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1964-02-04 第46回国会 参議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月四日(火曜日)    午前十時二十六分開会    ———————————   委員の異動  十二月二十三日   辞任      補欠選任    藤原 道子君  亀田 得治君    大矢  正君  中村 順造君  一月二十三日   辞任      補欠選任    植木 光教君  重宗 雄三君  一月二十四日   辞任      補欠選任    重宗 雄三君  植木 光教君   ———————————  出席者は左のとおり。    委員長     中山 福藏君    理事            後藤 義隆君            迫水 久常君            稲葉 誠一君    委員            植木 光教君            鈴木 一司君            鈴木 万平君            田中 啓一君            亀田 得治君            中村 順造君            山高しげり君            岩間 正男君   国務大臣    法 務 大 臣 賀屋 興宣君    国 務 大 臣 早川  崇君   政府委員    警察庁長官   江口 俊男君    警察庁刑事局長 日原 正雄君    法務省刑事局長 竹内 寿平君    法務省矯正局長 大澤 一郎君   最高裁判所長官代理者    最高裁判所事務    総局総務局長  寺田 治郎君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   説明員    法務大臣官房秘    書課長     勝尾 鐐三君    ———————————   本日の会議に付した案件 ○裁判所職員定員法の一部を改正する  法律案内閣送付予備審査) ○刑事補償法の一部を改正する法律案  (内閣送付予備審査) ○派遣委員の報告 ○検察及び裁判運営等に関する調査  (法務省関係今期国会提出予定法案  に関する件)  (西口事件及び重要未解決事件捜査  上の諸問題に関する件)    ———————————
  2. 中山福藏

    委員長中山福藏君) これより法務委員会を開会いたします。  本日は、まず、予備審査のため当委員会に付託されました裁判所職員定員法の一部を改正する法律案及び刑事補償法の一部を改正する法律案議題とし、順次提案理由説明を聴取いたします。賀屋法務大臣
  3. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、その趣旨説明いたします。  この法律案要旨は、第一審における訴訟の適正迅速な処理をはかる等のため、裁判所職員員数増加しようとするものでありまして、以下簡単にその要点とするところを申し上げます。  まず、下級裁判所裁判官員数増加しようとする点であります。政府におきましては、第一審の充実強化をはかるための方策として、数年来逐次裁判官定員増加する等の措置をとってまいりましたが、その一環として、このたび特に裁判官負担が重くなっている地方裁判所における事件審理及び裁判適正迅速化をはかるため、判事及び判事補員数増加するとともに、年を追うて増加してまいりました簡易裁判所における交通事件処理円滑化をはかるため、簡易裁判所判事員数増加しようとするものでありまして、人員充足見通し等を考慮した上、さしあたり判事判事補及び簡易裁判所判事員数をそれぞれ五人増加しようとするものであります。  次に、裁判官以外の裁判所職員員数増加しようとする点であります。すなわち、地方裁判所における事件審理及び裁判適正迅速化をはかり、また、年を追うて増加してまいりました簡易裁判所及び家庭裁判所における交通事件処理円滑化をはかるため、裁判所書記官家庭裁判所調査官及び裁判所事務官員数をそれぞれ増加しようとするものであります。これら新たに増加しようとする裁判官以外の裁判所職員員数総数は、百三十五人であります。  以上が裁判所職員定員法の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さいますよう、お願いいたします。  続きまして、刑事補償法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  刑事補償法による補償金算定基準となる金額は、昭和二十五年に定められたものでありまして、現在におきましては、低きに過ぎる面も生じていると認められるに至りました。この法律案は、この際、無罪裁判またはこれに準ずる裁判を受けた者が、未決の抑留もしくは拘禁または自由刑執行等による身体の拘束を受けていた場合に交付する補償金算定現行基準金額一日二百円以上四百円以下を、四百円以上千円以下に、また、死刑の執行を受けた場合に交付する補償金算定現行基準金額五十万円を、百万円に、それぞれ引き上げまして、施行日以後に無罪裁判またはこれに準ずる裁判を受けた者につき、この改正基準による補償金が交付されるものとし、いわゆる冤罪者に対する補償の改善をはかろうとするものであります。  以上が刑事補償法の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますよう、お願い申し上げます。
  4. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 以上で説明は終了いたしました。  両案に対する質疑は後日に譲ることといたします。    ———————————
  5. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 次に、検察及び裁判運営等に関する調査議題とし、第四十六国会法務省関係提出予定法案について説明を聴取いたします。
  6. 勝尾鐐三

    説明員勝尾鐐三君) 法務省所管第四十六回国会提出予定法案について、その概略を説明いたします。お手元の法案一欄表並びに第四十六回国会提出予定法案についてと題する印刷物の資料を御参照願えれば幸甚に存じます。  法案の総数は十四件で、うち予算関係法案は三件でございます。なお、裁判所関係のものは、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案と、最高裁判所裁判官退職金の特例に関する法律案の二件であります。  以下、お手元の一覧表の順を追うて説明いたします。  第一の裁判所職員定員法の一部を改正する法律案につきましては、すでに国会提案済みでございますので、その内容は省略いたします。  第二の法務省設置法の一部を改正する法律案は、法務省設置法におおむね次の改正を加えようとするものであります。すなわち、  一つは、定員を増加することであります。昭和三十九年度予算案において、大臣官房事務の強化をはかるため薬剤師、看護婦等五名、少年院における教化活動の充実をはかるため法務教官五十名、少年鑑別所における鑑別業務の充実を期するため法務技官十名、法務局及び地方法務局における登記事務の増加に対処するために二百名、訟務事件処理の充実をはかるため三名計二百三名、保護観察所における非行青少年保護観察の強化をはかるため保護観察官二十二名、入国管理事務所における業務の充実をはかるため入国審査官等二十九名、検察庁において公判審理迅速化交通事件処理の充実をはかるため検事五名、副検事十名、検察事務官七十六名計九十一名、公安調査局及び地方公安調査局における破壊活動調査機能の充実をはかるため公安調査官二百名、合計六百十名の増員が計上されておりますが、他方、大村入国者収容所において収容業務の減少に伴いまして入国警備官等二十四名の減少がありますので、結局、法務省所管全体では差し引き五百八十六名の純増ということになります。  二つは、名古屋刑務所及び福岡刑務所の位置を変更することであります。名古屋及び福岡両刑務所につきましては、昭和三十五年度予算において国庫債務負担行為形式による移転の承認を得まして名古屋、福岡市との間に所要の契約を締結し、名古屋刑務所については愛知県西加茂郡三好町に、福岡刑務所については福岡県粕屋郡宇美町に新しい刑務所を建設中のところ、昭和三十九年度において完成し移転する運びとなりましたので、その所在地をそれぞれ改めようとするものであります。  第三点は、出入国管理行政を有効適切ならしめるため、八戸市、尼崎市、坂出市に入国管理事務所の出張所を置こうとするものであります。  第三の刑事補償法の一部を改正する法律案につきましては、すでに国会提案済みでございますので、説明を省略いたします。  第四の下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案は、市町村の廃置分合等に伴い同法の別表に所要の改正を加えようとするもので、その内容は例年提出しているものと同じであります。二月一日現在で整理し、二月下旬に提案の予定であります。  第五の暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正する法律案につきましては、その内容は第四十三回、第四十四回の国会に提案されたものと全く同一であります。すでに国会提案済みでございますので、その内容についての説明は省略させていただきます。  第六番目は、経済関係罰則の整備に関する法律を廃止する等の法律案であります。御承知のように、経済関係罰則の整備に関する法律は昭和十九年法律第四号をもって制定公布されたものであり、当時戦時下の必要から住宅営団等九つのものについてその役員、職員は罰則の適用についてはこれを法令により公務に従事する職員とみなし、日本勧業銀行等特別の法令により設立された会社、鉄道事業電気事業ガス事業その他その性質上当然独占となるべき事業を営みもしくは臨時物資需給調整法その他経済の統制を目的とする法令により統制に関する業務をなす会社もしくは組合またはこれらに準ずる三十三のものについてその役員、職員がその職務に関し賄賂を収受しまたはこれを要求もしくは約束したときは三年以下の懲役に処し、よって不正の行為をなしまたは相当の行為をしなかったときは七年以下の懲役に処する等を内容とした法律でありますが、戦後事情の変更に伴い逐次改廃整理が行なわれ、現在経済関係罰則の整備に関する法律のみ適用を受けるものは、商工組合中央金庫、農林中央金庫、信用金庫、同連合会労働金庫、同連合会信用協同組合、同連合会国際電信電話株式会社日本航空株式会社電源開発株式会社となり、法務省としてはかねて本法律の廃止について関係省協議検討を続けてきたのでありますが、今般日本航空株式会社電源開発株式会社商工組合中央金庫については、日本航空株式会社法等それぞれの法律において役員、職員について涜職罪の規定を設けることとし、経済関係罰則の整備に関する法律はこれを廃止することとなったものであります。経過規定として、この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用についてはなお従前の例によることとすることは、現に本法律違反により裁判所に係属中のものもあり、過去の改廃の際と同様であります。近く国会提案予定であります。  第七番目は、刑法の一部を改正する法律案であります。  現行刑法誘拐罪関係法規改正をはかろうとするものであります。法務省においては目下刑法の全面的改正作業を進めており、誘拐罪関係規定についても、その改正を企図しておりますが、いわゆる吉展ちゃん事件をはじめとし、最近における身のしろ金目的誘拐事件の頻発、その伝播性にかんがみ、関係方面からも早急にその改正を進めるよう要望があり、身のしろ金目的の誘拐について、その刑を強化するとともに、その予備についても処罰規定を置こうとするものであります。法制審議会の審議を経て二月中に国会提案の運びで作業を進めておりますが、現段階における事務当局の案では、身のしろ金目的で人を略取または誘拐した者は、無期または三年以上の懲役に処することとし、ただし、第一審裁判の言い渡し前に被拐取者を安全な場所に解放したときは、その刑を減軽するものとすること、その予備をした者は、二年以下の懲役に処するものとし、ただし、その実行の着手前に自首した者はその刑を減軽しまたは免除するものとすること等が骨子となっております。身のしろ金ということば自体刑罰規定の用語として必ずしも熟しておらず、罰則の整備にあたっても、刑法のうち誘拐罪に隣接する逮捕、監禁の罪、恐喝、強盗、殺人、強姦等の罪との関連、法定刑均衡等を考慮しなければならず、また、一般に伝播しやすい罪に対し罰則を重くすることは、その犯人が確実、迅速に検挙、処罰し得る保障があってはじめて犯罪防止上の効果が期待し得るものと考えられるので、事務当局では諸外国の法制、運用の実情等をもしさいに検討し、目下鋭意作業を進めている状況であります。  第八は、少年法の一部を改正する法律案であります。少年交通事件の迅速適正な処理をはかるため所要の特別規定を設けようとするものであります。  交通事件の増加、ことに少年交通事件の激増の状況にかんがみ、法務省では、かねて少年交通事件取り扱いを検討していたのでありますが、関係省との意見の調整がつかず、少なからず苦慮しているのでありますが、少年交通事件は激増の一途をたどり、そのため関係機関はその処理に忙殺されて、資質、環境の調査を十分に行なう余裕がなく、画一的処理に甘んぜざるを得ないのみならず、未済も増加する実情にあり、また、その処分の実態を見るに、世人から、少年交通事件は野放しにされているとの批判がなされているので、この種事件の迅速適正な処理をはかることを主たる目的として少年法等に特例を設けようとするものであります。  本法案の適用を受ける少年交通事件は、一つは、道路交通法第百十六条から第百十九条までの罪(ただし第百十八条第四号及び第百十九条第一項第十一号から第十四号までの罪を除く)、すなわち、現在検察庁が取り扱う道路交通法違反事件中道路における車輌の運転者をめぐって発生するものだけに限定しております。したがって、警察から家庭裁判所に直送される罪に当たる事件や、車輌運転者以外の者の罪に当たる事件は除外されるわけであります。その二つは、道路において車輌の運転者の犯した刑法第百二十一条の業務上過失致死傷重過失致死傷の罪に当たる事件に限定しております。しこうして、右の少年交通事件については検察官先議権を認め、検察官が公訴を提起するのを相当と認めた場合には、その少年が十六歳に満たないときを除き、家庭裁判所事件を送致することなく、直ちに公訴を提起することができるものとしております。したがって、少年交通事件が、すべてが少年法の適用を除外されるものではなく、検察官家庭裁判所事件を送致するのを相当と認めて家庭裁判所に送致した事件については少年法がほぼ全面的に適用されることとなります。また、起訴猶予処分は許されない建前であります。三つは、少年交通事件については、罰金を完納しない場合労役場留置ができることとするとともに、少年特殊性にかんがみ、留置期間を制限することとしております。  以上が本法案の内容でありますが、少年取り扱いについては各種の問題点が多く、関係省庁との意見調整になお努力を続けて検討している状況であります。  第九番以下は民事関係法案でありますが、おおむね技術的な改正であります。  まず、遺言の方式の準拠法に関する法律案は、今国会に提出されている遺言の方式に関する法律の抵触に関する条約の批准に伴い、制定しようとするものであります。したがって、遺言の方式の準拠法については、法例によらず、この法律の定めるところによることとなります。遺言の現在の準拠法である法例では、遺言の成立及び効力は、その成立の当時における遺言者本国法により、遺言取り消しもその当時における遺言者本国法によることとなっており、ただ遺言の方式につき行為地法によることを妨げないとなっておりますが、この法律案では、遺言が、行為地法遺言者遺言の成立または死亡の当時国籍を有した国の法律、住所を有した地の法律、居所を有した地の法律不動産に関する遺言について、その不動産所在地法のいずれかの一に適合するときは方式上有効であるとするものであります。すなわち、国際的な交通が便利となり頻繁になってまいりましたので、遺言の方式に国際性を持たしたということであります。右の基本的な考え方を骨子として、遺言取り消し、二人以上の者が同一の証書でした遺言の方式、遺言者の年齢、国籍その他の人的資格に基づく遺言の方式の制限等に及ぼして整理をしたものであります。二月上旬閣議決定の上国会提案予定であります。  第十番目の不動産登記法の一部を改正する法律案は、不動産登記事務処理合理化及び簡素化をはかるため所要の改正をしようとするものであります。すなわち、抵当権その他の担保権登記事項中、債権の弁済期の定め及び利息の発生期もしくは支払い時期の定めの登記を廃止すること、保証書通知所有権に関する登記の申請の場合にのみ限ること、登記義務者に還付すべき登記済証または保証書登記済みの手続を簡素化すること、共同担保の目的たる不動産に関する権利が二個以上の場合には、共同担保目録申請人に提出させ、または登記所が作製することとし、追加担保担保権消滅等登記につき、その共同担保目録を利用すること、合併の登記の場合に、合併する不動産登記用紙中甲区事項欄に合併される不動産所有権登記を転写することを廃止して、合併される不動産登記用紙中中区事項欄に合併による所有権登記をすること、表示の登記のない不動産につき判決もしくは収用により所有権保存登記の申請もしくは嘱託または所有権の処分の制限の登記の嘱託をする場合にも、地積の測量図等の図面の添附を要するものとすることがその要点であります。  第十一番目は、借地法及び借家法等の一部を改正する法律案であります。  借地法借家法については、かねてからその全面的な改正を検討中でありましたが、国民の生活に直結する法律であるだけに問題点が多く、いまだ全面的改正にまで結論を得ることができないのでありますが、借地借家関係の最近の実情にかんがみ、緊急に改正を要すると認められる点について借地法借家法、民法、建物保護法に所要の改正を行おうとするものであります。すなわち、  第一借地法関係改正の要点は次のおとりであります。(一)建物に関する借地条件の変更に関し、建物に関する借地条件防火地域の指定、付近の土地利用状況の変化その他の事情の変更により不相当となった場合には、裁判所は、当事者申し立てにより、鑑定委員会の意見を聞き、借地権残存期間土地の状況その他一切の事情を考慮して、借地条件の変更その他当事者間の衡平を維持するため相当の処分を命ずることができるものとすること、転借地権が設定されている場合において、必要があるときは、裁判所は、転借地権者申し立てにより、原借地権についても右の裁判をすることができるものとする。(二)賃借権の譲渡または転貸に関し、借地権者賃借権の目的たる土地の上に存する建物を他人に譲渡しようとする場合において、賃貸人が正当の事由がないのにかかわらず賃貸権の譲渡または土地の転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者申し立てにより、賃貸人の承諾にかわる許可を与えることができるものとする。この場合において、当事者の利益の衡平をはかるため必要があるときは、裁判所は、鑑定委員会の意見を聞き、借地条件の変更その他相当な処分を命ずること、できるものとする。右の申し立てがあった場合において、賃貸人がみずから建物の譲渡及び借地権の譲渡または土地の転貸を受けるべき旨の申し立てをしたときは、裁判所は、鑑定委員会の意見を聞き、相当な対価を定めてこれを命ずることができるものとする。(三)地代借賃増減請求の場合の特則として、地代または借賃の増減の請求を受けた者がその請求に異議がある場合には、増減の額につき合意が成立し、またはその額が裁判上確定するに至るまで、従前の地代もしくは借賃をこえる額の支払いを留保し、または従前の地代もしくは借賃の仮払いを請求することができるものとする。  第二の借家法関係では、(一)借賃増減請求の場合の特則として、借賃の増減の請求を受けた者が、その請求に異議がある場合には、増減の額につき合意が成立し、またはその額が裁判上確定するに至るまで、従前の借賃をこえる額の支払いを留保し、または従前の借賃の仮払いを請求することができるものとする。(二)賃借人の死亡による賃貸借の承継に関して、居住用建物賃借人相続人なしに死亡した場合において、その死亡の当時その建物賃借人と生計を一にする者が同居していたときは、その者は賃借人が有していた権利義務を承継するものとする。ただし、賃借人の死亡後一月以内に、賃貸人に対して反対の意思を表示したときはこの限りでない。  第三の民法関係は、最近地下鉄、モノレール等の発達に伴い、地上権に関する特則として、土地の上換言すれば空間も、地下換言すれば地中も、工作物を所有するため地上権の目的とすることができるものとする。その場合、設定行為をもって、他の部分の使用に関し必要な制限を定めることができるものとする。この地上権は、第三者がその土地を使用しまたは収益する権利を有する場合でも、その権利及びこれを目的とする他の権利を有する者の承諾があるときは、設定することができるものとする。  第四の建物保護法関係では、同法第一条第二項すなわち「建物カ地上権ハ土地賃貸借期間満了ニ滅失ハ朽廃シタルトキハ地上権者ハ土地賃借人ハ其ノ後ノ期間ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス」とあります規定を削除するものであります。近く国会提案予定であります。  次の商法の一部を改正する法律案は、経済界の情勢に対処するため、緊急に改正を要すると認められる株式譲渡制限その他の事項について所要の改正をしようとするものであります。その要綱は、(一)額面株式、無額面株式の変更に関し、会社が額面株式及び無額面株式を発行している場合には、株主は、定款に別段の定めがない限り、その額面株式を無額面株式とすることを請求することができる。その場合において、資本の額が額面株式の金額に発行済み株式の総数を乗じた額を下らないときは、株主は、定款に別段の定めがない限り、その無額面株式額面株式とすることを請求することができる。資本の額は、額面株式と無額面株式との間の変更により、変更を生じない。発行済み株式の額面無額面の別は登記しない。(二)株式議決権に関し、株主は、二個以上の議決権を有する場合には、これを統一して行使することを要しない。その場合においても、総会に出席して議決権を行使する者は、定款に別段の定めがない限り、一人に限る。なお、この点については法制審議会において検討をされております。(三)転換社債に関し、転換社債の転換の請求は、定款に別段の定め、がない限り、株主名簿閉鎖期間内でもすることができる。株主名簿閉期間内の転換請求により発行された株式株主は、その期間内は議決権を有しない。会社が議決権を行使する株主を定めるため基準日を設けた場合において、その基準日後の転換請求により発行された株式株主は、その議決権を有しない。(四)株式の譲渡に関し、株式の譲渡は、株券の交付による。記名株式の移転は、取得者の氏名及び住所を株主名簿に記載しなければ会社に対抗することができない。会社は、記名株式株主からその株式につき株券を要しない旨の申し出があったときは、株券を発行しないものとする等でございますが、この点についても法制審議会の部会において検討中であります。(五)新株引受に関し、会社は、定款または新株発行に関する取締役会または株主総会の決議により、株主の有する新株引き受け権を譲渡できるものとする。等がその骨子であります。二月中ごろに国会提案予定であります。  最後は民事訴訟法の一部を改正する法律案でありますが、手形小切手事件の迅速な処理をはかるため、民事訴訟法中に手形訴訟制度に関する規定を設け、その他これと関連する部分に所要の改正をしようとするものであります。その要旨は、手形訴訟は、手形の支払い地裁判所にも提起することができる、手形訴訟においては、反訴を提起することができない。手形訴訟においては文書のみを証拠方法とし、書証の申し出は、文書の提出をもってのみすることができる、手形の呈示に関する事実の証明は、申し立てによる当事者尋問によることもできること、手形訴訟においては嘱託による証拠調べを許さないこと。手形訴訟において原告の請求を認容する判決については、裁判所は職権で、担保を供しないで、仮執行をすることができる旨の宣言をしなければならないこと等々でございます。右の規定は、小切手訴訟にも準用することになっております。二月下旬ごろ国会提案予定であります。  最後に、最高裁判所裁判官退職金の特例に関する法律案でございますが、目下その内容につきまして準備中でございますので、説明は省略いたします。  以上をもって提案の法案の概要の説明を終わります。    ———————————
  7. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 次に、先般当委員会が行ないました検察及び裁判運営等に関する実情調査のための委員派遣について、それぞれ派遣委員から御報告を願います。  まず、第一班の九州班からお願いいたします。後藤君。
  8. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 このたび当法務委員会が行ないました委員派遣視察について、九州班と代表し、調査の結果を御報告いたします。  派遣委員は、中山委員長、和泉理事、大谷委員及び私後藤の四名で構成され、これに西村専門員、鈴木参事、平野調査員が随行いたしました。  調査は、去る一月八日から八日間にわたり、福岡、長崎、熊本、大分の四県下における青少年非行の最近の傾向、少年法少年院法及び保護観察制度の運用等の諸問題について、主として、懇談と現地視察の方法により行ないました。  この調査にあたり、最高裁判所の宮崎課長及び今江事務官、法務省の横堀事務官、警察庁の太田警視の各位が同行され、現地関係の諸機関と緊密な連絡をとり、格別の便宜をはからわれましたことと、現地の各関係機関が、年末、年始多忙の中を貴重な資料を取りそろえ、熱心に調査に協力されましたことを特に報告し、その労苦に対し深く謝意を表する次第であります。  以下、調査項目に従い、順次説明いたします。  第一、青少年非行に関する事項。  最近の青少年非行の傾向につき、昭和三十八年度法務省犯罪白書は、非行少年増加、年少少年犯罪の増加、在学少年犯罪の増加行為の悪質化、犯罪の集団化などの諸点をあげておりますが、この傾向は、一昨昭和三十七年から昨三十八年にかけての九州四県でもほぼ同様に見受けられます。  これを福岡家庭裁判所における少年保護事件処理状況からながめてみますと、このような犯罪増加内容は、道路交通法違反の膨大な増加と関連するものであります。また、他の犯罪についてみますと、粗暴犯である恐喝、傷害、暴行事件増加が目立ってはいますが、刑法犯中ほぼ過半数を占める窃盗は昭和三十年以後大体横ばいの傾向であり、凶悪犯の殺人、強盗、強姦は昭和三十四年以降は減少している状態にあります。  次に、非行年齢は低下の傾向をたどり、昭和三十四年から昭和三十八年にかけ、毎年の道路交通事件数を除いた保護事件数はさして増減がないのに、十四、五歳の年少少年の占める割合は二一%から四〇%へ上がっており、このうち学生生徒事件の占める割合は、中学生は三・六倍、高校生は約一・九倍に増加しております。  これらの諸点は、若干の例外もないではないが、四県におおむね共通して見られる傾向であります。そうして、これについての各地方の対策は、非行集団の解体補導の予防対策に重点を置くもの、道路交通違反事件に試験観察制度を取り入れるもの、保護観察に補導委託制度を採用し好成績をあげるものなど、それぞれ重点の置きどころに特色が見られますが、いずれも第一線施設の責任者の方々の熱意がうかがわれ、また、どこも一様に予算不足を嘆く声が聞かれました。  青少年非行対策運営の実をあげるために、現在各地に設けられている青少年保護機関連絡協議会等の努力にかかわらず、関係諸機関の連絡協調必ずしも円滑とは言いがたいようでありますので、これらを総合統括する機関の新設を求める要望が強いようであります。  さて、少年非行対策についていろいろ意見が分かれておりますが、特にこれらのうち、検察官側の意見といたしましては、専従の検察官増加するとともに、少年事件の家事審判に際し、検察官の立会権、抗告権の保有、検察官先議権を認めること、罰金刑の未納についての成人後の換刑処分適用等の見解が述べられました。  家庭裁判所側としては、これら当面対策としての刑事訴訟手続重視には消極的態度を示し、少年法が青少年対策全般に基礎を置くものとして、これが適用には常に高邁な見地にあって、その解決に資するため、現行法制の育成に前進すべきものとしているようであります。  なお、保護観察官の事務担当量は、年間五十件ないし八十件が限度であるようでありますが、現実は保護観察及び環境調査調整事件のみでも二百件から四百件をこえ、本来の責務は果たし得ない実情にあります。保護観察の機能を十分に発揮させるため、保護観察官の大量の増員が要望されています。  第二、視察施設の営繕の状況。  青少年非行対策を遂行する各機関を施設面から見ますと、それぞれの庁舎にも、職員の宿舎にも、不満足な点が多い。たとえば、福岡地方裁判所本庁庁舎は、明治二十一年、当時の条約改正に備えてつくられ、外観こそ洋風のモダンな木造二階建てであるが、全体にゆるみがきており、また、冷暖房も設備しようがないほどであります。中でも、交通事件処理の即決法廷は、庁舎の一隅の二階に設けられておりますが、手狭で流通が悪く、事件の能率的処理が困難な状況にあります。これについては、目下福岡高等裁判所、同地方裁判所、同簡易裁判所の合同庁舎新営計画が進行中で、六階建てにすることで文化財保護委員会との話し合いもついたようでありますから、速急の施工が望まれる次第であります。  終戦直後の建物の例として、大分地方検察庁本庁庁舎を見ましたが、当時の事情によりまして、建て方がきわめて粗雑で、執務上きわめて不便な模様であります。来年度予算で新築のことが内定しておるとのことでありますが、これも速急に実現されたいものであります。  なお、要望は多項目にわたっておりますので、詳細は、調査整理保管の関係資料に譲り、報告を終わります。
  9. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 次に第二班の東北班の御報告を願います。稲葉君
  10. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 第二班を代表して委員派遣の報告をいたします。  去る一月十六日から十九日までの四日間、私、鈴木委員、岩間委員の三名が、松矢参事、久保調査員を伴い、福島、山形、宮城の三県における青少年非行に関する事項並びに営繕に関する事項等を調査してまいりました。  なお、今回の調査にあたって、現地において詳細な資料を作成していただき、かつ種々御便宜をおはかりいただきましたこと、特に最高裁判所から石川主計課長、衣斐事務官、法務省から藤島参事官が終始同行され、いろいろ御協力くださいましたことを、報告に先立ち、厚く感謝申し上げる次第であります。  以下、調査項目に従って順次述べたいと存じます。  まず、東北三県における青少年非行の一般的傾向について申し上げます。この地方の共通的傾向として考えられるものは、第一は、交通事犯の激増であります。例を山形県にとってみますと、家庭裁判所の新受件数は、昭和三十一年のそれに比して昭和三十七年は約九倍、正確には八・六九倍にもなっており、全国的傾向としての少年交通事犯激増の傾向は東北地方についても当てはまると言えるのであります。  第二は、犯罪年齢の低下であります。犯罪年齢低下の傾向は全国的なものであり、十四、五歳ごろの犯罪のみが現在増加傾向にあることが指摘されます。この点、年長少年、中間少年の非行率が横ばいであるのと対照的であります。この犯罪年齢低下の傾向は、罪種別に見て、刑法犯中窃盗事犯が増加していることと関係づけて考えることができるのであります。すなわち、低年齢者層の犯行として窃盗が行ないやすいものであるということが考えられるからであります。たとえば仙台家庭裁判所から提供された資料によると、昭和三十七年には窃盗——臓物罪を含みますが——の占める割合は年少少年非行総数の約八一%にのぼっております。  第三は在学少年非行の増加であります。在学少年の非行についても、先ほど申し上げました低年齢者の非行の増加と関連して考えることができます。すなわち、在学少年の非行中、中学生の非行が特に目立ち、仙台家裁管内でも昭和三十六年には五百二十件、三十七年には六百五十九件と、二六%もの増加が見られるのであります。  第四に、非行少年の家庭環境を見てみますと、中流家庭の子弟が多く、昭和三十七年の刑法犯検挙数について仙台管内に例をとると、中流家庭が四八・〇九%とその比重が大きいことを知ることができるのであります。  第五に、少年犯罪の特色の一つであるといわれる集団化傾向は、東北方面においても同様で、集団化の傾向を共犯という形態でとらえてみますと、宮城県警管内で昭和三十七年には総検挙件数の三一・二%を占めており、このことは少年は単独で犯行をなすほど大胆ではなく、仲間と一緒にやるという傾向がうかがわれ、特に年少少年の非行の増加との関係で注目すべき現象であると思われます。  次に、関係三県における少年犯罪の特徴と思われるものを拾ってみますと、まず福島県は、東北六県のうち最も関東諸県に近く、東京を中心にした少年非行現象の影響を受けやすいところであり、取り締まりの強化等に伴い、東京方面から流れ込んでくる右翼、暴力団などの影響が大きく、年長少年はもちろん年少少年までその勢力範囲に入りつつあることが指摘されます。  また、福島保護観察所の調べによると、当庁の年間取り扱い事件数は、昭和三十五年を境に漸次減少の傾向を示しており、その原因としては、保護観察開始後、東京方面への転居、出かせぎ等の青少年対象者の移動による事件移送が重要な原因であることが考えられます。このような経済の高度成長、オリンピック・ブームによる京浜地方への激しい移動は、表面の事件減少にもかかわらず、保護観察実施の面で困難な問題を投げかけていることが指摘されるのであります。  次に、山形県における特徴としては、第一に性犯罪の増加があげられます。粗暴犯、財産犯は横ばい状態であるのに対し、性犯罪は、山形少年鑑別所の資料によると、昭和三十七年全入所者の一三・二%、三十八年は一六・五%で、三十年、三十一年ごろの約六倍強になっており、また、単独の強姦よりも輪姦が多くなり、共犯としての人員構成も次第にふえていることが見られます。  第二に、自動車、バイクを使っての非行が多くなっており、その原因として、農村では長男の農家への引きとめ策としてバイクを買い与えることが多いといわれ、少年達が夜遊びにバイクを使用するという傾向が見られるのであります。しかも、多くが無免許であるということなど深刻な社会問題に触れるものを感じさせられるのであります。  第三に、高校生の非行の増加が目立ち、特に定時制高校の生徒の非行が多いようであります。その原因として、最近高校への進学熱が盛んになり、このことは農村の少年にも共通するものでありますが、進学は親のすすめによる場合も多く、農業をきうら少年たちがその逃避策として高校へ進学し、働く時間を少なくして友人と遊ぶ機会を多くつくっているという事実が、特に定時制高校生の非行増加の原因であるといわれているのであります。  以上、東北三県における青少年非行の傾向について申し上げましたが、これら非行の防止策に思いをいたしますとき、非行発生後の対策のみで青少年の非行を防止できるものではなく、総合的施策の必要、ひいては国家的政策にまで立ち入って検討する必要があることを再認識いたしました。  次に、少年法少年院法並びに保護観察制度の運用に関して、関係諸機関から提出されました意見要望を要約して申し上げます。  まず、現地における裁判所側の意見としては、第一に、最近の非行年齢低下の傾向にかんがみて、少年法適用年齢の範囲を拡大し、十二、三歳に下限を引き下げるべきであるとするもの、また、他の方法として、初等少年院の収容年齢の下限をおおむね十四歳として、弾力性を持たせるべきであるとするもの、低年齢者非行増加の折から、現行の保護処分中教護院送致は施設不足のため一般に活用されていない向きがあるので、教護院の増設が望まれるなどの意見がありました。  第二に、国選付添人制度を設け少年権利保護をはかる必要があるとするもの、少年審判について民間人の審判関与の制度を採用し、一般市民の関心を得ることが必要であるとするもの、現行法制少年の保護について審判と執行を分離しているため各種機関の連絡調整が特に必要であるとするもの、少年の刑事事件については特に判決前調査が必要であるとするものなどがあげられます。  次に、検察庁意見としては、検察官にいわゆる先議権を与える必要ありとするもの、検察官に不服申立権及び審判立会権を与えるべきであるとするものなどがありました。  また、道交法事犯については種々意見がありましたが、おもなものとしては、少年法五十四条の換刑処分禁止の規定を削除し、少年についても労役場留置ができる道を開くことが少年の道交法事犯の増加に伴い適当な措置であると思われるとするもの、また、一般的に道交法事犯については少年法適用を除外すべきであるとするもの、この種事犯については少年についても一部交通切符制を実施しているが、手続が繁雑で、成人のそれに比して検察庁から家裁を経由するという過程を経ているので、検察庁、家裁の両方から呼び出され能率が阻害され、他の非行性ある者との接触の機会を多くし、一般的にいって少年に対する交通切符制は適当でないとするもの、道交事犯の増加については他の犯罪と同様な前科の取り扱いは適当でないとするものなどであります。  次に、鑑別所からの意見としておもなものを申し上げますと、鑑別所内での規律違反者に対する取り扱いについては、現在何ら規定がなく、その判断が恣意に流れるおそれもあり、必要最小限度の規定を置くことがかえって少年の人権を守るために必要であるとするもの、また、少年院及び鑑別所での通信及び面会の制限については矯正教育に害があるかいなかの判断が所長にゆだねられているので、憲法二十一条との関係からも何らかの規定を置く必要があるとするもの、収容対象者の年齢、性別、非行性が区々であるのに引きかえ、現在の施設では少年院の種別がその要求を満たすためにはほど遠いものであるとするもの、少年院送致につきその種別の決定は鑑別所長権限とすることことが適当であるとするものなどであります。  次に、保護観察所からは、特に保護観察のための旅費の不足が強く訴えられ、また、観察活動充実のため関係機関との連絡調整、協力が必要であるが、現実は保護司の任意な活動に一任している状態であって、旅費を含めて予算不足が強調されました。  次に、少年院においては、物的施設の不足、最近の物価高の折から予算上収容者の食事面の改良の必要があるとするもの、保護観察官少年院常駐制度の実施が望ましいなどの要望がありました。  ただいままでに述べてまいりました法の運用立法上の現地の意見につきましては、立場によって種々見解を異にするものも多く、それぞれもっともな要素を含んでおり、これらを解決するにはなお慎重な検討を要するものと考えるのであります。  次に、関係機関の営繕の実情について申し上げます。  一般に裁判所関係建物は老朽化したものが多く、たとえば福島地方裁判所庁舎は明治二十七年の建築であり、その老朽度もひどく、他の隣接する近代建築物に比して時代おくれの感を禁じ得ません。特に福島地域の宿舎の中には明治十七年、正確には明治十六年十二月ですが、に建てられたものがあり、以来八十年を経過しており、宿舎として不適当な状態のものがありました。また、戦後建てられたものについても戦争直後の資材不足の折の建物であるため、老朽度が早く、すでに改築すべきものが多く見受けられます。この点については法務省関係の建物も同様であります。  このような状態では司法の権威維持のためにも憂慮すべき状態であるとの感を深くするとともに、最近訴訟の遅延、裁判官の不足が呼ばれている折から、特に寒冬地である東北地方については、宿舎の整備充実が急務であるとの感を深くいたしました。  また、少年院、少年鑑別所については、少年の保護を十分ならしめるにはあまりにも物的、人的両面において不十分であることが指摘できると思います。  以上概略を申し上げましたが、詳細は調査室に保管してあります資料をごらんいただければ幸いと存じます。  簡単ではありますが、これをもって報告を終わります。
  11. 中山福藏

    委員長中山福藏君) それでは、派遣委員の報告はこれをもって終了いたします。    ———————————
  12. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 次に、西口事件に関する捜査上の諸問題についてお願いいたします。
  13. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 西口事件の捜査上の諸問題に関する件という通告ですが、これは捜査の問題はなかなか各方面からの見方も違いますし、いわば結果論というふうな面も多く出てまいりますので、そういう点にこまかく触れるつもりはありません。また、そういうことを国会で特に取り上げることはどの程度必要かということも私は議論があるかと思うんですが、別の角度の問題を取り上げるわけです。  そこで、この逮捕に非常に貢献がありました古川泰龍さんが表彰を受けたわけですが、表彰を受けたその後に特に国家公安委員長に時間を十分ほどさいてほしいという申し出があったと私は聞いておりますが、どうでしょうか。
  14. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) そういう事実はございます。
  15. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 古川氏がどういうふうなことであなたに表彰が終わってから特にお話をしたいということだったのでしょうか。その内容を、差しつかえなければお話しいただきたいと、こう思うんです。これは警察のいろんな問題に触れるから、国家公安委員長としてはあるいは言いたくないかもしれませんが、それを差しつかえない範囲でぜひお話しをしていただきたいと思うんです。
  16. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) あの事件前後のいろいろな問題につきまして古川さんから不満も述べられましたし、また、状況も聞きました。これはあくまで国家公安委員長限りのことにしてくれ、こういう御要望がありました。内容につきましては、古川さんの御希望もございますから、差し控えたいと思います。
  17. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 特にあなたに時間を十分間あけてくれと言ってあなたにだけお話をした。それはあなた限りのことだともあなたは受け取ったかもしれませんが、それは、警察の全般の、捜査上だけじゃなくて、あり方に対する基本的な問題に触れておったはずだと私は思うわけですね。それはあなた限りのものとしてしまっておいてそれでいいものでしょうか。それを今後の警察の捜査のいろんな面で生かさなければならない問題が私はたくさんあると思うんです、あのお話の中に。それは、公安委員長はどういうふうにお考えでしょうか。
  18. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 古川さん自体の側から見ると、警察は少しもの足りなかったというお気持ちがあったと思います。また、警察当局の側から見れば、古川さんが御存じない面で、いろ  いろな措置をしておったということは、古川さんのほうは御存じなかったろうと思います。国家公安委員長といたしましては、そういう両方の立場をよく存じておりますので、今後も——古川さんの不満な点というのはそう大きな問題じゃございませんけれども、警察の管理、監督上特に留意しておきたいと、かように考えているわけであります。
  19. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 古川さんが不満を漏らしたということはあなたはそう大きな問題じゃないと言うけれども、大きな問題じゃないとしていいのでしょうかね。だいぶ違うのじゃないでしょうか。  話を前に戻しますけれども、古川さんを表彰するというふうなことを警察が熊本県の本部がきめましたね。そのとき、古川さんは、おれは絶対表彰は受けないぞ、東京の表彰式には絶対上京しないぞと言ったことがありますね。それをあなたは御存じでしょうか。そういう報告を受けておりますか。
  20. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) これは受けておりませんが、国家公安委員長は、表彰じゃなく、感謝状を差し上げたい、そうして御上京されなくてもけっこうです——呼びつける問題じゃありませんので、表彰じゃなくて、感謝状を差し上げたい、同時に、ちょっとした物でも差し上げたいという御連絡をしたのです。そうすると、最初はそういうことを言われたかもしれませんが、来ていただいた。向こうから、じゃ来るといって来ていただいた、こういう形になっているわけであります。
  21. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 それは形は自発的に来たにきまっていますよ、引っぱってくる権限はないのですから。感謝状を差し上げるのか表彰状か私よく知りませんけれども、新聞なんか写真入りで出ておりましたけれども、古川さんは、あれじゃないですか、そういうふうな東京へ来てくれと言ってもおれは行かないぞと言ったのじゃありませんか。そうしたら、あわてて地元の警察の者が古川さんのところへ行って、三拝九拝して、こういう手はずになっているのだからぜひ上京してくれと、こう言って頼んだのじゃないですか。じゃそうなっているのなら、それじゃしょうがないから行こう、こういうことになって東京へ来たのじゃないですか。それは、古川氏のほうに誤解があったかもしれませんよ、本件の捜査全体に関連して。いまあなたが言われたように、警察のやっていたことが古川さんにわかっていなかったかもしれません。そういう点は確かにあったと思いますけれども、とにかく警察のあり方に対して古川氏自身が非常に大きな不満を持っておったということ、これはもう事実じゃないですか。その不満がどこからきていたかということは、これはまあ別個の問題としても、不満を持っていたことは事実ですよ。だから、あなたに、感謝状の表彰式を終わって十分間時間をくれと言って、古川氏はいろいろな不満をあなたにぶちまけたんでしょう。それは事実でしょう。不満を持っていたことは間違いないですね。  そこで、なぜそういう不満が出たかということなんですよ。これはあなたはどういうふうにお考えですか。誤解があったというのですか、いろいろな行き違いがあったというふうにお考えでしょうか。
  22. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 根本の誤解は、警察当局の、それが真犯人であるという断定にひまがかかりました。御承知のような現在の人権が重んぜられる世の中であります。それと、そういう連絡があったら直ちに迅速に逮捕ということに踏み切ってもらいたいという気持ちはあったでしょう。それを逮捕できて、正月早々で、取り逃がしたというのではないから、結果的には非常によかったわけですけれども、その点において、実際犯人と思って泊めておられる恐怖という面からみると、現場の警察官が古川さんにとってはもの足らないという気持ちは、私は十分わかると思います。そういうところからいろいろ不満が出たと思うのでありまして、私は警察当局のあの措置は百点満点だとは決して思いません。なお今後改善すべきいろいろな点があろうと思いますが、この事件のあの経過を通じ、また、古川さんの不満のあれを十分生かして、今後捜査活動の一そうの実効をあげるための資料にいたしたいと思っておるわけでありまして、現地の警察当局もそういう気持でむろんおるわけであります。
  23. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 捜査に百点満点の捜査ということは、これは現実問題としてなかなかないわけです。私も捜査の経験があるからよくわかりますけれども、そういうことじゃなくて、もっと違った面でのこれは問題があったわけですよ。それはこれからお聞きしていきますけれども。  それで、この日、警察官が古川氏のうちに張り込んだわけでしょう。その張り込みの指示はどういうふうに出たのですか。だれがどこでどういうふうな指示を出したのですか、張り込むということについて。
  24. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 捜査の実務上のことですから、警察庁長官から……。
  25. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) お答えいたします。  捜査の概要については、週刊誌あるいは新聞紙等で相当報道されておりますので、ある程度御承知だと思いまするが、十一時半に古川さんの奥さんと娘さんとが、昔の派出所、現在はそこは廃止して、ただ木葉巡査というのが寝泊まりしておるだけでありますか、木葉巡査というのは本署の鑑識係でございまして、しかもちょうどその日は当直で宿直であったわけです。本人はいなかったわけですが、そこにおいでになって、そこから電話で本署に連絡があり、木葉巡査の報告に基づいて刑事課長が非常招集すると同時に、早く集まった順から外張りをした、そういう報告に相なっております。ですから、外張りをしましたのは一番初めの五名でございますが、それが到着して外を固めましたのが一時半ころ、そのあとの四名が一時五十分ころ、あとの十二名が相当おくれて最後は二十一名で家を張っておったということになっております。それからそれ以外の木葉巡査及びもう一人の相勤の宿直員は、すぐ有明荘という旅館に参りまて、そこで女中の証言を得たり、あるいは、川村弁護士という名刺を使っておりまするし、近藤弁護士という紹介状を持っておりましたので、東京にすぐ連絡をいたしまして、おのおのそういう弁護士の方はおられる、しかし、一人は御老人でうちに寝ておられる、一人はそういう紹介状を書いた覚えはないというような返事が夜中に行っております。そういう確認の仕事を二人つききりでやっておったわけでございまするが、張り込みの指示は、おそらく玉名署の刑事課長がやったものと私は了解いたしております。
  26. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 その張り込み指示は、うちの中へ入って張り込めという指示をしたんじゃないですか。ところが、現地では内部へ入らないで外張りというようなことで張り込みをやったわけでしょう。そこのところを私は聞いているわけです。私の質問のしかたはそこまでこまかく聞かなかったのですが、内部に入って張り込めというのはどういうところから出てきたのですか。本部長から出したのですか。そこがはっきりしないんですね。
  27. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) 私の報告を受けております際におきましては、署のほうから県警本部の捜査一課長に連絡して、その連絡を受けたものですから、捜査一課長が内部の張り込みをやれという指示をいたしたのであります。
  28. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 内部というのはどこが内部かちょっとはっきりしないけれども、現実と内部に張り込みをしなかったんでしょう。
  29. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) 建物の中を内部と、こういう定義にしますれば、それはやっておりません。
  30. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そこで、それならば、県警の捜査一課長が内部の張り込みをしろと言ったのは、どういうふうな捜査の一つの必要上というか、証拠の判断というか、そういうふうなものから内部の張り込みをやれと言ったのか。それがどうして食い違ってきたのですか、現地で。
  31. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) 捜査一課長は古川さんのお宅の模様とか状態とかいうことは詳しく知らぬわけでございまして、そういう場合の常道として、本人、家族を守るということが一つ目的。もう一つは、なるたけ近くにおって犯人を逃がさないで、しかも確認でき次第逮捕するという観点からすれば、常識的には内部に入って守るということが外を守るというよりも直接的であるという意味で指示したものだと私は考えます。
  32. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そこら辺のところは、これは捜査のあとで判断してみるというと、県警の本部で状態を正確につかんでおらなかったということにもなると思いますが、それはいまここでは問題にしないんですが、そこで張り込んでおった警察官が古川さんのうちに行って部屋のガラスをノックして、そうして古川さんに合い図したんですね、張り込んでおるという。それは午前四時でしょう。どうして午前四時になったんですか。そこが一つの何というか問題みたいになってくるところですがね。朝の四時まで一体警察官は何をしておったのか。さっぱり連絡がないというわけです。現在西口と古川さんとが一諸にいるが、朝の四時まで警察のほうから中に入っている古川さんに連絡がない。四時になって初めてうちのガラス戸かなんかノックして警察官が四、五人来て張り込んでいるということがわかったというのですね。そこはどうなんですか。四時までわから  なかったのですか。古川さんに張り込んでおるということを連絡しなかったのですか。
  33. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) 刑事局長から……。
  34. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) お話のように、当日、警察といたしましては、古川さん宅の内張りをする予定であったのであります。同時に、しかし絶対に西口に察知されないように、もし察知されたならば、自殺のおそれもある、また家族に危害のおそれもある、あるいは逃走のおそれもあるということから、絶対に察知されないようにという指示も一緒にいたしております。そういうことで現場へ行ったわけでございますが、現場に着いてみますと、深夜のために物音が非常に鋭く響く。そこで、古川氏のお宅に出入りすることはかえって西口に察知される危険性があるということと、それから建物があまり大きくなくて、外張りによっても一部近張りをやれば十分に内部の状況が把握できるというようないろいろの状況を勘案いたしまして内張りを実施いたさなかったのでございます。午前四時まで連絡がおくれたわけでございますか、その間にも途中近づいて連絡をしようと思いながら、また察知されるおそれがあるということで引っ返しておるような状況もあるわけであります。まあ午前四時に連絡がついたなら、それ以前にもできたのじゃないかということが考えられるわけでありますが、四時までの状況では、ちょっとした物音でも鋭く響くので察知されてかえって危険なことになるということから慎重過ぎたということが言えると思いますが、そのような状況で四時になったということでございます。
  35. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 それは現地の状態がありますから、それはあなたのほうで言われることもそれとすればわかるわけですが、それが一つは古川さんに非常に何といいますか不安感というものを強く与えた原因になっているわけですね。それが一つは警察に対する不信がそこから出てきたとも考えられるわけですが、それよりも、むしろ問題は、本件は古川さんが現実に逮捕した。最終的な逮捕は警察官がしたにしても、逮捕の中心的なものは古川さんがした。警察官がしなかったわけですね。そこから、警察のほうでは、まあ率直にいえば、自分たちのほうでつかまえたかったでしょう。それができなかったことからくる警察のおもしろくないという考え方、これは人間ですから持ったと思うのですが、それがその後のいろいろなことにあらわれてきているんじゃないですか。そこにいろいろな問題点があとから出てきたのじゃないですか。私はそういうふうに考えるんです。  そこで一つの問題になってまいりますのは、あとで警察の者が古川さんに対して、張り込みの問題で、外張りではなくて、あそこは二棟あるそうですが、西口のいたほうにはうち二名、それからそうじゃないほうの古川さんのいたほうにはうち二名、合計四名張り込ませた、内部に張り込んでいたというふうに言ってくれないかとか、話してくれないかと、こういうふうなことを古川さんに話したんじゃないですか。だから、警察のほうとしては、自分のほうの何か手柄にしたいと言うと語弊があるかもしれませんが、あとでいろいろな非難を受けるから、だから内部に張り込んでいたということにしてくれということを古川さんに頼んだんじゃないですか。それはどういうふうに調べておりますか、あなたのほうで。
  36. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) 率直に申し上げますが、実は、私のほうに最初に逮捕したという報告が参りましたときにも、いま先生のおっしゃったような報告が来たのであります。どういうふうにして逮捕したかということについては、内張りを四名でやっておったということで、これはりっぱな、まあ同じ逮捕するについても百点満点の逮捕をやったもんだというふうに私は非常に喜んだわけでございまするけれども、すぐそれから訂正が参りまして、あれは、実はそういう指示をしたので、そうしたものと県本部のほうでは考えておったのだけれども、実際は内張りはやらずに、外張りでやったのだという、その日のうちでございましたが、報告が参りました。それで私は——私はというよりも、われわれ関係者は、おかしいじゃないかという気持は持ち続けまして、その後も内張りをしたような工作をしたのじゃないかということにつきましては再度にわたって調査方を指示しまして、管区からも参りまして調べましたけれども、いや、そういう事実はない、内張りはしなかったけれども、頼んだというようなことはないというふうになっておりました。しかし、先ほどの大臣と十分間お会いになったということを私も知っておりますが、どうも特に古川さんがそういう事実のないことをおっしゃる必要もなければ、つくりごとを言うことはありようはずがないと考えましたので、ほめるとかほめないとかいうことは別問題として、ありのままのことをもう一度よく調べいということで調べてみましたら、そういうふうに古川さん自身に頼んだということはないようですけれども、そういうふうにとられる言動が皆無じゃなかったというような印象を現在受けております。というのは、つかまえました翌日でございましたか、木葉巡査というのは立願寺の昔の派出所あとに住んでおりまして、それが一番近いところでございますが、これが古川さんの宅に行きまして、協力を感謝いたしましたと同時に、古川さんの奥さんに対して、実は本部のほうからは内張りをせいという命令を受けておった。だけれども内張りができなかった。いま刑事局長が申し上げたような理由じゃございましょうが、やらなかった。だから、あとでいろいろ話が出るかもしれんけれども、内張りをしておったようなふうにしてくれればありがたいというような意味のことをやはり言ったらしいという報告が、実は一昨日でございますが、最後的に参っているような次第でございます。
  37. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 あなたがそこまで正直に言われれば私のほうも質問の角度を変えますが、あなたがそこまで言わないと思っていたので、僕は質問のやり方をいろいろ考えていたんですが、わりあいに正直に言われたからあれですけれども、それはそうでしょうね。それが古川氏がカンカンにおこった一つの原因です。私に巡査の名前は言うつもりはなかった。ここに書いてありますけれども、かわいそうだから言わないつもりでしたが、それがカンカンにおこった一つの原因ですね。  それで、もう一つあるんじゃないですか。それは、古川氏が、西口がいるので、家族を集めていろいろ二階で対策を講じたわけです。それを、いかにも古川氏がみな家族を集めて西口を逮捕する対策を練れというふうに、警察が命じたんだ、指揮したんだ、こういうふうに警察のほうでは発表したらしいですね。あるいはそれにとれるようなことを発表したらしいですね。古川さんに言わせれば、そんなことは警察の指揮は受けないんだ、自分のほうで西口をどうして逮捕したらいいかということを一室に家族を集めていろいろ相談したのだ。それをいかにも警察のほうが古川さんを指揮してそういう態度をとったんだということを警察が言うからというので古川さんおこったのじゃないですか。そこら辺は聞いていませんか。
  38. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) 十一時半に届け出がございまして、十二ごろでございますか、有明荘に巡査二人が出向きまして、そこに古川さんの妻女を呼び出して打ち合わせをし、自分たちは確認もし保護もするから、あなた方はできるだけ一緒にかたまっておってもらいたい、おったほうがいいと言ったのですが、指示ということじゃございませんでしょうが、そういう注意をしたいというふうに私は聞いております。
  39. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 その他いろいろありますけれども、結局、警察のやり方が、今後民間人の協力を得るためには、本件の捜査は特に民間人との接触の中でいろいろ反省すべきというふうか参考にすべき点がたくさんあるのじゃないかと私は考えるんですが、この事件の捜査全体を通じて、反省すべき点があるとか、あるいはこういう点がよかったとか、そういうことがあると思うんです。警察としてはこの点はどうですか、これは公安委員長どうです、そこら辺まで考えてないですか。
  40. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) これは犯人が逮捕できたからまだよかったのですが、万一そういうことによりまして逆の目が出たとするとこれは非常に相すまない事件になるわけでありまして、吉展ちゃん事件の、少しおくれたためにつかまらなかった、そういう経験を常に反省して、要は、警察官が十分な責任感と、しかも迅速機敏に処置するということ。しかし、同時に、いまの法制下におきます人権尊重という制約をかみ合わせながら処置しなければならない。そういう意味におきましては、今後の警察の捜査あるいは犯人検挙についての非常に貴重な、何といいますか、教訓でもございますが、御指摘のような点を十分警察庁としても検討し、全国の警察官の今後の捜査の教訓にいたしたいと思っております。
  41. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 それは国家公安委員長の言われるのは一般論で、それはそれに違いないのですが、要するに、本件の捜査から、今後の広域捜査というか、日本全国をまたにかけての犯罪か相当出てきております。それに対するもっと具体的な一つの反省というか、あるいはそれに伴うものは何かないのですか、警察庁のほうで。長官なり刑事局長、何かありませんか、もう少し。
  42. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) お答えいたします。  私どもは、この事件を通じて、さらに将来捜査をよりよくするために、従来の捜査のどこに欠陥があるかということを検討して参りたいと思っております。全くお話のとおりで、今後広域捜査を推進していく上においてちょうどかっこうの事件でございまして、なぜ早くつかまらなかったか、また、逮捕の際の問題については、相手方の保護という面ももう少し重要視していく方法がなかったかどうかというようなことについて検討する予定でございます。ただ、まだ西口の捜査がようやく福岡事件、それから静岡の事件が終わりまして、これからようやく東京の事件にかかってくるわけでございます。その間における逃走経路をずっと明らかにしまして、私どもの捜査の欠陥というのは一体どこにあるか、よりよくするためのいろいろな検討をいたしてまいりたいと考えております。
  43. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 西口がいろいろ新聞紙上その他でいっておることがありますね。たとえば、何か遺失物を拾得して警察に届けたら、お巡りさんが西口だということを見破らなかったとか、あるいは、名古屋の旅館でどうとか、あるいは、職務質問を受けたときにどうであったとかいわれておりますが、それらはいままで調べた範囲ではどうなんですか、真相は。
  44. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) いろいろ西口が言っておるわけでございますが、これは本格的に日にちを追って調査をいたしておるわけではございませんで、取り調べの途中に断片的に申しておることが新聞に出ているわけでございますが、私どもは先ほど言ったような方針でございますので、その中で一々裏付けをとりまして、われわれとして反省すべき点は反省していくという方針でいるわけでございます。  ただいままで調べましたところでは、まず最初にお話のありました逃走中交番に拾得物の届け出をしたときに、手配写真がはってあったが警察官に怪しまれなかったという点でございすが、これは、調査しました結果、そのような事実がございます。現金など入っておりますハンドバッグを届け出ている事実がございます。ただ、この時点では、これは十一月二十一日の午後のことでございますが、警察庁が西口の特別手配いたした当日の夜間でございまして、まだ各府県警察が特別手配の措置をとっておりません。したがって、拾得物の届け出を受理した警察官が西口彰であることを看破し得なかったわけでございますが、この際には特別手配の写真も派出所には掲示されていない時期でございました。  それから旅館に投宿して警察官の調査を受けた、これは名古屋だと言っておりますが、女中にチップを与えて発見を免れたというようなことも言っておりますが、これは、調査いたしましたところ、十二月二十九日の午後九時から翌日の午前九時ごろまでの間のことでございますが、名古屋市の中村区の福住旅館に近藤善孝と称して投宿していた事実がございます。しかし、当日は、同旅館に対しまして調査も行なっておりませんし、それから女中もそういうようなことは言っておりません。  それから逃走中に警察官の職務質問を受けたがうまく免れたということを言っているようでございますが、これも現在までに調査したところでは真偽不明でございます。  いずれにいたしましても、日にちを追いまして西口の逃走の経路を明らかにいたしまして、私どもとして反省すべき点は反省をしていきたいという考え方でございます。
  45. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 いまの最初の拾得物を届けたというときにその派出所に手配写真をはってなかったというんですが、それはまだ特別手配になっていなかったんですか。
  46. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) ちょうど届け出の日が十一月二十一日の午後でございますが、特別手配をいたしましたのは十一月二十一日で、二十二日以降特別手配の措置がとられているわけでございます。
  47. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 それでは、西口事件の問題については、また別な機会にいろいろ聞くこともあると思いますが、いま、他にいろいろな重要な末解決事件がたくさんあるわけですね。吉展ちゃんの事件とか、にせ札事件とか、草加次郎の事件とか、バラバラ事件とか、いろいろありますね。現在どういうふうになっておりますか、差しつかえない範囲で述べていただきたいと思います。
  48. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) いずれも犯人がまだ未逮捕でございまして、鋭意捜査を続けている最中でございますが、まず、最初の吉展ちゃん事件でございますが、これは捜査の経過はほとんど御存じだろうと思いますので、現在の捜査状況だけ申しますと、これにつきましては全国的に非常な御協力をいただきまして、情報件数が一万一千件ぐらいございました。その中で容疑者を指名しております情報七千件につきまして捜査をいたしまして、六千六百件ばかり処理をいたしました。現在保留にしております三百四件のほかに百五十八件につきまして裏づけ捜査を行なっております。ただ、犯人は、電話の声から東北あるいは北関東出身、それで相当年配の男、こう推定されるだけでございまして、このほかに捜査の手がかりとなるものがございませんので、下谷北署に引き続き捜査本部を置きまして、六十五名の陣容で先ほど申しました情報の裏づけ捜査を行なうと同時に、現場を中心として広範な区域にわたってじみちな捜査を続行中でございます。  それから草加次郎の連続爆発事件のことでございますが、これも途中の捜査経過は新聞で大体御存じと思いますが、現在の捜査状況を申しますと、現在、捜査本部では、犯人が爆発物あるいは脅迫状を郵送いたしました下谷郵便局管内を中心とする地取りの捜査を実施しております。なお、容疑者として少年をほかの容疑で逮捕取り調べております部面もございますが、一応現在捜査の主体を捜査四課から一課に移しまして、二十七名の要員でもって捜査を続行中でございます。  それからバラバラ死体の事件のことでございますが、これも十一月十八日に名古屋で両足、それから十一月十九日に大阪で胴体、ことしに入りまして一月二十四日に両腕が出て参りました。これは両足が岡山県のナシ箱にベビー毛布それから薄葉紙多数がつつんでありましたし、胴体は、扇風機のポリエチレンの袋、それからカシミロン製の長袖シャツ、それから薄葉紙多数でつつんで荒なわをかけてある。これは結局同一死体ということになり、それから本年に入りまして指紋もとれたわけでございます。全国に手配いたしまして、家出人、行くえ不明者、それから犯罪逃亡者等について、おきゅうその他の身体特徴の身元割り出しの捜査を進めてきたわけであります。この間、全国の刑務所から出所した者につきまして、刑務所の協力を受けて、身体特徴資料の照合も実施いたしました。また、指紋につきましては、警察保管の指紋資料と対照したわけでありますが、該当するものが発見できません。現在引き続き捜査中でございます。  それから偽造紙幣の関係につきましては、三百四十三枚発見されておるわけでありますが、これは使途、もの、場所につきまして、行使面、技術面それから情報面から全国的な捜査を進めてまいってきたのでございますが、まだ容疑者を確定するに至っておりません。今後の行使に備えて、行使直後における民間の早期届け出を促進するために広報活動を徹底する、また、その届け出に即応できる捜査態勢を固める、同時に基礎調査の面を進めていくという両面で現在鋭意努力中でございます。
  49. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 いまのそういう重要未解決事件の概要の報告をお聞きしたんですが、この見通しはどうなんですか。そこまで聞くのは無理ですか、途中だから。
  50. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 現在、見通しについて申し上げるまでに至っておりません。
  51. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 それじゃ、法務省関係をちょっとお尋ねするんですが、古川さんが福岡刑務所の教講師をやっていたんですが、これは今はどうなっているんですか。いまでも教講師になっているんですか。その後どうなっているんですか。
  52. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) まだお願いしております。
  53. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 まだお願いしておりますというのは、形だけお願いしているので、実際はちっともお願いしていないのでしょう。やめてくれと言ったんでしょう、はっきり言うと。
  54. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) それは、ある特定の死刑囚に対してちょっとやめてください、こういうことになっておりまして、それ以外には別にやめてもらうということになっていないわけであります。
  55. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 それは、そこの刑務所に豊田という教育部長がいるわけですね、この人が古川氏に対してやめてほしいということを言ったのじゃないですか。そうしたら、松本所長は、そういうことは言わなかったとあとで言っている。豊田という人ははっきりやめてくれと言ったのでしょう。そうでしょう。
  56. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 私が承知しておりますところは、一般的に教講師をやめてくれというのではなく、特定の死刑囚に対してやめてもらう。それで、そのほかにはやめてもらったと承知しておりません。
  57. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 それは、特定の死刑囚というのは西と石井という二人で、いま再審請求していますね。再審請求しておる二人の死刑囚だけのことをやめてくれと言ったのではなくて、死刑囚のことは全部やめてほしいというふうにこれは言ったのか、あるいは古川さんはそういうふうにとっていますね。とにかく豊田という教育部長はやめてほしいということを言った、全部の死刑囚に対する教護をやめてほしいということだったと、こういうふうに受けとっているわけですね。だから、その後、実際はあれじゃないですか、教講師としての面会はさせてはいないのじゃないですか。この二人だけのことではなくて、全般的な死刑囚に対する教講師としての面会をさせていないでし  ょう。
  58. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) いまの二人に対してだけとめておりまして、ほかにはとめていないと承知しております。
  59. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 まあそれは議論があるところだと思いますがね。新聞なんか見ると、古川さんの肩書きの福岡刑務所元教誨師と書いたのがずいぶんありますね。どうして元と書くのですか。大臣の言うのと違うんですね。新聞が書くのだから法務省とは関係ないかもしれませんがね。
  60. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) 教講師をやめてくれと申し上げることは、われわれとしまして、その担任をいま大臣から御答弁ございましたようにやめてもらうだけのことでございまして、教講師は別に国の職員でもございませんので、任免権等もあるわけではございません。実際上御協力願っておるその当該教誨についてのみ御遠慮願いたいというふうに申し上げた次第でありまして、他のことにつきまして、現実にいま何名について、あるいはまた次にどういう合同集会等に出て教誨されているか、ただいまのところ調査しておりませんので、明確なことはわかりかねる次第でございます。
  61. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 その点も古川氏の言うのと非常に食い違っているわけですね。この前の法務委員会で小宮氏が質問したんですが、あの速記録を見て古川氏はカンカンにおこっているわけです。国会というのはそんなうそを言うのかといって法務省の答弁を非難している。これは意見の食い違いというか、やりとりが十分伝えられなかった、こういう点があったかもしれませんけれども、とにかく憤慨しておりますね。  それは別として、そうすると、なぜ二人の死刑囚——西と石井、この教講師として古川氏にやめてくれ、遠慮してくれということを言ったのですか。
  62. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) 刑務所で死刑確定者に教護をお願いいたしますゆえんのものは、一面死刑確定者の信教の自由の保障という面がございますと同時に、死刑確定者につきましてはその者の心情の安定をはかろうという刑務行政の目的があるわけでございまして、さような二つの面からわれわれとしましては死刑確定者に対しまして宗教家の教護をお願いするわけでございます。われわれとしまして、刑務所としましては、判決の内容と申しますか、判決はあくまでも真なるものとしましてその執行という面についてわれわれが刑務行政を行なっているわけでございます。さような意味合いから死刑確定者については宗教教護をお願いしているわけでございます。ところがが、古川さんは、西外一名の者につきましては、彼らは無罪であるというふうにお考えになりまして、その命を救おうという人間的な愛から再審活動をみずからなさり、他に働きかけておられるということを新聞紙等で承知したわけであります。したがいまして、われわれとしまして、刑務行政の面におきまして、判決はあくまでも正当なるものとしまして刑務行政を行なっているわけでございますが、古川さんが、これは無罪である、判決は間違っておるのだという別個の立場から死刑囚に働きかけられるということになりますと、刑務行政とちぐはぐなことに相なるわけであります。刑務所としてお願いしております死刑確定者に対する教護という前提が違ってくるわけなんであります。刑務所としましては、さような立場の違う方に刑務行政の一翼である心情安定という面をお願いするのはいかがかという観点に立ちましてその教護をお断わり申し上げたという次第でございます。したがいまして、古川さんが別側の人格としまして西らに対する再審活動をなされることにつきましてましては、われわれはごうも意見を差しはさんだ点はございません。
  63. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 これは教講師制度の本質的な問題にも触れることだし、一体教誨師制度というものはどういうふうな役割を持っておるものか、本質的にどういうものか、これはもう少し私も研究したいと思うんですが、きょうは時間がありませんからこれでやめますけれども、どうも法務当局の話を聞くと、死刑囚に対する教誨師というのは、早くあきらめて、早く安心立命をして死刑執行を受けろ。安心立命させ、あきらめさせるための一つの方便というような形でまるで教誨師が使われている。そんなことを言ったら教誨師の方はおこるかもしれませんけれども、あなたのいまの答弁を聞きますと、そういうふうに聞こえますね。心情の安定、死刑が確定しているんだから早く死刑を受けるように、あきらめるように死刑囚を教誨師か説得してくれ、これが教誨師の役目であるかのようにちょっと聞いたんですが、そういうものですか、一体教誨師というのは。どうもおかしいな。何ですか、心情の安定というのは。
  64. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 一人の人に対してほんとに悟るための教護であろうと思います。早く死ぬことに対してあきらめろということではないと思います。
  65. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 だけど、結局、結論としては同じことになるのじゃないですか。そういうふうなことで、一体本質的に教講師の役割は何ですかね。それが法務行政の中でどういう役割を持つのか、私はたいへん疑問ですか、きょうはやりません。これはゆっくり研究しますがね。いろいろ例を調べますが、いずれにしても、古川さんが二人の死刑確定者の無罪を訴えておるわけです。再審の申し立てもしておる。これに対して非常に大きな運動が起き上がっておるわけです。このために骨を折ったということで、それで教講師をやめろということ、これはどうも行き過ぎじゃないかと、こう思います。もしこの人が再審の結果無罪になったとしたらどうなんですか。私はどうも割り切れないんですが、いまここであなたに答弁を求めてもあれですから、本質的な問題をよく研究してからあらためてこの教誨師制度全般の問題として質問をします。  きょうはこれで私の質問は終わります。
  66. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 本日はこの程度にとどめまして、これをもって散会いたします。    午後零時十二分散会    ————・————