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政府委員(松野孝一君) ただいま議題となりました
農業改良資金助成法の一部を改正する
法律案の提案の
理由と主要な
内容を御説明申し上げます。
農業改良資金制度は、
昭和三十一年に創設されたものでありまして、国の助成により都道府県に置かれる
特別会計の資金をもって農業者に無利子の貸し付けを行なう制度であり、従来、新しい農業技術の導入に必要な資金を貸し付け、農業経営の改善に多大の寄与をなしてきたのであります。
しかしながら、最近の農業をめぐる諸般の情勢にかんがみ、農業経営を技術面において改善するだけでなく、これとあわせて、広く農家生活の改善を促進し、農業者が健康で文化的な生活を営むことができるようにするための施策や、農業経営の次代をになうべき優秀な農村青少年の育成確保をはかるための施策を強力に推進する必要が痛感されるに至っております。
すなわち、農家生活の改善につきましては、従来から、生活改良普及員の普及活動等を通じて推進をはかってきたところでありますが、古い慣習に根ざした農家の生活
内容、生活方式には、まだまだ改善の余地が大きく、改善意欲のある農家に対しても資金的裏づけが十分でない等の
事情によって、依然として、改善効果が十分にあがっているとはいえないような実情にあります。
また、農業後継者の育成確保につきましては、従来から各種研修教育施設の整備拡充、青少年活動の促進等の施策を講じてきたところでありますが、農村青少年の他産業への流出の原因は、単に他産業との所得格差や農村の生活環境のみに基因するものではなく、農業後継者たる青少年が、家族農業経営の中において、その意欲と能力を十分に伸ばす機会に恵まれていないことにも大きな原因があると思われるのであります。
以上のような観点から、農業改良資金制度を大幅に改正し、無利子の貸し付け金として、農家生活改善資金及び農業後継者育成資金を加えることとした次第であります。
これにより、農業改良資金の貸し付け対象となる農家生活改善資金とは、農家生活の改善を促進するための合理的な生活方式を導入するのに必要な資金であり、農業後継者育成資金とは、農業後継者たる農村青少年が、みずから特定の農業部門の経営を行なう等の
方法により、近代的な農業経営担当者として必要な農業の技術、または経営
方法を実地に習得するのに必要な資金であり、それぞれの
具体的内容は政令をもって定めることとしております。
また、償還期間の最高は、従来三年でありましたが、新たな資金の種類の追加と技術導入資金にかかる技術の高度化の傾向にかんがみまして、これを最高五年に引き上げることといたしております。
以上のほか、農家生活改善資金と農業後継者育成資金について、その他の貸し付け条件、貸し付け要件等を定めております。
以上がこの
法律案の提案の
理由と主要な
内容であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願いいたします。
次に、
農林漁業金融公庫法の一部を改正する
法律案につきまして、その提案
理由及び主要な
内容を御説明申し上げます。
わが国の農林
漁業の自然的経済的社会的制約による不利を補正し、国是経済の成長発展に即応して、その生産性の向上及び経営の改善をはかるには、農林
漁業に対し強力な助成を行なうことが必要であります。そのための施策の重要な一環として、
政府は、従来から農林
漁業金融公庫を通じ、あるいは農業近代化資金制度により、農林
漁業の生産性の向上及び体質の改善のために必要な資金の融通の円滑化につとめ、特に
昭和三十八年度におきましては農林
漁業経営構造改善資金融通制度を設けて長期低利資金の供給の道を拡充強化してまいったのであります。
しかしながら、最近における他産業の急速な成長に対応し、これと均衡のとれた発展をはかるとともに、国際競争力を強化してゆくためには、農林
漁業の近代化をさらに急速に推進することが強く要請されております。このため、
昭和三十九年度から、農林
漁業金融公庫の融資制度を画期的に改善し、農林
漁業の生産基盤の整備、経営構造の改善経営の拡大等に必要な長期かつ低利の資金を飛躍的に拡大するとともに、複雑多岐にわたっている金利、貸し付け期間等の貸し付け条件を大幅に改善簡素化して、農林
漁業者に対する資金の迅速かつ円滑に行なうこととした次第であります。
この画期的改善
措置の第一点は、資金量の拡充であります。すなわち、三十九年度における公庫の貸し付け計画額は、前年比二百億円増額して一千七十億円とし、三百五億円を
政府が追加出資することといたしました。
第二点は、金利の
引き下げと金利体系の簡素化であります。まず、現行の九段階に分かれている複雑多岐な金利体系を資金の性格により金利を統一する方向で整理し、
原則として三分五厘、五分、六分五厘及び七分五厘の四段階とすることといたしました。ただし、果樹園経営改善、畜産経営拡大等の資金の金利につきましては、その政策的重要性にかんがみ、当分の間、五分五厘といたしております。
また、新たに土地取得、小造林等の資金の金利を三分五厘に
引き下げ、三分五厘の資金量を前年度の約二・四倍の四百四十五億円と画期的に増大するとともに、林道、主務
大臣指定施設等の資金についても金利の
引き下げをはかることといたしております。
第三点は、償還期限及び据え置き期間の改善簡素化であります。まず、償還期限につきましては、現行の十三段階に分かれ個別的に細分化されているものを、
原則として三十年、二十五年、二十年、十五年及び十年の五段階に改善整理することとし、土地改良、林道、漁港、伐採調整の各資金等広い範囲にわたって償還期限の延長を行なうことといたしております。また、据え置き期間につきましては、償還期限のうち数とし、二年以内のものを、三年以内に延長するともに、土地改良資金の一部等についても期間延長の
措置を講ずることとしております。
なお、このほか、融資ワクの統合、貸し付け事務の改善簡素化をはかり、公庫資金の貸し付けがより一そう迅速かつ円滑に行なわれるようあわせて
措置することといたしております。
以上のような農林
漁業金融公庫融資制度の画期的改善
措置を実施するため、同公庫の貸し付け金にかかる貸し付け条件を定めた規定に所要の改正を加えるとともに、
政府の追加出資についての規定を整備する等の必要がありますので、本
法案を提案した次第でります。
以下、改正のおもな
内容について御説明申し上げます。
改正の第一点は、公庫に対する
政府の追加出資及び公庫の資本金の増加についての規定の整備であります。さきに、申し上げましたように、農林
漁業の近代化を推進するため、
昭和三十九年度におきましては、総額一千七十億円の貸し付け決定を行なうこととし、これに伴い
政府が一般会計及び産業投資
特別会計から合計三百五億円の追加出資をすることといたしておりますが、特に今回の貸し付け計画額の増加が三分五厘を
中心とする低利資金の画期的拡大をその
内容としておりますところからも、今後とも
政府の追加出資による公庫の資本金の増加が予想されるのであります。このため、
政府は必要があると認めるときは、予算で定める金額の範囲内で公庫に追加出資できることとするとともに、この場合において、公庫はその出資額により資本金を増加するものとする規定を設けることにより、今後は
法律改正の手続を経ずに
政府の追加出資による資本金の増加を行なうことができることとしたのであります。
第二点は、監事の権限についての規定の整備であります。すなわち、監事は、監査の結果に基づき、必要があると認めるときは、総裁または総裁を通じて主務
大臣に意見を提出することができることといたしております。これは、他の
政府関係金融機関等と軌を一にしまして、監事の権限についての規定の整備をするものであります。
第三点は、公庫の貸し付け金にかかる貸し付け条件の改善整理であります。まず、さきに申し上げました公庫の融資制度の画期的改善
措置を実施するため、公庫の貸し付け金の償還期限には据え置き期間を含むこととするとともに、農地等取得資金の金利を三分五厘に改める等、公庫の貸し付け金の利率、償還期限及び据え置き期間について所要の改正を行なうことといたしております。
なお、果樹園経営改善資金、畜産経営拡大資金、沿岸
漁船整備促進資金及び沿岸
漁業協業化促進資金の金利につきましては、さきに申し上げましたとおおり、当分の間五分五厘といたしております。
以上が、この
法律案の提案の
理由及びおもな
内容であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願いいたします。
次に、
北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法の一部を改正する
法律案を提案する
理由について御説明申し上げます。
この
法律は、北海道における寒冷のはなはだしい特定の畑作地域を寒冷地畑作振興地域として指定いたしまして、この地域内の農業者で営農改善計画を立てて、これに基づいてその営農の改善をはかろうとする者に、農林
漁業金融公庫が必要な資金を貸し付けることにより、その地域における農業者の経営の安定をはかることを
目的とするものでありまして、
昭和三十四年に制定されたものであります。
この制度により農業者が資金の貸し付けを受けようとするときは、所要の資格認定を受けなければなりませんが、その申請の期限は現行の規定によれば
昭和三十九年三月三十一日と定められており、これにより、
昭和三十八年十二月現在六千六百六十七戸の認定をいたしておるのでありますが、諸般の
事情のため、なお今後認定を希望する有資格農家が約五千戸残っている状況であります。したがいまして、この資格認定の申請の期限をなお二カ年延長することとし、もってこの制度に基づく北海道寒冷地畑作地帯の農業の振興を継続してまいることとした次第であります。
以上が本改正
法案を提案する
理由とその
内容であります。
何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願いいたします。
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