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1964-06-02 第46回国会 衆議院 予算委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月二日(火曜日)    午前十時十六分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君    理事 櫻内 義雄君 理事 野田 卯一君    理事 松澤 雄藏君 理事 井手 以誠君    理事 川俣 清音君 理事 辻原 弘市君       相川 勝六君    荒木萬壽夫君       安藤  覺君    井出一太郎君       井村 重雄君    稻葉  修君       今松 治郎君    植木庚子郎君       江崎 真澄君    小川 半次君       仮谷 忠男君    川崎 秀二君       小坂善太郎君    周東 英雄君       登坂重次郎君    古川 丈吉君       保科善四郎君    松野 頼三君      山口喜久一郎君    山本 勝市君       淡谷 悠藏君    石田 宥全君       石野 久男君    岡田 春夫君       加藤 清二君    五島 虎雄君       堂森 芳夫君    中井徳次郎君       横路 節雄君    今澄  勇君       佐々木良作君    鈴木  一君       加藤  進君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         法 務 大 臣 賀屋 興宣君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 小林 武治君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  福田  一君         運 輸 大 臣 綾部健太郎君         郵 政 大 臣 古池 信三君         労 働 大 臣 大橋 武夫君         建 設 大 臣 河野 一郎君         自 治 大 臣 赤澤 正道君         国 務 大 臣 佐藤 榮作君         国 務 大 臣 福田 篤泰君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君         国 務 大 臣 山村新治郎君  出席政府委員         内閣官房長官  黒金 泰美君         内閣法制局長官 林  修三君         総理府総務長官 野田 武夫君         総理府事務官         (総理府特別地         域連絡局長)  三枝 三郎君         外務事務官         (アメリカ局         長)      竹内 春海君         外務事務官         (欧亜局長)  法眼 晋作君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         大蔵事務官         (主計局長)  佐藤 一郎君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君         大蔵事務官         (為替局長)  渡邊  誠君         厚生事務官         (保険局長)  小山進次郎君         農林事務官         (畜産局長)  桧垣徳太郎君         農林事務官         (園芸局長)  酒折 武弘君         食糧庁長官   齋藤  誠君         水産庁長官   庄野五一郎君         通商産業政務次         官       田中 榮一君         通商産業事務官         (通商局長)  山本 重信君         中小企業庁長官 中野 正一君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      廣瀬 眞一君         運輸事務官         (自動車局長) 木村 睦男君         運輸事務官         (航空局長)  栃内 一彦君         郵政事務官         (電波監理局         長)      宮川 岸雄君         自治政務次官  金子 岩三君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       石田 礼助君         日本国有鉄道副         総裁      磯崎  叡君         専  門  員 大沢  実君     ――――――――――――― 六月二日  委員安藤覺君、井村重雄君、仮谷忠男君、田澤  吉郎君、登坂重次郎君、古川丈吉君、保科善四  郎君、松浦周太郎君、山口喜久一郎君、中村重  光君、永井勝次郎君及び藤田高敏君辞任につき、  その補欠として、菅野和太郎君、福田赳夫君、  田村元君、山手滿男君、松田鐵藏君、馬場元治  君、高橋等君、石田博英君、重政誠之君、岡田  春夫君、横路節雄君及び山花秀雄君が議長の指  名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  閉会中審査に関する件  予算実施状況に関する件      ――――◇―――――
  2. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより会議を開きます。予算実施状況について前会に引き続き調査を進めます。質疑の通告がありますので、これを許します。山口喜久一郎君。
  3. 山口喜久一郎

    山口(喜)委員 去る五月の二十一日午前八時三十分から三十分間にわたりまして、大野総裁の急逝の波紋と越する某放送局座談会におきまして、石垣綾子さんが司会者となって、評論家大宅壮一さん、慶大教授中村菊男さんと論説委員宮崎吉政さんの四人によって、わが党副総裁大野伴睦先生の御遺徳を著しく傷つけるようなきわめて悪意に満ちた放送がなされたのでありまするが、官房長官は御承知ですね。ちょうどそのときは大野先生の御遺体が長年住みなれた高輪の屋敷を出て桐ケ谷の火葬場に向かわれる寸前でありましたが、この放送を御家族、親戚、友人その他御参集の方々が聞きながら、大野先生の御遺骸を前にして悲憤の涙にくれられたとのことであります。私は、言論の自由こそは新憲法の背骨であり、政治家は常に謙虚にこれに耳を傾け、あすへの反省のかてとしなければならぬと思っておる一人でもあります。だが、言論の自由にもおのずから節度があり、礼儀があり、限界があるべきであると信じております。  一応簡単に、この三十分の間の初めから終わりまで悪意に満ちたばり雑言の中で、特に私が問題にしたい点を取り上げてみたいと思います。あまり長くなりますからどんどん省略いたしまして、大野先生死去に対して、「むしろこういう人物、こういうきわめて特異な人物日本独特の人物日本政界でないと見られないような、一種のキノコといいますか、こういうものがなくなったについて、これからこういうものを二度と生まないよりに考える必要がある。何といいますか、ガンの手術なんと言うとちょっといけないかもしらぬが、何かこりいうビールスみたいなものがまだ相当日本政界に残っていますからね。これをこの機会に徹底的に排除して、そういうものが、ガンがもう一度発生しないようにしなければいかぬということ。とにかく日本政治というものに対する不信感といいますか、ある人には絶望感を与える、こういう点でこの大野伴睦ほど大きな役割りを果たした人はないと思うのであります。」、ずっと省略しまして、また、「羽島駅の問題にせよ、そういう部分的な利益国民全体の利益というものと途中ですりかえちゃって、そして国民全体がそれにあまり気ずかないで、やっぱりあれは親分だというような、そういうムードですな、」、また、「ほかの部分に比べて日本政界には恥部が、中村さんがさっきおっしゃった恥ずかしい部分が非常に多過ぎるのですね。ところが、恥部というのはたいがい隠れたところにあるものだが、政治界に限って恥部がどまん中、頭のてっぺんにある。副総裁なんというところに恥部があるわけなんだな。それが非常に問題なんで、これがなくなったということは、そういう意味で日本政治界全体の恥部をなくして、そうしてなるたけ少なくして近代化する方向に持っていくという上においては、あまり祝うべきなんと言うとおこられるかもしれぬが、そういう感じがする。」、また、石垣さんが「池田さんはどうでしょう。」と言ったのに対して、「つまり、政権を取るためには恥部でも何でもみな受け取るというような感じはなきにしもあらずである。」、大体あとは時間の関係で省略しますが、これを要するに、三十分間ほんとうにばりざんぼう悪意に満ちた放送であったことは、後の記録にこれはわれわれとしてもとどめておきたいと思っておるような次第であります。  そこで、ただいま拾い読みしましたが、官房長官に伺いたいことは、国家に功労ありとして従二位勲一等旭日桐花大綬章を贈られた大野伴睦先生に対して、悪意に満ちた誹謗の中でも、日韓会談はやみ取引である、大野先生死去によって日韓会談が促進せられると放言してあります。大野先生の経歴に示すように、若くして憲政擁護のため日比谷の焼き打ち事件に参画して、あるいは投獄され、いろいろの苦難を経て以来、大野先生の胸中には常に天下国家を憂い、あるいは台湾に、近くは朝鮮に使いして、みずからの死期を早めてまでも一片耿々憂国の至情やみがたく東奔西走されたのであります。はたして大宅氏の言のごとく大野さんの死は今後の日韓会談に好結果をもたらすでありましょうかどうか。この点を明らかにしておかなければ大野さんの霊も安らかに大往生ができないのです。この点官房長官にしかと承っておきたいと思います。
  4. 黒金泰美

    黒金政府委員 ただいま山口さんからお話がございましたように、大野先生日本政界にお尽くしになりました御功績は偉大なものがございますので、政府といたしましても、このことを持ち回り閣議で、御指摘のとおり、大勲位に次ぐ最高勲章を贈呈したような次第であります。したがいまして、私どもは、大野先生の御逝去がこの日本の国また政治にとって非常に痛ましいことであったと、まことに哀悼おくあたわぬものがございます。いまお話しになりました日韓会談等々の問題につきましても、身を挺して善隣外交のために御努力なさいました御功績は高く評価すべきものでありまして、今後ともにその御遺志を体して日韓会談の促進に努めてまいりたいと考えております。
  5. 山口喜久一郎

    山口(喜)委員 次に運輸当局並びに国鉄当局に承りたいのでありますが、大宅さんのことばの中で、東海道新幹線羽島駅を通ることに大野がやったのであって、あれは部分利益のために大部分利益を無視したやり方である、はなはだけしからぬというようなものの言い方をなさっておりますが、私は、この羽島駅に関する限り、幾多の新聞あるいは週刊誌等で非常にこの点は大野さんのなさったことと考え方を歪曲して世の中に誤り伝えられておる点が多いと思うのです。だから、この機会に、あたかもきょうは大野先生の御葬儀の日でもありますから、これを御説明によって明らかにしておきたい。私の聞くところによれば、むしろ岐阜県民、特に大野さんの長年の選挙区であるところの大栗田とも言うべき岐阜市民皆さんから、ぜひ岐阜を通過するようにという非常な熱望があった、それを、新幹線の将来のためを思って、いわゆるショート・カット、最短路線を通るためにわずかに岐阜県の一部分であるところの羽島を通る、こういうことをむしろ国鉄当局から大野さんにその仲介を求められ御尽力を頼まれたので、やむを得ず大野さんは、自分の大票田の岐阜を通ることを避けて羽島を通るように、岐阜県民岐阜市民皆さんを説得する重大な役割を果たされたと聞いておるのでありますが、はたしてその真相はいかがであるか、当時の事情に最も精通する方から特にこの点を詳しくこの機会に御説明を願いたいと思う次第であります。
  6. 石田礼助

    石田説明員 大野さんと羽島駅の問題につきましては、実は私就任前の問題でありまして、その事情については私何も存じません、幸いに副総裁がその事情について詳しく存じておりますので、お許しを得て副総裁をして説明いたさせたいと存じます。どうぞ御了承願います。
  7. 磯崎叡

    磯崎説明員 お許しを得まして私からただいまの山口先生の御質問にお答えいたします。ちょうど羽島駅の問題のございますところは、私は営業担当常務理事をいたしておりまして、この辺の事情はよく知っておるつもりでございますので、私から申し上げます。多少詳しくなりますが、二点につきまして御説明させていただきます。  まず、この問題が世間でいろいろ誤解があったことは、私のほうとしては非常に残念なことでございますが、事柄をわかりやすくするために二つに分けて御説明させていただきたいと思います。第一点は、ただいまの御質問名古屋と関ケ原の間の東海道新幹線ルートの問題であります。第二点は、そのルートの中に羽島という駅をつくることになった問題でございます。この二点につきまして御説明申し上げます。  第一点の、名古屋関が原と申しますか、米原の間のルートにつきましては、実は、昭和三十三年の夏ごろから、まだ正式に新幹線をつくるかつくらないかきまる前から、航空測量だけはいたしておりました。航空測量の結果、ルートといたしましては、名古屋から鈴鹿峠を越えまして京都に入るルート、もう一つ、それと非常に近いところで、名古屋から八風と申しますところを通りましてやはり京都に抜けるルート、もう一つは、濃美平野を真横に横切るルート、この三つルート航空測量で大体測量いたしまして、このいずれにすべきかということを検討したわけでございますが、前二者につきましては、非常にトンネルが多く、工事も非常にむずかしいということで、事務当局といたしましては、前二者を捨てまして、もっぱら濃美平野を横断するという案で具体的な検討を進めてまいったわけでございます。その後、昭和三十四年になりまして、徐々に東海道新幹線の問題が予算化され、また、各地におきまして地上の測量を開始したわけでございますが、私どもは、図面で引きました枇杷島と申します名古屋の少し北から関が原の入り口までまっすぐ直線で結ぶルート、これはちょうど、御承知のとおり、揖斐川、長良川、木曽川、この三つの川を横断するルートでございまして、地質調査その他の結果、ちょうどたまたま現在工事中の名神国道もほとんどそれに沿ってつくられるという案がございまして、建設省といろいろ検討いたしました結果、ことに揖斐川を渡りました左側の地域が非常に地盤が軟弱である、そこにことに鉄道線路のような重いものをつくることは、将来非常に運転上危険があるということで、枇杷島から関が原をまっすぐ貫くルートは技術的に不可能である、ある程度これを北へ寄せなければいけない、こういう結論が出たわけでございます。ちょうどそのころ、先ほど山口先生の御質問にございましたとおり、岐阜県といたされましては、その枢要な地域は全部、何と申しますか、いま申しましたルートのずっと北のほうにございまして、現在の東海道線は、名古屋からほとんどまっすぐ北上いたしまして、岐阜から西に行くという、ちょうど三角形の二辺を通っておるわけでございますが、岐阜方々といたされましては、これをどうせ北へ回すならば、名古屋から現在の東海道線にほぼ沿った北方迂回ルートをぜひ通ってほしいという非常に強い御要望がございました。昭和三十四年から三十五年にかけまして、ほとんど一年に近い間この問題が片づきませんで、現在なおあの地域工事が若干おくれておりますのは、実はそのことも一つの原因でございます。そのころ非常に地元出身の諸先生方にもいろいろごあっせん、お骨折りをいただいたのでございますが、昭和三十五年の暮れから三十六年にかけまして、いよいよ私どもといたしましても工事の期間その他から言ってぎりぎりのところまで追い詰められてしまいまして、どうしてもこの一、二カ月のうちにはルートをきめなければいけない、こういうところまで差しかかったわけでございますが、その際、大野先生は、地元の言っておることも非常に無理はない、確かに岐阜県としては南のほうをちょっと通られただけでは困る、しかし、やはり国鉄全体の計画、国全体の計画から見れば、なるべくまっすぐ通ったほうがいいと思う、したがって、自分としては、岐阜県の皆さん方には非常に気の業だと思う、すまぬと思うけれども、やはり国鉄計画のとおり技術的にぎりぎりの線まで北へ上げるだけでよろしい、そうすべきでないかというごあっせんをいただいたのが、たしか昭和三十六年の当初であったというふうに記憶いたしております。そのごあっせんによりまして、また諸先生方の御同意も得まして、現在工里中ルートにはっきりきまったわけでございまして、先ほど山口先生のおっしゃったテレビの中の某氏の発言は全く事実と逆である、地元の方にむしろ不自由を忍んでいただいて、国鉄全体の計画に非常に喜んで、しかも技術的に最も正しいという案に御賛同願ったというふうに私は確信いたしておる次第でございます。  それから、第二の点でございまして、そのルートの中に羽島という駅をつくった問題でございます。これは多少技術的にこまかくなりましてたいへん恐縮でございますが、ことしの十月一日から私どもはとりあえず三百六十両の電車で東海道新幹線運転を開始することにいたしておりますが、間もなく昭和四十年度からはぜひこれを四百両にふやすことにいたして、現在ダイヤを引いておるわけでございます。そういたしますと、特急を超特急が追い抜くという問題が起きてくるわけでございます。その追い抜く場所は、実は名古屋で追い抜くことが一番多くなる。これはダイヤ構成上そういうことになるのであります。名古屋特急を超特急が追い抜くダイヤになるわけであります。ところが、名古屋新幹線の駅は、御承知のとおり、現在の名古屋駅にぴったり張りつけてつくることになっておりますので、もうそれだけの追い越す線をつくる余地がないわけでございます。かろうじて一線だけ追い越し設備をつくりましたが、それ以上の設備ができない。何とかして名古屋からあまり遠くないところで追い越し設備のできるところがほしいということをかねがね運転技術上から検討しておったわけでございます。ちょうどそのとき、やはりそのお話大野先生に申し上げまして、何とか岐阜県の中でこういった用地の提供をしていただけないものでしょうかというふうなお話も申し上げましたが、先生とされましては、何としても、岐阜県を新幹線が通過する以上、やはり岐阜県に一カ所くらい駅があったっていいじゃないか、静岡県にもあり、愛知県にもあり、神奈川県にもあり、全部ある、岐阜県だけ通って駅がないという話はないじゃないかというお話と、たまたま私のほうの運転上の要請とが合ったわけでござまして、そうして、地域といたしましては、ちょうど名古屋米原の中間より少し名古屋寄り、それで岐阜県の中、割合土地代も安いということで羽島というところになったわけでございます。私どもといたしましては、私どもの非常に事務的な強い要請を、むしろ岐阜県側に無理をお願いして相当広大な土地割合に安く提供していただいたというふうに考えておる次第でございますし、また、大野先生とされましても、岐阜県のルートの問題で非常に苦心されておりましたのを、駅を一つつくることによりまして、岐阜にも、多少の距離はあるけれどもバスその他で行けるというふうなことで、岐阜県民の意思もある程度代表なすってあそこに駅をつくる、この二つの、私ども意見先生の御意見とぴったり合って羽島ができたというふうに私は考えておりまして、現在名前は岐阜羽島という駅で開業させていただくことになっておるわけでございます。  以上、二点についてやや詳しく申し上げましたが、私どもといたしましては、おかげさまで話で十月一日からこの世紀の大事業が一応完成いたします際に、いろいろ諸先生方ほんとうにお世話になってまいりましたが、ことに大野先生には、岐阜県通過に際しましてほんとうに並み並みならない御尽力をいただいたことに対しましては、ただただ感謝のことば以外に何ものもないということを申し上げて、御答弁にかえる次第でございます。
  8. 山口喜久一郎

    山口(喜)委員 最後郵政当局に承りたいのでありますが、この放送は前日に録音されたと承知しております。それが翌日の朝の放送になって、特に大野先生出生地であるところの岐阜県を含めた中部方面には、刺激することを避けてこれをカットして、その他の全国へ放送されたというような、かかる計画的な悪意に満ちた報道に対して、郵政当局では電波法改正等についていま研究中であるということを承知しておりますが、こういうことを何らかの方法で規制し、あるいは罰するというようなことを将来お考えになるのかどうか、この点を承りたいと思います。
  9. 古池信三

    古池国務大臣 ただいま山口先生からお尋ねになりましたとおり、三十一日の午前八時三十分から九時までの間、フジテレビジョン放送におきまして、御指摘のごとき放送があったことを承知しております。私は当日その放送は視聴いたしませんでしたが、後になりまして当時の録音を取り寄せてこれを聞きましたところ、まさに先ほど御引用になりましたとおりの放送がなされておりました。これは、わが政界の長老であり、また党の副総裁であり、日本政治に対して大きな御功績があり、かつわが国運の伸長発展のために情熱を燃やして一身をささげてこられた大野先生に対する批判としては、まことに私は遺憾千万に考えてこれを聞いたのでございます。今日言論の自由が言われておりまするけれども、これはあくまで国民的良識の上に立った自由でなければならない。特に、ただいまの場合、大野先生葬儀も終わらない時点において、かような悪口を公衆の前において述べるということは、おそらく、日本国民感情から申しましても、また国民道徳という点から言いましても、決してこれはとるべきものではない、かように私は考えております。もちろん、われわれ日本国民感情道徳のみならず、かようなことは、東洋における道徳、あるいは世界における少なくとも文明国良識のある国民はこぞってかかる態度はとらないものであると私は確信をいたすのでございます。  そこで、かような問題に対して今後どういう措置をとるつもりであるかというお尋ねでありますが、ただいま御質問のごとく、今日、放送法並びに電波法は、相当制定以来情勢が急変いたしておりまするので、この改正は当面の急務であると存じます。そのために省内に臨時放送関係法制調査会を置きまして調査審議を進めておりますが、その結論も六月中にはまとまりまして答申が出るはずでございます。その答申を見ながら将来放送法電波法改正をはかってまいりたいと思いますが、さような場合におきましては、ただいまのような事態に対する対策ということも十分に考慮をいたしまして、適切なる改正案を立案し、提案いたしまして、国会において御審議を願いたい、かように考えております。
  10. 山口喜久一郎

    山口(喜)委員 お約束の時間ももう迫ってまいりましたから、結論に入りたいと思います。  大野先生に限らず、われわれどもも、この議会に席を連ねるまでには、その苦労はなみなみなものではございません。「歌書よりも軍書にかなし吉野山」ということばがありますが、いくさ物語の中にもいろいろと悲しい思い出があるのであります。この苦闘を戦い抜いて、そうして幾十年間国家憲政のために身命を賭して活躍し、最後のはなむけがばりざんぼうであっては、私は、大野先生ならずとも、死んでも死に切れない思いがするのであります。由来、わが国では、結婚式では新郎と新婦は秀才と才媛であり、そうして、人の葬儀に際しては、その人の生前の徳をたたえることをもってわが民族の美風としておるのであります。しかるに、時と場所とをわきまえずして、かかる低劣なることばや表現をしなければ人を誹謗し得ないようなひとりよがりの言論人こそ、保守反動と言わなければならぬと思うのであります。恥部はむしろ言論界にあります。私はこの起こった事態に対して非常にふんまん禁じ得ないものがあります。言論は暴力であってはなりません。あくまでも公正であるべきだと思う。  以上、大野先生の御冥福を祈って、私の発言を終わります。(拍手)
  11. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて山口喜久一郎君の質疑は終了いたしました。  次に、淡谷悠臓君の発言を許します。
  12. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 農林大臣にお尋ねいたしますが、わが国の食糧、特に米がここ数年来非常に不安を感じ始めまして、私も三年ほど前から米価審議会等でこの問題に触れてまいったのでありますが、本年に入ってからは一般の国民諸君がみずから気がつくほどにこの需給が逼迫してきておる事実を感ぜざるを得ないのであります。この際農林大臣からそういう逼迫した食糧事情について詳しくお答えを願いたいと思う。  第一番にお尋ねしたいのは、政府の保管米であります。保管米の量が年々に減ってまいっておるのでございますが、その実態がどうなっておるか、ひとつお答えを願いたいと思います。
  13. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 ことしの四月一日の政府の内地米の在地量でございますが、約三百万トンでございます。
  14. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 私はもう少し詳しくお答えを願いたいのであります。私の下元にあります資料を見ましも、これは農林省から提供されたのでございますが、三十六年の十月一日の内地米の政府在庫量は百六十八万トン、三十七年は百二十五万トン、三十八年は百二十万トン、漸次低下の傾向を来たしております。なお、三十七年の一月一日では四百六十七万トン、三十八年は四百五十三万トン、三十九年四百三十五万トン、さらに、三十七年の四月一日は三百三十一万トン、三十八年は三百二十二万トン、三十九年は三百万トン、非常に減ってきておる。しかも、最も心配にたえないのは、七月、八月の端境期と九月の新米の出る時期が最も食糧の急を要する時期でございますが、一体八月のこの趨勢はどうなっておりますか、八月の在庫量についてお答えを願いたい。
  15. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 需給計画から見ますと、繰り越しが五十万トン程度だと思っておりますが、なお詳細につきましては政府委員から答弁いたします。
  16. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 お答えいたします。  ただいま四月期首の持ち越しが約三百万トンというふうに農林大臣から申し上げたわけでありますが、大体一月の売却牡といたしましては、外地米も含めまして、準内地米も含めまして、約五十万トンというふうに予定いたしております。したがいまして、八月末におきましては大体五十万トン程度の持ち越しになろうかというふうに考えております。
  17. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 私がお聞きしたいのは、せめて三十七年、三十八年、この二カ年にわたって、八月、九月の政府在庫量が幾らあったのか。これは内地米に関してだけお答え願いたい。
  18. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 三十八年度が六十二万トンでございます。三十七年度は八十万トンでございます。
  19. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 本年の推定はどのくらいになりますか、内地米に関してだけですが。
  20. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 先ほどお答えいたしましたように、昨年度の六十万トンまではまいらないかと思いますが、五十万トンから六十万トン間くらいだと思います。
  21. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 これは少し前のお話と行き違っております。五十万トン、六十万トンの内地米はないはずですが、外地米も入れてじゃないですか。内地米はそんなにあるはずがない。
  22. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 先ほど申し上げましたように、四月初めに約三百万トンございまして、一月の売却量は大体いままでの例で五十万トンというふうに考えております。今後の売却の状況いかんにもよるわけでありますから、いま、計画的にどうするかということにつきまして、計画を検討いたしておるわけでありますが、そのことから申し上げましても、大体月五十万トンというふうな売却を予定いたしておりますので、八月末の持ち越しは、昨年度の六十万トンまでにはいきませんけれども、五十万トンないし六十万トンの洲くらいの数字になるのじゃないかと思っております。
  23. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 大臣にお答え願いたいのですが、四月一日の三百万トンの政府在庫量が推定になっております。二カ月くらいたっておりますが、在庫量ですから、推定じゃなくて確実に押えられるはずである。この一点は一体どうなのか。さらにまた、この八月の在庫量が、三十七年は三十六年に比べて十八万トン減っております。本年は推定のとおりといたしましてもさらにまた十二万トン減っておる。十万トンもしくは二十万トンの内地米が、どんどん政府在庫量として減っていくというこの姿が、はたして日本の食料事情として安心し得る状態かどうか、大臣の御答弁を伺いたい。
  24. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 お話のように、ここ両三年、端境期に新米の早食いといいますか、それによって、端境期を突破してきております。そういうのが両三年続いてきておりますから、三十九年度においてもそういう状況は続くと思います。しこうして、こういうような状況が一本の米から見た食糧事情に不安なものでなかろうか、こういうお尋ねでございます。御承知のように、一昨年より昨年は収穫が減りました。しかし、政府に対する供出量といいますか、政府買い上げ米は一昨年より木米穀年度はふえております。そういう事情から、いわゆる自由米というものが減っております。でございますが、政府の管理におきまする米につきましては、いまのお話のような状況もありますので、輸入の繰り上げ等をいたしまして端境期に不安なからしめる、こういう態勢を整えて、輸入も七月中には約束のものが入ってくる、こういう状態でありますから、窮屈ではございますが、端境期に戸惑うことのないような措置を講じてきておる、こういう次第でございます。
  25. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 さっき食糧庁長官の御答弁では、月五十万トンは配給のほうから出ていくんだということですが、一体配給は一年間にどれだけ必要とするかということが問題です。一年間を通して一体どれくらいの配給両を準備なさるおつもりか。
  26. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 配給両といいますと、業務用も含めたりなんかいたしますが、需給計画から見ますと、需要量を六百二十八万精米トン、こういうふうに見ております。
  27. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 一人当たりの配給量を、年間どれだけに見ておりますか。
  28. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 政府委員から答弁いたします。
  29. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 大体昨年度と同様に見ておりまして、一人当たり六・七キロ程度でございます。
  30. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 一年間の一人当たりのキロ数であります。
  31. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 ただいま申し上げましたのは、一月当たりに六・七キロでございますから、それの十二倍でございます。
  32. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 「穀類の摂取量(一人当たり)をみると、いぜんとして年間百五十キロ程度に及び、」というのが三十八年度の年次報告であります。少なくとも百五十キロが一人当たりなければだめだ。現在一体現実にはどれだけ配船しておりますか。ここに非常な食糧不安の原因がある。百五十キロの配給量を予定しながら、現実はそこまでいっていないでしょう。幾ら配給していますか。
  33. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 当局から答弁いたさせますけれども、十キロ配給ということに配給量はいたしておりますが、現実にはここ数年間六・七キロくらいが平均になっておりますので、その程度の配給をいたしておるということでございます。総量等につきましては、なお当局から申し上げます。
  34. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 はっきりいたしましたが、百五十キロ予想いたしましたものが、十キロで百二十キロ、さらに六キロでは年間の配給量がせいぜい七十キロそこそこなのであります。しかも、さっきの食糧庁長官の答弁によりますと、五十万トンあればまず端境期が十分だ、こんなのんきな話はない。しかも、農林大臣は、自由米がだんだん減って政府の配給米のほうが多くなっていると言う。多くなっていながら一年間に二十万トンあるいは十何方トンというものが減っていっている。ここに大きな食糧不安がある。当然来るのは外米の輸入もしくは移入と思うのでありますが、一体ことしの手配はどうされておりますか。
  35. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 いまのお話政府の管理する米はふえていますけれども、消費といいますか、受配量もふえております。これは、一つは都市への人口集中、こういうことから来ておることが大部分でございます。そこで、外米の輸入によらなければならぬ面が相当ございますので、その点についての御指摘がありました。昭和三十九会計年度におきまする外国米の輸入計画数量でございますが、これは、準内地米が十三万トン、外米が三万五千トン、砕米が九万トンで、合計いたしまして二十五万五千トンでございます。そのうち外米及び砕米につきましては、タイ、ビルマ、ベトナム、カンボジアから所定の数量につきましてすでに買い付け済みでございます。七月中句までにはその全量がこちらへ着くことになっています。準内地米につきましても、輸入数量は十三万トンでございまして、その総量を本米穀年度内に繰り上げて輸入いたしまして、端境期に備える方針で買い付けを進めてきております。すでに、スペイン米及び加州米で約十万トン、台湾米で七万五千トン、計十七万五千トンの買い付けを了しております。これも七月中には全量到着することになっております。なおそのほかに少し台湾のほうとも活をつけることになっておりますが、いままでの状況はそういうふうなことで、約束の済んだもの等につきましては七月中に入荷といいますか、到着することに相なっております。
  36. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 もう少し立ち入ってお伺いしたいのですが、カリフォルニア米はどれだけで、スペイン米はどれだけか。さらに、台湾米については、台湾はなかなか売らないといって言い張っておったのですが、いつ交渉がまとまりましたか。
  37. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 時日ははっきりいたしませんけれどもお話のように、台湾はなかなか渋っておったのでございますけれども、食糧庁から人を派しまして、話がついて、七万五千トン、先月でしたかきまりました。加州米、ビルマ等につきましては政府委員から答弁いたします。
  38. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 加州米につきましては七万二千トン、それからスペイン米二万八千トン、これが四月から大体六月ころまでに到着することになっております。
  39. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 加州米とビルマ米で大体十万トンに、台湾が七万五千トンと申しますと、準内地米の輸入目標よりもだいぶ多いんじゃないか。十三万トンというはずのものがかなり超過しておりますが、台湾のほうの予定を狂わしたのですか、どっちを狂わしたのです。
  40. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 ただいまの十三万トンの輸入計画を米穀年度で立てます際におきましては、例年でありますと、台湾との交渉が二月ごろから始まりまして、年内から二月ごろの間に大体の台湾の輸入の見込み等について協議をするわけでございますが、本年度は台湾との交渉がたいへんおくれましたので、そこで、加州米、スペイン米を先に輸入の手当てをいたしまして、その後台湾の交渉に当たったわけでございます。したがって、結果的には、台湾の七万五千トンがきまりましたことに伴いまして、十三万トンの当初の計画は越えた、こういうことになるわけでございます。
  41. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 農林大臣、お聞きだと思いますが、どうもあの説明ではわけがわからぬですね。十三万トンあればいいのを、台湾との交渉がおくれたから四万トンをふやしたというのは、どういうわけですか。交渉がおくれると四万トンふやすのですか。何という答弁です、これは。
  42. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 あなたが心配しているように、台湾との話がおくれるということになって輸入の手当てが延びていくということになりますというと、食糧事情に影響いたしますから、台湾との活が延び延びになっておりましたので、加州その他と話を進めて、これを買っておいた。そのうちに台湾のほうも話に応ずるようになりましたので、台湾のほうも話を進めていった。御心配のようなことを私どもも心配いたしましたので、そういう措置をとって進めてきたわけであります。
  43. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 それはわかりますけれども、結局、それじゃ、台湾のほうの話がおくれたから必要以上に米は四万トン買ったのだというふうに理解してよろしいですか。そうなりますがね。どうも台湾のほうが見込みがないと思ったから加州米を買ってしまった、買ってしまったから、しょうがないから台湾から買う。それならなぜすぐ四万トン買わない。必要のない米を四万トン買うという話がありますか。特に、カリフォルニアとは片貿易でしょう。せっかく国際収支が黒字になりそうだといって宮澤長官は喜んでいる最中に、またこんな不必要な食糧をどんどん入れてどうなりますか。国の財政から言って、たいへんです。台湾については必要がないが、なお四万数干トン多く買ったというふうに理解してよろしいか。
  44. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 食糧事情が昨年よりは窮屈だ、これは御指摘のとおり。そういうことでございますから、食糧事情に不安のないような措置をとるのは当然でございます。でございますから、台湾との話がいろいろ国交的におくれておりましたので、加州から買う。一方的貿易であろうがなかろうが、食糧事情を無視するわけにはまいりません。淡谷さんが心配しているのと同じような心配をいたしまして、私どもはその手当をした。そこで、全体として食糧事情が、いまもお話しのように、安心して手放しというふうにはまいりませんから、万全の措置をとるのは当然だと思います。でございますから、三十九会計年度のものをこの米穀年度に繰り上げて輸入をしたということは、再々申し上げているとおりでございます。そういう意味におきまして、この米穀年度に三十九会計年度の分を繰り上げて輸入をして、食糧に不安なからしめるような対策を講じた。淡谷さんの心配しているようなことを私どものほうでも心配をして、その措置をとったので、何か片貿易だとかなんとかいうこととは話が違うと私は考えております。
  45. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 少し農林大臣こじつけじゃないですかね。初めから台湾のほうがきまっておれば、加州米を買わぬのでしょう。加州米を先に買ってしまったから、台湾のほうは減らすわけにいかないから、四万トン多く買ったというのですか、それともまた、最初は十三万トン入れればいいはずであった食糧の見通しが、さらに大きな不安になったから四万トン多くして十七万トン入れたんだ、この二つしかないじゃないですか。どうも農林大臣はあとのほうをおとりになっておるようだ。十三万トンの外米を入れなければならぬ不安状態が、十七万トン入れなければどうにもつじつまが合わなくなりそうだ、こういうふうになって多く入れたのだ、こう理解してよろしいか。
  46. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 ただいま農林大臣からお話がありましたように、当初の計画としては十三万トンを計画いたしておったわけでございます。そこで、その輸入計画につきましては、やはり買い付け時期等の関係がございますので、そういう意味で、いま大臣からもお話がありましたように、加州、スペイン米を、時期を失しないような意味で次々に買い上げてまいったわけでございます。台湾米につきましては、従来からも例年十万トンくらいのものは、比較的余裕のある際におきましても輸入を続けておりますような関係もありまして、また本年度の端境期における万全を期するという意味をも考慮いたしまして、交渉の過程で七万五千トンということになったわけでございます。
  47. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 どうも納得のいかない御答弁ですが、さらに進めまして、もう一つ、韓国に贈与した米を台湾から二万トン買っているはずです。これはこの中に入っておりますか入っておりませんんか。
  48. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 ちょっとわからなかったのですが、韓国から日本が買ったということでございますか。
  49. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 韓国へ贈与した分であります。これはこの前の国会で私から聞きまして、赤十字社の手を経て、台湾の米と、さらにカナダの小麦を韓国に贈与しているはずです。この米は一体どう始末をつけられたか。
  50. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 これは昨年度のことでございまして、いまの数字等には関係ございません。それからまた、これは政府がタッチいたしておりません。そういうことで、台湾から韓国へ米が行っております。
  51. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 とにかく、本年度は十七万トン以上の米を外国から輸入しなければ食糧の安全が期しがたいということは、はっきりいたしました。一体これはどこに原因があるのでしょうか。どんどん需要は増していっている。これは人口が増す限りは食糧の増すのは当然なのです。一体この食糧の増産が人口の増加、需要の増加に見合うほど伸びているかどうか、農林大臣からはっきりお答え願いたい。
  52. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 人口の増加に大体並行して米の増産が進んでおります。ただ、ことしの分は、米の生産量と消費量というのがございますから、配給量という面におきまして、ここ数年は配給を受ける人の数がふえておりまして、そういう面から、政府の管理下におきましては、配給面のほうが非常にふえてきておる、こういうことでございます。  それからまた、いまの御質問は、食糧の増産方面がそれに伴わないでないかということではなかろうかと思いますが、そういう点につきましては、十分米の自給度を増すということについては、世間では、何かこれを疎外したといいますか、おろそかにしたような感じを受けていますけれども、私どもといたしましては、米の自給度を増すというごとの政策を放棄したことはございませんで、依然としてこれを進めておる次第でございます。
  53. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 それでいいんですか、農林大臣。この農業の動向に関する年次報告の三十八年度分はでたらめじゃないんでしょうね。数字を見ますと、生産が落ちてますよ。決して大臣が言うように人口の増加に伴って米の量は増していないのです。はっきりした数字上の答弁まで、いいかげんでは、これはどうも困る。明確にお答えを願います。米は増産はしていないでしょう。
  54. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 昨年も、米の生産量はいままでの三番目くらいでございますが、その前は史上で一番多かったくらい。生産する人と米の消費量と直接対照して、人口がふえる分だけ米の生産がふえる、こう直接の関連はございませんけれども、ここずっと米の生産はふえております。それは数字的にふえておることは確かでございます。
  55. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 私は、この問題はまじめに取っ組まなければ取り返しのつかぬことが起こると思いますから、これは農林大臣に申し上げておくのですが、去年は史上最大の豊作であったが、その前はもっと豊作であったと言うんですね。史上最大の豊作以上の豊作があったのですか。そうなるというと、どうも話が合わないのです。だんだん落ちてきているのです。ことしはなおさら落ちるのじゃないですか。ことしの見通しは落ちるでしょう。もし生産が停滞しただけでも、増加する食糧の需要に見合うように増さなければ、相対的にこれは減少なのです。いわんや、人口と需要が伸びていながら、米の生産自体が落ちるようであっては、これは農政上の大きな問題だと農林大臣はお考えになりませんか。私は、日本の農民は農業をやってない国民諸君に対して食糧並びにその他の農産物を確保する責任を持つものだと思っております。その責任を果たさしてやるのが農政の本願じゃないですか。赤城農林大臣もおそらくはそう思っているだろうと思う。国民がもはや食糧の不安を感じ、食糧の生産事情がだんだん悪くなってくる、これを漫然として見過ごすようでは、農林大臣の資格がないと思う。この原因を一体どこで突きとめるか、農林大臣のお答えを願いたい。
  56. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 抽象的に原因を申し上げればいろいろございます。しかし、いま申し上げましたように、米の生産は減っておりません。昨年も、史上最大とは私は申しませんが、三番目であるということは統計上も出ておるわけでございますし、一昨年が一番多かったということでございます。そういうふうに、米の生産が年々減っておるというわけではございません。ただ、消費人口がふえておるのにそれだけのふえ方をしなければ減ったと同じじゃないか、こういうのは一つの見方かと思いますけれども、ふえただけそれに伴って増産していく、これは直接機械的にやっていくというわけにはまいらぬことは、農業そのものの本質から当然だと思います。しかし、お話しのように、日本の人口を養っていく農民といたしまして、米の生産をふやしていく、そしてこれを養っていくところの責任もあり、また、それを遂行せしむるための農政をやっていくということが、農林省として、農林大臣として当然ではないかという御質問に対しましては、私はそのとおりと考えております。そういう方向へまた進めておるわけでございます。
  57. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 これは抽象的な問題じゃなくて、具体的に日本の農業が危殆に瀕しておる形があらわれてきておる。昨日石田委員質問に答えまして、宮澤企画庁長官は何と答えられたか。宮澤企画庁長官は、農業基本法あるいは所得倍増計画では専業農家の育成に重点を置いた、現実はそうじゃなくて無業農家が依然として減らない、しかも農家所得としては上昇しておるけれども農業所得としては減っているから、この兼業農家に対して特別な措置をとる必要があるだろうと思うという答弁をしておりましたね。一体、この兼業農家というものの存在は日本の農業にとってどういう位置を占めるとお考えになっておるか。構想はそうじゃなかったはずです。食糧の販売が随時減っていっておることは、あなたのお書きになったこの年次報告でも明らかである。ここに第二種兼業、第一種兼業を問わず兼業農家というものの存在が影響しておりませんか。思うように構造改革が進行しない。これはこうした基本法並びに所得倍増計画の見通しに誤りがあったのではなかったかどうか。これは宮澤長官にお答え願いたい。
  58. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そのことは、昨日も半ばお答えを申し上げたわけでございますが、所得倍増計画で考えておりました農業の姿とただいまの姿とは、私は確かに違っておると思います。そして、ただいまの姿というのは、ごく一時的な現象ではなくて、おそらくはかなり長く続く姿ではないかと思いますので、そういう意味では、私は、所得倍増計画は農業のあのあと十年間のあり方について正確な認識を欠いておった、そういうふうにいま考えております。
  59. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 所得倍増計画十年の見通しが、二、三年にして誤った。では、この所得倍増計画を書き直す意思があるかどうか。早くしなければ間に合いませんよ。十年たって間違いましたでは、これはとんでもないことになってしまう。すみやかに所得倍増計画並びに農業基本法までも書き直すおつもりがあるかどうか、はっきりお答え願いたい。
  60. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま所得倍増計画の中間検討をやっておるわけでございますが、その中での一つの大きな問題はこの問題であります。少なくとも過去において歩いてきた道が、私どもが想定した考え方と違っておったということ。ある段階で、どの段階かはっきりいたしませんけれども、ある段階で本来見定めた姿のほうに急速に事態が動くのかもしれませんが、しかし、それがどの段階であるか、あるいは、そのかもということがどのくらい正確であるかということは実際わからないわけでございますから、現在の時点でとらえられる限りにおいて、やはりこれから先この姿はしばらく続くであろうという考えのもとに、計画をその部分は考え直さなければならない。それが中間検討の大きな問題であります。
  61. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 赤城農林大臣、どうですか。いま宮澤長官は、ある段階では手直しもやむを得ないだろうということを言っておる。あなたはどう考えられますか。
  62. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 所得倍増計画の手直しは二つの面があろうと思います。非常に成長が高度であった、こういうことで、農業関係等がこの高度成長下におきましてこれに伴っての成長ができなかったり、また所得面あるいは生値性の面において格差の縮小ができなかった、こういう点が一つあろうと思います。それから所得倍増計画における農業面の問題が一つあろうと思います。これは、自立経営農家を創設していく、これを強力にやる。二町五反以上の農家を百万戸、労力が三人ぐらいでやっていこう、こういうふうな一つ計画目標を持っておりましたが、それが進まなかった、こういう面があろうと思います。そうして、一面において、他の工業面等の経済成長に伴って農業から他産業に出る人が非常に多く、また農業面において兼業農家が七割以上を占めておる、こういうような状況、現炎に対しまして、この現実を見きわめて計画を相当アジャストするといいますか、直していくべき面が出てきている、こういうふうに考えます。ただし、いまのように農業基本法間違っていたんだ、こういうふうには考えません。農業基本法におきましても、もちろん食糧の総生産を拡大するということは一つの大きなねらいでございます。その面を通じて生産性を高め、そして所得の格差を縮小していく、あるいは農民の生活を向上していく、こういう面でございまして、決して農業華本法の方向が誤っておるとは考えておりません。ただその目標に達することが非常に鈍かったし、また離れておる、こういう面は、これは承認いたしますけれども、何も農業基本法を改める必要はないと私は思います。
  63. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 農林大臣の御答弁は、その最後の一句が一番ほんとうだと私は思う。大体あなたも感じておられるでしょう。特にこれは、私ども所得倍増計画が発表されましたときにはっきり言っておいたんですが、池田総理の経済成長政策は当初から農民と中小企業に弱かった。経済成長の姿を見ましても、十年間にはとても追っつかないような数字も出ておったのです。その点を追及いたしましたら、その分は農民の数を半分減らして補いますと言ったのは、はっきりした国会答弁でしょう。われわれはこれは農民の首切り案だと言った。その減らした分はどこへ持っていくかと言ったら、都市の産業でこれは吸収するんだということを、総理大臣ははっきりお答えになっている。はたして吸収しましたか。きのうの質問にも出ましたとおり、町へ吸収された農民、かつて国民の苗しろであると言われた農民は、タコ部屋や監獄部屋といったような荒れ地の中に植えかえられている。これは流入してまいりました農民自体にとっても悲しむべきことでありまするが、日本の経済からいってもたいへん悲しいことであります。残った者はどうです。一体農村の今日の原因、困っている現状、これは労力不足からきておるのであります。あわてて農業構造改善やら機械化の農業をやっておりますけれども、準備と受け入れ態勢ができないうちに、形式的だけに機械を入れましても農業は発展しない。実例は戦争のときであります。どうかこの際、あの戦争のときの食糧事情を真剣に反省してもらいたい。日本はあらゆる物資がなくとも、食糧だけはこれは健全であると何べんも言ったんです。しかもどんどん若い者を戦場に引っぱっていったために、農村には労力が不足しまして、機械的に機械を導入した。結果はどうです。二、三年待たずしてあの惨たんとした食糧飢餓に陥ったのは、日本の農村の実情であります。戦場と工場とは違いまするけれども、同じような状態がいま農村に起こっている。これに対してどのような方針を立てられるか。これは大胆に、手直しをするならするように、間違っているならいるように、明確な進路をいま示しませんでしたら、私は日本の農業だけでなくて、国民全体の生活の上に非常におそるべき結果を招来すると思いまするが、農林大臣、そうは思いませんか。
  64. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 農業の就労人口が減っておることは御指摘のとおり。またそれが他歴業に入らなかったと言いますけれども三十七年度等におきましても、七十一万人というものは他産業に入っています。そのほかに出かせぎ等で非常に労働力が不足している。でございますので、私どもは、これに対しまして後継者の問題等も真剣に考えなければなりませんし、構造改善等を取り上げているのも、そういう事態に即応して農業がやっていけるような素地をつくっていきたい、あるいは土地改良等あるいは価格政策、いずれも農業を安定していきたいということでやっておることでございます。で、いままでの農業政策を大転換する気持ちはないかということでございますが、いままでの農業政策を推進をいたしております。転換という意味がどういう意味かでございますが、何かお話によりますと、自立経営農家というものを中心としたものがだめになっているのじゃないか、こういうことのようにも考えられますけれども、私は、根本的には自立経営農家を拡大していくという根本方針はやはり貫かなくちゃならぬ。しかし実態といたしまして、兼業農家というものは七割以上も占めております。この兼業農家を農業として一面組織化していく。労働方面に安定的な面を講じなければならぬと同時に、一面におきましては、農業面においてこれを組織化していく、兼業農家でも兼業農家としてやっていける、こういう組織化の問題は相当深刻に考えなくちゃならぬ問題だと思います。そういう意味におきましては、農業政策というものにつきましての考え方を幾ぶん変えていかなくちゃならぬと思いますけれども、大きな筋道につきましては、私はその筋道を強化して農業が安定できるような、そして食糧の生産ができるような方向につきましては、強化をすることによって進めていく、こういうふうに考えています。
  65. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 農林大臣も、いまの日本の農業の現状には決して満足してないだろうと思う。しかし宮澤長官が言っておられるように、第二種兼業の現実に立って日本の農業をどうきめるかということに対しては、いま非常に大きな分かれ道にあると思うのであります。われわれは単なる専業農家だけでは新しい国際競争に耐えるような日本の農業はできない、こう断定してまいりました。いまでもそう思っております。兼業農家のさまざまな育成を考えておられるのかもしれませんけれども、成長産業と言われております畜産、果樹両面にあたってはどういう現象が起こっておりますか。最も手っとり早く例を示しましょう。いま日本の養鶏の実情、これは外国並みに日本でも鶏戦争が起こっておる。三百羽から九百九十九羽の中規模の経常は総飼養戸数のわずかに〇・八%、しかも飼養しておるメスの羽数は一七・七%、鶏卵の販売最から見ると市場総流通量の二三%、さらに戸数でわずかに〇・一%に当たる一千羽以上の大規模経営が飼養羽数では一一・八%、鶏卵販売量では一五%、この集中した近代的な養鶏事業が、他のたくさんの兼業養鶏家を、あるいは弱小養鶏家を、軒並みに倒したのは実態でしょう。これは年次報告ですよ、私の言うことじゃない。あるいは酪農の方面でも、果樹の方面でも、こういう事態が着々として起こっている場合に、自家消費を中心として考えるような兼業農家に重点を置いて農業の再生産を考えるならば、これは日本の農政として一大問題です。どうお考えになりますか。思い切って前向きに、われわれが主張した共同経営のほうに、あるいは近代的な農業のほうにお向けになるのかどうか。これは通産大臣、農林大臣、企画庁長官にも申し上げておきたいのですが、いまはっきりとあなた方が農業の進路を示しませんと、幾ら金を出しましても金は生きてこないのです。出さなければもっと困りますがね。農業というものは単に金だけでは救われない。そうした農政の根本に触れて正しい進路を打ち出しませんと、農村における農民の生産意欲は決して向上しない。どうお考えになりますか。これは宮澤長官と農林大臣と御両人からお聞きしたい。
  66. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 日本の農業の生産が国内的にも十分あがらない、あるいはまた国際的の競争力も弱い、これは、一言で言えば日本の農業の零細性であります。でございますから、この零細性を脱却せしむる、こういうことが必要でございます。そのために経営規模を大きくするということも二つでございます。また現実に兼業農家が相当ある。この兼業農家をその兼業のままの小さいままで育てていこうということでは、これは私は千年河清を待つがごとき旧来の考え方であろうと思います。しかし、これを共同化するとか組織化することによって、食糧の生産面におきましても、あるいは国際競争力に対抗する意味におきましても、その方向へ進めていこうということならば、これはまことに前向きだと思います。しかし、いつまでもいつまでも零細性を維持していかなくちゃならぬということでは、なかなか日本の農業の方向というものが進まないと思います。でございますので、前段申し上げましたような方向で進めたい、こう思っています。
  67. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 これは明らかに兼業農家あるいは個々の零細専業農家では、国際的な農業とは太刀打ちできないという結論が出たようであります。これはすみやかに経済倍増計画なり所得倍増計画なりあるいは基本法に対して手直しをする必要が生じてきたと思う。読み返してごらんなさい。あくまでも零細なとは言いませんが、いま二町五反くらいは零細な部であります。零細な個々の専業農家に重点を置いたような日本の農政は、この辺ではっきり切りかわりませんと、とうていやっていけないということが現実に出てきたことを確認いたしました。  そこでお聞きしたいのですが、一体成長部門といわれておりますところの酪農はどうですか。乳価の値上げ等はさまざまな論議をされておりますが、もっと根本的な問題が横たわっていないでしょうか。今日の酪農農家を圧迫しておりますものは、私はえさの高値であると思う。えさは国内で需要に満たない、ずいぶん輸入しております。農林大臣はこの酪農の問題を、えさの点においてお考えになったことがあると思いますが、一体どういうふうにお考えになっておるかお答えを願いたい。
  68. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 御指摘のように、いま畜産のえさの大部分を輸入に仰いでおる。こういう状況では、健全な畜産の伸展は見られないと思います。でございますので、やはり飼料面におきましては自給飼料等のウエートを増す、あるいはまた輸入しているようなものにおきましても、濃厚飼料等によりまして、国内におきまして生産できるものの生産を進めていく、そうして輸入していくものの量を少なくしていく傾向に持っていくことが必要だろうと思います。  もう一つは、飼料の価格の問題があろうと思います。こういう面につきましては、この委員会等におきましても申し上げましたように、政府の管理するところの輸入飼料等につきましては値上がりを押えていく、こういうことにしていきたいと考えています。  それからもう一つは、たとえば牛乳の活が出ましたが、ひとつ消費をふやしていく、こういうことによって、価格面におきましても供給面におきましても、これが伸びていくような形に持っていきたい、こう考えています。
  69. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 大蔵大臣、居眠りをしないで聞いてもらいたいのですが、さっきから食糧の輸入の問題が話になっておりました。ことしは十三万トンの予想を四万トン上回って十七万トン入れる見込みだそうでございますが、さらにいまの御答弁でえさの輸入が非常にふえてきている。この両者を合わせまして、金高においてどれぐらいになるか、これをお答えを願いたい。食糧とえさの輸入する代金。
  70. 田中角榮

    田中国務大臣 えさは千四、五百億円になると思います。それから酒米ということで十二、三万トン入れるということにしておきましたが、金額はちょっとお待ちください。
  71. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 大臣じゃなくて、専門家でいいですよ。   〔委員長退席、松澤委員長代理着席〕
  72. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 お答えいたします。三十八会計年度で買い付けました外貨所要額でございますが、主食用として約二億三千五百万ドル、それから飼料用の小麦、大麦で三億一千万ドルということになっております。
  73. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 日本貨に換算して幾らですか。
  74. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 ちょっと計算いたします。
  75. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 わかりますけれども、およそ五億五千万ドルという大きな金が食糧と飼料の購入のために海外に流れていっている。一体赤城農林大臣、えさを買って牛乳をしぼるという形の営農が酪農といえますか。私は牛乳屋だと思う。酪農の本来の筋は、えさを自分でつくって、このえさの収穫量によってその年しぼる乳の量を考えていくのが酪農の本筋なんです。そのえさをつくる耕種の部分を全部なげうってしまって商人からえさを買ってきて、それで酪農を営んでいるというようなごまかしの形の中に成長部門である酪農面のごまかしはありませんか、間違いはありませんか、その点はどうです。
  76. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 筋はいまのお話のとおりでございます。しかし、日本の耕地が非常に少ないとか、あるいはそういう自給飼料をつくるべき土地の獲得が十分でなかったとか、こういう酪農や畜産に適しない日本事情がいままで酪農が振興しなかった事情だと思います。しかし米麦ばかりでなく、やはりこういう畜産方面に日本の農業というものを伸ばしていかなくちゃならぬということで、このほうを進めましたが、従来、いま申し上げましたように、日本の酪農、畜産というものはなかなか進まなかった。そういういろいろな拘束といいますか、面があったと思います。しかし本来は、いまお話しのように自分でえさをつくって、それを食べさせて、そうして牛乳を出す、これが筋に違いないのでございます。そういう方向へおくればせながら持っていかなくちゃならぬ、こう考えておるわけであります。
  77. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 これは筋がそうだというだけじゃなくて、そうでなくちゃやっていけないのです。特に日本は酪農に適しているか適していないかと申しますと私は適していると思う。なぜならばまだ未開発の地域が多い。しかも気候が大陸に比べますと徳和ですから、草が非常に成育するのです。これはあらためてまた別の委員会で申し上げたいと思いますけれども、少なくともこの酪農の本筋に立ち返る勇気がなければ成長部門とはいえない。  果樹はどうですか。果樹はうまくいっていますか。少なくとも農業基本法並びに所得倍増計画では二つの成長部門の柱として果樹と酪農をあげられた。酪農はほぼ行き詰まりになってしまった。ここで方向転換しなければしょうがなくなってしまっている。増産はどんどんするのです。増産はしますけれども、その間における流通の手段が全然行なわれていませんから、そのためにやはり行き詰まっている。果樹はどうですか。果樹も同じように流通過程で行き詰まっているでしょう。一体この原因はどこにあるでしょう。政府が最も力を入れるはずであった果樹、酪農ともに政府が思うままにいかないというこの真の原因を一体どこに見ておりますか。
  78. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 畜産等につきましては、やはり飼料の、えさの面の自給度が非常に薄いというところに問題があると思います。果樹は私は相当進んできたと思います。これは価格の面等もあろうかと思いますけれども、果樹が行き詰まりということは私は考えておりません。果樹はますます進んできているし、よくいっている、こう思います。
  79. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 これは生産と流通の段階をはっきり見分けてもらわないと、とんでもない間違いを起こします。果樹も酪農も、生産のほうでは成功しているのです。ただ商品経済の段階に入り、商品生産物となりましたから、これを売っていく間にしぼり取られている。そこに自由化の問題があるのであります。せっかく成長しかけた酪農でも、あるいは果樹でも、いま自由化のあらしにさらしたら、これに耐えるほど成長していない。端的に申し上げましょう。レモンはどうですか。レモンは行き詰まったかんきつの生産の中に、ようやくオレンジとレモンに突破口を見出している。たしかに二百二十町歩しかないでしょう。けれども、これは決して衰えていって小さくなったのではなくて、いまやっと芽を出した小さい姿なんであります。それを一体自由化というのは何なんですか。芽を出したこのレモンをつぶすために行なったのですか。この海外の飼料の輸入でも、あるいはくだものその他の、自由化によっていろいろなものを入れる人たちであっても、食糧の輸入者であっても、だれが一体担当しているのですか。台湾から韓国へ昨年度送りました二万トンの米はどこが扱いましたか、お答え願いたい。
  80. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 この委員会でさきにお答えしたはずでございますが、商社は、三井ほか数社で扱ったと私は承知しています。なお、その点につきましては軍務当局といいますか、政府委員から答弁させます。
  81. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 ことしの十七万トンですか、入れます食糧の問題、米の輸入、これは一体どこが扱っていますか。買い付けばどこでやっていますか。
  82. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 政府委員から答弁いたさせます。
  83. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 それぞれの地域につきまして指定商社を設けておりますが、いま商社名簿は記憶しておりませんが、二十九社でございます。
  84. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 これは重大な問題でありますから、すみやかに資料を提出願いたい。  えさはどうですか。非常にふえていっております。えさの輸入はどこの商社に委託してありますか。
  85. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 えさの輸入につきましては、政府管理穀物でございます麦類を除きましては、ほとんどが自由化されておりまして、特にどの商社ということでございませんが、えさの輸入をやっております商社の数は非常に数多く、約九十社くらいにのぼるかと思います。特にどこに委託するというような形はとっておりません。
  86. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 政府管理の麦は、どこが扱っておりますか。これも政府自分でお買いになるのではないでしょう。だれかに買わせるのでしょう。それから約九十社あるという他の自由商社の中にでも大口の同社があるはずです。たいていわかっておるでしょう。
  87. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 政府管理の飼料穀物につきましては、他の麦類の輸入と同様に食糧庁の指定商社によって輸入されておりますが、私の記憶では約三十七社が担当しておるはずでございます。
  88. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 これもひとつ資料を御提出を願いたい。しかもこの輸入した飼料が、国内においてまた仲買い、小売り屋に入っておるでしょう。二重にも三重にもいっていますね。これはありませんか。――同社が西桜に販売するのではないでしょう。商社が海外で買い付けしたものを、国内のえさの会社か何かにまた卸売りをして、そこからまた配給するでしょう。そこまでおわかりにならないのですか、農林大臣は。
  89. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 輸入飼料のうち、政府操作のものにつきましては、食糧管理特別会計の飼料勘定に受け入れられますから、これは他の商社あるいはえさメーカーというところへいくことは直接にはないわけでございますが、その他のいわゆる自由貿易によりまして輸入されますえさは、大部分が配合飼料工場の原料として販売をされますので、輸入商社が直接に需要者に売り渡すという例は少ないかと思います。ただ需要者団体でございます農業団体等へ売り渡すものも相当の量にのぼっておる。約三〇%くらいは農業団体に売り渡されるという実情でございます。
  90. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 そんな見えすいた答弁をしても、こっちは承服できませんよ。えさ用の小麦というのが一番大きい数です、管理麦のうちでは。これは食糧小麦より多いはずですよ。年々赤字を出して量をふやしておるのです。これはちゃんと加工工場を指定してあるではないですか、日清製粉をはじめ。新しい商社がまた続々とこれに権利を主張しておる。一体社団法人日本飼料協会というのは何ですか。
  91. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 社団法人の日本飼料協会は、飼料の輸入、販売あるいは飼料の加工等を行なっております会社、法人等が集まりまして成立をいたしました社団法人でございまして、飼料に関する情報の収集、伝達あるいは飼料に関します流通あるいは生産、消費等に関します合理化増進等を目的として運営をされております一般の社団法人でございます。
  92. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 これは、大体えさに関する会社を全部総積みにして、まとめておる協会だと思うのです。ここの会頭はだれか、おわかりですか。
  93. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 日本飼料協会の会長は、現在安田善一郎氏でございます。
  94. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 違いますよ。河野一郎さんですよ。これは「また当協会はすでに会頭に河野一郎先生を」とちゃんと書いてある。安田さんは専務理事でしょう。
  95. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 お答え申し上げます。  会長は安田善一郎氏でございまして、名誉会頭というようなことで河野一郎氏が就任されておるように承知をいたしております。
  96. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 ああ、そう。これは私ちょっと読み違えておりまして、「新理事長安田善一郎氏は当協会設立当時の畜産局長(その後食糧庁長官)」、直接に会社には関係しておりませんが、食糧庁長官をやり、農林大臣をやった人がこういう外国の飼料を輸入する会社との連係ができている。レモンは一体なぜ騒ぐのですか。確かにレモンは生産者は困っていますよ。しかし現在のレモン騒動というのは、生産者のことを案ずるよりは別なものを案じていませんか。一体こんなに騒がなければならない理由はどこにあるのです。どうお考えになりますか。私は利権だと思う。はっきり申し上げておきます。レモン協会というのは、一体どこが一番たくさんレモンを輸入していましたか。新しい自由化の場合の立て役者はだれです。これは福田通産大臣にお答え願いたい。
  97. 福田一

    福田(一)国務大臣 レモンの輸入業者は九十一社ございまして、半期の判り当てが百三十万ドルぐらいでございますが、そのうちで四、五社が相当大きく輸入をいたしております。そうして、あと一番大きいところが二十六万ドル前後、それから十五万、十万、十万、五万、それくらいから先はもううんと小さくなって、二万ドルとか、最低は千ドルというくらいであります。
  98. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 ここに名簿がございますが、これは扱い量がわかりませんからお聞きしたのですが、大体見当がつく。ところがレモンの輸入関税は一体幾らになっていますか。
  99. 福田一

    福田(一)国務大臣 一〇%でございます。
  100. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 バナナは幾らですか。
  101. 福田一

    福田(一)国務大臣 昨年の四月に五〇%から七〇%に引き上げました。
  102. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 同じ輸入食料品であるバナナが七〇%で、レモンが一〇%、これは一体どこが違うのですか。普通五億円から六億円くらいの輸入量があるだろうといっておりますが、六〇%関税が違ったら、一体五億円にして幾らになりますか。三億円じゃないですか。これは利権じゃないですか。どうしてバナナが七〇%で、レモンが一〇%なんです。
  103. 田中角榮

    田中国務大臣 バナナは、御承知のとおり七〇%から五〇%、三〇%と下げるということになってはおったわけでございますし、政府もそういう法律案を出しておったわけでございますが、国会の御審議で、国内の果樹との関係がございますので、当分据え置くということになったわけでございます。しかし、これらの問題につきましては、国際会談におきましてもこれを一〇%、バナナにおいては三〇%でありますが、これを引き下げるという方向にあることは御承知のとおりであります。また一〇%以内の関税については、これをただに、ゼロにするというような後進国側の要求がありまして、いまの国連貿易開発会議で議論をいたして、日本からも代表を送っておるという方向であります。
  104. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 レモンはバナナに比べてはなはだ輸入量が少ないし、これは国内の果樹に影響があることは事実でありますけれども、あんなに騒ぎになる必要性は一体どこにありたのかという問題です。これから下げるのならわかりますけれども、初めから一〇%というこの関税をきめた形の中にうまさがある。価格差はどうですか、わずか十五円か幾らのレモンが七十円もしくは百円に売られている。この差益は一体どこへ行きましたか。これが離すまいとする一つのあせりでしょう。これを奪い取ろうとするのが一方のあせりでしょう。今度は、一体自由化した場合に、サンキストと契約を結んだのは一体どこの商社ですか。これは通産大臣にお答えを願いたい。
  105. 福田一

    福田(一)国務大臣 自由化をいたしましたあとに、サンキストからアンダーソンという副社長がやってまいりまして、事情を聞いたんでございますが、代理店、特約店を三つばかり結ぶつもりで、口頭で話はしたけれども、正式な契約はしておりませんでした。ところが、日本に来て事情を見た上で、これは取りやめることにいたしましたということを発表いたしておるわけでございまして、事実は、特約店はいまのところございません。
  106. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 伊藤忠商店と西木はきまっておるじゃないですか。スバルが入っておったのがやめたでしょう。あまり知っているようなことを知らないふりをしてはいけませんよ。そうじゃないというならばそうじゃなくてもよろしい。しかし、どうして一体七日の閣議に、通産省の諸君にも相談なし、自民党にも相談なし、しかも農林省にも相談がない。私は三日前に聞いてみた。レモン自由化のうわさがあるがどうだと言ったら、輸入局長知らない。それを経済閣僚懇談会か何かで、当時の議題にもなっていなかったレモンを至急に自由化をして、しかもあしたを待たず、その日のうちに手配をして、八日の官報にはもう発表しておるというこの早わざは、一体どこからその力を得ているのですか。どうしてもこれは受け取れない。これは果樹栽培者のためにも私は受け取れない。しかも多くの利権があると認められておるものを取り上げて別のほうの利権に渡すようであっては、これは自民党の内部が荒れるのは当然でしょう。きょうは詳しくは申し上げませんが、私の手元にも自民党の諸君から来ているいろいろな印刷物がありますよ。御必要ならば読みます。名前も出ております。これに関連した人の名前も出ておりますが、私はこういう席上では申し上げません。少なくともこういう不明朗な海外貿易のやり方は、断じてやめてほしい。しかもその利益を得るために、日本の農業を犠牲にして自由化に邁進しようというようなことは絶対に許せません。農林大臣、その点どうですか。
  107. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 自由化を国際条約、国際関係からいいましてやらざるを得ないものがあります。しかし、日本の農業を犠牲にしてやるということは、私は絶対にやるべきものではない、こう考えております。
  108. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいま伊藤忠と西本、スバルの名前をおあげになりましたが、その契約の事実はございません。実はアンダーソンが来ましたのは、いまあなたが御心配のような特約店契約があるということを聞いて、われわれとしましてはアメリカ大使館を通じまして、これはどういう事情になっておるかということを問い合わせました。ところが向こうのほうから、それならば、アンダーソンとは言いませんでしたが、サンキストの代表者をあなたのほうに出して事情説明させます、こういうことでございまして、先般アンダーソンがやってきて発表をいたしております。そのときに、特約店というものは全然置かないということをはっきりいたしておるのでございまして、これはそのように、向こうから正式なものが来てはっきり言っておる。またわれわれのほうは、伊藤忠にも確かめてみましたが、そういうものはいたしておりません。こうはっきり言っておるわけでございまして、特約店がないことだけは私は確信をいたしております。
  109. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 官房長官はまだ見えませんか。官房長官にも聞いてもらいたいと思うのですが、レモンのことを私はいいかげんに切り上げようと思いましたけれども、通産大臣からそのような御答弁があったのでは、私はもう二、三点くらい聞いてみたいと思う。それではレモンの自由化は完全にレモン協会その他の伊藤忠もしくは西本にも特約をしないで、ほんとうに自由にこれはばらまくつもりですか。ばらまいた結果は一体どうなると思いますか。バナナは自由化の結果どうなると思うのですか。とにかく自由化の方針なんだから、あとの影響はどうなってもかまわないからやろうというのでは無責任ですよ。バナナ業界は一体どうなっておるのですか。両方お答えを願いたい。
  110. 福田一

    福田(一)国務大臣 バナナのほうは、私の聞いておるところでは、二つの何か組合をつくっておるように聞いております。そうして、業者が二つの組合をつくって輸入をしておる、こういうことでございますが、レモンの場合においては、私はいまだそういう動きを聞いておりません。
  111. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 バナナも、私たちが予想したとおり、自由化によって非常な混乱を呈しているのです。特に通産省のさまざまな係の人にも、農林省の係にも相談しないで、抜き打ち的にやったということ自体が一体どんな混乱を起こしているのですか。レモンは値が下がるでしょう。しかし予告なしにやったために、レモンを扱う中小企業者が倒れていませんか。きのうもありましたが、倒産者の列にまた入ろうというのは御存じありませんか。一体レモンその他の輸入には保証金は幾ら取っていますか。その保証金はどこから出ていますか。
  112. 福田一

    福田(一)国務大臣 ちょっと、先ほどの答弁で間違っておりましたので、訂正さしていただきたい。それは、バナナで二つの組合ができておると申し上げましたが、そういう動きがあっただけで、われわれのほうは認めておりません。したがって、いま自由にだれでもが輸入できるという姿であります。レモンの場合におきましても、やはり姿といたしまして、だれでもが輸入できる、買いたければだれでもが買える、こういう姿にいたしておるわけであります。
  113. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 それは非常に無責任な放言だと思うのです。自由にした場合、これを押えるのは大資本家ですよ。何らの規制がなければ、資本の力がこれを決定するんです。結局大資本が最後には弱小企業者を倒して、みずからこれを独占するという形態が生まれてくるじゃないですか。私はしいて申し上げませんけれども、あなた方の一つの行動というものは、一つの宣言というものは、非常に大きく響くことをお忘れなく願いたい。政府の責任はそこにあるのです。少なくとも大臣としての言明がどのような影響を起こすか、その点まで克明に考えてやりませんと、これは国民に要らざる罪をつくらせますよ。農林大臣のスライド制もその一つなのであります。あのスライド制の、あなたの放言によって、あっちこっちにいろいろな異常な現象を起こしているということに気がつきませんか。やみ値が上がっているでしょう。これは食糧の事情が悪くなったわけじゃなくて、配給外の米の自由販売が値が上がっておる。それはどうつかまれておりますか。
  114. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 やみ値といいますか、自由米が上がるというのは、先ほども私申し上げましたが、一昨年より昨年の収穫高は減っているにかかわらず、政府への売り渡しはふえているのです。ふえているだけ保有やあるいは自由に回る米が少なくなっている、こういうふうに考えられます。でございますから、いろいろ食糧が端境期等に窮屈であろうというような見方もありまして、やみ米が上がっておるという状況は私も調べております。しかし、これはスライド制と関係はございません。絶対にそれは因縁づけで、スライド制を言ったからやみ米が上がったなんという、そういうことはちょっと因果関係が離れておると思います。
  115. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 そうお考えならば、私は、たいへんな考え違いだと思います。スライド側ということは、これはおそらくは生性者米価を今年上げないとは思ってないでしょう。生産者米価を上げて、スライド制をとるならば、消費者米価は上がるでしょう。米が自由販売の面に回るか政府の配給米のほうに回ってくるかは、自由販売の米の値段と貰い上げの値段との比較にあるのです。これはおわかりでしょう。消費米が高くなれば、やはりいまのうちに米を買いだめる現象が起こるじゃありませんか。これは、前の農林大臣が統制を廃止すると言ったら、自由に米をかついであるく人の背負い方が三倍にふえましたよ。あの米をかついであるく人の米の量というものは、体力に応ずるんじゃなくて、資本量に応ずるんです。米屋のあるものは、金を出して、かつぎ屋さんを通して米をかつがしておる。消費者米価が上がるぞということなら当然自由米が多くなる。これは、決して大風が吹けばおけ屋が繁盛するというような無理な連関性じゃないのです。そうお考えになりませんか。やみの実態をお聞かせ願います。ことしは幾らになっておるか。
  116. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 消費者米価が上がるということならやみの値も上がるだろう、――私がスライド制を言いましたのは、消費者米価を上げるということを言ったわけではございませんから、そういうことで了解しているということであれば、それは誤解であろうと思います。そういう意味におきまして、スライド制ということからやみ米の値段が上がったということは、私は、私が言っただけでそういうことになったとは考えません。やみ米の問題は、食糧全体の量の問題、それからまた価格の問題、この問題に関連することは、これはお話のとおりだと思います。  そこで、やみ米の実態ですが、これは、御承知のはずですから私から言う必要もないのですけれども、生産地、消費地とも二月初句ごろから値上がりの傾向が見られまして、私どものほうの調べでは、生産地では一升当たり百三十六円、消費地では百四十八円となっておりますが、五月以降は生産地、消費地とも横ばいで、弱含みのように見ております。  やみ米の流通量の動向につきましては、これは管理しているのでございませんから的確に把握することは困難でございますが、米穀の生産量から農家の米穀消費高と政府買い入れ数量とを差し引いたやみ流通量を推定いたしますと、三十八年産米につきまして、三十七年産米に比べまして約六万トンから三十万トンの玄米トンの流通省が少なくなっておりますので、年間にいたしましておおむね百万玄米トン視度がやみ米として流れるものではないか、こういうふうに推定されます。
  117. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 農林大臣が本気になってそんなことを考えているならば、これはます表す黙っておれません。ことしのやみ米が百四十円台に上がり、さらにいまは下がっておりましても、端境期にはおそらくは二百円になるだろうというのは、国民一般がもう考えているのです。いま五月、六月あたり落ちるのは、農家が当面の金策のために無理して売るからなんです。このあと、また上がりますよ。しかもそのスライド制の放言が米価に影響しなかったということは、これはあまりにも責任のがれです。一体米価が上がるのは他の物価の影響でしょう。生面者米価が上がっているというのは、他の経済の成長に伴う労賃の値上がりなんです。他の、肥料、農薬の値上がりなんです。公共料金の値上がりなんです。こうした政策のひずみが米価にあらわれてきている。そこへさらにスライド制をとるなんということを放言するものですから、ますますこれは一般の米価を引き上げて、飯米の困っている事情をひどくしている。買いだめ、売り惜しみの現象を生ずるのです。これはやはり政治家としては、特に農林大臣としては、そういう点は非常に慎重になされませんと、いろいろな副産物が出てまいります。  一体、スライド制をとろうという気持ち、これはきのう大体伺いましたが、スライド制をとるならば、これは食管法の改正が必要なんでしょう。そう申しましたね。
  118. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 スライド制がやみ値に影響するというふうには私は考えていません。物の値段というものは、生産者から消費者に――同じものなんですから、同じものをどういうふうに値段をきめるかといったら、大体普通なら一つの価段でいいわけです。   〔松澤委員長代理退席、委員長着席〕 高い、安いは別としても、生産者から消費者へ渡って、一つの値段でいいわけです。ところが、いま生産者米価と消費者米価とは範疇の違った一つの方程式でなっていますから、生産者の米と消費者の米とはまるで違ったような形になっています。しかし、私はこの関連がつくものなら関連をつけてみる研究をすることは、これは物価というものから見ましても当然なんです。同じものなのです。生産者の米も消費者の米も同じものなんですから。しかし消費者の米価は、とにかく本年上げないということははっきりしておるのですから、私はスライド制の研究をしたからといって、消費者のほうで、これは米価が上がるのだということは誤解じゃないかと思います。  それからまた、いまの生産者米価は生産費及び所得補償方式ということに食管法には帯いてあります。またその方式につきましては、政令等についていろいろこまかく書いております。消費者米価は、消費者の家計の安定という程度できめるということで、抽象的で、こまかい方式等は出ておりません。その家計の安定をそこなわない程度で生産者米価とどういうふうに関連がつくかというような検討をいたすことは、あえて差しつかえないばかりでなく、そのほうが価格のあり方という面について私は合理的だと思います。そしてまた、それを上げるか上げないかということは別な問題、ことしは消費者米価は上げないということにいたしておるのでございますから、これは別個の問題として、消費者米価を上げないということに御了承願っていればいいのでございまして、そのスライド制を研究する、あるいはその方向がいいということであればそういうこともやってみたいということ、そのものがやみ米を上げるというふうには私は全然予想もしませんし、考えられない問題だと思います。
  119. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 その点私は農林大臣と全く別な考えを持っておりますが、きょうはその議論をやめましょう。ただ、もしスライド制をとるとすれば、食管法の手直しが必要なことはお認めになるでしょうな。これはもともと日本の農業構造の劣っている点からいって、消費者米価との関係を、自由経済の法則には持っていけない弱味があったからなんです。そこに食管制の根本的なものがある。したがって生産者米価と消費者米価とは、別個な要因の上に立っているのが食管法のたてまえなんです。それに相関性を持たせようとすれば、食管法の根本的な改正ですから、これは法律改正を伴わなければしょうがないということは、お認めになりますでしょうな。きのうあなたは認めた。はっきりしてください。
  120. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 この検討の結果によっては、食管法を改正する場合もありましょうし、あるいは改正しないで、技術的に算定方式として、改正までいかないでやれるということもあり得ると思います。これは両方にかかると思います。
  121. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 大事な点ですからはっきりさせておいてもらいたいのですが、これは計算方式の問題じゃない。根本精神の問題なんです。生産者米価と消費者米価との間に相関性を持たせるという発想自体が、食管法に違反するのです。あなたはきのうははっきり法改正が必要だと言っていますよ。言いませんか。言わないというならば、私は速記録を取り寄せたい、大事な点ですから……。
  122. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 ですから、食管法を改正する場合もある。しかし、生産者米価と消費者米価を関連させたから、その点で食管法改正をしなければならぬという、あまり抽象的なことでやるのはどうかと思います。とにかく関連しているのですよ、生産者の米も消費者の米も同じなんですから。それから価格の面におきましても――これは事実上全然無関係で、消費者の受ける米は、生産者のつくる米とは違うのだ、無関係の米だというわけじゃございません。価格の面におきましても、保管料とかあるいは輸送とかあるいは生産費とかいろいろな画が出てきて、しかし政策的に見て、消費者米価を上げるべきものじゃないというときには、これは上げないでおるのでございまして、これは永久に上げてはいかぬという問題じゃないと思います。これは関連があります。ないわけじゃありません。関連をつけたから食管法を改正するということではなくて、現在の食管におきましても関連があります。直接にその米価の決定についての関連というものはございませんけれども、関連はあります。でございますから、場合によって、たとえば家計を妨げないということについて、たとえば消費者米価なら消費者米価を上げる場合に、その家計に差しさわりないという程度と、あるいは生産者から買い上げるところの米の費用の中で消費者も幾ぶん持ってもらわなくちゃならぬというものがあるといたしますならば、それを加えたからといって、家計を害さない程度ならば、いまの家計を害さない程度だということで食管法を改正する必要はございません。しかし、それ以上にいろいろ検討の結果、改正するという段階に至りまするならば、またこれは改正するという方法をとらなくちゃならぬと思います。だから両面あると思います。これは、結論がどういうふうに出るか、そのことによってきめていかなくちゃなりませんが、結論によっては改正しなくちゃならぬ、こういうふうに私は思います。
  123. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 それは妙にこだわりますが、普通の経済法則からいき、特に開放経済のたてまえからいったならば、同じ米なんですから、生産者米価の原価というものは消費者米価に影響するでしょう。それじゃ日本の米作が成り立たない。長い間の悪条件のもとに苦しんできた農民にとってはあまりに過酷だからといってできたのが食管法です。その経済の原則だけではいかない面を、一条と四条ではっきり区別しているのでしょう。連関性を断ったのでしょう。この連関性のあるはずの価格の連関性を断ったところに食管法の趣旨がある。精神がある。それを相関性を持たせるというならば、あの場合はこうだ、この場合はどうだという条件つきじゃなくて、絶対的にこれは誤りです。改正しなさい。特にそうした法改正を伴うべきものを米価審議会に諮問いたすかもしれませんなんというのは、とんでもない話ですよ。見てごらんなさいよ。米価審議会の審議会令がある。私はあなたの辞令をもらって米価審議会の委員になっていましたから勉強していましたが、この第一条ですよ。「米価審議会は、農林大臣の諮問に応じ、米価その他主要食糧の価格の決定に関する基本事項」なんです。食管法を変えるか変えないかということまで諮問する必要は毛頭ないし、たいへんな違法です。もしスライド制なんかとろうというならば、まず堂々と、きのう石田委員の言うとおり、国会にはかつて法改正を企てるべきものであって、あなたの諮問機関であり、あなたが任命した米審でこの点をこっそりやっちまうなんというのは、赤城さんにもちょっと似合わないですよ。もっとはっきりしなさい。
  124. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 どうも法律の読み方がお間違いじゃないかと思います。「農林大臣の諮問に応じ、米価その他主要食糧の価格の決定に関する基本事項」でございますから、米価決定、たとえば米価審議会において生産者及び所得補償方式という抽象的な文句があるけれども、一体どういうふうにやるかということについてその方式等を諮問したこともございます。でございますから、こういう「価格の決定に関する基本事項」でございます。いまお話しように、大切な基本事項、私はそういうふうに考えますから、これを諮問することは何ら差しつかえない、やはり価格の決定方式に関する問題でございますから。それでもし法律を改正しなければならぬというときに、私が独断で改正するとか、そんなことはやりません。やはり法律を改正する場合がありますならば、当然国会で御審議を得るということでございまするし、その前に勝手に諮問して、かりにそれがいいということになったからといって、それでもって来年からやるのだというようなことなどは私はいたしません。それはやはり手続は手続として、なすべき手段を通じてやっていきたい、こういうふうに思います。
  125. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 これは赤城さんとも受け取れませんが、この「価格の決定に関する基本事項」ということを拡張解釈しまして、何でも米価に関係するものが価格に関連する事項だというならば、これはこの後の自民党の総裁のあり方によって米価にたいへん影響ありますから、池田さんをやるか、佐藤さんをやるか、藤山さんをやるか、これも米価審議会に諮問ができるのですよ。これがほんとうの大風おけ屋論です。とんでもない拡大解釈だ。根本的に間違っていますよ。しかしこの間違ったスライド制は、食糧管理法を改正しなくてもいいんだとかあるいは改正する必要があるんだとかいう議論、これは赤城さんは両方の面があると言っている。場合によっては食管法を改正しなくてもできるようなことも言うし、食管法改正まで持っていかなければならないとも言っておるようにとれる。はなはだあいまいだ。米価審議会にこういう法制改革の問題まで諮問できると言っている。これは一体いまの政府の統一見解であるかどうか4官房長官にはっきり伺いたい。これは重大な問題です。それで待っていたんですよ。レモンじゃないですよ、レモンで聞きたいこともあるけれども、この問題です。
  126. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 私は、この第一条を、そういうふうにスライドという問題にすぐに結びつけて言うものだからむずかしくなるようでございますが、消費者米価の決定について、合理的な算定方式を検討すべしというような米価審議会の答申もかつてありました。この前の私がやっているときでございましたか、そのあとでございましたか、そういうこともありまして、消費者米価の価格算定についての一つの方式というようなものが必要であるというようなことは、米価審議会でも言っておったわけでございます。そういうことで、「米価その他主要食糧の価格の決定に関する基本事項」という中から消費者米価の合理的な価格算定方式ということを考え、あるいは諮問することも必要でございますし、その諮問の考え方の中に生産者米価と関連がつくものかつかぬものか、私は、ついたほうがいいというふうな考え方から、ああいう発言をしておるわけでございます。でございますから、そう窮屈にとらわれないで、それが悪いなら悪い、こういうふうな決定の方法がいいとか、こういうことの御審議を願うといいますか、私はそういうことにあってほしい、こう考えます。
  127. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 農林大臣、スライド制の問題をそうするりとスライドしたりしないでいただきたいのですが、やはり問題は、スライド制によって生産者米価と消費者米価との間に相関性を持たせることは食管法の破壊じゃない、こういう考え方、あるいはもし食管法に影響があるとしても、これを米価審議会に諮問することも不当じゃないといったような農林大臣の考え方が、これは官房長官の代表する政府全体の考えかどうか、特に大蔵大臣はどう考えているか、ぼくはこれをはっきり伺いたい。
  128. 田中角榮

    田中国務大臣 食管法は、あなたが先ほど申されたとおり、生産者米価イコール消費者米価ということができなかった事情がございまして、食管という制度ができたということは夢・実であります。しかし、食管法の前提から考えまして、生産者米価と消費者米価が無関係で決定しなければならないということをきめておるものではない。また、財政上から考えますと、昭和三十九年度だけでも千九十五億という大きな赤字を予定しておるわけであります。でありますから、当然生産者米価と消費者米価の間には関連性を持たせる――関連性なく決定できるものだとは解しておらぬわけであります。これは財政上の問題から考えても。また食管法の中の問題を端的に申し上げましても、第三条第二項に「再生産ヲ確保スルコトヲ旨トシテ」、また第四条第二項の「消費者ノ家計ヲ安定セシムルコトヲ旨トシテ」と、こう言っておりますから、食管法のたてまえからいえば、生産者米価と消費者米価の間には関連性を持たしてはならない、こういうふうにあなたは言っておられますが、しかし、この法律の第一条の「国民食糧ノ確保及国民経済ノ安定ヲ図ル」という大前提を前提として、三条、四条を考えますと、当然のこととして財政上の問題もありますので、生産者米価及び消費者米価というものは関連があり、こういう考え方をとっておるのであります。しかし、いま農林省が育っておりますスライド制という問題はまだ聞いておりませんから、批判をするという段階ではございません。しかし、少なくとも生産者米価と消費者米価が無関係で決定するのが食管法のたてまえであるという考え方は、誤りだと考えます。
  129. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 官房長官の御答弁を願います。
  130. 黒金泰美

    黒金政府委員 お聞き及びのように、農林大臣がこれから検討してみよう、こう言っていらっしゃる段階でありまして、したがって、内閣全体としてまだこの問題を取り上げていないのであります。
  131. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 関連質問が川俣清音君からあるようでございますが、午後に多少の時間を与えることにいたします。  これにて淡谷悠藏君の質疑は終了いたしました。  午後は三時を目途に再開することといたします。午後の質疑者は佐々木良作君及び井手以誠君であります。  佐々木君の出席要求大臣は、総理大臣、外務大臣、大蔵大臣、農林大臣、通産大臣、運輸大臣、自治大臣及び経済企画庁長官であります。井手君の出席要求大臣は、総理大臣、外務大臣、大蔵大臣、農林大臣、通産大臣、運輸大臣、自治大臣、厚生大臣、防衛庁長官及び経済企画庁長官であります。  この際暫時休憩いたします。    午後零時二十六分休憩      ――――◇―――――    午後三時二十七分開議
  132. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  予算実施状況について質疑を続行いたします。  佐々木良作君。
  133. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私は、公労協の仲裁裁定、中小企業金融、それから物価、農業政策の行き詰まり、その他政府の見解をただしまして施策の修正を要求しなければならぬと考える多くの問題を持っておるのでありますけれども、ただいままで同僚社会党委員の諸君の質疑も似たような項目についてずっと行なわれておりますので、私の持ち時間とにらみ合わせまして、なるべく重複を避けながら、まず第一に、最近のいわゆるミコヤン旋風が巻き起こした問題の具体的な問題について、第三番目には、わが党は最近沖繩調査団を派遣いたしまして、二年越しの懸案の現地調査を行なったのでありますが、たまたま沖繩問題は、新聞を通じてごらんのごとくに相当量大化いたしておりまするので、その沖繩問題について、さらに時間がありますれば、三番目に国際収支や物価問題等についてだんだんと触れて質問をいたしたいと存じます。総理並びに関係閣僚のひとつ率直な御意見をお伺いいたしたいと存じます。  まず第一に、ミコヤン副首相を中心とするソ連最高会議の議員団が訪日をされまして、これによって巻き起こされた問題についてでありますけれども、私は質問に先立ちまして、ミコヤン副首相らの今回の訪日が日ソ両国の友好親善の機運を高めるために非常に大きな貢献をしたと信ずるものでありまして、この点、ミコヤン氏らをはじめとする訪日議員団及び日本側のあらゆる関係者の御苦労に対しまして深甚の謝意を表するものであります。  さて、しかしながら、日本側の各階層の人々とミコヤン氏らはいろいろ会見をされましたが、各界との交歓は別といたしまして、おもに政府を中心として話し合いが行なわれたと伝えられる具体的な問題につきましては、どうも新聞の記事等を見ましてもばくとしておるように感ぜられますので、一般国民のためにその内容を明らかにしていただく意味におきまして、具体的に二、三お伺いをいたしたいと思います。  特に経済界は、ある意味におきまして、今回のミコヤン氏の訪日を中心として行なわれたいろいろな話し合いについて、いろいろな観測を行なっておりまして、ある意味におきましては経済界の一つの混乱状態とも見られるような現象がありまするので、私はひとつ総理以下に、私に対する答弁というよりは、それら経済界その他に対して政府の考え方なり見方なり事情なりを明確にする、こういう観点からお答えをいただきたいと思います。  まず、貿易拡大の問題について伺いたいと存じますが、新聞報道によりますと、パトリチェフ・ソ連貿易相の書簡といいますか、あるいは覚え若きといいますか、そういうものをミコヤン氏は携えてこられまして、これを多分五月十五日の会談でありましたか、この五月十五日の会談においてパトリチェフ・ソ連貿易相の書簡か覚え書きかを池田首相に手渡して、そしていろんな話をされた。こういうふうに載っておるのでありますけれども、どうもその辺が私ははっきりしないのでありますので、総理に、そういうような書簡かあるいは覚え書きのようなものを総理は文書として受け取られたのかどうか、その事実をまず承りたいと思います。
  134. 池田勇人

    池田国務大臣 第一回のミコヤン第一副首相との会談におきまして、いまお話しのソ連の貿易関係大臣の日ソ貿易に対しましての一応の見通しと申しますか、希望といいますか、相当程度のものを輸入したいという覚え書きと申しますか、書簡と申しますか、メモと申しますか、私はメモぐらいに考えておるのであります。そういう書類が私に波されたことは事実でございます。
  135. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 それはメモとして、ことばでなしに文書として受け取られたのでありましょうか。同時にまた、文書として受け取られたのでありますならば、それは公表といいますか、一般に知らせる方法はとられたのかとられなかったのか、重ねて承りたいと思います。
  136. 池田勇人

    池田国務大臣 特に正式なものとは私は考えておりません。したがいまして、それをまだ読んでおりませんが、外務省のほうへ引き継ぎをいたしております。ただ間問題は、そこの内容の大体のあらましと申しますか、日ソ貿易についての考え方は、ミコヤン氏から話を聞いておるのであります。
  137. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 そのメモみたいなものは、外務省の翻訳ができたら公表されるつもりですか。
  138. 池田勇人

    池田国務大臣 外務省でその内容を見まして、適当の処置をとると思います。
  139. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 格別、公表しては悪いとかという約束はなかったのでございますか。
  140. 池田勇人

    池田国務大臣 そんな外交文書とは私は受け取らなかったのでございます。参考に向こうの考え方を文書にしたものと認めております。
  141. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 もう翻訳はできておると思いますので、私は一日も早くこれを公表されるなり、少なくとも私どもに提示をされたいと思います。そのことは、くどいようでありますけれども、このメモに伝えられたと称して、総理も御承知のように、新聞の取り扱い方はいろんなかっこうに出されておりまして、それを中心に私どもは判断しようと思いまして、ほんとうはきょうのこの質問にも内容を見ようと思いましたけれども、各社ともみな見方が違っておるし、中身が違っている。それに対して経済界なりその他はいろいろ模索を加えたり、検討を加えたりしておるようでありますが、私は、少なくともソ連が貿易を拡大しようとする立場から総理に対して一つの意思表示を文書をもって行なわれたとするならば、その内容は国民の前に明らかにされたほうがよい、こう思うのでありますが、そういう措置はとられますか。
  142. 池田勇人

    池田国務大臣 内容をよく聞いて処置いたしたいと思います。
  143. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 内容をよく開いてというのはどういうことですか。内容を見た上で判断という意味ですか。
  144. 池田勇人

    池田国務大臣 翻訳もできておるそうです。発表しても何ら差しつかえないことだということでございます。
  145. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 早急に発表せられて、少なくとも私はそれならば資料として要求いたしまして、この内容を具体的に検討いたしたいと存じますが、この会談に際しまして、メモなるものを手渡しながらいろいろ池田さんに対して貿易拡大の話がされたと聞いております。したがいまして、いまその資料をすぐに見ることができませんから、この中の私どもがどうもはっきりしない点をひとつ具体的に二、三お伺いいたしたいと思います。  三億五千万ドルの買い付け計画を明らかにした、そしてそれがメモの内容にもなっておる、こういう話でありますが、この三億五千万ドルの買い付け計画というのは、たとえばどの程度の大きさの硫安設備であるとか、あるいは化学設備であるとかというふうに具体的に列挙して、そしてその合計が三億五千万ドルというふうになっておるものでありましょうか。同時にまた、それらはこれまでのプラント数の引き合いには出なかったもので、今回新しく提示された、そういうものでしょうか。感じを承りたいと思います。
  146. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 これは、いろいろ尿素であるとか、あるいは化学工業施設であるとか、そういったものの名前をあげております。そうして、これは目下商社に話をしようとしておる、またしたものもある、こういう趣旨の覚え書きでございます。
  147. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 六四年から六六年の間にソ連に引き渡される予定になっておる既契約分のたとえばパルププラント、紙プラントであるとか化学プラントであるとかというようなものは約二億ドル程度ぐらいある、こういうふうにいわれておりますけれども、そういう既契約分はこれには入っておらず、全然新しいものですか。
  148. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 その点は必ずしも明確ではございませんけれども、いろいろな施設の名前をあげまして、総額三億五千万ドルぐらいのものを注文したいと思っておる、こういうことでございます。
  149. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 必ずしも明らかでないというのがこんがらかりのもとだと思います。重ねて私は、三億五千万ドルの買い付け計画の内容について、いま総理も言われたことでありますから、一日も早く公表されることを要望いたします。そして経済界がいたずらにそういう種みたいなものをさがし回ってごちゃごちゃせぬように、まず貿易拡大について政府が基本的に方針を立てられるならば、向こうの材料をはっきりと提供されたいと思います。  それから二番目に、これと関連して伺いますが、プラント類の契約について、その当時、たとえばそのプラントでつくった製品で支払ういわゆる製品払いというような方式だとか、それから延べ払い条件の緩和だとかというもの、つまり買い付けについてのそういう希望条件が相当強く述べられたという話でありますが、それはどのように言われたものであるか、総理、承りたいと思います。
  150. 池田勇人

    池田国務大臣 ミコヤン氏との会談につきましては、貿易の拡大を望んでおるという希望がございましたので、私のほうより、あなたの国との貿易を拡大するためには、やはりコマーシャルベースによって日本人の貴国における貿易活動のやりやすいように、いわゆる滞在期間の延長その他の措置をとるべし。また、プラント輸出の延べ払いは、日本につきましても資金上の限度がある。したがって、できるだけ早く金を返すようにしてもらいたい、そういう話をしましたら、いや、プラント輸出につきましては、そのプラント輸出によってでき上がった製品を日本に買ってもらいたいと言うから、そんなことはできない。日本自分のところでプラント輸出するものは、製品は相当できるのだ、それを日本がまた製品で金を払ってもらうようなことはわれわれの経済の頭にはないとはっきり私は言っておきました。そうしてまた、私はこうも育ったのであります。日本に要らないものをどんどん売りつけようとしている、こういうことは日本として好まない、やはりコマーシャルベースでやらなければならぬ、あなたのほうは政府貿易だからそういうことをやりたい、また収支とんとんという考え方でそういうことをしいられるけれども、これはコマーシャルベースでないということをはっきり私は言っておるのであります。したがいまして、いろいろシベリア開発という話でございますが、現にシベリアの開発がいわれるほど進捗していないと私に見ておるのであります。しかもシベリアと申しましても、西部にごく近いほうの分の開発は相当計画されておるかもわかりませんが、われわれの考えておる極東方面の分は、具体的にあまり計画が進んでいないと私は見ておるのであります。そうすると、いかにも消極的のように聞こえるかもわかりませんが、ソ連の実態が、シベリア計画についてそこまでまだいっていない。それだから私は、三億五千万ドルにつきましても、かなり批判的に見る立場でやっておるのであります。しかもまたヨーロッパ方面、ことにイギリスに対しまして、化学プラントの相当な申し入れ、契約ができつつあるかに聞いております。しかし、それはシベリア問題ではなしに、ヨーロッパロシアの問題でございます。私は、日本といたしまして、ソ連の要求するがごとく多額の延べ払いをソ連に優先的にやることにつきましては、東南アジア等低開発国を控えている日本といたしましては、よほど慎重に考えなければならぬという頭があるのでございますから、いま三億五千万ドルの計画を見せられたならば、これをすぐ日本政府が取り立ててどうこういうところまでは私は考えていないのでございます。したがって、いかにもメモなるものか何かに対して非常に冷淡に聞こえたかもわかりませんが、私はそういう考えを持って、もちろん、ソ連あるいは中共との、すなわち共産圏貿易につきましては非常な関心を持っておりますが、低開発国に対する日本の立場というものもそれ以上に考えなければならぬ状況でございますので、慎重に事を運んでいかなければならぬと思っております。
  151. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 しかしながら、いずれにしましても、延べ払い条件の緩和などの希望があったようにいまお話しでありましたわけですが、その話と、それから従来の日ソ貿易の米本原則みたいなものに、輸出入のバランスの問題があり、バーター制の問題がありまして、こういう考え方に対する従来のソ連の態度というのは非常にかたいものでありましたが、こういう考え方と、今度延べ払いを延ばしてふやせという考え方とは、どういうふうに関係して受け、取られたわけですか。
  152. 池田勇人

    池田国務大臣 ソ連の従来の考え方は交わっておりません。その上に持っていってそういうことを出そうとするのでありますから、困難があるのであります。だからよほど慎重に、朝野をあげて考えなければならぬ問題だと思います。
  153. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 田中大蔵大臣、いまのような総理の基本的な見方があるようでありますが、新聞の伝えるところによりますと、対ソ延べ払い輸出の条件緩和について検討を始める意向だと伝えられる。そして田中大臣も大体それに賛成の立場で対処の方針を定められておるやに承るわけでありますが、どういうことでしょうか。
  154. 田中角榮

    田中国務大臣 対ソ貿易につきましては、総理がいま述べられたとおり、コマーシャルベースが原則でございます。いままでは、延べ払いにつきましては五年ということでございまして、世界各国も大体そのような状態であったと思います。しかし、船の問題を契機にしまして、五年半というものを新たに認めたというケースがあるわけでございます。その後、ミコヤン氏がこちらへ参りましたときに、十カ年間延べ払いというような話があったようでありまして、貿易商社等、これらの問題に対して検討を願いたいという陳情がございました。私は、原則論としましては、日本が賠償をやっておったり、賠償に付随する経済協力をしておったりする東南アジア諸国があるのでありますから、それらに重点を置かなければならないという問題、しかも資金量の問題もございますので、簡単に延べ払い条件が延びるというようなことはなかなかむずかしいことではあるが、外国の対共産圏貿易の状態等、十分調べましょうということを返事をすると同時に、外国がソ連貿易に対してどういう延べ払いをやっておるか、ときどき日本の府社等では、日本は非常にかたいことを言うけれども、イギリスとか西ドイツとかはうまくやっているじゃないですかというようなことを言います。どうしてうまくやっておるのか、表に出ている五年というようなものよりも、一体何をやっているのか、そういうものも出光をして十分調査をせしむるというような状態であります。
  155. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 いま後段に述べられましたけれども、新聞の伝えるところによると、ミコヤン氏は、たとえばイギリスは十年、イタリアは十五年程度を提案しておると言ったとか言わぬとか。しかしながら、それと関連をして、さきに来日したイギリスのバトラー外相は、それに対しては五年以上の延べ払いを実施したことはない、こう言っておるようでもありますが、実際にその辺の近所を調べさしておりますか。
  156. 田中角榮

    田中国務大臣 調べております。どうも業者の言うように、五年以上適当にやっておるというような例はないようでございます。
  157. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 適当にやっておるところはないような事情でありますが、しかし、新聞の報ずるところによりますと、先ほどのように、大蔵大臣は延べ払いの期間の七、八年ぐらいの延長、それから頭金比率のある程度の引き下げなどをひとつ検討をせよと言ってやられておるという話でありますけれども、そういう検討もされておるわけですか。
  158. 田中角榮

    田中国務大臣 具体的にそのようなことを事務当局には申しておりません。ソ連は低開発国ではございませんから、低開発国に対してもっと延べ払い条件を許容しなければならないというような日本の現状に徴しまして、実情等十分調査しておくようにということでありまして、七年とか八年とか、また頭金を少なくするとか、そういう具体的な問題を指示しておりません。
  159. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 くどいようですけれども、新聞によりますと、五月二十六日の記者会見か何かで、七年ぐらいまで延長したらいいじゃなかろうかと思っていま考えさしておるというような話があったとか、いずれにしましても、延べ払い期間の延長についてはある程度弾力的に考えようという意向はあるのですか。
  160. 田中角榮

    田中国務大臣 新聞記者会見のことでございますから、その間の事情をこまかく申し上げることはどうかと思います。質問は、十年の要求でありますが、五年を固執するのですか、こういうことでありますから、相手のある活でありますから、相手が五年と言えば五年一カ月ということもあるし、また、相手が五年半と言う場合、それよりもいいという場合もあるし、しかし日本の商社は、五年ときめればすべてのものを五年とする、こういう弊害があるが、相手が三年と言うなら三年一カ月というように、もっと弾力的に考えなければならないだろう。しかし、いろいろ業者の宵を聞きますと、どうも各国が公に話をしておるものとは違って、別な条件で対ソ貿易をやっておるというようなことがありますので、そういう実情を十分調査をしながら、資金の事情も勘案をしながら、相手の出方を待って考える、こういうことを申したわけでありまして、先ほど総理が言われたとおり、日本としては、まだ他にも重点的に信用供与をしなければならない問題もありますし、ソ連は、御承知のとおり低開発国ではなく、五年半よりも五年、四年ということもまた考えられるわけでありますから、広い意味で検討をするようにということであります。
  161. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 新聞を通じて見るだけでありますから、事情がさっぱりはっきりしないがために、私は純粋に質問をいたしまして、三億五千万ドルについて、いかにも大きなみやげのような感じで伝えられておることに対してどう見ておられるか、それから延べ払い条件などについて本気に取り組む姿勢があるかどうかというような点をお聞きをしてみたわけであります。しかしながら、私はこれらの問題を具体的に見る前に、ほんとうは今度ほど、いわゆるミコヤン旋風と言われるほど、新聞を通じて日ソ貿易の拡大問題を中心に経済界を中心にともかく大きな問題をひき起こしたことはない、少なくとも国民にはそういう印象を与えていると思うのです。ちなみに、総理大臣にしろ大蔵大臣にしろ、自分がやったんだからたいしたことはないと思われるかしらぬが、この二週間の間の新聞をその記事だけ拾って読んでごらんなさい。とてもじゃないが頭の中がこんがらかってしまって、どうなんだかわけがわからないことになってしまうほど、ともかくいろいろな状態になっていることは事実だ。したがって、私はむしろ、きょうの質問でもはっきりしないが、こういう問題については、早急に政府は基本的なこの問題についての態度を国民に明らかにする義務があると思う。そうでなくても、ウの目タカの目みたいになって、過当競争を一そう今度は外向きに過当競争になるようなかっこうで、東京財界と関西財界とが角突き合わせてみたり、関西財界自身がぎりぎりしてみたり、ともかく無用の混乱を巻き起こしているような状態心については、ひとつ当局においてその見通しを明らかにしながら、適当なる対策を述べられるべきだと思うわけであります。したがいまして、私は今度の問題について、日ソ貿易の拡大を中心として日ソの経済協力関係がうんと前進することを期待するものではありますが、まずその基本的な立場に、先ほど総理は、ソ連のシベリア開発などはどうもそれほどうまくいっているんじゃない、あまりそこにウエートを置いて考えないほうがいいのではないかという見方を披瀝されたわけでありますが、まさにこのことこそは一番この問題に対する日本政府の基本的な考えのもとになろうかと思うわけであります。したがいまして、私は重ねて今度のソ連からの話の一番もとになっておる貿易拡大問題が、シベリア開発及び沿海州開発計画の推進というところに根があるわけでありますから、この問題が一体ソ連の国内の事情から推進されると見ておられるかどうか。先ほど総理の言われたのは、われわれも外から見ておりますように、たとえばソ連の国内事情として、食糧問題だとか農業問題だとか、その辺が相当にややこしい問題もあって、必ずしもシベリア開発を重点施策として取り扱っているかどうか、今後推進するかどうか、疑問視せられるような感じもあるので、その辺も考えての見方であろうと思いますが、それらについては外務省としては相当な見方を私はこれまでも持っておられるのではないかと思うのですが、外務大臣、あらためてソ連のシベリア開発、沿海州開発に対して、政府の基本的な見解はどのようなものであるか、披瀝を願いたいと思います。
  162. 大平正芳

    ○大平外務大臣 私ども承知しているところでは、ただいまソ連政府が経済政策として重点を置いておるのは食糧生産であり、食糧関連の化学工業であると承知いたしておるわけでございます。したがいまして、肥料等食糧関連の化学工業につきましては、相当の投資をもくろんでおるようにうかがわれるのでございます。いうところのシベリア開発でございますが、私どもが受けておる情報によりますると、西シベリアの開発が重点であって、東につきましてはさほどの進捗はもくろまれていないというように承知いたしております。
  163. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 要するに、総理大臣をはじめ大蔵大臣の見方は、シベリア開発に対しては相当渋そうでありますし、同時に、したがいまして、せんだっての三億五千万ドル買い付けを中心とするソ連側の引き合いについても、相当慎重な様子が見受けられるわけであります。しかしながら、経済界は逆にこの問題に対して非常に期待をかけておることも事実であります。私はいま何とも申しませんけれども、これまでの日本貿易が自由諸国間の貿易に、格別アメリカ貿易に非常に片寄っておる状態をお考えになりながら、私はこの問題を十分慎重に、同町に建設的にひとつお考えになるようにお願いをいたしておきたいと思います。  この問題にからんで最後に大蔵大臣にちょっと念のために伺いますが、延べ払い問題というのが今後の一つの山のような気がいたしますが、現在対ソ延べ払いの残高は一体どれくらいですか。
  164. 田中角榮

    田中国務大臣 一億ドルくらいでございます。
  165. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 そんな程度ですか。新聞その他で私ども見ると、輸銀分だけで大体一億五千万ドルくらいはあるだろうという話ですが、一億ドルくらいのものですか。  それからもう一つ、重ねてまた対ソ輸出による本年の受け取り予定額がどれくらいの感じですか。
  166. 田中角榮

    田中国務大臣 数字の問題は取り調べてすぐ申し上げます。
  167. 渡邊誠

    ○渡邊(誠)政府委員 お答えいたします。対ソ貿易の最近の実績を申し上げますと、三十六年度におきましては、輸出が六千八百万ドル、輸入が一億二千三百万ドル、三十七年度におきましては、輸出が九千二百万ドル、輸入が一億二千三百万ドル、三十八年度の実績は、輸出が一億一千八百万ドル、輸入が一億五千六百万ドルでございます。これは、延べ払い輸出の分につきましては、五年の分割払いになっておりますから、輸出の中にはその分が入っております。それから現金で輸出しておる分もございまして、三十八年度におきましては、輸出は一億一千八百万ドルということに相なっております。輸入はすべて現金決済と申してよろしいわけでございまして、木材とか、石炭とか、その他対ソ輸入物資を現金で支払った分の実績でございます。本年度におきましては、これよりも若干伸びるという程度ではないかと存じます。
  168. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 だから、どれくらいの受け取りの見込みですか。
  169. 渡邊誠

    ○渡邊(誠)政府委員 ちょっと正確な数字は記癒しておりませんけれども、三十八年度の実績よりも若干伸びるという程度ではないかと思います。そう大幅な増加は……。
  170. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 一億四、五千になりますか。
  171. 渡邊誠

    ○渡邊(誠)政府委員 輸出は一億三千万ドルくらいではないかと思いますが、大体輸出と輸入につきましては、キャッシュでバランスするということが日ソ貿易のたてまえの一つになっておるのでございまして、最近におきましては、輸出需要はございますけれども、輸入品で少し頭打ちのかっこうになっておりまして、去年の暮れに対ソ貿易交渉をいたしたわけでございますが、本年度につきましては、あまり大きな伸びは望めないという状況であったように聞いております。
  172. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 さらに、一億三、四千としても、その中で過去の延べ払いの返済分とその頭金の合計額というのは、大体どれくらいだとお考えになりますか。
  173. 渡邊誠

    ○渡邊(誠)政府委員 正確な数字はただいま持ち合わせておりませんので、至急取り調べまして……。
  174. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 見当はどのくらいですか。
  175. 渡邊誠

    ○渡邊(誠)政府委員 見当といたしましては、おそらく三分の一見当が過去の分並びに新規契約分の入金ではないかと存じます。
  176. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 急な話で数字がはっきりしないようで残念でありますけれども、大体いまのお話のように、ことしの受け取りが一億三、四千であるならば、その中で過去の延べ払いの返済分と頭金の合計額は、まあまあ三割程度、四千万ドル程度じゃなかろうかと私ども聞いておるわけです。  そこで私は、先ほど総理大臣からもちょっと話がありましたが、今度のミコヤン氏らのなかなか景気のいい話ではありましたけれども、それに対して延べ払い条件緩和の問題が相当強く出ておることは、御案内のように、ソ連内における外貨事情のかなりの窮迫しておる事情を反映しておるものではないかと思うのです。そしていまの数字で見られるような状態から見ますと、むしろ、わが国のソ連向けプラント輸出がこれまでのようなペースで進んだ場合には、逆に近いうちに対ソ債権が大きく累積するおそれがあるわけでして、むしろそのことを警戒するならば、現状においては、わが国としては輸入の幅を増大をするか、たとえばそれは原油みたような第一次産品になると思いますけれども、輸入を大幅にふやすか、あるいは逆にプラントの延べ払い輸出のペースを落とすか、そういういずれかの方法をとらなければ、このままでいくと、順調に伸びてきた日ソ貿易が一つの壁にぶつかるのではないかというような状態にきておるような気がするわけであります。そういう状態の際に、いまお話に出ておりまするような延べ払い条件の緩和を前提として、あるいはそれを含んで日ソ貿易の拡大問題をぐっと推し進めるということは、従来の観点からするならば、ここに一つの大きな決意を必要としなければならぬだろうと思う。従来の観点からは相当無理な感じで、したがって、ここには政治的に非常に判断を加えて、貿易拡大のためにはここに踏み切ろうという一つの決意がなければ、私は今後日ソ貿易の、いま話が出ておるような線に沿っての拡大方針というのはとりがたいのではないか、こう考えるのでありますが、大蔵大臣はそういう観点に立ってこの問題を見ておられますかどうか。
  177. 田中角榮

    田中国務大臣 貿易の問題は、私よりも通産大臣からお答えをしたほうがいいかと思いますが、大蔵省で考えておりますものは、延べ払いの条件、信用供与の状態等を検討いたしておるわけであります。先ほど総理が申されたとおり、日本としては、東南アジアの低開発国等に対してはいろいろな延べ払いその他によって経済協力、経済援助等を行なう、また行なっておるわけでございます。こういうものを重点的に考えておるわけであります。また世界各国でも、御承知のとおり国連の貿易開発会議におきましても、低開発国に対してはひとつ援助をしなければならないということであります。しかしソ連は、先ほどから申し上げておるとおり、低開発国というよりも世界の主要工業国、こういう国でありますから、やはり日本に対して、ミコヤン氏が来て、日本が十カ年にしなければ西欧諸国は幾らでも延べ払い供与をするのだとか、そういう政治的な発言であろうと思いますが、私たちは、やはり日ソ間の貿易をするにしても、他の諸国に対する資金量の計画もしなければならないわけでありますから、そう無制限に信用供与をするというようなわけにはまいらないわけであります。あなたがいま申されたとおり、ミコヤン氏が国内向け言ったのか、また外貨事情が非常に悪いためにそういう延べ払い条件、頭金の削減というようなことを提唱されたのか、そういうことはわかりませんが、いまの状態でソ連側が言っておるというような基本線を固持する限り、日ソ貿易が、国民の一部で非常に待望しておるように、大きく前進をするということは非常にむずかしいのではないか、前進をさせるために延べ払い期間を大いに延長したり、頭金を少なくしたり、また生産品払いで受け取りたいというようなことは、いまのところなかなか考えがたい問題でありますので、大体あなたがお考えになっておるような状態であるというふうに考えます。
  178. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 重ねて念のために総理に伺いますが、先ほどの感じでありますと、シベリア開発に対する、言うならば慎重な見解を総理は示され、同時にまた、従来の日ソ貿易のバランスを最も強く考えるソ連の態度は、従来と変わらないという考え方をしておられる。いま大蔵大臣が言われますように、現在の帳じりから見て、今後これ以上に対ソ債権が累積することについては一つの危惧があるとするならば、新聞その他では相当積極的な動きがあるようでありますけれども、むしろ逆に言うならば、消極的な態度が現在の総理、池田内閣の姿勢のような感を持つのでありますが、大体そのように理解してよろしゅうございますか。
  179. 池田勇人

    池田国務大臣 何も消極的な気持ちじゃない、現実がこうだとわれわれは見ておるわけなんでございます。したがいまして、ソ連の政府が常に延べ払いの条件緩和とか、こういうふうに日本の貸し越しになることを願わず、貿易拡大で現金取引をうんとやるようになってくれば、われわれは積極的にやっていきたい。しかし、現実の姿がこうだということを私は申し上げておるのであります。したがいまして、ソ連の根本的な、わが国との貿易につきまして商業ベース、原則としてキャッシュ・オン・デリバリ、これでいくならば拡大ができる。しかし現実はそうでない。ことにいまジュネーブでやっておりまする世界貿易開発会議におきまして、政府として国民所得の一%はひとつやっていこう、こういう考えを持っております場合におきましては、今後わが国の東南アジアその他低開発国への経済援助について、いまの輸出入銀行の資金だけでいいかどうか、こういう問題につきまして今後私は十分検討を加えなければならぬと思うのであります。大体低開発国への援助が、賠償を入れまして、おととしは三億五、六千万ドル、去年は二億七、八千万ドル、こうなっておるのでございますが、国民所得の一%と申しますと六億近いものになるのではないか。そうなりますと、いまの分の倍近くになるということになれば、よほどやはり延べ払いにつきましてのいわゆる体制を十分今後考えていかなければならぬ。そういう方向で進みますが、いま新聞で非常にはやされたようなソ連への延べ払いというものは、わが国全体のあれからいえば、なかなか現実問題として制約があるということを申し上げておるのであります。消極的という意味じゃございません。
  180. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 しかし、いずれにしましても、これまでの態度を変えずにこの問題に対処しようとすれば、結果として私は消極的にならざるを得ないと思うのです。そこで実際私は、この使節団と一緒に日本を旅行してみたときにも感じたのですけれども、先ほどお話しの中で、延べ払い条件緩和の問題とともに、プラントを買った場合に、そのプラントでつくった製品で支払うという話があって、一蹴された話を総理はされました。しかし私は、もしほんとうにこのことばどおりの、言うならば製品払いというのか、生産分与方式というのか、そのことをミコヤン氏が言ったとするならば、どうも少し常識離れみたいな気がするわけであります。そして私は旅行しておって感じたことは、日本流の通訳さんを入れて話をすると、日本語をきちっと言ってしまう。その日本語に当てはまらない内容を向こうが言っておる場合を私はちょいちょい感じたのです。これは話が少々違うかもしれぬけれども、常識的に考えると、むしろシベリア開発とか、沿海州開発とかというのは、ソ連のいまの状態からするならば、それにほんとうの全力を注ぐということははなはだ困難だ。むしろ、この開発自身に日本計画的に協力してこい、そしてプラントその他のものをつぎ込め、同時に、でき上がった果実に対しては貿易を拡大してうんと持って知れ、そういうくらいの、むしろこのシベリア開発自身に積極的に日本が参加をしてくれという意味の問題の提起じゃなかったのですか。そういう受け取り方はできないですか。同時に私は、今後日ソ貿易を本格的に拡大し、日ソ経済協力を伸展しようとするならば、そういう考え方でいくのでなければ、総理はどう言われようとも、結果として消極的ということにならざるを得ないと思うのですが、重ねて御所見を承りたい。
  181. 池田勇人

    池田国務大臣 考え方が消極的だ、引っ込み思案だというふうにとられては困る。われわれはあくまで現実に即して積極的にやるつもりでございます。現実がそうだ。いまお話しのように、日本からプラント輸出をやって、どんどん日本で製品を持っていけ、こういう気持ちになることは、私自身としてはいまのソ連の外交政策、いろいろな点からいってむずかしいと思います。だから、あくまで善意でほんとうにシベリアの開発を日本と共同でやるというような考え方は、私には持てません。いろんな話のときにも、東京-モスクワ間の飛行機の乗り入れ問題につきましては、たいへんなことなんでございまして、シベリア開発を共同でやろうなんということを思って向こうが言うのじゃないかということは、私はとてもそういう気持ちで話はできぬと思います。
  182. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 それでは関連して、いま総理が口をはさまれました日ソ間の航空協定問題というのは、これも新聞を見ておりますと、最初の話は、今度はこれはすぐにでも話ができそうなような状態にずいぶん強く宣伝をされた。ところが、知らぬ間に何だか龍頭蛇尾のように消えて、とてもじゃないが、いま無理みたいな状態になっておるわけであります。この交渉は運輸大臣が当たられたのか、外務大臣が当たられたのか、その当たられたところでちょっとその現状だけを明確にしていただけませんか。
  183. 池田勇人

    池田国務大臣 この問題は 領土問題と同時に、私との間の二つの大きい問題でございました。私は二回にわたって当たりました。東京-モスクワ門のお互いの乗り入れということは、私はぜひやりたい、こう考えます。しかし、それにはやはり航空協定で相互に同じ条件でいかなければいかぬ。それはシベリアの開放でございます。われわれは、シベリアの開放という前提を承認するならば、一年あるいは二年の間はソ連の飛行機をチャーターして共同計算で一年くらいはやってもいいんじゃないか。だから、シベリアの空を開放するという原則を私は求めたかったのであります。しかし、向こうはその原則をくれません。いずれはというので、ずうっと延ばそうという考え方でございますので、私は、オリンピックを控えて東京-モスクワ間の問題は解決したいという気持ちはあったのでございますが、原則をつかまない以上は、遺憾ながら協定成立にいかなかった。したがいまして、第二回目のときにおきましても、自分はこういう考え方だから、とにかくシベリアの空を開放すべきだ、こういうことで、とにかくもう一ぺん考えてくれということを育っておるのであります。したがいまして、もしソ連がそういう気持ちになるならば、私は早急に再交渉してもいいと思っておるのであります。しかし、原則を認めざる限りにおきましては、私は早急に航空の暫定協定ができるとは思いません。ことにまた、日本のことを考えますと、東京-モスクワ間だけでなしに、モスクワの向こう、ビヨンド・モスクワも考えなければならぬという気持ちを持っておるのであります。これは世界交通路に対して市要な問題でございますので、私は、原則はあくまでとるべしという考えのもとに進んでおるのであります。
  184. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 そうしますと、将来におけるシベリアの上空開放という原則論が一番問題になっておるので、いまのチャーター云々の暫定協定の中身自身が問題だということではないと了解してよろしゅうございますね。
  185. 池田勇人

    池田国務大臣 大体、向こうの飛行会社と日本の日航とがソ連の飛行機を使い、町方の国旗を掲げて、そして向こうの毎土はソ連の飛行士、日本の上空は日本の飛行士、こういう平等な関係で計算も折半ということにソ連は同意しております。これも日本は同意しております。しかし、そういう一時的のもので、いつまでもシベリアの空の開放ということを約束せざる限りにおきましては、私は、その暫定的な分はまとまっても、航空協定をいま直ちに結ぶという気持ちはございません。
  186. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 関連してお伺いいたしますが、これも新聞の報ずるところによりますと、六月の中旬、やがてワシントンで今度は日米の航空交渉が行なわれて、これに運輸省の局長以下が行って交渉されるという話が出ております。いまは御承知のように必ずしもアメリカの空は日本の飛行機に開放されてはおらぬ状態であるわけです。おそらくそのような不平等をなしにするような交渉に行かれるのだろうと思いますけれども、そういう形でこの問題は進められるのかどうか、これは総理大臣、どちらでもけっこうですが……。
  187. 池田勇人

    池田国務大臣 お面しのとおり、日米航空協定につきましては不平等でございます。私は、この際絶対にこれを平等にしなければいかぬ。一ぺんにビヨンド・ニューヨークまでいくか、あるいはニューヨークまでにして、一応部分的なけりをつけるかということはいろいろ考えられるところでありますが、あくまで平等の原則を打ち立てなければならぬという強い決意を持っております。
  188. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 いまの総理大臣の方針わかりましたが、運輸大臣に重ねて伺いますが、これは数年前に交渉して事実上つぶれて、今度新たな交渉ということだろうと思うのです。私は、ほんとうは、こういう本格的な交渉こそ大臣その他力のある人が行って交渉されればいいと思うんだが、何か会議みたいなところに行って並び大名みたいに顔を出しておるときには大臣みたいなえらい人が行かれるけれども、そういう交渉のときはたいがい事務当局みたいな感じを受けるわけです。こういう大事な、しかもちょうど日ソの問題が出ておるときでありますが、これを事務当局と業者にまかす交渉くらいで、いま総理大臣の言われたようなかっこうにはっきりとなる見込みを持っておられるのか、その辺の事情をお聞かせ願いたいと思います。
  189. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 基本問題につきましては、ただいま総理大臣が答えたとおりでございまして、私は、困難はあるけれども、これは何とかして不平等条約を平等に持っていくように努力いたしたいと考えております。と申しますのは、最初、この話の起こりはずいぶん古いのですが、昨年日米経済合同会議におきまして、私がホッジス商務長官に、あれはどうなっておるのかということにつきまして強く要望いたしまして、その結果、自分はその担任でないからよく考えるということで別れて、その後駐米大使の武内君が私どもの考え方を強力にアメリカへ申し出まして、今度はそれじゃひとつ交渉してみようということになりまして、六月の下句に、最初は東京を要望したのでございますが、諸種の事情でワシントンでやることになったのでございまして、困難ではあるが、今年は何とか実現いたしたい。さっき総理が申し上げましたように、ビヨンド・ニューヨークはとにかくとして、いまサンフランシスコ、ロサンゼルスでとまっているやつをニューヨークまではぜひやりたいという強い熱意と、それから願望を持っております。その成功することを私は期待いたしておる次第でございます。
  190. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 期待、けっこうでございますが、同時に、私が申し上げましたのは、そういう折衝にこそ高度な政治折衝も必要であろうから、ひとつ閣僚級でも行かれたらどうかという希望を申し上げたわけでありますが、重ねて強くそのような希望を申し上げて、目的が達成できるような御努力をお願いいたしたいと思います。  ミコヤン関係の問題で、時間がありませんから、最後にはしょりまして一言だけ念のために伺っておきたいと思います。  それは、今度のミコヤン氏が見えた場合の政治的な会談の一番中心は、平和条約等を前提とする北方領土の問題であったと思うわけであります。この北方領土問題につきましては、池田総理は、新聞の伝えるところによりますと、ともかくも従来どおりの相当に強い姿勢をとっておられるように承ったわけであります。そしてまた最後に、ミコヤン氏からソ連を訪れてはという話があった際も、時が来るならばと、たいへんうまい表現でもってそのことばをぼかされながらお答えになっておるようでありますが、このことは、私どもあるいはまた一般の解説者も、もし北方領土問題が解決をするならば本格的に平和条約に乗り出してもよいが、いまのような平行線ではとても無理だということであり、そしてまた北方領土問題が解決の見込みがつくならば、むしろ積極的に平和条約に前進する意味においてもソ連を訪れてもいい、こういう感じに受け取ったのでありますけれども、そういうような見方でよろしゅうございますかどうか、重ねて承りたいと思います。
  191. 池田勇人

    池田国務大臣 二回にわたり、ことに二十六日の昼食をともにしながらの話では、私から大体二時間のうち四、五十分、北方領土の問題につきまして沿革その他を申し上げました。そしてサンフランシスコ講和会議の状況からいろいろ説き起こしまして、一八五五年の日露通好条約、一八七五年の樺太千島交換の条約、カイロ宣言、ポツダム宣言、ヤルタ協定の不承認等につきまして十分検討を加えてもらいたい、ことに樺太千島の交換の条約には、得撫島以北十八島の一々島の名前をあげてありまして、択捉、国後は入っていないのだ。ああいう条約なんかを十分検討してくれということを申しまして、とにかく国民の悲願である固有領土を返してもらわざる限りにおいては、平和条約はとても国民は受け入れないということを強く主張し、そしてまたミコヤン氏に十分の御検討を願いたい、御研究願いたいということを言っておきました。私は、再三にわたっての国民的悲願を彼はある程度感じたのではないかという気持ちを持っております。しかしそういう問題がございますので、招待は受けましても、いまのところ私が行く状態でないということをえんきょくに言っておきました。
  192. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 北方領土に対するわれわれの希望も基本的なもので、きわめて強いものでありますが、同時に平和条約の締結もまた日本国民の悲願でもあるわけであります。したがいまして、相手のある交渉でありますから、なかなか棒をのんだようなかっこうにはなりがたいものだと存じますけれども、少なくとも北方領土問題については、わが党はたびたび宣明いたしておりますように、南千島はもちろんのこと、歯舞、色丹というような南千島にも入らない、北海道の一部だという観点に立って、国後、択捉の南千島、これは当然でありますが、同時に一番問題の北千島についても、いろいろな問題がありますが、私どもは経緯からいって、これに対する領土の主張権を放棄しない立場を堅持しておるわけであります。これらのわれわれの考え方も十分に御検討いただきながら、領土問題についてはきぜんたる態度をとられんことを希望いたします。  三番目に、沖繩問題について伺いたいと思います。沖繩問題というのは、どうも日本の国内で私どもが問題にします場合に、歴代の保守党内閣は、これまた総理は弁解があるか知らないけれども、非常に消極的だと私どもは受け取っておるわけであります。  まず一昨年、一九六二年三月、ケネディ大統領が米国の沖繩新政策に関する大統領声明というものを発表いたしまして、沖繩に対する米国の政策を今後前向きに進めていく方針を明らかにされた。これに対して私どもは非常に大きな期待を持ったわけであります。格別この声明は、特に次の三点、すなわち第一は、従来の日本の潜在主権ということばを一歩進めて、沖繩は日本領土の一部であるということをはっきりと認めたこと、二番目には、沖繩が完全に日本の主権のもとへ復帰することを期待し、その困難をなくするために日米双方が経済援助を増大するという施政権返還への道程を、抽象的ではあるけれども明確に示したこと、そして第三には、高等弁務官の拒否権をできるだけ制限して、住民自治を拡大することを明らかにし、自治権の尊重に対するこれまでにない熱意を示したこと。こういう特に私どもの記憶に残っておる三点を中心とするところのケネディ大統領の新政策は、これまでの沖繩問題について私どもがもやもやとしておった頭の中をすっとさせるような感じで、大きな期待をわれわれに持たし、同時に沖繩住民に対しましても大きな喜びとなっておりまして、これに対する期待は非常に強いものであったわけであります。このことは、われわれだけでなしに、池田総理も当時明確に感じておられただろうと思うわけでありますが、まず、これから論じようとする問題の出発点でありますところのケネディ新政策に対する総理の率直な気持ちを伺いたいと思います。   〔委員長退席、松澤委員長代理着席〕
  193. 池田勇人

    池田国務大臣 ケネディ大統領の一昨年の声明の前に参りまして、沖繩問題につきましては、早期返還を中心にしまして十分話し合いをいたしたのであります。そういう点もございまして、いまお話しのような、われわれとしては喜ぶべき声明に相なったのでございます。しかるところ、その後日米協議委員会あるいは日米琉の技術協議会等の設立につきましていろいろ努力いたしたのでございますが、アメリカの事情その他もありまして、一年余りの時日を要したことはまことに遺憾でございますが、最近におきまして、こういう問題も解決いたしまして、われわれはケネディ大統領声明の線によって沖繩島民の民生の安定、福祉の増進につきまして今後十分力を尽くしていきたいと思っております。  なお、この問題につきましては、政府間のみでなく、やはり民間世論につきましても、私は相当アメリカのほうで考えてもらわなければならぬと思います。アメリカの報道関係者と会いますつど、私は沖繩問題は出しておるのであります。幸いに沖繩問題に対するアメリカの世論の反響も相当あるようであります。最近の有力新聞の社説等につきましては、われわれの考え方に協調的な論説もあらわれる状況になってまいっております。私は、今後ともこういう機運を醸成いたしまして、できるだけ早く施政権の返還、またそれまでにおきましても、ケネディ大統領の言われるように、施政権返還のときに備えて、沖繩島民の方々の福祉の増進に努力していきたいと考えております。
  194. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 総理はいま、最初ケネディ新政策が発表された月はなかなかスムーズにいかぬようには見えたけれども、最近において何か好転したような感じの発言をされた。もし最近において沖繩問題が好転をしておるとお考えになるならば、これは重大なことだと思うのでありますが、ほんとうにそうお考えになりますか。
  195. 池田勇人

    池田国務大臣 いまの私のことばは、好転したと言うのではございません。ケネディ大統領の声明以後いろいろな事情で非常にそれの実現がおくれてきておる、しかし、幸いに、最近にいまの日米協議委員会、日米琉技術協議会等が設けられるようになったということを言っておるのであります。また、そういう政府剛の問題として取り上げるのみならず、民間のほうの向こうの世論に対しても、沖繩に対する日本の立場についての認識を深めるよう努力をしている、そうして、最近有力な新聞につきましても、社説にこの問題を取り上げるようになったということを言っておるのであります。
  196. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 きのうの新聞は大田主席が退陣をせなければならないかもしれないという事情を報道していることを御存じだと思います。委員会ができたのは御承知のとおりでありますけれども、日米琉の委員会みたいなものが、これまでの基本的な沖繩住民の希望に沿うような問題の扱い方がされそうにない委員会であることは、おそらく総務長官が一番よく御存じではないですか。むしろ総務長官自身はそのことを十分御承知だと思いますが、ちょっとほこ先を変えまして、総務長官、最近におきまして格別このケネディ新政策よりもさかさま向きにぐんぐん後退していった事態がむしろ沖繩において爆発的な状態に集約されつつあるような危険をさえ私は感ずるのでありますが、御所見を承りたいと思います。
  197. 野田武夫

    野田(武)政府委員 沖繩の自治権が後退しつつあるのじゃないかというおことばでございますが、実は、御承知のとおり、ケネディの新政策以来、沖繩でアメリカは文官の民政官を設けまして、できるだけ民主的な行政をやろうということにかかっております。しかし、ただいまお話しの大田主席の問題その他は、情報としては取っておりますが、まだ詳細内容を知りませんから、ここでもって私どもの判断をはっきり申し述べる段階ではございませんが、いずれにいたしましても、最近琉球政府と立法院関係、また沖繩の政党関係においていろいろの意見が出ておることは承知しております。しかし、それは必ずしも自治権のつまり後退だということに断定する資料をまだ持っておりませんので、この上のお答えは差し控えたいと思っております。
  198. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 ケネディ新政策が発表されて以来、むしろわが党はそれと逆行するような状態が沖繩において起こりつつあるのではないかという心配をいたしまして、私どもは沖繩に対するわが党の調査団の派遣を要請してまいりまして、最近現地視察をいたして帰ってまいりました。その帰ってきたわが党の報告と、最近における新聞を通じて報ぜられる沖繩の状態とは完全に一致するものであります。むしろ、私どもは、沖繩新政策が最近において、最近というよりは年を追って日を追ってますますさかさま向きに逆行し、裏切られつつある状態について非常に心配しておったのでありますが、まさにちょうどそういう結果ができつつあることを具体的に見るわけであります。総理大臣はえらい何だかこの問題について熱意がなさそうな御答弁でありますし、責任がなさそうな問題の取り上げ方をされておりますが、現実にこの三年間に、事実自治権は次第に後退を始め、いろいろな問題がむしろさかさまに歩いてきたと私は思いますが、この間に一体日本政府は沖繩の人人の希望にこたえてどういう方法をとられたか、具体的にケネディ新政策に近づかしめるような交渉なり要望なりをアメリカに対して行なわれたことがあるかどうか、総理大臣に重ねて承りたいと思います。
  199. 池田勇人

    池田国務大臣 わが国の基本方針につきましては、ただいま申し上げておるとおりでございまして、しこうして、日米閣僚会議につきましても、外務大臣から、またその他の機会につきましてもアメリカに対し十分要求し、善処方を要望しておることと思います。  具体的な問題につきましては、外務大臣よりお答えいたさせます。
  200. 大平正芳

    ○大平国務大臣 沖繩の現状につきまして御心配の御発言でございますが、この問題は二つに分けてお考えをいただきたいと思います。一つは、施政権の問題、アメリカが現に掌握いたしておる施政権の行使、そのうらはらになりまする自治権拡大の問題が一つでございます。この問題は、いま総理が触れられた協議委員会、技術協議会の問題ではないわけでございます。協議委員会、技術協議会の問題は、沖繩の経済援助に対する調整機関でございまして、こういう基本的な施政権の問題に触れる機関ではないのでございます。施政権の問題は、協議委員会、技術協議会で取り扱うにはあまりに大きな問題でございまして、また、取り扱うべきでないと私は考えております。で、この経済援助の問題につきましては、援助額を増大し、これと沖繩の経済並びに民生との関連を組織的につけながら、ケネディ声明にうたわれた目標に近づけていくべく努力をいたしておるわけでございまして、その限りにおきましては前進いたしておると思います。アメリカの援助もふえておりますし、国会からちょうだいいたしております沖繩援助も年々ふえてまいっておりますし、わが国の各省の専門家による沖繩の実情の把握、それに対する援助費の充当等も漸次組織的に充実しつつあると思うのでございます。  したがいまして、佐々木さんが御心配なのは、前段の施政権の運用の問題であると思うのでございます。この問題につきましては、われわれは基本的に平和条約によりましてアメリカに施政権を認めた以上は、アメリカの施政権を尊重すべきだと思うのでございます。基本は、この施政権者であるアメリカと日本との協力関係というのが基本になければならぬと思うのでございまして、これをいろいろあげつらうことによって、私は沖繩政策は前進しないと思うのでございます。尊重すべきものは尊重しなければならぬ。しかし、そういう立場に立って、日本の要求すべきものはあらゆる機会に強く要請してまいるという態度を堅持していかなければならぬし、今日まで堅持しておるつもりでございます。それからまた、自治権の拡大の問題でございますが、これは主席の任命方法その他若干の前進を見ましたところも御案内のとおりでございます。ただ、運営の面におきまして遺憾なことが数々起こっておりますことは、はなはだ遺憾でございまして、これは、日米協力の基本の認識に立ちまして、私どもは協議委員会、技術協議会等の技術的な面から離れまして、高度の政治問題として強くかつ精力的にアメリカ側の理性を求めてまいるということで進んでまいりたいと思っております。
  201. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 総理の御答弁並びに外務大臣の御答弁をもし沖繩の人が聞いたならば、私は非常にがっかりするだろうと思います。同胞日本人としての沖繩人に対する態度としての愛情を私ども感ぜられないわけであります。現実にわが党の調査団はその報告書に次のような点を明らかにいたしております。  第一に、沖繩住民はいま施政権の返還と自治権の拡大について上は立法院議長から下は貧しい農村の主婦に至るまでまさに涙ぐましき悲願を胸にひそめて軍政下の生活に甘んじている状態にあること。第二番目に、現地の人たちは日本政府の沖繩に対する基本姿勢とその援助体制について強い不満を表明していること。特に施政権返還問題に対する日本政府の熱意不足とこの問題をめぐるアメリカに対する卑屈な態度について現地の保守党においてすら、強い批判を行なっておること。第三番目に、ケネディ新政策は完全に裏切られ、それで約束された自治権の拡大は明らかに後退を見せておること。第四に、現在沖繩は、同筆弁務官の布令の乱発をはじめ、マイクロウエーブ問題人権問題、教育問題、渡航の自由化問題、日本政府の援助問題などたくさんの問題をかかえているけれども、それらの基本的解決をはかるためには、施政権返還と自治権拡大に対する日米双方の基本理解を確立することが前提であり、これなしにはこの問題の解決がない。にもかかわらず、この問題に対する日本側の態度というものに対しては、ほんとうに心から痛憤おくあたわざる感じを持っておること。こういう報告書をわれわれに寄せておるわけでありまして、わが党は、このような沖繩の現状に対しまして、沖繩問題に対するこれまでの日本政府の態度があまりにも冷淡であり、かつ無責任であったことに対しまして、池田総理大臣に対して深く反省を要求するものであります。  時間がございませんので、だんだんと具体的な問題を申し上げるいとまのないことを残念に思いますけれども、総理もはっきりと、たぶん五月五日でありましたか、ワシントンポスト紙の記事をごらんになっただろうと思います。アメリカにおいてこの沖繩問題というものが非常に問題化され、第二のパナマ問題のような観を呈する危険性ありとして非常に深刻に世論に問題が投げかけられておる際に、わが日本政府自身がこの問題に対して本格的な取り組み方をされないということは、私は理解をすることができない感じを持つわけであります。率直に伺いますけれども、この施政権返還の問題の前に横たわっておりますのが、住民自治の保障の問題であり、その住民自治の保障が、いま申し上げましたごとくに、布令の乱発という事態によって基本的にいま脅かされておることは御承知のとおりだろうと思うのです。わが党の調査団がちょうど行っておりまする際に、現地におきまして、たぶん五月の二十五日だったと思いますが、立法院の議会が開かれておったそうでありまして、その予算委付会の総括質問が行なわれたそうでありますが、その第一陣に与党側の議員が立って、自治権の後退問題について行政府を追及したそうであります。その要旨は、昨年からことしにかけて高等弁務官の布令の乱発が相次ぎ、給与法、税制改正に対する軍の直接介入、金融機関、病院等に対する軍の手入れ、学校校舎の直接検査、サンマ布令、睡眠薬布令、水道布令など、行政・立法府の意思を飛び越えて軍の直接政治介入が顕著になって、このために沖繩の自治権は著しく後退しつつあるというものでありまして、私は、このような事実、事態に対して池田総理大臣はどうも十分な認識を持っておられないのではないかと疑うわけであります。さらにまた、この与党議員の質問に対しまして沖繩行政府瀬長副主席が答えて次のような発言を行なっておることも、ひとつ御承知置きを願いたい。その一つは、沖繩の自治は前進していない、――瀬長副主席の答弁ですよ。沖繩の自治は前進していない、むしろ後退と言ってもよいと、こう言明しておる。二番目には、キャラウェー高等弁務官は住民福祉のために民主的手続をとらない面が多い、こう言っている。これらの答弁は、明らかに沖繩自治の後退を認めて、キャラウェー高等弁務官の非民主的な態度を非難したものであると考えます。私どもは、軍政下にある政府が最高の統治権名の政治姿勢をまっこうから批判することは、GHQが日本におった当時をほうふつとして頭に思い浮かべます際に、非常な勇気を必要とするものであることを考えるわけでありまして、そうして、このような状態をまのあたりわれわれの同僚議員が見てまいりまして、そしてそのことの問題の重要性を非常に痛感してまいったわけであります。わが党は、都合によりましては、この具体的な問題をひっさげまして、直接アメリカの大統領自身に対してあるいはもの申そうかとさえ考えているわけでありまして、御承知のように、新政策を正面から打ち出して、それが完全に逆行して、そしてさかさまを向いて歩いている現状に対して、日本本国の総理大臣、政府がこれを黙っているという手はないと私は思います。現実に、野田総務長官がほんとうはよく御承知のように、いま言われますところの委員会の問題等をめぐっても、ほんとうは外務省の圧力に屈服をされた。それで、どうにもこうにもならぬ状態になりつつあるから、きのうの新聞ですか、総務長官ははっきりと、日米流の意見交換に非公式ルートも活用したいと考えると言っておられる。ちょっと念のために伺いますが、好田さん、この非公式のルートの活用ということはどういうことであり、そのことは明らかに、先ほど総理大臣がこういう機関を通じてこれから話し合いができると言うたことに対して、それではできないから、別のものでやらなければならぬということの証左であろうかと思いますが、ひとつ御意見を承りたいと思います。
  202. 野田武夫

    野田(武)政府委員 ただいま御指摘のありました新聞記事に私が非公式にアメリカとの交渉をやってもいいということを言っておりますが、これは誤解のないようにひとつはっきり申し上げておきます。もちろん、日本政府とアメリカ政府との交渉は外務省を通じて正式の外交ルートでやるべきではございます。しかし、私は沖繩問題の一端の責任を持っております関係上、外務省でおやりになると同時に、やはりアメリカ政府の理解を求めることが一番大事だ。それは、いま特に施政権の問題をお話しでございましたが、そのことも大事でございましょうが、同様に、沖繩の住民のいわゆる福祉向上、生活の向上ということが私どもの任務でございまして、これらに対しまして日本政府も援助をいたしております。そういう関係からいたしまして、高度の政治問題につきましてはもとより外務省を通じて正式ルートでもって交渉してもらう、同様に、これら経済上の問題なんかにつきまして、やはり側面から非公式にアメリカ政府といろいろ話し合って、理解を求め、それから同時に日本政府の考え方を十分取り入れてくれるように、これらにつきまして、できますならば、機会があれば、これはもちろん非公式でございますが、アメリカ政府の人たちとしばしば総理府の関係におきましても折衝いたしておりますから、そのつどにひとつ話し合いをしたい、こういう考え方でございます。
  203. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 日本国からの経済援助のあることは承知いたしております。沖繩人もそのことは十分承知いたして、そのことについての感謝もいたしております。そういう問題を、越えて、日本本土に復帰したい感情、その気持ちは野田さんもよく御承知だろうと思うのです。そういう経済的な問題ではなくて、基本的な問題についての話し合いのルートがふさがれておること、そのこと自身が何とも耐えがたい問題をいま沖繩に起こしていると思うわけであります。おそらくこの大田主席の退陣問題もそこに原因があることと私ども承知するわけであります。  総理大臣に重ねて伺いますが、このような沖繩の現状に対して、いま起こっておるところの弁務官の布令乱発について、日本政府として正式にアメリカに抗議して、ケネディ大統領の新政策に基づいてそういうやり方をやめるように交渉し、抗議し、出発をその正式のルートを通じて本格的な方向へ向ける措置をとられる用意はありませんか。
  204. 池田勇人

    池田国務大臣 われわれは基本的に施政権の早期返還を望むと同時に、それまでにおきましても、沖繩商民の生活の安定、福祉の向上、自治権の拡大をはかっていくことは当然のことでございます。もちろん、あらゆる方法を講じまして、私は沖繩島民の希望をいれるように努力するにやぶさかではございません。
  205. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 沖繩問題について最も大事なことは、経済援助とか福祉の向上だとかいう美名をもって沖繩人のこじき根性的感情を誘発させてほんとうの民族としての自主独立あるいは民族としての精神を失わしめないところに沖繩の問題に対する基本的な考えがなければならぬことを私は指摘しておきたいと思います。  私は、具体的に起こっておるところのマイクロウェーブの問題について、さらにまた渡航の自由化の問題について、おのおの具体的に現在起こっておる問題をはっきりと提示をして、それに対する善処とその約束を池田総理にお願いをいたしたかったのでありまするが、時間がございませんので、問題の焦点は野田さんをはじめ十分と御承知のことでありまするから、その問題を重ねて要望いたしまして、その問題に対する質問は終わりたいと思います。  最後に私は池田総理に強く要望をいたしておきたいと思います。まず、池田さん、百聞は一見にしかず、池田さんがよく言うわれるとおりであります。いろいろ人を通じて沖繩問題を把握されようとするよりは、まあちょっとでも瞬間がおつきならば、あそこならすぐ行けることでありますから、選挙区へ行くより近いくらいなものでありますから、私は、なるべく早く、いま問題が起こっておる最中に、池田総理自身が日本国民の代表として現地に乗り込んで、身をもってひとつ感じを体験せられんことを心から希望し、お願いをするわけであります。同時にまた、この問題は超党派で取り組むべき問題であると考えまするので、したがって、この国会内に沖繩問題に対する特別委員会の設置を、わが党は各党にいま呼びかけて御協力をお願いをしつつあります。沖繩問題というものは、超党派的に、しかも一根強く、これはぐうっとといいますか、たとえばちょっと外務委員会でつついてみたり、あるいは予算委員会でちょっとつついてみたりということではなしに、国会自身も恒常的に取り組む必要もあろうかと存じますので、各党に対しまして私どもは沖繩問題に対する特別委員会の設置をお願いしつつあるわけであります。池田総裁は、自民党の立場においても、このわれわれの考え方に同調されんことを要望いたす次第であります。池田総理の身をもって体験されんことを、同時に、この国会が誠意をもってこの問題に長期的に取り組む姿勢をとりたいことを、二つ最後に希望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  206. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 以上をもちまして佐々木良作君の質疑は終了いたしました。  次に、井手以誠君。
  207. 井手以誠

    ○井手委員 私は物価の問題と日韓会談を中心に若干お伺いをいたします。  小林厚生大臣、厚生大臣は昨日、この秋には医療費の値上げをお願いしたいという言明がございました。どのくらいの値上げでございますか、またその値上げはやむにやまれないものでございますか、お伺いいたします。
  208. 小林武治

    ○小林国務大臣 医療費の問題は、昨日お答え申し上げましたが、政府としては中央医療協議会の答申を尊重したい、こういうことを前々から申しております。この問題につきまして先般医療協の答申がありましたので、その趣旨に沿うよう事務的の検討をいたしております。大体の幅等につきましては、医療協から八%余と、こういう程度のお活がありましたことを申し添えておきたいと存じます。  なお、この問題につきましては、全体でどのくらい余分に要るようになるか、また、その中で政府の負担がどういうふうになるか、こういうふうなことにつきまして相当な検討を要しますので、いまさような事務的の作業を厚生省がいたしておる、こういう段階でございます。  それで、これは私どもかねてから、病院等におきましては相当その後の人件費あるいは物件費等の値上がりによりまして経営に困難をいたしておる、こういうふうな調査もあるのでございますし、また、医療協におきましていろいろ検討の結果、医療費を負担する側の被保険者側のものも若干の値上げを必要とする、こういうふうな答申でありまするので、ある程度のものはやむを得ないではないか、かような考え方を持っております。
  209. 井手以誠

    ○井手委員 自治大臣にお伺いいたします。  地方公営企業のバスについては三十億の起債が認められたとか、あるいは水道については起伏の償還期限を延長したとかいう措置を承っておりますが、その措置によってここ一両年は地方公営バスや水道料金を植上げする必要はないのですか、だいじょうぶですか、お伺いいたします。
  210. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 公営企業をこのままに放置することはできませんので、御案内のとおりに、地方公営企業制度調査会をつくるつもりで、ただいまこの国会で御審議を願っておるわけでございます。ばく大な累積赤字の処理、また、料金を押えておりますもので、それから出てまいります赤字問題につきましては、やはりとりあえずは御案内の四十八億円を中心として一つの処理をいたしましたことは、ただいま井手委員の御指摘のとおりでございます。しかしながら、根底から検討し直さなければなりませんので、赤字の処理並びに料金の問題等につきましては、この調査会で結論を出してもらいたいと考えております。
  211. 井手以誠

    ○井手委員 自治大臣、お伺いしておるのは、いまの措置だけでここ一両年値上げの必要はないのか、現在からの見通しを聞いているのです。
  212. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 経営の回から申しますならば、当然この収支がどうにか償うだけの料金をきめてもらわなければならぬわけでございます。しかしながら、なかなか全般の経済から申しまして、こういう特殊な企業だけを取り上げていくわけにはまいりませんので、政府といたしましても非常に苦慮しておるところでございますが、基本的には、これは上げるべきものであると私どもは判断いたします。しかしながら、やはり住民の福祉とか公共性が非常に強い事業が公営企業になっておりまするので、やはり政策的にこれを押えます場合においては、その部分について特殊な扱いをしなければならぬだろうということをただいま申し上げた次第であります。
  213. 井手以誠

    ○井手委員 自治大臣、重ねてお伺いいたしますが、現在の措置だけでやっていけるかどうかというあなたの見通しを聞いておるのです。借りた金は返さぬでいいとかなんとか、根本方針が変われば別ですけれども、いまの状態でここ一両年は値上げの必要がないかどうか、その見通しを聞いております。それでやっていけるかどうかの見通しを聞いております。
  214. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 やっていけないから苦労をしておるのでありまして、昨年の十二月からことし一ぱい見込まれる料金町の特別の政府の措置から生まれた赤字につきましては、先般御承知の措置をとったわけでございます。しかし、大体公営企業そのものが、お気づきのとおりに、資本勘定も借金なら、運転資金も借金、赤字も借金、借金だけでやって、こういう事業が収支が償いかねるところへ持っていって料金自体がいろいろな制約を受けるわけでございますので、根本的にこういう累積赤字の処理だとか、あるいは将来運賃をどうきめるかというのには、単に民間の企業と同じような考え方でいかない面があることは御案内のとおりでございます。私たちといたしましては、とりあえず、こそくではありまするけれども、特殊な赤字につきましては、やはり政府としても何らかの措置もいたしますし、一日も早くこういう調査会で、公営企業のあり方から始まって、今日の運営が妥当かどうか、また財政的に当然生まれてくるこういう赤字というものを将来にわたってどう処理するべきであるかといった問題について御検討を願いたい、こう考えております。
  215. 井手以誠

    ○井手委員 国鉄総裁にお伺いいたします。  総裁は、第三次五カ年計画を遂行するためには自己資本を充実しなくてはならぬ、そこで昭和四十年から四十五年の間に二回にわたって運賃を値上げしなくてはならぬという言明をなさっておるようでありますが、ここ何年かの間に運賃値上げの必要があるかどうか、その点をお伺いいたします。現在の機構のもとにおいて必要があるかどうか、上げねばならぬのかどうか、その点をお伺いいたします。
  216. 石田礼助

    石田説明員 現在の段階におきましては、国鉄は少なくとも四十年から第三次五カ年計画を遂行するにつきましては、どうしても運賃値上げなりあるいは公共負担の是正というようなことをして、自己資金の増加をはかるということが絶対に必要だと私は考えております。
  217. 井手以誠

    ○井手委員 運輸大臣にお伺いいたします。  バス、タクシーの業者、一万七千近くの業者から、すでに二、三年前より三五%から六五%の値上げ申請があっておるようであります。最近突き上げが非常にひどいようでありますが、このバス、タクシーの料金の値上げ、現存のままでやっていけるかどうか、押えることができるかどうか、運輸大臣の見解を承っておきたいと思います。
  218. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 タクシーにつきましては、大部分が中小企業者でございますから、政府の物価抑制の見地から青いましても、中小企業者はその例外と認めるという原則がございますから。それに合わしまして、目下その調整を検討中でございます。それから、バスにつきましては、六大都市にあるバスにつきましては、いまのままで全部三十八年度以降は赤字になっておりますが、付帯事業その他によりまして、忍びがたきを忍んでひとつ政府の物価政策に協力してもらいたいということを行政指導をいたしてやっておるのでございます。
  219. 井手以誠

    ○井手委員 運輸大臣、現在の料金で値上げをせぬで当分済むかどうか、主管大臣としてどういう見解を持っておられるかを聞いておるわけであります。それほどの高率の値上げを要請しておる、与党に対しても非常に突き上げがひどいと聞いておりますが、そのバス、タクシーの値上げについて、現行のまましばらく、ここ一両年やっていけるかどうか、緊急値上げしなくちゃならぬ事態になっておるかどうかを承っております。
  220. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 タクシーにつきましては、先ほどお答え申しましたように、目下その数字を整理して検討いたしております。バスにつきましては、現在は、ただいまも申しましたように、赤字なんです。赤字なんですが、大都市のバス業者につきましては、他の事業その他でカバーしてようやく当座をしのいでおるというのが実情でございまして、全部このままでいけるとは私は考えておりません。
  221. 井手以誠

    ○井手委員 企画庁長官にお伺いします。  長官はこの二月の予算委員会で、東京のタクシー料金を値上げするときに、これは特例中の特例であって、これ以外の値上げについては一切認めないというはっきりした言明をなさっておりますが、間違いございませんね。速記録もありますが……。
  222. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 きょうまでどうやらそれでやってきております。
  223. 井手以誠

    ○井手委員 そこが問題です。きょうまではやってきたが、今後はたいへんですよ。見てごらんなさい、主管大臣が何とおっしゃったか。主管大臣としてはどうしても値上げしなくちゃならぬとおっしゃる。医療費についてもそうです。国鉄総裁はここで声を大にしておっしゃった。値上げしなくちゃなりませんとおっしゃった。自治大臣もおっしゃった。運輸大臣もおっしゃった。最近は与党の中にも手直し論が盛んに唱えられております。今日まではどうやらやってまいりましたが、今後どうなりますか、経企庁長官。
  224. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それはまあ所管大臣に一つ一つイエスかノーかとこうお尋ねになりますと、皆さん、理由のあることでありますから、必要がないとはおっしゃらないことはよくわかっております。私もそういう理由のあることはわかっております。しかし、きょうまで、ここまでやってまいりましたから、ともかくこれでまあ五カ月ばかり済んだわけで、できるだけこれを今年内は押えていく、こういうことで、これはいろいろ御難儀をしいることでございますから、あまり自慢たらしく言えることではございませんけれども、続いてやってまいりたい、こういうふうに私は思っているわけです。
  225. 井手以誠

    ○井手委員 今後五カ月間は絶対に上げませんね。これは内閣の方針でもありますし、あなたの言明でございますが、たとえ主管大臣がどのように主張されても、今後五カ月間は絶対に上げませんね。はっきり言ってください。これは大事ですから。
  226. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私はそうあるべきものと思っておるわけであります。そこで、この問題が昨年の暮れからことしの初めにかけて閣僚懇談会等で問題になりましたときに、医療費の問題というのは、一つ当時これは未知数であったわけであります。そこで、中央医療協議会の答申が何かあった場合に、それについては当然各省間でどうするかという協議をしなければならないわけであります炉、その結論が最終的に、これは将来のことでありますが、どう出るかということ、だけは一つ問題が残るであろうということは、当時閣僚間で話し合ったことがございます。そこで、もし何らかの処置をとらなければならないと、これは予算でもそういうことは想定しておらないわけですが、そういうことになれば、そのときに協議をいたすべきものだと思っております。しかし、これは将来の未知数のことでありますから、ただいまの段階においてこれだけは見通し得る将来どうしても値上げを認めなければならないというものは、私の知っております限りございません。
  227. 井手以誠

    ○井手委員 長官、念を押しておきたいのですが、そうすると、今後五カ月間は絶対に上げない方針だが、医療費だけは別だ、こういうことでございますね。医療費だけ上げるかわからぬ、それはわからぬけれども検討の余地がある、ほかは上げない、かようでございますか。
  228. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 あと大きなものは、たとえば米の消費者価格というものがございますが、これについては、すでに主管大臣も、年内上げるつもりはないと言っておられますので、問題はなかろうと思います。そういたしますと、考えていきまして、閣僚懇談会で認めました、企業の形態が非常に小さくて料金をとめておる結果経営が危殆に瀕するおそれがある、あるいは国民生活にほとんど関係がないといったようなもの、その例外の範囲に入りますものは別でございますが、しかし、これは取り立てて申し上げるほどのものはないように思います。したがって、ただいまのお尋ねに対しては、私は肯定的に御返事をしてよろしいと思います。
  229. 井手以誠

    ○井手委員 政府できめられた物価抑制政策、それには、消費者米価も医療費も公共料金に準ずるとなっております。政府予算にも入っておりませんし、三十九年度の消費者物価上昇の四・二%にも医療費は入っておりません。織り込んでないんです。上がらないことにしてあるんですよ。そういう説明をなさっておるんです。なお検討の余地がありますか。公共料金は全部押えます、押えたところで四・二%くらいにとどめたいという説明ですよ。医療費を上げますと四・二%をこえますよ。よろしゅうございますか。
  230. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これはもうよくおわかりでございますから、重ねて申し上げるまでもありませんが、医療費を上げるということを肯定的にお返事を申し上げておるわけではない。これは先ほど申し上げたとおりです。なお、四・二%の関係でそんなに両者に相関関係があるものではございませんと思います。
  231. 井手以誠

    ○井手委員 大事な点ですからもう一ぺん確認をしておきたいと思うのです。医療費についてはなお検討の余地があるけれども、その他の公共料金については今後五カ月間は絶対に上げません、そういう方針でございますということですね。はっきりおっしゃってください。ここは国民が非常に不安がっておりますから、はっきりおっしゃってください。
  232. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 さようでございます。ただし、閣僚懇談会で設けております例外の中に入ると思われるものについては、それは例外をもって処置いたすことがある、こういうことでございます。
  233. 井手以誠

    ○井手委員 宮澤長官、あなたはこの二月のこの予算委員会で、来来のタクシー料金以外の特例は絶対認めませんと、この速記録に書いてある。いまの御答弁と違うでしょう。東京のタクシー料金以外は絶対特例は認めません、特例中の特例を相次いで認めるとたいへんですから、お説のとおり以後は一切認めませんとおっしゃっているんです。速記録に書いてある。どうですか。
  234. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 しかし、そのときにも申し上げましたし、また閣僚懇談会の決定を申し上げてあるわけでありますから、たとえば輸出検査料であるとか鉱業権の登録料であるとか、そういったようなもの、あるいは中小企業でこのために経営が危殆に瀕するに至ったもの、これについては考えますということは申し上げました。それ以外はおっしゃるとおりであります。
  235. 井手以誠

    ○井手委員 公共料金については上げないとはっきりおっしゃった。手数料は別です。そうしますと、もう一つ長に伺いますが、いま抑えに押えておる公共料金、しかし、主管大臣がお話しのように、上げねばならぬ事態にせっぱ詰まっておるもの、この十二月末までの期限に押えに押えたもの、これは公共料金のストップが解除になりますと一ぺんに上がりますね。そういう事態は予想されませんか。
  236. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、そのときの消費者物価の情勢といいますか、この問題をめぐる雰囲気というものがどのようなものであるかということにたいへん関係いたすと思います。すなわち、そのときにもなお消費者物価が――ちなみに、現在のところはかなり鎮静をしておるわけでありまして、前年対比で三・何%程度であります。昨年のいまごろは七%以上であったわけですから、鎮静しておりますが、かりに年末のころにかけてそれがまたかなり悪い経緯をたどってきたというときには、これはまたそのときの判断をいたさなければなりませんし、そのときの状況によって判断をいたすべきものと思います。いずれにいたしましても、年がかわりましたらあっちこっちで花が咲いたように一町に何か起こるといったようなことは、あまり適当でないと思います。
  237. 井手以誠

    ○井手委員 適当でないようなことが爆発的に起こってきますよ。これは間違いないのです。  そこで、総理にお向いいたしますが、物価安定策として政府は十四項目をおきめになりました。決意を持って実行するとおっしゃった。その十四項目は着々実行なさっておりますか、お伺いいたします。
  238. 池田勇人

    池田国務大臣 できるものから着々実行しておると思っております。
  239. 井手以誠

    ○井手委員 着々実行しておきながら、どうして主管大臣が値上げしなくちゃならぬとおっしゃるほどの事態になっておるのでしょうか。それはどこかに物価抑制策に欠陥があるんじゃないですか。あるいは政府に決意が足らないのじゃないですか。どちらでしょう、総理大臣。主管大臣からは、値上げしなければならぬということを盛んに切実におっしゃる。それを無理やりにあと五カ月間押えますという、それほどの情勢になっておるのは、十四項目に欠けるところがなかったのか、あるいは政府に熱意がなかったのか。完全におやりになったつもりですか、どうでしょう。
  240. 池田勇人

    池田国務大臣 あなたの御質問に対しての所管大臣の答弁を十分お考えになったらいかがでございます。医療費の問題は予算にも組んでおりません。しかし、医療協議会の答申を待って考えるということ。これが公共料金なりやいなやということにつきましては、いろいろ同順がありましたが、われわれは答申を見てどうこうということを考える。そうして、どういうふうな結果がいつ起こるかということにつきましては、これはどこが負担するか等によって将来考えられるのですが、これが四・二%にどれだけ影響するかということは別問題でございます。もういつ上げる、と何ぼ上げるときまっていない。それから、国鉄の運賃は、国鉄総裁は、将来五カ年間に上げることあるべし、こう言っておるのです。五カ月以内に上げるとは言ってはおりません。水道料金あるいはバスの問題等につきましても同様でございます。それからまた、宮澤君の答えにつきましても、消費者物価に影響するいわゆる広い範囲のものについてはやらない、ただ地方の特殊の中小企業には例外的にあるかもわからないということは初めから言ってあるのです。だから、あなたの質問とこちらの答え、宮澤企画庁長官の答えとはちぐはぐじゃございませんか。私はずっと聞いておりまして、どうも焦点が合っていない。五カ月間はこの前申し上げましたように上げずにきた、また今後もお約束の一年の間はわれわれはお約束のことを絶対に守る、こういうことを言っておるのであります。
  241. 井手以誠

    ○井手委員 焦点が合わぬじゃなくて、合わせようとしないのですよ。  そこで、途中ですけれども、宮澤長官、三十六年から三カ年間に消費者物価は幾ら上がりました。
  242. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 昭和三十六年の指数が全都市で一〇七でございます。そして、昨年、昭和三十八年の指数が一二二でございます。
  243. 井手以誠

    ○井手委員 三十六年度から三十八年度まで三カ年間に政府の統計では二〇%上がっております。  大蔵大臣にお伺いいたします。三カ年間に二〇%の物価が上がりますと、どういう影響になるでしょうか。いま国民の預貯金総額はどのくらいですか。概算でいい。
  244. 田中角榮

    田中国務大臣 突然の御質問でございましたので数字は出ておりませんが、全国銀行勘定で申し上げますと、三十八年で銀行だけで十三兆八千億でございますが、いますぐ数字を調べて申し上げます。――いま統計は、全国銀行預金十六兆一千億しかありませんので、預貯金その他をいま調べてお答えします。
  245. 井手以誠

    ○井手委員 二十四兆円です、農協、信用金庫、全部加えて。
  246. 田中角榮

    田中国務大臣 ちょっと待ってください。
  247. 井手以誠

    ○井手委員 いや、二十兆円でいい。二十兆円にしまして……。
  248. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 いや、それはだめだ。いま調べておりますから、後に発表いたします。
  249. 井手以誠

    ○井手委員 待っておりましょう。
  250. 田中角榮

    田中国務大臣 手元に三十七年しかございませんので、私がどこかでお答えしたいと思いましたら、やはり二十四兆一千億です。
  251. 井手以誠

    ○井手委員 二十四兆円の国民の預貯金、それに対して、消費者物価が三年間に二〇%も上がりますと、国民の財産は、預貯金はどういう結果になりますか、大蔵大臣。財産はふえますか減りますか。預貯金の利子を上回る消費者物価の上昇はどうなりますか、国民の財産は。
  252. 田中角榮

    田中国務大臣 預金の利子よりも消費者物価が上がった場合財産が減る、こういう議論でございますが、預金というものはそういう立場でだけ計算をするものではないわけでございます。預金は将来の危険負担やいろいろな面がありまして、しかも、この預金は物価が上がったときに使うというのではなく、ますますこれから日本の経済がよくなり、物価も安定してくるという政策を進めておるわけでありますから、いつも消費者物価が上がると預金をする人は損をすると、こういうことでございますが、必ずしもそうではないわけであります。
  253. 井手以誠

    ○井手委員 物価がどんどん上がってまいりますと国民の財産が減らされるのは、これは当然ですよ。幾ら言いわけをしても同じことです。  そこで、池田総理にお伺いいたしますが、総理は、昨年の選挙前あるいは選挙中に、消費者物価は、国民の注視の的である物価は、一両年の間に安定しますと約束なさった。これは国会に対して、国民に対しての約束でありました。ところが、ことしは無理やりにして公共料金を押える、しかし、来年になりますと、公共料金ストップを解除いたしますと次々に軒並みにこれは値上げになることは必至です。これは何とおっしゃっても当然値上がりになってまいりますが、その公約はどうなさいますか。一両年の間に物価を安定すると公約なさった。国民もそれを期待しておる。ところが、最近はどんどん物価が上がっておるじゃございませんか。これをどう安定なさろうとするのですか。
  254. 池田勇人

    池田国務大臣 物価の安定ということは、一両年のうちに物価は安定いたします。安定ということはどういうことかと申しますと、それにつけ加えて申しております。やはりGNP、国民総生産あるいは国民所得がふえるものの大体三割とか、できれば二割五分程度の上がり方は経済の原則だと言っております。したがいまして、私が昨年の選挙のときに約束いたしました消費者物価は、その後上がり方が非常に少なくなったでしょう。いま宮澤企画庁長官が言っておるように、昨年のいまごろは前年に対して六%ないし六・五、六%の上がりだったでございましょう。いまはどうです、前年に対しまして三・五、六%じゃございませんか。(井手委員「年度初めだよ」と呼ぶ)年度初めとか年度おしまいというのは、金融の関係とは違って、物価の問題はそういうことはございません。あるいはあるとすれば、くだものや生鮮食料品、授業料の関係でございます。サービス料でございます。だから、四月に一・六%上がったということは、授業料その他の雑費の上がりでございます。五月が〇・二%の上がりということは、一応落ちついておるじゃございませんか。私は公約は守っていきます。ここで申し上げますが、私はうそを言わない考えであるのであります。そういうようにやってきております。だから、国際収支も、だんだん私の予定どおり、あるいは予定よりちょっと早目に安定に向かっております。物価も、お約束どおりに、去年のいまごろに比べていまは落ちつきつつあるということは、私は言えると思う。ただ問題は、きょうもOECDの事務総長と話をいたしましたが、四年続けて毎年賃金、労賃が一割以上上がるということは、日本の歴史にも世界の歴史にもない。この点は、私はお約束したとおりやるためによほど政府としても苦労が要ると思います。私は、しかし、この苦労を甘んじて受けて、そうして、お約束どおり実行、物価の安定をいたしたい、こういう念願で日夜心を砕いておるわけであります。
  255. 井手以誠

    ○井手委員 私は賃金を聞いておるのじゃございません。私は物価を論じておるのですよ。中小企業の労働者が賃上げするのは当然だと総理自身がおっしゃったじゃございませんか。私がお伺いしているのは物価の問題です。あなたは、国民総生産が上がると言う、国民所得がふえると言うけれども、あの平均一〇%の国民所得が上がらない多くの国民の、物価による打撃をどうするのですか。それがあるから私は聞いておるのです。そこで、総理大臣は、一両年に物価を安定するという公約は守りますとおっしゃった。それではこの公共料金のストップは、ことしの十二月で期限がくるわけですが、これを解除なさると、これは何とおっしゃっても、軒並みに上がることは必至ですから、この公共料金ストップを来年まで延長なさるお考えがございますか。これが一番大事な点ですよ。これは政府の姿勢を示す根本です。公共料金を据え置かなくては物価はどんどん上がります。政府の姿勢を国民に示すためには、公共料金を二カ年間ストップするという決意がなくてはならぬはずであります。そのストップしたために困った企業に対しては、これは別の救済方法を考えねばならぬでしょう。いま一番大事なことは、国民が一番心配しておるこの公共料金の値上げに対して、政府がいかなる決意を示すか、私は総理大臣の決意を聞きたい。
  256. 池田勇人

    池田国務大臣 物価の問題のときに賃金の上昇を言ったら、そういう質問はしていないとおっしゃるが、私は、物価問題を考えるときには、国民経済全体の問題、ことに賃金の問題を考えなければ物価の問題を論ずるわけにはいかぬと思います。だから、私は、物価問題につきまして重要な問題として、四年間も続けて賃金が一別以上上がるということはたいへんな問題で、世界の歴史にもないし、日本の歴史にもない。こういうことは国際的に注意すべき問題でございますから、きょうもOECDの事務総長と話ししたわけでございます。イタリアの状況、ドイツの状況も話をいたしました。そこで、いまの公共料金を上げたならばすぐ消費者物価が上がるという結論については、私は疑問があります。過去の例を見てもらいましょう。公共料金の最大のあれである鉄道運賃は昭和二十六年に上げました。二十九年に上げました。三十二年に上げました。三十六年に上げました。三十六年のはこたえましたけれども、一十九年、三十二年はこたえていないじゃありませんか。そこで、公共料金というものは、経済的に物価問題と関係することもそれはありましょう。しかし、これは物価上昇の雰囲気、ムードをつくるものだというのでやっておるのであります。米価を上げましても、消費者物価に対しましては上昇の一割足らずでございます。一般の、米価を除いた公共料金では、上がり方の一〇%もないと私は記憶しております。だから公共料金の問題は、経済的数字のこともありまするが、ムードということを私は非常に重要視してやっておる。だから、答えておりますように、公共料金を上げないということは、経済の理論には反するけれども、物価抑制策としては、上げないというムードをつくるために必要だと言っておるのであります。しこうして、一年間のお約束をしておりました。いま、もうあと一年、すなわちこれから一年半を約束せいと言われますが、そういうことはいまから約束することは、経済の実態に反することであります。物価を上げないということは極力やります。いつの時代でもやらなければいけません。そうして一年間を区切ってやっておるわけです。そうして、いま言ったように、消費者物価というものは国民所得の上昇、生活水準の上がり、ことに人間の労働力に対する評価の上がりによって消費者物価がある程度上がることは当然だということは、世界の経済学者もみな言っていることなんです。しかし、それは度を過ぎてはいけない、こういうことでいっておるのでございます。国民は消費者物価の上がりを非常に心配している。もちろん私もあなたに負けないほど心配しておるのであります。だから、あらゆる措置を講じておる。だから、一年間はやってみます、こう言っておるわけです。その次にすぐ上がるから二年間約束せい、そういう政治は、理論はいま立たぬと思います。
  257. 井手以誠

    ○井手委員 そこが大事です。一番最後の点が一番大事ですよ。値上げムードを押えようという政府の姿勢でしょう。ところがどうですか、主管大臣は上げなくちゃやっていけないとおっしゃる。これはきょうばかりじゃございません。いつの閣議でも、あるいは記者会見でもそういうことをおっしゃっておるじゃございませんか。値上げが必要だとおっしゃる。しかもあなたのほうの自民党の政調会で何と言っておるか、公共料金の手直しの必要があると言っておる。そういう値上げのムードが今日国民をして、どんどん公共料金が上がるではなかろうかという心配をさせておるのであります。だから、私はあなたのおっしゃることと政府与党の姿勢が違う。私はここでどうしても聞いておかねばならぬのは、この物価値上げを押えるというこのムード、値上げムードを押えるというその空気をつくっていくためには、姿勢を正すためには、公共料金を押えなくてはならぬ。あと五カ月したらどうなりますか。政府の決意を二本なくては、私は引き下がるわけにはまいりません。もしあなたのほうで公共料金の値上げはやむを得ないということであるなら、その対策を示してもらわなくちゃなりません。信用しろとおっしゃるけれども、いままでどうでしたか。二・八%上がるのが七・六%上がっている。いつも上がっているじゃございませんか。ことしは四・二%――あるいは一〇%上がるかもしれませんよ。いままでの実績で明らかです。あなたの御存じの数字で明らかです。いままでの実績は一・一%しか上がりませんと国会で言っておるのが、七・六%上がった。二・八%が七・幾ら上がった。ことしだけ物価が安定するとは保証できません。政府の姿勢を明らかにするためには、値上げムードを抑えるためには、公共料金に対する確固たる信念を私はこの際示していただきたい。もし値上げについてここに検討するというならば、それにかわる措置をお示し願いたい。そうでなければ国民は安心いたしません。
  258. 池田勇人

    池田国務大臣 物価問題で御質問でございますが、昭和三十六年からどうだとかこうだとか言っておられます。しかし、いま国民の生活は、四年前、五年前に比べてどうなったでしょう。政府調査におきましても、国民の生活水準は上がってきております。国民の体位も、あるいはエンゲル係数も、そうしていろんな消費状況等々も非常に上がってきておる。物価も上がりましたが、昭和三十年、三十一年を基準にいたしまして、今年は春闘の結果によりますと、賃金は倍になっておりましょう。物価は三割一、二分しか上がっておりません。卸売り物価は下がっております。これで今後の物価を論ずる場合におきましても、一年間は公共料金を据え置き、この原則を守っていく。そうして据え置いた上において、国際収支の改善も顕著にあらわれ、経済が安定に向かえば、あるいはやはり不合理な点は長い目で見て徐々に直していく。そうして価上がりムードを抑えつつ、公正な物価の上昇、国民の耐え得る、そうして所得の増加のその何分の一かの上昇はやむを得ませんが、そういう安定した上昇過程を、経済全体の上昇過程をとっていこうというのがわが党の政策であるのであります。個々の所管の大臣が、いまいつ上げると約束をしているわけではありません。鉄道なんかにいたしましても、あの輸送の状況を考え、設備投資をするならば、やはりそれを利用する人のある程度の負担はやむを得ない。しかし、それは負担し得る程度に、その負担増加以上の所得の増加をはかっていくのが私の所得倍増、経済成長政策であるのであります。
  259. 井手以誠

    ○井手委員 所得は上がったけれども、物価に追いつかない低所得層、物価値上げによって生活水準が下がった人は半数あると私は思うのです。そういう人々にはどうなさるおつもりですか。生活水準は上がったとおっしゃる。けれども、物価の上昇程度に所得が上がらない人はどうなりますか。私が聞きたいのは、公共料金ストップの解除のあとにおける軒並みの植上げ必至の情勢のときに、そのあとはどうなさるか、政府の姿勢を聞いておるのであります。この国会ももう余日はあまりありません。私はこの機会にはっきりした方針を聞いておきたい。今後の公共料金をどうするおつもりか。必要があれば来年早々から上げてもやむを得ないというお考えであるか、今後も押えようというお考えであるか、どちらですか。一両年にはあなたは物価を安定すると約束したのですから、一両年の間に物価が安定する見通しをあなた申さなくては、国民は納得しませんよ。いま物価はどんどん上がっているのです。
  260. 池田勇人

    池田国務大臣 片言隻句でとやこう言われても、それは私は、国民もそういう質問についてはどうかと思います。ずっと私の答えをおくみ取りくださればおわかりになると思います。なお物価が上がって所得がふえない人が半分ある、生活が苦しい人が。しかし、私の統計ではそういうものは出ておりません。例外的にはそういう方もあるかもわかりません。恩給ばかりでやっておるような人はそうでございましょう。しかし国全体として大数観察でいくならば、相当の、大部分の人がやっぱり所得の増加が物価の増加の何倍かになっておる、そして生活水準は向上している、こう私は言い得ると思うのであります。五分位表を見ましても、所得の少ない人の上がり方が、決して上の人よりずっと累年落ちておるというわけのものじゃございません。所得の少ない人のほうが、おおむね上がり方がいいということに相なっておるのであります。  で、公共料金というものは、前から申し上げましたごとく、合理的なものにつきましては、ある程度の上昇はやむを得ませんが、ムードをつくるような上昇は極力避ける、こういうことを言っておるのであります。
  261. 井手以誠

    ○井手委員 今日までの統計によりますと、国民所得は平均して一〇%から一二%伸びておる。しかし物価は平均して七%上がっておるじゃございませんか。何分の一かじゃございませんよ。半分以上上がっておるじゃございませんか、ここ三年間は。半分以上物価が上がって、どうして国民の生活がどんどん向上いたしますか。それを言っておるのですよ。  そこで私はこの物価問題で、特に総理から言明をいただきたいのは、先刻来申し上げておりますように、公共料金値上げは必至だ。いろいろ対策は講じてあるでしょうけれども、上げねばならぬような情勢になっておる、事態になっておる。何とかしなくちゃならぬとおっしゃっておる。あなたのほうの閣僚がおっしゃっておるのですよ。そうであるならばこの際聞きたいことは、どうしてそれを抑えていくのか、公共料金はこのまま一年半ストップしていく方針であるのか、そうでなければ、ほかに根本的な対策を講ぜられるつもりであるか、国の費用をもってその差額を補給するのか、あるいは起債償還の延長を認めていくのか、根本的に対策を講ぜられるかどうなさるか、はっきりした、国民が安心するような対策を示してもらいたい。私どもが心配しておるのは、公共料金の値上げムードによって、一般物価がどんどん上がることを心配しておるからであります。
  262. 池田勇人

    池田国務大臣 経済の動き、流れをごらんになったらわかるでしょう。所得倍増計画の当初におきまして九%というのが名目で二〇%、一八%いったときのようなものをもって、今後も続いていくとお考えになるのは間違いでありまして、昭和三十年ころからの流れをずっとごらんになったらおわかりでございましょう。たとえば昭和三十五年につきましては、消費者物価はほとんど上がらなかった。しかし賃金は一〇%以上上がっているでしょう。そうして三十年、三十一年から三十四年、五年までは消費者物価はほとんど上がらない。しかし賃金は上がっているでしょう。そして三十六年、七年が非常な上昇になって、そうしていまの最低賃金なんかも、いろいろな急激な変化が起こったから、六、七%ずつ三年間。そうしていまは調整をとっておりますから、大体見込みのとおり、今年の上がりようは前年に比べて四・二形、三月・三月を比べれば、三%あまりというくらいな落ちつきを示す状況になっておるのであります。しこうして公共料金につきましては、先ほど来申し上げましたごとく、経済的には上げる必要がございますけれども、ムードの関係がありますから押えました。今後におきましても、ムードつくりのようなことが起こるようなら、これは考えなければいけません。そういうところを、これは上げる前提としてその対策をどうするかということは、まだ早過ぎます、経済は動くのですから。それよりも、いまは国際収支の安定、経済の安定的成長が大事なんです。そして物価のほうも大体見込みどおりにいっておるのであります。だから、来年度の予算をつくるとかなんとかいうときには、これはまたお答えする機会もございましょうが、ただいまのところは安定ムードをやって、国際収支も物価の問題も、一応安定をたどりつつある。そうして健全な方向に向かいつつあるということを替えば国民は安心してくださる。将来もわれわれ自由民主党の政策は、根本的には変わりっこない。安定成長によって生活水準を上げていく、福祉国家に向かって邁進する。国民はこれを私は信じてくださっておると思います。だから、選挙のときの公約とあまり変わっていない。ずっといっているわけです。
  263. 井手以誠

    ○井手委員 最初から四・二%の物価上昇を見込んでどこに公約が実行されておりますか。そこで経済企画庁長官にお伺いしますが、来年の春になると一斉に物価が上がりそうだ、そういうことはさせないようにしたい、そういう総理大臣の話でございました。それではストップの解除に伴って次々に上がりそうな公共料金は、どういうふうに押えようとなさるのですか。やはりストップに準じて運用なさるつもりでございますか。一カ年半延ばすということは言明なさらなかったけれども、安定させたいという総理の活である。そうであるならば、いまのようなストップの状態それに準じて安定させようというお考えでございますか。それをお伺いいたします。その一点、はっきりおっしゃっていただきたい。
  264. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その一点とおっしゃいますけれども、先ほどからのお尋ねに内包されておる問題の御認識が、私失礼でありますが、多少こちらから申し上げたいことがあるわけであります。これはお許しを願ってお聞きをいただきたいと思います。昨年度の消費者物価の値上がりを七・何%と言っておられるわけでありますが、これは改訂見通しで七・二%のところが六・六%で済んだわけでございます。これにはいろいろあっちこっちに感謝すべき要素がありますが、ともかくそれで済んだわけであります。そうしてただいまのところ東京をとりましても、全国をとりましても、前年対比で三・六%くらいのところにおります。昨年のこの時期には、それがもう七・六%、七・八%というところにおったわけでございますから、ことしの上がりの水準というものは、昨年の半分以下になっておるわけであります。そこで、この経緯をたどっていきますと、今年度対前年度というものが四・二%になりましても、実はあまりふしぎはないので、そういう道をいまのところ歩いておるわけであります。これにはもちろん各方面にお助けを願って、お天とさまをはじめ、いろいろいい要素があるわけでございますが、ともかくそういうところにあるのだということだけはこれを憾めていただきたいと思います。そこで、そういう状況が続いていきまして、ともかく所期の目的あたりで消費者物価というものの上がりが済む。四・二になれば、今年の四月対昨年の三月は三%になるはずなのでありますが、そうなりましたら、これは何年か続きました七彩近いところの消費者物価の動きというものが、大体ここで経済構造の変化等によってまず終わったという判断ができるときがくるのではないか、そういうときには、ともかく公共料金を押えておくということは、各方面に御難儀をしいておるわけですから、やはりそういう時期がくれば、それは次々と解除していく、あるいは全面的に解除いたしませんでも、起債その他いわゆる融資で助け得る部分は助けまして、何がしかは認めていくというときがくればいい。またきそうな感じがしておるわけでありますが、しかし、それはそのときの時点で判断するよりほかはない、こういうふうに申し上げておるわけであります。
  265. 井手以誠

    ○井手委員 ただいまの総理なり長官のお話は、総裁選挙がどうなりますか。あるいはまた論争する機会があるかもしれません。いまの問題は構造的な関係ですから、そういま目の前に輸出が好調で国際収支が好転したからもうだいじょうぶなどと安心される時代ではございませんよ。私ども国民生活安定の立場から心配のあまり申し上げておる。次に、私は日韓会談についてお伺いいたします。総理にお伺いいたしますが、友好関係をつくる、国交回復には私は両国が喜んで受け入れる態勢と空気でなくてはならぬと考えております。日韓会談においても、両国が喜んで受け入れる態勢、これはよかったという空気でなくてはならぬと考えますが、総理のお考えはいかがでございましょう。
  266. 池田勇人

    池田国務大臣 日韓の友好関係は末長くこれを続けていく土台をつくることが絶対に必要でございます。だから、両国国民の大多数が喜んでこれに応ずるという態勢が必要であることは、これは日韓のみならず外交を取り扱う上において当然のことだと考えます。
  267. 井手以誠

    ○井手委員 続いてお伺いいたしますが、韓国は先般日本の巡視船を連行いたしました。これはけしからぬ行為であります。また昨日の昼は、対馬沖において日本の保安官に銃を向けたという報道があります。きょうも閣議でいろいろ論議があったそうでございますが、いま日韓会談の漁業交渉は、いろいろな言い分はあっても、海岸線から十二海里の線でいこうという話し合いが進んでおるはずであります。そういう話し合いが進んでおるときに、こういう不法行為、不信行為というものは、これは外務大臣、どういうふうにお考えになりますか。
  268. 大平正芳

    ○大平国務大臣 一昨日ありました不審船のことにつきましては、国籍その他まだ判明いたしませんので、何とも申し上げる段階じゃございませんが、いま井手さんが触れられました、この前に起こりましたわが巡視船不法連行の問題は、仰せのとおりでございまして、これはわが国の公船に対する重大な侮辱でございます。両国の関係から申しまして遺憾きわまることであると思います。
  269. 井手以誠

    ○井手委員 韓国の政情不安については、去る四月農相会談が中断されたことで明らかに立証されておると考えます。本日の昼、学生のデモがきびしく行なわれて、千人近く連行された、警察官に逮捕せられたと報ぜられております。テレビが放送いたしておりました。しかもこの韓国の考え方あるいは学生どものスローガンは何であるか。それは日本の経済侵略、あるいは日本商社の追放を叫んでおると私は聞いておりますが、その状態はどうなんです。そうではないのですか。
  270. 大平正芳

    ○大平国務大臣 日本との経済関係を目して、それが再び日本の経済侵略になるのではないかという懸念も、学生運動の中のスローガン等にはちらほら見えるということは承知いたしております。
  271. 井手以誠

    ○井手委員 三月末でございましたか、閣僚の不信任案が提出されたときに、与党議員二十数名が賛成投票を行なったということが伝えられていますが、外務大臣御承知ですか。
  272. 大平正芳

    ○大平国務大臣 はい、伺っております。
  273. 井手以誠

    ○井手委員 総理大臣にお伺いいたします。  ただいままでお聞きしましたように、韓国における対日感情は非常に悪いのです。野党はじめ、学生その他の多くの人々が屈辱外交反対を唱えておる。日韓漁業会談反対を唱えております。またこれらについては一本にも反省すべき点があると考えますが、もし会談が成立して妥結した場合には、日本人の血税から請求権のあの金を払わなくてはならぬ。しかし韓国はそれを受け入れてくれるような空気ではない。これは明らかです。また政情不安であることは、もういまの外務大臣のお話で明らかであります。かりに日韓会談が妥結いたしましても、あるいは批准ができないかもしれない情勢である。向こうにはこういう日韓会談反対の空気が充満しておる。そういうときに日韓会談を進められることは、私はおもしろくないと考えます。先日までは早期妥結を総理大臣は言われておりましたが、今日の情勢に至っては、私はだいぶん変わってきたと思う。私はこの機会に、韓国が喜ばないものを何で急いで解決する必要があるのか、日韓会談に対する総理の考え方を承っておきたいと思う。
  274. 池田勇人

    池田国務大臣 御質問の点がどうも私はっきりしないのですが、韓国が喜ばないものなら調印も何もできないじゃございませんか。だから、前提が違うのじゃございませんか。われわれは韓国の政権が国民の支持を受けまして、そうして日本と国交正常化しようという努力のところに誠意を認めて交渉しておるのであります。したがいまして、あせりはしません。正常化は一日も早いほうがいいけれども、決してあせっていないということを初めから言っておるじゃございませんか。それを、韓国の人の反対が横溢しているのになぜ調印するか、――これじゃ質問にならぬと思います。答えようがむずかしゅうございます。前から私ずっと答えておるところをあなた御存じでございましょう。だから、緯圏の大部分の人が喜んでいないというのに、まとまりっこないじゃございませんか。その前提からひとつ変えてお話しにならぬと答えようがございません。
  275. 井手以誠

    ○井手委員 前提は決して違ってはいないのです。朴政権は早期妥結を希望しておるけれども国民はそうじゃないです。この前四月の初めにどうして金鍾泌が召換されたのですか、帰国いたしましたか。農相会談がどうして決裂したのですか、中断いたしましたか。これを見ても明らかじゃございませんか。きょうのデモはどうでございましたか、朴政権打倒を叫んでやったじゃございませんか。そういう空気の中に日韓会談をいままでのように早期妥結、一日も早く妥結したいという考え方は、これは改むべきじゃないのか、それを聞いておるのですから、決して筋は違っておるのではありません。私のほうが正しいのです。いままでは朴政権は安定しているという考えのもとに立って、私どもは反対であったけれども池田内閣は進めてこられた、しかし今日では不安定です。日本商社追放なんて叫んでおるときに、こういう妥結をして向こうがありがたく受け入れるですか。これは明らかなことです。そういう空気の中に進められることはどうかと、私は親切に質問をいたしておるのです。なお早期妥結をお捨てにならないのですか。これは非常に大事なことであるから慎重にやりたいというお与えでございますか、重ねてお伺いしたい。
  276. 池田勇人

    池田国務大臣 早期妥結の根本方針は変えておりません。一月も早くやりたい。しかし、それは決してあせっていないのですから、慎重にやっていこうというので、これは前からの私の考え方であります。だから、その方針でやっていく、相手のあることでありますから、相手が、国内事情があるからもうしばらく会談を休もうといえば、こっちも休みます。いや、それでもやらなければならぬというようなことは言っておりません。私は、やはり対等の立場で、誠意をもって、そうして向こうの考え方を聞きながらこれを一日も早くまとめ、そうして慎重にやっていくということは、もういろいろなことでおわかりいただけると思います。何でもかんでもやらなければならぬということは、決して言ってはいないじゃありませんか。
  277. 井手以誠

    ○井手委員 政情が安定していないから交渉は打ち切られたらどうかと、私どもはかねてから主張しているのですよ。政情が安定するまで、見通しがつくまで日韓会談は、たとえ朴政権から、いまの内閣から申し出があっても、しばらく待って、慎重にお考えになってはどうかと、私は親切に聞いているのですよ。好意をもって聞いているのです。政情が安定するまでお待ちになるお考えはございませんか。
  278. 池田勇人

    池田国務大臣 御親切かどうかわかりませんが、いまの私から、韓国の政情が安定だ不安定だ、こういう批判を下すことは私は差し控えます。われわれは誠意を持って、そして向こうさんと十分冊し合いをしながら、日韓の百年の基をつくろうということで進んでおるのであります。
  279. 井手以誠

    ○井手委員 安定、不安定は、総理の口から簡単に言えないかもしれません。しかし良識があるならば、総理の胸の中にはわかっておるはずであります。政情が安定するまで慎重に、たとえ来年になってもこれを慎重にやりたいというお考えでございますか、いかがでございますか。
  280. 池田勇人

    池田国務大臣 来年になってもと、こう言っておられますが、安定すれば、きょうからでもやります。何もあなたがおっしゃるように、政局が不安定で、大多数の人が日韓交渉に反対しているというのだったら、来年も再来年もできやしません。
  281. 井手以誠

    ○井手委員 外務大臣、あなたのいままでの御答弁からいきますと、政情は安定とは言えませんね。これはひとつお考えにならなければいかぬと思いますが、どうですか。総理も慎重にやりたいとおっしゃる。どうですか。
  282. 大平正芳

    ○大平国務大臣 たびたび申し上げておりますように、私どもが外交をやる場合に、相手国の政情について安定度をはかるなどという裁判官の立場には立たないつもりでございます。私どもは、相手国の合法政権と誠意を持って交渉するというのが私の責任でございます。その交渉の場面におきまして、先方の政局の主体性は交渉の場面に出てくるわけでございますから、交渉につきましては、慎重でなくていい交渉なんというものはどこにもありません。いつも慎重にやっておるわけでございます。
  283. 井手以誠

    ○井手委員 毎日のようにデモが行なわれておる。国民もデモに参加している事実もある。日本商社帰れというスローガンが出ておる。日韓会談反対の空気は、意見は、野党全員や与党の中にもあるわけですから、そういう空気の中に推し進めるべきものではないと私どもは考えるのですよ。だから、この政情がいま少しく安定するまで見きわめて、私どもは反対である、けれども、おやりになっている政府としては、いま少し見きわめられることが大事ではないか、いま少しく政情安定を見きわめる必要はないのですか。
  284. 大平正芳

    ○大平国務大臣 井手さん、御了解いただきたいのでございますが、つまり向こうの、韓国の状況を会談に当たってどのように集約して出してくるかということは、韓国の問題、韓国の政府の問題でございます。そして、その韓国の政局を交渉にどのように反映してくるかも、韓国の政府が判断して私どもとの交渉の場面に出してくるわけでございまして、私どもは、日韓会談という場面を通じまして慎重に誠意を持って当たっておることにおいて、必要にして十分であると考えております。
  285. 井手以誠

    ○井手委員 外務大臣、よく聞いてくださいよ。金鍾泌氏がどうして先般帰国をしたのか、日本に来ておった人がなぜ帰されたのか、あるいは農相会談がどうして中断したのかを考えると明らかでしょう。いつ朴政権が倒れるかわからないような状態のときに、これを急いで話を進めるべき問題ではないのです。これは慎重にやることが私はわが国の政府としての当然の立場であると考える。考え方であると思うのです。だから、いましばらく政情安定まで待つべきではないかと私は申し上げるのです。それはこういう状態でございますから、あるいは八月までとか、あるいは今年一ぱいとかいう期限つきではなくて、来年になっても私は安定するまで待つべきではないか。やはり慎重に、来年になってでも慎重にやるという考えに立たねばならぬじゃないかと聞いておるわけです。もう一ぺん願います。
  286. 大平正芳

    ○大平国務大臣 何べん申し上げても同じことなんでございまして、韓国与党の人を呼び返すとか、あるいは農林大臣を呼び返すとかいうことは、向こうの政府の問題でございまして、われわれがとやかく、あなたも私も心配する必要はないと思うのでございます。私どもが心配しておるのは日韓会談というものをどう進めていくかの問題で、会談の場面に先方の政局がどのように反映してくるかということを十分注意しながらやっておればいいわけでございます。私はその場合は、いかなる会談におきましても、これは日韓交渉ばかりでなくすべての会談においてきわめて慎重にやっておるつもりでございます。
  287. 井手以誠

    ○井手委員 私はこんな大事な会談は、もう何人も知っておる韓国の政情不安、そういうときには進めるべきではない、会談は中断すべきである、これは強く私は主張いたしておきます。  そこで、総理大臣にお伺いいたしますが、政府はかねがね言明されておるように、日韓会談は一括解決であるとおっしゃっておる、間違いございませんか。
  288. 池田勇人

    池田国務大臣 一括解決というのはどういう意味での御質問でございますか。
  289. 井手以誠

    ○井手委員 請求権、漁業権……。
  290. 池田勇人

    池田国務大臣 請求権、漁業権あるいは法的地位の問題等、いままで論議されたものは全部一括で妥結しよう、こういうことでございます。
  291. 井手以誠

    ○井手委員 そこで外務大臣にお伺いいたしますが、あなたのほうの外務省の代表は、去る五月の二十一日に、経済協力だけは先にやってもよかろうという考えを韓国の代表に述べられたと新聞は報道いたしております。これは事実ですか。これはいま総理大臣もはっきりおっしゃったように、請求権、漁業交渉、法的地位その他すべては一括解決になっておるのが基本方針であると私どもは信じておる。いままで承っておりますよ。ところがその請求権問題、それの添えものとしてあなたのほうで予定されておるこの経済協力、これは政府が関与したものですから公的な性格を持っておるのです。これだけ切り離して先に渡すべき性質のものじゃございませんよ。食後に出るくだものやみやげ品だけ先にやるようなばかなことはできません。私はそういう事実はないと思いますが、そういうことはあり得ないと思いますが、念のためにお伺いいたしておきます。
  292. 大平正芳

    ○大平国務大臣 三億ドル、二億ドルというものと政府が金額、条件につきまして責任を持っておる経済協力、これは協定ができて、国会の御承認を経なければ使えないわけでございます。いま御指摘の問題は、普通いわゆる民間レベルにおける問題であろうと思うのでございます。これは、商業ベースにおきまして、共産圏といわず非共産圏といわず、わが国は民間レベルにおいてやっておるわけでございまして、韓国だけがやって悪いという理屈はないわけでございます。今日まであまり動いておりませんが、私は原則論として、民間の間にそういう話があればそれは、実行して差しつかえないものと考えております。したがって、私どものほうで経済協力というものを考えておるという、あなたが御指摘された問題はそれを言ったのではないかと思います。
  293. 井手以誠

    ○井手委員 総理大臣、いま外務大臣から私はとんでもないお話を聞きました。経済協力は差しつかえないじゃないか、民間の経済協力は差しつかえないじゃないかというお話です。これはたいへんなことですよ。請求権の解決、国交正常化、その添えものとして経済協力というものが私は言われたと思うのです。当然のことだと思う。政府が三億ドル、二億ドル、それじゃどうしても足りないから何とかしてくれという相談に対して、民間のものについてはどうだろうか、それは政府間でやる、輸出入銀行が関与する問題ですから、別個の問題じゃございません。政府間で正式に取りかわされるものじゃございませんが、これは請求権に付随した問題です。国交正常化と切り離して考えるべき問題じゃないのです。一括解決は違うのです。これは一括解決の中に含まれるものです。総理大臣はどうお考えですか。
  294. 池田勇人

    池田国務大臣 ただいま外務大臣がお答えしたとおりでございます。経済協力と言いますが、その経済協力をどうとるかという問題でございましょう、外務省の言ったのは。これは共産圏と言わず、自由圏と言わず、いわゆるコマーシャル・ベースによりましての経済協力というものはどこの国ともやる。これはグローバルの通念です。ただ一括ということを私が言っておるのは、いわゆる政府の責任においていまの有償・無償、そうして法的地位あるいは漁業問題等の分とこれは別な観念。グローバルな考え方で、韓国だけグローバルなものからあれをするのだというのでは差別待遇でよくございません。日本としては、各国とやはり経済協力をやっていこうというのは、これは基本的の問題であるのであります。
  295. 井手以誠

    ○井手委員 それはわれわれは反対です。一括解決をする、請求権や漁業問題、法的地位などの一括解決をして国交正常化を行なう、そのあとで経済協力が行なわれるのではございませんか。順序があるはずですよ。国交正常化、国交回復をしてから初めて経済協力が行なわれるはずですよ。いままでの日韓会談の経緯を見ますればこれは明らかですよ。それを向こうから頼まれたからといって、韓国の経済状態が悪いから経済協力だけを抜き出して先にやるということは考えられぬ活だ。たとえこれは言いわけはできても、国民が納得するものじゃございませんよ。一括解決、国交正常化、そして経済協力という順序じゃございませんか。しかもそのために政府間で話し合いをした。輸銀が関与する経済協力、これは一括解決、国交正常化のあとに行なわれるものであって、国交を正常化せぬ前に輸銀が保証する経済協力をやるべきものじゃございませんよ。
  296. 大平正芳

    ○大平国務大臣 井手さんらしくもないことをおっしゃいますね。これは国交正常化の問題とまた別なんでございまして、国交正常化していない米承認国との間でも、商業ベースで取引をやっておるわけでございまして、したがって輸銀がファイナンスいたしておるわけでございます。頼まれたからやるというのではなくて、これは商売人同士の間で成約ができたら、それに対して輸銀が関与して輸出金融をやるということでございまして、先ほど申しましたように、承認国であろうと、未承認国であろうと、共産圏であろうと非共産圏であろうと、そういうものはやっていくたてまえになっておるわけでございまして、現にそう実行いたしておるわけでございまして、韓国だけはそれはやってはいかぬぞというのは、私はそういう理由がわからぬので、もし韓国だけはなぜやって悪いのか、あなたの御説明を聞いておると、それは請求権問題の解決のときに一億ドル以上の民間借款が期待できるというのがあるじゃないか、そういう文句があるじゃないかということ、いまあなたが御指摘されている一括解決の中にちゃんとそういう条項があるじゃないかということを言われておるのでございましょうが、それはやや言いがかりの種類のものだろうと思うのでございます。これは、つまり日韓の間にすでに一億数千万ドルの輸出が現に行なわれておるわけでございまして、経済関係はきわめて密接なんでございますから、その間に輸出金融の面で相当額の民間の借款はあり得るということは、私は当然のことだろうと思うのでございます。
  297. 井手以誠

    ○井手委員 きわめて不自然なやり方ですよ。いままでの日韓交渉から考えてみますと、きわめて不自然です。あり得ないことです。一括解決をする、そして国交回復、国交正常化、それに伴って経済協力をしようというのがたてまえじゃございませんか。けしからぬ話です。  それではもう一つ重大な問題でありますからお尋ねしておきたい。外務省の、これは専務当局でけっこうですが、漁業関係で内水とはいかなるものでありますか。どういう支配権が沿岸国に及ぶのか。内水について承りたい。
  298. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 領域内の水面でございまして、海について申し上げれば、直線基線なんかを設けた場合のその基線の内側の水域、こういうことでございます。
  299. 井手以誠

    ○井手委員 それは答弁がおかしいのですよ。内水とは河川、港湾、湖水、湖沼、こういった領土と同じ、陸地と同じ支配権の及ぶものを内水と言われているはずです。そうでしょう。
  300. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 そういうものももちろん含まれますけれども、海のほうについて申し上げれば、直線基線の内側も内水である、そういうことにジュネーブでつくりました海洋法会議の結果の条約になっておるわけでございます。
  301. 井手以誠

    ○井手委員 その直線基線について承りたい。日本の基本方針は何ですか。直線基線に対する基本方針を承っておきたい。ジュネーブにおける日本代表の方針、主張です。
  302. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 ジュネーブ会議におきましては、日本代表はこれに反対いたしました。
  303. 井手以誠

    ○井手委員 日本がとった面線基線に対する主張を聞いておるのですよ。間違わぬことをおっしゃってください。
  304. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 画線基線という制度は、国際法上わりに新しい制度でございまして、一九五一年に国際司法裁判所がこれをノルウェーの海岸について認めました。その後この問題が国際法委員会で取り上げられ、引き続いて海洋法会議で論議されたわけでございます。大勢はこれを支持するほうでございましたけれども、わがほうはこれをいろいろ制約するような方向で修正案などを出しまして努力いたしたのでございますが、そういうことが通りませんで、結局現在の条約案になるような結論が出たわけでございます、当時わがほうといたしましては、国際法上の制度としてまだそれほど確立しておらぬものについて、いま直ちにいまのままの形では賛成しかねるという立場から反対投票をいたした、こういうことでございます。
  305. 井手以誠

    ○井手委員 横田代表はどういう主張をいたしましたか。直線基線の長さは海岸から何海里を主張いたしましたか。
  306. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 横田代表は次のように述べております。「国際法委員会は、イギリスとノルウェーの漁業事件に関する国際司法裁判所の判決のうちで、直線基線に関する部分を現行の法を表現するものと解釈した。国際法委員会に対して、われわれは最高の敬意を持つものであるが、私の知るかぎり、右の漁業事件の前に、直線基線を国際法の現行規則として述べた国際法のテキスト・ブックはなく、領海に関する論文もない。国際法学会も、国際法協会も、その他の国際法に関する学会も、領海に関する決議のうちで、かつて面線基線の方式を採用したものはない。一九三〇年のハーグ法典会議でも、直線基線の問題は、討議にのぼらなかった。これらの事実に照して、直線基線を認めるにしても、合理的な範囲にとどめるべきものである。いずれにしても、直線基線について最大限の長さを定めなければ、かなりの海の区域が直線基線の内にとりこまれる可能性があり、結局には、公海の一部を沿岸国の主権に服させることになる。そこで、公海の自由を確保するために、許される最大限の長さを定める必要がある。」こういうふうな主張をいたしたわけでございます。
  307. 井手以誠

    ○井手委員 局長、そんな答弁を求めておりませんよ。直線基線の長さは幾らであるか、海岸から何海里かと聞いているのですよ。横田代表が主張したのは何海里かと聞いているのですよ。
  308. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 日本その他四カ国で出しました共同提案では、最大限の流さを十海里とする、こりいうことになっております。
  309. 井手以誠

    ○井手委員 それから、海岸線から。
  310. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 この基線は、海岸線の突端の間、その突端と海岸から五海里以下の島の間、またはそのような島の間で引くことができる。もっとも、この直線基線上のどの点も海岸から五海里以上でないならば、より長い直線を引くことができる。こういうことです。
  311. 井手以誠

    ○井手委員 それを言えばいい。朝鮮海峡の韓国の沿岸のように、屈曲の多いところ、鳥があるところでも、あまり直線基線を遠くに引いてはいけないから、長さは十海里、低潮線から、海洋線から五海里以上離れてはならぬというのが日本の基本方針でしょう。いまのは横田代表、最高裁判所の横田喜三郎さんですよ。それが基本方針でしょう。外務大臣に念を押してれきます。日本の基本方針でしょう、それは。一九五四年には、これが国際法委員会で原案になって採択されておるのですから、基本方針でしょう。
  312. 大平正芳

    ○大平国務大臣 横田代表がそういう主張をしたことは事実でございます。しかし、それがそのとおりにならなかったということでございます。
  313. 井手以誠

    ○井手委員 三分の二の多数は得られなかったけれども、多数国の、多くの国々の賛成を得ているのですよ。日本が修正案まで出しているのです、よ共同修正案を。日本の方針でしょう、それは。横田代表は日本の代表じゃございませんか。日本の代表が主張した修正案、提案、それは日本の主張でしょう。それだけはっきりおっしゃってください。
  314. 大平正芳

    ○大平国務大臣 そういう主張をもちまして鋭意戦ったわけです。
  315. 井手以誠

    ○井手委員 農林大臣、いまの主張は、日韓会談でどうされましたか。主張されましたか。この主張をするならば、済州島を含むさかさ富士山のような形には絶対なりません。海岸線から五海里、低潮線から五海里になるはずです。この低潮線から五海里、それから十二海里が領海、専管区域、共同――あなたの言う共同規制区域、こういうことになるのです。一番基本になるのはこの面線基線をどこに引くべきか、それを五海里と主張なさったのですか、日韓漁業会談に。
  316. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 いまさかさ富士みたいになったというお話ですが、さかさ富士までまだいっておりません。そういうことでなく、国際慣行に従ってどの辺に引くかということでまだ折衝中でございますので、いまのような考え方は、五海里とか十海里とかいうふうな考え方を含めて主張しながら折衝中でございます。まださかさ富士までいきません。
  317. 井手以誠

    ○井手委員 それでは農林大臣、低潮線から五海里というのが基本方針ですな、日本は。はっきりおっしゃってください。日本の方針は二つはないはずです。
  318. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 日本の主張は、先ほど言いましたように、破れた主張でもございます。そこで、国際慣行といたしましては、再々申し上げましたように、低潮線からはかっていく、あるいは鳥が相当複雑にあったり、出入りが多いというところでは、島をつないだ線を基線とする、こういう国際慣行でありますから、その国際慣行に従っていろいろ折衝をしておった、こういうことでございます。
  319. 井手以誠

    ○井手委員 農林大臣、誤解をしちゃいけませんよ。日本の案は、三分の二の多数は得られませんでした、修正案は。しかし、かつて一九五四年には、国際海洋法会議の原案になっておるのですよ。多くの国々が賛成しているのですよ。これが日本の主張なんです。朝鮮の低潮線、韓国の低潮線から五海里、それ以上を含めてはならぬはずです。それで交渉なさっておりますか。そうじゃないでしょう。それをくずしてはなりませんよ。低潮線から五海里を離れてはなりませんよ。それをはっきりしてください。この線さえはっきりしておるならば、済州島の問題とか、あるいはいろいろな小さな島の問題は解決するはずです。あなたのほうはそれを忘れておったではありませんか。主張していないでしょう。条約局長、それを知らないじゃないですか。これをあなたのほうは失念しておったでしょう。失念しておったならば失念しておったでかまいません。いまからやり直せばよいのです。その基本線を譲ってはなりません。どうですか、農林大臣。
  320. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 低潮線からはかる場合と、島をつないだ点からはかるはかり方、これが国際慣行でございます。国際慣行に従って主張しているわけでございます。
  321. 井手以誠

    ○井手委員 農林大臣、そんな答弁はありませんよ。島が次々にあるようなところでははかりようがないから、そういうように局が点々として五海里先、十海里先にあるようなとこころでは、全部含めるというようなことはできない。そういうところまで全部含めますと、河川や、港湾や湖と同じように、陸地と同じように支配権が及びますから、そういうことをしますと公海の自由を脅かされるというので、日本の提案としては、幾ら島があっても、海岸線から五海里、低潮線から五海里という限界を主張しているのですよ。それをくずしてはならぬと言っているのです。あなたはくずしているのですよ。島があるが、その島を含むという考えではございません。島が次々にあって、そのために内水がふくれては困るから、少なくとも、島が幾らあっても、低潮線から五海里以上を離れて直線基線を引いてはならないというのがわが国の主張ですよ。これを譲ってはなりませんよ。
  322. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 いま前段御指摘のやつは、湾の問題だと思います。湾の先にそういう島があるときにだと思います。それから低潮線のはかりようがないように島がたくさんあるところがございます。そういう場合には、島と島とつないで、それから先へはかつていくということは、この条約案にも盛られておりますし、これは国際慣行でありまして、日本の主張は低潮線からという主張でございますが、低潮線からはかることが困難な場合には、そうでないはかり方がある、これが国際慣行と私は了承しております。
  323. 井手以誠

    ○井手委員 赤城さん、これを沈んだことがありますか。横田代表の帯いたのを読んだことがありますか。あなた、知らぬでしょう。朝鮮海峡のように、海岸から点々と島があって済州島に及ぶようなところに、島をずっとつないで画線基線を引いては、済州島まで全部内水になってしまう。そういうことがあっては世界各国とも困る。だがら、いかに鳥が点々とある場合でも、海岸線から五海里離れてはならぬ、それが日本の主張ですよ。それをあなたのほうは守ってもらわなくちゃならぬ。守りますか。それを聞いておるのです。その次に鳥があった場合に、そこに領海を設け、そうして専管区域を設けることは――島の周辺は当然です。しかし、点々とある場合に、どこまでも局があるから、十海里先に島があるから全部含めるという、これはだめですよ。日本の方針とは違うのです。それだけははっきりしてください。この直線基線の五海里さえきまれば、あとは簡単です。あなたはそれをくずしているはずです。
  324. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 私は、あの間を結論的に申し上げますならば、内水にするなどということを了承したこともなければ、そういう話をしたこともございません。それから、島があれば、一番先の島まで持っていってそこを島と島をつないで基線にする、こういうようなことも考えておりません。また、そういうことは不当だと思います。でございますから、沿岸に近接しておるところの島――これは島が非常に複雑しておるところがたくさんございますが、そういうときには、最も近接している島と島とを結ぶということで、一番先の島まで結んでやっていこう、こういうようなむちゃなやり方はやっておりません。国際慣例に従ってやっておるわけてございます。先ほどの横田代表の主張は、主張として主張いたしましたが、これは結論的には通らなかった。そこで、国際慣行として認められておるところの考え方に従って基線の引き方を折衝した、こういうことでございます。
  325. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 井手君に申し上げます。実は質問中お気の毒ではございますが、関連質問といたしまして、川俣清音君から関連質問の印し出もございます。実は予算委員会といたしましては、理事会できめたお約束どおりのことをいままでやってまいりまして、委員各位には非常な御協力をいただいております。どうかひとつ将来の予算委員会の会議の方法といたしましても、お約束どおりにひと?やっていきたい、議会の正常化から見ましても、そうやっていきたい、こう考えておりますが、御協力をお願いします。きわめて簡単に結論をひとつお願いいたします。
  326. 井手以誠

    ○井手委員 時間もないようですから、結論だけを申し上げましょう。いまの直線基線の話は、別に日本の案が通らなかったからといって、別の案が通過したのじゃないですよ。そういう具体的な問題がいろいろ論議されて、三分の二の多数を得られなかった。だから、抽象的な結論が得られたわけですよ。別の問題がきまったわけじゃないのですよ。だから、日本としてはあくまでも低潮線から五海里以遠に直線基線を引くべきじゃないという強い主張をしてもらいたい。これを私は申し上げておきたい。日韓会談については、韓国の政情は不安である、そういう意味からも、私はこの際絶対に交渉を進めてはならないということを最後に申し上げまして、私の質問を終わります。
  327. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 井手君、御協力ありがとうございました。  井手以誠君の質疑に関連をいたしまして、川俣清音君の質疑を許します。なるべく簡潔にお願いいたします。  川俣清音君。
  328. 川俣清音

    ○川俣委員 井手以誠君並びに淡谷君から質問中に起こっておりまする消費米価の問題について、大蔵大臣並びに農林大臣から御答弁をいただきたいと思うわけでございます。  それは、消費米価は上げないような答弁もありまするし、総理大臣からは、所得が上昇するならば消費者が一部負担することもあっていいのじゃないかというような答弁も行なわれておりまするので、上げないような、上げるような答弁になっております。消費米価は上げないというのが、予算委員会の予算審議中に明らかにされたところでありまするし、また国会で承認をいたしました予算案にも、消費米価は上げないことになっておりますが、一体上げるのか、上げないのか、この点を明らかにしたいと思うのであります。特に農林大臣からは、上げないのだ、こういう答弁になっておりますが、ここで疑問が生じまするのは、いわゆるスライド制でありますが、スライドでなくて、統計学的にストライド制というものは、当然生産者米価にスライドする価格でありまするから、消費米価を上げないということになれば、生産者米価も上げないのだということになると思う。この点で、生産者米価は、物価の上昇並びに賃金の上昇によりまして、上げざるを得ないところへきておると思うのです。そうすると、消費者米価は上げない。スライドはやる。生産者価格は上げないのか、上げるのか、これもわからなくなる。上げる上げないは別にいたしまして、上げないような計算をやらなければならぬということに追い詰められることになるのではないかと思う。そこで大胆のスライド制というものは、統計学的にいうスライドでなくて、ただおそらくこうではないかと思うのですが、どうも消費者米価というものを毎年算定することは困難でございますから、生産者米価がきまれば自然にスライドして消費米価をきめるということがやりやすいことだ、そういう考え方でスライド制をとっておると思う。また一方、食管の赤字が非常に大きくなってきて、これを何とか防がなければならぬために、スライド制というものが考えられてきたのであろうと思う。ところが、一方に、いまの井手委員質問に対して政府の答弁は、公共料金をはじめといたしまして、物価の上がるようなことはできるだけ抑えなければならぬということになってきております。そうすると、上げなければならぬ生産者米価は、上げないという回答でもあるように誤解を受けるわけでございます。消費者米価は上げない。しからば、逆にスライドするならば、生産者米価も上げない。上げないという根拠が出てきていないはずだと思う。ただ観念的に上げないという意味なのか、この点が非常にあいまいになっております。消費米価が上がるということは、今度の仲裁裁定におきましても、織り込んでいないようです。したがって、もう一ぺん賃金の問題で労働問題が発生しないとは限らないと思います。また、そのほかに物価の上昇に非常に拍車をかけることになると思うので、そういう意味では上げないと言われるのでしょうが、上げないという意味がはっきりしない。スライドするということになるならば、上げるということにも聞こえる。上げないというのは、観念的には上げないのだが、スライドというのは当然スライドするわけですから、上がるということになるはずです。もし上げないというのなら、生産者米価も据え置きということになります。そうすると、従来の米価算定の基礎と全く違ってくる。あるいは需給均衡価格ということもいわれておりますけれども、需給均衡価格でことしの生産米価を検討いたしますれば、一万七千円以上になることになります。需給均衡価格というのは、非常に米がだぶついておったときの計算のしかたでありますから、だぶつかない、不足を来たしておるときには、ばか高い生産者米価になるので、これもとり得ないと思う。そうすると、今後の生産者米価の算定について幾多の疑問を生じてきて、生産者に大きな不安を与えるということになると思うので、この際明確にしてほしいと思う。  大蔵大臣にお尋ねしますが、この前の食管会計の中には、消費米価を上げるということになっていない。生産者米価は、生産費及び所得補償方式によって算定することになっておるから、これは計算によって上がるかもしれないし、上がらないかもしれないということになっておる。消費米価は上げないということになっておりますが、予算を修正するつもりで消費米価を上げるのか、あるいは予算を修正するつもりで生産者米価を据え置くのか、この点が明らかにならなければならぬと思う。
  329. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 農業問題に明るい川俣さんの質問とも受け取れないような御質問であります。すべてはっきりしております。消費者米価は、三十九年度に上げない、これははっきりしております。生産者米価は、生産費及び所得補償方式という方式がございます。その方式の中には、物価が上がった分は上がってきますし、労賃が上がった分も上がってきます。下がる分は、収穫が非常に多い場合には下がる要素もあります。そういう要素をいろいろ取り入れて計算しますと、これは当然上がらざるを得ないのでこれは上げないとかなんとかいうことではございません。はっきりしております。消費者米価は上げない。生産者米価は、その額はわかりませんが、相当これは上がる。これはもう川俣さん御承知のとおりに、やっていくのですから、そういきます。  そこでスライドの問題ですが、昨日からいろいろな問題がありますが、私は、たとえば消費者米価なら消費者米価の算定方式をもっと突き詰めてきめていく場合に、生産者米価との関連がそこにおいてつき得ないのだろうか、私はつき得るものだ、こういうふうに考えておるわけです。ですけれども、かりに生漁者米価が千円上がったら、消費者米価もやはり石千円上げる、こういうふうに私はスライドというものを考えておるわけでございません。それで、いわゆる生産者から高く――生産者から見れば高いというわけではございませんが、合理的に買って、そうして消費者にはわりあいに安く売っている。その差額は全部政府で負担するということばかりでなく、あるいは消費者が一部分は持ってもいいものがあろうじゃないか、その関連がどこかにありはしないか、こういうことですから、生撞著米価が上がったら、そのまま消費者米価も上げるということを考えているわけではございません。その一部分は消費者に負担してもらうような算定方式がないものであろうか、あるいは消費者米価が上がったら、逆に今度は生産者米価も上げていく、こういうようなことで、スライドですから、上からも下へくる、下からも上へくる、右からも左からも回るというような方式がないものであろうかという、この検討をひとつ進めるということで、私がスライド制の検討を命じた。したがって、消費者米価を上げるんだ、こういう結論には相ならないわけでございます。また、このスライド制がはたしていいのかどうかということについての結論も出ておらないわけでございます。そういうわけでございますから、何から何まで御承知の川俣さんの御質問でございますが、私が申し上げたような次第でございますので、御了承願います。
  330. 田中角榮

    田中国務大臣 いま農林大臣がお述べになりましたように、まだスライド制等の問題については全然協議を受けておりませんので、意見を申し上げる段階ではありません。  それから、生産者米価が上がるかどうか。まあ大体上がるだろうというように農林大臣いまお述べになりましたが、これもいま初めて聞いたことでございまして、農林省からまだこちらへお話がないわけでございます。  また、生産者米価と消費者米価との問題、これは先ほども申し上げましたように、全然無関係である、こういうふうに考えてはおり摂せん。これは当然関係はあるというふうに考えておるわけであります。しかし、スライドまでするかどうかという問題は、農林省でもお考えを十分願って、最終的結論が出れば、政府として検討するということであります。さしあたりの問題はどうかということでありますが、もし生産者米価が上がれば、一体いま消費者米価を上げるのかという問題になりますが、これは物価抑制、公共料金の抑制という閣議の決定がございますので、すぐ消費者米価を上げるというようなことは、閣議としてはむずかしいだろう、こういうことになるわけであります。
  331. 川俣清音

    ○川俣委員 大体了承しましたが、しかし、農林大臣、日本語を使ってもらいたい。スライドというものの理解になると、数理統計学的には農林省でもお使いになっておりますが、単純な計算方式であることの便宜はありますけれども、スライドというのは、大臣考えられておるとおりスライドすることなんです。したがって、スライドするということになると、生産者米価が消費者米価を上げるということがスライドなんですよ。おれのスライドは違うと言うなら、それは日本語じゃないですね。大体スライドが日本語じゃないでしょうけれども、では一体日本語でスライドをどう表現するか、そういう問題が起きてくると私は思うのです。どうかそういう意味で農林省が間違って計算をすることがないように、世界的に使われておるスライドというもので――赤城流のスライド、あるいは食糧庁流のスライドということになると、非常に誤解を生むゆえんでありますから、ひとつ御注意を喚起いたしまして、私の質問を終わりといたします。
  332. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 以上をもちまして質疑は全部終了いたしました。      ――――◇―――――
  333. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 この際、閉会中審査に関する件につきましておはかりいたします。  先ほどの理事会の協議に法づきまして、従来どおり、予算実施状況に関する件及び予算委員会運営の改悪に関する件、以上二点につきまして議長に対し閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、これにつきまして御異議はございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  334. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  なお、予算実施状況に関する閉会中審査の場合、委員を派遣して現地を調査する必要もあるかと思いますが、その際は、派遣委員の選定、派遣地の決定等、すべて委員長に御一任を願い、議長の承認を求めることにいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  335. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたします。  二日間にわたりまして、委員各位の慎重なる御審議を感謝申し上げまして、閉会いたします。    午後六時四十六分散会