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1964-03-26 第46回国会 参議院 商工委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月二十六日(木曜日)    午前十時五十四分開会     —————————————   委員の異動 三月二十四日   辞任      補欠選任    大矢  正君  大森 創造君     —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     前田 久吉君    理事            赤間 文三君            上原 正吉君            近藤 信一君            田畑 金光君    委員            川上 為治君            岸田 幸雄君            剱木 亨弘君            豊田 雅孝君            吉武 恵市君            阿部 竹松君            椿  繁夫君            奥 むめお君   衆議院議員    発  議  者 板川 正吾君    修正案提出者  始関 伊平君   国務大臣    通商産業大臣  福田  一君   政府委員    通商産業政務次    官       竹下  登君    通商産業大臣官    房長      川出 千速君    通商産業省通商    局長      山本 重信君    通商産業省企業    局長      島田 喜仁君    中小企業庁長官 中野 正一君   事務局側    常任委員会専門    員       小田橋貞壽君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○特定産業振興臨時措置法案(内閣送  付、予備審査) ○市場支配的事業者経済力濫用の防  止に関する法律案衆議院送付、予  備審査) ○輸出保険法の一部を改正する法律  案(内閣送付予備審査) ○中小企業指導法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付) ○中小企業信用保険法及び中小企業信  用保険公庫法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○商工組合中央金庫法の一部を改正す  る法律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 前田久吉

    委員長前田久吉君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  まず、委員長及び理事打ち合わせ会協議事項について報告いたします。  本日は特定産業振興臨時措置法案市場支配的事業者経済力濫用防止に関する法律案及び輸出保険法の一部を改正する法律案提案理由説明を聴取し、中小企業信用保険法及び中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案衆議院における修正点説明を聞き、この法案及び他の中小企業関係法案補足説明を聞いたのち、三法案に対する質疑を行なうことになりましたから、御承知願います。     —————————————
  3. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 次に、昨日予備審査のため、本委員会に付託されました特定産業振興臨時措置法案議題といたします。政府から提案理由説明を聴取いたします。福田通商産業大臣
  4. 福田一

    国務大臣福田一君) ただいま上程されました特定産業振興臨時措置法案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  御承知のように、わが国は、国際経済の弱異をになうものといたしまして、貿易為替自由化を着々と推進し、さらに関税の一括引き下げの動きに対しても、原則としてこれを受け入れていく方針を固めております。  このような国際経済環境変化に対処しつつ、国民経済の健全な発展を確保していくためには、申すまでもなく、かかる情勢に敏速に適応し得るよう国内体制を十分整備しておくことが必要であります。ひるがえってわが国産業の実情を眺めますと、今後の経済成長を先導することを期待されている重化学工業部門の多くにおいて合理的な生産体制がいまだ確立せず、経営基盤も脆弱であるという事情があり、国内産業体制は遺憾ながらいまだ十分整備されているとは申しがたいのであります。したがいまして、国際経済環境変化のもとで将来の経済成長を確保するためには、これらの部門において、早急に合理的生産体制確立経営基盤強化を通じ産業活動効率化をはかっていくことが必要であると考えます。  わが国産業の包蔵するこのような欠陥を是正し、産業活動効率化するための努力は、まず産業界において行なわれるべきことは当然でありますが、わが国産業資金調達の方式をも考えますと、その努力を実効あらしめるためには、産業界と密接な関係をもつ金融界からも協力を得る必要があり、さらに国民経済の健全な発展を確保し、国民の福祉の向上につとめるという見地から政府も民間における努力を助長する必要があると考えられます。  そこで、政府といたしましては、企業自主性をあくまでも尊重しつつ、合理的生産体制確立経営基盤強化を通じ産業活動効率化するための助成を行なうことにより、特定産業振興をはかることとし、その法的裏づけといたしまして、この法律案提出した次第であります。  次に、この法律案主要点について、御説明申し上げます。  第一は、この法律の適用を受ける特定産業の選定に関することであります。特定産業指定は、あくまでも産業界自主性を尊重して、将来の経済成長を先導すべき特定重化学工業部門のうち、その業界から申し出のあったものについて審議会意見を聞いて行なうことといたしております。  第二は、政府産業界及び金融界は、合理的生産体制確立経営基盤強化を通じ産業活動効率化して特定産業振興をはかるための基準について討議し、政府及び産業界の合意に基づいて基準を決定することであります。  この振興基準では、規格の整備、生産専門化設備適正化事業共同化合併等に関する特定産業ごとの一般的な方針が定められ、企業自己責任に基づいて行動するときの好ましい判断材料を提供しようとするものであります。  第三は、特定産業を営む者、政府関係金融機関及び銀行が産業活動効率化するために努力ないし留意すべきことを明らかにしていることであります。  第四は、政府助成に関することであります。  振興基準は、政府も参加して作成されたものである以上、その円滑な実施をはかることは、国の方針にも適合することでありますから、振興基準で定められた方針に従って産業活動効率化するため必要と認められるときは、政府は、資金の確保に努めるとともに、法人税または登録税軽減措置を講ずることといたしております。  第五は、合理化のための共同行為の特例に関することであります。  合理化のためにする一定の共同行為が、あくまでも振興基準で定められた方針に従って産業活動効率化のために行なわれる限り、これを許容してゆくことが必要と考えられますので、公正取引委員会の認可を要件として、ここに独占禁止法との調整をはかることとした次第であります。  第六は、合併に関する判断基準を公表することであります。これは、企業合併しようとするときに、独占禁止法に抵触するかどうかを関係事業者が容易に判断できるようにして企業合併を円滑ならしめようとする趣旨に基づくものであります。  その他、振興基準内容を常に公正かつ適切たらしめるために、その作成にあたっては学識経験者あるいは関連事業者並びに中小企業者及び労働者等利害関係者意見を十分に聞くこととしたほか、政府産業界及び金融界から振興基準を変更すべきことを請求し得る規定を設けるなど所要規定を整備いたしております。  なお、本法案は五年間の限時法といたしております。これは、貿易自由化等により経済事情が著しく変動しつつある期間について、盛業活動効率化を有効に促進するため、本法案規定するような措置を講ずることが適当であるという趣旨に出るものであります。  以上、本法案趣旨の概略を御説明申し上げましたが、要は今後のわが国経済成長を先導すべき特定重化学工業部門確立発展をはかるため、これらの部門のうち競争力培養に向かってみずから努力するものに対し、政府はもとより、金融界からもまた応分の協力を期待し、激動しつつある国際経済環境の中で日本経済の占めるべき名誉ある地歩をすみやかに築いてまいろうとするものであります。  何とぞ慎重に御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  5. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 以上で提案理由説明は終了いたしました。自後の審査は後日に譲ることといたします。     —————————————
  6. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 次に、二月二十六日予備審査のため本委員会に付託されました市場支配的事業者経済力濫用防止に関する法律案議題といたします。発議者板川正吾君から提案理由説明を聴取いたします。板川正吾君。
  7. 板川正吾

    衆議院議員板川正吾君) 日本社会党提出市場支配的事業者経済力濫用防止に関する法律案につきまして、提案者を代表し、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  御承知のように、日本経済の最も特徴的な現象は、高度経済成長政策によって、産業構造重化学工業化が進み、さらにIMF八条国移行OECD加入等開放体制を迎えて、大資本中心として、資本生産の集中、系列化がきわめて強化されてきたということであります。言葉をかえて申しますと、今日の日本経済は、すでに独占資本の支配する体制確立されているということができるのであります。  もちろん、過小な規模企業が多数乱立し、過当競争弊害も一部に見られるところでありますが、これらの現象は、主として中小企業の側面についていえることであって、資本面でも、生産面でも、独占的な大資本成長は著しく、中小企業との格差をますます拡大しているのが、今日の経済情勢であります。  このように独占資本が支配するわが国経済独占弊害がもたらす当然の帰結として物価問題、労働問題中小企業問題、農業問題等に、多くの矛盾を現出して高度成長政策を破綻させつつあることは、いまさら申しあげるまでもないと思うのであります。  第二次大戦後、西欧各国は、この独占弊害を解決するために意を用い、その有効な方策としてEECを中心として独占禁止政策強化してまいりました。そして、この独占禁止法の精神は、現在の経済活動の上に強く反映されつつあるのが世界的趨勢であります。ところがわが国におきましては、独占禁止政策は一貫して緩和もしくは骨抜きにされるという方向に努力が続けられていることは、きわめて遺憾であるといわざるを得ないのであります。  ただいま政府から提案されました特定産業振興臨時措置法案も、開放体制のもとにおける国際競争力強化という美名のもとに、たくみに独禁法骨抜きをはかって、さらに、独占寡占体制確立し、独占資本利益を一そう高めることをねらったものであります。この法案政府独占的大企業との結合を明文をもって宣言し、政府は税制、金融その他あらゆる面での援助を公約し、カルテルを拡大、合併を奨励しているのでありますが、さらに政令によって指定業種を無限に拡大すれば、独禁法は完全に骨抜きとされ、この結果、中小企業には企業整理を、農民には高い農業資材を、一般消費者には物価値上げを、労働者には首切り合理化をもたらす以外、何ものでもありません。  現在、わが国では従業員千人以上の大規模事業所は、事業所数で全製造業事業所数の〇・三%を占めているのにすぎませんが、収益では全体の三三%を占めているのであります。また、最大五社で市場の五〇%以上を占めている業種は、バター、チーズ、ビール等の食品、ナイロン、テトロン、ビニロン等合成繊維、硫安、尿素等の肥料、銑鉄、粗銅、各種鉄鋼製品、アルミ、セメントをはじめ軽三輪、乗用車、トラック、造船、重電機等わが国主要産業のほとんどにわたっているのであります。現行独禁法のもとにおいてさえ、このように大資本中心とした独占寡占体制確立され、中小企業者農林漁業者労働者一般消費者カルテル価格管理価格をもって高物価を押しつけていながら、さらに特定産業振興法をもって独占寡占体制強化をはかろうとすることは、まことに言語同断と言わざるを得ません。  今日、政治の立場にある者として、最も大切なことは、さらに独占寡占体制を強めることではなく、独占寡占のもたらす弊害をいかにして除去するかということに意を注ぐべきであると思うのであります。本法案提出した理由も実はここにあるのでありまして、独占寡占弊害、危険に対して、公正取引委員会の機能を強化し、独占禁止法の不備を補完することといたしたものであります。  最近公正取引委員会が、こうした独占資本の目にあまる価格政策、とくにガラス価格に取り組もうとしておりますし、その影響もあって若干のガラス価格引き下げも行なわれました。しかし、企業秘密主義や、公正取引委員会の権限の低いことは、コストや価格のメカニズムの実態さえも把握できない状態にあります。こうした実態を打ち破ることこそ緊急の課題なのであります。  市場支配的事業者経済力濫用防止法に関しましては、すでに同様のものがイギリス、西ドイツ、ノルウエー、オランダ、ベルギー等においても存在しているところであります。わが国独占禁止法カルテルによる価格維持については規制しておりますが、少数の大企業者間で暗黙の中に形成されるカルテル価格やまたいわゆる管理価格については、規制が不十分でありますので、独占禁止法を補完する意味で本法を提案した次第であります。  次に、この法律案内容について御説明申し上げます。  第一に、この法案では、公正取引委員会が商品または役務の供給量設備規模資本額等がその取引分野における支配的事業能力を有する事業者市場支配的事業者として指定し、これらの支配的事業者が、取引上優越した地位を不当に利用して行なう行為、すなわち管理価格形成等につきましては、現行独占禁止法違反行為とみなしてこれを排除する措置をとらせるようにいたしました。  第二に、国内会社であって、その総資産が百億円をこえるもの、または、外国会社であって、公正取引委員会指定する基準に該当するものは、毎事業年度業務状況その他必要な事項に関する報告書提出させ、公正取引委員は、市場支配的事業者活動状況を調査し、本法の適正な運用上必要ある場合はそれを一般に公表することができることといたしました。  第三に、公正取引委員会に、市場支配審議会を置き、この法律の施行に関する重要事項について調査審議し、公正取引委員会に建議することができるようにいたしました。  最後に公正取引委員会は、この法律運用状況及びこの法律目的達成上必要な意見を国会に報告することとし、これによって、市場支配的事業者規制について万全の対策を期すこととしたのであります。  以上は、本法案趣旨を簡単に御説明申し上げたのでありますが、要は、すでに今日、独占寡占体制確立している市場支配的事業者に対して、その経済力の乱用を防止することにより、常にその犠牲となっている中小企業者一般消費者利益を保護し、もって国民経済の健全な発達をはかりたいと念願した次第であります。  御承知のように、政府自民党は、過般の総選挙にあたり、わが社会党物価問題についての公開質問状に対し「管理価格の疑いあるものにはすみやかに検討を加え、もし不当な価格維持が行なわれていれば、これに対して必要な措置を講ずることは当然である」と回答し、管理価格の排除を国民に公約したのであります。  したがって、本法の制定は、この政府自民党国民への公約を果たすことでもあると存じますので、何とぞすみやかに御審議の上、御賛同くださいますようお願いをいたします。
  8. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 以下で提案理由説明は終了いたしました。自後の審査は後日に譲ることといたします。     —————————————
  9. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 次に、一昨日予備審査のため本委員会に付託されました輸出保険法の一部を改正する法律案議題といたします。政府から提案理由説明を聴取いたします。福田通商産業大臣
  10. 福田一

    国務大臣福田一君) 輸出保険法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  御承知のように、わが国経済は、貿易為替自由化推進等により、急速に開放体制移行しつつありますが、このような情勢のもとにおいて輸出振興をはかる必要性が従来に比較して一そう増大してきていることはあらためて申すまでもありません。しかしながら、国際間の輸出競争はますます激化の度を加えている現状でありまして、わが国輸出をめぐる環境はきわめてきびしいものがあり、輸出振興策の重要な一環として輸出保険制度の持つ意義はきわめて大きなものとなっております。  わが国輸出保険制度昭和二十五年に発足して以来、その内容は逐次拡充され、現在八種類の保険を含む制度成長しておりますが、海外諸国制度と比較いたしますとき、なお、不備な点が見られますので、開放経済体制への移行に対処して輸出振興をはかるため、この際、特に改善を要する諸点について、所要改正措置を講ずるため、この法律案提出した次第であります。  次に、この法律案内容について、御説明申し上げます。  第一は、普通輸出保険増加費用保険に付することができる費用範囲を拡大することであります。従来、この保険におきましては航海または航路の変更により新たに負担すべきこととなった海上の運賃及び保険料のみがてん補の対象となっておりましたが、陸上の運賃及び保険料につきましても、この保険を付することができることとするものであります。  第二は、普通輸出保険により担保される船積み前信用危険の範囲を拡大することであります。これによりまして、従来から担保されております輸出契約の相手方の破産のほか、新たにこれに準ずる支払い不能によって輸出ができなくなることにより受ける損失をてん補することとしております。  以上が、この法律案提案理由及びその要旨であります。  何とぞ、慎重御審議の上御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  11. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 以上で提案理由説明は終了いたしました。自後の審査は後日に譲ることといたします。     —————————————
  12. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 次に、中小企業指導法の一部を改正する法律案中小企業信用保険法及び中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案、以上三案を一括して議題といたします。  まず、中小企業信用保険法及び中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案につきましては、衆議院において修正されておりますので、その修正点説明を聴取いたします。始関伊平君。
  13. 始関伊平

    衆議院議員始関伊平君) 中小企業信用保険法及び中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案に対し、衆議院商工委員会において去る三月十九日決議いたしました衆議院における修正案につきまして、修正趣旨修正案提出者を代表いたしまして、私から御説明申し上げます。  まず、修正案の案文を申し上げます。   中小企業信用保険法及び中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案中第二条のうち第九条に一項を加える改正規定中、「総裁を通じて」を削る。  以上が修正内容であります。つまり今回の改正案におきまして、現公庫法の第九条には従来「監事は、公庫業務監査する。」と、これだけの規定がありますのを、「監事は、監査の結果に基づき、必要があると認めるときは、総裁又は総裁を通じて主務大臣意見提出することができる。」こういう改正案になっておるのでございますが、この改正案の中の「総裁を通じて」を判ろうとするものであります。つまり、直接に通産大臣監事から意見提出ができるようにしよう、こういう趣旨でございます。  これは政府がこの改正案を提案いたしました理由については、公庫業務の適切な運営を確保するためには、公庫業務監査について、さらに万全を期する必要があるということと、それからさきに行政管理庁等の勧告の次第もあった経緯にかんがみまして、監事職責を明らかにいたしまして、公庫業務監査について、その職責の万全を期するという趣旨から、この改正案提出されたのであります。  したがいまして、監事総裁監査の結果を提出するのほか、直接主務大臣意見提出することができることといたしましたほうが、さらに改正趣旨を生かすことになると信ずるものであります。  以上が修正案提出いたしました理由であります。  何とぞ御審議の上御賛同をお願いいたす次第でございます。
  14. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 以上で修正点説明は終了いたしました。  次に、三案につきまして、政府から補足説明を聴取いたします。中野中小企業庁長官から説明聴取中野中小企業庁長官
  15. 中野正一

    政府委員中野正一君) お手元に関係資料が配付してあると思いますので、それに従いまして御説明を申し上げます。  中小企業指導法の一部を改正する法律案説明最初に申し上げたいと思います。  こういう中小企業指導法の一部を改正する法律案という印刷物がございますので、この法律に従って御説明をいたしたいと思います。ただこれは中小企業指導法の一部改正、特に中小企業指導センター業務内容を拡大する、それと同時に、指導センターに対して来年度一億五千万円の政府出資をいたしますので、その関係規定改正というのがこの改正点でございます。  したがいまして、中小企業指導法に基づいていま国の中小企業指導センター都道府県五大市等が行なっておりまするいわゆる中小企業に対する指導事業というものは、どういう体系でやっておるかということを最初に御説明申し上げますと、今度の改正でどういう点が追加されるかということで、こういう一枚紙を印刷してお配りしてございますので、これをごらんいただきたいと思います。  これにございますように、中小企業指導法に基づく指導事業体系といたしましては、上に、左のほうにいま申し上げました日本中小企業指導センター特殊法人政府出資特殊法人が東京にございまして、その右のほうに都道府県等がございます。都道府県五大都——都道府県等となっておりますが、それが中小企業者に対して指導をやるわけでございますが、それ以外に小規模事業者中小企業者のうちの小規模事業者に対しては商工会または商工会議所日本経営指導員指導もございますので、その関係を書いてございます。黒棒が現在やっておることでございまして、点々のほうが今度の法律改正事業を追加しようということでございます。  中小企業指導センターの仕事といたしましては、都道府県で行ないまする中小企業に対する技術指導あるいは診断指導を行ないまするいわゆる府県中小企業指導担当者、それの養成と研修をやっております。それが下の欄でございます。それから上の欄は、なお、都道府県がやりまするそういういろいろの技術関係経営関係指導事業に対して協力をするということで、現在中小企業指導センターには、左の欄にございますが、十五名のいわゆるコンサルタント経営技術面コンサルタント専門家がありまして、これが随時都道府県五大都市等に参りまして、そういう指導事業協力をいたしております。それが府県に対する関係でございます。  それから府県はしからばどういうことをやるかというと、府県の下のほうに棒が引っ張ってありますように、第一は診断指導、それから技術指導、それから中小企業管理者及び技術者研修、こういうことを府県中小企業者に対してやっております。  それから指導センターのほうは、いままでは中小企業者には直接は指導はやっておりません。ところがこれは各中小企業者から非常に要望の強いのは、特に技術関係都道府県にありまする試験所等でいろいろ勉強ができないような高度な技術、たとえば機械加工自動化というような、いわゆる一番切実に中小企業者が望んでおりますようなことは、なかなか都道府県指導所なり試験所では教えてくれませんので、これを直接に中小企業指導センターにそういう施設と建物をつくりまして、中小企業者に対して直接都道府県で実施が困難な高等な技術研修をやろうというのが今度の法改正でございます。  それからもう一つは、商工会とか商工会議所におります経営指導員、これは小規模事業者に対して経営改善のいろいろ指導をやっておりますが、これに対する今度は研修を、いまの法律ではこういうことはできないようになっておりますので、研修もできるようにしようという、点線が改正案でございます。  それで、法律に入っていただきまするというと、そういう趣旨で第一は、いわゆる予算の定める金額の範囲内において指導センターに出資をすることができる、その出資をしますというと、それだけ資本金がふえる、こういう規定が第一でございまして、現在指導センターは五千万円の政府出資でございますが、来年度は一億五千万円の予算を追加をしたい、こういうことでございます。  それからその次がいま申し上げました都道府県研修を行なうことが著しく困難な中小企業の高度の技術に関して中小企業者とかあるいはその従業者に対して直接研修を行なうことができるようにする。  それからさらにその次に、第八条の目的を達成するために必要な業務でありまして、特に通産大臣の認可を受けた場合には、ここにずっと書いてありますこと以外にできるということで、この規定によりまして先ほど申し上げました商工会の経営指導員に対する研修を来年度からやりたいというのがこの改正案趣旨でございます。  それから次に、中小企業信用保険法及び中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。  これも法律案を見ていただくわけでありますが、ごくこれ一部の改正でございますので、おわかりにくいかと思いますので、一応もとの法律を、四十六国会提出の法令集というのがございますので、これをちょっとお開き願いたいと思います。  これの四五ページに保険法がありまして、今度の改正のところは四九ページでございます。四九ページの第三条保険契約、ここに書いてありますことは、要するに中小企業信保険公庫が、地方にありまする保証協会を相手といたしまして、いわゆる保証協会の中小企業者に対して行ないまする債務の保証、その保証に対してそれを保険をするという契約をすることができるということが書いてあるわけでございます。ちょっと条文はごちゃごちゃしておりますが、そうしてその種類が、保険の種類はいわゆるまん中ごろにありますが、保険額が二十万円までのものは小口保険と言っております。それから五十万円までのものが第一種保険、それからその次にあります。百万円までのものが第二種保険ということで、保険としては小口保険、第一種保険、第二種保険と三つございまして、どうしてこういう三つに分けておるかと申しますと、小口のものについては保険料をごく安くする。それから第一種保険につきましても第二種保険よりは小口でございますので安くするということで、保険料が違っておるだけでございます。  そういう規定を今度改正するわけでありまして、第一点はいま申し上げました小口保険の二十万円というのが、最近の経済情勢から見てちょっと低過ぎやしないかという議論がございますので、これを三十万円に引き上げる。それから第一種保険の五十万円というのを百万円にまで上げる。それから第二種保険の七百万円を一千万円に上げる。それから組合の場合は従来から最高限度が一千万円でございましたが、この組合の保険の最高限度を二千万円に上げる。これがいまの法律のほうに返りますと、中小企業信用保険法の一部を改正する法律案の後段のほうの内容、そういうことでございます。  それからもう一点、ちょっと複雑な点は、第三条第一項中「債務のうち当該期間の満了の時までに弁済期」がくるものというのを、全部削ってしまうという改正をやりたいということでございますが、これもちょっと別に、こういう「特殊保証の範囲拡大について」という刷りものがございますので、これをごらんいただいたほうがわかりいいかと思います。特殊保証というものは現在の法律にございますが、これはここにちょっと説明が書いてございますが、読みながら御説明いたしますと、現行中小企業信用保険法におきまするいわゆる特殊保証というのは、信用保証協会の保証契約におきまして、期間と限度をきめまして、その期間内に生じまして、かつ期間内に債務が発生し、同時にその債務の弁済期が到来するというような債務について、その元本が限度額に達するまで保証責任を負うというものを、法律によりまして特殊保証といいまして、そういうものについても保険ができる、こういう規定が第三条の規定になっておりますが、ところがこの特殊保証といいますのは、いま申し上げましたように、当該期間の満了のときまでに弁済期がこなければいけないという制約がございまして、そういう制約がありますと、たとえば四月から九月までの期間というふうにきめておきますと、八月なり九月の初めごろに債務が発生するというようなものは、九月までに弁済期がこないわけです。弁済期は十二月とか一月になる、こういうようなものはこの保証ができない、こういうことになりまして、非常に中小企業者に不便を与えておる現状でございます。したがいまして、今回の特殊保証の範囲の拡大は、この当該期間の満了のときまでに弁済期がくるという制約をはずしまして、その期間内に債務が発生すればいい、ということにいたしたわけであります。下に図が書いてございますが、現行の特殊保証、これが縦のほうが保証の限度、たとえば五百万円なら五百万円という保証の限度をきめまして、保証契約で定める期間というのは、四月からたとえば九月までというふうにきめるわけであります。その間にたとえば手形なんかの割引を保証してもらうというような場合には、この保証限度、五百万円の範囲であれば、百万円でも二百万円でも、そのつど自動的に保証ができるという形にいたしておるわけであります。それで横の白い欄がそういうことでございます。全部九月までに弁済期がきております。したがって、この弁済期がこないで次期にはみ出すのは、現在では保証あるいは保険制度に乗らん、こういう不便があるのでございまして、改正後のほうは、ここに書いてありますように、保証契約で定める期間の外に飛び出しておりますが、この飛び出しておるようなものは、現行の保証制度では保険にかからないという不便がございますが、今後は弁済期がくるという制限をはずしますので、その保証契約にきめた期間内に債務が発生すれば全部保証にかかる、こういう改正でございます。  これによりまして、特に手形割引の保証を今度拡大したいということの要望がございますので、この要望にこたえ得るのじゃないか。そして現在この不便な方法によりまして、各府県に五十一の保証協会がございますが、その約半分以上が、三十程度が、この不便な特殊保証ということをやっておりますが、こういうふうに改正していただくと、全部の保証協会で手形割引の保証ができますし、また従来やっておりましたところも相当規模を拡大し得るのじゃないかというふうに考えて改正をお願いしておるわけでございます。  それからその次の第二条でございますが、これは保険公庫法のほうの改正でございまして、これは先ほどちょっと申し上げましたが、予算をもちまして出資ということがきまりますれば、自動的に、法律改正を一回々々やらなくても、それだけ出資がふえたという規定に直そうとしておりますが、それと同じ趣旨でございまして、特にここにあります。二ページにありますように、融資基金に充てるために必要があると認められるときは、予算できめまして出資をするということで、来年度は四十五億お願いをしております。融資基金は毎年出資をふやしておりますので、一々法律改正しなくても出資金の増加ができるようにいたしたいということでございます。  それから、先ほどちょっと御説明がありましたが、監事の権限を強化するという規定がその次の改正案でございます。  それから、次に商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案につきまして御説明を申し上げます。  これもちょっと法律のごく一部を直しておりますので、その前にこの法案の要綱というのをお配りしてあると思いますので、このほうで説明をさしていただきます。  第一点は、政府出資の増額と資本金の条文整備の問題で、いまの保険公庫法で御説明したのと同じような趣旨でございます。現在商工組合中央金庫は、政府の出資が七十七億でございます。それから政府以外の民間の出資が六十三億でございますが、来年度政府出資を三十億ふやそう、その際に一々やはりこれも法律改正をしなくてもいいような規定にすると同時に、商工組合中央金庫の資本金の規定が非常に複雑でございますので、この際わかりやすく整理をしようということでございます。  それから、その次に、準所属団体の拡大ということでございますが、これはちょっとあとで申し上げます。それから、その次に、商工組合中央金庫の業務に外国為替業務を追加したい、現在は内国為替業務はやっておりますが、外国為替業務ができないような規定になっておりますので、中小業者に不便を与えておりますので、外国為替業務をできるようにしようということでございます。それから保護預かりの制度に貴金属を追加するというこまかい改正をやっております。  それから業務代理ということを商工中金がやっておりますが、これを主務大臣の認可を受けまして、営利を目的としない法人の業務の代理をする、たとえば、先ほど申し上げました信用保証協会の保証料等を保証協会にかわって受け取るというようなことは、現在の規定ではできません。そこで営利を目的としない法人の業務の代理を行なうことができるという改正にしますと、これも中小業者のために便宜じゃないかというふうに考えております。  それから最後に、役員の任期の変更でございます。現在は金庫の理事長及び理事の任期が五年でございますので、ほかの政府関係機関は四年というような通例になっておりますので、この際その任期を四年にしたい。もちろんこれは経過規定で、現在理事長なり理事であられる方は、従来の規定が働いて五年の任期ということになるわけでございます。今後、新しい法律が通ってから新しく任命せられる委員の方から適用されるということでございます。  それから残しました第二番目の点でございますが、これは法律のほうをごらんいただきたいと思いますが、この冊子で言いますと、一一四ページに、商工組合中央金庫法第二十八条の二という規定がありまして、準所属団体、これは前の既存の法律でございますので、これをちょっと読み上げますが、現在の二十八条の二の規定でございますが、御承知と思いますが、商工組合中央金庫はいわゆる所属団体というものに対して金を貸せる、こういう規定になっておりますが、その所属団体というのはいわゆる協同組合であるとか商工組合、環境衛生組合とか、そういうものがたくさんここに資格団体というものがありますが、そういう組合であって商工組合中央金庫に出資をしておるものには、所属団体として金を貸せる、こういう規定になっておりますが、ここにあります準所属団体、いわゆる所属団体に準ずるものにも貸せるということでございまして、どういうものが準所属団体かと言うと、ここにありますように「輸出ニ関シ所属団体ノ構成員ノ共通ノ利益ヲ増進スル為必要ナル施設ヲ行フ法人」でありまして「主務大臣ノ認可ヲ受ケタルモノハ前条第一項第一号乃至第四号ノ規定ノ適用ニ付テハ之ヲ所属団体ト看做ス」、この前条第一項第一号ないし第四号というのはいわゆる貸付でございまして、その貸付ができる、こういうことでございまして、これはどうしてこういうことになりましたかというと、いわゆる組合がいろいろな活動をいたしますが、組合が一つの活動として、たとえば共同で販売する、原料を共同で購入するということをやっておりますが、その場合に組合でできないことはありませんが、組合では機動的な活動がやりにくいということで、別に組合員が出資をして会社をつくり、会社で共同購入する場合がございます。あるいは共同販売ということがございますが、その場合に、特に輸出関係については、そういうものも組合と同じように扱って金を貸せるようにしてやろうというのが二十八条の二の改正、これは過去にやったわけでありますが、そういう趣旨でございます。  ところが、その後の状況を見ますと、必ずしも輸出でなくても、国内関係でも、そういうものが必要な場合がある。これはもちろん、やたらに広げようというのじゃございませんので、ここの法律趣旨に従って主務大臣の認可が要るわけですから、商工組合中央金庫が勝手にできるわけではありません。そういうことで例を申し上げますと、なたねを油に加工しておる組合がございますが、これがその製品を共同販売する、あるいは、たとえば原料の大豆を共同で輸入をする、こういうようなケースがあるわけでありまして、その場合には、その会社は販売会社でございますので、当該加工の組合に入れない、商工組合中央金庫から金を借りられぬという不便がございますので、そういう場合には、そういうものに金を貸せるようにしてやろうという改正でございます。ここにもありますように、そういう意味で「輸出ニ関シ」というのを削りまして、所属団体の構成員の輸出振興または事業合理化をはかり、その共通の利益を増進するために必要な事業を行なう法人であって、主務大臣の認可を受けたものには金が貸せる、こういう改正をしたいというのが改正趣旨でございます。  以上が簡単でございましたが改正の要点でございます。
  16. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 以上で趣旨説明は終了いたしました。  それでは、これより三案に対する質疑に入ります。御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  17. 近藤信一

    ○近藤信一君 修正者に一点だけお尋ねするわけでございますが、公庫監事の職能を強化することはたいへんけっこうなことだと思うんです。しかし、今回、ほかにも公庫法が出ておると思うんですが、そういう公庫法についても、同様に監事の職能を強化する改正案が出ているのも、出ていないのもございまするが、国民公庫の場合には改正案のようにそれがない。監事強化はない。それから原案は皆「総裁を通じて」云々というふうな文字がありますが、これはいずれも修正することになっているのかどうか。それから同じ商工委員会に付託されておる中小企業法案で、まだこちらへきていないものもございますが、衆議院のほうで現在御審議されておるのがあるのですね。そういうのも、衆議院を通過する場合には同様にこういう修正がなされてくるのかどうか、そういう点どうなんですか。
  18. 始関伊平

    衆議院議員始関伊平君) 商工委員会といたしましては、これに続きまして中小企業金融公庫法改正案をいま審議中でございますが、この通過の際には、きょう私申し上げましたのと同じような修正が行なわれる見通しでございます。それからなお、衆議院を通過いたしまして、ただいま参議院のほうに回ってきておると思いますが、お話の監事職責の行使の方法につきまして、きょう御審議願っておりますのと同じような修正をいたしましたものが二、三種ございますので申し上げます。一つは、衆議院のほうでは地方行政委員会関係でございますが、公営企業金融公庫法の一部を改正する法律案、それから次は、内閣委員会関係でございますが、北海道東北開発公庫法の一部を改正する法律案、なお、建設委員会関係といたしまして首都高速道路公団法の一部を改正する法律案、日本住宅公団法等の一部を改正する法律案、私の承知いたしております限り、きょうの保険公庫法と合わせまして、五つのものにつきまして同様の修正をいたしておりますので、おそらくは今後同じような問題が起こってまいりました場合には、同じような修正がなされるか、あるいは最初から政府のほうでこの修正案にのっとった原案を出されるようになることと存じております。
  19. 近藤信一

    ○近藤信一君 国民金融公庫だけが、これははずされているのですね、これはまあ農地補償の問題もからんでいるという関係もあるのですが、これは大蔵ですか、国民金融公庫法。その他はおしなべてずっとそろえていこう、こういう形だと思うのですが、国民金融公庫だけが今回の問題でははずされている。そのことはあなたに御質問しても、これは国民金融公庫の問題については、御精通でないかもしれませんが、なぜ国民金融公庫だけが、そういう改正がなされていないのか、まああなたがお聞きになっておられるのだったらば。
  20. 始関伊平

    衆議院議員始関伊平君) 国民金融公庫法関係は、御承知のとおり大蔵委員会でございまして、私承知をいたしておりませんが、大体衆議院のほうの空気から申しますと、それから衆議院のすでにこの問題を扱いました委員会の議事録なんかに出ました法制局当局などの見解を見ますと、こういうものが幾つか重なるということであれば、国会の意思はそこにあるものとして今後は原案を、御審議を願っておりますような修正案趣旨に即して出そうということになっておりますので、国民金融公庫を例外とするのは適当じゃないのじゃないか、そういう空気ではなかろうかというふうに存じております。
  21. 近藤信一

    ○近藤信一君 このくらいで、修正者に対しては。
  22. 前田久吉

    委員長前田久吉君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  23. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 速記を始めて。  他に御発言もなければ、午前の審議はこの程度にとどめ、午後は一時から再開することにいたします。    午前十一時四十五分休憩      —————・—————    午後一時五十分開会
  24. 前田久吉

    委員長前田久吉君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  午前に引き続き、中小企業指導法の一部を改正する法律案中小企業信用保険法及び中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案を一括して議題とし、質疑を行ないます。御質疑のおありの方は順次御発言願います。
  25. 近藤信一

    ○近藤信一君 私はまず、この法案内容に入る前に、大臣に中小企業対策全般について若干お尋をして、大臣の御所見を伺っておきたいと思います。  先年の通常国会では、中小企業国会といわれたくらいこの中小企業関係法律案が非常に重視されましたが、その中で特に基本法をはじめとして、十余件の中小企業対策の法律案が成立したことは、大臣も御承知のとおりだと思うのです。本国会は基本法の施行を受けて、やはり中小企業にとりましては重要な国会と思います。これに対し、政府法案は少しさびしいような気もいたしまするが、これはもちろん法案の数や長さで中小企業対策の問題がきめられるものではございませんが、池田首相が革新的な中小企業対策というふうなことを言っておられる手前といたしましても、これは若干貧弱の感がしないではないというふうに思うのです。本日ここに議題となりましたこの三法案、それに衆議院商工委員会におきまして現在審議されているところの三法案、合計でまあ中小企業法といたしましては、まあ六件というふうに思われるのですが、政府最初この中小企業関係につきまして強力にやるということで、さきに中小企業団体法の改正案、こういうふうなものも予定されていたやに聞いているわけなんであります。その団体法の提案は今日まだされておりませんが、このほかにもまだ、労働省から出されているところの中小企業退職金共済法の改正案がございますし、その他にも、たとえば私どもが過日委員会を通過させました軽機械の輸出振興法の改正案や、それから電子工業振興法の改正案中小企業関係がございます。こういう中小企業関係法律案は、いまどのくらい提出されているのか、また今後どのくらい政府として予定されているのか、この点あわせて政府の持っておられまする中小企業対策の中身を、ひとつ大臣がお考えになっておられまする点、それからそうした中小企業に対する地位はどんな地位を与えておられるのか、こういう点、大臣のひとつ御所見を伺っておきたいと思うのです。
  26. 福田一

    国務大臣福田一君) まず、中小企業の位置づけの問題でございますが、これに関連いたしましては、お説のとおり、総理は、革命的な、革新的な施策を行なうと、こういうような御発言があったわけであります。その発言に対しては十分ではないではないかという御質問と承るわけでありますが、私は総理が革命的とか、革新的とか言われたのは、非常に前向きな姿勢で取り組むのであるという姿勢を強調してあらわされた形容詞だと、私はこういうふうに考えておりまして、われわれも極力これは進めていかなければならないという、その前向きの点では同じような考え方を持っておるものであります。  そこでしからば、中小企業はどういうふうないまの日本の産業の中において役目を持っておるかということになれば、これは中小企業白書にも出ておりますように、日本の産業の生産量の約半分を占めておるということでありますから、これはもう非常に産業界の重要部門を担当しておるということでなければなりません。ただしかし、中小企業といいますのは、これまた白書にも出ておりますが、非常に多種多様であることは、もちろん近藤委員も御案内のとおりだと思うのでございまして、基本法ができましてから、いろいろと研究もいたし、調査も続けておるのでありますが、それぞれの業種、それぞれの企業によりまして、なかなか対策というものも異なっており、それからまた中小といっても——中企業と小企業、もう一つ零細企業というのがあっても、あるいは一つの考え方になると思うんですが、そういうようなものに対する対策というようなことになりますというと、なかなか一挙にこれを解決していくというわけにはいかない。これは統制経済的な形でこのすべてを律するというわけではございません。自由主義経済のもとにおいて、自由に利益を追求することを本人の意思にまかせてやらしておるという、この姿においては、なかなか簡単にこの問題を一挙にレベル・アップしていくということは、私は困難かと考えておりますが、しかしながら、極力これをレベル・アップするということは、大企業中小企業の持っております生産性の格差の是正あるいはまたそこに働く人たちの生活の向上、したがって、賃金格差の是正というような、いろいろな問題を順次解決いたしていかなければならない。  その方法といたしましては、あるいは法律的な措置によりまして、企業の診断とかあるいは指導とか技術の向上とか、いろいろの問題がございます。あるいはまた税制面においてこれを育成する、あるいは金融面においてこれを推し進めていく、こういうようないろいろの方法がございますが、金融面においてはしばしばお答えを申し上げておりますとおり、政府関係金融機関におきましては、大体二一%から二四%ぐらいの貸し出し規模の拡大を行なうことにいたしております。それから金利の問題でございますが、これもまた公定歩合引き上げという事実もございますが、商工中金の金利の引き下げをはかりますとか、また実質的な金利の引き下げを行ないますために、歩積み、両建てをできるだけ少なくするとか、こういうような面においていろいろの方途を講じますと同時に、いわゆる手形の保証制度を拡充するとか、あるいはまた保証料を安くしていくとか、いろいろの問題がございます。また税制の面におきましても、いままで申し上げておりますように、専従者控除の引き上げであるとか、その他いろいろの制度を考えると同時に、輸出振興のたてまえ、あるいはその他の面から見て、いわゆる設備機械等の償却年限の短縮というようなものもはかってまいる。これはまあ必ずしも中小企業だけではございませんが、特に中小企業向けのものが相当程度含まれておるということは御案内のとおりだと考えます。  以上のようないろいろの面から、この中小企業の格差是正に努力をいたしてまいるのでありますが、さしあたり、しからばどういうような法律を出しておるかといえば、御案内のように中小企業指導法の一部改正、それから中小企業近代化促進法の一部改正中小企業近代化資金助成法の一部改正、食料品総合小売市場管理会法案と、それから、まだこれは近く出すのでございますが、中小企業団体の組織に関する法律の一部改正事業活動の調整をはかるものでございます。それから、労働関係では、中小企業退職金共済法の一部改正、これが出ております。それから、産業労働者住宅資金融通法の一部改正、雇用促進事業団法施行令の一部改正中小企業金融公庫法の一部改正、債券の発行でございます。それから、商工組合中央金庫法の一部改正、出資の増等でございます。中小企業信用保険法及び中小企業信用保険公庫法の一部改正、これは特殊保証の範囲の拡大、先ほど申し上げたところでございます。等々でございます。それから、租税特別措置法の一部改正、所得税法の一部改正法人税法の一部改正等におきまして、先ほど申し上げたような中小企業に対する企業資本の充実をはかったり、企業経営の合理化に資するために、いろいろ租税負担の面からの適正化をはかる、こういうような諸法案を出し、またいまからも提出しようといたしておるところでありまして、冒頭御質問のございました革新的というところには、ほど遠いではないかということでございますが、私はこの中小企業問題というのは、やはり早いにこしたことはございませんが、何といっても、ことしがその手始め、今度は来年も再来年もというふうに強力にこの施策を進めていくことによって、しかもまた零細企業範囲まで含めて、中小企業自体の育成をはかっていくように今後も努力をいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  27. 近藤信一

    ○近藤信一君 大臣も御承知のように、昨年の中小企業本法審議するとき、それにあたりまして参考人を呼んで、私どもいろいろと意見を聞いたわけでありますが、で、ことにあのときに参考人も言っておられましたし、私ども質疑の過程においては、大臣にもお尋ねしたわけですが、政府中小企業対策というものは、非常にむずかしいと、これは私どもも承知しておるわけなんです。ところが、基本法のときに、ややもすると零細企業切り捨てという法案になるんじゃないかということで、参考人の諸君もいろいろと反対の意見を述べておられましたし、また私どもも委員会の過程で大臣に、零細企業問題に対しての措置というものははなはだ少ないんじゃないかと、こういうことで、きたるべき国会には、こういう零細企業に対するひとつ考え方を政府としてもしてもらいたい、こういうことで大臣にも注文をつけておいたわけなんです。いま大臣の御所見の中で、幾つかの中小企業法案の問題が説明されましたが、特に目立って零細企業はこうだから、ああしてやりたいとかいうふうな問題があまり取り上げられていないじゃないかというような思惑がするわけなんですが、この点、零細企業に対する政策として、何か大臣お考えを持っておられるのかどうか。特にまた大臣の地元は零細企業者が非常に多いという関係もある。で、大臣あたりが、零細企業問題についてよく考えてもらわなければ、私は他にあまり考えている人はないのじゃないかと思うのですが、この点はどうですか。
  28. 福田一

    国務大臣福田一君) 御説のように、零細企業に対する具体的ないま施策の面では法律その他にもあまり出てきておらないことは御指摘のとおりでございますが、これはひとつ近藤委員もおわかりのことと思いますが、零細企業というものの調査、実態把握というものが非常にむずかしいのであります。中小企業本法ができましてから今日まで、われわれは相当程度そういう面への調査に努力を続けておりますが、まだ的確に業種別にどういうような実情になっているかということのまだ把握は済んでおらない。今後それを十分把握した上で対策というものを立てませんというと、政策といたしましては、国民の血税を使って施策するのでありますから、適時適正な施策でなければならないと思います。そのときに、十分まだ調査あるいは対策がないのに、これを出すということはいかがであろうかというようなことなどがあるわけでありまして、たとえば、これは予算編成時には問題になったのですが、零細企業金融問題などというものをもう少しく考えていいのではないかということで、そういう場合において、零細企業というのは、国民金融公庫からも資金の貸し付けも得られない企業がかなりあることは、私もその実態はよく承知しているのでありますが、はたしてこれに対してどういう方途をもって講じていったらいいのかということがまずあります。  それからまた、私は中小企業といいますが、いま日本は人手不足であります。たとえば、いなかで駄菓子屋みたいなことをやっておって、そうして月五万円も売れないようなことをしている。奥さん一人で店番をすればもういいというような場合に、だんなさんも一緒になってやっているということばおかしいことで、またむだなことにもなる。この人に何か仕事でも与えたらいいじゃないかということが出てくるわけであります。ところが、この仕事を与えるには、技術の修得が必要だ。技術の修得が心要だということになると、どっかへ行って、その技術を修得しなければならないが、そこへ行くのに、一時間も二時間もかかるところに行かなければ、技術の修得ができないということになると、まず、そういうような研修所があったといたしましても、そういうところの宿泊所とか、そういうような問題をどう考えるかというような問題も出てくるでありましょう。これはただ単に私は一例を申し上げただけでありますが、そういうようなことをつぶさにまた地域的によく把握いたしまして、それに適応する施策をやっていくということでなければいけないのではないかと思います。  同じく中小企業といっても、たとえば奥さんが小売りをやって、だんなさんが勤めに行っている場合がございますし、いわゆる兼業農家みたいな問題でございますが、同時にまた、だんなさんがやっていて、奥さんが勤めているという場合もあったり、あるいはおかあさんが店をやっていて、子供が勤めに行っているというような場合があったり、あるいは労務者として働いているというような場合、これは千差万別であるのでありまして、こういうのを実態的によく把握しながら、それに応じたような施策をしていかなければならないのではないかということにおいて、われわれまだ実態の把握において欠ける面があるということでございまして、私としては極力こういう問題も考えていかなければいかぬ。金融等の問題につきましても、国民金融公庫で月にわずか五万円くらいのところにちょっと貸すといったって、なかなかこれはいかない。いまのあれからいってもできない。しかし、事実はそれを十万円なり二十万円、金額のことは別といたしましても、ここで三十万円借りれば非常に合理的な問題が解決できるという業がないとは、私は言えないと思うのであります。そういうものに対して何らかの特殊な金融機関をつくる必要はあるのか。国民金融公庫業務をそこまで広げるのがいいのか。これはいろいろ私は考え方はあると思いますが、こういうこともやはり十分研究していかなければいかぬ、こう言っておるのでありまして、私は零細企業の問題を等閑に付するという意思はございませんが、はなはだ申しわけないことであるが、そこまでの具体的調査研究にはまだ至っておらないということで、今回の場合においては、それがあまり法案の面その他に現われておらないということは、私としてはまことに残念に思っておるところであります。  今後ひとつそういう意味で順次調査をし、実態を把握するに従って、適切な施策を進めていかなければならない。それが中小企業本法のやはり望むところである、そういうふうに理解をいたしておるところであります。
  29. 近藤信一

    ○近藤信一君 大臣のお話の中でも言われておりますように、零細企業実態を把握するということは、これは非常にむずかしいということは、私ども同感だと思うのです。そこで、私は過日も企業組合の皆さんから陳情を受けて、これは大臣のところへも陳情は出ているかと思うのですが、かつては企業組合は脱税組合だと、こう言われたのが企業組合の実態であったと思うのです。ところが、今日ではもうその企業組合、先日のお話によると、いわゆる納税に非常に協力したということで表彰してもらっておるというふうな事実もある。企業組合は脱税組合ということには今日の状態からいってならぬ。何とか企業組合に対して事業協同組合と同じような特別措置をしてもらえぬか、そういうふうな陳情もあったわけなんですよ。私はそういう企業組合等についてやはり考えるということが、零細企業に対する一つの方途を見つけるというふうなことにもなるのじゃないかと思うのです。企業組合の将来について、やはり政府としても、中小企業庁としても、もう少し研究して何らかの措置を講ずるべきじゃないかと思うのですが、この点は現在のところどんな考えを持っておられるか。
  30. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 ただいまの零細企業金融に対する関連質問ですが、国民金融公庫金融する場合に、物的担保は要求をしないところまではいっておるわけなんです。ところが保証人をやはり要求をする。もっともその保証人は独立の生計を維持しておるものであるならば、親類でもいいとかいう程度まではいっておるようでありますけれども、とにかく独立の生計を維持しておる保証人を必要とするというところに問題があるわけでありまして、この点、大臣も指摘せられましたるごとく、零細企業金融のことでありますから、ごく少額の金融であるにかかわらず、保証人をどうしても必要とするということで、保証人を立てるとなると、立てられた保証人の財産も場合によったら調べるとか、そういうことのために、もう一歩というところで借りられるべきものが借りられない。これがいま零細企業金融の一番難点になっておるのであります。そういう点で、信用保証協会というものがあり、また信用保険公庫が再保険的なことをやっておるのでありますが、その信用保証協会の保証を受けたら借りられるはずなんであると、その保証協会へ行くとなると、またその保証協会で保証人を要求する。これがために堂々めぐりになって、借りられるべき金が零細企業金融の場合には借りられない。これが今日零細企業金融の一番問題なんであります。そこで国民金融公庫は物的担保は要求しない。それから、保証人につきましては、独立の生計維持をしておれば、それでいいくらいなところまでいっているのですが、もう一歩進んで信用保証つきで出すが、その信用保証をつける場合に、保証人を信用保証協会として要求するというようなことをしないで、そういう場合こそ、物的担保がなくてもあるいは保証人がなくとも、信用保証をつけるというところに、信用保証協会のほんとうの存在価値があるわけなんであります。もちろん健全経営をしておるという条件をつけるとか、あるいは公課公祖は納めておるとかいうような条件をつけていいのでありますが、要するに健全経営をしておるけれども、保証人として適当な者がないということだけで借りられる金が借りられないという、この盲点をこの際解決せられるというと、非常に零細企業金融は伸展すると思うのです。この点について関連して、大臣の御意見を承っておきたいと思うのです。
  31. 福田一

    国務大臣福田一君) まず近藤委員の御質問でございますが、企業組合をどういうふうに今後見ていくか。私は企業組合はやはり法制的に認められておるのであり、いままではどうであったかということを、いささか私つまびらかにもいたしておりませんが、業種別の小さいものが集まって企業組合をつくってやっている。こういう姿は私は日本において認められ、またその発展的育成をはかって差しつかえないものであると、こういうような考え方で対処をしてまいりたいと、こう思っております。  それから、ただいまの金融の面についての御質問でございますが、お説のとおり、どうも保証協会が保証しておるのに、まだそう窮屈なことを言うというのは、私はいささか蛇足の感がある。また、制度自体の運営の面からいっても問題があると思いますので、今後十分研究をさせて、よく話を大蔵省その他関係当局と煮詰めるようにいたしてまいりたいと思います。
  32. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 いまの点は、行政の指導方針を改められることだけによって、問題は解決できると思うのでありまして、信用保証協会の保証のつけ方、これを具体的に検討してもらいまして、これならば健全経営でもあるという場合には、必ずしも保証人がなくとも信用保証をつけることによって、さらに信用保険公庫の再保険でいけるという道を開くことをひとつ具体的に御検討願って、これはこういう緊急対策を、中小企業、零細企業対策に必要とするときでありますから、早急にひとつ検討実行せられるようにお願いしておきます。
  33. 福田一

    国務大臣福田一君) いま豊田先生お話のような趣旨に沿って研究をし、実現ができるように努力をいたしたいと思います。ただ、これはもうあなたのほうが専門家だからおわかりと思うが、貸すのでありますから、やるのじゃないですから、そこのけじめがどこでつくかというところに問題をやはりしぼらなければならないかと思うのであります。その点も勘案しながら、しかも、なおかつ借りられる、貸すと、こういうような仕組みに持っていきたい、こう考えておるのであります。
  34. 近藤信一

    ○近藤信一君 いま中小企業が非常に危機だと、こう言われておりますが、そういうときに特に私どもは、下請代金の支払遅延ということは非常に重大だと思うのですが、ところがこの下請代金支払遅延等防止法はざる法と、こういわれておりますが、これを改正強化するということが、政府の一部でもいわれている。これは経済企画庁で、長官は特に改正されなければならぬというようなことも言っておられるのですが、ところが、一部におきましては、運用強化でできるのだから改正する必要がないじゃないか、こういうようなこともいわれておるわけなんですが、通産大臣としては、この方向をどのように考えておられるのか、その点お尋ねいたします。
  35. 福田一

    国務大臣福田一君) 下請代金の支払い遅延の問題でございますが、これについては、御案内のように法律がすでにできておるのであります。ところが、これはまあそういうことを言うと、それはお前が悪いんだということになるのでありますが、事実問題としては、その法律自体があまり実効をあげておらなかったといいますか、実際に運営されておらなかったというきらいがあったと思うのであります。  そこで、まず、この問題について実は私は二つの問題を考えたわけでありますが、法律改正する、法律改正するというけれども、いままでにあまり行なわれておらない法律をもう一ぺん改正してみたから、その法律が行なわれるというものではないんじゃないか。むしろ、いままでの法律のまず実施がなされて、しかもなおかつ欠陥があるときにこれは改正していくほうが——いわゆるざる法というようなものをもう一ぺんざるざる法にするおそれがある、やはり実効をあげていく必要があるんじゃないか。実際に運用ができるようにしていくべきだ、運用すべきだ、こういうたてまえが一つの私の基本的なこの場合における考え方でございます。  それからもう一つは、あの法律ではとにかく六十日以内に支払いをしなければいけないということ。その支払いというのは、小切手でも現金でもいいのでありますが、しかし、その手形の期限というものは非常に延びておる。これは日本経済が信用によって近代化を今日までやってきたといいますか、運営がかなり信用膨張によって行なわれておる、こういう事情であります。そこで、このことが論議されました昨年の暮れからの問題でありますが、私は、日本のいまの経済で、かなり窓口規制とか、あるいは預金準備率の引き上げといいますか、まあ一連の措置をとりながら、あまり生産規模を拡大しないように、むしろサブサイドするように、押えるというやり方をとる。今度の公定歩合の引き上げというのもその政策の一つである。そういうときに、いま百五十日、二百日、二百五十日とか二百七十日というような手形が出ておるときに、一切これを禁止するというようなことを法律でつくった場合、これが行なわれたとしたら、私は、かえって倒産を激増させるだろう、ということは、一ぺんに膨張した信用が急に収縮することでありますから非常に危険性がある、こういうような感じを私は持っているわけであります。そこで、いまある法律がよく行なわれるようにする。しかも、いま言ったように、手形の支払いが延びておるのをできるだけ収縮をさせていくということで、どこら辺をめどにしたらいいかということを実は私も非常に考えてみたんです。これを九十日というようなことにするのはいささかちょっとまだ早過ぎるような気がする。まあ百二十日ぐらいならあるいはいいかとも思ったのですが、私自身としては百五十日ぐらいから始めて、三月とか半年とかたったときに、これを百二十日ぐらいに縮める、そうしてまた九十日——少なくとも九十日ぐらいまでの手形に支払い手形というものはもっていけるように、こういうふうにしたいというのが私の希望といいますか、政策といいますか、そういう考え方であったわけであります。私はその方針に従って、実は公正取引委員会とも連絡をいたしますし、中小企業庁長官にも連絡をとらせまして、その方針に基づいて、いま、今度は、百五十日以上出しておるようなものは、場合によってはその調査は親企業も——あるいは、いままでは下請から報告を聞いたが、それじゃだめだから親企業から報告を取る、そうして下請からも取る、そうして百五十日以上の手形のあるところは、場合によっては抜き打ち検査をやって行政指導もしていくし、何らかの措置をとっていく。それから、百五十日以上というようなものを出しておって、それが割引されないような場合に遅延利息を払わせる。こういうように、あの法律それ自体がそこら辺からだんだん完全に行なわれていくようにする。そうしてだんだんこれが百二十日、九十日というふうなところにもっていって、そうしてできるだけ支払いの遅延がないように、いわゆるそういう法の目的が達せられるようにしてはどうかと。一方において、公定歩合の引き上げというような、まあある意味では劇薬をかげながら、もう一ぺん追い打ちをかけた形になって、そこで法律を出すというと、どうしても二重の追い打ちをかけるということになるということを、実は私自身が非常な心配をしておったわけであります。現在そういう気持ちで、いま直ちに法案改正する意思は持っておりません。しかし、将来これは改正しないでいいかというと、やはりしたほうがいい面もあることもわかるのでありますが、そういう意味で、この法の運用をはかっていきたいというのが私の考え方でございます。
  36. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 関連。いま大臣の、漸次手形のサイトを縮めていくようにしたいというお話、一挙にというのじゃなくて、漸次これは短縮していきたい、それは私けっこうだと思うのです。けっこうというよりも、もうそれよりしようがないかもしれぬと、こう思うのです。しかし、その場合、それを法律によって明らかにしておいて、まず具体的に九十日といきたいけれども、九十日がむずかしければ百二十日に一応しておいて、そうしてだんだんこの法律を実行していく上において、これはまあ九十日にいけそうになってきたら九十日に短縮すればいいと思うのですが、運用していくということになっておると、現在の法律は、御承知でございましょうが、支払い期日六十日は押えてあるのですけれども、あとの手形の割引ができればそれでいいのだ——割引ができるとは一体何ぞやということになれば、もう下請の本人が割り引いてもらったかどうかという、この具体的事実を表に出さなければいかぬ。それを出していく場合に、今度の通牒でも——大臣の通牒、それから公取委員長の連名通牒で言っておるのですが、あれを見ますると、手形の割引ができぬというような場合には、親会社に補償を求めることができるとか、それからまた、現金あるいは割引のできる手形に取りかえを要求することができるということが書いてあるのですけれども、それは本人が表に出てそれを訴えなければできない。そうなると、何を言うかというのでお出入り差しとめられたりするということがまあ非常な問題に従来なってきておる。それがために、ここで取り締まりを強化しようと言われるのですけれども、そのまた基準が、いまのように、本人が表に出ないといかぬとか、それからまた、手形の割引ができるということならそれでいいということになっておると、だんだんだんだん実際は逆に延びていくようになる。短縮のほうじゃなくて漸次延びるほうに逆にいくのじゃないか。これを考える場合に、どうしてもこの法律改正に訴えて、そうして一挙に激しい法律でなくてもやむを得ないかしれませんが、漸次法律改正をしつつ理想的な形に持っていくというふうにおやりになったほうがいいのじゃないかと、実質は同じことですが、法律によってこれをおやりになったほうがいい、こういうふうに考えるのでありますが、御意見はいかがでございましょう。
  37. 福田一

    国務大臣福田一君) その問題も、私は私なりに、研究するというか、勉強してみたつもりでありますが、それをやる場合に、やはり手形法、親の法律ですね。まあこのほうから変えていかなきゃならぬ。こういうことになりますと、なかなか大げさなことになって、その法律改正をどういうふうにしてやるかという問題がまず一番先に出てまいります。それからもう一つ。私はこの法律自体が、先ほど一番最初に申し上げたように、ざる法になって、ほとんど運用されていないような形になっていることに問題がある。これはやはり、だんだん法律運用されるという形に持っていかなきゃならぬ。そこで、いま御心配の、実際には、行政的に、また本人が何も言わなきゃそれで済んじゃうじゃないかということはあります。ありますが、やはり抜き打ち的に——いままで下請のほうから言ってこないとだめなんです。今度は親のほうから支払われる手形のあれは見ていますから、お前のところは、こういうものを出しているじゃないかということで、こっちから調べられるというわけで、もう少し何とかしたらどうか、こういうことで、その場合何か処置がうまくいかなければ、公取が場合によっては今度は出ていく。積極的に出る。こういうことになりますと、実際問題としては、事業をやっていて公取から何か言われたんだという形は、私は、親会社としては非常につらいところだろうと思うのであります。だから、ほんとうに実際に効果をあげるという意味からいえば、法律改正によってやったほうがいい。法律改正しても、しかし、まだ実際に行なわれるかどうかの問題もある。取り締まりの人員がいるかどうか、人がいるかどうかということも、かなり大きな問題になろうかと、実際全部を監視するということになると。そうすると、親会社は、そこはやはりまあ、いままで親は大体関係もあるんだから、まあまあ九十日ときめておいても、百二十日までしばらくがまんしてようかということがないわけではない。そういうところからくずれる場合もあり得るかと思う。やる場合には、よほど実行できる法律にしなきゃいかぬということは、非常に実は考えているわけです。特に、今度の支払遅延等防止法なんというのは、あれは、法律は通っているけれども、さっぱりどうもいままでは値打ちがなかったように私は見ておる。そこいら辺の、これはお互いの意見の問題でありますから、いろいろ御意見を伺わしていただくことはけっこうなんです。そういう気持ちでおるわけであります。
  38. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 その法律がざる法になっておるということですが、これはいろいろ原因もありますけれども、あの法律が全然基準がないんですね、手形のサイトについて。もう手形が割り引けりゃいいということなものですから、最初は九十日がまあ大体原則的なものだということだったけれども、それは金融が詰まってくるというと、ことに政府関係金融機関なんかは、百二十日でも割らざるを得ぬだろうというので割る。そのうちには今度百五十日になるんですね。百五十日でもほっとくわけにもいがんだろうから、割らざるを得ないというので割る。そうすると、百五十日が割り引ける手形ということになってくるんですね。いまや私の見通しでいきますというと、この調子でいくというと、もう百八十日になってきはしないか。そうすれば、百八十日の手形が出てくる。ほっとけば下請がつぶれるから、それで割り引くというと、これは百八十日が一つの基準になってくる。これでは全然のれんに腕押しなんですね。したがって、支払遅延等防止法というものが全くざる法である。そういう点で、法律でもって支払い遅延を防止するということになれば、基準がはっきりしない遅延等防止法なんというのは、これは私は全くナンセンスだと思うんです。支払い期日だけ六十日はちゃんと押えてあるけれども、それから先の手形のサイトについては、何にも基準を設けておらぬということになれば、これは、私は、もう遅延等防止法と言えぬと思うんですね。そういう点において、一挙にシビアーな法律にせいということは言わぬけれども、漸次改正していくという前提において、一応のところですね、いまかりに百二十日が適当だと思ったら、百二十日というところで線を引かないと、だんだんこれは延びてくる。そこを非常に懸念するものです。ここらで踏み切ってもらうのが、私はいい。ことに中小企業については前々から非常に理解のある福田通産大臣ですから、この通産大臣にして踏み切ってもらわなけりゃいかぬと思うんですが、いかがでしょう。
  39. 赤間文三

    ○赤間文三君 ちょっとそれと関連しまして一緒に。いま大臣が、やっぱり法律は実行をせられるという法律じゃないといかん——非常にわれわれは同感なもので、これは改正されましてもやっぱり実行が困難になってくると、私はもう改正の意味がない。私はもう全然大臣の話よくわかるのですが、私はこの支払い遅延防止についてわれわれが考えられるのはやっぱり二つあるのじゃないか。その一つは、払い得るのに、ずるくて親会社が子会社に払わない、きちんきちんと払う能力もあり、金もあるんだけれどもというのと、ほんとうに景気が悪いやら何やらで困って、経営が非常に困る、不景気で、というときの遅延と、私は二通りの場合があるのじゃないか。政府が公取その他と協力してこれをできるだけ少なくされるためには、払う能力があって払わぬのは、これはもう大いに徹底的にやったほうがいいと思うし、やらなければならぬが、どうも金が都合がつかぬというものを、法律の力によって手形の割引を短くして、形式的はあくまで払うことになっておるというても、事実払えないというような、これはもうむしろ私はそういうものは政府なり地方庁なりが協力して、ほんとうに困っておるところには金融のお世話をして、あんまり遅延せんでも済むような金融その他の配慮の方法を相当講じてもらうのが法律を生かす一番早道じゃないかと、こういうふうに私は考える。それで今日尋ねたいことは、そういう場合において、特にこの遅延防止のようなものについては、親切に、会社の筋もいいし、全部そろっているけれども、とにかく現実に金がなくて遅延をやるというものは、政府なり地方庁が協力して金融の世話をやられたことがあるのか。ただ法律のたてまえ、たてまえというだけで、遅延はいかん、遅延あるたびごとに、そういうことのないように注意せいという書面その他の警告にとどまっておるのか。私の希望するのは、やっぱり、金融措置を講じて遅延の起こる原因を断つことに行政指導なり、そういうことについて御高配をどういうふうにこうむっているかということを関連してお伺いしておきたい。
  40. 福田一

    国務大臣福田一君) 豊田先生の御質問でございますが、できればそういうような措置をとるのも一つの考え方であると思って、私も、二月ばかりどうしようかと思って、ずいぶんいろいろ考えてみたわけなんです。考えてみましたが、何といっても、これをやるには手形法から変えなければならない。そういう手形を振り出しちゃいかん——この手形には期限がないわけであります。幾らの手形を振り出していいとか、幾ら幾らでなければいけないということはないわけです。手形法というものからまず変えていかなければならない。支払遅延等防止法だけでこれを処理することは困難であるということが、どうも私の聞いた法制局あたりの意見もそうであります。そうすると、両方の法律ということになると、事はだいぶ大きくなることが一つございます。それからいまお話のありましたように、百二十日にするか百五十日にするかということにおいて、私は実際のいまの経済状態でどれぐらいの——百二十日以上の手形が出ているか、百五十日以上の手形があるか、二百十日のが幾らあるか、実態をまず把握したい。ほんとうのところを言うと、いま実際にある、あるというけれども、どの程度あるかということはだれもわかっちゃいないので、そこのところのことばだけではこう出てくるが、どの程度あるか、これは相当大きければ大きいでまた考えなければならない面があるし、少ないならばその法律でもってぴたっと押えていくという手もあるかもしれない。しかし、それをやることによって、今度はもう一つの問題は、それをやるには百二十日にしてある。だから百二十日の手形しか出せぬということになったら、親会社が倒産したら、それにつながっている企業はどうなるか、この問題が非常に私は心配だ。そういう法律をつくって、いきなり——それは猶予期間を一年なら一年置くなら別かもしれません、私は、猶予期間を置かないならば、この一年くらい、この間調査をして実態を把握したところで、法律改正なら改正に踏み切るほうが何か実態に合うような気がした。ということは、実は相当大蔵大臣や企画庁長官あたりはむしろ積極性を持っておられるようですが、しかし、私は中小企業を実際にあずかっている人間として、そういうことをやって、もし逆に——私はその場合百二十日以上の手形を出せないでつぶれなければならぬということになったときには、金を貸してやらなければならぬというようなことになったときは、いまあとの質問にもありましたが、それは私はやってもいいと思います。さらにどれだけの資金量が要るか、そういうこともわかりません。それで、何もわからないで、そこに踏み切るということはいかにも私は責任者として無責任であるという実は感じを持ったのでありまして、私も二時は、場合によってはここでやろうかということを考えたこともあるのであります。ただ、いま言ったようなことをいろいろ勘案し、現在の段階を見てみまして、やはり一応今度はそういう百五十日という前後のところを切って、そうして実態の把握をまずしてみると同時に、公正取引委員会と連絡をとりながら、できるだけそれを少なくするようにすると、こういうやり方をとりまして、それで今度、次の御質問でございますが、実はこれを実行いたしますときに、これを閣議にかけたときに、私は閣議で了承を得たときに、私は閣議で、実は自分はこういう考えでこういう方法でやるつもりだ、ついては、実際問題としてそれじゃ調査してみたところが、その会社はなかなかいい会社ではあるけれども、資金繰りで非常に困っているといった場合には、これはやはり大蔵省のほうでも金融面についてめんどうをみてもらいたい、われわれのほうでも相談に乗ってやるつもりだ。通産省としてはどうせそういうものは相談に乗らなければいかぬと思うが、そういう場合には、大蔵省はひとつめんどうをみてもらいたいということを言って、大蔵大臣も、まあ考える、こういうことでございまして、いまの御質問については私も気持はちゃんと考え方としては持っておって閣議にもはかっている、こういう実情でございますので、いま申し上げたような私の、苦しいというか、責任者としてやる場合は、これはやる以上はあとへは引けない、そこに起きる影響とかいろいろな問題を考えた場合に、どうもまだ準備不足ではなかろうか、まあこう考えて、こういう措置に出ているということをひとつ御了承賜わりたいと思います。
  41. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 いま大臣の苦しいお気持をいろいろ率直に承ったのでありますが、私は、下請代金の支払い遅延防止という特殊の関係に対する特殊の規制という考え方からいきますと、私は手形法までいかなくとも、この下請代金支払遅延等防止法範囲内において、要するに公正取引になるかならぬか、その取引が公正であるかどうか、それの基準として、手形は九十日でなければいかぬとかあるいは百二十日でなければならぬとかということをすることは、私は可能だと思うのですけれども、これについてはいろいろ議論もありましょうが、かりにまたそれで規制した場合に、非常にショックを与えはせぬかという点でありますが、それについては、いま別の立場から赤間委員からも質問ありましたけれども、これは実情によってほんとうに払えぬ場合なら、これはやむを得ないが、やはり公正取引範囲内と認めざるを得ないというようなしんしゃくをするいき方も、これは手形法というような一般的なものでなくて、下請代金支払い遅延ありやいなやの特殊事情に対する特殊の法律であるから、私はいえるんじゃないかというふうに思っておりますけれども、まあかりに一歩譲って、そういう関係があるといたしましても、ここ一年調べてみなくても、それは本気に一カ月か二カ月か徹底的にお調べになれば、どの程度の手形というものが割り引き可能であるか、それがどの程度出ているかということは、私はわかると思うんです。ここで、真剣に行政をおやりになっておる福田通産大臣に、この際特に真剣にやっていただきたいと言うことは失礼かもしれませんから、さような言い方はしませんけれども、どうか徹底的に早く調べてもらいまして、そうして大臣の気持でも法律改正すべき点はするというお考えのようでありますから、それに向かってひとつ急速に邁進していただきたいと思うのであります。この点特にお願いをし、それについての御所見を重ねて伺っておきたいと思います。
  42. 福田一

    国務大臣福田一君) お説のような有力な考え方があるということを考慮に入れながら、前向きで問題に取り組んでまいりたいと考えます。
  43. 近藤信一

    ○近藤信一君 何か三時から大臣が衆議院の本会議に出られるようですから、あと二つばかりお尋ねしておきたいと思うのです。まだありますけれども、それはまた後日お伺いいたします。  先週末にちょっと帰りまして、中小企業のお方といろいろとお話をして、そのときに聞いたんですが、下請代金支払遅延等防止法法律はおもに手形を対象としてあるわけですけれども、しかし私聞いて驚いたんですがね、百万円の代金があると仮定しますね、そうすると、八十万円、いわゆる八割、八〇%を手形にして、あとの二〇%はずっと現金でも支払われない、そのままずっと残っていく、これが大きいということを言っておったんですがね。こういうことを聞いて私驚いたんで、これもやはり支払い遅延防止の一つの大きな対象になるんじゃないかと思うんですが、そういうことは大臣並びに長官は、そういう事実をお聞きになったことはありますか。
  44. 中野正一

    政府委員中野正一君) そういう極端な、百万円の支払いのところを八十万円だけ手形でやって、あとはネコババするということは、これはどこから見ても支払遅延等防止法にひっかかるわけですね、法律違反として。ただそういう事例が相当あるかどうかということは、ちょっと私も耳にしたことはございませんので、もしできましたら、先生の郷里のことじゃないかと思いますが、さっそく調べまして、善処したいと思います。
  45. 近藤信一

    ○近藤信一君 そういう事例、まだ長官はお聞きになっておらないようですが、私は現実に先週これを聞いてきたんですよ。それが一カ所じゃないわけですね。そういうのが現在相当あっちこっちに出ておるように私は話を聞いたんです。一枚の手形でそういう二割ずつ手形にのせないわけですね。相当それが重なっていきますから、それが三カ月、四カ月というように、だんだんと延びていくから、これじゃ下請はやり切れぬ、これじゃ倒産するのもあたりまえだ、こういうふうなことを言って、非常にこぼしておったんですよ。この点私は公取にこの間独禁法のときにお尋ねしようと思ったが、これは時間の関係であまりやっているといけませんので、この間はやめましたけれども、やはりそういう点、中小企業を担当しておられる長官は公取と連絡をとって調査していただきたいと思うんですがね。
  46. 福田一

    国務大臣福田一君) いまのような事情は、公取のほうへも連絡をしますし、それから地方の通産局へも連絡をして、調べてみたいと思います。
  47. 近藤信一

    ○近藤信一君 それから先ほど来、豊田委員からも下請代金の問題でいろいろと金融関係のことでも質問しておられたんですが、私、下請代金の支払いに対するところの調査というものが非常にむつかしいということはよく知っているんです。しかし、むつかしいからといって、これはほうっておくわけにもいかないし、この親企業とそれから下請とそれから金融業者、こういうふうなもので下請代金の支払い遅延に対するところの審議会というふうなものをつくって、そうしてこの遅払いに対するところの対策を立てる、こういうようなことも一つの方途じゃないかと思うのですが、そういうふうなことはどうですか。
  48. 中野正一

    政府委員中野正一君) 直接いまの先生のおっしゃったことに該当するかどうかはあれでございますが、通産省としても、この問題は長期的に見て下請関係というものをどう持っていくかということから、根本的に研究せなければいかぬのじゃないか。しかも、それは早急に必要な調査も研究もして結論を出そうということになりまして、中小企業政策審議会、基本法によりまするここに下請小委員会というものをつくっていただきまして、これは稲葉秀三さんが小委員長ですが、機械関係金属、化学、繊維、各方面の専門家の方に、金融関係の方も入っておられますが、集まっていただきまして、この間第一回の会合をやったのですが、そこで、ひとつこれはむしろ政策的な点を、個々の、いま先生のおっしゃったのは、地方的に何かブロック別に組織をつくって、個々の問題を処理するというか、調査研究させるというか、あっせんをさせるというか、そういうようなことをおっしゃっておるのじゃないかと思いますが、政策的な面は早急に研究したい。  それから、そういう紛争のような問題を、どこかそういう機関をつくってやったらどうかということはもうちょっと研究したいと思いますが、実は今年の予算請求をするときに、われわれが考えたのは、商工会議所あたりに下請のあっせんというか、そういうふうなことをやる機構をつくって、これに国が補助でもして何か第三者的な者が中に入ってやる仕組みを、そうすれば、いろんな紛争関係を上手に処理されるのじゃないかというようなことを考えまして、そういう提案をしたのですが、これは商工会議所のほうでてんでいやがられまして、もう受け付けられないのです。そんなことをやりだしたら、商工会議所はぶっつぶれてしまうということを聞かされたので、私もなるほどそういうものかとびっくりしたのですが、これはもう二度何か、この間聞きましたら、愛知県には何かそういういろいろ仕事をあっせんする、県のほうで援助した機構があると聞きましたが、もうちょっと具体的に研究をしてまいりたいと思います。
  49. 近藤信一

    ○近藤信一君 このことは、いま長官言われた下請代金のことは、これは公取にいろいろ聞いてもなかなかうまくいかぬわけだ。公取の答弁もいつもいわゆる匿名で投書をしてもらって、どうのこうのということを言うけれども、この間もその話をしたところが、幾ら匿名でこれは公取に言ったって、対象の親企業はどこかということがすぐわかるでしょう。そうすると、親企業はどこどこが投書したということがすぐわかるというのですね。うっかり投書もできないのですね。匿名投書をすればいいじゃないかと公取は言うのだけれども、匿名で投書をしてもわかるわけだ、だれがやったかということは。そうすると、自分たちはすぐ首を絞められることになるから、うっかり匿名で投書もできない。こういうような状態なんですよ、実際は。だから、いま長官が言われましたように、もっと徹底的なメスを入れて防止するような機関といいますか、審議会といいますか、そういうふうなものをつくって、そこでぼくはやれば、もう少しうまくいくのじゃないかというふうにも思うのですがね。これは長官、いま御答弁の中でいろいろと述べられておりまして、何とか遅延のないように早くやっていくというようなことでございますけれども、私は、何とかあれのもっと徹底的な対策を立てなければ、いつまでもこの問題はついて回って、常にこの問題は中小企業で一番重要な問題になってきちゃって、委員会のいつの議論でもこの問題が出てくるのでございまして、大臣も先ほど長いやつをだんだん短くしてきたと、こう言っておられたけれども、これはなかなか解決できないのじゃないかと思う。  それはそれといたしまして、大臣が本会議へ出席されましたので、大臣の質問は、またこの分はあとに回しまして、長官に保険公庫の出資の問題についてちょっとお尋ねしたいと思いますが、政府保険公庫に今度四十五億追加出資する、こういうことになったわけですが、この金額は、これは与党である自民党の要求では、たしかこれは百四十五億ぐらいであったと聞いておりますが、百四十五億与党の自民党が要求しておったのに、実際の出資が四十五億ということになると、これは三分の一にも満たない、こういうふうなことで、これは少ないのじゃないかというふうな批判があるわけなんですが、この点についての考えはどうですか。
  50. 中野正一

    政府委員中野正一君) 実はいま御指摘のとおりでございまして、政府最初に、政府というより通産省が大蔵省に予算要求をした保険公庫の出資額は、要求が四十五億なんです。その後自民党のほうでいろいろ要望がございまして、どっちかというと、これは党のほうでいろいろ修正をして要求をするというような形をとった段階で百億というものが追加をされた。それでわれわれとしては実はいま御審議願っております手形割引保証制度の充実というものを、法律案改正をお願いしておりますが、先ほど御説明いたしましたように、これを十分に広げていくのには、私の気持ちじゃ少なくとも五十億は要るのじゃないか——プラス五十億ですね——といういろいろな計算もしまして折衝したわけでありますが、とにかく最後には刀折れ矢尽きたというか、最後は政府案というものが四十五億——四十五億でももともとお前のほうは四十五億しか要求しないじゃないか、まるまるつけたのだという説明もできるかと思いますが、私としてはもう少しせっかく手形割引保証制度というものをうんと拡充するということであれば、もう少し出資が多かったほうがほんとうにこの制度が生かされてくるのじゃないかという気持ちがいまでもしておることを申し上げておきます。
  51. 近藤信一

    ○近藤信一君 四十五億の追加出資で三十九年度の融資基金はどのくらいになっておるのか、それからこれを保証協会で貸し付けるとしてどんな形で配分するのか、その配分の基準について何か方針がございまするならば、ひとつ説明をしていただきたいと思います。
  52. 中野正一

    政府委員中野正一君) 保険公庫の融資基金につきましては、現在の残高が百四十三億、これは全部各地方の保証協会に貸し付けておるわけです。これは三十三年からでありますが、大体、毎年二十億ないし二十五億——昨年は、三十八年度は三十億でございますが——というふうにだんだん貸し付けをやってまいりまして、残高が百四十三億でございます。それに、ことし三十九年度が約四十五億貸しますので、百八十八億を各地方の保証協会に貸すと、こういうことになってまいりました。融資金の配分の基準というものは詳細なものはございますが、要するにやはり各保証協会の、一つは保証の伸び率、それから一つは、弱体な、基礎の弱い保証協会がございまして、やはりそういうところでも中小企業者が相当たくさんいて、やはり保証も十分伸びさせなければいかぬというところがございますので、そういう基準も相当強く取り入れておりまして、できるだけ地方の弱体な、しかも将来伸ばさなければいかぬような保証協会の保証能力を充実させようというようなことになっておるわけでございます。そういうことで配分をしたい。しかもこれは、もし法律が早く通りますれば、さっそく出資を大蔵省から取ってきて、少し早目にこれは配分してやりたい。というのは、御承知のような公定歩合二厘引き上げ等のショックが相当中小企業方面にこれから起こってくると思いますので、その対策も兼ねて早急にひとつ配分したい、そういうように考えております。
  53. 近藤信一

    ○近藤信一君 ただいまの御答弁によりますと、昨年の保証協会の伸びと、それから弱体の協会、こういうところが基準になるわけなんでございますが、現在保証協会は幾つありますか。
  54. 中野正一

    政府委員中野正一君) 五十一でございます。これは、たとえば名古屋あたりは御承知かと思いますが、県の保証協会と市の保証協会の二つございますので、そういう関係で数がふえております。
  55. 近藤信一

    ○近藤信一君 五十一のうち、これはぼくは大都市が中心のようにも聞いておるのですが、いま長官が言われました弱体の協会というものですね、これはたとえばあまり工業地帯でない、産業地帯でない地域だと思うのですが、こういうところでおもなところではどんなところがございますか。
  56. 中野正一

    政府委員中野正一君) これは、弱体といったも、一生懸命その保証協会の方もやっておられるので、あまり言うのもぐあいが悪いのですが、いろいろの比較でございますね、各、いろいろの保証能力、いままでの保証の実績、伸び率等の実績から見て、あるいは持っている資産、それから一つは、私は、県あたりの方針というか、県がこれは大体出損しておりますから、それから地方の金融機関ですね、ここらあたりの力の入れよう、あるいは商工会議所あたりの方針とか、いろいろな要素が重なって、そういうことになっておると思いますが、おしなべていいますというと、僻陬の地というか、そういう言葉は悪いかもしれませんが、たとえば青森県とか鳥取でございますね、鹿児島県とか、そういうようなところはやはりいわゆる客観的に比較して、いろいろ力を入れておられますけれども、弱体であるというふうに見ております。
  57. 近藤信一

    ○近藤信一君 各府県ほとんど現在保証協会はありますか。
  58. 中野正一

    政府委員中野正一君) 全部各府県一つずつはございます。
  59. 近藤信一

    ○近藤信一君 次に、限度引き上げについてお尋ねするのですが、保険の限度額を、小口保険は、今度は三十万円、それから第一種百万円、第二種一千万円に引き上げるといわれておりますが、それによって零細企業に対する信用保証はなおざりになる懸念はないかどうか。
  60. 中野正一

    政府委員中野正一君) その点は私はないのじゃないかというふうに見ております。実際、実情を見ましても、二十万円というものはちょっとこれ実情に合わないのじゃないか。小口保険というのが、御承知のとおり、保険料は非常に安いわけでありますので、非常に地方の中小企業者からは、これは上げてもらいたいといっております。したがって、いま御指摘の点は、保証の手続きを簡素化するとか、あるいは小口保証のための融資基金ですね、融資基金を配る際に、そういうものに優先的に使って、基金をプラス・アルファして保証協会に流してやるというような方法をあわせて今度はやりたい。そうしていま御指摘のような心配のないようにしたいという考え方でございます。
  61. 近藤信一

    ○近藤信一君 保証協会で保証している中で、小口の部分は何パーセントぐらいありますか。
  62. 中野正一

    政府委員中野正一君) ちょっといま、資料調べてお答えいたしたいと思います。
  63. 近藤信一

    ○近藤信一君 現在信用保証はどの程度の金額のものが多いのか。大体が大都会と地方ではだいぶ金額的にも変わってくると思うんですが、大体この傾向はどんなふうだか、長官の御存じの範囲内でひつとお示し願いたいと思います。
  64. 中野正一

    政府委員中野正一君) これは全体の平均でございますが、三十五年あたりで四十五万円、三十六年で五十七万円、三十七年度で六十七万円、三十八年の九月末で八十二万円ということでございまして、御指摘のように、都会とそうでないようなところで相当差があるのじゃないかと思いますが、その資料がいまちょっと手元にありませんので、またさっそく調べまして資料として提出いたしたいと思います。
  65. 近藤信一

    ○近藤信一君 今度の改正で、出資増額は手形割引の信用保証を拡大して、それから中小企業金融を円滑にすることが大きなねらいであろうかと思うんですが、現在でも手形割引保証は相当に行なわれていると思うんで、その実態と、今度の措置によって拡大されると見込まれる、その程度のひとつ説明をしていただきたいと思います。
  66. 中野正一

    政府委員中野正一君) 現在五十一保証協会ありまして、三十二の保証協会が先ほど御説明しました手形割引保証、これは現在のやり方は非常にぎこちないやり方になっておりますが、それをやっております。それで今度はこの改正で全部の保証協会がやれるようになるのではないか。それから四十五億のうちで約十億円程度はこの手形割引保証のためにプラスアルファとして、いままでもそれはそれに使っておりますから、プラスアルファとしてこれをつけるように融資基金を流したいというふうに考えております。そういうことをやりまして、現在手形全体の保証残高の十一%程度が手形割引保証になる、これを相当に上げたいということで、一応目標としましては、既存のものを含めまして一年間の手形割引保証承諾額が約一千億に持っていきたい。ことし三十八年度は大体五百億くらいに手形割引保証が、ちょっと切れると思いますが、約五百億弱ぐらいになるのじゃないかと思います。それを目標としては一千億くらいに持っていきたい。これは保険公庫総裁もそういうようなつもりでいまいろいろ研究していただいておりますので、できるだけそういう目標に近づけるように一応努力したい。それにはやはり先ほどもちょっと御説明しましたが、特殊保証というのは、五百万円ならば五百万円という限度と、それから半年なら半年という期間をきめておきまして、その間に持ってくる手形は、五百万円の範囲であれば、三百万円と二百万円一々保証せずに、自動的に保証して、自動的に保険がかかるという仕組みを考えているわけでありますが、そうしますと、限度がかりに五百万円とすると、それが一ぱいになることはほとんどないわけですね。そうすると、平均すると四百万円ぐらいしか実際の保証はしないということになりますので、五百万円分の保証料払ったものはまあ歩が悪い。中小企業のほうからいった歩が悪いということになりますので、これもいま大蔵省と折衝しておりますが、大体従来の保証料の、保証料というか、保険料になりますが、保険料の一五%ダウン程度でやりたい。これをやはり相当この保証協会が保険にどんどんかけてくるということになるのじゃないかということを考えまして、そういうことで、これは法律でなくて政令でできますので、そういうことを考えております。
  67. 近藤信一

    ○近藤信一君 四十五億のうち十億くらい手形割引保証ですね、パーセンテージにすると一一%でありまして、それを今度一五%にするということですか。
  68. 中野正一

    政府委員中野正一君) 大体一割五、六分くらいに持っていきたいと思います。
  69. 近藤信一

    ○近藤信一君 監事の権限についてですが、これは今度は監事の権限を拡大するということがございまして、これはまことにけっこうなことであると思いますが、これは総裁を通じてだけしか主務大臣意見を出さなかったのを、今度は直接提出できるようにしたのは、これも修正されたのですが、いままで監事意見総裁にも主務大臣にも全然提出しなかったのかどうか。それから御承知のように、今国会で別の委員会にやはり公庫の予算及び決算に関する法律というのがございまして、この改正案審議されておりますることも長官知っておられるとおりだと思うのです。この中で公庫が作成する財務諸表やそれから決算報告書主務大臣を経由してこれは大蔵大臣へ提出される、こういうことになるのですか。その際に、公庫監事意見を付するよう改正されておりますが、これは公庫全般における監事の職能強化の一つの型だと言えるのです。それからこれで見ましても監事の権限は拡大されることになるのですが、いままで監事の権限が拡大されていないために支障をきたしたというふうなことの事例があったかどうか、この点はどうですか。
  70. 中野正一

    政府委員中野正一君) 中小企業保険公庫につきましては、いま先生の御指摘のあったような不都合のことがある——従来の制度でそういうことはわれわれとしては承知しておりません。そういう事例はなかった、この公庫につきましては。
  71. 近藤信一

    ○近藤信一君 それから商工中金の組織化のことについて、ちょっとお尋ねしていきたいと思うのですが、政府中小企業の組織化を主張しておりますが、その重大な使命を果たすべき商工中金の金利が他の金融機関に比較しまして高かったという声もございますが、この点ははなはだ遺憾だと思うのですけれども、今回三十億円出資を増額することによりまして利下げをはかったということでございますが、これは適当なことだと思うのです。今度の利下げによりまして商工中金、それから中小企業金融公庫、それから市中金融機関、これらの間の金利の差というものは一体どのくらいになるのか、この点いかがですか。
  72. 中野正一

    政府委員中野正一君) 商工中金の金利が高いじゃないかということを前前から言われておりまして、何とかこれを下げたいということで逐年下げてまいりました。三十八年度につきましては、政府の出資がございませんでしたが、短期の貸し付け資金につきまして自己努力だけで昨年度少し下げさせた。しかし、これは限度がございますので、来年度はぜひこれを実行したいということで三十億の出資をお願いしまして、これによりまして中長期の金利を三厘下げるわけです。それから、短期の金利を日歩五毛下げる。現在がこれは二銭四厘五毛でございますので、これを二銭四厘にしたい。これは相当影響が私はあるのじゃないかと、特に商工中金は御承知だと思いますが、短期資金のほうが多いわけでございますね。それで、この五毛の引き下げというのは相当中小企業にはプラスになるのじゃないかと、ただ、たとえば長期の資金等につきましては、三厘下げてもまだ中小企業金融公庫の金利よりは一厘ないし二厘高いのです。こういう情勢でございますので、できれば理想とすれば、中小企業金融公庫政府関係金融機関ですね、これと肩を並べるというのが理想じゃなかったかと思いますが、実際問題はそこまでいけなかったのは残念でございますが、そういうことで、大体長期のものが九分ないし九分一厘程度ございまして、これをほかの市中の金融機関と比べるとどうかということになりますが、市中の金融機関の金利が幾らかというのがなかなか実態がよくつかめませんのですが、いま手元にたまたまある資料でございますが、手形割引の利率の比較でございます。いま申し上げましたように、これは昨年でございますが、二銭四厘五毛、それから、全国銀行は大体二銭九毛、まあ二銭一厘ぐらいでございますが、これが今度全国銀行については、今度の公定歩合引き上げで上がってくるわけです。直接にこれは影響を受けます。これは都市銀行。それから地方銀行になりますと幾分上がりまして二銭二厘五毛、これも今度上がります。それから、相互銀行あたりになりますというと、大体従来の商中のあれより幾分高い二銭四厘八毛とか、二銭四厘九毛あたりでございまして、信金あたりになりますと、これは短期のものにつきましても、これは商中より相当高い。それから、これはここでそういうことを言っていいかどうかわかりませんが、これと例の歩積み、両建ての問題がございまして、実質負担金利は幾らかということになりますと、なかなか調査もむずかしい、この数字自身も実効平均金利を一応比較した資料でございます。
  73. 近藤信一

    ○近藤信一君 政府が出資しておる公庫は、このほかに幾つかあるわけですが、その公庫の金利というものは、いま長官が説明されましたように商工中金だけが違って、そのほかのほうは全部同じにそろえておるのか、みんなそれぞれ公庫によって金利が違うのかどうか、この点はどうですか。
  74. 中野正一

    政府委員中野正一君) これは、その金融いたしまする政府関係機関でありまするが、できたときの事情というか、また対象もいろいろ違うというようなことで、大体種々雑多のように私は感じております。中小公庫は先ほど申し上げましたように九分でございます。しかしこれも、たとえば輸出産業とかあるいは特定の機械振興法に乗っかる業種というようなものについては、特別に七分五厘というような特利を中小公庫のほうもやっております。しかし原則は九分。それから開発銀行、普通は九分でございますが、地方開発の分は八分七厘になっております。地方開発向けに貸すやつは八分七厘になっております。これはどうしてそういうことになったかというと、東北開発公庫の金利は八分七厘なんです。そして東北開発公庫の適用される地域以外のところは、開発銀行が地方開発を受け持つということになっておりますので、八分七厘にしたのじゃないか、そういうことになっております。それから最近の事例としては、これは私が石炭局長のときやったのですが、例の産炭地域振興事業団ですね、あそこあたりの金利はたしか六分五厘だったと思いますが、そういうふうにいろいろ対象の業種、地域等によりまして必ずしも一致していないというのが現状になっております。それから農林関係は、これはまた四段階か五段階ございまして、非常に低利なものもございます。
  75. 近藤信一

    ○近藤信一君 農林関係は非常に低利なんですね。中小企業実態というものは、やはりこの前総理も言われておりますように、農民の格差とそれから中小企業の格差は、これはもう非常に現在でも大きいのだ、こう言っておられるのだが、やはりこれは私は将来農林の金利くらい安くしていくというふうな考えを持ってひとつやってもらいたいと思うのですが、長官のお考え、長官が直接これは担当されるわけじゃないと思うのだけれども。
  76. 中野正一

    政府委員中野正一君) 私といたしましては、ぜひこれは中小企業向けの金融の金利をもうちょっと下げるべきであるという考え方を前々から持っておりまして、また業界、中小企業業界の要望もそういうところにございます。これは何とかしてまた次の新しい政策の一つとしてそういうものを取り上げていきたい。ただ、その場合に、これは前々から問題になっておるわけですが、例の無利子貸し付けの設備近代化補助金制度でございますね、あれらあたりも一種の金融なんだから、これも一回考え直して、少し安い金利を取ってうんと量をふやしたほうがいいんじゃないかというような議論もございまして、この次の政策としては、中小企業金融の全般のあり方というものを考え、それから同時に、一つには、これは中小企業のこの政策をもう少し今度はさらにきめこまかく持っていかないと、業種別にも業態別にもそうしないと、金利だけをただ一般的に下げてくれという議論だけでは、なかなか力強さが感ぜられないというようなこともございますので、そういう中小企業政策全般の問題にからめて金利問題は考えていきたい、こういうふうに考えております。
  77. 近藤信一

    ○近藤信一君 最後に一点お尋ねしておきたいと思うのですが、今度、中小企業六本がいま出ているわけですが、この中で商工中金とそれからいまの保険公庫法、この二つだけが四月一日施行ということになって、そのほかの法律は公布の日からと、こういうことになっておるのですね。これはどうしてそういうふうに四月一日と、公布の日からというふうなことになったのか、またそうせなければいけなかったのか、この点について、長官から御答弁していただきたいと思います。
  78. 中野正一

    政府委員中野正一君) 商工中金なり、あるいは保険公庫保険法の改正につきましては、これはどうしても四月予算が通ってすぐ改正をして、中金はいまの金利引き下げそのほかいろいろ利点があるわけでございますので、出資等につきましても早くやってやりたい。それから保険公庫等につきましても、大体先ほど申しました融資基金の配分等、それから地方の保証協会といろいろ今度の新しい制度に従って契約をせにゃいかぬ、これは半年ごとにやっておりますので、これは四月から九月、十月から三月というふうに二回に分けてやっておりますので、そういう関係もありまして、ぜひこの四月一日に施行したいという気持から、こういうふうに書いてあるわけでございます。それ以外のものにつきましても、実は、たとえば指導法等も、予算関係もあるのでございまして、ぜひ四月一日から実施したいというふうに考えておりますが、そこまで国会の御審議のほうをあまりこちらのほうで、政府のほうで縛ばる、というとことばが悪いのですが、そこまでやるのもあれだというので、まあ公布の日から施行するというのが普通のやり方でございますので、国会の審議が延びるということもございまして、これは四月一日と書いておきますと、またそれを修正して衆議院に持っていかなければならぬというような、御承知のようないろいろな問題も起こります。  ただ一言申し上げたいのは、この指導法につきましても、四月一日とは書いてございませんが、先ほどもちょっと御説明申しましたように、中小企業指導センター業務範囲を拡大するということでございまして、その内容は、中小企業者に対しまして直接高度の、程度の高い技術研修をやる。それから小規模事業者の経営指導をやっております商工会の指導員、これに研修をして再訓練をしよう、こういうのでございまして、それに必要な出資を一億五千万円する、この出資によりまして、研修所の建物なり施設なりをするわけでございます。そういう意味で、いずれも中小企業者生産性向上ないし合理化の促進に非常に役立つということでございまして、かねがね中小企業の業界からも一強く、一日も早くこれをやってもらいたいということを要望されているわけでございます。その意味におきまして、指導センターのこの法律につきましても、予算の成立後一日も早く出資を行ないまして、急速に新しい仕事ができますように準備を進めることが必要である。ぜひとも本改正法案は早急に御審議お願いしたいというのがわれわれの希望でございます。
  79. 椿繁夫

    ○椿繁夫君 この商工中金三十億ですか、出資金の増額をして、そうして金利を若干引き下げる。引き下げた結果が、一体、年にしますと、金利どのくらいになるのですか。八分とか九分とか、幾らになりますか。
  80. 中野正一

    政府委員中野正一君) 今度三十億の出資で下げたもので申し上げますが、長中期で三厘下げる。それから短期のものは日歩五毛下げるということでございますが、その五毛下げると二銭四厘になるのです。現在二銭四厘五毛ですから。これを年率に直しますと八分七厘六毛でございます。だから短期資金については年の金利が八分七厘六毛になります。それから一年から二年までのものでございますが、これは三厘下げまして——組合貸しと構成員貸しと二つございまして、組合に貸す場合と、直接構成員に貸す場合とありますが、一年から二年のものが、組合貸しが九分になります。それから構成員に面接貸すものは一厘高くて九分一厘、それから二年以上の長期のものでありますが、これは組合貸しのほうは九分二厘、現在これは五厘でございますが九分二厘、それから構成員に貸すものは九分三厘、こういうことになるわけであります。
  81. 椿繁夫

    ○椿繁夫君 これで今回の公定歩合の引き上げ措置によって都市銀行なり地方銀行、それぞれ金利は上がると思いますが、上がって全国平均どのくらいの金利になりますかね。
  82. 中野正一

    政府委員中野正一君) これはちょっと先生、実は私のところで少し研究してみますが、いますぐはとても数字は出ませんが、今度の公定歩合の引き上げによりまして、都市銀行と地方銀行は、一律に二厘ほど金利を上げるということを言っております。相互銀行、信金等は、日銀には全然関係のない——日銀と取引のない銀行でございますので、これは上げないということでございまして、しかもこれは短期の金だけ上げるということでございますから、その辺の全貸し出しにおけるウエート等を参酌して計算すれば出るはずでございますが、また適当な時期に勉強さしていただきまして、返事さしていただきたいと思います。
  83. 椿繁夫

    ○椿繁夫君 政府中小企業を対象とする三つの金融機関がありまして、国民金融公庫が大体運転資金中小企業公庫設備資金、商工中金は組合金融ということに大別されておるように思います。で、ことに今度のは政府の御方針である中小企業と農業の所得格差というものを何とか縮めていかなきゃならぬ、そういう方針からいきますと、私は中小企業の組織化というものを、政府が強力に指導される必要があると思う。協同組合などがありますが、なかなか共同施設とか共同受注あるいは共同購入というようなことは、現われてはおるけれども非常にむずかしい問題がございます。団地などについてもぼちぼち出てはおりますけれども、なかなか団地をつくって設備の近代化なり経費を削減していくような共同行為というものは非常にむずかしい。そういうところから考えますと、私はこの組合金融中心とする商工中金の金利のごときは、思い切ってこれは安くして、そうして少しでも共同行為のできにくい中小企業に組合を信頼させる、それに頼らせる、そのようにしてこの中小企業の組織化というものを育成してゆく必要があると、常々思っているのです。しかるに、いまお聞きしますと、三十億の出資の増額を行なうことによって、若干の金利の引き下げを考える。その結果が、いま伺いますと、組合でやっても九分を割らない。これは開発銀行のごときは、最近だいぶコストが上がって、六分五厘平均であったものを七分五厘程度にするということが、昨年来これは問題になっていますけれども、造船のごときに対しては、国としての政策もあるわけですけれども、とても六分五厘の金利は負担できないだろうというので、一般会計から利子の補給などを考えて、そうしてたしか金利の実質負担が五分程度ということに優遇をされています。私は日本経済に占める中小企業の役割り等から考え、しかも政府としてこれの組織化、近代化を促進することによって、総理の御方針のこの格差を縮小するということに力を入れるのなら、もっとこんなものは思い切った金利の引き下げをやって、組合というものに組合員が信頼し頼ることができるような措置を、政府としてそれこそ革命的な政策をもって当たられなければ、私はいけないと思う。開発銀行なら五分で借りられる措置がとられているのに、中小企業の組合金融で、なお今回の増資を行なって金利引き下げをやっても、九分を割らないというようなことでは、私は得心がこれはできない。近藤委員の質疑に対して、これからひとつ力を入れていきたいという長官の御決意のほどはわかりましたけれども、大体当初の予算の要求のときに、四十五億出して、まあ削られないで、そのまま大蔵省が認めて政府案となったということは、えらい成功のうちでしょうけれども、総理大臣があれほど声を大にして言うておられるその政策全体の推進の面から見ますと、非常に消極的な予算要求であったと思います。そこで与党のほうからも、この額にオーバーすること百億以上の要求があったということは、私は当然だと思う。これじゃ問題になりませんよ。だからこの委員会でおざなりの御答弁だけじゃなくて、ほんとうにやはり総理が、政府与党を代表して国民に公約しておられるのだから、もっともっと大胆な施策を私は出されることが望ましい。今度の増資をやり、金利引き下げを行なっても、なお年利九分何厘というようなことでは、中小企業は食っていけませんよ。もっともっと長官、ほんとうに思い切った構想を、最も近い機会に、強力に推進されることを私は望みたい。御決意のほど、いかがです。
  84. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 関連。ただいま椿委員から、特に中小企業の組合金融の金利の是正について主張せられたことは、私も全く同感に思うのであります。前前から、私なども、これを非常に主張してきたわけなのでありますが、特にここで大臣がおられれば大臣に直接決意を承りたいと思うのですけれども、大臣がおられぬから、特に長官に承りたいと思うのでありますが、それはこの近代化、高度化、これを大いにやろうとしておられる。ところがこの近代化、特に高度化は、組織の力に訴えて、協業あるいは共同施設、これに重点を置かなければ、言うべくして行われないのですね。その際に、やはり組合金融について、量的にも非常に画期的な手を打っていかなければ、近代化、高度化は言うべくして、木によって魚を求むるのたぐいのものだと思うのです。同時に金利について、普通一般の中小企業金融の金利よりも安いという行き方を打ち出さなければいかぬと思います。それについては近代化資金あるいは高度化資金、無利子の融資というのがあるけれども、これはもう全額というわけにはいかぬのであって、むしろ大部分というものは、この場合、金融機関たる商工中金に、組織を背景とする金融として、量的にも質的にも期待をしていかなければならぬ。それがいまの情勢では、全く木によって魚を求むるたぐいになるということを非常に懸念するわけなんです。その点について、近代化、高度化の見地から、どういう決意を持って今後進まれるのか。それに関連して、この商工中金の資金量と同時に低利資金の大幅導入、これについての決意を承っておきたいと思うのです。
  85. 中野正一

    政府委員中野正一君) いま両先生から御指摘がございましたが、まことに御指摘のとおりでございまして、組合金融強化というものを通じまして、中小企業者共同化、協業化等をもう少し強力に強めるべきじゃないか、これはわれわれもその方針でおりますが、その方針を裏づける手段というものが不足じゃないか、こういう御指摘だろうと思います。このたびの三十億の出資、長年の中小企業者の希望でございました金利の引き下げが一部実現をしたわけでございますが、決してこれで満足するわけではございませんで、さらに強力なる施策を今後とりまして、さらに中小企業向けの金融が量的にも質的にも円滑にいくように、力を十分にこれに注ぎたいというふうに私は考えております。特に今後協業化等のいわゆる中小企業の高度化あるいは近代化ということのための施策というものが最も現在要望されておるときでございますので、決意を新たにいたしまして、また新しい構想というものをいまもうすでに研究は始めておりますが、いま御指摘の点も十分拝聴いたしまして、参酌いたしまして、早急に結論を急ぐようにしてまいりたいと思っております。
  86. 椿繁夫

    ○椿繁夫君 長官の御答弁けっこうですけれども、なお、政府としての考えを承っておきたいのですが、次回にひとつ大臣にぜひ出てもらって、いまの問題、ひとつもう少し最高責任者としての意見を伺いたいと思っておりますが、きょうはこの程度にしておきます。
  87. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 私も関連してひとつ長官に申し上げておきたいのですが、中小企業金融の高いということですね。これは日本の現在の置かれておる国際情勢から見ても非常に重要である、通産省がこの金利に対して、金の融資額はむろんのこと、幾ら下げてもこれは長官の非常な手柄になるのであって、日本国民から感謝される、行き過ぎてもいい、大いに御努力をお願いしたいということをひとつ私からもお願いしておきます。  他に御発言もなければ、三案に対する質疑は本日はこの程度にとどめます。  本日は、これをもって散会いたします。    午後三時四十四分散会      —————・—————