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1964-03-12 第46回国会 参議院 大蔵委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月十二日(木曜日)    午前十時四十二分開会     —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     新谷寅三郎君    理事            柴田  栄君            西川甚五郎君            成瀬 幡治君            渋谷 邦彦君            天田 勝正君    委員            岡崎 真一君            川野 三暁君            栗原 祐幸君            佐野  廣君            津島 壽一君            鳥畠徳次郎君            林屋亀次郎君            日高 広為君            堀  末治君            木村禧八郎君            佐野 芳雄君            柴谷  要君            野々山一三君            鈴木 市藏君   国務大臣    大 蔵 大 臣 田中 角榮君    労 働 大 臣 大橋 武夫君   政府委員    大蔵政務次官  齋藤 邦吉君    大蔵大臣官房財    務調査官    松井 直行君    大蔵省主計局次    長       澄田  智君    大蔵省銀行局長 高橋 俊英君    大蔵省為替局長 渡邊  誠君    労働大臣官房労    働統計調査部長 大宮 五郎君    労働省労働基準    局長      村上 茂利君    労働省職業安定    局長      有馬 元治君   事務局側    常任委員会専門    員       坂入長太郎君   参考人    日本輸出入銀行    総裁      森永貞一郎君    日本輸出入銀行    理事      斎藤 正年君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○印紙税法の一部を改正する法律案  (内閣提出) ○日本輸出入銀行法の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付) ○外国為替及び外国貿易管理法及び外  資に関する法律の一部を改正する法  律案内閣提出)     —————————————
  2. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ただいまから大蔵委員会開会いたします。  印紙税法の一部を改正する法律案議題といたします。  前回に引き続き、本案質疑を行ないます。御質疑のある方は順次御発言願います。——別に御発言もないようでありますから、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。印紙税法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  5. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 全会一致と認めます。よって、本案全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  7. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 次に、日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案議題といたします。  前回に引き続き、本案質疑を行ないます。御質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 簡単に申し上げて御答弁をいただき、明らかにしておきたいと思います。  その第一は、今回相当出資をするということになっておりますが輸出振興のために出資が多くなるだろう、またそういうことはやむを得ないだろうということは、私たちもばく然とわからぬわけではございませんが、しかし、金額を切ってお出しになる以上は、それ相当根拠があるだろうと思うので、その点を最初に承っておきたいと思います。
  9. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 出資の額をきめます根拠は、三十九年度の場合で申しますと、輸出入銀行融資の総額が幾ら要るかということを概定いたします。これは非常に厳格な意味でははじけないわけでございますが、予想でございます。しかし、それは現在の船舶なら船舶受注状況というものがございますから、そういうものを勘案いたしまして、来年度の場合ですと千六百億円程度貸し出しベースで概定いたします。これに対しまして、輸銀回収金その他自分でまかなえるものを除きまして、政府からそれだけの資金手当てが必要になるわけでございます。その資金手当てをいたす場合に、借り入れ金資金運用部から六分五厘の金利を付して借りることになります。問題は、その輸出入銀行運用利回りでございます。この運用利回りが、平均いたしましておおむね四分四厘程度になっております。で、借り入れ金金利は六分五厘でございますので、借り入れ金のみではとうてい収支が償えないということになりますので、その場合に必要な借り入れ金とこの出資割合をはじくわけでございます。その結果、資金のコストが大体その四分四厘という平均の運用利回りに見合うように、つまり赤字にはならないようにということを勘案いたしまして、出資の額を定める、こういうやり方をしておるわけでございます。
  10. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 いままでは、法律をそのつど改正をしておったわけですけれども、今回は、予算の定める範囲内、こうなるわけですね。そうしますと、国際収支の問題等いろいろな意味合いにおいて、その応急の措置をとろうとかりにした場合に、委員会を開いて法律改正をやったほうが早いのか、国会開会中ですから、どっちみち補正予算を組んでやるほうが早いのか、どちらのほうがスピードがいいのか、事務的にいえば、どちらがより効果的か、能率的かということも、私は大切なことだと思うが、それをあえて予算でやったほうがいい、こういうふうに考えられた根拠はどこにあるのですか。
  11. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 従来の方式でございますと、この不足する出資追加しなければならぬという場合には、実は、法律改正案補正予算案と両方を国会に提出しなければならないのでございます。今度の改正案のようになりますと、補正予算はどうしてもこれは必要でございます。どうせ国会がなければこれはできませんので、法律案は必要ないが、予算案としてはどうしても国会の御承認をいただかなければならぬ、こういうぐあいになります。
  12. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そうすると、いままでは法律予算と両方必要だったのを、今度は予算だけでやるのだ、法律のほうは省略すれば簡単にやれる、だからこういうかっこうでやるということなんですね。
  13. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 手続としては、予算一本のほうが簡単であることは間違いありませんが、しかし、これは国会の御審議をなるべく節約しようという意図に出るものではございません。
  14. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 予算委員会で、輸銀出資をされるのに、今度は幾らになるかというようなことを、いままで過去に審議した例がありましょうか。たとえば分科会等でそういうことに触れた例がございましょうか。
  15. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 分科会等におきまして、出資の額がその額でいいのかどうかという数字の問題ではなくて、ちょうどこの大蔵委員会におけるごとく、輸銀そのもののほかの全般的な問題について御質疑はしばしばありました。
  16. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 それから、この前も若干問題をお聞きしたわけですが、あなたのほうで今度、ある国が国際収支上の理由からどうしても払えない、だから、今度は国がその相手肩がわりをするといったら、その国に対して輸銀肩がわりをすると、こういうような改正をすると、こうなっておるわけですが、この前聞きましたら、そういうような国が予想されますかと言ったら、あんまりないような話であったわけです。そこで、もう一度確認をしておきたいと思いますが、もう現にこの法律案が通ったら、まだ相手国から申し入れがないかもしれませんけれども、そういうことがあるとすればあるいは事前にきっと連絡があるから、早急にこういうような措置がとられるであろうと予測されるようなところがあったら、およその額と、そして相手国はどんな国だというような点を御説明が願いたいと思います。
  17. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 先日お尋ねございましたときに、法律案をつくるときに具体的なそういう要請があったことはないということだけ申し上げまして、実はそういう具体的な要請はございませんけれども、私ども過去の経験に徴しまして、おそらくそういう必要が近い将来に出てくるであろうということを考えまして、この肩がわり改正案をお願いしておるわけでございますが、いま成瀬委員の、具体的に、ではそういう可能性を考えられる国があるかどうかというお尋ねにつきましては、ごく最近になりまして、わが国に対する正式の要求はまだございませんが、ブラジル国際収支上の理由によって支払い延期の提案、要請主要債権国に申し出るような気配がきわめて濃厚となっておるということを聞いております。これは以前にも実はブラジルにやったわけでございます。ただ、ブラジルの場合には、たまたまあすこにウジミナス等がございまして、それに対するこちらから貸し付けをする、つまり外貨による貸し付けが行なわれまして、それでこちらの日本に対する債務を支払うというふうなことをやりました。しかし、問題は、アルゼンチンの場合にやったのは、輸銀肩がわり法律がございませんので、たまたま民間の一商社の分が繰り延べ決定額に見合っておりましたので、その商社が結局つないでおった。商社に対しては輸銀はそれだけ繰り延べているわけでございますが、相手国政府国際収支上の理由に対して日本の一民間商社繰り延べ債権を持っておると、こういうふうな状態が現にあるわけでございます。このようなことは非常に好ましくない。たまたまそのときには、金額がその商社取り扱い分と一致したわけでございますからいいのですけれども、そうは参らぬわけでございます。何社かが今度は繰り延べ債権を持つということになるのははなはだ不自然じゃないか。これはこの場合に輸銀がやはり肩がわりする、つまり輸銀相手国政府に対しまして貸し付けをしまして、その金をもって日本商社等に対して相手債務は全部支払う。ですから、民間のそういう債権は一応なくなって、輸銀肩がわりする、こういうすっきりした形になる、こういう趣旨で今回の法律改正をお願いしたわけでございます。具体的には、そういうふうなブラジルにおける主要債権国会議が催されることが遠くないのじゃないかというふうなことを承っております。
  18. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 こういう、私は一つ輸出するときに、外貨というか、だからまあ返らないかもしれないけれども、こういうことも日本政府としては受け入れる用意がある、法律改正も整っておるから、だからひとつうんとあんたのほうはおやりなさい。こういうことをやればできるのだから、まず日本でいえば輸出、向こうでいえば輸入、こういうことでやりなさい、金がなければひとつどんどんこういうことでやっていったらいいじゃないかというふうに進められる。しかし、相手国は御案内のとおりにインフレとかいろいろなことがありますから、日本へどんどんかりに申し入れが来たとしますね、そういうときに、ある一定限度額、あるいは一定基準を設けて、それはいい、これはいかぬよというようなふうにやられるものなのか。あるいは一〇〇そういうものがあったら、半分だけにするとか、あるいは四〇にするとかというような措置がとられることになるだろうと思うのです。ですから、問題は、そういうようなことをどんどんと進められはしないか、それが一つには輸出振興だという大義名分が立つだろう。それに対して輸銀のほうとしては、これでよろしゅうございますとかなんとかという一つ基準というものがなければならぬ。一〇〇%のんでいく用意があるのか、それともある一定のワクに押えられようとするのか、その辺のところのものはどうなっていますか。
  19. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) もし繰り延べ、非常に債権肩がわりを安易に認めるといたしますと、お尋ねのような心配のことが起こってまいると思います。輸出は主として民間商業ベースで行なわれますから、相手国国際収支上の状況いかんにかかわらず、どんどん輸出をしてしまって、そうして最後は肩がわりするんだと、そうすれば自分は損害を受けないということで、不良の債権が増加するおそれがあるわけであります。  そこで、今度の改正案におきましては、その点を縛っております。条文、別の条文でございますけれども主要債権国、つまり非常に金額の少ないものは除きまして、主要な債権を持つところの債権国が集まりまして、その国を相手にいたしましていかなる程度まで繰り延べに応ずるかということをきめるわけでございます。ですから、日本もそのときには債権国会議の中に入りまして、その交渉に参画するわけでございます。日本だけの、日本政府だけの考えではやらない。他の主要なる債権国がここならこの程度まではやむを得ないと同意した範囲におきまして、その同じ割合日本繰り延べを行ない、その分を輸銀肩がわりをする、このようにして大事をとっているわけでございます。
  20. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そういうような主要なる債権国の集まるようなことが、普通でいうと債権者会議ですね、そういうようなものがあるのか、もうすでにそういうようなことが議論されるような機関というものが現にあるわけですか。
  21. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) これは別に国際的な機関という形はとっておりませんが、パリ会議というふうな名前でありまして、特定の国に対する債権者のグループが一つのそういう仮の名前をつけまして、そのメンバーもきまっております。その連中が集まる会議を大体パリでやったものですから、パリ会議といっておりますが、今後の場合も、やはりブラジルアルゼンチンなどは同じような集まりになると思います。これはしかしはっきりした横の国際的な機関というわけではございません。主要債権者会議でございます。しかし、一つの慣行としてでき上がったと考えてもいいんじゃないかと思います。
  22. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 私は、パリ会議の、何というのですか、債権国としての主要な国はどんな国がございましょうか。
  23. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) ブラジルの場合で申しますと、西独フランスイタリア英国及びオランダの五カ国でございます。これは、ですから、わが国はこのときは入っておらないわけでございます。それから、アルゼンチンの場合には、フランス英国西独イタリアオランダ及びスイスの六カ国が参加しております。
  24. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 こういうものは、たとえば低開発DAC、そういうようなものとは全然無関係なんですか。何か少しは横の連絡はありますか、たとえばDACなんかのそういう機構とは……。
  25. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) これは必要のつどそういった会議が持たれるわけでございまして、横の連絡機構のようなものはございません。
  26. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 たとえば、いまここにあなたが、ブラジルとかあるいはアルゼンチンの五カ国ないし大力国という例でおっしゃったわけですか、大体はこういうところが肩がわりをするときに、大体政府機関における金利というものは、私は日本は四分なら四分になっているだろうと思うのですが、よそはもう少し低くないんですか。よその国は大体低利なんですから。
  27. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 金利の点、これは明らかでない点があるわけでございますが、わが国の四分という輸銀輸出延べ払い金利は、大体一般的な場合に比べて、各国の例に比べると、まず最低水準であると思っております。四分がもうほとんど最低水準である。これより安い金利をそういう場合に適用するというようなことはあまりなかろうと思いますが、若干はこれより少しむしろ高めであるというふうに思います。しかし、大体従来の延べ払いのときの条件金利においてはそのまま踏襲するというようなことになっておる場合が多かろうと思います。
  28. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 これは期間は大体どのくらいになりますか。
  29. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) これはアルゼンチンのこの前の事例を申しますと、一九六三年、つまり昨年と今年の暦年のこの二年中に支払い期限の到来した中期商業債権の五〇%を一九七〇年まででございますから、大体六、七年ということになります。それまで繰り延べするということになっております。ブラジルの場合は、六一年の六月以降六六年までに支払い期限が到来する中期商業債権の約六七%を七一年まで繰り延べる、こういうふうな交渉が行なわれております。
  30. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 これは実はこの前のときにお聞きしておって、えらい失礼をしましたが、今後パリ会議が継続的にといってはおかしいのですけれども、まだ連続的に持たれるであろう、そうしてその国はいまはブラジルアルゼンチンだということですが、まだほかの国に拡がっていくようなことは考えられますか。
  31. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) こういうことをうかつに予想いたしますと、相手国の名誉を傷つけることになりますので、言いたくはございませんか、国際収支上の状況が悪い、支払い準備が少いわりあいに債務が非常に多いという国はございます。そういった国については、やはりそういう主要債権国会議のようなものが催されることはあり得ると思います。日本がその点で相手国になりますといたしますれば、日本に関係の深い国、インドとかパキスタンという国は非常に長期の債務が多いわけでございますが、自由主義陣営のみならず共産主義陣営からも相当の負債がございます。これはむしろ積極的に低開発国援助という形で先進国が音頭をとって貸し付けをしてまいったのでございますので、そういった事情も考えますと、今後金利その他の面についても支払いが容易でないということが予想されます。それをこのようなパリ・クラブのような形でやるか、あるいは別のもっと組織的なものができあがるかわかりませんが、やはり将来債務支払い援助ということは当然起こるのではないか。従来でも国別にはたな上げ等が起こっております。それらの国については、ある特定の国の債務をたな上げすることについて、現実にやられたという例は幾つかあるように聞いております。
  32. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 低開発国後進国家に、たとえば食糧銀行とか食糧倉庫とか、何か世界的なそういうものをつくってくれとか、おれのほうの第一次産品を買えとか、そうでなければ国際収支があぶないとか、いろいろな要求が出てくると思うのです。今後、後進国家のほうが横の連絡をとりつつ、いろいろな形で先進国家と目される国に対しての働きかけはあるであろうが、日本は片一方では低開発国の問題があって、日本の国は先進国家の仲間でいえばあまり熱心じゃないんじゃないかというような批判も出ておると聞いております。そういうものに対処して、これから日本もいろいろと手を打ってやっていかなくちゃならぬと思うが、そういうような場合に、この今回の改正はそれに対処する一つの大きな役割りというか、ささえをするものなのか、そうじゃなくて、そういうような形については別途ほかの方途を講じてやられようとするのか、これは先の話になってまいりますから、そのときにならなくちゃわからぬじゃないかとおっしゃればそれまでだと思いますが、まあ国際的な情報等は私たちよりもあなたたちのほうがキャッチしやすい立場にあるから、事前措置というようなものも私は考えられておるんじゃないかと思っておりますが、そういうような点についてはどういうことでございましょうか。
  33. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 確かに先進国の、従来でもそうですが、日本の場合OECDへ加盟するというようなことになりますと、やはいままでの対外援助額についてもそれぞれいろいろと批判を受けるわけでございますが、やはり先進国について対外援助をしなければならないという問題がございます。また一方で、ブラジルアルゼンチンのように、外貨事情はよくないということがわかっておるけれども各国相当輸出をそれに対して行なっている、延べ払い抽出をあえて行なうというような状態のときに、日本外貨状況があの国は悪いからやらないんだというようなものではない。そういうような低開発国あるいはそういったブラジルアルゼンチンのような国との経済交流というようなものにつきまして、外貨事情のみの理由で非常に消極的になってしまうわけにはいかない。他国の出方を考えてやらなければならぬし、いろいろな無理なこともあえてやらなければならない状態にございます。そういう場合に、必ずや、最初民間商業ベースで行なわれた延べ払いについて、それが円滑に支払いができないというような事態が出てくるであろう。そういう面をこの肩がわりの制度によって裏づけをしておくという必要があると考えました。さらに、積極的に、たとえばインドパキスタンのような場合に何か新しい貸し出しをどんどん追加していくというような形で、ある程度はそれによって旧債を支払わせるというか、方法がとられる場合もございます。必ずしもこの条文によるんじゃなくて、別の方法で円借が追加せられる。また、同じようなことが先進各国からそれらの国に行なわれまして、その結果総合して支払い余力が生ずる、こういった解決方法もあるかと思います。この条文のようなことだけで、それで解決できるとは思いませんけれども、かなりその点においては重要なものではないかというように私どもは考えておるわけでございます。
  34. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 他に御質疑はございませんか。——発言もなければ、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。  なお、修正意見がある方は討論中にお述べを願います。
  36. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 私は、日本社会党を代表いたしまして、本案に対して、次にお示しをいたします修正条件として、賛成をいたします。  本案が、円借款における市中銀行協調融資分について債務の保証を行ない、または国際収支上の理由から債務繰り延べ等を必要とする国の政府に対して必要な資金貸し付けを行なおうとしておりますことは、わが国輸出振興上必要な措置であり、適切だと考えるのでありますが、しかしながら、追加出資の規定を改めようといたしております点については賛成することができないのであります。  現在、日本輸出入銀行への出資追加は、そのつど資本金額改正を要する法律事項となっておりますが、政府は今回これを改めて、今後は政府が必要と認めるときは予算で定める範囲内で出資追加ができることとしております。その理由とするところは、予算審議において審査の機会もあり、また日本輸出入銀行のごとく資本量の増加に伴い金利借り入れ金との逆ざやを埋めるため必ず出資を行なわなければならない機関においては、法令の形式としても一々法律改正を要することは妥当でないというのであります。しかしながら、予算委員会における審査は、問題のとらえ方が大きく、分科会においてもその時間的な制約等もあって、それぞれの機関について十分審議を尽くすことはできないというのが過去の実例でもあると思うわけでございます。また、法制上の整備ということでありますが、輸銀への追加出資は当初から行なわれております。最近急に出資追加が多くなったわけではありません。  私たちといたしましては、輸銀への出資が公正な事業計画に基づいて行なわれ、特殊な政治的な配慮に基づいて出資金の増額が行なわれてはならないと考えます。したがって、輸銀事業計画または業務の内容についても、予算審議だけではなく、さらに別にこのような内容についての審査の機会を与えられる、すなわち従前どおりのほうがより妥当であると考えられるわけでございます。輸出振興上特段の効果があるとも考えられないこのような改正が、今日急に行なわれようとしておる真の理由は、業務の実態について審査の機会をなるべく少なくしようとする意図ではないかと想像されるのであります。  以上の理由によりましては、私はお手元にお配りしてあります案のとおり、出資追加は現行どおり資本金額改正を要するものとして、第四条改正規定を削除していただきたいと思うわけでございます。
  37. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 私は、日本共産党を代表して、日本輸出入銀行法の一部を改正する法案に反対をします。  この法案に反対する理由は、第十八条に新たに設けられました第九号についてであります。日本輸出入銀行をいわゆる開放経済体制に即応させるものとして、このような条項が新たに設けられたと思いますが、これはやはり日本独占資本の海外市場進出の先兵として、より全面的な奉仕の機関に仕上げようとしたところにねらいがあると思っております。政府は、OECDへの加盟、IMF八条国への移行によって、貿易・為替の自由化の総仕上げをしようとしておりますが、自由化によってすでに日本の産業と国民生活に重大な打撃を受けていることは周知のことであります。このことは日本の貿易の平和的、自主的発展の方向とは逆行しております。で、池田内閣は輸出入銀行にまさに血道をあげるといってもいいほどの政策を強引にとってきておりますが、それはアメリカの独占体に従属した範囲内における政策でありまして、東西の貿易の拡大に対する世界的潮流とわが国民のこれに対する切実な要求があるにもかかわらず、主義諸国との平等互恵の立場に立つ貿易については積極的な政策をとろうとしていません。アメリカの反共戦略とドル防衛に協力を誓わされて、自主的、平和的な貿易政策の方向をますます今日困難に追い込んでいるとしかいえません。で、政府当局は、この法改正がOECD加盟とは何ら関係がないように言っておりまするが、それは法文上の解釈にすぎません。実際には第九号の新設は、日本の独占資本が海外市場獲得のために不当不要な延べ払いを行ない、不良債権となったものを国民の血税をもって政府肩がわりしようとするものであり、その制度化をはかったものがこの法改正のねらいの一つであります。このことはますます冒険的な輸出政策と冒険的な財政処置に追い込むものと言わなければなりません。  反対の理由の二は、第四条第二項に示す国会における審議権の制限であります。財政民主化の方向にさからうこのような法改正には、私たちは反対であります。
  38. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  39. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案について採決に入ります。  まず、討論中にありました成瀬君提出の修正案を問題に供します。成瀬君提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  40. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 少数と認めます。よって、成瀬君提出の修正案は否決せられました。  それでは、次に原案全部を問題に供します。本案賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  41. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって可決すべきものと決定いたしました。  なお、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、ご異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  42. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  午後一時に委員会を再開することにいたしまして、暫時休憩いたします。    午前十一時十六分休憩      —————・—————    午後一時三十三分開会
  43. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ただいまから委員会を再開いたします。  外国為替及び外国貿易管理法及び外資に関する法律の一部を改正する法律案議題とし、本案に対する質疑を続行いたします。  田中大蔵大臣が出席されておりますので、御質疑のある方は順次御発言願います。
  44. 津島壽一

    ○津島壽一君 時間の制約もあることですから、なるべく簡単に質問いたします。と同時に、大臣にも慎重に、また簡約に御答弁をお願いいたします。  昨日のIMF理事会において、日本がいよいよ八条国に移行するということが承認、決定されたというニュースがあったのであります。それにつきまして、これは非常に私はいいことで、喜んでいる。ここまでもってくる大臣、また関係当局のお骨折りは、非常に多として敬意を表するわけです。しかし、同時に、こういった新しい事態というか、段階に入った場合に、よほどの決心をもってこのあとのことを企画し、施策しなければならぬという感慨を深くする。  これはまあ時間をとるから、言うのもどうかと思いますが、往年、昭和の初めに金解禁をやった。これはもう各国がやって、日本が一番おくれて、最後だった。その金解禁の結果はどうだったかということは御承知のとおりで、申し上げませんが、わずか一年半でこれが崩壊したというわれわれは苦い経験を持っておるんです。もちろん、その当時の政府当局が悪かったとは私は申し上げません。世界経済全体が未曽有の不況であったというようなこと、また英国が金本位を離脱したというような、大きな世界の情勢が、これはそういった結果になったと思っておるんです。しかしながら、私も、いまから冷静に判断して、また私はその渦中にあったんですが、それから判断して、どうもあの時代のあの大きな仕事には準備が足りなかったということは、これは冷静に見て私は批判していいと思うんです。そういった意味において、今回のいわゆる開放経済体制というような大きな変転をもたらす時期に、政府としては十分準備をなさったに違いないと思うんですが、これから起こるべき経済の異動その他国内関係、これはよほど大きな決心々もってやられないと、途中で非常な難局にぶつかるということが予期せられないとは私は言えないと思うんです。そういった意味において、私は非常にけっこうなことだといって喜ぶとともに、非常に重大なる責任がここにかぶさってきた、こういうのが私の率直なる感想でございます。  そこで、きょう上程された法案は、外国為替及び外国貿易管理法及び外資に関する……というのでありますが、何といっても、自由経済、また、八条国移行に伴う義務を遂行するのには、国際収支というものを安定して、これに憂いがないようにしないと、非常に政策がやりにくいと思うのです。でありまするから、この法律案の内容についてお伺いするということはあと回しにしまして、国際収支ついて大臣の見通しをお聞きしたい。三十八年までの計数は大体持っております。しかし、大事なのはこれからの国際収支の見通しでございます。三十九年度は、大臣はどういうお見通しを立てておられるか。ただ抽象的に何とかやっていけるというようなものでなく、これは具体的にいえば、三十八年ははっきりしておるから、それと比較してどういったような増減があるかというようなものでも、大体の見通しを立てておられると思うから、それをお聞きしたいのです。それにつきましては、はっきりお伺いする、何というか、カテゴリーというものがありますから、まず貿易上の関係、それから貿易外の収支状況、主としてしりがどうなるかということでけっこうでございます。三は、資本取引です。外貨の借金——短期、長期を含めて。この三つの項目に分けて、大体のお見通しをひとつ承りたい。  これは、予算委員会その他本委員会でも、だいぶ質疑応答があったと思いまするし、あるいは重複するきらいがあるかとも思いますが、ここでこのIMFの決議を受けた機会に、ひとつあらためて大臣から、ここで確認する意味において、その見通しをお聞かせ願  いたいと思うのでございます。
  45. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 三十八年度の末すなわち今月の末の外貨準備高は、前から申し上げておりますとおり、十七億五千万ドルないし十八億ドルという政府の当初の見通し程度状態で年度を終わるというふうに考えておるわけであります。三十九年度一ぱいにつきましては、輸出輸入六十二億ドルということでございます。経常収支じりにおきましては、貿易外の五億五千万ドルの赤字を想定しますと、貿易外収支じりにおける五億五千万ドルが経常収支じりの赤字になるわけであります。それから、資本収支につきましては、四億ドルの黒字を見込んでおります。長期資本収支二億五千万ドル、短期一億五千万ドル、計四億ドル、こういうことでございます。で、総合収支じりにおきまして、一億五千万ドル程度外貨が減るであろう、こういう考え方に立っておるわけでございます。  輸出の六十二億ドルは、これはもう常識的なお考えとして、まあ大体政府もこれを達成できるだろうということを考えております。輸入の六十二億ドルというものに対しては、どうも今年度ももうすでに五十七、八億ドル、六十億ドルに近い輸入が行なわれておるのでありますから、六十二億ドル一に対しては少し低目ではないかということがいわれておりますけれども政府としましては年率九・七%、実質七%の成長に押えていきたいという考えでありますので、まあ輸入を六十二億ドルに近い数字で押えるように努力をしていきたいという考え方でございます。多少、輸入が少しよけいになるともし想定をいたしましても、資本収支において四億ドルの黒字を見ましたことは、これは資本収支じりは四億よりも多少よくなるであろうという見通しでございます。これは御承知のヨーロッパ市場等で外債の見通しもいまのところ非常に明かるい見通しがついておりますし、またアメリカ市場においてもインパクトローン等によって出初所期しましたものよりも流入が多いということもございますので、政府が当初発表いたしました総合において一億五千万ドルという赤字で大体過ごすことができるであろうという考え方でございます。
  46. 津島壽一

    ○津島壽君 貿易と資本収支の関係ははっきりわかりました。貿易外だけとりまして、その計数をどれくらいに見通しを立てておられるか、その点がなかったように思いますけれども……。
  47. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 貿易外につきましては五億五千万ドルの赤字を見ておるわけでございます。これは三十八年度が四億一千万ドル、それから三十七年度が二億二千五百万ドルということでございますので、三十九年度はどうしてもこの程度にはなるであろうという数字を出しておりますけれども、この貿易外収支の改善——五億五千万ドルをこすことのないように、できれば少しでもこれを少なくするように、新しい角度から、外航船の建造その他あらゆる角度から貿易外収支の改善について具体的な施策をいま考究中でございます。
  48. 津島壽一

    ○津島壽一君 貿易の関係はしばらく問題をおきまして、いまの貿易外と資本収支の関係について、ちょっとこまかくこの際立ち入ってお伺いしたいと思うのです。  これは非常に私はいやなことで、貿易の入超は、これはもう日本の経済の機構と申しますか、いままでの歴史が入超をずいぶん続けてきておるという事実がある。きわめて例外のときに出超というものを見たということは御承知のとおりであります。したがって、過去もう何年間も国際収支の調整の問題で苦労してきたのは、大きな入超を貿易外の受け取り超過でカバーしていくと。全額にならないまでも、とにかくこれは一つの調整の効果があったということは、これは歴史が示しておる。ところが、最近の状態で非常に私ども心配しておるのは、貿易はいまおっしゃたように、たいした増減なしにくるだろう。ところが、貿易外においては、もし私の持っておる計数に誤りかなければ、ただいまの、今年度の貿易外が五億五千万ドルということは、これは最後の収支のいわゆる暦年の計数で考えますと、どうも三十九年度予算は、今年度は貿易外収支は赤字がふえるというようなことに了解していいのでしょうか、ちょっとその点をお伺いしたい。
  49. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 貿易外の三十七年度が二億二千五百万ドル、三十八年度が四億一千万ドル、三十九年度は五億五千万ドル、こういうふうに見ておりますので、特需等も減るという想定をしておりますので、輸入、それから輸出貿易の量も五十五億ドルから六十二億ドルに伸びておりますので、これに付帯する経費その他を考えますと、貿易外収支の赤字幅が多少拡大する、こういう考えに立っております。
  50. 津島壽一

    ○津島壽一君 そこで、内容にちょっと立ち入って増加するという事情をお伺いしたいのですが、貿易外収支の問題は運輸の関係とか、あるいは手数料とか、その他特許権の使用料とか、海外旅行といったようなもの、その他のものも相当大きい金額なのでありますが、どうもこの傾向は非常に私はおもしろくないと思うのですね。貿易の入超ということは、これは経済発展のための原料等の輸入が増加するということは非常にけっこうなことである。しかし、貿易外の収支の上において特に何というか、大きな種目というか、項目になると思うのは、外国に対する利子ですね、手数料とか、その他特許料であるとか、海外漫遊の経費ですね、これが増してくる傾向にある。今後もこれはなかなか抑圧できぬ問題じゃないかと思います。経常的の収支の取引について為替の制限ということはこれは困難なんですから、もしそういった傾向があれば、私はいまの外貨というものが、これは一億五千万ドル減るというくらいの程度だというけれども、これは将来にわたる非常に大きなマイナスになるだろうということを心配するのですね。  そこで、これらに対して本年度、つまり三十九年度におきましても、これは増加はしかたがないのだということで、こういった五億ドルなんという計数が出るのであるか、また一つ大きなアイテムは、三十九年の見通しにおいても四億ドルの資本取引、外債発行でつじつまを合わすというような結果になるとすれば、過去の外資輸入による利子支払い、またこれは引き続きおそらく四十年度も情勢がいいから発行ができるだろうというお話ですから、これは外資導入をやり外債の利子を払うのは、非常に貿易外の毎年度の経常支払いが起こるということを予期しなければいかぬ。これは避け得ないものだと思うのですね。そこで、そういった事情がもしあれば、これは往年の非常に難局のところへ、同じところへ行くのじゃないかと思います。これは申し上げるまでもなく、明治以来、大正、昭和の始まりにかけてわれわれ苦労したのは、大きな外債をしょい込んで、貿易外収支で何千万というか、そのときの通貨の価値もありますが、それをカバーするのに外債を発行して、そうして国際収支というものを調整してきたのが歴史なんですね。外国の資本のいわゆる導入ができるからといって、これをやるということのいいか悪いかということの問題です。  そこで、従来、国際収支が悪くなった時分の過去の歴史を申し上げる時間もありませんが、外資の導入は抑制するという方針を立っているのです、その当時に。これは非常にむずかしいのです。そうしていわゆる貿易外の収支というものを何というか改善し、貿易に対して——これは貿易は自由貿易ですから、貿易を抑制するということはできなかったので、大正、昭和の八年までというものはその程度でやってきたのですが、どうもいまの国際収支、貿易外の内容が、どうもこれは将来に累を残すような方向に向かっておるのじゃなかろうかという感がする。しかし、私は消極的な議論をするのじゃないので、外資というものが経済の発展に大きな貢献をするものだということは認めておるけれども、それをやるにしても、ほかの対策が広く伴わないで安易な考えでいくと、大きくこれがマイナスになって、ことに戦後外国で借りたいわゆる外債その他の外資導入ですね、この償還期が来るのですね。これをいまはまだそんなに来ないのですけれども、大体昔のよりは短期になっておりますが、昔のは二十五年、三十年の外債だから非常に先のことで、日本の経済変転するから、そこら辺で早いうちに——ところが、だんだん期近になると、これは貿易外の経常収支じゃなくて、資本取引の払いというものが大きくなるのですね、これはどかっと外貨を落としていかなければならないという問題になるのです。そこらは如才なくお見通しは立てられておると思うけれども、どうもすぐ外資導入で何とかできればやれるというようなことで、実際の元金償還の時期が来たときにはどかっと落ちるのです。これはもうわれわれ大正十四年に経験したのですが、第一回、第二回四分半外債三億五千万円パーの価格で、それが一挙に償還期が来たので、これはえらいことになってくるということであったのです。  まあその意味では、ほかの各項目について、いろいろ御努力になるというのですが、すべてこの各項目ほとんど貿易外収支の経常の項目というものはみんなマイナスですね。たとえば海外旅行、これは昨年はわずかといっては悪いかもしれぬが、七千六百万ドルくらいだったのですが、今度はかりに一種の制約を設けて、これはIMFに除外例として承認を受けて年に五百ドル一回という制限を設けてみましても、この金額を大体見ても、これは相当増加するだろうと。そういう観点からいって、利子は、当然これは対外利払いは増しますね。これは累積してきますから。そういうようなことを考えると、たとえば運輸というようなものは日本は例年プラスだったのですね。この項目の貿易外収支が毎年四億何千万ドルのマイナスになっておる。その他交互計算とかいろいろなものがありますが、どうも貿易外収支の各アイテムというものをやって、これが改善されるという見通しがはっきり立つものか。むしろ増すものが多いわけでありますね。そこに私は非常に、政府としてはよほどの決心をもってやらなければいかぬ。  私はその一例として、たとえば国産品奨励という問題が起こっておりますね、国際収支改善の一環として。これも政府はどういうことをやられたか、これは大臣からお承りしたいのですが、国際収支が非常に窮屈な時代には、浜口大蔵大臣は会計法を改正したのです。どういうことをやったかというと、官庁がいやしくも物を買うときには国産品を買え、これは自由契約でいい、また請負に出す場合においてはこれに使用する資材は国産品にせよということができるという会計法の特例の法律までつくった。しこうして、その法律の効果はどうかというと、これはちゃんと記録にも残っておりますけれども、それによって二億とかなんとかという節約もできたという報告書も、大蔵省の中に委員会ができてやったからあるのですがね。だから、もう少し何か手を打っていただきたいというのが私の希望であって、この問題については大臣も非常に御苦心だろうと思いますが、この前経済企画庁長官がここにお見えになりまして、この問題で同僚委員からもいろいろ御質問がありましたときに、貿易外収支の問題は、非常に重大だから、近く今月内に関係閣僚の懇談会を開いていってやりますということだったのです。それは運輸の問題だったと思いますが、問題は範囲が非常に広いわけでありますね。そういう意味において、これを何とか取り上げて、そうして改善する具体策をお立てになるということが、開放経済体制に向かう、これはまあ去年からやってもよかったことと思うのでありますが、いまからでもおそくないですから、私は大臣にそれをお考えをお願いしたいのですが、大臣はこの点についてどういうような抱負というか、御意見を持っておられるか、それを承りたいのですね。
  51. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) できるだけ早い機会に経常収支じりでバランスをさせたいということは、私もそのとおり考えております。  それから、貿易外収支の問題を考えますと、政府もいろいろ施策をやっておりますけれども、実際上の各項目別に見ますと、先ほど申し上げましたとおり、四億一千万ドルが五億五千万ドルに赤字幅が広がってくるという情勢にあることは御承知のとおりでございます。この中で大きいものは、特需が受け取り側が減ってくるというような傾向にある。それから同時に、八条国移行に伴いまして、観光等については今年度九百万ドルの黒字でございますが、相当量の今度赤字になる可能性もあると、こういうことであります。貿易も非常に大きな額にのぼりますので、貿易外の中で特に海運収入面等を見ましても、外航船舶の建造その他邦船の積み取り比率等も引き上げてはおりますけれども、急の場に合わないということであります。また、かくて戦前の外債の償還期限も来ておりますし、また、技術導入に対するロイアルティーの支拂い等もあります。元利の償還及びそういうものを含めますと、三億二、三千万ドル余になるわけであります。でありますから、どうもいまの状態ではこの貿易外収支の改善ということは非常にむずかしいというふうにお考えになっておると思います。また、政府もこの事実に目をおおうものではないわけであります。  でありますから、この三月十四、五日ごろから——いままでも国産品愛用とかあらゆることをやっております。やっておりますが、四月一日に八条国に移行するという機会に、ひとつ国民の協力も得ながら、政府もかかる方法をもって貿易外収支の改善という問題に対して政策を行ないたいという問題に対しては、ひとつ明らかにしたいということで、いま政府部内で検討を進めておるわけでございます。四月一日には総理大臣声明等も行なって、八条国移行に対し、また特に経常収支の改善という問題に対しては、具体的な施策等も掲げながら国民各位の協力を得たいというふうに考えておるわけであります。  戦前、非常に御苦労になられた津島先生のいろいろ示唆に富まれた御発言がございましたが、私たちも常に御高説を伺っておりますし、また歴史上に日本が非常に困った租借金政策のしりぬぐいということに対しての事情も十分考えに入れながら、外資導入政策を進めておるわけであります。確かに、あなたがいま言われたとおり、借金の支払いということで借金をしなければならない自転車操業ということを考えると、借金はしたくないというのは事実であります。が、しかし、戦後、すべての資本をゼロの状態からわずか十八、九年で立ち上がってきた日本としては、開放経済に向かってどうしても将来百年のためには良質、長期の外資を入れなければならぬということも、これまた避けられない事実であります。昭和二十五年まで外資が入らなかった時代の日本の経済成長率、またわれわれの生活、また貿易に道を開き、海外との交流を始めながら外資の導入をはかってきたその後の状態を考えると、これはやはり自分の金だけではできないわけであります。これも無視することのできない、否定することのできない事実であります。でありますから、私たちも借りたものは必ず返さなければならない。その返す時期において返し得るほどの国力の培養ができるかというバランスは十分考えて、外資の導入をはかっておるわけであります。が、しかし、国内においてもオーバー・ローンの解消、同時にオーバー・ボローイングの解消を政府自体も民間も積極的に考えておると同時に、日本自体が外国に対するオーバー・ボローイングということに対しては考えていかなければならない。考えていくからといって、何もできないというのでは困りますので、国内において資本蓄積、貯蓄の増強、消費の抑制という問題とまつ正面から国民にやはり取り組んでいただいて、政府自体もかかる施策に対して勇敢に前進的な方策を掲げて、戦後の西ドイツ、か自国資本によって今日を築き上げたような、そういう受け入れ態勢をつくりながら、外資をできるだけ押えていくという方向をとらざるを得ないわけであります。  一番最終的な問題をもう一点申し上げますと、しかし、そうは言うけれども、それは理屈の上であって、先輩としてかつてその三億五千万余にのぼる大きな金を、相当大きな金を払わなければならないときに非常に苦労した。これは非常に私わかりますが、ただ当時の時点と違いますのは、国民所得の中で一般会計を含めた財政規模を検討しますときに、戦前は御承知のとおり相当大きな軍事力、軍事投資があったわけであります。それに比べて防衛費というものは非常に少ない状態でありますので、戦後そのような違い方によって経済が非常に大きく伸びた。でありますから、外資の導入というものが、国民経済の基盤確立と輸出の増強にほとんどが使われておるという事態を考えますと、必ずしも、戦費を調達した当時とは多少違うわけでございます。でありますから、私たちも過去の歴史を十分参照しながら、慎重な態度はとっておりますけれども、外資を得て国際競争力が培養せられて、これが返還期にくる場合には必ず元利の償還ができ、しかもそれによって貿易外収支の長期安定をはかろう、こういう考え方でありまして、津島先生のような御専門の先輩からはいろいろ御忠告があると思いますが、皆さんの御忠告等を体しながら慎重な態度でやってまいりたい、このように考えます。
  52. 津島壽一

    ○津島壽一君 時間が超過したようですから、最後に、それでは新聞記事ですが、IMFのゴールド・トランシュ、スタンドバイ・クレジットと言っていますが、あれの三億五百万ドルということでございますが、あれは借し入れの予約というか、現実の外貨の計算の中に記帳するということは、実行のつど入れるというような方針でございましょうか、どうですか。
  53. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 御承知のとおり、IMFの日本外貨準備の統計には、もうすでにゴールド・トランシュ分一億八千万ドルは加算されております。アメリカその他の先進国はそのようなことをやっておりますが、いままで大蔵省のやり方が非常によろしくないと言われればそれっきりでございますが、しかし、諸外国でもってゴールド・トランシュ分を全部外貨準備に入れておる分を、これを日本は入れておらなかった。これは健全財政上国民に訴えるという姿勢からも入れておらなかったわけでありますが、四月一日から八条国に移行いたしますので、これを機会に三月三十一日の外貨準備にはゴールド・トランシュ分の一億八千万ドルは加えたい、加えることによって外貨準備を厚くして、開放経済に対する前進的または積極的な体制を整えたい、このように考えております。
  54. 津島壽一

    ○津島壽一君 時間をちょっと超過しましたので、お許し願いたい。  それで、それに関連して、私の感想的なことばでありますが、あまりこの外貨準備の計数の増減に、非常などん底にいけば別ですが、いまの程度外貨準備が減ったあるいは増したから、またうんと増したから、もう二十億になるのだとかいうようなことは、私はあまり必要ないと思う。これは日本の経済というものの準備が、外貨債権が準備だというそういう観念は形式的なものであって、したがいまして、これは言い過ぎかもわかりませんが、よく国民に実情は知らせなければならぬが、増したからといってよくなったとか、少し減ったから、預金の残高がちょっと減ったからといって、われわれ会社、かりに会社として、私の会社はだいぶ悪いのだとか、預金が増したから何はこのくらいあるということは、私は問題ないと思うのです。しかし、これは大きいほどいいのであって、少ないほうがいいという意味ではないのですよ。したがいまして、万一そういったような、もう記帳すべきものが記帳されなかったというのは私はりっぱな態度だと思うのですよ。しかし、時期をちょうど開放体制の発足する時期にそれをつけかえるということで、いわゆるウインドー・ドレッシングと申しますか、それが国民に安易な考えを与えるという結果が起これば、これは害があると思う。だから、少なくとも貧乏しておるけれどもわれわれかせいでやるのだというそういった気持ちを、国民の協力というものはそういう苦難のときに集まるので、安易な考えを示すと安易な考えになっていくということで、協力というものはあまりやってこないと思う。その点は心理的な問題であって、大臣如才ないと思うのですけれども、あまり外貨の準備が、三千万ドル先月減ったということは、あまりこういうことには神経お使いにならないほうがいいのではないかと私は思うのですが、いかがですか、ほんとうのお考えは。
  55. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 私も、外貨準備高が減ったりふえたりするような、毎月毎月の統計に神経をすり減らしていくという考え方は間違いだという考え方をとっております。  私たちがゴールド・トランシュ分を外貨準備に加えるということは、当然加えるべきものであったけれども、ざっくばらんに申し上げますと、大蔵省流の超健全財政ご加えなかった。これはIMFの統計にも入っているじゃないかという議論をされておりながら、現在まで一億八千万ドルをIMFの統計では国際統計として各国に提示をしながら、日本政府として発表する月末の外貨準備高にはこれを加えなかったわけであります。今度は、いままでは大蔵省いろんな苦労もしてまいったわけでありますし、また御心配を受けるようなこともあったかもしれませんが、八条国移行というときですから、これは成年式という立場もありますが、いままでのような状態ではなくて、ゴールド・トランシュ分も加えますと、まだあります、あるものはこういうものがございますということを近く申し上げるつもりであります。まだ三、四億ドルのものでございますから、そういう問題も明らかにいたしたい。これは時期を非常に考えております。  で、あなたがいま言われたとおり、それでその安易な気持ちを起こさせてはならないということでありますので、真実の姿を四月一日を期して国民の前に明らかにして、しかし、将来のために財政金融政策はかくあるべしということはひとつ赤裸々な状態において、因循こそくな小手先のやり方ではなく、四月一日を期して国民の前にあらゆる姿を明らかにしたい。しかし、長い将来を考えて大いに国産愛用、引き締めといいますか、いわゆる身を引き締めて長期安定の道をはかっていただくように、政府も各般の施策を行ないますから、国民各位も期していただきたいということは、この機会にすべてを明らかにしたい、このように考えております。
  56. 津島壽一

    ○津島壽一君 最後に、大臣の懇切丁寧な答弁で時間がかかりましたので、お許し願いたいと思いますが、最後に簡単に。  これは理屈なしに、日銀法の改正という問題が起こっているようです。これは予算委員会で山際総裁が質問に応じてその希望を述べ、また大臣も同時に、自分もその考えであると、同調するというふうな御意見だと承ったのです。そこで、私は、この開放経済に向かう四月一日までには改正をして、すべてのおぜん立て準備ができてから、賞々とやるのがほんとうだったと思う。これは済んだことですから、何もいまさらということになりますが、しかし、そういう改正はいいのだ、同調するというのだと、やはり現行法に不備な点があって不適当なものであり、また新たに追加すべきものがあり、そこに何かあるから改正の必要があるという結論だと思うのです。きょうはそれに対する再質問はしないつもりですが、どういうポイント、改正の目標がどこにあるということで必ず腹案があって、改正してやると、こうおっしゃったのだと私は了解するのであります。でありますから、その一端、おもな点、ひとつここで、こういう点だからと。ただ不適当だとか不備だというだけでは、世間の論議というものはいま非常に議論が分かれる問題ですから、ひとつそういうことを発言される以上……。  改正を考えなければならないと。検討するというならばいいんですが、改正をするというような積極的な御発言でもしあったとすれば、その理由はこうこうこういう点があるからだという内容があるのだからだろうと思います。その点は、もう画質問いたしませんから、ひとつ大臣のお考えになっているいまの現行法はこうだとか、たとえば、あれは昭和十七年のちょうど戦争のときで、総動員法のあったときのもので、条文を見ましても、国家経済総力を最も発揮するために日銀法をつくったとかということですね、その内容だけをひとつ簡単に言ってください。これで私は質問を打ち切るつもりですがね。
  57. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 日銀法は、御承知のとおり、昭和十七年に制定をいたされまして、その後ずっと今日に至っておるわけであります。日銀法の改正の必要性というものに対しては、これは十分必要性が認められて、財政制度審議会において三年間にわたって御審議を願いまして、その結果大蔵大臣に答申があったわけでございます。まあ答申があったのでありますが、その中で大蔵大臣の指示権等をめぐって議論がありましたので、現在まで成案を得ずして、御審議をわずらわさないで今日に至ったということであります。八条国移行というときでありますので、こういう問題に対してもうピリオドを打って前進をすべきだという議論は、やはりどなたでもそのとおりだと思います。私もこの間はしなくも予算委員会で御質問がありまして、日銀総裁が先にお答えになったわけでございますが、私の意見を直後に聞かれましたので、日銀総裁も改正の必要を認められて早晩改正すべきだと言われた以上、私に異論のあろうはずはございません、こう申し上げたのです。私はちょうど四年ばかり前に自由民主党の政務調査会長として、長岡発言と同じことをやったわけでありますが、そのときは全く議論を起こして、そうして何をやろうとするのかと言われておったのが、三年の歳月を経過して、ようやく日銀総裁からはしなくも賛成であるというお話が出まして、ここでお互い十分議論をしながら改正の方向にいきましょう、こうもうきまったわけでございます。  大体において、改正案に対する答申の内容は、もう御専門であるので十分御承知であると思いますから、くどく申し上げませんが、要は、先ほどあなたの御発言にありましたように、現行日銀法は戦時中の昭和十七年に制定をいたされましたために、戦時統制経済的色彩が非常に強いということはもう当然でございます。最近のように開放経済体制に移行するときでありますので、国家目的に沿うというような考え方よりも、やはり国民経済の安定拡大というようなまあ道路法とか、河川法とか、いろいろな問題、戦時中の、また明治、大正時代の精神を盛った法律が抜本的に改正されておる例から見ましても、日銀法が制定の現行法でいいということはだれも考えないわけでございます。  その他改正の点につきましては、日銀と大蔵大臣との意見が違った場合、一体指示権があるのかないのか、現在総裁の諮問機関的な性格を持っておる政策委員会というものを日銀の唯一無二の最高意思決定機関にしたいとか、それから準備預金制度とか、準備率の設定及び変更の権限を大蔵大臣の認可からはずして、もう少し日銀の中立性といいますか、日銀の独自性を貫いたほうがいいのではないかとか、いろいろな問題がございます。こういう問題につきましては、日銀法というものに対して舟山試案が世に明らかにせられてからは、もう何か大蔵省でもタブーのような気持ちできましたが、ちょうど日銀総裁がそういうことを言われましたので、日銀さんが言われるならば、ひとつ私も大いに腰を上げましょう、こういうことを申し上げたわけでありまして、あとの問題につきましては、これから日銀当局の意見も十分聞きますし、この問題に対しては、新しい金融憲法式のものでありますので、もうたなざらし三年というようなことで、拙速をたっとぶようなことをしないで、世の識者の意見を十分徴しながら誤りのない改正案をつくりたい、このように考えます。
  58. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ただいま、IMF理事会で昨日正式に日本のIMF八条国への移行の決定がされたということを機会に、津島委員から国際収支の問題を中心にして御質問があったのです。私は、これは非常に重要な問題で、また先ほどの大蔵大臣の御答弁では納得いかないと思うのです。先ほど、大体四月一日までに具体策を政府で検討して発表したい、こう言っておられましたから、しばらく作業の過程を見たいと思うのです。  私は、四月一日からIMF八条国へ移行するにあたりまして、財政金融政策について今後どういう態度をとっていかれるか、この点についてお伺いしたいと思うのです。もろん、自由化の問題はすでに昭和三十五年ころから始まってなしくずしにやってきたのだから、たいして影響はないと言いますけれども、八条国へ移行しますと、あと戻りできないということですね。したがって、輸入制限については、今後直接的な統制が困難になって、財政金融政策による間接的な調整というものが非常に大きなウエートを持ってくる。そういう意味で、八条国移行へのIMFの決定があったのを機会に、ちょうどいい機会ですから、今後開放経済体制へ移行するにあたっての財政金融政策の基本的な態度について伺っておきたいと思います。こまかい点については、また予算委員会等で質問いたします。  まず、財政政策として問題になる点は、いまの日本の歳出面において、いわゆる下方硬直性といわれますね。毎年々々予算が膨張していく傾向にある。それも非常に大きな率で膨張していくわけですね。この点が国際収支の問題と、内容は違いますけれども、何か似た性質を持っているのですね。国際収支の、特に貿易外取引について津島委員からお話がありましたが、各項目調べると、みんな増加するものばかりですよ。財政支出につきましてもそうですよ。これが減るという見込みがなかなかないわけですよ。そこで、この際、いわゆる下方硬直性をもたらしている根本の原因が一体どういうところにあって、何がこのように下方硬直的にしているのか、これについてはっきりしたメスを入れて、そうして、今後やはり近代国家だから財政は膨張するのがあたりまえだというような安易な考え方では、やはりまかなっていけなくなると思うのですよ。この際、やはり財政の中で一番のガンになっていますね、一番問題点になっている下方硬直性、どうしてこれに対処していくか、どうしてこれを改善していくかという点、一番重要な点だと思うのですよ。国際収支との関係がありますしね。IMFへの移行にあたりまして、そこで何が下方硬直性をもたらしている根本の原因か、まずこれについて御意見を承ってそれにどう対処しようとされているか、伺っておきたいと思います。
  59. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 非常にむずかしい御質問でございますが、まず八条国に移行するということにつきましては、財政金融が一体であるという考え方を私は前から述べておるわけであります。同時に、金融につきましては、貯蓄の増強をはからなければならない。それから、自己資本比率が非常に少ない、低くなっておるということに対して、戦前の六一%、また現在でも先進諸国は六〇%をはるかにこして七〇%、七五%を示しておる国もあるのでありますから、少なくとも自己資本比率を上げていくということによって外資依存という態度を改めるとともに、国民消費の抑制という面からも相当考えていかなきゃならぬという考え方をまず第一番目に持っております。  もう一つは、第二の問題は財政の問題でございますが、財政は固有の機能、使命を持っておりますので、なかなかこれを引き締めるというわけにもむずかしい問題はございますけれども、しかし、少なくとも社会資本の不足を補う、社会保障を充実せしめるという目的は、理想は確かに必要でありますが、それをあまりにも短兵急に短時日の間になし遂げるということで歳出を無制限に膨張せしめていくという政策には、おのずから限界があるわけであります。でありますから、一般会計のみならず財政投融資も、また地方財政も、特別会計、政府関係機関も大局的に立って国際収支を悪化せしめないように、国内の安定成長をもたらすような方向に向かって調整をせられるべきであることは、また言うをまたないわけであります。しかし、そういうことを口で言っても、なかなか予算というのは年年膨張していくじゃないかということでありますが、この原因はどこにあるかということは、これは端的に申し上げて、戦争で国破れて山河ありというだけであらゆるものが非常に立ちおくれておる。同時に、戦後お互い新しい憲法のもと民主主義思想が育成をせられていきまして、やはりうっせきをしておった戦前、戦中の非常に苦しい中から一目も一時も早く脱却しなければならぬという何か観念的な気持ちから、一挙に先進国の水準に追いつかなければならないということを考えておるところにも一つの間違いが私はあると思う。やはり私は国内混乱をせしめないように一歩一歩堅実な状態で進むべきであろうというふうに考えられます。  もう一つは、経済成長が非常にある時期高かったので、財源が確保せられましたので、この財源があるので目的達成のためには繰り上げてもものをやろうという考え方が底流となったために、財政の膨張をある程度来たし、その意味において物価の上昇等の現象が付随的に出てきたわけでございますが、しかし、もうあと戻りのできないとあなたがいま言われましたか、そういう事態でありますので、やはり財政金融の全般を通じまして、相当長期の見通しに立ちながら、効率投資を行ないながら、限られた一定のワクの中で財政金融の総合的な調整運用の妙を得て窮極の目的を達成するように、少し方向や考え方を変えていかなければならないんだというふうに考えます。  しかし、最後に一点申し上げますと、財政が膨張する要因はたくさんございます。ございますけれども国会を通じての議論で、その九五%が、中小企業に金を出せ、農民に金を出せ、また道路に金が足りない、低開発に対して税制上措置すべし、あらゆる発言のほとんどが歳出要求、歳出増要求であります。こういうものをやはり国民によく訴えながら、政府も国民もまさに一体になって、多少われわれの生活基盤を確保することに対しては延びるけれども、窮極はこうなるんだというようなことをよく理解していただいて、政府も勇気をもって新しい立場で新しい政治の姿勢を立てるべきだろうというふうに、まじめに考えておるわけであります。
  60. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これまで日本予算の弾力性を失わしめてきた原因ももちろん重要ですが、問題はこの開放経済に移行した後の今後の財政の硬直性について御質問しているわけです。私も、財政が膨張すること自体は、何もこれにすぐ抽象的な反対を言えないと思うのです。問題は、それをほんとうに民生安定に役立てるのであれば、これは財政規模の大きいことを非難する必要はないと思います。いまの財政の組み方を見ますと、民生安定関係のほうも多少はふやすが、いわゆる産業基盤強化のほう、大資本擁護のそういう支出がかなり多い。その上に社会保障とかその他のものを積み上げるわけですよね。そうなると、物価が上がって、そうして社会保障をふやしても、これが予算に計上されただけの実質的なサービスができないということになるんです。私はもう少し具体的に伺っていきたいと思うんですよ。  今後の財政の膨張を不可避ならしめていく要因としてどういうものがあるか。まず第一に、いろいろな長期計画が非常に出てきましたね。この長期計画はいまどのくらいありまして、——これは道路計画もあります、治山、治水、港湾ですね、その他国鉄、電通、いろいろあります。いま総額どのくらいになりますか。そうして今後それはどのくらいになる見通しであるか。
  61. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 一般会計といたしましては、御承知の今度の国会で御審議を願っております道路が四兆一千億、五カ年計画、これが一番大きいわけであります。海湾五カ年計画は、三十九年度を初年度とする新五カ年計画をつくりたいということで、いま検討をいたしておるわけでございます。それから、環境衛生、下水道の五カ年計画、厚生省、三千三百億の要求をいたしておりますが、これも今年度を初年度として五カ年計画をつくろうということに相なっておるわけでございます。このほかに治山治水の五カ年計画がございます。治山五カ年計画、治水五カ年計画、これも四十年度からは改定をしなければだめであろうということをいわれておるわけであります。一般会計においては大体いま申し上げたようなものであります。そのほかに漁港の五カ年計画をつくれという議論がございますが、三十九年度にはこれをつくらなかった。  それから、一般会計以外で、政府関係機関、三公社五現業等を入れますと、現在電電の五カ年計画がございます。国鉄の五カ年計画もございますが、国鉄は政府が容認をしました五カ年計画よりも別な五カ年計画をいま国会で御審議願っておるわけです。それよりもなお第三の五カ年計画が必要であるということもいま国鉄当局は言っておりまして、これに対しては内閣は、国鉄基本問題調査会を設けまして、ひとつ四十年度の予算編成までには結論を得たいという考え方を持っておるわけであります。  そういう意味で、一般会計、特別会計その他全部入れますと、相当大きな五カ年計画ないし十カ年計画ができる、このような状態でございます。未確定要素が非常に多いので、五カ年後にこれらのものを合わせれば何兆円になるということは、いまの段階で申し上げられないということでございます。
  62. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 事務当局でもいいんですがね、現在どのくらいの額になっていますか。現在すでに判明しているだけで。
  63. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) おおむねは私が言ったとおりです。
  64. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 おおむね……。今後、いま予想される五カ年計画等も入れますとどのくらいになりますかね。十兆円をこえますかね。
  65. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) それはこえるでしょう。
  66. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 現在どのくらいですか。
  67. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 道路が今度新しい四兆一千億円の五カ年計画でございます。それに治水の五カ年計画は、十カ年間九千億だったと思うが、ちょっとおそれ入りますが、事務当局から。
  68. 澄田智

    政府委員(澄田智君) 治山治水の現在のこれは、前期後期ございまして、合わせて十カ年計画になっておりますが、これは九千二百億でございます。それから、そのほか現在ございますものは港湾でございますが、これが五カ年計画といたしましては、このうちでもって単独事業を除いて政府事業だけで申し上げますと、二千三百三十億、こういうことになっております。それから治山が、これも政府計画でございますが五百五十億。これが三十五年から三十九年までの五カ年計画、前期の五カ年計画。そのほかに住宅は、これは金額が出ておりませんが、これは一千万戸のうち三百万戸程度政府施策住宅としてつくる、こういうことになっております。これは戸数で出ておりますが、金額で出ておりません。そのほかに環境整備でございますが、これはまだ今度つくることになっておりまして、出ておりませんが、要求は下水だけで三千三百億ということでございます。それから、その他先ほどお話のありました国鉄、電電ということになりますが、これはちょっといま手元に数字を持っておりませんので、あとから調査をいたして御返事申し上げます。
  69. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 国鉄は一兆円でしょう。
  70. 澄田智

    政府委員(澄田智君) これは国鉄の新幹線の増加する前の計数でございまして、その後、新幹線がふえました分が上乗せになりまして、一兆ちょっとこす。
  71. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 電電はどのくらいですか。
  72. 澄田智

    政府委員(澄田智君) 電電のほうは、どうもはっきりあれしておりませんが。
  73. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そのくらいの計数がわかっておらなければ困るのですね。これが今度またいろいろ改定が行なわれていきまして、もっと大きくなる。これより減るということはないと思います。そうしますと、大体、これは固まってまいりますと、毎年これは減らすことができなくなるんですよ。大体、この計画、計画がずっと出てきますと、これは下方硬直的な一つの要素になってきますよ、いい悪いは別として。とにかく減らすことができなくなります。ずっとそういうものがどんどん出てくると、これが一つの大きな要因になってくると思います。  それから、もう一つは、年度の途中でいろいろな法案が出てきて、それが平年度化していくやつがあるのですね。それはいままでどのくらいになっています、三十九年度はどのくらいになります、平年度化するやつは。
  74. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) なかなかむずかしいわけでありますが、大体六千八百二十六億の自然増収につきまして、今年度の自然増収分が二千億余ございすまので、大体三十九年度の、三十八年度の決算、ベースから見ますと、四千五百億ないし四千八百億の増収になるわけであります。これが歳入財源として入っております。このうちの大体半分くらいが、十月一日から人事院勧告を行なったものに対する給与の平年度化、それから十月一日からやりました医療費の平年度化というようなものを全部含めまして、いわゆる硬直性あり、こういうふうに見通されて当然増経費と一説にいわれておりますが、そういうものが大体半分、こういうふうに見ております。大体間違いありません。
  75. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それから、物価値上がりによる分ですね、これはどのくらいに見ておりますか。
  76. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 公共事業費の単価増等、土地等に対しては一五%以上、一五%余、そのほかの公共事業の単価の補正はおおむね六%ないし七%というふうに見ているわけでございます。
  77. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、今後、とにかく長期計画が非常に大きくなってくると、大体自然増収、そのうち減税分を引いた残りの半分くらいというのですね。そういうものですね。こういう傾向は今後すぐに直らない。いまのあれですとそうでしょう。これがだんだん今度累積してまいりますと、財源のほうを、財源は一体どうするのか。それで、この間道路計画について予算委員会で自民党の方が質問していました。これに対して河野建設大臣は、四兆一千億に対しては、今後財源についてはやはり道路公債ということを考えている、それについては大蔵大臣とよく話し合って大体了解を得ているというような話でしたね。ところが、きょうの新聞を見ると、開放経済体制に移行すると、四月一日から八条国に移行するにあたって、やはり健全財政を守っていかなければならない、公債発行については考えていないという大蔵大臣の話が出ておったのです。しかし、いまみたいにいろいろな要因ですね、これはなかなか、ちょうど貿易外の取引と同じように、減らすことができない項目がみんな累積してきているのですよ。  ところが、いままでは物価値上がりによる名目所得の増加、それに累進課税がかかって実質的な増税という形で自然増収が非常にたくさんあったわけです。本年度三十九年度のように六千八百二十六億なんてものすごい自然増収があった。しかし、今後は私はそういう期待はなかなか困難だと思いますよ。三十九年度は、法人税等について三十八年の分があるから六千八百二十六億という非常に大きな自然増収が可能なんですが、ところが、四十年になれば、非常に私は様相が変わってくると思うのですよ。そうでしょう。九・七%の名目成長率でしょう。特に法人税について非常に変わってくる。鉱工業生産も九%でしょう。そうなると、どうしたって私はそこに財源という、公債発行の問題は起こらざるを得ないと思っている、いまのままでいけば。  大蔵大臣はいかに公債発行をせぬと言っても、私は、財政法で認められている、道路公債というものは発行することが可能になっているものですから、私も、何も公債発行をむやみに、何でもかんでも公債発行いかぬ、そんな考えを持っていませんけれども、いまのこの歳出の下方硬直性、それから歳入は、これから従来のように自然増収をたくさん期待できないとなれば、どうしたってそこに歳出歳入のアンバランスが出てきますよ。それが、外債ということもあるでしょう。外国の借金ということもあるでしょう。あるいは国内の公債発行というものも問題になる。それから、減税もやはりやらなければならぬ。何も、私は公債発行せよと言っているわけではないのですよ。客観的に見て、そういう方向に向かわざるを得ないのではないか。それを大蔵大臣は、ただ、公債発行をせぬ、せぬ、こう言っているだけで、それでは八条国に移行するにあたっては、これはあと戻りできないということになっていますから、かなり長期的に見てそういう財政のバランスについてはやはり考える必要があるのです。その点はどうなんです。
  78. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 確かに財政の硬直性は認められますけれども、その中には確かに五ヵ年一計画で縛っておったり、率直な話を申させていただけるとすれば、戦後新しい憲法で国会が国権の最高機関になったということで、すべてが法定主義でいくということで法律をつくり、法律をつくれば五カ年計画、五カ年計画は閣議の決定にまたなければならぬ、こういうふうに制度上非常に戦前と違ってきておるので、これもまた悪い意味ではない、これもある意味においては長期計画も必要であるし、この点は必要であるが、このバランス、弾力運用というものと法定主義というものの間の調整をどういうところに調利点を見出すかということは、これからひとつ検討していただかなければならぬ問題だと思います。  しかし、私は、まあ四十年、四十二、三年、四十四、五年、この五、六年間を考えますときに、全然政党政治も行なえないような拘束性がくるとは思っておらないわけであります。御承知の大体所得倍増計画の年率が七・二%であります。でありますから、おおむね三%、年度内における物価の上昇率を三%と押えれば、一〇%近い名目成長率になるわけであります。鉱工業生産の九%上昇を考えますと、これを税に引き直しますと、大体一四・五%ということでございます。でありますから、四十年、四十二、三年間をずっと見通しましても、三十九年度の予算と対比しまして、多少前年度ベースが大きくなってまいりますので、二〇%も対前年非常にふやすということはできないにしても、一〇%ないし一五%、ことしも、きのう新聞記者会見で申し上げたわけでありますが、大体その程度の健全な姿勢を持った財政は組んでいけるだろうという見通しを持っておるわけであります。  それから、河野建設大臣が、まあガソリン税の問題に関連をして、四兆一千億といえどもなかなかそううまくいかぬ。四兆一千億というのは二兆一千億を四兆一千億に上げたわけでありますから、大きなことであります。ちょうど十年前は国の道路予算の総予算は八十七億です。十年間で四兆一千億。この基本法は私が議員提案をしたわけでありますが、そういう意味から申しますと、非常に大きくなっておるわけであります。幾ら所得倍増でも直ちに、四兆一千億ですから大きいです。が、しかし、内容を見ますと、一般道路が二兆二千億、それから有料道路が一兆一千億、あと単独事業が八千億、こういうことになっております。そうしますと、一兆二千億の中でもって東京−大阪間、大阪から鹿児島間また東京から逆に青森間というと、高速度縦貫道路はあまりできない、こういう御質問に対して、四兆一千億がこれでいいとは思いませんと。財政これを許せば財源等を確保いたしまして、また改定いたしたいと思いますと、こう建設大臣はお答えになられたわけでございます。これはまあ大体建設大臣とか与党の政調会長とかというものは大体そういうことを言うものでありまして、私も政調会長のときそんなことを言ったこともございますが、これはやはり大蔵大臣と相談をし、いわゆる国債が出せるような状態にもしきた場合にはと、こういうことを言っておられるのでありまして、私は、建設大臣の発言と私の発言というものとの間には相違はない。私は、まだ内国債を少なくとも発行しないで、八条国に移行するのが四月一日でありますから、二年や三年やはりそういうまじめな態度で健全財政を貫いていくべきだろう、現時点においてはそのような方法で考えております。
  79. 澄田智

    政府委員(澄田智君) 電電でございますが、四十二年までに、五百万加入でということを目標にいたしまして、一兆七千六百二十億というのが一応電電公社の試算の五カ年計画でございます。
  80. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、歳出は下方硬直的に膨張していくと。しかし、その下方硬直的に膨張していく要因を洗っていきますと、長期計画年度内に年度の途中に出してくるいろいろな法案の平年度化、それと物価値上がりによる経費の膨張等ですね、その場合に、今度は財源については健全財政でいく、公債を発行をしないでいきますと、勢いどういうところにしわが寄ってくるか、これが非常に問題だと思うのです。それをわれわは一番心配しているわけです。  そうしますと、やはり産業基盤の強化のほうには次々とずっと計画が出てくるでしょう。それは予算の先取り的なものになってくるのですね。長期計画で出てくる、あるいは継続的なものが出てくるでしょう。そうなった場合、今度は生活基盤のほうの計画というものがなければならぬ。いま一応住宅とか環境衛生等もありますけれども、しかし、どうしてもこっちのほうは立ちおくれちゃうと思うのですよ。産業基盤の長期計画はどんどん出てくる。そうして公債発行はなるべくやらぬようにする、財源の制限がある。どこにしわが寄ってくるか。結局、生活基盤の改善のほうにどうしたってしわが寄らざるを得ないのですよ。だから、そこをわれわれは問題にする。なぜ生活基盤に関する五カ年計画、十カ年計画、これは道路とかあるいは国鉄とか電電みたいに、そういう計画をつくる必要があるのじゃないか。それをつくっておかないと、みんなそっちのほうにしわが寄っちゃうと思うのですよ。やはり、ですからそういう考え方ですね、公債はどうしたって必要になってくるのですね。この点についてはどうお考えですか。
  81. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) まあ、いままでの予算の編成の状況を見られてもおわかりになるとおり、大企業とか廃業基盤育成だけに重点を置いてやっているわけではございません。これは社会保障その他十分な近代国家、福祉国家をつくるために最優先的な投資を行なおうという考え方に立っていることは御承知のとおりでございます。もっと大きな立場から見られれば、これは議論は、究極の目的は一つだ。産業基盤を確保するということも、現在の税制でもって考えてみますと、昔のように六割、七割の株を持っておって支配をしておるような大企業は存在いたしません。ほとんど大衆資本によるものであります。しかも、これで国際競争力がつけば、輸出が伸び、国際収支の安定に寄与するわけであります。また、そうすることによって日本人自体の生活が涵養せられるわけでありますから、私は昔のような感じで大企業とか独占企業とかいうのは、これはちょっとおかしいというふうに考えます。これは昭和三十七年の暮れでも、中小企業に対して金融をやれと言うと同時に、重点に金を流す。それから第十七次、十八次造船の繰り上げをやって、造船に金を流さなければいかぬ。なぜそういうことか。造船だけでも、二百万の中小企業というものが非常に危機に瀕する。日本の現在の社会組織を考えてみますと、お互いに全く利害相反するような立場におれるところはなかなか少ないのであります。でありますから、やはり国際競争力もつけて、日本の外国からの借金政策等を直さなければならぬためには、やはりその産業基盤の強化ということも、これは国民自体の生活のレベルアップのために当然必要なことでございます。  また、必要だからといって、そっちにだけ金を入れられるかというと、それは入れられません。これは政党政治でありますし、議院内閣制であります。これは党の基盤が強くなければどうにもならぬわけでありますが、選挙に出て幾ら将来はよくなるのですと言っても、それは社会保障などを最優先事項に取り上げなければやれるはずはないのであります。元も子もなくなっちゃうのです。これはいつでも、一四%の対前年度予算がふえれば、社会保障に二〇%、二五%、こういうことをやっておるわけです。物価が三%上がれば、少なくとも生活保護費は一三%上げよう。これはこれからの近代政治の中では、こんなものをやらぬで済むものではありません。ですから、まあ木村さん十分御承知で御質問いただいておるわけでありますから、何もかも全部二〇%、三〇%というようなことは、これは望むべくもありませんけれども、乏しいながら、健全財政の中で、合理的に国民に理解をしていただくようにやっていくことが理想でもあるし、現実の姿はそのとおりだと思います。  では、それだったら、社会保障に対して五カ年計、画をつくれといいますが、これは五カ年計画をつくるよりも、毎年毎年——五カ年計画をつくるとすればそう大きなものにならないと思います。それよりも、一五%伸びれば二〇%社会保障を伸ばすということで、最重点項目にとっておりますので、私は、乏しいながら、その中においておくれた社会保障等の問題に対しては最重点的に配慮をせられていくであろう。また、私もそのようなつもりでおりますことを明らかにしておきます。
  82. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはことばとしては幾らでも言えるのです。いままでの実績をごらんになれば、国民生活白書が出たでしょう。あれで日本の消費水準はヨーロッパ並みになったとかいろいろ書いてありますが、それは反面マイナス面が指摘されていますよ。住宅難は依然として解決されていないでしょう。それから、公害でしょう。いろいろな災害でしょう。これが激増しておるでしょう。交通難でしょう。そういうものが激増しておる。ですから、非常にアンバランスになっておるわけですよ。それから、中小企業が立ちおくれた。農業が立ちおくれた。それから、格差は拡大しておる。そういうマイナス面を、今後財政支出がさっきお話ししたような内容でどんどん膨張してまいりますと、口ではそういうマイナス面を解消するすると言いますけれども、なかなかそこは改善されない。だから、やはりほかでそういう産業基盤の強化のための計画を立てるのならば、やはり生活基盤のほうの強化もきちんと立っておかないと、何も社会保障に全部使えとかそんなむちゃなことを言っているわけじゃない。大体、じゃ、ヨーロッパ並みに消費水準かなったというならば、もし政府が自慢するならば、全体のやはり均衡、財政支出の内容の均衡についてもヨーロッパ並みにする必要があるのです。社会保障の国民所得に占めろ比率はヨーロッパの半分くらいでしょう、まだまだ。大体三%くらいですよ、日本は。ヨーロッパは五、六%くらいですがね。ところが、日本の公共事業費の予算に占める比率、国民所得に占める比率はものすごく、これは先進資本主義国じゃ一番大きいですよ、何回も言いますけれども。非常にアンバランスなんです、そこが。そういう内容を見ると、ただ消費水準がヨーロッパ並みになったからといって、福祉国家とかなんとかとまだ大きなことは日本は言えないと思うのですよ。そういうことばはまだ言えない。消費水準が上がったって、今度ストックで考えてごらんなさい。お話にならないですよ。消費だけで考えず、ストック、貯蓄、蓄積ですね、こういうものを考えたら、まだまだそれは非常に懸隔があるので、そういう点は隠して、あそこでは触れておらないのですけれども、そういう意味なんです。  しかし、大蔵大臣はわれわれの質問に対しては非常にこのごろ御答弁がうまくなって、(笑声)ああと言えばこう、こうと言えばああ、一応とにかく将来に関することについては非常に言いのがれがうまくなりましたから、こういう議論をここで繰り返してもむだと思いますから、今度は予算委員会で言を左右することができないような問題についてはっきりと質問いたしたいと思うのです。  そこで、他の委員の方も御質問されますので、私は具体的に、二、三質問をいたしまして終わりたいと思うのです。  その一つは、先ほど津島委員もお触れになりました日銀法の改正の問題ですが、これは山際日銀総裁も改正賛成である。大蔵省も賛成である。意見がはからずも一致したといいますけれども、それは改正について意見は一致したのですけれども、内容については対立していると思うのです。はっきりと前にA、B二案が答申されて、それでこの舟山試案でしょう、それから、大体大蔵省側の意見を代弁しておるのは下村君の考え方ですよね。大蔵省の権限を強くするんですね。指示権を強化する。これに対して、大蔵大臣の議決延期請求権を持つことにとどめる、最終的には日銀の議決権を認める、こういう対立をしておるのです。もう焦点ははっきりしておるのです。ここで改正したら、日銀のような考えでいくのか、日銀の中立性というものを確保していくのか、大蔵大臣の指示権を強化するという方向でいくのか、二者択一です。どっちかなんです。どっちのほうにいくか、これがもう結論ですよ。ですから、大蔵大臣は日銀の中立性を認める方向において改正を考えている、そういうことなのかどうか、これはもうはっきりしておるのです。もう長い間、三年半も議論して、答申が出てから三年半もたなざらしになって、IMF八条国に移行する機会にはっきりさせたい、こう言われた。これは津島委員も言われたように、ほんとうにおそ過ぎるわけですけれども、問題はもうはっきりしておるし、どっちにするのか、その点を伺いたいと思うのです。
  83. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 答申のA案B案のいずれを採択するかということでございますが、何しろ答申に三年もかかりまして一本化ができなかったということであります。同時に、答申を受けましてから三年間じっと検討してきましたが、結論が出なかった問題でありますので、この問題は私もそうたいした問題じゃないと思うのです。こんなことでもって日銀と大蔵省が張り合ったところで、そういうセクト主義自体がいかぬのだという考え方を私は持っております。私は、こういうものは第三者がより商い立場で、中央銀行と政府所管大臣との権限はどうあるべきかということを、他の法律と平仄を合わせて考えれば、結論はおのずから出る問題だと考えております。  しかし、まあ私の真意を問われれば、ますます難航すると悪いので、現在の段階ではそういうことを申し上げません。こういう問題に対してはひとつ日銀の意見も聞きますし、また皆さん方のこういう御発言等も十分参照しながら、適当な結論を得たいと、こう思っておるわけであります。
  84. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 適当な結論といいましても、はっきりしておるんですよ。私の立場は、日銀の中立性を、やはり今後八条国の移行にあたりましては日銀の中立性を強化しなければいかぬという私は立場です。大蔵大臣はそういう方向で結論を出されるのか。これはもうこんなことは争うのはおかしいじゃないかと言われているのですね。私もおかしいじゃないかと思います。なぜ大蔵省がそんなにこだわるのか。
  85. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 日本銀行というものは、中央銀行でありますから、中立性を確保しなければならぬことは、これは申すまでもないのです。議論の余地のないところであります。が、しかし、金融を含めた経済政策全般につきまして最終の責任は政府にあると、こういうふうに考えておるのでありますから、絶対的な日銀の中立性を求めることは私はむずかしいと思うのであります。でありますから、歳入問題や予算等も全部所管事項としておる大蔵大臣が金融の所管大臣でもあるのでありますから、やっぱりより広い立場に立って金融だけの問題でなく、あらゆる問題に立って政府国会に対して連帯して責任を負っているのでありますから、全く大蔵大臣との関係なしの日銀の中立性などというものは私は存在しないと考えております、でありますから、私は戦前のような金融統制論者ではありません。そういう意味から考えて、いろいろのことを言われることは十分わかりますけれども、日銀総裁が国会のこの席に来れば、参考人と同じ立場で御発言をするのであります。政府は、憲法の規定において、この席において連帯して責任をとるのであります。こういう問題を考えるときに、私は、こういう問題に対しては世界で一体どうしているか、先進国はどうしているか、日本の戦前はどうであったか、将来の金融に対してどうあるべきかという問題に対しては、おのずから世の識者は結論を出す、こういうふうに考えておりまして、いま私がA案を採用したいなどと言うことは独断に過ぎなることでありまして、この問題は非常に重要な問題でありますので、いまの木村さんの御意向等も十分参照しながらしかるべき結論を出したい。
  86. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ただいま大蔵大臣は、これはたいしたことではないと言いながら、非常に重要な問題だと言われる。どっちがほんとうの御答弁なのかわからないのですけれども、私は、政府は、また政党内閣性ですから、自民党なり、政府なり、大蔵省なり、大蔵大臣なりか非常に聰明ならば——聰明といって、われわれが見て、予算編成等につきまして、たとえば開放経済体制に入っていくにつきましては、予算の内容をも含めて健全財政  ただ均衡財政が私は健全財政じゃないと思うのです。それから、膨張しても内容がよければ私は必ずしも反対ではないのですけれども、しかし、地主報償の問題とか金鵄勲章とか、いろいろまた圧力団体によって財政が膨張していく。で、金融と財政一体といいますけれども、やはり非常に聰明であればいいのですけれども、聰明でない場合、そうして金融に圧力がかかったりなんかすると、やはり問題なんです。ですから、金融政策については、それは財政・金融一体として考えなければなりません、総合的には。しかし、金融政策、特に具体的には公定歩合の操作の問題ですね、そういうことについては、やはり日銀の自主性というものをこれは私は確保すべきだと思うのです。じゃ具体的には公定歩合についてはどうなんですか。
  87. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) この間も予算委員会で公定歩合等に対しては発言をいたしませんと、こういうことを申し上げたわけでありますから、御承知のとおりでございます。私は公定歩合というよりも、日銀のやる各種の政策、施策であります、公定歩合はもちろん含めてでございますが、こういう問題に対しては日銀の自主性、中立性というものは、私ども非常に尊重しなければいかぬということで、政府関係機関でもって用があるときに、大蔵省へでも総理大臣室へでも来てもらうのが普通でありますが、日銀総裁は大蔵大臣室へさえも来てもらわないようにしようというくらいに配慮したのであります。もちろん、私が日銀へ行くこともありませんし、大蔵大臣に御就任になったらひとつ日銀を見に来てくださいと、こういうことを言われたのでありますが、日銀の中立性をいやしくもいささかもおかしてはならぬということを考えたのであります、私は。(笑声)笑い事ではありません。やはりそういうふうに相当姿勢を正しておるのであります。  しかし、そういうお互いの中立性というものに対しては非常に尊重をいたしておりますけれども、やはり金融政策という大きな問題に対しては、これは当然国会に対しては政府が責任を負うのでありますから、日銀と大蔵省の間にいろいろな意思の疎通をはかりまして、十分この間には政策上の食い違いは、現在のところ私は絶対にない、将来もないというふうに思います。  ただ、法制上の問題として、私は木村さんの言うことはわからないことはない。日銀の中立性というものは、それは国会に対して責任を負うておる大蔵大臣との間に、法律上どうあっても、十分連絡はとれるじゃないか、少なくとも法制の上においても中立性は維持すべきだ、こういう議論も十分理解できます。同時に、個々のケースに対して所管大臣が指示をすることは、これはもう中立性をおかすことであって厳に慎まなければいかぬけれども、検察庁法といえども最終的責任においては十四条の発動権を認めざるを得ないというのが政府と検察行政との間のやはり制度上の問題であります。でありますから、日銀の中立性、検察の中立性、こういう問題は十分ありますけれども、私はやはりその中において法制上どうあるべきかという問題は、もう他の法律、この種の法律でもってもう具体的な例示はたくさん出ておるのでありますから、私はこれらの問題を十分比較検討すれば、大蔵大臣と日銀総裁との権限の調整に対して法制上むずかしいということは私はないというふうに考えております。あなたの言うことは十分理解をし、あなたと同じような立場に立ちながらも、やはり国務大臣として国会に対する責任の地位に立っておる立場で御答弁を申し上げるとすれば、以上のように申し上げる以外にないのであります。
  88. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は現在の問題として公定歩合についてどうかと言っておるのじゃないのですが、もちろん大蔵大臣言われるように、政府には緊急事態に処するため命令権があるのです。きょうの朝日新聞の論説でも論じていますように、そういうものはあります。あるけれども、やはり公定歩合の操作等は日銀の自主性にまかせるべきだ。その点を伺ったわけなんです。  それと、もう一つは、政策委員会のあり方です。これにはやはりぼくは問題があると思うのです。もっと中小業者の意見が反映するとか、あるいはわれわれとしては労働界の意見を反映するとか、ことに管理通貨制度になってきますから、これが安易に流れると非常に政治的な金融政策が行なわれる危険性は十分あるわけですよね。それとまた、株価に対する影響なんかも、やはりこれは非常に厳正にしないと、大蔵大臣はそんなことはないでょしうけれども、今度は金利を上げろと命令する前に、そうすると株が下がるから、おれが株を売っておけば有利である。そんなことはあり得ないことでありますけれどもね。しかし、やはり日銀の中立性というものを確保しておかないと、そういう弊害が起こりやすい。  私は日銀にも責任があると思うのです、いままでの日銀にも。さっき大蔵大臣は日銀と政府意見はあまり食い違っていないと言うけれども、日銀は政府の言いなりになっているから、食い違っていない、そうだと思うのです。これ、自主性がないのです。ですから、自主性をもっと強化せよ。今度は日銀法改正にあたって中立性を強化せよという議論が出てくる。日銀はどうも政府に従属している。事実そうなんです、ずっといままで。山際総裁も非常にバックボーンがあるようで、ないんですね。あるようでないんですよ、実際は。えらく非常に折り目の正しいことを言うことがあるかと思うと、じゃ、実際にそれを実行に移すかというと、やはり政府の言いなりになってしまう。こういう点があるので、そこで質問したわけです。  政策委員会の問題、それから公定歩合の操作の問題。
  89. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 公定歩合の操作は、御承知のとおり、日銀の政策委員会で決定をしまして、大蔵大臣に報告をするということでございます。でありますから、大蔵大臣として、政策委員会で決定されたものに対して異議を申し立てたり差しとめたりしたことはございません。しかも、事前に政策委員会から大蔵大臣の意向を聞いてやるというような事例も一件もないわけであります。公定歩合に関する限り、中央銀行の中立性のもとで行なわれておるということは御承知のとおりでございます。  政策委員会につきましては、これもなかなかめんどうな問題でありまして、国鉄の経営委員会、電電の経営委員会——経営委員会というのは政策決定だけして、どうも……。それも総裁、副総裁という執行者が経営委員会に入っているので、どうも構成上おかしいという議論は戦後直ちからあるわけでありますけれども、日銀の政策委員会は私はうまくいっておると思うのです。ただ、金融制度調査会からの答申によりますと、日銀の理事というものを廃止をしまして、執行機関であるところの理事と意思決定機関であるところの政策委員会一つにしまして、日銀の最高意思決定機関にしたいというのが、こういうのが答申であります。これにはなかなか議論のあるところであります。これには国鉄の問題、電電の問題、その他の経営委員会と各理事と執行機関との間をどうするかといって、法律のたびに国会でも議論をされている問題でございますが、一応日銀に対してはこのような答申が出ておりますので、やはり答申の線に沿って検討を進めるということが正しいというふうに考えております。
  90. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 公定歩合の操作については日銀の自主性を認めていくのだと、こういう御答弁があったのですね、先ほどは。
  91. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 関与しておりません。
  92. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今度の改正についてですよ。
  93. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) これは私はまだ逐条全部頭に入っておりませんからですが、公定歩合に関しては、先ほど申し上げたとおり、現行でも大蔵大臣の権限がないのでございますから、これはもう現行どうりおやりになればけっこう、よろしい。ただ、この答申の中に入っておりますのは、他の日銀が行ないます準備率の引き上げとかそういう問題は、大蔵大臣の認可事項になっております。こういうものも中央銀行総裁としてやれるようにしたほうがより日銀の中立性を確保するゆえんである、このような答申でございます。
  94. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その点も含めて、どういう御意見であるか。
  95. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 答申尊重という意味で、まあまあという考えであります。
  96. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その点が対立しているでしょう。答申——A集を尊重するのか、B案を尊重するのか。
  97. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) この点の問題については対立はありません。
  98. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ありません……。
  99. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 申し上げておきます。
  100. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 日銀の、いまの、公定歩合以外の、いまおっしゃったことも含めてやはり日本銀行総裁の権限にすると、こういうことですね。
  101. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 答申を尊重、いたしたいと思います。
  102. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ああ、そうですか。
  103. 津島壽一

    ○津島壽一君 関連質問。ちょっといまの日銀の問題、私触れたくなかったのですが、大蔵大臣からだいぶ具体的な御答弁があったようですが、これは質問じゃないのですが、希望です。それは、いよいよ日銀法の改正に踏み切ろうと、そうしてこれから検討しようと、こういうことに了承したのですが、これは非常にけっこうで、なるべく早いほうがいいのですが、ただ、個々のいろんな問題については、これはこうするがいいとかなんとかということではないけれども、全体の問題のつかみ方ですね、これは調査会の案に触れて言うのじゃないけれども、全体の問題のつかみ方はどこをねらうかということで私の希望的な意見を述べるのですが、大体IMFの非常に有力なメンバーになるわけですね、もうこれから。それからOECDも、これは本格的のメンバーになる。それからEECとは密接な関係を持っていこうという方針ですけれども、それからBIS、国際決済銀行等もオブザーバーを出していく。向こうは何とかメンバーにしたいぐらいの気持ちでおるので、初めてここに日本は、こういった金融的な機構においてまあ本格的な役割りを占めていけるような地位になったわけですね。  そこで、私がさっき言ったのは、そういう場合は、古い着物は着かえていったほうがいいんだと。いままでの、戦時総動員法のもとにつくられた日銀法、それだから、そんなものはこういうところに入る前に決定すべきだったと。これは残念だったと私は思うのですが、それはしかたがないとして、これから日本は諸外国とつき合っていく、これは中央銀行がおもな役割りになるのですね、中央銀行が。各国もそうでしょう。BISのごときはほとんどそうであるし、IMFにおいてもほとんどそうである。それから、これらの国の、諸外国で主要なメンバーは、大体EECと同じように、まあ米国を除いて、米国は各機関において主要なメンバーであると思うのですが、BISは入っていないかもわかりませんが、そこで日本はこれからこれらの人とつき合って相互に理解をして、そうしてこちらの考えといったものがうまく反映して、仲間になるのですからね、おつき合をするのですから、親類づき合いというのか、友だちつき合い。それでありますから、日銀法というのはこの観点から考えなければならぬ。日本の政治も経済も、日本のいろんなことも考慮するのは悪くありません。  しかし、考え方は、たとえば米国は連邦政府でしょう。英国フランス、ベルギーは加えていいでしょう。ドイツですね、ドイツの法律のごときは、非常に参考になるのです。日本と同じ立場です、敗戦後早くブンデス・バンクをつくったのですから。それからイタリア、これらの先進国、といっては悪いですが、仲町の規定は、私はいまの中立性とか独立性の問題については、この管理通貨時代において、微妙な点においてうまく規定して、そうして中央銀行というものは何とか尊重されるという、国会における責任はだれだれというようなことはだれも考えておりませんよ、この場合。そういう意味におきまして、私はとるべき一つの何というか、法制なり、慣行なり、そういうものはもう熟成しているわけです。  でありまするから、この問題を御検討になるにあたっては、これら諸国、最も日本と密接な関係にある諸国のやっていることも十分参考に入れて、そうして中立性の問題とか自主性の問題というものは、彼らは長年の間の、英蘭銀行のごときはその一つでしょうが、慣行として、そうして海外から見て、政府と日銀というものがうまく一体となってやっているというところに、国際的信用というものが礎かれてきて、結局国の経済というものは発展するわけでございますから、そういった点において十分御検討を加えて、私が注意して、あえてやることだろうという点を、ひとつもう一つの考慮の中に入れていただきたいということを、私は積極的な意見はまた機会があるでしょうけれども、そういう意味のことをひとつ御留意願いたい、こういうわけでございます。
  104. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この結論は、じんぜんといままでのように三年半もたなざらしになっておったのですが、そういうようなことではなくて、かなり早目に結論を出せると、そういうことであるのかどうか。  それから、もう一つは、きのうの山際総裁の記者会見で、山際総裁がいまの日銀法の改正を金融制度調査会で早く検討することが望ましいという、そういう再調査ですかを委嘱したほうが望ましいと述べておりますが、大蔵大臣はどういうお考えですか。
  105. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 先ほどから申されておりますように、八条国移行の前にかかるものは改正すべきだったと、こういうお説は私もそのとおりに考えたのです。私も、日銀法とか、手形法とか、小切手法とか、銀行法とか、あらゆるものをもっとできるだけ検討して、新しい体制に順応すべきだという考えだったのですが、私も大胆になってからそんなことを言ったこともあるのですが、影響するところが非常に大きいので、よほど機が熟さないと、そんなことを言っても思いつきかなにか、はったりを言っているようなことになりますし、しかもその結果非常に影響するところが大きいので、私はいままで非常に慎重にやっておったわけです。  ところが、一月七日の日は、これはまああなたも御承知の銀行の昼さん会がありまして、八条国移行の議論ばかりやっておりながら、日銀法改正、金融関係法整備ということは一言も出ない。つい私はやむを得ず、日銀法の改正を含めて金融関係法の整備を、あなた方実際におやりになっている人が、政府が一方的にやるとやれるものもできなくなりますから、御意見があったら十分言ってもらいたい。そういう姿勢をとらないと、実際に八条国移行の国民的体制はとれませんぞ、こういうことをついに言わざるを得なかったわけであります。  それからまた、一、二カ月黙っておったわけでありますが、ちょうどこの間お話がありましたので、期せずしてこのような結果になった。こういう時期になりましたから、私はじんぜん日をむなしうしておるものじゃない、そういう意味から言いますと、日銀総裁きょう新聞で何か言われておるようでございますが、三年間かかって答申を受け、三年間たなざらしにして、これからまた六年間おかけするつもりはございません。そういう意味では、この機会に明らかにいたしておきますが、金融制度調査会に再諮問する意思はございません。できるだけ早い機会に成案を縛る。これはもう答申の大体はほとんど私たちもこれは賛成いたしておるのでありますが、ただ一点ぐらいのことでありますから、こういう問題や、また津島先生が言われたような新しい視野に立ってまたやらなければならぬ問題等は、日銀でも検討いたしておりますし、われわれのところでも各国の例等も検討いたしておりますので、やはり日銀と大蔵省でもってまず早急にお互いに懇親な状態で話を詰めてまいりたい。私はあえて成案を得るのに時日を、そう長い時日をかける必要はない、こう思います。ただ、こういう機会でありますから、私がいま言ったような手形法とか、小切手法とか、いろいろな問題がありますから、これは法務省として御検討願う問題もありますので、そういう問題もあわせながら日銀といろいろ話しをすれば私はできる、相当短い間に詰まるだろう、こういうふうに考えております。
  106. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今国会に成案を得て提案するということは、これはまだ考えておりませんか。
  107. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) それは今日の段階で申し上げられない。もし今国会に出したいと思います、こういうことをもし言おうものなら、大蔵省の原案を一方的に押しつけられるような、思わざる影響等を想定いたしますと、遺憾ながら申し上げられませんが、しかし、可及的すみやかに成案を得たいという考えであります。
  108. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 当面の問題について伺いたいのですが、先ほど津高委員の質問に対しまして三十九年度の貿易収支ですね、六十二億ドルでとんとん、輸出入六十二億ドルでとんとん、そうしてその前提には鉱工業生産は九%になっているのですよ。最近の鉱工業生産は前年に比べてどれぐらいの伸び率になっていますか。
  109. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) どうも少し申しわけないぐらいに高いのであります。前年同期に比して二一・五%というところです。
  110. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それから、今後の見通しはどうなんですか。それがどのぐらいに続きそうなんですか。
  111. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 二月も若干高いようであります。三月先行きも、いまのところ急激に引き締まるというような状態ではないようであります。ちょっと申し上げますと、十二月に対前月比一・四%の低下、一月は三・二%のプラス、二月は見通しといたしまして、二・五%ぐらいプラスということですから、非常に高い水準にあるというような見通しでございます。
  112. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、三十九年度で平均九%の鉱工業生産の前年対比伸び率に持っていくには、これはよほどのダウンをさせなきゃやっていけないんじゃないですか。
  113. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 三十九年年度間を通じますと、三十八年よりも少し純計でダウンしていくという数字が出ます。
  114. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 少しどころじゃないんじゃないですか、いまのベースで参りますと。いまのベースでいきますと、上期はそんなに急速にダウンできないとしましても、今度は下期でものすごいダウンさせなければ九%になりませんよ、いまの鉱工業生産の水準では。
  115. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 三十八年度通じまして政府の見通しは二二・六でございましたが、二月、三月が上がるだろうという考え方からいきますと、大体一四%ぐらいになるわけであります。でありますから、三十九年一ぱいを通じますと、九%といえば横ばいよりもちょっと下がるということになるわけでございます。
  116. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いまのあれですと、一四%ですか、三十八年度平均。
  117. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 対前年。
  118. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、四半期別のあれがあるでしょう、大体の見通しが。
  119. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) あります。
  120. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 四半期別はどういうふうに見ていますか、大体推定。
  121. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 四半期別はないそうです、毎月刑はありますが。
  122. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 しかし、四半期別は、これは大蔵大臣直接の担当でありませんから、あれですけれども、大体推定がなければおかしいと思うんですよ。試算かなんかなければ、年度平均といったって。
  123. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) いまお尋ねの趣旨は、大体第一四半期から第四四半期にかけて非常に高くなってきているんじゃないか。つまり前年同期比の開きがだんだんに大きくなってきているのじゃないかというお尋ねだと思います。これはまことにそのとおりでございまして、第一四半期の場合には数%程度でございましたが、第三四半期になりますと一八%強ぐらいになりまして、それから第四四半期になりますと、いままで一月と二月は推定しか出ておりませんが、おそらく二一、二%ぐらいは前年同期より高いという数字になるんじゃないか。したがって、いま先生のおっしゃりたいのは、そういう高い水準からスタートして年度平均で九%内におさまるのにはどういうカーブを描くのか。ですから、これは実は見通し作成のときにおきましては、一三・六という数字は、第四四半期には少し伸びが鈍化するという前提ではじかれております。つまり三月対三月をとれば、それほど、二〇%以上は開いていないという考え方だったわけです。それが実は実績がそういきそうもないということになりますので、最初は、あの見積もりを立てたときには、三月と三月を比べた場合には大体五%ぐらいアップしてもいいという数字だったわけです、三十九年度において。四十年三月は三十九年三月に対して大体五%ぐらいは上回っておるという姿が想定された。ところが、今度ことしの第四四半期が高くなりましたので、もし九%に無理やりおきめようとするならば、ダウンカーブを描くということになる。
  124. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それをお聞きしたんです。そこが問題です。そこで、大臣じゃなくていいんですよ。三十九年度の四半期別の推定ですよ、九%というのの。これがなければ、いきなり九%を持っていくわけじゃないでしょう。すぐにそんなダウンできませんから、徐々にやっていくんでしょう。そうすると、下期へいってよほどダウンさせないと九%にならぬということなんですよ。そんなこと、一体できるかというんですね。もしそれができないとすれば、輸入の六十二億ドルというのはこれは非常に狂ってくるんです。たださっき抽象的に、六十二億ドルでとんとんと言いますけれども、もうすでにその前提が狂っちゃっているんです。ことし、三十八年度の前提が狂っちゃっているんですよ。ベースが狂ってしまっておる。こんなに高いベースでないところで計算したんですからね。ベースが非常に高くなってしまっておる。その高くなったベースで計算していけば、これはよほどひどくタウンをさせなければ九%の鉱工業生産の成長率にならぬですよ。そういうことが一体できるかどうか。そうなると、実際問題として私はできないと思うのです。それをやったら大混乱でしょう。大混乱ですよ。できないとなれば、どうしたって輸入がふえる。そうすれば、国際収支一億五千万ドルの総合収支の赤字というわけにいかないと思うんですよ。そこが一番問題だと思うのです。
  125. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 私が答えるのが適当かどうかわかりませんが、こういうふうに思います。当初の見通しで、生産の上昇割合は漸次鈍化いたしまして、まあ最後には横ばい程度になるわけです。しばらくの間横ばいに近い状態になる、そういうことが想定されました。それが六十二億ドルの輸入の算出の根拠になっておると思います。今度の場合、まあそういうふうに上げていくと、若干でも最初の上昇を認めるようなことになりますと、年率九%にはとうていおさまりません。つまり年間を全体平均しますと、横ばい以下でなければならぬということになります、九%にするためには。しかしながら、ここに問題があるわけでございまして、輸入の増勢というものと生産の上昇というものの中に、ちょっと表面上あらわれないものがございまして、生産の鈍化が非常に極端でありますが横ばいに近くなった場合は、輸入は予想外に減るという実績がございます。なぜかと申しますと、在庫は、在庫統計から見れば、現在それほど在庫はあるわけではない。しかし、生産が二〇%以上の割合で上昇を続けております場合には、生産過程に投入される仕掛かりの増加、これがばかにならないわけです。何億であるかどうか正確にはいまはじけませんが、かなり大きな量になる。ですから、二〇%以上の上昇率のときに輸入された量、あるいは消費された量に対しまして、横ばいに近い状態になったときには非常にそれは節約されるということがありますので、かりに結果において私は九%が一〇%、あるいはそれより若干高いような年度比較になりましても、持っていき方によっては六十二億ドル程度に輸入を押えることは決して不可能じゃない。しかしながら、当初からも予想されておりますが、当初の予想以上に生産のカーブを鈍化しなければならぬということになりますので、引き締めの程度といいますか、それは相当強いものにならざるを得ないのじゃないか、そういう予想をもって申し上げているのでございます。
  126. 澄田智

    政府委員(澄田智君) ただいまの説明、ちょっと補足させていただきますが、三十九年度中にむしろ下がらなければならないことになる、こういう説明を銀行局長から申し上げましたが、それほどではございませんで……
  127. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いいかげんな答弁じゃ困りますよ。
  128. 澄田智

    政府委員(澄田智君) 三十八年度の年度平均で一四七・一という数字を予想しておりました。ところが、一月現在におきまして、一月の数字は一五五・七というところまで上がりましたために、したがって、それと三十九年度の年度平均、今度の経済見通しで見ております年度平均、これが一六〇・三でございます。これがいわゆる九%の上昇という数字でございます。したがいまして、その一六〇・三と一月の一五五・七のところの比較を見ますと、三%程度まだ上昇の余地があるということになりますので、後半期に落ち込むというのはやや極端なことでありますが、いずれにしても横ばいのような状態、非常に上昇のカーブが鈍化しなければ九%というところにおさまらない、こういうことになるわけでございます。
  129. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは一月でしょう。
  130. 澄田智

    政府委員(澄田智君) はい。
  131. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ところが、お話の二月も三月ももっと上昇するという傾向にあるわけですよ。そこが問題ですよ。一月でさえそうでしょう。きのう日本銀行と大蔵省の定例懇談会があった。新聞の伝えるところによると、そこで沢田君、これは日本銀行の営業局長ですね、営業局長さんの報告によると、鉱工業生産は相変わらず堅調をたどっている。これは大企業を中心に増産によって製造原価を下げ、販売競争に勝とうとの傾向が強いからである。つまり損益分岐点が非常に高くなっておりますからね。これは落とすわけにいかないのですよ、操業度を。そういう非常な矛盾があるわけです。それで非常に高くなっておる。一月でさえいまのお話でしょう。二月、三月もまだダウンしませんよ。そうすると、一応これを横ばいと、こうします。横ばいとしましても、今度は九%にするためには下期でどんと、うんと下降させなければ九%にならないようになるというのですよ。あるいはまたどかんとやらないとしても、下降的なカーブを引いていくにしても、予想された以上にデフレ政策をとっていかなければ六十二億ドルの輸入に押えることはできないのです。そこに非常に狂いが生じてきているのです。それを育っておる。特に四−六月ですね、四−六月は国際収支——輸入ユーザンスの決済期にもなるし、そういう重要な時期にもなっているわけですから、非常に狂ってくるのです。その点が、先ほど津島委員に対して大蔵大臣は、われわれに配付されてい三十九年度予算編成の前提としての国民総生産と総支出の表ですね、あれをただ報告されただけですよ。それから事情がうんと変わってきてしまっている。いまお話ししたように狂ってしまっているのです。ですから、これは改定しなければだめですよ。修正をしなければこれは、実際のわれわれ分析の判断になりませんよ。そこらのところをぼくは修正される必要があると思います。九%にとてもいきませんよ。九%にいくとしたら、ものすごいデフレ政策ですよ。これは中小企業は倒産するし、これはたいへんなことになります。だから、どうしたって九%よりもっと上にいかざるを得ない。その辺を明らかにしていただきたい。
  132. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) どうも重ねて申し上げて恐縮でございますが、従来の景気調整の結果を実績に引き比べてみますと、大体において、輸出は輸入ドライブがかかって順調に伸びる、輸入が概して考えたよりも落ちる結果がしばしば出ておるわけです。今回の場合、最終需要が強いという事情は認められますけれども、これからの金融の引き締めのあり方、もちろん非常に急激というわけではありません。ですから、四月、五月になって直ちに生産が横ばいになるという保障はございませんけれども、しかし、まあ漸次何カ月か経過後には必ず横ばい程度に生産が落ちてくるようにしなければならない。このことは、従来の九%の見みのときでも、大体それに近い状態を予想しておったわけでございます。で、今回少しの食い違いが生ずるわけでございますが、結果においておっしゃるごとく九%の、あるいは一〇%を少しこえるというふうな年度平均にもなるかもしれませんが、しかし、私どもかねてからこの積算をする場合の問題といたしまして、仕掛かり品というものの節約減少というものをあまり直視しておらぬ、そういう点からいって、かなりふえるような、輸入が若干ふえるような見通しに立っておりますが、そこの範囲ならば十分に押え得るのじゃないか。つまり輸入の見通しという点から申せば、大体あの程度におさまるはずである。従来は、大体引き締めをやりますと、翌年は年度間として輸入が相出額減っております。減っているというのが普通の引き締めの調整の結果でございまして、それが引き締めにもかかわらず若干増加するというふうな輸出入の見込みをされております。六十二億ドルは、今度の実績を若干上回る見込みでございますから、そうだといたしますれば、輸入に対する影響としては、生産の見込みにおいて若干の狂いが生じても、結果においてそう変わりはないのじゃないか、重大なそごを来たすことはないだろうというふうに考えております。
  133. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 時間が少なくなりましたから、あと簡単に。あとは議論になりますから、あとになってみればわかるのですから。  資料を出していただきたいのですね、二つ。一つは最終需要の乗数効果、これは経済企画庁で産業関連表による試算をやっておる、財政支出の経済効果という調査があるのです。これは昭和三十二印、非常に古いですか、最近において調査したものがありましたら出してもらいたいのです。これによると、最終需要の乗数効果については、資本形成の場合は非常に大きいのです。ですから、今度は三十九年度の公共事業費は非常に前年度に比べてふえております。こういう乗数効果は非常に大きいと思うのです。それと、そういう場合の輸入依存度、個人消費の場合の輸入依存度と、それから資本形成の場合の輸入依存度、この調査がありましたら。それが大きくなると、やはりいまの鉱工業生産が二〇%になったら、あとダウンしていくのだという、いままでの過去の傾向、そうなっているんだから心配ないというお話ですが、ほかの要素も考えなければなりません。これはあとでわかることですから。その二つをできたら出してもらいたい。これはぼくが要求しても出てこない資料があるのですよ。催促しなければ出してこないようではいけませんよ。要求をして出してない資料がある。要求しなければ、黙って、国会済んじゃえば忘れちゃうというのじゃ困る。  それから、もう一点だけ、渡邊為替局長がおりますから、最後に、これは再質問いたしませんが。この間のパリの蔵相会議に行かれまして、流動性の問題について協議された。そこで話し合いされたこと、それから流動性の問題についてどういう方向に結論づけられようとしているかですね、その点御説明いただきたいと思います。これで終わります。
  134. 渡邊誠

    政府委員(渡邊誠君) 国際流動性の問題の研究は、昨年九月及び十月の初句のIMFの総会の際に、各国蔵相及び中央銀行総裁が集まりまして、今後東京総会までに間際流動性の問題を研究しようじゃないか、ついてはその代理を任命してその代理に詳細に検討させよう、その場合においてはIMFも別個に流動性の問題を検討するが、しかしながら、IMFと蔵相の代理会議とは協力してやろう、そのほかOECD及びBISの協力も頼もうということになりまして、十一月、十二月、一月及び二月の四回パリに会合いたしまして、この問題を検討したのでございます。  その検討の主要点は、現在のIMF平価、これは変えない。それから、現在の金の価格、これも変えない。その基礎の上に立ちまして、今後のアメリカの国際収支が均衡した場合に、従来国際流動性の主たる供給源でございましたアメリカの国際収支赤字がなくなることにより、その供給源がなくなるわけでございますから、今後世界経済が伸びていくに際しまして必要な流動性の総需要がどうであるか、あるいはそれをいかなる方法によって支弁していくかという問題につきまして、あらゆる角度から検討をしたのでございます。しかしながら、その内容につきましては、これは十カ国の蔵相及び中央銀行総裁から命ぜられまして各代理が検討しておるのでございまして、六月の半ばごろ代理会議の結論を蔵相会議に報告いたしまして、そこで発表その他については蔵相会議が決定するという段取りになっておりますので、現にその発表を禁ぜられておるような状況でございまして、中間段階におきましては、はなはだ申しわけないことでございますけれども、内容につきましては御報告申し上げる自由を持っておらないわけでございます。
  135. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もう質問終わったんですけれども、しかし、傾向は大体言えるんじゃないんですか。たとえばトリッヒン案とかいろいろ出ていたでしょう。ああいう方向と大きく分けてそうでない方向とあるでしょう。そういう方向くらいは言えるでしょう。
  136. 渡邊誠

    政府委員(渡邊誠君) トリッヒンとかバーンシュタインとか、各種の学者、実務家の案もございまして、それらの案につきましても検討をいたしております。しかしながら、基調といたしましては、現実に即して最も妥当な方法を発見しようという考え方に立っております。
  137. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 せっかく大臣がおられるんで、この法律案の具体的な問題については大臣がいなくても政府委員でやりますが、せっかくの機会ですから、ひとつ根本的な問題に対する意見をこの際承って、明らかにしていきたいと思うんです。  開放経済体制への移行は、発達した日本経済のもとでは必然的な道だというふうにお考えになっておられるように考えるわけです。開放経済体制に移行するというのは、政策的な面としてのものなのか、どうしてもこの道は通らなければならない必然的なものとしてお考えになっているのか、その点ひとつ。
  138. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 政策的なものというよりも必然的だ、こういうふうに考えているわけであります。
  139. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 そこで、この開放経済体制に移行していくこの道が必然的であるということなのですけれども、根本的——基本的と言ってもいいのですよ、基本的に、この道を歩むのに重大な基本的な条件か具備していない。その基本的な条件は、私どもの考え方では四つあると思っております。  まず第一に言わなければならないのは、日本経済が、また日本経済を基底とするところの日本の政治、軍事上の立場が、真の意味での自主性を持っていないということは、この開放経済体制下に突入する上においては、一番基本的なつまり弱点というか、根本的の欠陥といわなければならないものだと思うのでありますが、これに対してはどういふうにお考えになっておりますか。
  140. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 開放経済に向かうことが必要であるということについては、また御質問があればお答えいたします。  政治的、軍事的に自主性がない、こういうことを言われますが、私どもはそう行えておらないのです。全く自主性そのものである、こういうふうに考えております。
  141. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 これは何も私どもが常にアメリカに従属しているということを言っているからという意味ではなくて、ほんとうにひとつ考えてみる必要があるんじゃないかと思う。たとえば日中国交回復の問題、たとえばフランスが中国を承認したという時点においては、何か池田内閣も前向きの姿勢を持っているかのような考え方を国民に与えましたけれども、ところが、時がたつに従って後退した。今日ではむしろ振り出しに戻った。しいていうならば、日中国交の回復は、安保条約の体制下のもとではこれはできないじゃないか。日華条約の破棄という問題も、安保体制下ではできないじゃないか。もし台湾の地位に重大な変化を伴うようなことは、安保条約締結国であり、また相手国である日本の立場で行なうということになれば、安保条約そのものに対する重大な違反行為であるというように、政府の考え方が次第に固まってきたというふうにあの中国問題に対する統一見解からも察せられるわけです。これらの事実は、一時前向きの姿勢で進もうとしたにもかかわらず、この新聞にあるところのアメリカに対するところの従属という問題が、日本の政治的、経済的な問題においても自主性を拘束している生きた事実じゃないか。こういう点から見ると、この問題は、いまあなたのおっしゃったように、全く自主性を持っているというふうに言い切れない面がある。これをそのままにしておいて開放経済体制に飛び込んでいくということは、これは根本的な欠陥であると私たちは考えるが、これをひとつ明確にしていただきたい。
  142. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 日本は世界自由主義、民主主義国家群に位置しているわけでありますから、ココム、チンコム等の制限に制約を受ける二とは当然でございます。しかし、こういうことは、日米安全保障条約を締結していることからくるものではなく、自由主義、民主主義国に組みしているような国々はみなココム、チンコムの制約を受けているわけでありますから、それが日本の自主性をそこなっているというふうに考えるのは少し飛躍があると思います。  それから、政府の中共貿易に対する姿勢の問題を言われましたが、これは総理大臣の施政方針演説でも申し述べているとおり、前進する態勢ということでありまして、いまの時点で、きのうはよくきょうは後退するというようなことを考えるよりも、長い歴史の中で考えていかなければならぬ、やはり世界の動きに相呼応しながら少なくとも前進体制をとっているという事実は、これはだれにでも認めていただけると思う。ただ、日中の問題について、いま国交は回復しておりませんから、政府は国交が回復していない現状において政経分離の方針をもう中外に宣明をしておるわけであります。この方針によって民間貿易はやりますと、こういうことになっておるのでありますから、これに対してどうも政府がうしろ向きになったとか、後退したとかという考えはございません。また、積極的にというけれども、これは相手のあることでありまして、相手外貨状態もございますし、これは民間のコマーシャル・ベースによる貿易が前進しつつあるわけでございますので、どうもこの問題と私は開放経済との問題が混淆されて論断されるのは何かおかしいような気がいたします。また、裏返していえば、中共貿易の問題が前向きに解決をしない以上は開放経済へ移行するのはおかしいと、こういう議論にもなるようでございますが、その間どうですか、私ちょっとわかりません。
  143. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 それでは、大臣聞きますけれども、たとえばOECDの加盟国ね、OECDの条約は一九六一年のたしか十月十四日だったと思います。あれに参加している国々を見てごらんなさい。ほとんど大部分はいわゆるNATO加盟国であります。だから、NATOの、つまりNATOの政治的、軍事的な、つまり条約のその経済的な基盤を強化するためのOECDの条約であることは、これは明らかであると思うのです。だから、そういう点から見ましても、決してこの経済が、政治や軍事の体制と別に経済が動いていくということは、これは考えられないのですから、当然この開放経済体制といわれているものは、日本の政治的、軍事的な諸面との相関関係の中で進んでいくということは、これはもう理の当然だと思うのです。  そこで、つまり私の質問していることをイデオロギー的に曲解をしないでひとつとってもらいたい。それは日本の経済がつまり今日自主性を真に回復していると、自主性のもとで動いておると言い切れない面は、政治、軍事的的な面におけるところの自主性の拘束を反映している。この形のままで開放経済に突入するということは、アメリカの衛星国的な役割りをして、その開放経済体制の中で、世界のそういう資本主義国の中で、イギリス的な、フランス的な弾力性をとり得ないのではないか。ここに私は開放経済に移行していく場合の基本的な欠陥が必ず出ておると。この点について政府は一体どう考えているのか。
  144. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 政府も私も、どうもイデオロギーと開放経済とを結びつけておらないのです。あなたのほうが、これはイオデオロギーを前提にしてどうも論断されておるようであります。いわゆるEECの国々とNATO諸国が同一であるということは、NATO諸国でなければEECに入れないというのじゃない、これは。時あたかもEECの国々がNATO諸国の国々であるということで、この間の関連性は全然ありません。EECは御存じのとおり、何が一体前提でできたかといえば、ヨーロッパ共同市場をお互いの力でもってやろうということでEECができたのでありまして、これとNATO加盟ということは全然関係がないわけであります。  それで、第二の問題としては、日本が自主性がないと。これはまさに占領軍の治下にあったときは確かに自主性がなかった。国会でもって附帯条件をつけるのでも、明治生命まで行ってオーケーをもらってこなければいけない。今日は、お互いに議論して法律はどんどんつくれる。これはどこに自主性がないということを……。私は何か少し幻想にとらわれておられるのじゃないかと、私はそう感じるのです。いわゆるNATO諸国というものとEECというものが時あたかもちょうど同じメンバーであったと、NATO諸国に属するものがEECのメンバーとしては多いということ等と比べまして、日本政府がいま自主性がないなんということは私は考えられない。また、イデオロギーを前提としておらないということに対しては、日ソ貿易等もやっておるのでありますから、イデオロギーにとらわれておるなどということは、この例を見てもないということは感じられると思います。
  145. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 大臣は四時までということですから、時間がありませんので、この問題について一々実例をあげて討論する余裕はありません。ただ、私が言ったのは、NATO加盟国はEECではなくて、OECDです。OECDの加盟国はほとんどNATO諸国だと。だから、そういうことを申し上げたので、これは大臣の思い違いかもしれません。  そこで、この問題につきまして、私たちは自主性を大きく制約を受けているということのままでこの開放経済に突入していくということは、非常な危険をもたらすものだ、国民に不幸をもたらすもんだと思いますが、これは時間の関係があって内容にまで触れて質問を展開している余裕がありませんので、あと次の問題に移りたいと思います。  一つの問題は、この法案拠出の中にも世界経済の趨勢に即応し云々ということが書いてありますが、今日の世界経済の趨勢を最も特徴的に見た場合、東西貿易の拡大、つまり対社会主義諸国との貿易の拡大ということが今日の世界経済の趨勢としては一特色だと思います。で、これはだらだら坂を登っていくようなものでなくて、国連の今度の貿易経済会議においても主要な問題の一つとして当然取り上げられるでしょうし、現在においてはこの問題はイギリスやアメリカにおいても大きな問題として取り上げられておりまするが、この開放経済体制に移っていくのについての東西貿易拡大に対する政府の積極的な姿勢というようなものは、一体どういうものに政策的にあらわれているか、これをひとつお答え願いたいと思う。
  146. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 東西貿易ということがこのごろのことばになっておるようでございますが、これは実際戦後の状態をすなおな気持ちで見ますと、お互いが代金を決済できるという状態である国々同士がまず貿易を始める。第二には、低開発国に対する援助を含めて貿易を拡大していく。それと、第三の問題として東西貿易ということがいわれてきたわけであります。これはいままで鎖国政策をとっておって、政経分離をしない共産主義国とはなかなか貿易したくてもできない状態でありましたが、雪解けといいますか、いずれにいたしましても、政経分離でもよろしいし、まただんだんと貿易というものが拡大しつつあることは、これはEEC諸国とソ連との貿易の問題、また日ソ間の貿易の問題、日中間の問題等を見てもおわかりになるとおりであります。これは時代の趨勢によってそういうようにだんだんとお互いが道を開いてきたのでありまして、日本がIMF八条国に移行する、いわゆる開放経済に向かうから、新しい角度で共産圏貿易というものに対してどう道を開くかということに対して、姿勢を明らかに別な角度からしなければならないというようなことは考えておらぬわけです。これはさっきも申し上げたとおり、貿易は相手国のあることでありますから、相手国日本の間に国交が正常であれば、正常な状態において貿易をします。正常でなくても民間貿易がやれるものは政経分離でやりましょうと、こういうことであります。  これは鈴木さんたちはどうも、日本政府がやりたくない姿勢をとっておると言っておりますが、これは逆なんであります。御承知のとおり、共産圏というものは全部、衛星諸国家の私たちは何十人という人に会いましたが少なくとも共産圏と西側の国との貿易をする場合には、輸出入のバランスということが前提である、こういうことを言うのです。日本からは物を買いたい。買いたいけれども日本は何か買ってくれなければいかぬ。売るものがありますかと。ないと。こういう状態が東西貿易のネックになっているということをひとつお考えになっていただかないと、日本国際収支というものがそう安閑としておれないというときに、ただでいいじゃないか、ひっかかってもいいじゃないか、何十年のあと払いでもいいじゃないかというわけにはいかないわけであります。やはりそういう事実というものをよく認識していただければ、東西貿易、日本対共産圏貿易というものが将来どうなるであろうかということは、想定できると思うのであります。
  147. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 時間がないから、私は残念ながらあと一つ、二つの問題で終わらなければなりませんが、結局、共産圏貿易の拡大を今日阻害しているものは人的障害なんです。
  148. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) そうじゃないね。
  149. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 そうですよ。ガットなんか明らかにそうじゃないですか。こういうふうなものが撤廃されないで、なかなか貿易が所期の方向に向かって進んでいかないということは、これは明らかだと思います。しかし、それにもかかわらず、今度ことしの春、貿易開発会議が開かれるわけです。この問題に対して私は、四十一回の国会ですから、ちょうど三十七年の八月二十三日にあなたにお聞きした。これはちょうど、その当時はまだこれがごく一部で問題が唱えられたわけでありまして、私はこれに対して、当時は世界貿易会議といわれたか、名前は世界貿易会議ということで御質問をした、あなたに。あなたはそのときに、これは非常に大きな問題であって、日本政府がこの問題に対してあれこれ発言をするのは時期として適当でないという答弁をなされておられた速記録がございますけれども、これは今日わずか二年たつかたたない間に、この国連貿易経済会議日本がやはり重大な発言をしなければならぬ立場にきているわけです。  そこで、国連貿易開発会議において日本は一体……。二つの点をお聞きします。ガットにかわるべきような他の、ひとつ世界経済会議的な機構的なものをつくるという方向について賛成をするのか、これが一つ。二は、いわゆる低開発国——たちは新興諸国と言っておりますけれども、この新興諸国の要望をいれて、ガットに対するところの日本政府の態度、要望をいれるという形において前向きの姿勢で進むのかどうか。こういう二つの点をお答え願いたい。
  150. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 国連貿易会議におきましては、低開発国援助という問題が一番大きな問題になると思います。この問題につきましては、の開発会議の中において日本も応分の低開発国援助をやっていきたいということを表明するわけであります。これは三十七年において三億七千万ドル、三十八年は少し相手国外貨事情等があって一億八千万ドルに減りましたけれども、米英等を含めまして世界で五番目の低開発援助国であるという事実は御承知いただけると思うわけであります。こういう問題に対しては、の貿易委員会及びIDA、IMF、世銀の会議等で常に議題といたしておるわけでありますので、こういう問題に対しては日本側の発言もしかるべく行なわれるであろうということは考えられるわけであります。  なお、ガットの問題、ガットというものと内容は同種のものであっても、そういうきっと御発言は、国連の加盟国である他の国々、もっと積極的にいうと、共産圏の国々等も加えたより大きなものをつくってはどうか、こういうきっと御思想だと思いますが、現在まだ、ガットでもっていま五月四日をめどにして一括関税引き下げ交渉をやっているところでありますから、そこでもまだ成果をあげ得ないうちに、それよりもでかいところに入ってひとつやろうというような結論は出しておらないわけであります。ガットでひとつ日本の意思を大いに述べて、一括関税引き下げという基本的な姿勢に対しては賛成しておりますが、日本の特殊性、農業国としての日本の実情等日本発言すべき事項はたくさんありますので、こういう場合においては十分ひとつ発言をしなければならぬだろうというふうに考えております。
  151. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 時間がないので、まだ大臣よろしいですか。
  152. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) もうちょっといいです。
  153. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 そこで最近の情勢は、ガットはむしろ斜陽化しつつある。たとえばフランスなんかとはとにかく、ガットに拘束されない立場で、さらにココムにも拘束されない立場で、対共産圏貿易を伸ばしていくべきだという基本方針をきめたかのごとく伝えられておる。私どもは事実によって知っておりませんけれども、新聞その他によると、こういうようにいつまでも斜陽化したガットにしがみついておる、こういうことはよくない。こういうことはむしろ国際経済の趨勢から立ちおくれとなる一つの原因になりませんか。大臣は十分御承知かと思いますけれども日本が開放経済の中に進んでいく上において、対日貿易差別がずいぶん方々の国で行なわれている。たとえばアメリカのような国でも、日本に対して約三〇%にのぼる自主規制を現に行なっておる。それから、イギリスにおいてもフランスにおいても、同様の形でやっぱり対日差別をなお依然として続けておられるわけですね。だから、こういうような事態を考えてみると、貿易上における対日差別を撤廃するためには、既成のこういういわば資本主義の親分衆が集まっているようなそういうところで料理をする、そういうガットというワクの中で解決し得ないのじゃないかと。だから、そういう形で、この国連貿易開発会議をひとつ契機として、より平和共存の立場で大きな共産圏も含めた新しい形のそういうふうな貿易経済会議が必要ではないかと、こういう立場で質問しているわけです。
  154. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) ガットの対日差別待遇の撤廃、これはまあ実際二国間交渉等をいままでやってきたわけでありますが、こういうことでは日本輸出が伸びないということで、これを合理的に解決をするためにはどうすればいいか、これは結局、二国間交渉でやっておってもなかなからちがあかない、ガットに加盟をしているということでもって。まあ池田訪欧を契機としまして、ガット三十五条援用撤回の交渉が非常に円満に進んでおります。これは一年間でもっていままでの十年分ぐらいの解決をしつつあるわけでございます。そういう意味で、やっぱり二国間交渉でいろいろなことをやっておることもさることながら、やはり日本が対日差別待遇を撤廃さして輸出を伸ばすにはどうするか、やはり国連のような機構に入るほうがいいということで、IMFの場において議論もしたり、また今度の国連貿易開発委員会でもって議論をしたり、ガットの場で議論したり、それからOECDに加盟をしようというのはそういう目標であります。そうすれば、お互いにグループになるわけでありますから、そういう中で議論をすることが非常に成果をあげることであって、いままでのずっと二十年の例をごらんになっていただければ、国際会議の正式メンバーになったことによって、日本が応分の負担をしたよりもより大きな成果があって、対日差別待遇等がどんどんと撤廃されているということは事実をもって証明できるわけでございます。  あなたが、いわゆるガットの会議なんかよりももっと共産圏を含めたということは、それはいつかできるでしょう。いっかできるでしょうけれども、いま自由主義諸国家の中でもって差別待遇の撤廃を盛んにやっておるのであって、これは私は少し言い過ぎかもわかりませんが、やはり国連の今度の開発会議というものは、これは相当なことになると思うのです。なると思う。と思うのは、これは日本のためにいいか悪いか、私は、日本はやはり先進工業国十カ国の中に入っておるということから考えても、ここでやられることは、国連のあの審議状況を見ればわかるとおり、これは一票はみな同じなのでありますから、われわれには金を出せ、われわれのいままで投資をした金をたな上げしろ、こういう議論のほうが私は非常に活発になると思うのです。だから、まあこれは将来のために、開発貿易委員会でもって日本も正式メンバーとして議論をすることは確かにいいことではありますが、これはやはりそれよりも大きな、共産圏も含めた大ガットというようなものは、まあしかし、いま日本がしろといわれてもなかなかできませんし、これはできるならば、できるような諸情勢が整ったときにできるのでありますから、そういうときは、まあ主要国としての日本の国際的地位も相当上がっておりますから、どうぞ日本もお入りくださいというか、日本も設立発起人になるか、私はまあその程度の、そういう状態だと思うのです。だから、いまガット以外の大きなものをつくって、また日本発言をしろ、こういっても、そこまではなかなか踏み切れない状態じゃないかと思います。
  155. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 これで私は終わりますよ、質問は。なかなか、あなたのおっしゃったとおり、日本はいかないでしょう。いかないということは、私のさっき言った、つまり自主性を十分持っていないということの一反映であると言いたいのですが、まあ私は言いません。  そこで、最後に聞きたいことは、対日貿易差別の問題でいつも向こうが問題に出すのは、二つですね。日本のダンピング的なものについて一つ、それから日本の労働政策に対する、つまり反動といっては、あなたたち、これは言い過ぎというかもしれませんけれども、ILOの八十七号の条約さえもすなおに批准しないような日本、こういうことでいつもやってくるわけです。そこで、対日貿易差別を撤廃するにふさわしい国内の体制をつくる、私は最小限この二つだと思う。真の意味の最低賃金制の確立、全国一律の最低賃金制の法制化と、もう一つはILO八十七号の条約の無条件批准、国内法を抜きにした無条件批准、この二つは対日差別撤廃のための日本の何というか、自由な発言一つの要因になると思うので、これについてどうお考えですか。
  156. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 世界市場において、かつて日本のダンピング政策に対しましては批判があったことは御承知のとおりであります。私もそれは認めます。でありますから、政府も業界と一体となり、相携えまして、輸出秩序確立ということをあえて訴えていることは、そのような立場に立つものであります。ダンピングというものは、一時的に輸出の伸張になっても、将来の安定的拡大をはかる道ではないということを国民自体が承知しておりますので、正常な輸出振興に努力したいという考えでございます。  あと、まあILO条約の批准ということが、これがどうも無条件にやらなければ対日差別待遇が撤廃にならないという議論には飛躍があると思います。政府はいまお出しをしておるのでございますから、もう何回もお出しをしたこのILO条約というものは、一日も早くひとつ関係法ともどもお通しいただくということが一番いいことである、このように考えております。
  157. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 最低賃金は……。
  158. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 最低賃金は、これはもう何年か前に最低賃金八千円ということがうたわれて、なに、できるものかといっておるうちに、もう一万円以上になっておるわけでございます。もうこれは御指摘のように、所得倍増政策を私は申し述べる気持ちはございませんけれども、とにかく戦後わずか十九年で、一歩一歩ではなく、二歩二歩ずつわれわれの生活はよくなりつつあるという事実だけを申し上げて、御了解をいただきたいと思います。
  159. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 時間がないそうですから、大臣に対する質問は終わります。
  160. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ちょっと速記をおいてください。   〔午後四時十四分速記中止〕   〔午後四時四十三分速記開始〕
  161. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記を始めてください。  それでは、大橋労働大臣が出席せられましたので、同大臣に対する質疑を行ないたいと思います。御質疑のある方は順次御発言願います。
  162. 野々山一三

    野々山一三君 時間がもうおそいので、大臣、基本的な問題についてできるだけまとめて伺いたいと思います。  前置きはもうやめますが、OECD加盟、そうして開放経済体制に入るわけであります。一そうそれが具体化するわけでありますけれども、問題は、やはり日本の今日までの経済成長というものが私は大ざっぱに見て三つの要件、つまり大企業に対する経済的、財政的、税制的な援助というものが強いものがある。それから産業の二重構造というものがある。それから極度のチープ・レーバーというものがそれを促進をしたということに見るのであります。そこで、少し、直接この法律に関係はないのですけれども、OECD加盟及びそれと並行的に進むIMF八条国移行という大勢ですね、大勢に関連をして、私は労働大臣の所見を聞きたい。  その一つは、OECD加盟ということに関連をいたしまして、OECDの中に三十五の委員会がある。そのほかにアウトサイトの二つの——経営者側の集団であるBIACというものがある、片方、労働側の集団の意見をそれに映し出すためにというのでTUACというものがある。そこで、このTUACと関連をした労働政策を聞くのでありますけれども、その前にBIAC、つまり商工業諮問委員会というものに対する政府の今までとってきた国内の経営者集団に対する政策といいますか、考え方といいますか、それを当然のこととしてOECD加盟の国内における産業資本の態勢整備という意味においてやらざるを得なかっただろう、話し合いを進めてこなければならなかったはずだと私は見るのであります。もしそれがやられていないというならば、当然これはあまりにもそういう基礎条件をそろえるために手を打たれなさ過ぎたというふうに考える。これはあなたの直接の所管ではないかもしれませんけれども、いま私の伺っておる商工業諮問委員会に裏打ちする日本の資本産業に対する態勢づくりというものをどういうふうに進められてきたかということについて伺いたい。
  163. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) ただいまの御質問の商工業諮問委員会の関連の国内の準備態勢ということでございますが、これは私のほうの所管でないと思われますので、どうぞ御関係のほうから聞いていただいたらしあわせかと存じます。
  164. 野々山一三

    野々山一三君 産業及び産業資本とその反対側にある労働の態勢、これは腹と皆中の関係なんで、まるっきり私の所管じゃないから知りませんというふうに言われると、あとの質問に入りにくうございますよ。そんな片っ方だけしかおれは知らぬというなら、一体なぜ——非常に今後大きな役割りを果たすはずですよ。経済の成長、貿易の拡大、後進国の開発援助というようなことがOECDの三大眼目であります。そのために国内の産業態勢、資本の態勢というものも整備するために、そうしてまたOECD加盟の各国がそれに対するの意思を受け継いでその三大目標達成のためになしていくことが、三大眼目である経済の成長、貿易の拡大、低開発国援助というその眼目を達成することに私はなると思う。それを切り離して、おれの所管じゃないから知らないと言われると、それじゃ次の問題を知っておるかと私はお伺いしますから、答えていただきたい。  TUACというものについて一体今後日本の労働団体はどういう働きをしてくれるのか、OECDと目的を達成するために役割りを演じてくれるのか、あなたには期待があるはずです。構想があるはずです。その点をひとつ、じゃ、お持ちなのかどうか、裏から聞きたい。
  165. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) OECD加盟に際しましては、当然日本の労働組合はOECDの労働諮問委員会のメンバーとして入ることと思うのでございます。私は、この諮問委員会における日本の労働組合の使命といたしましては、OECDの目的に協力をいたしますると同時に、日本の労働組合というものをできるだけ国際的水準にまで引き上げていくことについて、この組合の代表者が大いに貢献してくれることを期待いたしておるのでございます。
  166. 野々山一三

    野々山一三君 その入ることは当然であり、この団体を通じて、日本がOECDの目的を、日本の労働団体がOECDの目的達成のために協力してくれることが望ましいという構想であります。それならば、一体、OECDのTUACに参加している労働団体は、OECDの理事会の意思によれば、リストをきめて、これだけのものが入ってこい、こういうふうにきめておる。OECD加盟ということが、即、日本の労働団体の国際連帯に一つのワクをかける結果になることをあなたは想定していらっしゃると、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  167. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 御承知のとおり、労働諮問委員会に対する日本の労働組合の加入というものは、これは自由でございまして、政府のほうにおいて、どの組合が入れ、どの組合は入るべきでないというような判断をいたしておるわけじゃございません。これはOECDの当該委員会日本の労働組合の話し合いできまる問題だと思います。
  168. 野々山一三

    野々山一三君 ところが、そのOECDのその労働組合諮問委員会に参加している団体と日本の労働団体とが相談してきめるとあなたはおっしゃるのですけれども、現にOECDの理事会は、その参加団体なるもののリストをきめて、これが入るのだと、こういってチェックしているのです。かってな労働団体間の話ではない。もう現にすでに入っておる二十カ国の労働団体に対してワクをはめておるじゃありませんか。そうしてしかも、二つの国、スぺインともう一つの国の団体に対しては、これは自由な労働組合じゃないので云々ということで、そのリストからはずしておる行為をやっておるじゃありませんか。あなたがそれを知らぬはずはないので、そうすると、いまの話とはだいぶ食い違いがある。いかがでございますか。
  169. 大宮五郎

    政府委員(大宮五郎君) 先生御承知のように、TUACは、IFCTUすなわち国際自由労連と国際キリスト教関係の労働組合がそのメンバーになっておりますので、BIACと同じように、TUACのほうは経営者に対する組合側のサロンのようなものでございますから、まあ同じサロンの仲間として、あるいは同じ系統の自由労連の系統が話がしやすいといったような感触は持たれるかもしれませんけれども、それは政府としましてどの組合がそこに参加するのがいいとか悪いとかいうことにはなっておりませんので、なお、この問題につきましては日本の労働組合が十分その中でもってお互いにもう少し検討してきめるべき問題ではないかと思っております。
  170. 野々山一三

    野々山一三君 これは入るも入らぬもかってだといえばそうかもしれませんが、OECDの事務総長が議長になってそのリストをきめる行為をやったんです。OECDの事務総長がそのリストをきめるという行為をやるということは、それ自体、この間からOECDに対する権利義務の関係が相当議論されたのでありますけれども、必然的な結果として日本の国の、たとえば日本の労働政策として、それに対して日本は、OECDに加盟をしている国の行為として、それを具体化することが望ましいし、それに協力してくれることが望ましいし、そのためにこそその二つの諮問委員会というものがあるのだと、あなたは先ほど答えられた。また同時に、それをやっていかなければその効果があらわれないのだとあなたは言われた。そのことからいたしまして、必然的な結果として、それを強制するとまではいかないにしても、労働政策としてそれが出てくる危険性がある。あなたはそういうことをおやりになる気持ちは絶対にない、こういうふうに言われるのであります。あなたの、そのOECD加盟にあたっての国際労働団体ないしは日本の労働団体に対する対策やいかんということを私は聞いているのです。しかも、繰り返すようですけれども、このリスト作成にあたっては、OECDの事務総長が議長になって、そのリストをきめて、しかも二つの国の労働団体に対しては、これは条件が合っていない、自由な国の自由な労働運動をやっている団体ではないから、これは加盟させないということまで、総長の手元においてそれがやられているということから関連いたしまして、あなたの、言われるような調子に、ただ、かってです、自由です、そんなことにまでくちばしは入れませんということにはならない。客観的な、道義的な責任を負わされるはずであります。そういう立場からあなたの考え方を聞いているのであります。ずばり答えていただきたい。
  171. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 私は、OECD加盟に際しての労働組合対策といたしましては、先ほど申し上げたとおりでございまして、政府は組合の加入についてかれこれ指図がましい考えは毛頭持っておりませんし、また政府の立場から国内の労働組合の加盟について差別をする考えもございませんし、またOECDのそれに反するようないかなる行動にも協力する考えはございません。
  172. 野々山一三

    野々山一三君 それなら伺いますけれども、TUACというものを、OECDの中のTUACというものをあなたは認めるという立場に立たれるのですか、立たれないのですか。そうしてそれの果たす役割りというものを、あなたはどういうふうに認識されるのですか。OECD加盟にあたって、そういうことを聞いておかないと、あとあとの労働政策そのものに相当きびしい影響がある、これは予言するような言い方じゃありませんが、勘としてそういうことが言える。しかも、二十カ国のうち、新しく日本が二十一カ国目として入る。その中でいままで入っておった国二つだけは、まだ資格について議論があるが、新しい日本というものが当然そういうことについて体制的にこれはその義務を負わされる因果関係に立つと、こう見るのは私のひが目でしょうか。  ちなみに、日本労働協会が、これは政府が助けてつくっている団体です。この団体が調査した結果の意見、公式なものかどうか知りませんが、書きものになっているものによれば、こういうことです。わが国のOECD加盟は今国会で議論されているけれども、加盟が国会で承認されたならば、日本の労働団体はOECDの諮問機関であるTUACに必然的な結果として入ることになると、こういう調査報告書なり意見書を出している。それをあなたが知らぬというはずはない。事務当局は、そんなことは無関係だなんていうふうに言われるのは、少しこれは強弁というものじゃないですか。私の見方がきびし過ぎるのですか、伺いたい。これは労働政策の問題ですから、当局なんかに聞いたって価値はないので、労働大臣そのものに聞きたいのです。
  173. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 労働諮問委員会はOECDの外郭的なひとつの機関として、各国の労働組合がこれに加盟をいたすのでございますが、この加盟を政府として認める認めないというような問題ではなく、事実として加盟が行なわれれば、それをそのまま認識せざるを得ない問題だと、かように考えているのでございます。これについて政府といたしましては、国内の労働組合を政府の立場において区別するような考えはないし、またそうした企てには協力するものではないということを申し上げる次第でございます。
  174. 野々山一三

    野々山一三君 これは先ほどもちょっと問題にしたんですけれども、あとで理事のほうで相談してもらいたいと思うんですが、労働団体と資本団体との二つのアウトサイドの諮問委員会がある。その中の一つだけは、労働大臣は自分の所管だからといって答える。それで、資本団体に対してこれは相当てこ入れしていることは、事実記録に出ていますよ。たとえば日本の商工会議所に対しても、あるいは経営者団体に対しても、BIACというものに対して相当てこ入れが行なわれて、それに相当集団的に日本の使用者団体が入るという態勢なんです。そのことについてはわからぬというのですから、私は別の機会に聞かなければならぬと思う。これは両方の関係なんです。労使の協調を度外視して、あなたが先ほど答えられたように、一体経済の成長、貿易の拡大、低開発援助というものの本質的な目的を達成し得るとあなたはお考えですか。片びっこの人間でも、足は片方しかないけれども、歩くことは歩くんだから差しつかえないじゃないか、こういうふうにあなたが考えるならば、そういうふうにはっきり答えてください。そこのところが非常にぼけている、あなたの答弁は。そのものずばりで答えてもらいたい。
  175. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) その問題につきましては、実は私自身もいささか研究が足りない点もございまするので、できれば次回に補足させていただければしあわせでございます。
  176. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 ぼくもちょっと関連して聞きたいのですが、まあ民間諮問委員会というものは、OECDの外郭団体であるから……
  177. 野々山一三

    野々山一三君 外郭じゃないよ、サイドの諮問委員会ですよ。
  178. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 サイドの諮問委員会か。だけれども、いわゆるOECDの二十二の委員会、あるいは十三の特別委員会のほかにあるわけです。ですから、OECDに入ったということは、いま言ったように、二十二の委員会、十三の特別委員会に入ることであって、そういう民間の外郭団体としての民間諮問委員会に入ることが自由だと。いま大臣の答弁を聞いていると、それは自由なんだ、かってなんだというふうに聞いておるのですがね。そこらあたりは、そういうものなのか。どうも私らも、野々山君が言うように、入らねばならないものじゃないか、こういう取り方をしておるわけですけれども、そこのところはどうなんです。それもわからないのですか。
  179. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) OECDに対する日本の加盟ということは、これは政府間の問題でございまするので、これによって日本の労働組合がOECDの労働諮問委員会に加盟しなければならぬというような法律関係を生ずるものではないと心得ております。
  180. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  181. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) じゃ速記始めてください。  いまの野々山委員の質問に対しましては、労働大臣が先ほどお述べになりましたように、労働省で御研究の上で、次の機会に野々山委員の質問に対する答弁をしていただきたいと思います。よろしゅうございますか。
  182. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 承知いたしました。
  183. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) いまの問題についてはそのように取り計らいます。  その他の問題について御質問があれば……  速記とめて。   〔速記中止〕
  184. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記起こしてください。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時七分散会