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1964-05-21 第46回国会 参議院 商工委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月二十一日(木曜日)    午前十時三十八分開会     —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     前田 久吉君    理事            上原 正吉君            近藤 信一君            田畑 金光君    委員            大谷藤之助君            川上 為治君            岸田 幸雄君            小林 英三君            豊田 雅孝君            八木 一郎君            吉武 恵市君            阿部 竹松君            大矢  正君            椿  繁夫君            藤田  進君            鈴木 一弘君            奥 むめお君   国務大臣    通商産業大臣  福田  一君   政府委員    通商産業政務次    官       竹下  登君    通商産業省繊維    局長      磯野 太郎君    通商産業省公益    事業局長    宮本  惇君   事務局側    常任委員会専門    員       小田橋貞壽君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○電源開発促進法の一部を改正する法  律案内閣送付予備審査) ○繊維工業設備等臨時措置法案内閣  提出衆議院送付)     —————————————
  2. 前田久吉

    委員長前田久吉君) ただいまから商工委員会開会いたします。  まず、委員長及び理事打ち合わせ会協議事項について御報告いたします。  本日は、電源開発促進法の一部を改正する法律案提案理由説明を聴取した後、繊維工業設備等臨時措置法案質疑を行なうことになりましたから、御承知を願います。     —————————————
  3. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 五月十五日、予備審査のため本委員会に付託されました電源開発促進法の一部を改正する法律案議題といたします。政府から提案理由説明を聴取いたします。福田通産大臣
  4. 福田一

    国務大臣福田一君) 電源開発促進法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  この法律案は、電源開発株式会社が建設する福井県九頭竜川水系電源開発資金の一部を国際復興開発銀行から借り入れるため、その借款担保を付する等所要規定の整備をしようとするものであります。  いうまでもなく、わが国電力需要は、産業構造高度化生活水準向上に伴いまして、今後ともますます増大する傾向にあります。これに対する供給力としては、火力技術高度化等を反映して、大容量火力中心となっていく趨勢にはありますが、この火力経済性を確保するためには、ピーク供給用、さらには事故時の緊急用電源として、大貯水池式ないし揚水式水力を組み合わせることが最も望ましく、火力の建設と並行して一定割合水力開発することが必要であり、今後原子力発電開発が進めば、水力開発必要性はさらに増大するものと思われます。  九頭竜川電源開発もこのような観点から昭和三十八年五月の電源開発調整審議会の議を経て、電源開発株式会社が着工すべき地点と決定されたものであり、昭和四十二年十一月と予定される本開発完成の暁には、増大するわが国中央部電力需要の充足に重要な役割りを果たすものと期待されております。このような水力開発にはできるだけ長期低利資金を投入しなければならないことは申すまでもありませんが、国際復興開発銀行資金は十分このような要請にこたえ得るものでありますので、政府としては本年度以降約四年間にわたり、九十億円の同銀行資金をこの九頭竜川開金に投入することに予定したのであります。なお、このような外貨借款わが国国際収支改善に寄与するものであることは御承知のとおりであります。しかしながら、国際復興開発銀行から融資を受けるにあたっては、従来の例からして電源開発株式会社の資産の上に担保を設定する等の手続を整備することが必要とされております。よって、この際、電源開発促進法所要改正をしようとするものであります。  以上がこの法律案提案理由及びその要旨であります。何とぞ慎重に御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  5. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 以上で提案理由説明は終了いたしました。自後の審査は後日に譲ることといたします。     —————————————
  6. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 次に、繊維工業設備等臨時措置法案議題といたします。  前回に引き続き質疑を行ないます。御質疑のおありの方に順次御発言を願います。
  7. 近藤信一

    近藤信一君 法案審議に入る前に、委員会の運営上の問題について、ちょっと一言発言しておきたいと思うのです。それは、国会も四十日間延長になりましたし、法案もまだこれから十分審議しなければならぬ。そこで、私は国会法に基づきまして、やはり過半数以上がなければ委員会を開くことができない、この原則は守っていただきたい。しかし、それもただ開会のときだけ頭をそろえばよろしいということでなくして、やはり国会議員として皆さんも出てきておられるのだから、やはりこの委員会で十分審議していただく必要があると私は考えるのです。そこで、社会党といたしましては、定数が不足したならば委員会を休憩せよと、こういうふうなことも言われておるわけでございまするから、ただ開会のときだけ定数がそろえばよろしいというふうな従来の慣例ということはひとつやめていただいて、今後は必ず定数をそろえて委員会を開催してもらいたい、このことを委員長に強く要望しておきます。
  8. 大矢正

    大矢正君 このたび新しく提出をされました繊維工業に対する法案に対し、これから質問をいたしたいと思います。私としては基本的な考え方の問題について、まず大臣からお伺いをし、さらに法案の個々の面において及ぼす影響等について事務当局質問をし、最後にまたそれら具体的な答弁に基づいて大臣にこれからの基本的な考え方についてお伺いをするという方向質問を進めてまいりたいと思います。  最初大臣にお伺いをいたしたいことは、昭和三十一年現行法成立以来約八年間の歳月を経過いたしておりますが、ここに新たに繊維法を出してまいりましたことにつきまして、その目的とするところが現行法新法においてどのような違いがあるのか、この点から質問をいたしたいと思います。
  9. 福田一

    国務大臣福田一君) これはまあ御案内のように、本法の目的といたしております第一条に、すでに規定をいたしておるところでございまして、この繊維工業設備設置及び使用規制をいたしまして、そうして過剰精紡機廃棄促進等に必要な措置を請じよう、こういうのが目的であります。前の法律におきましては、この点が「輸出発展に寄与するため、繊維工業設備に関する規制を行なう」、こうなっておるわけでありますが、輸出工業設備に関する規制という意味におきましては同じでありますが、今度の法律の中に、過剰精紡機廃棄促進というようなことがあり、それから目的自体に、前の法律では輸出発展、こういうことを特にうたっておったわけであります。もちろん輸出発展は大事でございますが、これはまずその後尾におきまして、最初目的として旧法では掲げておるのを、そういうようなことをして、そして正常な輸出発展に寄与する、こういうことになっておりますので、いわゆる過剰精紡機廃棄促進、こういうことがまあ前の法律と変わっておるところと御了解願いたいと思うのでございます。
  10. 大矢正

    大矢正君 私、考えてみまするに、繊維工業ということになりますれば、単に天然繊維にとどまらず、最近ますます拡大基調をとっております人造繊維、いうならば化合繊というものがあります。したがって、今日繊維工業というものはわが国工業産業また経済の上において・どのような役割りを果たしているかということを基本的な考え方として、法律が生まれ出なければならないと思うのであります。一つには、一年間十二億ドルの外貨をかせぐ、もちろんこの中には天然繊維の原料の輸入がありますから、すべてが手取り外貨とは申せませんけれども、たとえそれが加工にいたしましても、わが国外貨を獲得する面においての重要な役割りを果たしていることは事実でありまするし、二番目には、わが国工業生産の中に占める繊維産業の地位というものは重化学工業中心となった今日においても、なお非常に大きなものがあると思います。また第三には、労働力需要するという面におきましても、これまたかなりの影響を持つ産業であります。このように考えてみますれば、繊維工業というものは、部分的なものの判断ではなしに、日本経済全体の基盤に立って考えるべき重要な産業であると思います。  そこで、このたび新しく提出をされました法案を見ますると、ただいま大臣が御答弁ございましたように、設備登録、そして使用規制設置制限、また過剰精紡機廃棄ということに重点が置かれております。こういうことでは基本的な繊維工業のあり方を規制することは私はできないと思うのであります。かりに精紡機設置制限をする、ないしはまた廃棄促進を行なうことによって、スクラップ・アンド・ビルドが実際に行なわれたとしても、日本繊維産業がいま申し上げた三点の上において、必ずしも有効な効果を持ち得るとは思われないのであります。したがって、私に言わしめますならば、もっとこの法律は大きな面においてものを考え、国内全体または国際的な視野に立ってものを考えて法律をつくるべきであったのではないだろうか。ところが、残念ながら、この法律過剰精紡機をいかに廃棄するかということだけに重点を置かれた法律であります。もちろん設置制限というものはありまするが、その他は従来の法律とはいささかも変わりがありません。こういう面において、私はその法律が掲げを効果について非常に不安を持っているわけであります。大臣のお答えをいただきたいと思います。
  11. 福田一

    国務大臣福田一君) お説のとおり、この繊維の問題が、日本産業の中に占める位置並びに輸出において占める位置、また労働問題において占める位置ということを考えてみますというと、繊維産業に対するわれわれの態度は慎重でなければならないと同時に、また全般的な見地からものを見、また国際的な視野からこの問題を考えていかなければならないことは、お説のとおりであると存じております。しかし、われわれがいまここに出しました法案は、いま御指摘がございましたような、設置とか使用制限とか、あるいは過剰精紡機廃棄促進というようなスクラップ・アンド・ビルド方向を出したのでありまするが、これは御案内のように、長い間審議会におきまして、業界並びに公平な第三者等皆さん方においでを願って、そしていろいろ御審議をしていただいた結論として、大体この法案のような骨子に基づいて措置をさしあたりすべきであるというような結論が出ておるわけであります。それが出るまでの間においては、いろいろな議論がたくさん出てまいりました。特に国際的に見るとか、いろいろな問題がありましたが、私はこの繊維の問題を取り扱う上において一番むずかしい点は何であるかというと、新しい繊維が次々と出てくるということでございます。たとえば生糸のような天然のものでございまして、それにかわるものが出てこない場合に、生糸繊維の問題について法律制定するという場合には、割合にこれは問題が簡単なのではなかろうかと思う。ところが、いまは御案内のように、日進月歩の勢いで新しい繊維というものがどんどん出てきておるというような時期に際会をいたしております。そしてまた、その新しい繊維をまじえて、それだけでものが解決するのじゃなく、またそれとまざった混紛というようなシステムがまたどんどんできておるというようなところに、この繊維問題解決のために非常な複雑さが出てきておると思うのであります。そういう点もいろいろ御研究願いまして、われわれとしても研究をいたしましたところ、結果として、まずさしあたりこういう体制で臨んでいく一これで全部が解決したというわけではございませんが、少なくともこの段階のことはいたすべきである、これで解決したのではございませんから、将来また必要があれば、またそういう問題が起きれば、法の改正あるいは新法制定というような問題も起きるかもしれませんけれども、いまわれわれが考え得る限度においては、最小限この程度措置はいたすべきである、こういう意味でこの法案提出いたしておるのであります。したがいまして、いま仰せになりましたように、これではまだ全部をカバーしないし、不安の面があるというのは、われわれもその意味では、いささか心配の面もあるわけであります。しかし、少なくともそれだけはしなければならないという意味におきまして、この法案提出いたしておるということを御了解賜りたいと思うのでございます。
  12. 大矢正

    大矢正君 先ほど来申し上げておりますとおり、今日、この人造繊維の急速な拡大発展というものが、ある意味におきましては、天然繊維を後退せしめているという面もあるわけであります。したがって、この法律の名前にあげられておりますように繊維工業、このように考えてまいりますれば、単にこれは天然繊維紡績段階でどう規制をするか、どう合理化をするかというそれだけの議論にとどまるのではなしに、人造繊維化合繊を含めた形で、繊維全体の中で法案というものが生まれるべきではなかったのかと思うのでありますが、遺憾ながらこの法案天然繊維段階においての紡績中心とした規制、もちろん幅出機についての登録及び設置制限はありまするが、中心的な課題はあくまでも紡績機械に対しての、いうならば制限であり廃棄であります。化合繊の面におきましては、この法案の中でしいて考えられる面といたしますれば、化合繊を用いての紡績段階、このことはもちろん考えられまするが、これではどうも天然繊維中心法律であるというように考えざるを得ません。そこで、もちろん今日、人造繊維というものが需要拡大によって設備を云々しなければならないような状態ではないことは私も認めますが、しかし、昨今のように化合繊設備能力の急速な拡大というものが、やがては大きな天然繊維との競合関係とあわせて繊維全体の立場でものを見なければならない時期がくるものと思うのであります。この面について、どうしてこの法律をもっと基本的なものにしなかったのかということをお伺いしたいと思います。
  13. 福田一

    国務大臣福田一君) 御指摘のとおりでございまして、この化合繊の問題が非常な大きな問題として順次クローズアップされてくるであろうということは、われわれも想定をいたしておるのであります。また、これがあまりに過当競争を生じたり、あるいはまた過剰な設備が行なわれたりするということとは非常に心配な面もございます。同時にアメリカ、イギリスあるいはイタリア等における化合繊の進歩というのは著しいものがございます。これが日本にどんどん入ってくる段階になってまいりまするというと、いわゆるただいまわれわれが提出いたしておりますような特定産業振興法という問題からこの問題を検討し、そうして化合繊に従事しておられる経営者、労務者その他中小経営者すべての問題も含めてこれを考えなければいけないという事態も起こるでございましょう。いろいろわれわれとしては、いま御指摘になったとおり、こういう問題がいろいろあることはわかっておるわけでありますが、それはすでに大矢委員が御認識を賜っているように、いわゆる日本綿業というものが繊維の中において今日まで占めてきたこの重要性、また今後もなお綿というものの持っている特質が嗜好というものに合い、あるいはまた気候というものに合うということになりますると、これが全然なくなってしまうということはあり得ない。輸出の面においてもやはり私はこれがまだまだシェアを持っていくと思います。そういう場合において、日本でこれだけ長い期間にわたって行なわれてきたところの綿関係の問題については、少なくともこの程度のことはすべきである一こういう結論が出ましたので、まず、この結論を取り上げてここに法案として提出いたしました。  しかし、繊維という立場から考えてみますと、先ほど来御指摘がございましたように、いろいろの問題がまだ内在いたしております。そうしてそれがどういう形にいくかということは、世界の繊維業界の動きとともに考えていかなければならない状態に立っておると考えておりますので、まず、さしあたりこの面についてこの法案を御審議を願い、そうしてこれを実施に移して、スクラップ・アンド・ビルドを考える、同時に、常に四囲の情勢国内情勢等も十分見守りつつ、必要に応じてまた対策を考えてまいる、こういうようにいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  14. 大矢正

    大矢正君 私は、この法案衆議院提出をされましてから、衆議院委員会議論をされました経過を全部拝見をさせていただきました。速記録で見ますると、衆議院の方々は、今日繊維工業というのは非常に重要な段階に差しかかっておるし、また日本の国の経済産業分野からながめても重要な位置を持つものであり、この法案が及ぼす影響ということも、これまた当然のこととして重要であるということが強調され、そういう重要法案だから、われわれは慎重に審議をひとつやりたいところなんだけれども、時間がないから質問ができない、こういうことになっておるわけです。そこで私は、こういうことでは残念でありますから、この際参議院では大いにひとつ質問をし、そうして具体的な面において将来に禍根を残さないような形で法案成立をみたいと思いますので、これがまた二院制の妙味であるとも思いますので、衆議院は時間がない、時間がないとして全員さっぱり質問をやっておらないという情勢でありますから、私その点大いに反省して、この際有効に、時間が多少かかっても質問をさせてもらいたいと思いますので、御了承を願いたいと思います。  次にお伺いいたしたいことは、ただいまの大臣の御答弁には、化合繊分野においては特振法があるから、その面においての生産調整なり、設備調整というものができる、したがって問題はないという御答弁のようであります。しかし考えてみますると、天然繊維分野においての紡績は、この法律によって行なわれる。化合繊はこれまた同じ繊維でありながら、特振法で行なわれる。企業的に見た場合における中小企業は、これは中小企業団体法でやられるんだと、こういうことでは私は繊維産業に対する基本的な方向というものは定まらないのではないかという心配があります。しかし、大臣の御答弁によると心配はないそうでありますから、いずれこの問題は具体的に議論を展開したあとで質問することといたしまして、昭和三十一年に現行法成立を見ましてから八年間、政府はもちろんのこと、国会で御答弁がありましたとおり、現行法といえども、現行法操短目的とする法律ではない、あくまでも目的にあるとおり、これは繊維工業合理化を主眼としたものであると強調をしております。ところが、遺憾ながら八年たちましても、再びここに新たに同じ目的を持つ法律を、中身の多少の変更はありますが、出さなければならないということの理由は一体どこにあったのか。もっと具体的に申し上げますならば、八年の間どうして繊維工業というものは合理化ができなかったのか、日本経済体制産業体制自由化を控えてますます充実をしたものにしなければならないという議論は当時からもあったはずであります。にもかかわらず、今日あらためて、ほぼ同様な内容のものを提出しなければならないというからには、何らかの原因なり理由が私はあったと思うのであります。大臣は具体的にこの面についてどう把握されておられるか、お答えいただきたいと思います。
  15. 福田一

    国務大臣福田一君) これはまあその面においていろいろ問題はあると思われるのでありますが、何といってもこの過当競争がある程度行なわれておりまして、そうして過剰設備廃棄が十分行なわれなかったということが一番大きな原因であったのではないかとわれわれは考えておるのであります。もとよりほかにもいろいろの理由がございます。しかし、これはおしなべて大企業の場合と中企業、小企業の場合ではだいぶ事情が違いまして、大企業の場合においては設備改善等が進んだところもあるし、中くらいのところもあるし、中小企業ではなかなかそれが進んでおらなかったという事情もある。いろいろな面はございますが、いずれにしてもある程度簡単に仕事ができるというようなことから、いわゆる過剰設備に相なってまいりまして、その過剰設備のいわゆる整理というものが行なわれない段階においてこのまま進んでいったのでは、みんながある程度共倒れになるか、あるいは中小企業が特に被害を受けるということに相なるのではないか。そこで私たちは、そういう中小企業等が特に被害を受けることのないように、こういうものを擁護しながらいわゆる過剰設備廃棄をはかっていく、こういうことが必要である、こういう考え方でございます。
  16. 大矢正

    大矢正君 いまの大臣の御答弁を承りますと、これはどうも過去における問題の認識はなしに、これからどうするかということの御答弁のように承るわけであります。私がお尋ねをいたしておりまするのは、これからどうすればいいか、どうするのかということを承っておるのではなしに、過去八年の間、同様の目的効果を持つ法律がありながらできなかった理由はどこにあるのかということをお尋ねいたしておるのであります。過去八年間、新法に基づいて最終年度の一年は別としても三年間、あわせて十一年間の長きにわたって操短なり、ないしは設備廃棄等を強調しなければならないような産業が他にあるのかどうか、もしあったとすれば、この際承っておきたいと思いまするし、単にそればかりではなしに、どういう理由で十一年間も同様な効果を持つ法律を延ばしていかなければならなかったのかという、その間の経緯の御説明を願いたいと、こう申しておるのであります。
  17. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) 過去の経過でございますから私御説明いたしますが、考え方としましては、まず第一に、現行法制定いたしましたときには、もちろん過剰設備があるということを認識いたしまして、しかし、その時点におきます過剰精紡機は、将来繊維需要が出てまいりました場合にそれが動くであろう、将来増加需要に対して動かすことができるいう認識をいたしておったわけでございます。ところが、この点につきましては、これも御承知と思いますが、現行法制定当時の精紡機の一分間の回転数は約八千回転でございましたが、現在は少なくとも一万二千回転くらいいたしております。八年間に約五割程度の能率の向上精紡機について行なわれました。したがって、動くだろうと思っておりました機械を動かさなくても済んだという現象がございます。  それから第二点といたしましてはこれは現行法の運用よろしきを得なかったということにもなろうかと思いますけれども、御承知のとおり第二十四条で、過剰精紡機に対しまして通産大臣格納の指示をいたしたわけでございます。これが格称的には半年半年ごとの操短率格納率、つまり操短率に相なっておりますけれども、この操短率企業に対して行なわれました場合に、指示されました場合に、たとえば三〇%操短という場合に、その百の中の三十台につきましては、結局企業者といたしましては、動かない機械もその操短率の中に含められることが利益であるというふうなことがございましたので、それでそういうふうに現実に動かない機械も業者はこれを保有しておったということでございます。  第三点としましては、これも法律の——これはまあ法律制定いたしましたことによる反射として出てくるかと思いますけれども、全体につきまして設備——正確に申しますと使用制限でございますが、そういう制限を行ない、機械そのものについて登録をいたしましたので、そういうことに対する法の反射として、精、機の設置及び使用が一種の権利化いたしまして、そうして巷間では登録権というような現象が生じたわけでございます。これは業者といたしましては、そういう法の反射による権利を保有したほうが得だということでございまするので、まあいろいろございますと思いますが、いま申し上げましたような三点で、現行法では、たいへん残念でございますけれども、過剰設備廃棄が進まなかった、こういうふうに考えております。
  18. 大矢正

    大矢正君 ただいまの御答弁議論をしておりますと、こまかい問題になりますから、その点は避けたいと存じますが、いずれあらためて議論さしていただきますが、そこで、この点は大臣から御答弁をいただけるのではないかと存じますが、合繊の分野においての質問になりますが、過去におきましては、東洋レーヨンなり帝人なり、あるいは日レなりといわれるように、合繊の業界におきましては、ごく少数の企業設備を持つことが許され、したがって、その間においては生産と価格の調整というものが、法律効果によって保護されるということがなくても行なわれてきたものと私は思います。しかし、今年三十九年度はかなり急速に他の企業も合成繊維とスフに乗り出してまいりまして、このまままいりますれば、合繊界自身におきましても過剰設備過当競争というものは、必らずしもないとは断言できないと私は思うのであります。そこで、これからの合繊メーカーに対して、政府としてはいかようなお考えを持っていられるのか、大臣は特殊法において業界の自主性なり、ないしは通産省の指示により何とかしたいというふうに御答弁にあるいはなるかもしれませんが、特振法は今日まだ成立を見ておりませんし、成立を見ていない法律を前提としてお考えを発表されても、私どもは納得するわけにはまいりませんので、どうされるおつもりか、この際お考えを聞いておきたいと思います。
  19. 福田一

    国務大臣福田一君) われわれとしては、いま御質問がございました点は、非常に重要であると考えておりますが、一方においては、設備の問題が出てきたときに、行政的な措置によって考えるという方法がございまして、それから政策として言う場合には、いわゆる特振法のようなものを考えておるんだということは、まあ申し上げることをお許し願えると思うのでありまして、対策ができておるという意味で申し上げるのではございません。これからこういうことを考えてまいりたい、設備制限の問題にしても、そのときそのときに応じて考えておることでありますが、いまこういう問題を十分研究をいたしておる。まだ実際には委員会等で、まあ産業審議会におきましてそういう問題、設備の問題等についても十分研究をしていただいて、そうしてある程度制限もやむを得ない、こういうふうに考えておるわけであります。私たちはこういうふうに考えてやっておりますが、これはまたもつと新しい繊維ができたらどうかという問題も実はあるのでありまして、そこに今度のいわゆる繊維の問題の一番むずかしいことは、ちょうど硫安の問題と農薬の問題とが同時に議題になりましたが、硫安の場合はあまり形が変わらない、あるいは一定成分を、アンモニアを持ったものということで問題が明らかにされておったわけでありますが、ところが農薬になると、日進月歩に農薬ができておるようですから、農薬対策というものは非常にできなかったということは御承知のとおりでございます。それにちょっと似通ったような面がこの繊維の問題にございまいますので、ここらまでで打ちどめだ、これ以上は新しいものが出る余地がないということになると、非常にやりいいのでございますが、まだまだ進歩の過程にあるというところに非常にむずかしさがございます。そこで、そのことを踏んまえながら政策を立案いたしますとすれば、やはり先ほど申し上げましたような、設備のある程度制限過当競争にならないような制限とか、あるいはまた海外からそういうような繊維の攻勢がかかった場合において、その繊維産業は参るという場合を考えてみますと、特定の産業振興法というようなもので、みんなが一緒になってこの問題を解決する工夫を考えてもらう、こういうようなことを政策として考えておるわけでございます。
  20. 大矢正

    大矢正君 先日「繊維月報」という雑誌を読ましていただきましたところが、ある新聞社の方が、このたびの新しい繊維法に対しまして、一体なぜ繊維新法が必要なのかわからないという立場議論を述べられておるのであります。それを見ますると、今日わが国は、池田総理が言われるとおり自由経済である、自由経済の原則というものは、あくまでも競争の原理に基づいて行なわれなければならない、そのようには書いてはおりませんが、私が考えるのに、そういう議論の進め方がされておるのであります。そこで、一時的にその産業過当競争のために将来危険性があるとする場合に措置することはあったとしても、恒久的に法律に基づき国みずからが乗り出して規制をすることにより過当競争を防止しなければならないという考え方は、今日その立場から見たら成り立たない、こういうことを強調しておるのであります。したがって、その人は、もう八年間も現行法に基づいて過当競争を、操短なりその他登録制なり、それぞれの立場で行なってきたのだから、もうその必要性はないということを盛んに言われております。なるほどこれも一つの議論であるには違いありません。私はただいまのその議論が正しいという意味で申し上げているのではなしに、そういう議論があるということは否定ができないと思うのであります。  そこで、大臣は、私がいま申し上げました国内にある繊維新法はもう必要ない、この際八年間やってきたのだから、あとは自由競争にまかせるべきである、自由な戦いにすべきである、こういう主張に対してどう考えておられるか、この際御所見のほどを承っておきたいと思います。これは私がわからないから聞くというよりは、いま申し上げたような議論が「繊維月報」というような繊維に関係のある雑誌に載ってくるという、このような情勢でもありますので、大臣としての御所見を発表してもらうことは適切であろうという立場において質問をいたしておるわけであります。
  21. 福田一

    国務大臣福田一君) ただいまの「繊維月報」の意見に対する御質問でございますので、さよう心得て申し述べさしていただきたいと思いますが、これは、私ははなはだ卑近な例を申し上げて恐縮ですが、病気をなおす、政治というものは、ある意味では病気をなおすお医者さんの役目でございますが、病気をなおすときに、まあ二週間薬を飲めばなおるだろうと思っても、いよいよやってみたけれども、やはりどうしてもなおらぬというときは、またあと一週間やるということはやむを得ないことです。非常に卑近な例を申し上げておしかりを受けるかもしれませんが、いまの繊維業界の実態を見てみましたときに、いままでたしかに八年間やってきましたけれども、その間に鳴いて、いわゆる能率が向上して、能率が向上したために、先ほど局長が申し上げましたような登録を維持していくほうが得だ、操短をやる必要ができてそういう問題ができた。いろいろございますが、いずれにいたしましても、いままでの過去の成長過程、また実在過程においてまた新しい事態が出てきておる。そうしてそれがまた一つの弊害を生んでおる。その弊害をためるためには、いままでの薬とは違った薬を入れて、そうしてしばらくの間やる。これはしたがって時限立法でございまして、恒久的にやるのではございません。四年間この法律でやってみたい、こういうことになっておるわけでございまして、私はこの政策の問題は、あらゆる面からいろいろ研究していただくことがけっこうでございますから、私は「繊維月報」がそういうことを言ったのは全然いかぬと、こういう考えではございません。「繊維月報」のお考えも一つの考えでありましょう。しかし、私はいまここで自由にしたならば、弊害のほうが多い、したがってこういう法律によって規制して、そうして弊害をためるほうが日本繊維業界のためにもなるし、日本経済のためにもなる、こういう観点から、私としてはこの法律を出しておるわけでございます。
  22. 大矢正

    大矢正君 大臣が十一時半までしか当委員会におられないということでありますので、あとわずかしか時間がありませんから、集約して二点ほどお尋ねをしておきたいと思います。  そこで一つは、これは衆議院でも指摘をされたことなのでありますが、衆議院だけじゃなくて、いろいろ新法に対して意見を述べている雑誌や新聞等を見ましても言われていることなんでありますが、この法律ほどわかりづらい法律はないと、こう言われております。まあ頭のよさと毛並みのよさでは大蔵官僚か通産官僚かといわれる通産省でおつくりになった法律でありますから、私どもが見てもなかなかわかりづらいということは当然のことであろうと思うのでございますが、しかし、国会の中で議論をされているだけが法律の内容でありますれば問題はないのでありますが、実際に国民の一人一人が、業者の一人一人がこの法律を読んで、その法律に基づいて事業を行なわなければならないということが裏にはあるわけであります。これは通産省でつくられた原案がこのとおりのものであったのか、あるいは原案はもっとわかりやすいものであったが、法制局でなおわかりづらくされたのであるか、その点のことはいろいろあろうかと思いまするが、この法律をかりに何度読んでもなかなか条文を理解することは困難であります。そこで、別にいやがらせで申すわけではありませんが、こういう古今まれに見る解読不能な法律というものは、これからはなるたけおつくりにならないほうがよろしいのではないか。中学校を卒業した、義務教育終了の課程の方々が読んでもわかるような法律をつくれとまでは申しませんけれども、一応の社会人としての教育がありとすれば、読んでわかるような法律にこの際すべきだと思いまするし、私はこれからの立法にあたりましては、極力そういう方向で進むべきであると思います。この点は大臣から御答弁をいただくよりは、むしろ大臣がこれから行政を行なうにあたっての考え方としていただきたいと存じます。  最後に大臣質問をいたしたい点は、この法律は四年間の効果を持つが、実際には三年間でそれを実施し、あとの一年間はアフター・ケアという形で様子を見るということになっていると思うのであります。そこで私は臨時立法でありまするから、当然のこととして、わずかの期間に限られる法律であろうということは、原則的に理解がいくのでありますが、現行法も臨時措置法でありながら八年間実施し、なおかつ、また四年間延ばさなければならなかったという、延べ十二年間にわたる法律になってしまうのであります。そこで大臣としては、いかようなる立場情勢があっても、この法律は、この法律においてきめられている四年間の期間をもって廃止ないしは廃棄するというお考えがあるのかどうか。これは将来にとりまして、またこれから議論を進める上におきまして、いろいろ重要な関連を持つ問題でありまするので、明確にひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  23. 福田一

    国務大臣福田一君) まず、最初のお尋ねでございますが、全くもう私も同感でございまして、私が出しておってそういうことを申し上げては恐縮でありますが、今後もっとわかりやすい法律をつくるということは、もう十分注意をいたしてまいりたい。なお、この法律が幸いに皆さんの御審議で通過したような場合におきましても、私はこの法律がどういうような目的で、どういうことができるというPRと言いますか、みんなにわからせる努力というものについては、極力これは通産省の事務当局をして、また関係団体をしてやらせるつもりでありまして、たとえ少しの精紡機を持っている人でも、わかりやすいような解説をぜひやらせる、こういう考えでおりますが、今後の問題といたしましては、お説のように、ひとつ十分注意をいたしたいと存じているところでございます。  なお、この法律はほかの法律とは違いまして、もう当然四年たちますと失効するということに法文上相なっているわけでございますから、この法律自体がもう一ぺん延長されるということはございません。ただ、新事態がこの業界の間に出た場合には、新しい立法がそのときにこういうものに関連して生まれないかどうかということについては、その新事態の予測ができませんので、ここで私は明言を申し上げるわけにはいかないと思うのでございます。
  24. 大矢正

    大矢正君 重ねてお伺いをしますが、新しい形で法律提出をされることは、かりに四年後にあったとしても、現行法をそのまま延長するという事態はないと解釈してよろしいのですか。
  25. 福田一

    国務大臣福田一君) これをもう一度このままの形で延ばすということはございません。
  26. 近藤信一

    近藤信一君 大臣が もう少しの時間、こちらでよろしいそうでございまするから、一、二点御質問を申し上げたいと思うのですが、現行法制定されましたのは昭和三十一年の四月、そのときにこの現行法が提案されますると、繊維工業設備制限に従ってその当時には、まあ非常に金属関係、繊維機械の金属メーカー、これは非常に反対したわけなんです。と言うのは、一方を生かすために一方を殺さなくちゃならぬ、こういう法案ではないかと、こういうことで 労使双方が猛烈な反対陳情が国会になされたわけなんであります。当時は大臣は違いまするけれども、その結果成立にあたりまして、四つの附帯決議がつけられたわけであります。そこでこの四つの附帯決議とは、どういう決議であるかというと、第一番が、「繊維機械の更新計画を毎年樹立し、これを強力に実施すること。」、これが一つで、二つ目には、「繊維機械の耐用年数を短縮し、その近代化を促進すること。」、三つ目が、「繊維機械設備の更新促進のため必要な予算的措置を採ると共に、所要資金の確保に努めること。」、四つ目は、「繊維機械輸出の増大を図るため、積極的な措置を講ずること。」、この四つの附帯決議がつけられまして、この法律案というものが成立をみておるわけであります。そこで附帯決議がつけられたあとで、当時の大臣は、その附帯決議の趣旨に基づくべく努力をしますという、いつもながらのごあいさつがあったかと思うのですが、先ほど来大矢委員から御質問がございますように、八年間の経過の中でこの附帯決議がどのように実施されておるか、この点についてひとつお尋ねしておきたいと思います。
  27. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) 経過でございますので、私簡単に御説明いたします。当時のことは私もよく存じませんけれども、当時繊維機械メーカーが相当あったわけでございますが、その繊維機械メーカーは、そのうちのある数社は、いろいろ他の産業機械でございますとか、自動車の部品工業というふうに転換をいたしました。現在は大きなのは繊維機械メーカーとして四社程度あろうかと思います。企業の関係はそういうようなわけでございます。  それから企業に対する繊維機械の発注の状況でございますが、これは当時そういうふうな附帯決議のつけられた関係がございまして、発注と申しますか、繊維工業設備の近代化につきましては、現行法のもとでも相当行なわれたのでございます。これも先生よく御承知と思いますが、推定といたしましては、現行法ができました昭和三十一年から現在までに大体年間三十万錐程度精紡機の発注が行なわれておるというふうな一応の数字になっております。そう低い数字ではないというふうに考えております。
  28. 近藤信一

    近藤信一君 いま局長答弁されましたように、繊維機械メーカーが今日他の自動車とか工作機械とか、こういう仕事に転換するということは事実であります。それはなぜかと申しますと、この現行法国会に提案されるであろうということが予想された当時に、いわゆるかけ込み設備というものが非常にあったわけです。これは大臣も御承知のことと思います。そのときには、したがって繊維精紡機の発注も相当あったわけでございます。そのときにばたばたとかけ込み設備機械メーカーのほうも相当仕事があった。ところがその後ばったり仕事がとまって、やむにやまれず、従来何十年もやってきたこのメーカーは他に生きる道を求めなければならぬ、こういう状態になって今日に至っておると私は思う。そこで今度の法案が出されるに至りまして、さらに強い制約というものが機械メーカーに加えられてくるのではないかというふうなことが予想されるわけでありまして、今度の法案とは直接は関係がございませんけれども、受ける影響というものは非常に私は大きいものがあるのじゃなかろうかと思うのですが、そういう点はいかがですか。
  29. 福田一

    国務大臣福田一君) 私は今後の問題といたしましては、御案内のように、いわゆるスクラップ・アンド・ビルドをやるわけでございまして、そういう意味でも注文があり得る。また新しく新設備をつくるということも行なわれますので、さほどの影響はないのではないかと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  30. 近藤信一

    近藤信一君 これは衆議院で参考人を呼んでいろいろと御意見を聞きました場合に、いわゆる廃棄処分になる繊維機械の古いやつを業者に直接払い下げてもらいたい、業者が後進国へ輸出できるようなことにしてもらえないかという御意見があったやに私は聞いておるのですが。
  31. 福田一

    国務大臣福田一君) われわれとしては、実はそういうようにこちらで持っている古い精紡機がよそへ行く、海外に輸出され、それによって今度は日本の品物が売れなくなるということは好ましいことではございません。その場合におきましても、業者が持っているのをすぐ直接に輸出するということにいたしますと、えらい安い値で売ってしまったり、あるいは自分の機械が売れるか売れぬかもわからないのにやってしまうという場合もありますので、そういう場合には機械業者に渡して、機械業者が出すということにいたしますと、自分らの商売にも影響がございますから、その点も十分考えてやるであろうということを考慮いたしておりますので、直接とにかく繊維機械自体の輸出に悪影響のないような措置でこの問題を処理いたしたいという考え方でございます。
  32. 近藤信一

    近藤信一君 私は当然そういうふうにならなければ、附帯決議の四つ目の輸出の増大をはかっていくというこの項目に対して了承しておられる政府当局としても当然だと思うのです。その点機械メーカーとしては、もしそういうことがなされるということであるというと、本来の機械輸出というものがますます困難になってくる、そういうふうになされるのじゃこれはたいへんだという、そういうふうないま空気があるので、そういう点はこれからひとつ政府としては十分考慮してやっていってもらいたい。
  33. 福田一

    国務大臣福田一君) その点については十分配慮いたしまして、措置をいたしたいと存じます。
  34. 大矢正

    大矢正君 局長にお尋ねをいたしますが、現行法は「繊維工業設備臨時措置法」とこうなっておりますね、新法はそれに対して間に「等」ということばが入っております。そこで、字の上においては「等」ということが入ったか入らないかということで尽きると思いますが、性格的にはかなりの違いがあるのではないかと私は思いますが、これはどこに違いがあるのか、どういう理由でこれが挿入されたのか、その点についてまずお伺いをいたします。
  35. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) 新しい法案に入っております「等」の字につきましては、これはごらんいただきますとおり、第一条の後段のほうでございますが、「繊維製品の正常な輸出発展に寄与することを目的とする。」と書いてございます。それを受けまして、これも御案内でございますが、第四十条におきまして、輸出の秩序、正常な輸出発展を確保するために通産大臣がメーカーに対しまして勧告をいたします。この勧告につきましては、設備に関する規制あるいは措置でございませんので、そういうふうなことで「等」が入っております。
  36. 大矢正

    大矢正君 次に、この設置制限についてお尋ねをいたしますが、第三条に「精紡機又は幅出機は、繊維工業設備台帳に登録を受けたものでなければ、設置してはならない。」と、こうなっております。そこで私は法案の条文にとらわれて質問を申し上げるのではなしに、基本的なものの考え方の上について理解ができない点があるのでお尋ねをするわけでありますが、かりに登録をするということになりますれば、一つの物体があり、その物体があることによって登録を受けることになると思うのであります。ところが、ここでは登録を受けたものでなければ設置ができないと、こうなっておるのでありますから、何もないうちに登録々済ませるということになるわけです。設備なり機械というものが何もないうちに登録を受けるということになるわけです。人間でありますれば、生まれたからそこに戸籍が生ずるわけであります。生まれてない人間にまで戸籍をつくるというわけはないわけです。これは一体どういうことになるのでしょうか。
  37. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) 第三条の設置制限の大要につきましては、いま御指摘のとおり多少意見なり議論があるような気もいたします。ただこれは御承知でございますけれども、一つは現在現行法がございまして登録制をとっておりますので、それとの関連——まあ悪いことばで申せば、その残滓が残っておるというようなかっこうでございますが、いずれにいたしましても、いま御指摘のございましたとおり、物体がございません前に事前登録というようなかっこうに相なっておりまして、この事前登録におきまして申請する事項は第六条にいろいろ書いてございますが、そういうふうな第六条所定の事項が、物体がない以前に登録をさせるというふうな事前登録制に相なっております。
  38. 大矢正

    大矢正君 前の法律にももちろん登録というものがあって、設備に対しての登録をしなけりゃならぬと、こうなっておりますが、これはあくまでもないものを登録ぜいと、こういうないものを登録せいというのであります。たとえば通産省なら通産省の許可のないものは設置をしてはならないというならば、これは話はわかるのです。ところがそうじゃなくて、登録を受けたものでなければ設置ができないということはどうしても理解ができないのです。そうじゃないですか。前の法律にはそういう文面があったから、この際載せたんだということでありますれば、現行法をつくるときにはそれじゃどうだったんです。もちろんそれは仮登録というものがあります。かりに登録をし一そして設置ができる。できたらそこで本格的な登録になる、こういう現行法体制はなるほどそのとおりであります。しかし、ないものを登録せいというのは元来おかしいじゃないですか。
  39. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) いま御指摘のことは、御指摘のとおりの考え方もあろうかと思いますが、まあ私ども現行法とのつながり、経過から説明させていただきますと、これも御承知でございますが、現行法におきましてやはり事前登録制をとっております。それから現行法の第八条におきまして「登録申請書を受理したときは、その精紡機、織物幅出機又は紡糸機を検査し、その精紡機、織物幅出機又は紡糸機が通商産業省令で定める技術上の基準に適合していると認めるときは、登録をしなければならない。」と書いてございますが、現行法はただいま申し上げましたとおり、技術上の基準に適合しているかどうかという点についての判断をするというふうな、非常にやかましい規定になっております。それでこれの意味合いでございますけれども、まあ私の考え方といたしましては、現行法におきましては、各繊維間につきまして御承知のとおり十の村区分を設定いたしまして、非常にある意味で窮屈な規制をやっておりました。そうしてその十の村区分が守られることが絶対必要であるという考え方に立っておりましたので、それでつくられます精紡機が各村区分に適合しているかどうか等々の問題について技術上の点も借りてそれを判断するということになっておると思います。この新しい法案におきましても、これは村区分の点は御承知のとおり十の村区分が実質的には六つの村区分になったわけでございますが、なお三年間は村区分がございます。そういういろいろの関係がございまして、事前登録制をとっておるというふうに考えております。
  40. 大矢正

    大矢正君 登録ということと設置制限についての許可制ということ、こういうこととは非常に大きな私違いがあると思うのであります。そこで内容的にはなぜ登録を受けなければならないか。それは設備の過剰が将来起こる危険性があるから、その面においてチェックしなければならぬという考え方があってこういうものが生まれてきたとは思うのでありますが、そういうことでありますれば、最初からなぜ許可制にしないのか。もとよりこの附則からまいりますと、附則の面においてでは、現行登録を受けたものは新法に基、つく登録を受けたと同様な効果を持つということが規定されておりますから、大部分の機械については自動的に登録ということになることは理解ができますが、新しく設置される場合ないしは過去において無登録において行なわれておった紡績機械というものは当然そのワクの外でありますから、登録を受けて新たにやるということになると思うのであります。そこでなぜその設置を許可制にしないのか、登録ということばで表現がされるのか、この点はどうなんです。
  41. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) これはまず第一に、ただいまも御指摘がございましたけれども、現在ございます法律から新しい法律へと移行をする新しい法案でございますので、そういう点から言いますと、現行法によっていろいろ規制といいますか、現行法による仕組みによって業界といいますか、設備規制ができておるわけでございますので、新しい法案に移行する場合に、その辺の関係をあまり変動しないほうが便利であろうということが一つあると思います。それが現行法と同じように登録制をとったものというように考えております。  それからもう一つは、御承知のとおり現行法は、使用制限でございますが、第二条で、登録を受けたものでなければ糸の製造の用に供してはならないという使用制限をやっております。それでこの法案におきましても、やはり第五条で御了承いただきますように使用制限をやっております。これは三年間村区分があるというふうなことと対応するわけでございますが、いわゆる紡出制限をやっておりますので、紡出制限の関係からまいりますと、現在繊維局にございます繊維工業設備台帳に精紡機登録されたその区分で引ける糸以外は引いちゃいかぬというふうな使用制限をやっておりますので、それをチェックするといいますか、使用制限をやりますためには、やはり登録制をそのまま引き継いで受けたほうがやりやすいというようなことでございます。そういうふうないろいろな点から単純な許可制にしなかったというふうに考えております。
  42. 大矢正

    大矢正君 次に、だいぶ飛びますが、法案の条文上わからない点があるので先ほど来お尋ねしているわけでありますが、現行法の第三章によりますと、「過剰設備の処理」と、こうなっております。ところが新法の第三章は「精紡機使用の停止」と、こうなっております。そこで、現行法と新しい法律目的を見ますると、その目的では、新法過剰設備廃棄重点を置いていると、こうなっております。ところが、実際の法の内容はそれがさかさまになって、現行法のほうが明確に「過剰設備の処理」とこうなっておる。新法のほうは「精紡機使用の停止」、これは目的と内容が明らかに違っておるのではないかと、私はそう思うのであります。現行法精紡機使用を停止するというなら、格納の裏づけをしているのであれば話は別でありますが、そういうことが新法に出てきて、現行法のほうがむしろ明確に「過剰設備の処理」と、こうなっているのはどういうことでこうなったのか、その点お伺いしておきたい。
  43. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) いまの御指摘の点につきましては、まず現行法におきまして「精紡機」と書かないで「過剰設備」というふうに書いてございますのは、ここで第二十四条に書いてございますように、精紡機、織物幅出機、紡糸機と、この三つを入れてございますので、その組みました三つを含んで過剰設備があるかないかということを判断いたしますので、過剰設備というふうに書いたと思います。新しい法案につきましては、その第十七条は幅出機、紡糸機は入ってございません。精紡機だけでございますから、精紡機というふうに把握しております。それから現行法の「処理」の字でございますが、この「処理」につきましては、これも御案内のとおり、「廃棄格納その他の方法により処理すべき」と書いてございまして、処理の内容といたしましては、「廃棄格納その他の方法」といろいろな方法があるというふうな感じ方でございます。それに対しまして新しい法案のほうは、「使用の停止」の一本で書いてございます。こういうふうなかっこうでございますが、ただいま御発言の、むしろ過剰設備廃棄促進するという考え方からくる表現につきましては、現行法のほうがもっとはっきり出ておるではないかというふうな御指摘でございますが、その点につきましては、私としましては、現行法の第一条の目的が、「繊維工業設備に関する規制」と、こうなっておりますが、それに対しまして新しい法案のほうは、「過剰精紡機廃棄促進」という字をはっきり出してありまして、この法案自体それが非常に中心的な課題である点を第一条の目的に出しておる点が違うかと思います。それから、これは少しこまかくなって恐縮でございますけれども、現行法の第、三章の二十四条の書き方は、これはここに書いてございますように、毎年少なくとも一回いろいろ意見を聞いて、そうしてその「廃棄格納その他の方法により処理すべき」云々と、こういうふうに書いてございますが、この新しい法案の第十七条におきましては、この点が、廃棄という点からは非常に明確になっておろうかというふうに考えておりますが、第十七条に書いてございますとおり、「精紡機廃棄促進しなければ繊維工業合理化に著しい支障を生じ、又は生ずるおそれがあると認めるときは、」−「共同行為を実施すべきことを指示する」というふうに書いてございまして、第十七条の共同行為を指示しますときの目的と申しますか、要請は何のためにあるかということにつきましては、廃棄促進をしなければいけないという点にございまして、その点をはっきりいたしております。そういう点からまいりますと、現行法の第二十四条は、むしろ毎年少なくとも一回はやるというふうな点も勘案いたしますと、まあ本法の運用がよくなかったというふうなこともございますけれども、いわゆる需給調整的な意味合いが深い、こういうふうな感じ方をいたしております。
  44. 大矢正

    大矢正君 次に、この共同行為についてでありますが、現行法によりますと共同行為につきましては、需給の状況その他を考えて通産大臣が「指示しなければならない。」と、こうなっております。ところが、新法のほうはだいぶこれがやわらかくなりまして、「指示することができる。」と、こうなっているはずであります。そうなってまいりますと、考え方の上でかなり違いがあるのではないかと私は思うのであります。逆に言うと、新法は指示しなければならないという、言うならば義務規定でありますれば話は別でありますが、現行法大臣に義務を負わしている、逆に言うと。ところが、新法のほうでは「することができる。」でありますから、してもしなくてもいいということになる。この法律の非常に大きな目的過剰設備廃棄にあることは当然でありますが、あわせて考えられることは、この三年間共同行為によっていかに繊維産業合理化するかということにあると思うのであります。それに対して現行法ですら「指示しなければならない。」と言って、大臣に義務を課しているにもかかわらず、新法においては、やってもやらなくてもいいという、言うならば「することができる。」 という表現というものはさかさまではないかと、私はそう思うのでありますが、お答えをいただきたい。
  45. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) 確かに御指摘のような表現の違いがございますが、これは実は私もあまり詳しくございませんが、一つは法律の技術的な書き方、これはむしろある意味で法制局の従来のやり方、約束ごとかと思いますが、第十七条におきましては、「合理化に著しい支障を生じ、又は生ずるおそれがあると認めるときは、」というふうに通産大臣の判断が入っております。それでそういうような判断が入っておるときには、共同行為といいますか、その義務を課するというふうなことについて、通産大臣法律上その義務負担につきまして、その権限をこの法律によって指示することができるという書き方によって、通産大臣がその権限を獲得をするというふうなことではなかろうかと思いますが、そういうふうな一つは法律の技術的な書き方の点はありまして、こういうふうになっておろうかと思います。
  46. 大矢正

    大矢正君 先ほどの第三章の表現、それからただいまの共同行為に対する通産大臣の指示について、これはいま局長の御答弁によりますと、技術的なことでそうなっているようにお考えのようでありますが、私はそうではなくて、この法律が持つ基本的な性格の上において違った面があるのではないかという一つの考え方を持っております。しかし、これはきょうは一とおり事務当局の御答弁だけを聞いておくという考え方を私持っておりますので、あらためて次の委員会議論をさせていただきたいと存じます。  次に、十二時も過ぎてまいりましたので、あと一点だけ勉強のためにお尋ねをしておきたいと思うのでありますが、現行法によりますと、村区分についての紡績機械規制のしかたについては、先ほど来局長答弁のとおり、十に区分をされております。私の認識に誤りがなければ、たとえば綿紡においては、綿糸、それから綿、スフ混紡、これらの糸をひくことができる、あるいはまた、梳毛に至りましては、梳毛もしくは梳毛式混紡糸はひくことができると、こういうように十の村区分それぞれに従って紡出をする糸の制限がありましたが、新法によると、これが四つに集約をされる。四つといいましても、自由の分がありますから、実際的には三つに集約されるということになると思うのであります。現行法の十の村区分に対する認識は一応私は持つことができるのでありますが、新しい法律に基づく三つの村区分ということは、具体的にはその紡績機械のひく糸の内容というものはどういうことになってくるのか。勉強の意味で、この際できる限りわかりやすく御答弁をいただければ幸いだと思います。
  47. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) 御指摘のとおり、本法案におきましては、村区分を実質的に三つに集約をいたしております。それでまず第一の特徴でございますけれども、これは村区分でございますので、村区分をきめました意味合いからいきまして、それぞれの村区分について専属糸が出てくるわけでございます。その専属糸につきましては、これは従来と違いまして、純糸だけということにいたしております。その純糸の内容は、他の糸の分が一%以下とか、三%以下とか、いろいろきめ方はございますけれども、いずれにしても純糸を専属糸にしておりますので、たとえて申しますと、純梳毛糸につきましては、これは梳毛がそれ単独で第二の村を設定しておりますので、純梳毛糸は第二の村、つまり梳毛村しかひけない、第一、第三ではひけないというかっこうになっております。そういうことで、第一の登録区分におきましては、綿、スフ、特綿、特繊とも従来の村から入っておりますが、合繊がございますので、ほかの村でひけなくて、第一の村に登録をされたものしか専属的にひけないものは、純綿糸、純スフ糸、純合繊糸、こういうことになります。第二の村では純流毛糸、第三の村におきましては、そこに入っております現行法の村のものが四つ入りましたが、純紡毛糸、純絹糸、純麻糸というふうなものが第三の村の専属糸になって、ほかの部落のものはひけない、こういうかっこうでございます。  それからその次に、これも御案内でございますけれども、複合繊維時代に対処するという意味で、混紡糸につきましては、各村を問わず全部自由ということにいたしました。したがって、綿とスフとの混紡糸、それから綿と合繊との混紡糸、御案内のとおり綿三五%、テトロン六五%というような糸が最近はやっておりますが、そういうふうなものは各村を通じてこれは自由にひけると、こういうかっこうになっております。  それから、物理的な、あるいは機械的な構造から申し上げますと、これは私はあまりよく知りませんが、知っただけを申し上げますと、第一の村に入りましたスフ村と現行のスフ村と綿村につきましては、同一の精紡機をもってただいまの機械的な構造から申し上げますと、綿糸もひけるしスフ糸もひけるというふうなかっこうになっております。それから、毛の関係から申し上げますと、たとえば構造的に申し上げますと、第二の村の梳毛式精紡機は、毛とそれから合成繊維の混紡糸は機械的にひけるというふうなことだそうでございます。合繊の関係は、いずれにいたしましても御承知のとおり合繊糸を紡出しますために二通りの型がございまして、綿スフ型合繊精紡機、それから梳毛式合繊精紡機がございまして、これは綿スフ型の精紡機から申し上げますと、綿とスフあるいは綿スフと合繊との混紡糸がひけます。しかし、合繊と毛との混紡糸は綿スフ型の精紡機ではひけないというかつこうになっております。逆に毛と合繊との混紡糸につきましては、これは梳毛式精紡機ではひけるけれども、綿スフ型の精紡機ではひけないというふうなことになっております。  それから、第三の村に入りました、これは麻とか絹とかいろいろございますが、それを紡出します精紡機は、大体においてそれぞれの糸に個有な精紡機が多いと、こういうことになっております。
  48. 大矢正

    大矢正君 この過去において十の区分が行なわれたそれぞれの機械というものは、法律の上におきましては、他の糸をひいてはいけない、こういうようになっているからひかないだけで、−機械それ自身は他の糸もひけるという状態に全部があるわけじゃないですか。あるわけですね。その具体的なひとつ内容を資料にして出していただくことができませんか。これは私ども、たとえばどの機械ならば何と何の糸をひけるのかということの内容が実はわからないのです。率直に言うと。これでは過去の十の村区分を四つに、実際には三つにしたから、それが具体的にはどういう効果影響を及ぼすかということについて理解するのには非常に困難なんで、できることならば、この際ひとつそれを早急に出していただいて勉強さしてもらいたいと思っております。
  49. 磯野太郎

    政府委員磯野太郎君) たいだま御要求になりましたものは早急にお出しいたします。まあ非常に大ざっぱに申し上げますと、いま御指摘がございましたように、大体綿とかスフのような短繊維につきましては、これは同一の精紡機をもって綿でもスフでも引けるということであろうと思います。それから絹でございますとか、いろいろ長繊維と言っているのがございますが、これにつきましては、長繊維を引く型の精紡機がまあ大体においてそれを引いていける。非常に大ざっぱに申し上げるとそういうことでございますが、いずれにいたしましても、これは資料をつくりまして御提出申し上げます。
  50. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑はこの程度にとどめまして、本日はこれをもって散会いたします。    午後零時十一分散会