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参考人(
勝間清君)
勝間でございます。私は現在
日本輸出双眼鏡
工業組合の副
理事長、それから
日本双眼鏡
輸出振興事業協会総代会の企画
委員長、そうして現在も
勝間光学の代表取締をやっております。
軽
機械輸出振興法案に基づきまして、諸先生方が双眼鏡の
業界の実態を御傾聴下さることを厚く
御礼申し上げます。
まず、
世界における双眼鏡の市場情勢について申し述べたいと思います。戦後初めてわが国の双眼鏡が
輸出されましたのは
昭和二十二年でありまして、その数はわずかに二万八千台、金額にして約五百三十三万です。その後、
輸出の伸長に伴いまして、八年後の
昭和二十九年には五十万台、さらに、三年後の
昭和三十一年には百万台に達しまして、この当時
輸出の花形としまして、大いに刮目されたわけであります。
昭和三十八年には百五十万台、金額にして約六十億円をこえるに至った次第でございます。このように、双眼鏡の
輸出については、
先進国であります西
ドイツ、
フランス等を断然圧倒いたしまして、いちじるしい伸長を遂げまして、
世界の双眼鏡の供給においては、ほとんど独占的といってもよい地位を占めるに至ったわけであります。この陰にはいろいろとPRの活動の力もあったわけでありますが、こうして獲得しましたマーケットを維持するため、現在
事業協会を通じて、PRあるいはアフター・サービス、市場実態の把握につとめておりますが、西
ドイツのツアイス社、最近になりましてアグファー社等の
先進国が市場の巻き返しということを着々進めており、また昨年
あたりから香港が双眼鏡
生産に乗り出し、また一、二の
後進国もこの
生産計画を立てているような現状であります。
昭和三十四年の十月、現在の
事業協会が設立される前は、双眼鏡の
輸出は、全くのめくら貿易でありまして、全
生産の九五%以上を
輸出いたしております産業であるにもかかわりませず、
海外市場の実態は、
輸出業者等の
情報に基づいてやっており、販売はもちろんのこと、アフター・サービスも、PRも、すべて商社まかせというような
状況であったのであります。この
業界は九五%以上が、もうほとんど
中小企業の小企業と申しましょうか、小企業よりも零細企業が非常に多いのでございまして、こういうことは、それまではたいへんいたし方ないことであったのでございます。しかし、
事業協会が設立されましたあとは、少額の負担金と政府の補助金によりまして、長年の宿願でありました
海外市場の調査あるいはPR、アフター・サービス、
品質改善という
業務が実現されるようになったのであります。
このことにつきまして、もう少し詳しく述べますと、
海外市場の調査とPRにつきましては、
海外市場調査団を、
アメリカ、カナダ、
ヨーロッパ、香港、台湾に派遣いたしまして、われわれの
輸出した双眼鏡の実態といかに消費者に愛用されているかを調査いたしまして、この結果は――
事業協会から派遣されたのでございますから、われわれ業者に対して報告会あるいは会報によって発表されまして、その調査資料に基づいて
業界の運営を計画しまして、PRとして、双眼鏡の使用方法だとか、あるいは扱い方の注意事項、それによります今度は双眼鏡につきますLJマークあるいは
輸出検査の合格証の意義等のパンフレットを小売店に配布しているようなわけでございます。アフター・サービスという面におきましては、
海外主要都市にサービス・センターを設け、消費者等の相談に応ずる体制を整備して、
輸出の倍増を企画しております。この点は現在私が企画
委員長を担当しておりまして、いままでのこの点で及ばなかった、いわゆるセンターを設けることに及ばなかったことを非常に強調して、このことに対しては着々とこの方面に伸長しているような次第でございます。
現在ニューヨークに
事業協会の職員を常駐さしておりまして、常にその
情報をキャッチさして、
品質の改善と苦情処理につとめ、
品質改善には、現在財団法人として
日本双眼鏡開放研究所に委託し、それと、われわれの
工業組合に技術
委員会というものがございまして、それから選抜された
委員と、かつ
日本望遠鏡検査協会との緊密なる連係のもとに、その成果を着々とおさめている次第でございます。
以上は
事業協会のほんの概要を述べたのでありますが、前述のとおり、
海外の競争相手が生じつつありますので、市場調査、PR、アフター・サービスの
確立、
品質の維持向上は、ますますその必要の度合いを増してきていると言わざるを得ないのであります。したがいまして、われわれ零細業者のみの資力ではとうていなし得ないこれらの
業務を、少額の負担金と、それに政府の補助とによって強力に推進するためには、
事業協会の存在ということが不可欠であると信ずる次第でございます。
次に、
登録制の必要性につきましてですが、われわれ双眼鏡製造
業界は、典型的なアッセンブル・システムでもってやっている
業界でございます。特に大規模な設備は要しませんが、双眼鏡の性能、精度を検査する設備が最も必要であります。よく双眼鏡は
ドライバー一本ででき上るように言われておりますが、これはとんでもないことでございまして、
ドライバー一本だとか、勘で双眼鏡をつくるということは、これはできないわけでございます。そういう点、
海外の消費者は高度な双眼鏡を望んでおりまして、一定の基準、つまり
品質管理、あるいは卓越せる技術者、それから設備が、
機械が――それこそ高度な
機械ということは必要ありませんが、双眼鏡をつくる上においての一定の設備によってつくれた双眼鏡、しかも製造業者の保証、すなわち登録番号を付した双眼鏡がほしいのであります。これにこたえようとするのが
登録制でありまして、この登録番号の表示は、消費者に対する
生産者の責任でもあるのであります。
このようなことから、必要な
登録制によりまして、現在登録されている月間の
最大製造量は、二十五万四千台でありますが、昨年の月平均出荷
数量は約十二万七千台でありますから、実に二倍近い
生産能力を有しているということになります。このことはすでに
生産能力が過剰であるということを示しておりまして、これ以上業者がふえるということは、業者が共倒れの危険にさらされていくと言わざるを得ないと思います。
昭和三十六年四月以来、登録の停止の措置が講じられておりますが、これはまさに
中小企業団体組織法による調整事業を、さらに
効果的なものにしていると私は考えております。このような
登録制に加えて、登録停止により過剰
生産能力を完全に
防止しているのは、この
輸出振興法に基づく双眼鏡と、それから
ミシンだけでございます。何としてもこの特権を守るのがほんとうであって、みずからこれを放棄するようなことがあっては、私はならないのではないかと考えております。
ここで、前に触れましたが、団体法に基づく調整事業、すなわち第五十六条の規制命令について申し上げたいと思います。現在の
生産能力は
需要の二倍をこえております。このことは非常に、好むと好まざるとにかかわらず、
業界全体の経営を維持するために、万難を排しまして、需給の調整をはかって、無用な業者間の
生産競争、出荷競争を避けなければならないことを訴えているものと言わざるを得ません。これは規制命令による調整事業を開始しました
昭和三十一年十二月当時も同じような
状況でありましたが、十年近くも何も行なってこなかったじゃないかというおしかりを受けるかしりませんが、いわゆるPR等によりまして伸びを示しているとはいえ、限られた
需要に対して二倍をこえる
生産の能力があること自体に問題があるのでありまして、これは時でもって解決するとか、そういうものではないのじゃないかと思われるのであります。解決策はただ
一つ、これ以上過剰
生産能力をふやさないことで、この問題はPR等によって
需要を開拓することにあるのじゃないかと考えるのでございます。
さきに述べましたように、香港、あるいは
後進国等の
生産攻勢ということは、これは別個に考えたいと考えおります。すなわち香港の双眼鏡、つまり私たちの
輸出検査基準にはとうてい及びもつかないいま現在、粗悪品でございますが、西
ドイツの高価品に対抗する手段としましては、廉価な優秀な双眼鏡を
輸出すべきであって、この問題に関しては、われわれ業者間で
過当競争をもたらし、そして香港あるいは西
ドイツあたりの思うつぼにはまるような規制をまで撤廃して過剰
生産に打ち込むべきでない、こういう考え方を持っておるわけでございます。そういう意味におきましては、
登録制の廃止などということはとうてい考えられない問題でございます。いまこそわれわれ双眼鏡に寄せております消費者の期待にこたえるのには、そういったようないろいろの問題に惑われることなく、独自の
輸出産業に飛躍発展することが一番大切でありまして、もう一度声を大きくして申しますならば、規制の撤廃、
登録制の廃止ということは、これはわが
業界にとってはもう自殺行為にもひとしいのではないかということを考える次第でございます。
わが国の
業界の、前にも申し上げましたが、九五%以上が非常に零細業者でございます。大体三十人以下が多いのでございまして、百人というのは数えるだけしかございません。
資本力もきわめてそういう面で乏しい次第でございまして、設備の近代化、
品質の改善ということは非常な困難な
状況にあります。それに加えまして、最近は労働力がとみに不足しております。おまけに経費は非常に上昇しておりまして、採算面の悪化はひどいものでございます。これを打開いたしますためには、事業の共同化とか、あるいは取引の
系列化等によって企業力を強めまして、
生産性を高める必要があると思います。またこれによりまして、資材の共同購入とか、いろいろなその面におきましてコストの引き下げ、そして
海外諸国に対しての競争力を大いに涵養しなければならないと思います。このために現在当局に
お願いいたしまして、
中小企業近代化促進法の指定を受けまして、税の軽減あるいは近代化資金の借り入れを行なって企業体質の改善をはかりたい、こう考えている次第でございます。また、
品質の改善、新製品の開発にも力を注いでおりますが、これは双眼鏡開放研究所に依頼し、先ほど申しましたように、着々その成果をおさめて――ここで申し上げてもおわかりにならないかもしれませんが、レンズの研摩機とかあるいは検査機だとかというものに対する研究を盛んとやっているわけでございます。
わが
業界の調整活動は、ちょうど八年目を迎えておりますが、その間、調整
数量の割り当ては
実績に基づいて行なてわれきているわけであります。割り当てと
生産の実態との間にアンバランスが生じてまいっておりますが、これは何としても早急に是正していかならないものの
一つでございまければなすが、これに関しましては非常に困難な問題がございまして、なかなか
業界全体の賛同を得られるような解決策が見当たらない
実情でございます。これは私
ども小ワク業者、大ワク業者という問題にからまってくるのでありますが、いまこのときこそ、お互いが譲り合って、そうして
業界の実態に即した割り当てを、何とか改善方法を考えて、もって
業界を一丸にして、そうしていわゆる外患――と申すと非常に大げさになりますが、内憂は、中心でもって反対があり、賛成がありといういうことでなく、一致して処するようにしたいものだ、そうして
海外に大いにPRして
輸出の倍増をはかりたい、そう考える次第でございます。
取引秩序の
確立に関しましては、これも
工業組合におきまして、いろいろ立案いたしました。協同組合による資材の購入あるいは協同組合によって共販、共同受注ということも打ち出していろいろと研究いたしております。そういう面におきまして、これはこの
業界に当てはまらないかもわかりませんが、現在鶏卵あるいは青果、こういったようなものの例を見ましても、非常にうまく円滑にいっているじゃないか、そういう面におきましての、われわれ
業界には、いわゆる機種は同じにいたしましても、
品質がまちまちでございますから、これに乗せるということは非常に至難な点もございますが、その点は双眼鏡の開放研究所におきまして、いわゆる規格の統一をはかって、そうして安心して消費者が買え、あるいは外国のバイヤーから注文を受けられるように持っていって、業者間の値下がりを
防止して、
過当競争をなくすという方向に持っていきたいという考えを持っておりますのですが、まだその成果はあがっておりません。商社のほうからは盛んに取引の
系列化を申してきております。そうして向こうの
輸入業者、
輸出業者、
メーカー、そうしたような一本の線で、優良系列でもって、
価格の維持をはかろうという相談を受けているのであります。共同受注、共販には資金が必要でございますが、その資金を獲得するために、私は幸いにして
事業協会の企画
委員長を担当しておりますために、
事業協会の資金を何とかして
工業組合に融資を受ける、あるいは協同組合に融資を受けて、これを共同受注の一本化で一カ月あるいは二カ月のブランクがあった場合に、その穴埋めに利用したいという考えも具陳いたしまして、目下
事業協会と盛んに折衡しておるような次第でございます。
以上双眼鏡につきまして、
世界市場におきまする地位、今後の市場対策あるいは国内体制のことについて申し上げましたが、市場対策としましては、いままで大きく飛躍いたしました双眼鏡のマーケットを失いたくない。さらに市場の開拓を初め、アフターサービス・センターの設置、そうしてそういったようなことで、われわれ
業界からも盛んに
海外に調査に出まして、大いに
事業協会を活用していきたい、こういう考えを持っておるわけでございます。国内対策としましては、
登録制による
品質の維持、保証、規制による需給の調整並びに
中小企業近代化促進法による企業体質改善、こういうものをもとにしまして
海外の
生産に対抗していきたい、こういうわけでございます。
以上をもちまして、私のこの法案に関する賛成
意見を具陳いたしましたが、われわれの意図するところをよろしくお取り上げ下さいまして、よろしく御指導下さることを
お願い申し上げる次第でございます。
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