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1964-05-21 第46回国会 参議院 内閣委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月二十一日(木曜日)    午前十時五十八分開会   —————————————    委員異動  五月二十日   辞任      補欠選任    徳永 正利君  古池 信三君   —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     三木與吉郎君    理事            石原幹市郎君            下村  定君            伊藤 顕道君    委員            源田  実君            小柳 牧衞君            林田 正治君            村山 道雄君            千葉  信君            山本伊三郎君            鬼木 勝利君            向井 長年君   国務大臣    外 務 大 臣 大平 正芳君    自 治 大 臣 赤澤 正道君   政府委員    外務政務次官  毛利 松平君    外務大臣官房長 高野 藤吉君    外務大臣官房会    計課長     谷  盛規君    外務省アメリカ    局長      竹内 春海君    外務省条約局長 藤崎 萬里君    外務省情報文化    局長      曾野  明君    自治大臣官房長 松島 五郎君    自治省行政局長 佐久間 彊君    自治省財政局長 柴田  護君   事務局側    常任委員会専門    員       伊藤  清君   説明員    自治省財政局公    営企業課長   近藤 隆之君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○外務省設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○自治省設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) これより内閣委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨二十日、徳永正利君が委員を辞任され、その補欠として古池信三君が選任されました。
  3. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 外務省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、前回に続き、これより質疑を行ないます。  政府側から大平外務大臣高野官房長藤崎条約局長曾野情報文化局長谷会計課長竹内アメリカ局長が出席いたしております。  御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  4. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 前回に引き続いて二、三お伺いしたいと思いますが、まず、アメリカ原子力潜水艦寄港問題については最近情勢が私どもにはよくわかりませんので、まずこの問題について二、三お伺いしたいと思います。  申し上げるまでもなく、日本国民は、世界の歴史で原水爆を被災した最初にして唯一国民であって、そのおそるべき破壊力を身をもって体験しておるわけであります。ところが、いま核兵器になると、この運搬手段が極限的にいま発達しておるわけであります。人類の生存に対して非常な脅威を与えておるとき、日本国民が憲法の精神と、そうして原水爆被災の体験から、核兵器全廃、そうして東西陣営軍事上の緊張緩和、こういう方面に努力をしておることは大臣もよく承知しておられると思うのですが、この点に関する大臣のお考えを、この際明らかに承っておきたいと思います。
  5. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) わが国史上唯一被爆国という立場にありまするし、また国民的感情といたしまして、原子核兵器の製造、保持、使用はもとより、その持ち込みも認めないということを政府の不動の政策といたしておりますことは御案内のとおりでございます。ただ、御指摘原子力潜水艦寄港問題というのは、これはそういう基本政策関連はない問題でございまして、近海を航行いたしております原子力潜水艦が、日本に水の補給休養等もよりの港に寄るということでございます。で、わが国安保条約のたてまえからいきますと、これを拒否する立場にないこともまた御案内のとおりでございます。ただ、そういう国民的な感情、そういう経緯にかんがみまして、政治的な立場アメリカ政府日本に対して日本の顔色をうかがいに来てまいっておることは御承知のとおりでございまして、私どもそういうことを考慮いたしまして、条約上のたてまえとして拒否する立場にないけれども、しかし、この問題の安全性という見地につきましては、重大な関心を持っておりまするので、鋭意アメリカ側との間に折衝を重ねつつある状況でございまして、私ども責任をもって、これを認めましても国民に対して差しつかえがないという心証を得るまで克明に安全性の問題につきましても究明をやりたいと存じて、いまそういうことをやっておるところでございます。まだ最終的な詰めにまで至っておりません。
  6. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 部分核停条約が締結されてから、それを契機として、東西陣営緊張も確かに緩和されてきたし、軍縮問題も現実の課題として取り組まれてきたわけです。こういうときに、アメリカ日本原子力潜水艦寄港を要請してきたということは、大勢から見ても、どうも世界大勢に逆行するのではなかろうか、こういうふうに私ども考えているわけであります。この点について大臣はどうお考えですか。
  7. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) その点は伊藤さんと私はその問題の評価が若干違うのでございます。軍縮の問題、いまの世界の平和というのは、私どもはやはり軍事力が均衡していると申しますか、恐怖の均衡と申しますか、現在ある各陣営の持っている軍事力バランスというものが、平和をささえておると思うのでございまして、軍縮の問題は、したがって、そのバランスをくずさないように、しかし、バランスをくずす軍縮をやると、軍縮自体が平和の脅威になると思うのでありまして、バランスをくずさないように、その水位を漸次下げていくということをじみちにやってまいるべきではないか、また、それ以外に道はないのではないかと考えておるわけでございまして、原子力潜水艦寄港問題というのは、現にある軍備の一部をなしているものが、日本に寄るか寄らぬかの問題でございまして、そういうものをつくるかつくらないか、増強するとかしないとかという問題ではないのでございまして、日本の三海里の外は公海でございますから、日本政府支配が及ばぬのでございまして、そういうところにどの国の船が航行をしているか、これは日本政府支配は及びません。おそらくいろいろな国の、公船であろうと、商船であろうと、軍艦であろうと、航海していると思うのでございまして、そういった船がたまたま日本もよりの港で水の補給を受けたり、乗組員が若干の休養をとりたいというだけの問題でございまして、いまあなたが御指摘されたように、軍縮の問題とか、平和の問題とかという重大な問題との関連において、この問題を評価していないのでございます。その点は若干見解が違うかもしれませんけれども
  8. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 ミコヤンが、言うまでもなく、ソ連の第一副首相が、この間議員団と一緒に国会に見えた十五日に、部分核停条約、内容は大気圏内、宇宙空間、水中、こういうものの核実験禁止をするという条約が今国会承認されたわけです。このことに対して外務大臣はどういうふうにお考えですか。
  9. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ミコヤン首相の来日と核停条約衆議院通過との関連でございますけれども、これは国会運営の問題でございまして、政府としてはどのような段階で国会が御承認をいただけるのか、どういう手順でやられるのか、そういうことは私としては全然関知していないわけでございまして、国会運営の御都合でやられたことと思います。
  10. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 質問の要旨をお考え違いじゃないですかね。ミコヤンが来られた十五日ということで、ミコヤンには何も関係はないわけです。たまたま国会でこの部分核停条約提案されて、この日本国会承認された。ちょうどミコヤンがその日に見えたから、そのことをあえて言ったので、何も関係はないわけですね、ミコヤンは、国内問題ですから。そこで、この日本国会で部分核停条約承認された。このことについて外務大臣としてはどうお考えかと、そういうことを聞いた。ミコヤンは何も関係ないです。
  11. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私といたしましては、結論として非常に国会承認に対しまして感謝し、かつこの条約は、できたらいいというものじゃなくて、今後相当努力を要するものであろうと思います。何となれば、これは全面核実験禁止への一歩だという規定のしかたをやっておりますけれども、それより前に、この条約より後退することを防がなければいかぬと思うのでございます。あの条約にも三カ月の予告をもちまして脱退ができるようになっておるわけでございます。脱退というようなことになると、たいへんなことで、またすべてのスペースにおける実験が始まるなんということになりますと、これはもう人類にとりまして、これほどダークなニュースはないと思うのでございます。そこで、これは何としても核保有大国責任が非常に重いと思いまするが、私どもが去年の国連総会からも非常に強調しておりますのは、核保有大国の平和に対する責任というものは想像を絶したほど大きいのだということを訴えておるわけでございますが、それにいたしましても、できるだけ多くの国が署名するということが非常に大事だと思うのでございます。百九ヵ国が現在署名いたしておりますが、百九のいわば重しがつく条約ということになりますと、それらの国と、それらの国民の願いが込められておるとなりますると、この核保有をいたしておる大国は、よほどこれは考えなければならぬ大きな政治的圧力になっておると思うのでございます。そういうできるだけ多数の国が署名するということがまずできたわけでございます。それで、これより後退させないという一つの保証ができたわけでございますけれども、しかし、後退させないためには、もっともっと努力がまず要ると思うのでございまして、国会から御承認いただいたら、やれやれよかったと思うわけにはまいりませんで、これからさらに決意を新たにして、後退は絶対にしないようにどうすればいいかということを日本政府としても応分の努力をせなければならぬと思いますし、さらに第二点として、これからさらに全面禁止への一つの階梯になると、この間もミコヤンさんがいらして、日ソ共同声明しないかという申し入れを受けたのですけれども核実験全面禁止というのは、アメリカ賛成ですし、ソ連賛成なんです。両方とも賛成されておるのだし、日本賛成だと、こういって声明を出すということも悪いことじゃないですけれども、問題は、みんなが賛成のことがなぜできないかと、問題はもっと現実査察の技術、方法のテクニカルなところに入ってきておるわけでございますから、そういったやはり問題の焦点はそこにあるわけでございますから、そういう点について光を当てていくことをひとつやろうというのなら、非常にこれはエンカレジングだと思ったのですけれども、ひとつ声明しようかだけでは何かもの足りないのでございます。これにどう返事するかいま考えておりますけれども軍縮の問題、核実験禁止の問題も、声としてはもうずいぶん出ておりますし、スローガンとしてもずいぶん鼓吹されておるわけでございますけれども、一番困難なのは、そういう具体的な問題の討議も、しかし困難でございますけれども、そういうところに力点を置いた努力をやらなければならぬというようなことが、今度の国会の御承認——近く得られると思いますけれども、を契機として、決意を新たにしなければならぬことではないかと私は思います。
  12. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 今度のはソ連関係がありますが、フルシチョフ首相から池田首相に宛てて親書が送られてきたわけですが、その一節に、日ソ両国共同声明を出し、地下核実験即時停止核保有大国に呼びかけたい、まあこういう意味親書一節、これはまあ一つ提案であろうと思いますが、その提案に対しては外務大臣としてはどうお考えですか。
  13. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) その前段の御質問にお答えを申し上げましたように、それ自体決して悪いことではないと思うのでございますけれどもジョンソン大統領も、フルシチョフ首相も、地下核実験禁止全面禁止という点に賛成しているのです。で、単にそれだけなれば、もうみんなが賛成していることでございまして、ああそうかというようなことで、それじゃああまり——せっかくの御提案としては一つの外交的なマナーにすぎないんじゃないかというような感じがするのでございます。したがって、その点査察の問題はどうかというと、ジュネーブでも議論して、たいへんな距離が依然としてあるわけでございまして、問題がそういうふうにあるということを十分承知しながらひとつ声明を出すということがいかがなものかという点が、いま私の頭を支配しておることでございまして、これに対してどういうお返事を申し上げるべきかという点が、いま政府で検討中でございます。問題はもっと切実なんであって、そういう一般原則的なことは、もうみんなそうだそうだということになっておるわけでございますから、せっかくやるのならもう少しやりようもあるんじゃなかろうかという点が、いま考慮いたしておる焦点でございます。
  14. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 それでは以下二つの点だけお聞きしておきたいと思うんですが、問題は、寄港問題にからんでは、核装備の有無ということですね、核装備があるのかないのかということ。それと、いま一つは、安全性、この二つの問題が問題の中心であろうと思います。  そこで問題を二つにしぼってお伺いしたいと思いますが、まず核装備について、これは私が言うまでもなく、アメリカ日本寄港する原子力潜水艦には核兵器装備していない、こういう言明があるわけです。しかし、私ども日本国民としては、それをすなおにそのまま受け取ることはできないわけです。もともとこの原子力潜水艦兵器でもあるし、それぞれの兵器を持ったこの原子力潜水艦日本の港に入ってくると、何かこう一定軍事的目的がなければ入ってくる必要はなかろうと思うんですが、一定軍事的目的が確かにあるんではなかろうかと、こういう問題が一つ出てくるわけです。そこでアメリカ原子力潜水艦は、日本寄港というのは一体どういう目的で入ってくるのか、こういう点を明らかにしておきたいと思うんです。で、その寄港することが日本の平和と安全にどのような関連があるか、こういう問題についてお伺いします。
  15. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 核装備は、核の持ち込みは認めぬということは日本政府が内外に宣明いたしております。アメリカもよく承知いたしております。そういうことはアメリカとしては絶対やらぬということもたびたび言明しているところでございます。よく国会でも議論になるのですけれども、まあその点、それでは日本はそれのインスペクションをやって、確かにそうでないことを確かめろと、こういうのでございます。だけれども条約というのは紙に書いてあるものでございまして、実際はお互いの信頼の上にあるわけでございます。信頼がこわれたら条約なんというものは存在しないと思います。アメリカがその国の名誉にかけておごそかに約束したことを破るような国であれば、私は今日アメリカは大をなさなかったと思うのでございます。これは私は全幅の信頼を置いて寸毫の私は不信は持っておりませんし、また、持つべきでないと思うのでございます。また、そういう態度で接しなければこれはほんとうに安保条約運営というのはぞんざいになってしまうと思います。  それから寄港目的でございますが、これは先方が申しておるとおり補給休養ということでございます。現在グアムとかあるいはホノルルとかいうところに入って休養したり水を補給したりして、また長い航海に出る。非常に航続力が長いものでございますから、そういうことも可能なんでございます。可能でございますけれども、まあずいぶん不便なことだと思うのでございます。日本の近くまで来ておって、目と鼻の先に日本の島が見えておるのにそこで水もくめないというようなのは友好国としていかにもおかしいと思うのでございます。私は原子力潜水艦日本寄港しようがしまいが、現在の安保体制日本の平和は守られてきましたし、これが寄港しなければ日本の安全は保てないというようなことは思いません。私は友好国としてそういうことはきわめてあたりまえなことではないかというように考えているのです。ただ冒頭にも申し上げましたように、国民感じというのが原子核という問題について異常なものがございますから、これもアメリカはよく承知しておりますので、条約上の問題としてではなく、政治的な判断として非常に遠慮して日本感じ方を聞いてきている。それでまあ安全ということについては上からも下からも横からもみな見て、私どもこれなら大体国民に安心していただけるなあというところまで問題を詰めて、しかる上に御返事したらよかろうということで長くかかっておるのでございますけれども、本意はまあそういうところにあるわけでございます。
  16. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いまの御答弁を聞いておると、安全性が一〇〇%あった場合、それを前提として友好国であるのに水もくめない、そういうことは常識として言えないと思うのです。ただ後ほどお伺いをするが、日本国民がそれの安全性については非常に危惧の念を持っているわけですね、現実の問題として。そういうことを抜きにしたら友好国間で水もくめないと、そういうことを抜きにして考えれば、いま大臣がおっしゃったとおりです。アメリカ政府もただ乗組員体養目的である、そういうふうには言明しております。けれども大臣おっしゃったように、これは非常に驚異的な航続力をもっているわけですね。したがって、演習するにしても、自分の国は広いんですし、太平洋にも島はあるんで、幾らでも寄港できる。航続力が非常に長いわけですから。それを日本国民があげて反対をしているその反対を押し切ってまで、ただ単なる乗組員休養ということであるならば、その必要はなかろう。ただ、安全性が一〇〇%保障された場合は大臣の御答弁はそれでよろしかろうと思う。その点はいかがですか。
  17. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ただいままでのところ、これはこの前の国会に対して中間報告を申し上げておきましたが、いままでの運航実績から申しまして、原子力潜水艦に危険はなかったわけでございますが、なお水の汚染の問題、原子炉安全性の問題その他科学的にいろいろ究明しまして、まずこれならだいじょうぶ、御安心がいただけるというところまで詰めまして、しかる上政府として責任が持てるということになりますれば要請を受けたいと思っております。いまあなたが御指摘のように、ほかの問題はともかく、安全性究明、これが第一と存じまして、この点に努力しているということでございます。
  18. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 アメリカ太平洋艦隊司令官のS・G・シャープ大将ですか、この司令官は、昨年の十一月十七日に、横須賀の記者会見でこういう意味のことを言っているんですね。原子力潜水艦日本寄港は、軍事上絶対に必要なものではない、こういう意味のことを述べているわけですね。そうだとすれば、いまも申し上げたように、そんなに軍事上何ら必要ないとするならば、ただ乗組員のいわゆる休養目的である、そういう単なるそれだけの目的であるならば、日本国民反対を押し切ってまでもあえて寄港を要請する必要はないんではなかろうか。ただ、先ほども申し上げました安全性が一〇〇%保障できる、そういうことであるならば話はまた別になると思うんですね。その点はいかがなんですか。
  19. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 非常に長い航続力を持っておりますから、アメリカの領土に帰って補給もし、休養もすることは可能でございますが、日本に寄れたほうがベターだと思います。しかし、寄らなければ全然活動ができないかというと、そういうものじゃないと、私はしろうとながらそう考えます。ただ乗組員にいたしましても、私ども船に乗った経験がございませんけれどもグアムで上がってまた飛行機で来て日本を見てお帰りになっている人もあるようでございまして、日本を見たいという人にわざわざそんな迂回までさせる必要もないんじゃないか。これは友好国としてのまあマナーじゃないかと思いますがね。そう深刻な問題とは私は考えておりません。ただ、あなたが言われる安全性の問題につきましては、原子核の問題というのは、みなしろうとで、原子力潜水艦ができまして数年でございますから、いろいろ危惧の念を持たれている向きもありますから、これはできるだけ政府のほうで解明して、これをPRして御納得をいただくようにしたい、これが政治だろうと思います。アメリカのほうも非常にしんぼう強くわれわれのクエスチョンに対して返答してくれているわけでございまして、ずいぶんしんぼうがいっているわけでございます。このことは客観的な問題でございまして、大平がどう思う、こう思うというような問題でなくて、一般に御了解いただくようなところへひとつ素地をつくっていくようにしたいと思っております。
  20. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 昨年の十二月四日行なわれたアメリカ海軍発表を見ますると、こういう意味のことがあるわけです。ポラリス型を除く現有の攻撃用潜水艦核兵器サブロック装備することを明らかにしておる。また、アメリカ政府もこういうことを言っておるわけです。グァム島を基地として西太平洋ポラリス潜水艦を派遣すると決定しておって、今日沖繩、フィリピンに核装備したところのアメリカ潜水艦寄港しておることは、これはまあ周知の事実であろうと思います。しかもアメリカ政府は、昨年十二月四日付の日本政府あての回答に、西太平洋水域潜水艦は、原子力潜水艦に切りかえられるに従って、日本寄港する潜水艦、いわゆる原子力潜水艦の隻数も度数も多くなる、こういうことを指摘しておるわけでございます。こういう一連のアメリカ政府のこれらの発表を総合して考えますと、日本寄港するであろうところの原子力潜水艦は、日本に入ってくるときだけ一々核装備をはずして寄港するとは考えられない、冒頭にお伺いした、アメリカ核装備はしていないということですけれども日本寄港するときだけ核装備をはずして寄港するとはわれわれはどうも信じられないわけなんですが、当然核武装した原子力潜水艦寄港するであろう、そういうことになろうと思います。そういうことになると、先ほど申し上げた安全性との関連において、安全性が一〇〇%保証されない限りにおいてはこういう問題が残るのではないか、こういうふうに考えられるわけですが、この点はいかがですか。
  21. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 兵器は日進月歩でございますから、潜水艦ばかりじゃなく、飛行機にいたしましても急速な進歩を見ておりますことは御案内のとおりでございまして、通常の潜水艦原子力潜水艦に置きかえられないなんということは言えないと思うのでございます。ただ日本立場で申しますならば、よく国会でも議論になるサブロックを搭載するのじゃないかと、サブロックはまだ開発中と聞いておりますが、かりにこれが開発が終わって実用になったと仮定いたしましても、日本アメリカとのおごそかな約束は、そういう装備の重大な変更は安保条約事前協議の対象になっておりますから、そういうことであれば、アメリカから事前協議の申し出があるはずでございます。アメリカは、そういう意図はないと言っておるわけでございます。原子兵器を積み得るということと、積むということはまた別でございまして、私どもはこれは全然疑っていないわけでございます。そこを疑ってかかれば、先ほど申しましたように、安保条約なんというような紙きれば要らなくなって日米関係はめちゃくちゃです。私はそういうことは、日本の国、日本国民としてやるべきじゃないと思うのでございます。約束約束としてきちんと相互に尊重して守るという信義の上に立たぬと、国と国との友好関係は保てぬと思うのでございます。搭載し得るものであるから搭載して入るに違いないなんと、なるべくそういうことはおっしゃらぬようにしていただかぬとこれはいかぬと思う。これは非常に大事な問題だと私は考えておるわけでございます。
  22. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 これはいま大臣指摘したように、結局、配置と装備における重大な変更であるから事前協議の該当事項だと、したがって、拒否し得る問題でもあるわけですね。ところが、日本の池田総理が本年の一月二十三日、衆参の両院の本会議においての言明で、サブロックを搭載した原子力潜水艦寄港は認めない、こういう趣旨の発言を本会議でしておるわけですね。これは大臣も御存じだろうと思います。で、日本政府条約上この趣旨の発言をしておったわけですけれども日本には、核装備の有無を検証する権限は与えられていないと思うのです。ただ、大臣は先ほどからアメリカはもう絶対信頼しておるという、その信頼に立って発言しておられるわけですが、しかし、過去の実績から見ても、国民としては信頼し切れない面があるわけです。たとえば、例のU2型の問題に対してアメリカ政府のとった態度、そういうことからも、核装備しないのだと言うてもそのまま受け取りがたい面があるわけなんですね。そういうことから、しかも安全性とも関連して非常に不安を持っておる。ただアメリカを絶対信頼しておるのだ、もう核装備はしてこないのだということを一〇〇%信頼の上にかりに立てば別ですけれども、いま申し上げたように、U2型の事件の際、アメリカ政府のとった態度等をもあわせ考えた場合、やはり一〇〇%信頼するところまでは行っていない、国民として。しかも後ほどお伺いする安全性についても幾多の問題がある、こういう段階だからわれわれは反対しておる、そういうことなんです。この点はいかがですか。
  23. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まあ検証の問題は、先ほど申しましたように、一々アメリカの軍を構成する兵員、装備が入ってくる場合に、一々日本が点検する、そういうことをやっておると、私は角をためて牛を殺すことになってしまうと思うのです。条約の根本は信頼でございますから、日本と共同防衛しようと、血を流してまで日本を守ろうというそういう厳粛な約束なんでございますから、どれどれお前のほうをおれらのほうに調べさせろ、そんなことは私は絶対に避けなければいかぬと思います。そういう、せよという御議論がありましても、私は絶対そういうことはできません。  それから総理の言明でございますが、それはそのとおりでございまして、核兵器持ち込みは認めない、イントロダクションは認めないということを日本アメリカに申しております。しかし、アメリカもよく承知しておりまして、全然そういう意図はないということでございます。今度の寄港問題は全然持ち込み関係ないと、向こうも十分それを承知の上でやっておることでございまして、それはお疑いを持たないようにお願いしたいと思います。
  24. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 大体核兵器の有無の問題については大臣のお考えがわかりましたので、次にいま一つの問題、安全性の問題についてお伺いしたいと思いますが、私どもは先ほどから申し上げておるように、安全性については深い疑義を持っておるわけです。これは専門家をわれわれは信頼する以外ないわけで、専門家の言質をとってもって参考にする以外われわれは理解する力がありませんから、そこで、日本の科学者では何と言っても湯川博士を筆頭として、署名な原子物理学者を含めて原子力潜水艦寄港には反対しておるわけです。それから日本の学術会議も、私が指摘するまでもなく、この安全を脅かされるおそれがあるので原子力潜水艦寄港は好ましくない、こういう声明を出して日本政府に警告しておるわけです。ただここで問題なのは、日本の物理学の水準が世界の水準に比較して一段と低い、そういうものであるならばこれはあまり参考にならぬわけですけれども日本の物理学の水準は世界的に相当高く評価されておる、これは事実であろうと思うのです。物理学の水準が世界的に高く評価されておるその中の著名な学者が反対をし、好ましくないということで政府に警告しておる。こういうことであるならば、やはりこれに耳を傾ける必要があると思うのです。専門家の言質で、水準の高い科学上の言明であるから、これはとってもってあくまで信頼しなければならぬ、こういうことであろうと思うのです。その点については大臣はどうお考えですか。
  25. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 科学者の科学的御意見には十分尊重しなければならぬと私は思います。しかし、真理は一つでございまして、洋の東西を問わず一つだと思うのでございまして、非常に危険なものでございますれば、アメリカにおきましても高い物理学的水準を持った国でございまして、いろいろな議論があろうと思います。子供が原子力潜水艦のはたで水泳するなどということも禁止するはずだと思いますけれども、いままで多数の港に寄港いたしております。自分のほうの港にも来てくれという状態であるということは原子力潜水艦が安全だということを立証しておると思うのでございます。いままでアメリカ以外の国々に百数回寄港いたしておりますが、何ら問題はなかったわけでございます。しかしながら、飛行機でも事故がありますし、自動車でも事故があるように、一〇〇%確実なんということは、私は人間である限りできることではないと思います。私もしろうと考えでございますが、できることではないと思います。一〇〇%絶対に安全であるか、それを証明しろというようなことは人間に求めることは私は無理ではないかと思うのでございます。政府部内におきましても、政府部外の科学者の御意見を十分拝聴いたしますが、同時に原子力委員会を中心に科学的な頭脳を擁しておりますから、そういう方々と安全性について十分御相談いたしまして、それで政府としてこれならば責任を持てるじゃないかという心証を得た上で処理していきたいということで、われわれしろうとの間でやっておるわけではないのでありまして、科学者の科学的意見を——よく科学者による政治的意見がございますが、それは私は尊重いたしません。科学者の科学的意見というものは一〇〇%尊重してまいりたいと思います。
  26. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この安全性について危惧を念を持っておるのは日本の科学者だけではないわけです。世界の著名な科学者も同様に危惧の念を抱いておるわけです。たとえばアメリカの物理学者であるエドワード・テラー博士は安全性立場から、あまり人口密度の高い港に寄港することには反対だ、こういう反対声明をしておるわけですね、米国で。それからアメリカ原子炉安全審査委員会、これも権威のある委員会ですが、これも同様な立場反対声明をしておるわけです。さらに史実を見ると、一九五八年にデンマークの政府原子力潜水艦のコペンハーゲン寄港に対してアメリカの要請を拒否しておるわけです。こういう史実もあるわけですね。おそらくデンマーク政府もこの安全性については十分危惧の念を持ったからだと思うのです。日本の学者だけでなく、こういう世界の学者が、そしてまた、現実にデンマークが、そういう原子力潜水艦寄港を拒否している史実もあるわけですね。こういうものもあると考えたとき、これは日本もよほど慎重に考えないと悔いを将来に残すことになると思うのです。したがって、安全性は一〇〇%保障されない限りはうかつにこれは処理すべき問題ではない、こういうふうに当然に考えられる。この点はいかがですか。
  27. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) うかつに処理するつもりは毛頭ございませんので、非常に政府も時間をかけてあらゆる角度から科学的頭脳を動員しまして日米間で検討しておるわけでございます。デンマークの例がございましたけれども、ことしの初めにデンマークの外相が参りましてその点聞きただしてみましたが、ただいま寄港の要請があれば好意的に考慮するであろうということで、ございます。過去において遠慮してもらいたいという時期もあったが、いまはそうじゃないそうでございまして、時代がだんだん進んでいくのではないかと思います。
  28. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 先ほどお伺いしたことと連関して、アメリカ原子力潜水艦寄港を予定しておるのはおそらく横須賀とか佐世保であろうと思います。そうだとすると、横須賀も佐世保も人口密度が相当高いし、船舶の往来も相当激しいわけです。したがって、先ほどのことばを借りるまでもなく、そういう地区への寄港については非常に重大な危険性がある。結局私どもとしては、この原子力潜水艦の放射能の廃棄物による海洋汚染について、いままで非常な深刻な不安を持ってきたわけです。ここでお伺いしたいのは、日本国民現実にそういうような不安、危惧の念を持っておる。これはアメリカ政府としても十分承知であろうと思うのですが、そういう事情であるにもかかわらず、あえて寄港を要請しようとするのか、この点についてはアメリカ政府はどのように考えておるのか、この点についてお伺いします。
  29. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 去年の一月九日に申し入れがあったわけでございますから、それからずっと安全性究明をやっているわけでございます。で、アメリカとしては条約上のたてまえは別といたしまして、政治的に日本政府のほうで了承しない限り寄港させるというようなことはないと思います。われわれその冷却水の廃棄の問題、それに伴う汚染の問題、それは文字どおり重点的な検討事項として、アメリカの基準も検討し、こちらのほうの基準も検討し、双方相当詰めて話し合いをいたしておるところでございまして、そういうことにおかまいなくこうするのだということではなくて、非常に紳士的に問題を煮詰めつつあるわけでございます。
  30. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 現在も日米間でこの寄港問題を中心に交渉が続けられておると思うのですが、特にお伺いしたいのは、先般中間報告があったのですが、その中間報告後の経過についてはわれわれ全然承知してないわけです。その中間報告後の経過についてその大要をお知らせいただきたいと思います。
  31. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 若干の点につきまして双方の意見の交換をずっとやっておるわけでございます。で、そのときも申し上げましたように、全部の検討を終えますと国会に御報告するつもりでございますし、国民にも報告するつもりでございます。われわれは抜き打ちでやろうなんと思っておりませんで、これは問題は国民によく理解してもらうことが第一でございます。そういう手順はとるつもりでございます。いま進行中でございますから、これが詰められる段階になりますとちゃんと御報告するつもりでおります。
  32. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 われわれの承知しておるところでは、その後の問題はおのずから一次冷却水の排水基準、この基準の問題を中心に日米間でまだ考えが統一されてないといふうに承っておるわけなんですが、この点はどうなんですか。依然として排水基準については日米間で開きがあるのかどうか、この具体的な問題についてはいかがでございますか。
  33. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 最終的とは申せませんが、大体その問題としては詰まってきているように思います。
  34. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そこで最後にお伺いしたいのは、大臣は以前から安全性について、まあ納得がいったら、こういう意味答弁国会でなさっているわけですけれども、この見通しについてはどういうふうにお考えですか。展望に立ってのお考えを……。
  35. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 中間報告を御提出申し上げた以後の折衝の結果、結晶したものは全部国民に御報告申し上げて御理解を得ると同時に、日米間でちゃんとした取りきめを一応いたしまして、責任の所在もはっきりさせた上で手順を踏みたいと思っておりますが、国民一人残らず御理解をいただくなどということは、これは事実上申して不可能だと思いますが、私が申し上げておるのは、政府としてこれで国民に対して責任が持てるという信証を得たら決意をしていただこうと思っております。
  36. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いままでの一体保守党内閣のやり方を見ておると、大事な大きな問題とか、国民が強く反対しておるような案件については、ことさら国会開会中という時期を避けて、国会の直後をねらって発表したり声明したり、そういう事例が多いわけです。たとえば第一次防衛力整備計画、第二次防衛力整備計画についても国会終了の直後を機会として発表しておる。それから近い例では、この間本内閣委員会でも審議になったいわゆる叙勲の問題についても、昨年の国会終了直後、そういう機会を絶好の機会として生存者叙勲を閣議で決定をしておる。ここで特に私がお伺いしたいのは、この原子力潜水艦寄港問題についても、いま国会開会中であるから鳴りを静めておって、この国会終了直後に寄港のような大問題を、しかも国民が強く反対しておるよう問題を、国会直後という機会をねらって話を進めるのではなかろうかと、一応過去の実績からそういうことが考えられるわけです。念のためにお伺いしておきたいと思うのです。そういうお考えはよもやなかろうとは思いますが、ここでひとつそういう考え方について明確にしていただきたいと思います。
  37. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) この問題起こりましてからもう一年有半になっておりまして、その間にずいぶん国会の休会の時期もあったわけでございますが、やらなかったわけでございます。つまり全体の検討を終えなければやるにもやれないわけでございますので、国会開会中とか閉会中とかということに重きを置いて考えているわけじゃ決してございません。私どもといたしましては、先ほど申しましたように、全部検討を終えて責任が持てる信証を得た時点と考えております。
  38. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 これは先ほどもお伺いしたように、防衛力整備計画、こういうものも確かに国会直後に第一次、第二次とも発表されているわけです。国会で問題になったいわゆる次期主力戦闘機種の問題、こういう問題についてもそうです。いまの生存者叙勲の問題も国会直後という機会を、あえてそういった機会をねらって発表している。そういうことからこの問題もそういうことではなかろうかと、一応懸念されるのでお伺いしたわけです。  そこで一応大臣のお考えが、いい悪いは別としてはっきりなってまいりましたので、次に原爆判決について最後に一点お伺いしておきたいと思います。これは昨年の十二月の七日に東京地方裁判所でこういう判決を下しているわけです。昭和三十年以来約十年ごしに審議されてきた問題ですが、広島、長崎に対する原子爆弾投下を違法として日本政府に対してその損害賠償を求めるという訴訟事件があったわけです。これに対する判決はこのようなものであったわけです。この判決は結論では原告側の請求を退けておりますけれども、その立論の途中でこういう一節があるわけです。第二次大戦中における米国の広島、長崎に対する原爆投下は国際法違反の行為であると判定したわけですが、この点が非常に注目を呼んでいるわけです。この判定に対する外務省の見解をまず承りたいと思うわけです。
  39. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) この判決全体としては尊重すべきものだと思っておりますが、いま御指摘の国際法上これが許されるかどうかという点に論及している点については直ちに賛成いたしかねる。従来どおり日本政府考えていたのが実定国際法としては正しい見解じゃないかと依然として考えております。
  40. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この東京地裁の判決ははっきりしているわけですね。すっきりした判決であるわけです。これは国際法違反である、違反の行為であると、もうきわめて明確に出ているわけですが、これに対して外務省の見解としてはいま御答弁あったように、非常に回りくどくなっているのですね。ちょっと聞いているとわからない。賛成反対かわからない。非常に不明確なんですが、これはアメリカの原爆攻撃がこの判決は確かに違反であると認めているわけです。国際法違反であるということを認めて、そして次にこういう判決文があるわけです。個人の戦勝国側に対する請求権が平和条約によって放棄されたことを一般的に認めたが、原爆攻撃をこうむった原告たちは戦勝国側に請求する法的手段を持っていない。したがって、条約による条約の対象となることもなく、政府に賠償または補償責任は生じないとして原告の訴訟を退けているわけですね。ただ問題なのは、判決文の末文にこういう一節があるわけです。きわめて大事な文句がある。国民を保護することは国家の責任であることを主張しておるわけです。この最後の末文で、このことはまた後ほどお伺いするとして、ここであえてお伺いしたいのは、この東京地裁でこの原爆投下の行為は国際法違反の行為である、こういうふうに言っておるわけですけれども、外務省としては非常に回りくどい見解であって、はなはだ遺憾のこととは思うけれども、国際法違反であるとはっきり断を下してしまうまでには至っていない、そういう意味でしょう。ずいぶん回りくどいわけですが、これは結論としてはどういうことなんです。ずいぶんくねりくねっておるのですが、もう少し率直に簡明に言えないわけですか。一体これは国際法違反であるのか、ないのか、ぼんやり聞いているとわからない。地裁は、はっきり国際法違反の行為であると断定しておるわけです。
  41. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま条約局長が申し上げました趣旨は、実定国際条約で原爆の使用投下ということを規制する実定国際条約というものはないということでございますから、だから、明らかに国際条約、国際法違反であるという論断はできない。これは第二次世界大戦後そういうことが多いのでございます。たとえば今度の部分核停条約にいたしましても、地下爆発は今度合法化されるんじゃないかという議論がありまして、いやそうじゃない、いままで核兵器の製造使用というようなことを禁止した条約がございませんから、そう論断できないのと同じように、実定国際条約上はそれがないのでございますから、それに違反したと論断できない、条約上の見地からそう言っておるわけでございまして、政治論として、また条理として許しがたいことだという感じはわかりますけれども条約違反かと、こう言われたら、いやそればそう論断できませんと答えるよりほかに道がないと思います。
  42. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 大体日本の司法機関がこの行為は、国際法違反である、こう言っておるわけです。今度は日本の行政機関が同じ日本の司法機関の決定に対して、判決に対してこれを尊重しないというわけにはいかないと思います。これは行政機関が司法機関の決定を尊重しないということはあり得ないというので、当然に尊重すると思う。尊重するという立場であるならば、同じようにすっきりした見解が述べられてしかるべきだと思いますが、それとも行政機関としては、司法機関の決定、判決に対して尊重する義務はないとか、尊重するのは事柄によるのだということになると話は別になりますが、まず行政機関としては、司法機関の決定を尊重するのか、しないのか、こういうことから論議が分かれると思います、この点はいかがですか。
  43. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 地裁でそういう判決があったと、その判決の論旨の中にそういうものがあったから、政府条約違反だと言えないという態度は改めなければならないということに対しては、承服できません。政府は実定国際条約がない以上条約違反ということを言えないという立場は捨てられないと思います。これをどうきめるかは最高裁の問題だと思います。
  44. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そこで最後に一点お伺いしますが、先ほどの判決文の末文に、戦争から生じた被害をなるべく少なくし、国民を保護することは国家の責任だと、こういう末文に明らかに出ているように、国家は個人に対して補償の責任はないのだといいながらも、末文に、なおかつ国家としては、やはり国民を保護する責任があるということを明確に打ち出しておるわけですね。そこでお伺いしたいのは、原爆被爆者に対しては一つ法律があるわけです。原子爆弾被害者の医療等に関する法律が現在あるわけですけれども、この程度のものでは、国家はその責任を尽くしたものとは言いがたい、こういうことをも明確にしているわけですね。しかし、どうするかということは裁判所の権限でない。だから、国会及び内閣の責任であるから善処しろ、こういう意味の末文が明らかになっておる。そういうことになると、ここでお伺いしたいのは、外務大臣責任だと私は思いませんけれども、これはまあ厚生大臣とか、社会保障の問題になってくると思う。ただ、外務大臣国務大臣ですから、全然何らかの関係がないということはいえないと思うのですね。そこでここでお伺いしたいのは、外務大臣ではなく、国務大臣の一員としてこの問題に対してどのようにお考えですか、このままでいいのかどうか。
  45. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私はその趣旨に全然同感でございます。現在、なるほど原爆被害者の援護に関する法律はございますけれども、これはそこに規定されてあるもの以外でも、政府の予算措置その他で政府としては十全の措置を講じて差し上げるのが当然の政治的な責任だと存じます。
  46. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 それでは時間もございませんから最後に一点だけ要望ですが、先般当内閣委員会で旧金鵄勲章年金受給者に関する法律の改正案が出されたわけです。その提案趣旨を承ると、日本の経済も高度に進んできたし、こういう老残の身で不遇の人を救済する必要がある、こういう提案の趣旨で金鵄勲章年金法案が提案されたわけです。ただ、そのときも申し上げたのですが、一方にはこういう広島、長崎の被爆者たちはいまだにこういう法律が一本ありますけれども、東京地裁が指摘しているように、そんなものでは何ら救済にはならぬ、国会並びに内閣はよろしくこれを救済する責任がある、国会と内閣を指摘していますから、私どもにもその責任があるわけです。そういう責任感じてあえて最後にお願いするわけですが、そういう立場からもやはり公平な原則に立って、まず原爆被爆者はいま非常な悲惨な生活を送っている、療養も意にまかせない、生活も非常に苦しい、こういう現実はいま現在あるわけですね。こういうことから、ひとつ外務大臣ということでなく、国務大臣としてこういう問題にはさらに熱意を持ってひとつ救済に具体的にお骨折りいただきたいということを強く要望申し上げて、時間の関係で私の質問を終わります。
  47. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 先ほどの関連も含めて二つほどお尋ねしたいと思いますが、最初の問題は、別にきょうは聞こうと思わなかったが、先ほど原子力潜水艦の問題が出まして、外務大臣がいろいろ答弁されたわけですが、昨年の通常国会の予算委員会で、あなたにこの問題をお尋ねしたときに、たまたま問題が出たから思い出してひとつ聞いておきたい。いまの原子力潜水艦寄港の問題に関係する安全性の問題でいろいろお話があったのですが、私が予算委員会でお尋ねしたのは、ちょうど中間報告が出た直後だと思う。そのときに、私はあなたに、中間報告だから十分わからない、今後煮詰めてまた向こうのほうに問い返すのだという御返事でしたが、その後一年もたって、まだそういう点の報告が来ないようでありますが、その点、私は実はあの中間報告されたときの問題点は、アメリカ原子力潜水艦は非常に制御棒が制約されておる。したがって、私はどうしても燃料であるウランがきわめて濃縮なものでないかと、その点、ひとつ聞いておいてください。制御棒はこれは原子炉の生命ですから、これが非常に——これは学者の説を聞いて私は質問したのでありますが、これがはっきりしなければ非常に不安である。それから冷却水の排水、廃棄の問題ですが、ろ過器にあるストロンチウムの放射度合いというものが相当これは問題になるので、向こうのほうでは原子力委員会のほうで基準がだいじょうぶだと言われておるけれども、疑問があるから、これもひとつ向こうのほうにお尋ねされるときにはお願いしたい、こういうことをやったと——私議事録をまだ見ていないのですが、いま話が出たので、幸いひとつこの機会にお聞きしておきたいのですが、そういうことでいろいろ外相が答弁されまして、中間報告だからそこまでわからないのだということで質問を打ち切っておるのでありますが、そんなことで今日いろいろ話を聞きましたが、まだ向こうのほうから最後の報告が来ておらない、そういうことですが、私は非常に善意に解釈しまして、相当東西間の冷戦と申しますか、緊迫感が、だいぶソ連の動向なんかを見ても変わってきたので、アメリカも、もういまさら日本に、問題がある原子力潜水艦寄港もそう積極性はないのじゃないかということで、この問題は、私は一応もうなくなっておるように、いままで考えておったのですが、いま御答弁を聞くと、いやそうじゃないのだ、やはりいろいろと話を進めておるのだ、こういうお話ですが、そうすると、そういう中間報告から今日まで相当日にちがたっておるのだが、はたしてそういう調査はそれほど長くかかるものではないと私は思う。先ほど外相が言いましたように、日本の原子力科学も非常に進んでおるけれどもアメリカはもっと進んでおるのだから、向こうのほうが安全だと言えば安全度を信用せざるを得ないという意味答弁がありましたが、そういう報告である以上、そういう最後的な調査というものがそこまでおくれるというはずはないと思うのですが、この点の経緯はどうなっておるか、ちょっと聞かしてもらいたい。
  48. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) あなたの御指摘の制御棒の問題、それから冷却水の問題、これは仰せのように、その後詰めておるわけでございます。それで、これはまあ最終的なところまでまだいっておりませんけれども、時間がかかっておりますのは、向こうも関係機関が多うございまするし、こちらも外務省だけでやるわけじゃございません。先ほど申しましたように、科学技術庁その他の御意見も十分聞きながら、いろいろやりとりをやっておるわけでございます。非常に慎重にやっておりますので、微細な点も疑問があれば続けてやらしておるわけでございます。それで国際緊張が緩和したからだらだらしているわけでは決してございませんで、従来と私ども少しも態度を変えていないつもりでございます。ただ、そういった点の詰めが終わりますれば、私どもといたしましては、国会国民に明らかにいたしまして、こういう手順をとるということはこの前にもあなたにもお約束したとおりでございます。こそこそやるつもりはちっともありません。そういった問題点を明らかにしてやりたいと思っております。
  49. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 まあこれはその当時のことを思い出して言っているのですが、全然あの当時は、もうアメリカ政府もこんなことに疑問を持つというようなことはないというような意味中間報告が、——いま持っておりませんが、私家にありますが、といったような報告であったのです、科学的に見ても。ところがそれが、中間報告でいろいろ国会で問題になり煮詰めてくると、そういういろいろ問題があって、解明をしてもらいたいということで言ったのですが、制御棒の問題にいたしましても、冷却水の廃棄物の問題にいたしましても、そんなにこの検討を向こうが一年もかかってとやかく言うほどのものであれば、逆に私いま疑いを持ったのですが、やはり危険性があるのじゃないか。アメリカのような原子力科学の発達しておるところでも、一年もかかってまだそういう最後的な報告がこないということは、やはり向こうでも問題があるのじゃないかといういまちょっと気がしたから、きょうはこれは尋ねる意図はなかったのですが、どうもいまの外相の答弁を聞いて疑問を持ちましたので聞いたのですが、この点ひとつ外務省もだいぶもう一年以上たっていますから、私も忘れたころで、これは済んだことだ、いまはこんなものはいよいよあきらめたと思ったのですが、何かこうまだ続けてくるとかいう話ですが、この点はぜひ——これは静観でもいい。来なければそれでもいいのですから、静観でもいいですから、その点何かあと味が悪いようでなくて、ひとついいぐあいにこの点は国民安全性については確信を持つまで、政府も十分考えてもらいたい、こう思うのですが、どうですか。
  50. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおり心得ております。まあ基準の問題なんというのは、向こうも自信を持っておりますし、こっちも自信を持っているのですから、それですから突き合わしてどうというように簡単にいかない。科学者というのはなかなかそこは慎重でございますので、私どもが思うように、そうスピーディーにいかないということは御了承願いたいと思います。
  51. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 この点また話をすると時間もずいぶんたちますから、いずれまたこの問題はそのときにまた十分お聞きするとして、これはこの前の衆議院ですか、参議院の外務委員会で、外務大臣答弁された新聞紙を見たのですが、アメリカの問題の大陸だなの法律の問題ですね。バートレット法という法律案ですが、これは日本の遠洋漁業に相当問題があるということで、新聞にも出たようですが、総理は非常にこの問題については楽観的であり、法律が通っても、向こうの条約承認されても、これは日本の特殊事情を認めてくれるのだ、こういうような意味のことが新聞に載っておったのですが、そう信じてよろしいのでありますか、ちょっと聞いておきたい。
  52. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これは去年の八月でございましたか、バートレット氏外十名の上院に対する提案から始まった問題でございまして、そのときにも、日本政府立場は口上書の形でアメリカ政府に伝えておいたわけでございます。十月一日に上院を通過いたしまして下院に回りまして、下院では修正がございまして、大陸だな資源というものは、何かそれは内務長官と国務、長官が協議してきめるとかいうような規定が入りまして、五月六日に下院を通過したわけでございます。通過いたしまして、それから大統領が署名——事実五月二十日に著名いたしましたが、この間に私どもといたしましては、従来の主張どおり、日本はその沿岸国の大陸だな資源に対する管轄権を認めぬという立場を終始主張しておることと、それから一九三〇年以来ずっとカニの漁業をやっておりますので、これはいうところの大陸だな資源というものじゃないんだというようなことについては十分注意を喚起し、十分厳重に執拗に抗議を続けてまいりましたのでございます。で、アメリカ政府も、よくそこは承知いたしておりまして、この下院の審議の途中でも、日本立場についての政府の証言は、ずいぶん理解を示しております。で、きょう大陸だな法が大統領の署名が終わりましたので、蔵後ジョンソン大統領がステートメントを出しております。申し上げますと、「私は、本日米国領海内で外国船が漁業を行なうことを禁止する米国法S一九八八に著名した。」いわゆるバートレット法と申します。「近年米国沿岸に出現する外国船の数が増加しており、これら外国船が米国領海内で漁業を行なうことを禁止する法律の制定が長い間必要とされていたが、本法律はこの必要を満たすものである。」この前段は日本関係がございません。で、その次に、「この新法律は、大陸だなに対する新たな権利を設定するものではなく、現存する権利及び将来生ずるかもしれない権利の施行を可能にするものである。大陸だな上の水域は公海であるので、同水域で本法施行手続に関して、諸外国と事前の協議を行なう予定である。」ここには日本は含まれるわけでございます。「この点に関し米国は、日本とこの協議を行なうに際し、長い期間にわたって確立された日本のタラバガニ漁業に対し、十分な考慮を払うことを日本に保障した。」というのがきょうのステートメントでございまして、私どもは一九三〇年以来の長い日本の漁業権益というものに対して、侵害にならないと期待いたしております。
  53. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 きょうそういう署名をされて、外務省にそういうものが入ったということを聞いて、それは長い間の日本の漁業権ですから、この法律が通ったからといって、直ちにそういう措置をとらないというのですが、しかし、いまの外交状態を見ますると、まあアメリカは絶対信頼していいという基本的ないまの内閣の方針ですが、この貿易面でも問題がたびたび出てまいりますから、これはもう日本の漁業の死活の問題だということを聞いておりますので、もうそれで日本の漁業権益が、それで大陸だなに関してはいいんだということを、外務大臣国民にはっきりここで言っていいかどうか。また、われわれがそう信じていっていいかどうか、この点はどうですか。いま読まれた、米大統領の署名されたこれによって、われわれはそれでいいんだ、こう考えていいですか。
  54. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 大陸だなの条約は、御承知のように、六月十日発効するわけでございまして、日本は参加いたしておりませんが、そういう客観的な事態は進んでおるわけでございまして、私どもは、これ、まあこのタラバガニの漁業に対しまして、あるいは保障が与えられたことは、これ自体はけっこうだと思いますけれども、今後大陸だな問題というのは、ここでピリオドが打たれたとは思いませんが、また、将来どういう問題が起こってくるかもしれません。十分の警戒と用意をもってかからなければならぬと思います。
  55. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 日本はどこまでも公海自由ということで、領海三海里ということでいままでずっときておるのですが、今日国際海洋会議の状態を見ても、いわゆる十二海里が大体専管水域として妥当であるということで、条約上署名されておるところも相当出てきているように聞いているのですが、日本は全くフリーな立場で、今日まで公海自由という原則を守ってこられておるのですが、私は日本政府の態度を支持するのです。今日日韓問題でも専管水域で問題になっておりますが、公海自由ということは、これはわれわれは主張するんだが、しかし、世界の情勢は必ずしもそう向いておらないのです。アメリカでもそういう、今度のこういうバートレットの法律ができるということですから、一九五八年ジュネーブで、国際海洋会議で、すでにこれが調印されておる、こういう事実に立って、将来日本政府としては、領海についての考え方というものを、依然としてやはり公海自由の基本方針で三海里ということを守っていくんだということですか、この点どうですか。
  56. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 領海につきまして三海里を変えていくつもりは毛頭ありません。日韓交渉等でやっておりますのは、領海の問題と別に、漁業の操業にあたっての取りきめでございまして、私たち領海と別な観念でやっているわけでございます。
  57. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ところが、それは考え方、言うことだけであって、実際専管水域としてあれが条約上やられると、いろいろ漁業面でも制約を受けるでしょう。公海の自由ということになれば、結局三海里まではどういう作業をしようと、航行しようと、これは自由だということですね、しかし、専管水域で十二海里というものが出てくると、いろいろあなたのほうがそういうことを変えぬといっても、事実上そういうことになっておるから、そういうものに対する態度、日本政府考え方はどうかと、はっきりと、それでいけるならけっこうですよ、いけなくなってきているでしょう、実際問題。こういう点が、日本政府がどこまでやはりそれでいくんだ、向こうが聞こうが聞くまいがかまわない、こうやるんだ、しかし、向こうのほうがそういう法律をつくってしまったらこっちは入れない、その場合は抗議する、いろいろ文句を言うだけであるか、この点をちょっと聞いておきたい。
  58. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 漁業協定は、双方その資源の関係もございまして、むやみやたらにとってもいいという性質のものではないと思います。長い間にわたって持続的に収益を保証して差し上げるような仕組みでなければならぬと思うので、十二海里の専管水域を設けることは、日本が非常にこれは譲歩である、そういう観念ではないのでございまして、むしろそのような規制を加えて、双方に規制して、協定をして、安定した操業を長期にわたって確保するほうが得だ、世界の水産資源というものは限りがあるわけでございますから、日本の漁業のためにどういう仕組みが有効かという観点からやらなければいかぬと思います。それはただ、領海の問題はまた話は別でございまして、これは裁判の管轄権、その他の問題もございまして、領海としては、私どもはいまの立場を変えるつもりはないのでございます。ただ、漁業協定はそういう立場から考えておるわけでございまして、先ほど申しましたように、観念が全然別な観念に立脚してやっていくということでございます。
  59. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これは、そういう考え方でいっていることは、政府の方針はたびたび聞いておるのだが、その領海以外のところは公海自由の方針からいくと、かりにそこで魚をとろうと、現にいままでは何も制約を受けることがなかったのです、従来は。最近専管水域とかいろいろ領海の問題がやかましくなっておりますが、いま言っておる魚族の保護ということであれば、公海自由であれば、それの間の公海についてはこれは共通のものですね、領土ではないのですから。そこを一国が規定してここは専管水域だから入ったらいかぬということは法律上きめられないわけですね、公海の自由からいくと、われわれの常識から考えて。もし魚族の保護であれば、それをとっておった関係国がいろいろ話をして、魚族があまりとると減るのだ、これはこれくらいにしようじゃないかということは対等の立場で私はきめるべきだと思う。今日こういう形になっておらぬじゃないかということですね。そういう点が問題になっていて、いまいう大陸だなの問題もそういうことから起因しておるのじゃないか。魚族保護という立場から考えておるというならこれは了解できます。私はそれだけではないという考え方でおるのですが、その点の日本政府の態度というものが私ははっきりしておらぬじゃないかと思う。
  60. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) わかりました。時代が進むに従って、まあ漁業なら漁業でも漁労技術が非常に発達してくる。速度も能率もあがってくるという段階でありまして、昔の三海里説というようなものが実態に合うか合わぬかというそういう問題は別にあると思うのでございます。日本立場としては、山本さんがおっしゃるように、できるだけ領海の線、それから公海において資源の保護を持続的に魚労を確保するという意味でこれは公平にやらなければいかぬ。が、ただ十二海里なんていうものが出てくるなんていうことが世界大勢になってきたということはよほど警戒を要するのじゃないかというお気持ちであるようでございまして、私もそれはよくわかります。わかりますが、公海自由の原則と資源保護と安全操業というようないろいろなかね合いでどのように協定を結ばれるのが一番漁業者にとって持続的な収益を保証する道であるかという観点で漁業協定の場合は考えていくべきじゃないかということでございまして、根本的に領海三海里がいまの時世に対して適当かどうかということはこれは非常に大きな問題でございまして、それに対して日本政府は、十分、私自身はまだ十分検対したことはございませんけれども、領海十二海里説というようなものに対しては、それは仰せのように、日本政府の姿勢としては慎重な検討が必要だと思います。ただ漁業協定についてはそういう観点から専管水域も共同規制水域も含めて、ひっくるめてマキシマムな利益を長期にわたって確保できる方便としてどういう仕組みがいいかという観点でございます。ということでございまするし、領海の問題はそういうことと離れて、いまの時代の趨勢から申しまして三海里がいいか十二海里がいいかということは、これはまた別な大きな問題として、漁業の観点からばかりでなく、全体的な観点から十分検討に値する問題であろうと思います。現在のところ、日本は領海を変えるというようなことは考えていないということであります。
  61. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それがいつも問題になっておるのですね。日本政府考え方は私は間違っておるとは思わないのですが、だんだん時代が進むに従って領海も十二海里、いま言われた魚労関係だけを考えて専管水域と、そういうものはこれはある程度やむを得ないのだと言われるのだけれども、それもまだ日本のいわゆる魚労にとっては相当重要な問題だと私は思うておるのです。したがって、いま外務大臣はなかなかとぼけるというてはおかしいのですけれども、わかっていてもなかなかうまくわからぬように答弁されるように思うのですが、これは漁業界ではいろいろこの問題で心配しておる向きが相当あるのです。高碕さんはなくなりましたけれども日ソ漁業の問題でも、あれは大阪の人ですが、たまに会うのですが、相当この問題で苦しんでおる。まあ日ソ関係は一応別途として、今度いよいよ日米関係の問題がここで大陸だなを中心に出てきておるのですが、私はいまのような外務大臣答弁内閣委員会だから、専門でないからその程度でいいと言うかもしれませんが、それだけではちょっと国民も納得しないと思うのです。日本政府はいま三海里の領海というものはこれは堅持せねばならぬ、それはけっこうだと思います。しかし、時代が変わって十二海里説が出ているので、これはまあ漁業協定とは別の問題としてこれは考えるものだ、これは慎重に検討すべきだ、こういうことですが、諸外国ではこれは早くに検討済みですよ、こういう点はひとつ政府もはっきりした態度で日本の漁業あるいはその他の実情、世界の情勢を考えてこの点のこれは一つの方針を出すべきだと思います。それば領海三海里という点についてもどの国もほとんどそれはだめだという考え方が多いと思います。そういう点から見て、日本はいままでのオーソドックスな考え方で領海三海里だ、これは当然そうすべきだというような昔からの考え方でいって、それで私はずっと通っていくのかどうかということを心配して質問したのですが、この情勢について各国の状態、考え方はどうなっておりますか、それだけひとり………。
  62. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 領海の問題につきましても三海里説でなくて、六海里にすべきであるとか、十二海里にすべきであるとかいう御意見がだいぶ強く出てまいっております。特に新興国の間にそういう意見が多いということは御指摘のとおりでございます。  それから領海とは別に、漁業専管水域というものを設けて沿岸漁民の保護をそれぞれの国がはかりたいということで、そういうものがだんだんヨーロッパ諸国の間に最近四つ五つ協定ができているのです。しかし、漁業専管水域というものは国際法上そういう権利がすでに沿岸国に認められておるというのでなく、そういう協定によって沿岸国にそういう漁業専管水域を認めることを設定することを締約国が認め合うわけでございます。当事国間の合意によって設置されるわけでございますから、国際法に基づく領海の制度とは性質を異にするわけでございます。しかし、御指摘のように、そういうものが最近二国間あるいは数ヵ国間でヨーロッパ方面で続々とあらわれてきておるということは御指摘のとおりでございます。
  63. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 大体わかったようなわからぬようなことですが、そういう実情は条約局長が言われましたが、単にヨーロッパだけでなくて、ラテンアメリカ方面でもそういう問題がいろいろあなたのほうの資料を見ましても問題になっていることは御承知のとおりです。したがって、私は日本政府はいわゆる旧来というと悪いのですが、公海の自由ということの原則を守っていくという態度はそうあるべきだと思うのです。しかし、世界の情勢はこうなってきておらないのです。こういうことでいろいろ問題を起こしておるのですから、条約局長はヨーロッパでは数ヵ国そういう状態になってきておると言いますが、私はこれは将来国際政治という場所において大きく問題が出てくると思うのです。したがって、この点、いまはしつこくは申しませんが、政府がき然とした態度で領海三海里を守る、これはいいのですが、それがそういうことを言っている間に徐々に狭められてきて、それは二国間協定でも数ヵ国間の協定でもいいのだが、いつでも協定々々で日本が締め出されることがないように考えてもらいたいと思うのです。そうでなければ私は安心していられる、あなたの言うとおりでもう安心していられるのだが、二国間が協定で公海の自由というものは三海里まで自由に行けるのだということを安心して言えるのですが、どうも私、こういう気持ちで質問したのですが、もう三海里で心配することはないのだ、こういうふうに思っていいですか。
  64. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 南米のほうに、一方的に何百海里というものが自分の海だという宣言をする例があることは私も承知しておりますが、それと関係国の合意によって漁業専管水域を設定をするということは別でございまして、私どもといたしましては、そういう合意によってやる分にはこれは差しつかえない。南米のある国々がやっているようなことを、これはしかたがないと言いまして認めるような態度は、私どもとしては絶対にとってはいけないものと考えております。
  65. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ぼくは納得すればすぐやめるのですが、日本政府の態度はわかっている。認めないということはもうわかっているのだが、それで認めないけれども、将来結局漁労ができなくなるのだと、日本の漁業はそこで禁止されてしまうのだというときに、日本はいまの世界情勢上どうなるのか、それは心配はありませんかということを、これを聞いているのです。
  66. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 漁業専管水域というものは、だんだんそういうものが出てきておりまして、私どもとしましても認めざるを得ないような立場にだんだん置かれるようになるのではないか、これは認めるわけでございます。ただ、それは最初に申し上げましたように、領海を拡張するという問題とも違いますし、一方的に公海に大きな海域を自分の海だと宣言することとも違うのだということを申し上げているわけでございます。
  67. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 その場合は。
  68. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 領海というものを一方的に広げたりすることは認められませんし、一方的な宣言で漁業水域を設定するということも認めるわけには参りません。漁業専管水域というものをリーズナブルの範囲で、関係国の合意で認めていくということは、これは自然の趨勢としてあらわれてきているというわけでございます。これは日本としてもだんだん認めていかなければならないかと思われる、こういうことでございます。
  69. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ちょっと外務大臣、ぼくが尋ねておるのは、一方的にそういう宣言をする国が出てきますね。その場合に、日本の場合は被害をこうむらないか、それだけを聞いているのですがやはりくどく聞いているのかわかりませんが、そういう場合は日本の漁業に影響しないのか、ないと言われれば新聞でどう言われようとも、これは日本政府信頼をしておればいいと言うのだが、これが影響すればあなたが言うように、いけないと言っても影響すれば、その影響を具体的にどう除外するかという点、その点だけです。
  70. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおり、日本の周辺にはよその国の漁労はないのです。つまり日本がどこまで攻めるかという問題です。世界の各国は、日本の漁業の攻勢からどのように防衛するかということが問題なんでございますから、仰せのように、いろいろな漁業協定を結ぶ場合に、日本が被害を受けないということは、私はないと思うんです。日本は自由であってほしいんです。七つの海で日本ほど活発にやって、のしている国はないわけでございますから、世界各国が漁業協定をやろうという場合に、その日本のすぐれた漁業の進出をどの辺でがまんしてもらうかということになると思うんです。したがって、あなたがおっしゃるように、全然日本の被害がないことを保証できるかというと、私はそんな自信がないんです。何となれば日本の漁業者はとてつもなく強いのでございます。でございますから、私は、いま置かれた客観的な状態において、マキシマムな日本の利益をどうして保護するかということでございまして、日本がかすりきずも受けないようなことは、各国はそんなに寛容なわけではないのでございますから、したがいまして、いま日本が当面する外交の中の一つの問題はそこに問題があるわけだと思うのでございまして、非常にしんぼう強く、腰強く日本の漁業者の活動できる安定した漁場を確保してあげなくてはならぬという法意を終始持っていかなければならぬと思います。
  71. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 条約局長に聞きますが、これは条約上の問題ですがね。そういう一方的にかりに公海と称するところを規制しちゃって、漁業ができないという宣言をかりにしたとしまして、それを犯しても条約上は違反ではないわけですか、向こうもそれに対して何ら手をつけることはない、こういうことですか。
  72. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) そのとおりでございます。
  73. 向井長年

    ○向井長年君 三点ほどお聞きしたいんですが、時間もございませんから、一点だけ外務大臣にお聞きしたいわけです。それは何かというと、むしろ防衛庁が中心になる問題かもわかりませんけれども、外務省にも大きな影響を持っているわけです。水戸の射爆場の問題ですが、この問題につきましては、相当長い間返還なりあるいは移転問題が強く地元から要望されております。これは日米合同委員会でも問題になっているようですが、特に東海村等の日本の科学の粋をいく原子力センターがあるわけですね。その地続きになっているのが水戸の射爆場ですが、これについて地元におきましては、一日も早く返還あるいは移転をしてもらいたい、こういうことで強い要望を持っておりますし、たびたびの政府に対する陳情もあると思いますが、その後この問題については、移転の方向はきまったようですが、御蔵島等が一応指定されて、いろいろと折衝を続けてきたようですが、これも無理である、こういう観点から、この問題については警戒しているような気がするわけなんです。この点ひとつ日米合同委員会あるいは政府の方針ですね。現状はどうなっているか、まずお聞きしたい。
  74. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 御指摘のように、水戸の射爆場移転の問題は、私ども賛成でございまして、日本の米軍に提供した施設、区域というものは御承知のように、もうだんだんと減ってまいりまして、もう四分の一、五分の一程度に減ってきていると思うのでございまして、漸減の方向にあることは御承知のとおりでございますし、あのときどき演習に使う場合に、あの地域にあれだけの広大な地域が必要であるかということを経済的に考えてみましても、これはあすこでないほうが私はいいと思うんです。原子力センターの問題でございますが、これは原子力センターのほうがあとから入ってきたわけでございまして、あの射爆場がたいへん目ざわりになっているようでございますけれども、あれは兄貴分は射爆場のほうが先でございまして、原子力センターができたから出ていけというのは、少し射爆場に対して非礼だと思いますけれども、しかし、全体の土地の効率を考え、経済的な見地から考え、地元の要望から考えましても、あれはどうもあそこでないほうがいいのじゃないかという考え方には私も賛成でございます。したがって、そのように先方にも伝えてありまして、先方も賛成なんで、どこか演習の代替地をさがしてくれ、代替地があったらけっこうだということでございます。ところが、非常に問題なのは、その代替地候補のところでそういう協力していただけると問題が解決するのでございますけれども、代替地を持っていくとみなそこで反対が起こってくるわけでございますから、そこはうまく話がつかぬものかというのが苦心のあるところでございます。原則として賛成でございますが、代替地について何か協力が得られないかというのが苦心のあるところでございます。具体的な折衝の経過、その代替地の状況等につきましては事務当局のほうから御説明させます。
  75. 竹内春海

    政府委員竹内春海君) 日米合同委員会におきましては、アメリカ側としては、水戸の射爆場返還には異議がない、ただし、米軍の演習は一日もゆるがせにできないのでぜひとも代替地をほしい、こういうことになっております。現在アメリカが言っております代替地に関する条件と申しますものは、横田基地より比較的近距離にある、陸上及び海岸双方が利用できる、人口稠密地帯から適当に離れていること、管制空域——これは空の地域でありますが、管制空域の圏外にあること、平坦地で岩石が少ないこと、あるいは電力、飲料水、有線通信施設がある、近辺の天候がよいこと、こういうような条件を申しております。
  76. 向井長年

    ○向井長年君 いま外務大臣からの答弁では、ああいうところにないほうがいい、したがって、どこかへ移転したほうがいいのじゃないか、しかし、原力原センター、これはあとから入ったのだからそれは理屈が立たぬ、こういう話ですが、一方政府として——過去あそこで百数十回事故を起こしておるのですね。しかも誤投下によって人が二十何名死んでおる、そういう問題を起こしておるわけなんです。そこで、あとからできても原子力センター、特に研究所、原子力発電所あるいは燃料公社、こういうようなものが密集して地続きにあるわけです。こういうところに先ほど言ったようなこういう誤投下等いろいろな事故が今後ないということはだれも保証できないと思う。そういう見地からやはり移転あるいは撤退、こういう問題を取り上げなければ、ただ単にどこかに、ああいうところはあとから入ったのだが、何とかよそへ行ったほうがいいのだろうというような軽い気持ちでは私はあの問題はおさまらぬと思う。現地ではただ単に基地反対というような問題じゃなくて、そういう立場から自治団体なり市町村あるいは県民、市民があげてこれは一日も早くということで何年来これを要望してきておるのです。その問題でアメリカからのいわゆる日米合同委員会においてのいろいろな要望なり要件がありますけれども、そういう要件を満たすようなところが、しからばこの近くにあるのですか。ないとなればやはりああいう危険な地域にそのまま存置しなければならぬ結果が生まれてくるのじゃないか、この点についてどう考えられますか。
  77. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 代替地候補は防衛施設庁のほうであげまして真剣に検討しておるようでございまして、私はいろいろな角度から考えて向井さんと同じ考え方で、あそこはやっぱり移転したほうがいいと思うのであります。ただお願いは、日本国民その他、日本の施設その他にできるだけレス・八ームな所でないといけない、そういう意味でせっかくそれを政府がさがして協力を求める場合に全部退路を絶たれて、結局どこも代替地がないが、やっぱりのいてくれ、こういうことは私は言えぬと思うのであります。代替地を真剣にさがして差し上げてということでないと、また向こうも引けないのじゃないかと思いますので、防衛施設庁のほうの御努力を支援いたしまして、また、それに御協力願って、早く解決いたしたいと考えております。
  78. 向井長年

    ○向井長年君 確かにむずかしい問題だと思いますが、ところが、あそこはいわゆる演習、これは月のうちわずかしかしないらしいですよ、現地で聞きますと。で、ああいう広大な地域、しかも危険地域というか、原子力センターの中で聞いてみると、一週間なり二週間全然やらないというような場合もある。一ヵ月に何回やるかやらないかわからない、こういうことなんで——非常に過去においては相当の演習をやったようですが、事故が起きた当時は。最近においてはほとんどやらない。しかし、F105ですか、あれが六月から横田基地からここで演習をやるのだと、こういうことがいわれておったのですが、これはアメリカのほうで今後当分の間中止したというのですが、そういうことも現地におきましては非常にこれを神経をとがらしておる、こういう状態であるので、これはひとつ政府のほうでは代替地を見つけるということも重要であるけれども、特にああいう特殊地域であるということを、これはやはりアメリカ側にも認識していただいて、ただあとからおまえ来たんだからそんな理屈は通らんじゃないかということだけでは、日本政府としては済まぬと思うのですよ。私は、先般実は科学技術委員会で調査に参りました。そのときに各地元から要望がありましたが、知事はじめ自治団体あるいは市長その他の諸君が、何とか、これは何年来の要望であるからどうしても聞いてもらわなければ地元の市民なり町民の諸君は射爆場にすわり込んで、もう動かぬ、こういう強い決意をしておるようです。しかしながら、まあ、何とかいま折衝中であるからそう過激なことはやらないでくれということで知事なり市町村長がこれを説得しておる。こういう現状である以上は、ただ単にアメリカさんの条件がこうだから、見つからぬからということで放置することはかえって問題をますます大きくするのじゃないか、こういう考え方もしますので、そこでこれは外務大臣としても、一日も早く撤退なりあるいは移転するような努力を特に要望いたしまして、私の質問は終わりたいと思います。
  79. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 他に御質疑はこざいませんか。——他に御発言がなければ、本案の質疑は終局したものと認め、これより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御発言がなければ、討論は終局したものと認め、これより採決に入ります。  外務省設置法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  80. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 全会一致と認めます。よって本案は、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、先例により委員長に御一任願います。  では午後二時再開することとし、これにて休憩いたします。    午後一時休憩    ————————    午後二時十五分開会
  81. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) これより内閣委員会を再開いたします。  自治省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、前回に引き続き、これより質疑を行ないます。  政府側から、赤澤自治大臣、松島官房長、柴田財政局長が出席いたしております。なお、佐久間行政局長も間もなく出席いたします。  御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  82. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それでは、一昨日に引き続きまして、地方公併企業に関係いたしまして、順次御質問したいと思います。  最初に、忘れない先というとおかしいですが、この一昨日の質問赤澤自治大臣にお尋ねした際に、地方公営企業制度調査会のメンバーの問題について、はしなくも大臣はメンバーについては、これはもちろん自治大臣が委嘱されるからいいんですが、衆議院の委員会におきましては附帯決議なりあるいはいろいろ質問の中で約束をされておるように聞いておる、そういう連絡を受けたんですが、この前の質問答弁では、何らか大蔵省を卒業した人とか、あるいは私鉄の経営者のようなエキスパートとか、そういうこれは一つの何といいますか、こういう専門家という意味で例をあげられたと思うが、しかし、どうも衆議院のほうのお話を聞きますと、きわめて中立的な人を選ぶ、こういう約束というかお話になっているのだが、おとといの答弁は、どうもその点が心配で、一方に偏した人を選ぶのではないかという心配がしたのですが、その点をひとつ……。
  83. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) そういうことはございません。もちろん片寄った構成をするつもりはございません。
  84. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そこで、これは当委員会では調査会、審議会をもう何十という審議をしてきたのですが、その際いろいろ政府は公正な立場委員を選ぶと言われておるのですが、選んでから見ると、われわれとしては問題がある人が選ばれるのですが、今度の場合は、地方公営企業という特殊な問題ですから、そうしろうとはいかぬということはわかります。そうかといって、一方に偏したような人々では、これはもう公平な判断が出ませんので、そういうことをいま言えないかもわかりませんが、大体どういうような関係の方面から選んだらいいか、だれを選ぶというそれは言えないと思うのですが、どういう方面から選ぶか、公平な結論を出すために選ぶというそういう考え方というものくらいは、ひとつこの機会に言ってもらわないと、あぶなくてしようがない。
  85. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) もちろん公営企業自体がこういう赤字を累積しておる実情を何とか縦横に分析して、そうして何らか経営がバランスをとれるような方法を考えませんと、地方団体も困るわけでございます。  そこで、私ども考えるのですが、おそらく御心配は、結局この経営面のベテランを入れて結論を出さした場合には、そのしわ寄せが働いている人にまた来るのではないかという御懸念、これは働く人たちには当然持たれると思うわけなんです。しかし、そういう面につきましては、私たちは不公平な結論が出るような形態はもちろんとりません。ですから、学識経験者なども、労使問題について十分深い学識また経験、経験という点では十分自信は持ちませんけれども、十分そういった面で合理的な意見が出るような仕組みを私は考えておる次第でございます。
  86. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 どうですかね、こういう公式な席上では、なかなかそういうことは答弁しにくいと思うのですが、ある程度われわれ、——われわれというと、どうもおかしいが、社会党の推薦するような方々も考えなければならぬということも考えておられるやに聞いておるのですが、何も相談しなければそれは委嘱できないというのじゃありませんが、やはり事こういうものでありますから、それは非公式でもいいから、いわゆる衆議院等の地方行政部会あるいは内閣部会の方々の意見を聞いてやはり選定するということくらいは、この場合、考えていただきたいと思うのですが、どうでしょうか。
  87. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 個々の委員を委嘱いたします場合に、一々どちらの御了解を得てというわけにはいかないと思います。しかし、先ほど申し上げましたとおり、私たちも片寄った人選はしないつもりでございますので、その点はおまかせをいただきたいと思います。
  88. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 実は臨時行政調査会、俗に七人委員会と言っておりますが、あの場合の行政管理庁長官をしておられたのは、あれはだれでしたか、その場合に、はっきりと、一人はやはり皆さん方の言われる方については考えましょうということで、太田総評議長が入ったのですが、それとこれとはウエートは違うかは知りませんが、これはやはり根本的な都市交通の合理化というか、そういう問題を取り扱うのですから、全般的な問題等は、臨時行政調査会のメンバーとこのメンバーと、ウエートは違うが、その局面においては重要な問題ですから、その点はひとつ御配慮を願いたいと思うのですがね。このメンバーは二十人だと聞くのですが、そういう割合で、公正であるということは、これはもう前提ですが、なおかつそういう考え方を若干でもこの場合聞けぬかということですね。
  89. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 秘密に会合して抜き打ちに何事かきめるということは全然考えておらぬわけでございますが、かといって、近ごろやっております三者構成で結論を出すなどということも、事が事ですから、やはりうまく結論が出ないのじゃないか。やはり私ども、先ほど申しましたように、労使問題などにつきましても十分学識経験のある人を交えたいと思っております。そのうちの一人として自分たちの推薦する者をというお考えであろうと思うわけでございますが、その点につきましては、またよく検討を加えてみたいと思います。
  90. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ぼくは、赤澤自治大臣ですから、そう疑うというようなことは絶対にしません。しかし、こう言っては言い過ぎか知りませんが、いつ大臣かわるかわかりませんのでね、もう七月も近ずいておりますし、そういう実は心配もあって、こういうことを……、失礼な言い方ですが、過去にそういうことはたくさんあるのですよ、経験上。したがって、そこでこれを議事録にとどめておきたいと思うのは、そういう一つ意味もあるのですが、ここでこれ以上言いません。それを言ったところで法律上、どうということもないのだから、赤澤自治大臣の公正な人選にまかさざるを得ないが、ただ、繰り返し申しますが、選ばれたあとで、どうも偏しておるということになると、出た結論自体がこれは偏見を生みますから、信用できないということになりますので、この点は衆議院でいろいろ附帯決議も出ておりますが、話し合いをされたその線で一応選定していただくということについて、ひとつもう一回聞いておきたい。
  91. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) そういう御懸念がないように必ず善処をいたしたいと思っております。この案も先ほどちょっと感じを承ったわけですけれども、やはりこれは早く上げていただきますと、直後に大体人選も進めますから、そういたしますと、やはり皆さんの御希望もよく承って、あまりまあ無理なことをおっしゃってもどうかと思いますけれども、こういう問題の解決は、それは自民党、社会党の区別があるべきものではないと思います。やはり何らかの形でうまく将来とも地方団体の負担にならないような方向を見つけなければならぬのでございまして、これは自民党がどう、社会党がどうということでなくて、私は共同でこの問題を解決するためにやはり真剣にならなければならないと考える次第でございます。ですから、まあなるべくこれを早く上げていただいて、そうして人選等につきましても御期待に沿うような形になるのが一番望ましいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
  92. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 まあその早く上げる、それはまあ別にして、後段の場合は、それでまた早く上げるかどうかはこれはまあひとつ誠意ある態度によってきまることですから、そこでそれじゃひとつ大臣にそれだけただしておきまして、次に、これは財政局長かまた他の人でもいいのですが、この前は交通全般の運営問題についてやりましたが、いま自治大臣ははしなくも言われましたが、若干労働給与関係についてちょっと聞いておきたいのですが、自治省で調べられていると思いますが、きょうは初めのうちは交通だけでいいと思っているのですが、六都市の交通関係のごく最近の職員給与の割合ですね。公営交通費用の職員費に対する、全般の費用に対する職員給与の割合がどうなっているか。
  93. 柴田護

    政府委員(柴田護君) 人件費の割合につきましては、六大都市のバスで申し上げますならば、大体平約七割五分程度、それから電車について申し上げますと、六大都市で平均いたしまして八割一分、八一%程度に相なっております。
  94. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そうすると、これは何年の調査ですか。
  95. 柴田護

    政府委員(柴田護君) 三十七年度でございます。
  96. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それでは、これはぼくは三十四年の調査では、六都市平均で五七・三%なんですが、東京、横浜等六都市別はどうなんですか。
  97. 柴田護

    政府委員(柴田護君) 六都市別に申しますと、バスの場合は、東京八二・二、横浜七四、名古風六二、京都六五、大阪八一・三、神戸七四・四、路面電車の場合は、東京が六九・九、横浜九五・八、名古屋が八六・八、京都が八三・八、大阪九〇・八、神戸九〇・七でございます。なお、これは総収入に対する費用比率でございます。したがって、これらの自動車なり、電車は、それぞれ赤字でございますので、その点を加味して比率は出す必要があろうかと思います。
  98. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 あとでまたその資料をもらいますが、総収入というのは営業収入に対する比較ですか。
  99. 柴田護

    政府委員(柴田護君) そのとおりでございます。
  100. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そうすると、総費用に対するウエートをいま聞いておるのですがね。
  101. 柴田護

    政府委員(柴田護君) ちょっと私が質問を取り違えておりまして失礼いたしました。総費用を一〇〇としてそれぞれ自動車は一〇〇、路面電車は路面電車で一〇〇ということにいたしますと、いまの比率は自動車の場合は全国平均が総費用中人件費が六七・八、個々の都市ごとに言いますと、東京が六九・三、桃浜六三・七、名古屋が六五・三、京都が六五・三、大阪が七〇、神戸が六六・二でございます。また、路面電車の場合で言いますと、平均は七〇・六でありますが、個々の都市ごとに申し上げますと、東京が六四・六、横浜が七五・八、名古屋が七〇・二、京都が六四・三、大阪が七四・三、神戸が七七・四、かようになっております。
  102. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 六都市はそれでわかるのですが、次に路面はないと思いますが——路面はあるかもわかりません。これは中都市をちょっと見たいと思うのですが、札幌、仙台、呉はどうなっておりますか。
  103. 柴田護

    政府委員(柴田護君) 札幌は自動車が五1・1です。電車が五七・二、仙台は自動車が六〇・九、電車が七一・四、呉は自動車が五五・〇、それから電車が七一・一でございます。
  104. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 特殊なところとして青森、鳴門、岐阜はどうなんですか。
  105. 近藤隆之

    説明員(近藤隆之君) 青森の場合は六〇・七、それから鳴門の場合には四七・三でございます。それから岐阜は五三・九でございます。
  106. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これはバスですね。
  107. 近藤隆之

    説明員(近藤隆之君) バスでございます。
  108. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それでは次に、六都市の給与の平均ベースですね、これはどうなっていますか。まず交通の場合、平均どうなっておりますか。できれば本納と手当と分けてひとつ。
  109. 近藤隆之

    説明員(近藤隆之君) 六都市のこれは三十八年度で申しますと、バスの運転手、事務職員、車掌、全部総括いたしまして、総平均で基本給二万八千六百三十六円、手当二万二千五百六十二円、合計五万一千百九十八円ということになっております。
  110. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃついでですが、水道、下水、電気、ガス、病院という、この順序でどうなっておりますか、六都市の平均。
  111. 近藤隆之

    説明員(近藤隆之君) 各事業につきましては、三十七年度の決算資料しかございませんので、三十七年度で御説明いたしますと、水道につきましては、統計上北九州も入れまして七大都市になっておりますが、平均月収が基本給で三万一千六百十一円、手当で二万五千三百五十九円、平均月収総計で五万六千九百七十円となっております。それから下水道につきましては、これは企業法を適用しておりますのが、東京、名古屋、京都の三市のみでございますが、東京におきましては本俸、基本給二万六千百三十八円、手当二万三千八百九十三円、合計五万三十一円、名古屋市の場合が平均月収二万八千百二十二円、手当二万七百三円、合計四万八千八百二十五円、京都の場合が基本給二万九千三百二十一円、手当一万五千八百八十一円、合計四万五千二百二円となっております。
  112. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 電気、ガスはどうなっていますか。
  113. 近藤隆之

    説明員(近藤隆之君) ガスは六大都市はございません。それから電気……。
  114. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 電気は六都市はあるのですか。
  115. 近藤隆之

    説明員(近藤隆之君) 東京都が御承知の小河内ダムのところに非常に小さいのをつくっておりますが、その分だけでございますけれども、基本給が三万三千五百八十二円、手当が二万三千九円、合計五万六千五百九十一円となっております。
  116. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 あとでまた、水道、病院について聞きますが、いまは交通の問題だけ取り上げますが、大体この各交通、水道、下水、電気——ガスは六都市ありませんか、それらを見ても、交通は全部の地方公営企業の平均から見ても別に高いというわけでなしに、大体地方公営企業としては一体にバランスのとれた給与になっておると思うのですが、これに対する自治省の見方はどういう見方をしておりますか。
  117. 近藤隆之

    説明員(近藤隆之君) 説明不十分で申しわけございませんですが、交通の場合には、全部合わせておりますので、車掌というような勤務年数が短くて比較的給与の低い職員も合わせて計算しておるので、そういう形になっておるのだと思います。したがいまして、六都市につきましてはそれぞれ見てみますと、バス事業の事務職員だけで見ますと、平均給与七万二千四百七十六円、それからバスの運転手さんは五万四千四百六十八円、それからバスの車掌さんは三万二千三百十九円、それから電車の場合になりますと、全体では六万八千三百二十四円でございますが、運転手は七万一千九百三十六円、電車の車掌は五万八千五百四十六円、そういうような結果になっております。
  118. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そこで六都市の地方公営企業を除いたベースはどういうようになっていますか。比較の上で。
  119. 近藤隆之

    説明員(近藤隆之君) 現在、他の部局についての精密な資料を持ち合わせておりませんが、調べましたところ、大体基本給とそれから期末勤勉手当については同じような傾向になっておりまして、ただ特殊勤務手当、それから超過勤務手当において企業の特殊性を反映いたしまして相当一般職員より高いというような傾向になっておると思います。
  120. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ぼくもいろいろ調査をしてみて大体そうだと思うのです。そこでそれは御存じだと思いますが、諸手当というのは、地方公営企業であればこれは普通の民間の企業と同じように、事業の性質上手当もある程度多いということはこれはやむを得ない。というのは長くつとめてそれだけもらう。また、勤務状態で特勤手当を出すのですから。一般職にしてもその職種によっては特殊勤務手当というものはあるのですから。基本給ということになるとあまり差がないということは、言いかえれば六都市以外もこれは大体そうだと思うのですが、平均給与から見て決して高過ぎるのだということは言えないと私は見ておるのですが、この点どうですか。
  121. 近藤隆之

    説明員(近藤隆之君) 一般職員と同じような傾向にあると申しますのは、一般職員の場合にはいわゆる行政事務にタッチしておる職員でございまして、その行政事務とこういった現業関係現実問題として同じような現在給与表を用いておるわけでございますけれども、それが御承知のように、年功に従って一般職員の場合にはだんだん上がっていく、それと同じような給与表をとっておりますので、比較的地方公営企業の場合におきましては、民間と比較しますと非常に額的には高いような形になっておるのだと思います。
  122. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 年功序列ということもそれはありますが、公営企業体には企業体という特殊な事情もあるのは、現在地方公務員という形であの給料を使っておるのですから。しかし、そういう形態はそういうものであっても、平均給与から見るといわゆる変わりはない。生活費という立場から見ると、同じ平均の給与であるということを言えると思うのですが、ぼくはその点を聞いておるのですが、それはどうですか。
  123. 近藤隆之

    説明員(近藤隆之君) 平均給与という場合、基本給では同じような傾向を示しておりますけれども、特勤手当、それから超過勤務手当というものの額が一般の職員に比べては相当上回っておりますので、手取り額ということになれば一般職員に比べて相当高いというふうになっております。
  124. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それはいま言ったように、特勤手当というのは、そういう事業形態であるから出すのであって、いわゆる超勤もせないのだ、労働形態も一般事務職員のような労働形態であれば手当を出さなくても済むような場合もありますね。したがって、私は特勤手当そのものをここで云々と言って、それで総体に給与は高いということも私は言えないと思うのです。特にそういうことが非常に一般都民、市民に刺激を与えておるように思うのですが、その点が自治省自体もそういうものは高く出し過ぎておるのだということには私はならぬという、ぼくの経験から思っておるのですよ。というのは、従来は交通にかわるということについては従業員も好んだような場合がありますが、だんだんともう交通事業というのは、そういうえらいといいますか、危険なものにいって少しくらいよけいにもらうよりも、一般行政事務のほうがいいんだという考え方の人がだんだんふえてきておるんですよ、いま。そういうことから見て、私はいま出された数字全般を見て、一般公務員の比較から見て、若干高いけれども、そういう特勤手当なんかを引いてしまうと、決して私は、高くないという考え方で、ずっといままでおるんですが、この点について、自治省は分析して、この点が必要でない経費が出されておるのだ、こういう特勤手当は必要でないのだというところまで分析して検討されたことがありますか。
  125. 近藤隆之

    説明員(近藤隆之君) 企業の特殊性から申しまして、超過勤務手当、特殊勤務手当がすべて必要がないということはもちろんございませんので、その特殊性に応じて出す場合があり得ると思いますが、ただ現在の特殊勤務手当、各団体で出しておりますものはすべて合理的かということになると、いろいろ問題があるんじゃなかろうか。一口に特殊勤務手当と申しますけれども、多いところは一人事たり一万円くらいにも積み重なって、各種種類合わせましてなっておるわけでございますし、少ないところは千円くらいのところもありますし、いろいろ各手当ごとについてそれがほんとうに国家公務員等の場合に出されております、不快、困難といったような概念に当てはまるものであるかということを再検討する必要があるんじゃないかと思っております。
  126. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それはおのおのの各都市なりそういう地元でそういうことはいろいろお互いに検討しておるんですが、それがぼくは総括的に金額がこうだから高いというのではなく、これはどういう必要性があってやられたか。こういうものをやはり緻密に検討しなければ、働いておる人に対する熱意というものにも影響いたしまするし、これは水道の問題にも触れますが、やはり地方公営企業となると、同じ種類の事務だというけれども、やはりそこに特殊性があるということで、伝統的に給与の体系も違う。したがって、平均すると基本給は大体六都市では一般職よりも低いというのが大体の状態と言われましたけれども、手当が問題でなくて、それがカバーしておるというのがいまの状態なんです。したがって、そういう点も十分検討しなければ、いまその合理化といえばいわゆる管理費用のうちの人件費の部面を合理化しようという考え方が先に出ておる。まあきのうも大臣にお聞きしましたが、各都市の理事者もそういう考え方におるようですが、それは私は間違いだと思っておるんです。したがって、自治省も公営企業課というものができて相当年数もたつのだから、そういう点の検討把握というものはいままでされておるかどうか、この点聞いておきたいと思う。
  127. 近藤隆之

    説明員(近藤隆之君) 現在の交通の財政状況の悪化というものが、ただ単に合理化のみで解決するとはもちろん思っておりませんで、取り巻く企業環境の変化に対応していろいろな施策がなされなければならないということは当然痛感しておるわけでございますけれども、ただ現在こういうように悪化してまいっておる交通事業におきましては、民営というものが一方にございまして、民営と公党というものを対比いたします場合、確かに公営のほうが手当が額的におきまして倍くらいになっておるし、基本給におきましても理論計算いたしましても、やはり二、三割方高という結論が数字的に出ております。もちろん地方公務員であるという特殊性、事業の公共性という特殊性あることも十分存じておりますけれども、人件費そのものについて合理化の余地がないと言い切るわけにはいかないだろうと思います。いろいろな部面について今後の検討が必要であろうと思っております。
  128. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それはおのおのの都市の理事者あるいは管理者でもいろいろそういう点を考えておると思うんですが、しかし、現在ここまできて、まあ現状というものを十分認識をした上で考えなければ、ただ民営とずばり比較してこうだというわけにはこれはいかぬと思うんです。民営といえば私鉄ということになりますが、私鉄の労務対策というのは私鉄として特殊なものを持っておると思うんですね。また、地方公営企業の交通としてはまたいろいろの労務対策というものもあってなっておるんですから、一がいに民営がこうだからというわけにはいかない。そういうことになると、一般の会社と一般の行政事務に携わる人をそういう比較で考えると、また別の問題が起きてくる場合もあるんですね。私はそういうことをここで取り上げようというわけじゃないんですが、いま地方で出ておるケースというものは、特に東京あたりの合理化というものは、御存じだと思いますが、人件費に焦点を合わした合理化というものが進められておるんですよ。それが一つ大きい問題になって、四・一七という問題もあの場合起こってきたのですが、こういう考え方は、私は自治省としては考えてもらいたくないと思うんですが、自治省がやはりそういう考え方で指導をしておるやに聞いておるんですが、その点どうですか。
  129. 近藤隆之

    説明員(近藤隆之君) 先ほども申しましたように、現在の交通事業の悪化が直ちに合理化の不徹底と結びついているわけではございませんけれども、その部面もあると。それから現実問題といたしまして、交通事業の場合には、民営と公営と競合して大都市の場合走っておるわけでございます。したがいまして、一つの参考資料として民営の給与というものもする必要があるんじゃなかろうかという意味で申し上げたわけでございまして、民営そのままに押えるべきであるということを申し上げているわけではございませんので、御了解いただきたいと思います。
  130. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そういう意味であればいいんですが、それが比較をするとこれだけ高いんだということをすぐ——あなたは専門家だからそうはとらぬにしても、一般的にはそうとるから問題になってくると思いますので、その点はひとつ注意してもらいたいと思います。  そこで、問題は本論に入りますが、かりに、ここで言われました六都市平均の交通は、五万一千九百八十円、それから水道は、五万六千九百七十万、下水道は五万三十一円ですが、こういう数字が出ておるんですが、勤続年数その他を私の調査した範囲では、今日これだけの生活費の高騰しておる時代においては、もう当然これぐらいのものは出さなければ、いわゆる労働力の確保もできないし、そういう考え方でおるんですが、他の比較で云々でなくて、これだけの給与についてはこれだけ出さなくてもいけるんだという、あなたが経営者の立場に立ってやり得る自信がありますか。
  131. 近藤隆之

    説明員(近藤隆之君) まあ高い低いの議論でございますけれども、一般の行政事務職員に比べれば確かにいろいろな関係はございますが、手取り額は高いということは言えると思います。ただ、比較の問題でございますから、一般の公務員そのものが低過ぎるとか、生計費がそれで立つかどうかという問題になれば別だと思いますけれども、そちらとの比較の限りにおいては手取り額は多いということは言えると思います。
  132. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これは手取りですか。税込みじゃないですか。
  133. 近藤隆之

    説明員(近藤隆之君) 失礼いたしました。税込みでございます。
  134. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これはぼくらも経験ありますが、なるほど五万円台だというと非常に高いような気持ちがしますがね。税金とか、あるいはまた、健康保険とか、共済組合の掛け金とか何か引いちゃうと、実際の給料袋はそんなにふくれていませんよ、実際問題。だから、ぼくはどうも政府のいわれるのは——まあ政府というか、あるいは自治体の管理者のことをいうかはまあ別として、どうも給与が高いじゃないかということが、先ほど昌頭で聞きましたこの財政収入、総費用との割合というものが頭にこびりついておるのじゃないかと思うのです。それは、経営費と人件費の割合から見たら、これは経営比率というものはきわめて高い——高いと申しますか、数字が非常に問題があると思いますね、経営比率からいうと。しかし、その労賃といいますか、賃金自体の分析をすると、私はそうでないと思うのですがね。そういう点の区別をまず私は考えて論議をしていかなくちゃならぬと思うのですよ。この経営比率が非常に低いから、したがって、賃金が高いということと、賃金自体が、その人の生計費その他を考えて、これはまあこれくらい出さなければいまの都市交通の労務はできないのだ、しかし、経営比率が非常に先ほど言われたように多いところでは八割を占めておる。したがって、経営比率は七五ぐらい下がっておるところも私はあるのじゃないかと思うのですが、それとは別にひとつ分離して考えなくちゃ今後の質疑応答が繰り合わないと思うのですが、その点どうですか。
  135. 柴田護

    政府委員(柴田護君) 私どもは、交通事業につきましては、勢いその事業の性質上、人件費が相当なウエートを占める。したがって、やはり経営の合理化というものを考えてまいります場合には、人件費というものをどのように合理化していくかということがやはり一つ焦点になるだろうと思っております。もとより、公営交通事業の経営の苦しさというものが何もそれだけにあるのじゃないのであって、たとえば料金の関係でございますとか、あるいは環境の変化でございますとか、いろいろな原因が複雑にからみ合っておりますことは事実でございますけれども、しかしまた、経営の合理化という形においては、それだけでまた企業は平然としておったらいいというわけではございませんので、これはどこの企業でも同じでございましょうけれども、少なくとも合理化する余地がありますならば合理化していくということは、また住民の負託にもこたえるゆえんだろうと思うのでございます。したがって、そういう意味合いからいろいろ見てまいりますならば、急激にやるかやらぬかという問題はこれはまた別の問題、つまりやり方の問題はいろいろございましょうけれども、しかしながら、そういった企業費というものの、人件費というものの占めるウエートというものをより少なくしていくという努力はあってしかるべきじゃないか、そういう意味合いにおいてこの公営交通というものの費用という中身を見てまいりますならば、特にそれが一般公務員の場合と同じような形において法律で規制されておるということを条件に考えてまいりますならば、お話の点はわかりますけれども、いろいろそこにはそれなりの合理化のする余地はないことはないだろうというように考えておるわけでございます。ただ、この問題の議論をしてまいりまする場合には、公営企業法の今日の立て方自身にもやはり問題があるのじゃないかというように私どもは実は考えるのでありまして、いまのような公営企業法の規定で一体いいのかどうか。もっとはっきり申し上げますならば、一般公務員との均衡というものを考えて、考えていくべきものなのか、あるいはそうでなくて、純粋の企業というような色彩をもっと強く加えていくと、そういう考え方に立って規定していくべきかという問題があるのじゃなかろうか。これは公営企業というものをどう考えるか、独立採算制の問題にもからみ合うわけでございますけれども、そういう問題も実は基本問題としてあるのじゃなかろうかというように考えておるわけでございます。
  136. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ちょっと食い違っておると思うのですが、ぼくの言うのは、先ほどからいろいろ尋ねておるので、混合しておるかわかりませんが、いま焦点を合わしておるのは、いま言われた、平均給与、諸手当も一緒に言われましたが、それらが都市交通という運輸事業に携わる労働者にとって、平均そういうくらいの費用が、私は特に都市交通という特殊な事情からいえば、当然生計費から見てもそれだけは必要である、そういう論点に立っておる。あなたのほうは、それはなるべく合理化して節約できるように考えていかなくちゃならぬということは、一般的な理論としてはわかる。これは企業であればだれしも経営者はそう考えるが、それは一応あとの問題として、いま言われたこの平均給与自体が、六都市という特殊の環境にあり、また六都市以外の都市にしても、交通事業に携わる労働者の賃金としては私は決して高くないのではないか。これだけのものを保証しなければ、あの交通を担当して責任を持ってやるという労働に従事できないということを言っておる。それはあなたのほうはそれは高いのだ、この程度ならいけるのだという自信があってやれるのかどうか、こういう点。……
  137. 柴田護

    政府委員(柴田護君) それは職員の構成、つまり経験年数等の問題もあるだろうと思うのであります。したがって、一がいにそれによってこれが妥当か、いま現在のベースというものが妥当かどうかということをつかまえますればいろいろ議論もあろうかと思うのであります。私どもの申し上げておりますのは、焦点が食い違うとおっしゃいますかもしれませんけれども、一般論として考えてみた場合に、この水準というものは、一般公務員の水準ということからかね合わして考えてみますと、これで妥当な線であるとはいえぬのじゃないか。もしそれが経験年数の非常に高い、年齢構成の高いような職員構成になっておりますれば、それを合理化する方法を考えていかなければなりませんでしょうし、また、何と申しますか、その職員の使い方自身におきましても、たとえば早い話がワンマン・カーというような問題を考えますれば、ワンマン・カーの採用という余地があるにかかわらず、それを採用しないということでありますれば、採用の余地ということについて考えていったらいいじゃないか、全体としての人件費というものをどのような形でもって合理化していくかということを考えていったらいいんじゃないか、また、その必要は今日の六大都市交通において十分あるのじゃないかと、こういうことを申し上げたわけでございます。
  138. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それは幾ら言ったところで、この平均給与が高過ぎる、これはいかぬなどということはおそらく言えないと思うのです。それは実際いまの物価なり生計費から見て、特に交通のあるところは都会が多いのですから、そういうところでこれだけの給与を出すのは高いということは言えないと思う。ただいま財政局長が言われたように、全体の経営から見てウェートが相当強いから何とかこれは考えなくちゃいかぬということは、これはもうあとで私が質問すると言ったのはそこなんです。そこで、あなたのほうが言わなければ言わないでいいんですが、しからば一体、これはもう私もちょっと調べたのですが、これは三十四年の統計ですが、日銀の統計局が出している主要企業営業分析という中に、業、鉄道業、道路運送業、それから製造業、それから電気事業、ガスという、これくらいに分けて、いわゆるこの人件費の割合、先ほど申しました総費用に対する人件費の割合を出しておるのですが、これは三十四年度ですが、それによりますと、全産業ではこの構成比が八・三%、鉄道事業では三五・二%、道路運送業では五〇・二%、製造業では一〇・〇八%、電気事業一四・八七%、ガスでは九・四%という数字を拾ってきたのですが、ごく最近の数字はどういうカーブを描いてきているか、その点ちょっとお聞きしたい。
  139. 柴田護

    政府委員(柴田護君) 昭和三十七年度の下半期の計数を見ますと、これが一番新しいかと実は思うのでございますが、民間企業の総支出中の人件費の割合として、全産業七・九二、製造業一〇・一二、鉄道業が三三・一〇、道路運送業が五〇・五六、電気が一一・四七、ガスが一〇・九〇、このようになっております。
  140. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それからもう一つ、あとで質問する資料で聞いておきますが、今度大蔵省で法人企業統計というものを毎年上期と下期で出しているのですが、それの売り上げ高に対する人件費の割合というのが、これも産業別に見ますと、鉱業、それから石炭産業は別に書いてあります、石炭、それから化学、鉄鋼、電気、ガス、運輸・通信、それから全産業平均と出しておりますが、この数字を見ると、これは三十五年の上期の数字しか私さがせなかったのですが、それによると、鉱業では一八・九%、石炭では三四・九%、化学では一一・九%、鉄鋼では一三・〇%、電気では一五・三%、ガスでは一二・二%、運輸・通信では三五・八%、全産業では九%と、こうなっておりますが、これはいま言われました一番最近の数字は、どうなんですか。
  141. 柴田護

    政府委員(柴田護君) これは三十八年度の四月−六月の抽出のようでございますが、法人企業統計季報というものでございますが、これによりますと、全産業七・一七、それから鉱業が二四・二八、それから化学が一〇・四二、それから運輸・通信が三三・〇七、電気、ガス、水道ひっくるめまして一六というようになっているようでございます。
  142. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 鉄鋼は出ていませんか。
  143. 柴田護

    政府委員(柴田護君) ちょっと手持ちの資料にはございませんので、調べまして御報告いたします。
  144. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 この数字を見ましても、運輸・通信といいますか、いわゆる道路運送、鉄道というのは他の産業から見るとはるかに人件費が高い。これはもう客観的にもいえると思うのです。したがって、経営比率を出す場合でも、こういう点を十分参考にしなければいかないと思うのです。したがって、現在の都市交通の経営比率が、これはあなたのほうの資料によりますと、三十七年度の資料ですが、軌道事業では八七・六、索道事業では一〇八・四、自動車運送では九〇・七、船舶運航では一〇三・五、その他で八一・七、こう出ておりますから、軌道事業、自動車運送は経営比率では成っていかないという数字がここで出ておるのですが、私はこの点と前の賃金の平均賃金のことを尋ねたのですが、この経営比率から見て給与が高いからこういう経営比率が出たという結論を出すことは私は間違いでなかろうかと見ておるのですが、この点どういう見解に立っておられますか。
  145. 柴田護

    政府委員(柴田護君) 御指摘のように、必ずしも給与費だけの問題に関連したわけではございません。やはり料金との関連も十分ある、さように考える次第でございます。
  146. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 いま簡単に答弁されたのですが、私は経営費率が、これはまあ一〇〇以上へ持っていかなければ、それはもう経営できないということは、これで赤字はわかるのですが、それをどうやっていくかということに一昨日から焦点を合わして質問して、きょうはちょっと回り道をして賃金の問題から入りましたが、この点が自治省としては真剣に取り組んでおられるのかどうか。しかし、これはもう地方公共団体のやっている事業だから、自治省はある程度指導といいますか、相談相手にやっているだけだ。これに対しては調査会をつくって今後やっていこうという答弁になるか知りませんが、せっかく自治省にも公営企業課というものがあって、これに本腰を入れて乗り出そうという考えだと聞くのですが、この点についてどう考えておられますか。
  147. 柴田護

    政府委員(柴田護君) いつかこの委員会で私お答えしたような記憶がございますが、確かにいままでの私どものやり方というのは、どちらかというと、やっぱり公営企業の、何と申しますか、拡大と申しますか、公営企業というものの振興といいますか、振興というものを形式的にのせる——振興というものをむしろ中心に考えておったわけであります。しかし、経営面につきまして、何も全然手放しでおるわけではございません。現に交通事業につきましても、運賃問題等につきましては、御承知のとおり、この運賃改訂問題が起こりまして以来、今日まで側面的に努力をしてまいったのであります。ただ、権限を持っていませんので、なかなかその辺の動きがむずかしいと思いますが、しかし、単にそういった運賃だけではございませんで、経費の問題にいたしましても、たとえばこれに経営をいたしてまいります上において、必要な建設経費の地方債の条件でございますとか、あるいは一般会計との振り合いの問題でございますとか、いろいろな問題が出てまいるわけでございます。で、まあ、赤字が出てからそういうことを考えるのはおそいじゃないかというおしかりもあろうかと思いますけれども、しかし、昨日も大臣が申し上げましたように、私どもといたしましては、ともかくいまからでもおそくない、そういった費用なりあるいは収入全般について、もっと積極的に現状を分析するとともに、これをどうしたら合理化していくか、とにかくできるものから努力をしようじゃないか、こういうつもりでやろうとしておるわけでございます。
  148. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 自治省の立場、私は理解できなくはないと思うのです。それはある程度私もわかるのです。いま言われたが、まあ、権限はない。しかし、権限はないけれども、やる方法は自治省は持っておると思うのです。特に起債の問題あたりでも、あの四十八億、あれは別として、一般的な起債の問題にしても、これは自治省が相当積極的にやらなくちゃいかぬ。やってもらっていると思うが、個々に聞くと、理事者のお話では、なかなかそうはいかない。これはたとえば全部の財政投融資の関係もあるから、なかなか自治省だけいかないのはわかりますが、私鉄とかりに競争するとしても、民営と競争するとしても、資金面でまず立ちおくれをしておる、そういうこともあるんです。  それともう一つ、これは地方の理事者、非常に気の毒だけれども、やはりあなたらがそう指摘されているか知りませんが、地方の理事者自体も従来の考え方に眠っておるような場合も私はあると思うのです。で、自治省からけつをたたかれて、あわてて、いや賃金だけ下げたらいけるじゃないかといううろたえ方をして鼻柱をたたかれるという理事者もおるのですね。そんな理事者ばかりだとはいいませんけれども、したがって、その点は自治省もある程度地方の理事者に対してもそういう意味の経営上の指導性というものを私は持つべきでなかろうかと思うのですが、そういうことをやっておりますか。
  149. 柴田護

    政府委員(柴田護君) いままではそれが十分なかったと私は思うのでございます。なかったからこそ、役人商売になってしまって、そういう面の配慮が欠けておった、もっと真剣に企業というものと取り組んで、これをほんとうに自分が事業をやっておるのと同じようなものの考え方で企業というものをやっていく。もちろん公益性の配慮も要るわけでありますが、そういう気持ちが欠けておるのじゃないかという御指摘は私はごもっともだと思います。しかし、それにいたしましても、経営というものをどのようにもっていく、どのように考えていくのだという基本的な問題につきましては、やはり実際問題として、今日こういう状態に公営企業がなってまいっておる際でもございますので、やはりそういった問題についての基本的な方針を立てて示してやる必要があるだろうというように実は考えるのでありまして、また、そういう方針を示しても、それに応じてやっていきますためには、やはり管理者に人を得なければなりませんし、そうしますと、企業体の組織の問題、あるいは議会との関係をどうするかといったようないろいろな組織的な問題も出てまいります。しかし、いずれにいたしましても、そういう問題については、まはりはっきりした目標を立てて、そうして経営者がその気になりやすいように、またその気になれば、その気になったで、しっかりした態度で経営をやっていけるようにいろいろあと押しをしてやらなければいかぬ、私どもの、いままでのやり方が必ずしも十全とは考えておりません。そういう方向で今後努力していきたいと考えておるわけであります。
  150. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 あなたらはそこまで聞いておるか知りませんが、民営の場合は、主管省というのは、大体交通の場合は運輸省一本ですね。大蔵省はいろいろ関係が若干あるかもしれません。ところが、地方公営企業になると、主管省は自治省だと思うのですが、その合議省として、あるいは運輸省あるいは厚生省ということでいろいろ牽制されるのですね。その点、行政組織上の隘路というものをこれは見のがせないと思うのです。今度の問題でも、大臣来られたらまた聞こうと思うのですが、自治省がもう主管省として一つの、きめればきまる問題であれば、私は四十八億の問題もそうむずかしくないと思うのです。運輸省は今度は相当好意的に見たようでありますけれども、こういう点が私はやはり行政組織上の問題として考えなければならぬと思うのですが、自治省と運輸省との間の連絡というものは、そうスムーズにいっておらないと見ておるのですが、この点どうですか。
  151. 柴田護

    政府委員(柴田護君) 私もかわりましてそんなに時間がたちませんので、あまり詳しいことは存じませんけれども、しかし、御指摘のような問題があろうかと思います。私どもからいろいろ接触していって、しりをたたいてやってもらったといったような問題もあるわけであります。むしろやはり経営面の問題になってまいりますれば、私どもの問題に結局なってくるわけでございます。やはり何か事業上のいろいろの問題があれば連絡を緊密にしていただくということが必要であろうと思います。前の都市交通財政問題調査会でありましたか、あの調査会の答申のあとのほうで、もっと各省連絡を密にしろというおしかりを受けたことがありますが、大いに反省しておるところであります。
  152. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これはあなたが反省しただけでは解決しない問題で、政府部内の大きな問題だと思うのです。私さっき地方の理事者に——管理者ですかにはちょっときついことを言いましたが、管理者は管理者の立場でそれで実は悩んでおるのですね。たとえばこれは別な問題かもしれませんが、運賃料金の引き上げの問題でも、まず運輸省それから自治省、経済企画庁、大蔵省、その間にいろいろな審議会があってなかなかむずかしい。私鉄の場合は——私は私鉄を悪く言っておるんじゃないですが、私鉄の場合は、運輸省の役人だけ一つしっかりと抱きかかえておけば案外スムーズにいくという実態なんですね。したがって、今日運賃の問題が非常に手おくれになっていったというのは、私は上げよと言っておるのじゃないのですが、そういう事務的な関係が複雑なために取り残されておるという実情を聞いておるのです。ところが、自治省は公営企業課というものができて、財政局の中にあるのだが、課長もそこにおられますが、どうもその存在が忘れられがちであって、自治省にそんな課があったかなというようなことも言われておるように聞いておるのですが、どうもその存在が薄らいでおるのですが、今度この調査会をつくってどんどんと根本的な改正といいますか、根本的な問題をやろうというときに、自治省はもう少し積極的に出ていくというような態勢があるのですか、これは大臣来てからもう一ぺん聞こうと思います。
  153. 柴田護

    政府委員(柴田護君) おしかり受けて恐縮でございますが、私どものところに公営企業課があり、非常に少数の人員でよくやっておる。しかし、体制は別に機構だけでございません、私どもはやっぱりそこにおる人々の心がまえと素質だと考えます。別に大口をたたくわけでございませんが、私どもとしましては、公営企業課では一騎当千のさむらいをそろえておるつもりでございます。これで十分かといえば、人手はたくさんおるにこしたことはございませんが、しかし、あまり人手ばかり多うございましてもかえって船頭多くして何とやらということになりかねない、まあいままで公営企業課というものがあまり大きく知られなかった原因は、やはり何と申しますか、公営企業の経理指導というものを中心にやって、それも実物を持たずに、どちらかというと技術的な面の指導をやった、それであまり目立たなかったんじゃないかと思います。私ども多少そういう点につきましては、そういうことじゃいかぬだろう、何らかの別の考え方をしなければいかぬだろうというような気持ちを持っておりました。調査会が発足いたします機会に、そういう問題につきましても再検討いたしたいと思っております。
  154. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ぼくは財政局長ばかり責めるという考えは持っていないのですが、これは交通の問題では、運輸大臣なり運輸省の諸君とも会うのですが、水道の問題では厚生省の諸君と会うのですが、あなたの公営企業課ですか、どうも何しているかわからぬような印象を受けるのですね。じゃましているやら助けようとしているやら、ちっともわからぬ、起債の問題でも、地方からあんたのところへ行くらしいのですが、何か押えるような態度であって、味方になるというような態度ではない。これは、うまくいかなければそういう悪口言うのは人間の常ですから、実はそうか知りませんが、運輸省あたりなんかへ行くと、非常に好意を持ってそれは必要だろうと言う、わしのほうには起債の権限がないから自治省だ。自治省へ行くと、必要性があるけれども、それはだめだと、こういうことで、せっかく民間との競合でここに路線を広げようとしても、そういう財源がないために経営が行き詰まっておるということを聞くのですが、これは財政局長、ここでそのとおりですとは言わぬと思うが、そういうことが実際ぼくらでも感じられるのですがね。もう少しどうです、自治省の公営企業課というのを局くらいにして、もっと積極的にやるというような考え方は省議で話出ませんか。
  155. 柴田護

    政府委員(柴田護君) 地方債の問題は実はいままでは地方債課でやっております。それでしたがって、公営企業に関しますものにつきましても地方債課で扱う、まあ私どものところは一応地方債計画という総ワクがあるものですから、総ワクとの関連でそう甘いことばかり言っておれない、人のふんどしで相撲をとっているところは、自分のところに振りかかっていることではございませんので、わりと色よい返事もできるのでございますけれども、実際一つのワクをもって仕事をしていくことになりますと、一がいにそういうわけにもまいらぬと思うのであります。しかし御指摘のように、今日並びに今日以降の公営企業のあり方というものを考えてまいりますれば、私どもとしては、公営企業につきましてもっと責任が持てるような体制を整えなければならぬだろうということは私どもは痛感いたしております。ただ省議でそういう話し合いが出たかということでございますけれども、省議まではまだなっておりません。しかし、おいおいそういう話は部内にはあるということを申し上げておきます。
  156. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それは社会党としても、いたずらに局をふやしてどうこうというのを好んでおるわけではないのですが、課でもいいんですが、どうも行政上からいっても発言力が弱いように思えてしようがない。しかもときあたかも非常に問題が起こったときですから、この際にひとつもう地方公営企業についてはすべておれのほうでやるのだ、多少は合議省があるからそこに相談もするけれども、主導権はもう自治省の公営企業課が、自治省が持っているのだ、こういう体制にしてもらわなければ、この調査会つくってどうこう結論出たからといって、結論出ても、自治省自体の体制がそうだったら、出ただけで、ほかの省へいったら、それはだめでしょうと一蹴されてしまって、その間に問題が消えてしまうという心配もこれはするのです。そういうことないか知りませんが、大臣は非常に意気込んで言われておるが、結局心配は私はそこにあると思う。その点、どうですか。
  157. 柴田護

    政府委員(柴田護君) 先ほど来お答え申し上げておりますように、私どもも十分御指摘の点はわかっておりますので、その方向でいろいろとやってみようと、かように考える次第でございます。
  158. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そこで、そういう抽象的なことではだめですから言いますが、現在六都市に限らず、交通事業全体を見ましても、財源がないためにバスももう時代おくれのバスを通して、もうそれを買いかえるだけの財源力もない。電車にしてもそうだし、また、高速度に転換しようとしても財源の措置でもうきゅうきゅうしておる。したがって、もうすでに三十九年度が始まっておるのですが、来年度、本年度も追加起債ができればけっこうですが、今後そういう資金源というものをどう考えられておるのか。
  159. 柴田護

    政府委員(柴田護君) 資金源につきましては、私ども必要なものにつきましては、たとえばいまのお話にありました地下鉄等、こういったものにつきましては、一応のワクは地方債計画で当初きまっておるわけでございますけれども、しかし、これは多分に弾力的に運用してまいりたい、したがって、必要あるものは早くつくるにこしたことはないのでありますから、むしろ資金をさがすという考え方で事業を進めるようにしていきたい、こういうつもりでおるわけでございます。
  160. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それでは大臣来るまでに水道問題のちょっと聞いておきますが、一昨日からきょうにかけて交通の問題を一応やったのですが、次に水道事業ですが、水道事業の三十七年度のあなたのほうの財政報告を見ますと、交通よりもやや経営比率はいい結果が出ておりますが、それも傾向線がいいのでなくして、ようやく赤字に転落するのを食いとめているという情勢で、私は下降線をたどっていると見ているのです。そういう見方について自治省はどう考えていますか。
  161. 柴田護

    政府委員(柴田護君) おっしゃるとおりだと考えております。
  162. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃ、そうですというのではなくして、それに対して自治省としてはどういう手を打とうとしているのですか。
  163. 柴田護

    政府委員(柴田護君) 私どもは、水道本来の中心はやはり資金問題であると思っております。資金問題、つまり建設資金がいま非常に最近できます水道は、また古いものでも最近つくりかえたり、あるいは拡張したりします分については、非常に建設費が高くなってきておりまして、そのもとは結局資金問題、したがって、経営が非常に悪くなってきていると思っております。そこで問題は、建設資金というものを、一体どうすれば安い資金というものを、しかも長期の資金というものを調達できるかということではないかと思います。もちろん一般問題としての自己資本をどう蓄積するかという問題もございますけれども、それはそれといたしまして、少なくともそういった配慮という問題に水道問題は尽きるのではないか、これは公営企業金融公庫法の御審議を願いましたときにも、衆参両院でもやはりそういう御意見も強うございました。私ども全く同感と思いますが、公営企業金融公庫もつくってできておりますし、これもまた理想から言えばまだ必ずしも十分ではない。したがって、多少在来から比べますと、昨年でございましたか、償還期限を多少延ばしたようなこともございますけれども、まだこれでも十分ではない。もっと水道事業について長期かつ安定した低利の資金というものをどうすれば供給できるかということをもっと本気で考えなければならない。従来からやっておるのでございますけれども、なお日本全体の資金需要といったものもございますし、金利水準といったものもございまして、なかなか思うにまかせません。しかし、いまの現状はいかにもまだまだわれわれの努力の余地があるのではなかろうかと思っておりますし、その方向で努力してまいりたいと考えております。
  164. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 いま言われたそのとおりです。建設費というものはほとんどもう枯渇しておる。それで従来のような水源自体開発ということもこれもひとつ問題になっておる。したがって、水源があってそれに対する配水管とか、そういう問題であれば資金もそう要らないのですが、いま水源開発というものが非常に大きな問題になっている。これは六都市はもちろんだが、東京は特にそれが大きくなっているのですが、言われたことはそれはなるほどですが、一体今後政府は、道路五ヵ年計画では四十七億という膨大な金が一応予算も承認されているのですが、水道についてはこれは地方自治体がやるのだからというので、政府は若干冷淡なのではないか、もっと潤沢な資金というものを政府考えるべきだと思うのです。これは自治省はそうだと思うのですが、大蔵省が問題があるかもしれませんが、政府自体がそういう水道五ヵ年計画が、もう立てられておるように聞いておるのですが、それが資金の獲得ということについては、道路の場合は非常に積極的に資金が出されております。これは予算委員会でも相当いろいろ問題にしましたけれども、水道については、非常に政府はその点が冷淡なように私は見ているのです。そうであるかどうか、ひとつ具体的に計画はこうであるのだ、資金の調達はこうするのだというようなものがありますか。
  165. 柴田護

    政府委員(柴田護君) おっしゃるような見方もあるいはできるかもしれません。しかし、厚生省ではやはり水道につきましても長期計画を持っておりまして、そしてこれの推進に当たっておりますけれども、あるいはおしかりを受けるように多少弱いというところがあるかもしれません。三十九年度の地方財政計画を立てます際、また、予算審議の際におきましても、私どものほうからもその辺のところを厚生省にも話をし、厚生省も応援をしてくれたわけです。地方財政計画の上では昨年に比べまして相当大きく伸ばしておりますけれども、しかしまあこれでも足りないということは言えるのでありまして、これもやはり地下鉄と同じように、在来から地方債の弾力的な運用をはかっているわけでございます。今年も同じようなつもりでおりますけれども、しかし、それにいたしましても資金問題、資金の性質の問題、安い長期の資金という問題はやはり大いにこっちのほうに、資金総量の問題もさることながら、その方向に今後もっと努力していかなければならないという考えでいるわけでございます。
  166. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 厚生省はいろいろ話をすると、一応言うんですが、これも地方公営企業ですけれども、主管省は水道の場合厚生省ですか、自治省ですか、どちらですか。
  167. 柴田護

    政府委員(柴田護君) 許認可権は水道法によりまして、厚生省にあるわけでございます。形の上では厚生省が主管になっている。しかし、金の面では私のほうでやる、こういうことになっているわけでございます。
  168. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それがどうもなかなかスムースにそういう資金の調達なり、計画とは一致しないんですね。あれは水道はいま地方公営企業といっているけれども、昔は衛生行政の一環でしてね。大体水道法というものが起こったその歴史を見ると、大阪ではコレラなんかはやるから井戸水はいかぬというので水道になってきた。従来の衛生行政というものが発達したものだから、それが今日は衛生行政から地方公営企業だということに変えられてしまって、われわれ迷惑しているんですが、そういうことで厚生省は厚生省の主張をして、こういう計画があるのだと言うのだが、金の出どころとなると自治省だ、それがやはり行政組織上の問題もあるけれども、水道の問題がうまく解決しないというのはそういうところにあるのじゃないかと思うんですが、自治省としては、水道に対する、先ほど言った五ヵ年計画、水は交通とまた異質の問題であって、これは水道がなかったら都会ではもう生活ができないんですから、だからこの点早く手を打たなければ、行き詰まってからではだめだ。そういう問題について自治省は、いわゆる調査会をつくって、結論を出してぼちぼちやるのだという考え方ですか。
  169. 柴田護

    政府委員(柴田護君) 水道の普及問題につきましては、私ども決して調査会等を考えているわけではございません。水道につきましては、おっしゃるように早く手を打っていかなければならぬ。特に新産業都市その他の問題を考えてまいりますれば、ますますそういうふうなことが必要であるというような考えを持っているわけでございます。しかし、私どもが調査会に期待いたしておりますものは、経営面から見て水道の、特に先ほど来申し上げておりますように、資金面その他の解決方策としてどういうことが妥当かということをむしろ調査会において結論を得たいというわけでございます。
  170. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これも東京都では毎年水不足で水源開発をやっているけれども、その間の送水管がないということで困っているんですね。大阪の場合、淀川という大きな天然に恵まれた水源があったのだけれども、この沿線においていわゆる工場が多くできて、水が汚濁して、下流でとったところでなかなか浄化できない。したがって、琵琶湖からパイプ輸送というようなことを言って、滋賀県と大阪がもめているんですが、ばく大な費用が要るんですね。こういう問題について自治省はこうすべきであるという指導はできないんですか。道路五ヵ年計画で、建設省がこうだという方針を立てて指導するということをやっているんですが、あれはできないんですか。
  171. 柴田護

    政府委員(柴田護君) 水源地をどうするとかいったような問題について総合的にこうだ、ああだということを積極的にわれわれのほうから申し上げるというようなことはしておりません。ただ、それは地方団体自身でそういう必要性があって、こう考えるがどうだという意見を求められた場合におきましては、やはり個々の地方団体の問題につきましてはその地方団体の自主的判断なり、決定というものを尊重していきたい、こういう態度でございます。ただし、たとえば利根川の問題でございますとかあるいは淀川の問題でございますとか、大きな水源の開発の問題につきましては、これはやはり主管は経済企画庁でございますけれども、これは積極的に意見を言っているような次第でございます。しかし、私どものほうからイニシアチブをとってこうだと言うことは、これは政府内の権限分配からいいますならば、そういう問題は経済企画庁の水資源局ということになるわけなんです。やはり最初の案を提案するのは水資源局ということになろうかと思うのでございます。
  172. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 まあ、臨時行政調査会でもその問題は若干触れておるようにも聞くんですが、どうもそうなると、地方公営企業課というのがあるのだが、厚生省、経済企画庁ということで、実際住民が水で困っても、打つ手というものはなかなか牽制し合って出ない。東京の場合、利根川からの水の送水ということについてもいろいろ計画があるけれども、費用の点その他でなかなか進まない。こういう問題をひとつ政府部内で道路計画のような水道計画というものが——単にこれは六大都市だけではないですよ。鹿児島もそうだし——鹿児島あたり、それから向こうは長崎のあたりに行くと、なおこの水源に困っているようでありますが、こういう点がどうも政府の打つ手が私としてはなまぬるいと思うんですが、こういう点について、大臣が来たらあとで聞きますけれども、公営企業課はあるけれども、そういう問題については全く無力ですか。
  173. 柴田護

    政府委員(柴田護君) 無力ということはないと思うのでありますが、公営企業課というものの働く分野というものは、やはりそういうような大きな計画が具体化して、ある一つの企業形態というものにまとまって、それでどうするかということになって初めて公営企業課の問題になる。それまでの、おっしゃるような大きな計画は、むしろ公営企業課の問題を越えた問題でございまして、むしろ私どもで言いますならば、企画連絡参事官の関係でございますとか、あるいは私どもの財政局全体の問題でございますとか、あるいは行政局の問題でございますとか、そういうことになってくるのでございます。したがって、具体的な問題になってきた場合に初めて公営企業課というものがこれを担当をしていくということになろうかと思います。
  174. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃ大臣見えましたが、ちょっと休憩をしてもらって、水道の問題について総括的に聞きましたが、病院の問題でもひとつ触れておきたいと思うんですが、病院は、これは公営企業じゃなくして、準公営企業という管理をしておられると思うんですが、その点どうなんですか。
  175. 柴田護

    政府委員(柴田護君) そのとおりでございます。
  176. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ぼくは、地方公営企業ということで幾つかまあ出てきておりますが、交通の場合でも問題があるし、水道の場合でも問題があるんですが、特に病院なんかは公営企業ということで律することは、地方公営企業法の財務規定だけは準用する、その他は独立採算制を考えておらないという趣旨説明があってあれが通されたんですが、独立採算制ということは、病院に限っては——これは公立病院ですよ、公立病院の場合には、そういうことは私はナンセンスだと思っているんですがね、この点どうですか。
  177. 柴田護

    政府委員(柴田護君) 問題はいろいろあろうかと思います。で、私どもは、したがって病院につきましては、公営企業とは考えておらぬのであります。独立採算と申しましても、実際問題として不可能でございます。したがって、将来あるいは独立採算が可能になる時期があるかもしれませんが、現状においてはこれは不可能と考えております。したがって、病院経営につきましては、公営企業とは考えておらないわけでございますけれども、しかし、そこには企業的な経営配慮を加える分野があるんじゃなかろうか、そういう意味合いから、準公営企業という形にして経営の合理化をはかっていくという立場をとっているわけでございます。
  178. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 企業的要素があると言われますが、しからば企業とは何かという定義から入らぬとまた問題があると思うんですが、公立病院はそういう関係で成り立ったものではないんですよ、あれは。いわゆる市民の保健を、健康を守るといいますか、病気その他を管理するという意味において、病院はもうけようとして建てたものでもなし、したがって、施療患者というものもかかえなくちゃいけないし、そういう立場で建ったものが、今日やはり自治省はどう言われようとも、独立採算という形で指導をされておるやに聞いておるし、また、事実そうなっておるらしいのですが、これはぼくはどこにしわ寄せが来るかというと、やはり人件費にしわ寄せが来るということであると思うのです。  で、一つの例を申しますが、これはどこの市とは、ちょっとまだ聞かなかったのですが、ある県立病院ですが、三十九年度の予算をどうしても編成できない。そうかといって、予算を出さなければ議会は通らないということで、薬品費をもうほとんど——ゼロにするわけにいかないから、もうしぼって、どうせ薬品だから将来また追加して、薬品がなければ治療できないのだから。これを削ってひとつ数字を合わして出しておかなければならぬ、こういうこそくなことをやられたということを聞いておる。これはいまちょっと記録してないのですが、どこと言われればまたあとで調べてきますが、そういうところがある。したがって、実際この点なんか考えて、病院の独立採算制はやらないと言っておられますが、現在もやはり地元へいくと独立採算制を強要されておる。この事実はやっぱり何とか考えなければ、ほんとの市民、県民の健康を管理する、病気をなおすというようなことはできずに、とにかく病院のメンツさえあったらいいのだということで、治療の水準も下がってくるし、公立病院としてはゆゆしき問題があると思うのですが、こういう点についてどうお考えでありますか。
  179. 柴田護

    政府委員(柴田護君) いまお話の事例は、実は聞き初めでございまして、そういうところがあるのかなという話を公営企業課長としておったのですけれども、まあ公立病院について公営企業的な運営ということを考えられた始まりは、私どもはあまり詳しくはありませんけれども、おそらくは民間の病院もああやってりっぱにやっているじゃないか、で、公立病院についての経営方式からいえば、もちろん公立という特殊性はあるけれども、しかし、民間的な視野に立って経営することが不可能じゃない分野もあるのじゃなかろうかというようなことから、経理の明確化ということを中心にして公営企業法の一部を準用、適用することができるというようなことから始まったと思うのでございます。実際にはやっぱりこれも一つの事業であることは間違いないのでございますから、そこにやはり経営的な配慮というものがあってもおかしくはない。しかし、おっしゃるような公立病院につきましては、特殊の使命もあるわけでございます。また、その経理を上げると申しましても、なかなか上げにくいむずかしい分野もあるわけでございます。あれこれ考えますならば、結局公営企業として病院事業というものを考えることは適当でないということから、経理の明確化をはかるべきところは規定を準用してはからせて、しかし、全体としては公営企業とは考えない、こういう立場をとって今日まで来ておるわけでございます。
  180. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これは実績調査をされておると思いますが、公立病院のあるところは、これはまあ大都会もそうですが、地方へ行くとなおさら押すな押すなの要するにお客ですよ。というのは、やはり信用性もありますし、自分らの病院である、市民の病院であるという気持ちもあるし、だから私はこの公立病院というのは非常にいい役割りを演じていると思う。まあ民営の病院とか、開業医というのが日本は一番、これは特異に多いのですね。だから公共性からいえば、これは病院が一番私は公共性があると思う。人の健康を、医療を守るのだから、これほどの公共性はない。ところが、日本の場合は民営が非常に多いわけです。これは日本の特殊性だと私は思うのです。それで、医療費もいつも問題になるらしいんですが、最近、一番困っているのは、医療費が上がってくるに際して上げなければもてない、そうかといって、医療費を上げると市民に対しての相当問題がある、こういうことから、公立病院が非常に二重の苦しみをしていると思うのです。したがって、私の率直な意見を申しますと、相当、普通経済からはある程度これはみつがなければならない、そうしなければ安い治療もできない。安いというと悪いですが、比較的市民の負担し得るような程度の治療はできない。高く出すのだったら民営でいいですよ、何も公立の必要はないです。あえて公立にして、非常に経費をかけてやる必要ないです。大体公立のあるというのは、医療費をある程度規制をしようという考え方があると思うのですよ。大体人のからだをなおすのに利潤を追求してなおすというのは間違いです。これをなおしてやったら幾らもうかるのだといって計算をして医療をやるというのは、私は根本的に間違いだと思う。医師会の人はどうか、おこるかもしれませんけれども、これは間違いですよ、各国の例を見ましても。それが民営と公立とあると、それを比較して、民営でこれだけやっているのだから公立もこれだけやれといって、人件費をしぼってくる。いま問題になっている看護婦の問題でも、補助看というような、せっかく戦後医療水準を上げるために看護婦制度というものを確立したのに、そういうものをつくっておってから、人がないということもありますけれども、六ヵ月に速成の看護婦をつくって、補助看護婦だということで、知識のない者でも人体を扱わそうということを医師会とか看護協会が言っておるようであります。さすが小林厚生大臣はそれはだめだといって拒否しておるようでありますが、そういうことになると医療の低下、それ以外にはない、それを押えるのが公立病院の役目だ、私はそう見ておる、これは間違いですか。
  181. 柴田護

    政府委員(柴田護君) おっしゃるような機能も十分あると思います。
  182. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 どうもすげない返事ですね、おっしゃることもあると思うということは。私はそれが公立病院の使命であるという自信を持っておるのだが、それは間違いである。公立病院がやはりある程度金をもうけて、金をもうけるというわけじゃないけれども、他にそういうものがあるのだというのかどうか。私は経済性を無視せよとは言わないけれども、ある程度経済が成り立たぬでも、市民の病気をやはり地方公共団体が守るのだということになれば、ある程度独立採算制とか、そういうことをいわずに、普通経済がもっても、医療の低下あるいは医療費の上がることをある程度食いとめるということが、その作用が必要ではなかろうかということが間違いであるかどうか。
  183. 柴田護

    政府委員(柴田護君) 私も、医療の専門家ではございませんけれども、あまり詳しいことは存じませんけれども、しかし、病院は、特に公立病院につきましては、かりに企業的な経営というものをいいます場合でも、あるいはそれによって利潤をあげるとかなんとかということは頭に初めから考えておりませんし、また考えるべきことだとは思いません。私ども、病院につきましては、おっしゃるような点も十分あるわけでございますので、これは企業的な扱いをしておらないのでございます。ただ、現実問題といたしましては、費用の負担区分、一般会計とのからみ合いを明確にして、そして経営的な考え方を織り込んでいくということは必要であろう、経営的な考え方を織り込んでいきますならば、やはり一般会計とのかね合いの問題も出てくるわけでございまして、そこをはっきりする必要があるだろうということを申して指導しているわけでございます。また、経営問題につきましても、もとよりおっしゃるように、そういう公立病院の持つ使命と申しますか、要するに、医療に関する指導的役割りというものは十分あるわけでございますので、その点はもちろん前提になるわけでございますが、それにいたしましても、かりに経営する場合に、個々の市町村がそれぞれアウタルキーのような考え方で、一市町村一病院というようなことをやって、小さな零細経営をするよりか、二、三ヵ町村が集まって一つの共同の病院をつくる、そうすれば経営もうまくいくし、人も充足されれば、費用も助かるということになりはしないかということで、そういう意味で経営の合理化になりはしないかというふうに考えております。
  184. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 後段の場合はいいですよ、後段の場合は、すでに町村組合その他で病院を共同して経営しておりますから、共同に経営するということは、医療設備も完備するし、通院する場合には相当便利は悪いけれども、やはりそれをこえてもそのほうがいいのですが、私の言っているのは、そういう、あなたのほうは独立採算を強要しておらないのだ、こういうけれども、一応地方公営企業の財務規程だけでも適用することによって、やはり独立採算制にせざるを得ないような方向に実際問題としては指導されている。これはきょうは時間もないから、いずれこの問題は具体的には、私はその予算書を示してやりますから、それで、それはそんなことがあなたのかということではそのときは承知しませんよ。あなたはないというのだから。したがって、あなたのほうは、そういうものはないかどうか、十分調べておいて、今度は自信のある答弁をしてもらいたい。おどすわけではない。事実そういうことを聞いているのだから。その点は、病院の問題はその程度にしておきましょう。  それから大臣見えましたが、交通、水道、病院で財政局長答弁してもらうのが気の毒な問題が残してあります。  まず、交通の問題ですが、四十八億でいろいろ御苦労願っていることは感謝しております。お礼は早いかどうか知りませんが。そこで、それは別としまして、今後交通の財源獲得の問題ですが、おのおの大きい都市では高速の建設はやらなければいけない。また、バスにしても、車両が古くなって買いかえなくちゃならぬが、赤字続きであるから減価償却の費用も食い込んでいる。したがって、三十九年度はどうもできないといわれるかもしれませんが、四十年度そういうところで財源措置をひとつどう考えていただくかという、これを一応自治大臣に伺いたい。
  185. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) ですから一日も早く調査会の設置法を通していただきたいということを申し上げているわけですが、先般も申し上げましたように、資本金はなしで、借り入れ金だけが何百億円なんというようなことで経営が持てるはずがないわけです。特に、地下鉄なんかの場合は、もちろん論外で、ですから私どもはこういう調査会で特に御検討をお願いいたしたいことは、独立採算なら独立採算でやれるような、経理ができるような姿に当初からいたしませんと、というだけのことであって、普通の独立採算とは違ったものが出てくるわけなんです。普通民間なんかの場合には、大幅な新線建設その他投資をいたします場合には、やはり自己資金を確保しますために、まず増資をして、金利のかからぬ金というものでこういうものはやっていくのが常識でございますけれども、そういうことすら行なわれておらぬ。そこで、やはり私どもといたしましては、調査会にお願いすることも、その点は、資本ともいうべきものをやはり場合によっては一般会計で相当のものを投資するとかなんとかいうことで、きまりはいたしませんけれども、何らかそういう方法を考えていただく、また累積赤字の一部だって、毎年々々利息がついていたのでは、とてもやれるものではありません。いま四百億をおそらく上回っていると思いますが、こういうものの一部だって資本勘定に繰り入れることも考えなければいけませんし、ともかく独立採算の形でやれる形に整えていくことが、つまり出発点をきめるということがまず大事なことではないかとも考えているわけでございます。その点やはりさっきもちょっとおことばにありましたとおりに、大蔵省の先輩格の人等も委員に加えると申しましたのは、やはりそういう措置について、一般国の財政あるいは自治体の財政に暗い方だけでかってなことをここでおきめになりましても、なかなか実現できぬ面もあるので、こういった方々の知恵も拝借したいというのはその点にあるわけでございます。
  186. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 大体具体的にはなかなか言えない、具体的に言えといってもなかなか言えないと思うのですが、こういうことはどうですか。地下鉄、高速道なんか敷けばその付近の土地が相当上がります。まあ一般経済から資本を出すということは、これは私いいと思うのだが、しかし、もとの地方公共団体の財政状態がああいう状態ですから、そこで資本金を出すといっても出せない、かつて大阪の場合は、地下鉄の場合は、たしか地価増加税というものを地方で取ったことがあると記憶しておるのですが、これは都市の地価というものはきわめて何といいますか、天井なしに上がりますから、ぼくはそういうことは、税金取れとは言わないけれども、非常に利益を受ける——均衡から言えば、やはりそういうものも一つの財源にしなければ、自治大臣も、無制限に地方交付税をふやして財源をやってくれるならそれでやってもいいけれども、そうはいかないので、そういうこともどう考えておりますか。
  187. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) どういう形で具体化するかということはなかなかむずかしい問題ですが、やはり一案として検討に値すると思います。民間企業などでは御承知のとおりに、これはそういうところへ一つの路線を敷きますと、すぐその付近の地価が上がる、それを先にそういう会社のほうでそれを安いときに買い占めておいて、そうして交通が便利になったらまた処分をするというような方法も当然考えておるわけであります。それに類することでございますが、公営企業の場合はなかなか民間会社みたいに簡単なわけにはいきませんが、しかし、やはり一案であると考えますので、十分検討いたしたいと思います。
  188. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 幾らでもあるのですが、それは交通の問題はその程度において、水道の計画で財政局に聞いたのですが、これは自治省の公営企業課も、問題なしとして率直に認められたのですが、水道の、水源開発と申しますか、水の不足というものがきわめて都市的な問題になっておる、これについては道路五カヵ年計画では、四兆一千億という膨大な計画が承認されております。道路も必要だが、水道も日常生活上欠かせざるところの、空気と水というものは人間生きるために必要なものなんだが、どうも政府の出方を見ておると、水道については地方自治体に何か資金を考えてやろうかという態度でなかろうかと私は思うのですが、これについて自治省として積極的に水源開発と申しますか、水道の、水の獲得ということで積極的に乗り出すかまえがないかということをお聞きしたいと思います。
  189. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) これは御案内のとおりに、所管が水資源局であるとか、あるいはまあ主として厚生省、それからこれを建設いたしますにつきましての資金の一部というものを自治省のほうでめんどう見ておるわけでございますが、いまのところやはり中心は厚生省になると私は考えるわけでございます。もちろん水道が完備するということは、いろんな面から考えまして非常に望ましいことでございます。第一に、一番大事な東京でさえ水に悩んでおるような事態なんです。政府全般について非常に責任感じまして、これに対して処置をしつつあることは御承知のとおりでございまして、しかし、農村のほうへ参りますと、いま簡易水道がだんだん普及しておりますけれども、まだ山の奥まで水道というわけにいかないところもあるのでございまして、しかし、まあ逐次こういった面でも上水道は完備いたす状態にもございますし、自治省としても、自治団体の負担部分についてはなお積極的な考慮を払わなきゃならぬと考えております。
  190. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そこで、そういうことで厚生省、まあ厚生省もいろいろな仕事を持っておるのですね。医療行政それから社会保険行政、それから環境衛生ですね。だからどうも厚生省の諸君に会うても、自治省で考えるんじゃないかというような態度でなかろうかと思うのです。経済企画庁は一生懸命やっているのですが、経済企画庁はいま物価の問題で頭に来ておる。そうすると、自治省にせっかく公営企業課というものがあるのですから、自治大臣もいろいろ忙しいけれども、この問題でひとつ閣議で、所管が違うからどうとかじゃなくて、積極的に水の開発という問題で、何か政府の五ヵ年計画でもいいし三ヵ年計画でもいいのだが、そういう問題でひとつ自治体にまかせるのじゃなくて、政府としてひとつ計画はできないものでしょうか。そういう所管の問題じゃなくて政府自体責任でやるというような、もう四十年度の予算編成も近づくと思いますが、そういうことを自治大臣どう思いますか。
  191. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) いや政府としてはそのつもりでやっておるつもりでございます。
  192. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それでは、私は鬼耳だから、今度は来年度予算編成のときにそれが出てこなければあなた食言したと言いますから、その点はひとつ間違いなく、できなければこれはいいですよ。主張さえすれば、経過はこうだったということをあなた言うてもらわぬと、ただ言いっぱなしじゃ困るので、そういうことはないと思うのですが、しかし、それは大臣かわったからということじゃなくて、そういうことで……、冗談でございますが。
  193. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) ただいま申しました意味は、厚生省だってやはり政府のうちでございまするので、やっぱり水道の問題も大事でございますから、政府としては責任を持つということを申し上げたわけでございますので、自治省で全部水道をひっかぶってということではない。御案内のように、そういう事態はちょっと私どもの力では手に負えぬことで、ございますので、そういった意味で御了解願いたいと思います。
  194. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 わかりました。あなた正直だから、これはぼくは厚生省の設置法もありますから、時間が許せばまた厚生大臣にもその点言いますが、しかし、先ほどもあなた留守中に言ったんですが、どうも水道行政といいますか、水道事業にしても交通事業にしても、いわゆる運輸省が主管省であるか自治省であるか、なかなか法律上むずかしい問題があって、われわれもどこが主点になるかわからない。水道の問題も厚生省が主管省であって自治省はわき役である、この点に関しては自治省であるけれども、厚生省も所管省である、こういうことでは、実際事業が進むのにはやっぱり一つの支障があると思うんです。臨時行政調査会どういう結論を出すか別といたしましても、政府自体もこの問題はやっぱり検討していただきたいと思う。  そこで最後になりますが、そういうことから、地方公営企業というものは、交通、水道、病院その他を問わず、病院その他のほうは準公営企業ですが、こういう問題が非常に行き詰まった問題のときに、このことではないけれども、公営企業課というような財政局の一課でなくして、公営企業局ということで大きく、局になるから力強いとは言いませんが、そういうことで地方公営企業はがんばるんだということで、そういう考え方は持っておられませんか。
  195. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 山本委員がかねてそういう御意見を持っておられるということは拝聴いたしております。で、これもまた公営企業調査会ができました場合には大きな課題に私はなると思います。将来の公営企業の姿はどうあるべきかということには、当然そのことも結果的には含まれるかもしれません。しかし、いずれにしても、いまの公営企業課をすぐに局にしてといったようなことを申しましても、なかなかそれが通るような状態ではございませんので、しかしながら、この公営企業がこういういろいろな問題点をはらんでおりまするので、そういった問題も含めまして調査会で御検討をお願いいたしたいと思います。
  196. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 最後にお願いをかねて所見だけ聞いておきたいのですが、当面するいろいろ問題について努力されておることについては感謝いたします。なお、地方公営企業、交通、水道その他の準公営企業でもほとんど行き詰まらんとしておる現状ですから、来年度予算編成、財政投融資その他のもろもろの財源問題で大臣が折衝される際には、いまの事態をふんまえて、その支障のない資金の獲得に、具体的にどうしろといってもなかなか言えませんから、その点を一段と努力をしてもらいたいということを切に私は希望したいと思いますが、その点どうですか。
  197. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 精一ぱい努力したいと思います。
  198. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 他に御質疑はございませんか。——別に御発言もなければ、本案の質疑は、本日はこの程度にとどめます。  それでは本日はこれにて散会いたします。    午後四時十分散会