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1964-05-21 第46回国会 参議院 外務委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月二十一日(木曜日)    午前十時十九分開会   —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     黒川 武雄君    理事            井上 清一君            草葉 隆圓君            長谷川 仁君            加藤シヅエ君    委員            青柳 秀夫君            鹿島守之助君            木内 四郎君            杉原 荒太君            山本 利壽君            岡田 宗司君            佐多 忠隆君            羽生 三七君            森 元治郎君            二宮 文造君            曾祢  益君            岩間 正男君            佐藤 尚武君   国務大臣    外 務 大 臣 大平 正芳君    国 務 大 臣 佐藤 榮作君   政府委員    科学技術庁長官    官房長     江上 龍彦君    科学技術庁原子    力局長     島村 武久君    外務省条約局長 藤崎 萬里君   事務局側    常任委員会専門    員       結城司郎次君   説明員    科学技術庁原子    力局次長    梅沢 邦臣君    外務省条約局国    際協定課長   徳久  茂君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○大気圏内、宇宙空間及び水中におけ  る核兵器実験禁止する条約締結  について承認を求めるの件(内閣提  出、衆議院送付)   —————————————
  2. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  この際理事会の決定につきまして御報告いたします。  本日は、部分的核実験停止条約につきまして、外務大臣原子力委員長に対し、質疑を行ない、討論、採決を行なう予定でございます。  それでは、大気圏内、宇宙空間及び水中における核兵器実験禁止する条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。  前回に引き続いて質疑を続行いたします。質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  3. 岩間正男

    岩間正男君 私は、この部分核停条約問題について、時間の関係もございますから、要点についてお伺いしたいと思います。  第一は、地下実験の問題ですが、アメリカは、昨年八月末条約締結して以来、すでにもう二十三回も地下実験を行なっているといわれます。これに対して日本政府はいままで何回抗議をされましたかお伺いしたい。
  4. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そのことを日本政府が、アメリカ地下核爆発を行ない、また行なったということを承知したごとに抗議をいたしております。
  5. 岩間正男

    岩間正男君 よく聞こえなかったのですが、抗議したのですか、しないのですか。
  6. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いたしております。
  7. 岩間正男

    岩間正男君 その抗議は、文書でやったのですか、口頭でやったのですか。その年月日はいつか。それから場所はどこで、相手はだれか、こういう点をお伺いしたい。
  8. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 在日大使館に対しまして外務省のほうから口頭抗議いたしておることが多いと記憶しております。
  9. 岩間正男

    岩間正男君 何回でございますか。
  10. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 一々記憶いたしておりませんが、先ほど申しましたように、私どもが知りました場合には、そのつどやっております。
  11. 岩間正男

    岩間正男君 それじゃ、これは文書資料として出していただくといいと思います。だれに対してだれが抗議をしたか、何月何日に。これはひとつ政府地下実験に対する態度を明らかにするためにぜひお願いしたい。抗議をされた結果について、どうもはっきりその反応というものがあらわれていない。いまのような御答弁なんですが、一体真剣に地下実験をやめさせる方向努力するのか。それとも野放しにするのか。そこのところはこれは非常に国民は問題にしている。といいますのは、核停条約地下実験が非常に大きな抜け穴になっておる。地下抜け穴ということばがありますけれども、私はまさにこの条約そのもののたいへんな欺瞞性、欠陥——根本的などうにもならない欠陥がここにあるのじゃないかと思うのです。したがって、真剣に努力するのか、この点をお伺いしたい。
  12. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いまさらそういう御質問を受けるのは心外でございまして、私どもは終始一貫、地下以外の爆発実験禁止ばかりでなく、全面禁止につきまして反対態度を堅持いたしておりますし、いずれの国であろうと、これを敢行する国に対しまして抗議を続けてまいる決意でございます。
  13. 岩間正男

    岩間正男君 そういう立場だと、私はこれは政府としてははっきりしなくちゃならないと思います。ミコヤン氏の共同提案で、地下核実験をやめよう、こういうことを日本政府に、今度来日の際に要請されたわけですね。これに対する政府態度がはなはだあいまいである。これについては社会党はじめ野党の皆さんもあくまでこの提案を支持して、完全禁止立場から努力をしておられると思います。そういうことを考えますと、当然この提案を受け入れ、そしてこれに対して対処をするというのが当然だと思いますけれども、この点いかがですか。
  14. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) われわれが核実験禁止ということ対してやります措置は、いま御指摘のように、繰り返し繰り返し抗議を続けておりまするけれども、見るべき成果があがっていないという御指摘でございまするが、しかし、それにもかかわらず、われわれといたしましては続けてまいるつもりでございます。何となれば、この部分核停条約それ自体も、岩間さん御承知のように、非常に長い会議、たくさんのいままでの会議のあと結晶されたものでございまして、実はこれは忍耐が要るわけでございます。即効的な効果が出ないからというて断念しちゃならぬと思っております。しかしながら、これをやっていく上におきましては、やはり筋道の通った建設的な効果的なことを考えなければならぬと思うのでございます。で、ソ連政府からお申し出がございました、日ソ同国共同声明を出さぬかという御相談でございますが、そのことだけから見ますと、あなたが仰せのように、けっこうなことじゃないかと思うわけでございますが、問題は、いままで地下実験禁止合意をはばんでいるものをどのようにして除去していくかということが人類に課せられた課題なんでございまして、そのことは、すでにもう国連におきましても、ほとんど全会一致で決議されて、そうして、その具体的な方途について軍縮委員会討議がゆだねられて、いま討議がされているということでございまするし、また、全面核実験禁止それ自体は、米英ソとも賛成なんであります。賛成なことはたびたび英ソ首脳から世界に宣明されていることでございます。したがって、それを日ソ両国型どおりコンファームをするということだけでは、何か物足りないわけでございまして、やはり問題は、いま全部が賛成なことがなぜできないか、そのできない、それをはばんでいる原因を究明して、それを打開していくというところに問題があるわけでございます。そういう問題を抜きにして一片の声明を出すというようなことは、それ自体悪いことではございませんが、いかがなものかと思いまして、私どもといたしましては、十分これは研究もしてみなければならぬと存じまして、そういう申し入れに対しましては、いま検討いたしているところでございます。
  15. 岩間正男

    岩間正男君 どうも、そういうことを言われますけれども、これはいままでの経過から申しまして、地下実験だけは、アメリカが今度の条約にもあくまでも固執して最後までこれを譲らなかった問題です。これに対して日本政府抗議をしていると言うならば、当然この抗議の精神というものを達成するためには、このたびのソ連提案というものに快く応じて、そうしてやっていくというのが首尾一貫した態度だと思う。抗議しているけれども、同じ目的でこの完全禁止を実現する方向には逡巡している、こういうふうにしか考えられないんですが、そういう点で単純です、問題は。そうしてまた、ほんとうにこれは世争の平和を願う人、ことに日本の人民にこたえるという、私は、そういう意味で、実際地下核実験というものをどういうふうに考えているか。第一に、アメリカはあくまで本条約では地下核実験を野放しにして、私は、先ほど申し上げましたように、これは大抜け穴じゃないかと思うんです。一九五四年以来、あくまで地下核実験について固執をしているわけですが、このねらいというものは、はっきり、これはどんな種類の兵器でも地下核実験でやれるのではないか、開発生産もできる、こういうことを考えて、そうして、核停によって禁止された期間は依然として生産もその他の開発も継続している、こういうところに立っているのではないか。私は、そういうことをただことばの上で申しているわけじゃございません。はっきりした証拠を持って言っているわけです。たとえば、マクナマラ国防長官が昨年八月十三日の上院における証言で、地下実験ではほとんど全範囲にわたる兵器開発実験と、あらゆる兵器効果実験を行なうことができる、こういうことを言っている。それから、日本国会答弁を見ましても、福田防衛庁長官は、アメリカ核兵器生産オーバーフィルの段階に立っているので、当分大気圏実験をする必要はないと答弁されている。それに経済上の理由もあり、さらに、米ソ双方オーバーフィルの状態にあるために戦争はできない、こういうふうに日本国会でも政府側答弁があるわけです。そこで、ごく一時的な、本質的な停止でも何でもない大気圏実験禁止は、アメリカ核戦略にとっては持ってこいなんです。自分はどんどんやる。中国その他には何もやらせない。地下核実験で幾らでもやる。それで核兵器生産開発を継続しながら時をかせぐ。そうして都合が悪くなれば三カ月の予告で大気圏その他の実験を復活再開することができる。こういうことがあるから、従来社会主義国世争平和勢力地下核実験に対して終始一貫反対してきたと思うんです。それなのに、アメリカ地下実験にあくまで固執してきた。そうして、だめなときは最後には拒否権を使う、そういうような方法までとっているのでありまして、こういうことをやっておいて、核兵器禁止の第一歩だ、緊張緩和への前進なんだとどうして言えるのかと私は思うんです。こういう点についてどういうふうにお考えになりますか。
  16. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) どうもあなたの属する政党の方と議論をしますと非常に問題が一般化されまして困るのですが、問題は、部分核停条約審議をお願いしているわけでございまして、アメリカ核政策というようなことについて私は答弁申し上げる責任者でないわけでございますが、問題は、いま御審議いただいている核停条約をすなおにお読みいただいて、アメリカソ連、興国という三国の核保有国最初に集まって合意を見た、それが結晶したものがいまお手元に御審議いただいておる核停条約でございます。そして、それはいろいろな議論はあるでございましょうが、地下以外のスペースにおける爆発実験はやめようということなんでございますから、それは大きな前進であると思うのでございますが、それが前進でないという根拠があれば、岩間さんから私は教えてもらいたいと思うのです。
  17. 岩間正男

    岩間正男君 それはあとで、その次の質問でやりましょう、御存じないとすれば。  そういう点、いまの地下実験抗議をすることがこの条約関係がないなどという、そういうことを言われると、これはたいへんだと思うんです。そういう日本の置かれている現在の立場と、それからアメリカ核戦略体制というものは、実質的に日本の現在の国民生活、それから平和、そういうものに深い影響を持っている。そういう観点から私は聞いているので、いまのような御答弁は不謹慎だと思うんですが、これはやはりもう少し真剣に、アメリカ一体どう考えて、アメリカ上院でどういう証言をしているか、この証言意味一体どういう意味か、このような証言についてはあなたはお読みになったと思う。あるいはアメリカ側と話し合いをされたと思うんですが、もっと真意についてはっきりして、これを国民の前に明らかにする。そうして、その上に立っての一体この条約というものははたしてどういうものか。単にことばの上できれいなことを言っています、全文きれいなことを述べているが、はたしてそういうことになっているか。抜け穴がたくさんあるのじゃないか。その抜け穴の最大の抜け穴がこの地下実験です。私はそういう点で、この問題を提起しているので、この点をはっきり答えてもらいたい。  私は、そういうことに関連してもう一つお聞きしたいんですが、昨年の八月ごろですね。この条約締結されたときに、大平外相新聞記者会見で、あなたはあまりこの核停条約には賛成されていなかったように思うのです。それが、いまではこれは賛成のほうに転換された。そこにはどういう変化があるのか。アメリカ側の様子をお聞きになって、ことにこの地下核実験というものはどんなにこれは必要なのかということをお聞きになって、そういうような変化があったんですかどうですか。この点をお聞きしたい。
  18. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) あなたの言う地下実験抜け穴じゃないかというのは、いままでは全部が抜け穴であったわけです。抜け穴がそこまで限局されたということは前進であるということを御指摘申し上げておきます。  それから、当初この条約が結ばれた、合意を見てからのこちらの政府措置でございますが、これはこの前の委員会条約局長のほうから、日本政府条約謄本を見て一応レビューしまして、そうして閣議におはかりするという手順をとるべきだと思いまして、したがって、まだその謄本も届かないうちにすぐ日本署名するということをしなかっただけのことでございます。何らそこにちゅうちょ逡巡はございませんでした。
  19. 岩間正男

    岩間正男君 どうも、ニュアンスだけじゃなくて、確かにあのときの態度はあなたはあまり積極的でなかったし、新聞のなににも出ておりましたよ。それがそのような経過で……。それから全部が抜け穴だと、この条約を結んだということで地下実験などは合理化された、こういう面があります。それから、いままでの核実験は、これは世界の大きな平和勢力圧力の中で絶えず大きな圧力を受けておったわけです。ところが、今度こういうものが出たというので、そういうことで何か実際平和ムードそのものが非常にゆるんできている面があるんです。そういう点では、いまのような御説明だけでは、日本の現在の情勢の把握という点では非常に私は不十分だと思います。  あまり時間もありませんから、次に汚染問題について伺いたいと思います。汚染の問題ですが、あなたは、本条約では少なくとも空気汚染はとまっておる——社会党、民社党の議員もそう言っておられるわけですが、はたしてそれはそうなのか。そこであらためてお聞きしたいんですけれども、これはどうですか。この条約ほんとう一体大気圏汚染というものはとまるというふうにお考えになっておるんですか、いかがですか。この点を伺っておきたい。
  20. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) それは最初に、地下爆発が、地下実験合法化されたというおことばでございましたが、これもまたあなたの誤解でございまして、これに先行して核実験というようなものが違法であるという実定条約がございますならば、岩間さんがおっしゃることは筋が通るわけでございますけれども、そういうことでなかった。国際条約にこれが違反であるという根拠はないわけでございます。地下に関する限り従来のままということで、この条約によって合法化されたという御理解は、これは誤解であろうと思いますので、申し添えておきたいと思います。  そのように実験スペースが集約されてまいりますので、その限りにおきまして大気汚染が救われていくということは、火を見るより明らかなことではないかと思います。
  21. 岩間正男

    岩間正男君 合法化論議をここでやれば、時間がこれだけでも一時間くらい要るのですからこれは省きますが、そういうことをはっきり言っていますよ。たとえば、地下実験というものがこの条約で差しつかえないことになった。したがって、これに対する最近の反対運動というものは非常に減退しておる。これはインドネシアの共産党議長アイジットの最近の政治情勢報告を見ても明らかです。こういう情勢がずっと出てきておる。ですから、法律的な問題も国際法上一つありますが、それと同時に、現実の問題はそういうふうになっている。いままでは全面的にこれに対する反対運動圧力を受けておった。ところが、これだけはとにかくこの法律によって認められるということになったのでありますから、その結果は、反対の現象が起こってくるのは当然です。こういう点についてはもっと情勢を把握していただきたいと思いますね。私は、地下実験というのは、先にも繰り返して申し上げましたように、決して軽々しいものではない。地下実験大気圏実験に比べて汚染をなくすからましだというようないまの御答弁だろうと思います。そうして、そういうふうに宣伝されておりますが、決してそんなものではありません。これは全く世論を惑わす落とし穴になっている。抜け穴落とし穴だ、こういう性格がはっきりあると思う。そうして、先にも申しましたように、その限りでは、来たるべき大気圏その他の大規模な実験準備を進めている。それが地下実験の真のねらいであるということは、先にも申しました。私は決してそういうことを証拠なしに言っておるのではありません。はっきりした証拠があるから——たとえばラスク国務長官は、昨年八月のアメリカ上院での証言でこういうことを言っております。地下実験の継続によって、今後の大気圏及び水中等核実験再開がいつでもできる準備の完了をもたらす、これがこの条約の重点である。まさにこの点をはっきり言っております。それから、これに符節を合わせたように、昨年の八月二十日にケネディ大統領はこういうことを言っている。太平洋ジョンストン島の実験場に五千五百万ドル、続いて三億ドルの改装予算を組んで、いつでも大気圏実験が再開できる準備実験中よりも急テンポで建設していると発表している。これは実に本条約が調印されてわずか半ヵ月のことなんですよ。この条約を真に守るというならば、大気圏実験というそういう方向準備を陰でどんどん進めていくなどという二面政策は、とれないはずなんですよ。ほんとうに良心的に忠実に実行するというならば、そういうことはできないはずなんです。ところが、一方では、大統領言明としてこういうことが発表された。これでは、あなたは、もう大気圏実験によって再び大気汚染される心配がないようなことを言っておられますけれども、これは事実と違うと思うのです。この点は、これらの証言、その他こういうものを検討されたと思いますが、これと関連して一体どういうふうにお考えになっておりますか、明らかにしていただきたい。
  22. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) その点につきましては、前委員会におきましても申し上げましたように、この条約はほうっておいてうまくいくとは思いませんで、やはりわれわれ署名国努力によりまして、最悪の場合、この線よりは後退しないようにしなければいかぬ。すなわち、また地下以外のスペース実験が再開されるような事態は、人類の非常な不幸だと思うのでございます。そういうことが起こらないようにしなければならない。そのためには、この条約にできるだけ多くの——こいねがわくば、地上の全体の国が参加してこの条約実効性を保障していくというようにありたいと思うのでございますが、幸いにまあまあ百九ヵ国が署名しておる。この百九ヵ国の署名というものは非常な政治的なおもしになっておると思うのでございます。これだけの国家国民が非常な注意を持って監視しておるわけでございますから、私は核保有国はこれを破るなんということは、これはよくよくのことでなければできないと思うのでございます。そういうことがないように、国際世論は強くかたく結集して後退をいたさないように努力していくべきものと思います。
  23. 岩間正男

    岩間正男君 そういうことを言っておられますけれども、一方では大気圏実験の設備を改装したり、予算をどんどん出して実験中よりも多額の金を出して改装をやっている。破る準備をしているのです。これはたいへんなことですよ。さらにもう少し事態を研究してほしいと思うのですね。もっとこれは進んでいるのですよ。一九六四年四月二十日といいますと、つい最近ですが、二月前ですが、ワシントン二十日AFPによりますと、マクナマラ国防長官シーボーグ原子力委員長共同ジョンソン大統領に報告した書簡というものが発表されている。これは非常に重要なものですよ。これはケネディ大統領のさっきの言明を裏書きするよりも、さらにもっと前進さしたものです。私はこの核停条約をやる上に非常に重要だと思いますから、この全文を、非常に短いものですから、読ましていただきたい。  第一は、「部分核停条約調印後八ヵ月の間にアメリカは合計二十回の地下核爆発を公表した。実際の実験計画は、これよりももっと広範なものであるが、原子力委員会は、ネバダ実験場での核爆発は必ずしもすべてを公表しないという方針で今後もその方針をとる。」。第二は、「これらの核実験からは、新しい兵器の設計並びに兵器の性能について重要な資料が得られた。かつて米国内で行なわれた最も爆発力の高い核装置実験もその中には含まれている。」。地下実験というものがどういうものであるかということをあらわしている。第三には、「これらの実験からは、地下核爆発検出方法改善についての有益な資料も得られた。また、大気圏内外核実験検出方法改善のための努力も続けている。」。まさにこれだけでも核実験というものの、地下実験というもののねらいが何であるかという、こういう点が明らかになってくると思います。決して軽々しいものではない。しかも、この最後の四のところです。これがまあ非常に重大なんです。この中で、「四、必要の際の大気圏内実験再開に備えて米国は一九六五年一月一日までに(一)、二ヵ月以内に貯蔵中の核装置実験を実施し、(二)、二カ月以内に運搬手段と核弾頭を含めて完全な核体系実験を遂行し、(三)、三カ月以内に核兵器についての新構想開発のための試験的な核装置実験を行ない、(四)、六ないし九カ月以内に核爆発の軍事上の効果に関する実験を実施し得る全体制を整える。」。こういうような、これは具体的なスケジュールを発表しているのです。この事実を見てごらんなさい。これはどうして一体これは実験の制限ということができるでしょうか。大気圏汚染、これを停止するのだ、こういうことが言えるでしょうか。全くそういうものではない。ある期間これはそうでしょう、ある期間は。まさにいわば次の大がかりな大気圏実験をやるための、実は準備態勢地下核実験によってどんどん、どんどん急いでいるのだ。こう言われてもしかたがない事態じゃないか。私のいまの公表したものは、これは大統領に報告されたものですから、これは政府にもはっきり手に入っていると思う。こういう問題についてこれは検討されたでしょうか。私は、これは非常に重大な問題を含んでいる。これこそがまさに地下実験というものを、あくまで世界平和勢力反対にもかかわらず固執しようとしている、そうして、今度のこの部分核停の中に、あくまでこういうような抜け穴として残されたところの、何よりも私はこれは遠因だと思う。ここにアメリカの本心が読める。私はそう断定して差しつかえないというふうに考えるものでありますけれども、この点に対してどういうふうに外務大臣はお考えになりますか。
  24. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) この条約の、アメリカのコングレスにおける審議を通じまして、いろいろな論議が行なわれていることも承知いたしておりますし、また、この条約締結反対の方々もあったということも承知いたしております。がしかし、この条約国会承認を得まして成立したこともまた現実事実でございます。私は、アメリカがその名誉にかけてこの条約を厳守してまいるであろうと確信いたしております。岩間さんのように、疑いを持っておりません。
  25. 岩間正男

    岩間正男君 もう一つだけ。まあ、そういうような答弁をされたのですけれども、私は、これは符節を合わせるように、前後の状況を考えて見ると、さらにはっきりすると思う。それはアメリカの大規模な核実験をずっと系統的に調べてみますと、周期がある。大体四年ごとに、水爆実験になってからこれを繰り返しています。第一期は一九五四年のビキニ実験、それから四年たって一九五八年の超高空実験、そうしてその次は第三期が一九六二年、四年たってクリスマス島の実験をやっている。こういうふうに考えてくると、この四年の周期というものは非常に私はこれはやはり一つの重要なものを物語っている。ことしは一九六四年、ちょうどいわば大がかりな核実験停止期になっている。中止期です。しかも、核停が結ばれたときもこれは中止期に入っている。したがって、現在は物理的にもこれは大気汚染が減っているというのは当然です。これは条約によって減ったということをいわれておりますけれども、これはそうではない。これはいまのようなこの一つの岡期の中にいるのですから、アメリカは、いま核実験の第四期とも言うべき一九六六年、これはもう迫っておる。つまり、二年後を目ざして舞台裏ではさらに大がかりな核実験に備えて着々その準備を進めていることは、先に述べたマクナマラ、シーボーグの共同報告書でもこれははっきりしていると思う。それでも、これは永久に大気汚染がとまった、そのような条約だ、こういうふうにこれは言い切れますか。私は、この点は非常に、この条約を結んでしまった、しかし時が来て、しかも、一昨日の当委員会での異常な事態があれば、これは三カ月の予告でもって再開することができる。それを判定するのはだれかといったら、当該国が判定する。何もこれは国際的な一つの、これに対するチェックするそういうものは、これはありません。そうすれば、これは判断というようなものは、これは自分の必要によってこれをやることができる。そういう条件に立ってつくり出すということができます。これはしばしば帝国主義者がやった下であります。こういうことを考えますときに、この条約期間というものは、非常にこれはこの期間は命が短い。社会党の森議員もそういうようなことを一昨日申されましたけれども、私はまさにそれは同感です。これは生まれて間もなく——この法律では永久的だなんて期間をうたっているけれども、これこそはどうも全くこれは反対のものじゃないかと考える。何か暗示がされる、こういうところの条約じゃないですか、これは。こういう条約にこれは私たちは賛成することはできない。あくまで、どうしてもこういう点から考えて、私はこの条約に対して、ほんとうにこれはもう完全に汚染を食いとめる、放射能の被害を食いとめる、こういうような日本国民の心からの熱望にこたえるためには、はっきりこれにふさわしい方針をとらなければならない。したがって、私は第一に、まずあくまで地下実験禁止する方向、そうして、完全核実験禁止、さらに、このような核実験というものを必要とするのは、言うまでもなく、これは兵器開発、製造、さらに貯蔵、運搬、使用、このような核戦争そのものでありますから、したがって、これらのことを含む全面軍縮の方向に、どうしてもこれは国民の意思を統一して大きくこれは戦っていく必要があると思う。この核停条約というのは大抜け穴がある、こういう条約というものに、私はやはりはっきりした態度をとるべきだと思うのですが、一体こういう見通しを持って、その上に立ってこの核停条約提案され、そうして、実施のためにこれは努力されているのですか。これは御答弁いただかなくてもけっこうですけれども、この点十分お考えいただきたいと思います。
  26. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 岡田委員佐藤大臣が見えました。
  27. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 これは佐藤原子力委員長にお伺いするのですけれども原子力委員長は別は専門家ではないので、あるいはお答えにくい点もあろうかと思うので、そういう場合には、ひとつそちらのほうの専門家のお答えを伺いたい。  で、まず第一にお伺いしたいのは、この条約において、いまも岩間君の指摘されました大抜け穴といいますか、とにかく地下の核爆発実験がいまなお行なわれておるという点であります。で、本来米ソ英三国の間においては、全面的に核爆発実験をやめるという話し合いも行なわれたのであります。しかし、アメリカ側はその地下実験の査察の問題を大きく取り上げました。そうして、査察ができないということ、査察が許されなければ、この地下実験禁止をこの条約にそれを含めない、こういう態度で、結局、地下実験というものが全く除かれたわけです。この査察の問題でこういうふうになったのでありますけれども、今後全面的に地下実験停止という問題がさらに起こってまいります場合に、この査察の問題というのは重大な問題になると思うのです。地下実験一体科学的にその現地における査察をしないでも探知できるものかどうかという点が、私非常に大きな問題、その点について原子力委員会としてはどういうふうにお考えになっております。たとえば、最近スエーデンのウプサラ大学の原子力実験研究所では、ソ連のセミパラチンスク付近でもって地下実験が行なわれたということを探知したということを新聞が伝えております。それが正しいかどうか知りません。しかし、そういうふうに、かなりセミパラチンスクとウプサラとの間には距離があります。探知できるのかどうか。その点についてひとつ見解を示していただきたい。
  28. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうも私しろうとですから、はっきりしたお答えができかねますが、空中爆発の場合と地下爆発の場合、これは相当地下のほうが探知しにくいであろう。これはしろうとなりにそう考えるわけでございます。いろいろ地震観測その他もやっておりますので、ある程度はわかるのじゃないだろうか。そういう方向において努力をしておるのだ、現在は、その程度お答えができるのでございます。なお、その他のことは……。
  29. 梅沢邦臣

    説明員(梅沢邦臣君) ただいまのお話でございますが、一九五九年にジュネーブで東西の会議がございましたときに、地下実験をやりましたものを探知する方法としてはどういうやり方があるかということの検討会がごさいました。古いのですが、そのときのデータでまいりますと、いまの地震というのは、大体五キロトンの地震という程度の地震が年に世界で数千回あるわけでございます。その程度のものをはかるというのとまざってしまいまして、なかなかはっきりしません。しかし、世界に百八十カ所くらい設置すれば、それを総合的に判断すればわかるのじゃないかというのが、一九五九年の相談で出ております。そのあと一九六〇年の三月にもう一度会議がございまして、そのときにはソ連が参加いたしませんでした。ただ、そのときには、アメリカのほうからは五キロトンではわからないのじゃないか。したがって、わかるようにするのには二十キロトン以上のところしかわからないのじゃないかという意見が出ておりますが、現在のところ、その程度のことで、その後は各国ともに探知方法というものの研究を続けておるようであります。
  30. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 さきに新聞に伝えられましたそのウプサラ大学の探知方法というのですか、それらについてはこちらの原子力委員会で承知しておりますか。
  31. 梅沢邦臣

    説明員(梅沢邦臣君) 探知方法については、承知しておりません。
  32. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 その探知した結果についてすでに新聞に発表されておるわけですけれども、そういう実験といいますか、そういうものの結果については各国が報告をされておるのですか。それは受け取っておりませんか。
  33. 島村武久

    政府委員(島村武久君) 御指摘のケースばかりでなく、一般的に申しまして、実験を行なったとか、あるいはそれを探知したとかいうような情報は、実は日本の場合、私ども科学技術庁あるいは原子力委員会というようなところに連絡が来るようなシステムになっておりませんので、私どももまた、一般的に承知いたします以外に、特別に承知するようなことをいたしていないわけで、御指摘のケースもまた連絡を受けておりません。
  34. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 日本においては、地下実験を探知するための何か研究をしておりますか。これは、原子力研究所でも、あるいは大学でも、どちらでもいいですが、やっておりますか。
  35. 島村武久

    政府委員(島村武久君) 一般的に地震探知の関係は一応関係施設等でやっておりますけれども、特に地下爆発実験というようなものにつきましての探知方法あるいは探知技術の研究というようなことは、私ども承知いたします限りでは、日本の国立研究機関その他、そういう機関での研究を行なっておるところはないと承知しております。
  36. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 地下実験アメリカで非常にひんぱんに行なわれておる。おそらくアメリカでは、やはり地震研究と同時に、その地下実験を探知する方法についての研究をしておると思います。あるいは、そういうことはすでに研究の段階を脱して、現実にそういうことを実際に行なっておるのじゃないかと思いますが、それらの点についてどういうふうにごらんになっておりますか。
  37. 島村武久

    政府委員(島村武久君) アメリカにおきましては、御指摘のように、探知技術の研究というようなことはなされておると承知いたしておりますけれども、その結果どのような方法で行なえばどのくらいの探知ができるというような詳細な情報は得ておりません。概略の状況につきましては、技術の次長から御答弁申し上げます。
  38. 梅沢邦臣

    説明員(梅沢邦臣君) アメリカではベラ計画というので、水爆、すべての探知技術の方法の研究計画というのが立てられております。その中でベラ・ユニフォーム計画というのがその一部になっております。それで、地下の測定方法の研究も進めようという計画は立てておりますが、われわれのほうにちょっとこまかく、どういう方法、どういう機械を使って、どういうところまでということは、向こうもまだ計画中でございまして、実験中でございますので、はっきりこまかくはちょっと承知しておりません。
  39. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 先ほどのお話ですと、世界に百八十カ所ぐらい探知の必要な場所を設定してそこで探知に従うならば大体わかるような話もあるわけですが、そういたしますというと、今後たとえば地下実験を全面的に禁止するというような条約ができて、それに従う。しかしながら、もしそれを破って地下実験を行なうというようなときに、行なわれるような場合に、その探知をする必要も生じてくるわけです。そういう場合に備えて、日本においても、日本のどこかの機関がもうそういう場合に備えて探知のための研究、これをやってしかるべきじゃないかと思うのですが、その点について佐藤原子力委員長はどうお考えですか。
  40. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま岡田委員の御質問のように、こういう爆発のそれが探知できるような、そういう技術をもう少し日本でも積極的に進めたらどうか、こういうお話でございますが、それに対しましては、私も同感でございます。しかし、ただいまそれぞれの技術者が申しておりますように、なかなか困難なことで、これが一番効果があるのだ、これならだいじょうぶだ、こういう計画はまだないようでございます。先ほど説明いたしましたベラ計画にいたしましても、これは完全なものではない。ことに非常に大きな爆発なら相当遠方でもわかるけれども、百八十カ所設けても十分でないというのがアメリカ側の言い分のようですし、したがいまして、まだまだ技術的にもう少し研究を遂げないことには、実効のある方法は見つからないんじゃないか、かように考えます。ただいま日本でやっておりますのは、これは非常に感度の高い地震計——地震の方面で研究をしておる。しかし、この地震と核爆発実験と、それはまた震動にも相当相違はあるのでございますが、そういうところがなかなかつかみにくいというのがただいまの実情ではないだろうかと、かように思うのであります。ただいま御指摘になりましたように、全然等閑視しておるわけじゃございませんけれども、なかなか技術的には非常にまだ至難だと、こういう結論である、かように出心います。
  41. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 技術的に非常にむずかしいということはわかりますけれども、しかし、外国ですっかり実験ができ、行なわれて、いい探知方法ができてそれから日本がそれをそっくりちょうだいするというのでしたら、これは容易なことでありますけれども、私はそれじゃいけないと思う。やはり日本自計としても、むずかしいことであるけれども、また、金のかかる二とでもありましょうけれども、やはりこういうような探知方法については真剣に取り組み出していい問題じゃないかと、こう思うんですが、どうでしょうか。
  42. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまお答えしたように、お話のとおりだと思います。ただ、私はそのむずかしさをただいま申し上げてわるのでございまして、各国の間で、国際間においてこの種のものが技術交流あるいは科学のお互いの助け合いといいますか、協力の面においても進めていくべきじゃないかと、かように思いますので、日米あたりだけでなしに、国際的にもそういう研究が進められつつあると、かようには聞いておりますと思います。
  43. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 次に、問題になっておりますのは、やはり探知方法の一つになりますが、例のブラック・ボックスの設置でございますが、これはソ連側では、それを設置して、そして年に何回か来てそれをあけて見ればいいじゃないか、こういうようなことを言っておる。たしか、これはイギリスの提案でそうなったんじゃなかったかと思うんですけれども、このいわゆるブラック・ボックスなるものが、探知をしてそしてそれを記録する、そういう機能を十分に果たせるものかどうか、そういうことについて、原子力委損会あるいはどっかの大学では御研究になっているかどうか。
  44. 島村武久

    政府委員(島村武久君) このような情勢になりましての判断等はまた変わらなければならないかもしれないと思うのでございますけれども、今日まで、日本の場合、原子力委員会は国内におきますところの原子力の平和利用のほうに全身で当たっておりましたものですから、外国の行ないます核実験を探知するためのブラック・ボックスの方面の検討、研究というようなことは、いたしてまいりません。したがいまして、先ほど次長から申し上げましたのも、世界的に地震の学者が集まった状況について申し上げました。日本として独自にブラック・ボックスの研究簿をいたしておるわけではございませんことを、御了承いただきたいと思います。
  45. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 日本で研究してないでも、これについての情報あるいはデータなりというものはお持ちになっておるんじゃないですか。それが入手できておれば、大体効果的なものかどうかということは、これは専門の学者であれば、判定もできるのであると思うのですが、その点は次長のほうはいかがですか、どうお考えになっておりますか。
  46. 梅沢邦臣

    説明員(梅沢邦臣君) あまりよく存じませんのですが、いまの感度の百万倍以上に倍率を上げていくボックス程度のものの機械になっているのじゃないかという感覚で私は見ておりますが、それ以上、中のこまかいことは存じておりません。
  47. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 もし全面的な地下実験禁止条約が近く結ばれるということになりますというと、やはりこういう問題は日本でもほうっておくわけにはいかない問題であろうと思うのです。ソ連アメリカとイギリスと、この三国だけでもってそれぞれの国に設置するだけではない、やはりその周辺の国々もそれが設置されることになる。その場合に、日本においてもこの問題はやはり取り上げられなければならぬ問題になってこようかと思うのです。そのときのやはり準備というものは、これはしておかなければならぬ問題だと思うのですが、どうでしょうか。これはひとつ原子力委員長のほうから。
  48. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまのブラック・ボックスといいますか、これはその道の専門家の会議、国際会議でそういうものを取り上げたらいいのじゃないか。それで、ただいま次長から説明しましたように、よほど感度の高い地震計でなければいかぬ。いまの感度の程度ではいかぬ。いまの感度の百万倍以上の倍率を持つ高感度の地震計と、こういうことを言って、しかもそれが百八十カ所ならばというようなことを言ったんですが、アメリカ側におきましては、これをもっと上げ、実験の程度も五キロトン以上、そういうことを育っておるが、それじゃどうも足らないのじゃないか、もっと二十キロトン以上と訂正をしないとこれはむずかしいようだと、かようなことを申しておるのです。で、どこまでも二面において核実験核爆発実験に対してこれを禁止すると、そういう方向へ各国が協力をしておる、そういう立場において私どももそれはもちろん賛成でありますから、そういう事柄がはっきりすれば、そのときにはさらに私ども日本が持つ役割り、その立場において国際的な協力の実をあげるような役割りを果たしたらいいと、かように考えますが、ただいまのところは部分的核停でございますので、その範囲において日本の協力ということを考えておる。いずれにいたしましても、ただいま言われることは非常な技術的にむずかしいことだと、それかといって、ほうってはおけない、いずれはこれは断じて全面的禁止方向へ行くべきものだ、そして、それをいかにして防ぐべきか、これの探知方法を整備していく。そして、国際的な問題でございますから、そういうことになれば、もちろん日本もその国際的役割りを果たす、こういうことで考えていくべきだと、かように考えます。
  49. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 先ほど岩間君も問題にされたわけですが、つまり、大気圏の放射能による汚染の問題ですが、この放射能による汚染の問題は、一般に太平洋あるいはアメリカの中、あるいはソ連の中のどこかで実験が行なわれる。そうすると、放射能が世界じゅうにまき散らされまして、で、その灰の降下というものがふえてくるわけです。すでに水爆の実験が行なわれましてからかなりの年数がたっておる。その間に実験が全然なかったとき、あるいは核実験が再開されて相当両国で競って実験をやったというようなとき、そういたしますと、大気圏内でもってこれが爆発をして放射能をまき散らすその量というものは、非常に違うわけです。この実験の行なわれたときとそれから行なわれないときと、その間における日本における放射能の降下量の増減、それとの関係ですね。それについてまず御説明願いたい。
  50. 島村武久

    政府委員(島村武久君) 御指摘のとおり、実験が行なわれますれば、大気中に放射能がまき散らされるわけでございます。日本で観測いたしております現在までの状況から判断いたしますと、一ぺん実験が行なわれますと、わりに早い間隔を置いた時期に一回と申しますか、一度放射能が、まあ、わりに濃い放射能が降下してまいります。それから自然に落ちつくわけでございますが、ある核種のものにつきましては、日本と申しますか、地球の気流の状況がございまして、通常日本でスプリング・マキシマムと申しておりますが、春の時候になりまして特に多く降ってまいるわけでございます。日本におきましては、北は北海道から南は鹿児島に至ります間に多くの観測網を持ちまして、統計的なデータをとっておるわけでありますが、三十七年の結果が三十八年の春に強くあらわれておることはございますけれども、その後は実験停止に伴いまして漸次減ってきておるというような状況でございます。  概略でございますけれども説明明を申し上げました。  なお、全ベータ月間降下量及びストロンチウム九〇の降下量につきましては、御要求がございましたので、お手元に数字によってデータをお出ししております。
  51. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 それで、これによりまして実験が再開され、さらに両国で実験をやめまして、つまりこの条約が結ばれるようになってからあと、やはり放射能の灰の降下は減っておりますか。それははっきりしておりますか。
  52. 島村武久

    政府委員(島村武久君) もちろん、実験停止が行なわれまして以降、全体的に見ますと、どんどん減ってきておるわけでございますが、数字的に申しますと、先ほど申しましたのに対応いたします数字を申し上げますならば、たとえば一九六二年——昭和三十七年秋のソ連核実験によりまして、三十八年の一月には裏日本の一部で一平方キロ当たり約三千ミリキュリーの放射能を観測したわけでございます。これは米子でございます。ところが、二月にはこれが急激に減りまして、数百ミリキュリーになりまして、七月以降は何も山陰に限りませず、国内最高値を求めましても、百ミリキュリー前後に落ちついておるのでございます。先ほど申しました核種によってはスプリング・マキシマムの問題がありまして、ストロンチウム九〇の月間降下量は、核爆発実験の翌年の春に最高値を示すような傾向を示しておるわけであります。三十八年の春には一平方キロメーター当たり四・六ミリキュリーの降下量を観測いたしました。しかし同じ三十八年の暮れにはこれが一ミリキュリー以下に減っておるわけでございます。したがって、実験が行なわれますと、若干の日時を経過したあと一時ふえ、それからだんだん落ちつくというストロンチウム九〇のような核種のものにつきましては、その翌年の春に最高値が観測されるという傾向が出ており、以後はだんだんに減っていく状況が観測される、こういうことでございます。
  53. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 大気圏内における実験がやめられたということになりますというと、今後灰の降下量というものはさらに減ってくる、こういう解釈でよろしいわけですか。
  54. 島村武久

    政府委員(島村武久君) そのとおり私ども考えております。
  55. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 地下実験、これは日本でやっておるわけではないのですが、アメリカでやっているわけですが、地下実験をやってその放射能が漏れたと、それでそのためにやはり非常な害を及ぼしたというようなことが起こっているのですか。何か一度そういう例があったというふうに聞いているのですが。
  56. 島村武久

    政府委員(島村武久君) 地下実験の場合は放射能が出ないようにしてやるというのがたてまえでございますので、原則的に放射能による汚染ということは生じない。つまり、地下に放射能を封じ込めてしまうという考え方でございますが、私、本日正確にお答えできませんけれども、岡田委員指摘のように、私も、何と申しますか、実験のやり方の失敗によりまして一時放射能が少し地上に出たということがあったことを記憶しております。その場合には、その地域に交通遮断が行なわれたようなこともあわせて聞きましたけれども、それ以後、それがどのくらいの範囲にわたり、どのくらいの期間交通がとめられたかというような詳細な情報は、記憶いたしておりませんのでお答えできませんけれども、原則的に申し上げますと、地下爆発実験によるものは地中に封じ込めるものであって、放射能の汚染はないということを申し上げておきます。
  57. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 いままで実験をやっておりました国ですね、特にアメリカ及びソ連が放射能の害というものについてあまり発表しなかった。あるいはその害について極力小さく見積もった傾向がある。しかし、最近は、特にソ連などではいままでこの問題については触れられなかったし、また発表もしなかったが、放射能の害について発表するようになったということを聞いておりますけれども、そうでしょうか。
  58. 島村武久

    政府委員(島村武久君) 私は、ソビエトにいたしましても、アメリカにいたしましてですね、放射能の害をきわめて軽く考えるような宣伝をいままでにしておったというふうには、実は感じ方といたしましていたしておりません。世界どこの国におきましても——もっとも私の承知いたします範囲は原子力の平和利用に関する面なんでございますけれども、明らかに原子力の開発を重要視するとともに、これに随伴する問題としては、放射能の問題に各国とも真剣に取り組んでおるように感ぜられるわけでございます。したがいまして、最近に至りまして特に放射能の害を強調するような傾向にあるということは、私自身承知いたしておりません。
  59. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 今度は原子力委員長にお伺いするのですが、原子力の研究開発というようなことは、いま世界の各国が競ってやっておる。そうして、そのうちの進んだ国において、また特に工業の進んだ国においては、これから原爆なり水爆なりつくり出すことができる能力を持った国ということでいろいろの国があげられておるが、原子力委員長のほうでは、米、英、ソに続いてフランスがいますでに持っておるのでありますけれども、さらに、その他の国においてそういう能力を持ち、そういう兵器をつくるための努力をするとか、あるいはつくろうという意思を持っておる国があるというふうにお考えですか。中国はすでにみずからそのことを言っておりますけれども、その他の国においてこういう傾向を持っておる国があるか伺いたい。
  60. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまのように、核の爆発物質を製造するそのためには、濃縮施設または再処理の施設が必要であろうと思います。そういう施設を持っておる国がどれだけあるか、こういうように考えますと、現在のところ、どうも米ソ、イギリス、フランス、こういうところではないかと思います。わが国は、御承知のように、原子力基本法ではっきり平和利用にこれはもう専念するようになっておりますので、いまの施設を持ちましても、それはどこまでも平和利用でございますから、ただいまのような疑念を持たれるような国ではないのでございます。しかしながら、他の国におきましてその施設がだんだん整備されてくると、これは可能だということが技術的には言えると、かように考えます。
  61. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 それから、日本においてはこれはもうすでにできておると思うのですけれども大気圏内あるいは大気圏外の核爆発が行なわれた場合には、探知する能力は持っておるわけですか。たとえば、いままでソ連あるいはアメリカ実験をしたそのときに、日本はその実験をことごとく探知できておるか。その点はどうなっておりましたか。
  62. 島村武久

    政府委員(島村武久君) 世界どこの国で行なわれますいかなる規模の大気圏実験も探知し得るということは、申しにくいと思います。現在日本には、核実験の探知のできます微気圧計は八カ所に設けられておりまして、その探知能力は、いままでの実験結果に徴しますと、六千キロメートルまでの遠いところで行なわれました一メガトン以上の実験ならば探知し得るという程度でございます。どこの地点で実験が行なわれたか、あるいは何時何分に行なわれたかというような詳細の推定をいたします際には、それらの八カ所の微気圧計のほかに、長野県の松代にございます高感度の地震計の記録も、同時に結果解析のデータとして使用いたしまして判定をいたすわけでございます。したがいまして、非常に遠いところの非常に規模の小さいものにつきましては、日本で探知する能力はないということになります。
  63. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 たとえば、フランスがいま南太平洋で原爆なり水爆なりというものを実験をやろうということで準備をしておりますが、あの辺でやられるのについては十分に探知する能力は持っておるわけですか。
  64. 島村武久

    政府委員(島村武久君) おそらく探知し得ると考えております。
  65. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 フランスがやるということは、非常に私ども遺憾なことであり、反対する態度をとっておる。おそらく日本政府もそういう態度をとっておると思うのでありますが、もしフランスが南太平洋でこれをやりました場合、日本に降る放射能はどういうふうになりますか。
  66. 島村武久

    政府委員(島村武久君) おそらくは、アメリカが南太平洋でやりましたような類似のケースとなるのではないかというふうに考えております。詳細は、今後の結果を見なければならないと思います。
  67. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 いずれにせよ、フランスが南太平洋で核爆発実験をやりますというと、やはり相当放射能の灰が日本にも降ってくる、そう解してよろしいですか。
  68. 島村武久

    政府委員(島村武久君) 南太平洋で行なわれましたアメリカ実験のあとで観測いたしました場合は、先ほど申し述べましたソ連実験に比べますと、非常と影響が少なかったようにデータ的には承知いたしておりますので、程度の問題でございますけれども、フランスで行なわれれば日本に相当程度降ってくるという言い方は、必ずしも適切でないと考えておるわけでございます。いずれにいたしましても、行なわれれば大気中に放射能が出ることは確かでございますから、影響皆無というわけにはまいらない。結果についてそれが相当と言えるかどうか、これはフランスのなにをやってみませんとわからないと考えております。
  69. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 もし、将来中国がやるといたしましたら、これはおそらく西北部の砂漠のほうが一番やり得る可能性のある場所だと思うのですが、その場合には日本に放射能はどういうふうに及びますか。
  70. 島村武久

    政府委員(島村武久君) 気象と申しますか、地球上の気流の関係等から判断いたしますと、中共がもし西域のほうでやります実験を予想いたしますと、ソビエトで核爆発実験が行なわれましたのと類似のような形態が日本にあらわれるのじゃなかろうかというふうに考えております。
  71. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そうすると、やはりジェット気流に乗って相当な灰が降る、こういうふうに考えられますか。
  72. 島村武久

    政府委員(島村武久君) 一般的にそういうふうに見られておるわけでございます。
  73. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 一つだけ科学技術庁の方が見えておられますからお尋ねしたいのです。  科学技術庁にお尋ねするのが適当かどうか私よくわかりませんけれども、しかし、政府のほうでは科学技術庁にお聞きするよりほかないと思うからお聞きするのですが、外国の資料などを見ますと、いかにして戦争を防止するかの問題を主題にしたものの中に、特に最近などは、原水爆というよりも、もっと危険なものがあるんだということで、たとえば細菌戦ですね、細菌戦そのものが、細菌ということはこれはいまさら言われたことじゃないと思うけれども、しかし、最近特にその問題を取り上げてきている。一体兵器として細菌というようなものが特にそういうふうに問題に取り上げておられるのは、科学技術的に見て一体どういうわけだろうかと私疑問に思っているのでお尋ねするのですが、これは科学技術庁でもそう精密におわかりにならないだろうと思うのですが、ただ、科学技術の見地から推測して、そういうことが一体実際に現実的になってきているのかどうか、その辺お尋ねしたいのですが。
  74. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうもお尋ねの御意見がどういうことかわかりませんが、私どものやっておりますことは、みんな平和というその立場においてのいろいろ科学技術の研究をいたしておりますが、ただいま軍事的な見地に立っての御意見でございます。そういう点を私のほうはあまり研究しておらないものですから、どうも答弁するということはいかがかと思います。
  75. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) それでは、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時四十二分休憩    ————————    午後一時十八分間会
  76. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) ただいまより外務委員会を再開いたします。  午前に引き続き、大気圏内、宇宙空間及び水中における核兵器実験禁止する条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。
  77. 曾禰益

    ○曾祢益君 本条約の背景等については、いろいろ各同僚委員質疑に対する御答弁等もありましたので、なるべくそういうものには触れないで、条約そのものに即して若干御質問申し上げようと思うのです。今度の条約は、戦後のいい意味での平和に向けての非常に大きな政治的の意味のある。ことに軍縮に関連した非常に重要な条約だと思うのですが、あまりにも政治的な観点から急速に三大国の間に話が進み、したがいまして、わが国なんか、この重要な条約の案文等に参加していなかったので無理もないと思うのですけれども、やはりこれだけの重要な条約ですから、やっぱりそれらの字句についても若干はっきりしておいたほうがいいと思う点があるわけです。  第一に、この条約政府提出のあれによると、前文の第三行目から「国際連合の目的に従つて厳重な国際管理の下における全町的かつ完全な軍備縮小に関する合意をできる限りすみやかに達成し、」云々と、こうありますが、この「国際連合の目的に従って」という字句は、どこにかかるのでしょうか。というのは、普通に読むと、国際連合の目的に従って完全な、全面的、要するに軍備縮小の合意の達成というところにかかるのかと思うのですが、あるいは、国際連合の目的に従った厳重な国際管理のというふうにも、英語なんか見ればとれなくもないと思うのですが、どっちがほんとうの解釈なのか。私はロシア諸はちょっと読めないので、ロシア語のテキストはわかりませんが、どういうふうな関係になりますか。技術的な面は、条約局からでもいいですけれども、まず、この点を御説明願いたいと思います。
  78. 徳久茂

    説明員(徳久茂君) 事務当局からお答えいたしますと、いま御質問の、「国際連合の目的に従つて」という字句は、「達成し、」にかかるというふうに解釈いたしております。ロシア語の表現もそういうふうに読みとれるような表現になっております。
  79. 曾禰益

    ○曾祢益君 もう一つそれに関連して伺いたいのですが、ここには、「厳重な国際管理の下における」要するに軍縮と、こうなっておりますが、この字句と、ここに至る過程においていろいろな意見が三国間、特に米英とソ連との間に、軍縮の基本的な方式について、ことに査察や管理の問題についていろいろな意見の相違があることはお互いに承知しているわけですが、「厳重な国際管理の下における」ということばで結局合意にしたわけなんですが、何かそこの辺の点について、たとえば有効な査察というような問題との関連において「厳重な国際管理」というものをどういうふうに彼らは考えておったのか。その点はどういうふうな情報なり判断をされておるのか。
  80. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) ただいまの御質疑は、「厳重な」という用語について特別の意味があるかということだと存じますが……。
  81. 曾禰益

    ○曾祢益君 そうじゃない。そうじゃなくて、「厳重な国際管理」という観念は一応わかるのですけれども、「厳重な国際管理」ということについては一応両方とも異議は申し立てない、だけども、それがさらに今度はかりに「厳重な国際管理」というもののもう少し突き進んだ形として、国際管理には違いないけれども効果的な査察制度というようなことになるとなかなか意見が合わないんじゃないか、両方の。なぜ「厳重な国際管理」ということで大体三国の意見が一致したのか。それらについて従来の国連における決議なり軍縮会議における両方の主張なりから見て、なぜ「厳重な国際管理」ということばに落ちついたのかということを外務省はどう判断しておられるのかということを聞いているのです。
  82. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) この「厳重な」ということに落ち着いた交渉の過程のことは、私どもよく存じておりません。この条約の直接の交渉は、御存じのように、米英ソの直接連絡でだいぶやっておったようでございました。最後の一週間ぐらいモスクワで交渉したわけでございますが、特にここにつきましては、アメリカ、イギリスで発表しました注釈書みたいなものでも触れておりませんので、はっきりしたことをお答えいたしかねます。
  83. 曾禰益

    ○曾祢益君 まあ、一応ごもっともな御答弁で、だから私も初めから、これには起案までの段階から日本が参加しておらなかったのですから、一応そういう御答弁であろうということはわかりますが、しかし、これは外務大臣に伺いたいのですが、そういうような程度のものじゃ困るんじゃないですか。日本が、やっぱり一昨日の本委員会における質疑応答にもあらわれているように、しっかりした、核兵器を中心とすることにはなりましょうが、国際軍縮、ここの目的である完全にして全面的な国際軍縮ということを崇高な目的とする以上は、やはり軍縮の基本的な方式とでも申しましょうか、その軍縮は同時にやらなきゃいかぬ。片方の陣営だけが損をしたんじゃ、軍縮といったって実際上できない。両方の信頼感が足りないからこそ、やはり「厳重な国際管理の下に」、いわゆるインチキが行なわれぬような査察制度なんかが必要だ。いろいろな問題がそこにからんでいるわけですよね。核実験禁止条約であるばかりでなく、軍縮への非常な今後の足がかりとして重要性をわれわれは認めているこの条約で、少なくとも戦後こういう問題、日本が参加する条約としては当然でしょうが、冷戦の曲がりかどに来た条約としても、私は非常に意義のあるこの条約で、軍縮の方式が一体「厳重な国際管理」という文句でいいのか。あるいは日本の目から見ると、まあそれに反対じゃないけれども日本方針からいえば、もっと有効な査察制度がどうしても必要だというふうに考えておられるのか、そこら辺のことは、ただ「厳重な国際管理」と三国がきめてしまったから、日本がただサインするかしないだけだというような受け方じゃ私は済まないと思う。この文章はこうなっているが、この際外務大臣の国際軍縮に関するそういう一つのフォーミュラ——方式としてのはっきりとした御見解というものはどうなのか伺いたい。
  84. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) たびたび申し上げておりますように、ただいまのあるがままの状態、大きな戦争にならぬで、大きな戦争が回避できておる状態というのは、ともかく米ソを頂点にいたしました両陣営の軍事力というものが、正確な表現ではございませんけれども、バランスがとれておる、そういう均衡の上に成り立っているとわれわれは認識をいたしておるわけでございます。したがって、そのバランスをくずすということは、逆に平和が脅威になると考えております。したがいまして、軍縮はこの軍事力のバランスの状態をくずさないでその水準を下げていくということでなければならないのではないか。いま御指摘のように、同時に厳重な査察を伴って実効があがるようにやっていかなければいけないと思うのでございます。そういう意味で、日本政府としては有効な査察を伴う軍縮でなければ意味がないのではないかと、実効的ではないのじゃないかと考えております。ただ、この条約で、いま御指摘のように、「厳重な国際管理」という表現で、ばく然と関係国が同意した。これはたいへんもの足らぬことでございますけれども、ただ、逆に「厳重な国際管理」ということばが出たことは、一つの大きな進歩であろうと思います。核実験については探知技術の発達を待つということでなくて、それはともかく「厳重な国際管理」が要るのだというプリンシプルは、内容はともかくとして合意し合ったということは、大きな進歩であったと思うのでございます。さらに、これをいまの段階で掘り下げてこの意味内容するところを規定していこうとすれば、合意を見ることができなかったと思うのでございまして、いまの段階におきましてはやむを得なかったと思うのでございます。日本政府としてどう希望するかと申しますと、有効な査察を伴う軍縮でなければ実効があがらぬだろうと思います。
  85. 曾禰益

    ○曾祢益君 大体そういうお考えでけっこうだと思うのです。  そこで、この地下爆発実験がなぜ今度残念ながら協定事項から除外されたかというと、むろん、これは主としてアメリカ側地下爆発実験による兵器開発をやりたいという意向があったことは否定もできませんし、アメリカ側もそのことをはっきり言っているのですが、しかし、アメリカ側でも、それこそ、有効な査察ができるならば、地下爆発実験を含めた協定が、より望ましいということを言っていることは、これは事実だと思うのです。だから、そういう意味からいっても、「厳重な国際管理」ということにだれも反対はないし、また、そこを三国が認めたといいますか、むしろソ連側が認めたことは一つの進歩であるけれども、その解釈になると、ソ連からいえば、トロイカ方式でもいいとか、実際上は現地を外国側のチームによる査察に対しては、非常なやはり警戒と反対があることも、これは否定できないと思う。その状態においては、いわば前文においては非常に全面的な完全軍縮の際における一つの条件として、基本的には「厳重な国際管理」が必要だということを言っておきながら、現実には地下爆発実験がやめられなかった直接の原因には、単に地下爆発実験を続けてやりたかったからという意図ばかりでなく、やはり有効な査察制度に関する両方の折り合いがつかなかった。それについて残念ながら、両方に言わせれば、まるい文句で言う「厳重な国際管理」の軍縮が必要だと言いながら、一番われわれがやってほしい地下爆発実験をもやめさせるためには、結局現地における地震と地下核爆発との違いを探知する制度、したがって、それを査察する制度も必要であるという米英側の意見に、ソ連があるときには賛成するごとく、あるときには頭から暫定するがごとく、究極においては有効な査察制度に関する双方の意見が合致しないということが、地下核爆発実験をこの協定に入れて、つまりやめる対象に含められなかった最大の原因じゃないかと思うのですが、その点はどうですか。
  86. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私も仰せのとおりだと考えております。
  87. 曾禰益

    ○曾祢益君 この第一条の2ですね、「この条約の各締約国は、さらに、いかなる場研においても、1に掲げるいずれかの環境の中で行なわれ、又は1に規定する結果をもたらす核兵器実験的爆発又は他の核爆発の実施を実現させ、奨励し、」云々と、この「又は1に規定する結果をもたらす」というのは、主として1のbの場合を言っているのか、この辺のことを字句の説明をひとつ、条約局長からでもけっこうですから、お願いしたいと思います。
  88. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 仰せのとおりでございます。「1に規定する結果をもたらす」という字句は、第一項のbのことに言及しているわけでございます。
  89. 曾禰益

    ○曾祢益君 結局それだけですか。そうすると、「1に掲げるいずれかの環境の中で行なわれ、」というのは、1のa、そうして「又は1に規定する結果をもたらす」というのは1のb、大体そういうことですか。
  90. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) そのとおりでございます。
  91. 曾禰益

    ○曾祢益君 この2の、締約国は何を差し控えるかということの内容になるわけですが、どこまでが禁止になるのか、つまり「核兵器実験的爆発又は他の核爆発」、兵器でなくても、核爆発の実施ですね、これを「実現させ、奨励し、又はいかなる態様によるかを問わずこれに参加することを差し控える、」この各締約国の差し控える義務の内容と限界ですね、これは爆発というところにどこら辺まで関係してくるのか。たとえば向こうに、核爆発の、核爆発と言ってはいかないですか、核兵器のごく秘密のたとえば図面というようなものがあるとして、そういうものをくれてやることは、一体差し控える役務の中に入るのか入らないのか。そこら辺のところはどの程度、まるい文句で明確になっているのか。これは非常に重大なことだと思うのですが、御説明願いたい。
  92. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 私も専門でありませんので、十分なことは御説明できませんが、核爆発だけが禁止されておるのであって、たとえば統御された核分裂、何といいますか、爆発に至らないようなものは禁止されておらないということでございます。  それから一項で禁止されておるのは、自分がやる。第二項で禁止されておるのは、一項で禁止されておるような同じ内容のことを第三者を使うといいますか、そういうものを間に介在させて抜け道に使ったりするようなことがないように、同じようなことをほかの人に奨励したりあるいはほかの人がやるのに参加してはいけない、こういう趣旨でございます。
  93. 曾禰益

    ○曾祢益君 むろんあれですね、第一条の一は、自分で一切の核爆発はやらない。核兵器であろうと何であろうと、みずからやらないということ、防止する、実施しない、やらない、禁止する、しないということ等いろいろありますが、これはやはりみずからの行為のことですね。2のほうは、第三者というか、ほかの国、ほかの人等がやる場合、それをいまおっしゃったように、擬装して第三国なり第三国人にやらせる場合もあろうし、そうでなくて、たとえばソ連が中共に手助けする場合もあろうと思うのですね。だから、そういうものを含めてそれを差し控えろということになるわけです。ただ問題は、したがって、その差し控えの禁止の内容が、ただ爆発に直接関係なければ、あとは完全にさっきの岩間君の話じゃないけれども抜け穴なのか、そんなルーズなものでやったのか。これは相当やっぱり米英ソがこれに踏み切るにあたって徹底的に議論をしたあげくこの字句で妥協しているのでし上うから、まあ、そういう会議の性質上、はっきりした目につく議事録等もないと思いますが、あっても、他の国や何か見せやせぬけれども、これは非常に大きな、特に核の拡散防止、擬装して上目分の国でやらない場合もあろうけれども、ぼくら一番心配する拡散防止という——フランスも中国もみずから自分の力でやるとは言っていますが、今後のいろいろな動きいかんによっては、援助を受けてということがあり得るわけです。ほかの国が、締約国が援助してやる場合というのが想定できないこともないわけですね。したがって、この差し控え、第三国に対する援助の差し控えということの限界ということは、これはやはり米英ソ三国自身が非常に大きなウエートを持って慎重に検討したのだと思うのです。だから、われわれがこの条約そのもののメリットを評価する上にも、その点がどの程度きっちりしているのか、どの程度抜け穴があるのかということは一つの非常に重大な問題だと思うのですが、もうほとんど抜け穴を見られるのですか、どうなんですか。核兵器の秘密をくれてやっていいんですか。実験爆発さえ直接奨励したり参加しなければいいというわけなんですか。どうなんです。
  94. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) この「奨励し、」云々というような抽象的な表現になっておりまして、それじゃ、たとえば、これから実験をやろうとしている国に図面をやるということは奨励することにならないかというような、非常にデリケートなところの御質問でございますが、実際に公刊されたものなんかでは、何もその点に触れている証言などはございません。ただ、いろいろなところで、アメリカ政府などでは、これはとにかく核実験だけの、核爆発だけの条約であるということを強調しておるだけでございまして、そのいまの二項の第三国との関係におけるこまかいところの説明までは至っておりませんので、はっきりしたことを御答弁申し上げかねます。
  95. 曾禰益

    ○曾祢益君 これは非常に大事だから、何も専門的でも何でもない、きわめて政治的な問題で、大臣から御答弁願いたいのですけれども、要するに、この条約全体が残念ながら核兵器禁止まで行っていないことはお互いに承知の上なんで、その最もまだ幼稚な段階の地下爆発を除く、とにかく爆発はやめよう、その程度ですから、それは私はこの条約全体に、だからといってけちをつけようとかなんとか、そんなことを言っているのじゃないのです。ただ、この条約の国際政局に持ついろいろなやはり重要性からいえば、これはもう純粋に実験を援助さえしなければ、かりにソ連が気が変わって中共に原爆の秘密を与えようが、アメリカとフランスが仲直りして、むしろドゴールさんが高い鼻を曲げてでも結局イギリスに与えた程度の原爆のあれをもらう、そのかわりアメリカとしては独自のやり方でやると、私はそういうこととが国際政治のあれからいってあり得るかもしらぬ。あるいはそれを絶対に否定できないようなあれかもしれぬ。核がこれ以上無制限に拡散するよりも、そういうような形になって、しかし、フランス、ドイツが個々に核兵器を持たないような形で、NATOという形で核兵器を集約しておくというような形も現実に国際政治の面において考えられるのですから、したがって、そういう核兵器の拡散の禁止にはこれは実際上ならないだろう。あくまで爆発に関連する面接の奨励、援助、参加、あるいはむしろ藤崎条約局長が言ったような、第二国を援助することが主でなくして、第三国という形で、締約国が自分の禁止義務をすりかえて第三国へやったんだから知らぬというカムフラージュを防ぐようなのが趣旨なんで、あくまで実験爆発に対する直接の参加でなければこの条約の問うところでないのだ、核兵器の秘密をどこの国にばらまこうが、核兵器の拡散の禁止がこの条約ではできないのだ、やむを得ないのだ、こういうものなのかどうかということ、この条約の政治的メリットというものをもっとはっきりしてもらいたい。大臣。
  96. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) この条約の解釈から申しまして、おっしゃるとおりだと思います。だからといって、この条約を軽く評価していいということにはならないと思いますことは、またあなたの御意見と私は全く同感でございます。拡散問題は、軍縮委員会のほうで一つの大きなテーマとして論議の対象になっておることは御案内のとおりで、まだ非常に初期の政治的段階にあると思うのでございまして、条約に結晶してまいる段階でまだとてもそこまで行っていないと思うのでございます。爆発という点につきまして、これだけ合意を見たことは大きな意味があったと思います。まあ鵯越ではございませんけれども、シカが越えた道でございますから、今度は馬が越えられないはずはないと思います。次々と、この条約の爆発から、さらにいま御指摘のような面にどこまで進めるか、新たなテーマでまた別な条約ができるか、そういったのは将来にかかった問題じゃないかと思います。
  97. 曾禰益

    ○曾祢益君 その解釈は何かあるでしょうか。三国の間で、たとえば米英ソ三国ですね、現につくった米英ソ三国政府の解釈、確かめて間違いない、まあ残念ながらあくまで拡散防止全体の問題とは無関係に、爆発のことだけの、第三国等を通ずる核爆発禁止するという程度しかなっていないのだということだけは明確ですか、どういう程度に明確ですか。
  98. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 他国に核兵器を引き渡すようなことがこの条約禁止されておらないということは、米英の当局者も言明いたしております。ただ、核兵器の拡散問題の全般につきましてこの条約が引き渡しを禁止していないにしても、全然効果がないかというと、そういうわけではないわけでありまして、ラスク長官もこの条約には今後十年間以内くらいに核保有国になり得るような国が大多数これに署名しておる、署名の意向を表明しておるのでございまして、そうすると、核実験をすることが非常に困難かつ高価になるからなかなか核兵器が持てなくなるだろう、そういう意味で拡散防止に寄与する、そういう趣旨のことを述べております。
  99. 曾禰益

    ○曾祢益君 そこで、その拡散防止がやっぱりどうしても目的であって、最終目的は全面的な軍縮、核兵器のみならず通常兵器を含む全面的な完全な、また同時履行的な、場合によっては漸進的にやるかもしれませんが、そういう軍縮であろうことは当然ですけれども、それまでに達する前に核兵器禁止したい。核兵器禁止するのには、核兵器禁止する前に実験をやめて、そして拡散をまず防止しなきゃならぬ。拡散を防止するためにも完全な実験を、地下を含めてオール・ストップということに持っていけば、何といっても国際的な圧力がこれから実験爆発をする国に非常にかかってくる。抜け道はないにしろ、そういうやはり欠陥がいまの条約にある以上は、地下爆発というのがある以上は、非常に拡散防止に対する道義的な責め方として弱点があるわけです。この拡散を防止するためには、やはり地下爆発実験というものを禁止するようにやっていかなきゃいかぬ。といったって、日本の力だけでむろんできるわけじゃありませんが、一昨日も議論になっておるように、けさも議論になったように。したがって、私はこのフルシチョフの書簡に対して、直ちに無条件に飛びつけとは思っていない。地下爆発を、実験禁止するようにするのにはどうしたらいいか、どうしても先ほど来申し上げているように、有効な査察制度、それを、しかもミニマムな——ぜいたく言ったら切りがないでしょう——ミニマムな有効な査察制度を、米英側もミニマムにしぼり、ソ連もそのミニマムのものは厳重な国際管理が必要だという原則から見て受け入れるというようなことで、やっぱりそこに持っていって、それでいわゆる抜け穴のない、全面的な核実験禁止に、段階にまず持っていく。そのことによって新たに核実験をやろうという国が世界世論の前にやはり孤立していくように持っていくことが一番重要だと思う。そういう意味からいっても、これは佐藤委員その他の諸君から言われた、やはり日本自身が軍縮問題に取り組む姿勢と態勢を国内的にも整えるとともに、たとえばフルシチョフからそういう意見があったときに、そのこと自身に、ただ日本が有効な査察制度がなければ地下爆発実験できぬよという剣もほろろのあいさつをする前に、外務大臣もすでに話をミコヤン氏とやっているようですけれども、やはり日本自身が国際軍縮委員会、十八カ国委員会に加わり、そしてそういうところの場で、単にお願いします、核実験やめましょうと言うだけでなしに、もう少し日本の特殊な憲法、特殊な原爆に対する国際的な発問権を持ちつつ、具体的ないわゆる外父上オネスト・マーチャント、正直な商人という立場から、何とかして地下爆発実験をやめるための最小限度の、信頼できる最小限度だけの、これだけなら信頼できるという現地査察というものの案をここに具体的に出して、そしてこの地下爆発実験に関する保有国の三カ国の協定に持っていく、こういう努力を、私は何を言うよりも今後一番日本としてやらなきやならないし、その一点から始めるのが一番核兵器禁止、軍縮への最初の正しいアプローチじゃないかと、こう思うのですが、外務大臣いかがですか。
  100. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私も全然同感でして、そういう筋道を通した貢献のしかたをすべきじゃないかと思います。時と所かまわずいろいろ声明を出すのも、悪いとは言いませんけれども、だが、それだけではうつろな感じがするわけでございまして、いま仰せのような方向で歩んでいきたいと思います。
  101. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連して。いいですか。
  102. 曾禰益

    ○曾祢益君 どうぞ。もう終わりました。
  103. 羽生三七

    ○羽生三七君 一昨日もきょうも、それからいま曾祢委員からも指指がありましたが、これをより完全なものに、全面核停に持っていくための努力日本という立場でどういう形でとられるかという問題はその点にあると思うのです。私はこの条約のいろいろな不利、欠点はよく承知いたしております。しかし、それにもかかわらず、なおかつこれを現状のままで放置しておくよりも、一歩前進であるという立場でものを見ておるわけですが、それをよりまた完全なものにするためにはどうしたらいいかという場合、いま、たとえば十八カ国の軍縮委員会日本も将来参加をして、あるいはまた国連の場でそういうあらゆる機会を通じてその完全達成のために努力をする。その必要性をいま大臣も認められたわけです。ですから、それをやらないと、この条約を批准したことそのものは日本立場からいえばそれほどたいして意味のあることじゃない。むしろかえって問題点すらあるわけであります。ですから、どうして日本がそれを達成するかということになってくると、私は日本のいまの政府の熱意にかかわってくると思う。たとえば十八カ国軍縮委員会にどうして参加するのか。どういう形をとって日本がそれじゃ意思表示をして参加をさしてくれろと言うのか。その場合一体どうするのか。国連の場で何らかの意思表示をするのか。適当な国を頼んで仲介の労をとってもらうのか。そういうふうに考えてくると、ここでは一応そう言っても、具体的に日本がそういう国際機関への積極的参加を実現するための道は、必ずしもそう近くはないと思う。ですから、そういうコースも想定をして、そうしてあらゆる場面に対処して——そのつど私は一々声明を出せとは言いませんが——対処して、日本として国際的に寄与し得る有効な条件というものを確立していかなければならぬと思う。それにはどうしたらいいか、この問題があると思います。  そういう順序を迫ったやり方のほかに、もう一つ端的に日本がいますぐできることは、私は核非武装宣言だろうと思う。これは国会なり政府自身がやるべきだと思う。前々からこれは歴代の総理大臣あるいは池田総理もそうですが、まあ声明したからといって格別たいして意味があることじゃないと思いますが、別にそれはマイナスになることじゃない。積極的な意味の結びつくものですから、たとえば核非武装を宣言する。これも一つ行き方だと思う。それから、そういうこと以外に、いま申し上げた具体的に国際機関に日本が有効な発言をなし得るためにどういう措置をとるか。そのことがもっと具体的に検討されないと、単に国会における質疑応答というただ一片の行事で終わってしまう。私はその点でもっと政府が積極的に具体的な道を想定をして、こういう手順を迫ってこうしていきたいということまで含めてお考えをいただいたほうがいいんではないか、そう考えまするが、この点についてひとつ御見解を承りたい。
  104. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおりでございまして、この間も申し上げましたとおり、国連ではどの分野に力点を置いてやるかという問題があると思うのでございます。何もかもやりたいからというわけで、いろいろアジアの諸国からも投票をお願いするわけにもいかぬし、協力を願うわけにもいかぬと思うのでございまして、国連活動全体で日本のエネルギーの配分を考えていかなければならぬと思います。そういうことと、それから、佐藤先生からもこの間御指摘がありましたように、日本自体の軍縮に対する研究の蓄積は相当ないといかぬと思うのでございます。ずいぶんおくれておるわけでございますから、大いにかけ足でやらなければいかぬと思います。そういうこととあわせて、具体的に手順を踏んで考えていきたいと思います。いま、いつどういう形でというところまで別に固まっておるわけではございません。羽生先生おっしゃったとおりに、運び方は具体的に手順を踏んでやらなければいかぬと思います。
  105. 羽生三七

    ○羽生三七君 そうすると、そういう手順を追って積極的に前向きで進む意思は持っておいでになる。ただ、その方途をいま検討中と了解してよろしいのかどうか。
  106. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおりです。
  107. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 最後に若干お伺いしたいのですが、先ほど曾祢君の言われました核拡散の問題、これはやはり、もしいま持っております国がさらに広がってくると、いよいよ核軍縮というものは非常に困難になってくる。この見通しから申しますと、多少広がってくる可能性があるわけでありますが、すでにソ連のほうでは、中国から要求があったけれどもこれを与えない。そのために中国とソ連との争いの一つの原因になっております。これは中国側では明らかにしております。さらにソ連のほうは、いわゆる衛星国にも核兵器を与えておらぬ、こういう状態です。それから、アメリカのほうはどうかというと、まあ、あまりまだ現実には与えておらない。しかしながら、NATOに核戦力を持たす、こういう問題を通じて西ドイツに与えようというような、間接的な方法で西ドイツを満足させようというような考え方を持っておる。西ドイツはこれを要求している。ここいらに一つ危険があると思う。フランスと中国は、今回この条約に加入しておりません。フランスが中国に核兵器を与えるかどうかというようなことが、あるいはそのフランスと中国との間に何か密約があるのじゃないかというようなことまで伝えられている。私はそう信じませんが、過日NATOの会議におきまして、クーブドミュルビル氏が、フランスとしてはそういうものを各国に与えることはないという言明をした、こういうことが新聞に伝えられておりますが、それについて何か情報をお持ちないだろうかどうだろうか。
  108. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そういうことを私のほうも聞いております。
  109. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 先ほど曾祢君の言われましたように、私はやはりこの核兵器が拡散されていくという問題については、日本としては非常にこれは考えなくちゃならない。で、まあ日本自身が持つことはもちろん、さらに、日本アメリカ核兵器を持ち込むこと、あるいは日本の周辺に核兵器を配置しておることにもわれわれは反対でありますが、同時に、両陣営の国々の核兵器の拡散、やはりこの条約禁止後、とるべきやはり重大な措置として、日本もまたあらゆる機会を通じて努力すべきである、こういうふうに思いますが、その点について、もう一度外務大臣の見解をお伺いしたいと思います。
  110. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日本の核に対する政策は、たびたび申し上げておるとおりでございます。そういう一番徹底的な政策をとっておるわけでございまして、いわんや、拡散政策賛成のはずはないわけでございます。拡散防止ということにつきましては、どの国にも劣らず私ども反対してまいらなければならぬと思います。
  111. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 次に、従来中部ヨーロッパにおいて核非武装地帯をつくろうということがラパッキー・ポーランド外相によってまず提唱されてまいりました。この核非武装地帯の問題が今日漸次、まあ理想的なものからやはり実現性のある問題として考えられるようになってきていると思う。たとえば、ラテン・アメリカにおいて、あるいはまたアフリカにおいて、そういう問題が現実的な問題として、現実的な政策として考えられている。これについて、私どももやはり実験禁止完全禁止あるいは核拡散の反対、核軍縮への方向とともに、この核非武装地帯というものをつくらなければならぬ、こういうふうに考えている。特にアジアにおいてそういうものができることが、やはり核戦争に対して日本を守る、そうして、世争の平和、またアジアの平和を守る問題として必要だ。もうこの問題についても私は直ちにこういうものができるとは思わぬけれども、しかしながら、われわれはやはりこういうものを設けるということを考えつつ、そして、その方向に向かって努力すべきだと思う。この問題について外務大臣考えておることがあるかどうか、そして、そういう方向に進めることに賛成かどうか、その点をお伺いしたい。
  112. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど曾祢委員の御質問にお答え申し上げましたとおり、われわれは、いわゆる平和のよって立て基礎が軍事力の均衡にあるということでございまして、極東の地域もその例外でないわけでございます。したがって、極東地域の非核武装という問題だけを、世界の平和から切り離して論じられないと考えます。極東地域におきましては、核保有国がそれぞれ各相互の軍事力のバランスを持っておるわけでございまして、したがって、そういう状況のもとで非核武装地帯をつくるというのは、即核保有国相互の間にそういう了解ができなければいけないわけでございまして、で、それは極東地域だけでなく、全体としての軍縮の課題になってくるわけであろうと思うわけでございます。したがって、ひとり極東だけの核武装宣言を日本がやってみても、これは非常に非現実的なことになりはしないかと思うのでございます。全面完全軍縮の進め方の一環として、これをどのように位づけていくか、そういう接近の方法をとらないといけないのではないかと思うのでございます。ただ、アジア地域で非核武装地帯を設定するのはどうかという問題だけを、取り離した問題としては取り上げられない、そういう取り上げ方は非常に現実的でないのではないかというように考えております。
  113. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 私の言うのは、いますぐそれだけ取り出してやれというようなことは申し上げていない。私は、やはり核実験の全面的禁止、それから両方でもって核兵器生産を減らしていく。あるいはまた、核兵器の軍縮を漸次進めていく。それからまた、さらに世界的にだんだん核非武装地帯をつくろうという各国の動きが地域的に起こっておる。それらのことと関連して、そうして、日本もまたそういう方向考えていくべきではないか。こういうことを申し上げたので、ただいますぐということを私は申し上げてない。そういう事態が来ることも予想して、日本としてはそういうものに対する心がまえをやはり持っていくべきではないかということをお伺いしたのですがね。その点はどうでしょう。
  114. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのように、全面完全軍縮の一環としてこの問題は検討に値する問題でございまするし、また、そういう状態が招来されることは希望すべきことでございまするし、われわれといたしましても、常時検討してまいらなければならぬ課題だと思います。
  115. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 一問だけ。先ほど曾祢委員政府側質疑応答を聞いておって、私新しく疑問が起こったのです。従来、私、第一条の第二項ですね、それを私なりに読んでおって別に疑問なかったのだが、質問聞いておって疑問起こったのだが、私、従来こういうふうに読んでおったのですがね。第二項によって締約国が義務づけられる。その義務の内容の範囲を、他国が、たとえば中共なら中共が核実験をやる。そういう場合、今度締約国であるソ連の義務がどこまで及ぶかというところで、この中共が核爆発実験をやるに必要な、まず一つは原料ですね、核燃料物質の提供だとか、あるいは技術的なノウハウ、そういうものを提供するのはこれは違反だと、こう読んでおったのだが、さっきの質問を聞いておると、そこまで及ばぬように何だかとれるようだったが、それでは、核実験の爆発というのは、抽象的、観念的で、現実の問題を想像してみると非常におかしいように思うのだが、そこはどうなんですか。非常に大事なことですよ。そこをはっきりしておかなければならぬ。
  116. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 「奨励し、」云々の内容でございますが、先ほどここでも申し上げましたように、実験のために必要な物質をやったり、図面をやったり、ノウハウを教えたりすることが奨励するということに該当する。どこまでが該当するかということは示されておりません。だから、どういうことをやったら奨励になるのかということは、非常にデリケートな問題でございますが、ただ、他面、核兵器を他国に渡すことはこの条約では禁止されていない。こういうことははっきりしているわけでございます。
  117. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 それを問題にしているのじゃない。
  118. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 奨励といりことば意味、内容については、はっきりしていないということです。
  119. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 ここには「いかなる態様によるかを問わず」というふうにある。これはあらゆる意味を包含しておると思うのです。これはおかしいですよ。これでは、それじゃもっと具体的に核爆発ということを、一体これで何が禁止されるのかわからぬのです、私には。それはちょっとおかしいじゃないですか。
  120. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 「いかなる態様によるかを問わず」というのは、「参加する」ということにかかっておるわけでございますが、「奨励し、」ということの内容は、つまりさっき言った、規定されておらないわけです。
  121. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 それは私には納得できぬな。そして、ここのこの条約の本旨からしても、この前文に書いてある趣旨からしてもですよ、おかしいな。核実験というのは、実験をするという目的と手段とこれは合体しておりますよ。意思と物質的の手段、方法というのは合体していますよ。それなくして核実験あり得ないでしょう。
  122. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 私の答弁がまずいかもしれませんが、とにかく核爆発を第三国がやることの助けになるようなことをしちやいけないということは、これははっきりしていると思うのでございまして、それではどういうことがその助けになるか、だからこの条約禁止されているのかということは、米英ソの当局者の口からははっきり説明が行なわれていないということだけを申し上げておるので、それが自由に行なわれるというようなことじゃないわけです。
  123. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 それは、それに必要なすべてのことはこれははっきりしないにしても、いま言った核分裂物質の提供とノウハウ、これくらい中心的のことはないですよ。
  124. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) つまり、核分裂物質というようなもの、核燃料とかいうものは、日本は協定で平和目的のために持つわけでございますが、そういうものは、それは実験をそれを使ってやろうという悪い心がけのものがおったら、「奨励」するというふうにあとからなるかもしれませんけれども、そこまでは禁止されておらないわけでございます。
  125. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 私のは、そういうことを言っておるのじゃない。ちゃんとはっきりした目的が明示されて、平和的に限定し、また、それに必要な材料を含まぬとおかしい。しかし、核実験をするためというのは、それは目的のための物質的の、技術的なこれが本体ですよ。これを禁止しなければ、第二項の意味がちっともわからない。
  126. 羽生三七

    ○羽生三七君 日本がそういう解釈をして、そういう考え方で進んでおったらそれでいいんじゃないですか。そうでない解釈でおったらおかしいことになる。前向きの解釈をして、いまの説明で……。
  127. 木内四郎

    ○木内四郎君 いまの政府委員答弁、私は助けになるということとエンカレッジということとはたいへん違うのじゃないかという気がするのですがね。何か向こうの助けになるような、「助けになる」というようなことを広い意味に解釈したらたいへんなことになる。エンカレッジというのは、それより一歩進んだことでしょう。そこはあなたのような答弁の、「助けになる」と言うと、これは非常に広いことになって、直接間接の「助けになる」という非常に広いことになる。条約はエンカレッジということばをつかっている。このエンカレッジということは、政流的の条約の解釈上の常識に従うよりほかないと思うのですけれども、「助けになる」というより一歩進んでおるのじゃないかと思う。そこはいまの解釈上の問題だけれども、これは結局、政治上の常識によってこのエンカレッジということを解釈するよりほかにないですよ。エンカレッジが「助けになる」ということでは、ちょっとことばのつかい方が——さらにこの条約を拡大して、条約に規定していないところまで責任を負うということになる。
  128. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ただいまの問題でございますが、これは条約局といたしまして信憑するに足る関係国のデータを持っていませんので、国会であいまいなことを申し上げるのはいかがかと存じての答弁でございましたが、この条約の本旨に照らしまして、いまの問題点につきましては、御承認をいただきましたあとにおきましても、私ども十分究明してまいりたいと思います。
  129. 曾禰益

    ○曾祢益君 やっぱりこれははっきりせにゃ困るですな。  さっきの私の質問に対する答弁は、これはわかります。全面的に核兵器の秘密、核兵器そのものを第三国に譲るとか、そういう意味で全般的の拡散防止、核兵器の拡散防止にはならぬ。だが、原締約国——米英ソ三国の意思の問題は非常に重要な参考だけれども、これは日本みずからが負う義務の内容の問題なんですからね。そんなあやふやなことじゃ済まない。これは日本の現政府を含めて、だれも自分で核爆発実験をやろうとは思っていない。しかし、日本のノウハウからいえば、第三国の核実験をやるくらいの知識というものは、いまあるかどうか知りませんけれども、将来あり得ることです。日本に悪い政府ができたら、たとえば日本の同盟国や与国か何かを通じて、自分じゃやらない顔をしてやらせることもあり得るわけです。そういう場合に、いま杉原君が言われたような日本政府の解釈としては、たとえば実験に直結するような——これにも問題はありますが、たとえば実験に直結するような形ではこの核燃料の提供や、いわんや実験に一切関係のあるような知識もノウハウも持つ。これは禁止されているものと思うのか、思わないのかということの政府の公の解釈がはっきりしないでは、この条約の採決に入れないことは明瞭じゃないですか。ですから、これは大臣が、若干時間をとってもけっこうですから、この義務の内容に関するもう少し明確なはっきりした解釈、答弁をして、それがいい悪いは別ですよ、それでやっぱり進めないことには、いまや私の見るところでは、同僚委員の御質問もやや終わりに近づいて、この重要な問題で返事なしに採決に入ることはできませんよ。時間をとってもけっこうですから、明確な解釈を出してください。
  130. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  131. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 速記を始めてください。
  132. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 第一条第二項の規定の趣旨でございますが、奨励することが禁止されていることは、これはもうはっきりしているわけでございまして、それで、ある国が他の国に原爆の秘密を与える、その結果その他の国が原爆を実施したということになれば、これは最初の援助した国は、この規定に反したわけでございます。ただ、そういう直接因果関係がなくて、ある行為をただそれだけ抽出しまして、それが奨励に当たるかどうかというと、非常にむずかしくなるわけでございまして、この条約の趣旨は、ともかく原爆が締約国以外のものによって実施されるのを奨励しちゃいけない、奨励になるようなことはすべて禁止されているのだ、そういう趣旨でございます。
  133. 曾禰益

    ○曾祢益君 それは、奨励のところはそれでいいかもしれない。局長が言われた、たとえば締約国が他の国を使って、そこで実験をさせるというような場合になったら、奨励ばかりじゃなくてどうなるのですか。たとえばいやなあれだけど、日本がどこか仲のいい国に核実験をやらす、そういう場合には、それはむろんいけないわけですね。そこで、具体的にそういう場合には核兵器の秘密は日本はおそらく持ついていないだろうけれども、ある程度実験爆発にプラスするような研究を教えてやる、あるいはプルトニウムを提供する。向こうは確かに実験爆発を、核兵器や何か知らないけれども核爆発する意図を持っている。そういう場合には日本もそういう国をやらせようという意味で機材なんかを向こうへ持っていくことは、奨励ではなくても、やはりいけないのですか。奨励の場合はどうなんですか。直接に実験爆発につながったらいけないというのですか。奨励の場合と、そうでない、締約国が第三国をしてやらしめるような場合と、その点がどう違うのですか。
  134. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) そういうようなことも禁止されておるわけでございます。
  135. 曾禰益

    ○曾祢益君 もう一ぺん全般的に説明してください。
  136. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 第三者をして爆発を起こさせたり、あるいは第三者が爆発するのを助けたり、助けるというのは奨励したり、あるいは第三者が生体となって爆発を起こそうとしているのに参加したり、すべてこれによって禁止されているわけでございます。
  137. 曾禰益

    ○曾祢益君 だから、実際の核爆発に関する知識は第三国にはやっちゃいけない、あるいは核爆発の核分裂物質の供給もいけない、こういうことになりますか。
  138. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 核爆発の起こさせ方に関する知識をやることは、これはいけないと思います。しかし、核分裂物質を平和目的に使うために、そういう条約上の保障があって第三国に渡す、こういうことはこれはちっとも差しつかえないと思います。
  139. 曾禰益

    ○曾祢益君 ですから、兵器に関する知識はやっちゃいけない。それから、核爆発に関するものは、平和目的でも核爆発に関する知識はいけない、こういうことになりますか。
  140. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 兵器に関する知識となると、若干間接になるかと思いますが、核爆発に関することだったら、すべてこれは禁止されておるということでございます。
  141. 曾禰益

    ○曾祢益君 物質のほうは平和的目的に限ることがわかっている場合にはむろんいいけれども、そうでない場合にはいけないわけでしょう。爆発であろうが、爆発はもうしないで、兵器だけに弾頭をつけるのだといってもいけないわけでしょう、実際には爆発をしないとは断定がないから。兵器に使われるような核分裂物資は、兵器に使われるかもしれない場合には、日本は輸出しちゃいけないわけでしょう。どうなんですか。
  142. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 爆発に関することでなければ、この条約禁止の対象になっておらないわけでございます。
  143. 羽生三七

    ○羽生三七君 それはやはり常識的な解釈で、この条約の基本的な精神がどこにあったかということを考えれば、おのずから出てくる結論だから、それを前向きで政府が解釈をして進めばいいと思う。
  144. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  145. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
  146. 岩間正男

    岩間正男君 私は日本共産党を代表して、本条約反対するものであります。  この部分的核停条約を平和への一歩だとか、放射能による大気汚染がなくなるとか、核戦争の脅威をなくす方向前進をもたらすものだという宣伝がされています。現に、政府、自民党がそう言っているし、また、民主勢力の一部にもそう思っている人もあります。しかし、この条約政府、自民党が言うような、核兵器全面禁止への一歩でもなければ、平和とか緊張緩和にとって何ら役立つものでも断じてないのであります。むしろ、アメリカ帝国主義が平和への道を進んでいるかのように人民をだまし、逆に核戦争準備を強めるためのごまかしの条約であることはいまや明らかであります。アメリカはその条約締結によって、世界人民の要求となり戦いとなった、核実験の即時無条件禁止核兵器全面禁止という根本的課題をたな上げすることをねらっているものであります。日本共産党が、この根本的課題を骨抜きにすることをねらった条約反対することは当然であります。それは日本人民の願望に沿うものであります。日本人民の利益と幸福を守る立場であります。過去十幾年にわたって、全世界の広範な平和擁護、帝国主義・植民地主義反対核兵器全面禁止の大闘争が巻き起こり、この戦いは大きく前進しました。日本人民の戦いがこの世界の運動の中で大きな役割りを果たしているのであります。しかるに、この条約はこれらの戦いに水をかけ、混乱させ、分裂させ、麻痺させることをねらっているものであります。現に、この部分的核停条約が三国間で結ばれたのち、アメリカとこれに従属する日本政府の策謀によって、日本の平和擁護・核禁止の戦いを停滞させ、分裂させようとしているのではないでしょうか。これで喜んでいるのはまさに米日反動であります。アメリカは真の平和や核兵器禁止への熱意を尽くしているなどとはとうてい言えないし、帝国主義者の侵略と戦争政策の本質はいささかも変わっていません。したがって、大気圏実験さえまじめに中止する意思はないのであります。  第二に、この条約はその前文で、いかにも核兵器禁止に熱意があるかのように誇張しながら、条約の本文では大きな抜け穴をつくっています。それはほかならぬ地下実験合法化であり、現にアメリカマクナマラ国防長官は、昨年八月アメリカ議会での証言で、「地下実験では、ほとんど全範囲にわたる核兵器開発実験と、その効果実験を行なうことができる」と述べて、地下実験を除外したたくらみを露骨に語っているのであります。その上、核兵器生産、貯蔵、運搬、使用のすべてがこの条約では事実上野放しにされているのであります。それどころか、アメリカは、条約第二条によって地下実験禁止についての拒否権を持っています。さらに、アメリカの都合の悪いときは、自分かってに一方的にこの条約から条文に従って何の苦もなく脱退できるのであります。特にアメリカは、地下実験によって大規模な大気圏内の実験準備を清々と進めているのであります。現にマクナマラ国防長官とシーボーグ・アリメカ原子力委員長は、連名でジョンソン大統領に核実験計画の内容を報告しています。それによれば、アメリカは、必要の際の大気圏実験の再開に備えて、一九六五年一月一日までに、二カ月以内に貯蔵中の核装置実験を実施する。二カ月以内に運搬手段と核弾頭を含めて完全な核体系実験を遂行する。三カ月以内に核兵器についての新構想開発のための試験的な核装置実験を行ない、さらに六ないし九カ月以内に核爆発の軍事上の効果に関する実験を実施し得る全体制を整えると発表しています。一体これは何でしょうか。実験の制限でも大気圏汚染停止でも何でもないではないでしょうか。これではアメリカ帝国主義者が核兵器全面禁止に向かってまじめに努力しているとは言えないのであります。  以上、明らかなように、この条約は一方において人民を欺き、他方において戦争政策を進めるアメリカの二面政策のあらわれであります。世界の唯一の原爆被害国であり、真に平和を望む日本人民は、絶対にこのような条約を支持することはできません。日本共産党は、真に放射能の被害をなくし、核実験核兵器を全面的に禁止し、核戦争そのものをなくし、祖国と人民を守るためにこの条約反対します。同時に、この条約の本質を明らかにして、人民とともに戦うものであります。  そのため、第一に、何よりもアメリカへの従属を断ち切り、アメリカ帝国主義者の核戦争政策をやめさせるために戦います。  第二に、アメリカの軍事基地の撤去、原子力潜水艦、F105D水爆搭載戦闘爆撃機の配備反対、沖繩・小笠原の返還、台湾、南朝鮮その他アジアのすべての地域からのアメリカ軍の撤退、南ベトナム、ラオスヘのアメリカの干渉の即時中止、中国封じ込めをやめさせ、特に安保条約を破棄することであります。  わが党は、現在日本の置かれている現実と最近のアメリカの露骨な侵略政策にかんがみてこの条約を支持しないことを明らかにして、私の反対討論を終わります。
  147. 長谷川仁

    ○長谷川仁君 私は自由民主党を代表いたしまして、この条約に賛意を表するものであります。  賛成の理由の第一は、大気圏内外水中核実験禁止によりまして、大気や海水の汚染が今後食いとめられるということであります。いわゆる死の灰の恐怖からの解放は、現実に原水爆の犠牲者を出しましたわが国はもとより、人類全体の生存と繁栄のために全世界の人々がもろ手をあげて歓迎したことは御案内のとおりであります。  第二に、この条約は将来全面的核実験禁止を達成するための貴重な足がかりとなり得るという点であります。この条約が一定の条件のもとにおける地下核爆発を禁じていない点は、わが国の立場からいえば、必ずしも満足すべきものではございませんけれども、管理と査察を伴う全面的核実験禁止は、この条約を足場として関係各国に働きかけることによりまして可能となると信ずるわけであります。  第三に、この条約が四年有余に及びますところの交渉の末、ついに妥結を見たゆえんのものは、一昨年のキューバ事件を契機といたしまして、米ソいずれもが核戦争は絶対に避くべきであるという認識と決意を強く抱くに至ったためと思われるのであります。この条約は、さらに今後東西の緊張緩和をもたらす契機となり得る意味で、きわめて重要な意義を有すると思われるのであります。  しかしながら、この条約は、地下核実験を禁じていないという点はもちろん、脱退に関する規定とか、あるいはフランス及び中共が署名していないというような一連の動きから見まして、必ずしも手放しで喜べない点もございます。  とはいいますものの、すでにこの条約署名した国が百九カ国に及んでおることでもあり、革に米ソの意向のみによってこの条約の運命が左右されることのないように、言いかえますならば、少なくとも米ソがこの条約より一歩たりとも後退することを許さない、こういうようなふうに他国とも提携いたしましてこの条約を活用することこそ、唯一の被爆団でございますわが国の義務であり、条約への参加を意義あらしめるものと信ずる次第でございます。  この点を特に政府に要望いたしまして、私はこの条約賛成するものでございます。
  148. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 私は日本社会党を代表して、本条約承認に賛意を表するものであります。  本条約は、大気圏内、宇宙空間及び水中における核兵器実験禁止しておりますが、地下における核兵器実験を除外しており、われわれが主張し、要求する全面的核実験禁止という点からいえば、不完全なものであります。また、本条約第四条の、異常なる事態が自国の至高の利益を危うくすると認めるときは三カ月の予告をすることで脱退できるという点につきまして、また、地下核実験がいま盛んに行なわれ、かつ、大気圏内の実験をいつでも再開できる準備アメリカが公然としておるという点につきまして、この条約について一まつの不安を覚えるものでありますが、しかし、本条約締結によりまして核実験の全面的禁止への道が開かれ、その実現の可能性が生まれたこと、これがこの条約の重要な意味でありまして、これが賛成の第一の理由であります。  第二に、戦後足かけ二十年の間に、米ソの対立不和によりまして冷戦がいよいよ激しくなり、国際緊張が高まって、一昨年秋のキューバ事件の際には、まさに米ソともボタンを押す一歩手前まで来たのであります。全世界は、人類を破滅に導く第三次世界戦争が勃発するのではないかと非常な不安に襲われたのであります。幸い、米ソ両国の首脳者が核戦争を起こすことを避け、好むと好まざるとにかかわらず、平和共存こそ人類が自滅をのがれる唯一の道であると悟ったので、漸次その方向へ向かっての努力が始められたのであります。そして、まず偶発的な戦争勃発の防止のため、米ソ両国首脳間に、緊急の際直接電話で話し合える装置が設けられることになり、次いで米ソ英三国の間に本条約締結が行なわれたのであります。さらに、米ソの話し合いが成立して、昨年十一月十七日には、国連総会において、核兵器など大量破壊兵器の宇宙軌道への打ち上げ禁止の決議がなされ、人工衛星等を利用しての核実験禁止されることになりました。また、本年の四月二十日、ジョンソン大統領、フルシチョフ首相は、同時に核分裂物質の生産の削減を声明したのであります。一昨年十月のキューバ事件以来、米ソ両陣営間で行なわれたこれらの合意は、平和共存の方向に向かって、徐々ではありますが、着実に進んでおるものと認められるのであります。われわれは、人類を破滅に導く核戦争を回避し、平和共存を通じて世界平和を実現することに賛成するものでありますが、かかる見地からいたしまして、平和共存と実現する途上における重要なステップとして、本条約の意義を高く評価するものであります。これが第二の賛成の理由であります。  第三の理由は、この条約により、大気圏内、宇宙空間及び水中における核実験禁止が、すなわち軍縮ではありませんが、これが従来全く停とんしておりました軍縮交渉に光明と希望を与えるだろうという事実であります。全面完全軍縮の達成には非常に無問題が控えておりまして、なかなかその実現は容易ではありません。しかし、それに光明と希望を与え、それへ向かっての第一歩の足がかりとなるという点におきまして、この条約を高く評価すべきであると思うのであります。  第四に、この条約が実施されることによりまして、全世界に放射能の灰をまき散らすことはやめられることになるでありましょう。すでにこの条約締結の前後から、米ソ英三国はこの実験停止し、そのために、世界にまき散らされる放射能は著しく減ってきておるのであります。これは両陣営の間に位して、頭上に常に放射能の脅威を受けております日本にとりましては、それだけでもこの条約の成立を歓迎する理由があると思うのであります。原爆の被害者であり、水爆実験の被害者でもありました日本国民は、本条約の成立は喜ぶべきことである、こう考えておるのであります。そして、国民の圧倒的多数はこれを支持しておるのでありますが、遺憾ながら日本共産党はこれに反対しておるのであります。もしこの条約締結されないで、核保有国によりまして実験が野放しに行なわれ、国民がいよいよ放射能灰に脅かされ、また、そのために生命をむしばまれましてもいいとでも言うのでありましょうか。また、実験が野放しに行なわれるばかりでなく、互いにそれによりまして刺激され、いよいよ核兵器生産が増大し、核保有国もまた増加し、そのために核兵器軍縮を困難ならしめ、それから遠ざからしてもいいと言うのでありましょうか。これは明らかに日本国民の念願に反するばかりでなく、全世界の平和をこいねがう者の願望にも相反するものと言わなければなりません。先に述べましたように、もとより本条約は完全なものではありません。全世界の平和を求める国及びその国民は、すみやかにこの条約を、地下実験禁止をも含める全面的禁止条約に高めるよう努力すべきであります。われわれ社会党はかかる立場から、本条約承認にあたりまして、政府に対して、一、いまなお実験を行なっている国に対しまして直ちに実験停止を求めること、他の条約署名国とともだ国連の場を通じ軍縮委員会と協力して、あるいは直接に完全なる禁止条約とするよう率先努力すること、一、近く実験を行なう準備をしているフランスにこれをやめさせるよう働きかけるとともに、フランス、中国その他未調印国に参加を求めるために努力、活動すること、一、核拡散防止のために努力をすること、一、日本もまた軍縮委員会に参加するよう各国に働きかけ、日本も軍縮に対する方針を研究し、打ち立て、積極的な活動を開始すること、一、アジアにおける非核武装地帯を設けることに真剣に取り組んでいくこと、これらを強く政府に要望いたしまして、本条約賛成する次第であります。
  149. 二宮文造

    ○二宮文造君 私は公明会を代表して、本条約承認について賛意を表するものであります。  われわれは、従来から、いかなる理由を問わず、核兵器の製造、実験、使用については人命を脅かすものとして反対する、これを戦争に使用する国々の責任者に対しては、人類の生存権を否定するものとして極刑に処すべきであることを、全人類の名のもとに決意すべきであることを提唱してきたのであります。その意味から、今回の条約は一歩前進であるとして賛意を表するものであります。もちろん、本条約は幾多の問題点をはらんでおります。たとえば、核実験全面禁止が全人類の要望であるにもかかわらず、地下実験を除外して核兵器に今後の開発の余地を与え、さらには核兵器の拡散の危惧を残している点、また、第四条による脱退規定は、条約成立のためのやむを得ない妥協とはいいながら、条約の存続を不安定ならしめている点などであります。言うまでもなく、日本は戦争放棄、すなわち、憲法第九条の規定を持つ世界唯一の国であります。しかもまた、世界でただ一つ原爆の洗礼に数十万のとうとい人命を失った国であります。したがって、これら核兵器全面禁止につきましては、世界のいかなる民族にも優先して力強く主張し、実現への努力を傾けるべきであります。ゆえに政府は、本条約を足がかりとして、核兵器全面禁止、完全軍縮、ひいては軍備撤廃の実現という人類最大の希望たる恒久平和の確立に向かって格段の努力を要すべきことを期待して、本条約に対する賛成の討論といたします。
  150. 曾禰益

    ○曾祢益君 私は民社党を代表いたしまして、本条約に賛意を表したいと思うのであります。  民社党の綱領にこういうことを言っております。「現在の世界の平和は、世界の民衆の平和への熱望によることはもちろんのことであるが、東西両陣営の武力の均衡によってかろうじて維持されている事実は否定できない。この均衡を急激に変更することはかえって戦争の危機をまねくおそれがある。われわれは、究極において、武力によらない世界平和の達成に努める。それにはまず、両陣営がおたがいに信頼感を回復するとともに、双方の歩みよりによって軍事的対立を同時かつ漸進的に解消するよう導くことが必要である。このため、双方の軍事力の増強を停止し、核兵器禁止はもとより完全な査察制度をともなう相互軍縮協定の成立につとめなければならない。それによって不必要となる経済力は、後進国の開発に向けるべきである。」。私は、このような正しい平和へのかまえというものが、最近の国際情勢によって完全に裏づけられたと思うのであります。一昨年の十月のキューバ危機において、人類ほんとうに核戦争、人類共滅の深淵に臨んだのでありますが、また、そのことは、第一には、ソ連がキューバという地点において、急激に両陣営のバランスを根本的にくつがえすような核基地をキューバにつくろうとしたことによって直接にもたらされたものでありまするが、その深淵に臨んだ米ソ商陣営の最高首脳者が、そこに核兵器のつり合いの上に保たれたかりそめの平和では、これはほんとうの戦争の危機は回避できないという認識に立ち、いま分析いたしましたような相互の信頼を回復しつつ、現状に即した漸進的な軍縮、緊張緩和の道を選んだということは、まことにケネディ、フルシチョフ両首脳の勇気は、それぞれの陣営内における反対をも克服しながらやっただけに、高く評価されなければならないと思うのであります。自後の情勢が、いわゆるホット・ラインの設定等における両首脳直接の交渉によって、逐次信頼の回復が行なわれ、その結果が一昨年の十月のこの部分的核停条約に結実したのであります。すなわち、このことは、私どもの正しい平和へのかまえから見て、また、このことが戦後十八年続いた冷戦の大きな曲がりかどであることを考えたときに、私どもはこの条約のできたことに最大の賛意を表する次第でございます。また、わが国において、長らくの間、正しい核実験禁止協定成立の運動、核兵器禁止運動、私どもあるいは核禁会議が提唱してまいりました、わが国は絶対に核武装しない、核兵器の拡散は断じてさせてはならない、またこの二つのことを達成するためにも、核兵器のまず実験禁止協定をつくり、有効な査察制度を伴った実験禁止協定をつくった上に、全面的な核禁止、さらに軍縮に進まなきゃならないというこの運動が、いかに正しかったかを証明しておるものと思うのであります。  以上のような背景におきまして、この条約を私どもは評価していくのが正しいのではないかと思います。むろん、この条約には、同僚各委員から御指摘があったようないろいろな欠点がございます。第一には地下爆発実験を除外したこと。第二にはこの条約そのものが、残念ながら中仏が入らないことによって大きなねらいを失っているということ。第三には、この条約そのものからは、残念ながら核兵器の拡散防止というところに至らない。こういうことさらには、異常な事態が生じた場合に、各締約国が自国の至高の利益が害されたという理由によって三カ月の予告で脱退が自由である点。欠点をあげれば、私は限りないと思います。だがしかし、われわれは公正に考えて、利点をも評価していかなければならないと思います。第一に、いままでの不安定な自発的な実験停止というようなことでは、これは決して悪循環は——核兵器実験による戦争の危機の増大とまた大気汚染等の悪循環は、決してこれは断ち切れないということが明瞭になった。そのいわゆる自発的停止なり野放しの核実験に比べたならば、この条約のもたらすところが非常に大きな前進であることを、何ぴとといえども断じて否定できないと思うのであります。この条約が、先ほど申上げましたような冷戦の曲がりかどであり、少なくとも米ソの一種の、一つの平和共存——初歩的であるけれども、相互信頼へのあらわれであるけれども、またこの条約ができた結果、先ほど来指摘されているように、その後国連総会において、宇宙空間軌道に対する核兵器その他の大量殺戮兵器の打ち上げが禁止され、またことしの四月に、これこそ、軍縮ではないけれども、最近のことばで言うならば、軍備管理を米ソ両国が相談の上で少なくともやろうという一つのあらわれと見るべき、米ソそれぞれが核分裂物資の生産能力を縮小するという、これまた画期的な進歩を見ていることは、この条約がもたらした事態の非常な利点だと言って差しつかえないと思うのであります。いわんや、わが国の最も望んでいる大気汚染に対するストップをかけたという点からいいましても、この条約が非常に大きな利点を持っていることは、もうちょうちょうの要はないと存ずるのであります。  最後に、この条約の最大のねらいというものは、先ほど来申し上げました、この条約が単に地下爆発を除く核実験禁止という段階にとどまるものであっては、歴史的使命を達成したことにならない。どういたしましても、この条約によってもたらされた緊張緩和への事態がさらに一歩進むためには、地下爆発を含む核実験の全面的禁止、また、そのために絶対に必要である双方が信頼し得る査察制度をしっかり発見する、それによって全面的な核実験禁止協定を早くつくる、また、そのことによって初めて第五、第六の核保有国の出現を阻止する、拡散防止をやる、こういうことが絶対に必要であると私どもは信ずるのであります。その意味で、われわれはまた正しい核兵器禁止運動をその線に乗せながら進めておりますが、政府においても、そういう意味で、日本のみずからの力によって、日本が持っている原水爆の唯一の被害国であるという特殊の地位、日本世界に誇る非武装憲法のこの背景を利用しつつ、国際連合、特に国際連合のもとにおける軍縮会議等に、積極的に自分のりっぱなプランを持って参加することによって、いま申し上げたような、この条約を足がかりとしての核兵器全面禁止、軍縮への道を進んでいくことを強く要請いたしまして、私の賛成討論を終わりたいと思います。
  151. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  152. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。本件全部を問題といたします。本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  153. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 多数でございます。よって本件は、多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  154. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日は、これにて散会いたします。  次回は、追ってお知らせいたします。    午後三時七分散会