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1964-03-17 第46回国会 参議院 法務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月十七日(火曜日)    午前十時三十分開会    ———————————   委員の異動  三月十二日   辞任      補欠選任    高橋  衞君  源田  実君  三月十三日   辞任      補欠選任    源田  実君  高橋  衞君    ———————————  出席者は左のとおり。    委員長     中山 福藏君    理事            後藤 義隆君            稲葉 誠一君            和泉  覚君    委員            植木 光教君            鈴木 一司君            田中 啓一君            坪山 徳弥君            亀田 得治君            中村 順造君            岩間 正男君            山高しげり君   国務大臣    法 務 大 臣 賀屋 興宣君  政府委員    法務大臣官房司    法法制調査部長 津田  実君    法務省民事局長 平賀 健太君   最高裁判所長官代理者    最高裁判所事務    総局総務局長  寺田 治郎君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    ———————————   本日の会議に付した案件 ○民事訴訟法の一部を改正する法律案  (内閣提出) ○下級裁判所設立及び管轄区域に関  する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出) ○裁判所職員定員法の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付)    ———————————
  2. 中山福藏

    委員長中山福藏君) これより法務委員会を開会いたします。  民事訴訟法の一部を改正する法律案議題とし、提案理由説明を聴取いたします。賀屋法務大臣
  3. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) ただいま議題となりました民事訴訟法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由説明いたします。  この法律案趣旨は、手形金または小切手金等支払いを求める訴訟の迅速な処理とその判決執行力強化等をはかり、それによって手形及び小切手の信用を高めるため、民事訴訟法所要改正を加えようとするものであります。  次に、この法律案の要点を申し上げますと、  第一点は、手形金及びこれに付帯する年六分の割合遅延損害金請求目的とする訴えについて、手形訴訟という特別の手続を認めたことであります。手形金請求は、手形法律上の性格にかんがみましても、また、その経済取引上の機能にかんがみましても、正当に手形振り出し等がなされた以上、迅速に決済されるべきものでありますので、訴訟及び強制執行の面におきましては特別の取り扱いをする必要があります。  そのため、第一に、手形金支払い請求目的とする訴えは、手形支払地裁判所にも提起することができるものとしております。第二に、原告手形金等請求について手形訴訟による審理裁判を求めたときは、その証拠調を書証に制限し、文書の真否または手形の呈示に関する事実についてのみ当事者尋問を許すものとしております。第三に、手形訴訟において原告請求当否についてした判決に対しては、敗訴の当事者から一定の期間内に異議申し立てることができるものとしております。また、その場合、裁判所は、通常の手続により引き続き原告請求当否につき審理をした上、手形訴訟判決を認可しまたは取り消すべきものとしております。  第二点は、小切手金及びこれに付帯する年六分の割合遅延損害金請求目的とする訴えについて、ただいま申し述べました手形訴訟と同様の小切手訴訟により処理すべきものとしたことであります。  第三点は、手形金及び小切手金等請求に関する原告勝訴判決につきましては、裁判所は、職権で仮執行宣言を付すべきものとしたことであります。また、その判決に対し控訴の提起または異議申し立てがあった場合において、強制執行停止を命ずることができるのは、原判決取消変更原因となるべき事情について疎明があったときに限るものとしたことであります。  第四点は、手形金または小切手金等支払いを求める督促手続につきましては、支払い命令に対し異議申し立てがあった場合において、手形訴訟または小切手訴訟による審理裁判を行なうことができるものとしたことであります。さらに、督促手続管轄裁判所につきましても、また、仮執行宣言付支払い命令に対し異議申し立てがあった場合における強制執行停止につきましても、手形訴訟と同様としたことであります。  第五点は、この法律は、昭和四十年一月一日から施行することとし、これに伴う経過措置を定めるとともに、民事訴訟用印紙法について所要の整理をすることとしております。  以上がこの法律案の概要であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに可決されるよう希望いたします。
  4. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 以上で提案理由説明は終わりましたが、本案に対する質疑は後日に譲ります。    ———————————
  5. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 次に、下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を一括して議題とし、質疑を行ないます。御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。——それでは、私のほうから一応下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、簡単にお尋ねしておきたいと存じます。  それは、「下級裁判所設立及び管轄区域に関する」云々と書いてありますが、この下級裁判所設立をおやりになるには、交通関係とか、あるいは地勢の関係とか、人口の数だとか、それから事件数だとか、いろいろな原因に基づいて設立管轄区域をおきめになると考えられますが、そういう点について、ひとつお所見を承っておきたいと思います。
  6. 津田実

    政府委員津田実君) 下級裁判所設立及び管轄区域の定め方につきましては、ただいま御審議をいただいておりますところの下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律によって定められることになっておるわけでございます。  この法律によりましては高等裁判所以下の裁判所設立を定めておるのでございますが、高等裁判所及び地方裁判所につきましては、大体裁判所法施行当時に設立されましたとおりの形におきまして設立されているということは御承知のとおりでございまして、全国に八高等裁判所、四十九の地方裁判所が設けられているわけでございます。おおむね従来一府県に一つ裁判所がございますが、北海道におきましては四つ設けられておる、こういうことになっておるわけでございます。  そのもとにおきましてさらに簡易裁判所設立されておるわけでございます。で 簡易裁判所につきましては、裁判所法施行当初設立されたものが大部分でございまして、その後若干設立されたものもございますが、それはほとんど予定されておったものということになるわけでございまして、現在五百七十カ所に設置されておるわけでございます。その設立当初のいきさつにつきましては、現在必ずしもはっきりいたしておらない点もあるのでございますが、大体におきまして、当時ございましたところの警察署二署につき一つというようなことを標準にいたしまして、そのほか、地理、あるいは交通状況、あるいは人口状況事件数というようなものをにらみ合わせてこれらの数がきめられたものでございます。しかしながら、裁判所法施行以来十数年を経過いたしておりまして、今日におきましては、交通状況人口移動等がかなり著しく変動いたしました結果、現在の簡易裁判所そのもの設立状態が、人口事件数、あるいは地理状況等に必ずしも合致していない面もあるとも考えられるわけでございまして、法務省におきましては鋭意これらの点につきましては調査検討をいたしておるわけでございます。もっとも、簡易裁判所につきましては、これをもう少しその設立当初からの状態——つまり、交通の便利が著しく変化してまいりまして、すなわち著しく便利になった個所もありまして、必ずしも現在の五百七十カ所を維持する必要がないのではないかという意見もかなりございます。ことに、弁護士会の方面におきましては、御承知のとおり、弁護士の数が必ずしも十分でありませんので、こういうふうに裁判所の分散配置されておるということは必ずしも弁護士活動に便利ではないというような点も主張されているようでございまして、したがいまして、これらの裁判所の有効な設置という意味におきまして再配置というようなことを考える時期に到達しているというふうに考えておりますので、鋭意調査検討いたしておりまして、最高裁判所とも連絡いたしましてその間の調査をはかっているわけでございますが、まだ現在その成案を得ているわけではございません。  なお、簡易裁判所設立そのものにつきましては、地元住民方々利害にも非常に影響があるわけでございますので、それらの点につきましても十分考慮を払う必要があることはもちろんでありますので、そういう点もあわせて検討いたしたいというふうに考えている次第でございます。
  7. 中山福藏

    委員長中山福藏君) さらにお尋ねしておきたいと思いますが、これは「別表第四表所在地の欄中「北海道雨龍深川町」を「深川市」に改める。」とか、いろいろな名称変更なんかあるようですが、これは、なんでございますか、交通の便、不便ということが一つの要素になっているように思うんですが、このごろは、御承知のとおりに、人口移動、いわゆる工業地帯というものに対する人口移動というものが相当あるわけですが、その人口移動関係というようなこともやはり考慮に入れてお考えになったんですが、しかし、人口がいかに多くても、事件があまり——人心というものが安定しており、また、経済的な関係から、裁判の数が少ないというような点も多々あるだろうと思うんですが、いわゆる生活の不安、安定というものが影響すると思うんですがね、そういう事件の数につきましては。そういう点にも一応考慮を払われておきめになったわけでございましょうか、ちょっとその点もお尋ねしておきたいと思います。
  8. 津田実

    政府委員津田実君) 御承知のとおり、全国に五百七十カ所配置いたしますということになりますると、大体従来から全国のおもなところと申しますか、かなり普遍的に設けられるというようなかっこうになっておりますので、人口移動そのものによりまして直接その位置を変えなければならぬという事態は必ずしもはっきり起こってこないわけでございます。ただ、一つ簡易裁判所が著しく繁忙になり、一つ簡易裁判所はさまでないということはあり得るわけでございますが、そういうものにつきましては、裁判官あるいは職員配置等によって適当に調整を加えて事務処理するというようなことでまかない得るわけでございまして、人口増加事件数増加によりまして裁判所位置そのものを変えなければならないというようなふうに考えたケースは非常にまれでございます。
  9. 中山福藏

    委員長中山福藏君) それからちょっとこれに関連してお尋ねしておきたいんですが、このごろ、簡易裁判所、こういう名前下級裁判所がおつけになっておりますね。で、簡易裁判所という呼称というものが、いかにも事件が簡単で短時間に処理し得られるというような感じ一般国民が受けているわけでございますがね。しかし、事件というものは、その人の環境によって、こちらが簡単だと思いましても、また下級なものだと思いましても、訴訟を提起するその人にとっては非常に大きな財産であり、非常にまた重要な問題でもあるという感じを個人々々が持っておると私考えるのですが、この簡易という名前ですね、これはもと区裁判所と言うたのと同じような意味だろうと思うのですけれども、この簡易という呼称を、事件を提起するような方々の心に大ざっぱに取り扱うのじゃないかというような感じを与えないような名称に関することをお考えになったことはないのですか。
  10. 津田実

    政府委員津田実君) 簡易裁判所名称につきましては、裁判所法律案当時いろいろ問題になったように記憶いたしております。もちろん事件を手軽に扱ってしまうというような意味簡易ではないのでありまして、簡易というのは、先ほど申し上げました全国の五百数十カ所というような地方に設立をいたしまして、関係住民方々が気やすく利用できるという意味の、非常に民衆に親しみのある裁判所という意味をあらわす意味でつけたというふうに私どもは聞いておるのでありますが、必ずしもその資料ははっきりいたしませんけれども、とにかく手続を簡単にしてしまうという意味ではなかったことはもちろんでございます。まあその当時もいろいろ議論がありまして、あるいは、従来の区裁判所性格は違うのでありますが、区裁判所という名称がいいのではないかというような意見もあったようでございますけれども、結局簡易裁判所というような名前に当時なったわけでございます。  その後、これを変えるかどうかという問題は、一応その当時それで解決をしたということでございまして、まあ最初は何かなじめないような名前であったわけでありますけれども、今日でいえば地元方々にもかなりなじみができてきた名前ではないかというふうに考えておりますが、確かにお尋ねのとおり、名前そのものは必ずしも絶対にいい名前であるというふうには言えないのではないかというふうに考えております。
  11. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 御承知のとおり、今度民事訴訟法の一部改正法律案が出ておりますが、これには小切手並びに手形についての改正があるようですね。これはもとに復元するわけですね、ある意味においては。だから、簡易なんかということは、日本のような零細な資産しか持たないという人が大部分を占めているところにおきましては、その零細な財産を持っておる人が非常に珍重がっているところの自分の財産に関するいわゆる権利関係を確立するという意味裁判であるとすれば、この簡易という名前が、いかにもおれなんかの訴えることは簡易にやられるのだというように、まあなんですね、法律知識一般に普及していない今日におきましては考えるのじゃないか。だから、いま申し上げましたとおりに、小切手あるいは手形訴訟を復元する、復活するということになりますと、やはりこの名称というものも復活していいんじゃないかという考えを持たざるを得ないわけですが、一応こういうことは将来最高裁判所においてもまた法務省におかれてもお考えになってはいかがなものだろうかと思うのですが、どうでしょうか。
  12. 津田実

    政府委員津田実君) 確かに、仰せのとおり、文字そのものは必ずしもいい名前というふうにまあ私ども考えないわけでございますが、もし非常に万人の首肯するような適当な名前ができれば、あるいは変えるほうがいいのではないかというふうに考えておりますが、ただいまのところ、全く万人が首肯するような名前というものが何であるかということが必ずしも私どもで浮かばないわけでございまするので、このままになっておるわけでございますが、御趣旨は十分検討いたしたいと思います。
  13. 中山福藏

    委員長中山福藏君) それから最後にもう一つお尋ねしておきたいのですけれども、今度いろいろと下級裁判所管轄区域設立に関してずっと場所的な事柄が述べてありますが、大体人口もとにして設立されたりあるいは併合されたり、簡易裁判所にする場所と、交通の便、不便によって設立及び管轄区域変更というものが出たところと、いろいろあるだろうと思いますが、種類は幾らぐらいございますか。今度こういうふうに変更設立をされた原因になった種類ですね。
  14. 津田実

    政府委員津田実君) ただいまのお尋ねの点でございますが、これは提案理由説明にもございますとおり、実質的に管轄区域変更いたしておるのはたった一カ所でございます。もちろん簡易裁判所を新たに設立したものはございませんし、簡易裁判所そのもの管轄区域を変えたのが一カ所、それからあとは市町村の廃置分合、つまり町が市に編入されたとかいうことによる名称変更だけでございまして、実質変更はないのでございます。  たった一つ管轄区域変更があると申しましたのは、この法律案に出ておりますところによりますると、法律案の二ページの一行目からでございますが、「同表鰍沢簡易裁判所管轄区域の欄中「本栖」を「本栖及び富士ケ嶺」に、同表富士吉田簡易裁判所管轄区域の欄中、「本栖」を「本栖及び富士ケ嶺」に、」、この部分だけでございます。この部分だけと申しますのは、お手元にお配りしてございますところの「法律案参考資料」の末尾十九ページに地図がございますが、その地図のうちで、現在「字富士ケ嶺」と書いた斜線の区域がございます。この区域が従来鰍沢簡易裁判所に入っておったのを、今度富士吉田簡易裁判所のほうに改めたいという趣旨だけでございます。この区域は、そのやはり同じ資料の十七ページにございますように、交通的に申しますると、現在、鰍沢へ出ますのには二時間半を要し、運賃百八十円を要するわけでありますが、今度変えまする富士吉田市へ出まする場合には、一時間二十分の所要時間で運賃百十円ということで、地元方々には便利になるという意味におきましてこういうことを希望されておりますし、地元関係及び甲府関係の各庁、弁護士会等もそれを希望しておりますので、これに変更するということでございまして、これ一カ所でございます。
  15. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ちょっと関連して。いまの下級裁判所というものは、あれですか、どこから下級裁判所ということばが出てくるんですか。
  16. 津田実

    政府委員津田実君) これは、憲法の七十六条第一項に「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。」、これでございます。
  17. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 下級裁判所というのを私らが常識的に考えるのは、一審の地方裁判所簡易裁判所下級裁判所と言えると思うんですがね。高等裁判所まで下級裁判所とは考えないんですがね。あれはわざわざ高等と書いてあるんだし、ことばがあれですけれども、これはアメリカ考え方ですか。どういう考え方下級裁判所というのに高等裁判所まで入るんですかね。
  18. 津田実

    政府委員津田実君) これは、憲法上、最高裁判所とは裁判官任命手続その他非常に違っておりまするししますから、最高裁判所とそれ以外の裁判所と分ける際の名称として下級裁判所ということばを使ったというふうに考えられるわけでございます。
  19. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、英語で言うと何と言っているんですか。
  20. 津田実

    政府委員津田実君) ちょっと憲法の英訳はわかりませんが、アメリカあたりでは特別の名前がなかったと思っております。あるいはローア・コートと言っておるかもしれませんけれども法律上の名称はないんじゃないかと思っておりますが……。
  21. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 一審裁判所と二審裁判所というふうな分け方があるのは常識的によくわかるのですけれども高等裁判所まで含めて下級裁判所なんと言うんじゃ、これは最高裁というものを権威づける、位置づけるためにそういうふうになっているんだと思いますけれども、これはちょっと何かよくはっきりしない点があると思うんです。まあどうでもいいような問題ですがね。  もう一つ疑問に思うのは、いまのいわゆる下級裁判所管轄をきめるのに、説明を聞いていると、これは法務省がきめているようですね。法務省説明して法務省で何かこう提案している。裁判所管轄をきめるのに、最高裁できめて、そうして国会提案することはできないのですか。どうもそこのところがおかしいんじゃないかと思うんですよ。それは法務省設置法にあるといえばあるでしょうけれども、基本的におかしくないですか。
  22. 津田実

    政府委員津田実君) これは、憲法におきますところの三権分立考え方から参りまして法律提案権内閣行政府が持つことが相当であるということになるわけでございまして、法律提案権そのもの行政府事務、したがいまして、司法権の中において法律提案権を認めるということは三権分立考え方に反するということから来ておるものというふうに考えられるわけであります。  下級裁判所管轄区域等につきましても、これは国民利害に直接影響があることで、結局立法そのもの国会で御審議になるわけでありますけれども、その案を用意するのはやはり行政府国民利害考えて案を用意するというふうになっておるというふうに考えられるわけでございます。
  23. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 予算の場合は、いわゆる二重予算で、最高裁判所が直接国会請求する権限があるわけでしょう。それは別に三権分立には反しないんじゃないですか。
  24. 津田実

    政府委員津田実君) 予算そのもの最高裁判所あるいは下級裁判所を運営するために必要な経費という意味でありまして、すでに運営ということは法律によって運営することがきまっておるわけでございますから、いわば法律を施行していくための必要経費という意味であるのですが、そのもと法律をつくる作業に最高裁判所が参画するということは、裁判所自体がみずから運用しやすい法律を立案するということになって、三権分立の中の司法の比重が大きくなるということが考えられるというふうに思われるわけであります。したがいまして、そこのバランスをとるために最高裁判所には法律提案権を認めていないという考え方であると思うのでございます。
  25. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 じゃ、最高裁判所規則で制定し得る範囲というのはどこまであるわけですか。
  26. 津田実

    政府委員津田実君) 憲法によりますと、最高裁判所は、訴訟に関する手続、それから弁護士裁判所内部規律司法事務処理に関する事項規則を定める権限を有するということでございます。ですから、これは規則で制定し得る事項であります。しかし、この訴訟手続につきましては、あるいは弁護士に関する規則につきましては、これは法律でも規定できるという考え方でありまして、現在の民事訴訟刑事訟訴法律できめており、細部の手続については最高裁判所規則で定める。弁護士法につきましても、弁護士法自体法律できめておる、しかし外国弁護士に関する規則というようなものは最高裁判所がつくっておる、まあそういうようなことになっておりまして、そこで規則法律との役割りの分け方をいたしておるわけでございますが、裁判所内部規律というようなものにつきましては、これは規則専管事項であるというふうに考えておるわけでございます。なお、規則そのものは、法律の委任で別の事項でも定められるというのが現在の大体統一した解釈ということになっておるわけでございます。
  27. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、最高裁規則できめる場合のいわゆる専管事項と、それから法律規則どっちでもきめていい共通事項と、こうあるんだというわけですか。その共通事項というのは、何といいますか、好ましい状況としては法律できめるのが好ましいんだ、こういうふうなことになると承っていいんですか。
  28. 津田実

    政府委員津田実君) ただ、訴訟手続あるいは弁護士に関する規則のうちで、国民権利義務に直接影響のある事項法律できめるのが相当だ、その他の事項はルールで規則できめてよろしいという考え方になると思います。
  29. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 裁判所管轄をきめるというのは、いわば国民権利義務にもちろん大きな関係があるんですけれども最高裁判所できめて、そしてそれをもちろん国会で議決するわけですけれども、そういう形ではそうすると三権分立の精神に反するのだということになるんですか。そうすると、あらゆる場合に、内部的というと語弊があるかもわかりませんけれども、当然裁判所が一番ウエートを持つ法律案が、ほとんどといっていいくらい法務省承知をしなければ国会提案できない、こういう結果がいま生まれているわけですわね。そうなってくるというと、現実にはもう最高裁判所というものが、法務省の、俗な言葉で言えば、言うことをきかなければ法律案も通してもらえない、予算案も十分やってもらえないという形ができてくるのじゃないんですか。そこのところは非常に基本的な問題で、私は常々の疑問なんですがね。
  30. 津田実

    政府委員津田実君) 先ほど申し上げましたように、法律提案権というのは、憲法上からいえば行政権だから政府部内でやる、内閣がやる、しかし、その内閣のうちでそれをつかさどっているのは法務省だというかっこうになっているわけでございます。ところが、それじゃ裁判所法律提案権を認めるのがどうかという問題はかねて議論もあったわけでございまして、これは三権分立のたてまえからいえば、裁判所法律提案という一つの行政事務を行なうことになる。しかし、裁判所といえども行政事務を行なってはいけないということではありませんけれども、もし裁判所裁判所法あるいは手続法というようなものの原案をつくって提案するということになりますれば、これは裁判所に都合のいい、裁判所がやりやすいような手続なり何なりをやるおそれがあるかもしれぬ。そういう意味におきまして、それは裁判所が原案を出すということは認めないほうがよろしいということになるのではないか。もしも内閣裁判所のために適当でない法律案をつくるというようなかりに不都合なことをやれば、それは国権の最高機関である国会がチェックすべきものであるし、また、国会自体がみずから法律案を作成、発案することもできるわけでございますので、裁判所自体提案権を認めなくても、その面では何らの不都合はないのではないかというふうな考え方になるわけでございます。  それからなお、ルールにつきましては、これは裁判所専管事項でありますので、ルールを国会の承認を求めるというようなことはちょっと憲法上できないだろうと思います。
  31. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 最高裁のルールでそれを拡大して、そして本来国会へかけるべき国民権利義務関係することをルールできめちゃうということなら、これはぼくはもう司法権のいわゆる優位性というものを極端に認め過ぎたのだ、三権分立の精神に反すると言えると、こう思うんですけれども、ただ、法案の提案そのものは、これは国会が国権の最高機関として議決するんですから、そこで十分判断ができるのであって、それを一々法務省を通すというか、法務省内閣というか行政権の弱異としてやるということになれば、そこで司法権というものが現実の姿として法務省にいわば——ことばは適切でないかもしれませんが、従属したようなかっこうをとらなきゃ、法案の提案もできなくなってくるのじゃないですか。幾ら最高裁においてこういう法案が裁判関係で必要なものだと言っても、法務省が、いやそれは必要ないじゃないか、こう言えば、それで終わりになっちまうのじゃないですか。それじゃおかしいのじゃないですか。それのいい例が今度の少年法の改正の問題なりあるいは借地借家法の改正の問題なりにあらわれているのじゃないですか。どうもそこら辺のところが私は疑問なんですがね。これはまたあらためて質問をしたいと思いますが、私もそれ自身も研究課題だと思うんですがね。  きょうは私の質問じゃありませんから、この程度でひとつ……。
  32. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 裁判所管轄変更は地方住民の意思を考慮する必要があると思うのですが、ことに本件の場合に、地方住民はこれに対して反対の意思はないのかどうか。また、地方住民の意思を聞く場合に、具体的にはどんな方法で聞いておるわけなんですか。
  33. 津田実

    政府委員津田実君) これは具体的にはいろいろのケースによって違いますが、大体におきましては、地方住民の方々意見を聞く——もう全部聞いております。その聞方は、直接法務省から係官を派遣をいたしまして市町村役場等につきまして聞くというようなこともございますし、あるいは、出先機関——大体において検察庁を使う場合が多いのですが、検察庁によって調査するという場合もあります。あるいは、直接出張して調査をするというようなことが大体で、そのほかに、弁護士会でありますとか、関係警察とか、あるいは府県当局、そういうものの意見を聞くということが通常のやり方でございます。  なお、特に地元住民意見が割れておるとかいうような問題につきましては、さらに慎重に考えるわけでございますが、まあそういう場合はほとんど変更をしない場合が多い、まあ変更提案をいたさないようにしておる場合が多いわけでございます。
  34. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 それから裁判所職員定員法の一部を改正する法律案についてちょっとお聞きしますが、これは判事五名、判事補五名、簡易裁判所判事五名ですか、それぞれ増員することに法案がなっておるわけですが、それは、定員をふやせば、なんですか、実際において人員は充足する見込みがありますかどうですか、現在の状態で。
  35. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) ただいま後藤委員からお尋ねのございました点でございますが、裁判所といたしましては、実はできるならば裁判官はもっと多数にでも増員をしていただいて、そうして裁判の迅速適正な処理に当たりたいと考えておるわけでございますが、御承知のとおり、なかなか裁判官の給源というものが十分にございませんために、いつも若干の欠員を抱えざるを得ないというような状況になっておるわけでございます。  ただ、ただいまお尋ねのございました判事五名、判事補五名、簡易裁判所判事五名という関係におきましては、現在の欠員を合わせましても大体四、五月ごろには充員できるであろう、かような見通しを持っておるわけでございます。
  36. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 それについて、司法試験によって採るのに、もうちょっと数を多くしたらどうですか。現在非常に競争が激しいようですが、もうちょっと及第者を多く出すようなことを考慮してはどうですか。
  37. 津田実

    政府委員津田実君) 現在の司法試験のたてまえから参りますと、司法試験管理委員会が司法試験を管理するわけでございますが、司法試験の及落決定につきましては考査委員会議がその権限を持っておるわけでございます。考査委員会議によりまして、つまりいまの司法修習生として適当な学力を持っているかどうかという点を試験して当否をきめるということになっておるわけであります。したがいまして、一応の理屈といたしましては、それ以外の人はその基準に達していないということになるわけでございます。まあしかし、実際問題としていろいろな諸般の事情を考慮して考査委員が定めておりますので、逐次合格者の数は増加いたしておるわけでございます。たとえば昭和三十六年は三百八十人程度であったのが、三十七年は四百五十九人になり、三十八年は四百九十六人、ほぼ五百人になっておるわけであります。本年はまあどういうふうになりますかわかりませんですが、大体そういうふうに逐次は増加いたしておるのでありますけれども、これを本質的にもう少しそういう面を考えるとすれば、やはり司法試験制度というものにある程度改善を加わえなきゃならぬのじゃないかというふうに考えておりますが、現在におきましても逐次増加していくという趨勢にはなっておるわけでございます。
  38. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 それから裁判官以外の裁判所職員の点でありますが、これは、なんですか、採用するのにどういうふうな基準によって採用するんですか。試験かなんかそういうようなことはやっておるわけですか。また、これを充足することはあまり困難でないでしょうか、どうですか。定員法を改正すればそれでもってすぐ充足ができますか、どうですか。
  39. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 裁判所職員一般職員の中で裁判所書記官とかあるいは家庭裁判所調査官というようなものにつきましては、これは非常に厳格な資格要件もございまして、裁判所書記官につきましては、裁判所書記官研修をしました者から任命をいたしますのが原則でございますが、まあ例外的に昇任試験というような方法で任用している場合もあるわけでございます。また、家庭裁判所調査官につきましても、家庭裁判所調査官研修所の業を終えました者から任命するのが原則でございます。しかし、その他に学歴その他で特に任用する場合もあるわけでございます。  その他の一般職員につきましては、一般の公務員と同様な関係になっておるわけでございますが、これらの職員の充員につきましては、裁判官の場合は違いまして、一般的に申し上げますと、はるかに容易でございますし、裁判所書記官、家庭裁判所調査官はやや別でございますが、その他のものにつきましては十分の充員の見込みがあるわけでございます。それから裁判所書記官、家庭裁判所調査官につきましても、この法律案で定めていただいております程度の充員は、書記官研修所あるいは調査官研修所の卒業生でもって充員できる見通しでございます。
  40. 中山福藏

    委員長中山福藏君) ちょっとお尋ねしておきたいんですが、裁判所によりまして非常に事務の複雑繁多なところと——たとえば和歌山県の田辺のようなところは一カ月に一、二件しか事件がないといううわさすらも聞いておるんですが、そういう閑散なところの裁判所の判事を遊撃的な移動裁判官というようなものにして、非常に複雑多岐にわたる多忙をきわめる裁判所移動さして、そして職員の足らないところを補充して裁判を敏活ならしむるというような方途は講ぜられないものでしょうか。一ぺん津田さんに伺いたいと思っていたんですが、その点はどういうお考えを持っておられるんでしょうか。忙しいところは非常に忙しいし、六大都市のようなところは特に忙しいのですが、いなかの簡易裁判所なんかほとんど事件のないようなところもあるように承っておるのですが、どうでしょうか、その点は。
  41. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) この問題は、最高裁判所司法行政の問題でございますので、私どものほうからお答えさせていただきたいと思いますが、裁判官の定員というものが何といいましても限られておりますし、また、この、充員というものがなかなかむずかしい状況でございます。そういう関係で、定員の伸びというものにもいわば限界がございまして、結局、現在の定員なり実員をもって裁判事務処理していかなければならないと、かような状況になっておるわけでございますので、私どものほうといたしましても、裁判官全国にどういうふうに配置するかということが一番むずかしい、また、大事な問題であると考えておるわけでございます。  で従来から定員の配置は大体二年ないし三年ぐらいことに新受件数を見まして、新受件数の多くなりましたところへ裁判官を増員すると、かような方法をとってまいったわけでございますが、三、四年前にいわゆる実態調査というものをいたしまして、それで各職員——裁判官を含めましてこれの実際の事務量というものを検討いたしたわけでございます。そういうような資料にも基づきまして現在配置をきめておるわけでございますが、いま委員長からお話しございましたまず大都会にはできる限り多くの裁判官を置くという問題につきましては、最近の定員の配置改正におきましても、東京や大阪には相当な増員をいたしたわけでございます。  それから簡易裁判所なりあるいは乙号支部等の小さなところの裁判官をどうするかという問題でございますが、これは実は事務量で申しますと、裁判官の一人当たりの一割にも当たらないという簡易裁判所もないではないわけでございます。そういうところへ一人置きますと、九割分の仕事量はむだになる、こういう貴重な裁判官のいわゆるエネルギーをむだにしないようにということを常々考えるわけでございますが、しかしながら、これまたたとえば北海道の僻地のような場合でございますと、そこに裁判官を一人置きませんことには、ほかから参りますとかえって交通その他でエネルギーのロスを生ずるということもあるわけでございます。そこで、まあできる限り事務量の小さいところは二つの庁に一人の簡易裁判所裁判官を置く、かけ持ちでやってもらうというようなこともやっております。場合によっては三つの庁にかけ持ちでやってもらうというようなこともやっております。それからまた、支部等につきましては、支部に必要な人員を本庁のほうに置きまして、本庁からいわば巡回裁判的に参るという方法もとっておるわけでございます。それからこれは常時行なうことではございませんが、先年一度行ないましたのは、東京に非常に未済事件がたまりました際に、ほかの比較的手のすいておる裁判所裁判官から暫定的に東京に応援に来てもらったという方法もとったわけでございます。  委員長からお話のありましたたとえば最高裁判所にある程度のプールの人員を持って、それを常時各地に派遣するということも、確かに一つの方法と考えられるわけでございますが、まだ実はそこまでのいわば余裕がないということでありまして、ともかく何とかしてそれぞれの土地の事件を早くやっていただくという意味で一応各現地に出ていただいておる、そうしてまあできる限りその間のやりくりで迅速にやるようにしていただくと、こういうふうな方法をとっておるわけでございます。
  42. 中山福藏

    委員長中山福藏君) ほかに御質疑はございませんか。——それでは本件に対する質疑は一応この程度といたしまして、本日はこれをもって散会いたします。    午前十一時二十分散会    ————————