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1964-05-19 第46回国会 参議院 農林水産委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月十九日(火曜日)    午前十時五十五分開会     —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     青田源太郎君    理事            梶原 茂嘉君            櫻井 志郎君            森 八三一君            北條 雋八君    委員            岡村文四郎君            仲原 善一君            温水 三郎君            野知 浩之君            藤野 繁雄君            堀本 宜実君            森部 隆輔君            大森 創造君            小宮市太郎君            戸叶  武君            矢山 有作君            安田 敏雄君            高山 恒雄君   国務大臣    農 林 大 臣 赤城 宗徳君   政府委員    農林政務次官  松野 孝一君    農林大臣官房長 中西 一良君    農林省農地局長 丹羽雅次郎君    農林省畜産局長 檜垣徳太郎君    食糧庁長官   齋藤  誠君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○土地改良法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) ただいまから委員会を開きます。  土地改良法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行なうことにいたします。  質疑のおありの方は御発言を願います。
  3. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 まず、私は、農地法に関して、特に質問もたびたびございましたが、重ねて農用地転用について若干の質問をしたいと思います。  法によると、五千坪までは知事許可でいいし、それ以上は農林大臣許可を得なきゃならぬと、こういうようこなっているようでありますが、宅地にする場合には、まず地目変更登記申請をする前にそれぞれ手続をするようになっておるのですが、地目変換登記といいますか、手続をしないで登記申請をした場合に、登記所としてはこれを認めざるを得ないというようなことが法務省の通達で確認されたと私は記憶しておるのですが、そういうことはございませんか。
  4. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 御承知のとおり、農地法転用許可に関します規定は、農地法四条五条にございます。四条は、「農地農地以外のものにする者は、」云々ということで、物理的に農地農地でない状態自分でしてしまう場合の許可規定、それから五条は、農地農地以外のものにするためにこれらの土地について権利を設定し、移転する、つまりだれかの、他人の宅地にするために農地を売る、所有権移転をする場合に許可をする、で、このいずれの状態につきましても、いまおっしゃいましたような形におきまして農地法上の許可をする。それから、一方、不動産登記法のたてまえのほうを申しますと、権利移転に関しまして第三者許可認可等を要する場合には、その許可認可を証する書面を添えて登記申請をするたてまえになっております。したがいまして、一五条転用に関しましては、登記所農地法許可の有無を審査いたすことに相なっております。  ところで、土地の表示の登記の問題につきましては職権主義をとっておりまして、事実上その状態農地であるが、雑種地になったかならないかという実態関係地目登記をするたてまえに相なっております。したがって、農地法四条許可を受けないで、ある人がそれを雑種状態にしてしまった、こういう場合に、実態雑種でございますれば、登記官吏地目変更をする届がなくても自分でしなければならない、こういう構成に相なっております。  そこで、問題は、明らかに許可を受けずにそういう砂利を入れたり何かした場合には農地法違反でございますけれども、そういう実態が出てしまったものを雑種地として認める、雑種であるからということで官吏登記をする、これは農地法いかんともなしがたい。問題は、放棄等をいたしておりまして、草ぼうぼうに相なりまして、農地なりやいなやということが非常に判定がむずかしい事例が発生いたしております。各地でそこが紛争の種等に相なった事例もございますので、先般そういう判定疑義のあるものについては、法務省農地委員会と連絡をとって、疑義のないように、自をそろえて地目登記をやるようにしてもらいたい、そういうふうにいたしましょうということを法務省との間で取りきめをいたした、こういうかっこう実態はなっております。
  5. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 法務省と取りきめをなさったのはいつごろでございますか。
  6. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 三十八年の七月でございます。これはくどいようでございますが、判定疑義のあるものについて両者の見解が異ならないことを要望する意味でございます。
  7. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 私は、京都で、特に府の農地局が、そういう農地宅地転用したというような、まあ言わば、かなり悪質な業者がいて、これを府の農地局が告発した。ところが、検察当局がこれを取り上げなかったということを実は聞いているわけなんです。また、これはちょっと古い話と申しましても、三十六年ごろだったと記憶いたしておりますが、福岡県でも、ゴルフ場をつくる場合に、水田を、ブルドーザーでさっさと埋めてしまって、そうして畑地に変えてしまったわけなんですね。だから、水田も畑も、農用地としては変わりはない、水田が畑に変わっただけであって、もちろんその農業委員会の問題として、農用地宅地地目変換するというようなものではないので、農業委員会としてもそう問題にしなかった。ところが、これを農業委員会が問題にいたしまして、実際は農地転用ではないかということで、再三県当局に陳情、あるいは異議を申し立ててきたわけです。そこで、その場所に行って見ると、確かに水田ブルドーザーで埋めてしまって、ゴルフ場かっこう状況にしておる、しかも、そこに芝を植えているわけです。それで抗議をすると、いや、実は水田としても収益が悪いので、芝を栽培してゴルフ場に売るのだ、こういうわけです。芝を栽培するということも、やはり一種農業といえば農業農作物をつくっておるといえば農作物をつくっておるということになる。まあとにかくそういうわけで農地転用された、で、これを告発するというような事件が起きたわけなんですが、その後同様なことが小倉にも起こった、小倉ゴルフ場ができた。これもやはり三町歩ばかりの水田ブルドーザーで埋めてしまって畑地にした。で、行って見るとこれは農家共同して畜産協同飼育をやっておる、その飼料畑をつくるのだ、こういうので、かっこうはあくまでもそのゴルフ場かっこうをしておるわけです。ところが、埋めた水田のところには、やせ細った申しわけ的にトウモロコシを植えているという状況なんですね。まあだれが見ても、どうもおかしな状況なんでしたが、そうこうしているうちにこれがうやむやになって、現在はもうりっぱなゴルフ場として芝生が植えられ、ゴルフ場として活用しているわけなんですね。どういういきさつでそういうふうになったのか、私はせんさくしたことはございませんけれども、こういうことは私は全国にかなりあったんじゃないかと思う。一応ゴルフ場建設されるというブームみたいなことになったことがありました。そういうときにそういうような違法行為——私は違法行為と思っておりますが、そういうことが行なわれたんだが、そのうちにうやむやになってしまったというのが、いま農地局長お話のように、何かほうっておいて、草がぼうぼうはえてきて、どうも雑種地のようなかっこうにほうっておけば自然に転用ができるという、それを合理化してそういうようにやったんじゃないかというように私は見るのですが、そういうことはなかったでしょうか。
  8. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) だんだんのお話でございますが、第一の、田部を畑に実際するという物理的行為は、先ほどちょっと読みましたように、農地農地以外のものにするということでございませんので、同じく農地内の問題でございますので、知事許可にかからないわけです。それから、もう一つ、芝を植える、御承知のとおり、近郊等で芝をつくって売っておる農業もございまして、芝を植えるということ自体は、肥培管理でございますと、一応農業に入る。いまの御設例のような事例は、いずれもそれをゴルフ場にするためにということでございまして、依然として農地でございますから、五条第三者——ゴルフ場経営を営もうとする会社その他に売ろうと思った瞬間に、今度は五条にひっかかるわけでございます。そこで、話を二つに分けまして、大阪及び小倉、私も二つ存じておる事例でございます。無断転用を発見いたしまして、大阪の茨木のゴルフ場の件でございますれば、これはあらためて代替農地ゴルフ場経営者造成をさせまして、それから裁判所の罰金刑がかかりました。そして、しかる後に許可はいたしました。しかし、許可にあたりまして、それと見合いの農地ゴルフ場経営者造成させました。その土地を村の牧場として利用させるという措置を講じまして、最終的には法律手続にのせまして許可をいたしました。小倉の例は無断でございますので、原形復旧をさせまして、一札入れまして、しかる後に手続をさせて許可をさせた例でございます。  それから、いまの御質問の、本来はそういう農地農地でないような状態に持ってさておいて、農地法許可を受けないでゴルフ場に持っていくんじゃないか、このお話でございますが、農地とは何ぞやという場合でございますが、私ども解釈は、耕作に供しようと思えば耕作し得る土地という解釈をとっております。したがって、一年、二年雑草がはえましても、これは耕作しようと思えば耕作し得る土地であるという限りにおいては農地でございます。そこで、農地農地でない状態にしようと思って砂利や泥をたたき込めば四条にぶつかる、こういう関係になります。しかし、数年放置をいたしておきますと、だんだん判定疑義を生ずるような状態になり得るおそれがある。これを先ほど御説明いたしましたとおり、農業委員会等で、法務省がかってにこれは雑種地だと認定しないで、そういうものについては、法務省では農業委員会意見を聞いた上で認定してもらいたい、これの取りきめを昨年の七月にやった。この措置で、いま御指摘のような形におきまして農地法を逃げるということを防ぎたい、こういう立場でやっておるわけでございます。したがって、単純に一年、二年草がはえる状態ですぐ農地法を逃げられるかというと、私のほうは逃がさないという立場で先ほどのような措置を講じておる次第でございます。
  9. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 最近はゴルフ場建設も少し何と申しますか、少なくなったようで、そういうトラブルもないようですが、そういうブームに乗ったゴルフ業者が、罰金を納めてどこか農地造成をおざなりにやれば、どうにか一年ばかり待てばゴルフ場ができるというような、そういう何かしら安易な方法がとられたように私は思うのです。いまの局長お話であると、相当転用について抜け穴をふさぐというお話でございますから、ぜひ農民農地を守る上からも、そういうように固く管理をしていただきたい、こういうふうに思っております。  次に、いまの法律による費用負担の問題でございますが、特に非農家である受益者費用負担をお聞きしたいと思うのです。農地が次々に転用されて、農業者以外の受益者がふえていくというと、残った農民維持管理費負担が加重していくという傾向になってくるのではなかろうか、こう思うのです。この問題は、施設の建設費にかかるものと維持管理費にかかるものとがあると思うのです。そこで、現行法では、第四十二条第二項で、転用になって所有権などを承継する農業者がいなくなった場合は、土地改良区が「必要な決済をしなければならない。」とだけ規定をしてあるようでありますが、「必要な決済」というのは具体的にどういうようになるのか、この点を御説明願いたいと思います。
  10. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 四十二条に関します御質問でございますが、四十二条は、土地改良区の組合員が、組合員たる資格にかかる権利の目的たる土地について資格を喪失した場合には云々と書いてございます。土地改良区の組合員は、土地に関します所有権利用権を持っていて、土地改良区の組合員たる資格を持ち、かつ、土地改良区の組合員として組織されるわけであります。いまお話のように、その人が農地を他に売ってしまいまして土地を持たなくなる。そういたしますと、組合員たる資格がなくなりますわけでありますが、土地改良区と土地改良区の組合員との問には種々の権利義務関係がございます。たとえば建設が終わって間もない時期、あるいは弁済が終わろうとする時期におきましては、建設費農民負担を年々払ってまいります。国営でございますれば完了後払ってまいる。県営でございますれば、あるいは団体営でございますれば、土地改良区が公庫から金を借りて払っておりますが、それを今度は公庫に払ってまいる。それから、毎年の土地改良区のルーキング・ワークを行なう事務職員負担金。したがって、権利義務関係がございますので、組合員たる資格を失なう、土地改良区の組合員でなくなる場合には、組合から出ていく人間でございますので、そこで権利義務関係を清算することがどうしても必要になってくる。「必要な決済」というのは、金銭上のそういう債権債務決済を行なうという意味でございます。脱退の時期におきまして行なう。そこで、いま先生指摘転用等が行なわれます普通の状態でたまたまやめていく形でございますが、土地を売ってやめていくという形、転用の多いところ等におきましては、相当まとまって土地工場敷地になる、住宅敷地になるということで、私が申しましたうちの建設費等が、黙って出ていかれてしまうと、残った人がかぶらなければならない、こういう問題がございます。そこで、私どもといたしましては、やめていく方には建設費負担をぼやぼやしないできちんと取り立てろという指導をいたしておるわけであります。取り立てるにつきましては、当然、組合でございますから、総会規定が必要でございます。で、総会定款等決済規定というものをちゃんとつくっておきまして、組合員が脱退するときには、これこれの金は払っていかなければならない、これが四十二条の決済であるという関係を明確にさせる必要がある。転用が多くなりました関係上、土地改良区等でこの決済規定を随時整備する形に相なってきておりますが、私どもは、この規定を整備して、組合員総意規定をつくって、出ていく方には必要な決済負担金を払っていく、繰り上げ償還していく、そうして残った方に御迷惑のかからぬようにする、こういう形で本件を処理したい。また、そういう方針で行政指導いたしておる次第であります。
  11. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 おっしゃるとおり、ほんとうに正確に行なわれるとこれは心配がないと私は思うのですが、土地から離れていって、定款でいろいろなことを取りきめても一何でも同じですが、払わぬやつには勝てないということなんで、なかなかその点は組合としてもむずかしい点じゃなかろうかと思いますが、この点はうまくいくようにお考えでしょうか、どうですか。
  12. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 御承知のとおり、土地改良区は共同組織でございます。残っていく人の利益というものと、出ていく人の利益というものは組合員全体で考えなければならぬ問題でございます。ぼやぼやして、うっかりしておって出ていかれて、金を取り立てないで残った組合員が迷惑をこうむる。そこで、その規定を先につくれという意味は、まだ出ていく状態になる前に、組合員の方の共同の意思の決定としてつくっておくということで、その場合には、今後出ていく人は、その規定に当然服することに相なります。かつ、御承知のとおり、賦課金については徴収強制権がございますので、これは取る気になれば取れるわけでございます。何にも規定等をつくらないで、出ていくときにただ金を出せというだけでは、おっしゃるような問題になり、まだそういう状態が一部発生するのが予想される事態に、組合員総意として規定をつくって、その約束の上で出ていく方は払っていく、払わず出ていく方については、確定した賦課金でございますれば、これは当然強制徴収権がございますので、追っかけていって取れるわけであります。そういう形で処理することがやはり一番適当であろう、かように考え、現にこういう措置相当決済をして組合を建て直しておる実例も少なくないわけでございます。やり方いかんにより、また、指導いかんによりまして効果相当あるものと思っております。
  13. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 その点はわかりましたが、重ねて、今度は、土地改良を実施した農地転用するということは、これは従来から国費や資金の浪費であると、各地転用については非難されてきたことは御承知のとおりだと思うんであります。で、こういう農地転用基準でも、回避するように述べてはございます。いまのようないろいろな措置がとられるということになりますが、しかし、現在の状況から見ると、都市近郊工場が進出する、あるいは新産業都市に指定されたところとか、あるいは工業開発地区において転用がいろいろな形で行なわれる、そういうものがありますが、非常に複雑でございますので、そういう点を確実に回避することができるか——回避するというのはちょっとおかしいんですけれども、もし具体的な方法を的確に講じないといろんなトラブルが生じてくるんじゃなかろうかと、こういうように思うんですが、その点どういうふうに農地局長はお考えでしょうか。
  14. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 先生指摘の点が私ども非常に苦しんでおる点でございます。御承知のとおり、農地転用基準で、土地改良事業をやった地区許可しないという原則を非常に強く持っております。で、その結果、たとえば土地改良事業そのものを先まで心配してやらないという地区も出てまいった例がございます。一つの例といたしましては、構造改善事業をやったら農地転用を認めないんなら農業構造改善事業を返上するという実例もあり、一方、さらばといって、土地改良事業をやったところをやらぬところと同断に扱うというのもやはり問題だ。それから、土地改良事業をやったところは絶対許可しないということでございますと、おそらく関東、近畿辺ではもう土地改良事業そのものをやる気もなくなってしまうという問題もあるだろう。で、現在の農地転用というのは、御承知のとおり、許可が出てイエスというだけでなくて、事前審査制をとってございまして、工場を建てたいというなら、ここへ建てたいというのに対して、そこを避けてこっちでやってください、こっちへ出てきたら許可してあげます。こっちへ建てたら許可しませんよということで、事前審査制といいますか、要するに土地改良事業といいますか、私のほうで許可したくないところは避けて、こちらなら許可してもいいという方向に——ども「指向」ということばを使っておりますが、一種の誘導をやることに重点を置いております。そこで、土地改良事業地区においては極力避けて、事前申請の段階で極力避けていただくという措置をとりまして、土地改良事業地区との調和を現在はかるということを軸にいたしましてやっておるわけでございます。と同時に、土地改良事業でも新しくでき上がったばかりのところというようなところは徹底的にお断わりすす。しかし、もう相当たって相当効果も果たしておるというようなところは、事情やむを得ないものは許すこともあり得るという、多少弾力的な姿勢に最近変わっておる次第でございます。
  15. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 じゃ、もう一つお尋ねしたいのですが、今回の改正案では、農業者以外の受益者から維持管理費市町村を通じて徴収ができる道が開かれておりますね。しかし、その市町村がこの制度を積極的に活用するかどうかについては、必ずしも制度上保証されておらぬというように私は思うのです。市町村がこの措置を拒んだ場合は、土地改良区にこの種の徴収権を与えることは、土地改良制度の本質上問題があるのではなかろうか。この問題の合理的な解決をどういうようにやっていく御所存なのか、この点をひとつもう一度聞いておきたいと思うのです。
  16. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 土地改良事業は、御承知のとおり、農業経営を合理化する本来の事業でございますので、本来、受益農民であろうかと存じます。ところが、排水事業のように、たんぼの水をはくとか、反射的に周辺の非農地利益をするという例があるわけでございます。この受益実態に着目して、土地改良区がそういう人から特別徴収金を取れるようにしたいという御意見があったわけでございますが、いまお話のございましたように、農民構成する土地改良区が、非農民にかってに幾ら出せということをきめることは法律的にも非常に問題がございますので、坂らなかったわけです。そこで、今回市町村というものを媒介にいたしまして、二つ方法考えたわけでございます。それは、そういう非農業受益の非常に大きいものは、市町村が、自分市町村財政で一部を持って、残りを農民にかける。非農業受益というものを市町村財政負担をすると、市町村住民の税金で負担をして、農民土地改良事業負担を軽減するという方法が講ぜられるようにしたのが一点。それから、市町村としては、そういうことをしないで、一般財政負担しないで、あるいは負担しても、その上に特定の人間負担をかけ得る道を開いた。それで、実行しない場合にどうかという御質問でございますが、なぜ土地改良区に認めないで市町村に認めたかという大きな問題は、市町村民によって構成される市町村議会というものに敬意を表しておる次第でございまして、一定地区で、その農業土地改良事業排水事業で、たとえばポンプで非常に金をかけて水を吐いておる。それを農民だけの負担でやるのはおかしいではないか、これはその他の人も負担すべきじゃないかという御判断市町村議会の公平な判断に待ちたいという立場で、市町村というものならばそういう措置考えていいではないかというふうに考えたわけであります。で、その場合に、市町村が公平に判断する限りは、市町村にそういう権限を与えることは妥当である。しかし、市町村が市議会を通じまして、やはりこれは農民負担すべき状態である、非農民まで受益があると言えば言えるのだが、その辺の判断がむずかしいという場合にはそれは避けるのはいかがかと、かように存ずるわけであります。一定土地改良事業農民と非農民にまたがって受益をしておる判断は、これは市町村議会の公平な判断に待つべきではないか、こういう立場考えておるわけであります。市町村長も、土地改良区その他の構成方々の御主張というものは当然承るわけであります。市町村議会議員方々も、その土地改良区の方々の御主帳というものは当然承るわけです。それを承った上での判断に待つということがやはり一番妥当ではなかろうか、そういう立場市町村議会市町村条例の定めるところに従う、こういう判断でございます。
  17. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 その市町村条例等をつくって徴収するということになりますと、かなり的確な措置がとられるというふうに思われますが、市町村議会がこれを取り上げない場合、そうすると、土地改良区がこれをやるということになるわけですね。そうすると、その市町村はこれを取り上げなければならぬという義務づけはないわけなんですね、制度上。したがって、そうなると、めんどうなものは、もう町からすれば、町の問題としない、あるいは村の問題としないで、これはもう土地改良区にというようになってまいりますと、土地改良区で、はたしてそういう費用負担徴収などできるのであるかどうか、こういう点が心配になってくると私思うのですが、そういう点についての解決策といいますかね、そういうものをどういうようにお考えになっていますか。
  18. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 問題は、その市町村農民以外に受益があるかないかという判断の問題だと存ずるわけでございます。御承知のとおり、たんぼの水を吐いていけば、そのたんぼに連なるどこかの住宅地の水も、あるいは土地もかわくという関係はつながっておると思う。問題は、その状態が、農民がたんぼを乾田化するためにポンプをつくる、これが農民負担でやるのが適当だ、農業土地改良事業プロパーであるという判断、それから、その後非常に、たとえばその農地等が住宅地等に変わりまして、これは明らかにこの土地はこのおかげによってこれだけ住宅地ともなり得たのだという、その実態の御判断は、私は、市町村の御判断に願うべきではなかろうか。市町村が取り上げないということではなくて、市町村が、その価値、そうじゃないと、土地改良区のそういう主張は適当でないと判断されるか、土地改良区の言い分ももっともだ、このポンプを農民だけの負担でやっているのはおかしい、村も持とうというのは、非農業受益実態ありと判定するかしないかという関係でございますので、市町村が取り上げないということよりも、非農業受益があるかないかという判断をだれがするかという問題。問題といたしましては、その土地改良区の農民市町村民でございますから、農民も、その市町村民判断については、市町村議会の御判断によることが実態として一番適当ではなかろうか。市町村が取り上げない場合は、私は、市町村民全体が、あるいは市町村議会が、これはやはり非農業受益がありと判断しないと考えたからというふうに考えるよりいたし方ないのではないか、かように考えるわけでございます。
  19. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 どうも私が勉強が足りないのか、解釈のしようも悪いのかですけれども市町村が拒んだ場合に土地改良区にその徴収権を与えると、こういうことにならぬのですか、なるのですか。
  20. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 土地改良区に徴収権を与えることは適当でないと私ども判断をいたしております。と申しますのは、土地改良区は農民構成されておる。農民構成した共同体が、非農民に幾ら金をかけるということを一方的に自分たちの総会できめて、それを強制させるということはあくまで適当でない。これは農民構成された団体が、第三者に、幾ら金を払えということをきめるということは、寄付は別でございます。話し合いは別でございます。法律上の権利として徴収権を与えることは穏当でない。なぜならば、その非農民の発言の機会、保護の面が何もございません。市町村議会でございますれば両方の判断ができる、こういう立場で、全然別個の土地改良区が、農民構成員以外の人に、金何円をかけるということを総会できめて、法律上の権利としてそれを徴収する、これはどうしても問題である、こういう判断をいたしております。
  21. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 わかりました。  そこで、徴収するかどうか、あるいはそれが受益者であるかどうかという判断市町村判断にまかせる、つまり市町村議会等の判断によって条例等をつくらせて徴収させる、こういうことなんですね。
  22. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) いま土地改良区の方々がおっしゃっております問題といたしまして、自分らが非常にポンプを動かした結果、その農業地以外が非常に受益をしている、あれは当然だれが見てもかけてしかるべきである、また、かけるようにすべきである、こういう御主張であります。そういう実態に存じます限り、これは実態がそうでございます限り、当然それは市町村議会は認めるはずであるという判断に立っているわけであります。その場合に、ただ受益があるかないかだけのことなら問題はございません。金何円何十銭を何のだれ兵衛から取るかという問題がございます。そこで、どうしても市町村議会市町村条例というもののふるいをかけませんとこれは問題がある、こういう立場市町村にはその権限を与える。  なお、余談でございますが、単純なる排水以外に、私どもでやっております湛水防除事業と、明らかにその事業をとる際に、非農業受益相当入っている、そうして、その土地全体が受益するという事業を新しくとる場合におきましては、負担関係に国、県、市町村を原則にして、新しくスタートさせる事業は別でございますけれども、しかし、たんぼを乾田化する、あるいは湿田から水をのけるという、農業事業として取り上げられたものの反射的利益関係事業につきましては、やはりいま申しましたように、市町村の議会の、審議、市町村条例手続を通じまして、土地改良構成員以外の方々から金を取ることは、そのルートを通じてやるべきではなかろうか、かような判断をいたした次第で、法律はさような形に仕組まれている次第でございます。
  23. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 私の心配することは、その市町村が積極的にそれを取り上げるかどうかという、そういう点について制度上保証がないという点に若干の危惧を持つわけなんです。まあお話を聞いてだんだんわかりましたので、その点は今後指導によるしかない、こういうふうに思うのですが。  次に、土地改良建設費といいますか、そういう費用負担について、非農家の点についていろいろ一お話があったのですが、もう一度転用の場合をお尋ねしておきたいと思うのです。転用許可の際は、その転用許可されたときに建設費等負担の納付をさせる、こういうことで問題は私はないと思うのですが、さっきお尋ねをしたような、農地法の抜け穴を利用して、無許可宅地化されたというような場合、私の聞いているところでは、愛知用水等の周辺の場合にそういうものが行なわれたというように承っているのですが、そういうように無許可宅地化されたような場合はどういうように処置をされるのでしょうか。
  24. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 先ほどの転用土地改良区との関係でございますが、実は昨年農地法施行規則を改正いたしまして、転用申請書を提出する場合に、「その申請に係る農地土地改良区の地区内にあるときは、当該申請書に当該土地改良区の意見書を添附しなければならない。」ということで、土地改良区の知らないうちに転用が行なわれる事態を防ぐというと語弊がありますが、必要な決済が励行されるようにし、土地改良区の意見書がついてこないと受け付けないような形に整理しております。そこで、問題は、いまの御質問は、そういう書類を出さないやつはどうかという問題なんだと思いますが、そもそも必要な決済をやろうというのは、残る農民方々利益というか、保護というか、自衛の問題でございます。したがって、むしろお互いの方々は、何のだれ兵衛さんはどうしたということはよくわかっておる関係でございます。あれがたんぼを売ったそうだ、あれは負担金がかかっているはずだという関係は十分わかっている関係でございます。この意味に関します限りは、無断転用ということは、むしろ土地改良区のほうから農業委員会その他に御連絡願えるくらいの効果があるのではないか。国の分その他に関します限り、これとそういうことは関係ございませんが、まさに農民負担に関する部分の決済でございますので、相互牽制が十分働くの、ではないかと思います。
  25. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 その農地法の抜け穴を利用して無許可でやった場合というのをお聞きしたのですけれども、そういうものについては、相互にそういう点を未然に防ぐといいますか、さっきお話のように防ぐような方法がとられるので心配は要らぬというようなお話でした。そういう点も応あると思いますが、すでに無許可宅地化されておるところですね、そういうのが私は愛知用水の周辺にあったというように聞いておるのですが、それはなかったのですか。
  26. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 無許可転用された事例は、愛知用水地区以外にも相当あると思いますが、愛知用水地区の問題は、おそらく実はまだ受益の確定等が残っております問題がございまして、どうしたらよろしいのか、愛知用水は、転用する場合には、事前に、負担金といいますか、金を出していただく取りきめをいたしております。関係町村と。そこで、その取りきめ以前に転用をしたという問題はあろうかと思いますが、無断転用の問題とは別個の問題ではないかと私は考えるわけでございます。ちょっとその実例は存じ上げません。
  27. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 それじゃあ、その点はいずれ明らかになったときにまたお尋ねしたいと思います。  次に、干拓地関係についてお尋ねをしたいと思います。今度の改正によりますと、干拓地または埋め立て地の配分を受けた者が、土地取得後八年以内にその土地転用した場合には、本来の負担金のほかに、その土地造成に要した費用から本来の負担金を差し引いた額を限度として特別徴収金徴収することができるということにした、こういうようにまあなっているわけです。私の聞きたいことは、八年以内としたという根拠です。「八年」と、こう限ってここに出ておるのですが、その根拠についてお聞きしたいと思うのです。
  28. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 農地法にも七十二条というのがございまして、開拓者がその開拓地に入りまして、そのまま開拓の目的どおり土地を耕せばよろしいのですが、耕さない事例がございまして、検査をする、成功検査ですね。その際に、法律規定といたしましては、検査の結果、「農地とすべき土地の開墾を完了していないことが明らかとなった場合」ということで、大体五年プラス三年で、八年の間に目的どおり開墾をしなければ買い戻すという規定がございます。それで、干拓地の場合には、こういうもちろん法制が違っておりまして入って、土地配分を受けた者は、地区の工事の竣工と同時に原始取得してしまう法制でございますので、こういう規定は使えないわけでございますが、農地法からの開拓地におきまする先例をこちらに持ってまいりまして八年という期限を求めたわけでございます。考え方としては、もっと短くという議論等、いろいろございましたのですが、開拓地の前例法制等を参酌いたしまして八年という年限をきめたわけであります。
  29. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 まあ一般に原野等の開墾の場合は、これは相当岩石、あるいは立木等の関係、あるいは傾斜地の関係等で、相当成功するまでには年限がかかる。そこで、五年で成功検査をやって、あと三年待ってそれでもできないものは引き揚げると、こういう処置が農地法でとられておるのを知っていますが、干拓の場合は、たとえば三池、有明の干拓等においては、干拓したら、もう塩を抜けば一応成功するという自然現象的な関係があるわけですね。そこで、農地法の開拓成功検査等の年限が適当であるかという点については、これは一考を要する点だと思うので、そこでお聞きしたいわけですが、それと私は、この八年という事柄について、別の意味でお尋ねをしているわけです。それは、たとえば三池、有明干拓のような場合は、これが新産都市指定地になっておるわけですね。この新産都市になっておるから、土地造成を、農地造成ということと、ここを工場地域に希望する向きがあるわけですね。したがって、八年というものが適当であるのか、九年が適当であるのか、そういう点は私はわかりませんけれども、しかし、もし新産業都市の進捗がゆるやかであるとするならば、あるいは九年後にこの土地工場地帯になる、早ければ三年以内にもなるかもしれませんが、私の見るところでは、おそらく十年ごろではないかというように推察をするわけです。そうすると、三池干拓は、潮どめも去年できましたし、農地としてこれから造成をされるというように思うのですが、そうすると、求める人はいろいろな複雑な心情を持って求めておるという、こういう傾向があるわけです。ちょうど都市近郊のかつての開拓と同じように、そういう傾向があるのですが、そういう点は考えられたことなんでしょうか。
  30. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) これは、実は各方面からいろいろ御批判をいただいておりました規定でございますが、問題は、農業を営むという立場でございますので、原則的に七割五分を国費で持って、二割五分のコストで差し上げるという法制に相なっております。それで、一方、単純に土地を買おうとすれば、御承知のとおり、田は二十万ぐらいが相場でございますが、国の政策としてつくった農地でございますので、過去の例等で申しますれば、最高でも九万程度でお分けしておるわけです。そこで、問題は、農業をやめるという場合に、農業をやっていくというがゆえに七判五分の国の負担で安く農地を提供いたすので、それをやめてほかへ売っちゃうんだというときに、そこまで国が七割五分の補助をしていいのかという議論がございました。しかし、それでは永遠に追っかけるかという議論がございました。それで、開拓地も、別に物理的に八年かかるという意味よりも、開拓地においては八年たてば自由処分権が発生しておる。そこで、八年たてば自由処分権が発生してもいたし方ないのではないか。そのかわり、八年以内の間であっては、農業をやるというから九万円で差し上げたのですけれども、それが十五方かかっておる土地であれば、六万の差額の問題については一定額を回収することを考えておる。しかし、いつまでも追っかけておるわけにもいかぬからということで、開拓地においても、八年たてば開拓者がどこに売ろうと自由ということに相なるわけでございますので、干拓地も同様の状態に置いたらいかがかと、こういう立場でございまして、先生おっしゃるとおり、八年は不当か、あるいは新産その他との関係で、それぞれの地区にどうきめたらいいかという、いろいろと御議論もございましょうと思いますが、私は、むしろ開拓地でも、八年たてば自由処分権が発生するのだから、永遠に回収すべしという議論との関係におきましては、八年後まで追っかけなくてもいいじゃないかと、こういうことで八年ということを打ち出したわけでございます。ちょっと御質問の点、落としたかもしれもせんが、落としておりましたらもう一度伺いたいと思います。
  31. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 答弁はそれで私はまあいいと思うのですよ。  そこで、干拓に関して具体的に質問するために、有明海の三池干拓を例にとりたいと思う。これは工事は昭和二十七年から開始されているわけです。当時は食糧増産といりのが農林省の大きな旗じるしであった。だから農地造成しようと、そういうことで始まったと私は思うのです。お聞きすると、四十一年に完成すると、こういうように言われております。私のすぐ近所に三池干拓の事務所がございますから、しょっちゅうその動きを知っているわけですが、これの総工費はどのくらいになっているのか、ちょっとその点をお聞きしたいのですが。
  32. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 三十九年度の予算におきまして予定しております総工費は二十億でございます。
  33. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 そうすると、総工費二十億、干拓面積は、私の聞いたところでは五百四十ヘクタール程度だと聞いておりますが、そうすると、すでにその中で日鉄鉱業が使用しておるというのは、予定地といいますか、そういうのがかなりの面積をとっているようですが、その面積はどのくらいでしょうか。
  34. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 話の起きておりますのは、日鉄の引き込み線の路線敷地の両敷地をあけてくれないかという話でございますので、絶対量としてそう大きなものとは考えておりません。絶対量はわかりかねますが、面積の総量について、話の起きております日鉄鉱業の路線敷地面積の大きさの数字はただいま持参いたしておりませんので、御了承願いたいと思います。
  35. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 そうすると、四十一年に完成しようというわけなんですから、すでにもう三十九年度までに二十一億に近い金が導入されるのですね。そうすると、農地造成計画というのがもうすでになければならぬと私は思うのです。そこで、日鉄の使用予定地とされている点は的確に出ておらぬとしても、田畑の造成農地造成は一体どういうようにするのかということだけは、これは当然農林省で計画が立っておると思いますが、それはどうですか。
  36. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 干拓地の土地配分につきましては、ほんとうに締め切りまして、かわき出します時期に干陸計画というものを樹立いたしまして、その干陸計画におきまして増反と入植とございますが、入植があるかないか、皆さんが増反であるとすれば、地元の状態、地元の方の大きさの状態でどのくらいずつ分けるかという、分ける基準を干陸計画で決定いたします。そうして干陸計画が決定いたしますと土地配分計画を立てるわけでございます。したがって、いま四十一年ないし四十二年、幾ら早くても四十一年になるかと思いますが、干陸の時期が四十年でございますので、現在、干陸計画はまだ立てておりません。したがって、つくる面積はおのずから出てまいりますが、それを何戸にどういう基準でどのように分けるかというのは、干陸直前の干陸計画において定めることにいたしております。その際には、知事さんの御意見その他を十分聞いて基準をつくる、こういう仕組みに相なっておる次第でございます。
  37. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 どうも十年近くこの工事はなっておるわけですね。そして、もう一、二年で完成というときにきているわけです。日鉄の試掘が行なわれ、あるいは人工高等、これがそばにできておるわけです。しかも、引き込み線その他予定されておるという。ところが、いまのお話で聞いてみると、増反になるのか入植になるのか、どういうふうになるのか、計画がまだ明らかでないようですけれども、これは農業基本法とどういう関係になるのですか。
  38. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 土地の大きさはあるわけでございますから、どう分けるかということでございまして、入植は原則的には最近やっておらないわけでございますが、たとえば一つの例としては、先般、数年曲の伊那谷の事例等がございまして、特に入りたいというような方が出てまいって入植扱いとした例がございます。そういうのは、むしろ最近ではレア・ケースでございまして、たてまえとしては、基本法というほど大げさな岳ではございませんが、地元の方の経営を拡大するという立場で、原則的には増反に分けていこう、八郎潟とは別でございますというたてまえで、基本農家の経営拡大に資するような方向で土地配分をする、ここまでは方針として確立いたしているわけです。ただ、御承知のとおり、その時点におきまして御希望が非常に多くて、私どものほうは、より少数の方をより大きくしょうという配分計画案をつくっても、現地のほうで、より多くの人により少しずつでもいいから分けてくれというようなお話し等も出てくる事例が非常に多いわけであります。したがって、土地干陸計画の時点におきまして、知事、地元の方方、それから実際に耕地として利用すべき面積、その三者の関係から具体的に土地配分計画をつくるということにいたしておるわけでございます。それがまた現実的に土地をお分けするのに一番現実的な方法であろうということで、まだどう分けるということは決定的に確定はしない、そういう仕組みでやっておる次第でございます。
  39. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 私の聞いておるのは、土地の人たちの希望等がいろいろあるだろうが、そういう希望を入れてどういうように配分するか、これからきめよう。増反を中心にしてやるというようなお話でもあるようですが、私の聞いておるのは、農業基本法としては、農地として今後自立経営をやっていくためには、二町五反以上の農地を確保させていこう、そういうねらいがあるわけでしょう。これについていろいろ意見もわれわれあるのですが、新しく、しかし、農地として造成する以上は、そこへ行って農業で自立ができるという、こういうのを立てなければ干拓した意味はないのじゃないですか。それを幾らになるのか、ほしい人にそれぞれ分けてやるということになると、ますます複雑になると思うのですが、そういう点、私は基本的な点を聞いておるのですが、いかがでしょう。
  40. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 先ほど来申し上げていますとおり、増反を原則にいたしまして、そして現に増反者でございますから、増反以前のその土地状態がいかにあるか、たとえば現在一町歩持っているか、あるいは五反歩持っているかという状態山とのかね合いで、一定の規模に持っていくために分ける、こういう基本的な考え方であります。そこで、当然御指摘のとおり、分ける以上は、いまかりに根っこに一町持っている方に、あと一町やって二町なら二町にするということを理想として考えておるわけであります。ただ、先生承知のとおり、日本の干拓地には漁村民等が非常に多くございまして、少しでもいいからみんなに分けてくれ、少しでもいいからみんなに分けてくれという、非常に激しい御陳情のある例もあるわけでございます。したがって、基本的にはそういう考えをとりながらも、現実には、やはりそういう実態がございますれば、より少ない人を二町なり二町五反にして、これが基本法だというふうに下向きに割り切ることもいかがかというような実例相当あるわけでございます。もう少し多くの人に少しずつ減らしてでもいいから分けてくれという実例もございます。考え方としては、根っこの土地と増反とを合わせて、できるだけ大きい農家にする、これが店本線でございます。ただ、それだけで押し切りますと、大体干拓地に入る方は半農半漁の方が非常に多いわけでございまして、多くの方が非常にほしいという実例相当あるわけでございます。そこで、基本的にはいま申した考えの上に立ちまして、現地と話し合いの上で、調整しつつ土地配分していくということがやはり必要でもあろうし、実態としてもやっておるわけでございます。基本的にはおっしゃるとおりでございます。
  41. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 そこで、農業をやらない人も農業をやる人も、土地というのは、収益のいかんにかかわらず、土地そのものを財産のように考えているのですね。ですから、一坪の土地でも分けてもらいたい、これは感情ですから、それは周辺の諸君は一人残らず希望すると私は思うのです。だから、どこかにけじめをつけておらぬとたいへんなことになると一町に、私はいま申し上げたいのは、もうすでに日鉄鉱業所がそこを使用する予定があるわけなんです。すでにもう私の調査したところでは百八十七ヘクタール、完成したその干拓面積は五百四十一ヘクタールの中で、日六十七ヘクタールが日鉄鉱業所並びに道路その他に使用される、こういうわけですから、だから、そこへ引き込み線がくる、いろいろなものがくれば、これはもう工場地帯になるという、そういう予想をしない者は私はないと思うのです。予想するのが当然だと思うのですよ。そこで、しっかりしてもらわぬというと、これを分けることになると、それはたいへんな問題が起きてくると私は思うのですが、そんな簡単なことで計画を立ててもらったのでは、将来ちょっと思いやられますので、もう少ししっかりした点をひとつ御説明願いたいのですが。
  42. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) いまの段階で申し上げ、数字が間違っておりましたら後刻訂正させていただきます。いま私が調べましたところでは、干拓地の面積二百十二ヘクタールで、その外側に、これは特殊な例なんでございますが、日鉄鉱業の人工島というのでございまして、人工島とこの干拓地とを何かあわせて使う方法の話がついておるわけでございます。そこで、私どものつくっております干拓地の外側の人工島にたどり着くための引き込み路線をこの干拓地の中から分けてもらいたいという下相談があるわけです。その数字は四ヘクタール程度の話なんです。したがって、干拓地の配分の二百数十ヘクタール等の関係では、そう決定的な問題とは私ども考えておらないわけです。それで、御質問の御趣旨は、この二百十二ヘクタールをどう分けるのかということだと存じますが、二百十二ヘクタールは、この干拓地の干陸時点におきまして、最終的に干陸計画におきまして配分計画、配分の基準を定めたいということを申し上げております。そこで、配分の基準につきましては、先ほど申しましたとおり、小さい農家をこの中に入植としてつくるよりは、地元の農家の方がより大きくなる、増反という形で配分することを出ないということで基本方針にいたしておるわけでございます。そこで、今度は具体的に、それでは幾ら分けるかという問題になりますと、ここに増反を希望する方々の現在の経営規模なり、それから、農業としてお進みになる御決意なりといろいろからむわけでございまして、入植の選考の問題があるわけでございます。そこで、一応現在、たとえばほかの土地の例で申しますれば、現在の土地が一町歩の方に何反歩、五反歩の方に何反歩というふうに基準を作成するわけでございます。で、したがって、私ども、これを、いまの段階でこの工事をやっておるにつきまして、何と申しますか、全然無考えで干拓をいたしておるということではないつもりでございますが、どこか私ども申し上げております点が間違って、不十分でございましたらもう一度御注意をお願いしたいと思います。
  43. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 いや、それはそれとして聞いておきましょう。しかし、私は、いま御説明になった二百十二ヘクタールとは思いません。これはお昼休みがありますから、もう少しお調べ願いたいと思う。それは大牟田地先と高田町地先と両方ある。高田町の地先のほうに人工島がある。ですから、両方合わせて私は言っているわけです。ただ、引き込み線を持っていくというのは、鹿児島本線に持っていく場合に、人工島から引き込み線を渡瀬という駅のほうに持っていくわけですから、そのときに引き込み線の敷地として、いまおっしゃったような面積かもしれません。しかし、坑口は、炭鉱の坑口もやはりいますでにもう工事をしつつあるわけです。そういうものを加えると、そのただ引き込み線だけでなく、日鉄の鉱業所の施設との関係で予定をしてあるといいますか、そういうものが私はあると思うんですよ。そういう点は私お尋ねしないとわからないんでいまお尋ねしたわけですが、いまの御答弁だけでは私は満足いたしません。まだ明確になっておらぬと思うのです。それから、配分について、まあ今後半漁半農であるからそういうものに見合ってやる、これは賛成です。賛成ですが、それでは農業基本法にいう自立経営というものと一体どういう関係を持って配分されるのかということですね。半漁は半漁でよろしいんです。半農と合わせて経営の確立したものがどういうかっこうでなされるのか、この点をひとつ十分お聞きしておきたいと思うんです。こういうように思うんです。
  44. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 基本法との関係でどう考えるかということでございますが、基本法との関係で、米作が二町五反が絶対であり、また、それがそれを割ってもいかぬ、ふえてもいかぬという考えをとっておらないわけで、極力規模を大きくして、経営が——所得なり労働報酬なりが上がるようにという考え方を基本にいたしておるわけです。したがって、水田経営につきまして二町なり二町五反というものが一応のメルクマールであろう、その辺でございますと、所得も六十万を越すであろうというところが一つの目安でございまして、したがって、干拓地の配分におきましても、根っこと合わせて二町なり二町五反に持っていくことを理想と考えておることは先ほど申し上げたとおりであります。しかし、御存じのとおり、干拓地の周辺には、再三御指摘をいただいております非常に零細な農業実態がございます。そこで、干拓地の土地の配分を受ける人だけに、その周辺の状態と無関係に二町五反ということをしゃくし定木にやるということについてはいろいろ問題がございます。したがって、基本的にはそういう思想はとりますが、地元の状態と十分調整しつつ、基本的な考えと調整しながら、具体的に配分計画を定めてまいりたい、また、事実さようにやっておりますということを先ほど来申し上げておるつもりでございます。
  45. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 私も、農地局長と同じように、二町五反でなければならぬとか、二町でなければならぬとか、そういうことは申しておらぬのです。ただ、農業速本法でいう自立経営、その自立経営をやるために、農家としては農地が二町なり二町五反なければ自立経営はできないことは明らかですね。いま水田、熟田であっても、あの筑豊地帯では二町以上なければ自立経営ができないと、こういわれておるのですから、だから、そういうものを二町五反なら二町五反、二町なら二町と限定して言っておるわけじゃないのです。半漁半農であればどのくらいの程度で自立経営ができるかという、そういう点についてどういうような考えを持っておるかと、こういうことをまず聞いているわけです。だから、それは地元の実態を見てでなければわからぬと、こうおっしゃると思うのです。まあいままでにもおっしゃっておるようです。そこで、それといろいろなからみ合わせが出てくるわけですが、すでに日鉄鉱業所が引き込み線を引いていく、人工局ができて、そこから坑内水もあげましょう、坑内水というのは鉱毒水ともいわれるほど、かなり鉱害を持ってくるわけですね。ところが、そこで漁業をやって、漁業というのは、つまり貝をとるのと、ノリ漁業、養殖漁業です。そういう工業地帯なれば鉱害がくることは当然です。そういう点もありましょう。そういういろいろな複雑な点があるから、綿密な、もっと何といいますか、不快度の調査の上に立ってやっていただかないと、ただ単なる形式上の問題として取り扱っていただいては困ると、こういうことなんです。で、私はそれに関連しましてもっと聞きたいのですが、時間も十二時を過ぎたようでありますから、午後お聞きしたいのですが、その前に、休みのときにひとつぜひ調査を願いたいと思いますのは、日鉄鉱業所との契約はどういうようになっているのか。矛れから、日鉄鉱業所が使う予定地ですね、それがどのくらいの広さがあるのか、日鉄の負担というようなことについてはどういうようになるのか、これは熊本の農政局と日鉄鉱業所の間で託し合いがついておる、話し合いがされておるということを聞いておるのです。そこで、これは本省のほうにどういう報告がなされておるのか。  それから、もう一つ、漁業権の補償ですが、これも非常に問題がございます。漁業権の補償はどういうようになっているのか、この点をひとつお調べを願いたい、こういうように思います。あとはもう質問はそれを中心にして二、三点ございますが、午後にしたい。
  46. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 漁業権の補償に関する御質問は、日鉄の埋め立て事業に関する漁業権の補償でございますか、こちらの干拓……。
  47. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 干拓、あるいは埋め立てをする場合には漁業権がなくなりますから、当然漁業権の補償がしてあると思う。ですから、いままでに漁業権の補償をしてあるものです。これからの問題じゃない。これからの問題はたいへんです。だから、これはいままでの問題。
  48. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 ただいまの埋め立て地の利用に関連して、簡単に一つだけ伺いたい。  三十五年の所得倍増計画の中で、それに関連して工業用地の造成の見通しの中に、十年間の海面埋め立ての計画があったと思います。はっきり数字は覚えておりませんけれども、二億坪内外であったかと思うのでございます。間違っているかもわかりません。相当経済の高度成長の関係で、工場用地の造成が大きく考えられておるわけでありまして、事実和音の埋め立てがそういう方向で行なわれておって、所によっては外資まで導入して実行されつつあることは御承知のとおりなんです。従来、長年にわたって海面の干拓というのが農耕地造成の上で非常に大きな役割りを過去においては演じてきた、これは申し上げるまでもない事実であります。ところで、農地改良の面でも、今後十年の計画を考えられると、こういうわけですが、海面の干拓ですね、農地造成を対象にする海面の干拓と、それと工業用地造成の海面の埋め立てと、私は、相当地域によってはぶつかってくるのではなかろうか、したがって、これから先の海面の干拓、農地造成としての干拓事業というものが、従来のような評価といいますか、従来のように期待はできないんじゃないかという感じがするのでありますが、その点についてはどういうふうに農林当局は考えておられるのか、すでに過去において農地造成のために非常に大きな努力を払ってきた干拓地が相次いで工業用地に転換しつつあることは御承知のとおりであります。今後、はたして海面干拓というものの農用地造成という観点からの価値いかんといいますか、どういうふうに見ていったらいいかということのお考えを伺いたいと思います。それだけであります。
  49. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) お答えいたしますが、いま御指摘のとおり、干拓事業は大体十年弱かかります。そこで、調査をいたしました時期から完成時期に入りますと、非常に環境の変化が激しいのでございます。特に太平洋ベルトラインにおきます干拓事業におきましては、その後の変化が激しくて、農民に売って、農民の手で転売されたケース、それから、売れば転売になることが自明であるがゆえに、政府の手で先に他用途へ転売いたしました事例が非常に多うございます。  それから、もう一つの最大の難点は、コストが非常にかかるわけでございます。そこで、干拓事業につきましては根本的に検討したいという問題が財政当局からも投げかけられておる次第でございます。前回の所得倍増計画におきましては、開拓が新規十かに対しまして干拓は一万という程度に、前倍増計画におきましても、新規干拓というものはやや内輪に想定をいたしておった次第でございますので、今後のアフターケアの問題といたしましては、干拓は以上の観点から慎重に検討を要する問題と、かように私どもは事務当局としては考えておる次第でございます。御承知の、干拓すべき土地の立地で、埋め立て事業市町村、県、その他の埋め立て事業との競合の問題は、むしろそういうふうに競合の行なわれる地域におきまして土地があるかないかという問題よりも、そういう埋め立て事業が行なわれますのは、住宅なり工場用地の建設聖業として県、市町村で行なわれますので、立地的にかりに土地がありましても、そういう所で農業干拓をやること、自身につきましては、すでに問題がございます。したがって、やるとしますると、そういう地域を離れた、むしろ埋め立て事業等が行なわれない地域が農業干拓を行なうとすれば行なうべき地域だという意味におきまして、立地の競合論につきましては、私どもは両者の競合による干拓事業の隘路という問題はあまり意識しておらないのでございます。
  50. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) それじゃ、ここでしばらく休憩いたしまして、午後一時半に再開いたします。    午後零時二十九分休憩      —————・—————    午後一時五十五分附会
  51. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) ただいまから委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き土地改良法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行なうことにいたします。質疑のおありの方は御発言を願います。
  52. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 午前中いろいろ資料についてお願いいたしておきましたが、まず、日鉄鉱業所に使用するという予定地の面積、それから日鉄鉱業との契約はどういうふうに結ばれておるのか、それから負担についてはどういうふうになっているか、まずこれからお尋ねしたい。
  53. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 三池干拓事業二つの工区に分かれておりまして、高田工区、大牟田工区に分かれておりまして、町田工区は全体で二六二・六ヘクタール、大牟田が二七八・三ヘクタール、合わせまして五四〇・九ヘクタール、先ほど先生のおっしゃった数字でございます。このうち、高田工区の二六二・六の中から五十ヘクタールを日鉄鉱業の洗炭、貯炭の敷地として、干拓地の海津に面する部分でございますが、横に割愛することを三十六年にきめております。したがいまして、農用造成面積といたしましては、高田工区が一七七・一二ヘクタール、大牟田工区が二一六・六三ヘクタール、計三九三・七五ヘクタールが田畑、宅地、公共用地、こういう形に相なります。  それからもう一つ、それとは別にこの洗炭場、貯炭場に到達いたします引き込み線の関係で、高田工区に五ヘクタールほどの敷地を割愛するしないの問題をいま相談中でございます。  それから契約の関係でございますが、したがって、この五十ヘクタールは農地造成事業、農林省の干拓事業でなくなるわけでございます。したがって、農林省は受託を受けて一緒にやるという性格の事業に相なります。したがって、負担を日鉄にかけるわけでございます。その負担の内容といたしましては、協定では、この高田工区の堤防をつくるのに要する事業費の一定割合を日鉄鉱業に割りつけておるという契約になり、国が五四・五%、残りを日鉄鉱業がその関係では持つという協定が一つ、それから毎年それをどういう形で払っていくかというのは別途の協定に相なっております。それから漁業補償等は、当初国がやったわけでございますから、その分はわがほうが農業干拓地として補償したことにならなくなるものですから、見合う補償分は、公有水面埋め立て権を放棄いたしまして、口銭鉱業からその漁業補償に要した分は国が受け入れる、こういう関係負担関係では相なります。  それから別途干陸計画の問題でございますが、三十八年と三十九年に干陸計画費をつけております。テンポの問題といたしましては、三十九年度末に干陸計画を終えるというための調達をつけて、現在背後地の状態、その他を調査いたしておる段階でございます。以上でございます。
  54. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 大体計画についてはわかりました。そこで、漁業補償については、日鉄鉱業のほうにも負担をかけるということですが、その補償の総額ですね。これはもうすでに支払われていると思いますが、その総額幾らですか。
  55. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 漁業補償は、当初この全体を農業用として二十七年から工事を進めておりました関係で、初めは農林省が全部やって、終えておるわけであります。これは漁業補償という形でなく、二十七年でございますので、自創法三十条、買収で行なわれたようでありまして、当時の金で二千七百万円が支払われております。先ほど申しましたのは、これは全部やはり国が干拓地にする場合で、一部非農業用になりますので、その分を一部向こうから国の特別会計のほうにもらうという関係が別途この中で出ているわけであります。
  56. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 いまの御説明ですと、漁業権買収によって支払われたという御説明のようですが、公有水面埋め立ての法律というのはずっと古い法律でございますね。その法律では、いまの補償が支払われたときに工事が着手される、こういうことになるわけですね。ですから、二十七年に工事が着手されていますから、そのときはいわゆる漁業権の補償としては支払われているのではないのですか。どういう意味ですか、三十条の買収というのは。
  57. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 干拓制度はいろいろ変遷をいたしておりまして、たとえば敷地が私有地でありますような場合には、昔は農地法で買収をいたしておったのであります。二十七年当時までの古いものにつきましては、いま先生がおっしゃいました漁業権を契約に基づいて補償するという方法によらないで、自創法三十条で、漁業権を買収することができるという規定がございまして、それによって買収をする。形式的には法律による買収でございます。最近におきましては、自剣法ではなくて、法律によらないで、自創法による買収方式ではなく、相対によります協議による補償、公共事業の補償として行なっております。このケースは古いケースでございますので、買収方式によった地区でございます。
  58. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 そういたしますと、さっきの御説明の中にもありましたように、日鉄の五十ヘクタール、これに、さらにいま問題になっております五ヘクタールがどういうようになりますか、それがふえれば五十五ヘクタールになりますね。その分は支払われた二千七百万円のうちに入っているのですか。今後取られるのですか。そのうちに入っているわけですね、どっちでしょう。
  59. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 漁業権を買収いたしまして、この五百四十・九ヘクタールの土地を干拓に利用することが可能になって、干拓工事に入ったわけであります。したがって、五再四十・九ヘクタールの土地を使いまして干拓事業を行なうことは、二千七百万円を支給することによって可能になったわけであります。ところが、そのうち五十ヘクタールがへってみまして、農林省の事業としてやる事業ではなくなったわけであります。したがって、これに見合う分は、別途農林省としてはこれを干拓事業負担で支給するわけにいきませんので、その分に要した割合を、特別会計としましては日鉄鉱業からもらうということになるわけでございます。したがって、御質問との関係では、二千七百万円の中に五十ヘクタールに見合う部分の漁業補償は入っておる、こういうことでございます。
  60. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 その点はよくわかりました。それで、結局日鉄の分は、農林省がその割合によってこれから徴収するということになるわけでございますね。
  61. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 徴収することを契約いたしまして、先ほどのほかの負担と総合いたしまして、年度割りで現実に坂っていく、こういうことでございます。
  62. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 そこで、次の質問に移りたいと思いますが、農用地として三百九十三・七五ヘクタールというかなり広大な面積が今後田畑に予定されるわけでございますね。この配分問題になるわけですが、すでにもう日鉄が用地として使用しているということ、これがちょうど干拓の中間に——中間よりもちょっと寄っていますけれども、中間にそれが位しているわけです。そうしますと、いまの三百九十三・七五ヘクタールという農用地に対していろいろな問題が起きてくると私は思うのです。特に当初質問をいたしましたように、ここが新産都市の区域に入っているわけですね。したがって、すでにもうその大牟田地区の二百十六・六三ヘクタールについては、市長からすでに工業用地としてこれを使用するような意見が出ているのじゃないかというように思うのですが、農林省に対してそういう申し入れ等があるのではないでしょうか。その点ひとつお伺いしておきたいと思います。
  63. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) まず、前段の第一点でございますが、この干拓地と、五十ヘクタールの日鉄用地との関係でございますが、海岸に干拓地が出ておりまして、海沿いの部分を切っておりますので、残った土地のたんぼの利用そのものとの関係はございません。海沿いの部分がまず第一点でございます。それから残った部分につきまして、市町村長ないし知事から他紙の申請が出ておるかということでございますが、陳情等が出ておるかということでございますが、出ておりません。そうして先ほど申しましたとおり、配分計画の調査費をつけておりますのも、そういう問題がないのでいまつけて、農業用に分けるべく作業をいたしております。現在までのところそういう御要請はございません。なお、新産との関係でございますが当初の新産の構想の時分には、この地区まで含んでおりましたが、最近の計画では、これは現地もはずしております。
  64. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 この干拓は二十七年から工事が着手されたのですが、当時、私は地方議会の議員をしておりましたので、再三にわたって農林省にも陳情いたしたことがございます。すでに十年をこえているわけです。期間からいうと十年というわけでして、十年はそう長い期間ではないと思いますけれども、今日の経済的ないろいろな変化からいうと、この十年というのは相当の変化があったと思うのです。特に経済高度成長政策が計画されて、農業基本法が出ている今日では、この当初計画された干拓というものから、相当経済的、あるいは地理的にも変化が多いと思うのです。そういう変化を考えなければ、今後の計画というものは私は立っていかないと、こういうように思うのです。それはなかなか一言で御説明ができないと思いますけれども、私がまずお聞きしたいことは、それでは三百九十三ヘクタールある農用地を、どれだけの水田をつくられ、どれだけの畑地にされるか、計画は明らかでありませんけれども水田とした場合に、かんがい用水は一体どういうように計画されておるか、こういうことをまずお聞きしたいのです。
  65. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) まず、田と畑の問題でございますが、一応いまの計画面におきましては、三百四十四ヘクタールを田、三十五ヘクタール程度を畑ということで一応予定いたしておりますが、なお調査を続けて、若干変わるかもしれません。  それから水の問題でございますが、この大牟田工区の中に淡水の池をつくりまして、その水を両方の干拓地に引くということが、水源措置の前提に相なっております。なお日鉄用地で、日鉄関係で使いました水の残も、この畑作等でも利用できるということに相なっております。
  66. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 私はあすこの住民ですからよくわかるのですけれども、一般論としては、地図をごらんになるとそれでいいと思うのです。そういう御説明でいいと思う。ところが、小さい河川であって、その河川の余水というのはないのですよ。干ばつにあえば、全く余水どころか、その水系でさえも干ばつで困るという、こういうところなんです。ですからその窮余の一策として、河口湖をつくるといいますがね。いま河口湖みたいな一つの用水をつくって、その用水をもってかんがい用水にする、こういうお話ですが、あの地域を御視察になっておわかりでありましょうが、筑後、平町というのは、干拓がほとんど半分くらいでしょう。おそらく昔からそういう地形になっておりまして、クリークはたくさんある。そのクリークがかんがい用水になっているわけです。したがって、今度の三百九十三ヘクタールの田畑を造成するのに、その水は昔と同じようにクリークをつくって、クリークからやろうというお考えを承ったんですが、これは三日年も前——三百年とは言いませんけれども、少なくも二百年以上も前の考え方とほとんど変わりがないじゃないかというように思います。それともう一点は、日鉄の工事用水の残を使うとおっしゃるけれども、それじゃ、日鉄鉱業の工業用水は一体どこから持ってくるかということになるのですが、これはどこにもないんですよ。矢部川という水系があります。それから中小河川では隈川というのがあります。白銀川というのがあります。ところが、その工業用水さえもどこから持ってくるかわからぬのに、その工業用水の残でもって、この水田のかんがい水としたいと、こうおっしゃるのは、どうも私にはわかりませんですが、ほとんど計画ないんじゃないですか。
  67. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) これだけの土地を干拓いたしまして、先ほど御指摘の、二十数年前からやってるわけでございまして、御指摘のように水田計画でございますから、水源のあてなしにやってるというわけではございません。私どもこの地区の立方はやはり日鉄の用水、工業用水からの水源が主力であろう、そしてこの人工局に関しまする部分は、私ども承知しておりまする限り、相当深いボーリングを、やりまして、地下水の使用が可能であるという立場に立ちまして、本計画を立てておるわけでございます。なお、先生意見にもしざいますけれども、御必要ならばそういうふうな資料として、資料に刷って御提出をいたしたいと思います。
  68. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 それでは資料をあとでいただきますが、これは、そもそも干拓を計画されたときに、二十五、六年でございましたか、私などは、ここへ水田を四百町歩つくって一体どうするのだということで、相当県の農政担当者に質問をしたことがございます。ところが、その当時も明快な答えを得られなかった。いまおっしゃるように、日鉄鉱業所の工業用水とおっしゃるのは、おそらく坑内水ではなかろうかと思います。坑内水をかんがい川水として使うことは、これは不適当なんです。鉱毒がありまして、かんがい川水として不適当なんです。適当な水ではありません。そこで、終わりに言われましたように、井戸を掘れば、井戸水でかんがいはできるという、それは確かにやっております。有明海の沿岸の干拓地にそれが利用されております。利用されておりますけれども、この点も、まだ実際は炭鉱を掘っておるのですから、下は三井の鉱区がある、それから日鉄の鉱区がある、こういうように掘っているわけなんですから、それもきわめて不安定な外計画だと私は思うのです。おっしゃるように、干拓をするからには、水の心配は要らぬように計画しているのだとおっしゃるけれども、私は、十何年この方、それに対して疑問を持っているのです。そういう点も十分解明をしていただかないと、この配分について、新産業都市である、しかも、そこにもうすでに、工業地がちゃんときめられておる、引っ込み線もちゃんと来ると、こういういろんな問題がございますから、きわめて複雑なものと私は思うのであります。したがって、これに対しての計画というか、これを早急にひとつ科学的に立てていただきたい、こういうふうに思いますが、その用意がおありですか、どうですか。
  69. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 現地について非常にお詳しい先生に、私がるる申し上げるのもいかがかと思いますが、水源問題その他につきましては、後刻、専門的な立場で、資料で御説明申し上げます。それから、確かに先生おっしゃいますとおり、こういう地区におきます土地の利用は非常に複雑であり、かつむずかしいことであることは重々承知をいたしております。したがいまして、私どもも、先ほども申し上げましたとおり、二年間にわたりまして調査費を組みまして、この土地利用の配分につきまして遺徳なきを期したいということで、調査費を組んで、土地配分の問題そのものも、二年間の調査の上に実施いたしたい、こういう立場で努力いたしておる次第でございます。
  70. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 私が、再三にわたって御質問申し上げましたことは、新産業都市というのは、御承知のとおり、熊本県の八代から筑後川の河口まで続く有明沿岸なんです。しかも、その福岡県寄りというのは、いまの干拓地が中心になるわけなんです。海岸としては。したがって、常識的に普通考えれば、ここはもし工業誘致がされるとするならば最適の地、こう考えられるんです。したがって、農林省はよほどしっかりして計画を立ててもらわないと、なんだ、農林省は土地は速成したけれども、あとは工業用地になったんじゃないか、こういうことになりかねないのです。しかも、その間にあって、八年間たてば、転用が、金さえ出せはできるという法律なんですから、それでまあそれを待って、ふらちなものが出てきて、あとで土地を光ろうというのが出てこぬとも限らない。またそういう動きが現在あるわけなんです。だから、私は特にお願いをしたいことは、早急に配分の計画等についても的確な方針を出していただきたい。それは、あくまでも農業基本法をあれだけ堅持されておる農林省でありますから、それに沿ったことをひとつお考え願いたいと、こう思うんです。それに対しては、あとで大臣見えられたときに、基体的な問題としてもお聞きしたい、こういうふうに思っています。  それと、もう一点は、水の問題ですが、この水はいま問題になっております慣行水利権の問題でありまして、そう簡単に河口に沼をつくって、そこに水をためるということも非常に困難なことだと私は思うのです。そういう点も基本的な問題になりますので、大臣に実はお尋ねをしたいと思うわけです。  そこで、農地局長にお願いしたいのは、その資料を、納得のできるような資料をいただきたいことと、早急に計画を、配分計画等の青写真といいますか、を早くつくっていただきたい、こういうことをお願いいたしておきたいと思います。  大臣が見えたので、さっそく続いてと思いますけれども、前から大臣の出席を求めておった矢山委員がおりますので、矢山委員質問を先にやってもらって、そのあとで私がやりたい、こういうふうに思います。その点だけ一つ……。
  71. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 三池干拓地におきます水源の問題につきましては、後刻詳細な資料として御提出をいたします。  それから配分の問題につきましては、先ほども申し上げましたとおり、去年から手をつけまして、ことし一年調査費を組みまして調査中でございます。ことし中に配分の干陸計画書を作成する予定にいたしております。御了解をお願いしたいと思います。
  72. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 それでは、私の農地局長に対する質問を終わります。あとに大臣に質問を残しておきたいと思います。
  73. 矢山有作

    ○矢山有作君 それじゃ、この前、大臣おいでいただいていろいろ御質問申し上げたのですが、そのときに保留をしておったものがありますので、それを中心に、きょう小宮さんの御質問中ですが、私のほうを先に片つけさしていただきたいと思いますが、ひとつよろしくお願いします。  そのまず第一点は、土地改良法の第一条の「目的及び原則」の規定の中から、食糧生産の維持、増進の明文が削除されたということに関連して、現在の米の需給逼迫の問題について質問しかけたのですが、大臣の御都合で十分お伺いできないうちに終わってしまいましたので、この問題でまずお伺いをしたいと思います。  米の需給が逼迫しておるという問題については、先般の本会議でも御指摘を申し上げましたし、大臣自身がよく御承知のことですので、もうその問題については事こまかく申し上げませんが、この間一応のお答えはいただいたと思うのですが、質問を続けていく都合がありますので、まず第一に、米の需給の逼迫が起こっておるその原因というものをどういうふうにお考えになっておるかということから御意見を承らしていただきたいと思います。
  74. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 最近における何といいますか、高度の経済成長からきておる二面における消費、ブーム、あるいは都市集中の傾向、そういうような傾向から、一面都会へ就労人口も相当出てきておるということ、あるいはまた消費ブーム等で、農業そのものよりも、他の産業から出かせぎその他によりましても所得を得たい、こういうような形から、つい稲作農業等が本業的でなくなっている傾向が幾らかあると思います。そういう関係から、栽培、肥培管理等がおろそかになってきた、こういう面が相当出てきておると思います。ただし昨年の収穫高はそう減っておるわけではございません。一面におきまして都市人口がふえてきておる。その結果は、いままで配給を受けなかった農家の人々などが都会へ出て、配給を受ける配給人口、消費数量がふえてきたことというような関係、こういう関係があろうと思います。  もう一つは、早場米を早期に繰り入れて消費する、こういうような二、三年前からのやり方がずっと続いておりますので、そういう点から、逼迫しておるというような感じを持たせておる面が相当あるのじゃないかと、こういうように考えます。
  75. 矢山有作

    ○矢山有作君 いま御説明を聞いておりますと、私もそのとおりだと思いますので、大臣のおっしゃったのを大きく分けると、現在の米の需給逼迫の状況というのは、一つは、米麦軽視といいますか、そういうようなムードがある。そのために米の生産というものが案外上がっていないというような点を一つ指摘されたと思います。  それからもう一つは、高度成長に伴って基幹労働力が農村から都市へ流出していく。したがって、従来までの生産の場にあったものが、逆に消費の場に回っていくことになる。したがって、非常に配給量が増大していく、こういう点も御指摘になったと思うのですが、それらの御説明を聞いておりますと、私は、米の需給逼迫の状態というのは、これは現在の日本の農業の中における一時的な現象ではない。これは長期的な、むしろもっと言うならば、日本農業の構造的な欠陥に根ざしておる問題だと、こういうふうに指摘しなければならぬと思うのですが、そうなってくると、米の需給逼迫という問題を、今後どう解決していくかということは、非常に重大な問題だと思うのです。もしこれが、昨年ちょっと不作で、ことしは足らなかったとかなんとかいうような、一時的な問題なら大した問題ではありませんが、いま言いましたような状態であるとするならば、これに対処する対策というものは、よほど慎重に、しかも根本的な農業施策のあり方にまで手を触れていかなければならぬ問題だと考えられるのですが、そういう点で、この需給逼迫状態を緩和していくために、指摘されたような問題を今後どう解決されていくのか。これはひとつ、非常に今後の問題として大切だと思いますから、お伺いをしたいと思います。
  76. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 長い見通しから見まして、私もそうその、何といいますか、急激な形で米の生産が減るとは思いませんけれども、逐次、このままでいけば、米の生産というものは減ってくる傾向にはなるかと思います。というのは、いま原因で申し上げましたとおり、また御指摘のように、基幹労働力というものが外へ出ているというような関係もございますから、そういう関係からいいましても、耕地の面積等からいきましても、いろいろありますから、長期的には減る傾向にあると思います。そこで、私は基幹労働力の確保が必要であると思いますけれども、就労者が減る傾向はいなめません。したがって、技術的に考えますならば、いま進めておりまするところの省力栽培といいますか、少ない労働力でやっていけるような栽培の方法をさらに一段と推し進めていかなければならないと思います。あるいはまた、それと同じような考え方から、機械化も進めて、労働力の不足を補っていくということが必要かと思います。しかし、それに加えて、そういうことがよくできるためには、そういうことがやっていけるためには、いま御審議を願っている土地改良法もそういうことに役立つためと考えておりますが、基盤の整備によりまして、土地の生産性といいますか、労働の生産性もございますが、土地の生産性を高めていく、こういう対策をなお強く推し進めていく必要があると、こういうふうに考えております。
  77. 矢山有作

    ○矢山有作君 ところで、そこで一つ私が疑問に思いますのは、基幹労働力の流出の状況というのは非常に激しいわけなんですが、この基幹労働力の流出の状況というのは、おそらく今後もそんなに変わらないテンポでどんどん進んでいくんじゃないかと思われます。  ちょうどこの間本を見ておりましたところが、「現代日本の農業農民」という本があるのですが、それが非常におもしろい見出しで書いておるのです。「沸騰状況下の農家農民」というので、いろいろ分析をしておる。それを見ると、農業人口の激減というのは今後かなりのテンポで進んでいくということをいっているわけなんですが、現在までの減りぐあいをもとにして、そしてそれでずっと推定を下していっておるのですが、それで見ると、相当大幅に減っていくような数字が示されておるのです。そういうような状況の中で、基幹労働力が激しく減っていく、それなのに、じゃ、機械化を推進することによってその穴を埋めていくと言いましても、何も私がいま言った本の数字をあげるまでもなしに、すでに農村では若い優秀な労働力というものはほとんどおらない。機械を使うにしても、じいさんや、ばあさんや、女房じゃなかなか使えないので、その機械化をやろうといっても、機械を使いこなすだけの労働力すら確保しにくいような状態になっている。省力栽培を幾らやっても、ここにもおのずから私は限界があろうと思う。そうなってくると、これだけ激しい基幹労働力の流出と、それに伴う農業労働力の質的な低下傾向、あるいは量的な低下傾向が起こっているのですから、何とかしてその優秀な労働力というのを農村にとめ置くということを考えぬ限り、いまおっしゃったようなことじゃ、それはなかなか成り立たないのじゃないかと、言ってみるだけになるのじゃないかという心配があるのですが、その点はどういうふうにお考えになっておりますか。
  78. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 労働力をとめ置く、ことに基幹労働力をとめ置く、こういうことはもちろん前提でございます。しかし、とめる対策を講じたといたしましても、労働力が出るという趨勢は、これはいなめない事実だと思います。現にアメリカあたりでも、後継者がどんどん出ている、農業が減っております。御承知のようにイギリス、アメリカ等は六%程度になっております。日本ではまだ二七%、二六・九%くらいある。ではありましても、それにいたしましてももちろん減る、農業就労人口が減る傾向がございます。でありますので、いまお話のように、労働力を農村に温存していくといいますか、こういうことが必要でございます。まあそれにはいろいろなことがあろうと思いますけれども、端的に言えば、農業の所得が相当ふえて、再生産にも、生活をしていく上においても安定をしていくということが基本的な問題だろうと思います。他の産業と同じようにいかなくても、農業の面におきましては、相当の自家消費がまだあります。そういう面で所得を増していくということに努めまするならば、労働力の維持ということがある程度できると思います。それにいたしましても相当は出来る、趨勢から見て出るということは御承知でございましょうが、私もそう思いますので、少ない労働力でやっていく方法も講じていかなければならないのじゃないかと、こういうふうに考えて、先ほどのようなことを申し上げた次第でございます。
  79. 矢山有作

    ○矢山有作君 私も大臣のおっしゃるように、これは基幹労働力の流出というのをとめて、優秀な労働力を農業に確保するということは非常に困難だと思うのです。それをやり得る方法というのは、御指摘になりましたように、何と言っても農業と他廃業との所得格差を縮めていくということが先決問題である、これはもうあたりまえの話だと思うのです。大体生産性を、農業の生産性と、工業の生産性とを比較して、工業の生産性並みに農業の生産性を上げていこうといったところで、性質上、同等なところに生産性を持っていくということは、これはもう不可能な話です。そうしますと、この生産性のどうしても劣っているところを、どうして所得の均衡をはかるという点で埋めていくかということになれば、それはもう価格政策ということが、やはり前面に押し出されてくるわけです。そうすると、価格政策を前面に押し出すことによって所得確保をはかっていく。それで他産業従事者との所得の均衡というものをはかる。このことが、繰り返すようですが、基幹労働力の確保には絶対必要である、これはもうおっしゃるとおりだと思う。と同時に、もう一つ考えなきゃならぬのは、やはりいま地域開発ということが盛んに進められておりますが、その地域開発と農業の開発とを、どう結びつけていくかというのも、非常に重大な問題だと思う。やはり地域開発の進め方によっては、農村のいわゆる住民に対して、都市的なというか、そういう生活の場を提供することもできるわけですから、したがって、地域開発と、それから農業関係というのは、この前のときにも申しましたが、十分今後考えてやっぱりやっていかなければならぬと、こういうふうに思うんです。ところが、現在のやり方を見ていると、そういう基幹労働力をとどめていくために重要だと、大臣自身がお考えになっているような、そういう所得政策も十分に行なわれておらない。十分に行なわれておらないどころではない。諸外国に比べて、これはきわめて不十分な所得政策しか行なわれておらぬということが言えると思いますし、それからまた、地域開発と農業との結びつけについても、十分な配慮がなされておらなかったということは、この前申し上げたとおりなんです。そういう点から、やっぱり今後所街政策というものを前面に押し出して、農民の所得と他産業従事者の所得の均衡をはかる、その基本的な立場に立って、農業の構造政策を進めていく、こういうことになる必要が私は期せずしてあろうかと思うんですが、この点については、この間大臣は、その所得政策をまずやっていくというわけにはいかないんだ、こういうことをおっしゃったんですが、その点ひとつはっきりとした御見解を承っておきたいと思うわけです。
  80. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 基本的にはお話のとおりだと思います。ただ、この間申し上げましたのは、価格政策もちろん大事なことでございます。そしてまた、先ほどおっしゃられましたように、工業の生産性と農業の生産性と違うのでございますから、それに対しましては、国が農業の生産性をバックアップするということが必要であり、そのための一つ方法として、大きな方法として、価格政策が必要だ、これは同感でございます。ただ、いかに生産性が低くても価格でかばってやるということではまずいので、やはり農業の生産性といいますか、農業の生産物に対しましても経済性に合うように、すなわち労働力の投資に対して多くの効果——メリットがあがるように、一つの経済原則からくるところの生産性の向上ということにも力を入れるべきで、両々相まってやるべきだと、こういうふうに申し上げたのでございまして、所得政策、価格政策を全然否定するような考え方で申し上げたわけじゃございません。非常に重要な政策の一つとして考えるべきだということは御指摘のとおりだと思います。
  81. 矢山有作

    ○矢山有作君 私は、やっぱり所得政策というものが現在の日本ではまず打ち出されてきて、そして農民の所得水準というものを確保してやる、一定のところに確保してやるということでないと、ほかの構造政策を幾ら言われても、なかなか実際面としての効果が上がってこないんじゃないか。現実の姿が、いま農家に行っても、それなら本気で百姓をやろうなどと考える者はおらぬわけです。たとえばぼくの村に帰ってみても、大体おやじ自体が、むすこに無理に百姓をやらせようと思っていないし、ましてや娘を農家に嫁にやろうと思っているやつは一人もおらぬ。おかあさんは農家に嫁にきていながら、自分の娘だけは農家外に嫁にやりたいし、自分の息子には農家の嫁をもらうのだけれども自分の娘は農家に嫁にやりたくない。こういう現実を見たときに、なぜそういうことになるか。それは何といっても、幾ら一生懸命働いても、あるいは政府の言うように、選択的拡大で酪農に取り組んでみても、豚に取り組んでみても、一同にうだつがあがらない、これじゃどうにもやれぬじゃないか、そういうような空気になってきているわけです。だから、政府が幾ら太鼓をたたいて、農業の近代化だといっても、あるいは選択的拡大だといっても、農民のほうがむしろそっぽを向いて、大多数の農民は、むしろ農業外の場において所得を求めるということのほうに関心が向いてしまっているような気がするわけですね。それを農業のほうに目を向けさせるためには、何といったって、やっぱり所得政策というものが先行して、そうして農業に目を向けさせて、その中で生産性を高めていけるような、また生産コストを低減することのできるような、いわゆる構造政策等が打ち出されてこなければならぬ、こう思うわけで、その点で、大臣の認識と私の認識といささか違うわけなんですが、それでなければ大臣なかなかやれませんよ。実際問題として、いままで構造改善を進めてこられて、そのことは、私は第一線に立って構造改善事業に取り組んでおられる農林省の皆さんはよく知っておられると思います。ただ、そういうことが本省のほうまで、あるいは上部のほうまで上がってきておるかどうかということは問題ですけれども、この点は、やはり今後の農政のあり方として、どこに重点を置くのかということで、私は真剣にお考えを願いたいと思う。と同時に、もう一つやはり考えなければならぬのは、まあ一つ土地改良事業を取り上げて見ましても、土地改良事業の公共性ということはこの前申し上げましたが、そうなれば、現在の農民負担能力等から考えてみて——この間、実は農家の負債調査の資料を要求したわけなのですが、まだいただいておりませんし、実態というものは年次報告で読んだ程度しかわかりませんが、そういう農家の負債の実態等からして、なかなか土地改良事業を進めていこうといったって、それを進めるだけの自信もない農民が多い。むしろ土地改良事業に一生懸命取り組むよりも、先ほども申しました農業外で所得を求めておるほうがより安全である、こういう空気もある。そうなると、そこで考えなければならぬのは、やはり土地改良のような公共性を持った事業——公共性を持ったということは、それはなぜかというと、食糧確保ということは、ひとり農民のためではない。これは国家的な仕事なんです。そういう立場から特に公共性を持っておるということを言うておるのですが、そういう土地改良には、これはやっぱり国が相当の財政投資をすべきである、こういうような考え方も私は生まれてくると思う。  そこで、先ほど私が申しました本を読んでおりましたところが、西ドイツと日本の比較が出ております。西ドイツでは、一九五六年から五七年の間に、労働単位当たりの資本装備率が、農業のほうが工業を上回っている。で、工業では一万一千七百マルク、農業は一万六千マルクであったわけですね。ところが、同じ年で日本と比較しておるのを見てみますと、日本の場合は、工業が四が八百円、農業が二万一千三百円、こういう状態になっておるわけです。そうすると、比率をとってみると、日本は二八%、ところが、西ドイツのほうは一三七%、こういうふうに農業というものに対して非常に手厚い国の保護といいますか、国の投資が行なわれておるわけです。だから、こういう点もあわせて今後の農業施策をやっていく場合にお取り上げを願わなければならぬ問題じゃないかと思うのですが、こういう点からいたしましても、例の革命的な農政ということから見れば、とてもとてもそこまで行きそうにないような状態なんですが、今後農業の面に対する所得政策とともに、土地改良事業のような公共的性格を持ったものに対する国の財政投資というものを大幅にふやしていくという姿勢で取り組んでいただきたいし、また、そういうふうにやっていかれる見通しなり、腹がまえなり、そういったものがおありになるかどうか、それもあわせてひとつ伺っておきたいと思います。
  82. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) いま日本の工業投資と農業とを比較をされました。日本だけで見まして、戦後の工業の何といいますか、再建というようなことで、相当力を入れたには違いありませんが、私は農業のほうが、その数字を持っていませんが、政府の直接的な援助、何と言いますか、援助投資等においては、農業が絶大じゃないかと思います。工業に対しましては、通産省の予算から見ましてもごく少ない予算で、間接にいろいろ民間の金融とかその他の面は、相当これはこれだけの工業が進んだのでございますから、あったと思いますけれども、国が補助とか、あるいは直接に出しておる面は、農業相当あるのじゃないかと考えます。それはいずれといたしましても、先ほどから申し上げましたように、農業そのものが脆弱な産業でございますから、それで、生産性からいいましても、他の工業等の生産性と足を並べて進むということは困難なものでございますから、国が力を入れてそれをバックアップしなきゃならぬということは、これはどこの国でも考えられることでありますし、特に日本でもそうしなきゃならぬと思います。したがいまして、土地改良等につきまして、国が相当力を入れていくということについての見通しがあるか、また成算があるか、こういうことでございますが、これは従来もやってきたのでございますけれども、今度の土地改良法等が通過いたしまするならば、長期計画も立てることにいたしておりますし、長期計画を立てるにつきましては、その裏づけとなる財政的なものを持たなければ、絵に書いたもちのような形になるのですが、当然財政的な裏づけをもって長期計画を立てますから、土地改良等基盤の整備に十分国が力を入れるということにいたしたいと考えております。
  83. 矢山有作

    ○矢山有作君 大臣はいま農業に補助金等という形で出しておるのと比べたら、工業より非常に出しておるのだとおっしゃったが、それはちょっとぼくはやはり比較の仕方がおかしいと思うのです。いまわれわれがこの場合に問題にしておるのは、いわゆる公共投資というものが、高度経済成長の中で一体何を中心にして行なわれてきたか、こういうことを考えてみたら、いわゆる公共投資というのは、大企業を中心にしてのそれの高度成長ということが一つの中心になっておったのじゃないですか。たとえばわれわれが地元のほうを見ておっても、水島地区の開発が行なわれ、岡山県の全予算を眺めても、水島に工場誘致するその基礎的な条件を整えるために、港湾設備をやる、道路をつくる、あるいは電力供給施設をやっていく、あるいは工業用水道をやっていく、こういうことのために莫大な金が使われておるわけです。本来なら大きな工場がどっかに工場をつくろうという場合に、土地も内分で手に入れ、電力の問題も、あるいは水の問題も自分考えなければならぬはずだ。あるいは道路の問題にしても、極端にいえばそうなってくると思います。ところが御承知のように、国の金で安く埋め立てをやって、普通で土地を買うのなら、坪二万も、三万も出さなければ買えないような所が、坪千五百円くらいで大企業には手に入る。じゃ、港をつくるからといって、別段自分の使う港に対して、おまえは受益者だからある程度の負担金を持ちなさいとか、あるいは道路をつくる場合に、おまえのところの工場のほうへ行く産業道路だから負担金を持ちなさいとか、こういうことは全然やっておらない。そういう公共投資というものとの比較で私は申し上げておる。そうすると、これははるかに大きな相違がある。農業の場合、だって、農家が米をつくる、麦をつくる。それは何も農民だけがつくったものを食っておるわけじゃない。これは国民をそれによって養なわなければならない。もし農民が米をつくる、麦をつくる、牛を飼うことをやめたら、これは全部外国から輸入しなければならぬ。そうなるというと、これは国際収支、じりからたいへんなことだし、そういうふうなことはできることじゃない。そうすると、農民土地という生産手段を使って生産をやっておるということ、そういう面において考えると、これは大企業と何ら変わらない社会的使命を持っている、重大な社会性を持っているわけです。ところが、それに対しては、なるほど災害があったら災害復旧のために幾らかの負担金を出してやる、農道をつける場合にはわずかな補助金を出してやる、こういうことが行なわれているわけです。そんなら農道をつけるのに、おまえが農業生産活動をやる上に非常に重要なことだから、全部農道は国でつくってあげましょうということにはなっていない。それらを考えますと、私は国の財政投資の中で、農業が受けている恩恵と、工業が受けている恩恵というものは非常に大きな相違がある。たとえば所得倍増計画、もう御存じですね、行政投資の実績及び計画期間中の所要額というので発表されているのを見ましても、四十五年の目標年次に十六兆一千三百億の総額が予定されている。ところが、その中で農林水産業に一応考えられているのは一兆円であり、これらを思うときに、やはり農業に対する公共投資というのは、諸外国の例に比べて非常に少ない。農業保護政策というものは、一般の人たちが、日本は農業保護政策が非常に手厚く行なわれているのだと感じているようには手厚くはないのだということを申し上げた。したがって、今後基幹労働力を確保して、ほんとうに農業の機械化をはかって近代化をやり、そうして生産力を維持していこうというなら、どうしても私は基幹労働力を確保できるような対策を立てなければならぬと思う。その一つの柱が所得政策であるし、それからもう一つは、現在の貧弱な農民に、たとえば土地改良事業をやるにしても、たくさんの負担を持たせてやらせるということでなくて、これは公共性を非常に強く持っているという立場から、国の財政投資でやっていく、そういう方向に向こうべきだというふうに申し上げているわけなんです。それでなかったら、とてもじゃありませんが、幾ら選択的拡大とおっしゃっても、農業をうまく生産性を上げるのだとおっしゃっても、なかなかそういうぐあいにはいまの趨勢からいったらまいらぬということを申し上げたいのであります。そういう点でひとつ一そうお考え直しを願って、所得政策なり、農業に対する公共投資の拡充なり、そういった点のひとつ御努力を願いたいと思います。
  84. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) これは別に考え直す必要はないと思います。所得を増すこと、それから土地改良等の公共性の面を拡充して強化していくという農業政策は当然やらなければならぬものであると思いますから、そういう点はさらに強化していきたいと思います。
  85. 矢山有作

    ○矢山有作君 この際ひとつ、ついでにお伺いしておきたいと思いますのは、食糧庁の長官もお見えになっているようでありますから、これは、この間の本会議のときには、どうもうまくどんぴしゃりというお答えがいただけなかったからお尋ねするのでありますが、三十九米穀年度の需給計画が発表されております。ところが、需給計画がそのとおりにいくのかどうかということに対して実は私ども非常に不安を持っているのであります。  その一つは、需要画からして、御承知のように一人当たりの消費量がだんだん上がっていく傾向にあるということが一つ、それからもう一つは、人口流出に伴い配給人口が非常にふえている、その半面、生産人口のほうは非常に減っている、そこへもってきて、米の集荷率が非常にふえたということは、それだけやみに回っていく米がなくなるわけでございますから、そういう面で需要面がかなり予定よりも増大していくのじゃないかという心配一つあるのです。  それからもう一つは、もうそちらのほうにはわかっていると思いますが、私はいまのところ、二月末の買い入れ数量だけしか抑えておりませんけれども、買い入れ数量のほうで六百九十万トンというのが、二月末の状態では四万四千トン下回った、こういうような状態にあるわけです。そういうような状態のところで、十三万トンの繰り上げ輸入をやる。しかし、それではなお足らぬので、七万トンくらい追加して輸入するんじゃないかということも聞いておるのですが、そういう状態をすべて考えてみて、はたして需給のバランスがとっていけるのか、供給面に心配はないのかということがひとつちょっと気にかかるわけなんですが、その点ではどうでしょうか。
  86. 齋藤誠

    政府委員(齋藤誠君) 結論から申し上げますと、この前お配りいたしておりまする三十九米穀年度の需給計画に従って大体やるようにいま努力いたしておるのでありますが、大体そういうことになるだろうと考えております。御指摘の、この中における不安要素として、消費量の増大が見込まれるのではないだろうかという点でございますが、消費量の増大の影響するところも、一人当たりの消費量がどうなっておるかということと、全体の消費量がどうなっているかということになると思いますが、一人当たりの米の消費冠につきましては、いろいろの統計がありますが、大体私たちは、三十六年度以降からほぼ横ばいが微減になっておるのではなかろうかというふうに考えておるわけでございまして、しからば、全体としてはどうかということになりますと、これは当然人口の増加、まあ年率〇・九が一%はふえるわけでありますが、そういう量をも織り込んで、本年度の需要量を見込んでおるわけでございます。そこで、米穀年度といたしましては、先生承知のように十一月−十月でございますから、その間当然新米が出回りがあるわけでございまして、それらを加えますると、量的な供給量としては特に不足するということにはならないと思っております。ただ、新米の出回りが九月、十月の間に行なわれますといたしましても、事実上の政府の売却操作の血におきましては、新米のとれたものからまた消費地に配給するというふうなことが起こってまいりますので、端境期におきまするそういう需給操作上、どの程度新米食い込みとして操作していくか。計画としては、昨年度と同様約五十万トンという計画を立てておりますが、この五十万トンの操作というのは、昨年の例で見ますと相当忙しかったわけであります。本年度におきましても、そういう意味におきまして、端境期の操作の点については万全を期さなければならないという意味で、そういう事情も考えまして十三万トンの繰り上げ輸入を行なったわけでございまして、現在のところ、大体十七万五千トンの量が四月から七月の間に入手することに相なりまするので、これによって操作上はまず不安はないだろうという考えを持っておるわけでございます。
  87. 矢山有作

    ○矢山有作君 私が調べた資料では、一人当たりの消費量というのは、三十四年以降ずっと微増の傾向にあるのですよ。長官の調べられた資料とはちょっと食い違うのですよ。したがって、私どももほんとうが知りたいので、人後のいろいろわれわれが勉強さしていただく参考にもなりますから、一体一人一日当たりの消費量というのはどういう傾向にあるのか。これはこの土地改良法関係の審議で云々というのでなしに、ひとつお調べいただいて、資料でひとつ御提出をいただきたいと思います。  しかし、いまの御説明では、いかにも心配がないというふうな御説明で、それをそのとおりだと思う限りにおいては安心なわけなんですが、私はやっぱりいささかの不安が残こる。といいますのは、まあ私の持っている資料で言いますならば、いま言いましたように微増の傾向にあるということ、それから最近の、これもあるいはあなたのほうの数字と私のほうの数字と違うかもしれませんが、大体配給人口というのが、三十四年以降見ると、配船人口がずっと言四、五十万ずつふえておるんですね。それで生産人口のほうが大体四、五十万ずつ減っておる、こういう数字が出ておるんです。これから考えてみても、かなり配給米に依存するところが多くなるんじゃないか。それから先ほど指摘しましたが、集荷量が非常によくなっている。集荷量がよくなっているということは、それだけやみ米の流通が減ってくるんです。それだけ配給米に頼るということになってくるんです。それらの点から考えると、需要が計画より上回ってくるという状態が起こる場合があり得るのではないかということが一つと、それからもう一つは、そういう傾向になると、この端境期が心配なのは、はたして端境期に順調に食いつなぎができるだけの、五十万トンというようなものが集荷できるかどうか、これも一つ心配なわけです。そういう点では、早場米の奨励金はことしは下げないようにしたということですが、これも一つの集荷を迅速にやっていくための手段だろうと思いますが、何にしても、はたして新米を五十万トンも予定してやっていくということが可能であるかどうか。それは天候という面で、はたして米作がことしもうまくいくかという自然に左右される問題もありましょうが、同時に、人為的に米が不足するんだそうだということになってくると、あるいは消費者のほうの側でもそれを見越して手を打つというようなことも起こり得るであろうし、またいろいろな要素もからみ合ってきて、端境期が非常に困難な状態になるのではないかという心配があるわけです。しかしながら、これは一体心配があるのかないのかと言っても、ここで議論することは——あなたのほうは心配ないとおっしゃるが、私のほうは心配だというので、これは水かけ論になるのが落ちなんですから、これは十分国民生活全体にとって非常に重大な問題ですから、需給確保ということについては全力をあげてひとつ御努力を願いたいと思うんです。  それと、もう一つ考えなければならぬのは、ことしは、なるほどいまおっしゃったように十七万五千トンの買い付けが大体いくようです。しかし、十七万五千トンがはたしてあるのかどうかということも問題になると思いますが、しかし、いずれにしても今後米の生産が、先ほども大臣もちょっと触れられましたように、基幹労働力の流出等によって米の生産があまり伸びていかないとした場合には、これは今後海外市場に米の供給を頼るという形が恒常化していくことになると、一つのやっぱり問題点が出てくるんじゃないか。いまの一本の国民の生活では、いわゆる外米というのはなかなか食糧には向かない。そうすると、せめて準内地米ぐらいでないと食糧にするというところまでいかないと思うんです。その準内地米の供給ができるかというとある程度限定されてくる。それと同時に、そういう準内地米はほんとうに安定して供給できる体制があるかどうかというと、海外市場の状態からして、私は多少不安があると思う。それからまた、日本でそういうふうに米の不足の状態が恒久化したということになれば、これはやはり輸入する場合に買手市場の立場に立たざるを得ない。したがって、いまでもかなり食糧を中心としての輸入量が増大している中で、米の輸入がふえてくるということは、これは問題だと思う。そういう点から、いままでの米の生産に対する考え方というものをある程度反省をしなければいけないのじゃないか。これは大臣のほうに申し上げるのですが、農業基本法ができてから、ことに選択的拡大ということが非常にやかましく言われた。選択的拡大で、米や麦をつくるのはおくれた百姓だ、乳牛を飼ったり、豚を飼ったり、果樹をやるのが進んだ近代的な百姓だ、こういうふうな空気になってきた。そこへ持ってきて基幹労働力が流出する。そういうようなことから、なかなか米を一生懸命つくろうという気がなくなってきたわけですね。これはたいへんなことなんで、そうすると、食糧政策全体として、一体今後わが国では食糧の自給体制というものを農政の基本に踏まえていくのかいかぬのかということが一番根本の問題になってくると思うのです。両ドイツの農業基本法には、御承知のように、食糧は国内で確保するといったような意味のことがちゃんと盛り込まれておるそうですが、日本の農業基本法を読んだ場合には、食糧自仏和ということが直接的には打ち出されておらない。まあ農業総生産の増大ということは言われておりますが、そういう点から、いままで、やってきた米麦に対する考え方、特に米に対する考え方、そういったものに一応反省を加えて、食糧自給という立場から、特に米に対する政策、施策というものを考え汚す必要があるのじゃないか。こういうふうに私は思うのですが、その点について、大臣の御見解はどうでございましょうか。
  88. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 確かに農業基本法ができたころ、あるいはその後おととしあたりまで、相当米の増産が進んできておりましたので、一般的な感じから言いましても、選択的拡大というようなことで、米の生産というものをおろそかにするような感じを受けたということ、これはいなめない事実かと思います。しかし、政府の政策として、私は、米の生産をおろそかにするとか、選択的拡大という名前によってそういうような政策をとろうというような考え方は全然なかったわけでございます。わけでございますので、いま御指摘のように、自給という文句を使っておりませんけれども、総生産を拡大するということが、一つの大きな農業基本法の骨子でもございます。そこで、私は米の場合を考えるのでございますが、選択的拡大といっても、水田酪農というようなこともありますけれども水田を選択的拡大の対象に持っていくということは、これは困難でございます。果樹を植えるということにつきましても、あるいは草地にするといりようなことも困難であって、やはり水田は稲、米をつくるのが一番適当している。宿命的と言いますか、最も適しているものだと思います。そういう意味におきまして、やはり日本の農業としては、米をつくることをおろそかにしていくということはできない問題だと思います。そういう意味におきまして、労働力の減少がございますけれども、先ほども申し上げましたように、省力的な栽培あるいは機械化ということを進める余地はまだたくさんあると思います。まあ一例を言いますと、直まきというようなものも相当技術的に研究が進んでおりますし、あるいはまた共同的にヘリコプターによって種をまくというようなことも行なわれておりますので、そういう面もなお一そう力を入れて、米の生産ということを放てきしたような、あるいは粗末にするようなことがないように、一そう政策を進めていきたい、こう考えております。
  89. 矢山有作

    ○矢山有作君 米の生産を中心にした農産物全体の生産というものについては、いまおっしゃったように、特に国内の自給ということをひとつ基本に踏まえて、特に米作の場合には、その生産を上げていくということのためにぜひひとつ御努力になっていただきたいと思います。私ども所得倍増計画を読んでみましても、四十五年で目標にされておる千三百万石というものは、すでに三十七年の段階で速成をし、三十八年の段階でそれが下がってくる、こういう状態になっているわけでして、しかも需要のほうは、いまの傾向で言うならば、私は微増の方向をたどると思うのです。そうした場合に、米の自給の状態については将来多少の不安も残るということが考えられますので、ひとつ食糧自給、特に米の問題については慎重に扱っていただいて、近く米価審議会等も開かれるわけですので、そういった場合に、米つくりに農民がますます失望しないようにということ、農業に対してますます農民が失望しないような、その一つの柱として、米価の問題についても処理をしていただきたい。このことはひとつお願いをしておきまして、次の質問に移りたいと思います。  土地改良法の第一条の「目的及び原則」の条項が改正されまして、農業基本法の二条、九条の関係のある条文が引用されまして、「農業生産の基盤の整備及び開発を図り、もって農業の生産性の向上、農業総生産の増大、農業生産の選択的拡大及び農業構造の改善に資する」、これが目的として掲げられたわけです。ところが、これを読んで感じますのは、「農業生産の基盤の整備及び開発」というものが、これが並列的に取り上げられておる。それによって「農業の生産性の同上、農業総生産の増大、農業生産の選択的拡大及び農業構造の改善」、これも並列的に取り上げられておる。そこで、一体これらの土地改良事業の重点といいますか、それはどこに置いていかれるのか。これは実はいままでもちょっとお聞きしたのですが、必ずしもその点が明確になっておりませんので、もう一度ひとつ伺っておきたいと思うわけです。その重点の置きようによって今後の土地改良事業の進め方というものが非常に大きく違ってくると思いますので、ひとつ端的にお示しをいただきたいと思います。
  90. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 第一条の目的が、従来の法律あるいはその前の法律等にありました食糧増産ということよりももっと複雑にいろいろな条項を一並べてあります。でありますけれども、食糧のいまの自給度、生産性、自給度の増大ということは捨てておける問題ではございませんので、当然総生産の増大ということは考えなくちゃなりませんけれども、何と言いますか、他産業との所得の均衡あるいは格差の是正、あるいは生活水準の格差の是正というようなこと、あるいは国際的にはいろいろな自由化の問題、こういう問題に直面しているときでありますから、農業そのものの体質を改善するといいますか、いつもお話のような構造政策といいますか、こういう基盤の整備としての土地改良というものがいよいよウエートが重くなってきている、こういうふうに考えられます。そういう点から考えまして、構造政策を強力に押し進める基盤としての土地改良、こういうものの切実性といいますか、重要性が増しておるわけであります。でございますので、農業総生産の拡大とともに、構造政策に重点を置く、こういう考え方が第一条にあると思います。でありまするから、端的に申し上げますならば、構造政策の基盤としての土地改良をして、そうして総生産も拡大していく、こういうふうに御了解願えればけっこうじゃないか、こういうふうに思っております。
  91. 矢山有作

    ○矢山有作君 農業の生産性の向上や農業総生産の増大、農業生産の選択的拡大、いずれにいたしましても、これを達成するのは、私はおっしゃったように農業構造の改善につまり農業の構造政策に重点があると思うのです。その場合に、じゃ、農業の構造改善をやるという以上は、一体そこのどこに重点を置いていくかということが次に起こってくる問題ですが、その場合にはやはり二つある。一つは、農業基盤の整備という、その場合に、やはり大臣がよく言われる将来の経営規模の拡大、あるいは機械力による耕作というようなことを考えたら、これは集団化という問題が一つの中心になってくるのだろうと思いますし、もう一つは、経営規模の拡大ということで、どうしてもやらなければならぬのは、やはり農用地の外延的拡大といいますか、農用地造成といいますか、それが一つの今後の重点になってこなければならぬ、こういうふうに私は考えるわけなんですけれども、そういうふうに考えていって今後いいでしょうか、またそういうふうに考えていって、この土地改良事業というものを今後御推進になるのでしょうか、そこのところをいま一度お聞かせいただきたいと思います。
  92. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) いまお話しのとおりだと私も考えます。内容的にいえば、経営規模の拡大に資するために、土地改良を強力にやっていかなければなりませんし、あるいはまた機械化、近代化という意味におきましての近代化も必要である。同時に、総生産、あるいは草地造成というような観点からも、土地造成ということも考えなければならぬ問題でございますので、お話のように私も考えます。
  93. 矢山有作

    ○矢山有作君 ところが、農用地の外延的な拡大をはかるとすれば、そこで当然出てきます問題は、これは農用地造成ということであり、いわゆる未墾地の開発ということになってくるわけです。で、未墾地の開発の問題について一つお伺いをしたいわけなんですが、提案理由の補足説明の二ページを見ますと、「農用地造成事業につきましては、その施行の要件として、その事業の施行地域内の農用地以外の未墾地について、事業参加資格を有する者の全員の同意を要することといたしたのであります」五条の三項です。「これは、未墾地からの農用地造成土地の形質及び利用目的を根本的に変更するものでありますことから、事業参加資格者の三分の二以上の同音がありましても、未墾地に係る事業参加資格者で回想しないものがある場合には、強制的に当該事業を施行し得る方式をとることが穏当を欠くと考えられたためであります。  ただ、全員の同意を得ることが困難な場合が予想されますので、このような場合に対処して農用地造成専業の円滑な施行に資するために、関係資格者のうちに同意しない者がある場合には、発起人等が関係者と協議して、所有権移転又は利用権の設定等の方法により、全員の同意を得るために必要な措置を講ずることとし、それでもなお同意が得られない場合には、都道府県知事関係者の意見をきいて、あっせん又は調停を行なうことができることといたしたのであります。」これは六条関係のようでありますが、こういうふうに説明をなさっておるわけです。ところが、これは農地局長にもお伺いしたのですが、私はこういうような土地改良事業法の改正、手直しで、はたして未墾地の開発、農用地造成ということが積極的に取り組んでいけるのかどうかということに非常に大きな疑問がある。その点で、私に言わしむるならば、今後農用地造成をはかり、経営規模の拡大をはかっていこうというなら、こういう未墾地の利用についてはもっと強い方法というものを考えるべきじゃないかというふうに思うのです。特に諸外国の例と、日本の農用地の率とを比較してみましても、日本の国土面積に対する農用地率というのは二〇%程度なんですね。これは耕地率と違います。農用地率です。二〇%程度です。ところが、英国にしても八〇%近い。フランスにしても六三%、西ドイツにしても六〇形に近い。イタリアにしても七〇%、アメリカで六五%、こういうふうに農用地率が非常に高いわけです。これから考えると、日本の場合には、いわゆる利用されないで放置されておる土地というものがかなりあるわけです。そうすると、それをやはり高度に利用していくためには、この土地改良法の改正のこの説明の程度では、改正をやられたこの程度では、私は非常に力足らずになるんじゃないか、こういう気がするのですが、その点では、大臣はどういうふうにお考えになっておりますか。
  94. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 御指摘のようなこともないわけではないと私も考えます。しかし、一応こういうふうにいたしましてなお目的が十分でない場合等には、検討を要する事態があるいは出てくるかと思いますが、現状におきましては、こういう段階で未墾地の開発に努めていきたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  95. 矢山有作

    ○矢山有作君 大臣、現状でどうして国土の高度利用のために、放置されておる未墾地を活用するための、もう少し前向きの積極的な方策というものが、せっかくこの土地改良法を改正するならば出てこないですか。
  96. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 実は御承知のように、土地改良法と別に、農地法において未墾地の買収というような道が開けておるわけでございます。これは終戦当時、農地法ができたときよりはだんだん弱まってきていまはおりますけれども、そういう面も開けておりますので、いずれまた農地法の問題も相当検討してみなければならぬということで、いま事務当局その他外部等に検討を命じたり、依頼したりしておる面もございますので、そういう面と、すなわち農地法の血と相まってこの未墾地の問題は進めていきたいと、こう考えておるわけでございます。
  97. 矢山有作

    ○矢山有作君 私はこの土地改良法の改正を見て非常に残念に思ったのは、多少手続的な面がいじられたというだけ、あえていうならば、土地改良長期計画を立てるということが一つの前進と見られるくらいなことで、実際においてこの法律が成立した場合に、じゃどれだけ日本の土地改良事業に貢献するのかということの評価になってくると、非常に心もとない気がするのです。いまの未墾地の問題一つを取り上げても、第五条、六条のような規定では、おそらく私は積極的に未墾地を開発して、農用地造成していくということはなかなかむずかしいんじゃないかと、こういうふうに考えておりますので、特にこの土地改良法の改正をされた場合の運用に当たっては、やはりいまおっしゃったような農地法の未墾地等の買収及び売り渡しというやつをこれは高度に活用していただかぬといけないんじゃないか。戦後、食糧増産の叫ばれておった当時はかなりやっておられたようですが、最近はもうほとんどやっておられない。それでは、私は土地改良法でこういうふうな改正をやってみたところで、土地改良法改正の実質的な効果というものは期待できない。こういう感じがしますので、そういう点では、いまおっしゃったようにただ口先だけで終わってはなりませんので、未墾地開発という問題に積極的に前向きにひとつ取り組んでほしいと思うのです。なぜ私がそのことをあえて言うかといいますと、この間局長にお聞きしたのですが、所得倍増計画というのがありまして、これを見ると、栄養水準の見通しというやつがあるわけです。その栄養水準の見通しの裏づけになる国内農産物の生産はどうなるのかということで、ここに米は一割増、それから麦は一割減、畜産物は大体三倍以上、あるいは果樹は二・三倍と、こういうふうな目標が示されておる。では、これの裏づけになる土地利用の見通し、土地利用というのはどうなっておるかということをお伺いしたのです。きょういただいたこの資料がそれですね。それだろうと思うのですが、これで見ると、四十五年において所得倍増計画がうたっておる栄養水準を確保するためには、総作付面積として八百万町歩ほど、耕地面積としては六百二十万町程度ということになっておるようです。ところが、ここでひとつ気にかかることがありますのは、これも私が先ほど言いました「現代日本の農業農民」というやつを読んでおってこういう見方もあるのかということで、いささかびっくりしたのですが、最近の農地の壊廃状態というのをずっと書いておりまして、一九六一年、つまり三十六年に二万七千ヘクタールの壊廃があった。それから農地法による農地転用許可面積についてみても、大体増加傾向にあると、そして転用の場合には、統制にかからない農地伝用を含めると、三十六年に三万町歩近い転用が行なわれたと、一方開墾、干拓、埋め立てによる農地造成というものも加味して、そして推計をやっているわけです。三十四年八月から三十五年の七月までの一年間の耕地の増減の統計の数個というものをもとにして推計をやったところが、終局値として出てきたのが、内地で三百四十三万町歩の農地壊廃が起こってくる。こういうような推計をしているのですね。これは先ほど言いました三十四年八月から三十五年七月までの一年間の農地の壊廃状況というものをもとにして、そして何とか高等数学を使って推計をしておりますので、その結果出て来た数字が、三百四十三万町歩の農地の壊廃が起こると、こう言っているので、これがそのままそういうふうになるとは思いませんし、なってはたいへんなことなんです。しかし、少なくとも農地壊廃の動向というものは、そういうような推計が成り立つような農地壊廃の動向にあるということは、私は十分指摘されていると思う。そうすると、この所得倍増計画が立てておる栄養水準を確保するためには、これは農地造成というものに対して、よほど真剣に前向きの形で取り組まぬというと、むしろ農地の減少傾向というものが避けられぬようなことになってくるのではないか。そのことが私は一つ気にかかるわけなんです。だからそれだけに、特に土地改良法が改正された機会に、未墾地の開発ということに対してはもう少し強い規制がほしかったということを申し上げているわけなんです。したがって、今後農地法との調整運用については格段のひとつ御配慮が願いたい。こういうふうに考えております。それからまた所得倍増計面で言っている栄養水準でも二千五百六十六カロリーなんですから、四十五年において。これは現在の諸外国の栄養水準に比べて決していい栄養水準ではありません。御承知のように、デンマークにしたところで、すでに現在——現在と言いましても九五五年から五六年ごろですが、三千四百カロリーをこえている。オーストラリアが二千九百カロリーをこえている。西ドイツが三千カロリーをこえている。フランスが二千九百カロリーをこえている。アメリカが三千カロリーをこえている。こういう状態で、私は決して二千五百六十六カロリーというのは満足すべき状態ではないと思うのです。そうすればこの栄養水準をさらに高めていくということは、今後所得倍増計画の中間検討等でもおそらく取り上げられる問題じゃないかと思いますが、そうなればなるだけに、耕地面積の拡大ということは避けられぬような重大な問題になってまいります。そういう点から先ほど申しました点について、特段のひとつ御配慮が願いたいと思います。
  98. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 見通しと言いますか、お活のようなことも考えられると思います。でありますので、農地法と両々相まって、また農地法もいろいろ検討中でございますが、現在のままといたしましても、農地法と相まって農地造成等につとめていきたいと強く考えております。
  99. 矢山有作

    ○矢山有作君 で、その未墾地の開発の問題に関連して、畜産局長がお見えになっておりますので、ひとつお伺いしたいと思いますのは、この間家畜の改良増殖計画というものをお示し願いました。それに必要な「飼料需給の見通し」というものをわれわれの手元にいただいております。その「飼料需給の見通し」の中で、特に四十六年において確保を予定されている粗飼料一千四十六万六千トン、これは一消化養分総量で出しておられるようですが、これを確保するための草地、耕地はどうなるかという資料もここにいただいておりますが、この内容について少しお伺いをしたいと思うのです。  三十九年度計画で、草地として牧草で考えられておるのが十三万五千ヘクタール、それを四十六年度の試算においては四十四万ヘクタールにまで持っていかなきゃならぬと、こういうことのようですが、この四十四万ヘクタールに持っていくための具体的な、財政的な問題も含めてですが、具体的な計画というものがすでに立てられているのかどうか。それともそういう点は全くわからないで、ただ四十六年度に家畜の数がこの程度になる、その場合に飼料はこういう状態になるので、草地として牧草はこの程度になる、この程度ほしいのだということではじき出されたのか、その辺はどうなっておりますか。
  100. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 先日の御質問にお答えいたしましたように、畜産局としては、四十六年の家畜改良増殖目標に照応いたしまして、粗飼料の給源を拡大する必要があるということで、草地の造成面積として五十万町歩、需給計画上の試算としては、四十六年度四十四力町歩の作付を可能とする面積を確保したいということで、これを今後の予算の編成なり、あるいは都道府県に対する指導の目標にいたしてまいりたい。また、飼料作付と同じ百万町歩を目標にしたいというふうに考えておるのでありますが、現在の段階では、これを具体的にどういうふうに計画化しておるかということにつきましては、端的に申し上げまして、具体的な計画として完成しておるものではございません。ただ、この目標に到達いたします方策としましては、一つは、土地改良法の改正が行なわれましたあかつきにおきまして、他の土地改良長期計画とともに、土地改良法による草地の改良造成面積をいかに計画化するかという問題を、農地局との共同によります総合調査の結果を積み上げて計画化をいたしたいという一面と、それから、現在公表をいたしております家畜改良増殖目標の、府県別の家畜改良増殖計画というものを各県において策定中でございまして、その家畜改良増殖計画に伴う自給飼料の生産計画というものを府県ごとに策定をしてもらうということを、一面この目標へのアプローチの方法として取り進めております。これはまだ全国的に完了しておりませんし、また、したがって、調整も終わっていないのでありますが、そういう二面の方向から、この目標への到達ということに努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  101. 矢山有作

    ○矢山有作君 じゃいまの段階としては、はっきりした裏付はないという以外にはないと思いますが、とにかくいずれにしても、五十万町歩なり、四十四力町歩の未墾地を開いて牧草地をつくっていくという上においては、これは現在、この間指摘しましたが、その未墾地がどういう状態のところが多いか、これは入り合い地が多い、あるいは現在の土地の利用配置の問題が、案外人里に近いところが耕地になっておる。その次が林地で、その一番奥のほうが草地になっておる。こういうような配置になっておるところが多いようですから、そういう利用配置まで動かしていくというようなことも必要だということは、この間ちょっと申し上げましたが、それらの問題を考えた場合に、草地の造成というのは、先ほど来言っておりますように、現在の土地改良法規定ではなかなか容易なことではありませんので、家畜の改良増殖計画というものをほんとうにそのとおり実現させていこうというなら、私は飼料問題は非常に重大だと思いますし、その中で、酪農等の草食動物の場合には、特に粗飼料の確保という面でかなり努力をしていただかなければなりませんので、いま具体的なものがないのに幾ら言ってもしようがありませんが、とにかく容易なことではやれないということだけは認識していただいて、せっかくいま伸びてきておる酪農がとんでもないことにならぬように、現在だってすでに生乳の価格が安いし、飼料は高いしで、むしろ頭打ちの傾向が出てきているのですから、そういう点はよくひとつお考えいただいて、この牧草地の造成について対処していただきたいと思います。  それから次は、飼料作物が三十九年度は五十二万七千ヘクタールですか、これが四十六年度で百万ヘクタールを予定されておる。そうして養分総量としていうと、二百二十六万二千トンが五百六十九万三千トンに、二倍以上になるわけなんですが、これは具体的にはどういうふうな考え方を持っておられるのか。私は現在の麦作の状況なんかを見ておって、はたして飼料作物がこういうような形で確保することが容易にできるのかどうかという点で、大きな疑問を持っておるのですが、少し内容に立ち至って御説明を願いたいと思うのです。
  102. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) この百万町歩の飼料作物の作付面積を考えましたものは、これはもちろん私どもとして意欲的な目標として百万町歩程度の作付を考えてまいりたい。その一つ考え方としましては、改良増殖目標に基づきます草食性動物のそれぞれの、それぞれといいますか、主として乳牛及び肉牛でございますが、そういう動物の粗飼料給与率というものを、少なくも日本の畜産として合理的な線として考えてまいる。これは上の牧草の生産との関連もあるわけでございますが、そういう観点で、大体酪農については七四%ないし七五%程度の粗飼料口統率を考える必要がある。肉牛に関しましては粗飼料の給与率を九〇%、八五%ないし九〇%程度を考える必要があるというようなことで、私どもはこの百万町歩はそういう意味でどうしてもこういう目標に到達すべきであるという一つのそういう需給積算上の目標としてまず考えたのでありますが、同時に最近の、最近といいますか、ここ数年間飼料作物の作付は大体年間五万町歩程度ずつの増反を示してきておるのであります。そういう意味ではかなり順調に伸びておるのでありまして、それが同時に草食性動物の飼養頭数の増加に見合いつつ伸びていると、ただ三十八年度は御承知のような長雨等の特殊な天候に影響を、受けまして、伸び方が若干停滞をいたしておるということはございますが、こういうような傾向は、私どもとしては飼料作物の作付については、すでに既耕地という土地基盤もあるし、別途農地局からお配りいたしました倍増計画における単純見通しにおいても、四十五年度間作を入れて八十五万町歩は見通されるということでございますから、われわれが今後畜産農家に対します粗飼料給与の指導について適切な指導を加えますならば、百万町歩程度の作付は可能であり、また土地配分の上からもなお検討を要する点でございますが、現在の、たとえば今後裏作の利用をもっと高めるというようなことを考えてみれば、百万町歩程度の目標は必ずしも作付困難、あるいは、不可能というようなものではないだろうという、ふうに考えておるのでございます。
  103. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 関連。草地の問題は大体わかりましたが、いまの裏作の問題では、特に水田酪農といいますか、水田地帯の酪農ということですね。こういう地帯において裏作の利用というか、そういうものが問題になると思うのです。それについて、それだけではよく計画がわからないのですが、もう少し具体的な御説明を願いたいと思います。
  104. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) この百万町歩について、計画的にいかに考えておるかということでございますが、これもはなはだ、どうも不勉強と申しますか、現在農林省内でも、飼料問題全体の中で牧草の生産なり、あるいは飼料作物の作付なりの問題についての検討も加えておる段階でございまして、今後約五十、力程度の飼料作物の増産をはかっていくということについて、各年度における計画というようなものを実は明確に持ち合わしておりません。  ただ、私ども当面の問題としまして、三十九年度から三カ年間に約十一万町歩程度の飼料作物の増産をはかりたいということで、飼料作物の緊急増産事業を実施するということで、予算の上でもそれを誘導するための飼料の栽培、あるいは採種、加工、貯蔵等に要する施設、機械の助成をするというようなことで、さしあたり三十九年度からの三カ年計画では、さような面積を当面計画として持っている次第でございます。
  105. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 私がなぜそういうことを聞いたかといいますと、山地に近いところは、果樹園芸といいますか、いわゆる果実が非常に伸びてきているわけです。果樹の造成というものが。ところが、選択的拡大ということになると、水田地帯はもう稲、麦、その他限られた作物になってしまって、選択的拡大ということになって、酪農に、応飛びついたわけですね。ところが、最近は多頭多飼育ということで、三頭五頭以下ではとても採算に合わないということで、多頭羽飼育をやりたい。やりたいんだけれども、飼料の点で壁にぶちあたるわけですね。といって、それだけ、五頭十頭飼って、それじゃ輪作をやって、水田をやっていくというまでには至っていない。なぜかというと、収入の面で稲のほうがいいのですから。ですから、そういう点をどういうようにやるかということは、これは経営のうまみでもあろうと私は思うのですけれども、もう少しどういう計画を立てていくかという指導を、ただ何といいますか、抽象的とまではいかぬが、いまお聞きすると、何かこうばく然とした計画のような感じがするわけですねもう少し深まった濃密な計画というものを早急に立ててもらわないといかぬじゃないかと思うのですが、そういう計画について進められているのですか、どうですか。いまの御説明だけではよくわかりませんので……。
  106. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) ただいま申し上げましたように、当面、ある意味で自然増的に飼料作物の作付面積は増加をいたしておるのですが、それのみに期待いたしておるのでは、これはただいま申し上げました今後五十万町歩以上の飼料作物の作付は期待できませんので、当面二カ年について、国の助成に要する予算化も行ないまして約十一万町歩程度の飼料作物の作付を期待をしたいということでやっておるわけですが、その事業、あるいは構造改善、これはもちろん別に構造改善事業等も十一万町歩の中には計算的には入れておるわけでございますけれども、そういう助成事業なり、あるいは構造改善事業を通じまして、これだけの家畜、特に草食性動物を飼うについては、これだけの飼料基盤というものを整える必要があるということで、それぞれこの事業あるいは構造改善事業を進めるにつきまして、個々の事業として指導を加え、それについての計画を進めてまいるということはやっていきたいと思っているわけです。  ただ、全国にわたりまして私どものこの目標を全部こまかく計画化して、四十六年度までのものを示すということは、まだ私ども詰め切っておりませんし、ある意味で私どもが現に手がけております飼料作物の緊急増産事業の経験も振り返りまして、この目標達成のために年度的な計画をさらに詰めてまいりたいというふうに思っております。
  107. 矢山有作

    ○矢山有作君 いろいろ話を聞きましたが、最近の状況というのは、どちらかというと裏作のほうが歩がいいのですから、だから案外楽観しておる。百万町歩の飼料作物の確保なんというのは、これは並みたいていの仕事じゃないと私は思う。よほどこれは腹を締めてやってください。特にこの間堀本委員のほうからもお話がありましたが、牧草地の改良にしたところで、日本の土壌の性質からして問題があるのだということを聞かされた。さらにまた、飼料作物の作付にあたっては、現在の状態ではいろいろ問題がある。よほどこれは真剣に取り組まないと、いま日本の酪農なり、あるいは畜産全般がたいへんなことになる。大体選択的拡大で畜産を鳴りもの入りで宣伝するのに、えさの問題を忘れておって、畜産だけを宣伝しようとするのは、農林省がどうかしている。大体牛というのはものを食わせずに養えるものじゃない。牛を飼う以上は食わさなければならぬ。食わすものを考えずに牛だけを飼わせている。そうしてその結果が、今日のようなえさは購入飼料の七割まで輸入飼料に頼らなければならない。したがって、輸入飼料が上がってくれば、えさが上がってくる。ところが、えさが上がっても乳価はなかなか上がらない。こういうことで、酪農のごときは、おそらくどうにもこうにもならぬところに行っているわけです。こんなことでは行政指導をやった責任は免れぬと思う。  私がこの前ビートの問題でいろいろ質問しているときでも、あれは食糧庁のなんという人だったか名前を忘れましたが、なんとか部長という方に、ビートについてはっきりした技術的な研究ができ、一定の目安があってあれを奨励するのかと言ったら、そうじゃない、技術的には非常に暖地ビートは未解決の点が多い。しかしながら甘味資源の自給度向上というので、さあビートをつくれ、つくれといってやった。それを県が受け、市町村が受けて、ビートをやらせた。岡山のごときは、知事が一生懸命になって、ビートをつくれというので、太鼓をたたいてビートをつくらせたけれども、その結果が大失敗に終わって、農民はたいへんな迷惑を受けた。そのもとは農林省です。今度の酪農にしたって、牛を飼え、飼えと占って、えさを考えないでいる。それで酪農ができるがごとく指導した側は、それで責任が逃れる。別にやめなくてもいいし、別になんともないかもしれないが、それを信じて一生懸命酪農をやり、ビートをつくった農民というものはたいへんなことになる。だからその辺はやはりもう少し慎重に扱ってくれなければ困ると思う。十分検討を加えてこれは詰めていって、はっきりと計画をつくり上げてもらう、そういうふうな努力をぜひひとつお願いしたいと思います。そうでないというと、この間の甘味資源のときのように、なまやさしいことではすみません。指導はしましたが、どうもそのころよくわかっていなかったので農民は損したのですから、それは仕方がありませんなんというのはとんでもない話で、おそらく檜垣畜産局長は名畜産局長ですから、そんなことはおっしゃるとは思わぬけれども、赤城農林大臣農業のことは専門家ですから、そんな失礼なことは言わないかもしれませんが、事畜産農民相当な金をかけてやっているだけに、しくじったらたいへんなことになるので、えさの問題は十分御注意願いたい。
  108. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 関連。  大臣に聞きたいのですが、基本的な問題ですが、現在農業政策は、大臣もいろいろ答弁しておられるごとく、また政府みずからが認めておるごとく、非常に他の産業と比較して立ちおくれをなしておる。このことは、言えると思うのです。それをいま十カ年計画でずっとやってきておられるのですが、どうもやっておられるその形式から見ると、これはなかなか政府がいま打っておる手では、一般の産業と比較して、その立ちおくれを取り戻すというようなことは不可能じゃないか。私たちはこういうような考えを待つわけです。  そこで、私は基本的な問題から聞きたいのですが、日本の将来の経済外交を考えたとき、少なくとも造船業は世界一だ、鉄鋼も世界で三番だ。また弱電等においては世界で一番だ。貿易も一番になっておる。ミシンもそうだし、あるいはまたオートバイもそうでしょう。いろいろなそうした日本の産業については高度に成長してきた。そこで、経済外交をやるためには、日本のものばかりは売れないわけです。輸入をしなければいかぬが、アジア地域の輸入を対象としますと、農業生産物しかないと私は思うのです。そこで、政府のほんとうの経済外交の立て方というものは、農産物については後進国から買うという予定を立てておられるのか。他の産業の、いわゆる製品を日本は輸出する。いわゆる工業立国にする。農業としては日本は自給自足の立場をとらぬのだ。こういう考え方なのか、そうした基本的な問題を一ぺん聞かしてもらいたいと思うんですがね。
  109. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 貿易面におきまして輸出も相当進んでおりますが、それについては輸入ということも考えなくちゃならぬのじゃないか。そういう面で、日本の基本的政策をどこに置くのかということのお尋ねでございますが、非常にむずかしい問題だと思いますが、工業化はもちろん進めていきますけれども、私は農業の自給体制、ことに先ほどからも話がありましたように、米等の自給体制というものは確立して、続けていかなければならないと思います。というのは、東南アジアやラテンアメリカ等のものも買わなくちゃならぬということにはなっておるというものの、日本の農産物とは違うものでございます。それからまた、たとえば紅茶とか、コーヒーとか、そういうものが多い。あるいはゴムとか、いろいろありましょうが——これは食糧じゃありませんが、日本の生産している食糧とは幾分後進国の出炭品は違ってきます。小麦はアメリカとかカナダ、これは競合いたしますが、でございますから、東南アジアとか、南米等の貿易という形を進めるにいたしましても、日本の農産物は違うものでございますので、やはり日本の農産物、ことに主食につきましては、やはり白総体制というものをくずしていくべきではない。また、そういうものが国内で充足されることによって、工業血の資材を輸入し、またそれを製品化して輸出するという面も進んでいく、こう思いますので、もちろん経済の成長という面から見て、工業の面が進むことは進めることではございますが、さりとて、自給体制というものをくずすものではない、こういうふうに私は考えます。
  110. 矢山有作

    ○矢山有作君 もうあまり時間がありませんので、ひとつ次に移りたいのですが、最近経済審議会が中期経済計画の策定をやっておるようですが、その審議会の産業構造分科会で検討されたものが発表になっております。その産業構造分科会での、これは農業近代化研究会の農業近代化報告なんですね。それを見ますと、離農対策として、自立経営者の養成、確保と、零細農家の離農対策を強力に進めるということを目標にして、土地管理組合を設立する、こういうことが出ておるのですが、一体この土地管理組合というのはどういう性格を持ったものなのかということをまず一番にひとつお伺いしたいのですが、大臣、この農業の近代化報告を御存じであるならば、その土地管理組合の性格というものをどういうふうにお考えになっておるのか、ひとつ御説明を願いたいと思うのです。
  111. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) いま御指摘の、国民所得倍増計画の中間検討におきまして、農業につきましていろいろ問題を検討しておることを聞いています。それが農業近代化研究会ということで、経済企画庁が経済中期計画策定の準備の面もあって、いろいろ研究検討をしておる。正式の機関ではございませんが、いろいろ貴重な検討を続けておるようでございます。それがきょうの新聞ですか、ちょっと新聞等にも漏れておるようでございます。直接私どもはタッチしておりませんから、いずれこの問題は検討いたし、とるべき点がありましたらとっていかなくちゃならぬと思います。いまの土地管理組合ですか、こういう構想もあるようであります。聞いてみないとよくわかりませんが、私は自作農のときのような関係、あるいはいまの自立経営規模の拡大というようなことで、信託しようとするような土地とか、あるいは放棄しようというような土地を、そういう土地管理組合で優先的に買い求めて、そうして自立経営規模を拡大する人に売り渡すというような中間的な機能をさせるようなものではなかろうかと考えておるのですが、そういう構想を詳しく聞いたわけでもございませんから、責任ある答弁はできませんけれども、多分そういうような考え方ではないかとこう思います。
  112. 矢山有作

    ○矢山有作君 土地管理組合の性格というのが、いまおっしゃったように、離農する者の土地を買い上げて、それを売り渡すということだけならば、この土地改良法の審議にそう直接持ち出す何もなかったのですが、実はこの新聞発表で、詳しい内容はわからぬのですが、読んでおったらこういうことを書いておるのです。これは文庫を途中から読みますので、十分おわかりがいただけぬと思いますが、「さらに兼業農家の挙家離農をすすめるとともに協業組織、土地管理組合、農協などが兼業農家の耕地をとりまとめて生産性の高い合理的な経営をやれるようにするほか、現在、地域的に専業農家と兼業農家、家がいりまじっていることが自立経営の発展を阻害している面も大きいので、土地の長期的利用計画をつくり、工業用地や農業用地の利用をはっきりさせることが急務である。」、こういうような文章がありますので、土地管理組合というものの性格によっては現在ある土地改良法の九十五条、農協の行なう土地改良事業だとか、あるいは農協連合会または三条資格者や何か数人で行なう土地改良事業ですね、これとの関連、さらに九十七条にいう農業委員会の交換分合計画の決定手続というところで出ておりますが、この九十七条の交換分合、これらとの関連が問題になってきやしないかと思ったんです。そういうことでちょっとお伺いしたんですが、御存じないということであるならば、これはしかたがないわけです。それともう一つは、先ほど読みましたが、土地の長期的利用計画をつくる云々と、こういうことになっているんで、そうなると、この土地改良法でいっている土地改良上長期計画との関連というものもできてくるんじゃないか、そこらの辺がどういうふうな関連を持ってくるのかということが、やっぱり今後の土地改良法一部改正が成立した後にも、中岡検討報告としてこれが正式に出てきて取り上げられてくるとすれば、やはり問題になってくると思うんです。そういう点があるからお聞きしたわけで、もし現在の段階でおわかりにならぬとすれば、これはいま聞いてもしかたがない。しかし、これは早急にひとつ、もう報告書が出てみるんですから御検討になっていただいて、これと、それから土地改良法との関連というものをまた何らかの機会にひとつお示しを願いたいと思いますので、これはもうお伺いをこれ以上してもしかたがありませんから、そういうふうにお願いをしておいて次に移りたいと思います。
  113. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) いまのお読みになったのを見まするというと、責任ある御答弁を申し上げるわけにはまいりませんが、私は一面これは農地法との関係のほうが関連が非常に多いんじゃないか、すなわち農業法人とか請負耕作、こういう面との関連が非常に多いんじゃないか、こういうふうに考えております。でございますので、土地改良法の長期計画につきましては、その点はあまり接触といいますか、摩擦とか接触とか、そういう面が少なかろうという気がいたします。なおいろいろ検討を続けてからお答えする機会があれば、そのようにしたいと思います。
  114. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 いまの組合の話なんですがね、私も新聞を見て実は驚いておるんですが、新聞によりますと、もう少し詳しく書いてあるのがございます。で、私はこれは構造改善に由来する一つ考え方からきておるんではなかろうかと、こういうふうに思うのです。それは構造改善をやります場合に、いろいろ問題がありますが、やはり基盤整備というものが中心になって、生産性の向上をはかるということが、第一番になりますので、そこで、この組合というものがどういう民法上の形でできるのかわかりませんが、その土地の中で組合がその土地の地域内における土地管理をするというふうに考えられる。しかも、それがゆえに農地の流動性をはかるということでございます。それで組合地内の農業地の買い取りだとか、先買い、先借り、そういういろいろ土地を利用するためへの一つの特権といいますか、一つ権利を、これは私はこういうふうに思うのですが、たとえばパイロットの計画をやり、基盤整備をやりまするときに、一人あるいは二人が個々に反対をいたしますと、なかなかその事業というものはできないのですね。それがために、たとえば道路公団がやるように、その事業全体をひっくるめて、その土地の全体の土地所有権所有権で確立を一応認めながら、その土地を基盤整備をしていく過程に、一つ組合との話し合いだけで進めていかれるような簡素な形で土地の流動化をはかり、かつその耕地整備といいますか、基盤整備をはかり得ることに必要なといいますか、具体的に進めるのに非常にためになる、これはつい最近の例でありますが、ある地域に、むしろ零細農の人は協力してやってくださいと、こういう形になってくるのですが、自分の経営する経営面積、あるいは計画、事業でけっこうやっていける農家はそんなことせぬでも、おれのほうじゃこれでやれるのだというふうなものが入っておった場合に、それは拒否してせっかくのパイロット地区が流れた例があります。こういうようなものは組合というものがあって、その地域の土地をその組合管理をする、管理をおまかせするということになっておれば、非常に簡易にそれが進められるというようなことがもくろまれておるのではなかろうかと、これは想像でございまして、大臣もお知りにならぬのだから、これは質問じゃございません。ただ私がそういうことを思いますので、もしこれがいろいろな検討の上から今後検討されると思いますし、また慎重に審議をされると思いますので、そういう場合には、いま申し上げましたような基盤整備なり構造改善なりがやりやすい方向へもっていけるというこの組織、そういうこともあわせて考えていただくようにすれば、この組合というものに意義があるのじゃなかろうか、こういう想像でございますが、一方は現実的なものでございますが、お願いを申し上げておきたいと思います。
  115. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 検討の段階におきまして、よくそういうことも頭に入れて検討してみたいと思います。
  116. 矢山有作

    ○矢山有作君 まだお伺いすれば、土地改良法の問題についてはいろいろとあるわけですが、だいぶ私が時間を消費しましたので、私の大臣に対します質問は、これでもって終わらせていただきたいと思います。ただ、最後に私はお願いしたいと思いますのは、私どもは、土地改良法の改正の問題については、これは最初から申し上げましたように、農業部内における土地利用区分もさることながら、現在のような高度経済成長のもとで、どんどん地域開発が進められていく。そういう中にあっては、農業と商業、工業あるいは住宅地域、そういった全般の中で土地利用区分というものを早急にやって、そして農地を確保していくということを考えていかぬというと、なかなか現在のような農地の壊廃の状況の激しい状態の中では、優良な農地を集団的に確保して、将来の農業生産を拡大していくということは困難じゃないかという点をます申し上げて、ぜひ早急に土地利用一区分をやっていただくようにと、こういうことをひとつは申し上げたわけです。  それからさらにもう一つの点としては、土地改良法を改正し、そして農業地の造成等を考えていく。これはもちろんその目的というのは第一条に示されておりますように、農業基本法を受けて、しかもその中心のねらいは農業構造の改善だ、その農業構造の改善というのは、日本の農業の一番の弱点である零細性を打破するということにあるわけですから、そういう点に重点を置いていくならば、当然一方の既耕地に対しては集団化という問題が中心になってきましょうし、さらにもう一つは、農用地の外延的な拡大ということで、いわゆる農用地造成というものに積極的に取り組んでいかなければならぬ、それをやるにいたしましても、その土地改良法の改正では十分そういう期待にこたえることができない面があるということも感ずるわけです。そういう点もありますので、今後ひとつ改正をされました土地改良法が十分にその所期の効果を発揮するように、運用の面において特にお考えを願いたい、こういうふうに考えます。  なおもう一つ農業基本法のもとにおいては、部分的な問題になりますけれども、選択的拡大で、特に畜産というものを強く取り上げられておるわけですから、その畜産の発展の基盤になるのは、やはり飼料政策だと思います。その飼料政策という問題を考えましても、土地改良事業に期待するところが非常に大きいわけですので、一畜産という立場に立っても、ぜひこの今後の農用地造成というものを中心にした土地改良法の運用ということに全力をあげていただきたい。このこともつお願いをしておきたいと思います。  そのほかいろいろと土地改良の問題については問題はありますけれども、大臣に対する質問といたしましては、私のはこれで一応終わらしていただきたいと思いますので、ひとつ全力をあげて農業の発展のために努力をしていただきたい。特に農地の基盤整備、あるいは農地の拡大、これには格段の努力を払っていただきたいと思います。なぜ強くそのことを言いますかというと、現在の高度成長の中で、どうしても農業がこのままでは置いてけぼりを食うおそれがありますので、そういう点特にお願いをいたしまして、私の質問は終わります。
  117. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 農業に対するもろもろの主要施策の方向等につきまして、私ども考え方と一致しておる面が非常に多いのでございます。土地改良法についての問題につきましても、土地改良法がいまの農業政策を進めるのに万全だとは考えておりません。またこの法案の起草当時から、相当農業関係も進んでおります。しかしこの改正案は、現在の土地改良法よりは数等進んでいると思います。御趣旨のように、この農業政策の方向、趣旨を十分に運用面において生かしていきたい、こう思っております。  それから飼料の自給の問題でございます。これも再々申し上げておりまするように、非常に重大な問題だと思います。先ほど小宮さんからもお話がありましたが、余談になりますが、最近、富山へ行きましたところが、あのライス・センターの米の乾燥施設の機械を利用いたしまして、水田地帯のレンゲソウを乾燥いたしまして、ちょうどお茶のようにして、これは相当現物見てきましたが、牛あるいは鶏の自給飼料として効果があるようなことを進めているような農協なんかがありました。まだ全般的な問題でありませんで、一部分の問題でありますが、そういうことも進めておりますので、全体といたしましても、えさ、飼料の問題を相当自純化し、牛や鶏ばかりふやしても何にもならぬ。草地の造成その他によりまして、そういう対策につきましても万全を期するような方向で進みたい、こう思っています。
  118. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 せっかくいまの飼料についてのお話があったので、これを大胆にひとつお聞きしたいのですが、水田地帯においては——まあおくれた酪農地帯と私はいっていいと思います。選択的拡大ということで盛んに奨励されたので、その勢いに乗って相当広がったと私は見ておるのです。ところが初めは資金を借りて、はらみ牛をとにかく北海道その他から、先進地から買うわけですね。持ってきて、子供ができる。で、乳が出ると。しぼっている間はまあ現金収入があるので、それでいいわけです。そうすると次の年次になると、うまく種がつけばいいけれども、繁殖も後進地ですから、なかなかうまく思うままにいかない。一頭じゃいかぬから二頭ということになって、また借金をして、またあすこの先進地から導入する、こういうようにしてだんだん頭数はふえた。ほとんどその購入飼料に依存するという依存度が非常に高かったと私は思うのです。つまり平地ですから、水田地帯は消費地が近いという面もありまして、市乳を目標にしているということで、そういうわけで購入飼料に依存する度合いが非常に強かったと思う。ところが最近になってくると、もう借りた金の返す時期にきている。それがだんだん重なってきて、相当負担がふえてきた。そうすると一方、飼料は購入飼料にたよっており、乳価は上がらないというはさみ打ちに今度はなってきているのです。実際問題として。そこで当初は非常な勢いで伸びていたけれども、全く頭打ちの状態です。したがって乳牛を手放そうか、どうしようかというせとぎわに今日きていると思う。ですから飼料の問題をいかにするかということがまず第一ですが、その窮余の一策として肉牛は山へ持っていこうじゃないかという、こういうことをいまわれわれは考えているのです。そしてしぼる牛だけを水田地帯に持ってきて、それでしぼって出そう、これは窮余の考え方で、それがほんとうに経営上いいのかどうかということは、まだ検討の余地があるのです。ところが、何といってもいまの飼料をどうやっていくかという、いま紫雲英の乾燥の話が出たのですけれども、そういう計画を具体的に指導するとともに、土地改良に沿って相当な政府の資金を出していただかないと、もう立っていけないという、農民自体の資金ではやれないというところへきていると私は思うのですが、そういう点について農林大臣は御視察になったのですから、その間の事情を十分考えもおありのことと思うのですが、水田地帯の酪農を今後維持し、なお多頭飼育ができる選択的拡大の前進をどうやっていくか、これについて御意見をひとつ承っておきたいと思います。
  119. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 実態は実際お話しのとおりだと思います。ことに水田地帯は選択的拡大になかなか向きにくいところで酪農などをやっているという状態でございます。そういう実態が出ていることは、私も承知しています。先ほど申し上げましたのは一つの例でございますが、どうも紫雲英でございますから土地改良したあと、裏作としても寒い地帯にもできまするし、しかしそれを乾燥する場合には、いま私が実際見てきたのは、協同組合がライス・センターになったところでやっているわけでございます。農民自分たちだけの資本でやれるものじゃなかろうと思います。政府としましても相当見てやらなければそれも普及しないと思いますが、これは一つの例でございます。これが全部そういうふうにしていいかどうかというような問題はございますけれども、いろんな面からなお飼料の点につきまして、なお土地改良の関連におきまして、水田地帯の飼料の問題等につきまして、よく研究、検討を加えていきたいと、こう考えております。いま結論どうこうというわけじゃございませんが、よく考えていきたいと思います。
  120. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 この間の新聞に、畜産コンサルタントということが発表された。自主的にある県では県自体でそういう畜産の相談役というようなことでやっておったと思うのですが、今度農林省のほうで各県に畜産コンサルタントというのですか、そういう相談役ないし診断経営という面まで含めてやる。これはけっこうなことだと思いますが、商業は商業で診断組織をつくって経営を合理化する、農業も当然経営ですから、そういう相談所といいますか、経営の指導所というのがあっていいと思う。ところがその問題は、何といったって採算に合わなければならぬ企業でございますから、飼料の問題に当然くるわけです。ところが、どこの児もそうだとは言いませんけれども、あえてこういう新しい機構ができますと、機構といってはなんですけれども、こういうものができると、種畜場長の古手の人だとか、あるいは畜産関係のお役人の古い人とかそういったような人がそこの席にすわりましてやっていくというのが、従来は非常に多かったのです。私はそういうように思うのです。今度は意欲的な、しかも構造改善事業に沿って、しかも農業基本法の選択的拡大という使命のもとにそういう計画を立ってありますから、相当これは意欲的な計画であろうと思います。その構想についてまず承っておきたい、こういうように思います。ついでで済みませんけれども、せっかく出たものですからひとつお願いしておきたいと思います。
  121. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 農林省内におきましてもコンサルタントではございませんが、畜産行政につきまして、もっと突っ込んで検討するようにいま室を設けておりますから、そういうことで機構上の問題ではございせまんが検討を進めております。なお、いまの府県のコンサルタントの問題でございますが、府県畜産会に三十九年度から置くことにいたしております。その詳しいこと等につきましては、畜産局長からお答えいたします。
  122. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 畜産の技術指導につきましては、一般的には御承知のように農業改良普及事業事業対象とされておるわけでございまして、組織的に農業改良普及組織によってやっておるわけでございます。ただ最近の畜産の動向を見ますと、酪農、養鶏、養豚あるいは肉牛につきましても多頭飼育といいますか、かなり主業的なあるいは専業的な畜産の芽ばえが見られつつあるのでございますが、従来の混合経営的な、あるいは零細な副業的な畜産に比べますと、技術問題も新しい問題に、ぶち当たるわけでございまして、こういう先進的な畜産農家といいますか、進んだ畜産農家というのは、同時にそれの成否はその農家の全生活に響くわけでございますし、また、今後の畜産の将来に非常に大きな影響を及ぼすという観点から、多頭飼育の先進的な主業的な畜産農家の経営技術の診断及び指導の指針というものを与えるためには、一人一人の技術者では十分ではなくなっております。これはあるいは飼育管理の問題あるいは予算の問題、衛生の問題、それぞれ専門分野を異にした人たちの集団的指導を必要とするという時期であろうかと私どもは心得まして、そういうことから府県の畜産会に県の指導監督のもとに畜産コンサルタント団というものを設置をさせる。このコンサルタント団の構成は民間の専門技術者によって構成をする。そういたしましてこれが農家の希望に基づきまして技術及び経営の診断を行なう。それに対する改善のための指導指針を与える。同時に、その指導指針に基づく改良の実施は、市町村段階に、あるいは数市町村に一人というふうに置きます指導農家によってそれをトレースをしていくという形で、多頭飼育の技術経営の安定改善というものをはかってまいりたいという考え方で、三十九年度からスタートしょうとしておるものであります。  なお、このコンサルタント団の中核となります技術者については、従来の経営診断事業等につきましては、御指摘のような難点も私どもは感じておりましたので、一定の年齢制限を加えますと同時に、中央畜産会におきまして技術者についてのある資格試験と申しますか、そういう資格認定を行なった上でそれを補助対象事業として取り上げるというふうにしてまいりたい、ただ若干の経過措置につきましては、年齢等の上では若干の経過措置考えたいと思っておりますが、技術者についての質の確保についても、われわれは真剣にこの問題を取り扱ってまいりたいというふうに思っております。
  123. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 これでたくさん時間をとって聞きたいと思いませんけれども畜産会というのは、大体前は馬が中心ですね、軍馬を中心として起こってきたものです。ところが、乳牛が入ってから、乳牛を奨励するためにホルスタイン協会というものをつくって、これまた乳牛普及に相当の貢献をした、また、種を保存するという、良質の乳牛を育てるにも役に立ったとこう思うのです。ところが、今度畜産会にそういうコンサルタント団を置かれるということについて、将来いろいろの問題が起きなければ私は非常にけっこうだと思いますけれども、もうある意味でそういうものを昔の、既存のままを考えないで、コンサルタント団といいますか、そういうものをつくる必要があるのじゃないかという気がするのです。というのは、家畜衛生保健所をつくったのですね、これはいまはもちろん家畜の消毒保健をやりますけれども、これは乳牛その他についてはほとんど種を売るとか、あるいは人工受精する、こういうことを中心にやっているわけです。繁殖をやって。またホルスタイン協会等もあれは普及には役立ったけれども、もうそういう時期でないということで、あるいは県においては県の酪農協会と、県酪といいますか、県の酪農協同組合等に合併してやっている。こういうような方向がもうずっと経営面に移ってきたと私は思うのです。その意味では時宜を得た考え方であり、また出し方だと思いますけれども、しかし、何か以前の畜産会であるとかそういうものにこだわっているのじゃないかという気が私はするのです。ですから、私などは従来からのつながりのないしろうとは、もうそういう昔のことは全然白紙に返してしまって、そうして選択的拡大の畜産が伸びるという中心目標に向かって組織していくということを非常に希望するわけです。こういう点はいかがでしょう。
  124. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 畜産会は、先生の御承知のとおり戦前はお話のような性格でございましたが、戦後畜産会は端的に言えばそれほど強力な団体でもないと私は思っております。思っておりますが、同時に、戦前の馬産中心の畜産会とは性格を異にしまして、畜産各種の団体の、少なくとも県段階におきまして、あるいは中央段階におきまして、総合的な畜産団体の形態をとっておるわけでございまして、でございますので、当面、民間事業としてのコンサルタント事業を担当させますものとしては、畜産会が適当であろうという考え方をとっておるのでございますが、従来の古い畜産会のからというようなものにこのコンサルタント団の組織編成等に、そういうからと結びつけてものを考えるということは、厳に慎しんでまいりたい。このコンサルタント団は民間の、と申しましても、あるいは場合により、府県のあるいは大学等の高い技術、経営の知識経験のある人をお願いするというようなことも考えまして、ほんとうに専心的な畜産経営技術というものの相談役となるように指導してまいりたい。そういう観点から、ただいま申し上げましたように資格認定等のワクもはめてまいりたいというふうに思っております。なお、将来いかなる形でこういうコンサルタント団というものを運営をしてまいるかということは、今後の実績等を検討しながら、慎重に改善の方向に向かってものを考えてまいりたいというふうに思います。
  125. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 畜産に関してはそれで終わりたいと思いますが、せっかく大臣、なかなかお見えになれませんから、時間が相当過ぎましたけれども、二、三お聞きしたいと思います。  農地局長にお尋ねをしたのですけれども、いまやっている干拓でございますね、ところが、十年も前に開始をした干拓ですが、これは当初、農林省がやるのですから、米の増産、食糧増産のために計画を立てて進められたと思う。ところが十年以上もたちますと、これは、今日の経済的あるいはその他の関係から、相当地理的に変わってきていると思うのです。効用その他、地理的効用といいますか、そういうものもずいぶん変わってきていると思うのですが、しかし、農林省で計画されて干拓をやられておるわけなんですから、当然農地として計画も今日されておると思う。いまお聞きすると、やっぱりそういう農地としてやるのだと、こうおっしゃるわけなんです。そこで大臣に干拓の問題は頭の痛いことだと私は思うのです。特に新産業都市に関連して問題があると思いますが、そこでお聞きしたいのは、従来の考え方をそのままおやりになる考えであると思いますが、その点は、他から、産業都市として工業地域としてほしいなんというときに、大臣のほうではどういうようにこれを取り扱われるか、ちょっとお伺いしておきたいと思います。
  126. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 農用地として干拓を進めてきているのでございますが、いまのお話のようにいろいろな事情から効用が変わってきて、工業地帯等に一部転用したいというような向きなどもございます。そういう面につきましては、やはり土地の高度利用という面で、客観的に見て適当であるという場合には、それは認めるつもりでおります。これは愛知用水などにおきましても、初めあの用水、農業用ばかりでありました。農民負担が非常に多くなってきて、工業用としても使うというような——これは干拓とは別でございますが、県のほうで、ぜひ負担するから、一部分農業に支障のない限りは水を分けてくれという場合がありまして、そういう場合には県が責任を持って負担をいたし、農民負担も軽減するということでありますので、そういうこともいたしている例ございます。干拓地等につきましても、効用がだいぶ変わってきて、土地の利用という面から、最も適した面に、ある程度使うという場合には、認める場合もあります。それから、最初からそういうつもりではやりませんけれども、計画を立てる場合には、将来も見越して、相当慎重な干拓計画等を立てなくちゃならぬと、こう考えております。
  127. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 非常に具体的になるのですけれども、具体的になると、大臣のほうでも々どこの干拓がどうということは、おわかりにならぬと思うのですが、しかし四百町歩に近い干拓が、農用地としてでき上がるということになりますと、こういう土地こそパイロット地区として、もう処女地としてやれる、縦横無尽にやれると、私はこう思うのです。そうしますと、この配分等について、ちょっと農地局長にお聞きしたところが、増反も相当考えているのだと、土地の規模もあるので、増反を考えているのだというお話が、たびたび出たわけです。そうすると、海岸地帯ですから、半漁半農ですから、百姓といっても、大した百姓やっていない。それに加えても、それで専業でやれるというところまでいかない。半漁半農でやれるのはどの限度かということになると、これまた先の見通しについては、なかなか困難だと思うのです。一番的確につかめるのは、農業基本法にいうところの二町ないし二町五反の農家、自立経営のできる農家をつくる、こういうことに落ちつくと思うのです。そうすると、土地の配分についても、それぞれ結論はきまってくると思う。その配分について、農業基本法とどういう関連を持たしておやりになるか、基本的な問題ですから、お聞きしておきたいと思います。
  128. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) これは干拓とは別でございますが、まあ干拓と言ってもいいんですが、八郎潟等におきましては、いまのような計画で、二町五反よりもっと多いような、そういう配分計画でやろうという方針でおります。ただ、地元増反という面も、全然無視するわけにまいりませんで、海岸地帯におきまして、農業基本法に沿うようなことで増反ということでありまするならば、その面も、しかし認めていいんじゃないかと思います。これはとりもなおさず農業基本法におけるところの自立経営の面が、そこで一応確立されるような方向でございますからでございまするので、両々相まってやっていくべきだと思いますが、地元の状況等も勘案しませんと、ここでどうこうということを申し上げかねますが、先ほど申し上げましたように、自立経営のできるような配分をまずすべきであるし、また周辺の農家が自立経営に、増反によってなり得るという面がありますならば、それもつけ加えて考えていいんじゃないかと、こう考えます。
  129. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 両々相まってと言われるのに、それならば、何かどこをどういうようにやるのか、具体的に聞かないとわからなくなってしまうのですけれども、いつも大臣のうまい答弁で、ぼくは、いつもあとで記録を見ると、なかなかうまく答弁されているので、結局はどうも最後はわからなくなってしまうという点がある。私の質問が悪いのか、農林大臣があまりにも答弁がうまいのかということになると思います。地域的にいろいろな問題がそれはあると思うのです。しかし基本は、あくまでも農用地として造成されているわけで、しかも零細農家をつぶしてまでも自立経営のできる農家にしようという、できるだけそういうようにしようというお考えで進められておるわけですね。ところが、ここで配分するときには、かなり幅があるような、地元の要望もあって、増反の面も考えている。こういうようないろいろな面がございますが、そこだけ聞いていると、農業の自立経営というものを基本にしてやっているのが、地元の要請によって増反もやりますし、入植のような基本的な農業自立経営のできるものにするというようにも聞えますし、そこらどうもあいまいなんで、その点どうもはっきりいたしませんですが、基本的な考え方というのはどうなんですか。
  130. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 基本的な考え方といえば、自立経営農家を育成する、こういうことでございますから、たとえば入植する場合には二町五反とか、それ以上のもので入植させる、また周辺の農家で、あと一町歩配分を受ければ二町五反程度になる、あるいはあと一反歩か三反歩か受ければなる、こういうような面もあるのじゃないかと思います。でございますから、基本的には自立農家の育成ということ、その自立農家の育成の方法として、入植による場合もありましょうし、あるいは周辺の農家の増反によって自立農家ということに達成するという場合もあるだろう、こういうふうに私考えますので、両面から自立農家の経営に資するようにしていきたい、こういうことでございます。
  131. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 それで大体はっきりいたしました。そこで、増反を含めて二町ないし二町五反という直立経営農家ができるというのが目安で、それで配分する、こういうような御答弁のようでありますから、これもよくわかりました。  次にお尋ねをしたいのは、これは有明海の計画ですけれども、そのかんがい用水としていわゆる坑内水を利用するというのを計画に立てているわけです。石炭を掘った坑内水ですね。坑内水がかんがい用水として適当であるかどうか、この点、どうお考えですか。
  132. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) どうも、私も抗内水についての知識がないのですが、というより私のほうの近くの常磐なんていうのは、抗内水が熱くてとても熱湯でございます。有明のほうの水質とか、そういうものをよく承知しておりませんが、これはひとつ技術的に研究して、その研究の結果を聞いて御答弁申し上げる、私も答弁の資料を持ち合わせておりませんので、研究の上お答えをいたしたいと思います。
  133. 小宮市太郎

    小宮市太郎君 もう五時になりましたから、この次おいでになるようですからあとで聞きたいと思いますが、御研究になることはぜひ必要だと思うのです。三池でも使ってないことはないのです。それは廃坑になった鉱山でございまして、昔は有名だったのですが、万田坑という、そこの廃坑になった水を真水と交換をして、いわゆる慣行水利権のある水と坑内水と取りかえているのです。そういう事例はあります。しかし、これはそのままの抗内水を持ってくれば酸性その他の鉱毒がありまして、直接にそれをかんがいするということは、非常に危険です。これはどこでもそうです。筑豊その他の抗内水もみな危険です。そこで、そういう危険なものを、これを拝見すると、かんがい用水は全部抗内水になっているのです。計画が。いかに農林省がずさんな計画であるか、ずさんというと語弊がありますけれども、研究中とおっしゃればそれはそうで通るかもしれませんけれども、もう少しその点研究をいただくということ、あとはもう時間が五時になりますし、この次の機会にお聞きしたいと思います。
  134. 青田源太郎

    委員長青田源太郎君) それでは本日はこの程度で散会いたします。    午後四時五十六分散会      —————・—————