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1964-04-24 第46回国会 参議院 外務委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年四月二十四日(金曜日)    午前十時三十九分開会     —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     黒川 武雄君    理事            井上 清一君            草葉 隆圓君            長谷川 仁君            佐多 忠隆君    委員            青柳 秀夫君           大野木秀次郎君            鹿島守之助君            木内 四郎君            杉原 荒太君            山本 利壽君            岡田 宗司君            羽生 三七君            森 元治郎君            曾祢  益君            野坂 参三君   国務大臣    外 務 大 臣 大平 正芳君    大 蔵 大 臣 田中 角榮君    農 林 大 臣 赤城 宗徳君    運 輸 大 臣 綾部健太郎君    労 働 大 臣 大橋 武夫君   政府委員    外務省経済局長 中山 賀博君    外務省条約局長 藤崎 萬里君    外務省国際連合    局長      齋藤 鎭男君    大蔵省為替局長 渡邊  誠君    文部省社会教育    局長      齋藤  正君    農林省農林経済    局長      松岡  亮君    運輸省海運局次    長       澤  雄次君    運輸省船舶局長 藤野  淳君    労働大臣官房長 和田 勝美君    労働大臣官房労    働統計調査部長 大宮 五郎君    労働省労働基準    局長      村上 茂利君   事務局側    常任委員会専門    員       結城司郎次君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○経済協力開発機構条約締結につい  て承認を求めるの件(内閣提出、衆  議院送付)     —————————————
  2. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  議事に入る前に、先刻の理事会で決定いたしました本日のOECD条約審議予定について御報告申し上げます。  本日午前は、運輸大臣労働大臣に対する質疑を行ない、午後は大蔵大臣外務大臣経済企画庁長官農林大臣に対して質疑を行ないます。  経済協力開発機構条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。昨日に引き続き質疑を続行いたします。御質疑のおありの方は、順次御発着を願います。
  3. 岡田宗司

    岡田宗司君 運輸大臣にお伺いいたします。昨日いろいろ審議をいたしまして、首相以下政府側の御見解を伺ったのでありますが、いずれにいたしましても、今度OECDに入りまして、貿易外収支自由化ということを受諾いたしまして、それによって海運収支の問題で今後非常に大きな問題があるということが明らかにされ、そして、昨年どろなわ式ですけれども海運政策の建て直しということが必要だということが明らかにされたわけであります。ところが、まだそのはっきりした具体的な政策を打ち出されていない。海運会社の統合というようなことは行なわれました。これからいままでの造船計画を改めて、さらに本年とりあえず追加をし、それから昭和四十何年ぐらいまでにもっと大きな計画を立てていくように総理は言われておったのでありますが、運輸大臣は、この海運収支赤字対策として、日本海運政策をここでもって一新していくというのについて、いかなる基本方針をお立てになっておるか、それをお伺いしたいのであります。
  4. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 貿易外収支の中で、海運収支が非常に重大な影響があるということは御趣旨のとおりでございます。私どもといたしましては、現在日本は御承知のように、七百万総トンであります。これが過当競争をやるため、その七百万総トンをフルに動かすに若干の懸念がありますので、OECD加盟を契機といたしまして、私どもといたしましては、海運の強力な再建にまず新政策をやりまして、それから引き続きまして、四十三年度目途海運収支がゼロになる、プラス、マイナスが均衡がとれるようにするためには、どうしても年々百五十万トンぐらいの船をこしらえまして、そして結局千三百五十万トンですか、この程度昭和四十三年になるというような計画を立てまして、千三百五十万トンになりますというと、現在の所得倍増計画に要するいろいろな物資輸入等積み取り比率をよくするためにどうしてもそれが必要だという計算のもとに、着々と進めておるのでございます。御承知のように、本年度は大体百万トン見通しがつきまして、船台の準備もいたしておりますが、今後さらに努力いたしまして、財政その他の資金面を、各省と交渉いたしまして、所定の百五十万トンに達するように努力いたしたいと考えております。
  5. 岡田宗司

    岡田宗司君 これから四十三年くらいまでに年々百五十万トンくらいつくっていく、こういうことになりますというと、これはずいぶんいままでよりもよけいつくらなければならぬ。そういうことになってまいりますというと、これはやはりそれの裏づけになります財政計画というものがなければならぬわけであります。この四十三年までに千三百五十万トンに達するまでのこれは物価の変動もありましょうけれども、全体としての資金所要量、そしてまた、それは一体政府でどれくらい供給するのか、それの大体の年次計画はどうなっておるのか、それらの点についてお伺いしておきたいと思います。
  6. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 数字にわたることでございますから、事務当局をして答弁させます。
  7. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) お答え申し上げます。  ただいま大臣の言われました計画によりますと、三カ年計画で全体の所要資金は三千二百億でございます。そのうち、財政資金は、現在の財政融資率によりますと二千二百億程度に相なるわけでございます。それから、これの年次別計画につきましては、実はこの中期計画経済企画庁ではやりまして、十一月ごろを目標にして中期計画ができますので、その際に年度別計画がきまることになると思っております。三十九年度につきましては、二百四十七億の財政資金がついております。これで約六十四万二千トンをつくれますので、その分につきましては、大臣の言われました百万総トン目途として、財政賞金追加を今年度お願いしたい、このように考えております。
  8. 岡田宗司

    岡田宗司君 本年度追加はどれくらいになりますか。
  9. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) これは百万総トン程度つくろうという方針政府で決定いたしていただいておるわけでございます。現実に何方総トンというのはまだきまっておりません。六十四万二千トン、二百四十億の財政資金が現在ございますので、四月一日からすでに開発銀行で受付を開始いたして、どんどん契約のできたものの融資を許可いたしつつあります。それでこの金を大体つかい終わりまして、それから、この三十九年度にどれくらいの一体建造規模に達するであろうか、これが契約できますものが九十万あるいは九十五万トンかもしれませんし、あるいは百十万トンになるかもしれません。これは十二月の終わりごろになるとほぼ確定してまいると思います。そのときに、いかほどの財政資金追加を必要とするかということを事務的に大蔵省と詰めたい、このように考えております。
  10. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、四十三年までの全体の計画としては経済企画庁がつくる中期計画が立たなければできない、それからまた、本年度追加分についてはやはり十二月ごろになると、こういうことでございますね。そういたしますと、これはやはり補正予算の問題と関連があるわけだと思うのですけれども、これは秋あるいはまた次の通常国会において補正予算として要求されることになりますか。
  11. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 先ほど事務当局が申しましたように、所要資金の総額は大体私ども運輸省としてはめどがついておるものでございますが、その年度割りその他につきましては、経済企画庁大蔵省といま折衝をいたしておりまして、それが年次計画のきまるのと同時に、造船の需給の問題等も同時にきまると思いますから、そのときに初めてあなたのおっしゃるような補正予算を組むか、あるいは現実に金を払う問題が起こるか、さようなことを詳細に検討いたしまして決定いたしたいと思います。
  12. 岡田宗司

    岡田宗司君 だいぶ大きな計画が立つわけですけれども、これは四十三年の終わりごろに、この外航船は、たとえば一般的な貨物船あるいはタンカーあるいは鉱石等専用運送船、そういうようなものがどういうような比率になりますか。
  13. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) 四十二年度の末におきまして、これは運輸省試算しました案でございまして、まだ政府全体の決定した計画になっているわけじゃございませんが、運輸省試算によりますと、四十二年度末におきまして、定期船が約三百万トン不定期船が二百五十五万トン専用船が百八十一万トン——これは鉄鉱石石炭専用船タンカーが五百六十七万トン、合計千三百万トンになる予定でございます。これは、しかし、あくまでも運輸省試算でございまして、まだ政府全体の決定したあれではございません。
  14. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、こまかい計画ができていないけれども、この運輸省試算から見ましても、今後集中的になされていくのは、一番多いのはやはりタンカーでしょうか。
  15. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) もちろん、さようでございます。
  16. 岡田宗司

    岡田宗司君 これは非常に金のかかる計画であるし、それからまた、今後の日本経済成長率とも関連のある問題であるし、また、日本輸出入増加とも非常に関係のあることでありますけれども、何ですね、千三百万トン四十二年度末に達せられるとすると、一体邦船による積み取り比率はどういうことになってまいるのでしょうか。
  17. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) 輸出で六一%、それから輸入で七二%でございます。
  18. 岡田宗司

    岡田宗司君 最近の郵船の積み取り比率が非常によくないわけでして、いただいた資料によりますというと、三十三年には輸出が五八・六%、輸入が五八・八%であったものが、三十八年には四六・三、四六・五になり、三十九年の見通しになりますというと四四・〇、四八・九と、こういうふうになっておるのであります。これはもちろん輸出入増大に伴うことから起こって、それだけ日本船が不足して追っつけない、こういうことから来ておるのだと思うのでありますけれども、しかし、それと同時に、こういうふうに積み取り比率が低下していくのには、ほかに原因があるだろうと思うのです。単なる自然にこの日本から出入りする貨物数量がふえたというだけのことじゃないと思うのですが、政府は、この積み取り比率の低下の原因は単に貨物数量がふえた、それに対する邦船供給量がそれに追っつけないということのほかに、どういう原因があるとお考えになっておりますか。
  19. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) これは貿易の、輸出入伸びに対しまして船腹増加がバランスしなかったことが、積み取り比率が下がってきました一番大きな原因でございます。
  20. 岡田宗司

    岡田宗司君 いや、それは先ほど私がそう言ったので、そのほかにもいろいろ原因があるから、その他の原因をあなたのほうでひとつ明らかにしてもらいたい。
  21. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) これは輸出入貿易量増大船腹増加が追いつかないということでございますが、それに全部集中されるわけでございますが、御質問の御趣旨は、結局、日本貿易が、輸出輸入のバランスが、戦前に比べまして、輸出に対しまして輸入量が非常に多くなっておるということ、それから、戦前に比べまして、輸入物資輸送距離が非常に長いということで、戦前と同じ積み取り比率を上げますのに、戦前の数倍の船腹を要するということだろうと思います。それで、結局、これは貿易伸びがたとえば二伸びましても、船腹としましてはそれに対応する二ではなくて、三あるいは四という単位で船腹をふやさなければ、積み取り比率を維持しあるいは引き上げていくということが非常に困難であるわけでございます。そういうことが大きな原因であると思います。
  22. 岡田宗司

    岡田宗司君 それはもう初めからわかり切っていることなんで、そのほかに、たとえば外国船との競争の問題とか、あるいはシップ・アメリカンのようなある種の制限とか、そういうものもやはり積み取り比率が下がっている原因じゃないのか、そういうことについてもう少し詳しく説明をお聞きしたいと思ったから質問したのです。
  23. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) 日本をめぐります海運競争は、御指摘のように、非常に激烈でございまして、アメリカシップ・アメリカン政策、あるいは各国自国船優先主義、特に戦後出てきました海運国自国船優先主義というものによりまして、日本競争も非常に激烈になっております。しかし、全体的に見ますと、船の絶対量は足らないわけでございまして、いま先生のおっしゃられましたのは、特に輸出につきまして影響がございます。輸入につきましては、大部分がいわゆる専用船長期契約で張りついておるわけでございます。その船の絶対量が足りないというのが一番大きな原因であると思っております。
  24. 岡田宗司

    岡田宗司君 外国船との競争ということがいまあげられたのですけれども、一体一番どこと激しい競争になっておりますか。
  25. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) これは輸出の場合と輸入の場合と違うわけでございますが、輸出の場合はライナー・ボートー定期船でございまして、これは日本に就航いたしております定期船で、アメリカ向け輸出につきましては、もちろんアメリカ船会社との競争が一番大きいあれでございます。それから、ヨーロッパ方面船主との集荷競争が激しく展開されております。  輸入につきましては、先ほど申し上げましたように、タンカーあるいは鉄鉱石石炭専用船長期契約外国船主競争してやっているわけでございます。具体的に申しますと、北欧諸国あるいはギリシア船主との競争が一番激しく行なわれております。
  26. 岡田宗司

    岡田宗司君 その運賃競争ですね、どうせ輸入業者にしても輸出業者にしても安いほうを選ぶのですが、そういう点で日本側が不利であった、そのために積み取り比率にそれが響いてきた、そういう事情はなかったのですか。そういう事情もあったのでしょう。
  27. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) 輸出につきましては、大部分の航路におきまして運賃同盟を結成いたしておりますので、運賃日本船外国船同一でございます。輸入につきましては、これは全く自由競争でございまして、従来は日本船会社の立ち直りがおくれているということ、それから、いろんな海運助成策が十分でなかったということから、先生の御指摘のように、船の運航のコストが、先ほど申しましたノルウェーその他の北欧諸国ギリシア船主に比べまして、コスト日本船のほうが高かったので、非常に契約がとりにくかったという肝炎がありましたわけでございます。これが、去年の海運の一連の諸施策を実施していただきましてから、新造船につきましては、外国船と十分対抗できる競争力がついたと、このようにわれわれとしては考えております。
  28. 岡田宗司

    岡田宗司君 アメリカシップ・アメリカン政策ですか、これはどのくらい響いていますか。
  29. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) シップ・アメリカン政策全般に申しましても、政府がみずから法律、政令で実施いたしておりますものと、それから、アメリカ経済団体その他で米船に積めという精神的な運動のものとございますが、政府法律あるいは規則で実施いたしておりますものは、これはアメリカ政府または政府関係銀行融資する物資については、原則として一〇〇%アメリカ船でなければならないという規定でございますが、実際の運用といたしましては五〇%まではその相手国の船に、これをウエーバーと申しておりますが、五〇%までは積んでもよろしいという妥協をいたしております。それで、アメリカから参りますこういう関係物資では、綿花クレジット綿花、あるいはアメリカ輸出入銀行融資を受けましたいろいろな機械類等がございますが、いずれも五〇%のそのウエーバーを得まして、ウエーバー範囲で、日本船はほとんどその許容された範囲のものを積み取っております。
  30. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、そのウエーバー範囲日本船も五〇%までは積んでおるのですか。
  31. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) さようでございます。
  32. 岡田宗司

    岡田宗司君 そのシップ・アメリカンによってアメリカ海運が非常に保護されておる。そのアメリカ船で運ぶ場合の運賃と、それから、日本船あるいは他の外国船で運ぶ場合の運賃ですね、この自由競争によるその開きはどれくらいになっていますか。
  33. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) 先ほど申し上げました綿花その他のいわゆる定期船物資につきましては、これは米船で運びましても、日本船で運びましても、同盟運賃で、全く同一でございます。ただ、トランパーの、いわゆる運賃の定めのないものにつきましては、これは日本船が運びますときは、もちろん世界のフリー・マーケットの運賃で運ぶわけでございます。米船は、そういう保護のもとでいわゆる米船だけの市場というものができておりますので、非常に高くなっております。ただ、こういうトランパー物資で、いわゆるシップ・アメリカン規則にかかる物資は、幸い日本向けは非常に少のうございます。むしろヨーロッパ諸国のほうが、小麦その他で大きな影響を受けておる、このように思っております。
  34. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、何ですか、日本海運の場合にはシップ・アメリカン影響の受け方が少ない。これは数量の面からいっても、この運賃価格面からいっても、その影響は少ないと、こういうことなんですか。
  35. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) さようでございます。  日本向け物資につきましては、トランパー物資というのは、これは詳細に調べますとあるとは思いますが、非常に量は少のうございまして、定期船物資がほとんどでございますので、いわゆる運賃面につきましては、影響ヨーロッパに比べまして少ないと思います。もちろん、このような規則がなければ、日本船綿花でも五〇%というようなことではなくて、もっともっと高い積み取り比率を上げられると思いますので、その面の影響は非常にございます。  また、先般小麦で問題になりましたソ連向け小麦は、これは先生指摘のように、五ドル以上の運賃開き米船ヨーロッパの船との間であったわけでございます。これは大部分が大西洋を渡りましたソ連向け小麦でございましたので、日本船には直接の影響はございませんでしたというような次第でございます。
  36. 岡田宗司

    岡田宗司君 しかしながら、シップ・アメリカンというのが、これはひとり日本ばかりでなく、やはりノルウェーでも問題にしており、イギリスでも問題にしている。おそらく世界の他の海運国は全部問題にしているだろうと思う。そうして、OECDに加盟している国のうちで、まあ、アメリカがこの点できつい留保条項をつけて、それが世界海運国にとって非常な一つの脅威というか、あるいは障害というか、その貿易外取引自由化の大きな障害になっている。こういうふうに考えて抗議もしたり、これをやめさせようとか、あるいは緩和させようという運動をしているわけです。日本もそれに加わっておることと思うのですが、これは運輸大臣、やはり何ですか、このシップ・アメリカンという政策は、これはひとり日本だけでなく、世界的に見てもやめさせたほうがいい、あるいは緩和さしたほうがいいと、そういうふうに思いますか。
  37. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) そのとおり考えております。
  38. 羽生三七

    羽生三七君 ちょっと関連して。  いまの問題ですが、この条約附属書に、海運関係のところでですが、「この備考の第二文は、合衆国には適用されない。」、こうあって、アメリカの自由が認められているわけですけれども、これは、主張すればそういうように自由に、アメリカだけは自由になるのか。また、国際的に見て、これ、OECD加盟国の中に、アメリカのような態度をとって差しつかえないのか。ガットとの関係はどうなのか。  それから、貿易自由化が叫ばれている際、もちろん海運もそういうことですが、その際に、アメリカの場合は政府関係物資というか、政府所管物資ということで、その責務を免かれていると聞いておりますが、それは一体それらのことをすべて含めて国際的にはどういうことになるのか、その辺の関係を少し詳しく外務大臣ですか、どなたですか、詳しく説明してほしいのですが。
  39. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) OECDは、御案内のように、経済政策全般につきまして協議調整をやっておる機関でございまして、海運一つアイテムのものでございます。で、きのうも申し上げましたように、アメリカは全体として留保アイテムの少ない国でございまして、非常に自由な国なのでございますが、しかし、アメリカ海運につきまして留保をつけるということをとめることはできないと思うのであります。これはアメリカの主権に属することだと思うのでございます。で、OECD条約そのものは、何も強制力があるわけでないわけでございます。各国各国政策調整にやはりすぎないわけでございまして、これから直接ガットその他、いま御指摘のように、ほかのものとの、それから国内法制との抵触は出てこないわけで、出てきた場合には、それだけの手順をとらなければならないわけでございまして、したがって、この問題はそういう討議を繰り返し繰り返しやっている間に双方の理解が進みまして、そうして、そういった雰囲気の圧力に対してアメリカがどれだけ自制するかということに、結局、なるのではないかと思うのでございます。OECD条約そのものからは、強制力は出てこないと思います。
  40. 羽生三七

    羽生三七君 最初私は、この条約審議に入る前の私どもの一般的な受け取り方としては、このOECDというものはクラブ的なもので、たいして強制力も何もない、こう思っておったわけです。ところが、こうやってみると、日本自身としては相当自己規制をしなければならない。そんな、ガットのような力は持っておらないと言えばそれまでかもしらぬが、しかし、なかなか相当きびしい条件もあると思うのですが、そういう中で、ひとりアメリカだけが海運政策でこういうことがとれるということは、きわめてふしぎに考えられるのですが、そういうことはないのですか。
  41. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) OECD条約は、全部の意見が一致して、いまから各国規制する規制をやろうとする場合には満場一致でなければならぬわけで、あらゆる場合に留保はできるわけでございます。縛られるわけではないわけでございます。それから、現在、たとえば日本政府国会から与えられている権能の中でできることしかやれないわけでございます。もし、OECDで決議されたことで日本法制と抵触するということになれば、国会にまた新しく政府権能をもらわなければいかぬわけでございます。したがいまして、条約も、そのようにちゃんと憲法上の手続をとらなければならぬと書いてあるわけでございます。そういう意味では、羽生先生のおっしゃるように、この条約そのものには何も拘束力はないわけでございます。ただ、せっかくそのように二十カ国が集まりまして政策調整をやって、お互いに、三大目的である高度成長もやる、貿易の拡大もやる、援助も強化していこうと場合には、それぞれのメンバーが可能な範囲協力をしていくというふうにしなければならぬと思うのでございまして、そういう意味政策的な自制はやらなければ、またOECDというクラブを持つ意味がないと思うのでございまして、私はそのようなクラブとして理解をしているわけでございます。
  42. 羽生三七

    羽生三七君 いまの問題とちょっと離れるのですが、先ほどの岡田委員質問関連してですが、日本海運政策長期計画を立てる場合に、当面の問題は、いま運輸大臣から、大蔵省とも、あるいは企画庁ともそれぞれ話しておるというお話でありましたが、それはそれでいいとして、やはり長期計画を一〇〇%達成するためには、日本の全体的な経済政策の中における海運政策の位置づけというものを企画庁と徹底的に話し合って、合意して、長期計画の中に完全に盛り込ませないと、その達成が困難ではないか。ですから、当面の三十九年度あるいは四十年度——明年度あたりのところは御折衝になっておっても、そういう意味海運政策の位置づけというものについて十分な話し合いが企画庁となされているのかどうか。そうしないと、計画倒れに終わる危険性なしとしない。そういう点はおやりになっていらっしゃいますか、どうでありますか。
  43. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その点にちょっと関連して、同じ問題ですが、先ほどの御答弁によると、積み取り比率が悪くなった原因は、貿易輸出入が非常に伸びたのに海運がそれについていかなかったということにあるのだというような御答弁だったと思うのです。池田内閣は所得倍増長期計画を持っておられる。したがって、その長期計画の前提としては、貿易輸出入とも非常に伸びることを予想をして長期計画を立てておられた。それなのに、海運だけがそれについていけなくて、そこにそごを来たしたということになれば、海運政策が非常に怠慢であった。見通しをあやまったとかなんとかいうようなこと以前の問題として、非常に怠慢であって、何ら方策がなかったということにしかならないと思うんですが、それらの点をどういうふうにお考えですか。
  44. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 私どもといたしましては、海運政策全般につきまして長期計画、池田内閣の経済政策伸びをおよそ予想して海運政策というものを考えておったのでございますが、予想以上に伸びたために、そこの間にそごを来たしたということは、私としてはやむを得なかったと思っているのでございます。そこで、経済企画庁といたしましては、単に海運のみならず、陸運につきましても、あるいは鉄道・自動車運輸等につきましても、今度ひとつアフター・ケアの意味で、急速に伸びたそれに対していろいろな施策を検討いたしまして、さらに結論を出すということでございますからして、その結論に合うようにいたしたいと、私どもといたしましては、予想以上に伸びたということに非常な原因があると思います。そこで、その長期の見通しがつかなかったことは怠慢じゃないかといえば、そのおしかりは甘んじて受けますが、実際問題といたしまして、ほんとうに世界が驚異するような伸びがあったのでございまして、そこまで見通しをつけて海運政策を立てたのではなくて、普通の場合において普通の輸出入の場合のことを想定してやっておったという次第でございます。
  45. 羽生三七

    羽生三七君 それでね、経済企画庁の結論を見てからというのでなしに、経済企画庁に対して運輸省としてどういう程度の話し合いをしているかということを私はお伺いしているわけです。
  46. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) それにつきましては、ただいまの四十三年までには、どうしても赤字を海運についてのみは少なくともとんとんにするような伸びは、さっき申しましたように、船はこれだけ要る、これに対する資金の出し方を考えてくれということについて交渉をいたしているのであります。
  47. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 過去の経済政策見通しを誤って非常に成長をした、それに合わなかったから今後はそれに合わすんだとおっしゃる。しかし、過去の経済政策の上に立てられた実績は、むしろきのうの総理のお話によっても、あやまちだったのだ、過度にむしろ成長し過ぎたのだ、これは直さなければならない、そうしてここでOECDが要求しているように安定的な成長をやらなければならない、こういうふうになっておられるのですね。そうすると、海運政策も、ただ単にいままでの過度の成長に追随をする政策でなくて、新たなる見地に立つ安定的な成長政策でなければならぬと思うんです。その点の照応のしかたはどういうふうにお考えになっておりますか、大臣
  48. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 総理が申しましたように、国全体といたしまして、過去の成長率が非常に予想以上に伸びた、それについての考え方を変えていく時期になっているのではないかという話でございますが、私どもといたしましても、やはりその総理の考えに従いまして、私どもといたしましては、海運政策をそれを基点に、その点を重点にしてこれから検討してまいりたい、かように考えます。
  49. 岡田宗司

    岡田宗司君 ただいま羽生君の御質問に対して外務大臣から、OECDがあまり拘束力のないようなお話があったわけですけれども日本が加盟する場合には、相当のみずから拘束される立場に立って入ったことになるのですが、たとえばアメリカ海運政策OECDの精神にも合わぬし、それからまた、それが加盟国の貿易外取引自由化障害になっておるというような場合に、これはOECD諸国はアメリカに対してOECDとしての勧告はできるのでしょうか、これはどういうものでしょうか。
  50. 中山賀博

    政府委員(中山賀博君) 正式加盟前、若干機会がございまして、委員会にあるいはオブザーバーのようなかっこうで出たものもございますので、その様子を見ておりますと、やはり極端に言えば、全加盟国が賛成して一カ国だけ反対するという場合には、その具体的な措置について一種のモラルなプレッシュアを受けるということは、これは事実でございます。しかし、法律的に申しますと、決定も決議も勧告も全会一致でございますから、ある国が反対すればそれは成立しないという形になります。
  51. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、シップ・アメリカンが加盟国の間で問題になっても、たとえば全会一致でなければ、勧告もできないということになると、アメリカが首を振れば、OECDアメリカのこの政策がたとえ加盟国にいろいろな害を与えても、何ら勧告もできない、こういうことになるのですか。
  52. 中山賀博

    政府委員(中山賀博君) たてまえは勧告も全会一致ということになっております。ただ、海運の問題につきましても、現にOECD海運委員会におきましては、アメリカ海運是正政策を求める討議が続けられておりますし、それからまた、若干のほかの国についても、留保しないで、制限的国内法を設けていることは悪いのだという問題が取り上げられて、たとえば貿易外取引委員会によってこの討議が重ねられております。したがって、法律的にはそういうことでございますけれども、しかし、それが場合によってはかなり大きなプレッシュアになるというふうに考えられるわけでございます。
  53. 岡田宗司

    岡田宗司君 いままではそのプレッシュアはアメリカのほうで感じもしなかったし、そういうものがあっても改めようとしなかった。これからもそういう態度をとり続けるであろうと予想されるのですか。
  54. 中山賀博

    政府委員(中山賀博君) このシップアメリカンの問題に関連して、たとえば海事法の二十一条という規定がございまして、そうして、たとえばこの問題に関連して、たとえば外国所在の文書の提出を求めるというようなこともございましたが、そういう問題についていろいろOECD海運委員会等で検討をして非常に強い線が出てくるということになりますと、アメリカとしてもいろいろやり方を変えて具体的には妥協案を出しているというようなことがございます。もちろん、いま申し上げましたのは、かなりテクニカルな点でございますけれども、全然無関心でおるということじゃなくて、むしろわれわれはそういうものからいうと、今後とも強く努力していきたいと思います。
  55. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうしますと、一体OECDに加盟して海運自由化を要求されるということは原則的にどういうことを要求されたのか、それに対して日本はどういう主張をされたのか、その結果として日本海運における自由化は現状に比較してどういう程度に進むのか、どういう問題がどれだけ留保されたのか、そこいらを詳しく説明を願いたい。
  56. 中山賀博

    政府委員(中山賀博君) このOECDができる際に、海運の問題についてアメリカが全面的な留保をしている。そうして、したがって、いろいろな面でこのOECD諸国、なかんずくヨーロッパ海運国から、ことに北欧の海運国等から強い抗議が出ております。われわれはごく最近から討議に参加しておりますので、最近のこととしては、いま申し上げましたような海事法二十一条関係の事態について具体的な問題に際会したわけでございます。しかし、たとえば先般のアメリカのソ連に対する小麦輸出の場合、シップ・アメリカンの問題その他、事あるごとにヨーロッパ海運国は一緒になってこれに抗議し、日本もこれに参画しているわけでございます。しかし、先ほどから外務大臣もお話しのとおり、強制力がないものですから、何といっても時間をかけて、そうして、これと話し合いを執拗に続けていくという努力しかないわけでございます。したがって、アメリカ留保は依然としてそのままでございますし、今後のむしろ発展に待つという問題だと思います。
  57. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それならば、日本に関して海運自由化というのは原則としてどういうことが要求をされるのか。それに対して日本はどういう主張をされたのか。その結果として日本海運自由化はどの程度行なわれ、どの程度留保がなされるのか。その辺を詳しく伺いたい。
  58. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) それはきのう本委員会でも申し上げましたように、本来はわが国は海運国でございまして、OECD加盟にあたっても留保をつけるなんていうことは本来名誉ではないわけで、そういうことがないことが望ましいのでございますが、海運が戦時中受けた壊滅的な打撃がまだ尾を引いておる段階におきまして、長期用船計画の期間の問題というものを、石油について三年、石炭鉄鉱石について二年という留保を要求いたしたのが、それぞれ二年、一年になったというのが結論になったわけでございます。それで問題は、そういう一年ずつ期間が短縮されたということを、国内における海運政策で克服できる措置がとられたかどうかという点が論議の焦点に衆議院においてもなりましたわけでございまするが、その点は政府海運政策によって克服できるという確信を政府は持っておるということを申し上げたわけです。
  59. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 日本側から留保を要求された期間は五年というふうにわれわれは聞いているのですが、それが違うのかどうか。それから、先ほどのお話によると、アメリカ側は非常にえてかってな留保をしておるのにかかわらず、日本留保というのは非常に弱い。これはOECD加入に際する外交交渉が相手方は非常にきびしいのに反して、日本側が非常に弱腰であるという印象しか受けないのですが、その辺のいきさつはどうなんですか。
  60. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 当初五年くらいどうだろうかという話をいたしたことはございます。しかし、とどのつまり、三年、二年でしようということになりまして、結論は二年、一年になったということでございます。それから、外交的な交渉の態度でございますが、OECDは、先ほど申しましたように、あらゆる経済政策の領域にわたっての討議をやる機関でございまして、海運一つアイテムにすぎませんけれどもアメリカといたしましては、全体としては非常に留保の少ない自由な国なんでございます。たまたま海運について全面留保を行なっておるからアメリカが非常に不自由な国というように見るのも、フェアではないかと思うのでございます。アメリカとしては、海運につきましてOECD加盟にあたりまして、この点だけはなかなか同調できませんという態度をあらかじめ各メンバーに知らしたということなんでございまして、これはアメリカの海巡業の体質から申しまして、容易にこれは克服できない問題と心得ておると思うのでございますが、わが国の場合はそうじゃなくて、むしろ早く自由化に持っていきたい、そうしてそれがわが国の利益なんだということでございまして、本来ならばこういう留保をしないほうがいいと思うのでございますけれども、しかし、いまの段階におきましては、やむを得ずこういう留保をせざるを得なかった。これは私はあまり名誉じゃないと思っております。できるだけ早い機会にこれは克服してまいらなければならない、そういう政策的努力をやってまいって前向きにまいるのが海運国だと思うのであります。アメリカ日本と、海運について同日の談ではないと私は思います。
  61. 羽生三七

    羽生三七君 いまの問題に直接関連はないのですが、経常的貿易外取引自由化に関する規約の第七条に免除条項がありますね。そこで、「経済上及び財政金融上重大な混乱を生じさせる場合には当該自由化措置を撤回することができる。」とありますが、これはいままで、日本は今度新規に加入するわけですが、いままでの加盟国の中にそういう障害のためにこの自由化の約束を撤回したような事例はあるかどうか。
  62. 中山賀博

    政府委員(中山賀博君) 規定はこのとおりでございますが、事例はないと聞いております。
  63. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それじゃ運輸大臣にお尋ねしますが、いまの外務大臣の御答弁だと、日本では海運政策はそうたいして自由化留保を重要に考えていないというような御答弁だったように思うのですが、海運の重要性、特に貿易収支に占める地位からいえばアメリカに比較にならないくらい日本海運は重要だと思うのですね。したがって、海運の振興五カ年計画等ができているのだと思うのです。そこでやはり私は海運自由化留保の問題はアメリカにおけるよりも日本のほうがはるかに重要な問題であると私たちは考えるのです。これは運輸大臣はどうお考えになるか。特に海運振興五カ年計画とこの自由化留保の問題とがどう諧調しているか。ちっともそれに足並みをそろえていない。非常にその点はちぐはぐになってしまっておる感じしか受けないのですが、それをどうお考えになりますか。
  64. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 私どもといたしましては、日本並びにヨーロッパの諸国は、元来が海運は自由であるべきだという原則に立っておるのでございまして、それが政策としてもいいんだと、かように考えておりますが、たまたま海運の再建五カ年計画の途上にちょうど加盟が当たりましたので、それを克服できるならば、本来の姿である自由の原則に返るべきである。かように考えまして、そのどちらが国策として、またこの留保条項がいれられない場合の不利と、入って対等に、大体ヨーロッパ海運自由の方針のようでございますから、その政策的といいますか、国策的基盤を得まして、金をかけるならば、すなわち自由化が促進されるために海運がこうむる被害を財政上の諸政策でカバーできるような施策を日本政府がとるならば、そのほうはやむを得ぬとして、本来の姿であるべき海運自由化に踏み切るのがよりよいと考えて、今回のOECD加盟に踏み切ることに私は同意いたしたのであります。
  65. 羽生三七

    羽生三七君 ちょっと一つだけ。外務大臣のさっきの佐多君に対する御答弁で、日本海運自由化をやったほうが得策だと思うが、やむを得ず一、二留保したとおっしゃったが、得策である客観的事情が私にはよくのみ込めなかったのですが、それはどういうことでしょうか。
  66. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 留保していろいろ保護を受けて歩く産業ではないと思うのであります。本来、これは世界にすぐれた競争力を持った海運事業なんでございますから、早く昔の栄光  を取り戻したい。そのほうがいいという考えであります。
  67. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 運輸大臣がお時間がございませんから、ちょっと曾祢委員
  68. 曾禰益

    ○曾祢益君 何といいましても、海運再建整備の五カ年計画で、まあ、少なくとも対外的に太刀打ちができる程度にやりたい。自由化に備えてですね。それが非常にOECD加盟によって長期用船計画についても二年、一年、石油関係に二年、ほかのバルキー関係は一年と非常に縮められた。しかし、基本的にはそういう障害を乗り越えても自由化のほうに踏み切るということは一応わかるのですけれども、タイム・テーブルがひっくり返ったような関係で、相当思い切った抜本的施策が要ると思うのです。それで一体どういうだけの、五カ年でやるべきものを直ちにもうやらなければならない。あるいは二年、一年の間に少なくともやらなければならない、このタイム・テーブルが早くなったのに即応した態勢については十分な心がまえができておるかどうか、これをまず伺います。
  69. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) そのことにつきましては、三十九年度にいわゆる海運の予算その他につきまして政府が非常に熱意を示されまして、どうしてもOECD加盟によってこうむる不利益をカバーするだけの措置をとっていただきまして、御承知のように、あるいは海運力をつける、強化するために、利子の引き下げ、それから、財政融資のワクの拡大、あらゆる日本政府としてやり得る最大の施策を私どもといたしましては実行していただいて今日に至っておるので、いまそれが着々と進んでおりますから、私は御心配のようなことはないと考えております。
  70. 曾禰益

    ○曾祢益君 まあ、初年度の三十九年度の予算の措置はできたわけですが、これで十分とはむろん思っておられないと思うのです。ここ両三年の、長期計画ではなくても、短期計画についての準備ができているのかどうか。政府政策としてはまだそこまで決定していないと思うのですが、どうなんですか。
  71. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 私のほうといたしましては、先ほど事務当局が申しましたように、四十三年度海運政策をとんとんにすべく諸施策を遂行してまいりまして、遺憾ないようにいたしてまいりたいと思っております。その具体的な年度計画等につきましては、先ほど申しましたように、経済企画庁といかにアフター・ケアをやるかということをいま検討中でございまして、それができ次第に、それに合わせて年次計画を定めまして、千三百五十万トンをどうしても四十三年までに実現いたしたいと考えて努力し、大蔵当局並びに経済企画庁とその話を進めております。
  72. 曾禰益

    ○曾祢益君 その四十三年度までの長期計画というのは千三百五十万トンで、これで結局積み取り比率がどのくらいになるか別として、少なくとも海運の赤字が解消できるというふうに先ほど言われたと思うのですけれども、私はそこはちょっと受け取れないと思うのです。たとえば、ポート・チャージのことを考えても、きのうも経済企画庁長官が率直に述べておるように、これは大蔵当局でもおわかりでしょうけれども、一人前に持っていくために一千三百五十万トンは必要だ、所得倍増計画に伴う船腹としてはそれくらい要ると。しかし、そのことが海運収入全部の赤字の解消にはむろんならないので、用船料のほうはなくとも、ポート・チャージを考えれば、相当のまだ赤字が残ると、こういうことじゃないかと思うのです。ですから、短期的に見ると、長期用船計画でほんとうは五年留保したかったやつを二年、一年となった。そいつに対する当面の施策はどうなのか。それから、四十三年度までに千三百五十万トンを持つ対策はどうなるのか。それから、海運に関して少なくとも赤字を解消するのにはどのくらいの計画が要るのか。まあ、しろうと的に見て三段階になりはせぬかと思うのです。それらの点を御説明をほしいのです。で、百五十万トンについてもまだいまのところは全く描けるもちだと思うのです、実際。それから、きのう総理大臣は、むしろ正直に海運関係赤字の解消には実際十年ぐらい要るだろうと言っているのです。私はむしろそのほうが真実に近いのではないか。だから、そういう点を含めてもう少し正確なといいますか、段階的な、期間的な御計画をお示し願いたい。
  73. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 私が海運政策の赤字と申しますのは、運賃面について申し上げているのでございまして、全体の赤字を克服するためには、総理の言われたように十年ぐらいはかかるかもわかりません。というのは、国全体の貿易と見合いまして、どうしても日本の置かれておる現状におきましては、輸出をふやして輸入を減らしていく以外に根本的な方策はございませんから、それに見合うように海運もやっていきたいと、かように考えております。
  74. 曾禰益

    ○曾祢益君 それから、シップ・アメリカンに別に対抗するわけでなくて、シップ・アメリカンみたいなのはむしろOECDの場でやめさせるようにすべきだと思うのですけれども日本政府管掌の輸入、まあ食管会計の輸入みたいなものについては、もっとシップ・ジャパニーズということはできないですか。むろんこれは経済的に業者関係に不利な条件でシップ・ジャパニーズということは言えないでしょうけれども、同じ条件ならシップ・ジャパニーズをもっと励行することは考えられないのかどうか。
  75. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) それにつきましては、私どもも強く農林当局に要望いたしまして、海運といたしましては、その船が、いままで余っておる船というものは、もう使用にたえないと申しますか、老朽船化しておる不経済船を、タンカーをカーゴーに直す計画をやりまして、それができるならば、できるときにはそれをやってもらいたいということを要望いたしまして、それは大体農林省でもそういうことができるならば考慮するということになっておるのでございますが、おそらくは、まず一隻だけは改造の途中でございますから、改造ができればそういう曾祢委員の指示する方向に行きたいと、かように考えております。
  76. 曾禰益

    ○曾祢益君 最後にもう一つ。この自国船の船腹を増強しなければならない。これはもう至上命令だと思うのですが、ただ、この間ちょっと新聞等に、全般的に見て世界船腹にも相当過剰な傾向もあるし、むしろ外国船を安くチャーターしたほうがいいのじゃないかという意見が、政府の部内ですか、あるいは業界ですか知りませんが、あるやに聞いておる。私はその点に関して非常に疑問を持つのです。非常に短見的な考えじゃないかと思うのですけれども、それらについての運輸大臣のお考えを伺いたいと思います。
  77. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) それは目先の利益はそうかもわかりませんが、国全体としては、どうしても日本の船を使ってもらうように行政指導をしていきたい。これにつきましては、何といたしましても、民間の貿易業者、財界、すべての人の協力を得なければ、日本の船を使うというようなことに持っていくに非常に支障がありますので、経団連その他民間の団体に外貨収支の改善について協力を求めておりまして、ほぼ目的が達せられるようになりつつあるというのが現状でございます。
  78. 岡田宗司

    岡田宗司君 四十三年に千三百五千万トン持つと、そうすると輸出については六一形、輸入については七二%の邦船積み取り比率になるというのがまあ見通しなんですが、三十九年におきましては、だんだんだんだん下がってきておりまして、四四形と四八・九%、そうして運賃のマイナスが一億六千六百万ドルですね。で、おそらく本年の計画が、いまあなたの言われたように、増強されましても、四十年度について私はこのマイナスが一億六千六百万ドルより減るとは思われないのです。あなた四十三年にはとんとんになるとかいうように言われているのですが、これから、三十九年度から四十三年にどのくらい運賃のマイナスが減っていくのか。それは大体の試算ができておるでしょうから、それに見合った計画の概略をお立てになっておるでしょう。それを示していただいて、はたしてそれがほんとうに可能なのかどうか、検討してみたいと思います。
  79. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) 三十九年度見通しは、これは経済企画庁が三十九年度経済全般輸出入見通しを立てましたので、それに対応いたしまして、現有船腹から積み取り比率輸出四四、輸入四九、為替収支運賃面の赤字が一億六千六百万ドルという試算を、見通しを立てたわけでございます。四十年度につきましては、経済企画庁貿易量の推定が出ておらないわけでございます。それで、私のほうといたしましても、積み取り比率、あるいは為替収支運賃面の赤という推算はまだいたしておりませんが、三十九年度に、大臣が先ほど申されましたように、百万総トンをこえます計画造船を実施いたしますと、それが四十年度に進行いたしてまいりますので、積み取り比率もはるかに向上いたしますし、運賃面の赤字も減少することは確実でございます。
  80. 岡田宗司

    岡田宗司君 四十三年にはとんとんになるとか赤字なくなると運輸大臣言われたのですけれども、何も根拠ないじゃないですか、どうですか。
  81. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) これは四十三年の貿易見通しにつきましては、先ほど大臣が言われましたように、中期計画が立たなければ、ほんとうは四十三年にどれだけの貿易量があるという政府としての見通しは立たないわけでございますが、これは運輸省試算でございまして、これは——先ほど大臣が言われましたように、経団連に運輸省から依頼いたしまして、一番大きな輸入のソースでございます石油連盟と、それから鉄鉱石石炭につきましての長期計画を——これは事業者団体でございます——そっちのほうに依頼いたしまして、四十二年度、三年度貿易量をこれは運輸省として試算いたしたわけでございます。それに基づきまして、運輸省で、百五十万トン程度ずつつくれば四十三年度において運賃収支がバランスをする、こういう試算を行なったわけでございます。でございますから、これは政府全体の試算ではございませんで、運輸省経済団体連合会と実際の業者のほうの見通しに基づいて立てた貿易量によりまして推算を行なったものでございます。
  82. 岡田宗司

    岡田宗司君 いまの運輸大臣のどうも約束というのか、見通しというのはたいへん甘いので、きのう総理大臣あるいはまた特に経済企画庁長官から私どもが伺ったのによりますというと、やはりどうもこの海運収支というものは構造的な赤字の一番大きな原因になっておるというので、これに対しては相当力を入れていかなければならぬ——あなたのような楽観的な考え方ではないのですね。どうもあなたいままでは楽観的な考え方をお持ちになっていたのか、あるいはそうでなかったのか知りませんけれども、このOECDに入って、そして海運自由化よろしいというので踏み切られ、そして、しかも一面においては、あわ食ってどろなわ式のいろいろの施策をおとりになる。それまでには十分の計画はおやりにならなかった。そこで今度入って、私どもが危倶を感じていろいろ御質問申し上げるというと、四十三年までにはこれは解消できるのだと、あまり根拠のないような、政府としてはっきりした根拠を立てておらない見道しを述べられた。これでは、今度のOECD加盟について一番大きな問題になっておる海運収支の問題についての責任者として、どうもあまり責任を持っておられるような態度でないと思うのです。しかし、この点については、最も重大な問題だと思いますので、慎重な検討と、そうして急速なる措置を私どもは要望したいと思います。
  83. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) それでは、これから大橋労働大臣に対する質疑を行ないます。
  84. 岡田宗司

    岡田宗司君 大橋労働大臣にお伺いいたします。  今度OECDに入りますと、OECDにはTUAC——労働組合諮問委員会というものがありまして、そして、あそこには大体国際自由労連、国際キリスト教労働連盟ですか、それの代表者等がたくさん各国の有力な指導者等が入っておるはずです。これは諮問委員会ではありますけれどもOECDではかなりの発言権を持っておるものと思うのですが、このTUACについて労働大臣はどういうふうにお考えになっておるのか。その意義、役割り等をどうお考えになっておるのか。
  85. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) TUACはOECDの組織外の、労働組合の連合体のごときものでございますが、しかしながら、OECDといたしましては、諸般の政策の討議に際しましては、常にTUACに相談をするというようなことをやっております。さような意味におきまして、TUACがOECDにおいて占めている地位というものはきわめて重要なものであると考えておる次第でございます。このたびわが国がOECDに加盟するにあたりましても、わが国の労働組合がこのTUACに加盟するということは、各国の実情等から見て、きわめて日本の労働行政の立場から見ましても望ましいことだと考えておるのであります。しかし、この加盟は、労働組合とTUACとの間において決定されるべき問題でございまするので、政府といたしましては、積極的に日本の労働組合に加入を慫慂したり、あるいはまた、TUACに対して日本の労働組合を加入せしめることを依頼したり、そういうことをいたす立場にはないのでございます。
  86. 岡田宗司

    岡田宗司君 OECDになぜこの諮問委員会が設けられたか、これはOECD一つの目的である加盟諸国の国民の生活水準の向上という問題と非常に大きな関連がある。また、あるいは経済の発展、あるいは貿易増加という面とも関係がある。そういう点で、やはり労働者階級を重く見、それからまた、その労働者階級を組織して経済上大きな役割りを演じている労働組合というものの機能を重視して、こういうものを設けたと思うのです。そうして、TUACというものが、これはそういうような諮問委員会でありますけれども、そういうようないろいろな相談を受ける。あるいは建議をする。勧告をする。そういうような委員会としていくといたしますと、今度加盟国の内部における労働者の地位の問題、あるいは労働者のいろいろな条件の問題、そういうような問題について、やはり論議もし、勧告もするということになろうと思うのですけれども、TUACはそういう役割りをするものではないか、その役割り等について詳細に御説明を承りたい。
  87. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 政府委員から申し上ます。
  88. 和田勝美

    政府委員(和田勝美君) 私からお答えを申し上げますTUACは、OECDがまだOEECといいましたころに、労働組合の立場をOEECに反映させるために労働組合が独自につくりました機関でございまして、このOEECが改組によってOECDになりましたときに、OEEC当時にできましたこのいわゆるTUACを、OECDとしては加盟国の大多数の労働組合を代表するものとして、OECDに対する助言あるいは勧告、こういうものをする機関として承諾することになったようでございまして、一九六二年三月の理事会でその決定をいたしております。そのOECD理事会の決定を見ますると、経済一般、または特定の分野において広い責任を持っておるOECD加盟国のすべて、または大多数の国における民間の利益を広く代表しておる、こういうものをOECDの諮問機関にすることにいたしておりますか、それにこのTUADが該当をすることと決定をしたわけでございます。  この構成は、岡田先生先ほど御質問にありましたように、ほとんどICFTU及び国際キリスト教労働組合のものがほとんどのメンバーでございまして、OECD加盟国の大多数を包含しておる機関でございます。  で、OECDとの協議の方法につきましては、このTUACがみずからOECDに要請をして協議いたします場合と、OECDの事務総長のほうのイニシアチブによります会議が開かれましてOECDとこの機関とが協議をする、意見の交換を行なう。そのためにOECDにはこの協議のために連絡委員会——リエイソン・コミッティーが設けられておるようなわけでございます。  で、活動状況といたしましては、いままで平均をとりますと九カ月に一回ぐらいの割合でOECDと会議を開催いたしておりますが、それ以外には、それぞれ正式の会議ということでなくても、意思の疎通を行なっておるようであります。現在までの議題としましては、経済成長と物価問題あるいは開発援助、それから造船問題、こういうようなことについて話し合いが行なわれているというように承知をいたしております。
  89. 岡田宗司

    岡田宗司君 このICFTUとIFCTUがまあ母体のようなかっこうになっておるわけですが、これらの労働組合は前々からEECの中でも、あるいはガットの中でも、OECDの中におきましても、いろんな発言をしておるわけです。たとえば、貿易の発展に賛成だという声明をしたり、あるいは、貿易自由化の諸措置を支持してきているんですが、しかし、自由化の進展に伴って労働者の利益を守ることに重大関心を抱いていると同時に、国際貿易発展のための措置として公正な労働基準に関する規定を設けろというようなことも提案をしている。この基準の前提条件として、結社の自由あるいは団体交渉権の自由と最低賃金というものを取り上げておるんですけれども、いずれOECDの内部におきましてもこういうことがやはり強く要求されることになってくるでありましょう。もちろん、二十カ国のうちにおきまして、その多くの国々は相当、こういうような問題についてかなり高い立場にあるわけであります。もちろん、スペインとかポルトガルとかいうような国は別でありますけれども。そういうふうなOECD日本が参加したといたしますれば、こういう問題について日本がやはりいろいろと先進国並みになるように要求されることはこれは必至だと思うんです。この点、OECDのもとにあるTUADが、もし日本OECDに参加した場合に、そちらのほうから日本に、やはり諸条件を先進国並みにせよという要求があるというふうにお考えになっておりますか、どうか。
  90. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 要求の形で来るかどうかは別といたしまして、OECD加入ということによりまして、日本の労働基準を国際基準に近づけるように、諸般の情勢上要請されることは、間違いないと思っております。
  91. 岡田宗司

    岡田宗司君 この日本OECD加盟が問題になりましてから、やはり国際自由労連等におきましても、日本の労働問題について非常に関心を持ってきております。昨年の七月の二十九日に、ICFTUのベター書記長が、ILO八十七号条約の批准をめぐっての声明の中で、OECDへの日本の加盟の問題に触れて、基本的な国際労働法規を無視する国の加盟は許されないというふうな発言をしているわけであります。もちろん、これが日本OECD加盟を妨害するとか、あるいはこれが日本の加盟を阻止するようなことにはならぬかもしれないけれども、一部からこういうような発言がなされているということは、これは重大な問題だと思うのであります。ILO八十七号条約の問題につきましては特別委員会もでき、まあ、今国会中に政府のほうとしても解決をする方針で臨んでおられるようでありますけれども、しかし、いままでのいきさつから考えまして、なおわれわれとしては、はたしてどうなるのかということも考えられますし、そういうような場合には、ILOのほうからの調査団が日本に来るというまことにみっともないことにもなるので、心配しているわけでありますが、少なくともOECD日本が入るということでありましたならば、やはりその心がまえというか、入るための姿勢として、当然こういうものはもっと早く批准されておってよかったのではないかと思うのですが、大橋労働大臣、その点、どうお考えになりますか。
  92. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) この点は全く同感でございます。さればこそ、歴代内閣といたしましても、つとに八十七号条約の批准につきましては方針を決定いたしまして、毎回の国会に案件を提案をいたしておったような次第でございまするが、不幸にして今日まで審議未了に終わってまいっている次第ごでざいまして、このたびの国会の提案にあたりましては、池田内閣といたしましては、今国会は八十七号条約を批准すべき最後の機会であるというかたい信念で、ぜひとも成立させたいという強い意欲を持って国会にお願いを申し上げている次第でございます。
  93. 岡田宗司

    岡田宗司君 私どももぜひ今回これが成立することが粟ましいと思っているわけですが、ただ成立すればいいのだと、国内法をいろいろ改悪して、そうして実質的には骨抜きにしちまうのだというようなことでは、われわれ承知できないわけでありますから、何とかこのいわゆる倉石修正案の線に沿うてわれわれはまとまることを期待しているわけでありますけれども労働大臣もそこいらの線でまとまることを努力される方針ですか。
  94. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 労働大臣も原案を提出いたしておりまする政府の一員でございまするので、終局においていかなる形で成立いたしまするか、これは国会の御審議の結果によるものでございまするが、御審議の始まらない現在の段階で、修正して通すというようなことを申し上げるわけにはまいりません。
  95. 岡田宗司

    岡田宗司君 しかし、修正案がリーズナブルなものであって、そうして多数がそれをまあよろしかろうということになれば、労働大臣としてもその修正に応じて、そうしてできるだけすみやかに通す、こういうつもりはおありなんでしょうな。
  96. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) もとより国会の御審議をいただきまする以上は、国会の多数の御意向として、修正を避けられないという場合におきましては、その御方針協力いたす考えでございます。
  97. 森元治郎

    ○森元治郎君 ちょっと関連して。この間ILOの本部から実情調査委員の派遣をする、これに対して日本政府は回答をした。けっこうです。それから向こうからまた、それを受け取ったことについて返事が来ておるわけですね。その内容はどんなものですかな。ということは、いま労働大臣がおっしゃったように、池田内閣としてはこれが最後の機会であるというかたい決心を持って臨んでおりますということが回答のしまいのほうにくっついているのか、ただ、来たいというならいらっしゃいというのか、そこを聞きたいわけです。
  98. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 実情調査のための委員の派遣の御意思、ILOの意向は受諾するという趣旨のものでございまして、これは五月五日にILOのほうで、これはILOが派遣するものでございますから、ILOのほうで発表するそうです。
  99. 森元治郎

    ○森元治郎君 その往復文書をILOのほうから発表すると、こういうのですか。文書の全文を、たいへんなむずかしい問題じゃないから、それをちょっと読んでみたらどうですか。
  100. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま電報が入りまして——私、伺ったのは、五月五日に向こうが発表したいということであったようですか、いま電報が入りまして、できるだけ早く発表したい、今明日でも発表したいということで、いま電報が来ているようでございます。これは日本が調査団を受け入れるという態度をきめたという趣旨のものと承知しております。
  101. 森元治郎

    ○森元治郎君 非常な事務的な、一行で済んでしまうものなんですか。こういう問題は長年の話で、四年かけ、十四回も勧告を受けているわけだから、拝啓陳者云々という例の書き出しから始まって、少しは色をつけた決心が当然入っているはずなんだが、往復文書は町方の気組みというものを見せて。これは大事なものなので発表できないものなんですか、むずかしいものじゃないと思うのですが。
  102. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 非常に簡潔有効なものと思います。
  103. 森元治郎

    ○森元治郎君 簡潔有効なものなら、これは非常にみんなが期待しているのであるから、「今国会では片づけてしまう最後の機会と信ずる」というのなら、そのことが回答に盛られていることと思う。したがって、これらの往復文書を簡単に読み上げてみたらどうですか。
  104. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 受諾するということでございます。
  105. 森元治郎

    ○森元治郎君 今度はILOの、これを受理したほうの返事はどういうふうになっていますか。
  106. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いや、日本政府が受諾したということを発表しただけです。
  107. 岡田宗司

    岡田宗司君 労働大臣にお伺いいたします。このOECDに加盟している国は、ILOの諸条約、いま百幾つありますか、百十八ありますか、このILOの諸条約をずいぶん批准をしている国が多いのです。まあ、アメリカ、カナダは批准が非常に少ないのですけれども、これはそれぞれ国内法で批准をしたと同じような相当、かなり高度の措置をとっているわけです。日本はいま二十四ですか、非常に少ないと思うのです。フランスなんか七十ぐらい、オランダが四十八とか、ノルウェーが四十八とか、スペインのような国でさえ四十六やっているわけです。日本より少ないと思われるのは、トルコとかポルトガルとかいう国なんでありますけれども、やはり先進国並みになるのだというつもりでOECDに加盟されるということにもなりますれば、こういう点ももう少し先進国並みにしたらどうかと思うのですがね。やっぱり国内事情がいろいろあって、OECDに入ってもILO諸条約の批准はそう簡単にはいかないのだというふうにお考えになっておるのですか。
  108. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) OECDに加盟いたしますると、先ほど申し上げましたるごとく、諸般の客観情勢は、日本の労働基準を国際基準に近づけるよう努力することが要請される、かようにまず認識をいたしております。この認識の上に立ちまして考えまするというと、少なくともILO諸条約の中の主要条約と認められます、たとえば第一号条約、第二十六号条約、第八十七号条約、第九十八号条約、第百二号条約、第百五号条約、こういった条約は、これは国際水準から考えまして、批准するといなとは別にして、少なくとも日本の国内の状況がこの条約の要請するような点にまで引き上げられるということが最小限度必要であろう、こういうふうに思っておるわけなのでございます。したがいまして、労働省といたしましても、一昨年以来、これらの条約を批准するか、あるいはこれらの条約の要求しておりまする水準を国内において実現するような国内法上の措置をとることを急いでおるわけでございまして、すでに一号条約につきましては、一号条約の批准の成否は別といたしまして、少なくとも欧州並みの労働時間を目標として国内の状況を整備したい。これにつきましては、すでに労使間において、それがためにはいかなる段階的な方法を採用することが適当であるか、できるだけすみやかに実現するために、いかなる階段的な段取りを採用することが適当かということにつきまして、実際的に討議を開始してもらっておるところであります。それから第二十六号条約、最低賃金の問題でございまするが、これにつきましては、国内のいろいろな状況もございまするので、これも二、三年うちに外国の水準にのっとり得るような準備的措置を目下労使間の話し合いによって決定いたしまして、その方向に進みつつございます。八十七号条約については、すでに今回は提案したわけでございます。  それから百二号条約、これは社会保障の最低基準の条約でございます。これはあと一歩というところでございまするので、この点も厚生省と相談しながら事務的な準側を進めておる状態でございます。  それから百五号条約、強制労働の廃止の条約でございますが、この点につきましては、批准の方針をもって事務的に検討を進めてまいっておりまするうちに、ILO自体が具体的解釈を明らかにしてくださる必要を認めるにいたりました。その点につきまして、目下ILOの具体的解釈が明らかになるのを待って、国内の措置を検討したいという状況でございます。  以上のようでございまして、いずれもこれらの重要な条約を批准いたしまするには数年間の準備期間が必要であると存じますので、すでに具体的な準備には着手をいたしておられるような状況でございまして、この点についての政府の考え方をこれによって御理解いただきたいと存じます。
  109. 岡田宗司

    岡田宗司君 ただいま労働大臣のほうから示されました方針は、私どももできるだけ早くそれをやっていただきたい、こういうふうに思うわけでありますが、特に一号条約のごときはとっくに批准されてなければならないはずのものだったと思うのです。もちろん週四十時間労働というようなことは、これは日本の場合そう急速に実現することは困難でありましょう。少なくとも第一号条約を批准することは、そうちゅうちょする必要のないことだろうと思う。私はそれはすみやかになされなければならぬと思うのです。それからまた、実際にいまヨーロッパ並みのと言われましたけれども、実労働時間をずっと比べて見ますというと、やはりヨーロッパの諸国に比べまして、日本は長いようであります。日本は、私の調べたものによりますというと、四十九・二時間になっておるのでありますけれども、まずヨーロッパの他の国におきましては、たいてい四十四・五、六時間、短いのは四十二・八時間とか四十二・六時間というふうになっておりまして、相当な開きが出ておるわけであります。だから、私はこれからの点はまず早くやっていただかなければならぬ問題であると思いますし、特に二十六号につきましては、これは最低賃金の問題はいろいろ問題がございましょうけれども、しかし、もうその機は熟しているのじゃないかというふうにも考えられますので、これまた急いでいただきたいし、それから百五号につきましては、いまお話がございましたけれども、これは八十七号あるいは九十八号との関係のある問題で、これまたやはり相当な国がもうすでに批准をしておるのでございまして、日本がちゅうちょすべき事態にもないと思う。数年の準備期間ということでなく、もしOECDに入って、そして池田さんの言うように、ヨーロッパ並みあるいはまた大国であるということでありますなら、それだけのことはやはりしていただかなければならぬと思うのですが、いかがでしょう。
  110. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 御趣旨はまことに同感でございます。しかし、何ぶんわが国の労働条件が非常に国内の事情に即応してヨーロッパと相当の隔たりがあるのでございまするので、国内産業労働界の諸条件をやはり新しい基準に適合するように準備をいたすというのに相当の期間がかかるわけでございまして、私が先ほど申し上げました一号条約——労働時間などにいたしましても、週の労働時間数にいたしまして日本の労働時間が五十時間というような状況、これを四十八時間の制限を厳格に守るということになりますと、多少、少なくとも四十六、七時間くらいまで縮まっていくべきものじゃないかと思いますが、それにつきましては、かなり国内で努力が必要じゃないか。で、どういう努力をする、それにはどれくらいの猶予期間が要るかというようなこと自体をやはり労使の間で話し合って決定してもらいたい、こういうふうに段取りを考えておるわけでございまして、最小限度三年、場合によれば五年くらいの計画でかからなければ、ちょっといまの日本の産業界として直ちに受け入れる準備がないのじゃないか。昨年あたりから積極的に指導はいたしてきておりますが、近く労使間で具体的な日程について協議をしてもらおうと思っておるわけでございます。  それから最低賃金の問題につきましては、すでに昨年の暮れ、三年計画で新しい制度の再検討をしようということにはっきりいたしておりまするので、これは三年以内に大体批准可能な状況にまで進み得ると思っております。
  111. 岡田宗司

    岡田宗司君 いまのお話で、私どもどうもまだ時間がかかり過ぎるように思う。OECDに入るときはえらい急いで入り、先進国だ先進国だと言っておりながら、四十八時間労働を実際に行なうについてまだこれから五年もかかるのだというようなことじゃ、少し政府の努力も足りないし、労働者階級をやはり軽く見ているのじゃないかというふうな考え方もするわけですし、もしそういうようなことですと、やはりこれまたEECあたりで問題にならぬとも限らないと思うのです。これらは、私どもとしてはもっと時間を縮めて実現に努力していただきたいと思うのです。  それから、OECDに入りまして、だんだん労働条件が国際基準に近くなるということになりますと、この賃金の問題ですが、これは総評あたりではヨーロッパ並みの賃金というふうに言っております。最近賃金は上昇の傾向にあるわけであります。しかし、まだ何といっても、ヨーロッパのこれらの国、これらの先進国の賃金等と比較をいたしますというと低いわけでありますけれども、あるいはまた社会保障の面についても劣つているわけでありますけれども、この賃金についてこれだけの開きがあるということは、やはり今後幾多の問題がそこから起こってくるだろう。昔のようなソシアル・ダンピングというなにはないにいたしましても、なおかつ、たとえば、EEC諸国が対日輸入規制というようなことを考える底にはそういうものがある。あるいはまた、アメリカ日本品の規制の際にやはりその問題を持ち出しておるわけですが、これらの点について労働大臣はどういうふうにお考えになり、また、どういうふうにこの日本の賃金水準を引き上げていく問題についてお考えになっておるか、その所見を承りたい。
  112. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 賃金の問題につきましては、一昨年だいぶ日本の賃金が国際的に注目された時期がございます。そのきっかけをなしましたのは、一昨々年における日米経済閣僚会議において、日本の一部商業の賃金の調査をアメリカ側が要望したというのがきっかけであったのでございまするが、その後、日本の国内におきまして自発的に賃金を調査いたしまして、その結果を池田総理大臣ヨーロッパへ行かれました際に各国にパンフレットを配付いたしまして、だいぶ日本の賃金についての認識を改めていただく機会を得たと思うのでございます。政府といたしましては、賃金の水準がいかになっておるかということにつきましては、現在の経済政策が進められてまいりまする限り、新たなる労働需要は非常に毎年大きく興ってまいりまするので、労働力の需給関係から考えまして、なおここ数年の間は相当な賃金の上昇が避けようとしても避け得られない情勢であるという判断をいたしておるのでございます。むしろ逆に、中小企業あるいは農林業等における生産性の低い産業をかかえておりまする日本の産業界全体といたしましては、賃金全体のベース・アップが労働生産性の上昇を上回るようになりはしないかということを心配いたしておる向きもあるのでございますが、しかし、労働省といたしましては、賃金というものが自由経済のもとにおいて労使の話し合いによって決定される事柄でございまするから、特にこれに対して政府の立場からのベースについての介入ということは現在の経済政策のあり方として当然避けるべきものだと、こういうふうに思っておるわけでございます。しかし、いずれにせよ、ヨーロッパの賃金上昇率に比べますると、日本の上昇率ははるかに大幅でございまするので、間もなく追いつくというような、また、その時期もそう遠くないと思っておるような状況でございます。
  113. 岡田宗司

    岡田宗司君 先ほど最低賃金制の問題について、いろいろ事情があって、そして三年くらいの準備期間を要すると言われたのですが、このいろんな事情ですね、最低賃金制の制定、そしてまた、この条約の批准、これをはばんでいる一番大きな理由はどこにあるとお考えになっておるわけですか。
  114. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 最低賃金に関しまするILO条約は、最低賃金の決定にあたっては労使対等の立場でこれに参画するようにというようなことに相なっておるわけでございます。ところが、御承知のとおり、現在の日本の最低賃金法は業者間協定の方式と、それから、行政庁の職権による方式と、労働組合を主体といたしました労働協約による方式と、三つの方式がございまして、制定当時の経緯から見まして、業者間協定をたてまえとするという運用に相なっておったのでございます。これでは、ILOの労使対等の立場で採用せしむるという趣旨に照らしまして、どうもILOの要求する水準に適合しないことは明白でございます。そこで、どうしても現行法を改正する必要があるわけでございますが、現行法を改正しようということに相なりますると、業者間協定の方式を乗り越えまして、どうしても職権協定の方式で統一的にやっていくというのが少なくともたたまえにならなければならないわけでございますが、その際において、現在労働界の一部で主張しておられまする全国一律の最低賃金という考え方がまだ十分検討されておりません。これに対しましては、職権方式による場合においても、全国一律ではなく、地方的な、あるいは業種別的な例外が必要じゃないかという強い反対論もあるわけでございまして、これについては、現在の段階でいろいろ論議をいたしてみましても、それは机上の論議にとどまることになりそうな状況でございます。実効ある論議を進めていただくということになりますと、少なくとも全国的に相当広範な業種を通じまして最低賃金が現実に定められておるということが必要で、現実の賃金をながめれば、全国一律方式でいけるものか、あるいは若干の例外を認めざるを得ないか、例外とすればいかなる事項を例外とすべきか、あるいはまた、逆に例外を原則とすべきか、すなわち業種別、地域別を含めた最低賃金をたてまえとしていくという逆の考え方が正しいか、やはりこれらは労使間で意見が対立をいたしておりまするので、私といたしましては、現実にでき上がった最低賃金によってどちらが日本の実情に適合するかということを話し合いできめてもらうという以外に、円満なる解決策はないと判断をいたしておるわけでございます。それには、やはり三年くらいの猶予期間をいただきませんと、最終的な方式を決定するだけの材料が整わない、こういう意味で三年ということをお願いいたしたわけでございます。
  115. 岡田宗司

    岡田宗司君 最後に、TUACに日本の労働組合が代表を送るということは、私は必ず起こってくるだろうと思うのです。で、先ほど政府は中立的態度というか、進みもしなければ阻止もしないという態度を表明されたわけでありますけれども、もしTUACと日本の主たる労働組合との間に話が行なわれまして、そしてその代表が参加するという場合には政府としては便宜をはかる、こういうおつもりですか。
  116. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) そのこと自体、最初に申し上げましたごとく、政府としても歓迎すべき事態だと思っておりまするので、さような場合にはできるだけの協力をいたしたいと思います。
  117. 曾禰益

    ○曾祢益君 いま岡田委員から質問のあった労働組合諮問委員会のことですが、これは公の答弁としては、政府が特に労働組合にすすめるとかということは慎しむと、これはまあわかります。加えて、自由労連への加盟問題をめぐっての日本労働組合の中におけるいろいろな従来のいきさつもあるし、最近は一つの方向が出たようで、私はけっこうだと思うのですけれども、こういう点からも、慎重な発言をされるのは私はこれはわかります。しかし、これは外務大臣にも特にお考え願いたいと思うのですけれども、やっぱりヨーロッパにおける新しい国際的ないろいろな機構において、政府だけの問題ではなくて、やはりそういう国際的な新しい国際協力機構の中における労働者というか、労働組合の役割りと地位というものは非常に高いですね。むろん、日本が従来加わっておったILOみたいな、これはまあ労働関係ですから、労、使、政府と、この三位一体の特別な組織になっておりましたけれども、それ以外の、特に経済協力の機構等における労働者並びに労働組合の地位というものは非常に高いわけですね。私は、今度OECD日本が加わって、それでこの国際機関が新たにできる場合に、やはりいわば三位一体的に、むろんこの経営団体の諮問委員会もあるでしょう。これはむろんあってけっこうです。特に日本から見て非常に重点と認められるのは、こういう国際協力機構、特に先進国が多い国際協力機構に労働組合の代表が積極的に加わっていって、そうして、経済成長、あるいは雇用の問題等についての発言もし、またこちらも勉強すると、こういう機会を持つということは、国の政策として私は非常に新しい行き方として、重点を置いて大いに歓迎奨励すべきだと思うのですよ。ことにこの資料によっても、日本の経営者団体のほうは、もうすでにOECD加盟を予想して、このTUACですか、それに加盟のための国内団体をつくっている。これはOECDに加盟すれば自動的にこの日本の団体ができていくわけですね。だから、一歩やや労働団体はおくれているわけです。ですから、これは、政府の公の話としてはそれでいいと思います。労働大臣は特別に、非公式にもせよ、むしろあっせん、奨励くらいして、日本の労働団体が出ていくことは非常にいいことである——出ていくといっても常駐できるかどうかは知りませんが——こういうところに政府としては歓迎——いま歓迎ということばを言われましたが、出ていくことが望ましいという積極的な意図で私は考えてしかるべきじゃないか。これは外務大臣も特にそういう意味で、そういう面でお考え願いたい。それで、これは希望ですが、御意見を伺いますが、同時にこの際伺っておきたいのは、これは両省の関係だと思いますが、ヨーロッパにおける労働アタッシェといいますか、そういう配置はどうなっておりますか。パリあたりには、こういう機会に相当大きな労働アタッシェの機構をお考えになっていると思いますが、これはどこがいいか、いろいろ問題があると思いますけれども、ますますOECD加盟ともなれば、これは外務省の機構としてのOECDデレゲーションコミッションができるわけですが、そういうことも考えて、パリあたりに相当有力な労働アタッシェ機構をつくる必要があるのではないかと思うのですが、労働大臣のこの二点についてのお考えを伺わしていただきたい。
  118. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) まず最初に、TUAC参加の問題でございます。多少表現は立場上違っておったと思いますが、気持ちは曾祢委員の御考えと変わりはないと思います。  それから、労働アタッシェは、ただいまのところ欧州におきましては、ロンドンとジュネーブとボンと三カ所だけでございます。そこで、今年度予算の編成にあたりましては、OECD加盟等を予想いたしまして、パリを要求いたしておったのでございますが、何ぶんにも予算の決定が昨年の末でございましたので、実際加盟が実現した後にということで、最終的には一年ずらしております。来年度からまた要求をいたしたいと思っております。
  119. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) それでは、午後一時半まで休憩いたします。    午後零時四十六分休憩      —————・—————    午後一時三十八分開会   〔理事井上清一君 委員長席に着く〕
  120. 井上清一

    理事(井上清一君) 午前に引き続きまして外務委員会を開会いたします。  経済協力開発機構条約締結について承認を求めるの件を議題とし、質疑を続行いたします。
  121. 曾禰益

    ○曾祢益君 昨日通産大臣に御質問申し上げた点ですが、大蔵大臣からも伺いたいのですが、資本の取引の自由化関連して、たとえば乗用車のような自動車産業のような場合に、どういう程度日本の産業の保護育成をやりながら、しかも全体としては自由化という方向に進み得るのか。きのう通産大臣の御答弁を聞いておりますと、どうもその点がきわめてのんきのようでして、いざとなれば第七条で、何かの緊急事態の場合には、いつでも伝家の宝刀を抜いて、そうして必要な外資法あるいは外為法の取り締まりができるからいいじゃないかというようなお話のようですが、私は、それでは何のための自由化か、そういう例外条項をあまり援用して、そして国際的にOECDの中でかりにそれが許されても、あとでそういうのは——外国でもあまりそういう伝家の宝刀は抜かないと思うのですが、そういう問題を起こすことは適当でないので、したがって、考えられるケースを考えた上に必要最小限度の自由化に対する留保ということをしているわけですね。その留保を通じて必要最小限度のコントロールができるものかどうか。たとえば株式の取得については、これははっきりどこかに書いてあったと思いますが、いわゆる重要なものは一五%ですか、そうでない場合でも一〇%という制限がある。一人当たり五%以上はというふうな制限は、これははっきり留保していると思いますけれども、それで証券市場から入ってくるものについてのコントロールはできる。それで十分かどうかは別として、ある。それ以外の、じゃ、直接投資といいますか、正々堂々とやってくる場合はどうだということを考えると、特に自動車産業の場合なんかは、いろいろな向こうのやってくるやり方もあろうと思うのです。ですから、従来たまっておった円資金でやるといっても、これはたいしたノック・ダウンのりっぱな工場の施設なんかできるほど円資金がたまっておらないので、これは問題にならない。たまたま日本資金を出して、そうしてノック・ダウン方式でやるのか、あるいは日本のほうから特定の銘柄を、ちょうどヨーロッパでやっているように、きのうも実例が出たけれども、たとえばドイツでフォルクス・ワーゲンはとても民族産業が強くて手が出ない。しからばオペルということで、オペルというマークをアメリカの資本が買ってしまう。フランスにおいても、ルノーは国営だから手が出ない。シトロエンは手が出ないけれども、シムカをアメリカ資本が買うというような形で、現実に相当重要な産業の外資による支配というものが行なわれている。日本の場合は、そういう自動車産業のような乗用車が自由化するという問題のほかに、もっと弱い産業でも、食料品だとかいろいろな場合でも、今後とも考えられるわけですね。そこでそういう場合に、各企業支配のいろいろな資本の入り方の方法を十分考えた上で、現在やった留保で十分なのかどうか。通産大臣はきのう、ここにいないのに言ってもしょうがないが、すぐに経済上、金融上その他重大な支障が起こる場合にはかまわない。そんなものをしょっちゅうやるのじゃOECDに何のために入ったかということになるので、それじゃなくて、何か留保条項の適当な運用によってたいした弊害なしにコントロールできるのか。しかも、外国からは、OECDに入ったのに日本がどうもやり過ぎているという非難をこうむらないで済むのかどうか。こういう点について大蔵大臣のお考え、御準備を伺いたいと思います。
  122. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) ただいま御懸念になりましたようなことはないと思います。留保をいたしております。それから、直接投資につきましては、十分スクリーニングをするということが原則になっておるわけでございます。でありますから、OECDも御承知のとおり資本の自由化をうたってはおりますけれども各国別に民族産業のものの問題等がありましてスクリーニングをやっておりますし、また、日本は特に中小企業の問題等特殊な問題がありますので、留保しておるわけでありますが、精神的に前向きで自由化に沿っていくということと、実際問題、OECDに加盟をしましたが、直接投資については十分ケース・バイ・ケースでもって交通整理をいたしますようにスクニーニングをいたしますようにということは、原則になっておるわけであります。でありますから、まあ、合理的に言えば、こういう産業に対しては何%ということを全部きめ得ることも一つの方法だとは思いますけれども、そうではなく、大蔵省でいままでやっておりますような、一つずつの問題に対して影響がないかということを検討し、また、各省大臣とも十分協議をして、影響がないというものに対して許可するのでありますから、OECDに加盟したから医業支配を受けたり、また、資本支配を受けるというような懸念はないものというふうに、いま政府としては考えておるわけであります。
  123. 曾禰益

    ○曾祢益君 その運用のほうはかなり、ことに資本取引の自由化については、コードのほうを見ても、貿易外の経常取引の自由化ほどきちんとしていない。相当抜け穴があることはわかるのですが、それにしても、証券市場を通ずる株式の取得に対する明白な留保のほかに、直接投資等についてはどの条項でそれの留保をしているのかということを、ちょっと条約に即して御説明願いたい。
  124. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 各国とも、先ほど申し上げたとおり、面接投資に対しては規制をいたしております、何らかの方法で。日本は現在まで行なっておりました投資に対してこういう方法でやっておりますということを十分説明をいたしたわけであります。各国の例もありますので、そういう意味で、表面的に留保をしなくても、日本の現在の状態をOECD側が認めたわけでありますので、現在どおり直接投資に対しては十分規制ができるという立場をとっておるわけであります。
  125. 曾禰益

    ○曾祢益君 そうすると、直接投資に対しては留保せずに、当局のやり方を信頼して、基本はむろん自由化だけれども、ケース・バイ・ケースの外資法、外為法の運用を認めて、そういう少なくとも第一そういうスクリーニングする法的根拠もよろしい、それからケース・バイ・ケースを信用すると、こういうことになって、あらためて何も留保していないと、こういうわけですか。
  126. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) そうです。日本の状態を十分説明をいたしましたが、ほかの国でもやっておることでありますので、OECD側といたしましても、日本が現在行なっておることでよろしいということで、コードにひっかからないということであります。
  127. 曾禰益

    ○曾祢益君 そうしますと、非常事態というか、コードの第七条だったかな、免除条項がありますね、資本移動の自由の。これは貿易外の経常取引の場合も、第七条ですけれども、「加盟国は、その経済及び財政金融の状態に照らして正当と認められる場合には、自由化措置を完全には執らないことができる。」とか、そのbの、「すでに執り、又は維持している自由化措置が、自国に重大な経済上及び財政金融上の混乱を生じさせる場合には、当該自由化措置を撤回することができる。」、Cが、要するに、国際収支が悪い場合に一時停止することができる云々のいわゆる免除条項によらずして、きのうの通産大臣との話はちょっとそれていたと思うのですけれども、免除条項でやるというようなことを言っておりましたが、そうではなくして、通常できるケース・バイ・ケースの許可制はいいというわけですね。よろしい、ケース・バイ・ケースでやってよろしいと、こう包括的の了解を得ておる。したがって、特にこの免除条項を援用するほどの重大なケースでなくて、あとはケース・バイ・ケースで当局がコントロールできると、こういうふうに了解していいわけですか。   〔理事井上清一君退席、委員長着席〕
  128. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) ただいまの御発言のとおりでございます。第七条の免除条項を適用するまでもなく、現在行なっておる日本の資本に対する規制は加入の際において認めておるわけでございます。が、しかし、もちろん規約にもありますから、いまよりもより規制を強めなければならないというような場合は、この条項をたてにとって日本側で説明をするということになるわけであります。
  129. 曾禰益

    ○曾祢益君 そうすると、大体それは直接投資という形の場合を考えておられると思うのですけれども、どこまでが直接投資なのか、直接投資の定義といいますか、そこら辺のことも、しかし問題があるんじゃないですかね。ただ別の方法でいえば、証券市場で株式を収得する場合にははっきり別の取り扱いがありますね。それ以外はいまあなたが言われた外資法、外為法とのケース・バイ・ケースのコントロールでできるというふうに見ているわけですか。
  130. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) そのとおりであります。まあ、普通でもこの疑問がわくわけでありまして、OECDもかかる問題に対してはこまかく規定しておけばいいじゃないかという考えはありますが、これは各国別になかなかむずかしい問題もありまして、現在の段階ではOECDでもってこまかく規定することはできないという状態にありまして、規約等に対して、明確な条項が示されておらないわけであります。でありますから、日本の状態は十分述べました。現行でよろしいということでございますので、市場経由等を除いては、直接のものは——大体ほとんど外国の諸君は投資賞をする場合には、非常にあとからのトラブルということを考えまして、ほとんどいま通産省、大蔵省に持ち込んできておりまして、大蔵省や通産省、農林省、外務省に相談なくやるというようなケースはいままではないわけであります。まあ、あなたが先ほど申されたとおり、日本人の名前で株を買ったり、またいろいろなことができるじゃないかと、これは全く非合法なやり方でございまして、どこにもある話でございまして、こういうものを除いては規正の状態で十分規制ができる、こういう考え方をとっておるわけであります。
  131. 曾禰益

    ○曾祢益君 そうすると、まあ自動車ばかりを一つの例として取り上げているのですから、取り上げますと、先ほど申し上げましたように、たとえばアメリカのビッグ・スリーのその一つ日本にノック・ダウン工場をつくる。そして、いよいよ、日本の下請は使うけれども、ノック・タウンで大きなアセンブリ・ラインをとってきてやるというような場合には、もう正面から通産省、大蔵省に堂々と向こうが来るわけですね。そして、その場合にどういうふうにスクリーニングされるか。また、たぶん奨励されないと思うけれども、スクリーニングされる。そういう場合に、これを国内産業保護のためにそいつをスクリーン・アウトにしても問題ない、OECDに入った精神からいって、そういえますか。
  132. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) ケース・バイ・ケースで十分検討しますが、日本の産業に影響あり、日本の特に自己資本比率が非常に低いという特殊な状況がありますので、このような状況に照らして十分スクリーニングはできる、また、いままでもやってまいったわけであります。
  133. 曾禰益

    ○曾祢益君 それから、これはまあ株式を証券市場から取得した形かどうかよく知りませんけれどもね。それとも買収というのか、それとも合弁になったんだか知りませんけれどもヨーロッパにおける乗用車のアメリカ資本が事実上大部分をコントロールしてしまった。ああいうようなケースの場合にはどうなりますか。この証券市場云云のあのコントロールのほかに、そういう形でなくても、そういうやはり日本のマークを買ってやってくる進出も食いとめられるわけですか。
  134. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) これは事実問題を申し上げて御理解を得たいわけでありますが、これは普通の国ですと、他の国の資本家が、あれをひとつ取ってやろう、こういうことになるのですが、日本はどうも金融引き締めなどをやると、自分だけ生きるために、ひとつアメリカと結んでやろう、こういうたくましい気持ちでいろいろ持ち込んできております。持ち込みますが、そういうものに対しても非常に強くいままでも規制をしてまいりましたから、これが全くやみでやられるということになると別でございますが、まあ、日本人のそのままの名前でいいとか、いろんなことがあると思いますけれども、その場合は当然非合法のものでありますから、株主権の議決権を行使する場合も公に行使できるわけじゃありませんし、まあ、いろんな問題は想像されますけれども、正規なものとしては、大蔵省の窓口を通らないでこういうことが行われるわけがないのでありますから、いままでも規制ができましたし、OECDに加盟後も規制をする、こういう考え方でございます。
  135. 曾禰益

    ○曾祢益君 まあ、直接投資に対してあまり神経質になる必要もないんだし、もっと自信を持って、ある時期にはまたこれはロイヤルティー、パテントの問題もありますが、これを消化して、そして一人前になるということをそうこわがる必要はないと思う。ただ、この外資の中で、資本の移動の自由化によって、必ずしも好ましくないと思うようないわゆるホット・マネーといいますか、そういうものの移入、導入についてのこれのコントロール、規制、同心に、長い目で見ると、長期安定的な資本を入れる必要は国際収支のバランスの上からもあるわけですが、その悪いほうのスクリーニングのほうについてはどういうふうなコントロール、制約がされるのかされないのか。また、どういうふうにやっていかれるのか。この点をお伺いいたします。
  136. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 外資も必要でありますので、良質なものに対してはこれを入れておるわけでございますが、ホット・マネーといわれる、いわゆるいつ引き揚げられるかわからないというようなもの、また、ある時期だけ株式市場に出てくるもの、これがすぐ引き揚げられるというようなものに対しては、これを抑制するという措置をとっておるわけであります。でありますから、金利問題で、絶えず日本に過度に流れることのないようにやっております。もう一つは、支払い準備制度をとっておりまして、ホット・マネーの流入があった場合に、二〇%ないし三〇%の支払い準備制度を外貨で持たせる。こういう制度上の措置をいたしておりますので、いままでのところでは、ホット・マネーが——あれはいつでありましたか、二月か、三月ですか、七、八千万ドル流れ込んだということはございますが、これはもうユーロ・ダラーの問題でございますが、これはもう金利を急速に引き上げたというような問題で正常な状態になっております。でありますから、これからも、ホット・マネーが流れ込んで日本の資本市場が混乱するというようなことを十分避け得る態勢にあるわけであります。
  137. 曾禰益

    ○曾祢益君 観光のための外貨の使用の自由化については、一定の留保をされているわけですね。ところが、きのうですか、ちょっとある新聞に出ておりましたが、すでにOECDの中で、当該委員会ではもうほとんど決定的な意向のようでございますが、一年一人五百ドルの自由化ということですれ。それでなくて、七百ドルまで上げようというので、もうほとんど決定的のように——これはむろん理事会を通らなければ拘束力はないわけですけれども、そういう方向にすらあるといわれているのですね。ところが、日本国民性の、いささかどうもぼくはあまりよくない国民性だと思うのたけれども、どうもわっしょい、わっしょいで、押すな押すなで観光に出かけていくと、これが相当なやはりわれわれから見れは不急不要だなあと思いつつも、しかし、自由化のほうへいく。これが五百ドルが七百ドルになるというようなことになると、相当な問題ではないかと思うのですが、その情報の信憑性と、あわせて観光の、この出かけていくほうですがね。入ってくるほらは大いに伸ばしてもらいたいのですが、その海外旅行の費用の自由化についての考え方をお述べ願いたい。
  138. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 三十七年はおおむね入ったものと出ていったものがとんとんでございます。三十八年度は千万ドルばかり赤字でございます。この四月一日から一年一人五百ドルの制限で自由化に踏み切ったわけでございます。ことしは少なくともその面では五、六千万ドル赤字になるだろうというふうに見通されるわけでございます。しかし、ちょうどIMFの総会及びオリンピックがございますので、今年度は出たり入ったりと、こういうところでございますので、日本の観光収入がふえるようにひとついろいろな施策をいま考えておるわけでございます。で、そのOECDの中で七百ドルという案があるという御指摘でございますが、これは前からも、こういうものはできれば制限を撤廃することがいいのだということでございます。ところが、イギリスも一つの制限をやっております。日本は何しろ戦中、戦後を通じまして約三十年間も鎖国状態にありましたから、とてもほかの国とは違うのです、こういうことを言いましたら、それは五百ドルでもよく踏み切った、こう向こうも相当理解をして、日本政府の労を多としたわけでございます。でありますから、私は五百ドルというものが七百ドルになるというふうには考えておりません。また、これはOECDに加盟しますと、この会は全会一致制でございますので、一日も早く加盟ができれば、五百ドルを維持できる、こういうことにもなるわけでございます。まあ、しかし、原則的には、なるべく五百ドル制限などをしないでも観光収入が受け取りがふえるというような方向に努力をすべきだと思います。イタリアなどは年間七億ドルも受け取り超過であります。そういう意味で、政府も鋭意観光振興ということに対して努力をいたしておるわけでございます。まあ、何ぶんにも五百ドルの制限でさえも、あなたがいま申されとおり、わんさわんさ、全く押すな押すなで、はなはだ嘆かわしいことでございます。私はもう理屈ではなく、今度は戸は締めぬのでありますから、いつでも出られるから、死に急ぎをするように、そんなに急いで外国回ってこなければならぬという、どうも日本人の短兵急な考え方、国際収支でもってすぐこれだけ締められるのでありますから、しょっちゅう外貨を持ち出したり締めたりすることはいいことでありますから、そうなるまでにはよほど国民的な協力を願いたいと、私は少し憎まれておりますけれども、そういうことをあえて言っておるわけです。それでもまだだめだったら、また一人十万円という出国税を取りますよということさえも言っておるのは、私が十万円取るというわけでない。三十年間も出なかったものが一挙に出るという事実を十分見まして、国民各位の自覚に訴えておるわけでありますから、三十九年度はバランスがとれるにしても、四十年度以降受け取り超過になるように十分な施策を行なってまいりたいということでございます。
  139. 羽生三七

    羽生三七君 非常にこまかいことですが、これは加入になった場合の日本の出先の機構ですね。人員配置、それから予算関係、そういうものの一応のあれをお話しいただきたいと思います。
  140. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いままで準備の仕事は在仏大使館に依頼しておったのでございますが、今度御承認をいただきますと、きのう衆議院を通過いたしました設置法でお願いいたしておりますように、十六名の職員をお願いする予定です。大使一人、それから参事官を三名、書記官等々十六名でございまして、そのうち大蔵省、通産省、農林省、経済企画庁運輸省、各一名ずつ職員を出向をお願いする。この定員の中に含まれております予算が、OECD代表部に使用されます予算がいまどれだけかちょっと記憶ございませんが、調べましてお答えいたします。
  141. 森元治郎

    ○森元治郎君 これは一番新しいことについて聞くのだが、OECDというのは、貿易の拡大、それから資本の交流を盛んにする。こういうことを妨げる制度とか、法律とか、そういうものはゆるめていく義務を負うわけですね、入るということは。そこで、二十一日の、向こうの新聞で、アメリカが反ダンピング法の運用規則の改正を発表した。日本にとってはたいへんな大きな影響が起こると思うのですが、一体、日本の国際収支の面から見ても、先進国から入超で、後進国の弱いほうに行ってひったくってきてその埋め合わせをしてバランスをとっている。その入超になっているアメリカのほうが、依然としてこういうふうなきわめて不愉快な態度に出てくるということは困ったものだと思うのですね。政府は注意を喚起しようとするのか、抗議をするのか、まず根本的にどっちの態度をとられるか、それを伺いたい。
  142. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 主として対米経済外交の問題。それより前に、OECDは、先ほど申しましたように、これは全会一致でなければ何事もできない仕組みになっているということでございまして、わが国が反対することはいつでもできるわけでございます。それから、全会一致で決議いたしましても、わが国の政府国会から与えられている権限の中で消化できないものは、もとよりこれは国会に立法ないし予算でお願いをしなければならぬわけでございまして、そういう仕組みになっているということをあらかじめ御了承いただきたいと思います。  それから、対米経済外交でございまするが、なるほどアメリカに対しましてはわが国は相当な輸入超過になっていることは御指摘のとおりでございます。それを、世上では対米関係収支のアンバランスということがしょっちゅう問題にもなりますし、一部では市場転換ということも考えたらどうかというような御論議もあるわけでございますけれども政府政策的に、また優先的に市場転換をするというようなことは、私はそういうことに対しては消極的でございます。アメリカから輸入する物資は、それだけの理由があって輸入しておるわけでございます。経済性を無視してほかの地域に市場転換するということは、そういうことを国民にしいるわけにはいかぬと思うのであります。そこで、アメリカが、しかしながら、いま自主規制の問題とか、いま言われた反ダンピング法の問題とか、各種の問題で、対日関係でいろいろのもんちゃくが起こっておりましたことも御指摘のとおりでございますが、しかし、これは少し実態よりオーバーに宣伝されておるきらいが私はあると思うのです。いままでの反ダンピング法の関係でも、問題になったらすぐ具体的なアクションがとられたように世上ではいわれておりまするけれども、実際適用になったものというのは、ただいままでのところ全然ないわけでございます。問題になったら、すぐアメリカがそういう措置をとってしまった——過去完了的に世間に響いてしまうということが私はあると思うのでございまして、問題をよく究明いたしまして、日本への影響というものを見きわめて、正当に評価をしなければならぬと思うのでございます。で、ヨーロッパに比べまして二倍半もの貿易をしている国でございますから、相当問題があるのはあたりまえだと思うのでございまするが、貿易量のわりには私は問題はむしろ少ないと思っておるのです。ああいう怪物のような国が、一つの国旗のもとにあるということは、非常にハンドルしやすいわけでございまして、あれがたくさんの国に分かれておりましてそれぞれ規制されたら非常にめんどうなことになるわけでございます。そういう意味では、対米経済関係はそういう角度から見て差し上げないとフェアじゃないのじゃないかという感じが私はいたします。一般に自由のたてまえをとっておる国が一部規制すると非常に悪者扱いになりますが、一般に規制しておる国が一部自由にすると非常にありがたがられるが、しかし、実際に実態心的に比較してみると、前者のほうがほんとうは日本に有利なわけなんだけれども、世間の受ける響きはそうでないというようなこともございますので、したがって、そういうことを前提にいたしまして、まずものごとはフェアに見なければならぬということをいま申し上げたわけでございます。しかしながら、貿易自由化ということは、わが国もそしてアメリカも、お互いにやっていくべき性質のものでございまして、それだからといって、アメリカのアンリーズナブルな措置を甘んじていく筋合いのものではないと思うのでございまして、これはOECDの場ばかりではなく、あらゆるパイプを通じまして、われわれの希望するところ、これをやはり執拗に先方に伝えるばかりでなくて、それに対してこっちがとるべき措置があるとすれば、それに対してそういう措置をとっていくことについてもちゅうちょしちゃいかぬと私は思います。
  143. 森元治郎

    ○森元治郎君 アメリカのたいへん喜ぶような説明を伺ったんだが、私が言いたいのは、その親しいもの同士が問題も多い、親しくないものはわりに問題少ないわけですね。大臣の答弁、おっしゃるとおりだと思うのであります。何か神経をいら立てるような、昨年の綿製品の問題にしても、今度の問題にしても、いら立つような感じを受けるのは、いつかケネディ大統領の演説にあったと思うんだが、終戦の翌年、一九四六年から十年間にアメリカ日本に二十億ドルの援助をし、このおかげでわが日本は二百十八億ドルの恩恵をここから引き出した。そんなら、二十億ドルで二百十八億ドルもうまくやっているのなら、そんなら、そう神経をいら立つようなこまかい点までぎしぎし言わないでもいいんじゃないかという感情がもとにあって質問しているわけなんですよ。そういう感情があって、大臣もここのところ急がしくて頭も少しむずかしいのだろうが、事務当局からこの問題について実態を御説明願いたい。そうすると、大臣もそれを聞いて今度はっきり質問応答が軌道に乗るわけですね。大臣は大づかみでやっているものだからだめなんですよ。やっぱり専門家にひとつ。
  144. 中山賀博

    政府委員(中山賀博君) 最近アメリカで関税法関係の法規の改正の動きがあります。これは新聞にも伝えられているとおりであります。われわれも昨年完全な改正案を入手したので、早速研究をいたしております。もちろん、関税関係のそういう反ダンピング法、たとえばアメリカ関係でいろいろございますが、そういう法規を不当に強化して強行するということは、自由貿易のたてまえに反することは事実でございます。したがって、現にジェネバで関税一括引き下げ交渉というのが行なわれておることは御承知のとおりでございますが、この中でも、関税交渉プロパーのほかに、非関税障壁の問題については特別の委員会が設けられております。つまり、世界的に関税を引き下げていくそういう中にあって、反ダンピング法その他の法規の適用が強化されては何にもならないという点から、非関税の障壁撤廃の委員会というのがあるわけでございます。近く開催されるわけでございますが、わが国としては、アメリカの、いま言った反ダンピング法適用の関係アメリカ・セリング・プライスの問題、関税評価の問題等について問題を提起する考えでございます。それから同時に、バイラテラルに作用してみましても、ただいま行なわれている関税法関係の改正案は、非常に技術的な点を含んでおりますので、ちょっと見たところプラスになるのかマイナスになるのか、よほどよく研究しないといけません。というのは、実は改正の中には、日本のほうにもプラスになる点もあるからでございます。そこで早急に結論を出してアメリカ側と交渉するつもりでおります。それで、従来は、実は昨年来貿易拡大法が通過して以来は、わりあいと問題が少なくて、そうして、関税法関係については、最終的にエスケープ・クローズその他の発動を見ることが少なかったわけでありますが、今度の関税法改正は、もう少し研究をよくして態度を決定したいと思います。
  145. 森元治郎

    ○森元治郎君 私が聞きたいのは、伝えられる情報しかわれわれは人手していないのだけれども、鉄鋼なら鉄鋼というものが、日本の国内の価格と海外の価格と見比べて、不当に安い価格で売っているのじゃないかというような疑い、こういうふうな疑いがあったときに、業者がそれを当局に訴え出て、あれはおかしいぞと言えば、すぐ当局がこれを取り上げて調べる。関税委員会が認定するのかもしらぬけれども調べる。そのときに、問題を提起した業者が調査の場に居合わせて、同席して実態調査をやる。こういうことは業者の、民間人の強いアメリカにしても少しく強過ぎやしないかということ、そういうふうな認定なり調査なりが済むまでは商売のほうもストップというのでは、二軍の被害を受けるような感じ、またさらに、品目がどのくらいいま調査の対象になっているのか。あるいは将来ねらわれているのか。数もかなりな数があって、しかも重要な品目だろうと思うのですがね。この業者が当局と同席して調べたり、認定があるまでは商売のほうもストップしておどおどしなければならぬ。こっちは被告席にすわっているような感じ。しかも、品目が現に調査の対象になっているもの、それから、いまねらわれて将来俎上に引き上げられる数もあり、しかも重要な品目である。こういうところが私はたいへんな影響があるのじゃないかというのが質問のポイントになるわけですね。専門家でけっこうですから。
  146. 中山賀博

    政府委員(中山賀博君) アンチダンピング法自身は、ガットの中でもアンチダンピングの規定はあるわけでございますから、そのものが違法だ、そのものがやめてもらわなければならぬという問題ではないと思います。ただ、今度アメリカが直そうとしているのは、施行規則の問題でございます。で、これはむしろガットの場とか、あるいは今度の関税一括引き下げ交渉の中において当然問題になる問題でございます。というのは、御承知のとおりに、OECD自由化のコードとしては資本移動とそれから貿易外という二つを持っておりますが、貿易に関する自由化のコードは、これはOEECのときのものが各国間に適用されるにとどまって、OECDはこれを継承しなかったわけでございます。それは別問題といたしまして、現在アンチダンピング法の対象になっております品目は、かなりの数にのぼっておりますし、また、今後重要なものもございます。これはいま仰せのとおり、アンチダンピング法では、ことに関税評価の場合においては、関税の差しとめがあるということによって、実はそれで商売が当分の間中止される。そして、たとえ評価の結果具体的にインフリンジがないということであっても、実際問題としてはその間商売が差しとめられるという点が従来から大きい問題だったことはそのとおりでございまして、われわれとしては、そういったことのないように努力していくつもりでございます。具体的な件数が何件そうなっているかということは、追って表でお出ししたいと思います。
  147. 森元治郎

    ○森元治郎君 施行規則だと言うけれども、なかなかこの施行規則というのは、えてして何とでも動き出すものであって、大きな高い角度からこういう問題は、大平さん好きな腹でとっくりと、疑いっこするような雰囲気をつくらないようひとつ協議する機関、政治的な機関、そういうもので話し合ってみたらどうなんですかね。
  148. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これはざっくばらんに申しまして、政府の力と申しますか、これは比較的弱いと思うのです。あなたが御指摘のように、民間が強いと申しますか、通商上の問題を取り扱っておりまして政府ができることというのは、ああいう国柄といたしまして、政府にいろいろものを申し上げてもなかなか十分に実効があがらぬという実感をわれわれは強くするわけでございます。そこで、何といっても、これは両方が理解し合うことが第一だし、それから信頼し合うことが第一でございますので、この間も岩佐ミッションをわずらわして方々へ行ってもらったわけでございます。最近のように、ああいう大企業の経営者、非常にパワーフルな経営者、これはどこの国でもそうでございますが、経済政策、景気政策なんかについて政府に匹敵するほどの力を持ったそういう実力者が、お互いのレベルにおいて理解し合っていくということが非常に大事だと思うのでございます。そういうことも合わせてひんぱんにやりながら、政府レベルの交渉もやってまいるというようにしてまいらなければならないのではないかと思うわけでございます。  腹芸の問題でございますが、まあ、ああいう外国の方々というのは、そう腹芸と申しましても、やはり非常に合理的に緻密に考える方々で、ぽんと腹をたたいてという東洋的な理解というようなところは少し縁が遠いんじゃないか。できるだけ接触を官民のレベルにおいて頻度を多く、かつ、いろいろな機会をつかんでやってまいって理解を深めていき、そういうことをやる姿勢になりにくいというような雰囲気をつくってまいるということが大切じゃないかという感じを持ちます。
  149. 森元治郎

    ○森元治郎君 私が腹芸と言ったのは、大平さんがいつもぐにやりぐにやりとして何か腹芸がありそうなかっこうしているから、その調子で渡り合ったら何とかうまくいくんじゃないかと思っただけで、商売というのは銭金の問題ですから、はっきり銭金で勝負つける以外手はないのです。それは大臣の言うとおりですが、私はただこの問題について感ずることは、アメリカが偉いと思うのは、一銭一厘でも自分の害になれば反発し、利になれば喜ぶ。このがんばるところですな。これはちょっと日本人にない見上げたところだと思うのですよ。日本はそういう点は案外ずるずるで笑ってしまったりするからね。この点だけが反ダンピング法の施行規則の改正についていいところだとは思う。どうです、きのう電報来たばかりだというのだから、よく内容を見た次第によっては、これは弱くても強い注意喚起、あるいは抗議に値することだと思うが、どうでしょう。
  150. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) よく勉強さしていただきまして、とるべき措置はとろうと思います。
  151. 曾禰益

    ○曾祢益君 OECD加盟にあたって一番むろん日本として問題にすべきことであるし、また、した点は、日本がこの自由化の要請にどうこたえ、どれだけの最小限度の留保をして——最小限度でなければいかぬと思うのですが、その最小限度が十分であるかどうか。こういうことについていろいろ質疑してきたわけです。これはやはり問題の一つのポイントだと思う。同時に、もう一つは、とにかく留保して入った。入った以上は、入ってからあとで、どうもいや日本はもうこんなことはケース・バイ・ケースでかってに制限できると思っていた。ところが、いや、どっこい向こうの期待に沿わなかった。何のために入ってきたのだというようなことになってもこれは困ると思うのですね。そこで、私の非常に短い質疑を通じても、やや、その心配がなしとしないじゃないか。というのは、その加入の留保条件について、いろいろ政府が相当長い間に苦心されて向こうと折衝もし、何回となしに内折衝もし、交渉もしてやってきたのだけれども、率直に言って、やはり思ったより渋い点もあったわけですね。特に海運問題なんかについては、こっちが思ったより先方がきつい条件であった。ところが逆に、きのうからの通産大臣、あるいは先ほどの大蔵大臣との質疑応答等を見ていると、どうも、特に資本の自由化についてはわりあいに、これは経常内の貿易収支自由化よりか資本の自由化のほうがOECD全体としてもむろんレベルは低いんですね。低いから当然だと思うけれども、まあ、大体その外資法、外為法をそのままにしておいて、そうしてケース・バイ・ケースでやっていけばいいんだ、たいした留保も要らないんだという、やや安易に考えているのではなかろうか。その解釈で正しいんだと思いますけれども、一まつの不安なしとしない。たとえば、これは正式の文献じゃないでしょうけれども、「OECDの手引き」というものの五十五ページの下段ですがね、終わりから約十行目くらいのところに、要するに自由化コードの説明をしておるわけです。自由化の定義のところに、「取引の自由化とは、取引を許可制の下におくことを禁ずるものではないが、許可に当たっての審査は当該取引の真実性を確認するための措置に限られること。」、こういうことになっておるわけですね。これは概括的のあれであって、むろん貿易外の経常取引の場合、それから資本取引の場合とあとむろん違ってきます。しかし、一般的に言えば、私はそういう精神だろうと思うのですね、一般的には。それから、きのう通産大臣が言ったようなコードの七条なんかを援用して、そうして段平をふるうというのは、これはよほどのレア・ケースであって、そんなこと乱用したら、その国の信用はもうがた落ちになってしまうので、そういうエスケープ・クローズなんかを援用して、せっかくやり出した自由化をやめるなんということは、これはめったに、国の信用上からも一たん入った以上はすべきことじゃない。ある大臣はそういうことを——これは誤解だったと思いますけれども、何でもいざというときにはある某会社の利益のためにも第七条を援用して、伝家の宝刀をふるうようなことをうかつに考えているのじゃなかろうか。そうでないにしても、先ほど大蔵大臣と応酬をしても、いわゆる直後投資の範疇に該当するような資本の取引については、日本に入って来る場合のですが、それについては全くケース・バイ・ケースで、実際上も向こうからも全く日本に信頼しておる、いろいろ話してみたら。したがって、証券市場を通ずる株の買収の場合には、もっとはっきりとした基準を置いた留保がしてあるけれども留保すら入れなかったのだ。要するに、日本の法令による取り締まりに信頼しておるから特に留保は入れなかった。こう言っておるわけです。私はそうであってほしいと思うのですよ。思うのだけれども、どうかな。どうも、それだったら、資本取引の自由化なんて、むろんそれは資本が入ってくるときばかりを問題にしておるのじゃありません。がしかし、どうもちょっと海運の問題についてはえらくシビアーなんでがっくりきた。それであわてたところが、資本の取引の自由化についてはたいしたことはないやというふうにやや傾き過ぎておるのじゃないか。私それがはたしてこのOECDの全体のコンセンサスかどうか、総意かどうかということについては率直に言ってぼくは心配するのです。そういう点が——これはむろん通産大臣大蔵大臣の言われたことを外務大臣から別のことを言われることを期待して言っておるわけでもないけれども、ほんとうにそういう心配はないのか。これは私は非常にまじめな心配だと思うのです。十分な留保であったかという問題と、無留保で簡単にいままでとあまりたいして違わないというセンスで入ってみた、ところが入ってみたら、恥をかくとかトラブルが起きたなら、これはいかぬと思うのです。そういう点の内外の意思の一致というものは十分なのかどうか。たとえば、いまの取引の自由化というものと、法的の制限というものの関係をどれほどに考えたらいいのか。特に資本の場合、もう少しぼくらが納得するように説明してもらいたいと思う。少し安易に考え過ぎておるのじゃないのですか、通産大臣大蔵大臣。そういうことはありませんか。
  152. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 全体の感じとして私がOECD加盟にあたっての感じとしては、向こうの事務局が参りまして日本政府と去年の夏やりまして、そしてまず驚いたことは、日本経済政策の実態を非常に手ぎわよく短期間の間にまとめ上げた日本の官僚の能力というものは相当なものだということだった。これは向こうが舌を巻いておりました。それから、つまりそれで十九の留保で難なくクリアーした。このことは、日本のいまやっておる現実のプラクティスが、OECDの標準から申して、もう大体そこまで来ておるということを示しておると思うのです。このクリアランスはぼくは日本の国際的な信用を相当上げたと思っております。それから、ただいま御指摘の面接投資は、OECD自体がまだ直接投資に対して検討が足らぬと思うのです。つまり、メンバー各国で非常に日本よりも強い規制をやっておるところもあるし、まだまちまちの状態でございまして、OECDが直接投資の規制自由化のコードをどうまとめ上げていくかという腹がまえがまだできていない。したがって、そういう盲点がございますから、初めからぼくらは、あなたが言われたように、直接投資のことを非常に心配しておったんです。今度のコンサルテーションでは十分面接投資が問題になりゃしないかということを各省もまた非常に関心があったもんですから、ここが難関じゃないかということでありましたら、案外そこが何ら抵抗がないわけなんです。これは要するに、OECDが将来に向かって面接投資というものはどう考えたらいいかということについて、いまから開拓すべきことはまだ処女地じゃないかというような感じがしているんです。したがって、これは楽であったからということの感じがある一方においてあることは事実でございますが、 しかし、そうかといって、いつまでもいつまでもしておっていいかとも思わぬのでございます。いまからOECDの討議が進むに従がいまして、直接投資をどのようにOECDとして考えていくかという輪郭を徐々にいまからみずからつくっていかなければならぬ。そういう時点に私はまだあるように感じるのでございます。
  153. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 外務大臣に対する質疑はここでちょっと中断しまして、農林大臣に対する質疑を行ないます。
  154. 岡田宗司

    岡田宗司君 農林大臣にお尋ねいたします。  今度OECDに加入いたすことになるわけでございますが、総理大臣なり外務大臣なりのお話を伺っておりますというと、日本が開放経済に進み、それで貿易自由化もどんどん進んでいく。それからIMF八条国にも移行し、そうして開放経済体制はOECDに加盟することによって完成されることになる。こういうことでございます。この貿易自由化ということもこれから進められて、さらに進められていくことになると思います。そういたしますと、結局残ってまいります自由化されない品目のうちには、農産品がたくさんあるわけです。これを自由化するということになりますというと、これはなかなか日本の農業にとりましても大きな問題が起こるわけでありますけれども、その農林関係の品物の自由化の点について、農林大臣はどういうふうな方針を持って対処されていくのかということをまずお伺いしたいと思います。
  155. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 再々申し上げておるのでございますが、いまのお話のように、日本の農林水産物は世界的に見まして相当コスト高になっています。この間も、所得倍増計画の中間検討等の中にも一つ出ておりましたが、まっ裸のままで世界市場へ出せば、あるものによっては九〇%、あるものによっては五〇%くらい、ほかのほうの品物が日本の農産物より安い。こういうことでございます。まる裸で自由化をするということになると、日本の農業というものは相当つぶれる。痛手をこうむります。しかし、御承知のように、農業基本法等にもありますように、また、政府でも政策としてとっておりまするように、あるいは関税率の調整とか、あるいは国内における保護政策といいますか、価格等の財政的措置をとって、あるいは同時に、あるいは前もってとって、あるいはあとで是正する場合もございますけれども、そういうような措置をとりながら自由化に対処していくという方針を進めております。でありますので、米麦とか、あるいは酪農品とか、あるいはでん紛とか、こういうものの自由化というものはこれはちょっとでき得ないと思います。ただ、酪農品等におきましても、すでに六、七年前に自由化していたものがありますので、そういう問題がいまちょいちょい出ておりますけれども、これからはそういうものを自由化をしていくことは、これはでき得ないといいますか、差し控えなくちゃならない。あと、自由化する品目は九十五、六かありますが、これにつきましては具体的に影響を考え、また、とるべき措置をあわせ考えながらやっていく。それにいたしましても、できるだけ慎重を期していきたい、こう思っております。
  156. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、最後まで自由化できないものは、米麦、それから酪農品及びでん紛、この四つでございますか。
  157. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) さよう考えます。
  158. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、他のものは漸次自由化していく、こういうことになりますが、それは大体何年計画ぐらいで自由化されるのですか。
  159. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 実は、その案等もいま検討中なんでございますが、全体の自由化率はいま九六、七%だと思いますが、農林関係もそれくらいになると思います。農林水産物のこれから自由化するもののウエートは非常に少ないといいますか、微少でありますけれども、それにいたしましても具体的に案を実はいまつくっておるので、何年かかってというようなことは、ほかとのにらみ合わせもございますので、いまここで御答弁申し上げる資料は持っておりません。
  160. 岡田宗司

    岡田宗司君 今度その四つが自由化されないということになって、あとのものはだんだん自由化されていく。そうすると、これの日本の国内の競争にたえ得るかどうかということが問題なわけですが、特に農産加工品ですね、こういうものについて日本が加工品に対する競争力を強めるために、農林大臣としてはどういう措置をこれから講じようとされるのか。
  161. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 原則的に考えまするならば、やはり生産費を低下することだと思います。そういう意味におきまして、食糧のコンビナート地域をつくっていこう、こういうことで、東京におきましても、海岸地帯等におきまして、市場と組んで食料工業といいますか、食料生産の仕事をひとつまとめていこうじゃないか、こういう調査部を設けておりますが、これは東京ばかりでなく、あるいは熊本等におきましても、その他大阪等におきましても、調査を進めていこうということで考えております。  もう一つは、まだお尋ねにならない、あるいはお尋ねになるのかと思いますが、外資と一緒に仕事をしている向きが食品については非常に多いのでございますが、これは具体的な問題として、私もずいぶん厳重な規制といいますか、会社を合弁でする場合における規制等につきましては、相当規制をいたしまして認可したという例がございます。同時に、そういう場合に中小企業の立場もございますので、中小企業がそれに対抗できるように合併いたしましたり、あるいは新しい機械等を入れることにつきましてのあっせん等をして、対抗できるような一つの基盤といいますか、方向づけをして、そうして合弁の認可をした。こういう例が、マーガリンの会社の例などその一つでございます。そういう態度はなおとっていきたいと思います。
  162. 岡田宗司

    岡田宗司君 いや、いま私もその点をお伺いしようと思ったのですけれども、今度OECDに入りまして資本取引が自由化されるということになってまいりますと、他の産業についてももちろん外資が入ってきて、日本で工場をつくったり、あるいは合弁会社をやったり、いろんな形で外国の資本による支配というものが行なわれてくる。これはやはり農産物加工の面についても相当ねらってもおるし、それから同時に、こっち側でそれを引き入れてやろうという考え方もあって、現にそういうものがぼつぼつ出ておるわけであります。たとえば、何も外資導入してやらなくてもいいようなトマト・ケチャップまで、どうも外国と共同して日本の国内でつくっていくというようなことまで、すでにもう行なわれておる。こういうことはこれからどんどん入ってくる、行なわれてくるんじゃないか。たとえば、かん詰めなんかもそういうことが行なわれるでしょう。あるいはまた、いろいろなジュース類など、濃縮ジュースを持って来てこっちでもって、こちらの合弁会社なり何なりが向こうの世界的に名の通ったマークをつけてどんどん売る。そうして日本のやつをなぎ倒すというようなことも起こってくるんじゃないでしょうか。もうコカ・コーラなんかずいぶんいい例だと思うんですが、コカ・コーラなんかは、たとえば日本における最近の広告とそれによる売り上げの増大なんというものはたいへんなもので、そのシェアはどんどんふえていっているというような状況ですが、ああいうようなものは、ひとりコカ・コーラに限らず、農産加工品、かん詰め類、いろいろなものに起こってくるというおそれがあるので、私どもも心配してその対策というものをお立てになっておるかどうか伺ったわけでありますが、いまお話を伺えば、厳重にやっておるというのでマーガリンの例を言われましたけれども、私はどうもその点で、こちら側でもって向こうと結んでやりたいという、しかも、それが単に中小企業でなく、大きいところがそれをやろうとしているところに問題がある、なかなか政府も押え切れないものもあるんじゃないかと思いますので、もう一度ひとつその点についてお伺いしたい。
  163. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 確かに御指摘のとおりでございます。向こうからも入ってきたいというものもありますし、こっちからも引っぱってこようという傾向が食品加工においては特に多いようでございます。でありますので、先ほど申し上げましたように、株式の所有等につきましても、向こうの支配が十分行なわれては困りますので、そういう点も配慮いたしております。あるいはまた、同じような事業をしておりまする国内の事業家との協調をはかる、あるいは製品の原料等につきましても、トマトなんかの場合は、国内の原料を使うように指導あるいは条件にしたり、また契約の内容にしたり、いろいろな方法で外資に荒らされないような方途は講じておるわけでございます。外資を全然拒否するということもどうかと思いますので、しかし、何といたしましても、大きな財閥といいますか、事業家も入ってきますし、こちらの事業家も大きな事業家との提携でございますので、中小企業等に影響を持つものが多いのでございます。そういう点から、設立許可等におきましては十分慎重にいたしたい。また、許可した暁におきましても、日本の農業がそれによって痛めつけられないように配慮をなお十分にしていきたい、こう考えております。
  164. 岡田宗司

    岡田宗司君 次に、先ほど運輸大臣が御出席になったときに問題になったんですが、御承知のように、今回OECDに入るときに非常に大きな問題になりましたのが海運の問題であります。そうして、貿易外取引自由化に伴って、やはり海運収支ということが非常に大きな問題でございます。その際に、日本の船による積み取り率ということが問題になってきたわけでありますが、その際に、たとえば日本政府の食管会計で買う米麦——米は少ないのですが、そういうようなものについて、なるたけ日本船で運ぶようにしたらどうかという御意見も出たのでありますが、そういう点について農林省としては積極的に何か措置を講ぜられておるのかどうか。
  165. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 農林物資につきましては非常にデリケートな問題もありますし、私どもは、小麦の買い入れ等におきましては日本船を極力使うようにいたしております。しかし、運賃との関係で、運賃等が高くなると日本内地における消費者価格等にまた影響するということもあり得ることがありますので、全部日本船というわけにはまいりませんが、できるだけ日本船を使いながら小麦等を運んできておる。こういうふうにいたしております。
  166. 羽生三七

    羽生三七君 若干意見が入るのですが、日本の農産物の自由化の問題に関連をして、日本の農産品と外国の農産品との国際競争力を見た場合に、これは日本が非常に弱い。日本の力が非常に弱いということは言うまでもないと思いますが、なぜ日本が国際競争力を持てないのかというこの問題が、ほとんど十分に解明されておらない。だから、労働の生産性なんかからいえば、私は日本より高い国は一ぱいあると思いますが、単位当たりの収量で言えば、私はかなり日本は高いところにあると思います。そうすると結局、零細耕地ということになりますね。これが国際競争力日本が持てない理由で、だから、この問題を解決しない限り、私はほとんど日本の農業問題の解決はできないと、こう思っております。  いまの農産加工のような問題は、私はこれは政府政策いかんで、たとえば農協に——農協と限定したことではありませんが——農協にそういう生産を中心に生産加工なんかについての十分な助成策をとられれば、これはある程度問題は解決しますが、しかし、土地は機械で生産できないし、日本の国土には制限がある。ここに外国農業と競争できない決定的な理由がある。だから、この問題を、おそらく所得倍増計画でも——この前予算の分科会でも由し上げましたとおり、二・五ヘクタール、百万戸つくるということで立案されたのでありましょうが、それが指摘したとおり、十年間におそらく八分の一程度達成されればまずいいほうじゃないか。そうなりますと、協業化とか共同化という問題があってもこの問題を解決しない限りおそらく半永久的に日本農業の国際競争力はできないのじゃないかという感じがします。ものによってはできるものもあるでしょうが、全体的に言ってですね。ですから、いま自由化のスケジュールが進まないというのは、私は当然だろうと思うのです。だから、やはり今後の国際競争力をつちかっていくためには、外国資本に対抗するいろいろな処置等もあるのでありましょうが、その施策の重点というものも、そこに指向してお考えをいただかないと、事の目的を達することができないのじゃないかという感じがしますので、私は、これは意見でありますから、あえて無理に御答弁を求めるわけでないけれども、何かお考えがあれば承っておきたいと思います。
  167. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 全くそのとおりなんです。私も考えておりますことは、やはりわが国の農業が零細農で、運命的な零細農で進んできております。そういうことでありますから、せっかく口では近代化とか、あるいは選択的拡大とかなんとか言っておりますけれども、国内におきましては、ある程度進みましても、国際的に見れば、どうしても国際競争力で勝ち得るというわけにはまいらない一番大きなネックがそこにあろうかと思います。でございますので、私はやはり経営規模を拡大するという方向に持っていくべきだと考えます。しかし、何といたしましても、農地等も私有でございますから、これをかってに配分計画を立てるというわけにもまいりません。やはり土地を買収するとか、あるいはいまの兼業農家の分解過程におきまして——これがほんとうの労務者に入る者とあるいは農業として残る者とある、この場合、この残る者を共同化し、また、共同化等の経過を経て個人の自立経常の経営面積を増すという方向に持っていかなければならないんじゃないか、こういうふうに考えておりますが、非常にこれは時日を要します。諸外国の例から見ましても、近代化といいますか、この農家の経営面積が広がって近代化していくためには相当の年数を経ております。しかし、日本の場合は、戦後急速な経済の進展もありまするし、変貌を続けてきておりますので、諸外国ほど時間がかからなくてもそういう方向に行くと私は考えますけれども、むずかしい問題でございますので、考えといたしましては、あるいは方針といたしましては、いまのお説のとおりに私は考えております。
  168. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ちょっと、羽生先生質問の、先ほどのOECDの予算でございますが、今度の成立予算で、三十九年度の成立予算の中に、OECD代表部の関係予算は一億一千八百四十九万二千円、これは平年度でございます。それから、OECDの分担金、これは四億二正方円、これも平年度でございますが、入っております。     —————————————
  169. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 農林大臣は、建設・農林連合の委員会に御出席のため退席されます。外務大臣に対する質疑を再開いたします。
  170. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 外務大臣に簡単に一言だけお尋ねいたします。  このOECDは、その機構からいたしますというと、非常にでっかいものでございますけれども、その実体を見ますというと、それがはたしてこのでっかい形にふさわしい実効をおげるかどうかという点から見まして、結局、アメリカとEECとの関係がうまくいくかどうか、ことにアメリカの通商拡大法に基づく関税一括引き下げをはじめとしてのアメリカの対外経済政策とEEC、ことにドゴールの政策とがうまく調和がとれていくかどうかということが一つの大きなポイントだと思う。そこで、その点について外務大臣はどういうふうに見ておられるか、外務大臣のオブザベーションというものをお聞きしたいと思います。
  171. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 正直に申し上げますと、この間の日仏協議におきましても、ガットの関税一括引き下げ交渉のアメリカとEEC、EECと申しましても、フランスの態度が非常に問題だと思うのでございますが、私どもが伺っておりましたところでは、だいぶん妥協的な機運が出てきたというように見ておったのでございますが、日仏協議を通じてフランスの感触を聞いてみると、必ずしも私どもが考えているほどフランスの態度、フランスの感じ方といたしましては、まだ楽観できない段階にあるということでございまして、仰せのように、OECDはもとより、ガットにいたしましても、いまやっておりまする国連貿易開発会議にいたしましても、このEECとアメリカとの関係が調整されるということが非常に決定的なキーになるんではないかという認識は私も全く同感に存じます。  そこでOECDの問題でございますが、これはこういう性格を持っておると思うのでございます。たびたび申し上げておりますように、既存のガットにいたしましても、IMFにいたしましても、そういう既存の国際機関に臨む場合に、そういう既存の国際機関において決定的な影響力を持っておる有力な国々、そういう国々の事前打ち合わせのシーナリーというふうな性格をOECDは持っておると思うのでございまして、そこで、ここは別に拘束のない討議の場でございまして、調整の場でございますから、そういうむずかしい調整の問題に一つの段階をつけて、先進国は先進国としての、そしてその先進国は、いまの世界政治において、世界経済において決定的な影響力を持つと同時に、決定的な責任を持っておるという意識において、何らかのそこに帰一した方向を打ち出していくという任務を持っておるし、またそういうように、そういう段階を持ったほうがより効果的に既存の国際機構の運営が円滑にいくと思うのでございます。仰せのように、EECとアメリカとの調整の問題は、ひとり関税の問題ばかりでなく、いろいろな面でありまするが、むずかしい問題だけに、それに接近、調整をする接近手段としてOECDというものの機能は非常に大切になってきたのではないか、そういう感じを私はいたします。
  172. 曾禰益

    ○曾祢益君 それじゃ、簡単にもう一つだけ伺いますが、OECDの加盟に伴ってOECD代表部ができるわけですが、それを機会に、ひとつヨーロッパにおける在外公館のいろいろ任務の分担等について、むろんいろいろお考えをめぐらしておられると思うんです。ぼくらはあまりよく知りませんけれども、たとえばパリにおいても、こまかいことだけれども、ココムの仕事もあるはずです。ブラッセルに行けばEECの本部もある。ジュネーブにおいては、むろんILOもあるが、国際連合の主として経済会議があすこで行なわれる場合も多い。いろいろ従来のそういうようなしきたりから、それぞれパリ、それからブラッセル、ジュネーブ等々にそれにふさわしい機構並びに人的配置がされておったと思うのです。そこで、今度はOECDに入った。何といっても、日本が初めてヨーロッパ的な広域経済圏——と言っては大げさかもしれませんが、そういったような国際機関に初めて常設代表部をつくるわけですパリを中心にそういうデレゲーションのしっかりしたものを立てる。これはもう当然そうなきやならぬ。同時に、そういう場合に、従来のいろいろな関係ももう一ぺん俎上に載せてリシャッフルしてみるというようなことも考えられておるかと思うんですが、大体どういうふうに、OECD派遣代表部と従来の公館との関係、従来の公館に託しておったような、EECなりそういったような国際機関との関係、国際連合の経済方面との関係というものをどういうふうに、何というか、入れかえというか、リシャッフルですね、やられようとするのか。それらのことについてお考えがおありだろうと思うので、お示しを願いたい。
  173. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) お答えに入る前に、先ほどの直接投資の問題で、つまりOECD全体の輪郭がまだ十分はっきりしていないと申し上げたのですが、大体私どものいままでのOECDを見たところでは、OECDにおいて直接投資と言っているのは、形式的には株式の取得であれ、ローンの形であれ、会社の経営に持続的な発言権を及ぼすものは直接投資だ、このように見ているようであります。しかし、内容的に見ますと、短期資本のごとくすぐ出ていってしまうというようなものではなくて、つまり、各国の金利の差において動くというものではなくて、雇用と生産を増して経済成長に資するような安定した資金ですね、そういうものをとらえているという感じでございます。しかし、これは場合によっては、そういう直接の投資を受ける場合の経済社会上の影響が非常に大きい場合があります。たとえば、最近でもブリティッシュ・フォードの株、三億五正方ドルの株をアメリカのフォードが買ってしまった。これをケース・バイ・ケースでイギリス政府が許可したという例もありますが、あまり違うものもありますし、そういう事例が起こるので、OECDとしては無条件に関税自由化はできぬというのがいまの段階のことでございまして、これをどのように規制するかというこのルーリングはまだできていない、これはいまから研究すべき問題じゃないか、このくらいの段階じゃないかと思っております。  それからOECDの代表部設置に伴って何か公館のあり方についてのことでございますが、正直なところ、まだどのような配置を考えたらいいかというところまで考えは及んでいないわけでございます。OECDは、幸いに今度御了承を得ましたらパリに専門の領土を持たない公館ができるわけでございます。そうして、ジュネーブには青木君が主宰しているのがございます。EECをどうするかという問題は前々からあったんでございますが、これは現にもうブラッセルの大使館で大体こなすことができる、そのほうが便利であろうということでございますので、いまのところOECDを御承認いただいてこの代表部をつくるというところまでで、いまこれのリシャッフルを考えるというところまでは、まだ私どもも考えていないわけでございます。今後の運営の状況を見まして、また、各方面の御意見を、反響を見てから考えてみたいと思います。
  174. 曾禰益

    ○曾祢益君 こういうことはむろん、実験しながら進んでいくのでしょうから、まずOECD代表部をつくるということでむろん当面けっこうだと思う。ただ、そういったような多少地域的に分散して、やはりそこにある意味でいい点もあるけれどもロスもある。だから、OECD本部のデレゲーションができる。そこがやはり中心になるならば、少なくともヨーロッパにおける、ヨーロッパに対するやや広域な経済協力関係のことは、大体中心を一カ所に据えて考えるということが今後やはり経験から出でくるかもしれないと思うのです。そういうようなお考えがあるかどうか伺ったわけです。それはそれでけっこうです。
  175. 羽生三七

    羽生三七君 関連して。  OECD本部の機構の全容というものはどういうものになっておるのですか。その点ちょっと人員とか、ごく簡単でいいです。
  176. 曾禰益

    ○曾祢益君 それに答えるにあたって、今度はあなたの関連に僕が関連して。  日本側からも出せるわけですよ、今度のOECDのほうに。それはやはり相当考えておられると思うので、日本側からも職員を出すべきですよ、こういうところに、OECD本部に。だから、そういう点も含めてお答え願いたい。
  177. 中山賀博

    政府委員(中山賀博君) OECDの職員は大体ただいまのところ千人おります。そこで、上部の機構としては理事会、執行委員会、事務総長がありまして、理事会というものは最高機関で、それから執行委員会及び事務総長は理事会の活動を補佐する機関でございます。その理事会、執行委員会、それから事務総長というものがあって、これが主となって機構を動かすわけですが、その下には大体三十五の大小の委員会がございまして専一別に分かれております。大きな委員会としては、経済政策委員会、貿易委員会、開発援助委員会ですか、小さくさらにわかれた委員会としては、農水産関係、工業及びエネルギー、労働力、科学技術、核エネルギーあるいは欧州通貨協定、貿易外経常取引及び資本取引の自由化、こういうふうにこまかく分かれております。それから、確かに今後したがって日本が加盟いたしました場合には、わがほうも職員を出せるはずでございます。これは大体各国別に一応の割り当てというものは考えられるわけでございますが、現在のところは英米系の人、それからフランスの人が非常にアクチョブに働いておるわけで、これはOECDのことばの制約から来るものだと思います。しかし、われわれとしては、ただいまのところ、さしあたって二名の日本人職員を候補者としてさっそく採用方を申し入れております。
  178. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、執行委員会とかあるいは理事会ということですが、そういう場合に、もし各国別の割り当てがあったという場合には、人数の関係のようなときには兼任とかなんとか、そういうことでまかなうわけですか。その割り当てはないわけですか。当面二名というお話がありましたけれども
  179. 中山賀博

    政府委員(中山賀博君) これはいままでのところは、たとえば事務総長につきましては主要各国間の話し合いできまっております。したがって、事務総長なんかにつきましては、必ずしも国籍できまっておりません。それから、むしろ私が申し上げましたのは、下の、この千名の中にいる、むしろこの事務総長以下の、下級と言うと悪いですが、比較的下級の、下の職員の——正確に言えばですね、この大体各国別の配分ということを考えておりまして、もちろん日本なんかに対しても採用の意思を示しておりますが、国連のほうには何か一つの基準があるというようなことも聞いておりましたが、OECDでは正確な割り当てというものはきまって、ないようでございます。
  180. 羽生三七

    羽生三七君 その場合ですね。まあことばの制約か何か、特定の国に人員の配置が片寄っていた場合、まあ、会議の席上で日本側の発言は幾らでもできますが、機構そのものから来る制約から不利をこうむるようなことはありませんか。
  181. 中山賀博

    政府委員(中山賀博君) その点はわれわれも非常に心配しているところでございます。そこで、これはしかし、同町に、有能な人がいたならばこれを採るにやぶさかでないというたてまえをとっているので、われわれとしては、すでに若いゼネレーションで、外国大学等を出て非常にことばもたんのうな人がおりますから、そういう人を漸次まあ養成して、そういうほうに向けたい。それからもう一つは、民間人でもよろしいわけですから、民間人の中でも特に有能な方をそういうほうに向けていきたいと思っております。これはしかし、むしろ私は抽象的な割り当ての問題ではなくて、実力の問題でございますので、日本の加盟が、年を経て日本人の実力が認められれば、漸次そういう方向に移っていくのだと思います。もちろん、会議等でこういう諸君のあるなしというものは、非常に大きな影響力を持つことはもちろんでございます。
  182. 野坂參三

    ○野坂参三君 時間もだいぶたちましたので、簡単に一つの問題だけ聞いておきたいと思うのです。  いまOECD加盟の問題は、日本経済全体に対し、特に日本経済の自主的な発展にとって深刻な、また長期にわたる影響があると思うのです。それから、むろん工業、農業、それから労働者や農民、中小業者、こうした者の生活にも面接間接、深刻な影響を与えるものだと思いますし、まあ、衆議院、参議院を通じてのいろいろの問答をお伺いしまして、問題はたくさんありますけれども、私は一つの問題、言いかえれば、政府側の御発言が、先ほど曾祢君が申しましたように、安易な考え方に立っておられないかということ。まあ、池田総理の発言なんか見ますと、OECD加盟によって万事がうまくいくのだと、こういうふうな印象をわれわれに与えておられるようです。それから、ここに提出されました政府側の説明書などでも、国際的協調による繁栄をわれわれは求めるということ、これが中心目的のようになっておる。はたしてそうだろうか。政府側では、いままでのような個別的な各国との交渉ではなくて、集団的なOECD加盟二十一カ国との集団的討議によって問題を論議し、ここから日本の繁栄をはかる、こういうふうに言ってバラ色に描かれておると思うのです。これを私見たときにすぐ思い出したのは、四年前に池田内閣ができて、高度成長政策、所得倍増政策、あれを打ち出されたときに、非常に楽観的なバラ色で描かれて、また多くの国民もそれにだまされたと思うのです。ところが、四年たった今日見ますと、いろいろな破綻ができております。政府自身でもアフター・ケアー病気を直すあとの始末をやる。こういうことを考えたときに、いまOECDに対する考え方と、四年前のあの高度成長政策、所得倍増政策における考え方と同じような楽観的な、あるいは軽率なこういう考えから生まれていないかということを私たち非常に不安に感ずるし、また、いろいろな問答を通じて、具体的にやっぱりそうだと、同じような轍を踏むのじゃないかと、こういう印象を私たちは受けるのです。あの高度成長政策の問題にしましても、また、今度のOECDの問題にしましても、それ自体が問題であると同時に、客観的な条件、たとえば国際経済情勢のこれの正しい認識のもとで、はたして高度成長政策を打ち出されたか、あるいはOECD加盟を決意されたかという点については、私たちとしては、政府は非常にこの点において大きな誤りをおかしたのじゃないかというふうに考えておるのです。  つまり、今度のこの問題にしましても、池田総理やあるいは外相なんかの申されることを見ますと、OECDのこの文書から出発されておりますけれども、いま問題は文書ではなくて、文書はむろん問題ですけれども、しかし、いまの日本を取り巻く客観的条件、あるいは日本経済力自体がどうであるかという現実から問題を出発して加盟する、しないを決定すべきだと、これは私は日本の将来をになうものとしては深刻にこの点は考えるべきじゃないか、こういう点を私たちはまず申し上げて、それでは、いまの現実の問題を見たときに、このOECD関連して三つの問題があるように思っているのです。  この第一は、OECD内部の、矛盾あるいはたががどうなっているかという問題、これが一つ。それから、このOECD一つの主要な目的である低開発国に対する態度、これがOECDあるいは加盟諸国に対する反発態度とこういう仮開発国の問題、それから第三が、ソ連、中国その他の社会主義国の最近における動き、こういうふうな問題からこのOECD加盟の問題を判断すべきであって、われわれの考えでは、事態は、OECDやあるいはEECができたあの当時よりは非常に大きな変化が来ている、あるいは根本的な変化が来ておるのじゃないか。したがって、OECDの目的とか機能とか運営も、当然前とは違った状態になってきている。ここからわれわれは出発しなければならない。こういうふうに考えるのです。  まず第一の問題にしますと、御存じのように、OECD内部では、いままでは以前のような、たとえばEEC等等と、あの時代よりアメリカの支配というものが非常に弱くなってきている。それから、加盟している各国が独自な政策を持ち、また独自な動きをとってきているということ、これの一番代表的なものは、先ほどの質問にもありましたように、フランスの態度だと思います。フランスは、御存じのように、EECにイギリスが加盟すると、間接にはそのうしろにいるアメリカ影響を払いのけたいと、こういう態度をとってきております。それから、東南アジアの中立化といまの南ベトナム等との問題と関連して、さらに中国の承認をやってきている。それから、関税一括引き下げについても反対してきておる。これはOECDに直接関係はない問題もありますけれども、このいわゆる西欧側における経済的な団結とか、結束とかというものは昔のようではなくて、ここに大きな破綻が来ている。OECD自身の一角がくずれつつあるのだ、こう言っていいのではないか。さらに政治面、軍事面を見ましても、フランスは独自の核兵器の開発をやろうとしているし、また、ポラリス潜水艦を拒否するとか、フランス以外にOECDに加盟しているオランダも、やはりポラリスを拒否するという態度をとっている。私が申し上げたいのは、こういうふうにしてOECD自身の内部が、昔のようなアメリカの直接、間接の指導下において団結するということが、もう乱れてきている、瓦解しつつある。ことに、またイギリスの問題を見ましても、たとえば中国なんかに対しても、十年間の延べ払いをやっております。これはOECDの一応の約束によれば、五年間であります。日本はやはり五年間に縛られている。ところが、イギリスなどは、これは十年間、それから、たとえばココムにしましても、イギリスなどはココムを破っていろいろのことをやっている。中国に飛行機を輸出したり、あるいはソビエトに石油のパイプを輸出をしております。アメリカは反対したけれども、イギリスは独自の立場でこういうことをやっている。こういう例でもはっきりしているのは、日本にも話し合いがあったそうですけれども日本がこの取引を結局やめざるを得なかったのは、アメリカの強要だといわれております。しかしながら、イギリスにおいては、こういうところに、拘束されずに独自の態度をとっているのです。また、西ドイツにしても、いまではココムの範囲を越えていろいろのいわゆる社会主義国との貿易の発展を考えているといわれております。こういうことを考えてみますと、OECDの加盟国自体の間に矛盾が以前とは比べものにならないほど深刻になってきており、日本だけがここではばかを見るのではないだろうか、こういう不安を私たちは非常に身をもって感ぜざるを得ないと思っております。これが第一の問題。  それから、第二の問題としましては、OECDの重要な役割りでおるところの後進国へのいわゆる援助の問題です。この問題でも、一つの例としましては、御存じのように、国連で最近世界貿易開発会議が開かれました。で、そこではどういう事態が起こったかといえば、ここでもOECD加盟国が、この会議を開く前に、内部の統一というものがとうとう実現することができないで、日本の新聞でも四分五裂の状態だ。こういうふうなこともいわれております。あそこで、結局後進国に対するいわゆる大国の援助というものが、大国の利益のように、大国の望むように、アメリカその他が望むような方向で京とめられたのではなくて、低開発国自身の反発、自分自身の新しい道を歩んでいこうとする——前のように帝国主義の援助や、帝国主義基盤のもとでやるのではなくて、低開発国自身が帝国主義国のただ単なる資源の供給国だ、こういう立場ではなくて、自主的な発展をやろう、こういう態度で出てきて、結局、OECDにおける後進国援助の問題も、いわゆる大国の思うようにはいかなかった。こういう事態が起こっております。  それから、その次に第三には、いわゆる社会主義国の問題ですが、これについては多くは申しません。これはソビエト、中国その他の国々にしても、最近の情勢を見ますると、いろいろ問題もおりますけれども経済的な発展は着々と進んでいると思います。しかも、こういう国がいわゆる東西貿易、さらには低開発国に対する援助、こういうものがかつてない大きな勢いで進出していると思うのです。こういう私は三つの状態を新しい問題として考慮して、そこでOECD加盟の問題が決定されなければならないと思います。したがって、私たちは、政府の考え方は、結局これはこうした現実の相当これは日本にとってはマイナスの現象だと思います。これを深刻に考えて決定すべきであって、ただこういうものが出された、アメリカから強要があった等々というのではなくて、自主的な立場で、こういう問題は決定すべきではないだろうか。いまの事態を見ますると、OECDに加盟しながら、実は加盟諸国の間におけるいろいろの市場の争奪戦、競争だけが私は激烈になるのではないか。協調の機関ではなくて、あるいは競争の機関になるのかもしれません。ことに、私たちはOECDに新規に加盟すると、日本が新しく加盟すると、その結果として、自由化に関する御存じの二つの規約、あれをおそらく日本に対して強要してくることは、これは明らかだと思うのです。で、イギリスとかその他、つまり以前に、古くからEEC、OECDに加盟しておる国と、おくれて加盟する国とでは、大きな差が出てきていると思うのです。イギリスなどは、もうすでに、先ほど申し上げましたように、OECDやココムというものを飛び越えて先に進んでおる。日本は、これからこの規約どおりに忠実にやらされねばならないと、こういう事態におちいっていると思うのです。こういうことを考えますと、私は、共産党としては、このOECD加盟はやるべきではない、こういう立場をとっております。私はこうした三つの点をあげて、私たちの大きな疑問を外相に申し上げて、こうした問題についてのお考えが聞きたいと思います。
  183. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そういうようにむずかしく考えないのです、私どものほうは。国際的な協調によってお互いの繁栄をはからなければならぬということは、野坂さんも、私、反対でないだろうと思うのです。まあ、孤立した繁栄はあり得ないというわけでございまして、世の中が、あなたが御指摘のように、多彩な分極化の傾向を見れば見るほど、あらゆる触覚を動かしまして、情報は的確にキャッチしておかなけりゃいかぬと思うのでございます。OECDの論議もますます多彩になり、豊富になることでございましょうし、そういう場面から、日本が孤立しておっていいとは私ども思わないのでございます。国民に対する責任といたしまして、こういう機関に座席を占めておるということは、大切なことであると思っております。  それから、先ほども曾祢先生の御質問にお答えしましたように、現在、われわれがやっておる経済政策というようなものが、もうOECDの加盟各国の水準にまで来ておるわけでございまして、OECDに入ろうが入るまいが、すでに日本の実態は、そこまで来ておるわけでございます、で、OECDが、OEECの地域的な限界を脱皮しまして、カナダとアメリカが入って、そうして、今度アジアの日本が入るということになりまして、先進工業国といわれる国々の一つクラブとして完結した形になるわけでございまして、われわれが国内の経済政策を考える場合におきまして、経済外交を考える場合においては、特にそうでございますけれども各国現実のビビッドな動きというものを時を移さずにキャッチしておかなけりゃならぬわけでございまして、そういうことを頭に入れて、われわれは、内外にわたっての経済政策の立案と運営に万全を期さなければならぬわけでございます。私どもは、そういう意味で、この機関に、どこからの強要でもなく、われわれが自発的に加盟したいという意思を表明し、そうして、満場一致の議決で招請を受けたわけでございまして、事柄はきわめてすなおだと思うのでございます。  それから、援助の問題でございますけれども、援助の問題につきまして、社会正義圏のボスといわれる国々がどんどん援助をやられることは、私は非常に賛成するものでございます。かけ声ばかりでなく、実際にやっていただきたいと思うのでございます。いままでの実績から見てみますと、OECDの加盟国がほとんどの援助をやっておるわけでございまして、社会主義のボス国、これはまだ見るべき援助をいまやっていないわけでございまして、これはやはり南北問題の解決の大きな有力な手順といたしまして、ソ連とか中共というような国々がどんどん援助をされることは、世界のために私はいいことだと思うのでございます。  それから、貿易開発会議に臨む態度がばらばらだということでございますが、これはまだ始まったばかりでございまして、いま各国の代表の演説が続いておるわけでございます。これは長期にわたる世界の課題だと思うのでございまして、この第一回の貿易会議におきましてコンクリートな結論が出るなんということは、そんなに甘いものじゃないと私どもは思っております。長期的に見ましても、今度の第一回の会議外、大きな意味で正しい方向づけが行なわれることが望ましいと思います。南のほうの国々からも、どんどん建設的な意見が出るし、北のほうの国国からも、これに対する意味のある接近が行なわれることがいいことなのでございまして、これについて活発な論議がかわされて、その中で、正しい一つ意味のある方向づけが行なわれて、その方向のもとに社会主義圏といわず、資本主義圏といわず、帰一した方向が出ることは、非常に世界の平和のために私は望ましいと思っておるわけでございます。あなたの言われる矛盾が発展すると——この矛盾論というのは非常にむずかしい問題でございまして、これは私は深く立ち入りませんけれども、百歩譲りまして、そういう矛盾が発展すればするほど、OECD加盟の意表はますます増大すると、そのように私は考えます。
  184. 森元治郎

    ○森元治郎君 ちょっといまの御答弁に関して数字だけ……。ソビエトが低開発国を援助すると約束をして実行した額と、その契約を履行まで行っていないその数字だけ教えてください。
  185. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ただいままでの調べによりますと、社会主義圏として後進国援助を約束をした金額が大体五十億ドル、実行されたものが十四億ドルと聞いております。その大部分がソ連と承知していただいて差しつかえないと思います。
  186. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) ほかに御発言もなければ、本件に関する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  187. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。岡田委員
  188. 岡田宗司

    岡田宗司君 社会党を代表いたしまして、本案の承認に反対をいたします。  池田総理大臣は、非常な意気込みをもってOECD入りを決意されたわけですが、池田総理大臣の言われたことを要約いたしますと、日本は開放経済体制に入らなければならぬし、もうその力も持っている。そうして、すでに貿易自由化、IMF八条国移行をやっておる。で、もう当然これによってOECDに入って、そうして世界の先進国の仲間入りをしていくんだ、こういう考え方であり、非常な大国意識を持ってOECD加盟を急がれたわけでございます。ところが、OECDに入るということになりますというと、貿易外取引自由化の規約、資本移動自由化の規約、この二つの規約を受諾することになる。そして、それに対しまして義務を生ずることになるのであります。もちろん、政府の説明によりますというと、それを受諾する際に、日本の産業経済影響を及ぼす面について留保条項を付し、そして。それによって悪い影響のあらわれることを遮断しておるのだということでございますけれども、しかし、いままでの審議の過程を通じまして、はたして政府の考えられておるように、これらの留保条項を付して、日本経済に及ぼす悪い影響を遮断することができるかどうか疑問であります。また、この二つの規約を受諾いたしまして、そのとおりに日本が行なう義務が生じてまいりました場合、日本がそれに対処するだけの準備ができておるかということになりますというと、はなはだ怪しいものだと言わなければならないのであります。たとえば、国際収支の今後の動向について非常に重大なファクターになっております海運収支の問題、すなわち、海運の問題につきましては、OECDに入るに際しまして日本側が得ようといたしました留保条項を拒否されまして、かなりきびしい態度をもって臨まれましたがために、あわを食って海運政策を立て直すというようなことをやっておりますけれども、しかし、これがなかなかうまくいきそうもないというようなところ、私どもはどうもやはり準備が不足しておるんじゃないかというふうに考えられます。また、資本移動の自由化という点につきましても、福田通産大臣にしても、赤城農林大臣にしても、そのほかこれはケース・バイ・ケースに審査をして、そうして、日本に入ってきて、外国の資本が日本の企業なりあるいは産業なりを支配し、また、それによって日本経済に悪彰響を及ぼすことを押えるのだ、こういうことでございますけれども、どうもいままでの行き方、あるいはまたいままでの実例から見まして、はたして今後それができるかどうか、それに対処する方針というものがどうもまだはっきりしておらないようでございまして、したがって私どもは、これらの面についてもなお準備不足でないかというふうに考えるのであります。あるいはまた、OECDに入るにあたりまして、盛んに先進国の仲間入りをするのだということで大いに先進国ぶりを発揮されておるわけでありますけれども、労働慣行の面につきましては、中へ入って、恥をかくような状態にあるわけであります。大橋労働大臣の御説明によりますというと、これから何年間かかかってそういうふうにするんだというふうに言われておりますけれども、この点なんかにつきましても、やはりもっと早くから準備をして、ちゃんと入る前には、また相当向こうからしりの来ないようなぐあいにしておかなければならぬと私は考えるのでありますが、それらの点が足りない。数えあげれば、準備不足といいますか、そういう点がずいぶんあると思いますので、いまこの時期にOECDに加盟するということは、なお時期尚早というふうに考えられますので、反対する次第でございます。(拍手)
  189. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 井上委員
  190. 井上清一

    ○井上清一君 私は自由民主党を代表いたしまして、本案に賛成の討論を行ないたいと存じます。  OECDの目的は、ここにあらためて申し上げるまでもなく、均衡のとれた高度経済成長の達成、低開発国援助の増大、そうして相互的な貿易拡大という三つの点に集約することができるのであります。OECDの活動が一方において経済政策、国際金融、貿易、科学技術、農業、漁業、海運、教育、税制、工業等きわめて広範な分野にわたり、他方においてガット、国連、IMF、世銀等諸般の国際機関との密接な関係のもとに進められておるのも、ひとえにかかる機構の広い視野に立った目的を十二分に実現せんとする意思のあらわれとみなすべきであります。しかして、この本来の目的は、きわめて高い理想のもと、相生に不可分の関係に立つものであります。すなわち、経済成長といい、低開発国援助といい、そうして貿易拡大といいましても、いずれも協調による国際経済の安定と発展を通ずる世界平和の維持を念願とするものでありまして、他方、先進国の経済成長なくして実効的な低開発国援助はあり得ず、また、貿易の拡大と相まってこそ、初めて援助の効果があがるという意味におきまして、これら三者はそれぞれ相関関係を持って進むべき性格のものであります。  なお、すでに政府当局の説明により明らかなように、OECDはその目的実現にあたり、常にまず精密な統計及び基礎調査を重視し、これら資料に立脚して世界的視野からの検討を行なっておるのであります。OECDの目的をこのように理解いたしまするならば、わが国がこれへの加盟を求める真の動機もおのずから明らかであると存じます。すなわち、わが国はIMF八条国移行とも相まって、いよいよ世界の大勢である開放経済体制への対処に努力しなければならない立場にあり、この試練を乗り切るためには、国内経済、産業体制の整備充実に万全の配慮をなすと同時に、ガット、国連等の場を通ずる国際経済上の諸問題の解決には特に注意し、わが国独自の利益をそこなわずして、国際的繁栄を可能とするよう積極的に協力する必要があるのであります。換言いたしますならば、わが国は進んでOECDに加盟することにより、第一にその広範な活動分野にわたる幾多の討議を通じて、わが国の国際的発言力を画期的に高め、第二に、諸般の重要経済問題に関する各国の実情並びに政策を迅速正確に把握し、開放経済体制の激流に乗り出すわが国の政策立案に資せんとするものであります。このことをさらにふえんし、貿易、国際金融、海運等多くの分野につき、わが国がいかなる具体的利益を得るかを一つ一つ列挙することは省略いたしたいと存じますが、この際私は、あらためて政府当局に対し、OECD加盟を契機として、われわれの多くが再認識するに至りました日本経済の実力と弱点、国際環境のきびしさと欧米諸国のわが国に寄せる信頼と相矛盾する要素を十分勘案し、加盟によって期待される利益を真に現実的、恒久的なものとなすよう、なお一そうの努力を切望する者であります。  以上をもちまして、わが国のOECD加盟を支持し、これに賛成する討論を終わります。
  191. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 曾祢委員
  192. 曾禰益

    ○曾祢益君 私は民社党の名におきまして、OECDにわが加盟することに賛成の意を表明いたしたいと思います。  わが国の経済の成長を通じ、国内の格差をなくし、勤労者の福祉国家をつくるために、なし得る限り貿易自由化を通じて世界におけるいろいろな後進国、先進国の格差等をなくした、ほんとうの平等な、自由な、平和な国際社会をつくるのにつとめるべきはわが国として当然のコースだと思います。そういう意味で、わが国が国連あるいはIMF、世界銀行等に入りまして協力してまいったわけでありますが、また、最近わが国が開放経済体制に向かうために、貿易自由化、IMF八条国への移行等を進めてまいり、また、そのいわば総仕上げとしてOECDに加盟し、その機会に貿易外収支並びに資本収支自由化に踏み切るということは、大勢としてまことに正しい行き方だと思うのであります。そういう意味におきまして、基本的にはその方向を私どもは支持いたします。国際機関の中でOECDは、何といっても、先進国、特に西欧側のクラブの性格を持っておりまするが、しかし、その少なくとも目的とするところは、われわれの理想でもある高度経済成長を持続的に行なっていく、また、後進国に有効な援助をする、世界貿易自由化と拡大につとめる、こういう理想からいいまして、先進国クラブであるからそれに入っていけないという理由は成り立たないと思うのであります。そういう意味で、私どもはわが国のOECD加盟に賛成であります。ただ、賛成だからといって、このまま無条件に賛意を表するわけにはまいらないと思うのであります。われわれは、いつまでも日本経済の孤立化に立てこもることは許されないと思いますが、ここに少なくとも三つの相当強い希望条件を付して政府の善処を要求したいと思います。  第一には、これはOECD加盟から来る直接の義務だけの問題ではなくて、開放経済に向かう国内体制としてのわが国の現在における経済社会状態を見たときに、何びとも承知しているように、一方においては開放経済に向かわなければならないけれども、他方においては、国内の経済社会のいろいろな矛盾、いわゆる二重構造が一つも高度経済成長の過程において、解決されてないのみならず、いたずらにかけ声においては農業、中小企業の革命的な改革ということが叫ばれ、現実はむしろ格差がややもすれば増大する傾向すらあることは、まことに遺憾千万であります。そういう意味で、開放経済に向かう体制におけるこのような中小企業、農業の近代化、それと他産業、大企業等との格差の是正という点において、特にOECD加盟に伴なう資本等の自由化の波もさらに高くなるわけであるから、特にこれらの格差是正についての格段の措置をとらなければならないということが第一であります。  第二には、すでに質疑応答の中にも明らかになったとおりに、中小企業とは言えない、重要な基幹産業であるけれども、まだ非常にかよわい不況産業、あるいは成長の過程にある産業、なかんずく海運業あるいは乗用車を中心とする自動車産業等のことを考えた場合に、何ぴともOECD加盟に伴なういろいろな制限から見て、これらの産業に対する施策において決して十分とは言えないということは明らかだと思うわけであります。したがいまして、それらの国内産業の保護について飛躍的な、それこそ画期的な施策が伴なわなければ、これは非常に大きなマイナスがあるということは、口をすっぱくして言わなければならぬところだと思います。  第三の点は、このOECDの加盟にあたっての政府の心がまえ、態度についての希望条件であります。すでにこれも質疑応答を通じて明らかになったとおり、やはりOECD加盟が何とはなしに、日本みずからが先進国のクラブの仲間入りをしたのだ、こういうような安易感で入るのでは失敗ではないか。むろん先進国の一つになったし、ならなければならないという大勢と自負心を否定するわけではありませんが、そういう甘い考えではなくで、むしろOECD加盟によってヨーロッパあるいはEEC等の閉鎖性に対して、われわれの開放の要求をぶつけていくのだ、こういうような気持ちを持っていくべきではないか。また、アメリカあるいはフランスの経済政策の中で、たとえば海運業に対する行き過ぎた保護政策等に対しては、それこそOECDの場を通じてその非を堂々と追及し、これを改めさせるという気魄に満ちた態度でOECDに加わり、われわれも義務を負担するが、同時に、誤りは摘発していく気魄が必要ではないか。特にOECD加盟にあたっての一番基本的な心がまえは、われわれが先進国側のクラブに入れてもらったというよりも、われわれが、気持ちとしては後進国側、特にアジアの後進国側の気持ちを体して、その代表の意味OECDの西欧先進国側に接するのだ、この気がまえが基本的に特に必要だと考えるわけであります。また、そういう意味からいいましても、単なる気がまえだけでなく、総理大臣との質疑応答の際にも申し上げたのでありますが、少なくとも、DAG時代からもそれとなく、もう実際上のいわば不文律とも言うべき、先進国側としてはその国民所得心あるいは国民総生産の一%ぐらいはむしろ後逸国援助のために、いわゆる身銭を切ってやるという、このかまえがやはり基本的になければならぬ。そういう意味におきまして、OECD加盟にあたって、ただふわっとした気持ちでいくのじゃなくて、後進国援助に対する日本の正当な役割り、それに対する備え、その気魄に満ちた態度でひとつ西欧側と折衝していくという、これが必要だと思う。  最後に政府が最近政治面等においても、西欧帝国とのつながりが深くなっていくということは、たいへん私はけっこうな外交の路線だと思います。イギリス、フランスの、アメリカだけでなくて、定期的な外相会談けっこうであります。それから、いろいろな国際機関に日本が入っていくのはたいへんにいいことだと思いますので、OECD加盟にもそういう意味で希望条件を付して賛成でありますが、ともすれば、新らしい機構に入ってもこなし切れない、こういううらみなきにしもあらずでありますから、十分にこれを機会に活発なる外交の展開を期してもらいたい。  以上の希望条件を付しまして、私は、OECD加盟に賛成の討論を終わります。
  193. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 野坂委員
  194. 野坂參三

    ○野坂参三君 私たちもOECD加盟に反対する立場で、その理由を四点ほど申し上げたいと思います。  第一は、先ほど私が質問したあそこに理由があると思います。これについては私は触れません。  それから第二に、OECD自身の性格ですが、一言でいえば、これが成立したそのときから、アメリカ世界政策を遂行する一つの道具としてこれはつくられ、また、それとして発展してきている。言いかえれば、いわゆる大国のグループの世界経済同盟の性格を持っている。これに日本としては参加すべきではない。これが第二の理由です。  第三としましては、OECDが低開発国の援助という形はとっておりますけれども、これもいわゆる大国、帝国主義諸国が共同して低開発国を収奪する、この話し合いの場になっているのだ。これに日本は参加すべきではない。  第四には、これが日本に対する影響だと思います。先ほど私の質問の中にも申しましたけれども、これに参加することによって、ヨーロッパアメリカの諸国は、わが国に対する自由化を強要しながら、逆に自分のほうでは輸入の制限とかいろいろの日本の海外発展についての妨害を試みております。その結果、結局わが国の産業経済は大きな国際独占資本の支配のもとで再編成され、わが国の勤労人民はその重圧のもとに一そう強く縛りつけられ、犠牲にされるにすぎない。したがって、こういうものには参加すべきではない。  最後としては、われわれはこの道を進むのではなくて、OECD参加という、こういう道を進むのではなくて、すべての世界の国々、OECD参加の国国はむろんのこと、参加しない社会主義国や低開発国、これらと自主独立の立場で経済的な緊密な政策をとるべきであり、この道を進むのがほんとうの日本の自主的発展の道である。こういう観点から、この条約承認に反対する者であります。
  195. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 他に御意見もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  196. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 御異議ないと認めます。  それでは、これから採決に入ります。本件全部を問題に供します。本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  197. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 多数でございます。よって本件は、多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十三条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  198. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日は、これをもって散会いたします。    午後四時六分散会      —————・—————