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1964-03-24 第46回国会 参議院 社会労働委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月二十四日(火曜日)    午前十時三十四分開会   —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     鈴木  強君    理事            亀井  光君            高野 一夫君            藤田藤太郎君            柳岡 秋夫君    委員            加藤 武徳君            紅露 みつ君            徳永 正利君            丸茂 重貞君            山下 春江君            山本  杉君            横山 フク君            阿具根 登君            杉山善太郎君            藤原 道子君            小平 芳平君            村尾 重雄君            林   塩君   衆議院議員    修正案提出者  竹内 黎一君   国務大臣    厚 生 大 臣 小林 武治君   政府委員    厚生政務次官  砂原  格君    厚生大臣官房長 梅本 純正君    厚生省公衆衛生    局長      若松 栄一君    厚生省薬務局長 熊崎 正夫君   事務局側    常任委員会専門    員       増本 甲吉君   説明員    国立予防衛生研    究所腸内ウイル    ス部長     多ケ谷 勇君   参考人    株式会社日本ポ    リオワクチン研    究所代表取締役 越後貫 博君    子供を小児マヒ    から守る中央協    議会事務局次長    兼新日本医師協    会幹事長    久保 全雄君    東京大学附属伝    染病研究所員東    京大学教授   松本  稔君    大阪大学医学部    衛生学講座主任    大阪大学教授  丸山  博君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○毒物及び劇物取締法の一部を改正す  る法律案内閣提出) ○保健所において執行される事業等に  伴う経理事務合理化に関する特別  措置法案内閣提出) ○医療金融公庫法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付) ○予防接種法の一部を改正する法律案  (内閣提出)   —————————————
  2. 鈴木強

    委員長鈴木強君) ただいまより開会いたします。  毒物及び劇物取締法の一部を改正する法律案議題といたします。政府から、本案に対する提案理由説明を聴取いたします。小林厚生大臣
  3. 小林武治

    国務大臣小林武治君) ただいま議題となりました毒物及び劇物取締法の一部を改正する法律案について、その提案理由を御説明申し上げます。  毒物及び劇物取締法は、主として毒物または劇物製造輸入及び販売について規制することにより、保健衛生上の危害防止をはかっているのでありますが、最近における毒物または劇物による事故は、それらを原料として使用する等の業務毒物または劇物を取り扱う者の取り扱いまたは管理が適当でないことに起因するものが多い状況にかんがみ、毒物及び劇物取締法の一部を改正して、業務取り扱い者についての規制強化等をはかるとともに、毒物及び劇物取り扱いに関する規定を整備しようとするものであります。  改正の第一点は、毒物及び劇物取り扱いに関することであります。すなわち、製造所店舗等の設備の基準をより具体的なものとするため、基準内容厚生省令で定めることとすること、毒物または劇物販売業の登録の種類を三つに分けること、毒物劇物取り扱い責任者の任務及び資格をより明確にすること、毒物劇物及びこれらの含有物施設外に流出すること等による危害の発生を防止するため必要な措置を講ぜしめること等であります。  改正の第二点は、業務取扱者に対する規制強化に関することであります。すなわち、シアン化ナトリウム等シアン化合物を用いてメッキを行なう業者等に対し届出義務を課するとともに、その事業場毒物劇物取り扱い責任者を置かせる等、営業者に対する規制に準じた内容規制を加えること等であります。  改正の第三点は、毒物劇物及び特定毒物を定める別表の整備であります。すなわち、法律別表には毒物劇物の原体を規定することにとどめ、これらを含有する製剤及び新たに開発される原体等政令規定することにより、毒物及び劇物範囲を現実に適合せしめる方途を講じようとするものであります。  以上がこの法律案を提出いたしました理由及び改正主要点であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  4. 鈴木強

    委員長鈴木強君) 本日は、本案に対する提案理由説明聴取のみにとどめておきます。   —————————————
  5. 鈴木強

    委員長鈴木強君) 次に、保健所において執行される事業等に伴う経理事務合理化に関する特別措置法案議題といたします。  政府から、本案に対する提案理由説明を聴取いたします。小林厚生大臣
  6. 小林武治

    国務大臣小林武治君) ただいま議題となりました保健所において執行される事業等に伴う経理事務合理化に関する特別措置法案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  保健所事業範囲は各般にわたっておりますだけに、その事業に対する国からの負担金補助金の数も相当数にのぼっているところであります。これらの負担金補助金につきましては、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律によりまして、年度末において交付額確定が行なわれ、その際負担金または補助金交付対象である各事業ごと地方公共団体の実支出額当該負担金または補助金について定まっている算定基準によって計算した対象経費限度額との比較が行なわれるわけでありますが、一方、保健所におきましては、一回の出張により数種の事業が行なわれたり、レントゲンフイルムのように、数種の事業に使用される医薬材料を購入したりいたします関係から、各事業ごとの実支出額を把握いたしますためには、そのような場合の支出額について一々按分して経理いたしておかなければならないのでありまして、このための事務量というものは軽視し得ないところとなってまいったのであります。そこで、政府といたしましては、このような事態に対処するためにこの法律案提案いたした次第でありますが、このことは、先般行なわれました補助金等合理化審議会の答申の趣旨にも沿うものであると考える次第であります。  次に、本法律案内容について、その概略を御説明申し上げます。  まず、第一条におきましては、この法律の目的を明らかにするとともに、この法律による特別措置対象となる負担金及び補助金を示しております。  次に、第二条におきましては、各法律にその率が規定されております負担金及び補助金につきまして、その率を、会計年度ごと政令で定める一定の率といたすことにしております。そして、その政令で定める率は、当該負担金または補助金にかかる事業等ごとのそれぞれに要する費用見込み額に各法律に定めてある本来の率をそれぞれ乗じて得た額の合算額を分子とし、当該事業等ごとのそれぞれに要する費用見込み額合算額を分母として計算して得た数値を基準として定めることにいたしております。  次に、第三条におきましては、この法律措置対象となる負担金及び補助金につきまして、その実績報告は各事業等ごとに行なうことを要せず、交付すべき額の確定も、その総額を確定すれば足りることとするとともに、これに伴う所要の規定を設けようとするものであります。  以上、この法律案提案理由を御説明申し上げたのでありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。
  7. 鈴木強

    委員長鈴木強君) 本日は提案理由説明聴取のみにとどめておきます。   —————————————
  8. 鈴木強

    委員長鈴木強君) 次に、医療金融公庫法の一部を改正する法律案議題といたします。  本衆議院送付案中、衆議院修正にかかる部分につき、修正案提出者衆議院議員竹内黎一君から説明を聴取します。
  9. 竹内黎一

    衆議院議員竹内黎一君) 衆議院修正にかかる部分について御説明申し上げます。  その内容は、原案の監事職務規定改正において「監事は、監査の結果に基づき、必要があると認めるときは、総裁又は総裁を通じて主務大臣意見を提出することができる。」とあるのを、「総裁を通じて」を削って、直接主務大臣意見を提出することとし、監事の権限を強化することとした次第です。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  10. 鈴木強

    委員長鈴木強君) 本日は、衆議院修正にかかる部分についての説明聴取のみにとどめておきます。   —————————————
  11. 鈴木強

    委員長鈴木強君) 次に、予防接種法の一部を改正する法律案議題といたします。  本日は、本審査の参考のため、お手元に配付してありますとおり、参考人方々の御出席をわずらわし、日本生ポリオワクチン研究所経営及び組織等並びに経口生ポリオワクチンについての忌揮のない御所見を拝聴いたしまして、その後、参考人方々に対する対する質疑に入りたいと存じます。  参考人方々には、御繁忙中、かつ、遠路のところをわざわざ御出席くださいまして、まことにありがとうございました。審議の都合上、まことに恐縮に存じますが、御陳述になられます時間は大体お一人二十分間程度といたし、参考人方々の御陳述がすべて終了いたしました後に、各委員からいろいろと質疑があることと存じますので、その点あらかじめ御了承願っておきます。これより順次参考人方々からの御所見を聴取いたします。  まず、日本生ポリオワクチン研究所経営及び組織等について、越後貫参考人より御意見を聴取いたします。
  12. 越後貫博

    参考人越後貫博君) 参考人越後貫でございます。私は、株式会社日本生ポリオワクチン研究所代表取締役として、本日この研究所経営及び組織等につきまして申し上げるのでございます。実は三月十日に、私どもの同僚の笠原四郎博士が本委員会でいろいろ陳述いたしておりますので、大約のことは御承知と存じますので、やはり重複いたしますと思いますが、簡単にこの研究所成り立ちと、それから、その経営組織等について申し上げたいと存じます。  この小児麻痺の問題は、わが国で非常に大きな問題でございまして、さきにはソークワクチンをつくりましてこれに対処する。しかし、これでも不足ということで生ワクチンに切りかえてきたわけでございます。この間にありまして、ファイザーとかコンノートとか、あるいはソ連のワクチンが導入されまして非常な役割りを演じたわけでございます。このことは、いずれにつきましても、国民として非常に感謝すべきことと存じますが、ただ、わが国といたしまして、この生ワクチン輸入にいつまでたよらなきゃいかぬものだろうかということでございました。で、私どもこういう製造ないし研究に携わっております者の間では、わが国ではこれをつくる技術があるし、独立国日本として、これをぜひ国産して国民の要望にこたえなきゃいかぬと、こういう意見が非常に盛んでございました。当時まあこれに反対する方はなかったわけでございます。昭和三十六年にセービン博士が参られまして、この生ワクチンにつきまして各地を回られて講演されたわけでございます。この機会に、生ポリオワクチン日本において国産すべきかどうかということが問題になったのでございます。当時、ソークワクチンをつくっております製造所と申しますか、研究所が六カ所ございました。私の考えでは、そのいずれもが自分で生ポリオワクチンをつくる能力を持っていたと考えております。しかし、セービン博士は、これはもう日本独立国なんだから、つくるということには反対はないのだ。だけれども、六カ所でつくる必要はないのじゃないか、それはあらゆる面で不経済であるし、混乱を起こす。で、わしのワクチンをつくるなら一カ所にしぼってやるべきだということでございました。そこで、当時私は、このワクチン製造業者をもって組織しております社団法人細菌製剤協会理事長をいたしておりまして、現在もいたしておりますが、その立場上、この六社の方々とお話し合いをしまして、セービン博士はそういう御意向であるし、それから、皆さんが能力をお持ちのこともよくわかっておるけれども、まあ一社——必要なものを六つもつくることはないということで、だんだん御了解を得まして、それではひとつ六社で共同してやろうではないか、こういうことになってきたわけでございます。それで、この会社というか、この研究所の形態というか、経営をどういうふうにしようかということで、性格といたしましては公益法人がよろしいのではないかということでございましたが、もうこの六社というのは、株式会社あり、社団法人あり、財団法人あり、県立ありというようなことで、はなはだ不ぞろいなことでございまして、これらを統合いたしますには株式会社が一番適当だし、また、早いだろう、しかし、運営については公益を旨とした運営をやろうではないか。各社ソークをつくるときに用いました器材その他をみな出してくれ、それから、そこでソークをつくっていたエキスパート技術者をみな出してください、こういうことで、しかし、また、研究所につきましても、これをつくっていたのでは何年になるかわからないし、当時の考えでは、セービン博士日本ではとりあえず五千万人分くらいつくって凍らしておいたらいいじゃないかというような話でありまして、どんどんつくって凍らしておいて、毎年小出ししていけばいいのだというようなお話で、それもそうかというような感じであったのですが、いざやってみるとそうもいかないわけでございます。で、そういう関係もございまして、とにかく一番近い、それから便利な所、東京近辺製造しようじゃないかというようなことで、北里研究所製造——この方面の製造所を借り上げて、それでもちょっと動物室等不足でございましたので、千葉血清研究所動物舎をあわせて使おうということで始まったわけでございます。それで三十七年の七月一日に会社が設立いたされまして発足したわけでございます。実は、研究活動は、ややその前から各社でも行なわれましたが、話がまとまりますと、三十七年の初めころから研究的な着手がされていたわけですが、七月一日に正式に発足いたしたわけでございます。それで、この六社と申しますのは、北里研究所、それから大阪大学微生物病研究会、これは財団法人でございますが、それから武田薬工、それから熊本化学及び血清療法研究所東芝化学工業、それから千葉血清研究所、この六社でございますが、会社資本金授権資本は一億二千万円といたしまして、とりあえず初めにそれぞれで一千万円ずつ六千万円を平等に払い込んだわけでございます。各社から取締役を一名選任しまして、それから監査役としましては、細菌製剤協会常任理事善場喜来君になっていただいた、それで発足したわけです。それで、技術者は、各社が、先ほど申しましたように、エキスパート東京へ出向させまして、それで技術委員会をつくりまして指導に当たった。それから、主体になる作業員は、北里研究所と、一部千葉血清から派遣したわけでございます。それで一番初めから非常に強力な技術陣を組んでやったわけでございます。そして、これらの人は技術参与として技術のことに当たる。それから、各研究所事務長のクラスの人たち事務参与ということで出ていただいてこの運営に当たっていただいたわけでございます。ただ、私が経緯上代表取締役に就任したわけでございます。  そこで、この会社の、あるいは製造所体制はできたのでございましたが、やはりセービンワクチンをつくりますには、発明者と申しますか、発見者と申しますか、このセービン博士了解をとらなければいかぬわけでございます。そこで、セービン博士との接触を始めまして、こういうことで日本ではやりたいのだがどうかということでやりましたところ、非常に喜んでいただきまして、それは非常にけっこうだ、そこにいるスタッフはだれだれかというので、私のほうで、こういう男がいて、これはこういう業績のあるあれであるというようなことを一々申しましたら、非常に喜んでいただきまして、それから、じゃおまえのほうへ種を分けてやろう、セービンさんのこれは特許の関係はないのでございますが、やはり道義上、セービン・ライセンスと申しますか、セービンさんの許可を得まして製造するように世界各国なっておりますので、私どものほうもそういう手続でセービンさんの御了承を得て、それから種を分けていただいた、こういうことでございます。それでさっそく製造にかかるわけですが、国のほうといたしましても製造基準を制定する、予研の検定施設を整備するというようなことで、国産の体制が着々できたわけでございます。それで、私どもセービン博士とは、協約といいますか、を結びまして、この製造についてはこうこうこういう条件でやってくれというようなことがございます。それは日本基準とはいささかも矛盾しないのでありますが、その上につけ加えたものが二、三あるわけでございます。そこで、その中で、おまえのほうでできたらばそのプロトコールといいますか、製造記録ないし、サンプル等は一ぺんセービンさんの要求によって提示するということになっておりますので、たまたま昨年私は機会がございましてアメリカのほうへ参りましたので、シンシナティのセービンさんの研究所へ参りまして、主任技術員を帯同いたしまして、詳細な記録を持参いたしまして、午前から午後にわたって、これ大体は儀礼的にけっこうだと言うのかと思いましたら、そういうことではなしに、サルの一頭一頭について綿密に検討されたわけです。それでいろいろ御指示もいただいたわけですが、非常にけっこうだ、よろしいということであったわけでございます。そういうわけでこの研究所ができたわけですが、それが済みましてから私どもは昨年の九月に検定に提出し、それから、予防衛生研究所でこれを検定しまして合格ということになったわけでございます。  それで、研究所成り立ち及び組織等を申し上げたわけでございますが、大体研究所経営はどうだろうかということになりますと、ただいまのところ、まだ決算になっておりませんので、正確なことを申し上げるまでに至っておりませんが、大体払い込み資本金が六千万、借り入れ金が七千五百万、それから一千万くらいの未払い等がありますから、ここで一億四千五百万くらいの金が使われておるわけです。それで、今回どのくらいの売り上げがあるだろうかというのは、まだこういう事態でございましてわかりませんが、かりに二百万人分が売れたのだ、一銭も入っておりませんけれども、売れたのだとすれば八千万円ということで、まずそこで六千五百万円ほどは足りないわけです。というのは、それは資本金も入っているのですが、普通の場合ですと、建物を建てたり施設をしたりしてやるわけですが、この場合、そういうものは借りものでやっているわけですから、製造のほうへその資本金やら何やらほとんど回ったようなかっこうですから、現在のところ赤字でございます。しかし、これは漸次国民に御理解をいただいてこのことが順調に進んでまいりますれば、いずれの日かバランスを回復することと存じております。  なお、この価格につきましては、先般の委員会でも申し上げたようでございますが、四十七円でございますか、これは非常に低廉と申してよろしいのではないかと思います。大体こういうものの値段は、検定料だとか、その他いろいろ経費がございます。それをだれが負担するかということがもう一つの問題、それから、一体ワクチンの品質をどの程度に押えるかということで非常に変わってくるわけであります。先般も、この中にサルから入ってくるSV40というウイルスがあるということを、これは参考人から申し上げておるわけでありますが、これは一体人間に飲ましたらどうなるかということはわからぬわけです。ただ、動物実験上、悪性腫瘍をつくることができるということであります。ただし、人間に用いるときは、そういう疑いのあるものはもう入れてはいけないことは自明の理でございますけれども、ただ、それにしても、その中に入っているものを殺せば、死んでしまえばもういいのだという態度もあるし、それから、いやしくも初めから入ってはいけないのだという態度もあるわけです。わが国の分は、特にウイルスの検出に便利なミドリサルをアフリカからわざわざ輸入して使う、こういう方針でございます。そのほかに、何もサルからくるウイルスSV40だけではないのであります。フォーミーエージェントと申しまして、ただ細胞が変性して形が乱れるというものもあります。そのうちのある部分は確かにウイルスらしいということになりますが、ある部分はどうも本質がわからないものもございます。ただし、そういうものは本研究所におきましてはすべて除外いたしまして、問題のない培養からのみつくっていくということでございます。私どものこのワクチンが、現在の知識で考えられるそういうものは全部除外した非常にピュアーな形で提供しているものである。そういうことを思えば、このワクチン価格は非常に低廉である、こういうふうに思うわけであります。  それから、もう一つワクチン価格に非常に影響がありますのは、どれだけの量をつくるかということでございます。ただいまはわれわれは一つ仕込みを五百万人分ということでやって計算をしております。ことしは一体五百万人分つくって五百万人分さばけるのかどうかわからぬ。将来にわたりますと、国内の需要はまずまず三百万人くらいに落ちていくのではないかというふうにも思います。仕込みが小さくなれば価格は上がる道理でございます。しかし、まあまあそういうことでなしに、現在の価格で何とかやれる限りやってみたい、こういう考え方で会社は進んでおる、そこで、また何か御質問でもございましら……。
  13. 鈴木強

    委員長鈴木強君) どうもありがとうございました。経口生ポリオワクチンについて久保参考人より御意見を聴取いたします。
  14. 久保全雄

    参考人久保全雄君) 一般に、いま大衆のほうで不安が起きておるということがいわれておりますが、これは一部の赤の扇動であるとかないとかいうこともそこの中に出ております。しかし、実際に母親たちがどういうところに思いを持っているか。そうしますと、わが国政府が正式に選んで、代表として派遣したところの海外ポリオ対策研究調査団報告、ここの中にうたわれていることをそんたくしてほしいということ。一つは、各国とも生ワクの投与を開始する前から、事故監視方式とその機構を整備し、投与の規模が大きくなるに従って、ますます組織的に運用をはかっている状態であり、実施した国々においては、監視を抜きにした例は一つもない、これが一つ。二番目に、これは生ワクチン接種を効果的に行なうにも、その効果を適正に把握し、また、それを評価するにも、また、接種後の副作用と思われがちな事故の原因を追求するにも欠くべからざる方式でなければならない。それから三番目、全国を地区に分けて、地区ポリオセンターをつくり、あらかじめ投与対象地域での十分な啓蒙宣伝活動の上、標本調査により、その地域血清中和抗体状況調査する。たくさんありますが、このようなことが今度の初回につくられたワクチンに関して全然やられていないという点に不安を持っているということ。私たち人体安全テスト要求というものは、そういう政府の派遣した学者の報告書の基礎をそんたくして実施してもらいたいというのにもかかわらず、今度やられているものは調査が非常に軽卒である、医師も配置されていない、しかも、その責任が自治体にある、こういう点に問題があるのではないか。名古屋で、現在、下肢麻痺の患者が二名おります。一人は名古屋市大、一人は市民病院、この二例を申し上げます。竹中幸彦さん、これは二月二十七日に投与いたしまして、今月の十二日、十三日ごろに発熱、その後、両下肢の麻痺、十八日に名古屋市民病院に入院、それからウイルス検査、血液検査、検便、マーカー試験をしている。検査のできぬものは京都、大阪へやっているが、その結果は半カ月ないし一カ月かかる、ポリオではないと思うが、断定はできない。県、政府、それから市当局へ報告をしたかということに対しては、厚生省からそのようなものを報告していただきたいというような通達は何も病院にはきていない。二番目の患者は市大に入っております。加藤則行さん、小川教授のところで扱っている、ウイルス検査をやって脳炎だと思っているが、ポリオでないとも言えない、学会でワクチンは安全だということになっているから黙っている。このお二人とも、こういう患者に関して報告せよという指示は出ていないと言う。このようなことではほんとうに科学を尊重し、国民を納得させるという体制になっていないのじゃないか。しかも、死亡した患者の調査は、新聞や報道機関によって調査された後に、生ワクチンそれ自体に関係がないというような調査が行なわれた。報道のほうが先につかまえているということは、これは実際には接種の指導の部面に問題がある。一番先にわかるのは当局であろう、私たちはそう考える。このような状態のままやっている中で、いまやワクチンそれ自体について不安の反対運動が起こりつつある危険があるが、この問題をどう考えるか。それにもかかわらず、多ヶ谷氏のテレビ放送を見ますと、ソ連の悪口を言ったといいます。と同時に、昨日のテレビではソ連の文献を出されて、このように安全だという形を出している。大衆は、はたしてこのようなものを信頼するかどうか不安を起こしている、その責任はどこにあるか。  三番目は、東大の高津教授のもとで投与が行なわれている方法と、疫学的追求のその科学的成果の発表がございません。大衆の中に流れているのは、各大学の中でやるほかに、大学の先生の出先の一般病院の中で投与されている、また、それが夜間のアルバイトによってやられているというような風聞も一般には流れている。すみやかに科学方式をここで明らかにしていただかなければ、疑惑は疑惑を生んでいくということになるのではなかろうか。しかも、事故が起こった場合は、その臨床経過だけを見て、そうして、関係がないという形で即断が出されている。先ほどのSV40の何のように、そういうものに対しても非常に真剣だと言われ、最も重視さるべきものがあるが、そういう実施の面においてこう軽々しくあっていいものかどうか。これは科学的ではない、しかも、非常に無計画である。投与後の事故は、少なくとも原因追求という観点がそこに入っておれば、すべて無料でやるべきである。そうして、その原因を追求して明らかにするという必要があるけれども、そういう形はとられていないという、このような行政上の欠陥、また、その失敗の責任はおかあさんたちは許さない。この責任をどこまでも追及していただきたい。  また、けさのNHKのラジオ放送では、接種率が六〇%ちょっとと言われておる。目的は八〇%であるけれども、まだ拒否しているところもある。二十七市町村の中止があるが、これはポリオに対する家庭の関心が薄いためか、それから、新潟、富山の雪のために投与がおくれているということである。このような形で全員を納得させて実施ができ得るかどうか。この点も検討していただかなければならないのじゃないか。このような問題が起こり出してきたのは、一に行政当局者とウイルスの担当学者の責任であると私たち考える。現在の不安の状態を取り除くためにも、いまは、何はともあれ、一時中止して、その投与方式を再検討する必要があるのではなかろうか。  五番目、東大をはじめとした人体安全テストの方法とその成績と、そうして実施責任者をはじめとしたところの関係技術者の氏名とその方法並びに科学的結果とをすべて公開してもらいたい。この公開がない限りは、あらゆる科学者の協力も得られないし、また、おかあさんたちの協力も得られない。全員の予防接種をやることによってその業績が上がるものでしょうけれども接種率の落ちているということでやるということは非常に危険である。この問題は、一ポリオの問題としてだけおかあさんたちは受け取っていないということ、日本で現在やられている日本脳炎、やがてやられるであろうところのはしかの生ワクチン、これらの問題に関しても、同じようにルーズな形でやっていかれるということに対する不安を持っている。また、天然痘のように、国家検定でやられて毎年十数例ないし二十例近くのそれに関連した死亡者が出ておる。これらは避けがたいものであるという形で簡単に考えておるかもしれませんが、諸外国はどうなっているか。英国では、これはすべて国会に報告される。日本においては統計調査部の単なる資料の中に入るだけである。これがはたして生命を尊重にしている行政のあり方か、科学のあり方か。  以上の点に関して御意見を申し上げました。
  15. 鈴木強

    委員長鈴木強君) どうもありがとうございました。  引き続きまして、松本参考人より御所見を聴取いたします。
  16. 松本稔

    参考人(松本稔君) 伝染病研究所の松本でございます。  私はウイルス学を研究している者ですので、その観点から申し上げます。  いま問題になっております法律案ソークワクチンと生ワクチンとを取りかえようというわけであります。それで、一応ソークワクチンと生ワクチンとを比べてみますと、ソークワクチンは、皆さん御存じのように、ポリオウイルスを一ぺん殺しましたもので、一般にワクチンと申しますと、二つの重要な面があります。一つは、予防効果がどうかということ、もう一つは、安全であるかどうかということ、この二つでございます。予防効果の点から申しますと、ソークワクチンはきわめてすぐれたものであります。各種の伝染病のワクチンが実際に世界で使われておりますが、その中でもソークワクチンは優等生の一人でございます。次に、安全性、これも問題がございません。もちろん過去において事故がございました。しかし、それは現在の製造基準検定基準を守りさえすれば、そういうことは起こらないのであります。そこにそごがあったから起こった事故でございまして、いまの標準ソークワクチンは安全性において何ら心配することはございません。  次いで、次に、生ワクチンのことを申し上げますが、世界でいままでに研究されました生ワクチンには各種ございます。で、いま問題になっておりますのは、その中のセービンワクチンでございます。現在世界で実際に使われておりますのはこのセービンワクチン一種でございます。まず第一がその点。で、これから申しますことは、すべてセービンワクチンに限って申し上げます。  第一は、セービンワクチンの予防効果の点でございます。これも非常にすぐれたものでございます。ポリオというおそろしい病気を予防する力は非常に強いのであります。その点ではソークワクチンもいずれ劣らず、かなり強い予防効果を持っているわけですが、非常に違った点がございます、ソークワクチンと生ワクチンの間には。第一に、この病気そのものを予防するという観点から申しますと、ソークワクチン、生ワクチン、そう大差はないかもしれません。しかし、御存じのように、ポリオという病気は、感染を受けました人の非常にわずかのものしか発病しないのでございます。特に問題になりますのは脳脊髄がおかされる場合でございます。そういうものは非常にわずかなんであります。大部分は病気にならずに済んでしまう。ところが、病気にならずに済んでしまうその人です。それはウイルスをどんどんまわりの人間にまき散らす伝染源になるのであります。ですから、その点ちょっと考えなければならないので、実際に病気を押える、予防するということと、感染そのものを押えてしまう、阻止してしまう、この二つは別のことなのです。で、その病気のほうの予防については、ソークワクチンも非常にすぐれている。生ワクチンもすぐれているけれども、感染を押えてしまうという点から申しますと、生ワクチンソークワクチンには非常な格段の差がございます。ソークワクチンは、感染を押えるということからいいますと、きわめて弱いのであります。しかし、生ワクチンはこれを完全に押えてしまいます。  それから、もう一つ、この点はまだ将来の問題がかなり残されておりますが、予防効果がどれだけ続くかということでございます。ソークワクチンも、ちゃんとした方法でやりさえすれば、かなりの効果の持続を認めることができます。しかし、それにしても生ワクチンにはかなわないと思います。生ワクチンのほうが予防効果はずっと長く続くと思います。ただし、皆さん御存じのように、生ワクチンを使い始めてからまだ何年もたっておりません。その間のいろいろな実験データを調査いたしてみますと、おそらく長く続くであろうということは想像はできますが、まだ見ない先のことでございますから、どのくらい続くかわかりません。しかし、おそらく続きます。現在までのところでも、その点でも生ワクチンはおそらくソクーワクチンよりまさっていると思います。  次に、一番問題になります安全であるかどうかという問題でございます。結論から申しますと、このセービンワクチンが実際上問題になるような副作用を持っていないという証拠が十分あげられていると思います。つまり実際上安全であると考えてよいと思います。まあこの点、前の委員会でも他の方がかなり詳しく説明されておられるので、あまり重複しますから、要点だけ申します。  第一が、このセービン博士のつくられましたワクチンの、要するにワクチンに使いますウイルスでございます。これは非常な慎重な研究の結果、たくさんの中から選び出されたウイルスでございます。その研究人間に用います前に、当然いろいろの検査が行なわれて、この三つのそれぞれ型に合った一つずつのウイルス株が選ばれたわけであります。その最も重要な基礎になっておりますことは病源性がどうかということ、病気を起こす力がどうかということであります。その点につきまして、主としてアメリカの学者ボディアン博士、セービン博士、この両博士が中心になりまして、人間のポリオというものは一体どうして起こるのだろうか、ああいう病気はどうして起こるのだろうか。それとサルで、サルはポリオにかかります。そのサルの病気とはどういう関係があるのか、それを詳しく比べた実験、研究がございまして、その人間の病気とサルの病気の比較という、その基本になる知識をもとにしまして、サルを使っていろいろな多くのウイルス株を検査したわけであります。サルでこうなれば、人間では絶対安全のはずであるという結論に達して選ばれたのがこの三つの株なのであります。いよいよサルの実験で安全となりましたので人間に使う。もちろん人間に使うのは初めてでございますから、少数例から始めて、積み重ね方式でやっていったわけであります。それで、皆さん御存じのように、すでに世界じゅうでおびただしい数の子供が接種を受けているわけであります。で、その結果、おびただしい数の接種を受けても、それを全部調べてあるわけではありませんが、こまかなウイルス学的の、あるいは臨床的の検査をしたケースもたくさんございますし、あるいはもっと別の観点から疫学的な調査をした研究もたくさんございます。それらの結果は、要するにこのワクチンは安全である、実際上問題にしなくてはならないような副作用は見出せない、そういうものがあるという証拠はないということになります。  次に問題になりますのは、もちろんその得られましたウイルス株、使っておりますウイルス株はそういう性質のものでございますが、実際にこれをつくりますときに、その方法がちゃんと基準化されていなければあぶなくてとても使えません。それで、セービン博士の努力により、また、その後このワクチンをいじりました研究者によって、現在世界で認められておりますところの標準の方法がございます。製造の方法、それから、もう一つは、そのできたものを試験する方法でございます。もちろん日本でやっておりますのは、世界の学界で認められている方法に準じてやっておるわけであります。それで、まあセービン先生のウイルス株を使って標準の方法でつくって、標準の方法で検定したもの、試験したものは、安全ですぐれた予防効果を示すはずであります。いままでの成績は、すべてそのことを示しております。しかし、考えてみますと、このワクチンを使い始めてからまだ何年もたっておりません。先のことはわかりません。それではどうしたらいいか、それは先ほど久保先生もおっしゃいましたように、いわゆるワクチンをやったあとの調査研究、そういうものを組織的にやらなければだめだと思います。このことは世界じゅうの学者が強く言っていることでございます。セービン博士もそのことは非常に強調しておられる、これは何もポリオに限ったことはないと思います。どのワクチンでもそうだと思います。ただ、その点、まあ従来の考え方はそれほど深刻でなかったといううらみはございます。幸いにして、ポリオの生ワクが問題になりましたときに、この点が非常に強調され、また、研究者、あるいは行政当局の間で非常な関心が持たれ、そして着々そのいわゆるワクチン予防接種——何と一言ったらいいのでしょうか、英語ではサーベイヤンスといううまいことばがあるのですが、サーベイヤンスというのは、日本語に直しますと、どうもおかしな日本語になって使いたくないのですが、何と言ったらいいかわかりませんが、要するにワクチンをやったあとどうなっているかという認識なんです。そのことはそれで順調にいっているか、あるいは何か変わったデータが出たら、それはそれに対してどういう対策を講じたらいいかという、その将来のわれわれのやるべきことのもとになるデータを集めるということです。で、現在厚生当局、あるいは府県の衛生当局、衛生研究所、あるいは大学その他の研究機関、あるいは病院、そういうものが力を合わせまして現在そういうことを一生懸命やっております。  大体いまやっております事項は三つございます。  第一は、生ワクをこれだけやりまして、日本じゅうの国民がどの程度免疫を得ているかという調査であります。これは全国を各地区標本調査をいたします。現在のところ、予期どおりの満足すべき状態にあると考えられております。  第二は、ポリオのウイルスがどうなっているであろうか。このワクチンを始める前ですと、ポリオのウイルスは、ことに夏の間は日本じゅう跳梁していたわけであります。ポリオのウイルスを得たいと思えば簡単にとれたものであります。それがどうなっているか、これらのウイルスは一体日本の中でどうなっているかということを調べるのが第二段であります。それは主として子供のふん便からウイルスを分離してみるのであります。その結果によりますと、現在までポリオのウイルスは見つかりません。もちろんワクチンをやったあとは、一ヵ月ないし一ヵ月半ぐらいの間はぞろぞろ出ております。それはもちろんウイルスをやったのですから、出るのはあたりまえなんです。しかし、そのほかの時期にはポリオのウイルスは見つかりません。つまりこれだけワクチンをやったためにウイルスは行きどころがなくなってしまった。絶滅したか、あるいは絶滅しないまでも、きわめて何というのですか、気息えんえんとしているという状態だと思います。  それから、もう一つのやっております事項は、いやしくも少しでもポリオではないかと疑われるケースを全部シラミつぶしに調べてみようという努力であります。このことは非常にむずかしいのであります。というのは、どこに患者が出るかわかりませんから、その患者をつかむということが非常にむずかしい。一応いまのところは届け出患者を対象としてやっておりますが、それでもなかなか調査はむずかしいものであります。しかし、非常な努力をここ二、三年続けておりまして、だんだんそういう調査もうまくいくようになってまいりました。で、御存じのように、一応どのくらいの届け出があって、その中で、実際に臨床的に見てポリオと考えていいかどうかというケースがどのくらいあるか、それから、一番肝心なのは、臨床検査、臨床症状の観察のほかに、やはりウイルス学的の検査をぜひしたいわけであります。しかし、これもなかなかむずかしいので、そう高い率は行なわれておりませんが、それにしても、諸外国の例から見ますと、日本の検査の率というのは非常に高いと思います。で、そういう例から、それではほんとうにポリオと断定していいような成績は得られるかどうか、まあそういうことを総合的に調査しているわけであります。そしてワクチンをやったあと、患者の発生がどうなっているかということを追跡しているわけであります。同時に、そのワクチンをさしたあとに、ワクチンが何か悪いことをしてはいないかという監視にもなるわけであります。現在までにそういう何といいますか、ワクチンをやったあと、ポリオ、要するに脊髄、あるいは中枢神経系がおかされて麻痺が起こった例というのを全部シラミつぶしに調べております。そうしますと、多くのものは、これはポリオではないという診断がつきます。で、非常に一部のものにこういうケースがございます。ポリオであるという判定はつかない、しかし、ポリオでないという判定もつかない、そういうケースが数例見つかっております。で、その点は、日本と同じように、詳しい調査をいたしておりますアメリカ、カナダ、この二国で全く同じようなデータが出ております。率まで非常に似ております。で、これはまあ非常に問題なんでして、いまのところ、それは何とも判定はつきません。しかし、間違ってもらいたくないことは、このケースは、ワクチンによってそういうものが起こったという証拠もあがっていない。わからない、また、逆に、そうでないという証拠もあがっていない、そういうケースであります。で、これが約百万に一例くらいの割合で、まあ率は外国でも多少の変動はありますが、大体そのくらいのオーダーのものでございます。こういうものを、非常に研究がむずかしいのでございますが、そういうケースケース一つ一つを慎重に調べるということが一つ。それから、もう一つは、そういうケースが社会の中でどういうぐあいに、時期的に、あるいはどういう社会層に、どういう年齢に、あるいはどういう気候とか、何というのですか、環境にどういう関係があるかというような、そういうことを調べたいのでありますが、何ぶんにもケースが非常に少ないのでそういう調査ができません。それで、一応これはそこまでの知識しか学問的にはございません。  それはそれくらいにしまして、要するに、そのようなワクチンをやったあと、どうでもいいと、どうせうまくいっているんだろうということでなく、きちっとした組織をつくって、そしてあらゆるエキスパートを動員して、このワクチン予防接種が、はたして予期どおりにいっているかどうかを調べるということ、それに何か変わったことが起こったならば、それにすみやかに対応し得る態勢をいつでもつくっておく、ことに先ほど申し上げましたが、免疫がどのくらい続くかということは、十年先、十五年先はわからないのであります。何もデータがないですから、そういう面も種々調べておりまして、これくらいに下がってきたら、これはあるいはどうしなければいけないのだろうかということを常に考えていなければならない、そのもとになるデータはそうやって蓄積していなければならない、始終調べる、そういうことが肝心だと思います。要するに、このセービンワクチンは、効果の点でも安全性の点でも、現在までの非常な膨大な研究からも、申し分ないと思いますが、それも安心してはいけない、どうしてもこのサーベイヤンスということを今後続けなければいけないというのが結論でございます。
  17. 鈴木強

    委員長鈴木強君) 続いて丸山参考人にお願いいたします。
  18. 丸山博

    参考人(丸山博君) 私の専門は衛生学でございます。文字どおり命を守るということを原則とした学問です。また衛生行政は、それを実践に移して、国民の健康並びに生命を守るという重大な行政事務だろうと思います。この二つの立場に私は立った経験もあるし、いま立っておるということでございます。過去三十年ばかり前から、子供をなくしたおかあさんたちの気持に切々と打たれながら乳児死亡の研究を続けてまいりました。いま、ここにそういうおかあさんたちがポリオの問題で非常に不安になっておる。そして、そのことが、この四月一日付で予防接種法の一部が現在生ポリオワクチンが問題のまま改正されるということになると、そのものがそのまま使われていくということになることは、たいへん重大なことだろうと私は思うのであります。まず、私たちの衛生学の立場で申しますと、重大な事実が起きておるならば、これに対して批判をしなければならない現実に対して、私たちは学問の原則に従って、これを虚心に批判する義務がある、こう私は感じます。また、行政の点におきましても、こういう意見を率直にお聞きいただけるならば、一般のおかあさんたちの心配は解消することができるのではないか。先ほど来、参考人のお二人からもありましたように、実施の段階におきます調査が十二分になされておるとは言えないという事態のまま、この集団投与がさらに進められていくということは、これは決して学問の上からいって望ましいことではないというふうに私は固く信じます。何しろ動物実験において安全であり有効である、あるいは臨床実験において安全であり有効であるといいましても、やはり薬は薬、毒は毒、毒をもって毒を制するこの仕事が大きな社会集団に当てはめられますときに、もしこれが法的強制力を持ったならば、やはりこれは重大なことだと思うのでございます。どうしても社会集団に適用させるという前に、十二分の懇切ていねいなる調査が実践されたあとで、みんなが安心して、もっともだ、調査の資料は学者も一般の人も、だれもが当然だという納得の上に初めて法的強制力を持つようにするのが最も妥当なことである、こういうふうに感じます。私たちの衛生学は、やはり何といいましても衛生行政とうらはらになりましてこの仕事を遂行する。そして、その目的は、最初に申し上げましたように、国民の生命を守る仕事を、片一方は実際面において、片一方は理論面においてやっているのだとするならば、この間におきます理解といものが科学的に証明される材料によって客観的に出された上でなければ、それを実施するということは性急であろうというふうに私は信じます。  以上申し上げましたように、この改正の時期をどうしてこんなにお急ぎになるのか、まだ調査をしなければならない、もっとあってほしいという学者、先生たちの御意見もあるのだから、また、事故の出た実例などについての調査内容も具体的に示される、そうしてその解明についてみなが納得いくようになるというような時期までどうして待てないのだろうかという点は、私は非常に不審に思うのであります。いずれにいたしましても、安心しておかあさんたちが自分の子供に飲ませることのできる状態をつくることこそ、われわれの学問の上からぜひ望むところであります。  なお、先ほどもお話がありましたように、このことは、単にポリオ対策だけでなしに、あとに続く予防接種の問題にまでつながる大きな問題であるというところに私たちは非常な関心を持っておるのであります。そういう意味で、この件につきましては、もっと慎重におやりいただくことが重要だと私は信じます。
  19. 鈴木強

    委員長鈴木強君) どうもありがとうございました。  以上で参考人の皆さんからの御意見の御発表を終わります。なお、本日は国立予防衛生研究所ウイルス部長の多ヶ谷博士にも説明員として御出席いただいておりますので、これから参考人に対して御質疑のある方は、順次御発言を願いたいと思います。
  20. 徳永正利

    ○徳永正利君 たいへんけっこうなお話を拝聴いたしまして、いろいろありがとうございました。  久保さんに、私いままでの参考人の中で、まだ触れておられない、私どもの耳に入っていない問題についてお教えいただきたいと思うのでありますが、ソ連で初めてこの生ワクチン製造されたときに、それを初めて生ワクチンをつくって使用したそのときに、どういうような手順でやったか、それが私どものまだ耳に聞こえてないわけでございますが、久保さんは非常にその点について御権威のようでございますから……。
  21. 久保全雄

    参考人久保全雄君) 量産化されるときの手順としては、少数の対象者をあげて健康管理をやりながら経過観察をしておるということが第一。それから、毒性復帰や何かに関しても、一代目、二代目、三代目、四代目、五代目、六代目、七代目という形で十数代まで調べた。これで、ある程度の安全性が確立されたとういときに、ある地域を選びまして、それはわりあいと隔絶されているような地域、そういう地域で、しかも、同一のような条件を二地域つくって、そうして両方の児童数を同じにして、片方は投与し、片方は投与しない。投与したほうと投与しないほうの経過を同時に観察して、そうして下痢のぐあい、熱発のぐあい、発しんのぐあい、それから便のぐあい、これらを全部比較研究をして、その場合にはもちろん小児麻痺病院が各地につくられておりまして、万一の場合にはそこの施設で特に研究し、治療をやる。そういう並行のものを立てながらやっておる。ですから、その数が類例にして一千四百万まで積み重ね方式でやられた後に法改正が出た。諸外国でも、少なくとも積み重ね方式ということには変わりはないんじゃないか。しかし、諸外国の中では、現在日本が飲ませるような形で、事故があったかないかを申し出によって調査するという形式をとっておるところもあるようですけれども、これはどちらかといえば、このことはモルモット扱いである。人体安全テストというものは、安全という認定の科学的な最後の仕上げとして人間接種される場合の最後の関門、これが日本の場合にやられていないというふうに思うわけなんです。
  22. 丸茂重貞

    ○丸茂重貞君 いまの久保さんのお話を承りまして、ソビエトの実情はほぼというか、数字等、あるいは累代免疫をどういうかっこうでおとりになったか、そのデータがどういうふうになったかということが入っておらないので、ほぼということばを使いますが、これに関連しまして松本参考人にお伺いしたいのですが、セービンワクチンをアメリカ、カナダで調査実験をしておられる。いまの参考人のソビエトにおけるところの調査実験、これに対してセービンワクチンに対する調査実験がアメリカ、カナダその他の諸外国でやられておる。学問的なウエートから見て、その調査方法、実験の方法は、いまのソビエトの方式に対して非常な劣ったものであるか、あるいは万全でないものであるか、こういう点をひとつお聞かせいただきたい。
  23. 松本稔

    参考人(松本稔君) 研究にはいろいろな段階がございます。われわれが日本セービンワクチン研究をいたしますにも、その段階を進める第一は、その数は少なくとも、非常に精密な臨床的、ウイルス学的の検討をするという方式でございます。次の段階は、それを再度実験の対象の数をふやし、そして、そういうふうなウイルス学的の検査というようなものは非常な手数を要するものでありまして、限られた研究者でたくさんの数はとうていできないわけです。まず下の段階で一体どういうことが起こるのかという、小さなサイズで実験をやっておきます。それで肝要なところを——今度大きなサイズにしたところは全部はやりません、肝要なところだけを押えます。で、ウイルス学的には、これを予期どおりにいっているという肝要なところを全部押えておきます。そして、次には大量の大数の中でどういうことが起こるかということを、そこに重点を置いて観察いたします。そういうやり方をとっております。まあそれが済みますと、今度はもっと大きなサイズになってまいります。そうすると、そういう方式もとれなくなります。そこで、やり方を変えて、もっと大数のものを観察できるような方式に変えなきゃなりません。そうすると、やはり接種した子供を一人一人医者が訪問して毎日観察するなんていうことはできません。ですから、その方法は一応簡略にいたします。で、もちろん医学的に見て、あるいは社会的に見て非常に重大な、あるいは問題にしなきゃならないような病気は全部ひっかかるような方式にいたします。ただし、普通のちょっとした、きげんが悪くなるとか、そういうふうなことは見のがしてもしかたがないと考えます。それは実際ワクチンをやる上では、たいした支障にはならないはずでございますから、そこまでは追及いたしません。しかし、医学的に見て、だれが見てもこれはおかしいというものはひっかかるような方式にいたします。そうやって調べてまいります。現在は全国でこういうおびただしい数をやっておりますから、大体われわれがとっております方式は、実際に患者と接する医者から、何かおかしいというような報告をしてもらうという、その報告を待つというやり方をやっております。現在はそれで完全とは思いませんけれども、しかし、いま実際上問題になるような病気は、何というか、故障は一応ひっかかるというふうに思っております。
  24. 徳永正利

    ○徳永正利君 生ワクの製造につきまして、セービンワクチンの株といいますか、種といいますか、そういうようなものは世界じゅうセービンワクチンの種でやっている、こういうことでございますが、製造過程において、あるいは設備等において、日本とあるいはアメリカ、あるいはカナダでございますか、あるいはソビエト、そういうところと格段の差があるというふうな点があるかどうか、松本教授に。
  25. 松本稔

    参考人(松本稔君) 私、外国のポリオの製造所を見たことございませんです。ただ、言えますことは、一般にわれわれのメーカーと向こうのメーカー、あるいは研究所のレベルというようなことを考えますと、そこに申乙大きな差があるとは思えませんです。もちろんほかの多ヶ谷博士なんかはよく外国の様子を御存じでございますから、話していただけると思いますが、私は詳しいことはよく存じません。というのは、私、研究室の者でございますので、そういうことはあまり専門でございません。
  26. 徳永正利

    ○徳永正利君 久保さんはソ連にたびたびおいでになったようでございますが、ソ連と日本とのいわゆるそういう施設とか、あるいはその他備品等について何か差があるというふうにお考えでございますか。
  27. 久保全雄

    参考人久保全雄君) 施設の差の問題では私はないと、少なくとも生命を尊重にするところに若干の差があるんではないか、生命というものがまず第一にあって、その生命を守るためにはどうやって万全の施策を講ずるかという点が第一ではないか。ですから、生命という問題、危険という先ほどのシミアンウイルスの問題がありましたが、シミアンウイルスをそれほど追及すると同じように、いまの実施に関しても真剣にやる。たとえば北九州市のごとく、インフルエンザ、ハシカその他もはやっているらしい、その投与の中でやられるので、そのどちらがどうなのかはっきりわからない、これがおかあさんたちの不安であるし、当局のほうではハシカもインフルエンザの問題もたなに上げてしまって、そしてこれをどうやって強行していこうかという、こういう点は行政上の問題に関してソ連と日本との間にだいぶ違いがある、そういうふうに思います。
  28. 徳永正利

    ○徳永正利君 いや、私のお聞きしているのは、そういうような、何と申しますか、行政的な問題をお聞きしているわけじゃなくて、実際の施設の面等において投与する生ワクチン日本でつくっているわけですから、それでソ連と日本との間にいろいろな施設、あるいは検査、あるいは技術的な面で相当な違いがあるかどうかということをお聞きしているのです。
  29. 久保全雄

    参考人久保全雄君) 日本の場合に一番決定的に欠けているものは衛生研究所だと思います。これを調査し、検討して、そうであるなしをつかまえていくところの県の衛生研究所、それを掌握する国立予防研究所、こういうようなものに対する施設が十分でないということが第一点。それから、そこで働いておる技術者というものが決定的に日本の場合には少ない。施設があっても技術者がいない。今度は技術者施設があっても、それをテストするところの薬品が満たされておらない。国家予算を私のほうで言う筋合いはないと思いますけれども、そういうものに対して厚生省が年間どれだけ下げていっているかという費用をごらんになられれば、いかにそういう基礎的研究の機関と大衆接点になっているところの機関が貧弱であるかということが、私ははっきりしているのじゃないかと思います。
  30. 高野一夫

    ○高野一夫君 いまの徳永委員の質問の前提になることで、特に多ヶ谷さんの御見解を伺ってみたいと思います。先ほど来、久保さん、丸山さんお二人が相そろって、現段階においては実施面においてまだ調査不十分ということばをお使いになっている。したがって、母親の不安が解消しない、そのままこれを急いで実施に移すことは学問的なやり方とは考えない、こういう御意見に私は聞いておるのです。その点われわれは、ソビエトであろうと英国であろうと、ドイツであろうとアメリカであろうと、日本の医学研究、医学者のあり方、あるいは薬学研究というものは、世界の水準を抜くことがあっても、劣ることはないという全般的のわれわれ常識を持っておる。そこで、厚生省関係の衛生試験所なり予防衛生研究所なりで、かりに手が足りなくても、それに相応して国立の大学病院とか大学の医学部あたりで、松本教授はじめ、先般もおいでを願った参考人方々が真剣に研究されておって、こういうような大学における研究機関の完備と研究態度というものは、決して世界のどの国にも遜色がないはずです。そこで、先般来、先週もいろいろな学者のお話を伺って、われわれはしろうとながら、一応それで納得ができたけれども、きょうお二人から調査不十分である、それが母親の不安を買っているという、こういう意味の——私にはそういうふうに受け取れるような御発言があったわけですが、この調査不十分というお二人の意味は、多ヶ谷さんの立場からこれをどういうふうに解釈され、受け取られるか、あなたの説明をひとつ聞かしていただきたい。ただ調査不十分であるというと、PRのやり方が足りない、母親を安心させる方法が足りない、これも調査不十分。あるいは研究なり何なり、そういうような副作用があるなしの調査が足りない、これも調査不十分。それで、あるいは両方含んでいるのかもしれませんが、そういう点について多少専門的に、多ヶ谷さんはこのお二人が調査不十分であるとおっしゃった点をどういうふうにお聞きになっているか、これに対するあなたの御批判をひとつ聞かせていただきたい。
  31. 多ケ谷勇

    説明員(多ヶ谷勇君) 予研の多ヶ谷でございます。ただいまの高野先生からの御質問でございますが、それに関連いたしまして、先ほど久保先生から言及されましたことに関しまして、私の一応知っているところをちょっと追加させていただきます。と申しますのは、私は、ソ連ももちろんWHOのフェローとして拝見いたしましたが、その場合と、それからチェコのプラハで一九六一年にポリオに関する講習会がございまして、そこにソ連のチェマコフ講師、それからウォロシコバ博士がおいでになりまして、いろいろ微に入り細にわたって世界じゅうの——おもにヨーロッパでございますが、ポリオに関係のある学者が集まりまして、相当突っ込んだディスカッションも行なわれております。それから、私は、先ほど久保先生からちょっとおしかりを受けて、ソ連の悪口を言ったりほめたりと言われましたが、私は悪口を言った覚えはないわけでございます。どこにそういう証拠がございますか。私が申し上げますところは、すべてこういう文献的なはっきりした印刷のものに基づいて申し上げたほうが誤解がないと思いますので、今日は主としてそれに基づいて申し上げていきたいと思います。  一九五九年にアメリカのパンアメリカン・サニタリー・ビューローが主宰して、まあWHOが主宰でございますが、そのパンアメリカン・サニタリー・ビューローがサポートいたしまして、生ワクチンに関する第一回の国際会議がワシントンで開かれております。その当時、日本からは、残念ながら、どなたも代表には出ておられませんが、その記録を見ますと、そこにソ連が生ワクチンを初めてつくりましたころのことが一応かなり詳しく記載されております。それから、ソ連において自国産の生ワクチンの安全性をどう考えて、どういうふうに投与したかということがはっきり文献として載っております。それで、その要点をかいつまんで申し上げてみますと、ソ連では一九五七年ごろからスボロジンチェフ教授かレニングラードでセービンワクチン研究を始められております。ただし、これは古い株でやっております。セービンが最終的に改良する一つ前の株でやっております。それで、一応三万人分ほどのワクチンも試作しております。それがつまりまずソ連における生ワクチン研究の第一歩でございます。それで、その次のステップと申しますのは、一九五八年に一応セービンの新しい株によってつくったワクチンを直接セービンから送ってもらっております。これはスボロジンチェフ教授とチェマコフ教授とお二人が別々にセービン博士からもらわれているようであります。それで、チェマコフ教授の記載によりますと、十一万人分のI、II、III型のおのおののワクチンセービンから九月に受け取ったというふうに文献に記載されております。それで、そのうちの約二万七千人分をエストニア及びリトアニアの共和国で免疫に用いた、と同時に、モスクワでワクチンの生産を開始した、そういうふうに記載されております。それと同時に、一九五八年の十月にソ連のアカデミー・オブ・サイエンスで、一応五万人分の人体投与研究的にやれというような決議がなされて、それから、同時に、一九五八年の十一月に、かりの製造基準検定基準をつくった。そういうふうに書いております。それで、したがって、モスクワにおける生ワクチン製造は一九五八年の十二月から開始されております。それで、一方におきまして、そのアカデミー・オブ・サイエンスの決議によりまして、人体の投与実験をやれということでございまして、これを一応セービンからもらった先ほどの約二万七千人分ですか、これを投与したわけでありますが、それと同時に、いわゆるレニングラードのほうでつくりましたワクチンの約一万二千人分が人体実験として投与されております。それで、その文献の中でこのようなことが述べられております。すなわち、セービンワクチンの生ワクによる経口免疫の免疫学的、疫学的な研究を始めるにあたって、われわれはセービン株の安全性の問題というものはすでに解決されていると考えた、というのは、一九五七年から八年にわたりまして、セービン博士自身の観察が非常にたくさんございますが、そのほか、スボロジンチェフ教授が、やはりセービンからもらったワクチン千二百人について、先ほど久保先生がおっしゃったようないろいろな実験をやっております。それから、同時に、チェコでは、その一九五八年の十二月に、これもセービンからもらった十四万人分のワクチンをいきなり大量投与しております。そういうことで、もうワクチンの安全性ということは何ら疑いないというふうに考えた。つまり、いきなり大量投与へ持っていってもいい。しかしながら、そのアカデミー・オブ・サイエンスの決議によりまして、一応五万人だけをエストニアでまずやった。それで、そのうちの一部分セービンのもとのワクチンで、残りはレニングラードでつくったワクチン。したがって、モスクワでつくられましたワクチンが実際にソ連で投与されましたのは一九五九年の春、すなわち三月以降のようでございます。それは後に一九六〇年にモスクワで開かれましたソ連の生ワクチンに関するアメリカとの合同会議の記録にも、その辺のいきさつが出ておりまして、たとえば一例を申し上げますと、リトアニアの共和国の中でございますが、最初にセービンからもらったもとの株で、少数の投与をやっております。何例でしたか、ちょっといま……。それで、そのあとでモスクワ製のワクチンを約八十万ぐらいですが、直ちに投与しております。まあそのように、すなわちソ連におきましてワクチンの安全性というのは、すでにセービン博士研究で十分もう確立されたものというようなことで投与が行なわれたわけであります。  さらに、ただいまの御質問に関連してくるわけでございますが、日本では非常に調査が不十分だと、そういう届け出や何かを待っていて受け身であるというようなことでございますが、ソ連におきますポリオ容疑患者、いわゆる届け出患者でございますが、これは一九五九年に大量投与がいま申し上げたように三月ごろから行なわれまして、一年間でかなりの大量行なわれております。それで、さらに一九六〇年、六一年と——私がチェコでそのチェマコフ教授にお目にかかりましたころが六一年でございますが、そのころまでには届け出患者は数千名とにかく記録に残っておるわけであります。それで、これはどういうわけですかという質問がチェコでも出ましたし、それからオックスフォードにおけるその年の九月に行なわれましたヨーロッパ地区の第一回のポリオ国際会議でも、同じような質問が各国の代表からソ連代表に対して行なわれたわけであります。そのときソ連代表は、チェマコフ教授は御欠席でありまして、ソロビトフ教授がおられましたが、ソロビトフ教授が一部お答えになり、さらに一部チェコの代表が、私がソ連代表に委任されているのだというようなことで、かなりお答えになったのでありましたが、かなりその地区が広いので、届け出といっても一つ一つ確認できない、それから、ポリオ以外のものがポリオとして届け出られている、したがって、ラボラトリーの検査というものはなかなか追いつけないのだというお話がございまして、ソ連はやはり国が広いだけに、いろいろ悩みも多いのだなということを私は悟ったわけでございます。したがって、これはアメリカにおいてすら、あるいはイギリス、あるいはさらに日本はあとからスタートいたしましたが、できるだけたくさんのそういう容疑患者を検査網へ回すということが、末端の臨床家並びに衛生研究所、衛生研究所でできない部分は予研に材料を送っていただければ、できるだけのことをいたしておるわけでございますが、そういうシステムを確立いたしまして、検査網を十分微に入り細にわたってやりたいということが先ほど久保先生も御引用になりました、生ワクチン投与を始めるにあたって、海外視察団の結論としてもそれは出ておりまして、その後、厚生省関係もそれに非常に努力を続けておりますと同時に、生ワクチン研究協議会におきましても、そのようなことが一番大切な目標である。これは生ワクチン研究協議会は一応昨年の三月に解散されましたが、解散するにあたりましても、厚生省に要望することは、このサーベイヤンスのシステム、それから疑似患者のほんとうの検査、そういったものを十分にやる、それと同時に、免疫体の持続ということをやはり厚生省の平常業務としてこれはやるべきである、そういうような要望をなされまして、その線に従って、現在でもそういう制度で行なわれているわけであります。  それから、もう一つは、先ほどお話にありました、九州地区ではインフルエンザ、はしか等がはやっておるのに投与しておるじゃないかというようなお話もございまして、これはわが国では現在でも——これはむしろ防疫課長なり公衆衛生局長がお答えになるのがほんとうだと思いますが、熱を出している子供とか、そういう急性の伝染病にかかっている子供はなるべく投与を見合わせようというような一応通達が出ております。しかしながら、私どもがプラハで生ワクチンの講習会のときのディスカッションの中で、いわゆる禁忌事項ということにつきまして、チェマコフ教援やウォロシコバ博士とディスカッスいたしましたときにソ連では、そういう少しぐらいの伝染病なんかの流行があったところで、何ら顧慮しないで投与しているのだ、初めのころは非常に慎重に行なったが、六一年、すなわち、生ワクの大量投与を行なった二年後に、はしかがはやったときに投与を行なったこともある、それから、種痘とほとんど同時に生ワクチンを飲ましたこともある、しかし、そのいずれもはっきりしたそういう因果関係のある何ごとか起こるという証拠は全然ないので、そういうことはほとんど気にしなくてもいいのだというようなお答えがございまして、まあわが国では、しかしながら、なるべくそういう非常にまぎらわしい状況を起こしてはいけないということで禁忌事項の中に入っておるはずでございます。  以上、もし足りませんことがございましたら、後ほどまた補足説明をさせていただきたいと思います。
  32. 丸茂重貞

    ○丸茂重貞君 丸山参考人に御質問したいのですが、先ほどのお話を承ったんですが、丸山先生の前提は尚早だと、こういう前提だったのですね。そこで、まあほかの方々の立場はともかくとしまして、丸山先生が尚早だという前提で御説明に入る以上は、松本教授が言われたセービンの菌株に対する実験調査に対して、そういうことでは尚早なんだということを学問的に御説明があるというふうに私は期待しておったのです。この点に対しては、少なくともこれくらいのデータが必要である、それによってできたところの事故についてはこういう方法で追求していく、その追求した結果がプラス、マイナスわからなくても、わからなかった場合には、少なくともこの期間ぐらいはこういうふうにしなくちゃいかぬじゃないかと、まあこれは私もしろうとでございますから、仮定のこととして例を引いたんですが、そういうふうに、先ほどの松本教授の非常に詳細な実験データに対しまする反論と申しまするか、尚早だということを学問的に証明するようなお話がほしいわけなんです。実は、その点に関連して、私は、先ほどソ連におけるところの状態はどうかということは、丸山教授に御質問する前提として伺ったわけです。いま多ヶ谷先生からお話を承りますと、ほぼ私の疑問と申しまするか、こういう点はどうなっているんだろうという点は、ソ連においてもほぼ同様だという印象を私は受けたのです。この点に関しまして、特に丸山教授が学問的に研究した結果が尚早だという結論を出されたその間の経緯、あるいは、少なくも丸山教授のお立場だとするならば、このくらいの実験データはほしいじゃないか、このくらいの期間がほしいじゃないかというふうなことがありましたらお聞かせいただきたい、こういうふうに思うわけです。
  33. 山本杉

    ○山本杉君 関連して、私もちょっと伺わせていただきたいのですが、大体前にお述べございました参考人のお話は伺いかねたのでございますが、松本教授のお話を少し伺いまして、なお、丸山教授のお話を伺って、そして私もいま丸茂さんと同じような疑問を持ったわけでございます。丸山参考人が、動物実験や臨床実験で安全でも、毒は毒、薬は薬ということばでおっしゃた。そして、科学的に結論が出なければ尚早であると思うということをはっきりおっしゃっておるのでございますが、衛生学者としてのお立場から、学問的に何を基準にしてそういうふうにおっしゃるのか、伺いたいと思います。
  34. 丸山博

    参考人(丸山博君) われわれが問題にするのは、人間社会集団を対象にしてどの程度の安全テストがなされたかということをむしろお伺いしたいのです。それの材料がなければ、私は何ともお答えできません。
  35. 丸茂重貞

    ○丸茂重貞君 こちらが御質問申し上げたんですが、何かいまのお話ですと、こちら側が回答する立場に立たされたような錯覚におちいったわけで、実は弱っておるわけです。私も学者ならとうとうとお答え申し上げたいところなんですが、幸か不幸か、学者でございませんものですから、本日承った松本教授と多ヶ谷博士のお話をもとにして御質問申し上げたわけなんです。当然動物実験を人体実験に及ぼす場合の問題は、これはひとり医学だけでなくて、あるいは免疫学だけの立場でなく、医学全般に関して共通の問題だと思います。その問題を的確に保証がなければやれないんだということになりますならば、いまの薬理学と申しまするか、そういうものは全部根底からくつがえるんじゃないか、こういうふうに私は思うのです。まあしろうとの考えですから、またお教えいただけばけっこうでございますが、そこで、いまの松本教授のお話を承って、私は、少なくも医学の立場からいけば、実験というものはそういう順序でいくべきであるということを納得いったわけです。これに関しまして、久保さん等のお話があるので、はたしてソビエトというものが、動物実験で納得のいったやつを生体実験に移す場合にどういううまい方法をとったんだろうか、なるほどその点は私も非常に心配でございました。だから、ソビエトにおきましては、動物実験で何も心配なかったものを人体に及ぼす場合に、いま久保さんが言われたような、心配もなくどういうふうに実験に移したんだろうということはたいへん興味があるし、今後私の立場からしても有利なことだ、たいへん勉強になることだと思って承ったのです。これはおそらく丸山教授がああいう前提をお出しになった以上は、学問的に詳細にお聞かせいただけるだろうと思って、実は楽しみにしておったわけです。ところが、いま承りますると、尚早ということだけでございまして、動物実験をやったからといって、人体実験に及ぼすには、これは必ずしも安全じゃないんだと、こういう議論は、私しろうとでも、失礼ですが、できると思うのです。先生のお立場でしたら、そういうふうなしろうとの見解に対しまして、どういうふうな順序と、どういうふうな方法をとっていったならば、いまの科学一般にある動物実験においてやったことを人体実験に及ぼす際に、だれでも越えなくちゃならぬ一つの飛躍ですね、その辺をどういうふうに飛び越えられるんだというお話が承れると、こういうふうに考えておったのです。  そこで、いま多ヶ谷先生のお話を承りますと、まあおそらく久保さんのお話にしてからが、ソビエトがモデルの国というふうなお気持ちじゃなかったかもしれませんが、聞く立場になるとそういうふうにとれた。間違っていたら訂正いたしますが、そういうお気持ちでソビエトではということで、多ヶ谷さんのお話を承りますと、何のことはない、ソビエトでも同じことをやっているじゃないか、こういうふうに私はとったわけです。いま多ヶ谷さんのお話を承っても、ちゃんと動物実験から少数の集団に実験をして、それを大集団に次第に及ぼしたという、これははっきりした事実があるわけなんですね。ソビエトにおきましても、アメリカ、カナダにおきましても、日本におきましても、実験の過程というものはそう違わない。いまの発達した医学のもとにおいてはという私は前提を持っていたものですから、ソビエトではどういううまいことをやったのかと思ったら、やつ。はり同じことをやっていた、何のことはないという印象を私は受けた。そこで、問題は、おそらく丸山教授のおっしゃっているのは、ソビエト、アメリカ、カナダというのは外国じゃないか、日本日本人だから、体質的に別なものがある、だから、日本としてはそういうところとは別なことをやるべきだ、こういう御意見なのか、あるいはいまのソビエトの実験方法というものは是認されるべきもの竹あるが、アメリカ、カナダ、日本におきますものは是認できないのだ、こういうお立場から学問的に追求をされた結果御発言になったのか、その辺をひとつしろうとにわかりやすいように御説明いただけばまことにしあわせなんですが。
  36. 高野一夫

    ○高野一夫君 関連して。丸茂委員のお尋ねと同じ方向になると思うのでありますが、それと関連して、私は別な角度からお尋を丸山さんにしたい。  いま丸茂委員がおっしゃった、先ほどの丸山さんの御説明は、これはとうてい私ども、学者の御意見としては了解することはできません。それは、だから、私は、何となく変な不安を感じたから、先ほど丸茂さんがおっしゃった、調査不十分というのは一体どういう意味なんだろうと、丸茂さんとあわせて、久保さんにお伺いするよりも、当面の責任研究の立場におありになる多ヶ谷さんは、お二人の調査不十分というのはどういう意味に一体お受け取りになったかということを私は聞いた。そして、ほかの委員の御参考にひとつしたいと思ったわけです。そこで、それに対する受け取り方、解釈、批判は多ヶ谷さんからはっきり伺った。私どもは学者でないし、その専門家でないからよくわからぬけれども、大体理解ができます。そこで、調査不十分である、現段階においてはまだ学問的の段階までいっていないというのはどういう意味かという質問に対して、丸山さんは、それはひとついままで調査十分であったという結果を聞いてみなければわからぬと言う。これは私はおかしいじゃないか。全日本における、世界におけるこのポリオ生ワクチン研究であります。特に日本における研究は、医学界においでになる限りは、十分御承知になっているはずだと私は思う。東大で研究、慶応で研究、阪大でやる、いろいろおやりになる。厚生省も予防衛生研究所でおやりになる。その結果が全然おわかりにならぬということは、私は、医学界で研究をなすっている方のわれわれに対する御説明としては、とうてい理解ができない。それは十分御承知の上であって、しかも、なおかつ、こうこういう点において調査不十分じゃないかとおっしゃるならば、われわれもまたその御意見をもとにして考えましょう。しかし、そうでなくて、何もいま現段階における日本における研究の段階の調査が完備しているかわからぬじゃないか、それで説明ができないということは、私は、これが全然しろうとの方であり、ほかの学界の方であるならいざ知らず、私は、医学界の、あるいは大学、あるいは研究機関で研究した結果についてわれわれは伺うのだけれども、あなた方は十分御承知であるはずだと思う。だから、御承知であるから調査が十分であるとかないとかいう一つの結論が出るのだろうと思う。久保さんにしても、私もそう思いたい、それがただ漫然と、まだ一般の母親によく知れ渡っていない、それは厚生省の努力も足りないと思う。不安を与えないように、十分正しい姿を納得させ、理解させるような努力が足りないことは私ども認めている。しかし、それだから母親が不安であるということと、ワクチンそのものに不安の因子があり、要素があるから母親が不安だということとは、根本的に違ってまいる、この点を私どもはつかみたい。だから、地方自治団体でやるとかやらぬとかいうことも問題であるかもしれないが、そういうような手続、一般の民衆、家庭、母親によく正しい姿を認めさせることができないために不安である、不安をもたらしている、こういうのか、それとも、そのもののやり方、そのものの本質、ワクチンの本質、あるいはワクチンの試験のしかた、研究のしかたに不安な状態があるから母親が不安を持っているのだと、こういうのか、これは非常に根本的に違っています。こういう点については、私はもう少し、ほかの皆さんの御質疑関係してまいりますが、これは丸茂委員と同じく、問題点になろうと思いますので、丸茂委員の御見解と私の疑問とをあわせお考えくださいまして、あらためてもう一度丸山先生の御意見を聞かしていただきたい。
  37. 丸山博

    参考人(丸山博君) 私の申し上げましたのは一般論ではなくて、現に問題になっている日本の初めてつくられた国産生ワク投与の問題について、そういう調査をするような態勢が十二分に組まれておって、そうしてその中から成績が発表されているかどうかということについて疑問を持っているわけなんです。それですから、私がイエスとかノーとかというような判断を下すことができないのでございます。これは衛生学と申しましても非常に範囲が広うございまして、いまここで申し上げましたのは、衛生学的観点の原則論だけを申し上げたわけです。その原則論が貫徹されなければ、あとの各論はやはり問題だというたてまえで申し上げたのでございます。
  38. 阿具根登

    ○阿具根登君 先生方に御質問申し上げますが、たしか一昨々年であったと思います。非常に小児麻痺がはやりまして、日本の母親をはじめ、国民が非常な心配をいたしました。そのときにソ連あるいはカナダから生ワクチンを入れてもらって、特に総評等はソ連から十万人分の生ワクチンを入れたというときには、ほとんどの人が生ワクチンを早く飲ましてくれと、こういう意見だったと思うのです。ところが、その当時は厚生省がきわめて慎重であった。しかも、ソ連よりもカナダが安いからといって、カナダのワクチンが入ってきた。いま皆さんの御質問なり諸先生方の答弁を聞いておりますと、どうも私はふに落ちないことがございますが、これだけは皆さん十分御存じのことだと思いますから、まず第一点をここで教えていただきたいと思うのです。ソ連並びにカナダのワクチン日本の国産ワクチンとどう違うのか、一緒なのか。ある新聞では、それよりももっと精製されているきれいなワクチンだということもいわれているのです。だから、当時の——現在もそうですが、諸外国のワクチン日本の国産された生ワクチンは一緒なのか、それよりも下なのか、それよりも上なのか、その点をひとつ御説明いただきたいと思います。これは専門家の方ですから、おそらく皆さん御承知と思いますから、どうぞお願いいたします。
  39. 久保全雄

    参考人久保全雄君) 生ワクチンを人体テストなしにやってほしいという母親の要求は初めからありません。一番最初の母親の要求は、米ソいずれのワクチンでもいいから、ワクチンがほしいというのが初めの声だったのです。そうしてソークワクチンが入ってきた。これを受けた。そのときに、どうしても全体から安心できるようにするためには追放してしまわなければならない。そのためには、生ワクチンを現在ソ連はやっているのであるからして、生ワクチンのやはり人体安全テストをしてもらうべきじゃないかということで、これはほしいということの中から、ソビエトから六百人分が寄贈された。それは自民党の野原正勝氏がお持ち帰りになった。冷凍車に乗せて、冷蔵陣に入れてきちっと持ってきた。それは、その当時としてはみんな飲みたくてしょうがなかったワクチンです。しかし、これは国立予防衛生研究所に寄贈いたしました。そのときの答弁は、二つの地域に分けて、一炭鉱地域と一農村とでこれはテストをやってみますということでお受け取りになった。差し出し人は石橋湛山氏です。それが第一回目の人体安全テスト要求であります。予研の分、おやりにならない、御返事がこない。第二回目は、ネストロフ氏が来られたときに、二千人分をやはり日ソを通して金沢大学に寄贈した。金沢大学では、地域の麻痺協の方たち医師会、大学、全員が取り組んで、この人体安全テストのために子供さんたちの教室が出されて、そうして「ほまれの家」というような張り札までやりながら、いよいよ実施をやるという前日、突如として圧力というものがかかったのでしょう、これがその当時の記録をごらんになればわかる。前日突如中止命令が出された、これが第二であるのであります。その次によこされたのは、やはり今度は総評の十万人、イスクラ産業という会社にきました千三百名——そのうちの千三百名は国立予防衛生研究所に入った、やはりテスト用です。総評のものも、これは全員実施というたてまえでなく、少なくともそういうものの観点できたものであります。その時期にそういうテストをやらないで、英国のカイザーから突如として入れて、そうして流行してどうにもならない。古井大臣の裁断によるところのものとわずか一、二カ月の差のときにカイザーのものは実施された、そのあとすぐ一斉投与確定した。そうしますと、このときのデータというものが、はたしてあとのかぶったものとどういうことになるのか。そういう点に関しては、安全テストのことを無視したのは国立予防衛生研究所と厚生省の態度だったと思うのです。おかあさんたちは不安なものを飲ませたいという、そういう母親はおりません。しかし、学問の発展で安全である、安全のための効果、それから副作用、そういうものを整理するということに関する協力というものは惜しまないのだという例は、金沢の例だけでなく、神奈川にもあります。ソ連と日本が同じだといいますけれども、私は先ほどのことを少し補足したいと思います。ソ連と日本では決定的に違っています。副作用が出たもの、あるいは副作用がないもの、その投与における医療を全部保障しています。いま投与されている間のものは、そうであれば政府が保障するといいますが、そうでないものの保障は、その期間におけるものを全員保障しながら研究していくのでなければ、下痢あるいは発熱というものは必ずしも、医者の上に先ほどかかってくると言われましたが、かかりません。今度の死亡例は全部農村僻地です。都会の場合ではありません。しかも、医師は、そういう異常者は即刻保健所に通告しろという通達を受けていない。もし受けていて医師が出さないとすれば、これは別の問題です。そういうものが全部いって収拾されてくれば、これは整理がつくのじゃないか。先ほど名古屋の例を出したのもそういう報告受けていない、報告を出さなければいかぬということになっておらぬ。そうだとすれば、全部かかるというふうには私たち考えられない。おかあさんたちの不安になっているのは、そういう点をびしっとやっていただくということがおかあさん方のあれであるし、科学の問題に関しては、教授に聞かれてもこれは答えられない、データが発表されなければだめだ。まずデータを公開して、所属の学者たちがやったものを公開した後に、これはどうだというのであれば話は別ですけれども、それを出さないできめられるということに関しては、学者が保留という態度をとるのは当然であります。私も意見を聞かれれば保留と言います。
  40. 阿具根登

    ○阿具根登君 経過は私も存じておりますが、私が質問いたしておりますのは、いわゆるまあソ連ならソ連が、先ほどの多ヶ谷先生の話でも、一九五八年から研究されて、そうして絶対人体に副作用はない、危険はないんだということを発表されておって、たぶんこれが日本にくる場合には、あげてこれは早く服用させるかという意見があったわけです。ところが、今日厚生省は、法律まで改正してこれを早く飲ませたいと言っている。ところが、逆に言えば、今度、当時早く飲ませろと言っておった方々が第一飲まぬ、まだまだ早すぎるというふうな意見のように聞こえますので、だから、私は、現在の国産の生ワクチンは諸外国の生ワクチンとどう違うのか、それをお聞きしたい。それが違うならば、これは議論はおのずから分かれてくると思いますし、同じものであっても、日本人と外国人の体質が違うからこれはだめだとおっしゃるのか、ああるいはこれを待ったとおっしゃるならば、諸外国の人は飲んでもいいけれども日本の人は飲んではいけないとおっしゃるのか、いろいろな疑問が私たちに浮かんでくるわけです。だから、第一の疑問として、諸外国でそういう実験をされた、日本でも実験をしたこのワクチンと国産ワクチンがどう違うのか、それを簡単に教えていただきたい。これならばすぐ出るはずだから、これは分析されればすぐわかるはずですから、その点を伺いたいと思うのです。これを丸山先生、松本先生、あるいは久保さんからお聞きしたいと思います。
  41. 久保全雄

    参考人久保全雄君) 同じであるかもしれませんし、同じでないかもしれない。というのは、アメリカのもの、ソ連のもの、日本のもの、カナダのもの、こういうものを比較検定をやられたときに、これは日本のものは優秀である、それから日本のものは劣っているということはできる。この比較検定をやられた報告をやはり公開していただきたい。この比較検定をなされないで、一国の検定だけで優秀だということは、一つの品物を出して、これが優秀だと言われても、ほかの人は判断に迷う。ですから、この比較検定を公開していただきたい。やっておられるのでしたら、それを最優秀であるという保障、その科学的根拠をここへ出していただきたい。出ていない間は、私たちがそれは科学だということは言えないと言っているのです。  それから、国産品の問題、量産化の問題に関しては、これは原則として、国産の場合に、どんなものであろうと、条件が違いますから、これはやはり慎重に初回のものに関してテストということをやるのがやはり原則である。そういうものを抜きに、いまの最も研究の条件のそろっている冬の期間をのがしてしまうという点に関して疑問がある。流行というものでどうしてもかぶせなければならないというのでしたら、流行期の前に、年齢を区切った投与でなく、相当の部分の年齢層にまでかぶせてくるべきである。年齢の限られたものとして、しかも、冬の期間はテストとしての有効な時期です。そのテストを放棄しているという点に関してやはり疑義がある。やはりこれは大衆だけでなくて、科学者といえども疑義がある。疑義がある以上は保留せざるを得ない。
  42. 松本稔

    参考人(松本稔君) 結論を申します。セービンワクチンである限り、どこでつくられても同じでございます。セービン博士を中心といたしまして、世界じゅうの医術科学者、臨床家が非常な努力をして膨大な実験をして、このワクチン製造基準検定基準というものをつくって、それにのっとってつくられたセービンワクチンは全部同じでございます。ということは、完全に保障されております。で、もちろんそういう基準に従ってつくられたものは、当然同じ品質のものができるはずでありますが、人間がつくるものでございますから、それだけでは不十分でございます。そこで、検定ということがございます。検定というのはちょうどものさしのようなものであります。万国共通、一メートルは一メートルでございます。この万国共通の基準に従って検定されたワクチンは、みんな同じセービンワクチンでございます。
  43. 丸山博

    参考人(丸山博君) ワクチンそのものについては私の専門外のことであります。問題は、たといそれが同一であろうとも、実施する条件が違えば、結果は違って出てくるということについての調査がどうなっておるかということを明らかにされることが、私にとっては判断の基準になるわけであります。
  44. 多ケ谷勇

    説明員(多ヶ谷勇君) いまのあのワクチンの同じか違うかという御質問に関しましては、私も全く同じである。ただし、もちろんこれは生物製剤でありますから、同じ顔のふたごであっても、片っ方にほくろがあって、片っ方にほくろがないというふうに、全く同じものはないわけであります。したがって、テストし得る範囲内の品質は全く同じである、学問的にいえばそういうことであります。そして、それはその品質を調べる目安でかけた上で、世界じゅうで何千万という人に投与した。いろいろなところでつくったいろいろなワクチンで、そういうクォリティが同じものであるということで、現在までの効果と安全性が確認されておる。そういうことを一言付け加えたい。これは先ほど言いましたチェマコフ教授がソ連で投与を始めるにあたって、WHOの報告に載せておられるのと全く同じことで、ソ連人のデータを確立されている。ただし、当時はソ連におきましては、慎重論者、ソーク論者、いろいろございましたようでございます。すなわち、日本における昭和三十五年、六年に学者がいろいろ論議しまして、生ワクを取り上げるにはどういうステップを踏んで取り上げるべきかという議論をしたと同じことが、やはり五八年ごろにソ連でも行なわれていたことも考えていい資料だと思います。したがって、そういう過程を経て、さらにただいま六四年に、わが国でも六一年から三年間の経験を積んだ現在において、このような国際基準に基づいた日本でつくった基準ですね、こういうものに合格する品質のワクチンは、どこの国の製品であろうと、同等であろう、そう考えて一向差しつかえないと考えます。
  45. 丸茂重貞

    ○丸茂重貞君 きょうの問題はウイルス学的、あるいは疫学的な問題ですね。したがって、学問的な問題なんです。そういう意味で、私は、本日参考人お四方に来ていただいておりますが、松本教授と丸山教授のお話を最も重視した。なぜかなれば、このお二方は、少なくも何ものにも左右されない学問的な見地に立ってのきわめて客観的な参考意見をいただける、こういう立場から私はこの両先生の御意見を最もきょうの本問題の核心として承ってきたのです。そこで、松本教授のお話は、少なくも専門的な素養のない私にもよくわかる問題ですし、これを敷衍された多ヶ谷さんのお話をあわせ考えますと、私はもうよくわかり過ぎるほどわかった。ところが、先ほど私が御質問申し上げましたように、丸山教授のお話は、どうも私よくわからないということで、再三質問をいたしたわけです。ところが、はしなくも、いま丸山教授のお話に、私は専門外でございますが、こういうおことばがございましたので、私はいままでの丸山博士の御意見に対する疑問が氷解いたしました。というのは、先生は衛生学の教授でございますが、ウイルス学、あるいは免疫学に対しては専門家じゃないのだと仰せられたので、それならば私と同じ立場だな、こういうふうに思うのでありまして、そうだとするならば、私も同じような多少の専門的な知識を持っていますから、少なくも私はきょうの御意見は、松本教授及び多ヶ谷さんの御意見をやっぱり一番客観性のあるもの、科学性のあるもの、学問的なものというふうに考えたいのでございます。まあこれはいい悪いの問題を除いて、そこで、先ほどたった一つそれでも丸山教授が仰せられた。というのは、総論がだめである以上は、各論がどんなによくてもだめなんだという先ほどの御説明があったようでございます。これはそこまで議論が進んでまいりますると、今日おいでをいただきましてわれわれを教えていただくねらいからずいぶん離れてまいる。というのは、当面われわれが日本におけるところのポリオワクチン法律でもってやる場合にどういうふうな支障があるか、あるいは考えられるところの、予側すべきおそるべきことがあるのか、こういう点に対しまして、はたして準備が不十分なのか、調査、実験が不十分なのか、こういう点を承ったわけですね。これが一番われわれとしては国民に対する責任であるわけなのです。このしろうとの御意見というものは、あくまで推測が入りますから、われわれはいろいろな御意見がありましても一向かまわないという基本的な立場をとっております。したがってきょうは松本先生と丸山先生の御意見基準にして考えなければいかぬ、私は深く覚悟をしてお伺いしておった。そうしますと、まあ松本教授と多ヶ谷さんのお話では、全部疑問としていた点、あるいはこういう点はどうだろうかという点が百パーセント解明されたわけです。ところが、困ったことには、同じ学者の丸山教授がずっといろいろ変わらない御説明で、自分は尚早なんだ、いまの御意見もそのように承りました。ただ、しかし私は専門外なんだというおことばを承りましたので、初めて先生の学者的なお立場からのお話が理解できました。これは専門外の問題に対しまして先生が学者としていろいろな疑問を抱かれるのは当然だと思います。そうなくちゃならぬのでございましょう。しかし、今日の問題とは、専門外だという御意見を前提にして考えるならば、たいへんはずれておるんだという私は非常に印象を持っておるのですが、さように私ども考えてよろしいかどうか、最後にひとつちょっとつけ加えていただければしあわせだと思うのです。
  46. 丸山博

    参考人(丸山博君) いままでの議論はポリオ生ワクチンそのものについて御議論なさっておることでありました。私が問題にしますのは、それがいかに投与されるかという点でございます。ですから、私が参考人として呼ばれたことは意味があると私は信じております。その点で専門外というのは、ワクチン学者としての、あるいはワクチン製造、品質検定、要するにワクチンそのものについていろいろと聞かれましても、それは私の専門外であるという意味の専門外でございます。ワクチンが、ただ、ものがあっても、それが実際に投与されるのでなければそれは効果がないわけです。そうすると、りっぱな製品であっても、それが投与のされ方いかんによっては、決して同じような効果はもたらさないであろうということは予測できるところでございます。そういうような条件に対する調査が完備しておるかいなか、体制が組まれているかいなかというところに問題があるということを私は申し上げておるのでございます。
  47. 鈴木強

    委員長鈴木強君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  48. 鈴木強

    委員長鈴木強君) 速記を起こしてください。
  49. 紅露みつ

    紅露みつ君 各委員からいろいろ御質問が出ましたし、懇切な御答弁がございまして、たいへん知識を得たように思いまして、ありがとう存じます。私などは、申すまでもなく、これは全くのしろうとでございますが、丸山先生にちょっとここでひっかかっておるのでございますが、しろうとや専門外とおっしゃいましても、やはりお立場上、はたからはそのとおりには受け取らない。やはり専門家を細分化していきまして、専門家の間にはいろいろな分野ができるんだと存じますけれども、やはり外にお向かいになった場合には、一応全くの専門外、しろうという受け取り方はできないわけでございますね。科学的に十分な立証ができないからおかあさん方の不安があるんだと、こうおっしゃるのでございます。私どもその点はたいへんに心配しておるわけでございます。おかあさん方が不安を持っていてはいけないということで、どうしたらその不安が解けるだろうということを心配しておるのでございますが、先生の表現の中に、どうしてそんなに急ぐのであろうか、ふしぎだというおことばがあったのでございますけれども、これは申すまでもなく、三十五年、六年、あのときに小児麻痺のたいへん悲残な蔓延、しょうけつぶりからみまして、おかあさん方がもう大部分が私は急いで生ワクを飲ませたいという気持だと思うのでございますね。だけれども、やはりそうしたお立場の先生から見れば、まだ残された疑問があるということ、これは追求されなければならないと存じますけれども、どうしてそう急ぐのであろうか、ふしぎであるというような表現がございますと、これまでの質疑応答にみられましたように、どういう反応がこのためにあったということの立証がないのでございますから、先生がそういうような表現をなさいますと、非常にこれは大きなおかあさん方の不安をつのらせるのではなかろうかと思うのでございますが、先生は、こういう問題について外にお出になって講演なさる場合もおありでございましょうか。そういう場合に、これが影響するところが非常に大きいと思うのでございますが、御所見を伺っておきたいと思います。
  50. 丸山博

    参考人(丸山博君) 私は、いままでこのポリオ問題について公式の席上で発言したことはございません。きょう初めてここに出席したのでございます。そして、いま問題にします時期尚早であると言いましたことは、初めて日本でつくられた国産第一号の製品を使うということを強制化することはまだ早いのではないかという意味でございます。その点誤解のないようにお願いいたします。
  51. 紅露みつ

    紅露みつ君 ややしろうとから見ますと、しろうとらしいと申すことは、科学的な御表現でなくて、感情が含まれているように受け取れまするので、私は、その点を今後におきましてはひとつ慎重になさっていただきたいということを考えるのでございますが、この点はそうお考えになりませんでございましょうか。
  52. 丸山博

    参考人(丸山博君) 科学的な資料が与えられておらないときに、科学的な結論としての発言は私にはできかねるのでございます。
  53. 山本杉

    ○山本杉君 私、一つだけお話の中でひっかかりました問題、いま紅露委員の口からも母親の不安ということが出ておりますが、丸山参考人、それから久保参考人がおっしゃった母親の不安ということ、私どもきょうこうして専門家の参考人に対して伺っておりましても、なかなかわかりにくい問題でございますが、どうして母親たちが——まあ一部の母親ですけれども、その不安の点を突っ込んでいるのでしょうか。その点について伺いたい。
  54. 久保全雄

    参考人久保全雄君) 一番先に読み上げました、日本政府が派遣した科学者の視察団報告が、少なくとも実施のときにはこのようなことが必要だと前に述べたその線に沿って実施されないという点に不安を持っているということでございます。
  55. 山本杉

    ○山本杉君 私は、あまりこういう問題には触れたくないのでございますけれども、どうも不安を抱いているという、その不安の論点でございますが、それに対して私どもは、もう少しはっきりしたものを表に出していきたいと思っております。それについて、まあ御説明はもうけっこうでございますけれども、特定の婦人たちが不安を抱いているというような感じを受けますので、ちょっと伺ってみたわけであります。
  56. 久保全雄

    参考人久保全雄君) 特定の婦人が持つのではなくて、飲むものを……。
  57. 鈴木強

    委員長鈴木強君) ちょっと待ってください。発言はまだ許しませんから……。答弁を求めたのですか。
  58. 山本杉

    ○山本杉君 いや、説明は要りませんと言ったのです。
  59. 鈴木強

    委員長鈴木強君) それじゃ柳岡君。
  60. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 越後貫先生にお答え願いたいのでありますが、先ほど先生のほうから、この研究所の設立にあたっての経過並びに今後の運営方針について御説明がございました。それで、株式会社が二社ほど入っておったので株式会社としなければならなかったという点、さらに、また、今後の運営としては、しかし、そうであっても、公共事業的な考え方をもって運営をしていきたいのだ、こういうふうにおっしゃっているわけでございますが、しかし、一応そういう営利事業会社がこれに関与しておるということになりますれば、私は、その会社の今後の運営としては、やはり営利事業的な考え方が入ってくることは明らかではないか、こういうふうに思います。そこで、三十五年にソークワクチン基準がつくられて国産化が始められたわけですが、その六社の中で、やはりソークワクチンをつくるにあたっての相当の設備ですね、費用がかかっておると思うのです。そういうばく大な費用をかけてそういうせっかく設備をつくったのに、その翌年の三十六年からは、もう生ワクに切りかえられる、こういうことで、おそらくその投資が完全に償却されないまま現在に至っているのじゃないか、こういうふうに思うのですが、各社このソークワクチンをつくるための設備費ですね、そういうものが完全に消化をされておるのかどうか、そういう点ちょっとお聞きしたいと思います。
  61. 越後貫博

    参考人越後貫博君) この日本生ポリオワクチン研究所株式会社でございますので、私の気持ちがどうあろうと、これが採算をとっていかなきゃいかんと私は思っております。で、現状でいかんといいましても、それは将来にわたって何かそういうバランスを回復しなければならぬ。それから、今日こういうふうに生ワクチンのことが非常に論議されまするのは、やはり国民の関心が高まっているからでございますが、昨年あたりですと、もう小児麻痺というのが百四十人、そのうちの三分の一ぐらいは本物で、あとは違うだろうと、こういうようなぐあいで、いずれは小児麻痺の問題も世人の関心が薄らぐ時期があるのじゃないか、こう思うわけです。それで、そのときにやはり皆で忘れてしまってはいけないのでありまして、私は、この研究所が今後の日本小児麻痺の問題を学問的に守っていく、そういう組織にならなきゃいけないと思っているわけです。ですから、そういうこともできるだけバランスにいたしたいと考えております。  それから、もう一つ、これはソークワクチンをつくっていた会社人たちが、仰せのように、六つ寄り集まってやったわけです。で、それとの関連ですが、ソークをつくりますときには、まあ私どももこのすぐあとに生ワクチンが控えているのだということを皆さんに申しまして、そうして覚悟を促したわけですが、そこで、それも覚悟してやってきていただいたわけですが、そこでそのソークがなまに切りかわるということで、それが完全に償却できたろうかということですと、完全かどうかは知りませんが、その後もやはりソークはずっと出ているわけでございます。それで、生ワクが投与されている間も、このほうとしてはソークが行なわれていたわけですから、両方が行なわれているわけです。それから、いまでもソーキアンといいますか、ソーク派の人がおるわけでございまして、それを好きな方もありまして、そんなこんなで、それと外国ワクチンなどの入りましたものもプールするなどの操作もいたしまして、相当量を結局のところソーク製造者はさばいたわけでございまして、完全償却かどうか知りませんが、やや耐えられる程度にいっておるのじゃないか。  それから、もう一つ、このソークワクチン製造を通じましても、わが国ワクチン製造に組織培養による方法というものが非常に迅速に導入されたわけです。で、たとえば麻疹とか、その他いろいろのワクチンが先に見えるわけです。そんなこんなを考慮に入れますれば、六社にそこをがまんしていただいて将来を期していただきたい、こういうことで私どもは申しているわけであります。
  62. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 将来を期してという御決意でございますが、しかし、いままでの委員会で厚生省の説明を聞きましても、非常にこの生ワクを製造するには費用がかかる、設備もかかる、したがって、相当な単価でないと採算はとれない、こういうこともいわれております。しかも、今後のこの人口の出生動向等を見ましても、年々出生は少なくなっていくということを考えますと、私は五百万人分いまつくっても、はたしてそれが完全に買ってもらえるかどうかというのは非常に疑問があると思うのです。しかも、ソークの保存期間ですが、これが現在では約一年、こういうふうになっておりますね。そうしますと、一年で売れればいいのですが、売れなければそれがむだになってしまうということになりますと、今後経営上、私は非常に疑問を持たざるを得ないわけです。したがって、まあこれは私の意見でございますけれども、こういう国民の保健上の問題につきましては、やはり国が積極的にこういう事業を興こしていくということが妥当ではないかというふうに思っています。これはここの議論ではございませんけれども、そこで、単価の問題ですが、先ほど、これからもしこの生ワクを使う人が少なくなれば単価も上がらざるを得ないだろう、こういうこともありまして、現在四十七円ということをいわれておりますけれども、メーカー出しの値段はもっと高いというふうに聞いているのですが、四十七円でございますか。
  63. 越後貫博

    参考人越後貫博君) いや、四十七円でございます。それで、出しの値段が高いということはないと思いますが、安くなるということは、たとえば販売手数料とか何とかいうことはありますから、それは四十七円でございます。
  64. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 それで、最後に、そういう今後の経営に若干の疑問を持つという観点からして、国から予算上、この製造についての補助とか資金的な援助というものが全然ないように思うのですね。そういう点について、研究所として、特に代表されておる方として、政府に対してどういうような要望をお持ちであるか、この点ひとつ率直にお伺いしたいわけです。当然このあと厚生省に対しましても、こういう問題についていろいろ私ども意見を申し上げていきたいという観点からも、ぜひ率直な御意見をお聞かせ願いたい、こういうふうに思います。
  65. 越後貫博

    参考人越後貫博君) 非常に御同情のありますおことばで恐縮でございまして、まあこの現状では、私、四十円でも、数年少し先で需要が減るわけでございますが、数年見れば何とかなるのじゃないかという考え方ですが、いまのその不安問題ですとどういうことになりますかわかりませんが、これが一日も早く正しいところが知れ渡りまして普及して、この会社の製品が小児麻痺の対策に寄与できるということになるなら、まあ来年とは言わないですが、数年で何とかなるだろう。それで、政府のほうも私どももそういう気持ちでやっておりますので、まあほんとうはこういうものは買い上げていただきたかったわけですが、そういうことにもまいらないようでございますので、何かの形で、こういう実は営利会社でありながら、営利を目的としない会社をひとつ庇護育成していただきたいと、こう思っております。
  66. 鈴木強

    委員長鈴木強君) 参考人方々に対する質疑はまだいろいろおありのこととは存じますが、時間の関係もありますので、この程度で終了いたしたいと存じます。  参考人方々には、長時間にわたり、それぞれ学識経験者の立場から、真撃、かつ、熱心に貴重な御意見の御発表をいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  67. 鈴木強

    委員長鈴木強君) 速記を起こして。  引き続いて政府側に対する質疑を行ないます。  御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  68. 藤原道子

    ○藤原道子君 本件につきましては、社会に非常な不安を与えてまいりましたことは、まことに遺憾だと思っております。私はこれについて、政府側にも大きな手落ちがあったと思う。安易に考えていままでやってきた、セービン株だから大丈夫だという安易な考え方が、こういう結果を来たしたと思う。もっと懇切丁寧に、この冬は国産のワクチンを使うのだ、これについては、こうこうこうこうだから、投与を受けるようにというような熱心なといいましょうか、そうした心づかいが欠けていた、これが混乱を起こす原因になったと、こう思います。私どもも、この委員会を通じまして参考人を呼びましたことが、今度で二回でございます。したがいまして、その問題については、大体私たちの腹がまえもきまりましたけれども、事ここに至りますまでは、おかあさん方の不安をどう解消していくかということについての自信がなかったわけです。そういう点につきまして、非常にPRというか、そういう点に欠けていたということは、今後にもあることでございますので、十分自戒していただきたい。これは要望でございます。  さらに、その次に、私ども投与しております現地の実態を見ますときに、配慮に欠けているのではないか。寒い所に赤ちゃんを連れておかあさんが長蛇の列をなしている。そういうところで、たまたま風邪を引いたならば、生ワクそのものの影響ではないとしても、あるいはかぜ引きと一緒になれば、熱が出るというようなことはあたりまえだ。そういう点から、私はあの投与いたします現地の改善方が願いたい。で、雨の中を、この間もかさはさしておりますが、赤ちゃんを抱いておる、雨にぬれるような状態で投与しているということについては、どうお考えでございましょうか。そういう場合の対策もしなければ、問題は、生後三ヵ月からの赤ちゃんでございますから、非常に私は心配をして、現地の状況を見てまいりました。それに対してのお考えをまず聞きたい。
  69. 小林武治

    国務大臣小林武治君) ただいまのお話はごもっともでありまして、私ども厚生省としては、事柄を安易に少し考え過ぎた。したがって、これの安全性その他についての周知の方法において欠けるところがあった、この点を深く反省し遺憾に存じますが、こういうふうなことは、今後十分注意をいたしたいと、かように考えます。なお、投与の環境等につきまして、御質疑の点は、私どももさようなことがあってはならぬ、十分に注意をいたすつもりでおります。
  70. 藤原道子

    ○藤原道子君 いま一つ。私はどうしてもわからないことが一つあるのです。いま熱海の赤ちゃんが日大に入院しております。これは右半身が麻痺しているというので、私どもも、まあポリオで副作用があるならば麻痺がくるぐらいは承知しておりますけれども、日大入院の赤ちゃんが麻痺がきていることが非常なショックでありまして、直ちに現地を見舞いまして吉倉博士の御説明も伺いました。あの赤ちゃんは、すでに生ワクを二回飲んでいる。輸入の生ワクを二回飲んでいる。ソークワクチンも三回注射している。十二分に免疫ができているはずなのに、この赤ちゃんに、さらに国産の生ワクを投与したというのは、どういうわけか。そういう場合に、お医者さんなりあるいは保健所記録はないものでございましょうか。この点がまことに、何だかずさんなような気がして、私も不安を感じる、この点についての御意見を伺いたい。
  71. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) ただいま、法律的にはソークワクチンを実施しておりまして、生ワクを臨時投与の形でやっておりますので、その二つが並行して行なわれております。したがって、ただいま御指摘の例も、法律的にソークワクチンを注射しました上で、さらに臨時投与の生ワクを受けたものでございまして、この場合も、従来の方針といたしましても、両方やっても一向差しつかえない。むしろソークをやって、そのあとに生ワクをやるほうがより安全であり効果も高いということから、両方の併用を認めておるわけであります。記録等につきましては、十分検討いたしまして、十分な記録を整備して、間違いの起こらぬように今後つとめてまいりたいと存じます。
  72. 藤原道子

    ○藤原道子君 私が言うのはそうじゃないのですよ。すでに輸入の生ワクを二回飲んでいるのです。それにさらにソークを三回やっている。しかもソークの最後は、ことしの二月の十日にソークの注射が終わっているのです。だから、生ワクとソークを併用することが、より好ましいということでございますから、私どもも孫にもそうさせました。ところが、それをやっているのに、なぜ今回さらに重ねて国産の生ワクを飲まなければならなかったか、これなんです。だから、そうして輸入生ワクを飲み、ソークワクチンを三回注射したという記録は、保健所にあるはずだというのです。それなのに、国産生ワクをやる必要があったか。
  73. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 生ワクの接種歴は三十八年にI型、II型の混合生ワクを一回、それからIII型を一回、それで二回でございます。したがって三種混合のワクチンとしては、前に一回分やっているわけです。それで今度三種混合の二回目を受けたということでございます。
  74. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、日大で吉倉博士のお話を伺いましたけれども、もうすでに完全に免疫ができているはずなのに、なぜ今度のを飲んだか、私どもにもわかりませんと、したがって国産生ワクによる障害だと仮定するならば、輸入ワクチンがきかなかったということ、こういうことを言っていらっしゃったのです。それが一つ私にはわからない。  そこで、保健所にそうした記録があるのに、I型、II型を飲んで、それからIII型を飲んでいる。だから私たちはしろうとですから、それでいいように思うが、さらにソークワクチンを三回も注射しているということで、記録があったのに、どういうわけなのだろうか、こういう疑問が一つ。そうすると、それをまた国産生ワクを飲んで、今度は麻痺がきたんじゃないかということになれば、ますますおかあさん方が不安に思うのはあたりまえだと思うわけでございまして、そういう点が十分に記録を備えてはいると思うけれども、私には何やら、ずさんな点があったんじゃないかという不安を持つわけであります。  それから、熱海の赤ちゃんでございますが、あれは急性小児片麻痺というのですね。そういう場合の学理的な宣伝——宣伝と言っちゃ悪いけれども、新聞発表等があれば、もっとおかあさん方は安心だと思う。非常に数少ない病気で、高熱のために脳内の酸素が不足して、それから起こった麻痺だというので、私病床も見舞いました。そうすると、起きているときはぴんとして動かないけれども、眠っているときには、若干動いて、それから腱反射をしてみたら、普通の子供さんくらいぴんとした反射がございまして、それで病理の説明等を聞いて、私も安心してきたんですけれども、そういう点の麻痺がきたということで非常な不安を与えているのです。もしあなた方に確信があったならば、もっとそういうことがおかあさん方に徹底してわかるように、私はPRというのでしょうか、そういうことをされたほうがいいと思うのです。とにかく今度のやり方については、厚生省として、いま大臣からはっきり反省しなければならぬというおことばがございましたので、私はこれ以上申し上げませんけれども、要は赤ちゃんでございます。非常な不安を持つのは親心なんです。そういう点を、人情の機微をお考えいただきまして、今後遺憾ない指導による投与が行なわれることを強く要望いたします。  で、いま私が聞いたのは、一回I II型とIII型を飲んだから、それで今度は混合の生ワクは飲む必要があったわけなんですか。それをもう一ぺんはっきり聞かしておいていただきたい。
  75. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 今度の生ワクの投与のしかたも、三種の混合型を二回飲ませることになっております。したがって、熱海の赤ちゃんの例は、前の二回で今回の一回分になる、三種混合の一回分になる。そして今度の投与が三種混合の二回目になることでございますので、これで正規の投与になるわけでございます。
  76. 藤原道子

    ○藤原道子君 その点わかりました。私は二回投与が済んでいるんだから、それ以上飲むのはおかしいと、こういうふうに考えていた。私の考え違いは、はっきりこれでわかりました。
  77. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 この生ワクは、非常に効能の面は安全の面からいってすぐれておると、こういうことで三十六年以来投与をしておるわけですが、これが単に、いわゆる閣議決定による行政措置としてなされているわけですね。ソークが必要だということで国産を始め、その翌年すぐに生ワクに切りかえて、もう二年間も投与をされておるということなんですが、単に行政措置で、これをやってきたということは私は問題があろうかと思うんです。なせ三十六年にこの規定改正をしてソークというふうに、ソークを注射をするんだと、こういうことを規定しながら、その規定に基づいての、実際の今度は実態から見ると、生ワクを投与しているということになれば、しかも、生ワクの効能なり安全性がすぐれておるということであれば、もっと早くこの規定改正をなぜしなかったか、そういう点をひとつ、厚生大臣にお伺いしておきたい。
  78. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) すでに御承知のように、このワクチン製造検定基準等ができまして、正規の医薬品として国内で使えるようになったのが今回でございまして、したがって、いままではそういう意味で、正規の検定基準による医薬品としてのものがなかったわけでございます。それで緊急の応急措置として、従来予算措置をもってやってまいったわけでございます。
  79. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 しかし、ソ連なりカナダから輸入をして投与をしているわけでしょう。国産としてのワクチンはなかったにしても、輸入をすれば幾らでもできたわけですね。その輸入をするのが政府としては困るから、その規定改正をせずにやってきたのか、まあその辺が私は納得できない。基準がないといっても、それは国産品に対する基準であって、外国産品に対しては、もうすでに基準はあって、しかもそのものはポリオにきくと、こういうことになっているわけですから、私はソークよりも生ワクがいいということになれば、規定改正し、輸入をしてでも、国産品ができるまで輸入をしてでもその、きくワクチン国民投与するのが常識じゃないかと、こういうように思うんですが、そういう点は。
  80. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 予防接種法で使用すべきワクチンは、国の検定基準に合格した品物を使うという規定がございまして、それが従来からの例でございます。したがって、検定基準ができていないときは、外国製品を輸入しても国の検定は行なわれないわけでございます。国の検定基準が制定され発効したのが今回にちょうど当たるわけでございます。
  81. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 そうすると、外国産品については、これは政府責任で、いわゆるそういう緊急措置としてやってきたと、こういうことですか。
  82. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) そのとおりでございます。
  83. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 そこで、先ほど経営の問題並びに今後の経営方針等について、会社の方からお聞きをしたわけでございますが、この価格の問題についてまずお聞きしたいのですが、検定料というものを、一ロット三千二百万円も政府が取っておる。これは、そんな高いものを取るのはおかしいじゃないかという質問に対して、いわゆる営利企業として採算ベースの面から見て、いわゆるコマーシャル・ベースから見て当然であると、こういうことを先般の委員会で厚生当局は答弁しておるわけですね。しかし、私は少なくとも国民の保健上、こういう伝染病に対する予防というものは当然政府が全額国庫負担をして、そうして国民の生命を守っていくというのが本旨であるとすれば、この検定料政府が取るというのは非常に私はおかしいのじゃないか。少なくとも政府自身が三千二百万円もその会社へ補助するというならわかるのですが、先ほどのお話でも、赤字で、おそらく当分の間は非常に経営も苦しいだろう、こういうことを越後貫さんは言っておりますが、そういう非常に苦しい経営をしなくちゃならない会社から逆に三千二百万円も政府が取ると、これは私はおかしいのじゃないか。しかも、それが価格の四十七円あるいは五十何円というような大きな価格になっておるわけでございまして、そういう点、一体検定料というものをどういう基準で設定をしておるのか、その点をお聞きしたいわけです。
  84. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 先ほど公衆衛生局長から御説明ありましたように、この会社、いわゆる民間の会社で生ワクを製造したということになりますと、これは正規の医薬品ということになるわけでございまして、むろんワクチン類は医薬品の取り扱いを受けておりますが、生ワクに限らず、その他ワクチン類全般につきまして、それぞれ検定手数料というものを従来とも歳入予算に計上してこれを徴収しておるわけでございます。このポリオ生ワクチンにつきましては、昨年の九月十六日、厚生省告示四二八号をもちまして、生ワク手数料の基準をきめまして、総計三千百八十九万何がしかの検定料を歳入として取るということをきめたわけでございますが、柳岡先生の、こういう重要な仕事をやるワクチン・メーカーから検定料を取るのはおかしいじゃないとかいう御意見、私は、それはそれとして、御意見は十分正しいとは存じてはおりますが、しかし、なぜそれじゃ生ワクの会社についてだけ検定料を免除するかということになりますと、これはやはり民間ベースでやっております現在の医薬品製造業者全般に共通する問題になる点もございますし、その点は、やはり国で生産すべきだという議論であるならばまた別といたしまして、やはり民間の会社として、ワクチン・メーカーとして発足した限りにおいては、生ワクの手数料というものは、他のワクチンと同様に取らなければならないというふうな前提のもとに私どもはこういう歳入予算を計上いたしておるのでございます。その点、事情をお含みの上、御了承願いたいと思います。
  85. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 政府は、私は特に厚生省の仕事としては、先ほどから各先生が、参考人の方が言われておるように、人命を尊重して、国民の生命を守っていくというのが厚生省の一つの大きな任務であろう、仕事であろうと思うのですね。したがって、そのためには、政府はあらゆる予算の制約の中で大きな予算を出して、そしてあらゆる面での国民の生活を守っていくということを、まあ政府政府なりにやってきていると思うのです。したがって、今度のこの生ワクの問題についても、私はもっと政府が中心になって、そしてやっていかなくちゃならぬと、こういうふうに思いますし、またそのために、この六社というものを統合して、そうして一社でもってやったほうが合理的な製造もできるし、また設備も、人間からいってもむだがない、そういう意味で指導してきたと思うのです。したがって、もう一歩進めて、そういう積極的な意欲といいますか、政府国民に対する姿勢というものが私は必要じゃないかと思うのですが、政府補助金を出すとかなんとかよく言われますけれども、しかし、今度の予防接種費の生ワクに対する補助金を見ますと、一体、政府はこれで、補助金を出して国民の生命を守っていくんだということが言えるかどうかということ、私は非常に残念に思うのです。と申しますのは、計算をしてみますと、一人当たりの今回の補助金は十九円三十六銭ですね、一回分。そして買い上げ価格は、買い上げといいますか、これは地方公共団体が買い上げるわけですけれども、これは、先ほど四十七円と言っておりますけれども、しかし、実際には一人一回分五十八円九銭くらいになってくるわけです。そうすると、しかも、検定料は一人当たり一回分十一円取るということになりますと、十九円三十六銭から十一円引きますと、わずかに七円か八円しか政府補助金を出していないと、こういうことになるじゃないですか。予算上はなるほど三分の一補助したとかなんとか言っておりますけれども、実際はもっともっと、五分の一か六分の一かの額しか補助をしていない。こういうふうになるのですね、こういう点は、一体厚生大臣どういうふうに考えますか。
  86. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これは、まあお話のような議論もあろうと思いますが、一般のその他のマイシン、いずれの薬にしましても、国民の健康を守り、生命を守るための医薬品でありまして、これらもみんな民間においておつくりになって、それについては検定料を取っておると、こういうことで、検定料を取るということは、ほかの一般医薬品と同じに私は当然扱うべきものだと思う。  ただ、特別理由があれば、あるいはこれを免除するとか、あるいは別の方法で補助するとか、いろいろの方法がありますが、医薬品というものが、いずれも人の生命に関するものであって、しかし、これが民間ベースでつくられる。それを政府が権威づけるといいますか、検定料を取るということは、同じに扱ってしかるべきだこういうふうに思います。それで他の必要から、これは、たとえば、補助するとか、あるいは場合によって特別な免除をすると、こういうふうな問題があると思うのでありますが、扱い方としては、私はいまのような扱い方はやむを得ないと、こういうふうに考えます。
  87. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 特別理由があれば免除措置をとってもいいと、こう言われますが、私は、十分この生ワクの問題ついては特別理由があると思うのです。というのは、人口の出生動向、先ほど申し上げたのですが、これは年々減っておるわけです。現在は百五十八万台です。百六十万台前後ですね、これが昭和二十二、三年ごろは、二百六十万台ぐらいだったわけです。これが年々減って、現在は百五十八万台に下がってきておる。しかも、今後の動向を見ても、これは減るともふえないと、こういうふうな政府の所得倍増計画の中における人口の動向調査によっても明らかにされているわけですね。したがって、生産をしても、はたしてそれだけ売れるという見込みは全然ないわけです。しかも、その生産されたワクチンは、一年間で効能がなくなっていくと言われています。一年たてばまた新しいものをつくらなければならぬ、こう言われているわけです、これが全部生産品を政府が買い上げて、そして政府が保存をして、そして各地方公共団体に配給をして、国民投与をするというならば、私は納得いくのですが、そうでなくて、必要なときワクチンを買っているということになれば、はたして生産された量が全部消化されるということにはならないわけです。したがって、私は、少なくともこういうものについては、政府が全部買い上げをするか、あるいはその価格の問題について、できるだけ政府が補助をして、検定料なんというものは取らない、検定料というものは、予防研究所の予算からいくと、予算の中で二分の一、三分の一くらい占めているのです。この三千二百万という額は、そういう研究所なり、あるいは国民の犠牲でもって、そういう予防研究所経営されるというような、その金で。こういうようなやり方は、私は政府のやるべきことではない、全部生産品を買い上げる、そういう意図はございませんか。
  88. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これは生ワクだけでなくて、コレラのワクチンなんかも同じような問題があります。天然痘につきましても同様の問題がありまして、御意見は御意見として、今後の問題として考えたいと、この際は、一応検定料としてはひとつ御承認を願う、いまの問題は、私は繰り返して申し上げますが、生ワクチンに限らず、コレラの問題につきましても同様の問題がありますので、そういうものと関連して考えたいと、かように考えます。
  89. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 この価格の設定については、研究所に全部自由裁量になっているわけですか、それとも、政府はこれに対して何らかの関与はできるのですか、これは少なくとも独占企業であろうと思うのです。したがって、価格の設定にあたっては、もし研究所の自由裁量ということになりますれば、私はやはり、これは何らかの措置をしていかなければならぬと思うし、そういう点、どういうふうになっているか。
  90. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 御承知のように、一社だけでやっているものですから、独占的な価格になるわけでございますけれども、中身につきましては、この生ワク会社ができるまでの間に、いろいろとデータその他、国費で相当な経費を費やしておりますし、それから、会社ができましても、その中身につきましては、十分国のほうで指導をいたしておりますので、価格の決定につきましては、その中身を検討し、大蔵当局とも相談をいたした上で、大体四十七円というふうな金額が適当だということで、会社の一方的な決定にまかせずに、国が関与して、四十七円という金額をきめておるわけでございます。
  91. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 そうしますと、今後もそういう方針をとっていかれるということでございますか。
  92. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 大体、おっしゃるとおりの方針で、今後ともやっていくつもりでおります。
  93. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 その点やはり、はっきりしておかないと、これは地方公共団体並びに受益者と申しますか、国民の負担は、ますます大きくなっていくのではないかという懸念をするわけです。先ほどのいろんな説明を聞かれても、投与数が減ってくれば、価格は当然上げなければならぬ、こういうことまで言っているわけですから、したがって、当面はこの価格の設定については、私は、基本的にはやはり国が全部持つ、全部無料にしていく、こういう目標を立てて、そして地方公共団体なり、あるいは国民の負担が増加しないように、ひとつ考えていただきたい、こういうふうに思います。  それから、免疫性の問題で、大体成長するに従って免疫が出て来て、したがって、問題は、あまり危険はないと、こう言われておりますけれども、しかし、十八カ月で切っておるということは、私どもは、できれば、これを義務教育の段階まで引き上げるべきで はないか、こういうことも考えております。いわゆる年齢の引き上げについて、今後厚生省としてどういうふうにお考えになっておるか、お伺いします。
  94. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 現在まで私どもこの接種対象の幅を決定いたしますには、国民の全般的な免疫状況を勘案しながら対象を決定しているわけでございまして、将来も、この国民の免疫状況を追及してまいりまして、そのような必要が起こってくれば、当然そういう措置をしたいと思います。
  95. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 最後に、要望と御見解をお聞きしておきたいのですが、先ほどからいろいろ論議されてまいりましたように、予防接種法の中で投与に関するいろんな基準があるわけですね、しかも、その基準が、正確に政府によって、あるいはそれぞれの管理する機関によって守られておれば、私は問題がないのではないかと思うのです。そういう基準なり、あるいは今後のいわゆる投与後の健康管理、こういう問題について、やはり十分政府当局としても指導して、そうして万遺憾ないような態勢をしいていくことが国民に不安を与えない大きな要素であるというふうに思いますので、そういう点はひとつ十分留意をしていただきたい、こういうふうに思います。そういう点について、最後に厚生大臣のひとつ誠意ある御回答を願って、私の質問を終わりたいと思います。
  96. 小林武治

    国務大臣小林武治君) お話の趣旨は十分了承いたしました。
  97. 鈴木強

    委員長鈴木強君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  98. 鈴木強

    委員長鈴木強君) 御異議ないものと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御意見もないようでございますが、討論はないものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  99. 鈴木強

    委員長鈴木強君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。予防接種法の一部を改正する法律案を問題に供します。  本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  100. 鈴木強

    委員長鈴木強君) 総員挙手と認めます。よって本案は、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
  101. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、この際、本案に対する附帯決議案を提案いたしたいと思います。  まず、案文を朗読をいたします。     附帯決議案  一、経口生ポリオワクチン投与に当っては基準を設け、投与しても健康上支障のないよう医師をして万全を期せしめること。  一、経口生ポリオワクチン投与後の事態を把握し、調査研究するとともに、特に、副作用等の起きた場合は、万全の措置を講ずること。  一、経口生ポリオワクチン予防接種費用については、国民の負担がかからないよう努力すること。   右決議する。  以上でございます。
  102. 鈴木強

    委員長鈴木強君) ただいま提案されました藤田委員提出の附帯決議案を議題といたします。  藤田委員提出の附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  103. 鈴木強

    委員長鈴木強君) 総員挙手と認めます。よって藤田委員提出の附帯決議案は、全会一致をもって、本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、厚生大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。
  104. 小林武治

    国務大臣小林武治君) ただいまの御決議の趣旨を尊重して、善処いたすつもりでございます。
  105. 鈴木強

    委員長鈴木強君) なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成については、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  106. 鈴木強

    委員長鈴木強君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時五十五分散会    ————・————