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1964-02-25 第46回国会 参議院 法務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月二十五日(火曜日)    午前十時二十一分開会    ———————————   委員の異動  二月二十日   辞任      補欠選任    大矢  正君  亀田 得治君    ———————————  出席者は左のとおり。    委員長     中山 福藏君    理事            迫水 久常君            和泉  覚君    委員            植木 光教君            田中 啓一君            高橋  衛君            亀田 得治君            中村 順造君            大和 与一君            岩間 正男君   政府委員    警察庁警備局長 後藤田正晴君    法務政務次官  天埜 良吉君    法務省人権擁護    局長      鈴木信次郎君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   説明員    警察庁警備局    警備第二課長  後藤 信義君    ———————————   本日の会議に付した案件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  (警察官による人権侵犯に関する件)    ———————————
  2. 中山福藏

    委員長中山福藏君) これより法務委員会を開会いたします。  本日は、検察及び裁判運営等に関する調査を議題といたします。  警察官による人権侵犯に関する件につきまして岩間君から発言を求められておりますので、これを許します。岩間君。
  3. 岩間正男

    岩間正男君 神奈川座間町の三協紙器争議事件で、同労組の法対部長佐藤千春君が大和署に通捕されて、その指紋をとるために戦前特高まがいのさかさづりの拷問をやったことが人権擁護上いま非常に大きな問題になっております。この事実について人権擁護局長はこれを調べたと思うんですが、報告してほしいと思います。
  4. 鈴木信次郎

    政府委員鈴木信次郎君) 法務省人権擁護局長でございます。よろしくお願いいたします。  ただいま御質問の点につきまして、二月十三日付の神奈川新聞及び総評全国一般神奈川地本横浜地域支部ウルベ帽子店分会教宣部二月十九日付発行チラシ闘争ニュースNO.22により情報を認知いたしまして、警察官による不当逮捕並びに暴行による人権侵犯の疑いのある事件といたしまして、これを管轄いたします横浜地方法務局において人権侵犯事件として立件して現在調査中であります。  この情報によりますと、(一)二月十日、神奈川県高座郡座間座間の三協紙器製作所神奈川工場で行なわれました会社側——これは会社清算段階に入っております——すなわち清算人立ち入り清算業務の際、同製作所労組法律対策部長佐藤千春威力業務妨害——これは刑法の二百三十四条に該当するということでありますが、この威力業務妨害現行犯大和警察署員によって逮捕されましたが、同人には威力を用い会社側業務妨害した事実はなく、また、右逮捕被疑者弁護人身柄拘束理由をただしたのに対し、威力業務妨害だというのみで満足な説明を与えず、さらに被疑者自身にも逮捕理由説明していない。  (二)大和警察署に留置され取り調べを受けた被疑者黙秘権を行使し対抗したところ、警察官同人をさかさづりにし、ける、なぐるの拷問を加え、指紋採取した。というのであります。  そこで、これにつきまして、所轄の横浜地方法務局におきまして本月の二十日から調査を開始いたしまして、現在関係人十八名につきまして事情の聴取を終了したという段階になっております。そうして、現在の段階におきましては、本件被疑者と相手方の主張が対立しておりまして、不当逮捕及び暴行の有無につき、これをそのいずれとも認定しがたい状態にあります。そこで、さらに慎重に調査を遂げましいて、なるべくすみやかに結論を出したと、かように考えております。
  5. 岩間正男

    岩間正男君 同じ問題について警察方調べられたと思うのですが、これはどういうことになっておるか聞きたい。
  6. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) 先般三協紙器仮処分執行の際に、ただいま岩間委員からお話があったような点について岩間委員のほうからお話があり、私どものほうでも調査をいたしております。  第一点の不当逮捕でないのか、こういう点につきましては、当日における仮処分執行の際に、被疑者こうもりがさを振り回すといったような妨害をいたしたのでございます。したがって、威力業務妨害罪現行犯として逮捕したのでございます。したがって、私どもとしては不当逮捕とはいささかも考えておりません。また、逮捕理由を話しておらぬと、こういうお話でございますが、現場において逮捕し、警察官が本人に告げております。  第二の指紋採取の際のさかさづりということを先般来おっしゃるのでございますが、さかさづりという言葉から受ける通常のわれわれの概念といいますか、そういった実体はございません。被疑者佐藤逮捕大和警察署に連行をせられまして、その日に直ちに弁解録取書を取って調べに入っておりますけれども、一切黙秘権を使ってものを言っておりません。しかし、警察としては、やはり刑事訴訟法にきめられております指紋採取あるいは被疑者写真の撮影、これは当然行わねばならぬことでございます。そこで、当日まず被疑者写真をとろうとしたのでございますが、なかなか写真台にすわらぬ、あばれるといったようなことでしたが、この点については、どうにか写真をとることができたのでございます。それで、次いで指紋採取しようとしたのでございますが、これまたあばれてとらさぬということでございまするので、指紋採取は遺憾ながら翌日になったのでございます。そこで、翌日指紋を第三調室でとろうとしたのでございますが、この際も、あばれる、そして椅子からおりてしまって下にすわり込み、寝ちまうといったようなことで、どうにもとれない。ところが、調べ室のことでございますので、非常に部屋が狭い、また机が置いてあるといったようなことで、万一自傷をしたような場合におきましても、とかく後日になっていろいろな問題がおそらく起きやせぬかという点を私どものほうとしては警戒をして、むしろこれは部屋を変えたほうがよろしいということで、警察官の休憩所——畳敷きでございます。広いほうでございます。そちらへ移して指紋採取にかかったのでございます。この際も、当人は横に寝ちまって手足をばたつかせてどうしてもとらさぬということでありますので、二、三名の警官が抱き上げて指紋をとろうとしたのでございます。しかし、その際も、今度は手の指を硬直さしちまってとらさぬといったふうなことでどうにもならなかったのですが、最後に、警察官のほうから、指紋採取法律に基づいてとるんだからおとなしくとらしたらどうだ、こういう話をしましたところ、あきらめたのかどうか知りませんが、うつぶせになって横に寝ちまったわけですが、そこで全身の抵抗する力は抜いているようですが、それでようやく指紋がとれたというのが実体でございます。この間に、指紋片方はとろうとする、片方はとらさぬとするということで、ずいぶん時間かかかっておりますけれども、いずれにせよ、おっしゃるようさかさづりといったようなことはございません。おそらく、そのことは、上向きに寝ころんでいる被疑者警察官が抱き上げて指紋台に手を伸ばさせようとしたというようなことはあるようでございますが、そういうことをさして言っているのではなかろうか、こういうふうに考えるのでございます。
  7. 岩間正男

    岩間正男君 いまのあなたの報告は、どうして調べたか。これは私はあとで詳しくやるが、どういう方法で、そうしてだれがやったのか。
  8. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) 先般岩間委員のほうからお話があり、私どものほうとしては、私みずからが警備部長電話をかけ、また、ここに来ております警備課長電話をかけ、そして第一線のほうから詳細な報告書をとり、その報告書を読んで不審の点はさらに照会をするといったようなことで私どものほうとしては調査をいたしたのでございます。
  9. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると、警察の当事者だけを調べたわけですね。そして、向こうから報告書を求めて、その結果に従っていまの答弁があった、その程度ですね。
  10. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) さようでございます。
  11. 岩間正男

    岩間正男君 これは私は非常に重大だと思うんですがね。この関係者から訴えを受けまして、これは非常に重大な問題だ、戦前特高まがいのことが復活されておる、日本の民主主義にとって非常に重大な問題だというので、特にあのとき警察庁のほうに注意をして、これは警察庁の方針としてもそういうことをやらしているとは考えられない、あくまでもこの問題は厳重にいまの段階調査してもらいたい、こういうことを特に要求したわけです。ところが、いまの答弁は、調査段階では全く警官の一方的な報告書——おそらく警察立場ではさかさづりをやったなどというようなことを言いそうもないでしょう。しかし、それではあなたたち立場としてはまずいんじゃないか、警察庁としては。こういうような不当なことが実際に行なわれているんですから、あくまでも厳重に事実を取り調べてもらいたいということを要求した。ところが、いまのような報告なんというものは、これは通例行なわれていることです。ですから、この問題に対処する対処のしかたが非常になまぬるい。そうして、事前に予定感情をもって、もう警察官行為というものは何とか一方的にそのように合法化していくんだ、そういうことをまざまざと私は感ずるんですが、これは詳細にお聞きする中であなたのいまの答弁というものはどれだけ事実に反するものかということが明らかになりますから、これはそういう点であなたたちがはたしてこれに答え切れるのかどうか、確信を持って答えてもらいたい。  それでお聞きしますが、手錠をかけて逮捕したということを言っているんですが、これは逮捕理由はどういう理由ですか。
  12. 後藤信義

    説明員後藤信義君) ただいま局長から御説明申し上げましたように、当日仮処分命令が出まして、それに基づいて三協紙器工場内にあります製品、半製品、あるいは機械類等搬出をすることになったわけでありますが、その際、搬出作業をいたしますために人夫が百名ばかり三協紙器に行ったわけでありますけれども、その際に、什器類——什器といいますか、机、椅子あるいはロッカー等の置いてあります工場の二階でありますけれども、この一室におりました佐藤が、人夫が上がっていったのに対しまして、搬出するならば書類を見せろといったようなことを言ったようであります。それからまた、じゃまだからどいてくれということに対しまして、局長お話しになりましたように、こうもりがさを掲げましてこれを振り回すというようなことで搬出業務妨害をいたした、こういうことでございます。それで、威力業務妨害現行犯として逮捕したわけでございます。  なお、さらに、佐藤につきましては、従来、三協紙器が解散をいたしました昭和三十六年の七月ごろから二年有余にわたりまして各門にバリケードを築き、そうして清算人側工場の中に立ち入って工場の中を点検するという作業を力によって妨害をしておったという事実がございます。そういうようなことを含めた意味威力業務妨害、こういうことになるわけでございます。
  13. 岩間正男

    岩間正男君 搬出するなら書類を見せろというのは、これは逮捕理由になるのですか。
  14. 後藤信義

    説明員後藤信義君) それは直ちにそのこと自体が逮捕理由になるということではございませんけれども、正当の権限を持った者が入っていって持ち出そうというのに対して妨害をする、その妨害の一態様としてそういうような言葉を使ったということを申し上げたのでございまして、書類を見せろということが直ちに犯罪になっておると申し上げたのではございません。妨害をしておる一態様として、口でもそういうことを言って、動作でもそういうことをしたということを申し上げたのであります。
  15. 岩間正男

    岩間正男君 書類を見せろというのはあたりまえです。一方の立場のことを考えてみなさい、労働者権利を。書類を見せろということ、あるいはそういうなにをするということを確かめるのは、これは労働者のやらなくちゃならぬ義務でしょう。そのことが理由になったり、それからバリケードを築いたりなんかというのは、これは争議以前の、まだ仮処分の決定を見ない前でしょう。それについてこれが逮捕理由になるのですか。
  16. 後藤信義

    説明員後藤信義君) バリケードは二年有余にわたりましてこれを築いておったのでございますが、バリケード等を築き、会社側の意思に反して一室を占領するなどということは、これは最高裁の判例その他によって明確な業務妨害になるということでございます。そして、いま岩間先生おっしゃいましたように、これは仮処分命令が出る以前からの行為であるということをおっしゃいましたけれども仮処分が出ましてから、私どもの把握しました実情によりますというと、会社側清算人側からバリケードを撤去するように——これは仮処分命令が出ておる、したがってあなたのほうで撤去してもらいたいということを申し出たのでございますが、これに応じなかったのでございます。また、当日も同様の状態でございました。
  17. 岩間正男

    岩間正男君 それは労働者がちゃんと主張を持っているんですよ。工場占拠のそういう権利について。また、一方で争っているそういう段階のことまで逮捕理由にするなんということは、いまのようなあなたの説明では、これは問題になりません。しかし、ここのところでこだわっておるのでは進まないから、じゃ次に聞きたいのですが、取り調べの際に具体的な理由を聞いた。どうして逮捕されたのかわからないので、それで佐藤氏からそれを聞いた。そのときに、全然具体的な理由を答えていない。これはいいのですか、どうなんですか。
  18. 後藤信義

    説明員後藤信義君) これは、先ほど局長から御説明申し上げましたように、弁解録取書をとったわけでございますが、その前段階に、逮捕のときに、逮捕現場におきまして逮捕理由を告げております。それから弁解録取書をとるときに、さらに被疑事実も告げておるわけでありますけれども、私どもの聞いている範囲におきましては、佐藤は一言も発しておらないのであります。
  19. 岩間正男

    岩間正男君 それは逮捕理由というのを具体的に聞いておるわけです、どこが悪くて逮捕されたのか。それについて何一つ答えていないのが現状です。あなたのほうでは、弁解録取書の場合に言ったとか、現場で言ったとか言っておりますが、これは事実に全く反しておりますよ。これはあとでそのときの状態をよく話せばわかりますよ。  次に聞きたいのだが、法務省は来ていないですね。刑事局長は来ていないですな。横浜地検田中検事調書ではどうなっているんです、この逮捕理由というのは。法務省関係はだれもいませんか。「三協労組法部長である佐藤千春仮処分内容をしるした書類を見せろと質問し、持っていたこうもりがさを振り回して威力業務妨害を行なった」、これは検事取り調べの際に読み上げた調書の文言なんです。そういうことを検事は言っておるわけですが、これは全く事実と反しているんです。これは人権擁護局でこういうところはどうですか。まだ調べておりませんか。どうですか。調査の過程らしいけれども、どうですか。
  20. 鈴木信次郎

    政府委員鈴木信次郎君) 先ほども申しましたように、人権擁護の面からは現在調査中でございまして、その具吟的内容の詳細についてはまだ報告をとっておりませんから、もうしばらくの御猶予を願いたいと思います。
  21. 岩間正男

    岩間正男君 当日の前後の事情、これは私たち調査をしたのです。そうして、このような事実はないということは、非常に明白になっておるのです。そのときの模様をここで簡単に話してみますと、当日、つまり二月の十日です、午前十一時ごろ、佐藤氏は工場二階の事務所に数人の組合員とともにいたところ、ワーッという喚声とともに百人前後の暴力団が工場建物内になだれ込んできた。五分後には上階に上がってきて、口口に出ていけと叫んだ。そこで、佐藤氏らは、事故を避けるため、一時二階を去ることになり、  一番最後佐藤氏は、組合員が全部去ったのを確認した上、組合員が置き忘れた雨がさ二、三本をかかえて部屋を出ていこうとした。ちょうどそのとき、二階に上がってきた葵開発井手口社長とすれ違った。井手口社長佐藤氏は、昨年の紙パ労連本部での交渉のとき以来一、二回会って知り合いだったので、佐藤氏は「組合員の持ちものは持っていきます」と言うと、井手口氏は「全部私物は持っていってくれ、そのつい立てに掛けてある作業衣どもそうだろう」と言った。佐藤氏は、部屋のすみに組合パンフなどがたくさん積んであったので、散乱してはいけないと思って、井手口氏に「組合員を二、三人呼んできてこれを片づけたいがどうか」と聞くと、井手口氏は「それではたれ某——名前は不詳ですが——この人と一緒に行って間違いの起きないようにしてやれ」と言ってわざわざ人をつけてくれた。そこで、佐藤氏は、その人のあとから数本のこうもりを持って階段をおり、出口のほうに二、三歩歩き出したとき、階段下のコルゲートマシンのカッター付近にいた二、三十名の警官の中から「そいつを逮捕しろ」という声がかかって、いきなり数名の警官が取り囲んで佐藤氏の両腕をつかみ、「何をするのか」という抗議にもかかわらず、無理やりに裏口のほうに引っ張っていった。  その後いろいろありますけれども、これがそのときの状況なんです。これがどうして一体業務妨害になるか。あなたたちは一体この事実を詳しく調べた上に立って言っているのか。単に一方的な警察の言い分だけ聞いておいて、そうして、人権を守るということで当然全国警察を指導する立場に立っているあなたたち立場としては、私は非常にさっきの答弁では了承できない。これはどうです。あなたたち、このような事実に対してどういうふうに答えることができますか、お聞きします。
  22. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) 実は、三協紙器のこの争議の問題は二年有半にわたっております。この日に仮処分執行をするということがございまして、警察としても当日暴行事案あるいは妨害事案といったようなものが予想せられまするので、警備警戒の措置をとらねばならぬということになったわけでございますが、その際に、私自身、おそらくやこの事件あとになって必ずいつものようないわゆる私どもで言えば対警抗議というものがあるであろうということを予想を実はしたのでございます。そこで、私ども自身が実態を知っていなければこういった席でのお答えも十分でないというようなことから、この執行については、ここに来ております警備課長に私が特に御苦労だが行ってこいということで現場に派遣をしたのでございます。そういうような意味で、ここにおります後藤課長十分事情を承知をいたしておるのでございます。  ただいまのお話の点も、おっしゃるようなとおりであるならば、これは威力業務妨害罪にはならぬと思います。しかしながら、実情は私どものほうとは違っておるということを申し上げておきたいと思います。
  23. 岩間正男

    岩間正男君 後藤課長は、そこの二階からおりてきて逮捕されるとき、あなたは現に見ておりますか。
  24. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 私は、当日事態が全部終わるまで外におりましたので、その逮捕状況は見ておりません。
  25. 岩間正男

    岩間正男君 そういうことでしょう。だから、ただいまの警備局長答弁では、これは問題が明らかにならぬですね。  第一に聞きたいんだが、まず井手口社長了解しておる。持っていってくれ。こうもりもあるし、そのほかに作業衣なんかもある。組合のほうでは、組合パンフが散乱してはまずいから、それもついでに持っていこうというので、二、三人組合の人をつれてきてそれを運び出そうとして、わざわざ相談している。それに対して、社長は、ちゃんと了解づきでもうオーケーを与えておる。問題が起こってはまずいからというので人までつけてやっておるんです。そうすると、全く私はこのような逮捕というやつは考えることができない。第一業務妨害ということを言っておるけれども業務妨害といいますと、仮処分で指定された場所で仮処分に指定された事項に対して妨害を起こせば、業務妨害というものは成立するんです。そうすれば、当然その場において仮処分執行されたものに対してそれを搬出する、その搬出妨害するとか、そういうことがなければ成立しないわけでしょう。そこで、どうですか、仮処分内容はあなたたち御存じだと思いますけれども仮処分内容はどういうことです。
  26. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 仮処分内容は、私どもここに写しを持っておりますので、よく存じております。  それからただいま先生井手口社長了解を得て入ったと申しますか、私物を取り出したというお話でございました。これは先ほど局長からお話を申し上げましたように、先生からさようなお尋ねがありましたので、直ちに私のほうではその事項につきまして特に調査をいたしたわけでございますが、井手口社長はさような了解を与えておらぬということを言っておるそうでございます。  それから私が当日現認しておりますところによりますと、私物を取り出しましたのは、全部一たん外へ出てからでございます。佐藤逮捕されました後に、人夫のほうの指揮者が出てまいりまして、「私物のある方はいまから三十分以内に取り出してもらいたい、三十分を過ぎれば当方としては責任を負いかねますよ」ということを携帯マイクを通じて話しております。それに基づきましてばらばらと正門前におりました組合員が入ろうといたしますのを、だれかが、「それではまずいから代表者を選んで入ろうじゃないか」というので、たしか五、六名中に入りまして私物を持ち出したと私は見ております。そういうことを見ておったのでございます。
  27. 岩間正男

    岩間正男君 それは、井手口社長のことをあなた方のほうで調べたというんですけれども、われわれとしての事実に反します。これはわれわれもはっきり確かめております。そういう点、これは非常にあなたたちのいまの言い方では承知できないのですが、だれが行って調べたんですか。
  28. 後藤信義

    説明員後藤信義君) これは、先ほど局長から申し上げましたように、私自身が、あちらの警備部長電話をいたしまして、そういうようなことが問題になっておるから、詳細に事実を明らかにしておくようにということで話をしておきましたところ、これにつきまして報告書が参ったわけでございます。  それから先生は、井手口社長私物搬出了解を与えたのだから、業務妨害にならぬではないかというお考えのようでございますけれども、私どもといたしましては、私物搬出そのもの威力業務妨害になるとは考えておらないわけでございまして、当日、先ほど局長から御説明申し上げましたように、人夫がその中に入ってどいてくれと言ったと、こういうかっこうでございます。
  29. 岩間正男

    岩間正男君 人夫がどいてくれとかなんとかいうこと、文書を持っているだろうというようなこと、これは問題にならないということははっきりしていると思う。何か言いがかりをつけてその問題にからましちゃまずいと思うのです。一番問題は、やはりその仮処分内容でしょう。仮処分内容に違反するかどうかということが中心にならなければなりませんよ。前後のそういう情勢判断や、それから二年有半行なわれているとかと、そういうことを根拠にして逮捕理由にするということは、これは拡大解釈ですよ。そうでしょう。仮処分内容、この問題が一番大きな問題になるので、そういう問題をあなたたち明らかにしたですか。仮処分内容はあなた方御存じだと思うのですが、どうですか。あなたのほうから言ってもらったほうがいい。それを読んで下さい。
  30. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 前文のほうは省略いたしまして、主文のほうを申し上げます。 でございます。
  31. 岩間正男

    岩間正男君 その中で一番問題なのは、その第二日録記載物件ということでしょう。これは、内容としては、製品、半製品、原紙なんです。その搬出に対して佐藤氏が妨害したかどうかということが逮捕の一番問題になるわけでしょう。ですから、組合員そのものを全部逮捕するということはできない、個人の行為についてですから。その中で佐藤氏がその現場逮捕されたということは、はっきりいまの現場調べてみなくちゃならぬ。ところが、いまの現場調べてみれば、そういう事実はありますか。そこには一体物を置いていますか。そこは、工場建物内の広場で、逮捕されたところには物品は何もなかった。それから人夫は近くに一人もいなかった。こういう事実が確認されているんです。そうするというと、製品、半製品それから原紙などというものを搬出するこの仮処分の中の一番中心的な問題について何らの妨害行為はしていないということは明らかなんでしょう。それに対して妨害する何かがあったのでしょうか。  その次に、こうもりを振り回したという。これは言いがかりである。これは、ちゃんと了解を得てこうもりを持っていった。最初は、理由を聞かれたけれども、何も逮捕理由を答えることはしなかった。それで、最後になってきてどういうことになっているかというと、検事の読み上げたそのときの逮捕理由になってくるとずっと変わってきて、さらにこれはあとで横浜の警備部長でしたかの新聞のなにによると、「原紙の積み込みを妨害した」、こういうことに変わってきている。最初聞かれたとき、なぜそれを答えられない。現行犯でちゃんと逮捕理由を言ったなんて言っているけれども、そういう事実もない。その次には取り調べの際に聞かれた。そうするというと、単にそれは威力業務妨害現行犯だ、そういうことを言っているだけであって、その具体的な理由については何一つ言っていない。当人はどうして納得できますか、この逮捕理由というものは。こういうかっこうで行なわれているところの不当逮捕を納得することはできません。  さらに、まあもしもいまの逮捕理由が成立するとすると、階段の途中でそういうことがあったか。むろん階段の途中でもなかった。それから今度は二階でそういうことがあったか。二階には警官がいなかった。警官がその事実を調べるという事態もその現場では起こり得なかった。  そういうふうに考えてくるというと、実際逮捕理由というのは全くのでっち上げじゃないか。威力業務妨害というそういうあなたたちの判断というものはどこに一体成立するのか。私は警察庁に要求したいのでありますけれども、あなたたちは、あくまで全国警察に対して正当な法の行使ということを建前にして指導する立場に立っている。あくまで警官のやったこと全部をカバーするという立場でなぜ行くんです。そういうことをやっていたのでは、封建性の残存が非常にある中でいろいろな問題が全国至るところに起こっている。人権擁護局の最近の調査によりましても、一昨年あたりの件数をお聞きしたいと思うのでありますが、人権擁護局調べている問題だって、件数としては非常に多いでしょう。それも全部じゃない。その中の最も著しい、どうしてもがまんのできないような問題がはじめて人権擁護局に訴えられる。ですから、実際の行なわれているそういう事実の何十分の一、何百分の一しか知られないんです。それさえも年々増加している。そうすると、あなたたちは、一体ほんとうに警官執行を正しく指導するという立場に立っているのか。あくまでも警察官のやったことは正しいので、そうして事実が驚くべき人権侵犯があったにしても、そのことをあくまでもおおい隠す、こういう立場に立ったのでは、真に警察の民主的な行政なんていうものは行ない得ない。どうなんです。これで一体不当逮捕でないと言えますか。こういう上に立っているんです。私はこのことをまず確かめないというと、当人があと指紋をとられることに対して抵抗した、その抵抗の理由というものは、自分で覚えのない、聞いても答えることのできないそういうものに対して、不当なやり方に対して、抗議をするのはこれは当然ですよ。抗議しないならおかしいくらいです。それをいやおうなしに強引に何でも自分たちの目をつけた——おそらくこれは佐藤氏をねらったのだと思うのだ。「あれを逮捕しろ」という言葉の中に出ている。そうして今度はそれをどんどんそのような理由でもって逮捕理由を構成する、こういう一つの、何といいますか、でっち上げを予定されたそういうような弾圧の手段として行なわれるということは絶対に了承することはできないんですがね。  どうなんです。威力業務妨害ということで一番大切な製品、半製品、原紙、こういうものの搬出を妨げるということが最大の課題になりますよ。ここのところが問題の焦点になると思うのですが、そういう事実はありましたか、ありませんか、そこをお聞きしたい。
  32. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) 私どもは、警察の運営にあたりましては、民主的にしかも国民から信頼されるといったような警察権の行使が行なわれるように全力の指導をいたしておるのでございます。したがいまして、警察をカバーといいますか、警察の非を非と認めないといったような考え方はいささかも持っておらないのでございます。しかし、同時にまた、第一線の警察が、いわゆる対警抗議といいますか、そういう声におびえて違法行為を見のがすといったようなことのないようにということもまた私どもとしては指導をいたしておるのでございます。本件につきましても、こういう警察の基本的な考え方から問題の処理に当たり、また、問題の調査をいたしておるのであります。  ただいま御質問の点につきましても、事実の関係等について私ども調査の結果と岩間委員調査の結果が食い違っているということが言えようかと考えておるのでございます。
  33. 岩間正男

    岩間正男君 とにかく、いままでわれわれもこういう問題を何十件か扱ってきました。そういう場合に、警官がやった事実というのは、ほとんどが事実無根、事実がない、こういうことの連続なんです。しかし、どうですか、これはあとで問題になりますけれども、さかさづりという事態を当人が一体でっち上げしますか。そういうことを多くの警察権力の前ででっち上げ、そういうことを使うというふうに考えられるだろうか。そういう立場から立てば、あなたたち立場はむろん警察庁立場ですから、警官の職務に対して同情的に見たりする、その気持もわからないわけではありません。しかし、最大の任務は何かといったら、これは人民の権利を擁護するという立場です。その立場に立つならば、労働者がそういう不当逮捕逮捕理由がない、こういう事実があるのだというものを一つ一つ消していくような立場をとってはならないと私は思います。それは現場警察は責任問題になりますよ。むろん、こういう問題が起こるとすれば、われわれは当然罷免を要求しなければならなぬ問題です。そういう警官が一人だっていたら話になりません。これは県警だって責任があるというふうに考えますから、あとでこれは明らかにしたいと思いますが、一生懸命になって自分の擁護を始める。しかし、そこのところをあなたたちはかばうような立場をとってはならない。そうでなければ真実を追求することはできない。ですから、その点は再調査をやるべきです。事実をはっきりつかむ、その上に立たないと、そうして、単なる報告書とか電話とか、その電話も、向こうがあわてて大急ぎで署長が行って言わないでくれということをつくるということは、いままでもありふれたことです。あまりにありふれたことです。マンネリズムです。ですから、あなたたち答弁は何とか言いくるめるかもしれませんけれども、事実に反しているということが多い。そういうことのないように、少なくとも警察庁はそういう態度をとってはいかんということを言っておきたい。  そこで、取り調べの際に、佐藤氏から逮捕状を見せろと要求した。そうしたら、「現行犯には逮捕状は要らない。逮捕手続をいま山崎が書いているから」と言って、とうとう逮捕状を見せなかった、逮捕理由も具体的には説明できなかった、こういうことが明らかです。これはこれでいいのですか。単に威力業務妨害現行犯だ、そういうことで一方的に押しまくって、当人に逮捕理由も具体的に説明できない、そうしてあくまでも逮捕という事実をあなたたち一方的に合理化していく、そういうことでいいのですか、どういうことですか。
  34. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 繰り返して申し上げますように、逮捕現場において逮捕理由を告げたということでございますし、それから取り調べ段階においても当然告げたわけでございます。
  35. 岩間正男

    岩間正男君 それは逮捕理由威力業務妨害現行犯だと、こう言っているだけです。どういうことで現行犯になるのかということをはっきり当人としたら不当な勾留まで受けているから聞くのはあたりまえです。その権利があると思います。そういうことについては一切かまわないのですか。
  36. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 先生のおっしゃるように、取り調べ段階で当然説明してやるのが至当と存じます。
  37. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると、これは非常に不当です。当人が納得できない。おそらく納得できるような理由説明することはできなかったというのが実情です。そうして、検事取り調べにあたって逮捕理由が読み上げられた、それになるというと、いつの間にか事実に反するようなことになってきている。さらに、先ほどもちょっと触れましたけれども神奈川県警の星田公安部長は、神奈川新聞で次のような談話を発表している。ここには「原紙の積み込みを妨害した」と、こう言っている。原紙の積み込みを妨害したとはっきり言っている。そういう事実があったのですか、なかったのですか。これは先ほど私が言ったので明らかだと思うのですが、あなたたち調べられたんだろうけれども、原紙の積み込みを妨害したと、こういう事実があったのですか、なかったのですか。これは威力業務妨害の最も中心的な問題だということを先ほど言いました。この点が私はきめ手だと思うのですね。原紙の積み込みを妨害したという事実は、あなたたち調査ではありましたか。
  38. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 私ども調査では、さような事実はなかったようでございます。
  39. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると、どういうことです、これは。関係者がだんだんかわっていって、検事段階になるというと、いつの間にか最初言った威力業務妨害現行犯というのが、今度はずっとその具体的な内容になって変わってきた。田中検事の、さっき読み上げましたこういうやつね、「三協労組法部長である佐藤千春仮処分内容をしるした書類を見せろと質問し、持っていたこうもりがさを振り回して威力業務妨害を行なった」その中では、書類を見せろと質問したことは何も威力業務妨害にはならないわけです。と同時に、かさを振り回した、こういうことですね。書類を見せろといってかさを振り回した、そのことを二つ結合してはじめて威力業務妨害だというふうに検事は言っているのだと思うのでありますが、そうすると、こういうかさを振り回したなどという事実は、これはいつの間にかでっち上げになってきた。さらに今度は、先ほどの星田公安部長の新聞での談話では、「原紙の積み込みを妨害した」、こういうふうに発表されている。こう考えるというと、全く犯罪のでっち上げじゃないですか、これでは。こういうふうに逮捕理由というものはしょちゅう猫の目のようにだんだんと変わっていいのですか。どんどんどんどんつけ加えられていっていいのですか。なるほど、現行犯だから逮捕状はないでしょう。現行犯でその場でやるということはあなたたちの一方的認定で、これはでっち上げ的に逮捕した、逮捕状はないから。しかし、それが検事段階になって取り調べ段階になるというと、もっと拡大解釈する。それから公安部長がそういうような談話を発表する。どれがほんとうなんですか。こういうことでは人権は守れませんよ。  これは人権擁護局長、どうですか。こういうようなやり方をされて逮捕すれば、だれだって逮捕できるのですよ。不当逮捕がどんどんできる。目をつけられれば、もうねらわれたら、ヘビにねらわれたカエルのようなもので、こういうことでいいですか。擁護局長の見解をこの点について聞いておきたいと思う。どうですか。
  40. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 私先ほどお答え申し上げました言葉が足りなかったようでありますので、つけ加えさしていただきたいと思います。それは新聞に発表されたとおり星田君が言いましたか、私は保証の限りでございませんが、ただ、かりに新聞に発表したようなことを星田君が言ったとしますならば、おそらくそれはこういうことではないかと思います。当日の業務というものは原紙その他の物品の搬出という業務でありましたので、それを妨害した。人夫の使命はそういうことでございますので、それに対します妨害は、すなわち原紙その他の物品を搬出する妨害である、かようなことになると思うのでございます。先ほど先生からお尋ねのあったときには、原紙そのものを搬出するということに何か妨害をしたというような意味で、妨害したかどうかということにとりましたので、さような事実はない、こういうふうに申し上げたのでありますが、全般を通じて申し上げますと当日の業務に対します妨害でございますので、そういうような言い方もあるいは出てくるかと思うのでございます。
  41. 岩間正男

    岩間正男君 そのような後藤さんの説明ですけれども、あなたはそういうふうに推量までして言う必要はないですよ。新聞にはそう書いてある。あなたが行って調べられた事実もないので、ここでだから星田公安部長をかばうようなそういう発言は私は要らないと言っているんだ、人権を守るためには。人権擁護局長、どうですか、この点。  それから最近の人権侵犯の事実というのは年々非常にふえていると思うが、概況を話して下さい。
  42. 鈴木信次郎

    政府委員鈴木信次郎君) 先ほどもお答えいたしましたように、お尋ねの具体的事件につきましては、現在調査中でございまして、調査の途中でもしこの場合こうだったらああだというふうにいろいろ仮定の問題を想定してお答えするということは、これは誤解を招くおそれもありますので、不適当だと思われるのであります。やはりいろいろな証拠によりまして事実の正しい状況を認識してその上で法律論を加えるというふうに持っていくのがよかろうと思うのでありまして、現在いろいろな方面から調査中でありますから、この調査が終了するまでその点はお待ち願いたいと思います。  それから最近の人権侵犯事件状況はどうかというお尋ねでございますが、おそらく、御質問の趣旨は、警察官関係による最近の人権侵犯事件の数、あるいはそれに対する人権擁護局の措置というふうなことだろうと思われますので、最近三年間の警察官による人権侵犯事件の受理及びその処理の件数を申しますと、昭和三十六年度におきまして受理した件数の総数は四百六十九件、同じく昭和三十七年度では四百九十二件、それから昨年度昭和三十八年度の統計が最近ようやくまとまったわけでありますが、三百八十六件となっております。
  43. 岩間正男

    岩間正男君 その中で、人権擁護立場から警察官の侵犯という事実に対して人権擁護局がはっきりそれを指摘してそうして処分の対象にした、そういうのは幾つございますか。
  44. 鈴木信次郎

    政府委員鈴木信次郎君) 昭和三十六年度の受理合計四百六十九件のうち、侵犯を認めた処理をいたしたものが九十二件、三七%になっております。それから人権侵犯はなかったという非該当という認定をいたしましたのが百二十九件、五二%。それから中間処理——中間処理と申しますのは、たとえば移送とか、中止とか、回付というふうなもので最終的な結論までいかなかったものですね、これが二十九件、一一%となっております。昭和三十七年度は、先ほど申しましたように受理合計が四百九十二件で、侵犯を認めた処理をいたしましたものが百八件、三二%、それから非該当——人権侵犯の事実はないというものが百八十件、五三%、それから中間処理が四十八件、一五%、こういうふうになっております。それから昨年度昭和三十八年度、これが受理合計は先ほど申しましたように三百八十六件、そのうち、侵犯を認めた処理をいたしたものが九十二件、四一%、それから非該当が百十件、四八%、中間処理が二十二件、一一%、こういうふうな数字になっております。  したがいまして、全般的に申しますると、三十六年度と三十七年度では若干ふえておりますが、大体横ばいの状態で、三十八年度はいささか減少しておる、こういう統計上の数字になっております。
  45. 岩間正男

    岩間正男君 減少しているけれども、パーセンテージはむしろ一〇%くらい上がているんですね。これは予算のときにも問題になったのですが、人権擁護局の機構あるいは人員、予算、こういう点がほかの機構に対して非常に弱小である。これがはたして人権擁護を大きく打ち出して民主主義を確立すると言っている政府の方針としていいのかどうかということが問題になっております。次官も見えておられますけれども、今度の問題というものは、私は非常に典型的だと思う。しかも、いままでに起こった事件に比べましても、一つの新しい特高時代の復活を思わせるような、あとで問題になってきますがさかさづりの問題がある。こういうような事態が起こっておるということは、私は決して見のがすことのできない問題なので、これについてはっきりこの事態を明らかにして、真実の上に立って、このような侵犯の事件に対しては厳重な処理をすべきだ。こんなことは二葉のうちにつみ取るというような体制をとらなかったらたいへんですよ。戦前の復活ですよ。すでに始まっている。そういう既成事実というものはこれはたいへんな事態だと思うので、この点、人権擁護局の権限をはっきり人民の人権を守るという基本線を据えていく、そういう問題についてどうお考えになりますか。これは次官の御意見を伺いたいと思います。
  46. 天埜良吉

    政府委員天埜良吉君) 人権擁護については、法務省としては特に力を入れておりまして、予算その他についても十分に拡充をしていきたいというふうに考えております。しかし、本件につきましては、いま慎重に調査をしておる段階でありまして、慎重に調査をした上すみやかに結論を出して公平な裁定をしたいというふうに考えております。
  47. 岩間正男

    岩間正男君 次に私お聞きしたいのですが、指紋の問題です。指紋をとるまでの経過、特に指紋をとるについて責任者はだれがやったか、そのときの責任者。県警、大和署、こういうこれに関係した人たちがある。この点をまずお聞きしたい。
  48. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 指紋採取につきましては、大和署の刑事課長の荒川警部がその責任者でございます。
  49. 岩間正男

    岩間正男君 県警の藤江刑事部長、それから伊藤、山崎の両巡査がほとんど主力的な役割をやったというふうにわれわれは調査しておりますけれども、いかがですか。
  50. 後藤信義

    説明員後藤信義君) ただいま県本部とおっしゃいましたが、これは、私どもの聞いておりますのでは、鶴見警察署から当日出動させられた警察官であるようでございます。お話の藤江は、巡査部長でございます。それから伊藤は巡査でございまして、両名とも鶴見署の勤務でございます。
  51. 岩間正男

    岩間正男君 当日の神奈川県の警官の出動人員はどれくらいですか。
  52. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 概数六百名ばかりでございます。
  53. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると、各地区にそのような動員態勢を求めたわけですね。ここの三協紙器で職場を守っていた労働者は何人いたのですか。
  54. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 大体四十名近くのようでございますが、当日、私も現場に行って見ましたけれども、支援労組と申しますか、ほかのほうから応援も来ておったようでございまして、私の見たところでは、大体二百名程度が門の内外、特に工場の門の中に入っておったように覚えております。
  55. 岩間正男

    岩間正男君 これはあとで詳しく聞きますけれども、かりに支援労組を含めて二百名、実際はその労組所属員は四十名、これに対して六百名の警官を動員した。いまの応援というのは、県下各署から応援を出した、そういう態勢ですね。当日はなかなか遠くからやってくるので、集結まで時間がかかったということを聞いているのでありますけれども、これは全県下にわたってこういうような態勢をとったのですか。
  56. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 全県下にわたったかどうかは聞いておりませんが、神奈川県の警察官は相当多数おりますので、全県下にわたりませんで、おそらく集めやすいところ、機動隊あるいは横浜市の中にあります警察署等を動員したものと私どもは考えております。
  57. 岩間正男

    岩間正男君 これはあとで詳しくお聞きします。  そこで、指紋の問題ですが、指紋をとるまでに何回かかっているんですか。それから本人はあくまでこれに対して拒否したと思うんですが、これはどういう経過をたどって指紋をとったのか、これをお聞きしたい。
  58. 後藤信義

    説明員後藤信義君) これは、先ほど局長からかなり詳細に申し上げましたことに尽きるわけでございますが、逮捕の当日、取り調べのときにさっそく写真を撮影し、そのあとですぐに指紋をとろうとしたのでございますが、これは抵抗をしましたためにやめたわけでございます。そうして翌日の午後三時十分から午後三時三十分にわたる二十分間において、先ほどお話し申し上げましたような経過をたどりまして指紋をとったわけでございますが、その間には、最初第三調室でとろうとし、それがうまくいきませんし、また自傷事故などが起こってはいけませんので、畳の敷いてある警察官の休憩所でとりましたわけでありますので、途中若干中断されておりますので、指紋をとる作業そのものが何分かかったかは正確にわかりませんが、第三調室で始めましたのが三時十分、指紋採取が終わりましたのが三時三十分、こういう報告を受けております。
  59. 岩間正男

    岩間正男君 非常に概括的ないま説明なんですね。こういうことでは実際その当時の様子はわからない。私たちはもっと詳細にその当時の様子を調べております。  こういうことじゃないですか。二月十日午後一時ごろ、取調室写真をとろうとした。本人は写真をとることをがえんじない、首を左右に振ったりして正常な写真をとらせまいとした。というのは、あくまでこのような不当な逮捕について抗議する当然の労働者権利、最初は理由さえも告げられないような逮捕に対して絶対同調はしない、これは労働者としては当然の一つの権利を守るという戦いだと思うのですが、結局は、どういう写真をとったかわかりませんが、写真はとった。これはあなたのほうにあるわけでしょうから、これはできればどういう写真か参考までにいただいておけばいい。当人が拒否してもあくまでとった写真というのはどういうものか、これをいただけたらいただきたい。  それからそのあとに今度は指紋をとる段階です。一方はガラス板に隅を塗って指紋をとる準備をしていたので、あくまでこれを拒否しようとした。それで、土間にうつぶせになって手に土をつけてとらせまいと抵抗した。ところが、警官が体をかかえ込むようにしてあくまでこれを強行しようとした。そこで、握りこぶしを握ってこれを拒否した。その指を四、五人かかって開かせようとしたがだめなので、警官は右手をさかさにねじった。あまりの痛さに大声を出したら、警官が口を押えた。息ができなくなったので足をばたばたさせたので、第一回目の指紋とりはやめた、こういうことです。  それでそのあとに今度は当人はまた房に戻されたのでありますが、右手が非常に痛むので、医者を呼んでくれと言った。ところが、なかなか医者が来ない。検視に立ち会っているとかいって来ないで、その晩は看守がサロメテールを塗ってくれた。そのくらいでごまかされた。それで、明け方、体がほてってくるので、医者を呼んでくれといった。そうしたら、次の日の一時ごろに村田という内科の医者が来た。逮捕前からかぜぎみだったので診察してもらったが、一応異常がないということで、そのときはまだ外傷もなかったので、腕の痛みについては何もわからなかった。ところが、二月十一日の三時ごろになって、弁護士に会ったのちに取り調べがまた行なわれた。留置場から出ろというので、それを拒否したら、房内に入ってきて、三人がかりで手足を持ち上げ、取調室に連れ込んでいった。で、あくまでもこの取り調べに対しては黙秘権を行使して、二十分ぐらいがんばった。その後、指紋をとる準備をして、それで藤江、山崎、伊藤外二、三名が入ってきて、右肩と腕を伊藤か、左手を藤江が押えていた。指紋採取を拒否したので、机の上のガラス板を手のそばに持ってきて押させようとした。不安定なので、右手首などに九カ所にガラスの切り傷ができた。そのとき、藤江が、「宙に浮かせば抵抗できなくなる」と言った。そこで、それまで押えつけていた両手をはずすのと両足を警官が持ち上げるのと同時で、はずみで顔は土間にぶつけ、左ほおを土間で傷つけた。手は土間でどろんこになって、そのまま十分ぐらいつり上げられた。  こういう事実がある。この足をつり上げたというのは、さっきの局長の話の中には全然出てこなかったのですが、ここが大切ですね。かかえ込んだなどといえば、これは何だか穏健に聞こえます。ところが、からだの自由を失わせるために足をつり上げたらいいといってうしろから足をつり上げた。こんな事実はあなたのほうで調べなかったのですか。これはどうですか。
  60. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) 先ほどの私の答弁に対しての疑問がございまするので、その点をお答えしておきたいと思います。  先ほど私から申し上げましたように、横に寝ちまってどうにもならぬということで持ち上げております。かかえ上げたのをさかさづりと言っておるのではないかと、こう申し上げたのはその点でございます。なお、詳細の当日の指紋採取状況課長からお答えを申し上げます。
  61. 後藤信義

    説明員後藤信義君) これは、先ほど局長から申したとおりでございまして、二月十日の午後一時ごろに写真を撮影をしたわけでございます。それが抵抗がありましたが、これは終わりました。それから続いて指紋をとろうとしたのでありますけれども被疑者は両手をかたく握って指紋採取させまいとして抵抗いたしましたので、この日は中止をしております。それから翌日十一日の午後三時十分ごろにあらためて大和署の第三取調室指紋採取しようとしたわけでございますが、この際にも前日同様に両手をかたく握りまして指紋採取を拒否したのでございます。それで、警察官が二名で被疑者の体を押えながら指を開かせようとしたわけでございますが、被疑者はこれをのがれようとしまして、椅子を自分ではずして、床にすわり、あるいはその場に寝てしまうというような行動に出たわけでございます。そこで、さっき申し上げましたように、その取調室は三畳ばかりの狭い部屋でございますし、机や椅子やらが置いてありまして危険でありますので、場所を畳敷きの巡査休憩室に移すということで、二、三名の警察官被疑者を休憩室に連れていったわけでございます。そうしてそこで指紋採取しようといたしたわけでございますが、被疑者は畳の上に寝ころんで足をばたつかせるというようなことであばれますので、二、三名で腕や足を押えてあばれないようにして、やっとのことで被疑者の指を開かせたのですけれども、今度は指に力を入れて指紋をとらせようとしないというようなことであったようでございます。このときに、先ほど申し上げましたように、三、四名の警察官被疑者の体をかかえて、高さは約五十センチメートルくらいと言っておるようでございますが、五十センチメートルくらい、床と申しますか、畳から上に上げた。しかし、これもうまくいかないので、一、二分でやめておるのでございます。どうもうまくいかないので、「どうして指紋法律の規定でとれるということになっておるのにとらせないのか、もっと静かにしたらどうだ」と言ったところが、「とるならとれ」と言って今度はうつぶせに畳の上に寝ころんで力を抜いたということで、そのままの姿勢で被疑者の腕を横に伸ばして、そうしてこの際は抵抗もなく指紋採取した。その終わった時間がちょうど午後三時三十分ごろであった、こういうことでございます。
  62. 岩間正男

    岩間正男君 もっともらしく聞こえる。かかえ込んでなどという言葉を使われますと、まるでおかあさんが自分の子供でもかかえ込んでいるように聞こえますが、言葉というものの魔術はおそるべきもんです。うしろから足をつり上げて体の自由をほんとうに奪っておいて、そうしていやおうなしに拷問的なやり方でやって、これがかかえるという言葉で表現されているところにいまの警察実体があると言われてもしかたがない。そうして、そういうものを警察庁が真に調べようとしていない。そういうことで一体日本の民主主義が守られますか、また、権利が守られますか、あなたたち言っていますけれども。  いまは第三回目まで話した。第三回目はどうかというと、ここではだめだというので、畳の部屋に連れていかれた。このとき、ズボンはベルトを取り上げられておりますから、しりから恥部まで出てしまっている。いいですか、はだ着はまくれて、そうして腹が出ている。署内の畳の部屋まで連れていった、半裸の状態で。畳の部屋には、警官が、さっきの三人、そのほかに六、七人、十人ぐらいいた。いいですか、ここで半裸のままで腹ばいにされ、うつぶせにされた。右手を逆手にねじられた。左手は畳にぴったりつけられ、胸から顔まで畳に押しつけられ、両足は持ち上げられた。頭の前にすわっていた警官が左耳の上からひざでこづき始めた。そうしてひざで体重をかけてこづき始めたので、畳とひざにはさまれて激しい苦痛が加えられた。このとき佐藤氏は殺されると思ったと、そういう感じを持っているわけです。いいですか、殺されると思った。それで抵抗をやめた。すると、警官が何と言ったか、「見ろ、おとなしくなった、朝鮮と同じだ」これは何という言葉だ。「朝鮮と同じだ」という言葉は、戦前の朝鮮人の虐殺のああいう印象を思い起こします。「朝鮮と同じだ」、何という言葉だ。その次に、「本籍を洗ってみろ」、こういうことを言っておる。その次に、「写真をとっておけ」と三回フラッシュをたいた。その次に、「死人と同じだ、死人はこうしてとるんだ」、こういうばりざんほうを浴びせた。その次に、「こいつは強盗でもやる気か、指紋をとるのをいやがって」そうして右手の指紋をとり、「今度は左手だ、おとなしいもんだ」と口々にからかっているのであります。  一体、この事実というものをあなたたちはとのように——これは警察が隠蔽しても、当人がこういうものを一体捏造するということがあり得ると思いますか。ここに現にそのときの、だいぶあとに過ぎてからでしょうが、写真があります。これは耳たぶがやられておる。それからこれによりますと、この辺に黒あざが出るような傷がある。それからここには、至るところに、手錠をはめられ、あるいはガラスで切った傷が出ております。これを見てください。拷問あとはかくのごときものです。あなたたち拷問のなにがないとかなんとか言ったって話になりません。ここに医師の診断書があります。      診 断 書             佐藤千春        大正四年三月廿八日生  一病名 右頬部擦過、打撲傷(径約      2センチメートル)      右下部口唇打撲傷(皮下出      血を伴う)      左耳殻打撲傷(皮下出血を      伴う)      右前膊、手掌、擦傷(小豆      大、約八カ所)   右の各傷は推定二、三日以前のも   のと思われ、全治十日間を要する   ものと認める  右の通り診断します   昭和39年2月13日  神奈川県高座郡座間座間の鈴木医師かこの診断書をつくっています。こういう私たちは物的証拠さえも明らかにしているのであります。そうして、その上に立ってこのような事態というものを究明しているのであります。あなたたちにこれを反駁する何か反証がございますか。そしていまのようなかかえ込んだなどという言葉で事態を糊塗しようとする、そういうことをしようとしています。しかし、裏づけがありますか。この点、いかがです。
  63. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) 私どもは、先ほどから申し上げますように、警察官に非がある場合には、これをかばうという気持はございません。あくまでも事実に基づいて処理をいたしておるつもりでございます。先ほど岩間委員から被疑者が一体こういうことをでっち上げると思うか、こういうお話がございましたが、私自身は、なるほど被疑者がでっち上げるとまでは思いません。しかしながら、この被疑者は、非常に何といいますか、オーバーといいますか、そういう言い方をしておるというふうに私は警察調査の結果感じておるのでございます。この被疑者は、逮捕せられたときも、実はメモを押収せられておりますが、それを飲み込んでおります。警察官のほうはたまげて、毒でも飲んだんじゃないかということでびっくりしたような場面があったわけでございます。つまり、それを見て警察官がそれを苦労してはがせようとした。ところが、ぶっ倒れてしまったので、これは毒だということで警察官がたまげたんですが、どうも様子がおかしいということで、そらを使うなと、こういうことを言ったところが、本人はニヤニヤと笑いながら起き上がってきておるといったような事実もあるわけでございます。それらを考えまして、私どもも全くでっち上げておるというふうには見ておりませんけれども、非常にオーバーだ、こういうふうに考えております。したがって、私どもがここでお答えしておりますのは、警察について調査した結果、事実に基づいてお答えを申し上げておるつもりでございます。
  64. 岩間正男

    岩間正男君 そのメモを飲んだとかなんとかいうのは、それはこういう警察で、信用されない警察で、実際どんどんさっきの逮捕事実を見てもわかるような、こういう警察、そういう警察に渡して悪いようなものは抵抗を持つかもしれませんよ。そんなことまであなたたちは何かけしからぬというようにやる前に、自分のことを反省してみたらどうですか。これはあと人権擁護局に見ていただきたいと思うのですが、こういう証拠それ自身か何よりも問題ですよ。  私はお聞きしたいんですけれども指紋をとる。なるほど刑訴法のほうに被疑者指紋をとることができるとなっております。しかし、こういうことまでやって指紋をとるということはどの規定によってできるんですか。そういうことが書いてありますか。
  65. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 先生御承知のように、刑訴法第二百十八条の第二項には、「身体の拘束を受けている被疑者指紋若しくは足型を採取し、身長若しくは体重を測定し、又は写真を撮影するには、被疑者を裸にしない限り、前項の令状によることを要しない。」ということで、令状が要らないということがございます。さらに同法の第二百二十二条の第一項でございますが、これによりますと、第二百十八条によってする検証については百三十九条が準用になっております。そして、第百三十九条は、裁判所の行なう身体検査の直接強制の規定でございまして、これによりますと、「裁判所は、身体の検査を拒む者を過料に処し、又はこれに刑を科しても、その効果がないと認めるときは、そのまま、身体の検査を行うことができる。」という直接強制の規定がございます。これが準用になっておりますので、この規定に基づいて指紋採取を行なったわけでございます。
  66. 岩間正男

    岩間正男君 その法律の中には、傷を負わしたり、全治十日間のこういう傷を負わしてもいいと、こういうことが書いてありますか。
  67. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 当然そのようなことは書いてございません。
  68. 岩間正男

    岩間正男君 限度があるでしょう。しかも、この逮捕理由というのは、先ほど私が詳細に申し上げましたように、これは全く成立しないんですよ。これが成立したらたいへんなことですよ。日本の人権は守れません。こんなさっきからたくさんあげているように逮捕理由がどんどん変わっていく、こういうようなばかげたことで一体人権が守れると思っていますか。指紋をとるというような規定はある。当人は指紋をとられるような覚えはない。逮捕される覚えもないのですから、指紋なんかはとられる覚えもない。そういうことに対して拒否するのは当然です。しないほうがおかしい。人権を守る戦いじゃないですか。実際、不当逮捕、不当権力、これで殺されるかと思ったような恐怖の段階にまで落とされる。そうして足をうしろからつるし上げられ身体の自由を奪われ、そしてひざでもって耳のところをこづかれる。十人の警官があたりを取り巻いているそういう大勢の中で指紋をとられる。この指紋というものが、いま言った法律で守られるところの指紋というふうに考えられますか。こんなことまでして指紋をとっていいということがどのような法律に書かれているか。あなたたちは、その法の中で、当人を傷つけたりさかさづりをやったり、恐怖的な殺されるかと思ったというような恐怖的な立場まで落として指紋をとっていい、こういうようなことは、これはどの法律にも私はないと思いますが、どうですか。
  69. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 先生は、指紋をとる段階においてさかさづりを行なったりあるいは傷つけたりということを断定しておられるわけでございますけれども、私ども調査をいたしました限りにおいては、さような事実はないわけでございます。そしてまた、指紋をとることが当然の権限として規定してございますので、それに基づいてとったわけでございますので、その抵抗を排除するという行為は当然ある程度まで認められるはずでございます。もちろん、そのことによって傷つけるというようなことになってはこれは問題でございます。
  70. 岩間正男

    岩間正男君 傷つけないといったって、傷かついているのでしょう。ちゃんと医師の診断書までついております。うそですか。これは診断書なんかでっち上げだとあなたたちお考えでしょうか。写真もあります、全部。そういう客観的な事実がある。
  71. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) 岩間委員の御質問の前提にある、逮捕理由がない、だからそれに対する指紋をとられあるいは写真をとられるということに対する抵抗が労働者の当然の権利である、こういうお話でございますが、私どもはその点がまず意見の違いということを申し上げておきたいと思います。私どもは、威力業務妨害罪の容疑で逮捕いたしたのでございます。したがって、現行犯逮捕者に対する指紋採取と、こういうことを行なったのでございます。もちろん指紋採取の過程において傷をつけてまで指紋をとるなんということは、これはもう認められないことは当然でございます。しかし、その点については、事実の問題が、私どもとまた見解が異なる写真等があるようでございますが、その写真がはたして警察官が受傷さしたという証拠があるのかどうか、私どもとしてはそういう点はないと、こういう確信を持っておるのでございます。
  72. 岩間正男

    岩間正男君 そういうことになりますと、これはたいへんなことなんですね。当人がでっち上げて傷でも付けて、そうしてその傷を医者に行って診断書をつくってでっち上げたという前提に立てば、いまのような御答弁になりますね。私は最初からなにしたように、あなたはあくまでも公平な立場に立って下さいよと言ったって、電話一本で聞いたのか、それとも、実際係官十何人調べてそうしてやってみましたか。指揮監督する立場からいえば、あなたはそのくらいのなにをすべきだし、これは人権擁護局がやるでしょうが、それだけでなしに、あなたたちは自分自身でこういうようなことについて調べ——客観的な事実ですよ。傷を負っているそうしてほんとうにそれは痛み、それからいま言ったように医師の診断書というものもあるし、しかも、それは診断書どうりかもしれないけれども、それは警察で受けたのだということをどうして立証できるか、こういったようなことに立ったのでは、全く被疑者というものをほんとうにあなた罪人扱いにするという前提に立たなければいまのような御答弁というものはこれはできんじゃないか。少なくともいまのようなはっきりした証拠を私はあげているのですから。これの反証はないんです。ただ言葉で、経過を調べた、警察報告ではこうだった、だからこうだというような御答弁で一体この問題がはっきり明らかになると思いますか。そんなことじゃない。あなた方の答弁としたら、それはもっととにかく調べてみるという言葉が出なければならないと思ったのですが、もうまるでおかしいです。とにかく、刑訴法に指紋をとるということはある。被疑者だ。この被疑者についても、すでにこれは逮捕理由はないんだということを私は先ほど詳細にここであげたんですから。そういう不当逮捕しておいて、さらに今度は強制し、拷問して傷をつける、そういうことまで追い込んでおいて、当人は殺されるかと思ったというような恐怖の状態にまで追い込んでとった指紋しゃないか。そうして、先ほどの答弁の中ではっきりしたのでありますけれども、傷を負わせてまで指紋をとってはならぬということは、これは先ほど局長さんがここではっきり言明したわけです。これは私たちは確認しておきたい。いやしくも傷を負わせてまで指紋をとるというようなことはない、こういう被疑者に対して。これはもう確認しておいて下さい。そうしてその上に立って実際そういう事実があったかどうかということを今後あなたたちはもっともっと調べて下さい。私たちははっきりと証拠をあげているのですから、これを否定するに足るだけの証拠をあげて言ってもらわなければ、これはだれも了承しない。この点、いかがですか。
  73. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) お説のように、傷をつけてまで指紋をとっていいということはございません。したがってそういうことがあるとすれば、これはもうまことに申しわけないことだと考えますけれども、しかし、私どもはそういう事実はないと、こういうことを申し上げているのでございます。
  74. 岩間正男

    岩間正男君 ないとあなたがそう考えられるのは、それは一応しかたないわけですね、いまの段階でね。しかし、ないということが起こっているのが日本の現実なんです。それで、そのために人権が著しく侵犯されている。そうして、先ほどあげただけでも四百件をこえている。その中の最近は四〇%ぐらいはそういうなにが指摘されている。いまの非常に弱い法務省の中で最も日の当たらない人権擁護局——まあ局長さんを前にしてそういうことを言ってははなはだ気の毒でありますけれども、その擁護局においてさえも四〇%を指摘しなければならないそういう事態が起こっている。そこのところは、私はほんとうに、これはあなたたちもっと虚心たんかいにこの問題をやっぱり徹底的に警察立場としても追及しなければ話が合わぬ、そういうことを言っておるんです。この事実をくさいものにふたというようなことでやっていったら、たいへんなことになります。私は、このような戦前特高まがいの復活、これは二葉のうちにはっきりつまなければならぬという観点に立っておる、日本の民主主義のために。そういうふうに私はここでこの議論を展開しているのでありますから、その点にやはりあなたもあくまで立ってやっていただきたい。  さらに申し上げたいのですが、指紋をとり終わったあと、何かシャツをかけて出ていったらしいですね。それで、しばらくして、本人が起き上がって、そして部屋の入口に来たところか、大和署の荒川刑事課長が立っていた。それで、佐藤氏は「どうだ、おまえさん、あなたは私のこの顔が見られますか」、この言った。そうしたら、もう荒川刑事課長は目を伏せてしまった。そのとき、そばに背広を着てめがねをかけた三十五、六才くらいのもう一人の警官が立っていた。「それは刑訴法にきめられているのだ、刑訴法でできるのだ」、こういうことを言ったそうです。さらにまた、そのあと、荒川刑事課長に当人が会ったときに、「私はやらなかった、暴行してはいけないと思って見ていただけだ」、こういうような弁解の言葉を加えています。  一体、警察は自信を持っていたとこれで言えますか。非常に何か工合が悪いでしょう。それで、逮捕のなにを見ましても、これは警察の勾留期間が過ぎて、検事勾留の時間が全部過ぎないうちに、夜中ですか、夜中に釈放のなにが出たというのは、これはどういうことですか。この間の事情というのは、一体背後は何か。こういうことは、私たちは非常に疑問に思われている問題です。むろん当人はこのような暴行が行なわれたということを認めないうちは警察を出ないと言ってがんばったようであります。しかしいろいろ弁護士さんなんかの話によってこの次の朝八時ごろ出たようですけれども、私はどう考えましても、このような問題ですね、こういう問題について、ほんとうにやはりしっかりした態度で警察庁がこの問題を調べると同時に、人権擁護局か、あまり例のない事実ですから、いろいろの人権侵犯はあるけれども、このような事態というのは、あまり私たちは聞かないんです。そして、しかも、法をはるかに逸脱してけがをさせてまでこれをとっていいなどというそういうことは絶対にないんですね。そうすると、これに対して法務次官のもう一度決意を伺っておきたいと思います。
  75. 天埜良吉

    政府委員天埜良吉君) 先ほども申し上げましたが、本件についてはただいま慎重に調査をしている段階でございます。慎重に調査をいたしまして、なるべくすみやかに結論を出して、公平な裁定をしたいというふうに考えております。
  76. 岩間正男

    岩間正男君 次にお聞きしたいのですが、この葵という会社はどういう会社ですか。
  77. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 私どものほうで承知しているところでは、これは不動産の売買をやっている会社でございます。
  78. 岩間正男

    岩間正男君 葵というのは、いままでの経過はどうなんですか。三協紙器座間工場、これは最初は日本森林が経営しておった。そうして、それが日本森林、日亜森林事業所に、それから葵に渡った、こういう形になっているんですね。ところが、これは土地の売買なんですか。この会社というのは、こういうような製紙業の会社ではないわけですね。これはどういうんです。
  79. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) あらまし私からお答えして、詳細は課長からお答えします。  三協紙器は、当時の本州製紙の下請の工場でございます。これが一年数カ月で経営難になったわけでございますが、三協紙器から日本森林という会社が競落をいたしまして、その日本森林からただいまお話しの葵という会社が買った、こういう所有権関係の移転をいたしておるのでありますが、葵なるものは、ただいま申しましたように、不動産等の売買をやっている会社でございます。
  80. 岩間正男

    岩間正男君 その葵で人夫を雇ってきたというのですが、これはどのような人夫なんですか。
  81. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) この仮処分執行の際に、会社清算人が現在の所有者である葵に執行を委任したと、こういうことになっているわけであります。そこで、葵が残土業という職業があるそうですが、それをやっておる武蔵野興業といいましたか、そういった会社の重役を葵の社長が兼ねておるといったようなことで、その残土業の人夫を連れてきた、こういうことのように私は承知をいたしております。
  82. 岩間正男

    岩間正男君 この人夫たちは、手にいろいろな、バールですか、そういうものを持ってきたのですが、これはどうですか、この点は。
  83. 後藤信義

    説明員後藤信義君) これは、すでに申し上げましたように、正門——特に仮処分命令では正門だけになっておりますけれども、各門に、私も見てまいりましたが、相当がんじょうなバリケードがつくってございまして、先ほど読み上げましたものの中にもございましたが、相当がんじょうな木などを積み重ねまして、そしてそれの上にさらに有刺鉄線を巻きつけておるという状況で、その背後にまたダンボールを巻いたものなどを重ねておったようでございます。でありますので、そういうものを取り除くためにそういう器具が必要であったものと考えております。
  84. 岩間正男

    岩間正男君 これは何人くらいですか。
  85. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 私どものほうで調査といいますか、承知しております範囲では、百十四名でございます。
  86. 岩間正男

    岩間正男君 この人夫たちの所属は、これは警察では十分承知しておると思うのですが。その調査を進めておりますか。
  87. 後藤信義

    説明員後藤信義君) これは、先般私岩間先生のところで御説明をしたわけでございましたが、その際にもその話が出ましたが、私どものほうでは、特にこの人夫が同日何らかの犯罪でもありました場合におきましては、相当背後と申しますか、その人夫内容に立ち入って捜査を進めなければならぬわけでございますが、これは債権者側の当然の権利の行使でございまして、その権利の行使の一環としてどのような人をどこから持ってこようと、それは警察として公然と関与する範囲ではないと、かように存じておりますので、特に私のほうでは調査をいたしておりません。
  88. 岩間正男

    岩間正男君 これはやっぱり調べてほしいですね。なぜかというと、これは三十八年五月三日のときも三協紙器に押しかけた。で、これは武田組じゃないかと言われておる。それが、この前のときには大和署の二階ですか、二階に待機しておったというようなこういうことも明らかになっておる事実でしょう。当日入ってきた人夫達が手に手にバール、手かぎなどを持って飛び込んできている、こういうことなのですが、これは一体暴力団と関係ないというのですか。神奈川県警というのは非常に暴力団と関係の深いことは天下周知のことです。御承知ないですか。あるんですよ。河野建設大臣のこの前の自分のうちを焼かれたときに、テレビで放送をあんたたち聞かなかったですか。これはいけませんね、だめじゃないですか。全くこれは神奈川県警のやり方そのものについて公憤を発していた、河野さんは。そうしてまた、どうです丸山事件、この犯人はいまだにあがっていない。これは三光タクシーの組合委員長が川崎で殺された。これはいまだに犯人があがっていない。それから私たちの経験したのでは、昨年の六月の横須賀におけるアメリカ原子力潜水艦反対の統一行動のときに、わが党の野坂議長、その隣に私はすわっておりましたが、そこへ発煙筒を投げた。この犯罪者は即日釈放されている。こういうような問題というのは天下周知なんですよ。こういう点でもっとやはり警察庁がしっかりこういう問題を把握して、そうして悪名高いやり方を払拭するように努力すべきだ。  六百人の警官を動員したというんですが、一体だれの要請によって警官をこんなに大量に出すということになったんですか。
  89. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) 清算人のほうから、事故等があっても困るので、警察警備警戒してもらいたい、そういう要請が文書で来たことは事実でございます。しかし、私どもが六百人の警察官を出したというのは、そういった要請があったから出したというものでもないのでございます。要請も一つの理由ではございますけれども、やはり警察警察としての判断でこの程度の警察力を持っていかなければ不測の事態が起きた場合にどうにもならぬと、こういう判断で出したわけでございます。結果的にはなるほど当日は支援労組を入れて二百人程度で、六百人の警察官動員は数が多過ぎるという印象を私自身結果としては持っておりますが、実は、当日の情報では、支援労組を含めて千五百人の人たち工場に集結する、こういう情報があったわけでございます。したがって、警察としてはそれに対る警備警戒として六百人の警察官の動員を命じた、こういうことでございます。なお、先ほど神奈川警察のあり方について御意見がございましたが、神奈川警察の名誉のこともございますので、この際つけ加えてお答えをいたしておきたいと思いますが、もちろん神奈川警察にも落ち度もあるし、欠点もございます。しかしながら、おっしゃるように神奈川警察が暴力団と結びついておるといったような事実は、これはございません。この点はひとつはっきりいたしておきたいと思います。丸山事件は検挙をみておりません。これははなはだ遺憾なことではございますが、現在捜査をいたしております。また河野邸が焼き討ちにあったということ自身、これは警察の警護という観点から確かに私は落ち度があったと思いますけれども、これまたやむを得ない事件であって、このことがあるがゆえに暴力団と神奈川警察が結びついておったんだということは、これは絶対にないのでございます。発煙筒の事件につきましても、当日釈放しておるというお話でございますが、先般の国会でもお答えいたしましたように、この事件被疑者は十六歳の少年でございます。また、当日負傷もしておったというようなことで、調べが済んだあとで釈放して、これはそれぞれ手続に従ってきちんとした処理をいたしておるということでございます。
  90. 岩間正男

    岩間正男君 とにかく、百十四人の人夫がバールや手かぎを持って、そのうしろに六百人の警官が十数台の車に乗って押しかけてくる。そういうことが一体客観的に見てどういうふうに労働争議に影響するかということは言うまでもない、言わずして明らかです。警察は、自分の判断で、出動要請は関係なかったんですか。これは自分の判断で出たというんですか。執行吏が仮処分を行なうことになっているんですが、執行吏はその日来ていなかったのですね。執行吏が当然そういう要請をするとすれば出動を要請するということになると思うんですけれども、これはその要請もなかった。全部これは警察の判断でやった。しかし、その結果は非常にやっぱり一つの威圧を加えると、こういう結果になりませんか。要請は全然なかったのですか。この点どうもまだ不明朗ですから、明らかにしてもらいたい。
  91. 後藤信義

    説明員後藤信義君) ただいま局長からお話し申し上げましたように、清算人側のほうからトラブルが予想されるので警備の措置をお願いしたいということは要請してまいりました。ただ、しかし、それは一つの判断の材料になったということにすぎないということを局長が申し上げたのであります。当日、先ほど局長から申し上げましたように、私どものほうで察知いたしました情報によりますと、支援労組員を含めまして千五百名が工場を守るということでございましたし、それからまた、従来そのようなことは単なるデマではないかというようなお考えがあるいはあるかもしれませんけれども、すでに昨年の三月横浜地裁の裁判官が実地検証のために工場におもむかれたことがございますが、その際には組合側から二百名ばかりで、実地検証が結果的には、行なわれなかったのでございます。そういうような状況で実地検証を拒否しておる状況がございます。さらに、昨年の七月ごろには、競落不動産の引渡命令執行するために会社側が来るのではないかということで連日数百名の労組員を動員しておったという事実もございます。そのようなことでございましたので、あながちこの千五百名動員ということは架空のことではないと考えたために、相当多数の警察官を動員したのでございます。現に、当日私も現場に行って見ておりましたが、やはり支援労組員が相当に来るということは、当日現場警備隊員が配置されました後においてもそういった危惧の念を持って見ておりましたために、工場の周辺のみならず、駅前及び駅から工場に通ずる道路等の要所にも警察官を配置して、そのような支援労組員が集まりまして抵抗をするということを阻止しようという態勢をとっておったことに徴しましても、相当に警戒すべき状態にあったということであります。
  92. 岩間正男

    岩間正男君 あなたたちはそういう調べをされておる、警察の当局者から  一方的にしかし、あのときの町の人たちが人民がどう見ておるかということは、これは争えないことです。あなた方は警察権を執行する際にあたって世論というものはごまかすことのできない問題です。ここに座間の町長の声明書を持っておる。実はこれを見て、これが真実を語っている。この町長さんというのは、決して革新陣営だと考えられるような人でもない。ところが、あなたたちの行動がどういうふうに受け取られるか最もいい証拠だと思うので、いまの警察権の執行というのがどういうふうに人民に受け取られるかということを明らかにするために、もう一つは、今度の三協紙器の戦いというものはどういうふうに見られておるか、町民の代表者として二期つとめられた町長の声名書です。この声名書の一節を参考のために読み上げたい。あなたたちこういうところにもう少し真剣に世論を聞いてごらんなさい。神奈川県警というものはどういうふうに受け取られておるのか、そういうところを調べられて警察行政をやってごらんなさい。完全に人民から浮いてしまうんだ。  少し長くなりますけれども、  こういうふうに書いています。そして、そのあとにさらに、印象として「私は生まれて初めて前述のような仮処分執行を見ました。警察権力を見ました。洋子ちゃん事件警官とは比較にならない警官を見ました。」  こういうふうに書いてあります。これは私の声じゃない。あの当時の農民やそれから町民や、そしてそれを代表する二期をつとめている町長のやむにやまれぬ、黙っていられなくて町に発したところの声明書なんです。この声を聞いてください。「洋子ちゃん事件警官とは比較になならい警官を見ました。」というこの一句の痛烈な響きは一体どういうことを意味するか。数々の問題が未解決です。吉展ちゃん事件も迷宮入りです。それから続いた幾つかの問題があるのです。そういう問題のほうは全くもうたな上げにされて、そうして現実に必要もないところに大量の警官を遠方からまで集中して、そして白はち巻きのバールや手かぎを持った暴力団を先頭に、そのあとについていっている警察官の姿というものを人民はどういう目で見ているかということをはっきりあなた自身がつかむことができるかどうかというのが警察行政のかぎです。もう切実にこの町長が訴えている。これは町民に全部配ったらしいです。ほんとうにこういうような一つの声がはっきり町民の真の代表としてあるのだ。一体、このような警察権の介入というものが労働争議に対して役に立つのか立たないのか。そうして、これを一体人民がどういうふうに見ているのか。そうして、そこで行なわれた不当逮捕の問題、さらにさかさづりというまさにこれは戦後初めてだろうと思いますけれども、このような不祥事件が起こってきておる。これこそは、いま問題になっておる新暴力法を実際は国会に提出し無理やりに通そうとするところの一つの既成事実をつくりつつあるのではないかとさえ思われます。私は、この問題を取り上げているのは、決して簡単な気持からじゃありません。断じて再びあの日本帝国主義のあの時代を繰り返してはならぬ。その芽ばえが始まっている。こういうような中で、ここに法務大臣はおられないし、それから警察庁長官もおられないのでありますが、幸い俊敏な関係の諸君がおられますから、これはよく伝えてもらいたい。そうして、ほんとうにこの問題について善処してもらいたい。あんたたちがどういうふうに善処するかということは、これは今後の警察行政をどうするかという試金石です。こういうような具体的な事実が出てきているのに、これに対して、いまだに警察立場が間違いがなかったのだ、手抜かりはなかったのだ、法は確実に守られたのだというような形で通り抜けようとするならば、これはあなたたちはまさにそのような戦前警察の復活に手をかすものであると、こう言われてもしかたがないと思います。  私は、最後に、このような大きな一つの社会的影響を持つ、日本の民主主義をどうするかという問題にのっぴきならない重要な関係を持つところの問題について、どういうふうに善処されるか、法務次官と人権擁護局長の決意伺いたい。なお、警察庁長官にもよく伝えていただきたい。
  93. 天埜良吉

    政府委員天埜良吉君) 前にも申しましたように、人権擁護ということについてはきわめて重大なるものを痛感をいたしておりますので、十分に調査をして早く結論を出したいというふうに考えております。  なお、大臣にはよく伝えておきます。
  94. 鈴木信次郎

    政府委員鈴木信次郎君) ただいま政務次官からお答えいたしましたとおり、人権擁護立場から十分真相を調査いたしまして、そうして適当な結論を出したいと、かように考えております。
  95. 中山福藏

    委員長中山福藏君) ちょっと委員長から確かめておきたいことがございます、人権擁護局長に。あなたは人権擁護についてふだんどういう行動を局としてはとっておられますか、ちょっとそれだけをお聞かせを願いたいと思います。
  96. 鈴木信次郎

    政府委員鈴木信次郎君) そうおっしゃいましても、抽象的で、ちょっとどういうふうにお答えしていいかわかりませんが、人権侵犯事件の端緒、これはいろいろありまして、本人——被害者の申告による場合が一番多いわけでありますけれども、そのほかに、たとえば新聞記事とかあるいはラジオ、テレビの放送等一般、その他マスコミあるいはこの国会における御質問もその一つになろうかと思いますが、積極的にそういった事実がありましたならはこれを取り上げていく。特に、表面化したものよりも、まだ表面に出るべくして眠っている事件が日本にはたくさんあるのじゃないか、むしろそのほうに重点を置きまして、従来以上にほんとうの侵犯事件を拾い上げまして、これに対しまして人権擁護局といたしましてできる限りの努力をする、これが必要であろうと、こういうふうに考えております。  具体的な方法といたしましては、これはもう制度化しておりますが、人権擁護局のほかに、全国の法務局、地方法務局の人権擁護部あるいは人権擁護課、さらにそれの支局という行政組織による方法。それからもう一つは、全国八千九百名近くの人権擁護委員、これがそれぞれの市町村から推薦を受けまして法務大臣によって人権擁護委員に任命されております。これらの方々が直接民衆に接しまして、相談しやすいと申しますか、何かあればすぐそこに行って相談をする。そうして、そのうち人権を侵犯するものがあれば、とりあえずその委員のところでできるだけの処置をする。委員個人でどうしてもできないというふうなものは、直ちに、先ほど申しました人権擁護局、法務局、地方法務局の人権擁護課、そういう行政組織のほうに連絡をしていただきまして組織をもってこれを処置していく。  まとめて申しますと、できるだけ眠っておる事件まで積極的にやっていく必要があるので、その方法としてはいま申しましたような二つの方法がある、かように考えておる次第でございます。
  97. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) 岩間議員のお立場からする御意見はよくわかりました。長官にも御報告を申し上げておきたいと、こう考えております。  もちろん、私どもは正しい世論の支持なくしては警察運営はできませんので、十分そういう点は配意をして警察の運営ということに当たっておるつもりでございますし、将来もそのつもりでやってまいりたいと、こう思っております。  ただ、本件に関して座間町の町長がいかなるお立場の方かは私はよく存じませんけれども、当日も現場においでになって戦いはこれからであると、こういう激励もしておられたようでありますが、二年有半の間における座間町長の行動というものは私どもも相当なる関心を持って見ておるのが事実でございます。
  98. 中山福藏

    委員長中山福藏君) ほかに御質疑はございませんようですから、本日はこの程度をもって散会いたします。    午後零時二十三分散会