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1964-05-28 第46回国会 参議院 商工委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月二十八日(木曜日)    午前十時三十一分開会     —————————————   委員異動 五月二十七日   辞任      補欠選任    高山 恒雄君  赤松 常子君     —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     前田 久吉君    理事            上原 正吉君            近藤 信一君    委員            大谷藤之助君            岸田 幸雄君            豊田 雅孝君            吉武 恵市君            阿部 竹松君            大矢  正君            藤田  進君            鈴木 一弘君            赤松 常子君   政府委員    通商産業政務次    官       竹下  登君    通商産業省繊維    局長      磯野 太郎君   事務局側    常任委員会専門    員       小田橋貞壽君   参考人    倉敷紡績株式会    社社長     三木 哲持君    埼玉紡績株式会    社専務取締役  飯塚 直次君    三菱レイヨン株    式会社会長   賀集 益蔵君    全国繊維産業労    働組合同盟書記    長       宇佐美忠信君    日本繊維産業労    働組合連合会副    書記長     中島 道治君    大阪機工株式会    社常務取締役  田渕  清君    全国金属労働組    合繊維機械対策    委員会委員長  山口 政一君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○繊維工業設備等臨時措置法案(内閣  提出、衆議院送付)     —————————————
  2. 前田久吉

    委員長前田久吉君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  まず、委員長及び理事打ち合わせ会協議事項について御報告いたします。  本日は、繊維工業設備等臨時措置法案について、参考人方々から御意見を伺い、質疑を行なうことになりましたから、御承知願います。     —————————————
  3. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 次に、委員異動について御報告いたします。  昨日、高山恒雄君が辞任され、その補欠として赤松常子君が選任されました。     —————————————
  4. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 繊維工業設備等臨時措置法案を議題といたします。  本日は、七人の参考人の方に御出席を願っております。ただいまから順次御意見をお伺いいたしたいと存じますが、その前に一言御礼をかねましてごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中にもかかわらず、本委員会のために御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。委員一同にかわりまして、厚く御礼を申し上げます。参考人方々は、各自十五分以内で御意見をお述べ願いまして、各参考人の御発言が終わりましたあとで、委員方々から御質疑がありました場合にはお答えをお願いいたしたいと存じます。この際恐縮ですが、何ぶん大ぜいの方に御意見を伺いますので、なるべく簡単にお願いいたしたく、また、前の方との重複する点を御省略願えると好都合に存じます。  それでは、三木参考人からお伺いをいたします。
  5. 三木哲持

    参考人三木哲持君) 私、倉敷紡績三木でございます。御指名でございますので、繊維新法に関しまして、私、一紡績業者といたしまして、私見を申し述べさしていただきたいと存じます。  結論から先に申し上げますと、私は、本法案は、わが国繊維産業の再組織の基本となるものでございますから、本法案が今会期中に成立いたしますことが、わが繊維業界にとりましてはもちろん、わが国経済界全般にとりましても絶対的に肝要である、かように確信いたしておるものでございます。その根拠につきまして、若干卑見を申し述べさしていただきたいと存じます。  私は、去る昭和三十一年十月に施行せられました現行法、すなわち、繊維工業設備臨時措置法は、今日まで、わが繊維業界安定のために重要な役割りを果たしてまいったものと考えるものでございます。ただ、残念ながら、現行法の盲点を突いたと申しますか、無登録紡機を新設して、御当局監視をものともせず、法律に違反した、いわゆる俗にいう、やみ糸を紡出する不心得な者がたくさんあらわれまして、わが業界に大きな害毒を流しましたことは、今さら申し上げるまでもないところでございます。それはともかくといたしまして、現行措置法施行せられましてから、すでに八年以上経過いたしまして、内外の諸情勢にいろいろと大きな変化を来たしたことでございまするし、特に最近いわゆる自由化のムードが高まってまいりましたにつきまして、現行法の改廃問題がやかましく論ぜらるるように相なりました。そして、いろいろと論議の末、このたびの法案が今国会に上程せられたわけでございまするが、その過程におきまして、現行法をそのまま継続せよという議論、また現行法期限切れの上は、来年の六月でございますが、すべてを全くの自由放任にせよという議論などがあったことは、御高承のとおりでございます。  私は、現行法をそのまま継続せよという議論は、もはや現在の諸情勢に照らしまして、論外だと考えます。次に、急激な自由論者は、現行法企業合理化を阻害している、国際競争力を弱めているから、すべからく一挙に自由競争体制へ持っていくべきであるという議論をせられるのであります。私自身も、一繊維企業を担当するものといたしまして、繊維産業の新情勢に対処するためにも、はたまた、弾力性に富んだ積極的な経営を可能ならしむるためにも、自由競争体制への移行という趣旨には何ら異論を差しはさむものではございません。しかし、その自由体制へ移行する方法につきましては、できるだけ業界混乱を避ける方法によらねばならぬとのかたい信念を持っておるものでございまして、幸い、本法案が漸進的に自由化方向をとるように立案せられておりますことは、きわめて妥当であると考えるものでございます。もし万一、一部論者の主張するような急激な自由化方式がとられました場合には、一体どんな結果を見るでごさいましょうか。私は、必ずや次に申し述べますような大きな弊害を起こすことは、火を見るよりも明らかだと考えるのでございます。すなわち、綿業界梳毛業界はもちろんのこと、この関連業界関連金融業界も大きな混乱におちいり、倒産者——これは単にメーカーばかりではございません。商社、商売人もろとも倒産者が続出し、ひいては無数の離職者犠牲者を出すという大きな不幸を招くことは必定だと考えるのでございます。  次に、急激な自由化は、輸出に対する過当競争に一段と拍車をかけることと相なり、不当な安売りによって国際収支の上に大きなマイナスを招くばかりでなく、輸入国側制限措置に口実を与え、輸出阻害原因となるものと考えるのでございます。さらに、かような大きな犠牲を払ったあげくの果て、政府としては、そのまま放任して置くことがどうしてもできなくなって、結局再び何らかの形での規制措置へ逆戻りせざるを得ないということになりまして、そしてそのときの困難さは、今日措置法の改正にあたって必要とせられている努力の幾倍にも当たるものであろうと考えられるのでございます。  これを要しまするに、業界にできるだけ混乱をもたらすことなく、また、国家的損失を招くことなくして、近い将来の自由競争体制をめどといたしまして、その間いわゆるスクラップ・アンド・ビルド、すなわち、一方において過剰設備廃棄しつつ、他方において企業合理化を推進するの方策をとることが、この際、業界自身の責任でもあり、また、政治の要諦でもあろうかと確信いたすのでございます。  ところで、率直に申し上げまして、新法内容は、私が初め希望しておった内容とは必ずしも一致してはおりません。たとえば私は当初、綿は従来どおり独立した一つのいわゆる村区分として存続させることが望ましいと考えておったのでございます。その理由は、登録区分統合及びそれに伴います糸の紡出範囲の拡大は、市況の不安定を招きまして、輸出阻害原因となるということをおそれたからであります。  次に、新法期限は五年が望ましいと考えております。それが新法では四年に短縮されております。なおまた、零細な企業はその希望に応じて国家で買い上げていただいてもいいのではないかというように考えておったのでございますが、それは、わが現在の国情からいたしまして、困難であるということを今日では私も了解いたしております。その他にも希望がないではございませんでしたが、新法では、ただいまも申し上げましたとおり、過去二年以上にわたりまして、各業界並びに学識経験者によって練りに練られ、そうして政府総合的判断によって調整せられたいわゆる苦心の作でございますから、私は各業界、各企業ともそれぞれ多少新法に不満の点はあるにいたしましても、大乗的な立場からこの法案を支持すべきであると考えまするし、現に私自身も、今日では本法案のどの点をどう変えていただきたいという考えは毛頭持っておりませんばかりでなく、先生方のお力添えによりまして、本法案がぜひ今会期中に成立いたしますよう熱望する次第でございます。  ただここで、新法施行に伴います具体的な問題につきまして、一、二私の希望なりお願いなりを申し述べさしていただきたいと存じます。  その一つは、輸出振興対策に関連する問題でございます。輸出振興対策につきまして、私どもが日ごろ希望いたしておりまする項目は、実はたいへんたくさんあるのでございまするが、本日の委員会趣旨にかんがみまして、この席で一般輸出振興策についてお耳を汚すことは差し控えます。ただ、新法施行に関連する点についてのみ一言申し述べさしていただきたいと存じます。ただいまも申し述べましたとおり、新法案では紡機登録区分が整理統合され、それに伴いまして糸の紡出範囲が拡大されておりますので、場合によっては市況の不安定を招き、それが輸出阻害原因となりはしないかということを心配いたしまして、私は輸出入取引法第五条の三のアウトサイダー規制規定が整備されるよう希望いたしていたのでございまするが、設備規制法たる性格新法に、この種輸出入取引法の範疇に属する規定を織り込むことは、法の体系上当を得ないということで、結局新法では特定仕向け地輸出すべき特定の糸または生地の需給が著しく均衡を失し、販売価格が著しく低落するおそれがある場合等には、販売価格出荷数量等について通産大臣勧告ができることになっております。設備規制法たる新法にかような規定を特に設けていただいたことは、輸出振興に対する御当局配慮の賜でございまして、重要な意義を持つものと考えるのでございまするが、要は、その運用いかんでございますから、この勧告とそれに付帯する事項につきましては、時期を失することなく、かつ弾力的に運営せられますよう切望する次第でございます。  もう一つ述べさしていただきたいことは、私ども新法施行後において最も懸念いたしております問題の一つは、現在の無登録紡機に対する措置についてでございます。現在の無登録紡機が、その発生過程におきまして、制限糸紡出という法律違反を犯してまいりました事実にかんがみまして、私どもといたしましては、これら無登録紡機は、少なくとも登録紡機凍結率以上の率によって廃棄または格納されるべきものと考えていたのでございますが、法案によりますと、法施行日までに現に設置せられておる無登録紡機登録及び一定範囲混紡糸、すなわち従来の自由糸でございますが、これを紡出させることとなっておりますが、私は法律上の扱いといたしまして、このような措置がとられねばならないという事情を聞きまして、今日ではやむを得ないことと考えておるのでございまするが、現在の登録紡機過剰処理需給の見通しに基づいてそれぞれ現行登録区分ごと凍結または廃棄せられることになっておりますのに対しまして、従来の無登録紡機をそのまま登録せしめ、自由糸需給いかんにかかわらず、凍結または廃棄対象としないこととなっておりますために、万一これが従来のような制限糸紡出という法律違反を繰り返すようなことがありましたならば、それこそたいへんでございまして、ただに需給混乱させるばかりでなく、繊維産業全体の合理化を妨害することとなるのは必定でございます。したがいまして、新法施行にあたりまして、これらの無登録紡機制限糸紡出違反によって、法律目的達成を阻害しないように、政府におかれまして監視を厳重にやっていただきたいと考えるのでございます。聞くところによりますと、政府自由糸以外の生産は厳重に取り締まるとはっきり言明されておるようでございますが、それに必要な予算が計上されていないのが不思議に思われる次第でございます。私は政府が十分なこれらの取り締まりのために要する予算措置を講ぜられて、確実かつ有効に御監視くださいますよう切にお願い申し上げる次第でございます。  以上、はなはだ表現の悪いところがございましたが、私に与えられました時間も大体経過いたしたことと存じますので、発言を終わらせていただきたいと存じます。どうもありがとうございました。
  6. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 次に、飯塚参考人からお願いをいたします。
  7. 飯塚直次

    参考人飯塚直次君) 御指名をいただきました飯塚でございますが、私は中小紡経営に当たっておりますので、中小紡という立場から繊維新法に対する意見を申し上げたいと存じております。  まず、新法に対する基本的な態度でございますが、ただいま上程されて諸先生方の御審議を願っております新法は、先ほど三木参考人からお話がありましたように、二カ年有余にわたりまして審議の結果、ここに提案されておりますので、別にこれに対しては私ども中小紡といえども、長年にわたった繊維産業統制経済から自由経済に移行いたします過程といたしまして、当然これは踏むべき道であるということを考えておりますので、本法案に対して賛意を表することについてはやぶさかでございませんことを、まず御了承願いたいと思います。  ただ、ここで一言申し上げたいことは、この法律によりまして、やはり影響の一番大きいものは中小紡績であるということを、御考慮いただきたいと考えております。したがいまして、われわれがこの法案について賛意を表したということは、必要条件として、税制の問題、金融の問題、この二つの問題を大きく取り上げていただきたいということをお願いしておるわけでございます。そこで、しからば、中小紡績というものは、これは綿とか化繊とかいうことを問わず、現状設備状況から考えてみましたときに、試み綿紡績というものをとらえてみたときに、五万錘以下を中小紡績と称するとするならば、全体の百三十六社のうち百二社がそれである。したがって、会社数においては八〇%が中小紡であるということをまずお考えいただきたいと思うのでございます。したがいまして、紡績一般的には、観念的に大企業だと言われておりますが、その中に中小紡という、これは中小企業という形では法律的にありませんが、企業の実態からいきますと、やっぱり中小である。しかし、その中小が先ほど申し上げましたように八〇%を占めておるということ、したがって、この影響というものは非常に大きな問題があることに、まず諸先生方の御留意をお願いしたい、こう思うのでございます。したがって、もし中小紡というものが問題が多くなるということは、われわれ紡績といたしましては、機屋さんとか、あるいはメリヤス業者、さらに問屋の流通機構に原糸を供給しておりますので、この受ける影響というものは日本繊維産業に相当大きな影響があるということでございます。  そこで、具体的に新法について、五項目について申し上げたいと思います。もともとスクラップ・アンド・ビルドということが本法案の骨子でございますので、過剰設備廃棄いたすという条件によりまして、稼働設備を新設あるいはまた増設できるということになっておりますので、したがって、われわれ中小紡設備も、決して古いということではございませんが、現状のままでいきますと、やはり新鋭設備に切りかえて、合理化の促進をはからなければならないのでございます。したがいまして、ことに最近は労働力が不足しておりますので、この労働力の不足の傾向といたしましては、御案内のように企業中小化することに応じて、さらにその深刻の度合いは大きいということでございます。そこで、われわれ中小紡といたしましても、ここで企業合理化をはかる必要があるということが、いわゆるスクラップ・アンド・ビルドに進むことでございます。  それに続いて合理化資金の問題についてお願いしたいと思うのですが、これは企業合理化にあたって、まず資金が一番大事であることは申すまでもないのですが、ただ中小紡という立場からまいりますとするならば、信用度の問題、さらに自己資金点等において、やはりこの合理化をするためには、遺憾ながら政府資金、あるいはまたそれぞれの金融機関に仰がなければなりませんので、現在のところでは、今年の開発銀行からは十億の予算を計上されておりますが、さらに中小企業公庫のほうからは、やはりそれぞれ資金を計上されておりますが、試みに十億の資金をもって何ができるかということを申し上げますならば、大かた五万錘の設備をすれば、すでにそれで足りなくなってしまうという状況でございます。したがいまして、私どもといたしましては、金融の道についてどうぞひとつ増ワクと、さらに優遇措置をぜひともお願いしたいということでございます。  なお、この金融問題について申し上げたいことは、開銀融資につきましては、主として大口の融資をお考えのようでございます。さらに中小公庫といたしましては、中小企業法に基づく一定ワクによってやられることになっておりますので、中小金融公庫ワクにも入らない、開銀融資にも入らないという谷間ができることが、われわれは最も憂慮しております。その谷間に入るのが、中小紡績がちょうどその中に入るという形も考えられるわけでございますので、この点については格段の御配慮お願いしたい、こう考えております。  さらに、税制の問題でございますが、これは今後新法施行に伴いまして、中小紡績におきましては、合併とか、あるいはまた企業統合とか、こういうことが当然相当進行されることでございましょう。したがいまして、そのときにおける合併の差益や、あるいは譲渡所得について税の減免の御処置をお願いしたい、かように考えておる次第です。  なお、無登録紡機の点につきましては、先ほど詳細にわたって三木参考人のほうからお話がございましたので省略いたしますが、これによって影響をこうむるものは、全日本繊維産業であると同時に、その中で最も被害者であるのは中小紡であるということを申し上げたいのです。  なお、本法案は四年間で失効する規定になっております。私どもは、先ほどお話のありましたように、五年を要望しておったのですが、今日ではあえてこれに反対意見を申し上げるものではございませんが、万が一もし社会情勢、あるいは一般経済界情勢とか、いろんなことがありましたときには、失効規定であるから、もはや何をか言わんやということではなく、ことに中小紡という立場から、私は十分あたたかい眼をもって本法案推移を見守りいただきたいということをお願い申し上げて、中小紡であるところの私の意見を申し上げて参考に供したいと思います。ありがとうございました。
  8. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 次に、賀集参考人からお願いを申し上げます。
  9. 賀集益蔵

    参考人賀集益蔵君) 参議院における繊維工業設備等臨時措置法案の御審議に際しまして、業界人の一人として日ごろ考えておりましたことを申し述べる機会を与えられましたことは、私の非常に満足するところであります。  私は、多年、化学繊維製造の業に従事してまいったものでありまするが、およそ企業経営に携わる者としては、その企業を繁栄させて、株主並びに従業員に報いることに努力すべきは当然でありますが、それだけではなく、私企業といえども国民経済の一端をになうものであります以上、その業企の力の及ぶことであるならば、進んで国民経済全般発展に寄与すべきものであると信ずるものであります。また、国民経済全般発展方向に逆行するようでは、企業自体の繁栄も期待できないのではなかろうかと思う次第でございます。  わが国経済は、常に国際収支均衡一つのかぎでありまして、そのため輸出の増大は至上命令であります。繊維産業は、生糸以来、輸出の大宗としての地位を占めてまいっておったのでありますが、このことによって、産業自体としても大いに発展したのであります。しかし、最近における内外情勢推移は、わが繊維産業の環境を著しく変化させてまいった次第でございまして、この情勢に対応する方途を誤るならば、歴史ある繊維産業の将来を危うくするものでございます。  それは、元来、わが繊維産業が、労働集約的な面において有利であった地位が失われるということでございます。近来、若年労働者を中心に労働需給は次第に窮迫してきまして、賃金水準もまた順次上昇してまいった情勢であります。これがため、労働集約的な事業は、国際競争力が低下せざるを得ません。それに加え、軽工業から始まる後進諸国工業自給化は、いまや繊維製品輸出にまでも進出して、その力はおそるべきものであると思うのであります。他方欧米先進諸国自国繊維産業の防衛にきゅうきゅうとして、わが繊維産業は、双方からはさみ打ちにあっている状況であります。  このような事態のうちに、わが国開放経済体制に入ったわけでありまして、繊維産業にとっては、まことに重大な時期であるといわねばなりません。国連の貿易開発会議において、低開発国輸出に対して特恵待遇が与えられることになるか、あるいはガットにおいて繊維品関税一括引き下げ対象となるか、また米国その他の諸国に対する輸出規制の廃止や緩和がどの程度実現し得るか等々、私ども経済外交の強力な推進に非常な期待を寄せている次第であります。  外に向かって正当な要求をすることは当然でありますが、同時に世界の、したがってまた、わが国産業経済の必然の発展方向に沿って、わが繊維産業はみずからその体質改善をはからなければならないと考える次第であります。いたずらに現状維持を固執しているようでは、先進諸国に対して、かつて主張していた立場を逆に後進諸国から主張されて、答えるべきすべを失うばかりでありましょう。  わが繊維産業体質改善方向は、当然に労働集約的な性格からの離脱でなければなりません。したがって、単なる紡績、織布から、一方は装置工業である化合繊という原料繊維段階にさかのぼること、また一方では高級多様な高度加工製品に重点を移すことが必要になるのでございます。これは、いわば、繊維産業部門の内部における産業構造高度化に当たるものであると思う次第でございます。これは、繊維業界において、品種転換が大幅に行なわれ、また優秀な企業の活躍にますます期待をかけざるを得ないということを意味するものでございます。  もちろん、現存するあらゆる企業が、このような方向に進むわけにはまいりません。また、その必要もありませんかもしれませんが、しかし、その方向に進み得る企業は、その努力をしなければなりませんし、その他の企業は決してこれを妨げてはならないのであります。さもなければ、繊維産業はもはや新しい事態に対応する道を失い、いたずらに斜陽化するのみであります。幸いにして、わが維維企業の多数は、新しい方向に向かって非常な熱意を持っております。繊維業界の秩序や体制も、この方向に沿うように改められねばなりません。多年、業界体制基本であった繊維工業設備臨時措置法が、その期限を待たずに、このたび廃止され、新しい法律が制定されるゆえんも、ここにあると考える次第であります。  新法においては、化合繊の製造設備は、天然繊維との総合需給調整の名のもとに、規制されていた事態から解放されることになりますが、これはまことに当然のことであります。今後は国際競争力を強化するために、企業としてはいかなる努力をすべきか、自己責任に徹するとともに、広い国民経済的視野がますます重要となるものと考える次第であります。  また、新法においては、不自然ないわゆる村区分が完全撤廃にまで至らなかったのははなはだ残念に感ずるのでありますが、それでも複合繊維の新方向に沿って紡出範囲の制限が相当緩和されたことも、当然しごくのことと思うのであります。さらに、新法においては、多年継続してきた操短体制を打ち切り、過剰設備スクラップ・アンド・ビルド方式によって整理し、自由競争体制に移行することとした意義は非常に重大であります。これなくしては、わが紡業績界は内外の新情勢の中に孤立し、全体として衰退の道をたどるのみであったことでありましょう。  私は、このたびの繊維新法は、繊維産業を新事態に即応させるために必要な過渡的法律であると思います。その目的は、現行の規制体制からの離脱であります。したがって、時限失効法は当然であり、各条の解釈や運用については、従来のごとき需給調整体制の引き延しに利用されたり、既得権益の保護に偏したりすることがあってはならないと信じます。衆参両院における御審議において、このような懸念が薄らぐことを得ましたのは幸いであります。この上は、なるべくすみやかに新法案が成立することを希望してやみません。  しかし、新法の実施に当たっては、当局をはじめ私ども業界人すべてが、新法趣旨を体して、繊維産業を新方向発展せしめるよう、努力をしなければならないと思います。それによって、わが繊維産業は、将来になお光栄ある歴史を保持できるでありましょう。私どもはそれを期して、今後も全力を尽くすことを誓う次第であります。しかしながら、企業によっては、スクラップ・アンド・ビルド方式により、過剰設備を処理し、合理化を推進するにあたっては、非常に困難なものがあるのは事実でありますので、政府におかれましても、金融税制上の優遇措置を講ぜられ、これを援助されることを強く要望するものであります。  御清聴ありがとうございました。
  10. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 次に、宇佐美参考人からお願いいたします。
  11. 宇佐美忠信

    参考人宇佐美忠信君) 当委員会におきまして、全繊の新法に対する意見を申し上げる機会を与えられることに対し、まず厚く感謝申し上げたいと思います。  わが国経済開放経済体制への移行、合繊への質的転換、若年労働力の不足、戦後の海外市場の変化、過剰設備の存在などの諸情勢などによりまして、繊維産業の安定発展及び輸出振興のためには、現行措置法にかわりまして、新たな観点に立った繊維産業に対する措置が必要であることは、繊維産業に働く者の立場から見ましても痛感するところであります。その措置一つとしての繊維新法の制定にあたりまして、特に次の四点につきまして、全繊としての意見を申し上げたいと思います。  一つは、中小企業に対する金融財政の特別の措置について。この法律に基づいて過剰設備廃棄及び新設、すなわちスクラップ・アンド・ビルドを行ない、国際競争力を強化することとしておりますけれども、今後の紡績業は若年労働力の不足問題及び賃金をはじめとする労働条件の改善により、大企業としては労働集約的な体制から近代的な設備による自動連続操業の行なわれる体制に移行する方向をたどることは、現在すでに綿紡稼働設備七百万錘中二百二十五万錘が連繰となっていることから見ても必至であります。しかしながら、中小企業におきましては、連続操業の可能な近代的設備の費用が、新規に工場を建設する場合には、一万錘当たり約五億円、機械設備のみにても二億円を必要とすると言われております今日、開銀よりの十億円の融資及び中金よりの設備近代化資金のある部分が向けられたといたしましても、必要費用に対しましてはきわめて少額であると言わざるを得ません。さらに加えまして、中小企業は新規労働力の充足率が非常に低いため、設備労働力の両面から窮地におちいるであろうということが予測されるのであります。以上の理由によりまして、今後政府といたしまして、中小企業に対する金融財政上の特別の配慮を要望いたしたいと思います。  二番目は、繊維産業における最低賃金の実施及び労働力の流動化対策の確立についてであります。わが国繊維製品に対する先進諸国の輸入規制の口実の一つに、繊維産業の低賃金が云々されていることは周知のとおりでございます。これらの口実、誤解を一掃し、また中小企業における労働力を確保するためにも、最低賃金の確立が必要であります。また同時に、この最低賃金が行なわれて、はじめて国内における過当競争の抑制にも役立つことになると思います。繊維産業の体質強化のためには、質的に脆弱な中小企業合併統合の促進も行なわれることにならざるを得ないと思われますが、その場合、働く者に一定の労働条件すら保障し得ないような状態を存続さすことは、国際信用の面から見ましても排除されなければならないと思います。さらに、業界の再編期におきましては、集中生産、合併等が伴うことがありまするので、特に中高年齢労働者の流動化を可能ならしめる施策が強力に進められ、繊維産業の体質強化のために犠牲が働く者にしわ寄せされないような措置を取っていただくことを要望いたします。また今日まで、若い、安い労働力と高い生産性によって、国際競争力をつちかってきたわが国紡績業でありますが、今後は労働力の面から、抜本的な変革を行なうことが必至と言っても過言ではないと思います。そのためにも繊維産業に対する諸施策を立てるにつきましては、労働対策を重要な柱としていただきたいと思います。  三番目の問題は、複合繊維の調整措置についてであります。合成繊維関係の規制については、この法律対象外としていますが、合繊の設備はここ数年来急速に増加し、数年後には設備過剰、産業秩序の混乱が予想されます。繊維産業全般の総合的な計画があってこそ、初めて繊維産業発展輸出の振興が期せられると思います。原綿、原毛にかわりまして、より良質な合繊綿がわが国におきまして生産されるということ自体、日本経済のためには喜ばしいことでございますが、天然繊維が現状事態を招いた二の舞いを繰り返すことのないよう、事前の調整がとられるべきであろうと思います。そのためには複合繊維につきましては、別途の法による調整措置をはかっていただきたいと思います。  第四は、審議会の運営と構成についてであります。繊維産業の体質強化のために連続操業体制が予想されることは前に申し上げたとおりでありますが、現在の設備の過不足は、年間三百五日操業、一日操業時間十五、七時間を基準にして算出されたものであります。これが先ほど申し上げましたような連操体制になりまして、二十四時間操業となる場合は相当の変化が生ずるということは明らかであれます。その場合の需給計画、設備更新計画、その他合理化を調整審議するためには、今日までのように政府当局業界代表のみによって実質的に運営されてきた審議会の内容を改善していただき、繊維産業に従事する労働者、消費者代表をも加えて実質的な審議が行わなれるようにし、その審議会の機能を強化すべきであると思います。  なお、最後に申し上げたいことは、強力なる経済外交の推進をはじめとする附帯決議につきましては、私どもといたしましては全面的に賛成でありますが、前に申し上げました中小企業に対する財政金融上の特別の配慮につきましては、できることなら法律の修正ということで御検討願えれば、たいへん幸いだと思うわけであります。  以上で終わらせていただきたいと思います。
  12. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 次に、中島参考人からお願いをいたします。
  13. 中島道治

    参考人(中島道治君) 繊維労連の中島でございます。  中小企業に働く労働者の立場から繊維新法について意見を申し述べたいと思います。  第一に、本法案の背景とその政策的意図でございます。戦前の紡績を中心として繊維産業の歴史は操短の歴史であったことは、すでに諸先生方の御存じのとおりでございます。しかも、戦後においても繊維資本はその復興過程において、昭和二十七年、三十年と労働者の大量人員整理によって不況——操短の犠牲を労働者に転嫁してまいりました。特に、婦人労働者に対するその犠牲、しわ寄せについての歴史的経過については、私たちは忘れることができないのであります。しかも、三十三年以降も依然として慢性的な過剰生産のもとで、膨大な設備が遊休化しております。市場条件の変化による輸出の停滞、繊維産業のウエートが天然繊維から化合繊へと移行しつつある中で、いわゆる自由化のもとで新産業体制を確立しようとする中で本案が出されております。しかも、繊維の中小企業金融引き締めに体質的に弱いという面を持っており、とりわけ現在の金融引き締めの過程でこの問題が出されておることは、繊維の中小企業及びそこに働く労働者に一段と犠牲がしいられるのではないかという点についてたいへんな危惧を持つものであります。  本法案は、一見したところ、繊維工業の設備規制のための臨時措置法的なよそおいをこらしているが、法制定の背景をなす政策的意図は、繊維製品の需給構造の変化、輸出貿易における繊維輸出の相対的低下によって綿紡績業の相対的斜陽化が進行しているため、過剰精紡機スクラップ・アンド・ビルドをてことして、複合繊維時代に対応し得る紡績業の体質改善を促進することにあり、そのため金融税制上の優遇措置、生産、出荷、価格カルテル等独占禁止法の適用除外の措置が許されることを求めております。その意味で特定産業振興法の繊維産業版ともいえる性格を持っております。繊維産業の二重構造という実態を考えたとき、頂点では、ゴールドラッシュで無計画的にこの膨大な設備投資が行なわれております。たとえば三十七年の実績で三百二十六億、三十八年の見込みで七百四十六億、三十九年の計画では八百億というような形になっております。ところが、膨大な底部分となっている第二次加工部門の中小零細企業の問題が、この頂点となっている化合繊設備投資の問題と同様に本法案からははずされている。そういう点を見ますと、本法案に、繊維工業一般ではなく、むしろ「原糸や化合繊製造企業振興法」という性格が強く、はたしてこの本法案の第一条であげている目的、「繊維工業の合理化を図るとともに、繊維製品の正常な輸出発展に寄与すること」という目的にはたして沿うことができるかどうかという点について、たいへん疑問に感ぜざるを得ないのであります。  第二に、本法の制定と中小企業及び労働者へ及ぼす影響についてでございます。従来とってきた政府の伝統的な繊維産業政策は、一つは、生産力の発展に伴う過剰設備の買い上げ、技術革新に即応した新設備導入に対する金融税制上の優遇措置、二つは、原糸市況の維持のための操短の実施のための勧告、監督、滞貨金融の補償措置でございました。また、繊維産業の生産構造は、原糸の製造を行なう十大紡、化繊七社、羊毛、麻紡績数社を頂点として、この糸を織り、加工染色し、縫製する製品加工の中小、零細企業の産地群を底辺とするピラミッド型構造をなしております。そうして、これに流通段階で五棉商社と少数の産地問屋が介入しております。こういう意味で典型的な二重構造を形成しておる。しかも、常に糸商の製品安は、このような体制的生産、流通構造によって再生産されてきております。その上伝統的な繊維産業政策は、その政策の保護対策を主として原糸の製造を行なうこれらのピラミッドの頂点に位置する大手独占企業に置いてきております。輸出競争力は織布、縫製、染色加工の中小零細企業による低賃金、長労働時間により手間をかけたものほど競争力が強いとされており、国際的水準によって装備された大手独占企業と加工段階の後進国並み水準の中小企業、農村より供給される女子年少労働力による低賃金労働のたくみな結合によって、このような二重構造を温存してきたのであります。戦後、商社資本の金融力が後退し、綿糸、綿布輸出からスフ織物、メリヤス、綿合繊の二次加工製品などが輸出の面で伸びてきたことから、原糸メーカーによる織布・加工・縫製段階の系列化が一そう進み、大手独占企業は一そうその資本支配の合理化を貫徹しております。  もし、本法律の制定を機会にこのような行政指導が進められたならば、大手紡績による中小紡績の賃紡化、大手紡績内部の集中生産に伴う工場閉鎖、生産の一部を中小企業に切りかえることによる大企業の労働者の人員整理、特に女子労働者について工場閉鎖に伴う配置転換という名目で、表面にあらわれない形での自己希望退職という問題の発生、複合繊時代に対応した大企業の製品によるチョップ販売体制の確立によって起こる中小企業との生産分野の競合、メリヤス、縫製、織機部門の系列化の促進がすでに進行しております。たとえば十大紡ではまねのできない超番手の生産、日清紡の二百番手とか、あるいは特定需要先と結びついた大量生産方式、日紡は大型衣料店と結合したシルウオーキの生産、あるいは東洋紡の小売り店の組織計画、富士紡の地方卸売り店の組織化など、従来の糸売り中心から特定需要先のほうへと体制を固める市場拡大をはかっております。こういうやり方に対して、はたして現在の競争力のきわめて弱い中小紡が太刀打ちできるかどうか。もし太刀打ちできないとなれば、このしわ寄せをさらに中小企業で働く労働者に一そう寄せられることは、従来の経過からみてきわめて明らかでございます。たとえば、現在の労働基準法の実施状況につきましても、労基法の無法地帯と言われる大阪の泉州地帯では、基準法について、せめて八時間労働ではなく九時間労働ぐらいは守らせたいというような形での労働基準監督署の行政指導さえもうまく受け入れられていない企業がたくさんあるわけです。さらに、業者間協定による労働者の賃金統制化、そういうものを考え、さらにその面における労働組合の組織率化、たとえば三十九人以下の繊維の零細企業では、〇・九七%しか進んでいないというような状況考えるときに、独自に労働組合でもちろんこのような状況を改善するために運動していかなければならないのですが、この運動が私どもの微力のせいか、たいして現在のところ効果を上げてないところからみますと、このような形での中小紡の労働者に対するしわ寄せというものは、一そう今後も強まるのではないかというふうに思われます。  第三番目に、意見でございますが、今後の繊維工業は、糸及び糸の生産と輸出から今後はメリヤス、二次加工製品分野への生産と輸出の伸びが期待されるところであります。にもかかわらず、織布業、染色整理業、メリヤス業、縫製業の近代化がきわめて立ちおくれております。本法案は、従来の生産秩序の近代化を平行的に進める配慮が欠けており、右にあげた業種の近代化というものは、わずかに中小企業団体法と中小企業近代化促進法一般の行政指導にゆだねられ、紡績業を中心とした大企業本位の政策がきわめて露骨であります。私ども組合といたしましては、以下述べますような事項が着実に実施されるように経過を見ながら、本法案の独走化には反対せざるを得ないのでございます。  第一に、労働者対策について。織布業あるいはメリヤス業を中心に、主として先ほども申し上げましたような、産地における労働基準法の完全実施のための監督を強化すること、これはぜひ労働省とのタイ・アップで一そう進めていただきたいと思います。  二番目は、現行最賃法、特に業者間協定を中心としたような賃金統制に類するような現行最賃法は一刻も早く改正し、全産業全国一律に適用する法定最低賃金制の制定を進めていただきたい。同時に並行して繊維産業における労使協定による産業別最低賃金制の実施についても十分な措置をとっていただきたい。このようにして低賃金構造の打破をはからない限り、しかも、底辺部分において打破をはからない限り、繊維産業における近代化というものは絵にかいたもちにひとしいと思うのであります。  三番目は、織布、メリヤス縫製業における家内労働の広範な動員の実態が、繊維産業労働者の労働条件向上の死錘になっております。たとえば私ども中小企業で賃上げを要求しますと、会社のほうは生産を制限して、その部分を家内工業のほうに回す、そうして家内工業のほうはなかなか組織化が困難である、工場で働いている労働者よりもさらに一そう劣悪な条件で放置されている。こういう点から考えますと、家内労働法の早急な制定が、これもまた繊維産業の近代化のために欠くことのできない条件でございます。  四番目は、国際競争力の強化を名目とする交代制の強化、たとえば自動連動装置による三交代の導入が前紡関係ですでに行なわれつつある。こういうふうになりますと、国際競争力をとかく至上命令にする繊維の資本は一段と三交代制を強化する。そうしますと、せっかく過剰設備凍結しても、だんだん意味がなくなっていくのじゃないか。しかも、三交代制による労働密度の強化が一段と進められていく。そういうことによって、特に婦人年少労働者保護に関するILO八十九号条約の批准、さらにILO週四十時間労働制に関する勧告への移行についても、繊維産業の近代化の関連において十分検討していただきたいと思います。  次に中小企業の対策でございますが、第一に、織布、染色整理メリヤス、縫製、撚糸業に対する近代化のための産業政策を早急に確立していただきたい。特に設備近代化資金の大幅融資ワクの確保、それからその協同化、専業化の促進のための金融税制上の具体的措置をとっていただきたい。  二番目は、中小下請け企業に対する加工賃の大幅な引き上げと、手形決済期限の短縮、あわせて最近の金融引き締めからきているような黒字倒産などの実情にかんがみて、中小企業資金調達の困難性から、銀行の両建て、歩積みについての廃止についても十分行政指導を加えていただきたいと思います。  さらに、大企業が従来中小企業が生産してきた分野に徐々に入り込んでくるというような形、傾向は非常に強くなっておりますので、中小企業と大企業との間の生産分野の調整措置についても十分に考えていただきたいと思います。  ついで、消費者の対策でございますが、化合繊発展によっていろいろな種類の繊維原糸が、しかも質のいいものが安く供給できるという体制については私どもも賛成でございます。しかしながら、独占禁止法の穴あけに通ずるような各種産業政策の立法化というのはどうしても賛成できません。この際繊維工業審議会の構成委員にぜひ消費者代表として主婦、小売商、そういうものを加えて、できるだけ国民経済的視野に立って、国民の衣料というものを十分考えていただくような行政政策こそ望ましいと思います。そういう意味で、そういう消費者団体の関係者を多数参加させて、この人たちの意見が十分反映するようにやっていただきたいし、さらに加うるに、中小企業労働組合の代表もぜひこういう審議会に参加させて、そしていろいろな審議会、あるいは法律できまって、その実施の過程で、個別企業の中で労使で角を突き合わす段階以前に、ぜひ国の産業政策、繊維の産業政策全体の中で、中小企業労働者の意向を反映するような措置を十分とっていただきたいと思います。  さらに、最後に付け加えて申し上げたいのは、従来の審議会がこれが一番関連があるのですが、ある業界筋と当局のほうで、あらかじめどんどん話をこなしておいて、そしてあと組合とか、その他もし消費者代表が加えられるようなことがあっても、その意見をただ聞きおくというようなことのないよう、十分留意されて、審議会が民主的に運営されるよう切望してやみません。以上でございます。
  14. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 次に、田渕参考人からお願いをいたします。
  15. 田渕清

    参考人(田渕清君) 田渕でございます。私、本日、繊維新法審議にあたりまして、繊維機械メーカーを代表いたしまして、その参考人としてここに意見を述べさしていただく機会を得ましたことを、厚くお礼を申し上げます。  今日の繊維機械は非常に多種多様にわたっておりまして、私らが身につけておりまする衣料品はもちろんでございますが、外を走っております車のタイヤコードとか、魚をとりまする漁網に至るいろいろの製品をつくっております。またスライバー工程を一足飛びにしまして、最終段階の布地をつくるという布織の機械もできております。かようにして、繊維機械そのものは非常にバラエティーに富んでおりまして、これらの機械を今日現在国内におきましてつくっておりまする業者が約四百企業ございます。そのうち比較的大きい企業と言われておりまする三百人以上従業員を収容する会社は、約四十数社でございまして、その他の三百五十数社は中小企業で営まれております。  さて、これらの企業で最近どれくらいな数字の繊維機械がつくられているかと申しますと、最近三カ年におきまして、三十六年度では六百六十数億、三十七年度におきましては、経済不況の影響を受けまして幾分か低下しまして六百四十数億、昨年度は幾分か戻りまして六百六十数億という数字の機械を生産いたしております。そのうち輸出にどれだけ向けられておるかと申しますと、三十六年度では二百数億出ております。三十七年度では二百五十数億出ております。昨年度は少し減少しておりまして、百九十数億という数字が計上せられております。生産、輸出はただいま申し上げましたとおりでございますが、輸入の面はどうなっておるかと申しますと、三十六年度で七十億、三十七年度で九十数億、昨年度はオープン経済影響を受けましたものか、相当ふえまして、百八十億を計上せられておりますが、これはあと処理の部分的なパートの機械がおもでございまして、スピニング・マシナリー工程の機械はごく一部で、一億以下の数字に相なっております。  ただいま申し上げましたことが大体われわれの現状でございますが、さて、われわれのほうから見ました国内繊維産業の方面はどういうように見ておるかと申しますと、三十一年に繊維工業設備臨時措置法ですか、これが制定せられましてより今日までに約八年経過いたしておりますが、その間国内的には合成繊維の急ピッチな台頭、また先ほど諸先輩からお話がありました複合繊維の進出とか、また外に向かいましては貿易の自由化、また後進国の繊維需給率の非常なる上昇等の客観的また実質的にも非常なる変化があったのでございますが、一方遊休繊維機械設備が依然として慢性化的な徴候で保有せられておるし、また高率な操短実施が行なわれておりまして、非常に不安定な状況にあるように見受けております。したがって、われわれは国内需給に全面的におんぶするということは非常に困難なことは申すまでもないことでございまして、現法が施行せられた三十一年以降は、特に企業の一部を他の機械産業に振り向けるとか、いろいろなことを考えまして、多質的な経営にほとんどの企業が移っております。全部ではございませんが、ほとんどの企業が移っております。またこの三十一年以降の制限による需要不足に対しまして、この穴埋めを輸出振興に私どもはほんとうに血のにじむ努力を重ねまして、今日までまいったのですが、一面弱小部門につきましては、政府当局の御支援を得まして、機械工業振興法等の指定を受けまして、会社の合理化に邁進してまいったのでございます。その一、二の例を申し上げますと、繊維機械部品メーカーのリング、スピンドル、針布等の面につきましては、三十六年以降カルテル組織をつくりまして、多数少量生産の弊を除去するために規格品の統一をはかりまして、コスト低減をはかっております。なお、比較的弱い染色整理、メリヤス等の部面につきましても、引き続いてカルテル組織をつくりまして、量的制限をする等いろいろくめんしてまいりまして、一方先ほど申しましたこの面には機械工業振興法の適用を受けるに加えまして、国内延べ払い販売制度の線に乗せていただきまして、輸入からくる圧迫にたえるというような措置も講じまして、合理化を促進してまいりましたのですが、そういうふうにしまして多角経営したり、またいろいろな合理化をしましても、何と申しましても、国内繊維産業影響を受けるということは一番大きな問題でございまして、その国内繊維産業一定ワクの中に入っておって、この開放経済下におきましてインターナショナル的に十分戦える力がそのまま養えるであろうかと常に私危惧しておりましたのですが、幸い先ほどのお話もありましたように、今回新法ができまして、前向きな姿勢で行かれるということにつきましては、基本的に私ら業者は賛成でございますが、ただ私はこれが施行にあたりまして、二つの希望点を持っております。  その一つは、われわれは先ほども申し上げましたとおりに、輸出振興についてなみなみならぬ努力をいたしております。ことに三十一年現行法が制定せられまして後、ほんとうに会社をあげて各企業体とも輸出の振興につとめてまいったのでございますが、聞くところによりますと、新法が制定せられますと、相当数の廃棄機械ができてまいります。これが少しばかりのお化粧によりまして海外へ流出するというおそれがわれわれにあるわけなんですが、万一無統制にそういうようなものが海外に出るとするならば、われわれのつちかってきました正常輸出のラインも相当傷つけられるのじゃないか、また出ていく機械もおそらく古いものがいくということが想定せられますので、技術面においても粒々辛苦漸次つちかってきた線がゆがめられて解釈せられるのではないかというおそれがありますので、この点につきまして、御当局におきましては十分なる管理のもとに、こういう事柄を監視していただき、また適正なそのときどきに処置を講じていただきたい、かように考えます。これが希望点の一点でございます。  次の一点は、新法施行せられました場合には、先ほどもいろいろと参考人の方方からお話がありましたが、多額の合理化資金が放出せられるように聞いております。どうか国産愛用の見地から、こういうお金は国内メーカーの立場に立っていただいて、ひとつわれわれのほうに向かって御使用をいただけばと存じております。  以上二点が私らが新法施行せられますにあたっての希望点でございますが、結論としまして、私業界を代表しまして、基本的に本法案のあり方は賛同でございます。  また期間につきましても、紡績会社さんとわれわれ自身は唇歯の間柄にあると存じておりますので、混乱を起こすような、いますぐに実施する、いますぐ最終段階にいくということではなくして、三、四年の余裕を置いての実施は妥当な点であると思います。したがって、本法案が一日も早く御審議せられ、御実施にならんことを祈っております。  御清聴ありがとうございました。
  16. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 次に、山口参考人からお願いをいたします。
  17. 山口政一

    参考人(山口政一君) ただいま御指名にあずかりました山口政一です。  私は全国繊維機械関係の労働者を代表いたしまして、非常に貴重な時間でございますので、ごく簡潔に要点のみ四点にわたって意見を申し述べさしていただきたいと存じます。  まず第一点の問題でございまするが、現行法の三十三条の二項に、「審議会は、この法律の実施に伴い繊維機械工業その他の関連事業が受ける影響に対処するための措置(繊維工業設備の更新に関する措置を含む。)について、通商産業大臣に建議することができる。」となっておりますが、続いて三項は、「通商産業大臣は、前項の建議があったときは、これを尊重し、繊維工業設備の更新の措置に係る建議については、当該建議に基き、設備の更新に関し必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」というふうになっております。しかし、今回の改正法は三項が除かれております。さらに二十八条の二項の中で、全文については同じでございまするけれども、ただし書きのいわゆる「(繊維工業設備の更新に関する措置を含む。)」というカッコ書きの部分が削除されております。したがって、この三項はいわゆる審議会において建議があった場合にこれを尊重し云々とあって、この「設備の更新に関し必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」という通商産業大臣の任務といいますか、「努めなければならない。」こううたわれておりまするけれども、この改正法はそれが除かれておるということになりますと、何か繊維機械関係、いわゆる重要な関連産業である繊維機械関係が何かまま子扱いになっているんじゃないかというような、ひがみではあるかもしれませんけれども、さように考えるわけです。したがって、われわれは現行法よりもうしろ向きになるのでなく、前向きとまではいきませんにいたしましても、少なくとも、現行法のそのものが大体この本文の中に含まれてしかるべきではなかろうか、かように存じておりますので、非常にむずかしい問題であるかと存じまするけれども、できれば、本文の中に追加願えれば幸せである、かように存じておるわけです。  それから第二点の問題については、繊維工業の審議会の関係でございまするけれども、旧法も現行法も同じ五十人以内ということで、ほぼ五十人からなる委員によって構成されておりまするけれども、この中に現在関連産業として、繊維機械工業関係といたしまして業界側から二名出ております。労働者側から一名選ばれて委嘱任命されているわけでございますが、やはり労働者側一名ということになりますと、いささか少ないような感じがいたしますし、一名という単数でなくて、できれば複数の委員を任命委嘱されるように政治的な配慮お願いいたしたい、かように考えておるところでございます。  それから第三点の問題でございますが、私たち労働者といたしましては、いま職場における仕事量という問題については一番重要な関心事であり、いわゆる生活のかてになるわけで、非常に今後の見通し、仕事量があるだろうかという問題については相当神経を使っておるわけです。ところが、御承知のごとく昭和三十一年に、いわゆる糸を紡ぐほうの関係ではなく、糸を紡ぐ設備機械をつくる側でございますので、これは設備の制限をされております。そういう関係から非常に仕事量が減少してまいりましたし、さらにこの法施行前における昭和二十六年から三十一年の間における過去六年間の実績から申しましても、大体国内受注というのが、おおむね綿紡、毛紡、合繊紡を含むのでございまするが、そういう関係からいたしますと、国内受注というのは大体百七億でございます。この六年間を平均いたしますと百七億で、ところが、それ以降最近においては非常に受注が減退してまいっております。三十七年の例をとりますと、年間四十六億、昭和三十八年の一月から六月まででまいりますと二十八億、年間推定といたしまして大体五十六億程度であろうというふうに判断をいたしておりますが、かつての法施行前のほぼ半額ということで、著しい仕事量の減少、こういうことになっております。したがって、この現行法の中にも輸出振興という問題の附帯決議がなされておりますが、そういうような関係等もございまして、政府当局の御配慮どもございまして、比較的輸出は今日まで順調に伸びておる、こういうように判断をしてほぼ間違いないわけでございまするけれども、今度の改正法の問題でいきますと、一番問題点になるのは、国内におけるほぼ三百六十万錘程度の過剰設備があると言われておりまするけれども、この過剰設備のうち、一部分を輸出されるというようなことが考えられ得るわけです。しかも、輸出されるという条件の中が廃棄消滅扱いにされる、こういうところに問題が若干あるのではないか。ということは、あえていえば輸出をする場合については、国内の廃棄と同じ条件だということになると、いわゆる過剰設備輸出奨励策、こう私は判断をいたしているわけですが、そういうことになりますと、国内で設備の制限を受けた、設備はつくっちゃいけないというのである程度制限を受けてきた。さらに今度は輸出で活路を求めてまいりましたのが、また輸出の面で圧迫をくう危険性が多分にあるのではないか、ということになりますと、今日までいろいろ繊維機械だけではやってまいれませんので、先ほどの参考人の方も申されましたように、大半が転換をいたしておりますし、ほぼどこの企業でも五〇%以上は他の仕事をやって、かろうじて今日になっている。したがって繊維機械関係に働く労働者は、総体的に見まして、他産業と比較いたしまして、非常に低い労働条件の中に置かれているというのが実態です。ところが、これで輸出がまかり間違って、今日ある程度上向きのテンポで上昇してまいりましたものが、この本法施行に伴って、向こう三、四年の間に急激に低下をいたしますとするならば、非常に労働者にとって、失業というほんとにみじみな心配が多分にあるわけでございますので、そういう点で特に繊維機械関係の輸出振興を、この法施行によってはばむことのないように、十分ひとつ御配慮お願いいたしたい、かように考えるわけです。  最後に第四点といたしまして、改正法が施行された場合でございますが、この改正法の法の運用いかんによりましては、この繊維工業その他の関連事業とこれに関連する労働者にどうも不利益を与えるのではなかろうか、かように考えておりますので、そういうことが起こらなければけっこうでございますけれども、過去の三十一年の法施行の問題からあらわれてきた現象、さらに改正法に伴って輸出市場の問題を考えますと、過去の実績の例から見ますと、非常に可能性があるのではなかろうか、かように判断いたしておりますので、こういう問題については、本文の中で云々ということは、いまの時点では非常にむずかしかろうと存じますので、どうかひとつ何らかの形で附帯決議を付していただきたいというふうに考えているわけです。  まず第一点としては、国内におけるいわゆる内需の振興の問題、この内需の振興の問題につきましては、いろいろ設備の近代化資金の問題とか、あるいは今日化合繊機械などの需要が行なわれるように判断いたしますので、これらの問題について繊維機械メーカーといたしましても、おそらく膨大な研究資金をつぎ込み、さらに研究を重ねていかなければ、いわゆる技術の温存と技術の向上ができないかと存じますが、それらの問題等を含めて国内需要の振興の問題。さらに第二点といたしまして、繊維機械の輸出の振興の問題でございます。輸出の振興の問題については非常にむずかしいかと思いますが、現行法の中では、繊維機械の輸出振興については積極的な処置を講ずることという大綱が、今日の現行法の中の附帯決議の項目として一項載っておりますので、こういう大綱的な文章だけでもけっこうだと思います。こういう文章を附帯決議の中で入れていただき、さらに第三点としては、いわゆる労働者問題として、繊維機械関係に働く労働者——いわゆる糸の関係については、これは糸の立法でございますので、いろいろ配慮されていると思いますけれども、その縁の下の力持ちである繊維機械をつくる関係の業界並びに労働者の問題というのは、法施行の中では、先ほど申し上げました二十八条の二項にしか載っておりません。したがって、この労働者対策というのは、今後どういう形で問題が出てくるかということについては、予断を許せないというふうに判断をいたしておりますので、非常にむずかしいかと存じますが、まあ端的に申し上げまして、この法律施行期日中に、繊維機械関係の労働者に、いわゆる失業だとか、大幅な賃金、労働条件の引き下げだとか、こういうような労働者に重大な不利益を及ぼすような事態、こういうものが発生したときには何らかの形で善処をするというような表現でもけっこうでございますが、そういう形を入れていただいておくならば、先ほど申し上げましたいわゆる繊維工業審議会の中で、いろいろ発言をする機会があり、さらに従来行なわれておりましたように、機械関係の専門委員会というようなものが設置されるではなかろうかり存じておりますので、そういう形の中で、いろいろ出た事象の中で、いろいろ検討してまいれば、意見として具体的に出てまいるだろう、かように考えておりますので、附帯決議の案文等につきましては、こまかいことは申し上げませんけれども、ただいま申し上げました国内振興、あるいは輸出振興、労働者対策、この三点の基本的な考え方の上にのっとって附帯決議を付していただくならばしあわせであろう、こういうふうに考えておりますので、格別の御配慮をいただきたい、かように存じております。
  18. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 以上で、参考人方々の御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  19. 前田久吉

    委員長前田久吉君) それでは、参考人の方に対して御質疑のおありの方は、順次御発言願います。
  20. 大矢正

    ○大矢正君 たいへん貴重な御意見をお聞かせいただきまして、心から喜んでおります。  この際、私ども新法について当委員会でいろいろ議論をいたしておりますその中の疑問の点の二、三について、端的に各参考人にお尋ねをいたしたいと思っております。  最初に紡績三社の三木飯塚参考人にお尋ねをいたしたいと思っております。  それは業界が適正規模の設備を持ち、企業それ自身の創意に基づいて自由な競争が行なわれること、これを目的とするこの法律について、私は、いまの日本経済方向がその方向で進んでおる限りにおきまして賛成をいたしたいと思うのであります。ただ、法律がねらいとしていることが、はたして可能なのかどうかという点になりますと、どうも疑問が出てまいるのであります。先ほど来、各参考人からお話がありましたとおり、この新法が永続的な操短体制というものをこの際、早急に解決をして、各企業、そうして業界が適正な水準の設備を持つ、この状態にするために、三年間の間、それぞれの立場努力をするということになっております。そこで私は、やはり一番の問題の焦点は、過剰紡機廃棄が実際に可能であるかどうかという問題に尽きると思うのであります。政府の資料によりますと、三カ年間でおおよそ二百三十万錘の過剰紡機のスクラップ化をしたいという御意思であります。もちろん、これに対して新設または凍結解除はありますが、そういう方向のようでありますが、しかし、私は考えてみまして、過剰紡機の処理をこの際、早急に、しかも積極的に行なわなければならないのだといたしますれば、この法律に盛られたようなことだけで、はたしてできるかどうかという点になりますと、多くの疑問を持つのであります。やはり国が一定資金を出し、また、ある場合には業界資金の拠出をし、そして早急に過剰紡機の買い上げ、廃棄を行なうというようなことでありますれば、私は、目的とする方向がより有効に進むと思うのでありますが、遺憾ながら、この法律業界企業の自主廃棄が原則であります。しかし、ここでそういうことについて、たとえば銀行から、ないしはその他の金融機関等を通じて、業界や個々の企業希望をする程度の合理化資金なり、廃棄のための資金なりが提供されるのでありますれば、私は、これは可能であろうと思うのでありますが、遺憾ながら、これは、先ほど来お話がありましたとおり、十億円程度でありまして、ほんの微々たるものであります。二百三十万錘の廃棄に対しての十億円というものは、ほんとうに微々たるものでありまして、こういうことで、はたして業界、そして各企業が自主的に過剰紡機廃棄をすることができるかどうかということになりますれば、私は不可能じゃないか。特に、この法律は御存じのとおり、三年間の期限、アフターケアの一年間、合計四年間ということに限定をされております。先日、私は、通産大臣に、この法律を再延長するという事態があるのかどうかという質問をいたしましたら、それは絶対にないと、こう言っております。どんなことがあっても三年間、あとの一年間を加えて四年間で、業界の再編成なり過剰紡機の処理を行なうのだという強い決意がうかがえるわけであります。そうなってまいりますと、これは逆論にもなりまするが、三年間かりに新設もしくは凍結の解除を希望しなければ、機械を廃棄する必要性がないということも言えるわけであります。そうすれば、三年間機械を寝せておけば、四年目、五年目にはもう自主的にその機械を持ち出して糸を引き出すことができるという状態になるということは、そういう意味においても、過剰紡機の処理というものは進まないのではないかという実は心配を私はしているわけであります。そこで、私のそういう心配が単なる杞憂にすぎないものであるかどうか、業界のお二方にこの際、お伺いをしておきたいと思います。  それからいま一点は、先ほど来お話にもありましたとおり、無登録紡機に対しての対策が述べられておりますが、しかし、なかなかこの無登録紡機、やみ紡機は、今日百万錘に達すると言われる。これらの紡機を完全に掌握するということは不可能に近いことであろうと私は思います。当然のこととして、制限をされておる糸を引くというような、ほんとうのやみ行為もこれからもなお起こるのではないかという不安を私ども持っておりますが、そこで、それらを排除するような具体的な方法があるかどうか、あるとすればお聞かせいただきたいと思います。
  21. 三木哲持

    参考人三木哲持君) 私は、実は業界代表というような意味できょうは出させていただいていないと思っておりますので、私個人の意見でございますので、そのつもりでお聞きいただきたいと存じます。  いま先生のお話を伺っておりますと、ことばをかえて申しますと、はたしてこの法律業界が安定するに至るかどうか、法のねらいが達成されるかどうかというような点が主眼になっておるように存じます。これは非常に私も実は見通しのむずかしい問題だと存じておるのでございます。と申しますのは、これから実際問題といたしまして、法が施行せられましてから、いろいろ施行上の問題につきまして、まあ、ただいまも私からちょっと申し述べたような点もございますが、いろいろな点につきまして、政府施行面でどういうぐあいに実際におやりになるかというようなことによって、かなり状態が変わってまいると思います。たとえて申しますと、先ほど申しましたやみ紡機の問題でも、これの監視が厳重に行なわれるか行なわれないかという問題、あるいは、先ほど、ほかの参考人からも申されました金融上の優遇措置がどの程度行なわれるかどうか——ただいま開銀十億と申されましたが、この十億円と申しますのは、私どもは、ことしの十月から来年の三月まで、とりあえず十億と解釈いたしております。で、来年度は、これが当然もっと増額せられるものと考えておりまして、さようにお願いもいたしておるわけでございます。しかし、はたしてどれだけのものをお認めくださるかということは、これは私はわかりません。しかし、もっともっと大きな金額が融資せられることをお願いもしておりますし、今後も続いてもっとお願いしなければならぬと考えております。  それから、先ほど飯塚参考人からお話がございました税制上の措置、すなわち、企業合併等に対する税制上の措置がどう行なわれるかというようなことによりましても、これからの事態は変化があると存じます。  なおまた、この新法施行のときに、この過剰紡機の格納がそのときに、はたして何ぼになるかということ、大体いま私たちに見当はついておるのでございまするが、しかし、まだ決定はいたしておりません。かりに、そのときに非常に格納率が低いというようなことに相なりましたならば、そこにおいて非常な需給のバランスが乱れていきまして市況が非常に悪くなる。したがいまして、市況が悪くなれば、当然、古い紡機廃棄して新しい設備に置きかえるという意欲も減りますし、また、やろうと思うても銀行が金を貸してくれないというようなことにもなりますので、そのときの、新法に入りますときの格納率いかんというような点も影響いたしてくると思います。したがいまして、その格納率がどうであるかというようなことが非常に影響いたすと思います。  なおまた、これからの市況、これは広い意味で申しまして、日本全体の景気、もう少し大きく言えば、世界全体ですが、特に繊維業界全般がこれから一体どうなるのかというようなことによりましても変わってまいりますし、また、先ほどからお話があっております労務事情並びに賃金の上昇がどうなってくるのかというようなことも、すべてこれから廃棄及び新設の意欲並びに可能不可能の問題に関係いたしますので、これは非常に見通しがむずかしい問題でないかと考えますので、私は確信を持って申し上げることは、よういたしませんが、少なくとも言い得ますことは、かりにこの新法が成立しなかった場合を考えますと、この新法が成立せずして、もし来年の六月に現行法が消えてしまうというような場合を想像いたしましたならば、先ほども申しましたような非常な混乱が起こりまするから、それに比べれば、新法というものはぜひ施行せられねばならないし、また、そのことが業界を安定に導くのに大いに役立つと考えるのであります。また、申すまでもなく、業者もこれから市況の安定をはかるように、また、新法の目的が達成せられるように、業界全体としても努力もしなければならないと存じます。  それから最後に、やみ紡機監視の点でございますが、これは、先ほど私も申しましたとおり、言うべくして事実非常に困難らしく存じます。それが証拠には、過去にずいぶん御当局もこれには力を入れていただきましたし、また、われわれ紡績業界といたしましても協力をいたしてまいったのでございまするが、十分な目的が達し得なかったのは事実でございます。したがいまして、新法になりましても、よほど御当局がこの監視に力をお入れいただかなければ困難だと存ずるのでございますので、先ほどもお願いしたような次第でございます。  これを要しますのに、今後のいろいろの情勢によりまして、廃棄並びに廃棄による身がわりの新設等の問題はいろいろと変わってまいりますので、かくかくであると申し上げますのは、はなはだ申しわけございませんけれども、この辺でお許しを願いたいと存じます。
  22. 飯塚直次

    参考人飯塚直次君) ただいま大矢先生の御質問の第一点の、一体、三カ年間の期間、アフターケアの一年間で完全に過剰紡機がなくなるかという問題でございますが、これはしからば、過剰紡機をなくさずに今日のような状態でいけるかどうかということが、私たち企業者としては問題になると思います。御承知のように、自由経済に移行した今日、後進国がかなり安い糸、及び織物その他製品を相当量日本に持ち込むのではなかろうかということを考えるわけであります。そうなりましたときに、やはりわれわれといたしましては、この機会に、企業合理化をはかって設備の新鋭化を非常に迫られておることはもちろんでございます。したがいまして、私は、先ほどもお願いいたしましたように、それに要する設備資金の確保ということをまずお願いし、これができますならば、私は、そういう方向で出ていくであろう、さらに大企業におきましては、自己資金等によって、ある程度までそれの目的が達成し、さらに今後拡大していくであろう、合成繊維の分野からまいります企業の競争というような問題も出てまいりますので、当然、紡績業といたしましては、設備の更新をして、現在でも凍結されて、綿紡においては二八%、スフ紡においても、正味でいきますと二二・幾らになりますが、こういうものをそのままいつまでもこの状態でいくということについては、私どもはけっこうだとは考えておりません。そういうことを念願として対処したい、こう思っております。  もう一つ、やみ紡機については、先ほどお話のありましたとおりで、なかなかこれは根強いものがありますから、容易には根絶を期すということは困難であろうと思いますが、しかし、これも、それぞれ政府の対策というものが打ち出されるならば、やはりわれわれ同業者でありますから、この点については、指導よろしきを得るのではなかろうか、しかし、困難であるということは、私は申し上げられると思います。  以上です。
  23. 赤松常子

    赤松常子君 ちょっとこれに関連して。いまの御回答に対しましてもう一度ちょっとお尋ねしたいのでございますが、御両者とも、やみ紡機の存続、これが非常に問題のネックになるような御発言でございました。これは根本的に言えば、日本政府自体が繊維産業の遠い将来を見通しての産業政策、繊維政策ができていない、これに私どもは欠陥があると思っている次第でございます。また、今度この新法ができましても、また五、六年先には同じことを繰り返すような懸念を私は持っている次第です。八年前も繊維関係の法律ができて、そしていままたこういうことをしなければならぬ。また五、六年たったらどういう状態になって、また同じことを繰り返す杞憂は私も感じているわけでございまして、根本的には日本政府自体がいま申します繊維産業の将来を見通した計画を持つべきだと、こう考えておりますが、いかがでございましょうか。先ども——片言隻句をとらえてかれこれ申すのはたいへん失礼でございますけれども、新々紡をさしてのおことばだと思うのでございますが、やみ紡機がどんどん出てしまって、あって、それが前の法律施行に非常にまあ支障を来たしたような私ども受け取り方をした次第でございます。それが、経営者の皆さまからごらんになって、どういうところにもっと力を注いだらよかったのか、こういうことを再び繰り返さないために、政府の監督が非常に不行き届きであったのか、あるいは業者自体の自主性というものが不足であったのか、あるいは審議会自体にもう少し不足な点があって、審議会自体にもっと強力な、何と申しましょうか、監督指導という面がなければならなかったのではないだろうか、そういう前の法律の欠陥、失敗、それをもうちょっと具体的におっしゃっていただいて、今度の新法に対しても不備なところは補っていったらどうであろうか、こういう御質問をいたしたいと思う次第でございます。まあそういうことで、政府の監督が不行き届きであれば、もっともっと政府に対して鞭撻もしなければならないと思います。どうぞその点について御意見を伺いたいと存じます。
  24. 飯塚直次

    参考人飯塚直次君) いまの御質問でございますが、これは法律自体にも問題があった。なぜかといいますというと、今日までの法律は、使用制限であって、設置は差しつかえなかった、ここに大きな欠陥があった。今回の法律においては、設置することもできないということでございます。もう一つは、業者自体もこれは反省を要する問題があったのではないか。両方に問題が私はあろうと思います。大体その程度でよろしゅうございましょうか。
  25. 赤松常子

    赤松常子君 政府自体に対して御意見ございませんでしょうか。
  26. 飯塚直次

    参考人飯塚直次君) これは政府自体も——旧来は、綿紡績と、あるいは化繊紡績と、それぞれ違う業界が操業の監視をしておりました。これが今度は一本になりまして、全繊維産業が行なうということと同時に、政府自体が今度は責任を持ってやるということになっておりますから、おそらくこの点については問題はなかろうかと思います。
  27. 大矢正

    ○大矢正君 ただいまお答えをいただきましたが、この法律の立て方というものが、過剰紡機の処理をあくまでも業界企業の自主的な立場においてなされなければならないという大前提がありまして、その範囲において、政府、通産当局の行政指導というものが行なわれるのでないかと私は思います。したがって、通産当局が行なう過剰紡機廃棄についてのいうならば力の限界というものはおのずから出てまいるものでありますから、やはり私は三年後に再びまたこの法律を変えるもしくは存続をするというような議論をしなければならない事態になるということは残念なことでありまして、私ども議員といたしましても、政府に、積極的にまあ国が買い上げるということ、そして廃棄をするということは、この法律上できないのでありまするから、裏側の資金をより積極的に出すという面において、過剰紡機の処理、廃棄努力をいたしたいと思いますので、ひとつ業界においても、再びこの法案が三年、四年後にまた議論をしなければならないことがないように御努力お願いしたいと思います。  次に、合繊関係について賀集さんに二点ほどお尋ねをしたいと思います。これは先ほど宇佐美参考人の御発言にも触れられておったのでありますが、私は、単なる私の杞憂であればよろしいのでありますが、どうも今日の合繊界の状態、将来どうなるであろうということを予測した場合において、いまの合繊界の設備能力、これらのものを考えてみますると、これからは新法施行によって法律上の拘束は何らなくなってくる、自由な競争である。もちろん、合繊というものがあらゆる分野に進出をして、年々非常に驚くべき需要の増加を来たしておりますから、そういう意味においてはうなずかれる面もありますが、しかし、いままでのようにたとえば東レさんあるいは日レさんあるいは帝人さんといわれたごく限られた少数の企業設備によって運営をされる時代から、漸次設備の能力においても企業の数においても拡大をしてきておる今日、将来とも過当競争が起きないという、設備の過大という事態が起きないという心配がないとは私は言えないと思うのであります。もとより、合繊それ自身は装置産業でありますから、設備に対して多額の資金を必要とすることは、制約をする一つの部面としては生まれ出てはまいりますけれども、なかなかそれだけで問題が解決をするものではない。今度の法律では、それらの問題について規制をする何らの方法もない。しいてさがせば、これは協会から御要望もあるようでありますが、いま衆議院にかかっております特振法でそれらの問題の調節をしたい御趣旨のようであります。しかし、残念ながら今度の国会でもこの特振法は通らぬようであります。私どもは——私は社会党ですから、社会党が反対をしておるということもありますが、単にそれだけではなくて、指定される業種、業界の消極的な態度も今日あるようであります。これらの面もありますので、なかなか特振法は今度の国会で成立をして合繊界が調節をする場合の方法にしたいということには沿えないようであります。今度通らないと、これで三回出しておりますから、いくら心臓の強い通産省でも、四回まで国会に出すことはできないじゃないかという気がする。そうすると、自主調整がなかなか困難だという面が出てまいります。それらの見通し、考え方等について、どう考えておられるか、これをお答えをいただきたいことが一つであります。  それからいま一つは、かりに今日専業七社がそれぞれの規模において、わずかな規模でありますが、紡績機を持っております。そこで、これからこの法律が発効してから失効するまでの三年ないしは四年間、それからそれ以降、これらを考えてみて、合繊の専業七社の方は紡績機械をみずから積極的に持とうという御趣旨がおありなのか、あるいはそうではなしに、綿の提供を中心として紡績紡績の今日の既存の各社におまかせをするという方向で進められようとお考えになっておるのか、それらの点についてこの際答えていただければ幸いだと思います。
  28. 賀集益蔵

    参考人賀集益蔵君) ただいま大矢委員からの御質問に対して、第一の問題でありまするが、現在、後続部隊と申しますか、新たに化繊業を進めるというところが続出しておるような次第であります。これは遠い将来においては設備過当の問題が起きてくるかもしれません。しかし、現在の状態においては、私は現在のあり方で促進されておる状態では、設備が多過ぎて現在の紡績界のごとく過剰設備になるんじゃないかという御懸念はないんじゃないかと思います。それは理由としては二つあります。一つは技術的の問題だろうと思います。一つ需給の関係から起こってくる。それに、技術的に天然繊維と合成繊維とでは性質上非常に違ったものがあります。天然繊維は、いわゆる動物、植物の利用によって生産されるものであります。そして、いままでに品種の改良とかあるいは遺伝学の応用によって、多少綿のごときは単位面積の増産をはかるとかいうようなことはありますけれども、これは非常に自然に制約されるものでありまして、限度は小さいのであります。しかし、合成繊維になりますと、技術的に性質を変えていく。これも限界がありますけれども、相当幅の広い範囲において性質を変えていく力を持っておる。一例をあげて具体的に申し上げますと、いまから七、八年前のナイロンであります。ナイロンの漁網をつくって光線にさらしておると、黄色くなって老化してしまうということでございます。それは今日では完全に克服されている。日光の紫外線によっても作用を受けない。それからポリエチレンは、これは英国のICIが発明して、相当長い年限研究を重ねた結果、日本に技術導入されたものでありますが、大きな技術的な変化はございません。最初から有効なものができておりますから。しかしあれも、繊維がかたいということで、今日ではもっと繊維をやわらかくしようということに技術がだんだん進んできております。最も著しい例はアクリルであります。これは生まれてから約三カ年間というのは売れなくて困ったのです。それは染色性が悪い、それに強度も足らぬ、白度も足らぬ、そういうものは技術的に改善されて、今日では非常に需要が増大している。そういうような次第でございますから、技術の発達によりまして需要が増大していく一つの要素を持っております。これが天然繊維と非常に大きな違いのあるところでありまして、ことに合成繊維になりますと非常に比重も軽い。水に浮くような軽いものがある。これはパイレンとか、プロピレンと申しますか、そういうようなものが、これはまだ生産はやっておりませんけれども、将来まだ相当伸びるのじゃないか。その比重の軽いというところを利用して、相当強力でありますから、資材用にも伸びるのじゃないか。でありまするから、合成繊維は、ナイロンにおいても、プロピレンにおいても、ポリエチレンでも、将来その技術の開発によって一つの特徴をつくれば新しい分野にいくと、こういうことになります。ただ単に衣料だけの問題じゃなくて、資材用、工業用に広く用いられることがあるのですが、最近の例として見ますと、マニラ・ロープを船会社が使っておった。あのマニラ・ロープは水の中にはうり込むと沈むのであります。プロピレンは浮くのであります。そのために、あのマニラ・ロープのかわりにプロピレンをこのごろだいぶ使っている会社が出ております。現在、郵船社会でも、あのほうが軽くて取り扱うのに便利だし、ことに水に沈まぬから、ロープを引っぱり上げる場合の水の抵抗がないから力が少なくて済むと、こういうように見られる傾向があるのでありまして、研究すれば研究するほどこの用途が拡大していく、こういうことがあるのであります。でありますから、ただ単に衣料面だけの需給関係だけでこれは判断できないのであります。いままでわれわれが考えていなかった、あるいはろ過装置ですとか、ああいうような化学的抵抗に強い繊維でありますから、そういう方面で綿を使っておったりあるいは羊毛を使っておったところへ合成繊維を使うと、こういうようなことになりますので、いまこの特振法がなくて、われわれの自主——もちろんこれは通産省の指導によってやっているわけですから、自主調整である程度いけるのじゃないか、こういう考えを持っております。  次に用途の問題でありますが、まあ統計でごらんになってもおわかりになるように、天然繊維というのは現状維持かあるいは減退の方向をたどっております。ところが、国民の所得が増大して、文化が進んでくると、繊維の需要度が大きくなる。私はこまかい数字はわかりませんが、大体日本人は——これは通産省のほうにお聞き願ったらわかるのですが、一人当たりの繊維の需要というのは八キロぐらいであります。ところが、アメリカでは二十キロぐらい使っているはずなんであります。そういうぐあいに、日本でも、経済が伸びていって所得が多くなってくると、繊維の需要が増大してくる。それは将来他の繊維も多少増加するかもしれませんが、おもに合繊によってまかなわれるのじゃないか。最近に至りましてアメリカの状態のニュースが入ったのですが、カーペット、これがもうほとんど毛を使わないで合繊でかわりをやっている。それで、ある合繊のごときは日本からの長期の輸入を期待している、こういうような情報も入っているんでありますから、この天然繊維というのはいままで繊維の需要の大部分をまかなっておったが、それが現状維持かあるいは多少減退する傾向をたどっておる。そして、人口の増加、それと国民所得の増大等によってふえてくるのは、化合繊の繊維でもってまかなっていかなければならないような状態になる。したがいまして、私は、特振法が議会で間に合うか合わぬか、時間的にどうかというようなうわさは聞いております。聞いておりますけれども、相当これは多額の資金を要することであって、そして企業自身がそれだけの責任を持ってやらなくちゃならぬことで、そして今日通産省の指導のもとに自主調整をやっておりますが、その点から考えまして、かりに特振法が通らぬでも、いままでの方法によって十分その可能性があるものと信じておるような次第でございます。
  29. 近藤信一

    ○近藤信一君 時間も普通ならば昼食時間をはるかに過ぎておりまするけれども、これは私ども委員会としては重要な問題であり、せっかく参考人に来ていただいたので、昼食もまだ先に延ばして、参考人の皆さんにいろいろ質問するわけなんですが、本来ならば委員長から弁解をしていただくわけですが、私は端的に皆さんにそれぞれ御質問を申し上げますので、皆さんもひとつ御協力を願って、簡単に御答弁をいただきたいと思います。  まず、私は三木参考人にお尋ねをいたしますが、現行法の改廃問題が論議されておりました当初から、綿紡——紡糸機ですね、紡糸機を規制の対象からはずすことにつきましては、天然繊維関係の業界、特におたくは倉敷紡でございますから、反対をしておられたわけなんです。その後の反対の機運というものがだんだんと薄らいでいって、今度は新法に協力する、こういうふうなことに変わってきたように私思うのですが、この問題について簡単にお答えをしていただきたいと思います。
  30. 三木哲持

    参考人三木哲持君) いろんな問題につきまして、初めのうちはとにかく、まあみな言いたいことを言い合ったということでございまするから、結局出ました結論と初め皆が言っておったこととの間に相当相違ができてきておることは事実だと考えます。私のほうは綿紡会社と申しておりまするけれども、しかし、ただいま賀集さんからお話がございましたとおり、天然繊維以上に今後合成繊維が伸びていくということに対しての私の考えも変わって、私もさように考えておりますので、必ずしも綿紡とか——あるいは毛紡とかというものだけに執着するという考えはございませんので、やはり合繊が伸びていくことに対しましては私たちも賛成でございますし、また会社にとりましても合繊が伸びていくということが望ましいのでございます。で、初め紡糸機を規制の対象に入れるように主張しておったのに、なぜ途中からそれを放棄したかということに対しましては、最初に申し上げましたように、できればそのほうが望ましいと考えておったわけで、必ずしもぜひそうでなければならないというわけではございませんので、結局まあ大乗的の立場から、新法に賛成をいたしておるわけでございます。
  31. 近藤信一

    ○近藤信一君 もう一点お尋ねしますが、あなたは輸出入取引法の第五条の三のアウトサイダー規制命令を希望しておられましたが、これは本法案でいれられずに、そのかわりに四十条の輸出について勧告という条文が入りました。これで一応けっこうと、こう思うとの御意見でございますが、輸出入取引法の五条の三のアウトサイダー規制命令と、本法案の四十条の通産大臣勧告とは、その性格そのものが違ったものでございます。この程度の規制では、あなたが期待されておりますような効果は十分に私は発揮できないじゃないか、期待できないじゃないかというように思うのですが、この点はいかがですか。
  32. 三木哲持

    参考人三木哲持君) よく一般に言われておりますとおりに、独禁法に穴をあける——俗に穴をあけると申しておりまするが、そういうことは、業界といたしまして希望はいたしておったのでございますが、なかなかこれは言うべくして実現がむずかしいように私は承知いたしております。そこで、いま御指摘のように、輸出入取引法の改正よりも今度のほうが弱いものであるかもしれませんが、しかし、どうしても輸出入取引法の改正によることができないとすれば、現在の新法に盛り込まれておることで、われわれは満足すべきであり、また新法に織り込まれておることで目的を達成するように業界努力しなければならない、かように考えておるわけでございます。
  33. 近藤信一

    ○近藤信一君 次に、飯塚参考人に二点ほどお尋ねいたしますが、この現行法の改廃問題が論議されておりました当時、過剰精紡機政府買い上げということを盛んに要望しておられたのです。中小紡にそういう声が強かったように私は当時の参考資料から知ったわけでございますが、本法、いわゆる新法においては、そういう買い上げ処置ということは全然考慮されておりませんのでございますが、この点は現在あなたのお考えとしてはどんなように考えておられるのか。  それからもう一つは、本法施行に伴って、中小紡績の中には転換をせなければならぬという企業者、さらにまた、これでは立ち行かないから企業合同をやらなきゃならぬ、こういうふうな意見があるやにも聞いておりまするが、この点、これは重ねて二つの点についてお尋ねいたします。
  34. 飯塚直次

    参考人飯塚直次君) ただいまの御質問の第一点の、なぜ当初買い上げを要望しておったのに、それがなくして本法案に賛成なのかという御意見でございますが、当初はもちろんそういう考え方であったのですが、少なくとも紡績業というもの、これが現在の法律の間においては、買い上げということは困難であるということが出てまいりました。そこで、やむを得ず、そういう方法でなく、ただしやはり自由経済に移行いたします段階において設備の更新が必要になってまいります。そこで、それに要する資金の格段の御配慮お願いしたい、こういうことに変わっているわけでございます。  それから第二点の、今後転換が行なわれるのではなかろうか。これは、御指摘のように、中小紡立場からまいりますならば、当然合併という問題も出てまいりますし、あるいはまた設備の譲渡という、いわゆる転換という問題も出てまいります。その場合にぜひ税制上の特別措置お願いしたいということは、先ほど申し上げましたとおりでございますので、そういう方法によって御配慮願いたいと考えております。またそれが中小紡の本法案に対する要望でございます。
  35. 近藤信一

    ○近藤信一君 次に、賀集参考人にお尋ねしますが、先ほど大矢委員からも御質問がございました特振法の問題ですが、これは大矢委員から御質問されましたので、私はそのほかに一点お尋ねしておきたいことは、繊維業界の革命とも言うべき化学繊維が非常に近年盛んになってまいりました。まあ私ども消費者の立場から言えば、安くて強いものは大いに歓迎すべきだと思うのです。しかし、この化学繊維が現在その設備量では日産二千七百トンと言っておりますね。これはアメリカに次いで世界第三位という地位であるそうでありますが、経営規模の国際比較を見ますると、これは米国のデュポン、英国のICI、それからドイツのバイエル等、こういうところと比較するとまだ格段に劣っているようでございますが、そこで国際競争力の観点から現状と将来の見通しについて先ほどもお述べになったわけでございまするが、この点一つお尋ねしておきたいと思います。
  36. 賀集益蔵

    参考人賀集益蔵君) お答えをいたしますが、規模においてはイギリス、アメリカのICIとかデュポンに劣っているかしれませんけれども、まあわれわれの考えでは規模のあまりに小さいものは経済単位に達しないということで、経済単位以上のものに持っていかなければならぬということであります。ただ、大きいのは、何ぼでも大きいのがいいかというと、そういうわけのものでもない。これは非常に議論のあるところでございますけれども、今日のところわれわれは、きょうは個人の資格で来ておりますが、私が化繊協会の会長をやっておりますから、会長としての資格で申しますが、後発の規模の小さいところは、なるべくある程度大きく持っていく。それはいろいろ、五十トンでいい、三十トンでいいというようなことがありますが、需要の面はますます出てくるのでありますが、その点において、合社の機能がほぼ似たり寄ったりというところへいくのが理想じゃないかと思うのであります。その面から考えましたら、バイエルとか、ICIとか、あるいはデュポンとかいうようなところと比較して小さいとお考えになるかもしれませんけれども、やはり対外的に国際競争力を持っていくのにはある限度の規模であればいいのじゃないか、必ずしもそのアメリカやイギリスを凌駕するような大規模でやる必要はないのじゃないか、こう考えるのであります。  それから、化合繊は多いのです。ほとんどすべてが満ぱいの生産をやっておる次第ですが、それはやはり輸出の面において相当貢献しているのじゃないか。すでに本年度の輸出の目標もこの間の輸出会議できまったのでありますが、化合繊では第二次製品を入れて四億四千万ドルということを出しておりますが、今日では綿よりもむしろ凌駕するような時代であります。それは私は、これからの合成繊維の問題もありますが、化繊で、スフの生産でありますが、それは欧米に比較しまして規模は小さいのであります。小さいのでありますけれども、ある程度の模規に達っしておりますので、決して外国にひけをとらず、品質においてもコストにおいても負けない状態になっておる。合繊でも、先発、後発を問わず、大体においてある程度の——具体的数字を申し上げるのは、ここでいろいろ議論がありますから控えますけれども、ある程度の規模になれば相当競争し得る、こういうぐあいに考えております。
  37. 近藤信一

    ○近藤信一君 次に、これは共通した問題で三木参考人飯塚参考人両氏にお尋ねをするのですが、過剰精紡機が今度の法案で二錘を廃止することによりまして一錘の割合で新施設または凍結解除が認められることになっておるのでございますが、企業者の立場からは新設と凍結解除のどちらをお選びになられるのか、これは大手と中小では違ってくると思いますので、これは両参考人にお答えが願いたいのです。  もう一点は、綿製品に対する先進国の輸入制限と後進国の需給体制の整備という両方の圧力から、わが国の繊維製品の輸出の将来というものが非常に楽観できないのではないか、こういうふうに私は思うのですが、経営者としてこれらに対処していく方策としてはどういうふうな方策を講じていかれるお考えであるか、この二点について両参考人からお答えを願いたいと思うのです。
  38. 三木哲持

    参考人三木哲持君) お答え申し上げます。古い設備を——古い設備と申し上げますと語弊がございますが、格納設備廃棄いたしまして新設をする計画はどうかというお尋ねでございまするが、これは実は正直なところ、どれだけどうしろという最後的な結論はまだ出しておりません。で、私のほうの一個の会社に関する数字のことですから、ここで速記録に載ったりするとちょっと困りますので、できれば速記をとめていただきたいのですが、実は私のほうで申しますと、廃棄可能の数字が約八万からございます。それで、これをいわゆる最も新しい設備に持っていくか、あるいは一部手直しをしましてやるかということでございまするが、いずれの場合にいたしましても、現在の採算あるいは金利償却等を見ますと、そろばんには実は合いにくいのでございます。しかしながら、先ほど来もいろいろと話が出ておりますように、基本問題の点でございますが、どうしてもこれから新鋭設備にして国際競争力を高めていかなければならないという点から、大体この廃棄し得る数字をできればこの期間に廃棄して、二対一の割合で新設していきたい、かように考えております。  それから第二にお尋ねになりました、いわゆる後進国の紡機新設が非常に進んでいっていること、それから先進国が輸入をチェックしようとしていることにはさまって、日本輸出がこれからだんだんむずかしくなってまいりますということは、御指摘のとおりでございます。これにつきましては、むろんお願いいたしたいのは、政府のほうにおかれましていろいろとお力添えをいただきたいと考えるわけでございます。特に経済外交の推進ということが一番大切であろうと私は考えます。その他いろいろと輸出優遇策というものをお考えいただきたい点が多々あるのでございまするが、それを一々申し述べますと時間がかかりますししますので、省略させていただきますが、業界とすれば、それはどうすればいいかということでございまするが、業界といたしましては、むろん合理化によりましてコストを一そう引き下げ、また品質を一そう向上していって、国際競争力を高めていくということは、これは言うまでもないことでございまするが、業界がなるべく不当な過当競争をやめる、また無秩序な輸出をやめるということに協力していくということが一番大切なことと思います。しかし、何分にもたくさんの会社がおりまして、みなそれぞれ競争意識が強いものでございまするから、なかなか思うようにはいきかねる点があるのでございまするが、しかし、これはこれからますます。綿にいたしましても、毛にいたしましても、その他化繊との混紡糸にいたしましても、海外輸出というものは困難さを加えてくるかと思いますから、業界考え方も次第に変わってまいりまして、どうしてもここにみな秩序ある輸出に持っていかねばならないという考えが強まってまいることと思いますし、また御当局の御指導を得まして、さように持っていくように努力することによって、輸出が減退しないように、さらに伸びていくように努力いたしたいと考えております。
  39. 飯塚直次

    参考人飯塚直次君) ただいまの御質問に対してお答え申し上げますが、まず過剰設備を二対一の割合によって廃棄にしていくのか、あるいはまたそれによって新設をしていくか、凍結を解除していくかという問題でございますが、これは同じ中小紡の中にあってもいろいろやり方の相違はあろうと思いますので、私が中小紡全体として云云ということは申し上げるべきではありませんし、また申し上げる何ものもございません。  しからば、われわれの会社はどうするのかという問題がありますのですが、この点については十分検討を加えておりますのですが、ただ私自体の会社といたしましては、現在、多角的と申し上げるまではないのですが、紡績以外について、織布をやり、さらにレース産業にかなり多くの設備を持っております。私はできるならば、現在の綿紡のみにとらわれずに、やはりそういう方面にさらに一そう進出をしたいと、こういうふうに考えております。  それからもう一つの綿紡の輸出の将来性についてでございますが、これはいろいろ問題もございますし、なおまた綿紡として申し上げていいのか、繊維産業全体として申し上げるべきかというところにも一つ問題がございますが、少なくとも私ども紡績業でございますので、今後増産されるであろう、またその増産体制に入っております合成繊維は、長繊維を除きましては、短繊維のものは少なくともわれわれ紡績産業の手をかりなければならない現状にございますので、こういう点と相まって、輸出のほうにも伸ばしたい。しかし、その体制がどういう形になるかということはよく予断を許さないところでございますけれども、一にかかって、先ほどお話しになりましたような経済外交というか、あるいは対外的の大きな問題を取り上げていくべきではないかろうか、かよう考えております。
  40. 近藤信一

    ○近藤信一君 そこで、国連の貿易開発会議でいま盛んに新聞でもいろいろと問題になっております。で、この国連の貿易開発会議の動きというものは、わが国にとりましては非常に重大な影響を及ぼすのではないかと、こう私は思うのであります。ことに低開発国輸出に対するところの特恵関税の問題はわが国繊維産業に致命的な打撃を与えるおそれがあると私は思うのですが、これは業界としてこの影響をどのように評価をしておられるのか。この点は、それぞれ業界の綿紡の大小、それから化合繊賀集さん、お三人からそれぞれの御意見を承っておきたいと思います。
  41. 賀集益蔵

    参考人賀集益蔵君) 国連の貿易会議におきまして、低開発国に対する特恵関税問題ということでありますが、私の携わっておる化合繊におきましては、低開発国においてこれを生産しておりませんです。したがいまして、化合繊においては低開発国は競争の相手じゃないわけでございます。したがいまして、この特恵関税が実現した場合に、われわれのほうにはあまり影響はないのじゃないかと、こう考えておる次第でございます。
  42. 三木哲持

    参考人三木哲持君) 私は紡績業界を代表して本日は出席をいたしておりませんので、業界代表としての発言は遠慮いたしたいと思います。個人としての考えなんですが、低開発国への輸出問題でいろいろと問題が現に起こってもおりますし、将来も起こるであろうということは、私いろいろと考えております。多少御質問からはずれるかもしれませんが、一例といたしまして、先般西アフリカのナイジェリアが、日本がもっと第一次産品を買うてくれなければ輸入を制限するというような問題が起こりましたことは、御承知と存じまするが、それに対しまして、われわれは第一次産品を——われわれの買いますのは原綿でございますが、向こうの言ってきます原綿を日本で、これは相場が米綿その他に比べまして一割以上、二割近くも割高なんでございまするが、これをある程度買い付けることによりまして、向こうが輸入を非常にチェックしようとするのをある程度防いだというようなこともやった例もございまするし、またその他の地域におきましてもそういう問題が起こりつつありますので、この一つの例のようなことを今後考えていかねばならないのじゃないかと思うのでございますが、何といたしましても、しかし、これは第一次産品を買うといいましても、われわれ業界の力で可能な点は、たとえば原綿を産しておる国はそうでもございませんが、われわれが買おうとして買えない国もございまするから、こういう点につきましては、政府当局におかれて御配慮いただきたく考えておる次第でございます。
  43. 近藤信一

    ○近藤信一君 次に、労働組合の宇佐美さん、中島さん、両参考人にお尋ねするわけですが、新法の第十八条の第二項第四号におきまして、共同行為の指示の内容は「従業員地位を不当に害するものでないこと。」という条件がつけられております。この「従業員地位を不当に害する」ということについて具体的に考えられる問題点というものがございまするならば、当面どんなことがあるのか、この点が一つと、それから若年労働力の不足ということが繊維産業にとりましては非常に重要な問題の一つとしてこれは指摘されているのでございますが、労働者側としてこの問題についてどういう対策がとられるべきだと考えておられるのか、この二点について、御両人から、それぞれの立場からお願いしたいと思います。
  44. 宇佐美忠信

    参考人宇佐美忠信君) 第一点の問題でありますが、先ほど申し上げましたように、新法によりまして繊維産業の体質の強化をはかっていく。そうした場合に、工場を多数かかえている企業の場合には、能率のよい工場に生産を集中して、能率の悪い工場をつぶしていくというおそれがあるのではなかろうか。そうした場合に、流動性の可能な若年労働者の場合にはまだよいわけですけれども、特に流動の不可能な中高年齢労働者のいわゆる雇用問題が非常に重要な問題として提起されてくるのではなかろうか、そのことが第一点であります。  もう一つは、連操体制がとられるということになった場合に、おそらくいま精紡段階での二十四時間操業については規制が行なわれているわけですけれども、これが漸次国際競争力の強化ということで機械の操業時間を長くしていかざるを得なくなってくるのではなかろうか。そうした場合に、労働者の働く時間というものが深夜に及ばざるを得ないような事態が出てくるおそれがある。当面その二つが一般的に考えられる問題でありますけれども、さらに加えまして、一番私どもが懸念いたします問題は、これも先ほど申し上げましたように、中小企業の場合に、今度の体質強化の中にあって自然に淘汰されるような企業が相当数出てくるおそれもある。そうした場合には、企業者のみならず、そこに働く従業員の雇用問題にとりましてたいへん重要な問題が出てくるのではないかと考えられるわけであります。  第二点の若年労働力の不足対策でありますけれども、この点につきましては、まず第一に、日本繊維産業、なかんずく天然繊維の産業におきまして、過去におきまして相当長期にわたって低賃金等の事態が続けられ、さらにまた、労働時間等につきましても、必ずしも他産業から比較いたしまして短いとは言い得ない、あるいはまた寄宿舎制度の存在、こういうもの等によりまして、繊維産業に対する一般国民のイメージというものが非常によくないという実態があろうかと思います。そういう面で、私ども労働組合の立場からいたしますると、繊維産業がもっと魅力のある産業になり得るような措置というものをとるべきではなかろうか。それから、若年労働力の絶対数が不足するわけでありまするから、今後紡績産業といえども相当数の中高年齢労働力というものも擁しなければならないことになるのではないか。そうした場合に、今日、住宅の問題、あるいは経済の地域格差の問題、あるいは職業訓練の問題、さらにはまた年功序列型の賃金、いわゆる中高年労働者の雇用をはばむ賃金の制度、こういうものについて抜本的な改革を行なっていくことが、今後の労働力不足に対する重要な問題になるのではないかと考えております。
  45. 中島道治

    参考人(中島道治君) 第一点の問題でございますが、従業員地位の問題ですが、私は大企業の場合、まだしも、集中生産体制である程度吸収できる余地がありますからまだいいと思います。しかしながら、中小企業の場合、吸収できない条件がたくさんあります。そうした場合、共同行為によって、たとえばその被害がストレートに労働者に及ぶ場合が多々あると思います。その点について、単に当該労使だけの交渉ではなくて、それ以前にやはり審議会などで十分に労働組合の意向を反映して、国の産業政策全体としてそういう中小企業の問題に対処していくという配慮がなされてしかるべきだというふうに考えます。  それから第二点の問題ですが、これはやはり繊維の、特に中小企業労働者の低賃金の問題が最も重要だと思います。おまけに、もし共同行為でかりに休まなければならないというような場合になりますと、えてして失業保険による肩がわりというのがなされております。こういうことについての抜け穴をはっきり規制しておく必要があります。また、賃金問題については、宇佐美参考人からなされたように、年功序列賃金の体系をやめて、そして特に婦人の労働者の賃金を高めるように、男女同一労働同一賃金の原則をさらに徹底させるような政策がこれも単に当該労使だけでなく、特に中小企業の場合加工賃という形で非常にしわ寄せされてきますし、賃上げと加工賃の問題が常にからみ合ってきます。そういうことがございますから、特に現在の中小企業の低賃金を抜きにしておいて、私は輸出振興といっても、おそらく国際間、特に先進資本主義国の労働組合から非難をこうむるのは当然だと思います。そういう面で、特に中小企業でもかなり賃上げが可能なような行政指導というのが当然なされるべきであると考える。また同時に、雇用の減少問題ですが、これも中小企業、特に産地におきますと、十人や二十人働いておるような企業では、その事業主のうちに付属しておるような——付属して、しかも家事の手伝いまでさせられておるような形での労働力の確保というのは、もはや不可能だと思います。そういう意味で、特に産地の協同組合とそれから政府あるいは当該労働組合とが協力して、産地ごとに共同宿舎をつくって、明るい住みやすい条件をそういう婦人労働者に与えていくというような形での、国をあげての雇用問題全体の解決の施策が非常に重要であろうと思います。
  46. 近藤信一

    ○近藤信一君 次に、田渕参考人にお尋ねをいたしますが、五点ほどございます。簡単でよろしいのですが、私も簡単に質問いたしますから、お願いいたします。  まず第一に、三十一年の繊維工業設備臨時措置法が成立して後に、繊維機械メーカーというものが、私は相当他に転換したと思うのです。先ほど田渕さんもそのことを言われたと思うが、一体現在残っておる繊維機械メーカーとしてはどれくらいの数があるか、その数の問題が一つ。  それから、わが国の繊維機械の国際的水準は非常に高いものであると私は評価をしておるのでございますが、一体現在国際的な水準はどの程度にあるのか、これが第二点。  それから、政府では過剰設備廃棄に伴う新設分として五十五万錘を予定しておるわけでございますが、それが予想どおり行なわれると、その分だけ従来の内需量に上積みされる、こういうふうに考えてよいのかどうか、この点が一つ。  それから、廃棄扱いとされた中古機械、スクラップの機械ですが、この輸出による影響は非常に憂慮されておるように思うのですが、数量的にどの程度の予測をしておられるか、この問題が一つ。  それから、いただきましたこの要綱の中にもございますように、繊維機械の輸入の問題ちょっと出ておるのですが、一体現在繊維機械としてどのような機械が輸入されて、どれくらいの数量を輸入されておるのか、これが一つ。  最後に、国産品の愛用という項目がここにあるわけで、先ほどあなたはその点をお述べにならなかったわけでございますが、国産品の愛用について、一体現在の国内需給に応ずるだけ、また今後の需給に対して十分応じていかれるような手段というものが講じられておるかどうか。  以上についてお答え願いたいと思います。
  47. 田渕清

    参考人(田渕清君) 近藤委員さんから御質問の六点につきまして、簡単に御説明申し上げます。  第一番は、現在繊維機械をつくっておるメーカーはどれほどあるかということでございますが、これは、先ほど私が申し上げましたように、大体目ぼしい——小さいところまでは入れられませんが、大体企業をなしておるものは四百企業ほどあります。そのうち三百人以上の従業員を持っております比較的大きなメーカーが四十四社ございます。それ以下の、三百五十六社でございますか、これが中小企業が成立しております。以上、簡単でございますが、一項終わります。  それから、現在われわれがつくっておりまする機械がどれくらいの水準にあるかという御質問でございますが、どこの国でも全部が全部トップ・クラスの機械をつくっておるとは私思いません。大体わが国の機械で、スピニング・マシナリーと、それからあと処理の機械とに、二つに分けますと、スピニング・マシナリーの糸をつむぐ紡績の機械につきましては、大体どの国にも負けない程度になっておる。また、一部においては外国を凌駕する装置も考案せられておるというように考えております。これは、三十一年から本年まで輸入せられておりまするスピニング・マシナリーの機械が、どの年でしたか、一年だけ一億をオーバーしておるだけで、あとは数千万の輸入にとどまっておる事実から見ましても、御承認いただけると思います。ただ、染色整理その他あと処理の機械でございますが、これは先ほども賀集参考人さんからいろいろ合繊その他化学繊維の御説明のときにありましたように、日進月歩でいろいろな繊維がつくられております。これのプリンティングとか、処理機とか、こういうようなものの研究は、残念でございますが、いま一歩外国から劣っております。この件につきましての輸入が、先ほど私が説明しました線に、三十八年度は百八十億に輸入が上がっておるという数字を申し上げましたが、その大多数の金額はその部門に輸入せられておる。それから紡糸、いわゆる紡績でなくして、紡糸方面の機械で輸入せられておる、しかもそういう機械は、イタリア、スイス、フランス、西独、こういう方面に非常に多いということでございます。二項をこの程度に終わらしてもらいます。  三項の、過剰の五十五万錘の精紡機は、いわゆる紡機が発注できた場合、現在のわれわれが国内で需給を受けておる上積みとしてこれが出た場合、また上積みとして出るか出ないかは、いまさっき三木参考人さんからお話がありましたように、いまだにはっきりした線はわれわれ業者でもつかめておりませんし、紡績のお方でも、国際収支とかその他の経済情勢が秋以降にどうなるか、ややいいように向いておるように聞いておりますので、秋以降に幾分か現在よりもいい条件の判断が下されるのじゃないかと思っておりますが、いずれにしましても現在われわれが繊維機械で使っておりまするわれわれのキャパシティは約七〇%程度のものでございまして、三〇%ほどは繊維機械設備におきまして余力を持っておりますから、たとえこういうものがきましても、あまり混乱をせずして消化できるという確信を持っております。  それから四番は、スクラップ化せられたものの輸出でございますが、これは、先ほども申しましたように、非常に私ら関心を持っておりまして、スクラップしたものを出してはいけないということがどこにも書いてございませんので、この解釈については、またこの統制につきましては、一段の管理統制下に当局で置いていただくように切望してやまない次第でございます。  それから、輸入機械の数量は、これは、先ほども申しましたように、三十六年度では七十億、三十七年度では九十五億、三十八年度では倍増になっておりまして、百八十億になっておりますが、あとの機械の種類のほうは、さきにお答えしましたように、一々申し上げるより、資料に少し掲げてございますが、大体そのとおりでございます。  それから、国産愛用の件について発言がなかったとおっしゃられましたが、私これはさきに発言いたしております。これは財政投融資で、今度新法によって繊維産業合理化せられるにあたりまして、そういう面から放出せられる資金につきましては、輸入の機械のほうに向かわずして、国産愛用の見地からわれわれの機械を使っていただきたい、われわれのほうでももちろん全力をあげて技術の開発その他外国に劣らない水準のものをお世話さしていただくつもりでございますからということで先ほどお願いしたはずでございますが、私のほうは二点しか希望は申し上げなかったのですが、私の迫力が足らずして一点見落とされておったということ非常に残念でございますが、どうかひとつよろしくお願いいたします。  以上でございます。
  48. 近藤信一

    ○近藤信一君 最後に、山口参考人にお尋ねするのですが、三十一年の措置法が成立して以後というものは、繊維機械の生産というものは徐々に私は縮少されてきておるというふうに思うのです。その影響従業員の動向というものは一体どういうふうになっておるか、いわゆる繊維機械の縮小によって従業員が整理されてきておるのかどうか、こういう点が一つ。  さらにもう一つは、賃上げ闘争におきましても、非常に金属機械の中では、金属産業の中では比較的繊維機械の賃金というものは率が低いわけなんです。これはやはり繊維機械の製品がだんだんと縮小されてきている影響もあるのかどうか、その点をひとつ。  それから、これは山口参考人も、また中島参考人も言っておられ、これはまた宇佐美参考人にも共通する問題だと思うのですが、五十人の審議会の中で、労働者側の委員というものが非常に少ない。そこで、やはりこの労働者側の審議会の委員をふやしてもらいたいという山口参考人からも御意見が出ておるわけなんですが、この少ない場合に、どのような審議会の中での不利益があるかどうか。これは数の問題でございまして、満場一致制か、採決かどうか、私この審議会の内容について十分知りませんが、皆さんから、労働者側委員をふやしてくれと、こういう御要望がございますので、どういう点でふやしたほうがいいかどうかという点をお聞かせ願いたいと思います。  以上で私の参考人に対する質問を終わります。
  49. 山口政一

    参考人(山口政一君) ただいまの質問にお答えいたしたいと思いますが、三十一年に法施行になりまして、当時と今日の状態の問題について若干説明を加えたいと思いますが、いわゆる重要な繊維機械メーカーの実情といたしましては、ほとんどその間人間がふえておりません。したがって、三十一年以降、三十四、五年当時まで、ほとんど新規の採用というものを省略をいたしております。そういうような実情の中で、平均年齢が非常に高くなってまいりました。直接現場作業員の平均年齢というものは、大体フレーム・メーカーを中心にたいしまして、三十七歳程度になっております。そのほか、転換を要する事務関係、技術職関係等については、若い人たちを、新しい分野への進出のために、比較的入れてまいっておりますので、総体的な平均年齢というのは三十三歳から三十五歳の程度の中におさまっている、こういうのが実情になっているわけです。したがって、賃金の問題につきましては、ある程度賃金が、利潤の公平な分配、こういう問題でまいりますと、一定の限界が訪れてまいります。そういうことで、最近では、ここ三十五年以降は、一般的な賃金の社会水準という問題がございますので、そういう問題の影響などを受けまして、常に賃金は一般相場よりも若干低いところで出てまいっておりますが、それ以前の問題については、定昇の範囲内で賃金が押えられてきてまいっております。こういうのが今日の実態でございますので、他の産業と違いまして、非常に従業員の数がふえてまいっておりますし、産業規模も拡大されているというのが実情であろうかと存じますが、繊維機械関係は五割も六割も伸びたというところは全くない、若干の一割、二割程度をやっておるこういうことで、平均年齢が非常に高くなって、今日平均賃金は若干数字で見ると高いかもしれませんけれども、同一年齢、同一勤続の状態から比較いたしますと、たとえば人事院勧告が三人世帯で賃金三万二千円とか言っておりまするけれども、繊維機械のフレーム・メーカーの段階では、平均三人世帯の賃金等を見ますと、二万四千円程度というのが実態なんです。したがって、決して高い賃金ではない。常に低い賃金の中に置かれているのではなかろうか、かように判断をいたしております。  それから、次に、第二の賃上げの率の問題は、いま含めて申し上げましたので、省略をいたします。  それから、審議委員の問題でございますが、数が少ないことによって、不利益になるかどうか。世の中はやはり民主主義だろうと思うのです。いかに理論が正しくとも、やはり多数の方が御賛成得られなければ、その問題というのはなかなか取り上げられにくい、こういう問題がございますし、発言をするにいたしましても、どうしても一人だということになりますと、相談相手もなかなかありませんし、人間のことでございますので、どうもこう何か言い忘れたこともございますし、言いたいこともなかなか言えないというのが実態であろうと思いますので、どうしてもそれぞれの代表ということになるならば、一名というのは、いわゆるそういう多くの人員で構成するということになりますと、若干、いささか無理があるように感じますし、特に、設備の制限を受けた、その受けられた側の繊維機械ということについては、あくまでもこれは死活問題であろうということでございますので、最小限どうしてもやはり、それぞれの代表——業界、労働組合代表というのが、少なくても最小限やはり二名は必要ではなかろうか、そういうことで、審議会の権限を強化していただければ、特に重要な問題点については遠慮なく発言をさしていただきますので、ぜひ二名ぐらいにやっていただきたい、かように考えるわけでございます。
  50. 中島道治

    参考人(中島道治君) 審議会の問題で、私は、産業政策が経済論理として貫かれる限り、常に労働者の問題は労務者の問題として片づけられますし、賃金問題はいわゆるコストの問題として片づけられると思います。しかしながら、私が最初に陳述いたしましたように、現在の繊維産業の二重構造を考えるときに、労働者の問題はやはり繊維の産業構造全体の改善なくして対処できないんじゃないか、改善できないんじゃないかというふうに考えます。そういう意味で、どうしても審議会に労働者側委員を送り込んで、そして労働者側委員発言も十分加味されて、そして特に企業における、この種問題における事前協議制的機能を、審議会でも、それほどきちんとしなくてもいいから、とにかく審議会の次元で最初にそれをある程度こなして、そしてそれから起きてくる問題を今度産業別組合あるいは当該の組合で処理していくということのためにも、ぜひ審議会に労働者の委員を加えるべきだと思います。また、まあ数の点でどうかと言われますが、少なくとも全国的組合の場合には最低限一名以上はぜひ加えていただきたいと思います。  それから、先ほどちょっと人手不足問題でつけ加えました重要なことですが、特に人手不足の解消の問題で、既婚の婦人労働者に対する保護措置、託児所とか、保育所とか、そういうものについても、国あるいは地方自治体、それから協同組合というものがやはり積極的に取り上げて解決していく、そういう形でないと、既婚婦人労働者を十分労働力として組み入れることができない、そして勢い人手不足で現在いる人たちが労働強化になるという実情が多々ありますので、その点も人手不足の解消の問題としてお考え願いたいと思います。
  51. 宇佐美忠信

    参考人宇佐美忠信君) 審議会の中に労働側委員が加わる場合に、数が少ない場合の不利という問題でございますけれども、先ほど申し上げましたように、日本繊維産業が長い間にわたりまして、いわゆる若年の安い労働力によって発展の基盤をつくってきた。このこと自体私ども否定でき得ないことだと思いますが、今日若年労働力の不足問題から、ここで繊維産業の労務構成が抜本的に変わらなきゃならぬ事態に直面してきている。その場合に、繊維産業の改革というようなものが、いわゆる労務の問題、労働力の面から考えざるを得ない。そうした場合に、この再編期にあたりまして、需給計画の問題なり、あるいは合理化の問題なり、あるいはまた設備の更新の問題なり、こういうものを調査審議する機能を持つ審議会には、労働者の代表というものをやはり積極的に参加させる道を開いて、その中でやっぱり繊維産業に働く者の協力を得るという態勢をぜひとっていただくことが必要なのではなかろうか。そういう意味で、私ども、不利とかあるいは不利じゃないとかいう問題より以前に、再編期にあたっては、ぜひ当該産業労働者の積極的な協力を求めるという立場に立って、ひとつ委員会をふやしていただくようにしていただきたい、かように考えております。
  52. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 時間も二時近くなりましたので、簡単にひとつお願いいたします。
  53. 赤松常子

    赤松常子君 たいへん時間が経過いたしておりまして、恐縮でございます。私も簡単に御質問いたしたいと思っております。  第一に飯塚参考人にお尋ねいたしますが、いまレース産業が、大企業にはだいぶ進行いたしておりますが、中小企業ではどういう進行状態であろうか、それを一つ。  それから、宇佐美参考人と中島参考人にお尋ねいたします。最近私もちょっと職場を回ってまいったのでございますけれども労働力不足ということが、逆に賃金を上げないと人が集まらないというような、まあいい面も少しは出ておりまして、少し賃金が上がっているのではないか、これを踏まえて最低賃金制の促進、これを基盤にしてそういう一つの機をつくる情勢が生まれているのじゃないか、この点についてお二方から現状をおっしゃっていただきたいということが一つ。  それからもう一つ、組織のあるところはしあわせでございますけれども、無組織における中小零細企業における労働者の混乱、そういう問題が、まあ想像はできますけれども、実際はどういう姿においてあらわれているであろうか、この点二、三お尋ね申し上げたいと思います。
  54. 飯塚直次

    参考人飯塚直次君) ただいま御質問のありました、レース産業はどういう姿であるかという御質問のようでございますが、これは御案内のように、レース産業といいましても、かなり種類が多いということは、御承知だろうと思いますので、私がいま申し上げておりますので、エンブロイダリー・レースのことを申し上げておるわけでございまして、これは全国的に見て、機台数でいきますと、大体七百台くらいでございますが、業者の数は二十二社と聞いております。なお、それ以外にラッセル・レースというものがございますが、これはラッセル・レースは比較的零細企業が多いのでございまして、なかなかこの方面でいきますというと、いずれも国産機を多く使用しておるというような観点から、かなり問題はあろうかと思っております。なお、リバー・レースについては、ちょうどエンブロイダリーとラッセルとの中間的な機械でございますので、この方面はさほどではございませんが、いずれにいたしましても、これもかなりの設備が稼働されておるのでございまして、現在いろいろな問題について、あるいはいろいろな用途がたくさんふえてはおりますが、一方には、ことにラッセルのような場合には少しく問題があるんではなかろうかと、これはなんとなれば、比較的零細であるのと同時に、国産機で大部分がまかなわれておるところに問題があろうかと、こう考えております。その程度でよろしゅうございますか。  なお、御参考に申し上げたいのでありますが、これは単にレースだけを拡充するということではございませんで、私は、紡績以外に、その他の方面にもいろいろ人の問題という点がありますので、この方面を勘案して進めたい、かように考えておるということを御了承願いたいと思います。
  55. 宇佐美忠信

    参考人宇佐美忠信君) 若年労働力の不足によりまして繊維の賃金が上がってきつつあることは事実でありますけれども、ただ、私ども立場から見ますると、そう不足のわりには大幅に上がってきていない。それはなぜかといいますと、若い労働力が不足をしておるために、各企業とも募集に相当の力を入れておることは事実でありますが、その場合に、現在のいわゆる従業員の賃金を引き上げることなしに、なるべくより多くの人が募集できる方法ということで、募集に相当の費用を使う。で、今日募集のために大体一人当たり五万円程度の経費をかけているといわれておるわけでありますが、そのこと自体相当の費用を出している。現在働いている従業員に全般に賃金の引き上げの影響がこないという配慮があっての募集経費の支出ということになっておるのではなかろうかと、そういう意味で、私どもといたしましては、こういう機会に、それだけ多くの募集費用を使うのであれば、繊維の賃金そのものをやっぱり引き上げるということにしていかなければならないのではなかろうかと、そういう基盤の上に立って繊維産業における最低賃金が実施されるようにぜひしていただきたいと考えるわけであります。幸いにいたしまして、最近各産地ごとにおきまして、業者間協定によるところの最低賃金というものができてきているわけでありますが、この業者間協定による最低賃金の場合には、比較的賃金そのものもまだまだ少額というような形でつくられているわけでありまして、この点は、業者間協定でなしに、繊維産業としての、いわゆる産業別の最低賃金という形に切りかえていただくことが第一じゃないかと考えているわけであります。
  56. 中島道治

    参考人(中島道治君) 労働力不足による賃金の引き上げの問題ですが、赤松先生から出されたように、最近やはり初任給の値上がり傾向はかなりあります。しかしながら、幾ら上がったといっても、これはあくまでも寄宿舎にいて生活する程度の賃金であります。少なくとも、もし寄宿から出て、そして間借りをして、はたして一人前の賃金として可能かどうかということになると、私は依然として低賃金の域を脱していないと思います。  それから二番目には、最近の労働力不足が、特に年少労働力不足が構造的になっていること——おととし、去年くらいまでは、初任給、上げれば中小では人が集まるだろうという判断で事業主のほうもやっておりましたが、去年からことしの時点になってきますと、ここでかりに月千円くらい上げてももはや集まらぬのではないかという形で、かなり絶望的になっているという面もあります。ですから、一カ月ほど前に山形県のほうに行ってまいりましたが、そこでは、依然として二百七十円程度の業者間協定がつくられて、そしてそれを三百二十円にしようという基準局側の指導もなかなか受け付けてないというような、低賃金の状態での対処のし方というものがまだなされております。しかしながら、全体の組合運動としましても、やはり未組織労働者の賃金を高める以外に組織労働者の賃金は高まらないという観点から、全国一律の最賃制の運動を、おととし、去年、ことしと、年を追うごとに非常に強くなっておりますから、そういう条件と、それから業者間協定の賃金制度の決定方式それ自身について、大橋労働大臣も、あの方法は実効を期しがたいというようなことを、政府自身も認めつつあるという状況の中で、中小、零細の未組織労働者を一挙に網ですくうということになれば、やはり法定による全国一律の最賃制をつくり上げ、同時にその上に立って、繊維は繊維として産業別の労使協定の最賃をつくって、さらに全国一律の最賃を引き上げていく、そういう形で賃金問題については対処していきたいというふうに考えております。
  57. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 他に御発言もなければ、参考人方々に対する質疑はこの程度にとどめます。  参考人方々には、本日はお忙しいところ遠方から御出席を願い、また長時間にわたりまして御意見の開陳、質疑に対するお答えをいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、心から御礼申し上げます。  それでは本日はこれをもって散会いたします。    午後二時五分散会