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1964-05-19 第46回国会 参議院 外務委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月十九日(火曜日)    午前十時二十三分開会   —————————————   委員異動  五月十八日   辞任      補欠選任    野坂 参三君  岩間 正男君   —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     黒川 武雄君    理事            井上 清一君            草葉 隆圓君            長谷川 仁君    委員            青柳 秀夫君            木内 四郎君            杉原 荒太君            岡田 宗司君            佐多 忠隆君            羽生 三七君            森 元治郎君            曾祢  益君            岩間 正男君            佐藤 尚武君   国務大臣    外 務 大 臣 大平 正芳君    国 務 大 臣 福田 篤泰君   政府委員    防衛庁防衛局長 海原  治君    防衛庁参事官  麻生  茂君    外務省条約局長 藤崎 萬里君   事務局側    常任委員会専門    員       結城司郎次君   説明員    外務省国際連合    局政治課長   中村 輝彦君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事辞任及び補欠互選の件 ○大気圏内、宇宙空間び水中におけ  る核兵器実験禁止する条約締結  について承認を求めるの件(内閣提  出、衆議院送付)   —————————————
  2. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  この際、委員異動について御報告いたします。  昨五月十八日付で、野坂参委員委員辞任され、その補欠として岩間正男委員が選任されました。   —————————————
  3. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) この際、理事会の決定について御報告申し上げます。  本日と明後二十一日の二日間、午前、午後委員会を開会し、部分的核実験停止条約の審議を行ないます。  まず、本日は、外務大臣防衛庁長官に対する質疑を行ないます。   —————————————
  4. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) この際、理事辞任についておはかりいたします。理事佐多委員より、都合により理事辞任したい旨の申し出がございましたが、これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  つきましては、直ちにその補欠互選を行ないたいと存じます。互選投票方法によらないで、委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 御異議ないと認めます。それでは理事加藤シヅエ委員を指名いたします。   —————————————
  7. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 大気圏内、宇宙空間び水中における核兵器実験禁止する条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。  本件につきましては、すでに提案理由説明補足説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
  8. 岡田宗司

    岡田宗司君 この条約締結されましたことは、最近の国際関係の上において大きなできごとであったと思うのであります。もちろん、この条約は全面的に核実験停止するものではない。そういう意味で不完全であります。さらにまた、これはそれ自体核兵器をどうこうするというものでもありません。また、これ自体軍縮に直接関係するものではないのであります。しかしながら、この条約が結ばれましたことは、一面において全面的核実験停止方向第一歩を踏み出し、引き続いて核兵器の縮減、あるいは核軍縮、さらには一般的軍縮の道を開くものとして大きな意義があると同時に、また、この条約国際緊張の緩和をもたらし、すなわち冷戦をやめる第一歩にもなっていっているように思われるのであります。こういう点で、私どもはこの条約調印をされました際にもちろん賛成をしたわけでございますが、日本政府もこれに賛成をし、調印をし、これがいま国会に承認を求められておるわけでありますが、政府はこの条約の持つ意義についてどういうふうにお考えになっておるか、まずお伺いしたいのであります。
  9. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 御指摘のように、この条約地下を除くスペースにおける核実験禁止するということでございまして、その限りにおいて不完全なものであることはまぎれもない事実でございます。しがしながら、この地下を除くスペースにおける大気の汚染がその限りにおいて救われるということ、さらには、こういうことにおいて合意を見ることができた以上は、さらに進んで他の軍縮問題の領域におきまして、米ソその他核保有大国の間に合意を見る可能性をわれわれに暗示していると思うのでございまして、われわれがこれが第一歩として意義があると申し上げておるのはそういう意味でございまして、今日不完全ながらここまでの合意を見るに至ったことを人類のために喜ぶとともに、せっかくここまで来た以上は、さらにこれを踏み締めまして、第二ラウンド、第三ラウンドの軍縮についての実効ある合意が成立するように希望し、また、そういう国際的な世論形成というものにわれわれも懸命の努力を払ってまいりたいと念願いたしておるものでございまして、そういう意味合いにおきまして、私どももそういう期待を込めて署名をさしていただいたわけでございます。
  10. 岡田宗司

    岡田宗司君 この条約前文といいますか、そこに「国際連合目的に従って厳重な国際管理の下における全面的かつ完全な軍備縮小に関する合意をできる限りすみやかに達成し、その合意により、軍備競争を終止させ、かつ、核兵器を含むすべての種類の兵器の生産及び実験への誘因を除去することをその主要な目的として宣言し、」、こうありますが、これはこの条約がかような「厳重な国際管理の下における全面的かつ完全な軍備縮小」に進む第一段階だ、そういうふうに規定しているわけであります。しかしながら、この条約ができましても、一面において軍備縮小についてのいろいろな話し合い国連軍縮委員会等で行なわれておりますけれども、なかなか実現をしておりません。したがって、第一歩を踏み出したといたしましても、これから先、この全面的かつ完全な軍縮へは非常に道も遠いわけであります。その間にいろいろ重要な問題があるわけでありますが、この条約がそこまで行かないといたしましても、なお、直接に全面的な核実験禁止、すなわち、さらにこれに地下核爆発実験をやめるということを加えなければならないとうことは当然のことと思われるわけであります。で、この条約調印されましてから、地下核爆発実験をやめるということについて、この三つの調印国の間において、さらに次のステップがとられておるかどうか、そういう情報があるかどうか、その点をお伺いしたいのであります。
  11. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 米英ソ三国の間で地下爆発実験禁止について直接の接触があったということは私ども聞いておりません。ただ、米ソの首脳がいずれも全面的な核実験停止賛成だという意味声明を行なっておりますことは承知いたしております。ただ、御承知のように、国際連合は、第十八回総会決議によりまして、軍縮問題の討議ジュネーブ軍縮委員会にゆだねた。ゆだねて今年の一月からジュネーブにおける軍縮委員会討議が行なわれているわけでございまして、そこにおきましては、地下実験禁止という限られた問題だけでなくて、軍縮問題全体について、アメリカ提案し、ソ連提案し、そして、英国もまた提案する、相当大がかりの提案がございまして、ただいままでのところ原則論討議の域を出ていないように承知しております。
  12. 岡田宗司

    岡田宗司君 まだ、そういう話し合いがこの三国に行なわれておらないということには、何か障害があると思うのですが、その障害が何であるかということについて、外務大臣はどうお考えになっておりますか。
  13. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) この条約前文にうたっておりますとおり、「厳重な国際管理の下における」という「厳重な国際管理」、これは米英ソ三国とも賛成、こういうエクスプレションには賛成なんです。だけど、これは具体的な問題になると、具体的な方法手段になりますと、まだ合意を見るに至っていないということであろうと思うのでございます。一方、御承知のように、探知技術がだんだんと発達してまいっておりますので、すでにもう地下を除くスペースにおきましては、探知は可能だと言い得るところまできている。地下についても、まただんだんと探知技術発展、発達いたしまして、遠からず捕捉できるのではないかといわれているわけでございまして、各国の間の十分な信頼がまだ打ち立てられていない今日の段階におきまして、その国際情勢の成熟と相まってその信頼を打ち立てていくという努力と、また、一面において探知技術がそれ自身独自の系列を持って発展をしてまいるというようなところから、私どもは、この国際管理につきまして、関係国の間に地下について合意を見ることができないのじゃないかというように悲観的には見ていないのでございまして、必ずやそういった合意を見るに至る段階が来るだろう、しかし、ただいまの段階ではまだ相互の信頼がそこまで行っていないというように見ております。
  14. 岡田宗司

    岡田宗司君 ただいま大平外務大臣が、「厳重な国際管理の下における」云々と言ったのは、これは、「全面的かつ完全な」軍縮というほうに冠しておるのでありますが、この地下核実験停止の問題になって一番障害になっておるのは、査察の問題であろうと思います。これは、「厳重な国際管理」といううちの一部でございましょうけれども、この査察につきましても、大体まあ米ソの間においていろいろやりとりが行なわれました後に、若干の歩み寄りは見られる。ただ、回数が非常に問題になっておるわけでありますけれども、この回数合意に達するというのには、まだ時間がかかるというふうにお考えになっておるのか。あるいはまた、例のブラック・ボックスという方法で、この回数における合意と同時に、それについての合意に達せられるならば、あるいはこの問題が解決できるのじゃないかと思うのですが、それらの点についての外務省が得ておる情報はどういうものなのか、お伺いしたいのであります。
  15. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど申しましたように、米ソの間の直接の接触は、その後管理をめぐっての方法についての接触はなかったと思います。で、軍縮問題の討議ジュネーブで行なわれておるわけでございますが、先ほど申しましたように、大がかりな軍縮にからまる問題点を全部出して、それで、それをめぐっての原則的な討議が多いので、いま御指摘のように、地下実験禁止、またその査察という問題に限っての討議ところまでジュネーブ討議は行っていないと思うわけでございます。また、米ソ両国とも、非常に緊切な課題としてこれはどうしても両国で話し合わなければならぬのだというとこまでの機運にまだ来ていないのではないかと私どもは見ております。いままでのジュネーブ討議をずっとフォローしてみましても、この査察問題について具体的な討議をやっておる形跡はありません。
  16. 羽生三七

    羽生三七君 関連して。今度ミコヤン氏が訪日されたときに持ってきたフルシチョフ・ソ連首相池田総理あて書簡で、いまの地下実験の問題に関連をして新しい提案をしておるようですが、それに対して、それは総理が御回答になることだと思うけれども外務省としては何らかの御検討をなさっておるのかどうか。いまちょうど岡田委員地下実験問題について御質疑の過程でありますので、お尋ねをする次第であります。
  17. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) あの書簡では、ソ連日本政府に対して呼びかけがございまして、共同核実験全面禁止について声明を出そうじゃないかと、そういうことでございまして、こちら、総理なり私なりとの会談におきましては、そうおっしゃるけれども、問題は国際管理ということで、いままで問題がいつも暗礁に乗り上げておったので、そこを割り切らないといけないのじゃないですかという話をいたしましたら、いや国際管理賛成だと、こういう態度です、先方は。で、私がいま岡田さんにもお答え申し上げましたように、国際管理ということば、そういうエクスプレッションは賛成なんですね。だけれども、問題はそこにはないので、問題は、どういう管理お互い合意をするかということでございまして、われわれ、ここは待ったなしで、お互い不信感があってはいけないので、前提抜きでやれないものですかと、こう申し上げたわけでございますが、問題は、結局そういう具体的な合意の問題になるわけでございまして、そこがはっきりしないと、単なることばやりとりになりはしないかということを懸念いたしておるわけでございます。しかし、せっかくの御書簡でございますので、どのようにこちらとしてやるべきかは、いま政府部内で検討いたしておるところでございます。
  18. 岡田宗司

    岡田宗司君 地下実験が現在もなお続けられておるわけです。特にそれはアメリカにおいてかなりひんぱんに行なわれておる。ソ連のほうは行なわれておるともいわれていますが、まだ回数は少ないようであります。で、この地下実験アメリカにおいて非常にかようにひんぱんに行なわれておるというのは、地下実験アメリカが非常に重視をして、そして、その実験によって核兵器の進歩の上に何かをもたらそうとしておるということが推定されるわけですが、その査察の問題と関連しまして、こういうふうに地下核実験に非常に重きを置いておる国が、一体地下実験を全面的にやめるということに対して踏み切るということはなかなか容易なことではないだろうと思うのです。つまり、アメリカ側に、特にアメリカの軍部に地下実験をまだ続けていきたいという意向が非常に強いのではないかというふうに考えられるのですが、アメリカ側地下実験に対する考え方といいますか、それについて外務大臣はどういうふうにお考えになっておりますか。
  19. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) この条約署名後、アメリカはたしか二十二回実験やっておると伝えられております。アメリカは公表いたしております。ソ連のほうは公表しておりませんので、どのぐらいの頻度において行なわれておるかはさだかではございません。なぜやっておるのかということを、私どもも詳しいことはわからないのでございますが、核の開発というのは当然実験を伴うことなんで、あなたがいま御指摘されたように、全面的な実験禁止ということになると、核の開発を断念するということを決意しなければならぬわけでございまして、そういうところまでまだ情勢が行っていないから、地下における非常に制約された条件のもとにおいてでございましょうが、実験が行なわれておるのではないかと申し上げる以外に答えようがないと思います。
  20. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、アメリカのほうが非常に回数が多い。ソ連のほうはまだわからないが、行なわれておるだろう。とすると、まだどちらも地下実験をやめていいというところまで踏み切っておらぬのだと、そういう御見解ですか。
  21. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私も科学者じゃないからよくわかりませんが、ただ、核の開発には実験を当然伴なうものじゃないか。この実験のない開発なんということは考えられないから、核のこれ以上の開発、それは平和利用目的であれ、軍事利用目的であれ、いずれにせよ実験ということが先行していくのではないか。したがって、核開発はもう断念するのだというところまではまだ行っていないので、制約された条件のもとにおいて実験は続けておると見るよりほかに見方がないのじゃないかと、そういうことでございます。
  22. 岡田宗司

    岡田宗司君 この条約に対して日本調印したのは、私は単に受動的な意味で三国の間にできたものに賛成するというだけにとどまってはならないと思う。日本といたしましては、この条約調印する以上、もっと積極的な意味を持ってやっていかなければならぬ。それは、この条約前文に書いてありますように、やはり全部の核実験停止、さらに進んでは全面的かつ完全なる軍縮達成ということへの段階としてわれわれはこの条約承認するわけでございます。したがって、単に受動的に、この持っておる国々が調印をしたこの条約調印するだけでなく、やはり日本としてこれに調印した以上、この目的賛成しその目的をもっと積極的に実現するために努力するということが含まれておると思うのであります。そこで私どもは、そう考えてまいりますというと、この条約調印しました以上は、やはり米英ソに向かいまして、すみやかに全面的な核実験停止に行くようにということを、日本だけでなく、多くの調印国とともに積極的に働きかける要があろうかと思うのであります。いま外務大臣は、アメリカにおいてかなりの回数が行なわれておる、それから、ソ連においても探知できないが行なわれておるであろうという推定をされておりますが、やはり私はこういうことが続けられていきますというと、せっかくこの条約が結ばれましても、なかなか目的達成ということにならない。したがって、条約が多くの国によって調印され批准されましたあとには、やはりこれをもとの三カ国に対してさらに進めるように働きかける義務と責任があろうと思います。その点をどうお考えになるか、お伺いしたい。
  23. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおりでございます。岡田さんがここで、これからさらに前向きに核実験全面禁止、さらには軍縮に歩度を進めていく上において、署名をした国日本としては、もちろんやらなければならぬことじゃないか、私は全く同感に思いますが、同時に、これから後退してはいかぬと思うのです。つまり、この条約は、せっかく署名はされた、署名はされたが、この条約を破る勢力があって、条約はほごになってしまったというようなことは、これはたいへんなことなんでございまするから、まず日本署名をするということは、日本ばかりでなく、できるだけ多くの国がこの条約に加盟をするということが大事だと思うのでございます。そういう政治的な大きな圧力を、重みを、この条約につけて、そして関係国は軽々にこれは侵犯ができないのだというかまえをまず固めておく必要がある。幸いに、その後たくさんの国が署名いたしまして、百九カ国にのぼっておる。これだけの勢力がるということは、核保有国といえどもこれを無視できないことになっておると思うのでございまして、これから後退しないのだという決意がまず第一になければならぬと思うのでございます。  それから、あなたが御指摘のように、第二に、これからさらに進んで積極的な施策を施していくということでございますが、これは、わが国も、国連を通じてこれまで鋭意やってきておることでございます。去年の十月三十一日に、第一委員会で、核実験停止に関する決議をいたしております。これは賛成が九十七、反対一つ棄権が三、投票不参加が一でございまして、日本共同提案国になって、もちろん賛成をいたしております。それから十一月の二十七日に、本会議でこの決議が上程されまして、賛成が百四、反対が一、棄権が三。日本はこれにも共同提案国になりまして、賛成をいたしておるわけでございます。  それから、全面完全軍縮に関する決議というのが、三十八年十一月十五日に第一委員会提案されまして、これは日本共同提案国になっております。で、本会議に十一月十七日に上程されております。これも、全部、全会一致で通過いたしております。  で、われわれは、国連の、それから国連以外の場を通じまして、組織的に、このような数々の努力を通じまして、世界世論形成ということに今後も努力をしてまいるつもりでございます。それを怠ってはならないと思うわけでございます。国連外におきましても、ときと場合を考えまして、日本が、こうするのが是と信じますならば、決してちゅうちょするつもりは毛頭ないわけでございます。  ただ、やたらに声明の連発をやるとか、ときとところをかまわずにやるなどということは、私ども性に合いませんで、そういうことは、日本国際信用からいって、いかがなものかと思うのでございまして、建設的に寄与し得るという条件のもとで、日本のやる行動は信頼に値するものであるという、やはり重さを持たなければなりませんので、ところもかまわず、ときをかまわずに、いいことだからやれということには、にわかに私は賛成できぬと思っておりますけれども、これが是と信じたときには、勇敢に措置すべきことは当然かと思っております。
  24. 岡田宗司

    岡田宗司君 核を保有し、それから今回の条約の最初の署名国である米英ソのうちの一つの、ソ連首相から親書が池田総理ところにもたらされて、そうしてそのうちで、地下実験停止に触れた提案がなされているわけであります。もちろん、どういう返事をされるかということについて、いま検討中だということでございますけれども、私どもとしては、こういう機会に、何らかの形で日本としては、やはり地下核実験も直ちに停止をして、そうして、いま核実験を続けている国が直ちに地下核実験停止をも含むように、すみやかに交渉することを要求するのは当然だと思うのであります。そういうような方向で私は答えてもらいたいと思うのですが、その点についての外務大臣見解をお伺いしたい。
  25. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま申し上げましたように、三十八年の十一月二十七日の核実験停止、これは全面禁止決議でございますが、この決議は十八カ国の軍縮委員会に対し、部分核停条約前文に掲げられた目的達成するため、緊急感を持って交渉を継続するように要請しております。さらに十八カ国軍縮委員会に対しまして、可及的すみやかにいかなる場合にも、第十九回総会までに討議の結果を報告するように要請いたしております。それから、事務総長に対しましては、核実験問題が討議された本会議及び第一委員会の文書及び記録を、十八カ国軍縮委員会利用に供するように要請いたしているわけでございます。それで、日本はこれの共同提案国になってこいるわけでございまして、国連は、国連総会決議の総意に基づきまして、軍縮委員会にその仕事をゆだねたわけでございます。これを、ここで真剣な討議が行なわれる、そうして総会に報告して、取り上げるべきものから取り上げていく、こういう方向に段取りができているわけでございます。私どもは、この十八カ国軍縮委員会に入って、その討議の中に入っていかなければならぬと決意いたしまして、そのように努力したのでございますけれども、不幸にしてソ連反対にあって入れなかったのでございます。その点は率直にミコヤン氏にも訴えておいたのでございます。日本全面実験禁止への協力を求めるのも非常にけっこうだし、その気持ちもわかるが、そのための国連がこのように組織的に軍縮問題を取り上げている場合に、そうしてあなたがおっしゃるように、被爆国としての日本の発言というものは、世界世論に相当アピールするんだというのであれば、なぜ軍縮委員会日本が入るのをあんた方は反対したのだということ、これはよほど反省していただかなければ困る、今後われわれが希望した場合にはどうぞ御反対しないようにということを申し上げておいたわけでございます。われわれは世界世論をじっくり地固めしながら、単なる散発的でなくて実効がある成果を生み出さなければいかぬとすれば、国連のそういう組織的な討議に参加し、あるいはそれを支援し、促進していく方向において軍縮問題を取り上げていくのが正当じゃないかというように感じておるわけでございます。それがじみちな行き方じゃないかと考えておるわけでございます。しかし、そればかりでいいかというと、先ほど申し上げましたように、その他の国連以外の場におきましても、建設的な寄与し得るという見通しさえあれば、あえてちゅうちょするものではございませんけれども、本筋はやはり国連中心にこの問題の運び方を考えていくべきじゃないかと考えております。
  26. 羽生三七

    羽生三七君 関連して。ただいま十八カ国軍縮委員会に参加を希望した場合に云々というお話がございましたが、積極的にそういう参加をなされる機会をどういうときにお持ちになるか、ほんとうにその実現のために日本政府としても努力する決意がおありになるか、その辺ちょっとお開かせいただきたい。
  27. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これは国連活動を、日本として日本のエネルギーをどのようにして配分してかかるかの問題であると思うのでございます。ただいままでのところは、御承知のとおり、経済社会理事会を中心に、経済問題、社会福祉問題、そういったところで応分の寄与をすべきだという点に国連活動の力点があったように思うのでございますけれども、われわれといたしましては、国連の憲章の改正、機構の改正全体の問題がすでに討議に入っておるわけでございまして、日本ももっとほかの領域におきましてシートを占めて差しつかえないのではないかという判断でございます。その中には、やはり安保理事会の問題と軍縮委員会の問題があるのではないか、こういうところにちゃんとシートを占めておく必要があるのではないかと思っておるわけでございまして、そういうところにねらいを置きまして、他の関係国といろいろシートの割り振りその他、お互いに協力し合いながらそういうことができるような雰囲気をつくっていかなければいけませんが、焦点はそういうところに置いて努力してみたいと考えております。
  28. 森元治郎

    ○森元治郎君 関連。いま大臣の御答弁の中にある、ミコヤン氏に、十八カ国委員会に入れてくれ、じゃまするなということに対する御返事はどうであったかが一つ。もう一つは、シートを取るというお話がいま出ましたが、日本政府軍縮に対する方針、政策、こういうものができておるのか。通常兵器、核兵器について、あるいは軍事予算の面で、あるいは核実験禁止について、こういう全般的な軍縮政策、核兵器廃棄への方針というものが立っておられるかどうか、シートだけ取って考えるんじゃこれは困ります。おありだったらばおっしゃってもらいたいし、あまり長くできないならば、プリントしてもらいたい。
  29. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ソ連の反応は、ミコヤン氏はそれらの事情を承知していなかったようでありまして、それはよく検討してみたいということでございました。  それから、日本政府軍縮問題に対する考え方でございますが、これはすでに本院におきましても、佐藤先生その他からたびたび御注意がございましたが、正直のところ、戦争中長い間ブランクができまして、われわれの兵器、軍備等に対する知識というのはずっとおくれておるということは、これは隠れもない事実だと思うのでございます。したがって、森先生が御指摘のように、日本政府は単にシートを占めるだけでなくて、何らかのポジチブなものを提案するだけのものを持たないと意味がないと思うのでございます。そういう意味では、私どもといたしましては、いま若い者を、俊秀をすぐって勉強をやらしておるところでございます。ただ、幸か不幸か、いまの軍縮問題というのは、非常に在来の兵器時代の軍縮とまた非常に構想が変わっておりますし、ある意味において世界全部がしろうととも言える局面もございますから、あえて非常におくれたことをわれわれはぐちる必要はない。どんどん勉強していかなければならぬのじゃないか。そうして日本自体ちゃんとしたプラットホームを持つべきじゃないか。しかし、それは、それができてからそれじゃシートを求めるということじゃなく、シートを求めることも求め、勉強もしていくということをやっていかなければいかぬのじゃないかと私は思います。
  30. 岡田宗司

    岡田宗司君 どうも一般軍縮の話に広がってしまったんですが、私はその部分的核停条約を全面的にするための努力についての話を伺いたいと思います。いま十八カ国軍縮委員会のお話が出ましたが、私はそのほかに、もういまこういうふうに多くの国々がこの条約調印したんですから、やはり地下実験をやっている国に直接、もうやめろという呼びかけをする時期が来ている。そのことで何らか手段を講ぜられたらどうか。そうお考にならないかどうかということをお伺いしたんです。私はもうアメリカなり、あるいはソ連がやっておるとすれば、ソ連なりに対して、あなた方もやめて直接この条約を完全にするために交渉に入ったらどうかという呼びかけをすべきじゃないかと思いますが、どうですか。
  31. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほどお答え申しましたように、いままで直接の接触米ソとも持っていないようでございます。それをわれわれのほうでやったらどうだということ、これは検討に値する問題だと思いますが、いま御承知のように、国連決議軍縮委員会討議にゆだねられておるわけでございまして、それを総会に報告する、そういう段取りになっておるわけでございまして、いまのところ軍縮委員会討議というのはまだ実のある実質的な討議まで行っていないということも先ほど御報告申し上げたとおりでございます。しかし、米ソの間にはそれにもかかわらず直接の接触がございまして、この間も御承知のように、核爆発物質の生産を規制したり、あるいは核兵器大気圏の軌道打ち上げをやめようじゃないかというようなことになったりしまして、したがって、軍縮委員会討議が伴奏になりまして、本体のほうは米ソの直接交渉できまるというようなことが行なわれておるわけでございます。米ソの間にどのような連絡が事実あるのか、われわれは十分窺知できないところでございますが、われわれがソ連接触し、それから、アメリカ接触するたびごとに、ともかく米ソの谷間に置かれた日本としては、この米ソ接触ということに対しては非常な関心を持っておるんで、共通の関心、共通の利害、両国のそういった領域は相当広がってきつつあるように思うし、それにはもう精力的にやっていただけないかということは、たびたびわれわれも要請いたしておるわけでございまして、今後も一そういうことにつきましては十分努力してまいりたいと思います。
  32. 岡田宗司

    岡田宗司君 この条約反対をし、そしてこの条約署名をしない国がある。そのうちでも特にフランスと中国は顕著でございますが、フランスはすでに独自の核兵器開発をやっております。この間ポンピドゥ首相が参りましたときに、外務大臣あるいは総理大臣は、この問題について首相なりあるいは外相なりとお話になったことがございますか。
  33. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日仏会議でもそれはしょっちゅう先方からの見解は示されておりますが、フランス側の言い分は、この部分的核停条約というのは、なるほど地下を除くスペースにおける実験禁止したということだが、しかし、核兵器そのものの製造、運搬、貯蔵ないし使用ということに全然触れていない、われわれとしては全面的なそういった規制が保証されるならば賛成するにやぶさかでないんだが、このような部分的な条約の程度ではとても賛成できないんだということでございまして、全面軍縮反対とかなんとかいうものではない、いまの状況のもとにおいては賛成できない、そういうことでございます。
  34. 岡田宗司

    岡田宗司君 フランスは近く太平洋でもって新しい核爆発実験をやる準備を進めておる。この点につきまして日本政府はフランスの首相なり外相なりから通報を受けたかどうか。さらにまた、これに対して、日本としてやはり太平洋でもって核実験をやられることは困る。これについて抗議をせられたかどうか、その点。
  35. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いつどこで実験をやるとかいうような通報を受けておりません。従来フランスがやりました実験については一々抗議をしております。それについては、フランス政府といたしましては、世界でたった一つ日本の抗議だけが傾聴に値すると申しております。
  36. 岡田宗司

    岡田宗司君 どこの国の抗議が傾聴に値するか知らぬですけれども、やめさしたいというのがわれわれの念願です。傾聴に値するならばやめてもらいたいと思うんですけれども、どこでいつやるかという通報はないと言われておりますけれども、おそれく一九六五年タヒチ局付近のどこかの小さな島でやる準備が大がかりに進められているということを聞くわけです。これは世界世論に反することであり、また同時に、特に日本にとりましては、やはり放射能の脅威が日本に及んでくることでございますので、私どもとしては、やはりこれから強く抗議をしてやめさせなければならぬと思いますが、このフランスの態度に対しては、私は、日本のみならずこの核停条約署名している国は強く反対をし、また、フランスがこの核停条約に参加するように圧力をかけるべきである、こう思うのですが、外務大臣はどうお考えになりますか。
  37. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) われわれとしても、先ほど申しましたように、署名国がふえていって全世界が一本になって支持する条約になることを希望いたしております。ただ、フランスといたしましては、フランスの独自の考え方があるようでございまして、ただいまのところ、不幸にしてまだフランスが賛成にまで至っていないのは遺憾に思います。いまあなたが御指摘されたように、これは第一ラウンドで、 第二ラウンド、第三ラウンドとじみちな努力を通じて、われわれの努力によって署名していない国々の評価をかちとるように努力することによって、われわれが期待するような事態を招来するように努力しなければならないと思います。
  38. 岡田宗司

    岡田宗司君 この部分的核停条約が結ばれるについて、フランス、中国等の反対は、これは全面的なものではない、核兵器それ自身をやめることを含んでいるのではないからだという反対がなされているわけです。もちろんわれわれは、全面的な核兵器を持つことを禁止する合意が各国の間に成立し、実質上核兵器というものが地上から姿を消すことを望む。しかし、これはなかなかそう丁寧にできるものではない。これができるまでは反対だ、何もこういう条約を結ばなくてもいいのだということになりますると、実験は依然として大気圏内でも行なわれるということになりまして、日本としては非常な被害をこうむることになり、そしてまた、国際間の緊張は一そう激しくなっていって、それこそ核戦争を誘発するような事態になるかもしれない。そういう意味で、私どもはそういう反対論に対しましては反対ところでありますが、しかし、いまの状況から見まして、われわれがおそれるのは、この条約署名しまして最初にこの条約を成立させた三国だけでなくて、核兵器がだんだん方々に広がっていって、いわゆる核拡散の問題が起こることをおそれているのであります。現在すでにフランスは独自の核兵器開発をやり、その実験をやろうとしております。中国も持つことを希望しております。いつ持つかということは私ども知りませんけれども、持つことを希望しているのであります。これらの国々以外にこういうふうな核兵器を持ちたがっている国が他にもあるのかどうか、そういうことについて情報を持っているのかどうか、そしてまた、その核兵器を各国が持つことを、これは別に禁止しておるわけではない。この条約署名をした国でも核兵器を持つというものが出てこないとも限らない。それらに対して外務大臣はどういうお考えをお持ちになり、また、そういう核拡散を、この条約を持った国、持たない国、条約署名した国、あるいは署名しない国を問わず、核兵器を持たさないようにするには、やはり国連等を通じて世界世論で圧力をかけていかなければならぬと思うのですが、その点についての外務大臣の御見解を伺いたいと思います。
  39. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 中仏以外に核兵器を持ちたい希望を持っている国というのは、私ども聞いておりません。  それから、後段の拡散防止についての努力でございますが、それは岡田委員も仰せのとおり、国連等を通じて努力する問題の焦点の一つだと思います。現にジュネーブ会議におきましても、拡散防止が大きな問題として取り扱われておりますけれども、最大の問題の一つとして論議されておるのも、そういう認識に立ってやっておることと思います。
  40. 森元治郎

    ○森元治郎君 具体的なほうで聞いてみたいのだが、この条約ができたときに、日本政府は入れという勧誘を受けて入ったと思うのですが、日本の憲法のたてまえからいって、核軍備は持たない、政策的にも持ち込ませない、自分では持たないという国が、こういう地下実験はやってもいいのだ、逆に、署名すれば地下実験は許される、こういう全く反対条約に加入するにあたっては、だいぶちゅうちょされたと思うのです。ためらわれたと思うですが、その間の事情を御説明願いたい。
  41. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いまのお話、地下を除く核実験禁止をするのでありますが、地下実験をこの条約が合法化するとかしないという性質のものではないと思います。そのためにためらったわけでは決してないのでございまして、当初、八月五日の署名がありまして新聞で内容は伝わったわけでございますけれども、多数国条約でありますし、条約の原文も直に見ていないし、十分検討してからでもおそくはない、一応のレビューをさしていただいてから閣議にお諮りしょう、そういう手続上の問題だけでございまして、この条約によって地下核実験が合法化されることが問題だという考え方でわれわれはちゅうちょした、そういうことでは決してないのでございます。
  42. 森元治郎

    ○森元治郎君 それは議会答弁のふできであって、持たないものが、大気圏内外ではやらないとか、水中ではやらないとか、一体持たないものは関係のない条約で、地下実験をやってもいいということだけを、私の表現のしかたのくだらぬところをつかんで大臣答えられているが、持っていないのですね、やろうと思っても。それは大気中でもどこでもやれない。それなのに入って禁止しますと、自分を縛るにも縛りようがない。私は、これは入れない立場だと、入らないで外にいてやったほうがいいんじゃないか、こういうことを考えるわけです。これが一点。しかし、大臣は八月五日に調印され、それからゆっくりレビューをしたいとおっしゃいますけれども、七月二十五日に条約調印されて、翌二十六日にはアメリカ側から外務省に向かって、この条約はすべての国に開放されるというあの条項に従って、どうか日本もひとつ応援のために入ってくれないかと持ってこられたはずです。外務省はこれに従って二十九日に資料を整え、三十日から三十一日だったか、総理大臣に、こんなふうでございますと報告をしているのですよ。大臣はすっぽかされている。八月五日に気がついた、新聞で知った、そういうことじゃなくて、二十九日にもうすでに資料を整えて出しているのですよ、総理大臣に。
  43. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 第一点のほうは、つまり核兵器地下爆発、地下実験禁止——兵器だけの問題じゃないのでございまして、その点は森先生、誤解のないように。日本に全然関係のないというものじゃない。  それから、日付の点でございますが、私の記憶——何日にどうしたという一々記憶はないのでございますけれども、私が申し上げた趣旨は、一ぺん条約を見てから、条約文を十分検討した上で閣議にはかろうということを考えただけでございます。そう申し上げたので、具体的なプロセスは事務のほうが知っていると思いますから……。
  44. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 条約に加入するときは、いつでも日本政府は認証謄本をとってからいたしておりますが、認証謄本は八月十日に受領しまして、十四日に署名したわけで、その前に加入した国のあることは事実でございますが、これは認証謄本も原締約国から受け取らないうちに加盟いたしたもの、だろうと思います。
  45. 森元治郎

    ○森元治郎君 私は日付をせんさくしているのではなくて、憲法と本条約加入との関係について事務当局で練った結果、なかなかこれはむずかしい問題だ、入れないのじゃないか、入らないほうがよろしいのではないかというような議論があったはずだ。この点について大臣に……。
  46. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そういうめんどうな憲法論議はございませんでした。
  47. 森元治郎

    ○森元治郎君 そういう憲法論議がないというのは、あまりに軽率というか、政治家として非常に残念だと思うのです。私は、持たない国が入って何の役に立つか、むしろ外にいて、入らない中国その他の潜在的な核保有国あるいは潜在的な核実験予定国、こういうものをさせないようにするには、むしろ国のたてまえからいってもそのほうが有利ではないかという個人的見解なんです。個人的見解と言うと、大臣に逃げられますけれども。そこでこの条約は非常に抜け穴だらけなんです。第一点は、この条約は改定をすぐやるべきだ。この条約で一貫しておるものは、国連憲章と同じく米英ソという大国が主導的で、その他の一般加盟国は何か芝居の道具立てみたいなもので、その他大ぜいなんです。三人の役者を輝かせるために首をそろえさせられただけのような感じがする。具体的に言えば、この条約改定については、米英ソの三カ国を含む過半数ですか、過半数の票によって改定ができる。ちょうど安保理事会もああいうふうに常任理事国の五カ国が加った七カ国で云々というように、依然としてこの条約でも国連方式で拒否権があるような感じもする形式になっておるわけですね。これでは一体核兵器を持たない、実験をやらない、実験もできないような国が何のコントリビュートできるのだろうか、貢献ができるのだろうかと思う。ですから、こういう条約はこの際やめよう、単純過半数にしてはじめて一般加盟国の本条約に対する貢献もでき、大国のわがまま、これを押えることができるのじゃないか、これが第一点ですが、その点。
  48. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) この条約署名すること、先ほど岡田さんの御質問にも私お答え申し上げましたように、できるだけ多数の国が署名いたしまして、できるだけたくさんのおもしをつけておくということは、この条約がこのレベルから後退をしない保証の一つになるんじゃないかという意味のことを申し上げたわけであります。  それから、大国の拒否権の問題ですが、それはいま森先生がいみじくも御指摘されたとおりになっております。三国は拒否権を持っておる。これは純粋なデモクラシーの理屈からいいますと、一国一票で、何ら特権的地位を与えるという必要はないと思うのでございますが、しかし、核兵器核実験禁止というような問題で、核の保有の大国の責任というのは非常に重いと思うのであります。また、そういう国の同調を得ないと実効があがらぬわけでございまして、単純多数で押えたら実効がそれじゃあがるという保証があれば、あなたの御提案も確かに意味があるわけでございますけれども、いまの段階におきましては、この三国のうちのどれかにそっぽを向かれたら、この条約そのものの基礎がくずれちゃうということなんでございまして、実際的な政治の問題といたしましては、目的を達するためには、そういった計らいが私は許されていいんじゃないかと思います。
  49. 森元治郎

    ○森元治郎君 そうすると、日本をはじめその他大ぜいの国が入った。この非実験国、非核保有国——百九のうち百六のその他の国というのは、一体どんな役割りをするんですか、ただがん首並べて。持ってないんだから、実際問題としてわれわれ力がないというんなら入ることないと思うのです。入った以上は、一体これらにも力が、発言権、しかも、発言が実行されるような形になってなければ、条約としては意味がない。だから私は、ことに日本などは入らないほうがいいんだと思うのですが、持たない、弱い、小さい国は、一体いかなる貢献をなし得るのですか。いつでもイエス・マン、道具立てじゃないですか。
  50. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いまお答え申し上げましたように、できるだけ多数の国がおもしになっておる。そういう国々の願いと友情を裏切らないようにということが、大国に対する制約になると思うわけでございます。
  51. 森元治郎

    ○森元治郎君 だから私は、その他の百六カ国というのは、実験禁止の合唱隊だと思うのですね。どんつくどんつくやって、お祈りやるだけのお願いのグループ、こう思うのですよ。だから私は、まず規約の改正をこの点でやることが一つと、もう一つは、なぜそんなこと言うかというと、脱退条項がありますね。異常な事態が自分の利益を危うくするときには脱退する権利があるんだ、主権の行使として。この「異常な事態」についての質問はあとにしますが、この第四条にしても私は改正すべきだと思うのは、ただ黙って出ていってしまう。その出ていかせないために、大臣のことばを借りれば、この線から後退しないように、地下実験をさせないように持っていくためにも、この条約の線だけは土台として守って前へ出ようと、こう言うのです、大臣は。だから、ここにはそういう場合には直ちに締約国で協議する。その次の条項に、脱退するようなときには三カ月の予告をもってやる。だから、ここに協議するということが一項入らなければ、だれかがおかしなそこらでもってどかんとやる、危ないからもう出る。そうすると、強いだんな方が出ていって、爆発やるにも何も持ってない者が条約国としてすわっていても、何の意味になるかと思う。だから私の伺いたいのは、そういう大国のわがままというか、そういうものをあまりに自己流の解釈を、野方図を認めないために、第四条には私は「協議をする」という一項を入れるように改正すべきだと思うのです。
  52. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 合唱隊ではないかというのですが、平和なためには、ちんどん屋であろうと合唱であろうと遠慮すべきではないと思います。  それから、脱退規定でございますが、この三国のうちどれかが脱退するということになると、もう条約の基礎はくずれてしまうのでございます。それで脱退規定があるということは、この条約一つの罰則みたいなものだと思うのです。つまり、そうなればたいへんだということが、この条約の実効を保証しておると、逆説的に言えば、そういうことになるのではないかと思うわけでございまして、そういうことが万が一にもないようにする。あなたが言われる、それより、その前階梯で協議しようじゃないかというようなことも考える余地はないのでございまして、脱退ささないという意味で、そういうことはもうないようにするために、というのが前提にあると私は思うのでございます。しかし、条約の条文の構成からいきまして、そういうものがあったほうがいいのではないかという御意見につきましては、なお、われわれも検討してみますけれども、私はこの条約というのは、脱退規定というのが、非常に重大な意味を持っておるというふうに考えます。
  53. 森元治郎

    ○森元治郎君 まるで大平さんが核兵器を持っているようなことを言うのはおかしいですね。——この「異常な事態」というのは何ですか。これは米英ソ三国の過去ここまで来る間の討議の中で、それぞれの国の発言があったと思う。大臣はどういうふうに聞いておられますか。
  54. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 「異常な事態」そのものは、具体的には定義されておらないわけでございますが、この前後にありますように、「異常な事態」というのは、「この条約の対象である事項に関連する」ものであって、かつ、「締約国の至高の利益を危うくする」ようなものでなければならないわけでございます。
  55. 森元治郎

    ○森元治郎君 わかっているのはあなただけで、ほか聞いた人はだれもわからないけれども。  そこで、一九六一年のアメリカの草案の中には、こういうことを言っております。調印国調印しながら義務を果たさない場合、たとえば中国やフランス。もう一つは、非調印国実験を行なった場合には、この「異常な事能」というものの中に入るのだというのが、アメリカ側説明であることは新聞でも書いておりますが、この点はどういうふうに理解したらよろしゅうございますか。
  56. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) そういう場合の中にはこれに該当するものが当然あり、また、これはそういうものの場合であろうと思いますけれども、それじゃ逆に、すべてそういう場合は「異常な事態」と自動的に認定されることになるのかというと、そうではないだろうと思います。
  57. 森元治郎

    ○森元治郎君 その御説明はわかるが、「認める」のは、「自国の利益を危うくすると認めるとき」というのは、条約締約国が認めるのではなくて、その主権国が自分で、アメリカソ連かどっかその国が認めるのですから、ここに幅が非常に広いと思うのです。ですから、どうです。こうなると、「この条約の有効期間は、無期限とする。」と、アンリミティッドと書いてあるけれども、私は後ほど防衛庁長官にも質問しようと思うのだが、中国あたりで思わぬでかいやつをぶち上げた、これは容易じゃないとある国が判断すれば、条約にとどまることについて深く考慮しなければならぬ。そうすれば、この条約の有効期限は無期限ではなくて、無期限を目途としながら、実際は一年、二年、三年、ドカンのやり方次第では非常に短いもんだ。この条約の期限は、他国がやったときまでと書いたほうがいいくらいのもんです。この点どういうふうに解釈しておりますか。
  58. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 先ほど申し上げましたように、どこかで小さい核爆発が起こった。それは現在の米英ソ核兵器の進展状況からいけば、直ちにこの至高の利益を危うくするような異常な状態とは認められない。かりに協議でもして説得の努力でもしようかということになることがあるかもしれないわけでございまして、どこかで核爆発が起こったらすぐ条約は失効するというよりは、そういうほうのゆとりもこの条約にはあるわけでございます。
  59. 森元治郎

    ○森元治郎君 この条約全体を見て感ずることは、米英ソ三カ国が中心で、いろいろよい面もたくさんあります。が、その半面を見ると、どうしても中国とかフランスとか、あるいは将来起こり得る第三国の核爆発に対抗して味方をふやしておこうというような政治的な感じを非常に強く私は受けるのです。ですから、私は、この条約に入った以上は、もうこの線から後退させないという点で、日本が強力に条約の中で締約国に働きかけなければ無意味条約に早くなってしまう、こういうふうに思いますが、大臣もう一ぺん。
  60. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおり思います。
  61. 岡田宗司

    岡田宗司君 関連。この「異常な事態」というのがいま問題になっておりますけれど、これらについて何か三国の間に合意された文書とかなんとかいうものがあるのかどうか。あるいはまた、各国がこれらの「異常な事態」ということについて、この条約署名を求める国、たとえば日本とかその他の国に説明があったかどうか、また外務省はこの点について、もし向こうから何の説明がなかった場合に、こちら側から説明を求めたかどうか、それらの点をちょっとお聞きしたいと思います。
  62. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 注釈的な内容の附属文書みたいなものはございません。これがどういう意味かということについては、先ほど森先生がおっしゃいましたような意味であることは、もういわば公知のことになっておるわけでございます。ただ、それのどの程度のものを「異常な事態」と言うかということについては、その場合場合の判断の問題で、そこまで定義づけることは、初めからもういわば不可能じゃないかと考える次第でございます。
  63. 岡田宗司

    岡田宗司君 それについて定義づけることは困難じゃないかというのは向こう側の言い分なんで、こちら側ではこの点がこの条約を有効ならしめ、かつ永続ならしめる非常に重大な点なんです。お聞きになったかどうか、三国に対してただしたかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  64. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 聞いてはおりません。しかし、これはもう聞くに及ばず、意味はさっきのように、他の締約国または締約国外で核爆発実験をするようなものが出た場合、ということを想定しての規定であることは、もういわば公知のことになっております。
  65. 岡田宗司

    岡田宗司君 公知のことはいいですよ。だけれども、その程度の問題だと言われたけれども、たとえば先ほど森君が言われたように、中国が大きいのをドカンとやった場合に、アメリカなり何なりが、これはたいへんだというので抜けてしまうような場合、この条約は全く無効になってしまうので、そこで、そういうような場合もあり得るので、そういうことをお確かめになったかどうか。やはり条約を結ぶ場合には、たとえばさっき森君の言われたように、コーラスの一員として参加するにしても、そのくらいの準備は、条約局長ともあろうものがしないというのはおかしいじゃないですか。
  66. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) いまの、「大きな」とおっしゃるところが非常に問題なんでございまして、「大きな」ということは簡単に言えるわけでございますけれども、「大きな」というのは、これは認定の幅の問題で、どこから「大きい」と言うか、そこまではっきりしませんと意味がないわけでございます。
  67. 岡田宗司

    岡田宗司君 確かめてないんですね、何も。
  68. 森元治郎

    ○森元治郎君 大臣に伺いたいのだが、一番みなが心配しているのは、中国とフランスがこの条約には入ってない。入ってないけれども、「この条約は、すべての国に開放される。」という第三条第一項の目的から見ると、どの国かがフランスなり中国なりに働きかけて、入らないかということを申し入れた、誘ったことがあるのですか、どうですか。
  69. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 承知いたしておりません。
  70. 森元治郎

    ○森元治郎君 これは当然誘って悪いものではないと思うのですが、大臣のお考えはいかがですか。
  71. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 誘って悪いものでないと思います。
  72. 森元治郎

    ○森元治郎君 これはやはりどこの国にも誘いかけるべきだと私は思うのです、平らな気持ちで。そういうところから話がほぐれてくるのだと思う。これはおやりになる、あるいは日本あるいはその他の国をしてやらせるように御努力するお考えはありませんか。
  73. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) よく考えてみたいと思います。
  74. 森元治郎

    ○森元治郎君 中国、フランスその他の国々が核兵器を持ってはいけないという理由がありますか。
  75. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま、まあ核兵器の保有とか使用とかということを規制する国際条約というようなものはございませんで、中国やフランスが保有するということになっても、それは違法であるとかなんとか言うことはできないと思います。
  76. 森元治郎

    ○森元治郎君 これらの国々の核爆発というのは決してうれしいものではないのであるから、これを押える手、押えさせる方法、大臣はどんなふうにお考えになりますか。
  77. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これは先ほどずっと触れましたように、全面軍縮ということに両国とも反対はしていないわけであります。そういう保障があればなにもやる必要はないと言っているわけでございます。問題は、軍縮問題の討議がどのように実効ある結晶を見てまいるかということにかかってくると思います。それは中国やフランスがそれをどう評価するに価するかという状況になれば、そういう状態は、両国に対しまして、そういう自制を招くことになりはしないかということになると思います。
  78. 森元治郎

    ○森元治郎君 主権平等とか、戦争前はよく国家の平等権ということを盛んに言ったわけです。ことに平等権なんというのは、大平さんがどっかのお役人になっている昭和十三、四年ごろ盛んに言われたことばです。これは軍縮会議などで、従来は主力艦、五・五・三の比率、そういうような比率が出た。続いてロンドン条約で補助艦の軍縮が行なわれた。そういうときに日本が、国家が平等だからという立場からその比率に反対をした。やがて出してきた提案がコモン・アッパー・リミットという一つの方式であった。お互いが主権国家、平等だから持てるというアッパーのリミット——共通最大限、これはだれも同じだ。しかし持たない。自制する。こういうようなことを日本が出したが、つぶれてしまいましたが、私は中国でもフランスでもどこの国でもやる権利はあると思うのです。だから、単に、お前はやるな、やるなと言ってもだめで、やはり現在大きなものを十二分に持って、へどが出るほど持っている国の自制、これが道義的にあとから育ってくる核実験国、核保有国の増大、拡大を抑える手だと思うので、何としても、こういう条約の立場に立って、すみやかに大国が、いま持っておるものを犠牲にしてもストップする、減らしていく、こういうことを真剣にやらない限り、私は非常に国際情勢は危険になってくる。こんな条約なんか意味がなくなってしまう。大国の自制、米英ソ、光に十分持っておる国の自制があれば、中国のような激しいことばもおのずから話し合いの空気に持っていけるのだと思うが、この大きい点はどうですか。
  79. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま森先生が言われたとおりの考え方が、私が十八回国連総会において主張したことなのでございます。すなわち、核保有国の責任というものを鼓を鳴らして強調したゆえんは、そういう趣旨にあるわけでございます。
  80. 森元治郎

    ○森元治郎君 また、あさってもあるのだそうですから、残りは次に伺いますけれども、この条約は、先ほど申した、異常な事態のときには脱退する権利を持っておる。留保するのじゃなくて、脱退する権利を持っておる。あそこには「有する。」ということが当然入るのだから、われわれが並び大名、合唱隊というのじゃないなら、主権国家として許されておるなら、問題の条約の改正などにあたっては、並び大名も主権平等の見地から単純過半数でやるべきだということを申し添えて、午前の分は終わります。
  81. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 一時三十分まで休憩いたします。    午前十一時五十五分休憩    ————・————    午後一時三十七分開会   〔理事井上清一君委員長席に着く〕
  82. 井上清一

    理事(井上清一君) ただいまより外務委員会を再開いたします。  午前に引き続き、大気圏内、宇宙空間び水中における核兵器実験禁止する条約締結について承認を求めるの件の質疑を行ないます。質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  83. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 本条約は、午前中の質疑でも明らかになりましたように、核兵器の全面的な禁止一つの目標になっておる。ところが、この核兵器の全面的な禁止という問題がなかなか交渉が進捗をしないのです。そこで私はまず防衛庁長官にお聞きしたいのは、アメリカソ連の核戦力の現状がどういうふうになっているのか。防衛庁ではどういうふうにそれを観察しておられるのか。それをまず。
  84. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) 核兵器の問題は、御存じのとおり、高度の秘密性を持たしておりまして、なかなか正確な数字は発表いたしておりません。ただ、いろいろ入手できます資料を総合いたしますと、大体のところ、現在アメリカ核兵器の数といたしまして数万発、大体五万発前後、ソ連がその二分の一以下ないし三分の一というような数字が予想されるわけでございます。なおまた、破壊力という点から見ますると、大体専門象の推定の数字は、アメリカが九百億トン、ソ連が大体そのやはり二分の一ないし三分の一と、そういうふうな数字が予想されるわけであります。
  85. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 核兵器の保有量がいまちょっと出ましたが、ミサイルのほうの保有量についてはどういうふうにお考えですか。
  86. 海原治

    政府委員(海原治君) ミサイルの保有につきましては、先般、四月十四日でございますが、四月の十四日にアメリカ政府の正式の見解が国防省発表として出ております。これによりますと、ICBM——大陸間弾道弾の数でございますが、これが現在発射可能のものが七百五十ある。で、これに対しましてソ連のほうは、その四分の一以下である、こういう数字でございます。  なお、御参考までに申し上げておきますというと、このほかにアメリカの核攻撃力といたしましては、同じ発表で、戦略爆撃機が五百四十機。ソ連はこれに対しまして大体二百七十機。それから、ポラリス潜水艦でございますが、ポラリス潜水艦のミサイル・ポラリスは百九十二発、すなわち潜水艦の数が十二隻、こういう公表の数字が四月の十四日の国防省の発表にございます。
  87. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 特に極東における核装備の状況、これはアメリカソ連も両方極東においては装備の状況がどうなっているのか。
  88. 海原治

    政府委員(海原治君) 極東におきます、まず米軍の現実に核を装備いたしましたものの展開につきましては、私ども資料を持っておりません。ただ、御存じのように、沖繩には地対地のミサイル、メースがございます。オネスト・ジョンもございますし、あるいはナイキ・ハーキュリーズ——地対空のミサイルもございます。沖繩は御存じのような場所でございますので、あすこには核兵器が貯蔵されておるのではないかというふうに一般に推測されております。  ソ連側の核兵器の状況につきましては、沿海州、樺太等に中距離の弾道弾が展開されておる。この機種につきましてもいろいろな憶測が行なわれておりますが、一般に六ないし八程度の機種がある、この中距離弾道弾は当然に核弾頭のものである、こういうふうに考えられております。さらには、ソ連の爆撃機あるいは戦闘機等にも空対地のミサイルが装備できますし、地対空のミサイルの中には、相当数核兵器の核弾頭を装備したものもある、このように一般に推測されておりまして、その実態につきましての詳細なる数字は、手元には持ち合せておりません。
  89. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いま沖繩のほうがちょっと出ましたが、朝鮮や台湾における核装備の状況はどうなっておりますか。
  90. 海原治

    政府委員(海原治君) 台湾には米軍の作戦部隊は展開しておりませんので、ここには核兵器はないものと思われます。朝鮮につきましては、かつてマタドールが展開しておりました。これにメースがかわるという情報がございましたが、メースはその後展開されておりません。したがいまして、一説によりますというと、あそこにございます大甲溪のほうはいわゆる原子砲的なものではないかという推定、想像はいたしますが、確証は持っておりません。
  91. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それからNATOの多角的な核戦力構想ですが、これは一体具体的にはどういうものなのか。特にその多角的な核戦力構想に対してイギリス、フランス、西ドイツ、おのおのがどういう態度をとっているのか、その点伺いたい。
  92. 海原治

    政府委員(海原治君) これは各国によりまして反応ないし考え方がだいぶ相違があるようでございます。まず英国は、ナッソー協定に基づきまして戦略核装備をポラリス潜水艦の建造を主体として進めております。なお、フランスはナッソー協定に反対いたしまして、独自にNATOの管理を受けない核装備を考えておる模様であります。西ドイツは、NATOの統合核戦力を保有する意味でナッソー協定に賛意を表しておりますが、それぞれの国情によって違うものと存じます。なお、佐多委員もよく御案内のとおり、ナッソーにおきまして、一九六二年十二月の十八日から同月二十一日の間にケネディ米大統領とマクミランが会談して、核防衛組織に関する声明共同で出したわけであります。これに対するいろいろな反応は、いま申し上げたような形であらわれておるようであります。
  93. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 中共の核兵器開発状況、これについて、いつでしたか、日米合同委員会のときだったか何だったか、防衛庁長官だったか、わりあいに早いのじゃないかというような発言をされたように記憶しているのですが、この点をどういうふうに防衛庁では見ておられますか。
  94. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) 中共における核爆発の問題ですが、前長官のときに相当具体的な発表を見たようでございます。私、就任して以来、各方面の専門家の意見も伺っておりますが、大体現在の時点では、やはりここ一、二年以内に、早ければ核実験が行なわれるのじゃないか。最近の陳毅外相、あるいは周恩来首相の談話等を見ましても、大体そういうことを示唆いたしております。ただ問題は、核実験でありまして、装備に至るまでは相当の年月を要する。これも中共の責任者が率直に認めておるようであります。
  95. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 核実験がわりあいに早いのじゃないかという根拠はどういうところにあるのですか。
  96. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) これはマクナマラ国防相でありますとか、あるいは先ほど申しました陳毅外相、あるいは周恩来首相、その他の中共の最高責任者の各般の談話でありますとか、声明とか、いろいろな点を総合いたしまして、大体実験をやるとすれば、ここ一年か二年のうちにやれるのではないかという推定でございます。ただ、これに要する膨大な電力の問題でありますとか、あるいは中ソ確執による技術協定の廃棄だとか、いろいろなこれをむしろおくらす要素も多分に最近出ておるようでありますので、いつごろとか、あるいはむしろ早まったのじゃないかというのは、最近ではむしろ昨年の春から秋ごろまでに行なわれた観測よりは、むしろおくれてきているのではないかという観測が強いようであります。
  97. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 第七艦隊の核装備の状況はどういうふうになっておりますか。
  98. 海原治

    政府委員(海原治君) 第七艦隊の所属の艦艇の搭載航空機につきましては、これはそれぞれたとえばAC−3、A4−BないしはFの3C、こういうものにつきましては、核爆弾、あるいは核ミサイルというものの搭載は可能でございます。しかし、これは何回も申し上げておりますように、搭載が可能であるということと、現実に核装備をしておることとは別問題でございまして、その辺の状況は、現に第七艦隊が常時どういう状態にあるかということにつきましては、私どもその詳細は承知いたしておりません。
  99. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 核兵器そのものを全面禁止するためには、核基地というか、核装備というか、そういう核基地の撤廃ということが非常に重要な問題となると思いますが、いまの御報告によりますと、極東においてもアメリカ、あるいは沿海州を含んでソ連等が核基地を持っている。あるいは核装備している。したがって、むしろ核兵器の全面的な禁止に積極的な賛意を表する日本側が提唱をして、太平洋における核基地撤廃の提案をする。それにはもちろん中国も入れて、そういう交渉なり、そういう方向へ持っていくということが非常に必要だと思うのですが、その点について防備庁長官どうお考えになりますか。
  100. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) 私どもの立場からいいますれば、将来にわたりまして、一日も早く核兵器国際管理に置くべきじゃないか。したがって、政府の一貫した態度でも、核実験反対を終始強く世界に訴えておったわけであります。今後もその方針に変わりはないわけでありまして、御指摘のとおりのいわば核基地の撤廃というのも、一つの私どもの目標ではありますが、ただ問題は、ICBM、IRBMとかいった固定的なものから、最近は水中から発射するような流動的な基地の性格の変更もございます。非常に複雑な内容になってきた。幸い、昨年の夏に、部分的ではありますが、核実験禁止の協定も米ソ話し合いがつきまして、英国も参加したわけでありますが、私どもの立場から申しますならば、将来はやはり相互不信を一日も早く除いて、核兵器日本としては米ソのいわば谷間といいますか、俗にいわれる被害の立場に置かれるわけでありますので、一日も早く核兵器国際管理による核戦争の勃発の防止ないし起こることに対する不安をなくすというところまで私どもは持っていきたい。ただ、その時期なり方法なりは、相当の事実を的確にやはり認識して、どういう時期にどういう形でやるか、これはまた別の慎重に考えるべき問題であろうと存じます。
  101. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 フランスでは核兵器を持つことを非常に希望し、努力をしているのですが、フランスの現在の核実験開発状況、核兵器の保有状況というのは、これはどういうふうに見ておりますか。
  102. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) フランスにドゴール政権ができた直後、私もたまたまパリに行ったわけでありますが、ドゴール新政権が発表した大きな三つの柱の中の一つに、われわれは大国民としてフランス人の手によってみずからの原爆をつくってみせるということを発表したことは御案内のとおりでありますが、その後やはり原爆をつくり実験をいたしました。また、豪州の南寄りで水爆の実験を近くやるという準備も進めておるという情報も得ております。ただ、ミラージュの積載機の問題につきましては、原爆が大き過ぎるとか、ミラージュ自体の機体の欠点等が問題になりまして、この点はことし実現の予定が二、三年延びたと専門家は見ておるようであります。なお、推量につきましては、政府委員から答えさせます。
  103. 海原治

    政府委員(海原治君) フランスの原爆の開発につきましては、今月まで六回という数字もございます。ともかく数回程度の原爆の爆発はいたしております。しかし、ただいま大臣から御答弁ございましたように、具体的に予定されましたミラージュ4という爆撃機に搭載するにはその形が大き過ぎる。したがって、もう少し小さなものにしようじゃないか。この小型化する予定が、当初の計画ではことしくらいに完成するはずでございましたのが、なかなか予定どおりいかない。したがって、二、三年おくれるのじゃないか。そのミラージュの爆撃機にいたしましても、低高度におきましての飛しょうの際にいろいろと問題がある。こういうようなことが専門家筋の推定として出ております。したがいまして、当初は一九六四年、すなわちことしじゅうには約五十機のミラージュ4型の爆撃機が原爆を搭載して一つの勢力となる予定がございました。これはやはり二、三年おくれる、こういうように現在見られております。
  104. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そのフランスの核実験なり核武装なりをとめることが核兵器の拡散防止の非常に重要なポイントになると思います。それをやめさせるためにアメリカなりイギリスはどういう努力をしておるというふうにごらんになりますか。
  105. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) ナッソーの場合でも、やはりフランス側にいろいろアメリカが強く働きかけたことは御承知のとおりでございますが、やはりフランスの同意を得られなかった。アメリカといたしましても、これはやはり拡散を防止するという御指摘の点から見て、今後努力するだろうと思います。しかし、現在のフランス人の考え方ないしは感情から申しますと、なかなかこの点についてアメリカ話し合いには直ちに応じないのではないかというふうに私どもは見ておるわけでございます。特に昨年、十二月の三十一日のドゴール首相の国民に対するラジオ、テレビの演説におきましても、はっきり、やはり水爆はフランスの独立を保障するものだと、むしろ意欲的な面を強く出しまして、対米関係からいっても、われわれは世界的な、国際的な発言力の大きな背景をなすものであるというようなことも言っておる点から見まして、なかなかいまのアメリカ考えておりますような考え方には応じないような要素が多分にあるようでございます。
  106. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 アメリカは、フランスに核兵器の秘密というか、核兵器情報を与えているのかどうか、そこいらはどういうふうにごらんになりますか。
  107. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) これはむしろ逆の話を私どもは聞いておるわけでありまして、最初ドゴールが、われわれがみずからの手でつくると言った一つの原因は、アメリカが原爆をつくった陰には、フランスの優秀な物理学者その他が貢献したのに、ところが、戦後情報の提供をアメリカないし英国に求めても何らこれに応ずるところがない。これに対して非常にドゴールが憤慨したという話を聞いておるわけでございまして、 むしろこれによってドゴール大統領みずからフランス人の手によってつくり上げるということを宣言し、また、それに成功したのではないか、こう考えております。
  108. 森元治郎

    ○森元治郎君 大臣の御答弁の中では、中国の核兵器開発は、核実験はここ一、二年のうちにやるだろうといういま予想が専門家筋ではなされている。これに関連して、一、二年のうちに実験をやる。それから、どういう順序でか核兵器の生産が行なわれて、それが第一線部隊に配属される一方、大量生産が進む。同時に、これを運搬するミサイルの開発も進む。そういう経過ですね。それはどんなふうな順序、どんなふうな年月をかけて進むものなのか、わかりやすく御説明願えるならば、いまの中国の段階ソ連で言えば何年度ぐらいの力、アメリカで言うならば一九四四年ぐらいなのか、五年ぐらいなのか、あるいは七年ぐらいなのか、そういう米ソとの比較で御説明願うとわかりやすいと思うのです。
  109. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) 非常に科学的な施設並びに基本的な研究も進んでおる英国ですら、実験原子炉が始動いたしてから装備の成功まで七年かかっております。フランスが十三年、こんな例を見ますると、かりにたとえ一年ないし二年以内に核実験を、爆発を行なっても、装備までには相当の年月が要るのではないか。大体専門家はそう見ておるようであります。なおまた、先ほど申し上げましたが、これをさらにおくらす要素としては、ソ連との技術協定の廃棄があり、また、多数の若い科学者ソ連からの引き揚げもあり、いろいろな点で、相当かかるという観測の上にさらにおくらしている要素が出ておるようでございます。なおまた、英国は御承知のとおり、アメリカの大体百分の一程度の力を持っておるのでありますが、米ソ英という比率を大体見ますると、中共はとうていこれは比較にならぬようなまだまだ程度の低いものである。総合的ないろいろな要素ができ上って装備をしてきますので、現在のところ、大体専門家筋では、実験には成立しておるが、装備に至るまでには相当な年月を要するだろうということはほぼ一致した意見であります。
  110. 森元治郎

    ○森元治郎君 相当な年月というのは、イギリスの場合七年とか十三年とか数字がありましたが、そういう数字でおおよそ見当はつけられないものか。相当な年月ということと、それに、おくらせる——うしろへ引っぱる力が作用しておるようですから、それを加えると十三とか十四とか、大体の数字が出ると思うが、言えないものですか。
  111. 福田篤泰

    政府委員(福田篤泰君) 何年とか十年とかいう具体的な数字は、私ども差し控えたいと思います。
  112. 森元治郎

    ○森元治郎君 これが問題なんですね。これ科学の問題でありますから、およその見当がつく。あとはお金の問題とか、資材とか、技術とか見当つけて、これがはっきりしないと、いつでも社会不安、政治不安の種になるし、しかも、科学技術は異常な進歩をしているから、何も米ソと同じ程度で開発しないで、もっとショート・サーキットで、七年はいまや三年半でいくんだということもあり得るかもしれません。そこで七年とか、十三年とか、そこらがあるとまたたいへん気分が落ちつくし、われわれが打っていく手も打ちやすくなるのじゃないか。どうですか。
  113. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) かつて、二月実験を行なうだろうというのでだいぶ大きな問題を起こした前例もございます。いま御指摘のように、おくらす要素、さらにまたテンポを早める要素も確かに考えられる。国際情勢の流動してやまない実態から見ましても、また、いまのような中共の孤立的な立場がどうなるか。いつまでもまたソ連と一線を画していくかどうか、あるいは手を握るか、そういうことも予想できませんし、さらにまた、核装備をするに至るいろいろな産業構造の問題も出てまいります。中共の国内消費の問題もありましょうし、あらゆる要素がからみ合っておりますので、ただ一応の御参考として英国やフランスの例を申し上げたわけでございます。大体これについて相当の年月を要するだろうということ以外に、いまのところ何年ということは私ども差し控えたいと思います。
  114. 森元治郎

    ○森元治郎君 それでは、そこに防衛局長の専門家がおられるようだが、いまのイギリスくらいになるには、やはり七年なり十年くらいでいくものなのかどうか。そうして、先進国の米英というものとの時間差、これは縮まらないで、依然としてこの力の距離ですね、量、質においての距離というのは縮まらないものだろうか、どんなものですか。
  115. 海原治

    政府委員(海原治君) 御指名がございましたが、私決してそのほうの専門家ではございません、ただ、関係のいろいろの文書を調べてみますと、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、非常に推定がむずかしいということはわかるわけであります。と申しますと、たとえば一九六〇年にアメリカのGE社が非常に詳細綿密な調査をいたしました結果のレポートが出ました。これによりますと、最初の核実験は一九六三年、すなわち去年、それで核勢力となるのは一九六六年以後、こういうふうな見積もりを出しております。このGE社のレポートというものは、当時一般には非常に権威のあるものというふうに考えられておった。こういうもの、その他いろいろの推測がございます。これらはすべて、いま中共が実際に生産用に使っている原子炉が幾つあるかという問題です。その原子炉がどのような形のものかということが前提になるわけでございます。従来しばしば御説明し上げておりますように、現在中共には原子炉は四つある。こういう情報でございますが、その中に、北京のものはこれは確認されておりますけれども、あとの三つ、すなわち西安とか重慶とか、満州にあると伝えられておりますものについては、確証がございません。したがいまして、その能力につきましても、全部憶測でございます。さらに、北京の実験用の原子炉も、熱出力も一万キロワット、一説には七千キロワットでございますが、これも実験用のものでございます。これを用いて生産に使うとすればという仮定がございます。そこでプルトニュウムを使うということになってきますと、毎年ある程度のものができるだろう、それをためていけば何年度にはどれくらいになる、したがって、早ければこの年に最初の核爆発が行なわれるであろう、こういう推論の積み重ねでございます。ところが、大臣からも御説明いたしましたように、中共のこの開発を支援いたします条件が十分整っておりません。当初はソ連科学者の援助がございましたが途中で引き揚げました。あるいは予定された発電の開発も非常におくれております。やはり御承知のように、この関係はたいへんに多量の電力を食いますので、豊富な電力の利用ということが絶対の条件であるということを専門家が言っておりますが、その電力につきましても、はたしてどの程度のものかということはみな推測でございます。そこで、フランス等と比較してどうかということになりますと、ある専門家の見積もりといたしましては、中共がプルトニウム方式をとって生産をする。その場合にはまず熱出力二十万キロワット程度の大型の原子炉をつくる必要があるだろう、こういうことになっております。フラントの場合には、この型の生産炉は五八年に一基、五九年に一基できております。この二基を利用いたしまして、六〇年から六二年の春までの間において、先ほど私が申しました六発の実験をしております。ところが、中国でこの最初の大型の原子炉が一体できているのか、できていないのか、ここがよくわかりません。したがいまして、いつかということになりますと、先ほど大臣からお答えしましたように、それを予測することはきわめて困難である。で、たとえばことしの一月二十七日にアメリカの下院におきますマクナマラ国防長官のステートメントにも、中共というものは、その乏しい資源にもかかわらず、非常に核の開発努力している、しかし、これが兵器として利用されるのには、この十年間はおそらく無理じゃないか、こういうような推測もしている次第であります。私どもの手元には、以上のような推測しかございません点をひとつ御了承願いたいと思ます。
  116. 森元治郎

    ○森元治郎君 しからばアメリカの先ほどのGEの発表で、六三年ごろ爆発をやるだろうという話でしたね。ドカンと上がったときの、あの付近の小さい反米新興国に与える心理的影響というものは、この影響はどの程度に計算しているのですか。とてもまだまだいなかの段階であって問題にならないのだから、だれもたまげやしないだろうというのか。これで、日本が明治維新で外国から西洋の船買ってきてたまげたように、これができた以上負けやせぬというふうに、あそこらのジャングルにいる人たちはたまげるだろうと思うのですね。この心理的影響というものはどの程度に判断されますか。
  117. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) これは将来の予測でございますので、あまり的確には表現はむずかしいのでありますが、何と申しましても対外宣伝力並びに国内消費に対する宣伝は能力以上なものを持っている中共でありますので、最大限これを政治的、軍事的に生かし、利用するだろうということは、容易に想像されるわけであります。地下実験に関しましても、ソ連がセミパラチンスクでやっておりますが、一体どこでやるかということも中共に対して大きな問題でございます。いまから具体的にどういう影響ということまでは私ども言えませんが、少なくとも東西アジア、もちろん日本を含んだアジアの地域に対して相当大きな影響を及ぼす、これはいまから十分予測できるわけでございます。
  118. 森元治郎

    ○森元治郎君 そこで、今度は大国のほうのまた責任ができてくるので、中国に対して屈辱感ですね、こういうものを絶えず与えるような刺激、こういうことはもう厳に慎しまないといけないと思うんです。それが一つ、それから中国は日本やそこらのせっかちな合理主義文明国と違いまして、ものをはかるとき、十年、二十年の単位ではかるんですね。いまは違うが、福田さんやわれわれがお釈迦さまになっちゃったあと、おそまきながらあと二十年もたてば今日のイギリス以上、ソ連の間ぐらい、あるいはソ連に近いくらいのところまで核兵器開発は私はできると思うんです。ですから、福田さんと私らはドカンと灰をかぶらないからいいが、愛する子供らがドカンとかぶっちゃこれは意味ないんで、こういう長いものさしではかるというつもりで、中国に屈辱感を与えないで、そして国際社会に引っぱっていくという気持ちが大国、そして隣国である日本には必要であると思うんですが、大臣のお気持ちを。
  119. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) もちろん、われわれとしては、相手が中共であろうと、またアメリカであろうと、ソ連であろうと、原爆の実験に対しては終始反対をする必要があろうかと思います。ただ、言われましたとおりの中共自体の国際的な地位と申しますか、プライドと申しますか、それを十分われわれとしては考慮に入れる必要があろうと存じますし、さらにまた、長い目で見て、いろいろな短いものさしで判定することも危険だということも十分私ども了解できるわけでございます。ただ、私はこれと同時に、核戦力なり核兵器に対する国際世論と申しますか、考え方と申しますか、相当のテンポで変わってくるんじゃないかという期待も実は持ち、また、これに対してはわれわれも微力を尽くす必要もあろうと思いますが、もちろん国際連合の場であろうとそういう点は慎重に考えなければなりませんが、戦術的には研究する必要がありますが、方向的には、やはり実験はこれを禁止する。ないしまた、核分散はあくまでこれをやらないようにする。将来は核兵器自体の国際管理まで、核戦争の最終的な破壊戦争は絶対に防止する。こういう方向にやはり進むべきでもあるし、また十分その方向考えなければならない。その中において中共に対する考え方も私どもは捕捉する必要があろうと思っております。
  120. 森元治郎

    ○森元治郎君 中仏の関係は、技術提携なり弱い者同士というか、いじめられている同士というか、相互の技術的提携なり惰報交換、軍事的あるいは科学的な交換というものが行なわれておるんですか、おらないんですか。
  121. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) ちょっと御質問の意味が。
  122. 森元治郎

    ○森元治郎君 中国とフランスとの間に情報交換なり、核開発がおくれた二つの国がお互い情報の教えっこをしてスピード・アップもできるし、研究のむだも省くこともできる、効率もよくするということもあり得ないこともないと思うんだが、どうですか。
  123. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) これについては、私は情報の交換をしておるということは話は聞いておりません。先般首相、外相が来られたときにも、実は私的な立場でこれが話題になりましたが、一応、もちろん私的な立場で先方も否定しておりまして、いまのところ、そういう話は伺っておりません。
  124. 森元治郎

    ○森元治郎君 そこで、現在、将来核兵器を使えるだろうという力を持っておる国、新聞だ何だ見ると、そんな国を拾い上げてみると、こんな国になるのですが、そちらの御調査はどうか。スイスだとか、ベルギー、インド日本も入る——カナダ、中国、チェッコ、スエーデン、西ドイツ、イタリア、東ドイツ、イスラエル、こういうのが核兵器でも生産し得る潜在的なポテンシャルを持っておるというふうに言われるのですが、中国とフランスに続く国は一体どこになりそうですか。
  125. 海原治

    政府委員(海原治君) いま先生の御指摘になりました国々は、私も実は専門家に意見を聞いておったわけであります。これはまあそういう現在の各国の技術の程度から判断して、もしも決意をすればそこまで行けるであろうと、こういう見積もりでございます。すなわち、現在世界には原子炉の数が五百八十六ある。ところが、米、英、ソ、仏、この現在核兵器を持ったりしておるところは三百九十九でございまして、そのほかの国に原子炉が百八十七あるわけであります。原子炉を持っておる国の数としては、三十六カ国ございます。それは、小さな実験用の原子炉ももちろん含んでおるわけであります。そういうような国の中で、その国の科学技術、工業技術等から考えて、もしも原子爆弾をつくろうと決心した場合には、その程度の期間の間に可能であろう。純砕な推測でございますが、私どもとしましては、何らそういうそれに似たような数字は承知いたしておりません。
  126. 森元治郎

    ○森元治郎君 その私のあげた国々の名前は、潜在的な核兵器生産の能力を持っておるかどうか。スエーデン、スイス……。
  127. 海原治

    政府委員(海原治君) 潜在的なというおことば意味でございますが、いまおあげになりました国は、私が申しました国、原子炉を持っておる三十六の国に全部入っておると記憶しております。したがいまして、その決心をして努力をすればその程度の期間内にはつくれるだろうと、こういうことでございます。したがいまして、潜在的というのはそういう気持ちを持っておるのかということになりますと、これは私ども全然承知いたしておりませんので、全くそういう推測をされました人の個人的な、純粋な客観的な、技術的な見積もりと、こういうようにひとつ御理解願いたいと思います。
  128. 森元治郎

    ○森元治郎君 私があげた国は、やるつもりならば技術もある、金もある、能力もある、ただやるつもりならやれるんだという国はこれらの国々でしょうかということを聞いているのだがら簡単なんですが、日本が入っておるからむずがしいだろうが、日本はあとで聞くことにして、カナダ、東独、チェッコ、西独、イスラエル、これはどうなんですか。
  129. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) どうも簡単でむずかしい問題で、大体各国別にいろいろの考えもありましょうし、当事国になりませんと、これははっきり申し上げることはむずかしいと思います。
  130. 森元治郎

    ○森元治郎君 これはやっぱり日本ももちろん能力があるということは新聞でも雑誌でも、あなた方の「国防」とかに、ほおかぶりで原稿代かせぎで書いてある原稿にもたくさん書いてあるのですよ。ただ、公の席に来ると、国会答弁というやつではっきり言わない。原稿でありますからはっきり言わなければだめですよ。日本だってやろうと思えば今日の日本は十分でき得る力を持っておると思う。どうですか、力のほうは、大臣の判断で。
  131. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) これは原子兵器と申しましても、メガトン級からデービー・クロケットという小型のものまであり、万種万端でございまして、これは非常に定義がむずかしいわけであります。なお、わが国では御案内のとおり、国会を通過しました原子力基本法、これが基本的なわれわれの態度をあらわしておるのでありまして、能力という点は、私ども相当程度まで原子力の平和的利用については相当な実績も積み、また発展もしておると思いますが、これを核兵器につくり得る力がどう計算さるべきかという点は、私ども考えたこともないわけであります。
  132. 森元治郎

    ○森元治郎君 外務省の方々に聞きたいのだが、この本条約承認を求めるの件の補足説明の中には、断定的に、フランス、中共はもちろん、さらにアルバニア、カンボジア、北ベトナム、北鮮、キューバなどがいずれは核保有国になるとされておるんですか。これにそこにはひっかからないで、中共だけですか。
  133. 中村輝彦

    説明員(中村輝彦君) いまの質問の御趣旨のところを、おそれ入りますが、もう一度。
  134. 森元治郎

    ○森元治郎君 だれか……まあ、もう帰っちゃったから、またあさって条約局長にでも……。  これは防衛庁長官、お答えできるかどうか。フランスはこの条約に入らないが、まあフランスもこの条約の気持ちというか、やらないでくれというみんなの願いというものはわかるとか、その道義的に協力したい気持ちはあるんだとか、そういうフランスの意向というものは聞いておるんですか。門はあいているからお入りなさいと言っているだけなのか。さっき外務大臣は、何も連絡しているかどうか知らないという話なんですが、これは入れることが当然なんですね。しかし、入らないにしても少し慎んでくれないかとか、どうしたら君の満足がいくかというぐらいのことは当然やらなければ、これは敵対関係になっちまうんですね。一体このフランスというものと今度の条約関係、これは防衛庁の大臣はどう聞いておるんですか。
  135. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) これはどうも外務大臣がお答えするのが筋道であろうと思います。ただ、しいておまえの個人的見解はどうかとお問いになりますならば、私は、やはりいまのところ、フランスは入らない。しかし、将来は入る余地は多分にあるんじゃないか。これに反して中共のほうは、これははっきり公式にも発表しておりますとおり、この協定自体が世界の人民大衆を欺瞞するものである、少数の強大国の独占をねらっているといったようなたてまえから考えましても、これはなかなか加入する態度はフランスに比べて非常に違っておる、固い態度である、まあ、こういうような感じを持っておるわけであります。
  136. 森元治郎

    ○森元治郎君 軍事専門家の防衛庁長官の立場から、中国やフランスが、フランスは少しく進んだ水爆、中共が核爆発実験をやっても、条約が心配しているような「異常な事態」、あるいはこういう条約に入っていることによって実験ができない、縛られていることはつらいんだというような事態にはならないんですか。
  137. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) これもどうも外務大臣からお答えになるのが適当かと存じますが、私ども参加した百十三カ国、それから中共、フランス等の非参加国の十一カ国、この参加しない態度なりいきさつを見ておりますと、むしろいまおっしゃった三カ月前の事前通告で脱退できるといったようなものとは少し違うんじゃないか。むしろそういう事態が——これはもうこれ以上私言う必要ないと思いますが、言ってはいけないと思いますが、違うような気がするわけであります。
  138. 森元治郎

    ○森元治郎君 条約局長、政府委員に聞きたいんだが、「異常な事態」というのはその普通でない事態、ただ核爆発やったから、水爆やったから「異常な事態」とは言わないかもしらぬが、積み重ねということもありますわな。積み重ね——一発は何でもなくても、一発ごとに研究開発されていけば、やはりこれも普通でない事態になってくる。脱退するか、とどまるか、一応の考慮をしなければならぬという事態も来ると思うんだね。もう一ぺん戻ってしまうけれども、「異常な事態」という判断を聞かしてください。
  139. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) この判断は、どうしてもそのときの状況によって、いわは自由裁量で締約国としてはやりたいというところから、こういう抽象的な表現になっておるわけでございまして、それを、実験回数だとか、規模だとか、そういう具体的な事象に引き移してこうこうこういう場合というぐあいにはなかなか限定できないと思うのでございます。
  140. 森元治郎

    ○森元治郎君 それじゃ、終わりに福田長官に。近く行なわれるだろう中国の核爆発は心配することはないと断言できるのか、あるいはどうせ爆発があれば、新聞社はあなたのところへ聞きにいくでしょう。声明も出すわな。その防衛庁長官の心組みをひとつ聞かしてもらいたいのだがね。
  141. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) まだいつやるかわかりませんし、また、専門家ですら判定できない問題でありますので、この点は答弁いたしかねます。
  142. 羽生三七

    羽生三七君 ちょっとさっきの資料のことで、米ソ核兵器の実勢力についてお話がありました。このミサイルで長距離、中距離なんかの分野でどういうふうになっているか。その点おわかりになりませんか。大体でよろしいです。
  143. 海原治

    政府委員(海原治君) ただいま手元に数字の持ち合わせがございませんので、後ほど資料として提出させていただきます。
  144. 岡田宗司

    岡田宗司君 先ほどアメリカソ連との核弾頭並びにミサイルの数の比較等があげられ、また、アメリカのほうが圧倒的に多いということでありますが、もちろん、その数はそういうふうに開いておりますが、運搬手段もそういうふうに開いておりますけれども、その破壊力の点について、もし全面戦争が起こったときには、この両方共倒れになるというふうにわれわれは判断しておりますけれども、たとえば少ないほうのソ連でもアメリカの全土を全面的に破壊する力を持っている、そういうふうに判断されますか。
  145. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) これはもう御指摘のとおりで、従来のような戦争の勝敗の形はもうない。ともに勝利者はなくなるというような私ども感じがいたします。特に、いま米ソともに持っている核爆発力は、相手方を倒す二倍ないし三倍のものをすでに持っているというのが大体専門家の推測でございます。しかも、数年前考えられたような、しかも専門家ですら言いました、ボタン戦争によって一挙に先制して——機先を制して相手を一瞬にして葬るというようなこともすでに夢物語で、双方とも残存的な報復力を強力に持つ。したがって、全面的な核戦争はきわめてみじめな結果を生むだけであるというのが最近の常識のようでございます。なくなりましたケネディにしましても、現在のフルシチョフにいたしましても、そういうような観点も手伝って、奇襲防止を何とかしようじゃないかというので、両者間の奇襲防止に役立つ直通連絡の問題でありますとか、あるいは共通の場においての核戦争防止の話を進めるとかという、私どもにとりましては喜ばしい現象が昨年末から実際に行なわれているというのが、今日の実態ではないかと考えております。
  146. 岡田宗司

    岡田宗司君 しかし、まあいまのところ両国ともまだほんとうに核兵器軍縮をやるという段階にはいっておりません。過日ジョンソン大統領、それからフルシチョフ、それからまたイギリスのヒューム首相、それぞれ生産を削減するという方向を打ち出しましたけれども、しかし、いままで蓄積されたもの、削減してもこれからなおそれにつけ加えられるものを考えていきますと、非常な大量のものが本年中にもあるいは来年、再来年にも積み重ねられていくわけであります。特にそのうちにおいてわれわれの住んでおる日本に関係を持っておる、まあ近いところに展開されるものがわれわれにとっては特に問題になるわけでございますが、原子力潜水艦、そのうちでもポラリスが最近太平洋に配備されるであろうということがアメリカ側から報道されておるわけであります。そしてまたフェルト司令官ですかも、そういうことを言ったように伝えられておりますけれども、あなたのほうでは、ポラリスが近く太平洋に配備されるということについて何か情報をお持ちになっておられますか。
  147. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) 将来ポラリスの潜水艦が大西洋を中心に、あるいは太平洋に、各地に作戦をなし得る体制で配置されることは想像できるわけであります。しかし、まだ太平洋につきましては、私ども正式には通知を受けておりません。また、これに対するソ連につきましても、隻数はわかりませんが、やはり原子力潜水艦が極東ソ連海軍に配置されるという情報もあるわけであります。明確な隻数、場所等はまだ通知を受けておりませんし、まだ的確に把握しておりません。
  148. 海原治

    政府委員(海原治君) ただいま大臣のお答えしましたとおり、正式の通知はございませんが、太平洋におきますポラリス潜水艦の配備につきましては、たとえば昨年の十一月の七日に台湾でシャープという太平洋艦隊司令官が、太平洋にはことしの末ころまでに最初のポラリスが配備されるであろう、こういうことを言っております。同様の趣旨のことが、アメリカの関係者からそのときどきに述べられております。最近のネービー・タイムズによりますと、ことしの大体十月か十一月ころ最初のポラリス潜水艦が配備されるのではないか、こういうことでございます。その場合の基地といたしましてはワシントン州のバンガー、これが一応ポラリス潜水艦全部のための基地になりまして、グアムにはポラリスの随伴艦、テンダー潜水母艦と一緒にそこが前進拠点になるのじゃないか。それからパールハーバーが乗員の訓練施設になるのじゃないか、こういうことが一般に伝えられております。  なおこの際、先ほど羽生委員の御質問がありましたが、お答えしてよろしゅうございますね。先ほど資料で正確にお答えすると申し上げましたが、昨年の春の数字が手元にございますので申し上げますと、イギリスのロンドンの戦略研究所の見積もりでございます。これによりますと、ICBMとして規定されておりますのは、大体二千マイル以上のもの、これがアメリカ側が四百五十ないし五百、これに対しまして共産圏側は七十五以上、次にMRBM——中距離弾道弾でございますが、これは七百マイルから二千マイルということで一応つくってございますが、自由陣営側が二百五十、共産陣営側が七百、こういう数字が一応昨年の春ころの見積もりでございます。なお、その後のことにつきましては、マクナマラ長官の言明等につきましても、ソ連につきましては数百の中距離弾道弾、こういう表現のしかたがしてございますので、なお後刻調査いたしますが、はっきりした数字が出るかどうか、この辺のところは一応調べさしていただきたいと思います。
  149. 岡田宗司

    岡田宗司君 このアメリカのポラリス潜水艦の太平洋配備に対して、いまソ連側のほうでもすでに原子力潜水艦をつくって就航さしておるということから、太平洋にもやはりソ連側の原子力潜水艦、これはポラリスの潜水艦でございますが、やはり配備されておるか、あるいはこれからされるだろうということが予想されます。それらについてどれくらい、あるいはどこがその基地となるか、そういうことがおわかりにならないか。   〔理事井上清一君退席、委員長着席〕
  150. 海原治

    政府委員(海原治君) アメリカのポラリス潜水艦につきましては、先ほど申しましたいわゆる基地としましてはワシントンのバンガーでございまして、これはポラリス潜水艦と申しますのは、御存じのことと思いますが、普通の潜水艦と違いまして基地を離れまして大体二カ月の間は常時航行中でございます。そのほとんどが潜没した状態でございますが、二カ月ごとに交代いたしますので、その間は、どこにいるということは申せないかと思います。ただ、念のため申しますが、前進拠点としましては、先ほど申し上げましたグアムが予定されております。それから、乗員訓練のためにはパールハーバーということでございますので、これ以上には基地はできないと思います。たとえば、大西洋におきましても北氷洋等を控えまして、イギリスのホリー・ロッホ——スコットランドにございますが、ここに基地がございますが、ここにございますのは、潜水母艦と若干の船だけでございまして、船はそこへやって来まして、ミサイルの修理をしてまた出て行くという、こういうかっこうで動いております。したがって、先ほど申し上げました三つ以外にはポラリス潜水艦の基地はできない、こういうふうに考えております。
  151. 岡田宗司

    岡田宗司君 それに対してソ連側のほうは。
  152. 海原治

    政府委員(海原治君) 次は、ソ連のほうでございますが、ソ連につきましては、アメリカのポラリス潜水艦と同じような潜水艦はまだできていない、こういう情報でございます。ミサイルを発射する原子力潜水艦はございますが、アメリカのポラリスの潜水艦は潜没したままで発射できるわけでありますが、まだソ連につきましては、この潜没したままでのポラリス潜水艦と同じような形においての攻撃が可能な潜水艦はできていない。一時、昨年の初めからポラリス潜水艦と同じものができたという情報がございましたが、その後、この情報は誤りである、したがって、現在のソ連はまだ浮上して発射するミサイルを持った原子力潜水艦しかないというのが現時点においての見積もりでございます。したがって、この基地がどこになるかということはまだわかりませんが、太平洋におきましてのソ連潜水艦の基地はウラジオでございます。まだ北のほうにも若干の基地がございますけれども、主としてはウラジオがその基地になるのじゃないか、このように私どもは判断いたしております。
  153. 岡田宗司

    岡田宗司君 アメリカが太平洋にポラリス潜水艦を何隻か配置をする、こういうことになってくるというと、太平洋における核戦力のバランスというものが非常に変わってくる。おそらくソ連もさらにそれに対抗する手段を講ずるでございましょう。いずれにせよ、核戦力の面においては非常にバランスが変わってき、しかも、両方だんだんそれを増加していくという傾向が強まってくる。先ほどのお話でソ連のほうは、大陸間弾道弾はアメリカ側より少ないけれども、しかし、中距離弾道弾はアメリカ側より多いという、これはヨーロッパのほうに向けても相当あるけれども、やはり私は太平洋のほうにも相当あるのじゃないか。ポラリスが配置されてくるというと、太平洋のほうに向かっている地帯において、ソ連側がさらに中距離弾道弾の基地を増し、その数を増す。あるいはまた、核弾頭を積んでおって飛べる航空機を増すということになるというと、太平洋方面における核戦力の両方の配備状況が非常に強まってきて、そうしてその間にある日本というものは、やはり相当の脅威を受けるということになりはしないかと思うのですが、それらの点について防衛局長はどういう御見解を持っておりますか。
  154. 海原治

    政府委員(海原治君) アメリカのポラリスの艦隊の配備に伴なって、ソ連側も引き続き配備を増強していくと、こうお互いにせり合っていくのではないか、こういう趣旨の御質問と拝承いたしましたが、私どもは、一応ポラリス潜水艦というもののアメリカの建造計画というものは、もうすでに数年前からきまっております。御存じのように、一応四十一隻つくるのだ、一応それで終わりだ、こういうことになっておりますので、具体的にこれが現実に就役いたしまして、それぞれの地域に配置されることによって、さらに相手方がこれに対応する手段をもってどうこうということにはならないのではないか。午前中、先ほどでございますか、大臣からも申し上げました、米ソ双方がある意味ではあり余る核戦力を持っており、まあ、米国側につきましては九百億トンという推定もございますし、中には二千四百億トンという推定もございますが、それに対してソ連は、かりに三分の一といたしましても、たいへんな数量でございます。したがって、その中で、まあ、予定されましたポラリス潜水艦の就役が具体化されましても、さらに刺激をするような要因になるかならぬか、私どもは、むしろソ連は一応織り込み済みであり、したがって、その織り込みの前提のもとに今回の条約締結にもなったのではないか、こういうふうに観察をいたしておる次第でございます。
  155. 羽生三七

    羽生三七君 それに関連をして。先ほどの米ソ両国核兵器の比較ですが、一ころミサイル・ギャップと盛んに言われたですね。先ほどの数字を見ると、だいぶ違うのですが、これはその後、数年前のそういうことが言われた時期から見て、アメリカが追いつき、追い越したのか。その辺の事情はどうなっているのか。発表が不正確であったのか。
  156. 海原治

    政府委員(海原治君) いわゆるミサイル・ギャップということがやかましくなりましたのは、特になくなりましたケネディ大統領が大統領選挙に出られる前に、ときの米国政府に対しまして、いまのようなことをしておってはたいへんなことになるということで、その当時におきましてアメリカソ連との比率が三対一である、ほうっておけばこれがずっと大きくなるのだ、こういう意味の、推測と申しますか、ことをされ、そのような同種のいろいろな推測がアメリカのいろいろな雑誌に載りました。これがいわゆるミサイル・ギャップとして騒がれたのでありますが、その後、その見積もりは、実は当時の米空軍当局の見積もりがはソ連側に対しては過大見積もりであり、アメリカ側に対しては過小見積もりであった。特にソ連側の見積もりにつきましては、現実にそのミサイルを持つということではなしに、ミサイルの生産の能力の限界の数字をあげていたのだということになりまして、私の記憶では、三年目ぐらいには、ミサイル・ギャップとして当初あげられました開きというものが見積もりとしても小さくなっております。まあ、それを契機といたしまして、アメリカが非常に生産に熱を入れたというようなことから、先ほど申しましたような数字になってきた。両方に、当初の見積もりにおいては数字的な実は誤りがあったということと、その後アメリカ側の非常なこの方面の力の拡大、この二つが相まって現在のような結果になった、このように判断いたしております。
  157. 岡田宗司

    岡田宗司君 先ほど、ポラリス潜水艦の航続能力その他からいってまあワシントン州のバンガーに基地があれば十分なんだということのお話があったわけです。そういたしますと、いまのところアメリカ日本に対してポラリス型潜水艦を寄港させるということを申し入れてきてもおらぬし、また、そういう必要もない、そういうふうに解していいわけですか。
  158. 海原治

    政府委員(海原治君) そのとおりでございます。そのようなことは、先般もたしかこの委員会でもそういう趣旨の御説明をしております。ポラリスというものは、もう基地を出ましたら行くえがわからないというところアメリカ側の戦略的の意味がございますので、通常の原子力潜水艦とは違います。日本に寄港するということはまずない、こういうことでございます。
  159. 羽生三七

    羽生三七君 そうすると、問題になっていた原子力潜水艦日本寄港ということは、一応これで消えたのですか、ポラリスに関する限りは。
  160. 海原治

    政府委員(海原治君) いわゆるミサイルを積載いたしましたポラリス潜水艦については、従来から、その寄港ということの要請はないだろう、こういうことでお答えしております。
  161. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 沖繩に対してはどうですか、寄港は。
  162. 海原治

    政府委員(海原治君) 沖繩も同じような状況だと思います。ただし、航行の途中に万一のことがございましたら、いわゆる緊急避難的な場合には、これは寄港することは、あすこは米軍の基地でございますので、当然に予想されることだと思います。
  163. 岡田宗司

    岡田宗司君 次に、ポラリス型でない、ノーチラス型あるいはスレッシャー型の潜水艦の寄港問題について、私ども反対の立場で、前の外務委員会においても、その他の委員会においても政府の立場について質問してまいったわけでございます。いまだに寄せてよろしいという回答を出しておらぬわけでありますが、このノーチラス型またはスレッシャ一型の潜水艦、アメリカのほうではサブロックを装備する、こういう方針をとってきて、現にサブロックを装備されているわけですが、アメリカ側は、このサブロックを装備した原子力潜水艦をすでに第七艦隊に配置している、こう思うんですが、そういうふうになっておりますか。
  164. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) これはまだ開発中というのが真相のようでございまして、大体去年の十二月八日に——詳しいことは政府委員から答弁させますが、ペンタゴンの発表のときにも、来年一ぱいくらい——すなわち今年でありますが、一応万端の準備をする必要があるだろう、試験的にもなおあと三十発程度は試験をして、その上で今年の末ごろまでには装備して、実戦的に役立つような段階に入るだろう、こう発表しております。
  165. 岡田宗司

    岡田宗司君 その点、防衛局長のもう少し詳しい御説明を願います。
  166. 海原治

    政府委員(海原治君) これは、いま大臣から御答弁申し上げましたように、昨年の十二月八日に国防省でこのサブロック開発状態につきましての発表がございました。この前後にいろいろと専門家筋の想定がございまして、これを集約いたしますというと、その当時から、いま申されましたように、約三十発のオペレーション・タイプのミサイルというものをテストしなければならぬ、こういうことが一点でございます。それで、この試験の完了するのは一九六四年、すなわち本年中であろう、こういうことでございます。しかし、当時の見積もりとして、一応確実に成功する見通しがついた、したがって、本年中に完了されますところの試験の結果を待たないでも、いわゆる実戦的なミサイルの——いわゆるサブロックの生産に入る、その結果、ミサイルは、当初第一段階としては、約二百発というものが生産されるだろう、この二百発のミサイルは総計二十五隻の原子力潜水艦に装備されることになるであろう、こういうことでございます。すなわち、すべての原子力潜水艦に装備されるものではございません。その理由を申し上げますというと、このサブロックというのは、この距離につきましてもこれは現在極秘でございますが、いまのところは、原子力潜水艦の五十キロ前方でも正確にピンポイントする能力を持ったソーナーに意味があると思います。したがいまして、ソーナーの関係ないしは魚雷の発射のための指揮機構というものは膨大なものでございます。したがいまして、従来の潜水艦にそのままこれを載せるわけにまいりません。従来進水しております原子力潜水艦に入れるとしますと、これを一ぺんドックに入れまして、胴体を切りまして、広げたり大きくしたりしてからでないと一ぺんに積み込まれない、こういう技術上の理由がございますので、サブロックを積みますものは全部で二十五隻程度になる、このサブロックはこの二十五隻につきましては一般の魚雷と混載される予定である、こういうのが現在までに私どもの手元に集めました情報でございます。  なぜおくれたかといいますと、沈没いたしましたスレッシャーがこのための試験艦でございますが、沈没と同時に、非常に大事な試験装置がなくなりまして、この試験装置を新たにつくってやるということがあったために時間的におくれたと、こういうことでございます。
  167. 羽生三七

    羽生三七君 その場合に、ポラリス潜水艦、ポラリスがこれだけ開発されておる場合、ノーチラス型等が日本に寄港しなければならぬという場合の実用的価値というものは一体どういうことなんですか。そんなに、どういう実際的な効果を持って向こう側が、アメリカがそれを要求しておるのですか。
  168. 海原治

    政府委員(海原治君) これは、先般も私説明したことと同じことになるわけでありますが、第七艦隊が日本の近海で演習いたしますときには、当然通常の攻撃型の原子力潜水艦というものは随伴するわけであります。ここで演習が終わった場合に、一般の船は横須賀なり佐世保に入っていく。しかし、そこまで一緒に来ておる潜水艦だけは沖繩に帰れ、グアムに行けということになりますというと、非常にその艦隊の訓練にも影響があるわけでございます。このことは、先般志賀前防衛庁長官にお供しましてハワイに参りましたときに原子力潜水艦に乗りましたときにも、あそこの太平洋艦隊の潜水艦隊司令長官がそう申しておりました。これは事実でございます。もう一度申しますが、第七艦隊には、練習には当然そういうような潜水艦が随伴してまいりますが、演習が終わって一般のものが全部日本に入ってくるのに、一部の潜水艦だけがあっちへ行けということではいろいろな点でぐあいが悪い、この点はぜひそのように御了承願いたい。これがいわゆる実用的価値だと私どもは信じております。
  169. 岡田宗司

    岡田宗司君 いまの点ですが、十一月の十七日ですね、ちょうど昨年の選挙の最中でございます。シャープ太平洋艦隊司令長官ですか、あの人が横須賀に来まして外人新聞記者との会見をしたその記事がジャパン・タイムズに載ったのであります。それを見ますと、原子力潜水艦は航続距離が大きい、だから、日本のどの港に何も入れなくともいいのだというようなことを言っておるのでありますね。その記事をお読みになりましたか。
  170. 海原治

    政府委員(海原治君) 私ちょっと読んだ記憶がございません。
  171. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) 実は私は旗艦で食事をしながらそれに出まして、日本国民の持つ特殊な核兵器に対する感情、これを実は詳しくお話し申し上げまして、司令官も非常にその点をよく了解しておりまして、それほど神経質と申しますか、ナーバスになることはよくわかりました、それについてそういう無理を急いでやるという気持ちはさらさらないというようなことを言われたのは事実であります。
  172. 岡田宗司

    岡田宗司君 それはあなたと対談されたときにそういう話があったほかに、いま言ったように、横須賀の基地で新聞記者会見でこれを言って、それがジャパン・タイムズの記事になったのです。ほかの日本側の新聞には出ておりません。私その記事をいまだ持っておるのです。この委員会大平外務大臣にもその点でただしたことがあるのですけれども、これはひとつ防衛庁長官も、防備局長も、そう言われたことは十分に研究しておいていただきたい。もちろん、私どもはこの潜水艦の入ることにあくまで反対であり、同時に、特にサブロックが配備されるということになってまいりますというと、これはもう明らかに核兵器であります。特に私どもとしては反対を強くせざるを得ない。その点は十分にお考えおきいただきたいと思います。  それから次にお伺いしたいのは、アンチ・ミサイル・ミサイルですが、アンチ・ミサイル・ミサイルは、アメリカソ連も両方で開発しておる。そしてソ連側では過日のメーデーのとき……その前でしたかちょっと記憶しておりませんけれども、これが実験に成功しておるというようなことを言っておるのですが、このアンチ・ミサイル・ミサイルは、両方でどの程度開発をしておるのか。
  173. 海原治

    政府委員(海原治君) ただいま先生の申されました情報と申しますか、見積もり、私も新聞でございましたかで読んでおりますが、これにつきまして、詳細につきましては何ら私どもの手元にはその後も調べが参っておりません。ただ、そういう方面の研究をしておるということは事実のようでございますし、さらにいまソ連の高官が、どんなものが飛んで来ても落とせるのだということを言われました、それとの関連においてそういう推測が行なわれておるのじゃないか、こういうふうに判断いたしております。と申しますのは、アメリカ側におきましても、いわゆるアンチ・ミサイル・ミサイルとしましてナイキ・ジュースあるいはナイキ・エックスというものの開発が行なわれておりますが、今日までのところ、予想されたような成果は得ておりません。低高度を飛びますミサイルを撃ち落とす、これはできておりますけれども、いわゆるICBMあるいはIRBM、こういう高高度を飛んでいます弾道弾を有効に撃ち落とすということは、研究は続けられておりますけれども、いつまでに完成の見通しであるか実は予測ができない、こういうところが専門家筋の観測のようでございます。
  174. 岡田宗司

    岡田宗司君 次に、戦術的核兵器開発ですが、これは両方で盛んにやっておる。地下実験をいまアメリカでも盛んにやっておりますけれども、このアメリカのいまやっておる地下実験というのは大体戦術的核兵器開発と関連がある、そういうふうに見ておりますか。
  175. 海原治

    政府委員(海原治君) 地下実験につきましては、これはことしの一月にアメリカの原子力委員会が米議会に報告しました年次報告がございます。これの六七ページにはっきり書いてございます。これによりますというと、アメリカにおきます地下実験というものは戦術核兵器、防空核兵器——いまおっしゃいましたアンチ・ミサイル、アンチ・サブマリーン——潜水艦、一の関係のための開発と試験をやる。これによりまして、大体いままでのところでは、二百キロトン程度の効果のあるものの実験ができております。今後おそらく三百キロトン程度のものまではできるであろう。二百キロトンと申しますと、例の広島型の十倍の能力がございますが、こういうものが、大体地下二千七百フィートまで掘り下げたところで直経四十八インチ程度のところへ埋めて爆発させて、これによっていろいろなデータを得る。それによってもっと大型のものの弾頭の開発ができる。こういうことがレポートに出ております。いわゆる戦術核兵器実験のためということが正しいことじゃないかと思います。
  176. 岡田宗司

    岡田宗司君 アメリカ軍は、戦術的核兵器をすでに全軍に配備しておると思うのですが、この日本に配備されておる——陸軍はおらぬわけですが——海軍、空軍はいま核弾頭は持っていないけれども、いざという場合には、いつでも日本を中心として活動する日本にいる部隊というものは、この戦術的核兵器をもって武装されておりますから、核弾頭をいつでもつけて行動する用意はしてあるわけですね。そういうふうに見られますか。
  177. 海原治

    政府委員(海原治君) 核弾頭と一口に申されますけれども、いろいろこれは種類がございますので、全部の種類のものに直ちにいつでもすぐつくというものではどうもなさそうでございます。たとえば、飛行機につきましてもいわゆる戦闘爆撃機として分類されますものは、爆弾を積む場合——通常の爆弾を積む場合、あるいはナパーム弾を積む場合、あるいは原爆を積む場合、その組み合わせと申しますというと、先ほどの第七艦隊に積んでおります飛行機なんというのは、ジェーンなどによりますと、数百種類ある、そういうことになりますというと、おそらく特定の種類のウオー・ヘッドを積みますときには、特定の射撃管制装置が必要になってくる、こういうことでございますので、原爆を積む場合には若干の補備的な装置が要るのではないか、こういうふうに一般には観測されております。しかし、積めることは事実でございますが、それがいますぐ積めるかといえば、積める状態にあるかどうか、この辺のところはいま私どもは詳細を承知しておりません。
  178. 岡田宗司

    岡田宗司君 たとえば、これは私どもも問題にしておる例のF105戦闘機ですね、これなどはいつでも積めるのじゃないですか。
  179. 海原治

    政府委員(海原治君) このF105につきましては、原爆のみならず、水爆も積めるということになっております。しかし、それがすぐ直ちにということではどうもなさそうでございますが、この詳細につきましては、もちろん先方の機密でございます。私どもは、いつ聞いても教えられないものでございますので、その詳細は承知いたしておりません。
  180. 岡田宗司

    岡田宗司君 いままあ核弾頭を日本へ持ってきていないにしても、そうして、いまF105がこれを積んでいないにしても、少なくとも日本にF105を配置しているのは、いざというときにやっぱり高性能の航空機がすぐ役に立つようにということじゃないのですか。そうすると、戦争が始まって、そら、これから改造をして載せるのだということじゃ、F105を日本に配置した効果というものは何もなくなる。したがって、もうすでに、いざというときには核弾頭をハワイから、グアムから、どっかから持ってきてすぐ積めるという状態にあるのじゃないですか。
  181. 海原治

    政府委員(海原治君) 私の御説明が不十分で申しわけございませんが、特定の、たとえば原爆を積むときに改造ということではございませんので、そのためのキットと申しますか、装置をつけるというようなことは必要だろう——この時間が五分か十分かわかりませんが——そういうようなことは必要であるということではないかと思います。と申しますことは、F105というのは、先般御説明いたしましたように、いろいろな種類の飛行機でございますから、要撃戦闘機としても非常に能力を持っております。地上戦闘にも協力する能力を持っております。それで、各国ともにいわゆる万能機というものを開発いたしておりますので、そういう能力を持つわけでございますが、具体的にそれじゃ原爆を積むときにどういう手段を講ずるかということにつきましては、私ども詳細なことは承知いたしておりません。ただ、推測されますのは、改造というふうなことではございませんけれども、そのまますぐ積めるというようなものでもない。この程度のことが安全に申し上げられるところかと思います。
  182. 岡田宗司

    岡田宗司君 まあ、ちょっと手を加えればすぐ積めるということらしいのですが、それはそれとして、最近アメリカでF105の故障がだいぶ頻発しておる、そうして、そのために日本においても、F105はこの間横田で日本の国民にこれを見せてたいへん誇示したのですけれども、実際の演習は取りやめになった、しばらく取りやめになるようですけれども、その故障というのはどこにあったのでしょうか。
  183. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) 一昨日グラウンドの命令が出てまいりまして、引き続いて二機アメリカの本土で事故があった。原因が探求されるまでは一切禁止するというのが米空軍の命令でございます。おそらく、いましさいに原因を検討中だろうと思うわけでございます。
  184. 岡田宗司

    岡田宗司君 このF105は、いま横田に板付のが全部来ておるのですか。
  185. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) 全部は来ておりません。この間、たしか十三日に三十五機参った。残りはまだ板付に残してあるわけでございます。場合によりましては、ほかに演習に使っているかもしれませんが、プレストン司令官の連絡によりますと、大体初めの約束は六月の末まででございました。この間参りました連絡では、六月の二十日ごろまでに残余のものも移転を完了する、こう言ってきております。
  186. 岡田宗司

    岡田宗司君 それから、移転を完了した後、このF105はさらに新しくほかの基地に配備される計画があるのですか。
  187. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) いまのところ、そういうことはないようでございます。
  188. 岡田宗司

    岡田宗司君 このF105の演習場の問題ですけれども、御蔵島はいろいろな事情でお取りやめになったようです。しかし、その移転先もわからないわけで、まだきまっておらないということで、結局、いまはF105の演習が取りやめになっておりますからいいでしょうけれども、しかし、再開されるときは依然として鹿島灘、あそこをお使いになるわけですか。
  189. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) 先般地元の方が来られまして、105の水戸射爆場に対する使用は取りやめてもらいたい、反対だということを申し込んでこられました。私は、機種に対する内応については別に取りきめがございません、日米間でそういう内容について話しがありませんので、105だからといって断わる理由もない。演習上必要があれば私どもは当然これを受託するつもりでございます。ただ、いまグラウンドで使用いたしておらぬという事実でございますが、先般の閣議におきまして、これは佐藤科学技術庁長官とも打ち合わせまして、105に関係なく、原子炉の位置、それから今後の原子産業の発展という立場から水戸射爆場は不適当であると正式に閣議で発言しまして、代替地を一応それ以来さがしておる段階でございます。たまたまその候補地の一つが御蔵島であったわけですが、報道関係におきまして少し行き過ぎがありまして、そのために現地にも御迷惑をいろいろかけたわけでありますが、先般視察をし、また、いろいろなこういう資料を集めた結果、不適格地であるということになりまして、他の候補地、並びにほかの御点からする——射爆場の新しい立場からする代替地の問題について米軍とも実は話しておる最中でございます。具体的な内容につきましては、いままでの経験から考えまして、一切きまるまでは発表いたさないという考えを持っております。
  190. 岡田宗司

    岡田宗司君 これはいまのお話ですというと、きまるまで一切発表しない、こういうことになりますと、国民としてどこへきめられたか、きめられたところの人はたいへんなことなんですね。自分たちの住んでいるところが射爆場になる、それについて自分たちの意見も求められない、これじゃひど過ぎるのじゃないでしょうか。
  191. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) これはことばが足りないで誤解があったようでありますが、大体これは内定しているとか、あるいは最も有力な場所であるということが見きわめるまでは発表しないし、十分資料を整えてから地元との話し合いに入る、こういう気持ちでございまして、単なる内定を軽々に二つ、三つここで発表することはむしろ混乱を招く、もう少し慎重に、正確なデータを集めた上で地元との話し合いに入るわけでありますが、抜き打ちに入ろうとしましても、こういう射爆場の問題はやれるものでもございませんし、また、やるべきでもございません。あくまでも地元の人と十分納得した話の上でやっていく、その方針は変えておりません。
  192. 岡田宗司

    岡田宗司君 いまのお話ですと、御蔵島はやめになったと、しかし、すでにもう二、三の候補地があって、それについて調査をしており、しかし、これは重大な問題だから内定するまでは発表できないのである、すでに、しかしながら、ないしょで調査はしておられるわけなんですね。
  193. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) 調査は、実はもうこれは四年前からの問題で、いろいろやっては地元との話し合いでまだ発表するまでに妥結しないところが各地に実は二、三カ所ございます。これはまだあきらめておりませんで、地元の今後責任者といろいろの点で話し合いを進めていきたい。先ほど非常に抽象的でありましたが、いままでの候補地では不安でございまして、一日も早く代替地を見つけるために全然別の角度からひとつやろうではないかというので、一つの案をつくりまして、いろいろ専門家を動員していま検討中であります。ただ、先ほど申したように、それがはっきりするまでは発表しないと言ったことは、御蔵島のような単なる候補地ですら、内定といって、話し合いに入らない前から、すぐ基地反対闘争という行き過ぎがございます。これを私どもはおそれているわけでございます。
  194. 森元治郎

    ○森元治郎君 関連して、大臣に伺います。那珂湊射爆場返還については、また来週月曜日茨城県から陳情に上がります。そこで、大臣がこの間胸を張ってお話しになったことは非常にありがたいと思うが、那珂湊をどこに動かすか。返還ですね。われわれから言えば返還です。あなたのほうからいえば、動かしてやる、私の在任中にやります——とは言わない。やる決意である。そこがちょっと困ったのですが、在任中にやる、その決意でやる、たいへんけっこうなんですが、在任中というのはどこまでが在任中かわからないのですが、その御決心はそのとおり受け取ってようございますか。
  195. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) そのとおりでございます。それは実は森委員一番御存じで、足かけ四年来やっております。毎年各前、元長官も非常に御苦労されている。施設庁の職員も非常に御苦労をされておりますが、残念ながらまだ解決しません。私は実は総理にも申し上げました。どうしてもこの問題は至急片づけなければならない。そこで、陳情の方々にも実ははっきり自分の気持ちを申し上げて、何としても相手方のある問題ですから、まず第一に米軍と、最小限度の要求を満たすかどうかいま話し合いをつけております。その上で、いろいろな点について今後は地元の関係ある責任者と話し合いたい。そうして見通しがつけば、お互いが同時に発表いたしたいと実は手順を組んでおるわけでございます。何とかいたしまして、この問題だけは目鼻をつけたい。工事その他で時間がかかりましても、解決の方向だけは、具体的な結論だけは私はぜひ在任中に出したい、こういう考えでございます。
  196. 森元治郎

    ○森元治郎君 在任中というのでたいへん喜んでみんな帰ったのです。帰りながらバスの中で、在任中……人がいいですからね、在任中といっても長いかと思うと、七月に総裁公選がある。優秀だからまた選ばれるだろうとは想像するけれども、あと二カ月ですね、五、六、七と。その辺でただいまのようなことにならしてみせる——決意じゃなくて——みせるということが言えるかどうか。
  197. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) 在任中わずかな期間ではありましょうが、最善を尽くして何とか解決する決意でございます。地元の方も万全の御協力をお願いいたしたい。
  198. 森元治郎

    ○森元治郎君 もう一点、防衛局長に伺います。  F105は那珂湊の爆撃場に飛んできて落っことしますね。長鞭馬腹に及ばないという感じがするのです。先ほど大臣は、佐藤国務大臣とお話をした結果、水戸射爆場は不適当であるという結論を同意さしたけれども、同時に、純技術的な面から見ても無理だ、不適当であるという結論は出ると思うのですが、どうですか。あのばかでっかいもので、早くて、より距離を置かなければ、とてもあんなものでは容易じゃないでしょう。しかも、スピードは高度が高いほうがいいにきまっているのですから、千メートルくらいの下で走ってきたのでは、何もF105を飛ばす必要はない。やはり高空で高速で持てる力を出すためには……。高度をとったときには、もう仙台でもないが、平の上くらい行ってしまいますからね、不適当だと思うのですが、技術屋さんとしてどうですか。
  199. 海原治

    政府委員(海原治君) 御指名でございますので、私技術屋ではございませんし、いま先生のおっしゃいましたことにつきましてお答えする資格はございませんが、ただ不適当かどうかということは、結局、F105の使い方というものが、先ほど申しましたように、いろいろございます。したがいまして、高高度からのいわゆる超スピードでの爆撃というようなことを、実行するためには不適当かもしれません。しかし、105というものの配置の目的は、従来しばしば申し上げておりますように、いろいろな意味がございます。地上戦闘に協力するという場合には、たとえば戦車の突撃に呼応して、この攻撃を支援するために105が地上の目標を襲撃するということは、向こうのマニュアルにも書いてございます。アメリカでもそういう演習をやっております。そういうときの飛び方は、従来の早さとか、そういう従来の飛行機と同じ程度の速力であり高度であります。したがいまして、米軍が水戸の射爆場においてやろうとする爆撃の種類によりましては、あそこが不適当である。しかし、あそこでできる程度の爆撃の演習は当然あるわけでございます。したがいまして、一般的にいって、あそこが105のために不適当だとするかどうかということにつきましては、そう一がいにはお答えできない性質のものであるというふうに御了解願いたいと思います。
  200. 森元治郎

    ○森元治郎君 これは向こうの何か作戦の本に書いてあるかもしらぬが、簡単に言えば、エンジンをフルに使うものをしぼって使うということは、これは本物じゃないですね。やはり高速で走るというところにあの飛行機の特徴があります。それをおそく走らして地上の攻撃用に使うというようなことは、これはそういう場合もあるので、飛行機は一つしか用途に使えないのでは、戦闘の機材としてはあまり高価過ぎますから、何でもやりますよ。しかし、ほんとうのねらいは私ははずれておると思う。議論しても、何でも使うとアメリカが言えばそれまでですが、私は不適当だと思う。もう少し御研究を願います。
  201. 海原治

    政府委員(海原治君) 私の御説明、どうも御納得いただけないで申しわけございませんが、たとえば105がかりに嘉手納から板付、この間を飛ぶといたしまして、非常に高速な飛行機でございますが、マッハ2の速度を出すためには、離陸いたしましてから三万フィートまでは〇・九マッハまでしか飛べないわけです。これはエンジンの性能上当然そうなるのです。三万フィートになりましてから初めてマッハ2に加速をするわけです。加速するためにも二分かかる。したがいまして、かりに嘉手納から板付までマッハ2で飛来いたすといたしましても、結局計算をいたしますと、三十五分かかります。これはその三万フィートまでのぼるのには、いま申し上げましたように、高速では上がれません。そういう制限がございます。したがいまして、低速で行動する場合には、エンジンをしぼるとかしぼらないということではなしに、三万フィート以下で飛びます場合には、通常の従来の飛行機と同じような使い方をするわけでございます。したがいまして、先ほど私がお答えしましたようなことに相なるわけでございまして、四万五千とか、そういう高高度をマッハ2で飛んでおる場合にどうなるかということになると、これはとても水戸ではさばき切れない、こういうふうに判断いたします。しかし、先ほど来御説明申し上げましたように、多目的のものでございます。それぞれの目的に応じた演習のためには、あそこでも役に立つ、間に合うということは技術的には言い得る次第でございます。その点御納得いただきたいと思います。
  202. 岡田宗司

    岡田宗司君 これは水戸の射爆場を今度引っ越すことにして、引っ越し先をさがしておるわけですけれども、その引っ越し先になるところでやはりF105が演習をするわけなんです。先ほどのお話ですと、機種によって演習場が限られておらぬから、F105も使われるわけですが、F105は万能機で、そうして水爆も積める、こういうことになりますというと、このF105の演習には水爆の投下の演習ということも含まれるわけですね。その点どうでしょうか。
  203. 海原治

    政府委員(海原治君) 私、実はF105の演習の計画の内容を承知いたしておりませんが、水爆の投下ということは、本物を落とすということではございませんで、模擬爆弾を落とすということも実はございません。この投下演習ということもいろいろございます。したがいまして、何と申しますか、これは専門家に詳細聞かなければわからぬわけでございますが、写真判読、いろいろの手がございます。したがいまして、水爆投下の演習ということは、結局、射爆指揮管制装置、いわゆる爆弾を吊下しますパイロンから放す時期の問題、あとは機械が計算いたしますから、それだけのことでございますので、そういう操作をやるということであれば、そういう演習をやるということになりますが、水爆投下の演習をやるとかりに申しますと、非常に本物に近いものを落とすようなふうに一般には誤解される趣がございますので、その辺はひとつ十分御注意していただきたいと思います。私の知識はその程度でございます。
  204. 岡田宗司

    岡田宗司君 水爆の投下、ほんとうにそれを落とされたらたいへんなことですよ。だから、そんなことを私ども考えていやしません。しかし、F105がいろいろな種類の演習をやるということにはどんな方法にせよ、実際の水爆は落とさないにせよ、水爆投下の演習ですね。その装置の演習はやるわけなんでしょう。そういたしますと、これはやはりわれわれは国民に非常な不安を与えるし、それからまた同時に、そういうことの演習をやるということを日本の国内でやられるということは、やはりいざというときに、その日本にいるF105は水爆を積んで出ていくのだということを裏書きすることにもなるので、私どもはこういうことはやはりやってもらいたくない。こういうふうに考えるのですが、この演習の問題について防衛庁長官はどういうふうにお考えになりますか。
  205. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) 先ほど来お話を承っていますと、どうも一つよほど気をつけないと困る問題が出てくるではないかということですが、なし得るということと、やるということの区別の問題でございます。なるほど、水爆は搭載可能でございますが、しばしば政府がはっきりと言明し、またお答えしていますとおりに、核兵器持ち込みは断じてやらせません。したがいまして、なし得るということと、水爆を積むであろうということとは全然別個の問題であるということが第一点。  第二点は、これは私しろうとでわかりませんが、一度専門家の空幕その他に十分105の演習の態様と申しますか内容について調査をさせ、また、連絡もさせるつもりでありますが、大体いまの考えで、御指摘のような水爆投下というのはよほど高度からいたしませんと、おそらく危険であろうと思います。おそらく水爆の投下そのことを考えての演習はしていないのじゃないか。しかし、これは私のしろうと考えでございますので、この点については一度第五空軍とも連絡さして、こちらでも研究させたい、こういうふうに考えます。
  206. 岡田宗司

    岡田宗司君 とにかく日本に核弾頭を持ち込むのもごめんこうむりたいという政府考え方であり、また、F105のようなものもそういうふうに使ってもらっては困るということであれば、国民に不安を与えるようなF105の演習ですね、これについては国民の意向を考えて、やはりやめてもらわなければならぬと思うのです。いま防衛庁長官がそういうふうに言われましたならば、これは私そういう御努力を願いたいと思うのですが、いずれにしても水戸がだめだということで、ほかへ持っていってまたやられるというのでは、やはり国民に不安を与えるわけなんです。だから、アメリカにこういうような試験飛行はどこかほかでやってもらう、本国ででも、あるいはアメリカの領土のどこかでやってもらうというふうに、いっそのこと思い切ってそうしてもらったらどうなんですか。そうすれば問題はなくなるのです。向こうだっておずおず気がねしながら演習しないでも済むわけですから。
  207. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) 私の立場からいえば、日米安保体制によって日本の独立平和は保たれておる、この確固たる考えを曲げておりません。また同時に、航空機は日進月歩でありまして、その性能は非常なテンポで改善され、性能はすぐれたものになりつつあります。したがいまして、105なり、あるいは将来の100Xというものがこういう性能だからあぶないとか、こういう能力があるから日本では困るといった御議論には、残念ながら同意いたしかねるのでありまして、私どもは、やはり必要な演習は十分やってもらって日米安保体制の裏づけを全ういたしたい、こういうふうに考えております。
  208. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、F105が水爆の投下演習をやるのもよろしいと、こういうことなんですか。
  209. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) 投下演習はどういうふうにするか、将来するかどうかということは、先ほど来申したとおり、専門家に十分検討いたさせます。私どもはそういう考えは持っておりません。今後も核兵器持ち込みは絶対反対であります。また、全面核戦争自体も万々ないものという想定で考えているわけでございます。技術的にはどういう演習をやっているかにつきましては、先ほどお答えしたとおり、専門家に一ぺん検討させたいと思います。
  210. 岡田宗司

    岡田宗司君 専門家に検討させて、もし水爆投下演習をやっているのだ、あるいはやるのだという場合には、抗議されてそれはやめさせるような防衛庁長官はお考えですか。
  211. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) 報告の結果を持ってから検討いたしたいと思います。
  212. 曾禰益

    ○曾祢益君 今回部分的核停条約ができまして、それを契機としてさらに核兵器の拡散が防止されることが望ましい、それによって核兵器全体の禁止、それから全面軍縮に進みたいというのが、これはもうわが国の念願だと思うのです。ところが、みんなが心配されることは、実際問題としてここに現にもう原爆を開発してしまったフランス、すでにやっているフランスと、これから原爆、水爆を開発しようという中共、いわゆる第四、第五の核保有国の出現というものもなかなか禁止できない。こういうところに非常に問題があるわけですね。そこで、フランスなり中共のそれぞれの主張は、その国々の主張ですから、外国で批判してもちょっとしようがないわけですが、ただ、その中に確かに一つの非常に強い民族主義的といいますか、防衛上あくまで自主独立の防備が必要だ、外交上の自主独立がどうしても。核兵器自体においてはみずからの核兵器保有がなければならないという、こういう主張があるわけですね。そこでその問題をいかに説明していくかということは、国によって違いますけれども、存外わが国にとっても一つの問題を最近提供しておるんじゃないかと思われるのは、フランスの核兵器をみずから保有する必要があるという理屈づけの方法ですね。皆さん御承知のように、特に最近日本の有力新聞、有力な総合雑誌等が掲げました。これはドゴールさんの相当な側近の一人である。むしろブレーンの一人であるとすら言われている。これは防衛庁長官に主としてお聞きしたいわけですが、ガロア将軍の論拠を尋ね、聞いてみると、「結局いままでの同盟条約、同盟機構による集団安全保障はこの核兵器の手詰まり時代になって、もはや根本的に考え直さなければならない。」という議論をしておるわけですね。簡単に言うならば、いままでは確かにフランスもアメリカの力の上に自分の安全をはかってきた、NATOというものは意味があった、アメリカの海外に対するNATO援助というもの、それをバック・アップするアメリカの核戦力というものは非常な意味があったと実効性を認めておったけれども、完全に米ソの核手詰まりの状態からいうならば、アメリカがヨーロッパ、このフランスを救うために——ソ連が直接向こうから核攻撃をしてくれば別です。これはヨーロッパとアメリカとの区別なしに、グローバルに攻撃するでしょう。——そうでなくて、ヨーロッパで何か事態が起こった、それを救うために、ヨーロッパにおけるNATO側の力が何といっても劣勢であるから、それを救うために、アメリカが核戦力を使うことは、アメリカみずからが自分の安全を破壊する。自分の本土にソ連の核報復をみずから誘致することになる。そんなばかなことは実際上考えられないじゃないか。ゆえに、やはりフランスの安全としては、むろん自分だけが使うのは目的じゃないけれども、最後の場合には自分の安全は自分で守る必要があるから、フランスはみずから核戦力を持つんだと、まあ簡単に言えばそういうアーギュメント、そういう議論だと思うんですね。それをフランスが、フランスの自分の栄光なり、あるいはフランスの偉大さのためにどうお使いになること自身はかってかもしれない。そういう議論のもとに、たとえば日本に対しても一つの警告的なことを言ってるわけですね。結局、日本は中共が核兵器を持つことになるならば、これはいろいろ核実験爆発をやるということと、それをオペレーショナルな兵器として持ち、それをみずからの兵器でそいつを運ぶ兵器まで持つということは、最初の実験をやってから何年かかるかそれはわかりませんよ。しかし、ガロア将軍の言うのは、とにかくいずれかの日には、いまのままでいると、中共は核兵器を持つだろう、その場合の日本の安全というものは根本的に考え直さなくやいかぬ。つまり、彼の結論的な予言をもってするならば、幾ら日本アメリカに頼って、アメリカとの安全保障体制に頼っていっても、結局は日本みずからがフランスみたいに核兵器を持つんでなければ、結局のアメリカの属国的な立場でほんとの自主独立の立場に立った安全ははかれない。かといって、日本のいわば革新陣営といいますか、社会党以下の左の諸君が言ってるような議論で、まるで無手勝流でいこうというのは、これはだれが考えても、ガロアの言うことを聞かなくても、これは問題なく完全に中共の衛星国になる以外にはない。こういう意味の、非常に刺激的であるけれども、存外日本で非常に痛いところに触れるのを避けておるようなところをぐっとえぐったような、フランス人のことですから、ロジックは間違っておっても、言い方は非常に鋭い切り込み方でやっておりますね。私はこれは非常な一つの問題だと思う。そこで、一体日本の防衛長官としては、中共が核兵器を持つようになった場合に、ガロア将軍の言うように、日米安保条約体制はこれでつぶれると見るのか、有効でないと見るのか。私はその見方に非常なやっぱり独断、ドグマがあると思いますね。フランスのみずから核兵器を持たなきゃならないという議論の中に、やはり一つの議論のあやといいますか、まやかしといいますか、当然にアメリカは自分がかわいいから、ヨーロッパは捨ててもみずからの安全をはかるんだという断定があるんですね。そうかもしれないけれども、そう断定できないものもある。アメリカの安全と西ヨーロッパの安全というものを一体的に見ようとする大きな方向一つあるわけで、アメリカがみずからの安全を犠牲にしてまでヨーロッパを救いに来ない、ゆえにフランスみずからが核兵器を持つんだというところに、飛躍というか、独断があると思いますね。しかし、いずれにしても、そういうような一つのいままでの同盟、集団防衛、安全保障体制に対する疑惑といいますか、あるいは弱点に対する指摘というものは確かに鋭いものがあると思いますね。したがって、まず第一に伺いたいのは、ガロアの議論はむろんフランス政府の公な説明じゃないですよ。しかし、実際上私は紙一重だ、同じことを言ってると思います。フランスの主張がNATOに関する限り、何を言ってもかってですけれども、一体その議論は、日米安保体制の上に、大きな期待と戦略体制の基本を、むしろ置いておられると思うんです。アメリカのいわゆる原子力のかさの上にかぶさって、しかし国内には原子力兵器は持ち込んじゃ困る。大きく言えばアメリカのアンブレラの中で非常に限られた防衛力を維持発展させようというのがいままでの池田内閣、歴代の保守党内閣の国防計画の基本だと思うんですね。その辺がぐらつくことがないのか。ぐらついた結果が、それじゃ、それならみずから核兵器を持つということになるのか、そういうところ一つの大きな問題があると思うんですよ。防衛庁長官の御意見を伺いたいと思います。
  213. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) いま例にあげられましたガロア将軍の考え方でございますが、私も読みまして、やはりこれは鋭い批判があることは確かにお説のとおりと思います。しかし同時に、その背後にあるドゴール大統領なりあるいはフランスのいまの指導者の中にある米国に対する対抗意識と申しますか、大国意識、そういうものが確かにあるのではないか、さらにまた、欧州経済共同体の英国の参加申し入れに対して、当時のフランスの指導者がはっきり言っておりますとおり、英国はいざとなれば逃げてしまうのだ、ヨーロッパは結局ヨーロッパだけで片づけなければならぬ、責任は結局われわれが負うのだと言い切っておりました。その考え方をやはりアメリカに対しても持っているのではないか。そういういろいろな背景があると思うのであります。したがいまして、一応論理としてはわれわれといたしまして大いに学ぶべき点もたくさんございますが、直ちにこれをもって現在の日米安保体制を批判することは、いささか当を得ないと思います。特に核兵器の問題につきましては、日本の根本的政策として一切核兵器は保有いたしません。また、できません。アメリカ核兵器のいわば戦争抑止性に依存するという従来の態度は、私は今後も続けていくべきである、そういう考えを持っております。なお、安保新条約も一九七〇年が一応の転機でございますが、現在の時点では、御指摘のとおり、何らか根本的に原子兵器あるいは原水爆というものを材料としての安保体制の内容あるいは構造についての再検討については必要はない、こう考えております。
  214. 曾禰益

    ○曾祢益君 そうすると、防衛庁長官のお考えではガロア理論というものは、必ずしもそのまま承認できない。日本の同盟ということばがいいかどうかわかりませんが、日本の安全保障の相手方であるアメリカの核兵力、核戦力を考えた上の安全保障体制で、日本の自主性も、日本の安全も十分にやっていける。そして、したがって、中共がみずから核兵器を持つようになっても、むろんそれがないようにあらゆる施策をするであろうけれども、中共が核兵器をみずから持つようになっても、それ自身、日米安全保障体制の死滅——それでだめになってしまうという意味にもならないし、また逆に言うならば、日本が、だからといって、中共に対抗するような気持ちその他の理由から、核兵器を持たなければほんとうの自主性と安全性は保てないとは考えておらない、こういう考え方ですか。
  215. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) かりに中共が今後数年ないし十何年かの後に核装備をすると一応想定いたしましても、ずいぶん先のことでありますから、いまから断言することは、あまりにも危険でございます。一応そう仮定した場合に、日本がやはり核戦力なり核兵器を持たなければ独立性はむずかしいという考えは、私は持っておりません。核兵器自体、時代とともに常に性格を変えていく。先ほどもお答えしましたとおり、最初は、ボタン戦争で一撃でやられると思ったのが、米ソですらすでに必要以上のものを持っていて、これをどう管理するかという一つの新しい悩みすら出ている。そこに共通の利益から一応協定まで一歩進んだわけでありますが、すぐそばにある、近接した国が核兵器を持つからといって、核兵器を持つことがわが国の安全を確保する、ないしは独立性を保障するという考えには、私は飛躍的に考えたくないのであります。
  216. 曾禰益

    ○曾祢益君 いま長官が言われたように、一九七〇年、安保条約の期限到来のころには、一体世界情勢がどうなっているのか。一方においては米ソという形における、古いと言っちゃいけませんけれども、在来の観念の冷戦というものの緩和の徴候は現在においてもあるし、今後においても続くのではないか。ところが、他方において、それを少し撹乱する、ディスターブでするような中共のソ連に対するチャレンジ、フランスのアメリカ、イギリスに対する挑戦というようなものが起こって、形勢はなかなかこんとんとしている。アジアの情勢はなかなかあちらこちらに火の種がある、こういう情勢ですからわかりませんけれども、私ども考えでは、たとえばガロア理論というようなことで、日本が直ちに、核時代であるから、独立国たる以上は必ずみずから核兵器を持たなければほんとうの安全はないとか、同盟安全、集団安全保障体制はこれでもう死滅したとかいうような議論は、私は間違っていると思う。特に、われわれは、だからフランスに対し、中共に対し、われわれの力が及ぶ及ばないは別として、今度の条約等に加盟し、国際世論に訴え、さらには持てる英米ソ三国をして、まず部分的でなくて全面的核停条約、完全な査察制度を伴った完全な国際管理のもとにおける地下核爆発実験協定をつくらせて、それがまた軍縮に関する一つの大きな国際管理機構のパターン、モデルとなるというような、広範にして総合的な外交施策をやることによって、漸次中共、フランスのみずからの核戦力培養というものに対する反対の態勢というものを築いていかなければ、日本みずからはあくまでそういう面でいかなる場合においても核戦力は持たない、この従来の基本方針を貫いていく。しかし、それはただ旧来の観念にかじりついているだけでなく、ただアメリカとの防衛条約があるから安全だというのでなく、それを検討し、時代の要請に応じて直すべきものは直し、あるいは先ほど来議論になっているような、常時駐留から起こるつまらない国民と駐留軍とのフリクションというものをなくするとか、いろいろな必要な改定なり、駐留なしの形式の安全保障もあるだろうし、いろいろなことを考慮しつつも、なおかつ、われわれは集団安全保障の上に立った日本の最小限度の自主防衛というような線を進めていくとともに、核兵器は持たない、こういうやはり基本線には何らの曇りを持たないところの政策とやはり防衛理論というものをはっきりしなければいかぬと思う。そういうものに触れることは何でも危険だから、ただ触れないで議会のその場その場の答弁でお茶を濁すのでなくて、りっぱな日本の憲法、世界情勢に即した防衛的な理論というものはしょっちゅう検討し、それを固めていく必要があると思う。そういう意味で、私はいまあなたの御意見を伺ったわけですが、核兵器は絶対にいかなる場合においても持たない、この基本的な態度は変わらないものだと承知してよろしいか、あらためて伺いたいと思います。
  217. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) 全く御趣旨に賛成でございまして、なまじっかの核兵器を持つことによる、いわば歯には歯をもってすることは危険の悪循環であると私は確信いたしております。核兵器を所有しないということ自体が、世界各国に向かって核実験反対し、さらにまた、核兵器国際管理の完成に私どもが強く主張し得る裏づけになる、そう考えておる次第であります。御趣旨に全く賛成であります。
  218. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 それでは、技術的な点で防衛局長にお伺いしたい。先ほど防衛局長の説明の中にあったんですが、ソ連がポラリス潜水艦に相当するものは持っていない、また、いま持ち得ないような状況にあると、判断すると。その主たる理由は、技術的な面から見てどういうところにあるかというふうに見ておられますか。
  219. 海原治

    政府委員(海原治君) 先ほど、ソ連がまだアメリカのポラリスのように潜没したままで発射するミサイルを持っていないようであると、こういうふうに申し上げましたのは、防衛庁独自の判断ではございません。いろいろ世界のあちこちでそういうふうな憶測が行なわれておりまして、防衛庁の専門家も、潜没したままでポラリスのように千五百マイルないしはやがては二千五百マイルという長距離を飛ぶということは、たいへんに管制上非常にむずかしいものであります。そこで、地上から発射します場合の、たとえば衛星を打ち上げるということはまた別個に、船自体のナヴィゲーション・システムと申しておりますけれども、その辺の技術のおくれがまだソ連には解決できていないのじゃなかろうかと、こういうことが専門家の推測でございます。しかし、それを裏づけする確証ということになりますと、私ども何らございません。
  220. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 私が疑問にしている点は、つまり固型燃料の発達の面がソ連はおくれているのじゃないかという私身疑問を持っておるもんだから、それが大きな、あるいは主たる理由になっておるかどうかという点を私は聞きたい。
  221. 海原治

    政府委員(海原治君) 御指摘ございましたように、固型燃料の点にも問題がある、それから、水中に潜没しておる船からの測定装置の点にも問題がある、大体その二つの点に技術的な困難がある、こういうふうに観測をしております。
  222. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 それでは次に、これは外務省に聞きますが、今度の条約禁止の対象になっている範囲の問題ですがね、その中の一つで二、三聞きたいのだが、第一点は、禁止の対象になっておるものの中に、要するに、核爆発実験、これが禁止の対象になっておるが、その中で、「核兵器実験的爆発及び他の核爆発」ですね。それが今まで現に実行された実例というものがあがりますか。
  223. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 実験で行なわれた爆発については私存じませんが、実際に使われる可能性としては、ダムの建設、それからアラスカあたりで何か工事をするのに使ったということを聞いております。そういうようなための爆発も実験としてはこれから禁止されるわけでございます。
  224. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 それからもう一つ。この禁止の対象の範囲の問題ですけれどもね、核弾頭だけに限られるのか、あるいはロケットも含むのか、そこの範囲はどうなんです。
  225. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) ロケットを発射するのには、いまのところ核爆発は使っていないんじゃないかと思います。核爆発を使っていない限りは、ロケット発射というものは制限されないわけであります。
  226. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 これは空中爆発などがむしろ主たる対象になるので、地上における爆発よりも、空中爆発が多いんでしょう。その場合ロケットを使わないでできるのですか。
  227. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) ロケットで打ち上げた飛行体が核爆発を起こすということになるわけだと思います。そのロケット発射自身は、核爆発で発射するものじゃないと私存じておりますが、間違っているでしょうか。
  228. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 防衛局長に聞きたいのだが、核弾頭だけの実験、ロケット発射をするかどうか別として、どうなんです。僕はこれはすぐさっきの固形燃料などの問題のなににも関係があるから、聞いている。
  229. 海原治

    政府委員(海原治君) ただいまお話ございましたロケットの推進のための力を起こすために、核の爆発力を利用しておるものがあるかということでありますと、いままでのところは、そういうものは承知いたしておりません。しかし、ロケットというものの定義になるのでありますが、そのロケットにもいろいろな定義のしかたがございますが、ロケットの弾頭に……
  230. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 要するに、弾頭だけかどうかという問題です。
  231. 海原治

    政府委員(海原治君) ただいままでのところでは、弾頭だけというふうに承知しております。
  232. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 これも防衛局長にお尋ねしたいのですが、中共の実験問題に関連して聞くのだけれども核爆発実験と、それから兵器、ことに実戦配置につくような兵器は距離があるということはだれもわかります。その中でも、同じ核兵器といっても、これはもうあらゆる種類のものがあるので、その中で最も、何というか、簡便にできる核兵器、つまり何年後とかというよりも、簡便に最も早くでき得るようなもの、そういうもの、これはいろいろ諸条件があるから一がいには言えないことだと思うのですが、私が重視しているのは、中共でそういうようなものをつくった場合に、そういうふうな非常に射程の長いものとか、運搬手段の非常に長足的に進歩したもの、そういうものではないと私は実際問題として考える。それで最も短期間で、しかも最小限度兵器として使える、そういうものの、これは非常な差があるでしょうが、一番簡便にできるようなものを、これはどういう質問の立て方をしたらいいかわからぬが、それについて大体中共でどれくらい……しかし、時期というのは実際わからぬから、質問が無理なんだけれども、僕はそこのところをよくやはり考えていかないというといけないという感じがしている。
  233. 海原治

    政府委員(海原治君) お答えになっているかどうかちょっと的確には承知いたしませんが、まあ、一番複雑でない、簡単と申しますか、できるものといたしましては、やはり広島型、あるいは長崎型の原爆、重さが四トンか四トン五百、長さが三メートル、直径が七十センチ、これは大きなものでございます。この程度のものがやはり一番、何と申しますか、先ほど御説明いたしました、フランスあたりで五九年に設置いたしまして、翌年から六回ばかり爆発させましたものが大体そういうものじゃないかと、こういうふうに想像されております。したがいまして、中共が開発いたしましても、同じような過程を通るだろうということも、先ほど御説明したとおりでございます。これでありますと、まあ、爆撃機に積んで目的地の上でもって落とすということで、運搬手段から申しましても、一番目的を達するわけでございます。これを小型にするとか、あるいは重さに比例して爆発力を大きくするとか、あるいはいわゆるきれいな爆弾にするとかいうような点が、非常に技術的にむずかしいということを先ほどフランスの例で申し上げまして、ミラージュの爆撃機に積むのにはいまの爆弾では大き過ぎるのだ、こういうような観測があることも御説明いたしました次第でございます。一番簡単にといえば、おそらくは広島型の爆弾ということではないかと考えております。
  234. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 地上爆発にそういうのが核兵器としていままで使われている例はないかもしらぬが、やはり技術的にあり得る問題じゃないか。空中投下じゃなくして地上で爆発せしめる。そういうことが技術的に考え得るかどうだろうかということを聞いている。
  235. 海原治

    政府委員(海原治君) 地上で爆発するとおっしゃいますと、ここに置いておいて、これに導火線でもつけて点火するとぱっと爆発する。そういうことには私ども技術的に詳しくはございませんが、そういうふうなしかたでの爆発は、いままでのところないようであります。
  236. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 次に、外務大臣にお尋ねしたいのですが、中共の何らかの形においての核兵器の保有ということがあった場合を仮定しまして、その場合の、軍事的よりむしろ私は政治的影響の面でどういう点に着目して、重さを置いて日本としては見なくちゃならぬかという点についての外務大臣見解をお聞きします。
  237. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 国民がこれをどう受け取るかという問題、そういう心理的な面が大事だと思います。それにつきまして核科学の分野における技術水準というものは、決して日本の国は劣っていないのであるという一つの国民的自覚を裏づけにしたやはり国民的自信というものを打ち立てて、動揺のないようにいたす政治指導が大事じゃないかと思います。
  238. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 質問というより私の観測をちょっと、私の質問の趣旨を明らかにする意味で、申し上げたほうがいいかと思うのだが、中共が何らかの程度においての核保有をした場合に、一番私自身が注目しているのは、蒋介石の大陸反攻との関係ですよ。これが一番私自身は注目しているのです。それで、また蒋介石が大陸反攻政策を、口に出して、これば取り下げたと言わぬでも、事実上そういうことになるかどうかということは、今後の台港、中共の関係で非常に重要なファクターだと思うから、私は、要するに中共の核というと、蒋介石の大陸反攻政策との関係ということ、ここに一番注目しなければならないと私自身は思っておりますが、質問というのではないけれども外務大臣、もし御所感があればひとつ。
  239. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 御指摘された問題は、問題としてわれわれも研究してみたいと思います。
  240. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 私は、これで終わります。
  241. 佐藤尚武

    ○佐藤尚武君 私は、外務大臣に一般軍縮の問題で、一、二の点で御質問申し上げたいと思うのでありますが、けさほど来の大臣の御答弁の中にも一般軍縮の問題について言及されました。それからまた、その御答弁の中に、ミコヤン総理との会談のいきさつについても、ちらっとお話がございましたので、ちょうどいい機会かと思いまして、質問申し上げるようなわけであります。  第一点は、軍縮に関しての調査研究の問題であります。それは、昨年の二月のこの委員会で、ちょうど総理外務大臣御列席の委員会でありました。その際私は、とにかく国連での一番大きな問題である軍縮の問題に日本が参与していないということは間違いだということで、ぜひこの問題に対して、もっと積極的な態度に出なければいかぬと心得まして、それで御提案申し上げたのであります。それはその十八カ国委員会に割り込んでいくということを目的としていろいろな方策を講じなければならぬと思いますけれども、まず第一着手としては、終戦以来長い間軍縮の問題とは離れておりました日本として、まずもって調査研究をしなければなるまいと心得たわけであります。それでその点に関して大臣方の注意を喚起いたしたわけでありましたが、総理大臣も、また外務大臣も私の意見には全然同感を表せられたように私は了解いたしました。そうして外務大臣は、同感であるからして、その方面に向かって力点を置いて、くふうしていきたいというようなお答えがあったと記憶しております。私のその発言が動機になったかどうか存じませんけれども、その後幾ばくもなくして外務省に国際資料部というものが設けられたということでありまして、そうして、その資料部の中でもって、この国際軍縮世界軍縮の問題についての調査研究を進められるということになったと、ほのかに聞いておったのであります。それにはかなりのスタッフを集められておる模様であります。ここでお尋ねいたしたいのは、その軍縮に関する調査なり、研究なりというものが、外務省内での調査研究にとどまっておるかどうかということであります。なるほど、外務省内にも若手の優秀なお役人さんたちが大ぜいおられることとは存じまするけれども、何しろこの問題は世界的なスケールの問題であり、かつ世界的な有名な軍事専門家たちを相手にしてやらなければならぬ問題であると心得るのであります。それには、どうも外務省だけのお役人さんたちで十分であるかどうか、私はこれは外務省をけなすわけでも何でもありませんけれども、自然そういう懸念がわいてくると思うのであります。戦前、私自身も国際連盟時代に軍縮の問題に長年の間携わっておりました。その当時の経験から申しましても、そしてまた、その当時は多くの陸海軍の軍人たちも参加してまいっておったのでありますが、惜しいことには、日本国内には世界的な権威を持った軍事評論家なりあるいは軍事専門家なりというものがいなかったのであります。終戦後の模様は私はよく存じませんけれども、その点においてまだあまり評判の高い人たちを聞きませんので、あるいは私の懸念が当たっているかと思うのでありまするけれども、それにしても、軍縮の問題を打ち込んで研究しておられる学者たちもおられるでありましょうし、また、戦前の軍人の中で、多くは太平洋の花と散ってしまったかもしれませんけれども、しかし、その中でもまだ生き残っている軍事専門家がいないわけではないと思うのであります。そういう人たちを集めて、そうして衆知を集めてかかっていくということでなければ、外務省内だけの研究では私は打開がおのずから局限されるような気がするのであります。そういう点について外務大臣はどういうふうな構想をお持ちになっているか、お伺いしたいと思います。
  242. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 佐藤先生の御質問が契機になりまして、私どもも、軍縮の問題を平和の観点からも、安全保障の観点からも深く広く究明しなければならぬと、その領域において日本が非常におくれておるということは率直に認めるものでございまして、幸いに最小限度の要員は確保できましたので、ただいまいろいろ調査の準備をいたしておる段階でございます。もとより民間の専門家もときおりわずらわしてヒアリングはやっておりまするが、そういったものをオーガナイズしてまとめるというようなところへまだとても来ていませんので、いま初めてこれは基礎的な準備をしておるという段階でございます。
  243. 佐藤尚武

    ○佐藤尚武君 いや、いまのお答えでそういった面に努力を続けられておるということを承知しまして喜んでおるものでありますが、繰り返して申し上げるようでありまするけれども、とにかく世界的な軍事専門家を相手にしてこっちの意見を立てていかなければならぬということであろうかと思いまするので、やはりこれは広く衆知を集められるということに重点を置かれる必要があるかのように思うのでございます。過去の経過、歴史とかいうものを研究するということは、それは若い人たちでも十分できまするけれども、しかし、それをもとにして将来この軍縮をいかに持っていくべきか、日本の立場としてはどういう主張をしなければならぬかという、そういう重要な意見を立てるというためには、どうしても私は、部外のあるいは民間のそういった専門家たちの協力を得なければできない相談じゃなかろうかと思いますので、申し上げた次第でございます。  もう一つの点は、ミコヤンとの応酬問題であります。けさほどの御答弁の中でその点に触れられて説明があったように拝聴いたしました。私は、あの会見がありまして、翌日の新聞でもって、大臣がミコヤンに対して、十八カ国委員会日本の加盟を拒んだのはソビエトであったということを指摘されたということ、そしてまた、今後日本が加盟を申請するというようなことがあるとするならば、そのときにはソビエトは反対しないようにしてもらいたいというようなことを言われたという話を聞きまして、たいへんこれはいいことを指摘され、ソビエトをたしなめられたという点で私は非常に喜んだのであります。その辺のいきさつなり空気なりを、重複にわたるかもしれませんけれども、もう一度外務大臣からお話しを願いたいと思うのであります。当時とは国際情勢においてもだいぶ変わってまいったものがあるかのように思います。そのうちに日本が加盟を申請するというようなことがあるとしまして、必ずしもソビエトが反対をする理由はなかろうかと思うのであります。十八カ国委員会ができました当時においては、日本のような、ソビエトから見れば、いわばアメリカの与国というような立場として彼らは見ておったのでありましょうが、そういう日本軍縮委員会に入れるということは自分の地位を弱めることになるというような懸念からして、日本の加盟を拒んだのだろうと思いますけれども、現在におきましてその点は非常に違ったものがあり、日本の立場に対しましてもソビエトはかなり重きを置いてまいったように見受けられますので、日本軍縮に参加するということに対しましても、相当の考慮を払われる形勢になっていやしないかと思うのであります。でありまするから、外務大臣は、今後この十八カ国委員会日本が割り込んでいくということについて、あらゆる機会をとらえてその目的達成されるようにお考えになっておるかどうかということについてのお話を承りたいと存じます。いかに調査研究を進め、もしくは軍縮に対する日本自身の意見を持ち得たとしましても、どうしても国際的な会議に出てそれを主張する立場に立たなければ、これを実現するということは困難でありまするので、十八カ国委員会にはぜひとも加盟をするように持っていってくださらなければならぬというように考えます。そういう点に関しましての大臣の御意見をひとつ承りたいと思います。
  244. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) この間のミコヤン氏との会談におきましては、フルシチョフ首相書簡を中心に話をしようということでございまして、その書簡の中には、日ソ共同して核実験全面禁止声明しようということがうたわれておるわけでございます。これに関連いたしまして先方は、日本はいますでに大国である、そうして唯一の被爆国として日本の発言というものは世界が傾聴するであろう、アメリカも傾聴するであろうし、ソ連もまた傾聴するであろう、したがって、この機会に、日ソで共同してその意思表示をしてはどうかという趣旨だという意味説明がございました。そこで私は、御激励はありがたいが、しかし、あの軍縮問題は、先ほどの午前中のやりとりでもお聞き取りいただいたように、国連総会決議をして、ほとんど満場一致の決議をもちまして軍縮委員会討議にゆだねておるということでございまするから、そしてそこであなたのほうも提案し、アメリカ提案し、英国も提案しておる、いまその論議が実質的に進展しておるとは思えないけれども、しかし、この問題は、時間をかけて討議を続けておる間に何らか打開の糸口を見つけ出し得るものと思うから、日本としては、こういう国連をはじめといたしまして軍縮問題に取っ組んでおるこの筋道というものに乗ってじみちな協力をしていくのが正しいと思うと——そこで軍縮委員会への日本の参加問題になったわけでございます。で、ソ連反対したではないかと言いましたら——実は具体的にそのことを御記憶なかったのかもしれませんけれども、よく検討してみるが、あれは御承知のように、社会主義国、中立国、資本主義国でございますか、一応のシートの割り振りみたいなものがあるので、その間の配分上の問題であったのではないかと思う、しかしいずれにしてもそれはよく自分のほうでも検討してみるということでございました。今度日本軍縮委員会に参加することについてソ連のサポートを得られるかどうかというような点は、私はわかりません。ソ連の真意が那辺にあるかもつかみ取りかねます。ただ、われわれといたしましては、けさ岡田先生、森先生なんかとのやりとりにも申し上げましたとおりに、軍縮問題は、平和の立場から申しましても、安全保障の立場から申しましても、非常に重大な問題だと思いますので、日本がこれに組織的に参加することを断念しちゃいかぬと思っておるわけでございます。もとより、国連におきましては、各方面にむやみにシートをむさぼるというふうなことは不可能でもございますし、また、すべきことでもないわけでございます。おのおの日本の占めるべきシートというものは適正なものでなければならぬと思います。私どもの気持ちといたしましては、軍縮問題という問題につきましては、何とか組織的に参加をする道をくふうしたいという存念には全然変わりはございません。
  245. 佐藤尚武

    ○佐藤尚武君 とにかく日本といたしましては、憲法でもって戦争を放棄し、武装を解除しておるわけでありまして、世界でそういう立場に立っておる国は日本をおいてないわけであります。武装を解除したという結果、日本は今日の経済上の復興ないし繁栄をもたらしたという点におきましては、武装をする心配がなかったということが非常に大きな要因ではなかったかと思うのであります。もしそうだとしまするならば、全世界をして日本の範にならわしめるということができましたならば、これは世界というものがどれだけ幸福な世界になるか、とうていわれわれの貧弱な頭でははかり知ることができないものがあろうと思うのであります。でありまするから、日本こそが軍縮の先頭に立って、そうして日本の例にならわしめるように諸国を引っぱっていくということがわれわれに与えられた非常に大きなそして聖なる使命でなければならぬし、先ほど曾祢委員が引用されましたフランスのガロア将軍の意見、これはフランスの地位を擁護するための議論であろうかと思います。ああいう議論でもっていくとしましたならば、ソ連はまたまたかたくなるでありましょうし、とうてい核実験全面禁止なんということは望めないことになるでありましよう。平和の前進、推進などということは望めないことになってしまうと思うのであります。あのような論に従って、日本も核武装しなければならぬというようなことになりまするならば、これはとんでもない結果におちいるわけでありまして、そういう必要がないような世界をつくるべくみんなが努力しなければならぬ問題だと思うのであります。すなわち、世界の健全な世論、それは武装解除ないしは核兵器全面禁止というような方向世界を引っぱっていくということでもって、世界世論でもって、そういうような議論の行なわれる余地のないところまで到達せしめなければならぬでありましょう。そういうような意味におきまして、日本の立場というものは世界的に申しましても非常に重要な、そしてまた、自分の思ったことをてきぱきと言える立場にあると思うのです。自分自身が武装を持たないのでありますから、これほどはっきりした立場に立っている国はほかにはありません。日本の言い分は必らずや全世界に聞かれなければならぬと思うので、それには、ただ日本政府のかたい決心が何よりも必要だと思うのでありまするからして、どうぞ政府におかれましても、いままでとってこられましたような経路をいろいろお進めくださいまして、そして、いま申し上げたような方向世界を引っぱていくという大きな意気込みを持ってやっていただくことを切にお願いしたいと思います。
  246. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) それじゃ、本日の質疑はこの程度といたしまして、次回は五月二十一日午前十時開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時二十四分散会