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1964-02-21 第46回国会 参議院 科学技術振興対策特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月二十一日(金曜日)    午後一時十五分開会   ―――――――――――――  出席者は左のとおり。    委員長     向井 長年君    理事            大谷藤之助君            丸茂 重貞君            小林  武君            松澤 兼人君    委員            江藤  智君            白井  勇君            鈴木 一司君            平島 敏夫君            山本  杉君            野上  元君            松本 賢一君            高瀬荘太郎君   国務大臣    国 務 大 臣 佐藤 榮作君   政府委員    科学技術政務次    官       鹿島 俊雄君    科学技術庁長官    官房長     江上 龍彦君    科学技術庁計画    局長      村田  浩君    科学技術庁研究    調整局長    芥川 輝孝君    科学技術庁振興    局長      杠  文吉君    科学技術庁原子    力局長     島村 武久君    科学技術庁資源    局長      橘  恭一君   事務局側    常任委員会専門    員       工楽 英司君    常任委員会専門    員       小田橋貞寿君   説明員    原子力委員会委    員       兼重寛九郎君   参考人    日本原子力研究    所理事長    菊池 正士君    日本原子力研究    所副理事長   森山 乕男君    日本原子力研究    所理事     菅田清治郎君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○日本科学技術情報センター法の一部  を改正する法律案内閣送付、予備  審査) ○参考人出席要求に関する件 ○科学技術振興対策樹立に関する調査  (昭和三十九年度科学技術庁施策  及び予算に関する件)   ―――――――――――――
  2. 向井長年

    委員長向井長年君) ただいま科学技術振興体策特別委員会を開会いたします。  まず、日本科学技術情報センター法の一部を改正する法律案議題といたします。これより提案理由説明を聴取いたします。佐藤科学技術庁長官
  3. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま議題となりました日本科学技術情報センター法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を御説明いたします。  日本科学技術情報センターは、わが国における科学技術情報に関する中枢的機関として昭和三十二年に設立されて以来、科学技術情報の迅速かつ適確な収集及び提供につとめてまいったところでありますが、その業務量は発足当時に比して著しく増加してまいっており、さらに、今後、この傾向はますます強まるものと考えられるのであります。このように増加しつつあります業務を円滑に処理いたしますためには、整備された施設設備を必要とすることはいうまでもないところであります。しかるに現在、日本科学技術情報センターが賃借しております建物は、数カ所に分散しており、しかもすでに狭隘となっているため、施設の十分な整備をはかることがきわめて困難となっているばかりでなく、業務の遂行にも著しい支障を来たしている状況にあります。  かかる状況にかんがみまして、政府は、同センターの機能を十分発揮し得る建物を建設することといたした次第でありますが、これに要する土地等につきましては、政府が出資することとし、このため、現在、政府が同センターに対し、予算の範囲内においてのみ出資し得ることとなっている日本科学技術情報センター法の一部を改正し、現物出資をも行なうことができるよう改めようとするものであります。  以上が本法案を提案する理由であります。  科学技術振興重要性に対する皆様の深い御理解によりまして、慎重なる御審議の上、すみやかに御賛同あらんことを切望する次第であります。
  4. 向井長年

    委員長向井長年君) 本件に関する質疑は後日に譲ることにいたします。   ―――――――――――――
  5. 向井長年

    委員長向井長年君) 次に、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  これから審議を行なう予定の昭和三十九年度科学技術庁施策及び予算に関する件について必要と考えますので、参考人として日本原子力研究所理事長菊池正士君、同副理事長森田乕男君及び同理事菅田清治郎君の出席を求めることといたしましたが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 向井長年

    委員長向井長年君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、手続につきましては、委員長に御一任願いたいと思います。   ―――――――――――――
  7. 向井長年

    委員長向井長年君) それでは次に、昭和三十九年度科学技術庁施策及び予算に関する件を議題といたします。  本件につきまして前回説明を聴取しておりますが、これより質疑を行ないます。御質疑がおありの方は順次発言を願います。
  8. 野上元

    野上元君 長官は、きょうは二時から何かお忙しいそうで、あまり時間がありませんが、この際、長官にぜひ聞いておきたい問題についてのみ質問したいと思います。  本日のこれは朝日新聞記事でありますが、東海村にある原研動力試験炉及びその他二つの炉が再び運転中止するということが記事になって出ておるわけでありますが、しばしば原研原子炉がとまるという現実をわれわれが見ておりますと、何か底深い原因があるんじゃないかというような気がいたします。かつまた、ばく大な国費を投じて建設された原子炉が、しばしば停止されるということは、国民の側に立っても非常に不安だと思います。どういうところに一体しばしばこうとめられる原因があるのか。その点についてひとつ御説明いただきたいと思いますし、かつ、長官対策をお聞きしたいと思うのです。
  9. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 原子炉等がしばしばとまると、こういうお話でございますが、いろいろ、とまっておる場合の原因等もございます。場合によっては、点検の必要上、あるいはまた、自分たち研究の題材の必要から、とまることもあり得る。したがって、その理由を、どういうところでとめておるのか、その場合が明確でないと対策もはっきりしないわけです。いままでいわれておりましたJPDR、これをこちらに移します前の、いわゆる建設途上において問題が起こりました。その際は、GE側から、GEが指摘したその主たる理由は、労働不安というか、そういうことが理由であって、これをとめたのであります。今日、そのときの労働不安は一応解消した。したがって、GEから私のほうに引き継がれて――私のほうというより原研に引き継がれて、そうしてその問題は一応その当時は落着をいたしたのであります。  今日また新聞記事をにぎわしておるという問題につきましては、原子力委員長のほうから説明をさせます。
  10. 島村武久

    政府委員島村武久君) ただいま長官から申し上げましたとおり、動力試験炉は、昨年の暮れに原子力研究所の手に渡ったわけでございます。その後、動力試験炉原研として動かしますために、今度は原研自身の手で動かすわけでございますので、いろいろな点検あるいは準備等をいたしておったわけでございます。したがって、まだ日本側引き渡しを受けましてから動かしていなかったわけでございます。ようやく準備も整いまして、もう動かせるような段階になったわけでございますけれども、当時問題になりました争議協定、つまり二十四時間前の予告――ストをやります場合の二十四時間前の通告でございます、あるいは保安要員を確保するとかいうような内容を盛りましたそういう協定は、GE側から引き渡しを受けるまでという期間協定でございます。長官から御説明申し上げましたように、そのときは一応それでよかったのであります。今日では無協約状態になっておりまして、理事者側からは組合に対し、そのような協定を、再び原研自身として動かすことにつきまして締結したいという申し入れを、昨年暮れからいたしております。いまだに協定を結ぶ段階にまで至っておらないわけであります。したがいまして、ごく低出力、ゼロ・パワーに近い運転はぼつぼつやっておりますけれどもパワーをアップするということはしないでおるというのが事実と承知しております。
  11. 野上元

    野上元君 一応御説明は了解できるわけですが、こまかい突っ込んだ話は長官がおられなくてもできると思いますから、この際、長官にお聞きしたいのですが、このしばしば原子炉運転中止されるということは、「国会やあるいは原子力委員会あるいはまた産業界などから強く批判されており、直ちに労使の姿勢を正す必要がある」というふうに新聞では出ておるわけですけれでも、それと同時に、長官所信表明の中には触れられておらないのですが、これまた新聞等によりますと、いわゆる日本原子力研究所の機構について抜本的にメスを入れる必要があるということを長官が表明され、それについて目下研究所のほうでは研究をしている、中間的な報告はあったけれども、しかし、それは必ずしもまだ満足すべきものではない、こういう新聞記事を見ているのですが、これについて長官はどういうふうにお考えになっておられますか。
  12. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御承知のように原子力研究所を設けまして、ただいま八年たっております。この八年間というものは、設備整備にその期間を費やされている、かく申してもいいのではないだろうか、なかなか原子炉一つつくるにいたしましても、多額予算、さらにまた設計その他に口数を要します。そう簡単なことではございません。もし予算制限がないならば、おそらく必要な諸設備を一ぺんにみんなするだろう。今日までしばしばいわれるのでありますが、原研というところは、どうもわけのわからないところで、一貫性がないのじゃないか、あらゆるものを並べているのじゃないか、こういうことをいわれますが、研究者立場ならば、おそらく予算制限がないなら、基礎的研究をする意味において、それらのものを一とおりはそろえたい、この気持ちはわかるような気がします。ただ、ただいま申し上げますように、なかなか多額の金がかかり、多くの日数を要するものでございますから、順次つくってまいりますると、結局八年を経過した、この辺で今度はもう整備は一とおりついたと、かように見てもいいのじゃないだろうか――またもちろん必要なものはあるだろうと思います。――そういうふうに考えると、この辺で基本的な、いままで批判を受けている一貫したといいますか、ある一つ計画性のある研究に乗り出すべき段階ではないだろうか、かように思うものですから、そういう意味でいろいろ研究所のほうとも御相談をし、いかにすべきかと、そういう意味の案を練っているというのが現状でございます。
  13. 野上元

    野上元君 長官、非常に抽象的にお答えになったのですが、これは新聞情報ですから、どこまでわれわれが信ずべきかはわかりませんが、昨年の暮れJPDRGEから受け渡されて、いよいよ運転開始というどたんばになって、三つ事項をあげられて運転中止を命令してきた、こういう事実があったわけです。このことは当委員会でも問題になったことがあります。そのときには原研側あるいは科学技術庁側では、GEに、明らかにGEのほうにミスがむしろあったのじゃないか、われわれのほうにはGEがあげた理由のごときものはなかった、こういう趣旨の答弁があったように私は記憶しているのです。ところが、あなたが原研のほうへ出された、いわゆる書類の内容新聞に書いてありましたが、それには明らかに前回運転中止はわがほうにミスがあったと、そのことは非常に遺憾である、こういう前書きを付して出されている。私どもとしては、どちらがほんとうなのか、ちょっと迷っているわけなんです。その点を、忌憚のない御意見をひとつ伺いたいと思うのですが、一般論としては、私もよくわかるのですけれども、今回のあなたが出された改革の要求書は、要請書は、明らかにJPDR運転中止に基づいて出されたというようにわれわれは見ているのですが、その点はどういうふうにお考えですか。
  14. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) GEJPDRをつくって試運転を始めた最初三つ疑問点を出してきた。あるいはそれがふなれな事項があるとか、労働慣習とか、どうも管理体制がはっきりしないのではないか、こういうふうなことを最初は申していたようですが、だんだん詰めてみますると、こういう今日の労働状況では、いわゆる労働不安では、私のほうではこれより以上このJPDRの発電を続けていくわけにいかぬ、そういうのが原因でございます。これはもうその当時の経過で、はっきりしております。しかし私のほうからGEに対して、当方の全部責任だというようなことは申しておらないはずでございます。これは後にGEと私どもとのほうで延滞料というか、そういう計算もございますから、そう簡単に当方責任だとは言っておらないと思います。それはまた別といたしましても、その実体そのものは、原因不明の事項があるとか、あるいはいま言うようにふなれであるとか、こういう事柄はつけたりのようで、実体は、労働不安、こういうことをGEははっきり申しておるわけであります。したがって、その労働不安というものはどういうところからきているか、いろいろ聞いてみますると、ただいま局長からお話をいたしましたように、ただいまは協約がない状況でございます。したがって、一応GEからこちらの原研に引き継ぐまで、その間は通告二十四時間というものをいたしましたものの、その後はこれをとめた、その期限がきて、協約がないことになっておりますから。ただいまそういう状況経過しておる。これにはいろいろ理由がございます。必ずしも組合側主張が全面的に不都合だというわけでもないでしょうし、また管理者側にも当然考うべきこともありましょうし、また管理者側として、在来からこの経過をたどってみれば、もう八年も経過するのだから、その間にはもう少し具体的に話し合いもついたはずだろう、こういうことも私どもとしては言えるわけなんです。そういう点も先ほど冒頭に申しましたような一つ研究課題もさることだが、現実の問題として当面する事柄、それについても私ども満足の行くような、納得の行くような解決方法が望ましい。ただ申し上げたいのですが、私どもとしては、この労使双方で話し合うことについて、いわゆる科学技術庁としてその間に介入することは、これは厳に戒める、こういうことでいままで注意をしてまいりました。ただ、私どもはこの原子力研究所理事者側に対して、いろいろの要求を出し得る、そういう意味から理事者に対して、この状態ではまずいんじゃないか、そういう意味注意を喚起しておるというのが現状でございます。
  15. 野上元

    野上元君 そうしますと、主として労働問題についてあなたのほうから原研理事者当局に指示された、こういうことになるのですか。
  16. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま申し上げますように、このGEからJPDRを引き継いだとき、そのいきさつから申せば、その点が一つのポイントでございます。しかしなから、JPDRばかりじゃございませんし、その他の研究動力炉その他もございますから、そういう意味で、管理右側に全体についての要望を出しておる、こういうのが実情でございます。
  17. 野上元

    野上元君 それに対して理事者側からは、あなたの満足するような回答が行なわれておるんですか。
  18. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはまだ十分話し合いをしないと当方満足が行くとか、あるいは労使双方納得が行くとかいうところまではいかない。まだまだ折衝の余地が双方にあるんだろう、かように考えております。
  19. 野上元

    野上元君 技術的な問題はあとでお伺いするとして、一つだけ長官にこの際参考までにお知らせしておきたいのですが、私のところには、日本原子力研究所労働組合から、動力試験炉問題をめぐる私たち主張、こういうものが来ているのですが、長官お読みになったことがございますか。
  20. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) それは読んだことがございます。
  21. 野上元

    野上元君 これを読まれて、私もしろうとでよくわからないのですが、誤りがありますか。
  22. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これを読んでみまして、私は組合側主張というのはこういうところにあるようだ。事柄の性質上なかなか理解のしにくい問題、それを抽象的にはなかなかよく書いている。しかし、組合側主張はよく盛られている、かように私は見ました。
  23. 野上元

    野上元君 私も実はそういうふうに感じたので、これを読んでみますと、JPDR運転中止するというようなことはあり得ないのじゃないかという感じがするのです。しかし、これは理事者側意見も聞かなければなりません。なりませんから即断は許されませんけれども、そう感じたのですが、長官もたまたま私と同じように感じられたようなんですが、なおかつそういう点については、長官みずからひとつ十分に御検討願って、先ほど申しましたように原研の動向というのはやはり相当大きなものがあろうと思いますから、ひとつ慎重に御努力順いたいと思います。  この機会にお伺いしておきたいのですが、私どもいわゆる岡目八目といいますか、しろうとの目から見ますと、日本科学技術振興ということがよくいわれますが、何かばらばらでまとまりがないというような気がするのです。というよりも、むしろむだがたくさんあるのじゃないかというような気がするのです。したがいまして、この科学技術研究開発利用というものについて、この際、長官は一元的なものを可及的につくり上げられるような御意思はないですか。
  24. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) たいへんむずかしいことでございます。いまお話しになりましたように、研究開発利用、この三つを申せば、三つことばとしては簡単に済みますが、この三つは、それぞれ区別して考えなければならないだろう、かように考えますし、ことに基礎的な部門になってまいりますと、これは学校でやっているとか、あるいは本来原子力研究所開発に本体を置くべきだ、かように考えますが、原子力そのものが戦後の科学でございますだけに、まだ基礎的な研究もできておらない。したがって、開発計画にまで乗り出すのには、まだまだ不十分だ、こういうことであります。それから他の民間でやっておりますいろいろの研究部門、これは原子力について言うわけじゃございませんが、その他の科学技術の面では、むしろ利用というほうが主になっていると思います。したがって、ばらばらであるようで、しかもまた重複するようであるが、それぞれの立場においてはそれぞれのものが有効に使われているというのがいまの現状ではないだろうか。科学技術研究ということばは、一口にいわれまして、どうも明確な概念がないのじゃないだろうか。研究員の方々にいたしましても、どこまでが基礎的な学術の究明であり、どれから先がいわゆる研究部門になるか、こういうことは、観念的には分け得ないだろう、かように思いますだけに、科学技術と、これはことばとしては簡単にいわれるが、現状のようにならざるを得ない。ただ、私考えますのに、原子力研究所というものは、ちゃんとした目的を持って建設されており、そうしてこの原子力研究所では非常な多額予算を使っておるが、それも単に運転訓練あるいはそれになれるというだけではもの足りない気がする。これが先ほど冒頭に申しました、もう八年もたったのだからそろそろ本格的な研究方向に進むべきじゃないだろうか、こう私が申しましたゆえんでもございます。
  25. 野上元

    野上元君 これは私もちょっと調べたのですが、政府各行の所管する国立研究所ですが、大体科学技術関係だけでも現在七十四ある。そうしてその中で大きなのは通産省運輸省農林省、防衛庁、こうある。しかもこれら七十四の研究所のそれぞれが勝手ばらばら研究を行なっておるという傾向が見られる。したがって、これは何とかして統合しなければならぬという考え方が、あなたのほうの党の科学技術特別委員会から強く要請されて、科学技術庁はこれにこたえて、昭和川十年度までには何とかして立法化しようというところまで働いておるというふうなことがいわれておるのですが、その点はどういうふうになっておるのですか。
  26. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 科学技術庁をつくったから、ひとつ統合してみたらどうか、これは長い間の私ども希望でもございます。これは必ずしも所掌、所管を一カ所にしろ、こういうような主張にまで飛躍するものでもございません。少なくともただいまの状況では、予算的に一本で見るわけにいかない、こういうことをまず希望いたします。予算書には科学技術振興という款ができておるようですが、まだ実際はなかなかそうはいっていない。私のほうで、北海道の開発庁の予算のような、後には農林省あるいは建設省に返すにしても、一カ所で要求するようにはまだなっておりません。文部省予算文部省要求する。またそれには科学技術庁はタッチしない。また通産省各種試験所は、これは産業自身と密接な関係があるからという意味で、なかなか通産省試験所等を分離することは容易には賛成をしない。したがって、これまた通産省がこの予算要求しておる。郵政省にしても電波監理、あるいはまた運輸省あるいは厚生省あるいは農林省建設省それぞれがみんな自分のところの専門のものを見ております。したがって、私どもとしては、せめて予算だけでも一カ所で見るような方法はないだろうか、こういう希望を持っております。幸いに今日行政管理庁行政組織の監査をしておりますし、また、新しい提案もするようでございます。どういうものが出てまいりますか、その答申等も待って、将来のことは研究してみたい、かように思いますが、現状としてはたいへん不十分でございます。ある一部の方からは、思い切って科学技術省をつくったらどうか、こういうような御意見がございますが、省をつくりまして各省で所掌しております技術部門だけをその省に持たすということは、必ずしも当を得たものではないだろう、かように考えますと、やはり総理大臣の持っている調整的な権限を実施する上からいうと、省というよりも科学技術庁として内閣にあるほうが、むしろ本来の権能を発揮し得るのじゃないだろうか、こういうことも考えております。これなどは行政管理庁でどういうような行政組織の軸を出してまいりますか、それの答申に待ちたい。ただ、私どもの申し上げたいのは、なるべく重複した事柄はやらない、そういう意味で部内も指導しておりますから、重複あるいは競争的な立場に立つようなことは、今後はないだろうと思います。これは、重複するということも、研究の過程においてはときには競争の効果も上げ得るように思いますけれども、非常に多額の出費を必要とするものであるだけに、納得のいくような競争ならともかくも、ただいたずらに重複したようなことは、これは避けるべきじゃないか、かように私は思っております。
  27. 野上元

    野上元君 私もこの整理統合というのは容易ならざることだと思うのです。で、佐藤長官でなければ私はこういうことを実は聞かないのですが、あなたならできるのじゃないか。あなた以外にやる人がいないのじゃないかと思うから私は聞いておるのです。それほど私はむずかしい問題だと思うのです、これは。もうすでになわ張り争い等が非常に激烈をきわめておるといわれておるくらいですから、非常にむずかしい問題だと思います。しかし、この委員会でしばしば問題になっておりますように、わが国科学技術の現在の状況は、欧米に比べると二十年おくれておるということをしばしばいわれるわけです。いま、まだ二十年を固執されておるかどうか知りませんが、いずれにしても相当のおくれを見せておる。しからばこれに追いつくにはどうしたらいいかという問題なんですが、やはり相当思いきった施策を施さなければ、今日科学技術に投資しておる資金等の量から見て、これでは先進国からますます引き離されていくのじゃないかというような気がするのです。しかもそのわずかな資金を、いま申し上げましたように国立だけでも七十四もある。しかも科学技術関係だけでですね。いわんや民間を合わせると、これはもう膨大な研究所があると思いますが、そういうような各個ばらばらにやっておることは非常に損ではないかという気がするのです。したがって、この際、あなたもそう長いこと長官をやっておられるわけじゃありませんし、二度と長官をやられるかどうか知りませんが、ひとつ思いきった手を打つようなお考えはないかということをちょっと聞きたかったんですがね。  それと、つい二、三日前、ある書類を読んでみましたが、ソビエトにおける科学技術のやり方を見てみましたのですが、ソビエトにおいては御承知のように科学アカデミーがさいはいをふるっておるわけですね。その下に大学あるいは国家の研究所。あるいはそれを統括しておるわけですね、科学アカデミーが。したがって、何か可能性のあることを発見すると、とことんまでその研究を続けていって開発していく。もしも途中でそれがだめだというふうにおおよそ見当がついても、なぜだめなんだという極限まで、とことんまで突き詰めていくということをやって、あのような輝かしい科学の成果をもたらした、こういうわけですが、アメリカも大体同じような制度でやっておるということになりますと、いま申しましたようなばらばら科学行政をやっていて、はたして先進国との科学の差が埋められるかという点を非常に私たちは心配するわけですが、資金の効率的運用から見ても、ぜひひとつ抜本的なメスを加えてもらいたいと思うのですが、どうですか。
  28. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 日本科学技術の水準、それはあなたが言われるようにそう低いものではございません。ただ、ものによりましてその面では非常におくれておる。たとえば宇宙開発の面でというようなものだと一籌も二籌もこれを輸しているから、これはよほどおくれておる、こういうことは言えますが、一般的な技術水準というものは相当高度のところへきている。ことに産業技術の面では私は誇っていいのではないかと思います。最近は、科学技術の進歩したソ連に対しても繊維関係のプラント輸出が出ている。これなどはわが国の繊維関係の技術は優秀だ、こういうことを証明しておると思います。これなども、もとをただせば外国から教えられたものです。しかし、そういうものを短時日の間にのみこなすそういう力はあるわけです。十分それを利用するだけの力はある。ただ残念ながら、宇宙開発の技術においては非常におくれておる。また原子力につきましても、これが平和利用という立場において私どもは推逸しておりますが、これも原子力平和利用においては、そう肩身の狭い思いをしなくてもいいのじゃないか、かように私は思います。したがって、技術者自身が非常な自信を持って、そうして問題に取り組んでいく。いま御承知のように私どもはいわゆる法制はしいておりませんが、民間の創意と工夫、これを生かすように、あらゆる環境をつくる等、その整備をいたしております。したがって、これらの点ではそうひけをとらない。それにいたしましても、どうもむだじゃないか、中途はんぱなもの、たとえば国立研究所にいたしましても、同じ原子力をどの大学でも持たなければならない。非常にこまかなもの、設備の不完全なもの、そういうものを持つのが現状でございますが、これなども、ほんとうに原子力というものはどういうものであるか、この程度のものを教えるには役立つけれども、しかし、それをさらに開発計画にまで持っていくには、やはり東海村を使ってもらいたい、かように思いますし、また、その小さなものになれば民間でも同じものを持っております。こういう事柄はむだなものではあるが、同時に、みずからが工夫する、そのしかけにおいて必要な点もあるのですね。ある段階に達すれば今度は東海村を利用する、こういうことになればいいのだろう。また、その他の技術になりますと、各会社でそれぞれの特質を持っておりますから、同じエレクトニクスの問題にいたしましても、それぞれの会社が同じようなことを研究しておるのじゃないか。あるいはソニーとか、あるいは東芝だとか、あるいはナショナルだとか、そういうものは同じじゃないか、こういうことも指摘されますけれども、これまたそれぞれの会社が自分のところの特質を生かしていく、これも要るわけです。かように私ども思います。問題は、こういう研究にどのくらいの予算がつけられるか、国家的に見てどういうような予算をつけておるか、また会社においては研究費と宣伝費とどちらにウエートを置いておるかというような点が、私どもが指摘して一般に注意を促すいいデータでございます。今日までのところ、特殊なものについての研究ではおくれておるものがあるが、また、特殊なものについてはよほど進んでもいる。このことを私は皆さまに御披露しておきます。
  29. 野上元

    野上元君 もちろんあなたが十分に配慮されることもよくわかりますが、いま申し上げましたように、われわれの目から見ると、何かばらばらなようで、ますますセクショナリズムの壁を高くしていくというような気がするわけです。かつてフランスのバストウールですかが、学問の自由はあるけれども、学者には祖国があるという有名なことばを吐いたのですが、それがそのままいまの日本科学技術の陣営に持ち込まれるとたいへんだという気がするのです。研究の自由はあるけれども私には母校があるというような、研究の自由はあるけれども私には企業があるというようなことになってくると、それぞれ表面は仲よくやっておるようで、実際はお互いに隠し合うということになりはしないかという心配をしておるわけなんです。そういうことのないように、ぜひひとつやってもらいたいというふうに考えたわけです。  時間がありませんので、もう一つだけ聞いておきたいのですが、最近スイスあたり、あるいはまたイギリスあたりの記事を読んでみますと、いわゆる科学者、研究者というものがアメリカに流れておる。アメリカ、カナダ等に流出しておるということで非常に重大問題だと、スイスのごときはこのような状態を放置すると、将来輸出産業に甚大な影響を与えるというようなことを言っておりますし、イギリスでは、つい先般御承知のようにウィルソンが緊急質問に立って、科学者の動向を説明しろということで、だいぶ問題になっておるようであります。日本の場合はどうですか。
  30. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) アメリカの技術者の研究システムというものは、日本の場合と違って、ことに二年あるいは三年という年期奉公――というと語弊がありますが――そういう期間、自由に研究をしてくださいということで各国の学者を招致している、これはわが国にも影響があるように見受けますが、しかし、これはその機関で相当の待遇をいたしまして、そうして研究は自由にほうっておく、こういうものでございますが、科学者がいま申し上げたように自由な立場において自由な研究をする、これは必要なことです。私どもがいま悩みに思うことは、科学の進歩、科学技術振興を言っている場合には、科学者を優遇しなければ、本来の道はあかないと思う。なかなか予算その他で、また他とのつり合い上から、いろいろ制約を受けているが、そういう制約を打ち破って、そうして科学者を優遇すること、そういう気持ちでも率直に出てくれば、おそらく科学者の研究もまたよほど変わるのじゃないか、かように思います。先ほど言われましたスイスあるいはイギリスの例などは、おそらくアメリカの科学技術者の雇用の関係だと、かように思いますが、将来私どもも何らかの工夫を必要とするのじゃないか、かようにも考えております。ただいま研究団地――団地をつくることを政府自身が計画いたしておりますが、これなどはお互いの知識の交流、技術の交流をはかり、そうして振興をはかる。そういう意味では、各国立の研究所ばかりでなくて、民間の研究所もなるべく一カ所に集めて、そうして静かな環境のもとに研究に専念できるようにしたい、こういうことで進めておりますが、なかなかこれなども実際問題になりますと、まだまだ私ども考えるようには進んでおりません。したがって、まずこういう環境からつくっていかなければならない。そうしてただいま申し上げるように、さらに技術者優遇の立場に立っていろいろ考えてまいり、同時にまた、これは学問の自由、その立場において自由な研究をさせる、これが必要なことではないだろうか。ただ残念に思いますのは、学者の諸君が、いま申し上げたような気持ちでやってくださればいいですが、それがときどき自分たちの範囲を逸脱するというか、越すとでも申しますか、その軌を逸している者もなきにしもあらず、研究の自由、学問の自由、これは私どもどこまでも尊重してまいるつもりだし、またそういう意味においての待遇優遇、そういうことにも特に私ども注意してまいりたいと思います。いろいろ先ほど来お話になりました点は、私ども伺いましてたいへん気持ちのいいお話ばかりでございますが、その御指摘になりました点は、十分私どもも首肯のできる節が多いように思いますので、まだ始めたばかりの科学技術庁でございますが、これはどうかりっぱに育てていくように、十分の注意を私どももいたすつもりでありますが、何ぶん御支援のほどをお願いいたします。
  31. 向井長年

    委員長向井長年君) 速記をとめて。   〔速記中止
  32. 向井長年

    委員長向井長年君) 速記を起こして。
  33. 鈴木一司

    ○鈴木一司君 長官に、たいへんお忙しいようですから簡単に一言。  東海村で御承知のように原研、原燃、原発その他たくさんの計画がいまされている、そうしてまた安全対策あるいは地帯整備、いろいろいま政府におかれましても施策を検討されておるやに聞いておるのですが、実はあのそばに射爆場があるのです。ちょうど第二原研が大洗に設置されて、これも計画で土地買収に着手しておるのです。その中開にある射爆場をいま移転していただかなければ、今後の原子力のいろいろな施設というものはできないのではないか。先ほど申し上げたとおり、やはり一カ所にいろいろの関連性のある産業が発展するためにも、ぜひ射爆場を返還してほしいというのが地元の意向で、再三陳情申し上げておるわけなのですが、長官いかがでしょうか、これに対する見解をひとつ伺いたいと思います。
  34. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 東海村をつくりました際に、実は射爆場とああいうものを併存しないで、そのときに射爆場の問題を解決すれば非常によかったのかと思います。しかし、とにかく射爆場があり、同時に東海村の施設も進んでまいった今日でありますから、いままでも数回にわたって射爆場の移転を要求してまいりました。そうして、今日までのところは飛行の方法を変えることによってやや実害は減らすというそういう処置をとってまいりましたものの、もう今日になれば、全然別な場所へ射爆場を移していただくよりほか方法はないのじゃないか、こういう意味から私ども強く主張いたしまして、幸いにしてようやくそれがいま実ろうとしておる。いろいろ問題はございますが、射爆場の候補地をあちらこちらとさがしてまいりまして、防衛庁のほうで大体候補地がきまりつつあるのじゃないだろうか、いまたいへんむずかしい段階になっておるようであります。防衛庁も原研施設を見、同時にまたあの付近の東海村の全般の施設を見て、こういう所に射爆場を置いていることはどうも適当でない、だから一日も早く他の候補地を見つけてそうしてそちらへ移そう、そういうことで鋭意努力中でございますので、私は科学技術庁長官といたしまして、射爆場と施設と両方を置きますことは、幾らそれが模擬爆弾にしろあまりいいことではない、好ましいことではない。現に模擬爆弾といいながらも実害を生じておりますから、最近のスピード等から見まして誤爆等も予想される、この際、どうかひとつ思い切って防衛庁が他に移すようにこれを強く要望しております。防衛庁のほうもただいま申しますように、ある程度まで候補地を見つけつつある、こういう実情でございます。追ってこの問題は解決するのではないか、かように私は見ております。
  35. 鈴木一司

    ○鈴木一司君 ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
  36. 野上元

    野上元君 それじゃ原研側にちょっとお聞きしたいのですが、今回の原子炉運転中止原因は、先ほどお聞きしましてよくわかりました。いわゆる労使間の協定がまだない、したがっていつストライキをやるかわからないというような状態のもとで運転をし、急速にとめられることは危険だと、こういうふうに考えられて、運転の停止を命じられた、こういうような御趣旨のようでございましたが、それはそれといたしまして、いま協定について話し合いを行なわれておるのでしょうか。
  37. 菊池正士

    参考人菊池正士君) おります。
  38. 野上元

    野上元君 どういう点が話し合いがつかないのですか。
  39. 菊池正士

    参考人菊池正士君) そのほうをいま担当しておられます菅田理事から……。
  40. 菅田清治郎

    参考人菅田清治郎君) 先ほどもお話がありましたように、昨年の十二月の九日にJPDRを引き継ぎまして、その際に、二十四時間前のストの事前の通告、争議時におけるスタッフの協定事項、それから保安上の要員を確保すると、この三点が当時協定で結ばれて、DRを引き継ぎましたあと、一応その協定が切れた形になっております。年末さらに次の操作を進める上で協定がぜひ必要であるということで提案をいたしております。労使双方で先週、今週に入りまして、連日詰めて協議をしておるという段階でございます。ただ残念ながら、まだ双方合意にならないということでございます。
  41. 野上元

    野上元君 おそらく合憲に至らないから協定が成立しないのだと思うのですが、どの点が一番むずかしいのですか。ずばりで言われてけっこうですが。
  42. 菅田清治郎

    参考人菅田清治郎君) 問題点は、二十四時間前の事前の通告と、御承知のように労働三法では、所の場合、特にどの条項にはめて事前通告をしなければならないという条項がございません。十日前の事前通告とか、いろいろのものがございますけれども、所の場合にはどれにも適用されないものですから、従来の慣習から申しますと、二十四時間以前に通告をしておりました。最近若干その点乱れがちになっておりましたので、原研としては、スト権が確立され、スト行為がしばしば行なわれる際に、大型炉の安全を確保するためには、ぜひ少なくとも二十四時間以前に予告を受けまして、社会的な観点からいっても、安心して炉の操作ができるようにというのが私ども主張でございます。組合側からいたしますと、何も炉はそう二十四時間前に通告をしてとめなくても、科学的にいえば短い時間でとめることもできるじゃないか、こういう主張がございますけれども、所といたしましては、いろいろな観点から、技術的な面の論議もございますけれども、安心して操作ができ、世間的にも大型炉を動かすにはそれ相当の装置、操作が必要じゃないかという点で主張いたしておるわけでございます。
  43. 野上元

    野上元君 JPDRが引き渡されるまでには、労働協約がありましたね。その労働協約を見ると、大体骨子は三つからなっている。一つは二十四時間前のストライキ通告、二つ目は保安要員の確保、三つ目にはいわゆるスト破りをやらないということ、ほかの者に炉をいじらせないこと、この三つがあったわけですね。それで、あなた方は話し合いがついて成立したわけでしょう。その引き渡されてからその協約を、同じものを結ばれればいいのじゃないですか、話は簡単じゃないですか。
  44. 菅田清治郎

    参考人菅田清治郎君) 所といたしましては、いまおっしゃるとおりに取り運びたい、こういうふうに思っているわけですが、当時協定JPDR引き渡しを受けるまでということで協定がございましたので、引き渡しを受けたあとは自然にその協定条項が切れたと、こういう形になっておりますので、それでは今後操作をしてパワー・アップしていく場合に困まりますので、労使協定を結びたいという申し入れをしている。なかなかまとまらないということでございます。
  45. 野上元

    野上元君 私、誤解しておりましたが、あなたの説明を聞いておると、二十四時間前の通告が問題になっておるというふうに聞いたのですが、そうじゃなくて、そういう協定を結ぶことを組合側はいやがっているのですか。
  46. 菅田清治郎

    参考人菅田清治郎君) 先ほど申しましたように、問題点三点ございますが、保安、要員を出すこと自体に別に問題はない。ただ保安要員を争議という形で――全面的なストの場合もございますし、部分的に一部やる場合もございますが、部分的なエリアをやる場合、個々の場合に協定を結ぶという形もございます。所としては全面的に結んで、個々にさらに細目ができれば非常にけっこうだと、こういうふうに思いますけれども、その間の意見の食い違いが若干ございますけれども、やはり所としては安全を守るという点に両方異論はございません。しかし問題点は、二十四時間前に通告するということはやはり問題がある。そういうふうに思って、事態を執行する場合には、やはり直前にとめるということが効果的であるというような考え方を組合は一応持っておりまして、そこの点、なかなかまとまりかねておるということでございます。
  47. 野上元

    野上元君 炉を停止してまで協約を、交渉しなければならないという理由はあるのですか、それを危険だというだけですか。
  48. 菅田清治郎

    参考人菅田清治郎君) いまの問題は、炉を動かしながら協定するという考え方を所は考えておりました。しかし、何といいましてもやはりスト権下にいつとめられるかわからないという問題がやはりあるわけです。内部的には本年に入っての状態、あるいは炉の引き渡しを受けたあとの状況は、所は組合の良識を信頼するというような形をとってまいったわけでございます。最近のところまでそういう形が出てきて、それで炉のロー・パワーの操作は若干やっておりました。しかし、やはり何と申しましても組合にはスト権がある状況でございますので、その場合の不安感というものがございますので、いろいろ再検討を加えました結果、やはり協定を結んだ上で炉を動かそう。動かそうという意味は、ロー・パワー操作で炉のメインテナンスの必要な点でするのはよろしいが、パワーを上げていくという形では問題があるということで、原研はぜひ協定を結んでパワーを上げていきたい、こういうことでございます。
  49. 野上元

    野上元君 さきも長官にお聞きしたのですけれども組合から出した私たち主張というのは当然あなた方もお読みいただいたと思うのですが、これを読んでみると、組合としてはきわめて紳士的にものごとを考えておるし、保安ということについては特別に関心を払っておるようですし、技術的に見てもそんなに二十四時間前に通告しなければ危険だというようなことは全くないので、これを見ると、大体技術的に見れば一時間内外でも十分に安全な操作ができる、こういうふうなことが書いてあるわけですね。これをお読みになって、あなたのほうではこれではこれは真実ではないという何かありますか。
  50. 菊池正士

    参考人菊池正士君) その二十四時間の根拠でございますけれども、これは技術的に何をどうして、これをどうしてという根拠をたどっていけば、確かに二十四時間必要でございません。しかし、こういうスト下という事態は一種の非常に興奮状態にあるとか、精神が安定状態にないということは確かだと思います。そういう状態が起こるとすれば、非常に安全ケースをとらなければいけない。それからまた、場合によっていろいろな連絡その他にも時間を要する場合がございます。そういったようなことを全面的に考えてみますと、私が現にこうやっておりましても、炉がハイ・パワーで動いていて、それが二十四時間――二十四時間という根拠は、一つの正確なサイクルであって、その間には連絡の問題とか、いろいろな問題がその間におのずからそれに含まれておるのであって、それをはっきり証明する根拠はございませんけれども、私としてはそれだけの余裕を持たなければ皆さんに対して、あの炉を安全に動かしていくということを申し切れる自信がないということで、これは、ですから技術的な問題というよりも、私の信念といってもいいかもしれません。事実ああいう大きな炉を持っている場所が通告なしのストをやるというような状態で炉を動かすというようなことは、私自身がそのそばに住んでいるということすら非常に不安を感じております。したがいまして、付近に住んでいる方にも、そういった安心感を与える上でも、私は二十四時間という時間をいただかなければならない。あれだけの大きな炉を動かす責任を持てないということは私の信念でございます。
  51. 野上元

    野上元君 私は相当離れて東海村をながめておるので、あなた方は直接向こうにおられるのだから、しばしば接触されておる感触からものごとを判断されるから若干ギャップはあると思うのです。あると思うのですが、これを読んでみますると、非常に保安には所以上に職員のほうが注意をしておるような気がするし、いままでそういうむちゃなことは一ぺんもやったことがないし、技術的に見ても何ら危険はないということは理事長も認められておるということになると、そんなに炉をとめてまであそこでやらなくてもいいじゃないかというような気がするのですがね。ちょうど断崖絶壁の上を運転している運転手とお客さんのような立場であって、これはいいかげんに運転しろといっても、いいかげんに運転すれば自分もあぶないのですから、そういうむちゃなことがやられるはずがないというふうに考えられるし、また、そういうふうに書いてありますが、そういう点もあなた方は信用できないのですか。
  52. 菊池正士

    参考人菊池正士君) この問題は、やはり責任の所在をはっきりさせないでこの問題は言えない。したがって、組合がこうだから、だからいいというようなことじゃない。やはりどんな場合にも管理している人が安心する方法をとらなければいけないということは一つ言えると思います。それからいままでそういうことがなかったとおっしゃいますが、一時間前でストが起こったケースがございます。それじゃ、なぜここ二年間協定なしで――JPDR以外のパワーは小さいものを動かしておりましたが、その不安はもちろんあったと思いますが、原研創設以来、長いこと不文律として普通の事務ストであっても二十四時間前の通告を受けております。そういう状態でずっとまいりましたのですが、最近の一年ぐらいは非常に乱れてきました。そうしてちょうど去年のJPDRの炉がとまる直前に第三号炉のほうがわずか一時間の予告でストが起こったという事態がございました。それ以来非常にストの問題が大きく問題になってきたのでございます。いま菅田理事の話をちょっと補足いたしますと、原研で動いておりますのはJPDRのほか、二号炉、三号炉でございます。これが一万キロでもって動いております。われわれは、この炉に対しても、少しパワーは低いのでございますが、同様に二十四時間の協定を結ぼうとしておるわけであります。いままでこの炉に対して協定はしてなかったのでありますが、これからいよいよ一万キロに上がることになりますし、ずっと経常的に長いこと動かすことになりますから、この際JPDRに限らず、この二つの炉についてもそういう協定を結ぼうとしておるわけであります。それが一つ新しくそこに加わっておるために、現在協定がなかなか進行がはかどらないということでございます。
  53. 野上元

    野上元君 そういうふうに両者が対立して解決しないまま炉が運転を停止されるということは、われわれから見ると、非常に心外だという気がするわけですが、これに介入するという方法はないのですか。原子力委員会というのは、日本原研の運営について何か監督権というようなものはあるのでしょうか。
  54. 兼重寛九郎

    説明員兼重寛九郎君) お答え申し上げます。  原子力委員会は厳密に申しますと諮問機関のような性格を持っておりますので、直接監督というような立場ではございません。そのほうは科学技術庁長官でございます。しかし実際的にはそういう問題のときにいろいろ発言を求められて、これに私ども考え方を申すこともございますし、また直接菊池理事長などといろいろお話をすることもございます。それで、私がこれから申し上げますことは、そういう性格のものであることをお含みおきでお聞きを願いたいと思います。  実は、昨年のあれは十一月の末ごろと思いますけれどもGEがこういう状況の中ではパワー・アップができないから運転をとめるという通告を突然したことがございますが、私の記憶では、その前日に菊池理事長が私のところへ見えまして、そのまた一両日あるいは二三日前に、いまお話のあった三号炉を――いまは一時間の予告でと言われましたが、私が聞きましたときには三十分の予告で、どちらが正確か知りませんけれども、私は三十分と聞いております。それで、三十分の予告でとめるということで、そのときには保安要員のことについても多少いざこざがあったようですけれども、これは結局話し合いがついて、保安要員を残してとめた、こういうことでございます。こういうような状況では、自分責任をもって運転を続けるということができない、これをもう少し何か根拠をもって規制するというようなことは考えはないのか、あるいは考えられないのかというふうな御質問がありました。それで、私は局長にその話をいたしまして、そういうことの検討も頼んだのでありますが、すぐ解決のできるものではございません。ところが翌日GEから話がございまして、当時組合側GEから言われて、二十四時間前の予告ということを所が言っているのだからというようなことも言われたんでありますが、外から見てそういうふうに見られることもやむを得なかったと思いますけれども、私は菊池理事長は、実際にその前に私のところへ来て話しておられますから、良心的には何らそういうことについてひけ目を感ずることなく主張できるというふうに考えておったわけであります。そこで、その二十四時間前の通告を所側がされることにつきまして、私どもその方針でおやりになることを承知しております。で、先ほどから組合側が、技術的には何ら心配なく、非常に短時間の予告あるいは予告なしにでも保安要員さえ残しておけばいいと、こういう主張をしておられることは承知しております。これが技術的に根拠のないこととかいうふうに申すわけではございません。原子炉はそういうふうにいろんな場合を想定して、いろいろ保安装置をつけてあるわけでございますから、非常に善意の運転者がちょっとした操作上のミスというようなことだって、これはないとは言えないわけでありますが、そういうことがあったらすぐ大事に至るようなことではこれはいけませんから、そういうものに対する保安装置もついております。ですからそういう予告なしのストライキに入ったらすぐ危険が起こるというものでないことも、組合側の言われるとおりでありますけれども、しかし一方、原子炉はどのように注意してやりましても、思いがけない事故が絶対に起こらないという保証はできませんために、いろいろ安全審査もやっておるわけでありますし、それから現在のところでは相当土地の広いところでなければ置かないような措置もとっておるぐらいなのであります。そこで人為的に、できる限りに慎重な態度で運転を進めていただくというのが私どもの態度でございます。したがって、組合との協定によって二十四時間前に通告するということは、少なくも慎重な態度で運転するということでありまして、その通告なしが乱暴であるということにはすぐならぬかもしれませんけれども、二十四時間前の通告でやるほうがより慎重であることは間違いがない。そこで炉のストライキのときに、二十四時間前の通告を求めるということが、組合がストライキに訴えるその効果をそれで非常に減殺するものであるかどうか、そういう点から考えまして、組合側も炉の――私どもから申しますと、ストライキの対象に炉を持っていくのは最後の段階に持っていく、ほかにあらゆる手を尽くしてもなおそれでいかぬ場合これは仕方がないでありましょうけれども、炉を一番まっ先にそういうストライキの対象にすることは、やはり避けるべきであるというふうに感ずるのであります。したがって、二十四時間前の通告を所として要求されることはもっともだと、こう考えております。組合側もその辺は良識を持ってそれに応ずるということを希望しておるわけでございます。
  55. 野上元

    野上元君 大体お話わかりましたが、これは解決のめどはあるのですか。見通しはついているのですか。
  56. 菅田清治郎

    参考人菅田清治郎君) スト協定の問題は、単にスト協定だけの問題でなしに、いろいろな問題がからんでおります。と申しますのは、いわゆる公務員のベースアップが進みまして、われわれのほうはベースアップ問題で労使きのうも団交をやっている始末で、これからその問題の解決をいろいろやっていかなければならない。その他労使間のいろいろな問題がここに固まっております。そういうものと当然組合は結び合わせて事を処理しよう、こういうことになっておりますので、短時間に片づくという見通しは、やすやすとちょっと得られないというのが実情でございます。
  57. 野上元

    野上元君 たびたびストライキが起こるという問題については、私ども非常に心配しておるし、またふしぎに思っておるのですが、単にそういう協定だとか、ベースアップ闘争だとか、そういう問題ばかりじゃなくて、研究所につとめておる研究そのものに問題はないのですか。たとえば、あそこに入って基礎的な研究をしようあるいは開発をしようというつもりで入って行ったのが、実際入ってみると、アメリカやイギリスの炉を運転させられるだけだ。こんなことじゃつまらぬじゃないかというような空気はないのですか。
  58. 菊池正士

    参考人菊池正士君) この問題は、原研として非常に本質的な問題でございまして、つまり、そういう意味で入ってきた人が、入ってきたときの期待と多少建った場合があったということもございます。しかし、それは原研というものがどういうことを目標にしているかということを十分に検討しなければならないのであります。で、そういう意味で、このごろでは人を採る場合には原研の性格というものを十分に説明いたしまして、それでその職場に関するいろいろな説明もいたしまして、十分そういった説明をした上で採っております。しかし、あの中には非常に基礎的な研究、まあこの場合非常に重要度の高い、まあやりたいときには夜おそくまでやりますけれども、その場合にはどうしても朝おそくなって出てくる。いわゆるいろいろ基礎研究に従事する人たちは、かなり自由な態度でやっている。しかし、その隣合わせには炉の運転という非常に規則的な、しかもどちらかといえばいわゆる純粋な研究者としては興味のわかないような、いろいろな異質な仕事がそこに入ってきておる。しかしそれならそれで、どこにだっていろいろなそういう異質な仕事があって、それぞれ適当な人がやっている。たとえば普通の工場でも、単に機械を回しているだけの人もあれば、オフィスをあたためるためのボイラーたきとかいろいろな種類の人がいるわけでございますから、それはまあ当然のことなのでございますけれども原子力研究所の異質さというものは、ちょっとほかに例のない異質さでございます。しかも、その異質なことをいろいろやられるかなり技術サービス的なことをやる人も、相当な高度の知識を必要とする人でございます。その人は、十分研究に行けば研究にも向く人たちが、またそれをやらなければならないような実情にございます。そのために内部的にいろいろなアンバランス、こっちのほうへ行けば楽なところ、こっちへ行くと非常にきつい形の勤務であるというふうな、いろいろなアンバランスがある。それの調整をどうとっていくかということは、結局、そういった何と申しますか、原子炉運転員というような一つの職種といいますか、そういうものがはっきり確立されてくれば、それをやること自体を自分の職務と考えるというグループの人ができてくれば、そういう問題がだんだんと解消してくるのじゃないか。いまそこらが非常に初期の段階で混在しておりますために、いま御指摘になったようないろいろな不平不満がとかく出がちでございます。その点はわれわれも十分考えておりまして、そういうことがなくなるように人員配置、それからそういう仕事に適するような人の養成ということを極力やっております。しかし、これは短時日にはまいりません。そういう状態を実現するためには、どうしても数年の、忍耐強い努力が必要だと思います。
  59. 野上元

    野上元君 そうしますと、過渡的段階として、私が質問したような状況があり、そのために所員にそれだけの不満があるということは一応認められたわけです。将来はこれをあなたが言われているように職能別にですか、採用して研究員研究員として、炉の運転員は運転員としてというふうに将来やられるつもりなんですか。
  60. 菊池正士

    参考人菊池正士君) そういうつもりでございますけれども、職能別に採用するということはちょっと問題がございまして、炉の技術者あるいは原子力の技術者というのは、いまのところ外部にないのでございます。所内へ入ってきて巣立っていくという人たちなのでございます。したがって採るときに、つまりそういう方向へ行く人であるということを明確にして採るというような方針にしたいと思っております。
  61. 野上元

    野上元君 現在といっても三十八年の四月現在の調べなんですが、日本において研究者の総数は十六万五千四百三十八名であって、そのうち大学その他で研究しておる者が五三%、民間の企業に三三%、国または公立の研究所に一四%の研究員がおる。こういうふうな一つのデータが出ているのですが、これは大体正常な姿ですか。どなたでもけっこうです。
  62. 村田浩

    政府委員(村田浩君) ただいま手元に詳しい資料を持っておりませんけれども、私のほうでは文部省のほうと連絡をとりまして、そして全国の科学技術者の数の把握ということに努め、それに基づきまして、将来どのように科学者あるいは技術者を養成していけばよろしいかということを策定いたしております。最近の動きとしましては、所得賠増計画と見合いまして昭和三十四年を基準といたしまして、昭和三十五年から昭和四十五年まで十一年間の科学技術者の需給を想定いたしまして、その結果およそその間におきまして約十七万人の不足を来たすということから、大体年間の大学卒業生程度の科学技術者を現状よりも一万六千人ずつふやす。そういう計画を実施すべきであるという結論を出しまして、その旨を昭和三十六年には文部省のほうにお願いいたしております。その結果、年々と国立及び私立大学におきます理工系の学生の収容数が増加しまして、現在私どもの承知していますところでは、昭和四十二年ごろになりますと、ほぼ年間の需給がバランスがとれる状況になるというふうな計画で進んでおります。
  63. 野上元

    野上元君 先ほど長官にちょっと質問したのですが、日本科学者でアメリカに渡って留学をして、そして何といいますか、スペシャリストとして養成されて向こうにとどまってしまうという科学者の数はどれくらいになりますか。
  64. 村田浩

    政府委員(村田浩君) わが国から海外へ流出します科学技術者が現在何名になっておるかということを統計的に正確につかまえる方法がございませんので、私どものほうでもいろいろたとえばアメリカにつきましては、全米科学財団あたりの協力を得まして調査をいたしております。一九六二年末現在におきましてわが国からアメリカに行きましてアメリカに滞在して科学技術関係研究をしている、あるいは科学技術関係の教職に従事しているという人の数は、おおよそ七百名ばかりになっております。もちろんこの七百名の方々がずっと永久にアメリカに滞在されるかどうかという点までは確認されておりません。間もなく帰国される方も入んておるかもしれませんわけでございますが、それにいたしましても、相当数の人が科学技術関係でアメリカに行って滞在し、研究あるいは教職にあるということは事実でございます。また、外務省の旅券課のほうを通じまして一応調べた資料がございますが、それによりますと、一応これも一九六二年、これは昭和三十七年度の実績でございますが、科学技術関係でこの一年間にアメリカヘお渡りになった方は合計して約二百名にのぼっております。この数は、たとえば一九五九年昭和三十四年度におきましては、百四十名ばかりでございます。年々増加の傾向にあるということは読み取れるわけでございます。しかし、これもまた昨年は二百名おいでになりましたのが、引き続きずっとあちらにおられるかどうかということは、ちょっと確認の手は現在ございません。
  65. 野上元

    野上元君 現在の状況では、まだ計画局長の言われたようなそういう状況だと思う。しかし、イギリスあたりはもう早くからこの問題を取り上げて論争しておるのでございますのですね、とりわけ今度ウィルソンが労働党の党首になってから緊急に国会で質問しておりますが、それを見てみますると、やはり憂うべき状態だと、こう言っているわけです。しかも長官所信表明最初にもありますように、「現代は科学革命の時代であり、技術革新の時代であるといわれておる」ということなんで、非常に重要な問題だと思うのですが、あなたのほうとしては、海外に流出したのが一年間に二百名だというふうに一応数字をつかんでおられるわけですが、それがどういうような動向を示すかという点については、十分な検討が必要じゃないですか、というのは、実はこの科学白書を読ませてもらったのですが、これには三十七年度の教員の数が非常に少ない、困っておるのだということが言われておるわけですが、科学教育の振興こそ今日重大な問題なんだということはよくわかりますし、そのために教員が足らないということは重大な問題です。しかも有能な頭悩がアメリカあたりにどんどん流出してしまうということになると、日本科学陣にとっては非常に大きな打撃になるんじゃないか、しかも、これが年々歳々漸増の傾向があるということは、よほどいまのうちから注意しなければならないんじゃないかと思うのですが、どうですか。
  66. 村田浩

    政府委員(村田浩君) 御指摘のとおりわが国から多数の第一線の科学者、技術者が海外に流出されるというようなことになりますと、わが国本来の科学技術研究にも将来支障を及ぼすやもしれないわけでございます。国内において、これら科学者あるいは技術者が十分に落ちついて研究あるいは教育に従事されるようにいたさなければならないと思います。その観点からいたしまして、科学技術庁では、広くいいまして研究者の処遇改善といいましょうか、国内におりまして教育あるいは研究に従事されます方が十分な処遇を受けられるようにという意味での方策を鋭意推進いたしております。かつまた同時に、先ほど長官の御答弁にもございましたように、研究の環境をよくする、俗にいいます豊かな研究の環境を造成するという必要があると思います。そのためには総理大臣の諮問機関でございます科学技術会議では、総理大臣の諮問にこたえまして、国立試験研究機関の刷新、充実に関する基本方策を答申しておられます。その答申の中にもこういった研究施設における設備あるいは環境の改良、充実ということを指摘されております。特に今後、発展が予想されます大型の非常に価額の高い研究施設等を充実することの必要性が指摘されております。私どもといたしましては、そのような施設、諸外国に見劣りしないようなりっぱな研究施設を完備することにいたしたいと考えておりまして、それにはいわゆる共同利用体制というようなものを打ち立てていく必要があるのではないか、またその重要な一環としまして、すでに講ぜられておりますように、筑波山麓に研究学園都市というものをつくりまして、ここに国の研究機関、それから民間の研究機関、それに加えまして、希望する大学等が同じ場所に集まりまして、豊かな環境のもとに勉強ができ、研究ができるような新しい組織をつくってまいりたいということで、努力いたしておるところでございます。
  67. 野上元

    野上元君 私は、まあお答えとしてはわかるのですが、科学技術振興のために投資されておる資金の量から申して、ここにアメリカの一九六一年から六二年にわたっての投資額が出ておるのですが、大体五兆三千億円という金が出ておるわけですね。その場合、日本の例をとってみますと、二千四、五百億というわけですね。五兆をこえるものと、二千四、五百億のものと競争するわけですから、実際にアメリカに行って、その設備の優秀なことと、それからその養成された後の就職の問題、待遇の問題等を考えると、あなた方が考えておられるように、簡単に国外流出を防止するということは非常にむずかしいのじゃないかというような気がするのですね。だからその点で私は申し上げておいたわけですが、ひとつその点は十分に心がけていただいて、将来に悔いのないようにしてもらいたいと思います。それからこの長官所信表明を読ましていただきました。もっともなことですね。全部これはもうやってもらいたいことばかりなんですが、ただ私が気にかかるのは、ここにはおそらく文部省の所官だから書かれないのだと思いますが、科学教育の振興というのは、あまり強くうたっていないのですが、たとえば水泳人口の多いところは水泳が強い、野球人口の多いところは野球が強い、ピンポン人口の多いところはピンポンが強いということに大体スポーツ界ではなっておりますね。それと同じじゃないですかね。やはり科学技術の問題も、そのバックグラウンドが広くてかつ深くないと、優秀な技術者は出てこないのじゃないかというような気がするのですね。これが根本じゃないかという気がするのですが、そういう点には、これにはほとんど触れられておらないので、設備を具体的にこうする、こうするということしか書いておられないのですが、それだけで、はたしていいのですか。さっき申し上げましたように、教員の数が足らないとか学究の数が足らないとかいうことは、ここの白書のとおり、あなたのほうで問題意識はあるわけですから、それをどう是正していくかということが、この所感の中に盛られなければならぬと考えるのですが、どうですか。
  68. 村田浩

    政府委員(村田浩君) 先ほどちょっと申し上げましたように、科学技術庁の所掌事務としましては、大学の教育に関することは除かれておりますので、その点を補完いたしますために――それだけではございませんが――補完いたします組織としまして、総理大臣の諮問機関として置かれております科学技術会議がございます。御承知のとおり、科学技術会議は、総理大臣が議長となりまして、それに文部大臣、大蔵大臣それから当科学技術庁長官、経済企画庁長官政府から四名の大臣が委員として入られ、それに学術会議の会長それからそのほかに学識経験者五名をもって合計十一名で構成されておる科学技術会議がございます。ただいま野上先生御指摘の大学における教育等の充実、そういった問題につきましては、現在この科学技術会議の場におきまして、当庁長官はもちろんのこと、文部大臣も参加いただきまして、総理大臣の司会のもとに検討さしていただいておるわけであります。科学技術庁といたしまして大半における教育あるいは研究等につきましていろいろ希望なり意見なりございます場合には、その場におきましていろいろと申し上げて、文部大臣のほうでお取り上げいただくようにやってまいっております。事務局といたしましては、科学技術会議のお世話を主として科学技術庁がやっておりますが、同時に、大学に関する部面につきましては文部省のほうの事務局でやっていただいております。この両者の間で緊密な連絡をとりつつ、ただいまお話のございましたような点につきまして具体的に協力してまいるようにいたしておるわけでございます。
  69. 野上元

    野上元君 あまり時間がありませんので、とびとびになるかもしれませんが、今回法律案として科学技術情報センター法の一部改正が出ておるわけですが、これもやはり科学技術白書に出ておる問題ですが、これも相当日本は立ちおくれておるということを聞いております。今回その法案の内容を見てみますと、ただ政府の投資の方法をちょっと改めるという程度のものであって、問題の核心には全然触れておらないように思います。それで、これは釈迦に説法だとは思いますが、この際、科学技術白書が明らかにしておる今日の科学情報事業といいますか、の立ちおくれがこういうところにあるんだということがはっきりいたしております。たとえば最近は情報が非常に多いですね。おそらくわれわれが聞いてもびっくりするようなたくさんの刊行物が出ておる、書籍が出ておる。これをどう整理するかということは重大な問題だと思うのです。まず第一にそのために司書が必要である。それから次には二次情報を作成するドキュメンタリストが必要である。第三番目には部外の学者による翻訳が必要である、この三つがうまく回転しないと、実際の科学情報センターの仕事はスムーズにいかないと、こういうふうにうたわれておるのですが、日本においては今申し上げましたような司書を養成するような大学はない、またドキュメンタリストを養成するようなところもない。こういうことになれば、科学情報センターの最も重要な業務である点を全然改善をされる意思がないというふうにしか考えられないのですがね。もしもそういうことであれば、科学情報の立ちおくれは、明らかに日本科学技術の水準をおくらせるということになりはせぬかというふうに考えるのです。これは私が言うのじゃないのです、科学技術白書が言うのです。あなた方が問題を指摘しているのだが、それについての何らの改善策がないのはどういことなんですか。
  70. 杠文吉

    政府委員(杠文吉君) 日本科学技術情報センターにつきましては、私の所管になっておりますので、私からお答え申し上げます。  ただいま御指摘になりましたように、確かに世界の情報の量は年々相当量増加しております。それに応じまして日本科学技術情報センターが収集しておりますのは、外国文献におきまして年間約四千種でございます。外国の特許明細書は二万七千件、原子力のレポートは七千五百件であります。それにあわせまして国内の雑誌を一千種とっておりますが、外国の文献の収集におきましては、それほどまでに見劣りがするということにはなってないというふうにわれわれは考えております。ただ国内の文献の収集整理ということは、相当立ちくれておることは事実でございます。この点について業務はもっと拡大していこうということを考えておりまして、三十九年度におきましても多少の予算の増加を見ております、国内の文献の収集にであります。ところが、現在の職員数は二百二十七名ございますが、これを処理するにあたりましては、いたずらに職員数をふやすということよりも、これを何とか機械化して要領よく索引等ができないものかということで、目下東芝の機械を入れて試験中でございます。これも外国製を直ちに入れるならば、あるいはすぐにでも役立つということはあり得ますが、やはり国内の機械を発達させ、発展させるということも一つの使命でございますので、東芝の機械を現在入れて、ほぼ実用化に近づいております。これは機会がございましたらごらんいただければおわかりいただけると思います。ただ、いまの司書等の関係でございますが、司書というようなものにつきましては、これは図書館関係の事業でございまして、この情報センターができるにつきましても、国会図書館と重複しないようにというような立場からできあがっておりますので、司書の養成等にまで手をつけるというには至っておりません。いろいろ御指摘がございましたのは、法律の改正によるというよりも、むしろ通常につきまして私たちが十分に注意しなければならぬ事柄だろうと思っております。ただ法律の改正が、何しろ提案理由にもございましたように、場所が分散し、しかも近代的な施設を入れるようなふうには、仮屋でございますので、なっておりませんから、それを能率よくするためにビルを建てる、そのための土地を、国有地を別物出資していただきたいということでございます。
  71. 野上元

    野上元君 いまの御説明聞いておりますと、この索引の機械だけは外国製は使わないで国産製にしようというのは、本末転倒じゃないか。それよりも原子炉をひとつ外国のを使わないで国産でやるべきじゃないですか、まあこれはいらぬことなんですがね。それで、私も考えるのには、人の手でやっておったのではとてもじゃないが間に合わない。科学技術白書の一九五七年の発表によりますと、刊行論文だけでも百二十万、いまじゃ相当ふえておるだろうと思いますが、科学技術振興雑誌が五万五千種というように出ておるわけですが、これを索引し翻訳するというようなことは、だんだん不可能になるのじゃないかというような気がするのです。外部の学者を総動員しても翻訳不可能だと思いますね。そうしますと、今の索引機械をつくるとか、あるいは翻訳の機械をつくるとか、そういうことは計画されておるわけですね。索引はいま聞きましたが、翻訳のほうの機械なんかはどうなんですか。
  72. 杠文吉

    政府委員(杠文吉君) 翻訳機械につきましては、情報センターがいま考えているというのではなしに、日本自体といたしまして目下大学等においても研究が進んでおりますし、また国立研究機関におきましては通産省所管の電気試験所において研究がなされております。しかしこの問題はアメリカにおいてもまだ成功を見ておりません。非常に先端的な仕事でございます。しかも日本ではただいま申し上げたような個所においてやっておりますし、また日米科学委員会におきましてもこの問題を取り上げまして、大いに日米協力下において実用化までなるべく早くこぎつけたいというふうに目下努力している最中でございます。
  73. 野上元

    野上元君 この科学技術情報センターにおきましては、いわゆるレェファレンス・サービスというのはやっているんですか。
  74. 杠文吉

    政府委員(杠文吉君) やっております。
  75. 野上元

    野上元君 これも白書で読んだのですが、アメリカのケース・インスティテュート・オブ・テクノロジーですか、の調査によると、アメリカの科学研究者研究時間の割り振りが大体出ているのですが、これをちょっと読んでみますと、情報の入手と発表に大体五〇・九%を費やす。実験研究に三二・一%、資料処理に九・三%、思考と計画にあとの七・七%を使うということになるので、情報の収集、発表ということが最大の大きな任務になっているわけですが、それについて日本は相当立ちおくれているんじゃないかという気がするんですが、その点はどうですか。
  76. 杠文吉

    政府委員(杠文吉君) 確かに御指摘のとおりに、アメリカの例をあげますと大いに立ちおくれているということは言えるかと思います。情報センターが、先ほど雑誌類を申し上げましたけれども、現在、件数にしまして世界の情報量を集めて見ますのが約三十万件ございます、これをここ四、五年のうちにはぜひ百万件にしたいというふうに努力目標を持ってやっております。したがいまして、この新ビルディングができた暁におきましては、できるだけ先ほど申しました機械類等もとり入れまして、迅速な抄訳、これをまた迅速に提供するというふうにいたしたいという考えでございます。
  77. 野上元

    野上元君 そういう問題について、おそらくこれは総論であってその下に名論があるのだろうと思いますから、そのことは了承いたします。どうかひとつそういう点の立ちおくれのないようにしてもらいたいと思います。  時間がありませんので先を急ぎますが、兼重先生お見えになっておりますので、ついでにお聞きしたいのですが、原子力委員会が長期計画を持っておりますね、原子力開発について。その長期計画によりますと、大体昭和四十五年度までには百万キロの電源を開発するということをいわれているのですが、その時点における火力、水力、それから原子力のそれぞれの発電総量をひとつ教えていただけませんか。
  78. 兼重寛九郎

    説明員兼重寛九郎君) 私いまそのほかのものの総量についての資料を持っておりませんのでお答えいたしかねますけれども原子力発電所がかりに百万キロワットになりましても、これは量からいいましたら非常にわずかなものでございます。で、あの計画の中では、その次の十年間は大体もう経済的に競争できるようになるというふうに考えまして、その間に日本原子力発電所が六百万ないし八百万キロワットできるであろう、あるいはできるのが適当だと、こういうふうに言っておりますのですが、その数は、その後十年間に建設される数の火力発電所――その当時は水力発電所はあまり残っておりません――その火力発電所のたしか三〇%程度を原子力発電所にすると。もちろん三〇%というのには、まだその建設の酒造能力とかいうようなこともありますけれども原子力発電所が大体ベースロードといっております、ずっと続いて逆転しなければ非常に採算上工合が悪くなる性格のものでございますから、そういうふうなことから考えると、たとえば原子力発電所が将来は八〇%になるとかいうふうにすることは、非常に先になって――それは改善されれば別でございますけれども――いまのところでは、そういうことを考えますとたしか三〇%程度を予想した数でございます。四十五年のときに百万キロワットはありますものの、まだ全然率としては問題にならない。
  79. 野上元

    野上元君 私が読んだ記事では、百万キロはちょうど総出力の総出力の総量の二%、こういうことです。そうするとその五十倍というと、五千万キロワットがその時点では動いておるということになるわけですね。
  80. 島村武久

    政府委員島村武久君) お答え申し上げます。  ちょうど手元に資料を持っておりませんのですけれども、百万キロの達成の時点でなくて、ここにございますのはちょうど一九七〇年、昭和四十五年現在でのわが国の電力供給量に対する見込みといたしまして、国民所得倍増計画の資料では二千四百二十億キロワット・アワーということになっております。原子力は大体その三%、これはそのついでに申し上げますと、一番最初の御質問にあったかと思いますけれども、この場合の水力が三五%、火力が六二%、それに対して原子力が三%という割合になる見込みでございます。
  81. 野上元

    野上元君 私、お聞きするのは原子力発電がはたして採算ベースに乗るか、経済性を十分に発揮できるかどうかという点が非常に聞きたかったわけなんです。それで兼重さんのおっしゃる話を聞いておりますと、大体昭和五十五年度までには六百万ないし八百万キロワットを出す、そのころには。大体採算ベースに乗るだろう、競争力を持つだろう、こういうふうに考えてよろしいのでございますか。
  82. 兼重寛九郎

    説明員兼重寛九郎君) 私が申しましたのは、その一九七〇年、四十五年ごろに大体競争できるようになるだろうと想定しておりますから、それからあとの十年はもう自然に置いておいてももう原子力発電所は建設されるようになるだろう。その建設される発電所のこれはキロワット・アワーでありませんで、キロワットが六百万ないし八百万というのがその間に建設される新しい発電所の三〇%。ですから逆に申しますと、その二倍くらいのものが火力発電所として建設されるだろう、こういう見込みのもとに六百万か八百万かという数字を想定したわけであります。その四十五年から五十五年の間は、多少のいいとき悪いときがございましょうけれども、経済的に見て競争できるということを想定しておるのでございます。五十五年になって競争できるようになるのではございません。四十五年には、それはもう人によってはもっと前に、七〇年を待たずに六八年でもだいじょうぶだと言う人もありますし、いや、なかなかそうでないという意見もあるのでありますが、とにかく七〇年、四十五年という切りもあって、その辺がということになっておるわけでございます。
  83. 野上元

    野上元君 この際ついでにお聞きしておきたいと思いますが、兼重さんは宇宙開発審議会の会長をやっておられるわけです。この間内閣に答弁を出されたあれを新聞記小を読んでみますと、まことにこれは新聞のとおりですから、ひとつ誤解しないでもらいたい。失礼な話なんですが、具体性がないのではないかということを痛烈に批判しておるようですが、兼重さんのお立場としては、あの程度でやむを得なかったということですか。
  84. 兼重寛九郎

    説明員兼重寛九郎君) 私は自分の名前で総理大臣に答弁を出しました当事者でございますので、そんなことはございませんという御返事をしなければならぬわけでございますが、実は宇宙開発審議会というのができましたのが三十五年でございますから、もう三年半かかっております。その三年半の間にあの程度しかできなかったということは、私としては非常に不満足なんでございますが、私の力の及ばないところであろうかと思います。あれに出ておりますことを、具体的に盛ってありますこと自体は、いま批判を受けたことではありませんで、一番最初に出ております、いまばらばらにやられておるという表現は避けましたけれども、おそらく第三者と申しますか、外からごらんになった方は、ばらばらにやっているのじゃないかと、そういうことばをお使いになりたいだろうと思うのであります。そういうようなふうに見えますのは、見るほうが悪いとも私はよう申し上げません。それで、そういうことについてのある程度相談し合いながら――ああいうふうにして非常に広い範囲にわたることを一カ所でやるということもできないことでありますから、おのおの分担してやるというのでけっこうなんでありますけれども、その分担をよく相談し合って、お互いに助け合い、抜け目のないようなふうに、しかもむだ足を食わないようにするという、そういう相談場所がなるべく早くできたほうがいいと思いながら、なかなかその案が浮かばないのが現状でございます。私、その辺で終わっておきます。
  85. 野上元

    野上元君 具体的にお聞きしますと、たとえばロケット・プランを抽出してみてお聞きしたいのですがね、大体あなたのほうの方針としては、あるいは科学技術庁長官の方針としても、基礎研究は大学でやらせる、開発はまた別だと、利用もまた別だと、三つに分かれているわけですね。ところが、実際には東大生研ではロケットを飛ばしているわけですね。あすこにいくと開発になるのじゃないですか。基礎研究を飛び越えて開発にいってしまっているのじゃないですか。その辺の統制というのはないのですか。
  86. 兼重寛九郎

    説明員兼重寛九郎君) どういうことが基礎研究で、どこから開発かというのは、これはいろいろむずかしいと思いますが、大学の中でもたとえば理学部の人たちから見ますと、工学部でやっておりますことなんかは、はるかに応用に類することでありますけれども、しかし、工学部の者――私は工学部の関係者だったわけでございますが――から見れば、またその工学の中で大学でやるような基礎的な研究はあると思っておりますし、またあるわけでございます。そこで、いま東大の生産技術研究所でやってきましたことが大学でやるのにはふさわしくない。応用研究であるかどうかというのは、これは見る人によっていろいろ意見があろうかと思いますけれども、あすこの研究者たちが、いろんな分野の者が関係しておりますけれども、その協力もしませんでしたら、現在の状況まで日本はいかなかったろうと思うのであります。それで、私はいつも申しておりますのは、宇宙開発といいますと、とかくロケットを開発してそれをなるべく高く飛ばすことであるかのような印象が濃いことで、これは非常に残念に思っておるわけであります。宇宙開発にはもっとやらなければならぬことがたくさんあるように思うのでありますが、ロケットだけが問題にされますので、そのロケットだけに考えを詰めますと、東大の生産技術研究所昭和二十九年ごろから小規模のものから始めてあそこまで育ってきた。それも、後になりまして、科学技術庁がそれと似たようなことで始まったのでありますが、そういうときに、よく相談がありまして、お互いにどういうふうにして、この分をどちらが受け持つというようなふうになっておったらよかったろうと思うのでありますけれども、私の知っておる限りでは、その辺は非常に不十分であったと思うのであります。時間をとって恐縮でございますが、昭和二十七年平和条約ができまして独立を回復したときに、航空の研究ができるようになりました。当時通商産業省それから運輸省などから、かなり大規模の計画の航空に関する研究機関をつくりたいという話が出ましたときに、同じつくるなら、できるだけいい性能の高いものをつくって、みんながそれを利用することにしようではないかという話になりまして、大学の関係者も含めて約二年あまり相談をし、調査団を出しまして、いま三鷹に航空技術研究所というのができたのでございます。これは大学の人もちゃんと相談に乗っておりますから、たとえば駒場に航空研究所という大学の研究所がありますけれども、たとえばそこでは、このごろ非常に高速度の気流を出すマッハということで、よくありますけれども、マッハというとおそらくいま十五ぐらいじゃないかと思いますが、そういうものをつけますが、これは非常に小さなもの。ところが航空技術研究所のほうは、もっと大規模のものをつくっている。そのかわりマッハはそれよりも少さいのでありますけれども、そういう三鷹の研究所にあるような大規模の施設を使って研究しなければならないものは、大学の人もそこに行ってそれを使ってやる。各省の人も民間の人も皆それを使ってやるというような相談のもとに進んでおりますので、その辺は、その後同じようなものがほかにできると、まことに……。ただし、これは現在航空の研究所というのがあまり日本では問題にならないからそういうふうにいってるのかもわかりません。これが宇宙開発のように非常に注目を引くものであったら、なかなかそううまくいかなかったかもわかりませんけれども、その当時そういうことをやった効果が確かにあった。ところが、いま宇宙開発については、どうもそういうふうな努力がされていないのじゃないかという気がいたします。お前はそういうことをやるべき立場におるじゃないかとおっしゃられるかもしれませんが、前の航空技術研究所のときから、もう十年をこえておる。ですからもう次の人がそういうことをやられてもいいのだろうと、私はこう思っております。
  87. 野上元

    野上元君 原子力委員会では、こういうものを研究しておる各研究所から大学を含めて、資料の要求ということはできるのですか。
  88. 兼重寛九郎

    説明員兼重寛九郎君) 原子力のことに関係いたしましては、大学は、たしか権限としてはできないのじゃないか。しかし、実際問題として、頼めばそういうものは貸さないということはないと思いますけれども、これは原子力のほうの関係に限るわけでございます。
  89. 野上元

    野上元君 そうしますと、やはり私が心配したような、学問には国境はないけれども、私には祖国があるのだと言ったのと同じで、やはり母校があるということになりますか。その点はそれでけっこうでございます。  時間がありませんので、最後に一点だけ科学技術庁に聞きたいのですが、科学技術開発振興といいますと、宇宙開発とかあるいは原子力というのが非常にはなばなしくクローズアップするというために、じみなものがみな沈澱しているような気がする。そのじみなものの中には、国民の生活にとってきわめて重要な問題がたくさんあるわけですが、たとえば最近の例をとりますと、京葉工業地帯には大きな工場が林立しています。連日連夜黒い煙、赤い煙を無制限に吹き出しておりますが、これをとめる方法がない。いわゆる大型トラックとかミキサーとかその他騒音を伴う自動車がひっきりなしにすっ飛んで歩いている。こういうものに対する対策、そういうようなものは、皆さん方はどういうふうにお考えになっておるか、聞きたいのですが、経済成長の指数だけが伸びても、喜ぶのは一部の人だけであって、その陰にはそういう公害で泣いている人が非常に多いと思うのです。その公害を防止することにもう少し力を入れる必要があるのじゃないか。たとえば煙が出ないような措置をするとか、自動車の騒音をとめるとか、あるいはその他いろいろな方法があると思うのですが、そういう問題について皆さん方、もう少し強力に手をつけてもらいたいと思うのですが、科学技術庁のやっている現実はどうですか。
  90. 芥川輝孝

    政府委員(芥川輝孝君) ただいまおっしゃいました公害あるいは産業災害、その問題につきましては、一方、虚業その他の社会活動の発展という点と、それから生活環境を改善するということを中心にいたしまして、国民生活の健全な向上、この両方の調和の問題が非常に重要なことと存じておりますが、科学技術庁といたしましては、環境、科学技術の向上という立場におきまして、公害の問題の防止につきまして科学技術的な研究を進める体制をとっておるわけでございます。  それで、公害のことにつきまして若干申し上げますと、大別いたしまして大気汚染の防止、それから水質汚独の防止それと騒音、震動大体その三つに大別しております。このほかに悪臭その他いろいろあるわけでございますが、ただいまのところでは重点をこの三つに指向しておるわけでございます。  それで、この防止のほうから見ますと、通産省なり厚生省なりそれがおのおの行政目的を達成する立場におきまして、法律を出して逐次防止につとめておるわけでございます。たとえば工場の排出いたしまするばい煙につきましては、ばい煙の排出の規制等に関する法律というのが出ております。その他水質につきましてもそれぞれ所管の法律が出ておるわけであります。ただ、その後、たとえば大気汚染を取り上げて申しますと、こういう防止法を施行してまだ日が浅いので、その成果が十分でないというせいもあるかと存じますが、もう少し科学技術的にこれを改善することができないかというふうなことを強く要望されましたので、科学技術庁といたしましては、昨年の秋に科学技術庁の中に大気汚染防止の合同推進会議というのを設けまして、これには各省のいわゆる官房の系統、つまり行政を中心にやるほう、同時に大気汚染に関しまする汚染防止の研究をやっている研究所、これを同時にその委員会の中に入れまして、大気汚染の発生状況、これの防止について具体的な問題を取り上げまして、各省と逐次打ち合わせを進めておるわけでありますが、もうちょっと具体的に申し上げますと、要するに汚染源がありまして、その汚染源がどういうふうな空気のよごし方をするかというあたりにつきましては、汚染源の状況を正確につかみますと、相当汚染状況の推定ができるのではないか、まず、そういうふうな科学技術的な解明をやる必要があるであろうというようなふうに考えます。そこらにつきましては、特別研究促進調整費を相当出しましてこの研究を促進しておるわけでございます。
  91. 野上元

    野上元君 経済学者にいわせますと、最近のいわゆる内部経済はことごとく企業が吸収して、外部不経済は、ことごとくこれを国民がしょわされておる、こういう表現を使っているのですが、全く私なんか生活の実感から見てそういう気がするのですがね。そういう点についても、ひとつ十分に努力してもらいたいと思います。幸いにして防災科学センターというものができたわけですから、予見し得ざる災害についても、これを防止しなきゃならぬし、かつまた現実の目の前にある公害等についても、すみやかにこれを除去するように、科学振興はそういう方面にも十分ひとつ力を注いでもらいたい、かように要望いたしまして、あとたくさんありまするけれども、もう時間がありませんので、私の質問はこの辺で終わります。
  92. 向井長年

    委員長向井長年君) 他に御発言もなければ、本日はこの程度にいたしたいと思います。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十三分散分