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1964-05-26 第46回国会 参議院 商工委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月二十六日(火曜日)    午前十一時二分開会   —————————————   委員異動  五月二十五日   辞任      補欠選任    田畑 金光君  高山 恒雄君   —————————————  出席者は左のとおり    委員長     前田 久吉君    理事            赤間 文三君            近藤 信一君    委員            岸田 幸雄君            小林 英三君            豊田 雅孝君            吉武 恵市君            阿部 竹松君            大矢  正君            鈴木 一弘君            高山 恒雄君   政府委員    通商産業政務次    官       竹下  登君    通商産業省繊維    局長      磯野 太郎君   事務局側    常任委員会専門    員       小田橋貞壽君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○繊維工業設備等臨時措置法案(内閣  提出、衆議院送付)   —————————————   〔理事赤間文三委員長席に着く〕
  2. 赤間文三

    理事赤間文三君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  まず、委員長及び理事打ち合わせ会協議事項について御報告をいたします。  本日は、繊維工業設備等臨時措置法案について質疑を行なうことになりましたから、御了承を願います。
  3. 赤間文三

    理事赤間文三君) 次に、委員異動について御報告申し上げます。  昨日、田畑金光君が辞任をされ、その補欠として高山恒雄君が選任せられました。
  4. 赤間文三

    理事赤間文三君) 次に繊維工業設備等臨時措置法案を議題といたします。  前回に引き続き質疑を行ないます。御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  5. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 初めに、今度の繊維工業設備等臨時措置法案は、過剰設備廃棄ということが一つの大きなことになっておりますが、海外においても全世界的に過剰設備であろうと思いますが、わが国以外の国々における過剰設備廃棄状況というものはどんなものか、それを初めに伺いたいのです。
  6. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) 御承知のとおり、わが国以外の国におきましても、紡績、特に綿紡績中心でございますが、設備が一般的な過剰状態になっております。そういう点につきましての過剰設備の解消の問題は、多くの国におきましては、企業の自主的な適正規模への努力によって行なわれております。特に政府がこれに関与しておるというような例はほとんどないようでありますが、ただ御承知のとおり、イギリスにおきましては、最高ピーク、大正五年ぐらいでございますが、紡績綿紡績、約八千万錘を持っておりましたが、それがただいま大体九百万錘程度になっております。それでこういうような非常に膨大な過剰設備廃棄につきましては、そういうような状況でございますので、民間の力だけではどうにもならんということであったと思いますが、一九六〇年ごろに、御承知のとおり綿業法を制定いたしまして、そうして過剰設備廃棄を強力に行なっております。大体当時二千五、六百万錘でございましたやつを、約半分の千二百万錘程度を目標にして過剰設備廃棄をやったわけでございます。これにつきましては、過剰設備買い上げと申しますか、一種の買い上げのようなことをいたしまして、それに対する所要経費が千六百万ポンドでございました、その千六百万ポンドの経費資金につきましては、政府が千五十万ポンド、三分の二を補助金として出しました。残りの三分の一を業者の拠出金によってまかなってやった、こういうことになっております。
  7. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いまイギリスの例についてだいぶ話されたのでございますけれどもイギリスでは、いまの局長の説明のとおりに政府資金というものでかなり廃棄資金というものが、まかなわれております。そうして確かにかなりの数に減ってきております。その後こういうような強力に進められた過剰設備の処理というものは、その近代化がうまい工合に進んでいるのかどうか。日本の国でもこの法案によれば、これから先かなり近代化を進めていくということになるわけであります。そこで前例としてイギリスあたり、このほかにベルギーというような国もありますけれども、そういうように廃棄したあとで近代化というものが順当に進んでいるかどうか、その点状況がわかれば伺いたい。
  8. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) これもよく御承知と思いますが、当時、イギリス政府及び業界考えましたのは先ほど申し上げたとおり二千五百万錘程度、これを半分にすればいいじゃないかという考え方であったようでございます。ところが、現実の問題といたしましては、どうも千二百万錘でもなお過剰があるということで、目下継続中でございますが、約八百万錘程度イギリスとしては適正規模であるということになっております。  それから近代化の問題でございますが、いまいろいろ本を読んでみますと、イギリス紡績業があのような非常な繁栄から転落いたしました理由としては、いろいろあげておりますけれども、まず第一は機械が古くなった、つまり近代化が行なわれなかったということを指摘しております。それから二番目には、労働力のほうで詰まってきたというようなことを言っておりますが、特にその機械近代化につきましては、いま申し上げましたような過剰設備廃棄と並行いたしまして、これはイギリス政府のほうで強力な金融措置によって近代化を行なうという方針を立てまして、そういう近代化計画を計画し、届け出をして実行する者には、所要設備資金について金融的にめんどうを見るというかっこう近代化を推進しております。
  9. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いまの一つの国の例を見ても、なかなか近代化を進めていくのに思うように進んでいない。かなり錘数を減らしても、さらにそれを減らさなければ適正規模が出てこない。こういうような状態になっております。それで、まず今度はわが国国内の問題でありますけれども、この法律案によって、三年後のことでありますけれども、一体そのときに過剰な錘数はどの程度の予定になるのか。また、いまのそのような国の例から見て、適正規模をいま考えておるのはどのくらいか。  それをさらにつづめていくというようなことになっていくのではないか、そういう心配があるわけでありますので、現在考えている三年後の過剰の錘数と、適正な設備規模というものは一体どのように政府として考えているのか。それを伺いたい。
  10. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) 御承知のとおり現在の登録錘数は約千六百万錘でございます。それからこの法案施行になりましたときに、三十九年度の需要に見合っての適正な設備というふうに算定をされますのが、一応千二百五十九万錘でございます。したがいまして、千六百万錘から約千二百六十万錘を引きますと、三百四十万錘余がそのときにおける過剰設備になるわけでございますが、これを御承知のとおり二対一のルール廃棄をし、新設をする、スクラップ・アンド・ビルドをするわけでございますが、もしもそうしまして、この法案が四年の法案でございますので、それが失効いたしますときは、四十三年の十月を予定しておりますが、そのときにおける需要に見合った適正規模が千四百十五万錘というように算定されるわけでございます。したがいまして、法案施行時に三百四十万錘程度使用停止格納いたしまして、そこに二対一のルールを働かせながら、この法案が失効いたしますときの約千四百二十万錘程度にしていくというのがこの法案考え方でございます。もしもそういうふうになりました場合には、四十三年ごろには大体適正設備になる、そういうふうな見通しでございます。
  11. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そこで過剰の設備錘数を減らして二対一の比率で近代化自動設備というものを入れていくというようなかっこうになるわけでありますけれども、現在の格納してあるものでも、かなり設備としてかけ込みでつくったものもありましょうけれども、新しいものが多い。それをここのところで再びつぶしていく、あるいは長期格納にたえないというようなことからやっていくとかということでつぶしていくというようなことも出てくるだろう。そういうことになると、かえって近代化ということについても思うように進んでいかないのじゃないか。とにかく一つは二十五年以降、あるいは新しい時代に格納されたものが多いし、そういうものを廃棄して新しい機械をどんどん入れていくということになれば、特別の考慮といいますか、資金的な考慮というものを国のほうでかなり払ってあげなければ近代化は進まない。またたとえ錘数を減らしていきましても、いまの答弁にあった千四百十五万錘が適正と考えておっても、それをさらに下回っていくという条件が、イギリスの場合でも考えられてきたわけでありますから、そういうようないわゆる危険な見込みというものについて、四十三年以後になれば野放し状態みたいなかっこうにもなってくるわけでありますし、そういうときには一体近代化の進め方をどう合理的にもっていこうとするのか、もう一度伺っておきたい。
  12. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) 私ども考えておりますようなことで廃棄新設がまず進むかどうかというような問題でございますが、これにつきましては、先般アンケート企業に対して実施をいたしました。その結果によりますと、大体これは錘数にいたしまして約八八%程度カバレッジになっておりますけれども、その推定は、企業としては約百八十万錘程度廃棄いたしまして、そうしてそれを見返りにして四十七万錘程度新設をする。それから格納のものの中にまだ動くのがございますので、それについては四十二万錘を解除して動かすと、こういうふうなことになっております。先ほど申し上げました私ども見通しと若干違う点はございますけれども、これはそのアンケートを出しました時点格納数と、それから先ほどのカバレッジを修正いたしますと、まあそのアンケートの結果は私ども考えておりますものとあまり違わないというような結果も出ております。まあそういう点からいきますと、業界といたしましても、この法案構想に乗って廃棄新設をやる努力と熱意があるというふうに考えておる次第でございます。
  13. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 先ほどの御答弁に、イギリスの場合政府が三分の二の補助金を出してかなり資金を注ぎ込んで過剰設備買い上げ廃棄をしていった。まあこの法案の作成の段階で、業界あたり意見として、過剰設備廃棄について、特に資力の少ないところの中小企業等については、その過剰設備については政府買い上げるべきであるというようなかなり強硬な意見があったというふうに聞いておるわけでありますけれども、この法律の中身からは、そういう点は見えないわけであります。その点についてはどういう理由でそのような状態になっているのか。
  14. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) ただいま御指摘廃棄設備買い上げの問題につきましては、御承知のとおり、昨年の六月に通産大臣あて答申されましたその答申の中には、少数意見として入っております。過剰設備廃棄特に中小企業が行ないます設備廃棄につきまして買い上げを行なえという一項が入っている次第でございます。それが今度の法案構想ではなくなっておるわけでございますが、実はこれはいろいろ経過がございまして、昨年の末に最終的に業界意見調整をいたしましたときには、そのときの業界意見としては、当時業界が要望いたしました買い上げについては、これを実行してくれというふうなことは要請をしないというふうな調整の結果になったわけでございます。そういうふうな事態になりました理由としては、いろいろあろうかと思いますが、一つは、答申をいろいろ審議しましたときの時点があまり景気がよくございませんので、業界としては将来に対する——特に中小企業は将来に対する大きな期待を持てなかったのでございますが、その後御承知のとおりの市況の回復がございまして、そうしてそういうことで自主廃棄ということのほうがむしろ筋であって、強制的な廃棄、したがって買い上げというようなことはこれを引っ込めるというふうなことになって、こういうふうな構想になっておるわけでございます。
  15. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 この中小資本中小企業に対してのこれは大きな問題でありますけれども、いま自主廃棄、いわゆる自己負担でもって一対二の過剰設備を処分していくやり方ですね、そういったようなことをやれということでありますが、とうていできないという声もあるわけであります。この中小企業中小資本に対しては、設備合理化のためにいろんなことを三十九年度は考えておると思うのでありますけれども政府の打たれている現在の手は、資金的に見てどんなものがありますか。
  16. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) 中小企業に対するまあいろいろ近代化のための援助と申しますが、そういう点でございますが、これはたとえば、よく御承知と思いますけれども、紡毛につきましては約三百くらいの企業がございますが、これはもう全部一万錘以下の中小企業でございます。それでそういうふうな中小企業を主体といたします業界につきましては、御承知近代化促進法指定業種にいたしまして、そうして内部留保等を厚くして、近代化を進めるというふうなことを援助いたしております。  それから金融の問題でございますけれども金融につきましては、先ほど申し上げましたアンケートによりますと、これはいろいろございますが、本年度三十九年度の中小企業金融公庫に対する企業期待額を申し上げますと、三十九年度の合理化のための総工事額が約六十三億程度でございますが、この六十三億の総工事額に対しまして、三十九年度の所要資金が約三十億というふうな数字になっております。この三十億に対しまして、企業としてはその半分の十五億を中小企業金融公庫から借り入れをしたいというふうな期待数字になっております。この十五億の点については、まあいろいろ今後の進展、審査等もございますが、そういうことを行ないまして、通産省としては積極的に公庫金融あっせんしたいというふうに考えております。
  17. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 この中小公庫資金でございますけれども、これも結局現在の法律からいけば、資本金五千万とか、従業員数三百人ということが一つの限度になってまいります。それ以上というようなワクになってくるわけですね。そうするとそれ以下に漏れるものがあるんではないかということが考えられるわけであります。そういうふうな業界の数、いわゆる公庫金融融資対象にならないような、その資格がないような中小資本中小企業業界というものは、一体どのぐらいの数に上っているのか、わかりませんですか。
  18. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) 公庫のほうは、御承知のとおり資本金五千万円以下かあるいは従業員三百人以下というふうな資格要件か、どっちかにございますればこれは一応公庫へいけるわけでございます。問題は特に零細企業につきまして、資格要件はあるけれども、実際に公庫等金融に乗るか乗らないかという点が問題になろうかと思いますが、こういう点は、これもまあよく御承知かと思いますけれども、現在の中小企業金融公庫繊維工業に対する貸し出し額の残高は約三百億でございますが、この三百億の中心になっていますのは大体合繊加工、染色、メリヤス等でございます。そういう点からいきますと、公庫としてはむしろ紡績よりも一般的に企業規模の小さなものについていろいろめんどうを見ているわけでございますが、従来紡績関係では、こういう開発銀行とか中小企業金融公庫のような政府関係金融機関のようなものには、実はあまりなじみもなく、残額もほとんどないわけでありますが、いま申し上げましたような公庫繊維工業に対する運営態度もございますので、私どものほうであっせん等努力をいたしますれば、まあ公庫金融の問題につきましてはそう小ちゃいからむずかしいというふうなことはないのではなかろうかというふうに考えております。
  19. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 その次に、どうも村の区分が三年後にはなくなるわけであります。そうすると、一台の紡機でもって綿であろうと、スフであろうと、合繊であろうと、いかなる糸も紡げるということになってくるわけであります。そうすると、いままで一つ繊維だけしか手がけられなかったために比較的に競争も少なく、安定もできるという部門も出てくるわけです。特に中小企業に対してのしわ寄せというものは大きくは受けない。それが一つの障壁といいますか、ブレーキといいますか、プロテクターのような役目もしていたわけであります。   〔理事赤間文三君退席、委員長着   席〕  それがいかなる糸もひけるということになってくると、かなり資本からの攻撃というものを受けてくるようになりはしないか。まあ一刻も早く村区分は廃止してしまえという業界の声もあったということでありますけれども、そういうような一面心配考えられるわけでありますけれども、そういう大資本に攻め込められるというような危険を、中小企業業界は感じなければならない心配をされるわけでありますが、その点については局長のほうとして、政府として心配がないというように言えるような対策なりというものはございますか。
  20. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 ちょっと関連を。さっきの中小公庫との関係でありますが、従業員数三百人以下、それから資本金五千万円以下ということになっておりますが、そのごく下のほうが金融ベースに乗るか乗らぬかという点についての質問、また答弁はあったのでありますが、従業員数三百人をこえている場合、また資本金五千万円をこえている場合、それでも実際的には中小企業範疇に入れるのが当然だというようなものが特にこの繊維工業関係にはあるのではないかと思うのです。それについて開発銀行等へいくと、資本金五千万円以上はもう中小企業金融公庫では扱わないが、さりとて開発銀行扱いかねる。ことに従業員数三百人をこえているというような場合には、この中小企業金融公庫ではもちろん扱えまいが、また開発銀行でも扱いがたいというような一つの谷間がそこに出てくると思われるのでありますが、こういう面について、石炭鉱業などについては、従業員数千人以下でもこれは中小企業範疇に属するという特別の扱いを法令的にして、そうして中小企業金融公庫金融ベースに乗せておるわけでありますが、石炭鉱業などに比較的従業員数関係から言うとこの繊維工業は似た点があるのであります。そういう点から繊維工業関係については、鉱業——マイニングに類するような特別の扱いというものが法令的に必要なのではないかという点が考えられるのでありますが、その点についてどういうふうな考えを持っておられるか、これを承っておきたいと思うのであります。
  21. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) ただいまの御指摘の点は、実は私どももざっくばらんに申し上げて、いろいろ心配をしている点の一つでございますが、的に申し上げますと、いま御指摘のとおり、石炭がやりましたような中小企業金融公庫融資に対する特別措置は、この法案関連をいたしてはとっておりません。したがいまして、五千万円、三百人というふうな条件をはずれました企業は、政府関係金融機関としては、開発銀行融資期待するよりしょうがないというようなかっこうになっております。その点についてまあ一つの点は、資本金の問題は一応別といたしましても、非常に典型的な労働集約産業でございますので、実態がいろいろ産業の性格から見ますと、中小企業というべきものでありながら、五千万円、三百人をこえることによって公庫にいけないで、開発銀行にいくというふうなことになるわけでございます。そういう点は、これは私どもとしては、政府関係金融機関に対する融資あっせんとしてはそういうことになっておりますので、開発銀行に対して積極的なあっせんをしていくというふうなことによりたいという考えでございます。
  22. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 まあ、さしあたりはそれでいかれるということですが、はたしてうまくいくかどうか。その点については十分今後運用にあたって細心の注意を払って、どうしてもうまくいきかねるというような場合には、特殊の法令の扱いをしていくというようなことに検討をしてもらいたいと思います。その点いかがでしようか。
  23. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) この法案は、御承知のとおり本年度の問題としては、十月一日にかりに施行になりますれば、半年間の施行ということになります。いま御指摘のような点につきましては、その半年間と申しますか、この法案施行の推移をよく見まして、必要があればそういうようなことや積極的に考えていきたいというふうに考えます。
  24. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 さっきの答弁
  25. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) この法案が三年後に村区分を撤廃するということにいたしておりますので、まずその点で中小企業についての混乱が起きないようにというふうなことが第一であったと思いますが、中小企業に対するいろいろ考え方としましては、ある意味で現在の中小企業立場保護するという、ふうなことから、三年間純糸にして村区分を多くするのでございますが、その点は中小企業保護のためというふうに考えております。それから三年を経過しましたときに、その純糸村区分を持っておったというある一面保護立場はなくなるわけでございますが、ただ、この法案がありますその後の一年につきましては、なお全体の設備制限はあるわけでございます。その一年間の設備制限で、中小企業はいま御指摘のような強力なニューカマーがもしあるとしましても、そういうようなことから保護されていくというふうに考えております。  それで、全体的にこの法案が失効いたしましたときの中小企業の地位がどうなるかというようなことでございますが、これは将来の見通しでもございますので、いろいろな考え方があろうかと思います。私ども考えておりますのは、現在の繊維工業、特にまあ紡績、織布の特質といたしまして、ごくわずかの資本でいわば単純な機械加工というふうな生産技術、つまりわずかの資本と簡単な生産技術新規企業参加ができるという点が繊維工業の特徴だと思います。それで、そういう点が特に従来は若年労働者等が豊富であるというふうなこととも関連いたしまして、新規企業参加が容易に行なわれました関係上、過当競争が出てきたということでございますが、まあその点につきましては、一つは四年後の雇用の見通し等からいきますと、これもよく御承知でございますけれども、四年後のこの法案が失効いたします昭和四十三年を見ますと、新規の中学の女子卒業生が、三十八年の四十六万名に対しまして、その半分程度の二十七万程度になります。全体としてこういうふうに女子新規中卒者が非常に減りますし、また、その減りました中で、おそらくは、見通しといたしましては、紡績とか織布等に入ります女子労働者新規労働者というものはまたなかなか困難になろうかと思いますが、そういう点で、比較的わずかな資本であまり高くない生産技術とそれにプラスいたしました労働力充足という点の、最後の労働力充足の点が相当困難になろうかと思いますから、そういう点で四年後にそうそう新規参加紡績等に対して行なわれるということはあまりなかろうというふうに考えております。  それからもう一つの点といたしましては、この点はいろいろ議論があろうかと思いますけれども、この法案が実施されております四カ年の間に、全体的な設備制限を下ささえといたしまして、紡績につきまして系列関係——中小紡績の大紡績に対する系列関係、あるいは商社に対する系列関係が、まあただいまの時点でも相当その系列化が進んでおりますが、この系列化が進んでいくのではないかというように考えております。そうして、それが四年間でその系列化が安定したかっこうで固まりました場合には中小企業といえどもその系列化の中で自己立場を確保しまして安定していけるのではないか、こういうふうに考えておる次第でございます。  なお、よけいなことでございますが、系列化の点について、その系列化が力の強いものと弱いものとの関係でアンバランスなかっこう系列化が行なわれますことは、これは好ましいことではございませんが、その点については何と申しましても四年間は紡績全体として設備制限、つまり新規企業参加と申しますか、増設がございませんので、そうだとすれば、その全体の中でバランスのとれたかっこう系列化が、これは業界と私どもがうまくやればとれていくのではなかろうかというふうに考えております。
  26. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そのいまの中小と大企業、大資本との関係でありますけれども、大手の紡績業者のもとに系列化が進むであろう。そういうような見込みをこの法案からも立てられておるようでありますけれども、中小紡がこの法案から政府の優遇措置等もあって動いて変わってくる、一体どういうような系列のほうに入っていくというふうにお考えですか。たとえば合繊もあればそのほかもございますし、いろんな形があるわけでありますけれども、その系列化はどういう方向に固まっていくだろう、そうして安定する、こういうふうに見ているのかどうか、その見方ですね。  それともう一つは、しかしやはりそのような系列化を進めていっても残るものが出てくるんではないか。そういうものについての施策というものを一体この法律によってはどういうように見ていくのか、いわゆる零細の、それにもとり残されていくであろう企業については、新規企業参加がないと同じように零細は自然と淘汰されるのだといわれてしまえばそれきりでありますけれども、そういうものについてどういうように合理化対策を考えていくか、その点についてお願いいたしたいと思います。
  27. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) 系列化の問題でございますが、先般の通産省が主催いたしました産業構造調査会の繊維部会の結論といいますか、報告によりますと、たとえば綿紡績で申し上げますと、綿紡につきまして純粋の親企業というふうなものが約二十社あるということになっております。それから子企業と申しますか、その親企業系列化にあるものが、約三十社というふうなことになっておりますが、それから賃紡の関係が十五社あるということになっております。以上申し上げましたのは大体紡績の系統の系列の問題でございますが、そのほかに商社系列が約三十社ございます。それからその他といたしまして、他メーカー系列が四十四社ということになっております。いま申し上げましたとおり大別いたしますと、大体これは綿紡績の話でございますが、中小企業、比較的大きくない企業につきまして約三分の一程度綿紡績系列にある、それから約三分の一が商社の系列にある、それからそのほかの三分の一強が他メーカーの系列でございますので、これは大体において合繊原糸メーカーの系列に入りまして、そうして綿から合繊糸を紡出しておるというふうに考えております。それで、こういう関係が将来どうなるかということでございますが、私ども考え方からいきますと、今後の各種繊維間の問題といたしましては、合繊が相当ふえるということを考えておりますので、これで中小が合繊を引けるようなことになりました場合には、合繊メーカーへの系列に入っていくものがだんだんふえていくということではなかろうかというふうに考えております。それから各種繊維間の問題としては、御承知のとおりこの法案の裏づけの考え方といたしましては、四年間に約百五十六万錘が新たに動くわけでございますが、この百五十六万錘のほとんどのものが合繊の増産に対処しまして合繊を引くであろうというような見通しになっておりますので、そういう点では合繊がふえていく、そういう点からいっても合繊がふえていくというふうなことではなかろうかと思います。そういうことで、いろいろそういう関係を勘案いたしますと、現在綿紡績といいますと、三十五、六社のものが合繊紡糸——合繊糸を紡出しておるといいますか、この関係がだんだんふえてまいります。そうして十六紡を中心にいたしました、大きな紡績で引いておりました純綿糸の関係が、これが下へ下がりまして、中小がその純綿糸を補完するようなかっこうで引いていくというふうなことになろうかと思います。
  28. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いま私二つの質問をしましたが、前段のほうは答弁がありましたのですが、そういうような系列化の中へも入れないような——大手紡の系列の一員になったり、合繊のほうの一員になって活路を見出していくという企業もあると思いますけれども、それにも乗っかっていかれないような零細企業というものが出るんではないか、それに対しては一体合理化対策というものは本法案に見られないわけでありますけれども、一体そういうことが起きてきたときには、そういうおそれがあると思いますが、どういうように考えているか、第二段の質問はそういう質問だったんですが、それについての答弁をお願いしたいと思います。
  29. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) その系列と申しますか、そういうふうなごく小さなものについてどうなるかということでございますけれども、大体綿紡績で申し上げますと一応五千錘未満というふうなものが零細的な企業に当たろうかと思いますが、五千錘未満が約二十五社ぐらいございます。これがどうなるかということでございますが、私の感じとしては、こういうちっちゃなものにつきましては、これはもちろん合繊への転換等がなかなか困難でございますので、これは将来も現在と同じように純綿糸を引いていくということだと思います。問題はそういう零細企業が、この四年間純綿糸を操業していくような地位が現在と同様に与えられるかどうかということだと思いますが、感じとしましては、少なくともこの法案のございます四年間は、全体の紡績錘数が制限されております。一方、純綿糸の需要につきましては、現在四十九万トンぐらいでございますが、純綿糸については、合繊のように非常にふえるということはございませんけれども、しかし、大体現状程度は将来も需要があるわけでございますので、一方、比較的大きなメーカーが合繊等に転換いたしまして、純綿糸を引かなくなりますので、そういうふうなことからいいますと、やはりこういうふうな零細的な企業も純綿糸の紡績業として、少なくとも四年間は、現状どおりの立場を維持していくというふうに考えております。
  30. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 大事なのは、この法律で三年、それから一年間のアフター・ケアということで、四年間のことを見込んでいるわけであります。しかしその間に繊維それ自体、工業全体の足並みというか、過剰設備廃棄もやっていく、適正な規模にもっていくということで、そうして企業それ自体立ち上がっていくチャンスというものを与えていこう、こういうことが一つの大きな目的にはなると思いますのですが、四年間は零細はいいだろう、それ以後は純綿糸の需要があればいいだろうというような行き方だと、これから先、零細というものは、局長答弁の限りにおいては、四年後になるというと、どこへいくかわからないというような感を受けるわけです。むしろこの四年の間に、何とか合理的にも、経済性にも見合うように、零細企業を指導するなり援助するなんというようなことは考えられないのか。そういう点この法律案はうたっていないわけでありますけれども、それをどう考えていくのか、それに対しての考え方というのはないのか、こういうことを伺ったのです。
  31. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) 基本的な感じから申し上げますと、どうも紡績業というものは、従来は、いわゆる規模の利益というものがほとんどなかった産業ではなかろうかと思います。これはまあいろいろ理由があろうかとは思いますけれども、まあ何といっても原料代が全体のコストの中で五〇%程度占めておりまして、あとの五〇%の半分が賃金であるというふうな、非常に典型的な労働集約産業でございますので、そういう点からいって、たとえば自動車でございますとか、機械工業、石油化学のような、規模がある程度大きくなければ企業としての経済力がつかないというふうな、規模の利益に非常になじまない業種であったと思います。それで今後そういう点がどうなるかということでありますけれども、非常に御指摘のとおり、今労働力の確保という問題から、繊維工業全体として一つの転換期に入っておると思いますが、それでその労働力の問題につきまして、これをまあ労働節約をやるという立場から紡績設備等の近代化を推し進めなければならないということになろうかと思いますが、そこのところでどうも繊維工業あるいは紡績業につきまして、若干ある程度の経済単位的な考え方、あるいはそういう行き方が、現在及び将来の問題として出てきたのではないかというような感じでございます。御承知のように、紡績では糸を巻く工程で非常に多くの人間を雇うわけでございますが、その巻き糸段階での労働節約をはかりますために、たとえば自動ワインダーを備えます場合には、一つの糸の品種につきまして一万錘程度でなければ自動ワインダーを経済的に使えないというような状況でございます。そういう点で非常に典型的な労働集約産業で、規模の利益あるいは経済単位という概念に非常に遠く離れておった紡績業につきまして、そろそろ経済単位あるいは規模の利益を考えるような段階に日本の紡績業は当面しつつあると思います。そういう点からいきますと、今御指摘になりましたような零細企業を将来どういうふうにもっていくかという問題でございますが、これはどうも現実の見通しといたしましては、こういう零細的な企業が品質のいい、良質な若年労働者の充足に困難をいたしました場合に、中高年齢層に移っていくということが考えられます。そういうことが考えられますが、これはまああり得べき姿といたしましては、そういうような転換期でございますから、ただいまの時点でこういう零細的な企業が将来生きていくかっこうとしては、やはりある程度の規模を持たなければいけないというふうに考えております。そういうふうな方向で指導いたしたいということを考えております。
  32. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 局長政府考え方というものはわかりました。給局全体を通じて言えることは、スクラップ・アンド・ビルドによって、だんだんと近代的な生産性の高い機械というものが据えられるようになってくる。そうすると、結果的には生産の過剰ということも起きるでありましょうし、設備の効率も考えなければならない。いま答弁がありましたように、集中した生産性というものを考えていく段階にきている、こういうふうな答弁に承ったわけですが、そうなると、場合によれば、この法律にはありませんけれども、全体を通じて中小紡の場合、その他の場合でも、少数の工場に集中生産というような態度をとるということになれば、企業によっては工場閉鎖とか、片方に集中するために閉鎖しなければならぬというようなことが出てくるわけです。いまお話のように中小企業はまとめなければならない、零細をまとめなければならぬということになると、まとめるためにお前はやめろということで、閉鎖していくものもあるでしょう、あるいは集中生産のため閉鎖というものが出てくる。そういう閉鎖された業者に対して、これを永久に保障するというわけにいきませんけれどもめんどうをみてやるというわけにはいきませんけれども、立ち直っていく機会を与えていく、あるいは業者間でめんどうをみていく、保険なりをつけていくということが考えられなければ、本格的な繊維というものの再編なり、近代的な生産性の向上ということは出てこないわけであります。零細に限らず、全般に通ずる問題でございますが、そういう点で、ほかの国では閉鎖されたものに対していろいろ考えて対策を実施されているところもあるようでありますが政府はどのように考えて、全一体的に近代化をはかっていき、業界の再編をやっていくか、その点をお尋ねしたいと思います。
  33. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) ただいま御指摘の点は、非常にむずかしい問題であろうと思いますが、どうもざっくばらんに申し上げまして、従来中小企業につきまして、これは紡績ではございませんけれども、一般的に言って、企業数が非常に多いというので、組織化しなければいけないということで組織化が非常に進んでおります。ところが、一方こういう共同化と申しますか、事業の共同化、協業化という点はあまり進んでおりません。ほかの業種に比較いたしますと、あまり進んでおりません。したがって、共同購入でございますとか、共同販売、あるいはさらに進みましてサイジングなんかにつきまして、共同の設備を持つということも実はあまり進んでないわけであります。それで中小企業につきましては、一つの行き方といたしましては、今後はこういう共同化、協業化というものを進めていかなければいけないと考えております。こういう零細な企業を将来のそういうふうな見通しからいいまして、将来あるべき経済単位までの引き上げと関連をして、その近代化を進めるためにいろいろ援助をすることはもちろんでございますけれども、まあそれが御指摘のように企業の倒産とか閉鎖とか、そういうような問題が出てきたときにどうするかということでございますが、そういう点は今後いろいろの推移があろうかと思いますけれども、まあ私どもとしては、そういうような状態が出ないようにうまく指導をしていくというふうなことが一番大切だということでございますので、これが将来、たとえば零細企業の数企業の合併というようなかっこうで経済単位の引き上げが行なわれるか、あるいは違ったかっこうをとるとか、そういう点はいろいろの問題が出てこようと思いますけれども、そういう問題についてはよく研究いたしまして善処していきたいと思います。
  34. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 研究善処するということでありますから、まだ固まっていないということはわかりますが、どちらにしても、設備近代化、多量生産の生産性の高い機械を据えるというためには、集中生産をしなければいけないことになってくる。企業合同、協業化ということもわかりますが、その場合に脱落していく、私は引っ込みましょう、あなたは引っ込めということで閉鎖をしたりしていかなければならない産業が出てくるのは当然であります。その企業に対しての裏打ちといいますか、そういうものをはっきりやってあげなければ、今後の繊維工業それ自体を立ち直らせる、石炭と同じような斜陽の状態をよくしていくということはとうていできないと思う。その点を十分にこれから研究考慮するという段階だそうでありますから、裏打ちをされるように特に望んでおいて、きょうはこの程度で質問は終わりたいと思います。
  35. 高山恒雄

    高山恒雄君 私、ちょっと資料の問題で請求したいのですが、この精紡機の実態調査というのがございますね。この中の格納錘数というのが年欠別に改造されたということになっておりますね。そうすると、ほとんど改造されたということになっておるのか、それとも格納の中にはもうリムとフレームだけ残って、あとの付属品はもうどうにもならぬというものはほとんどないのかどうか、実態調査されたのかどうか、この点ひとつお伺いしたい。実態調査されたのであれば、現在の登録錘数に対する再起不能という機械はないということは、私は言えないと思います。そういう点をひとつ。いま答えが出なければ調査された資料でもよろしいですが。
  36. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) この精紡機実態調査表でございますが、これは各企業から、当方の用意いたしましたアンケート表を出しまして、それに記載をしてもらって集計したものでございます。したがって、個々の企業あるいは個々の機械について通産省のほうで実態調査はいたしておりません。
  37. 大矢正

    ○大矢正君 次の委員会の質問に関連して、いまの紡績機械格納について聞いておきたいと思いますが、一次格納、二次格納、これらを通して現在格納されている機械の中で実際に使用にたえない機械があるのかどうか、あったとすればどのくらいあるのか、その資料がありましたら御答弁願いたいと思いますが。
  38. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) まず大ざっぱな感じでございますけれども、現在の格納の中で、御承知のとおり第一格納、第二格納とございますが、第一格納は綿、梳毛、スフ合わせまして百四十四万錘でございます。それで、これは措置法以前の格納といいますか、操短の実態を受けまして法律制定と同時に格納したものでございますから、どうも三十年あるいは三十一年ごろから約十年間格納状態にあったということを考えれば、これはほとんどまあ使用することができないというふうに考えて、そんなに間違いはないと思っております。そのほかの短期格納につきましては、これも御承知のとおり時時の需要見通し等でふえたり減ったりいたしております。そういう関係もございますから、短期格納のほうの相当部分は、これは使えるというふうな感じでございます。なお、その点につきましては、先ほど申し上げましたアンケートによりますと、この法案施行時にもし格納錘数が、これは三登録区分を通じて三百四十万程度ありとすれば、この中でこれは古い機械を二台つぶすわけでございますけれども、そういう格納の中で四十二万錘は解除を申請をして動かしたいというふうな企業数字になっておりますので、この四十二万錘、四十四、五万錘程度は動くというようなことであろうかと思います。これは個々に実態的な調査をしたわけでございませんけれども、感じとしては大体そういう感じでございます。
  39. 前田久吉

    委員長(前田久吉君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。  本日はこれをもって散会いたします。    午後零時八分散会