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1964-02-20 第46回国会 参議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月二十日(木曜日)    午前十時十四分開会   —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     黒川 武雄君    理事            井上 清一君            長谷川 仁君            加藤シヅエ君    委員            青柳 秀夫君           大野木秀次郎君            木内 四郎君            杉原 荒太君            山本 利壽君            岡田 宗司君            佐多 忠隆君            羽生 三七君            森 元治郎君            佐藤 尚武君            曾祢  益君   国務大臣    外 務 大 臣 大平 正芳君   政府委員    外務政務次官  毛利 松平君    外務省アジア局    長       後宮 虎郎君    外務省国際連合    局長      斎藤 鎮男君   事務局側    常任委員会専門    員       結城司郎次君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○国際情勢等に関する調査  (国際情勢に関する件) ○経済協力開発機構条約締結につい  て承認を求める件(内閣送付予備  審査) ○通商に関する日本国とオーストラリ  ア連邦との間の協定を改正する議定  書の締結について承認を求めるの件  (内閣送付予備審査) ○北太平洋のおっとせいの保存に関す  る暫定条約を改正する議定書締結  について承認を求めるの件(内閣送  付、予備審査) ○原子力の非軍事的利用に関する協力  のための日本国政府アメリカ合衆  国政府との間の協定を改正する議定  書の締結について承認を求めるの件  (内閣送付予備審査) ○通商に関する日本国とエル・サル  ヴァドル共和国との間の協定締結  について承認を求めるの件(内閣送  付、予備審査)   —————————————
  2. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) それでは委員会を開会いたします。  国際情勢等に関する調査を議題といたします。  前回に引き続き、当面の国際情勢につきまして質疑を行ないたいと存じます。  ちょっと速記を止めて。   〔速記中止
  3. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 速記を始めて。
  4. 曾禰益

    曾祢益君 日中問題で若干重要な問題を御質問申し上げたいと思います。  最初に、やはり条約関係が非常に基本的なものだと思いますので、あらためて条約問題に関連して御質問いたします。  まず台湾地位でありますが、これは、従来から断片的には主としてサンフランシスコ平和条約に関連して、日本が放棄しただけでまだ地位が確定していないというふうに伺っておりましたが、そのとおりに解釈してよろしいかどうか、大臣お答えをお願いいたします。
  5. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 条約上は、そういうように承知しております。
  6. 曾禰益

    曾祢益君 サンフランシスコ平和条約におきましては台湾澎湖島等を第二条ではっきり日本が放棄しております。しこうして、その帰属については何にも書いてございません。しかし、ここに日華平和条約と称する条約がございます。これによりますと、第二条で日本は「放棄したことが承認される。」両国が承認するという意味だと思いますか——となっております。このサンフランシスコ平和条約とやや条約関係が違うと思いますが、それでもまだやはり所属がきまっていない。単に放棄しただけで、国民政府——日本条約相手国となっている国民政府帰属したものとは法的にはならない。こういう解釈でよろしいかどいか、はっきりお答えを願いたい。
  7. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日華平和条約では、その地域領土権を認めたというように私ども解釈いたしておりませんので、いまあなたが仰せになったようなことの理解で政府もおります。
  8. 曾禰益

    曾祢益君 私が解釈しておりまするように、なるほど国民政府条約を結んでおりまするが、その中の規定そのものからいえば、わが国が放棄したことを承認しているだけであって、その放棄した台湾澎湖島がいずれに所属するかについては、この条約もきめていない。したがって、日本が放棄したままである、帰属は最終的にきまっておらない、こういう御解釈だと思うので、私もそのように理解します。そうなってまいりますと台湾帰属が問題であります。ここに台湾に対する領土権主張する人といいますか、団体でありまするが、三つあります。いわく国民政府、いわく中共政府、もう一人は、これは私は台湾住民といったらいいのかと思います。一体その三人のうち、三者のうちいずれが正統の主張者であるか、まだきまっておりませんけれども帰属は認められておりません。三人のうちいずれが一番わが国から見て主張に根拠があり、いずれが後継者としてふさわしいか、この点に対しての政府のお考えを伺います。
  9. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) わが国は、いま曾祢委員が御指摘のように、その地域の権原を放棄した、したがって、帰属は未定であるということでございますから、サンフランシスコ講和条約に署名いたしました国々がこの問題にどのような決定をするか、その国々がきめる立場にあると思います。わが国立場からいって、その三者のいずれを希望するかということにつきましては、先ほど申しましたように、わが国といたしましては放棄したままの状態でございまして、その帰属についてただいまとやかく申し上げる立場にないと思います。
  10. 曾禰益

    曾祢益君 日本が放棄しているのに帰属について口出しするのは適当でない、こういうお考えのようで、私もそれは非常にごもっともとは思うのです。しかし、それは権利じゃなくとも、政治的にあるいは条理的に、あるいは民主主義原則からいって、一体いわゆる主権を主張している、領土権主張している単に政府というようなものだけの意見、つまり、力関係のみによって支配されるという考え方でいいのかどうか、また、そういう行き方が全体の日本をめぐる極東の平和と安全から見ていいのかどうか、それから、やはり日本考えておる民主主義からいって、一体住民意思というものを聞かずに、はっきりと領土権がきまっていれば別ですが、もしきまってないとすれば、所属には一番最大の発言者は、私は住民だと思う。その住民自由意思を尊重することなしに、あるいは伺うことなしにかってにきめるということは、私はルールに反すると思う。日本から、日本が放棄したものに対して何か欲を出したような意味で、独立をさせたい、中国本土とは一緒になるのはいやだ、させては損だと、そういう考慮をむろんすべきではないということは、全くいま外務大臣が言われたとおりである。しかし、日本考えがなくていいのか、ただ拱手傍観していていいのかという問題になると、私はそうでないと思う。日本がやはり主張すべきものは、台湾のステータスを引っくり返して、国際的な平和のつり合いをぶちこわすことではないはずだ。平和的に、最終的に言えば、帰属については台湾住民意思を聞かずにきめるということだけはあり得べからざることであるということは私は言えるのだと思いますが、外相の御意見を伺いたい。
  11. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) この段階日本が申し上げられることは、この問題はアジアの平和、安全、繁栄ということに至大の関係がある問題である、したがって、そういう観点からアジアの安全と繁栄を阻害しないように、しかも、筋の通った解決が望ましいと思うわけでございます。そういう観点から、いま御指摘の問題につきましても、政府として関心も持ち、かつ検討していかなければならない問題であると存じます。
  12. 曾禰益

    曾祢益君 その問題でそれ以上御答弁を求めるほうが無理だろうと思いますので、大体のお気持ちも一応わかるような気もするし、明確でありませんけれども次に移ります。  やはり条約関係ですか、私はこの日華平和条約、これをつくったいわば原動力である、吉田首相の、ダレス当時の国務長官に対する書簡——一九五〇年の十二月二十四日付の書簡に、やはり一つ日本政府としての中国政策の骨格といいますか、パターンというものがちゃんと出ていると思います。これは私はなかなかりっぱなものであると思う。すなわち、第一項においては、日本は究極的には中国——これはいわば大陸を主とした中国あるいは中国全体と言ってもいいと思いまするが——との全面的な政治的、通商的関係を樹立していくのだ。これはもうびしっと基本、原則というものを打ち出してある。第二項は、それを考えながらその方向に向かって一つアプローチとして、現に国連において中国代表権を認められている国民政府——台湾政府との間にそういうような関係を結んでいくのだ。いわゆる漸進的なアプローチ、積み上げ、こういうことです。並びに、しこうしてその条約においては、その条約適用区域は現に台湾政府が支配している区域に限るのだ。すなわち限定的な講和というか承認という性格。そして第三項に、今度は逆に、一方において中共政府との間には、現に中共政府国連に刃向かっているから、国連精神を貫こうという、また国連協力しようとする日本としては中共とは条約を結ばない。そのほかいろいろ中ソ友好同盟条約だとか、中共日本のいわゆる内部撹乱をやるとか、よけいなことが書いてありますが、簡単に言えば、要するに、中共のほうが国連に反しているから中共とは条約を結ばない、こういうふうに、いわば三位一体になった政策がある。この政策から見るならば、なるほどその日華平和条約を結んで国民政府との間に国交を結びましたが、予ての条約のあることが、いわゆる究極的に中国との間に日本国交を樹立するのに私は必ずしも妨げになるべきではない——ならないと思うのです。日本の一部には、台湾との条約を破棄しなければ中共と  の国交調整ができない。まあ政治的に云々は別としてですね、条約に見て。こういう議論がある。私はそれは間違っておる。その議論も間違っておるし、その後、日本歴代保守党政府が何かというと、いや、台湾との条約があるから、中共との関係はいわゆる政経分離で、政治的には何にもおつき合いもできません、経済オンリーでいきます。この解釈もみずからを縛り過ぎている解釈ではないか。むろん、そのために国民政府をどう説得するかとか、いろいろなことはございます。私はその労力を必要ないと言うのじゃないけれども、ただ厳格な法解釈としては、日本政府の建前は、今日においてもなお日華平和条約なるものがあっても、大陸中国との国交はできるんだ。して差しつかえないのだというほうが、法的解釈として正しいと思う。この点に関する政府のお考えを伺いたいと思います。
  13. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 法律論として、いま曾祢委員の御発言、私どもも理解できるところでございます。が、しかしながら、いま私ども日華平和条約というものを持っておりまするし、結びました条約には忠実でなければならぬという立場がございますので、日本政府立場といたしまして、いま日華平和条約運命政治的に論ずるというのは時期尚早ではないかと思うわけでございます。
  14. 曾禰益

    曾祢益君 政治的に論ずるには時期尚早であるとともに、いろいろなステップをとらずに、政治的にそういうことを言うのは適当でないというお気持ちはわかります。私もまさにそのとおりだと思います。しかし、法律的には私は妨げない。忠実にこれを守りながら、なおかつ、この中国大陸中国全体との国交を許容しているのはこの条約精神であるし、また、私はそうだと思うのです。まあ、それ以上政治法律を分けて答弁しろと言うのも無理でしょうから、この点はあれしませんが、逆に言うならば、外務大臣中共をどう見ておられるかということは、この点からいっても私は重要である。一方においては、国民政府との条約かあることが中共大陸——中国との国交を樹立することの法的な妨げにならないか。もう一つは、第三項の、中共侵略者だというのが残っているんじゃないかという議論がある。その点については、私は大臣のこの間の当委員会における御答弁からいっても、また現実からいっても、現に中共は、もはや朝鮮戦争のさなかの国連反逆をしている取り扱いということはもう無理なのであって、吉田書簡の第三項で、だから中共とは条約を結ばないということは、これはもうすでに事情が変わっているので、第三項はもう効果はないのだ。中共の性質を好戦的と見るか、侵略的と見るか、そうでないと見るか、これは見る立場によって違いましょう。法律的に見ると、いわゆる国連に対する反逆者だから、だから吉田第三項があるから中共との条約は結べないという議論は、これは私は成り立たない、こう考えるのですが、この点に対する大臣お答えを伺いたいと思います。
  15. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 中共政権をどう見るかにつきましては、この前の委員会においても、長谷川先生の御質問に対して申し上げたわけでございますが、もっとふえんいたしますと、私どもといたしましては、共産主義間接侵略可能性が全然ないとかというように思っているわけでは決してございません。また、いま御指摘のように、中共政権国連でかつて非難決議をされたという事実も記憶いたしております。で、私どもといたしましては、中共政権が平和を愛好し、日本侵略すみということのないように衷心希望いたします。そして、そういう前提で、この間長谷川先生に申し上げたように、現在の時点で、将来たとえば核兵器を持つとかというようなことになると問題はまた別でございますけれども、現在の時点でフィジカルな軍事的な脅威というようなものは別に感じていないということを申し上げたわけでございます。この政権との間には、いまたびたび政府が申し上げておるような政経分離原則のもとで民間レベルの接触はありますけれども政治的な関係はない。政治的な関係をどう取り結ぶかということにつきましてはこれは将来の問題でございまするが、日本国益というものの慎重な判断の上に立って、同時に、世界世論の趨向を見きわめた上で慎重に対処するという心がまえでおりますということを申し上げておるわけでございます。
  16. 曾禰益

    曾祢益君 そういたしますと、結局するところ、日華平和条約たるものからいっても、中共をいつまでも承認しない、中共との国交を樹立しないという法的の制約があるわけではない。また、吉田書簡の第三項からいっても、また国連憲章並びにその解釈からいっても、中共がいつまでも侵略者だからという、その法的な理由で中共承認しないのじゃなくて、問題はやはり政治の問題である、極東の平和と安全、国民政府との関係、そういうような関係で、あるいは自由陣営意見調整、こういうことの政治的なあれで、いきなり台湾条約を破棄して、いきなり中共との間に国交を結ぶ。私もそれには賛成でありませんが、そういう方式ではないけれども、しかし、法的に、条約的に、あるいは国連憲章決議等からいって、中共との国交樹立ができないのじゃなくて、あるいはしないのではなくて、それは政治的な問題である。条約上、法律上の制限あるいは禁止、障害はない、こう解釈していいのですか。そのくらいのことを外務大臣言ったらどうですか。
  17. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま日華平和条約に忠実でなければならないというのが私ども立場でございます。そこで先ほど私がお答え出し上げましたように、いまこの条約運命につきまして論ずるということは、私は時期尚早でもあるし、穏当でもないと存ずるわけでございます。それ以上のことは、ちょっと私に言明さそうというのは無理じゃございませんか。
  18. 曾禰益

    曾祢益君 言わぬは言うにまさるということもございますが、私は、吉田さんが立つ前にそのくらいのことを言ったほうがいいと思いますが、それは見解の相違で、次に移ります。  もう一つ観点から伺います。私は、ですから、政府としては台湾を捨てる——と言うと悪いのですけれども台湾との条約台湾との国交政治経済関係を犠牲にしてもバスに乗りおくれるなという意味中共だけと全面的に国交調整をやれという意見は間違っている。台湾を捨てないといいますか、しかし、日本としてはやはり漸進的に国交調整して中国の主人とやっていくのだ、こういうようなかまえを適当な機会にそろそろお出しになったほうがいいんじゃないかと私は思いますけれども、これは意見相違かもしれませんので、次に移りまして、一方において、そういう、日本が直接に中共のことを踏まえて、台湾との関係アメリカとの関係をいろいろ話し合いをしていかなければならない。他方においては、外務省も非常に心配しておられると思うのですが、ことしの秋の国連総会——といっても、むろん十一月中旬におくれるとは思いますが、それには中共代表権の問題がどの程度まで火がついてくるか、これにはいろいろ見方があろうと思いますが、現段階においては票読みができているわけではございませんが、政府のお考えでは、大体ことしは、何とかかんとか、いろいろテクニックもございますから、総会における先議権の争い、重要事項指定方式とか、いろいろございます。結局、中共承認側がふえて、大体において中共承認過半数で勝っても、安全保障理事会のことは別としても、総会において中共が認められることはないと見ておられるか。そういうこともあり得るというお考えなのか、その点はどうですか。
  19. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) あなたのいま御指摘のように、総会までにまだ半年余りの時日がございますし、それまでの間に、われわれが国連対策考えなければならないいろいろの現在なお未定の問題があらわになってくると思うのであります。したがって、正直に申しまして、政府は第十九総会に対しての国連対策というものを持っておりません。まだそれを打ち立てるほどの材料はいま整っていないわけでございます。鋭意これから努力いたしまして、その用意をしてかからなければならないという心組みでおる段階でございます。したがって、いま御指摘中共代表権の問題につきましても、それがどのような姿で出てくるのか、出てこないのか、出てくるとしてどういう姿で出てくるのかということについて、いま的確な見通しを立てるというような段階ではございません。
  20. 曾禰益

    曾祢益君 私は、一応のお答えとしては、もっともですし、むろんいまだ票読みができているであろうはずがございません。がしかし、かなり大きく動く——去年、おととしのように、十六票の差で過半数が得られないで、あっさり否決されるという情勢でないということは、大体想像できる。したがって、それに対処するというふうな方法や工作等もお考えと思うのですが、そこでお伺いしたいのは、社会党の諸君の御質問等に答えて、首相外相も、国連において中共がその代表権を認められる、あるいは迎えられる、こういう状態になったならば、日本国連主義であるの、だから中共承認するということばをつかってみたり、あるいは国交調整すると言ってみたり、あるいは善処すると、いろいろ言っておりますが、とにかく国連中共承認されれば、それに従わざるを得ない。その前に、国連の場を通ぜずして日本が直接中共承認外交はやらない、国連がきめればやはりそれに従うのだという趣旨のことを言っておられます。それは私はそのとおりだと思うのです。しかし、そのことは、ただ大勢に順応するのが国連主義と言えるのか。別の機会に自民党の人が問うと、日本は自主的に考えている、自由陣営の動向とか極東安全等考えてやるのだ。一体自主性が中心ならば、大勢がそう、だからといって、大勢に順応するだけでないはずです。もし、客観情勢中共が勝つという客観情勢であるならば、ただそれを拱手傍観しておっていいのか。この問題もあろうと思うので、むろん二つに割り切って、完全に多数決主義なのか、完全に自主性を貫く。そうもいかないとは思いますけれども、一体政府は、そういう場合に、国連における中国代表権の問題が討議される場合の状態として、ただ多数できまたっからそれに便乗していればいいのだというふうにいわゆる受動的に、言うならば、投げやり的な態度ではなくして、日本がその間にあって、日本の能動的な役割りを示すべきではないか、こう思うのですが、その点はどうなんですか。
  21. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 外交一般は、日本が独自の立場、独自の方針を立てまして、日本国益になるかどうかの判断の上に立って決意すべきことでございまして、いま御指摘の問題も、その例外でないと思います。同時に、この問題は、世界世論の向かうところをよく見きわめるということも、あわせて十分しんしゃくしなければならぬことは当然でございます。それで、いま御指摘の問題がどのような展開を示しますか、具体的なプロセスをさだかには読めませんが、国会等の論議では、ことばが不十分なものですから、たとえば国連に加盟するというような事態が起これはどうだという御質問でございます。私ども申し上げているのは、世界世論というものの向かうところを見きわめて、ということを申し上げておるわけでございます。国連加盟というような事態は、仮定の状態でございますけれども、もしそういう事態があれば、それは国際世論をはかるものさしとしては、きわめて有力なものじゃないかという趣旨のことを申し上げているわけでございます。したがって、いまそういう基本的な心がまえでおるわけでございます。これはもうこの中国問題ばかりじゃなく、外交一般に対する基本的な心がまえにほかならないわけでございます。したがって、国連加盟したらとか、加盟したあととか、加盟する前とか、そういう時点、時間的な要素を入れて言っているわけじゃ決してないわけでございまして、前段に申し上げたような基本的な心がまえでわれわれはあらゆる情勢に対処していくのだということが、私の申し上げられることじゃないかと思います。
  22. 曾禰益

    曾祢益君 国連主義ということは、けっこうだと思います。国連決議等に反映する世界情勢大勢というものは、やはり考慮しなければいかぬ。そういう抽象的なことを言っておられる。それもよくわかる。しかし問題は、国連決議の内容は、日本のやっぱり受動的な立場と非常に違うと思う。日本が何も世界世論を動かすなんという大それたことは、だれも考えていないけれども日本が一体中国をどう考えて、特に自由陣営の中における中国のいわゆる専門家といいますか、最も近接な利害関係を持つ日本一体中共代表権を大体どの程度にどういうふうにするとか、台湾をどういう方向に持っていくのだということは、これなくして単に潮だけを見ているのではなくて、日本という船の船長としても、あるいは水先案内人としての外務大臣は、潮を見ながら船をどう進めるかということをお考えだと思う。ですから、自主性を持ってやってもらわなければ困る。かりに国連の多数がどうであろうと、それが正しくないときには、われわれはそれに従わないくらいの自主性があってもいいじゃないか。同時に、こういうことで、アメリカの場合には、中国問題で中共が勝って、国府が追い出されるとなれば、アメリカ外交の全面的な敗北になるかもしれない。もしそういう場合に、日本がそういう事態を迎えたならば、これは日本政府の、それは保守党であろうとどの党であろうと、日本政府がそういう敗北に終わるということは、日本国民としては耐えられないことであろうと思う。非常に大きな政治的な問題であろうと思う、悪いほうの意味において。したがって、当然にそういう事態を避けるべく自主的な努力があってしかるべきだと思う。外務大臣お答えは、国連できめたら中共を大体承認していかなければならぬと言う。それも一つ方向としてはわかります  が、私はそうでなくて、そういう情勢が来たら、ただ順応するだけでなく、それならばそれに応ずる日本指導的立場があるのじゃないかということをおいて、そういう場合、中共承認し、国連から国府が無条件に追い出されるようなことで一体いいのか。もしそういう状態が起こったならば、台湾海峡の波も高くならずに済むかどうかということも考えなければいけないじゃないか。してみれば、ますますここで現実に両方の政権があるという事態を踏まえながら、やはり中国一つで、それは中共である、だが台湾はこれは一つの独自の存在であるという現実を踏まえて、日本の指導的の外交をやっていくべきではないかと、こう思うのです。ただ野党の質問に対して片言隻句で答えていくと全然つじつまが合わないようなことで、国連待ちで、国連がきめれば中共承認するのだ、それをさらに追及していくと、いや時間的に必ずしも国連の決定待ちでなくてもいいと言う。それなら、国連決定前に台湾条約を破棄して中共外交をやれという意見とどこが違うのかということも疑惑を招く。疑惑であるかどうか……。そういう解釈ならば、それを明確にしていただかないと私は困る。そういう意味で、もう一ぺんお答え願いたいのですが。国連尊重主義ということはいいけれども国連における単なる受動的立場でなくして、国連の場において中国代表権の問題をうまく解決するために日本が指導的な役割りをとっていくべきである。その意味台湾にもいろいろ使いも出すであろうし、アメリカとも話し合いをする。フランス、イギリスとも外務大臣が来る機会に話をしていくのだという力強い外務大臣の施政方針を伺いたいと思って、あなたを応援する意味質問しているのです。
  23. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 能動的であることは、即自主的であるとは、私は思いません。受動的である場合は、必らず非自主的であるとも思いません。これは日本国益考えまして、あらゆる場合に自主的でなければならぬのは大原則だと思うのでございます。そのときの状況に応じまして、能動的である場合もありましょうし、受動的である場合もあり得ると思うのでございます。それから、この問題につきましては、やはりいま曾祢委員がお触れになりましたように、やっぱりアジアの安定、繁栄という点につきまして、日本は重大な関心を持っておるわけでございまするから、この問題は、そういう観点から、私どもとしては終始そういう問題として処理してまいらなければならぬと思います。  それから、アメリカその他第三国との間の問題でございますが、これはきわめて密接に十分の話し合いをしてまいるつもりでおるわけでございます。まあそういったところから御判断いただきたいと思います。
  24. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 杉原委員
  25. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 簡単に質問いたします。  ただいま曾祢委員から、きわめて重要な問題について御質問がありました。私のお尋ねしたい点も、曾祢委員質問の中のある重要項目と関連を持つ事柄についてであります。ただいま曾祢委員も触れられましたが、数日前衆議院の外務委員会において、社会党の委員の方のお尋ねに対する答えとして、外務大臣は、中華人民共和国政府国連代表権を認められた場合には中華人民共和国との国交正常化をはかる旨の方針を述べられたように報道されて、内外の注目を引いております。  私の質問したい第一点は、この報道の伝える外務大臣発言の内容は、正確に言えばどういうことであったか。国連において中共代表権が認められた場合には中共との国交正常化をはかるという方針ないし心がまえを、いまから腹をきめておられるのか、その点をお伺いいたしたいのであります。私はかねて、国連における中国代表権問題の帰趨がきまった場合を仮定して、その場合において、わが国中共との政治関係についてどういう方針を持って臨むかという問題については、いまの段階においてお尋ねすることは、従来差し控えておったのであります。しかるに、外務大臣が、すでに伝えられるような発言をなさったとすれば、その真意はどうであるかお尋ねせざるを得ないのであります。ただいま曾祢委員質問に対する御答弁の中でも、この点について外務大臣は多少触れられたのでありますが、この点はきわめて大事な問題であります。大事な問題であるだけに、いま言うように、私はみずから進んでの質問はしないでおったのであります。しかるに、外務大臣がいま言ったような、すでに外務大臣としてのお考えを述べておられるようでありますので、外務大臣の真意を明確にしていただきたいと思うのであります。
  26. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 御指摘のように、この問題はまだ仮定の問題でございまして、そういう問題を取り扱うのが適切かどうかという点につきましては問題があると思います。しかし、国会の論議として出てまいりましたので、私が申し上げました趣旨はこういうことでございます。  先ほども曾称委員の御質問に対しましてお答え申し上げましたとおり、外交は、その国の国益というものを慎重に判断してみずから独自の立場で決断すべきものだと思います。したがって、いま御指摘の問題もそれ以外ではないと思います。同時に、世界の世論の向かうところを十分参酌してまいることも当然でありまして、御質疑のありました国連加盟というような事態、それをいまから予想することは、あくまでも仮定のことでございますが、そういうことがあったとすれば、そういった問題は国際世論をはかる一つの有力な手だてだというふうに理解をいたしておるわけでございます。そういうことになりますならば、そういう情勢になりますならば、政府としては、それに対して善処していくということは当然考えなければならぬ、ことではないかと、そういう趣旨の御返事を申し上げたつもりであります。
  27. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 外務大臣の意図せられた御趣旨は、いまの御答弁でわかりました。ただ、報道せられておるところは、要するに、中共国連加盟というか、あるいは代表権が認められた場合には中共との国交正常化をはかる、こういうふうに言われたように伝えられている。それであるからこそ、非常な注目を引いていることと思います。そういう伝えられるような表現を用いられたかどうか。もしそういう表現を用いられたとすれば、その場合の中共との国交正常化というのはいかなる内容を意味しているのか。ことに、中共政府承認やら外交関係の設定というようなことを含むかどうか、そういう点お尋ねします。
  28. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 国交正常化ということばを私はつかっておりません。御質問された人が、御質問の中でそういうことを言われたと思います。私のほうからはつかっておりません。私は、その御質問から愛けた感じでは、いま経済的に民間レベル関係がある。いま問題にしているのは、政治的な関係をどうするかという問題、そういう範疇の問題として問題になっておるということだと承知いたしまして、そういう事態になった場合は、政治的な関係というものをどう取り結んでいくかというようなことについて考慮をしなければならぬ事態になるのでなかろうかという意味のことに私は了解明たしておるわけでございます。国交正常化云々ということを私は申し上げていないのです。
  29. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 外務大臣の真意とせられる点はほぼわかったようでありますか、一方、その真意のいかんにかかわらず、外務委員会においてどういうふうな表現をせられたかは、これは議事録を見ればわかることですから、私、これ以上質問いたしません。  次に、アメリカの国務省の極東担当の国務次官補をしておりますロジャー・ヒルズマン氏が、昨年の十二月の十三日、サンフラシスコのコモンウエルス・クラブの昼食会で、「米国の対中共政策」と、題する講演をせられたことは、だれでも知っているところであります。その中において、次のようなことを言っております。すなわち、「今日われわれは、中共に対し門戸開放政策をとる、すなわち、われわれは変化の可能性に対して門戸を開いておくこと、米国の利益となり、自由世界のためとなり、また中国人を裨益するであろういかなる新事態に対しても、それを締め出さないことを決意しておく」と言っております。「それと同時に、一方、われわれは、台湾の中華民国国民とその政府とに対する緊密かつ友好的連携を完全に尊重する。われわれはこの関係を歴史的偶然とは考えず、根本的原則の問題と考える。この関係を破壊することが、われわれと中共との関係の根本的改善にとって必要条件であることを北京政府が固執する限り、このような改善の見通しはあり得ない」と断言しております。私がここでこのヒルズマン氏の述べているところを引用いたしましたのは、アメリカ中共政策についてとやかくいうつもりからではありません。私のお尋ねしたいのは、わが国自身として、外務大臣は、中共国連加盟に関連しての中共との政治関係について、ある種の考え方を述べられたことは事実のようでありますが、その中共国連における代表権が認められた場合に、国民政府との関係については基本的にどういう考えをもって処していかれるつもりか、その点をお尋ねいたします。
  30. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仮定の問題としてお答え申し上げて、そして一般的にこういう心がまえでおりますということを申し上げたわけでございますが、今度また、その仮定に立ってさらに国府との関係について考えるということになりますと、仮定の御質問に対して答えたことが、それ自体がまず穏当かどうかという問題がありますのに、また、それを踏み越えて、もう一つまた問題をつくる危険性があるように思いますので、私といたしましては、ただいまの段階で、せっかくの御質問でございますけれども、そういう仮定に立って国府との関係をどう考えるかというところまで、いま考えたこともございませんし、そういうことに言及することを差し控えさしていただきたいと思います。
  31. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 外務大臣のお立場は、私よくわかります。それだけに、衆議院においての仮定の問題に対する外務大臣の御発言が、私は、外務大臣の真意とせられるところと違って一般にとられることのないようにということを希望しておきます。
  32. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) よろしゅうごいざますか。——岡田君。
  33. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ただいま曾祢委員、杉原委員から、国連総会中国代表権を認め、あるいは中国の加盟を認める、こういう場合に、日本はどういう態度をとるかということについていろいろ御質問がありました。で、いま杉原委員指摘されましたように、衆議院の予算委員会あるいは外務委員会におきまして、総理も外務大臣もともに、もし国連総会において中国代表権が認められ、あるいは加盟が認められるような場合になったならば中共承認する、あるいは中共国交正常化をはかる、あるいはまた、善処する、こういうようなことばで、その場合の日本の態度について御発言があったように伝えられておるわけであります。ただいま大平外務大臣から、その発言についての真意といわれるものの御説明もあったわけでありますが、いずれにせよ、そういうように印象づけられる発言をされたと思うんです。で、私が伺いたいのは、仮定、仮定と言われるけれども、すでにこの問題は起こり得る問題となっておる。純粋の仮定ではないのであります。そして、われわれはこの問題に対して何らかの態度を考えなければならない事態に来ておる。まあ、いろいろな問題があるでありましょう。そしてまた、国連におきましてどういう形で中共の加盟が認められるようになるか、あるいはまた、いつそれが実現されるか、いろいろ問題がありましょう。しかしながら、いずれにしましても、次の国連総会において問題になり、あるいは次の国連総会においてそれが実現されないでも、その次ぐらいには実現されるかもしれないという可能性も出てくる。外交でございますから、やはりそういう可能性考えて、それに対処する方針というものは持っていなければならぬ。おそらく、中共国連総会におきまして代表権を認められるというような事態が起きたときに、政府が善処するとか、あるいは中共承認するとか、あるいは国交正常化をするというようにとられる発言をしたということは、やはりその可能性に対して、あなたが一つの方針を持っておるということをおぼろげながら知らしたものと思うのでありますが、そうでしょうか。
  34. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど曾祢委員並びに杉原委員の御質疑に対してお答えしたとおりの心境でございます。
  35. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 それから、よく総理にいたしましても、外務大臣にいたしましても、対中国、つまり中華人民共和国に対して前向きの姿勢をとっていくということを言われておる。で、もし国連において中国代表権が認められるというような事態が起きたら善処するというようなことを言われたことは、この前向きの姿勢でいくということの一つのやり方なんでしょうか。この前向きの姿勢ということと、いま発言されたことと、その関係をお伺いしたい。
  36. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) その前向きの姿勢というのは一体どういう意味なのかということから解明をしてかからなきやならないわけでございますが、私ども中国大陸との関係につきましては、貿易とか人の交流の事実上の関係があるわけでございまして、まあこれは貿易の面で申しますと、従来友好商社貿易という片寄った形の姿であったというようなものは、民間レベルで正常な姿にできるだけ持っていこうというような努力が行なわれていたわけでございます。そういった歩みを前向きという感じ方と受け取られる方があろうかと私は思います。  それから、政治面につきましては、これはまだ将来のことにかかるわけでございまして、何らのアクションはとられていないわけでございまして、私が先ほど申しましたように、この問題につきましては国益の慎重な判断の上に立って考えにゃいかぬ問題である。これはひとりその問題ばかりでなく、外交一般がそうでございます。国際世論の指向するところをよく見きわめていかなきゃならぬ問題であるというように申し上げたのでございますが、そういう問題をどのように岡田さんが受け取るかという、あなたの採点の仕方だろうと思うのでございまして、私から採点するわけにもいかぬと思います。
  37. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 国際世論の動向をよく考慮して、国連総会におきまして中共代表権が認められるということはそれの非常に大きな指標であるというふうに、先ほど言われたのでありますが、よもやそのことは、国際世論に逆行しても、あるいはまたそういう大きな指標があらわれてきたにもかかわらず、それと違った方向に行くということを意味しているんではないだろう、善処ということはおそらくそうではないと私は解釈しております。が、また衆議院の予算委員会や外務委員会での御発言を見ましても、どうもそうは受け取れない。そうすると、まあ前向きと解釈せざるを得ないし、いわゆる政経分離というわけのわからないことを言っておられますけれども、実際は何らかの形で中国アプローチが始まろうとし、政府もそれを認めて進めることをまあ反対もしてないような態度であるとするならば、それは、やはり前向きに進みつつある、政治的にもそういう方向に進みつつあるという解釈もあながち無理でないと思うのですが、その点はどうお考えになるか。ひとつ私にその考えが間違っているか間違ってないか採点をしていただきたい。
  38. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど申しましたように、あなたの御採点が伺えれば、参考にいたしたいと思います。
  39. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 いや、私のほうも採点していただきたいと思っておるのですがね。まあ、採点していただけないならば、それもやむを得ないと思うのですけれども。  そこで、国連総会に対処する態度をまだ具体的におきめになっておらぬということは、これは外務大臣として慎重な態度になられておると思うので、了承はできるのです。けれども、何といっても、この問題は、日本外交にやはり大きなターニングポイントになるものと思われるのです。今まで政府は、少なくとも自民党はどの政府も、仮定の上に立つにせよ何にせよ、とにかく中共承認するとか、国交の、正常化をはかるとかいうようなことをにおわせたことがない。ところが、国連総会において中共の加盟が認められれば、あるいは代表権が認められるようになれば善処をするといういまのおことばから見ると、初めて新しいものが何か出てきたような気がするわけです。このことは、やがて国光政府運命とも関係する問題であります。日華条約とも関係する問題であります。そういたしますと、これはいままでとってきた日本外交の大きなターニング・ポイントになると、そういうふうに思うのですが、この国連総会が今後中共に対してどういうような処置をとるか。もし加盟を許すことになれば、これは日本外交のターニング・ポイントになる、そういうふうにお考えになっておるかどうか、この点をひとつ御論議願いたいと思います。
  40. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど申しましたように、来たるべき国連総会がどういう様相を示すであろうかということは、まだかいもく見当がつかないのでございます。いま御指摘の問題は、非常に重要な問題である、特に日本にとりまして重要な問題であることは申すまでもないことでございます。私どもも重大な関心を持っておりまして、それだけに私どもといたしましては、国連対策というものにつきましても慎重な用意が要ると思うわけでございます。いませっかくそういう各般の資料を取りまとめつつある段階でございまして、そういう段階でありまするので、いまの段階国連総会の様相並びにその結果を予想し、かつ、それがわが国外交にどういう影響を及ぼすかというような点について申し上げるのは、まだ相当時期が早いのではないかと思います。
  41. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 過日松井大使をアフリカ諸国に派遣されました。その使命はいろいろございましょう。しかし、その中には、アフリカ諸国の中国に対する態度、動向について調査をする。さらに日本側の立場を知らす。それを了解してもらって同調を求めるというふうに伝えられておるのであります。で、新聞におきましても、この問題について、前半はよろしいけれども、後半のほうについてはいろいろ論評もあったように聞いております。で、もちろん今回の松井大使の派遣は、重要なかぎを握るアフリカ諸国の国連総会における対中国方針というものについて、直接かつ詳細に調査し、意見を交換するということは必要なことでもあるし、それをおやりになっておるとも思うのですけれども、もしあとの場合、新聞でも論評されておるような、日本立場を説明するまではいいのですけれども、それから先の、同調を求めるということになってまいりますというと、これはいろいろ国内においても誤解を生むし、また、国際的にも非常な誤解を生むと思う。その点につて、この中共問題に対して松井大使の任務というのはどういう点にあるのか、それをお話し願いたい。
  42. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 松井さんの派遣は、これはもうずっと以前にきめてあったことでございます。去年は岡崎大使を派遣し、その前は鶴岡大使を派遣し、私どもとしては、AA諸国という国連過半数を占める一大勢力、幸いにしてわが国はAA圏のメンバーと申しますか、仲間になっておりますので、しょっちゅう。パーソナルな接触を持って、お互いによく理解が行き届いておるという状態にしておきたいというのが本旨でございます。したがって、フランスが今度とりました措置の以前に、そのように松井大使には命令をいたしてあったわけでございます。これは中国問題ばかりでなく、いろいろな問題が国連にございますので、御案内のように、政治委員会委員長の問題等もございまして、AA閥の各国と事前に十分お打ち合わせをするという必要を感じておったわけでございます。いま御質問中国問題につきましては、その機会にフランスのとりました措置等の影響がどのように及んでおるか、もとより松片さんの手で御調査があるものと思うわけでございます。あなたが御指摘されたように、日本側が同調を求めるとか申しましたが、日本側はまだ今日、今度の国連総会に対策を持ってないわけでありますから、同調を求めようもないわけでございます。そういうことは私どもは全然考えていないことでございまして、岡崎大使の前例にもありますように、その意味の旅行であるというふうに御理解いただいて差しつかえないと思います。
  43. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そういたしますと、松井大使が向こうへ行かれるのは、アフリカ諸国の中共問題に対する態度について聞くと、向こうの状況を調査する、こういうことであって、たとえば意見を交換するということになりましても、こちら側の態度というものもある程度固まってなければできない。いわんや、日本側の態度を伝えて同調を求めるということになりますと、こちらの態度がきまってなければそれはできない、こういうことになりますが、そういたしますと、各社の新聞全部、松井大使が向こうに行って日本側の意向を伝え、同調を求めるというふうに伝えてあるのです。これは各社が全部誤報をしておるのか、あるいは推測の記事を書いたのか、その点はどういうふうにお考えになっているのですか。
  44. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 外務省のほうは私が責任を持っておるわけでございまして、私の申し上げることを御信頼いただきたいと思います。
  45. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 あなたの言われたことがほんとうだとすると、新聞は全部誤報である、推測記事である、しかも、それは誤解を生む推測記事を書いたと、こういうことになると解釈して間違いないわけですね。
  46. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私がただいま申し上げたことを御信頼いただきたいと思います。
  47. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 あなたが先ほどから言われたように、仮定の問題であるから具体的な態度はきまってないのだと、方針も何もまだきまってないのだということになれば、あなたのいま言われたことのほうが論理一貫するわけですけれども、しかし、どうも、私ども松井大使にお会いしたわけでもないし、この問題について外務省側のどなたにもお会いしてないので、外務省の意向を知らなかったわけでありますけれども、新聞を通じますというと、はっきりどうも日本が何らかの方針を持って、そして意見の交換をし、同調を求めるというふうにとられるわけなんです。これは非常に誤解を生むと思うので、その点は今後とも十分に私は気をつけていただきたいと思う。  それから次に、自民党の藤井勝志、田川誠一両代議士が過日中国に参られました。そして中国の中日友好協会の会長である廖承志と会談をして、その会談の結果を持って藤井氏は東京に帰ってきた。新聞記者会見においても、あるいはまた自民党にも報告されたと思いますし、また外務大臣もおそらくお会いになって聞かれたことと思うのでありますけれども、廖承志が藤井氏に述べたいろいろな問題が伝えられておるわけであります。そのうちに、新聞に伝えられたところによりますというと、日中貿易は、 いわゆるLT方式——これは廖氏、高碕氏両氏の間に取りかわされた覚え書きに基づく貿易の方式——によって拡大されてきました。この貿易は民間ベースによるものであり、それが拡大されてくれば、当然民間の常駐の通商代表のようなものの交換が必要となります。そこでこういうことが可能かどうかということも提案があったようであります。  それから第二は、日中間に民間航空相互乗り入れ、こういう問題も提起されております。  それから第三には、新聞記者の交換ということも提起されておるのであります。新聞記者の交換につきましては、過日の委員会長谷川委員からいたしまして質問がございました。これは相互主義の方式によって、日本新聞協会とそれから中国側のしかるべき機関との間で話し合って合意に達すれば政府は反対しないというような話でございました。  この問題につきまして外相の御見解を承りたいのですが、まず第一に、新聞記者の相互交換の問題につきましては、もし日本新聞協会と向こう側と新たに話し合いが始まりまして、そして相互主義に基づいて合意に達しますれば、この交換を認めるということについて外務大臣は反対しないという態度を重ねて確認されるかどうか、まず、それをお伺いしたい。
  48. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 外務省考え方といたしましては、この間申し上まげしたとおり、公正かつ客観的な報道が未承認国の場合も行なわれるということはいいことだと思っております。で、わが国の場合、現実に中国大陸に新聞記者を派遣する場合には、わが国政府としては特別な制約を設けていないわけでございます。それでいま岡田さんが御指摘のとおり、相互主義でございますが、相互主義の内容になりますると、つまり人数の問題もございまするし、期間の問題、あるいは指紋とかいろいろな手続上の問題も若干あるようでございまして、私どもの気持といたしましては、いまあなたが御指摘のように、お話が円満につけば、そうしてそういう技術的な相互主義の内容についてお話が十分つけば、このことば別段政府として異議を差しはさむべき問題じゃないのじゃないかと思っておりますが、そういった問題につきまして政府部内で十分検討を遂げて、技術的な問題も解決するようにできたらばと、いま思っておるところでございます。一般的な感じ方としては、長谷川さんに申し上げたような気持ちでおりますということを申し上げておきます。
  49. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 それでは次に、廖、高碕方式といいますか、この方式によりまして、日中間の貿易というものはふえております。これは政府の発表しました統計におきましても、一九六三年には前年に比べまして対中国貿易は六〇%という伸びを示しておるわけです。ことしもさらにそれが拡大せられるであろう、こういうふうに予想されるわけでありますが、もちろんそのために貿易関係の商社の人たちとか、あるいは向こう側の貿易公司の人たちとの、相互に日本へ来たり中国へ行ったりということが盛んに行なわれるようになっておりますが、この貿易を促進するということのために、相互に——これは政府通商代表部ではない、とにかく民間の通商代表の常駐という問題が起こってくる。また、廖氏のほうからもそれが藤井氏に要望されておるわけであります。この中国側と日本側との間に貿易の——これは民間ベースでありますけれども、常駐代表を交換するという問題について、政府側としてはどういうふうなお考えか。もし、これも両方で相互主義に基いて合意に達すれば、日本中国側の貿易代表を日本に長期に滞在させることを許すかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  50. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日本側が相手方のほうからまだアプローチを受けておりませんので、まだ何とも申し上げられません。
  51. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 しかし、藤井さんのお話は聞いていらっしゃるでしょう。もし藤井さんのお話を聞いていれば、正式の提案ではないけれども、そういう提案があった、それについてはこういう考慮が払われるということぐらいの御返事はできるのではないかと思いますが、いかがですか。
  52. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 藤井さんお帰りになられて、ごあいさつにお見えになられましたけれども、仕事の話はまた追ってということで、私はまだ聞いておりません。ただ、伝えられているような問題については、政経分離の建前でやっておりますから、その原則に照らして、もしそういう問題がございますれば、それは事務所なるものの機能、性格というものをよく吟味して検討しなければいかぬと思いますが、いまのところ、まだ私のほうにはアプローチはございません。
  53. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連して。政経分離ということですね。総理もわざわざ施政演説の中でうたわれたり、それから事あるごとに政経分離、分離と言われるのですが、そんなことを言わぬようになすったらいかがですか。おやりになるなら、黙っておやりになればいいので、ことさらに政経分離ということを強調されぬほうがいいのじゃないですか。
  54. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) せっかくの御注意でございますが、この中国大陸との事実上国交がない状態の中で、貿易その他の民間レベルの接触をやるということを、いわばそういう表現でやっておるわけで、政治とは峻別してやるのだという日本政府気持ちをここにあらわしたつもりなんでございます。政府もそういうことを申し上げる自由があってもいいのではないか。
  55. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 どうも政経分離というのは、私ども見ておりますと、これは国内向け、それから、アメリカ台湾向けの隠れみのみたいな気がするのですが、それは私の解釈ですが、それはそれとして、いまのお話を聞いてみると、つまり、経済の問題としてならば、もし向こうからそういうような具体的な提案がなされるなら考慮をされる、あるいは検討をする、こういうおつもりであるように受け取れるのですが、もし、そういうようなことが具体的な問題として提起されましたならば、外務大臣としては、日中貿易を促進するという立場から、やはりそれについては善処されるつもりであるのかどうか。たいへん善処ということばがお好きですから、お伺いするわけです。
  56. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) それはアプローチがあってからの話でございますけれども、先ほど申しましたように、いままで政府は、御指摘がございましたけれども政経分離という原則でやってきている。その建前に照らして、言うところの事務所なるものの性格とか、機能とかというものをよく検討をさしていただきたいという気持ちです。
  57. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 次に、航空機の相互乗り入れの問題でございますが、この問題について、綾部運輸大臣がいろいろな理由をあげておるのですね。たとえば中国側にジェット機の着くちゃんとした施設ができていないからとか、あるいは政治的な問題だとか、いろいろ言われておる。しかし、これももし、たとえば福岡と上海というような航路について、商業的なベースで相互乗り入れの話が起こっまいりました場合には、これは政府としてやはり商業的ベースの立場からこれを認めるというお考えを持つかどうか。その点について運輸大臣はいろいろ発言されておりますけれども外務大臣としてこの点に関するひとつ御見解をいただきたいと思います。
  58. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) その問題も私のほうに何らアプローチがございませんので、何とも答えようがいまの段階でないわけであります。
  59. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 あなたにアプローチがないからお答えようないと言うのですが、綾部運輸大臣は、衆議院の予算委員会の分科会等で堂々とお答えになっているんですね。そうしますと、これはたいへんおかしな話なんで、やはり外国との関係もあることでございますから、この問題に対する大平外務大臣としてのお考えがないはずはない。もう一度重ねてこの問題をお伺いいたします。
  60. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 運輸大臣が国会で応答されておることは承知いたしておりまして、私のほうに御相談があるということもおっしゃっておるようでございますが、ただいまのところ、まだ何らお話がないわけでございます。で、よくそれを伺ってみないと何とも申し上げられませんが、一般的な考えといたしましては、航空機の乗り入れという問題は、航空協定——国と国との間の協定によるというのが大原則で運営されておるのが実情でございます。いま中国大陸との間に国交がない状態で、航空協定を結ぶという段階に立ち至ってないことは御承知のとおりでございます。そういう姿において取り上げるということは、できない相談ではないかと思うのでございます。ところが、また国交——外交関係が樹立されてない韓国との間に民間航空をやっておる例があるじゃないかという話でございますが、これはそういう実体的な必要が現実に出てまいりまして、そうてし各航空会社の間でそういう話が持ち上がり、合意されてきたという実体的な必要が裏づけになっておったように承知しておるわけでございます。そこで、今度のケースは、そのような状態になっているのか、なっていないのかも実際問題として検討してみなければならぬ問題であろうと思いまするし、私どもといたしましては、これはどこの国でも航空機乗り入れという問題は非常に厳重に航空協定でやっておるのが例でございますので、たいへんかたく考えておるわけでございます。いま御指摘の問題がどういう問題なのか、現実にアプローチを受けてみてからよく吟味しなければならぬと思っております。
  61. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 国交が回復していない国同士の間で相互乗り入れが実現されるという前例はすでにできておる、それからまあ実際的の必要からそうなっておるのだということでありますが、これも日本中国との間に国交回復していないでも貿易が増大しておる。それにつれて人の往復もだんだん激しくなってくるということになれば、的必要もまただんだんに出てくるわけであります。さらに、どこも望んでなければできないのでございますけれども日本側におきましても、はっきりいわば全日本空輸なんかはこれはもう中国との航空路を開設することに非常に熱心なんです。そういうようなことからいたしますというと、必ずしもこれは出てこない問題じゃないのです。私どもは、前例もあるし、必要もあるという観点から、必ずこの問題が現実の問題として提起されてくるであろう、こういうふうに考えますので、その際には前例に照らして善処していただきたいということを希望したい。  それからもう一つ……。
  62. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ちょっと待ってください。いま、韓国の先例というのは先例になるかならぬかの問題でございますが、韓国は承認はしておりますけれども外交関係にないということだけちょっと中共の場合と違うということだけ、念のために申し上げておきます。
  63. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 それから、パキスタンが中国との間に航空路を開設して、そうしてさらに日本にそれを延長してくる、こういうことを申し入れてきておる。これは日本のほうとしては、中国を通るがゆえにどうもこれに対して承認を与えていないように聞いておるんですけれども、この問題についてはどう処置されておるのかお伺いしたい。
  64. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) この問題につきましては、パキスタン側から、日パ航空協定の付表の改定——上海を通って日本へ来るように付表を改定するようにしたい、こういう申し込みがございまして、年末、運輸当局、航空局のほうと向こうからまいりましたやはり航空局の幹部との間に話し合いが約一週間行なわれたのでございますが、やはりまだ当時内外の情勢がそこまで熟していないということで、その路線の変更を認めるに至らず、そのままの交渉になっております。
  65. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 どうもよくわからないんですが、上海を通って日本に乗り入れる。内外の情勢を見てそれに承認を与えていないということは、これは率直に言えば、中国を通って来るからということだと思うんですけれども、しかし、パキスタンの飛行機が中国を通って日本へ来る。このことについて私はそれが中国を通って来るがゆえに認めないというのは、どうも理屈にならぬのじゃないか。もしそういうようなことになりますれば、これは日本とパキスタンとの間にトラブルが起こることは明瞭です。すでに日本の南回りの飛行機はカラチを通ってヨーロッパへ行っておりますけれども、トラブルが起きている。こういうことを避けるために、またそういう立場にいて、人の国の飛行機が中国を通って日本へ来るからそれを認めるとか認めないとかけちなことを言わないほうがいいんじゃないかと思うんですが、外務大臣はその点どうお考えになりますか。
  66. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いまアジア局長から御報告を申し上げましたとおり、両航空当局でまずお話し合いを願ったわけでございますが、まだそういう域に達しないということを承知いたして聞いておるわけでございます。
  67. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 これは私は、早くこういう問題については解決するほうが、いまの内外の情勢に照らして適当なものと、こう考えるので、ぜひそういうようにお進め願いたいと思います。  次にお伺いしたいのは、対キューバ貿易の問題です。御承知のように、過日キューバの漁船がアメリカに捕えられ、そうしてキューバがアメリカのグアンタナモ基地に対して給水をストップした。それ以来アメリカがキューバに非常な強硬な措置をとるということを宣言した。その一つとして、キューバに貿易をする国に対してその貿易をストップするように要請をしておるわけであります。しかし、イギリスの首相は、過日の米大統領との会談におきましてはっきりそれを断わった。フランスもまたどんどんキューバにトラックを輸出しておる。ところで、日本もまたキューバと貿易をしておることは明瞭であります。日本はキューバから砂糖の原糖を買い付けております。そしてアメリカの商務省に言わせるというと、自由主義国のうちでキューバとの貿易で、キューバの輸出量が一番大きいのは日本だということまで指摘されておるわけであります。もちろん、その見返りとして、日本からもいろいろ輸出が行なわれておりますが、今回、アメリカが対キューバ貿易国に対しまして措置をとっておる。イギリスとフランスとユーゴーの三国に対して軍事援助を中止するという措置をとっておるのであります。この軍事援助中止の措置ということは、あまり実効がないであろう言われておるんでありますけれども、とにかく、これらの国に対して軍事援助中止の措置をした。キューバから日本はキューバ糖を買い、さらに日本からも品物が行っておる。こういう日本とキューバとの間に貿易があるということに基づいて、アメリカから日本政府に対しまして、日本とキューバとの貿易をたてに、日本からキューバに物品を輸出するなという申し入れがあったかどうか、それをまずお伺いしたいんであります。
  68. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そういう申し入ればありません。
  69. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 日本がキューバと貿易をしておるということは、これはもうアメリカもよく承知しておる。そうすると、日本は対キューバ貿易について、いまのところ、アメリカから何も制約をされてない、こう承知してよろしいのですか
  70. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) あなたが御指摘になりました対外援助法の改正で、これはキューバに配船した国に対して軍事援助、経済援助を打ち切るということですが、日本のほうは配船いたしておりませんし、この関係日本にございません。日本で問題になるのは砂糖でございますが、砂糖は、キューバ糖を需給計画に入れないで需給計画が立つという状況にはないわけでございまして、したがって、ある程度のキューバ糖はどうしても必要なわけでございます。這般の事情はアメリカもよく承知いたしておるわけでございまして、いま日米間にキューバ貿易をめぐりましてトラブルはありません。
  71. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そういたしますれば、日本がキューバに物を売る。まあ日本のほうがバランスからいうと悪い。もっとキューバに売れるわけなんですけれども日本の対キューバ貿易があまり積極的でないんですが、ことに外国船によって運ばれる場合には、日本はキューバとの貿易を増加をしていっても、これは何ら問題でない、そういうふうなことでしょうか。
  72. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ただいまのところ、別段問題はないわけでございまして、この状態で推移してまいれば、私はここに問題があるように思いませんが、キューバのほうから、そういう砂糖の輸入契約を長期的に結ばないかというような話がございました。そうすると日本からの輸入物資もその八〇%は入れる用意があるとかいうような話はありましたけれども、これは政府レベルというよりは、商業レベルの問題として検討する問題であるということで、日本の業界のほうも、まだそういう雰囲気でないようでございます。したがって、いままでのような姿で推移していくと、私は特段の問題はないと思います。
  73. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 アメリカの対キューバ政策は少々ヒステリックだ、そして今度の対キューバ経済封鎖も、私は成功の見込みはない、こう思ってるんです。しかしながら、アメリカがキューバに対してこういうような処置をとるということになりますれば、これからさらに、その処置は日本等にも及んでまいりまして、そして日本外交なり、あるいは貿易に、アメリカが再び干渉をする可能性なきにしもあらず、それはすでにこの英・仏・ユーゴーに対する関係から見ても明らかであります。その際に、外務大臣としてはやはりき然としていかれるかどうか。アメリカのほうからいろいろ言われるというと消極的になるという態度をとられては、これは日本自主性は失われるので、その点について外務大臣はき然たる態度で臨まれる用意があるかどうか、その点を明らかにしていただきたいのであります。
  74. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ただいまのところ、そう問題はあると思っておりませんが、問題が出てまいりましたら、そのときにまた検討してみたいと思っております。
  75. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) それでは森君。
  76. 森元治郎

    ○森元治郎君 きょうは質問するつもりはなかったんですが、お話を伺っていると、二つばかり大きな問題が出たと思うので、落ち穂拾いみたいな質問になりますが、外務大臣は、総理大臣もそうだけれども中共代表権問題については、たいへんもう、あなたの言う前向きの姿勢で、世界大勢がそっちに向くならば承認するというようにわれわれが十分受け取れる発言をしておったのに、きょうは、杉原さんから注意を受け、あるいは、けさ出がけに見たテレビでは、大平外相は少し行き過ぎている。池田さんも行き過ぎているだろうけれども、けさのテレビには、大平さんしか出ていなかったけれども、あなたには行き過ぎているという声があるせいかどうか、たいへん後退したような感じがするんです。たとえば杉原さんの質問に答えてあなたは、中共国連代表権問題についてみながそういうふうに中共を正統政府として承認するんだというふうなことになってくるならば、これは一つ国際世論をはかるものさしになる、そんな情勢になったならば善処していく、こういうふうに表現されたんです。いままでの速記録を手元にとって見ますと、質問応答の経過から見れば、善処ではないんです。たとえば、大平さんが十二日の衆議院の外務委員会の御答弁の中でも、「国連におきまして中共政府国連に加盟される、世界の祝福の中にそういう事態が起こりますならば、当然わが国として重大な決心をせなけりゃならぬのは、これは理の当然だと私は思います。」、理の当然だ、わからないのはおまえが悪いというような言い方でしょう。わかっている。ところが、きょうは、そんな情勢ならば善処していく。それは口輪をはめられたのじゃないですか。それが一つ。  そこで私が伺いたいのは、この答弁——穂積君に対する答弁、それから総理も衆議院の予算委員会で横路君の答弁に、「国連に加入を認められ、そしてまた、各国の大勢中共を認めることになれば、私は、やはり国連の場において行なわれたことについては、日本国連を尊重しておるのでございますから、やります。」、こう言っているんです。いいですか。これとあなたの「善処する」とはたいへん違うんですが、後退した御答弁だと思うんですが、何か党内事情もおありかと思うので、あるならば、それも聞かしてもらうと同時に、前の答弁は生きているんでしょうね。
  77. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 国会で御答弁申し上げたことは、片言隻句全部私の責任において答弁いたしたことでございますので、責任をとるつもりでございます。表現は、善処とか、対処とか、決意とか、いろいろになっておるかと思いますが、私の気持ちに変わりはありません。
  78. 森元治郎

    ○森元治郎君 そうでなかったら、これは重大問題ですから、そうあるべきだと思うので、したがって、このように強い御答弁があれば、しからばどうなるんだという質問が出るのは当然なんですね。仮定のことが答えられないならば、初めから雲をつかむような、善処するくらいでいけばいいのに、ここまでやりますとくれば、どうやるんだと聞くのは当然なんです。そうなってくると、仮定で逃げたんでは政治家としてはだめですね。そこで私はその点も、瞬間がきょうはないから、要するに、過去の御答弁は一言一句そのとおりこういうことで進みます。  ところで政府は、来たるべき国連総会に対してたいへんな機微な状態になる、世論の動向をよく見て慎重にということは、自分は動かない、よそのものが動くのをじっと見ている、こういうふうにうかがわれるのですが、いろいろ情報収集だの情勢検討だのされるんでしょうが、じっとして動かないんですか、動くチャンスはたくさんあるかと思いますが。日本はこの重大なときに追い込まれてきて、曾祢さんの言う受動的でじっと九月あるいは十一月まで待つのですか、どうですか。
  79. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 国連対策なるものは、先ほどもお話し申し上げましたように、まだきめていないわけでございます。どういう場合に受動的になるか、どういう場合に能動的になるかも、したがいましてまだきまっていないわけでございます。申し上げられますことは、私も実は重大関心を持って、周到な用意をしてかからにゃいかぬと思っているのが今日の心境でございます。
  80. 森元治郎

    ○森元治郎君 さっき、松井大使がアフリカへ行くのはごく小さい旅行だ、この前、岡崎君が去年行った、今度はまあ松井君の番だ。そんなもんじゃないと思うのですね。大体行く場所が悪いですよ。アフリカでしょう。松井さんがアフリカへ行ったのは何でもないと言うが、アフリカこそ天目山なんですね。大体十七カ国回ると、言うんだが、それを聞きましょう。十七カ国のうちに、国民政府承認した国、中共承認している国、両方を承認していない未承認国、ちょっと、その色分け国の数を、言ってください。
  81. 斎藤鎮男

    政府委員(斎藤鎮男君) 御説明申し上げます。AAグループといわれる中に、これは五十八カ国ございますが、そのうちでアフリカ・グループに入るもの、二十八ございます。
  82. 森元治郎

    ○森元治郎君 今度行く十七カ国の中だけでいいです。
  83. 斎藤鎮男

    政府委員(斎藤鎮男君) これは大部分が旧仏領の植民地でございますけれども、そのほかにガーナ、ナイジェリア、ケニア、そういったところは国府の非承認国でございます。そのほかに、態度が非常にはっきりいたしませんエチオピアにも参ります。そのほかは、大体国民政府承認国でございます。
  84. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 アルジェリアがあるじゃないですか。
  85. 斎藤鎮男

    政府委員(斎藤鎮男君) アルジェリアにつきましては、一番最初に参りましたので、当然おわかりと思いましたので……。
  86. 森元治郎

    ○森元治郎君 そうすると、大体国民政府承認している国のほうが多いわけですね。
  87. 斎藤鎮男

    政府委員(斎藤鎮男君) 回るところでは、そうでございます。
  88. 森元治郎

    ○森元治郎君 だから重大なんですよ。国民政府のほうの側の票数が、中共側に回られてはたいへんだということは、だれが見てもわかることなんですね。しかもダカールで旧ブラザビル派の会議が開かれるというおりから行くということ、しかも、松井君は有名なフランス語の達者な人、へたなのが行って聞き違えてくるのと達って、これは確実に私はあのくらいわかるのはいないと思う、ほんとうに。そういうのを派遣する。しかも、人柄がいい。チャンスはいまだ。私は多数派工作だと思うのです。どうですか。多数派工作じゃないかと私は思う。それが一点。  それから、方針がきまっていないと大臣は重大な答弁をしているが、国連対策は私は方針がきまっている、われわれは。外務大臣も方針は持っているはずでしょう、国民政府と今結んでいるんだから。国民政府はだめだから、君、中共をやってくれよなんて回れるわけないでしょう。そうでしょう。中共政府は、あなたのほうに言わせれば、厳然たる存在でしかないんだから。国民政府の側に行けば、支持者のほうに行ってうろうろしないでくれ、一体どういうふうか、こういう意見の交換をやる。そのときに、日本は方針がきまっていませんなんという、そういうことは、新聞記者が種取りに行くのと違うのですよ。国の代表が行くのです。大平大臣の決裁を経て国連大使が海外に出張をされた。松井君がちょっと見てくるなんといったようなものじゃないと思う。さらに深く勘ぐれば、もう安保理事会はアメリカ国民政府を除いちゃ、みんな国民政府側じゃないですね。国民政府が動かないとすれば、もうアメリカ——しかしアメリカも、いまはどこへ行ってもどうも歩きにくい。ここで恃むのは日本、しかもアジアの一員だ。三大の柱の一をプリンシプルとして持っているアジアの一員、これに行ってもらうのが一番いいですよ、だれが考えても。だから、当然私はこの目的は、あなたが何と言おうと、向こうの情勢判断し、いや私は北京が好きですよという場合には、慎重に願えないか、どのような理由をつけるか私はわからぬが、つけて、私は説得をしてくると、こういうふうに思うのです。大臣、単なる岡崎さんのあれとは違うと思うので御答弁を願います。
  89. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これは、たびたび私は本院並びに衆議院で申し上げたとおりでございます。多数派工作をやれとか、説得工作をやれとか、そういう趣旨のものでないことは、たびたび申し上げてあるとおりです。森さんはたいへんうがった御観察のようでございますが、私どもといたしましては、ひとり中国問題ばかりでなく、いろいろな問題を国連でかかえておるわけでございますが、有能な松井さんでございますから、私は全部心得てやっていただけると思って、信頼して派遣しているわけでございます。私は多数派工作をやれとか、説得をやれとか、そういう意味の指示はいたしておりません。
  90. 森元治郎

    ○森元治郎君 個々の情勢判断に、あの辺には、この訪問国の中には、日本から大使が行っている国も五、六カ国あると思う。特に松井さんが行かなければならぬ理由はどこにあるのですか。
  91. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これは前々申し上げたとおり、前は鶴岡大使をわずらわして行っていただいたし、去年は岡崎さんに行っていた、だき、今度は松井さんに行っていただくように考え、できるだけAA圏の皆さんとは個人的な接触を密にしておいていただきたいと思っております。他意はございません。
  92. 森元治郎

    ○森元治郎君 しかし、政府は、国会の答弁でもわかるように、国民政府国交関係を持って、さらに友好関係を進めていくのだ。しかも吉田前総理も行かれるのだ。こういう関係であるならば、黙って世界大勢がどう動くかを日本が見ているという立場にはないのじゃないか。この点はどういうお考えですか。あるいはそれを期待しているのか。
  93. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 中国問題につきましては、フランスが新しい措置をとりましたし、そういうことが各国にどういうような影響を及ぼしているか、これは当然松井さん見てくる、だろうと思うわけでございます。こういう時の問題でございますから、十分見ていただけると思いますが、問題は、多数派工作をやれとか、説得工作をやれとかというような指示をしておるかどうかということにつきましては、そういうことはやっておりませんと私は申し上げておるわけでございます。
  94. 森元治郎

    ○森元治郎君 そうすると、何もやらないで、世界が依然として国民政府のほうを支持する票が多ければそれでよし、またいまの大勢に押されて中共のほうが多数になって、単純過半数でも、三分の二でも国連の中の支持を得られるのならばそれでもよしと、こういう態度ですか。
  95. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 国連におきましては、日本は公正な活動を展開するということでございまして、そのときに応じましてその基本精神を保持してやるつもりでございます。今度の総会の様相がまだわかりませんから、具体的にどうなるかというようなことは、私の頭に描いておりませんけれども、いま問われれば、公正な活動をいたしますというふうにお答えするよりしかたがないと思います。
  96. 森元治郎

    ○森元治郎君 公正な活動をするという場合ですね、国民政府関係を結んでこれを推進していくことは、公正も不公正も注釈が要らない。何か新しい要素が加わったときに、初めて公正な活動ということばが必要になるし、その行動が必要になってくる。そんなふうになりませんか。
  97. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 何か新しい要素が何かということもわかりませんし、まだそういうことを頭に描くことができないわけでございます。いまの段階では、いま申しましたとおり、われわれは公正にやるのだ、こういうことを申し上げるより以外に道はないと思います。
  98. 森元治郎

    ○森元治郎君 次の機会あたりに台湾の問題が一番大きくなると思うので伺いたいと思いまするが、仮定のことは申し上げられないと、よくそういう趣旨答弁が総理とあなたにもあるけれども、あなた、国連の前代表である福島君、今度政治委員会の議長に立候補するとかいう曽野君だって、新聞の座談会で堂々と台湾問題どうしよう、あれまで、くっつけて、中共承認して、くっつけてやるのはもったいない、何とか残す方法はないかと、堂々と座談でおやりになっておれば、これはわれわれも国会で言うのは当然なんですね。この点はどんなふうにお考えになりますか。
  99. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 森先生が外務委員のお立場でどういう御論議をされるかということは、あなたの御判断でございまして、それにどう答えるかは私のまた判断であります。
  100. 森元治郎

    ○森元治郎君 この政府の方々の、重要な局長さん、部長さんという方の御発言は、これはやはり外務省なり何なり各省の責任ある態度だと判断してよろしゅうございますか。
  101. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 福島さんなり曽野君が発言されておるのは、福島さんなり曽野さんなりの御責任において発言されておるわけでございます。その発言につきまして御相談を受けたことではないわけでございます。もちろん、その立場においての御発言がどういう影響を持つか、どのように受け取られるかということは、その人たちが御判断されてやっておるものと私は存じます。
  102. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) それでは、本日はこの程度において質疑を終わります。
  103. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) それでは、経済協力開発機構条約締結について承認を求めるの件。  通商に関する日本国とオーストラリア連邦との間の協定を改正する議定書締結について承認を求めるの件。  北太平洋のおっとせいの保存に関する暫定条約を改正する議定書締結について承認を求めるの件。  原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府アメリカ合衆政府との間の協定を改正する議定書締結について承認を求めるの件。  通商に関する日本国とエル・サルヴァドル共和国との間の協定締結について承認を求めるの件。  以上五件を便宜一括して議題といたします。提案理由の説明を願います。毛利政務次官。
  104. 毛利松平

    政府委員(毛利松平君) ただいま議題となりました経済協力開発機構条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  経済協力開発機構条約は、一九六〇年十二月十四日、欧州経済協力機構の加盟国十八並びに米国及びカナダによって署名され、翌一九六一年九月三十日に効力を生じたものでありまして、この条約により、欧州経済協力機構は欧州の地域的性格を脱し、かつ、後進国の援助をその目的の一つに加えた新たな経済協力開発機構に改組されたのであります。  わが国は、同機構への加盟の希望を機会あるごとに表示してまいりましたが、一九六二年十一月の総理訪欧を機として、機構側においてもわが国の加盟を招請する機運が急速に高まり、一九六三年三月、機構は交渉の開始を決定いたし、同年五月から七月にかけて東京及び。パリにおいて交渉が行なわれ、その結果同年七月二十六日、機構はわが国の加盟を正式に招請するとともに、交渉の結果を記録する了解覚書の署名が行なわれた次第であります。  経済協力開発機構は、高度の経済成長、後進国の援助及び貿易の拡大を三大目的とする国際機関でありまして、経済通商の面のみならず、金融、科学技術、農業、漁業、原子力、教育、労働等、きわめて多岐にわたる分野において活動しております。  わが国は、この機構に加盟することにより、先進工業国との間の協力関係の緊密化を通じ高度の経済成長を達成し、もって世界経済の発展に貢献することができるのみならず、他の加盟国の経済動向に関する情報の入手、対外投資の円滑化、後進国援助の合理化等の面においても期待し狩ること大であります。  よって、ここにこの条約締結について御承認を求める次第であります。   次に、通産に関する日本国とオーストラリア連邦との間の協定を改正する議定書締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  この議定書は、第四十四回臨時国会に提出されましたが、審議未了となったものであります。  わが国と豪州との間の通商関係は、昭和三十二年十二月に発効した現行の通商協定によって律せられておりましたが、同協定署名の際の了解に基づき、昭和三十五年以来、豪州の対日ガット第三十五条援用撤回実現のための交渉を重ねました結果、昭和三十八年八月五日に東京で、わが方福田国務大臣外務大臣臨時代理)と豪州側マッキュアン副総理兼貿易大臣及びマッキンタイア駐日大使との間で、日豪間にガット関係を設定することに対応して現行通商協定に所要の改正を加えるための議定書が署名され、かつ、豪州はこの議定書の発効とともに対日ガット第三十五条の援用を撤回する旨の書簡が交換されました。  この議定書は、(イ)現行の通商協定中のいわゆる二国間セーフガードに関する条項(第五条)を削除し、新たにガットの優先規定を設け、(ロ)改正後の通商協定の当初有効期間を改正議定書の発効の日から三年後の日まで延長することを主たる内容としております。  よって、ここに、この議定書締結について御承認を求める次第であります。  次に、北太平洋のおっとせいの保存に関する暫定条約を改正する議定書締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  現行のおっとせい条約は、日本国、カナダ、米国、ソ連の四カ国一の間で、おっとせい資源の最大の持続的生産性を達成するための措置を決定するため科学的調査を行なうことを取りきめた有効期間六カ年(ただし、その後一年間は新条約または改正条約が発効するまで効力を存続する)の暫定条約であり、一九五七年十月に発効いたしました。同条約は、一九六二年十月から最終年度に入ったので、条約の改正を検討するための当事国会議が一九六三年二月に東京で開かれ、この会議で採択された現行条約を改正する議定書案に字句上の修正を加えたものが、同年十月八日にワシントンで四カ国により署名された次第であります。  この議定書は、条約の有効期間を六年間延長すること、陸上猟獲との関連において海上猟獲が許されるかどうかを研究すること、獣皮の配分方法を変更して、ソ連もわが国とカナダに獣皮を配分すること等の点について現行条約を改正することを目的としているものであります。  おつとせい資源につきましては、現行条約のもとですでに六年間科学的調査が行なわれたのでありますが、なお、今後の調査の結果に待たなければならない問題が少なくありません。この議定書による改正点は、いずれも、おつとせい猟穫に関するわが国の従来の立場を反映した妥当なものであり、この改正に基づく今後六年間の調査により、おっとせい資源の最大の持続的生産性達成のための措置が一そう明らかにされることが期待されます。  よって、ここにこの改正議定書締結について御承認を求める次第であります。  次に、原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府アメリカ合衆政府との間の協定を改正する議定書締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  この議定書は、第四十四回臨時国会に提出されましたが、審議未了となったものであります。  原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府アメリカ合衆政府との間の協定第五条Aは、わが国が米国から購入することができる原子力研究事業に必要な特殊核物質の量に制限を設けておりますが、最近のわが国における研究事業の拡大発展に伴って研究用特殊核物質の需要が増大しておりますので、この需要に応ずるために同協定第五条Aに定める制限量のワクを撤廃することにつきまして、米旧政府と交渉を行なってまいりました結果、このために同協定の一部を改正することにつき合意に達し、昭和三十八年八月七日にワシントンで、わがほう武内大使と、米側ヒルズマン国務次官補及びシーボルグ原子力委員長との間でこの議定書に署名が行なわれたものであります。  よって、ここに、この議定書締結について御承認を求める次第であります。  最後に、通商に関する日本国とエル・サルヴァドル共和国との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明申し上げます。  エル・サルヴァドル共和国は、一九六一年以来中米地峡諸国間に成立している中米共同市場の中心でありまして、同国との通商関係を強化拡大することは、わが国の中米地峡諸国との間の貿易の振興及び経済協力の促進上、きわめて重要なわけでありますが、従来、わが国との間には協定がなく、わが国の産品は協定税率に均てんし得なかったのであります。  よって、わが国産品に対する協定税率の適用と通商上の諸般の待遇の保障を実現するため、昭和三十七年以来、通商に関する協定締結について交渉を重ねた結果、昭和三十八年七月十九日に東京で、外務大臣とエル・サルヴァドル共和国全権委員ハウレギ経済大臣との間でこの協定の署名が行なわれるに至った次第であります。  この協定は、関税に関する事項、輸出入及び為替に関する事項、出入国及び滞在に関する事項、課税、裁判を受ける権利、財産権及び事業活動に関する事項のそれぞれについて最恵国待遇を規定するとともに、工業所有権に関し内国民待遇を、また財産の公用収用及び海運に関し、それぞれ内国民待遇及び最恵国待遇を規定しております。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  以上五件、何とぞ御審議の上すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  105. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 以上で説明は終わりました。  本日は、これにて散会いたします。    午後零時二十五分散会