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説明員(宮川
岸雄君)
東京オリンピックの衛星通信によります中継につきまして、現在の時点におきましての大体の取りきめの模様、あるいは施設の整備
状況等について御
説明申し上げたいと思います。
なお、あらかじめお断わりいたしておきますが、交渉のこまかい点等につきましては、官房のほうで直接に担当しておりますので、若干その点につきまして
説明が不十分になるかと思うのでございます。御了承いただきたいと思います。
前国会におきましても、この問題につきまして、非常に
委員の各位からいろいろ御指導、御注意等がありまして、ありがたく思っている次第でございますが、この問題につきましては、政府といたしまして、ぜひオリンピック中継を何とか実現いたしたいという気持ちのもとに、これを各
方面を通じまして、主としてアメリカに対しまして働きかけを続けてきたわけでございます。
これを実施いたしますにつきましては、まずシンコムという衛星が打ち上がるということが第一条件でございます。それから第二条件といたしましては、国内にそれに必要な送信機ができておるということが必要条件でありますとともに、アメリカにおきまして、受信装置ができておる、これが必要でございます。なお、それをアメリカ国内にどういうふうに流すかという、その取りきめも必要になるわけでございます。
その衛星の問題でございまするが、これは前にも御
説明いたしましたように、すでにアメリカのNASAにおきまして、シンコムを打ち上げる
計画がございまして、これは若干おくれておりますが、現時点におきまして、八月十五日以降におきましてこれを打ち上げる
計画には変わりはございません。
使いますのはシンコム三号でございますが、シンコム三号を使いました場合には、いま上がっておりますところのシンコム二号よりもややその中継の状態はよくなるのでございますが、必ずしも十分なものだということは言えないかと思っております。それは、いままでにすでに経験済みでございます。これはリレーもしくはテルスターよりも、搭載されております中継器の周波数の帯域が狭いからでございます。しかし、一応シンコム二号の実験によりまして、大体その
程度の周波数帯域であるならば、これは送れるであろうということが実験でもって確かめられたわけでございまして、これには、
郵政省の
電波研究所長の上田研究所長も向こうに参りまして、直接これを見ているような状態でございますが、先に、日本側の設備につきましての準備につきまして申し上げたいと思いまするが、これは前国会等におきましても、しばしば御
指摘がございましたように、相当長期間にわたりまして準備しなければならない、少なくとも六カ月くらいはこれはかかるということを申し上げておったのであります。したがいまして、この最終的な取りきめが非常におくれました場合には、時間切れになるという心配もあったのでありますが、その後、日本側の送信機を日本電気株式会社におきまして、研究用のものとしてつくっているものを無償で提供してもよろしいという申し出がございまして、これはたいへんいいことである、省といたしましても、
予算措置その他が確定していないときにおきまして、機械を発注するというようなことにも難点がございますので、その申し出を受けることにいたしまして、実は目下製作中でございます。
また、それをどこに置くかという問題につきましては、これは技術的な問題でございまするが、たまたま
電波研究所の鹿島の三十メートルのアンテナが受信に適当しておりますので、送信、受信を一緒に兼ねる、同じ点でやれるということが、非常にこの中継に都合がよいであろうということを
考えまして、そのほか、
電波の妨害というような点までも考慮をいたしまして、
郵政省電波研究所の鹿島支所におきまして、この鹿島支所を日本側の送信基地とすることにした次第でございます。
そのためには、アンテナをつくらなければならないのでございまして、これは十メートルのアンテナを目下、これも日本電気におきまして建設中でございまして、これも提供を受けることになっております。
なお、それを据えつける部分の土台その他につきましては、
電波研究所側におきましてすでに準備を進めておりまして、これは八月中にこの機械ができるということになっております。
次に、アメリカ側の受信の装置でございまするが、これはやはり太平洋岸にあることが望ましいのでございまして、太平洋岸にいろいろな衛星通信の基地がございまするが、いろいろ技術的な点からはロスアンゼルスの近くにございますポイント・マグーというところの基地を使うことが一番よろしかろうということになっておったのでございますが、特にシンコム用の受信装置を
考えました場合におきましては、このポイント・マグーの受信装置は、そういう目的のためにつくってございませんので、それに対しまして、やはりそのための受信装置を付加する必要ができてきたのでございます。省といたしましては、あるいは外務省を通じ、あるいは直接に日本側がぜひオリンピック中継を実現したいということをアメリカ側に伝えておったわけでございまして、アメリカ側におきましても、これを何とか実現したいというような気持ちになっておったのでございまするが、最初、この話がなかなか進まなかかったのは、そのポイント・マグーの受信装置を改造する費用をどこが出すかということになったようでございます。その額は二十五万ドル
程度と言われておりますが、まあ金の額からいえばたいしたことではございませんが、アメリカの国務省が出すか、国防省が出すかというような点につきましては、アメリカ側の中におきまして相当議論がございまして、アメリカ側の国内事情でございましょうと思いますが、やはり国防省、国務省等においてこの支出をするのはどうも思わしくないというような結論が最初はあったようでございまして、なかなか進んでおらなかったわけでございます。しかし、なお、われわれ、あるいは
NHKの当時の前田副会長に行っていただいたり、あるいは当時の
政務次官の金丸次官に行っていただいたりしまして、なお強硬にいろいろと説得をいたしておったわけでございまするが、たまたま、話はヨーロッパ
関係のほうからほぐれてまいってきたわけでございます。
と申しますのは、ヨーロッパの
放送連合におきましては、このオリンピックのテレビ中継というものは、実は全部フィルムもしくはビデオテープを飛行機によりまして輸送するということによってこれをヨーロッパに流すような
予定になっておったのでございますが、たまたまこの中継が実現するならば、日本からシンコム三号を使いましてアメリカの太平洋岸に映りました画像をマイクロウェーブによりましてカナダまでこれを電送いたしまして、カナダから飛行機によりましてヨーロッパに運びますというと、全部飛行機で持ってまいりますよりも、だいぶ時間が早くなるということがございまして、この点につきまして、ヨーロッパ
放送連合でございますEBUというところが、非常に積極的な関心を示しまして、これは前田副会長、金丸次官等の、直接ヨーロッパに参りましての説得もあったかと思いまするが、ヨーロッパ
放送連合におきましては、いい画像が受けられるならば、それに相当するところの金は出してもいいというような話が出てまいったのでございます。そういうことから、アメリカ側といたしましても、ヨーロッパのそういう意向等をあわせましてやはりやらなければならないという方向でますます話が進んでまいったのでございます。
ただ、このヨーロッパ
放送連合の支出いたします経費というものは、完全な絵を受けた場合にのみ金を出すということでございますので、もし衛星がうまく上がらなかった場合であるとか、あるいは、何らかによりまして画像がよくいかなかったような場合におきましては、金が出ませんので、やはり最初に、ある
程度の金の支出というものを、リスクをおかして出すところがなければならないわけでございます。それで、この点につきまして、日本側といたしましても、若干の用意をやはりするというたてまえにおいて交渉をしなければならなかったのでございまして、大体二十五万ドルと予想しておりましたのでございますが、十万ドル
程度のものは、日本側においても支出してもいいから何とかしてもらいたいというような形で話を進めてきたわけでございます。その二十五万ドルという経費はトータルで、最後には
運営経費その他を含めまして三十五万ドルということに結局相なったわけでございまするが、その経費はアメリカの分担がどこから出すかということで、いろいろ最後まで話がつかなかったわけでございます。
アメリカは御
承知のように、コムサットと申します宇宙通信株式会社がございまして、これが宇宙通信のことを一手に今後建設
運営するということで、先ほど世界宇宙通信網の契約等もできたように聞いておりまするが、この会社はこのための
運営その他につきましてはやってもよろしい、しかしながら、そういうリスクをおかしたものに対しましての支出はやはりできないというような
考えを終始とっておったわけでございます。
また、このオリンピック中継の
NHKからの番組を一手にアメリカ国内に流すということに独占契約をいたしておりましたNBCというアメリカのテレビの中継の系列がございまするが、このNBC等におきましても、すでに、飛行機によって送りましたテープをアメリカに流すということの
予定ができておりますので、時差の
関係その他がございまして、中継によって直接になま中継をするということの利点というものを考慮したのでございましょうか、あまりこれに対して積極的な意図を示さないで、NBCといたしましては、金を支出するというようなことはいたさなかった、どうしてもがえんじなかったのでございます。しかしながら、これの親会社でございますところのRCAという
放送会社がございますが、このRCAのほうが、それでは金を出してもいいということに、話が出てまいりまして、ここで最終的に金の出場所が大体ついたのでございます。
そういたしまして、結局、コムサットがこの
運営その他を行なう。それから、会社に対する建設その他のこともやる。金につきましては、アメリカ側といたしましてRCAが出す。日本側といたしましては、この十万ドル
程度のものは引き受ける。もしこれが完全にいった場合におきましては、そのEBuからの金が入ってまいりますので、実際には支出額はだいぶ少ないことになります。つまり、支出した額に比例いたしまして戻すという約束に最終的にはなったわけでございまして、この支出の金は、もしうまくいけばずっと少なくなるわけでございまするが、日本側におきましては、それでもこの十万ドルを出すというような契約をどういうところがするかというようないろいろ問題があるわけでございまするが、やはり
郵政省がこれを契約するというわけにはまいりませんし、日本といたしましては、日本側を代表いたしまして
NHKがコムサットと契約を結ぶことがよかろうということになりまして、
NHKが一応金に対する同意をいたしました契約を結びまして、これによりまして、最終的な日米間のこの中継の可能という取りきめができたのでございます。もちろん、この中継は、あくまで現在、日米間におきましては、NASAと
郵政省との間で結んでおります、実験ということによっての契約しかございませんので、たてまえといたしましては、もちろん、今度のオリンピック中継も当然このデモンストレーション・テストという形において行なわれるのでございますが、ただ、こういう国際的行事でございますので、おそらく、この
開会中、一日一時間
程度のものは収録しましたものを送るということに相なるかと思っております。なお、できれば
開会式等はなま中継で送るというようなことも
考えられるかと思っております。
なお、この十万ドルの支出につきまして、
NHKといたしましてこれを出すというような場合におきまして、いろいろ現在の
NHKの
放送法上における制約その他もございますので、これにつきましては、慎重に
検討の上、この支出の実際の出資をいかにするかということについては、なお未決定でございまして、目下
検討している次第でございまするが、まあ、こういうような国際的なことを、しかも日本側からアメリカに非常に積極的に交渉して成功せしめたという経緯な
どもございますので、そういう未決定の点な
どもございますけれ
ども、一応出すという形におきまして契約を取り結んだ次第でございます。
なお、この衛星中継に使いますシンコム三号という衛星の中に搭載されますところの中継器、これはトランスポーターと申しておりますが、その周波数のバンドが非常に狭いために、先ほ
ども申しましたように、十分な画像を送ることがおそらく
——もちろん、これは、ヨーロッパのほうにおきましては、耐用に供するわけでございまするから、それに適当するだけの画像は送れる見通しはあるわけでございますけれ
ども、音声をそのままに、そのテレビの画像と一緒に送りますと、それだけ周波数の帯域をとられることになりますので、これは太平洋ケーブルによりまして音声だけを別に送るということにいたしましたならば画像が改善できるかということを
検討しておりまして、現在、その方向でひとつ技術的な
検討を進めております。
それからさらに、
NHKにおきまして、世界で初めての、画像の質を改善する方式を、すでに大体の試作を経て現在
検討済みのものがございます。これは実は、リレーとかテルスターのように短時間にしか使えない
放送の場合を
考えまして、十五分間の
放送を三十分間に引き延ばすというようなことを
考えてつくったものでございますが、これは、周波数のバンドの狭いものを大きくするというようなものにも同時に使える原理のものでございますので、これは現在、
NHKのこの設備を、日本側及びアメリカ側においても、
NHKがこの受信設備を持っていってそれを置くと、そうして使うという契約の内容になっております。これによりまして、走査線の数を少なくいたしまして一本置きにいたしまして送ると、それを向こう側におきまして大体想定して、その飛び抜けた走査線の信号を電子計算機が大体推測いたしましてこれを再現するというような方式でございまするが、これによりまして相当画質が向上するのではなかろうかということで、この画期的な試みも今回の契約の中にもございまするが、目下、製作会社において製作をいたしております。九月ごろに受信側の装置だけはアメリカ側に送って、おそらく、
NHKの要員が向こうに行ってこれが
運営にあたることと思っております。
何ぶんにも非常に短期間の間におきましていろいろな設備をいたしておりますので、技術的には相当むずかしい点がございます。八月中に機械が
完成いたしましたならば、直ちに鹿島にこれを据えつけまして、同時に、そのころに上がりましたシンコム三号、これは日本においては、もちろん全然いままで経験がないものでございますけれ
ども、これを使いましての実験を行ないまして、ただいま申しましたようないろいろな方式のうち一番いい方式を、直ちにそこで実験の結果、採択いたしまして、その一番いい方法によりまして、少なくとも、この二十日間の間、毎日一時間
程度のものをアメリカに送る。同時に、アメリカからは、先ほど申しましたように、これをEBUに送るというような形によりまして、日本の東京のオリンピックの中継が、
開会式はなま中継、そのほかのものにつきましては、
NHKの収録いたしましたものを、飛行機に乗るよりもはるかに早くアメリカ及びヨーロッパに送ることができる。それによりまして、日本というものの宇宙通信
関係の技術というようなものの非常に進歩していることも海外に十分伝えることもできましょうし、同時にまた、日本におきまして行なわれているこのオリンピックの状態というものが、非常に短期間にアメリカもしくはヨーロッパに送られて、茶の間において見られるということは、国際間の親善、あるいは国際感情の交流というようなものにつきましても、非常に意義があるかと思いますので、今後、
関係全員を集めまして、これが施設の建設並びにこの
運営につきまして万全の
対策をとりたいというふうに
考えて、目下準備を進めておる次第でございます。
以上でございます。