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1964-06-11 第46回国会 参議院 法務委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月十一日(木曜日)    午後一時四十七分開会   —————————————   委員異動  六月十一日   辞任      補欠選任    二木 謙吾君  鈴木 万平君    久保 勘一君  坪山 徳弥君   —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     中山 福藏君    理事            後藤 義隆君            迫水 久常君            稲葉 誠一君            和泉  覚君    委員            植木 光教君            栗原 祐幸君            鈴木 一司君            鈴木 万平君            田中 啓一君            坪山 徳弥君            日高 広為君            丸茂 重貞君            亀田 得治君            小宮市太郎君            中村 順造君            米田  勲君            岩間 正男君   国務大臣    法 務 大 臣 賀屋 興宣君    国 務 大 臣 赤澤 正道君   政府委員    警察庁長官   江口 俊男君    警察庁刑事局長 日原 正雄君    法務省刑事局長 竹内 壽平君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○暴力行為等処罰に関する法律等の一  部を改正する法律案内閣提出、衆  議院送付)   —————————————
  2. 中山福藏

    委員長中山福藏君) これより法務委員会を開会いたします。  この際、委員異動について報告いたします。  本日、二木謙吾君、久保勘一君が辞任され、その補欠として鈴木万平君、坪山徳弥君が選任されました。   —————————————
  3. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 本日は、暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。稲葉君。
  4. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 暴力行為処罰法改正案に対して、きょうは少し中身に入った質問をしたいと思います。  その前に、きょうは法務大臣に主としてお伺いをいたしますが、日本では非常に暴力団が多い。近年特にふえているわけですが、どういうふうな理由でそういう暴力団日本に多いのか、いろいろな角度から問題があると思いますが、法務大臣のお考えになっておる理由というのは何でしょうか。それをひとつお聞かせ願いたい、こう思うのです。
  5. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 的確に、こういう理由でふえておりますということをはっきり申し上げるほどの自信はないのでありますが、いろいろの想像推測等が入る次第でありますが、大体戦後法軽視という風が一般に強くなっております。法律を尊重しなければならぬという考え方が薄くなっている。それから、ときには、それを軽視することをむしろ誇り——と言ってはおかしいかもしれませんが、何かこうそのほうが勇ましいんだというような感じもあるようにわれわれも感ずることがございます。それからやっぱり戦争のあとというものは殺伐になりますし、それから映画などでやはりチャンバラものとか西部劇とか相当ふえております。こういうことはやっぱり気持ちの上に非常に関係が多いんじゃないか。ことに若い者などは、相当にそこに痛快味、男らしさとかいろいろなものを感ずる要素がある。殺傷とか、刀剣類を用いてああいうことをすることが、悪いというよりも、幾らかそのほうが精神上愉快、満足を感ずるような気風があるんじゃないか。一般に、法秩序と申しませんでも、社会全体として一つのしつけとか道義とかいうものの評価が少なくなっております。そんなようなことがどうもこういうことが起こる背景になっておる。それからそれにはやはり金が伴いまして、麻薬で金をもうけるというようなこととか、脅迫か恐喝かちょっと私わかりかねると思いますが、そういうようなことで金を得る。金を得て享楽的に遊びたい。また、そういうプロレスに一つ興味を持ち、悪く思わない、こういうような気分もずいぶんふえているんじゃないか。それからこれは私がどうも見当違いかもしれませんが、やっぱり取り締まり警察なんというものは戦前よりはおそろしくない、軽んずるというような点もあるんじゃないか。  こういうふうないろいろな現象が総合して起りますと、またそこでそういう場合に暴力団——一人で悪いことをしているよりも、やっぱり仲間があるほうがいいし、また、相当な組織になっておれば、肩幅も広い、ほかの者と衝突しても負けない、それで入りたいというふうな要求も起こり、また、そういう風潮ですから、暴力団を組織するほうもだんだんこしらえているんじゃないか。こんなように一応私は推測いたしております。
  6. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 閣議で、暴力団の何か対策要綱をつくりましたね。そのときに、暴力団が一体なぜ日本にこう多いんだろうか、発生するんだろうか、こういうことについて一種の統一的な見解というか、そういうようなものはやらなったわけですか。いま大臣の言われたのは、大臣個人見解ですか、法務省としての見解なんでしょうか。
  7. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) いまの三十六年二月でございましたかの対策要綱のときには、私は内閣におりませんで、そのときにどういうことで話があったか別に知りません。その後、どうして暴力団がふえるのだろうかというような問題は、私が就任しましてからは、特にそういう題目で総合的に話し合ったことはございません、と承知しております。
  8. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、いまあなたの言われているような理由だとして、これは非常に私としては分析などが不足だと思いますが、いずれにしても、その理由だとして、それならどうしたらいいんだ、どうしたらこういうふうなものをなくせるんだ、どういうふうにあなたとしてはお考えなんでしょうか。
  9. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) それは、普通に世間に言われますように、世間一般社会秩序を維持する法的また道義的の水準が上がり、それにもとることは恥ずかしいんだというような気持ち一般にずっと高くなるといいますか、広くなることがやはり根本だろうと思います。しかしながら、ことに年の少い者にそういう興味を与えるようないわゆるマスコミと申しますか、マスコミ範囲外かもしれませんが、テレビ、映画、いわゆる不良文化財と申しますか、そういうものが自粛されて悪い影響を及ぼさないような状況も必要だと思います。  それから、これも率直に申しまして、学校教育などの児童生徒精神に及ぼす権威がだいぶ落ちておるようでございます。これらもやはり高まって、しかも学校教育がそういう方面に行き届くようにするということは大事じゃないかと思います。  それから家庭もそうでございまして、戦後はどうでも子供は親の言うことを聞かない。親の言うことの権威を認めない。親もそういうような状態で、みずから権威を失墜してやむを得ぬというようになる。むやみに昔のように子供自分のものだというふうに親がいばるのも、どうもよくありません。やはり、親として、年長者として、社会経験の深い、しかも子供を愛する者としての考え方、しかももっとそういうものを若い者が尊敬し、親のほうでもそれだけのいい意味のプライドを持っていくというような点も非常に必要ではないかと思います。  そのほか、青少年問題で非常に言われるのでございますが、ただ心がけが悪いのだとかわがままだとかというふうな——みんな精神状態はほかのいわゆる健全な状態にある人と同じようなものだという一種の考え方相当にわれわれも古くから考えておる面がございましたが、これはやはり心理学的と申しますか、病理学的と申しますか、精神状態相当薄弱であるとか、変質であるとか、こういう面が非常に関係すると思います。異常と申しますか、そういう面から、やはりもっと犯罪の問題にいたしましても、病理学的といいますか、ちょっとしろうとで適切なことばはわかりませんが、もっと科学的にそういう方面に対する知識がふえ、それに基づく取り扱いのしかた、法務省で申しますと、すぐ精神鑑別所でございますか、少年鑑別所、そういうふうなことが考えられるのでございますが、こういう面も非常に進んでこなくちゃならんのじゃないか。むろん、それには、先進国民であるおとな、社会的な地位の高い人の行為というものが非常に影響すると思います。  そういうふうに基盤的に一般社会方面がよくなりますとともに、犯罪の犯される、非行があるという者につきましては、その施設の中に収容しまして、少年院にしましても、また刑務所にいたしましても、扱い方、つまりこれを改善していく。一方には、経済上、生活問題もございます。それから職業教育であるとか、また、一方にはその生活をため直すというふうな方面が非常にいかなくちゃならぬ。また、刑罰の量定も相当なところにいかなくちゃならぬ。こういうふうな面がまた重要である。  そのほか、御指摘がありました先ほどの閣議決定の各項目などは、いずれも必要な大事なことじゃないか、こういうふうに考えております。
  10. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 世界じゅうでどういうふうな国が暴力団が多いんでしょうか。その点はどういうふうに大臣としてはお考えでしょうか。どことどこと言ってもいいですけれどもね。
  11. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 外国のことはよく存じませんが、聞きますところによると、日本のような形の暴力団というのはそんなにない。むしろ形が非常に違うんじゃないか。われわれは若いときからシカゴのギャングということを聞いておりますが、これは生活常識が違い、武器なども違う、規模も違うかもしれませんが、どうも同じものでないというように聞いていますが、これは一つ日本には沿革的に昔からの博徒でありますとか、それから——博徒が多いでしょうが、ほめて言えば清水次郎長なんかみんな伝説的にはいいほうが言われておる。そのほかああいうのがたくさんあります。そういうのがやはり一つの脈を引いてきておる。それで日本流の形態のものがほかの国と相違して日本には多いんじゃないかというふうな考え方もできるんじゃないかと思うのであります。
  12. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 日本のいろいろな一つの特徴的なことをお聞きしているというのじゃなくて、ギャングだって暴力団なんでしょう。どうですか。ギャング暴力団でないというふうなことなんですか、大臣は。
  13. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) いや、別にそうでございません。
  14. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ですから、世界の国でどういう国に一体ギャングにしろ暴力団にしろ多いんですかね。そういう点は、当然法務省としても研究してわかっていることじゃないですか。どこの国におもに多いんですか。
  15. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 大体、暴力団というものが、そうはっきりした観念じゃないのでございます。
  16. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 まだはっきりしませんな。暴力団というのははっきりした…
  17. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 観念ではないと思います。
  18. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 はっきりした観念ではないと。それはもちろん各国によって違うと思いますけれどもね。日本とかアメリカ中心にこういうふうな暴力団ギャングか知らぬけれども、そういうのが多いんじゃないですか。それははっきりしているんじゃないですか。
  19. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) アメリカギャングが多いということは聞いております。
  20. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だから、こういうふうなものは、日本とかアメリカとかフィリピンとかいろいろあるでしょうけれども、そういうような国に多いんじゃないですか。いわゆる資本主義国に非常に多いんじゃないですか。そういう点についてあなたのほうで研究されたことはないわけですか。
  21. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) それは資本主義国に多いというが、いまの私どもが知っておる共産主義国の行き方では、片っ端からつぶしていますから、なかなかできないんじゃないかと思うのです。
  22. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あなたの言われることがよくわかりませんが、共産主義国は何だというんですか。ギャングみたいなものがあると、みんなつぶしてしまうんですか。そういう意味ですか。
  23. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 私が想像いたしまするのに、日本のような人権とかいろいろなことを十分考慮しないで、これが悪い団体だと思えば、すぐ警察力で解散なりつぶすことができるんじゃないか、だから発生する余地がないんじゃないかというふうな想像をしております。
  24. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、あれですか、中国にしろ、ソ連にしろ、あるいはその他の国にしろ、そういうようなところでは、そういうふうな暴力団やなんかできる余地はあるんだ、あるんだけれども、どんどんつぶしてしまうから起きていないんだ、こういうあなたのお考えですか。それはあなただけのお考えであるのか、あるいは池田内閣全体がそういうふうに考えておるわけですか、みんな。
  25. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 余地というお話ですが、余地という意味はどういう意味ですか。余地があるかないかというお話ですが、それは何の余地だか私にはよくわからない。
  26. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私の質問しておりますことは、いまの暴力団だとかギャングだとかいうことは資本主義国に非常に多いんじゃないか、社会主義国にはこういうふうなものはないんじゃないかと考えるんだけれども、一体こういう点についてあなたのほうでどういうふうにお考えになっておるかと、こういうふうに聞いておるわけですよ。もう一ぺん話をもとへ戻しますけれども、そこら辺から答えていただきたいですな。
  27. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 資本主義国よりも社会主義国のほうが道義的観念が発達してギャングのような悪いことを考え余地がないんだとは思わないんです。端的にきびしい取り締まりができるから起こらぬだろうと想像しております。
  28. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、あなたは、日本にこういう暴力団なり暴力的な風潮が非常に強くなったのは戦後だ、特に戦後多い、こういうふうに言われるわけですか。
  29. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 戦前より強くなったというので、戦前は強くない、別にそう申し上げたわけではない。
  30. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 戦後のほうが戦前よりも強いんだと、多くなっているんだということは法務大臣は認めるわけですね。そういうふうな意味にお聞きしていいわけですか。
  31. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) そうでございます。
  32. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、それはいまあなたの言われたいろいろな理由があげられましたけれども日本経済成長というものが、高度経済成長というふうな形でいろいろ経済成長してきた。消費面はいろいろ拡大をしてくる。享楽面もふえてくる。こういうような、経済成長が行き過ぎたというか、いびつになってきたとか、そういうふうなことも原因となってこういうような暴力的な犯罪なり何なりがふえてきたんだ、こういうふうなことがもう一つ原因だと、こう承ってよろしいでしょうか。
  33. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) そういうお考えには賛成できない、むしろ反対です。
  34. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 反対だと言われると、結局どういうことなんですか。暴力的犯罪がふえてきたことは経済成長とかなんとかいうことには実際は関係ないんだ、一般国民法律を軽視するようになってきたからだと、こういうことですか、基本は。
  35. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 経済成長関係があるというお考えに、私はそうではないと思います。
  36. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だから、結論的に言えば、戦後はあなたの言われるところの法律軽視とかなんとかということが中心なんだ、そういう風潮がふえてきたことが中心なんだ、こういうふうに承ってよろしいんですか。
  37. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 前に申し上げたとおりに御解釈願います。
  38. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あなたの言われたのは、いろいろなことを言われましたけれども、最初に一番大きな要素として言われたと思われるのは、戦後法律軽視風潮が非常に強くなったんだ、むしろこういうことをやること自身誇りに思うようになってきたんだ、こういうようなことを言われたわけですがね。そうすると、あなたとしては、いまあなたの全体のお話を聞いておると、やれ家庭のしつけがどうであるとか、教育権威がどうであるとか、こういうふうなことになってくると、あなた自身考え方の中には、暴力団ということに限って言えば、戦前のような状態のほうがそういう面が起きる余地が少ないんだと、こういうふうに見ていいんだと、こういうふうに聞こえるんですがね。
  39. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 違います。一口に言って、戦前状態のすべてがいいと言っているのではない。申し上げたような点について戦後はよくない点がある、こういうのでございます。
  40. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あなたのいろいろお考えを聞いていますと、大体のことはわかるんですよ。大体のことはわかるというのは、私ども考え方と非常に世代的な隔たりがあるというような意味でもわかるんですが、そこで、それじゃこの問題は押し問答しておっても始まらないから、問題を変えますと、このごろ暴力団がいわゆる政治結社という形をとっているということ、この点については大臣はどの程度御存じなんでしょうか。失礼な言い方かもしれませんけれども政治結社をとっているものが多いと言われているんですが、どの程度みな政治結社をとっているのか、この点はどうでしょうか。
  41. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) どのくらい政治結社として届け出ておるか、今後どういうふうになるのか、私はその数字はよく存じません。
  42. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 数字を聞いているわけではなくて、暴力団政治結社という形をとっているものがあるということは御存じですか。
  43. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) あるらしいということ——その暴力団ということばは、暴力団暴力団と言いますが、先走るようですが、なかなか法律の上で暴力団の規定がやりたいと思っても、非常にできにくいのです。それぐらいですから、何が暴力団かというと、私は前にも申したのでありますが、ようなことでありまして、だから、暴力団がこうとはっきり言えませんが、暴力団と思われるような世間常識と申しますか感じで、そういうものが政治結社として届け出ているものがだんだんふえている、こういうことを聞いておるのでございます。
  44. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 政治結社として届け出があるということを聞いておられる。どういうような形の政治結社というふうなものをとっておるのか、あなたとしては別にそれについては関心を持たないわけですか。これは暴力団だと断定しなくても、暴力団らしいものがなぜ政治結社のような形をまずとってきたのだろうか、こういう点について考えられることはないわけですか。
  45. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 考えております。
  46. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 じゃ、なぜ暴力団——暴力団らしきものが政治結社というような形をとるようになってきたのか、あなたが考えておられるというならば、どういうふうに考えておられるのでしょうか。それをお聞かせ願いたいと思います。
  47. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 戦後は政治的意識というものが非常に一般的に進みまして、暴力団というような人も政治上のことをやはりいろいろ考える。その考え方がいいか悪いかは批判は別といたしまして、考えるようになった。それで、一つ団体の力で行こうというような考えを出して政治結社にしていこう、こういうことはあると思います。  それから、これから先はちょっと私は速記をお許し願いたいのですけれども……。
  48. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 速記をやめて。   〔速記中止
  49. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 速記を起こして。
  50. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あなたとしては、いま言った暴力団なり暴力団らしきものが政治結社として非常に進出してきておる、その政治結社としての暴力団のいろいろな綱領があるということについて関心を持たれたことがありますか。別に関心は持たないわけですか。
  51. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 御質問趣旨はわかりませんが、それは非常に注意しなければならぬことだ、こういうことは感じております。いま具体的にどういう行動をしたからどういうふうに考えるかというと、ちょっと思いつきません。
  52. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 行動ではなくて、綱領です。政治結社綱領があるんですね。自分は何々をするとか、いろいろあるでしょう、二つか三つ。もちろん自民党にもあるし、社会党にもあるわけです。こういうふうなものの綱領というのが一体どういうものであるかということについて、関心を持たれたことがございますか。主義主張と言ってもいいかもわかりませんね。
  53. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 実は、これも少し言い方があれですが、会社の定款を見ましても、ああいうものの綱領を見ましても、いろいろよさそうなことが書いてあります。それじゃ、それをみなやっているかというと、どこでもそうじゃないので、その中の一つ二つをやっているような場合が多いので、正直に申しまして、一々その綱領とかなんとか、あまり気にかけておりませんです。ただ、ほんとに政治活動するのか、これが暴力団といわれるのだから、その政治活動が純粋の思想や言論や文書以外に逸脱して不当な影響を与えることがありはしないか、そういう意味関心を持っております。
  54. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あなた自身は、そういう政治結社はいろいろあるそうですが、その政治結社綱領というものを読まれたことはあるわけですか。
  55. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 若干ございます。
  56. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは、ことしの四月四日の読売新聞に出ていることなんですが、ある政治結社、これはK会と書いてありますが、ここの綱領があるんです。「世界の平和、国家の繁栄に寄与し、民主主義国家国民としての義務を〃責任ある行動をもって〃遂行する。」、これが一です。二が、「自由民主主義を擁護し、これを阻止するものがあれば呵責なく粉砕し、徹底的に戦うものである。」、こういうふうにいろいろ書いてあるんですが、だから、いまいわゆる暴力団政治結社というふうなものをとっている、それは、何といいますか、政治的には右翼主張をしているものが多いんだということは、これは事実として認めざるを得ないのじゃないですか。
  57. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) どういうものがどうだとか、はっきりわかりませんが、数からいったら右翼のほうが多いのじゃないかと思います。
  58. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そういうふうな暴力団は、政治結社として、たとえば日韓会談反対する者に対抗するとか、安保闘争をやる者に対して反対をするとか、こういうふうな形での動きを現実にいままでしてきたのじゃないですか。そういうことについて大臣としてはお聞きになったことはないんですか。
  59. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) いや、別に報告を受けておりません。
  60. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 報告を受けてない。そうですかな。たとえば刑事局から、あるいは公安調査庁あたりから、暴力団右翼という形をとって政治結社の形をとっていろいろ行動を起こしているということについて、報告を受けたことはございませんか。
  61. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 具体的にどういう行動をしてどうだという報告を受けたことはないです。大体そういう傾向があるという報告は受けております。
  62. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 大体そういう傾向があるとして報告を受けていると。そうすると、政治結社という形をとった暴力団なり暴力団らしきものが現実にはどういう行動をとっているのだというふうにあなたは報告を受けていないわけですか。もう少し具体的に、その報告をどこからどういうふうに受けているのか、ひとつお話しを願いたいんです。
  63. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) どうも御質問趣旨がよくわかりません。安保反対、別にとがむべきことはない。ただ、それをやるのに、どういう行動で、違法なことをやるかどうかという問題です。いま、違法なことをやったということを私は報告を受けていない。
  64. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 違法なことをやったという報告を受けていないですか。そうすると、違法なことをやったという報告は受けていないけれども、そういう暴力団らしきものなり何なりが右翼関係という形で政治的に動いているのが大半であるのだということの報告は受けている、こうは承ってよろしいんですか。
  65. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 違います。大半であるということは、そういう報告は受けておりません。
  66. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ことしの二月に公安調査庁から出た取扱注意の「右翼関係団体名簿」というものがあるわけです。この中にも、第一が旧右翼系列の団体、第二は仁侠系列の団体として、その仁侠系列団体の中にいわゆる暴力団と称するもの、そういうものが右翼のような政治結社の形をとっているということが列挙してあるわけですがね。そういうふうなことですから、しかも、きのうですか、公安調査局長会議かなんかやって、大臣はそういうふうな意味についてというか、それに近いことを訓示をしているのじゃないですか。
  67. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 私の訓示は、右翼団が、暴力団といいますか、右翼的な団体が、政治に不満を持ったり、左翼の団体が破壊活動をやる計画がある、そういうことに刺激されて直接違法の行動をする心配がある、こういうことを申したわけであります。
  68. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、あれですか、暴力団なり何なりが直接行動政治的に起こす心配がある、こういう意味ですか。ちょっと前のほうがはっきりしなかったんですが。
  69. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 左翼団体が破壊活動をやる計画を持って、相当にこれが進展をするということを右翼のほうの人が心配している。それからまた、現実日本政治にいろいろ不満を持っている。そういうことから、違法な直接行動に出るというおそれがある、こういう報告を受けております。それについて十分に公安調査庁として注意するように、こういうことを申したのであります。
  70. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、いまの左翼がそういう行動に出るとか、そういうようなことに関連して、政治的な不満を持って直接行動に出るようなことのおそれがあるというのは、右翼団体がそういうおそれがあるというんですか。その中に暴力団関係も一ある、含まれていると、こういうふうなことなんですか。
  71. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) どうも御質問趣旨がわかりませんが、左翼がそういうことをやるということに憤慨してと申しますか、憂慮しまして、その結果いわゆる右翼団体というようなものが直接行動に出る憂いがある。どんな直接行動かわかりませんが、想像すれば、あるいは特定の人の家に放火しますとか、殺傷傷害事件を起こすとか、そういう憂いがある。こういう考え方であります。
  72. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その右翼団体という中には、暴力団政治結社の色彩を持っているものとか届け出があるものとか、こういうふうなものも含まれているというのか、あるいは含まれないのか、あるいはそこまではわからないというのか、そこはどうなんですか。
  73. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 含まれているのだと思います。全部の暴力団がそれに含まれてはおりませんが、暴力団と思われる団体がその中に相当あるのじゃないか、こういうふうに感じております。
  74. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それに対する対策は、どういうふうにやっておられるわけですか。
  75. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 事前になるべく危険な行為があれば察知いたします。また、破防法によりまして規制をすべきところには規制をし、察知できた行動に対してはそれぞれ手当てをしていく、こういうことでございます。
  76. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いままで、労働争議などの場合に、暴力団関係をしたということ——暴力団が入ってきてすく暴行をやったとかなんとかいう意味ではなくて、暴力団がそれに関与したという例ですね、これについてはどの程度大臣はお聞きでしょうか。
  77. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) そのお話の関与したという意味がよくわかりませんが、関与したという話があるという話は聞いております。それで、なお申し上げますが、それについて私が就任しましてから、別に報告は受けておりません。
  78. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、これはそれじゃ刑事局長のほうが詳しいかもわかりませんが、労働争議のときに暴力団がそれに関与というのは、何も入ってきて組合員なり何なりに暴行とか何とかをしたという意味ではなくて、それに会社側から頼まれたか頼まれないかは別として、とにかくその中に入ってきておるというか、関与したというか、そうしたことについて、どの程度あるというふうにあなたのほうでは報告を受けているわけですか。あるいは、報告を受けなくても、キャッチしているわけですか。
  79. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 私のほうでは、事件が発生をいたしませんと、その事件に、そのケースに、どれだけそういうものが関与しておったかということはわからないのでございますが、一般的に、ある争儀のあったそれにどの程度暴力団が介入しておったとか、あるいは関与しておったというふうな情報は、検察庁のルートからは得られないわけでございますが、ただ、過去の事件で、たとえば三井三池争議におきましては、私どものほうで調査したところによりますと、これはあとで調べた結果わかったのでございますが、いわゆる暴力団に所属しておる者というのが七十名事件を受理しておりまして、それぞれ公判請求等の処分を受けておるのでございます。
  80. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、近来の労働争議その他のときで暴力団が関与してそれで処罰を受けたというのは、三池争議だけですか、ほかはないんですか。
  81. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) ほかはないとは申し上げておりませんので、たとえばと言っていま三井三池争議のお話をしたわけですが、ほかにもそういうことで処分をした例はかなりたくさんあると思います。
  82. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 かなりたくさんあるとすれば、ずっと、どの事件でどういう形で暴力団がそれに関与し、犯罪を犯したのか、その程度の調べは当然ついているわけだと、こう思うんですよ。その一覧表みたいのものをひとつ説明を願いたいわけです。
  83. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 御説明を申し上げます。  いま手元にあります資料は、三十五年、三十六年、三十七年の三カ年でございますが、まず三十七年の新しいほうから申し上げてみたいと思います。なお、この申し上げます数字は、法務省刑事局に全国検察庁から報告のありました事件から拾った数字でございまして、御承知のように、全国で発生いたしましたすべての事件が報告されてはおらないのでございまして、まあ特に重大な事件は報告を受けておりますし、検察庁がそう思わなくても、報告しておいたほうがいいと考えたものは報告してくると、こういう報告規程になっておりますので、そういう前提のもとに集められたものでございますから、全部をカバーはしておりませんが、相当なものは入っておると、かように考えていいと思います。  まず、右翼関係でございますが、昭和三十七年におきましては、これは労働争議だけと、こう限定をいたしますと、個別に拾っていかないとわからないのでございますが、十二件の犯罪報告されておりまして、犯罪被疑者として受理しましたのが三十一名でございます。それから三十六年におきましては、七件報告されておりまして、受理人員が二十九名となっておるわけです。昭和三十五年におきましては、三件報告がございまして、三人の受理をいたしております。
  84. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 労働争議などの場合に暴力団が入ってきて事件を起こしたわけですね。そうすると、それはどういうふうな過程で入ってきているのか。たとえば、会社側から頼まれて入ってきているとか、自分のほうで好きこのんで入ってきているとか、いろいろあると思いますが、また、その給料とか日当とかはどういうふうな形で払われておるのか、そういうことについては、あなたのほうでは調べたことはないんですか。
  85. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 報告のありました件につきましては調べておりますが、ケースごとによってその入り方もそれからいろいろ態様があるわけでございまして、調べたものはございます。
  86. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちょっと委員長、関連。
  87. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 亀田君。
  88. 亀田得治

    ○亀田得治君 三十五年が三件で三人と言われましたが、三池は三十五年のはずですね、これだけでも七十何名あるとおっしゃったわけですが、その統計というのは何かいいかげんなものと違いますか、それが一つ。  それと、もう一つは、三十八年ですね、こういうことは、暴力問題を非常に注視しておられるのであれば、ちゃんと握っておってもらわないといかんわけですが、それは全然数字的なものは集計されておらぬのでしょうか。
  89. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 統計の数字のほうがいいかげんじゃなくて、私がちょっと申し上げるのが悪かったのでございますが、三件、三人と申しましたのは、右翼のほうの関係で、暗殺、テロでございますが、これに類する事件を犯したケースが三件、三人でございまして、安保闘争関係におきましては十一件、八十二名、その他のものといたしまして、対左翼の関係の問題として分類されておりますのが十二件、三十六人、それから資金関係として報告されておりますのが一件、一人、その他のケースが七件、十六人でございます。  それから昭和三十八年につきましては、いま握りつつあるわけなんで、これはたいてい六月を基準にいたしまして一年分をとりまとめたものでございますが、三十八年につきましては、もう近くできる予定でございますけれども、まだ集計に至っておりません。
  90. 亀田得治

    ○亀田得治君 はなはだ法務省の態度が暴力問題に対して消極的だと思うんですよ。そんなあなた、このテンポの早い時期に六カ月ごとでなければわからぬというようなあり方ですね、それはおかしいと思うんですよ。重要な暴力団の事件などは、毎月でも法務省がちゃんとキャッチしておく、必要な場合には法務大臣もそれを聞いてそうしてちゃんと指示も与えるというくらいの積極性がなきゃ、ともかく半年ごとに下から上がってくる数字だけ見ておられる、そういうのじゃ、これははなはだ心もとないわけですがね。法務大臣、そういう体制でいいんですか。
  91. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) お話と少し違うと思うんです。おそらく刑事局長の申し上げたのは、何件とかという集計が上がってくるのは、いま、前年度は六月と申し上げたんで、事件事件の問題につきましては報告が参るのでございます。現に、松山の事件のときも、さっそく現地の検察庁はむろん動きますが、本省からも検事を特派いたしまして、早く——また早くないとわからぬ。あとからになるとわからないこともあるかとも思います。早く出したような次第で、いまのは統計的数字の上がりを刑事局長は申し上げたのだと思います。
  92. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 大臣の仰せのとおりでございまして、ここに資料として日報として毎日特殊な事件は私のほうであらためて書きまして上申を差し上げておるわけでございまして、事件そのものはできるだけ早い機会に掌握するようにつとめております。
  93. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまの報告ですね、労働争議その他の場合に、暴力団が会社側についたというか何というか、その場合に、組合員やなんかに対して被害を加えたというようなことで事件になってきた。これは、報告事件ではないというんですか、報告をしてもしなくてもいい事件だというんですか。これは、私も報告事件の内容ということは大体知っておりますけれども、必ず報告しなくてはならぬ事件もあるし、そうでなくて、してもしなくてもいい事件もあるでしょう。どっちなんですか。
  94. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 報告規程によりますと、特異重大な事件は報告すべきことになっております。
  95. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 特異重大な事件というのは抽象的な話で、逆に労働争議などの場合に組合員が暴力行為処罰法かなんかで逮捕されたりなんかすれば、それは必ず報告してくるわけです。公安部があるんだから、報告してくるんだけれども、まあそのくらいにしますか、それはそうでしょう。
  96. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) そういうしぼりがかかっておりますが、先ほども申し上げましたように、ほとんど大部分の事件は報告されてきておると思います。
  97. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 しぼりがかかっておるとかいうふうにことばのあやではなくて、念を押しますと、労働争議その他の場合に組合員のほうがかりに暴力行為処罰法かなんかで逮捕されたりなんかすれば、これは必ず報告しなければならぬでしょう。そのために各地検の中に公安部があるわけでしょう。必ずそのほうは報告するんでしょう。
  98. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) いまお尋ねの部分も特異重大なというやはりしぼりがかかっておるのでございまして、そのほかに、先ほど説明をいたしましたように、特異重大と客観的に見ない場合であっても、検事正の考慮でこれは報告しておいたほうがいいと判断されたものは報告をされる、こういうことでございますので、大部分の事件は労働公安事件は報告があるのでございますが、中には抜けておるものもないとは言えない。そういう意味で、正確を期して正しいお答えを申し上げた次第でございます。
  99. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だから、労働公安事件というのは、組合がその事件を起こしたということで逮捕や勾留された場合は、労働公安事件としてこれは必ず報告されるんだと、ところが、逆に暴力団が組合員に対してやったような場合は、必ずしもそういうふうな労働公安事件という形にならないで報告されない場合もあるんだと、こういうふうに実際はなっているんじゃないでしょうか。
  100. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) それはそうではございませんで、同じ事件に関与した者は、それが第一組合員であろうと第二組合員であろうと暴力団であろうと、それに関与した者は、一つの労働事件でございますので、先ほど申しましたように、件数は少ないのでございますが人数は多くなっている、こういうことで、それはひとしくオール・オア・ナッシングで、報告があるときは一括して報告されますし、ないときは両方ともない、こういうことでございます。
  101. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、そういう報告があれば、その暴力団がどういうような形でその労働争議に入ってきたのか、関与するに至ったのかということは、これはあなたのほうでわかるわけじゃないですか。会社側から頼まれた場合もあるし、好きこのんでやった場合もあるんでしょう。いろいろありますわね。それはどういうふうにわかっておるわけですか。
  102. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) それは先ほど申しましたようにわかっておりますが、個々の事件ごとによって入り方も違っておりますので、事件ごとに一つずつ見ていきませんと、こういうふうに入りました、こういうふうに入りましたというお答えがしにくいと、先ほどそういうようなお答えをしたつもりでございますが……。
  103. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは個々の事件にそれぞれ特徴があるのはあたりまえの話ですけれども、大体会社側から頼まれて入ってきたのか、自分で好きこのんで入ってきたのか、大きく分ければこの二つじゃないですか。大体のことがその傾向なり何なりが当然わかっていなくちゃならないんじゃないですか。また、そういうふうなことは全く法務省として関係がないのだ、関心がないのだ、こういうふうなことですか、それは。
  104. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) さっきから私のほうはわかっておるとお答え申し上げておるわけであります。
  105. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 わかっておったら、出してください。わかっておるならば、じゃどういうふうになっているのか。会社側から頼まれて暴力団が入ってきて事件を起こしている場合が多いのか、あるいはそうじゃない場合が多いのか、そこら辺を明らかにしてください。わかっておる事態というのがこっちにはわからない。あなたのほうにわかったって、こっちにはわからないんだから、わかるようにちゃんとしてください。大事なところなんだから、この法案の審議に。
  106. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 一つ一つの事件についてお答えをしないと十分ではございませんが、ここで大ざっぱに申し上げますと、いま御指摘のように会社側のほうから頼まれて入ってきた場合が私は多いと思うのです。それからまた、中には、押し売りみたいな形で、好きこのんでという先ほどお話がございましたが、そういう形の入り方も、私はそういう事件も記憶しておりますが、大部分は、民間会社の争議の場合でございますと、会社側の要請、依頼によって介入してきた例が多い、これが事件として見ました場合に、そのほうが多い、こういうふうに申し上げて差しつかえないかと思います。
  107. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは大体常識的なことだと思うんですよ。わかっておるわかっておると言って少しも答えないから、こっちにわからぬから聞いたわけですが、そうすると、いまずっと三十五年、三十六年、三十七年、あるいは三十八年も出てくると思うんですが、これは事件ごとにどういう形で暴力団がどういうふうな経過をたどって事件に関与してきたのかということは、これはいますぐじゃなくてもいいから、ぼくは明らかにしてもらいたいと思うんです。一番大きな重要な問題だと、こう思うんですよ。そういういまわかっている範囲で二、三言っていただいてもけっこうですし、わからなければ、あとでまとめて何か詳しい資料にして出していただきたい。その点はどうですか。
  108. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 私のほうで関心を持っていないか調べようとしていないんじゃないかという御質問がございましたので、わかっておるということを申し上げたのでありますが、これは、先ほど来申し上げるように、私どもは情報としてとったのじゃなくて、事件の調べの結果に基づいて調べの結果として承知をしておるのでございますので、具体的にどの事件でどの組がどういうふうな形で入ってきたかということを個別的に申し上げることはいかがかという感じも実はいたしておるので、ただ少し研究をさせていただきまして、できるだけ御要望に沿うように処理をしたいと思っておるわけでございます。
  109. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは研究して御要望に沿うようにしたいというのですけれども、そういう点は暴力団というものの生態なり暴力団というものをなくするということから考えて重要なことではないんだということですか。
  110. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) そうではございません。捜査上知り得たものにつきましては、私ども一つの制約を受けているのでございまして、そういう意味で申し上げておるので、公にすることが不必要だという意味ではない。必要は感じておりますが、また秘密にすることも法律上義務づけられたことでございまするので、両々そこら辺のちょうどいいところで妥当なところを発見いたしましてできるだけ御要望に沿うように処理いたしたいというのが私の気持ちでございます。
  111. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その問題は、これは私どもも問題をあとに残します。これは私どもあとでよく相談しますから。  そこで、それじゃ、いま言ったように、労働争議に暴力団が入ってきて事件を起こした場合はわかるけれどもというんですけれども暴力団が入ってきているという例が各地にあるわけですね。これはあとで亀田さんが現地調査をした結果、きょうでなくて十六日に質問されますが、その他ありますが、そういうような争議や何かの場合に暴力団が入ってきたということは、これはあなたのほうじゃわからない。どこでわかるんですか。また、どこがわかるようなところもないし、わかる必要もないから、別にそれに対するキャッチもしない、こういうんですか。警察のほうでそういうことをやっておるんですか。
  112. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 労働争議に暴力団が入ってきました場合に、これが犯罪にもならず事件になっていない場合でございますと、われわれのほうではわからない。これは警察が承知いたしておられるかどうか、そこのところも私どもにはわかりません。しかし、いやしくも事件になりましたものにつきましては、先ほど申しました制約はありますけれども、大部分のものは報告されておると思いますので、その報告を受けました限りにおいては私どものほうはわかっておるつもりでございます。
  113. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あとで警察庁長官が来てからその点は聞きますが、これは警備警察が絶えず出ておるんですから、よくわかっていると思いますが、これはあとで警察庁長官が来てからにいたしましょう。  法務省にお伺いするのですが、いま暴力団を退治しなければならないというようなことになってきて、そうするとどういう法律——いろいろな法律がたくさんありますね。刑法もあるし、その他の法律があるでしょうが、どういう法律でこれを取り締まるのですか。
  114. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 暴力団取り締まり法律と申しますと、私は相当幅広いと思うのでございます。法律をあげていきます上に、段階的に申し上げますと、非常に予防的な効果というような点をねらった法律といたしましては、銃砲刀剣類等所持取締法もございます。それから麻薬取締法もございますし、それからまた刑法の中でも兇器準備集合罪のような規定はそういう方面に役立つ規定だと思いますが、私は、個々の刑法犯で処理されるということにいよいよ罪質がきまってまいりました場合に、今度はそれをどう処分をしていくかということは、刑法の規定、あるいは暴力行為等処罰ニ関スル法律の規定、その他現行刑法罰則等で暴力団に適用をみた法律の種類は非常に多いと思います。最も多く適用をみておりますのは、やはり刑法犯だと考えておりますが、なお、予防的な意味での取り締まりの対象になっておるものは、きのうも数字をあげました銃砲刀剣類等所持取締法だと思います。
  115. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 直接暴力団を取り締まるのを目的としたという意味じゃなくて、いろいろな特別法があるわけですね。その法律でも十分取り締まろうと思えば暴力団を取り締まれるのが相当あるのじゃないですか。それはどんな法律があるでしょう。
  116. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 頭のめぐりが悪くて急にばっとお答えできないのが残念でございますが、刑法の規定だけでなく、私は暴力団の外延的な行為取り締まりも結局は暴力団取り締まりに貢献するのだという考え方を持っておりますので、たとえば売春防止法のような法律も、売春暴力と言われておりますその売春を有力な資金源にしております暴力団にとりましては、売春防止法による管理売春等の規定を適用しますことが、ひいては暴力団取り締まりにいい効果をもたらすものだというふうに考えておりますので、そういう法律をずっと頭に描いてまいりますと、その範囲は相当広いものになると思いますが、少し考えさせていただきまして、法律の名前をあげろということになりますと、御猶予いただきたいと思うのでございます。
  117. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私の言うのは、一見暴力団とはまるで関係ないような法律でも、これを活用すれば十分暴力団を取り締まれるものがあるんじゃないですかと、こう言うんですよ。ところが、そういうようなものもさっぱりやっていないのじゃないかということを言いたいんですが、それはあとの話で、こっちからこの法律があると言ったのでは、これは答えにならぬしするから、それはあなたのほうでもう少し考えさしてもらいたいということは、あなたがぱっと出ないということ自身は、暴力団取り締まりに対してふだんから考え方が足りないんだというふうにとるわけではないですけれども、とられてもいたし方がない、こういうふうなことがあるのじゃないかとぼくは思う。単行法の中にたくさんあるのじゃないですか、活用すれば、やれるのが。
  118. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 仰せのとおりでございまして、私もいまのような観点から頭にこう考えてみておるのでございますが、先般、京都の暴力団取り締まりに際しまして、所得税法違反を適用いたしまして資金源の面から取り締まった実例もございまして、ひとり売春防止法や麻薬取締法のようなものでなく、縁のなさそうな法律の活用によりましても暴力団を取り締まることが私は効果のある方法だというふうに考えておるのでございまして、なお考えてみますれば、平素考えていないのが悪いのでございますけれども、よく考えてみまして、十分既存の法律を活用して運用してまいりたいと思っております。
  119. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私のほうも無理を言うつもりはないので、たとえば暴力団があっちこっち興行をやるわけでしょう。興行をやる場合に、著作権法に違反してほとんどやっている場合が多いのじゃないですか。そうでしょう。これで現実に岡山、広島で事件になっているんじゃないですか。だから、一見暴力団関係のないような法律でも、やろうと思えばやれるわけですよ。そのことを私は聞いておるんですけれども、それを先に言っちゃったんではあれになりますから、隠しておいたわけです。いずれにしても、著作権法違反でもやれるわけです。そうでしょう。なぜこういうふうな著作権法違反で各地にたくさんあるのをいままでやっていないんですかね。どの程度やっていますか、いままで。
  120. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 気がつきませんでしたが、ただいま御指摘の著作権法とか入場税法とか、先ほど所得税法のお話を申し上げましたが、そういったような、あるいは関税法といったような、税法系統のものも相当私は適用の余地があるのじゃないかと思います。ただ、私どもとして、従来なぜそういうものを活用しなかったかという点でございますが、これは特別法の持っております一つの宿命でございますけれども暴力団だけにこの法律で一斉検挙というような形でそういうものをねらってやるというような特別法の運用というものがはたしていいかどうか。そういう違反がもしあるとすれば、だれにだってひとしくやらなければならぬ問題でございますし、特別法の範囲は非常に広いものでございますので、これを一つの検察方針あるいは取り締まり方針として打ち立ててまいります場合には、いろいろ考慮すべき事項が多々あったと思うのでございます。そういうことからとかく現場のほうでは敬遠されがちであったと思いますが、ただいま幾つかの例をお示しいただきましたように、こういう面につきましても活眼を開きまして運用の妙を発揮していくというのこそ、法の運用に当たる者の平素考えておくべきことでございますので、私どもとしましても、そういう運用をしようという現場の考え方に対しましては、できるだけ全体的な立場から資料をあげ、応援をしてまいりたいと、かように考えております。
  121. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、法務省にしろ、あるいは警察庁にしろ、日本著作権協会と話し合えば、非常に興行の面で著作権を侵害してやっていることがすぐわかるのじゃないですか。そういうような話し合いをしたことがあるんですか、法務省なり本警察庁は。どうですか。
  122. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 法務省といたしましては、著作権の問題に関して暴力団対策の一環として担当者とお話し合いをしたことはございません。
  123. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 警察はどうですか。
  124. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 暴力団の不法事犯の検挙活動と並行して、暴力団の首領や幹部等の不法所得にかかる脱税事件などにつきまして、先ほどお話がありましたように、広島、あるいは山口、岡山等である程度捜査いたしたものもございます。著作権協会とは、ことしの二月ごろに打ち合わせしたことはございます。ただ、何分にもこの方面の特別法の活用につきましては、まだまだ不十分であるとは考えております。
  125. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それなどは一つの例ですよ。例で、資金源として一番重要なものですから、しかも、わりあいに捜査としてはやりいい捜査ですよ。著作権協会と相談をしてやったかどうかということと、そういう現実に興行があったかどうかということと、どの程度の収入があったかということは、これはわかることですから、これはやろうと思えば幾らでもやれるんですよ。やらないところに私は問題があると、こう思うんです。それを変なように勘ぐれば、さっき言ったように、暴力団政治結社という形になってくる。しかも、その政治結社綱領というものは、「自由民主主義を擁護し、」というようなことになってきて、これを阻止するものがあればこれをやっつけるんだということになってくるわけですよ。こうなってくれば、あまり暴力団に手をつけないようになってきて、それははれものにさわるようにしておいたほうがいい、そのほうが保守政党にとっては有利じゃないかと。しかもそれが労働争議のときなんか会社側に加担してやってくるわけですから、そういうふうな、笑止といえば笑止ですが、そういうふうにとられるようになってくるんですよ。これはさっぱり熱意を示してやらないからだと思うわけですけれどもね。  そこで、話はちょっと違ってきて恐縮になりますけれども、いま言った暴力団政治的に進出しているということの中で、あなたのほうからいただいた「暴力団について」という資料があるんですが、これは法務省ですね。第四のところの最後のところに、「暴力団の幹部クラスの人々の中には地方議会の議員等の地位を占めている例もあるが、中堅、とくに下部クラスには、素行不良者が妙なくないのである。なお、地方議会の議員等の地位を占めている暴力団の幹部でもその現職中に殺人、傷害等の罪を犯し、処罰を受けた事例もあることには注意を要する。」と、こういうこともあるんですが、これは現実にこういうことがあったんですか。
  126. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) ございました。ございましたので書きましたわけでございます。
  127. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはあるから書いたにきまっているわけです、資料として出したんですから。そうすると、名前はいいですよ、名前をあげろとは言いませんから、具体的にどういうふうな例があったのか、これをひとつ示していただきたいんです。いまでなくていいですよ。資料でいいですよ。名前は要りませんよ。ABCでも何でもいいですよ。  そこで、この前、今度の改正案に関連をしてあなたのほうで言っているのは、暴力関係犯罪の刑が低いというようなことを盛んに言うわけですね。盛んには言わないですか。刑が低いから、これを下限を上げなければならないということが一つの今度の改正案趣旨ですか。そう承ってよろしいですか、一つ趣旨ですよ。
  128. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 言い方にもよりますのですが、大体いまおっしゃるような趣旨一つの重要な改正案提出の理由でございます。
  129. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、この前私が聞いた六月三日の毎日新聞に出ている件ですね。二日に事件を起こしたのだけれども、その前に、二月の事件で暴力団のある会の一員がこれは傷害を犯したわけですね。傷害を犯して、何か十日間入っていて罰金二万円で釈放された、こう書いてあるんですが、これは具体的にはどういうことなんですか、これだけではわかりませんがね。
  130. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) この事件は、昨日御指摘がございまして、調べ上げましたときにはすでに散会になっておりましたので、御報告ができませんでしたのですが、この事件は、ことしの二月北砂町で起こった事件でございまして、ある暴力団と思われる団体の配下の二十才の者がクリーニング店へ参りましてズボンのアイロンかけを頼んで、断わられて憤慨して手拳でもってその顔面を殴打し、それをとめに入った店員に対しましても同様な乱暴をいたしまして、それぞれに一週間の傷害を与えた、こういう事件でございます。これに対しまして、逮捕、勾留をして取り調べたのでございますが、二月十四日に送致を受けて、二月二十日に在庁略式で罰金二万円を求刑したようでございます。この事件につきましては、仰せのように、私もちょっと扱い方が軽いんじゃないかという念を強くいたしておるのでございますが、この点について、当局に、取り調べに当たりました東京地検の意見を聞いてみますると、前歴として刑事罰はないというような点、それからいま申したように年令二十才であるという点、まあ少なくとも検事の前におきましては非常な改悛の情を示しておったというような点等を考慮してこのような処置をしたということでございますし、さらに突っ込んでよく事情を聞いてみますと、この事件を取り扱いました者は新任検事でありまして、新しく任命されたばかりの若い検事でございまして、十分事情がわからずにやったような形跡もあるようでございます。この事件の処理は私も少し遺憾であったという感じを持っておるわけでございます。
  131. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 検察庁全体が、裁判所のほうが刑が軽い軽いといって盛んに文句を言って、ことばは悪いんですけれども、いろいろ言っていて、検察庁自身がそれを守ってない体制では、裁判所その他に対して何を要求しておるのかさっぱりわからなくなるのじゃないですか。しかも、この人がある指定の暴力団ですか、組員だということがわかっていたんですか。暴力団の組員に対してはささいなことであっても重く処罰するんだということを検察庁なんか言っていて、そうしてそうじゃないものをやっていて、それで重くしろ重くしろと言ったって、無理じゃないですか。
  132. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) ただいま主任検事はよそに転出しておりまして、本人から聞くわけにいかなかったのでございますが、記録によって調べてみますと、わかっておったと思うのでございます。でございますので、私も先ほど申しましたように、この処理は適当でなかったというふうに申し上げておるわけでございます。ただ、庁全体としてこういう態度でいいわけではございませんので、前にも申し上げたかと思うのでございますが、暴力対策として求刑を引き上げていくという申し合わせまでして、できるだけ全国一斉に刑を引き上げていくという基本方針をきめておるのでございます。
  133. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いままでの暴力行為の取締法の具体的な適用ですね、これはどういうふうな場合多くて、全体の中でどの程度暴力団に適用になっておるんですか。
  134. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 昭和三十七年につきまして調べたものによりますと、暴力団の構成員と目される者の犯した暴力犯罪の数は、これを比率で申しますと、兇器準備集合罪ということにつきましては、人数は五百三十五人でございますが、その占めておる割合は七六・三%でございます。それから暴力行為等処罰ニ関スル法律違反は、三千五百八十七人でございますが、その占めておる割合は四一・四%でございます。それから刑法犯の恐喝でございますが、これは八千八百八人でございまして、三四・八%を占めております。殺人につきましては、七百八十九人で、一二・五%を占めております。それから脅迫につきましては、九百十五人で、二八・五%。傷害につきましては、一万五千七百五十三人で、一九・九%。暴行につきましては、五千三百二十三人で、一三・八%を占めております。
  135. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私の聞いているのは、ちょっとはっきりしなかったかもわかりませんが、暴力行為処罰法で処罰を受けたでしょう、その処罰の中で、暴力団関係者はどの程度いるのかと言っているんです。暴力団関係者と、そうでない者を分けて、それを示してもらいたい、こう言っているんです。
  136. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 暴力団に限らず、暴力行為等処罰ニ関スル法律違反というのは、これを歴年別に総数を申し上げて、正確に申し上げなければならぬのですが、まず昭和三十七年について申し上げますと、全体が九千七百九十六人でございまして、そのうち暴力団の占めております割合が三千五百八十七人でございます。
  137. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、暴力団関係者の占めている以外ですね、以外の人はどういう人が多いんですか。
  138. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 大部分は暴力団の構成員とは目されない一般人でございまして、労働運動、公安事件と目されて、そういうのでこの適用を見ましたのは大体三百人前後でございます。でございますから、四一%が暴力団で、あとの五八%強が一般人でございます。その五八%の中で三百人程度のものが公安、労働関係、こういうふうに私ども見ております。
  139. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そこで、どうもいまの数字は三百人というのはちょっと納得がいかない数字ですけれども、これは、あれですか、逮捕された者という意味ですか。
  140. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) これは、逮捕ではなくて、検察庁が受理した件数でございますから、在宅事件も入っております。
  141. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 労働争議に関連をして発生する暴力行為の事件ですよ。いいですか。それで逮捕されたのは何人ぐらいいるわけですか。そこで逮捕されてから勾留された者はどのぐらいですか。逮捕された者全部が勾留されたわけじゃないと思うんですけれども、勾留された者の中で起訴されたのはどのぐらいいるというのはわかるわけじゃないですか。
  142. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 在宅と逮捕との比率、及び逮捕者中勾留にまで持っていった者の比率は、ちょっと個個の事件に当たってみませんとわからないのでありますが、お手元に差し上げました統計表で「公安等関係事件及び労働争議行為に関連して発生した暴力事犯の受理及び起訴人員調」というのがございます。それによりますと、昭和三十七年について申し上げますと、先ほど申しましたように暴力行為処罰ニ関スル法律違反の全受理人員は九千七百九十六でございますが、そのうちで公安、労働関係の事件は、正確に申しますと、二百七十二でございます。大体三百件ぐらいと先ほど申し上げましたが、この統計表で正確に申し上げますと、二百七十二でございます。これは全部人数でございます。この統計をごらんになっておいででございましょうか。この二百七十二の上のほうにカッコに入れて二百六と書いてございますが、この二百六という数字は労働争議行為に関連して発生したものでございます。これを全受理人員との比率で申しますと二・七%でございます。この起訴は、二百七十二のうちで七十人が起訴されております。その全起訴者は三千七百二十一人でございまして、そのうちの七十人が公安、労働関係でございますし、労働争議に関連したものは五十八人でございます。  ただし、ここに書いてありますのは、左翼といいますか、労働組合の方だけじゃなくて、先ほどのたくさん介入してまいります暴力団の争議に関連したものもこの数字の中に入っておるのでございます。厳格に申しますと、そこから差し引いて計算をしないと暴力団構成員による暴力行為処罰法の件数を出せないのでございますが、それがはっきりわかりませんので、労働、公安関係の事件として一括してここに掲げてあるわけでございます。
  143. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、二百七十二人を逮捕したのだけれども、起訴したのは七十人だと、こういうふうに承ってよろしいわけですか。三十七年度ではただしその中では暴力団関係の分も入っているかもわからないと、こういうわけですか。
  144. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) この二百七十二人の数字は、全部逮捕者であるかどうかということにつきましては、在宅送致のほうもかなりあると思いますので、全部が逮捕とは言えないと思いますけれども、まあまあそれに近い数字ではないかというふうに考えていいかと思います。
  145. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると二百七十二人逮捕したとか勾留したとかして起訴が七十人というわけだと、一般の勾留事件と比べて起訴率は低いのじゃないですか。起訴率が低いということは、逆に逮捕しなくてもいい者まで相当大きく網を張ってという形で逮捕しておるということになるんじゃないですか。そう見てもいいんじゃないですか。
  146. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) この数字だけをごらんになりますと、そういうお考え方も出るかと思いますが、中身を詳しく審査してみますと、そうではございませんで、送致事件も非常にしぼられたものが送致されてくるのでございますが、さて調べてみますると、公安、労働事件の特殊な性格からくるのでございますが、できるだけ指導的な立場の者、あるいはその罪、情状において重い者にできるだけ起訴の際にはさらにしぼりをかけまして処理をすると、こういうことになっておるのでございまして、その結果として一般犯罪よりも起訴率が低くなっておるのでございます。仰せのように網を張っておいてそれから精選をするというやり方では実際の運用としてはそうなっておらない、その逆でございます。
  147. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 たとえば、「争議行為に関連して発生した「刑法犯」受理、処分調」というのがありますね。一枚の紙のがあるでしょう。この三十八年を見ても、前年未済と受理を合わせると千百九十八件、起訴は百件、不起訴は七百三十六件ということで、この数字だけを見ても、いかに多くの人間が被疑者として扱われて処理されておるかということがわかるのじゃないですか。いまあなたの言われたように、たくさんやってきておも立った者を処罰したのじゃなくて、むしろ逆に非常にたくさんの人間を初めから被疑者として扱って処分をして、そのうちの一部分を起訴したということなんです。だから、当初から被疑者扱いをしなくてもいい者、勾留扱いをしなくてもいい者が、こういうようないわゆる争議行為に関連した事件の中には、多数の者が逮捕された、勾留されたということになるのじゃないですか。そういう見方のほうが正しいのじゃないですか。
  148. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) おことばを返すようでございますが、私どもの中身を検討しております結果によりますと、そうではないのでございます。これにはいろいろ原因はございます。私は、主たる理由は、先ほども申し上げましたように、さらに訴追をして刑事責任を問う者の範囲をできるだけ限定していくという基本的な考え方に立脚しての処置でございますが、さらにいろいろな捜査上の困難等もございまして、これはまあ捜査技術の問題にもなるかと思いますが、そういう点は第二義的な理由でございまして、第一義的には、あくまで刑事責任を追及すべき者を最小限度にとどめて筋は通していく、これが検察の基本方針でございます。ただいまお読み上げになりましたのは、私どものほうから差し出しておりますのは昭和三十七年までの統計でございますので……
  149. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 「三十九年五月八日、法務省刑事局公安課」ですよ。
  150. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) それは作成の年月日でございまして……。
  151. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 「三十八年」と書いてありますよ。
  152. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) そうですか。
  153. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうですかって、書いてある。三十八年と書いてあるけれども、三十七年度分だという意味ですか。
  154. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) そうじゃございません。私の見ておるのは、ごらんになっておるのと違いました。——ございます。これは二十四年から三十八年までの……それは仰せのとおりであります。
  155. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だから、結果として言えることは、あれじゃないですか、逮捕、勾留が非常に多いということですね。これは捜査の技術かもしれぬけれども、結果としては、事件に対して関係のない者まで逮捕、勾留をたくさんされているという結果になってきているんじゃないですか。結果としてはですよ。それは捜査技術の上でそういうふうにしなくちゃならぬとか、こういう理屈は別として、実際の姿を見れば、一般の事件なら、勾留すればたいてい起訴ですよ。そうでしょう、普通の事件ならね。こういういわゆる暴力行為、特に争議行為に関連をする組合関係の事件というのは、たくさん逮捕しておきながら起訴が少ないという事実の裏は、よけいなものまで逮捕しているんだということになるんじゃないですか。そう解釈できるじゃないですか。
  156. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) おことばを返すようでございますが、実態はそうではないというふうに私は確信をいたしております。
  157. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 実態を確信したといっても、それはあなたの確信であって、それじゃ具体的な事例をとってあげてくださいよ。たとえば三池の争議でもいいです。三池の争議で一体何人逮捕して、何人勾留して、何人起訴したんですか。その結果、何人無罪が出たんですか。
  158. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) これはちょっと統計が古くて恐縮なんでございますが、「犯罪白書」の三十六年の記述をちょっと申し上げますと、百十七ページのところに書いてございますが、「公安犯罪はどうであろうか。」ということで逮捕状請求の問題を論じているわけですが、「逮捕状の請求に対し裁判官がこれを不許可とした数は、明らかにすることはできないけれども、全事件の許可の比率がいちじるしく低いから、公安犯罪についても、ほぼ同様の傾向にあるとみてよいであろう。」そこまではいま問題ではございませんが、「次に、公安犯罪について逮捕された者の数をみると、法務省刑事局の調査によると、昭和三四年に検察庁で受理した公安犯罪の総数は、二、二一三人であり、このうち逮捕されたを者は、その二五・二%にあたる五五三人である。さきに掲げた全事件の逮捕率二八・一%は、検察庁で処理した総数のうち逮捕された者がどれだけあるかの比率をみたものであるから、公安犯罪についても、本来ならば、その処理に総数のうちの逮捕率をみなければならないわけであるが、差し当たってこれを明らかにすることができないので、検察庁で受理した総数のうちで逮捕された者がどれだけあるかを示したものである。これによっても、ほぼその傾向をうかがうこと」ができるであろう。」、さらに、「全事件の逮捕率は、前記のように二八・一%であり、また、検察統計年報によって刑法犯の処理人員のうち逮捕された者の比率をみると、三一・六%であるから、公安犯罪の逮捕率は、全事件のそれより低く、また、刑法犯のそれよりさらに低いものといえるであろう。」、これが「犯罪白書」に出ておる記述でございまして、受理人員のすべてが逮捕だということにはならないのでございますが、さらにまた、たくさん逮捕しておいてという結果論的にこの数字をごらんになりますと、そういう見方、そういう御疑念が生ずるのはごもっともでございますけれども、事件を見ますると、犯罪にならないと思われるものを逮捕したものはほとんどございませんで、犯罪になるけれども、起訴猶予といいますか、起訴しなかったというのが、私どもの見た、結果から見ましてそういうふうに見られるわけでございます。ただ、情状その他につきましては、いろいろな考え方があるかと思いますし、多数の者が容疑者になっておる場合が多いのでございますから、その間に甲乙をつけがたいものがございまして、結局、きわめてできるだけ顕著な情状の者だけを起訴にとどめる、こういう起訴方針といいますか、起訴の処分の傾向になっておるのでございまして、仰せのように、網をかけてあとで少数の者を起訴するという検挙の方針でもなければ、捜査方針でもないわけでございますし、そうでないことは、いま申しましたような処理の結果から見ましてもうかがわれると思っております。
  159. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ですから、いまあなたの言われたのは、古いものを引用して言われたんですが、統計が古いか新しいか別として、逮捕率が少ないということは、逆に被疑者にならないような形の者まで被疑者扱いをされているということですよ。いわゆる在宅事件かどうかしらぬけれども、それだけ全体としてふえているということではないですか。現実に、たとえば労働争議のような事件の中で、逮捕された者がそれじゃ一体何人起訴されておりますか。勾留されている者はどの程度の割合で起訴されているか。ほかのいわゆる窃盗とか強盗とか、恐喝とか、そういうような事件と、勾留の率というか、そのものの起訴率とは違うでしょう。普通刑法犯のほうがうんと起訴率は高いでしょう。ところが、労働争議に関する事件は起訴率は低いのではないですか、ほかと比べて。それはそれだけよけいなものを逮捕しているということになるのではないですか。形の上でというか、結果か知らんけれども、そうとられるんじゃないですか。それが捜査技術の上から必要だというなら、それは一つの議論としては承りますけれども現実の姿としてはそういうふうになっているのではないですか。そうじゃないですか。
  160. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 事件によりましては、いろいろな形で起訴率、不起訴率と申しますか、そういうものは違ってくるわけでございまして、いま一般論として申しますと、一般刑法犯の起訴率は、ただいまでは五割に近いものが起訴率になっております。しかし、公安事件については、非常に低い。また、これを特殊な一般刑法犯ということではなくて たとえば特殊な類型の犯罪を、殺人とか傷害とかいうふうな個別にとっていきますと、この起訴率というものはまちまちなんでございまして、一がいにあるものは起訴率が高い、あるものは低いというふうには言えないのでございます。交通事件のようなものは、非常に起訴率が高くなっておりますが、これは事件の性質によってそうなるのでございまして、これはそれが実情でございます。それをどういうふうに評価いたしますかにつきましては、私は先ほど申したような評価をいたしておりますが、稻葉先生は違った評価をなさる、これはいたし方ないことで、数字はまさにそのとおりの数字になっておるのでございます。
  161. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 事実問題として、たとえば三池なら三池の争議を例にとってそのことを示してください。それから三池争議だけではなくて、ほかのものもあれば、例をとって示していただきたいんです。そうすると、事実が大体わかると思うんです。
  162. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 三井、三池の事件について、暴力行為等処罰ニ関スル法律違反の罪名で受理をいたしましたものが六百六十四名でございまして、そのうちで求公判が二十七名、求略式が八十二名、起訴猶予が四百十七名、嫌疑なしが百三十四名、その他が四名、こういう数字になっております。  次に、傷害について申し上げますと、受理人員が四百四十八名、求公判が百三十二名、求略式が三十三名、起訴猶予が百三十八名、嫌疑なしが百三十九名、その他が六名でございます。あといろいろな罪名がたくさんございますが、大体そういう傾向でございます。
  163. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまの説明を聞いてもわかるのは、このうち一体勾留になったのは何人なんでしょう。逮捕が何人で勾留が何人だかわかりませんか。
  164. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 私の持っております資料では、その点がちょっとわかりかねておるわけでございます。
  165. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは調べればわかると思いますから、すぐでなくてもいいから、調べていただきたいんですがね。これはそこの検察庁へ連絡すればすぐわかると思うんですがね。これを見てもわかるように、嫌疑なしが非常に多いんじゃないですか。暴力行為のほうで嫌疑なし百三十四名でしょう。それから傷害のほうで嫌疑なしが百三十九名ですか。これは非常に嫌疑なしが多いですね。そうでしょう、実際問題としてね。普通の事件でこんなに嫌疑なしが多いことはないですわな。これは検察庁のほうじゃないかもわからない。これは警察のほうの犯罪の場合の被疑者の立て方が実にラフな立て方をしていて、その現場におれば何でもかんでもほとんど被疑者扱いにしているからこういう結果が出てくるんじゃないですか。これは勾留されたかされないかは別として、これだけ被疑者扱いをされて嫌疑なしが出てくるなんということは、これは普通の事件ではないことですよ。これは法務省は認めるんじゃないですか、従来の例からいったって。これはどのくらいですか、四分の一以上が嫌疑なしじゃないですか。片方の傷害のほうは三分の一くらいが嫌疑なしですね。こんな大きな嫌疑なしが出てくるというのはいままでないんじゃないですか。法務省の扱いでは、普通事件ではないんじゃないですか。この点は言えるんじゃないですか。
  166. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) それはほかの事件に比べまして仰せのように嫌疑なしの数が多いのでございますが、起訴猶予が四百十七名で、あやしいやつを一網打尽に網をかけてという先ほどおことばがございましたので、私はそうではないということを申し上げておるのでありまして、この事実を否定しようというような考えは毛頭ございません。
  167. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 六百六十四名受理されて、起訴猶予が四百十七名ですか、暴力行為で。このこと自身は一体何を物語っているかということですよ。これはいかにたいしたことでもないようなものが、一般ならば放置されているようなものがみんな立件されて受理されてきているということですよ。みんな被疑者扱いされてきているということじゃないですか。六百六十四名の受理のうちで実際的なものは求公判が二十七名だけじゃないですか。あとはみんなほとんどは逮捕もしなくたって済むし、事件として被疑者扱いしなくたって済むし、そういうものがみんなこの扱いの中に入っておるんじゃないですか。暴力行為処罰法としていかに警察なり何なりがラフな形でこの暴力行為取締法を労働争議の中には適用しているかということがこの数字だけでもわかるんじゃないですか。そう考えませんか。ぼくはそう考えますよ。
  168. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 私どもはこの犯罪を見ておるわけでございますが、たしか第一組合と第二組合の間の闘争がかなり暴力行為処罰の適用を受けていると思うのでございますが、後に、筋一組合と第二組合が争議といたしましては和解状態になってまいりまして、刑事事件だけがあとへ残って、処罰——これはやむを得ないことではございますが、検察官としましては、そういうふうに和解ムードが出てきた場合に、なお本人たちが処罰を強く希望しておるならば格別、そういう空気もなくなってくるという状況を十分察して、処分の面で反映をしていかなければならぬ、これが私はほんとうの法の運用だと思うのでありますが、労働争議事件で多数の起訴猶予を出しますのは、処理がおくれているせいもございますけれども、実際に起訴、不起訴をきめる段階になってまいりますと、争議が片づいてしまって、苫小牧の王子製紙の事件におきましても、闘争のさなかでは非常に犬猿のごとく争った当事者でございましても、さて争議が解決をしてしまえば、一陽来福で、非常におだやかな空気になってくる。その段階で、刑事処分だけが強く出ることは法の運用としましてもいかがかということから、起訴猶予という形で処分される者が相当あるのでございまして、稻葉先生のような場合も私はないとは申しませんが、ここで起訴猶予の多いのは、多くはそういうような形で処理されますために起訴猶余が多くなっているのだと、私はそういうふうに考えております。
  169. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そういうふうな場合もこれはないことはありません。お互いが告訴合戦をやったりしますからね。この三池の場合の起訴猶予は、そういう形でほとんど両方が告訴し合った事件だというんですか。そういうのも入っていると思いますがね。  それからこの一つの事件をとってみても、一般の事件に比べて公判の結果無罪になるのが多いんじゃないですか。これはあなたのほうで自由人権協会に回答していますね。あの中に出ているけれども、あれは三十五年と三十六年ですか、無罪が多いというようなことが出ている。著しく多いんじゃないと言っていますけれども暴力行為等処罰、ことに労働争議に関連をする事件の起訴の中では無罪がほかの事件と比べると多いということは、過去に——今は言えるかどうか、あなたのほうでは言えないと言うかもしれないけれども、少なくとも三十四、五年ごろには言えたんだ。いまでもその傾向はあるんじゃないですか。
  170. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 仰せのように、労働事件、公安事件におきましては、無罪率が、少なくとも第一審の判決を見ますると、無罪率が非常に高いのでございまして、それにつきましては、犯罪の証拠が十分でないという認定を受けるものもございますが、それに入らないで法律上の正当性の限界とかいうような問題等で無罪になる者も相当率があるわけでございます。そういう意味で、そういうものをひっくるめまして無罪率というものは相当高いのでございますが、事実認定につきまして無罪になった者につきましては、これは事実の見方の相違でございますので、ことに証拠の取捨の問題と関連をしますので批判の限りではございませんが、法律上の見解の相違から無罪になりました者につきましては、法律解釈を固めていくというような意味におきまして検事控訴をしてさらに上級審の判断を仰いだという例も少なくないのでございます。そういうものが上級審において前の無罪判決が破棄されて有罪に変わったという例も、これまた少なからずあるのでございまして、一般的に申しますと、仰せのように無罪率が高い、こういうふうに申すほかないと思います。
  171. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だから、その無罪率が高いというのは、ほかの一般の事件と比べてどの程度に無罪率がこの労働争議に関連をする暴力行為等処罰に関する事件なんかは高いのか、これは明らかにしてもらいたいと思うんですよ。それは無罪率が高いということ自身は、非常にラフな検挙が行なわれ、しかもそれで捜査も不十分であったということを結果としては物語る場合が多いんじゃないですか。
  172. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 一般犯罪をまあ平均をしてと申しますか、司法統計年報によって調べてみますると、いわゆる無罪率というのは、昭和三十年の〇・七%というのがかなり高いのでございまして、それから逐次減ってまいりまして、昭和三十四年には〇・四%となっております。現状も体〇・四%から〇・五%の間だと私記憶いたしております。これに対しまして、公安犯罪、労働事件につきまして無罪を見ますると、昭和三十四年の第一審の——通常第一審判決でございますが、総数が三百二人の中で無罪になった者が三十九人ございますので、一二・九%を占めております。これは全体から見ますると非常に高い無罪率になっているわけでございます。
  173. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 三池の場合でも相当無罪が出たのじゃないのですか。ことにあの洗たくデモの場合の主婦か何かは二十人くらい無罪が出たのじゃないですか。
  174. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) わかっておりますが、数字でございますので、ちょっと御猶予をいただきまして…。公判請求をいたしました二百二十二名につきまして十九名の無罪が出ておるように承知をいたしております。
  175. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 国家公安委員長がほかに御用だということですから、二点ばかりお聞きしておきますが、それはきのう話しました例の交番で暴力見のがしということ、被害の少年に手錠をかけたという事件が伝えられたわけですが、このことに関連をして調べてくれということを言っておきましたが、その結果をここでお聞かせ願いたいわけです。これはどういうことかというと、結局、警察官が暴力を見のがして、全く暴力に対して何といいますか憶病だったというふうに伝えられておりますので、この事実関係ですね、わかった範囲だけのことを、ひとつあなたからでも、警察庁長官からでも、どっちでもいいんですが、ここでお聞かせを願いたい。
  176. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) お答えいたします。  毎日新聞に載りました日吉のいわゆる暴行事件でございますが、私のほうで早速神奈川県警本部につきまして調査をいたしました概要を御報告申し上げます。  起こりました事件は、まず、日時は、六月の五日の午後十一時三十分ころから六月六日の午前零時十五分くらいまでの間でございます。場所は、横浜市港北区日吉町四百六十八、東横線の日吉駅前派出所及びその付近でございます。関係いたしました警察官は、神奈川署の外勤乙部古橋巡査と同じく鈴木巡査の二名でございます。  事件の内容は、前記日時ごろ、東横線日吉駅前において、横浜市南区蒔田町東谷八百八十一のアンタ・タクシー運転手鈴木という運転手と、横浜市南区堀ノ内一の二十四セントラル・タクシー株式会社運転手の森田という運転手と、それから横浜市保土谷区西谷町九百二十八新生タクシー株式会社の山崎という運転手三人が、それぞれ営業用自動車を停車させて客待ちの状態でありました。  アンタ・タクシーの運転手である鈴木は、自分の車を置いたまま自分の車から離れてセントラル・タクシーの運転手森田運転手のそばに行って世間話をしておった状態のときに、学生風の、学生風と申しますのは、これは高等学校を出てそれから大学準備中の、まあいわゆる浪人をしておる間の少年Aと、それからその友人である学生のBとの二人が、この空車である運転手のいないアンタ・タクシーの車に乗り込みまして、運転手を呼んだわけであります。  呼ばれた運転手が自分の車に近づきますと、田園調布まで行けということをAという少年に言われましたが、鈴木運転手は、構内タクシーで行ってくれというふうに答えております。そのときに、御参考まででございまするが、構内タクシーは日吉駅前には三社あるそうでありますが、三社のうち一台が待機しておったそうであります。そこで、その少年A、Bは、アンタ・タクシーから、一たん乗り込んでおりましたけれども下車をしてきて、乗車拒否だというふうに騒ぎましたので、鈴木運転手——これもまた参考というよりも重要な問題でありますが、この二人は相当酒を飲んで泥酔をしておる状態でございましたが、そういうわけでもございましょう、一たんおりましてから乗車拒否だというふうに騒いだのでございまするが、そういうことで、鈴木運転手は、駅前におりました構内タクシーの配車係の長瀬という人に、東京へ行く客があるからお願いしますというふうに依頼をしております。あとで調べますというと、自分は東京方面じゃなしに横浜方面に行く客なら乗っけていこうというつもりでおったようでありまして、田園調布は日吉から東京方面に当たるものですから、東京方面に行く客があるから配車してほしいということをあっせんをいたしておりまするが、配車係は、はい、引き受けましょう、こういうふうに答えております。  しかし、一たん断わられた少年Aは、乗車拒否だというふうになお騒いで、鈴木になげりかかる——鈴木というのはアンタ・タクシーの運転手でございますが、その鈴木運転手になぐりかかる気勢を示したので、これを見ておりましたセントラルの森田運転手が鈴木を助けようとして近づきますと、さらに少年Aは乗車拒否だと騒ぎ立てました。その際、その少年に左ほほをなぐられております。セントラル・タクシーの運転手だと思いまするが、その仲裁というか、アンタ・タクシーの運転手をかばいに行って、先ほど雑談をしておったもう一人のほうの運転手森田でございますが、これは少年Aに右ほほをなぐられたようでございます。  なお、この少年は、セントラル・タクシーの森田運転手に、まあ少年の言い分だと、そのときに森田運転手に足でけ飛ばされたというふうに申し立てておりまして、双方いずれが先にやったかということは、現在もちろん捜査しておりますけれども、両方とも相手のほうが先だ、なぐったほうが先だ、けったほうが先だということを言っておりますけれども、いずれにしても、双方の暴行が行なわれたのであります。  さらに、そのA少年は、とめに入りました鈴木の、これはさっきのアンタ・タクシーの運転手でございます、乗車拒否をしたと言われるほうの運転手でありますが、それのみぞおちのあたりをけ飛ばしまして、鈴木は胸が苦しいというので、みぞおちをけられたものですから、すぐに大仁病院へ診察に行き、六月八日に自分がそのA少年に暴行を受けたという旨を神奈川署へ届け出ております。これはあとのことでございますが、そういう状態でございます。  さらに、A少年及びB少年の両名は、セントラル・タクシーの森田運転手の腕をつかみまして、乗車拒否だ、交番に行こうということで、交番に森田運転手を連れ込みました。連れ込まれました森田運転手は、しゃくにさわるということで、交番内の折りたたみのいすで少年Aになぐりかかっております。  そこで、派出所におりました鈴木巡査は、森田運転手の持っておるいすを取り上げ、双方を取りしずめようと両者の中に割って入りました。少年A、BのうちのB少年と、それから森田運転手は、それでしずまりましたけれども、少年の一人、先ほどから相互暴行をやっておりまするA少年は、さらに威勢がしずまらない。威勢がよく、なおもあばれ、森田運転手の胸ぐらをつかんでけんつくを食わせたようであります。この騒ぎを聞きまして、休憩室におりました古橋巡査が出てまいりまして、ともにこの状態を制止しようとしたのであります。  そこに、今度は、港北区下田町八百七十の三和木工所の西方という者と、使用人の日吉本町の田谷という両名が派出所の中に入ってまいりまして、騒いでおるものですから、何をやっておるのだと、こう言ったところ、少年Aは、この二人に対しまして、そのかっこうが一人は和服を着ておったのですが、まあやくざ風だったと見えまして、やくざなんかの出る幕じゃない、引っ込めと、こういうふうに少年Aが申しております。そこで、入ってきた二人のうち一人、田谷というのが、おれたちはやくざじゃない、ふざけるな、こういうことを言って、そこでまた相互に、第三者であるあとからきた田谷と初めの少年Aとの間に相互にけり合いを始めましたので、鈴木巡査は田谷を休憩室に連れ込み、一たん両名の間は分けたのであります。  さらに、少年Aは、警察官の古橋、鈴木に向かいまして、きさまらは雲助の味方かということを言いまして、古橋巡査の腹部をけ飛ばし、五、六回なぐったということであります。  こういう状態では収拾がつきませんので、酒に酔ってなおあばれておるA少年を古橋巡査が制止するために、やむなく戒具として手錠を用いることとしましたが、ますますA少年はあばれますので、これを組み伏せまして、鈴木巡査をして少年Aに前手錠をかけさせようとしましたけれども相当あばれますので、なかなかかからない。ようやく両手錠をかけていすにすわらせていた状態になりました。  そこで、A少年は、まあ手錠がかかれば酔っぱらっておってもあばれることができない状態になりましたが、A少年は、乗車拒否の運転手を交番に自分たちが突き出したのに、届け人の自分のほうを縛るとは何ごとだと、こう言って口では騒ぎ続けたわけでございまするし、同時に、周囲の見物人も、ちょうどそういう状態を見ておりました者の中からは、その少年Aに同情的な状態でございました。それで、十四、五人の見物人が交番に入って参りまして、その少年Aと同じような意味の、警察が雲助の味方をするのかということを、前後の事情というか前からのいきさつを知らないで少年が手錠をかけられているというときに参りました者の十四、五人が、やはり同じことを言っておるのであります。  そういうことで、その後少年Aはおとなしくなり、もうあばれないということを言いまするので、手錠はそこではずしました。だから、手錠をかけておった時間は十分ないし十五分ぐらいであったということであります。  そうこうしているうちにパトカーが応援に参りましたので、そのパトカーに少年二人を乗せ、今度あばれた相手方である運転手は国分の車で、これは警察官がそれに乗って署のほうに連行したわけでございます。神奈川警察署に着いた時間は六日の午前零時十五分でございます。  本署で、警視の雪江というのと、野口警部補、保坂部長の三人でこの関係者を調べましたところ、少年Aとセントラルタクシー森田との間に相互の暴行事実というものがございましたので、これは書類送検することにいたしました。なお、あとから無関係の第三者で入ってきまして少年Aに対して暴行しました田谷という者につきましても、暴行罪で送致する予定でございます。  なお、少年A及びBは、オンザロック四はいを飲んでおって、飲酒検知管で調べましたところ、呼気一リットルについて酒気一・五ないし一・二ミリグラム、これは専門的な数字でございますが、一・五ないし一・二ミグラムを含んでおりまして、いわゆる泥酔の状態であったわけでございます。  これがただいままで私たちのところに報告を受けております事案の概要でございまして、間違って手錠をかけたというのじゃなしに、その暴行状態というか、泥酔してあばれている状態を制止する方法として、これはひどい酔っぱらいのあばれた場合しかもちろんやりませんけれども、手錠を用いるということも皆無ではございませんので、そういう処置に出たということでございます。
  177. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いま法案の審議の直接のあれじゃありませんから、あなたの話をお聞きしておくことにいたしますが、少年が手錠をかけられて、ほかの二人の男が床に倒れたのをなぐっているのをおまわりさんのほうはとめなかった、こういうふうにいっていますね、その記事では。そこはどうなんですか。
  178. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) 神奈川県警の報告では、そういう事実はない。ただ、そういうふうに見えた形は、ねじ伏せて手錠をはめたということと、それから田谷という者となぐり合いをしたという状態との時間的な関係によって、倒れているものをなぐっているというような形にもあるいは見えたかと思いますが、その点は神奈川警察としてはそういう事実はないということを申しております。
  179. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それでは、そのことはまた別な機会に、いまあなたの話ですから、真実を追及するときはするとして、国家公安委員長がいるときにもう一点だけちょっとお尋ねしておきたいんですが、たとえば昭島というところがございますが、あそこの市会議員の人が無免許の問題とかなんとかで新聞に載りましたね。新聞に載ったので、新聞社に九回ほどいろいろな形でおどかしみたいな電話がかかってきている。「なまいきなことを書くと昭島市を歩かせないぞ」ということを言ったり、奥さんが出たときに、「奥さんかい、だんなに言っておいてくれよ、あんまり無理するとけがをするぞと」というようなことで九回ほど六月三日の午前七時五分から同日午後零時まで九回ほどおどしの電話がかかってきたというのですけれどもこういうような事実は聞いておりますか、警察庁のほうで。
  180. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) 警察の第一線であるいは聞いているかとも思いますが、われわれのほうでは聞いておりません。
  181. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いま言ったようなことがいわゆるこの市で行なわれているわけですね。これは言論というか、そういうような自由に対する暴力として行なわれているわけですから、これは事実関係をよく調べて、あなたのほうで指揮して適切な措置をとってもらいたい。これだけきょうここで要求しておきます。それはどうですか。
  182. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) その指揮ということばは別といたしまして、十分連絡してそういう悪質なものについては手を抜かないようにしたいと思います。
  183. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そこで、この法律の今度の改正案を含めて、第一、法律そのものを読んでみてよくわからないんですね。暴力行為処罰法というのを、改正案を含めてですね、一体幾つくらいの構成要件があるんでしょうか。この点はどうですか。今度の改正案含めてですよ。
  184. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 非常にたくさんあるように質問を実は衆議院のときにも受けたのでございますが、いろいろ組み合わせてまいりますと、幾つかの類型がここに出てくると思うのでございまして、少し組み合わせを図でも書いて研究してみないとみんなで幾つになるかわかりませんが、研究をしてみたいと思っております。
  185. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 組み合わせを図で書いて研究して見ないと幾つの構成要件があるかわからぬというのは、この法案についてはおかしいですよ。ぼくは、だから、今度の改正案を含めて、一体幾つ構成要件があるのかと。ある人は二百数十あると言う人もあるんですね。これは長谷川瀏さんも言っています。長谷川さんはぼくのところにわざわざ来たわけです。それは別として、これはどういうような構成要件が図でもいいから組み合わせがあるのか明らかにしてもらいたい。それが明らかにならないと審議が進まぬですよ。今度の改正分も含めてでいいんですが、幾つあるんですか。縦横に入り組んでいて、どういう構成要件がどこに引っかかってどうなのか、とてもわからぬですよ、しろうとでは。専門家でもわからないですよ。一つ一つ説明してくれませんか。
  186. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 私もそういうような研究をしたことがないのでございますが、前に申し上げました「現代法学全集」の、池田克前最高裁判事のお書きになりました「暴力行為等処罰法」の二百八十四ページ以下のところに書いてございまして、ひとつ私も研究をさしていただきますが、先生もその本をお持ちのようでございますので、私がこれを一つ一つ説明をいたさなければ相ならぬものでございましょうか。
  187. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私は研究してくれというのは、その池田克さんの本は、これは非常に大きくまとめてあるんですよ、類型がね。そうじゃなくて、もっとこまかくしてくると、それが団体の威力を示した場合もあるし、団体もしくは多衆の威力の両方を示した場合もあるし、多衆の威力を示した場合もあるわけで、それがいろいろなところに引っかかってくるわけです。それを具体的に図なら図であなたのほうでやってみたらどうですか。いままでやったことがないんですか。
  188. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 私はやったことがございませんのですが、なお、池田さんの本の二百八十四ページのところを見ましても、池田さんのは確かにまとめてあるので、「団体若ハ多衆ノ威力ヲ示シ」として、「暴行スル罪」、「脅迫スル罪」、「器物毀棄スル罪」と、こうありますが、これを団体と多衆の威力を分解してやれば、その倍になるわけでございます。「団体若ハ多衆を假装シテ威力ヲ示シ」というのを、これはまとめて書いてございますが、団体を仮装して威力を示す、あるいは多衆を仮装して威力を示すというふうに分解いたしますと、その倍になるわけでございます。「数人共同シ」、「常習トシテ」と、こうだんだんと分けてまいりますと、相当な数になろうかと思いますが、私はそういう勉強はあまり興味がありませんので、いたしたことはございません。
  189. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 興味がないとか興味があるとかの問題じゃないんじゃないですか。この法律を、特に改正案を出しておる以上は、この法律がどういうような構成要件があるのかということをはっきりさせなければ、この法案自体の内容が十分わからぬじゃないですか。第一条ノ二というもの、第一条ノ三というもの、これらのものは全体としてきわめて複雑多岐にわたっている法案なんです。ぼくはこれをつくった人は非常に頭がいいなと思うわけです、これを見ると。だれがこういうことを考え出したのかと思うんですが、具体的に一つ一つどういうような構成要件があるのだということを、長谷川さんは二百数十あると言うんですが、あるのかないのか、あなたのほうで研究してそれをつくってごらんなさい。それでなければ、この法案というものが、たとえばどこにどういうふうに引っかかってくるのかわからぬですよ。何でもかんでも引っかかるようにできているところにこの法案の魔術性というものがあるわけですよ。それはあなたのほうで興味があるとか興味がないの問題じゃないですよ。当然のことじゃないですか。あたりまえのことですよ、研究をするのは。これはいかんですよ。だから、研究をして、ちゃんと表を出してください。それであなたの出した表がまた不備な場合もあるから、不備な場合はこちらもよく研究をしなくちゃならぬけれども、それは一番大事なことですよ、犯罪ですから。だって、罪刑法定主義をとっているんですから。その構成要件が幾つあるのかどうかよくわからないというんでは、私は法案というものは一体何のためにあるのかわからんですよ。それをよく研究してくださいよ。
  190. 米田勲

    ○米田勲君 委員長、関連。
  191. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 米田君。
  192. 米田勲

    ○米田勲君 いま局長が発言したうち、私はそういうことに興味を持っておらないので云々ということばは、委員長のもとで善処してもらいたい。いま稲葉君の質問をしたことは、この法案が通ると、これは警察庁の手によって警察職権として行使されることを当然予想しなきゃならない。その場合に、犯罪の構成要件というものが当然問題になるわけです。これが明確にならなければ、警察職権は非常に拡大した形でふるわれることになるおそれが十分あるから、そこで、われわれはそれを懸念して、構成要件を明確に説明を聞いた上で妥当かどうかの判断をしようとして、いまこの質問が出ている。そのことを承知しながら、経験からいっても、あなたの立場からいっても、当然この質問が何のために行なわれているかということを知りつつ、私にはそういう興味がないので云々という発言はきわめて不穏当であります。したがって、委員長としては、注意を与えると同時に、この発言については速記録の上で善処されたい。
  193. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 委員長として、一応速記録を十分拝見いたしまして、相当の善処をいたしたいと思います。
  194. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) ちょっと御質問趣旨を私ははき違えているかもしれませんが、構成要件を明確にすることは、私この席から責務だと思って、幾らでも明らかにしなきゃならぬと思っております。しかし、いま御質問は、二百幾つという説もあるが勘定せよというお話でございましたので、これは私も勘定するということはやったこともありませんし——それは明確であるかないかということについての御質問でございましたら、いかほどでもお答えを、私の知っております限りお答えをさせていただくつもりでございます。
  195. 米田勲

    ○米田勲君 稲葉君は、学者の書いた、専門家の書いた見解をいま引例として出して言っているのであって、それを主張しているわけではない。こういう意見もあるが、あなたの立場の見解では構成要件としてはどういうものがあるのかと質問をしているのである。だから、その場合は、私はそういうたくさんの構成要件があるとは考えない、構成要件としてはこれこれであるということをあなたの判断できる範囲で答えれば事は済むんじゃないか。それであなたの答弁というものは成り立つ。それを、私はそんなことに興味がないので云々ということばは、この委員会の審査に対して非常に不穏当な発言ですよ。あなたはまじめに言っているかもしれないが、それが速記録に麗々と載っている。われわれがそれを黙っているということは許されない、この委員会の権威の上から。だから、あなた自身が積極的にそのことばを取り消して、正当な答弁をあらためてなすべきですよ。委員長から注意があるまでもなく、そのことを反省すべきじゃないですか。
  196. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 興味がないと申しました点は、つつしんで取り消しをいたします。しかしながら、弁解をするのではございませんけれども、幾つ構成要件があるかということは、私もいまお答えしましたように、研究をさせていただきます。それで幾つになるかを私どもの立場でお答えを申し上げたいと思います。
  197. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私は、この法律で、今度改正案が出ているわけですけれども、常々疑問に思っていますことは、これはとにかくわからないんですよ、この法律は。これは羽山課長の書いたものにも書いてあるでしょう。この法律は文語体で句読点もなく書き流されているんで、非常に読みにくい、落ちついて読めばよくわかると書いてあるけれども、落ちついて読んでもよくわからないわけですよ、あっちへ入りまじり、こっちへ入りまじりしているから。研究をするというんですから、これはまたあなたのほうで研究をしていただきたい。これを明らかにしていただきたいということを言うわけで、いまここでということを言っているわけではないわけです、それはそこで済んだわけですから。これはそれで一応あれします。  そこで、もう一つの問題は、こういうような暴力行為処罰法のような、何といいますか、立法、これはほかの国でもあるんですか。どうなっているんですか、その立法例は。
  198. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) ほかの国でもあるかということでございますが、これも私は非常につまびらかにいたしているわけではございませんけれども、この種の条文は刑法の中に書き込んである立法例もございます。これは私も見ておりますが、特別法の形でこういう条文を置いてありますのは、私の知る限りではございません。
  199. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これはあなたのところの長島参事官が書いた本ですよ。これはあなたごらんになったでしょう。日本刑法学会の「刑事法講座」です。この中で長島君がはっきり言っているのは、「わが国のように、団体若くは多衆の威力を示して暴行、脅迫又は器物投棄の罪を犯した場合の刑を特に加重している例は見当らないようである。」、諸外国にはないんだと言っているんです、日本のようなこういう特殊なやり方は。こういうことをはっきり長島君がそういう意味のことを言っているわけです。だから私は聞いているわけですよ。きょう長島君は来ておりませんか。——来ていないようですね。だから、これはどういう意味で言っているのか。前にたとえばスイスの刑法がどうだとか、アメリカの各州の成文法はどうだとか、フランス、イギリスはどうだとか引用いたしておりますけれども、そういうふうなことを言っているけれども、「わが国のように、団体若くは多衆の威力を示して暴行、脅迫又は器物投棄の罪を犯した場合の刑を特に加重している例は見当らないようである。」と、こう言っている。だから私は聞くわけです。あなたのところの参事官がこう言っているんですから、これは。だから、立法として日本独自の形と言っては言い過ぎかもわからぬけれども、そういう形でこの法案ができている。しかも、この法案そのものが非常にわかりにくい。わかりにくくて、構成要件が幾つあるかちょっと聞いただけではわからぬわけですよ。だから私はその点を問題にしているのであって、だから、長島君がどういうような意味でこういうふうなことを書いたんだか、あなたのところで聞いてくださいよ。ちゃんと本になっているわけです、「刑事法講座」に。  もう一つ、この中で長島君の考え方ではあなた方の考え方と違うところがあるんですよ。知っているでしょう。これは私見と言えば私見ですから、深く取り上げませんけれども、長島君の書いたものの中には、法務省の今度の説明と違いますよ。違うものがもう一カ所あるわけですよ。それはまあ私が聞けば、個人が発表したものだから個人の意見だからと言うから、そこまでは長島君の立場もあるからぼくはあれしませんけれども、いずれにしても、こういうような形でどうもほかの国には見当たらないような立法例だと、こう言うんです。なぜほかの国に見当たらないような立法例というものが特に日本で行なわれ、しかもなおかつそれを改正しようとしているのか、そこに問題があると思うんです。  そこで、もう一つの問題は、なぜこれを暴力行為処罰法の中に入れたのか、改正を。これは普通刑法でもできるのじゃないかということですね。これは羽山氏の論文の中にも書いてありますが、前の兇器準備集合罪の場合は普通刑法でやっていたわけですね。今度の場合に普通の刑法の改正ではまずかったというのですか、本来ならば普通の刑法の一部改正の形でやるべきだ、こういうんですか、どちらなんです。本来ならやるべきなんだけれども、少しおくれるから、だからこういう法律の形で、特別法の改正というような形でやったと、こういうんでしょうか。本来なら刑法の改正でやるべきなんだ、だけど便宜的にこういう形でやったんだと、こういうことですか、どうなんですか、ここのところは。
  200. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 今回の改正につきましては、異例な、外国に立法例のあまりないような規定を特に設けたというのではございませんで、これは既存の法律に一部改正を加えるというので、今回改正しようと存じますのは、外国にも幾つかの立法例があるものでございます。これはひとつ誤解のございませんように御了解を願いたいと思います。  それから、準備草案におきましても、暴力行為処罰法相当部分、請託罪を除きましてほとんどの部分が刑法の中に規定せられるという趣旨で立案されておりますが、先ほど申しましたように、外国ではこういう特別法という形で取り上げたのはないようで、私は知りませんけれども、これに類する規定は各国によりましてないわけではないのでございます。本来、この規定は刑法的な一般法なのでございまして、でありますから、一般法的な性格を持った法改正でありますならば刑法の規定に入れて改正をするのが当を得たものであろうというふうに私ども立法の衝に当りました者としては考えるわけでございますけれども、暴力立法を考えます場合に改正をするということになりましてあれもこれもということに手をつけますと、まさにこれは刑法の全面改正につながってしまう事項でございます。そこで、必要にして最小限度ということで改正をいたすとするならばどうしたらいいかということで、これは立法技術的にも非常に苦心をみなでいたしたところでございますが結局、暴力団暴力行為を主としてねらう、焦点を定めて、それに適合する法律の改正ということになりますと、暴力行為処罰法という現行法がございますので、刑法全面政正までのつなぎとして、手を入れるとすればこの法律の一部改正にいくのがその改正の趣旨を生かすのに当を得ておるのではないかという結論に実は相なったわけでございます。  この法律も、すでに、いろいろ御議論は存しますけれども、四十年施行されてまいりました結果として、判例も幾つか出ておりますし、解釈も、人によっていろいろな解釈がありますけれども、いわゆる通説というものもすでに出ておるのでございまして、これらの判例、学説等をすべて受け継ぎまして法解釈の指針とするということになりますと、全く新しい法をつくるよりも、既存の法律を利用するのが一番いい。そういうことからいたしまして、特に常習犯の規定を改正するということになりますと、現行法の一条二項にその規定が現にあるわけでございますのでそれを直していく。ただ、一条ノ二になります銃砲刀剣類の規定は、むしろこれは傷害罪の特別類型でございますので、刑法に書いてもいいわけでございますが、一部刑法に持っていき一部は暴力立法の改正というようなばらばらなことでなく、できるだけ統一的にやっていくほうがいいという考えで、この暴力行為処罰法の一部改正ということにいたした次第でございます。
  201. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 暴力団に所属する者の銃砲刀剣類による傷害ですか、これらを重くしたいんだということになれば、暴力団に所属する者のそういうふうなものはそれとして、そうでない暴力団などに所属しない者が偶発的に行なった場合ですね、そういうような場合まで重く処罰しなければならないというのはおかしいじゃないですか。
  202. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) そういう場合もございますので、おのずから法定刑には限度が出てくるわけでございます。これが法定刑をつくります場合の最もむずかしいところでございますが、なるほど「一年以上」というふうに銃砲刀剣類傷害につきましては下限を定めましたが、これが情状酌量によって減軽になる場合もございますし、執行猶予の現行法の規定もございますし、さらにまた検察官の便宜主義によって起訴猶予という道もあるのでございまして、情状によりましては十分酌量する方法はあるわけでございます。そういう点を考慮いたしまして、「一年以上」といたしましても、罪そのものの性格から言いますと、決して不当ではないという確信を持っておるわけでございます。
  203. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 情状によって酌量する余地がある、だから偶発的なもので暴力団に所属しない者までもこれでやるんだということになれば、それならば現行法だってやれるんじゃないですか。上限が同じなんですから。上限をもしも暴力団の場合はもつと上げるというなら話は別ですけれども、上限が同じで、下限だって、下までただ一年というところで区切るかもわかりませんけれども、現在の段階だって、実際問題としては、そこでいくらでも酌量減軽なりいろいろな形で量刑ができるのじゃないですか。そうじゃないですか。いまの法律と一体どこが違うんですか。いまの法律とちっとも違わないじゃないですか、改正案は。ただ下限はつけたにしても、上限が同じであるから、それよりも重くなることはないんじゃないですか。かりに下限をつけても、酌量減軽ができるわけでしょう。酌量減軽は考えられるわけでしょう、実際は。この場合だってそうすれば六月になるのじゃないですか。減軽を認めるならば、結局ちっとも違わないじゃないですか、実際問題として。
  204. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) ちっとも違わないことはないので、非常に違っておると私は考えておりますが、上のほうを加重類型を定めたということになりますと、下限を引き上げるという方法よりもむしろ通常の形としては上限を引き上げるのが普通の形でございますが、現行の傷害罪という規定は十年以下から科料まで定めておりまして、あらゆる悪質の傷害罪から、きわめて偶発的な暴行の結果的加重犯のような傷害までを含めて、非常に幅の広い法定刑を定めておるのでございます。もしこの通常の形の傷害罪、特別の類型の傷害罪というふうに二つに分けるということになりますと、準備草案が示しておりますように、通常の形の傷害罪は七年以下というふうにしておいて、重い類型の傷害罪は十年以下というふうに上も上げるというのが私は筋の通った話だと思いますが、そのような改正は刑法改正の際にまた検討していただくのが相当だという考えでございまして、上限については、現行法は一切の重い傷害をも含めて上限をきめているということから、また下限のほうは科料まであるということで、銃砲刀剣類のような危険な武器に匹敵するようなものを用いて傷害をしたそのような故意犯であるような場合に、科料、罰金というようなことは、とうていこの手段方法からいたしまして、このような傷害にはふさわしくないことは、これはもう一見明瞭でございます。上のほうはいま申し上げたような理由で含まれていると理解されますので、下限のほうでしぼってこの重い類型の傷害であるということを明らかにしたわけでございます。
  205. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 幅の広い法定刑のつくり方、これは日本の刑法の全体の特色でしょう。これはドイツ刑法でも何でも非常にこまかく分けます。殺人の場合でもそういうのと比べて日本の刑法全体が幅の広い法定刑を用いていることが特色じゃないですか。そうでしょう。そこまではいいでしょう。どうですか。
  206. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) これは日本の刑法の特徴でございまして、明治四十年制定されました当時はいわゆる新しい刑法として世界的に有名であったと私は聞いております。しかしながら今日の刑法理論の発展はこれでは広過ぎるので、さらにある程度の段階を、構成要件の細分化ということが一つの立法の目標にも現在ではなっているわけでございます。諸外国で御指摘のように非常にこまかく分類しております構成要件の国ではこれを単純化していこう、それから日本のように幅の広過ぎているものについてはある程度の細分化をはかっていく、そうして地球上のあらゆる国がある程度構成要件においても歩み寄りの姿を見せているというのが現在の刑法学界の私は趨勢であろうと見ているわけでございます。
  207. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、現在の法定刑の範囲内でまかなえるんだ。やろうと思えばやれるんですね。保釈の問題については別です。議論があるから。やれるんだけれども、裁判所の刑が軽いからもっと重くしてもらいたいんだということなんでしょう、端的に言えば一つ理由は。
  208. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 端的に申しますればそういうことにもなろうかと思いますが、裁判所の刑を重くしてもらうということの意味でございますが、裁判所の刑を重くするといって、裁判官がひとり負うべき責任のことまでおっしゃいませんでしたが、これは法を執行します者の全部の責任でございまして、法を運用していきます場合に、その罪にふさわしい刑を盛るというのがたてまえでございますが、最近の実情は下限のほうに集中してきておる、このことがひいては暴力団の改過ということばが当たるかどうかわかりませんが、矯正教育を施していく上におきましても、幾つかの支障を生じてきておるのでございますし、やはり相当な刑を盛っていかなければならぬ。これの指針をなすものはまさしく立法でございますので、そういう意味で、下限を引き上げて、この種の悪質な犯罪につきましては相当重い量刑をしていくのが相当だ、かように考えておるわけでございます。
  209. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、いままで暴力行為処罰法関係で傷害の刑が軽いとかなんとかいろいろ言っておりますね。それは、暴力団関係の事件で刑が軽過ぎた、そうしてそれで検事控訴したんだ、検事控訴して検事控訴が勝ったんだというのがどの程度あるんですか、全体の中で。
  210. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) これはまあ非常にむずかしい分析になりまして、ただ統計をいろいろにこう眺めて見るだけではいまのような御質問にお答えするような結論は出ないと思うのでございますが、暴力団だけの刑をとってみましたそういう資料はお手元へ差し上げてみたわけでございますが、やはり全体を見まするということになりますと、暴力団であろうと何であろうと、とにかく暴力行為処罰法で処罰されましたものの全部の統計から一つ傾向を探り出すにとどまるのでございまして、これもお手元へ差し上げました統計資料で明らかにしておるつもりでございます。いま仰せのように、暴力団についてどういう刑が言い渡され、それに対してどういう理由でまた検事控訴をして、その結果がどうなったかというようなことになりますと、まあなかなかこれは資料としてつくりにくいものですから、その点につきましては、具体的な事例集によって一面見ていただき、もう一つは、暴力団の量刑状況を見ていただき、他面全体的な傾向を見ていただく、こういったような統計を相互に比照して御推察といいますか、達観をしていただきたい、かように考えておるわけでございます。
  211. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 法務省から出た「昭和三十八年中に東京地方裁判所において判決言渡しがあった傷害事件のうち銃砲刀剣類を用いた事犯の科刑調」というのがありましたね。これを見ても、一審判決で一年以下というのは一つだけ、二つぐらいで、あとは何もないじゃないですか。ほとんどがみな一年以上じゃないですか。
  212. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) この資料は、衆議院段階で御要望がございまして調査をしたのでございますが、これも一十分な資料ではございませんわけで、一つ二つじゃないかとおっしゃいましたが、これは六つこの中に一年以下のものがございまして、ただ、ここで注意しなければなりませんのは、前歴累犯になっておるものが相当あるのでございまして、こういう点を考慮してこの刑が出ておるということがまず頭にくるわけでございまして、それからもう一つは、執行猶予の数も相当この中にはあるということもこの表によってお認めいただけると思うのです。これは、注——注のところには書いてございませんが、この資料をつくります経過からして、ほかの罪と、これよりも軽い罪と併合罪になりますものはこれに加えましたが、これよりも重い罪との併合罪になるものははずしまして、できるだけ銃砲刀剣と、すべてに当たるかどうかわかりませんが、それと近いものをもって傷害をした、今回の改正の第一条ノ二に該当するであろうと思われるものを拾ったのでございまして、数字は少ないのでございますが、これをつくりますのには非常な努力をしてつくった資料でございます。
  213. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 この表の求刑はどのくらいなんですか。いまわからなければあとでもいいですが、求刑はどの程度ですか。そして、この中で検事控訴をしたものはどのくらいあるんですか。
  214. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 実は、調査の過程におきまして、求刑も、検事控訴をしたか、被告人控訴になったかということもついでに調べたのでありますが、具体的な事件でございますので、求刑を書きますと、情状も明らかにしないで検事の意見と裁判官の意見とが著しく食い違っているということだけが表面に出ますので、これは一体いかがなものであろうかという実は考慮をいたしまして、求刑のほうはそちらに差し上げました表には載せていないのでありますが、それからまた検事控訴をしたことについても載せていないのでありますが、調査はいたしております。
  215. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これだけもらってもわからないですよ、求刑とその結果として検事控訴があったのかなかったのかわからなければ。あなたのほうでは裁判所の刑が軽いと言うんでしょう。軽いか重いかは、やはりそれがわからなくては……。いまわからなければ時間があれですから、あとで表にして出してください。あなたのほうでは裁判所の刑が軽いからこういう法律をつくって重くすると言っても、求刑もわからないし、不服で検事控訴をしたのかしないのかわからぬのでは、重いか軽いか判断のしょうがないですよ。いまでなくていいです。
  216. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) ただいまの点は、衆議院の段階でも申し上げたのでございますが、ただいまの趣旨、この部分が刑が軽いというのでこの一年の刑をつくったのではなくて、このような兇器を用いてやる傷害という罪にふさわしい刑ということから「一年以上十年以下」という刑を、案をつくったのでございまして、このような事件というものは年間に七百ないし千程度でございます。傷害事件の中では少ないのでございますが、少なくてもこれは危険な罪であるということについては、そういう罪は現に七百ないし千あるということは想定されますので、こういう罪については重い法定刑をつくるというのが趣旨でございまして、こういう罪について、非常に裁判結果が軽いから重くするのだということではございません。重くする重くすると申しておるのは、暴力団の構成員の人たちの量刑されておるのが、この罪も含むかもしれませんが、一般的に申しまして軽い、それで重くしなければならないということを申しておるのでございますが、この罪というものについて特にそういうことを私どもとしては申しておるわけではございません。  求刑の点でございますけれども、先ほど申しましたような理由で名前がはっきりわかっておりますので、それに求刑、量刑を書きますことは、どういうものでございましょうか、私はちょっと疑問に思っておるのでございますが、資料に出しますことにつきましては少し内部で検討してみまして御要求に応じ得るかどうかを考えてみたいと思います。
  217. 亀田得治

    ○亀田得治君 委員長、関連。
  218. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 亀田君。
  219. 亀田得治

    ○亀田得治君 いやに刑事局長は求刑の点を出したがっておらぬようですけれでも、しかし、これは公開の裁判の結果のほんの一部の説明にすぎないわけで、そんなものを出さぬという法は私はないと思う。お聞きしておって想像するのは、おそらく検察庁も案外たいした求刑をしていないんじゃないか。あるいは、控訴等もたいしてやっていないんじゃないかという感じを持つわけですよ。それでしたら、それは非常に重大な問題ではあるわけでしてね。公開の裁判の結果の一部を、しかも参議院の法務委員会で重要な段階で資料として出してもらう、これは当然なことです。これはひとつ委員長から命令してください。
  220. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 刑事局長、どうですか、いま亀田氏のいわれたことね、もっともだと思いますが、できるだけ——できるだけじゃなくて、十分御調査の上御提出を願いたいと、こう委員長からお願いします。
  221. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 委員長の御要望もございますので、できるだけ御要望に沿うように研究さしていただきます。
  222. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いま亀田さんも言われて、委員長が言われたのは、この配られた表だけの問題でなくて、全体として、あなたのほうで、科刑が非常に軽い、軽いから重くするんだと、こう言うんでしょう。そうじゃないんですか。そういう意味じゃないんですか。じゃ何なんですか。軽くないんですか。軽くないんなら、別に重くする必要がないじゃないですか。
  223. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) この種の事件が軽いというようなことを私は申していないのでございます。銃砲刀剣類のような重い手段を用いての傷害事件についてはこういう法定刑が当然必要だということを言っているのでありまして、暴力事犯全体としては、先ほど申しましたように、傷害は今度の改正ではこれだけでございますが、恐喝の罪を見ましても、その他暴力行為の一条一項の罪を見ましても、大体において軽いほうに集中しておるということは、統計で先ほど御説明したとおりでございます。全般的な問題としましては、そういう傾向にございますが、銃砲刀剣類という罪が現在あるわけじゃございませんで、そういうものは傷害罪の中の一つに入っておるわけでございます。そういうものが特に軽いから重くせにゃいかぬというのでこの改正案を出したのではございませんで、そこのところを混同して御質問が衆議院でもございまして、私も弁明につとめたわけでございますが、どうかその点は御了承願いたいと思います。
  224. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 御了承願いたいといったって、わかれば御了承しますけれどもね。わからなきやなかなか了承できないですよ。なぜそれじゃこういうふうなものを設けて下限を上げたがるんですか。「銃砲又ハ刀剣類ヲ用ヒテ人ノ身体ヲ傷害シタル者」というのは、傷害罪と銃砲等所持取締法の併合罪というか——併合罪でしょうな。所持だけで違反になるんですからね、片っぽうは。併合罪だから、刑はもっと十年以上に重くなるんじゃないですか。当然その範囲内でまかなえるのだから、特に下限を設けたという意味は一体どこにあるのかといえば、いままでもそういうものは軽過ぎるんだから重くするというのじゃないですか。銃砲等を用いて人の身体を傷害した者は、いまの法律ではどうなんです。傷害罪と銃砲等所持取締法違反と何になるんですか。
  225. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 現行法のもとでは、そういう場合には、仰せのように併合罪でございます、傷害罪と。
  226. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 上限は幾らになるんです。
  227. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 上限は十年……。
  228. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 十年じゃないですよ。
  229. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 片方は…。
  230. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 三年以下です。
  231. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 十三年になりますね。これは現行法が今度改正になりましても、銃砲所持取締法と両方になれば、同じような上限になるわけなんです。これは暴力団の立法として前に昭和三十三年に御審議願いました兇器準備集合罪、これも、件数としては六百件足らずでございますが、ほとんど八〇%近いものが暴力団によって犯されているということを先ほど御説明しましたが、兇器——兇器といっても、このようなピストル、刀を持ってやる傷害というものは、私どもの調査したところでは、ほとんど多くのものが暴力団の構成員によって犯されていると思われるのでございます。そうだとしますと、件数は千件、千人足らずでございますけれども、そういう罪を重くするということによって暴力団の対策に資し得るのではないかという考え方でございまして、裁判官がこういう事件を特に兇器を用いたものが軽いから、それで刑を引き上げるというのではなくて、刑が一年という幅になりましたのは、こういう種類の重い類型の犯罪でありますから、短期を一年にしたのでございます。上を上げなかったのは、先ほど御説明したように、現行法は、十年という刑の中に番極端な重い傷害をも考慮に入れて立案したものと思われます。しかしながら、下のほうが科料までいっているところを見ても、重いところだけじゃなく、一番軽いものまでも考えての科料の規定だと思いますので、こういう重いものについては、上のほうは上げないけれども、下のほうだけ上げるということで法定刑のバランスをとった、こういうことでございます。
  232. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 よくわからないんですがね、説明のしかたが。実際に暴力団が銃砲刀剣類を用いて人の身体に傷害することが多いんですか。多いと。そこまではいい。多いし、それはいま言ったように、併合罪になれば十三年、上限は。それで下限はずっと下まであるけれども、実際の適用例というものを調べてみれば、そうした場合、一年以下というのは、暴力団が特にやった場合にはあまりない、普通の場合は。ことに前科があって累犯加重になる場合が多いわけですから、もっと非常に重くなるわけです。上限は。上限は重くなるんだから、普通の裁判の状態では当然まかなえるわけじゃないですか。裁判は普通一年とか二年とかいつも一年以上の刑で処断されておれば、特にこれをやる必要はないと、こういうわけですか。そこはどうなんですか。裁判で銃砲刀剣類を用いて人の身体を傷害した者は二年とか三年とかずっと刑がいっておれば、特にこの条文をつくる必要はないわけでしょう。それはそうじやないですか。
  233. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) それは仰せのとおりだと思うのでございます。ただ、こういう立法は、二つしか言うなれば改正をしておらないのでございますけれども、それの持つ意味は、この二つを改正することによって一般的な暴力犯罪に対して重い刑をもって臨むという立法的な一つの手が打たれたわけでございます。それの照り返しと申しますか、これが一つの指導理念になりまして、暴力団の行なうその他の恐喝とかというようなものにつきまして量刑の指針になっていくという意味がこの中にはあるわけでございまして、そういうことも期待しながら、最小限度の立法をすることによって対策の一環としたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  234. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは「法制審議会刑事法部会第二十三回会議議事録」ですが、この中で、問として、「結局、法定刑の下限を上げるため、すなわち裁判が軽過ぎるから、ある意味社会の要求に従って裁判所をしばるための改正だということになるのか。」、こういう問に対して、法務省当局は、「裁判官が独立であるから、各ケースについて適正な判断をしていると思うが、下限の方もこのように考えてもらいたいという立法の側からの希望が表明されるだけであって、裁判官をそれによってしばるというのではない。」と答えております。裁判官は独立であるから縛るわけにいかない。結局裁判のほうでも一つと下限のほうも一年ということより下げないようにしてもらいたい、こういう要求をいままでしているんだけれどもうまくいかない、だからして結局法律をつくるんだということになるのではないですか。それならそれでいいじゃないですか、そういう考え方ならば。
  235. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) そういう質疑応答がございましたことは私もはっきり記憶いたしております。答えましたのは私でございますから、なおよくわかっておるわけでございますが、ただ、そのときは刑が下限のほうに集中しておって、量刑が一般的に下限のほうに集中しておって適正でないと思われるということは、これは一般論として申しておるわけでございまして、この一条ノ二がそういう音一味だという趣旨ではないわけでございます。一般的に暴力犯罪、今回の改正になろうとしているものだけじゃなくて、一般的にそういう状態に今日ではなっておると、これでは暴力対策として適当でない、であるから、一部構成要件の重いものについて重い刑を盛るということによってこれが一つの量刑上の指針になっていくということを私どもは期待しているという趣旨でこの問答は行なわれておるわけでございます。
  236. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その答は、前の続きで、「刑罰が改正刑法準備草案よりも重くなっているものがあるが、それには特別な理由があるか。」と、こういうことの続きなんですから、どうもよくわかりませんが、まあそれはそれとして、そうすると、第一条ノ二で言う「銃砲又ハ刀剣類」ですね、これは、「法律案逐条説明書」によりますと、「「銃砲」又は「刀剣類」とは、銃砲刀剣類等所持取締法第二条にいう「銃砲」又は「刀剣類」とその内容を同じくするものである。」と、こう書いてありますね。これでよろしいですか。
  237. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) それで私どもの立場は明らかになっていると思います。
  238. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 しかし、法制審議会の審議のときには、あなた方はそういうふうな答えをしていないんじゃないですか。違うんじゃないですか。「第二条にいう「銃砲」又は「刀剣類」とその内容を同じくするものである。」と、ここで「説明書」ではっきり書いてありますよ。しかし、法制審議会の議事録を読んでみますと、「大部分は取締法と内容、実態を同じくするであろうが、法律制定の趣旨を異にしているので若干の出入りがあると考える。」と、こう言っているんじゃないですか、法制審議会で。この言っていることと、いまあなたのわれわれに資料として出した「法律案逐条説明書」、これで、銃砲または刀剣類とは取締法第二条にいうこれと「内容を同じくするものである。」というのとは違うんじゃないですか。
  239. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) それは明らかに違います。初め私どもは法制審議会で述べましたような解釈を事務当局としましてはとったわけでございますが、法制審議会で審議をしておりますうちに、なるほど法律は片一方は銃砲刀剣類の取締法であり、片一方は刑法的な一般法であるというところから、制定の目的を異にしておるのでありますけれども、他の行政目的じゃなくて、やはり取り締まりという目的から申しますならば、同じ目的に奉仕するので、片方は兇器という点に着目をしてその所持を取り締まっていこう、片一方はそういうものを用いて傷害行為をするというその違いはございますけれども取り締まりの目的に、同じ目的に奉仕するということである点においては同じである。だといたしますると、現行法上、銃砲刀剣類というものが銃砲刀剣類等所持取締法二条にはっきりと定義が掲げてございますので、その定義と違った解釈をするということは現行法の全体系から申しまして適当でないということで、言うなればその後の審議の過程を経て私どもの統一解釈と申しますか一つの結論に到達した解釈がただいま「逐条説明書」の中に書きましたような結論になっておるわけでございまして、現在の私どもの解釈としましてはその「逐条説明書」のように解釈をしておるわけでございます。
  240. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、なぜこの「説明書」では「第二条にいう「銃砲」又は「刀剣類」とその内容を同じくするものである。」とここに書いてあるのかということは、法制審議会のときとの答弁は違うのだ、その後変わってきて統一解釈をしたんだ、こういう説明ですから、わかりました。そうすると具体的にはどういうふうに違いますか。法制審議会のときにあなた方が答弁していたものと、こういうふうに第二条に言うものと内容を同じくするのだとはっきり言っているところとどういうふうに違いますか。
  241. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) これはどういうふうに違うかと申しますと、たとえば刃渡十五センチメートル以上の日本刀というのを例にとって申しますと、十五センチが一センチでも欠ければ、この定義による日本刀には当たらないという解釈に私はなると思うのでございますが、刑法的な考え方から言って、たとえば十四センチ半だったという場合に、それを日本刀ではないというふうに解釈することがはたして適当かどうかといったすれすれのところに問題がありそうな気がいたしたわけでございまして、そういう考え方は学者の中にはいまでもそういうふうな考え方をされる方があると思います。また、私どもも当初そういう考え方を実は持ったわけでございましたが、そういうところで違ってくる。そして、なぜこのはっきりしたものにしていこうという考え方に変わってきたかと申しますと、その審議会の記録にも明らかになっておりますが、これが必ずしも明確でないので、定義規定を置いたらどうかという議論もございまして、それで定義規定を置くかどうかということが審議の対象になったわけでございますが、いろいろ論議をしますと、本来これは定義を置かなくても同じ現行法の体系のもとでは同じに解釈されるのだ、それを定義を置くとかえって違う銃砲刀剣類というものがまた現われてきて、かえって困難になってくるのじゃないかというような議論が大勢を占めまして、結局定義は置かないということとうらはらになりまして、この解釈を銃砲刀剣類等所持取締法二条に掲げている銃砲刀剣類であるという解釈に落ちついたわけでございます。  そういういきさつがありまして、もし前のような解釈をするとどう違うかということは、そういった観念的なものであろうかと思います。
  242. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それじゃ、銃砲刀剣類等所持取締法が将来改正されたらどうなんですか。
  243. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) その場合には、私は、この法律の性質上、現在の時点で定まっております銃砲刀剣類のあの定義に掲げたその内容の銃砲刀剣類がそのままいくのだと思うのです。したがって、たとえば取り締まり目的をやるために、飛び出しナイフはいま五・五センチメートル以下の飛び出しナイフで一定の形態を備えていないものは除外されておりますが、あれも除外されぬという改正がかりに起こったといたしましても、この暴力行為処罰法第一条ノ二に言う銃砲刀剣類はその改正の飛び出しナイフは含まれてこないというふうに、法制審議会でもそういう理解に立って議論をいたしておるわけでございます。
  244. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは飛び出しナイフだけの問題ですか。銃砲刀剣類等所持取締法は、きのうもこまかく質問しましたが、これは将来改正される可能性が多いわけですよ。ずいぶん改正されているわけですからね。そのつど何か必要があると改正されているんですから。いまあなたが言われたように、これは現在のところの言う銃砲刀剣類なんだ、それに限定されるんだということで、大臣それでいいんですか。いいのならはっきりさしておいたほうがいいと思う。
  245. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) いまの御質問の点は、実に私には非常にむずかしいところでありまして、同じような疑問を持ちました、説明を聞きまして。刑事局長が申し上げたことでよろしいと信じております。
  246. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 よろしいと信ずるのはけっこうですがね。それなら、この暴力行為等処罰法の中で「銃砲又は刀剣類」ということに対してちゃんとした定義を設けておきなさいということが再三学者からも言われておるわけですね。その他の人からも言われておるわけですよ。この所持取締法が改正されるということは考えられるのですからね、いろんな面できわめて。これは警察のほうの所管で、あなたのほうの所管じゃないんですよね。法務省は相談を受けるかもわからぬけれども、銃砲等取締法は法務省の所管ではないわけだ。警察庁のほうの所管なんだし、十分な連絡もなしにどんどん改正される。しかも、委員会はこの委員会にかからぬわけですよ。地方行政委員にかかるのですから、十分な連絡のないことも考えられるんです。それなら、第一条ノ二の「銃砲又ハ刀剣類」に対してちゃんとカッコならカッコをして、現行の、いまこれのいうところの銃砲または刀剣類だとはっきりこれはぼくは限定すべきだと思う。定義すべきだと思うんですよ。定義されるのならまた話は別だと思うんですよ。ただそう思うと言ったところで、実際はそれはただ解釈だけであって、実際の適用のときにはそういうふうに適用されなかったところでどうということはないわけでしょう。これは別に有権解釈になるわけじゃないでしょう。いまあなたが言われたように、有権解釈みたいになって、それと違った解釈をしないということは確言できないのじゃないですか。できますか、これは。
  247. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) もちろん、確言できるかとおっしゃられても、たてまえ上そういうことはできないのでございますが、いま御疑念になった点は、やはり法制審議会でも議論に出ました。それで、定義を置くかわりにカッコに入れる——まあカッコに入れる入れないは別にして、銃砲刀剣類等所持取締法二条の銃砲刀剣類ということに書くことの適否につきましても議論があったわけでございますが、これは刑法的な規定が行政法の動きによってどんどん動いていくというようなことは適当でないという議論で、これは改正意見は少数でございましたが、適当でないということで、これも議論の末そうなりました。それからまた、もっと違う立場の定義規定の入れ方もそのとき議論になったのでございますが、いずれも一長一短ございまして、やはりこのままの原案のままのほうがよろしい。別に手前みそで申し上げるのじゃございませんが、結局議論をした末にやはりここへ戻ってまいりまして、原案のままで解釈はこうだということに相なったいきさつがございます。他の改正意見等もたしか審議会の記録の中に出ておったかと思いますが、事務当局としましても、その議論が出ましたときにいろいろな案を考えてみたわけでございます。
  248. 亀田得治

    ○亀田得治君 委員長、関連して。
  249. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 亀田君。
  250. 亀田得治

    ○亀田得治君 この点はやはりもっとはっきりしておく必要があるように私も思う。それで、はっきりすることによって何か支障があるのなら、これはまた別なんだ。だから、はっきりしかたは二通りあると思うんです。一つは、そういう解釈をここで明確にしておくというのも一つのはっきりのしかた。もう一つは、銃刀法によるというふうなカッコを入れるのも一つのやり方。しかし、これもやはり不明確。銃刀法が動いていくという問題があるから、そこでカッコにどうせ入れるのであれば、現在の銃刀法で定義しておるそのままのものをここへ書き込んだらいい。これならもう動く余地がないわけなんですね。それはちょっと長過ぎてていさいがいいとか悪いとか、必ずそういうていさいのことを考える人も相当あると思うんですね。そんなことは必要ないと思うんですよ。ともかく問題をはっきりさせておくことが必要なんだ。あの銃刀類というものがやはり広く解釈されるおそれもあるのじゃないかということは、何といってもこの立法に批判的な人の立場からは出ておるわけですから、ちゃんとこうカッコの中にはっきり書いていいのじゃないですか。書いたからといって、あなたのほうがほんとうにそのつもりでおるのなら、差しつかえないわけでしょう。明確にするのですから、それはいいことなんです。これは大臣、どうです。
  251. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 先ほどから刑事局長がお答え申し上げているように、同じ文句を書きますと、そこでまた同じような「銃砲」と言っても、別の解釈が起こるのじゃないか。いろいろ専門家がそういう立場からすべて検討して、現行のままが結局それはベストである、こういう結論になった。私はそれを信用しています。
  252. 亀田得治

    ○亀田得治君 同じ文句を書いてほかの解釈が起こる、そんなことはこれはあり得ぬですよ。刃渡何センチと書いてある場合に、その何センチが、銃刀法の場合と暴力行為法の場合と二通りになっておる、そんなことはあり得ないんです。それからまた、多少そういう物理的なことばでなくとも、ほかの法律的な用語の場合であっても、それは両方とも同じような意味に解釈するということになる。これははっきりしているんです。そんなことすら保証できないというなら、こんなことでは、法律の解釈の説明を求めておったって、これはもう出まかせということになってしまう。だから、その点は、大臣、そんなことにはならぬが、ただ問題は、銃刀法の改正、変更ということがあり得るので、銃刀法が改正されたら、いまのままの条文、あるいはいま銃刀法によるカッコのしかたであっては、銃刀法の改正につれてこの暴力行為法が広がっていくおそれがあるのじゃないか、そこが問題なんです。大臣意味をよく理解していただいているでしょうか。
  253. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 問題は私理解はしておると思います。それで、考え方は、銃砲刀剣類云々は、現在の銃砲刀剣類の取締の法律と同じ範囲のものであるということが一つのきまった私ども考え方です。それを拡張しようとも縮小しようとも思っていないのだ、それが一番間違いなく表現される方法が何であるか、こういう問題だと思うのであります。それで、先ほど御説明申し上げますように、同じ文句を、銃砲取締のほうの規則と同じような文句をこちらに書きました場合には、専門的に検討すると、違った解釈をかえって起こす憂いがある、そう申しますから、それはいろいろ聞きまして、私もなるほどと。それじゃそう考えるほかない。  それから銃砲刀剣類の取締の規則が改正された場合には、それでそのままついて広がるのじゃないかと。これはごもっともで、私もそれで質問したところが、いまの法律解釈ではそうではない、現在の立法したときの銃砲刀剣類取締法の規則の範囲そのままいくのが法律上の正しい解釈である。それならそれがよろしい、これが私の考えであります。
  254. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちょっとおかしいですよ。大臣にそんな間違ったことをだれが教えるのか知らぬが、法文に同じものを書いて、それは二つの解釈が出てくるおそれがあるというふうに大臣は教えられているようですが、刑事局長、一体そんなことを教えたんですか。おかしいじゃないですか。
  255. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 大臣の御説明をちょっとふえんさせていただきます。  大臣に私がいろいろ法制審議会のときに議論になりましたことを申し上げた中の一つに、いま亀田先生のおっしゃったのも一つの案。それからまだ他の案もございます。たとえば、銃砲、刀剣、やり、なぎなた、あいくち、こういうふうに並べて、これ以外のものはもう全部入らないのだというふうに書くのも刑法的な書き方としては一つ考え方でございます。そういう案も実は出たのでございます。しかし、もしそういう書き方を——いま亀田先生はそういう御質問はなかったのですが、そういう考え方をした場合に、そうすると、いまの十五センチ以上という制限が取締法にありますが、それがないと、かえって短いのも日本刀だという判断になるおそれもある、そこで、広がってくるおそれがあるというような御説明をしたのの、いま大臣のお答えの中にそういうことが出て……。
  256. 亀田得治

    ○亀田得治君 場合が違う。
  257. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) はあ、場合が違いますから、それに私のふえんをさせていただきました。
  258. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 解釈上は、私は刑事局長が申し上げたことによるわけであります。考え方は、われわれが企図いたしております銃砲刀剣類その他の範囲を、いま考えておるように変えようという意向はごうもないのです。それを一番間違いなく表現するなら何がよろしいかと、こういうことで考えておりまして、それから先は、私はいまの法制審議会の討議及び省内の専門家の意見によりまして、一応私の聞きましたところでは、それでよろしい、こう考えた次第でございます。
  259. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いま大臣お話を聞いていると、何か同じような文句を使うとかえって誤解されるというんですか、何かまずいというんですか。そういう意味を言われておるのですね。そうでしょう。
  260. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 銃砲刀剣類取締の法律でございますか、それに書いている同じ文句をこちらにも今度入れたほうが間違いないじゃないか、こういうような考え方をしましたら、それはかえって誤解を生ずることがあるという私どものスタッフの専門家の意見でございます。
  261. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、いま大臣の言われたことだと、この条文の解釈は出ているのでしょう。どこへどういうふうな文句を入れた場合に何かそういう誤解されるとかなんとかということになるわけですか。
  262. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 大臣に御質問でございますが、亀田先生にお答えした点に触れますので、私から答えさせていただきますが、それは、「銃砲又ハ刀剣類」とございますのを、それを明らかにするために、銃砲、刀剣、やり、なぎなた、あいくち、こういうふうにちゃんと品名をあげていくわけですね、こういう書き方をすれば、その範囲が、それから旗竿などに広がっていくはずがないじゃないかという意味ではっきりするわけです。それから、そのかわり、今度は、長さとかなんとかというものは、十五センチメートル以上という制約がございませんので、日本刀のこんなに短い日本刀というものはないと思いますが、これは社会通念上ということになるのでございますが、形の上でも実質でも日本刀といわれるものが、はたして十五センチということを境にして〇・一センチでも一短ければ日本刀と言えないのかということになると、これは私どももなかなか概念をきめるのにむずかしいので、かえってそういう場合には一見明瞭のごとくにして解釈が広がるおそれがあるということを申したわけでございまして、大臣もそういう趣旨のことをいまお述べになったのでございます。
  263. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすれば、「銃砲又ハ刀剣類」と何もカッコで示さなくても、別表どおりだとしておけばいいじゃないですか。別表をつくって、別表でちゃんと限定しておけばいいんじゃないですか。それをやってなぜ悪いんですか。
  264. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) なぜ悪いかと言われますと、悪い理由はないと思いますが、刑法学者が刑法的な規定をつくります場合と、行政目的を達成するための取締法をつくりますときには、罰則の形や何かも、まああまり形にとらわれるなという先ほど亀田先生の御意見もございましたが、これはやはりとらわれるのでございまして、法制審議会の御意見、これは学者が多いのでございますが、そういう方々は、刑法的な規定の中に何センチメートルなんということを書くのはおもしろくないという御意見がこれは圧倒的に多数でございまして、そこで、大臣がおっしゃるように、現行の取締法の規定を動かさないでどういうふうにしたらばこれを一番よく規定し得るかということで、いまのような結論に、原案に戻ってきたので、この議論は、かなり議論を経た上で戻ってきたのでございます。
  265. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そんなら、現在の銃砲刀剣類等所持取締法にいうところの銃砲または刀剣類という規定で、これは動かさないんだというんですね。動かさないんだということをこの条文の中に書けないんですか、どこかにはっきり。それはまずいですか。
  266. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) それを書かなくてもそういうふうに読めるというのがこの解釈でございます。
  267. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それじゃお聞きしますけれども、たとえば「兇器」というものがあるでしょう。兇器というのは一体何なんですか。一体、そうすると兇器というのは……。
  268. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) この一条一項のほうは改正をいたさないのでございますが、一条一項のほうの「兇器」は、私からお説教がましく申し上げて面映ゆいのでございますが、兇器という概念につきましては、性質上の兇器と用法上の兇器と、二通りに分かれております。性質上の兇器というのは、もちろんピストルや刀も入るのでございますけれども、問題はいつも用法上の兇器がどの範囲まで兇器という中に入るかという点でございますが、この点につきましても、本来の用途は別のところにありましても、これを用いるときに兇器として用いる、それが兇器の役割りを果たすというようなものはまあ用法上の兇器に入るわけで、それもだんだん制限的な解釈が出てまいりまして、まあ一見見たところで危険な感じを起こさせるものでなければならぬとか、いろいろまあ解釈に制限がございます。この「兇器」の範囲は銃砲刀剣類とは違いまして、かなり広いものになっておると思います。
  269. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そういう場合の兇器は、いわゆる用法上の兇器ですね。これは万年筆だって兇器になるとか、あるいはマッチだって兇器になるとか、みなそういうことなんでしょう、判例は。そういうことじゃないですか。
  270. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 万年筆が兇器になるという判例は私は存じませんが、いまは、先ほど申しましたように、かなり制限的に解釈をする傾向にあると思います。一見、見た自で危険感を生ずるようなものでなければならぬというような制限的なもの、そういうふうにこうだんだん用法上の兇器につきましても制限をして解釈をするという傾向にあると思います。
  271. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 兇器がそういうふうに制限されておるとすれば、ここでは銃砲または刀剣類を用い傷害と書いてありますけれども、兇器を用い傷害とは違うわけですな。それは具体的にどういうふうに違いますか。
  272. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 銃砲刀剣類に該当する、武器に相当する器具を用いて傷害を犯した場合には、この改正法の第一条ノ二でございますが、その銃砲刀剣類に当たらない兇器、たとえば庖丁のようなものをもって傷害したという場合には、現行法の二百四条のほうに帰りまして処罰されると、適用法条が違ってくると、こういうことでございます。
  273. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 大臣はいろいろ都合があるということですから、お聞きしたいのは、この改正案は、結局において、あれですか、暴力団の構成員によるものを中心として重く処罰しようとか、そういうものをなくそうとか、こういう目的でもってできたことは間違いないですか。
  274. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) それだけかといいますと、暴力団に所属せざる者でもこの法律に触れますればやはり処罰されますから、そういう意味において、暴力団の所属員に限定されると、こう言えば、そこに多少すき間ができまして、ことばどおりでございません。しかし、たびたび政府委員よりも申し上げますように、銃砲刀剣類を持ちましたり、あるいは常習的にやります者は、多くは暴力団の所属員でございます。そうして、暴力団の所属員がこの種の犯罪を犯すおもなる大部分のものでございますから、したがって、この法律を実行いたしますれば、暴力団そのものが非常に痛手を受けて、その所属員が厳重に罰せられ、まずまずそういうものに対してこれの犯罪を防止する上においても役立つ、まあせんじ詰めればこういうものでございまして、目的は結局性質の悪い暴力を防ぐ、それは大多数が暴力団の所属員がやるのだ、これでそれが非常に刑罰の効果をあげる、かように申し上げてよろしいかと思います。
  275. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、「暴力団の構成員等によって多く犯されている実情にかんがみ、これを特別の犯罪類型として、通常の傷害罪より重く処罰しようとする趣旨の規定である。」、これは「説明書」に書いてあることですが、そうなれば、その趣旨法律の目的に書くということができないわけですかね。ということは、新しい法律はどんな法律でもたいてい第一条にその法律の目的を書いてあるわけですよ。新しい法律はほとんどそうでしょう。戦後の法律は。だから、この改正なら改正をするときに、この法律はこういうために特にやるのだということを書けないんですか。書いては工合が悪いんですか。
  276. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) これは書かないほうが適当だというふうに申し上げるほかないと思います。書かないほうが適当であるというふうに申し上げたいのでございます。と申しますのは、仰せのように、戦後に限らず、行政法の分野におきましては、行政目的を達成するためにその法律をつくるのでございますから、その法律趣旨、目的を明らかにする。あるいは刑事手続等におきまして、刑事訴訟法にも第一条に目的が書いてありますが、そういう手続とか運用とかを規制する法律につきましては、その目的なり趣旨なりを明らかにして運用に過誤なきを期するというのがその法律の立法形式だと思うのでございますが、刑法のような規定は、よく申します自然法的な規定でございまして、これを規制いたしますのは、目的にあるのではなくて、積み重ねてまいりました判例、学説というような解釈にまつ部分が非常に多いのでございまして、そういう解釈できまってくるものでございますから、ここで特に目的を掲げるということは、刑法的な実体法を定めます場合には適当でないというふうに私は考えております。
  277. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは手続法かもしれませんよ。しれませんけれども、刑事訴訟法などもちゃんと目的が書いてあるわけですね。第一条に、近来ほとんどの法律がそういう目的が書いてあるんですからね。  それじゃ、この法律に目的を書くとすれば、あなた方のほうではどういうふうに目的を書くわけですか、この法律の目的を。
  278. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 私のほうは書く意思はございませんし、また、書くのは適当でないと考えておりますので、どういうふうに書くかということは研究もしてみませんが、これは先ほど申しましたように一般法でございまして、主としてねらっておりますところは、大臣からお答えいただきましたように、また、提案の趣旨に書いてありますように、主として暴力団がこの種の犯罪を多く犯すという実態にかんがみてこの法律の改正をすることに間違いございません。でございますが、この法律一般法でございますから、まず構成要件に該当する行為があれば一般の人でありましても処罪の対象になることは当然でございまして、これを目的を掲げて暴力団のみに適用するとか、そういうふうな制限をすることは、一般法の法律としては適当でないということは、それによってもおわかりいただけると思いますが、本来、これは刑法に規定すべきことでございまして、倫理的な基盤の上に立った私は刑罰法令だと、かように考えておるわけでございます。
  279. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 刑法に規定すべきだといっても、現実に刑法に規定していないわけですよ。大正十五年から規定していない。しかも、構成要件自身が人によって二百幾つあると言うし、私は構成要件を聞いてあなたのほうでもそれはわからぬというそういう法律であって、しかも、現実にいままでの経過、これはできたときは暴力団や何かを中心にしてやるんだということを言っておりながら、その後の経過においては特にこれが労働争議であるとかそのときどきに使われていることが実際に多いわけですよ、現実には。羽山氏の論文でもちゃんと言っているんじゃないですか。羽山氏は「終戦以来各地に労働争議が起こり、これに関連して前述したように暴力沙汰の事件も発生し、それに対し暴力行為等処罰法第一条第一項を適用した裁判例の少なくないことは事実」、こういうふうなことも言っている。これが直ちに弾圧法であるかどうかということの議論は、見方によるものですから別としても、実際にこの法律の目的とするところは違った形で、できたときからすぐ行なわれたわけですよ。こういう過程からいっても、いまそういうようなことであるならば、暴力団の構成員に主として使うんだというならば、その法律の目的として主としてこれはこういうふうなものに使うんだということを書くことがどうしていけないんですか。これは書くことが必要ない、書かないほうがいいんだというようなことを言うから、それじゃこの法律全体をまた別な形のものに使うのじゃないかということもすぐそれが考えられてくるんじゃないですか。しかも、私が質問したように、この法律によって非常に逮捕者が多い。しかも、その勾留、逮捕の中で起訴するものはほかの事件に比べて少ないわけですよ。これは、見方によってはたくさん逮捕したということが言えるのじゃないですか。逮捕しなくても済む者を逮捕していて勾留をする、しかも勾留した者の中で無罪で出る者が、ほかの法律と比べて、特に労働争議でこの法律が適用された場合に非常に多いんですね。ほかに比べると数字で明らかになったのじゃないですか。こういうことから見ても、これが労働組合とかその他のところに使われるということが非常に大きいということも考えられるから、それならば、暴力団を主としてやるというのであるならば、そのことを書いたほうがはっきりするんじゃないかという議論も当然出てくると思う。だから、暴力団のやった場合のものはこの法律でやるとか、あるいは、そうでないものは、別個の普通刑法でもやれないこともないから普通刑法でやるということもあるから、いろいろあるんですね、こういうふうなものをなぜこの法案の中ではっきりさせないかということから私は疑点が増してくるということを言うんです。結局だから、暴力団という集団をなぜ構成要件的に明らかにすることができないのか。暴力団というものはこういうものだ、構成要件に明らかにして、これで主として適用するなら適用するんだという形のものをどうしてこの法律の中に書けないかということですよ。それが問題になってくるわけじゃないですか。
  280. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 刑事局長が先ほど御説明申し上げましたそれも一つでございますね。いまの一条一項は改正は今度はしないのでございます。今度は一条の二、三でございます。これは、例の多衆をたのんでとかなんとかいう形容詞がちっともついておりませんから、先ほどお話になりました一条の——現在一条一項でございます、一条一項の受理件数、それから逮捕件数、起訴件数、また無罪、この率が非常にほかより何といいますか、幅が広過ぎる、こういうような状況も、今度は一条と一条の二、三、今回の御審議を願いますれば、たいへんに私は違いがあるのじゃないかと思います。それからそれで一条一項も乱用というお説もあります。私どもは必ずしもそのお説に賛成してないのでございます。しかし、一条の二と三ですね、これがほんとうは衆議院でもお説がございまして、暴力団そのものを法律の規制対象にしたらいいじゃないかと。これはまた詳しくは刑事局長から御説明申し上げますが、法律的にはつかまらないのでございます。暴力団とは何ぞやということがどうしてもつかまれないものですからこういうことになるので、それでつまりいま私の申しましたことを要約すれば、一条の二と三に区分されて前文を書くかという問題にもなる。それもおかしいじゃないか。それからまた、いま言ったように、暴力団というものはほとんど法律的につかみにくいじゃないか。そこも難点がある。こういう次第で書かないほうがいいと、こういう結論になりました。
  281. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 第一条ノ二と第一条ノ三がもちろん今度改正になって出ているわけですけれども、いま私が聞いていた中でも、「銃砲又ハ刀剣類」ということば自身が、もう去年の十二月ごろと少なくともこの法律を提案するころとですでに法務省当局の解釈が違っているんですよ。違っているということは、いかにこの法律自身があいまいなものであって、そういうふうな形で適用されるかということを私は意味していると思うわけですよ。しかも、「常習」ということ自身、きょうはやれませんでしたが、あとで米田さん、亀田さん、あるいは私からやりますけれども、常習ということ自身が非常にあいまいでもって、それが法制審議会で決定されたものの、法制審議会の総会で多数決で引っくり返ったという形で、両方の議論があって、あいまいなものなんですよ、認定自身が。そういう非常にあいまいなはっきりしないものをたくさん含んでいるこの法案なわけです。だから、もっと明らかにしなければならない点があるということを私ども主張しているわけです。  それからいま言ったように、暴力団という構成要件がつかまらないと言うけれども、つかまらないならつかまらないで、じゃ一体どういう構成要件になるかということを法務省当局が一体考えたことがあるのかないのかというんですよ。こういう暴力団の定義があるんだ、こういう暴力団の定義もあるんだ、だけれども、この点はどうも不備だということならわかりますけれども、構成要件として暴力団をどういうふうに定義して研究したことがあるのか、いままでの例を明らかにしてもらいたいわけです。できないことはないですよ、やろうと思えば。
  282. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 研究をいたしました結果、この間の暴力団の定義の際にも御議論がございましたように、取り締まりの対象としての暴力団というものを想定することは、これはもちろんできますが暴力団そのものを取り締まっていくためには、暴力団というものを法律概念としてとらえなければなりませんが、その法律概念をとらえた立法例としまして西ドイツ、フランス、アメリカの一部の州にございますので、そういう構成要件も検討してみましたが、アメリカの場合におきましては、その暴力団のとらえ方があいまいであるということの理由で連邦最高裁判所で違憲の判決を受けておるような始末でございますし、フランスの立法例につきましては、これは今日までほとんど適用を見ていないのは、やはりあまり範囲が広過ぎても適用しにくいのでございまして、そういうふうに適用しなかった理由をあちらの本は書いております。それから西ドイツにつきましては、戦後その種の法律ができたのでございますが、これも書いたものとして聞いておりますところでは、ベルリンで不良少年にほかの罪と併合罪のような形で適用して一件だけ有罪になった例があるということでございますが、適用を見ていないと、こういうことで、結局、ギャングとかギャングスターとかいうようなことばが、これは世間では通用することばでございますが、違法な団体としてどこで違法であるかということになりますと、これは日本暴力団についても言えることでございますが、なかなか確定しがたいのでございます。それがもし確定できるならば、暴力団そのものを規制するような罰則をつくることも私どもとしてはいろいろと研究してみたのでございますが、その点でとうていそういう立法をすることは困難だということに相なりまして、そこで、形を変えまして、一般法ではございますが、特に暴力団の構成員が犯すと実体的に認められるもの、そういうものについてのみ改正を施すことによって実質的に暴力団を取り締まることをねらった改正であるということに、目標をそういうふうに定めまして立案をしたわけでございます。したがいまして、いままでの実績から申しますと、暴力行為処罰法違反という罪はほとんど現行法の第一条第一項の違反でございますが、このような違反につきましては、暴力団もそれによって適用を受けますけれども、他の人たちにも及ぼす影響がございますので、この分には一切手を触れないことにいたしまして、やや暴力行為処罰法の内部におきましては刑のアンバランスも考えられる、理論的に考えられるのでございますけれども、一条一項には手を触れないで、一条二項の常習犯につきまして手を触れる、それと、いまの銃砲刀剣類の所持、こういうふうに二点にしぼったわけでございます。研究の過程におきましてそういう結論になった次第でございます。
  283. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そのいま言った第一条ノ二第一条ノ三ということ自身が内容があいまいだ、こういうんですよ。なぜあいまいかといえば、法制審議会の言っておることと、今度あなたの言っていることを違うのじゃないか。違うことははっきりしたでしょう、いま。……ちょっと待ってください。はっきりしているし、「常習」云々についての規定のしかたは、法制審議会のときのものが、部会のものが総会で引っくり返ったりしているでしょう。多数決でやられているから、それだけでもあいまいなことばなんじゃないか。あいまいなことばなら、あいまいなことばをはっきりするような形のものを法文の中にも残しておくべきじゃないかというふうに、これはだれだって常識的に考えることだし、いまあなたの言われるように、暴力団の構成員のやるのを実質的にこういう形でやるんだ、そしてこういう犯罪をなくするようにしたいんだということなら、そのことを法律の中にはっきり残しておけばいいじゃないですか。それを残しもしないから、非常に疑いが出てくる。それは、現実に対する法律の過去における適用例を見れば、はっきりしてくるのじゃないか。それはもちろん暴力団にも適用になったですよ。適用になったけれども、それ以外のものに適用になって、しかもそれが非常に多くの者が逮捕されたりなんかして、そうして無事の者をたくさん出しているのじゃないか。こういうことから言っても、この法律の適用はおかしいのだから、十分考えるべきじゃないかということを言っているわけですよ。  そこで、私は、時間がありませんから、最終的にいまお聞きした中で、じゃ暴力団というものの定義というか、その法律的な構成要件というものについて研究したことがあるかと言ったら、アメリカがどうとかどこがどうかということはわかりましたが、法務省としてこういう定義もある、こういう定義もあるけれども、だけれどもこの点は不備なんだ、不備なんだということを出していただきたい、こういうわけですよ。それは出せないわけですか。
  284. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) お答えをいたしますが、法制審議会の過程において私どもの述べました見解が国会の段階に来て変えたというのではございませんで、法制審議会の冒頭に私が趣旨説明をしましたときには、先ほど御指摘のような解釈をしたのでございますが、その後審議の過程においてそういう解釈をせぬでもいいということに法制審議会の段階でいまのような解釈になったわけで、それは先ほど申しましたように、定義規定を置くことのうらはらの解釈としてそういうものが出てきたというわけでございます。  それから過去にこの法律がいろいろ労働運動等に適用があったということをおっしゃって、そうしてあいまいだあいまいだとおっしゃいますが、法制審議会で議論になりましたのは、多数決できめたというのは、これはその「常習」という規定があいまいだというのは、多数決とかいうのではなくて、きわめて少数の方の討議で、これはもうほとんど問題にならない程度の少数の方でございました。常習性の問題につきましては、判例もたくさんございますし、学説もありまして、もはや明確になっている概念だということでございます。それで多数説か少数説かで問題になりましたのは、刑の下限を置くか置かぬかということでございまして、いまお話しのことは趣旨が違うように思いますので、申し上げます。  それから暴力団について研究をしたか。研究をいたしましたので、先ほど諸外国の例も引いていろいろやりましたが、案を何か書かないと研究したことにならぬようなふうに私聞こえましたのでございますが、あいまいなものであって、とうていとらえにくいということになりましたならば、それでも案を書くということは無意味なことでございますし、私どもとしてはギャングとかギャングスターとかいうものの解釈、それはまさに日本語で訳すならば暴力団でございますので、そのアメリカの例でございますならば、世間でそういうふうに言われているいわゆるというのに当たるわけで、いわゆる暴力団、こういうことではとうてい罪刑法定主義のたてまえからいいまして憲法三十一条との関係で許されないということになるわけでございまして、十分検討の上で採用しがたいという結論になったことを重ねて申し上げておきたいと思います。
  285. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまのお話は、私はもう聞いていてわからないところが非常にあるんですよ。これはやはり積極的に暴力団対策ということを何か明らかにすることがどうもまずいんだというような印象を与えるんですよ。そこで、この問題については、これは米田さんなり亀田さんからまた日を改めて質問がありますから、きょうはこの程度にしますし、それから常習の問題は、これはもちろん常習という条件のきめ方、これは過去に何年以内に何回やったとか、そういう形できめるべきだというような案もあったこともあるし、それから下限の引き上げの問題で採決のあったことも私もわかりますけれども、いずれにしても、あいまいな概念であることははっきりしているわけですが、そして、最後にいまあなたが言われた銃砲刀剣類ということばが法制審議会の中で変わってきたんだ、最初に言ったことを法制審議会のあとのほうで変えたというんですが、法制審議会のどこで法務省当局はその場合の銃砲刀剣類という解釈を変えたんですか、どこにありますか、それは。
  286. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) これは、定義規定を入れるかどうかということで法制審議会の過程において幾たびも一事務当局は会合いたしまして、この解釈の、法制局にも入っていただきまして、いろいろ議論をしたのでございますが、結局、定義規定をおかなくてもいいという大前提としまして銃砲刀剣類等所持取締法第二条の銃砲刀剣類と同じであるという読み方ができるのだということが前提になりまして、定義規定をおかなくてもいいという結論になったように記憶しておるのでございます。審議会の議事録にはそのことは出ていないということでございますが、私がその当面の責任者としてそれに参加しておりまして、そのとおり明らかでございます。
  287. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 一応、私の質問はまだ残っておりますけれども、一応この程度で中断しまして、きょうは私の質問はこれで終わりたいと思います。
  288. 中山福藏

    委員長中山福藏君) ちょっと、法務大臣から、明十二日、広島市の全国更生保護大会に出席のため六時ごろには退席いたしたいとの申し出がございますので、御了承を願いたいと存じますが、よろしゅうございますか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  289. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 和泉君。
  290. 岩間正男

    ○岩間正男君 議事進行、議事進行。
  291. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 岩間君。
  292. 岩間正男

    ○岩間正男君 きょうの日程につきまして、両党の国会対策委員会の決定については、私も一応決定されたそのことは尊重したいと思うんですが、公明会の和泉委員質問されることも私は賛成でございます。しかし、ここで確認しておいていただきたいことは、これはしばしば理事会ではっきりしたことであります、それから申し合わせ事項にもありますが、これはわれわれ共産党の質問です。実はこの暴力法とは非常にいろいろな点で関係が深い。私は実はこれだけの質問の準備をしているんです。しかも、われわれは、連日、自民党から始まった数十時間の質疑に対して、終始一貫協力いたしてまいりました。したがって、当委員会のこの審議の状態の中で、途中で時間が迫ったから、共産党が質問する、これを切るというような、理事会の決定に違反したこのようなやり方というものを、私たちはこれは党として了承することができない。私は、むろん順序については、これはこだわっておりません。これは社会党の米田、亀田さん、その他やられるけれども、適当なところでこれは共産党を審議に、当然これは質問をさせるのが当然だ。それから当委員会の運営から考えても、それから少数意見の尊重というたてまえからいっても、また、国会の運営そのものの中で、つまり両党の国会対策委員会でこれは大筋はきめられました。しかし、具体的な民主的運営というものは、まさにこれは委員会の理事会なり何なりでそこのところははっきりやってください。そういう点から、委員長に私はお伺いしたいのでありますが、途中で時間が来たからなどということで、共産党の質問をそれは打ち切るなどという、多数を頼んだやり方は絶対にこれは避けてほしい。このことを確認してほしい。このことを私は要望いたします。御返答を求めます。
  293. 中山福藏

    委員長中山福藏君) ただいま岩間君のおっしゃったことは、よく理事会にはかりまして、理事さん方に御協議願いたいと思います。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
  294. 和泉覚

    ○和泉覚君 暴力法の改正については、すでにこの前本会議でも質問いたしましたが、また、本委員会でもいろいろと質問されておりますが、この暴力について特に審議しておる最近非常に新聞紙上をにぎわしておるのは暴力事件なんですが、この暴力事件というものを町からなくしようというところの考えというものはだれしも変わらないところだと思います。しかしながら、このように暴力問題について一般の大衆から非常に反対の声が強いということも、これまた事実であります。したがって、いろいろのあの当時の新聞の論調を見ましても、いまの暴力法というものは早くつくるべきではあるけれども、この運用面において乱用され、拡大解釈されるというような点について配慮がされるべきだというような意見が非常に強いのですが、先般の本会議におきまして、大臣は、世論としてはこの法案を通過するように望んでおる、このような世論であるというように大臣は言っておられますが、あとのほうの乱用に対するところの措置、配慮、こういうものに対して声が強いというこの問題を大臣は認められるか認められないのか、お答えを願いたいと思うのです。
  295. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 人権の尊重ということは、政治の基礎と申しますか、最も重大なことでございます。一面、社会全体の秩序、公共の福祉のために、やむを得ざる……。
  296. 中山福藏

    委員長中山福藏君) もう少し大きな声でお願いいたします。
  297. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 人権の尊重ということは政治の基礎だと私どもは存じております。基礎でございまして、これはきわめて重大に考えております。一面、社会の秩序を維持しますために、公共の福祉等の見地からまた制約を受けることがあり得るということも申し上げるまでもないのでございます。それで、重大なことは、乱用をしないように、その法律の解釈を拡大をいたしまして人権の尊重にもとらないように、侵害しないように気をつけるということは、一番大切な点であると思います。その点につきましては、いろいろな事情から、警察当局も、検察当局も、判断を誤ることはこれはあり得るのでございますが、今後も特に注意をいたしまして、そういうことがないように非常な注意をいたしてまいる、これがまあある意味では矛盾するようなことで、むずかしいのでございますが、その矛盾をするような間に処してほんとうに公正を期していくということはつとめだと考える次第でございまして、今後もそういう点に十分に留意をしてまいりたいと思います。
  298. 和泉覚

    ○和泉覚君 そこで、この前の質問のときに、大臣は、いろいろな意見もあったけれども、今度の改正は最小限度にとどめたというようなことをおっしゃっておったわけですけれども、これは総理も法務大臣も言っておるわけですけれども、いまのは人権に大きな誤解を招く問題というのは当然入れるべきであって、こういう問題をどうして最小限度の中に入れないのか、この点をひとつ明らかにしてもらいたいと思う。
  299. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) これは、先ほど暴力団に適用する趣旨だというような点につきましてもお話がございましたが、立法技術その他から見ましても、入れるのが適当でないし、入れたために少しもそれでそういう目的がより達せられるというわけでもない。当然なことでありますから入れなかった次第でございまして、趣旨といたしますところは全く同じ考えでまいる、こういう考え方をいたしております。
  300. 和泉覚

    ○和泉覚君 同じ考えであったならば、わずかの一条を入れるだけか、もしくは私がこの前主張したように、一条の一項のほうを削除するかという意見を申し上げたわけですけれども、いま言ういろいろの反対のあるという事実というものを見るならば、最小限度中に当然入れるべきである。同じ意見ならば、どうしてこれを入れなかったか。
  301. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) その技術上の点は、政府委員よりなおお答え申し上げますが、稲葉委員よりも恐喝の問題がお話がございました。これはなぜ入れなかったかという点は、やはり私どもはなるべくどちらかというときには最小限度に広げないという考え方がございまして、私はしろうとですから、この法案の説明をいたしますときに、一番になぜ恐喝を入れないかと実は申した次第です。それは、いままで政府委員から説明がありましたように、入れるということについて幾多の疑問があります。疑問があるものを広げるのはよくないという考えから、永久に恐喝の問題を投げたのではなく、十分に考究してからそれからしようと、こういうような結論になりましたわけでございます。さようなことも、これはすべて最小限度に限っていく、こういう気持ちをあらわした一端でございますから、御質問がございませんでしたが、申し上げたような次第で、まことにその気持ちは御同感でございます。
  302. 和泉覚

    ○和泉覚君 ちょっと、時間がないというので非常に残念ですけれども、ほそとうならばほかに言いたいことがあるのですが、前後して名古屋の事件をもう少し話したいのですけれども、時間がないというので、結論的に、この前の本会議に名古屋の事件を一つ申し上げたわけですが、そのときに大臣のおっしゃるには、拡大解釈等によって調べられる、送検されるようなことは、その問題について大臣がおっしゃるには、判決と検察当局の意見と違うようなことは十分あり得るのだといったようなことを言っておられ、答弁があったわけですけれども、過去においてはあったかもしれませんけれども、ないように配慮されるのがこれは当然でなければならないと思うのです。そこで、その見解の相違——事実上あのときも私は事実名古屋に行っていろいろ調べたのですが、全々暴力団なんてほんとうに縁遠い。入院してやせ細った患者とそのアパートに同居しているところのおばさんが選挙に誘ったという問題を、いまいう二人以上なるがゆえに多衆暴力になるというようなことで問題を暴力で送致しているわけですが、ああいうふうな事例を見ましても、ほんとうはわれわれの町に現在横行するところの暴力というものは絶対なくしたいとわれわれも心から願っておるわけです。いまの見解の相違でもって、判決というものがあるからはっきりするからそれでよろしいではないか、こういうふうに言うのですが、その間において取り調べを受けたり、呼び出しを受けてみたり、ほんとうに苦しんでいるという姿が現実がある。ですから、私は強くいまの条項に対して大臣がその配慮というものを持つべきであるという考えですが、将来、これはいままで出さなかったのですが、これを出すというような気持ちがおありにならないのかあるのか、その点をひとつお伺いしたい。
  303. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 判決と検察の起訴との間に食い違いがありまして、起訴のほうが範囲が広くなる、これは事実でございまして、そういうことを申し上げたかと思います。大体は、私ども見まして、まず警察当局が容疑をする、それから検察において調べましてなおその容疑の範囲がよほどせばまってくる、これが事実だ。が第一次とすれば、検察が第二次でございまして、検事のところで非常にふるわれると思うのです。そして、裁判でまたそこがいよいよ確実にされる、こういう段階であるということをわれわれは考えておりますが、それはいまお示しのごとく、それだから起訴のほうが常に裁判よりも広いのだ、それでいいのだ——決してそういう考えではないのでございまして、理想としては警察も検察も裁判も全く同じになりたいところでございます。そういうふうにできるだけ自戒をいたしまして持ってまいりたいと思います。  名古屋の事件は、検察の意見と裁判と違いました。第一審ではたしか無罪になった。こういう点につきましてなお検察の意見で控訴をいたしておるかと思いますが、また判決もございまして、その判決によりまして十分また反省をして、適用に行き過ぎがないように十分に戒心をいたすつもりでございます。
  304. 和泉覚

    ○和泉覚君 この暴力法も、制定の当時、やはり質問に対して総理のほうからもそのとおりのいわゆる安心できるような返事があったし、また、今度の審議でも、総理からも、なおかつ法務大臣からも、安心できるような御返事があったわけですけれども、一向に総理も大臣も言っておられるから安心なんだと言っておられないのが現状であって、運用面に十分注意するというようなこの間の御返事だったけれども、どのような安心できるような手を打ってくださったのか、くださるのか、こういう点をひとつ聞きたいと思うのです。
  305. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 検察当局もその点は十分に心得てやっておりますが、しかし、常にそういう考えを強く絶えず持ってあやまちがないように訓示をいたしておる次第でございます。  なお、近く検察陣の首脳の会合をいたしまして、その際におきましても、十分に留意いたしますよう申すつもりでございます。
  306. 和泉覚

    ○和泉覚君 先ほども大臣はしろうとだからというお話だったのですが、法務大臣がしろうとだとすると、くろうとはだれになるのかということを考えておるのですけれども、あまりしろうとの手を打たれちゃって、いいかげんに何でもひっかかるような手を打たれちゃ非常に困ると考えておるのですが、その点をひとつわれわれはいわゆるもう少し専門的にわたることをちょっとお尋ねしたいと思っておったのですけれども、あまりしろうとだというのじゃどうかと思って考えたんですが、いわゆるこの点の、いまちょっと稲葉委員のほうからも先ほど質問があったわけですけれども、現在、売春法だとか破防法とかあるいはまた軽犯法だとか、そういうのに一々各条一項を設けて、その趣旨もさっき刑事局長のほうからその答弁がありましたけれども、このようなその目的というものを明らかにした法律という条文を付加してあるところの法律は、いまの三法、もしくはほかにありますか。これは大臣でなくてもけっこうです。
  307. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 目的を掲げました法律は、非常に行政法には多いのでございますが……。
  308. 和泉覚

    ○和泉覚君 目的でなしに、その条文を一条、それがために乱用してはならないという条文をつけ加えたもののことを言うのです。
  309. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) これはあまりございませんのですが、ただいまお話のございました破防法とか軽犯罪法等にございます。  で、これがどうしてはいったかということでございますが、もういかなる法律でも乱用してはならないことは当然なことでありますけれども、ことさら立法府がそういう条文を入れることによって立法的にそういう指図をしたのはどういうわけかという点につきまして、破防法は、刑罰規定もありますが、大部分はその破壊活動団体を規制するための措置が書いてございます。言うなれば半分以上は手続法でございまして、その規制の方法としましてこういう活動があるというようなことが前提になっておりますので、この運用を一つ誤まりますと、非常に人権に大きな影響があるということからしてそういう条文を入れたものだと思いますし、これは私はそれなりに意義を持った規定だと考えております。それからまた、軽犯罪法にこの規定がございます。この軽犯罪法は実体法でございますので、これに乱用防止規定を置きますことは非常に異例なことでございまして、おそらくこの法律以外には私はないのじゃないかとさえ思っております。で、なぜそれでははいったかということでございますが、これは終戦直後、新憲法施行と前後してこの法律はできたのでございますが、その前身をなしましたのは警察犯処罰令でございまして、警察犯処罰令がしばしば乱用をしたということで、この警察犯処罰令のかわりにできてまいりました軽犯罪法は、実体法でございますけれども、そういう苦い経験があるということでこの規定がそこへ押し入れられたのだと思うのでございます。本法は、これは入れないほうが適当な規定だったと思いますが、そういった警察犯処罰令という特殊な法律処罰令からこう変わってたき軽犯罪法でありましたために、そういうものが国会ではいることになったのだと、かように今日では想像いたしておりますけれども、これはすこぶる異例な措置だったと思うのでございます。
  310. 和泉覚

    ○和泉覚君 ほかにも売春法にもはいっておりますけれども、まあいまのように異例ではいればはいるわけですから、これもひとつ入れたほうがある程度みんな安心できるし、みんなが納得して賛成できるものにするということの配慮というものは私は大事だと思う。私たちは、まだ次にあります一条の問題にもからむことなんですが、そのような全然入れていかんということはないと思いますからして、当然軽犯罪法にもあるのだから、みんな心配しておる面を緩和させる意味においても、こういうものをむしろ異例でもはいるのだから、異例として人権に関する問題なんだから入れるべきであると私は主張するのですが、この点はひとつもう一回大臣のほうからもお答えを願いたい。
  311. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) ただいまの問題は、立法のていさいと申しますか、技術と申しますか、ていさいばかりでなく、効力面の問題がございます。私が申し上げますより、刑事局長が御説明を申し上げるほうがよりよいと思いますから、どうぞ政府委員にお答えを御了承願いたいと思います。
  312. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) お答えを申し上げます前に、売春防止法もおあげになりましたが、仰せのとおり、そういう規定がはいってございますが、これはやはり大部分が売春防止に関する措置規定があるのでございまして、罰則部分もございますが、これは売春防止法全体としましてはその一部をなすものでございまして、そういう関係から、やはりこの法を運用する者の扱い方いかんによりましては自由裁量の余地もあって、扱い方いかんによりましては非常に人権に支障を生ずるおそれがあると思われますものにつきましては、そういう規定を入れておるのが通常でございますが、そういう意味からいいますと、一般法である実体法につきましては、入れないのが原則であり、軽犯罪法はその特異の事例の全く一つであるというふうに申し上げておるわけでございます。  ところで、いいものならば入れてもいいではないかという御意見でございます。いいものはいいという意味において御意見ごもっともでございますけれども、やはり立法技術と申しますか、立法形式と申しますか、そういうものはやはり世界共通の原理の上に立っておるのでございまして、現に日本法律も外国にも紹介されて、外国の学者も批判をしておるわけでございますし、外国の法律も、しばしばこの議場で私が紹介いたしますように、私どもも見ておるわけでございまして、こういう長い間の法律史の中でのやはり一環としてあるわけでございまするから、こういうものは乱用すると申しましても、特に実体法につきましては、解釈、裁判例というようなもので補充しなければ、実体法というものは実際問題として動かないわけでございまして、そういう積み上げの上に成文法というものはあるものでございますので、そういう趣旨はよくわかりますけれども、それは法を運用します者の戒心する手段を他に講ずることにいたしまして、法律そのものにはそういうものをお書きにならないほうが適正である、妥当である、かように私ども考えておる次第でございます。これを書かぬからといって乱用するというようなことでは毛頭ございませんで、法律の制度上、そういうふうに考えている次第であります。
  313. 和泉覚

    ○和泉覚君 もちろん話のわかった人たちが取り締まりに当たる場合には、乱用しなかったら結局問題はないことでして、乱用はなかろうと言うておるのですけれども現実においてはその事例があるがゆえにみんなこうやって全部が反対しているわけなんですから、特に人権の問題で重大問題なんだから、いままではそういう議論があるかもしれないけれども、法というものは実情に即して民衆というものを安心させてやるために当然入れるべきではないか、これが私の主張なんですが。
  314. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) ごもっともな御意見でございますが、先ほども申したような理由で、私どもとしては賛成をいたしかねておるわけでございますが、これは条文にそういうことを書いたら乱用がないかというと、私はむしろそういう見方をしませんで、たとえば労働運動の乱用の問題も同じでございますけれども、労働運動に対する法を執行する者の正しい理解と認識、これが大事なんです。それから創価学会の事件につきましても、宗教団体、宗教活動というものに対する深い理解と認識が法を執行する者にとって大事なことで、これが欠けますと、法文にどのようなことが書いてございましても、結果においては乱用のようなことになるのじゃないかというふうに考えておりまして、法を執行します者はほんとうにそういう意味でよく社会の実情に徹して正しい理解、正しい認識を持って事に当たらなければならぬというふうに考えておるのでございまして、そういう点をむしろ啓蒙したほうが乱用を防ぐのには私は役に立つのじゃないかというふうに考えておる次第でございます。
  315. 和泉覚

    ○和泉覚君 もちろん乱用がされなかったら問題はないわけでして、そのような大臣あるいはまた局長のほうからの通達どおり行なわれているということであればわれわれは何も問題はないわけなんですけれども、何だかいろいろの理由をつけながらそういうところに改正がされないということは、先ほどから話があるように、過去の事例からして乱用のような事態があるがゆえに何かこうした条文をつけることを好んでいないようにとれるわけなんですけれども……。
  316. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) いまのお話のような、条文をつけないほうがいいということにつきましては、御質問の中のお気持ちはよくわかりますが、私どもの、政府と申しますか、考え方につきましては、刑事局長の申し上げたような次第でございまして、一応お聞き取りを願っておきたいと思います。なお、場合によりましては、職務に熱心なあまり、しかも猟師山を見ずというようなことが往々起こるのでございまして、絶対にないということを目標にいたしまして十分に努力をいたすつもりでございます。
  317. 和泉覚

    ○和泉覚君 第一条の問題ですが、先ほどあったように、「団体若ハ多衆ノ威力ヲ」云々と、もしくはそれを「仮装シテ」とあります。その最後のほうに「数人共同シテ」とあるわけですけれども、この犯罪の構成要件からいって、あの四条——暴行、脅迫だとかあるいは器物損壊だとか傷害というものを犯した場合には、別に団体でなくても、多衆でなくても、二人でやった場合にはこの罪は構成するのじゃないですか。
  318. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 私が誤解をいたしておりますれば何回でも訂正してお答え申し上げますが、第一条も、現行法のもとでは共犯になります場合には刑法の総則の規定がかぶるのでございまして、共犯にならない場合に共同してやった場合がここへ一つだけ入ってくるのと、あとはそういう多数を背景としてやるこういう手段方法が特にこの第一条の第一項であげられておるのでございまして、それ以下の規定はすべて個人的な犯罪として取り上げておる規定でございます。
  319. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 大臣、どうぞ、先ほど了承を得ておりますから……。
  320. 和泉覚

    ○和泉覚君 「多衆」というのは、あれから言うたら二人以上ということなんでしょう。二人以上が「多衆」ですね。その「多衆」というものが、いわゆる二人以上ですること自体がすでに威力になるのか、団体自体がもう威力になるのか。「多衆」だけでもって、二人以上でもって威力になるのか。
  321. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) ちょっとそのところの解釈が私どもと違っておるのでございますが、「多衆」というときは、「数人共同シテ」という「数人」とは違いまして、「数人」と「多衆」ということばが書いてありますように、「多衆」になりますと、これは二人以上と  いうのではなくてそれ以上の数人を言うのでございます。それから「数人」というときには、まあ従来の解釈としましては、二人以上を言うと、こういうことになっております。それからあとのほうの「数人共同シテ」というときには、二人以上の者が共同してということでございますが、その二人以上の者が即多衆であるというのではございません。
  322. 和泉覚

    ○和泉覚君 だから、この条文からいったら、いずれにしても暴行傷害というものを二人以上で行なえば、これはひっかかるわけでしょう。
  323. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) そうでございます。端的に申しますと、そういうふうになるわけであります。
  324. 和泉覚

    ○和泉覚君 だから、二人以上でもってやる犯罪が全部暴力法にひっかかるというならば、前のほうの「団体若ハ多衆ノ威力」、もしくはそれを「仮装シテ」云々という文句は、全然要らないということになりはしませんか。入れなければならぬ必要はどこにあるのでしょうか。
  325. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) いまの「数人共同シテ」というところは、いまのような解釈でございますが、前段のほうは一人でもよろしいのでございまして、多衆の威力をかさに着てそうしておどしというような場合、そういうときには、数人でなくても、一人でもよろしいという意味で理解していただけばいいと思います。
  326. 和泉覚

    ○和泉覚君 したがって、いまのその「団体若ハ多衆ノ威力」というところに非常に問題があるわけなんですがね。こちら自身がそれを言わなくても、見たところで何も乱暴しなくても、見たところでそれが団体の人なるがゆえに向こうがこわがったというので、これが威力になるわけですか。先ほどちょっと時間がなかったので、概略しか申し上げなかったのですけれども、病人だとか隣のおばさんがちょっと二、三人集まったら、これすなわち多衆なんだ、威力で暴行したというように一応起訴されたわけですけれども、そういうことがあり得るかどうか。
  327. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 具体的事件がどういう事実認定をしたかということにつきましては、いろいろ御議論の存するところと思いますが、条文の解釈に従いまして、威力を示すという意味は、相手の意思を制圧するに足りる勢力を相手方に認識させる。むずかしく言うと、相手の意思をある程度制圧させるに足るだけの勢力を示す、そうしてそれを認識させるということが威力を示すという内容でございます。でございますから、ただ背景に団体があるというだけでは、何もその相手方が自由意思を制圧されるというような関係がございませんければ、私は何々会社の者であるとか、あるいは何々団体の者であるとかいうことを申しましても、多衆の威力を示すというのには当たらないわけでございます。
  328. 和泉覚

    ○和泉覚君 まあ当たらないという判断でもって一応一審の判決は無罪になったと思うのですけれども、本人は騒いだわけでもないし、本人が小便をして帰ってきて、ふとんを出して敷いてくれと言って、それで自分が乗っかってきたけれども、それを大家さんに注意されたものだから、もとの位置に戻した、というんで、何も暴行していないので無罪になっているの、ですけれども、こちらのほうのやつは、多衆の威力を示して、同女が繰り返して拒絶しているにもかかわらず、同女を投票所に連れ出そうとして、共同して同女の体をささえて、まくら元に準備した洗い張り用の板の上に敷いて乗せた、これが暴力になってしまった。それでかつぎ出して暴行を加えなんて書いてありますけれども、まあこれは一つの実例としてそのように解釈——私もそれで現地に行ったわけです。選挙法で云々というなら話はわかるけれども、(「選挙違反だ」と呼ぶ者あり)選挙違反ではない。そんな判決をしたわけじゃない。それなら、選挙違反にかかるかかからぬかということで討論するなら話はわかるわけです。それをすぐ暴行事件として取り上げるということ自体が少し私おかしいのじゃないかと言ったところが、だって多衆でしょう、乗っけたのだから暴力でしょう、だからこれにひっかかるのだといって送検しているわけです。そこのところへ行ったときに、いわゆるその配慮の条文がないがゆえに、結局それ以上私も何も言こうとができなかったわけです。再三言うたわけですけれども、少し常軌を逸しておるのじゃないか、運用面で問題があるじゃないかということを再三育ったのですけれども警察にしても検察にしても、いま言うとおり、何といっても条文にあるのだからしかたがないと、これを言われたのじゃ、ほんとうに安心してわれわれがいまいう条文というものを——いまからどうするか知りませんけれども、いわゆる安心して法案を通すために協力はできないということなんです。その事実は局長はお聞きになったわけですか。聞いたとすれば、それに対するお返事、感想でもけっこうですから…。
  329. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 私は、この事件の報告をとりましていろいろ検討してみたわけでございます。検察庁、警察本庁の言い分というものは、言い分としてわからぬわけではございません。被害者の夫からの申告によりまして事が発覚して、被害者があくまでもそれの保護を求めておるというようなところから発覚したのでございますが、そこで私の感じましたことは、先ほどもちょっと触れましたように、宗教行事という要素をこの事件でどこまで捜査当局が考慮に入れて判断に到達したかというような点につきまして、私はまあある程度考慮をしなければいけなかったのではないかという感じを実は持っておるのでございますが、なにさまこの事件はただいま審理中で、また、七月の三日でございますか、第三回目の証人尋問もあるようで、いずれは裁判所から公正な判断が下されるものと私は確信をいたしておりますので、その成り行きを待ちたいと、かように考えておりますけれども、ただ、感想といたしましては、宗教行事、宗教感情、そういうものにつきましては、やはり深い理解を待って対処していくということが必要だということを私は感じておるものでございます。
  330. 和泉覚

    ○和泉覚君 先ほどのまた一条の問題も、数人共同の問題で、二人以上のいわゆる複数であった場合には、この前の質疑にもありましたけれども、たとえ偶発的なような、その場で起きたことで、暴行してあげようとかどうしようとかいう意思はなくて、その場で感情的になって何か事件が起きたようなものであれば、普通ならば刑法の犯罪で十分に傷害罪として行なわれるべき事件も、先ほど申し上げたような、それ自身が数が二人以上であるということがこの暴行犯というものの罪を構成する一つの条件になるわけですね。
  331. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 数人共同して犯すということになりますというと、一人でやるよりも数人である犯罪——ある犯罪といいますか、脅迫、暴行、器物損壊、こういったような罪を犯す場合には、それの受ける脅威というものが単独の場合よりも重いということでこれの刑が重くなってくる、かように考えるわけでございまして、この法律趣旨はそういうところにあると思うのでございますが、仰せのように、偶発的にその場で二人が共同して暴行を加えるというようなことになりますと、まさにこの条文に触れるのでございますが、通謀をいたしましてやることになりますと、これはまた刑法の共犯の規定に触れると思います。
  332. 和泉覚

    ○和泉覚君 そこで、先ほど稲葉議員のほうからも意見があったわけですが、そのように、二人以上の事件も全部、複数の犯罪であるならば全部ひっかかるということになれば、この点は団体でなくても非常に危険を感ずるわけなんです。したがって、この今度の改正の趣旨にも書いてあるけれども、暴行、脅迫、器物損壊、傷害事件というものが、その場合であってもいわゆる二人以上であるならばこれにひっかかるということになれば、現在世の中で新聞に出ておるような忌まわしいような事件であるならば、当然いまの暴力処罰法でもってやるべきだということはうなずけるわけですけれども、そうでない偶発的なものまでも刑が同じことになることが心配されるわけです。したがって、先ほどのそういうような目的というのは、刑法の性質を有する本条には書き込むことは無理だというような説明があったわけですけれども、この点はいわゆるそういうふうに全部が心配しているわけですから、大衆のための法律ということを考えるならば、この点はいままではなかったとしても、いまから考えて入れるべきではないかと私は思うのですが、局長はこれをどうお考えになります。
  333. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) この点に非常に御心配の御様子で、その旨の御質問でございますが、私は乱用を防ぐという規定を設けるということの適否につきましては、先ほどお答え申し上げたように、私は考えておるのでございますが、数人共同して犯す、このことが単独で犯す場合よりも情状が重いということは、これはたとえば対談の場合を考えましても、二人で話しているときと、向こう側が数人であるときと、これは対談が普通の場合だったら何でもございませんが、もしもそれが脅迫的な言辞を弄しているという場合でございますと、一人で言われるよりは数人で言われたほうが脅威を感ずることは理の当然のことでありまして、この理の当然のことを規定しているのが第一条の一項だと思うのでありまして、要は、これを運用する人がその数人で犯したという犯罪をどういうふうに見るかというものの見方に大部分がかかってくる。その見方が誤っておりますと、今度はその調べを受けましたほうから見ると、乱用された、乱用しているのだというような感じを受けるのでございまして、ここのところがこれは大事なところであって、法規を設けるということが大事なことではないというふうに私は考えておるのでございます。
  334. 和泉覚

    ○和泉覚君 だいぶ時間も経過しましたから、警察庁のほうにも聞きたいと思っておったのですが、あとに譲ることにしまして、先ほど刑事局長があの事件に対して明るい見通しがあるような返事がありましたから、安心して警察庁のほうは質問をひとつ保留して、現在まで実際においてるる申し述べましたように、だれしもが暴力犯罪というものを町から追放しよう、なくしよう、特にオリンピックを控えて特にこういうことはなくしたいということは理の当然で、われわれも双手をあげて賛成することですが、いままで申し述べましたように、いろいろの角度からしての声のあることも聞かなければなりませんわけです。その点をひとつほんとうに、特にこの問題は、いかなる法律がありましても、要は運用する人にあることはこれは事実でありますからして、この点は先ほど大臣もよく運用面において注意するようにというようなことを、方法をとるというような話でありましたが、この点を重ねて強く要望して、きょうのところは終わりたいと思います。
  335. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 本案の質疑は一応この程度にとどめることといたします。  この際、警察庁に申し上げますが、昨日岩間委員から要求のありました機動隊に関する資料を至急御提出願います。それでは、本日はこれをもって散会いたします。   午後六時二十六分散会