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1964-08-19 第46回国会 参議院 外務委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年八月十九日(水曜日)    午後一時二十分開会   —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     青柳 秀夫君    理事            井上 清一君    委員            木内 四郎君            黒川 武雄君            杉原 荒太君            和田 鶴一君            岡田 宗司君            羽生 三七君            森 元治郎君            曾祢  益君            野坂 参三君            佐藤 尚武君   国務大臣    外 務 大 臣 椎名悦三郎君   事務局側    常任委員会専門    員       結城司郎次君   説明員    防衛庁防衛局長 海原  治君    外務省アメリカ    局長      竹内 春海君    外務省条約局長 藤崎 萬里君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○国際情勢等に関する調査  (国際情勢に関する件)   —————————————
  2. 青柳秀夫

    委員長青柳秀夫君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  この際、外務大臣から発言を求められております。外務大臣
  3. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 先般の内閣改造に際しまして、はからずも外務大臣をお引き受けすることに相なった次第でございます。もとより浅学非才の者でございまして、はたして重任にたえるやいなや危惧なきを得ないのでありますが、一たんお引き受けした上からは、駑馬にむちうちまして、懸命の努力を傾注いたしまして職責を果たしたいと考えております。何とぞ各位におかれましては、格別の御鞭撻、御支援のほどを切にお願い申し上げる次第でございます。  近来、開放経済に向かいまして、国民の一人一人が直接身にしみて国際問題に切実なる関心を持たざるを得ないという状況に相なったのでございます。なおまた、南北問題、すなわちいわば経済的な国際上のひずみとでも申しますか、これらの問題の解決もきわめて重大なる問題になってまいったのでございます。これらの内外の情勢は、日一日とその勢いを増大するものを考えるのでございます。この間に処しまして、国民の世論に顧み、また、国際情勢の推移を十分に観測いたしまして、今後わが国の外交の進むべき道、これに処して誤りなからぬことを庶幾いたさなければならぬと考える次第でございます。重ねて皆さまの御協力をお願い申し上げまして、はなはだ簡単でございますが、ごあいさつにかえたいと思います。   —————————————
  4. 青柳秀夫

    委員長青柳秀夫君) 本日は、国際情勢等に関する調査を議題といたします。  ベトナム問題に関する件について質疑を行ないます。岡田委員
  5. 岡田宗司

    岡田宗司君 今月の初めにあたりまして、トンキン湾アメリカ駆逐艦北ベトナム魚雷艇攻撃をいたしました。そういう事件が二度起こりました。その後、さらにアメリカ軍北ベトナム魚雷艇根拠地あるいは石油貯蔵所等攻撃、破壊いたしました。このことは世界中に非常なショックを与えたわけでございます。その後、かかる軍事行動が停止せられまして一応の落ちつきを見せておりますけれども、しかし、いつまたかような事態が起こるかもわからないような状況にあるわけであります。わが国はインドシナ半島とあまり遠く離れておりませんし、特に日米安全保障条約に基づきまして、日本にはアメリカ軍基地があり、アメリカ空軍海軍日本におりまして、そうして、ここからトンキン湾並びに北ベトナム方面行動を起こしておるのであります。こういうような事態からいたしまして、この問題を私どもは対岸の火災視をするわけにはまいりません。われわれといたしましては、これらの事件というものが今後どうなるかということについて、深く憂慮をしておるものでございますが、外務大臣は、この事件がどういうような原因から発生し、そうしてまた、いま一応落ちついておるが今後どういうふうになる、こういう見通しを持っておられるか、まず外務大臣のこの北ベトナム事件に対する所見を承りたいのであります。
  6. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) インドネシナ半島一帯がかねて紛争の地域でありましたことは御承知のとおりであります。これらに関連いたしまして、アメリカの第七艦隊がたまたまトンキン湾哨戒に当たっておった際に、はからずも北ベトナム魚雷艇攻撃を受けたことが、今回のトンキン湾事件の発端であると考えております。攻撃は二回にわたって繰り返されたのでございますが、アメリカ艦隊としては自衛上これに対処するに至ったことはやむを得ない事態であったと考えるのでありまして、この直接の攻撃を排除するのみならず、さらに魚雷艇根拠地並びに軍事上の石油施設をも攻撃したのでございますが、これらは自衛上まことにやむを得ざる行為であったと考えています。しかし、その事件発生直後、アメリカ大統領が、これはあくまで限定された処置であって、決して事件の拡大を来たすものではない、そういう決意を声明されたのでございまして、その後、かの地域における状況もと状態に返ったのであります。したがって、北ベトナム方面からさらに攻撃を加えられざる限りにおきましては、事件の発展はあり得ない、かように考えておるのであります。
  7. 岡田宗司

    岡田宗司君 外務大臣のいまの御発言を聞いておりますというと、アメリカ側発言されたようなことをそのまま繰り返しておられるだけであります。何ら外務省としてこれらの問題について的確な情報をつかみ、あるいはそれを分析して日本外務省として権威ある見解を持つというふうには思えないのであります。第一に、あなたはいま、アメリカ駆逐艦マドックストンキン湾付近でただ哨戒しておったら、いきなり北ベトナム側魚雷艇攻撃を受けた、こういうふうに言われておったわけでございますけれども、その第一回目の直前に、南ベトナム艦艇北ベトナムの沿岸にある二つの島に対して攻撃を加えた。そうしてアメリカ駆逐艦はそれを援護しておったという事実があったわけであります。すでにアメリカ側においてもそれらのことは新聞紙上で明らかにされておるのでありますが、そういう点について外務省はいかなる情報をお持ちになっておるか。外務大臣は、こういう南ベトナム軍がおそらくそれはアメリカと了解なしに攻撃をしたわけではないし、また、アメリカ海軍駆逐艦がそれらを援護しておったという態勢にあったとするならば、これは南ベトナム並びアメリカ側北ベトナムに対して先に攻撃をしかけたものではないかと私は思うのでありますが、その点についての外務大臣所見はどうでありましょうか。
  8. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 南ベトナム艦艇二つの島を襲撃したというようなことは新聞に出ております。おそらく事実だと思いますが、しかしながら、アメリカ艦隊がこれを援護してそうして攻撃を助けたというようなことは確認しておりませんし、また、おそらく事実と相違するのではないかと考えております。
  9. 岡田宗司

    岡田宗司君 しかしながら、とにかくアメリカ駆逐艦がそういうような海上におること、これはさきに一九五八年でありますかの十一月と記憶しておりますけれども台湾海峡でだいぶ中国と台湾の間に事が起こりました。金門馬祖を中心にして事が起こりましたときに、アメリカの第七艦隊の一部艦艇が、中華民国——つまり台湾政府側艦艇援護をしておったということ等から推しまして、また、南ベトナムに約二万に近い軍事顧問団と称するアメリカ軍隊を送り、そうして事実上戦闘行動に従事させ、さらにアメリカ空軍北ベトナムの各地を爆撃しておる。あるいはまた、十七度線のごく近くに大きな飛行場を設けまして、そうしてそこにアメリカ新鋭戦闘機等を配置しておるというような状態から見ますならば、この南ベトナム艦艇北ベトナム攻撃いたしましたことと、その付近アメリカマドックス号がおりましたこととも関連なしとは言えないと思います。あなたは確認しておられないかもしれないけれども、そういうことは、これは常識から見ましても、関係があると見ざるを得ない。世界の各国におきましても、この点について、アメリカ側発表等を信じないものがおる。アメリカ軍事同盟を結んでおるNATOの諸国のうちにおいてさえ、このアメリカ行動に対しまして非常な疑惑と批判を持っておることは御承知だと思います。私どもは、いま日本外務省がこの点について、ただアメリカ側発表は何でも正しいのだと、うのみにしておるような態度をとっておられることは、まことに日本外務省といたしましては情けない話ではないかと思うのであります。やはり、われわれは、近くに起こっておることであります、私どものことにも重大な関係を持っておることでございますので、的確な情報というものについて、これはあなたはお持ちになっていないかもしれないけれども、あなたの手元において集まっておるのじゃないか、その点について外務省情報局ですよ、そこに来ております情報について、だれか説明していただきたい。
  10. 竹内春海

    説明員竹内春海君) ただいま御指摘のような新聞報通があることは私ども承知しておりますが、アメリカ艦隊南ベトナム北ベトナム攻撃について援護しておったことは、私ども公式には承知しておりません。
  11. 岡田宗司

    岡田宗司君 公式にはアメリカのほうの説明なり通報なりで知っておられるでしょうが、新聞情報等もごらんになっておって、一体外務省としてどう判断されておるか。アメリカただ報道だけが正しいのか、あるいはまた、新聞等が、しかもアメリカ自身新聞がそういうことを報道しておるのについて、外務省はどういう判断を下しておるのか、それをお伺いしたい。ただ、外国の発表があったから、それがすべて真実でございますなんというのでは、外務省情報局なんか要らないはずです。
  12. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 外務省全体としてどういう判断を下しておるかという御質問でありますから、私からお答え申し上げますが、もとより日本といたしましては、直接みずからこの地方に情報網を持っておらないたてまえでございます。そうすると、他の情報によるよりいたし方ないのでありますが、われわれといたしましては日米安全保障条約のいわゆる盟約国でもございますし、このアメリカの公式の情報にあくまで信頼する、こういうたてまえをとらざるを得ないのであります。
  13. 岡田宗司

    岡田宗司君 たいへんおかしな話を聞くのですが、日米安全保障条約盟約国であるからアメリカ情報はそのまま信じるんだ、こういうお話ですが、じゃ、これからもしアメリカ側が、たとえば南ベトナム傘地といたしまして北ベトナムと事をかまえる——よく戦争の発生のときにありがちなことで、日本なんかも満州事変のときにやったことでありますが、一種のしかけをいたしまして、そうして、それをきっかけに攻撃を開始するというような事態が起こりましたときに、やはりこれはアメリカ側のほうでもってそのことを隠して、よそから攻撃されたから自分たちは反撃をしたんだというように言って行動した場合に、やはりそれを信じられるのですか。アメリカが言えば、うそでも何でも、日米安全保障条約盟約国であるから、その言うことは全部真実である、そしてそれに基づいてそれを真実だとして日本としての態度を御決定になるのですか。いまのあなたの言からすれば、そういうふうに考えられるのですが、そういうおつもりですか。
  14. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 事実の真否判断する他の有力なる根拠がありますれば、もちろんそれを十分に取り入れて、そして判断をするのでありますが、他にそういう判断の材料がないという場合には、かような締盟国情報を信ずるよりほかにない、こういう意味で申し上げたのでございまして、締盟国声明にかかわらず、他の諸般の事実によってこれが真否が疑わしいというような場合には、ただ締盟国が言ったからそれに何でもたよるのだ、それだけを採用するというような、そういうたてまえではございません。
  15. 岡田宗司

    岡田宗司君 今度アメリカのほうから、北ベトナムから攻撃を受けたからやったんだ、それであんたのほうでは、それはやむを得ざることである、こうお認めになったというのでありますけれども、それが疑わしいかどうかという点について、どうお考えになったか明らかにしていただきたい。いまのお話ですというと、どうもただそのまま信じられている。しかし、アメリカ側報道でさえ、南ベトナム艦艇北ベトナムに対して砲撃をし、その際にマドックス号がその辺に遊よくをしておって、いわば援護の形をとっていたということを伝えておるのです。そうすれば、アメリカからいかなる声明があろうと、あるいは通告があろうと、これはやはり情勢分析をしてみなければならぬのが私は外務省任務じゃないか。それを、ただ新聞報道は怪しいんだということでもって、アメリカ外務当局の言うことだけが真実だというふうに考えられることはおかしな話で、この際はそういうようなアメリカ側報道さえこれは退けられて、いちずにそのアメリカ政府のほうの発表真実である、そういうふうに信じられたのかどうか、もう一度お伺いしたい。
  16. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 新聞情報、また新聞にもよりましょうが、いろいろあったようでございますが、これはアメリカ声明をひるがえすだけの力のないものである、かように判断したわけであります。
  17. 岡田宗司

    岡田宗司君 アメリカ声明をひるがえすだけの力がない。力があるかないかでなくて、そういうようなことがアメリカ側からさえ報道されるというところに、われわれは疑惑をはさむ余地があると思うのですよ。それをひっくり返す力があったかなかったかの問題じゃない。それでも疑わなかったんですか。
  18. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 先ほど申し上げたとおりであります。
  19. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういうようなことでこれからいろいろな緊急事件に処せられるというのは、まことに心もとない話でありまして、日本外務省というものはそういうようなことで対処していくとすれば、これは私どもも、もっと何か活を入れてもらわなければならぬと思うのです。しかし、外務大臣がそういうぼけたことを言っておったんでは、これはまことにわれわれたよりないと思わざるを得ないんですが、まあ、それはそれといたしまして、次にお伺いしたいのは、二回目の攻撃を受けまして、そしてアメリカ軍は非常に長い間、何時間かにわたって、暗夜、相当波の荒いとき、それと交戦をした。そしてそのあとで直ちに、空軍による北ベトナム魚雷艇根拠地並びに石油タンク爆撃を遂行しておるのであります。で、この第二回目の遭遇戦といいますか、攻撃といいますか、このことについてもずいぶんいろいろと判断がまちまちでありまして、アメリカ側発表もいろいろ分析をされまして怪しいということが言われておるのであります。これもいまの流儀でいけば、全部アメリカ側発表が正しいとされるのでありましょうが、次にアメリカ側発表によりますというと、北ベトナム魚雷艇根拠地あるいは石油タンク等爆撃したということは、これはアメリカ側発表しておるのだから、これは間違いない事実でありましょうが、その事件の起こりますときに、その前に、日本から第七艦隊及び日本におけるアメリカ空軍出動しておるわけであります。過日衆議院において、この日米安保条約と、この日本における第七艦隊及びアメリカ空軍ベトナムへの出動がいろいろ問題になりました。で、その問題といたしまして、いわゆる事前協議の問題があるわけであります。アメリカ軍は、極東の平和と安全を守るために出動したということになっておるわけでありますが、在日米空軍なり海軍なりが作戦に出ます場合には、日本側に対して事前協議をすることに条約上はなっておるわけであります。しかし、今回の出動については事前協議は行なわれなかったと思うのであります。事前協議はなかったわけですか、まずその点を外務大臣からお伺いしたい。
  20. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 事前協議はございませんでした。
  21. 岡田宗司

    岡田宗司君 日本におけるアメリカ軍作戦行動を起こす場合に事前協議をしなければならないと思う。これは、まあ日米安全保障条約そのものについては私どもは反対なのでありますが、それは別といたしまして、あの条約に基づけば事前協議をせざるを得ないことになっておるわけでありますが、なぜアメリカはその事前協議をしなかったか。日本側は、アメリカ側事前協議をしないことに対して、あるいは抗議をするなりあるいは求める——まず第一になぜ求めなかったか。ああいう形勢になって、日本からアメリカ軍出動せられるであろうということが予想せられるときに、なぜ日本側アメリカ側に対して事前協議を求めなかったか。あるいはまた、アメリカがもし事前協議なしに行動したという場合には、日本側はこれは条約違反だとしてなぜ抗議をしなかったか。この点をまず明らかにしていただきたい。
  22. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 事前協議対象とならないから事前協議をしなかったのでありまして、なぜ事前協議対象とならないかという理由でございますが、第七艦隊日本施設及び区域を使用した事実はございますけれども、それは直接戦闘目的とした作戦行動としてその飛地を進発したのではないのでありまして、ただ単に、トンキン湾付近哨戒するという目的に出たものであるという場合には、基地を出るときに事前協議をしなくてもよろしいのであります。たまたま哨戒の最中に不意に相手方から攻撃を受けた、それを自衛行動として排撃をした、こういうことなのでありますから、これは安保条約による事前協議対象にならない、かように考えておる次第であります。
  23. 岡田宗司

    岡田宗司君 なるほど、早くから日本基地を離れて、そしてトンキン湾付近を遊よくしておりましたマドックス号等は、あるいはそのほかの艦艇もありましょうが、それらは哨戒で出ておって、そしてこれの出動については事前協議対象にならぬ。しかし、第一回の衝突が起こりました後に、日本からあげて第七艦隊が出て行った、大挙出動した。そして、しかもこれらは戦闘態勢に入って出て行ったのではないでしょうか。これは単にあの辺を遊よくするために出て行ったのではなくして、一つの作戦行動として出て行った。だから、第一回目の衝突の起こる以前にあの辺にいた艦隊と、あの衝突が起こってから後大挙出動した艦隊、これは私は目的は違っておると思う。そういたしますれば、あのあとから出たものもこれは事前協議対象にならなければならない。作戦行動である。それからまた、特に空軍につきましては、こういったものが爆撃に参加しておるということになりますれば、これは明らかに作戦行動である。待にあの爆撃が第七艦隊空母から発進したものとすれば、そうして、その準備をして日本から出て行ったものとすれば、これは明らかに作戦行動を予定して出て行ったものである。そうすれば事前協議対象になることは明らかである。あなたは、二度目もただ哨戒に出て行った、そういうふうにお考えなんですか。
  24. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 一度目の問題はほんの偶発的な問題でありまして、それはもうその場で終わりというのでありまして、再び事態は静穏に帰したわけであります。そうして二日おいて、哨戒中またはからずも攻撃を受けた、こういうことでございまして、この間に日本を進発したものがありましても、それは当初から直接作戦行動をする命を受けて進発したのではないのでありまして、かような場合には、すべて事前協議対象にならないという解釈でございます。
  25. 岡田宗司

    岡田宗司君 それはアメリカ側解釈なんですか。日本側日本外務省外務大臣解釈として言われておるのですか。アメリカ側でもって、これは事前協議対象にならないのだから事前協議通告をしなかった、事前協議をやらなかった、日本側はそうでございますかというので、それをオウム返しに言われておるのですか。
  26. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 少なくとも、そういう事実を前提といたしますならば、それは日米両国の間において十分に協議されて合意に達した事柄でございまして、国によって解釈がまちまちであるというのではございません。さような事実に基づいて導かれる結論は日米同一でございます。
  27. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、二度目の攻撃をした後に、直ちに北ベトナム魚雷艇根拠地やその石油タンクを一挙に壊滅に近いほどにたたいた。あれは作戦行動ではないのですか。あれは予定された作戦行動じゃなかったのですか。
  28. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 私どもは、これは直接攻撃を排除する行為一体をなすところの自衛行為である、かように解釈をいたしております。
  29. 岡田宗司

    岡田宗司君 自衛行為かなんか知らぬが、人の国に入ってぼかんぼかんやる。これが作戦行動でなくて何が作戦行動ですか。そういう場合は作戦行動でない——軍が計画的に攻撃をすることを作戦行動と言わないのですか、あなたの解釈では。
  30. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) その攻撃を受けた事態からその以後の一体自衛行動でございますが、それを部分的に、その行動は計画的なものである以上は、あるいは作戦行動と言えるかもしれません。
  31. 岡田宗司

    岡田宗司君 それが計画的なものである以上作戦行動と言われるならば、これは日本から発進した艦隊から起こったものだとすれば、これは来前協議対象になるはずではないのでしょうか。
  32. 藤崎萬里

    説明員藤崎萬里君) 今度の事件について事前協議対象になるかどうかの判定の基準になるのは、御存じのとおり、戦闘作戦行動発進基地として日本施設区域が使われていたかどうかということでございますが、現にあそこにおりました米軍がとった行動は、もちろんそれだけで戦闘作戦行動であるわけでございますけれども、それが日本から発進されたかというと、そうじゃないわけでございまして、したがいまして、事前協議対象にならない、かように考えております。
  33. 岡田宗司

    岡田宗司君 たとえば空母日本から出て行く、その空母から発進したものが作戦行動をとった場合に、これは日本関係なしというのですか。
  34. 藤崎萬里

    説明員藤崎萬里君) いまおっしゃっただけの事実からだけでは、いずれとも判断しかねるわけでございまして、その空母戦闘任務を与えられまして戦地に直行し、こういう行動をとれと初めから——日本基地を出るときからそういう任務を与えられてやる場合には、日本発進基地に使われたということになるのでありましょうけれども、一たん出たあとで、何かまた不測の事態が起こった、そこで駆逐艦援護するために航空母艦の飛行機が飛び立っていった。そういう事態の場合は、日本施設区域がその戦闘作戦行動基地として使用された、こういうことにはならないと考えております。
  35. 岡田宗司

    岡田宗司君 日本から出て行く空母がちゃんと戦闘の用意をして、そしてまた、おそらく何ですね、急に攻撃を受けたからどことも連絡なしに急にやるなんていうもんじゃなしに、ことに第一回目の攻撃を受け、第二回目のときまでに日本からあれだけの艦隊が出て行ったということになれば、これはだれが考えたって、戦闘準備をして——出て行ったときには作戦を開始するという準備をして出て行っているというのは、これは軍隊のことからいえば常識じゃないですか。それにもかかかわらず、どうしてこれは日本から発進した艦隊作戦行動をやったのだとお認めにならないのですか。
  36. 藤崎萬里

    説明員藤崎萬里君) 条約の規定が、私が申し上げたような形になっておるわけでございまして、ただ、こういう時勢だから航空母艦としてはどんなことがあってもそれに対処するような態勢を内部的に整えておくとかなんとかいうことは問題の眼目じゃないわけでございまして、その航空母艦が全体としてあすこを攻撃してこいという命令を与えられて、ほんとうに日本作戦行動発進基地として出発をする場合のみが事前協議対象になるということが条約解釈として、この条約の審議をしていただきました国会の当初から政府が御説明いたしておるところでございます。
  37. 岡田宗司

    岡田宗司君 それじゃお伺いしますが、一体アメリカ軍——アメリカ海軍あるいは空軍日本から発進するときに、これからこういうような戦闘作戦行動をやりますということを明らかにして出かけますが、まずそれをお伺いします。それを日本政府通告して出かけますか。
  38. 藤崎萬里

    説明員藤崎萬里君) 当然、日本政府に対してはそういう場合には事前協議が行なわれるはずであると考えます。
  39. 岡田宗司

    岡田宗司君 私が聞いているのは、一体軍というものが、たとえば今度のような事態に処して出動する場合に、よその国に対して、これからこういうことをやりますということを言って出かけるかどうか。
  40. 藤崎萬里

    説明員藤崎萬里君) そのこともこの条約の審議の際にだいぶ問題になりましたけれども、それは事前協議をするということでございますから、言わなければ協議にもならないわけでございまして、最後に突き詰めて言えば、信頼関係ということになるかもしれませんけれども、私どもとしては、当然事前協議があるものと考えておるわけでございます。
  41. 岡田宗司

    岡田宗司君 当然事前協議があるべき事態でありながら、事前協議を向こうから求めてこなかったという場合には、一体どうするのですか。
  42. 藤崎萬里

    説明員藤崎萬里君) アメリカ条約違反をした場合にどうするかということでございますが、それはやはりその場合に、その違反の度合いの程度に応じてしかるべく措置をとると申し上げる以外に、前もって日本政府としてとるべき行動の予定を立てることはできないかと思います。
  43. 岡田宗司

    岡田宗司君 たとえば、今回の場合、考えてみましても、第一回目は偶発的なことであったでしょうが、しかし、第二回目の場合は偶発的なこととは思えない。しかも、北ベトナムへの爆撃が、日本から発進した空母から出たものによって行なわれたという場合に、普通常識的に考えれば、作戦行動準備をして日本から出て行ったというふうに考える。それからまた、アメリカ側で、大統領が北ベトナム艦艇の集結地、根拠地、あるいは石油タンク爆撃する前に、それより数時間前に、テレビでもって、攻撃するということを明らかに言っているんですね。それがアメリカ国民に知られてから後にその爆撃が行なわれた。そういたしますと、明らかにこれは予定された作戦行動であるということが言えると思う。つまり、大統領みずからが、こういう軍事行動をやるのだということを国民に明らかにした。それからある時間を経てその爆撃が施行されておる。これは計画的に、作戦的に進められたものにほかならない。そうすれば、この日本から発進した艦艇からそういう作戦行動が行なわれたということになれば、これは明らかに事前協議対象になる。本来ならば、アメリカとすれば、日本側に対して、こういう作戦行動を行なうのだから、事前協議を求めるべきだ。それを求めないで出て行った。日本側とすれば、本来なら、もしそういう場合には、アメリカ条約違反であるとして追及しなければならぬ問題でありますけれども日本側のほうでは、アメリカのやることは御無理ごもっともである。こういうことでアメリカの弁解に回っているように私どもはとれる。何もそんなにアメリカ側の弁解をしなくてもいいと思うのですが、一生懸命に椎名外務大臣をはじめ皆さん方はアメリカの弁解をやっておられる。これは事前協議対象になりません、これはアメリカ軍の偶発的な行動であります、先に出て行ってからやったことは何ら条約に違反いたしません。まるで弁解をやっている。これからこういうことがしばしば起こることが予想されるのであります。と申しますのは、いまこの事件はおさまっているように思える。しかし、たとえば北ベトナム南ベトナム軍隊とが十七度線で小ぜり合い、あるいは南ベトナムの内部におけるベトコンの活動が非常な活発な動きを示してアメリカ軍に損害を及ぼす。あるいは、どの雑誌だかに指摘されておりましたけれども南ベトナムの有力な将軍が暗殺されるというような場合には、また報復爆撃等の軍事行動が起こるのではないかということが予想される。そうなってまいりますというと、また日本に帰って来たものが出て行く可能性があるわけであります。通告しないで出て行って先でやったことは事前協議対象にならぬということだったら、いつでもアメリカはそれを繰り返す。事前協議ということは空文になっちゃう。そうじゃありませんか。それでもよろしいのですか。一体、この条約が結ばれた以上は、この条約にある事前協議という一つの重要な条項は、やはり守ってもらわなければならぬ。日本側としても、かかる場合が予想されるといたしますならば、アメリカ側に対して事前協議を求めることができる。アメリカ側だけから日本通告するのでなくて、日本側からアメリカ側事前協議を求めることもできる。一体椎名外務大臣はどうお考えになっておりますか。
  44. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 爆撃前の声明があって、しかる後に、何時間かおいて爆撃の事実があったということも新聞等において承知しておりますが、要は、その声明の後に作戦行動任務を帯びて日本基地を発進したかどうかという問題なのであります。その事実がなければ事前協議対象にはならない、こう考えておるのでございまして、われわれといたしましては、かような該当の事実はないということを確信しておる次第でございます。
  45. 岡田宗司

    岡田宗司君 作戦行動というのは軍の秘密で明らかにされないとすれば、向こうはいつでも黙って出て行って先でもってぽかぽかやる。そうすれば、事前協議ということは、向こうでは通告する必要は何もないことになるでしょう。どうですか。
  46. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 御説のような場合も考え得るのであります。これは、要するに、盟約国の相互信頼というものが結局最後の核心になるのでありまして、お互いに不信なことをしようと思ったら、これは条約も何も成り立たない。どこまでもやはり相互信頼の上に築かれておるというふうにわれわれは考えております。
  47. 岡田宗司

    岡田宗司君 日本側だけが一生懸命相互信頼相互信頼と言っていても、アメリカの軍のほうで、作戦行動をやる場合に、事緊急を要するとか秘密を要するというのでもって、いつでも今回のような行動をとるとすれば、これは相互信頼も何もあったものでない。そうして事前協議が空文になり、いまの日米安全保障条約の一つの重要な条項は常に無視される、あるいはじゅうりんされるということになるじゃありませんか。それから、今後もこういうことが予想されるわけです。とにかく北ベトナムのこのインドシナ半島においては、ああいう事実が、緊急の事態が起こっておる。まだ起こるかもしれない状況にあるわけです。日本からもアメリカ海軍空軍が出て行くことが予想されるのですから、そういうことが予想されるときに、いま日本政府アメリカに対して、今後日本からそういう艦隊が出て行く場合に事前協議をすべきであるということを要求せられるかどうか。黙って見送られるのか。今回のような事態があっても、もう何も言わないで、アメリカ側のほうから事前通告があるまでは手をこまねいて見ておって、あとから、あれは事前協議対象じゃございませんと言って百方国民に弁解することで足れりとされておるのか、その点をお伺いしたい。
  48. 藤崎萬里

    説明員藤崎萬里君) いまの事態について事前協議を要する事柄であったという前提に立っての御質疑のようでありますが、この点は私どもは意見を異にしていることは、先ほど来申し上げているとおりでありまして、それから、このもとになっております交換公文の解釈といたしましては、いま申し上げていることは、条約締結当時から申し上げていることと少しも変わらないのでございます。いまのところ私どもといたしましては、この条約の実質的な改定になるようなことを申し入れるというような問題は検討いたしたことはございません。
  49. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、こういうような事態にあって事前協議をすべきではないかということは、アメリカ側に申し入れるということはできないのですか。
  50. 藤崎萬里

    説明員藤崎萬里君) いまのトンキン湾事態と離れまして、抽象的に問題を考えた上で答弁させていただきたいと思いますが、かりにアメリカ事前協議を当然なすべきではないかと思われるようなことについて何も言ってこなかった、日本政府としてはどうもふに落ちない、したがって、その問題を究明するために協議を申し入れるということは、これはもちろん可能でございます。条約の実施に関することでございますから、何でも協議ができるわけであります。ただ、それは事前協議を提案するということではなくて、事前協議の問題について協議を提案するということだろうと思います。
  51. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすれば、とにかく日本アメリカ軍基地があって、しかも、これからもひんぴんとして使われるかもしれない事態にある。これが日本国民に対して相当不安を与える場合には、これはこの問題についてもアメリカ側に対して、たとえば条約と離れて政治論的に話し合いをすることだってできるんじゃないかと思うのです、私どもは。それは、条約には「日本側から事前協議を求めることができる」と書いてないといたしましても、少なくとも先ほど椎名外務大臣の言われましたように、相互信頼ということに基づいておるとするならば、よけいそういうことができるんじゃないかと思うのだが、どうでしょう。外務大臣、どうお考えになりますか。
  52. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 事前協議の問題は、すでにもう条約あるいは附属文書に明瞭に書いてある問題でありまして、いま条約局長から申し上げたように、具体的な事実についてもしも申し入れることがあったとすれば、これは事前協議のまさに対象になる事実ではないかというような、そういう問題について提言をするということはあり得ると思います。当然やることになっておる事前協議でありますから、繰り返してこれを発言する必要はおそらくない。また、かりに該当の事実があって、不幸にして事前協議の事実がなかったというような場合には、これは条約違反でございまして、そういったような場合には、その具体的な事態に立脚いたしまして、そしてこれをどういうふうにするかということが処置されるのであると、かように考えるわけであります。
  53. 岡田宗司

    岡田宗司君 もう一つ。事前協議の問題と離れまして、今回の事態というものは日本にも非常な不安の面を起こしておる。これからもああいうことが行なわれて、日本基地からどんどんアメリカ軍が発進するということは、いよいよ日本国民に不安を与えると思う。この問題についてアメリカ側に対して、たとえば日本側としてどういうふうにこの問題を処理するのか、あるいはまた、日本側としてこういうことはあまり大げさにやってもらいたくない、あるいはまた、日本側としてもっと根本的な処理の方式について何かアメリカ側に対して申し入れるつもりがあるのか。まあ、あそこでやっておることはアメリカさんのおやりになることだ、御無理ごもっともでございますと言って黙って見送っておられるのか、外務大臣所見を承りたい。
  54. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) その問題につきましては、すでにライシャワー大使が総理にアメリカ政府の意向をもたらしたときに、池田総理から、この事件不拡大の申し入れをしておるのでございますから、重ねて申し入れる必要はいまのところないと思います。
  55. 岡田宗司

    岡田宗司君 それじゃ、私の質問をこれで終わりましょう。
  56. 青柳秀夫

    委員長青柳秀夫君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  57. 青柳秀夫

    委員長青柳秀夫君) 速記をつけて。羽生委員
  58. 羽生三七

    ○羽生三七君 事前協議問題に関する条約上の解釈の問題は別として、私、大局的な点で一点お伺いしてみたいと思うのです。  御承知のように、今日の世界情勢が、平和共存という国際情勢もとでみな一応安心しておるのに、問題は、御承知のように、ベトナムを中心とするインドシナ問題、それからキプロスあるいはラテン・アメリカに若干の問題はありますが、主として東南アジアに一番大きな問題点があるわけです。ところが、率直に申し上げて、どういう御解釈をなさろうと、私ども考えると、この危機というものは、まさに製造された危機である。そういう私ども解釈をしておる。だから、日本アメリカ日米安保条約を結んで締約国の立場にある。そういうことで、外務大臣あるいは外務省としては、アメリカに対する一応の信頼感というものを基礎にして外交をおやりになっておるようでありますが、私は、これはいかがかと思う。だから、こういう情勢もとにおいて、たとえ締約国であっても、必要な問題については、むしろ、忠告より進んで、さらに警告をさえ必要とする。たとえばNATOの加盟国がそういう意味の自主性を、同じ加盟国内においても持っておることは御存じのとおりであります。でありますから、私どもとしては、いま日本外交にとって必要なことは、単に自主性という抽象的な問題からさらに進んで、そういう意味の具体的な警告をすら必要とする、そういう情勢にあるのじゃないか。だから、条約上の問題についても、いま岡田君が指摘されたように、まさしく、これは空文化だ。全く事前協議というようなものは条約上に明記されておっても、実際空文にひとしい。いまの日本政府の立場でいうと、これを合理化するためには、どういう解釈でもできるのじゃないか、そういう感じさえ持つわけです。だから、私は、むしろこの平和共存という国際情勢というものを定着をさして危機の拡大を防ぐという立場に立つならば、たとえ安保条約の締約国であっても、もっとそういう意味においての積極的な必要な発言が望ましいのではないか。それがないと、単に条約上の解釈をめぐって、適当な抜け道を政府が児出して、いつでもこれを空文化していく。このことは今後も続くのじゃないかということが杞憂されるわけであります。ですから、私どもとしては、いまの世界の大局というものを政府がはっきり認識されて、そういう大局的な見地から、たとえ相手の国とどういう条約上の関係にあろうと、この世界の正しい平和路線を定着をさせ、さらに前進さしていくために、どういう役割りを日本が世界の中で、特にアジアの中で果たすか、この外交の基本的なかまえというものが必要だと思うのです。外務大臣は就任早々、アジアとの近隣外交ということを言われたようでありますが、けっこうであります。だが、自由陣営だけの近隣外交じゃだめであります。ですから、その点は前の外務大臣にも申し上げましたけれども、イデオロギーで判断をして、自分の好ましい陣営とだけ近隣外交をやる、それではいかんと思う。だから、そういう意味で、アジアには、今度のベトナム問題に限らず、いろいろ問題があると思う。たとえば、この際だから一緒に申し上げますが、プラント輸出の問題でも、延べ払いの期間が五年以上ではいかんとかなんとか、アメリカはどういう資格で言うのですか、そういう国が世界のどこにありますか。よその国の商売上の貿易上の問題について、期限についてまでかれこれ言うという、これは単なる一例です。ですから、そういう意味からいって、日本の外交というものが、アジアのみならず、世界全体を通観してみて必要な役割りを果たすにはどういうことが必要であるか。そういう角度からの外交の姿勢というものが望まれるのじゃないか。ですから、そういう意味で、先ほどの岡田委員の質問にもありましたけれども、もっとそういう点については率直に、アメリカに対してわが日本の見解というものを述べる、そういう姿勢が必要ではないかと思う。私はこまかいことは一々——他の議員も御質問のようですから、これ以上申し上げません。そういう大局的な問題についての外務大臣の心がまえ、今後に対する方針についてこの機会に承っておきたいと思います。
  59. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) お説まことにごもっともでございまして、単なる自由陣営の近隣外交であってはいかん。もっと広く胸襟を開いて外交に当たるべしという御忠言はまことにありがたくちょうだいいたします。ただ、日本政府といたしましては、政治、経済の面にわたりまして、いわゆる自由主義の立場をとっておる。民主主義の政治を貫いていきたい、こういうのでございますから、おのずから、独裁の国柄とは、やはりどうしても越えることができない一線というのがあるということは、これはやはり十分にはっきりとさせて、そうして外交を行なわなければならぬ、かように考えておりまして、中共との問題につきましては、いわゆる政経分離のたてまえで経済の交流を、積み重ねによってこれを実行してまいる、こういう立場をとっておるのでありまして、また、対ソ連圏——ソ連とは御承知のとおり、だんだんあらゆる面において年とともに両国の交流がしげく行なわれておるような状況でございまして、決して狭い近隣外交のみに閉じ込もるというようなたてまえはとっておらないことは、十分にひとつ御了解願いたいと思うのであります。  それから、ちょっと先ほど触れられましたから申し上げますが、アメリカは何も、五年以上の問題については、とやかくうるさいことを言って干渉をしておるというのではございません。ただも共産圏に対しては、いわゆるクレジット競争にならないように、もしも余裕があるならば、むしろ南北問題、つまり東南アジアの低開発国に対する協力をやるべきではないかという一般論を言っておるのでありまして、一つ一つの問題について干渉がましいことを言っておる事実はございませんし、また、かりに言っておっても、そういうものに耳をかす必要はない。共産圏は、御承知のとおり、国家貿易であります。それで、自由圏は国内にもいろいろ競争相手がある。向こうは一人、こっち側は多数ということがあって、結局、貿易の面におきましても、一人の相手方に多数の相手方が操縦されるという場合が非常に多いのでございます。そういったような関係もありまして、その点はアメリカの意見によるまでもなく、日本といたしましては、十分に共産圏貿易につきましてはあやつられないようしてかからなければならない。その一つがいわゆるクレジット。ベースなのであります。この点は誤解のないように申し上げまして御了解を得たいと存じます。
  60. 羽生三七

    ○羽生三七君 私の質問の重点はそこにあったわけじゃないので、時間の関係上、私が要点をしぼったためにそういうことになったのですが、たとえばアメリカのゴールドウォーターの進出ですね。これは大統領選挙なんかに関連をしてアメリカのこの傾向はまだ続くと思うのです。たとえば、ベトナムにおける今度のような問題は、非常に警戒を要すると思う。だから、そういう場合に、先ほど岡田君が言われたように、今度の場合は皆さんがそういう解釈事前協議対象にならないと言われておるけれども、少なくともわが日本が見て重要と考えられる問題については、アメリカからの協議がなくても、日本みずから協議を求める等の積極的な姿勢があってしかるべきじゃないか。そういうことを言わむがために、私は世界の大勢を先に申し上げたのです。その点はっきりしていただければ、それでよろしいのです。その点についてのお考えを承りたい。要するに、日本の自主性の問題です。
  61. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) この問題については、特にあなたとの間において論議をかわす必要のないほど、私どももあらゆる場合において、自主性を持って対処すべきである。また、さよう進めておるつもりでございます。
  62. 青柳秀夫

    委員長青柳秀夫君) 曽称委員
  63. 曾禰益

    ○曾祢益君 先ほど岡田君が指摘されました、最近のトンキン湾事件等における日本施設から進発したアメリカ軍行動について事前協議対象になるかならないかという御議論があったのですが、その御議論を聞いておって、政府の答弁でまだ少し欠けておる点がありゃせぬかというふうに感ずるのは、確かにこの夢前協議の非常に限定した解釈とすると、日本基地から進発したアメリカの軍艦、飛行機等の直接戦闘行為の場合だけが対象になるということになるのかもしれませんが、現実にはなかなかそういうことは分けることがおかしいというような問題があるわけです。したがって、そういう問題を想定したかしないかは別として、条約によれば、第四条の極東の平和と安全に関する随時協議というような事項もあるわけです。そういう意味も含めまして、必ずしも特定の行動がはたして日本から進発した戦闘行動であるかどうかということは疑わしいような場合でも、実際は、日本から出る第七艦隊所属の艦船部隊、あるいは航空部隊が、いつでも戦闘行為——自衛の名においてするといなとにかかわらず、報復上やるかなんかは別として——事実上戦闘行為に行き得る準備態勢で行くような場合には、そういう事態を全体として、当然これは双方が意見交換をしておくべきではないか。ライシャワー大使からある種の通告があったのに対して、ただ事件不拡大を申し入れたというのでなくて、もっとこれらの事態全体に対しての随時の外交レベルにおける協議があってしかるべきではないか。この点に対する外務大臣態度なり御答弁なりというものが、非常に十分でないように思うのです。これがやはり国民の不安の一つの原因ではないか。この点はどういうふうに考えておられるか。第六条の交換公文だけでなく、第四条の随時協議ということも、そういうことも活用してしかるべきではないか。その点についてのお考えを伺いたい。
  64. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) お説のごとく、第四条の後段の事項に該当する事柄でありますが、この点につきましては、いち早くライシャワー大使が池田総理を訪問されまして、そうしてトンキン湾における事態発生の経過、及びこれに対するアメリカ側のとった措置等につきまして、報告を受けたのでございます。これに対しまして池田総理から結論として、この事態のこれ以上の遊艇をとどめるように、いわゆる事件不拡大の方針を述べまして、これを了承して両者の会見が終わったのであります。これと並行して、在米の武内大使からラスク長官に会見を求めて、同様の申し入れをいたしております。これは結局、四条後段における「日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じた」と認識されて、そうして、これに関する両国の協議が、以上申し上げたような方式によって行なわれたものと、かように解釈しております。
  65. 曾禰益

    ○曾祢益君 私の申し上げたのは、もう少し幅が広いことを申し上げているつもりなんであって、確かにトンキン湾におけるアメリカ海軍北ベトナム海軍との交戦が二回起こり、状況がどうであったか、公海上であったかどうか、いろいろ問題はあるにせよ、確かに両海軍に交戦状態が二度起こり、次いでアメリカの沿岸に対する報復措置がとられた。これは一応一回限りの措置のようでございますが、私はその措置そのものに対する事件不拡大、これはむろんそのとおりでなければならないのでありますが、問題は極東の平和と安全と、それから、日本アメリカ基地を貸している以上、日本の平和にも関連するインドシナの不安定な事態、これに対して日本考え方はこうであるということを、アメリカにも、また、国連等の場面で世界にも、はっきり打ち出しておくことが必要ではないか。ただアメリカから今度の報復措置についての報告を受けてそれに対して不拡大の希望を申し述べておいた、第四条の協議をやっておりますというのでは、どうもそれこそ何といっても事後の——六菖十菊の感なきにしもあらず、したがって、そういうことでなくて、ただ私ども日本人が在日アメリカ軍出動だけを気にしているのも、これは一応無理からぬ点はあるけれども、おかしいのである。やはり、日本としては、東南アジア、インドシナの事態に対してこう考える。たとえば、一方においては、アメリカの、特に大統領選挙を前にして、こういう問題で非常にはでな軍事行動をとるというような傾向もあるとするならば、こういうことに対する今度の行動だけでなくて、そういうことに対する事件不拡大の警告は、これは私は必要だと思う。同時に、戦闘というものは、一方だけで起こるのでなくて、いかなる理由にせよ、北ベトナム海軍が交戦したという事実もあるのでございまして、アメリカ軍事行動だけを非難するというやり方は、私は正しくない。であるから、両方に対して軍車行動を差し控えろと言う態度が、当然なきやならない。であるから、この間の報復行為が一回限りだ、それで事件不拡大だと言って安心しているのでなくして、やはりインドシナの危険な事態をどう緩和していくかということについての日本政府の方針、希望というものがなきやならぬのではないか。一つは、アメリカに対し、並びに北ベトナム及び中共に対する事件不拡大、軍事的介入は差し控えろという、こういう日本のきちっとした申し入れが第一必要なのではないか。  第二には、その事件不拡大の方針とともに、やはり結局は軍事行動だけでこの事態を解決するわけにはいかないはずである。したがって、 いかなるかっこうかで、国際的な関係国を中心とする国際的な会議等の話し合いの場を持って、やがては政治的解決に向けなきゃいけない。その場合に、いわゆるジュネーブ十四カ国会議がいい、あるいは国連がいい、いろいろな考え方があると思います。いずれにしても、国連の場を通ずるか、あるいは直接でもいいから、やはりこの関係国の会議によっていわゆる政治的解決をもたらす、こういうことが必要じゃないか。ただその場合に、いままでのラオスの例かち見て、あのような、いわゆる停戦の監視委員会みたいなものでは、実際上中立なり独立の保障というものは守られておらない。したがって、会議を開くのはけっこうであるけれども、会議のねらいであるインドシナ三国——あるいはベトナムだけでもけっこうでありますが——の中立なり独立なりをどう有効に保障するのかという、そのことを十分に考えたような国際会議が開かれて、いわゆる単なる口約束だけでなくて、りっぱな中立保障、独立保障が得られるということが必要ではないか。  第三に、われわれはこの東南アジアの諸国、インドシナの三国が次々に一つ一つ共産圏におちいっていくということに対してわれわれは無関心であってはならないと思う。われわれは、そういうこと——軍事行動を防止するとともに、将棋倒し的に東南アジアの諸国が共産圏に繰り入れられていくような事態を、軍事行動によらずして、どう防いでいったらいいか、ここにやはりポイントを置いていかなきゃならない、かように考える。ですから、国際会議による狛江の保障けっこうであるから、有効な保障を得るように努力する。  いま一つは、そういう当面の危機解消の方策だけでなくて、もっと抜本的な東南アジア諸国に対する援助というものが、あるいは東南アジア諸国における危険な事態を防止するために、もっと抜本的な策が必要ではないか。こういう恒久策というものを考えていく。  その第一の恒久策は、これは私はこの間の世界貿切開発会議にあらわれたように、また、池田総理大臣のみずからの提案によって日本みずから提案したように、日本国民所得の一%ぐらいは後進国の開発援助に向けていくんだ。そういうような後進国、特に中共の周辺における不安定な国々に対する経済、社会の援助計画というものを進めて、このことによって——軍事力によるのではなくて、政治によって、経済、社会的な進歩によっていわゆる共産化というものを防いでいくということが第一のやはり基本的政策でなければならぬ。  第二は、基本的政策とまで言えるかどうか知りませんが、先般ソビエトから提案がございまして、いわゆる国連の常設的な警察軍というものをつくってはどうか——これは何もソ連が言い出しっペではなくて、御承知のように、むしろスカンジナビア諸国なりカナダのような、中立ないしはいわゆる中小国側が、まあ大国のにらみ合いの場合に、そこにピンチ・ヒッターとして、火消し役として、コンゴやなんかでやっているように、そういう大国でない国連警察軍を随時つくったことから考えまして、そういうものを常設したらどうか。私はソ連の言っていること自身、なかなかソ連らしい少し虫のいい点もあって、中小国でつくらせるけれども、安保理事会のもとに置いて、それで拒否権をふるうということはどうかと思いますが、いずれにしても、これらの問題について国連の安保理事会のもとがいいか、あるいは総会のもとがいいかは別といたしまして、そういうものをつくって、そして、たとえばインドシナで何らかの国際協定ができるという場合に、一つの、いわゆる相対立している軍隊を引き離し、そこに火消し役を置いておくという意味で国際警察みたいなものをつくるということを考えてはどうか。日本がこの問題にどう取り組むかということについては、いろいろ国民感情その他の問題があります。これは将来の課題ではあるけれども、そういう方向の警察部隊を設置するということについては、ひとつわれわれがもっと積極的に考えたらどうか、こういうようなことを私は考えるのであります。たいへんこっちばかり言って申しわけありませんが、要するに、一つは随時協議というものも、これまたアメリカの一回とってしまった措置に対する通告に終わっているのではなくて、インドシナの事態は確かに極東の平和を脅かし、日本の平和を脅かす事態なのであるから、その状態をどう緊急に平静におさめていくか。軍事行動を慎み国際会議に持っていく。国際会議で何をねらってやっていくかということと、いま私が申し上げたような根本政策ということについて、日本政府として、外務大臣としての一つのはっきりした方針を内外に示していただきたいという意味で申し上げたわけです。御意見を伺います。
  66. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 適切な御意見でございますが、まず、インドシナにおける状況はまことに不安定でございまして、一応あの騒ぎは静まったものの、不安の状況は依然として残っておると思うのであります。日本といたしましては、これをあくまで安定せしめるという考えであることはいまさら申し上げるまでもないことでありますが、問題は要するに、ゲリラの浸透活動というものをどうして終えんせしめるか。これは方法はいろいろ多岐にわたるものであろうと思います。これを国際的に保障し、そしてこれを安定せしめるにはどうするかということでありますが、結局、ベトナム、ラオスに関して、それぞれ一九五四年及び六二年のジュネーブ協定がありますが、この協定の趣旨を尊重し、この基礎の上にあくまで解決を求めるのが正しい行き方ではないか。わが国もとよりアジアの一国でございまして、この事態状況いかんは、日本の平和と安全に至大の関係を持っているので、事態解決のための協力はいかなることをもあえて辞せずという基本の方針はもちろんあるのでありまして、まずもってこのジュネーブ会議の趣旨、精神に基づいて国際的にゲリラの浸透活動を終えんせしめ、そしてこの地域の安全を確保する。これを国際的に保障をする方法に出るのが適当であろう、かように考えるわけであります。  なお、お説のごとく、共産主義の進出を防ぐということは、結局は経済的なひずみを是正することでありますので、他の諸国と相伍しまして、日本も十二分の力をその方面に今後も尽し、また、現に着々これを実行しておるような次第でございます。  将来、ソ連の提案する国連軍の問題は、あまり問題が大きく、また具体的にまだはっきりした形を整えておらぬのでありますけれども、これらの趣旨、精神にはもとより異存はないのであります。  以上申し上げます。
  67. 曾禰益

    ○曾祢益君 いまお話がありました国連警察軍の問題もあまりはれものにさわるような逃げ腰でなくて、積極的にひとつ取り組んでいただきたい。出どころはソ連であっても何でもかまわないのでありまするから、ぜひひとつ御検討を進めていただきたい。  それから、日本国際的にひずみを直す、これについて力強い御発言がありまして、われわれ賛成です。そういう意味で、これからの外交は、国内における日本のひずみを直す問題と、国際的な南北問題のひずみを直す問題とのからみ合いで、いろいろ重要で、かつ危険な場面があると思います。そして椎名外務大臣から力強い就任のごあいさつがありましたが、私個人として考えるならば、実はいまから四半世紀くらい前に、あなたが商工省の総務局長、私は企画院の第五部の貿易担当の書記官でありまして、そのときの阿部内閣のもとに貿易省問題というばかばかしい問題が起こりましたことをお互いに覚えておるのです。そういう過程から考えて、いま椎名さんが外務大臣になられたということは、私は非常に積極的ないい意味があるのではないか。つまり、いま私の申し上げたことは、たとえば後進国を援助するといっても、やはりその後進国の生産品を日本が買ってやる、農業品を日本が買ってやる、あるいはその国がつくったような軽工業品を、一体日本が特恵関税で買ってやれるかどうかということが非常に大きな問題になるわけです。そのことは、言いかえるならば、開放経済体制に向かう場合の日本の国内のひずみ是正、中小企業や農業のおくれをカバーしながら自由体制に向かっていかなければならない、そういう際に、私は商工省のかつてはホープであった椎名さんが外交の衝に当たられるということは、非常に意義があるのではないか。よく世間では経済外交というようなことを言いますが、経済外交ということばはあまり熟していないことばではないか。外交はすべて非常に高い政治の問題でありまするから、経済外交、経済外交と言っていると、かえってそういうところにつまらない——いまでもあるような、外務省とどこかの——通産省その他との、つまらないとわれわれが見る権限争いというような問題がぽつぽつ出ております。しかし、そういうことよりも、やはり日本国際的なひずみを直し、日本らしい国際平和に貢献し、もって日本の安全に寄与するという場合に、やはりそのこと自身が日本の国内のひずみの問題、内政の問題と切っても切れない関係にあるわけであります。そういう意味において、内政、ことに通産行政に通暁視されている外務大臣が外交の衝に当たられるということは、国内もまとめていくぞという意味において非常にわれわれは大きな期待を持てるのではないか。異数の人事といわれる椎名外相に、私は大きな国民の期待がそこにかかっているのではないかと思うのであります。そういう意味において、あなたのそういう面における国際経済に対する日本の寄与、積極的な前向きな、つまり南北問題解決に対する日本の寄与、これを国内的にこなしていくような大きな意味での私は内政、外政の調整役の新外相ということで御活躍を期待するのでありますが、あなたの御発言をさらに伺うことになればけっこうです。  私の質問はこれで終わります。
  68. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ほかに何らつけ加えるところはございません。どうぞ、そういう意味において大いに駑馬にむちうってまいりたいと存じます。どうぞ御鞭撻、御支援を願います。
  69. 青柳秀夫

    委員長青柳秀夫君) 森委員
  70. 森元治郎

    ○森元治郎君 事前協議がせっかく二人の方からだいぶ質問がありましたから、これについて私も少し質問をしたいと思います。  外務大臣がこの間の衆議院の委員会で、現在の事態安保条約に言う第四条後段に該当すると言っておられる。第四条後段は、非常に文章は私はきつい文章だと思うので、大臣はこの辺をその答弁でも声を小さくしているのですが、日本国の安全というものを、もう少し大きい声で言ってくれないと困るのです。大臣はいつでも、極東の平和あるいは安全に関する脅威が生じた——その前に「日本の安全」というのがくっついているのです。だから、問題は大きいわけです。日本の安全と、極東の平和と安全に関する脅威が生じたときには——脅威と言うからには、事前に協議もしたくなる客観的情勢と、こういうことになると思うのです。「脅威が生じたとき」——条約でも、ふだんでも脅威といえば並みたいていのものではないわけですね。それが一つ。  それから、これは船にたとえますると、軍艦が日本の佐世保や横須賀から出てまいります。その行く先はいわゆる臨戦地帯——戦争に臨む——昔よくつかった戦場に準ずる区域出動する。まず区域が問題であります。それから軍艦の装備であります。装備は、昔、日英同盟とか三国同盟がありましても、ふだん軍艦というものは戦闘に必要なだけの弾薬を弾倉一ぱいには積んでおらないでそして出動するのが普通でありました。ところが今日は、完全な戦闘準備を整えた軍艦になっております。これが脅威が生じた臨戦の区域に入っていく。当然その四条と六条がまざり合った四条の交換公文を合わせ考えなければならない環境が生まれていると思うのです。ですから、私は随時事前協議が必要である、こう思うのです。政府答弁では条約局長が、実質的な改定は必要がないという先ほど御答弁があったが、実質的な改定はしなくても、先ほど曽祢さんも触れられたが、四条と六条の実施に関する交換公文を合わせますと、随時な事前協議が当然必要である。これが私は当然受け入れられるとするなら、条約を改定せずとも事前協議が行なわれると思うんですが、どうですか。
  71. 藤崎萬里

    説明員藤崎萬里君) 「日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威」とございまして、「日本国の安全」ということもあるんじゃないかという御質疑でございますが、この場合、「又は」のその点がどっちに該当するかどうかということはあまりやかましく詮議だてする必要もないかもしれませんが、まあどっちかといえば、極東における国際の平和及び安全に対して脅威が生じていると見るべきであって、現在の事態が直ちに日本の安全に脅威を与えていると見るのは、これは現実の見方の問題でございますけれども、いささか行き過ぎではなかろうかと考える次第でございます。  それから第二に、現在のような事態では第四条に基づく協議も平時の場合よりはもっとずっと活発に行なわれるべきであるという御趣旨は、全くそのとおりであると考えます。ただ、それでまたいろいろな事柄について事柄が起こる前に協議すべきである、事前に協議すべきではないか、随時に事前に協議すべきではないか、それがまさにやはり望ましいことであるということも御同感でございますが、ただ、事前協議という熟語は、ただ事前に協議するというだけの、何と言いますか、時間的な観念だけの事柄じゃございませんので、ある重要な事項と限定いたしまして、これは事前協議対象とする、それで、その事前協議対象とされている事項については日本国民の意思に反して行動しないというように、明らかにそのもの限りの特別の意味の法律的な意味を与えられた用語でございますので、単純に事前に協議するということと事前協議を行なうということは、やはり観念上区別していくべきではないかと考えます。
  72. 森元治郎

    ○森元治郎君 「日本の安全」のほうはちょっと軽くてというような御答弁だが、極東の中に日本があるわけで、それの脅威が生じたときに日本がちょっと直接関連がないような答弁は、少し事務的な答弁だと思います。それは私はどなたも承服しないと思う。  第二点は、私がさっき言った理由で戦場に準ずる地域、大砲をぶっぱなし、飛行機が飛び立つ、そういう地域に行く。アラスカのほうへ行くのじゃないんですから、そういうことと装備というものが、戦前のいわゆる軍艦というものの装備と、今日の段階とでは、全部完全な戦闘態勢にある船でありますから、事前協議を、あなたの言う、ここに条約で定めてある法律的な主題とすべき事前協議に、当然随時事前の協議でもやり得ると思うんですがどうですか。随時事前の協議でも法律で定めた内容のことが主題として取り上げておかしくないと思います。
  73. 藤崎萬里

    説明員藤崎萬里君) 戦地におもむくということと戦闘作戦行動発進基地となることとはまた別でございますし、それから、「装備の重要な変更」というのは、この条約の審議されました国会でも明らかにされておりますように、核兵器の持ち込みということでございます。それ以外における装備の変更——非常な重装備をしている、そういうようなことは、これまた事前協議とは関係ないことは御存じのとおりでございます。ただ、一切の条約の実施にかかわりますことは随時協議対象となし得るわけでございますから、現在のような事態においては、平常の場合よりも随時に協議が活発に行なわれるんじゃないかという御趣旨には賛成である、できればすべて率前に行なわれるのが望ましいということを先ほど申し上げたのでございまして、それを法律上の、条約上要求されているところからどうかということになると、そこに問題が起こってくるわけでございます。
  74. 森元治郎

    ○森元治郎君 私は、いまの条約局長の答弁に核兵器の話が出ましたけれども、そういうことでなくて、軍艦そのものが、昔の軍艦というのは、戦争をやるような道具はいつもそろえて走っておったわけではない。いま、ことに東南アジア、南北ベトナムトンキン湾、東シナ海でも行動する軍艦は完全な速戦即応の態勢にある。だから、軍事行動を規制する事前協議の、法律で事前協議する対象になるのだ。こういうことを言っているのです。その点、間違いないように。
  75. 藤崎萬里

    説明員藤崎萬里君) どういうような装備をしておりましょうが、その艦船が日本施設区域戦闘作戦行動発進基地として使用したと認められるかどうかということが基本の基準でございまして、さっきもちょっと答弁いたしましたが、艦船の装備、乗り組み員の心がまえがどうかという事柄ではないわけであります。
  76. 森元治郎

    ○森元治郎君 防衛局長がおいでのようだけれども、ひとつ伺いたいが、海というものはこれはつながっておりまして、特別、別な空へ飛んで行くわけではないのであるから、こういう特殊事情もよく頭に入れて、先ほど私が御質問した、いまの軍艦というのは、ことにアメリカの第七艦隊は速戦即応の態勢にある。しかも、出動する地域が、いつでも事が起これば反撃するということもアメリカが宣言しておるのでありますから、そこへ行くような船は、そのつどと言っていいくらいの事前協議対象になり得るのではないか。軍事関係を扱っておるあなたから、この質問に御返事を願いたいのです。
  77. 海原治

    説明員(海原治君) 条約関係事前協議対象ということの限りでございますと、これは先ほど来から外務省のほうからお答えになっていることも私ども考えておりますし、防衛庁といたしましては、そういうことにつきましての解釈を、特別の解釈を持ち合わせているわけではございませんので、その点はひとつ御了解いただきたいと思います。  それから、アメリカの軍艦と昔の日本海軍の軍艦との違いをお述べになっておりますが、私ども承知いたしますところでは、第七艦隊所属の軍艦でも、先生のおっしゃいましたいわゆる速戦即応ということばがそのとおり適用されますかどうか、非常にそれは問題でございます。と申しますのは、第七艦隊は御存じのように、弾薬にしましても、弾薬だけを補給する船を別に持っております、数隻。こういうものが艦隊行動の中に入ってございます。それぞれの航空母艦駆逐艦にいたしましても、こういうものを持っております。武装というものは、昔の日本海軍のそれぞれ軍艦が持っておりましたいわゆる弾薬の定数準備等とそう違いがないように私ども承知いたしております。簡単に申しますというと、第七艦隊の軍艦というものが、昔の日本の軍艦とは質的に違う形において行動しておるというふうには、私ども解釈いたしておりません。したがって、特別に第七艦隊の船であるから条約解釈においても特別の意味を盛り込むべきじゃないかということにつきましては、そういう事実関係に基づきましてこれは外務省のほうからお答え願いたいと思います。
  78. 森元治郎

    ○森元治郎君 私は、今日の事態が第四条後段にあるという外務大臣の見解、そうして臨戦区域に出て行きますと、軍艦の装備がいつでも戦争をやれる立場にあるのだから、もう事前協議の条項というものは意味のないものであるから、実質的改定と言いますか、それをしないまでも、いまの条約のあるがままで随時事前協議をすべきであるということをもう一ぺん申し上げて御返答を求めたい。
  79. 藤崎萬里

    説明員藤崎萬里君) 御趣旨はよくわかっているつもりでございますが、随時なるべく事前に協議を活発に行なっていくということには全く御同感でございます。ただ、また議論になりますけれども事前協議という、いわゆる事前協議の問題とは別であるというわけでございます。
  80. 森元治郎

    ○森元治郎君 もう一つつけ加えて。もはやその作戦行動ということば、作戦行動日本から出るアメリカ軍隊ということばがもう通用しない時代だ、こういうふうに思うのだが、その点はどうですか。常時すべてが作戦行動である、こういうふうに思うのです。
  81. 藤崎萬里

    説明員藤崎萬里君) この条約の審議されました国会において、日本から戦闘作戦行動が起こされる、つまり、事前協議対象となる具体的な例の典型といたしまして、「戦闘任務を与えられた航空部隊、空挺部隊、上陸作戦部隊等の発進基地として日本施設区域を使う場合」と、こうございますけれども、やはり私は、こういうような場合と、単に日本で補給を受けた艦船が出港していってそれがたまたま洋上で敵の攻撃を受けて応戦するというような場合とでは、やはり非常な相違があるので、こういうような戦闘作戦に関連しての事前協議というものが無意味になったと言うことはできないだろうと思うのでございます。
  82. 森元治郎

    ○森元治郎君 大臣、その自衛権の発動、自衛行為、それから本土を報復爆撃したのは自衛行為の延長である、こういうお話が衆議院でもあったようでありますが、少しく今度の場合はわれわれ同僚議員も伺ったように、行き過ぎているんじゃないか。防衛庁長官が、国連憲章五十一条に定めたところの自衛権の範囲だというような御答弁があったようでありますが、その自衛権というのは、そういう野放しに認めるのではなくて、よほど今日では遠慮して自制していこう、ことに国際連合ができた以後は。たとえば五十一条を読んでも、国際連合がしかるべき措置をとるまでは個別的あるいは集団的自衛の権利を帯するものではない……、ひっぱたいちまえなんて書いてないのですよ。とるまではやってもいいけれども、おのおの自衛の権利を行使する、それを妨げないのだという程度に弱くなっているんですね。そして、事が起こったならば大至急に安保理事会のほうに報告しろとまで書いてあるのですが、私は、本土爆撃は一方的にアメリカが向こう側の魚雷攻撃を計画的行動と見て計面的に報復した、前から準備していて。こういう色が濃いので、過剰防衛の気味があると思うのだが、大臣はどうですか。
  83. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 衆議院の委員会におきまして、北ベトナム艦艇根拠地及び油のタンクを爆撃したことは自衛行為の延長ということばを私はつかった覚えがございますが、これは、自衛行為そのものであるという意味で申し上げたのでございまして、誤解を生じやすいのでございますから、この際あえて注釈を加えておきたいと思います。それで、これはやはり適当な自衛行為の範囲に属するものとわれわれは解釈いたしております。
  84. 森元治郎

    ○森元治郎君 たいへん、マクナマラ長官がそこへ坐っておるような感じがする答弁であります。事態も知らないで、アメリカのほうから通告して、こういうような事態だから同盟国だから信頼しようと言っているついでに、自衛権のほうまでマクナマラ長官みたいなことでは、私はほんとうの盟邦ではないと思う。このままこれを自衛権として当然であるというのならば、これはどこまでも遊んでいっていよいよハノイの爆撃、あるいは中共の北ベトナムに通ずる道路なり軍事施設なりの爆撃も、これは自衛権の延長で認められるのかどうか。何かその辺にやむを得ないんだといったような、押えていきたいのだ、自制していきたいのだというところが一つもない。ぬけぬけとして、向こうが手を出したからひっぱたき返す。しかも強くひっぱたき返すというのでは、これは戦争になるほかないと思うが、自衛権というものの発動には、十分こらえたというところがあって初めて世間もまあまあと理解するときもあるのです。何でもアメリカのやるとこは正しいという前提でやっていくことは、戦争の危険を増すんじゃないかと思うのですが、いかがですか。しかも、池田さんは不拡大の方針ということを言っている。ただお祈りするだけで、拡大すれば「自衛権の延長」、これではあんた、能なしの最たるものだと思うのです。どこに自主性があるのだ。どうですか大臣、自衛権の行使についてこの辺が限度……。
  85. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これはやはりそのときどきの具体的事実に徴してこの程度はやむを得なかったという判断を下していくのが至当でございまして、一がいにどの程度までが自衛権の範囲であるかということを抽象的にきめることは、これはきわめて困難であると存じます。
  86. 森元治郎

    ○森元治郎君 大臣は再びああいうところでこのような爆撃をやっていて将来大きな戦争に発展しないかということをどういうふうにお考えになりますか。この程度でおさまってしまって、もう北ベトナムはぺしゃんこで、中共も介入し得ない、ソ連は中共が屈辱を受けるのを腹の底でにやりとして見ておるのだから、たたくのはいまだ、当分出て来っこないから、こう思っていらっしゃるのか。お見通しはどうですか。
  87. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) やはりこれは限定された行為であるというアメリカ側声明がございましたが、やはり不拡大方針のもとに対処をしたものと考えまして、これが三たび北ベトナムによって攻撃が加えられざる限りにおきましては、このまま平穏に終わるものと、かように考えております。そういうふうにまた期待してもおります。
  88. 森元治郎

    ○森元治郎君 期待をされるような場合には、北ベトナム、あるいはそのうしろにいるとアメリカが言っておる中共、こういうものとの意思の疏通ができないと困るのですが、現在は国連にも入っていないし、意思の疏通もない。これは非常に不幸なことだと思うのです。そこで最後に一つだけ、こういうふうな戦争の状態が長く続くことは避けて、早く平和をもたらしたいのでありますが、政府はどういう方針、お考えを持っているか。北ベトナムが屈服をして手をついてくればよろしいのか、あるいはインドシナ全体を一つとしてこれに平和をもたらすための中立化構想というフランスの考えもあるし、それからたくさんの国々が言っております十四カ国——ジュネーブ協定関係の国々の会合によってとにかく打開をしてみよう、いろいろな動きがあるわけですが、日本はどれをとるのですか。日本アメリカのこれまた言うとおりで、アメリカが右と言えば右、十四カ国と言えば十四カ国、一体どっちなんだか、その点を明確にひとつ時間を少しかけて新大臣の抱負を、東南アジアはこうしたら私は平静にしてみせるという御意見を伺いたい。
  89. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ベトナム及びラオスにつきましては、それぞれ一九五四年と六二年のジュネーブ協定があるのでございまして、まず、これらの協定の趣旨を尊重いたしまして、その基礎の上に解決を求めることが最も適当であると考えておる次第であります。日本もとよりアジアの一員といたしまして、求められるならばいかなる役割りをもあえて辞さない、平和と安全の確保のためにはあらゆる努力をすべきであると、かように考えますが、まずもってこのジュネーブ協定の趣旨の上に解決点を見出していくのが最も適当な方法であると考えております。
  90. 森元治郎

    ○森元治郎君 求められればと言うが、どこから求められればとおっしゃるのですか。われわれは国民としてひとつ、われわれの外務大臣ですから、われわれはそれを求めます。ジュネーブ協定の趣旨云々と言うが、いまジュネーブ協定は、外国軍隊の撤退、独立、そしてお互いに侵略しない。ところが、北ベトナムアメリカでは、両方が侵略したと言って切りがない論争が続いているわけですが、どこかで話し合いの場を持たなければならないが、その具体的なところまで教えてください。十四カ国提案は悪いとか、アメリカの言うとおり、北のほうが屈服して、降参した、もうやりませんと言うまで待つのか。それは私は戦争に通ずると思うのだが、一体日本はどれをとるのか。あるいは中立問題についてフランスがやるようにやるのか。あるいは、現実にいまラオス関係では三派がパリに集まって、左派、右派、中立派が集まって、何とかしょうといって集まりをやっている。一体どの方式がいいのですか。求められればと言うが、私は求めますよ、大臣。あまりジュネーブ協定第何条というような法律論は要りませんから。
  91. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) きわめて複雑をきわめておる問題でございまして、いま割り切ってどの道を選ぶかというようなことは、そう簡単に明瞭に私からもちろん申し上げることはできないことをまことに遺憾といたします。日本といたしましては、応分のもちろんこれは協力でございますが、日本といたしましては、求められれば——求められるということは、どの方面から求められたらやるかというのではなくて、これは事態の要請に従って日本の役割を演ずべき場合がありますれば、あらゆる努力をすべきであると、さように考えている次第でございます。
  92. 青柳秀夫

    委員長青柳秀夫君) 杉上原委員
  93. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 私は、きょうは質問はしないつもりであったんですが、ところが、先ほど曽祢君から、また、ただいま最後に御質疑がありましたように、仏領インドシナ各地域に対する今後の基本的の態度外務大臣からもお答えがありましたが、それを聞いておりまして、ごく簡単に……、私きょうはあまりこまかいことは質問はいたしません。きわめて簡単に一点だけ質問したいと思います。  いまのまま行くならば、今後大規模の爆撃とかなんとか、そういうことがあるなしにかかわらず、ベトナムを中心とした事態というものは、きわめて政治的に重大になっていくと思う。これに対する日本として臨む基本的の態度、これをひとつやはりはっきりしたものを持っておらなければならぬと思う。その場合、現実にいま国際情勢によりまして、ことに東亜あるいはアフリカというところにおける問題を中心にした国際政治を見ておりますというと、私は痛感していることがあります。それは、第一は、もっともっと各地域の民族心理というものを尊重する、これに重きを置いて政策を考えていかなければならぬという精神面が大衆です。その地域国民がどういうことを一体考えているのか、その民族心理をよく重視した政策をとっていただかなければ誤りを来たす。  第二には、国際的に不干渉主義ということがもっと強調されなければならぬ事態に私はあると思うんです。世界の混乱を導いている原因を見るとよくわかりますように、不干渉主義ということがもっともっと切実に実際政策の上に取り入れられていかなければならぬことだと私は思う。  そこで私はきょう、それを具体化した場合、どういうふうになるかというような質問はいたしませんけれども、今後の考え方として、いまの民族心理をもっと重く見ていく政策、また不干渉主義というものを国際的に強く甘木は打ち出していく。私はそれが現実に今日の事態に非常に大事なことだと考えているが、外務大臣はどういう考えであるか。  それが中心でありますが、なお、一つつけ加えて言いますと、先ほど曽祢君から国連軍ということがありました。これは抽象的に考えると、非常に理由があるように思われますけれども、いままでの実際の現実のいわゆる国連軍の、たとえばコンゴにおける結果はどうであるか。それが意図する目的がどこにあるにせよ、結果の事態一体どうであるか。これは非常に反省を要することだと思う。私は、かねてから政府に対しても言っておったのでありますが、国連というものが、現実にいまの国際政治の中で、自分の分を越えて実力手段を使用するというところまで行くのは労多くして功少ないのじゃないかという考えを私は持っているものであります。いまのこれは付随的の問題でありますけれども、そういった点について外務大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  94. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 過ぐる世界大戦を契機といたしまして、新しい独立国がたくさん出てまいりました。いわゆる民族革命というようなことばでいわれておるようでございますが、とにかく、民族主義を旗じるしとして、おのれの民族の興隆発展を熱望して、そして新しい国づくりに踏み出しておる。こういう状況が至るところに見えるのでございまして、これらの問題に十分なやはり敬意と申しますか、これを尊重し、これをあくまで正しく育成するということが私は非常に大事かと思うのであります。ただいたずらに、外面から行儀をよくせよとかいうように、外部からこれを一つの鋳型にはめていくということは、個人の教育の場合も同じことでございまして、決して賢明な道ではない。民族心理をあくまで尊重し、これを育成するというところに重点を置くべきことは、まことにお説のとおりである、かように考えておるわけでございまして、その民族心理の尊重育成ということが、裏から見れば不干渉主義ということにもなるかと存じます。いずれにいたしましても、でき上がった既成観念をもってこれを律する、鋳型にはめるということは正しい行き方ではない、また平和と繁栄を世界に持ちきたすゆえんではない、かように考えるわけでございまして、まことに御同感でございます。  国連軍の創設に関しましてはいろいろな見方があると思いますので、私はこの際は御意見を承ることにとどめたいと思います。なお、よく研究したいと思います。
  95. 青柳秀夫

    委員長青柳秀夫君) 井上委員
  96. 井上清一

    ○井上清一君 私はこの際、問題をかえて他の問題につきまして若干御質疑を申し上げたいと思います。  それは日米航空協定の改定の問題について伺いたいと思います。現行日米航空協定は、どうも前々からはなはだ不公正なものである、改定をということは前々から叫ばれておったことであり、外務省としても、再度これらの交渉に乗り出されたわけで、今度の交渉も私ども何らかの成果を見るものと期待をいたしておったのでございますけれども、遺憾ながら成立を見るに至らなかったのであります。その交渉の経過につきましていろいろ新聞に出ましたけれども、どうも報道がまちまちであって、どれが真相であるかということがはっきり国民に知らされていないように私は思うのです。したがって、国民としては、どうもアメリカ側に押し切られたというような感じを受けているんじゃないかというふうに私は思うわけであります。そういうことでございますので、この際、ひとつ日米航空協定改定に関する交渉の経過について、この機会に御説明をいただければ幸いだと思います。
  97. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) お答えいたします。  去る六月の二十二日からワシントンにおきまして行なわれた日米航空交渉におきまして、日本側は、現行協定は占領時代の米国の既得権をそのまま認めたものであって、米国は東京及び以遠権を有しておるにかかわらず、日本は米国の中心部たる東部への乗り入れ及び以遠権を認められておらない。したがって不平等であるということ、最近の日本経済の発達、自由化等によって、日本、米国、ヨーロッパ間の貨客が増加していること等を理由といたしまして、日本−ホノルル−サンフランシスコ及びロスアンゼルス−ニューヨーク以遠を要求したのであります。これに対して米側は、次のとおりの提案を行なったのであります。米国−東京以遠を、米国−東京−大阪以遠とし、沖繩−東京を、沖繩−九州−東京とする。日本−ホノルル−ロスアンゼルス−南米を、日本−ホノルル−ロスアンゼルス−ニューヨークとして、ホノルル−サンフランシスコ−南米を除く地点、日本−シアトル、これを削除する。さらに、日本は次の点を認めることとされたい。すなわち、東京以遠の現在就航していない路線につき、将来日本から特別の合意を得ることなく自由に運航を開始し、香港についても新らたな運航を開始し得ることを確認すること。次、東京−ニューヨーク間は必ずロス経由に運航すべきこと。これであります。この米側の案は、日本にニューヨーク乗り入れ権は認めたが、以遠権は認めない。その代償として、大阪及び九州の地点を米国の権利の中に追加し、また、日本が十年以上も運航してきたサンフランシスコを削除し、シアトル−中南米の路線の権利も削除せんとするもので、とうていわがほうの受け入れがたいところのものであったのであります。  このように、米側とわがほうの立場の隔たりがあまりに大きいので、わがほうといたしましては、現在交渉をこれ以上続けることは無意味であると判断いたしまして、八月の五日、交渉を一時——一時です——中止いたしまして、近い将来の適当な時期に再開することに決定した次第でございます。
  98. 井上清一

    ○井上清一君 このまま放置するということじゃなしに、適当な時期に交渉を再開する、こういう御意見ですが、政府部内に、あるいはまた日航の社長あたりは、この際協定を破棄したらどうか、また、運輸省の一部では、協定を破棄したらどうかというような意見もあったやに聞くのですが、そういうお考えでなしに、適当な時期に強くひとつ交渉を推進しよう、こういう御意向と承ってよろしゅうございますか。
  99. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) さようでございます。いたずらに事柄を険しいものにすることは、決して有終の美をおさめるゆえんではない、かように考えて、一時これを中止いたしまして、適当な機会に再開するという方針でございます。
  100. 井上清一

    ○井上清一君 もう一つ伺いたいと思いますが、クウェートの問題でございます。先般、クウェートの外務大臣日本にやってまいりまして、そのときの接遇の問題に端を発しまして、どうもクウェートと日本の国交に大きな影響を及ぼすのではないかと懸念されるような事態に立ち至ったことは御承知のとおりでございます。その後、椎名外務大臣外務大臣に御就任早々書簡を送られまして、事態が平静に復して、いまや良好な状態に戻っているということは、まことに慶賀にたえないところでございますが、どうも最近また新聞で見ますというと、日本外務大臣が陳謝をしたかのようなクウェート側の書面か何かに発表もあったようでありまして、これらの真相をひとつ承ったほうがいいと私は思います。どうも従来の日本の外交は大国相手であって、アジア、アフリカ、また中近東あたりの小国に対する外交ということについては、先ほど杉原委員からも御意見がございましたが、ほうはいたるかの地の民族運動また民族主義というようなものに対する理解を、どうも日本外務省当局で少し欠いている点がこうした問題を起こしたのじゃないかというような懸念も出てくるわけでございまして、これらの点について経過をひとつお話しいただければけっこうと思います。
  101. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 事柄は、必ずしも、このクウェートの外務大臣を迎えるわがほうの態度に特別にどうこうというあやまちがあったものとはどうしても考えられないのでありますが、やはりそこに何か誤解があったのではないかと、かように考えております。いずれにしましても、ああいう事態になりまして、ただにこれはクウェートの一外務大臣に対する侮辱でなくして、国家あるいはまたアラブ連盟そのものに対してこれを軽視するものであるというふうに、現地の新聞等がかなり極端な記事を掲げたようなことでございまして、私、就任早々でございましたが、決してこの友好の気持ちにおいてごうまつも変更はない、両国の親善についてはますます将来これを厚くしてまいりたいと思うし、また、アラブ連盟の当面する諸問題については、日本側としては深い理解を持っている、ただ、事柄の解決の方法としては、あくまで平和的な手段によって処理されることを強く希望する、という趣旨の書簡を送ったのでございます。ところが、たまたまサバ外相が所用で近くの外国を旅行しておられまして、その帰国を符って、ようやく数日のあとに駐在大使が面接をすることができました。そのメッセージをお手渡ししたのであります。まあよく研究するということでそれを受け取ってもらいまして、そうして数日後に、よく日本の真意がわかったということで、一応の結着をしておるような次第でございまして、問題が事なく解決いたしましたことを喜ばしく思っております。さような経過でございます。
  102. 青柳秀夫

    委員長青柳秀夫君) 野坂委員
  103. 野坂參三

    ○野坂参三君 きょうここで論議されましたインドシナ半島をめぐるいろいろな情勢についての問題は非常に重要な問題で、極東の平和と安全だけでなしに、直接わが国の平和、安全にも関係する問題で、これはわれわれみんなが今後どういうふうになるかということについても不安を持ち、また心配もし、また、政府に何らかの積極的な具体的な策があるだろうというふうにも考えましたけれども、きょうの外務大臣の御答弁では、まあ、これはあたりまえと言えばあたりまえかもしれませんけれども、私たちは失望せざるを得なかったと思うのです。ここには、日本の外交の根本的なあり方、そこに問題があると思いますけれども、もう時間もありませんので、私はどうしてもこの短い時間の中で聞いておかなければならない点が一、二ありますので、これだけを聞くだけにとどめたいと思うのです。  それは、こういうふうな報道を私は聞きました。これはどういうことかと申しますと、八月の二十日から二十五日の間、あるいはこの期間は若干ずれて九月になるかもしれませんが、この間に、政府当局としては外務省のほうで重大な発表をされるらしい。どういう内容かと申しますと、それはアメリカの原子力潜水艦が日本に寄港する、これに対して、いままで日米間にいろいろな交渉がありましたが、いよいよ日本政府はこれを最後的に許諾するということを発表する、現実にこのアメリカの原子力潜水艦が日本に寄港するのは十月ごろになるだろう、そして第一回は佐世保だ、まあ、こういうふうな実は話と言っていいか、あるいは情報と言っていいか、というものが伝わっております。これが事実だとすれば、私は非常に重大なことだと思います。ですから、これが事実であるかどうかという点についてまず外務大臣の責任ある御答弁を聞きたいと思います。
  104. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) この問題になっているその潜水艦でございますが、これはノーテラス型といいまして、原子力を推進力に用いているにすぎないのであります。何ら核武装をしておるものではない。でありますから、日米安保条約によって当然日本に寄港し得るのでございますけれども、しかし、問題は、原子力を推進力にせよ使っておるというので、国民感情といたしましては、ただこれを自然の間に処理するということは適当でないというので、その安全等に関し優して十分に日本の科学陣営等の意見を徴しまして、そうしてアメリカにいま質問、照会、調査をしておるような状況でございますが、御説のように、近く重大なるこれに関する発表があって、十月に現実に寄港するようなことに相なるというようなことにつきましては、私はまだ関知しておりません。
  105. 野坂參三

    ○野坂参三君 それでは、いまの問題で少し具体的にお聞きしたいのですけれども、私の質問の中には、たとえば八月末とか、あるいは第一回が十月とか、佐世保とか、こういうふうに具体的に申しましたけれども、こういうものがかりにいま違っておるとしても、近き将来に政府としては、ノーテラス型であろうがポラリス型であろうが、アメリカの原子力潜水艦が日本の港に寄港することを許すということを決定されることは絶対にない、近き将来においてはないと、こう胃って差しつかえないものですか。
  106. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ただいまお話したように、安保条約目的に従ってわが国に寄港するというのである限りは、これは条約のたてまえ上拒否しないものでございまするが、ただ、安全性の問題でいろいろ各角度から研究調査をいたしました結論に基づいて、アメリカに照会をやっておる段階でございますので、その解明がありましたならば、その趣旨を十分に国民に周知徹底をいたしまして、そうしてその寄港の問題を処理したいと、こう考えておるのでありまして、その時期等につきましては、いまだ明確な時期——いついつごろになるかといったようなことについてはまだ申し上げかねる段階でございます。
  107. 野坂參三

    ○野坂参三君 そうしますと、そういうことはいままだ交渉中ということになっておる。で、御存じのように、この問題はもう二年がかりの問題で、ことに去年の通常国会では、たとえば七月末などでは、特に科学者を参考人として呼んで、外務委員会の席上で安全性の問題についていろいろ論議があったと思います。湯川博士などは、安全性を保証はできない、危険性がある、こういう科学者の意見が相当強かったと思うのです。それからもうすでに一年たっております、この間に。私たちの聞きたいのは、この問題についての日米間の交渉は一体具体的にどういうふうになっておるのか。進んでおるのか。一年前と同じ状態なのか。私がいま質問したあのいわゆるニュースというものは、これは全然根拠がないものではないようにも思えるのです。まして、外務大臣のことばの中にも何らかの怪しい点がある。そうしますと、私もう一度お聞きしたいのは、どういう交渉の経過になって、いまどういう段階になっているか。それから、いつごろということについても、大体の、当局者としては見当があるはずです。もう一年も二年も前の話です。これをお聞きしたい。
  108. 竹内春海

    説明員竹内春海君) 日米間におきましては、主として安全性の問題につきまして、あまり活発ではありませんが、ときどき意見の交換を行なっております。それがまだ完結しておりません段階でございます。時期につきましては、先ほど大臣から御答弁がありましたとおりでございます。
  109. 野坂參三

    ○野坂参三君 それでは、最近中にはないと、こういうふうに断言したと、こういうふうに理解して差しつかえありませんね。
  110. 竹内春海

    説明員竹内春海君) そうは申しておりません。
  111. 野坂參三

    ○野坂参三君 それでは、最近のうちにもあり得ると解釈していいのですか。
  112. 竹内春海

    説明員竹内春海君) それに対しても、先ほど答弁したとおりでございます。
  113. 野坂參三

    ○野坂参三君 その点を聞きたい。もう一度それじゃあ言ってほしい。ごまかしてはいけませんよ、ごまかしては。
  114. 竹内春海

    説明員竹内春海君) 先ほど申し上げましたとおり、安全性につきまして、いまだアメリカ側と折衝中でございます。
  115. 野坂參三

    ○野坂参三君 そうしますと、もしアメリカ側との交渉が、かりに妥結する、結了するといったような場合には、政府側として発表される前に——私は何も国会の承認という、こうむずかしいことは申しませんけれども、少なくとも国会の中で非常に大きな問題になったし、ことに、外務委員会では中心の議題にも、かつてなったと思います。だから、最後に政府が決定される前に、われわれのほうに一応こういう問題について提案され、また論議される機会を与えられるのが当然ではないかと思いますが、この点いかがでしょうか。
  116. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは先ほども申し上げましたように、ただ推進力が原子力を用いているというのでございまして、この潜水艦が、安保条約目的に従ってのわが国に対する寄港である限りにおきましては、これを拒否し得ないことはすでに申し述べたとおりでございまして、ただ、安全に対する国民感情がございますので、安全であるかないか、その点を十分に調査をいたしまして、そうして、これの安全性を確認して、そうして実行したい、こういう考え方をとっているのでありまして、したがって、その点の解明が終わりますれば、適当な方法によって国民に周知徹底をさせまして、そうして実行をいたしたいと、かように考えております。
  117. 岡田宗司

    岡田宗司君 ちょっと関連。外務大臣にお伺いしたいのですが、いまの問題ですが、昨年の十一月の十七日に、当時の太平洋艦隊司令長官だったシャープ大将が日本に来まして、それでも日本軍事基地を視察した。そのとき、横須賀で外人記者との記者会見があったんですよ。その際に潜水艦の寄港問題について聞かれた。そのときシャープ司令長官は、非常に航続力の長いものだから、別にいま特に日本に守る必要はないのだというようなことを言っておられた。それがジャパン・タイムズにちゃんと出ておる。そのことは、私はあとでこの委員会でも大平外務大臣に、あるいはアメリカ局長等にもお尋ねした。そういうことがあったことは事実であるし、そういうことを言ったこともこれまた事実なんです。そういたしますと、向こうさんのほうでは、あんまり入れたくないと、入れなくてもいいんだと、これはもう日本に反対運動も強いし、いろいろあるということも考慮されたのかどうか私は知りません。あるいは軍事上の必要から、それだけの必要がないということで言われたのか。しかし、そういうことがあったということを外務大臣御存じですか。それを報告を受けておりますか。
  118. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いや、いま初めて承ります。
  119. 岡田宗司

    岡田宗司君 それについてどういうふうにお考えになりますか。
  120. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) どういうふうに考えるかとお尋ねでも、私ちょっと御返事に困るのでありますが、向こうが寄港を希望すれば、これはそれに応ずるのが当然であります。また、寄港の必要がないと言って申し入れがなければ、わざわざこちらから寄港していただきたいと言う必要はないと思います。
  121. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、少なくとも第七艦隊の管轄下に置かれている太平洋司令長官であった者が日本に来て、わざわざ記者会見でそういうことを明言したとすれば、何も急ぐ必要もないし、交渉を急いでやって、そうして入れますということをあなたここで言う必要もないわけでしょう。どうですか。
  122. 青柳秀夫

    委員長青柳秀夫君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  123. 青柳秀夫

    委員長青柳秀夫君) 速記を始めてて。
  124. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 航続距離が長いから、絶対に必要というのではないけれども、やはり入港を希望するという申し出があるようでございます。
  125. 岡田宗司

    岡田宗司君 いや、それは去年の十一月十七日以降にそういうことを言ってきたのですか。
  126. 竹内春海

    説明員竹内春海君) 十一月以降にそのようなことを言ってきておりませんし、前から入港を強く希望するということは、そのまま残っているわけでございます。
  127. 岡田宗司

    岡田宗司君 しかし、太平洋司令長官の言は、あなたどう考えられますか。それは何ら申し入れに影響はない、こうお考えですか。
  128. 竹内春海

    説明員竹内春海君) 私の記憶が正しければ、当時シャープ将軍は、アブソリュート・オペレーショナル・ネセシティはない、こういうように言ったと思うのであります。そのオペレーショナルということをどういうふうに解釈するか、これは作戦上ということに解釈されますけれども、運航上ということにも解釈されますが、その前には、原子力潜水艦は六十日間も水中にもぐっておられる状態であるから、運航上寄港を必要とするということは絶対ではないが、しかし、わがほうとしては入港を許可されることを強く希望するということを同時に申しておりますので、アメリカ側態度には、その間何ら変更はない。また、公式にもそういう変更があったという通知は受けておりません。
  129. 岡田宗司

    岡田宗司君 しかし、そういう責任者がそういうことを言ったということは、こちら側の判断上にやっぱり一つの影響を与えるファクターと考えませんか。考えないとすれば、実はおかしな話です。
  130. 竹内春海

    説明員竹内春海君) 私どもはシャープ大将と交渉したことはございませんし、この問題についてシャープ大将が当時アメリカ政府を代表して、権限を持って発言したとも考えておりません。
  131. 野坂參三

    ○野坂参三君 私、最後に一言だけちょっと申し上げ、また、質問にもなると思いますけれども外務大臣は、ノーテラス号は、あの型のものは原子力で推進するけれども、核武装はされていない、こういうふうに申されましたけれども、もう一般的に常識として、また、アメリカの責任者も言っていますように、ノーテラスにはサブロックというものを積んでいる。これは事実ですね。それから、汚染の問題にしましても、もうすでに原子力潜水艦の故障というものは何回も起こっている。それから、廃棄物の処理をどうするか。そういうふうな汚染の問題というふうなこともいろいろからまっていると思います。ことに私たちの一番問題にしたいのは、もし日本の、たとえば横須賀にしても佐世保にしてもその他の港にしても、これにアメリカの原子力潜水艦が寄港するということになれば、たとえいま核弾頭を積んでいないと言われましても、ノーテラスが入れば、次に来るのはポラリスだ。そうすれば、日本の島全体が要塞になってしまう。核武装がされるのである。こういうことをわれわれは憂えているわけです。汚染の問題だけではないと思います。そこでわれわれとしては、どうしてもこのような危険なものを日本に寄りつかせてはいけない、ノーチラスであろうが、ポラリスであろうが。こういうことを私はいま言っている。それで、いま外務大臣お話では、交渉中である、しかし、交渉が妥結すれば、ノーチラスならかまわないから受け入れよう、ただ、時期ははっきりしないと言われましたけれども、大体において、いま、われわれのほうは、直感ですけれども政府側としては、そう遠くない、近い将来にこれを受け入れる方針でいま進めている。外務省はその工作をいま進めている、こういうふうに私たちは理解して差しつかえないのかどうか、これをお聞きしたいのであります。
  132. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 申し上げたように、絶対に核武装をしておらない。もし核武装をするのであれば、絶対にこれは、総理大臣がしばしば国会において声明しておりますとおり、これは絶対に受け入れないのであります。その点の御心配は御無用かと存じます。
  133. 野坂參三

    ○野坂参三君 最後に聞きますが、つまり、そうしますと、核武装をしているかいないかとか、この判断、これはだれがやることになりますか。日本政府側が向こうの潜水艦に乗り込んでいって、そこで核武装をしているかどうかということを点検できるかできないか。もしできないとすれば、一体だれがやるのか。結局アメリカの言うままになることになるのじゃないか。
  134. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 軍艦でございますから、めったに中に入れるはずはございませんが、ここらへ来ると全く信義の問題になるのでございます。
  135. 青柳秀夫

    委員長青柳秀夫君) 本日は、この程度で散会いたします。    午後四時八分散会