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国務大臣(
椎名悦三郎君)
漁船拿捕の問題は、これはいわゆる
李ラインというのを認めるか認めぬかという問題にかかるのでございますが、これは
国際法上から申しましても、あるいは
国際慣行から申しましても、まことに
不法不出なものでございまして、ごうもこれを認めるという必要は、毛頭ないのであります。わが方はそういう
方針のもとにやっているのでありますけれ
ども、
向こうは、これは合法的だ、適法なものであるという前提のもとに、
季ラインを侵犯する船は、これはもう当然見のがすわけにいかない、こういう
考え方で、根本的にそこに食い違いがあるのであります。で、これをいかにして打開するかというのでございますが、
日本といたしましては、御
承知のとおり、
国際紛争を力をもって解決するという一切の
手段は、これは憲法上においても認められておりませんし、できない、あくまで話し合いでこれを打開する以外にはないと、かように
考えて、それで
漁業交渉を先般進めたのであります。すなわち、かような
李ラインなんというものはもう認められない、
韓国側からこれは撤廃すべきものである。これにかわって
専管水域――
領海ということまでは行かぬにしても――
専管水域というものをだんだん
考えられてまいっておりますから、
領海プラス専管水域というものを、十二海里なら十二海里というものに認め、そうして、その認め方についてもいろいろ技術的に困難な問題がありますが、その
専管水域外においては、
魚族資源の保護のためにお互いに自制し合って、規制をする、そうして、さらに
漁業関係については特別の
援助を、
漁業協力をひとつ
考えようじゃないかというような、大体こういった三項目について話を進めてまいったのでありますが、不幸にして、
韓国側の国内の
事情のために
交渉が中断されて現在に至っているような
状況であります。でありますから、あくまでこの線を進める以外には私はないと
考えております。最近非常にこの
漁船拿捕あるいは
巡視船の
活動がひんぱんになって、もう網をおろすひまもないほど活発で、したがって、
拿捕の隻数は必ずしも昔と違って多くなったというのじゃありません、むしろ少なくなっているかもしれませんが、しかし
巡視船の
活動が非常に活発になった。そこで、こっちは正当な
漁業でありますけれ
ども、
向こうはこれは
不法だと、それで追い回されるというような
関係で、操業率が非常に落ちて、ために倒産をするものすら出てきておる。であるからして、国内の
漁業者は、
政府がこれを補償すべきであるというような陳情もしばしば出ておるのでありますけれ
ども、これは
李ラインを前提にする
拿捕行為というものを是認するというような思想につながるのでございまして、絶対にこれは筋違いであるということで、われわれはこれを受け付けるわけにはいかぬ。まことにお気の毒ではあるけれ
ども受け付けるわけにはいかぬ。それでもう
一つの道である
漁業交渉を再開して、そうして、なるべく早くこの問題を妥結するという以外にはもはや方法はないということでやっておるような次第であります。
商品の
援助は、いま
事務当局からもお答え申し上げましたとおり、これはその問題とは
関係なしに、少なくとも事実上の隣国
関係であり、長い間いろいろな緊密な
関係をとってきた
韓国の実情がまことにどうも見るに忍びない、少しばかりの
援助をすれば、
韓国の雇用
関係も、あるいはまた、国内あるいは対外的な外貨獲得の
関係においても、目に見えて実績があがるということがわかっておる。つまり、原材料あるいは工場の機械部品等の補給いかんによっては、いまの非常に低い操業率が急に高まってまいりまして、雇用
関係もよくなるし、
経済関係も非常に強化されるということがみすみすわかっておるのでありますから、請求権問題を離れた
一つの
経済協力という
意味において商品の
援助をしようじゃないかということが、今年の春ごろに
先方の希望もあり、こちらも、しからばというので、話が始まったのでございまして、これは全然こういう問題とひっかけて、そうして、これのかけ引きに使うという性質のものではないのでございまして、これはこれとして進める、こういう
事情でただいま
先方の確答を待っておるというような
状況でございます。