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1964-06-04 第46回国会 参議院 商工委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月四日(木曜日)    午前十時四十分開会     —————————————   委員異動 五月二十九日   辞任      補欠選任    赤松 常子君  田畑 金光君 六月二日   辞任      補欠選任    田畑 金光君  高山 恒雄君     —————————————    委員長     前田 久吉君    理事            赤間 文三君            上原 正吉君            近藤 信一君    委員            大谷藤之助君            岸田 幸雄君            小林 英三君            豊田 雅孝君            八木 一郎君            吉武 恵市君            阿部 竹松君            大矢  正君            中田 吉雄君            藤田  進君            鈴木 一弘君            高山 恒雄君   国務大臣    通商産業大臣  福田  一君   政府委員    通商産業政務次    官       竹下  登君    通商産業大臣官    房長      川出 千速君    通商産業省繊維    局長      磯野 太郎君   事務局側    常任委員会専門    員       小田橋貞寿君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○繊維工業設備等臨時措置法案内閣  提出、衆議院送付)     —————————————
  2. 前田久吉

    委員長前田久吉君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  まず、委員長及び理事打ち合わせ会協議事項について御報告いたします。  本日は、繊維工業設備等臨時措置法案の審査を行なうことになりましたから御承知おき願います。     —————————————
  3. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 次に、委員異動について御報告いたします。  五月二十九日、赤松常子君が辞任され、その補欠として田畑金光君が選任され、六月二日、田畑金光君が辞任され、その補欠として高山恒雄君が選任されました。     —————————————
  4. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 繊維工業設備等臨時措置法案を議題といたします。  前回に引き続き質疑を行ないます。御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  5. 高山恒雄

    高山恒雄君 繊維工業設備等臨時措置法案内容の質問に入るまでに、政府が今日までとってこられたことに対して、私の私見も多少含めて大臣にお伺いいたしたいと考えます。  今回の繊維工業臨時措置法参考資料にもありますように、この繊維工業設備臨時措置法が制定されたゆえんは、何といってもこの背景になったものは、日本の戦後の過剰設備中心になってこの設備調整法ができたと思うのです。そこで、終戦直後は大体約二百万錘、それだけの錘数があったのですが、それがちょうど戦前に比較しますと、約六分の一でありまして、そこで早く言えば、大きな犠牲産業でございまして、昭和二十二年の片山内閣時代に四百万錘の必要が生じて、それを目標にして政府としては指導をされ、また四百万錘を樹立するための努力業者労働者ともやった経過があることをよく私は承知いたしております。そこで、この繊維産業の復興は、当時の日本の生活の不安定な状態から考えますと、少なくとも米の輸入、これの見返り物資、こういうことで、かなりの政府にも貢献しておるとこう考えるのです。ところが、昭和二十五年になりますと、朝鮮ブームということから、これは当時のGHQもこれに対して制限緩和する、こういうことになったわけです。そのときの日本政府考え方というものは、私は目標がなかったのではないか。したがって、急速にこの日本設備が過剰になった。したがって、昭和二十五年から九年までの間、約四年間に八百四、五十万錘というものが増設された、こういうふうに私は考えるわけです。そこで、この当時の昭和二十九年の不況に際しまして審議会が発足し、しかも、その審議会が発足しました当時の大体の考え方というものは、日本設備は八百数十万錘を基礎にしてやろうということになっておったと私は思うのです。ところが、そうした設備に対する制限を加えるということから、急激に発注の契約もあったと思いますけれども、八十三万錘というものが増設された。そうして九百二万錘になった。そのほかにそうした法律施行された後も、これまた憲法にいう企業の自由という立場から制限を無視して八十万錘くらいのやみ紡機が増設された。これがいままでの繊維の私は実態だろうと思うのです。したがって、繊維の過去から考えますならば、制限をしたために今日になってみれば多くの余剰設備をかかえた、こういうことも一面では言えるのではないかと思うのです。そうしたその期間というものは、約八年間そうした統制下にございます。そうして、八十万錘の無登録紡機があるにもかかわらず、この処理は、政府としては、結果としては、これに対する手の下しようがなかったというのが事実だろうと思うのです。そうした時期に、今度のこの繊維新法をいま新しくやろうと考えておられるのですが、私が先ほど申しますように、そうした設備調整法のいわゆる設備制限というものが大きくあとに禍根を残した、失敗ではなかったか、こういうふうに私考えるのですが、この点については大臣もお認めになると思うのですが、どうですか、お伺いしたいと思いのです。
  6. 福田一

    国務大臣福田一君) 今日までの繊維設備、特に紡績に関しまする推移設備推移はお説のとおりであると私は考えております。ただ、まあ制限をしたからふえたか 制限しないでもやはりふえたかということになりますと、これはおのおの考え方があろうかと思いますが、私は高山委員のお考え一つ考え方である、こう存ずる次第であります。
  7. 高山恒雄

    高山恒雄君 私の考え方一つ考え方だと、こういうふうに大臣は言っておられるのですが、私は、それならその無登録紡機というものの処理政府は直ちにできなくちゃいけない。その無登録紡機処理ができないままに、すでに規格外の糸の紡出して規格内の糸すら紡出しておる、これは設備制限を加える、生産にある程度の自主調整というような形における、法律内容における制限を加えたのですが、それすら十分でなかった。したがって、むしろそうした制限が結果的には余剰設備をもたらした、こういうことに私はなろうと思うのです。  それともう一つは、私はいろいろ調べてみてわかってきたのですが、この過去の繊維産業実態を見ますと、昭和二年から七年ごろまでの間に十八回も生産操短ということをやっておるのです。そういうことが実際には日本繊維の今日をつくったとも言えましょう。繊維産業がなぜしからば適正設備による国内需要あるいは輸出、これらの設備調整とれないかというと、私は過去のそうした生産に対する操短をやって調整をとっておる上から、いままではそれでよかった。ところが、この法律をつくると、結果的にはそれができない。いまのうちに据えるだけのものを据えておかなければ損だ、こういう私は結果が生まれてきたと思うのです。むしろあの設備調整当時の三十一年にこれを発足しましたときに、むしろ政府としてはこの中小精紡機をどうするか、どういう指導をするかということを基本的に考えるべきではないかということを、私も当時の設備調整委員におったことがありますが、そういう発言をしたことがありますけれども、これを一切いれなかったのが当時の中小企業の代表でもありましたけれども、私はそうした考え方からいくと、どうも繊維の場合は業者意見が強くて、政府のき然たる指導というものが、あまりにもあと回しになっておるような形になる。したがって、できたものを処理していく、こういう形しかないのではないかという気がするのですが、こういう点は、大臣も十分御承知だろうと考えますが、そういうふうな考え方でも間違いないかどうか、大臣所見をお伺いしたいのです。
  8. 福田一

    国務大臣福田一君) 高山委員は、この方面よく御研究でございますが、私、繊維産業というものを見てみますというと、従来繊維産業というのは、非常に景気と不景気の波動がきつい。同じ産業のうちでも、これほどむやみにもうかるかと思うと、むやみに損するという産業も少ないと思う。もうかるときになりますというと、やはりもうかるからどんどん設備を増設する。設備を増設して、さあ悪くなるというと手をあげてしまう、何とかしてくれと。こういうことからいろいろな法的な規制措置がとられる。そうしているうちに、もうかるとまたやるというような繰り返しで、こういうのが、先ほど御指摘になったような数回の規制根本原因であったと思うのであります。でありますから、法律をつくりましたときに、いわゆる中小紡機やみ紡機というものを徹底的になくする。なくするという考え方ではあったんだと思うのだけれども、実際に法の適用の場合になると、なかなか実現しにくいというところに、実はこの措置法その他いままでの一連の法律欠陥が出てきておる。それじゃ、そういうものがあるから、やらないでおいたらどうかということになると、これまた、やらないでおくというわけにもいかなかった。これはいわゆる自由主義経済欠陥でもあるが、ある種の統制をやっても、その統制が実現できないということになっておるのですから、その辺についても、何かどこかそこいらに救いがたい病根があるように私は感じておるのでございます。これをいかにしてこの病根をなくしていくかということが、これからの立法問題でもあるし、行政的な問題でもあるのではないか、こういうふうに感じております。こういうことを申し上げると、それなら、なぜそのことをちゃんと書いておかないかという御指摘を賜わると恐縮なんですが、なかなかこれはむずかしい問題でありますが、しかし、やはり法律でもって規制している以上は、これに従うように極力持っていかなければならない、かように考えておるわけでございます。
  9. 高山恒雄

    高山恒雄君 大臣もよく御承知であるので、私は繰り返し大臣の所信を聞こうとは考えておりません。しかし、大臣もおっしゃっておるように、法律でも規制ができない。できない点は、やはり憲法に基づく企業の自由、こういう問題があって、私はできないと思うのです。しからば、これは登録制になっておるのですから、これを強化するということは、行政指導をいかに強化するかという問題に尽きるのじゃないか、私はそう考えております。ところが、繊維産業というのは百年からの歴史を持っておりますし、他の産業に匹敵のできないほどの中小企業をかかえております。三次製品も含めますと。それでむずかしいと思いますが、むずかしければむずかしいほど、いわゆる監視とか、そういうものをもっと政府自体が強化する。いま監視その他をやっておられますけれども、これは業界がやっておるのですね、紡績協会がやっている、羊毛協会がやっておる。したがって、政府はそれのいわゆる行政的な取り締まりの権限だけが多少あるということですね。経費はみな業者が出しておる。こういう行政措置というものに私は問題があろうと思うのです。業者に金を出さして監視させている。そうして政府は、一方には最高機関である国会できめた法律を無視されておる。こういう行き方が私は行政面の誤りではないか。これはもう過去からみて、この点を非常に私は憂うるものであります。まあ今後、細部にわたるこの廃棄の問題についても監視の問題もございます。これもどうするかという問題になりましょうが、少なくとも私はこうした中小企業をかかえておる、しかも登録制を基準として政府行政措置をしようとするならば、それに見合う予算を立てて、私は政府としてもっと権限を強化すべきだ、こういうふうに考えるわけですが、大臣どうお考えになりますか。
  10. 福田一

    国務大臣福田一君) お説のとおりであると存じます。ただ、確かに業界からも金を出させておりますが、政府も少しは出しておるわけでございまして、ことしは去年の倍以上に、ようやく予算を三十五万円ほど取っておりますが、しかし、それはもうそれくらいのものでいいとは私は考えておりません。やはり御趣旨のように、法律できまっている以上は、法律が実現できるようにということで考えていきたい。ただ、実際問題として、百台とかそういう非常に少ない数の仕事をしておる、またそれをやらなかったら、急にもうそれで破産してしまうというような実際問題の取り扱いの場合に、なかなかここにめんどうがある。だから、それを順次やめさせるとか、いままではあまり大きいものはもう認めないというようなやり方もやってきておりますが、これでうまくいくはずはないので、順次これを転換する強力な行政措置というものは、やはり法律がある以上はなさなければならないという御趣旨には、私全面的に賛成でございます。
  11. 高山恒雄

    高山恒雄君 私も、大臣にそういう所見をお伺いするのについても、むずかしい問題とは考えております。しかし私は、経費全額政府が負うということにして、その人員は、各社にこれはひとつ選考を依頼する、したがって選考された者は大臣の委嘱として監視員の役目をつとめる。そうして、それに要した——一週間に一回の監視をやるならば、それだけの日当も支払う。何かこういう建前の強化策が今日までもなされておるならば、もっと三十一年のこの調整法の制定以後、秩序が確立されたのじゃないか、こういうふうに私としては考えるわけです。これは意見になりましたけれども……。  それじゃ次に進みたいと思いますが、これは答申案の問題ですけれども、少数意見として過剰設備政府買い上げをすべきじゃないかという意見答申がなされております。そのことは、少なくとも日本産業構造の変化による中小企業というものの立場が非常に変化しておる。一つ申しますならば、下請ということばをよく使いますけれども、下請の中には完全系列下にある、純然たる昔からいう加工賃かせぎの下請がございます。それから同じ中小企業でも、自己資本に基づく第三次製品まで手をつけておる中小企業もございます。まあ概していえば、同じ中小企業といっても三つに分析することができる。今日完全系列化になっておる中小企業というのは、三十二年でしたか、中小企業近代化資金を利用して、かなり大企業の裏づけによって金を借りることもできる。ところが、そうした完全系列にないいわゆる加工賃かせぎをしておる中小企業というものは、かなり苦しい状態に私はあると思うのです。そのことはなぜ苦しい状態にあるかと申しますと、せっかく景気がよくなったという場合、二十九年に悪くなり、この法案ができまして、三十一年には景気がようなった、さあもう翌年の三十二年には景気が悪くなった。したがって、中小企業に手を加えようとする場合には、政府金融引き締めをやっている。これは三十二年の結果にも出ておりますが、政府中小企業中心として、そうして何とかそれをカバーしていきたいとお考えになるころには、景気が非常に悪くなる。これは商工調査で私は調査してもらったのですが、政府が三十二年ですか、買いオペをやっております。これも中小企業対策としての買いオペをやったわけです。現在もやっておられますが、そういう状態でやられたのですね。ところが実際には、手続上の複雑さのために、中小企業は金を借りようと思っても金を借りないのです。そして特別融資あとから出しておるということです。だから、中小企業政府が手を打たれる場合には、少なくとも政府金融引き締めをして、どうにもならないようになったときに中小企業対策ということでやっておられることが過去の繰り返しだ。これは紡績界における操短繰り返しと同様に、中小企業対策というものも、やはり過去の繰り返しだ、こういうように思うわけです。したがって、そういう事態中小企業が非常におくれをとっております。近代化をする力がない事態が長く続いておる。一方では設備制限されておる、さあ不景気になった場合にはなかなか金融ができない、こういうことでおくれておる。そうして、それにもかかわらず八年間の増設の規制を加えておいて、今度の法案は三年間でそれを解消していこうとされるのです。八年間統制を加えておいて、設備をするということについては規制をしておいて、いまやろうとされることは、三年間で自由化しますよ——私はここに問題があろうと思う。したがって、答申案は三年ということを結果的には出しております。しかし、大臣がいつでしたか、私は日にちはよく存じておりませんけれども、新聞で拝見したときに、大阪に大臣が行かれたときですね、三年じゃ無理だ、五年ぐらいは必要だという発表をした、その新聞記事を私は見た記憶がございます。なかなか大臣は福井県でもあるし、絹、人絹の産地でもあるから、中小企業のことは理解していられるなと、私はその新聞を読みながら感じたのですが、ところが、法案になってみると、依然として三年、あとの一年は、これは中間をとられたということもありましょうけれども、四年になっておる。しかし実際の制限緩和というものは、これはもう三年だ。三年すればもう自由化に踏み切るのだということになろうと思うのです。この法案からいくならば。そういう点に対する、大臣自体もそういうふうにお考えになったと思いますが、それを三年にしなくちゃならない理由、四年にされなくちゃならない理由は、どこに一体問題があるのか。八年間も統制して、そうして不況事態に対して金融措置をされても、買いオペをやられても中小企業に金が流れない。そうした経過を踏んできて、そうしてまたここで三年の間に開放経済にもっていく準備をされている。しかも半期の予算と、こうおっしゃっておりますけれども、わずか十億の予算中小企業中小企業の別ワクの中で考えていこうということです。これで一体中小企業が救われるのかどうか。この点大臣所見をお伺いすると同時に、大臣発言された五年がどうして四年にならざるを得なかったか、こういう点、ひとつ忌憚のない御意見をお聞かせ願うといいかと思います。
  12. 福田一

    国務大臣福田一君) まず予算——過剰設備廃棄いたしまして、一方において近代化合理化を進めていく、そういう意味での中小企業といいますか、そのための資金が、予算が十億だ、これはお説のとおりであります。これは私決して十億で満足したわけではない。もっとほんとうは、せめて三十億ぐらいは出したいという希望を持っておりましたけれども、なかなか御案内のようないろいろの問題がございまして、実現しませんでした。しかし、将来これは必要でございますから、私、通産省としてはもっともっとこの予算はふやすように努力をいたしてまいりたい。来年度の予算編成、また次の予算編成等においては、相当重点項目として取り上げていかなければならないと考えているところであります。  それからこの問題、七、八年の規制措置があった後に、もう三、四年の予告で設備を大体自由な姿に持っていってしまうというのはどこに根拠があるかというお説でございましたが、急にそこへ持っていくのが無理なことは私も承知いたしているわけでありますが、大体四年後の需給関係を見てみました場合に、これは想定でございますからそのとおりになるかどうか、なかなかむずかしいと思いますが、その想定に基づきまして、この三年四年の間にいわゆるスクラップ・アンド・ビルドをしてまいりまして、大体需給関係供給設備が大体需要にマッチする、合うようになる、こういう数字が出てまいりましたので、そこで自由に今度はやらせるようにしてはどうか、こういう考え方に基づきまして法案を提出いたした次第でございまして、これは数字のことでございますから、そんなのは大体そうなるようにしてしまったのだろうと言われればそれまででございますけれども、われわれとしては一応数字的な根拠をもととしまして、この年数というものをきめたのだ、こういうわけでございまして、需要供給関係をにらんだ上での措置、こう御了解を賜わりたいと思うのであります。
  13. 高山恒雄

    高山恒雄君 その需給見通しからくる体制をどういうふうに伸ばしていくかということが資料として出ております。これは局長にお聞きしたいのですが、現在登録数が千六百三万錘あるわけですね。三十九年の四月から六月に稼動可能数というのは千二百二十二万錘あるわけですが、もう七月から九月にここで約十九万錘というものがふえるわけです。この七月から九月にふえる十九万錘の稼動台数というのは、現在の綿紡二八%、羊毛の四〇%、スフの三〇%、その中からそれだけのものはいわゆる格納を一応緩和する、こういう考え方なのか、それが一つ。  もう一つは、三十九年の十月、この施行時にあたりましても、ここにも自然増があるわけです。Bの欄ですが、これが千二百五十九万錘、ここでもふえてくる。ここでふえてくる事態というものは、四十二年の十月一日には千三百七十二万錘、これはよくわかります。これは二錘廃棄したものに対しての一錘の新設を認めようとおっしゃるのですから、これは数字的にここに三百四十四万錘と出ておりますから、これはわかりますが、この三十九年の七月−九月期から実施時期に至りますまでの自然増というものはどういうふうにお考えになっているのか、この点ちょっとわかりにくいんですが、局長のほうから御説明願いたい。
  14. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) 最初の三十九年四−六月期千二百二十二万錘から七−九月期千二百四十一万錘にふえます分は、これはただいまも御指摘がございましたように、ただいま四−六月期の操短綿糸は二八%、それからスフ糸が二四%、梳毛糸は四一・三%になっております。先般きめました需給部会での決定によりますれば、七−九月期は綿糸は二六・二%で一・八%緩和することに一応いたしております。それからスフ糸にいたしましても一%緩和いたしまして二三%にすることにいたしております。そういう緩和に従いましてこの差額が出ているわけでございます。  それから第二番目の、七−九月期と法施行時の約十八万錘の自然増でございますが、これは一つ需要関係もございますけれども、もう一つは新しい法案施行の時点におきます調整、まあ中小企業調整などの関係からも幾らかの自然増考えられるということで、十八万錘の増加分を見込んだわけでございます。
  15. 高山恒雄

    高山恒雄君 そうしますと、法案では結果的には千六百三万錘という錘数の中からこの廃棄対象になるのは私は綿紡機スフ紡機梳毛機、これがまあ大体中心になろうかと思うんです。合繊はそういうことにはなりませんから、その他絹紡につきましてもあるいは紡毛にいたしましても、私はそう規制になるとは思っておりません。そうなってきますと、すでに三十七万錘というものは施行される日までには緩和されていくと、こういうことになろうと思うんですがね。これは間違いないわけですね。そうしますと、四月−六月の稼動数の千二百二十二万錘ですか、これが対象でなくて、実際は千二百五十九万錘の中からこれだけの余剰設備をやっていこう、廃棄していこうと、こういうことになるわけですね。だから、この点がもうすでに三十七万錘というものは緩和されて、施行されるときにはもうそれだけの錘数がふえてきている。こういう実態の中で法律施行される段階になろうかと私は思うんです。  そこで私は先ほども大臣にお伺いしたように、大体いま綿紡紡績協会に入っておる数は百三十九社、それ以外に三十何ぼ、だから百六十何社と私は踏んでおりますが、しかもその中にはこの二万九千九百九十九錘以下三万錘未満の機械を持っておる会社がどのくらいあるかというと、九十一ある。これは協会登録から出ております。梳毛でこれは二千錘以下——この間ニッケに皆さん方と私は見せていただきましたが、あそこが大体日本の一割を持っておると言われます。梳毛では。と同時に梳毛もあそこが一番最高ですが、梳毛日本梳毛の一〇%を持っております。しかし、わずか二千錘以下というのが五十社ございます。紡毛を対象にしますと、一セットと申しますと、人員どのくらい使っておるかというと、これは十四、五人です。多いところで二十人、まあ十四、五人と見ればいいところです。こういうように約二百社近いものが、私は全部とは申しませんけれども、系列にも入ってない。この法が施行される段階になると一体競争に耐えられるのかどうかという問題を心配するんです。三十九年の十月一日からこれを施行されるとおっしゃっておりますけれども、もうそれまでに三十七万錘というものは解除されていく、しかも二錘廃棄されたものに対して一錘を認めていく。それが対象になるのは大企業中心としているということを私は言わざるを得ないのです。こうした一体零細な企業がこの法案施行された後の競争に耐えられるかどうかというと、これは耐えられないのじゃないか、私はこう思うのです。この点大臣にお伺いしたいのです。  もう一つ大きな問題は、問題の焦点がもう一つございます。それは大臣も御承知のように、今日のこの情勢はもう一つ不利な条件がある。それは労働力の不足です。これは私が予算委員会でもそのことを質問したのでありますが、何ら手も打ってないようでございますが、労働力はここ三年間というものは、ほとんど中小企業は二八%くらいしか入っておりません。そこへもってきて、それだけしか入ってないのに地域労働者、いわゆる家庭の奥さん方を雇用しておるというのが実態だろうと思うのです。そうすると、若年労働者の張り切った生産意欲というものと家庭の主婦がそこで働くというのにはかなりの私は生産に対する差もあろうかと思いますが、一方ではそうした中小企業近代化におくれておる、一方では労働力の不足、しかも将来の生産見通しの中には通産繊維局においては人員の問題を検討される場所すらない。これはみんな労働省依存だろうと私は思うのです。しかも労働省の今後の労働力の推移という問題で私は学卒を多少調べてみたんですが、昭和三十九年を百といたしますと、四十五年には、七年後にはわずか四八%しかおりません。こういう事態は累進的に労働省の調べでも出ておるわけです。一方では労働力の不足、一方では近代化におくれておる。しかもこの三年間の間、この規制された中で競争をやっていかなくちゃならぬということは、私はいやがおうでも中小企業が不利な立場にあるだろうと考えるのですが、大臣は、こういう点に対する一体法以外の行政をどうお考えになっているか、所信をお伺いしたいと思います。
  16. 福田一

    国務大臣福田一君) ただいま御指摘のございました中小企業の問題で、いわゆるスクラップ・アンド・ビルドをするのは大企業であって、中小企業は非常に困難である、また中小企業自体が非常に資金その他の面で弱い、こういう御指摘でございました。私は、これはいろいろ繊維の問題で見ておるのでありますが、紡績の場合においては、大体機屋とそれから紡績関係中小企業とはかなり密接な関係にあることは高山さんも御存じだと思います。したがいまして、こういうものはつくってすぐそれが必ずそこで使ってもらえるというようなことでございますと、案外これは非常に利益が薄くても何とか持っていけるということになるのですが、これがどこで使ってもらえるか、買ってもらえるかわからないということになりますと、たいへんむずかしい。こういう意味で言いますと、この紡績関係中小企業というものは、もちろんこれは例外もございますけれども、ほかのものと比較した場合には、かなりそういう意味では楽な面があると私は思っているわけであります。しかし、それだからと言って、ほうっておいていいというつもりで申し上げたのではございません。これに対しても手厚い何らかの措置は講じていかなければならない、かように考えておるのでございます。  一方、労働力の問題、特に若年労働力の問題でございますが、これはただ単に紡績関係だけではございません。もう全般の産業に通じて、全般の中小企業の問題として、また国の産業経済の今後の進め方の根幹をなす一つの問題として取り上げなければならない問題であろうかと思うのであります。要するに、いわゆる若年労働力が順次減るというと、その場合にこれを補うのはどうしたらいいかといえば、いままで若年労働力でやっておるものであっても、これを相当年輩の人でかえることができるものは、これは事業を経営する人もそういう気持ちになり、また働く人もそういう気持ちになって、労働市場というとおかしいんですが、働く場所を転換していくという政策を強力に進めていくことが一つの大きな問題ではなかろうかと思っております。これはもうよく御存じと思いますが、外国あたりでは、百貨店の売り場はほとんどお年寄りの方がやっておられる。日本の場合はみんな若い者がやっている、こういうふうに違うわけでございます。あるいはエレベーター等々相当まだ私はいわゆるそういう働き場所の転換、若い人から年寄りへという、年寄りと言うてはおかしいかもしれませんが、そういう意味での政策というものを国民自体にもよくわかってもらい、また事業者自体もそれをよく認識しながら、また働かれる人もそういうお気持ちになってもらうような努力というもの、これが非常に必要になってくるであろうと思うのでございます。したがって、これは紡績の問題だけで取り上げることはできません。ただ、先ほど御指摘になりました結婚した者を相当使っておる、お説のとおりであります。それはいままで工場で働いていた者が近所のところへお嫁に行った。そういう者を実は目がけて連れてきているのです。これは能率の問題になりますと、必ずしもそう落ちるとは思っておりません。熟練工ですから、結婚するまでに相当年期を入れておりますから、それが帰ってきてやれば、かなり能率はあげてくれると思うのであります。しかし、そういうことにたよっていていいかということになると、これは仰せのとおりでございまして、われわれとして十分この問題は徹底的に研究をいたし、対策を講じなければならない問題であると、かように考えておるわけでございます。
  17. 高山恒雄

    高山恒雄君 大臣の言われることは私もよくわかりますけれども、他の中小企業の問題と繊維の場合は、余剰設備廃棄からくる、片や労働力の不足というのは、何といってもこれは全般的でしょう。しかし、いままで規制しておった台数というものを今度は廃棄していこう、しかも、その半分は新しく新設していこう、そこにもってきて、私が申しましたように、三十二年以降の近代化というのは、紡績中小企業で進んでないグループがある。こういう事態の中で、むしろこれは倒産というような形が起こるのではないか、こういう実は心配をするわけです。したがって、他の中小企業と変わっている点がそこにあろうと思うのです。大臣は御承知でしょうけれども、この倒産の率から見ても繊維が一番多いのです。これは生産工場だけではございませんけれども、商社を含めまして、昨年の暖冬からこっちにかけて倒産率が一番多いのです。一月、二月、三月、四月と。これは私は繊維としてはゆゆしい問題だと思う。しからば秋物がうまくいくかというと、昨年の暖冬のために、これまた見込み生産というものがやりにくい情勢にある。しかも十月からこの法案施行されるということになりますと、かなりの混雑が私はあろうと思う。  そこで、私は最後に大臣に聞きますが、来年施行されてから半期間におけるところの予算十億では満足していないと、大臣はおっしゃっておられますけれども、少なくとも中小企業に対するそうした税制の処置、あるいは金融の処置というものに特別の配慮がなければ、労働力の不足の面から、一方には過当競争の面から、私は問題が起こってくることを憂えるものです。それならば、政府施行後に施策があるのかというと、それがあるならば、ひとつお聞かせを願いたい。
  18. 福田一

    国務大臣福田一君) これは御指摘のとおり金融、税制の問題ということに結論は帰着していくと思うのであります。金融面については、先ほどもちょっと申し上げましたが、極力今後努力いたしてまいりたいと考えているところであります。税制の面になりますと、これは償却の問題が一番大きいと思うのであります。廃棄いたします場合に、特別償却というものも考えておりますが、それより私は一般論的に、繊維機械などはもう少し償却年限を短縮していいということを考えております。従来も実は私は通産省を担当しません前から、このことはずいぶん努力いたしまして、大蔵省ともしょっちゅう交渉いたしておりますが、とにかく海外と日本の場合とを考えて見ると、ずいぶん相違があると思うのであります。先ほど御指摘になりましたようないわゆる弱体なものであり、しかも労働力の問題を控え、いろいろの意味で不利の点のある繊維産業というものをもう少し伸ばしていくということになれば、私は償却について税制の面でよほど考えてもらわなければいかぬという考え方を前から持っているのでありまして、今後は特にこの償却年限の短縮ということについては、一段と努力を傾けてまいりたい、かように考えているわけでございます。
  19. 高山恒雄

    高山恒雄君 繊維局長に聞きますが、衆議院の質問にお答えになって、大体将来の紡績界というものは、中小企業綿紡に移行していく、また大企業は合繊に切りかえていくだろう、したがって、そういう関係からいくならば、あまり混雑もしないのではないかという見通しを持っておる、という答弁をなされていることを御記憶にあると思いますが、現実はなるほど繊維局長が言われる点を私は確認せざるを得ないと思います。そこに多くの問題がいま出ておりますのは、大企業メーカーでは綿の、いままでの紡出しておった糸のいわゆる太ものと申しますか、その得意を大メーカーが失っておるわけではないのです。大メーカーはむしろ小メーカーに下請けをさせる。そうして下請生産を、大メーカーのマークでこれはおさめるということになりましょう。そのために一流メーカーでつくっておる製品と二流メーカーでつくっておる、あるいは三流メーカーということになりますか、まあ新紡あたりは相当技術も進んでおりますけれども、まだまだそれには技術的には及ばない新新紡等がございます。こういう糸を大メーカーのマークをつけて、そうして機屋に送る。そのために機屋が相当糸の品質が悪いために困っておるという事態が起こっておることを私は聞いております。こういう問題を一体、繊維局の局長が答弁されておるように、大企業が綿をやらないようになってスフに変わり、あるいは綿でやるならば六〇以上の細ものに変わるだろう。これで、行政指導としていいのかどうか。結果的には下の中小企業泣かせではないか。こういう点について私は意見のあることを知っております。政府としてはどう指導されるおつもりか、局長からひとつ……。
  20. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) ただいま御指摘になりましたような現象があることは存じておりますが、まあ考え方としましては、御承知のとおり、合繊が急激に膨脹いたしまして、その関係でいろいろ大中小の紡績段階で変化が起こっておることと思います。だんだんと大企業が合繊のほうに転換いたしまして、従来やっておりました純綿糸中小企業が引いておるということになると思いますが、現在そういう過渡期でございますので、御指摘のような、いままで中小企業といたしましては、従来ひいておったものよりもやや高級な薄番手をひくというような経過的な現象になっております。それで御指摘のようなことはございますが、私どもとしては、いまの下請け系列の関係につきましては、これはいろいろ問題はあると思いますけれども、一面長所といたしましては、むしろ系列関係に入りますと、技術的問題、金融問題、いろいろめんどうを見てくれる場合もあるわけでございます。そういう系列関係を通産省あたりが善導いたしてまいりますれば、その関係はわりあいかっこうのいい関係になるということも考えられるわけであります。いずれにいたしましても、現在過渡期でございますが、そういう点はよく大企業並びに中小企業指導いたしまして、うまくやりたいと考えておる次第でございます。
  21. 高山恒雄

    高山恒雄君 この輸出取引規則の第五条の問題についてお聞きしたいのですが、繊維設備審議会の起草委員会でも、輸出組合にメーカーの加盟は望ましいということで答申が出ております。全く私たちもそうだろうと思うのですが、いまなお、日本のこの輸出に対しては非常に乱立的ないわゆる安売りが行なわれておる、一部にはこういうことすら言われております。繊維製品は他の機械その他の大きなものの取引をするためには、繊維を安くして、そうしてその取引の一つの突破口を開拓すればいいのだ、それがためにこの貿易の市場の過当競争が行なわれておる。したがって、日本製品に対する逆に諸外国からの規制が行なわれる、こういう事態が起こっていることは、政府も十分御承知だと思います。これはことし始まったことじゃありませんし、長い間の懸案でありますけれども、いまだにその繊維の過当競争が国外で行なわれているという点は、私はもう通産省としてひとつぜひ検討していただいて、できるならば、この窓口を日本としての立場から一本の体制を整えていくというような方法にしなければ、いつまでたっても繊維産業に対する諸外国からの規制が私は阻止できないと思う。こういう面に対する通産省としては外務省との何か話し合いができておるのか、今後どういうふうにこれはお考えになっているのか、これは大臣からお聞きしたいと思います。
  22. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) 大臣の御所見の前に私から申しますと、いま御指摘になりましたような過当競争に基づく過当輸出競争と申しますか、それが一番の病根でございますが、それをいろいろな意味で直しますためには、資金の問題といたしましては、これも御承知だろうと思いますけれども、一応繊維につきましては、そのほとんど全部が輸出貿易管理令の承認品目になっておりまして、その承認基準の設定等を通じまして政府はいろいろ指導いたしております。数量の問題、価格の問題、いろいろ指導をいたしております。それから業者関係につきましては、ただいまお話がございましたけれども、たとえばこれは輸出業者関係で、輸出入取引法に基づきます輸出協定が相当たくさんできていることはもちろんでございますけれども、そのほかに御承知のとおりたとえばインドネシアの加工貿易でございますとか、それから特殊な染色の関係等につきましては、取引法の五条の三の生産業者協定が、これも、十数件ございまして、そういう点で政府指導のもとにいろいろ業者の協調がはかられております。いろいろな一般法及び行政指導を通じまして、よく業界と協調いたしまして、輸出の点で特に問題が起きないようにいろいろ配慮いたしておるつもりでございますが、基本的に申し上げますと、これも御指摘のとおり、どうも日本繊維製品は品質がよくて価格が安い、特に品質がいいという基調のもとで、価格の点で特に非常にすぐれた国際競争力を持っておりますので、その点でいろいろ先進国等から輸入制限があるというような実情でございます。こういう点は、よく善導していきたいと思います。
  23. 福田一

    国務大臣福田一君) いま局長からお答えをいたしたような措置をとっておりますが、実際問題として御指摘になったようなことはあるのであります。どこかというと、法律で取り締まれないところに問題がある。要するに商業道徳と申しますか、そういう面においていささか欠けておる面がございます。それから同時にまた過当競争をいたしておりますために、日本繊維業界がまたそういうことで、いわゆるダンピング的にでも、自分のシェアをふやすというようなことを考えるような場合もある。それからもう一つは、国内で高く売れるときにはどんどん国内で売りますが、少し国内で不景気になるというと、金繰りの関係やなんかで、またダンピングしていくというような関係もなきにしもあらずでございまして、そういうような事情があることもよく理解しながら、今後もできるだけそういういわゆる世界の人たちから指弾を受けるような商取引が行なわれないように努力はいたしてまいりたいと考えておるのであります。
  24. 高山恒雄

    高山恒雄君 これで終わりたいと思いますが、今度の臨時措置法の新法によって、私が質問いたしました点から派生してくるでありましょう中小企業に及ぼす影響というものは、非常に大なるものがあるのではないか、私自身はそう考えております。それで私たちは、この点については、産業は何といいましても金と労働と生産によると思います。その中の一番困難な金融と労働という問題の過渡期が日本には来ておるわけです。そういう中で、八年間も統制がとられた設備規制が、いま、わずか三年の間に多くの中小企業をかかえておる繊維界で開放経済に持っていこうとされる段階であります。これはよほどいままでの月並みの考え方中小企業対策ではなくて、日本産業構造の大きな変革があるのだ、その中にあって、中小企業をどう育成強化されるかという点は、私が申すまでもなく、大臣自身もお考えになっておると思うのです。そういう意味から申し上げますならば、私たちは例年の予算を見ますと、中小企業中小企業と、そのときどきによっての大きな新聞掲載はされますけれども、実際にその効果があがってないというのが、二、三日前中小企業庁が一日の公聴会を愛知でやったようですが、その新聞記事にも出ておりますように、問題は人手と金融だと、もうそのとおりだと私も思うわけです。これをほんとうならば、これだけの大きな犠牲産業になるのではないかという不安定な事態の中に施行されるこの法律の中に、金融、税制の問題等は本文の中に入れて、しかも大蔵省あたりに十分なる交渉をしていただいて、善処すべきだとこう私は考えるわけです。しかし、もう今日ここに来て、私はそのことを強く主張してもいたし方ないと考えますが、今後の政府の政策上、いわゆる行政措置によって、次の予算には何とかして私は金融、税制の問題を考えていただく。それからもう一つは、労働力も全般の問題でなくて、むしろ繊維局あたりに労務課ぐらいは置いていただいて、その問題もひとつ掌握をしてもらう。私は、いま労働人口の、繊維の問題について詳しいデータを持っておりますが、お尋ねしたって繊維局は御承知ないと思うのです。そういうことで生産見通しなんということを言われても、いまは見通しが立たない時代なんですよ。私はこの際、大臣に最後にずばりお聞きしたいのですが、もうこの時代では、暫定でもいいから、労働課というようなものを置いて、十分なる検討をしていただく必要があるのじゃないか。他の産業もそうでありましょうけれども、特にこれだけの新法をつくったゆえんの中で、私はそれを重要視される必要がある、このことの希望意見を申し上げて私の質問を終わりたいと思います。
  25. 福田一

    国務大臣福田一君) ただいま御指摘になりました税制、金融の問題につきましては、この法案には入れておりませんが、しかし御指摘のとおり、これは非常に重要な問題でございますので、行政上の措置といたしまして、今後御趣旨を体して大いに努力をいたしたい、かように考えております。  なお、労働力を確保する意味からいっても、課のごときものを設けて、実態を十分調査すべきであるという御意見でございます。私は、この課を設けることは、予算関係もございますので、なかなかすぐには実現はいたしかねると思いますが、しかし繊維産業において、いわゆる女工さん問題というものは、これは非常に大きいことはよくわかるのでございます。その労働力確保の問題を離れて繊維産業を論ずることはできないという御趣旨は、よく理解いたすところでございます。したがいまして、この問題については、十分繊維局において実態を常に把握するように、課はすぐには設けられなくても、この問題を一そう突っ込んで研究をしながら、繊維産業に対する行政の強化ということを実現をいたしてまいりたい、かように考えます。
  26. 大矢正

    ○大矢正君 先日来、私は新法の趣旨について、二、三、大臣及び当局側にお尋ねをいたしましたが、きょうあらためて基本的なものの考え方、そうして、それに基づく具体的な方途についてお尋ねをしてみたいと思うのであります。  私は、今日の繊維産業の現況からして、現行法をもってしては、繊維産業の将来にとって非常に重要な問題が発生してくるであろうという立場から、新しい繊維立法を通産省が考えられ、それが一次、二次、三次と徐々に変化を遂げてまいりました経過をつぶさに勉強さしていただき、さらにまた、衆議院においての論議、先般、当委員会にお招きをしました参考人の方々の御意見、これら総体的なものの判断の上に立って、今日の繊維産業というものは、一体どういう位置づけと、どういう産業としての分析をしなければならないかということを考えてみたのでありますが、私の考え方にもちろん誤りがないとは申しませんが、大きく分けるならば、今日の繊維産業を五つに分けることができる。今日の繊維産業がかかえている、いうならば苦悩というものは、私は五つに尽きるのじゃないかということを自分なりに考えてみたのであります。  その一つは、当委員会で最初に議論がありました、過去におきましても、今日においても、輸出の中に占めている非常に重要な繊維産業の比重、これから考えてみて、繊維というものが対外取引の上において、いかような立場に置かれているのか。もちろんその中には、一つには海外各国のわが国の綿製品中心とした——最近は毛織物にも及んでおるようでありまするが、輸入制限の動向に対してどう対処していくか、あるいはまた、低開発国が最近とみに力を増してまいりました面を中心とする輸出の世界的な構造変化というものにどう対処していくかという、いうならば、対外的な取引上の問題がまず第一に私はあるのじゃないか。こういう面からも、今日繊維産業というものをとらえる必要性があるということを感じているのであります。  第二には、最近の化合繊の活発な動きによって、日本繊維需要構造が急速に変化を遂げておる。この日本繊維需要構造の変化に対応するために、われわれはどうしなければならないか。立法をつかさどるわれわれは、立場としてどういう考え方を持たなければならぬか。私は第二点としてこの問題があると思う。  第三点としては、昭和三十一年現行法が制定以来、今日なお依然として続いている過剰設備の問題をどう調節をし、設備需要とをどのようにして合わせるかという問題があり、第四番目には、日本経済の発展段階における労働力不足、先ほど大臣の御答弁にもありましたが、特に若年労働力の不足をどう解消していくかということ、これが第四点に私はあると思う。  最後の第五番目は、今日業界が再編成の過程をたどり、そうして合理化に迫られ、その再編の過程におきましては、どう考えてみても、零細企業は取り残され、つぶれ、大きな企業に集中、合併される傾向が出るであろうという問題であります。これは、自律的な作用によって行なわれるか外的な作用によって行なわれるかといういろいろな見方はあるにいたしましても、この業界の再編、そして合理化の過程が、繊維産業の将来にどういう影響を及ぼすかという立場においでも、やはり繊維産業考えてみなければならないと私はこう思うのであります。  そこで、そういう私なりの判断からまいりますると、このたび提案をされました繊維新法というものは、明らかに、この五つの条件を満たしておるとは言えないのであります。先般の委員会におきましても、若干私は大臣にその点について触れたのでありまするが、こまかい点についての、この五つの点をさらに分析をした具体的な面の質問は、これから大臣及び局長にお尋ねをいたしまするが、この五つの具体的な命題というもの、私の申し上げることが間違いがなければ、この五つの命題が、法案の中になくて一体どこでこれが解決をされると考えておられるのか。まずこの点からお伺いをいたしたいと思うのであります。
  27. 福田一

    国務大臣福田一君) ただいま御指摘になりました、いわゆる繊維の問題を取り上げてみたときの、現在においての五つの問題があるという御趣旨のことにつきましては、私はお説のとおりであると考えております。これらの問題が十分解決をいたされることは、まことにわれわれとしては政策的に努力をいたさなければならないところであります。そこで、そういうことではありますが、しかし御指摘の点を全部この法案の中に盛り入れるということは、それはまたなかなかむずかしいことでございまして、御指摘になりました御趣旨の点を十分頭の中に入れながら、しかも、いま設備過剰に悩んでおり、格納してありますような設備、それから将来伸びるであろう需要供給関係等々をにらみ合わせながら、これを順次近代化合理化し、需給の面を合わせていくという一つ法律というものが、いま御指摘になった五つの問題解決の一つの方向である、こう私たちは考えておるのでありまして、ただいま提案をいたしております法案でもって、御指摘になりました五つのものが全部充足できるとは私は考えておらないところであります。
  28. 大矢正

    ○大矢正君 そこで、法律の中において、私がいま申し上げました五つの命題というもの、課題というもの、今日繊維産業がどうしてもなさなければならない、言うならば課題というものを消化するためには、どのようなものが法律の中に盛り込まれているかといえば、これは設備の過剰ということが、第三に申し上げたことだけが載っているだけでありまして、他の四つの面については、なるほど過去の——過去のと申しましょうか、現状の繊維法と異なって、輸出に対する多少の行政指導なりというものが出てはおりまするが、本質的には過剰設備廃棄だけしか出ていないということは、他の四つの命題は一体どこにおいて、どういう形で解決をされ、繊維産業というものが、将来ともにわが国の重要な産業として発展をしていくようにしむけられるおつもりなのか。いま大臣の御答弁は、法律の中に載っているのはという立場で御答弁がありましたが、それでは法律に載らない部分は一体どうやって解決されるおつもりか。この際念のためにお伺いをしておきたいと思います。
  29. 福田一

    国務大臣福田一君) いわゆる輸出入、まず第一点に輸出入の関係でございますが、これは先ほど来申し上げましたとおり、輸出秩序の確立であるとか、あるいはまた経済外交の推進であるとか、一方におきましては低開発国に対する面で言いますというと、私は原料面でのいわゆる転換、一次産品の買い付け等による問題があると思っております。ただし、これは必ずしも綿製品というものではございません。繊維産業全般について言った場合に、やはりそういうことを考えていかなければならない、こう考えているのでありますが、そういうような施策を今後ますます強力に推進をしていかなければならない。  第二点は——私ははっきりあれしませんが、需給の構造等についての御指摘かと思っているのでありますが、次は化合繊が急増することにより日本繊維の、日本需要構造の変化という問題でございます。この法律自体は、綿の関係を取り扱っているのでありますが、私は綿というものは、今後もその特質がございまして、化合繊の持っておらないやはり特質がある。これは私はこの消費というものは、やはり依然としてある程度はふえつつあると思うのでありまして、もう綿を使わないでいいという時代がくるとは思っておりません。しかし、いわゆる織物と言いますか、繊維関係はまだまだ需要が伸びるようになると思いますが、その伸び率からいえば、綿というものは非常に少ないと思っておりますけれども、しかし綿が廃棄されてしまう、なくなってしまうということはあり得ないと思っているのであります。したがいまして、私たちとしては、こういうような非常に転換期にあると言いますか、非常に進歩の早い繊維産業、変わった品物が次から次に出てくるというような繊維産業に対しましては、十分注意を怠らないで、そうして適当にこの推移を見ながら行政指導をしていく必要はあると考えておりますが、綿の問題について、さしあたりもうそういうものはほかに転換したほうがいい、こういうような行政指導はとる必要はないと考えているところであります。  それから三番は、先ほど来申し上げたところでございます。いわゆる過剰設備廃棄解消ということでありますから、それはこの法律で取り上げております。  次は、若年労働力の確保の問題でございますが、これは私は先ほど来高山委員からも御質問がありまして申し上げたところでありますが、これは一つの大きな課題でありまして、特に繊維産業においては重要な課題でございます。したがって、これについては、われわれとしては十分な注意を払いますと同時に、繊維産業の目的としてこれを取り上げて解決できるか。私はそうではないと思っている。これは比率の問題、ほかの産業においても、やはりどうしてもこの労働力の問題は出てきます。ただ繊維の場合におきましては、いわゆる若年の女の労務者というものが必要であるというところに一つのまた大きな特徴があろうかと考えておるのでありますが、こういう面をどういうふうにして確保していくかということは、十分われわれとしてもこれから対策を考えなければならぬし、今後の命題としては最も大きな政治、経済上の課題ではなかろうかと考えております。それをいまごろそんなこと言っておるようじゃ手ぬるいじゃないかというおしかりであれば、これはどうもおしかりを受けるよりいたし方がないと思うのであります。  次に零細企業の問題でありますが、私はこれもまた必ずしも繊維産業だけにとどまったことではないと思っております。まあこの零細企業の問題は、それが将来はたして十分な生産性をあげて存在していけるものであるかどうかというところに一番大きな問題がある。すなわち生産性があげられるかどうかということは、金とか、金融、税制とかということではないのでありまして、それが社会的に必要であるかどうかということによってきまっていくのであります。社会的に必要であれば金融もついてくるし、税の問題も解決ができる、その仕事が社会的な必要性をなお持ち、将来ますます持つであろうかどうかということによってきまってくると思いますが、将来それはだんだん社会的に必要性がなくなっていくのであるということでございますれば、これに対して政府としても適当ないわゆる転換等の措置をとっていかなければならないと思う。その場合に、これに対して転換資金をつけるとか、あるいは税その他の面で大いにその措置を促進するというようなことが必要でございましょう。もう一つは、そういうことではなくて、過当競争、そのこと自体は非常に必要な企業ではある、零細企業といいながらもそれは必要であるが、非常に過当競争が起きて、そうしてこれがどうしても一部のものが成り立たない、こういうものがあるだろうと思うのであります。これに対してはやはり政府として何らかの規制措置をとるか、あるいはまたそれをとる場合に、適当ないわゆる援助的な措置をとることが必要になってくるかと思うのであります。だからこの零細企業の問題になりますというと、私はこの一般の中小企業というものの問題を離れた、ある程度社会福祉といいますか、社会政策といいますか、そういう意味でのものを加味した政策がここにどうしても出てこなければならないのじゃないか、これはいままではそういうところまでは手が届いておりませんが、今後の行政面においてはそこまで手を届かせなければ、私は政治にたっていかない、いままではそこまではなかなか手が伸ばせなかったのでありますが、今後はそこへ手を伸ばすべき段階にきておると、私たちはそういう面でもう一ぺん見直していかなければならないのだ、こういう考え方を持っておるものでありまして、以上述べましたような考え方で問題の処理に当たってまいりたい、かように考えておるわけであります。
  30. 大矢正

    ○大矢正君 局長、ただいま大臣の御答弁の中に、合繊の分野におきましては伸び率は非常に高い、綿の分野におきましては伸び率は低いけれども生産量は増加している、こういういま御答弁がありましたが、過去の実績ですね、ここ数年間の実績は事実どうなっているのか、伸び率ということは言いかえるなら前年よりはふえることには間違いないわけですね、原則的に。ただそのふえ方がどうかという問題なんでありますが、大臣の御答弁によれば、絶対的な生産量それ自身は年々ふえていっているのだ、がしかし、その伸びは合繊と比べるとそれは問題にならないくらい低い、こういう御答弁でありますが、事実これは、綿というものは糸の段階でも製品の段階でも、事実天然綿を必要とする、その量というものはふえていっているのですか、その点まずお伺いしておきたいと思います。
  31. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) 私の記憶からいたしますと、いままでに綿糸がピークで生産されましたときには七十二、三万トンであったと思います。ただこれは合成繊維が全然出ていなかった時分であって、しかも日本紡績工業が千二万百錘というふうな非常に大きな基準で、錘数であったときの生産量でございますが、その後紡績の縮小の関係でございますとか、あるいは化合繊が出ました関係で、その数字をピークといたしまして以後は漸減をいたしております。それでまあ見通しから申しますと、これは資料にございますが、昭和三十九年度の綿糸需要の見通しが四十八万七千トンでございます。それから四十年度が四十九万六千トンでございますので、まあ若干、量といたしましては激増をいたしておるようなかっこうでございます。それからなお、四十三年度の需要見通しは、私どもの計算によりますと五十万六千トンでございますので、この関係から参りますと、将来の需要の見通しといたしましては、絶対の生産量も若干微増をいたしまして、三十九年度から四十三年度に至ります間の年平均の成長率としましては、三十九年度を起点といたしまして各年〇・九%ふえる、需要としてはふえるというふうなのが私どもの見通しでございます。  それから過去の数字でございますが、過去の数字からいきますと、三十八年からさかのぼって申し上げますと、一部推定を含みまして、三十八年度の綿糸生産が四十八万三百トン、それから三十七年度が四十八万四千百六十七トンでございますので、三十八年度は三十七年度より若干減っております。それからなお、三十六年度は五十五万一千五百十九トンでございますので、どうもこの実績で見ますと、三十六年度から三十七年度にかけては落ち込みが多かった、生産としては落ち込みが多かったというようなかっこうでございます。これはこの間に合繊が相当伸びたというふうなことでございます。なお三十五年は五十四万三千九百六十五トンでございますので、これも三十五年度より三十六年度はふえておりますが、いま大体申し上げましたようなかっこうでございます。
  32. 大矢正

    ○大矢正君 まあ私も実はいま局長が御答弁されたことのほぼ大要は調べて質問しているわけでして、大臣はあたかもこの綿は、かりに後退しつつあるとは言いながら、なおまだ伸びる余地があるというような、非常に先行きの明るいとは申しませんが、そう暗くないという御答弁がありましたから、私はどうも過去の実績に比較をして、それは間違いじゃないか、なるほどあなたのほうから出されている四十三年度までの需給の見通しはここに出ておりますから、この数字からいきますればそういう議論は出てきますが、これはあくまでもそうなるであろうというあなた方の希望であって、過去の実績からいけば、この希望どおりになるはずだということはとうてい考えられない。だから大臣の認識は多少違うのじゃないかと思って実は質問したのでありますが、そこで、たいへん政務次官に恐縮なんですが、うちの党のほうでは局長あるいは課長にはなるたけ質問しないで、大臣がおらぬときは政務次官に集中して質問するように、こういうことでそれが国対の方針になって、私もその国対の一員で、みずから入ってきめた手前もあるので、そういう意味では数字的なことはもちろん局長ないし課長にお尋ねすることにして、考え方はすべて政務次官に御答弁いただくという前提で、ただいまから質問いたしたいと思いますので、その点で、これまでにおそらく近藤理事からその点はお話がいっていることと思いますが、あしからず御了承願います。  そこで、この法律の目的が第一条に書かれておりまするが、この法律の第一条の中段には、「過剰精紡機の廃棄の促進等に必要な措置を講ずることにより」ということばで過剰設備の、過剰精紡機の廃棄がうたわれております。そこでこの過剰精紡機の廃棄というのは法律の中においては一体どこに現われてくるのか。それからまた具体的にはどんな形でそれが発生をしてくるのか、法律に基づいてです。まずこの点でお尋ねしておきたい。
  33. 竹下登

    政府委員(竹下登君) 私に最も不得手な質問でありまして、最初第七条に初めて法律上の文字として出かかっております。それで第十七条に具体的な事項が書かれ、二十一条でもって使用停止命令等の具体的な規定がなされておる、このようにお答えをいたします。
  34. 大矢正

    ○大矢正君 これは私どももそうですが、とかく議員というものは、大きなことではいろいろ議論ができるが、実際に具体的な面になるとなかなか議論できないということは、これは私自身よくわかっていることで、政務次官も私同様議員でありますから、具体的な点ではなかなか御答弁しにくいかと思いますが、重ねてお伺いをいたしますが、いまの十七条というものは、これは通産大臣の共同行為、いうならば使用停止に関する指示ですね、それから二十一条というのは、それらに基づいて行なわれる、いうならば命令、その中の一体どこに廃棄ということばが出てきておるのか、使用停止と廃棄とは違うでしょう、それはどうなんですか。目的に廃棄が出ている、廃棄ということはなくしてしまうということでしょう。使用停止というと使ってはいけないということです。これは大違いです。いまのあなたの答弁では恐縮ですが、納得できない。
  35. 竹下登

    政府委員(竹下登君) 私も不勉強でございますが、十七条に精紡機の廃棄を促進しなければ繊維工業の合理化に著しい支障等々認められるときに指示するという、「共同行為を実施すべきことを指示する」と、こういうことになっておりますので、廃棄という文字は十七条出ておるというふうに思います。
  36. 大矢正

    ○大矢正君 そこで、精紡機の廃棄を促進しなければならないというふうに、なるほどあなたの言うとおり書いてある。精紡機の廃棄を促進しなければならないということは、一つのいうならば情勢であります。これは情勢。私の申し上げていることは、廃棄をするということはどこにあるかと、こう聞いているのです。
  37. 竹下登

    政府委員(竹下登君) 私も不勉強でございますが、二十条に、「遅滞なく、使用の停止に係る精紡機の登録番号その他の通商産業省令で定める事項を通商産業大臣に届け出なければならない。」、その際に共同行為の中で廃棄という事実が行なわれるから、この二十条の中に浮かび出てくる。このような答弁でいかがでございましょうか。
  38. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 午前の審査はこの程度にとどめます。午後は一時三十分再開することにし、これにて暫時休憩いたします。    午後零時二十分休憩      —————・—————    午後一時五十五分開会
  39. 前田久吉

    委員長前田久吉君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  午前に引き続き、繊維工業設備等臨時措置法案を議題とし、質疑を行ないます。御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  40. 大矢正

    ○大矢正君 午前中、この法律の目的にあります精紡機の廃棄についての質問をいたしましたが、それに対する政務次官の答弁にはどうも納得がいきかねる面がありますので、重ねてお尋ねをいたしますが、目的の中にあります精紡機の廃棄については、第三章の「精紡機の使用の停止」という、この中の十七条、ここにそれが表明をされているというお説のようでありますが、現行法の第二十四条にも同様「(共同行為の指示)」に関しての項があります。この中においても同様に、過剰な紡機やあるいは織機その他について「廃棄、格納その他の方法により処理すべき」云々という形になってあらわれているわけでありますが、現行法の廃棄ということ新法の廃棄ということと、ことばにおいては同様のものがあらわれてくるのでありますが、これは一体どう違うのですか、その点をお尋ねしておきたいと思います。
  41. 竹下登

    政府委員(竹下登君) 廃棄ということばの意味は、現行法も新法も変わらないというふうに理解をいたしております。
  42. 大矢正

    ○大矢正君 廃棄ということばの意味においては変わりがない、また書かれている趣旨においても、これはもちろん廃棄ということばなんですが、書かれている趣旨においても変わりがない。そうすると、現行法では廃棄はできなかった。事実、今日そういう姿になっているわけです。新法ではそれができるという理由根拠は一体どこにあるのか。
  43. 竹下登

    政府委員(竹下登君) 廃棄の意味が変わらず、そうして廃棄自身が現行法において今日のような状態であるものを、新法においてそれが特に促進されるという要素につきましては、私のいまの感じた限りにおいては、第七条の「政令で定める比率を乗じて得た錘の数の範囲内」、すなわち二対一ということによって申請をしまして、二台つぶすことによって一台新設できるというそのメリットを与えておるということが、新法において促進される要素ではなかろうかというふうに理解をいたします。
  44. 大矢正

    ○大矢正君 いま政務次官の御答弁によりますと、第七条の「(登録の基準等)」に関しての中で、「政令で定める比率を乗じて」云々ということばの表現があり、その政令で定めるということは、二対一であるというお話でありますが、この法律がかりに通過をして、それに伴って政令をいずれ出されると思うのでありますが、その政令に書かれる内容というものはどういうものなのか。もちろん成文化はできていないことは私も十分存じておりますが、新たな法律に基づく新しい政令の要綱なり骨子というものをこの際お聞かせ願いたいと思います。
  45. 竹下登

    政府委員(竹下登君) それは局長のほうから。
  46. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) この法案に関連しまして考えられる政令は、ただいまのところ三つございまして、一つはいま議論になっております「政令で定める比率を乗じて」と書いてございまするけれども、その政令が一本であります。それからもう一つは、この法案施行期日を政令で定めなければなりませんが、その政令がございます。それからもう一つは、手数料の関係につきまして、法案自体におきましては、四十三条でございますが、手数料の上限を定めておりますが、その範囲内で政令で定める具体的な手数料をきめなければならない。この三本の政令が出ることになっております。
  47. 大矢正

    ○大矢正君 先ほど来質問しております廃棄について、部分的には消滅という表現が用いられている場合もありますが、この廃棄というのは一体この法案のどこが具体的にそれを示していますか。そして廃棄をしなければならないということなのか、廃棄を希望する人はしなさいということなのか、その廃棄ということが非常に不明確なんです。ことばの上では廃棄ということばが非常に出てくるのだが、法案の上からいけば単に十七条でいま政務次官が言われているとおり、一つの情勢として過剰精紡機があげられているだけにすぎないのでありまして、廃棄というのは一体絶対的にやらなければならないとか、廃棄をしなければならないとか、あるいは廃棄をすべきであるとかいうことは明確にはなっていないわけなんですね、その点はどうですか。
  48. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) 廃棄につきましては、現行法から引き継ぎまして廃棄という字を新しい法案でも採用したわけでありますが、廃棄の定義につきましては、法律上の定義は書いてございません。結局常識概念といたしまして、機械をスクラップ化いたしてしまうというふうなことを考えております。それから廃棄が強制かどうかということにつきましては、この法案の構想は廃棄を強制いたしておりません。これは御案内のとおりでございますが、廃棄をいたしました場合に新設ないし登録の区分の変更のメリットを与えております。そのメリットを与えるということで全体として廃棄を促進しておるという構想でございまして、廃棄自体は、自主的に設備を持っております者がそういうメリットを勘案いたしまして廃棄したほうがいいという場合に廃棄が行なわれる、そういうかっこうでございます。
  49. 大矢正

    ○大矢正君 政務次官にお尋ねしますが、この法案は目的では廃棄をしたい、廃棄を促進したい、廃棄することが今日の紡績業界を安定する道だと、こう言っているわけですね。そこでそれならば、いずれかの個所で廃棄をしなさいということが出てこなければならぬのだが、事実法案の上においては廃棄をしないということは出てこない。いま局長の答弁のとおり、それじゃ廃棄をするかしないかは、そういうことの一切は業界が自主的にやりたければやればいいのだという式のものであるのかといえば、これはそうでもない。なぜかといえば、新しく設備をする場合には二台廃棄すれば一台できるのだ。裏を返して言うと、廃棄をしてはじめて新しい設備ができるのだ、こういうことになるわけですね。その面においての規制はあるけれども、廃棄を促進するための絶対的な条件というのは、法案の中からはどこからも出てこない、こういうことで廃棄がほんとうに行なわれるのかどうか、この問題は次から次に具体的に私は質問しますが、ものの考え方の上からいってどう考えるか。
  50. 竹下登

    政府委員(竹下登君) 私はこの法案については、いま大矢先生の御意見のごとく、本法は廃棄を強制するものではもとよりないのでありますが、二対一という廃棄メリット自体でおのずから促進されるという期待を持っております。
  51. 大矢正

    ○大矢正君 この法案がなぜ必要かといえば、けさほど私は大臣にも質問したとおり、今回繊維産業が持っているのは五つの重大な要素がある。しかし、この法案はその中のたった一つの部分、すなわち過剰精紡機についてどうしたらよいかということだけが書かれているだけであって、他の四つは全部それは捨て去られておる、現実の問題としては。単に抽象的な表現であるにしても、過剰精紡機をどうするかということだけが載っている法案なんです。その過剰精紡機を廃棄しなければならないという最大の目的を持っておるこの法案が、廃棄というそれ自身における決定的な内容がないということは、この法案のそれこそ目的とする本筋がすでに失われておるという解釈をせざるを得ないのじゃないですか。
  52. 竹下登

    政府委員(竹下登君) 先ほど申し上げましたように、どうしても国際経済、国内経済を問わず、近代化合理化が要請される限りにおいて、二対一の廃棄メリットによって促進されるということは私は期待され得るものである。いわゆる合理化精紡機導入の意欲等を考えますときに、廃棄は期待できるものであるというふうに認識いたしております。
  53. 大矢正

    ○大矢正君 法律というものは、おそらく単に期待をするということで法律というものはできるものじゃないと思うのです。そうしなければ業界なら業界の体制というものが、今日の日本経済の中で生きのびていくことができないということから生まれてくるのであって、単に期待ということでこの法律が出るということは私はないと思う。がしかし、事実そういうかっこうになっているので、その点について深く議論をしてもしようもありませんから、この辺でやめますが、そこで先般私は局長に第一格納、すなわち長期格納が行なわれておるいまの設備というものが、将来これを稼動させることができるのかどうかという質問をいたしました。ところが、局長の答弁によりますと、私の多少の解釈の相違もあるかもわかりませんが、長期格納、すなわち第一格納の紡機については、大よそ使用は不可能であろう、こういう御答弁であります。そこで、たとえば本質的に過剰紡機を処理するのに、国が資金を出し、業界資金を出す等の措置を講ずること等により、買い上げその他の方法でスクラップするのでありますれば、これは廃棄ということは促進されると思うのでありまするが、それが行なわれない。裏では使用の目的を持ってつくった機械ではあるが、すでに長期にわたって格納されておるために事実上使用不能と思われる機械というものは通産省提出の資料によると、綿でおよそ百万錘、梳毛で二十万錘、スフで二十万錘、合計百四十万錘しかないという数字になってあらわれております。そういたしますと、あなたがたのほうで提出された資料は二百三十万錘を廃棄したい、こういう御希望でありますが、事実上使用不能の長期の格納というものは百四十万錘でありますから、九十万錘、約百万錘近いものを第二格納、すなわち長期の格納の部分をスクラップ化しなければならないという結論が出てくる。そこで廃棄についての決定的な法文上の措置がない形でそれが行なわれた際に、通産省が考えておられる二百三十万錘の廃棄ということがどうして可能になりますか。もし局長の答弁が事実であるとすれば、言いかえるなら使用不能な紡機というものは今日百四十万錘程度しかない。あとは全部いつでも使える態勢にあるんだと、こういうかまえであれば、業界がみすみす使える機械というものをスクラップにするという理由が出てこないじゃないですか。これは一体どうなんですか。
  54. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) ただいま御指摘のございましたとおり、ここへ参考資料として出しております二百三十万錘が廃棄されるかどうかという点は、これは将来の見通しでございますので、そのとおりかというふうにお尋ねでございますと、そのとおりだというふうにお答えする自信は実はないわけでございますが、いろいろな点から考えまして、まず第一点は、これはしばしば申し上げておりますけれども、先般行ないました業界に対するアンケートの結果を集計いたしますと、いろいろな数字が出ておりますが、この集計によりますと、昨年の暮れ現在におきまして、企業の経営者としては約百七十万錘程度を廃棄をするという数字を出しております。重要な点でございますからもう少し申し上げますと、格納のまま保有をするというのが百二十三万錘出ておりまして、それから処理計画といたしまして新設の見返りに廃棄をするのが九十五万錘でございます。それから解除の見返りとして廃棄をいたしますのが約八十万錘でございますから、当時の時点におきまして約百七十万錘程度は業者として廃棄をするというふうなことを言っております。その点が一つでございます。それから、これも傍証程度でございますが、先ほど御指摘のございました長期格納の数字の問題、これは措置法施行以前から大体その程度のものが操短をしておりましたので、それはもう相当長い間使えないということになっておりますから、その大部分はもう廃棄をしてもいい、こういうふうに考えておるんではないかという気がいたします。それから先般お配りいたしました精紡機の実態調査表によりますと、いろいろ数字がございますけれども、結局昭和二十五年以前に製造いたしました精紡機の中でどれくらいが格納されており、どれくらいが稼動しているかという錘数でございますけれども、A、Bと申します昭和二十五年以前のものをとってみますと、格納しておりますものが約百七十七万錘でございます。これはちょうど二十五年以前につくりました機械の七〇%程度に相当いたしますけれども、これも百七、八十万錘という数字が出ております。まあそういうような点。それから今後のこの格納いたしておりまして、物理的に使える機械を今後なお三年間ないし四年間保有をいたしまして、それをそのまま使うのか。あるいは三年後、四年後のことを考え、それから機械の機能といたしましても、今後急増する合繊に対処して合繊を引くことが企業として有利であるという判断に立って三年四年後を考えまして、物理的、経済的に不利な機械を多少廃棄のほうにウエートを置いて廃棄をしていくのかという点は、いろいろ企業経営者の経営上の問題でございますけれども、中には将来を見越しまして、金融の手当その他がつけばそういうような態度を打ち出す企業者もあるかと思いますいろいろな点を考えますと、二百三十万錘廃棄につきまして、そのとおりの自信があるわけじゃございませんけれども、しかし、それに近いようなかっこうで廃棄が促進されていくということを期待しても、そう大きな狂いはないんではなかろうかというふうな感じを持っております。
  55. 大矢正

    ○大矢正君 この際参考のためにお尋ねをしておきたいのですが、局長に御答弁いただきたいと思いますが、綿の分野で考えてみた場合に十大紡、新紡、新新紡、その三つの区分を前提として考えてみて、おおよそこの格納の数字及び比率はどういうふうになっておりますか。
  56. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) これはいま御質問のございました十大紡、新紡、新新紡という分け方ではございませんので、実は違ったわけ方で恐縮でございますが、三十九年の一月現在におきまして、これは規模別の分け方でございます。綿紡績でございますが、五千錘以下の企業が二十二社でございます。それでこれは登録錘数として五万六千二百錘持っておりますが、実質格納は二千六百六十三錘でございますから、登録錘数に対して四・七四%の格納になっております。それから五千錘以上一万錘未満、これは会社数が二十一ございます。登録錘数が十四万七千四百六十八錘ございますが、この実質格納数が三万百八十三錘でございまして、二〇・四七%でございます。それから一万錘以上三万錘未満企業、四十二ございますが、登録錘数が七十一万二千五百三十錘でございまして、実質格納錘数は二十万五千六百七十八錘、格納率は二八%八七、それから三万錘以上になりますと、企業数四十九でございまして、登録錘数八百十万三千八百九十二錘に対しまして、格納錘数は二百三十五万四百八十錘で、実質格納率は二九%になっております。この総計でいきますと、結局二八・七〇%の格納率でございます。
  57. 大矢正

    ○大矢正君 法律の第十七条の共同行為、このことに関連をしてお尋ねいたしたいと思いますが、十七条に基づいて通産大臣が出す指示というものは、この法律の上から申しますと、言うならば必要とする精紡機の数、逆に言うと、過剰精紡機ということに私はなると思うのでありますが、それ以外に指示というものは具体的にあるのかどうか。あるとすれば何があるのか。この点お尋ねをしておきたい。
  58. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) ただいまのお尋ねの点は、結局指示の内容だろうと思いますが、「その精紡機を糸の製造の用に供することを停止することに関する共同行為を実施」することの指示でございますので、いろいろ計算をいたしまして、過剰と見られます精紡機につきまして使用を停止しなさい、してはどうかという指示、使用の停止をいいますので、それのあれといたしまして、その使用の停止が解除される場合のこと、この二つを指示の内容としております。
  59. 大矢正

    ○大矢正君 そこで、結局二つの段階があるわけですね。共同行為をしなさいという指示の段階と、それから次に二十一条でいう命令の段階と、この二つあるわけですね。で、法律でいう過剰精紡機、これは二十一条の命令が出たときに初めて過剰精紡機ということばが存在をするわけで、十七条の段階においては、過剰精紡機ということばは生まれてこないわけですね。そういうことから考えてまいりますと、かりに十七条の内容に基づいて通産大臣が共同行為をやりなさいという指示だけでもし業界がそれに従う、こういうことになってまいりますと、命令までいかないで問題が解決をするということになるわけです。そうすると、その段階では過剰精紡機ということばは発生をしてこないという解釈になるわけでありますが、そうすると、この点と廃棄という問題とは一体どういう関係になるのでしょう。命令が出て、過剰精紡機であるというところまでいったときに廃棄という問題が具体的になるのだが、十七条の共同行為をやりなさいという指示だけでそれが進行した場合に、廃棄という問題はどうなるのです。
  60. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) いま御指摘のございましたとおり、十七条の指示が出まして、その指示を受けまして業界が、業界と申しますか、この三区分が共同行為をいたしまして、そして第二十条で共同行為をいたしましたといって共同行為が成立し、それが届け出されました場合でも、二十一条がかかりませんので、過剰精紡機ということではございません。それで、この法案の運用といたしましては、結局第二十一条の運用及び解釈の問題になろうかと思いますけれども、私どもといたしましては、第二十一条の使用停止命令の発動の条件、ここにございます企業の数で二分の一以上、錘の数の三分の二以上というような条件でございますが、この条件が整いました場合に、その共同行為をもってしては同項に規定する事態を克服することが困難であると認めるときに二十一条が発動できるわけでございますが、結局この共同行為自体が、現行法でやっておりますような半年というふうな短期の共同行為ではございません。三年間の共同行為でございますので、その間いろいろ経済の変動、景気面の変動があろうかと思います。その相当長い三年間につきまして、共同行為は御案内のとおり脱退、加入それ自体自由でございますので、その共同行為が今後三年間そのまま存続されるという、それがうまく動いていくという、こわれないという見通しにつきましては、これはいろいろ疑念があると存じます。したがって、二十一条が規定いたしました二分の一以上、三分の二以上という条件が整いました場合には、共同行為の将来に対する存続及び実行について、それを確保するために二十一条を直ちに発動をいたしたいというふうに考えております。
  61. 大矢正

    ○大矢正君 まあ私はしろうとだから、専門家のあなたに答弁されると、どうもわからないような感じがするのだが、私ども考えてみて、こういうことが言えるのじゃないかと思うのです。法律で過剰精紡機というものが発生をするのは、二十一条の命令が出たときでなければ過剰精紡機というものは出てこない。十七条の共同行為の指示では過剰精紡機というものが出てこない。ところが、そこで逆に今度は十七条の中で、廃棄というものが出てくるのだというさっき政務次官は答弁をしているのですよ。過剰精紡機が出てこないうちに廃棄というものが出てくるというのはおかしいじゃないかという議論になりませんか。過剰精紡機があるかどうかということの最終的な認定なり、法律でいう過剰精紡機というのは、二十一条までいった最終的な命令の段階が出てこなければ出てこないのにかかわらず、十七条で廃棄ということばが出てくるのはおかしいじゃないか、こう私は思うのだが、いかがですか。先ほどの趣旨と合わぬのだが、政務次官答弁してもらわぬと困る。
  62. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) さっき政務次官の答弁中にございました十七条との関連は、廃棄を促進しなければという十七条の共同行為の指示する場合の、何と申しますか、究極目標と申しましょうか、政策目標……。
  63. 大矢正

    ○大矢正君 目標じゃない、情勢でしょう。
  64. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) 情勢です。それが書いてあるということを説明されたのだと思います。それから過剰精紡機がある場合に廃棄という概念をとっておりますが、それにつきましては、いまお述べになりましたように、この法案におきましては、二十一条が発動されなければ過剰精紡機はございません。したがって、二十一条が発動されて初めて第七条あるいは第九条にいいます過剰精紡機、つまりこの法律の過剰精紡機が出てくるわけでございまして、したがって、第七条でたとえば書いてございます過剰精紡機の錘の数に政令で定める比率を乗じて得た錘の数の範囲内で、つまり二分の一でございますが、二分の一ということは二対一で二錘を廃棄するということでございますが、それは二十一条がかからなければこの法案としては動いてこないと、こういうことになるわけであります。
  65. 竹下登

    政府委員(竹下登君) 私が午前中に、廃棄という文字が法律の上でどこから出るか、というふうな質問と誤認をいたしましたので、十七条に廃棄という具体的なことばが文字の上で出てくるというふうなつもりでお答えいたしました。
  66. 大矢正

    ○大矢正君 そこで、先ほど来くどいように申し上げるのですがね。この十七条の共同行為というものの中には、過剰精紡機というものはないはずなんですよ。そうでしょう。過剰精紡機というのは二十一条でなければ出てこないのだから。共同行為というのは命令の前なんだから、だから命令の前に過剰精紡機ということばも概念も生まれてこないし、法律上の考え方も生まれてこないし、十七条の段階では過剰精紡機というものはないはずなのに、それを処理しなければならないという内容がここに書かれるということは、私にはどうしても理解できない。二十一条のところでそれが書かれるならいいんだけれども、十七条の共同行為、すなわち過剰精紡機こいうものはないのだという中でそれを書かれるということは、法律の上から言ってもおかしいじゃないですか。政務次官どうですか。
  67. 竹下登

    政府委員(竹下登君) これは私も法律の専門家ではございませんので、あるいは誤りがあるかとも思いますが、私は過剰精紡機というものが、法律上二十一条の命令によって初めて過剰精紡機というものがそこに浮かび上がってくる、こういう認識は私どももわかるわけであります。しかしながら、この共同行為の指示にあたってのそういう情勢自体を、法律要件となるべき経済情勢自体を法律の上に書くということについては、廃棄ということばが使われても別に差しつかえないのではなかろうかという感じがいたします。
  68. 大矢正

    ○大矢正君 法律を感じで言われたんではかなわぬので、法律というものは、こういうものだからこうあるということで、それを感じでああのこうの言われても困るのですが、まあそういうことは別にして、政務次官に対してもう一つお尋ねをしますが、いまの局長の答弁によると、十七条の共同行為の指示の中で、私は共同行為の指示というものはあくまでも停止をすべき精紡機の数ということを示すのかと、こういう質問をしたところが、局長の答弁では、もちろんそれもあるが、凍結の解除もある、こういう御答弁があった。そこで、この法律を読めばそのことが一番よくわかると思うのですが、末段にこう書いてある。「精紡機を糸の製造の用に供することを停止することに関する共同行為」云々と、こうなっておる。「停止すること」ですよ。凍結の解除は停止することとはおよそ反対のことでしょう。どこにこの「関する」の中に凍結の解除が出てくるのですか。そういう解釈がどうしてこの文章から生まれるのですか。もし正確にそういうことであるならば、もっと文章をつけ足して、停止することに関しての内容とあわせて、凍結の場合についての共同行為、これを書かなければならないものではないですか。停止することに関する共同行為の中に、その凍結の解除という内容まで入るということは、それはだれが考えてもおかしいと思うのですよ。どうですか。
  69. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) あるいは議論になりまして恐縮かと存じますが、まあ私の感じとしましては、その精紡機を糸の製造の用に供することを停止すべき旨の共同行為というふうに書いてございますれば、停止することだけであろうかと思いますけれども、「停止することに関する共同行為」と、こういうように書いてございますので、停止すること並びに使用停止になりました精紡機の停止の解除というようなことに関するものも含まれておるという解釈をいたしております。
  70. 大矢正

    ○大矢正君 あなたのほうは含まれておるという解釈をするかもしらぬ。しかし法律というものは、みんなが見てなるほどそう書いてあるのだなというところで法律でしょう。あなたのほうが、おれはそういうふうに解釈しておるのだ、おれはそう思っておるのだと、条文はどう書いてあろうとそうなんだということでは通用しないということなんです。そうじゃないですか。明確でしょう、これ以上明確なことはないですよ。「停止することに関する共同行為」について云々と、こう書いてある。それが解除のことまで入っておるとあなた抗弁されても、それは話にならぬですよ。さればといって、いまさらこれを文章を直せと言ったって、あなた直すとは言わぬだろうから、これ以上言ってもしょうがない。最終的には自民党の良識ある人の判断によってそう読めるかどうか聞いてみるよりないので、その点は一応それで終わります。  それから次に、今日の紡績業、特にそれと労働力との関係について二、三お尋ねをしておきたいと思うのでありますが、あなたのほうから出された資料によりますと、求人に対する採用を比率であらわした充足率というものが出ておりまして、この数字は三十八年の実績として、グループ別には、十大紡が約七五%の充足率、新紡は四七%、新新紡は三四%と、こういう数字が示されておりますけれども、これはもちろん労働省の職安の調べでありまするからして、求人をする事業主の側としては、かりに百人必要だという場合に、そのまま百人という数字を出さないで、百二十人なり、百三十人なりという、いうならばワクをふくらました形での求人をおそらくされるであろうことはわれわれも感じております。ですから、この充足率が必ずしも企業実態に合った正しいものだという判断を私もいたしてはおりませんが、事実上そういう山をかけた数字ではなしに、ほんとうの正しい意味での求人に対する採用、この充足率というものはどういう数字になっておるのか、この点をお尋ねしておきたいと思うのです。
  71. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) いまおっしゃいました最近の労働事情からいって、求人の申し込みに水が入っておるのじゃないかということでございますが、輪をかけておるのじゃないかということでございますが、これはいま御指摘になりましたように、私もそう感じております。たとえばこれは御案内のとおりでございますけれども、三十六年に、この資料でまいりましても十八万名を繊維工業として求人いたしましたものが、翌年には一足飛びに二十六万人になっておりますが、これはやはりそういう労働事情から輪をかけた求人申し込みがあったのじゃないかと思います。実態はこれほどではないと思います。充足率あるいは雇用についての実態はどうかというお尋ねでございますが、これは定量的には実はよくわかりません、承知しておりません。ただいろいろな話を聞いたりなんかいろいろいたしました関係では、最近紡績中心にいたしまして若年労働力の確保に非常な苦労と経費その他を払っておることは事実でございます。十大紡等々におきましては、御承知だと思いますけれども、日本の労働力の給源と見られます九州南部、鹿児島県におきましては、最近においても新しく出張所を開設した企業もございまして、これは結局実質的に申し上げますと、労働力を開発するための出張所でございます。そういうのが数カ所ございます。それから大ざっぱに申し上げますと、十大紡等の中心的な紡績につきましては、全体としてどうにかこうにか労働力を充足しておるような状況でございます。ただ、これも最近出ました現象としては、よく御承知でございますけれども、従来の中学校卒業の女子新規労働力だけでは十分な労働力の確保ができませんので、それにかえまして、新制高校卒業の女子労働者を雇用する現象が相当ふえてまいりました。これは新しい現象で、結局従来の若年女子新卒者の労働力を補完する新しい傾向でございます。それからここに出ておるほどのことではございませんが、紡績の底辺部の新新紡等になりますと、これはやはり労働力に、特に新規女子中卒者については相当の困難を感じつつあるようでございます。そういう点は、結局ある意味での生産の減少が出てまいりまして、またそれを補うために中高年齢層への移行というような現象が出ております。きわめて大ざっぱに申し上げるとそういうことでございますが、繊維工業における労働力の問題は、これも御案内のとおり、現在を起点といたしました将来に非常に問題があるわけでございまして、将来相当に大きな問題になろうかと思います。  それからもう一つの特徴といたしまして、この資料に出ておるかどうか存じませんが、従来紡績——これは綿紡資料でございますけれども、綿紡の女子工員の勤続年数は一番多いときは五年を平均といたしておりました。ところが最近におきましては、平均といたしまして三年半ぐらいになっておるかと思いますが、そのように在勤期間が非常に短かくなりつつある、短縮されつつあるというのが最近の顕著な現象でございます。
  72. 大矢正

    ○大矢正君 具体的にいま局長から今日の、特に綿紡績の段階においての労働力の状況についてお話がありましたが、こまかい数字がはたして正確であるかどうかということは、これはあまり議論をしてもしようがない話で、そのことについて私は触れようとは思わないのでありますが、ただ考え方の問題としては、このことが繊維産業にとって現在もまた将来も非常に大きな問題点になるのではないかということからお尋ねをしたいと思うのでありますが、そこで話が回り道になるようでありますが、今日の十大紡、新紡、新新紡、単にそれだけではなくて、その他の紡績ももちろんありますが、いまの労働力は現在現に稼働している設備に必要な限度においての人員なのか、あるいはまだ余裕があるのか。それが一つ。もう一つは、私どもどう考えてみても、今日これからは一年一年若年労働力というものは減少をして、もちろんこれは単に繊維産業に関してのことだけじゃありませんが、一般的に言えることでありまするが、若年労働力の吸収は困難になるであろうことは想像にかたくないわけでありまして、そういう意味で繊維産業が求め得る、特に紡績が求め得る若年労働力というものは十分可能性があるのか、その設備に対して可能性があるのか、あるいはないのかという問題も、これまた非常に重大であります。そこでこの際、繊維局長に私がいま申し上げたような考え方で労働力の面をどうお考えになっておられるか、その点をお答えいただきたいと思うのです。
  73. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) ただいま紡績業全体といたしまして、これは昨年の十二月の末現在の数字でございますが、紡績——これは綿、毛、スフその他紡績業全体として労働者数が二十万一千人ございます。一番大きいのは綿紡の六万九千名でございますが、この二十万名につきまして、設備との関係において余裕があるかどうかということでございますが、これは余裕はございません。それから将来の見通しなりの問題といたしましては、特に従来紡績業がその発展の根幹といたしておりました女子の中学卒業者、つまり義務教育を終わった者の女子、非常に良質の若年労働力を確保して発展をしていったというそれにつきましては、これはそれの確保については非常な困難があると思います。
  74. 大矢正

    ○大矢正君 そこで、これは業界内部でも私は議論のあるところであろうと思いますが、過剰精紡機というものが単に生産需要、この面からだけものを見るのではなしに、労働力の面からも見なければならないという議論が今日あるわけですね。なぜそういう議論があるかと言えば、私は私なりに考えてみてもこういうことが言えると思うのです。今日繊維産業が雇用し得る若年労働力、これはもう目一ぱいのところに来ており、いま稼働している設備に間に合う程度の人員しか充足することができない。そうなると、かりに設備余剰があったとしても、人的な面でその機械を動かすことができないということにもなる。そうでしょう。さらにこれが一年一年若年労働力というものは減少することは統計上明らかになっておるわけでありますから、なお窮屈になってきます。そうすれば過剰設備だからと言って設備廃棄するよりは、先に人間がいなくて機械を動かせないという事態が当然出てまいります。もちんろこれには裏として自動化ないしは連続化という合理化への方向が労働力を多少なりとも減らすことは可能でありましょうけれども、しかし、もしそれをやるとなれば、またその裏として資金が必要になってくるということも言えるわけですね。だから、ひとつとらえなければならない立場は、やはり過剰精紡機をとらえる際にはその機械全体の生産能力及び余力がどの程度あるかというとらえ方もあるけれども、労働力の面ではたして過剰設備というものが動き出して、過当競争が起こるかどうかという面のものの見方もしなければならないのではないかという気がいたしますが、その点はいかがですか。
  75. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) いまの御指摘の点は非常に重要な問題でございまして、昨今の状況におきましても、労働者が確保できないために、これは継続的ではございませんけれども、ある時点において格納をしておらない、つまり動かしていい設備が動かないという現象を散見いたしております。将来労働力についての対策とか、あるいは機械の合理化をやらない場合にはそういう現象が相当ふえていくと思います。それから設備の問題について物的な供給力、あるいは需要に対応する供給力というサイドだけでなくて、労働力のサイドを加味いたしまして、もっと立体的に見るべきだという御指摘でございますが、これはそのとおりだと考えております。そのとおりだと考えておりますが、ただ労働力の面で相当詰まったという現象があるから、現在まあ三〇%というふうな過剰設備があったとしても、それが労働力の点で動かないから、過剰設備の問題をそういまの時点で気にしなくてもいいという議論は、いろんな関係から見まして、そういう考え方は少し困るというような感じでございます。
  76. 大矢正

    ○大矢正君 そこで、これはまあ大きな問題になると思うのでありますが、今日日本はあらゆる産業で言えると思うんですが、若年労働力が非常に不足をしている。ひとり繊維産業にとどまらず、もうこれが地下産業といわれる石炭においてもそうでありまするが、すべての産業がそうであります。そこであらゆる産業が今日考えなければならないことは、やはり自動化なり、または繊維でいえば連続化なり、合理化なりというものを行なうことによって幾らかでも若年労働力というものを他に振り向けるという方向をそれぞれの産業がみな考えなければならぬ。これをやらない限り日本経済の発展というものは考えられないわけであります。原則において。そこで、さらばといってそれをもし行なおうとすれば、当然のこととして多額の合理化資金が必要であるということになります。これがなければやはり労働集約的な従来の産業のままでこれからもなお推移しなければならぬという結論になる。しかし、それがもう許されない情勢に来ている。そうなってくると、やはり国が果たす役割りの中で、特に資金面においてどういう協力をする必要性があるかということが出てまいると私は思います。で、三カ年間で二百三十万錘を廃棄をする、新たに六十万錘近い紡機を新設すると、こういう考え方に基づいてこれから進められるわけでありまするが、そのための資金の計画というものは、具体的にはどういう方向で考えられるのか。先般私が昭和三十九年度の十億円、これは開銀融資でありますが、その点だけに触れましたが、単にこれは三十九年度だけの問題でなしに、この法律が完全に実行される当初の目的でありますところの過剰紡機の廃棄が終わる昭和四十二年度、これまでの計画と考え方というもの、特にそれに基づく資金的な措置というものが必要になってまいるわけでありまするが、これからは従来に増して、新たなこの法律に基づいて、従来より以上、どの程度の政府関係金融機関の融資、言いかえるならば開銀、中小企業金融公庫等の融資の増額を考えておられるのか、また資金的計画を持っておられるのか。この点がありましたならば、大臣からでもけっこうでありまするし、もし大臣のほうで具体的な資料の手持ちがなければ、局長のほうからでも御答弁をいただきたいと思います。
  77. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) 数字だけ私から答弁いたします。この法案施行と関連いたしまして、あるいはこの法案の裏となっております繊維工業、特に紡績中心といたしました近代化のために、どのくらいの金が要るかということでございますが、そういう点は、今後通産省でいろいろ検討していきたいと考えております。ただ御参考までに申し上げますと、昨年実施いたしました業界からのアンケートの集計によりますと、これはこの法案施行と関連いたしまして、昭和三十九年度から四十二年度の間におきまして、いろいろな目的でどれだけの金を考えているのかというふうな問いを発しましたところ、企業数で約四百四十社の回答でございますが、その三カ年を通じまして六百九十五億円というふうな数字が出てまいりました。六百九十五億円の内訳といたしましては、合繊紡に転換をするための金が百五億円でございます。それから品種転換、まあ細番手に転換するとか、そういうようなことであろうと思いますが、それが六十三億でございます。それから一般的に高性能化、これは精紡機の性能の高いものへの入れかえでございますとか、あるいは極端な場合にはキャス式のそういう近代的な連続設備的なものを含んでいるだろうかと思いますが、それが五百二十七億円でございまして、全体として約七百億程度の金の集計になっております。今後いろいろこういう点につきまして、もっと突っ込んだ調査と集計をいたさなければならないというふうに考えておりますが、大まかな方向といたしましては大体この程度、あるいはこれをもう少し上回ったような所要金額になろうかというような感じがいたしております。
  78. 大矢正

    ○大矢正君 先ほど精紡機の廃棄について質問いたしましたが、若干質問の漏れた点がありますので、この際念のためにお伺いをしておきたいと思うのでありますが、かりに過剰精紡機を廃棄をし、それに基づいて新設をする、その過剰精紡機の廃棄というのはスクラップにするのだというお説ですが、そのスクラップにするということは一体どこで押えるわけですか。これは押え方がいろいろあると思うのです。しかもそれは通産省として押えられるのか、業界が自主的に押えるのか、最終的なスクラップということの押え方、または鉄くずとなってしまって、実際にどんなふうにしても使用不可能だという状態まで見定めてスクラップと称するのか、そうではなくて工場からはずしていずれかへ持っていったから、スクラップと称するのか、また鉄くず屋か何かわかりませんが、そういうものと単に売買契約ができたから、そしてそれに基づいて取り去ったからスクラップというのか、これは将来問題が残ると思いますので、この際お伺いしておきたいと思います。
  79. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) 廃棄、つまりスクラップの確認につきましては厳正にやりたいと思っております。これは御案内のとおり無登録精紡機、やみの精紡機が非常な問題になっておりますけれども、これの発生原因はいろいろございますけれども、まあ一つには現行法にございます代替登録というふうな制度がございまして、能率の悪い、あるいは耐用年数がもうすでにまいりました機械にかえて、新しい機械を新設いたしました場合には、その古い機械は動かないように格納しておくというような制度がございますが、そういうふうな点についての若干の運用の問題等もございまして、そういうふうなこともございまして、無登録のやみの精紡機の発生の一つの原因となったというふうにもまあ言われているわけでございます。そういう点からいきまして、全体として過剰設備を新しい法案をもって解消したいというふうなときに、そういうふうなことになりますとこれは大へんでございますので、厳重に確認をいたしたいと思います。民間がするか政府がするかにつきましては、これは政府、通産省が確認をいたします。それから確認方法につきましてはいろいろあろうかと思いますが、スクラップ屋に売り払ったというふうな書類の提出等々もあるかと思いますけれども、どこかによそへ持っていったとか、それからモーターをはずしたとか、ギヤボックスをはずしたとかいうふうなことは、もちろんこれは廃棄になりませんので、これはスクラップ屋等に行きまして、ほんとうにこなごなになったという現場まで確認するというわけではございませんけれども、それに近いところまで実態的にスクラップになる、あるいはなったという確認を通産省としてするということで考えております。
  80. 大矢正

    ○大矢正君 次に、無登録紡機についてお尋ねをしておきたいのでありますが、従来の法律からまいりますれば、これは自由糸を引くことを前提にして、設置制限ではありませんから、登録のない紡機というものが事実上動く、もちろんその中には制限されている、言うならば引いていけない糸を引くというものも含まれますが、これは今度の新しい法律施行されますると、その告示に基づいて、ある一定期間内に、自動的にということばは当てはまりませんけれども、登録をされ、そしてその登録をされた紡機となります。私どもはしろうとながら心配がありまするのは、これについての具体的な制限の方法というものはなかなか出てこない、むしろこの際無登録紡機、自由糸を引くという前提で登録をされる過去の無登録紡機登録にあたっては、ある程度のチェックをする必要性があるのではないか、そうするほうが紡績にとってはよいのではないかという感じがいたしますが、いままでの御答弁からまいりますと、これはそういう方向はとられないようでありますが、とられない理由というのはどこにあるのか、そしてまたそういうことをやらなくても将来問題が起こらないというお考え根拠を承っておきたいと思います。
  81. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) 現行法と異なりまして、新しい法案におきましては、使用制限でなくて設置制限をとりましたので、そういう意味合いから申し上げますと、全体の設備、こういう設置制限対象となりました設備登録されるわけでございますので、そういう意味合いから、まず第一に、取り締まり等につきましても、実態をより正確に把握することが必要であるという考え方からまいりますと、やはりこれを隔離された一つの村に登録いたしまして、実態を明らかにしたほうがいいということで、第四の村に登録することにしたわけでございます。それからいまおっしゃいましたような、登録をするときに、たとえばこれは答申案の策定途中でもいろいろ議論がございまして、たとえば百錘持っておりますものについては、その五十錘を撤去させるなりあるいはいろいろの措置をいたしまして、あとの半分くらいを登録さしたほうがいいというようないろいろな議論もあったわけでございますけれども、どうもそういう点は結局実施の事前の段階、あるいは法案の策定の段階になりますと、いろいろ財産権とのむずかしいことがございまして、そういう差別的な待遇がとれないというふうなことからいたしまして、この法案のようなことになっております。  今後の無登録機に対する運用の問題といたしましては、これは従来いろいろな事情がございまして、必ずしもその取り締まりに完ぺきを期しておるというふうなことではございません。むずかしい点はこれは相変わらず依然として残っておるわけでございますが、まあ御承知のとおり制限糸の紡出が三十万錘ございますけれども、この一応現行法に違反しておるのではないかと見られる制限糸紡出三十万錘につきましても、これは三百工場に分布いたしておりまして、一工場平均千錘というふうな非常な零細なかっこうをとっております。そういう零細な企業につきまして、これは非常に公式的に法律を適用いたしました場合には、その企業がたちまちにして閉鎖、倒産になるわけでございますが、そういういろいろなむずかしい問題もありまして、非常になまぬるいというようなお感じではございましょうが、現在程度の取り締まりになっております。
  82. 大矢正

    ○大矢正君 大臣もお見えになったし、近藤委員の質問が私のあとに残っておりますから、あと一つだけお尋ねをしておきまして、後日に譲りたいと思いますが、それは村区分の問題でありますが、今日繊維に関心を持っておる人々の意見の中には、なるほど新法によって十の村区分が三つになり、それだけ幅広い形で紡機の運用ができるということになってまいりますし、糸を引くこともできる、このことは過去の十の村区分からまいりますれば、かなりの進歩には違いないのでありまするが、しかし、なお三つの村区分を三年間残さなければならないということは、どう考えても自由な競争の立場からまいりましても、また企業及び業界それ自身がみずからの総意に基づいて企業の運営をするという立場から見ても、好ましくないという議論が出ておるわけであります。そこで私どもとしては、この点について専門家ではありませんから、絶対的にこの新法施行と同時に村区分全廃をすべきであるという具体的根拠の持ち合わせはございませんけれども、今日なお三つの村区分を残さなければならないとするその考え方の基礎は一体どこにあるのか、この点を最後にお尋ねをしておきたいと思います。
  83. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) 村区分を最終的に三つのかっこうで残さざるを得なかった理由は、詰めてまいりますと、結局中小企業の保護というようなことというふうに考えて、おります。御承知のとおり今回の三区分におきましては、純糸につきましてそれぞれ専属的な紡出範囲になっておりますが、純綿糸、純梳毛糸、あるいは第三の村に入りましたいろいろ純糸がございますが、そういう純糸は大体におきまして中小企業が引いております。逆に申し上げますと、現在の時点では中小企業は合繊混紡糸、あるいは混紡糸というふうなものをまだ引いていないわけでございます。そういう点から複合繊維時代でございますし、混紡糸をうまく引くために村区分の廃止が、ある考え方からすれば即時の廃止が好ましいというふうにも考えられますが、純糸しか引けない、いまの時点では純糸しか引いておりません中小企業を保護するためには、こういうふうな村区分をとりあえず三年間残すことが必要である、こういうふうな考え方をとっております。
  84. 大矢正

    ○大矢正君 私もおそらくあなたがそういう御答弁をされるだろうとは想定をしておったわけでありまするが、ただ、そこでまた問題が一つ出てくるのは、やはり考え方の上において中小企業、零細企業というものを国みずからがやはり守ってやらなければならないという基本的な考え方がありといたしますれば、そういう村区分ももちろん必要でありましょう、一時的には。しかし、三年後には村区分というものがなくなって、ほんとうの意味の自由な競争というものが行なわれるが、それまでの間に、中小企業に対して村区分という消極的な立場においての保護ではなしに、前向きの積極的な姿勢と立場においての方法、この方法が考えられなければならない。それには何があるかといえば、私はやはりまあ十大紡がいいとか悪いとか、そういう議論をするものではありませんが、より強くやはり中小零細企業に対しての融資なり税制の道というものを考えてやって、そういう意味でみずからの力をつけてやって、三年後には自由な競争がそれ自身の能力において行なわれるような立場が必要になってくると私は思います。しかし、残念ながら、どうもこの法律の条文の中には、どこにも金融をどうする、税制をどうするということは出てきてない。これではとうてい、いま私が申し上げましたような、単なる村区分をつくる、そのことによって中小企業が救われるとは考えられません。これは私の要望になりまするし、同時にまた、もしこの法律案が上がるということになりますれば、附帯決議その他で各委員から要望されることと思うのでありまするが、法律にはないにいたしましても、特に中小零細企業に対しての資金計画を政府みずからが持って、三年の間に中小零細の企業合理化なり、自動化なり、また労働力不足を補うための連続化なりについての資金の提供その他、いろいろ合理化のための資金がありまするが、そういう面でどうしてやるかということを、この際やはり考えるべきであるということを申し上げて、私のきょうの質問は終わりたいと思います。
  85. 近藤信一

    ○近藤信一君 私はこの際、ただいま審議しておりまする法律案とは直接関係ないのでございまするけれども、国連貿易開発会議と日本繊維製品の輸出問題、さらに繊維機械の問題について若干お尋ねをしておきたいと思うのであります。  去る三月二十三日からジュネーヴで国連貿易開発会議が開催されて、目下その各種委員会で審議が進められております。六月十五日には閉会になるということでありますが、この会議は、低開発国を中心にして、百二十一カ国の大会議であることは大臣も御承知のとおりであります。伝えられているところによりますると、低開発国側の先進国側に対する要請が予想外に強くて、日本もOECDなどへの加盟で非常に無理をして、先進国の仲間入りをしたはずであると私は思うのでありますが、まだ産業構造が弱い点などからいたしまして、この会議ではやっぱり中進国的な立場日本としてはとらざるを得ないこともございまして、政府当局もたいへんろうばいしておられるのではないかと思うのであります。  そこで問題となりますのは、この貿易開発会議の成り行きとわが国の輸出貿易の関係ということになりますが、それでは問題があまり広範囲になりまするから、この際といたしましては、それをしぼって、日本繊維製品の動向が特に日本繊維製品の輸出に大きな影響があるのではないか、こういう点をまずお伺いをしたい。それから、その前提といたしましては、昭和三十九年度におけるわが国の繊維製品の輸出見通しはどのようになるのか。特にその総額と、それから前年との比率、それから三十九年度の輸出の見通し、こういうような点についてまずお伺いしたい。
  86. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) 実態的な点を御説明いたしますが、昭和三十九年度の繊維の輸出目標でございますが、これは十三億三百七十万ドルでございます。三十八年度の実績は十二億二千五百六十三万三千ドルでございますので、その実績に対しまして若干増加をするという目標でございます。内容的に申し上げますと、これはもうよく御承知の点でございますけれども、まず第一に綿の関係、これが昨今相当停滞ないし下をはっておりまして、綿糸布の関係が、三十八年度の実績の三億四千六百九十万ドルに対しまして、それを若干下回りました三億四千万ドルになっております。綿糸布につきましても、目標をもっと高くいたしたかったわけでございますが、いろいろ見通しをやりましても、どうも綿糸布についてはこの程度しか昨今の情勢からいけばできないというふうな感じでございます。それから絹化繊につきましては、三十八年度実績の三億八千二百万ドルに対しまして、四億二千四百万ドルと約四千万ドル程度ふえております。御案内のとおり、化合繊、特に合繊を中心にいたしまして最近の輸出は伸びておりますので、絹化繊の関係は毎年相当の増加をいたしておる次第でございます。それから毛麻、これは毛麻と申しましても、毛でございますけれども、三十八年度実績の一億二千九百万ドルに対して一億五千二百万ドル、これは相当大幅の伸張を見ております。その他生糸製品がございますが、大体申し上げますと以上のような状況でございまして、綿糸布の停滞、合繊、毛製品関係の伸張というのが最近の状況でございます。
  87. 近藤信一

    ○近藤信一君 いま局長の答弁の中で、化合繊の輸出も相当見込まれておるわけですが、その比率は一体どれくらいになるのですか、天然繊維と化合繊維の……。
  88. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) 正確な数字、ちょっといま調べまして、あとから申し上げます。
  89. 近藤信一

    ○近藤信一君 国連貿易開発会議における主要な議題といたしましては、五つぐらいじゃなかろうかと思うのですが、その一つは、一次産品買い付けの問題と、第二の点は特恵関税問題、第三の問題は貿易に関する保証融資問題、それから第四はガット以外につくるという機構問題、第五はその他のようでございますが、このうちで特に繊維製品などの輸出に関係が非常に深いのは特恵関税問題であると考えられるのです。この特恵関税というのは、低開発国の工業製品及び半製品を先進国に輸出する場合には、関税などについて優遇制をとる、こういうことだと思うのですが、この問題は七十五カ国が提案者であるということでございますが、お尋ねをいたしたいことは、この提案を主唱した国々はどこかということと、どういう趣旨によってこのテーマを提案したかという、この点についていかがですか。
  90. 福田一

    国務大臣福田一君) 七十五カ国が、いわゆるプレビッシュ報告といいますか、共同いたしまして一つの提案をいたしておるのでありますが、低開発国からいいますと、いま繊維のことで御質問でございましたが、いずれにいたしましても、一次産品あるいは非常にまだ度合いの低い工業品というようなものを出します場合には、何としても関税障壁を乗り越さなければうまくいかないというのが低開発国全部の私は意見だと思っております。自分のところの品物を一々考えてみると、全部がそれが影響いたしますので、これはもうほとんどの国が実は特恵問題については主唱者になっておるとみてよろしいかと存ずるのであります。
  91. 近藤信一

    ○近藤信一君 新聞などの報道によりますると、この問題の提案内容は、第一の問題は先進国での関税水準が一〇%以下になっている低開発国の工業製品、やはり同じく家内工業製品、こういうようなものすべてが半製品と、それから低開発国産品を主原料としておりまする製品の関税は即時撤廃してゼロにしろ、こういうふうなことでございます。  第二の問題は、以上のほかに低開発国の工業製品に対する関税は直ちに半分に切り下げろ、そうして残りの半分は五カ年間でゼロにすることなどであったようでございますが、わが国の繊維製品の輸出はアメリカでの自主規制、それからEECでの差別的輸入措置、その打開策に非常に苦心をしておられるおりからでございますが、低開発国の製品との輸出競争ということがだんだんと激化してくるおそれがあると思うのです。特に繊維製品に関する特恵関税問題の提案内容につきまして簡単に御説明をしていただきたい。  それから、この機会でございまするからもう一点質問しておきますが、半製品とは一体どういうものをさして言っておるのか、こういう点について具体的にひとつ説明していただきたいのです。
  92. 福田一

    国務大臣福田一君) ただいま御指摘のございました二点については、実を言うと、この特恵問題について本低開発国の内部においてもいろいろの意見があるわけであります。特恵関税をやらねばいけないということではみな一致してやっておるのでありますが、その内容が違っておる。最近実は新聞紙上でもごらんをいただいておると思うのでありますが、この機構問題で実は正面衝突といいますか、先進国との間にかなり正面衝突をいたしております。そうして、ほかの四つの問題等に対することについてなかなかまとまりがつかない、これはだから非常に私は近藤委員がいい点で着目をしていただいて、そうして御質問をいただいておりますので、われわれとしてもむしろこれは感謝をいたさねばならないと思っておるのであります。ということは、この低開発国との問題というのがこれからの私は国際会議における一番大きな議題にいつでもなるだろう、いかなる問題が起きてもなるだろうということはよく言われておることでありますが、何といいますか、もし世界国家というものが将来できるという想定のもとに考えてみれば、これは一種の社会保障をやれという一つの主張ともなるわけであります。しかも、そういうようないわゆる低開発国ということばで表現すれば、その人たちもおこるので、いまや発達しつつある国である、こう言わなきゃいかぬといってメンツのことを言いますけれども、事実は非常に貧乏というか、非常にまだおくれておる国なんです。そこの国をできるだけ育てていかなければ世界貿易の拡大はできない。年間一千三百三十億ドルといういま貿易額が全部であるのでありますが、これが六%ずつ毎年伸びておるといわれておるのだけれども、しかしこの貿易の額がどんどんふえていくようにならなければ、これは先進国においても工業が伸びる道理もないし、またその国の国民生活を伸ばしていく方法もないのでありますから、だから低開発国にできるだけいろいろの一次産品にしても合理的にこれを産出するとか、あるいは程度の低い工業品にしてもどんどんつくらせるようにするとか、またそれが売れるようにする、こういう仕組みを考えていかなければ、この貿易額を伸ばすことができない、ひいては世界経済の発展、貿易の発展というものはあり得ない、こう私は思うのであります。だからこの点をわれわれはもう非常な関心を持って見ていかなければならないのですが、実を言いますと、今度の会議は、当初は先進国の側ではこれほど低開発国が強力に圧力をかけてくるとは思わなかった、もう少しおとなしく出てきて、おとなしいと言うとおかしいけれども、いわば常識的な姿において会議が運営されるであろうという考え方を持っておったのですが、意外に低開発国の意見が強く、そこで日本としてはどういたしましんかというと、われわれから言いますというと、御案内のように先進国と低開発国との貿易額というものは大体半々になっておるわけでありますから、どちらもりっぱなお得意さんなんです。そのりっぱなお得意さんに対して、われわれはあまりすげない態度をするということは、これは商売の上からいってもおもしろくないということもありますので、原則といたしましては、一次産品の問題についても、特恵関税の問題についても前向きで漸次やっていこう。しかしすぐ、きょうあすの問題にはならないから、まず機構を整え、それからまたそういうものが買えるようないわゆる金融の問題も考えにゃいかぬ、特に日本は東南アジアに関係が多いのでありますから、たとえばこの東南アジアに対しましては、東南アジアの開発銀行というようなものをつくる、これは何も日本だけがつくるわけじゃございません。世界の国々全部から金を出してやるのですが、日本が出す金の中でも、できるだけ東南アジアの開発銀行によけい金を出そう、どれくらい日本が金を出すかということになりますと、これはフランスが提案したところでありますが、国民所得の一%くらいはみんなで協力してもいいんじゃないか、こういうことをフランスが言っている。フランスが言うのはあたりまえでございまして、向こうは植民地が非常に多い、その植民地にいままでたくさんの金を出しておる。すでに一%出しておるわけであります。日本の場合は賠償も含めて一%にはなりません。いま〇・六六という数字になっておるのでありますが、まだ一%にならないが、この一%くらいは出すべきであるということについては、われわれも実はフランス提案をのもうではないか、前向きに積極的にやろうじゃないか。こうなりますと、日本といたしまして大体どれくらいかというと、四億ドルから四億五千万ドルの間だろうと思う、年間それくらい出してやろう。今日いまどれくらい出しておるかというと、二億八千から三億ドルということでありますから、一億ドルから一億五千万ドル年間出して、そうして大いに低開発国問題について前向きでやろう。その資金のうちでも東南アジアに向ける分をわれわれとしては一番よけい出しましょう、というふうな態度で臨もうということで今度の会議に臨んでおりますが、いま仰せになりましたような具体的な問題になるというと、まだそこまでの詰めが実は話し合いがついてないというのが現実のことでございまして、直ちにいまここで具体的にお答えはいたしかねると思うのでございますが、しかし、この問題はあらゆる機会にひとつわれわれが理解をし、あらゆる機会にわれわれが検討する。それから日本という国は、御案内のように中小企業、しかも弱小な農業がある。この中小企業、農業、特に農業に対してたいへんな暴風雨が吹いてくるんだ、低開発国暴風雨というのが今度やってくるんだということがみんなにわかっておりませんというと、これはたいへんなことになる。われわれは国際会議の席上に出ても、何でも人にいい顔をすればいいというので、、オーケー、オーケーといって承知をして、さていよいよ実行しようということになったら、これはたいへんなことが起こる。これはたとえばの例でありますが、レモン一つ自由化しようといったところで、ずいぶん私などは方々の委員会におきまして、レモンの自由化ということで、いろいろ御質問を受けておるわけであります。レモンは年間わずかに二百万ドルかそこらの輸入でございますが、それくらいのものでさえもこれだけの抵抗があるということを考えてみたら、いわゆる低開発国が農業について、われわれの農産物をどんどん買ってくれ、そうして関税なしで買えとかいって、そういうことをそう簡単に引き受けられるかどうか、なかなか私は日本にとっては大問題である。もちろん、原料なんかの問題になりますと、たとえばアメリカからいま綿を買っている、できればよそからもう少し買って、品質が同じで値段が同じならよそからできるだけ買えるような仕組みにするための協力をするというようなことは意味があると思いますけれども、これも順々にやっていかなければならない、こういうことだと思うのでありますが、いずれにしてもこの問題は、今後われわれとして最も関心を持たなければならない重大な問題である。そうしてこれは決して国際問題だけじゃない、国内の問題にすぐにはね返ってくるのですから、そういうすぐはね返るということを頭の中に入れながら、国際会議にいつでも臨んでいかなければならないんだ、こう考えておるのでありまして、ただ先ほども申し上げましたように、まだ具体的なところまではいっておらないということを御理解を賜わりたいと思うのであります。
  93. 近藤信一

    ○近藤信一君 いま大臣の御答弁の中でもございましたように、日本は低開発国とそれから先進国の中間的な存在にあることは大臣も言っておられる。両方にこれはうまく顔を立てていかなければならぬというふうな立場にありますし、特に今度の国連の貿易開発会議におきましては、第一の問題になりますのは、一次産品の買いつけ増大に関する提案の中で、低開発国の天然産物とそれから競合するような合成繊維、いわゆるいま問題になっておる合成繊維、この合成繊維などの対外工業品といいますか、これを先進国ではできるだけひとつ抑制してもらいたい、こういう一つの難問題が出ておるわけなんですが、この問題に関する提案の内容について御存じの点をひとつ説明していただきたいと思います。
  94. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) 天然生産物にかわる合成でできますものについて、低開発国がその天然生産物をつくって売ります場合には、その輸出促進のために先進国で合成でできますものの生産を抑制せいというふうな意見なり構想があることは事実でございますけれども、具体的な提案までにはなっていないように聞いております。  それからなお、先ほどお尋ねのございました三十九年度の絹化繊の目標額四億二千四百万ドルの中身でございますが、ちょうどその半分の二億一千百万ドルがレーヨン関係でございまして、レーヨン糸とレーヨン織物でございます。それから合成繊維は織物、糸を通じまして一億八千万ドル、あと三千四百万ドル程度が絹関係、こういうことに相なっております。
  95. 近藤信一

    ○近藤信一君 一方におきましては、ガットが五月の四日から三日間ジュネーヴで閣僚会議が開かれました。それでいわゆるケネディ・ラウンドということでございますけれども、これから五年間に五〇%一斉に引き下げるという案もかなり手直しされたようでありますが、この九月ごろを目標にしてこの問題が動き出してくるのではないかと思うのですが、そういたしますると、国連の貿易開発会議はガット以外に別の関税、貿易機構、こういうものを提唱しておるようでありますが、そのことは別といたしまして、ケネディ・ラウンドによる関税一括引き下げ案ということで特恵関税制度はどういう関係になってくるのか、この点はどうですか。
  96. 福田一

    国務大臣福田一君) これは先進国の間でも、また低開発国を含めてでございますが、どういうふうにこれを関連さしていくか、機構の問題それから中身の問題でありますが、どう関連させるかということについてまだ意見がまとまっておりません。で、今度の関税一括引き下げの問題につきましては、すでに御案内と思いますが、新聞発表では何か少しうまく進んでおるように出ておりますけれども、私どもの了解しておるところでは、EECとアメリカとの意見が対立をいたしまして、そうしてアメリカは五年間に五〇%関税一括引き下げと、こういうことをいいますし、EECのほうはディスパリティといいまして、どっちかといえば低関税である。アメリカは高関税である。その高関税のところに五〇%引き下げた場合と、低関税のところに五〇%引き下げた場合とでは競争力にたいへんな違いが出てくると思います。いわゆる平準化ということ、そういう意味の格差を是正するということから入っていかなければならないということで意見の対立を見まして、どうしても話がつかない。そこで、とにかくそれならば、関税を引き下げることは困難であるという、いわゆる例外品目というのがどこの国にもあるだろうから、その例外品目というものをお互いにひとつ提起してみようじゃないか、これが一つの前進になることでもあるからということで、九月の十日までにその例外品目を出そうということになっております。したがいまして、われわれ通産省といたしましても、もちろんこれは工業製品についてでございます。農業ではございません。外務省等とも連絡はとっておりますが、ただいまさしあたり私の省でどういうものが例外品目にいいだろうかというようなことをいま調べておるという段階でございます。したがって、そのケネディ・ラウンドによるいわゆるガットの関税一括引き下げの問題と、低開発国のいわゆる貿易会議というものとの関係はいまのところまだはっきりしておらない、どうしたらいいだろうかという研究をしている段階である、こう御推察願ってけっこうだと思います。
  97. 近藤信一

    ○近藤信一君 今回の国連貿易開発会議の提案は、そのいずれをとってみましても、先進国側にとりましては、これは容易ならぬ一つの問題だと思うのです。そこで中進国的な立場にある日本といたしましても、この特恵国の関税問題は重要な案件であると思いますが、そのために政府は、経済企画庁長官や朝海主席代表などがしきりに往来いたしまして、その対策に対して非常に苦心をしておられるようですが、すでにこれも二十日ごろに、現地に対しても内閣から訓令も出ておるというようなことを聞いております。特に特恵関税問題は繊維工業をはじめといたしまして、わが国の産業構造やそれから貿易構造には大きな影響が与えられると思うのですから、この際ひとつ本問題に関しましては、政府側の見通し、それから対策、こういう問題について伺っておきたいのです。
  98. 福田一

    国務大臣福田一君) お説のとおり国連貿易開発会議に対しては、企画庁長官を出し、朝海大使を出してただいま協議に参加させておるわけでありますが、先ほど来申し上げますように、われわれといたしましては、少なくともいままでは三億ドルくらいのいわゆる経費を、金を出して低開発国の貿易あるいはその開発等に努力をしておりますが、今度は少しまた前向きで一億ドルか一億五千万ドルくらいよけい出そうというような姿勢で臨んで、まあフランス案を支持していこうということと同時に、それを出す場合においても、先ほど申し上げたとおり東南アジアに特に力を入れていこう、こういうことでございます。ただし、日本だけで東南アジアをやるということになりますと、また例の大東亜共栄圏というつまらぬ誤解を受ける。そうでなくて、世界各国から出してもらうが、日本が出す金は、できるだけ東南アジアのほうに半分とかなんとかいうような、こういう日本の出す金のうちで少なくとも半分くらいはまず東南アジアに出す。あと方々ございますが、そういう考え方にしてはどうだろうかという、これもまだ開発銀行構想というものが具体化しておるわけでございませんので、そういう考え方で臨んでおります。そうして今度は一次産品の問題、それから特恵関税の問題につきましては、これは一応前向きで——という意味は、反対しない、低開発国を伸ばすことがこれがまた日本の貿易を伸ばすゆえんであり、日本経済を伸ばす道であるというたてまえから、そのことには反対しない、原則として。しかし、これを実際実施する場合に何年間でやるか、あるいはどういう段階を経てやるかというような問題がまず一つございます。品目別にこれはあるわけであります。たとえば繊維なら繊維の場合はどうするか。ただしもう一つ考え方としては二国間の問題であるわけであります。タイと日本の場合と、あるいはインドネシアとはまた違った考え方でいかなければならない。そうすると、二国間の話し合いということも考えていいのではないか、だから具体案をきめる場合においては、ひとつ十分慎重にその点では臨もう、こういういま考え方で会議に臨ましておるわけでございます。  先ほど申し上げたように、機構問題等でもいまもつれておりまして、これがどういうふうに解決をみるかというようなことは、まだわれわれうかがい知ることができないところでありますが、いずれにしても低開発国の要求というものは、ただいま近藤委員からも申されましたとおり、相当強烈といいますか、われわれが予想した以上に強いものがあり、そしてまたわれわれの負担にたえないような面もなきにしもあらずでありますので、こういうことは、やはり低開発国に対して日本の事情というものをよく知らせておく必要があるのであります。こういう点の努力もわれわれは今後大いにつとめてやらなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  99. 近藤信一

    ○近藤信一君 貿易開発会議の問題は、いまも大臣から力強い御意見がございましたので、この程度にいたしまして、次は繊維機械の関係について若干お尋ねしておきたいのですが、現行法成立のときに、衆議院の商工委員会におきまして、附帯決議をつけたその中に、「繊維機械の更新計画を毎年樹立し、これを強力に実施すること。」という、こういう項目がございます。この更新状況についてどのようにやっているか、ひとつ御説明を願いたいと思います。
  100. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) 繊維機械の更新状況につきましては、まあ現行法がああいう体制をとっておりまして、全体としての過剰設備、それを動かさないというふうな表現になっておったわけでございますが、その中でも御案内のとおり、現行法でも近代化のための更新というものはある程度ニュアンスが出ておりまして、御承知のとおり稼働をしておる能率の悪い機械に代替いたしまして、新しい機械を入れていくというようなことは、行政として指導をしたわけでございます。正確な数字はいまちょっと手元にございませんけれども、大体紡績の全体といたしましての投資の実績は、昭和三十二年ころから毎年二百五十億ないし三百五十億円程度の中を左右しておりまして、ああいうふうな体制のもとでは、ある程度近代化更新計画は進んでおったというふうに考えております。
  101. 近藤信一

    ○近藤信一君 附帯決議の第三項に、「繊維機械設備の更新促進のため必要な予算措置を」云々とあるわけですが、いままでの予算的な措置としてはどのようにやってこられたのか。
  102. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) 繊維機械の更新促進のための予算措置がどのくらいあったかということでございますが、これは特に計上されました財政投融資、あるいは一般予算としては、たいへん残念でございますが、そういうものはなかったのではないかと思います。ただ御案内のとおり、これは最近でございますけれども、たとえば紡毛、紡績業をはじめといたしまして、ほとんどの繊維工業が、これが近代化促進法の指定業種になっていまして、そういう面から内部留保を厚くするというかっこうで設備の更新を奨励しております。  それから附帯決議の二番でございますけれども、耐用年数の短縮の問題につきましては、これは御承知のとおり、大体従来十七年程度のものを十四年、織布段階におきましても、平均十五年のものを十三年にするというふうなことで耐用年数を短縮いたしまして、その近代化を促進いたしております。
  103. 近藤信一

    ○近藤信一君 本法案過剰設備処理方法では、三年間の新規増といたしまして百十五万錘を見込んでおられるわけですが、このうち凍結解除分が五十五万錘、それから新増設が六十万錘となっています。そこで、これまでの紡績機械の内需量を見ますると、これは昭和三十八年度約七十六億円になっていますが、本法案に基づく設備の新規増加分の六十万錘については、今後三年間において従来の内需量に上積みされて、結局六十万錘分が内需増加となると、こういうふうに理解するんですか。
  104. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) 御審議いただいております法案におきましても、たとえば第七条、第九条の関係におきましては、その一項一号で現行法の代替更新の規定を掲げております。したがって従来から行なわれ、それから今後も行なわれます動いております古くなった機械にかえまして、新しい機械を入れていくという点は、これはここに資料として出しております三百四十万錘の過剰設備をソースとして新設ないし凍結解除をやるというふうなことと別になっておりまして、平均的な更新計画に上積みをするものであるというふうに考えております。
  105. 近藤信一

    ○近藤信一君 本法案の四年の期間内におきまして、紡績機械の内需量と、それから輸出量はどのくらい見込まれておるのか、この点はどうですか。
  106. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) ただいまのお尋ねは、四年間の紡績機械の内需量及び輸出量というふうなお尋ねであったと思いますが、たいへん恐縮でございますが、その辺ははっきりした見通しがございません。一応の感じ方といたしましては、これも御案内のとおりでございますけれども、精紡機だけをとって昭和二十九年から昭和三十八年までの十カ年間を見ますと、毎年平均いたしまして百五十八億円程度の精紡機の生産がございますが、そのうち平均的に申しまして三三%が輸出されております。将来も大きな事情の変化がなければ、大体こういうふうな内需七割弱、輸出三割強というふうなかっこうが推移していくのではないかと思います。
  107. 近藤信一

    ○近藤信一君 本法案では二対一の比率で廃棄に伴う新設ができることになっていますが、今後新設される精紡機の性能はどういうものであるか。それはすべてが自動化、それから連続化の機械ばかりではないと私は思うのですが、その点はどうですか。
  108. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) 今後新設されるものの考え方でございますが、現在自動連続装置といわれるCASS、NASS等につきましては、御案内のとおり企業的なサイドで動いておりますものはCASSの三万錘でございまして、そのほかNASSが試験的に動いておると思いますが、この四カ年間のいわば近代化計画でそういうような自動連続装置はどのくらいできていくかということでございますが、これも御案内のとおり、そういう自動連続装置は普通の性能の高い機械と対比いたしましても、大体七割あるいは倍近い所要資金を要しますので、そうそうこれが簡単に普及をされまして、多くのものがそれになるというふうな感じは持っておりません。どれくらいになるか全く見通しの問題でございましてよくわかりませんが、まあ一つ意見といたしましては、現在の三万錘程度のものが四カ年後には五十万錘以上ぐらいになろうかというふうな感じでございます。最近呉羽もいろいろ考案をいたしておりますので、あるいはそういう点もっと促進されまして、もう少し大きな数字になることも考えられますが、いずれにいたしましても、現在のたとえば綿で九百万錘というふうなものの中でせいぜい百万錘程度のものがこれにかわるであろうというふうな感じであります。
  109. 近藤信一

    ○近藤信一君 過剰設備を海外に輸出することも廃棄扱いとされるようでございますが、そうなりますると、これまでの繊維機械輸出の圧迫となってまいりまして、機械メーカーにしわ寄せされると思うのですが、凍結され、また廃棄扱いになる設備の中で海外へ輸出できるというのはどれくらい見込まれておりますか。
  110. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) 中古の精紡機でどれくらい海外に輸出されるものがあるかということでございますが、これは過去の実績といたしましては、御案内と思いますけれども、昭和三十七年でございましたか、香港に二万錘程度が出ておりますが、これは向こうとの合弁でそういうものが出たと思います。現実の問題といたしまして、海外で繊維機械を希望いたしますものは、これはもちろん新規の機械を希望いたしますので、中古機械が輸出されるということは、これはある意味で例外的なケースであるというふうに考えております。今度の新しい法案におきましては、第十五条の滅失の中に運用の問題として輸出される場合も、十五条以降の滅失であるというふうに考えておりますが、現実の問題としては、そんなに中古精紡機あるいは中古繊維機械が輸出されることはございませんし、またいろいろ御指摘のございますように、繊維機械は日本の非常に有望な輸出軽機械でございますので、その正常な輸出を阻害することは厳に戒めなくてはならないというふうに考えております。
  111. 近藤信一

    ○近藤信一君 本法案によるところの過剰設備廃棄は、これはまだ使用のできる設備廃棄するわけでございます。したがって、この廃棄に伴う新しい設備については特別の配慮がなされてもいいのではないかと思うのであります。その意味で特別償却についてやはり従来と違った新しい考え方というものがとられてしかるべきではないかと思うのですが、この点どうですか。
  112. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) 廃棄を見返りといたしました精紡機の新設分につきましては、特別償却をすることにつきまして大蔵省の同意を得ているというふうに存じております。
  113. 近藤信一

    ○近藤信一君 最後に一点お尋ねしておきたいことは、この四月三日の工業新聞によりますると、アメリカの一流繊維機械メーカーが日本の商社を通じて東南アジア市場へ積極的な売り込みを開始しようとしておるわけなんで、国内メーカーはこうしたアメリカの動きに対しまして、非常に動揺しておるわけでございますが、特に東南アジアを一番大きな市場としておる日本のメーカーにとっては、打撃が一そう大きいのではないかと思うのです。そこで、この問題について、現在までの段階はどうなっておるのか。実際アメリカの機械メーカーが日本の商社を通じて動き出しておるのかどうか。この点御存じであればひとつお答えしていただきたいと思う。
  114. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) 私不勉強でございまして、その新聞を見ておりませんが、ただいま重工業局の担当官もまいっておりますけれども、その話は知らないということでございます。そういう事実は知らないということでございます。
  115. 近藤信一

    ○近藤信一君 このとおり工業新聞に大きく出ているのですが、新聞だけが知って政府のほうはそういう問題知らぬとはおかしいじゃないですか。具体的に名前まで上がっている。
  116. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) いま私どものほうの重工業局の担当官も知らないと言っておりますので、これはその新聞もよく読みまして、研究してお答えしたいと思います。
  117. 近藤信一

    ○近藤信一君 ひとつその点、日本の機械メーカーも相当ろうばいしておるようですから、十分調査して、何らかの処置を講じていただきたいと思うのです。  まあ時間もおそいからこの程度で終わります。
  118. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は本日はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時三分散会      —————・—————