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1964-03-12 第46回国会 参議院 文教委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月十二日(木曜日)    午前十時五十八分開会   —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     中野 文門君    理事            二木 謙吾君            吉江 勝保君    委員            植木 光教君            久保 勘一君            笹森 順造君            中上川アキ君            野本 品吉君            秋山 長造君            小林  武君            豊瀬 禎一君            柏原 ヤス君   国務大臣    文 部 大 臣 灘尾 弘吉君   政府委員    文部政務次官  八木 徹雄君    文部大臣官房長 蒲生 芳郎君    文部省初等中等    教育局長    福田  繁君    文部省社会教育    局長      斎藤  正君   事務局側    常任委員会専門    員       工楽 英司君   説明員    文部省大学学術    局審議官    村山 松雄君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○国立学校設置法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付) ○文化功労者年金法の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付) ○教育文化及び学術に関する調査  (公立高等学校教職員定数に関す  る件)   —————————————
  2. 中野文門

    委員長中野文門君) ただいまより文教委員会を開会いたします。  国立学校設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本法案については、すでに提案理由説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。御質疑のおありの方は順次御発言願います。
  3. 小林武

    小林武君 国立学校設置法一部改正の法律案を見ますというと、その中に宇都宮大学工学部を初め、大学院の場合においても工学部というようなものが非常に多い。それから提案理由説明の第五にあげられておりますところの国立高等専門学校の新設についても、これは工業技術者養成ということになっているわけでありますが、私は文部大臣お尋ねいたしたいのは、工業技術者必要性ということはわれわれも全く同感でありますし、それについていろいろな施策を講ずるということも、これはまあ認めるところでございますけれども、非常に心配いたしておりますことは、理科系偏重というようなことに陥ることがあった場合に、はたしてそれが科学技術振興ということになるのかどうかという、こういう考え方を持っているわけです。それで、文部大臣科学技術振興ということをどう御理解なさっているか、その点について御意見を承りたいと思うのです。
  4. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) たいへんむずかしいお尋ねでございますが、私どもとしましては、今日、日本のおかれておる状態から考えまして、産業、経済の拡大発展をはかりますために必要な人材養成しなければならないという考え方をいたしておるわけであります。その人材につきましても、いわゆる基礎的な問題を研究する人も必要でございますし、同時にまた、実際に役立つ、直ちに役立つような専門家養成する必要もございますし、それぞれの面において基礎的なものから応用的なものを含めまして、それぞれの面においてりっぱな人をつくり上げていかなけりゃならぬ、このような考えのもとに、現在この国立学校の整備をはかっておるような次第でございます。
  5. 小林武

    小林武君 科学技術振興ということをわれわれが口にする場合、いま大臣がおっしゃった、いわゆる科学技術者養成する、あるいは産業の発達に応じていろんな技術者が要求されておるから、それをつくればいいというようなこと、また、あるいはその問題を取り扱うのに基礎、応用の問題を取り上げる、これはまあ一面を語っていると思うんです。このことに特段の異議はございませんけれども科学技術振興ということを日本で取り上げた場合、これは文部省はよく私は御承知だと思うんですが、国会の中においても、あるいは科学技術会議というような学者の集まりの中においても、科学技術振興ということは、単に、やっぱり現在大学教育の中に起こっているような理科系にやや偏重しているというような感じを与えるような、こういう行き方とは違ったものが考えられておるのではないか、こう私は思うんですけれども、そういう点については別段お考え文部大臣はお持ちになっておらないわけですか。
  6. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) どうもよくお尋ねの御趣旨がわかりかねるのでございますが、もう少し具体的におっしゃっていただきたいと思います。
  7. 小林武

    小林武君 私は科学技術振興ということを取り上げる場合には、これは衆議院において科学技術基本法の問題を取り上げた場合にも討論されたことでございますし、あるいは学者の中でもいろいろ議論するにあたっては、自然科学人文科学というものの均衡、もっと端的にいえば、科学技術ということを取り上げる場合においては、自然科学とこれに関連する人文科学というものの、そういうものの一体としての振興がはかられなければならないというふうに議論されたし、われわれもそうなければならないと思うわけです。そういう点について文部省としては一体どうお考えになっておられるのか、このことをお尋ねしているんです。
  8. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 科学技術振興という考え方の中に、単なる理工系だけの問題でなしに、もっと広く人文科学等のことについても考えなければならぬという御意見であろうかと思うのでありますが、それについては私どももそのとおりだと考えております。いま、ただ大学とか専門学校だけの問題でなしに、小中学校をはじめといたしまして、やはりその方面教育というものがなされなければならないし、広くは国民全体の中に科学技術振興というような問題についての心持ちがわき起こってまいらなければならぬと思うのであります。国立学校の問題といたしましても、単なる理工系だけを伸ばせばそれでよろしいというものではもちろんないと私も思います。最近の状態は、ことに予算的に見ますれば理工系方面相当予算がつぎ込まれておることは事実でありますけれども、他の面を決しておろそかにしてはならないということは私どももさよう考える次第であります。
  9. 小林武

    小林武君 いま大学に関係ある人たち意見の中にも、理工系偏重というような現象が起こっているということを非常に憂慮しているわけです。私は文部大臣は、その他のいわゆる人文科学というような面に関しても十分配慮しているというようなお話でありましたけれども予算の立て方をちょっとながめてみましても、文部省自体がやはり理科教育中心である、ということは、やっぱりこの理工系中心であるということを言っているんですね。予算説明書の中にもそのように私は書かれておるように見ておるわけです。どう考えてもそういう点が心配されるような事実があらわれておる。そう考えるわけですけれども一体配慮をされたというような——他のいわゆる人文科学系について、科学技術振興というような立場からどのような配慮をされておるのか。この点は直接、大臣お尋ねをしたいわけです。どんな一体配慮をされたか。具体的にわれわれは予算の面その他から見ればそういう配慮はあまり見えない、こう思うのですけれども
  10. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) この数年来、特に科学技術者養成ということが強く要望せられておりますので、文部省予算の上から申しますと、御指摘のとおりに、理工系方面に非常に重点が置かれて予算が組まれておることは、これは事実であります。また、どちらかといえば人文系方面よりも理工系方面に、何といいますか、資金を多分に必要とするということは御了解いただきたいと思うのであります。そういうふうなこととあわせまして、予算面からごらんになりますと、確かに理工系のほうに重点が置かれておるということは私もいなむことはできない。したがって、それとの比較においては人文系のほうが、劣っておるじゃないかという御指摘もそのとおりだと思うのであります。しかし、人文系方面を決しておろそかにしてはならぬという私は心持ちを申し上げたわけであります。予算上あらわれたところは御指摘のとおりと私も認めざるを得ないと思います。ただ、私ども今回の予算で御審議を願っております、たとえばアジアアフリカ言語文化研究を生かすような施設でありますとか、あるいはまた図書館の職員の養成を行ないますために、新たに短期大学をつくるというふうなところに、さような心持ちを決して忘れているんじゃないというところをひとつ御理解願いたい。
  11. 小林武

    小林武君 いささか情ないことを言う感じがするんですね、図書館の司書の短期大学をつくったとか、それからアジアアフリカの何か言語学のそれをつくったということでは、私はいわゆる科学技術振興というものをほんとうにとらえたやり方ではない。いわゆる間に合わせの技術屋を早くつくればいいというようなことが大学教育で行なわれた場合においては、私はいつかやはり行き詰まりを感ずる、所期の目的を達成されないところの悩みをわれわれは持たなければならぬと思うのです。その点はひとつもっと具体的に——私は予算の面からばかり申し上げるのではないのです。予算の面にあらわれないからということだけで申し上げませんけれども、少なくとも理工系に偏重しないというような手当ができておるのだというお話文部大臣からお伺いできたらけっこうだと思ったのでありますけれども、正直に言って、あまり満足した御答弁ではなかったように思うわけです。この点については文部省においても十分ひとつお考えを願いたいと思うところであります。  それからこの問題とからんで、理工系偏重というようなところから大学格差が非常に顕著にあらわれているというか、一そう強められているというようなことについてはどうでしょう。これは大学局長お尋ねするわけですけれども、そういう事実を認めていらっしゃらないか。実際仕事をなさっている立場から見て、理工系偏重というようなものが大学格差を一そう強めていると考えておられませんか、どうですか。
  12. 村山松雄

    説明員村山松雄君) 大学格差の問題でございますが、格差意味がどういうことであるか、見る人によって多少違うところもあろうと思いますが、おそらく国立大学の中には、旧制帝国大学母体とするもの、それから旧制官立大学母体とするもの、それからそれ以外の旧制高等学校専門学校師範学校母体とするもの、いろいろ沿革がございます。旧制大学母体とするものには、現在、博士課程大学院が置かれております。それからそれ以外の学校母体とする学部には、従来、大学院が置かれておらなかったのでありますが、昨年来、一部充実したものにつきましては、修士課程のみを置くようにいたしてまいっております。そこで大学院大学沿革、それから現状大学院を持つか持たないかによりまして、人の面、あるいは予算の面で違いがあるんじゃないか、こういう御指摘かと私了解するわけでございますけれども、この点はやはり大学振興させてまいる場合に、全体的な観点から、すべての大学を同じテンポで整備充実するというわけにもまいりませんので、一面において、世界的にトップレベル研究活動をしなければなりませんし、他面において、増大する大学入学志願者を、能力ある者はでき得る限り大学に収容するというようなことも考えなければなりませんので、大学振興につきましては、量の拡大と質の向上という二つの命題をなかなか同時に解決することも困難でございますので、一面においてトップレベル博士課程まで持つ大学におきましては、その研究活動において世界的水準を維持し、あるいはこれを抜くという方向に力を入れてまいらなければなりませんし、その他の大学につきましては、大学レベルを維持しつつ、できるだけ、さしあたりは量的拡大をはからなきゃならぬというようなこともございまして、その組織の取り扱いなり、あるいは経費の面につきまして差があることは事実でございますが、これはその使命ないし教育研究活動の実態に対応いたしまして、いわば過渡的発展段階におきましては、やむを得ざる措置、かように考えておるわけでございます。これが科学技術理工系偏重というようなために、ますます増大されるのではないかという御指摘でございますが、これにつきましては、そういうことから、その意味での格差が増大するという工合には考えなくてもよろしいのじゃないかと思っております。
  13. 小林武

    小林武君 まあ非常に私はいまの答弁は不満ですよ。というのは、重大なやはり問題点を持っていると思います。いまの文部省方針からすると、世界的な水準をいくような大学をつくるということを是認している。一方においては、大学に収容するために、まあ大学といわれるかどうかわからないような大学でも、存在さしておけばいいというようなことをあなたの答弁は言っているように思うのです。あなたも駅弁大学なんというようなことばをずいぶん最近までお聞きになったと思うのです。こういう一体ものの考え方で、駅弁大学駅弁大学で学生を入れるために必要なんだ、トップレベル大学トップレベルとして、これはますます世界の国々と研究上のせり合いもやらなきゃならぬから、ますますこれには力を入れていかなきゃならぬというようなことになると、大学格差というものは一そう増大するのではありませんか。そういうことを文部省の堂々と方針としてお持ちになっているのかどうか、持っているとしたら、私はきわめて重大だと思うのです。この前ですか、いつか灘尾文部大臣から、試験地獄はたいへん困ったものだというような、試験地獄に対して非常に御心配になっていることを聞いて、私はまたたいへん大臣はいま緊急な問題について御心配になっているということについて喜んだわけです。この試験地獄一体原因も、その多くはいわゆるあなたのような考え方が存在するから、いわゆる有名校に集中しようとして起こっておるわけです。そのためには、もう高校から、中学から、小学校と、いまや幼稚園の段階まできたと、こう言われておる。私はそういう試験地獄を解消し、それから大学格差をなくしていくことによってそういう問題点は多少なりとも解決できると思っております。文部省の力の入れどころは私はそこだと思います。そういう点について、あなたは別なお考えをお持ちになっている。そうすると、文部省方針は、ますます大学格差を大きくするように努力されているということ、こういうふうに理解してよろしいですか。
  14. 村山松雄

    説明員村山松雄君) 国立大学博士課程を持つもの、修士課程のみを持つもの、それから大学院を全然持たないもの、三つあることは事実であるし、その差別を早急に解消することは実際問題として困難だと申し上げたわけでございまして、国立大学の中で大学博士課程まで持つものには、ますます充実をはかり、大学院を持たないものは放置していいのだということを申し上げたつもりは毛頭ございません。長期的に見れば、おいおいすべての大学がもっとトップレベル大学に近づいていくということが望ましいことであることは申すまでもないつもりであります。ただし、やはり重点の置き方が、大学院につきましては高度の研究学部レベル大学におきましては大学レベルの教養を持った職業人養成ということに、やはり重点の置き方はニュアンスを異にしていくべきものと考えておりますし、さればといって学部レベル大学につきまして充実措置を怠ってよいということでは決してございませんので、施設設備におきましても、人的方面におきましても、それから運営費の面におきましても、比率におきましては大学院を持つものと同等のレベル充実していくべきものと考えておりますが、さしあたりその三つ目的使命一つにしてしまうことは、実際問題として困難であると申し上げた次第でございます。
  15. 小林武

    小林武君 いまの大学院の問題、大学院がある大学とか、あるいは大学院を持たない大学とかという問題は後ほどひとつさらに質問をいたしますけれども、とりあえず、あなたにお伺いしたいのは、いわゆる予算そのものが非常に理工系に偏重しているという場合ですね、これは研究費の問題にしろ、あるいは学校施設その他の問題にしろ、だんだん差がついていく、その結果が学校そのもの一つ格差が当然できてくるというようなことになるわけでありますけれども、そういうことをいまのところはやむを得ないと、こうお考えになるわけですか。
  16. 村山松雄

    説明員村山松雄君) 理工系教育研究は事柄の性質上、大臣も申されましたように、膨大な施設設備を必要とし、また多数の人員を擁さないとできない本質を持っております。しかも、そういう傾向は最近の科学の進展に伴ってますます増大してまいっております。研究設備につきましても、最近は一つが何億、何百億という設備を備えなければ最新の研究はできないというような段階になっております。そういうことからいたしまして、予算面におきまして、どうしても理工系の金額が張ってくるということは、これはやむを得ないというか、むしろ当然のこととさえ言ってよろしいのではないかと思います。現状理工系偏重という御指摘もございますが、逆に、わが国の大学教育においては、従来、人文社会系が偏重されておって、最近やっと理工系充実に手をつけてきたが、人文社会系理工系比率は、まだまだ人文社会糸のほうに片寄っているという御指摘もなかなか有力にあるわけでございます。それらを勘案いたしまして、できるだけ人文社会理工系均衡ある発展をやっていきたい、そういう観点からいたしますと、現在の予算措置等は一応、私どもとしては全体として不十分のうらみはございますけれども、一応均衡がとれたものと考えております。
  17. 小林武

    小林武君 文部大臣お尋ねいたしますが、私はいまのような考え方だというと、大学格差というものはますます大きくなると思うのですね。たとえば東大を例にとるというと、東大は全くマンモス化しているという、東大学長そのものが、これ以上東大をマンモス化させることは、大学そのものにとっては決していいことではないと、こう言っておるように私は聞いておるわけです。大体いまの予算面からながめてみましても、どんな理由があるにしる、新制大学大体二十校分に相当するほど東大が大きくなっているということは、大学の機能の上から見て私は問題があると思うのです。あるいは旧帝大、七帝大といわれたそういう国立大学予算は、大体他の国立大学予算の半ば近くを占めておるというようなことになると、これも私はたいへんなことだと思うのです。そういうものをますます助長するような、そういうお考え文部大臣はお持ちになっておるわけでありますか。
  18. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) ますますそういう勢いを助長するような気持というものは私は持っておりません。ただ先ほども説明員からお答えいたしましたが、何と申しましても日本の国力、日本の力でもってすべての大学を一挙に東大並みにするというふうなことは、これは不可能なことであります。現実の必要から考えまして、今日、東京大学をはじめ旧帝国学大等相当多額予算がいってはおりますけれども、長い目で考えれば、やはりすべての新制大学充実をはかっていかなければならぬということは、これは当然のことであります。私どもその心持ちでもって文部行政は進めてまいりたいと思っております。いたずらに格差を増大するために努力をいたしておるつもりはないのでございます。現在の実情におきましては、こういうことになりますけれども、もっと長い目でもって、これはお互いに検討し、またお互い努力しなければならない問題と心得ておる次第でございます。
  19. 小林武

    小林武君 長い目でいまの実情をそのまま押し進めていったら格差はさらに増大するわけですね。これはもう言わなくてもわかっていることなんです。たとえば付置研究所の問題につきましても、東大宇宙航空研究所を置いた、これは東京大学に付置したものを改組拡充したと、こう言いますけれども、何でもこういう問題を次々と、いわゆる大きい大学にさらに大きな研究所を付置していくというようなことになると、これは、どういうことになるんです。これは長い目で見て、一体そのことが是正されるということにはならないのじゃないですか。
  20. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 付置研究所お話が出ましたが、付置研究所を置くといたしますれば、今日の場合といたしましては東大に付置せざるを得ない、その実際の必要からそういうことになるわけでございます。また東大が非常に大きくなっておる、いわゆるマンモス大学だ、こういうふうなお話がございます。確かにそういう面もあろうかと思うのであります。さりとて、これを直ちに二つに分けるとか、三つに分けるというようなことは、そう簡単にできることでも私はないと思います。したがって、現状におきましては、お話のような違いがずいぶんございますけれども地方大学というものを漸次充実していくということの努力は依然として続けていかなければならぬものであります。その意味で、私はそういう長い目で見ていただきたいということを申しておる次第でございます。東京大学あり方等におきましても、これは検討すべき点は確かにあろうと思いますけれども、こういうふうな問題も一挙に右左に片づけられる問題でもないと私は思うのであります。そういうふうに、いたずらに大きな大学をつくるのがこれは能ではないと私どもも思います。思いますけれども現実はさしあたってそうせざるを得ないというふうな実情の点があるということも御了解をいただきたいと思うのであります。そのかたわら、だんだんと地方充実していくということを私どもは努めたいと思うのであります。
  21. 小林武

    小林武君 まあ水かけ論のような話になってくるようですけれども、これがいまのような文部省考え方をこれからもとっていくということになりますというと、これは大学格差というものはますます広がると思うんですよ、予算的に言ったって。研究費だって一体差別があるんでしょう。そういうやり方でいってどうなりますか。まああなたがいまおっしゃるように、長い目で見るとか、あるいは漸次これを改良するとかというならば、それについてはこのような手を打っていく、そうして大学格差というものをなくしていこうと努力しているんだと言われる。私は建物の坪数が大きいとか小さいとかということを言っているんじゃないんです。学部の数が同じでなければならぬというようなことを言っているわけでもないんです。そういうことを言っているんではなしに、もう地方大学を、ごらんになればよくわかっていることです。その研究設備といい、校舎といい、あらゆる点で非常に大きな差ができている。いわゆる有名校有名校でないものとが国立大学の間にもでき上がってしまっておる。それをさらに助長するようなやり方大学行政としてとるということはどういうことなのか。そういうことが現状の上からやむを得ないというようなことを言っていいのかどうかということになるわけです。やむを得ないという立場で議論されるならば、これはもう何も議論する必要はない。現状だけで満足しているということであるならば、さらに現状の中からもっとたくさん矛盾を出していって、将来手のつけられないようになってもしかたがないんだというふうな議論ならば、これは話は別なんです。しかし、少なくとも国立大学というものをやっぱりどうりっぱにしていくかということを考える場合に、これは現状矛盾現状の起こっているいろいろな問題点を、少なくとも文部省は積極的にこれを解消するようなやり方をひとつ考えなければいかぬと思うんです。そのやり方の具体的なものはないわけでしょう。具体的に一体格差を解消するようなやり方はどういうやり方ですか。それは大学院をたくさんふやすとか何とかという問題じゃないんですよ。大学院の問題については後ほどお話も承りたいと思いますけれども、どう一体具体的な案を持っているんですか、予算的な面からも。
  22. 村山松雄

    説明員村山松雄君) 国立大学予算上の扱いで違いが起こります制度的な唯一の理由は、やはり大学院のあるなしによって起こるわけでございます。大学院のあるなしと大学格差の問題は直接関係がないような御指摘でございますが、私どもといたしましては、大学院のあるなし以外で国立大学予算差別している点はございません。現在、国立大学の経費で違いがございますのは、教官当たり経費の面でございますが、これは大学院のある大学につきましては、その分の経費を考慮いたしまして、大学院を持たない大学より多くの経費を計上しているわけでございます。それから建物につきましても、大学院がありますれば、おのずから人もよけいおりますし、それからスペースがよけい要りますから、その分だけ建物の坪数を多く見積もっているわけでございます。それ以外の点につきましては、学生経費でございますとか、人件費でございますとか、そういうものにつきましては、大学院のあるなしにかかわらず、何らの格差を設けておらないわけでございます。したがって、問題は、大学院を持つ大学がそれぞれの段階に応じてどれだけ必要であるかということになるんじゃなかろうかと思います。現在、大学院のある大学は一部の大学でございまして、これだけで十分とは考えておりませんで、まあ学問や教育の進展に応じましてふやしていくべきものと考えておりますが、さればといいまして、いま直ちにすべての大学に早急にすべて大学院を備えるべきだという考えは必ずしも現実的でない、かように申し上げておる次第でございます。
  23. 小林武

    小林武君 研究費差別はないですか。たとえば学科制の大学と講座制の大学と、いまはないわけですか。
  24. 村山松雄

    説明員村山松雄君) いま御説明申し上げましたように、俗にいう教官研究費——予算の費目でいいます教官当たり積算校費あるいは講座等経費、これにつきましては大学院のあるなしによって差がございます。これは大学院を持つものはそれだけの負担がある、現実に経費もかかるということを考慮いたしまして、多額の単価を計上しておるわけでございまして、その意味では差がございます。しかし、これは負担が重いことに伴う当然の差と、かように解しておる次第でございます。ことさらに差を設けておるわけではございません。
  25. 小林武

    小林武君 重ねていまの点、念を押しますけれども、そうすると、この点は当然のことであって、あれですか、その差のあることについていろいろ大学の教官の間に問題が出されておる。そういう差別を受けるところの理由がはっきりしない、こういわれているのですが、文部省としては、それは当然のことと考えておるわけですか。
  26. 村山松雄

    説明員村山松雄君) 大学院のあるなしによる単価が、はたしてほんとうにそのあるなしの事態に比例して正当に積算されておるかどうかにつきましては、まあ若干の議論もあろうかと思いますけれども大学院のあるなしによって差があること自体は、これは当然のことと考えております。
  27. 小林武

    小林武君 差のあることは当然だと、こう考えるわけですか。
  28. 村山松雄

    説明員村山松雄君) そのように申されます。
  29. 小林武

    小林武君 当然だと考える。それでは次にお尋ねいたしますが、国立大学の移管の問題でちょっとお尋ねをいたしたいのでありますけれども……。
  30. 秋山長造

    ○秋山長造君 ちょっと。今までの小林委員の御質問に関連して、ちょっと文部大臣の御所見を伺いたいのですが、さっきも、審議官もおっしゃったように、大学の問題は、質の問題と量の問題と両方あるので、一そうむずかしい点があると思うわけですが、ただ、全国に、さっきも駅弁大学というようなお話があったのですが、いずれにしても、そういう悪口を言われるような非常に施設設備の不十分な、一体大学といえるのかどうかというような国立大学がたくさんあることは、これは申すまでもないことですが、これから、この新年度から国立学校の特別会計法が実施になるとすれば、やっぱり国立大学というものは全部特別会計にもちろんなる。その特別会計にする理由としては、やっぱり国立学校施設設備を画期的に拡充していきたいということが一つのねらいになっていることは、これはもう提案理由にも書いてあるし、文部大臣もせんだって小林委員の質問に対し、また私の質問に対してもその点を強調されたと思う。それからさらに今後、これは文部大臣のせんだっての文教行政についての所信表明の中にも特に強調されましたが、明後年——四十一年度あたりから急ピッチで始まる大学生の急増対策、まあこういうようなものも控えておるわけなんです。それから、かたがた科学技術振興というような時代文教の強い要請もある。そこで文部省としては、一体国立学校、特に国立大学のこの施設設備の拡充ということについて、ひとつの計画をもっておられるのかどうか、年次計画のようなものを、具体的なはっきりしたものをもって、そうしてこれらの難問題と取り組もうとされておられるのかどうかということについてこの際お伺いしておきたい。
  31. 村山松雄

    説明員村山松雄君) 国立大学施設の整備についてのお尋ねでございますが、これは御指摘のとおり、国立学校の整備はいろいろな面で必ずしも十分でないわけでございますが、特に施設面が非常におくれているというのは、これは私どもも十分承知しておるわけでございまして、文部省の管理局を中心といたしまして年次計画を立てて整備に努力いたしております。現在五カ年計画で不足坪数あるいは危険校舎の改築、それから新増設に伴う建物の整備に鋭意努力をいたしております。幸い、大蔵省の理解も得まして、最近の国立学校施設費の伸びは大へん顕著でございまして、最近五カ年間に従来の約五倍程度、絶対額がそもそも最初が非常に少なかった点もございますが、国立大学の各費目の中でも最も飛躍的な伸びを示しております。三十九年度におきましては、約三百億になっております。特別会計によりまして、国有財産の処分による財源あるいは病院の施設等につきましては、借り入れ金による財源も認められましたので、三十九年度は従来に増して一段と増額をされております。今後もますます努力いたすべき問題だと考えておりますが、それだけ努力いたしましても、現在、文部省考えております五カ年計画の全体計画からいたしまして、まだ五割未満の進捗率でございますので、今後ますます努力をいたすべき課題であると考えております。
  32. 秋山長造

    ○秋山長造君 五カ年計画というのは、いつからいつまでの計画ですか。それから五カ年計画を、寡聞にして今まで私そういう具体的な計画があるということを承知していないのですが、国立大学施設設備の拡充五カ年計画というはっきりしたものがあるならば、その計画をひとつ資料として配付していただきたいと思う。
  33. 村山松雄

    説明員村山松雄君) 最近の五カ年計画は昭和三十六年度を起点とするものでございます。その計画につきましては、これは管理局の所管でございますので、相談の上、できるだけ御要望に沿いたいと思います。
  34. 秋山長造

    ○秋山長造君 いまの五カ年計画を至急に資料として提出を願います。それから今度急増対策の問題等ともからんでくる問題ですから、なかなかいま審議官が答弁された程度のことで、一体それが実態に即していけるのか、どうかということについては、まだまだ問題があると思いますが、これは私は関連質問ですから、いずれ後ほどその五カ年計画の資料をいただいてからまたあらためて質問いたします。
  35. 小林武

    小林武君 国立大学へ移管の問題ですが、今度の提案理由説明中にございますところによりますというと、多年地元から要望があったということが一点と、所在、国立大学充実のためにも条件のそろったという二点が、この移管の理由になっておるわけであります。この二つの条件がそろえば公立大学の移管ということは漸次進めていくわけでありますか。
  36. 村山松雄

    説明員村山松雄君) 公立大学を所在の国立大学に合併しまして、その学部とするということは、実は昭和二十四年に新制の国立大学が発足いたしました際には、かなり積極的に取り上げる必要のある問題として処理いたされまして、当時かなりの数の公立の専門学校が、所在の国立大学、高等専門学校と一緒になりまして新制大学を形成いたしました。それ以後も、要望と、それから受け入れ大学側の受け入れ態勢とにらみあわせ、昭和三十年ころまでは漸次やってまいったわけでございますが、昭和三十年ころから既設の国立大学の整備がおくれておるという声がたいへん強くなりまして、その整備に全力を注ぐべきであって、いたずらに学部をふやしたり、あるいはすでに公立の学校として存在意義を持っておる大学を移管するというようなことは、あまり積極的に取り上げるべきでないという考え方が強くなりまして、以後、公立大学国立移管ということは中絶状態で今日に至ったわけでございます。ところが今回措置いたしました三つ大学は、その中絶に至る以前からたいへん要望がありまして、その後整備も重ねられ、それから受け入れ大学側の意向も医学部を持つということは、かなり大きな学部を持つことになりまして、大学はなるべく総合的な学部を持って運営したほうが運営上いい面もあるということで、非常に積極的にこの移管問題が推進せられまして、文部省としては、既設の国立大学の整備のほうが先であるという考え方は現在でも持っておるわけでございますが、この三大学だけは、むしろ従来のいきさつもありまして特別的な例外的な措置と、かように考えておるわけでございます。したがいまして、将来の問題といたしましては、かりに要望があり、あるいは受け入れ大学側でも一応好条件があると考えられるような場合がかりにありましても、公立大学の移管ということはよくよく慎重に取り扱いたいと、かように考えております。
  37. 小林武

    小林武君 ただいまの答弁にはちょっと納得がいかないところがあるのですけれども、将来、移管については非常に慎重な態度をとっていく、こういうお考えでありながら、三つ大学について移管を許したということがどうもはっきり理由がわからないわけです。方針があって、条件がそろっておったら移管を許すという一つ方針があるならば、これはよくわかりますけれども、このほかにも医科大学というのもあるし、その他のいろいろな大学がありますね、公立の大学というのは。どうして——この三つだけがそういう以前から要望されておったということでは、これは理由にならないような気がするのですけれども、私は山口大学の場合は、直接、当委員会から派遣されて事情を聞いたりしておるわけです。で、移管を要望する理由というのはよくわかるわけです。移管をしなければ、私はかなり県財政その他にも影響するところがあるだろうし、大学として、将来、医学部としてりっぱな発展をするためにも国立になったほうがよろしいと、こういうふうに私は見たわけです。そうするならば、ひとりこの三つ大学だけではなくて、他の大学といえども、条件がそろった場合においては、国立移管を希望したら許されるべきではないかと思うのですけれども、これはどういうものなんでしょうか。今後絶対やらないというような、そういう絶対とは言わなかったけれども、今後こういうものについてはあまり考慮しないというようなお話がありましたが、ちょっと片手落じゃないですか。何か聞いておると、この三つだけは特別な理由があるというふうに聞こえるのですよ。私はそういう不明朗なあれではうまくないと思う。この三つだけが何か非常に政治的な発言力の強いところにあるから、どうも移管が許されたなんという勘ぐり方をするようなことになると、私は重大だと思う。
  38. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 公立大学国立に移管するという問題のこれまでの経過については、審議官から御説明申し上げましたとおりだと思います。今回、閣議決定いたしました三大学は、私の承知いたしておりますところでは、だいぶ前からの問題、かなりもう長い間かかった問題でございまして、文部省としましても、国立大学に移管するというその心持ちを持って今日まで公立大学側といろいろお話し合いをしてまいったと思うのであります。ようやく国立に移管しても差しつかえない段階になったというので、多年の懸案を解決したつもりでございます。将来の問題といたしまして、絶対に公立を国立に移管しないというふうなことは、これはとるべきでないと私は思うのであります。さりとて、いまの国立大学現状から申しまして、まずもって国立大学充実をはかっていくということに、既存の国立大学充実をはかっていくということに主力を置かなければならない実情のもとにあろうかと思うのでありまして、われわれ一般的に申せば、今後、積極的に公立大学国立大学に移管しようというような心持ちはございません。しかし、また将来のことでありますから、時代に応じてまた考えなければならぬ場合もあるということはあり得ると思いますけれども、全般的に申しますと、心持ちとしましては、今後、積極的にどんどん公立大学国立大学に移管していこうというような考え方はいたしておりません。
  39. 小林武

    小林武君 われわれが視察に行って報告をいたしました中に明らかに書いてありますけれども、この山口県立医科大学というのは、戦時における国家非常の際の国策として、国の要請に従って建てたもの、そういう学校であるというようなことを言われておる。そういう学校がだんだん大学になった。そうしていろいろそれを経営しますと、なかなか経営は容易じゃない。何とかして国立に移管してもらいたいと、こういうところから国立移管の要望が出てきたということになれば、これは私はひとり山口大学だけではなくて、ほかの大学だって、そういう要望があったら拒否される理由は私はないと思うのです。だからあの三つ大学は特別のものであるというような、こういう言い方だというと、なかなか納得がいかない。私は大学国立移管については反対しておるものではない。あすこに行って当然だなと思った。移管を要望するということは、なるほどなというようなことの気持ちになった。そうするならば、国立移管を要望しないようなところは、別にそれは国立に移管する必要もないと思いますけれども、条件がそろったら、希望があればこれにこたえるというのは、そういう道が今後ふさがれるようなことがあっては私はならないと思う。そういうことはないのでしょうね。
  40. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 先ほどお答え申し上げましたとおりでありまして、そういう道を決してふさぐというふうなことは考えておりませんけれども文部省側といいますか、国のほうの側には国のほうの都合があり、県のほうの都合だけでこちらがそれを引き受けなければならぬというふうにも考えておらない。やはりそのときの問題によって具体的に考えていかなければならない問題であろうかと私は思うのでありますが、いま申しましたように、今回の三大学は多年の懸案であった問題であります。それを今回解決したということでございます。将来絶対にないということは私は申しません。申しませんが、積極的にどんどん公立を国立に移管するという方針をとっておるというふうなつもりはないのであります。
  41. 秋山長造

    ○秋山長造君 ちょっと関連してお伺いしますが、一体、全国に公立大学は幾つあるのですか。で、その中で、いま小林委員の御質問の出ているように、この際は三つだけになったけれども国立に移管してもらいたいという要望の出ている大学は、そのうち幾つぐらいあるのですか。
  42. 村山松雄

    説明員村山松雄君) 現在、公立大学は、この三つを含めまして全国で三十四ございます。そのうちで国に移管してほしいというような御要望を示されておりますものは、まあ潜在的な希望はわかりませんけれども、文書等でいただいておりますものは、そのほかにあと二つぐらいあります。
  43. 秋山長造

    ○秋山長造君 どことどこですか。
  44. 村山松雄

    説明員村山松雄君) これは申し上げていいかどうか……。
  45. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 文書で来ているなら言いなさい。
  46. 村山松雄

    説明員村山松雄君) 島根県の県立の農科大学と、それから兵庫県のやはり県立の農科大学、この二つが現在移管を希望しておられるようであります。
  47. 小林武

    小林武君 次に、大学院の問題でお尋ねをいたしたいのですけれども、今度、大学院が置かれたわけでございますけれども、この大学院というのは、方針としては一体あれですか、どのぐらいまで広げていくお考えなんですか。
  48. 村山松雄

    説明員村山松雄君) 大学院は、現在、修士課程博士課程とがあるわけでございます。博士課程を置きますものは、旧制帝国大学と、それから官立大学母体とする、正確に申しますと、学部の上に博士課程を置いておったのでございまして、博士課程につきましては、現在当分の間はその程度でやっていきたいと思っております。それから修士課程につきましては、昭和三十七年度までは博士課程のある大学にのみ修士課程も置く、こういう方針でまいったわけでございますが、昭和三十八年度から、つまり昨年度から、中央教育審議会の答申をもちまして、大学院のうちで修士課程は高度の職業人養成というような意味合いからも、学問研究などの進展、それから産業界の発展に対応いたしまして増設が必要だという御意見もありましたので、新設に踏み切った次第でございまして、三十八年度に五大学、七研究科、三十九年度には十六大学、十七研究科の新設を計画しておるわけでございます。今後この修士課程研究科の規模をどの程度にするかということにつきましては、現在まだ確たるはっきりした限界をきめておりませんが、事柄の性質上、やはり当該分野が、修士課程レベル教育研究を必要とする度合いの強いものであって、当該大学がこのことを希望もし、かつ現実にすでにその学部相当充実しておって、それに若干の努力を加えれば、修士課程の設置の可能性のあるものというような観点から、大学の御要望とにらみ合わせて選定いたしまして、これも急速に飛躍的にということじゃなしに、徐々に置いていきたい、かように考えております。
  49. 小林武

    小林武君 いまの説明だというと、それじゃ将来は全大学にこれが置かれるということを予想してもいいわけですね。
  50. 村山松雄

    説明員村山松雄君) 全大学に置くかどうかは、やはり客観的な情勢、つまり全大学について修士課程レベル教育研究を国家的な立場から必要とするかどうかというような観点から検討かさるべきでありまして、現在、少なくとも近い将来に全大学に置くべきものだとは考えておりません。
  51. 小林武

    小林武君 先ほど、修士課程にしろ、修士課程大学院を置くという場合に、条件のようなことをあなたは申されたのですけれども、それに大体合うというと、これは順次広まっていくものでしょう。そうなるとやはり全大学に及ぶということになりませんか。条件がそろえば全大学に及ぶということになるでしょうか。それともう一つ、その場合に教員養成大学、教員養成目的とした大学というのはどういうことになるのですか。これは高度の職業人養成ということから考えて、教員養成目的とする大学というようなものはどういうことになりますか。
  52. 村山松雄

    説明員村山松雄君) 前段につきましては、条件は全大学において整える可能性があるから、結局、修士課程は全大学に及ぼすということになるのではないかと、こういうお尋ねかと了解いたしますが、論理的にはそういうことになろうかと思いますけれども現実的に考えますと、たとえば現在大学院発展の過程を振り返ってみますと、大学院の発足当初にはたいへん希望者が少なくて、ほとんど定員の何%にもならないという事態でございました。それが最近やっと社会全般の経済的な発展や、社会側における人材需要、それから大学の内部的な発展、だんだん教師がそろってまいりまして、志願者もふえ、現実必要性もふえて、修士課程の増設にやっと踏み切った段階でございますので、現実の問題といたしましては、最近つくりました修士課程につきましても、必ずしも志願者があり余っているというような状態でもございませんで、現実の問題としては、とりあえずは徐々にやって、成果を見ながら進めていきたいという考えでございます。それから教員養成大学について大学院をどう考えるかという点につきましては、これも論理的には、教員養成大学充実に伴って必要性が出てこようかと思いますが、現在、教員養成大学については、そのあり方等につきまして、中央教育審議会なり、あるいは教育職員養成審議会なり、文部大臣の諮問機関からもいろいろ答申や建議がなされております。それからまたその答申を受けまして具体的な、たとえば教育課程のあり方、設置基準のあり方等についても検討が進められている次第でございますので、まあそういう具体的な検討の進捗状況ともにらみ合わせて大学院必要性考えるという段階でございまして、いま教員養成学部充実したら修士課程を置くというような予定はございません。
  53. 小林武

    小林武君 そうするとあれですか、中教審の、何と言いますか、答申案とか、あるいはこの間も議論したのですけれども教育職員養成審議会ですか、教養審の建議とか、そういう問題が現在でも出ているわけですね。それについて教員養成制度をどうするかという問題については、あとは文部省一体どう処理するかということにもかかっていると思うのですよね。そのときに一緒に教員養成大学については修士課程を置くか、博士課程を置くかということについてきめたいのであって、現在もしそういう条件がそろっても、教員養成大学に関する限りはこれは置かないと、こういうことになりますか。
  54. 村山松雄

    説明員村山松雄君) 置かないという積極的な方針が必ずしも確立しておるわけではございませんが、あり方等についていろいろ論議がされておりますので、相なるべくはそういう論議の動向を見定めて措置したい、こういう次第でございます。
  55. 中野文門

    委員長中野文門君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  56. 中野文門

    委員長中野文門君) 速記を起こして。  本法案に対する本日の質疑はこの程度にいたします。   —————————————
  57. 中野文門

    委員長中野文門君) 文化功労者年金法の一部を改正する法律案を議題といたします。  前回に引き続き質疑を行ないます。御質疑のおありの方は順次御発言願います。
  58. 秋山長造

    ○秋山長造君 この前の委員会で、大臣非常にお急ぎだったために、私ちょっと質問が中途はんぱに終わってしまったのですが、あらためてもうちょっとお尋ねをしておきたいと思うのです。  学士院のほうは、法律に基づいてその学士院の事業内容なんかについてもちゃんと規定されておるわけですが、芸術院のほうは、どういう事業をやるかというようなことは全然規定をされていないのですね。まずお尋ねしたいのは、その芸術院のやる事業は何かということ、まあ私どもが外部から見ておりますと、せいぜい芸術院賞の受賞ぐらいなことで、あまり積極的な——芸術の発達に寄与する積極的な活動というものをあまりやられていないんじゃないかという感じを受けるんですがね。その点をまずお伺いしたい。
  59. 斎藤正

    政府委員(斎藤正君) 日本芸術院の目的あるいは仕事につきましては、日本芸術院令をもって定めておりまして、仕事といたしましては、「日本芸術院は、芸術に関する重要事項を審議し、芸術の発達に寄与する活動を行い、及び芸術に関する重要事項について文部大臣に建議することができる。」という規定はございます。現実にやっておりますことは、これは学士院等とも同様でございますが、芸術院の会員をみずから選ぶということと、それから芸術院賞を与えるということが毎年行なわれていることでございまして、その他ただいま読みました政令に掲げておりますその他の活動につきましては、過去、昭和三十六年に国語問題についての日本文芸家協会の問い合わせについて、第二部会でこの事柄について審議したことがございます。その他は昭和二十四年に、院といたしまして芸術関係の入場税の問題に対する建議を提出したことがございます。最近は、中心は院賞あるいは会員の補充ということでございます。
  60. 秋山長造

    ○秋山長造君 その芸術院賞、それから今幾つかおっしゃったこと、それから会員の選挙ですね。そういうことのようですが、従来、これは国会でもいろいろな場所で問題になったこともあると思うんですが、この芸術院の会員の選挙が公正に一体行なわれているのかどうかということについて、いろいろ巷間伝えられるところによると問題があるようですが、特に第一部の美術部門なんかについてはいろいろな話がある。せんだっても新聞に投書なんか出ていたのでごらんになったと思うんですがね。私も別にそう立ち入って詳しい事実を知っているわけでも何でもないんですけれども、どうもやっぱりいろいろな機会に問題にされるので、芸術院というもののあり方というものについて、本来の趣旨からいうと案外ちょっとはずれている面があるんではないかという、確かに——誤解であるか誤解でないかは別として、そういう感じを持たれていることは、これは間違いないんじゃないかと思うんです。その点について、文部省あるいは文部大臣としては——これはゆゆしいことだと思うんですね。一国の芸術関係のこれは最高の栄誉機関ですからね。そこに列する人の選考について、とかくの不明朗なうわさなんかが始終つきまとうということは、はなはだこれはおもしろくない。それは困るんです、そういうことがいつまでもあってはね。その点について、文部大臣はこの実態をどういうように把握しておられるんですか。
  61. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 芸術院会員の選考につきまして、ただいまお話にも出ておりましたが、とかくの批評があるということは私も承っておりました。これは私、今回の大臣就任前のことでございますけれども、国会のほうにおきましても、いろいろ御注意もございました。文部省としましては、まことに残念なことと存ずる次第でありますので、芸術院のほうにもその点を伝えまして、さような批判の起こる余地のないように、公正な選挙をやってもらいたいということでお話をいたしたわけでございます。芸術院側におきましても、その点について非常に反省をし、選挙等において妙なことが行なわれておるというようなうわさを生むようなことのないようにということで、かなり、ことばが適当かどうか存じませんが、自粛自戒をしておる。またその措置をとっておるというふうに私は承知いたしておるわけでありますけれども、何にいたしましても、このような、国家——いわば最高の芸術家としては栄誉ともいうべき芸術院に列する問題でございますので、そういうふうなことが、たとえうわさでもあるということは、まことに残念なことだと私は思うのでありまして、ただ、文部大臣が監督権限を振り回すとか何とかということでなしに、このようなりっぱな人たちの集まりでございますので、この会自体において自粛自戒、世上とかくうわさの起こらないようにやってもらいたいものと念願もし、期待もいたしておる次第であります。
  62. 秋山長造

    ○秋山長造君 通俗に考えますと、芸術家なんというのは一番現世的な名利に超然とした非常に高邁な人たちの集まりだというように考えられる、また、それなるがゆえに非常に社会から尊敬を受けているわけです。ところが一皮めくってみると、案外世間にありがちなことよりももっと醜いことが行なわれているのではないかというような疑惑を持たれるということは、これはもう文部大臣おっしゃるとおり、非常にこれは遺憾なことですね。そういうあるべからざる不明朗な事実があるらしいというようなことは、一体どういうところにその欠陥があるのでしょうか。この芸術院会員の選考について、そういう暗い陰が伴いがちだというようなことが起こってくるのは何が原因でしょうか。どういうところに問題があってそういうことになったのでしょうか。これは選考の方法についてあるのでしょうか、法制の不備でしょうか、何でしょうか。
  63. 斎藤正

    政府委員(斎藤正君) 芸術院が会員を補充するための選挙と、それから院賞を授賞するための選考が、これが芸術院の仕事としてきわめて重要な仕事でございますが、その方法についてなお法制的に検討すべき問題があるかどうかということでございますが、これは過去芸術院が発足いたしましてからも、あるときには少数の選考委員でやって、そうして会員の承認を求めるという方法をとったこともございますし、また、現在では全員が選考委員になって会員の推薦したものにつきまして、会員の選考によりまして候補者を倍数にしぼる、そうしてそれについて投票をもってきめるというようなふうに改正いたしました。これは今までの経緯に見て、いろいろ選考方法を検討して、院自体としてお変えになっておることでありまして、私はその選考方法の技術的なものというものが決定的なものでなくて、やはり選ばれる、実際の選ばれる結果というものであって、そう技術的には——どちらがいいかということでいろいろ工夫してみる必要はありますけれども、そのこと自体が決定的な問題ではないと思います。それからもう一つは、従来いろいろ言われておりました会員あるいは院賞のための選挙運動、来訪あるいはそのための贈りものがあるというように言われておった、これが一つ大きな批判ないし誤解を生む原因になったと思いますので、そういう点につきましては、先ほど大臣がお答えいたしましたように、昨年の春の日本芸術院の総会におきまして、会員並びに院賞受賞者の選出に際して、その運動と思われる来訪者、あるいは本人であると第三者であるとを問わず、来訪者あるいはこれに伴う贈りもの等は一切これを拒否して、誤解のないようにしようということを、いわゆる自粛の申し合わせをいたしまして、そしてこれは院の全体の申し合わせとして実行しようじゃないかということで誤解を避けるようにいたしました。それで、芸術院の会員の選出につきまして、何を法制的に改めたらいいかということは、いろいろな批判に対しまして、この技術的なことが決定的な要因だと考えられないのであります。
  64. 秋山長造

    ○秋山長造君 先月の二十二日ですか、毎日新聞に投書が出ておりますね、「日本芸術院を廃止せよ」。局長ごらんになったと思うのですが、大臣ごらんになったかどうか——この投書のままであるかどうかということは、これはまあわかりませんけれども、その投書のしまいに、「芸術院にあいそをつかして会員を辞任した骨のある美術家は小杉放庵、坂本繁二郎、梅原竜三郎、川端竜子、故人として横山大観、高村光太郎の諸先生である。」云々、こういうことを書いてあるんですが、これは事実なんですか。
  65. 斎藤正

    政府委員(斎藤正君) 過去の会員で辞任された方々は八人ございまして、いまおっしゃいました川端、それから梅原、小杉放庵、横山大観その他富本憲吉等、八人の方がございます。ただ私、この辞任の理由というものを私自身の口から的確にお答えするということはなかなかむずかしい次第でございますが、八人の方が辞任されております。
  66. 秋山長造

    ○秋山長造君 たとえば、富本憲吉さんなんかという方は、昭和三十六年に文化勲章をもらった人ですね。まあなくなったようですけれども、芸術院会員で辞任した人としては一番新しいんですか、時期的には。一番最近辞任した人はどなたですか。
  67. 斎藤正

    政府委員(斎藤正君) 一番先に辞任された方は昭和十六年の川端竜子先生でございます。富本憲吉氏は昭和二十一年に辞任されております。
  68. 秋山長造

    ○秋山長造君 こういう方々が辞任されたという理由については、これは局長はおわかりにならぬと言う。それから私も直接は知らぬわけです。ただ、元日展審査員何がしという人の投書にそう書いてあるから、それを受け売りするだけのことですけれどもね。こういう日本芸術院のあり方と関連するわけですが、前から私この席で大臣にも繰り返し同じことばかり質問しているわけですが、何かこういう芸術院のあり方をも含め、あるいはさらに文部省の芸術文化行政の機構というようなものも含め、さらに外局としてあるところの文化財保護委員会のあり方というようなものも含めて、何かもう少し国としてまとまった強力な組織、機構、あるいは芸術文化行政そのものというものが望ましいというように思う。その点については、文部大臣もそれは同感だということをおっしゃっておったんですが、そこで問題は、それじゃこれからどうするかという今後の問題だと思うんです。で、文部大臣は、学術の面については学術顧問ですかね、何人か碩学の人たちを委嘱されて学術顧問というものを設けておられるようですがね。この芸術、文化行政の面について、一体何かそういう権威者の意見を、あるいは進言を常時聞いてやっていくというようなお考えがないのかどうか。さらに、これはやっぱり一国の最高の行政のあり方についての問題ですから、権威ある諮問機関というようなものを早急に設けられて、そうしてそれにひとつ諮問をされて、その結果を勇敢に取り入れて、新生面を切り開いていかれるべきではないか。あまりぐずぐずしておられると、いいことだ、いいことだとおっしゃりながらぐずぐずしておられると、やっぱり時がたってしまうので、事は火急を要するのじゃないかと思うのですがね。大臣の御所見をお伺いしたい。
  69. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 私は、この日本の芸術、文化をさらに発展させ、振興してまいりまするために、現在の文部省の行政が決して十分とは思ってはおらないということは前々から申し上げておるとおりでございます。ただ、まことに恐縮に存じますことは、自分に具体的な構想を持たないでお答えをするということが、私としては非常に心苦しいのでございます。心持ちにおいては、いま秋山さんのおっしゃったような気持ちでもって日本の芸術、文化に関する行政を進展させてまいりたい、こういうような気持ちは持っております。ただ、具体的な案を持たないでお答えするということでありますので、まことに申しわけないと思っておる次第でございますが、自分としましては、できるだけその方向において今後構想をまとめてみたいと、このように考えておる次第でございます。また、先般の御質問の際にも、いまお尋ねになりましたような御趣旨のお尋ねもあったかと思うのでございます。非常に示唆に富んだ御意見のように私も伺ったのであります。そういうふうなことが、現実的にはたして私でこなせる問題か、こなせない問題かということもございますけれども、私はいまのような点も参考にいたしまして、この間もお答え申し上げましたが、検討させていただきたいと思っておる次第でございます。
  70. 秋山長造

    ○秋山長造君 重ねてお伺いしますがね。まあ大臣、当分、文部大臣をやられるものという前提でお尋ねしているわけですけれどもね。大臣の御在職中に、ぜひこの問題はひとつ片づけておきたいというだけの積極的な御決意をもって取り組まれるおつもりかどうか。
  71. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 問題はしかく簡単では実はないと私は思う。役所の機構の問題にいたしましても、なかなか機構改革というふうなことは、皆さん御承知のとおりに、必ずしもその所管省の思うままにもいかないのが現在の状態でございます。そういうことでありますので、そういう点もございますし、また芸術の問題ということになりますと、秋山さんも御承知のとおりに、なかなかむずかしい点も多々あろうかと私実は思っておるわけでございます。したがって、私が在任中にという話はおこがましい話だと思うのであります。私としましては、しかしその方向にだんだんと自分の想をまとめてみたい、こういうふうな心持ちでおるわけであります。またいろいろ御意見等も伺わせていただければ、しあわせに存じますけれども、そういう心持ちでもって芸術文化行政の進展をはかってみたい。いまの芸術院の問題等も、やはりその一環としてもちろん検討いたしたいと思うわけであります。しかし、いま芸術院をどうするこうするということを軽々に私が言うべき事柄ではございません。そういう心持ちで、広くひとつ芸術文化の行政を進めていくという方向で、漸次ひとつ構想をまとめてみたい、このように存じておるということをお答えすることで、ひとつ御了承いただきたいと思います。
  72. 中野文門

    委員長中野文門君) その他御質問ございませんか。——ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  73. 中野文門

    委員長中野文門君) 速記をつけて。  午前中はこれをもちまして終了いたします。午後一時半に再開いたします。    午後零時三十八分休憩    ————————    午後一時四十六分開会
  74. 中野文門

    委員長中野文門君) これより委員会を再開いたします。  公立高等学校教職員定数に関する件を議題といたします。  質疑の申し出がございますので、これを許します。豊瀬君。
  75. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 昭和三十六年ですか、高等学校の定数が改正される際に、私ども委員会を通じまして、日本の文教政策の推進の上からも、国際的な水準から見ても、逆行性もはなはだしいという立場に立って強く反対をし、修正案を出したことも御承知のとおりであると思います。はたして、私どもが予見しておりましたように、以後約三カ年間たちました今日、従来の旧制中学の校舎がかなり大きく使用されておる中で、戦後の生徒の身体は非常に発達いたしまして、ただでさえ五十人入れることが困難な状況の中に、逆に一割を水増しすることを認めたということは、教師の労働過重はもちろんのことですが、生徒を対象にして考えて見ましても、教育効果をあげるという点から非常にマイナスの面を生じていることは御承知のとおりでございます。まず最初に私が聞きたいのは、そのことを憂えまして、幸いに自民党の皆さんも賛成をしていただいて、当該法律に対しまして、数項目の附帯決議をつけておったわけです。この六項目にわたる附帯決議につきまして、今日まで、どういう具体的な成果をもたらしてきたか、局長から御答弁をお願いします。
  76. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 御指摘になりました附帯決議でございますが、いろいろございまして、その概要を申し上げたいと思います。まず第一に「各学校の課程別職種別の現在の教職員数を確保し、絶対に現状を下回らないように措置すること。」ということが一項入っております。これにつきましては、当時、私どもの承知いたしておりました範囲におきましても、この定数法を上回って過員をかかえている府県、そういうところにおきまして、その過員の整理の問題が起きやしないかということの懸念もあったようでございまして、それにつきましては、私どもとしては極力、現在——当時の現在において、かかえております過員については、いま整理が起きないようにということを関係の教育委員会に対して再三指導いたしまして、これは衆議院におきましても、関係の委員の方から、すこぶる強く要請された点でございます。それは指導いたしました。それで、三十八年度から、御承知のように、高等学校の生徒が急増いたしましたので、すべての府県にわたりまして、この生徒急増に伴いまして定数増になったわけであります。したがって、当時過員をかかえておりましたところにおきましても、定数増の中に、それが自然に含まれてしまうという結果になったのでございます。  そういう観点から申しまして、三十七年度と三十八年度の比較をしてみますと、校長、教員、養護教員、助手、それから事務職員等につきまして、一年間に合計一万五千百八十一人という増員が行なわれております。これはトータルでございます。そういった意味で、その問題は解消したと承知いたしております。  それから次の問題は、高等学校教育現状から考えまして、この法律の施行のときにあたりまして、現存しておりました定時制分校の統廃合に関する問題であると思います。これにつきましても、政令で分校の一応の規模をきめます際に、一応全学年の生徒を収容する分校は百人、それ以外の分校は六十人ときめておりますが、この規定の適用を昭和四十二年四月まで停止するものとして、その間の小規模の分校について、その整理について十分検討を加えていくということに、手続としてはいたしたわけでございます。したがいまして、分校の整理統廃合ということが極端に、また、無理に行なわれないようにという配慮でございます。そういう経過から申しまして、数を比較してみますと、三十八年と三十七年でございますが、これは、三十七年は九百十五校の定時制分校がございました。これが、三十八年度では五十七校減になっております。こういう配慮の結果、五十七分校が減少したということになっておるわけでございます。  それからもう一つは、高等学校の設置者の問題でございます。これについても、「市町村が高等学校を新設することについての制限は実情に即して措置すること。」、こういうことでございます。これにつきまして政令の規定におきましては、「人口がおおむね十万人以上であり、かつ、高等学校を設置するのに充分な財政上の能力を有すると認められることとする。」というような表現を使っておりますが、あまり画一的にこの辺がならないように、人口十万以下の市町村でも、財政力のいいところは高等学校の設置ができるというような配慮をいたしたわけでございます。そういう具体的な高等学校の設置の例といたしましては、徳島県に一校、埼玉県に一校ございます。そういう例外を置いたわけでございます。  それからその次の問題は、「養護教諭、養護助教諭、実習助手及び事務職員の数は現在過少につき、将来さらに増員充実措置を講ずること。」という附帯決議でございます。これにつきましては、私ども、将来だんだんと、これについての増員充実をはかっていきたいという考え方を持っております。現在までに、配置基準等について、さらにこれを改正するということは行なっておりません。  それから、その次の問題は、高等学校生徒の急増期間における施設設備の整備の問題でございますが、これは「抜本的施策を樹立し、その充実をはかり、すし詰め教育を極力避けること。」、こういう御趣旨でございますが、これにつきましては、御承知のように、昭和三十七年度から高等学校急増対策として、公私立にわたりまして政府計画を策定して、できる限りたくさんの高等学校志願者を収容するという計画を進めてまいりましたことは、御承知のとおりでございます。  それから、その次の問題は、「教育効果を高めるため、将来高等学校設置基準甲号を指向して努力し、特に農業・工業・水産等の専門課程の教職員の充実をはかること。」、こういうことがございますが、これにつきましても、私ども、一応この定数法によって確保します定数については、財源保障を十分いたしたわけでございます。将来の問題としては、この甲号基準というものを十分考慮いたしまして、できる限り充実をはかっていきたいという考え方でおるわけでございます。  それから最後の「私立学校の適正配置に留意するとともに、国の助成を強化して教職員の充実をはかり、格差是正に努力すること。」、こういうことがございますが、これにつきましては、これも高等学校の急増対策の一環として、公立と相並んで私立高等学校につきましても、適正配置と、それから、これの拡充について財源措置等をやってまいりましたことは、御承知のとおりでございます。昭和三十七年度から明年度予算におきましても、国庫補助、私学振興会の融資、あるいはまた地方交付税による急増対策の経費の助成、そういう措置を講じてまいったのでございます。  大体、以上でございます。なお、御質問がございますれば、それに応じてお答え申し上げたいと思います。
  77. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 各項について私の予定している質問について、ただしながら、大臣の所見を聞くのが、質問としては穏当だと思いますが、大臣も所用の時間があると思いますので、一応いま、従来の経緯と、文部省が国会から課せられてきた高校定数に対する課題の要点についてただしたわけですが、大臣も大まかなところは御了解いただいたと思います。  そこで大臣お尋ねいたしますが、初等教育あるいは前期中等教育と後期中等教育の関係ですが、私は、後期中等教育のほうが、一学級の生徒数はより少ないことが望ましい、こういう判断を持つのですが、大臣の所見を承りたいと思います。
  78. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 教育のほうの専門家であられる豊瀬さんの御質問でございまして、私は全くしろうとでございますので、教育論というふうな立場からお答え申し上げる力はないと思っております。私は、小中学校の場合と、高等学校の場合と、高等学校のほうが人数が少ないほうが適当ではないか、こういう御趣旨と伺ったのでありますけれども、一がいに、そうも言えないのじゃなかろうかというふうにも思うのでありまして、あるいは、その学校の特質と申しますか、そういうようなものによって考え方が違わなければならぬという場合もあろうかと思いますが、おしなべて考えました場合には、高等学校の場合は、大体、ある程度の素質を持っている、相当の年齢に達している者の集まりでありますので、必ずしも数が多いからといって、小中学校における教育効果以下の教育効果しかあけられないというふうにも言い切れない点もあるかと思いますが、どうも、これは私、専門家ではありませんので、ひとつ局長からでもお答えさせていただきます。
  79. 福田繁

    政府委員(福田繁君) この定数法の制定されます当時は、御承知のようにいろいろな角度から、こういう問題についても検討されたわけでございます。一学級の定数は、なるべく少ないほうが生徒の指導あるいは実験、実習等によろしいということは、これはもう一般的に言えることだと思います。  で、普通課程におきましても同様で、それからまた商業、工業等におきましても、なるべく少ないほうが実習等の効果があがることはもちろんでございます。しかしながら、それ以前におきまして、それぞれの課程において、実際に一学級の定員が、どれくらい実員があったかというような点も、これは法律として必要があろうかと思うのです。そういった点から、法律制定の過程には、過去の一学級の定員、実際に収容しておりました生徒の定員等を考慮しまして、まあ大体、各課程について一割程度までは入れても、それほど無理ではなかろうというような考え方から、これはもう過去の実績から考えたわけでございます。そういう観点から一割以内のいわゆる生徒の増加収容はやむを得ない、特に急増期におきましては、なるべく多くの生徒を収容することが望ましい、こういうような観点から、現行法のような規定ができたと承知いたしております。そういう趣旨でございますので、できる限り、やはりその範囲内において、生徒の指導を十分やっていけばよろしいのではないかというように私ども考えております。
  80. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 大臣は、現行法がそうであるし、悪いと言えば、それなら、なぜ手直しをせぬかと、こう先の質問を予想して防衛的答弁をなさっておりますが、別にきょうは、そういう下心があって聞いておるのじゃないのですから、基本的な事柄を、質疑に入らないで大臣に聞いておるのは、基本的な姿勢だけをお聞きしたいと思っておりますので……。  やはり、いま局長説明はしましたけれども、生徒急増に備えて、校舎等の設備が間に合わないという判断が大きな要因となって、一割増という望ましくない措置がとられた、これは当時の法案審議の際にも明らかなところですが、そのことを大臣が、いまの局長答弁、先ほどの大臣答弁の中から否定しようとしておられるのでしょうか。
  81. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) いや、別に否定するつもりもございませんが、ただ、先ほどのお尋ねは、小中学校と比べて高等学校のほうが生徒数が少ないほうがいいんじゃないか、こういうふうな御質問のように伺いましたので、あのような御返事を申し上げました。
  82. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 それでは、より少ないほうが望ましいということについては御賛成ですね。
  83. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) その問題は、まあ、より少ないと申しましても、少な過ぎるという場合もあり得るかと思います。適正な規模というものが一応考えられると思うのでございますが、私は専門的なことはよくわかりませんけれども、現在の状態から申せば、もっと少ないほうがよかろうということは、一般的には言える問題だろうと思います。
  84. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 さらに大臣に尋ねますが、あの際、急増対策という事態に対応するために、政府としては一割増という措置をとったのですが、そのことが高校生をたくさん入学させる、進学させるという方便として役立ったかもしれませんが、後期中等教育には質的な面において、マイナスの面をかなり生じたということは認められますか。
  85. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) はたして従前に比べましてマイナスになっておるかどうかということについては、私は的確なことはわかりません。
  86. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 最初に専門家ではないとおっしゃるから、なかなか質問がしにくいんですが、文部行政の最高責任者として、従来よりも狭い教室に五名以上の生徒を押し込んだということが、少なくともプラスにならなかったと、あっさり答えればマイナスの面を生じたということは、これは、当然認めるべきじゃないでしょうか。
  87. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 私は、従前の定数よりも五名ふえたということでもって、直ちにそれが個々の生徒にとってマイナスになっておるかどうかということは簡単に結論を下せぬと思うのであります。ただ従来よりも、それは生徒諸君にとって気の毒な状態であるということは、もちろん言えると思います。また、学校の先生にとっても、それだけ手数がかかるということは、これはもちろん言える問題だろうと思いますけれども、先生にも御勉強を願い、生徒も勉強するというふうなことを考えました場合に、はたして、それが教育上の大きなマイナスとなってあらわれているかどうかということについては、的確なことは申し上げかねると思います。
  88. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 教育論から、どういう教育学的あるいは教育心理、教育原理的なマイナスが生じましたかという質問をしたわけじゃないんですが、まあ一般的にマイナスの面があるということを認められたんですが、これは局長お尋ねしますが、先生一人に対する生徒数というものと、一学級の生徒数というものは、教育効果という判断からすると、必ずしもそれがイコールの形で結論が出てこないということは認められますか。
  89. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 一学級の編制の問題と、それから全体の生徒数を教員の定数で割った一人当たりの生徒数というものは違うことはもちろんでございますが、しかしこれはいわゆる定数の問題としては、相関関係はあると思います。したがって、現在の一学級編制が五十五人、それから大体先生一人当たりの生徒数というものは、大体二十人だったと記憶しますが、そういうように計算されておるようでございます。したがって、従来も一割以内の定員をオーバーして収容しておったという実績もございますし、その辺は、私どもは指導の問題としては、生徒の質の問題はありますけれども、指導の問題としては、大体いけるんじゃないか、同じように考えてもいいんじゃないかというように思っておるわけでございます。
  90. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 労働、密度では変わらないという意味ですか。指導の面というのは、教育技術の面ですか、労働密度の問題ですか。
  91. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 指導の面でございます。別に労働時間の問題ではございません。
  92. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 私が聞いているのは労働時間じゃなくて、単位時間の密度の問題を聞いておるんです。指導の面でというのは、生徒を指導していく教育技術の面においては、教員一人当たりの生徒数の問題と、一学級何人詰め込むかという問題は、大体、教育的にはあまり変わらない結果が出てくる、こういう答え方ですか。
  93. 福田繁

    政府委員(福田繁君) これは厳密に申しまして、先ほど申し上げましたように、同じ観点から言っておるわけじゃございませんけれども、大体、教員一人当たり生徒二十名程度ということになりますれば、先生の指導力も、かなり充実されたものと考えられます。ヨーロッパなどの場合におきましても、大体、それくらいの標準ではなかったかと記憶いたしております。したがって、それくらいの先生の定数の充実をはかっておけば、まあ一学級の編制が四十人あるいは五十人の普通の編成が一割程度、オーバーしても、それほど指導の上に差しつかえが起こるというふうには考えられないのではないか、こういうふうに私は申し上げたつもりでございます。
  94. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 大臣お尋ねしますが、荒木前大臣は、義務教育学校は、できれば早急に四十人程度にするのが望ましいと思う。三十がいいか三十五がいいか四十がいいのか、いろいろ教育学的には異論があるところでしょうが、まあ常識から言って、四十名程度にするのが望ましいことだと思う。こういう答え方をしているのですが、小中学校について、その観点からして高等学校についても、いまの五十名の基準にプラス一割をしていくというたてまえよりも、少なくとも現行よりも一日も早く少なくしていくほうが、それが先ほど大臣答弁のように、二十にするのか三十にするのか四十にするのかの理想的なあり方の問題はおくとして、望ましいことだとお考えでしょうか。
  95. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 専門家でないという前提はお認めいただいておるようでございますが、そのつもりでお聞きとり願いたいと思うのでございますが、私も高等学校の現在の実情というものから考えまして、この定数が減ってくるといいますか、低くするという方向については、荒木前文部大臣と同じような考え方でございます。小中学校につきましては、先般定数法について通過さしていただきましたので、さしあたり、これでもって進めていくということに相なろうと思いますが、高等学校につきましても、もっと定数を減らす方向に向かって努力しなければならぬということは、将来の問題としては言えると思うのであります。現在のは、それと逆行しているじゃないかという御趣旨かと思いますが、この点は私どもも、まことに学生あるいは教師の諸君にはお気の毒でありますけれども、今日の場合としては、この程度でひとつがまんして御勉強願いたい、こういうふうなつもりでございます。
  96. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 義務教育につきましては、一応五カ年を見通した新しい定数法が成立したわけですが、高等学校の該当生徒数あるいは進学見込み数というのも、ほぼ数年先まで見通しができておるところですね。そういう段階に立って、現在のままで、しばらくごしんぼう願うということでは、後期中等教育発展の上に、いろいろな支障を来たすと思う。かりにこれを改正するという立場に立ったとして、一学級生徒数を減少していくという立場に立つとすれば、必要な方策というのは、どういうことであるとお考えでしょうか。
  97. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 現在は御承知のように公立高校標準法の附則において臨時の措置をとっておるわけであります。これが、ある時期がくれば解消する問題と私は考えます。それからが正常な状態として、ものを考えていくということになろうかと思っております。
  98. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 いわゆる高校生急増の時期が過ぎた後に、この暫定法を手直しをしていく。基本的には、そういうお考えだと理解してよろしいのですか。
  99. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) お話しのとおりと申し上げてよろしいと思うのであります。現在の急増の状態が終了しないうちに、この附則を手直しをする、あるいは削除するということは、実際問題として、かなり無理があろうかと考えております。ただいまのところ、現在は、これでもってごしんぼう願おう、そのようなつもりでおります。
  100. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 さらに大臣お尋ねいたしますが、その解決策は、都道府県が自前の財政で高校を新設することにもなりましょう。それから高等学校施設設備に対して、国が補助金を出すというやり方もあるでしょう、第三には、福田局長から附帯決議の第六項目の説明がありました私立学校等に対する国の助成、これによって急増されている生徒を収容していく能力を量的に高めていくということもあるでしょう。こういう大まかに私が指摘した三つの点について、新たな検討を加えて、どれでやるかは別問題として、第一の場合は、国としては、直接的には、地方自治体に対する交付税等の基礎を高めていかなければなりませんので、無関係とはいえませんけれども、その三つ措置を並行的に進めていくことによって、従来よりも高めていくことによって、急増時において高等学校の一学級生徒収容数を減らしていくという考え方はお持ちでない、こういうことでしょうか。
  101. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 今回のこの高校生徒の急増に対する対策といたしましては、今日まで、すでに御承知のような措置をとってきておるわけでございます。この措置をもって、しのいでいく以外にはない。この際、さらにまた、変わった施設設備につきましても、さらに、これにつけ加えた大きな整備計画をつくるとか、あるいは多量の教員を増していくとかというふうなことは、実情から申しまして、なかなか困難であろうと私ども考えるのであります。われわれの可能な限りにおいて、今日まですでに計画を立てまして、これが推進に努力いたしておるような次第であります。いま、この計画を変更しようというような考え方は持っておりません。
  102. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 午前中の小林委員の質問にもあったのですが、私は、たびたび委員会で指摘したところですが、たとえば午前中の質問と関連する問題としては、大学というものの終着駅を、どう見るかという問題が一つあると思う。一つの新しい何か科学の進歩が行なわれれば、そこに能力あるところに附置研究所等を新たにつけ加えてつくって、そこで研究させていく、あるいはどこかの強い希望が出、受け入れ条件が整えられると大学院を設置する、これでは、大学というものが、個人の幸福増進、あるいはそのことによって社会全体の進展、こういう立場から、どのような位置づけがさるべきかという大学の将来を見通した構想がないのではないかという気がするのですが、私は、少なくとも国の文教政策というものは、大学の果たさなければならない役割という立場から考えて、大学院、それから普通大学、その他文理学すべてにわたって、将来の理想図を設計して、その中から、附置研究所大学院も、あるいはいま進めております文学部の分離問題も考えてこられなければいけない、同様に、後期中等教育に対する将来の展望がなければならないと思う。こういうことがないから、生徒がふえると、それを押し込めばよろしいと、多少先生たちも、たくさんの生徒が入学を希望しているのだから、労働密度が高くなっても、がまんをしなさい、幼児教育、義務教育についても同様ですね、やはり少なくとも、二、三歳から、いわゆる保育の必要な時代から、現在の生徒の中では大学までをどう連関させ、どう社会形成の中で教育が果たさねばならないかという役割の位置づけの中から、全体設計図が必要だと思う。それがないから、逆行的な水増しが行なわれてみたり、すし詰めという事態がなかなかに解消しないと思うのですね。このことに対しましても、他日大臣の所信表明と相まって、全分野にわたって私は質問したいと思いますが、きょうは時間が切られておりますので、いまの問題には触れないでおきますが、そういう検討をしておいていただきたいと思います。  さらに、大臣の時間も迫っておりますので、大臣お尋ねいたしますが、現在のすし詰めという、一割増という事態が、非行少年の増大と無関係ではないということは、青少年問題協議会等でも論議しているようですが、このことを大臣は、どういうふうに理解されますか。
  103. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 現在の非行少年の問題、まことに遺憾な現象でございますが、この非行少年発生の原因につきましては、これはいろいろあろうかと考えるわけでありますが、また教育の面が、決して無関係ではないということは認めざるを得ないと思うわけでありまして、教育の場において、もっともっと努力をしなければならぬ余地が多々あると思うのでありますが、ただ私は、いま仰せになりましたような、つまり定数の一割増という問題が、直ちに非行少年増加というものに、どの程度つながるものかというようなことにつきましては、的確なことは申し上げかねる、かように存じます。
  104. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 局長お尋ねしますが、普通科と、まあ実業科と言いますか、それとの一学級生徒数が使い分けられているのは、どういう理由でしょうか。
  105. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 工業その他の産業教育関係の学科につきましては、実験、実習を伴うわけでございます。したがって、そういう実験、実習については、普通科の場合と違ったものがありますので、そういった意味から、四十人という定数がきめられているものと考えております。
  106. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 違った意味というのを聞いているわけです。
  107. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 実験、実習を多くやるわけでございますから、そういう趣旨でございます。
  108. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 実験、実習上の場所の問題というとらえ方でしょうか。実験、実習には、少数生徒のほうが指導効果が多いという意味でしょうか。
  109. 福田繁

    政府委員(福田繁君) もちろんそういうこともあると思いますが、具体的には、やはり実習上の状態、たとえば工場などに参りましても、その工場の状態によって、四十人くらいしかやれないという場合もございましょうし、また、練習船などにおきましては、船の実習上の問題等も、もちろんあると思いますが、そういう具体的なものと関連して、そういうような少ない定数がきめられているわけでございます。
  110. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 これで大臣に対する質問は終わりますので、終わりましたら退場なさってけっこうです。  いわゆる定時制高校の場合ですね。これは勤労青少年の問題ですから、大臣も強い関心を持っておられると思うのですが、こういう昼間働いて、夜勉強をしているという者に対して、少なくとも普通の先生たちも生徒も、昼間の学校とは違った考えで勉強していると思うのです。そういうところに対しては、別な意味において養護教諭等の配置は、教育的に考えても必要な措置だと思うのです。これは認められますか。
  111. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 定時制の高校の問題につきましては、私も相当関心を持っておるつもりでございます。今後、まあ後期中等教育の整備充実ということの中で、定時制の問題を十分検討してみたいと思っておる次第であります。いまのお話の養護職員のことでございますが、これは、昼と夜と一緒にして考えておるのが現状のようでございます。お話しのように昼間労働いたしまして、夜間通っている。それだけ勉強にも熱心であり、同時にまた、からだも疲れているだろうと思うのでございますが、その方面につきましては、もっと配慮をしてしかるべきものではないか。かように私も考えます。今後、よく検討したいと思います。
  112. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 ただいま大臣のお答えのように、昼間の学校と併任しているために、十分夜間の場合には手が届いていないというのが現状です。法案を改正するかしないかという問題もありますけれども、配当率基準を高めることによっても処置できる問題でございますので、特に現在、勤労青少年に対する問題としては、世論的にも高まっておる時代ですから御努力をいただきたいと思います。  もう一つ大臣にこれは要望いたしておきますが、これは大臣でも、簡単に御理解いただけると思いますが、一学級たとえば四十人の成績を調べて、四十四、五人ぐらいになった際の疲労と、五十人でおってそれからあとの五、六人なり十人なりという場合の疲労度というものが非常に違うということは、簡単に御理解いただけると思います。ですから、単に総数において、一万数千名の生徒が詰め込まれたということだけでなくて、教師の労働密度から言いますと、その一割というのは、それ以前の、たとえば三十を四十にした場合よりも、もっと大きく高まっておるということは十分理解していただきまして、最初は当分の間、これでいきたいということですが、すでに予算も政策も決定した後ですから、簡単に変更することはできないだろうと思いますけれども、早急の間に、後期中等教育振興という全般的な立場に立って御検討をお願いしておきたいと思います。  約束の二時半の時間がきましたから、質問はたくさん残っておりますが、これで終わりますが、局長答弁は必要がありませんから、第三項の養護教諭、養護助教諭、実習助手あるいは事務職員の配置等については、はっきりと「過少につき」という結論を出しているのですから、これは、現在まではふやしてきてないという答弁は正直でよろしいのですが、あなたの答弁からすると、配置基準の手直しを将来考えたいということですね。このことに対しまして、いま大臣は、急増の終わった後ということで原則的には考えておるようですが、最終的には、私の大臣に対する要望も含めて、どういうところまで大まかに、政令的な内容でなくてよろしいですから、どういう程度、いつの時期に配置基準の手直しをしようとしておるか、それから第四の早急に抜本的対策を樹立して充実をはかり、すし詰め教育を解消していきなさいと、これも三十七年度から云々という言葉ですが、このことに対しても、同様に要望します。特に、第五の問題につきましても、専門課程の教職員の充実に対しては、いつの時期に大まかに言って、どういう構想で充実をはかっていこうとしておるか、この点について、一つ考え方をまとめて、次回に、私がこの問題で質疑する際に備えておいていただきたいと思います。  それから、委員長あと二、三分ちょっと時間を貸してください。これは高等学校の定数とは違いますが、昭和三十八年度の人事異動期を前にして、局長に基本的な姿勢を尋ねておきたいと思います。  たとえば、高知県、愛媛県等において、いわゆる行政処分と異動とがダブって行なわれた事実があったことは、本委員会における決議をあげた点から考えても、認めておられるところと思います。と申しますのは、行政処分を行なっておいて、さらに数百キロ離れた遠隔の地に異動し、家族も相離れて生活をしなければならない状態のようなところに異動させるということは、明らかに私は懲罰であり、行政処分的な傾向を持っておると思うのです。このことに対しましては、高知県につきましても、さきの委員会で審議をしたのですが、文部省として十分指導するということでしたし、当該教育委員会も善処するということでしたので、具体的な問題の処理は、当該教職員組合と教育委員会にまかしたのですが、まず一つは、人事異動が懲罰的な色彩をもって行なわれないということ、第二には、人権をじゅうりんする——いろいろその形態はありましょうけれども、特に私が要望しておきたいのは、長期にわたって夫婦あるいは家族別居生活を余儀なくされるような状態におくということも、重要な問題と思うのです。それからもう一つ、人事異動で大きな問題は、いわゆる退職勧奨の年齢に男女差があるということですね。これは異論のあるところかもしれませんけれども、私は教育という職場は、他の職場に比して、女子を最も必要とする職場の一つであると考えております。また、人権という立場から考えても、女子教職員なるがゆえに、男子よりも、はなはだしいところにわたっては、十歳近くも若い年齢で勧奨をするということは、これは第二項の人権と関連してくる重要な問題だと思う。こういう事態といいますか、人事異動が行なわれないように、十分の配慮をお願いしたいと思うのです。こういうことこそ、文部省が勇気をもってやるべきことではなかろうかと思うのですが、こういう指導に対しまして、これからいろいろな主管課長会議等も開かれると思いますが、局長の基本的な姿勢についてお答え願いたいと思います。
  113. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 先ほど御要望のありました点については、答弁は要らないということでございましたが、ちょっと誤解があるといけませんので、私の申し上げたことをちょっと補足させていただきたいと思います。  私の申し上げましたのは、養護教諭等につきましては、配置基準について、引き上げ、その他改正を行なっておらないという意味に申し上げたのでございまして、もちろん生徒増によりまして、それに伴う教職員の定数増というものは、当然起こっておりますけれども、その点から申しますと、若干の増員が三十八年度においてあることは当然でございます。この点は誤解のないようにお願いいたします。  それで大臣が申し上げましたように、今後、急増期を終わりまして、いずれ私どもとしては、対策を考えるような時期には、十分検討してまいりたい、こういう心組みでおるわけでございます。  それから後の質問でございますが、高知県のことにつきましては、昨年もお尋ねがあったと記憶いたしております。私の記憶では、懲戒処分に加えて僻地に異動するというような、いわゆる懲戒処分のみにその理由を求めて、さらに、これを人事異動するというようなことはなかったように私は記憶しておりますけれども、もちろんそういうことが、もし万が一ありとすれば、これはおっしゃるとおりに、懲戒処分のみを理由に人事異動をやることは好ましくないことは当然でございます。また、いろいろな勤務条件等につきましては、いろいろな事情も、個々についてはあると思いますが、できるだけやはり夫婦別居されるというような問題は、そういう事態の起きないようにやるのが、人事行政のうまみでなかろうかと私は思っております。  それからまた、女子教員と男子教員との問題でございますが、特に勧奨退職等におきまして、女教員に不利な扱いをするというような意味お尋ねがあったと思いますが、この点につきましては、やはり私どもは、原則的にこれは平等であるべきものだと考えます。しかしながら、女子の教員につきましては、やはり女子特有の事情と申しますか、身体的にも、いろいろな特性がございますから、そういうことは、やはりおのずから人事行政のやり方の上にも考慮すべき点を残していると思います。そういう観点から申しますと、やはりそういう女子なるがゆえにということだけではなくて、やはり総合的に人事行政をやるのが望ましいと考えます。私どもの態度としては、もし指導をする必要がございます場合には、そういう考え方で指導してまいりたいと考えております。
  114. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 教育委員会総会における大臣のあいさつの際に、これは後ほどお尋ねしたいと思っていますが、いわゆる広地域異動、従来の任命権者であったものが県にかわっておりますが、一応内申は、市町村教育委員会でやっておりますね。この広地域人事異動を大幅にやるべきであるというように解釈し得るあいさつが入っているのですが、そのことの適否の問題ではなくて、文部省として、現行制度の中で市町村教育委員会管轄外の大幅の人事異動を今回はやるべきであるという観点で行政指導を行なっておりますか。
  115. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 私どもは、そういう指導を全然いたしておりません。大臣のあいさつの中で、もしそういうようにとれるような意味のあいさつはなかったと私は思っております。大臣もそういうことは、もちろんお考えになっていないことだと考えております。ただ、教育委員の総会のときに、決議が一つでございまして、その決議の中では、そういう趣旨にとれるような文句も見当たりました。しかし、これは委員の総会の意思でございまして、私どもとしては、別に人事行政について、さような指導はいたしておりません。
  116. 中野文門

    委員長中野文門君) 本日の委員会は、これをもって散会いたします。    午後二時三十九分散会