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1964-02-13 第46回国会 参議院 法務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月十三日(木曜日)    午前十時八分開会    ———————————  出席者は左のとおり。    委員長     中山 福藏君    理事            後藤 義隆君            迫水 久常君            稲葉 誠一君            和泉  覚君    委員            植木 光教君            大谷 贇雄君            鈴木 一司君            坪山 徳弥君            亀田 得治君            山高しげり君            岩間 正男君   政府委員    警察庁刑事局長 日原 正雄君    法務政務次官  天埜 良吉君    法務省民事局長 平賀 健太君    法務省刑事局長 竹内 壽平君    自治省選挙局長 長野 士郎君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    ———————————   本日の会議に付した案件 ○不動産登記法の一部を改正する法律  案(内閣提出) ○検察及び裁判運営等に関する調査  (選挙違反事件に関する件)    ———————————
  2. 中山福藏

    委員長中山福藏君) これより法務委員会を開会いたします。  本日は、まず、不動産登記法の一部を改正する法律案議題とし、提案理由説明を聴取いたします。天埜法務政務次官
  3. 天埜良吉

    政府委員天埜良吉君) ただいま議題となりました不動産登記法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由説明いたします。  この法律案の趣旨は、不動産登記事務の適正迅速な処理をはかるために、不動産登記法の一部を改正して登記手続合理化及び簡素化することにあるのでありますが、そのおもな内容を申し上げますと、  第一点は、抵当権その他の担保権登記手続合理化及び簡素化することであります。しかして、  その第一は、抵当権その他の担保権登記において現在登記事項とされております元本及び利息に関する弁済期の定めの登記は、その実益がきわめて乏しいのにかかわらず、申請人及び登記所に多大の煩瑣な手数を要する結果となっておりますので、これを廃止しようとするものであります。  その第二は、共同担保関係を明確にし、共同担保に関する登記手続合理化及び簡素化するために、共同担保については、すべて共同担保目録を設け、この目録共同担保関係登記に利用しようとするものであります。  第二点は、不動産合併登記手続簡素化するとともに、合併後の不動産所有権登記を簡明にすることであります。  現在、不動産合併登記においては、合併前の不動産所有権登記を多数移記することとなっておりますが、これはきわめて煩瑣な手数を要するのみならず、合併後の不動産所有権登記としてはかえって簡明を欠きますので、合併登記をするときに、登記官吏合併後の不動産について単一の所有権登記をすることとして、合併後の不動産所有権登記を簡明にすると同時に、合併登記手続簡素化しようとするものであります。  第三点は、以上に述べました以外の点について登記手続合理化及び簡素化をはかることであります。しかして、  その第一は、現在保証書を提出して登記申請がありました場合には、すべて登記義務者にその登記申請の間違いのないことを確かめるために事前通知をしているのでありますが、従来の実績に照らし、この事前通知所有権に関する登記及び不動産合併登記申請の場合にのみすることとしようとするものであります。  その第二は、合併後の不動産に関する所有権登記登記済み証を簡略化し、合併後の不動産に関する権利登記手続簡素化しようとするものであります。  その第三は、登記申請書に添付される登記義務者権利に関する登記済み証または保証書についての登記済み手続簡素化しようとするものであります。  その第四は、未登記不動産についての判決もしくは収用による所有権の保存の登記または処分の制限登記申請書または嘱託書にも、当該不動産を特定し明確にするために、土地の所在図または建物の図面等を添付することとしようとするものであります。  第四点は、以上の改正に伴い所要経過措置等を定めるとともに、担保附社債信託法及び立木に関する法律所要歴理をすることであります。  以上がこの法律案の概要であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決されんことを希望いたします。
  4. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 以上で説明は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ります。    ———————————
  5. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 次に、検察及び裁判運営等に関する調査議題とし、選挙違反事件に関する件につき質疑を行ないます。  速記をとめて。   〔速記中止
  6. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 速記を起こして。
  7. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 選挙の実際に関係の中でいろんな問題がたくさんあると思うのですが、その一つに、法定費用がどういうふうな根拠でいま算出されるのか、その点からひとつ説明を願いたいと思うわけです。
  8. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 法定費用につきましては、一昨年の五月に公職選挙法改正になりました際に、従来は有権者数に応ずるような考え方をとっておりましたものを、固定額と、それから有権者数に応ずる考え方をとりまして、そして法定費用の額も実態に合うようにということで相当大幅に引き上げられたわけでございます。その一昨年五月に改正になりました際に、その当時、現在の法律の中で許されておりますところの経費、たとえば、選挙事務所において必要な経費でありますとか、街頭演説演説会等のそういう言論による選挙運動に要する経費でありますとか、文書図画に要する経費というものを、その当時の状況ではございますが、一応これくらいかかるという数字を出しまして、そしてその半額を固定額ということで、現在大体衆議院議員選挙の場合には百二十万円、参議院全国区につきましては六百五十万円という額になっておりますが、百二十万円を衆議院議員の場合には固定額といたしまして、その上にその当時の有権者数によりましてその実際必要だと思われる額を頭割りをいたしまして、そしていまの公職選挙法で定めておりますところの十円五十銭というような額を算出いたしましてできておるような形でございます。先般行なわれました衆議院議員の総選挙の結果について、その場合の法定費用平均額を見ますと、そういうことで算出いたしまして、ですから選挙区によって違うわけでございますが、平均いたしますと、大体二百五十余万円ぐらいに相なる、こういうことに相なっておるわけでございます。
  9. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 最初は有権者数に応じて法定費用算出していたわけですか。それはいつごろまでで、それがなぜいけないというので別な算出方法に変わってきたのでしょうか、そこの理論的な根拠がはっきりしないのですが。
  10. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 一昨年の五月の公職選挙法改正までは有権者数に応じて算出する方法でいっておったわけでございますが、一昨年の五月の公職選挙法の大改正の際に、法定費用がいままでは実情を無視するように低いというようなことがございまして、そしてそれを実態に合うようにするということから増加をすることと相なったわけでございますが、その際に、有権者数に応じて出すといっても、どうしても基本的に一定の額というものがかかる。選挙区の大小ということを除いてみてもそういう要素はあるわけでございますので、そういうようなことから有権者数に応ずるということが必ずしも正しくないということでそういう考え方が出てきたわけでございまして、その当時の選挙制度審議会でこういう考え方が採用されたということでございます。
  11. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 有権者数に応ずるのが考え方が必ずしも正しくないというのですが、それは相当長い間そういう形でずっとやっきたわけですか。
  12. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) これは、衆議院議員選挙法におきまして法定費用考え方が出てきたときからそういう考え方でやってきておるというふうに記憶しております。
  13. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 何年ぐらいですか。
  14. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) あの普通選挙と申しますか、普選実施と大体同時ごろじゃないかと思っております。四十年ぐらいたっておったように思います。
  15. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それが実態に合わなくなったというのは、実態に合わないというのは額の問題で、単価の問題で、実態に合わないというなら合わないこともわかると思うのですが、そうでなくて、固定額有権者数との両方を考えるという行き方になったというのが、どうもそこのところの変化の根拠がわからないのですが、しかし、それはまあいいです。きょうの問題ではありませんから、いいですが、そこで、固定額算出を百二十万ぐらいというのですけれども、それはきょうでなくていいですから、もう少し表か何かで数字が出てきた根拠を明らかにしていただきたい。ちょっと、いまあなたの言われたのでは明らかでない。何と何をどういうふうにやって百二十万円という数字が出てきたのですか。百二十万円という数字は動かないのですか、固定額は。
  16. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) この法定選挙費用につきましては、公職選挙法百九十四条及び公職選挙法施行令の百二十七条できめてありますので、いま申し上げました固定額のほうは、動かないといいますか、これは改正するまでは動かない非常に厳格な考え方になっているわけでございます。
  17. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 有権者数単価をかけるわけでしょう。一人十円五十銭ですかをかける。この十円五十銭というのはどこから出てきたんですか。
  18. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 先ほど申し上げましたように、この制定されました当時の基礎になりますのは、その前の選挙制度審議会答申でございますが、選挙制度審議会答申におきまして、法定選挙費用というものを一定のところに引き上げて守られるかっこうにすべきだという考え方から、その当時の法定選挙費用というものが不当に実情に無視しているようなかっこうだというので、実額実態に合わせるように上げますと同時に、いま申し上げましたようなことが出たわけでございます。したがいまして、これは一昨年の五月ごろを一応の基準といたしまして、その当時これならやれるという平均的な額というものを一応算出されまして、そうしてそれを、固定額と、平均有権者数と申しますか全国平均的な数字に結果において割りがえしたようなかっこうになっている。その当時の考え方で大体二百四十万円くらいだったというふうにいま私記憶しております。したがって、百二十万円は固定額にいたしまして、そうして平均有権者数にその当時の有権者数割りがえしまして、そうして有権者数に応ずる一人当たりの額かいまの衆議院議員選挙におきましては、公職選挙法施行令百二十七条に書いておりますように、十円五十銭という数字をはじき出しまして、逆算に実際はなっているわけでございますが、そうして、選挙区の大小有権者数に応ずる考え方をそこで取り入れようということになり、同時に、選挙そのものにつきましては、どこで選挙をやっても一定の額は要るのだからというのでそれを半額と考えたというふうに思われるわけでございます。したがいまして、これにつきましては、現在ではもうすでにこれが現状に即しているかどうかとい議論は常にあるわけでございますが、額がそうなっているとすればこれは考えなければいけないということになりますし、私どものほうでもできるだけ常時こういうものについては検討しているというようなかっこうになっております。
  19. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 公職選挙特別委員会じゃないから、そういう点はあまりこまかく聞きませんけれども、ちょっといまの点なんかは、どうも全体として納得できないんですよ。どうもよくわからぬ、理論的根拠なり何なりが。いずれにしても、一つの例をとると、たとえば東京の何区の選挙区の衆議院でも参議院でもいいが、幾らになるんですか、法定費用は。東京参議院地方区幾らになりますか。
  20. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 昭和三十七年の七月の参議院議員選挙のときの法定選挙費用でございますが、それよりいま新らしいものを計算しておりませんが、その場合には、参議院地方区で、東京の場合六百三十万円。これは全国最高でございます。そうして、最低は鳥取県の二百七十万円でございます。全国平均では、その当時三百九十六万円ということに相なっております。  それから衆議院でございますが、この前の昨年の十一月の総選挙の場合におきまして、東京一区が三百九十五万五千円、東京二区が……
  21. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 もういいですよ。
  22. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) そういうことでございまして、全国平均が二百五十三万円でございまして、最高兵庫県一区の四百十三万八千円、最低が同じく兵庫県の五区 二百二万六千円、こういうことになっております。
  23. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 参議院全国区は幾くらですか、六百五十万とありますが。
  24. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 参議院全国区は、公職選挙法施行令の百二十七条できめております。六百五十万円、こういうことに相なっております。
  25. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 参議院全国区は、そうするとスライドしないのですか。有権者の数がどうとかいう計算ではないのですか。東京地方区が六百三十万、参議院全国区は六百五十万というのは、何だか金額的に合わないような気がする。
  26. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) その当時の考え方といたしまして、現在の公職選挙法の百九十四条でございますが、「公職候補者一人につき、参議院全国選出議員選挙にあっては政令で定める額」というふうに規定がしてありまして、これは有権者の多寡に応ずることはできませんから、全国基準でございますので、定額という考え方をその当時とられたと思います。そうして六百五十万ということにきめられたことと思っております。
  27. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それで、法定費用に入るものと入らないものがあるわけですね、選挙運動関係するものでも。選挙運動に関連して法定費用に入らないものは何と何があるのですか。
  28. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 法定費用に入る入らないといいますか、むしろ選挙に際しましての選挙運動に要する経費について収支報告をする責任出納責任者が持っているわけであります。そして、そういう考え方から選挙運動に関する支出と考えられるものと考えられないものというものを法律が振り分けておるわけでございます。それが選挙法の百九十七条でございまして、六項目ばかりあるわけでございます。  一つは、立候補準備のために要した経費候補者なり出納責任者意思を通じて支出するもの以外のものといいますから、逆にいえば意思を通じないで支出したものというふうになっております。  それから二番目は、立候補届け出があった後におきますところの公職候補者あるいは出納費任者意思を通じないで出した経費というのは、これはいろいろなものが含まれるわけでございまして、候補者出納責任者意思を通じないで文書を配って出すとか、あるいはほかにいろいろな活動をすることがかりにありますと、違法なものも合法なものもございましょうが、そういうものが一切意思を通じないで出したものが含まれるということになるわけでございます。  それかな三番目は、公職候補者が乗用する船とか車馬等のために要した経費、これは、選挙運動用というよりは、むしろ公職候補者についてはそういう足というか、そういう費用はその中に入らないということに考えております。  それから四番目に、選挙期日後におきまして選挙運動残務整理のために要した経費というものもこれは入らないわけでございます。  五番目は、選挙運動に関し支払う国または地方公共団体の租税とか手数料に該当する公租公課といったようなものでございます。  それから六番目に、政党その他政治団体といいますか、それが、ただいまの公職選挙法におきましては、特定の候補者のための選挙運動というものをあわせて行なうことができるような余地が認められております。それについて要した経費というものも入らないわけでございます。  それから同じ条文の二項でございますが、選挙運動用自動車選挙運動用船舶、これに要した経費も入らないわけでございます。  これだけが法定選挙費用支出としては考えないでよろしいといいますか、そういう考え方に立っておるわけでありますので、それ以外の選挙運動に要します経費は、どういう性質のものでありましても入る。一応選挙運動に要した経費として入りますし、届け出義務がある、こういうことになっておると考えております。
  29. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そこで、法定費用が、いま参議院全国区で六百五十万、東京で六百三十万、衆議院幾らと出てきたわけですが、その法定費用の満ぱいというか、満ぱいまで、満度まで選挙違反にならないで合法的な支出でずっと埋めていくというような場合に、どういうふうなもので全部埋めていけるのですか。ちょっと質問の意味がわからないかと思いいますが、私どもが実際選挙をやってみて、法定費用が出ておるでしょう、こういう数字が。そうすると、選挙管理委員会届け出るわけです。そのときに、合法的な支出というものを選んでいっても、とてもこんな金額にならないわけですよ、実際の例はそうなんですよ。選挙違反にならないで法定費用を満たすには、一体どういう費用をどのくらい使えることになるのですか。
  30. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 私ども実際にやりました経験がありませんから、私より先生のほうがよく御存じのことと思いますが、法定選挙費用といいますのは最高額でございますから、そこまで満つる必要はもちろんないわけでございます。それ以下で選挙ができることを、むしろなるべく少ない選挙費用でできることを法律としては望んでおるといいますか、予定をしておると思います。どういう計画でやったらそこまで満ちてしまうかということについては私はよくわかりませんが、結局、先ほど申し上げましたように、選挙事務所を設けるための経費とか、立候補準備のための支出でありますとか、それから演説会を開催する経費であるとか、許されておる文書図画経費であるとか、それから労務者を雇いますから、そういうものの経費でありますとか、それからその労務者なり選挙運動員——労務者日当でございますが、選挙運動員がたとえばいろいろな会場の交渉とかいろいろなことのために出かけましたり打ち合わせをしたりいたします実費弁償とか旅費とか食糧費だとかでございます。それから宿屋に泊まれば宿泊費があるわけでございます。そういうものは一切この中に入ってくる。電話でいろいろ連絡する電話料出納責任者を通じて出してやります場合は当然入ってくるわけでございます。  立候補準備から選挙運動が許されます間において支出されました経費支出すべてが入っておるということを申し上げるよりほかないわけでございます。
  31. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、これはどうも法定費用まで適法ないわゆる選挙運動支出を出していっても、この法定費用になかなかならないですよ、現実問題として。どうもそこら辺のところがよくわからないのですがね。  そこで、いまあなたの言われたようなことだと、適法に認められておるのは何と何があるのであって、いま言った経費、たとえば運動員だって制限されておるのじゃないのですか。労務者だって制限されておるのじゃないのですか。
  32. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 運動員につきましては、別に制限があるわけではございません。ただ、選挙運動報酬を受けて従事する者につきましては一定制限がございます。運動員ということになりますか、運動員とは厳密には言えないかもしれませんが、いわゆる労務者と申しますか、労務者にも制限はないわけでございます。したがって、労務者なんかの雇い入れの数の限界は、結局、いまの法定選挙費用という総ワク範囲、総ワクをこえるかこえないかということが限界になるわけでございます。
  33. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、労務者は、何人でも法定費用範囲ならば雇ってもかまわないわけですか。
  34. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 労務者というものは、日当基本額が七百円で、その他、超勤手当というものはその五割以内ということでございますから、三百五十円でございますか、千五十円の額があるわけでございます。これはかなり実態に近いくらいなものじゃないかと思いますが、そこで、そういう額の範囲内で労務者を雇うと、労務者と申しますものは御承知のように単なる労務提供者でございますから、それほど雇ったって用事がないじゃないかということがあるかもしれませんが、法制的には何人でなければいかんということは言っておりません。  それから選挙事務に従事する人たち報酬が得られる人がおられるわけでございますが、この部分につきましては、その人数制限があるわけでございまして、これは衆議院議員の場合でありますと、一日三十人ということになっておるわけで、これは、報酬を払い得る選挙事務従事者というものでございますから、そういう限界をこしらえておるわけでございます。本来、選挙事務従事者には報酬は払わないものというたてまえ上、報酬を払いました場合にそういう限界を設けておるわけでございます。そこは労務者とは選挙運動を推進することにおきまして作用が少し違う、単純な労務提供者というわけにはいかんじゃないかということだろうと思いますが、労務者につきましては、法定費用範囲であれば法律で禁止してないからかまわないと、こう言わざるを得ないと思います。
  35. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 法律で禁じていないからそう言わざるを得ないというのですけれども、そうすると、選挙事務所から金を各地の責任者なら責任者に渡しますね。その場合、これは労務者を雇うための費用だといって渡した場合には、選挙違反にはならないわけですね。
  36. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 選挙運動のための経費は、出納責任者が現実に支出するということになっております。そこで、それ以外の人が支出いたします場合には、出納責任者承諾を得たものしか支払えないということになっております。そして、出納責任者承諾と申しますものは、承諾する人ももちろんでございますが、支出する項目についても、特定した指示があるべきだということになっておりますから、労務者を雇う金だからというそういう概括的な考え方ということになりますと、そこに多少問題がありはしないかという気がいたします。それと同時に、今度は、はたして労務者を雇うために使ったのか使ってないのかということがなお問題として出てくる場合があるだろうという気がいたすわけでございます。あまり概括的に出納責任者以外の者に選挙費用を渡して使わせる、こういうことを避けるという考え方が貫かれておるというふうに考えております。
  37. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 出納責任者が、実際運動する人が地区にいるわけですよね、その人にこれはその日に労務者を何人雇ってくれと労務債だといって金を渡せば、選挙違反にならないのじゃないですか。
  38. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) いま仰せられましたように、具体的な地区人数がはっきりしておりまして、そうしてそれに応じて日当七百円とか、超勤その半分とかいうものの範囲内で渡されるということ自身は別に違反にはならないと思います。
  39. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それから、実際に運動する人が、あちこちかけずり回ったり、あるいはガソリンを使ったりいろいろするわけで、金を立てかえることがあるわけでしょう。そういう場合、立てかえたやつをもらってはいけないのですか。
  40. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) お話運動員のほうの話だと思いますが、それは一実際に必要な、お話のように車馬賃でございますとか、食費とか、宿泊費用というのは一これは当然自分で立てかえた場合はあとで弁償してもらえるわけでございます。それが実費弁償という法律規定があるゆえんだろうと思います。ただ、法定選挙費用については非常にむずかしいと申してはあれでございますけれども規定がございまして、たとえば宿泊費については千五百円以内ということになっておりますから、本人がかりに二千円かかった宿屋へ泊まりましても、もらうのは千五百円しか返してもらえない。そうして、五百円分は、結局、やかましくいえば、本人が出納責任者のほうへ寄付をして五百円分多く使ったという、寄付して支出が多くなったと、こういうたてまえになってくると思うのでございます。したがって、幾らかかりましても千五百円でございますし、弁当につきましては、一食について百五十円以上は幾ら高い食事をとられてももらえない。そういうことには相なりますが、弁償してもらえることはこれは当然でございます。
  41. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そこで、法務省の刑事局長でも、警察庁の刑事局長でも、どっちでもいいんですが、われと思わん者は答えてほしいのですけれども、いま言ったような形で出納責任者から金が渡りますね。責任者なら責任者に、何人労務者を雇うからそれで払ってくれと渡すとか、あるいは立てかえ分がいろいろあるから渡すとか、こういうふうなことをすると、現在の段階ではもうそれはすべてが選挙違反の形になっちゃっているのじゃないですか。実際そうですよね。投票取りまとめの金としてそういう金を渡したという形にされていますね。投票取りまとめというのはどういうのですか、ちょっとわからぬのですがね。どうですか、法務省のほうで。
  42. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) これは事実認定の問題だと思うのでございますが、どういう場合でございましてもそれが報酬性を持っておるというふうに見られますと、名義は日当とか選挙法にいわれる正式な名義の実費であるというふうなことをいいましても、口で言っただけじゃだめなんで、ほんとうに実費か報酬も含まれておるかということがやはり疑問になる。疑問になれば、その容疑で取り調べを受けるということは、これはまあやむを得ない成り行きじゃないかというふうに思うのでございます。
  43. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だから、前提として、選挙事務所から金が来れば、それはもう投票取りまとめのためだとか、あるいは運動報酬として金が行ったのだという、こういう前提に立っているわけですか。ただ、それをくつがえして、いや実際は労務者のあれとしてもらったとか、立てかえの実費弁償だとか、そういうものの立証がつかなければだめなんだという考え方に立っているのですか。
  44. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) それは、そうじゃなくて、その逆だと思います。何でも金が出ればもうすでにこれは報酬だという前提に立って、その弁解が成り立てば許してやるが、そうでなければ違反だ、こういうのじゃなくて、稲葉先生もよく御承知のように、嫌疑がかかるには嫌疑がかかる相当な理由がなければむやみやたらに取り調べを始めるなんということはあり得ませんし、また、現在もやっていないというふうに思います。
  45. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その逆だということになれば、検察官なりのほうでそれが投票取まとめであり、運動報酬であるということのしっかりとした立証責任が当然あるわけです。現実にそういうふうにはいっていないんじゃないですか。とにかく金が行ったらとっつかまえてこれは投票取りまとめのための金だというふうにやって自白を求めているというのが現実じゃないですか。これはここにおられる議員の方もいろいろな形で御存じだろうと思いますけれども、それは実際はそうです。弁解なんか全然聞かない状態がそこに行なわれておる。これは具体的な例がありますから、きょうここではあれしませんけれども一投票取りまとめというのはどういうことですか。投票取りまとめとして渡したというふうに起訴状でも逮捕状でもほとんど印刷してあります。定型的にそうなっている。投票取りまとめというのは一体どういうことなんですか。起訴状にそういうふうに書いてあるでしょう、逮捕状でも起訴状でも全部。投票取りまとめのために金を渡したのだと、こういっております、みんな。投票取りまとめというのは何なんですか。
  46. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 実質は選挙運動だと思うのでございますが、選挙運動報酬の金だと思いますが、投票取りまとめは、そのとおり一ある特定の人に頼んでその人に何票かの投票を取りまとめてもらう、その運動をしてもらう報酬として金が出ている。そういう性質の金だという意味だと思います。
  47. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 投票取りまとめ並びに選挙運動報酬としてというふうに書いているんじゃないですか、いつでも。選挙運動報酬と投票取りまとめの金というのは別個に考えているんじゃないですか。
  48. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) いつでもそういうふうに書いているというお言葉でございますが、事実投票取りまとめだけの意味で金を渡しておる場合もありましょうし、あるいは投票取りまとめを頼みかつそれをやってくれるその人に対する報酬、両方の意味があるときには投票取りまとめ並びに報酬として、こういうふうに書かざるを得ないんじゃないか。これは事実をそう見たという意味だと思います。
  49. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 投票取りまとめというのは、そうすると一種の運動報酬というふうに見ているわけですか。買収資金を渡したという形になるのですか。どういうふうなんですか。
  50. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) それは、運動報酬じゃなくて、投票買収という意味だと思います。
  51. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 投票買収だとなると、現実に投票の買収をしていなければあれじゃないですか、ただ渡して受取ったというだけで、投票取りまとめの報酬として渡したかどうかということはなかなか認定できにくい。その金が現実にどういうふうに行ったということだけで、何といいますか、しっかり調べられなければわからないんじゃないですか。
  52. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) これは、先ほど申しましたように事実認定の問題でございますから、事案はそれは千差万別だと思いますが、投票取りまとめの場合に、現実に個々の選挙人に投票してもらえれば百円上げるとか、現に百円をやって投票を頼むとか、個々の投票買収もございましょうし、一々金をやらないけれども平素その人には頼めば聞いてもらえるような事情があったり、頼む頼むで何人かを頼んで私の顔で何票は大体いいというようなことでそれの運動をやってもらったという報酬で今度は金をその人に幾か出す、こういったのがよく実例にあるように思いますが、そういう個々の事例によりまして投票取りまとめ並びに運動報酬としてというような書き方に起訴状がなっているものもありますし、それは事情によりましていろいろな書き方があると思いしますが、事実はそういう事実だという立場でいろいろ書いておると思います。
  53. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 運動員にはいわゆる何と言いますか報酬を出さないという前提に立っているわけですか。これは選挙局長どうなんですか、出さないという建前で選挙法ができているのですか。
  54. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 運動員にはお話のように報酬を出さないという建前でできております。実費弁償だけはする、こういう考え方だと思います。
  55. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 労務者は何人でもいいということはわかりましたが、そうすると、労務者選挙事務所事務に従事していて報酬を出していい者とそれから報酬を出せない運動員と、こう三種類あるわけですか。
  56. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) お話のとおりだと思います。
  57. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、最後の報酬を出せない運動員ではあるけれども、それに対しては実費弁償はできる。それで、その運動員というものは人数制限はないのですか。
  58. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 実費弁償できます運動員につきましては、人数制限はございません。
  59. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、選挙事務所から各地区のいわゆる責任者みたいなものに金が行くわけですね、よく選挙の例で。金が行っただけじゃ、それが選挙違反になるのかならないのかわからないですね。選挙違反になる金が含まれている場合もあるし、いま言ったように選挙違反にならない金が含まれている場合もある、こういうことになるわけですね、選挙局長のお話だと。
  60. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 金の行き方でございますけれども、ぼうっとお金が使途を特定しないで——要するに、出納責任者以外の者が支払うというためには、支払われるものの内容とそれから支払うべき者がだれが支払うかという文書の承諸書が要するわけで、出納責任者承諾書が要るわけですが、その意味では、ただ金が行くわけではなくて、金の出し方というものが特定され、だれが払うということが明確であるというような行き方が必要になってくる。したがいまして現実の問題といたしましては、先ほどお話のように、合法的なものと非合法のお金になる。使途が最後の使い方のところで分かれていくかっこうでございますから、両方含まれているということに結果的にはなる場合があると思います。
  61. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 各地区で実際にその選挙運動をやってみなければ、労務者を現実に何人使ったか、あるいは運動員を何人使ったかとか、それからあるいは事務に従事していて報酬を払っていい者を何人使ったかということは、ある程度選挙運動が進行しなくちゃわからないのじゃないですか。進行してそれがわかってから金を渡したというのでは、実際の選挙運動というのはできないのじゃないですか。選挙は終わってしまうのじゃないですか。その前にある程度の使途を概括的に指示するなりして渡さなければ、選挙運動なんていうのはできっこないじゃないですか。概括的に指示して渡したら選挙違反だというのは、そんなのはおかしいですよ。そう思わないですか。そんなことじゃ選挙運動というものはできないですよ。
  62. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 労務者につきましても、まあそういう意味で、労務者に要する報酬労務者何人を雇うための報酬ということがはっきりしたお金の渡し方をすべきだということを法律ははっきり厳格に要求しているものと私どもは考えます。それから選挙運動のために従事する者で報酬のもらえる人がございますが、これにつきましても、何人そういう人を置くかということにつきましてはあらかじめ選挙管理委員会届け出た人に限るということに法律ははっきりしておるわけでございますから、使ったあとでどうだと、こういうわけじゃなくて、使う前に、それは下話はあるかもしれませんが、はっきり人を特定して、しかもその届け出文書でやれというようなことで、まあきびしすぎるということではまさにそういう感じをいたすわけでございますが、むしろ非常に厳格にそこのところはできておるわけでございます。その届け出につきましても、氏名、住所、年齢、性別、使用する期間をきちっときまった用紙で届け出をしたあとでなければ使えない、こういうことに相なっておるので、やっておいてもらってあと払いというようなことのたてまえになっていないと思います。
  63. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちょっと関連して。これはわれわれもいま稲葉君から質問しておる点で非常に迷惑を受けている問題があるわけです。それは、おおよそ報酬をもらったりして選挙運動をやるという立場でないことの明らかな人に実際は若干金が出ているわけですね。これは報酬とかそういう意味じゃないのです、明らかに。しかし、そういうものがともかく何かまとめて出ておるというふうなことで買収という範疇に全部入れてそして処理しているものがたくさんある。もっと具体的にいいますと、労働組合等が人を動員する場合に、いままで日当をちゃんと出すわけですね。職場を休んで、したがってそれだけ賃金が減るわけですから、いろんな意味でそういう損害を弁償するという立場で出されるわけです。そういう金を、これをまとめると相当な金額になりますわね、何千円というふうに。それを買収の範疇に入れて、起訴状の書き方はいろいろですが、やっているのがたくさん今度出ておるわけですね。これは非常に筋が通らぬわけですね。いやしくも買収という以上は、票を動かすというやはり要素がそこに当然なければならぬと思う。そんな土のは全然ないわけですね、そういう観念は関係者の間では。いやそれによって間接的に全体の票に響いてくるのだといったようなそういう広い解釈はできないでしょう。おそらく買収というのはそれを入れてきているわけですね。私が検察庁でそういう問題で交渉した場合に、それでもともかく出してならぬ費用だから結局買収になるのだというふうな結論ですね。しかし、そうじゃない。いまあなたのおっしゃっておったように、出し方のルートの違反と見るべきだと思うんです。たとえば出納責任者文書による事前承諾書が要るとか、そういったようなものがないままに出ているというなら、その点の違法なんだな。その点の違法とぼくは見るべきじゃないかと思う。これはどういうふうに解釈しますか。実際のそれは実費弁償なんですから、その人にとっては。出すほうも受け取るほうもそういう意味なんです。ただ出し方は間違っているのだ、確かに。出し方が間遠ったからといって金の性格が違ってしまうということは、私はこれは筋が通らぬと思う。出し方が間違っているなら、その点についての違反の何か罰則があればそれで行くとか、あるいは罰則がなければそれはしかたがないことで、それがすなおなやはり解釈運用じゃないかと思うのですがね。買収、被買収といったような利益を与えるとか与えぬとかというような関係の全然ないところに、ルートが間違ったからといって、全部これを一括して買収にほうり込んでいくというのは、はなはだ私は酷だと思っているんだが、どうですか。これは竹内さんに聞いてもどうせ検察庁と同じことを言うから、あなたに理屈を聞こう。
  64. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 先ほども出ておりましたように、報酬を与えられる人と与えるべからざる人とこれが選挙法規によっては厳然と区別をされているわけでございます。したがいまして、報酬を与えるべからざる人に、しかもそれは選挙運動に従事する運動員で、したがってそれは特定の候補者に当選を得または得せしめる目的をもって働く人、現実にその人は報酬を受けちゃいけない人なんです、その人に、まあどう言いますか一渡すべからざる、受け取るべからざるお金を渡す、そうしてその人を運動にかり立てていく、こういうことになれば、これはやはり買収なんだということになっていくことになる。と同時に、もちろん、先ほど先生がおっしゃいました、私どもも先ほどから申し上げた渡し方の問題がございます。渡し方も問題もございますし、実質的に選挙運動のために渡すべからざるお金をその人に渡して、何といいますか票をかせぐことに力を加える、こういうことに道行きがなっていくことになれば、買収ということに勢いそこへ入っていくということになるのではないだろうかと思いますが、具体的な問題と関連がございますので、関係のほうからひとついっていただくほうが適当かと思いますが、まあそういうことになっております。
  65. 亀田得治

    ○亀田得治君 あなたはいま報酬報酬という言葉を使いましたけれども報酬じゃないんです。いわゆる動員費といいまして、これは実費弁償なんです。たとえば一人一日二、三百円とか、四、五百円程度のものなんです。これは一方で給料をもらわないのですから、まだ足らぬくらいですよ。しかし、そういうことは言えないわけだ。しかし、実際においては二、三百円から四、五百円程度というのは実費弁償なんです一金額的に。そういうのを言っているんですよ、私が言っているのは。何千円というのは、それはまとまって来た場合の話を言っているので、あるいは法定実費弁償額に比較してもっと少ないものもあるのじゃないかと思いますがね。それは報酬じゃないんです。実質は実費弁償なんです。その出し方が悪いんです。その出し方が悪ければ全部性格まで達ってしまう、そういうことにはならぬでしょうが。そこを聞いているんです。
  66. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 具体の場合の問題は私どもよくわかりませんが、いまお話のような一日の俸給をもらうかわりに出さなければならないというような趣旨のものであるということになりますと、少なくとも選挙法にいう実費弁償とは性質が違う。選挙法にいう実費弁償といいますのは、ここに書いてありますように、鉄道賃、船賃、宿泊料、そういうことになってしまうわけでして、そういう性質を持たないお金はそれでは何だということに勢いなってくる。そこのところがやっぱりいまの問題であろうかと思います。ですから、そういう使途のはっきりしない——この法律実費弁償ということをきわめて具体的にはっきりと明示したものしか考えておりませんから、おそらくそういうものでないものといえば、勢いそういうことになる。同時に、お言葉を取り上げるようで恐縮でございますが、要するに、賃金を払ったかわりの金をそれより額が少なくても与えるという実質があるとすれば、少なくともこの選挙法にいう実費弁償ではないということにならざるを得ないのではないかと思います。
  67. 亀田得治

    ○亀田得治君 賃金のかわりということだけにえらいあなたは力を入れますけれども、それは私は説明として言っておるのであって、動員費というのは、出発点がいろいろな意味があってそうしてできてきておる問題なんです。選挙のときだけじゃないんです。いろんな場合にも労働組合の動員費というのはそういう意味もあってそうしてできてきたものだと、そういう意味のことを言っているんです。そこで、結果としては法律に書いてある程度の実費弁償の額なんです。実際にやりとりしている諸君に損害まで及ぼすわけにいかない、そういう考え方です。いわんや、一方では給料を棒に振っているんだ。その人に実際の損害まで及ぼすわけにいかない、そういう意味なんですよ。あなた賃金のところにえらい力を入れますけれども、だから額だって計算したって大体法定の程度のものなんです。そういうものを、私、いま言っているんです。そういうものを、出納責任者のきちんとしたルール等を通らないで出た、それはすぐ買収だと、そういうふうに持っていくのは間違いだと私は思う。そういう仮定でひとつ考えてください。そういうことがありますかな。実際の実費弁償で、今度はほんとうの一円何十銭というきちんとしたそれをも、ルートが間違えば、その点では違法でしょう、出し方の点について。しかし、そは出し方が違法だからといって、おまえそれは買収だと、そういうわけにいかぬでしょう。その点、ちょっと先に答えてください。
  68. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) おっしゃいますように、実費弁償の出し方の誤りということがはっきりするような場合でありますれば、それは実費弁償の出し方の誤りとしての問題ということになるかと思います。
  69. 亀田得治

    ○亀田得治君 それさえはっきりしておれば、だいぶん納得がいくわけです。そういう点の検討をあまりしないで、ともかく何か金が出た、ルートを通っておらぬ、それは全部けしからぬのだ——それは中にはけしからぬのもあるかもしれぬが、しかし、よく計算し調べ、本人たちの気持ちというのを考えると、これは単なるルートの間違いじゃないかというふうなことにすぎないものもたくさんあるわけです。そういう場合に、ぼんやり出しているやつですから、多少の金額の誤差はあると思う。しかし、法律上は、たとえば一厘事件なんといって、取るに足らぬような程度のことでそのために全部が悪質な金と見られるというふうなことは、これは非常識な解釈でね。初めから意識的に買収資金をばらまくんだが、ひとつそういうふうなのがれ道を考えながらやっているといったようなものは、これは許せんでしょうよ。そんなもんじゃないんです。  じゃ、刑事局長に聞きますが、ちゃんと最初に出納責任者のルートを通って選挙が始まって十日間Aという人が実費弁償をもらっていたとする。ところが、次の十日間はそのルートを通るのを忘れちゃってそして、やはり同じ金額を出した。これは買収になるんですかならぬのですか、あとの十日間は。
  70. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 買収にならないと思います。
  71. 亀田得治

    ○亀田得治君 だいぶそれではつきりしたと思いますから、関連質問ですから、一応この程度にしておきます。
  72. 中山福藏

    委員長中山福藏君) ちょっとその点お尋ねしておきますが、竹内さん、いまの答弁は、責任を持って答弁しておられますか。
  73. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 私は法律解釈といたしまして、お答えを申し上げたのでありまして、先ほどもお言葉がございましたが、買収罪というのは、運動員に対する運動報酬または投票報酬という場合でございますので、その報酬性を全く含まない場合には、これは先ほど亀田先生もおっしゃったように、選挙費用支出手続に関する規制に違反するのは格別、買収罪にならない。これは法律解釈としてだれも異論のないところでございまして、そういう意味でいまお答え申し上げたわけでございますが、ただ、先生が明らかである明らかであるとおっしゃる組合動員費というものが、単なる実費であるかどうかということは、これは事実問題でございます。この事実が亀田先生のおっしゃるとおりでございますれば、法律違反にはならないことは明らかであります。その事実が、そうは言うけれども実は報酬性を含んでおるんだということになれば、買収罪になります。これは、これまた事実の問題でございますから、私はここで何んとも言えませんが、その点は亀田先生も御異論のないところで、これは法律家として当然なことだと思います。当然なことをお答えを申し上げたわけであります。
  74. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまの点をもう少し聞いて別の関係に移りたいと思うんですが、選挙運動に従事する者に対して実費弁償として弁当料を出せるわけですね。百九十七条の二で、一食につき百五十円、一日につき四百五十円弁当料を払えるのじゃないですか。というのは、選挙運動に従事する者に対する弁当料を払っても、別に違反にならないのじゃないですか。前もって届けるのですか。きょうは何人選挙運動に使うから弁当料幾ら払うのだということを運動する前に届けなければならないことになっておるんですか。そんなことはないんじゃないですか。そこは選挙局長、どうですか。選挙局長なかなか良心的だから、ひとつ……。
  75. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 弁当料は、お話のように、一食につき百五十円、一日につき四百五十円、やはりこれは基準額でございまして、各府県の選挙を管理する選挙管理委員会がきめるわけでありますが、その範囲でございますれば、弁当料としてはっきりした実費弁償であれば、これは出してちっとも差しつかえない。しかし、実費弁償というものは、支出いたします場合に、本人が立てかえてあとで払う形式もございます。あらかじめ渡す場合もございます。あらかじめ渡す場合には、弁当料だけ出すというわけにはいきません。車馬賃とかいろいろございますから、そういうものを特定して出すということで考えていかなくちゃいかぬ、こういうことになっております。
  76. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私が言うのは、手当料として一食百五十円なんだから、昼と晩なら三百円でしょう、一日で四百五十円なんだから。その範囲内の金を運動員に対して弁当料だとはっきり明示して弁当料としてちゃんと渡せば、これはちっとも選挙達反にならないんでしょう。
  77. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 明示してはっきりした形で渡せば、選挙違反にはならないと思います。
  78. 亀田得治

    ○亀田得治君 この条文を見ますと、「選挙運動のために使用する労務者一人に対し支給することができる報酬の額の基準(い)基本日額七百円以内」、こう書いてあるわけです。これは報酬のほうですがね、労務者に対する。そして、報酬の以外に実費弁償がさらに出るわけですね、労務者に対して。それは間違いないですね。
  79. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 労務者に対しては、報酬の日額七百円と、こういう超勤の額と、それからその三号に書いております鉄道賃、宿泊料、こういうものが出るわけでございます。
  80. 亀田得治

    ○亀田得治君 そういたしますと、労務者の一日の手取りというものは相当な金額になるわけです。そしてその中の報酬部分というのがまあ現在なら七百円近くあるわけです。「七百円以内」となっているけれども、この物価騰貴の世の中ですから、それはあなたぎりぎりまでいくのが常識でしょう、労務者に対する報酬ということになってくると。そうすると、運動員に二、三百円とか四、五百円出たといったようなものは、それとの比較において一体どう判断するのが常識的かというんです。そんなものを、二、三百円、四、五百円程度出ているものを、選挙運動員に対する報酬というように判断できますか。選挙運動員というのは、少なくとも労務者の諸君よりも社会的な地位もやはり高い、そういう人がやっているわけです。もし報酬だと言うんだったら、金額的にはもっと高くなけりゃならぬ、何といったって。労務者に対してこれだけのものが出ているのに、選挙運動員に対してそれよりも以下のものが出ている、そんなものを手続が間違ったとかいったようなことでいきなり報酬の概念に持っていくというふうなことは非常識だと私は思うわけですが、局長はどういうふうに常識的にそこを感じますか。
  81. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) まあ地域によりますし、状況によっても非常に違いますから、一がいには申せませんが、金額の比較からしてそれがどういう性質かという額だけの観点から申し上げますれば、そういうものがそれだけの報酬という性質を帯びるかどうかということは、確かにお話のような点もあるというふうに考えられます。しかしながら、具体の問題は具体の場合のケースによって考えなければなりませんので、あるいは額のいかんにかかわらずそれがそういう性質を帯びると考えざるを得ないというケースであれば、これはまた問題は別であるということになるかと思います。
  82. 亀田得治

    ○亀田得治君 その程度のお答えならまあまあというところですがね。ともかくもっとやはり常識的にその辺は指導してもらわぬといかんと思う。特にこれはひとつ検察庁のほうに要望しておきますよ。そういうことで起訴されているのがあるんですよ。これは公判で無罪にするというのはたいへんな努力が要るわけで、しかも、そういうお互い買収、被買収というような関係は全然ない、ともかく好きでやっている、そういう諸君に対してそういう汚名を着せるというようなことははなはだ酷だと思うんですよ。ひとつ選挙は今後もちょいちょいあるわけだから、やはりこういう点もよほど検討してほしいと思います。  もう一つこれに類似したコとですが、これは鹿児島で起訴されておる問題です。これは刑事局長も御存じだと思いますが、選挙前に労働組合が決起大会をやった、労働組合主催で。そうして、三百円ずつですかね、出てきた人に対する汽車賃なり弁当代なり、いろいろなことを含めて。これは全部ちゃんと領収証も取りまして組合の会計にちゃんと納まっているわけだ。そういうものを買収だと、こうきたわけだね。これははなはだぴんとこないですよ、関係者には。どうしてそういうものが買収になるんだろうか。買収するされるという関係一つもない。みんなが景気づけにやってきているわけだ。だから、そういうような問題は、もうちょっと慎重に、金さえ出ればとにかく買収なんだ——それが何万というような金なら別ですがね。だから、悪いとも思っていないから、全部領収証を取ってちゃんと金庫に置いてあるわけなんだ。しかも、組合が自分の金を出している、自分らで集めた金の中から。これはずいぶん起訴前に議論をしましたが、結局は起訴しておりますが、まあちょっと非常識だと思うんですね。これはちょっと苦言を呈する程度でやめておきます。
  83. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは別のことですが、ちょっと具体的なことについて聞くわけですが、これはおもに警察の刑事局長あるいは法務省の刑事局長に聞きます。自治省の選挙局長のほうは大体私のほうは終わりました。まあこれにこりずにひとつまた来て下さい。  そこで、去年の衆議院選挙のときに、いわゆる背番号の立候補問題が起きたわけですが、そのときに、背番号候補として肥後亨のところからいろいろな者がたくさん出たわけですが、その背番号候補のいわゆる参謀格というふうな形で小林初三という者がいたということが一部伝えられているわけですね。この小林初三というのは、元警視庁の捜査二課の主任警部補をやっていた、こういうことも言われているのですが、そういうような事実があるんですか。
  84. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 肥後亨関係選挙違反の事件を捜査しております最中に、お話の元警視庁警部補の小林初三につきまして虚偽事項の公表罪の共犯の容疑が認められましたので、小林を逮捕いたしまして送致をいたしております。
  85. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは警視庁で何をやっていた人ですか。
  86. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 捜査二課の主任警部補であります。
  87. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 捜査二課というのは何をやるところですか。
  88. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 知能犯関係であります。
  89. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、知能犯関係をやっていた主任警部補の人が肥後亨事務所に入ったわけですが、どういうわけで肥後亨事務所に入ったのですか。
  90. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 事務所に入った経緯については、私よく存じておりません。
  91. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 逮捕したのはどういう容疑ですって。背番号候補の何ですか。虚偽事項のどうですって。それをさせたのの共同謀議か何かにこの人が当たったと、こういうのですか。
  92. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 虚偽事項公表罪の共犯の容疑でございます。
  93. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それでどうなりました。この人はどうなったの、その後。
  94. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 送致後ですか。
  95. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 現在どうなっているの。
  96. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 小林初三氏につきましては、昨年十二月二十八日に公判請求になって、ただいま公判中でございます。
  97. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 個人の名誉に関することですから、あまり詳しいことを聞くのもあれかと思いますがね、まだ判決もないことですから。何か伝えられるところによると、一番から二十七番までの背番号候補を立候補させるというふうなことやいろんなうその経歴などを新聞やラジオを通じて公表するアイデアをこの人が考え出したのだと、こういうことを伝えられているのですがね。それは知能犯係をやっていたのだから、その点はなかなか専門家かもしれませんが、この点はどうなんですか。
  98. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 私どものほうの調べた段階では、一応共犯ということで逮捕いたしたわけでございますが、この虚偽事項公表罪の中心の人物はやはり肥後亨本人でございまして、小林氏のほうは肥後亨のもとにありまして虚偽事項の公表を容易ならしめる投割りを果したというふうに聞いております。
  99. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 肥後亨の行為を容易ならしめる行為というのは、具体的に何なんですが。
  100. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 一応従犯ということになりますか、いろいろ手伝いをしたりということであろうと思います。まあいろんな行為が考えられますが……。
  101. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 警察としてはあんまり答えたくないことでしょうが、問題は、なぜ警視庁の捜査二課の主任警部補というのが肥後亨の事務所に入っているのですかね。どうもちょっと常識では考えられないのですがね。おかしいじゃないですか。この人はだいぶ前にやめたんでしょう。
  102. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 昭和三十年の四月十九日に依願退職をいたしております。
  103. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これはどういうわけでやめたんでしょうか。
  104. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 退職の理由は一身上の都合によりということに一応なっております。
  105. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは、週刊朝日ですか、「警視庁情報」というふうなところのあれによりますと、警視庁から追われていた右翼団体の幹部を逃走させたと上役から疑われ辞任したのだ、その後は警視庁時代に暴力団に売った顔を利用して暴力団の幹部とつながりを持ったものであろうと書いてありますね。これはあなたもお読みになっただろうと思うんですが、ここに書いてあることをはほんとうですか。まだほかに書いてありますがね。
  106. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) そういうようなうわさもあったようでございます、当時。
  107. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 逮捕されたのは三度目……。
  108. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 三度目でございます。
  109. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あまり詳しく聞きませんけれども、どうして警視庁の主任警部補までやった人が肥後亨の事務所に入ってああいう違法な選挙をやるように参画していったんですかね。何かちょっと考えられないですね、常識的には。そこのところをどういうふうに判断されるわけですか。
  110. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) これは私も詳しい事情は存じないのですが、いろいろ個人的な関係があったのではないかと思います。
  111. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、あれですか、警視庁なり警察庁におる人が、そういう一部の人と個人的な関係というのを在任職中に持ったんでしょうか。そこら辺は調べはついていないんですか。
  112. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 先ほど申し上げましたとおり、うわさはあったということはあろうかと思います。しかし、その当時在職中であったかどうかというようなことはよく存じません。
  113. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 しかし、この人を逮捕して警視庁で調べたんでしょう。調べたのだから、その間のいろいろな経過というふうなものは当然わかっていなくちゃならないんじゃないですか。これは、警視庁としては、この人がつかまったということは、ほかの人がつかまったのは新聞発表したけれども、この人がつかまったことは新聞発表しなかったでしょう。これはまあ無理もないですから、それは私は聞きません。なぜこの人がつかまったことを発表しなかったのかとかそんなことは聞きませんけれども、もう少しわかっていなければおかしいじゃないですか、いろんなことが。警視庁の警部補までやった人がこういうふうになっていくということは、どっかに原因がなければならぬ。たとえば、警察官と右翼のつながりであるとか、あるいは暴力団というか何というか、この「警視庁情報」なるものに書いてあるのは、暴力団に売った顔を云々と書いてあしますが、暴力団とのつながりがあったのかとか、いろんなことが考えられるんですが、どういうんですかね。それはもう少し詳しくわかっているんじゃないですか。
  114. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 私は聞いておりません。当時、退職の当時の事情にいたしましても、ただ単なるうわさということで結局は依願退職になっているわけでございます。
  115. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 まああまり詳しく聞かないで省略しますけれども、実際問題として、よく地方などでは、警察の署長クラスが、まあ定年が早いわけですよ、やめた場合によく大きな会社へ入るわけですね。栃木県の例なんかで見ると、大きな会社でしかも自民党の政治家なり実業家なりそういう人が経営しているところへ入るわけだ。ほとんど署長クラスがね。それはそれとして、ところが、下の警部補とかあるいは巡査部長とかあるいは巡査とか、そういった人たちは、やめてからほとんど行くところが恵まれていないわけですね、現実問題として。そこに一つの問題があるんじゃないかとも考えられるんですがね。実際上は、あれですか、そういう警部補とかそれ以下の人がやめてからどういうところに行っているのが多いですか。
  116. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) やめた後の就職先の問題でございますが、なるほど、お話のように、幹部クラスについて上の方が心配してと申しますか、幹部クラスをほしいという要望もあってあっせんする場合が相当ございます。それから警部なり警部補以下の者につきましては、一応建前はそれぞれの所属長がいろいろ心配して、本人に希望がある限りは就職先なども心配してやっております。お話にもありましたけれども、巡査、巡査部長につきましても、やめた者について希望があればあっせんとしていく。ただ、また、就職先が少ないという状況と、あるいは就職条件等が合わないという点はあろうかと思います。
  117. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 こういうふうな事件が退職した警察官の中から起きないように、これは今後いろいろな方面で十分注意してもらいたいと、こう思うのですが、これ以上追及しませんけれども、法務省の刑事局長、この問題に関して肥後亨はいま裁判になっているわけですね。この前千葉県の検察審査会の事件で前の関係もあって実刑になったわけでしょう。だから、権利保釈の制限はなくなっているはずですね、一審の判決があれば。保釈になっているんでしょう、これはまた。
  118. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 私、ちょっとそれは気がついておりませんですが。
  119. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは病気だというので保釈になったらしいですよ。それはいいですよ。それは別として、この前の東京都のにせ証紙の事件ですか、あるいは千葉県の知事選挙のやつも一緒ですか、あの裁判のときに、肥後自身は、金を自民党の根本からもらったときは、ある自民党の大臣というか幹部というか、その人の目の前でもらったとか、その人の了解のもとでもらったとか、こういうふうなことを言っているのじゃないですか。
  120. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) そういうことを肥後が先般の第二回目の公判でございましたかに申しているということであり、また、その肥後を弁護しております弁護人のほうはまた違った弁解をしているということで、両者の間に意見の食い違いがあるというふうな報道を聞いております。
  121. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、肥後亨が東京都知事選なり千葉の知事選において金をもらったこと、それは争いがないとして、それが自民党の元大臣か何かその面前でもらったとかその了解を得てもらったとかいうことについてのいままでの捜査はどういうふうになっているのですか。非常に疑惑に包まれているんですよ。肥後の言うことだからそのまま受け取ることができないという見方もありますし、それは私らもいろいろ検討しなければなりませんけれども、そういうふうなことまである程度明らかになっているのだけれども、ほとんど検察庁当局もやらなかったのだ、もう一歩の突っ込みをやらなかったのだというようなことが強く言われているわけですよ。そういう点でどの程度の調べをしたわけですか。某大物とかなんとかいうのはちゃんと調べたのですか。
  122. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) その点は、徹底的に調べました結果結論を出しましてただいま公判に回しているわけでございまして、調べたときはどうであったかというようなことにつきましては、ただいま申し上げることは適当でないわけでございます。そう思いますが、調べは徹底的にいたしていることは事実でございます。
  123. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その調べをめぐって、東京地検のいわゆる若手の検事の中で非常な不満があった。上からこの程度で打ち切れというかそういう——もっと上のほうの人を徹底的にやれとか、あるいは起訴するとか逮捕するとか、そういう意見が相当若手の中にあったのだけれども、上のほうから押えられたというようなことで、若手の検事が非常に不満を持っていたということが伝わっているのですが、相当意見の対立があったのじゃないですか。
  124. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) そういう話を、稲葉先生でございましたか、前にもちょっと伺ったような気がいたします。そこで、当時私どもは第三者の立場で法務省におりますので、地検の内部の若い検事諸君の間にどんな気持があったかということはよくわからなかったわけでございますが、たしかそういうようなお話をちょっと伺ったものですから、当時、私のほうにも若い検事がおります、若い検事は若い検事同士の話し合いということもあるわけでございまして、いろいろ調査してみましたけれども、いまお話のような不満というようなものは、私の調査したところでは、それは誤解であろうというふうに結論としては私考えておるわけでございます。
  125. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 捜査の問題ですからあれですけれども、若手の検事の中に相当不満があったので、それをなだめるといっては語弊があるけれども、まあ一席あれじゃないですか、一席と言っては悪いけれども、どこかの温泉へ若手検事か何かあれして、そうしてあんまり強く言うなよというようなことで、それは事件が終わってからでしょう、打ち上げてからどこかへあれしてというような話も伝わっているのじゃないですか。その捜査に当たった検事が全員がどこかへ旅行したり何かしたのでしょう。
  126. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 非常に内輪のことをよく御存じなので、なんでございますが、捜査が夜おそくまで働きますものですから、まあ一段落がつきますと一慰労を兼ねまして旅行するとか、一席設けてお互いに苦労を分かつ、慰め合うというような会は、これはこの事件に限らず、よく検察庁としてはやっておるようでございますが、不平不満を押えるために上司が特に気をきかしてそういうことをやったという趣旨じゃないというふうに私は考えております。
  127. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私の質問はこれで終わるのですけれども、私は、きょう出た、ことに自治省の選挙局長あたりのいろいろな答弁、あれは非常に参考になると思うんですね。従来、どうも選挙違反になるかならないかわからないのに、どんどんコンクールのような形で逮捕したり勾留したり公判の請求をしたりなんかしている例が相当あるわけですね。こういうような点を、それは違反ならばどんどんやってけっこうなんですけれども、そういう点を十分人権の保障というような意味からいっても慎重にやってもらいたい、こういうふうに考えるわけです。  私の質問は、きょうはこれで終わります。いまの質問に関連をして別の機会に私はまた具体的な例をあげて質問するかもしれません。あと亀田さんから関連質問があるそうですから、どうぞ。
  128. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連して。肥後亨の問題ですが、某大物のおるところでもらった、こう言っておる点ですが、某大物はだれかということまではお聞きしませんが、そういうことが全然なかったことを肥後亨が言っておるのか、あるいは、そういう場面はあったけれども、その某大物は、おれは知らなかったと、実際にやりとりしている者がたまたまその部屋に一諸にいたということなのか、これはどっちなんですか。具体的な場所なりそれからその大物の名前まで私たちいま聞くわけじゃないのですから、私がお聞きするのは全然なかったことを肥後亨が言っているのか、客観的にはそういう配置というかそういう状況はあったが、しかし某大物としてはそういうことは知らぬのだということなんですか。どっちなんです。
  129. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) これは私御納得のいくように詳細に申し上げることをはばかるいまの段階でございますが、肥後亨氏が公判延で述べましたことはかなり事実に相違しておるというふうに聞いておるわけであります。もちろん、外形的な事実と申しますか、そういうような容疑があったことは検察庁としてもあったればこそ調べをしたんだと思いますので、そういう容疑はあったでございましょうが、肥後が述べておるような面前だとかなんとかいうような事実関係につきましてはどうも事実と相違しておるように私は承知しておりますが、詳しいことは遠慮さしていただきたいと思います。
  130. 亀田得治

    ○亀田得治君 その外形的事実とかといってもいろんな外形があるわけだが、面前というほどでなくても、大体同じ場所にそういう某大物というものがいたのかどうか、その点ですね。面前というと、それはこう目の前でやりとりするという印象を与えますから、それは違うという意味なのか、全然そんな部屋などに某大物すらおらなかったのだと、そういうことなんですか、どっちなのか。
  131. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 私の説明が悪いかもしれませんが、先ほど申し上げました程度でひとつお許しを願いたいと思います。
  132. 亀田得治

    ○亀田得治君 その程度は言うてもらっていいんじゃないかな。
  133. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまの点、私は前に千葉の工業大学の関係の件、これをずっと追及したときに出てきたんですが、あのときには、法務大臣が秘書課長を使って某大物というのをいろいろ調べた、といっちゃ悪いけれども調査したというか、いろいろ当たったというか、聞いたわけですがね。それはあれですか、今度の場合には東京地検としてはどうなのかな。立件はしたんだけれども、嫌疑なしだったのか、あるいは、起訴猶予にしたというのか、どうなんですか。起訴しなかったんですか。この大物というのはだれか知らないけれども
  134. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) これは肥後派の違反が公判で逐次、もうすでに冒頭陳述もしておるわけでございますし、だんだん公判廷で明らかになってまいると思うのでございますが、特にいま御指摘の大物とかなんとか言われる方の立場のみを考えてやっているんじゃなくて、この公判が漸次進行してまいりましてある程度公判という場で明らかになってまいります事項につきましては、私もここで御質問に答えていくのはこれは当然の義務だと思いますが、いまの段階ではまだそこまで進行していないように私は見ておりますので、それで遠慮さしていただきたいということを申し上げているわけでございます。
  135. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 しかし、その公判の中で検察官は冒頭陣述をやっておるわけでしょう。冒頭陳述の事実というのは、これはもう検察官としては証拠によって証明し得る確信があるから冒頭陳述しておるわけですね。その冒頭陳述の中に出ているんじゃないですか、その点は。僕は冒頭陳述をまだ見ておりませんけれども、これは手に入るわけです、幾らでも。記録を直接見るわけにいかんとしても、冒頭陳述自身は手に入るわけですから、その中に出ておるんじゃないですか。これはたしか新聞にも出ておりました。
  136. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 冒頭陳述をいたしておることは事実でございまして、その中に出ておるのでございますが、これは冒頭陳述でございまして、これから証拠によってその事実を証明しようというのが検察庁のこれからの争訟でございます。いまお話の、調べたことはどういうことであったかというようなことやその他は、今後検察官が立証していくその段階に応じまして私どもは明らかに検察官がいたしました段階になりましてから御説明申し上げる、これが私どもの立場である、こういうように考えております。
  137. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 しかし、公開の法廷で冒頭陳述が行なわれているでしょう。非公開じゃないでしょう。国民だれでもその冒頭陳述を聞けるんですから、国会がその冒頭陳述の内容を聞けないというわけがない。冒頭陳述では一体どういうふうに言っておるのですか。その冒頭陳述では、検察官としては証拠十分だ、立証できるとして冒頭陳述しておるんでしょう。冒頭陳述ではその点は一体どう言っておるのですか。きょうわからなければ、あとで冒頭陳述を出してください。
  138. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) ただいまそこまで御質問があるとは予定しておりませんでしたので、たくさん資料を持っていながらそういう資料を持ってきていませんので冒頭陳述で、どういうことを言ったかということは次の機会にお答え申し上げたいと思います。
  139. 岩間正男

    ○岩間正男君 関連してちょっとだけお聞きしておきたいのですが、先ほど肥後の陳述が事実と合っていないというお話ですが、これはどういうことなんですか。事実と合っておるかどうかということは、いまから明らかになることじゃないんですか。単に地検が調べたその範囲内でそういう事実とは合っていない、そういうことなんですか。
  140. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) お答えいたします。  それは、私の言い方が正確じゃござがませんでした。ただいま岩間先生のおっしゃるとおり、地検の捜査をいたしましたところによって明らかになった、つまり証拠によって明らかになった、その事実関係のことでございます。
  141. 岩間正男

    ○岩間正男君 某大物なるもの、これは調べたかどうかわからない、さっきのあれでは。そういうことですと、いまの発言では非常に不十分な気がするのですが、肥後が新たにそういう陳述をすれば、そういう観点に立ってもっと真の真実を追及するという立場に立たなくちゃ、今の局長のお話を聞いていますと、何か事実に反する、合っていないのだというような形でつまり事件の内容を語っているんですね。そういうことになりますよ。これはやっぱりまずいでしょう。事件を語らない語らないと言って、ぐあいの悪いところはこれは事実に合っていないということでは早計になると思うんですが、どうですか、この点は。
  142. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 地検が証拠によって調べましたところで見ております事実と肥後が公判廷で述べたところとは違うようであるということは、先ほど申し上げましたその言葉から御推測いただけると思いますが、検察庁が調べているということはわかるわけでございまして、その調べの内容につきましては、先ほど申しましたように、いまこの段階では申し上げるのは適当でないと、こういうふうに考えるわけでございます。
  143. 岩間正男

    ○岩間正男君 事実に合っておるかどうかということは、今後明らかになることです。非常に疑惑が持たれていて、実際の事実の捜査についても、先ほどからお話が出た問題その他いろいろ出ておりますから、その点についてはあくまでも慎重に追求する立場に立ってやってもらいたいと思いますね。どうも何か事実に反するというような言葉が出てくると、地検の捜査段階において証拠を固めるそういう段階での事実という意味なんですから、そこのところを混同しちゃまずいと思います。
  144. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 選挙違反関係の問題は終わったわけですけれども、法務省と警察庁の関係で三つばかり資料を明らかにして委員会に出してもらいたいものがあるので、ちょっと申し上げておきます。  一つは、八百トンにのぼる脱脂粉乳の密輸事件がいまあるわけですか、この関係の捜査といいますか、これは関税法違反ですね、この捜査関係の状況、これをひとつ明らかにしてもらいたい。  二つ目は、滋賀県に起きた、例の少年が火遊びかなにかして火事を出したということで、それがあとからぬれぎぬだとわかったという人権事件、誤判事件がありますが、これのいままでの経過ですね。  それともう一つは、大阪の通産局が関係しておる百貨店の汚職事件がいまあるわけですが、これの捜査のいままでの状況、経過といいますか、全貌というか、こういうふうなものをひとつ明らかにしてぜひこの委員会に出していただきたい。これをひとつお願いしておきたいと思います。
  145. 中山福藏

    委員長中山福藏君) どうですか。それは出していただけますね。
  146. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 承知いたしました。
  147. 亀田得治

    ○亀田得治君 それで、滋賀県の事件ですが、子供が放火したということを認定した根拠ですね、どんな調べをやってそう認定したのか、そこを特に詳細に、できたらこれは——そういう子供の調書というのはどういうふうにとるのかわからぬが、調書を全部出してほしいですね。調書はないのか。ともかく、何か関係書類があったらみんな出してもらいたい。
  148. 中山福藏

    委員長中山福藏君) それでは、本日は一応この程度をもって散会いたします。   午後零時三分散会