○
田中一君 一
水系ごとにやるんだ、それからいまあなたが言っているように、いま財源がないのだ、財源がないからこそ各
水系の
交流というものが必要だということを言えるのです。私は常に思うのですが、
日本のいままでの
河川行政というものは、ことごとく
災害待ちなんです。
災害を待っている。
災害を待てば、いずれ
集中豪雨でもってこわれてくれれば
予算がつくのだ、それでそれに改良を加えてまあまあ完全なものができるのだ、それを待っておるというのが
日本の
河川行政のあり方、
河川政治のあり方ですね、
災害を待っている。しかし、
国土保全というものが
建設大臣の
災害待ちよりも先行する役目なんです。義務なんであります。
災害が来れば金が何ぼでもつく、それこそ十分の十もつくじゃないか、十分の九・五もつく、これを待ったらいい。そう言って、もうくずれそうな
河川を今度は何ミリの雨が降ればあの
河川、あの川はあそこのところはこわれるのだとわかっている。
河川局長の手元でわかっております。一ぺん
建設大臣、
河川局長の秘密の
——これは局長としてりっぱだからそういうことを準備しているのか知りませんけれども、金がないからできないけれども、今度はあそこに
集中豪雨があったらば、あの辺にあったらばあの個所の何という町の何地先であれが決壊するぜということはわかっている。わかっていてもそれをやらない。それまで
日本の
河川を担当する
行政官は知っているのです。それ待ちではこれはもう結局二重投資であり、かつまた、
災害待ちという非常に
国民に申しわけないことになるわけであります。したがって、
集中豪雨があったときには、その流量を変えればいいのです。変えることのほうが、
集中豪雨があっても、
災害があっても
災害を未然に防げる、いわゆる
国土保全の
先行投資になるわけなんです。その
先行投資というものが
考えられておらないのが、やはり今回
提案された
法律の全部に一貫する体系です。
治水治水と言いながら、全体の
国土保全という面から考慮されておらぬ。いわゆる
河川行政オンリー、一
水系オンリーとしての
考えであって、これはやはり
災害待ちの姿から一歩も前進をしておらぬのが、今回の
提案された
法律の全体です。これはむだです。それこそそのむだをどう排除するか、これこそ
建設大臣の当然なる義務である。その検討をされておらない。その検討をしようというところがない。なるほど昨年頭をはねられた
建設省の原案のほうがずっといいのです。すっきりとしておる。もみくちゃに
各省からたたかれてこういう姿になった。こんなものはわれわれはとうてい賛成することはできない。しかし、旧
河川法というものは、宿命的に官僚のなわ張りによってがんじがらめになったものを解放したという解放の戦士としては、これは
河野さんを高く評価しますけれども、それならもう一歩前進して、いま申し上げている全体の
河川行政、
河川行政に先行するいわゆる
国土保全という面にまで
考えられても、これはおそらく
各省は反対しないんじゃないかと思う。なぜしないかというと、農業用水は渇水時にはもっと余分に流してあげましょう、飲料水はいまのままではたらたらでありますから、これをこう
水系を変えてこれだけ十分に送り込みましょう、
工業用水しかり。こうしていままでの水以上に水を供給しましょうという
考えに立つならば、これは
各省反対しません。
河川が自然の水の流量ですから、それを
国土保全という面で究極望んでいらっしゃるところの
利水を十分に充足させようという
考えを持つならば、これこそ初めて
建設大臣の任務じゃないかと思うのです。それならば
各省とも反対しないと思うのです。私は、ただ建設官僚だけが、
河川はおれのものだといってがんじがらめにしておくというんじゃなくして、効果というものは全部必要なところに持っていくのだという
考え方、せめてはっきりとそうした
国土総合開発という見地からそういう
ことばで表現すれば、これはほかの役所だまされますよ。そういう形でもってその面にだけの
計画、全体
計画は、総合
計画は、まあ総理
大臣の諮問機関であるところの
国土総合開発審議会に一ぺん諮問する、
計画そのものを。
工事はむろん
河川局が当然担当すべきものでありますけれども、全体の
治水、
利水の
計画、これは
治水が完成して
利水という
考え方じゃなくして、並行してせめて
河川の流域変更くらいは、ずばりと明言化することが私は必要であろうと思う。これは
慣行水利権として、農民からは一時は
誤解があるかと思いますけれども、これは納得すれば、秋田県で干ばつだ、青森県ではうんと水が上がって
災害が起きておるという場合に、その水を秋田県のほうに供給をし、青森県のほうの水は
災害が守れるということが、いまこそあなたの
計画されるものであろうと思うのですが、その点、
各省の反対とか、あるいは財政との問題とか、それらを一挙に解決するようになる、そこに
経済性があるわけです。二重投資にならない。ただし、それは
先行投資ということは必要だと思う。
災害だとなるほど各選挙区から突き上げるものだから、それこそしいて申しますならば、国会議員であるいは
災害待ちの
思想がちょっぴりどこか心の中にあるかもしれませんが、
自分の選挙区に今度大雨が降った、しめた、
予算をつけるぞといえば次の選挙には有利かもしれない。しかし、そういうものを排除しなければ、
日本の
国土というものは
——政治が悪い面で利用されてはいかぬ、それをなくすことに、
国土保全の
責任を持つところの
建設大臣のねらいがあるんですから、そういう
意味で、いま
大臣が
自分の苦しいところを率直に申し述べたいままでの経緯をよく知っております。しかし、一歩でも前進というならば、大蔵
大臣を説得し、
各省大臣を説得する道はあるわけなんです。私、この点についてもう一ぺん
建設大臣の、将来の努力は努力として、この
法案の審議にあたっての見解を伺いたいと思います。