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1964-02-20 第46回国会 参議院 文教委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月二十日(木曜日)    午前十時四十一分開会   —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     中野 文門君    理事            北畠 教真君            二木 謙吾君            吉江 勝保君            加瀬  完君    委員            植木 光教君            久保 勘一君            笹森 順造君            中上川アキ君            野本 品吉君            秋山 長造君            小林  武君            豊瀬 禎一君            米田  勲君            柏原 ヤス君   政府委員    文部大臣官房長 蒲生 芳郎君    文部省初等中等    教育局長    福田  繁君    文化財保護委員    会事務局長   宮地  茂君   事務局側    常任委員会専門    員       工楽 英司君   説明員    文部省初等中等    教育局    教科書課長   諸沢 正道君    文化財保護委員    会委員長    河原 春作君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○教育、文化及び学術に関する調査  (文化財保護に関する件)  (義務教育諸学校の教科用図書の無  償措置に関する法律の施行に関する  件)   —————————————
  2. 中野文門

    委員長中野文門君) ただいまより文教委員会を開会いたします。  文化財保護に関する件を議題といたします。  質疑の申し出がございます。これを許します。小林君。
  3. 小林武

    小林武君 文化財保護委員会委員長お尋ねをいたしたいのでありますが、委員長お尋ねすることは個々の問題にわたったことは避けまして御質問申し上げたいと思います。大体、四十二国会から以降だと思いますけれども、衆参両院におきまして埋蔵物文化財に関する質問がございまして、遺跡をどうするか、この遺跡の破壊をどう守るかという問題で質疑があったわけでございます。例を一つあげますというと、京都市の宝池かまあと、あるいは千葉君津青堀町の内裏塚の問題、あるいは千葉市の加曽利貝塚兵庫県揖保郡御津町にある輿塚、それから大阪府の西陵古墳、さらには岡山県の美作台地問題等々ございました。あるいは福岡市の福岡城鴻臚館の問題についても質問があったわけであります。この中で全く解決をいたしましたと申しますか、保護立場から解決をいたしましたのは西陵古墳だけだと言ってよろしいのではないかと思うわけであります。残念ながらその他のものにつきましては、これが破壊されるという状況になっておるわけであります。こういう問題のあと、さらにきょうも質問いたしたいと思っておりますけれども、院塚古墳大阪府泉北郡の旧陶器村のかまあとの問題、さらには千葉市の加曽利貝塚の問題、松江市金崎古墳群兵庫県播磨町の大中遺跡兵庫県小野市樫山古墳群というようなものが問題となって出ているわけであります。このように、前から非常に心配されて取り上げてあるのに、それが解決しないばかりか、次々に問題が起こってくる。こういう現状のままでは、埋蔵物文化財というものは破壊され尽くすのではないか、こういうことを心配するものでございます。こういうことで、私は、これは文化財保護委員会としてもかなり抜本的な対策というものをお立てになる必要がある、このように考える次第であります。文化財保護委員長としては、そういうことをご存じになっておられますかどうか。おりましたら、現在そういう問題についてどういうお考えをお持ちでございますか、その点をお伺いいたしたいわけであります。
  4. 河原春作

    説明員河原春作君) ただいまの小林さんの御質問に対してお答えを申し上げたいと存じます。  近来、あるいは道路の建設、あるいは宅地の造成等、いまいろいろな理由に基づきまして、ただいま御指摘になりましたような事態が発生をいたしましたことはまことに遺憾に存じます。もちろんそのうちにはきわめて悪質なものもあるようでございますが、しかし、まあごくいなかのほうにまいりますと、ほんとうに知らず知らずのうちにその禁を犯したという実例もないではないようであります。私、考えまするのに、むろんその個々事件に関しましては、やはりそれだけの事件のよって起こるところを究明して解決をしなければなりません。ただいまお話しになりましたように、解決のできていないものもあることは承知しております。また、その経緯についてお求めがありますれば係の者から御説明を申し上げますが、私といたしましては、とにかくそういう事態の発生するということよりも、もっと根本的に、関係当局者はすべてそういうような事件がいま起こっておるということを早く知るということが絶対に必要でありますし、また、そういう工事をする人にとっては、そういうことをすることが禁を犯すことになるのだということを、はっきり知らせる措置ほんとうは必要じゃないかと思います。つまりそういうことによって、いたずらに罪人をつくることを避けるのでありまして、罪人をつくってからこれを処断するよりも、そういう方向に一歩進めていくのがわれわれのとるべき態度ではないかと考えます。土木工事をいたすものは、官省といたしましてはもちろん建設省とか、農林省が一番多うございますが、むろんそのほかにもございますし、また民間においては、日本道路公団をはじめいろいろな多くの事業団体がございますが、われわれのほうでは史跡名勝天然記念物並びに埋蔵文化財包蔵地保護という点に立脚をしまして、いろいろ注意を喚起するような方法をお願いいたして御了承を願っております。また、そのうちで日本道路公団では埋蔵文化財包蔵地発掘調査要領でしたか、そういう名前の規則をつくりまして、下部に伝達方を決定しておるような措置をいただいております。もちろんただいま申し上げましたのは相当規模がしっかりした団体でありますから、あるいは先ほど指摘になりましたもののように、ごく少数の人がいたしたということの防御になるか、その点は多少問題は残りますが、しかし、とにかくわれわれとしては、できるだけ多くの人に、そういうことは文化財保護法違反になるのだということを普及徹底させたいというのが念願であります。先ほど指摘になりました数個の事例のうち、私聞いておりませんものもございます。もしお求めがございますれば、現在どういうような調査状況になっているかを御説明申し上げたいと存じます。
  5. 小林武

    小林武君 個々の問題につきましては関係の方からお伺いをすることにいたしまして、委員長お尋ねをすることは、割合に総括的な基本的な問題だけにとどめたいと思うわけであります。で、いま河原委員長お話の中にもございましたが、知らず知らずのうちにということがあるわけであります。私は、やはりこの点が、埋蔵物文化財問題点一つだと思う。文部省においても、埋蔵文化財包蔵地図譜というようなものの刊行費を、今度四百九十九万円新たに計上しておるわけでありますから、この意図のあることは、ある程度わかるのでございますけれども、調査が、私はきわめて率直に言っても粗漏だと思うのであります。たとえば、千葉県の君津郡の青堀町におけるところの内裏塚の問題を私が質問をいたしましたときに、当時の文化財保護委員会事務局責任者答弁といたしまして、そういうあれはないというような、こういう趣旨答弁があった。これは速記録をお調べになればよくわかることでございますけれども、まあこれが何かの思い違いかどうかでそうおっしゃったのかどうか、あまり悪意には解釈しておりませんけれども、そういう当面の責任者でも御存じないというようなあれがある。私は、でありますら、もう日本の国内にあるところに包蔵されているところのものに、全般に関して徹底的な調査をしなければならないのではないかと、このように考えているわけでございますけれども、そういたしますというと、私はいまの文化財保護委員会の活動だけで、はたして一体これができるのかどうか。あるいは各県に置かれているその面の専門方たちだけで一体これができるのかどうか。そういう点について、委員長としては、調査に万全を期するというような御用意があるのかどうか。なお、そのためには考古学の研究者並びに学者協力求めても、この際抜本的な調査をやらなければならぬというようにお考えになっているかどうか、ひとつその点をお伺い申し上げたいわけであります。
  6. 河原春作

    説明員河原春作君) 率直に申し上げて、文化財保護委員会全体が十分であるとはむろん申し上げませんが、そのうちでも、この埋蔵文化財調査というような方面においては、多少手薄のように私自身も感じております。しかし、そういう方面に着眼いたしまして、ただいま御指摘になりましたように、遺跡台帳を二、三年前からやっておりまして、ことしの三月で一応完成するはずでありますが、実際のところは少し延びているようでありますが、それからそのでき上がった遺跡台帳に基づいてその地図をつくることになって、ただいまお話しになりましたように、約五百万円の経費で三十九年度から地図をつくって各県に配付するようなことをいたしておるのであります。それから、ただいま考古学者援助というようなお話もございましたが、われわれもそういう点に着眼いたしまして、もっとも着眼のしかたがおそかったようにも思いまするが、とにかく昨年から考古学者に接触すると言いますか、そういう仕事をだいぶいたしてまいったのであります。現に昨年の秋、名古屋日本考古学会の総会が開かれましたときに、その出席された会員の全部を御招待申し上げて、名古屋から奈良ですから、近いことも近いんですが、全部奈良平城宮跡の視察に来ていただきまして、実際の現状を見ていただくと同時に、また皆さん方の御意見も伺って、将来、平城宮跡発掘に対する準備の資料といたしたいと考えて、皆さんに喜んで来ていただいたような次第であります。それはほんの一、二の例でありますけれども、ただいま御指摘になりましたように、そういう方々の援助求め用意のあることだけは、いま申し上げておくことができると思います。なお、その具体的な事例としては、ただいま私が申し上げた一、二の例にとどまっておりますけれども、将来はますますそういう方向に向かって仕事をいたしてまいりたいと考えております。
  7. 小林武

    小林武君 何と言っても、やはり文部省調査をなさったと言っても、これは包蔵されている全部にということは、必ずしもこれは言い得ないと思っております。専門家の話を聞きましても、たとえばその調査が全部を網羅しているというようなことには考えておらないような意見もあるわけであります。でありますから、私はこの調査というようなものについて、さらに保存のためのいろいろな手だてというようなものについて総合的に計画立てる、そういう計画のもとに保存の態勢ができていないというと、私はこの問題の解決はできないと思うのです。でありますから、いつでも後手々々になりまして、問題が起こってはあわててそれに対する手当てをする。もう手当てをしようというころには、遺跡が破壊されているというようなことになりまして、先ほども申し上げましたように、大事な文化財が全く壊滅をしてしまって、破壊され尽くしてしまうというようなことになると思いますので、この際ひとつ具体的にそういう計画、あるいは考古学者研究者協力を得られるようなひとつ対策事務局にお命じになって立てられるよう、私は要望する次第であります。  もう一つお尋ねいたしたいのでございますが、一体文化財保護委員会としては、その保護基本原則というようなものを、どういうふうにお考えになっているのか、もう一つ基本原則をお持ちなのかどうか、たとえば、こわれるものは、あるものはもうとにかくこわれてもかまわないのだ、重要であると考えたものは残すけれども、重要でないと考えたものはこわしてもいいとお考えになって、まあ自然にまかしてもいいというようなお考えは、まあないと思うんですけれども、あるいはそうじゃなくて、基本的にはすべての文化財を残すというような立場に立ちながらも、国土の開発のために破壊されるというような場合には、どうしても避けられないとかいう場合にはどうするのかというような、そういういろんなこれは一つ方法があると思うのであります。文化財保護委員会としては、どういう立場で基本的な原則をお立てになっておられるのか、その点についてお尋ねをしておきたいわけであります。
  8. 河原春作

    説明員河原春作君) 文化財保護法によりますると、文化財保護はむろんでありまするが、それと同時に、それを保護することによって公益に非常に影響を来たすというような場合には、やはり考えなければならぬ、文化財保護法規定によりますと、「公益との調整に留意しなければならない。」という規定が条文のうちにある、それで、われわれが一番日常苦慮いたしますことは、公益との調整ということと所有者所有権その他の財産権の尊重  ということと、そうしてその目的である物件の大切に保存されるということと、その間の調整といいますかが非常にむずかしい、ただ、文字だけから申しますと非常に簡単明瞭でありますが、実際に扱いまするについて、その点の決定にほんとうに苦慮するのであります。だから、そういう方面からの制約はあることは確かであり、また、制約をしなければならぬような情勢のあることも間違いないことでありまするが、それをどう決定するかということはあまり抽象的過ぎて、ここでお答え申し上げてもかえってお答えにならないかと思いまするが、場合によって破壊される部分があるということを、そういうことはさせないんだというわけにもいかないのであります。これは少し御質問趣旨からそれるかもわかりませんが、たとえば一番われわれの目に映ずるところでありますから申し上げますが、首都高速道路公団の第四号線、つまり日本橋本町から分かれて乾門を通って、そうして国立競技場のほうに出て参りまするあの四号線は、江戸城の城跡の一部を破壊しておるのであります。しかし、また一方によれば、これは公益上やむを得ないという主張もございますし、そこでまあいろいろ研究し、お互いに妥協し、お互いに譲り合って、イギリス大使館の前はトンネルで通すと、そのかわり千鳥ケ渕のところは橋をかけるというような大体の妥協と申しますか、協定と申しますか、成立したのでありますが、しかし、結局、史跡を一部破壊していることは事実であります。その間の調整をどうしてとるかということが文化財保護委員会現状といたしましては、絵画、彫刻、建造物というものは大体型ができているので、専門の方がおられれば大体解決するのですけれども、どうもこの問題がいま一番ほんとうのところ困って苦しんでおるようなこともあるのでございます。
  9. 小林武

    小林武君 いまの点でございますけれども、確かに調整という、わりあいに便利な言葉なんですけれども、私もいま委員長のおっしゃるようなことを認めない、全然認めないというようなことはできないと思います。これはもうやはり産業の発達、交通の発達というようなことを考えますと、それに従った土地造成、住宅の問題も出てまいりますし、しますから、これは、それをもって、そういう状況の中ではどうしてもやっぱり避けられないというような事態も起こらないとはいえない。やっぱりそれは認めざるを得ない。しかし、何と言ってもこの主たるところは、われわれはとにかく文化財は破壊しないのだという根本的な原則一つ立てておいて、そうして調整をなさらないと、私はこれはもう無原則にどんどん破壊されてしまうというようなことになるのです。たとえば、この前に私が質問いたしました千鳥ヶ渕皇居内竹橋千鳥ヶ渕でありますが、あそこは江戸城の地下の何か暗渠のようなものが現われた。当時、首都高速道路工事工事中にそれが現われたものでありますけれども、これが何ら調査されないまま、学者の側からはそれぞれ意見が開陳されたにもかかわらず、こわされてしまった。文化財の技官も何かそこに出向かれたというような話も聞いておるわけでありますけれども、それが十分な調査のされないままにこわされてしまったために、いまだにそれが単なる、こうでないかという推測にとどまっているわけであります。でありますから、原則はやっぱり、私は文化財はとにかくどの文化財も大事にして破壊しないようにしなければならないという原則立てるべきだ。少なくともその原則はこの法の中に示されているように思うのであります。先ほど委員長がおっしゃるような、万やむを得ないというようなこと、あるいはその遺跡のいろいろ価値と申しますか、そういう点から配慮して、やむを得ないというような場合もないとも言われないということば、これは認めますけれども、原則はやっぱりそこに置かなければならぬと思うのでありますが、そういう点で御努力を願わないというと、今後私は問題が続出いたしまして、一番お困りになるのは文化財保護委員会ではないか。最後に一番損をするのは国民が自分たち文化財をなくしてしまう、一番損するわけでありますけれども、そういうことにならない前に、ひとつ文化財保護委員会としては、はっきりした態度をひとつお持ちいただきたいと思うわけであります。もう一つお尋ねいたしますが、予算一体こういうことでいいのかどうかということなんです。今度、新年度の文化財保護委員会予算総額は三十三億八千五百十一万円だという。たとえば、埋蔵物文化財関係のある予算をちょっと拾ってみましても、平城宮の四億四千万ですか、文化財防災施設費補助金というのが、これが二億九千万ばかり、これはまあ埋蔵物の今の起こっている問題を一つ考えただけでも解決のしようがないように思うのです。たとえば、先ほど触れました京葉工業地帯加曽利貝塚問題一つを見ましても、いま半分だけは市と千葉県でもって何とか保存方法はできても、半分のほうはどうかというとどうにも手がつかぬ。買ったほうは代替地さえあれば、これはもうほかに移ってもよろしいと言っていながらどうにもならなくなってしまった。こういうことを考えますと、この予算では一体埋蔵物文化財だけ一つを取り上げましても問題にならないのではないか、このように考えるのです。この予算一体問題等について、委員長はどういうふうにお考えになっているか。もっと強力なひとつ文化財保護委員会としては御発言をなさる御意思がないかどうか、お伺いしたいわけであります。していないのかどうか。
  10. 河原春作

    説明員河原春作君) ただいまは文化財保護委員会予算につきまして好意ある御指摘を受けまして、まことにありがたく思っております。私ども十分であるとは思いませんけれども、昭和二十五年の発足以来、初めのうちは平年約五億の予算でやってきたのであります。それが昭和三十六年にやっと十億台になって、三十七年が十二億八千万円、三十八年度が二十一億幾ら、そして三十九年度が三十三億ただいまお述べになりましたような額になった。政府の平均の増加は何か一割四分とか五分とかいっているのに、この二年ばかりは五割近い増加をしてまいったのであります。むろんそれで十分であるとは申し上げるわけでは決してございませんけれども、まあ普通の役人の予算獲得考え方から申せば、まあまあという御批判を受けてもいいんじゃないかと思います。むろんそれで十分であるとは申されませんから、これからさらに皆さんの御支援を受けて努力いたすことはむろんであることを申し上げておきます。
  11. 小林武

    小林武君 たいへんどうも残念ですけれども、委員長も少し心組みが弱いように考えられるわけであります。確かに数字をあげて、だんだんふえてきている、増加率を見れば、たいへん努力あとが見えるというようなことは、これは私どもも認めますけれども、私はそれだけではだめだと思うのです。先ほどから申し上げているように、このわずかの間に埋蔵物文化財についてたくさんの問題が起こっている。この問題をどう解決するかということが、私はやはり予算の組み立ての大事な条件になると思うのです。そう考えますと、これはいまの予算ではとてもだめだという強い御意思がない限りにおいて、先ほど委員長がおっしゃったような総合的な計画も、さらには文化財を守っていこうというような御意思も達せられないのではないか、このように考えるわけでありますが、私はひとつ委員長としてこの際大いにいま起こっている問題を御研究いただいて、容易ならざる事態にあるということを御認識いただいて、そうして予算の面からも大幅に増額するような、ひとつそういう努力をしていただきたいということをお願いいたします。委員長に対する質問はこれで終わります。  次に、個々の問題についてお尋ねをいたします。熊本県の三名郡にある岱明村院塚古墳というのが、現在、産炭地振興法の適用を受けた工場誘致でもって、ここにある県下最古の前方後円墳が破壊されようとしているということについては御存じでしょうか。そうして、その問題の解決は、もういまや地元において、残さなきゃならぬという考え方になっておって代替地を買う金があれば何とか解決できるというようなところまでいっておるように聞いているのですが、この点についてはいかがでございましょうか。
  12. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) いまの御指摘熊本県のことにつきましては、はなはだ恐縮でございますが、存じておりません。ただ私のほう、ついせんだって都道府県主管課長会議を開きまして、先ほど来、河原委員長小林委員の問で御質疑等がございましたような点につきましては、主管課長会議等でも十分申しておりますし、いまのような買収といったような問題がございますれば、特に来年度の予算を中心といたしました会議でもございましたので、県のほうから何らかの話があるべきだと存じますが、私、存じておりませんので、代替地を買うか買わないかという問題については、ここで申し上げられませんが、一般的な問題といたしましては、そのような問題が起こりましたときには、国でも買収費の増額をいたしまして、何分、平城宮の旧跡地の買収予算が多いものですから、その他の予算は四千万ばかりございますが、それを府県なり市町村に補助いたしまして、府県市町村、国、三者でそういう話があるときには買うような形をとっておるわけでございます。一般的なお答えで失礼でございますが、以上でございます。
  13. 小林武

    小林武君 だから、私は調査というのは、どうもどの程度の調査をやっているかということが問題だと思うのですね。あなたのほうでそういう点についてかなり自信のあるお話も承ったことがあるのですけれども、院塚古墳というのは御存じない、また、問題が起こっておらないと、こういうのでありますけれども、これは現在問題になっておって、県の教育長としては、この院塚古墳を残さなければならぬというところのほうに大体傾いておる、しかし、問題点があって、この三町歩土地のうち、ちょうど古墳のあるまん中の一町歩、これを残すためにはほかに続いている土地をさらに買えばよろしい、これが一反三十万円だから約三百万円ほど必要なんだ、県も村も財政的にはなかなか困難であるから、何とかして国にもひとつこれについては援助をしてもらいたいという希望が出ている、これを一体保護委員会では御存じないわけですか、全然これは聞いておりませんか。
  14. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 承知いたしておりません。なお、先ほどそういうことはないと私が答えたようにおっしゃいましたが、ないということではございませんで、私は目下のところ知りませんということでございます。
  15. 小林武

    小林武君 いまあなたは知ったわけでありますが、どうなさいますか、これは院塚古墳というものをどうなさるおつもりです。
  16. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 実はそばに記念物課長が来ておるんですが、存じていないということでございます。それで先ほど申しましたが、その土地がいま小林委員のおっしゃるような実情にあるとしますれば、もちろん県の教育長がそのような意向を漏らしておるとしますれば、直ちに連絡をいたしまして国、県、また所在市町村協力保護できるものであれば、できる限りそのような方向に進めたい。一般的な答弁で恐縮でございますが、そのように考えます。
  17. 小林武

    小林武君 先ほど文化財保護委員会委員長お話申し上げたのですけれども、調査がやはり私は十分でないと思うのです。また、調査が十分でないということは、今のような状況の中では必ずしも責められる性格のものでもないと思うのです。当然それは調査漏れというものはできるだろうし、知らないというような御答弁もある程度やむを得ないような状況にあるとさえ私は判断するわけです。でありますから、この包蔵文化財埋蔵文化財につきましては、ひとつ学者研究者協力態勢をもっと強力になさって、そして調査を十分なさり、問題の起こっておることを直ちに的確につかんでいただく。研究者学者がこの院塚古墳がこわれることを非常におそれるのは、学問的な価値の上から、これは非常に重大なものだからという判断に立ってやっておるわけであります。私はその点については、委員会としてはひとつ最大の努力を払っていただきたいと思うのです。  次にお尋ねいたしますが、大阪府の泉北郡から南河内郡、堺市の後方の丘陵地帯にかけて、旧陶器村、この古代かまあとの地帯のほうの遺跡については御存じでございますか。
  18. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) その点については承知いたしております。当委員会では、三年前から、若干ではございますが、一部補助金も出しまして調査をいたしておるものであります。
  19. 小林武

    小林武君 その調査の結果どういう手当てをしておるわけですか。これは臨海工業地帯の宅地造成等のために破壊されようとされておるわけでありますが、これはどういうことになっておりますか。
  20. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 本年度で三年間の調査で終わる予定であったようでございますが、なお調査に従事した人人等の意見によりまして、来年度もう一年継続調査をするということのようでございます。で、これは結局調査をいたしますので、記録をとどめ、そこから出ました遺物等につきましては、収蔵庫等をつくって、これを保管するかどうかといったような話を地元のほうからも出しておられますが、いまだはっきりした結論は出ておりません。要するに、調査をいたします場合、こういう埋蔵文化財は、調査をしますと結局こわれるわけでございます。原形をそのままに置いておくためには、掘ったり調査をしたのではいけなわけなんですが、一応いろいろな事情で調査をし、最悪のときには記録をとどめ、遺物だけは保存するということで処理をする以外にないであろうという結論のもとにやっておる事業なのでございます。
  21. 小林武

    小林武君 これは、するとあれですか、破壊もやむを得ないと、それで調査をして研究をして、それを記録にとっておくという方針なので現在ありますか。
  22. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 当該地帯が堺の臨海工業地帯の一部になるということでございますので、先ほど来、委員長も申しましたが、そういった産業開発、公益的なそういう面から、結論的には、詳細な調査をして後世に記録をとどめる、遺物はとどめる。しかし、原形は結論的にはこわれてもやむを得ないという判断に立ったものでございます。
  23. 小林武

    小林武君 私の聞いた範囲では、これはこの埋め立て地の土取りのためにどんどん遺跡がこわれていっておる、今のお話のように、十分の調査をやって、そうして記録にとどめるというような作業が必ずしも行なわれていないように聞いておるわけであります。私はここでひとつお尋ねいたしたいのですけれども、この遺跡の何といいますか、性質といいますか、意義というようなものをどういうふうにお考えになっているでしょうか、これをひとつお伺いしたいのです。
  24. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 私もその非帯に学問的な、そのかまそのものがわが国の文化史上どの程度の価値を持つものであるかといったような、内容的な専門事項については、失礼でございますが、よく承知いたしておりません。ただ原則といたしましては、埋蔵文化財はこれは残したい。すべてのものを残したいという基本的な考え方はございます。しかしながら、いろいろな産業開発その他公益上の問題等で、これを残すか残さないかということを判断いたします場合の一つの要素としましては、同じような性質のかまがただ一つしかないものか、あるいは非常に少ないものか。その近くに若干類似のものがあるかどうかといったようなことから、それがただ一つのものであり、非常にかけがえのない、絶対に貴重なものであるということであれば、あらゆる手を尽くしましてそこを買ってまあ民有地であれば買うとか、あるいは道路計画でございますれば、そこを多少避けて、通らぬような道路計画にしてもらうとかといったようなことをして保存措置を講ずるのでございますが、まあそれほどまで犠牲を相手に払わせるのもどうであろうか、しかもそのかまに類似したようなものはその他にも若干あるというようなことから、まあやむを得ず調査をして破壊もやむを得ないという結論を出すのが従来のやり方でございます。したがいまして、私、そのかま自体の文化史上の価値ということは承知いたしませんが、そういった判断に立ってそのかまの破壊もやむを得ない。しかしながら、学問的には、後世、十分そのことがわかるような記録をとどめるということに結論があったものと考えます。
  25. 小林武

    小林武君 一般論は私は聞きたくはないのです。一般的なお話ではなくて、この泉北郡の古代のかまどの地帯をどうするかという、これが一体遺跡としてどういう意味を持っておるか、どういう性質のものかということを私は聞きたかったわけです。私もあなたと同じように、研究者でもなければ、専門家でもないわけでございますけれども、これは日本最古の窯業地帯で、いわゆる陶部という帰化人のかまということになりますというと、どこにもここにもあるという私はものではないように思う。それが一つ遺跡の意義だと私は思う。なお、この古墳群が、ここにやはり住居址の調査によるというと、日本の最初の火葬の始まりというのがここだというような、そういう研究も何かあるそうであります。そうなりますというと、遺跡としての意義というようなものもかなり学者の間では重要視されていて、これについてとにかく十分の研究をしなければならぬ、残すものは残さなければならぬという、こういう態度をとっておるのでありますが、私は非常に残念なのは、そういう調査もあまりなされておらない、遺跡の意義や性質もお考えになっておらないように思うのは、調査は今まで依頼されてやられているようでありますけれども、どんどん土取りでくずされている、調査はきわめて部分的にだけ行なわれているというようなことになりますと、いささか、先ほど委員長お話のように、調和をとるというようなことがございましたけれども、調和をとるというあれじゃなくて、これは片手落ちのやり方だと思います。破壊のほうに重点を置いた処置のように思うわけであります。こういう点、ひとつ十分御検討いただいて、遺跡の重要性についてもまだ十分事務局としても把握なさっておらないようでございますが、ひとつ検討なさって、専門家もいらっしゃると聞いておるわけでありますから、これについては、今までこわされたものはしかたございませんけれども、どうぞひとつ保護立場から、学問研究の立場から、ひとっこれを、遺跡を尊重するような解決のしかたをしていただきたいと思うわけであります。  次は、前から出ました千葉市の加曽利貝塚の問題ですけれども、先ほどもちょっと申し上げておいたのですが、ちょうどめがね状をなしている貝塚の半分は県と市でもって何とか買うことになったというと、北半分が残るのですか、そういうことになっておるのですが、あとの半分が破壊されるのではないかということを非常に心配しているわけでございますが、これについて、文部省は、どうもきわめて冷淡であるというような風評を聞いているわけです。どうも全部残すということについて、文部省はあまり力を入れていない、逆に、何だか文部省の牽制があるような話も、これは伝え聞いたところでありますから、真偽のほどはわかりませんけれども、市や県がとにかく買収予定地を一万六千六百三十四坪ですか、買収して、ここを公園化して博物館を建てる、こういう努力をしているならば、国として、これに対して何とか手当を講ずるというようなことができないのか、またどういう態度をおとりになっているのか、ちょっとその点についてお答えをお願いしたいのです。
  26. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) この加曽利貝塚の問題につきましては、昨年も小林委員から御指摘があった点でございます。私どもこの加曽利貝塚が縄文時代中期から後期の土器を包蔵しておる環状貝塚で、きわめて貴重なものであるという学問上の価値判断に基づきまして、こうしたものがこわされないということは一番いいことでございますので、昨年来、県、それから千葉市にも再三にわたって協議をいたしました。もちろんその前に、千葉県としても、加曽利貝塚に問題が起こったから加曽利貝塚考えるということではなくて、千葉県全体として、大体これに類似したものが三百カ所余りあるようですが、どのように考えるのか、総合的な計画立てて、その一つとしての加曽利貝塚を具体的に考えるべきじゃないかというような話から、数回話をいたしたわけでございますが、何分にもこの加曽利貝塚は、御指摘のように地域が広大なのでございます。二万坪余りございます。で、これを全部買い取る、その場合にその半分を国が持ってくれるかというような話も具体的に出たわけでございます。ところが、これはその半分の一万坪余りで一億二、三千万円するようでございますが、全体として二億五、六千万円もする、その半分を国が持つとなりますと、一億余りを国が持つということは、現実の問題として、私のほうは先ほど予算努力が足りないというお話もございましたが、平城宮跡発掘調査買収に五億ばかりの金も使っておりますし、役人感覚ではございますが、この加曽利貝塚に来年度一億数千万円出すということは不可能であるというふうな判断に私のほうは立ちまして、したがいまして、国のほうとしては残したいけれども、加曽利貝塚だけについて一億数千万円出すということは不可能である。だから何かある程度の補助金は出せるが、県、市のほうとしてもどうであろうかといったような話がなされたのは事実でございます。したがいまして、市としましては半分だけを買おうということに結論的になったわけでございますが、こういったような非常に広大なところを絶対に全部残さなければならないかどうか。しかも、これはいろいろそこに住居跡等も発掘すれば出てくることで、こざいましょうが、平城宮跡のように何十万坪というものが一つの単位で、そこに宮跡の遺構があるので、その半分ではあまり意味がないといったようなものと比べますと、それほどのものではないであろう。もちろん全部めがね状の両方のまるい地帯を双方残すのが一番いいけれども、まあいたしかたがなければ半分くらいでもいいであろうといったような学者等の意見も参考にいたしまして、先ほど小林委員が御指摘のような結果になったわけでございます。ただ、つけ加えますが、私のほうで補助金をわずかでも出そうと考えましたが、市のほうとしましては、わずか数百万あるいは千、二千万程度のものならば、もらってももらわないでもいいから、とりあえずは市のほうでやる、今後の保存措置についてまた協力してもらいたいというような話でございます。以上が経緯でございまして、一口に申しますと、私のほうでそんなに広い土地を要らぬといったわけではございませんが、結論的にはそういうことになったわけでございます。
  27. 小林武

    小林武君 非常に重要だと思うのは、文部省は金がないから要らぬといったのは、まあ認めるわけにはいかぬけれども、まあそれはともかくとして、学者が、一体それを、半分あれば必要ないというようなそういう結論を、どういう学者がしたわけですか。それは文化財保護委員会学者がそういう結論を出したわけですか。
  28. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 半分で、あとは要らぬということではないのです。それは全部が非常にいいのだけれども、やむを得なければいたしかたがないであろうということでございます。どなたも、もちろん私ども学問的にわからないものでも、それを要らぬと考えたわけでは毛頭ございません。それにつきましては、主として私どもの内部におりますそういう専門的な技官の意見が中心でございますが、専門審議会の委員等をしておられる二、三の考古関係の先生にも御相談いたしました。
  29. 小林武

    小林武君 それでは文部省としては、加曽利貝塚の半分はまあ大体やむを得ないと、くずされてもやむを得ないという態度で現在進んでいるわけですね。
  30. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 二万坪のうち半分の一万坪はそのまま保存できる見通しがつきました。残り半分は、結論的には破壊でございますが、できる限りの発掘調査をして十分記録をとどめる。もちろん、発掘調査をした際に、これは学者先生にお願いしてやるわけですが、貝塚として何ものにもかえがたいような形のところがあるとか、あるいはその貝塚の底の辺に住居あとがあるのではないかといわれておりますが、そういうものが出ましたときには、またさらにそのときの考えで、それをそのときはその部分は買収するとかいったようなことも起ころうかと思いますが、一応のところは発掘調査をして記録にとどめる。結論的には、発掘調査をするということは、破壊をするのと同じ形に、形の上ではなります。
  31. 小林武

    小林武君 発掘調査をするということは、それは破壊と違うのじゃないですか。しろうと考えかもしれませんけれどもね。発掘調査をするということは破壊と同じだということになりますか。
  32. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 発掘調査をします場合は、そこの場所を現状変更をしたい、工場を建てたい、宅地をつくりたい、道路をつくりたいといったような、周囲の状況から緊急的に発掘調査をする場合もありますが、そういう状況がなくても、学問上その埋蔵地帯を発掘して積極的に学問的な調査をしようという、二つがございます。私どもがやっておりますのは、その緊急な場合と、緊急ではないが、発掘調査をするという二つの方法をとっておりますが、発掘調査はもちろん破壊ではございません。発掘調査をしてその形を調べ記録にとどめるのですが、しかし形の上では、古墳等を発掘調査いたしますと、もちろん古墳はなくなるわけでございますから、結論的には、形の上では破壊と同じような結果になるものが相当多いと考えております。
  33. 小林武

    小林武君 まあ学問上の発掘を破壊とお考えになることは、ひとつおやめになったほうがいいんじゃないかと思います。そういう乱暴な意見はやはり言わないほうがよろしいと思います。なお、先ほど、残った部分についても、これから調査をやる。調査をやって、大事なものがあれば、さらにその土地については買収をする用意もあるというようなお話でございますが、そういうことになると、これはあれじゃないんですか、この土地はすでに東洋プレハブとかという工場が、すでに敷地として買っているのじゃないんですか、できないんじゃないですか、あなたはそうおっしゃるけれども。
  34. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) この二万坪全体が東洋プレハブが買っておったのです。ところが東洋プレハブは、その場町がそのように文化財として重要な土地であるなら、私のほうが買収した値段で買い取っていただけるなら協力いたしましょうということで、半分を、東洋プレハブに一時渡ったものを、東洋プレハブから市が買収するということになったように承知をいたしております。したがいまして、東洋プレハブ会社は非常にそういう点では協力的であったと思います。ですから私が申しますのは、残った一万坪は東洋プレハブが工場用地として買収しているわけですから、そこに工場を建てていくと思います。しかし、その過程においてできる限りの調査をさしてもらう。その場合に、東洋プレハブとの話し合いで、こういった日本じゅうさがしても二つとないような、こういう住居あとがあったとか、あるいは加曽利員塚としても、非常に希有な、世界的にも貴重な場所が出てきたといったようなときには、東洋プレハブ会社と話し合いをして、保存方法はある程度考えられるのではないか。そのように東洋プレハブは協力的であったので、私のほうもそういう考えで今後進めたい。一万坪だけ保管、保存して、残った一万坪はもうどうぞかってにということではないということを申し上げた次第でございます。
  35. 小林武

    小林武君 そうすると、こう理解してよろしいですか、買収のきまったところは別ですが、残ったところは直ちに工場が建つというわけではない。この建つまでの間に学術的な調査をやるということ、そういう予定は立てているわけですね。立っていて、そうしてその調査の結果によっては、その土地についての買収考えられる、こういう用意もしてある、こういうふうに理解してよろしいですね。
  36. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 一応のいままで、現在のところまでの考えでは、来年度調査をいたしますと、結局かれこれだけ申しておったのでは実現いたしませんので、金の問題になるわけですが、調査費といたしましては、二百万円ばかりで、その半分を国が持って、残り半分を県、市で、大体二百万円くらいの調査をやって、必要があればお互いにもう少し増額もしようというようなところでございます。それから、それ以上その調査をしている過程におきまして、先ほど来申しておりますような、非常に学問的に重要な場所が出たり、遺構が見つかったりした場合には、それを買うのも一つ方法でしょうし、あるいは東洋プレハブがそこへ工場の建物を建てようとしているのを少しはずしてもらうとか、あるいは東洋プレハブ会社が、そういう文化財なら自分の会社で保管したいということになりますか、いろいろ方法はあると思いますが、そういったような方法もあるだろうということでございます。ですから調査をするその金額、それははっきりいたしておりますが、それ以外のことはお互いにそういう気持でこの調査に臨むということでございます。ですから東洋プレハブとそこまで話を詰めているわけではございません。
  37. 小林武

    小林武君 そういう論議をこれからやってもしょうがありませんから、私のほうから御要望いたしますが、やはりあなたがおっしゃっているように、東洋プレハブとの間の話し合いをやはりはっきりきめておく必要があると思うのですよ。工場を建てる前には、前に学術的な調査をやる、その調査の結果によっては、どうしても残さなければならないようなものについては、こちらは買収用意もあるのだということを、両者の間ではっきり約束しない限りにおいては、これは私はもう相手は、そういう学術団体でも何でもないわけでありますから待っていないと思うのであります。でありますから、どうぞひとつ気持だけ持っているというようなことではなくて、しっかりした計画立てられて、加曽利貝塚がなるだけ保存されるような、完全に保存されるように、そういうふうにしていただきたいと思います。次に、金崎古墳群の問題でございますけれども、これは指定されているのですね。この問題については、一体どういうふうに現在処置しているわけでございますか。
  38. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 島根県松江市の金崎古墳史跡に指定されております。大体一万五千坪ぐらいな面積でございます。昨年暮に県のほうからの連絡によりまして、その場所が、ある所有者でございますが、開発会社に頼んでその土地に宅地造成をしようとしておるという連絡がございまして、私のほうも係官を派遣して調査いたしたわけでございますが、結果的にはある一部の場所が破壊をされました。まだ破壊をされない場所等がございましたが、それは私のほうの係官が参りまして、工事も中止させ、今後のやり方について何ぶんの指示があるまでといってそのままにしておけということで、いろいろ県とも協議いたしました。金崎古墳のうち、一万坪余り、ここは直接古墳そのものというよりも、古墳の裾野のような、その一万五千坪の中に幾つかの古墳がございまして、古墳古墳の間は別に何でもないわけですが、そういったような場所が一万坪余りございまして、はっきり覚えておりませんが、三、四千坪が古墳そのものの面積でございますが、一応ここだけは確保し得たわけでございます。それで、私のほうとしましては、このような無断の現状変更が行なわれるということはきわめて遺憾でございますので、その関係者も呼びまして、事情もいろいろ聴取いたしました。これを告発して懲役五年以下とか、あるいは何万円以下の罰金とかといったようなことも罰則においては規定されております。で、そういうようなこともしようかとも考えましたのですが、ただそれを、宅地造成をした人、所有者は、事情をあまり知らなかったので、まことに申しわけないということで、四千坪近くの土地を自分が持っておったのでは、このように宅地造成をしたり、いろいろわからないままつまらない保管をすることにもなりかねないので、これを市に寄付する、市のほうで十分な保管をしてもらいたいといったようなことも申し出ますし、いろいろいままでの行ないに対しての反省もいたして参りました。松江市といたしましても、むしろ破壊されたこと自体を究明することよりも、それも重要であるが、今後一そうその史跡が従来以上にりっぱに保管されるほうが重要であるからといったような考え方に立ちまして、まことに遺憾ではございますが、現状変更した人を告訴するといったようなことは行なわないで、今後のりっぱな保管の保証が得られましたので、そのように県にも措置させるようにしたわけでございます。以上が、大体の経緯と結論でございます。
  39. 小林武

    小林武君 何か新聞によりますというと、あなたのお話と若干違うようなところがあるわけです。持ち主がだいぶそうじゃなくて、一体自分が持っているものに対していろいろな干渉されるというようなことは、はなはだ遺憾であるというような、そういう主張もしておるように聞いたりもしたのですがね。一面また、私もそういう土地を持っている人に同情しなければならぬところもあるのですね。やはり金が必要だということ、どうしてもやはりそれを売却しなければならぬとか何とかというような事情の生ずるというようなことも考えられることですから、だから、私はそういう人たちの立場に立つというと、これはやはり国が何とかこの土地をどうするとか、県がどうするとか、市がどうするとかいうようなやり方をやらないというと、ほんとう保存にはならないと思うのです。確実に保存するということには私はならないと思うのです。そういう点について、若干何かあなたとの食い違いがあるのですけれども、それはいいと思う、たいへん円満におさまったというのですからいいですけれども、あれじゃないですか、そういう遺跡の破壊を、私が聞いたのでは、ある程度、技官が出向いて行って許したから、そういう破壊が起こったんじゃないですか。これは向こうのほうもやったのもあるだろうけれども、かってにやったのもあるだろうけれども、技官が出向いて行って許可した。ところが許した部分からそういうものが現われた、こういうこともあるのじゃないですか。
  40. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 実は、これは無断で現状を破壊する、いわゆる宅地造成の行為があります前に、県のほうから私のほうへ照会がございました。それは一万数千坪の金崎古墳、そのものを指定いたしませんで、古墳群でございますので、古墳古墳の間にも土地はありますが、その周辺を広く一万五千坪指定したわけなんです。ところが、最近のように松江市が発展してくれば、当然、宅地造成も行なわれるわけですが、そういう状況にあるので、少しそれを狭めるわけにはいかぬであろうかといったような話が県のほうからございました。それで、私のほうといたしましては、もちろん先ほどの貝塚の場合とは違うわけですが、その一万五千坪全体が古墳ではなくて、相当古墳から離れた地所も指定してありますので、そういうところは、これは宅地を許さしてもいいのではなかろうか。そうすると、最終的には、いまの一万数千坪のうち四、五千坪くらいが、非常に局限していけばその程度を指定しても、あとは宅地造成を許してもいいのではなかろうかというふうに考えた時期があったわけです。そういったやりとりをしております途中に、宅地造成が始まったということでございます。ですから係官が許したかどうとかいうことじゃございませんで、手続をして一万五千坪のうち四、五千坪を残して、あとの一万坪ぐらいは宅地造成を許そうかと、そういう考え方を県のほうと話をした。それを許されたと考え所有者が宅地造成をやったといったように聞いております。したがいまして、私のほうの技官が許したとかいうことではないのです。
  41. 小林武

    小林武君 それならばいいと思うのですけれども、許したと、こういうふうに現地の研究者なんかは言っているわけなんです。許したと思うものですから、やってみたところが前方後円墳のあれが出てきた。そういうようなことから、たいへん指定史跡に対する文化財保護委員会考え方がどうもおかしいというような、そういうやはり不信感みたいなものがあると思うのです。だから、やはりそういう点については保護委員会自体が私ははっきりした考えを持っていなければいかぬと思うのです。金崎古墳群は指定史跡でもありますし、これは文句のないあれでありますから、これの保存に対してはひとつ最大の努力をされることをお願いしておきます。  それから次は、兵庫県播磨町の大中遺跡、弥生時代の縦穴で漢式鏡のかけらが出たという。ここが工場敷地に買収された。そしていまは何かあわてて中止をしているようなことになっているそうでありますが、ここは一体どうでしょうか。買収でもして、これを保存するというようなお考えがあるのですかどうですか。
  42. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 大中遺跡につきましては、これは未指定地でございますが、この播磨総合開発の一環と存じまして、この大中遺跡が出てきましたそのあたりの土地が工場用地になるというようなことで、播磨の教育委員会が昨年緊急調査をいたしました。その結果、住居跡が発見された。また貴重な出土品もあったということで、これは昨年秋ごろでしたか、直接、県知事さんが文化財保護委員会のほうへまいられまして、ぜひこの土地を買って保存したい、文化財保護委員会のほうでも補助金を出してもらいたいというような話がございまして、約一千坪ばかりでございますが、それを直接には播磨町が買収主体でございますが、国、県等も補助いたしまして、その大中遺跡買収保存することにいたしました。
  43. 小林武

    小林武君 保存することになるわけですね。
  44. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) はい。
  45. 小林武

    小林武君 次ですが、樫山古墳群兵庫県の小野市のものなんですが、ここは何かゴルフ場を誘致するというようなことで、この古墳群が破壊される寸前にあると聞いているわけです。この古墳群は大化の改新前の階層分化というようなものを研究するのにたいへんいい、何といいますか、資料になるものであるということから、研究者の間では非常にこれを重要視しているわけでありますが、これについては御存じでございますか。
  46. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) その場所がゴルフ場になるといったようなただいまのお話につきましては聞いておりません。
  47. 小林武

    小林武君 それではいまのところこの古墳群につきましては特段の心配はないわけですね。
  48. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) そのゴルフ場をつくって、その辺がゴルフ場になるといったような話を聞いておりませんので、心配があるとかないとかということよりも、ゴルフ場になってこわされるということを聞いておりません。
  49. 小林武

    小林武君 だから心配ないわけですね。それならばけっこうです。
  50. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 心配ないと申しておるのじゃ、ございません。ゴルフ場になって破壊されるということであれば、十分これは一もちろん私のほうも心配ないと言っているわけではございませんので、大いに県とも協議して対策を講じなければならぬと考えます。ただ私は聞いておりませんということでございます。
  51. 小林武

    小林武君 あなたは聞いておらないというのは、ややあやふやなところがありまして、絶対心配ないということではないようでございますから、ここで念を押しておきますが、ゴルフ場誘致の問題が起こっているようです。それで、そこをかなり広い地域にわたってくずすということになっておりますので、地元としての研究者としては非常にここの重要性を考えて、そのことについて心配しているようでありますから、ひとつお問い合わせいただいて、事前にこの保存についてひとつ御努力をいただきたいと思うわけであります。
  52. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 私、存じませんので、さっそく県のほうにも連絡をいたしまして調査をいたしまして、御指摘のような点を参考にいたしまして、できる限りの措置を講じたいと思います。
  53. 小林武

    小林武君 岡山県の総合開発、美作台地ですか、それから臨海工業地帯、百万都市造成というようなもので、かなりこれについては埋蔵物文化財のことも考慮に入れてやられておるようでありますが、これはどうなんでしょうか、こういう広大なところに調査の体制というようなものが県内でつくれるような状況にありますか。先ほども何度も申し上げましたのですけれども、こういう非常に広大な地域にわたって仕事をする、開発をやっていく、県側におきましても、その点について文化財の問題については考慮をしているという話も聞いているんですけれども、この調査の体制というようなものが、いまの文化財保護委員会の持たれている機能からいって十分なんでしょうか、どうですか、この点は。
  54. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 岡山県の吉備高原美作台地の件でございますが、これにつきましては、御指摘のように農業開発地域にも指定をされておるようでございますが、この地域には多数の埋蔵文化財が包蔵されておるということが明らかになっております。したがいまして、私どもといたしましては、昨年来、県の教育委員会はもちろん、知事さん、それから農林省がこれには関与いたしますので、農林省とも数回にわたって折衝を行ないまして、その結果、農林省側あるいは県知事側で申しますのは、十分、埋蔵文化財については意をはかる、開発計画は認可面積のある割合の増減はできるようになっておるから、埋蔵文化財包蔵地帯は開発計画からできる限り除外して、埋蔵文化財を破壊しないようにつとめたいというふうな話し合いをいたしております。したがいまして、いま直ちにここを発掘調査をするということに着手はいたしておりません。しかし、お尋ねのように、こういった大きい広い場所をかりに調査をする場合はどのようにやるのか、文化財保護委員会で十分なのかというような御質問でございますが、私どものほうといたしましては、埋蔵文化財史跡等の発掘調査につきましては、これは高等学校の先生、中学校の先生、こういう先生方も調査をそれぞれなさりたいといったようなことで届け出がある場合もあるのですが、国家的に非常に重要な場所ということになりますと、少なくともある県内でございましても市町村だけとか、あるいは県だけにまかしておるようなやり方はいたしておりません。県のほうから、そういう場合にはもちろん御連絡がございますが、私のほうと県のほうと十分に相談いたしまして、しかるべき学者を派遣いたしております。その場合、これはすべての大学が考古学の学科があったり、教授がおるというようなことでもございませんので、勢い東京周辺のいくつかの大学あるいは京都、奈良辺のいくつかの大学、その他東北大学だとか、九州大学とか、地方にもございますが、そういうようなところの先生に日ごろから御連絡もいたしておりますが、特にその先生の御専攻の時代、内容等を勘案しまして、先生方にお願いをしておるということでございます。もちろん私のほうにおります担当技官を派遣して調査をする場合もございます。
  55. 秋山長造

    ○秋山長造君 関連。いまの小林さんの御質問、ことばをかえて言えば、最近、非常に地方どこでも盛んな地域開発の問題と、それからこの埋蔵文化財だとか、史跡保存だとかいうようなこととがかち合う面が出てきているという問題だろうと思うのです。新産業都市だとか、あるいは工業開発地域の指定だとかいうようなものがその最たるものだと思います。これは全国的にどこの府県にいっても、市町村にいっても、ものすごい地域開発ブームといいますか、非常なものですね、工場誘致熱だとか。ですから、いま小林委員質問されておるようなことは、これは今後も至るところに出てくることが予想されるわけです。ですから、この点については、ただ何か特別にこう新聞で問題になったり、国会で取り上げられたりした場合にだけ国家的対策を講ずるというようなことであっては、これとても間尺に合わぬのじゃないかと思うのです。私のお尋ねしたいことは、第一点は、この文化財保護委員会として、最近のこういう地域開発ブームに象徴されるような地方でのこの埋蔵文化財なり史蹟なりを、ややもすれば破壊しがちなようなこの動きというものに対して、何か地方に対してあらためて注意を喚起するような通達か何か出されたことがあるかどうか。あるいは通達というようなものでなくても、何かあらためて地方の注意を喚起されるような文書でも流されたことがあるかどうか。それから、もしそういうことがなければ、やっぱりそういうことをこの際——まあ一片の通達でこと足れりというわけじゃないけれども、全国的に注意を喚起する意味において、地域開発に狂奔すると言ったらことばが悪いかもしれぬが、地域開発にのみ走って、この文化財保護というようなことが、ややもすればおろそかになりがちなこの地方団体に対して、注意を特に喚起するということをやられる必要があるのじゃないか、この二点について、これは委員長でも事務局長でもよろしいですが。
  56. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) ただいまの問題につきましては、実は少し沿革的に申しますと、いま御指摘のような問題がいろいろ起こりますので、昭和三十二年に、文化財保護に関する関係官庁間の連絡強化ということで閣議了解をしてもらいました。それからまあ一応閣議了解をもとに各省庁等の間で、私のほうでいろいろな覚え書きのようなものを交換いたしております。一、二の例を申しますと、たとえば通産省では文化財保護と工業の調整に関する覚え書きとか、あるいは厚生省関係ですと、都市公園行政と文化財保護行政に関する覚え書き、自然公園法についての覚え書き、あるいは建設省では新住宅市街地開発法の運用についての覚え書き、河川行政と文化財保護行政に関する覚え書きといったようなことで、内容は十分、文化財保護委員会と事前に協議をしてやってくださいといったようなことでございます。それから、最近いろいろ法律ができますものにつきましては特に開発関係、一例を申しますと、近畿圏整備法とか、あるいは観光基本法とか、その他新住宅市街地開発法等々、こういったようなものが、法律ができます場合、あるいは政令、省令ができます場合、常に文化財尊重の一条を入れていただくようにお願いはいたしております。これはまあ一応国家的な、私のほうの直接委員会の問題でございますが、一方におきまして地方庁に対しましては、こういったようなことを県の教育委員会、知事さん方に覚え書きとか、法律の条文とかいったようなものができます場合には、それをふえんいたしまして知事さん、教育長さんに通達をいたしております。また具体的に一、二の例を申しますと、道路公団と文化財保護委員会との間で協定を結びまして、この史跡とか、埋蔵文化財とか、こういったような場所に道路をつける場合には、国道とか、あるいは高速道路をつける場合には、できる限りつけない。それからやむを得ずつける場合は文化財保護委員会と協議をして行なう。その結果、発掘調査的な調査をする場合には道路公団のほうで十分部下を監督して、経費をもって、地元の教育委員会等と相談をしてやるといったような内容でございます。そういったものを都道府県教育委員会にも通達いたしております。その他、県の主管課長会議等を招集いたしましたときには、絶えずそのようなことを申しておりまして、最初、委員長からも申しましたように、文化財行政のうち、建造物、美術工芸、こういった行政もさることながら、最近では史跡等の記念物行政に委員会としても十分の配慮をはらっております次第でございます。
  57. 中野文門

    委員長中野文門君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  58. 中野文門

    委員長中野文門君) 速記を起こして。  本件に関する質疑は、暫時この程度でとどめまして、さらに午後質疑を継続いたします。
  59. 中野文門

    委員長中野文門君) 次に、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律の施行に関する件について質疑の申し出が、ございます。これを許します。米田君。
  60. 米田勲

    ○米田勲君 最初に官房長に一つお尋ねをします。文部省は行政執行にあたってガラスばりの行政といいますか、そういうことをたてまえとしておるのではないかどうか、それをお聞きします。
  61. 蒲生芳郎

    政府委員(蒲生芳郎君) 行政官庁といたしまして、特に民主的な行政官庁のあり方といたしましては、明るい行政をしてまいりたいと、私はさように考えております。
  62. 米田勲

    ○米田勲君 それではお尋ねしますが、さきにこの委員会で私が問題にして取り上げた分限免職の示達の問題でありますが、これは特別国会の中で、結論的に、文部大臣から分限免職の示達は撤回をし、直ちに主管課長会議を開いて、地方における教育委員会のこのような行為は一切責任を持って中止をさせる、こういう約束ができたことは官房長も知っておるとおりであります。ところがその後、文部省は私に対して、この分限免職の示達文書を渡した人間を血眼になって捜査をして、そしてその本人を呼びつけて、なぜ米田にあの文書を渡したかということをきびしく追及した事実がある。その事実を認めるかどうか。
  63. 蒲生芳郎

    政府委員(蒲生芳郎君) さようなことのあったことは私全然存じておりません。
  64. 米田勲

    ○米田勲君 初中局長はその事実を知っておるかどうか。
  65. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 私もさようなことを聞いておりません。知りません。
  66. 米田勲

    ○米田勲君 それでは官房長に聞くが、こういう分限免職の示達文書を、いま官房長が言ったように、明るいガラスばりの行政をやっているので秘密行政をやっているのではないという立場からいえば、その文書をだれに渡そうが、それを血眼になって探索をして、本人を呼んで締めあげるというような行為をすることは、あなた方は知らぬようであるが、あり得ないことではないか。そういうことをしてはならないことではないかと思うが、官房長の見解をお聞きしたい。
  67. 蒲生芳郎

    政府委員(蒲生芳郎君) 仰せのように、そのような行動は好ましくないと私は考えます。
  68. 米田勲

    ○米田勲君 もしそういうことをした人物がおった場合には処置をするかどうか、それをお聞きします。
  69. 蒲生芳郎

    政府委員(蒲生芳郎君) 処置ということがどの程度のお話か私もよくわかりませんけれども、そういう事実がもしありとすれば注意をいたしたいと思います。
  70. 米田勲

    ○米田勲君 これは時間が限られていて、本論のほうに入るのを急ぐために、事実を握っておるのであるが、この問題は後ほどまた問題にすることにします。  それから、きょう私が緊急に質問をするに至った二月十四日の教科書主管課長会議の、会議の内容を記録した文書を米田に渡した者はだれかということを、昨日来、文部省はやっきになって探索を続けておると聞いておるが、そういう事実があるのかどうか、初中局長にお聞きします。
  71. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 私、そういうことを探索しているとは考えておりません。もちろん会議等で配りました資料は、教育委員会その他一般に配っても差しつかえないものでございます。さようなことはないと思います。
  72. 米田勲

    ○米田勲君 私は次の機会に、文部省がガラスばりの行政ということにほど遠い、いま申した一、二の事例でもわかりますように、何か自分たちがやった行政指導を隠蔽するに狂奔して、社会党の議員に対してそういう文書を手渡した者をきびしく追及して、自分、そういうことをやってはならぬということをやっておる事実が幾つかあるのであります。これは重大な事実でありますので、きょうはこの問題を引き続きやるわけにはいきませんので質問を保留しておきます。  そこで本論に入りますが、第四十五特別国会の十二月十七日に衆議院で修正議決をせられた教科用図書の無償措置法案の修正点が、御承知のように長谷川衆議院議員から本委員会で説明をせられ、豊瀬議員から重要な点について、将来、疑義が起こったり、原案を修正議決した立法府の趣旨が侵されたりしてはならないという特別な配慮から、修正提案者の長谷川君に対し質問が行なわれ、長谷川君からは答弁があった後、討論、採決の結果、多数をもって衆議院送付案どおり可決せられたのであります。ところがその後、本法律に関する政令が出されましたが、その政令の内容に対してわが党の内部に疑義が起こりましたので、私から福田初中局長、諸沢教科書課長に対し、詳細に原案を修正議決されるまでの問題点と論議の経過を説明をして、かりそめにも政令や省令、あるいはその行政指導において文部当局が立法府の修正議決した趣旨を無視したり逸脱してはならないということを申し述べて、十分慎重を期するよう再三お話しをしたのであります。そのつど両者は、私の善意の忠告をよく承知をしておる旨を繰り返し述べ、いろいろ話し合いをしたが、どうもその説明されることばの中になお若干の疑点がありましたので、将来に禍根を残してはならないと考えまして、要点を文書にしたためて提出を求めたのであります。その提出された文書は別に公開されるものではありませんが、読んでみますときわめて抽象的な表現であります。そこで、私はこの表現の一部を訂正をすることを求め、さらにそれだけでは十分でないと考えて、本法律の趣旨を逸脱してはならないことを繰り返し強調をしたのであります。ところが私がその後、数県にわたって連絡調査をした結果、二月の十四日に開かれました主管課長会議における文部当局の指導に、法律上重大な事実があることを知ったのであります。私はこの内容を検討をして、官僚にはわれわれの善意の忠告は一庁のほご紙にひとしく、馬耳東風、馬の耳に念仏にしかすぎなかったことを知ったのであります。このような違法行為をこのままに見過ごすことはもちろんできませんので、違法行為の行政指導を直ちに阻止するために、特に本委員会の委員長理事打合会に出席をして緊急質問をお許し願った次第であります。これが私の本日緊急質問をいたそうとした経過の概略であります。  そこで、まず第一に、私は初中局長に質問をいたします。福田初中局長は、この法律案の原案が修正議決せられたことはよく承知しているはずであります。一体文部省は法律の中に用いられていることばのうち、指導、助言、援助、こういう文言はそのことばは同じであっても、使われている場所によって実際の行政上の行為としては違うものであるのだということを認識して指導しておるのかどうか、それを概括的にまずお尋ねをいたします。
  73. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 法律、政令等に、文部省として教育委員会に対しまして、指導、助言、援助というような規定をおきました場合には、やはりそれぞれの具体的な事項について書いておるのが通例でございます。うたがって、一般的な御質問でございますので一般的に申し上げますと、それぞれの条項に従って、その趣旨に応じて指導、助言、援助をするということでございます。特別に変わったということはなかろうと思いますが、一般的にはそういう解釈をとっております。
  74. 米田勲

    ○米田勲君 この義務教育無償措置法の中に二カ所、指導、助言、援助ということばが使われてあるが、この二カ所の意味は違うのだ、行政上の行為としては違うのだということを考えておるのかどうか、初中局長にお尋ねします。
  75. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 御指摘のその指導、助言、援助につきましては十条こ……。
  76. 米田勲

    ○米田勲君 簡潔に答えてください。
  77. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 承知しました。十条に、「適切な指導、助言又は援助を行なわなければならない。」という規定がございます。それから十三条の一項に、「当該都道府県教育委員会が行なう指導、助言又は援助により、種目ごとに一種の教科用図書について行なうものとする。」というような指導、助言、援助規定がございますが、別にこれを私は、指導、助言、援助の内容について、あるいはその方法について違うというような解釈をいたしておりません。あるいは法律解釈として法制局等はいろいろのニュアンスをつけますけれども、そういう解釈は、まあ専門家の場合は別といたしまして、私どもとしては一般的に申しますと特に格段の違いはないだろうと思います。
  78. 米田勲

    ○米田勲君 初中局長の答えたとおりだと私は思っておる。違いがあるはずはない。次に質問をしたいことは、特に本日の主管課長会議の内容に関連をするために初中局長の見解をただしておきたい。この法律の第十一条、第十二条、第十三条について、まず、第十一条の第一項に、この法律の原案では、「都道府県教育委員会は、当該都道府県教育の水準及び自然的、経済的、文化的諸条件を考慮して、当該都道府県内の義務教育諸学校において使用すべき教科用図書として、種目ごとに数種の教科用図書を選定する。」、こうあった全文が削除をせられたのであります。さらに同条の第二項の原案が、「前項の選定は、教科書の発行に関する」云々とあって、この第二項も全文削除せられたのであります。この削除をせられた結果、第一項、第二項の削除によって何がはっきりしておるかというと、都道府県教育委員会は、「種目ごとに数種の教科用図書を選定する。」という原案にあった任務と権限が完全に削除されたということをはっきり認識をしておるのかどうか、局長にまずお尋ねをいたします。
  79. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 私は、その点は前々から申し上げておりますように、十分に認識をしておるつもりであります。
  80. 米田勲

    ○米田勲君 さらに同条の第三項の原案に、「前二項の規定により選定を行なおう」とあったのを削除をされたのですから、都道府県教育委員会は具体的な教科書の選定については、いかなる形においても全くタッチをしてはならないようにしたのが本法案の修正議決をした立法府の趣旨であることを福田局長は明瞭に承知をしておるかどうか、お尋ねをします。
  81. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 大体趣旨は御説明のありましたとおりだと思っておりますが、私どもといたしましては、具体的にというおことばがございましたが、教科書はたくさん種類があるわけであります。したがって、その教科書の内容なり、あるいは造本、体裁、あるいは紙質その他教科書についてのいろいろの内容、特色等、具体的にやはりいろいろ検討いたしまして、研究の結果をその資料として教育委員会なり、あるいは一般の学校に送付して参考にしてもらうという、そういうようないわゆる従来やっておりました教科書の研究事業というものに即したやり方はいたすわけでございます。そういう点につきまして、やはり具体的な教科書についていろいろ研究し、評価をするということは当然であろうと考えております。ただ、いま御説明になりました中の趣旨を汲みますと、具体的に幾つというように種類を限定をして選定をして、それを市町村教育委員会に採択させる、そういうことはやらない、こういう趣旨だと思います。
  82. 米田勲

    ○米田勲君 私が言わずもがなですが、いま局長が答えたことばを委員長も各委員もよく記憶をしておいていただきたい。私が質問をしておるのは、具体的な教科書の選定についてであります。具体的な教科書の選定についてはいかなる形においてもタッチができない、県の教育委員会は。それを承知しているのですかと聞いておるのです。
  83. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 個々の教科書について選定はいたしません。
  84. 米田勲

    ○米田勲君 次に、同条の第三項の修正によって、都道府県教育委員会は従来も当然持っていた任務権限である指導、助言または援助を行なうにこの際はとどまり、その指導、助言、援助の中には具体的な教科書の選定や採択について触れてはならないことになったことが一つあります。そしてまた、その指導、助言または援助を行なうにあたっては必ず選定審議会の意見を聞かなければならないと法は拘束を加えておるのであります。都道府県教育委員会が選定審議会の意見も聞かずに独断で指導、助言、援助をすることも法がこれを許してはいないのであります。この二点を福田局長は明確に承知をしているかどうか、お尋ねをいたします。
  85. 福田繁

    政府委員(福田繁君) そのとおりだと思います。
  86. 米田勲

    ○米田勲君 教科書の選定、採択は市町村教育委員会、国立及び私立の義務教育諸学校の場合は校長ですが、市町村教育委員会に属する任務権限であり、教科書の選定、採択は、都道府県教育委員会はこれに対し指導、助言、または援助をするのだと称して、この市町村教育委員会の選定、採択の任務権限に立ち入ってはならないのであります。いわんや市町村教育委員会の自主的な教科書の選定、採択の任務権限を拘束したり、具体的な教科書の選定、採択をしたり、干渉したり、またそれに類似するがごとき行為は法が断じて許していないということを明確に福田局長は了解をしているのかどうか、その点をきわめて私たちは疑義を持っておるのであります。この点についてどういう理解をしておるのか、明確にお答えをいただきます。
  87. 福田繁

    政府委員(福田繁君) これはかねがね私どもも申し上げておりまするように、採択権は、公立の場合でございますと市町村教育委員会にあるわけでございます。したがって、具体的な教科書の選定行為、これは事実行為であります。あるいはまた、それから終局に採択するという採択権の問題は、これは市町村教育委員会の権限なんであります。そういった関係からその採択、選定をするにあたって必要ないろいろな資料を提供したり、指導、助言ということはありますが、あくまでこれは市町村教育委員会がみずから決定すべきものだと考えております。
  88. 米田勲

    ○米田勲君 そこの点が私は問題だと思うのです。市町村教育委員会が教科書の選定、採択権を持っておるということは福田局長も明確に認めておる、認識しておる。ところが市町村教育委員会が持っておるこの選定、採択の権限を、指導、助言という名目を通じてこの自主的な教科書の選定、採択権を侵したり、あるいは自主的な教科書の選定、採択の仕事に対して制約を加えたり、あるいは特定の教科書を採択すべきだということを干渉したりまたはそれにきわめて類似をする行為をすることは法が許していない、そういう行為を。ここが一番問題なのであります。その点はいかがですか。
  89. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 原則として、おっしゃるとおりだと思います。
  90. 米田勲

    ○米田勲君 原則としてではなくて、法律がそれを許していないと私は思うのですが、あなたは原則としてはそうだが、実際問題としては何か別のことがあるのですか。それ、ちょっと疑義が起こりますから明確にしてください。
  91. 福田繁

    政府委員(福田繁君) ことばづかいがどうも足りなくて申しわけございませんが、法の趣旨はおっしゃるとおりだと思います。
  92. 米田勲

    ○米田勲君 それではいま繰り返し私が指摘したところは、法が許しておらない。このことを局長は認めますね。その次に採択地区の問題であります。第十二条に「都道府県教育委員会は、当該都道府県の区域について、市若しくは郡の区域又はこれらの区域をあわせた地域に、教科用図書採択地区を設定しなければならない。」と法はきめておるのであります。ここでは原案にあったところの「(県の区域となる場合を含む。)」というカッコ書きは削除をされておるのであります。この第一項の定めがあるからと称して、都道府県教育委員会は独断で採択地区を設定することはできないと私は思うのでありますが、いかがでしょうか。
  93. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 採択地区を設定しますのは法律上から申しましても都道府県教育委員会の権限でございますけれども、それはやはり市町村教育委員会の意見を聞いてきめるということになっております。したがって、おっしゃるように独断ではない。十分実情を聴取した上できめるということになろうかと思います。
  94. 米田勲

    ○米田勲君 私はこの第二項に「採択地区を設定し、又は変更しようとするときは、あらかじめ市町村教育委員会の意見を聞かなければならない。」というふうに法が拘束をしておる限り、独断で都道府県教育委員会が採択地を設定することは法の精神を逸脱するものであるということを考えておるのであります。その点は間違いがありませんか。
  95. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 意見を聞かなければできないと思います。
  96. 米田勲

    ○米田勲君 いままで取り急いで幾つかの点について質問をし、それぞれ福田局長の答弁を通じて明瞭に一応はなったと思います。そこで、私はこの法律案が提案をされてから通常国会、臨時国会、特別国会と非常に長時間を要しました。その法案をめぐって精力的にお互いが論議をして、そうしてその論議の結果、修正点について合意に達し、これを修正議決をするという方向に向かったものでありますが、なお念のために、本委員会の議事録にこれを可決する以前にとどめておいて、今後、行政指導上誤りのないように、法の精神を逸脱しないようにという配慮から、十二月十七日のこの委員会で豊瀬議員から、修正案の趣旨説明に当たった長谷川議員に対し質問が行なわれたのであります。その質問の内容は、御承知かと思いますが、こういうことでありました。「ただいま修正提案者から趣旨説明がありましたが、それにも簡潔には触れられておったようですが、なお、念のために一点だけ、ただしておきたいと思います。政府原案の十一条による都道府県教育委員会の選定権を削除して、単に都府県教育委員会の任務を、市町村教育委員会の行なう採択に関する事務について、適切な指導、助言、援助を行なうということにとどめた修正提案の理由は、都道府県教育委員会が、いかなる名目、様式、態様に基づこうとも、市町村教育委員会等に対して、採択に関する限りは、特定の教科用図書の推薦を行なう。あるいは、たとえばこれがよろしくはないか、こういったような類似の行為を行なうことを一切否定しておるものと、法文上からも、ただいまの提案趣旨の概要からも察知されますが、そのように提案者の修正理由があったと判断してよろしいですか。」、こういうふうに念のために質問をし、これに対して長谷川議員が答弁をしておるのであります。これはあらかじめお互いの話し合いの最中にずいぶん論議をして、そういうことをお互いに一問一答的にとどめて、これを誤りないようにしようという話し合いに基づいて行なわれた質疑応答であります。そこで、私は今まで申し上げたこと、局長の答えたことば、それからこの会議録に載っておるいまの豊瀬委員質問と長谷川議員の応答等を全体を総合して、この法律のうち非常に現在問題になっておる重要な個所、それが修正議決したことによって一点の疑いの余地のないほど明瞭になっているものだと私たちは判断をしておるのであります。ところが、ふだんは他に対してはまことにきびしく、必要以上にきびしく、法をたてにとって容赦苛責のない文部官僚が、政令や、省令や、次官通達、あるいは局長通達、都道府県主管課長会議等において、この法律を犯し、原案を修正議決した立法府の意思を無視して行動している事実があるのであります。もしこのような事実がわれわれの手によって立証せられた場合は、福田局長を初め、関係者の責任はきわめて重大でありまして、われわれとしては絶対に許すことはできないと思っておるのであります。そこで福田局長に尋ねたいが、そのような事実が今後立証された場合は、福田局長並びに関係者はもちろん、事の重大性にかんがみて、職を退いて責任をとるという決意があるのかどうか、それをまずお伺いをいたしたい。
  97. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 私の進退に関しましては、これは私自身でどうということではないわけでございます。そういう問題について私が職を辞すとか何とかいうことは考えておりません。
  98. 米田勲

    ○米田勲君 福田局長に重ねてお尋ねします。あなたの所管をしておる仕事の中で法を逸脱して行政指導をしたという事実が立証された場合には、あなたは責任をとるべきではないか、私はこう思います。それが行政者の当然の態度であります。あなたはどう考えておりますか。
  99. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 御忠告はありがたく拝聴いたしますが、私どもとしては、もし間違った行政指導が行なわれておるとするならば、それをすみやかに是正するという措置をとりたいと思います。
  100. 米田勲

    ○米田勲君 私はこの問題に対して冒頭にも申し上げましたように、誠意をもって初中局長や、教科書課長に対して誤りのないようにしてもらいたいことを再三にわたって話をしておるはずであります。そういう経過もあるにかかわらず、さらにまた、この法案の修正議決の経過があるにもかかわらず、明らかに法律の条文に違反をするような行政指導を加えたという事実が立証された場合には、あなたは責任を取るべきではないかと私は言っておるのです。それは当然ではありませんか、いかがですか。
  101. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 私自身としては十分考えてみたいと思います。
  102. 米田勲

    ○米田勲君 法に違反をして行政に当たる者が行動をした場合には、その及ぼすところは甚大であり、許すことができないのであります。ですから、もちろんあなたはその責任者として、関係者とともに厳重に処罰されるべきだと私は思っておるので、これを立証するために私は今後あらゆる努力をいたします。  それでは第一の質問を次にします。それは二月十四日に教科書主管課長会議を招集して、各都道府県の主管課長が文部省に集まって会議をされましたが、その会議の後半に行なわれた各主管課長の質疑に対して応答に当たったメンバーはだれだれであるか、局長にお尋ねいたします。
  103. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 私はその会議の際には、冒頭にあいさつをいたしまして、あとは所用のため出席できなかったのでありますが、質疑応答に当たりましたのは課長以下の教科書課の補佐その他の人間でございます。
  104. 米田勲

    ○米田勲君 それでは、局長はあいさつをしてただちに退席をした模様でありますから、特に教科書課長お尋ねをいたします。後半の質疑に対して応答に当たったのはだれだれか、それを明確にしてください。
  105. 諸沢正道

    説明員(諸沢正道君) 当日答弁に立ちましたのは私と教科書課の鈴木課長補佐でございます。
  106. 米田勲

    ○米田勲君 それでは次に、この主管課長会議の内容について一々御質問いたします。まず第一に、初中局長は冒頭あいさつをしている、このあいさつの中で、私は幾つかの点について疑義がございますので、その疑義をまずお尋ねをいたします。初中局長はこの中で、国が無償で教科書を給与するというのも、国民的自覚を促すところに根本的な意義があるのであるから、始業式の当日に学校長が訓話の上、直接、児童生徒に手渡す等、その意義をあらわす方法考えられたい。こういうふうにあいさつの中に言っております。ところで、私がなぜここの点に疑義があるかというと、学校経営上の権限は、責任は、学校長とその職員によって構成されておる学校の教職員のメンバーがその責任を負うべきものであります。どんな訓話をしようが、または訓話をしまいが、そのことは文部省の初中局長の立ち入るべきことではないのであります。しかるにかかわらず、こんな始業式の日に、学校長がこの本を渡すときに、こういうことを強調して訓示しなさいというようなことにまで立ち至って行政指導をするということは、文部省の行政権限を逸脱しているのじゃなないか、老婆心というのがれ道はないと思う。局長はいかなる考えでこういうことを言っておるか、お伺いをいたしたい。
  107. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 文部省教育委員会に対しまして指導、助言をすることは当然の法律上の義務でございます。したがって、それぞれの事項につきまして適切な指導、助言を行なうということを従来からやってまいっておりますので、いまお述べになりました教科書無償の問題につきましても、これは文部大臣が委員会におきましても、一再ならず御説明されたと思いますが、こういう画期的な教科書無償というような制度につきましては、子供に対しても、そういう制度の意義あるいは国民的自覚をより深めるというような観点から、十分その問題を取り扱ってもらいたい、こういうような趣旨でございます。  したがって、学校でやれという強制ではもちろんございません。おっしゃるように、学校では、学校自体のいろいろなお考え方も、あるいは運営の方法もあると思います。しかしながら、文部省教育委員会が、さようなことを申して悪いということは私はなかろうと思っております。
  108. 米田勲

    ○米田勲君 そういう答弁が、今日の文部行政を混乱させているのです。大体、指導だとか助言だとかという、あいまいなことばを乱用している。文部省の行政権限の範囲内と都道府県教育委員会の行政権限の範囲内と、学校長の権限の範囲内とを明確にやはり区別をする必要がある、秩序を保つために。文部省が教科書を無償にして生徒に配付するときに、こういうふうにやったらいいなということを期待をすることはかまわない。それは自由でしょう。  しかし、あなたは訓辞の中で、学校長に始業式にあたってと、——あまりにも具体的じゃないですか。訓話をやれ、そのときには、こういうことを強調せい、これでは、学校経営の権限にまで初中局長が入り込んでいるということになりませんか。そういうことだから行政が乱れてくる。あなたの守るべき限界を逸脱していると自覚しませんか。
  109. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 私が直接やるならば、もちろん逸脱でございます。おっしゃるとおりのように逸脱でございますが、私は教育委員会に、そういうことを指導してもらいたいということを申したわけでございます。単にそれにとどまるわけでございます。
  110. 米田勲

    ○米田勲君 文部省の言い分は、常に困ってくると強制したのではないとか、単なる資料であったとか、参考意見であったとかということを言っておるが、裏側で締め上げている実態を一つ一つ暴露すればわかりますが、常にそれは強制なんです。そういう形をとっている、現在の文部省の行政のやり方が。ですから、私はこういう学校長の訓話をいつ何どき、どういう内容でやるかなんということまで立ち入って初中局長が訓話をする必要はない。そういうことをやると、学校でやる一切のことを初中局長があれをやれ、これをやるべきだ、これをやるように指導せいということになってしまって、教育体系の混乱を引き起こすことになるということを特に強調しておきます。ここは本論ではありませんので、この程度注意を喚起しておきます。  それから次に、初中局長のあいさつの中に、従来市町村には、採択のための委員会または研究会等があったようであるが、これは法律上疑義があり、このようなあいまいなものによる採択の決定は自今困るという意味のあいさつをしておる。一体、初中局長は、市町村教育委員会が、先ほども申したように教科書に対する自主的な採択と選定の権限を法律的に持っておるのだと、それは侵してはならないのだと、ほかのものが。こういうことを法律がきちっと定めておることを認めておりながら、御自分は、市町村教育委員会が教科書の研究会をしたり、研究会のメンバーをこしらえて、そこで研究をさせたり、あるいは委員会のようなものを設けて研究をさせたりしておることは法律上疑義がある、一体、この法律上疑義があるというのは何を指しておるのか。また、こういうあいまいなものは自今やめろと、そういうことを言う権限はないのではないか。市町村教育委員会が、よりよい選定や採択をしようと思って自主的にいろいろな研究組織をつくったり、あるいは話し合いの機会を持ったり、人の意見を聞いたりすることは法律が何もそれを拘束していないではないか。法律がそれを禁止していないではないか。どこが困るのであるか。どこに初中局長が、こういうことはやめてくれと言う法律の根拠があるのか。これもまた、私は初中局長のあいさつの中にあることばとして納得ができません。どういうわけで、こういうことを言うのか説明をしてもらいたい。
  111. 福田繁

    政府委員(福田繁君) いまお述べになりました点につきましては、相当誤解をしていらっしゃるんじゃないかと思いますが、私の申し上げました趣旨は、従来市町村教育委員会で、採択委員会とか採択協議会というような、単に名目上の委員会の形式のものをつくりまして、そうしてそれでもって、いわば諮問機関でございましょうけれども、実質上選定、採択をするというやり方が、かなり広く行なわれております。その点につきましては、衆議院の文教委員会においても、三木委員でございましたか、再三御指摘になって、そういうあいまいなものでは困る、責任の所在の明瞭な組織をもつてやるべきじゃないか、こういうような御意見が衆議院の文教委員会では再々出ております。私ども全く同感でございまして、だれが責任を持っておるかわからないようなところで採択、あるいは選定をやるということは、不公正な採択が行なわれるということが、そういう傾向が出てまいりますのでありますので、そういった意味から権限の、あるいは責任の所在の明瞭でないようなものはやってほしくない。しかしながら、市町村教育委員会が採択するにあたって必要な場合は、自治法上の正規の委員会をつくって、そこで諮問するようにしてもらいたい、そういう指導をいたしたのであります。したがって、後段の点がお述べになりました点にないわけでございますが、私は、そういう公正な択採が行なわれるという見地から、必要な措置をとるように申し上げたわけでございます。
  112. 米田勲

    ○米田勲君 初中局長は、いまの答弁の中で、委員会の何か一メンバーが何かの発言をしたことをたてにとって、それがはしなくも自分の考えに一致しておったといって、そういうことを言うことは当然なんだと、こういう話は、筋が通らない。初中局長のやり得べき限界というものは、法律の線を守るということだけだ。委員会で、だれが何という発言をしたから、私もそれに同感だから私はそれをやってもいいということにはならない。そういう常識すら逸脱しては困る。いま初中局長の答えたことばの中に、こういうことばがある。市町村教育委員会が、単に名目上の委員会などを設けてということばがあるが、一体、それは単に名目上の委員会を設けてというのは、どういうことですか。この市町村教育委員会が重大な教科書の選定や採択をしなければならないその責任を果たすために、いろいろな人の意見を聞いたり、いろいろな会合を持って、他の意見を聴取したり、あるいは協議会とか委員会を設けて、多くの人々の意見を聞き取ることは、何ら法は拘束をしていないし、禁止もしていない。私はむしろ望ましいことと思う。しかしそれが、最終的に市町村教育委員会の意思によって、大ぜいの意見はこうであった、委員会の意見も、その大ぜいの人たちの意見を正しいと信ずるがゆえに、この教科書を採択する、選定する、こう意思決定されていくのが、私は民主的な市町村教育委員会の教科書の採択の仕事をしていく経過になってしかるべきことと思っておる。それを何ですか。従来市町村教育委員会のやっていた仕事を、単に名目上ということばを使うというのは、どういうことですか。
  113. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 私が申し上げましたのに誤解があるといけませんから、私は現場の学校の教師たちのいろいろな意見を聞くなということを申したわけではないわけです。これはできる限り広く各層の意見を聞いて採択するのが当然だ。その採択する場合におきまして、ただ方法として、今までのような諮問機関であるのか、その採択の権限を持っている委員会であるのかわからないような、責任の不明確な委員会というものが、いろいろやっておったのが事実でございます。そういう点がございますので、今後採択委員会なり協議会というものを設ける場合には、自治法上の諮問機関としての委員会を設けて、正規におやり下さい、こういうことを指導したわけでございます。決して意見を聞くなとか、そういうことを申したつもりは毛頭ございません。
  114. 米田勲

    ○米田勲君 あなたはまだ、単に名目上のということを、どういうわけで使ったのか答弁をしていないね。教育委員会のやっていることを自分で勝手に憶測して、これは単に名目上のものだ、そういう断定をなぜ独断でやるのですか。あなたは名目上だと思っているかもしれない。あなたは責任が不明確だと思っているかもしれない。しかし市町村教育委員会は、自主的に、そのことが必要であると考えてやっておることに対して、何ですか、これは。単に名目上だとか、責任の所在が不明確だとか、そういうことを一方的に言い切っていいんですか。そういう前提に立って、市町村教育委員会のやっていることを一方的に、そういうことはやっちゃいかぬとか、こういうことはやれとかいうこと自体がおかしいのではないですか。独断にすぎませんか、あなたの判断は。答えて下さい。
  115. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 決して私の独断ではございません。これらの問題につきましては教育長協議会等においても、いろいろ検討された点でございまして、ただ、事実上の責任の所在がはっきりいたさないような委員会で、選定あるいは採択というようなことのあることは好ましくないということでございます。
  116. 米田勲

    ○米田勲君 それでは初中局長に聞くが、市町村教育委員会が、自分らの発意で任意の機関を設けて、そこで意見を聴取した、こういうのは、単に名目上のということになりますか。責任の所在が不明確だということになりますか、どうですか。答えて下さい。
  117. 福田繁

    政府委員(福田繁君) そういう事実上の委員会でございますと、私は困るのではないかと思います。やるならば、自治法でちゃんときめております正規の委員会を設けて、そして十分学校の意見を聞いて採択をしてもらいたい、こういう手続の問題でございます。
  118. 米田勲

    ○米田勲君 これはおかしいことを言い出した。この法律に基づいて、市町村教育委員会がその任務と権限を果たすために、自主的に判断をして、必要だということを法の限界においてやのに、なぜそれがいけないと言うのですか。教育委員会の発意でなしに、勝手にだれかがやるんであれば話は違う。それは局長の言うとおりなんです。しかし教育委員会自体が、自分たちの任務と権限を果たすために必要だと思って、そのことを発意をして、やらせたり、聞いたりすることが、何で名目上の委員会だったり、責任が不明確だったりすることになるんですか。自治法上の云々なんていうことをたてにとらなければならないのですか。そういうことまで、この教科書の選定、採択のために必要なものは拘束されるのですか。市町村教育委員会が自主的に、そういうことはできないのですか。あなた、どう考えているんですか。
  119. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 私は、先ほど申し上げましたように、採択権は市町村教育委員会にあると思っております。したがって、市町村教育委員会が採択権を行使するにあたって、一つ意見を聞くのは、これは自由でございます。自由でございますけれども、正規の機関を設けて聞く場合には、そういう自治法上の委員会を設けて、あるいは協議会でもけっこうでございますが、そういうもので、十分意見を聞いてやってもらいたい、こういうことを言ったわけでございます。
  120. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 あなたが言ったことは、いまあなたが言ったような言い方をしていないじゃないですか。あなたが当時、指導したあいさつの際に言ったことは、その中に、市町村教育委員会で十分協議して採択するように指導してもらいたいとか、そういう採択では、これから困ると言うし、それからひもつきでは絶対いけないとか、いろいろ言っている。だから、地方教育委員会が採択を行なうにあたって、自主的に決定をした委員会の諮問機関でなければ合法的でないという指導をしたのではない。あなたの指導は、それは合法性については、あなたの言う地方自治法の条例に基づく諮問機関が合法的でしょう。あなたの言っているのは合法性、非合法性ではなくて、地方教育委員会が、自主的に教科書採択を行なうにあたって、各層から、あるいは教科研究会とかあるいは校長会とかあるいはその他の諸機関の代表から十分の意見を聞く。その集約を条例に基づく諮問委員会でやっているところまでのもあれば……、やらないでそのまま判断をして、教育委員会自体できめておるところと、その前段の、自主的に各層の意見を聞くことを、あなたは拒否していると、否定しているのです。  したがって、地方教育委員会が、自分の任務を行なうに必要な自主的な運営というものに立ち入って干渉したと、あなたの発言は判断せざるを得んですよ。それは先ほどのあなた、米田委員質問に対して言ったことと関連しますが、法律の、教科書を無償でやる法律の趣旨がこうあるから、この趣旨をよく徹底させてもらいたい。この範囲内では、文部省設置法に基づくところの指導、助言、勧告権の範囲を逸脱しない。しかし、どこの場所で、どういう方法でやりなさいという教育、教授の内容について、具体的な要求をするということは、教育行政権が教育権に介入する問題として、これはきびしく批判されると思う。そのことについて、われわれはどうあろうとも、そこまで踏み込んで、地方教育委員会を統一していくのだという決意をあなたが披瀝すれば、別の観点から問題があるけれども、あなたは、地方教育委員会は、どういう方法で条例に基づくもので諮問をしようが、先ほどあげられた校長会あるいは教員代表あるいは先刻あなたが御承知のように、どこにも教科研究会というものがある。そういうものから理科研究会、国語研究会、そういうものの意見を十分聞く。このことを、こういう運営の自主性というものを、あなたは少なくとも否定する印象を与える指導をしたじゃないですか。それはあなた方の権限で自由ですと、こういう指導をしたのですか、どちらですか。
  121. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 私はもちろん、文書でもって出したわけじゃございませんから、そこのところは正確でないかもしれませんけれども、私の申し上げました内容は、そういういろいろな意見を聞いてはいけないとかということを申したわけではない。教科の研究会その他いろいろございますから、事実上お聞きになるのは幾らお聞きになってもかまわないと思います。  しかしながら、委員会等を設けてやる場合には、自治法上の委員会を作って、今までのような不明確な委員会ではなくやっていただきたい。こういうことを申したつもりでございます。
  122. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 もう一点だけ。地方教育委員会が、自治法上の諮問機関あるいは委員会等でないものできめられたところで教科書の採択が決定されておる。そのためにあなたの考えている市町村教育委員会の採択権が侵されておる、こういう判断をしているのですか。
  123. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 採択権が侵される侵されないということよりも、かつて関西地方に起こりましたいわゆる不公正な採択事件というものは、事実上の、そういった委員会というものの責任が不明確だという点に、いろいろな問題があったわけでございます。そういった点から、諮問機関として置くならば、そういう正規のルールにしたがって委員会を作っていただきたい、こういうことを指導したわけであります。
  124. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 だから、あなたの判断は、市町村、私どもは、市町村教育委員会の採択権の有無については、法律上から異論を持っているが、あなたの判断は、市町村教育委員会に採択権があるという判断をしたのですね。そのことを一応肯定して追及をしても、その採択権が、市町村教育委員会にあるという判断をあなたがしておるならば、市町村教育委員会が、どこから意見を聞こうとも、それを違法性があるような言い方によって、地方教育委員会が現在行なっている、あらゆる各層の意見を聞いて、その地域に適合する教科書を選ぼうとする作用を阻止する。そのことによって、後段に米田委員が追及していく、冒頭から法律を修正した趣旨を、何というか、実質上つぶしていって、当初の法律どおりの実施をねらっておる、こういうことしか、ずっと一連してみると、判断されないのですよ。したがって採択のために、地方教育委員会が教科研究会であろうと理科研究会であろうと、よい教科書を採択するために、あらゆる機構の意見を聞くということを、あなたが主管課長会議に、それでは困るとか、そういう言い方をする必要はないじゃないですか。それは自主性に対する明らかな干渉でしょう。そう思いませんか。
  125. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 私は、そういう違法云々というようなことを言ったつもりは毛頭ございません。ただ委員会をつくる場合には、いままでのような不明確なものでは困るということを申しただけでございます。
  126. 米田勲

    ○米田勲君 どうもあなたの言っていることは了解ができない、先ほどから。私は採択権や選定権を持っておる市町村教育委員会が、自主的な判断に立って各層各界の意見を聞くことは、これは法律に抵触していない。むしろそれは望ましいことなんです、民主的なあり方としては。それにもかかわらず局長は、従来市町村には採択のための委員会または研究会等があったようであるが、これは法律上疑義がある。なぜその自主性を、自主的にやっておるものを違法だ、そういうものは違法性があるというのかというところに疑義があるのです。自治法上に基づくものを設けることも、これも教育委員会の発意があればやれる。しかし、それだけで、ほかのことをやっちゃいかぬのだ、そういうことは、どこかにあるのですか。本法にありますか。それ以外のものはやっちゃいかぬ。それ以外の方法意見を聞いてはならぬということは、どっかにあるのですかそれをもしも、あなたは否定するのですか。
  127. 福田繁

    政府委員(福田繁君) それは何か誤解と思います。私は、そういう発言をした記憶はありません。それが法律上疑義があるという意味じゃなくして、法律上あいまいだったから、あいまいでない、責任の所在のはっきりした委員会を置く場合には置いてもらいたいと、そういうことを言うたわけですから、事実上、どこから意見をお聞きになろうと、それは市町村教育委員会の自由でございます。そういうことを毛頭申したつもりはございません。
  128. 米田勲

    ○米田勲君 私は、そんななことを言った覚えはないと言って逃げれば、それで事は済むわけじゃない。あなたは明らかに、従来市町村教育委員会がやっておった、教科書の採択のために必要だと考えて自主的にやっておった研究会、委員会は違法だ、そんなものはやめてしまえ、やっちゃ困る、こう言っておる。しかし、あなたはそれを言わないと言うのだから、 ここではっきりさせようじゃないか。自治法上に基づく諮問機関——諮問機関ということも、それもいいでしょう。しかしそれ以外のことはやっちゃならぬのだ、こういうことは、私は絶対言わぬということをはっきり言ってもらわぬと……。
  129. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 私は委員会を設ける場合には、そういう自治法上の委員会にしてもらいたいということを申し上げただけでございます。意見を聞いてはいけないとか、そういう違法だということは申し上げていないつもりでございます。
  130. 米田勲

    ○米田勲君 それは従来やっておった、市町村教育委員会が、教科書の採択に必要だと考えてやっておった研究会、委員会、そういうものを招集して、そこで意見を聞くという行為は、自治法上にきめられた諮問委員会でない場合であっては、それはいけないということをあなたは言っているのですというのですね。
  131. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 聞かれるのは一向差しつかえないと思います。
  132. 米田勲

    ○米田勲君 ここまで追及して、初めてあなたの意思ははっきりする。この主管課長会議では、私がいま表現したような話しかしていない。受け取る側はどう取りますか。文部省ににらまれたらこわいというのが都道府県教育委員会のみなの気持だ。文書を渡しただけでも締めつけられる。それが、こういうきわめて疑義のある、しかも自主的な市町村教育委員会の活動を押えつける話をするということはけしからぬ話だ。これも逸脱している。しかし、いまはっきり、そういうことは何も違法だといっておらぬし、自主性を拘束するものでないという答弁をしたので、これ以上は言わない。  それでは次に、あなたのあいさつの中に、またこういうことがある。市町村教育委員会で十分に協議して採択するよう指導されたい、万一議がととのわない場合は、諮問委員会等設け、その意見を聞いてきめることも適当な方法であると考えられるが、この場合も委員は公正な者でなければならない。私は、ここまではいいと思う。その次に、あなたはひもつきは絶対にいけないということをくっつけておる。何ですかひもつきというのは、私はわからぬ、ひもつきはいけないというのは何ですか、明確にして下さい。
  133. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 教科書の採択でございますから、教科書会社、あるいは特定の団体等のひものついている者は困る、こういう趣旨でございます。
  134. 米田勲

    ○米田勲君 教科書会社の人なら、これはわかる、売ろうとする側ですから。しかし何ですか、あとで言ったのは、もう一度言って下さい。具体的に言ってごらん。
  135. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 教科書の採択に関係のない団体等が、そういうひもつきの者を出してやるということは望ましくないという趣旨でございます。
  136. 米田勲

    ○米田勲君 では、こういうことですか、あなたの言っていることは、この諮問委員会のメンバーを選ぶときには、たとえば都道府県の教職員組合に加盟をしておるメンバーは適当でない、席を置いている者はいかなる人物であろうとも、いかなる学識経験を有しておる者だろうと、それだけの理由で、これはだめだ、これはひも一つきだからだめだ、こういう見解ですか。
  137. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 私は、そこまで考えていないのでございますが、教員は大部分組合に入っておりますから、現場の先生を、そういう委員会の委員にするとすれば、組合の組合員も入ってくると思います。しかし、そこで採択するとか、選定するとかいうような行為になりますと、組合の利益代表とか、あるいは特定の供給会社の利益代表、そういうようなものであっては困るのであります。そういう趣旨で、公正な人を選んでもらいたいということを申したわけであります。
  138. 米田勲

    ○米田勲君 組合の利益代表では困るということなら、一応話はわかる。しかし教職員組合に校長さんなら校長さんが加盟しておった、それだけの理由で、それをひもつきと見るのかどうかということです。そんなことは問題ではない、その人が公正な判断のできるという可能性を期待できるなら、そんなことは問題ではないという意味なのか、どっちですか。
  139. 福田繁

    政府委員(福田繁君) いま御質問のあったとおりでございます。
  140. 米田勲

    ○米田勲君 特定の団体の利益を代表するというのは、どういう人ですか、利益を代表するという人は、あなたの言っているそういう者は、どういう者をさすのですか。
  141. 福田繁

    政府委員(福田繁君) いろいろあると思いますが、その団体のためのみから、そういう目的のみから判断をして委員として行動するという場合だろうと思います。
  142. 米田勲

    ○米田勲君 わからぬ、あなたの答弁はわからない。団体の利益のみを代表しようとする者というのは、その団体の中の構成メンバーの中のだれをさすのか、どういう役職の者をさすのか、どういう行動をとっている者をさすのか、それがはっきりしないとだめでしょう、あなたは先ほど組合に加盟しているメンバーであることを理由にして、それはひもつきだからだめだとは言わぬと言っている、そうでしょう、そうすると、団体に加盟しているいないは問題じゃない、団体の利益を代表する、そういう者がひもつきだというと、じゃその団体の加盟しているところの、どのメンバーをさして団体のひもつき、利益代表だと断定するのか、やはり条件が必要でしょう、どれでもこれでも一いいというわけにはいかない。さきには加盟していることは問題ではないといっているのだから。どうですか。
  143. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 一般の団体の構成員だとか、あるいは会社の社員だとかいうような場合は、これは別にその人その人の識見によって考えてけっこうだと思いますが、やはり組合なり、あるいはその他の会社、一般の団体等の場合を考えてみますと、主要な役員というものは、やはりその団体、組合等の考え方に左右されるわけでございますから、そういった場合は、やはりこういう公正な採択にあたっての委員会には適当でない、こういうように私は考えております。
  144. 米田勲

    ○米田勲君 だんだん聞いておるほうが判断に苦しんでくる。組合に加盟をしておるがゆえに、ひもつきだからだめだということではないと、まずこれを言っているのだ、あなたは。そのうちに、だんだん問うていくと、主要な役員は云々と言っている。この主要な役員というのは、組合の主要な役員というのは、ではだれをさしているのですか。どこを。わからない。私はその人物が、真に公正な学識と経験を持ち、教科書の採択や選定にあたって、りっぱな意見を吐露してもらえるという可能性を期待できる人物だと教育委員会が判断をした場合には、それがどういう顔の人であろうが、どこの団体に所属をしていようが、何の職業にあろうが、そんなことは問題でないんじゃないか。あれはひもつきだからだめだ、これは利益代表者だからだめだという、頭から、そういうきめ方をしてワクをかけていくと、これは際限のない話になってくる。だから、あくまでも諮問委員会のメンバーは、公正な選定や採択のできるような、そういう人物を選んで下さいという限界以外に出るべきでないんだ、あなたは。何でもひもつきだ、利益代表はだめだということを言うから、市町村教育委員会が自主的に判断をし、それが妥当だという人物を選ぼうとするときに、形式的なもので全部ワクをかけてしまおうとする、それが逸脱をしているんだと言う。そういうことを言う必要はないわけではありませんか。  あなた方の最近の行政には、いつも私は言いますが、人を信頼しないんだ、頭から。人を信頼しないということが先行しておる。なぜ市町村教育委員会を信頼できないのですか。公正な教科書の採択と選定を諮問できるような適当な人物を選んで下さいということを言えば足るんじゃないですか。私はそう思うんです。それがどこの団体に所属しようが、どこの利益代表だからだめだと言い出したら、どうなるんですか、一体。私の言うことが正しいんじゃないですか。局長、どうですか。
  145. 福田繁

    政府委員(福田繁君) もちろん公正な採択を行なうための諮問委員会でございますから、公正な人を選んでもらいたいというのが趣旨でございます。
  146. 中野文門

    委員長中野文門君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  147. 中野文門

    委員長中野文門君) 速記を起こして。  委員会は午後二時四十分より再開することとし、これにて休憩いたします。    午後一時四十一分休憩    ————・————    午後三時開会
  148. 中野文門

    委員長中野文門君) これより委員会を再開いたします。  午前に引き続き、文化財保護に関する件について質疑を行ないます。
  149. 小林武

    小林武君 午前中の質疑でたいへん残念に思いますことは、調査保護のしかたというようなものはもっと具体的に、計画的にやられなければならないということ、それが文化財保護委員会の中では十分でないというようなことを感じたわけであります。こういう委員会行政といいますか、そういうもののよさというものを、この文化財保護の場合においては十分発揮すべきであるのに、委員長の御答弁の中にも、どうもややお役所的な、役人的なものの見方に立ったような御答弁があるということは、これは遺憾だと思うわけです。しかし、そういうことを取り上げてかれこれ言ってもしようがないんでありまして、大体質問で明らかにされたと私は思うんですけれども、案件はたくさんある。これをいまのままで放置しておくならば、とにかく日本埋蔵物文化財というようなものはほとんど破壊され尽くすと言ってよろしいのではないか。学問的な損失も加えて、これは非常に重要な問題でありますから、文化財保護委員会としては、一そうの御努力をひとつお願いいたしたいと思うわけであります。  その際、特にお考えを願いたいことは、やはり岡山県の例を見ましたんですが、あの膨大な地域の開発が行なわれるという場合に、調査については、なかなか局長の言われるような程度のあれでは手に負えないと思うんです。どうしてもたくさんの研究者並びに学者協力を得なければならぬと思うんでありますが、そういう手だてについても、もっと範囲を広げて十分おやりになったらどうか。あなたのほうの関係学者の人たちとわれわれが接触する学者の人たちでは、だいぶ同じ人がいないように思うんです。だから、私は、文化財保護委員会でその気になれば、相当のことはできるんじゃないか。なお、その際、研究者の中には、必ずしも小学校の先生だから、中学校の先生だからというふうに、専門家ではないのではないかという考え方で、研究をむしろできないようなことにしないようにしてもらいたいと私は思うんです。岡山県の高等学校の生徒諸君でも、このぐらいの「文化財保護問題の研究」というようなものを一つ出して、世界の二十一カ国の文化財保護に関するアンケートをやって、各国の文化財保護対策を集めているというぐらいな、そういう熱心な研究者もいるということを考えますと、これらの研究者の研究というものは助長するように努力なさるべきだ。もちろん、そのことによって文化財がいたずらに掘り荒らされるとかなんとかということがあってはなりませんから、厳重なそういうあれはなさるべきでありますけれども、それを口実にして研究の発展を阻害することのないように、そういう体制をつくっていただきたいということを要望申し上げます。  この際、埋蔵物文化財ではないんでありますけれども、昨年の十一月の何日ですか、二十四日ですか、六日間にわたって本院から委員派遣をやった際に、一例ですけれども、安芸の宮島の厳島神社、これについては二木委員から御報告があったわけであります。その際に私は非常にふしぎに感じましたことは、建築そのものが国宝であり重要文化財、そういう厳島の神社に社務所がある。そしてそれが、国宝が社務所のかわりをして、代用もさせられておるということになりますと、一体、これは一朝何か事があった場合に、いろいろ非常に苦心されて防火設備等についてはかなりやっておりましたけれども、これはやはり社務所に使ったんじゃ、私は危険度がきわめて大だと思うんです。ところが、まあいろいろ理由もあるだろうと思うんですけれども、そういう国宝であり重要文化財に指定されたような建物というものに対して、国がもっと適切な指導というものはできないものか。そのとき関係者の説明を聞いて痛感したのでありますが、そういう点なんかについて、いささか文化財保護委員会のやり方は手ぬるい。こういうことをやっておったんじゃ、建物、埋蔵物をはじめ、日本文化財というものはどうなることやら。その他、そういう事例は、私が申し上げるまでもなく、京都の場合においてもあったことでございますから、どういうあれをやるのかというようなことについて、ほんとうに確たる方針をお立てになっておるのかどうか、伺いたいと思います。宮島の問題なんかについては、単に金の出どころがないとかなんとかということで放置しておいていいものかどうなのか。もちろん、国がどうするということを私は言うわけじゃありませんけれども、一体へ指導はどうなっておるのか、このことをひとつお尋ねして、私の質問を終わります。
  150. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 宮島の例をおとりになられましたが、一般に建造物関係、特に国宝、重要文化財に指定されましたそういう建造物関係につきましては、終戦後、法隆寺が焼失しましたのを契機といたしまして、保存、修理ということも大事ではあるが、そのものが焼けてなくなったのでは、これは修理をすることもできないし、一番重要なことではないかといったようなことで、これは国会でもいろいろ問題にもなりましたことですが、文化財保護委員会としましては、そういう意味で、防災の施設、設備の予算を年次計画立てまして大蔵省当局とも話し合い、年々増額を見ておるところでございます。ただ、防災のやり方にいたしましても、いわゆる理想的なのは完全防災でございますが、消防法に規定をいたします最小限度の防災といったようなことで、その間、予算制約等もございますが、その範囲内でできる限りの措置を講じておるわけでございます。また、昨年来、文化財のいわゆるパトロール官といったようなものも、四名ばかり定員をとりまして、所々を歩いては防災に気をつけておるのであります。また、電気関係の会社等にもお願いいたしまして、絶えず文化財の電気等の配線については、普通の建物以上の注意を関係会社にお願いしてみるところであります。  宮島に一例を引かれましたが、ただ現在のやり方といたしまして、私どもとしまして多少ぐあいの悪い点は、国宝とか重要文化財といった指定文化財につきましては補助対象になるわけでございますが、社務所をつくるといったような場合、これは補助対象にならないわけでございます。しかし、補助対象にならないでは、お寺なり神社がお困りになるわけであります。そういうわけで、私のほうは補助対象にはならないけれども、補助対象になっておるほうで補助率をできる限り高率にして、ひいてはそういう社務所とか庫裏とか、指定外の建物にその社寺から金ができる限り回せるような、そういう措置を講じておるのが現状でございます。もちろん、埋蔵文化財等につきましては、指定をした史跡名勝天然記念物以外に、埋蔵文化財、多くのものが未指定のものがございます。しかし、未指定のものでも、埋蔵のほうはむしろ未指定のほうが危険が多うございますので、このほうはできる限りのことをいたしておりますが、現在までのところ財政当局等との話し合いもいたしまして、以上申しましたような措置で進んでおります。  宮島につきましても、昨年そういうお話を聞きまして、神社側にも話をしておるところでございますが、本日ただいま、このように御安心のいただけるような結論になりましたと御報告いたすほどの具体的なものを持っていないのを非常に遺憾に思っておりますが、今後ともただいまの御注意のような点を十分考慮いたしまして、文化財の防災保護努力したいと思います。
  151. 吉江勝保

    ○吉江勝保君 文化財に関連して、一、二簡単な問題ですがお尋ねしてみたいと思います。  小林委員、また秋山委員が熱心に御質疑になりましたことを聞いております間に感じましたことを、関連質問としてその際にお尋ねしようかと思ったのですが、その一つは、いまもちょっと質疑が行なわれておりましたが、昨年の十二月の末ごろに、参議院の文教委員会で班を構成して国政調査をいたしましたが、その際に各班から出された報告の中に、それぞれ文化財に関する報告がなされておるのでありまして、この報告を委員長はごらんになっておるのかどうか。私どもは議長に報告をしておるのでありますが、この文教委員会で重要な問題として、一委員質疑をしておる問題と違いまして、委員会の全員が各班一緒になって調査をしたその報告書でありまして、その結論的なものが報告をされております。その中に文化財関係のことが盛られておるのでありまして、そういう報告された事項について、委員長が、これはいままでもたびたびあるのですが、はたしてごらんになっておるのかどうか。私どもが国会に報告したのを委員長はどういうようにごらんになっておるか、その点、先にひとつお聞きいたしたいのであります。
  152. 河原春作

    説明員河原春作君) ただいまお尋ねくださいました案件については、むろん、国会調査班の随員として文化財から参ったこともありますし、いまお示しになったときに参ったかどうか私存じませんが、とにかく調査班の結論として御報告になるのですから、それを各担任の係において来年度の予算に実現するのにどうするかということをむろん研究してやります。いままでその御報告に基づいて、来年度の予算に計上したという面も記憶しておりますし、むろんどれ、いつといわれるとちょっと記憶がありませんので、具体的に申し上げられませんけれども、しかし、それは必ずみんなで協議して、このうち来年度予算にこれはぜひ計上しようじゃないかということにしてやっておりまして、その例は二、三にとどまらないと思うのであります。
  153. 吉江勝保

    ○吉江勝保君 予算に実現するところまで実は持っていくつもりはなかったのでありまして、実は国会で皆で研究をして調査をして報告をしている事項を、はたして委員長はお聞きになっているのかどうか、そういうものを私は見たこともありません、聞いたこともありませんという程度か、私どもの調査したものを文化財に関する限りは関心を持ってお読みいただいているのか、お聞きいただいているのかということを実はお聞きいたしたのでありまして、どうなんですか。昨年の暮れには何班か出まして、それで各班とも文化財に関する報告書を出しておりますが、お目に入っているのでしょうか。
  154. 河原春作

    説明員河原春作君) 第何班と仰せられましても、私いまはっきり記憶ありませんが、とにかく国会の調査班についてはみんな、文化財のほうから随員として参加したこともありますし、参加しなくても、御報告に基づいて皆でどういうふうにやるかということを研究しております。
  155. 吉江勝保

    ○吉江勝保君 大体御答弁で察せられるのですが、もうこれ以上お聞きしても無理だと思いますが、ここにおいでになって、きょう聞いておりましても、各委員が非常に熱心に文化財のことについて心配をいたして質疑をいたしているのであります。特に調査班が行って調査した結果は、これは手続の上からいって、書類が自分のところに回ってこないから見ていないというような言い方ではなしに、やはり文部省に行っているものは、大体文化財のことに関しての報告があったことは知っているはずであります。そういうものをもう少し熱心に取り上げて、そうしてなるべく早い機会に委員長のほうからでも文教委員会のほうに、あの調査については実は自分らもこういうように考えておりますというような、そちらのほうから発言を求められてでもお話しいただくくらいの熱意が実はほしいのであります。ほかの文部省の各局長につきましては、ここにしょっちゅう呼び出されまして各委員質疑応答をやっているのであります。文化財については御出席いただく機会も少ないわけですが、特に関心をこめ文教委員会にお持ちになって、こちらで報告したようなものについては一番先に目を通されて、一番先にそれについてここでひとつ報告してみたいというくらいの関心を持っていただきたいと思う。これだけ国会議員が熱心にけさから論議しているのをごらんになっても、ちょっと私どももの足りないような感じがするのです。文化財保護委員会の熱心ぶりといいますか、お働きぶりといいますか、それはある程度予算はここでふやしましたが、もう少し関心を持って皆と一緒に力を入れていくという態度をお示しいただきたい。これは希望を申し上げておきます。  それから、もう一つ、これも関連ですが、小林委員質問の中で、千鳥カ渕の工事中に江戸城遺跡のようなものがあらわれたというお話がありましたが、当時私らも新聞で読んだのですが、それがどうなったのか、そのままこわされてしまったのか、先ほど質疑を聞いておりますと、たぶんこわされてしまったのだろうと私は聞いておりましたが、そういうときに、新聞でも報道して皆関心を持った問題を、文化財保護委員会ではどういう調査をして、判断を下して、そうしてこわされてしまうことを見送られてしまわれたのか、そのときにこれだけの処置はとったけれどもやむを得なかったというような経過がありましたら、ひとつお話をいただきたい。これはほかの埋蔵文化財についても、先ほど質疑でもわかるように、あちこちに起こっておるのであります。そのときに、一体文化財保護委員会はどれだけの措置をおとりになるだろうかということが、非常に聞いておりまして不安というのですか、疑惑を持たれたのです。一番近い例として、あの千鳥カ渕の問題のときには文化財保護委員会ではどれだけの措置をおとりになったのか、その点をひとつ御説明いただきたいと思います。
  156. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 先ほど小林委員からもお話がございまました、いまの吉江先生の御質問の点でございますが、これは地下道ではなかろうかというような話がございました。私のほうの史跡の担当者が参りまして、本人だけの独断ではございませんが、本人が十分にそこで図面を作成し、帰って数人の史跡関係の先生方とも御相談した結果、これは地下道ではなくて暗渠であろうというふうに考えました。しかも、そのこわされるという場所は一部でございまして、その続きはまだその場所から続いて、こわされていないわけでございます。ほとんど残ってるわけでございます。それで、結論的には、一部こわれたわけでございますが、その図面、記録等十分に私のほうでとって保管をいたしております。一応いまの御質問の事実問題だけを私からお答えいたします。
  157. 吉江勝保

    ○吉江勝保君 大体そのときの経過の模様はわかりましたが、そういう際に、あの場合どれだけの学者が集まって最終的な結論を出されるかというのが、これが問題になってくるんじゃないかと思うのです。そういうときに、先ほど午前中からも小林委員からだいぶ質問が出ておりますが、相当やはりこれは大事な重要な問題でありますから、やはり何というか、相当信頼が置けるというか、国民を直接納得できるような学者とか、そういう人たちをお集めになって、そうして最終判断を下すようにしていただきたい。文部省文化財保護委員会には相当専門家がいらっしゃるだろうと思いますが、これだけのものをこわしていくというようなときには、相当慎重な調査というか、検討を加えてやっていかれるような仕組みというのですか、そういう人たちをお持ちになっているのか。ただ技官が行ってみたところが、そうでなかったからというような程度で、ああいうものをこわしていかれるのか。文化財保存すべきかどうかというときに、最終決定の判断を下すときの専門家、そういう人たちはどういうメンバーでおきめになるのか、その点をひとつお話し願いたい。
  158. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 史跡だけで、こざいませんで、名勝天然記念物、あるいは建造物、美術工芸、あるいは指定文化財につきまして、また広くは未指定埋蔵文化財等であってもそういう方法をとりますが、特に指定文化財につきましては、いま先ほど来の例で申しますれば、結局こわすということは一部現状変更ということになるわけでございますが、現状変更の問題が起こりました場合、私のほうの専門の技官、調査官を派遣いたして、調査をいたして帰ります。その報告等に基づきまして、別に文化財保護委員会の所轄機関といたしまして、文化財専門審議会、大体委員さんは百名ばかりいらっしゃいますが、それがいろいろな部門に分かれておるわけでございます。史跡に例をとりますれば、百名ばかりの委員さんのうち、二十名前後の方で史跡等の専門分科会を持っておられます。そこで、調査をしてきました担当者が正式にはかるべきほどの問題であるか、あるいは正式に分科会を招集するのじゃなくて、三、四名の東京所在の先生方においでいただいて御意見を伺ってきた程度でいいものであるかという判断をいたしまして、その二つの方法をとりますが、三、四名の先生方で御相談をしてきめていいものもあるし、これは調査団が調査をし報告したことでいいであろうということであれば、そのとおり許しております。しかし、数名のいわゆる幹事的な先生方ですが、そこだけでなくて、正式な専門分科会を開いて現状変更を許すかどうかをきめたほうがいいであろうという御意見がありますれば、分科会を正式に開きまして、現状変更を検討していただく。現状変更をしてもよろしい、その場合はこういう調査をし、こういう形をとれば、一部変更やむを得ないであろうという御答申をいただければ、そういったことを関係者に通知してやっていくというのが実情でございます。  それでは、どういう顔ぶれの人々であるか。これは大ぜいいらっしゃるのですが、一部申し上げますと、その専門審議会の会長さんは原田淑人先生、東大の名誉教授でわが国における考古学の権威者でございます。その先生が会長でございますが、分科会のほうは、東大の名誉教授坂本太郎先生が史跡の分科会会長でございます。そのもとには、委員としまして、東京所在の教育大学とか早稲田大学、明治大学といった国立、私立の考古学の主任教授のような先生方、それに京都大学とか、あの辺のそういう考古学の先生方にも御配慮いただいておりますが、私の頭に浮かびます二、三の先生を申し上げますと以上のような先生がございまして、私どものほうだけの担当者限りでやると申しますのは、きわめて軽微な現状変更の場合だけでございまして、おおむね以上申しましたような正式の分科会あるいは幹事会的な分科会の先生方と御相談して処理いたしておる状態でございます。
  159. 吉江勝保

    ○吉江勝保君 もう一点だけお尋ねして、私の質疑を終わりたいと思います。それは、最初に申し上げました、この委員会の調査報告書なんですが、先ほど広島県の文化財について小林委員からお話がありましたが、宮崎県の調査をしました話も、あるいは西都原と申しましたか、あそこの古墳群についての調査報告書が出ておるのでありますが、こういうものについても、何かこの機会に、あれをごらんになってどういうようにあなた方は受け取っておるかというようなことでもお述べになる御意思があれば、承っておきたいと思います。
  160. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 先ほど来の吉江先生の御質問、これは委員長お答えになられました。一応、委員長のもとで事務を統括いたしております私といたしましては、御報告になられましたものは速記録に載っております。もちろん、私、帰って御報告しますが、詳細は速記録に数日後に出るわけでございますが、文化財関係の分科会の速記録、議事録はすべて委員長は目を通しておられますことを補足さしていただきます。  これは、ただいま申されました宮崎県の西都原古墳の買い上げの問題でございますが、お話を聞きまして、さっそく県のほうにも連絡をいたしました。そうしましたところ、買い上げて保存するというのが一番理想的な方法ではあろうけれども、いま直ちに買い上げなくても、いますぐこれがこわされるとか、あるいはこわさなければいけないという事態にまで立ち至っていないから、買い上げをするということはいますぐ考えなくてもよろしかろう。それではどのようにしてこれを保存するかということは、県としても十分研究をして文化財のほうに連絡するというお話でございましたので、そのようになっております。  それから、そのほか、いまのは一、二の例にすぎませんが、そのほかの問題につきましても、御要望があれば、私のほうで後刻まとめてここで御報告させていただいてもよろしいかと思いますが、これは吉江先生から直接私にも十分言われましたことでございますので、三班の先生方の調査報告につきましてのそれに対する措置につきましては、実現できるものとできないものがございますが、一応私のほうではお答えできるような用意をいたしております。あいにくだだいま手元に持ってきておりませんので、必要でございますれば、後日御報告させていただきたいと思います。
  161. 吉江勝保

    ○吉江勝保君 けっこうです。
  162. 野本品吉

    ○野本品吉君 午前中から小林委員等の具体的な事実に基づいてのいろいろな御質問がありましたので、私のお伺いしたいと思いました点も相当わかってきましたので、残されたと申しますか、関連しまして、二、三の点についてお伺いしたいと思う。  最近、国土開発、それから、住宅公団の大住宅の建設、それから観光ブーム、こういうとうとうたる勢いがありまして、そのために損壊もしくは滅失した幾つかの文化財があろうと思う。そこで、私は事務当局から、代表的なもので、埋蔵文化財、あるいは史跡名勝天然記念物、それから重要文化財等で、比較的近い時期において損壊、滅失したものにどんなものがあるかということを、代表的なものでけっこうですから、お話しをいただきたい。
  163. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) ただいまの御質問でございますが、私の知るところでは、指定をされております国宝とか、重要文化財、あるいは史跡名勝天然記念物で、おっしゃいましたようなことで滅失してしまったというような例はないように考えております。ただ、棄損という点でございますが、これは毎年現状変更ということで、史跡等の一部現状変更の許可申請、これは毎年四、五百件ございます。ただ、それが棄損という場合、これにはいろいろ意味があろうと思いますが、こちらもやむを得ないということで、まあ一番おわかりよい例を申し上げますれば、この近くでは、高速道路のために、赤坂の弁慶橋のあたりのホテルのそばの石垣等も一部積みかえしたりしておりまして、お堀の上に橋ができたり、あるいはお堀の土手のところを一部削ってそこに道路を通すといったようなことが行なわれております。これをまあ棄損といえば棄損ともいえますが、これは公益上の点と、文化財保護と両者が歩み寄って、最終的にはお互いに譲歩し合ってきめたことでございますので、まあこれを棄損というのはいかがと思いますが、いま先生の御指摘になられたような点で、滅失はおそらく私の記憶ではない。棄損は、以上申しましたような現状変更を棄損というのでございますれば、相当数あると思います。しかし、これは棄損と称すべきものではなかろうと存じます。正確な数字は、いま覚えておりません。
  164. 野本品吉

    ○野本品吉君 まあ非常に大事なものの棄損もしくは滅失したものがないということで、一応わかったのですが、しかし、将来いまのような傾向が、さっき申しましたように、大きな住宅、住宅公団による大住宅が建設され、地方開発で道路ができる、新産都市の開発だというようなことによって、大事な文化財が滅失する、あるいは棄損されるおそれは多分にあると思うのですね。そこで、それに対する対策をどう考えるかということについて、先ほど小林委員からもお話が、こざいましたが、私はこういう案を提案してみたいと思うのです。それは、文化財保護委員会が、日本文化財として将来まで何が何でも残したいという埋蔵文化財あるいは史跡名勝天然記念物、そういうようなものの総合的な調査をして、そうして正確な地図をつくって、これを建設省なり、住宅公団なり、あるいは道路公団なりにあらかじめ渡しておいて、どこにどういう道路をつくり、どこにどういう住宅を建設するにしても、これは大事なものであるから、これはよけてほしいという、あらかじめそういうことを申し入れておく必要があるのではないか。全国的な総合調査をして、それを詳細な図面にして、これだけはというのをあらかじめ知らせておかないと、たとえば平城宮のような場合、一応ごたごたして、解決はしましたけれども、既成事実に押されて、そうしてそういうことができなくなってくる。これは私は文化財保護の総合対策として大事なことじゃないか、こう思っておるわけなのです。この点についての御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  165. 河原春作

    説明員河原春作君) ただいまのお尋ねについて、先刻もその一部分をお答え申し上げたのですけれども、文化財保護委員会といたしましては、土木工事に非常に関係の深い、役所で申しますと、建設省とか、農林省、あるいは公団その他ついては日本道路公団とか住宅公団とか、おもだったものに対しまして、史跡名勝天然記念物並びに埋蔵文化財包蔵地保護、こういう点について気るつけてほしいということをまとめまして、これを御依頼申し上げて、まあ大体の御了承は得ておる。そのうちにも、日本道路公団においては特に、埋蔵文化財包蔵地発掘調査実施要領とか、そういう名前の要綱をまとめまして、関係の各機関に配付して、気をつけるようにということを伝えてくださったのであります、先月か先々月に。ただ、それについては、いまお話しのような別に地図がついておるわけじゃありませんから、実際の運用の際には、いざぶつかってみないと、その効果があらわれないというような場合もあろうと思いますから、この三十九年度の予算から、大体三カ年の予定をもってそれを記入した地図をつくりまして、そして将来は大きな工事でも、たとえば静岡県なら静岡県でやろうというようなときには、その県の地図を一応見てもらう、こういうふうにいたしたいということで、計画を進めてまいっているようなわけであります。
  166. 野本品吉

    ○野本品吉君 私は、年来いまのようなことを考えておりましたので、それに着手されておるようで、けっこうでございます。ぜひその点につきましては特段の御努力をお願いいたしたい。  それから、もう一つお伺いしたいと思いますことは、最近中尊寺の解体修理が始まっておる。そこで、私は中尊寺へ行って、半年ほど前ですが、あそこの住職と懇意なものですから、遊びに行ったのですが、いろいろ見たり聞いたりいたしましたところが、中尊寺の柱は明治の初年に一応修理してあるのですね。ところが、いたむ度合いからいうと、修理した場所のほうが早くいたんじゃっておる、こういう状態なんですね。古くからあるものは比較的しっかり残っておる。そこで考えますことは、修理の技術等に関する問題なんです。それから、もう一つは、いつかこの委員会で行ったときでありますが、京都の博物館へ行きまして、古文書の修理の現場を見たわけですね。そうすると、そういう際にしみじみ感ずることは、中尊寺のようなものの解体修理にせよ、古文書の修理にせよ、非常に高度な、いまの一般の職人ではどうすることもできないような技術を必要とする。そこで、そういう技術者が養成されていかないというと、今後大事な文化財の修理というような場合に直す人がいなくなってしまう。これはそういう特殊な技能、技術を持った人を将来続けていくということが、いつになっても修理の技量を、腕を持っておる者をずっと続けていくようにするということが、文化財保護の大事な条件になってくると思う。そこで、古文書を直しておるとか、ああいう特殊なことをやっておる人は、あれはどういう形で国が使用しておるか、それをお伺いしたい。
  167. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 文化財の修理技術者の研修、養成の問題でございますが、一般的に申しますと、美術工芸関係建造物関係、それに重要無形文化財としてのあれもございますが、一応美術工芸、建造物が主体になろうと思います。それで、私どものほうといたしましては、昭和三十年ごろから毎年美術工芸関係建造物関係の修理技術者の講習会を行なっております。建造物関係は二年間で一つの研修が終わるような仕組みでやっておりますし、美術工芸のほうは、毎年毎年テーマを変えまして、同じ人が七、八年も続けてその研修を受けておるといった形のものもございますが、先ほど指摘の古文書関係の人もおりますし、あるいはよろいのおどしを修理する人とか、あるいは先ほどの中尊寺の柱のようなウルシ関係の技術者、まあいろいろな分野の人がおるのですが、大体美術工芸では年々四十名ばかり、建造物では二十名ばかりの人に、あらゆる専門家、権威者を講師にいたしまして、研究をさせ、講習をさせております。それから、ただこれは二週間ないし二十日ぐらい年間にやるわけでございますが、それらの人々が仕事に従事します場合は、やはり講習会の講師になられたようなそういう先生と絶えず連絡をとりまして、講習会のときだけではございませんで、四六時中、問題が起こりましたときは、指導を直接仰ぐなり、あるいは手紙で照会するなり、あるいは文化財委員会であっせんしてやるなりいったようなことをいたしております。  ただ、これらの人の身分関係でございますが、どういう関係で、こういう人々を文化財委員会は使っておるか、これは一応現在の文化財保護法の体系で申しますと、国宝とか重要文化財、こういったようなものは、所有者が管理をするという原則をもっております。所有者管理の原則でございます。したがいまして、社寺なら社寺が自分の宝物を修理いたします場合、それは社寺が、たとえば九五%補助金が出ておりましても、形の上のでは社寺が修理をする。したがって、修理をお願いするのは、社寺がある人にお願いをするという形をとります。したがいまして、形式的には文化財保護委員会の職員でもございませんし、国家公務員でもございません。しかし、実質的には文化財保護委員会の職員、国家公務員と同じような扱いで、いろいろ連絡を密にしてやっておるというのが現状でございます。
  168. 野本品吉

    ○野本品吉君 いまのような方法で技術者の養成あるいは訓練をしていった場合に、将来、先ほど申しましたように、高度の特殊な技術を要する、そういう要員を確保することができるかどうか、この点についてのお見通しは……。
  169. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) この修理技術者と申しますと、一口に技術者と申しましても、これは非常に上から下までございまして、たとえば先ほど中尊寺の柱に例をとられましたが、これは近く解体をして東京に運びまして、東京博物館の横に、文化財のほうの所轄機関ですが、文化財研究所というのがございます。ここでいろいろ科学的な保存修理の方法等を研究しておるのですが、そこへ運びまして、その責任者はもと芸大の先生をしておられました、ウルシ界ではわが国の第一の権威者、文化功労者でもございますし、重要無形文化財指定になっており、芸術院会員でもございます松田権六先生がこの修理を担当してくださることになっております。したがいまして、そういう文化功労者、文化勲章受章者のような方もこれは修理技術者でございますし、また古文書の裏張りをするような、いわゆる経師屋さんのような方も修理技術者でございます。したがって、非常にこういうものには経験を要します。知識と同時に経験を要する問題でございますので、しかも、いま申しましたように、非常に一がいに修理技術者といいましてもいろいろな内容でございます。したがいまして、非常に高度の学問的なそういうことを要するものにつきましては、これは非常におそまきでございますけれども、昨年、芸術大学にこういう文化財の修理の講座を設けてもらいました。大体そこの講座の先生方が実はそういう高度の修理技術者でもあるわけでございます。芸術大学の美術学部の学生がこの修理講座も受けております。そういう形と、また非常に経験を要します経師屋さんのようなものは、これは経師屋さんは弟子をとって養成をしていっている。それに文化財としては講習会のようなものをやったり、あるいは大学の先生方を指導者としてつけたりといったようないろいろな方法で、一応いまのところはそういう形でやっていくのがいいのではなかろうか。ただ、非常に修理を要しますものはたくさんございますので、これを三十年なり四十年間に日本じゅうの修理すべき美術工芸品を全部やれということになりますと、これは人数をもう少しふやさなければいかぬと思いますが、いまの方法でやっていけば、一応そういう美術品的なものの滅失、棄損を防ぐだけの修理技術者はおるのではなかろうかという計算に立ってやっておるわけでございます。
  170. 野本品吉

    ○野本品吉君 私がこういうことを申しますのは、結局、特殊な技術を持っておを者が必要である、その技術者の養成確保が続かなくなったときには文化財がなくなってしまうときだと、こういうふうに考えるものですから、そこでいまの修理技術者等の養成確保についてはそういう憂いのないように万全の方策を考えていかないといけないんだということを申し上げるわけなんです。  もう一つお伺いします。飛騨の高山ですか、例の合掌づくりの大きな建物が重要文化財として指定されておりますね。あれらのうちに、一体年間どのくらいの維持費を出しておりますかね、補助。
  171. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 御質問趣旨がよくわかりませんが、維持費…−。
  172. 野本品吉

    ○野本品吉君 飛騨の白川に合掌づくりの大きなうちがありますね。あの大きなうち一軒が指定されているわけですが、それに対して維持管理の費用として国はどのくらい出しておるかということです。
  173. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) これは維持費は出しておりません。ただ、これは非常にむずかしい問題でして、まあ私どもも家を持ってそれぞれみな自分の家で生活しているのですが、その自分の家が文化財である、そこにお百姓さんが生活をしておられる、それに維持費を出すとなりますと、非常にまあ補助金的性格等の法律関係もございましょうが、何を対象としてそういう金を出すかということが理論的に非常にむずかしいのでございます。それで、一応私どものほうがとっておりますのは、修理をする場合に、これは社寺などですと多少民家とは違うのですが、民家の修理でございますので、一般の文化財でない家に住んでおる人の修理と、文化財であるその家に住んでおる民家の修理と、これもいろいろ問題がございますが、まあ一応修理だけは三十年か五十年に一度修理しておけば数十年間続くわけですから、そういうときには御本人の経済上の能力等を十分に考えまして、しかるべく補助金を出しておるということで、これは定率ではございません。ですから、非常に富裕な方が家を持っておられる場合と、経済的に非常に苦しい方が文化財としての家を持っておられる場合、修理費の補助率は違っております。これは社寺等の補助率は、非常に観光収入のあがる社寺は補助率はやはり少なく、ほとんど観光収入のあがらない、自分で負担能力がほとんどないというところは厚く国が補助するといった形とほぼ同じ原則でやっております。
  174. 野本品吉

    ○野本品吉君 いまの白川の合掌づくりの話が出ましたから、それについて聞きたいのですけれども、昔あのうちは数十人といってもいいくらいの大家族が住んでおったのですね。いまは御夫婦とむすこさんと三人暮らしなんですね。そこで、文化財に指定されておりますから、それの現状変更、その他修理にいたしましても、一々届け出なければできない。しかも、大きいうちですから、固定資産税はたくさんかかってくる。そこで、私が言いたいのは、そういうようなことのために、指定された建物を持っておる人たちに経済的な損害といいますか、そういうことのないように配慮すべきである。それから、たとえば松江ですか、小泉八雲の住宅がありますね。あすこの家に行ってもそういうことなんです。どっちに行きましても、文化財に指定されているので、国からは少しばかりの金は来るけれども、家を直したくもなかなか思うように直せない。税金は取られる。これはとてもたいへんなことですよというのが、私の見ました数カ所の家ではみなそうなんですね。そういう点について、文化財保護委員会にこまかいところへ心を使って心配していただく必要があるのではないかと、こういうふうに考えているわけですから、お伺いしているわけなんです。
  175. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 文化財につきまして、いろいろ法律的にも制約事項がございますが、また同じ文化財保護法所有者所有権その他財産権を尊重するようにという規定もございます。これをうまく使い分けるということはなかなかむずかしいことでございますが、いま野本先生がおっしゃいましたようなことを新聞等でも私ども一、二読んだこともございますし、人から聞いたこともございます。したがいまして、あまり文化財保護だけの立場から本人の財産権をできる限り侵すことのないように注意をいたしております。それでもまだまだ十分でないと思いますので、今後一そう注意いたしたいと思いますが、ただ、そういうような問題が比較的起こりますのは、いわゆる個人の民家にそういう問題が起こるわけなんです。そこで、私ども指定をいたします場合の考え方といたしましては、できる限り指定をしたあとは適正な価格で町なり市なり、その所在市町村がその家を買収して、御本人に金を差し上げて、御本人はできれば、先祖代々の家で絶対に譲らないということであれば別ですが、できる限りその他のところに家を建てていただいて、そのあとはまあ財団法人とかいったような法人組織にするなり、あるいは市町村、県が直接お持ちになって、そこを一般の文化財を鑑賞するような方々に開放できるような施設設備にするように、そういう話し合いを原則として進めております。しかし、やはり先祖代々の自分の家だから売りたくないという方もおられますので、完全にそのとおりにはいっておりませんが、原則としましては大体そういう方向で進むのが実情でございます。  それからなお、文化財になっております家は、学校などと同じように、固定資産税が減免されるように、法律的にこれは非課税なり免税と法律上はっきり書いてもらうのが一番いいと思って折衝はいたしておりますが、現在は法律的にははっきりいたしておりません。しかし、自治省のほうにお願いいたしまして、自治省のほうから府県市町村に通達をしてもらいまして、固定資産税はできる限り減免措置をとるようにということは言ってもらっております。
  176. 野本品吉

    ○野本品吉君 要するに、今の問題は、指定されたためにいろいろ所有者に不便やあるいは不利を与えないようないろいろな配慮が必要であろうということを申し上げたのです。  最後に、もう一つお伺いします。日本の重要文化財で戦争直後海外に流出したものがあるわけですね。最近においてはそういうようなことはありませんか。
  177. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) まあそういうことも風評を聞くのでございますが、文化財保護法ができましたときに、従来の国宝はすべて新しい法律の重要文化財に指定がえをいたしました、暫定的に。そのときに、そういう旧国宝、重要美術品等をお持ちの所有者に照会を出しました。ところが、幾つかの件数については返事が参らない。むしろ所有者が戦後どうなっておるかわからない。あるいは所有者はおるのですが、転売転売と、こうやっていったものですから、結局品物がどこにあるかわからぬというものが数件ございます。これはおそらく海外等へその一部が出ているのであろうと思います。で、そういうものがあるようには聞いておりますし、絶対に出ていないということは確言できないと思いますが、しかし、文化財保護法ができましてからここ十年余りになりますが、文化財保護法ができました後に無断で海外にそういうものが行ったということは、私ども目下のところは承知いいだしておりません。ただ、毎年何件かは外国へ売りたいというようなことでわかる場合がございます。それは、私のほうは、本人等に、所有者に、こういう重要文化財を海外に輸出することは法律で禁止されておりますので、それでも輸出したいときは許可を得るように言っておりますが、ただそれだけでは十分でございませんので、いろいろ、税関所在地から海外に出るわけですが、密貿易式にどこからか出ていくのではわかりませんが、税関を通っていくものが一応ルートとしてはあるわけでございますので、税関長さんには、文化財を持ち出すときには荷物検査をして、十分そういうことのないようにということをお願いいたしております。
  178. 野本品吉

    ○野本品吉君 いまの問題で、結局管理責任者の異動、変更の届け出が完全に行なわれているかどうかということになってくると思うのですがね。それはどうですか。
  179. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 法律的には、所有者が変わります場合には、所有者の変更届けを出すようになっております。それから、特に美術品等でございますと、刀剣に例をとりますと、Aという男が国宝、重要文化財の刀剣を持っておる。それを他人に売りたいというときには、まず国に売り渡し申し出をすることになっております。で、国として買うまでに至らないということになりますと、それが第三者に好きな値段で売れるということになっております。したがいまして、法律的には、所有者が変更しましたときは届け出るようになっておりますし、それとは別に、売ろうと思うときには国が必ずわかるような仕組みになっておりますので、原則としましては、所有者変更届けが出ないはずはないし、わからないはずはないのでございますが、しかし、やはりこれに対して所有者変更の届け出をしなかったときにはどうであるといったような罰則関係もございませんので、絶対に厳守されておるとは言いがたいというふうに考えます。
  180. 中野文門

    委員長中野文門君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  181. 中野文門

    委員長中野文門君) 速記起こして。  本日の委員会はこれで散会いたします。    午後四時四分散会