○曾祢益君 今回部分的核停
条約ができまして、それを契機としてさらに
核兵器の拡散が防止されることが望ましい、それによって
核兵器全体の
禁止、それから全面
軍縮に進みたいというのが、これはもうわが国の念願だと思うのです。
ところが、みんなが心配されることは、実際問題としてここに現にもう原爆を
開発してしまったフランス、すでにやっているフランスと、これから原爆、水爆を
開発しようという中共、いわゆる第四、第五の
核保有国の出現というものもなかなか
禁止できない。こういう
ところに非常に問題があるわけですね。そこで、フランスなり中共のそれぞれの主張は、その国々の主張ですから、外国で批判してもちょっとしようがないわけですが、ただ、その中に確かに
一つの非常に強い民族主義的といいますか、防衛上あくまで自主独立の防備が必要だ、外交上の自主独立がどうしても。
核兵器自体においてはみずからの
核兵器保有がなければならないという、こういう主張があるわけですね。そこでその問題をいかに
説明していくかということは、国によって違いますけれ
ども、存外わが国にとっても
一つの問題を最近提供しておるんじゃないかと思われるのは、フランスの
核兵器をみずから保有する必要があるという理屈づけの
方法ですね。皆さん御
承知のように、特に最近
日本の有力新聞、有力な総合雑誌等が掲げました。これはドゴールさんの相当な側近の一人である。むしろブレーンの一人であるとすら言われている。これは
防衛庁長官に主としてお聞きしたいわけですが、ガロア将軍の論拠を尋ね、聞いてみると、「結局いままでの同盟
条約、同盟機構による集団安全保障はこの
核兵器の手詰まり時代になって、もはや根本的に
考え直さなければならない。」という議論をしておるわけですね。簡単に言うならば、いままでは確かにフランスも
アメリカの力の上に自分の安全をはかってきた、NATOというものは
意味があった、
アメリカの海外に対するNATO援助というもの、それをバック・アップする
アメリカの核戦力というものは非常な
意味があったと実効性を認めておったけれ
ども、完全に
米ソの核手詰まりの状態からいうならば、
アメリカがヨーロッパ、このフランスを救うために——
ソ連が直接向こうから核攻撃をしてくれば別です。これはヨーロッパと
アメリカとの区別なしに、グローバルに攻撃するでしょう。——そうでなくて、ヨーロッパで何か事態が起こった、それを救うために、ヨーロッパにおけるNATO側の力が何といっても劣勢であるから、それを救うために、
アメリカが核戦力を使うことは、
アメリカみずからが自分の安全を破壊する。自分の本土に
ソ連の核報復をみずから誘致することになる。そんなばかなことは実際上
考えられないじゃないか。ゆえに、やはりフランスの安全としては、むろん自分だけが使うのは
目的じゃないけれ
ども、最後の場合には自分の安全は自分で守る必要があるから、フランスはみずから核戦力を持つんだと、まあ簡単に言えばそういうアーギュメント、そういう議論だと思うんですね。それをフランスが、フランスの自分の栄光なり、あるいはフランスの偉大さのためにどうお使いになること自身はかってかもしれない。そういう議論のもとに、たとえば
日本に対しても
一つの警告的なことを言ってるわけですね。結局、
日本は中共が
核兵器を持つことになるならば、これはいろいろ
核実験爆発をやるということと、それをオペレーショナルな兵器として持ち、それをみずからの兵器でそいつを運ぶ兵器まで持つということは、最初の
実験をやってから何年かかるかそれはわかりませんよ。しかし、ガロア将軍の言うのは、とにかくいずれかの日には、いまのままでいると、中共は
核兵器を持つだろう、その場合の
日本の安全というものは根本的に
考え直さなくやいかぬ。つまり、彼の結論的な予言をもってするならば、幾ら
日本が
アメリカに頼って、
アメリカとの安全保障体制に頼っていっても、結局は
日本みずからがフランスみたいに
核兵器を持つんでなければ、結局の
アメリカの属国的な立場でほんとの自主独立の立場に立った安全ははかれない。かといって、
日本のいわば革新陣営といいますか、社会党以下の左の諸君が言ってるような議論で、まるで無手勝流でいこうというのは、これはだれが
考えても、ガロアの言うことを聞かなくても、これは問題なく完全に中共の衛星国になる以外にはない。こういう
意味の、非常に刺激的であるけれ
ども、存外
日本で非常に痛い
ところに触れるのを避けておるような
ところをぐっとえぐったような、フランス人のことですから、ロジックは間違っておっても、言い方は非常に鋭い切り込み方でやっておりますね。私はこれは非常な
一つの問題だと思う。そこで、一体
日本の防衛長官としては、中共が
核兵器を持つようになった場合に、ガロア将軍の言うように、日米安保
条約体制はこれでつぶれると見るのか、有効でないと見るのか。私はその見方に非常なやっぱり独断、ドグマがあると思いますね。フランスのみずから
核兵器を持たなきゃならないという議論の中に、やはり
一つの議論のあやといいますか、まやかしといいますか、当然に
アメリカは自分がかわいいから、ヨーロッパは捨ててもみずからの安全をはかるんだという断定があるんですね。そうかもしれないけれ
ども、そう断定できないものもある。
アメリカの安全と西ヨーロッパの安全というものを一体的に見ようとする大きな
方向は
一つあるわけで、
アメリカがみずからの安全を犠牲にしてまでヨーロッパを救いに来ない、ゆえにフランスみずからが
核兵器を持つんだという
ところに、飛躍というか、独断があると思いますね。しかし、いずれにしても、そういうような
一つのいままでの同盟、集団防衛、安全保障体制に対する疑惑といいますか、あるいは弱点に対する
指摘というものは確かに鋭いものがあると思いますね。したがって、まず第一に伺いたいのは、ガロアの議論はむろんフランス
政府の公な
説明じゃないですよ。しかし、実際上私は紙一重だ、同じことを言ってると思います。フランスの主張がNATOに関する限り、何を言ってもかってですけれ
ども、一体その議論は、日米安保体制の上に、大きな期待と戦略体制の基本を、むしろ置いておられると思うんです。
アメリカのいわゆる原子力のかさの上にかぶさって、しかし国内には原子力兵器は持ち込んじゃ困る。大きく言えば
アメリカのアンブレラの中で非常に限られた防衛力を維持
発展させようというのがいままでの池田内閣、歴代の保守党内閣の国防計画の基本だと思うんですね。その辺がぐらつくことがないのか。ぐらついた結果が、それじゃ、それならみずから
核兵器を持つということになるのか、そういう
ところに
一つの大きな問題があると思うんですよ。
防衛庁長官の御意見を伺いたいと思います。