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1964-02-22 第46回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月二十二日(土曜日)    午前十時三分開議  出席分科員    主査 相川 勝六君       川崎 秀二君    竹内 黎一君       塚田  徹君    古川 丈吉君       橋本龍太郎君    森下 元晴君    兼務 加藤 清二君 兼務 玉置 一徳君  出席国務大臣         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         国 務 大 臣 佐藤 榮作君  出席政府委員         総理府総務長官 野田 武夫君         総理府事務官         (内閣総理大臣         官房審議室長) 松永  勇君         文部事務官         (大臣官房長) 蒲生 芳郎君         文部事務官         (大臣官房会計         課長)     安嶋  彌君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     福田  繁君         文部事務官         (社会教育局         長)      齋藤  正君         文部事務官         (体育局長)  前田 充明君         文部事務         (調査局長)  天城  勲君         文部事務官         (管理局長)  杉江  清君         文部事務官         (文化財保護委         員会事務局長) 宮地  茂君     ————————————— 二月二十二日  分科員荒木萬壽夫君、小川半次君、小坂善太郎  君、古井喜實君及び永末英一委員辞任につき、  その補欠として橋本龍太郎君、竹内黎一君、塚  田徹君、森下元晴君及び竹谷源太郎君が委員長  の指名分科員に選任された。 同日  分科員竹内黎一君、塚田徹君、橋本龍太郎君、  森下元晴君及び竹谷源太郎委員辞任につき、  その補欠として小川半次君、小坂善太郎君、荒  木萬壽夫君、古井喜實君及び永末英一君が委員  長の指名分科員に選任された。 同日  第三分科員加藤清二君及び玉置一徳君が本分科  兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十九年度一般会計予算文部省所管  昭和三十九年度特別会計予算文部省所管      ————◇—————
  2. 相川勝六

    相川主査 これより会議を開きます。  この際、分科員各位に申し上げます。質疑の持ち時間は、本務員は一時間程度兼務員もしくは交代して分科員になられた方は三十分以内にとどめることになっておりますので、特段の御協力を願います。  なお、政府当局に申し上げますが、質疑時間が限られておりますので、答弁は的確に、要領よく、簡潔に行なわれますよう、特に御注意申し上げておきます。  昭和三十九年度一般会計予算及び昭和三十九年度特別会計予算中、文部省所管を議題といたします。  質疑を続行いたします。加藤清二君。
  3. 加藤清二

    加藤(清)分科員 委員長のお許しを得まして、私は去年に引き続きまして、芸術院中心として質問を試みてみたいと存ずるのでございます。  その前に、きわめて関係の深い勲章の問題、特に生存者叙勲についてお尋ねいたします。  聞くところによりますと、これが閣議決定いたしまして、実行に移される段取りになっているそうでございますが、はたして生存者叙勲について、目下どの程度事が運んでおるのでございましょうか。まず総務長官に承りたい。
  4. 野田武夫

    野田政府委員 ただいま加藤さんからのお話のとおり、生存者叙勲について昨年の七月十二日の閣議でこれを行なうということに決定いたしました。引き続きまして、その基準その他についての準備をいたしております。しこうして、これに伴いまして、生存者叙勲を全面的に行ないます場合におきましては、実は戦争終末のころに戦没者に対しての叙勲問題が、事務が中途で断絶しておりまして、すでに勲記または通達をもって叙勲する旨政府が明らかに意思を表明しておりますにかかわらず、まだ勲章が授与されてない、こういうことでございまして、当然生存者叙勲をやる以上は戦没者に対する叙勲も行なうべきものだということで、本年一月七日、閣議において戦没者にも叙勲をする、こういうことに決定したのでございます。引き続きまして、この生存者叙勲につきましても、閣議決定に基づきまして今日まで準備をいたしておりますが、何しろ今回の叙勲対象といたしましては過去の栄典制度で行なっておりました、つまり定例叙勲というようなことでなく、ほんとうに国家のため、また公共のために功労のあった方を叙勲しようということでございますから、基準決定がなかなかむずかしいのでございます。あくまでも公正を期してその基準決定したいということで、なお今日生存者叙勲につきましては基準決定準備をいたしております。ただ戦没者につきましては、先ほど申しましたとおり、戦争終末までに大体事務的に行なわれたことが、実際叙勲が行なわれておらなかったのでございますから、戦没者叙勲は大体準備が整うておりますので、これをできるだけ近く行ないたい、こういう段階でございます。
  5. 加藤清二

    加藤(清)分科員 簡単にお答え願えればけっこうでございます。生存者叙勲の最初はいつ行なわれますか。
  6. 野田武夫

    野田政府委員 ただいまのところいつということはまだ、基準決定準備をいたしておりますのではっきりわかりません。しかし戦没者叙勲は、いま申しましたように事務的にも大体もうそ準備が整うておりますから、これと同時か、または多少生存者がおくれるかというところでございまして、いまのところいつごろ生存者叙勲を行なうかということは、まだ申し上げる段階まで入っておりません。
  7. 加藤清二

    加藤(清)分科員 簡単でけっこうです。ことしうちに行なわれますか、行なわれませんか。それはオリンピックに間に合いますか間に合いませんか。
  8. 野田武夫

    野田政府委員 叙勲対象が相当広範でございますから、一時にはできませんが、できますればことしじゅうに行ないたいと思っております。オリンピックに間に合うか間に合わぬかでございますが、そのころは、できるだけできたら間に合わしたいという、これは私の気持ちでございますが、これもはっきりここでもってお答えはできません。
  9. 加藤清二

    加藤(清)分科員 これは、われわれとしては、立法措置によらなければならない、かように心得ているものでございまするが、聞くところによれば、内閣では閣議決定によってこれが実行に移せるという解釈のようでございます。その理由を承りたい。
  10. 野田武夫

    野田政府委員 御承知のとおり、生存者叙勲を停止いたしましたのは二十一年の閣議によることでございまして、閣議決定によって生存者叙勲を停止いたしております。その後、二十八年におきまして、緊急なものは生存者でも叙勲していいということになっておりますが、いわゆる現行の栄典関係法規は新憲法下においてもそのまま有効に現存しておりまして、栄典関係法規はなくなっておりません。したがって、閣議において停止したことでございますから、その現在の栄典関係法規を活用する場合においては、やはり閣議においてこれを決定してもいいという解釈をもって政府は取り扱いをいたしております。
  11. 加藤清二

    加藤(清)分科員 栄典関係法規の第何条第何項によるのでありますか。
  12. 野田武夫

    野田政府委員 お答えします。  つまり、栄典関係法規全部が残っておりますから、何条とか何条でないということではございません。
  13. 加藤清二

    加藤(清)分科員 それでは法解釈の上からさような処置に出られたものと解釈してよろしゅうございますか。
  14. 野田武夫

    野田政府委員 法解釈と申しますか、つまり現在の栄典関係法規は廃止になっておりません。したがって、閣議においてその法規を活用する、こういうことであります。
  15. 加藤清二

    加藤(清)分科員 勲章を軽々に扱いますると、これは予期せざる結果を招くことを私はおそれるものでございます。申し上げるまでもなく、ナポレオンは、勲章はおとなのおもちゃである、かように述べました部下に対して、やがて君らはこの勲章によって支配されるであろう、かように述べておることは御存じのとおりでございます。私ども勲章をもらう、授けるということよりは、その勲章原因をつくることそのことのほうをより大切だと考えているものでございます。原因をつくることに喜びを感ずる気持ちが何よりも大切である、かように思うものでございます。ところが、勲章にはこれを見せびらかすというところの随伴的な所作がついて回るのでございます。つまり結果的な要素が非常に多いわけであります。小人がこれを望む場合には多く形骸に重点が置かれるのでございます。その結果、勲章を得るところの手段を選ばなくなるわけでございます。ここに勲章にまつわる過去の忌まわしいいろいろな問題が介在しておると思うのでございます。したがいまして、その手続におきましても、その方法におきましても、かような過去の忌まわしい思い出が将来に実績となってあらわれないように、ぜひ御留意願いたいと存ずるわけでございます。私はなぜこのようなことを申し上げなければならぬかというと、今日すでに行なわれておりまする生存者叙勲その他に、これに類することが非常に多く散見できるという悲しい事実があるからでございます。  そこで、私は次にお尋ねせんければなりませんが、今日行なわれておりまする勲章のうちで、日本最高と思われまするものの中に文化勲章がございます。またその文化勲章を授ける母体に芸術院がございます。この芸術院の問題につきましては、すでにここ数年来私は何度も唱え来たってまいりました。一体文部省としては去年以来、ちょうどこれで一年目でございまするが、その間において芸術院日展その他これに関係することどもにつきましてどのように調査をなされ、どのように検討なされ、どのような処置をなされたかについてお尋ねしたいのでございます。  まず第一番に、どのようなことをおやりになったか、文部大臣にお尋ねいたします。
  16. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 従来取り扱いましたことにつきましては、まず政府委員からお答えさせていただきます。
  17. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 先般の国会におきまして、二月四日にいろいろな点を御指摘されて加藤委員から御注意がありました。その直後、私、二月十三日、芸術院の部長の会議におきまして状況をお伝えいたしまして、その後、芸術院におきましては、六月四日の総会におきまして、芸術院選挙にからむ誤解等を避けますために、会員並びに院賞受賞者選出に際して、その運動と思われる来訪者——本人あるいは第三者たるを問わず、その運動と思われる者が来訪し、並びにこれに伴う贈りもの等は一切これを拒否するという申し合わせをいたしております。これに基づきまして十一月行なわれました会員選挙におきましては、このような動きというものはなかったというふうに私ども承知しております。
  18. 加藤清二

    加藤(清)分科員 それでは約束違いでございます。私はここにそれとは相反するたくさんの実例を持っていることを悲しみます。特に大臣にお尋ねとお願いがしたいのでございまするが、これはきのう、きょうに始まった問題ではございません。いうなれば、芸術院正常化は、国会正常化とともに、もはや一つの慢性的なはやりことばと相なっておるのでございます。  そこで私は、この具体的事実を申し上げてみたいと存じまするが、すでに本件に関しましては、昭和三十四年二月十三日、朝日新聞が「論壇」において「芸術院に望む」「会員選挙授賞に情実なくせ」、こう述べておる。続きまして、東京新聞は、三十五年二月十九日、また同じように訴えておるのでございます。東京新聞もまたしかりでございます。芸術院賞日展の花盛りである、日展お手盛り授賞である、こう述べております。それから去年国会で行なわれましたのは、あなた御存じの二月四日でございます。その後にすでに芸術院においては実行に移されている問題がございます。それに対する批判がいろいろ新聞に取りざたされておりまするが、毎日新聞の四月十五日号、月曜日でございます。これを見ますると、「これでよいか美術部門」「芸術院賞の奇妙な選考」九割近くが日展作家で占められ、平家にあらざる者は人にあらず、こう出ておる。局長、あなたはいま大体正しく行なわれたと言うていらっしゃるのですが、それは見解の相違なのか、この場をのがれるための言いのがれなのか、これで現状はいいと御存じなのか、性根を据えてお答えを願いたいと思います。次々と材料を出しますから……。
  19. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 ただいま申し上げましたのは、選挙あるいは選考に関しまして、運動あるいはこれにまぎらわしいものが行なわれておるという御指摘がございましたので、その点について強く御意向等も伝える機会を持ったのでございまするが、その結果六月の総会において自粛決議がございました。そしてその後の会員選出等につきましては、そういう動きはなかったということを、私どもは聞いておるのであります。その点を申し上げたのであります。
  20. 加藤清二

    加藤(清)分科員 動きがあろうがなかろうが、日展芸術院を独占しているか、芸術院日展を独占しているか、これは結果から見れば明らかな事実でございます。あなたはこの場で言いのがれだけをすれば、あなたの役目はそれで足りるかもしれませんけれども、決して芸術界正常化いたしません。  実例を申し上げましょう。買収実態でございます。私は、この件について、去年も私の意見総理大臣並びに文部大臣の答えに対して、各論壇からある程度批判もいただきましたので、ことしはその関係者数多くの方にアンケートをとってみたわけでございます。そうしますると、このままでよろしいと答えたのは、たった一枚でございます。それから、私にはそういうことはわかりませんと言うたのが、これ一枚でございます。名前もはっきりしておる。松方三郎さん。これは名前をあげてもよろしいということですから……。ところがあとの人は全部いけないと言うておる。しかも、去年の実情を申し上げますると、これはあえて名前を伏せます。「私が〇〇部の審査に当たったことがあります。その際は入選、入賞を目ざして事前運動に悩まされました。中には現金をもって買収しようとする者もあり、その辞退もずいぶんわずらわしいことでした。中には置いて逃げていく者もあり、そのつど払い戻し、返済に非常に苦労をいたしました。」中略でございます。「中には下見と称して批評を請い、謝礼と称して買収する者もあると聞いております。よって審査員搬入後」——これから対策が載っておるわけでございまするが、「搬入審査員をきめることのほうが適切ではないかと存ぜられます。」というので、最後のところへ参りまして、「いずれにしても芸術界までがかように濁ってきたことは悲しい事実でございます。文部省並びに先生方のお力によって浄化し、不正をする者が再び立ち上がれない方法をお考え願いたいと存じます。」こう出ておるのでございます。これは買収実態でございまするが、その後御承知でございましょうが、中央公論が出て、ここに論説が載っております。それはなぜかというと、あなたは正しく行なわれておるとおっしゃってみえまするが、決してそうではない。昭和三十八年四月二日に芸術院賞が発表になりましたが、一部美術部では九名中八名が日展評議員なのです。「日展評議員のみが院賞対象となるのでありましょうか。」こういうものも来ております。  なお中央公論五月号には、日展及び芸術院選出並びに選考方法悪徳政治家はだしで逃げ出す、こう書かれている。悪徳政治家はだしで逃げ出すほどの悪らつさである。その内容を読み上げる時間はございません。あなたこれでよろしいとお考えでございますか。
  21. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 芸術界あるいは美術界におきまして、それぞれ団体でやっておりまする、前段でお述べになりました入選その他の問題は、これにつきましてやはりその過程において厳正に行なわれることを期待すべきだろうと思いますので、もし御指摘のようなことを承りますれば、これは私どもが直接監督したりする仕事ではございませんけれども、そのことは当該団体にお伝えするようにいたしたいと思います。  なお、芸術員会員日展評議員その他の実際上占める数の比率等については、いろいろ御批判もあろうかと思いますが、私申し上げましたのは、六月四日の総会に基づきまして、このたび行なわれました選挙についての実際の動きというものは、その点はなかったというふうに承知しております。
  22. 加藤清二

    加藤(清)分科員 あなた、そんな表の舞台の上の装置だけ見て、これでよろしいなんという判定を下すようでは、もはやあなたには人を見る目がないと言わなければならぬ。  去年の国会で行なわれました討議、自粛答弁、特に総理までがこれについてはお答えになっている。「お話のような点は、今後十分検討いたしまして、せっかくの御意見でございますから、文部当局から一つ検討させてみたいと思います。」時の荒木文部大臣は、もし、しかくさようなことがあれば、もはや日展存在価値を失うものである。したがって、そのようなものは栄える必要がない。ただし、芸術院だけは傘下であるから、給料だけは、歳費だけは上げようとおっしゃった。現にことしは上がりましたね。私は、この点は約束実行されたから感心だと思っています。しかし、歳費を上げることだけを実行されて、粛正することを怠っていたならば、これは画竜点睛を欠くのそしりを免れないと思います。あなた、ほんとうにこれでいいと思っていらっしゃるのですか。いいとおっしゃるならば、私は、次に材料を出します、時間は食うけれども
  23. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 私は、そのときの大臣答弁に基づきまして、直ちに、私たちのとり得る措置といたしまして、芸術院に対して、かかることのないようにということをお伝えし、そしてそれに基づいて自粛するという措置をとられたということを申し上げたのであります。
  24. 加藤清二

    加藤(清)分科員 あなたは他力本願、相手まかせですね。自粛すると相手が言うた言葉だけを額面どおり受け取って、自粛が行なわれずに結果はかくのごときである。権威ある朝日、毎日、雑誌中央公論、これは日本で権威のある雑誌であり、新聞である。そこがまさかうそ論説を書くとあなたは言い得ますか。あなたの意見と違うだけの話、あなたがたった一人違った意見を吐くだけです。  そこでもう一つ、新しい大臣に認識を新たにしてもらうために、私は、次の書簡を読み上げてみたいと存じます。「芸術院の問題について」云々と前文がございまして、そしてここには「日展中心とした美術政治家が、自己芸術崩壊とともに、その美術政治的生命の温存の座として万難を排して獲得するという、少なくとも芸術仕事としている人々とは思えない権力の座への執着は自己芸術的生命の自滅をみずから認める以外何のものとも考えられません。一体芸術院存在はだれのために、何のためにあるのか、一般人々にはもちろん、われわれ美術に携わっている者にさえわかりません。国鉄一等無料パス並びに年金は国民の血税を持ってまかなわれている。しかもこの会員人たちは経済的には芸術家として恵まれた人たちである。その人たちが貧しい芸術家のために会員として一体どのようなことをしてきたか。芸術院としての文化勲章の足がかりとして名誉欲につながる以外何ものでもない。会員になるには一体どのような基準があるか、日展系会員がほとんどで、在野団体に所属している作家がいかにすぐれた作品を残し、一般大衆すらふしぎに思っていても、在野作家は決して芸術院会員にはなれないこの矛盾。」中略をいたしまして、これになるためにこの矛盾の中へ飛び込むためにどうしたか。「ある人はそのために住んでいた家を売って金をつくり、運動資金にしたという作家まであらわれた。事前運動はもはや公然の秘密となっている。」そこで評論として悪徳政治家はだしで逃げ出すほどのあくらつさであるという結論が出てくるわけなんです。これ、でよろしゅうございますか、大臣
  25. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 先ほど来いろいろ具体的な資料を持ってのお話でございまして、私も注意深く伺っておったつもりであります。芸術院というような機構は、申すまでもなく、日本といたしましては、芸術方面における公の最高機関であると思います。したがいまして、この芸術院会員に選ばれるということは、芸術家としましては私は最も名誉あることであろうと思うのであります。ただ名誉あるところにはこれに伴いましてその名誉を獲得するためにいろいろな弊害をかもし出すということもこの世の中にはしばしばある。あるいは人間性の弱点ということになろうかとも思いますけれども、しかし何にいたしましても、そのような名誉ある地位を持った芸術院会員をもって構成する芸術院というものがりっぱな、いかなる人からも疑いの目を持って見られない、尊敬せられる、信頼せられるものでなければならぬことは申すまでもないことであります。われわれとしましては、いわば国の最高の資質を持った人々によって構成せられておる芸術院であり、その地位にかんがみまして、やはり芸術院みずからがみずからを常に正しくしていく、常に国民の信頼にこたえられるような姿であってほしいものと念願をいたしておりまして、みだりに文部省あるいは文部省当局がこれに対しまして、いわば皆さんのよく言われる権力を持って臨むというようなことであってはならぬ。それらの人たちみずからが絶えずおのれを反省しつつりっぱな芸術院を構成してもらわなければならぬと思う。そういう立場から芸術院に接触し、また芸術院に御尽力、御努力を願いたいと思っておるわけであります。いろいろ御指摘になりました事項につきまして私はかれこれ申すものじゃございません。あるいはその人たち立場立場による御批判もあろうかと思います。あろうかと思いますけれども、いかなる批判にせよ、芸術院みずからが妙な批判を受けるようなことであってはならないという立場から芸術院に対して私どもも接触し、その改善向上のために努力をしてまいりたいと考えておるような次第であります。
  26. 相川勝六

    相川主査 加藤君に申し上げますが、時間が切れましたので……。
  27. 加藤清二

    加藤(清)分科員 よくわかりました。そこで大臣芸術院及び日展が好まほしき状態ではないということを御認識いただいたようでございます。同時に私は、この正常化をはかりまして、日本芸術の進展、これと日本芸術海外進出をはからなければならぬ。ことにオリンピックを控えましてその感をひとしお深くするものでございますが、そのやさきにあたりまして、平家にあらざる者は人にあらずというこの日展の仕組み、それを基盤としそれを基礎としたところの芸術院が、これまた汚職、買収に満ち満ちているということに相なりますと、これはここで通り一ぺんの答弁では直すことはできない。すでに自粛決議も数回行なわれておるはずでございます。にもかかわりませず、なおかかる権威ある筋から御批判をいただくということは、これは具体的事実が存在しているという証拠であると同時に、文部省それ自体も怠慢のそしりを免れないと思うわけでございます。したがってこの際、大臣のこの件に対するところの御決意のほど、具体策、これを承りたいのであります。
  28. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私の芸術院に対する態度は、いま申し上げましたとおりであります。私は名誉ある人たちをもって構成する国の最高芸術関係機関でありますその立場を尊重いたしまして、文部大臣としては今後接触いたしたいと思うのでございます。ただ、いろいろ御指摘になりましたような批判、その批判自体にもまた批判すべきものもあろうかと思うのであります。しかし、いろいろな批判を受けるということについては、芸術院としましてはおのれをむなしゅうして常に自分の改善をはかっていくための努力をせられるのが当然であろうかと思うのであります。その意味におきまして私は芸術院の諸君のこれらの批判に対する謙虚なる反省というものについては、これを促してまいりたいと存じております。同時に選考等をめぐりましていろいろおもしろからざる事実があるということにつきましては、先ほど社会局長からも文部省のとりました措置について申し上げましたところであります。選考する側の人たちの態度、またその選考せられんことを望んでこれに働きかけていく人の態度、両方あろうかと私は思うのであります。いかなる誘惑がありましても、いかなる贈りものがありましても、き然たる態度をもってやってもらうことが一番大事なことであります。芸術院側といたしましては、同時に芸術あるいは美術等に携わる人たちといたしましては、やはりその仕事の性質から見まして、小ぎたないことはひとつなさらぬような芸術家としての、美術家としての魂がほしいというふうに思います。これはやはり一般美術行政に関連する問題として私どもが気をつけてまいり、またそのような健全な風が起こるように各方面の御協力を得たいと思うのであります。
  29. 加藤清二

    加藤(清)分科員 時間がございませんので、残余の分は文教委員会と同時に決算委員会に譲ることといたしますが、本日の最後にひとつ承っておきたいことは、日展には隠し財源がある。これはもう既定の事実でございます。ところでその日展は一体私企業であるのか法人であるのか、法人であるとすれば経理公開の義務があると思うが、これは一体行なわれているのかいないのか。それから入場料を取っているが、最高の入場者を持っておる日本美術展としては、一体入場税はどうなっているのか。ここらあたりが不分明のまま取り残されているようでございます。これについて最後の御答弁を願いたい。
  30. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 社団法人でございますので、予算決算の報告は受けるわけであります。
  31. 加藤清二

    加藤(清)分科員 あなた、法律用語だけでしゃべっておってくれたら困るのです。実際はどうなっているかということを聞いているのだから。
  32. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 三十七年度の収入につきましては二千九百万余でございます。支出が三千四百万余でございますが、いまお話しの財産、隠し財源という点については、私、承知しておりませんが、調べてみたいと思います。
  33. 加藤清二

    加藤(清)分科員 それでは最後に意見を申しておきます。冒頭申し上げました勲章はおとなの玩具である、ところがその玩具にやがて人は支配されるであろうと言うたナポレオンのことばがそのまま当てはまっているのがこれでございます。勲賞、地位、名誉、このために原因と結果が逆になり、目的と手段が背反している、それがこれでございます。したがって今日ではどうなっているか。平家にあらざる者は人にあらず、このことが具体的事実となってあらわれているのがこの世界でございます。それをあなたは平然としておられるというならば、あなたも朱に染まった人間といわなければならぬ。よろしく奮起して調査検討——去年総理大臣が述べ、去年文部大臣が述べ、ことしまた清浄潔白な文部大臣が述べられたとおり、具体的に調査検討を、あすと言わずきょうからぜひやっていただきたいものだと思います。今日では世渡りじょうずが日展の幹部となり、その幹部がやがて芸術院会員となり、その幹部がやがて文化勲章をいただくということになっておる、少なくとも美術部門においては。これでもってはたして文化勲章が値打ちのあるものであり、正しく行なわれておるものであるということが言い切れるでございましょうか。むしろこれは天皇の名を汚すものである、文化勲章を汚すものであると私は思うのでございます。もしそれ世渡りじょうずが全部芸術家であるとするならば、演説じょうずはみんな政治家のはずでございます。念仏じょうずはみんな仏さんのはずでございます。少なくとも芸術家としては何を目標とすべきかといえば、世渡りじょうずや勲章ではなくして制作に専念することであり、よりよき作品をつくることでなければならぬと思うのでございます。名誉心を満足させたり、あるいは作品の値段をつり上げるというようなことはこれは邪道であるはずです。よりよき作品をつくることに精魂を傾注することが芸術家のつとめであると思う。同時に政治家の心すべきは私腹を肥やしたり、あるいは自己地位保全のために派閥を強化するごときは、これはもってのほかだと思う。幸いなるかな、もはや保守党においても派閥解消が一歩前進しつつある。(「社会党はどうしておるんだ」と呼ぶ者あり)このときにおいて相なるべくは、でき得べくんばここにおける派閥、美術界における派閥も直してやる。——あなた非難するかもしれないが、少なくとも、私は社会党においては派閥解消の先達として動いておることはあなたも御存じのとおりなんだ。そこで政治家としては、よりよき社会、住みよき社会、住みよき国家をつくるために全知全能を振りしぼるべきである。この際、芸術家も政治家も本然の性に立ち返ってよりよき国家建設のために努力しなければならぬと思いまするが、芸術家が安心をして制作に専念できないところに問題があるわけなんだ。芸術家が安心して制作に専念すれば、それでわが事終われりとするには、これは政治家が組織をつくってあげなければならぬと思うのでございます。その点、ひとつぜひ私の最も尊敬する文部大臣、ことしの奮起と実行方を促しまして私の質問を終わるわけでございます。
  34. 相川勝六

    相川主査 川崎秀二君。
  35. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 分科会でありますので、具体的に御質問をいたしたいと思います。ワシントンハイツにありまするオリンピック選手村のあとを何に使用するか。これは東京都との関連上、森林公園に大部分はすることにたてまえはなっておるのですが、あそこには鉄筋コンクリートの建物もあり、さらに二棟ほど新たに本部の建物をつくるかという話も聞いておるのでありますが、それらは惜しいわけですから、当然公共的なものに将来使うことが妥当であろうと思いますが、担当大臣はどう考えておられますか。あるいは文部大臣の御所管かもしれませんが、伺います。
  36. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 だれの所管というところまでまだ至っておるまいかと思うのでございますが、私どもとしましては、あの選手村は非常にすぐれた環境にもありますし、オリンピック後における使用につきましては、このオリンピックを記念する意味におきまして、何か青少年のための施設として使用することが一番適切ではないかと考えておるわけでございます。その意味でいろいろまた使途についてもそれぞれ意見のあるところだと思うのでありますが、このために寄り寄り関係省とも御相談をいたしておるようなわけであります。具体的にはいま何に使うというところをきめておりませんけれども関係省の意向も十分聞きまして、日本の青少年のために有効適切な施設に使いたいものと考えておるような次第であります。
  37. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 青少年のために使うという一つの線が出たわけでございますが、これは両大臣、私も帰り新参でありまして、実はこの予算委員会、予算の今度の折衝の際にも多くの意見を申し述べることができませんでしたが、幸いにこの点につきましては、私個人の意見も自民党の政調会でかなり幅広く認めてくれまして、青少年という線だけは出ておると思うのです。しかし、もう一つ掘り下げてみると、スポーツのほうでも何か使いたい、あるいは少しこれは、思いつきとしては当然出てくるのですけれども、修学旅行の際に、あの辺は非常に静寂な地帯でもあるし、スポーツの施設を見るというのでいいのじゃないか。ところが修学旅行というのは、何千何万と来るわけですから、そこに泊まれる者と泊まれない者との差も出てくるということで、私の考えておりますことをもし御賛成ならば、そういう線に向かって大体いきたいということで、灘尾文部大臣並びに佐藤大臣の御意見を伺いたいのですが、順序をつけて、第一には、青少年のうち特に青少年の国際交流、たとえば、ドイツであるとかアメリカの青年が日本に来ましたときに泊まるかっこうの場所というものはきまってないわけであります。したがって、国際青少年の交流センターにすることが第一の筋道のたったことではないか。また、日本の青年、特に全国から選ばれた者、たとえば総理府が派遣をしておる海外派遣団、ああいうのが行く前に一週間ないし二週間勉強するためにこの選手村の一画で泊まるということは一番適切ではないか。それから第二は、やはりスポーツの産物でございますから、スポーツの合宿にも当てたらいい。選手は幾らでも泊まるところはあるわけですから、むしろスポーツのトレーナーあるいはコーチャーなどが合宿をして研さんをする場所に利用したらどうかというのが私の考えております第一、第二の順序をつけての案であります。  それから、修学旅行のうち、特別に何か公共的な奉仕をするという目的を持って修学旅行をしておるというようなものは利用させていいのではないか。順序をつければそういうふうなことで、全体として文部大臣お考えの青少年のためにということになりますが、これらをめぐって、所見を両大臣から承ってみたいと思います。
  38. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 いまお話しになりましたような方向にこれを使っていくということは、やはりわれわれが寄り寄り話題といたしているところでございます。まあ、あれもやりたい、これもやりたいという希望も出てこぬわけではございませんけれども、いろいろ検討をする一つのかっこうな項目ではないか、かように考えております。
  39. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 いろいろお話を聞かされて、私ども将来の利用につきましても十分考えるべきだと思います。ただいまきまっておりますのは、先ほど申されますように、森林公園にする、しかし、その中にはコンクリートの建物等がありますから、これをどういうように使うかということが、オリンピックが済んだ後にいろいろ考えられる。それにはいろいろ御意見が出てくるだろう。文部省における文部大臣のお考えもございますし、少なくともこれをただ一般にというか、利権化するというようなことはしたくない。その気持ちだけはみんな一致しておるようでございます。
  40. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 もうこの問題については質問をいたしませんけれども、いままでのオリンピック選手村の慣例に従いますと、選手村のあとの使い方というものは大体きめておいてやった。メルボルン、ローマ、ヘルシンキ、いずれも後には庶民住宅にするということを発表して選手村建設にかかった。今度のは多少違います。違いますけれども、なるべく早くきめられて、少なくとも青年のためという線が一つ出ておれば、それを中心にして公共的なものということにされることが望ましいと私は思うのであります。  次に、きょうの質問は全部具体的な質問でございますから、的確にお答えをいただきたいと思うのですが、オリンピックの際に行なわれる一つの行事として、これはローマ大会からオリンピック大会をめぐる一つの行事になってきたと思うのです。今度は、ほんとうを言うと、一番レールに乗った世界青少年キャンプというものです。これは総理府にいろいろとごあっせんをいただいて日本の各種青年団体、今日二十八団体が結集をして音頭とりをして、先般川島正次郎氏がその組織委員会の会長になりまして、私自身も副会長をしているわけでございますので、諸般の事情は知っているわけでございますが、ただこれをもっともっと意義のあるものに組み立てていかなければならないという意味で、いま実行委員会などもその中にできまして案を練っている最中ですが、その案を練っているうちに結論に到達した問題に、その際に大パレードをやろう、これは外国から千名ほど、それから日本の青少年を各種団体集めて二万人ぐらいで東京都内を行進しようというのです。もとより青少年キャンプは千名でも各国の民情を知らし合ったり、勉強をしたり、あるいは世界の将来についての意見を交換するなどで、数は少なくても意義はあると思いますけれども、どこで何をやったかわからぬということではいかぬので、やはり青年の意気というものを中外に明らかにしなければいかぬというような意味で、パレードをやったほうがいいだろうということを提案をして結論に到達して計画している。御存じのように、オリンピック大会は開会式が花だと言われておりますが、今度の開会式ばかりは、どうも従来とは違って、外人のほうによけい切符がある。開会式に入る人間の数は七万二千五百ときまっている。そこで、ほかの入場券はまだ売れ残りもあるというので、割合に当初予想したよりも売れないのです。東京ではべらぼうに売れるのですが、地方では売れない。ところがオリンピックの開会式だけは、申し込みのうちの百九十六人に一人というので、宝くじみたいになった関係日本国民はほとんどこれを見る機会がないわけです。テレビでがまんしなければならぬ。そこで、オリンピックの威容を少数の人しか見られないのでははなはだ残念ではないかという意味で、それの代替というわけではないけれどもオリンピック気分を国民的に盛り上げていく行事として、世界青少年キャンプではこの大パレードを考えているわけです。二つの意義をもって考えているわけです。これはぜひとも実行したいと思っておりますけれども総理府のほうでは今日どう考えられるか。また総理府から御連絡を受けました担当大臣としては、この非常に国際的な、また民族的なパレードというものに対して御賛成であるかどうか伺っておきたいと思う。
  41. 松永勇

    ○松永(勇)政府委員 総理府といたしましては、この企画は非常に時宜を得たものであるという考えのもとに、これを推進したいという考えで現在準備を進めておりますが、何ぶんにもオリンピック時における交通の問題はいまから相当頭を悩ましておりますので、警察当局ともその辺の調整を目下やっているところでございます。
  42. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 ほんとにいまやってくれておりますか。
  43. 松永勇

    ○松永(勇)政府委員 やっているそうでございます。
  44. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいまのお話はたいへんいい催しのように思いますが、まだ具体的には伺っておりません。川崎さんは財団法人東京オリンピック世界青少年キャンプ組織委員会に関係しておられますが、その具体的な案をつくられれば、私どもその趣旨はたいへんけっこうですから、十分御協力申し上げるつもりでございます。いまのようにたいへん多数の者ですから、警察等の取り締まりあるいは交通がどういうようになるか、そういうこともよく研究しなければならないわけですが、趣旨はまことにごもっとものように思いますから、具体的に案ができ上がりましたらひとつよく御相談してまいりたいと思います。
  45. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 これから申し上げることは、いずれも組織委員会の会長がやられることでありまして、担当大臣のことではないのでございますけれども、担当大臣が御指導もされ御尽力をされる意味でいろいろ申し上げたいことがあるわけであります。その意見を申し上げて、そうしてこういうことはどうだろうかというふうに御質問申し上げます。  これは日本国内では新しい問題ですが、実はすでにオリンピック大会のあるたびごとに特別招待者という者が海外から来るわけです。これはオリンピックに対して特別の功労があった人ということでございます。組織委員会ではその第一号をドイツのカール・ディームという博士に——これは体育科学界といいますか、そういうものの世界的な草分けであった。ところがおととしの暮れにその方がなくなられましたので、特別招待者としてはいまもってだれを出しておるということがないのであります。これは私の一つの提案でございますが、日本オリンピック大会開催に功労のあった者あるいは世界のオリンピック史上にさん然たる光彩を放った者を招待をしてはどうか。その一つの案に、選手のかがみというか、長く不滅の長距離走者といわれて九つの金メダルをオリンピック大会で取った、こんな人は世界にはないことです。言わずと知れたフィンランドのパーボ・ヌルミ選手であります。ヌルミ選手が非常に盛名があったころは世界記録を六十幾つも書きかえたと言いますが、ヌルミランドという名前で手紙を出したところがフィンランドに届いた。書いた人はフィンランドというのを知らなくて、ヌルミランドと書いたらヘルシンキに届いたという逸話まで残っておる人です。本年六十四、五歳になりますか、非常に健在で、百まで生きよう——オリンピック選手は若いときに非常に過激な運動をするのでわりあい短命ですが、百まで生きょうというので運動具屋をやっておるようです。ヘルシンキ駐剳の小島大使の最近の手紙によると、招待があればぜひ東京に行ってみたいということを言っておられるわけです。それから一九四〇年の東京オリンピック大会が流産はしましたが、そのときに一番日本に対して好意を持ってあっせんをしてくれて、当時ヘルシンキ、ローマと争ったにかかわらず、東京が勝ったということの原動力にはスエーデンの陸連の会長をしておられたエドストロームという人がおります。この人は国際陸連の会長でもあって、八十二、三歳になりますか、そういうような人です、これはだれと限定をしない、あまり数が多くてもいけないけれども、そういう人を招待者として招聘したらどうかと思うのです。これは組織委員会のきめることではあるけれども、そういうことに対してどうお考えになるか伺っておきたいと思います。
  46. 前田充明

    ○前田(充)政府委員 特別招待者につきましては各方面からもいろいろ御意見が出ておるようでございます。ただいま組織委員会のほうで、選考ということばは悪いかもしれませんが、どなたにおいで願うか、そういうことについて検討をしておる次第であります。
  47. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 その次の問題は、すでに佐藤担当大臣が賛成された問題でございますが、私はむしろ慎重にやれということを言いたいのは、オリンピック功労者の表彰の問題であります。これは先ほど来、本日の毎日新聞ども反映して、勲章の問題が加藤君から手きびしく出ております。それと類似の問題でございますが、東京オリンピックを招致するにあたって非常に功労のあった者を表彰してはどうか。実は私は三カ月ほど前に河野謙三君と一緒の懇親の席上で申したのです。前の事務総長などはずいぶん功労のあった人で、あれはオリンピック大会途中でやめたけれども、いずれかの機会に表彰したらどうだというような話をしておるうちに、たまたまそういうことがこの間の参議院の特別委員会の席上に出て御賛成になったと思うのですが、生存者は、さっきの加藤君の話ではないけれども、大会の前後などにやらずに、相当時期を置いてやるべきだ。いまからこれをやるとたいへんものほしそうな者が続々と出てきてはなはだ始末の悪いことになるので、生存者オリンピック後一年あるいは半年期間を置いてやるべきではないか。むしろこの際に、私はスポーツ界のためにもえりを正して申し上げたいのは、前のオリンピック大会を招致した——これはたいへんな困難な情勢であったと思うのです。いまとは違うのです。日本にとってはスポーツの未明のときからスポーツというものを啓豪して歩いた、たとえば嘉納治五郎先生あるいは事実上一九四〇年の東京大会招致の原動力であった副島種臣オリンピック委員、さらには徳川家達公、これは当時の組織委員長、永井松三氏あるいは外国人でもラツール伯とかあるいはいまのエドストロームというような人はオリンピック東京大会の招致に非常に功労のあった人だ。私はまだ時期を佐藤大臣が言わなかったのがよかったと思う。オリンピック大会のときに功労者を表彰するならばそういう物故者というものを中心にして、生きておる人ならば外国人、ブランデージ委員長等を表彰すべきが筋道であって、生存者オリンピック大会前あるいはそのときに表彰するようなことになるといろいろな物議をかもすことになり、また好ましいことではない、こう考えております。佐藤大臣の御意見をいただきたい。
  48. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 オリンピックの功労者をどうするか。国にあります賞勲制度から見まして、いまある勲章を授与するかあるいは特別にオリンピックだけの功労章というものを国がつくるか、こういう二つに分かれるのであります。最初に申しました現行の勲章を出したのはベルリンの大会のときです。これはあまり好ましくないようでありますし、ことに社会党さんのほうからも現賞勲制度には御異論があるようです。ただ後に申しますような勲章というか、功労章というか、オリンピックだけにその記念するものを政府が出す、こういうことについてはオリンピック準備委員会等では大体皆さんが御賛成だ。これは社会党の諸君もたいへんけっこうなことだ、こういうように言っておられます。しかしてその個数はどのくらいなんだろうか、まずそれを調べてくれないか、かように申しますと、ヘルシンキのときの先例を例にとりますれば、数は二百あるいはせいぜい多くても三百程度じゃないか、こういうことでございます。したがいまして、いま言われるようなことにならない。在来からの前例を十分尊重するならば、その程度ならば比較的つくりやすい、こういうことでございます。ただいまそういう意味の方向で考えてみようか、またただいまお話しになりましたような御意見もこれはもちろんけっこうなことでございますが、ただいま申し上げるように記章だということになると、これは功労章というのでしょうが、それは生存者を主体にして考える、先例を尊重してその範囲に限る、こういうことでございまして、いろいろ希望条件その他がございましても、なかなかそれに合致しないのじゃないだろうか、かように思っております。しかし、ただそういうような意見が出ておる程度でございまして、まだ具体的には進んでおりません。この個数、あるいは図案等がどれくらいでき得るか、造幣局の能力等もありますから、それもよく考えなければならない。ローマ大会ではそういうのが出ておりませんし、そういうことなどもいろいろ参考にして考えてみよう、かように思っております。
  49. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 いま伺っておると、やはりオリンピックのときに功労者を表彰しようということですか。
  50. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 さようでございます。ただいまのヘルシンキの例などはそういうことできております。それからオリンピック関係者、しかもその組織に入っておる人たち、きわめて少数な者を各国同じように功労章を与える、こういうことでございます。ただいまお話しになりました物故者等について、いろいろ功績等がございますが、これはいまの勲章にいたしましても、追賞はあまりしないような考え方のように聞いておりますから、これはちょっとこの問題にすぐ該当してどうこうするというわけにもいかないと思います。  ただ、私どもいろいろ考えてみますと、いま御意見の出ましたような方々、あるいは日本オリンピックについて、たとえばロスアンゼルスに行ったときに非常にお世話になったとか、こういう方を何か表彰する方法はないだろうか、こういうのでその道も考えております。現存の方ならば、外国人に現行の勲章を贈るのも一つ方法だ、オリンピックを機会に贈るのも、それはそういうことも考えられるということで検討はさせております。ただ、いま言いますオリンピック功労章、これは全然別のような考え方であります。
  51. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 そこで私は、やはりオリンピックというものは終末まで見てみないと——むろん今度の大会は成功すると思います。思いますが、そのことで思い出したのですが、ヘルシンキ大会のときに一番の功労者であった人、オリンピック委員長があとで汚職が出たのです。どえらい汚職が出て、そして二年ほど問題になって、IOCの委員を辞退されたこともあります。私も多少親交があるので、同氏の名前をここで申し上げることははばかりますが、そういうような関係で、功労章というものを差し上げるのは、やはり閉会式が終わって、そしてこの大会を通じてどういう方が最も功労があったかということを研さんされてやられることのほうがよいという私の議論でございます。たぶんそういうふうになるのじゃないかと思うけれども、そして外国人はすでに来られた方に対して——これは名前をあげてもいいでしょう、ブランデージ委員長をはじめ何十人、あるいはいまのお話はたぶんロスアンゼルス在住の人、名前も知っております。名前は和田さんでしょう。そういうような方に対して差し上げることはいいと思いますけれども、国内の功労者はなるべく時期をずらせてやられたほうがいい。ただ功労章を出すのだということにしておかれたほうがいいということの所見だけを申し上げて御参考に供しておきます。
  52. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいまお話がございましたが、その雑談めいた場合にも、外国人に対してはこれは問題はないだろう。しかし、日本人の生存者に出すことはよほど慎重に考えなければいかぬだろう、こういう意見も出ておりますので、ただいまの御意見は十分聞いておきます。
  53. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 オリンピック大会が終わりますと、あとはしばらく国際的な大きな規模のスポーツ大会はないわけであります。年じゅうこんな大きなものがあったらたいへんですが、当分ない。けれども、これだけの施設をつくり、日本が国際的な水準を確保して、将来どこの地にオリンピックがあっても、あるいはそれに似た大会があっても、唯々と選手を送り、活躍をさしてみたいというのが国民の念願だと私は思う。そこで、これは日本学生陸上競技連合というものだけがきめただけで、まだ体協まではきめておらない問題に——この日本学生陸上競技連合の会長というのは河野一郎氏です。その要請に、一九六七年のユニバーシアード大会、これは国際学生オリンピックというような名前ですが、種目も八種目、陸上ほか七種目であって、規模は小さいし、完全に現在の施設でまかない得るし、財政的にもほとんど負担がかからぬ。これは二年ごとに行なわれておって、来年はハンガリーのブタペストで終戦後第七回の大会——通算すると二十七、八回以上になりますが、その大会をやろうということになっておるわけですが、一九六七年のユニバーシアード大会を東京に誘致するというようなことの議が、体協でも将来起こると思います。またそういうことを推進しようと私自身は考えておるのですが、これは担当大臣がもう十一月には終わりですし、ことに学生の大会ですから文部大臣に伺っておきますが、どういうお考えでございますか。もしそういうことになりますれば、御賛成ですか。
  54. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 整備せられました施設において、そういうふうな大会が催されるということは、スポーツを通じての国際友好親善の上に非常に意義のあることで、御計画になっております誘致の問題、条件が整いまして具体化しましたら、われわれとしましてはできるだけの御協力をいたしたいと思います。
  55. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 これはたいへんありがたい御答弁をいただきました。ユニバーシアード大会はぜひやりたい。これはオリンピックのように、各国では、共産圏や中立地帯では、非常に社会人の選手が強いのです。ところが学生の選手はあまり強くない。そこで、日本で開催すれば、日本はアメリカに次いで第二位は確実だ、あるいは総合得点では日本のほうが上にいきはしないかという一つの自信を青年、学生に与えるという意味では、非常に大きいものですから、そういう意味で注目しておいていただきたいと思います。  ところが今度は逆に、これは文部大臣にぜひ伺っておきたいし、また文部大臣措置をされる場合に、警告くらいは発しなければならぬ問題があったのではないか。いまのような国際学生スポーツのほうは、非常に日本の招致メンバーも有力ですし、条件もあるのですが、この間の札幌の失敗ですね。あれは去年私が浪人をしておったときに、総理大臣の秘書官二人から聞いて、あれは招致できるのですかと言うから、絶対敗北必至だ、それは惨敗するぞと言っておったら、えらいことに第一回で落選、そのために七千万円もの誘致費を使った。いま札幌はたいへんです。札幌市長は自民党系ですから、あまり言えないですけれども、内部をかえなければとてもおさまりつかぬだろう。七千万円もの金を使って、昨年は市長以下十六名、本年も五名、大名旅行はしないだろうけれども、とにかく行き、いろいろな運動をしておったが、失敗をした。失敗をしたからわれわれは指摘をするのじゃない。根拠は非常に薄弱でした。夏季大会をやって、そして冬季大会もとろうということは、これはオリンピックの歴史にないわけです。大体において夏季大会をやったところは、二回は遠慮して、三回目に冬季競技の開催適地があればとれる。ところが、ヨーロッパのように、これは非常に冬季の開催地に適格だというところに国をかえてやる。同じ国で、フランスはパリでとれたのに、今度はグルノーブルでとるというわけにはいかない。今度グルノーブルがとったのは、夏季大会がメキシコですね。この次の開催地にリオンが敗れたので、非常に同情が集まった。こういうことを考えてみると、戦わずして敗北必至であった。この次もとれない、これは予言しておきます。その次のその次ぐらいに誘致の目標を置いて、じみに——とれるときには少し金は使ったっていいでしょう。とれそうもないのにこれだけの金を使って、これは財政措置からすると、きっと札幌市の金は相当使われておるし、きっと起債措置でいろいろなものをやったに相違ないので、これは自治大臣の問題ですが、こういう根拠の薄いものに狂奔することについて、文部大臣というものは、やはり体育協会を通じて勧告するとか、何かの方法はとれなかったのかどうか。
  56. 前田充明

    ○前田(充)政府委員 札幌がうまくいかなかったわけでございますが、体育協会と文部省と、その誘致するかどうかというときには、私どもとしても相当慎重にやっていただくような話し合いはいたしました。しかし、当時札幌の希望が非常に熱烈でございました。これはもうことばで申し上げるのも適当なことばがございませんが、非常に熱烈でございましたこと、それからもう一つは、札幌がその前からいろいろ打診をしておったわけでございます。打診では、カナダ等がわりあいに有力だ、カナダと日本とがどうだろうということで、非常に有力だという情報が入ったということもございました。それからもう一つの問題は、いま先生からもお話がございましたように、やっぱり最初から、一度立候補して一ぺんに通るということは相当困難であるということもいわれておったわけでございます。かような意味で、それではひとつ第一回——と言うとおかしいのですが、最初の立候補としてはあげるのもいいんじゃないか、こういうことになりましてやった次第でございます。お金のかかったか、かからないかの問題は、ちょっと私ども文部省として、結果として今日七千万円かかったというお話もございますが、札幌市としては、あるいは四千万円ぐらいじゃないかという話も聞いております。しかし、どの辺か存じませんが、アマチュア・スポーツにむやみに金を使うことは、これは誘致といわず、大会それ自体といわず、もちろんぜいたくなことはしないほうがほんとうだということについては、私ども先生の御意見と全く同じでございますが、今回もし非常に多く使われたとすれば、それは行き過ぎかとは思いますけれども、しかし、情勢は相当やむを得なかった点もお含み願いたいと思います。
  57. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 だけれども、それは実際有望だなんて、やぶにらみ情報なんです。とにかくああいうことをしたのですから、続けてやるにしても、この次立候補するにしても、この次もだめだから内輪でやって、四回目ぐらいを見込んで着実にいくように指導してもらいたいと思うのです。  それから次は、これも一つの新しい構想なんですが、佐藤大臣のほうでございます。佐藤大臣、これは全然新しい考え方ですが、といっても先例がないわけじゃないので、オリンピックの初優勝者といいますか、日本の優秀な選手がメダリストになった、金メダルを獲得したということを記念して、各競技場にそれの記念的なものを残したらどうかという考え方があるわけです。これはもうすでに一つ出ておる。織田幹雄君が三段飛びでアムステルダムで十五メートル二十一、これを記録して、あの国立競技場の中の日章旗の掲揚塔は十五メートル二十一になっておる。フィンランドのヘルシンキの競技場へ行きますと物見やぐらがある、高い展望台があるのですが、あれはヤルビネンという選手が世界記録の七十二メートル七十一を投げた、それからこういうものが始まってきたわけです。それでそういうものをずっと——いま陸上だけですから非常に片手落ちなんで、できれば各競技場に、たとえば水泳では鶴田義行君がアムステルダムとロスアンゼルスと二回優勝した、その最初の記録を時計の上で表示をするとか日の丸でも立てて二分四十八秒八、ここに書いてありますが、これは水泳場にいま大きな秒針がありますから、そこへ日の丸をつけておくというような一つの仕組みとかいうことを考えて、そして一本に外国の選手を迎える場合に、日本オリンピック大会で優勝した最初の選手の記録すべきものを記念しているのだということを見せるのも一つの構想と思うのですが、これらはどうですか、当然御賛成だとは思うのですけれども
  58. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 組織委員会でいろいろそういうことを計画しておるだろうと思いますが、なおただいまのお話もございますので、組織委員会と打ち合わせをいたしたいと思います。
  59. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 あとは文部大臣への質問でございますから、佐藤大臣はけっこうでございます。  同じようなスポーツ関係の質問ではございますが、オリンピックが終わりますると、当然スポーツの問題は、選手の強化とかあるいは最優秀選手を鍛練するとかいうようなことよりも、これを機会に、日本がスポーツ国家としてあるいは健康な国家として育成されるという意味で、スポーツの国民的普及ということに重点を置いた施策を進めていただきたいと思うのです。文部省ではこのことについて非常に御熱心であって、あらかじめスポーツの長期政策を立てようという意気込みでいろいろな案をつくられておるようであります。  まず学校体育のほうから伺いますが、一学校一プール案というものもあったり、あるいは陸上のトラック、野球の広場というようなものも準備されておるようですが、そういうことの根本的な施策をどうお考えでございましょうか、お伺いしておきます。
  60. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 オリンピックの大会を待つまでもなく、スポーツの普及奨励ということは、いろいろな意味においてわれわれが重要な施策として取り上げなければならぬ問題と心得ておりますが、特に今回のオリンピック大会を日本でやるということになりました、これを契機といたしまして、国民の間に健全なスポーツが、ただ見るスポーツではなくて、国民の多数のものがこれを実践するような姿において普及奨励をはかってまいりたいと思っているわけであります。文部省としましては、この大会のあと、もちろんそれまでに検討には着手いたしたいと思いますが、やはり上長期的な計画を立てまして、その計画に従って着実に進めていく、こういう姿でスポーツの普及奨励をはかってまいりたいと思っております。いろいろまた御協力もいただきたいと思いますが、そのような心持ちでおります。
  61. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 来年から何か具体的な、むしろことしの予算でなしに……。
  62. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 予算的にはそうでございます。
  63. 前田充明

    ○前田(充)政府委員 オリンピック後における方策という基本方針については、いまお話がございましたのですが、具体的な点について一、二考えております点を申し上げさせていただきますと、やはりスポーツを振興するというのは、国民全体の層を厚くするというところに基本的な考え方があると思うのでございます。そのためには、やはり何といってもやる場所が必要である。この問題がございまして、従来ともスポーツ施設の補助ということについてはやっておりまして、ただいま一学校一プールというようなお話もございました。これについても私どもとしては一応計算等もいたしておるわけでございまして、これはもう従来、オリンピック予算のためにどうしても一般スポーツ予算というものは、圧迫をされるということもあるわけでございますが、これについてはぜひ今後はっきりした計画を考えながらやっていきたいと思っております。  それから、その次に考えますことは、スポーツをやるということは、同時に国民のからだをよくする、体力を強くするということであろうと思うのであります。そういう点につきましてのどうすればいいかという問題は、もちろんいままでもいろいろなことを考えてまいっておりますが、もっと科学的な研究に基づいて行なわれなければならないという体力研究と申しますか、そういう点について今後特に力を入れなければならぬと思います。  なお、いわゆる普及奨励としては、今日やっております一つ方法としては、スポーツ・テストというものをやりかけておりますが、これは国民の体力の一つの診断になるわけでございます。これは将来とも続け、さらに普及をしながら続けていかなくちゃならぬということ、それからさらにもう一つ、やはり組織化という問題、スポーツ人口が非常にふえておるわけでございますが、これはやはり組織化して、やりやすくするということを考えなければならぬじゃないか、かように考えております。
  64. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 ただいま非常に広範囲な分野でお話がございましたが、ひとつぜひ文部省に、従来の角度よりも徹底してやってもらいたいものは社会人体育なんです。これは往年、厚生省もそういうものに手をつけようとしていろいろ確執があったわけですが、どうしても文部省だと学校体育というものに中心が置かれるので、いまやはり日本人の体育向上というものを考えてみると、二十五歳から四十歳くらいの、青年から中年の人々が体育をする機会がない。これは一つは、それぞれの職場において精力的に活動しなければならぬ時代でしょうから、スポーツをやるという時期でもないかもしれぬけれども、人間の練成という意味では、むしろその時代こそ大切だと私は思うのです。その意味で社会人体育というものが非常にビハインドしておる。これは何とか引き上げていかなければならぬ。いま日本の大学を卒業するのは、旧制よりも一年低いから二十四、五歳ですね。ところがオリンピックの優勝者の年齢は、大体平均が満二十六から七です。ですから、学校を卒業して二、三年というところが一番強いわけですが、それがなかなか養成ができないので、社会体育というものがおくれておることのために、社会体育クラブ、アスレティック・クラブというものをどんどんアメリカみたいにつくっていく必要がある。そういう意味で一学校一プールもいいけれども、一町村一トラック、一野球場という町村単位の考え方も、国民スポーツ普及という見地からお考えを願いたいと思いますが、この点はどうですか。
  65. 前田充明

    ○前田(充)政府委員 川崎先生は、世界的にいろいろスポーツのことを御研究になっておられますので、他国のこともよく御承知でございますが、その一つであるドイツのゴールデン・プランニングなども一つの社会体育と申しますか、国民全体のからだをよくするという計画として行なわれつつあるわけでございます。これは人口がだんだんふえ、都市が非常に発達する、その途中において計画的にそういう場所を確保していくということから考えまして、非常にいい方法だと思っております。日本においても、もちろん現在、非常に人口の都市への集中化が行なわれておるわけでありますが、集中化する以前にそういう土地を確保し、そういう場所をバランスをとって考えておるということは非常にやらなければならぬ問題でございまして、これはすでに私のほうの大臣もいろいろな場所でそういうことについて発言をなさり、各方面の方々の御協力をだんだん得つつある状況でございますので、何らかのはっきりしたものを今後だんだんとやってまいりたいと思っております。  なお、もう一つ申し上げさせていただきたい点は、私どものほうで来年度、職場の体育の実態と申しますか、そういうものの調査をやることにいたしております。一体職場職場がどういうふうな実態であって、どういうふうな希望を持っておるかという点についての調査に基づきまして、具体的な方法を考えたいと思っております。なお、厚生省におかれましても、今回保険者対象の体操等もお考えになっておられまして、それから労働省におかれても労務者の体操、そういうものを考えたいという御意向もあるようでございます。私どもも、かような意味におきまして職場というものについての、からだをよくする一つの奨励としての体操でございますが、かようなものも考えてみたいと思っておりますので、これはそれぞれがみな協力いたしましてやりたいと思っております。
  66. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 あなたのところは、総合的に指導しなければならぬのですから、ぜひそれはお願いしたいと思います。今後の日本の目標は、経済的には福祉国家の建設ということでございましょうが、同時に、健康国家をつくるという意味での御奮発をひとつ願いたい。揺籃から墓場までの安全感ということを社会保障では言っておるけれども、幼児から老年までの健康感、これが今後の文教行政の一つの柱にならなければいかぬと私は思っておるのであります。  その他いろいろと御質問申し上げたいこともございますけれども、スポーツはこの程度にしまして、二つだけ、もう二、三分でけりをつけたいと思います。  国立劇場は、あれはなかなか因縁があってうまくできないので苦労されておるけれども、私簡単に言いますが、第二劇場はつくる気持ちはもうないですか。——おられないですか。それではそのほうはあと回しにします。  いろいろな意見国会に登場しまして、政治、経済、文化各般にわたる質問、ことに今度の予算委員会が始まって、社会党は分科会あるいは委員会で相当精細な御質問をされており、私は党派を離れて敬意を表しております。けれども、一番忘れられておるのは政治家の表彰です。これは勲章なんかやる必要はない。けれども、政治家で憲政に尽くしたる者、軍国主義と戦って議会政治を守った者というようなものに対して、当然表彰しなければならぬじゃないかという意味で、先年私ども多少の微力をささげまして尾崎記念会館というものができた。いま国に寄付しておりまして、維持に何らの支障はございません。衆議院がこれを管理しておる。文部省も若干の補助を尾崎記念財団に与えて育成してくれておるのは感謝にたえませんが、物故したる先輩の業績というものを国はもう少し系統的に考えてあげてしかるべきじゃないか。その点ですべての政治家が忘れておるのがそれであって、追悼会の一つくらいでごまかすようなことではいけないのです。尾崎先生はもとより、犬養毅、河野広中、島田三郎等の有力なる先輩、近年は鳩山元首相に至るまでの系統的な保護というものを加えなければいかぬ。これはぜいたくなことをする必要はないが、その人の持っておったすずりとか遺品とかいうようなものは、たとえば尾崎記念財団なら記念財団に委託をして、そして文部省が厳重に監督をして残していくような形にしたらどうかと私は思うのです。そういうようなことについては、言い出す者がないものですからこの際私は申し上げているのですが、きっと文部大臣はおわかりになると思います。これは文部大臣がおわかりにならなければ、やる役所がない。衆議院を考えても、衆議院は行政府じゃないですから。そこで、ぜひ文部大臣と衆議院当局あるいは参議院当局お話をいただいて、そういう政治家の遺品あるいは記念物というものを適当な財団に管理させるというようなことに踏み切られたらどうか、こう思うのですが、どうでしょうか。
  67. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 御趣旨につきましては、私全く同感でございます。文部大臣が発動するのが適当であるのかどうなのかということもございましょうが、そういう問題につきましては、十分ひとつ承りまして検討さしていただきます。
  68. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 国立劇場の問題について、最近の事情と、第二劇場をつくる意思を捨てたのかどうか。国立劇場をつくってくれと言ったのは、むしろバレーとかオペラ歌手のほうが熱心であったのですけれども、古典保存という意味で第一劇場が近くできることはけっこうですけれども、第二劇場も考えたらどうかということが、私の本日質問せんとするところの趣旨であります。
  69. 宮地茂

    ○宮地政府委員 現在建設中の国立劇場は、御承知のような経過をたどりまして、七千坪ばかりで、もとのパレス・ハイツのあとに建設する予定になっております。ただいま基本設計、実施設計をほぼ完了しかかったところでございますが、三十九年度からいよいよ建設に着工するという手順になっております。三十九年度、四十年度で建築を終わりまして、四十一年度から開館をするのが一応の予定でございます。この国立劇場はいろいろな経過がございましたが、一応いま申しました規模の国立劇場は、いわゆる古典演劇、芸能の保存ということを一番の主眼といたしまして、保存するためには、そういった古典演劇、芸能の関係者がそういうものを発表する場として国立劇場を考えておるというのが、現在の国立劇場でございます。したがいまして、先ほどおっしゃいました古典芸能——古典芸能も定義のしかたでいろいろ幅が広がると思いますが、一応私どもが現在の国立劇場で目的にいたしておりますのは、歌舞伎であるとか、あるいは文楽であるとか、あるいは邦舞、邦楽といったようなわが国古来からのものでございまして、バレーその他外来のものは、一応現在の劇場では予定をいたしておりません。したがいまして、文化財保護委員会といたしましては、純粋の古来からのわが国の古典演劇、芸能の保存ということでいまの劇場をいたしておりますので、それとは違った意味におけるバレ一等のものにつきましては、文部本省のほうでお答えいただきたいと思いますが、文化財保護委員会といたしましては、第二劇場をすぐつくるという考え方はいまは持っておりません。
  70. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 文部省はどうなんですか。
  71. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 現代芸能に関することにつきまして、どういう段階でどういう種類のものから手をつけていくことがいいか、劇場というものを国で経営するのがいいのか、その他団体の助成あるいは国際交流、調査交流等を運ぶのがいいのか、まだ今後検討すべきものだろうと思います。現代芸術に関する部面は、私どもで所管しておりますが、現在のところ劇場をということになっておりません。広く芸術行政、芸術全般の助成という観点で検討してまいりたいと思います。
  72. 相川勝六

  73. 塚田徹

    塚田分科員 私は、このたびの文教予算に伴いまして、特に自然的、経済的、社会的諸条件に恵まれていない豪雪地帯の問題につきまして、文部大臣がいかにその教育振興を考え、また政府がどのようにその問題に対して考え、そしてどのような施策を指向しておるかということにつきまして、御質問を申し上げたいと思うわけでございます。  まず第一点といたしまして、それらの地域に対しまして現在国家がどのような補助をやっておるか、また補助率がどのようなものであるか、この雪寒地帯には特に特別の補助率を考えておるかという点、また特別に考えておれば、災害地帯の補助率とどれくらいの差があるかという点について御質問するわけでございます。
  74. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 僻地教育の振興という問題につきましては、私も最も関心を払っておる部面の一つでございます。年来この方面の施策について進めてまいっております。しかし、なかなか打ち勝ちがたい自然的条件のために、非常に困難を伴う仕事であると思うのであります。だんだんと予算等につきましても改善を加え、増額もはかってきている次第であります。詳細につきましては政府委員からお答え申し上げます。
  75. 福田繁

    ○福田政府委員 豪雪地帯ということでございますが、豪雪地帯の多くは僻地になっておると思います。したがいまして私どもとしては、僻地教育の振興という見地から教育問題を取り上げているわけでございまして、第一番に、僻地あるいは豪雪地帯の教育内容の問題でございますが、こういう自然的条件に恵まれていない地域の教育に対しましては、あるいは教育内容の研究指定校を設けるとか、あるいは多く小規模学校などがありまして、あるいは複式学級——単式の学級もございますが、そういう複式学級などの困難な条件のもとの学校が多うございます。そういうものに対して資料を作成して配付してやるとか、あるいは複式の教科書を文部省で作成するとか、いろいろそういう助言、援助を続けておるわけでございます。そのほかに教育内容一般以外につきましても、施設、設備の補助、そういうものとしては、たとえば教員宿舎の建築費、あるいは集会室の建築費、また発電施設設置の補助、あるいはまたスクールバスなどの補助、あるいは給水施設の設置に対する補助、あるいはまた保健管理費の補助、あるいはまた給食施設の補助、あるいはまたテレビ受像機の購入に対する補助、いろいろございますが、そういうものは、多くは僻地あるいは豪雪地帯に向けられるものでございます。したがって、それぞれの費目に関しましては、特に他のものと比較して補助率を高めていくというものではございませんが、そういう僻地に対する補助金というものは、従来から継続してやっております。今後もそれをだんだんに拡大していくというやり方をとっておるわけでございます。特に教材費につきましては、僻地は、いま申し上げましたように小規模学校が多うございますから、そういう小規模学校に対する設備の補助などにつきましては、できる限り小規模学校に重点的にいくようにというような考え方から、昨年は一般の学校に対する配当基準よりも割合を引き上げまして、三百人以下の学校あるいは百五十人以下の学校に対して、従来の充当率を引き上げるというような措置もとっております。また教員定数につきましても、今回の標準法の改正によりまして、小学校の大体五学級以下の規模につきましては一・二五——いままでは一学級当たりの比率は一・一人でございましたが、これを一・二五にいたしました。中学校につきましても、産学級以下の小規模につきましては、一学級当たり二人というような配当をいたしました。そういうように、各般の問題について、できる限りこれを考慮していくという対策を従来からとってまいったわけであります。今後もそういうことで進めてまいりたいと思います。
  76. 杉江清

    ○杉江政府委員 施設の整備について簡単に申し上げます。施設の面における考慮は、僻地ということではありますが、集会室の整備、宿舎の整備、この二つが大きいものでありますけれども、明年度予算におきましては、特にこの予算は相当他よりも顕著にふやしております。それから屋内連動場の整備につきましても、従来とも僻地ないし寒冷積雪地帯に対しては、その配分上特別な考慮をいたしております。小学校の屋内運動場におきましても、これが配分にあたっても、僻地、寒冷地に対しては適切な配慮をいたしたいと思っております。なお、従来とも行なわれておったわけでありますが、積雪寒冷地帯の校舎及び宿舎につきましては、負担坪数の算定の基準として特別な補正増をいたしております。これは今後とも行ないたいと思っております。
  77. 塚田徹

    塚田分科員 それでは次に、耐雪、耐寒構造の問題でございますが、雪寒地帯においては積雪度、寒冷度等のために各種の文教施設の耐用年数が非常に短く、またたいへん危険性が多く、それらの点に従いまして、それらの文教施設を鉄筋、鉄骨化によって耐雪、耐寒構造にする必要があると思うわけでございます。その点につきまして、政府は豪雪地帯の文教施設の整備強化をしなければならないということは、いまの御答弁の内容でわかるわけでございますが、それらの危険な校舎につきまして特別な配慮をしておるか、またそれらの危険校舎について、特別の指定を設けておるかどうかについて御答弁を願いたいと思います。
  78. 杉江清

    ○杉江政府委員 積雪寒冷地帯においては特に施設の堅牢の度合いを高めなければならない、こういう見地で、積雪寒冷地帯における文教施設については、できるだけこれを鉄筋化していくということが非常に大切なことだと思います。ただ現在のところ、特別に積雪寒冷地帯における鉄筋化を助長する制度はございませんが、運用上できるだけ見るように今後努力してまいりたいと思っております。
  79. 塚田徹

    塚田分科員 現在、全国の僻地の小中学校の数が大体九千三百、その中で、特に寒冷地帯においてはその七〇%に近い六千三百余りの小中学校があるわけでありますが、その児童生徒数も約七十万人の多きを数えておるわけであります。また特に私の出ております新潟県だけをとってみましても、小学校の数が二百九十二校、そして児童数が三万五千三百五十人、そして中学校が百二十校で、生徒数が一万二千五百六十人、合計四百十二校で四万七千九百十人余りがこのような僻地の学校において学んでおるわけでございますが、この点、政府はへき地教育振興法に基づいて諸政策をどのように考えておられるか、そして現在どのような施策を講じておるか。また、現在のへき地教育振興法は昭和二十九年に制定されたのでございますが、すでに十余年を経過しておるわけでございます。そして私としては、この法律はもはや十分なものではないと考えるわけでございますが、政府当局といたしましてはこの法律を改正する意思がおありかどうか、この点について御質問申し上げる次第でございます。
  80. 福田繁

    ○福田政府委員 ただいまの御質問でございますが、私ども、法律の制定以後において、できる限り実態に合うように常に検討してまいるという基本的な考え方においては異存はないわけでありまして、常にそういうことを考えておるわけでございます。ただ、現在のへき地教育振興法につきましては、先ほどもちょっと申し上げましたが、直接この振興法に基づきまして補助金等を出しておりますものは、たとえば僻地の集会室の建築費補助とか、あるいは教員宿舎の建築費補助、スクールバス等の購入費補助、あるいは保健管理費の補助といったようなものが補助されております。しかしながら、それのみではなくて、この法律が制定されました以後において、いろいろとこの法律の趣旨に基づいて各種の補助金が出されております。たとえば三十九年度の予算におきましても、公立中学校の宿舎についての建築費補助、並びにそれに伴う宿舎の運営費、居住費の補助というような補助金も出すことになっております。それからまた、公立高等学校の寄宿舎建築補助も、特にそういった趣旨から三十九年度においては出すことになっております。また給食施設の補助、テレビ受像機の補助とか、いろいろございます。そういった点で、このへき地教育振興法の中に盛り込まれない事柄につきましても、その趣旨に応じてそれぞれの予算措置を講じてまいっておるわけであります。したがって、ただいまの時点において直ちにこれを改正するということではございませんが、その中でいわゆる僻地の指定基準というのが省令でできておりますが、そういう指定基準というものは、いろいろ地域の実情に応じて改定する必要があろうと思います。したがって、その僻地指定基準については、私どもは十分検討いたしまして今後改善をいたしたいと考えております。
  81. 塚田徹

    塚田分科員 いま申されたとおりの御答弁でけっこうですが、次に、いまの御答弁の中で、スクールバス等の問題の点について計上しておるということでございますが、私は確かにこの点については非常にけっこうと思うわけでございますけれども文部省当局としまして、現在学童がそれらのバスまたはスクールボート、あるいは雪上車等によって通学できる地域はそれによって通学できるからいいわけでございますけれども、その他の地域におきましては、なだれその他の災害等があって通学できないというようなことにつきまして、建設省あたりと十分に連絡をとって、通学道の確保等の問題についていままで話し合いをされたことがあるか、話し合いされたことがあればどのような結論に達したかということにつきまして、御答弁願いたいと思います。
  82. 福田繁

    ○福田政府委員 具体的な道路につきましては、一々話し合いをしたことはございません。一般的に僻地の教育の振興という見地から申しまして、道路の開発その他が基本的な条件なわけでございますから、関係の自治省あるいは建設省の実情に応じて、そういう教育条件を整えるという意味におきまして、話し合いは従来からやっております。しかし、個々のどこの道路をどうするというような具体的な問題については、いままで話し合ったことはございません。
  83. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 ただいまのお尋ねは、非常に適切な御質問のように伺っております。私もこの僻地教育の問題を考えます場合に、ただ単に学校ないしそれに関連する施設のことのみ取り上げておったのでは問題の解決が非常にむずかしいのではないか、もっと視野を広くしまして、お話しになりましたような道路の整備、こういうふうな問題も取り入れまして僻地教育の問題を考えなければならぬ、このように特に最近感じておるわけでございます。従来からも文部章のほうで自治省その他建設省とも話をいたしておると思いますが、御質問の御趣旨全く同感でございます。私としましても努力いたしたいと思います。
  84. 塚田徹

    塚田分科員 この問題にもう少し関連してでございますが、現在冬季間においては、小学校は分教場に集約いたしまして勉学をしておるわけでございますが、中学校のほうになりますと、宿舎のあるところが皆無と言っていい状態であるわけでございます。その点については、中学校も義務教育でございますので、小学校並みにしてもらえないものかどうかと私は考えておるわけでございますが、文部省当局はどのようなお考えをお持ちであるか。
  85. 杉江清

    ○杉江政府委員 文部省といたしましては、冬季分校整備、そのための助成は現在のところいたしておりません。むしろ冬季分校における教育は能率の悪い二面もあるから、できるだけ冬季分校を解消して本校に通う、そのかわり宿舎を整備してやろう、こういう策をとっております。もちろん、中学校についてもそういう策をとっておるわけでございます。そこで、寄宿舎の整備については特に従来も力を入れておりますが、本年度におきましては約三倍の予算を組みました。そして、先ほどお話しのように高等学校の宿舎については、また新しく、僻地の恵まれない生徒のために、いい学校に通うために僻地生徒用の宿舎をつくるようにいたしたわけであります。このように宿舎の整備については明年度相当大きく伸ばしておりますが、今後もこういう方向で考えていきたいというふうに思っております。
  86. 塚田徹

    塚田分科員 先ほど文部大臣は、この問題に対しては広い視野を持って問題を解決していきたいというおことばであったわけでございますが、現在、国有林野の活用というものも考えてやったら非常にいいのではないかと思うわけでございます。実は私がアメリカにおりました当時の考えでは、アメリカでは国有林野の収益の一部をその国有林のある地域の教育費、そうして道路整備費等にしておるのが現状でございます。そこでこれは非常に有効で、かつ効果的であると思うわけでございますが、この国有林野の活用についても、日本でもたしか昭和十一年でございますか、東北地方について、この林野を活用して文教施設の整備を行なったという事実があるわけでございますので、文部大臣も今後そのような問題についてもお考えをお持ちかどうか、お尋ねいたします。
  87. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 現在の日本の国有林野につきまして、そのようなことが直ちに行なえるかどうか、私まだ十分な知識を持っておりませんが、よく御趣旨を体しまして研究させていただきたいと思います。
  88. 塚田徹

    塚田分科員 この国有林野の問題は、私は非常に大事だと思い、かつまた有効的だと思うわけであります。ことに豪雪地域においては非常に国有林野を有しておるわけでございますので、その点につきましては、今後とも農林大臣あるいはその他の関係各省の方々と御研究をしてくださるというお話でございますので、その点についてはそれでいいわけでございます。  次に、雪寒地帯の教員の方々の待遇改善ということでございますが、現在のそのような僻地においての学力低下という問題につきましては、現在の教員の方々が非常に手薄であるというのと、また昨日の新聞には、一人の教員の方々が何科目も担当しておるというような記事もここに出ておるわけでございます。「わずか三百円の臨免取得申請を提出すれば専門外の教科を担当できるという仕組みが、いきおいへき地学級の学力低下を招いている」ということなども新聞に報道されておるわけでございますが、この点について、もっと専門的な教師を送る方策を講じておるか、そうしてまた、それらの地域に対して教員の待遇改善を、何らかの方法でほかの地域と差をつけておるかということについて、文部省はどのようにお考えでございますか。
  89. 福田繁

    ○福田政府委員 僻地などの教員の待遇につきましては、私ども一番心配しておるところでございます。しかしながら、実際の問題としては、現在僻地手当が八%ないし二五%ついております。したがってこれは俸給に比例して支給されるわけですから、最高二五%という一般公務員の隔遠地手当と同じ程度のものがつけられております。したがって、この手当をさらに増すということはなかなか困難でございましょうが、新潟県のように、全県が大体この寒冷地手当の関係では五級に指定されておるようであります。したがって、寒冷地手当という関係におきましては、かなり積雪地帯というものがその中で最高になっておりますから、考えられておると思うのでございます。そういった意味で積雪寒冷地手当あるいはまた先ほど申しました僻地手当、こういうものの両者を考えて、この手当による優遇方法と、それからもう一つは、最近新潟県でやっておると聞いておりますが、従来優秀な先生を僻地にやる場合には、まず若干の特別昇給等も考慮してやるという方法もあわせて採用しておるようでございますが、そういう方法は、できる限り私どもも広くやってまいりたいというように考えております。できる限り僻地に参ります先生を優遇して、りっぱな先生を僻地に送ってもらいたいということで、いろいろと各方面から今後対策を立てていきたいと考えております。ただ、僻地の労力は、そういった先先によって指導されるわけでありますから、この先生がよくなければ労力も上がらないということになろうかと思います。同時にまた、それらの先先に対して指導するものも必要でありまして、市町村教育委員会などに指導主事を充実するということも、僻地の学力を向上させる一つの方策であろうと思います。そういった関係から、指導主事などの充実も今後はかっていきたいというように考えております。
  90. 塚田徹

    塚田分科員 これは文部省昭和三十六年の十二月に発行された「わが国のへき地教育」という本でありますが、この中にも「「幹部教師はへき地学校勤務者から」という行政慣行が形成されるならば、」云々ということが書いてあるわけでございます。もはや三年もたっておる現在でございますが、いまだにこのような例がないわけでございます。そのような行政指導をするということをここに正式にうたってあるにもかかわらず、実行されていないという点につきましては、どのような障害があり、そしてまたどのような点が改正されていったかということについて御質問いたします。
  91. 福田繁

    ○福田政府委員 具体的にはなかなかむずかしい点でございます。各県で人事をやる際に、僻地の経験者を必ずしも優遇してないというのがいままでの実情でございます。したがって今後教員人事をやります際には、特に校長などに登用する場合には僻地の経験者でなければ校長にしない、こういうやり方をとっておる県も数県ございます。しかし、これが全国に行き渡っているわけではございませんので、いままでのような僻地と平場の先生の交流がいろいろな点から非常に困難であったということを考えますと、やはり校長に登用するような際にも僻地の経験というものを重要視していくことが非常に重要でありますので、私どもとしては、そういう方向に各県でやってもらいたいと考えて御指導しているわけでございます。
  92. 塚田徹

    塚田分科員 そこで、このような幹部教師が僻地へ行くのが少ないということについては、文部当局もいろいろと頭を悩ましておられることは、私自身十分心得ておるわけでございますが、その中でそれらの地域に派遣される教師の待遇改善の問題でございますが、国が補助をするにいたしましても、全額補助というのは、非常にどころか全然ないわけでございます。そういたしますと、それらの僻地の市町村が幾らか負担をしなければならないという現状であるわけでございますが、それらの特別の地域に対しましては、文部省といたしまして、これから全額補助をするという方向に持っていくお考えをお持ちかどうか、お伺いします。
  93. 福田繁

    ○福田政府委員 補助につきましては、いろいろな費目について事情は異なると思いますが、私どもも補助率の引き上げ等については検討したこともございます。しかしながら、なかなか補助率の引き上げは予算としては非常に困難な場合が多いわけでございます。したがって、補助金に見合う裏起債を十分自治省と相談をして、これの必ず起債をつけるというやり方をいたしております。それ以外に、一般的な財源補充の問題として自治省と相談いたしておりますのは、僻地の町村の財政力の貧弱なところに対しまして、できる限り財政力を強化するという意味で、いわゆる交付税の底上げ等をいろいろと相談してまいっておるわけでございます。
  94. 塚田徹

    塚田分科員 それでは最後に一言。教科書の問題もどうなんでございますが、教科書も現在たしか五年生までは無償配付というのが、文部省のほうの案であるわけでございます。私の申しております雪寒地帯は非常に学力の低いところで、また経済的にも恵まれていない地域であるわけでございますので、これらのみじめなところに住んでおられる方々のためには、少なくとも教科書を全額無料で配付するということについて、一年生から五年生までではなくて、義務教育の間は少なくとも無料で配付していくというようなことも、学力の差をなくすしに非常に大事ではないかと思うわけでございますが、そのような考えをお持ちかどうか。
  95. 福田繁

    ○福田政府委員 御趣旨は全く同感でございますが、現在教科書無償措置が進行しております際でございまして、年次計画を追って、中学校の最終学年まで無償措置を拡大しようということでございます。しばらくお待ちをいただいて、全面的に教科書を無償交付していくという方針を、できる限り私どもとしてはすみやかに実施したいと考えております。
  96. 相川勝六

  97. 玉置一徳

    玉置分科員 私は、まず第一点に義務教育の通学費補助、第二点は無形文化財の伝承費につきまして、第三点は名勝史蹟、天然記念物の予算につきましてお伺いをいたしたいと思います。  まず第一点の義務教育の通学費の補助についてでありますが、御承知のとおり、新制中学としまして終戦後止まれました現在の中学校の制度でありますが、そのつくりましたときも、できれば教育目的を完遂するために、十一学級は最低保有することが望ましい。したがって小さい町村は、組合立の中学をつくることが望ましいという指導のもとにやってまいったわけであります。なお近時、また小学校を含めまして統合の指導がなされてまいったわけであります。こういった国の指導に基づきまして、市町村教育委員会では統合を進めてまいったわけでありますが、教育目的を完遂するという意味では非常に望ましいことでございますけれども、これは、なおもう一点国及び府県の地方公共団体が、公共投資と申しますか、教育の投資の重複投資を免れたという点と、教員の人件費の減少に伴う財政支出を少なくしたという効果はあったわけであります。しかしながら、それを設置しております町村にとりましては、先ほどお話しのスクールバス、ボートあるいは通学費の補助、そういう財政支出が逆に新たに加わってきたのも事実でございます。こういうような支出の対象となるべき寄宿舎、スクールバス、ボートあるいは通学費の補助というようなものは、最初設置いたしましたときの条件であり、あるいはまた統合のときの条件といたしまして、ついそういうようにできたわけであります。当時は、金額的にはあまりたいした金額にのぼらなかったのでありますので、町村の当局者、教育委員会の方々は、この条件でものをまとめていったわけでございます。それから漸次、今日まで物価が騰貴してまいりました。人件費が高騰する、バス、ボート、汽車賃というようなものも次第に上がってまいりまして、現在では町村財政のいわばガンとなり、しかも去年の三、四月ごろだったかと思いますが、一挙にバス料金その他が三割値上げになったことがございます。これで町村財政は、全く窮地に追い込まれたというのが現状じゃないかと思います。一例を申しますと、京都府の船井郡の日吉町でございますが、ここの学校は、小学校が五つと中学校三つをそれぞれ一つに統合したのでございますが、教員の減少が二十二名、どういう基礎か知りませんが、向こうの実例でやったのですが、町村当局の調べたケースですと、年額七十万円として一千五百四十万円、地方交付税の減少がほかにございます、これが四百十三万円、合計で一千九百五十三万円の国及び府県の財政支出の減少を来たしておりますが、統合しました町村が、交通費の補助として出しておりますのが実に五百八十六万円、こういうような結果が出ております。これは昭和三十八年五月一日現在の調べでございます。こういう実例から見ましても、先ほどの僻地の教育振興にもお述べになりましたけれども、いまや義務教育の通学費の補助というものは、町村教育財政にとりましては大きな問題点になってまいっておるわけであります。  そこで、第一点、局長にお伺いを申し上げたいのは、義務教育の通学対策に対して、今日までに文部省がおとりになりました助成措置は一体どうであったか、まずお答えをいただきたい。
  98. 福田繁

    ○福田政府委員 そういう学校統合あるいは僻地の学校等の通学につきましては、先ほども申し上げたのでございますが、スクールバス、ボートの購入費の補助を、二分の一補助でございますが、従来からやってまいりました。三十九年度におきましても十八台分計上されております。また準要保護児童、生徒に対する通学費補助、二分の一補助でございますが、対象人員として小学校四千人、中学校六千五百人というような経費で計上されております。そういうことで、そのほかに、もちろん補助金だけでは不十分でございますので、市町村で実際にスクールバスを運営しているとか、あるいは会社に委託してスクールバスを運営させておるとか、あるいはまた契約によってそういう子供を運んでおるというようなものに対しましては、これは特別交付税でもって措置をしてもらっております。必ずしも、御承知のように十分ではございませんけれども、昨年度におきましても約三千万程度の特例交付税が交付されておるようでございます。したがいまして、今後もそういう市町村の運営しておりますようなスクールバス等につきましても、特交をもって今後十分自治省と相談していきたいというように考えております。
  99. 玉置一徳

    玉置分科員 そこでお伺いを申し上げたいのは、スクールバス、ボートは三十四年度から制度を実施していただいたわけでございますが、これの二分の一補助はよくわかるのでありますが、運営費の措置は非常に微々たるものじゃないか、人件費の三分の一にも満たないような現状でございますので、ぜひとも実際に必要とする金額の二分の一の助成を措置費に対してもしてあげていただきたい、かように思うのと、それから昭和三十四年度くらいから実施されましたやつでございまして、お伺いいたしますとまだまだ次の年がありまして、これを五、六年は続けていかなければいかぬという要望があるやに承っております。つきましては、大事にスクールバスとして使っておりましても、満五年間、ぼつぼつ来年度あたりからそれの更改の時期に入るんじゃないかと思います。学校施設のように、一度補助を出して建ててあげますと相当長年月使えるものと違いまして、五年くらいもすれば、当然これは買いかえなければならない順番がくるわけでありますから、二回目はどうだというふうに減らす必要の理由がないものだと思いますので、新規の事業と同じように二分の一補助で見てあげていただきたいと思いますが、これについての文部大臣の御所見を承りたい。
  100. 福田繁

    ○福田政府委員 もちろん御指摘のように、私どものほうとしましては、できる限りバスの運営費等につきましても、自治省と相談して、今後十分対策を立てていきたいと思っております。  それから御指摘のように、スクールバスの補助は三十四年から継続してまいっておりますが、まだ全体から比べますと、補助いたしました台数も非常に少のうございます。今後は、やはり新しいものといたしましても、二百台以上の希望もあろうかと思います。また、大体五年ぐらい使いますと耐用年数を過ぎるというような状況でございますので、耐用年数を経過したものにつきましてはその更新についての補助、これらも今後十分前向きに大蔵省と相談してまいりたいと存じます。
  101. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 学校に通学する関係におきまして、最近、各市町村のその関係の経費負担が非常にふえておるということは、これは明らかな事実だと思います。私も事務局にもよく達しております。だんだん学校等の統合が進んでまいりますので、一そうこの通学関係の費用の問題が切実な問題となってきておるように思うのであります。実はその意味におきましては、何か予算的な新しい措置を講ずる必要がありはしないかというので、役所の諸君にも研究調査を実はお願いしておるところであります。通学費の町村の負担を一体どうするか、いろいろ方法もあろうかと思うのでありますが、同時にまた、負担のしかた等の問題も研究を要するものがあろうと思いますから、私は、この問題はやはり町村の財政の上から申しましても大きな問題でございますので、前向きにひとつ研究して、なるべく早くこの問題の緩和をはかっていきたい、かように考えております。
  102. 玉置一徳

    玉置分科員 そこで、大臣にもう一点この問題についてお伺いいたしたいのは、先ほど局長からお答えはいただきましたけれども、実際は通学バス、通学ボート、あるいは寄宿舎で用を足さないところがございます。御承知のとおり中学の統合をいたしますと、大体その地域の中心にございますから、自動車を一ぺんに六台なり八台なり走らせぬと、同時刻に学校に集めることができ得ない場合のほうが多うございます。したがって会社に委託もできず、ほとんど在来の交通機関を使わして、それについて町村が補助をいたしている例が多くございます。先ほど申しました五百八十六万円を出しておりますこの日吉町というのも、実は一万以下の町村でございます。同じことが私のほうの、京都の北側でございますが、京北町が五百万円、美山町が四百何十万円、そういう例が船井郡の園部町にしろ八木町にしろ、私のほうに御承知のようにあるわけでございます。これは僻地の指定を受けているところはその町村の一部分でございます。したがって、自治章が特別交付税で昨年度見ていただきましたのは、その僻地に指定された分だけを見ていただいたわけであります。それで町村財政の状況を詳細に陳情いたしまして、自治省でも、今度僻地の指定のないところでも、交通機関を、スクールバス、スクールボートを使わない町村財政が交通費を補助しておる町村から支出した分につきまして、かなり手厚く見てもらうように二、三日前の予算分科会で自治大臣からの御答弁もいただいたわけでありますが、ただいま申しますように、準要保護家庭もしくは僻地の指定を受けたところ以外にも、事実こうして出しておる町村の出費をどういうふうにしてカバーするかという問題につきましては、ひとつ十分に御研究をいただきたい。御承知のとおり、こういう出費を重ねなければならないところは、ほとんどが僻村でございます。したがいまして、財政の伸びがそうどんどん伸びるようなところではございません。おそらく人口も、毎々国勢調査ごとに減少していくというのが現状だと思います。五百万近くまでこういう小さい町村でできてまいりますと、もう行き詰まってまいっておりますのが現状でございます。つきましては、本年度の特別交付税は自治省がかなり見るというお話ではございますけれども、ひとつ来年度の予算編成を目されまして、文部省が親となりまして主導性をおとりいただきまして、自治省ともよく御相談の上、通学費補助に対しましてひとつ徹底的な御調査をいただいて、町村が真にやむを得ず予算化しております支出につきましてはどういうふうに見ていくか、こういう問題につきまして十分お考えいただかなければならない時期じゃないか、かようにも存じますので、ひとつ御考慮をいただきたい。これにつきまして大臣の御所見を承っておきたいと思います。
  103. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 先ほど申し上げましたとおりでございます。私も玉置さんと同じような心持ちを持っておるわけであります。十分調査を遂げまして適切な方策というものを立てたい、このように考えておりまして、できれば来年度の予算に何がしかのものを計上したい、そういう心持ちでもって調査を進めていきたいと思う次第でございます。
  104. 玉置一徳

    玉置分科員 次に、簡単に文化財保護委員会の方に御質問を申し上げておきたいと思います。  この三カ年間、毎通常国会の予算委員会におきまして、私は、無形文化財の年金を交付していただきたい、そして日々の生活に後顧の憂いのないように、無形文化財の方々が後世にそれを伝承できるように御精進を願うような施策を講ずることが、人間国宝として指定せられました方々に対する、一つは栄誉であり、一つは国として当然の義務じゃないかというのでお願いをしてまいったわけでございますが、今般予算には千五百万を計上していただきまして、ほんとうにありがたく存ずるわけでございます。  そこで、この伝承費と申しますか、俗に私たちが年金と言っておったわけでございますが、一体どのような積算の基礎でこういう金額をはじき出されたのか、そしてこれはどういうようにお使いになる予定であるかをお聞かせいただきたいと思います。
  105. 宮地茂

    ○宮地政府委員 重要無形文化財を保存するということは非常に大事である。しかしそのためには、重要無形文化財の保持者として指定されておる人がわざをみがき、また優秀な後継者が絶えず出ていくということが、結局重要無形文化財を保存する具体的な措置の大きなものである、こういう観点に立ちまして、ただいま年金とおっしゃいましたその予算が千五百万円ついたわけでございます。ただ、これは年金ではございませんで、一応助成金、しいて言えば補助金的な性格の助成金でございます。  この積算の基礎はどうかということでございますが、当初、私どものほうといたしましては、芸術院会員とか学士院会員の年金が四十万円くらいになっておりましたので、ほぼそれに見合う金額というふうに考えまして、現在五十一名の方が指定をされております。したがいまして千五百万円は、私どものもくろみました金額を均等割りにしましても若干不足するのでございますが、現在のところでは、この五十一名の重要無形文化財保持者の方々の内容がきわめてバラエティーに富んでいるわけで、しかもこれは年金ではございませんで、御本人のわざの練摩向上あるいは後継者の確保という点が目的でございますので、その目的を達成するためには、それぞれ工芸関係とか芸能関係とか、同じ工芸なり芸能にいたしましてもいろいろな分野がございまして、いろいろ経費も違ってくるわけでございます。そのようなわけで、現在のところ画一的に幾らである、それに五十一人の人数を掛け算をして千五百万円であるということにはなっておりませんが、どのように配分するのが一番適切であるか、重要無形文化財を保存するのに一番適切な方法を考えまして、保持者の方々にこの金が行き渡るように検討したい、そういうふうに考えております。
  106. 玉置一徳

    玉置分科員 御承知のとおり、この方々は、指定をされますや法律に基づきましていろいろな伝承上の記述——記録を残すとかわざを練摩するとか、いろいろな義務を課せられているわけであります。しかもこういうものに指定されます方々は、いわゆる経済ベースに乗らないような、ある意味ではこの世からなくなってしまうような民族の栄誉を残すためにやっておるわけでありますから、芸術院会員とか学士院の方々とか、あるいは文化功労者とかの方々は比較的りっぱな方々でございまして、生活にお困りになるような方はございません。無形文化財に指定されるような方々は、主としてそういう経済ベースに乗ってないようなものをおやりいただくように指定したわけでございますので、今年度こうやって初めて顔を出していただきました御努力に対しましては心から敬意を表しますけれども、先般文化勲章の年金では五十万円から一挙に百万円にはね上がったことは、御承知のとおりであります。初めて顔を出していただきました千五百万円に対しては心からの敬意を表しますけれども、はなはだ些少であり、僅少であるといわざるを得ないと思いますので、さらに一そうの御努力をいただきまして、その方々が真に自分の技術をみがき、伝承をりっぱにでき得るようなところまで、予算上の措置の御努力を続けていただくことを心からお願いを申し上げたいと思います。  最後に、名勝史跡、天然記念物あるいは民族資料、埋蔵文化財の買い上げ予算の点でございますが、平城宮趾の分を除きますれば、今年度予算につきましては、昨年度と対比してかなりの増額をいただきましたことは事実でございます。しかしながら、御承知のとおり、近年産業の発達に伴いまして都市近郊その他につきましての住宅地の造成とか、あるいは公共事業の道路の敷設等によりまして、そういうところを荒らさなければならないような事態がだんだんと多くなってまいっております。それが私有土地の場合、どうしても買い上げてやらなければ、せっかくの天然記念物その他が原形をとどめることができ得ないというようなものも必ずしも少なくないのじゃないか、かように思いまするにつきましては、本年度おきめいただきました予算ではございますけれども、とうていこれだけではその目的を達することができ得ないんじゃないか、かように存じます。神社仏閣その他のあれにいたしましても、その周辺の整備という問題がまた緊急に迫られておる課題じゃないか、かように思いますにつきましては、なかなか予算の取りにくいところだとは思いますけれども、ひとつ十分な御配慮をお願い申し上げたい、かように思いますにつきまして、大臣からひとつ決心、決意のほどをお聞かせいただきまして、質問を終わりたいと思います。
  107. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 有形、無形を問わず、文化財に対する非常にあたたかい心持ちを伺いまして、非常にありがとうございました。  だんだん文化財関係の予算も、おかげさまで伸びてはまいっておりますけれども、しかし現状において決して満足すべき状態でない、私もさように考えておる次第でございますが、お心持ちはよくわかりますので、またわれわれも同じような心持ちを持っておりますので、今後ともにひとつ努力してまいりたい。この考え方を申し上げまして、終わらせていただきたいと思います。
  108. 玉置一徳

    玉置分科員 質問を終わります。
  109. 相川勝六

    相川主査 これにて、昭和三十九年度一般会計予算及び昭和三十九年度特別会計予算中、文部省所管に対する質疑は終了いたしました。  次会は、来たる二十五日午前十時より開会し、外務省所管に対する質疑を続行いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後零時四十二分散会