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1964-02-13 第46回国会 参議院 社会労働委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月十三日(木曜日)    午前十一時十八分開会   —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     鈴木  強君    理事            高野 一夫君            徳永 正利君            藤田藤太郎君            柳岡 秋夫君    委員            鹿島 俊雄君            亀井  光君            紅露 みつ君            丸茂 重貞君            山本  杉君            横山 フク君            阿具根 登君            杉山善太郎君            藤原 道子君            小平 芳平君            林   塩君            村尾 重雄君   国務大臣    労 働 大 臣 大橋 武夫君   政府委員    労働大臣官房長 和田 勝美君    労働大臣官房労    働統計調査部長 大宮 五郎君    労働省労政局長 三治 重信君    労働省労働基準    局長      村上 茂利君    労働省労働基準    局労災補償部長 石黒 拓爾君    労働省労働基準    局賃金部長   辻  英雄君    労働省職業安定    局長      有馬 元治君    労働省職業安定    局失業対策部長 住  栄作君    労働省職業訓練    局長      松永 正男君   事務局側    常任委員会専門    員       増本 甲吉君   説明員    農林省農政局農    政課長     八塚 陽介君    日本電信電話公    社総裁     大橋 八郎君    日本電信電話公    社職員局長   中山 公平君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○労働問題に関する調査  (労働行政基本方針に関する件)  (最近の雇用失業問題に関する件)  (日本電信電話公社及び公共企業体  並びに政府関係機関における労働問  題に関する件)  (中高年齢者雇用対策に関する  件)   —————————————
  2. 鈴木強

    委員長鈴木強君) ただいまより開会いたします。  審議に入るに先立ち、御報告いたします。本委員会における定例日につきましては、従来どおり火曜日及び木曜日とし、火曜日は厚生関係、木曜日は労働関係の審査及び調査を行なうことと十一日の委員長及び理事打合会において申し合わせいたしました。   —————————————
  3. 鈴木強

    委員長鈴木強君) 次に、労働問題に関する調査中、労働行政基本方針に関する件を議題といたします。質疑のある方は、順次御発言願います。
  4. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、労働行政一般について大臣に御質問を申し上げたいと思うわけです。  労働行政一般といいましても、非常に多岐にまたがっておりますので、私は、本日は雇用就労、それから労働者生活問題を中心に、どう動いているか、労働省が把握しておられる問題をもう少し詳しく御報告願って、これを中心にきょうは質疑を行ないたいと思うのでございます。ですから、今日の雇用問題がどう動いておるかということ、それから労働者生活がどうなっているか、これに関連をいたしまして、農業労働者就労が非常に最近ウエートが大きくなってきているわけですが、この農業労働力移動、それから受け入れ態勢がどういうぐあいに動こうとしているか、スーパー・マーケットの現出によって、地域によっては中小商店失業者がふえ、この方々生活の道を求めて被雇用者に転換しつつある、こういうことを考えるわけであります。そういう面から労働省がどう把握されておられるか、そういう方々生活がどういう条件の中に移りつつあるか。ことしの予算を見ますと、国民所得平均は一人二十万円をこすわけであります。昨年の——昨年というのはことしでございますが、三十八年度を見ますと、予想では一人十七万三千円、実績見通しでは十八万七千円、三十九年の予算では二十万三千円です。こういうぐあいに国民所得の総平均移動をしているわけでありますが、たとえば五人家族にいたしますと百万円以上になるわけであります。そういう条件の中のいままでの所得階層状態はどうか、こういうものを含んで、その条件がやはり雇用関係と非常に関係をするのでありますから、そういう状態労働者の把握されておることをまず第一にお聞かせを願たいと思います。
  5. 大宮五郎

    政府委員大宮五郎君) 先生承知のとおり、最近における雇用増加は、三十四年以降、かなり大幅な増勢が続いておる、わけです。しかしながら、三十七年におきましては景気調整の影響もありましたので、その後半から三十八年の初頭にかけましては、若干増勢の鈍化がございましたが、昨年の四月以降、生産が次第に回復してまいるとともに、雇用のほうも漸次増加して、回復してきております。大体数字で申し上げますと、三十七年の上半期ごろは、季節変動を修正いたしまして、年率六、七%の増勢で進んできましたのが、下半期に入りますと年率四%程度の増勢になり、三十八年の初めはさらに若干落ちましたが、三十八年の四月以降は再び六%台の増勢で進んできておるわけです。そのような状況を受けまして、企業整備状況ども、三十七年では若干ふえましたが、三十八年に入ってからは漸次減ってきております。また、労働市場状況といたしましては、三十六年の状況が最も求人難の激しい状況だったのでございますが、三十七年では若干求人が伸び悩みまして、情勢が緩和されたかに見えたのでありますが、三十八年の春以降は、再び求人がふえてまいりまして、求職者増加を上回るような状況が続いております。特に新規学卒につきましては、三十八年の三年卒の分につきましては、中学卒が戦後最大の数を送り出すときにあたりましたのに対しまして、求人のほうは、大手筋新規採用手控えが若干ございましたので、やや中学卒については緩和され、従来よりも若干中小企業のほうに回るようになりました。また、高校卒についても大体同じような状況が見られたのでございますが、ことしの三月卒業は、まだ数字的にははっきりしたものは出ておりませんが、いろいろな推定をいたしますと、再びかなり求人超過状況が強まってきておるという情勢が進んでおります。ただ、中高年離職者の再就職問題につきましては、従来から、若年労働者に比べますと求職困難な問題が続いておりまして、これは漸次改善はしてきておりますが、若年層に比べますと、まだ求職者倍率のほうが高いという状況が続いております。大体最近の状況を申し上げますとそういうふうなことになっております。
  6. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ちょっとあと質問するため、資料の件について先にお尋ねをしておきたいのです。労働経済指標に出てくる三十八年度九月の雇用者と、それから企画庁の月報に出てくる雇用者数とが非常に大きな違いがあるわけですが、これはどういうことになるのでしょうか。数字を申し上げますと、労働経済指標に出てくる雇用者数は二千三百五十六万、臨時が百二十三万、これは日雇いも含むのでありましょうか。それから、こっちで見ますと二千六百十四万と、こうなっているわけですが、これはどういう計算になりますか。
  7. 大宮五郎

    政府委員大宮五郎君) 経済企画庁のほうの数字をちょっと手元に持っておりませんのでよくわからないのでございますが、お手元労働経済指標に載っておりますのは、総理府統計局労働力調査の結果に基づくものでございまして、そこの雇用者総数は、農林業雇用者九月分について申しますと四十万、そのほかに、非農林業雇用者としまして、ただいま先生が御指摘になりました常雇いの者と臨時の者と日雇いの者の、この合計が総理府統計局による雇用者の九月分における総数になるわけでございます。
  8. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 わかりました。そこで、いま求人求職関係労働市場関係お話がありましたけれども、私は、いまの雇用情勢を見ると、中学とか高校学卒についてはフレッシュな労働力を安い賃金で雇えるというところに、大企業をはじめ、中小企業をあげてそこへ集中している。ですから、中高年が置きざりを食っているというのが現状でございます。私は心配するのでありますけれども、今度相当な予算をとって中高年労働対策をおやりになっていることはけっこうでございますけれども、この訓練をして、それじゃあ就労ということになるのかどうかということは、私は大きな疑問を持っているところでございます。ですから、順次お尋ねしていきますけれども、ことしの三月を見通して、まあ今日現在でもよろしゅうございますけれども中学卒高校卒大学卒求人求職との関係、それから中高年の、まあ二十五とか三十とか、基礎の置き方によって違うと思いますけれども、この求人求職との関係、それから地域別の、またはできれば府県別殺到率の問題を、その三つに分けて、いまの階層に分けて、そういう資料ができておりますか。
  9. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) 資料としてまとめてはおりませんが、いまの関係資料を早急につくって出すこともできます。ただいま申し上げてもよろしゅうございますか。
  10. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 どうぞ。
  11. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) まず、中学卒求人求職関係でございますが、大体の傾向は先ほど統計部長から御説明があったとおりでございます。これを少し詳しく申しますと、三十六年、七年、八年、九年と、この四年間について申し上げますと、中学求人率は、三十六年が二・七倍、七年が二・九倍、八年はちょっと落ちまして二・六倍、ことしの九年は、これは見込みでございますが、三・九倍、それから高校も同じく申し上げますと、三十六年が二・〇倍、七年が二・七倍、八年が二・七倍、それから九年は見込みでございますが、三・四倍でございます。大学卒については、私どものほうではこういった調査をいたしておりませんので、資料が現在のところございません。  それから、地域別年齢別殺到率といいますか、求職率の問題ですが、これは最初に年齢別で申し上げますと、これは一年資料が古いのですが、三十五年、六年、七年という三カ年の数字でございますが、全体の殺到率求職率で申しますと、三十五年が一・五倍、三十六年が一・三倍、七年が一・五倍、で、これを高年齢者について見ますと、四十代、四十才から四十九才の年齢層で見ますと、平均で三十五年が一・五倍であるものが、この年齢層では三丁七倍、三十六年は二・六倍、七年は二・八倍、さらにもっと年齢を上げまして五十才以上でとらえて見ますと、三十五年が一五・三倍、六年が八・四倍、七年が七・九倍と、非常に倍率が上がってまいるわけでございます。これをさらに地域別に見てみますと、三十七年のデータでございますが、全国平均で見ますと、殺到率は一・〇倍というぐあいで、一対一になっておるわけでございます。しかしながら、地域別に見てみますと、北海道が〇・八倍、東北が二・〇倍、関東が〇・八倍、中部が〇・五倍、まあここが一番殺到率が低いわけでございます。それから近畿が〇・九倍、それから中国が一・四倍、四国が一・六倍、九州が三・八倍ということで、地域的には東北九州が非常に殺到率の点では倍率が高いわけでございます。
  12. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 七年というと、もうだいぶ——ことしは三十九年ですから、なかなかマッチしない面が多いと思うのです。そこで、私、経済動きについて少し考えてみたいと思うのですけれども経済動きの中で雇用関係がどうなるというような検討労働省でされておりますか。
  13. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) これは長期経済の中では、三十五年の所得倍増計画におきまして、長期的な労働力の需給の見通しを一応立てております。それから、それが今日長期経済計画見通しということで再検討はされておりますので、近くことしの十月ごろまでには、その長期的な四十三年ごろまでの雇用見通しがほぼでき上がると思います。年次別の問題は、これはその年その年の経済運営の基調と見通しに関連いたしまして、年次別に一応の見通し立てて隔年やってまいってきておるわけでございます。
  14. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そういう経済基礎をどういうところに置かれているか知りませんが、たとえば平面的な、事務的なものの考え方計画を四十三年まで見通しをつけるという、まあ日本経済の実態というものはそういうことじゃないと私は思うのだけれども、しかし、その平面的な計画立てるというなら、その中で労働時間の短縮であるとか、そういういろいろの要素が入っていますか。
  15. 大宮五郎

    政府委員大宮五郎君) 経済見通し全体といたしましては、先ほど職安局長が申しましたように、経済企画庁中心になりまして、もちろん労働省もその中に加わりまして作業をいま開始しておるところでございまして、雇用の面につきましては、そういう全体としての経済との関係では、まあまず雇用全体の増加数を確定すると同時に、その中身として、労働省独自の立場から、産業別地域別等に、もっと詳細な、具体的な見通しつくってまいりたいと、いま作業を進めておるところであります。雇用の問題はもちろん、労働時間の問題、あるいは賃金等の問題と非常に深い関係がございますが、これらはまた別の面からも相当検討しなければならないところでございますので、一応雇用問題についての見通しのときには、雇用のほうだけをとりあえずやりまして、別途、賃金等についても検討を進め、最後には経済全体の中で雇用賃金の位置づけなどもできれば進めたいと思っておりますが、現在のところ技術的に、まだまだ解決しなければならない問題がたくさんございますので、とりあえずいま進めておりますのは、雇用の全体としての見通し並びに地域別産業別等見通しを進めておるところでございます。
  16. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 産業別とか経済見通しとかということで雇用計画が立ちますか。だから平面的に、事務的におやりになる姿というものしかお答えにくいのじゃないかと、私はそう思っているから、平面的、事務的におやりになるにはどういう要素が入っていますか。たとえば労働時間短縮雇用拡大完全雇用の道をスローガンとして掲げておられるのだから、そういう平面的な経済——いま計画されたものが平面的にいくものとして、何もなしにいくものとして、労働省としては平面的に、事務的に計画をお立てになると思いますが、そういうときにはどういう要素が入っているかということをお聞きしておるわけです。
  17. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) ただいま私どものところで検討いたしておりまする四十三年までの五カ年間にわたる地域別産業別雇用計画考え方からいたしますると、現在御指摘になりましたような労働時間あるいは賃金といった要素は、直接検討の材料にはなっておりませんが、国の立てております所得倍増計画を背景に、通産省考えておりまする適正配置計画、工業の適正配置計画、さらには各種の地域開発計画、最近一番大きな問題は新産都市の建設計画でございますが、こういった要素を織り込みまして、雇用の長期的な計画を現在検討中でございます。
  18. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、大臣お尋ねをしたい。いま労働省事務関係としての答えがあったわけです。ここ四、五年の経済の趨勢を見てみましても、私は、労働者雇用難ということは、自然現象の中で足らぬとき、必要なときだけは雇用が伸びた、雇用が減ったときは、景気変動の中で底に落ちてもやむを得ないというものの考え方が私は基礎になっているのじゃないかと思う。私は、労働大臣にもいままで申し上げてまいったところでございますけれども、何としても生産力——経済成長に応じて、国民生活購買力バランスをとっていく、こういう主権者国民の中における経済政策というものは、私は、単にこれが経済家通産省企画庁が頭の中に描いているばかりでなしに、労働行政社会保障行政国民全体の中でこういう経済計画というものが立てられなければならぬということを申し上げてまいりました。大臣もそういうつもりでしっかりやっているのだというお話がありました。私は大いに期待しておった。まあ大臣がおやりになっている前のことも関連いたしますけれども、昨年所得倍増計画に少し手直しがされたようでありますけれども、しかし、私は、国民総生産資本形成投資の面を見てみても、昭和三十五年では民間投資国民総生産の二二%、三十六年は二五%、三十七年は二〇%、三十八年も二〇%ぐらい、三十九年もそれくらいのウエートを持って進んでいくと私は思うのです。一方、外国を見てみますと、国民総生産民間設備投資拡大というのは、金融やその他の財政の措置を講じて、一〇%ぐらいのバランスをとって景気変動をなくしていく。だから、国民生活の上がるに応じて生産拡大がされていく。だから、日本経済状態を見てみれば、化学工場慢性六割操業であり、そして、その他の産業も八割、八割五分になってきたらものすごい勢いで投資が始まる。慢性操業短縮経済政策がとられて、そしてこの国際競争力に勝つのだとおっしゃる。そういう中で物価の値上がりというものを、端的に言えば操業短縮でほこりをかぶっている工場設備資金物価値上げ調達をしていく。労働者の低賃金や長時間労働も、この調達の犠性になっていると私は言いたいのであります。そういうことをやって、それで昨年の三十八年度の第三四半期から生産が少し向上してまいりました。しかし、向上してまいりましたけれども、このことは物価のそれでは値下がりになったか、賃金がそれではうんとその分だけ拡大したかというと、そうでないので、国民購買力は依然として高水準をとっている。それだけ拡大したものが在庫投資とか、少し出たものは、依然としてそういう国民生活を度外視して経済が動いている。ですから、だんだんと周期的に極端な景気変動を繰り返していくということにおちいっていくと私は思うのです。だから、こういうような問題が基本的に労働行政の中から大きく発言されて手直しをされていくという方向にいかぬ限りいま言った雇用計画なんて立たぬと私は思うのです。だから、そういうことでありますから私は平面的にということを何回も申し上げておるのでありますけれども、私はどうしてお立てになるかということを所管局長統計調査部長に聞きたいということになるわけであります。まあそれはいま無理でありますれば、労働大臣としては、こういう基本の問題を手直しをしていくというところに力をお入れになって、そうして、そのお入れになっている姿の中から雇用計画その他をお立てになるということにならなければ、私は、なかなか立たないのではないか。あとで私は触れたいと思いますけれども、フレッシュな中卒とか高校卒業だけを集中して個々に取り合いが行なわれている。私は大阪へ参りました。大阪は昨年度中高卒求人が十九万人ですね、その労働力が求められずに、中高卒大阪に供給されたのは五万足らずであります。それでは中高年就労関係はどうかというと、求職者に対して二五%だ、四分の一でございます。こういう状態であるわけです。片一方は十九万に対して四万何千しか人がおらぬで満たないという。それで、片一方では、中高年ではたった二割五分しか求職者就労が与えられていない。こんな状態なんであります、具体的には。全国平均は、いま三十七年の例をおっしゃいますから、なかなかこれは古くて、もう値にならないわけでありますけれども基本的に雇用問題というものはそういうことなんだと私は思う。だから、労働省が今度中高年就労対策として力を入れていただきますことは非常にけっこうなことでありますけれども、せっかく力を入れ訓練をされた、企業がそれを受け入れるかどうかというのは大疑問があるわけです。ですから、フレッシュの労働力職安において企業就労させるというならば、私は、中高年方々もそれ応じてミックスして、ウエートをきめて企業で働いてもらえるというかっこうにやはりしなければいかぬのじゃないか、私はそう思うのです。もっと平易な労働には若い人を使わなくても、身体障害者とか老人を使える場というものは幾らでもある。そういう政治はされていない。まあ一つの例を申し上げますと、名神国道ができました。あそこでチケットを発行されている。みんな若い高卒ぐらいの人ばかりであります。問題が起きればどうか知りませんけれども、平常の問題ならば身体障害者でけっこう間に合うと私は思うのです。だから、そういう問題がどういうぐあいに配慮されて、そうして労働省としては経済の問題、経済進め方について、完全雇用の問題の進め方について、どういうぐあいに労働大臣努力していただいて今日までまいったか、将来どうしていこうとおっしゃるのか、御見解をお聞きしたい。
  19. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 労働行政につきまして、藤田委員をはじめ、当委員会の皆さんからいろいろな面から御指導をいただき、また、御協力を賜わっておりますことは、私ども常に感謝を申し上げておる次第でござ一います。特に、ただいま藤田委員の仰せられました点は、現在の労働省行政におきまする最も弱点とする点をつかれたものでございまして、私もそういう意味で傾聴をいたした次第なのでございます。なるほど産業成長に伴いまする将来の見通しというもの、これについては、社会保障、あるいは労働の問題、これらも当然織り込んでなければならぬものでございまして、そういう意味で、政府といたしましては、この計画につきましては、そういった面をできるだけ配慮しつつ、いままでも進めてまいっておったのでございまするが、振り返ってみますというと、具体的な労働時間の問題、労働賃金の問題、あるいは労働力の内容についての中高年齢、あるいは若年労働技能労働者、こういった構造的な変化というような面につきましては、詳しい具体的な計画立てる段階にまでは残念ながらいっていなかった点を認めざるを得ないと思うのでございます。今後の労働政策といたしましては、かような面に力を入れなければならぬということは、私どもかねてから考え、また、当委員会におきましてもその考えを申し上げておった次第でございますが、御承知のとおり、労働省も、最近におきましては、御案内のILOの問題というようなひっかかりの問題にかなり手をとられておりまして、こういった建設的な、将来に関する計画に力を入れるということが相当妨げられておりましたために、今日まで御期待に沿うような努力成果をあげずにおりますことは、まことに遺憾に存じておる次第でございます。しかし、何と申しましても、労働行政の将来のあり方は、おのずから明瞭でございまするので、私どもはこの線に向かって、乏しい身にむち打ってあらゆる努力を傾注しなければならない、かように存ずる次第でございます。かような意味におきまして、実は先般、内閣にございまする雇用審議会に対しましても、二月四日に開かれたのでございますが、その際に、産業及び労働の面における構造的変化に伴う雇用に関する政策というものを諮問いたしまして、私どももこの審議会審議に積極的に協力し、この審議会によって示される答申というものを参考として、大いに積極的に前進の姿勢を立て直してまいりたい、かように存じておる次第でございます。今日までの具体的な成果を申し上げることができないことは、まことに遺憾であり、申しわけない次第でございまするが、どうぞ今後について御期待をお願いいたしたい、かように念願する次第でございます。
  20. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで、私は、労働大臣が今度雇用審議会にそういう総合的な問題をお出しになって諮問されるとおっしゃるのでありますから、それはそれで了としまして、問題は、私は、よくお考えをいただきたいと思うのです。で、いまの外国経済計画というようなものは、所得を上げる計画、たとえば所得倍増計画というようなかっこうで表現されるわけですが、ここは予算委員会じゃありませんから、労働大臣にそういうことは申し上げませんけれども、諮問されるときに、外国はどういう経済発展計画を持っているか、やはりどの国も持っているのは完全雇用計画なんです。完全雇用中心にして国民生活を引き上げるというところに視点を置かれているのが、外国と言ったら何ですが、いまのヨーロッパの先進諸国の姿だと私は思うのです。そういうところに視点を置くということは、いかにして国民生活労働者、農民の、要するに勤労国民がいかに国の主体者であるかというところで経済計画立てられるということを、ひとつ今度の雇用審議会にその諮問をされるときには、そういう要素を大きなウエートとして私は諮問していただきたい。だから、その上に立ってわれわれは国政を進めるところでありますから、むろん相まって一歩、二歩、十歩というぐあいに前進するために、ともに議論してよい方向を見つける、ただ労働省を攻撃するとかせぬとかいう議論ではないと思う。そうしなければ、ことしはOECDに日本が参加するというのでありますけれども、そういう道筋というものは出てこないと思うのであります。だから、そういう点を十分にひとつ御配慮を労働大臣にしていただきたいということを重ねてお願いをしておきたいのです。ですから、いま労働大臣がおっしゃったとおり、労働省職安局とか、その行政をおやりになるところで、そういうやはり基本的な問題も考えながら雇用計画立てていただかなければ、経済が、社会がこうなったから手直し手直しという答えだけしか出てこないので、私の責任ではないというかっこうに、事務局にその責任を求めるわけではございませんけれども、私はやはりそういうところを柱にして労働行政を進めるなり、計画していただきたいということをお願いしたいのであります。それは紙の上で十年計画、五年計画立てて、こういうぐあいに雇用がなりますと言えばそのとおりでございましょう。しかし、経済自体はそう動いてないわけです。そういうかっこうには動いてない、いま御報告がありましたように、景気の鈍化がありましてぐあいが悪うございましたけれども、ちょっとよくなって求人のほうが伸びてまいりましたというかっこうの報告しかできないということになるわけでございますから、根をぜひそこに置いていただきたい。  もう一つは、中高年労働者をほんとうに企業家が、フレッシュの労働学卒労働者だけではなしに、賃金の問題も関係してまいりましょうけれども、これもやはり就業さすというかまえを使用者につくらせるだけの行政指導があってしかるべきだと思うのです。そうでなければ、中高年の人は、子供をかかえた人だけが置いてきぼりになってしまう、私はそういうぐあいになるわけだと思うのです。だから、そういう点の指導も積極的に労働大臣はじめ、おやりを願いたい、これをお願いしたいのであります。  それから、私は、もう一つ大きな雇用の今後考えウエートとして農業問題があると思うのです。三十七年度の農業の実態を見てみますと、総数で五百八十七万五千の農家戸数がございます、三十七年の農林省調査で。三十年は六百四万三千の戸数が、五百八十七万五千になっておるわけであります。ウエートのほうでいきますと、専業、第一種兼業、第二種兼業というぐあいに分かれておりますけれども、専業のほうは、三十年が三四・九が二五・七に専業は減っております。それから、第一種兼業が三七・六が三三・四に、これも少し第一種兼業のほうが減っております。しかし、第二種兼業、これは給与生活者が主体の農業でありますが、二七・五から四〇・九になっているわけでございます。この七年間に第一種兼業が全体の四割をこしている。三十八年、三十九年になりましたら、もっと私はウエートは高くなってくると、こう思うのです。この農業労働者をどう引き受けるか。もう一つは、私は、先ほど申し上げましたように、中小企業の商業部門の、要するに雇用者への転換があると思うのです。しかし、これもなかなかつかみにくいのであります。しかし、もう農業のやつは、労働省でもようつかめると思うのです。全体の平均反別が一町歩であって、東北、北海道、関東をのければ、あとは五反平均の農家でありますから、これは生活ができない状態であることはもう事実なんです。だから、その所得のふえ方を一つ見てみても、昭和三十年から、三十年を一〇〇としますと、国民所得は二三三・九になっている。ところが、農業所得は一二二にしかなっていない。この所得状態を見てみても、農業労働者が、もう農家にいては食えないということで、当然労働省の管轄と申しましょうか、雇用の場、生活の場を求めて、他に職業とてないわけでありますから、どこかで働いて生活をするというところに移動していくのは当然だと私は思う。だから、そういうきめのこまかい受け入れ態勢をつくりながら、私はこの問題の処理がされなければならぬ。経済の面、産業の面からいいますと、地域的に住宅が不足するわけでありますから、地域に適正に工場を配分して云々という問題も、労働省が、企画庁や内閣の経済計画立てるときに、大いに要求する題目ではないかと私は思うのであります。都会にその労働力を持ってきたって住む家がございません。たとえば仕事が見つかっても住む家がないということでありますから、そういう問題もやっぱり配慮のウエートの大きな筋合いになってきょうかと思う。だから、きょうは農林省の方もきていただいておりますから、最近の三十七年以後の、農業センサス以後の事項について御報告をここでひとつ願いたいと思う。
  21. 八塚陽介

    説明員(八塚陽介君) ただいま三十七年以降というお話でございますが、私どものほうの統計でも、まだ三十八年度の統計はもちろん集計いたしておりません。三十七年度の分は間もなくでき上がるという段階でございますので、御了承願いたいと思います。
  22. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 農林省としては、三十七年までの農業センサスの計画というものを……
  23. 八塚陽介

    説明員(八塚陽介君) 政策でございますか。
  24. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 農林省はセンサスの調査を出しておられて、それはあなたのところでつくったのじゃないんですか。
  25. 鈴木強

    委員長鈴木強君) 議事の進行は、委員長の許可を得てやってください。
  26. 八塚陽介

    説明員(八塚陽介君) センサスと申しましょうか、私どものほうで、三十七年度につきましては、まだ三十七年度としてまとめた公表はいたしてございませんが、速報といたしまして一応ございますので、それを申し上げてみたいと思います。ただいまの、専兼業別の進行でございますが、お話にありましたとおり、兼業化は非常に激しくなっております。三十七年の十二月現在について申し上げますと、総数が五百八十七万五千戸でございます。そのうち、専業が百五十一万ということで、構成比にいたしますと二五・七%というふうな状況になっております。したがいまして、もちろん兼業はその反対の七四・三%ということになるわけでございます。特に、やはり藤田先生お話にありましたように、第二種兼業、要するに農業に主として依存しない第二種兼業がふえております。実数で申しますと、兼業全部で四百三十六万四千でございますが、その中で第二種兼業が二百四十万四千ということで、構成比で申しますと、兼業は七四%のうち、約四〇%ということで、やはり兼業化が進んでいるわけでございます。  なお、これを地域別に申し上げますと、やはり何と言いましても関東、東海、近畿というような地帯が多いのでございまして、北陸あるいは東北は、むしろ出かせぎというような対応の仕方をいたしているわけでございます。簡単でございますが……。
  27. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 いや、私の聞いているのは、それは私は、資料は、ただいま申し上げたとおりなんです。問題は三十七年度までだけれでも、そこから先どういう状況にこの状態が動くだろうかということを聞いているのです。
  28. 八塚陽介

    説明員(八塚陽介君) 今後の動きにつきましては、先ほども統計調査部長のほうからお話がありましたように、あるいは安定局長からお話がありましたように、中期見通しというのを経済企画庁のほうでやるということになっておりまして、私どものほうも、多少その作業の下請ということで、すでに検討に入っております。また計数的にもちろんどうこうという段階には至っておりませんが、現在の私の考え、やや私見にわたりますが、この傾向は今後もなお続くであろうというふうに考えております。
  29. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ですから、こういう状態で、もうその所得の問題を見てみても、私はもう動くだろうどころじゃないと思うのです。昭和三十年を一〇〇として、三十七年は二三三・九国民所得がふえている。農業所得は三十年を一〇〇として一二二・五、二割二分しかふえていないわけですよ。七年間に、片っ方は二三三・九総額国民所得はふえているわけですから、動くだろうどころじゃなしに、私は、その生活手段を見つけなければ食べていけない、生活できないというところに農家が追い込まれている。このことをここで議論しようとは思っていない。そういう既定の事実、耕作面積やその他の関係で、そういう既定の事実で、労働省としては、その受け入れ態勢というものをやはりこしらえていかなければならぬということが、歴然たる姿で出てきているのだ、こういうことを言っているのでありまして、その点もやはり要素を分けて、労働省でひとつ計画の中に、——ここにもう一つ中小企業の問題がありますが、そういうものを入れ労働省雇用計画立てていただきたいということを、前段の労働大臣にお願いしたのとあわせて、私は、特別な御配慮をいただかないと、また同じような議論をすることになると、こう思うわけであります。  そこで、私は、もう一つこれに関連して、低所得関係の問題を申し上げてみたいと思うのです。たとえば三十七年七月一日の就業構造基本調査ですか、これで見てみますと、自営業主がその当時、三十七年七月一日の総体調査で見ますと九百七十八万四千人、自営業主——農林業も含んでおりますが、その中で十二万以下の人が、一カ月にして一万円ですね、この方が二百八十七万六千人。十八万円以下、一カ月一万五千円以下の人が四百三十六万四千人。こうなりますと、七四%の人が自営業主の中で十八万円以下の所得にある。  それから、今度は雇用者のほうを見てみますと、そのときには、雇用者総数二千四百四万六千人のうち、十二万円以下が四百十一万九千人、それから十八万以下が八百八十七万人で、合わせてこれも五四%という数字になるわけであります。  そうしますと、三十七年七月一日から今日まで一年半ほどたっておるわけでありますけれども、この状態は、自営業主はほとんど家族持ちなんです。それから雇用者においても、私は一〇〇%家族持ちとは言いません。家族持ちの世帯の主体者のウエートがどれくらいか、私はここでよく言い切ることはできませんけれども、しかし、やはり世帯の主体者として生活関係のない人でも、大きなウエートとしてこの給与で生活をされているということになると、国民所得の標準家族の関係を見てみたらどうなっていくかということも、私は重要な問題ではなかろうか、こういうぐあいに思うわけでありまして、ここらの関係労働省としてはどういうぐあいに見ておられるか、これもこの際お聞きしておきたいと思います。
  30. 大宮五郎

    政府委員大宮五郎君) わが国で、まだ賃金ないしは所得の低い人たちがかなりおりますことは先生指摘のとおりでございます。そこで、そういう人たちの所得をできるだけすみやかに改善するということは、全体としてもちろん望ましいことでありますし、また、労働省が直接関係いたします雇用労働者につきましても、これは幸いにして労働力の需給関係の改善等がございましたおかげでもあるわけでございますが、最近では比較的賃金の低い層の改善が顕著に進んできておるわけでございます。たとえば規模別に見ますと、いわゆる中小零細企業労働者賃金は、大企業賃金に比べて、かなり低いわけでございますが、そのような規模別格差も、下のほうの規模の賃金の上昇がかなり大きいという形で規模別格差の縮小が進んでおります。また、年齢の若い人の賃金は、年齢の多い人よりも、外国に比べましても低いというのが日本の特徴であったのでございますが、これも最近は、年齢の若い人たちの賃金上昇率が大きいという形でもって全体の格差が縮小してきております。  それから、なお、先ほど先生が御引用になりました就業構造基本調査によりましても、たとえば雇用者の中で、仕事をおもにしておるような人たちだけをとりますと、たとえば年間十二万円未満の賃金の人、これは月額にしますと一万円未満ということになりますが、それらの人は全体の中で、三十一年の調査のときには四四・一%を占めておりましたが、三十七年の調査のときには一六・〇%というふうに減って、上のほうに移りつつある、こういう状態はきわめて好ましい方向の変化であろうと思います。なお、今後とも、賃金その他の面におきまして、こういう条件が改善されていくという方向で諸般の努力を続けつつあるところでございまして、今後とも、この方向はさらに伸展いたしたいというふうに期待しておるところでございます。
  31. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 どうも的確な処置をいまのところでは労働省としては期待をするということで、たとえば、こういう低所得者の皆さんの賃金引き上げというものはどういう処置をとっておられるかというと、たとえば最低賃金の問題がここに出てくるわけであります。私は、雇用問題として、きょうは賃金の問題に触れておくわけでありますけれども、最低賃金を見てみましても、昨年十二月きりの業者間協定から横すべりの最低賃金が一番多いわけでありますけれども、一日四百円をこえた最低賃金というのは二つですかしかないという状態なんです。総体としては少しずつ上がってきておることは事実でございます。事実でございますけれども、最低賃金の業者間協定を行政の上で指導されるというのでありますけれども、二十五日働いて一万円です。きっちり二十五日働いて一万円でございます。実際問題として、それが二百五十万を対象にすると、言って宣伝——宣伝というか、主張されておる最低賃金の中の一番上の一件か二件が四百円、あとはみな三百円かそこらあたりで停滞しておるという、これも十二万円以下のクラスに入るわけでありましょうけれども、しかし、自然を待つというかっこうじゃなしに、いまの生活がどれだけ要るか、どれだけの条件のもとに、労働力を通じて、その働く能力を持っておる人が社会に貢献するか、また、してもらうかというところに労働行政基本がある、こう思うわけであります。ですから、その雇用問題から私はこの問題に触れましても、そういう条件がもっともっと積極的に満たされない限りは、いけないのではないか。生活保護法は、東京で標準家族一万六千何ぼになりましたが、ここは家族の全体の収入であります生活費でありますが、この中には、私は、生活保護法のランクの中にどういうウエートでこれがかみ合っておるかということも摘出することはできません。これは労働省の統計調査部その他でおやりになっていただかなければ、われわれが作業することはできないわけでありますけれども、しかし、このかみ合っておる人も相当あるでしょう、この中には。だから、そういう意味で、私はもっと、一番初めに大臣にお願いしたように、生産力はウナギ登りに上がっていく、昭和四十五年の国民総生産も、ノーマル操業をしたら、目標の二十六兆ははるかにこえるような条件日本の国には満たされた。満たされたけれども国民購買力二十三兆の目標にはなかなか遠うございます。しかし、その国民所得の配分の問題へ入っていくと、半分以下の人が国民の大半であるということが、もう算術計算でもすぐ答えが出てくる。だから社会保障も具体的には進まない。たとえば就労の場がみんなあれば、生活保護法というものがほんとうに必要なのかどうか、私は疑問に思うぐらいでございます。だから、そういうぐあいにして基本的な問題が、どんどんと生産力に応じて国民生活があらゆるところで上げられていくという方向が経済政策の中にとられるということになってくると、こういう問題が相当調整されてくるんではないだろうか、そういうところに労働行政ウエートをもっと大きく持っていただかなければ、貿易の問題や何かでガットの三十五条援用とか、そういう問題がいまじぶん議論をせなけりゃならぬことになってくるんではないか、少しちょっと話がそういうところにそれましたけれども、それほど労働行政というものは大事ではないかというぐあいに考えているわけでございます。私もせっかく昨年は一カ月半あまり勉強さしていただく機会がありました。非常にいい勉強になったと思っておりますけれども、この議論をすると長くなりますから、私はこれについてはいたしませんけれども、しかし、傾向としては、私は、労働行政というものは、まず雇用問題を主点にして進めていただきたい。今日最低賃金が、額が高い低いは別といたしまして、各国の傾向を見てみますと、経済の上昇に応じてスライディング・システムで、最低賃金所得保障の年金、医療の内容、児童手当というようなものが、そういうかっこうでずっと計画的に上がっていくのが外国の趨勢だと私は見ている。そういうぐあいに思っております。しかし、いま私はその議論をここでしょうとは思いませんけれども、それが経済繁栄の道であり、全体の労働者の幸福の道であるというぐあいに私は考えておりますからこそ、ここで五カ年計画をいたしまして云々、または中高年の就業対策をおやりになる個々の面については、たとえば中高年就労対策なんかについては御努力していただいていることについては非常にけっこうなことだと思うわけでございますけれども、その根が、ほんとうの雇用計画というものが経済政策との関連において立っていないところに皆さん方の苦労もあるでありましょうけれども、そういうことが労働行政を推進する大きな欠陥になっているんではないか、こういうぐあいに考えるわけであります。ですから、新産業都市の問題が経済的には出てまいりますけれども、もっときめこまかい——労働力が停滞している、高齢をもって移動できない労働者が停滞している地域にやっぱり収入の道を立てて、農業の失業者といいますか、潜在失業者の対策として経済的な処置をするとか、何かそういうこまかいことをおやりになっていただかなければいかんのじゃないか。広域職業紹介とおっしゃいますけれども、大都市とか中都市ぐらいまではありますけれども、もう小さい町村に参りますと、そういう窓口も全然ないというのが、これもあなたまかせのような気がするわけであります。だから、町村においても労働力が過剰して生活ができぬで困るなら、そこにはやはっぱり窓口を開いてあげて、いわばこれは農業労働者だからというものの考え方ではなしに処置をするようなことは、農林省との関係経済企画庁との関係、商業においては通産省との関係、そういうものを緊密にしていただいて、企画庁で案が立つのでありましょうけれども、そういう点も配慮をしていただかないとよい結果が出てこないのじゃないか、こういう気がいたします。ですから、まあ時間がないそうでありますから、またいずれあらためてこの問題を議論することにいたしますけれども、そういう点はぜひとももっときめこまかく、そうしてほんとうの実態に合った雇用計画というものを立てていただきたい。  最後に、私、少し整理してみますと、経済政策の中から雇用の問題が出てくるという問題の雇用審議会の諮問に対する注文をいたしまして、それから、もう一つは、きょうのところの取りまとめでありますけれども、新規労働力企業が採用して使うというなら、中高年も一緒にして比率をきめてでも、そこで企業で働くという姿をとってもらいたい。第二であります。  それから、第三は、単に窓口に出てくるものばかりでなしに、どれだけ出てくるやら見通しのつかぬようなかっこうでなしに、その労働力の過剰している農業の問題やら、または商業の問題ですね、見通せる限りの問題をこちらで勘案していただいて雇用対策関係省ととっていただきたい。  その次は、低所得者との関係でありまして、その雇用問題には、収入がなければ、働け働けと言ったってできないわけでありますから、問題はやっぱりどうなと生活ができるような最低保障的な所得の保障をしながら、相合わせて雇用対策の問題を十分に処置をしていただきたいということを、きょうはそういうことをおもに申し上げて、特段の御配慮をいただきたい。  ちょど時間がないそうでございます−から、ぜひきょう私が議論いたしましたこのことの中で、まだまだ深く入りたいのでありますけれども、きょうはこれで時間がございませんのでやめますが、資料をぜひ出していただきたい。きょう問題になりましたような関係資料を事務当局で出していただきたいということをお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  32. 藤原道子

    ○藤原道子君 関連。一言だけ。  ただいまずっと伺っておりまして、労働省のお考えに対して、ちょっとあきたらない点がある。先ほどの御答弁の中に、低所得層に対して、昭和三十一年には四四・一%だったのが、三十七年には一六%に減ってきている。非常に期待の持てるような御答弁だった。ところが、三十一年度と三十七年度における経済的な情勢はどうなのか、三十一年度に四四%でも、その当時の生活水準を考え、三十七年度とは格段の違いがある。もっともっとみじめな暮らしにおちいっていることは言うまでもない。だから、いま経済成長しているといわれながら、栄養失調で、国民の四人に一人は栄養に欠けているというようなことが厚生省から発表されている。そういう事態において、もっと労働者を保護する立場にある労働省としては、そういう点もお考えになって、抜本的な低所得層対策を講じてほしい。  そこで、大臣に一言お伺いしたいのでございますが、最低賃金制の確立についてはどういうお考えを持ち、どういう見通しを持っておられるのか、それだけちょっとお伺いしたい。
  33. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 先ほど藤田委員から、労働行政の今後のあり方につきまして御意見を詳細承ったのでございますが、私も、今後の労働行政のあり方につきまして、全く藤田委員と同じような感想を持っておる次第でございます。しかし、何ぶんにも、御承知のように、労働行政というものは、とかく利害の対立しやすい労使の双方の間に立ちまして、国策としての労働行政を前進させていくというような立場でございまするので、私どもの仕事を進めるにあたりましては、申すまでもなく、労使双方の理解と協力を得ながら進めなければならぬという点があるのでございまして、そういう点から、従来、労働行政がややもすると時勢におくれがちな形になっておったのではないかと考えるものでございます。私も一昨年就任いたしまして以来、いろいろな面から労働行政の問題点を考えてまいりました。特に最低賃金の問題などにおきましては、最低賃金法の制定当時のいきさつから申しまして、業者間協定というものを中心にして考える、中心にして考えるではない、せっかく法律には職権による最低賃金の決定方式が規定されておるにもかかわらず、これは行政的には実際上使えないのではないか、もっぱら業者間協定を推進するのだというような行き方でまいっておったわけでございます。その結果、現実の取りきめられております最低賃金が、労働者の最低生活の保障をいたしかねるというようなものばかりになっておりましたので、これでは労働行政としてまことにその使命をはずかしめておるのではないかというので、いろいろ検討をいたしました結果、まず、あまりに低い最低賃金は時勢に合うように引き上げていこうということで、これについても相当なる抵抗はございましたが、方針として確立  させることができたわけでございます。しかし、より根本的な問題は、従来の業者間協定一辺倒のやり方ではおのずから限界がございまするので、必要なる場合には行政庁の職権による最低賃金決定方式にまで進まなければならぬ、かように考えまして、最低賃金審議会にもこの点を諮問いたして、いろいろ労使間のお話し合いの末、原則的にこの新しい方針に踏み切っていただくことができたわけでございます。ただ、これにつきましては、なお、職権方式を採用すべき業種、並びにその際職権によって定められるべき最低賃金の金額の目安等について、なお最低賃金審議会で引き続き検討を続けるということに相なっておるのでございまして、ただいまその審議の終わるのを待っておるわけでございまするが、労働省といたしましては、低賃金の解消ということは、ぜひともこれを急速に進めていく必要があると考えまして、この業種の決定並びに金額の目安が審議会において答申されましたならば、直ちにこれに基づいて、広範に最低賃金を各地万別に、また、業種別に決定いたしてまいりたい。幸いに、最低賃金審議会の答申によりまするというと、これによって三年間この方針で最低賃金を決定していこう、そうすれば各地万別、産業別にいろいろな最低賃金が現実にきまってくるであろう、で、その段階において各種の最低賃金を比較検討しながら、日本の現在の最低賃金法のたてまえでありまする業種別、地域別の最低賃金という行き方でいいのか、それとも全国一律の最低賃金というような新しい考え方を採用する必要があるのか、こういった最低賃金制度についての根本的なあり方について最低賃金審議会検討をしてみたい、こういう御意向もあるのでございまして、私も、この最低賃金審議会の答申を得られたということは、従来停滞いたしておりました最低賃金に関する労働行政といたしましては、一応の進歩であると、かように思っておるのでございまして、願わくは、この方向に向かってすみやかに進んでまいりたい、かように思っておる次第でございます。しかし、何と申しましても、この問題は労使双方の御協力を得るということが必要でございまするので、その方面の御協力を得るよう、労働省といたしましても、今後できるだけの努力をいたしますとともに、特にこの問題について御研究の進んでおられます当委員会委員の皆さまには、今後格別の御指導、御鞭撻をいただきたい、かように存じておる次第でございます。
  34. 鈴木強

    委員長鈴木強君) なお、藤田委員質疑の中にありました資料につきましては、御要求がございましたので、先ほど有馬職業安定局長からいろいろ御説明がありましたが、それを何かに取りまとめたような資料を提出していただきたいと思います。なお、詳細につきましては、藤田委員と連絡をとって、御相談の上、提出いただきたいと思います。  それでは一時三十分まで休憩いたします。    午後零時三十七分休憩    ————————    午後二時八分開会
  35. 鈴木強

    委員長鈴木強君) ただいまから再開いたします。  午前中に引き続き、質疑を行ないます。
  36. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 私は、まず、大臣に、基本的な労働行政に対する姿勢について御所見をお伺いしたいわけでございますが、先刻の藤田委員の質問の中で感じているんですが、いままでの労働行政経済政策に追随したというか、経済政策に振り回されているような労働行政になっているんじゃないか、こういう感じがするわけです。十年近くの間、政府所得倍増計画ということで経済政策を進めているわけでございますが、その中で、確かに日本経済成長率は世界で一番だ、こういうようなことを言われておりますけれども、一面では、やはり多数の国民が住む家もない、あるいは働くにも職場がない、こういう形で非常に苦しい生活をしておる、こういうふうにというよりも、それが事実であろうと思うのでございます。したがって、それもやはりこういういままでの労働行政なり、あるいは社会保障政策経済政策に追随をした中で行なわれてきたというところにやはり一つの大きな欠陥があるのではないか、こういうふうに思うのでございます。  そこで、私は、生産というものは労働なくして考えられないという立場からいっても、政府の中で、この労働者を保護すると申しますか、労働者の立場を理解する唯一の機関である労働省は、もっと今後のあり方としては、労働者保護に重点を置いた労働行政、もちろん経済政策に結びついた労働行政ということが前提でございますけれども、重点は、やはり労働者保護の労働行政というものが私は必要ではないか、こういうふうに思うのですが、こういう点についての大臣の所見をお伺いしたいわけです。
  37. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 労働行政というものは、これは本来労働者保護が最重点であることは当然でございます。ただ、労働者生活の向上ということは、いつもその国の経済力の成長ということを背景にしなければ安定性を考えられませんので、そういう意味におきまして、労働政策というものが経済政策というものと相携えて進むということは必要ではないかと思うのでございまして、これは決して労働政策経済政策に追随するとか、あるいは経済政策が第一で、労働政策が従になるというようなことであってはなりませんが、常に経済政策労働政策というものは、車の両輪のごとく、並行して進まなければならぬと思うのでございます。かような意味におきまして、私は、労働者保護を重点とし、これを進めるにあたっては、経済政策との調和を考えながら進んでいくというふうな行き方であるべきかと心得ておる次第でございます。
  38. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 そこで、これからの日本経済がいままでのいわば封鎖経済から開放経済に移行する、こういう一つの転機を迎えているわけでありますが、こういう中で、特に国際競争力の培養、あるいは日本経済の発展のために、日本の今後の労使関係のあり方と申しますか、いわば近代的な労使関係というものはどういうものでなければならないかということなんでございますが、これにについては、先般の大臣の所信表明の中でも、相互信頼に基づいた話し合いによる合理的な問題処理が必要である、こういうお話がございました。しかし、現実に私ども日本労働問題を見てみますと、大臣が希望せられるような話し合いによる合理的な解決というものをはばんでおる幾つかのものがあるのではないかと思うんです。法律的にも、あるいは経営者の感覚の面からも、あるいはまた、政府政策の面からも、この労使の自主的な話し合いを阻害をしておる点があろうと思うんですが、こういう点の大臣が表明された所信との関連を少し私はお伺いしたいと思うのであります。
  39. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 労使間の今後のあり方といたしましては、当然、繰り返して申し上げておりますとおり、労使相互の信頼と理解を基調として、問題についての十分な話し合いによって事柄を処理していくという行き方でなければならぬと思うのでございますが、さて、それでは現在の労使間においてこの原理が十分に生きて動いておるかという御質問でございましたが、その点になりますと、残念ながらいろいろ欠陥があらわれておる面も少なくない、こうお答えせざるを得ないわけでございます。
  40. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 そこで、特に問題をしぼりまして、具体的に公労協の賃金交渉の問題で、各公企体とも、非常に壁にぶち当たっておる。これが現状でございます。そこで、この公労協の賃金交渉における問題として、三十七年の四月の仲裁裁定の中で、あるいは公労委の兼子会長の談話の中でもこの点を指摘しておるわけです。これは大臣も御承知かと思いますけれども、非常に労使間の自主的な団体交渉がきわめて不十分である、このことは労使双方に十分な反省を求めると同時に、この三公社の制度にも欠陥があるのではないか、したがって、こういう点を根本的に改める必要がある、こういう談話を発表しておるわけでございますが、これについて政府としては何らその点に対して検討なり、あるいは改善というものを加えておらない、こういうふうに私は感ずるわけです。というのは、今回の賃上げの冬公社の状況を見ましても、依然として一昨年来からの方針が踏襲されておるように思います。というよりも、それ以上にきびしい政府のひもがついておる、こういうことを私たちに推察せざるを得ないわけでございますが、こういう点について大臣はどういうふうにお考えになっておりますか。
  41. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) いまの御質問につきましては、私も残念ながら同じような感じを持たざるを得ないのであります。元来、公労協の関係の、ことに公社の賃金交渉における自主性の確立ということは、公労委の判定をまつまでもなく、従来から日本の官公労の一つの問題点として考えられておったのでございますが、労働省といたしましても、この点につきましては、当然公労法の改正の問題なり、あるいは公社法の改正の問題なり、そういった団体交渉のスムーズな運び方という見地に基づいて、機構上改善をすべき点がありはしないか、こういうことで、いろいろおりに触れて研究はいたしておるのでございますが、しかし、これにつきましては、よほど根本的な研究を進めませんと、なかなか容易に結論を得がたいような実情なのでございます。しかるに、残念ながら、公労法に関係いたしましては、御承知のILO八十七号条約の問題がございまして、この問題でここ数年来わずらわされておりまするので、まず公労法の問題といたしましては、この点を早く何とか処理をいたしたい、そうして自由な立報を取り戻した上で、この公労協の団体交渉の問題に取り組みたいというような労働省といたしましては一応のスケジュールを組んでおるわけでございまして、これは役所の都合でかってにそういう考えをいたしておるのでございまして、そのスケジュールではなかなか問題解決の順番がこないのではないかという御批判は甘んじて受けなければならぬと存じますが、私どもといたしましては、ILO八十七号の問題を早く処理いたしまして、そうしてこういったこまかい点についてのいろいろな重要問題について、さらに労働省として前進していきたいと思っておるのでございます。
  42. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 現在のこのような状態が好ましいことではない、こういうお話でございますが、そこで、全電通が賃金の交渉を約四カ月半ほどやってまいってきたわけでございますが、最近になって公労委に対しての団交促進のあっせん申請をしておるわけでございます。これはいままでにない例でございますが、こういう点について、私がやはり先ほど申し上げたように、大臣の希望するような方向に現実にはないというところから、いわゆる公労法、あるいは公社制度の欠陥と申しますか、そういうものがこういう事態を引き起こしているというふうに思うのでございますけれども、この全電通の団交促進のあっぜん申請について大臣は御存じでございますか。
  43. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) あっせん申請が公労委に対してなされておるということは、組合の代表者がお見えになりまして御報告がございましたので、承知をいたしておりますが、そこで、私どもといたしましては、この問題についての団体交渉の促進ということをぜひ心がけなければならぬと存じておるのでございまして、そのための根本問題としての公労法、あるいは公社法の研究の問題は、これはいま直ちに間に合うことではございませんが、現行法規のもとにおいても、もう少し実質的な団体交渉を可能にする方法はあるのではないか、こう考えまして、その方向でただいま努力をいたしておるのであります。問題は、こういった賃金交渉においては、常に予算を握っておりまする大蔵省において公社側の理事者の自由な考えを拘束するという点、すなわち、予算を握っておる大蔵省に締めつけられて公社の理事者がスムーズに団体交渉を進めることができないような状況になっておる。この点に問題の中心点があるわけでございまするから、労働省といたしましては、大蔵省に対しまして、その点について団体交渉を進め得るように、大蔵省としても大局的な立場から考えてもらいたい、こういう申し入れをいたし、ただいま大蔵省の部内で公労協全体に対する賃金交渉における各理事者側の態度というものについてどういうふうに大蔵省としては配慮するか、これを緊急にきめてもらうように頼んでおりますので、大蔵省部内できょうじゅうにも相談をいたしてくれるだろう、かように運んでおるわけでございます。
  44. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 公社総裁にお伺いしたいのですが、四カ月半もこの問題で団体交渉をして、なお解決をされない。しかも、その交渉の中で、総裁は、こういう公社の賃金交渉は、こういう形は非常に好ましくない形だ、こういうことも言われておるようでございますが、その真意と申しますか、どういうこの事態に対してのお考えをお持ちでございますか。
  45. 大橋八郎

    説明員大橋八郎君) ただいま、何かこの問題について交渉中に私が意見を述べたようなお話だったのですが、どういう意見ですか。私は、実は御承知のとおり、交渉委員の中に入っておりませんので、一度も交渉委員会に臨んだことはないのでございます。何かはかのことでございましょうか。
  46. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 総裁は団体交渉委員でないということは知っておりますが、公社を代表する交渉委員が一応公社としての表明として、公社における賃金交渉というのは、こういう形の賃金交渉は好ましくないのだ、こういうことを言われているわけです。これについて、もちろん総裁としても、先ほど大臣の言われたような現実の姿からして、公社としての自主的な能力をもっと強めるために、私は、現在の労使紛争の解決のための改善策を公社として当然考えなくてはならぬ、こういうふうに思うのですが、そういう点について総裁のお考えをお聞きしたい。
  47. 大橋八郎

    説明員大橋八郎君) どういうことを交渉委員が申し述べたか、実は私聞いておりませんが、現在の交渉のやり方がそれでいいかと仰せられますと、必ずしも私は万全の行き方とも考えられません。私ども、もしもう少し自主的にやり得る何か根拠が与えられますれば、もう少し自由な、早い妥結になるかもしれません。しかしながら、昨年来五カ月間にわたって団交が進まないということは、それだけではないのでございまして、私の見るところでは、もう窓口と申しますか、門口で両方の意見が対立しておるようなことで実は長びいているように私は承知いたしております。公社といたしましては、とにかく要求が出た以上は、その要求の根拠となる理由といいますか、根拠といいますか、そういう幾つかの論点があるわけでございまして、たとえば公務員の給与と公社職員の給与との関係がどうなっているか、あるいは一般消費物価の値上がり等の状態がどうなっているか、あるいは公社の財政上の関係がどうなっているか、幾つかの論点があるわけでございますから、その個々の論点についてまず検討をお互いにして、その上で最後の結論を得たい、こういうことを申しているようでありますが、組合としては、そういう論点に入る前に、何でも具体的の返事をしろ、こういうことで今日まで両方の意見が対立しておった、かように私は存じておるので、先日公社の当局と組合と兼子会長がおいでになりまして、何か非公式の懇談があったようでございますが、その結果、とにかくあっぜん云々ということは別問題として、非公式にさらに交渉を進めてみたらどうか、こういうお話があったので、先日から交渉を開始しておるようでございまして、今明日にわたって、また、なお交渉を続けることになっておりますから、その結果がどうなりますか、あるいは局面が打開せられるようになればけっこうだと思っております。
  48. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 いまの総裁のお答えは私は非常に不満なわけです。と申しますのは、そういう制度、法律的な根拠が与えられればやれるけれどもと言うだけで、積極的な労働者に対する思いやりと申しますか、もっと労働者に対しての生活の向上をはかろうという気持が私はまだないような感じを受けるわけです。一方では、合理化がどんどん進むにしたがって労働条件が向上するのだ、こういう基本的了解事項を組合との間に結びながら、その具体的な問題になってきますと、公労法上、あるいは公社制度上できないのだということで押さえてしまう、こういう過去何カ年かのやはりそういうことが労使間の大きな紛争の一つの原因になっているわけでございまして、その紛争の原因を、私は総裁として積極的に解消していく、そういう努力が必要ではないか、こういうふうに思うわけです。いま総裁の言われました中で、組合としては、物価の上昇なり、あるいは日本経済の実態、あるいは人事院勧告、他の公務員なり公共企業体労働者との関係、こういうものについて十分検討していかなければならないのだ、そのことを組合員にも話をしてきたのだけれども、組合は受け付けないのだ、こういうことなんですか。私らが承知することでは、組合はもうすでに要求書を提出した段階において、そういう問題をじっくりと検討していこうじゃないかと、こういうことで申し入れをしておった。ところが、公社は、三公社で十分協議をしなければならぬと、こういうことでひとつも具体的な話し合いに入っていかない、こういうふうに聞いておるわけです。これについての経過と実態を、ひとつ交渉に当たられた方からお伺いしたいわけです。
  49. 大橋八郎

    説明員大橋八郎君) ただいま私の聞いておることと柳岡先生お話とは、どうも食い違っておるようでありますから、現実にその団交の席に臨んでおった職員局長から実際の問題をひとつお聞き取りを願いたいと思います。
  50. 中山公平

    説明員(中山公平君) 交渉の従来の経過でございますが、昨年以来、約二十回交渉が行なわれておりますが、組合側の当初の主張としまして、早く回答を出せということが非常に強く言われたわけでございまして、私どもといたしましても、要求が出てまいりました以上、なるべく早く回答するということが望ましいことではあるという意味検討を急いでおったわけでございますが、何ぶんにも、公社法にもございますように、公社職員の給与というものは、一方で公務員の給与、一方で民間の事業の従業者の給与、その他の事情を考慮して定めなければならないということになっておりまして、検討の範囲も非常に広く、かつ、また、深いものがございまして、それらの点で時間がかかっておりましたのと、技術的に申しましても、賃金のことでございますので、先行きのいろいろな諸情勢ということも、遠い将来のことは別といたしまして、ごく近き将来の諸情勢見通しというようなことも賃金考える場合には必要ではないかと存じておるのですが、それらにつきましては、やはり経済統計等の十分なデータというものも必要になるわけでございまして、そういった点から昨年におきましては検討の段階が続いておったわけでございます。しかし、十二月の十三日であったかと思いまするが、私どもが何を検討しておるか、どういうものを賃金問題の検討の柱としておるかということを明らかにいたしております。これは先ほど総裁からも御質問にお答えいたしましたように、国家公務員の給与との関係、消費者物価の動向、国民経済の動向、電電企業の合理化の進行過程における生産性等の問題、それに公社の財政の問題、この五つの柱を組合に明らかにいたしまして、組合のほうからも、十六日の交渉であったかと思うのでございまするが、それにほぼ見合うような現実的な数字の提出を求められました。私どもその数字を示すことを鋭意急ぎまして、一月の交渉の段階におきましては、公社側から、これをひとつ中心にして中身の議論に入りたいという提案もいたしたわけでございまするが、組合側といたしましては、こういう個別の検討事項を論議することが賃金の回答とどのように結びつくのかという点が明らかでない以上は、中身の交渉はあまり意味がないんじゃないかという主張が繰り返されまして、あっせん申請というところに参ったわけでございます。  経過としては大体そういうことでございます。
  51. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 いま職員局長の言われたことは、組合からあっせん申請をして、その結果、兼子会長が非公式に労使双方の事情聴取をして、その結果そういうことを公社当局が言い出してきたというふうに私どもは理解しているわけです。したがって、それ以前は、そういう問題について具体的に検討していこうという、その公社の方針といいますか、そういう考え方がなかったのじゃないか。そこにやはり公社の積極的な努力というものが見られないというふうに私は思うんです。したがって、この問題について、時間がありませんから先を急ぎますけれども、この賃金紛争を解決するためにどういうことをいまお考えになっているか。いわゆる問題は、回答をいつ出すのかということは、労働者にとっては、やはりもうすでに五カ月近くなりますから、非常に関心の強い問題でございますし、現実の生活の上からも、公社の積極的な誠意というものが見たいと思うのでありまして、そういう点についての公社の方針といいましょうか、お考えをひとつお聞きしておきたいと思います。
  52. 中山公平

    説明員(中山公平君) あっせん申請が出されまして、二月の七日に兼子会長から労使双方が呼ばれまして、先ほど総裁からもお答えをいたしましたように、あっせんはあっぜんとして公労委に預かっておくが、いま一応さらに労使団体交渉を進めたらどうかという兼子会長の助言がございまして、労使団体交渉の持ち方につきましては、従来のように、多少意見の食い違いはあるのでありまするけれども、兼子会長の御助言の趣旨に沿って双方努力をいたしましょうということで、十日に公社のほうから団交再開の申し入れをいたしました。十一日に再開団交の第一回を持ちまして、ここで大きくいって一点、こまかく分ければ二点ばかりの論点に問題がしぼられたわけでございますが、それは、大きくいえば検討項目の個別論議というものが賃金回答にどう結びつくかということについての整理と、それに関連することでございまするが、個別論議をした結果、幾日ぐらいかかれば回答が出せるか、組合としてはなるべく早く回答を出してもらいたいんだ、幾日ぐらいで回答が出せるかという点について公社側の態度を明らかにすべきであるということになりまして、本日交渉を持つことになっておりまするが、本日の交渉におきまして、その点につきまして公社側の態度を明確にいたした上で交渉を軌道に乗せていきたいと私どもは思っております。で、明日も団交がございますので、われわれも努力をいたしまして交渉を軌道に乗せ、中身の議論をこれから三回、四回と煮詰めて、その煮詰める過程の中から回答を早く出せるような努力をいたしていきたいと、このように考えております。
  53. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 具体的にそのめどはいつごろに置いておりますか。
  54. 中山公平

    説明員(中山公平君) この点は私どもは組合側に対しては、交渉を四、五回重ねていきますと、その中からおのずから回答も、煮詰めれば煮詰めるほど早くなっていくことであるから、われわれも努力をするから、ひとつ軌道に乗せてもらいたい。こういうことにいたしたいと存じております。
  55. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 二、三回、四、五回の団交の中で回答を出すようにしたいと、こういうことなんですが、その後団交は長引けば、これはやはり紛争の解決はさらにおくれるわけですから、私としては、ぜひこれは少なくとも近いうち、できればこの一、二週間のうちに、そういうような誠意ある回答によって労使関係を円満に解決できるような努力をぜひお願いしたいと思うわけです。  最後に、大臣にもう一つお伺いしたいのですが、こうしたストライキ権のない労働者に対する問題は、先ほど大臣から一応今後の方針をお示しになったわけですが、もう一つ問題になりますのは、政府関係機関、特に、俗に政労協と言っておりますが、国民金融公庫、あるいは労使関係でいけば全総訓とかあるわけでありますが、そういう関係機関の賃金問題も非常に私は問題があるような気がするのです。ここは御承知のように、労働者はストライキ権を持っておるわけですね。でありながら、一方では予算総則的なるもので大蔵省にひもがついておる。こういうことで、何ら自主的な解決能力を持たないというのが現実の姿だろうと思うのです。この点については、後日またこの関係機関の問題についていろいろ大臣のお考えをお聞きしたい、こういうふうに思います。ひとつこういう点についても十分御検討いただいて、真に話し合いによって合理的な解決ができるような労使関係の確立に御努力を願いたいと、こういうふうに思います。
  56. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 私は、政労協の問題に至りましては、公労協以上に不合理なものだと思っております。公労協につきましては、御承知のとおり、公社という特殊な性格から見て、一応完全不完全は別といたしまして、公労法という特別法がありまして、労使紛争問題の処理について一応の準則ができておるわけであります。ところが、政労協に至りましては、先ほど御指摘のとおり、これは完全に民間の労使関係と同じ法規の適用を受けておる。しかも、理事者側は三公社以上に大蔵省から厳重に締めつけられておる。そこで、自由なる団体交渉が事実上きわめて制約を受けておるというような状況でございまするので、この問題は一つの問題として十分に検討をし、合理的な制度的な解決を心がけねばならん、こういうふうに思っておるわけでございまして、ただいま御指摘のあった次第もありますので、労働省といたしましては、今後真剣にこの問題を研究して、一日もすみやかに合理的な解決の制度を打ち立てたい、かように存じております。
  57. 鈴木強

    委員長鈴木強君) 本問題につきましては、大臣のおっしゃいますように、現行公労法、あるいは電電公社法等の制約もありまして、困難な点があると思いますが、しかし一団体交渉の過程においてこの交渉が進まない点は非常に遺憾だと思います。ですから、少なくとも、こういう団体交渉を軌道に乗せて、紛争状態を解決していくということが当面必要だと思います。そういう点で、ひとつ電電公社は、さらに一そう組合とお話し合いを進めて、早急に結論を出していただくようにお願いしたいと思います。その点、また労働省のほうも不当介入になってはいけないわけですけれども、制度上の欠陥その他がありますから、そういう意味におきましては、先ほど御指摘のように、労働省方面でも御配慮をいただいておりますが、さらにひとつ度合いを強めていただきたいと思います。
  58. 小平芳平

    ○小平芳平君 たいへんに時間をお急ぎのようですから、まとめて御質問いたしますから、まとめて御回答願いたいと思います。  労働大臣の所信表明でも、完全雇用の達成、労働条件の向上ということを目標としておやりになるように掲げられております。ところが、実際には、先ほどの午前中の委員会の論議にもございましたように、中高年齢層の失業者の問題とか、再就職の困難な状況とか、炭鉱離職者その他の地域失業者の大量失業だとか、いろいろ問題をかかえているわけであります。その上、また、ことしは、はたして経済界が上向いていくかどうか、一部中小企業の大量倒産のような不安もあらわれておりますが、労働大臣としては、こうした完全雇用、あるいは労働条件の向上ということに対する見通しをどのように具体的にお持ちになっていらっしゃるか。ことに中高年齢層の失業者の再就職の問題についても、午前中もお話がありましたが、具体的にどのような対策がおありか、その点についてまずお伺いいたします。
  59. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 中高年齢層の就職問題というものは、これは失業しておられます御本人のためにも、早く職場を確保して差し上げなければならぬ問題でありますと同時に、日本経済全体という立場から見ましても、一方において労働力の不足ということに悩みつつある産業界に対して、遊休労働力としてこの中高年齢労働力が遊んでおる、そういう意味でこれは早急に解決しなければならぬ問題であると思うのでございます。そこで、労働省といたしましては、中高年齢層の就職対策につきましては、ここ数年来、いろいろと努力をいたしてまいっておるのでございますが、何と申しましても、一般産業界におきましては、中高年齢層の労働力について一つの既成観念を持っておるのでございます。すなわち、日本のいままでの年功序列型賃金体系から申しまして、中高年齢層の労働力というものは、若年労働力に比べて割高である、それから、また、中高年齢労働力というものは、その家族構成その他から考えまして、流動化ということがむずかしい。したがって、これを雇用する場合には、住宅問題というものも考えていかなければならない、こういった点などがおもな原因となりまして、非常にむずかしい問題になっておるのであります。そこで、労働省といたしましては、まず、中高年齢者の適職の調査を数年前から進めてまいっおるのでございまして、非常に不足しておる若年労働中高年齢者をもって代替すべき適当なる業種、これをいろいろな方面から調査をいたしておるのであります。一応これについては結論が出ておるわけでございます。  次に、求人に際しまして、大体の求人は、できれば若年労働力という要求の求人でございますが、若年労働力の求人難というものをよく説明し、今後の経済産業見通しというものの基礎に立って、できるだけ中高年齢者をもって代替するように勧奨するという措置を安定所の窓口において指導をいたしておるようなわけでございます。さらに中高年齢者の就職を一そう容易ならしめるために、職業訓練所におきましては、中高年齢者の再訓練に主力を置くようにいたしておりますし、また、住宅問題の解決のためには、就職者の移転就職者用住宅というものの建設を急いでおり、さらに、また、移転就職者に対しましては、雇用主のほうに住宅の資金を融通する、また、本人にも移転の費用の一部を支弁してやるというような、総合的な対策を講じて中高年齢層の就職促進に努力をいたしておるのであります。しかし、何と申しましても、今後さらにこれを推進をいたしまするためには、使用者の完全なる理解が必要であるわけでございまして、このためのPRというものは、遺憾ながら現在までのところ、いまだ十分であったとは言い切れないと思うのでございまして、今後は使用者に対する啓発、宣伝、こういった面に力を入れていく必要があると思うのでございまして、その点については特に急いでいきたいと思っております。
  60. 小平芳平

    ○小平芳平君 いろいろの対策についての御説明がありまして、こまかくいろいろお聞きしていると時間がないそうですから、具体的に大臣お尋ねしたいことを申しますと、一つは、使用者の理解ということを仰せになりましたが、官庁関係の、たとえば炭鉱離職者は広域職業紹介所を通じて、官庁関係にどの程度再就職なさっているかどうか、これが非常に少ないのじゃないかと私は思うのですが、もっと一般使用者の理解を大臣としてお求めになる一方、また、各官庁に対しても、そういうことをもっと啓発していかなければならないのじゃないかということをひとつお尋ねしたいわけです。  もう一つは、転職のための住宅についていろいろ対策が立てられているようで、今年度も、また、三十九年度も相当の計画をお持ちのようですが、この住宅に入った場合、この人たちは相当北海道とか九州から愛知県とか東京とかというふうに移ってこられるわけですが、その人たちの住宅が非常に不安定でありやしないか、事実不安定な状態にあるわけですが、そういう点についてお尋ねしたい。
  61. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 官庁関係といたしましては、特に炭鉱離職者については政府間で話し合いをいたし、今年度の炭鉱離職者の就職計画の際にも数字を具体的にきめてございます。ただ、その常住率が一〇〇%というわけにまいってはおりませんが、大体まあ今年度は予定計画の九〇%くらいはいけると思っております。特に労働省といたしましては、各省にお願いをいたしまする以上は、みずから率先垂範する必要もあると考えまして、このたびの炭鉱地方を中心とする職業安定所の増員等におきましては、できるだけ炭鉱離職者の中で、適当なる人物があれば優先的に採用するようにということで実施をいたしておるようなわけでございます。しかし、何と申しましても、使用者の理解、ことに一般中高年齢者を今後は使っていかなければならぬのだということについての経済界の一般的な理解は決して十分とは申せませんので、労働省としては、今後この方面に非常な力を入れる必要があると思っております。  次に、移転就職者用住宅のいわゆる先行き不安と申しますか、御承知のように、一応移転就職者用の住宅に入ったお方は、原則的には一年以内に住宅を求めて移転していただくようにという規定に相なっておるのであります。これはなぜこうい規定に相なっておるかと申しますと、一般的に住宅政策は建設省で所管をいたし、建設省が地方団体と協力いたしまして公営住宅というものをやっておるわけでございまして、ただ、労働省といたしましては、一般公営住宅に依存するだけでは就職問題の解決上どうしても不十分である。そこで、やむを得ず、労働省みずからが住宅問題に乗り出したというようないきさつなのでございます。したがって、国の住宅政策全体から見ますと、労働省が住宅政策に手を出したというのは、一応暫定的、かつ、例外的な処置でございまするので、そこで、まあこれは就職者が就職するために必要な住宅、こういうたてまえで一年以内という期限を定めたわけなのであります。しかし、何ぶんにも、住宅から追い立てるということは、これは衣食住という生活の根本に関する問題でございまするから、現実にかわりに入る住宅を与えない限りは、強制的に追い立てるということは、これはとうていできる話ではございません。したがって、事実上は他に具体的に適当な住宅があり、引っ越しのできるような状況になるまでは、結局移転用の住宅に住むことを認めざるを得ないわけなのであります。そこで、まあたてまえ上はあくまでも一年以内ということに相なっておりまするが、住宅というもののの生活上重大な役割りから考えまして、決して無理はいたしません、こういうふうに申し上げておるのでありまして、役所側からの追い立てによって住宅不安におちいるということは、住宅に入っておられる方としては絶対に御心配はない、こうお考えになっていただいてけっこうでございます。
  62. 鈴木強

    委員長鈴木強君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  63. 鈴木強

    委員長鈴木強君) 速記をつけてください。
  64. 小平芳平

    ○小平芳平君 それで、いま大臣は不安がないというふうに言ってお帰りになっちゃったわけですが、もう一ぺん話をもう少しもとに戻して御質問します。  それで、広域職業紹介の窓口を通して炭鉱離職者の方が職を求めていらっしゃる場合に、どのぐらいの人が住宅を求めていらっしゃるか。かりに東京なら東京、名古屋なら名古屋に就職をして、現地に来てからも住宅を求めておるんだが、事業団住宅に入るには相当の競争倍率になっていやしないかと思われるのですが、いかがですか。
  65. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) 広域職業紹介ベースで炭鉱離職者が京浜、中京、大阪地区に就職する場合は、ほとんど住宅の手当てをしなければ就職が不可能だ。われわれの推定では、大体住宅の手当てをするめどを一応七〇%に置いておりますけれども、これももっと実際は高いのじゃないかと思います。しかし、この七〇%をめどにして全部を先ほど大臣から説明がありました移転住宅で補うというわけではございませんで、それぞれ社宅、アパート、公営住宅等もできるだけ織り込みまして、それで足りない部分を移転者用の住宅として措置をしてまいっておるわけでございます。現に、昨年、一昨年、今年と、すでに一万二千六百五十戸ばかりできておりますが、この上にさらに来年度は一万戸という移転住宅を建設いたしまして、いまの中高年を主とします再就職対策に備えてまいっておるわけでございます。先ほど一年を原則としておるために、非常に先行き不安じゃないかというような御指摘がありましたのですが、まあ住宅の性格からいいましてそういった制限はつけておりますが、大臣からお答えいたしましたように、無理はしないという考え方基礎にして運営しておりますが、一年後の措置につきまして、さらに一年ぐらい、合計二年ぐらいは最初から簡単には移れないだろう、こういう心組みでわれわれは指導しております。  その二年たったあとどうするかという問題でございますが、これは建設省の住宅政策と提携をいたしまして、公営住宅の二種というのがございますが、これにそれぞれ割り当てをいただきまして、今年の例で申しますと、千五百戸割り当てをいただきました。来年度はこれをさらに二千戸にして、二年たったものから優先的にそちらの公営住宅のほうへ移っていただく。そのほかに、また社宅もだんだんと用意されますので、移転宿舎から恒久的な住宅へお引き取り願うのには、無理のないような指導でもって移っていただくというふうな考え方でやっていきたいと思っております。
  66. 小平芳平

    ○小平芳平君 建設省のほうで割り当てをきめて公営住宅のほうへ移転するようになれば、それがスムーズにいけば非常によろしいと思うのですが、そうでないと、もともとその市なりその県には、すでに住宅に困っている人があるわけです。そのすでに住宅に困っている人たちがあるのに、その市営住宅や県営住宅や、そういう公営住宅にまた広域職業紹介を通じて来た人たちがその住宅へ入らなければならなくなったわけですから、ですから、これは政府としてそういう不安をなくすためには、公営住宅を相当別ワクでつくっていただかないと不安が去らないと思うわけです。  それから、一年というたてまえを二年にしてとおっしゃるのですが、ここにもう一つの問題は、ある一つの事業所、会社へ就職をして、その就職した会社を通じて事業団住宅へ入ったとします。そうすると、今度は炭鉱で働いていた仕事と極度にその労働の質が違うために、その会社にどうしてもっとまらないというような場合には、会社をやめたらすぐ追い出されるという不安を持っておるのですが、その点についてはどうでしょう。  それから、もう一つ、ついでにお答え願いたいのは、先ほどの二年とおっしゃいますが、もうすでに長い人は二年をこしておるわけですが、これに対してもう少しはっきりした法的措置——一年と言っておいて、それをまた二年くらいと言って、またすでに二年半にもなっておるというようなずるずるとした措置ではなくて、もう少しはっきりと法的措置がとれないかどうか、お尋ねしたい。
  67. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) あとのほうから先にお答えいたしますが、二年たった実数、今年度中に二年を経過するものが二百七十五戸でございます。それから、来年の見込みが千四百六十九戸でございます。したがいまして、算術計算上は、先ほどの公営住宅のワクで十分この方々だけは少なくとも移転といいますか、お引取りが願えるわけなんですが、そこにやはり地域的なかみ合わせの問題がいろいろありまして、大体数の上ではうまくいくのではないか、かように考えております。それから、また、原則一年、猶予期間一年、合計二年で、その辺のあれがどうもはっきりしていないじゃないかという御指摘があったのですが、これは入居する場合の契約にそういう条件をはっきり明示しております。二年を経過してもずるずる居住しなければならぬという場合がございますから、その場合には、公営住宅の二種並みの住宅家賃に引き直して、多少現在の家賃よりも上がりますけれども、一般の公営住宅並みという家賃に、二年を経過した後には家賃を若干上げていく、こういうふうな処置を具体的な契約で取りかわしておりますので、その辺は初めから予測がつかないというわけではないのでござます。  それから、再就職した後、さらにまた転職をするというケースが、これはもちろん若干あるわけでございますが、この点については、職安としましては、一たんお世話をした以上は、やはり正常雇用に落ちつくまで、二度でも三度でも再就職のお世話をする。その場合に、住宅を追い出すいうようなことは毛頭考えてもおりませんし、お世話をした住宅におる方々が転職をするという場合には、どっちかというと最優先的に扱って再就職のお世話をしておるというのが現状でございます。
  68. 小平芳平

    ○小平芳平君 再就職をした場合でも住宅は追い出さないわけですね。
  69. 松永正男

    政府委員(松永正男君) そのまま……。
  70. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから、じゃ、その点はわかりましたので、では、ひとつ職業訓練については、特に失対事業の問題とからんで、前国会で盛んに論議されたわけでありますが、あまり論議までもいかなかったわけですが、その後の職業訓練の総体的なもので、全体でなくてもよろしいんですが、ある一つの例でもよろしいんですが、職業訓練予算で予定したものと、それから実際の希望者と、それから実績といいますか、実際にその訓練を受けて卒業して無事再就職したというようなケースについてちょっと御説明願いたい。
  71. 松永正男

    政府委員(松永正男君) 転職訓練につきましては、公共職業訓練所の中で最重点を置きまして計画立てておるわけでございます。内容といたしましては、先ほど来出ました炭鉱離職者の転職、それから現在日雇い労働者で失対に働いておる方々を対象にした転職、それから一般の中高年層、これを対象にいたしました転職、まあこれを主にいたしまして、転職訓練計画といたしまして、三十八年度におきましては、延べ総数二万四千二百人というものを予定をいたしております。で、炭鉱離職者につきましては、一番最近の資料で申し上げますと、一般訓練所におきまして一千三十七人が現在訓練を受けておられます。それから総合訓練所におきまして一千百二十二人が訓練を受けておられます。それから日雇い労働者方々は、一般訓練所におきまして現在五百四十人の方々訓練を受けておられます。それから、そのほかに駐留軍関係離職者の方が、一般訓練所におきまして四百三十四人、それから総合訓練所におきまして八十三人現在訓練を受けておられます。そのほかに。一般の転職の方々が二千九百四十三人おられます。これらの方々が現在訓練所におきまして訓練を受けておられるわけでございます。訓練所を終了されまして就職をされるわけですが、大体平均いたしますというと、就職率が八五%から九六、七%というような就職率を示しております。新規学卒方々で、訓練所を卒業しましたものは、全部一〇〇%の就職でございますが、中高年齢層につきましては、やや就職率が落ちておりますけれども、大体八五から九五というくらいの就職率を示しております。これは訓練所の修了時における就職でございますので、その後における就職を含めますと、これは具体的にはなかなかつかみにくいのでございますが、これを相当上回っておるであろうというような推測をいたしております。それから、具体的には、訓練所内におきまして、現在一般の新規学卒の若い人たち、それから中高年層の炭鉱離職者日雇い方々と同じ訓練所に通って勉強しておるという現状でございます。率直のところ、この転職訓練を始めます際に、若い新規学卒の人たちに対して転職者の方々がどういう影響を与えるであろうかということを実は心配をいたしたのでございます。しかし、実際には、炭鉱離職者方々で、やはり六カ月ないし一年の訓練を受けまして就職をしたいという方々は非常な熱意を持っておられますので、むしろわれわれが最初に心配をいたしましたのとは逆に、この転職訓練方々訓練受講の態度は非常にまじめで、それから、また、所内の規律も非常によろしいということで、むしろ若い子供たちに非常にいい影響を与えておるというような状態でございます。  それから、また、訓練所における転職訓練の重点といしたましては、生活を控えた方々でございますので、できるだけ短期間に一つの職に腕をつけるということを目標にいたしまして、就職の際にも、たとえば国家試験のようなものがございまして、それを通れぱ非常に有利だというような職種をできるだけ選びまして、在所中にその試験に受かるというようなことで、それも関連のある検定でありますれば二つ受けるような便宜をはかりまして、就職しやすいようにいたしているというようなことで、訓練につきましてもいろいろな苦心をいたしまして、転職訓練を受講される方が勉強しやすいようなことを考えていろいろやっておるわけでございます。
  72. 鈴木強

    委員長鈴木強君) 他に御発言がなければ、本日はこれにて散会いたします。    午後三時十七分散会    ————————