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説明員(
佐藤達夫君) 一昨十二日、
人事院は、
国家公務員法等の規定に基づきまして、
公務員の
給与改定についての
勧告を
国会及び
内閣に提出いたしました次第でございます。ここで、その
報告、
勧告等のごく
ポイントとなるところを御
説明さしていただきたいと存じます。
人事院が毎年四月現在で
官民給与の
総合比較を行なっておりますのでございますが、本年もその例に従いまして、四月現在で
職種別に
民間給与の
実態調査を行ないますとともに、あわせて
国家公務員の
給与の
実態も
調査いたしました次第でございますが、その両者を比較してみましたところが、その
総合の
較差において
民間のほうが八・五%
公務員を上回っておることが明らかになった次第でございます。したがいまして、
人事院といたしましては、これをぜひ
民間の
水準に合わせる、すなわち
国家公務員の
給与を
民間の
水準に合わせるという
措置をとることを必要と認めまして、今回御
勧告を申し上げた次第でございます。
この
調査につきまして、本年、
従前と変わったところがございます。これは御
承知のとおり、
民間事業所の
調査につきましては、五十人以上の
規模の
事業所を
調査しておったのでありますが、その点はことしも同様に五十人以上の
規模のところを全部
調査いたしました。ところが、この
官民の
較差、すなわち
水準をとらえるにあたりまして、本年は
民間の
事業所の
企業規模百人以上というところをとらえまして、その
水準を求めた次第でございます。これは従来の
方法とは違った
方法をとっております。その理由は、これは
前々から五十人という
規模は、現代の実際の
企業の
規模からいっての
構成からどうであろうかという
批判もありましたし、われわれもその御
批判は
十分耳にとめまして
検討はいたしておったのでございますが、それよりも本年五月に行なわれました
公労委の
仲裁裁定におきまして、この今回の
仲裁裁定は、従来と違いまして
人事院と同じような、すなわち
官民の
較差を四月現在でとらえるという
方式をおとりになったわけでございます。しこうして、その場合に、
民間の場合について、
企業規模百人以上というところに線をお
引きになりました。で、この
公労委の
仲裁裁定の
対象になっております
職員は、もとより
公社もございますけれ
ども、五
現業の
職員が入っております。五
現業の
職員は、これは身分においては
一般職の
公務員でございまして、私
どものおあずかりしている
公務員と同じきょう
だい分と申しますか、同じ性質を持っております。したがいまして、そういう
人たちをも
対象としたこの
仲裁裁定において、
官民の
較差を基準とし、かつ、その
民間の
水準を求めるについて、百人以上という線をお
引きになりましたことは、私
どもとしてはこれは捨て置きがたいことでございますので、この際、
公労委のとりました百人以上という線に合わせることがむしろ合理的であるという、さようなことで、この
官民較差をはじき出した次第でございます。
したがいまして、ただいま申し上げました八・五という
較差は、
民間の場合は百人以上の
規模のものについて得たものと比べての結果であるということになります。
以上が、まあ、
実態でございますが、その周辺のいろいろな
事情として、本年私
どもの特にある種の特色と見てよろしいと思われるものは、
一つは
職員団体のほうからの
要望、これはもう
例年どおりきわめて熾烈なものがございましたけれ
ども、一方において
各省各庁の方面からの
給与改定についての
要望が、
相当熱心に
人事院に持ち込まれたということでございます。これはおそらく
各省各庁におかれては、
新規卒業者の
採用あるいは
中堅職員の
民間への流出というようなことに、
相当切実な思いをされてのことではないかと思うのでございますが、そういう面が
一つございます。
それから申すまでもなく、いわゆる春闘がことしはだいぶ
例年よりおくれて妥結されているという傾向が認められる。しかもそれによる賃上げの幅というものがわりあいに顕著
——相当顕著なものがあるというような観察が、一応なされる次第でございます。
かくいたしまして、以上のような
一般情勢のもとにおきまして、今回の
勧告を申し上げたわけでありますが、まず第一に、
勧告の本体とも申しますべき
俸給表の
改善についてごく
ポイントを申し上げます。で、
俸給表上での、
俸給表上でのと申しますか、いわゆる
俸給表を中心としての
引き上げは今回の
勧告では率において平均して七・九%となっております。この八・五と七・九との
関係は、これはもういまさら申し上げる必要もございませんが、七・九の
本俸関係の
引き上げが諸般の
手当等にはね返る、その他別の
手当の
改善等とあわせますと、これが結局において八・五の
官民の
較差を完全に埋めることになるという結果と相なる次第でございます。しこうして、この
俸給表の
関係での
改定は全
俸給表にわたりましてかつ全
等級に及んでおります。中でもたとえば
大学の
教官なり
研究職員、医者というような者についてはそれぞれまた特別の
配慮を加えております。
次に、最も
俸給表上の
改定で顕著だと申し上げてよろしいと思いますのは、
初任給の
引き上げでございます。これは
各省庁における
新規採用者の困難ということもございますけれ
ども、いずれにいたしましても
民間で一年間にほとんどの
職種にわたって千五百円以上の
増加を見ておる、これは顕著な
増加だと思います。それらの事実を踏まえまして
民間との均衡をはかりますために、
大学卒、
短大卒については二千円ずつ
初任給を上げております。たとえば
大学卒のいわゆる上級(甲)の人の
初任給について申し上げますというと、
本俸は現在一万七千百円でありますものを、今回一万九千百円に上げる。すなわち二千円上げるということになります。それから
高校卒の者については千七百円
引き上げることにいたしました。現在一万二千四百円のものが一万四千百円になるわけでございます。これは
本俸についての
数字でございます。なお、
教官の
初任給については、またいろいろこれは特殊の
事情がございますのでさらに考慮を加えております。
なお、いまの
初任給の
引き上げ等にも関連いたしますが、今回は
下位等級の
方々に対する
引き上げ率を特に高くしております。これが第三点でございます。
第四点といたしまして、
昇給の
間差額の問題がございます。これについてもできるだけ
改善をはかることにいたしまして、特に
中位等級の
方々に対するものについて
配慮を加えました。
五番目に、
行政職の
俸給表(一)のいわゆる行(一)といわれます
俸給表について
相当顕著なる改革を加えました。それは現在あります四
等級とその上の三
等級との間に
一つの新しい
等級を設けたわけでございます。すなわち、まあかりに新三
等級と申し上げてよろしいと思います。これは御
承知のとおり、またたびたび御
指摘をいただいておりますとおりに、現在の四
等級、すなわち本省でいえば
課長補佐級の
人々が主としてその地位にあるわけでございますが、非常にその辺が詰まっております。しかも現在三
等級と四
等級との
俸給表の断層が
相当著しいものがあるという
実態がございます。また、
かたがた中だるみという
ことばでもそれは表現されておるものの
一つの現象になっておるわけでございます。さようなことを勘案いたしまして、
従前の、今日における四
等級をいわば
二つに割って、その一部分を別な新しい
等級に持っていった、すなわち新しい三
等級ということにそれが相なるわけでございます。
それから、次に第六といたしまして、
行政職の(一)、それから
教育職の(一)、
研究職、
医療職(一)の
俸給表のそれぞれの
一等級を全部いま申しました
俸給表から
引き抜きまして、そうして新しく
指定職俸給表というものを設けまして、そのほうに移したわけです。この
指定職俸給表におきましては、従来、昨年の改正によりましておきめいただきました東京あるいは京都の
大学の学長あるいは
事務次官というようなものについていわゆる一官一
給与というような形のものを去年お
つくりいただいたわけであります。それらのものもこの同じ
指定職俸給表の中に入れることにいたしました。いわゆる一官一
給与といわれるような
グループを甲の中におさめました。それからただいま申しました従来の
一等級の
——各
俸給表から抜いてまいりました
一等級の者を乙の欄に入れました。そうして
指定職俸給表を
構成することにいたしました。したがいまして、先ほど申しました
行政職俸給表の第一について申しますと、現在の行(一)
俸給表の
一等級が
指定職俸給表のほうに移りますから、いままでの二
等級が
呼び名を
一等級と変えます。それからいままでの三
等級の
呼び名を二
等級と変えました。先ほど申しました四
等級を
二つに割った四
等級の上の部分を三
等級ということで、表の上ではずっと
数字がそろうというような形に相なるわけであります。
それから、そのほか第七点といたしましては、一昨年の
号俸の間
引きが行なわれましたんでございますが、それに関連する最終の
調整措置として、一部
職員について
次期昇給期間を三カ月、行(二)の
方々の一部については六カ月、短縮することを
考えておる次第であります。以上は
俸給表関係でございます。
次に、諸
手当その他について申し上げます。諸
手当関係の第一は、
期末、
勤勉手当の増額でございます。これはただいまの
官民比較の結果、
民間に合わせます
趣旨におきまして、六月と十二月の
期末手当をそれぞれ〇・一月分ふやします。それから三月の
勤勉手当を〇・一月分増額いたします。したがいまして、合計〇・三月分、
期末、
勤勉がふえるということに相なります。
それから、次に、二といたしまして、
宿日直手当の
引き上げを行ないました。これはやはり今回の
官民の
調査におきまして、その結果に基づきまして、
宿日直手当を
引き上げる必要があるということが明らかになりましたので、
勤務一回につき
現行の三百六十円を四百二十円といたしました。その
範囲内で支給できることといたしました。なお、土曜日から
引き続く
宿日直勤務については
現行の四百二十円を五百四十円と改めました。
なお、これは少し新しいものでございますが、法務局の
出張所等——最も典型的な例は、ごくいなかにあります
登記所のようなところでは、ほとんど
職員が少ないんでございまして、
常直勤務ということをやっております。自分の家におっても、夜、昼かたわら
登記所の仕事をやっておるというような変則な
勤務状態ではございますが、
現実にそういう
常直勤務があります以上、それに対する適当な
手当を必要と認めまして、月額の
宿日直手当としてそれらの
方々には三千円の
範囲内で支給できることといたしました。
それから第三点は、
初任給調整手当の
支給期間を来年度からでございます、これを延長したらどうかというので、それも
勧告に盛り込んでございます。すなわち
現行三年以内
——理工系の人は三年以内でこの
支給期間が打ち切られるのでございますが、それを今度五年以内ということに延長いたしました。それから
理工系以外の
人々、それはすなわち
現行では二年以内ということになっておりますが、その二年以内の
打ち切り期間を三年以内ということに改めたのでございます。
それから四番目に、
通勤手当につきましては、昨年も
改善をお願いいたしたんでございますが、ことしは少し昨年の
改善とは角度が違うのでございます。現在
交通機関等を利用する場合の
支給額を算定いたします場合に、百円は今度の
俸給の中から払ってもらうというたてまえのもとに、百円
控除ということになっております。自転車などを使用する場合についても、それに相応した定めはあるのでありますが、この百円
控除というものはどういうものであるか、現に
公社等の場合については、そういうことをやっておるものはございません。
民間を調べました結果においても、そういう
控除をとっておるものはきわめてまれにしかないということで、この際、その
控除の
方式を廃止するということにいたしました。これによって
給与関係では、やはり
相当の
改善に相なることと
考えております。
それから第五番目は、
現業職員などの
勤務の実情を考慮いたしまして、ことに
年末年始等、普通の
公務員が休んでおります場合に出て働かなければならぬという
人たちのために、休日給を支給できるようにいたしました。
それから
手当の
最後の六といたしまして、その他
行政職俸給表の(二)、すなわち行(二)の
方々の一部につきまして、
初任給のきめ方を
改善するとかあるいはその他また
研究職の
研究室長あるいは
一般の
行政職の
地方機関の
課長などについての
特別調整額の
適用区分を改めるというようなこと、あるいはそれらと
宿日直手当の併給を認めるというように
合理化を
考えております。
以上で大体の
内容でございますが、
最後にこれらのいま申しました
俸給、諸
手当などの
改善を全部合わせますというと、八・五という先ほどの
民間との
較差が埋められて、
民間に見合う
給与の
改善が行なわれるということに相なるわけでございます。
最後に、今回の
勧告におきましても、
例年のとおり、その
実施期日は五月にお願いしたいというたてまえにいたしております。このわれわれの
勧告申し上げましたその
実施期日につきましては、はなはだ残念なことでございますけれ
ども、過去四年が四年とも、常にこれが繰り下げられまして、十月の
実施ということになっております。このことは、結局私
どもの
勧告の
趣旨が、四月
調査に基づく官
民間のズレをさかのぼって埋めてやろうという、すなわち
民間の
給与に
公務員給与を追いつかせようというたてまえでできております点から申しますというと、これが繰り下げられるということは、常に
公務員の
給与は
民間に追いつかないという結果とも相なるわけでございまして、私
ども人事院の
当局者としては、はなはだ残念なことでございます。
その他、今年の新しい
一つの
事情としては、先ほど申しましたような
公労委の
仲裁裁定が
人事院と同じような
較差というものを基礎にいたしまして、そしてその
較差は四月で完全に埋められておるというところも勘案いたしますると、ことしは何としてもこれはせめて五月一日からお許しいただきたいということをお願いしておる次第でございます。
なお、今回の
勧告、
報告に関連しまして、
国設宿舎等の整備について、
要望書を
内閣総理大臣に提出いたしております。これは
前々から
住宅手当の
問題等もございまして私
ども検討を続けておるのでございますけれ
ども、まだ今日の
段階では
住宅手当を支給するというところまでの確実な根拠をつかみかねておる、なかなかこれは困難だというのが現状でございます。しかしながら、一方において
中堅以下
——特に
中堅以下の世帯を持っておられる
公務員諸君あるいは
新規採用の
諸君等についての
住宅の
施設がまだまだこれは
不足である、そういう
現実の
住宅の
不足のほうをやはり解消していただくということも
一つのあるいは先決問題であるかもしれないという
考え方に立ちまして、昨年も
内閣総理大臣、
大蔵大臣にお願いして、その結果、本年度の
予算には
相当それらの
施設の充実のための
予算を盛り込んでいただいたのでございますが、この際、さらに一段とその辺のひとつ御努力をお願いしたいということで、この
要望を書面にして
内閣総理大臣にお出ししたわけでございます。
以上、きわめて大体でございますが、
勧告、
報告の要旨は右のとおりでございまして、何ぶん今回この
勧告の
内容がこのままの形でひとつ実現いたしますように、あらためてここでお願いを申し上げておく次第でございます。