先ほど申しましたように行動右翼である、こういう見方をいたしております。
  112. 亀田得治

    亀田得治君 防共挺身隊というのも行動右翼ですか。
  113. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) 私どもはさように現在は考えております。
  114. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、いわゆる五千何がしの名簿の中には入っおらぬわけでしょうか。
  115. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) その名簿は、昨日申し上げましたとおりですが、刑事局のほうにありますのはいわゆる暴力団と警察内部で考えておるものである、こういうことでございますが、私のほうが所掌しておりますのはいわゆる右翼である、こういうことになっております。これは私どもの対象の団体でございます。
  116. 亀田得治

    亀田得治君 しかし、これは両方にまたがっておる性格の団体もあるのじゃないですか、実際問題として。
  117. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) そこが、ただいま申しましたように、最近ややこしいのが出てきつつある。したがって、両方にまたがっておるものが最近出かかってきておる、これが実態でございます。
  118. 亀田得治

    亀田得治君 いや、本件の防共青年隊というのは実態はまたがっておる性格のものと違いますかということですがね。
  119. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) やっておる行動は、率直に言いまして、私は暴力団的なやり方をやっておるものである、こう思いますが、これらの掲げておる綱領その他から見まして、一応私どもとしてはいろいろなところでいろいろな事件を起こす行動右翼である、こういうことで私どもは視察の対象にしておる、こういうことでございます。
  120. 亀田得治

    亀田得治君 本来ならば、刑事局のほうでも対象にしてもらわぬといかぬわけですね、実態から言いますと。あなたのほうでも対象にされる、それはけっこうでしょう。刑事局のほうは抜けておるのですか、どうなんですか。
  121. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 私のほうでも対象に考えております。
  122. 亀田得治

    亀田得治君 それでこの団体の実態がやや明らかになったわけですが、そこで、これは当然警察庁なり警視庁のほうでお調べになっておるはずですが、これが司自動車に動員されておる状況ですね、毎日何名どういう形で動員されておるのか、その点もつかんでおると思いますが、それを明らかにしてほしい。
  123. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) 防共青年隊のうち二名は、現在いろいろな事故を起こしております。代務員と称する者がおります。これは十六名でございますが、そのうちこの青年隊所属は二名でございます。ところが、この二名は先般来の事件で検挙をいたしまして、現在は会社は退いておるようでございます。なお、代務員に入っていなくてこの争議にときどき出かけていっておるというのが大体十名から二十名見当でございます。ただ、これも三月から四、五付近まではよく出てきていろいろな事件を起こしておりましたが、最近はちょっと足がとまっておるというのが実態のようでございます。
  124. 亀田得治

    亀田得治君 そういう暴力団が司に出ていく場合には、これは名目はどういうことになるのですか。臨時雇いですか、どういうことになっておるのですか。
  125. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) ただいま申しました代務員に入っておった者はまさに臨時雇いでございますが、それ以外に十名ないし二十名行っているのは、別段会社の臨時雇いといった性質のものでなしに、これは何といいますか、外部支援団体、こういうことにでもならざるを得ない、これがまあ実態でございます。
  126. 亀田得治

    亀田得治君 ことばの論議は別として、日当をもらっているわけでしょう。幾らもらっているのですか。
  127. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) 私どもは当然こういうものはただで行っているとは見ておりません。何らかのおそらくや反対給付があるものと、こういう推定をいたしておりますが、そういった点については今日までまだはっきり実態がつかめない。私どもとしては、社長側には、こういう者を現場に来させちゃいかぬということを再三にわたって警告をいたしております。ところが、その際に、いや、わしらのほうで頼んでいるのじゃないのだ、これは向こうから来るのだ、こういうことでのれんに腕押しみたいな形になっておる。しかし、私どもとしては、しつこいくらいの警告を発する、そうして現場で事故が起こればどんどん検挙していく、こういう方針でやっておるのでございます。
  128. 亀田得治

    亀田得治君 経営者が自主的におやりになることに対する警察の介入の限度というもののあることは、これは私も了承しますが、もっと積極的に手を打っていいものが打たれておらないという点を私これから二、三申し上げるわけなんです。  一つは、四月九日のことなんですが、非常な暴力事件が起きているわけです。四月九日の正午過ぎですね、労働組合の委員長の榊原という人が、当日の夜開催せらるる予定であった足立区民総決起大会の宣伝のために宣伝カーに乗って回っていたわけです。同乗者には中島、横尾というような人がおるのですが、運転をしていたのは宮崎という人です。もちろん宣伝カーは警察の許可も得まして、そうして宣伝活動をやっていた。ところが、当日午後三時半過ぎごろ、千住の正和自動車株式会社の教習所第二コース付近に来たわけです。拡声機でその辺で呼びかけておりましたところが、社長じゃなしに、専務の、社長の娘婿に当たるはずですが、樽沢早人外多数の者がやって来て、そうして自動車を取り囲んで、うるさいやっつけろ、こういうことを言って自動車のアンテナを折り曲げたり、マイクを破壊したり、あるいは自動車の上に乗って前部のガラスあるいは側面のドア・ガラスなどを足でけって破る。そうして車の中にいた榊原委員長をなぐりつける。最後には、ドアをこわして、榊原、宮崎運転手、こういう人を車外に引きずり出して、そうして路上でみんなで暴行を加えているんですね。宮崎の首を締めつけたり、そうして路上に倒れた榊原君に対しては数回踏みつける、こういうふうなことをやりましていろいろなところにけがをさせておるわけです。専門用語でけがの場所は書いてありますが、それは省略いたします。そうして、最後には、そのへとへとになっておる二人を自分たちが持ってきた小型自動車に閉じ込めて、そうして脅迫をしておる。自動車はもちろんずいぶん破損した。こういう事件が起きたわけなんです。  これはもちろん警察、検察庁も調べておるわけでありますが、一つその警察の扱いとしてけしからぬことは、当日の午後、樽沢早人、現場において暴行、傷害の指揮をとった人ですね、この人を千住署が呼んだわけです。逮捕じゃなしに任意出頭の形で呼んだ。そして調べたわけです。ところが、夜になりますと、社長の樽沢正が千住署にやって参りまして、でっかい声で、早人を早く出せ、千住署がおれを参考人に呼びつけるというようなことはけしからぬ、こういうようなことを言ってどなり散らしておる。これは負傷をした宮崎君も調べを受けておりまして、その事情というものを一々見聞して、はなはだ憤慨しておるわけなんです。これは普通の暴行と違うわけでして、相当なけがをさせている。付近の人たちがたまりかねておかみさんたちが出て来てわいわい言うので、ようやくその暴行行為がやまっておる。非常な悪質なものです。そういうものを、結局は逮捕もしないでその日帰してしまっておるわけなんですね。労働組合の諸君がこの十分の一程度のことをしても、いや逮捕だのと言うていつも問題が起こる。経営者側がやりますと、はなはだもってこういう思いやりのある処置をとっている。これはどうしたことか、なぜこういうことになっているのか、この千住の署長にも来てもらっておるわけでありますが、直接私は署長から聞きたい。なぜそういう手ぬるい処置というものがとられておるのか、聞きたいわけです。それは、皆さんは間接の報告ですからね。どうせ報告は、警察ですから、自分の都合のいいことしか報告してきません。なかなか自分の欠点というものははっきり報告書の中に書かない、それが普通なんです。だから、署長から明確にしてほしい。その上で、署長に対して若干私さらにただしたいと思います。こういうことで千住署長に直接来てほしいということを要求していたわけでありまして、委員会のほうで参考人の手続なり適当に処置されて、長い間は聞きませんから、質問できるようにしてほしい。
  129. 中山福藏

    委員長中山福藏君) ちょっと速記をとめておいてください。   〔速記中止
  130. 中山福藏

    委員長中山福藏君) それでは、速記をつけて。
  131. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) 本件につきましては、すでに先般岩間議員が抗議団を連れて来られまして、だいぶきついお申し入れが私にございました。私は、事柄の真相を明らかにせねばいかぬということで、私どものほうの職員を使って現地につきまた警視庁本庁につき調査をいたしたのでございます。その結果を御報告申し上げます。  当日は、午後三時四十分ごろに、日共東部地区委員会の宣伝カーに乗った榊原委員長ら四名が、樽沢が経営をしております別の会社の正和自動車練習所の第二練習コースの道路上で、正和自動車の樽沢社長は、司自動車の社長となって、一日一万円の水揚げがないと首にする、運転手からしぼった金で豪勢な邸宅をかまえて労働者の敵である、樽沢社長は毎朝暴力団を使って暴行をしている、こういったことを拡声機で放送したそうでございます。ただ、この宣伝行為を車を使ってやることは、警察の許可を受けております。道交法による許可を受けております。これを聞きましたところの練習所の職員数名が現場にかけつけまして、自動車を取り囲んで、営業妨害だ、こういうことでもって放送をやめさせようと、こうしたわけですけれども、片方は放送をやめない。そこで、社内から四、五十名の男が出て来まして、宣伝車を取り囲んで引きずり出せと叫びなから車のドアや窓をあけようとしましたが、かぎが内からかかってあかない。そこで、窓ガラス等を破り、また、そこから手を入れてドアのかぎをあけた。また、マイクを引きちぎり、そして乗っておった榊原委員長や宮崎運転手——これは司自動車には無関係の者で、応援の者と認められますが、これに対して暴行を加えたのでございます。これが事実関係でございます。  そこで、この事件につきましては、この日の三時四十三分ごろに、一一〇番で、正和自動車練習所のところで労組の宣伝カーと歩行者の事故らしい、こういうことで、けがしている者があるようだ、こういう通報がございました。この一一〇番がありました直後に、三時四十六分、氏名を言わない女声で、正和のところで樽沢社長がなぐられている、そしてけがをしている、こういう一一〇番が入ったのでございます。パトカーは、前のときの通報で現場に行っております。警ら中の千住署のパトカーは午後三時四十七分ごろに現場に到着をして、引き続いて千住警察署の警備交通課長以下十三名、これが現場に出動しております。さらにその後制服員三十一名、私服員五名を現場に派遣しておる、こういう警察措置が行なわれております。最初に現場に到着しましたパトカーの乗務員は、現場におって被害者から事情を聞いたわけです。ところが、宮崎運転手が、現場から立ち去っていこうとする一団の人の最後尾についておった正和自動車練習所の専務の樽沢早人、この人を指さして、あの男が暴行をしたんだと、こういうことを申し述べましたので、樽沢について直ちにそのことを尋問をいたしましたところ、樽沢自身は、マイクで社長の悪口を放送した、業務を妨害したのでやっつけたのだと、こういうことをすなおに申し述べて犯行を認めております。そこで、樽沢専務と、被害者である宮崎運転手及び宣伝車に乗って犯行を目撃しておりました中島君という人三名をその場から千住署に同行して取り調べを行なったのでございます。その他、第三者で目撃、会社側の関係者等の聞き込みを行なって捜査をした結果、本事件は樽沢専務のほか正和自動車の金谷満、青山忠靖、田中——ちょっと字がわかりませんので田中と申し上げておきます。田中という男、この合計四名の犯行であることが明らかになりましたので、それぞれさらにこれらの任意出頭を求めて取り調べて、いずれも犯行を自供いたしております。  なお、被害者の榊原君ですが、これは救急車で病院に行ったようでございますが、治療後所在不明となって、警察としましては本人の住所及び労組の事務所等を通じて合計十回にわたって呼び出しを行なっております。これは被害者の調書をとる、こういう必要があるわけでございますが、ところがこれには応じてもらえない。こういうことで捜査がやや停滞をしたようでございますが、松本善明弁護士事務所を通じて出頭方を説得しました結果、四月二十日になって出頭して取り調べに応じてもらっております。  また、宮崎運転手でございますが、事件当日の被害調書の作成で呼び出しをしておりますが、同時にまた診断書の提出もお願いをしましたけれども、これには応じてもらえないで、被疑者の確認のための面割り、写真による面割りのために被疑者の写真を持って自宅へ行って、それを確認をしてもらいたいということを要請をしておりますけれども、宮崎運転手は、組織を通じなければ写真を見るわけにいかぬと、こういうことで捜査には協力をしてもらえなかったと、こういうようなことで、実はこの事件の結末をつけるのが私ども常識で考えるよりはやや日がかかっておる、これが実情のようでございます。  そこで、先ほどの御質問の樽沢早人を早く出せと、出さないと承知せぬと、こういう意味合いの発言を樽沢社長が、これはおやじさんのほうですが、警察で言っておったと、こういうお話でございますが、そういう点については私どもは承知をいたしておりません。また、本件について先般の抗議に岩間さんがお見えになったときも、何で逮捕せぬのだ、こういうこともございましたので、その間の事情もやはり私どもとしてさらに調べたのですが、これはやはりこの連中の一つの特徴といいますか、事件を捜査して調べますというと、全部犯行を認めるわけです。黙秘権を使ったりそういうことを一切しないで、調べがどんどんと済んでしまう。しかも、本人の名前ははっきりしておる。また、証拠関係等もなくなるという心配もない。こういうようなことで、私どもとしては任意で十分に捜査ができる、こういうことで警察としては任意の調べをやったのだ、こういうことでございます。  なお、この事件につきましてまあいろいろな事件があるわけですが、組合側等から警視庁あるいは千住警察署あるいは私どものほうに、どうも警察はこういう右翼の連中に手ぬるい、こういうお話がしばしばあるわけでございますが、私どもとしては、組合側であろうと、あるいは右翼側であろうと、いやしくもこういった争議の際に不法行為をやるという者に対してはどんどん取り締まりをやるのだ、いささかもそこに片寄ったことはやらぬ、これは従来からのわれわれのかたい方針でございますが、その点は十分にひとつ御理解していただきたいと思うのであります。
  132. 亀田得治

    亀田得治君 樽沢正が警察署に来て大声でどなりつけた事実はないとおっしゃるわけですか、知らぬというわけなんですか、どっちなんです。
  133. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) 私は聞いていないということでございます。
  134. 亀田得治

    亀田得治君 だから署長がおらぬとだめなんです。そういうことを言われて、そうしてしぶしぶ帰しているのが実際なんです。いまの説明ですと、何か犯行をどんどんしゃべるものだから逮捕する余地がないようなことを言われる。しかし、これは現行犯でしょう。問題が起きて紛糾しておる、その直後に現場に警察が行っているわけでしょう。普通なら、それをちゃんと逮捕していくのが普通じゃないですか。現行犯に類するものを、言いさえすれば逮捕せぬのだということになれば、ちょっと言うて逃げてしまったら何にもならぬでしょう。おかしいじゃないですか。それだけのけが人が出ておるのに、それこそ現行犯逮捕ですから、ある程度この人に間違いないという見当がつかなきゃ、かえって現行犯逮捕も行き過ぎる場合がある。実際にやっているところなら間違いないでしょうが、若干その直後ということになれば。当然、一般の場合であれば、これだけのけがをさせられていれば、その場で現行犯逮捕して連れていくのがあたりまえじゃないですか。そこの徴妙な点は一体どうなっているんです。あなたは向こうをかばうようなことばかり言いますけれども、こまかい経過というようなことをきちんとつかんでおっしゃってもらわぬと困りますよ。それは警察だけの言い分なんかの報告でこの速記録に載せてもらったってですね。それほど問題が明確じゃないんですよ。一つは、樽沢早人を宮崎に対して面通しをさせておる。この人に間違いないだろうなと警察で宮崎に。ということは、早人がそれほどはっきり自白しているかどうかもわからないわけなんだ、おそらくそこまで念を押しているということは。宮崎のほうでは、当然これはこの人に間違いないと言って逮捕されるという期待を持っているわけですね。それが樽沢正におどかされて帰してしまって。そんなあなた警察にだれが協力するものですか。被害者ですから、これは当然ほんとうは捜査に協力してでもやってもらわなければいかぬわけなんだ。当然これは現行犯逮捕すべきじゃないですか。どうなんですか。
  135. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) もちろん現行犯逮捕をすぐするか、あるいは任意にやるか、その場その場の状況によるわけでございますが、本件の場合には、先ほど申しましたように、パトカーが数分後に現場に着いたわけでございます。ところが、騒ぎ自身はすでにおさまっておった。それで、一団の人間が現場から立ち去ろうとしておった。そこで、被害者の宮崎運転手に、だれがやったんだと、こう聞いたらば、その一団のうちの一番うしろから行く人間を指さした。そこで、その人間が樽沢早人であった。で、樽沢に、おまえやったのか、こう言うと、わたしはこういう理由でやった、こういうことでありますから、それじゃ警察署へ来い、こういうことで警察署へ被害者と一緒に同行をして、警察で調べた。調べた際に、それは宮崎運転手にいま一度この人間に間違いないかと、こういうことをそれは面通しをやってはおります。しかし、いずれにせよ、そういうことで警察署へ現場から連れていって、そして調べております。そういうわけで、その調べの際に、先ほど言いましたように、まあ全部すらすらと何もかも被疑事実を認める、こういうことで調べが済んだということで本人を帰した、これが実情でございます。
  136. 亀田得治

    亀田得治君 樽沢正からは調書をとっているのですか、当日、四月九日。
  137. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) 樽沢正は、本件の場合には現場には関係がございませんので、樽沢正は調べておりません。
  138. 亀田得治

    亀田得治君 しかし、参考人として当日呼んだのでしょう、樽沢正は。呼んだから来たのか、向こうからかってに来たのか、どっちなんです。
  139. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) 樽沢正を当日呼んだということは聞いておりません。
  140. 亀田得治

    亀田得治君 都合の悪いところを抜くものですからね、そして何かスムーズにずっと捜査が進んでいるようなことをおっしゃっておるが、事実はそうなっておらぬわけですよ。で、一体これはどういう段階にあるのです、捜査は。それほどあなたすらすらしゃべってもらっているのなら、もうとうに起訴されて、かくのごときものはすでに裁判が進行していなければいかぬ。どんなんです。事実は何もそんな進んでおらぬじゃないですか。
  141. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) 四月の二十七日に、先ほど申し上げました四名の被疑者を、暴力行為等処罰法違反及び傷害罪で東京地検に送致をいたしております。
  142. 亀田得治

    亀田得治君 四月二十七日というのはえらいおそいですな。四月九日にそういう事件があって、それほどすらすらと、もう半日もあったら調書がとれるようなことをおっしゃっておりながら、はなはだおそい。東京地検ではどうなっています。
  143. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 私のほうへ受けております報告によりますと、四月二十一日に同事件は受理されておりまして、四月二十一日受理というふうに報告を聞いております。
  144. 亀田得治

    亀田得治君 おかしいな、日が違うじゃないか。
  145. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) これは私のいただいておる資料は二十一日とありますが、それは二十七日の間違いだそうでありますので、二十七日に受理をいたしております。
  146. 亀田得治

    亀田得治君 いや、受理だけしてもらって握っておってもらっても困るから、それはどうなっておるのです、受理して。
  147. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) この事件だけでなく、御承知のようにほかに多数の事件がございまして、昨日でございましたか一人起訴になっておりますが、その他の事件は一括して処理するということで、目下鋭意調査中ということでございます。
  148. 亀田得治

    亀田得治君 ともかく、経営者側の問題になると、鋭意調査中とか、そういうことになりがちなんです。検事はまだ現場検証もしておらぬというじゃないですか、竹内さん。
  149. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) その点は私のほうではわかっておりませんが、よく調査してみたいと思います。
  150. 亀田得治

    亀田得治君 だから、これはだめなんですよ、結局。うやむやになってしまう。労働組合等の場合に警察官がそれだけ来れば、当然現行犯逮捕として逮捕しますよ。だから、こういう事件などは、逮捕して身柄をそのままずっと一それほどはっきり認めておるのなら、さっさと調書をとって、もう引き続いて公判をずっと開いていきゃいいんですよ。そうしなきゃ、かくのごとき種類の事件というものはなくならぬですよ。甘く考える。まあどうせわれわれのほうがやったってという考えでおるからなんだ。もし堂々と、やったことは何でもやっていると言うなら、ある程度それはなめてかかっている、その言い方は。なめてかかっているんですよ。受ける感じはそういうことですね、逆に。正直に、いやそれは悪かったという意味で言っているわけじゃない。で、そういうことを助長するのは、警察や検察庁のこういう手ぬるい扱いからくるわけなんだ。  それからもう一つ聞いておきますが、この四月十日ですね、翌日、この組合の事務所の前で決起集会があって、そうして集会が終わってみんなが解散をしかけたときの問題をちょっと触れておきたいと思う。で、その際に、決起集会はまあ会社の外でやっているわけですね、道路で。ところが、会社の中のほうから、防共青年隊の諸君がへい越しにのぞいて、労働組合員にずいぶん罵声を浴びせかけていたわけです、決起集会が終わったとき。そうすると、まあ集会に集まっておった組合員の諸君は、何くそという気持ちになるわけですが、その際、私服警官の高尾、山田、平沢、こういうような人たちが、へいによじのぼったり、かさで暴力団をつっついたりして挑発をかけていたんですね。こういう問題が起きておる、挑発を。写真がありますよ。これは署長に見せて千住署の公安係の平沢という人であるかどうかを確認してほしいわけですが、これが挑発をかけているわけなんだ。しかし、組合員の人は、その署の人かどうかわからぬ。そこで混乱を起こさせようとしているわけですね。それで、そのうちにへいを乗り越えて暴力団の諸君が道路のほうに飛び込んできて、そしてそこで若干紛糾を起こしたようですが、その際千住署の山田という公安係長、これが暴力団によってどぶの中に突き落とされたんですね。それでそこでごたごたが起きておるわけです。ところが、組合のほうから、これは千住署の公安の人だということを気づく者がいて、そんなものにかかわりあってはいかんということで、組合のほうはずっと退散していったわけですね。もしそういうことに気づかないで、組合員が暴力団にやられておるという勘違いをしてそこで紛糾を起こせば、たいへんなことになる。組合員のほうも引っぱられるわけだ。ところが、ずっと引き揚げたものだから、この山田係長もていさいが悪いかっこうになって、その場は笑い話になってしまっているわけですが、こういう点は、あなたのほうでは、一体どういうふうに把握しているんですか。そんなことが署の正式文書になってきちっと来るわけがない。しかし、その話は聞いているでしょう。どうなんです。
  151. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) その事件につきましても、岩間議員からきつい申し入れがございましたので、実情を私ども自身の手で調査をいたしておりますので、それによって御報告申し上げます。  四月十日に、組合側が、午前七時四十五分ごろから、支援労組員約百三十名を会社前の道路上に動員をして、会社構内にいる会社側の警備員、これと対峙をしたのでございますが、この間、午前八時ごろ支援労組員十五名ぐらいが通用門から構内に入ろうとしたわけでございます。そして、会社側の者に阻止をされ、続いて午前十時三十分ごろに、支援労組員三十名ぐらいが同じように通用門から構内に入ろうとして、これをまた阻止しようとする会社側の警備員三十名ぐらいとの間で口論を始めて、不穏な状態になりましたので、現場に参っておりました警察官二個分隊が両者の中に割って入って、双方を分離をいたしております。さらに、十時四十分ごろから、支援労組員全員が組合事務所の前の道路に集合して経過報告を行なったのですが、その際に会社側の警備員四、五名が組合員と口論をして、構内から飛び出して支援労組員に突っ込もうといたしましたので、警察官がこれを制止をしたのでございます。御質問の写真は、組合員の中へ突っ込もうとした会社側の警備員を警察官が制止をした際のものでございます。すなわち、同日の午前十一時ごろ、会社構内から支援労組員の集合を見ておりました会社警備員に対して、労組員の中の女性が舌を出して、そして他の組合員も、しやしかったら出てこい、こういう半畳的なことばがあったわけでございます。そういうことから、警備員四、五名がへいを乗り越えて、そして道路上に出ようといたしましたので、現場におりました私服警察官数名の者、高尾等でございますが、これが手に持っておりました洋がさをあげまして出てくるなと言って制止をしたのでございます。このとき警察官が洋がさを上げたのは、へいを乗り越えようとする警備員に道路上からやめろといって制止した。警備員に突っ込めという合い図をしたものでは全くないのでございます。  また、警察官が袋だたきになったという点でございますが、この点は、この制止にもかかわらず、警備員数名はへいを乗り越えて道路上に出て、組合員と対峙をして不穏な情勢となりました。近くにおりました私服警察官、これは山田警部補等でございますが、これは即刻これを制止しようとしましたために、雨で道路がぬれておりましたので、足をとられて転倒して両わきの排水溝に足を突っ込んだということでございます。会社側の警備員の暴行を受けて袋だたきにあったということはございません。これが実情でございます。  本件につきましては、私自身その写真が実はほしかったのでございます。私自身のほうでもこういうことは厳重に調べなければならぬ、そういうことで、抗議にお見えになりましたときに、岩間議員等がお見えになりましたときでございますが、数葉の写真を持って抗議されましたので、私は、その写真をもらいたい、こう申し上げたのでございます。その際に写真はいただきました。ところが、その写真だけはどういう理由か実は私どもはいただけなくて、お持ち帰りになったのでございます。そこで、私どもいたし方ございませんので、その写真によらないで、現地につき、また警視庁について実情を調べた、ただいまお答えした状況がその結果でございます。
  152. 亀田得治

    亀田得治君 この問題だけであまり時間をとるわけにもいかぬのですが、いまのお答えに対してももっと突っ込んで明確にしなければならぬ点がたくさんあるわけですが、なかなか時間の都合でそうも参らぬわけですが、いずれにしましても、警察が挑発をかける、われわれよく聞くことなんですが、ところがその疑いというものがこの中にあるわけなんです。いままでの三月下旬からずっと暴力団が来た経過は、警察官がいかにもそれを守っているようなかっこうで経過してきている。それは私一々読んでおりませんが、無数の暴力行為が行なわれているんですよ。無数の暴力行為が白昼公然と。それがどれもそう問題にならぬ。書類はつくられているが、一応捜査中といったようなことで経過しておる中から、だれだって四月十日のこの混乱というものは挑発行為だというふうに見ておるんですよ。あなたはそれは単に人の書いたものの報告だからよくわからぬわけでして、私はほんとうにそういうことがあったとしたら、これはたいへんなことだと思うので、実際はこの委員会においてその関係当事者に来てもらって事態を明確にしたいと思っているわけです。だから、一応本日のところはこの問題はなにしてほかに移りますが、後ほど岩間君がこの点で一点関連質問がありますから、それは委員長のほうで取り計らってほしいと思いますが、その前に大臣にちょっと聞きますが、防共青年隊の諸君がやってきて、そうして組合の旗を引きずりおろし、自分たちは今度は日の丸を十数本立てるわけだ。大臣、どう思いますか。あなたも日の丸が好きなほうですが、日の丸というものがこういう右翼暴力団によってこういうふうに使われておるということを——これは私か行ったときもちゃんと立っていた。あなたはどういうふうにそういう点を考えられますか。
  153. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 日の丸は日本国旗でございますから、乱用すべきものじゃないと思います。
  154. 岩間正男

    ○岩間正男君 委員長関連して。
  155. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 岩間君。
  156. 岩間正男

    ○岩間正男君 関連ですから、長いこと時間をとりたくないと思っておりますので、要点だけ聞きます。  第一に、いまあなたが報告されましたが、これはだれから聞いたのですか。千住警察の署長ですか。それから、あなたのいまここで報告された相手ですね、聞いた相手、それをはっきりさせてください。
  157. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) 私のほうは、私どものほうの係の主任の警視を警視庁及び千住警察署にやりまして、関係の者から事情を聴取さして調べた報告を私が基礎にしてお答えをしたのでございます。
  158. 岩間正男

    ○岩間正男君 この問題は、暴力団と警察の結びつきの点で問題になっているわけです。したがって、当事者の警察から聞くだけでは、これを指導しておるあなたたちの立場として事件の全容というものはつかめないんじゃないか。そういう点から言いますと、これは関係者だけの話を聞いていまの報告書をまとめられているのですが、しかも、その報告書の中では、都合の悪いところは全部抜けておるように感ずるんです。たとえばさっきのこうもりがさの問題もあり、写真の問題もあって、写真がすでにはっきりしている。このような写真に対して、しかもそのあとであそこでどさくさが起こって、逆にこうもりを持った者がやられる、暴力団に。そういう事態なんかについて、これは調べていないんじゃないですか。  そういう点とか、もう一つはっきりしたいのは、いままで警察が動員しているでしょう。これは多いときは百人くらいでしょう。それから、連日毎朝これは動員しているわけです。この事件が起こる前からあの辺をずっと警官がパトロールをしているのは事実だ。この動員の数はあなたのほうでわかりますか、これは何人くらいか。今まで三カ月にもなんなんとする長い間これに対してあなた方精力的にやっている。その目的は何ですか。その数は。この点がわかりますか。これは関連ですから、あとで書類で出してもらってもいいですが、動員の目的は何なんです。
  159. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) 本件は、先ほど申しましたように、非常などろ沼的な様相を呈しております。したがって、私どもとしては、毎日情報の活動をいたしまして、不法事件が発生しないように、事故が起こらぬようにと、こういう意味で、毎日警察官を長期間出さざるを得ないというのが実情でございます。   〔委員長退席、理事後藤義隆君着席〕  で、現在まで警察官を出しました総数は、延べ二千五百六十四名でございます。労組の動員数は、私ども把握した数字では二千六百三十九名、会社側は二千四百五名でございます。
  160. 米田勲

    米田勲君 委員長
  161. 後藤義隆

    ○理事(後藤義隆君) 米田君。
  162. 米田勲

    米田勲君 私はこの際関連質問を……
  163. 岩間正男

    ○岩間正男君 委員長、何ですか。
  164. 後藤義隆

    ○理事(後藤義隆君) 米田君に許しました。
  165. 米田勲

    米田勲君 岩間君、あとから……。  私は昨日の質問の際に、御承知のように、相当分量を残して中断をしている事情については、委員長もおわかりだと思います。この機会ですから、私関連して質問をしておきたいのですが、昨日も現行法規を適用する警察当局の職務権限の行使のしかたについて問題点が相当われわれの手元でも集約されてあるのだということを申し述べておきましたが、   〔理事後藤義隆君退席、委員長着席〕 私はいま亀田議員が問題として取り上げていろいろお答えをいただいておる経過を聞いていただけでも、相当長期にわたるこの労働組合の争議と、会社側が防共青年隊の支援を得て行なわれている混乱と暴行の状態から判断して、現に発生したその暴行、傷害事件直後に到達している警察官のその場の処置としては、私は当然亀田議員の言われるとおり逮捕をし、取り調べをすべきであるということを常識的にも国民の立場として考えるのであります。なおまた、答弁の中にある、本人が事情をすらすらと申し述べて黙秘権を使わぬので留置しないで帰してしまったというが、私たちの判断からすれば、相当長期間にわたって無数の暴力事件が発生をしておるという経過にもかんがみ、この現に発生した暴力事件関連をし留置をした上でその他の余罪を徹底的に洗うべきである。当然その中心人物であるから、その日までに発生した無数の小暴力事件についても関連して取り調べるべきである。そういう事情を総合的に判断をすると、大声でどなりつけて帰せと言われたから帰したのかどうかはわからぬにしても、取り調べに当たっておる警察当局の態度はきわめて手ぬるく時宜に適しておらぬという批判を強く持つのであります。こういう問題は、亀田議員の手元にでも全国的に相当たくさんの資料が集まっております。だから、われわれは、現行法規を改正して刑罰さえ重くすれば、法さえ強化すれば、あなた方は暴力団とその暴力団による暴力犯罪を防遏できるのだと言っておるけれども、実際第一線の警察官はそのような状態で適当な適宜な措置がとられていないという自己批判をすべきだということをわれわれは強く主張するのである。この点は亀田議員も指摘しましたから、私はこれ以上その点については申し上げませんが、この機会に、第一線の警察官だけでなく、検察当局にもそれに類する問題がたくさんあるということを指摘しておきたいのですが、一つだけ竹内局長にも事前に連絡をとってあります問題をこの際指摘をし、反省を促したい。  問題は、本年の四月に発生した事件でありますが、釜石郵便局内で起こった事件であります。この事件は、庶務課長と組合の役員が、どういう事情か知らないが、下はコンクリートの場所で立ちながら話し合いをした模様であります。話し合いの内容は、組合の役員が有給休暇をもらいたいという折衝であったようであります。ところが、庶務課長は、業務の都合から有給休暇は許さぬというので、強くその組合側の主張を退けておる。だんだん論が発展していくうちに、庶務課長はこういうことばで言い始めた。トイレに行く場合でも使用者側の許可がなければ、かってに行った場合には賃金カットをする。この有給休暇をかってにすれば賃金カットをするぞという話し合いから発展していって、トイレに行く場合でも、使用者側の許可がない場合には、行ったら賃金カットをするぞというとんでもない発言をしたわけです。ところが、組合側は、その不当な当局の言い方に非常に憤慨して、抗議を申し込んでエキサイトした模様であります。ところが、そのときに、この庶務課長は、組合の役員を強く押し倒した。ちょうど拍子が悪く、突き飛ばされたその役員は、転倒をして、床のコンクリートで頭を打って脳震盪を起こした。その後病院に連れて行き、医者の診断で五日間静養をする必要があるということで静養をした事件が起こっておるのであります。  それを釜石郵便局の組合員は盛岡検察庁に告訴をいたしました。ところが、検事のその後の取り調べはどうであるかというと、加害者である庶務課長を取り調べて、その庶務課長がそういう事実は絶対にございませんと強く否定をしたことを主たる事実と認定をして、その後この事件に居合わせた七、八人の人たちがいずれも同じような事件の発生経過と事実を証言したにもかかわらず、検事自身がこれは組合側のでっち上げた事件であるとして問題にしないで、いまやそのまま処理されようとしておるのであります。このことは、私は、たくさんある中の一例で、時間もありませんし、関連質問ですから、指摘だけをしたんですが、どうも検察当局も、ただいまの警察当局の第一線部隊のやっていると同じように、暴力団暴力団と結託をした会社側、使用者のやり方、あるいは検察庁と使用者側のこういうやり方に対して、従来この数年間労働組合の争議やデモ行進などで突発的にある事由から発生した悪意の事件でないとしてもその事件に対しては、相当逮捕、留置して手きびしいやり方をしておるのに比較して、きわめて不穏当な妥当を欠く不公平な取り扱いをしていることをたくさんの事実からわれわれは感ずるのであります。だから、われわれは、賀屋法務大臣にも、法を強化し、取り締まりを強化すればそれで組織的暴力団暴力行為を防遏できるのだとあなたは言われても、事実はなかなかそうはいかぬのだということを言っておるのも、そういうたくさんの事実を押えて言っているのであります。これは法務大臣に聞いても、その事実はわからぬと思いますので、竹内局長はもうあらかじめ申し上げておきましたから、連絡をつけ、盛岡地検とも事情を連絡し合っていると思いますので、一体、こういうことでよいのか。国民の側から見れば、どうも検察当局も警察当局も不公平ではないかという批判を免れないのであります。ですから、この問題についても、長い時間をかけて答弁は要りませんが、はっきりした、この検事のような組合側のでっち上げであると不問に付そうとするような態度は私はいかぬと思うので、この際、関連して見解を尋ねると同時に、警告を発しておきます。その他の事件をここで次々に出すことは、委員会の運営を阻害しますので、それは取りやめにしたい。答弁を求めます。
  166. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) ただいまお尋ねの釜石の郵便局事件につきましては、ただいま御指摘のような事実に基づきまして、告訴、告発を受理し、現在までのところ、被疑者、被害者はもちろん、参考人七名を取り調べ、さらに診断書を作成いたしました医師を取り調べるというような状況まで進行をいたしておりますが、検察庁といたしましては結論を得ていない模様でございます。  ところで、ただいま、検察官までが何かこうへんぱな取り扱いをするのではないかというおしかりをこうむりまして、まことに私はつつしんでいま伺ったわけでございまするが、検察官といたしましては、事情がわかりにくいために、結果において先生方の目から見て不適当だというような結論になった事件も私はないとは申しませんが、気持ちといたしましては、労使の健全な発展に検察側から妨害してはならぬ、あくまで公正公平に処理をしていかなきゃならぬということは、検察側の終始一貫してとっておる態度でございます。この事件につきましても、当面しております検察官はもちろんのこと、検察庁全体の考え方といたしまして、さような態度を堅持いたしておりますし、ただいま本省において全国の検事正等の会同をいたしておりますが、その会同の席上におきましても、そのようなことは特に強調いたしまして、いやしくも関係者あるいは部外の者から公平な取り扱いでないというような疑いを受けるようなことは決してあってはならぬということをくれぐれも申して注意をいたしておるところでございまして、たいへん御注意いただきましてありがとうございます。
  167. 岩間正男

    ○岩間正男君 委員長
  168. 中山福藏

    委員長中山福藏君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止
  169. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 速記を起こしてください。
  170. 岩間正男

    ○岩間正男君 時間がないというから、当然ですから、簡単にやりますが、樽沢社長が二百人の暴力団とさらに警官の護衛のもとに会社に入っていった。このとき、従業員にあいさつしているわけです。会社のやることは事前に業者団体、警察、暴力団とも打ち合わせの上のことで、おまえらはわしの言うことを聞くだけだ、こういうあいさつをしている。この点についてあなたたちは確かめたのですか。この点はこの前私が抗議に行ったときも非常に問題にしたわけなんです。こういう点はさっぱり報告がないのですけれども、これはどうなんです、簡単に言ってください。
  171. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) 警察といたしましては、二十二日の社長就任式の際に会社側が多数の人を動員をするという情報がございましたので、三月二十一日に樽沢社長及び専務を署に呼びまして、署長から暴力事案等を起こしては相ならぬということで厳重な警告を発しております。また、ただいま御質問就任式の日に社長が言った、こういうことでございますが、これは社長はどういう意味でそういう発言をせられたのか、私どもにはわからないわけでございますけれども、警察といたしましては、社長がやろうとしておる右翼団体等を現場に入れないように、また、暴力事案を絶対に起こしちゃならぬ、こういう警告を発したのが実情でございまして、社長と警察とがぐるになったといったようなことはまるっきりこれは逆の事実でございます。
  172. 岩間正男

    ○岩間正男君 委員長
  173. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 亀田君。——亀田君に許可いたしました。
  174. 亀田得治

    亀田得治君 最高裁のほうにお聞きしますが、例の大井のなぐり込み事件ですね、これはだいぶん以前の事件でありますが、傷害致死、この事件について、懲役三年六月が三名、一名が懲役三年、四名が懲役二年、二名執行猶予、こういう判決になっておるわけです。いやしくも人を殺しておいて懲役二年やとか三年やとか、それから執行猶予二名出ておるわけです。これは一体法務省から出した資料の間違いなのか、どういうことなんです。警察と検察庁がたよりないということは先ほどからはっきりした。裁判所だってたよりないじゃないですか。最高裁から答えてください。(「委員長、だれに答弁させるんですか」と呼ぶ者あり)最高裁は来ているんでしょう。
  175. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 最高裁は、もうしばらくたって来るそうです。いま呼んでおります。
  176. 亀田得治

    亀田得治君 警察と検察庁の関係は、きわめて不十分だけれども一つずつ例を示して指摘しておるわけです。そこで、いま、肝心の判決のほうに移っているわけです。大体いまごろおくれて来るというそういう姿勢がなっておらぬ。これは委員長、ちょっと休憩して早く呼んでください。(「委員長の手落ちだ」と呼ぶ者あり)
  177. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 委員長の手落ちじゃございません。これは要求があるから、呼ばなければならぬけれども——速記をとめてください。   〔速記中止
  178. 中山福藏

    委員長中山福藏君) それじゃ速記を起こしてください。
  179. 亀田得治

    亀田得治君 最高裁が来たらひとつ聞きますが、法務大臣はどういうふうに考えます。
  180. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 審理の内容すべてを見なければ評はできませんが、裁判所は厳正公平に法を適用しておるものと私は信じております。
  181. 亀田得治

    亀田得治君 あなたは、大臣は、きょうは当初からそういう趣旨の感じのする答弁をちょいちょいされるんですが、公平にやっていると信じておるとあなたがおっしゃっても、人を殺しておいて三年六月、三年、二年というような、こんなふざけたことはないじゃないですか、実際。  じゃ、最高裁が来てからもう一ぺん確かめますが、松山の四国自動車事件ですね、これをひとつ聞きましょう。これは検察庁も傷害事件について略式を求めておるわけだ。しかも、事件の内容は、労働組合の争議中に組合員に対して傷内一家という暴力団の身内の者が攻撃を加えて傷害を与えておる事件なんです。これはことしですよ、一月二十七日、略式請求は。これは検察庁ですが、一体暴力団事件のやかましいときに、争議中の組合員に暴力団が傷害を負わして、検察庁自身が罰金を求めているじゃないですか。なぜ公判請求をして体刑を求めないのですか。答えてください。
  182. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) この事件は、よく中身をそれこそ調べてみませんと意見は申しかねるのでございますが、お手元に差し上げました資料で私どもも同じような読み方をしておるわけでございますけれども、これは全治四日間の傷害を負わせるとともに、脅迫し、他の一名に対して足げりにする等の暴行を加えた、こういう事案のようでございまして、罰金一万五千円という求刑になっております。仰せのように、見方によりましては軽いとも言えるのでございますが、またこういう判断をしたということにつきましては、何か事情がございましたか、その辺は十分に御説明はできませんけれども、軽いという見方に対しましては、十分私どもとしましても反省をしてまいりたいと思っております。
  183. 亀田得治

    亀田得治君 それから検察庁、法務省から出された各種の資料ですね、これを拝見してみても、検察庁も裁判所も暴力団に対して非常に手厚いわけなんです。法務大臣は、ともかく裁判所にけちをつけたら何か司法権でも侵害するようなつもりでおられるのかもしれませんが、それは裁判の途中にそれに容喙するようなことをやっちゃいかぬ。だけれども、出た結論に対して重いか軽いか、適正かどうかということは、これは当然批判すべきなんです。法務大臣、そんな、一般的にいって裁判所は適正にやっていると思います、公平にやっていると思います、そんなことで済ませるべきじゃないんじゃないですか。材料はたくさんあるんですよ。
  184. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 法務当局として容易に裁判所に対してその決定に対して私が批判を加える気持ちはないと思います。よくよくのことではじめて考えられるのであります。現に裁判は三審までございますし、再審制度もございます。私どもが一々裁判の結果に批判を加えることは私はよろしくないと思います。
  185. 亀田得治

    亀田得治君 それはおかしな考えですね。裁判所だって、裁判そのものに容喙されては困る。しかし、結果について批判をされるのはけっこうですと、これは普通の裁判官であればみんなそう言いますよ。みんな途中が問題なんです、問題は。結果について批判をするのは、これは学者もやっておるし、世間もやる、あたりまえのことじゃないですか。裁判というものを何か一つの外部の者はさわっていかぬようなそういう考えでおるから、これは独善におちいる。そうして、暴力団に対してこれほど批判があっても、先ほど指摘したような世間の常識とはかけ離れたことをやってすましておる。そういうことをしておるから、法務大臣などは勘違いして、これは法律をもっと強くしなければならぬというようなことになってきているんでしょう。現在の法律で強く十分やれるんです。問題はそこですよ。現に、十六、十七、十八と検事長並びに検事正の合同を持たれたようですが、その際、馬場検事総長が訓示しておる中にこういうことを言っておる。「今日量刑の現状を見まするに、宣告される刑はおおむね法定刑の下限に集中し、執行猶予の率は戦前に倍加し、」——これからあとです。「殊に近時頻発する暴力団による殺傷犯、少年による残虐な犯罪の科刑、処遇が一般に軽きに失するという不満は国民の素朴な法感情であるように思われます。」と検事総長がはっきり批判しているじゃないですか。しかも、これは世間の常識に合っておるじゃないですか。このことはあなたの部下である検事の元締めの検事総長がはっきりこう言っておる、公式の場で。それに対して、あなたは、法務大臣がそんな裁判所に迎合するようなことをおっしゃっておってもらっちゃこれは困るじゃないですか。
  186. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) ちっとも迎合しておりません。それは、法律上の刑の最高限、最下限をきめるのは、これは国会の意思できまる。適用は裁判所がやります。刑の最高限、最下限、そういうものを適正にする案を私は御審議を仰いでおるのであります。それはいろいろ批判がございますが、私は、御指摘のように、一々の裁判の判決について一々それを批判するということはよろしくない。全体としていろいろ考える必要はあります。それは裁判そのものを批判しているのじゃないのです。刑罰に対する正確なる見方がどこにあるか、それはもっと最下限を重くすべし、こういう考え方で法案を提出して御審議を仰いでおる。
  187. 亀田得治

    亀田得治君 話は見当違いじゃないですか。いま、その下限を高めるとか高めぬとか、そういうことをお聞きしておるわけじゃない。大臣は先ほど裁判の結果に対して批判するのはよろしくないようなことをおっしゃるから、あなたの部下の、しかも検事の元締めである人がきちんと批判をしておるわけではないか。しかもですぞ、この検事総長の訓示の中で、いま申し上げたところをさらに進めて読んでいきますと、「従来の求刑に再検討を加えるべきものと考えます。」と検察官の自己批判を求めておる。私は馬場さんとはちよいちょい意見も違いますが、この点はまさにこのとおりですよ。大臣もこれは同席されておったと思うのですが、こういうことは一体いかんのですか。検察官自身も求刑に再検討を加えるべきだとはっきりと批判をされておる。同時に、裁判官に対しても、特に暴力団の点について、軽きに失し、国民の素朴な法感情とは背馳しているという点を指摘しているんです。これは私はまさに馬場さんが思い切ってあの地位だと言いにくいことを言っておると思うんですが、法務大臣が水をかけるようなことをおっしゃったんでは困るじゃないですか。
  188. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 私はちっとも困らない。検事総長が申しましたことは、判決が軽い。それは、現在の法律の最高限、最下限——最下限の規定が軽いからそうなる。判決を批判しているのじゃないのです。それから検事みずからが反省することは、これは当然でございます。裁判に対する批評とは違う。
  189. 亀田得治

    亀田得治君 これは検事総長を呼んで聞かなければならぬことになるかと思いますが、これは刑事局長はどうなんです。これは従来の特に暴力団に対する裁判の結果が軽いと批判しているわけですが、刑事局長は専門的に見てどう考えるか。
  190. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 私から申し上げるのもおこがましいのでございますが、大臣の仰せになっている意味は、個々の裁判について量刑が不当に軽いということであれば、一審、二審、三審、あるいは再審の制度まであって、その手続に乗せて検察官がそれを国家機関として争って正しい裁判を求めると、こういう仕組みになっておりますので、法務大臣たる地位にあられる立場としては、個々の事件についての量刑についてかれこれ批判はしたくない、こういう御趣旨であろうと思います。  それからまた、検事総長が、いまお読みになりましたように、量刑について、その他幾つかの検察みずからの姿勢を反省しておられる点、この点を部下の検事正、検事長に訓示をしておられるわけであります。私は、全く同感でございます。検察官は、自分を常に謙虚に、世間の声、正しい声、言うなれば声なき声も聞いて、そして検察の正しいあり方を推進していくということでなければならぬと思っておるのでございまして、この点につきまして、大臣も何らこれに異議を申し立てておるわけではございません。大臣のおっしゃる意味は、先ほど私が申したような御趣旨でお述べになっておるものと解釈をいたしております。
  191. 亀田得治

    亀田得治君 まあ刑事局長はうまくそこを取りつくろうように言っておられますが、一体大臣に聞きますが、従来の暴力団犯罪に対する求刑並びに判決ですね、一つ一つを言うとあなた言いにくいようだから、一般的に言ってどう考えておるんです。
  192. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 求刑についても、検事は常に反省をして、適正なる求刑をすることにつとめております。私もそれをすすめております。判決につきましては、現在の刑事法を改正して適正なる刑の範囲を定めることが必要である、こういう感じを持っております。
  193. 亀田得治

    亀田得治君 検事総長自身が特に暴力団犯罪に対する求刑の再検討を正式に言っておるときに、あなた自身が、まあ検事は適正に従来やっておると思いますと、そんなことは、もう幾ら部下を思うあまりかもしれませんが、それは、ずれておりますよ。それは、もっと事実は事実としてはっきり認めていかぬから問題が起こる。そういう点がいままでにわれわれになぜはっきりせぬのかということをやかましく言うてきておるわけなんです。大臣のような考えでいたら、奮起する検察官も裁判官も出てきませんよ、暴力団問題について。
  194. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 大いに検察官は奮起しております。
  195. 亀田得治

    亀田得治君 奮起しているといったって、従来やっていることをあなた検察官、裁判官についても認めておるわけでしょう。反省のないところに奮起がありますか。世論が批判をしているときに、それによって裁判官、検察官がやっぱり考え直すことは直さなければならぬとはっきり責任者が言うほうがこれは奮起するんじゃないですか。中には、暴力団に対して非常に重い求刑、判決をしているのもあるんですよ。それは最近ですよ、六月十五日の尼崎支部の判決ですね。これは暴力団同士のけんかです。実際に相手を殺した人でない、それを使った人を、共同正犯として無期懲役に持っていっている。裁判長は、こういう事件というものは民主主義の立場から見てけしからぬという立場で、いままでとは非常に違った重い判決を出してきておる。これは世論の批判を受け入れておるのだ、この裁判官は。同じ日に、横浜の地裁でやはり殺人事件が裁判をされております、同じような事件。で、裁判長が、かかる犯罪は民主主義の敵だと、こう言うて、この五人の者に対して懲役八年から十二年のきびしい判決をしたと、こう報道されておる。ところが、この横浜のやつでも、いままでに比較したらきびしいわけなんです。きびしいんです。だから、その以前はどうなっておったかということは、皆さんが出されたこのいろんな資料を見ましても、何かこう暴力団同士の撃ち合い、殺し合いであれば大目に見ていくと、そういう点がありありと求刑なり裁判の結果にあらわれておるんですよ。そういう点は否定できないでしょう。無期と三、四年、えらい違いじゃないですか、これは。こんなことを裁判官、法をつかさどる人がいままで平気でやっとるんですからね。それは、一々の検察の仕事なり裁判所の仕事というものを一般の国民大衆は知らぬから黙ってるものの、これを何かの一覧表てなぐあいにして並べられたら、こんなもの黙っておりませんよ。——最高裁いま出てきたようでありますが、一体どう考えているんです、こういう判決のアンバランスについて。
  196. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 先ほど、検事は適正にやっておりますと申し上げたのは、適正にやるべく非常に努力しているんです。結果として検事の求刑と裁判の判決が違うことはずいぶんございます。また、控訴いたしましても違う場合もございます。だから、やったことが全然間違いがないとは申しません。また、客観的に批評しまして裁判のほうが正しくて検事の求刑が正しくないということを言うのでもございません。適正ならんとして常に努力し、常に反省をいたしている。いままでは平気で間違ったことをやっているというようなことでない、こういうことを申し上げた。裁判につきましては、最高裁がおいでになったら御答弁ございましょうが、傷害致死が軽かったというお話でございます。傷害致死、その間にどういう因果関係があったか、どういう事情があったか、それをすっかり知りませんと、単純な私の個人的な批評もできません。裁判官は平気だとおっしゃるが、全然そういうことに無関心でいわゆる平気でやっておられるとは思わない。まじめに努力してやっておられる。結果は、これは御批判はございましょう。私はそれを申し上げている。
  197. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) 判決の結果については、いろいろまちまちに差異があるように一見見えるのでございますけれども、しかし、事件によっては非常に重い刑を言い渡した判決もございますし、また、事件によっては一見非常に軽いというように思われる判決もあるわけでございますが、いろいろその事件事件に合わせました性格の量刑を言い渡しておりますので、一がいにこうと申すことははなはだむずかしいのでございますけれども、しかし、いま亀田委員からお話のありましたように、国民が一つの罪についてどういうように考えているかというような量刑の批判というものは、やはり裁判の上にもおのずからあらわれてくると、こういうふうに思っているわけでございます。
  198. 亀田得治

    亀田得治君 ともかく、自分のやっている仕事を合理化したい、正当化したい、そういう気持ちはわかりますよ。それはだれでも自分なりにまじめにやっているつもりなんでしょうから。しかし、これだけ世間の批判が出ておりましたら、もっと謙虚に反省をしてみる必要がありますよ。私はそういう点でいま刑事局長が来るまでに馬場検事総長の言われた点をここで朗読して申し上げたわけですが、検事総長自身か暴力犯罪に対する求刑の再検討ということをはっきりおっしゃっているわけなんです。これは自己批判なんです。ところが、裁判所のこのゆる過ぎる、国民の素朴な法感情に矛盾するということを正式の会合でおっしゃっているわけなんです。法務大臣はなかなかいろいろな理屈を言われて、裁判を何か批判してはいかぬような感じで、はっきり言われないわけですけれどもね。だから、最高裁当局がこの問題をどう考えているのか、これはごうごうたる非難があるわけなんですよ。その非難のあらわれの一つが、六月十五日の尼崎支部の判決なりそういうものになってやはりあらわれておるんじゃないか。私は、おそくてもそういうふうに裁判官の考え方暴力団に対してしゃんとしてくればいいと思うんです、おそくても。そうすれば、当然それまでの扱い方というものはやはりゆるかったわけでして、それはやはり多少まずかったならばまずかったという点をはっきりすべきじゃないか、はっきり。裁判だから批判してならぬということはないでしょう。裁判をやっているときに、そこへのこのこ出かけていっていろいろな干渉をやる、これは絶対許されぬ。出た裁判について世間の常識なりそういう立場から見て批判することは、これは自由でしょう。また、それがなければ、裁判官というものはいわゆる独善になってしまって退化しますよ。そういう点、刑事局長、どういうふうに考えているんですか。
  199. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) 私どもは、裁判につきまして、事実が有罪であるか無罪であるか、白か黒かというようなことについて、具体的な事件についていろいろな批判を受けるということは、これはやはり裁判の独立というような面から考えまして、絶対に承知いたすことはできないのでございますけれども、しかし、いま亀田委員が仰せられましたように、一つの罪について量刑が非常に軽いではないか、これでは国民の信をつなぐことができないじゃないか、あるいは審理がおそ過ぎるじゃないか、もう少し審理を早くするような点を考えたらどうだ、そういうような面につきましての国民の御批判というものは、これはもちろん大いに裁判官としては考え、なぜそういう批判が起きるかという点について反省もしなければならない、こういうように考えているわけでございます。
  200. 日高広為

    ○日高広為君 委員長、議事進行について。  本案については、質疑を打ち切り、討論を省略し、直ちに採決することの動議を提出いたします。   〔「賛成賛成」「委員長不信任案」「休憩休憩」と呼ぶ者あり、その他発言する者多く、議場騒然〕
  201. 中山福藏

    委員長中山福藏君) ……いたしました。   (「賛成賛成」「委員長不信任案」と呼ぶ者あり、その他発言する者多く、議場騒然)……  本案……いたしました。……手続は、委員長に御一任を願います。  本日は、これをもって散会いたします。    午後六時五分散会    ————————