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政府委員(
竹内壽平君) ただいまの御
質問まことにごもっともでございまして、立案に当たりました私
どもといたしましても、
暴力団そのものを直接防遏できるような立法形式はとれぬものであろうか
ということは慎重に検討をいたした次第でございます。できますならば、それが最も端的で立法の趣旨にもかなっておるわけでございますので、そういたしたかったのでございまするが、この点はいろいろ検討いたしますると、困難な問題がございまして、まず第一に、
暴力団と私
ども世間
一般にいわれておりますこの
暴力団という
考え方でございますが、これを
法律的に見ますると、定義を下すことが非常にむつかしいのでございまして、外国の立法例等も調べてみましたが、世間でいわれておる
暴力団とかギャング
といったような形でそういう
暴力団に加入したり活動したりする
ということを罰する規定を設けた
法律がございますが、これはその後外国の
最高裁判所の判決で憲法違反である
という認定を受けております。その理由としますところは、
暴力団と世間でいわれておる
暴力団というだけでは
処罰概念としてはきわめて明確を欠くものである
ということが理由になっておるのでございまして、
日本の
暴力団につきまして、先ほど申し上げましたような実態を見てまいりますると、
暴力行為にややもすれば及ぶ
ということは認められるのでございますが、平素は私
どもが見て正業と思われるような
職業についておる者も大部分でございますし、厳密にばくちのみをもって
資金源としておるような
団体でございますれば、これは違法な
団体と認めていいと思うのですが、そうでない
団体については、なかなかすぐその
団体そのものをもって違法なる集団である
というふうに認定しますことは
法律上困難でございます。そういうこともありまして、立法技術的に
暴力団そのものを対象とした規制の
方法ということを
考えますことは、
日本の憲法におきましてもむつかしい
ということに結論がなった次第でございます。
一方、それでは、いま
仰せのように、個々の人を対象とした罰をきめることによって、はたして
暴力団対策になるであろうか
という御疑念でございますが、ただいま取り上げましたのは必要にして最小限度の対策
という
考え方に立っておりまして、
暴力団対策として
暴力団を締め上げるような
法律を
考える場合にはもっとたくさんの規定を設けることも必要であろうかと思いますけれ
ども、その中で
暴力団の団員が犯すであろう、ほかの
一般の人はあまり犯さない、しかし
暴力団の人は好んで犯す、そういう罪を犯すことは
暴力団の
特徴とも言えるような罪がある
といたしますれば、それはまさに
銃砲刀剣類を用いてむやみやたらに人を
傷害する
というような類型の
犯罪であろうかと思います。
それからもう
一つは、先ほど
警察庁からも御披露がございましたが、これらの
構成員は、言うなれば前科者の集団でございまして、
暴行の前科、
暴力行為の前科を重ねておる者が集まっておる前科者の集団と見られるのでございまして、この人たちは、言うなれば
暴行、
暴力行為の常習犯であります。そこで、常習犯の規定を強化する。
この二つによって相当長期間
社会から隔離することができるならば、はたして
暴力団にどういう
影響を与えるであろうか
ということを刑事学的にいろいろ研究してみますると、
暴力団の人たちは、幹部の者が相当長期間にわたって服役をしておりますために、その子分等の集団はがたがたになってしまいまして、もはや
暴力団としての体をなさない
というような結果におちいった実例もたくさん私
どもは知っております。そういたしますると、
暴力団を解消して
社会の真人間として、普通の人として
社会の中に溶け込ましていくように推進をしてまいりますためには、どうしてもこれらの人に対して相当長期の刑を科することによって
社会から隔離し、一方、その人たちが
社会復帰の場合に国家の手を差し伸べていく
というリハビリテーションの道をもあわせて刑事政策的に大きな考慮を施していくことが
暴力団対策として最も適切な
方法ではないか。そういう観点から見てまいりますと、個々の人を罰する規定を設けることによりましても、先ほど
大臣が申されましたように、
暴力団のこれからの対策としましては相当
効果をあげていく
というふうに見られるのでございまして、そういう意味におきましてこのような立法をいたしたのでございます。でありまするから、この
法律は
暴力団ということばは書いてございませんけれ
ども、まさしく
暴力団対策の
法律としましては
効果をあげ得る
法律だと、私はかように
考えておる次第でございます。
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