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国務大臣(
大平正芳君) それでは、当面の
外交懸案につきましてあらましを御
説明申し上げまして、
あとほどふえんして
事務当局からお聞き取りをいただきたいと思います。
近いところから対
韓経済交流の問題でございますが、
日韓交渉が停滞いたしておりますことは御
案内のとおりでございまして、したがいまして、この
交渉の骨組みになっておりまする
有償、
無償の
経済協力というものが動き得ないことは理の当然でございます。しかしながら、一九六三年で見ましても一億五千七百万ドル
韓国に対して
わが国は
輸出いたしておるわけでございまして、
輸入は二千数百万ドルにすぎないという非常に
アンバランスの
状態にあるわけでございまして、これは
開放経済の趣意から申しますと、バイラテラルな形で
日本と
一つ一つの国との
貿易の
バランスをとることを
考えることは必要ないのでございますが、非常に顕著な
アンバランスがある場合におきまして、正当な理由があれば、これを
バランスの
方向に多少なりとも努力してまいるのが正しいと思うわけでございます。そのことは、
韓国の
経済にとりましても、
輸出拡大ということを至上の目標といたしておる上から見ましても大事なことと思うわけでございまして、
わが国の側に
韓国からの
輸入につきましてこれを拡大する余地があるかないか、そういった点をまず常に検討し
改善すべきものは
改善しなければならぬと
考えておるわけでございまして、御承知のように、
韓国からの
輸入は海産物、
鉱産物等が主でございまして、ノリにつきましてはすでに本年分一億枚は
輸入いたしました。追加は一億五千万枚が
輸入の許可があったと聞いております。若干の
改善を見ておるわけでございますが、しかしながら、
わが国の
国内の
関係産業との
関連がございまして容易ならぬ問題でございまするが、
関連産業との
調整等も十分吟味した上で、可能なものは
輸入拡大につきまして考慮をしてまいるということが、私
ども外務省の
立場であろうかと
考えて検討を進めておる次第でございます。
それから第二の点といたしまして、
先方から
要請がございまする
プラント輸出の件でございますが、この件は、私
どもといたしましては、
韓国と
日本との
経済交流を通じまして、
韓国の
経済の
体質の
改善にいまの時点で役に立つようなことを
考えるべきじゃないか。三年、四年
あとに効果が出るというようなものよりも、もう少しじ
みちな
考え方がありはしないかというようにも
考えて、なぜ
プラント輸出なるものがそんなに要求されるのか、それと
韓国経済との
関連におきまして十分検討してみなければならぬのじゃないかと
考えておるわけでございまして、吟味いたしておるという
段階でございます。
それから、
原材料の問題でございますが、
韓国の
工場設備の
操業度は、一九六二年に六二、三%程度でございましたが、六三年には約一〇%ぐらい
操業度が落ちてきております。ことしはさらに若干落ちておると推定されるわけでございます。たくさんの
失業者をかかえておる
状況でもあるようで、雇用の増大から申しまして、また、
インフレ対策から申しましても、
操業度を高めてまいるということがじ
みちな
体質改善への道ではなかろうかと私
どもは
考えるわけでございますが、しかしながら、一体
原材料というものの在庫はどのような
状態にあるのか、私
ども他国のことでよくわかりませんし、また、
操業度が低いということは、必ずしも
原材料の
不足だけに基因するものかどうか、そういった点も
原材料部品の
不足というところだけに基因するものかどうかという点もよく承知いたしませんので、そういった点もよく
先方の
お話も聞いた上で、
韓国経済体質の
改善にお役に立つというリーズナブルなものがございますれば、私
どもとして前向きに
考えていくベきじゃないか。しかしながら、こういった
一連の
考え方は、冒頭に申しましたように、
日韓交渉の根幹をなしております
経済協力と全然無縁のものでございまして、
民間の
レベルにおける
経済交流でございまして、
政府が特別に政策的に有利な
条件を
考えるとかいうようなものではないので、現在与えられた四囲の
情勢の中で消化し得るもの、そういった可能なもの、そういう
方向を
考えてまいるべきではなかろうかと
考えておる次第でございます。
それから、
国府との
関係でございますが、
国会が明日終わりまするし、去年の暮れからことしにかけまして、
アジア局長が
訪台をしたり、吉田元
総理が行かれたりしたことを通じまして、
日本政府の
要路の者が適当な時期に
訪台を
考えておるということも
先方には
お伝えがあったようでございまして、私も
国府との
友好親善の
関係で、
機会ができればグットウイル・トゥアということでおたずねをしてみたいということで
考えておるわけでございます。明日
国会が終わりますと、
政府部内で御相談をいただきまして、御決定があれば、そういうものとして
考えておる
段階でございます。
それから、
クウェート問題でございますが、四月末に、ちょうど天長節の前の日に、
クウェートの
サバ外相が、これは
日本政府の招待じゃございませんで、
先方から、
ヨルダン河の分水問題。パレスチナの難民問題、この二つの問題について
アラブ諸国の
元首会議の意向を
日本政府に
説明して、その
理解を求めるという趣旨で
おいでになったわけでございます。その後、
サウジアラビアの
外務次官——サウジアラビアは副王が
外務大臣をやっておられる
関係で、
外務次官が来られたわけでございます。
アラブ連合、それから
ヨルダン、それぞれ
要人が同じ
目的で
日本政府の
理解を求めるために
おいでになりまして、
外務省といたしましては、
日本のただいままでの
外国要人接遇のプラクティスによりまして、できる限りの
接遇をいたしたのでございます。すべての方々に天皇陛下にお目にかかっていただく
機会もお願いし、
総理大臣との表敬時間もお願いし、私も
サバ外相とは四十分
お話を聞いたわけでございます。ただ、この問題は
国連の問題に現になっておるわけでございまするし、
日本といたしましては、
日本の国是として、
国際紛争は、武力による
解決でなく、話し合いを通じて
解決する。幸いに
国連に持ち出されておることでありますし、
国連憲章の精神によりまして平和的に
解決することが望ましい。そうして、
わが国といたしましては、
国連のメンバーといたしまして、その妥結の線に応分の
協力を惜しむものではないということを骨子といたしまして、
日本政府の
立場を申し上げておいたわけでございます。ただ、
共同声明を出すという問題があったのでございますけれ
ども、この種の問題で
共同声明を出した例は過去においてございませんし、そういうことでなくて、
外務大臣がお見えになった、そうしてそういう
要請があったということについてステートメントを出すということにいたしたわけでございます。これは四カ国とも全く公平にいたしたつもりでございますが、最近の
報道によりますると、何か非常に冷遇を受けたということをカイロからの
通信等によりまして聞きまして、実は私も全く戸惑いをいたしておるのが正直な私の
心境でございます。しかし、
クウェートと
わが国とはずっと
友好関係を続けてまいりましたし、今後も続けてまいらなければならぬのでございますし、特に
アラビア石油関係では特別の
関係のある国でもあることを決して忘れておるわけじゃございませんので、したがって、なぜそういう
誤解が生じたのか、
一連の
接遇の節々をずっと検討いたしておるわけでございますが、私
どもは、なぜこういう
誤解が生じたのか、実は発見するのにただいままで苦しんでおる次第であります。したがいまして、
クウェート駐在の
河野大使を通じまして、
日本政府の意のあるところを
十分説明をさせまして、その
誤解の一掃に鋭意努力をお願いしてやっておりますし、一昨日の五時に、近く休暇で帰国をされるアル・サネ・
クウェート駐
日大使を招致いたしまして、きわめてフランクに私のあるがままの
心境を申し上げて、
サバ外相に
お伝えをいただくようにお願いをいたしておいたわけでございます。ただ、
新聞等で、
先方がいろいろ申し上げているのに私
どもが何ら申し上げていない、こういうことは御了解をいただきたいのでございますが、この種の
案件は、やりとりを始めますと際限がなくなるわけでございまして、私
どもとしては
外務省の見解、これは事実に反する、だから、一々それを挙証してあげつらうということは一切しないつもりでおりまして、必ずや御
理解を得るものと思っておるようなわけでございます。
それから、最近行なわれました
東京における
マレーシア紛争をめぐる
頂上会談でございます。これは
日本政府が招いたことでも決してございません。三国が自発的に
日本の
東京で会合をやらせてもらいたいという希望がございました。この問題に深甚な関心を持っておる私
どもといたしましては、喜んでフォース・カントリーとしてのサービスはいたしましょうということで、
会談の
場所等、便宜をできるだけ注意して差し上げたわけでございます。幸いに、若干の予定はおくれましたけれ
ども、
外相会談が行なわれ、続いて
首脳会談に入ったわけでございますが、
共同声明でありましたような結末、すなわち
解決に至りませんで、近く
外相会議を持とうということ、それから
フィリピンの提案にかかる四カ国
委員会の構想につきましては、
インドネシアは賛成いたしましたが、
マレーシアのほうはイン・プリンシプルに賛成だが、
敵対行為が実際やむというようなことを
条件としてというようなことで、完全な意見の一致を見ることができずに、次の
外相会議に問題が持ち越されたかっこうになっておるのでございます。いま
フィリピンは
外相会議を
早期に開くというような呼びかけをいたしておるかのように聞いておるわけでございますが、
インドネシアも
マレーシアも、
東京会談から帰られた
あとの模様を見ておりますと、必ずしも穏やかな
状況ではないように思っておりますので、
早期の
解決というようなことはなかなか至難でなかろうかと思うのでございます。がしかし、
外交は決定的な
解決、明快な
解決というのはなかなか望みがたいものでございまして、
会談をしんぼう強くやること自体に意味があると思うのでございまして、三
国首脳がともかく集まったということは事実でございますし、その将来の
方向も
おぼろげながら出ておるわけでございます。私
どもとしては、この萌芽が実を結ぶように希望いたしまするし、将来も、
日本においても求めがあれば
協力を惜しむものでないというふうに
考えておるわけでございます。
インドシナ半島のことでございますが、非常に目立ってわれわれの
印象に映りますことは、
アメリカの決意が非常にかたいということでございます。これは五月の末にニューデリーで
ラスク長官と私がお目にかかったときに、すでに非常な強い
態度が映されておったわけでございまして、その後
一連のそれが具体化されたものと思うのでございますが、ただ、
アメリカ側の
措置につきましては、最近ようやく
軍事領域におきましてきわ立った
報道が
新聞等に出ておりますし、
北京放送、
新華社電等はこれを伝えておりまするし、また
アメリカ側も、
アメリカ軍による反撃の事実も認めておるようでございまして、がしかし、
ラスク長官もついこの間の
記者会見にもありましたように、
限定措置として、インドシナにおける
ラオス中立協定、ベトナムにおける
休戦協定というものが
共産側によって守られるということであれば、
自分のほうも介入する意図はないのだということ、それを保障する限りにおいて、そしてICCが機能し得るような
状況になればいいんだということが
目的であると言われておるわけでございまして、すでに先人によってつくり上げられました、
関係国によってつくり上げられましたそういった
中立協定、
休戦協定というものが、実のある順守を全うするような
状況に早くなりまして、平和がよみがえるということを私
どもとしても心からこいねがっておる次第でございます。