運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1964-04-23 第46回国会 参議院 文教委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年四月二十三日(木曜日)    午前十一時十一分開会   —————————————   委員異動  二月二十二日   辞任      補欠選任    米田  勲君  千葉千代世君   —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     中野 文門君    理事            二木 謙吾君            吉江 勝保君            豊瀬 禎一君    委員            木村篤太郎君            久保 勘一君            笹森 順造君            中上川アキ君            野本 品吉君            加瀬  完君            小林  武君            千葉千代世君            柏原 ヤス君            高瀬荘太郎君    発議者     小林  武君    発議者     加瀬  完君    発議者     豊瀬 禎一君   国務大臣    文 部 大 臣 灘尾 弘吉君   政府委員    文部政務次官  八木 徹雄君    文部大臣官房長 蒲生 芳郎君    文部省初等中等    教育局長    福田  繁君   事務局側    常任委員会専門    員       工楽 英司君   説明員    文部省大学学術    局審議官    村山 松雄君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○女子教育職員出産に際しての補助  教育職員確保に関する法律の一部  を改正する法律案撤回許可に関する  件 ○教育文化及び学術に関する調査  (女子教育職員出産に際しての補  助教育職員確保に関する法律の一  部を改正する法律案に関する件) ○教育職員免許法の一部を改正する法  律案米田勲君外四名発議) ○教育職員免許法の一部を改正する法  律案内閣提出) ○農業、水産、工業又は商船に係る産  業教育に従事する国立及び公立の高  等学校教員及び実習助手に対する  産業教育手当の支給に関する法律の  一部を改正する法律案小林武君外  四名発議)   —————————————
  2. 中野文門

    委員長中野文門君) ただいまより文教委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  四月二十二日、米田勲君が辞任され、その補欠として千葉千代世君が選任されました。   —————————————
  3. 中野文門

    委員長中野文門君) この際、おはかりいたします。  現在、当委員会で審査中の女子教育職員出産に際しての補助教育職員確保に関する法律の一部を改正する法律案は、ただいま発議者全員より撤回したい旨の要求がございました。これを許可することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 中野文門

    委員長中野文門君) 御異議ないと認め、本法案撤回を許可することに決定いたしました。   —————————————
  5. 中野文門

    委員長中野文門君) 次に、教育文化及び学術に関する調査中、産休補助職員に関する件を議題といたします。  本件に関しましては、理事各位並びに各会派の方々と協議を行なってまいりましたが、今回、お手元に配付してありますような改正草案につき、意見の一致を見ましたので、この際、御審議を願いたいと存じます。  なお、本草案趣旨は、実習助手出産の場合について他の女子教育職員の場合と同様に、職員臨時的任用を行なえるようにしようとするものであります。本草案に対し、御質疑、御意見等がございましたら、御発言願います。   〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 中野文門

    委員長中野文門君) 別に御発言もございませんようですから、本草案は確定したものと認め、本草案を、女子教育職員出産に際しての補助教育職員確保に関する法律の一部を改正する法律案として、本委員会から提出することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 中野文門

    委員長中野文門君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、本会議における趣旨説明内容につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 中野文門

    委員長中野文門君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。   —————————————
  9. 中野文門

    委員長中野文門君) 次に、教育職員免許法の一部を改正する法律案(参第三号)、教育職員免許法の一部を改正する法律案(閣法第一二九号)を一括して議題といたします。  両法案については、提案理由説明は聴取しておりますので、これより質疑に入ります。御質疑のおありの方は順次御発言願います。
  10. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 大学学術局長はどうしておられますか。
  11. 蒲生芳郎

    政府委員蒲生芳郎君) 本日病気で欠席しておりますので、村山審議官からお答えいたします。
  12. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 本日の議題になりました免許法の中で、社会党提案法案は、前国会あるいは休会中におきましても、その意図するところの正当性から、たびたび文部省に折衝してきたことは御承知のとおりですが、社会党が二月一日に本案を提出するまでに対しての文部省としての私どもが出しておる法案に対する研究ないしは具体的な措置に対する経過の概略を説明願いたい。
  13. 村山松雄

    説明員村山松雄君) 社会党提案教育職員免許法改正は、盲学校聾学校養護学校に勤務する教員について、この者の所持する基礎免、すなわち小学校中学校高等学校の各相当の免許状上進する場合の経験年数に通算することを内容とするものでございます。この点につきましては、従来、免許状上進について基礎となる経験年数は、教員の職の専門性にかんがみて、上進しようとする免許状と同種の学校経験でなければならない、こういう原則でできておったわけでございまして、これを盲聾養護学校に勤務しながら小中高等学校経験年数を通算することは、専門性にかんがみていかがであろうかということで、きわめて慎重に取り扱ってまいったわけでございます。しかし半面、盲聾養護学校教員の実態にかんがみますと、その者の上進する基礎免が必ずしも一級免許状でない場合が多うございまして、また盲聾養護学校等特殊教育の普及に伴いまして、これら特殊教育学校と、それから小学校中学校高等学校等、普通の学校教員人事交流必要性も高まってまいりまして、教員専門性確保をしなければならない必要性もさることながら、教員資格につきましても、普通学校特殊教育学校との間の交流を認めさせる必要性も高まってまいりまして、専門性確保とそれから人事交流の原理、それから本人の資格上進意欲奨励、そのようないろいろな政策的な配慮とのバランスをいかにすべきか、各方面意向を聞きながら検討をしてまいった次第でございまして、その結果、文部省といたしましては、特殊教育学校勤務者について、単に教諭のみならず、実習教員実習助手も含めましてその所持する基礎免許状上進について、特殊学校経験年数基礎免上進の場合の経験年数に通算することが、教員人事行政等円滑性確保するために、専門性比較考慮をいたしましても配慮をすることが必要であるという結論に達しまして、社会党の御提案改正案よりも、さらに一そう人事交流便宜という観点に着目した改正案を得まして、御提案したような経過でございます。
  14. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 本国会中のいつごろ別表三の改正意図を明確にされましたか。
  15. 村山松雄

    説明員村山松雄君) いつという日時であれば、結局いろいろな経過はございますが、法案閣議決定を経まして国会に御提案したときをもちまして改正について政府として踏み切ったということになると思います。
  16. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 免許法については、少なくとも大学局においてはかなり固まった意思として、別表三、第五の意思を持たないで、十六条の一項に二項を追加挿入していくという意図をもってずっと進んでまいっておられたはずです。私ども官房長を通じて、文部省免許法改正意図内容について、具体的に、これはきわめて非公式な意向でありましたけれども社会党法案を態度決定する必要があるので、文教部長として政府免許法内容を知りたい、こういう問い合わせをしましたところ、単なる口頭でなくして、それは非公式のものであったにせよ、印刷のものとして十六条二の修正意思表示されたわけですね。この免許法改正意図別表三ないし別表第五の改正という方向に変わられた時期はいつですか。
  17. 村山松雄

    説明員村山松雄君) 今回の教育職員免許法改正の動機は、御指摘のように、三十九年度の予算でお認めいただきました高等学校の特別の技能教科に関する検定試験制度を制度化する必要に基づきまして、十六条の二の改正内容とするものを考えておるのでございます。そのようにいたしまして、教育職員免許法改正案を出すということになりましたわけでございますが、それに関連いたしまして、ほかに、あわせてこの際改正する必要がある部分があるだろうということをいろいろ検討してまいった結果、かねて、先ほど申し上げましたようなことからいたしまして、教員専門性という点からは例外にはなりますが、人事交流便宜、あるいは特殊教育学校に勤務する教員資格上進意欲奨励というような角度からやったらどうかというお話もございました。経験年数の通算の問題を、法案提出の最後的な段階で加えることに踏み切りました次第でございまして、いつという日時は必ずしも正確ではございませんが、法案提出の最後的な段階でつけ加わったというのが経過でございます。
  18. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 社会党免許法改正案は、二月一日に正規に提出をしておりますね。それから、二月二十七日に二木委員質問が行なわれている。政府提出案は三月四日ごろになっておるはずです。で、私ども法案提出意図を持っていろいろ検討を加えておる段階で、文部省免許法改正意図を聞いたわけです。私どもとしては、常に社会党がみずから提案して、それを通過していくということだけを立法ないしは法律改正の真の目的としていなくて、あるいは与野党一緒になって共同提案することもあれば、私ども考えておる意図行政府みずから出していただく、これも決して必ずしも否定するところでない、こういう判断に立って文部省免許法改正意図について、これは委員会の席上でないですから、あくまで非公式な話ですが、聞いて、その意図がないということだったので、二月一日、私ども社会党法案提出を行なった。しかも、二月二十七日、提案責任者米田君と中途から、私、交代をいたしまして、二木委員質問に対して答弁をしたのですが、二木委員は同時に担当養成課長安養寺君にも質問を行なっておるのですが、この二月二十七日の時点においても、私の、いま村山課長が、人事異動円滑化に資するためこのことを力説したにもかかわらず、安養寺課長答弁は、そのことを基本的に否定し、この法案の精神に、わからないことではないけれども、理解はできるけれども、賛成をいたしかねるという立場に立った答弁をしておる。ところが、三月四日、突如として、そうしたいきさつを無視して、私どもの出しておる法案そのままが一部に取り入れられた政府免許法改正案が出されてきた、こういういきさつですね。私としては、その関係方面からの要請もありましたのでと、こういうことですが、少なくとも二月一日以降、社会党法案提出して以来、文部省に対して、免許法改正の中に社会党が多年主張しておったものを入れてもらいたいという意思表示をしたことはないはずです。二十七日まで文部省にその意図がなかったのに、関係方面からの意図を聞いたというのは、こちらの方面からの意向をくみ入れて、社会党提案の一部を断りもなくそのまま——私に言わせると盗用と言いたいのですか、盗用をすることによって、文部省が従来意図してきておった免許法改正と抱き合わせて出したという、その真意と経過をもう少し詳しく説明していただきたい。
  19. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) この問題は私がお答え申し上げたほうがよろしいと思いますが、この免許法改正につきまして、事務当局の間でいろいろ案を練っておったわけであります。最終的に私が決定をするわけでございますが、その間におきまして、国会においては社会党皆さん方のお考えがあり、また、党段階におきましても、いろいろ相談いたしました結果、最終的に私のところで、皆さんのお考えもけっこうである、かように考えまして、政府案として取り入れましたようなわけでございます。そのようにひとつ御了承いただきたいと思います。
  20. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 これはあなたからそういう答弁はなさらぬでも、責任大臣にあるのですから、あなたがそう判断したとおっしゃるならば、それは答弁としてはまことに形式的には整然とした答弁です。しかし、議事録を一々ごらんいただかなくとも、私がまた長い、数ページにわたる議事録を読み上げなくてもおわかりのように、私が文部事務当局と折衝してきたのはあくまで非公式な話し合いです。これは私どもとしては、前国会からこの法案を出しておったいきさつから、また、先ほども述べたように、私ども提案の主体をとらなくとも、文部省自体改正するということも、この前にはけっこうである、こういう立場に立って話を進めてきておったわけです。ところが、二月二十七日、すなわち政府提案の数日前までは、これは安養寺君は課長であるから、文部大臣が答えていないから責任を持たないとは、従来の答弁上からはおっしゃらないわけですね。担当養成課長は、私ども主張しておる別表第三項の修正に対しては否定的な答弁二木委員にしておるのですよ。それから突然、三月四日ですか、法律案が出されてきている。これは大臣判断をしたという形式的な答弁で私どもとしては了解しがたい。まあ審議に入っていないで、一方出された、そのことについて自民党社会党の間でいろいろと話が進められておる。その間に、これは行政府から、自民党あるいは文部省考えておることも一緒にして、出しましょう、こういうことは例のないことでもないし、また、時と場合によっては肯定できることですよ。ところが従来、以前の国会から提出をしてきておる、そのことに対して、本国会において、免許法改正についてはどういう意図を持っているか、これこれですと、そこで私も出して、しかも数日前の審議の際には、やはり盲聾学校という専門性は尊重していきたい、私が人事交流円滑化のためにもこれは必要であると主張をしたにもかかわらず、養成課長答弁は、そのことによって盲聾学校教員確保に若干の不安を感じる、国会において、少なくとも二十七日までは、反対と論断するにはいささか強過ぎますけれども、少なくとも賛成的な答弁は行なっていない、そういう経過をとりながら、すでに国会審議中の法案の一部を、行政府が、そのまま何らの話もなくして——権限としてはあり得ることでしょうが、自分たちの従来から意図しておった法案社会党の多年主張している法案をいきなり抱き合わせて出してくる、これは私は相互の、行政府立法府権限問題は抜きにして、何といいますか、委員会審議されている法案行政府が出すという場合には、別のものがくっついておるから、別個の法律ですとは形式的には言えても、手続上は私は好ましくない、こういうことが、たびたび行わなれておったのでは、私は行政府立法府関係においては好ましくない状態が出てくる、こう思うのですが、そのことに対する大臣の見解と、なぜ二十七日以降、突如として三月四日に至るまでの間に、四、五日の間に文部省の態度が変わったのか、その両方について、大臣または審議官答弁をお願いします。
  21. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 二十七日ということでありますが、それまでの事務当局考えは、課長からお答え申し上げましたとおりであったかと思います。その後の問題であります。つまり事務当局考えておりましたものに対しまして、私ども段階で、各方面のこれまでの御論議、御要望等をかれこれ勘案いたしまして、そういう筋を政府案として取り入れることが適当でないかというので、私ども段階でそのようにいたしたわけでございます。この点は事務当局としては、当初そういう考え方でもって進んでおったと思うのでありますが、最終段階においてそういう決定を下した、こういうふうにひとつ御了承をいただきたいと思うのでございます。なお、政府といたしましては、よそさんの考え盗用するという考えは毛頭ございません。ただ、他の方面のお考えにいたしましても、これはけっこうである、取り入れたほうがよろしいというような考えのもとに、むしろそういう考えを尊重する意味において、政府もまた取り上げた、こういうようにお考えをいただきたいと思うのでございます。その間、あるいは御連絡等に欠けるところがあった点がありますれば、これは私ども遺憾の意を表したいと思いますが、心持ちとしましては、皆さんのお考えにいたしましても、政府法案提出する段階において、これを尊重して取り入れるというようなことも、あわせて御了承をいただきたいと思うのでございます。要は、いきさつもいろいろあったようでありますが、事務当局考えておりましたものが最終段階において、私ども手元で、そのような考え方が入ってきた、このように御了承を願いたいと思うのでございます。
  22. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 大臣形式一点ばり答弁については了解できませんね。そうすると、なるほど、私、速記録を見てみたのですがね。二月二十七日には、説明員安養寺重夫君と書いてあって、文部大臣の名前が載っておりません。そうすると、この日の答弁は、事務当局のひとりよがりという、ことばはちょっとあれですが、とにかく事務当局のかってな答弁で、大臣のあずかり知らないところであると、こうおっしゃるなら私はわからぬでもないのです。少なくとも事務当局が、二月二十七日の段階までは、そのことを採用することによって諸種の問題が起こってくるから、研究はしていくけれども、まだその段階ではないと、こういう答弁をしておるのを、事務当局が何か言ったか知らぬけれども文部大臣責任において、いままでの御主張を尊重したのだからありがたく思いなさいと、私は率直に言わせていただくならば、議事録のつかないことを前提にして言わせていただくならば、そういう答弁は盗人たけだけしい言い方である。少なくとも以前の国会から私ども法案提案して、委員会審議を通じてもたびたび主張してきておるところを、委員会の席上においてもずっと否定をしてきた、そうしてその前においても出す意思がないと言い、二十七日の段階まで好ましくないと言ってきておるのですよ。それが事務当局考え方であって、大臣のところで、君らの主張も取り入れたのだと、これが国会が始まる前、あるいは最小限度譲歩して、社会党法案審議に対する説明員答弁がない前ならばまだわかります。答弁の中で否定的な立場をとっておるのに、それは大臣の出席しない、説明員答弁だからあまり気にするなと、こういう言い方をなさるつもりですか、二十七日の答弁は。
  23. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) そういうふうな御無礼な考え方はいたしておりません。その当時まで文部省事務当局としてはそういう考えを持って進んでおったと、私はこのように思うのであります。その後、最終的に文部省法案決定するに際しまして、いろいろな方面の御意向等も十分勘案いたしまして、取り入れたほうがよかろうという裁断を下したのは私でございます。事務当局は決していいかげんなことを申し上げておるのじゃないのでございまして、当局といたしましては、そういう考えを持っていろいろ検討しておったわけでございますが、その後の問題というふうにこの点はひとつ御了承いただきたいと思います。決していいかげんなことを申しておったとは私は存じておりません。われわれの段階で、こういうふうに直したほうがいいのじゃないか、また、皆さんのお考えも取り入れたほうがいいのじゃないかということでやり出しましたことであります。また、社会党さんのものを盗むとか盗まぬとか、そういう心持ちは一切ございません。いろいろ勘案した結果、われわれもこれを取り入れて、そうして案をつくったほうがよろしい、こういうことにいたしましたようなわけでございまして、ですから一応御了承願いたいと思います。
  24. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 大学局長がいませんから、きょうの審議としてはまことに残念ですがね。二十七日の説明員である安養寺君の答弁に対しては、大臣として責任を持つ、こうおっしゃるわけですね。そうして三月四日に政府提案がされたことも、これは事実ですから認めなければならないでしょう。しかも私ども法案審議していただく際には、理事会を通じていろいろお話をいたしましたり、質問をしていただく二木委員に対しても事前の折衝をいたしております。三月四日に出されるまで、与党である自民党皆さんからも、社会党趣旨もけっこうなところがあるから、この際、政府が出すことを予定しておるものの中に君らの意向を取り入れて一緒に出させるよう努力しようというお話も全然あっていない。与党がもし社会党の出しておる法案を取り入れようという善意意図があったとするならば、社会党が出しておって審議しておる法案に対して、一言半句の事前了解がないということは、これは両党間にとってもまことに非礼な話です。ましてや行政府審議されておる法律案の一部をそのまま取り入れていくとすれば、権限抜きにして、これも一緒に入れたいと思う、すでに審議されておるけれどもと、このくらいの相互事前了解があることのほうが私は当然だと思うのですが、大臣は、その趣旨さえ生かされておれば、審議中の法案を一部行政府が採用してやっていくことは善意であるから了解しなさい、こういう考え方議員の出しておる法律案というものをながめていくつもりですか。
  25. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 私は政府政府として法律案提出いたします場合に、いろいろのことを考慮して決定をしなければならないと思うのでありまして、御承知のように、われわれが法案提出いたします場合には、部内において検討をいたしますと同時に、与党諸君にもいろいろ御相談をいたしておるわけであります。それと同様に、ほかの意見につきましても、けっこうだと思うものがあればそれを取り入れることは何ら差しつかえないことだと私は思うのであります。ただ、いま豊瀬さんの仰せになりましたように、あるいはその間の処置につきまして御了解を得るとか、あるいはごあいさつをするとかいうふうな点において欠くるところがあって、それがお気にさわるということでありますれば、この点はおわび申し上げたいと存じますけれども、私どもとしましては、法案提出するまでにいろいろな事情、いろいろの要望意見等も十分勘案いたしまして、よりよきものにしていくという努力はなすべきではないか、このように考えておる次第であります。今回の場合は、事務当局はそれで進めておったのでありますけれども、その後の段階におきまして、与党諸君の御意向もあり、またわれわれも考えまして、この際これを取り入れたほうがよかろうというようなことで取り入れた次第であります。手続上その他におきましてお気にさわるような点がありますれば、今後十分気をつけたいと思います。
  26. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 私が言っておるのは、ことばは少し強かったのですが、あなたたちから断わりを言ってもらいたい。そうすればすなおな気持になって審議しましょう、こういうことを言っておるのじゃない。たびたび言っておるように、きちんと割り切ってしまえば、議員が出しておる法律案の一部を行政府がそのまま取り入れて出すことも違法でもなければ何でもありません、それぞれの権限に基づいてやることですから。しかし基本的なあり方として、すでに特に野党が提出し、そのことに対して審議に入っておるこの法律案を、行政府がそのまま一部として出していくというようなことは、話し合いがついてやるべきことが望ましいことではないか。黙って、それは行政府がその主張は取り入れたのだからけっこうなことではないかという、当然のあり方という割り切り方をされるならば私は異論があるのであります。たびたび言いますように、事前話し合いがついて、野党が多年主張しておったことを行政府から出していただくことは、これは私どもとしては喜ばしいことです。また途中で話し合いがついて、行政府提案とするか、与野党の提案とするか、いろいろの取り扱いはありましょう。しかし審議しておる法案を、与党諸君意向もあって、こうおっしゃるけれども与党諸君からは、少なくとも提案者の社会党には、文部省のほうに出されるように努力しておるということは一言半句もなかった。私は参院の自民党皆さん意向がどこにあったかわかりませんけれども審議してもらうまでにたびたび会合しておるけれどもその意思表示はなかった。したがって、私としては二十七日まで文部省は反対しておって、突如として三月四日に出したということに対してどうしても釈然としない、これが一つ。と同時に、基本的なあり方として、与野党いずれにしろ、立法府において議員が出している法律案行政府がそのままほかのものと抱き合わせていく際には、最小限度、相互事前了解ということが当然のことではなかろうか、このように思うのですが、このことに対しては大臣はどう考えられますか。
  27. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 決して悪意でやったわけでも何でもないわけでございます。私どもはただ皆さんの御論議、皆さんの御意見等を通じまして、これを政府案としても取り入れて御審議を願うということがよかろうということでやりましたわけでございますが、いま仰せになりましたような点につきましては、もっとよく御連絡もし、御了解も得て進めるほうが、少なくとも誤解は生じないというふうに思いますので、十分今後気をつけてまいりたいと思います。
  28. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 今後そういうことのないようにしていきたいとおっしゃるので、いきさつについてはそれで終わりますが、与党と野党の場合は、同じ立法府行政府という関係の中におきましても異なると思うのです。したがって、社会党の出しておる法律案をいま審議に入って、行政府としては反対的な意思表示をしておるものを、突然そのまま一部として採用していくということは今後絶対に行なわれないように御留意願いたいと思うのです。大臣はそこまで検討されたかどうか、人の腹を推測するのは失礼と思いますが、少なくとも文部事務当局には、文部省が出すことを予定しておった十六条二の追加挿入条項については社会党は反対であるということは承知しておったはずです。その社会党の反対の法案を従来出そうとしておって、社会党国会にたびたび出してきておる法案の一部を抱き合わせて出したということは、幾ら私どもに、善意だからそうひねくれて考えないで善意考えてくれとおっしゃっても、反対法案を通過させるために社会党の出しておる法案を抱き合わせてやったと私ども考えることは、ごく普通の判断じゃないでしょうか。いきさつについては了解しましたけれども、そういう意図があったかないかという愚かなことは聞きませんけれども、私どもとしてはそういう考えに立たざるを得ない、特にこの法案については、以前、官房長、総務課長を通じて、文部省免許法改正のことについて私はたびたびただしてきており、その結論を私どもの部会に報告して、社会党はこの法案を出すことに結論を出したわけです。そういう経過を踏まえてみますと、文部省の今回とった措置は、大臣がいかに、事務当局段階ではそうであったろうけれども大臣段階で合意的にやったのだ、こうおっしゃっても、私どもとしてはすなおに理解するわけにはまいらないわけです。今後、私ども法案提出の際に、どの程度まで与党皆さんあるいは行政府とが相互善意立場に立って連絡していくかは今後の課題でしょうが、自後、こういった事態が再度行なわれないように十分御注意を願いたいと思います。  そこで、本論に入りまして質問に入ります。
  29. 中野文門

    委員長中野文門君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  30. 中野文門

    委員長中野文門君) 速記を起こして。
  31. 野本品吉

    ○野本品吉君 教育職員免許法の一部を改正する法律案につきまして二、三質問を申し上げたいと思います。  政府提出のこの法案は、特別の高等学校教諭免許状の制度を設けるということと、それから盲聾、養護の在職年数が資格付与のすべての場合に同様に適用され、扱われると、この二つの内容になっていると思います。それで、最初の特別の高等学校教諭免許状の制度を設けることにつきましてまずお伺いいたしいたと思います。この法案の第十六条の二の一項の四号に、省令で定めるという受験資格、実施の方法、これらは大体どのように構想されておるかということについて御説明いただきたい。
  32. 村山松雄

    説明員村山松雄君) 省令では、まず検定試験の科目を柔道と剣道と計算実務を予定しております。この三つについてやるということは省令段階で明らかになるわけでございます。これは予算との関係もございます。あと省令で書きますことは、たとえば試験の期日ですとか、あるいは場所、出願の手続等の細目的な事柄でございます。それから試験の手数料といったようなものも省令で書く予定です。それから試験の方法につきましても省令段階で明らかにいたしたいと思っております。やり方といたしましては、柔道、剣道、計算実務といったものについて行ないますので、これらの事柄につきまして、学識経験のある大学の教授あるいは実務家等に文部大臣が試験委員を委嘱いたしまして、この方々によりまして受験者の人物、学力、実技等を判定していただく、その判定は、事柄が実技的なものでございますので、省令で形式的な基準を書くことは困難ではなかろうかと考えておりますので、最終的な判定は、委嘱いたしました委員の方々の合議の結果に基づいてきめる、合議の結果、合格すべきものときめられた者につきまして、文部大臣が合格証書を授与する、こういうことを省令で規定することを予定しておる次第でございます。
  33. 野本品吉

    ○野本品吉君 さしあたっては、柔道、剣道、それから将来はタイプライターであるとか、そういう一般の学校でもあまり教育をしておらないようなものに広げていく、こういうことですか。
  34. 村山松雄

    説明員村山松雄君) 大体仰せのとおりでございます。重ねて申し上げますと、今回の改正趣旨は、一般的に教員資格付与を検定でやっていくというほどのかまえではございませんで、あくまでも教員養成は、若干の例外はあるけれども、大学の課程を通じてやっていくという原則は維持していきながら、その原則については、どうしても現場の需要を充足できないもの、たとえば高等学校の教科内容が最近たいへん拡大いたしまして、実技の面につきましては、なかなか大学で養成しにくい事情がございます。そういうものについてやっていきたいということでございまして、今回、柔道と剣道と計算実務とをそのような性格のものとして取り上げたわけでございますが、今後の問題といたしましては、音楽ですとか、タイプライティングですとか、簿記あるいは書道といったようなものが、高等学校の現場からの御要望がございますし、私どもといたしましても、将来でき得ればそういうものについて拡大していきたい、かように思っております。一般的な普通教科まで検定を広げる考え方は現段階ではございません。
  35. 野本品吉

    ○野本品吉君 それで免許法の第一条にあります教職員の免許に関する基準を定めるということ、それによって資質の向上をはかるということに第一条ではなっておりますが、この免許の基準をどう設けるかということについては、特殊な技能であり、特殊な事柄であるだけに、なかなかめんどうだと思うのですが、そういう基準の設定について御研究になっておりますか。
  36. 村山松雄

    説明員村山松雄君) 教員資格付与の基準は、御指摘にもありますように、現行法の第一条によりますれば、その精神を受けますと、大学における修業の年数と、それから修得した単位の数と種類によって基本的には資格付与をなすというたてまえになっております。ところが、今回考えておりますような実技に関する科目につきましては、そのような大学における修業年限や修得単位という形における基準にあてはまらないという実情がございますので、先ほど御説明申し上げましたように、この判定基準はそういう形式的な基準ではなくて、これらの科目についての学識経験のある大学教授その他の方々を委員に委嘱いたしまして、委員の方々が面接、あるいは口頭、あるいは実技の試験をやる、その結果を試験委員の方々が合議をしてきめる。率直に申しますと、やや主観的な判断にお願いせざるを得ないのではなかろうか、かように考えております。
  37. 野本品吉

    ○野本品吉君 この基準の設定は、相当私ども考えましてもむずかしい、また、めんどうなことだと思いますけれども、やはりできるだけ慎重綿密な御検討をいただいて実施をいたしませんと、将来、検定制度そのものに混乱を起こすのじゃないかと思うので、私は基準の設定につきましては、ぜひ綿密な研究を願って進められるように希望を申し上げておきます。  その次にお伺いいたしたいことは、今度新しいそういう特別な検定が行なわれるのだから、検定の問題に関連してでありますが、第五条の一項第二号のただし書きの「、文部大臣において高等学校を卒業した者と同等以上の資格を有すると認めた者を除く。」云々と書いてありますね。教員資格の場合ですね。そのために大学の入学の資格検定と申しますか、それが現在行なわれているわけですね。これはこの法律と特別に関係がないように思いますが、私は検定ということで関連さしてお伺いしたい。大学入学の資格検定は年々どのくらい受験者があるか、どのくらいの合格者が出ているかということです。
  38. 村山松雄

    説明員村山松雄君) 大学入学資格検定試験は、初等中等教育局の所管で、各都道府県を会場として毎年一回実施しております。私、所管が違いますので正確な数字を記憶しておりませんが、受験者は、たしか二、三千名、それから合格者は一割ないしそれ以下、必ずしも非常にたくさんの受験者があり、たくさんの合格者を出しているという状況ではないように記憶しております。正確な数字は、後刻調べまして御説明申し上げます。
  39. 野本品吉

    ○野本品吉君 その合格者の中から大学へ入学するものがあるはずですね。特にこの点は、私がお聞きしておりますのは、この大学入学の資格検定に合格した者で、それで大学へ行く人が育英会の、つまり奨学金の貸与にどの程度恩恵にあずかっておるか、それはわかりますか。
  40. 村山松雄

    説明員村山松雄君) これも正確な数字は承知しておりませんけれども、育英会の奨学生の採用にあたりましては、高等学校在学生、高等学校卒業者と、それから大学入学資格検定試験合格者は全く平等に扱われております。したがって、採用者も必ずあるわけでございますし、大学に入学する者もございます。たいへんばく然たる記憶で恐縮でございますが、ことしのたとえば東京大学などの合格の発表の中にも、検定試験合格者という名前が二、三あったように記憶しておりますので、必ず、むしろ検定に合格した者は相当数が大学に入っておるんじゃないかというぐあいに想像しておる次第でございます。
  41. 野本品吉

    ○野本品吉君 これは大臣にお考えいただきたいのですが、私はこの試験に合格した者こそ、実にいわゆる苦学力行の士であると思うのです。したがって、これらの苦学力行の士が大学へ上がった場合には最も優先的に育英会の奨学資金というものを貸与すべきじゃないか。これは各学校からもいろいろ推薦があるわけでしょうが、その者たちに優先して、これこそ奨学資金を貸与すべきじゃないかという考え方を持っているのですが、これは大臣いかがですか。
  42. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 仰せのとおりに、非常な努力をしてそれだけの資格を得て大学に入ったわけでございますから、そういう人たちの育英奨励につきましては、十分な配慮をもって考えていくのが適当であろうと思います。
  43. 野本品吉

    ○野本品吉君 私はこの点を特に大臣にお願いしますのは、一般の大学の卒業生は学校その他から奨学金の貸与についていろいろとあっせんしていただけると思うんです。これらの資格検定の合格者に対してはそういう世話をしてくれるものも少ないであろう。したがって、本人から希望の出た場合にはそれらの点を十分考慮されて、親切にあたたかい手を伸ばしていただきたいということを申し上げておきます。  次に、盲学校聾学校養護学校の在職年数が資格上進のすべての場合に同様に扱われるようになりますことは、私どもまことにけっこうなことであると思っております。そこで、この対象人員というのはどれくらいありますか。
  44. 村山松雄

    説明員村山松雄君) 対象人員と申しますと、結局、盲学校聾学校養護学校に勤務する教員で、二級免許状以下の基礎免許状を持っておる者、こういうことになります。そういうことになりますと、おそらく盲聾養護学校勤務者のほとんど大部分ということになろうかと思います。正確な数字は記憶しておりませんが、現在、盲聾養護学校合わせまして教員数が約一万名近くございますので、それの七、八割が該当するんじゃなかろうか、かように想像いたします。
  45. 野本品吉

    ○野本品吉君 なお、それと関連してでありますが、この盲学校聾学校養護学校等の学校種別に見ました教員の需給の状況、充足の状況ですね、資格者の。これはどういう状態になっておりますか。
  46. 村山松雄

    説明員村山松雄君) 現在、特殊教育学校教員資格といたしましては、基礎免許状と特殊免許状と二つが必要になっております。しかし、暫定的には特殊免許状を持たなくても、特殊教育学校教員になれるわけでございます。したがいまして、この特殊教育免許状まで持っているという角度からこの需給を考えますと、若干窮屈でございますけれども、そういう暫定措置もあわせて考えますと、一般の学校教員特殊教育学校に回すこともできるわけでございますので、問題は、資格の面よりはむしろ進んで行くものがあるかどうかという角度から、この需給の問題が窮屈であるかどうかということになるわけでございます。現段階では特殊教育学校は特別の奨励措置を講じて増設をはかっておりますが、教員の供給が非常に窮屈であるというぐあいに聞いておりません。
  47. 野本品吉

    ○野本品吉君 最近、特殊教育の問題が非常に重要視されてきただけに、教員の需要も相当ふえてきておるだろうと思う。そこで、これらの学校の有資格者の充実のぐあいと申しますか、割合というものは、一般の幼稚園、小学校中学校に比べて悪いのではないかと私は想像しているわけなんで、それはどうですか、一般のものと比較して。
  48. 村山松雄

    説明員村山松雄君) 特殊教育学校におきまして、基礎免許状の面から見ますと、一般の小中高等学校に比べまして、一級免許状を持っておる者が少ないのは事実のようでございます。したがいまして、特殊教育学校教員構成は、一般の小中高等学校に比べまして、必ずしも充実しておる状態ではないというぐあいに見てもやむを得ないような実情だと思います。
  49. 野本品吉

    ○野本品吉君 その一般の学校よりも、教員の充実度合いというものが低いというところに、私はこの法案の持つ重大な意味があろうと思う。そこで、特殊教育学校教育に従事している者に対して、その在職期間を全部通算するということになったのでありますが、そういう関連において、特殊教育の問題について若干私はお伺いしたいと思う。で、現在盲人、それから聾唖者、精薄、肢体不自由、病弱あるいは虚弱の子供の出現率というものは、これは古いあれでありますが、文部省の統計で見ましても、盲人が〇・〇七%、聾唖者が〇・二五%、精薄者は四・二五%、肢体不自由者は〇・三四%、病弱、虚弱の者が一・三五%、こういうことが文部省のいままで出しました資料にあるわけですね、そうして、小学校中学校への就学の子供の数を、これらの出現率によって計算すると、盲人が一万三千、聾唖者が二万三千九百、精薄の者に至っては七十八万一千、肢体不自由児が六万二千五百、虚弱者、病弱者が二十四万八千、合計いたしますと百十何万という、二、三年前の古い統計でありますけれども、そういうものが出ておるわけです。そこに私はこのいままで見落されがちであった特殊教育というものをもっと重大な問題として、文教という角度からばかりでなしに、福祉国家の建設といろ大きな政治目標から考えて、それらの百万をこえる気の毒な人たちにどのようにしてあたたかい教育の手を伸ばすか、どのようにしてこれらの人たちを守っていくかということを、教育、文教の角度からもっと重要視して考えていかなければならぬのじゃないかと思う。このことについては文部省も一応の計画をもって、特殊教育の充実向上のために進まれておるようでありますが、全国的に見まして、こういう大きな立場からの特殊教育というものが、文部省が現在持っておる四十一年度とか、四十三年度までにこうするという計画に照らして、全国的にそれがどういうふうになっているか、おわかりになっていたら御説明いただきたい。
  50. 村山松雄

    説明員村山松雄君) 特殊教育の振興につきましては、初等中等教育局におきまして、大体こういう見方をしております。盲児、聾児については、大体出現率も安定しておって、これ以上ふえることはないであろう。それから就学率につきましても、現在、盲学校聾学校で十分とは申せないまでも、ある程度普及をしておる、したがって、盲聾学校につきましても、もちろん振興をはかりますが、さらに重点的には、出現率が現在すでに多く、かつ、むしろ今後さらにふえるのではなかろうかと思われる精薄児とか、あるいは肢体不自由児の教育の振興に重点を置いてやっております。やり方といたしましては、各都道府県に少なくとも一つ以上の養護学校をつくること、それから精神薄弱児につきましては、これは数も大へん多うございますし、それから必ずしも養護学校という単独な学校でやらなくても、普通の学校に特殊学級を設けて、特別な教育を施せば、ある程度特殊教育の効果が上がるという考え方に基づきまして、特殊学級の増設普及を特別の補助奨励の措置を講じていまやっておるわけでございます。これに対する教員確保対策といたしましては、その国立の教員養成を主たる目的とする大学におきまして、全部ではございませんけれども、若干の大学に、これら盲教育、聾教育、それから精神薄弱児教育のための特別のコースを設けまして、特殊教育免許状を持った基幹教員の養成をやっております。この養成は、まあ大体初等中等教育局の養護学校及び特殊学級の拡充計画に合わせまして、逐年ふやしてまいっております。現在、大体何とか需要をまかなっておる実情でございます。そういう次第でございますので、先ほど申し上げましたように、特殊教育学校では、現在でも普通の学校に比べまして助教諭の率が高くなっておりまして、教員構成は必ずしも十分ではございませんけれども、最近拡大してまいっておりまして、これが教員養成の新しい大学で特別のコースを設けてやっておりますので、新しい大学の卒業生が入っておるという角度から見ますと、特殊教育の分野はある意味では充実しておるということもいえます。まあ今後、学校及び学級の増設計画と支障を来たさないように、教員養成のほうも逐年拡充あるいは内容の充実につとめてまいるように、いろいろの方策を関係の大学とも十分話し合いまして進めていきたいというぐあいに考えております。
  51. 野本品吉

    ○野本品吉君 これは大臣にお伺いして御意見を承わっておきたいのですが、一般的にいままでの傾向からいいますと、教育といいますと、すぐ幼稚園、小学校中学校高等学校、大学のことに頭が向いてしまって、そして気の毒な百何十万という盲聾、精薄その他のほうへの向け方が足らなかったということは言えると思うのです。そこで、ぜひ今後の問題といたしまして、この盲聾、養護、精薄、病弱、これらの子供たちをどうしたらば救って、守っていくことができるかということに、大きな教育的な関心を持つように文部省自体毛お考えをいただきたいし、それから地方の各府県に対しても、そういう角度で力強い指導をしていただきたいと思うのです、府県によりましては相当関心を持ちまして、たとえば神奈川のごときは、この種の問題について相当な金を出して取り組んでおるようでありますが、一般的に見ますというと、このことは忘れがちになるので、将来そういう方向へひとつ強力な文教行政の推進ということをお考えいただきたいと思いますし、もう一つ、私は青少年の問題に多少の関心を持っておるのですが、たとえば婦人の教護院へ行きまして——これは主として売春法によって検挙された者が多いのですが、そこへ行くと、半分以上は精薄なんですね。それから少年院その他におきましても、いわゆる青少年の非行対策として打ち出されておる施設に収容されておる者の相当部分が精薄である、同情すべき人たちだと私は思う。そういうことも考えあわせまして、この面の将来の文教行政というものを一段と高揚をしていただく、全国的にこの機運を高めていただきたいということを心らか念願いたします。同時に、その指導が徹底していけば、もう必然的に盲学校聾学校その他の各種の特殊教育の機関で働いていただかなければならない教育職員と相当数必要とするであろうと思いますので、そういう行政の推進にあわせて、それらのかわいそうな、気の毒な子供を守る人たちの養成、確保についてお考えをいただきたい、こう思うのですが、どうですか。
  52. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 気の毒な児童、精薄あるいは身体障害者、その他きわめて気の毒な状態にある児童、生徒に対する教育、戦前のことを考えますれば戦後はよほどその方向に進んできた、特に文部行政の上でかなり著しく進んできたということは私は言えると思うのでありますが、しかし、実際の状況に対しての教育施設、これはまだまだ不十分だと申さざるを得ないのであります。文部省としましても、ある程度の計画をもって推進しておりますが、しかし、その計画自体がまだまだもっと詰めて考えなければならない点が多々あるように思うのであります。御承知のように、予算の関係毛ありますし、あるいはまた教育に従事する教職員の質の問題、あるいは数の問題、まだ不十分な点も多々あると思うのです。私はやはり今後の文教行政の上で特殊教育というものによほど重点を置いて、そして推進してまいらなければならないと、そういう考え方をいたしておりますが、せいぜい御協力のもとに努力いたしまして、その点につとめたいと考えておる次第でございます。
  53. 中野文門

    委員長中野文門君) 暫時休憩いたします。    午後零時二十一分休憩    ————————    午後一時五十一分開会
  54. 中野文門

    委員長中野文門君) これより委員会を再開いたします。  農業、水産、工業又は商船に係る産業教育に従事する国立及び公立の高等学校教育及び実習助手に対する産業教育手当の支給に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  本法案につきましては、提案理由説明は聴取しておりますので、ただいまより質疑に入ります。質疑のおありの方は順次御発言願います。
  55. 吉江勝保

    ○吉江勝保君 ただいま議題とされました法案につきまして、一、二御質問申し上げます。ちょうどこの法案は、昨年の四十三通常国会でも提案されておりまして、そのときにも、相当、本委員会におきまして詳しく質疑応答がかわされておりますので、重ねて重複いたしますような点は省略したいと思います。  一、二、問題を取り上げましてお尋ねしてみたいと思いますが、第一に、ただいま新たに産振手当てを支給しようとする盲聾唖あるいは特殊教育、こういう方面教育に従事しておりまする教員あるいは助手、こういう教員助手が産振手当を受けられるような科目といいますか、そういう産業教育にいまどのくらい従事しておる教員がおるか。この科目別の大体の教員数というものを一応お聞きいたしたいのであります。
  56. 小林武

    小林武君 ただいま御質問をいただきました件につきましては、盲学校にはその対象になる学科は現在ございません。聾学校に木工科、農業科、機械科、工業科、窯業科、これだけあるわけでございますが、大体教員を、推定でございますけれども、百四十三名、実習助手が十二名、こう推定しておるわけでございますが、これを科目別の資料は持ち合わせないのでございます。
  57. 吉江勝保

    ○吉江勝保君 文部省のほうではわかりますか。
  58. 福田繁

    政府委員(福田繁君) ちょっと科目別にはわかりかねます。
  59. 吉江勝保

    ○吉江勝保君 それでは今後この盲学校聾学校養護学校の高等部において産業指導というのですか、産業教育指導に重点を置いていきたいというのは、発議者はどういうような産業教育をお考えになっていますか。
  60. 小林武

    小林武君 いずれも身体的な欠陥を持った者が対象でございますので、これをまあ従来のままでやっていくということになりますというと、その仕事の領域は非常に狭くなりまして、盲学校であるならばそのほとんどが理療科——あんま、はりとかいうものになってしまうわけでございます。例をちょっととりますというと、盲学校で、総数として二千九百六人の男の生徒がおりますというと、二千八百六十二人がその理療科である、こういうことになっておるわけでございまして、聾学校は比較的科目が多いわけでございますが、これとても他の一般の生徒と同じように社会の広い領域にわたって活動するということは困難な状態でございます。しかしながら、これらの人たちにもできるだけ広い範囲で社会の中で活躍できるように、あるいはその他の養護学校等においても、従来の考え方からすれば就職するというようなことはとうてい考えられないというような者にも、やはり社会において自活できるような方向に努力するというのが今後の特殊教育のとるべき方向ではないかと考えるわけであります。すでに三十六年度、盲学校聾学校におきましても、盲学校の場合には養鶏であるとか、あるいは電気器具とか、ピアノの調律とかいうようなものが岩手、徳島、平塚、札幌、大阪というようなところにできたり、あるいは聾学校でも金属塗装とか、工芸印刷、機械工業、金属加工、窯業が宮城、広島、秋田、長崎と、こういうふうにできておるわけでありますが、こういうようにできるだけ広い領域にわたって活動できるような教育を今後しなければならない。この努力をすれば、こういう身体的な欠陥を持った人たちも、もっと社会人として活躍ができるのではないかと考えるわけであります。そういう意味で、どこらまでということでなしに、なるたけ広げて、適性に応じてその教育によって領域を広げてやりたい、こういう考えを持っておるわけであります。
  61. 吉江勝保

    ○吉江勝保君 将来の職業適性指導というようなことについて、文部省のほうに何か考えておられることがあるかどうか聞いてみたいと思います。
  62. 福田繁

    政府委員(福田繁君) お尋ねの点でございますが、現在、盲学校聾学校養護学校の課程について見ますと、全体の課程の数から申し上げますと、盲学校が八十一課程、それから聾学校が二百十五課程、養護学校が十課程、合計三百六課程となっております。その中で、先ほど提案者からの御説明がございましたが、農、工の課程を持っておりますのは聾学校の一部でございます。それは聾学校の中で農、工合わせまして七十八課程でございます。全体から申しますと、これはいわばこういう特殊教育の面における職業教育の課程としてはまあ一部であり、ことばは悪いのですが、私ども平生申しておりますような特殊学校における、いわゆる主流とでも申しますか、そういう本体ではないというように私ども考えているわけでございます。したがって、私どもといたしましては、この盲学校、あるいは聾学校、あるいは養護学校のような学校の卒業生が社会に出まして、やはりできる限り社会生活を営む上において必要な職業というものをなるべく身につけて、そうして一本立ちできるような教育を受けさせていくということが主眼でございます。そういう点から申しますと、まあ私ども考え方といたしましては、農耕ももちろん大事でございましょうけれども、たとえば盲学校における職業教育といたしましては、養鶏だとか、あるいはピアノの調律、電気器具の組み立てとか、こういうような、最近でも新職業の開拓という意味で、そういうことを奨励してやってもらっております。また、聾学校におきましても金属の塗装だとか、印刷とか、機械工業等も一部含まれておりますが、そういういろいろな新しい職業の開拓と同時に、たとえば、花卉の栽培、それから点字印刷、それからいろいろ藤などによりますところの細工物、それから写真製版といったようないろいろのものがございますが、できる限り広い分野において、それぞれ適当な新しい職業というものを身につけて、そうして社会に出た場合に、できる限り生活能力を継続できるようにというような配慮かういっているわけでございまして、本来まあ盲学校におきましては理療科、あんま、はり、きゅうというものは、これはまあ従来からやっていることでございます。それから聾学校の美容、理容とか、被服というようなものがございます。こういうものが従来からの本体でございまして、盲学校の理療科、聾学校の理容というようなものに加えて、先ほど申しましたような、新しい職業分野というものもできる限り取り入れていきたいというようなまあ方針でもって、各教育委員会と連携をとってこれを奨励しているわけでございます。
  63. 吉江勝保

    ○吉江勝保君 いま新しい職業を開拓して、指導し、教育していこうということに力を入れておられる例を二、三あげられたのですが、そういう教育に実際当たっている教員はどの程度の資格というか、技術というのですか、持った教員を充てておられるのですか。ただ一般の普通の教員でやらしているのですか、特に資格があるのですか。
  64. 小林武

    小林武君 それぞれ普通の高校における資格を持った人たち、こういうことでございます。
  65. 吉江勝保

    ○吉江勝保君 その教員は何ですか、専門的にいうとそれだけを担当するのですか。やはりほかのものと同じように、一般に教育担当しているのですか。
  66. 小林武

    小林武君 これはその農業なら農業、木工なら木工、そういうものを主として担当するわけであります。いまここで提案申し上げておりますのは、それをほんのわずか担当するという場合には、産業教育手当支給規則によりまして手当が支給されないということになっております。だから、いま申し上げているのは、専門的にそのことに従事している教員を対象にして申し上げているわけでございます。
  67. 吉江勝保

    ○吉江勝保君 文部省のほうにお尋ねしますが、いま局長からも幾つかの新しい産業教育を、例をあげておられますが、そういう教育に従事する教員は、やはり専任教員を採用して充てておられるのですか。
  68. 福田繁

    政府委員(福田繁君) こういう面につきましては、専任で、かつ専門の教員でないと十分な指導ができませんので、できる限りそういう教員を充実してやるようにいたします。
  69. 吉江勝保

    ○吉江勝保君 盲学校聾学校、あるいは養護学校等の教員には、たしか調整額がついておると思うのですが、その調整額は、どの方面教育に従事しておっても、全員みんなつけておるのですか。
  70. 福田繁

    政府委員(福田繁君) そのとおりでございます。特殊教育に従事いたしております教員につきましては、全部に八%調整額がついております。
  71. 吉江勝保

    ○吉江勝保君 そうしますと、いまの専門の産業教育手当は、これは発議者のほうにお聞きしますが、もちろんそのほかにそれをつけるということになるのですか。
  72. 小林武

    小林武君 そのように考えております。なお、ダブるというようなそういう考えもありますけれども、たとえば、産業教育手当を受けている者が定時制の手当を受けている、あるいは通信教育に携わっている者が定通手当を受けているというようなことがございますから、これは二つをもらうというように考えております。
  73. 吉江勝保

    ○吉江勝保君 実習助手についてひとつお尋ねしてみたいのですが、この実習助手産業教育手当をつけるときには、この実習助手に何らかの資格でもつけられるのですか、実習助手には全部産業教育手当をつけることになるのですか。
  74. 小林武

    小林武君 先ほどちょっとお答え申し上げましたように、木工、印刷とか、被服、理容、美容、工芸とか竹工、クリーニングとかいろいろありますが、その中で、産業教育振興法によって手当を受けられる者は、木工、農業機械、工業、窯業、これだけでありますが、これの実習助手ということになります。
  75. 吉江勝保

    ○吉江勝保君 そうして、その実習助手資格というものも、やはり他の産業教育振興法の実習助手の場合と同じような資格を認めるのですか。
  76. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 一般の産業教育手当の支給を受ける実習助手の範囲を定めます政令がございまして、その政令によって、その助手の資格というものが一応きめられております。それによりますと、「大学に二年以上在学しその者の現に従事する実験若しくは実習に関する学科若しくは課程において六十二単位以上を修得した者」云々という限定がありまして、あるいは、「これらと同等以上の学力があると文部大臣が認める者で、技術優秀と認められるもの」、あるいはまた、「高等学校において担当実習に関する学科若しくは課程を修めて卒業した者又はこれと同等以上の学力があると文部大臣が認める者で、三年以上担当実習に関連のある実地の経験を有し、かつ、技術優秀と認められるもの」、あるいはまた、「六年以上担当実習に関連のある実地の経験を有し、かつ、技術優秀と認められる者」、こういうようにございまして、一定の学校を卒業した者か、あるいは学校を卒業した経歴がなくても、実地の経験を有しておる者で、かつ技術優秀の者というふうに認められるというような、そういう者に対して産業教育手当を支給するというように、一応、政令ではさまっておりますので、おそらくこの場合でも同様な条件が適用されることだろうと思います。
  77. 吉江勝保

    ○吉江勝保君 大体私の質疑は、この程度でけっこうです。
  78. 中野文門

    委員長中野文門君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  79. 中野文門

    委員長中野文門君) 速記を起こして。
  80. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 吉江委員から言われたように、たびたび出してきておるのですが、私どもはこの種の問題は、諸手当等の制定の際には、いろいろと一時に全部の手当がきまったのではなくして、国家公務員の隔遠地の問題とか、あるいは職務の困難の度合いとか、いろいろの理由で次から次に僻地手当とか出てきたために、今日まで若干バランスは失しておるけれども、やはり同じ仕事に従事しておれば、それぞれの職種に従って手当というのは均等にやられるべきだというふうに主張してきたのですが、文部省が今日までこういうのを手直ししようとしないのは、どういう理由に基づくのですか。
  81. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 特にこういう産業教育手当の支給に関する範囲を拡大するという問題についてのお尋ねでございますが、私どもはこの特殊教育の面につきましては、こういう考え方もあるかも存じませんが、従来からいわゆる八%の調整額、これは先ほど申し上げましたように、特殊教育に従事しておりますところの教員に全部行っているわけでございます。この調整額自体を再検討するという方向のほうが、特殊教育全般に携わっております教職員のために適当ではないかというように考えているわけでございます。また、これらの関係の教職員の間にも、現在の八%の調整額では低いので、これを引き上げてほしいという要望もかなり前からございますことは、豊瀬委員も御承知かと思います。そういう強い要望がございます。したがいまして、一部の人たちのみに行き渡るということでなく、できれば全部の教職員に対しまして調整額等を引き上げていきたい、こういう考え方のほうが先に立っているわけでございます。したがいまして、そういう考え方で、かつて関係省とも話し合ったことがございますが、現在までまだ実現いたしておりませんので、先ほどのお尋ねにぴたり合うかわかりませんが、そういう考え方で従来対処してきたわけでございます。
  82. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 関係方面意見の一致を見ないというのは、予算的な問題ですか、それとも他の手当、公務員等の手当とのバランスの問題が主たる理由になっておりますか。
  83. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 両方と思いますけれども、主として他の諸手当等との関係の問題だと思います。
  84. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 局長が言われたように、八を一二なり一五なりにしていくということは、原則論的に賛成ですが、この法案は、小林委員からたびたび答弁あるいは提案理由説明の際にされているように、特殊学校に勤務する人に手当を出すことによって優遇しようとすることだけがその趣旨ではないですね。産振手当というのは産業教育に従事している人たちに出されている。だから、盲聾学校にも、それのあるところには出しなさいという性格のものでしょう。だから、特殊学校の手当を上げるという問題と、特殊学校というものの中で産業教育に従事している人に対して、特殊学校に対する職務の困難な度合いに応ずる手当とは別に、当然、産業教育に従事しているこの種の人たちには、特殊手当はそれはそれ、産業教育手当は手当として、当然これは別個の性格を持っているので支給さるべきだということですね。だから、引き上げるということとは性格的には異っているわけです。こちらに、この盲聾学校養護学校等の教員等に出さないということは、二重取りになるのだという考え方文部省内にあるのじゃないですか。
  85. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 筋道の議論としてはおっしゃるとおりだと思います。その理屈は、私ども何も否定はいたしませんが、先ほども説明がありましたように、聾学校をとってみましても、約千人ぐらいの教員の中で農業、工業の教育に従事しておりますのは百四十三人くらいでございます。そういたしますと、あとの相当多数の教員というものは、聾学校の理容等の、産業教育ではございませんけれども、そういういわゆる職業教育というものに携っているわけでございます。したがって、学校の中でのアンバランスと申しますか、不均衝というものが生ずるのではないか、こういうような考え方もあるわけでございます。文部省の中にそういう意見があるということではなくして、やはり学校の中においてもそういう意見があることを私どもは聞いております。
  86. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 職業教育に従事している者とのアンバランスを生ずるということになりますと、産業教育手当の支給に関する現行法律に問題がありますね。なぜ産業教育手当をある特殊な授業をやっている人たちに対して出したか、これの適否について、あるいはワクの拡大とか、そこまでさかのぼって産業教育手当の支給に関する法律を批判していけば別問題ですが、それを肯定していく立場に立つと、それは他の職業教育指導とは異って、別個にその労苦に対して手当を出しましょうというこれが法律です。したがって、それらの盲聾学校等で産業教育に従事している人たちが、極端に言ったら、全国に一校しかなかろうとも、教員数にして二、三の人間であろうとも、特殊教育の困難性に対する手当と、法に指定するところの産業教育手当というのは性格的に別個である。例を申しますと、あなたのほうが詳しいのですが、僻地手当をもらっている人でも高等学校においては産業教育手当をもらうべきですね。それに従事しておれば。そうすると、手当はいかなる性格、質が異ろうと一つしかもらえないという筋のものではない。そこで割り切るべきだと思うんです。そうすると、当然、盲聾学校においては普通学校とは異って職業指導の困難性なり、心身の不自由な生徒に対する職業指導の重要性はありましょう。しかし、それらは一般的に言って特殊学校に対する勤務手当として出ている。その中で、また、さらに現行の産業教育手当の支給という法律がある以上は、その人たちに対しても当然これが適用さるべきで、総額のアップという問題と法の均てんした適用ということは別個の性格として考えらるべきだと思うのですよ。もしかりに現場の中に、自分たちも職業指導しておるのに、これらの人たちだけが手当をもらうのが不当だという意見があるとすれば、その考え方が間違っておるか、産業教育手当の支給に関する現行法律が不均等な法律であると言わざるを得ないですね。さっきの午前中の免許法審議と同じように、法というものは、それに該当する人たちが他の法の恩典を受けていようとも、その法の制定の趣旨に立って、これはいずれの場合でも支給されるというのが当然だと思います。そこに、それを支給することによって他とのアンバランスが生じるなら、そのアンバランスを改正していくということが当然で、特殊学校勤務手当を出しているから、あるいは不均衡を生じるから、この人たちにだけ産業教育手当の支給を排除するというのは、明らかにこれは免許法と同様に差別待遇と言わざるを得ない。その点の、何といいますか、法の平等といいますか、これに対する局長の答弁をお願いします。
  87. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 先ほど申し上げましたように、おっしゃる意味は私どもよくわかりますけれども、現実の問題としては、いろいろ関係省側と相談いたしております際に出てきます問題は、やはり諸手当の根本的な検討という問題が根底にあるわけでございまして、そういう問題をひっくるめて十分根本的に検討した上でというような意向がかなり強いわけでございます。そういうことで、私どもとしても、こういう問題や、あるいはまた産振手当にいたしましても、普通科の教員にもこれを広げろという要求もかなり強い要求になってきております。そういういろんな問題がございますので、範囲の問題や、あるいは他との均衡の問題、あるいはまた根本的にそういう諸手当をどういうぐあいに考えていくかというようなことも十分検討していきたい、こういう考え方でいまおるわけでございます。今後も十分ひとつ私どもとしては検討してまいりたいと考えておる次第でございます。
  88. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 それでは局長、納得できませんね。農業、水産、工業または商船にかかる産業教育というものは国として特に重要である、あるいは特殊的な立場である、だから、それに対しては手当を出しましょう、こうなっておるわけですね。だから、農業、水産、工業または商船にかかる産業教育ということに問題があるとすれば、それをどこまで広げるかということは一つの問題点でしょう。しかし、少なくともそれにすでに従事して、それのワクを広げていこうとしているということの問題と、現行にある農業、水産、工業、商船にかかる産業教育の特殊性、重要性という法の精神とは、そのワクを広げるという問題とその法律を均等に差別なく適用していくという問題は明らかに違うでしょう。だから、産業教育の手当を支給する産業教育の種別を広げるということはけっこうなことでしょう。その問題と、適用する対象の平等性というのは別でしょう。そうなりますと、盲聾だけは産業教育に対しては従事しておるけれども手当は出せませんということでしょう。その差別する理由が不明確でしょう。なぜ盲聾だけ、農業、水産、工業または商船にかかる産業教育に従事しておっても手当を出さないかということを、もう一度明確に答えてください。
  89. 福田繁

    政府委員(福田繁君) おっしゃることは私も理解しておるつもりでございますが、一般の普通科の先生などに範囲を広げるというような問題とは若干違うことは私も承知しております。しかし、これにつきましては、先ほど来申し上げておりますように、相手のあることでございまして、私どもとしては根本的な検討を進めていくということについては、従来からいろいろと苦慮しておるわけでございます。いま直ちにこれをどうするということは、理論上ともあれ、この立法のときにおきましては、いま御審議になっておるようなこの問題はまだなかったと思います。そういう点からこれは除かれておったわけであります。新しい観点から検討されるならば、もちろん検討の価値のある問題でございましょうけれども、やはりまあ考え方によりますと、これはやはり一般の普通科の先生に広げるのも範囲の拡大である、こういう先生に対して広げていくのもやはり一面においては範囲の拡大とも考えられるわけであります。そういった点において少し事情は違いますけれども、相手方から見れば、やはり範囲の拡大には違いないという感じを持つであろうということを私は考えるのであります。そういった意味で、今後全般的な問題とあわせて検討していきたい、こういうふうに申し上げたのであります。
  90. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 問もなく終わりますが、くどいようですが、農業、水産、工業、商船を、たとえば林業というか何というのか知りませんが、他の業種に広げていくのが一つ、これの適否の問題が一つ、そうですね。それからこういう職務の困難な度合い、あるいは特殊性に関する手当の総ワクを広げていく、これが一つの問題、この問題とは別個に、現行法を肯定していく際に、学校の種類によってその手当をもらえないということは、これはあくまで法の不平等ですよ。関係方面があることだからとおっしゃるから、再度突っ込んで聞きますが、文部省としては、いま言った産業教育内容の拡大と、あるいは。パーセンテージのアップの問題とは抜きにして現行法を肯定していくとすれば、盲聾学校養護学校等の高等部に適用することは望ましいと考えてあるんですか、望ましくないと考えてあるんですか。
  91. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 私はまあこういう手当をつけることも先生の待遇改善の一つだと考えます。そういった意味で、できるだけ待遇改善をはかっていくということについては賛成でございますが、先ほど来申し上げておりますように、いろいろこの問題につきましても他の関連もあるわけでございますから、十分検討さしていただきたい、かように申しておるわけでございます。
  92. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 全体を上げていくその中で、対大蔵省なりその他との関係で、どこに重点を置いて文部省が仕事をしていくか、それはいろいろあることでしょう。それはあなた方の努力に待たなければならない。しかし、少なくともこの問題はよりベターにしていくという問題じゃなくて、差別をなくすという問題でしょう。そういう観点に立つならば、いまこの法案に賛成ですかというと、文部省が賛成ですと答えるのは困られるかもしれません。しかし、少なくともこの差別を排除するということに対しては、文部省としては対大蔵省なり、その他の予算獲得の問題としては努力してもらうべき性格だと思うのです。この趣旨は基本的には賛成だとは、いまの段階でも言えませんか。賛成をしましたから法律をさあ通してくれ、そういうこと等は抜きにして、当然これは文部省として手直しをする、差別待遇の改善の問題でベターにしていく問題ではないか。底上げの問題だと思うのですが、もう少し局長、はっきりした答弁をしてください。
  93. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 私ははっきり申し上げているつもりでございますが、先ほど来、十分検討さしていだきたい、かように申し上げているわけでございます。
  94. 加瀬完

    加瀬完君 関連して。文部省はこの特殊学校における職業教育の位置といいますか、あるいは価値といいますか、こういう立場をもっと重要視していただかなければならないと思うわけです。いままでのこういう特殊学校は、一つの保護とか、救済とかといったようなものが教育内容としても非常に大きかったわけですね。しかし、いまでは職業人として盲人だからあんまということではなくて、別に肢体不自由児であろうが、身体条件が悪かろうが、それはそれなりに経済的にも独立して生活できるような職業教育というものが非常に必要になってきておるんじゃないかと思う。そうなってまいりますと、単にこの特殊学校の先生だから特別の調整の手当をやればいいということではなくて、その上に優秀な職業の指導者を与えなければ、この目的は可能になってこない、そういう意味合いでこの問題を取り上げていただかなければ、なかなかその職業指導の優秀なこの教師、あるいは実習助手というものは得られないんじゃないか、こういう点を私どもは危惧するわけでございますが、そういう点から、いま豊瀬委員の御指摘のような面を御検討をいただきたいと思うわけです。これは要望のような形になりましたが、この点いかがですか。
  95. 福田繁

    政府委員(福田繁君) それはおっしゃるとおりだと思います。私もそういう方向でいままで微力ですが、努力してきたつもりでございます。今後もそういう点については特に留意していきたいと考えております。
  96. 中野文門

    委員長中野文門君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  97. 中野文門

    委員長中野文門君) 速記を始めてください。  本日の委員会はこれをもちまして散会いたします。    午後二時三十五分散会    ————————