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1964-03-31 第46回国会 参議院 法務委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月三十一日(火曜日)    午前十時二十九分開会    ———————————  出席者は左のとおり。    委員長     中山 福藏君    理事            後藤 義隆君            迫水 久常君            稲葉 誠一君            和泉  覚君   委員            植木 光教君            大谷 贇雄君            鈴木 一司君            鈴木 万平君            田中 啓一君            高橋  衞君            坪山 徳弥君            亀田 得治君            岩間 正男君            山高しげり君   国務大臣    法 務 大 臣 賀屋 興宣君    国 務 大 臣 福田 篤泰君   政府委員    警察庁刑事局長 日原 正雄君    防衛庁人事局長 小幡 久男君    法務大臣官房司    法法制調査部長 津田  實君    国税庁長官   木村 秀弘君   最高裁判所長官代理者    最高裁判所事務    総局総務局長  寺田 治郎君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    ———————————   本日の会議に付した案件 ○裁判所職員定員法の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付) ○検察及び裁判運営等に関する調査  (千葉県下における自衛隊員による  暴行事件に関する件)  (国税庁職員に対する思想調査に関  する件)    ———————————
  2. 中山福藏

    委員長中山福藏君) これより法務委員会を開会いたします。  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。稲葉君。
  3. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 裁判官以外の裁判所職員がどういうふうにふえてきているのかというふうなことを一応聞くわけですが、その前に、裁判官以外の裁判所職員というのはどういうふうなものがあるのか、ちょっと御説明願いたいと思います。
  4. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) お手元に法務省から「裁判所職員定員法の一部を改正する法律案参考資料」というものを出していただいておりますが、その四ページの四というところでございます。そこに「裁判官以外の裁判所職員定員、現在員等」と書いてございまして、その一番左の欄に、秘書官以下ずっと並んでおります。特に重要なものを申し上げますれば、書記官書記官補事務官速記官、それから家庭裁判所調査官、同調査官補、そういうものが特に重要なものになるわけでございます。
  5. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 裁判所調査官というのは、これは最高裁だけですか、高等裁判所にもあるわけですか。
  6. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 法律の上では最高裁判所と各高等裁判所ということになっておりますが、実際には、高等裁判所は、東京高等裁判所海難審判事件とかそういう特殊の事件処理のための調査官が置かれているだけでございます。
  7. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 書記官とそれから事務官とは、どう違うのですか。
  8. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 書記官は、主として裁判事務プロパートのほうの関係職員でございます。裁判所法の六十条に、「裁判所事件に関する記録その他の書類の作成及び保管その他他の法律において定める事務」と、それからその第三項におきましては、「裁判官の行なう法令及び判例の調査その他必要な事項調査補助する。」と、こういうことがございまして、簡単に申し上げますと、裁判事務直接の担当者でございます。  それに対しまして、事務官のほうは、これは裁判所法の五十八条にございますが、「裁判所事務を掌る。」ということになっておりまして、主として司法行政事務、それから裁判事務につきましても書記官のさらに下部のほんとうの事務的な補助と、こういうような関係仕事をしておるのでございます。
  9. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 よく書記官代行といりようなことを言うんですが、これはどういうのですか。
  10. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) いまお話のございました点は、書記官補書記官代行をすることができる、こういう規定裁判所法中にございまして、それで代行書記官というふうに呼んでおるわけでございます。  ただ、この点は、今回の三十九年度の予算書記官補から書記官の組みかえということをやっていただきまして、これは数年来やっていただいておるわけでございますが、本年三十九年度をもちましてその組みかえが一応完了することになりますので、そうなりますれば、いわゆる代行書記官というものはなくなるわけでございます。
  11. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、全部なくなるんですか。
  12. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 書記官補書記官代行いたしますものは、予算を通していただきますれば、全部なくなることになるわけでございます。最高裁判所等書記官職務代行しませんところの書記官補が若干残ることになろうと思いますが、これはきわめて小数でございます。
  13. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いままでなぜ書記官補書記官代行をするというような制度があったわけなんですか。何か特別な必要があったわけですか。
  14. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) この点は、書記官制度ができまして、従来の裁判所のいわゆる書記を書記官に任用することになったわけでございますが、私どもといたしましては、書記官というものの地位を非常に高く考えまして、これに充てるためには相当な学歴あるいは教養その他の資格のある者から充当したい、こういう考えであったわけでございます。ところが、その当時におきましては、いろいろな点で必ずしもそれに十分な資格の者を十分な数得られなかったのであります。しかし、そうかと申しまして、全然書記官補のままで置いておきますと、これでは裁判所の独立した立ち会い事務ができないということで、裁判の機能にも支障を来たすことになりますので、便宜代行ということで一時をいわばしのいでまいったわけでございます。  その後、書記官研修所等における教育も逐次進みましたし、また、新しく入って来られる方々はかなり学歴その他もすぐれた方がおられまして、そうして今日ではいずれも書記官として一人前の仕事をしていただけると、こういうことになってまいりましたので、数年来組みかえということをお願いいたしましてそれをお認めいただきたいと、かようなことになっておるのでございます。
  15. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 書記官補から書記官へ組みかえというのは、あれですか、何か試験でもするんですか、そこはどうやってやるんですか。
  16. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) いま組みかえと申しましたのは、いわば予算及び定員書記官補の数を書記官の数へ組みかえていただいたわけでございます。  そういたしまして、実際にどういうふうにしてその書記官を埋めてまいるかという点は、必ずしも当然に現在の書記官補をそのまま書記官のほうに任ずるというわけではございませんので、裁判所といたしましては、あるいは事務官の中にも書記官としてふさわしい人もあるかもしれませんし、そういういろいろな広い面から、書記官研修所教育をし、あるいは裁判所書記官昇任試験というものに合格いたしました者から書記官に充てる、こういう運用になるわけでございます。
  17. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、これでもう四百七十八名ですか地裁ではふえる予定だというのですけれども、これは書記官補が減って書記官が四百七十八名ふえるんですから、実質には三十九名だけの書記官の増と、こうなるわけですか。
  18. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これは、組みかえの関係とそれから純増員関係とは別でございまして、組みかえをしていただきます者が七百名ある、正確に申しますと六百九十四名あるわけでございます。それからそのほかに純増員というものが書記官について四十八人と、そういうことであります。
  19. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、地裁家裁一緒にしているのではないですか。
  20. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 地裁家裁についてそれぞれあるわけでございます。書記官は全部で四十八名の増員が認められましたので、純増はそれだけでございます。それから組みかえと申しましたのは六百九十四名でございます。
  21. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そこで、書記官純増は、地方裁判所の場合三十九名ですね、家裁は九人でしょう、予算が出ているのは。この書記官三十九名の純増というのは、一体どういう根拠があるんですか。何名ぐらい要求したんですか。
  22. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) この点は、前回もちょっと御説明申し上げましたように、訴訟促進関係とそれから交通関係と両方で要求いたしておるわけでございます。そして、訴訟促進で要求いたしましたものは、書記官は百十二名でございます。それから交通関係事件処理関係で要求いたしましたものは、少年関係つまり家庭裁判所関係が三十八名でございまして、簡易裁判所関係が六十二名、合計二百十二名と、こういうことになるわけでございます。
  23. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、私ども裁判所に行って見ても、非常に狭い場所に一ぱい入って、何といいますか、非常に事務が過重だという印象を受けるんですが、それに地裁だけで三十九名の書記官増事務官が三十四名増、まあこの程度で、一体事務量があれだけふえているのに、どれだけ何といいますか事務量の増大を防ぐといいますか、それはどういうふうに考えているんですか。
  24. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) その点、まことにごもっともなことでございまして、私どもとしても実はもっともっと増員ができればとも考えているわけでございますし、また、そういたすべく要求もいたしたわけでございますが、先般も申し上げましたとおり、訴訟促進関係につきましては結局裁判官供給源というものが問題になってまいりまして、裁判官増員にはある程度技術上やむを得ない制約と申しますか、最高限があるわけでございます。定員をふやすといたしましても、結局充員ができなければこれは目的を達しないわけで、大体充員ができるであろうというところを目途に増員をしていただくということになるわけでございます。そういたしますと、自然に書記官のほうも結局現在の裁判官のもとにおける事務量ということでございまして、今度は裁判官がふえますればそれに伴いますところの書記官事務量の増加、こういうことで書記官増員ということになっておりますので、裁判官と全然切り離しまして増員するということはなかなか考え方としてむずかしいことになるというわけでございます。  それからなお、建物関係は、これは毎年少しずつ営繕費のほうで認めていただいておりまして、ここ数年はかなり大幅な営繕費によって全国裁判所が逐次整備されつつあるわけでございます。もう数年いたしますれば、おそらく全国裁判所に相当満足できる程度建物が建つことになるのではないか、かように考えておるわけでございます。
  25. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いま裁判官供給源の問題があったわけですが、私ども裁判所に行ったりして感ずることやなんかでは、判事がやらなくていいようなことを判事がやっている場合が非常に多いということをよく聞かされるわけです。特に最高裁判所とか東京高裁あたりは非常にそれが多いというんです。たとえば高裁事務局長というのは裁判官がやるというのは、現在やっているようですけれども、法のたてまえとしては裁判官がやることにはなっていないのじゃないですか。あれはどういうんですか。
  26. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) ただいま稲葉委員お尋ねになりました裁判官事務をもう少し減らしてはどうかという点は、私どもとしても全く同感でございまして、これはいま臨時司法制度調査会等でもいろいろ論議がされておりますが、一例を申しますれば、かりに非行事件というようなものは、純粋の裁判官でなくても、何かそういうある程度法律的な素養のある者にまかせることはできるのではないか、最後の当否を裁判官が判断すればいいので、一から十まで裁判官がしなくてもいいのではないかとか、あるいは補助的な職員をもう少し活用できないかという点は研究しておるわけでございます。  それからいまあとでお尋ねをいただきました司法行政関係でございますが、この点も毎回国会等でもいろいろお尋ねを受けておりますし、私どものほうとしましても、できる限りこういうポスト裁判官を充てることをやめて、そうして事務官の優秀な方にかわっていただくというふうに考えているわけでございますが、いまお尋ねのございました高等裁判所事務局長の問題につきましては、これは何と申しましても高等裁判所長官が認証官の方でございまして、そういう方を補佐してそうして高等裁判所管内人事あるいは会計その他の問題につきまして実質的にこれをいろいろ按配していくということにつきましては、やはり裁判の経験のあると申しますか、広く申しますれば一応ローヤーの資格のある者でなければなかなかむずかしいのではないか、こういうような考え方からきているわけでございます。
  27. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまの高等裁判所事務局長ですね、法律的な根拠はどこにありましたか。これは書記官をもって充てるというのが原則になっているんじゃないですか、たてまえは。
  28. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これは、最高裁判所規則に、司法行政上の職務に関する規則というのがございまして、そうして、この規則におきまして特定のポストのものは判事または判事補をもって充てることができるということになっているわけでございます。
  29. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 高裁局長だけのことを書いた何か規則、条文はありませんか。あるんじゃないですか。裁判所法にあるんじゃないですか。
  30. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) それは、私の記憶いたしておりますところでは、その規則はなかったと存じます。
  31. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 当然裁判官がやらなくてもいい仕事裁判官にやらしているということですね。判事が不足だといいながら、たとえば最高裁の中に、職員厚生——レクリエーション担当の何か係があるんですか。それを裁判官がやっているというんじゃないですか。
  32. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) たとえば、人事局能率課というものがございますが、この能率課長裁判官でございます炉、これは兼務をしているわけでございます。つまり、ほかの任用の課長がそれを兼務してやっているというわけでございます。
  33. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 最高裁の中にいろいろなものがありますわね、局の下に。そういうふうな課長や何かとか、課付の参事官、書記官がいるでしょう。それは全部判事でしょう。
  34. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 全部ではございませんので、若干は一般職の方でございますが、かなりの部分が局長課長判事または判事補でございます。
  35. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 補助裁判官という制度についていろいろ考えているということですけれども、これは何か考えがあるのでございますか。
  36. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これはまだこの席で案として申し上げる程度に熟したものとしてはございませんが、しかし、臨時司法制度調査会等でも論議されており、また、私どものほうの内部的にもいろいろ検討いたしておりますものといたしましては、たとえば、現在高等裁判所には調査官を置くことになってはおりますが、これは、先ほども申し上げましたように、東京高等裁判所にきわめて特別のものとしてございますだけで、一般的にはございませんので、これをもう少し広げまして、高等裁判所にもう少し広い範囲で調査官を置いていただくとか、あるいは地方裁判所にさらに調査官を置いていただくということも、それによってかなり役に立つ面があるのではないかというふうに言われているわけでございます。  なお、先年、裁判所書記官職務権限裁判所法の改正で改めて補充していただきまして、そうして、先ほどちょっと読み上げました裁判事務調査に関する補助というようなことを入れていただきました。これも一種の補助機関になっておるのでございます。
  37. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これを見ますと、家庭裁判所調査官が四十名ふえるわけですか。
  38. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 家庭裁判所について調査官を四十名の増員を計上いたしていただいておるわけでございます。
  39. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 家庭裁判所調査官は、仕事が近年非常に多いわけですね。それは、御存じだと思いますけれども試験観察が多いわけですね。家庭局長が来ておりませんけれども試験観察で、私ども宇都宮あたり家裁でも、調査官が持っているのは大体一人十五、六件です、少なくても。東京あたりではたくさん持っているそうですね。だから、試験観察についても、すでに家裁のほうで見きれない状態にあるんだということを盛んに言われるわけですが、試験観察制度の活用ということは非常に大きな問題になってくるわけですが、これは非常にいいことだと思いますけれども、その四十名というのはどういうふうな根拠なんですか。
  40. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) この四十名は、少年交通事件関係でこれを要求いたしまして、また、計上していただいておる、こういうことになるわけでございます。
  41. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまの家裁調査官少年交通関係だけで、一般事件については調査官はふやさないわけですか。ふやそうとしたのだけれどもだめだったというのですか。
  42. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 今回のところは、少年交通関係ということで要求し、また、認めていただいたということになるのでございます。
  43. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは、法務大臣少年の場合の交通事件については特例を設けるという案がありましたね。法務省でつくったらしいんですが、あれはどうなったのですか。
  44. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) その特例につきましては、刑事責任年齢の低下という考え方であったのでございますけれども、これは、研究してみますと、いろいろ責任年齢の点に学理的の問題が多いようでございまして、まだ結論を得るところまで至っていない次第でございます。
  45. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 結論を得るに至っていないといっても、これは国会の中で「提出予定法案」としてぼくらのところにちゃんと配られているわけです。要綱が配られておりますね。それで、法務省でも世間的にも発表したのじゃないですか。
  46. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) いや、別に発表はいたしません。中の案で、年齢を低下するか、あるいは中間年齢責任について完全な責任を認めるか、そういう無責任の間に年齢層を設けるというのが出まして、考え方は研究しているのですが、まだ結論は出ません。これをやるのだと発表をいたしたことはございます。いろいろ研究しておりますから、その話が伝わっておるというようなことでございます。
  47. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 「提出予定法案」として法務省から正式にぼくらのほうに提出しているんですよ。これは委員会発表したんですか。まさかそんなことはないでしょうね。「少年法の一部を改正する法律案」 「少年交通事件の迅速適正な処理を図るため所要の特別規定を設けようとするもの。」、こういうことで、「提出予定法案」では(確定)として法務省から出ておりますよ。
  48. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) それはおかしいですね。
  49. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 おかしいといっても、これはみんなのところにありますよ。
  50. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) それは、研究が済みまして結論を得たら提出したいという意味で申し上げたことはあるそうです。
  51. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはことばの問題ですからいいですけれども、ちゃんと(確定)と書いてありますよ。「予定法案確定)」と書いてあります。
  52. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 行き違いがあるようです。
  53. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 行き違いですね。まあそれはいいです。それは別として、私ども印象では、法務省だけが青少年課で二カ月ぐらいでこの案をつくっちゃってぱっと発表しちゃった。現実に通用する最高裁判所側、そういうふうなところとさっぱり打ち合わせをしていない、連絡協調してないということが言われるわけですね。ですから、最高裁側反対でこの法案が、何といいますか、あとまわしにされたというか、今度の国会に出せなくなった——この法案でいいというのじゃない。私ら反対ですけれども、そういうふうなことが言われているわけです。法務省裁判所関係法案を出すときに、一体最高裁側とどういうような連絡をすることになっているんですか、たてまえは。
  54. 津田實

    政府委員津田實君) これは法務省として各部局それぞれ裁判所関係のある法案を出す場合のことでございますが、各部局によりまして若干の相違はございますが、たとえば司法法制調査部でございますと、直接裁判所法案を出すことになっているわけでございますから、この場合は、立案段階におきまして十分裁判所意見を聞き、また、裁判所会議をいたし、そういうふうにして立案をするわけでございます。全然裁判所と無関係立案を進めるということはございません。もちろん、予算を要する事項につきましては、予算の折衝は裁判所大蔵省が直接やるわけでございますから、その結果を裁判所及び大蔵省から聞きまして、予算法案につきましては、三者意見を調整してつくるということにいたしておりますが、他の部局におきましてもほとんど大同小異だというふうに考えております。ただ、最初どういうふうに考えるかということについては、それぞれ法務省部内で独立にやることもあり、裁判所部内でおやりになることもありますが、いよいよ本式の立案段階になれば、当然連絡調整をはかっていくということにいたしているわけでございます。
  55. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 すると、少年法の一部を改正する法律案は、法務省としては刑事局青少年課立案したんでしょう。最高裁側と一体どういうふうに打ち合わせしたんですか。打ち合わせがまとまったというので国会へ出すようにして私らに説明したんですか、あるいはそこまでいかなかったのですか、よくわからないんですが。
  56. 津田實

    政府委員津田實君) ただいま御指摘の法律案につきましては、もちろん刑事局の所管でありますが、おそらくは、まず法務省の中の考え方をきめるという段階のことはむろん作業はあったかもしれないと思いますが、その後裁判所とどういうふうに連絡されたか、その辺につきましては、具体的に私どもは承知いたしておりません。しかしながら、いずれにいたしましても、提案を確定するときには、裁判所意見を一致さしてやるわけでございますので、そこに出ておりますのがどういう行き違いであったかわかりませんですけれども、おそらく、政府部内におきましては、どういう法律案が大体何件ぐらいでるかということは早く内閣のほうで掌握しなければならないので、そういう意味でわれわれ俗に言っている登録ということばがございますが、そういうものとして一応法案の仮称というようなことが登録されたということはあり得るかもしれないというふうにいまからでは考えるわけでございます。
  57. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それと関連するんですけれども、やはり同じあれで、借地法及び借家法等の一部を改正する法律案、これは法務大臣、どうなったのですか。
  58. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) これは、私どものほうでは一応やったほうがいいという考えであったのです。しかし、この法律を施行しますと、その事件について家庭裁判所等にそのほか一般に持ち込む事件がふえて、現在の裁判所の人手では処理することが非常に困難である、相当多額の経費を要するというような話になりまして、その経費につきましては、どうも大蔵省のほうは了解するわけにいかない。主としてその点で進行がいまできないという状態でございます。
  59. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これはまあ初めから昭和四十年の四月一日から施行という考え方でしょうから、今度の国会でなくても間に合うということもあるでしょうけれども、これなんかもやっぱり「第四十六回国会提出予定法案確定法務省」という中に入ってぼくらに配られているわけですね。これはことばじりをとらえるわけじゃありませんけれども、おとなげないからあれしませんけれども、結局こういうようなことでも、十分に最高裁連絡がとれていない。実際に裁判するのは裁判所関係なんでしょう。裁判所関係から、この法案をやるためには、たとえば鑑定人の制度であるとか、あるいは鑑定委員会はこれだけ人数が要る、これだけ費用が要るんだということがあとから出てきて、はじめてそれじゃだめだということがわかって提案しないという形がどうもあるような印象を与えられるわけですね。どうもこれは法務省が何か独走しちゃって、裁判所側を全く無視したというか独走しちゃって、どんどんつくってどんどん発表しちゃったんだという印象を与えるわけです。十分もっと連絡したほうがいいんじゃないですか。連絡が不十分だったという点もあるのじゃないですか。
  60. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 少しそれは違うのでして、「(確定)」と書いてありますと、それはどこかで少し書きようがへただった。そんなことはないんです、初めから。法律案の内容を審議しますときに、一応こういう考え方でやりたいという考えになりましたときに、相当研究してどの段階でどの辺まで作業が進んだら関係のところと相談するか、これはそのものによりましていろいろ違うわけであります。正式に書類で相談をするというところまではっきり原案がまとまってやる場合もございましょうが、多くはその前に一応成案——成案といってももうこれでいくときまらないまでも、一応の考えがまとまったときに相談をかけるというのがまあいままでの状態でございまして、それで、そこまで行っていよいよ金が要るというものなら、また大蔵省に相談をする。こうなりまして、相談の順序や、どの段階でやるかということは、そのときそのものによりまして違う。いまのような(確定)というのは少し私は行き過ぎだと思います。むろん、金の要ることも、よけい要るか少なく要るか、これは考えようで、そんなにたくさん事件は起こらないと見る人もあれば、起こると見る人もあります。全然金が要らぬということはない。このぐらいの金なら来年四月からやるなら大蔵省も一応そのときに考えようというような返事をする場合もあります。たいがいの場合に、その場でなければ考えぬという返事が多いのです。そういう段階でありまして、確定しておいて相談が不十分でなかったかと言われますが、差し上げた文書に(確定)とあれば、どこかで行き違いで、確定ではない。一応出す意味で作業をしている、できれば出したい案だという、実情はそうであった次第でございます。
  61. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ですから、法案をこういうものを出すのだとか出したいとかということの予定法案の説明を委員会に出すなら、出してけっこうなんですが、そのときに、いまこういう状態ならこういう状態だということをはっきりさしてほしい。私のほうは出るのだとばかり思っているし、特に借地借家法というのは非常にむずかしいし、影響が大きいものですから、こっちにウエートを曲直いてやっているわけで、今度こっちが出ないんだということになると、はぐらかされたような感じになってきますから、十分そういう点は何といいますか、研究していただきたいし、それから裁判所側ともよく打ち合わせをしていただきたいと思いますね、今後。  それはまあ別として、そうすると、借地借家法の改正案があの発表されたような案どおり出るとすれば、裁判所側としては一体どの程度の人数をふやさなければいけないのですか、あるいは費用を。
  62. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 先ほど来お尋ねいただきました点は、私どものほうといたしましても、できる限り従来から法務省と十分な連絡をとってやってまいったつもりでございますが、その間にいろいろ国会のほうからごらんいただいて不十分というふうにごらんいただくような面があったといたしますれば、今後一そう協力してまいりたいと考えております。  いま御指摘のございました借地借家法の関係につきましては、これは実際にどのぐらいの事件が出るかということは、結局は一つの見通しの問題になるわけであります。これは一応発表もされておるところでございますが、たたとえば賃借権の譲渡というような場合に、それを地主が承諾しなかったときにこれにかわる許可を裁判所でするということを一つとってみましても、一体世の中でどの程度にその譲渡があるかということも必ずしもはっきりいたしませんし、また、その中でお互いの話がつかなくて裁判所に許可を求めてくるというのがどのくらいあるかということも、これは全く新しい制度でございますので、正確な把握ということはなかなかむずかしいわけでございます。その上に、先ほど来お話もございましたように、私どものいま承知いたしておりますところでは、その法案どおりといたしましても、昭和四十年四月ごろからということでございますので、そういたしますれば、自然、予算上は来年度予算ということになるわけでもございますので、そういう計数上のいろいろこまかい点は、まあ正確なところはいま計算しておると言うほうがあるいは正しいのではないかというふうにも考えるわけでございます。
  63. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 しかし、これは新聞によりますと、三月十六日の「朝日新聞」によると、本件について「最高裁側が、改正案を施行」すると、「年間約八億五千万円の予算増額を必要とすること」それから「改正案は、民事事件の訴訟遅延を解消することにもなり、賛成であるが、現在の定員では余裕がなく、さし当り三百人程度職員増員を必要とする」というようなことも言っているんですけれども、これは三百人というふうなことは、何を三百人というかはっきりわかりませんし、その根拠もわかりませんけれども、現在の借地借家法の改正案を法務省からこういう案だということは最高裁側に相談はあったのでしょう。
  64. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これは、先ほどお話のございました少年法の場合と借地法の場合とではまただいぶ趣が違っておりまして、借地法の改正の問題は、これはもう御承知のとおり、数年来、十年と言っては言い過ぎかもしれませんが、とにかく相当長い間の問題でございまして、一方また法制審議会等も開かれまして、いろいろ民法部会というようなところで検討されてまいったわけでございます。そういうほうにはむろん私どものほうからも参加いたしておりまして、これはその点では終始密接な連絡をとってまいったように考えておるわけでございます。  そういたしまして、しかしながら、これまたたぶん御承知かと思いますが、その法案の内容というものが、これは直接には民事局のほうでやっておる問題でございますので、私がそれから間接に聞いておるところで申し上げておるわけでございますが、法案の内容そのものが何度も変わってまいりまして、これは変わってまいるというのは、何といいますか、つまり、いろいろ理論的に学者の方々も検討され、あるいは実務家も入ってやりまして、どうすればほんとうに現在の日本の情勢で妥当な結論になるかということが理論的になかなかむずかしい問題で、ずいぶん長くいろいろ検討されたわけでございます。そうして、その間に、それによりまして、たとえば裁判官の必要数とかあるいは事件の伸び方というようなことも具体的に変わってまいるわけでございます。ことに、最終の段階におきましても、訴訟事件でやるか非訟事件でやるかというような点についてもいろいろ議論があったように伺っておりますし、また、どの程度の効力を与えるかという点につきまして、たとえば鑑定委員会というようなものをどう構成するかというような点については、実はきわめて最終の段階にもいろいろ御論議があったように伺っておるわけでありまして、そのそれぞれの段階におきましてむろん内部的には民事局、刑事局と協議いたしましていろいろ試算はしてまいったわけでございますが、その最終の段階で一応法制審議会でおまとめになった案でどういうことであろうかというので試算はして、これは大蔵省との話はしておるわけでございます。  ただ、繰り返して申し上げて恐縮でございますが、何と申しましても、正式の予算の折衝というのはやはり四十年度の予算になるわけでございますので、いまは一応の試算をいたしましたものをまあこういうところでもあろうかということを大蔵省とお話し合いしていると、こういう段階になっておるわけでございます。
  65. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 まあ最高裁側がそういうふうに言われるのなら、しいて私どもはいま何人くらい出さなければいけないかということを言いませんけれども、やっぱりこの借地借家法がいずれ改正ということになれば、相当大幅な裁判官なりそれから書記官なりが増員されなければやっていけないんだということは事実なんでしょう。
  66. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これは、私どもとしては、いまのところ、かなりの増員が必要となるであろう、なお、鑑定委員の日当その他についても相当な予算が必要であろう、かように考えております。
  67. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 法務大臣、いまのはこれは昭和四十年からのことですから、いま直接の問題ではございませんけれども、借地借家法を改正するということになれば、それに当然伴って裁判所側の職員増がなければやっていけないわけですから、この点は十分御考慮をお願いしたい、こういうふうに考えるわけです。  それから別な問題になるんですが、もうさっきちょっと私が質問した家庭裁判所調査官が、非常に試験観察が多くて、たくさん件数をかかえて困っているわけですね。これは、その点の調べはあとでつきますか。ここではわからないかもわかりませんが、わかりませんか。
  68. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 現在ちょっと手元にいたしておりませんが、調べればある程度の数字は出るかと思います。
  69. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは東京とか大阪とかの大都市と、それからそうでない中都市との間で調べてみるといいと思うんですけれども法務大臣、こういうところに一つの原因があるんですよ。少年がいろいろな事件を起こすでしょう、非行事件をね。従来だったら、裁判所少年院へよく送るわけです。ところが、少年院へ送ったんじゃ少年が現実の少年院のあの姿ではよくならないんだと。かえって悪くなるばかりなんだと。いまの少年院のあり方ではだめなんだと。それならば、裁判所としては、ある責任者のところへ預けて、そうして厳重な条件をつけて少年の模様をしばらく見ていく、試験的に模様を見ていく。そうして、その結果がよければ保護観察にするというふうな意向が非常に強いんです。これは少年院のあり方に対する不信の声が裁判所の中に非常に強いんですよ。これはこんなことを言うと裁判所の人はかえって迷惑かもわかりませんけれども、私ども聞く範囲ではそうなんですね。そこに原因があるんですよ。ですから、少年事件の問題の中で少年院送りというのは非常に減っておりますよ。これは事実なんです。あそこへ行ったらどうにもしようがなくなる。逆効果になるんです。この点は、法務大臣、よく考えてもらいたい。いまの段階少年院のあり方というようなものについて法務大臣としてお考えがあれば承りたいと思いますけれども、いまなければいまでなくてもいいんですけれども
  70. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 少年院に行ったために悪い子供の中に入って悪いことを覚えて帰るということもありますけれども、一つは、刑務所に行きますと、刑務所から帰ってきた人間だ——少年院を刑務所と同じようなものだという社会観念がありまして、そこへ行ってきたということで社会のほうで受け入れるほうで一つのプレジュディスが起きるというような面もあるかと思います。少年院自体の内容をよくしますという必要は、むろん始終努力してまいりますが、いまこの両方があるのではないか、こういうふうに考えます。大ぜいのところへ行って悪いことを覚えてくるという点もあると思いますが、ほんとうに注意していかなければならないと思いますが、中がだんだんよくなれば世間の受け入れ側の考え方も変わるし、相互関係だと思います。さらに努力していきたいと思います。
  71. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは裁判所定員法の質疑のときですから、はずしますけれども少年制度のあり方という問題なんかはもっと基本的に考える必要があるんですよ。それは法務省には法務省の言い分があると思いますけれども、現在のようなああいう形の中へどんどん入り込んでどんどん悪くなる形が強いですね。これは法務省としても意見があると思いますけれども、十分お考え願いたいと思います。  そこで、裁判所事件の数が非常にふえたんだ、それで裁判官をふやすんだと。これはわかるんですが、そうすると、一体どれだけの人数が必要だということをどうやって算出するのか。この前私も質問したのですが、ここに表みたいなものをいただいておりますが、これはどういうものなんでしょう。概略だけでもけっこうですから、説明願いたい。
  72. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これは、前回にもちょっと申し上げましたが、今度裁判官その他の職員増員をしていただくということの考え方は、大体二点から出ておるわけでございます。一点は訴訟の促進という問題でございますし、一点は交通事件処理ということになっているのでございます。  そうして、いまお尋ねの点は主として訴訟促進関係の問題と存じますが、この訴訟の促進につきましても、現在いろいろお話を伺っておりますと、結局やはり大都会の訴訟事件が非常におくれておるという御批判が多いのでございます。それに比べますれば、中小都市の事件の遅延ということはそれほどでもない、こういうふうにいろいろ御批判をいただいておりますので、私どもといたしましても特に大都会のほうに重点を置きまして、大体六大都市及びこれに準ずるところの裁判所増員をしていただくという考え方が出発点でございます。  そういたしまして、お手元に差し上げました「訴訟促進のための所要人員算出方式」というものに書いておりますとおり、現在民事では大体十カ月から一年近くかかる、刑事では大体六カ月程度かかっておるということでございますので、これを少なくとも民事では五カ月、刑事では三カ月と速度を半減したい、こういう観点から人員を算出したわけでございます。  その算出のごく大まかな考え方は、前回にも申し上げましたとおり、要するに裁判官を倍にすれば事件は半分の速さでできるであろう。これも当事者のほうの御都合とかいろいろございますから、一がいには言えませんけれども、ごく大まかに考えれば、裁判官を倍にすれば事件は半分の速さでできると、こういう考え方が出発点でございます。ただ、これを一年でやろうといたしますと、ばく大な裁判官を必要とすることになり、これは常識的ではございませんので、大体三年計画ぐらいでこれをやっていくと、こういうことにしようということでこの数字をはじき出しているわけでございます。  「算出方式の説明」というところが非常に複雑なような表現をとっておりましておわかりにくい点もあろうかと思いますが、実は、前回にも申し上げましたとおり、これはいまから四、五年前に訴訟促進関係増員を要求するという作業を始めました当時、当時の担当者が統計数学の専門家の知恵を借りまして、そうしてこれを数式にするにはどうしたらいいかというようなことでいろいろその意見も聞きまして、そうしてその結果ここにこういう数式というものを考え出して、この考え方自体は大体大蔵省のほうでも御了解いただいておるわけでございます。実は、私どものほうは、そういう式ができましたものを最近になってあとから見ておるわけでございますので、理解の点が若干不十分な点があろうかと思いますが、結局、そこにありますように、三年後の未済件数というのは、要するに、現在の未済件数と、今後三年間に新たに来る事件、これがいわば受理のほうになるわけでございます。それから処理のほうは、裁判官の数に裁判官一人当たりの年間処理件数を乗じてこれを三倍にすれば、それが三年間の処理能力ということになりますので、三年間の受理件数から三年間の処理件数を差し引きますれば、これが三年後の未済件数になる。そうして、(B)のところにありますのは、結局、審理期間の短縮率、つまり、特定の事件を一年でやるか半年でやるか。つまり、半年でやれるということは、未済事件が半分になれば審理期間も半分になろう。そういう意味では、大きな目で見れば、審理期間の短縮率は未済事件の減少率と一致するであろう。こういう点からこの二つをかみ合わせますと、その(C)のところにありますような数式が出てまいるということになるわけでございます。結局、現在の未済事件数よりもどれだけ審理期間を短縮するかということは、結局、現在の未済件数と、それから今後の処理件数、それは増員後の裁判官数で見てまいりますれば、そのときに審理期間が半分になっておるものならば結局この数式は成立すると、こういうことになるのでございます。これをこのままでは非常にわかりにくうございますが、それぞれたとえば現在の未済件数をAと置き、審理期間短縮率をBと置くというふうにして、そうしてその方程式を解いてまいりまして、求める数字は増員後の裁判官数というものが求める数字でございますから、この方程式を解きますと、その下にあります「故に」というところの数式になる。で、結局この数字を求めるわけではございますが、しかし、そのうちの年間処刑件数を一人当たりの年間処理件数でやっていくという点は、大体現在の裁判有数と見てもよいので、今後増員を必要とする数は、そのプラス以下に書いてあるところになるのではないかということで、結局一番冒頭のところに戻りまして、所要人員数というそこに帰ってくると、こういうことにごく大まかに申し上げますればなるわけでございます。
  73. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その結論はどうなんですか、この式でいくと。大蔵省が認めた式なんでしょう。この式でいくと、一体裁判官は何人ふやしたら充足できるのか、それから書記官は何人ふやしたら充足できるのかという結論はどうなっているんですか。
  74. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) この点は、前回にもある程度申し上げたかと存じますが、この数式はいま増員をしていただこうとします東京、横浜、大阪、京都、神戸、名古屋、広島、福岡の八ヵ庁についてそれぞれこの計算をいたしまして、そして必要とする数字は各庁ごとに出てまいるわけでございます。この数字はお手元には参っていないと思いますが、省略させていただきますが、合計数といたしますと、全体で判事二十四名、判事補三十名、裁判所書記官百十二名と、これはその八ヵ庁の合計でございますが、そういう数字がこの数式の結果出てま  いったのでございます。
  75. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 結局、その中でしかし認められたのは五名・五名でしょう。
  76. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 裁判官につきましては、御指摘のとおりでございます。
  77. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、現在の段階では、どこかへ事務量がしわ寄せが来て、裁判官の負担が重くなれば、それがまた書記官へ負担が重くなってくる、こういう結果になってくるんじゃないですか。
  78. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これは現在よりもさらにこういう増員によって一そう早く仕事をする、こういうたてまえの要求でございますので、その要求の妥結いたしました線が低いということは、結局その訴訟促進が最初期待したようなほどにはまいらないということでございまして、まあ現在の裁判官の負担は別にいまより重くなるということではございませんが、ただ訴訟の速度を半減しようというふうに計画いたしました目的は、この数字では達することは困難であろう、こういうことでございます。
  79. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 大体質問は終わりに近づくんですが、この「新受事件数と裁判官数との比較」という表をいただいたわけですが、これで見ると、明治二十三年に裁判官が千五百三十一人ですね。現在が二千四日三十人。一・五九倍ですか。事件数が、明治二十三年は五十九万九千三百八十四、昭和三十七年が四百四万二千八百十四。六一七四倍。事件数は六・七四倍になっているのに裁判官の数は一・五九倍、こういう結論ですね、これは。
  80. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) その数字の点は、御指摘のとおりでございます。
  81. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは裁判官がこの数字を見ただけでも実に無理な仕事をさせられているということはよくわかりますね。そうすると、裁判官以外のいわゆるいろんな職員がいるわけですが、これは昔と今とでは、今は非常に複雑になっていますね。数もふえているんだと思いますけれども、昔——昔というか、戦前の裁判所構成法のころと、裁判所法になってからのころと、裁判官以外の職員の変化はどういうふうになっているんですか。
  82. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) ただいま稲葉委員のお述べになりましたお話の中の前段の点でございますが、裁判官の負担が激増しておるではないかという点につきましてもちょっと申し上げたいのでございますが、この「合計数」と「裁判官数」とを比較してごらんいただきますと、確かにお話のとおりになるわけでございます。しかしながら、備考の欄をごらんいただきたいのでございますが、たとえば昭和二十五年にいたしますと、これは物価統制令違反とか食糧管理法違反というような特別法犯の増加が著しいのでございます。つまり、刑事事件新受の五十六万九百二十四という中で、特別法犯が三十八万余りも占めておる。つまり、非常にそこにウエートがかかっておる。それを差し引きますと十八万幾らということで、これはむしろ十五年当時よりも刑事事件は減っておるという計算になるわけでございます。それからさらに三十五年以降は、これはもうつとに御承知のとおり、道路交道違反事件が激増しておるわけでございます。この点は、この備考にありますとおりに、三十五年には道路交通違反事件が百八十九万三千七百十件、それから三十七年度で申しますと三百二十五万九千四百八十三件。結局、この三百二十五万というものを差し引きますと、刑事事件の中で道路交通以外の与件というものは四十万足らずである、こういうことでございます。むろんこれでも戦前よりはふえておりますから、その限度では負担が重くなっておりますし、むしろ私どもとしてさらに重要視いたしておりますのは、やはり行政事件その他のやはり非常にむずかしい事件がふえておるとか、手続が非常に複雑になってきておるという点のほうがまあ裁判官の感覚からいたしますとむしろ非常に負担のように感ずるわけで、件数で何倍になったという点は、どっちかというとそこに数字の一つの問題がある。道路交通事件が決して全然簡単というわけでもございませんけれども、これは幾ら数があっても、ある程度の数の裁判官がおれば処理できる、こういうことでございます。  そういう点を御理解いただきたいわけでございますが、さらに補助機構の点は、先ほどお尋ねいただきましたたとえば書記職の数でございますが、御承知のとおり、戦前には裁判所と検事局とそれから現在の法務局にあたります登記所と、これを総合いたしましてそこに裁判所書記というものが置かれておりまして、その数は大体五千人ないし六千人程度であったのでございます。しかしながら、これは決して現在の観念における裁判所だけで働いておった職員の数ではございませんので、かりに半分と考えますれば三千人程度裁判事務のほうに来ておった。しかも、それもたとえば会計とか庶務という現在事務官でやっておりますようなこともみんな書記がやったわけでございます。現在の数は先ほど資料でお口にかけたとおりでございますが、これをたとえば昭和二十二年に比較して見ますと、昭和二十二年当時は書記官事務官合わせまして三千三百名ほどでございます。二十三年にかなりふえまして、事務官書記官が合計六千五百程度になったのでございますが、しかしながら、今日、事務官書記官書記官補を合計いたしますと、三十八年度におきましては二万二千人ということで倍増しておるわけでございます。さらにそのほかに速記官が九百名足らずおりますし、また、先ほど来問題になっております家庭裁判所調査官及び調査官補を合わせますと約千三百名ということでございまして、そういう点で非常に数的にも補助機構は充実してまいっておるわけでございます。  さらに、資格の点につきましては、先ほどちょっと申し上げましたように、今日の書記官というものは、とうてい戦前の裁判所書記とは比較にならない知識教養を持っておる、こういうことを申し上げて差しつかえないだろうと考えておるのでございます。
  83. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 行政事件はもとは行政裁判所でやっていたわけですね。ところが、戦後は普通裁判所でやるわけですから、これも事件も相当ふえておるし、それでむずかしい事件が多いわけですね。それで民事裁判官の負担が重くなっているというふうに考えるのですが、いまの道交違反事件が三百二十六万あるわけですけれども、これはなるほど裁判官は負担にならないかもわからないけれども、略式命令を書くのは全部書記官がカーボンを使ってほとんど書いているわけでしょう。だから、書記官の負担というものは非常に重い。負担が、道交法違反がふえることによって今度は書記官のほうにかかってきているんじゃないですか。
  84. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 裁判官の面では道交事件が非常に軽いウエートである、それに比べれば書記官のほうの軽さというものはそれほどでないということは、御指摘のとおりであると思いますが、しかしながら、書記官としては、公判廷に立ち会いまして調書をとるという仕事は、これはなかなか頭も要りますし、骨の折れる仕事でありまして、いま御指摘の略式命令を書くといいましても、これは、ただいて書き写す仕事、また、どちらかと言えば書記官よりももっと下の人でもいい仕事であります。当然それは裁判官がそれをよく審査してそれの内容を決定するわけでございます。その一つの補助としていわばタイピストがわりに使うということでございますから、その仕事はかりに少々ございましても、そう骨の折れる仕事ではないのでございます。
  85. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 書記官が道交通法違反とそれから立ち会いと比べて、立ち会いのほうが骨が折れるというか、仕事がばく大であるとか精神的なあれがあるとかということを聞いているのではなくて、刑事事件はこれだけふえているけれども、道交法違反が非常に多いのだから、刑事事件のほうはそれほどふえたことにならないと、だから裁判官の負担としては刑事事件はそれほどふえてないと言われるから、それでは逆に、しかし道交法違反がこれだけ三百二十六万もあるということは、その負担は書記耳にかかってきているのじゃないか。これは私は裁判所へ行って見ても、ほとんど書記官が朝から晩まで略式命令を書いている。カーボンで朝から晩まで書いていて、目を悪くしちゃう。体を悪くしている人もずいぶんいる。いまそういうことも結果として出てきているのじゃないか、こういうことを言っているわけです。だから、こういう道交法違反がこれだけふえたのなら、それに伴って当然書記官増員の問題とか、あるいはカーボンで書かなくてもほかのやり方なんかあるのだろうと思いますが、これは一体どういうふうにするんですか。
  86. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 先ほどのお答えが多少的をはずれておったかと存じますが、これは決して私ども道交法事件がふえる場合に書記官増員を必要としないなどとは毛頭考えておりませんので、現に本年度におきましてもその関係増員を要求して、現実に書記官については十九名の増員を計上していただいております。また、事務官につきましても三十四名の増員を計上していただいておるのでございます。先ほど申しました書記官なり事務官が二十二、三年当時に比べますと倍にもふえているということは、それはやはりその関係でそういうふうにしていただいているわけでございますが、さらに、いま最後にお話のございました負担軽減の点につきましては、これはもう御承知のとおり、最近かなりの庁でいわゆる交通切符制というものを採用いたしまして、これは警察のほうから検察庁を通って交通裁判所まで一つの切符でもって参るということになりますので、その間にそれぞれの官庁であらためて書類をつくるという手間がよほど省けておる、裁判所のほうにおきましてはその点ではよほど負担を軽減していただいている、こういうことになるのでございます。
  87. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 結局、裁判所職員定員法を見て、現実にやはり裁判官なり書記官なり書記官補なりあるいは調査官なり、そうしたものが仕事が非常にふえている割合に人数がふえてない、少ないのだということは率直に感じられるわけですね。これは大蔵省もこの前来てもらって話したんですが、そこで法務大臣、最後に、大体おわかりと思いますけれども、今言ったような形で事件がこれだけふえているのに非常に裁判官だけでなくて書記官などの職務がふえているわけですね。これを何とか軽減する方法について大蔵省あたりと折衝して——賀屋さんは大蔵大臣をやられたのだし、そっちのほうにも折衝をして、この負担の軽減なり増員ということにもっと骨を折って心ただきたい、こういうふうに思うわけです。それに対して御感想があれば承って、私の質問を終わります。
  88. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) まことにごもっともでございまして、私自身の経験といたしましては、だいぶ何年も昔ですが、郵政事務の増大に対して増員をどう解決するか、電話の需要増加の架設の停滞に対しましては、どう解決するか、そういう問題は直接裁判には関係はございませんが、あるいは特許局の審判事務の増加ということで非常に増員を要する、これらは一応の計算は出るわけでございます。それらは能率をできるだけあげましても、やはり非常な増加をしなければならない。そういうことでずいぶん当該局は苦しみ、私どももそういう予算を昔担任いたしておりましたときにもずいぶん苦しんだわけでございます。ところが、それはいろいろときによって違いますが、それも国会全体の予算の論議になりますというと、人員の増加は認めない、役人の増加というものは極力押えろ、そういう空気が常になかなか強いのでありまして、行政整理をやるとか、そういう空気が強うございまして、いまは必ずしも当時とは同じではないかもしれませんが、全体としての部局の増設とか、役人の増加は押えていくという空気がございまして、部分的な要求と全体が調和しないという悩みが継続していると思うのであります。それで、大蔵省といたしましてはいろいろ常に押えにかかる、これはやむを得ないと思いますが、それでわれわれのほうでは増加をする。そこで結局落ち着くところは、自分のところだけひどく押えられたというのではがまんできないが、ほかががまんしている程度だと、詳しいバランスはわかりませんけれども、一応はここまでやってくれたならば、相当努力しているのだというので、いわばあきらめるとか、泣き寝入りするような実情が多いのでありまして、それで私どもも来年度の三十九年度の予算につきましても、相当いろいろな点で折衝いたしまして、裁判所の問題は裁判所から御交渉になるのですが、機会あるごとに側面的にずいぶん話をいたしたような次第で、結果がこういうことになりました。どうも、部分的に見ますと、満足ができないことが多いのでございますが、全体のつり合いからそこだけあまりに過酷に増員を認めないということだけはないようでございます。幾らか率直に申して自分の関係のところだけ少しでも多くしてもらいたいということで努力をいたしておる次第でございます。  法務省自身といたしましても、登記所の増員問題などは非常に苦しんでおるわけでございます。細々ですが、百人、二百人そこそこ認められてもらっておるのでやっとがまんはしているのですが、あれを三百人くらいまで増してもらいたいという気持ちは十分にございます。今後もできるだけ努力したいと思います。
  89. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうも大臣のいまの説明を聞いたんですけれども、ちょっと実力者大臣の言としては少し納得いきかねるんですね。やはり特殊事情だと思う。とにかく、先ほども話がありましたが、もう事件のほうが六倍にもふえているんです。それで裁判官の数が一・五倍。これはいろいろ説明がありましたが、大ざっぱに言ってこういうことでは迅速を期待してもこれは無理じゃないか。私は、時間の関係もありますから、二、三点お伺いしたいのですが、提案理由を見ますと、訴訟の適正迅速化をはかる、そのために増員をするんだと。しかし、その増員は、さっきから問題になっているように、ほとんど微々たるもので、判事判事補それから簡裁判事、それが各五人の増員ということでございますから、これは全く提案理由にうたっている迅速をはかっていないことは事実です。私はこの問題と関連して、提案理由には「迅速な処理」と迅速だけ問題にしている。しかし、何か一つ落ちておるんじゃないか。裁判行政の中で何が非常に重要な問題が落ちておるんじゃないかというふうに思いますが、憲法なんかと考えてどうお考えになりますか、法務大臣にお聞きします。提案理由の迅速だけが問題になっているが、どうですか。
  90. 賀屋興宣

    法務大臣賀屋興宣君) ちょっと御趣旨がよく了解できないのでありますが、今回の提案理由は、ここに申しましたようなことが理由で、裁判に関してどういう方針でいくかということはこれ以外にあろうと思います。たとえば適正というようなことは十分あろうと思いますが、それを無視したということではなく、今回の増員をいたします理由はこういうところにあるという意味ではないかと一応考えるのでございます。
  91. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は、迅速、それからもう一つ、これは車の両輪のようなものだと思うのですが、公平というものが問題になってくる。憲法三十七条にもこれははっきり刑事被告人の権利として、「刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。」ということを明記している。これは迅速の問題だけここで取り上げられているのですが、こういう点を考えれば、公平な運営という面から見ましても、人員は非常にこれは不足なんではないか。こういう点からの考慮がないという点で、私は実はこれはちょっと片手落ちではないかと思っている。ただスピードだけのことを問題にしているのですか、その点はいかがですか。
  92. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 公平ということは当然に考えておる原則でございます。「公平な」ということを幾らか軽く見ますれば、同じ人間でももっと迅速にやれるかもしれません。それではいけないので、公平ということは常に裁判所は注意しておられる。注意じゃない、基本の方針としておられる。その基礎のもとに早くやろうと思えば、事件も多いし複雑であるから、人を増さなければならない。こういう意味で、迅速と書いてありますことは、もう公平は不動の原則として、その基礎の上に迅速にやるのには人を増さなければならぬという意味で要求されたように私どもは理解しておるのであります。
  93. 岩間正男

    ○岩間正男君 まあそこのところですね、これは当然だからこれには今度は問題にしなかったんだと、こう言われておりますけれども、これはまああとでいろいろな問題についてお聞きしたいと思いますけれども、必ずしもそういっていない問題がたくさんある。だから、やはり二つの、非常にスピードを重んずるということと同時に、やはり公平の原則を貫くというこういうものでなければ私はならないというふうに考えるんです。  そこで、裁判がおくれている原因には、裁判官が不足しているという問題もありましょう。しかし、これはそれだけじゃないのではないか。  第一に、最高裁は、横田長官はじめ、裁判官会議などで訴訟の遅延をしょっちゅう問題にしているわけですが、その原因の中に人員不足もあげていますが、そのほかに、裁判所側にだけあるのではなく、むしろ訴訟当事者、あるいは代理人、関係人等の側にもそういうものがあるんだということを盛んに言っているんですが、これはどういうことなんでしょうか。
  94. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) ただいま御指摘のございました点は、これは、たとえば民事事件で申し上げますと、期日があらかじめ指定されておりましてきまっておりましても、正当な理由がなく、あるいは正当な理由があるかないかがはっきりしないままで出頭されないという場合もあるのでございます。そういうのがいわば直接の訴訟の関係人ということになりますし、それからさらに証人の方が正式の呼び出しをいたしましてもおいでいただかないというようなこともございます。こういうのもいわばそのために期日が延びる、こういうようなことを大体考えておるわけでございます。
  95. 岩間正男

    ○岩間正男君 そのほかに非常におくれる原因というのを何か考えておりますか。
  96. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 実は、訴訟遅延の原因というものは、いろいろ審議会とか調査会等でも問題になりまして、私どもばかりではなしに、弁護士会の方々やあるいは法務省の方々も一緒にいろいろ検討いたしておりますが、実にいろいろ複雑な原因がまざっておりまして、ことば一つでこういう原因ということはなかなか言いにくいのでございます。われわれのほうとしては、やはり裁判官の負担が重いとか、あるいは裁判所の施設が十分でないというようなところを謙虚に反省して、こういう点で予算的措置その他を講じていきたいというふうに考えておるのでございますが、先ほど申し上げましたような、当事者が出頭されないとか、あるいは証人が出頭されないというような問題のほかに、たとえば弁護士さんをおつけになるときに本人自身で訴訟をおやりになる、これも民事事件でございますが、そういう場合にはなかなかそれは手続がしろうとの方にはわかりにくいので、そういうことも一つには訴訟遅延の原因になっていると思いますし、また、刑事関係では、弁護士のおいでにならないようなところで国選弁護をお願いする場合になかなか容易でないというようなことも一つにはその点も関係を持ってまいろうと思いまして、これはなかなか複雑な原因であるというふうに申し上げざるを得ないわけでございます。
  97. 岩間正男

    ○岩間正男君 刑事事件の場合、特に権力裁判と言われているような問題ですね、こういう場合にはどうです。この例として具体的な例は松川事件だと思うんですが、判決がとにかく最終判決に到着して無罪が決定するまでに十四年かかっている。これが遅れた原因をどういうふうにつかんでいるのですか。法務大臣、いかがです。
  98. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 一般裁判ではそんなに遅延しているわけではございませんが、何審も、控訴、上告をやり、それからまた差し戻される、そういうふうなことが重なりまして事件そのものが非常に複雑であるという場合に起こりますことで、一般ではないと思います。そういう場合には、まことにおくれたことは遺憾でございますが、先ほども一仰せがありましたように、適正に公正にやらなくちゃいかぬという要求からやむを得ずそういうことになったことが多いと存ずる次第でございます。
  99. 岩間正男

    ○岩間正男君 いまの御答弁では、松川事件裁判が遅延したほんとうの原因というものをはっきりお述べになっていらっしゃらないのだと思います。第一に、あれは、警察、検察側の拷問によるうその自白、まあ赤間自白と言われるもの、あるいは証拠の隠匿、諏訪メモ、こういうふうなものがあって、いま裁判の公平ということを非常に考えていると言われたわけですけれども、実際は官憲によって憲法や刑訴法が無視されてこれらの訴訟指揮がなされた、このことが裁判の非常に遅延した大きな原因になっていると、こういうふうに思うんです。この点についてこれは反省はいかがでしょうか。法務大臣、いかがです。
  100. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) まあ当時は、今と違いまして、いろいろ捜査上不便なことが多かった時期のようでございます。しかし、判決がああいうふうに最後に確定いたしまして、それにつきまして検察側としましてどういうふうにこれを考えるか、反省すべき点があるか、あるいは反省以上に責任々とるべきような点があるかということにつきましては十分に審査をいたす考えで、ただいま最高裁におきましても担任の人をきめまして十分にその点を探査いたしておると、こういう次第でございます。
  101. 岩間正男

    ○岩間正男君 まあ真犯人の追及の問題もこれはあるわけで、時効が間近いということでこれは放棄されていけない問題だとわれわれは考えているわけです。同時にまた、これに関係した警察やあるいは検事側で非常に責任を負わなければならないものがあると思う。こういう結論はいつごろ出すお考えですか。
  102. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 前の答弁で最高裁と申しましたが、これは最高検察庁の問題であります。  いま熱心にそれについて調べておりますから、ただいまのところいつという時期をはっきり申し上げられませんが、十分に反省すべきところ、さらに責任を追及すべきところについて調査をいたしております。
  103. 岩間正男

    ○岩間正男君 すでに判決が下って、自後の処理をやっているわけでしょう。そういう中で真犯人の追及の問題と責任者の処分の問題というものは最も敏速に、そうしてこの責任感を明らかにした立場でなされなければならない、こういうふうに考えるのですが、この点はいかがでしょう。
  104. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) できるだけ早く結論を得たいというように思っております。
  105. 岩間正男

    ○岩間正男君 このような不当なことについて、これは大臣も認めておられる。だから、それに対する責任問題を現在追及中だという話でございましたが、これは松川事件だけではないと思うんですね。メーデー事件、白鳥事件、芦別事件、それから青梅事件、帝銀事件、松山事件、下山事件など、たくさんの戦後の事件がございます。これは公安労働事件等といわれる種類のものですけれども、その背後には権力支配が非常に濃厚に動いておる。で、私は、こういう事実を考えますときに、裁判のおくれを問題にする、これは当然であります。裁判所がそれをいま問題にしているんですね。それでこのような立法をされたわけでありますが、しかし、同時に、裁判の公正公平ということを切り離しては裁判としての意味を失うだろう。単にスピードがあるだけでいいというものでもない。したがってこういう点について、これは憲法に定められた三権分立の立場から考えて、単にスピードだけが問題でなくて、公平の立場からの措置ですね、人員配置の問題も私は非常に関係を持ってくると思うんですよ。ほんとうに裁判を適正、公平にやっていくためには、やはり人員の配置をいままでよりも分厚くしなければならぬ。その面からの要求というものは今度の予算要求でなされたのですか、どうなんですか。そのにおいがないですね、少しも。そういうことをわれわれは聞いていない。いかがです。
  106. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 先ほど来御指摘のありました点、全く私どもも同感でございまして、訴訟を何でもかでも早くやろうなどということは毛頭考えておりません。提案理由でも「適正迅速な処理」というふうにうたっていただいておるのでございますが、さらにその根本に裁判の公平ということは、これはいわば私ども裁判官といたしましては夢寝にも忘れることのない問題で、いわばすべてはその前提の上に成り立っておるわけでございます。定員の要求にいたしましても、これも大臣からお話のございましたとおり、ただ早くさえやればいいということなら、現在の人員でもできないわけではないのでございますが、それでは裁判の目的に反するということで、やはり何とかして適正また公平なやり方で、しかも早くやりたい、こういうことが中心でございます。そういう意味では、私ども単に増員だけではなしに、たとえば営繕費として相当な予算を計上していただいて、法廷の施設あるいは裁判官室その他の施設というものをやっていただくことになっておりまして、あるいはその他いろいろな資料整備もしていただいております。これらはすべてその公平な裁判所の適正な迅速な裁判という目的から出発して計上していただいているつもりでございます。
  107. 岩間正男

    ○岩間正男君 私はそういうような一般的なことを聞いているのではなくして、今度の予算要求の中に、公平の観念から人員を増加しなければならない、当然あなたも認めておられる、それをどういうふうに具体化する努力をしたかということを聞いているわけです。ところが、それが建物のほうにいったり、どうもはずれています。だから、的確に答えてください。短くてけっこうです。
  108. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君)  今回の増員要求は、すべてその目的でございます。
  109. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうもその点がはっきりしないと思うんですね。私は、この裁判の運営の問題について、しかも非常に重要な一つの問題があるのであります。まさに焦点ともいうべき問題があると思う。それは、最高裁長官の横田喜三郎氏の問題です。これは、昨年訪米して、コロンビア大学で、砂川事件について最高裁判決をたたえた演説をしているのです。これはまあ新聞でもずいぶん問題になって、これは重大な問題だということを指摘しておるわけですけれども、これを法務大臣はお読みになりましたでしょうか。
  110. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) いまの横田長官のことは、私存じませんです。  それで先ほど御質問の中におことばがありましたが、ちょっとあとからまた誤解を生ずるといけませんから申し上げておきますが、松川事件に対して検察陣が不当と認めていまいろいろ調べているということでございますが、不当なことはないかということを調べる意味でございまして、検察陣の緒言と違いまして、裁判の結果がああいうことになりましたことは、検察陣として十分でなかったということは言えるかもしれませんが、しかしながら、検察が信ずるところで進みましてそれが検察の見込みと違って無罪になるということも一これは裁判としてはあり得ることですから、あれだけの裁判で違ったのだから、はたしてそこに手落ちはないか、責任はないかということを調べているので、その点がちょっとございますから、念のために申し上げておきます。
  111. 岩間正男

    ○岩間正男君 横田長官のことについては答弁をなされないんですが、いまの松川の問題ですが、これはまあ諏訪メモとか赤間自白の問題をあげてみても、いわゆる不当な暗黒裁判といわれている姿がはっきりしたと思うんです。無罪になれば、当然公正な裁判を妨害した警察や検察当局が対比的に犯罪的な要件も備えてくるわけです。だから、いまのような答弁ではぐらかされてはいけないと思うんですが、その問題は一応もとに戻って、ただいま法務大臣から弁解がありましたので、私はその点については、はっきりした立場をとっていただくように要求いたします。
  112. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連して。ちょっと一言お聞きしておきますが、松川事件に関する検察側の責任という問題で法務大臣はきわめて慎重にいま多少補足的に答弁をされたわけですが、内容的なことについては、私も別な機会にまたいずれお聞きしたいと思っておるんですが、検察の首脳部としては、どういう点を責任の有無について検討をしておるのか、問題点だけをひとつここで御披露願いたいんです。その問題点についての白黒と適不適といったようなことの判断はあるいは延びておるかもしれませんが、どことどこを一体問題点として取り上げておるのか、その点だけをひとつお聞きしておきます。
  113. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) その点につきましては、私はいま申し上げるべき十分な資料を持っておりませんので、取り調べまして申し上げ得ることは申し上げたいと思います。
  114. 亀田得治

    ○亀田得治君 まあ関連ですから、これはいずれ法務大臣のほうから整備していただいて、お答え願った上でお聞きすることにいたします。
  115. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 岩間君にちょっと申し上げておきますが、できるだけひとつこの点にしぼって御質問をお願いしたいと思います。
  116. 岩間正男

    ○岩間正男君 そこで、さっきの横田長官の御発言ですが、これは法務大臣まだお読みになっていらっしゃらないというのは、ちょっとうかつじゃないかと思うんですが、ぜひこれは御検討願いたい。私この一節を読んでみますが、「コロンビア大学法学部同窓会で、砂川事件についての伊達判決を破棄した最高裁判決をたたえたのち、つぎのような演説を」したということです。「これは日本の最高裁がアメリカ流の〃政治問題の原理〃を認めた点で歴史的意義があり、政治的見地からいえば、この判決は、日本の平和と安全、日米間の友好と協力の基礎をきずいたものである。もし、この判決が確認されたらどんな重大な結果がおこるか、諸君は容易に想像できるだろう。日本にいるアメリカ軍は撤退せざるを得ず、日米の友好的協力関係にヒビがはいるであろう。そればかりでなく、日本は外部からの侵略にたいし有効な防衛手段をもたないことになろう。そこで検察側は最高裁へ異例の跳躍上告をおこなった。日本にはいまなお、無防備、無抵抗という意味の中立主義をとなえる人びとがいる。日本の一部の人びとの間にいきわたっているこのような意見にたいして、最高裁が明確に反対の宣告をしたことは意義深い」……それから続くのでありますが、いまの一節を読んだだけでも、これは重大な問題を含んでおるんじゃないか。政治的な裁判はしないんだといっておる長官が、実はいまのことは非常に重大な政治的な発言だというふうに思うんですね。どうでしょうか。特に東京地裁の伊達判決に対してこれを否定して跳躍上告をさしたわけですが、その趣意がいまの演説の中にはっきり出てきているじゃないか。最高裁が政治的判断と予見を持って検察陣に対して跳躍上告を行なう。そうして、あの伊達判決は、当然これはわれわれの立場からいえば違憲判決でありまして、正当だと思う。日本の人民の権利を守る当然の判決だと思う。こういうものに最高裁が手を出して、しかも跳躍上告というような異例のやり方でもって伊達判決を、下級裁判を否定してしまう、このことのむしろ政治的意味を述べておるわけですね。こういうことで一体裁判の公平公正というものは保てるかどうか、これは私は重大な問題だと思うのでありますけれども法務大臣はどうお考えになりますか、これについて。
  117. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) いまお述べになりましたことは、私は、政治的理由で法を曲げて判決をしたんじゃない、正しい判決をしたその結果が政治的に見るとそういうふうになると、こういうことで、一向差しつかえないと思います。
  118. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは時間の関係もあってここで詳細にやることはできないんですが、大体その結果はどうなるか、この判決の持っている意味というのはこういうものだというような形の政治的見解がどんどん述べられています。こういうことでは裁判の公正というものは非常に期しがたいのじゃないか。しかも、これは東京地裁ではっきり違憲の判決が出たんです。これに対して最高裁がまるで圧力をかけるような形でもって跳躍上告をやって異例の措置をとったという点では、これは日本の裁判の歴史上重大な問題です。今後の運営についても公平公正の立場から許しがたいほどのやり方だというふうに考える。これは最高裁長官のことでございますから、これに対しては国会が批判する自由はないかもしれません。最高裁関係の方々にこれを伺っても、あなたたち答えることはできない問題だと思いますから、あえて聞きませんけれども、しかし、いまの法務大臣の御答弁というのは、法の公正、法の公平を真に守っていくというそういう立場、そういう立場というものをどう貫くかという態度の問題、これと非常に深い関係があると思う。  しかも、私はここで問題にしたいのは、なぜ日本でそれを公然とやらないか。日本でやったらいいでしょう。日本の最高裁の長官です。日本でやればいい。なぜアメリカへ行ってアメリカの大学で一体こんな演説をする必要があるか。これこそ全くアメリカに対して日本の裁判を売り渡す結果になると言われてもしかたがない。なぜこういうことをやる。日本の最高裁の長官でありますから、日本人に対して堂々と自分の所信を披瀝するならまだ話はわかる。ところが、そうじゃない。日本で言えないことをアメリカに行ってやっておるというやり方、ここにいま置かれている日本の裁判の性格がある、こう言われてもしかたがないようなやり方じゃないですか。私たちはこういう点についてやっぱり不謹慎のそしりは免れないと思うんですね。法務大臣、これをしもよしとされますか。堂々ともっとはっきりした態度をとってください。
  119. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 第一審と上級審で判決が違う、それで法が公平でないということは、これは覆審制度を置いた趣旨から全く私はそうは思わない。最高裁は信ずるところによって判決を下したのでありますから、その結果を横田君は批判されたんだと思います。横田氏は、私は想像しますに、何もアメリカでは言えるが日本では言えないということじゃない。日本でも私は堂々と言えると思います。
  120. 岩間正男

    ○岩間正男君 とにかく、これは新聞の伝えるところで、国内のニュースとしては伝わってこない。アメリカからこだまして返ってきたという形でとらえられている。こういうところに問題があるんですよ。伊達判決というものの正当性をわれわれはあくまで主張しているわけですが、こういう主張に対してそのような権力じみた政治的な圧力が加えられておる。こういうような形では非常に私はまずいと思うので、やはり事が事だけに、人が人だけに、この問題についてはもっと慎重で、日本の法をあくまでも守る、そうして憲法の命ずるところの法の番人としての最高裁判所長官としての立場を私ははっきりさしてほしいと考えるわけです。だから、こういうやり方で行きますから、この法案の提案理由を見ましても、迅速についてはうたっているけれども、公平の観点というものは抜けてくるんじゃないか、こういうふうに私は考えられるわけです。こういう点についてもっと公平の裁判を貫くんだ、憲法三十七条の刑事被告人の権利を守るんだ、こういう点で一体今後施策の上でどういう処置を考えておられるか。この保証はどうなのか。この保証なしには憲法は空文になるわけです。この点はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  121. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) それはもう日本の裁判所の不動の考えでございまして、政府もそういう考えのもとに動いております。それで、裁判官の何といいますか地位などはすべていまの制度では定まっておる。行政が干渉しない、そういうふうな制度を確立しておる次第でございまして、関係者一同その精神を守ってまいっておる、これが保証でございます。
  122. 岩間正男

    ○岩間正男君 御用意がなくていまのような御答弁かもしれませんが、問題が起こったあとだけに、これについてはっきりした見解をもう少しまとめて法務大臣の御答弁を私は要求したいと思う。いまのような御答弁では満足できません。  もう一つだけ最後にお聞きしたい。スピードスピードといいますけれども、公平を失ったスピードというものは、これはあり得ないと思うんです。ことに、今度の暴力行為等処罰法の場合、いままでの三人の裁判官の合議制というものが単独制に変わってくる、こういうような形で考えられているんじゃないですか。そうすると、スピードはスピードかもしれないけれども、公正の面からいくとこれは非常に危険だ、こういうことにならざるを得ない。しかも、これに対しては法務省があくまでもそういう主張をして、その主張に裁判所側が屈服したという形ですね。現在こういう方向に措置をとられているんだと思うのでありますけれども、こういう問題を具体的に考えてまいりますと、スピードの問題と公正の問題というものをどのように適正にマッチさせていくかということは、これは重要な課題だと思うんですが、いかがでしょう。
  123. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 公平適正ということはもう原則でございまして、それを犠牲にしてスピードアップしようという考え方はないわけでございます。公正適正にやる、裁判としてできるだけスピードアップをしたい、こういうことでございます。  ただいま暴力行為取締法の改正につきまして、単独制で審判するということについてお尋ねがあったかと思いますが、これは、事柄の性質からそれで適当である、しかし、内容が複雑で合議制を必要とする場合は合議制でもやるというように、裁判所考えによりまして、その内容によりまして、必要なものは合議制をとるという道が開けてあるわけでございます。
  124. 岩間正男

    ○岩間正男君 内容の性質というのは、どういう内容の性質ですか、その点だけお伺いしたい。
  125. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) それは、裁判所がさように考えまして、裁判所で決定します。
  126. 岩間正男

    ○岩間正男君 それは裁判所側で内容……そこのところがわからないですな。裁判所考えて適当になどということでこれはきめられる問題じゃない。
  127. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) その点は、現在各種の事件につきましても、裁判所が合議制に付する決定をして合議で処理するという扱いがあるわけでございまして、どういう場合とお尋ねをいただきますと、非常に説明が抽象的にならざるを得ないわけでございますが、要するに、事案が複雑であったり重要である場合には、慎重に検討してそうして合議に付する、こういうことは、それぞれの裁判所が合議体で検討いたしまして決定するわけでございます。
  128. 岩間正男

    ○岩間正男君 抽象的な御答弁ですけれども、一ちょう上がり式にどんどんこういう問題をこれだけで処理していくというやり方は、これはまずいのじゃないか。これは、暴力行為等処罰に関する法律案がいま出されているんですが、この法案の通過に対して非常に心配しているその一つの理由の中にもいまの問題があるんですけれども、これはしかし次の問題としまして、私の質問は終わります。
  129. 中山福藏

    委員長中山福藏君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  130. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 速記を起こして。  他に御発言もないようでありますから、質疑は終局したものと認めまして御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  131. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。別に御意見もないようですから、討論は終局したも一のと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  132. 中山福藏

    委員長中山福藏君) それでは、これより採決に入ります。  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案どおり可決することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  133. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 多数でございます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本会議における口頭報告、議長に提出すべき報告書の作成等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  134. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 御異議ないと認めます。よって、さよう決定いたしました。    ———————————
  135. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 次に、検察及び裁判運営等に関する調査を議題とし、千葉県下における自衛隊員による暴行事件に関する件について調査を行ないます。
  136. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 要点だけ聞きますけれども、この事件で自衛隊が被害者に謝罪をしたことはあるんですか、自衛隊側で。
  137. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) この事件で、事件関係のない者に対する行き過ぎの自衛隊巡察隊の行為がございました。直ちに翌日、被害者の——事件が十二日にあったわけでありますが、十五日に被害者の宅に参りまして見舞いもし、そうして謝罪をいたしました。なお、治療代等についても支払いをしたいという申し入れをいたしましたが、先方は断わったというような報告でございます。
  138. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その三月十三日ですか、だれがどこへ行ったのですか。私どもの聞いているのとずいぶん違うんですが。
  139. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) 政府委員からお答えいたします。
  140. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 十五日に、警衛隊長の山田稔一三佐が深山(みやま)の宅をたずねまして、深山きょうだいに謝罪をしまして、先ほど申し上げましたように、治療代のことも申し上げて、一応了承を得たということであります。
  141. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは深山(ふかやま)というのがほんとうでしょう。  十三日に、山田三佐ですか、これは役場に来たのじゃないですか。自宅をたずねたということになっておりますか。
  142. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 十五日に役場に上がっております。役場に上がって、深山きょうだいに謝罪を申し上げたのであります。
  143. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、謝罪じゃなくて、もしやったのなら謝罪するけれども、調べてみなければわからないのだと、そういうことでないですか。で、おたくのほうの要求は何ですかと聞いたから、いや自分のほうは別に要求はないんだ、安心して生活できればいいんだ、こういうことを言ったのでしょう。謝罪でも何でもないのでしょう。
  144. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 深山さんのにいさんから当初下総の海上自衛隊に電話がございまして、そこで初めて被害者のお名前が判明したものですから、それを伺いまして、警衛隊長の山田氏が上がりまして、そこで謝罪申し上げて——これは当面加害者と関係ございませんので、その晩の事情をあやまりまして、それで治療代のことも申し上げたと、こういう報告でございます。
  145. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 きのう私は深山さんの兄貴に会ったんです。深山さんの兄貴ばかりじゃなくて、その他の人三人ばかりに会いましたけれども、全然話が違うので、非常に憤慨しておる。山田三佐が来たというときにも、これは深山さんのにいさんが電話したのでしょう。自分のほうではこういう目にあったけれども、どうしたのだという電話をした。それで、自分のほうの基地へ来てくれという話だったので、それはひどいじゃないか、ふざけるな、自分のほうで被害を加えておいて基地へ来いとは何事だといって非常に憤慨して、そして電話を切った。それであとから来たのだけれども、それは、もしやったのなら謝罪するけれども、調べてみなければわからないのだというようなことを言ったというんですね。それで、山田三佐があやまったというのじゃなくて、もう一人いた若い人が、あやまったというよりも、おたくのほうの要求は何だと、こう聞いたというんです。要求なんて別にないのだ、自分のほうとしてはただあぶなくてしょうがないから、安心して暮らせるようにしてくれ、こう言ったというんですよ。謝罪でも何でもないんですね。謝罪に行ったというなら、役場へ行ったというのはおかしな話で、個人の自宅へ行くなら謝罪になるかもしれないけれども、役場へ行ったというのは謝罪にならないし、別に手みやげを持っていくのが要件じゃないでしょうけれども、そんなものは持っていったわけじゃないでしょう。何しに行ったのですか。
  146. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) いま申し上げましたように、当夜、そういう事件に券き込まれた方のお名前が判明いたしませんから、そういうことが事前に推移しておったところ、この電話が参りまして、とりあえずというので現在御出勤中の役場へ上がりまして、こちらの受けた報告としては、一応傷の程度もお伺いして、治療代も出せるものなら出したいと思いますがというふうにお話し申し上げたというふうに報告を受けておるわけでございます。
  147. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは十三日ですね。
  148. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 失礼いたしました。先ほどから十五日と申し上げましたが、十三日であります。
  149. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 では、その後は深山さんのうちへはだれも行かないんですか。
  150. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) その後は聞いておりません。そこで一応そういう話を申し上げて、先方も了解されたと思って帰っておりますので……。
  151. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 了解されたというのはおかしいじゃないですかね。治療費を持ちましょうという話はあったかもしれませんけれども、こっちのほうでは憤慨してしまっているわけですよ。いきなり基地へ来てくれなんて言うから、人をばかにするなといっておこったわけです。それで、別に要求なんかないという程度のことなんです。その後行かないという話もおかしいですよ。  高瀬氏のほうはどうしたんですか。これはあなたのほうはいろいろあると思うんですが、高瀬氏のほうは……。
  152. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 高瀬氏のほうは、同じく山田三佐が参りまして、数回参ったようでありますが、お留守のようでございます。働きに行って去るということをお伺いしたようでありますが、これはいずれもお留守で、お会いできなかったということでございます。
  153. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは長官がいる間に要点だけ先に聞いちゃいますが、十六日に警務隊の工藤二曹という人が供述調書をとりに来ましたね。こういう事実はありますか。
  154. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) その事実を聞いております。
  155. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは何をしに行ったのですか。
  156. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 時間ははっきりいたしませんが、被害の状況をお伺いして、診断書等を出してもらったということを聞いております。
  157. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その節も工藤という人は別にあやまらないんですね。自分は関係ないんだ、あやまるんなら責任者が謝罪するんだと言って、別にあやまらなかったというんですが、この人は、基地の外で起きた事件ですね、しかも自衛隊外の人でしょう、それに対して供述調書をとる権限があるのですか。
  158. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 供述調書ではございませんで、被害の状況をお伺いしたということを聞いております。
  159. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 被害の状況をお伺いしただけですか。調書はとらなかったんですか。とったんじゃないですか。
  160. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 調書といいますか、被害の状況を書面にして出してもらいまして、診断書もとってもらっておるようでございます。
  161. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 防備長官ね、この基地の最高責任者は一体だれなんですか。その人が全然被害者のところへもわびに行かないんですね。これはどういうわけですか。
  162. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) これは基地司令がもちろん最高責任者でございますから、いま御指摘のような態度あるいは言動と申しますか、加害者側がそういう立場でもし御指摘のような態度であるならば、これは非常に礼を失したことであると考える次第でございます。
  163. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 徳沢という司令がおりますね、これが一月十八日に町の役場に来て、町議会の全員の協議会で、何といいますか、いろいろ話したわけでしょう、そのときの状況を。そのときもちっとも別にわびなかったんじゃないですか。申しわけないとも何とも言わないんじゃないですか、徳沢司令は。
  164. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 私は現場に居合わせたわけではございませんので、詳しいことはわかりませんが、おそらく責任者としまして当然おわびの気持ちで申し上げたと思っております。
  165. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 徳沢司令は、まくらことばでは、善良な市民に迷惑をかけてすまないということをまくらことばで言ったかもしれませんけれども、そのときとったテープ・レコーダーがあるんですよ。ぼくのところにあるんですが、これはかけてみればわかるんですが、このテープは徳沢司令が町議会へ来てしゃべったやつです。そのままぼくのところにあるのですが、そのときも別にあやまったわけでもない。それで、一月十九日に町議会で決議かなんかしたんじゃないですか。
  166. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) お示しのように、決議がございまして、部隊のほうに何か書面が参っております。
  167. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その決議はどんな決議で、その決議に対しては一体どういうことをしてくれということだったんですか。町議会の決議ですよ、鎌ケ谷町の。
  168. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) そのことは聞いておりますが、現在その決議を手元に持っておりませんので、後日調査いたしまして御答弁申し上げます。
  169. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 決議は一月十九日にありまして、一月二十一日に公文書で基地の司令のところに持って行っておるわけです。町議会から町長がこれを持って行った、書類にして。それに対して確固たる返事を書面でくれと、こういう要求をしておる。このときは、自衛隊側は、学習院のヨットの遭難がありまして、そっちに行っておくれたことはおくれたんです。それはそういう事情があったことはわかりますが、それに対して書面でちゃんと返事をくれと言っておるのに、ちっとも返事してないじゃないですか、鎌ケ谷町議会の議長に対して。
  170. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 先ほど申されました取り込みがありましてもしかりに返事等がおくれておりましたら、督励しまして御趣旨に沿うようにいたしたいと思います。
  171. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その後一月十九日に町議会で決議したというものは二十一日に持ってきているんですが、防衛庁側に連絡があったんですか。
  172. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 決議があったということは聞いております。その公文書によりまして正式な返事をしなければならないということまでは私どもは聞いておりません。帰りまして事件を調べまして、そういうことがありましたら、礼を失しないようにすみやかにしかるべき御返事を差し上げたいと思います。
  173. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 一月二十一日に公文書でいっておる。ヨット事件で多少おくれたことはおくれたでしょうが、そういうものが来れば、すぐ、ここで事件になっているんですから、防衛庁側に連絡が来るのがあたりまえだと思うんですが、ないんですか。決議があったこと、決議の内容、それから公文書で来たこと、司令に対して抗議があったこと。
  174. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 決議文の手交があったことは聞いておりますが、内容等については聞いておりません。すぐ調べまして適切な措置をとりたいと思います。
  175. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 もう一つは、この深山という人の言うのと自衛隊側の言うのとちょっと違っているということを新聞紙上で見るんですが、深山という人が言うのは、戸がはずれてどやどや入ってきていきなり表に連れ出されてやられたんだと、こういうことを言っておりますね。こういうことは調べましたか。
  176. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 当初の調査では、その点少し食い違いがございまして、最初は、深山さんが表に出てきてなぐられた、そういう説明があったのでありますが、その後いろいろ調べてみますと、やはり入ってきて、高瀬氏と深山さんが近所におられるのを見て、二人同時に連れ出したように聞いております。その点は修正しておきます。
  177. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは事実関係ですから、そうだとすると、自衛隊側の人は、最初は、深山さんが出てきたので、何か高瀬という人の加勢をしにやってきたんだと思って、そうして表でなぐり合いになったと、こういうふうに言った。あとで調べてみたらそうじゃないということでしょう。そうすると、最初自衛隊側の人がうそを言ったということになるんですか。ていさいが悪くてうそを言ったかどうか知らぬが、うそを言っていた、こういうことなんですか。
  178. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 当時の報告では、非常に混乱をしておったんでしょうけれども、一人一人冷静に調書を取ったり、証拠固めができておりませんものですから、混乱した中でそういう判断をした報告があったのでありますが、その後いろいろ調べてみますと、やはり高瀬氏の近所に深山さんがおられて、この二人になぐられたというふうに思いまして二人を連れ出したというのが真相のようでございます。前のは修正いたします。
  179. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 修正されるのはいいんですけれども、私の聞くのは、じゃなぜ自衛隊側が調べて最初には深山のほうが外へ出て来たのでそれをなぐったんだというふうに自衛隊側が判断したのかということですよ。それは混乱しておったからということでなくて、自衛隊の十四人の人は、あなた方内部の調べについてうそを言っていたということにならざるを得ないじゃないですか。
  180. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 少なくとも間違いがあったと思います、報告は。
  181. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それ以上あなたのほうとしても言いにくいかもしれませんが、それはあとで総合判断してきたら深山さんの言うとおりだったというのでしょうか、結論は。その前に自衛隊側は結局自分たちのことを隠すためにうそを言ったということは明らかになってきたんですね、いまの段階で。だからあなたは修正したんでしょう。そう見ざるを得ないと思うのですが、そうでしょう。うそを言ったのは、それはことさら責任をのがれるために言ったのか、いろいろあるでしょうけれども、それは間違いないのじゃないですか。
  182. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) まあうそを言ったかどうかという問題は事実問題でございますので、私も確信を持っておりませんが、少なくとも間違っておったということだけは言えると思います。
  183. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、その深山という人をなぜ自衛隊の人が十四人も行って表へ連れ出したんですかね。どういうことなんですか。
  184. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 先回も申し上げましたとおり、これに先立つ数十分前でございますね、高瀬氏に宮内二曹が相当ひどく痛めつけられたという事件が前提にありますので、その状況を聞きたいという意味で、巡察隊の数名が中に入りまして、そのときに高瀬氏をただそうと思ったときに、当時宮内二曹をなぐったのが二人だったものですから、その一人が深山さんと誤解をしまして、おそらく一緒に連れていって事情を聞きたい、こういうことをしたのではないかというふうに考えております。
  185. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 深山という人は、表でやられて、洋服は泥だらけになっているし、帰ったときにはワイシャツのボタンが一つも付いていなかったと兄貴は言っておりますね。ここに診断書がありますが、あなたのほうにも診断書があるでしょう、深山さんの診断書が。どういうふうになっておりますか。
  186. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 詳しい診断書をいま探しておりますが、大体、打撲傷でございまして、一週間程度の治療を要するということでございます。
  187. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 詳しいことはわからないなんて、そんなことはないでしょう。診断書のオリジナルなものをあなたのほうで持っていったんですよ。
  188. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 「右側頭部打撲、右下腿裂傷」、「全治一週間」、頭部打撲は「全治まで日時未確定」、こういうことになっております。
  189. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だから、これによると、それはちょっと診断書ではっきりしないところがありますが、頭部の打撲のほうは全治まで日時未確定だということがはっきり出ているのじゃないですか。そうすると、ひどくやられたのじゃないんですか、これは。
  190. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 診断書にはそのように書いてございます。
  191. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 高瀬という人は、どういうふうに被害を受けたんですか。
  192. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 高瀬氏のほうは、先ほど申しましたとおり、お伺いしてもお留守でございます。これは加害者のほうでございますので、主として警察のほうで調べておられるというふうに考えております。わがほうには出ておりません。
  193. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、高瀬という人は、最初加害者であるかどうか別として、あとのほうは被害者じゃないですか。被害者で、血まみれになってそこに倒れていたでしょう。高瀬という人を血まみれにして倒して、そのまま自衛隊の人は中へ帰っちゃったのじゃないですか。
  194. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 大体のところは一週間と見ておりますが、被害調書が高瀬さんのほうは遺憾ながらとれておりません。
  195. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは警察のほうはその点はわかっておりますか。
  196. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 高瀬国夫の診断書は、「頭部、胸部及び右肩胛部打撲傷、全治一週間を要する」という横関医師の作成した診断書があります。
  197. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その高瀬とい人が路上に倒れておるのをそのままにして自衛隊の人は帰った。ところが、別に准尉というんですか、その人が来て店へかつぎ込んだとなっているんですが、その点はどうなんですか。
  198. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) おっしゃるとおりでございまして、高瀬さんを補給隊の吉村三尉が助けておられるということでございます。
  199. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 吉村三尉が助けたというのは、高瀬という人はどういう状態にあったんですか。路上にころげていたんじゃないですか。それを店へかつぎ込んだんじゃないですか。助けたというのはどういうふうに助けたんですか。
  200. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) おそらくそれに近い状況じゃなかったかと思いますが、あとの結果から見ますと、そちらでしばらく休息して帰った、そういう状況であったと思います。
  201. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、吉村三尉という人がいて、そのとき高瀬という人がどういう状態で路上にいたのか。助けたというのがよくわからないんですよ。どういうふうに助けたんですか。私の聞いた範囲では、ころがっていたというんですよ。倒れていたというんですよ。
  202. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 倒れていたと吉村君は言っております。
  203. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、こういうことが明らかになってきましたね。けんかの原因はいずれにしても、高瀬というのは自衛隊の人十四人にやられてそこに倒れてしまった、倒れてしまったからそのまま十四人の人は帰ってしまった、こういうことははっきりしておるわけですな。
  204. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 別の調査を見ますと、吉村君が仲裁をしたと言っております、けんかをしておるところに入りまして。だから、おそらく倒れて相当長い間ほったらかしてどうこうという時間的なズレはなかったと思います。なぐり合って、倒れて、助けるという閥にそんなに長い間はなかったと思います。
  205. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私はその高瀬という人に会っておるわけではありませんから、これ以上のことははっきりしませんが、会って調べれば事情はわかりますが、いずれにしても、高瀬という人が倒れておることは間違いない。それを置いて、自衛隊の人は帰ってしまったということは間違いない。けんかに勝ったから帰ったかどうかは別として、帰ったわけです。自衛隊の人は、かりに外でけんかをしてやられた場合に、仕返しをして相手をやっつけちゃう、それは一つの戦闘訓練として教えておるのかどうか、そういう点はどうですか。
  206. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) そういうことは全然やっておりませんが、ただいまの場合も、吉村君が助けるのと帰っていくのと時間的にそうズレはありませんので、おそらく吉村君が助けておるのを見届けて帰ったんじゃないかと思います。善意に解釈しておりますが、なおこの点は調べましてお答えいたします。
  207. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その点はよく調べてください。私のほうももうちょっと調べてみましょう。  それからせっかく防衛庁長官がいるのでお聞きをしたいのですが、ここのこの被害者二人にに対して一体どういうふうにするつもりですか。防衛庁としては、隊員の処分と言うと語弊がありますが、どういうふうにするつもりですか。
  208. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) 自衛隊側としては一応調査を終わったという報告を受けておりますが、十八日に柏警察署に調査をお願いして、いま調査を続行中である、近く調査は終わるだろうという報告を受けておるわけであります。調査が終わり次第、事件事件でありますから、私は公平にまた敏活に処分すべきものは処分しなければならぬ、また、陳謝あるいはその他の事由が十分の場合には当然その責任を果たすべきだ、こう考えております。
  209. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 三月十九日じゃないですかな、柏署で隊員全部を呼んで調べたというのは。これはどうですか、警察のほうは。いま捜査はどういうふうになっているんですか。
  210. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 柏警察署で引き継ぎを受けましたのは十八日でございます。警務分遣隊から引き継ぎを受けまして、即日署長以下捜査幹部は現地で実況見分を行なって、その後連日被疑者、参考人の取り調べを進めて事案の真相究明に当たっております。きのうまでに高瀬国夫と巡察隊員十四名、それから参考人として二十三名の取り調べを終わっております。ただ、被疑者等の一部にまだ重ねて取り調べを要する者がございまするし、それからこれと並行して捜査しております第一事件と申しますか、最初の紛争の氏名不詳の男がまだ判明いたしませんので、まだ捜査は終結に至っておりません。
  211. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはいつごろ大体の目安がついて、あれですか、送検するわけでしょう。
  212. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) さようであります。
  213. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その見込みはどうなんですか。
  214. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 氏名不詳の男の捜査もございまするのと、それから取り調べをいたしましてこの事案の真相をできるだけ突きとめたいと考えておるのでございまして、いまのところまだ若干の日時を要しますので、見通しはまだここでははっきりは申し上げられないと思います。
  215. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 松丸という人を調べましたか。一緒にいた人です。
  216. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 松丸修ですか。これは調べております。参考人として調べております。
  217. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その松丸という人が聞いているということでは、私どもが聞いたのは、自衛隊の人が来て高瀬や深山氏をやるときに、頭をなぐるな、頭をなぐると死んじゃうから、からだのほうは少しぐらい平気だ、こう言ってなぐったと、こういうんですよ。だから、相当自衛隊のほうも殺気立って何かやっていることが考えられてくるんですがね。頭をなぐると死んじゃうから、からだなら少しぐらいやっても平気だといってなぐったというんです。これは、何かあれですか、自衛隊と町民との間でうまくいかないことでもあるんですか。
  218. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) その際その場所でそういう発言があったかどうかは別といたしまして、従来ときおり隊員が外出中に土地の若い人とささいないさかいがあったということは聞いております。しかし、いろいろ言われましても、制服も着ておりますので、おのずから自重しておったということは、一件かあったということを記憶いたしております。
  219. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 防衛庁長官がいる間に、もう時間があれですが、二点だけ聞いておきますが、それはちょっとこれとは直接の関連はないのですが、飛行場のことですが、この飛行場で民有地を買収したわけですね。そのときに、名義書換料という形であとから一億三千万円くらいですか、幾らだか、国の費用を予算を出したんじゃないのですか。こういうことはありますか。これは一たん買収したんだけれども、登記済みのものと未登記のものと両方あるわけです。いずれも両方について時間がたっちゃったので、名義書換というふうな意味で一億幾らの金を国から出したんだ。ところが、それが役場へ入ったのは七千四百万くらいなんだ。しかも、それらのものを各地主に渡すんだけれども、渡すときに、その一部を、一割ないし一割五分あるいは五分、三段階に分けて、補償金を渡すでしょう、渡す中から差し引いて取っておいた、いろいろな運動費として。そういう事実があったというんですよ。ですから、一体この土地について防衛庁側は金を幾らぐらい出したのか。土地の買収費なり名義書換料として出したのが、それが現実にどういうふうになったのか。で、防衛庁側に受取はどういうふうに出ているのか。これはちょっといまはわからないでしょうけれども、あとでもいいですから、調べてもらいたい。その一割ないし一割五分を各地主の補償金のうちから集めた金が、この飛行場の補償金のいわゆる運動費として使われて、その金がある千葉県ですかから出ておる大官の手へ相当渡っているわけですよ。こういう事実があるというんですね。ですから、あなたのほうでわかる範囲のことをこれは調べておいてもらいたいですね。いまここでは無理でしょうから、この次でいいです。
  220. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) さっそく調べまして御報告申し上げます。
  221. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それからもう一つ、このそばに学校があるわけですね。学校が、沼南町の南部校舎という学校と、それから鎌ケ谷小学校の第二分校——これは粟野分校と言うようですね。これがあって、それが非常に爆音がひどくて困っている。これはPTAの機関誌なんですが、「こだま」という三十九年三月二十一日の鎌ケ谷町立鎌ケ谷小学校PTA広報部の機関誌ですが、これによるというと、その粟野分校というところでは、飛行機が飛び立つと、爆音で先生の言うことばが聞こえなくなっちゃって、まるで無声映画を見ているようだ。あるいは、体操をしているときに、レコードの音が聞こえなくなって、児童の動作と音楽がちぐはぐになって困る。電車の音より飛行機の爆音のほうが被害が大きいので、非常に困っているので、自衛隊としてどういうふうに考えているかというようなことで自衛隊のほうに再三交渉をしているらしいですね。それで、隣にある沼南町の南部校舎では、防音校舎として七千万円の予算を組んでつくったのだけれども、鎌ケ谷は非常に困っているのだけれども、防衛庁のほうはさっぱりやってくれないんだということを言っているんですが、こういうことは、いまわからなければぜひひとつ調べてくれませんか。これはぜひそのとおり実現するように骨折ってもらいたいと、こう思うんですがね。その点をよく調べてくれませんか。
  222. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) さっそく自衛隊並びに内局の関係の者に当たりまして、どういう陳情があるか、また、どういう処置をとるか、さっそく調べまして調査を促進させます。
  223. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それから、警察は、この事件は、暴力行為取締法違反で調べているわけですか。それで、いまのところ被疑者は何人ですか。
  224. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) いまのところは二名の傷害ということでございますので、集団傷害事件等ということで一応やっております。  それから被疑者は十五名でございます。
  225. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは早急に結論を出していただきたいというふうに思います。  防衛庁長官の時間があれですから、私の質問は終わって、あとの私の質問は本会が終わってからやります。
  226. 岩間正男

    ○岩間正男君 時間がないから、二、三点お伺いしたいんですが、この巡察隊というものの任務ですね、これはどう規定されているのですか。これは法的の根拠はどうなんですか。ちょっとその点を明らかにしてください。
  227. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) お答えいたします。巡察隊の任務は、「隊外における隊員の規律を維持し、必要な場合これを保護し事故を未然に防止する。」というのが任務であります。
  228. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは何にありますか。
  229. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) この当該事件といたしまして、下総航空基地巡察隊服務規則であります。
  230. 岩間正男

    ○岩間正男君 ああ、下総のこれは規則ですね。すると、いまの十四人の巡察隊が編成されたんですが、そうすると、いまのどれに当たるんです。隊外で隊員の規律を維持し、必要な場合にはこれを保護し、事故を未然に防止するという、どれにも当らないですね。これはどうなんです。
  231. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) また同じ規則の中に、「臨時巡察隊は隊長または基地当直士官が状況を判断した上、当直警備員を編成する」というふうに書いてあります。
  232. 岩間正男

    ○岩間正男君 はっきりした目的をうたっているわけですね。その目的のどれに当たるかを聞いているんですが、どれにも当たらないのじゃないですか。規律を維持したのでもないし、それから必要な場合にこれを保護したわけでもない。また、事故を未然に防止に行ったのでなくして、逆にけんかを売りに行ったんです。そうすると、これは防衛庁長官にお伺いしますけれども、こういうような形で巡察隊というのが編成され、しかも聞いてみると、大体一班が四人ですね一普通。多くて七人でしょう。それをこれは十四人も出しておる。それから非番の者まで合わせて、そうしてしかもその連中がけんかに入り込んでいった。もうさっきからの質問ではっきりしていると思うんですが、仕返しですよ。明らかにやられたのを仕返ししたんですよ。こういうかっこうで運営されるということについて、防衛庁長官としてはどういう見解を持たれるか、この点を明確にしておいてもらいたい。
  233. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) ただいま局長から申しました第二条の「必要な場合これを保護し」この規定に準拠しまして、なお数名残っておるという申し出がありましたのでかけつけた、私はそういう報告を聞いております。
  234. 岩間正男

    ○岩間正男君 「保護し」だったら、これは行ってみてそんな危険がなかったということがわかったら、帰ればいいでしょう。ところが、引きずり出してけんかを始めた。全然保護ではない。けんかを売りに行ったということが明白ですからね。こういう形では非常にまずい。それでしかも私怨を晴らすようなかっこうで印象づけられている。実際はそういう行為をやった。これは私はここのところが一番問題のところだと思うんですけれども、この点についてどうするか、長官として明確にしておくことが必要ではないですか。いかがでしょう。
  235. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) 先ほどお答えしましたとおり、近く全部のわがほう並びに警察側の調査が終わりますので、その上で私どもの処分なり態度を明確にいたしたいと思いますが、観念的に申しますと、出かけたこと自体は保護の目的でありますから、私は正しいものであると思います。しかし、その後の行動につきましては、いままでの調査段階におきましても確かに行き過ぎがある。こう考えております。
  236. 岩間正男

    ○岩間正男君 けんかをやったことは公務と考えることができますか。
  237. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) けんかをどういうふうに解釈するかによって違いますが、私はいままでの調査では行き過ぎがあったと、この解釈しております。
  238. 岩間正男

    ○岩間正男君 行き過ぎがあるんですか。
  239. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) そうです。
  240. 岩間正男

    ○岩間正男君 こういう点では公務ということには入らないでしょうね。こういうことが公務に入ったら非常に私は重大なことだと思うんですが、この見解はいかがでしょう。
  241. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) もう少し具体的に、先ほどの御質問の中にもまだ私どもの受けた報告に漏れたような大事な微妙な点があるようでありますから、そういう点をしさいに調べた上で考えまするが、いまのところ、確かに行き過ぎがあったと認めざるを得ないと思います。
  242. 岩間正男

    ○岩間正男君 この協定書を私見たんですが、この協定書によりますというと、自衛隊の施設外で行なわれた犯罪については、これは当然警察官が行なう。ただし、特例を設けておる。「自衛隊の規律維持又は秘密保持に直接関係がある犯罪及び警務官が逮捕した現行犯人に係る犯罪は、警務官が捜査を行なうものとする。」、こういうことになっておるわけです。それで、十二日から、警察のほうには了解を求めたのかどうか、とにかく自衛隊にまかしておく、こういうことで十八日まで警務官が調査したわけですね。調査した結果が、これはどういうことになったんですか。規律維持の問題です。規律維持について一応結論が出たんですか。そうして十八日に警察に引き渡したのかどうか。その点はどういうことになっておりますか。
  243. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 規律維持に関係があることを協定で書いてありますのは、施設外の犯罪でありましても、本件にございますように、巡察隊が自衛隊の規律を維持しようという気持ちで出て行ったことは事実でございますので、そういったことに関連した事案であるという前提で当初自衛隊で調査したのであります。詳しいことは現在警察で調査を開始しておりますので、正確な結論は警察から……。
  244. 岩間正男

    ○岩間正男君 自衛隊としての判断を聞いておるんです。ただ一週間むだに過ごしたわけじゃないでしょう。十八日まで調べたんでしょう。自衛隊はそれの結果どういうふうに出ておるかということを聞いておるんです。
  245. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 先ほど長官から申し上げましたとおり、本来事故を未然に防ぐべき任務を持った正規の隊員が、ともかく結果において民間人に対して被害を加えたという点は、相当やはり問題があるというように考えております。
  246. 岩間正男

    ○岩間正男君 十八日に引き渡さざるを得なくなったそのことの中にもはっきりあらわれておるわけですね。最初、この協定があるにもかかわらず調べた。そうすれば、これは規律維持の問題かどうかという一応のなにが出てそれから引き渡したということにならなければ、つじつまが合わないんですよ。どうもそれがあいまいです。規律維持というような点から見て、この調査の内容はどういうことなんだか、そこのところを明らかにしてもらいたいと思います。
  247. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 協定の一条の二は、規律維持に関係のあるものは自衛隊の警務官がひとまず担当をするという規定でございまして、そういう前提が強い性質のものでございますから、自衛隊の警務官がまず調査したいということを警察に連絡しまして了解を得て、隊内の関係者も調査を終わりまして、警察のほうへ引き渡した、こういうことでございます。
  248. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、自衛隊員の規律維持は、自衛隊だけで行なうのじゃなくして、警察との総合調査の上に立ってその結果結論を出すと、こういうことですか。
  249. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 先回から申し上げておりますとおり、後半の事件の被害者のほうは民間人でございますので、民間の方々の言い分を十分聞いた上でものことの判断をすることがなければ公正な判断を期し得ないということから、警察において終局においては扱ってもらうことが適当な措置であろうと判断して後半の事件を扱ったわけであります。
  250. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は自衛隊としての判断を聞いておるんですが、四、五日調べたのですから、これについて一応のはっきりしたことは、隊規を維持するとか、そういう立場からこれは見解を出さなければいけない問題だと思うんですが、この結論はまだ出ていないと判断していいわけですか、いまの答弁では。
  251. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 先ほども申し上げましたとおり、制服を着た正規の任務を持った隊員が暴行事件に巻き込まれたということは、やはり職務上の権限を逸脱したものであるかどうか、あるいは、暴行というものも入っておりますので、そういった点から相当問題があるということはもう確かでございます。この点は、警察の調査を待ちましてしかるべき措置をとりたいというふうに考えております。
  252. 岩間正男

    ○岩間正男君 まあ警察の調査を参考にするのはいいけれども、しかし、自衛隊は自衛隊としての隊規を維持するという立場からの独自の判断というものはあり得てもいいと思う。あとは参考までの問題じゃないかというふうに思います。民間人に傷害を与えたというのは、これはまた別な自衛隊の責任問題になると思う。私は、二つの問題だから、二つの問題は明白にこれは分けて考えたほうがいいと思う。その点どうもまだはっきりしない。  長官の時間があまりないようですから、最後にもう一つお聞きしたいのですが、長官、どうも週刊誌なんかの伝えるところによると、自衛隊員が非常にコンプレックスに陥っている。絶えず何か被害妄想みたいなそういうものの中にいる——これは事実はわかりません。もっと実態を調べてみなければわからないわけですが、しかし、そのようなコンプレックスを持っているという原因というものはどこにあるというふうに考えておりますか。これは私は非常に重要な問題だと思うのですが、いかがでしょう。
  253. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) 自衛隊ができまして十年になりますが、発足当時は、ともすれば日本の防衛、祖国の国防に対する認識がまだ薄い点もあったようであります。世論も冷たい目で見る傾向がなかったとは言えないと思います。そういう場合には、当然自衛隊員にも気分的にこれが反映したことはあったように私どもは聞いておりますが、しかし、最近は、そういういわゆる御指摘のコンプレックス、劣等感、あるいは日陰者扱いされておるような気持ち、これは私はほとんどなくなっておると思う。むしろ国民から愛される、あるいは尊敬されるという明るい面が相当強く出ておるのではないかと、私どもは第一線を絶えず見ておりましてそういう感じを受けております。
  254. 岩間正男

    ○岩間正男君 ここでは、いざこざが絶えず町民との間に絶えなかった。いままで絶えず大小のそういうものが起こっておったということなんですね。それに対して自衛隊が自粛したとかなんとか週刊誌は伝えておるわけなんですけれども自衛隊員が非常にそういうコンプレックスを持っておるその原因というものをやはり私は相当探究しなくちゃならない。一つは、基地というものは、先ほども問題がありましたが、土地取り上げの問題もあるだろうし、それに爆音が絶えず住民を悩ましておるというような問題、そういうものが結局自衛隊員にかぶさってくる。自衛隊員責任というよりも、基地を使い、そうしてまた、そこで戦闘訓練をやっておる。しかも、それが憲法には——これはあなたたちは保障されたというふうに言っているかしりませんけれども、積極的な改憲論者さえこれは違憲だと、だからこれは憲法改正をしなければならないと言っておることでも明らかなように、これは非常に違憲のにおいが強い。最近はそうでなくなったと言っていますけれども、こういうのが心理的にひそんでいるんじゃないでしょうか。この点はいかがでしょうか。
  255. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) 昔はそういう点も確かにあったと思います。しかし、これも先ほど申しましたとおり、最近は非常に明るい面が出ております。現に昨日も各地区の総監が全部集まりまして業務報告を受けたんですが、ある県のごときは、民宿と申しまして、民家へ泊まって演料をぜひやってもらいたいという申し出もあるくらいでございまして、御指摘のような暗い面ばかりでは私はないと思います。
  256. 岩間正男

    ○岩間正男君 だいぶこれは伝えられているのとは違うんで、長官のいまのお話を聞いていると、ばかに明るく朗らかに前進しているように思うんですけれども、大体どうなんです。こういうコンプレクスというやつは、これはしばしば抑圧されていれば、反対表現になる。これが暴力につながるんです。暴力の原因というものはそういうものと深い関係があるわけです。  それからもう一つ、私はこの前もここで問題にしたんですけれども、最近の冷戦対策の中で、国民に対しまして自衛隊は「心理戦の渦中にある」、そういう意味で、こういうようないわば人民敵視政策というようなものを基本的にとられている。こういう考え教育をされていけば、自衛隊はどうしても人民に対してほんとうに信頼感のもとにやっていくという機運が非常に薄くなっていく可能性が出てくるのじゃないか。やはり敵視の観念というものは大いに一つのわだかまりになっているように思うんです。この事件の背景というようなものについてこれはやはり明らかにする必要があると思うんですが、どうも長官のお話を聞いていますと、非常に明るい、いい方面、ここだけ見て言っていますけれども、そういうことではやはりほんとうにこの問題の本質をつかむということには私はならないと思うんですが、この点はどうです。土地の人たちのこれに対するいろいろな——爆音に対する絶えざる被害もあるでしょう。それから自衛隊員に対するやはり何とも割り切れない気持ちというのは依然として残っている。それからさっきの最近とっているそういう政策、こういうものとも私は関係があると思うのですが、どうお考えですか。
  257. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) 基地周辺の民生安定の問題に関連した総合対策、これはどの地区でもイデオロギー以前の問題でありまして、自衛隊なりあるいは米軍なり、最善を尽くして対策に取り組む必要があると存じます。現にまた努力をしておるわけであります。いま御指摘を受けました下総のことは、私も初めてお話を承り、さっそくこれは事実を調べて対策を講ずる考えであります。  第二のコンプレックスの問題でありますが、これは特殊の一つの例外的事件であります。私どもの自衛官に対する教育の基本方針は、これはたびたび申し上げましたとおり、あくまで国民と一体であるというのが鉄則でございます。国民と乖離し、あるいは国民を敵視するなどは、毛頭考えておりませんし、また、そういうようでは、自衛隊本来の任務はとうてい達せられないわけでございます。
  258. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  259. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 速記を始めて。
  260. 岩間正男

    ○岩間正男君 もう一つだけお聞きしますが、いまのようなここで演説をされても、これは自衛隊の実態とはなかなか遠いのじゃないか、私はこういうふうに思います。で、具体的にお聞きしますが、こういう問題で市民との間にいざこざを起こした問題、あるいは傷害事件、それから自衛隊相互の中でけんかをするということも相当あり得るだろうと思う。中には、けんかの結果死んだ、そういう例も一つ聞いておるわけです。いままでのこういう結果を統計にしたものはございますか。それを資料としていただけますか、この次までに。資料としていただけますね。それから傷害事件とか住民との間にいざこざを起こしたそういう問題について、資料をいただきたい。  以上で終わります。
  261. 中山福藏

    委員長中山福藏君) それでは、本件は一応この程度といたしまして、暫時休憩いたします。    午後一時六分休憩    ————————    午後四時三十二分開会
  262. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、検察及び裁判運営等に関する調査を議題とし、国税庁職員に対する思想調査に関する件につき調査を行ないます。稲葉君。
  263. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 今年の二月に、国税庁総務課という名前で、意見調査書というのか、内部で配られたかどうかはっきりしないのですけれども、何か配ったりなんかして職員意見調査をしたことがありますか。
  264. 木村秀弘

    政府委員(木村秀弘君) ただいま仰せになったような書類を配って総務課の職員意見を徴したことはございます。
  265. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 配った目的というか、経過というのは、どういうのでしょうか。
  266. 木村秀弘

    政府委員(木村秀弘君) 国税庁におきましては、職場の明るい人間関係をつくり出すという目的で、昨年の十一月から、職員の多数が一体現在の職場にどういう不満を持っておるか、あるいはどういうことを希望しているかということをおもな調査事項といたしまして、それに付随するいろいろな事項調査する、これは一般の産業会社等で最近よく行なわれておりますモラール・サーベイというようなものを国税庁にも取り入れてはどうかという趣旨で計画を立てたものでございます。
  267. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、おもなものはどういう点を聞いているわけですか。
  268. 木村秀弘

    政府委員(木村秀弘君) 非常に雑多なこまかい質問事項がございますが、主として目的は、現在の職場においてどういう点に不満を持っておるか、将来どう改善をしてほしいかということが主たる議題でございまして、それを知るためにいろいろなこまかい事項についての質問を発しておるわけでございます。
  269. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは本人が記入することになっているので、だれが記入したかということは筆跡なんかを見るとわかるんですか。
  270. 木村秀弘

    政府委員(木村秀弘君) 本人が記入することになっております。もちろん、これはマルをつけるかつけないかという問題でございますが、中には質問によっては意見を書いてほしいというようなのもございますから、筆跡鑑定等をやろうと思えばできないことはないと思います。しかしながら、匿名でございますし、それからもちろん提出は任意でございます。
  271. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 国税庁の総務課だけやったのですか。ほかでもやったんですか。
  272. 木村秀弘

    政府委員(木村秀弘君) 国税庁の総務課だけでやっておりまして、ほかのところでは、三月の三日だと思いますが、その日以外にはやっておりません。
  273. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは一般の税務署がありますね、税務署などでも、税務署職員に対して、いろいろな意見調査というか、税務行政上改善すべき点というか、そういうふうなものの意見を徴したこともあるんですか。
  274. 木村秀弘

    政府委員(木村秀弘君) 事務上の改善策等につきましては、献策制度というのがございまして、毎年改善策を職員の中からつのっております。これに対して賞金等を出してやっておりますが、こういうモラール・サーベイというようなものは、いままでにたしか福岡局だけがやっておって、ほかの局署  ではやっておりません。
  275. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いままでの税務署でやっていたのと今度のモラール・サーベイというのはどういうふうに違うのですか。
  276. 木村秀弘

    政府委員(木村秀弘君) 従来献策制度でやっておりますのは、主として事務の改善策でございまして、今度のように職員が職場についてのいろいろな不平とか注文とかいうようなそういう意味のものではございません。
  277. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 今度三月三日にやったんですか。それは、総務課が何人くらいいて、集まったのはどのくらいなんですか。
  278. 木村秀弘

    政府委員(木村秀弘君) 総務課八十人でございます。
  279. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 集まったのはどうですか。
  280. 木村秀弘

    政府委員(木村秀弘君) これは、その後の経過を申し上げないとおわかりにくいかと思いますが、この三月三日にやりましたものは、実は責任者の目を通しておりません。決裁が済んでおらないものを担当者がテストとしてやったものでございまして、あとで内容を見てみますというと、必ずしもわれわれの企図しておったものにふさわしくない、また、中には一部穏当でないような質問がございましたので、これはたしか三月の二十日前後かと思いますが、そのころに廃棄をいたしまして、あらためて決裁をとったものを今度は総務課だけでなく官房各課に出して意見を求めております。
  281. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、前のものですね。私が見た範囲では、たとえば三十四問に、「あなたの支持する政党は、つぎのどれですか」、こうあるわけですね。一が自由民主党、二が民主社会党、三が社会党(右派)、四が社会党(左派)、五が共産党、こうあるわけですがね。これは一体どういう考え方でこういうふうなものを意見調査したんですかね。社会党は右派とか左派とかいうそんなものはないんですがね、いまは。
  282. 木村秀弘

    政府委員(木村秀弘君) 実は、私が不穏当と申し上げましたのは、この点と、もう一点ございまして、主としてこの点でございまして、担当者は各産業会社等でやられているモデルを見まして、中には機械的に取り入れたものもございますし、中には自分の頭で適当にモディファイしたものもございます。しかしながら、いま御質問の点は、ある会社のモデルをそのまま引き写したというようなことになっております。
  283. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、もう一点というのはどこですか、不穏当だとかなんとかいうのは。
  284. 木村秀弘

    政府委員(木村秀弘君) たとえば、四十五問、四十六問、これは類似の設問でございますが、「あなたは現在の状況でいってどのあたりの地位まで昇進できると思いますか」あるいは「あなたはどの地位まで昇進するのがあなたにふさわしいと思いますか」、こういうものは、一般職員に対して問うべきでないという感じがいたします。これと、ただいま御指摘になりました点、そういう点については、われわれのほうであまり適当でない、不穏当なものであるというふうに感じております。
  285. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、この三十四問の政党支持を問うているのは、特にこれを問うて、それを集計して何らかの対策にしたい、こういう意味だったんですか。
  286. 木村秀弘

    政府委員(木村秀弘君) 担当者の事情を、心境をその後聴取しましたところ、単純に某社の設問をまねて取り入れたということでございまして、特に意図はございません。
  287. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その集めたものは全部廃棄した、こういうわけですね。
  288. 木村秀弘

    政府委員(木村秀弘君) 仰せのとおりでございます。
  289. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、第二回目に、これではいけないからといってまたやったわけですか、正規な決裁を経て。それはこのときのものとどこをどういうふうに変えたんですか。
  290. 木村秀弘

    政府委員(木村秀弘君) これはたしか三月の二十四日と記憶しておりますが、正規の決裁をとらせまして出したものでございまして、内容は全部、ほとんど全く新しいと申してもいいかと思います。
  291. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、あれですか、国税庁の総務課だけでなくて、全部でやったんですか。各税務署なんか全部含めてやったんですか。
  292. 木村秀弘

    政府委員(木村秀弘君) これは一応国税庁の官房各課に対して調査をいたしましたものでございまして、局署の段階はまだやっておりません。でき得れば将来やりたいと思いますけれども、そうするまでには、各局長意見等も聞きまして、質問事項等についてももっと内容を整備いたしてそれからかかりたいと思います。それで、今回の三月二十四日に行ないましたものは、一応の研究資料ということになっております。
  293. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 この意見調査書を総務課で配ったものの中には、組合に対してのいろんな意見や何かを求めたところはないんですか。
  294. 木村秀弘

    政府委員(木村秀弘君) ございません。
  295. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それでは、これをやめて新しくまた決裁を経てやったというんですが、新しく決裁を経てやったものがあれば、一部私どものほうにいただきたいと思うんですが。
  296. 木村秀弘

    政府委員(木村秀弘君) 承知いたしました。
  297. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 新しく決裁を経てやったものというのは、これは何に使うのですか。
  298. 木村秀弘

    政府委員(木村秀弘君) 新しい決裁を経て行ないましたものについても、必ずしも内容に自信を持っておるわけではございませんので、はたしてこういう質問が将来の職場の改善に役立つであろうかどうだろうかというような点について、価値があるかないか、そういう面については今後もやはり担当深く研究をしてまいらなければならぬと思います。したがって、新しく行ないましたものにつきましても、あくまでもこれは一応研究資料でございまして、将来まだまだ改善を要する、実際実施に移すまでには改善を要する事項が多々あると存じます。
  299. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 今度の新しく決裁を経たものの中には、政党支持がどうだとかかんだとか、そういうことはないんですか。
  300. 木村秀弘

    政府委員(木村秀弘君) もちろんございません。
  301. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 この総務課で出したものは、社会党を左右に分類しているのですが、民間会社のものを写したといっても、民間会社でやっているものが社会党の右派とか左派とか分かれてやっているというのもちょっと考えられないんですがね、昔左派、右派があったのは別として。国税庁でこういうふうにやったというのは、意識的に社会党が分かれているというふうに印象づけよう、こういう意図でやったのじゃないですか。
  302. 木村秀弘

    政府委員(木村秀弘君) これは、われわれにいろいろな資料を提供してくれた会社に対する信義もございますので、名前は御遠慮申し上げたいと思いますが、実は、参考にいたしました会社のこの項目についてはそのままでございます。やはりカッコしてこういう文句があるのでございます。
  303. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 普通ならば、社会党は自由民主党の次に——これは変なことかもわかりませんが、数からくれば民社の上にくるのが普通です。民社が上にいって社会党があとにきているというのは何か理由でもあるんですか。
  304. 木村秀弘

    政府委員(木村秀弘君) これは順序も引き平しでございまして、当人に聞きましたところ、この点については全くの引き写しでございまして、別に意図するところは全然ございません。
  305. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いま国税庁の中は、いわゆる全国税というのですか、それから新しい、何か名前は知りませんが、新しい組合と二つに分かれて、まあいろいろあるわけですけれども、組合対策というか、あるいはそういうふうなことから、だれがどのような組合に属しているか、こういうようなことを当局で調査したことはあるんですか。
  306. 木村秀弘

    政府委員(木村秀弘君) そういう調査はいたしておりません。
  307. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 国税庁の職員がどちらの組合を支持するかとか、あるいは支持しているかとか、こういうふうな調査も、したことはあるんですか、ないんですか。
  308. 木村秀弘

    政府委員(木村秀弘君) ございません。
  309. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それじゃ、きょうは、私、時間もあれですから、この程度で終わりますが、いま言った新しいのをいただいてから、内容をよく検討して、必要があればまた質問をする、こういう形にしたいと思います。
  310. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 本件は一応この程度といたしまして、本日はこれをもって散会いたします。    午後四時四十七分散会    ————————