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1964-06-01 第46回国会 衆議院 予算委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月一日(月曜日)     午前十時八分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君    理事 櫻内 義雄君 理事 野田 卯一君    理事 松澤 雄藏君 理事 井手 以誠君    理事 川俣 清音君 理事 辻原 弘市君       相川 勝六君    荒木萬壽夫君       安藤  覺君    井出一太郎君       今松 治郎君    植木庚子郎君       仮谷 忠男君    川崎 秀二君       小坂善太郎君    重政 誠之君       周東 英雄君    登坂重次郎君       中曽根康弘君    古井 喜實君       古川 丈吉君    保科善四郎君       松浦周太郎君    松野 頼三君       山本 勝市君    淡谷 悠藏君       石田 宥全君    石野 久男君       加藤 清二君    五島 虎雄君       河野  密君    多賀谷真稔君       堂森 芳夫君    中井徳次郎君       中村 重光君    永井勝次郎君       藤田 高敏君    今澄  勇君       佐々木良作君    鈴木  一君       加藤  進君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         法 務 大 臣 賀屋 興宣君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         厚 生 大 臣 小林 武治君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  福田  一君         運 輸 大 臣 綾部健太郎君         郵 政 大 臣 古池 信三君         労 働 大 臣 大橋 武夫君         建 設 大 臣 河野 一郎君         自 治 大 臣 赤澤 正道君         国 務 大 臣 佐藤 榮作君         国 務 大 臣 福田 篤泰君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君         国 務 大 臣 山村新治郎君  出席政府委員         内閣官房長官  黒金 泰美君         内閣法制局長官 林  修三君         公正取引委員会         委員長     渡邊喜久造君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    高島 節男君         大蔵事務官         (主計局次長) 澄田  智君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     福田  繁君         厚生事務官         (社会局長)  牛丸 義留君         厚 生 技 官         (環境衛生局         長)      舘林 宣夫君         厚生事務官         (保険局長)  小山進次郎君         林野庁長官   田中 重五君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      廣瀬 眞一君         郵政事務官         (大臣官房長) 武田  功君         郵政事務官         (人事局長)  曾山 克巳君         労働事務官         (労政局長)  三治 重信君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         建設事務官         (住宅局長)  前田 光嘉君  委員外出席者         日本専売公社副         総裁      大槻 義公君         日本国有鉄道総         裁       石田 礼助君         日本国有鉄道副         総裁      磯崎  叡君         日本電信電話公         社総裁     大橋 八郎君         参  考  人         (公共企業体等         労働委員会仲裁         委員会委員)  金子 美雄君         専  門  員 大沢  実君 三月三日  委員松浦周太郎辞任につき、その補欠として  石田博英君が議長指名委員選任された。 同月四日  委員永末英一辞任につき、その補欠として西  村榮一君が議長指名委員選任された。 同月六日  委員淡谷悠藏辞任につき、その補欠として横  山利秋君が議長指名委員選任された。 同日  委員横山利秋辞任につき、その補欠として淡  谷悠藏君が議長指名委員選任された。 同月十日  委員保科善四郎君及び石田宥全君辞任につき、  その補欠として高橋等君及び秋山徳雄君が議長  の指名委員選任された。 同日  委員秋山徳雄辞任につき、その補欠として石  田宥全君議長指名委員選任された。 同月十一日  委員井村重雄君及び岡田春夫辞任につき、そ  の補欠として稻村左四郎君及び赤松勇君が議  長の指名委員選任された。 同日  委員稻村左四郎君及び赤松勇辞任につき、  その補欠として井村重雄君及び岡田春夫君が議  長の指名委員選任された。 同月十三日  委員仮谷忠男辞任につき、その補欠として河  本敏夫君が議長指名委員選任された。 同日  委員河本敏夫辞任につき、その補欠として仮  谷忠男君が議長指名委員選任された。 同月十七日  委員井村重雄君及び登坂重次郎辞任につき、  その補欠として三池信君及び篠田弘作君が議長  の指名委員選任された。 同日  委員篠田弘作君及び三池信辞任につき、その  補欠として登坂重次郎君及び井村重雄君が議長  の指名委員選任された。 同月十九日  委員安藤覺君及び加藤清二辞任につき、その  補欠として島村一郎君及び重盛寿治君が議長の  指名委員選任された。 同日  委員島村一郎君及び重盛寿治辞任につき、そ  の補欠として安藤覺君及び加藤清二君が議長の  指名委員選任された。 同月二十四日  委員石野久男辞任につき、その補欠として井  伊誠一君が議長指名委員選任された。 同日  委員井伊誠一辞任につき、その補欠として石  野久男君が議長指名委員選任された。 同月二十五日  委員井手以誠君辞任につき、その補欠として松  浦定義君が議長指名委員選任された。 同日  委員松浦定義辞任につき、その補欠として井  手以誠君議長指名委員選任された。 同月二十六日  委員仮谷忠男辞任につき、その補欠として和  爾俊二郎君が議長指名委員選任された。 同日  委員和爾俊二郎辞任につき、その補欠として  仮谷忠男君が議長指名委員選任された。 同月二十七日  委員古川丈吉君、石野久男君、横路節雄君及び  加藤進辞任につき、その補欠として馬場元治  君、大村邦夫君、田中武夫君及び志賀義雄君が  議長指名委員選任された。 同日  委員大村邦夫君及び田中武夫辞任につき、そ  の補欠として石野久男君及び横路節雄君が議長  の指名委員選任された。 同月二十八日  委員安藤覺辞任につき、その補欠として保科  善四郎君が議長指名委員選任された。 同日  委員保科善四郎辞任につき、その補欠として  安藤覺君が議長指名委員選任された。 同月三十一日  委員安藤覺辞任につき、その補欠として塚田  徹君が議長指名委員選任された。 同日  委員塚田徹辞任につき、その補欠として安藤  貴君が議長指名委員選任された。 四月一日  委員安藤覺君及び山本勝市君辞任につき、その  補欠として菅野和太郎君及び大高康君が議長の  指名委員選任された。 同日  委員大高康辞任につき、その補欠として山本  勝市君が議長指名委員選任された。 同月三日  委員田澤吉郎辞任につき、その補欠として山  手滿男君が議長指名委員選任された。 同月六日  委員西村榮一辞任につき、その補欠として永  末英一君が議長指名委員選任された。 同月七日  委員井村重雄君、登坂重次郎君及び永末英一君  辞任につき、その補欠として福田赳夫君、早川  崇君及び西村榮一君が議長指名委員選任  された。 同月八日  委員仮谷忠男辞任につき、その補欠として中  垣國男君が議長指名委員選任された。 同月十四日  委員石田宥全君中井徳次郎君及び小平忠君辞  任につき、その補欠として楢崎弥之助君、松井  政吉君及び竹谷源太郎君が議長指名委員に  選任された。 同日  委員松井政吉君及び竹谷源太郎辞任につき、  その補欠として中井徳次郎君及び小平忠君が議  長の指名委員選任された。 同月十六日  委員楢崎弥之助辞任につき、その補欠として  石田宥全君議長指名委員選任された。 同月二十四日  委員加藤清二君及び堂森芳夫辞任につき、そ  の補欠として楯兼次郎君及び松井政吉君が議長  の指名委員選任された。 同日  委員楯次郎君及び松井政吉辞任につき、そ  の補欠として加藤清二君及び堂森芳夫君が議長  の指名委員選任された。 同月二十八日  委員中垣國男君及び加藤清二辞任につき、そ  の補欠として仮谷忠男君及び楯兼次郎君が議長  の指名委員選任された。 五月七日  委員早川崇君及び石田宥全君辞任につき、その  補欠として登坂重次郎君及び阪上安太郎君が議  長の指名委員選任された。 同日  委員阪上安太郎辞任につき、その補欠として  石田宥全君議長指名委員選任された。 同月八日  委員楯次郎辞任につき、その補欠として加  藤清二君が議長指名委員選任された。 同月十三日  委員登坂重次郎辞任につき、その補欠として  森下國雄君が議長指名委員選任された。 同日  委員森下國雄辞任につき、その補欠として登  坂重次郎君が議長指名委員選任された。 同月十四日  委員石田宥全君及び小平忠辞任につき、その  補欠として栗林三郎君及び中村時雄君が議長の  指名委員選任された。 同日  委員栗林三郎辞任につき、その補欠として石  田宥全君議長指名委員選任された。 同月十五日  委員登坂重次郎君及び中村時雄辞任につき、  その補欠として園田直君及び伊藤卯四郎君が議  長の指名委員選任された。 同日  委員園田直君及び伊藤卯四郎辞任につき、そ  の補欠として登坂重次郎君及び中村時雄君が議  長の指名委員選任された。 同月二十日  委員登坂重次郎君、石野久男君及び中村時雄君  辞任につき、その補欠として松田鐵藏君、赤松  勇君及び鈴木一君が議長指名委員選任さ  れた。 同日  委員赤松勇君及び鈴木一辞任につき、その補  欠として石野久男君及び小平忠君が議長指名  で委員選任された。 同月二十二日  委員志賀義雄辞任につき、その補欠として谷  口善太郎君が議長指名委員選任された。 同月二十六日  委員仮谷忠男辞任につき、その補欠として田  村元君が議長指名委員選任された。 同月二十八日  委員小平忠君及び谷口善太郎辞任につき、そ  の補欠として、中村時雄君及び加藤進君が議長  の指名委員選任された。 同月二十九日  委員石田博英君、菅野和太郎君、田村元君、高  橋等君、馬場元治君、福田赳夫君、松田鐵藏君  及び石田宥全君辞任につき、その補欠として松  浦周太郎君、安藤覺君、仮谷忠男君、保科善四  郎君、古川丈吉君、井村重雄君、登坂重次郎君  及び松井政吉君が議長指名委員選任され  た。 同日  委員山手滿男君及び松井政吉辞任につき、そ  の補欠として田澤吉郎君及び石田宥全君議長  の指名委員選任された。 六月一日  委員重政誠之君、岡田春夫君、山花秀雄君、横  路節雄君、中村時雄君及び西村榮一辞任につ  き、その補欠として山口喜久一郎君、中村重光  君、藤田高敏君、永井勝次郎君、鈴木一君及び  佐々木良作君が議長指名委員選任された。 同日  理事井手以誠君三月二十五日委員辞任につき、  その補欠として井手以誠君理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  国政調査承認要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  予算実施状況に関する件      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 こたより会議を開きます。  この際、理事補欠選任についておはかりをいたします。  委員の異動により、現在理事が一名欠員となっておりますので、これよりその補欠選任を行ないたいと存じますが、これは先例によりまして委員長において指名することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、井手以誠君理事指名いたします。      ————◇—————
  4. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 次に、国政調査承認要求に関する件についておはかりいたします。  先般の理事会の協議に基づき、予算実施状況について調査を行なうことにいたしたいと存じます。つきましては、この際議長に対し国政調査承認を求めることとし、その手続委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  直ちに委員長において所要の手続をとることといたします。      ————◇—————
  6. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 それでは、これより予算実施状況につきまして調査を進めます。  この際、おはかりいたします。本日、辻原弘市君の質疑の際、公共企業体等仲裁委員会裁定に関し、参考人として公共企業体等仲裁委員会委員金子美雄君の意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  これより質疑に入ります。質疑の通告がありますので、順次これを許します。  辻原弘市君。
  8. 辻原弘市

    辻原委員 私は、社会党を代表いたしまして、ただいまから、許されました時間の範囲内におきまして、一つ憲法の問題につきまして、いま一つ仲裁裁定をめぐっての関連をする諸般問題等について、総理大臣また関係の各大臣及び関連を持つ関係当局に対しまして順次お尋ねをいたしてまいりたいと思います。  最初に、私がお伺いをいたしまする憲法の問題でありますが、最近新聞紙上に報ずるところによりますれば、内閣に設けられている憲法調査会がおおむね六月の二十日過ぎには国会及び政府に対してそれぞれの報告書提出しようといたしておるようであります。ひるがえって考えてみますると、この憲法調査会なるものの設置につきましては、わが党は、これは明らかに将来憲法改正を意図するものであり、かつ、これが発議権を持たない内閣にその機関として設置をするということは、いかように現在の憲法解釈いたしましょうとも、これは明らかに許されない行為である、すなわち、憲法九十九条によって天皇及びその他の国会議員を含めての公務員憲法を順守するの義務を持っている、これらの公務員中心になり国会議員中心になって将来改正を意図するかかる調査会設置することは断じて許されないという態度をとり、また、憲法九十六条には唯一改正手続として明らかに国会がその発議権を持つことを示しておる、そういう憲法上の立場から、われわれはこれを認めず、したがって、それに対する委員を今日まで送らずに至っておるのであります。かく考えてまいりますると、この違憲であり許されない行為のもとに生まれた調査会国会にその報告書提出しようとすることは、これは何と考えても全く憲法解釈からして合法的立場において許された行為ではない、こういうふうに私どもとしては断ずるのでありまするが、それについてまず総理の御所見を承っておきたいと思います。
  9. 池田勇人

    池田国務大臣 憲法改正に対しまする手続問題、また、それによりまする憲法調査会合法性の問題は、従来たびたび論議されたところでございます。しかも調査会が置かれまして、この問題は一応われわれは終止符を打ったと考えておるのであります。しかるところ、今国会におきましても参議院におきましていろいろ議論せられましたが、私は、憲法七十二条によりまして、憲法改正発案権内閣にもあると考えておるのであります。したがいまして、内閣におきまして憲法調査会を設けてこれを検討するということは、私は違法ではないと考えておる次第でございます。
  10. 辻原弘市

    辻原委員 政府は、従来から、憲法七十二条の解釈をたてにとりまして、憲法改正に対する発議権国会だけではなくて内閣にもあるというまことに珍妙な解釈を下しておるのでありますが、私はあえてここで従来の意見をそれぞれ戦わそうという考え方はございませんが、少なくとも憲法に対するすなおな解釈をいたしてまいりましたならば、当然明らかに九十六条は憲法全体を通ずる唯一改正手続規定である。しかも、九十六条には、衆参両院の三分の二の賛成を得て国会が初めてこれを発議することができると明瞭に規定をいたしておるのでありまするから、われわれは、政府の七十二条に基づく解釈については、これはあくまでも容認のできないところであります。しかし、このことは議論に相なりまするから、私ども立場をいま一度明らかにいたしまして、次の問題に触れてまいりたいと思います。  それは、憲法調査会審議の経過の中におきまして、調査会にそれぞれの意見書提出をされており、その中に、自民党の政調副会長である愛知揆一氏ほか十七人による改正意見書なるものが提出をせられまして、調査会全般審議方向にかなり重大な影響を与えているということを私ども新聞紙上において承知をいたしておりまするが、一体、この改正意見書というものは、これは自民党方針としてわれわれが受け取ってよろしいものであるかどうか、この点を総理総裁として池田さんから承っておきたいと思います。
  11. 池田勇人

    池田国務大臣 自民党員でございまするが、しかし、それは一憲法調査会委員としての意見でございます。党議で決定したものでも何でもございません。
  12. 辻原弘市

    辻原委員 そういたしますると、これらの改正意見書に署名をいたしておりまする十七人の方々意見というものは、これは自民党党議できまった意見ではなくて、それぞれの個人意見である、こういうふうにいまお答えになったわけで、私は形式的な意味においては総理の答弁は理解ができます。しかし、それだけの見解をまとめられ、そうして提出をされたということには、これはただ単に所属をする委員としての個人的資格だということだけでは、国民は納得いたしはすまいと思います。そこで、私は、一歩さがって、それでは、これらの意見書と私は言いません、これらの改正意見書に盛られている意見というものは、これは自民党方針に沿うものであるか、ないしはこれはもとるものであるか、さらにまた、自民党の綱領、ただいまの自民党の運動の方針、こういうものに照らして、これらの意見意見書なるものは、あなた方の自民党の党の方針というものに沿っているかいないのか、この点を明らかにしておいていただきたい。
  13. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、憲法調査会委員でありまするわが党の方々意見をつまびらかに検討いたしておりません。したがいまして、その意見についての賛否は、私は差し控えたいと思います。しこうして、わが党といたしましては、憲法調査会法制定のときに申し上げましたごとく、憲法改正の要ありやいなや、また、改正の要ありとすればいかなる点をいかようにするかということにつきまして、検討をお願いし、報告を求めておるのであります。報告がございましたならば、この報告国民に十分周知してもらい、そうして国民の意向を参酌してわれわれは十分考えたいと思います。
  14. 辻原弘市

    辻原委員 私は、一党の総裁として、また国政全般を預かっていく総理として、ただ必要ありやなしやを検討するということではなくて、少なくても国の基本法である憲法に対してさだかな考え方というものは当然持つべきじゃないか、こう思うのであります。今日まで、これは総裁としてであったか総理としてであったかは別にいたしまして、池田総理からわれわれは、国会を通じあるいは新聞紙上等に発表せられたその談話を通じて、憲法に対するお考え方を承ってまいりました。それによると、ただいま総理も触れられたが、憲法調査会の結論、答申を待って、その報告を待って、さらに世論の動向を見きわめた上で決したいというのが、総理憲法に対する考え方であったように思います。しかし、いやしくも国の基本法である憲法に対して、わが党のごとく、現在の憲法こそ世界に誇る憲法である、すなわち、民主、中立、基本的人権、平和、こういった諸般の近代的諸国家に要請をせられる要素を明確にうたった憲法こそ、これが国民の守るべき、また国民に与えらるべき、積極的に国の施策として実施していくべき最も価値あるものであるという考え方に立って、憲法擁護はもちろんのこと、さらに進めてこれを実施すべきだという態度をとるか、あるいは憲法調査会自民党有志議員の中にあらわれておりますような改正方向に踏み切るか、やはり私は総理としての何がしの考え方がなくてはいけないと思うのであります。そうしたことについて、私が申し上げるだけではなくて、特に最近、あなた方のほうの総裁選挙を前にして、池田総理政策基本に対するあいまいだ態度というものが各方面において批判をされておる。特に、先般の新聞を見ますと、藤山総務会長大阪における談話においてこういう批判を下しておる。経済政策はもとより、その他重要か施策について何ら明確な政策を示さない、しかも、今日まで政権を担当してきたが、ただのんべんだらりその日暮らしのことをやってきたのが池田さん、また池田内閣ではなかったか、こういう批判を公然と下しておるのであります。私はこの大阪談話を見てまことに奇異に感じました。というのは、藤山さんという人は単に自民党の一個人ではない。いやしくも重要な党の三役である総務会長という党議をまとめる枢要な立場にある人が公然と自民党総裁に対して批判を行なっているというこのこと事実は、これを国民が一体どう受け取るか。藤山さんが、自分もその枢機に参画をしておりながら、何にもやってこなかった、こういう批判を下すということになりますと、国民は、藤山さんがああ言われるんだからそれだけの理由があるんでしょう、こういうふうに考えられるに違いない。私は、おそらくその中にこの憲法等の問題も含めて批判を下しておると思うのであります。一体、藤山批判のごとく、池田さんが政策に対する何の考え方も持たず、のんべんだらりその日暮らしで今日まで政権を担当せられてきたのか、この点について、国民の誤解を一掃するためにも、たまたま総裁選挙も七月に迫っておりますので、明らかに見解を下しておくべきことが、私は池田さんのためにも得策であろうと思います。
  15. 池田勇人

    池田国務大臣 憲法問題につきましては、先ほど来申し上げましたごとく、また、あなた方も御承知のとおり、私の考え方ははっきりしておるのであります。私は、政治はやはりはっきりものを言わなければいかぬ、そして国民の協力を得なければならぬと考えております。しこうして、私の政策につきましていろいろ批判はありましょう。批判はありましょうが、批判のあるところに民主主義があるんじゃございますまいか。私は、そういう点につきましては国民は十分御承知と思います。いろいろ批判をしながらお互いに切磋琢磨して、それは与野党に限らず、与党内においてもそういう意見のあることは、私は、何も差しつかえないことだ、こう考えておるのであります。
  16. 辻原弘市

    辻原委員 池田さんの民主主義論は、私はちょっとおかしいように思う。それはなぜかというと、一般国民内閣に対して批判をしたり人に対して批判をすることは、これは当然であります。また、自民党の諸君がいろいろと党内において執行部のやり方に対して批判することも当然である。しかし、一党の責任のある立場にある藤山総務会長が、党の機関の中ではなくて外部において、みずからも参加したことに対して批判を下すなどということは、必ずしも民主主義ではありません。私は他党の党内事情に関与するつもりで申しておるのではない。また、そういう資格もございません。しかし、自民党のために惜しむ。それは、その機関の中でどういう批判を下して、いろいろやることはけっこうだと思うが、しかしながら、それを全然無関係なところに行ってやるということは、必ずしも正しい世論を喚起するための手段方法ではなかろうと私は思う。そういう意味において、私は、池田さんが自由でありますということでそれに対して何ら明確なお答えをできないということは、これはまさに藤山さんの言うようにのんべんだらりという批評を受けてもやむを得ないと思う。  今日多数党の総裁というものが内閣を組織することになっている以上、現時点においては、残念ながら自民党総裁内閣の首班であることは、これは既定の事実であります。いま自民党総裁選挙を直前に控えて、たびたび繰り返すようでありますが、国の基本法たる憲法に対して、少なくともこれを擁護し、これを着実に実行していくという見解を示すか、ないしは、かくかくの点に問題がありとして改正方向にその所信を向けていくのか、そういう態度見解というものを明らかにして総裁選挙に臨むべきではないか、私は第三者的にこう考えるのであります。このことは、私のみではなく、総裁選挙への立候補がうわさをせられておるそこにいらっしゃる佐藤国務大臣も、それらを含んで力説せられておったということを聞いております。総理は、少なくとも、今次の総裁選挙に臨み、しこうして引き続いて政権を担当せられるという心組みがあるならば、国の基本法に対してその考え方を明らかにできないなんということは、私は断じて許されないと思います。そういう意味で、いま一度お考えを承りたい。
  17. 池田勇人

    池田国務大臣 総裁選挙に臨みというお話でございますが、私はまだ臨んでおりません。そうしてまた、いま御質問の憲法改正の問題につきましては、過去四年間、あるいはそれ以上、私の所信ははっきり申し上げておるとおりでございます。憲法調査会報告を待ちまして、国民に十分周知してもらい、国民意見を聞きながら最後の決意をする、こういうことでございます。これは総裁選挙とは関係のないことであります。しかもまた、選挙に臨みという前提で御質問になるのは、少し気が早過ぎるんではないかと思います。
  18. 辻原弘市

    辻原委員 六月の二十日過ぎ、新聞紙上には二十四日ごろといわれておりますが、そのころに報告書提出をされたならば、一体政府としてはこれをどういうふうに処理をされますか。
  19. 池田勇人

    池田国務大臣 調査会報告がございましたならば、政府といたしましても、その報告につきまして検討を加える考えでおるのであります。ただいまのところ、一応法制局で検討を始めたいという気持ちでおります。
  20. 辻原弘市

    辻原委員 自民党総裁としてお答えを願いたいと思いますが、同様国会報告書提出をせられた場合、これはわれわれ国会自体の問題でありますが、自民党総裁として、国会においてはどういう扱いをしようとされておるか、そのお考えを承りたい。
  21. 池田勇人

    池田国務大臣 憲法改正は最も重要な問題でございますので、内閣を通して国会報告がありました場合におきましては、国会において各派いろいろ御相談の上、特別委員設置によって検討することが適当だろうという気持ちを持っております。まだ党議で決定したわけではございませんが、私の気持ちとしては、検討の特別機関を設けるべきではないかと考えております。
  22. 辻原弘市

    辻原委員 これは近い将来重要な事柄でありますから、いま一度はっきりしておきたいと思うのですが、伝えられておるところによりますと、ある意見によれば、国会図書館等にその専門的な調査機関をつくってはどうかというふうな意見もどこからか出されておるようであります。いま総理がお答えになりましたのは、自民党としては国会各派の了解を求めて特別委員会を設置したい、だから総裁としての総理のお考えは特別委員会を設置したいというお考えだ、こう受け取ってよろしゅうございますか。
  23. 池田勇人

    池田国務大臣 何も特別委員会をこしらえてやろうということ一つに限ったわけではございません。やはり、その点は、私としては、最重要問題でございますから、各派十分いわゆる協議検討の上、適当な措置をとらるべきことを望んでおるのであります。
  24. 辻原弘市

    辻原委員 時間がございませんので、憲法の問題はその程度にとどめまして、次に、私は、冒頭に申し上げました公労協関係仲裁裁定関連をする事項について順次お尋ねをいたしてまいりたいと思います。  まず冒頭に申し上げたいことは、過般の四月十七日に予定をせられました戦後最大規模といわれる、しかも当今の非常な物価高を反映いたしまして異常なまでに結束を強めた公労協のストライキが、直前の十六日に、政府を代表する池田総理と労働者側を代表しての太田総評議長との会談、話し合いによりまして、六つの事柄についてことごとく合意に達し、直前においてこれが回避をせられたということは、私は国民の一人としてもまことに喜びにたえないところであったわけであります。これはわが国労働史上において特記せられる事柄であるとまで私は評価をいたしております。それはなぜか。形式的な議論をいたしまするといろいろ議論があります。しかしながら、いま申しましたように、労働者を代表する立場のその代表と、それから使用者を代表する立場総理とが、その形式にこだわらずして隔意なく話し合いをして結論に到達をしたということは、これは、日本の労働運動にとって、また、従来とかく労働運動に対しては十分なる認識を持たず、しかもそれに対してはある種の先入観を持って当たってきた自民党総裁としては、一つのよりよい慣行を開いたものであるということを私は実は考え、この考え方は、私のみではなくて、当時の新聞の論調なり国民一般のそこはかとなき声を聞きましても、大いにその点については評価、歓迎をいたしておるのである。したがって、私は当時この六条件について池田総理が決断を下されたということについては敬意を表しておった者であります。ところが、その後のいろいろな経過を見てまいりますと、特に直接の問題であるこのストライキを回避するのみらず、長期にわたる紛争を妥結せしめようという内容を持った六条件の中での一、二の項目、これが、仲裁裁定が出ました以降、はたして十分これらのことが織り込まれ、これらの総理・太田会談の趣旨に沿って解決をせられたものであるかどうかについては、まことに私は疑問とする点が多いのであります。特に、それらの会談の中に約束をせられました条項で、直接の紛争解決の目的であった賃金問題、これを考えてみますと、一つは民間との格差是正の問題、一つは、長い間の紛争が少なくとも公労委に提訴をされ、少なくとも調停の段階で解決するのだという意欲を持って、この条項が取りきめられたものであると私は理解をしておるのである。しかも、いま申し上げた二つのことは、単に会談の際に約束したということにとどまらないで、翌日でありましたか、総評側とそれから政府側との間に文書によって覚え書きが取りかわされておる。私はそれを新聞紙上において熱読玩味をいたしました。その趣旨によりますと、明確ではありませんが、総理の意図があらわれておる。この覚え書きの意向というものがあらわれておる。それは調停の段階で労使の問題については妥結を見るべきが至当である、調停の段階で積極的に議論を戦わして結論を出してもらいたい、こういうことに相なっておると思うのであります。ところが、実際には、調停の段階では何することもたくて、仲裁に移行して初めて結論が出たということでございます。その点において、なぜ一体調停の段階で政府は明確な意思表示をせなかったか、また、総理が太田氏との会談において希望したことは調停の段階における処理ではなかったのか、この点について総理から伺っておきたいと思います。
  25. 池田勇人

    池田国務大臣 お話のとおり、四月十七日のストが取りやめられたことは、国民並びに世論の良識がそうさしたことと私は考えます。その国民の良識、世論を、十分労働者側におきましても政府側におきましても考えました。そうして意見の一致を見たのでございます。私は、今後もやはりああいう国民の良識によってこういう事件が円満に解決されることを望んでおるのであります。しこうして、太田、岩井君と私との話におきまして、公労委における調停、これにつきましてはできるだけ努力しよう、こういうことでございまして、調停を成立さすという約束じゃない。そういう点で調停の場におきまして十分努力していこうということに意見の一致を見たのでございますが、結果におきましては仲裁裁定にいったのであります。しかし、太田君、岩井君との会見後におきます公労委の調停につきましても、以前とは違いまして、相当議論があり、それに向かってお互いに努力したという事実は認められるのであります。ただ、結果がそういう結果にならなかったということで仲裁にいったと聞いておるのであります。
  26. 辻原弘市

    辻原委員 もとより公労委というものは第三者的中立機関でありまするから、これを、労組側にいたしましても、政府にしましても、面接それを拘束するかのごとき行為はできないでありましょう。しかしながら、太田氏がそれを提案したということは、少なくとも、総理の決意によって調停の進行というものがスムーズにいくということの判断があったに違いないと私はそんたくをするのである。何となれば、従来の政府が言ってきたことは、そこに労働大臣もおられるが、できるだけ労使の間におけるよりよい慣行をつくりたい、これが一つである。それから、いま一つ、大蔵大臣もそこにおられるが、従来政府がこの種の紛争に対してとった態度というものは、いわゆる調停の段階においては何ら政府側の意思表示をしなかった。ところが、私は談話承知をしたのでありまするが、大蔵大臣はこういうことを言われておる。すなわち、調停段階で具体的に金額を出せばこれを政府としても尊重すると言っておる。このことは従来政府にはなかった異例の談話であったと私は思う。言うなれば、総理もしかり、大蔵大臣もしかり、また労働大臣もしかりであったと思うが、ともかく調停の段階で結論を出させるのだというあれが、これが表面的な私の目に映った政府態度である。同時に、われわれもそのことを主張しておった。すなわち労働裁判的な仲裁によって不満ながらもそれに服さなければならぬという労働関係のあり方というものは、必ずしもこれは正常なものではない。したがって、労使がニュートラルな立場を保持し得る調停段階でそれぞれ当時者双方が議論を戦かわせた末、賃金については賃金協定を結んで、自主解決がはかられるという余地のある調停段階において事を解決すべきだということは、過ぐる四月十日の衆議院の本会議におきましても、わが党を代表して多賀谷議員からそのことを政府に迫っておるのであります。ところが、私が冒頭に申し上げましたように、そのことが事実上できなかった。総理は、ただいまの答弁で、そういう希望と期待と努力をしたけれどもできなかったと言われておる。太田氏はできるという判断に基づいてそのことを申し入れたと思う。私もできたと思う。なぜできたと思うかといえば、それは使用者側委員が決断を下せばよろしい。すなわち、使用者側委員というのはあげて政府に拘束をせられておる。かかって政府態度にある。とするならば、なぜ政府は調停段階で使用者側委員をして金額を明示せしめなかったか。このことであります。そのことを私は指摘をいたしたい。どなたが答弁の責任者であるかは知りませんが、なぜ一体できることをおやりにならなかったか、そうして、努力をした努力をしたという表面的なことだけで糊塗しておったか、私はそのことを政府態度として強く非難をいたしたい。お答えを賜わりたいと思います。
  27. 池田勇人

    池田国務大臣 公労委の調停によって成立せしめたいという考え方、希望は、先ほど申し上げたとおりでございます。しこうして、太田、岩井両君と私との会見後におきましても、調停におきまして話し合いが会見以前と同じような状態ということを聞きましたので、私は官房長官をして注意せしめたのであります。やはり誠意をもっていろいろ話し合いをすべしということを申し伝えた事実を記憶しておるのであります。しかし、あなたも御承知のとおりに、各企業体の方々予算で相当縛られておるのであります。給与総額がきまっております。また、予備費の額ももうきまっております。そうして、その間に、流用・移用につきましては、政府の、大蔵大臣の認可を必要といたします。だから、与えられたる権限というものは、いわゆる公共企業体の光事者能力というものは、いまの制度ではかなり、かなりじゃない、非常に削減をせられておるのであります。したがいまして、話をしようといったって、そういう状態にがんじがらめに縛られておる状態では、なかなかいまの仲裁裁定で出たような金額は出にくいということは、もうあなたも予算を十分御承知の方でございますからおわかりと思う。しかし、誠意は尽くすように私は指示したのでございます。したがいまして、太田、岩井両君と私との間におきましても、いわゆる当事者能力をいかにつけたら、いかにしたらいいかということにつきましては、お互いに今後研究していこうという話し合いをいたしたのでございます。やはり、こういう問題につきましては、いろいろな制度上縛られておる点が多いので、今後この点につきまして検討を加えようというのが私の考えでございます。
  28. 辻原弘市

    辻原委員 総理、私は、お考えの前提が違うように思うのです。総理のいまの御答弁が、そこにいらっしゃる国鉄の総裁あるいは電電公社の総裁のことばであるならば私は了承いたします。しかし、そうではなくて、当事者能力がないから、予算運営上縛られておりますから調停が動かない、動かないから、これはやはり動かし得る力のある総理とそれから労働者の代表とが会って解決をいたしましょうというのが池田・太田会談なのだ。だから、決してほっかっておいたのではなくて官房長官に何がしの指示をいたしましたといまおっしゃいましたが、ところが、そこにいらっしゃる官房長官は逆なことをやっておりますよ。だから、私は、政府は今度の調停の問題については二足のわらじをはいておったと、こう言うのです。一方においては、総理がおっしゃったように、確かに何とか調停を進行させようというお話があったに違いない。ところが、官房長官は、各企業体に対して、何にも言うなという箝口令をしいているじゃありませんか。一方において口金をはめておいて、一方においてやれとたたいたって、当事者能力のないものにそれがどうしてやれますか。やれる道はただ一つであった。やれる道は、要するに、あなた方が、予算上縛られてはいるが、それは大蔵大臣政府が責任を持ちます、だからひとつ企業体は安心して当事者同士の公正な話し合いによってやりなさい、こういうことであって初めて調停は動くのです。一方において縛り、一方においてしりをたたく、そんな二足のわらじをはくようなやり方がどこにありますか。その点については一体どうですか。
  29. 池田勇人

    池田国務大臣 二足のわらじじゃないのです。わらじが小さ過ぎるということなのであります。そこで、いまの予算制度並びに各般の問題についてこれからお互いに検討していこうじゃないか、こういうことであるのであります。何も二足のわらじをはくとかなんとかいう問題じゃない。小さくていまのところははけない状態になっておるじゃないか、こういうことなんです。これは国会におきましても十分御検討を願いたいと思います。
  30. 辻原弘市

    辻原委員 ちょっと総理、蛇足ですが、いまお答えになったそのわらじが小さくてというのがちょっと意味がわからないのですが、どういう意味ですか。
  31. 池田勇人

    池田国務大臣 一般の労働者側の要求に対しましてこれをいれるような予算になっていない。あるいは予算総則におきまして非常な弾力性を持たすとか、流用・移用につきまして大蔵大臣の許可が要らないとか、あるいは借り入れ金が相当程度できるとか、使用者側に対する予算執行につきましてのスケールがもっと広ければある程度できる。そこで、いまのところは非常に小さいわらじになっている。しかし、公労委の仲裁裁定によりましてそのわらじを広げるといった場合におきましては、これは内閣としての方針をきめる、あるいはどうしても広げられぬというときには十六条二項によって国会予算上・資金上可能なりやいなやの審議を求める、こういうたてまえになっておるのであります。だから、一応出されたわらじというものは要求に沿うだけの大きさを持っていない、また広げるだけのあれがない、それはやはり政府として全体的に考えなければならぬ問題になっておるという、この実情をお考えになればおわかりいただけると思います。
  32. 辻原弘市

    辻原委員 そのことが、総理、私にはわからないのです。これはあとで議論をいたしますが、わらじが小さければ、当然補正を提出すればよろしい、労働者側が要求する金額は、何も、国家財政がひっくり返る、行き詰まるような金額ではないはずなんです。だから、労働者のためにはわらじが小さくて、たとえばただいま農地補償その他の問題が出ておりまするが、一方においてはかなりわらじが大きくなっているというようなことがはんぱだと言っているのです。しかし、これは私はあとで議論をいたしますが、わらじが小さければ、これは当然補正をすべきです。もともとそうでしょう。もともと、公社の予算というものは、これは小さい大きいの議論じゃなくて、仲裁裁定なりあるいは調停において賃金の新たなる話し合いの決着がつけば、その範囲でまかなえないということが前提なんですよ。しかし、これは私は予算の問題についてあとで大蔵大臣にいろいろお尋ねをいたしたいので、あとに回しまするけれども総理が、わらじが小さいから、そういうことについて金額が明示できなかったんだと言う理由については、私は納得ができません。  次にお尋ねをいたしたい点は、仲裁裁定が出ました。その仲裁裁定をめぐって今日各企業体労働組合の中でいろいろ議論をせられておりまするが、その中心的な問題は、申すまでもなく、民間との格差是正ということにあったのであります。しかも、この民間との格差の是正ということは、先ほど申しましたように、文書を取りかわしてまで総理と太田さんとの間で確認をせられた問題であります。したがって、現在の公共企業体のそれぞれの職員の給与については民間との間に格差ありということを総理もお認めになっておったのじゃありませんか。いま一度私はその点についての総理の御見解を承りたい。
  33. 池田勇人

    池田国務大臣 わらじの問題でございますが、われわれといたしましては、公共企業体の職員の給与につきまして、常に頭にこれを置き、そうして一定の定期の昇給等も見て、あなた方の審議をいただいておるのであります。しかるところ、要求がいかにも大きいのでございます。そして、先ほど申し上げておるように、予算の規模等がきまっております。そこで、当事者能力がないという非難を受けたのです。だから、そういう制度につきましては今後検討しようということであったのでございます。初めからわらじを小さくしたわけでも何でもない。だんだんからだが大きくなったと申しますか、欲が出てきたと申しますか、いろんな点から、もっと出せという、要求が出てきたのでございます。そこで、仲裁裁定によってわれわれは善処しよう、こういう回答をしたのでございます。  次に、また格差の問題でございますが、あの覚え書きにありました法律上の義務だというのは、私から申し上げたのであります。私から、こういうことになっておるんだから当然じゃないか、だから公労委において十分検討してもらおうじゃないかということであって、格差があるんだと私は太田君に言ったわけじゃない。格差があれば公労委でこれを十分検討して善処すべきじゃないか、それが法律上の義務であるということを私から言ったのであります。
  34. 辻原弘市

    辻原委員 また総理からわらじのあれが出ましたから、私も一言反駁を下さなければならぬと思いますが、総理は、だんだん要求が大きくなってふくれ上がってきたから、わらじにはまらないようになった、こういうようなお考えを言っておられるようでありますが、それは正確ではありません。それは、組合の側が要求いたしましたのは昨年の九月、その当初にそれぞれ所定の方針を定めて要求をいたしておったのであって、過程において過大な要求にふくれ上がってきたなんという事実は、これは断じてないと私は承知しております。したがって、総理がわらじが小さいから金額を明示することができなかったと言われることは、これはどうも正確な理由にはならないと私は考えます。いま、賃金格差があったということを認めたのではなくて、あればこれをやることが公労委の義務であると言ったんだと言われる。ここには太田さんがおられませんから、私はそのことについてこうであったではないかということを強く申し上げるわけにはいきませんが、しかし、一般的に合意に達したということを常識的に解釈いたしましたならば、これは、あればというようなあいまいな形で太田さんがこれを受け取ったものとは理解できないのであります。格差の幅についてはいろいろ議論のあるところではあるが、ともかく民間との間に格差がある、そういうことを処置するのが公労委の当然の義務である、こういうふうに断ぜられたということは、当時の新聞にそれぞれ報道せられておったのであります。したがって、私は、当然、格差是正というものが、少なくとも正確を期して調停委においてないしは仲裁委においてこれが結論を出されるものと実は期待をいたしておったのでありまするが、ところが、出ました仲裁裁定、ここにございまするが、これを拝見をいたしますると、全く驚くべき結論を出しておる。どういうふうに結論を下しておるかといえば、仲裁裁定は、公労委全体としては、百人以上の規模の全産業との対比においては特にその差異はない、こう結論を下しておるのであります。  幸い、きょうは兼子委員長は不在であるようでありますが、委員会を代表いたしまして、参画をせられました金子委員が出席をせられておりまするので、私はその点についてお尋ねをいたしたいのでありまするが、これはだれが常識的に考えましても、民間と公労協との間に全然総体的に格差がなかったというようなことは全く実情からかけ離れておる、こういうふうに私は言わなければならぬと思うが、それについて公労委の考え方を承りたいと思います。
  35. 金子美雄

    金子参考人 お答えいたします。  民間の給与と、公労協と申しますか、公企体の給与水準との間にどういう格差があるかというお話であります。一般にその給与の格差というものはどういうことで判断するかということは、なかなかむずかしい問題でありますけれども、一応は賃金の統計というものによってこれを判断することが妥当であろうかと思います。賃金の統計といたしましては、公企体、民間の産業、両者を含んだ権威のある統計というのは数が少ないのであります。たまたま、昭和三十六年の四月に、いわゆる賃金センサスといわれる非常に広範な賃金統計を労働省が実施されまして、その結果が昨年の八月ごろでしたか発表になって、これを利用することができるようになったのであります。組合側も民間との格差を論ずる際にはこの統計をお使いになっております。われわれも、この統計が最も権威のある統計だと考えまして、この統計を中心として、まず統計的に民間との格差はどうあるかということを判断したわけであります。ただ、その場合には、組合側は千人以上の民間の企業と比較すべきであるという御主張があり、公労委の仲裁委員会は百人以上の規模と比較したというところに、組合側の主張とは食い違いがあるわけであります。われわれが百人以上をとりましたことにつきましては、一応、民間のカバレージと申しますか、労働者をどのくらい含むかという問題、これは上のほうからとりまして少なくとも過半数のものをとらなければ民間の給与と言うわけにいきませんので、そういう点を考慮した点、あるいは特に大企業だけと比較することがいいかどうかということにも問題がございます。御承知のように、公務員の場合には五十人以上の規模の事業所との賃金の比較をやっております。そういういろいろな点を考えて、われわれは百人以上というところの規模をとったわけでありまして、この点は組合の要求・主張とは違っておりますけれども、仲裁委員会としてはそういう規模で比較するのが最も公正であると判断した次第であります。なお、給与の比較についてはいろいろ技術的な問題もございますが、そういう点を勘案・修正をいたしまして、最終的に、民間とそれから公企体全体の水準とは問題とするほどの格差はない、こういう結論に達した次第でございます。
  36. 辻原弘市

    辻原委員 こまかい数字にわたる議論はここではなかなか困難でありますから、私は大筋の議論だけにいたしておきたいと思います。それは、問題は二つに分かれ、すなわち、一つは、四月の引き上げ時点における、その当時所在をしておるところの民間格差は一体どうなっておるかという点である。それから、いま一つは、公共企業体職員が四月の時点に引き上げられる、同時に、民間の場合にはそれぞれ各企業体を相手にして組合との間の話が進行しておる、いわゆる春における民間企業のベースアップが一体どうあるかということ。裁定書にもごく簡単に触れておりますが、問題はこの二つである。その際に、一体四月の時点における格差がはたしてそれではなかったのかというと、いま金子委員が言われました労働省の昭和三十六年の賃金実態総合調査、それからいま一つは中労委における賃金事情調査、ここに私はそれぞれ詳細なそのデーターを持っております。私は数日にわたってこれを分析をしてみた。それらの実態調査を双方がそれぞれ使った。ところが、これをすなおに使うならば、——もちろん多少のいろいろな修正がございましょう。あるいは三十六年の賃金実態総合調査の場合にはそれを伸ばさなければなりませんし、いろいろな補正を加えなければなりませんが、かりにそうだといたしましても、そのままこれを採用しました場合においては、まず三十六年の賃金実態調査においてはどういうことに相なるかといえば、全産業においてはこの調査に基づけば約五千三百円の開きが出てきておる。製造業においては八千六百円の開きが三十六年の時点においてこれが出てきておるのであります。それをそれぞれ修正をし、それをそれぞれ引き伸ばしましても、さらに三十九年の四月においてはその格差がより以上であるということは統計上常識であります。さらに、中労委の賃金事情調査を見ましても、これは労働省の賃金総合実態調査よりもさらにその差が拡大をしておる、こういうことが言えるのである。だから、そのことは、数字上仲裁委が検討を加えたものとは修正・補正のやり方が違うのだということをある程度是認をするにいたしましても、四月の時点における民間格差が三千円以上あったということは、これは事実である。それがほとんどないのだという結論は、先ほど私が言いましたように、あまりにもこれは政治的数字にすぎる、こう私は理解をいたしますが、いま一度その点についてお答えを願いたい。なぜ私がしつこく言うかといいますると、あとでこの問題にも触れまするが、裁定の理由書には何らそういうことが具体的に明記されておらない。理由がわからない。お答えを願いたい。
  37. 金子美雄

    金子参考人 統計につきましては、先ほど申しましたように、仲裁委員会が主として用いた資料は賃金実態総合調査でございます。中労委の賃金の調査があることも承知しております。しかし、これは中労委が中労委としての調整をやるための資料といたしまして特に中労委に関係の深い企業を数百社選んだ調査でありまして、大企業を中心としたものであるということ。先ほど申しましたように、千人以上の企業をとるか、あるいは百人以上の企業をとるかというのは非常に問題の点でありますけれども、その点は、仲裁委員会として、百人以上で比較すべきである、こういう判断に達したということを申し上げました。  なお、数字の上でどの統計をとっても相当大きな格差があるはずだというおことばがございましたが、これは、裁定の理由書にも書いてありますような、たとえば超勤手当に対する修正、その修正がどういう数字になっておるかということは、非常にこまかい数字になっておりますので理由書には書いてありませんけれども、民間の超勤とそれから公企体全体としての超勤とは非常に額が違っておりまして、その点を修正しますと、ただいまおっしゃったような程度の格差というようなものもそれが少なくなってくるというような事情がございまして、同じ統計を使いましても、理由書に書いてありますような修正を施せばその差というものは非常に小さくなる、かようにひとつ御了承願いたいと思います。
  38. 辻原弘市

    辻原委員 理由がはっきりいたしませんが、数字上の問題でありますから、その点についてこまかく議論を重ねることはいたしませんが、いま例に出されました超勤の問題一つをとりましても、これは私は必ずしもその扱い方が正確じゃないと思います。確かに、民間と公企体職員との間の、それだけではなくていわゆる公務員を含めての超勤とでは実態が違っておる。実態は違っているが、しかし、それを統計をとる場合に公企体のウエートで修正をしておるということは、これは非常に私は間違いであると思います。細部を検討いたしますと、かなり、格差なしという結論を導き出すために、技術的な、そういう常識からはずれて正確を期し得ないような修正をやっているというところに、細部にわたっては問題があります。  それから、最も問題だというのは、しばしば金子委員が言われておりますが、何がゆえに公企体と民間とを比較する場合に百人程度の規模まで落として対比をしなければならなかったということについては、この点は説明不十分であります。しかも、私がその経過をいろいろ詳細にお聞きをいたしますと、調停の段階において、この同一資料、すなわち労働省三十六年の賃金実態総合調査、中労委の質金実情調査、この同じものを採用するという場合に、なぜ統計のとり方を違えなければならなかったか。しかも、調停の段階における労使の間においては、すなわち公労協側における主張、たしかあなたがいまおっしゃたように、それは千人規模をとるべきである、こういう主張であります。それに対して各公社側の御議論というものは、それは五百人規模が妥当なんだという主張をとられた。そういたしますと、第三者としての公労委の公正な判断というものは、まず最も結論に対して重要な影響を及ぼすその統計のとり方について労使双方の主張を参酌して定むべきが、これが当然の措置ではなかったか。われわれは常識的に考えて、一方が千人と主張する、一方が五百人と主張するならば、あるいはその中間を採用するという公労委の態度が出るかもしれぬと予想しておったのが、労使双方がその実情に立って主張しているそのこととは全くかけ離れた百人規模をとったというところに、根本的に統計の採用のしかたの誤りがあるのです。その点について私は後日のために少し議論をいたしておきたいと思う。  一体、公共企業体というものは、民間に対比をした場合に——民間とこれは比べるわけですから、同じような年齢構成、同じような職務、同じような勤続年数あるいは性別、できるだけ同じようなものを抽出して比較をするというのが、賃金によるこれは比較論であります。そうするならば、できるだけ規模においても、その産業実情から見て相似通ったものを対比するということが、これは賃金比較の前提でなければならぬ。それをまるっきり違うものと比較をして、これが比較でございますなんということは、これはおよそ常識ではないはずであります。そうすると、公共企業体というものは、国鉄は申すに及ばず、あるいは電電公社を見ましても、あるいは林野現業を見ても、アルコール専売を見ても、印刷を見ても、いずれもこれは俗にいうところのかなりの企業である。民間に対比をいたしますると、おそらくや労働組合が主張する千人以上の規模のものでありましょう。とするならば、どう考えてみても、正確な民間との比較をしようとするならば、同じ程度の規模をもって比較をせなければいかぬ、これは常識であります。しかもその統計が出ておるのだ。それをあえて比較にならぬ、これから賃金が上がろうという——これは最近の物価動向を見れば明らかです。特に最近の物価動向では、サービス料金が非常に上がってきておる。一−三月から若干落ちついたというのは、いわゆる弱小零細企業の賃金がある程度上昇をしてきた、それがある程度落ちついたということの証拠だ。そういうようなこれから上がっていかなければならない、現時点においては低いが、上がっていかなければならぬという、そういう賃金事情をかかえておる小さな百人程度の規模の零細企業あるいは小企業までを含めて対比するということは、これは一体何事かということなんです。その点については説明が不十分です。私をして納得させることはできません。いま一度お考えを承りたい。
  39. 金子美雄

    金子参考人 仲裁委員会の裁定につきましては、いろいろと御批判もあることかと考えます。しかし、先ほど来申しておりますように、仲裁委員会といたしましては、それが最も合理的、妥当であるという判断をした次第でございます。ただ、先ほどのお話の中で、規模の問題について、使用者側委員も五百人以上で見るべきだ、こういう御発言がありましたが、われわれはさようには考えておりません。
  40. 辻原弘市

    辻原委員 ただいまのお答えによっても、なぜ百人規模をとったかということについては、どうも納得ができません。ただ考えられることは、できるだけ裁定として出すべき金額を縮めるがために、いわゆる格差、これを縮小させんがための一つの統計のとり方としか、われわれには理解ができないのであります。使用者側が五百人云々ということについて、私が申し上げました。もちろん私が直接聞いたわけでありませんから、いまそのことについてとかくを言うことはできません。しかし、私は、経過の中においてそういうふうに承っておる、またそれが常識だと考えておる、こういうことであります。したがって、いま言いましたように、百人規模をとりましたがために、また、それぞれの修正を、先ほど触れられた超勤等を含めていろいろな手直しをされたがために、せっかくの統計も正確な結論を出すことができず、きわめて大ざっぱに、四月時点においておおむね民間とは均衡しているなどという結論を出したものと、われわれは理解をせざるを得ないのであります。  それからいま一つ、引き上げ後はどうなるかという問題でありますが、それは裁定書を中心にして考えてみました場合に、まず今回の引き上げの平均が金額にして二千二百九円、定昇の三・五%を含めましても三千百円であります。これを率にいたしますると、平均値が七・七六%の引き上げ、定昇三・五%を加えましても二・二六%にすぎません。最も新しい民間企業における秤の賃上げの統計を、私はここに各企業体別に持っております。これを集計いたしまするとどういうことになっておるかと言えば、二二・六%である。あなた方が、裁定書に発表され、新聞紙上に発表されておるのを見ると、この平均において大体民間が大ざっぱに言って一一から一三%以内の引き上げだから、それに見合っておると断じられておりますが、それも誤りであります。すなわち、引き上げだけを見ましても、ここに二二・六%とそれから平均値における引き上げ一一・二六%の間には、かなりの差を生じておるということ。したがって、ひるがえって考えてみますると、格差を是正しようという意欲のもとに、まあ総理がいろいろ言われましたけれども、太田・池田会談が持たれ、そのことにおいてやられた事柄が、四月の時点においての引き上げ格差是正においても、またその後の賃上げにおきましても、民間との上にさらに差を重ねるような裁定書をあなた方はお出しになったと、私は批判せざるを得ないと思うのでありまするが、その点についてのお考えも承りたい。
  41. 金子美雄

    金子参考人 ことしの民間の春闘のベースアップをどういうふうに見るかということは、一つの重要なポイントであります。ただこの統計は、公労委といたしましては直接そのような統計は持っておりません。労働省がいろいろ集めております統計、あるいは日経連が集めております統計、あるいは先ほど御指摘になりましたが、総評の統計等も参照いたしております。そういうのを参照いたしますると、日経連のわれわれが利用し得た当時の一番新しい数字は、平均して一一・幾らの上昇率であります。また、労働省の集められた春闘のベースアップの統計から中央値を見てまいりますと、一二・何がしの数字が出ます。総評の平均値が一三・何がしであることは、御説のとおりであります。こういう数字を全体として勘案いたしまして、われわれは、こういう数字は、平均が幾らという数字そのものがずばりと必ずしも意味のあるものとは思いません。つまり、ことしの春闘の中心はどこにあるかというふうに幅を持たして考えますと、これは理由書にもありますように、一一%ないし一三%のところに多数のものがある、こういうふうに考えるべきではなかろうか、こういう判断をしたわけであります。  なお、公企体の裁定によるベースアップが民間のベースアップと同じような意味で計算したら、幾らに平均がなるか、こういうことも御参考までに申し上げておきます。これは、先ほど公企体の場合には定昇として三・五%というお話がありましたが、この定昇としての三・五%と申しますのは、いわゆる予算上の単価でございまして、これは来年の一月に昇給したものは三カ月の原資しか要らない、ことしの四月昇給したものは一年間の原資が要る、それを全部平均しますと、三・五%の昇給原資ということであります。ところが、民間の定昇込みという場合の定昇というのは、制度上の昇給と申しますか、一年間に昇給によって基本給の額が、あるいは基準賃金がどれだけ上がるか、こういう計算になっているのが大部分でございます。同じような計算をやりますと、公企体全体の平均の定昇率は、三・五%ではなくて、四%をはるかにこえる——はるかにではありません、四・三九でありますから、四%をこえる数字になります。そういう民間と同じような計算方式でことしのベースアップの計算をやりますと、公企体全体の平均のベースアップの率というものは、一二・六五%となります。われわれはこういう数字をつかまえまして、大体ことしの春闘に見合ったものである、こういうふうに考えております。
  42. 辻原弘市

    辻原委員 定昇の問題の扱いにいたしましても、確かにお説のごとく、予算単価をもって三・五%ということではあるが、しかし、あなたの言われたごとくそれが四%になり、あるいは四%を上回るということも、これは一方的意見である。したがって、われわれはこれを採用するのに、予算単価をもってその率をはじき出すことが一応正確であるという考えに基づいて申し上げておるのであって、要は、実際の賃金が民間と比較してどうなるかということを、少なくともこまかい点は別といたしまして、大筋としてはこれを判断することが、格差是正の上において一番正しいやり方である、そういう考え方からすれば、格差がなかったなどというその結論については、私は何としても承服をいたしかねるのであります。  なお、裁定書につきましてのいろいろな批判、いろいろな見解というものは、われわれもございます。物価の問題をとりましてもありますが、これはまた後日の機会に譲りまして、時間もございませんから、次に、私は大蔵大臣に対して、この問題の扱いを承っておきたいと思います。  これは新聞の発表でありますが、仲裁裁定は完全に実施いたします、こういう態度を表明せられておるようであって、このことはけっこうであります。ところが、当然それに伴って出してまいるべき補正予算は、一向に出てまいりません。私は、予算委員といたしましても、本予算成立後に起こった事由によって必要となった経費については、当然補正を組むべきであるという、この考え方は正しいと認識をしております。しかも、われわれはようやく本予算審議を去る三月終わったばかりでありますが、その審議の際に、各款項費目に至るまでこれは必要であるという意味において審議をした。それはことごとく必要であるという意味において、政府は款項費目を定めて、われわれに審議をしてくれ、こう言っておる。われわれもまたその前提においてこれを審議し、そして国会の意思としてこれを認めたということ、したがって、われわれはそうなれば、それらの費目については動かしがたいなれば、当然補正をすべきだ、これが筋であろうと思う。なぜ一体補正を出しませんか。この点について大蔵大臣から承りたい。
  43. 田中角榮

    田中国務大臣 今回の仲裁裁定によります資金の総額は、約五百十五億円でございます。各企業体の経理内容等を見ますと、必ずしも完全実施ということは容易ではないのでございますが、その後財源措置その他十分検討いたしました結果、増収、既定経費の移用・流用、それから予備費の使用等によって完全実施ができ得るという結論に達しましたので、補正予算の御審議をお願いしないということにいたしたわけでございます。
  44. 辻原弘市

    辻原委員 総額五百十五億と、こういうわけでありますが、それぞれの三公社五現業にわたる各企業体別の金額を明示願いたい。
  45. 田中角榮

    田中国務大臣 造幣が一億でございます。それから内訳も申し上げましょうか。——造幣が一億でございますが、移流用が五千万円、予備費が五千万円、計一億円でございます。それから印刷が三億六千万円でございまして、移流用が二億六千万円、予備費が一億円ということでございます。林野は合計二十億三千万円でございますが、予備費二十億三千万円を充当いたします。アルコールにつきましては、六千万円でございます。移流用が三千万円、予備費が三千万円、計六千万円でございます。郵政は百二十四億四千万円でございますが、増収が三十八億円、それから電電公社等他会計よりの繰り入れが六十六億七千万円、それに移流用が九億七千万円、予備費が十億円、計百二十四億四千万円であります。専売は、予備費十五億円、流用八千万円、計十五億八千万円でございます。国鉄は二百六十六億五千万円でございますが、増収でまかなうもの二十億円、資産充当でまかなうもの四十五億円、なお移流用によりますものは百五十一億五千万円、予備費五十億円、計二百六十六億五千万円でございます。電電公社は、総額百五億七千万円でございますが、資産充当によるもの二十四億円、移流用をもってまかなうものが六十一億七千万円、予備費二十億円、計百五億七千万円、総計しますと五百十四億何千万円、切り上げて五百十五億、こう申し上げたわけでございます。
  46. 辻原弘市

    辻原委員 いま大蔵大臣が言われた数字だそうでありますが、そこで私は国鉄総裁にお尋ねをいたしておきたいと思うが、国鉄に関しては、いま大蔵大臣が言われたように、総額二百六十六億五千万、そのうち増収を期待するものが二十億、それから資産勘定において四十五億、それから移流用で百五十一億五千万、予備費が五十億、こういうことになるわけでありますが、われわれは、過ぐる本予算の際にも国鉄問題についていろいろ議論をいたしましたし、また総裁見解も承ってまいりましたが、まずいまのような移流用を含めての、さらに増収を含めての経理ということが、国鉄の五カ年計画その他に影響を及ぼさないでできるかどうかということについて、総裁のお考えを承りたい。
  47. 石田礼助

    石田説明員 お答えいたします。  国鉄の今度の裁定による支出額二百六十六億五千万円に対しましては、ただいま大蔵大臣が御説明になったとおりであります。しかし、それは国鉄としては、いま一番大事な保安対策に対する費用というものに対しては、全然手を触れておらぬ。それで、この二百六十六億五千万円というものは、いわゆる予備費、それから経費の流用、増収、資産充当というようなことでまかなっていけると考えております。
  48. 辻原弘市

    辻原委員 ちょっと不明確な点があったのですが、まず、その移流用を考えている百五十一億五千万円は、全然国鉄の保安対策、安全運転経費には触れておらない、触れなくてもできる、こういうお答えでございましたか。
  49. 石田礼助

    石田説明員 お説のとおりであります。
  50. 辻原弘市

    辻原委員 そういたしますと、その百五十一億というのは、どこから持ってくるのですか。
  51. 石田礼助

    石田説明員 これは退職金の流用でありまして、昭和三十九年度の末に払うものを四十年度の四月一日に払うということでありまして、これはこれまでもやっていることであります。
  52. 辻原弘市

    辻原委員 そういう移流用は、これまでもやっているということは、国鉄の会計としてはきくのですか。そんな程度の幅のある予算を国鉄は組んでわれわれに提示したのですか。ほんとうはどうなんです。石田さん、私は国鉄に同情してこういう議論をしておる。ところが、この間新聞で見ますと、あなたのほうでは、五カ年計画を一年切り詰めて、明年度からまた新しい計画を実施しようということを積極的に推進されようとしておる。ところが、私はそれに興味を持ったものだから、いままでの何次計画というものの施行率を考えてみると、予算上は計画を持ったが、ほとんど六〇%、ないしは最近の五カ年計画に至ると、東海道新幹線を除けば六〇%を割るというような計画の実施状況なんです。それだから、国鉄が移用、流用をやるということになると、そういう全体計画にも響くし、またもし、これは総理も言われておったあれなんだが、安全運転に対しての経費は、本年はわれわれも積極的に推進して大幅に認められておるが、そういうものに手がつけられるというようなことであっては国鉄のためにたいへんだという考え方で、私は特にこの移流用によってまかなうということを重視しておる。ところが、あなたの御答弁、国鉄当局のお考え方によれば、退職金の操作によって百五十億を生むのは容易なんだ、またそういうことを従来やっておるのだということになれば、われわれは国鉄予算についてもっと検討しなければなりません。簡単にやれることなんですか、どうなんです、総裁
  53. 石田礼助

    石田説明員 お答えいたします。  この経費流用の百五十一億円というのは、ただいま申し上げましたとおり、退職手当を一日延ばすということでありまして、これによって国鉄の保安対策費、それから工事費というようなものには全然関係がないのでありまして、これは御心配の必要はないと私は考えております。  四十年の問題につきましては、御承知のとおり、これまで国鉄で計画をつくってその予算の請求をしておったのでありますが、いつも請求する金額が通ったことはない。そこで今度は、ひとつ政府の案としてぜひ確実に予算の裏づけをしていただきたい、そうしてまたわれわれが希望する計画を実行したいという考えからいたしまして、国鉄の案にあらずして、これにかわるのに政府の案をもってするということで、国鉄基本計画懇談会というものをつくりましてただいま検討中でありまして、御心配のような、経費の百五十一億を流用することによって国鉄の既定の計画に傷がつくということはないと私は確信しております。
  54. 辻原弘市

    辻原委員 総裁、こういうふうに理解してよろしいか。それは、退職金の支払いなんだから、いつかはこれは請求される。三十九年度は支障はない。しかし、それは当然いずれかの時期において払うことになる、こういうことですね。百五十一億というのは、いわば一時これはどこかから借金をしてきたと同じ形ですね。
  55. 石田礼助

    石田説明員 退職金は予算の範囲内において払うということでありまして、要するに、三十九年度の末日に払うのを四月一日で払うということでありますので、これはちょっとどうも少しやりくりし過ぎるようでありますが、退職者の立場から申しましても、国鉄の財政上の窮状を考えれば、一日くらいのごしんぼうは願えるものだと私は考えておるのであります。したがって、工事というものに対しては全然影響がないというように御了解をいただきたいと思います。
  56. 辻原弘市

    辻原委員 予算の範囲内で払うということは、通例いわれる法律上の技術であって、予算の範囲内だから、金が少なくなったら退職金をよけい払わぬでもいいということではないでしょう。要するに、端的に言って次年度に持ち越したいということですね。というのは、四十年度においてはそれだけの金が必要だということでしょう。だから、百五十一億というのは、四十年度において補てんをしなければいかぬ、こういうことが明らかですね。そうでしょう。
  57. 石田礼助

    石田説明員 お答えいたします。そのとおりであります。
  58. 辻原弘市

    辻原委員 大蔵大臣にお伺いいたしますが、そういう予算の操作というものは妥当ですか。
  59. 田中角榮

    田中国務大臣 昭和三十九年度の国鉄予算で、退職料は二百四十六億を予定いたしておったわけでございます。ところが、今度の仲裁の財源等の問題もあり、十分検討いたしました結果、そのうち百二十一億だけ流用したい、こういうことでございます。でありますから、二百四十六億全額退職をするということが、三十九年度で退職人員が減れば、当然その金額は流用できるわけであります。でありますから、国鉄の退職予定人員、いわゆる二百四十六億に相当する人員が退職をしなければ、流用しても一向差しつかえないということになるわけでございます。百五十一億五千万円のうち三十億ばかりは、工事の繰り延べのものではなくて、その後の情勢によって単価を切り下げ縛るという事情がありましたので、合理化によって約三十億円ということで、合計二百四十六億円のうち百二十一億円の退職料を流用するということと、合理化によるいわゆる単価の引き下げ等ができ得るという金額三十億円を加えて百五十一億五千万円、こういうことになったわけであります。でありますから、三十九年度に二百四十六億円分の退職をせしめておって、そうしてその退職料を四十年に払うことになりますと、あなたのいま言われるような問題が起こるかもしれませんが、三十九年度の退職人員の一部が四十年度になるということになれば、当然四十年度の国鉄予算のときの問題として算定せらるべきであります。
  60. 辻原弘市

    辻原委員 いずれにいたしましても、人員、金額は別として、要するに三十九年度で当然支払いを予定しなければならぬ退職金に手をつけておるわけです。だから、金額は多少その増減によって動いてくるでありましょうけれども、いずれにいたしましても予定しておった金額をひっぱずして四十年度でやるわけだから、穴のあくことは当然ですよ。大蔵大臣いろいろ言われておるが、穴のあくことは間違いない。だから、あらかじめそういうような予算措置を三十九年度にして、また予算の執行をしていかなければならぬものを、次の年度にそれを持ち越してかぶせていくというような予算編成は、正しくないということです。それはどういうところから出てきたかというと、やはり冒頭に申し上げたように、これは当然必要な経費は補正として組むという習慣をつけなければなりません。しかも金額にしては五百億程度ですから、これは財源がないということは言われない。当然そのことは、私は新たな財源をもって処置すべき問題であるということを強く主張いたしておきたいと思います。しかし、こまかい点につきましては、時間が若干経過をいたしておるようでありますから、別の機会にいたしますが、そういうことを国鉄総裁が黙って認められたのではありますまいが、しかし、この席上においては、どうも認められたようなお考えで言われることは、国鉄のためによろしくありません。これは私はそういうように思います。また、大蔵大臣のはしなくもお答えになった点から言うと、合理化とかその後の事情による工事の遅延とか言っておりますが、単価の切り下げその他の工事勘定に対する影響も出ております。だから、われわれとしては、その点についても、当然の措置は当然の措置としてやってもらいたいし、また仲裁裁定としては、国鉄法の示すとおり、やはり新しい一つの給与の問題として措置をしていくのが妥当な態度だと思います。そういう糊塗的な態度でもって予算を運用し、編成するものではありません。  次に、総理にお尋ねをいたしますが、太田氏との会談の中で、また先ほど総理の触れられました問題で、重要な問題がございます。それは当事者能力に欠けておる、こういう点であります。その点からいわゆる公企体のあり方を検討したいという総理のお考え、これは私はしごくごもっともだと思うので、したがって、その点に対する総理の御見解というものを、どういうふうに具体的に推進されようとしておるのか、この点を承りたい。  考えてみますると、今回のいわゆる公労協紛争がどういう経過をたどったかといいますれば、昨年の九月にそれぞれ各企業体組合から要求が出て、これが調停に入ったのが二月十七日、仲裁に移行されたのが五月七日、裁定が出たのが五月十九日、この間、通算いたしますると約百八十日に及んでおる。百八十日という長い、いわゆる一年の半分の間を費やして紛争を続けておる。もしこれが民間であるならば、たいへんです。経営者は経営者として、それだけの日数ガタスカしておりますると、企業の経営に重大な影響ありとして積極的にその解決のために全能力を傾けるでありましょう。ところが、遺憾ながらそれぞれ公企体の三公社五現業の当事者には、私はその熱意がなかったとは断定はいたしませんけれども、しかし、事実において百八十日の間ともかくじんぜん日を送っておるということ、このことの厳たる事実は、何としても公企体なるがゆえにということで許されない問題である。しかし、一がいにそれを責めるわけにはいかない。総理が先ほど言われたように、結局は当事者能力がないということ、民間のようにいい労使の慣行が確立されておらない。したがって、これは何としても経営また労働の両面にわたって私は総理と太田氏の約束に基づいて今後推進をしていただかなければならぬと思うが、それについての、先ほどお伺いをいたしましたように、具体的な構想というものをこの機会にお示しを願いたい。
  61. 池田勇人

    池田国務大臣 公共企業体の問題は、民間の企業とはまた別の使命を持っておりますので、やはりそれが国有公営的の存在であることも、御承知願いたいのであります。したがいまして、経理その他につきましては、予算国会審議を願うことに相なっております。だから、民間どおりにはまいりませんが、やはり労使の慣行ということを考え、また公労委の存在ということも考え、そうして予算上の問題等を考えまして、いかに措置すべきかということにつきましては、関係次官会議でいま具体的に検討さしておるのでございます。いま私がこういうようにやるということを申し上げる段階ではないと思います。
  62. 辻原弘市

    辻原委員 検討の段階だから具体的には言えないというお話しでありますが、私は、あえて一つ具体的な問題について総理のお考えを承っておきたい。  三公社五現業、まあいずれを見ても大体同じような状況でありますが、これは太田氏との会談においても触れられておったようでありますが、やはり予算制度そのものに問題がある。たとえば、国鉄の場合には、日本国有鉄道法の四十四条には、いわゆる給与準則を定めて給与を支給しなければならぬことになっておりますね。しかも、その給与準則は国鉄予算に示されてある給与総額を上回って支出をしてはならぬということになっておる。もちろんそれにはただし書きがあって、裁定その他若干の例外措置を認めてはおりまするが、いずれもこれは国会の議決を経なければいかぬことになっておる。そこにいわゆる給与の動かし方についてはこの準則及び総額にしぼられるという点が、いわば当事者だけではどうにもならぬという問題があるということ、これはかねてから指摘をされておったところであります。したがって、次官会議等で検討中だというお話しでありまするが、触れていくとするならば、国鉄におきましても、電電公社におきましても、これらの予算制度、給与総額制度というものに検討を加え、これに改良を加えていかなければどうにもならぬという実際の問題になると思うのでありますが、そういう問題をも含めてニュートラルな形に動かしていこうというお考えに基づいてやっておられるのか、その辺のところを少し見解を承りたいと思います。
  63. 池田勇人

    池田国務大臣 給与の問題でございますから、予算関係することは当然のことでございます。また、予算関係する場合におきまして、支出の対象になりまする収入の問題も考える、これは借り入れ金によることを得るかどうか、いろんな問題がございましょう。しかし、それが一つの当覇者能力を持たすアイテムと申しますか、一つの場面だと考えます。またそれと同時に、やはり十六条の二項の国会承認ということ、予算がない場合におきまして国会承認ということについての制度というものも、これは考えなければなりません。そこで、裁定によって、常に政府はそれによらなければならぬというふうなことも、なかなかむずかしい問題で、やはり労働関係法、いろいろな点から十分検討してみないと、私はいい結論は出ないのではないかと思います。
  64. 辻原弘市

    辻原委員 公共企業体それ自体の性格、運用等の検討も当然でありますが、私は、同時に当事者という限り、当事者能力を付与するという限り、一方労働組合に対しても、今日の労働法の規定は不適当であると思う。したがって、これは、同時にそのことを含めて私は改正をすべきであるという考え方を持っております。すなわち、いかように考えましても、公労法十七条にいういわゆる公共の立場においてストライキ権、これに制限を加えるのだという考え方は、これは国際的な通念からしても非常におかしいと思う。これはもうすでに過般の衆議院の本会議においても議論をいたしておりますから、私は重ねてはいたしません。しかし、常識的に考えてみれば、一体国鉄と私鉄とどこが違うのか。また最近の航空機の発達から見て、航空機の会社と国鉄とその業務においてどう違うのか。あなたは多賀谷君の質問に対して、高度な公共性ということばを用いられておりましたが、私はそのことがどうしても理解できない。公共性、これは理解できます。しかし、その場合に、国鉄であろうが、私鉄であろうが、航空会社であろうが、これはやはり私は、運輸という公共性から見れば、大同小異であろうと思う。あるいはたばこを製造するということとそれからビールをつくるということと、一体具対的にどう違うのか、これも私にはわからない。あるいは国内の電電公社、それと国際電話を扱うところの国際電電会社と比較をしてみて、それが一体どう違うのか。ただ経営の主体が国にあるというだけである。しかし、それを国際的なあれでもってながめた場合に、国有をやっている国はたくさんある。イギリスでもフランスでもそうです。ところが、国有だからといって直ちに争議権を制限している国はないはずであります。しかも、ILO等においては十把一からげにそういうことをするのは間違いだということ、こういう点から見て、公企体のあり方において、経営者に、理事者側にその当事者能力を付与するのであれば、当然労働者側に対しても、自主的に労働問題を扱える、そういう立場を保有せしめるべきである、これが私は当然であると思う。その意味においてお考えを承りたい。
  65. 池田勇人

    池田国務大臣 公労委におきます経営者の当事者能力をあれする、予算あるいは国会等に全然関係なく当事者能力を与えるという意味ではございませんよ。先ほど申し上げましたように、高度のいわゆる公共事業である、これは何人も認めると思います。ただ、外国に例をとってとやこう言っておられますが、いま日本の沿革と現状から申しまして、私は、国民大多数が国鉄その他のスト権を認めてもいいという気持ちではないと思います。あくまでやはりいまの制度で、これを活用してストの起こらないような事前の措置をとって、労使間に円滑な労働関係が樹立することを望んでいると考えております。
  66. 辻原弘市

    辻原委員 私は、その総理の認識が非常に誤りだと思うのです。ストライキ権を与えたら直ちに行使するなんということは、一方的宣伝なんです。事実民間の大企業単産を見てごらんなさい。ことごとくストライキ権を保有しておりますが、これが、企業に対して致命的な影響を与えたり国民に迷惑を及ぼしててん然としているようなストライキ争議というものが、頻発しておりますか。私は逆だと思う。いわゆる自主的に解決をする。そのことがまた、いつでも抜くことができるとなれば、抜くことに対して慎重になるのは、これは当然であります。しかも、そういうものを抜きっぱなしにして世論の批判をこうむるなんということは、これは労使双方のとらざる方向なんだ。だから、おそらくそういう場合は、逆に短期に解決するという双方の意欲を燃やして、そうして世論のまにまに私は自主的に解決ができていくと思う。だから、ストライキ権を与えたから直ちにストライキが頻発する。それは国民の好まざるところであるという、そういう断定は、今日の労働の趨勢に対する総理の識見とも私は思えないのであります。しかし、これは議論になりまするから、その程度にいたしまして、ただそういうことを含めて御検討をいただくかどうか、この点を確かめておきたいと思います。
  67. 池田勇人

    池田国務大臣 労働関係につきましては、常に検討を加えなければなりません。しかし、現時点においていまのストライキ権を認めるかという問題につきましては、私は、いまの時点では、認めるということは世論でないと考えております。
  68. 辻原弘市

    辻原委員 時間がございませんので、あと二間だけ私は簡単にお尋ねいたしておきたいと思います。  それは、この前の会談におきまして、最低賃金制のことについて触れられております。その発表の中身を見ますると、現在の地域間協定あるいは業者間協定による最低賃金制度というものは、これはすでに労働者側から見れば実際の賃金くぎづけみたいな形になる。また地域、業者間から見れば、逆に統一がとれなくて困る。いろいろな問題をはらんで壁に来ておる。したがって、太田氏が提案をされたような全国一律に基づく最低賃金制度を前向きで検討を進めたいということが言われておるのであります。大いにわれわれの歓迎するところであるが、具体的にどういう形で進められようとするのか、そのことの構想について承りたい。
  69. 池田勇人

    池田国務大臣 中央最低賃金審議会の答申もございますし、われわれは、この答申に従いまして、広い範囲での職権決定方式を進めていく、そうして情勢の推移によりまして、理想はやはり全国一律の最低賃金ということが理想でございますが、日本の産業形態その他実情等を考えまして、いま直ちにそれに踏み切るというわけにはいかぬ。やはり審議会の答申を参考といたしまして、徐々にそういう理想に向かって歩んでいこう、こういうことを私は言っておるのであります。
  70. 辻原弘市

    辻原委員 同様会談の中に、住宅の問題に触れられておりました。私は、このことは非常に時宜に適した——太田氏があえて住宅の問題を持ち出されたということにつき、また、総理もそれに熱意を持たれたということは、非常に時宜に適したことであったと歓迎をしておる。ただ、しかし、これは有名無実に終わってもらいたくない。私が申し上げるまでもなく、最近における住宅の不足というものは、一般に考えられている以上にこれは深刻な問題であります。時間がございませんので、中を集約いたしまして私はお尋ねをいたしたい。  まず、政府は積極的に一世帯一住宅を推進せられるということであるが、これは今後——少なくとも本年、明年にわたってどういうような具体的な形で進められようとするのか。  それからいま一つは、公務員、公共企業体職員等の住宅、これは、あなた方が言われる公務員の能率を増進する意味におきましても、また生活安定を期する意味においても、民間との対比においても、私は非常に劣っていると思う。そういった面における住宅、その推進をどういうふうにはかられるか、また太田・池田会談の中で特に触れられておりました夜勤等の特殊勤務者に対する住宅の配慮というものは、具体的にはどういうことなのか、どういうふうに建設省としては措置されようとしておるのか、この点について具体的な所見を承っておきたいと思います。
  71. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知のように、政府といたしましては、今年度から住宅政策を新たにいたしまして、今後七カ年間に約八百万戸の住宅を建設するということにいたしまして、一世帯一住宅という方針を立てております。これは年次表によりまして、順次建設することにいたしております。これは、従来の趨勢を勘案いたしまして、この数字以上に民間の住宅も建っていくでございましょうし、政府としても決して無理のない数字であろうということは、先般予算審議の際に十分御審議をいただきまして、御決定をいただいております。それに基づいて公団もしくは地方自治体等におきましてこの計画を進め、さらに民間につきましても金融をいたすことによってやってまいることにいたしております。ただ、特にここでお答え申し上げておきたいと思いますことは、従来は、公団等が間々収入の多い人に引き当てる住宅を建てておりました。また、住宅金融公庫が資金を金融いたします場合に、大会社、大資本の会社に金融をいたしておりましたものを、これを是正いたしまして、今後なるべく資本の少ないものに金融を重点的にしてまいる、そして、その方面に向けると同時に、しいて申しますれば、低額所得の人に重点を置いて住宅の設計をしてまいるように指導していきたいということにいたしております。  なお、私はこの機会に申し上げておきたいと思いますことは、明年度の予算の編成、さらにわが党といたしましては、住宅をさらに積極的にやる必要があるということで、目下私は建設大臣として住宅問題に専心取り組みまして、できるならば住宅金融を大幅に広げて、そして個々の人に資金面を潤滑にしていくことにしたい。そして、従来戦前にもありましたように、住宅組合等をつくって、その組合対象に金を貸す、低利長期の金を貸すということをいませっかく検討中でございまして、総理の会談等に示されました線に沿っていきたい、こう考えております。
  72. 辻原弘市

    辻原委員 あとの、公務員、公共企業体の住宅問題、それから特殊勤務者に対する住宅問題……。
  73. 河野一郎

    河野国務大臣 いま申し上げましたような——しいて申せば、公務員の場合には、私は、これは世間に非難がありますように、かえってそういう人が優先して入ってしまうじゃないかというような非難があるくらいでございまして、これは特にそういうことのないように、公平に一般に国民全般にわたるように住宅政策としてはいかなければならぬ、こう考えております。ただ、いま申し上げましたように、公共企業体等におきましては、その企業体自身においてやる、それをわれわれとして御協力申し上げて十分充足するということが、いくべき方向じゃなかろうか、こう考えます。
  74. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて辻原弘市君の質疑は終了いたしました。  午後は、一時から再開することといたします。  なお、午後の質疑者は、永井勝次郎君及び石田宥全君であります。  永井君の出席要求大臣は、大蔵大臣、厚生大臣、農林大臣通商産業大臣、運輸大臣、自治大臣及び経済企画庁長官であります。  石田君の出席要求大臣は、大蔵大臣、農林大臣通商産業大臣、厚生大臣、建設大臣及び経済企画庁長官であります。  暫時休憩いたします。    午前十一時五十九分休憩      ————◇—————    午後一時十分開議
  75. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  予算実施状況について質疑を続行いたします。  永井勝次郎君。
  76. 永井勝次郎

    ○永井委員 私は、中小企業の倒産を中心として中小企業の対策について、また上昇ムードの一そう強まっております物価の諸問題について、政府にお尋ねをいたしたいと思うわけであります。  実は総理がその責任の中心でありますから、これらの問題を総理にお伺いしたいと考えていたのでありますが、総理がお見えになりませんので残念であります。したがって、総理が発言されてまいりました、経済は池田にまかしてくれ、あるいは物価は一両年の間に安定する、今後は農業と中小企業を政府経済政策の重点項目の一つとして革命的な予算をつけてやるんだ、こういうふうにしばしば声明されてきておるのでありますから、こういう総理立場に立って、それぞれの大臣から単に所管の事務的答弁ではなくて、国務大臣としての立場からこれらの問題について総理にかわって答弁をいただきたいと思うわけであります。  そこで、中小企業の倒産でありますが、これは毎月新しい記録をつくって多くなってきております。この中小企業の倒産の問題を政府はどのように考えておるのか、またどのような防止対策をもって臨んでおるのであるか、これらの諸点について通産大臣から伺いたいと思います。
  77. 福田一

    福田(一)国務大臣 中小企業の倒産の問題でありますが、これは永井さんからも、御質問の御趣旨が倒産問題だけでなくて、全般の意味からもひとつ解明せよというお話でございますので、もうすでにおわかりのことと思いますが、あらためて御答弁をさしていただきたいと思います。  御案内のように、日本が開放経済体制へ入ってまいるということになりますと、どうしてもいわゆる設備の近代化、合理化、こういうものをやっていかなければならない。その設備の近代化、合理化は、大企業の場合におきましては大体そのめどがついてまいっておるのでありますが、大企業がそういう近代化、合理化をやるにつれて、中小企業また下請関係にある中小企業、こういうものはやはり相当な設備の近代化、合理化をやっていかなければならないという面に直面をいたしております。これをやります場合においては、相当な設備資金あるいはまた相当な増資とかその他のいわゆる資金関係においてある程度の無理をいたしておる点もあるわけでありまして、こういう点につきましては、政府としてもできるだけのめんどうを見るように予算関係その他でもやってまいりましたけれども、なかなか十分な措置ができておらない。そこで政府といたしましては、この前、昨年来いわゆる中小企業基本法というものをつくり、中小企業の近代化、合理化に特に力を入れるというやり方で進めてまいっておりますが、ほかにも原因はあるとは言いながら、こういうことが一つの大きな要素となりまして、かなり中小企業が金融的に困難な事情にあることも事実であります。たまたまそういう事情のあるときに暖冬異変のような事態が起きてまいりましたり、あるいはまたいわゆる公定歩合の引き上げというような経済の引き締め政策が行なわれるということもございまして、中小企業に対する経済的な圧力が非常に加わってまいっておることは事実であります。そこで、その数字でございますが、実はこれは負債総額一千万円以上というのを基準にして調査をいたしておるわけでございますが、この数字がずっと昨年の十二月以降四月まではウナギ登りに上がってまいりました。また負債金額のほうも順次上がってまいりまして、そのピークは四月の件数において三百三十二件、金額において三百六十三億というところまでだんだんふえてまいりました。私たちとしても、これに対しましてはあるいは買いオペをやり、あるいは中小企業関係の三機関に対しまして特別の措置をとるようにいたし、さらにまた、これは大蔵大臣から御発言があると思いますが、市中銀行等に対してもできるだけ連鎖反応による倒産がないようにする等々、いろいろの施策をとってまいりました。ところが五月は、件数はわれわれが予想したよりは非常にこの点では減っておりまして、五月には記録を更新すると思ったのが二百八十二件で、そして金額も二百五十二億、こういうふうにちょっと減っております。しかしこれは負債総額千万円以上というところを対象にいたしておりますので、こういうような数字が出ておると思いますが、われわれの認定では、もっとそれ以下のもので非常に苦しいものがあると考えておるのでございまして、この点についてわれわれとしても決して油断はならない。そこで、六月にこれがしわ寄せされるおそれがあるというので、六月にも買いオペの実施をしたりその他いろいろの手当をいたしております。これまた大蔵大臣からお答えがあるべきことではありますが、御案内のように、いわゆる税金の延納ということについてかなり弾力的な措置を大蔵省が特にとってくれまして、私はこれがそういう意味においてはかなりの好影響を与えておると思います。金利も、日歩二銭くらいでございますから非常に安い、だから、いわゆる借りかえをするよりは延納のほうが楽だということになりますと、これが七−九の時期においてどういう影響を及ぼしてくるかということも考えてみなければならない問題でございまして、彼此総合いたしまして、われわれといたしましては決してこれで十分な対策ができておるとは思いません。今後も十分警戒をいたしますと同時に、時宜に適した措置をとってまいらなければならない、かように考えておる次第でございます。
  78. 永井勝次郎

    ○永井委員 いまの通産大臣の話では、この倒産の原因は景気調整としての金融引き締めだ、それから本人の経営の放漫だ、その結果である、こういうふうに原因をつかんでおられると思う。こういうようないろいろな事態は池田内閣の高度成長政策の中でずいぶん繰り返されてきた問題でありますが、今日のような倒産の頻発の事態というものは、政府としては予期していたところのものであるのか、あるいは予期しなかったところであるのか、その実態についての把握の状況についてお伺いをいたしたいと思います。
  79. 福田一

    福田(一)国務大臣 中小企業の倒産の原因について先ほど申し上げたのでございますが、これを予期しておったかどうかということになりますと、われわれは何も好んでそういうことがあるほうがいいなどと考えておるわけではございませんが、しかし倒産というものは、こういうようないわゆる政策がないときにおいても、毎年毎月いままででも行なわれておるのでありまして、その数字がどれだけ大きくなったかどうかというところに問題点があるのだと思うのであります。こういう点から考えてみますと、確かに最近はふえてはおりますが、われわれとしては決してこれを予期したわけでもなければ、そういうことのないようにできるだけ経営を健全にやり、あるいはまた無理なことをしないようにというような考え方でやると同時に、何としても必要な資金については、政府のほうからもできるだけ金を回すというような措置をとってまいっておるのでございまして、今日こういう不幸な倒産を予期しての政策ということはやっておらないわけでございます。
  80. 永井勝次郎

    ○永井委員 今日の中小企業の倒産の頻発は予期しなかったところである。そういう予期しなかったとするならば、この事態に対する見通しの見誤りがあったでありましょうし、また高度成長政策の発展の中でこういう問題は克服していけるのだ、こういままで言ってきたことが誤りであったということが、中小企業の倒産という事実によってここに立証されておると思うのであります。さらにこれほど誤診をして見誤っておる。見誤っておる事実に対して、どこで見誤ったかということについての追求が政府に足りないのではないか。やはり通産大臣は、今日の倒産は、従来ありました景気循環の波動の中で、好況のときは倒産が減り不況のときはふえる。こうした景気循環の波動の中に起こる倒産である、こういうふうに今日の倒産をつかんでおるのかどうか、あらためて伺いたい。
  81. 福田一

    福田(一)国務大臣 先ほども申し上げましたが、景気循環の法則に加うるに、今日の時代はいわゆる開放経済体制に向かっておる。ここに一つのまた新しい大きな要素が加わっておる、かように考えておるわけでございます。
  82. 永井勝次郎

    ○永井委員 いま大臣の言われたことは、もうすでにいろいろな中で織り込み済みでございます。織り込み済みでなければならないはずであります。自由経済にしていくのだ、それによる打撃というものもあるのだ、あるいは経済の近代化をやっていくためには膨大な設備投資が要るのだ、そうすれば金の流れにまかしておくならば、力のあるところに、大企業だけがどんどん近代化が先行して、中小企業や零細のところは金は回ってこないのだ。そうした設備が投資された結果として、膨大な設備投資の大企業と、設備投資をできない金のない中小企業、零細との、今度は新しい部面における競争ということになれば、これは手も足も出ない。こういうことになってくるということは、これはもう高度成長政策の推進の中で計算済みでなければならないはずであるし、ことに景気調整として金融引き締めをやる。そうでなくても金詰まり、金融難で、金融をしぼるのですから、したがって、しぼられる関係は大企業の関係ではなくて中小企業の関係でますますその打撃が強くなってくる。こういうことは織り込み済みでなければならないはずだと思う。そういうことを織り込んだから池田総理は、これからは農業と中小企業を経済政策の重点項目に加えるのだ、こう言っておるのでありましょうし、宮澤経済企画庁長官が、第一ラウンドは終わった、第二ラウンドなんだ、アフターケアだというふうに言っておられるのも、こういう事態が起こることを予期したからではなかったかと思う。ところが担当の通産大臣は、これは予期しなかったのだ、こういうことになりますと、いままで抽象的にいろいろ高度成長政策の手直しをするのだ、こういうふうに私たちは理解をしていたのが、手直しをしない、従来のやり方がいいのだ、それをやって進めてきたところが、中小企業の倒産がたまたま予期しない事態において頻発したのだ、こういうふうに通産大臣はとっておられる。そのような事態であるのかどうか。さらにこれから話を進めていく上の出発としての重要な起点でありますから、今日の中小企業の倒産は金融引き締めによる予期しない事態だと政府は分析している、こういうように理解してよいかどうか、重ねて伺います。
  83. 福田一

    福田(一)国務大臣 先ほど私が予期しないと言った意味は、わかっておってそれに対する手当てをしなかったのかどうか、こういうふうな御質問に対してお答えをしたのでありますが、われわれは好んでおったわけではない。これはやむを得ない事情でそういうことになったのだという意味でお答えをしたつもりであります。そこで、問題はどういうことかと言いますと、経済というものの把握の問題になると思うのであります。これは大企業といい中小企業といい、いろいろ把握のしかたがあるわけでありますが、中小企業といっても、資本金五千万円ともいい、三千万円ともいい、いろいろ把握のしかたがありますが、いずれにしても経済というものは全部を含めての経済と見てまいりました場合に、これを高度化していこうという場合において、下のほうからいわゆる積み上げ式でもって経済を高度化していこうという考え方に立ってもなかなかむずかしい。すなわち、基礎産業というものから始めまして、これを順次政策を拡大していくというのが、いままで先進諸国においてもとられてきた方途であったとわれわれは思うのであります。日本は、御案内のように戦後非常に経済がもう壊滅的な事情に立ち至りまして、その後、何としてもこの経済を立て直すには、いわゆる基礎産業に手をつけなければいけないということから、まず重点的に基礎産業から入ってまいりまして、かなりの程度高度化が進んでまいりました。その間において、いま永井委員が御指摘になりましたように、中小企業その他がいささか手おくれと言いますか、十分かゆいところに手が届いていないということは事実であります。それだからこそ、これから中小企業に力を入れていきたい、こういうことを言った総理の意味もそういう意味だと思います。私は経済というものを、中小企業も大企業も含めて同じように、中小企業が一〇%伸びれば大企業も一〇%伸ばすというふうに、比率的にうまく伸ばせるというようなくふうがあれば一番いいと思いますが、実際問題としては、なかなかそういうことは、私はいかなる方途をもってしてもできるものじゃない。やはり重点的に、大体基礎産業から取り上げて、そして順次これを中小企業のほうに及ぼしていくという考え方にならざるを得なかったと思うのであります。そういう意味で、今後はひとつ中小企業に大いに力を入れて、この立ちおくれを取り戻すように努力をしたいというのが、私たちの考えでございます。
  84. 永井勝次郎

    ○永井委員 そうしますと、中小企業倒産対策は、金融引き締めの結果であるから、金融をもう少しゆるめればこの倒産は防止できる、あるいは救済できる、中小企業の振興発展は期待できる、こういうふうにお考えになっておられるのですか。
  85. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、金融をゆるめるだけでは中小企業の問題は解決いたさないと思います。中小企業をやる上におきましても、金融の問題もあれば労務の問題もあります。また景気自体、すなわち注文がどれくらい取れるか、ということは、今度は一方において販売がどれほどできるかという問題がございます。一方において、もっとこまかく言えば、無配にしてでもがまんをしていくかどうかという問題もあるでしょうし、いろいろ中小企業をやっておる人たち、幹部の人たちの資産関係があって、それの信用がある場合もあるし、なかなか一言にしてこの内容を尽くすことはできませんが、いずれにいたしましても、金融引き締めを緩和したからそれで中小企業が立ち直るものではないと私は思っております。
  86. 永井勝次郎

    ○永井委員 私は金融だけで中小企業の今日の倒産の防止はできないと思います。それはこの統計でも明らかなように、昭和三十四年は岩戸景気でありました。岩戸景気における倒産は千百六十六件。これが三十五年、三十六年、池田内閣が高度経済成長政策を実施することになって、その発展段階に入ってから、ずっと金融がゆるみ、景気が好況なんだけれども倒産はどんどんふえてきているわけです。三十五年は金額にして六百五十一億、三十六年は八百三億、三十七年は一千八百四十億、こういうふうにどんどんふえてきているわけです。さらに三十八年に入ってはこれが高くなり、昨年の暮れから今年まで、二月は一月より、三月は二月より、四月は三月より、もう毎月有史以来の倒産の数にのぼり、金額にのぼっておる。こういうことは単に金融とか景気循環の理論では説明のできない段階にあると思うのです。  そこで通産大臣にお尋ねするわけですが、いま中小企業基本法が昨年から出発したばかりです。政府が中小企業を経済政策の重点施策でやるんだ、こう言っておる政策の中で、ことに第二ラウンドで農業、中小企業に対するアフターケアをやるんだ、これほど農業、中小企業に重点を置き、とれほど心を配りながら、その中でこれだけ未曾有の倒産が起こっておる。これは景気循環とは異質のものではないか、別なものではないか。別な角度から高度成長政策の欠陥としてあらわれたこの事象をもう少し政府はまじめに忠実に、そうしてごまかすことなく分析して、高度成長政策の中に含む矛盾とその誤りとをいまにして訂正するのでなければ、どんなに、中小企業基本法をつくってその路線に従って中小企業の振興をやるのだと言ったところで、こんなざまでは振興になりません。また口先で革命的な予算をつけて中小企業を強めていくのだと言ったって、強めていくということばの裏からどんどん倒れていっているのですから、こういうことは私は政府の反省が足りないと思う。  そこで、通産大臣が中小企業基本法によってこれから踏み出そうとするその出発点において見当違いに歩かれたら困るので、いま倒産の事実に対してどういうふうに把握しているのか、どういうふうに掘り下げているのか、私はそのことを聞きたいのです。いろいろなことはあるでしょう。ですから政府としては、中小企業倒産の頻発の事態が金融の引き締めによるのか、あるいは開放経済のためにこういうふうになったのか、あるいはそのほかのいろいろな問題があるのか、このことをひとつ、これからの質疑の出発点でありますからはっきりさせておく必要があるので、重ねてお伺いをいたします。
  87. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、先ほども申し上げましたように、この倒産の大きな原因の一つは、開放経済体制に向かいつつあるということと、景気循環の問題と、その他いろいろあると思います。これはそれだけで尽きておらない。一つ一つを調べていきますといろいろの原因がございます。そこで、先ほど永井委員も仰せになりましたが、いわゆる中小企業基本法ができたのだから、まじめにひとつ政策を実行していかなければならないというお話でございますが、確かにお説のとおりなんでございます。そこで、まじめにこの問題を取り上げてみますには、実態の把握ということがむずかしいのでございます。実態の把握をおまえがしてないのは怠けておるのだ、けしからぬと言われれば御説ごもっともでおわびをするよりいたし方ないと思いますが、中小企業と言いましても千差万別であります。非常に種類が多い。そして、その差も非常にたくさんあります。この実態を把握しないで政策を実行するということはなかなか困難でございます。そこで、昨年来われわれはこの実態の把握に非常な努力をいたしておるのでございまして、私たちとしては、中小企業のうちでも特に零細企業というようなものについては、今後特にひとつ考えを新たにしなければいかぬ面があるのではないかということを考えておるようなわけでございますが、実態の把握ということがなかなか言うべくしてそう簡単にはできない。しかし順次これをいたしておるところでございます。私たちは、倒産の問題も含めまして、中小企業の実態の把握をする、倒産問題についてはさしあたり金融の面から——金融さえついておれば倒産しないで済むのでありますから、できるだけ連鎖反応を起こさないように、あるいはまた、どうしても必要なところであればそれぞれ手当てをする。いま中小企業庁におきましては、各通産局にも窓口をつくって中小企業問題を取り上げるというようなことをいたしております。しかし、こういうこともまだ一般にはなかなか認識が深まっておらないようでありますし、また全部相談に来られたらはたして応じ得るかどうかという問題もございますが、しかし、われわれとしては、この問題にまじめに取り組んでこの問題を解決することが今後の日本経済、また日本の国民生活というものを解決する根本の重点的なものであるという考え方で処置をいたしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  88. 永井勝次郎

    ○永井委員 先ほど来伺いまして、政府は、中小企業倒産の実態は金融の問題だ、したがって金融をつけさえすれば何とかなるんだ、こういうふうに把握されておるということが明らかになりました。  そこでお尋ねいたしますが、政府の中小企業対策の基本方針に、一つは産業の近代化をはかるということ、一つは国際競争力を強化するということ、一つは企業間の格差の是正をするということ、この三つが基本的な柱ではなかったかと思うのですが、いかがです。
  89. 福田一

    福田(一)国務大臣 お説のとおりでございます。
  90. 永井勝次郎

    ○永井委員 この三つの柱が政府の基本の方針であるとすれば、この方針に従って実際に実行されておるかどうか、その実行がこの線に沿って効果を上げておるかどうか、これを具体的に吟味してまいりますならば、私は自然に答えが出てくると思うのです。  そこでこの基本方針に基づいて、政府は物的生産性の向上、これを一つ打ち出しております。それから中小企業の事業活動の不利の補正をするんだ、不利益な部分の補正をするんだ。そうしてこれらの施策の効果が中小企業全般に浸透するように努力する、こういうふうにうたってあります。この限りにおいては私は妥当だと思うのですが、これに対して今日の段階で大臣は修正をされたり、あるいはもっと別な角度で検討しなければならぬとお考えになる点はございませんか。一応あらかじめ伺っておきたい。
  91. 福田一

    福田(一)国務大臣 お説のとおりだと思っております。
  92. 永井勝次郎

    ○永井委員 そういたしますと、設備の近代化をはかるためには膨大な資金が要ります。日本は、大企業も全部を含めて資金が不足であります。自己資本が少なくて、膨大なおくれておる設備投資をしようというのでありますから、これは借り入れ金が多くなる。したがって、この限りにおいて、政府の考えておる設備の近代化を進めてまいりますためには膨大な資金手当てをする。その資金手当てのできるものがどんどん伸びるということになるわけでありましょう。そういたしますならば、これは大企業がその力を持ち、大企業が事実において自己資本以上の大きな借り入れ金によって設備の近代化をはかりましたことは御承知のとおりだ。これはお認めになるだろうと思う。国内の資金の足りない面は外資も導入してどんどんやったわけであります。そういたしますと、限りのある資金が大企業のところに集中的に投資されたということになれば、中小企業の分野に金が回らなくなることは当然だと思う。その面から、中小企業が金融の面から実際の運営としてしぼりあげられた。これが自民党の、池田内閣の高度成長政策の中でいままでたどってきた設備近代化の施策の足取りだと思うのです。その結果だと思う。その事実がこれを証明していると思うのですが、この点はいかがですか。
  93. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、傾向的にはあなたのおっしゃることは事実であると思いますが、じゃ、中小企業は少しも近代化されておらなかったかというと、そうではございません。生産性向上が行なわれておらなかったか、そうではございません。ただ、これは度合いの問題であります。そこで、いまあなたの仰せになったように、それには資本が要る。その資本は限りがあるものだから、それが力のあるほうへ持っていかれてしまえば、どうにもならないではないか、こういうお説でございますが、われわれの見るところでは、もう大企業のほうはある程度の設備の投資ができております。もちろん、これからやらないで済むというわけではありませんが、もうある程度できておる。そうして、いま立ちおくれておる中小企業のほうへ今度は力を入れていこうというわけであります。すべて経済というものは生きものでございますから、伸びていく場合にも、きょういってきょうのうちにすべてを並行的にそろばんで割るようにいかないことは、あなたも御承知のとおりである。やはり二年とか、三年とか、五年とかという年月をかげながらこれを円満に育てる、こういうことでございまして、子供がおとなになるときの過程と同じような動きに相なるかと思うのでございます。いまは骨組みができましたが、肉があまりついていない、この肉や皮に相当するような部分にこれからはやはり力を入れていく、こういうことでもあります。したがって、それにはある程度の年月というものをかけていただかなければ、子供がおとなに一足飛びになるわけにはいかないのでありますから、順次これをうまく成長させるようにしていかなければならない、かように考えておるわけでございます。
  94. 永井勝次郎

    ○永井委員 一度にできないことはわかります。それから金というものは信用のあるところに流れて、信用のないところに流れないのも、これはあたりまえのことであります。でありますから、大企業に流れて中小企業に流れなかった。そこでここに設備投資の、政府が出しております中小企業の年次報告の数字に示しておるわけでありますが、設備投資は昭和三十一年、中小企業は二千億、大企業二千八百億、それが三十七年度には中小企業は六千五百億、大企業は一兆二千億、大企業は設備投資が五倍にふくれ、中小企業は三倍にとどまっておる。設備投資の総額は大企業は四兆九千億、中小企業は二兆七千億、全体の六五%が大企業、全体の三五%が中小企業、さらに規模別格差による従業員一人当たりの設備投資を見ると、資本金十億以上の従業員一人当たりが百十九万円、一千万円から五千万円の中小企業のところが三十七万円、一千万円未満の従業員一人当たりが十三万円、こういうふうに政府の高度成長政策の中で設備の近代化を促進していくという、この実行の中でこういう格差が拡大してきておるのであります。こういうような設備投資の格差の中で、どんなに中小企業や零細企業が向こうはち巻きで二十四時間働いたって、これは機械力にかなうものでないことは明らかであります。一つの例をとってみれば、印刷の関係で、大日本印刷の近代化したところは輪転機の回転が三百回、そうでない従来の設備によっているところは輪転機の回転が三十回、これは機械力でありますから、どんなにさか立ちしたってこれは競争にならないことは明らかであります。大企業が膨大な設備投資をし、膨大な近代化をし、そうして生産性の向上をはかった。その圧力はだれが受けるのですか。その増産されたものはどんどん海外に輸出されて、海外市場を獲得して伸びていくならいいのですが、これは当然そんなに海外に伸びないのですから、国内のシェアを競争してくることはあたりまえです。でありますから、こういう近代化された大企業と、近代化されない中小企業と、日本の国内市場において競争すれば歯が立たないことは明らかであります。こういうところから中小企業がいま倒産に追い込まれていっているのだ。だから景気循環の問題ではなくて、構造的な変革の問題がここにあるのだ。通産大臣が中小企業の倒産をこう握っておられるように、倒産はこうだと握っておられるのは景気循環なんだ、金詰まりなんだ、こういう上つらのところを握っておる。われわれの考えておる中小企業のこの倒産というのは、そんなところではなくて、構造的な変革の中で大企業にどんどん追い込められている。そうして追い落としを食っているのだ、こういうところにこの倒産の重大性と深刻さとが私はあると思うのです。大臣いかがですか。設備投資のことはもちろんわかります。わかりますが、これは大企業をやっちゃって、そうして近代化した大企業と近代化されない中小企業とは競争しながら、中小企業はいまぼつらぼつらやっておるのですから、歯が立たないのはあたりまえです。どうですか。
  95. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、企業の倒産の原因は金融だけだと申し上げておるんじゃないので、それは表現がまずかったかもしれませんが、私は永井さんと同じような認識に立っておると思っております。また、そういうふうにお答えをいたしておるつもりでございます。  そこで、いま御説明がありました、たとえば大日本印刷の場合に、一方は三百回転で一方は三十回転だ、これではとうてい太刀打ちできない、お説のとおりであると思います。しかし、それはそれほどの比率にはならないということは、たとえば大日本印刷というものは、幾らそういうような能力があったにしても、地方のすみずみまで物をつくって販売しているわけじゃない。やっぱりいろいろの限度がございます。商売というものにはいろいろの限度がある。だから、地域的な一つの利点というものを持っておる中小企業というものが、全然それに太刀打ちできないかどうかということになると、私は問題があると思います。しかし、生産性が非常に差が開いておるではないかということでございますが、お説ごもっともでございます。したがって、それであればこそ、私たちは中小企業基本法をつくって、この格差の是正に当たらなければならない、今後大いにやらなければいかぬ、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  96. 永井勝次郎

    ○永井委員 そうすると、いままでの高度成長政策の中で、設備は大企業に集中されて、独占資本は強化された。そして中小企業はその大企業から見れば収奪しやすい条件に置かれておる。こういうことはお認めになられたと思うのです。また、政府の中小企業対策の三本の柱の中には、企業間格差の是正をやるのだ、中小企業の不利益を補正するんだ、こういう政策があったと思うのですが、それはそのとおりに私は運んでおらないと思う。逆だと思う。格差はますます拡大しておる、不利益の条件はますます深まっておる、こういうふうに思うのです。たとえば大企業と中小企業の格差が、出荷比率の関係でとりますと、中小企業は従来出荷比率が五〇%内外であったものが、いま五〇%以下にぐっと落ちています。そうして成長業種における中小企業の比率は、従来四六%であったものが三四%にけ落とされております。そうして停滞業種の中では、中小企業が六八%であったものが七三%に増しております。成長業種では大企業がどんどん進出している。そうしてその成長業種の中から中小企業を駆逐している。駆逐された中小企業は、停滞業種の中で過度の競争でお互い同士仲間で競争しておる。どんどんそこに吹きだまりのようにたまっていっておる。これが六八%から七三%にふえている現実だと思う。これは福田通産大臣のお手元でまとめました中小企業の年次報告の中の数字でありますから、これは間違いないと思うのですが、こういうふうになっておる。だから、大きな三本の柱である企業間格差をなくするんだ、不利の補正をするんだということは、逆です。ますます格差は拡大し、ますます中小企業は不利のところに追い込まれておる。これはこの数字からお認めになるのだろうと思うのです。いかがですか。
  97. 福田一

    福田(一)国務大臣 この数字のとり方は、確かにいま仰せになったのはそのとおりでございますが、しかし、生産性の向上というようなことで見てみますと、また一方においてはある程度差がいささかながら縮まってきておるというか、中小企業のほうが伸びてきておる数字のとり方もあるわけでございます。が、いずれにいたしましても、いまお説のようにこういうような格差があり、そういうような傾向にあるときであるからこそ、われわれとしては政策的になお一そう力を入れていかねばいけないと言う。それではいま現実に効果があがっていないじゃないか、こういうことでございますが、私は、現実に効果があがっていないという場合に政策をやる場合に、たとえば印刷業にやる場合とか、あるいは何かほかの販売業にやる場合とか、いろいろあるでありましょう。それから大企業とつながっておる下請企業というか、中小企業もあります。これのうちにも、その大企業がわりあいに弱い大企業の場合と、大きい企業であって相当力を持っておる場合とでは、下請の受けておる圧力もずいぶん違います。場合によっては下請がかなり援助をされておるようなところもありまして、なかなか一様でないのであります。それは、下請企業だからというそういうことだけではわからない。それから業種によってまたいろいろ違いがあります。私たちはその実態を把握しながら、それぞれに適応する措置を、すなわち適応する政策を実現しなければならないというので、ただいま努力をいたしておるところでございまして、いまそんなことをやっておっては間に合わないではないかということでおしかりを受けるかもしれませんが、しかし、実態を把握しない政策というものは私はあり得ないと思う。やはり政策をやる以上は、よく実態を把握して、そうして、しかもわりあいに公平な姿でやっていくということが必要かと存じておるのでございまして、いずれにしても御趣旨の気持ちはよくわかっておりますので、今後大いにそういう意味で努力をいたしてまいりたいと思います。
  98. 永井勝次郎

    ○永井委員 その不利の補正なり企業間格差の是正というものを具体的にどういうふうにおやりになるのですか、私はこれをお聞きしたいのであります。池田総理は、委員会において、これからの中小企業対策は、保護政策はもうやらないのだ、金融ベースに乗るものを対象にしてやるのだ、こういうふうに言っておるのですよ。金融ベースに乗らないものは切り捨てていくのだ、金融ベースに乗るものを育てていくのだ、こう言っておるのですよ。でありますから、その具体的な——これはほんとうのことを言っておるのだと思うのです。弱いものは足手まといだからどんどん切り捨てていくのだ、力のあるものはこれは育てていくのだ。それが証拠には、たとえば政府の行なっておる近代化資金の運用にいたしましても、これは中小企業の上層部の力のあるもののところに土を盛ってやる、下のほうには全然恩恵はいっておりません。こういうふうに、この不利の是正を通産大臣は大いにやるんだ、こうおっしゃるのだが、具体的にどういうふうにやるのです。総理大臣は、もう金融ベースに乗らぬものは対象にしないのだ、こう言っておるのですから、私はおのずから今後の政府の中小企業対策というものの基準は適正規模、膨大な中小企業の中に適正規模基準というものを置いて、その適正規模基準以上のものは対象にしていくが、その下は削り取っていくのだ、こういうことになるだろうと思うのです。中小企業全般を含めて、これから企業格差をなくしていくのだという具体的な政策は、一体具体的にどういうことをおやりになるのですか。
  99. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、総理がそういう意味のことを発言されたことは聞いておりませんが、しかし、もしそういうことを言われたとしても、全然そのほかのことをやらないという意味ではないと思っております。金融ベースに乗るかどうかということは、それがいわゆる事業として経営していって、また社会の必要性に応じてそれが必要であるかどうかという点が一つの基準になってくる。必要であれば必ずそれは成立する産業になってくるわけであります。伸びていく産業になるわけなんです。私は、そういう場合において、いわゆる零細な企業、あるいはそういうようないわゆる変わっていかなければならないような企業に対しても、十分な配慮をいたしていくということは必要であると考えておるのでございまして、総理がどういう御発言があったか知りませんが、私といたしましては、そういうような場合においても、ベースに乗ろうが——乗る場合はもちろんこれは問題ないでありましょう。しかし、乗らないものがたとえば転業するとかいった場合、あるいは零細なものであって、これがなかなかそういう生産性の向上等もできないというようなものについても、今後はひとつあたたかい配慮をしていくということが必要であろうと考えております。
  100. 永井勝次郎

    ○永井委員 これは速記録を持ってきてないからわからないのですが、総理が、明らかに金融ベースに乗るものを対象にする、これはしかし資本主義経済からいえば経済の原則じゃないですか。それとも社会政策的な政策をこれからどんどん適正規模以下のところにつぎ込んでいくというお考えですか。そういうお考えがあるとするならば私はひとつ伺いたいのですが、たとえば大きなファクターを持っておる金融の問題、これは都市銀行あるいは地方銀行含めて中小企業に対する貸し出しワクというものが年々減っていっています。ふえていくのではなくてどんどん減っていっています。昭和三十九年の三月が、都市銀行では中小企業向けの貸し出しが二〇・一%です。前は三〇%あるいは三五%前後あったものが二〇%前後に落ちているのです。地方銀行もそのとおりです。格差を是正するには金融が大きな役割りをしているのですが、この金融が中小企業のほうにもつとふくれていっているというならいいのですが、大臣がどうおっしゃろうと、金融の面では中小企業にしぼって大企業のところに集中融資が行なわれておる。それが大企業の設備投資、近代化の大きな原動力となり推進力となっておる。これは明らかなことなんですが、金融の面から一体そういうことができるのかどうか。通産大臣ばかりでなんですから、今度は大蔵大臣、ひとつこの企業問格差是正の方向としての金融政策というものを明確に示していただきたい。
  101. 田中角榮

    田中国務大臣 中小企業金融につきましては、一般金融機関に対しましての中小企業向け金融を手厚くするということと、もう一つは、御承知の中小企業三公庫の資金ワクをふやしていくということ、第三点には、各機関を通じまして調整の意味もありまして買いオペレーションの制度を財政資金でやっております。それから日本銀行が行なうオペレーション制度の中で、中小企業金融機関向けを大きくしょうというようなことを続けておるわけでございます。いま御指摘になりましたように、都市銀行は二五%程度であって、前年度よりも割っておるということでございます。私たちも特に都市銀行に対しましても、二五%を割らないというよりも、中小企業に対しての貸し出し量をふやすようにということを金融機関にも指導をいたしておるわけでございます。それから政府関係機関につきましては、今年度の第一・四半期につきましては対前年度比二九%、三〇%に近い資金ワクを増額する等、中小企業の金融対策に対しては格段と意を用いておるわけであります。
  102. 永井勝次郎

    ○永井委員 大蔵大臣に重ねて伺いますが、確かに政府三金融機関には資金がふえております。資金がふえたってこれはつめのあかほどですよ。格差を是正するための金融対策としての資金量では決してございません。もうおしるしだけの資金量のふえ方です。政府機関でふえただけは市中銀行でしぼってくるのですから、中小企業の側から借りられる資金量というものは、差し引き勘定したら減っています。政府は、政府機関でふやしているじゃないか、そのかわり市中金融機関でしぼられるのですから、トータルにおいては減っています。少なくも格差是正のための大きなファクターを占める金融の問題を是正の立場政策として取り上げるというなら、こんな資金量では問題になりません。ことに中小企業専門の信金その他は業務方法書によって支払い準備金を留保しなければならぬ。積み立てを置かなければならぬ。その積み立てた金はどういうふうに運用されるかといえば、コールに出して、そしてコールに出したものは大企業に使われてしまう。中小企業から集めた金のそのピンはねが大企業のところの資金量に回っていく、生命保険もそうであるし、火災保険もそうである。まあ、金融の問題の内容に入っていけばいろいろむずかしい問題がたくさんございますが、そういう状態になって、決して格差是正のなににはなっておりません。金融の面から格差是正が行なわれておるという数字的根拠がありますならば重ねて大臣からお示し願いたい。
  103. 田中角榮

    田中国務大臣 戦後中小企業専門金融機関の制度ができまして、御承知のように年々その資金量もふえておるわけであります。いま中小企業専門金融機関からのコールへの資金量等が非常に高いと言われておりましたけれども、私たちが調べましたところ、相互銀行では、昭和三十八年の二月末が八百六十二億、対預金比率が四・六%三十八年の三月で三・四%、三十九年の二月は三・六%、三十九年の三月で三%ということでございますから、三十八年に比べて三十九年の預金のふえた額がコールに大きく回っておるというような数字は出ておりません。信用金庫におきましても、三十八年の二月一三・五でありましたものが、三十九年二月は一二・一%、三十九年三月は一〇・三%、このように、コールに流れておるという声が非常に高いようでありますが、そのような数字は出ておらないわけであります。  この中小企業の問題は、大企業との格差是正——日本にある中小企業は数が非常に多くて、世界で例のない特殊なものでございます。これを一挙に格差是正を行なうということは非常にむずかしい問題でありますが、あなたが先ほど指摘せられましたように、自己資本比率を上げること、また設備の近代化を行なうこと、金融でもってめんどうを見ること、また税制上の配慮をすること等々、いろいろな施策を総合的に行なって初めて中小企業の近代化が進んでまいるわけでございます。中小企業基本法も制定せられた今日、政府もこの基本に沿って中小企業の育成強化に努力をいたしておるわけであります。
  104. 永井勝次郎

    ○永井委員 私は設備近代化の問題についてあらまし触れました。企業内格差の問題について金融の問題に触れました。そのほか税金の問題もあります。労務の問題もあります。技術の問題もあります。いろいろありますが、時間がございませんからこれらの問題には触れる余裕がございません。  しかし、国際競争力の強化だ、こういうことで大企業重点にいままで高度成長政策をやってきた。そうしてその点は相当に強化されました。そうしてその大企業が操短をしないでフルに活動していくためには今後これは大へんなことだと私は思うのです。そこで、いま日本の国内にはどういうことが起こっているかといえば、先ほど来通産大臣や大蔵大臣が言われたように、中小企業に力を入れる入れるというけれども、その入れるのは適正規模以上なんです。それは大企業が国際競争力を強化していくためには力のある下請企業が必要です。また若年労働が少なくなっている今日、この労務の手当てを強化することも必要です。でありますから、政府のいまやっている中小企業対策というのは、大企業から見た中小企業のあり方のワク内で動いているのじゃないか。結局は大企業にとって都合のいい下請企業をつくることだ、賃金労働者をつくり出すことなんです。これが政府の中小企業対策として行なった政策の成果として実を結ぶのは結局はここなんだ、ここに落ちつくのだ。決して中小企業全体の振興などと、そんなものとはおよそ違ったものである。それが証拠には、工業関係だって下請関係はどうですか、中小企業の七〇%は大企業の下請なんですよ。しかもそのうちの有力なものが大企業なんです。ですから、ここを近代化せよ近代化せよといって、そして近代化していく。生産を上げるときには、この大企業をフルに使います。経済界が詰まってくれば、このしわ寄せばこの下請に向けます。そこで選別、整理をやる、系列を強化していく。力の弱いものは系列外に除外していく。こういうことでいま整理を行なっている。そういう整理の過程でできているのが今日のこの倒産じゃないのですか、倒産の実態じゃないのですか。これは宮澤長官にお伺いいたします。  宮澤長官は、第一ラウンドは終わった、第二ラウンドにこれから入るのだ、アフターケアとして農業、中小企業に重点を置くのだ、大企業重点で第一ランドはやったのだ、こういうふうに言われておるのですが、大企業と中小企業のこの関係をどういうふうに把握されておるのか。そして、現在起こっているこの中小企業の倒産というのは、私が先ほど来お尋ねしてきましたように、構造的な変革の過程なんだ、だからこれは少しぐらいの金を流したって何だって、どんどんこれから倒産がふえていきますよ。そして個人企業をやっている零細なものはどんどんやめさせられて、黄金労働者になっていく。有力なものは、みんな系列化されていく。そうして独占企業の親柱がぬくぬくと太っていく。こういう池田内閣の高度経済成長政策の成果が、ようやく三十五年から出発して実を結びつつあるのだ。その実を結ぶに従って中小企業は倒産していくのだ、弱いものは倒産して、淘汰されていくのだ、こういうことだと思うのですが、官津企画庁長官は、第二ラウンドあるいはアフターケアと言った趣旨はどこにあるのか、この際伺っておきたいと思います。
  105. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほどから承っておりましたが、幾つかの現象を一般的な理論化をなさりますその度合いが、多少事実を離れておるところがあるのではないか。言われまして幾つかの点は、事実のところがございます。たとえば中小企業の生産性と大企業の生産性の格差は、決して縮まっていないのではないか、それはそのとおりであります。今日までのところ、そのとおりでございますが、しかしそれならば中小企業の生産性が下がっているのかといえば、これはもう申すまでもない、中小企業の生産性そのものは数年の間に二倍ぐらいにはなっているわけであります。ただ大企業の生産性の上がりのほうがはるかに大きゅうございましたから、その間の格差が大きくなっている。また金融機関の中小企業向け貸し出しの比率は、年とともに上がらないで低下しておるのではないか、ここ二、三年の間を見ますと、確かにそれはそうであります。しかし、それがあたかも中小企業向けの金融量が減っておるというようにおっしゃいますと、それはもとよりそうではないのでありまして、大銀行、市中銀行の中小企業に対する金融も、この二年ぐらいの間に数千億は少なくともふえておるわけであります。ですから格差の問題をそういうふうにしてとらえられますことは、すなわち大企業の設備投資なり土産性の向上というものが予想以上に大きくて、中小企業も向上はしておるけれども、それに必ずしもついて行ってはいないのではないかとおっしゃる限りにおいて、それはそのとおりである、先ほどから通産大臣、大蔵大臣の言っておられる意味もそういうことだと私は思うのであります。それだけのことから、最終的に、これで中小企業が独占資本に奉仕するところの基盤を政府は意図してつくりつつあるのだとおっしゃいますと、それには私どももとより異議があるわけであります。と申しますのは、私どもが第二ラウンドということを考えておりますのは、大企業の設備投資がほぼ——ほぼと申し上げておきますが、一巡しかかっておる、そういうときに、いまこそ中小企業が設備を更新して生産性を上げる。それを国の経済としてなし得る時期であるし、またなさなければならない時期である、こういうことを申しております。そういうふうになりました場合に、中小企業のかなりのものは従来の親企業との関係からその系列に入ることがもちろんあると思います。また入りつつあると思います。しかし他方で、中小企業の中で、たとえば中小企業庁がしきりに進めておりますような企業の協業化、集団化、団地化といったようなものは、むしろ特殊技能を持った中小企業を一丸にして、そうして有利な取引条件を与えて、親企業あるいは大企業の制圧を受けないように、むしろ特殊技能を中小企業として生かさせよう、そういう方向に一部は向いておるわけでありますから、全部が全部何もその独占資本に奉仕するためにその系列に入っていくというわけではない。そういうふうに大企業との系列に入っていくものもございますし、特殊技能を生かして、中小企業でなければできないような、大企業を相手取ってどことも取引をしよう、そういうふうに進んでおるものもある、そういうふうに考えております。
  106. 永井勝次郎

    ○永井委員 私も何も中小企業の一〇〇%が系列に入るというのではなくて、大企業だって手をつけない分野がたくさんあります。そこでは中小企業が割合に安定した経営をしております。しかしそれもいつまで安定した経営ができるかわからないという状況で、全体としては七〇%が系列に入っておる。これは依存度が二〇%程度のものもあります。一〇%の程度もありますが、多かれ少なかれ大企業に依存して経営を立てているというものが七〇%以上だ、これからふえていくだろう、こう思う。  そこで私は通産大臣にお尋ねいたしますが、通産省では中堅企業というのを育てていると思うのです。それは近代化のねらいは中堅企業だ、こういうふうに思うのです。しかし中堅企業に育てられて、そうしてそこから今度、いかにもソニーとかあるいは本田技研とか、こういうところをああいうふうに大企業に育つのだ育つのだ、こう中小企業に幻想を抱かせている。その幻想に酔っぱらっていくと、その途中でみなふるいにかかって倒れてしまうということであります。成り上がるものは少ない、落ち込むものが多いのだ、その中堅企業に対する考え方はどうなのか。  それから、政府は盛んに整理合併を慫慂しあるいは転換をいろいろ誘導しております。指導と称して、あるいは相談と称して、いろいろやっていますが、整理合併、転換、こういう政策は何を基準にしてこういうふうに進めているのか。私は、そこには適正規模というものがあるのではないか、適正規模を一体どういうところに置いているのか。これは私が重ねて言うまでもなく、こういう形を通した有力な下請企業をつくり出しているのだ、それから零細なものはどんどんやめさせて、そうして大企業のところに、賃金労働者として雇用のほうへ回す、転換させるように指導しているのだ、こういうふうに思うのですが、事実はいかがですか。
  107. 福田一

    福田(一)国務大臣 先ほど来の永井さんのお話で、いろいろ統計のことが出ましたので、ひとつこの際、中小企業問題をわれわれが見ていきます場合において、特に注意をしなければならない点があろうかと思うのであります。それは何かといいますと、中小企業というのは一定の資本金あるいは一定の従業員というようなものを基準にして中小企業というのをやっております。ところが、これは年がたつに従いまして相違が出てきておるのでありまして、ただいまソニーとかあるいは本田技研ということをおあげになりましたが、これらは優等生のうちでも優等生であります。大体そういうのでなくても、たとえばいま資本金五千万円というけれども、資本金二、三億というようなのは、昔はやはり千万円か千五百万円でできたのが、いろんな事情で一億、二億というものでほとんど同じくらいの社会的な仕事をしておるというようなものが相当ございます。そういうものはもう中小企業に入らない。かなりよくなっていきますと、中小企業から抜け出してしまう。そうして実はあまりよくならないようなものだけの統計というものが、いわゆる中小企業というものをとる場合、いわゆる中小企業の定義のしかたによってそういう数字がいつも出てくるわけであります。でありますから、銀行の貸し出しの問題にいたしましても、あるいはその他のいわゆる設備の問題にいたしましても、そういうことがございまして、一般のものとはその意味で若干違ってくる。七千万円か一億にも資本金がなってしまうと、どちらでもいいということにはなっていますが、かなりそういうような面もあるということは、ひとつ御認識を賜わりたいと思うのであります。  そこで私たちは、そういうような適正規模というものを確かに考えながら、いわゆる合併とか協業とかいうようなことをいたしております。それはどういうことであるのか、それは私はみんな業種によってそれぞれ違うと思います。いわゆる大企業に連なっておりまするところのものでございますれば、その企業自体から見ていわゆる下請関係でありますれば、ここに一定の適正規模というものがまた出てくるわけであります。しかも連なり方によって、これも違うわけであります。一方そういうことに関係のないものにおいては、これはまたある程度合併とかあるいはまた協業とかいうようなことが必要になってくるわけでありまして、私は前々から申し上げておりますように、その業種業種に応じた適正規模というものを考えながら、これが十分に生産性が向上され、そしてまた収益をあげ得るような方法を講じておるわけであります。
  108. 永井勝次郎

    ○永井委員 金融の関係については、同僚の加藤清二君から、歩積み・両建てについて質問をいたす予定になっております。その時間をさかなければなりません。また物価の問題に触れなければなりませんので、中小企業の問題は、もっと、構造的に中小企業がどういうふうに変革されつつあるか、そうして池田内閣の高度成長政策が修正されない限り、この倒産は、金融緩和くらいではとてもこれは及ばないんだ、こういう点をいろいろな点から私は立証したい、こう思っていたのでありますが、十分にその時間がないことが残念であります。しかし、人間のからだも、熱が出るときには病気があるぞということの予報であります。経済政策の中で予期しない事態がいま出ておる。それも毎月記録を更新するというような倒産の激増が起きてきている、こういうことは私は強弁してこれをごまかさないで、高度経済成長政策一つの矛盾の露呈だ、矛盾が熱を出してきたんだ、こういうふうに反省して、倒産していく、また倒産するまでにどのような苦しい戦いをしているかという中小企業の方々の苦しみに共感して、私はこの問題をぜひまじめにやっていただきたい。われわれは野党だ、与党だというために政策を左右するのではなくて、いま中小企業が、池田内閣の高度成長政策、大企業だけを中心にした政策の中でどんどん踏みつけられていっているこの事実を、私は理論的にも実際的にもこれを正確に立証して、そして政策の転換を要求しなければならぬ、こう考えておるわけであります。しかし、本日は時間がありませんので、金融の面については後刻加藤君からいろいろ御質問があると思います。  そこで、物価の問題についてお尋ねをいたしたいわけでありますが、物価は池田さんは一、二年の間に安定させる、こう言っているのですが、一向に安定しそうでない。どんどん上がる趨勢にあります。  そこで、国鉄総裁にお尋ねをいたしたいのでありますが、国鉄総裁は国有鉄道の経営の分析について率直にいろいろお話しをなさる、私はその点において敬服をしておるわけであります。運賃値上げについて総裁は発言をなさっておるようであります。旅客運賃、通勤通学の運賃が、現在のような割引をしたり、あるいは貨物運賃が重要物資の割引をしたり、赤字路線がどんどん一般の経営の中でまかなっていけるものでもありませんし、膨大な借金をしょっている国鉄として、私はその利子の支払いだけでもたいへんだ、こう思うのです。ただ、経営を安定するためにその金をだれが負担するかということについては、いろいろ問題であろうと思うのですが、国鉄総裁から、この運賃値上げをどういうふうにしておやりになる計画なのか、その施策をひとつこの際承っておきたいと思います。
  109. 石田礼助

    石田説明員 お答えいたします。  実はこの問題は、ただいま国鉄基本問題懇談会においてこれから討議しようということなんでありますので、私がここにお答え申し上げるのは、全く私の私見だということにどうぞ御了承願いたい。最後の決定は懇談会でやるのであります。  私の私見から申しますれば、御承知のとおり国鉄がいま直面しておる問題は、過密ダイヤの問題、それから輸送力不足の問題、それから輸送の安全の問題、多々あるのでありまするが、これを一体どうしてやるか。私は方法はまず二つある。第一は借金をしてやることだ。第二は自己資金をふやしてやることだ。もちろんこの間において、国鉄の経費をとことんまで切り詰めて合理化をするということでありまするが、国鉄の借金は、御承知のとおり三十八年度においてすでに七千億である。三十九年度において約八千億。もしも借金にたよってやるということになるならば、その利息の負担に追われて、国鉄というものは独立採算というものの維持ができぬ。それではどうするか。自己収入をふやす以外に私は道はないと思う。自己収入をふやすにはそれではどうするかということになれば、主として運賃の収入をふやすということと、公共負担の是正をしていただくということが二つの大きなファクターだと考えております。そこで、運賃の値上げということはだれもお好みになることではない。しかし、少なくとも旅客運賃の値上げということについては、これは私は値上げじゃないと思う。是正だと思う。ということは、今日まで国会政策として、国鉄の旅客運賃というものに対しては押えに押えてきた。その結果はどういうことになっているのかというと、一般の物価というものは、昭和十一年に比べて三百三十倍にもなっておるにもかかわらず、旅客運賃に関する限りは、わずかに百六十倍である。こんなに安い運賃は私は世界にないと思う。それから私は、運賃をつまり値上げというんじゃなくて、あまり低く過ぎるやつを上げる、いわゆる是正だということだと考えておるのであります。ただ貨物運賃に関する限りは、国鉄が独占性を失いつつある今日、ことにトラックの競争のために、へたに上げるというと、これは運賃の増収にならないで、運賃の減収になる。そこにわれわれは大いに警戒しなければならぬ。  そこで、やはり収入をふやす一番大きな問題は、旅客運賃の値上げということと、そして公共負担の是正ということにあるのじゃないかということに考えております。
  110. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 永井君に申し上げます。あと加藤清二君に関連しての質問を許すとすれば、そろそろ時間ができておるのですが、そうすると、加藤君の質問がなくてもいいという結論になりますか。時間はひとつ約束どおりにしてもらわないと一あなたの質問はもうそれでいいでしょう。
  111. 永井勝次郎

    ○永井委員 最後に一点……。
  112. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 じゃ、一分間許します。
  113. 永井勝次郎

    ○永井委員 実は物価の問題について、農林大臣には生鮮食料品の問題、自治大臣には公共料金抑制の問題、厚生大臣については医療費の値上げの問題、公取委員長については管理価格に対する調査問題等いろいろございましたが、いま予算委員長から一分間の発言だ、こういう強いなにがありますし、同僚の加藤君の質問の時間に食い込んでもどうかと思いますので、ひとつこれらの点について簡単でもいいですが、物価値上げを抑制するという立場において、それぞれの大臣からいま言った問題について、簡単に方針だけお示しを願いたいと思います。
  114. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 生鮮食料品等につきましては、三十八年の十月ごろまで上がってきております。その後物によっては下がってきておるものもあります。私どもといたしましては、昨年度閣議で生鮮食料品その他物価の安定策を講じました。それにのっとりまして、きめこまかに対策を講じていきたい、こう考えております。
  115. 小林武治

    ○小林国務大臣 医療費の問題につきましては、先般総理大臣から、この席上で中央社会保険医療協議会の答申を尊重したい、こういうお答えがあったのでありますが、先般これらについての若干値上げをすべきである、こういう答申がありましたので、私もその趣旨を閣議に報告するとともに、その趣旨に沿うような数字的検討と申しますか、具体的検討を、厚生省、大蔵省、また経済企画庁、こういうところで具体的な検討をするように指示をしておりまして、いまその作業が続けられておる、こういう状態であります。
  116. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 公営企業の料金のことについてのお尋ねと思いますが、御案内のとおりに、去年の十二月以降のものにつきましては、特別の措置をとりましたが、大体いまの公営企業、特に交通関係が、現在のような状況のもとでは、どんな優秀な企業家がかりに経営いたしましても、収支償うとは考えられません。そこで、おそまきではありまするけれども、これを根本から検討いたしまして、そして、そのあり方等を中心として将来とも健全な経営にいたしますために、公営企業調査会をいま発足させようと皆さんに法案の審議を願っております。これによって累積赤字も分析いたしまして、この解消もいろいろな方途で講ずるとか、また将来に向かって赤字が出るのが当然だなどということでなくして、もっと合理的な方法を至急に検討いたしたい、かように考えております。
  117. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 永井勝次郎君の質疑関連いたしまして、加藤清二君より質疑の申し出があります。これを許します。  加藤清二君。
  118. 加藤清二

    加藤(清)委員 委員長のお許しを得ました貴重な時間でございまするので、質問は簡にして要を得ます。ずばりずばりと聞きます。したがって、答弁のほうも簡にして潔、やるかやらぬかお答え願いたいのでございます。  第一番、中小企業の倒産は戦後最高でございます。不渡り手形の発行も戦後最高でございます。これに対する対策について特にお尋ねいたしまするが、この際、財政投融資の計画の変更ないしは政府金融機関のワクの拡大、または徴税期間の延長、猶予等々について、どのように対策を講じていらっしゃいまするか。特に、六月危機説の叫ばれておりまする最中、大蔵大臣の決意を承りたい。
  119. 田中角榮

    田中国務大臣 中小関係一三機関につきましては、御承知のとおり、三十九年度第一・四半期前年対比二九%増しの資金を出しておりますが、第二・四半期七−九月に対しましても、しかるべく必要量だけ資金を確保しようという考えでございます。十二月から買いオペレーションによる資金は、御承知のとおり五百五十億になっておりますが、これに加えて六月二百億の買いオペを追加をいたしまして、計七百五十億にしたいということでございます。  それから市中金融機関につきましても、中小企業に対しては、金融の引き締めということによって黒字倒産等を起こさないように、万全の処置をやっております。  それから、税制の問題につきましては、御承知のとおり通則法等の規定によりまして延伸、延納、その他具体的にできる限りの処置をいたしております。
  120. 加藤清二

    加藤(清)委員 中小企業に対する資金量のワクの拡大、これは黒字倒産を避ける最も緊急なカンフル注射と思います。したがって、金融量をふやすということですが、それは買いオペだけでございましょうか。ほかに何かございましたら、理論でなくて、やるものを言ってください。
  121. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほど申し上げたわけでございますが、買いオペレーションをやります。それから日銀からの買いオペレーションにつきましても、中小企業向けにいくように率をふやしたい。それから三機関の資金も繰り上げて第一・四半期に使っておりますので、これらの問題も必要量をよく見まして確保いたしたい。なお、市中金融機関につきましても、中小企業の六、七月の資金に対しては、格段の措置をするように要請をいたしております。
  122. 加藤清二

    加藤(清)委員 金額の予定を承りたい。
  123. 田中角榮

    田中国務大臣 金額は、そのときになって必要だと思うだけ処置いたします。
  124. 加藤清二

    加藤(清)委員 必要なだけとおっしゃるのは、倒産を避けるに必要なだけと解釈してよろしゅうございますか。
  125. 田中角榮

    田中国務大臣 倒産を避けるだけというのではなく、常識的に見まして、前向きで積極的に資金量を確保してまいりたい、こういうことでございます。
  126. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは、する覚悟があるならば、数量金額の御予定もおありと存じまするので、あらかじめ前向きの姿勢という数字の内容を承りたい。
  127. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほども申し上げましたように、買いオペレーションは二百億、市中金融機関のものは、いま行政指導をやったり要請をいたしております。三機関の資金ワクにつきましては、増ワクをしなければならないという方向と意思を申し上げたのでありまして、時の情勢に対処してやります、こう申し上げたわけであります。
  128. 加藤清二

    加藤(清)委員 資金量の増ワクについて、池田総理は他の委員会において、三公庫に公債発行をさせる、そうして補えばだいじょうぶであるという旨を述べておりまするが、これに対して大蔵大臣のお考えを承りたい。
  129. 田中角榮

    田中国務大臣 三十九年の予算編成のときに、中小企業金融機関に債券を発行せしめたいという話はございました。その問題等々も話をしまして、最終段階において百億のワクをつくったわけでございます。これを大幅に増すということになりますと、商工中金との問題がございまして、なかなかそのようにもいかないようでありますが、これら三機関の将来の問題に対しては検討をいたします。
  130. 加藤清二

    加藤(清)委員 池田総理の答弁は、すでに行なわれておる中小企業金融公庫百億が済んで以後の話なのです。済んで以後、今国会の各委員会においてまたそう答えられておるわけです。プラスアルファの話なのです。それについてはいかがですか。
  131. 田中角榮

    田中国務大臣 総理がどういうふうにお答えになったかわかりませんが、総理考え方は、中小三機関に対する姿勢でございます。その後も記者会見等でも言っておりますが、輸銀等も資金量を確保するために輸銀債を出せないかという検討を命じられております。しかし、出せば六分五厘で出せるわけはないので、一体その差額をどうしなければならぬかという問題もありますので、検討いたしております。同じような問題、すなわち中小企業金融公庫の債券ワクの拡大をはかるとすれば、商工中金債との問題がありますので、これらの問題をあわせて検討いたしております、こう申し上げておるわけであります。
  132. 加藤清二

    加藤(清)委員 では大蔵大臣としては、本年度中に三公庫に債券発行を百億以外プラスアルファをやる気があるのかないのか。
  133. 田中角榮

    田中国務大臣 検討いたしておる段階でございます。
  134. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは総理の答弁とは食い違いがある。総理は必ずやると言うておる。補完的意味においてこれを行なうと、商工委員会においても、大蔵委員会においても述べておる。食い違いがある。いずれがほんとうですか。
  135. 田中角榮

    田中国務大臣 総理大臣との食い違いがあるということではないと思います。私は総理の発言を聞いておりませんので、検討いたしておるだけでございますが、あなたがいまそういう発言でございますので、総理大臣の意向を聞いて、総理がやると発言をしておれば、やる方向で検討します。
  136. 加藤清二

    加藤(清)委員 それではこの問題は、あすにでもまた承わる、こういうことにして、次のほうへ移りまするが、あと二問でございます。  二問のうちの一問、民間金融についてお尋ねします。  民間金融は、歩積み・両建てが中小企業に対して非常な圧迫を与えているということは大臣もすでに何回か述べられておる。ところで、これを大臣は、めどを二割までとさきにお答えになっている。それを徹底的に行なうということも言うておられまするが、今日行なわれているところの銀行の歩積み・両建ては、はたしてあなたの御答弁になったような二割になっているのかなっていないのか。なっていないとするならば、一体それをどのように是正させようとしていらっしゃるのか。承るところ、見るところによると、大臣の肝っ玉はまことにけっこうでございまするが、事銀行に関する限りは、ちゅうちょ逡巡、さっぱりやってみえぬように思うが、一体いかがなものですか。
  137. 田中角榮

    田中国務大臣 ちゅうちょ逡巡はいたしておりません。おりませんから銀行合併論などを言っておるわけでございまして、非常に積極的であり、前向きであることは御承知のとおりでございます。  歩積み・両建ての解消という問題につきましては、かつて予算委員会でも間々申し上げましたが、積極的に取り組んでおります。日銀及び大蔵省で特別監査を行なっておりまして、その結果、相互銀行は非常に成績をあげておりますが、どうも都市銀行、地方銀行等に対しては、当初考えておったよりも実績があがっておらないというような面もありますので、鋭意いま歩積み・両建て解消の方向に向かって検査を行なっておるのでございまして、私は、この前申し上げたのに対しては、あのとき少し間違いがあったようであります。あの当時は、御承知のとおり相互銀行からは歩積み・両建て解消の具体策が大蔵大臣に流れておりましたし、それから各銀行もその当時作成中でございました。できるだけ二割ぐらいというような理想的な案を申し上げたわけでありまして、現在総貸し出しワクに対して二割というには及ばないのでございますが、二割になるように努力をいたしております。
  138. 加藤清二

    加藤(清)委員 前向きの姿勢はよくわかりますが、一向に実績があがっていないというこの事実を大臣はどう把握し、どう対処されようとしているのか。現在具体的事実を私どもが、借りている中小企業に尋ねてみますると、三割、四割はもうお茶づけ前であって、一般中小企業に対する金融の歩積み、両建ては七割から八割が平均になっておる。あなたのほうの調査は、この間三割とか二割と言うておられますが、あれは大企業の場合なんです。中小企業の実態を調べられたことはございますか。銀行局は三百人も動員して調べたと言うけれども、一体中小企業に当たられたことはありますか。銀行の窓口と、ゴルフ場と、夜の会合だけでどうして実態がつかめますか。
  139. 田中角榮

    田中国務大臣 銀行を検査しておるということは、御承知のとおり非常に積極的にやっております。ゴルフに夜というような話は、何を言われるのかよくわかりませんが、銀行検査官がきっとゴルフにでも行っておるのではないか、——そんな日程ではないようであります。日程は非常にきつい日程でありますので、ゴルフなどをしているひまはないだろう、こう考えます。  第三点は、借り主、借りておる中小企業を調べたらどうかというのですが、これは、いま借り主を調べる法的な権限を与えられておらないわけであります。銀行法にもあらゆるものから——借り主が自発的にお出しになるということであれば別でありますが、こちらから借り主を調べる、これはもう憲法上の大問題になるわけでありまして、そういうことはいま権限を与えられておりませんので、われわれは所管の法律に基づきまして、各金融機関から報告を求め、随時検査を行ない、びしびしとやろう、こういうことでありますので、三、四年前から比べて去年、去年よりもことし大いに大蔵省も日銀も努力しておることだけは、ひとつお認め願いたい。
  140. 加藤清二

    加藤(清)委員 中小企業の倒産は戦後最高である、不渡りが最高であるということは、もう各新聞が筆をそろえて発表しているところなんです。これについて、その原因の探求、実態の調査が法的根拠がないからできないなどというようなことは、これは言いのがれである。ほんとうに中小企業の倒産を救わなければならぬというならば直ちに発動してしかるべきである。  さて、そこで、通産大臣は中小企業庁をしてどう調べさしておるのか。経済企画庁は一体一千万円以下の倒産をどのように把握しているのか。公取はこれに対して、もはや限度がきている、特殊扱いにしなければならぬという空気が濃厚になっていると聞いているが、一体公取としてはどのような調査準備ないしは実行にそれを移しているのか、はっきりと承りたい。
  141. 福田一

    福田(一)国務大臣 中小企業庁としましては、現場の東京通産局その他の各通産局を通じまして実態の把握をするよう指令を出し、また各通産局は、各府県の経済部あるいは商工会議所等とも連絡をとりながら努力をいたしておりますが、いまあなたの仰せになったような十分な資料が集まっていないのは私は遺憾だと思っております。
  142. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 経済企画庁では、通産省及び大蔵省から調査の結果をもらいまして、その分析をいたしておりますけれども、自身で調査をいたすような権限は持っておりません。いたしておりません。
  143. 渡邊喜久造

    ○渡邊(喜)政府委員 公取といたしましては、過般中小企業を中心としまして二千三百通のアトランダムなアンケートをいたしました。それが現在取りまとめの過程にございまして、去る五月の十四日に中間集計の結果を、関係委員会の方に一応御報告しました。その後、また相当数が集まりまして、現在回収状況六百二十四通集まってきております。これをいま分析して、最終の結果報告をつくりまして、これを国会に近いうちに御提出申し上げようと思います。そうした片方の事実をもとにし、同時に大蔵省の検査などをその後伺っておりますが、まあ相互銀行等においては、だいぶ昨年の検査に比べて実績があがっているようですが、どうもその他の銀行においては、あまり改善の実がないように聞いております。そういうような事態が今後続くようであれば、われわれとしては当然特殊指定に踏み切らざるを得ないのではないか。現在といたしまして、私どものほうとしては、特殊指定をやるとすれば一体どういうかっこうでやるか。まあ銀行協会の自粛基準のようなものがありますが、だいぶあいまいな点も多うございますので、こうした調査と並行しながら、そういう方向の固めをいま一生懸命やっている状態であります。
  144. 加藤清二

    加藤(清)委員 これは重大な問題です。よく心得てもらいたい。倒産が目の前に続出して、戦後最高に行なわれているという事実、それを目の前にして、権限があるとかないとかで調査も行なっていないとするならば、これはまさに職務怠慢と言わざるを得ない。権限のあるなしの問題ではないのです。すでに先の予算委員会において、ともに姿勢を正すためにこれは前向きの姿勢で調査し、是正すると答えているではないか。あれ以来もう三カ月も四カ月もたっている。一体何をやっておったのです。そうなれば、公取が今後本件を特殊指定にすると言うても、調査してないほうの通産省や経企庁は発言の権限を喪失したと言わなければならぬが、それでもよろしゅうございますか。いわんや過去において銀行局長が、十一回にわたって通告を発しているはずだ。自粛決議は五回にわたって行なわれておる。にもかかわらず、歩積み・両建ては依然として増勢の一途をたどっておるではないか。なめられておるもはなはだしい。私がなめられておるのじゃないですよ。大蔵大臣、あなたが銀行になめられているのじゃないか。あなたは銀行になめられなければならぬような何ぞ悪い原因でも過去においてつくったのですか。あるいは選挙のときにおいてでも、何ぞあなたはやったのですか。やらなかったらもっと前向きにしたらどうです。あなたの権限でしょう。公取が特殊指定すると言ったら、それは銀行局の仕事だから、そっちへ持っていってくれては困る、こっちにしてくれと言うておるでしょう。それを言うておりながら、どうして調査の権限がないなんて逃げているのです。矛盾もはなはだしいじゃないですか。この仕事はおれのワクだ、銀行局のワクだ、公取へは渡さぬ、こう言いながら調査はしていない、そんなばかな言い分がどこにあるのです。はっきりしてもらいたい。
  145. 田中角榮

    田中国務大臣 どうも私の答弁をよく聞いておられないようでございますが、私はあなたの御質問に対して、的確にお答えをしておるわけであります。現在金融機関は、日銀及び大蔵省で特別に検査を行なっております。検査を行なった結果、考えたよりも相互銀行などは実があがっております。ただ、都市銀行に対しましては、われわれが当初所期したよりも実効があがっておりませんので、引き続き特別検査を行ない、是正をいたすように努力はいたします、こう言っておるわけです。それだけではなく、銀行などばかり検査しないで、借り主を検査したらどうかという質問でございますから、借り主に対しては検査を行なうというような権能を与えられておりませんので、検査はいたしておりません。いたしておりませんけれども、銀行協会、銀行連合会等で御承知のとおり苦情処理所といいますか、借り主からの苦情を受けつけて、これによって自粛をしようという態勢になっておるわけでありますので、こういうこと以外に借り主を調べて過当な歩積み・両建てを調査するという権能は与えられておりません、こういうことを申し上げたわけであります。
  146. 福田一

    福田(一)国務大臣 御案内のように、ただいま公取委員長からもございましたが、この抜き取り検査といいますか、二千三百の企業に対しましてどういう状態になっておるかということをいま発して、その状況をとっておるということと、いま一つは、各倒産等の起きましたような場合において、そういう事実があるかどうか、こういうようなことは事業者から聞いております。しかし、歩積み・両建ての内容を的確に把握するのは、私は何といっても銀行それ自体だと思うのであります。銀行がするのでなければ私は的確に把握することはできないと思う。三百何十万とあるような事業所全部についてこれを調査するというようなことは、これは困難でございます。したがいまして、通産省にも人数の問題もございます。局としても、やはりそれに当たり得る人の人数もあります。だからわれわれとしては、できるだけの調査はいたしておるのでありまして、決してなおざりにしておるのではありません。したがって、閣議においては、常に歩積み・両建ての問題はすみやかに解決してもらいたいということを、私は数次にわたって発言をいたしておるわけであります。
  147. 加藤清二

    加藤(清)委員 大蔵省が予算委員会の討議の結果、この問題について調査に踏み切ったということは聞いております。しからば、通産省はいま調査しておるとおっしゃいまするが、調査したならば、その答えをここで発表してもらいたい。  次に、経企庁は調査する権限がないとかどうとか言うておるが、もしそうとするならば、今後公取のほうでこれを特殊指定にすると申し出たときに、あなたのほうは発言権を喪失したと一緒でございまするが、それでよろしゅうございますか。はっきり答弁してもらいたい。ただ反対だけじゃいかぬ。
  148. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、歩積み・両建ての問題は非常に重要だと思いますが、しかし行政というものは、それぞれその所管する面において相互に補完し合いながら行政の実をあげるべきものだと思うのであります。通産省としてやるべきことは私はやっておる。それは私ども申し上げたように、公取と連絡いたしまして、そうして二千三百の事業所に対して、いかなる事情にあるかということを調査いたしておるということを申し上げておる。公取だけではできない。われわれのほうが協力しながら、中小企業庁が連絡をいたしましてこれをやっておるわけであります。それで、その結果がいまある程度集まってきておりますから、公取のほうでこれを発表されると、こう申し上げておるのでありまして、われわれは、やはりちゃんと自分の任務においては仕事をいたしておるつもりであります。
  149. 加藤清二

    加藤(清)委員 では、その点について調査の結果の資料をすみやかに提出していただきたい。そのように委員長から申し伝えてもらいたい。そうでないと、大蔵省が銀行からなめられておるだけでなくして、本委員会、予算委員会が討議し、池田総理も大蔵大臣も答弁したことが実行に移されていないということになれば、本委員会までが銀行になめられたということになる。黙って承服することはできない。
  150. 福田一

    福田(一)国務大臣 その資料は、これは順次集まっておりますから、二千三百のものをどこで一応まとめるかということは問題でありますが、現在の形において集まっている分について資料を出せというのでございますれば、提出をいたしたいと存じます。
  151. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この問題は、わが国経済ばかりでなく、社会問題としても大切な問題でございますから、私は非常に重大な関心を持っております。しかし、さればといって具体的な調査を経企庁に個々にやれとおっしゃることは、これはおそらく御質問者自身が多少無理なことをおっしゃっていらっしゃるということは、御存じで言っていらっしゃると思います。なお、この問題について、事態が放置されて解決の見通しがないというようなときには、私は発言をいたします。
  152. 加藤清二

    加藤(清)委員 発言とはどういうことでございましょうか、重ねてお尋ねいたします。要は、過去において銀行局長が十一回にわたって注意をしておるのです。十一回にわたって注意を喚起した。ところがそれに相呼応して、銀行は五回にわたって自粛決議をし、それを大蔵大臣に答申をし、各銀行の支店にまでこれを普及徹底させている。今回もそれをやった。しかしそれは看板だけであって、具体的事実は歩積み・両建てということばを使わずに、逆に必要資金であるとかあるいは希望預金であるとか、名前を変えさせて、六割も七割もやらしておるのです。私どものように手足がなくても調査することができる。いわんやあなたのところでその気があったら、大勢の職員がいるではございませんか、大蔵省は臨時に三百人も動員していま調査に臨んでおるという、やれぬはずがない。やれぬのは組織がやれぬのでなしに、あなたにやる気がないからなんだ。
  153. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、その質問に答えをしろとおっしゃってもちょっと無理でございます。私が持っております関心の程度は、これは抽象的に申し上げてもしようがないことでありますが、この問題については深い関心を持っておるということだけを申し上げておきます。
  154. 加藤清二

    加藤(清)委員 そこで私は、通産省も前向きの姿勢で調べると言う。経企庁もその気はあると言う。公取のほうはもちろん特殊指定にしたいと言う。大蔵省も三百人有余を動員して調査したが、なお足りないから今後前向きで調査する、そうして何がしの対策を練ると言う。まことにけっこうだ。しかくさようであるとするならば、至急今日現在でけっこうでございますから、その調査のデータ、特に統一見解としてのデータを出していただきたい、ここへ提出していただきたい。ただやった、やったでは困る。その時期はいつ……。
  155. 田中角榮

    田中国務大臣 これをただいま提出いたします。
  156. 加藤清二

    加藤(清)委員 これを、通産、経企あるいは公取は別として、統一見解として承ってよろしゅうございますか。
  157. 田中角榮

    田中国務大臣 加藤さんの言われることはわかるのですが、銀行は、御承知のとおり銀行法に基づいて大蔵大臣がいま検査をいたしておるわけでございます。でありますから、大蔵省の検査は内閣の検査でありますから、そのまま信憑性があるというよりも公文書でございますから、そういう意味でひとつ御理解いただきたい。
  158. 加藤清二

    加藤(清)委員 重ねて申し上げます。通産、経企、中小企業の実態調査、特に歩積み・両建て、これに関して調査を進めておる、しかも前向きで行ないたいと言うてみえるのですから、それならば本委員会としても協力せざるを得ないわけです。したがって、その調査資料なるものを今日現在、今日締め切りでけっこうでございますから、明朝までにひとつ、いまのこれは大蔵省——この間三百人でやった、この間新聞に出ておる、これは問題にならぬ。これはゴルフ場調査では承服できないということを言うておる。もっとはっきり言いましょうか、これをどういうところで調査されたか。私どもの中にも銀行、金融の関係には知り合いがよけいおる。どこでどう調査されたか、よう知っておる。これは承っておきましょう。委員長、時期を切っていただきたい。
  159. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 少々お待ちください。五分間休憩いたします。    午後三時六分休憩      ————◇—————    午後三時二十四分開議
  160. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  ただいまの加藤清二君よりの発言は時局柄きわめて重大な意義を持つものであると考えられます。よって、ここに委員長の手元において政府に要望をすることを取りまとめて発言をいたします。  中小企業倒産の現況にかんがみ、歩積み・両建ての解消は急を要する。よって、政府は、歩積み・両建ての完全解消について早急に調査の上、すみやかに行政上・法制上遺憾なきを期せられたい。  以上でございますが、これに対しまして、政府を代表して大蔵大臣より御決意を承りたいと存じます。
  161. 田中角榮

    田中国務大臣 ただいまの委員長の発言を体しまして、行政上遺憾なきを期したいと存じます。
  162. 加藤清二

    加藤(清)委員 中小企業の倒産が戦後最高である。これは中小企業が金融上三重の苦に責められているからなんです。第一は、政府の融資が少ない。第二は、銀行の歩積み・両建てが多過ぎる。第三は、親企業との関連において取引条件が非常に悪化の一途をたどっている。受け取りの場合も、支払いの場合も、決済条件がさらに悪化をしている。この問題でございます。  そこで、大蔵大臣にお尋ねいたしまするが、手形決済の場合に不良手形を発行したものに対しては刑罰に処すると、さきの委員会で述べられているのでございます。はたしてそれは完全に実施されているやいなや。不渡り手形は、きのうおとついの新聞によりましても御存じのとおり、戦後最高でございます。たいへんな数にのぼっております。一体何をとって不良となさるのか、すでに内容ははっきりいたしておりまするが、下請代金支払遅延等防止法、これには六十日と相なっているわけでございます。それ以上の長期化したものは不良ということなんです。法律に違反しているからでございます。一体大蔵大臣はこれについてどのように対処をされまするか。
  163. 田中角榮

    田中国務大臣 御承知のとおり、現在の手形法は、手形を出して不渡りになっても、これを罰するという規定はないわけであります。先進諸外国は、これらの問題に対しては、詐欺罪とかその他刑法上の責めを問うようになっていることも御承知のとおりであります。でありますので、現在の状況を見ましたときに、やはり手形法の改正を必要とするだろうという考えに立ちまして、いま法務省に検討をいただいておるわけでございます。この問題は法務省の所管でございますので、これから法務省、大蔵省、通産省等で十分実情に合うように検討をして、少なくとも、いままで融手を出したり手形を落とさなかったりしても何ら責任を問われないということは、私は、時代に即さないものではないか、こう考えます。しかも、あなたが先ほど言われた支払い遅延防止法の点は、六十日以上のものを出したものはいかぬというのではなくて、六十日以上に対しては利息を払わなければいかぬということになっているわけでありますから、これらの問題ではなく、あらかじめ落とすつもりがなくて融通手形を出したり、また、決済が全然できなくなったということに対しては、これはもう当然手形法の改正を必要とする、こういう考えであります。
  164. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 加藤君に申し上げますが……
  165. 加藤清二

    加藤(清)委員 結論にいたします。
  166. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 では、一分間許します。
  167. 加藤清二

    加藤(清)委員 支払い条件が非常に悪化しているということは事実でございます。ところが、その悪化しているところをキャッチすることが今日では困難でございます。なぜ困難かといえば、発行手形の発行日の記入が義務づけられていないという点でございます。したがいまして、いまお答えの、法律を改正なさるとおっしゃるならば、手形法を改正なさるとおっしゃるならば、それに必ず発行者の発行日の記入を義務づけられるよう、これがポイントであると存じます。これについての大臣の答弁を伺って、私の質問を終わります。
  168. 田中角榮

    田中国務大臣 手形法の改正の段階において当然検討せられる重要な問題でございますので、あわせて検討いたしたいと存じます。
  169. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 以上をもちまして、永井勝次郎君の質疑及び関連質問は終了いたしました。  次に、石田宥全君。   〔委員長退席、機内委員長代理着席〕
  170. 石田宥全

    石田(宥)委員 私は、農業災害の問題並びに食管制度の問題について御質問を申し上げたいと思うのであります。最近の農政が混迷を来たしておると言われておるのでありますが、その問題についてまず最初に明らかにいたしたいと思うのであります。  この点については、経済企画庁長官に伺いたいと思うのでありますが、池田内閣の施政の中で、農政というものの位置づけをどのように考えておられるのか。どうも、最近いろいろと議論になっておりますように、農政というものは所得政策でいくのか、社会政策でいくのか、あるいは食糧政策中心としていくのかということについて、一向にその方途が明らかでないじゃないか、こういう問題について経済企画庁長官の答弁を願いたいと思います。
  171. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 農業というものとその他の産業、たとえば工業というものを比較して考えますと、農業というのは、現実にわが国にある姿を考えますと、ただの業ではない。工業というのは、これは一つの生産活動であると思いますが、農業ということばで表現されるものは、ただそういう生産活動ばかりではなくて、むしろそれは生活の実体である、生活そのものであるという面が多いと思います。したがって、農業政策というものは、実はただの経済政策ではなくて、現実のわが国においては、人口の三割を占めるところの人々の国民としての、あるいは人間としてのあり方というものと切り離せない問題であると思います。それは、たまたま農家そのものが生産の単位でありながら生活の単位である、家庭柱場とが離れているというようなこととは違うという比喩的なことからでもおわかりいただけるようなことだと思います。したがって、農業政策というものは、ただ産業政策の問題ではなく、もちろん所得政策の問題でもありますし、広範な意味での社会政策の問題でもある、そういうふうに観念すべきものだと思います。
  172. 石田宥全

    石田(宥)委員 この農業というものは、業そのものではなくて生活そのものであるという、そういう前提に私も賛成です。だからこそ社会政策的な面をおろそかにしてはならないし、同時に、国の食糧政策というものをもまたおろそかにしてはならない問題であろうと思うのです。  私が先ほど指摘いたしましたように、政府の農業基本法では、これは所得格差を是正するということを第一条に規定しておる。生活を含んだところの農業そのものの所得を他産業従事者の所得に均衡させるということを法律は規定しておる。われわれが、そういうことはできないのではないか、いまの池田内閣の手ではできないのではないかということを指摘したけれども総理大臣をはじめ農林大臣等は、できるんだ、こうおっしゃった。一体、所得政策というものについて、農業基本法に明確に規定してあるのでありますけれども、これを一体どうお考えになるか。
  173. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 非常に正確には農林大臣にお尋ねをいただくことがしかるべきことかと思いますが、私のいままで見ておりますところでは、農業のうちである範囲のもの、たとえば俗に百万戸と言われておるわけでありますけれども、これらの農業は、将来それ自身が業としても生活としても成り立ち得る、そういう可能性を持っておる、農業基本法もそういうことを考えておるのではないかと思います。しかし、所得倍増計画が当初考えられましたころには、兼業農家というものはいつときの現象であって、やがてはその農地は大農業にどういう形でか合併をされ、そして農地を売った人々はその他の業に転換をするであろう、こういうふうに考えておったように思います。しかし、その考え方は、ただいままでの発展を見ておりますと、おそらく明らかに誤りでありまして、兼業農家というものは年とともにふえつつあって、決して減ってはおらないわけであります。現に七割五分くらいが兼業農家になっておって、しかもその農家所得の五〇%以上が実は非農業の所得であります。農業所得ではない。そういう状態が現在ございますが、しかも、そういう状態はなお今後とも続きそうに私は考えるわけでございます。一方では完全に自立的な業としても成り立ち得る農家というものは経済の発展段階のある時期から急速に育っていくものであろうかと思いますが、さりとて、その際にも、兼業農家というものはなお残るであろう、そう簡単には解消いたさないものと考えますので、私どもとしては、そういう専業農家を育成するという一つ政策を立てる一方、他方で、兼業農家というものが自然発生的にこうやって育っていくのでなく、さらにどういう施策をそれに対して積極的に考えるべきかということをもう一つ別個に考えなければならないのではないか、そういう感想を持っております。
  174. 石田宥全

    石田(宥)委員 そういたしますと、所得格差を是正するという考え方は間違いであったということを率直にお認めになるわけですね。
  175. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 農業所得、農家所得と分けました意味での農業所得が、その他の所得に対して急速に格差の是正が行なわれようとしておるかというと、どうもただいままでのところ残念ながらそうだというふうには考えられない。また、農業の生産性も他産業の生産性に対して依然として三割という壁を破れないというのが実情であると思います。
  176. 石田宥全

    石田(宥)委員 次に、社会政策的な面について伺いたいと思うのであります。  いまお話しになりましたように、農家の所得の中の五〇%以上が農業外収入によっているという事態を見ると、日本のいまの農業というものの姿が明らかになるわけですが、そこで、社会政策的な面では、私どもが本委員会において、昨年も一昨年もことしも、農家の出かせぎ、労働力の移動の問題についてこれを追及しておるわけです。ところが、政府は、農林省も、農村の労働力の移動についての実態を把握していない。また、労働省は都市その他における労働省としての出かせぎの実態を把握していない。私はこれは政府の怠慢だと思う。だから、これに対する対策を強く要請してまいっておりますが、何の対策もないままに、先般来東京では大正時代に行なわれたような監獄部屋の実態が新聞に明らかになった。続いてタコ部屋の実態が明らかになった。一体、これは、農業政策でもなく労働政策でもないとされて、どっちからも取り残されておる。この谷間におる出かせぎの実態というものが、昨晩NHKで十時十五分から現代の映像ということでその一部が発表された。この面については、厚生省の立場から、労働政策でもない、農業政策でもない、その政治の谷間の姿として厚生省が管轄しなければならないような事態になってあらわれたこの事実を、厚生大臣からひとつ御承知の範囲で承りたいと思います。
  177. 小林武治

    ○小林国務大臣 ただいまのお話でございますが、私ども厚生省におきましても、はなはだこれは相すまない話でありますが、いまのところ実態を把握いたしておりません。これは、お話によりまして私ども福祉事務所の問題としてこれからひとつ取り組んでみたい、かように考えております。いずれにしましても、農村と社会政策のお話がございましたが、私どもは、農村等においては所得が低いために減税の恩典にも浴しない、したがって、社会政策的にできるだけこれを見たい、こういう考え方で、御承知のように、国民健康保険、すなわち医療保障の面において特別な配意をいたしておるのでありまして、昨年から、農村等を主として対象として世帯主七割給付、こういうようなこともあえていたしましたし、また、今年からは、これは四カ年計画でございますが、家族まで七割給付にして、そして、所得の低い、減税等の恩典を受けない方々の医療保障を十分にしていきたい、こういうふうに考えておりますし、また、一方国民年金というものがいま実施されておりますが、これらの面においても、ほとんど対象者は農山漁村あるいは中小企業等でございますので、国民年金の給付額の増額というものを厚生年金の関係と対応して上げてまいりたい、すなわち、農村等を主として対象とした医療給付あるいは所得保障の面においてこれを進めてまいる。それから、ただいまの離職者あるいは都市に流出した農村の所帯主の問題につきましては、現在これらの問題が主として問題になっておりますが、これらの方につきまして、もし生活保護等の関係があれば、原因のいかんを問わず、調査の上で生活保護の対象にも取り扱っていきたい、かように考えておるものでございまして、いま申されました実態等はいかんながらまだ把握しておりませんが、今後の問題として取り組んでみたい、かように考えております。
  178. 石田宥全

    石田(宥)委員 出かせぎが半年から七、八カ月にも及ぶ。ところが、けがをした人も労災保険の適用もないものが多い。賃金の不払いも数限りなくある。そうして、七カ月も八カ月も夫のいない家庭を守っておる。非行少年が続出するのは当然じゃないですか。そこには社会的ないろいろな問題が出ておる。ところが、驚くべきことには、これは私どもが独自の立場でいま調査中でありますけれども、夕べのこの放送の中に出てきましたように、秋田県の仙北郡だけで、五月十日現在の農繁期にまだ帰ってこない人が四百五十何人かある。また、もっと驚くべきことには、ほんの一部分の調査だけれども、何年間も夫が行くえ不明だというものが、この調査の上に七十何人というものが浮かび上がってきている。これは、昭和の今日、農村における残酷物語ではないですか。一体、それに対して、農林省も知らない、労働省も知らない、厚生省も知らない、そんなことでいいのですか。これが日本の政治ですか。厚生大臣は、今日農家で、出かせぎその他によって生計を維持して、そうして生活保護を受けておる人たちが急激に多くなってきておるが、その数字を明らかにしなさい。
  179. 小林武治

    ○小林国務大臣 これは多少の調べをしておりますが、いま若干ずつ増加しておりますが、急激に増加しておるという数字はまだ出ておりません。それで、これらの問題、まあ世帯主の問題でありますから、国民健康保険にもすぐ関係してくるので、国民健康保険は世帯主なら七割、こういうことになっておりますが、従来の世帯主が欠けたという場合には、また別にこの世帯主の認定というようなこともあるということを、ひとつ御承知願いたいと思います。
  180. 石田宥全

    石田(宥)委員 いま調査中だということでありますが、いままでの調査の実態を明らかにしてください。
  181. 小林武治

    ○小林国務大臣 これはごく一部の調査でありますが、たとえば三十八年の三月、保護開始世帯二万三千中、世帯主の不在、死別等によるものが一千百、すなわちこれでは四・七%、こういうふうになっております。その次の六月が五・〇八%、次が九月で調べましたのが五・一一%、それから十二月が五・三二%と、若干ずつ増加しておることは事実でございます。
  182. 石田宥全

    石田(宥)委員 この問題については、私は厚生大臣だけを責めようとは思わないけれども、これは三年も前から予算委員会でいろいろの人たちが取り上げておるのです。私も二回取り上げておるのです。  農林大臣、この農政の混迷からこういう事態を生じておる。しかし、いまだにその実態も把握しておらないという。これは農林大臣がまず第一義的に責任を負わなければならない問題ではないでしょうか。
  183. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 農政の方針につきましては、私は混迷はしていないと思います。しかし、農政の実際の運営上といいますか、動き方においていろいろ問題が新たにできてきておるという事態は、私は認めるにやぶさかでないと思います。そこで、これに対して責任を負うかどうかということでございますが、もちろん、大きい意味におきましては、そういう混迷的なものがあるということについては、私どもも責任といいますか、心を用うるに足らない面があるということは感じています。
  184. 石田宥全

    石田(宥)委員 これは一面においては労働大臣の所管として重要な問題でありますが、きょうはその問題を特に追及しようと考えませんので、そこで、農政としての三本の柱の一つである食糧政策の問題。これは、人によっては農政というものは食糧政策中心でなければならないと言われておる。私も、日本の農政というものは国民の食糧の自給度を高めるというところに中心を置かなければならないのではないかと思う。ヨーロッパのある国などでは、食糧の自給度に一定のパーセンテージを示しておる。最近日本でもその声が強くなりまして、与党の中の一部の人たちもそういうことを言い始めておる。農業基本法の制定当時においては、私どもは極力食糧の自給度を高めるということを第一条の中に挿入すべきことを主張したけれども政府と自由民主党の諸君はついにこれをとらなかった。しかし、最近の食糧の国際情勢から見て、何としてもやはり国民の食糧自給度を高めるということを農政の中心としなければならないと考えられるのでありますが、農林大臣の御所見はどうでしょうか。
  185. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 九千万といいますか、一億の国民の食糧をまかなっていかなければならない農林政策といたしまして、食糧の供給源として自給度を増していくということは重大な農政の目標だと思います。ただ、御承知のように、就業人口の三割を農村人口が占めております。でありますから、食糧の生産を通じてやはり農民の所得が他産業と均衡を得られるように方向づけ、また、生活が農民としてやっていける、こういう向上を目ざしていくということも、当然農民の立場から考えなくちゃならぬ問題だと思います。しかし、それはあくまで食糧の生産に携わっているのであり、その食糧の生産というものは、全国民の重大関心事であり、生命線というようなものでもある、それを通じていまのような農民の立場というものをよくしていく、こう考えなくちゃならぬと思っております。
  186. 石田宥全

    石田(宥)委員 経済企画庁長官に伺いますが、最近外国食糧の依存度が非常に高まってまいりまして、飼料のごときは大幅にふえてまいりました。経済企画庁では、本年の二月、農産物の輸入がますます増大をして外貨事情に悪影響を来たしておるということを発表されておるようでありますが、ここ数年間の外国からの食糧の輸入状態、特にいま指摘いたしましたような飼料の輸入の状況、これをひとつお示しを願いたいと思います。
  187. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 具体的に飼料につきましての計数、ただいまだれか政府委員が持っておりますか、私統計があればすぐ申し上げますが、私どもは確かに食糧——昨年度の場合には小麦、砂糖等々の食糧の輸入が多かったことは、多少わが国の異常天候に影響されておりますけれども、そういうことに関係なく、トウモロコシを中心とする飼料の輸入が非常にふえております。三億ドル台をこえて四億ドル台に入ろうとしておるわけであります。しかも、それが国内における養鶏、大体一億九千万羽あまりの鶏がおりまして、年間に一千万羽以上ふえておるようでございますが、それを反映しておるように思います。この問題をどうかしなければ、相当の輸入量にもなりますし、また、しようによっては外貨の使用が少なくて済めるのではないかという問題を提起しておるわけでございます。
  188. 石田宥全

    石田(宥)委員 こまかな数字はあとでひとつ届けてもらうことにいたします。私は、このように濃厚飼料が半分以上も外国に依存するという状態のもとに、成長作目だと言われる畜産が国際競争にたえ得るかどうかという、この根本の問題について農林大臣の考えを聞きたいのであります。  御案内のように、ブロイラーのようなものをはじめといたしまして、あるいはアルゼンチンの馬肉のようなものがどんどん輸入されておる。そういたしますと、端的に言うと、素材で輸入をするか、製品で輸入するか。非常に高い船賃をかけて飼料を輸入してきてここで製品にする、そのほうが安くつくか、あるいはここでその製品を輸入するかということになりますと、飼料を輸入してきてここで育てるよりも、向こうで製品にしたものを冷凍で持ってきたほうが安くつく。そうすると、日本の畜産業というのは成り立たなくなるのではないか。この点については、農林大臣は成長作目としての畜産についてはどのようにお考えになっておるか。
  189. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 畜産、ことに酪農の国際競争力というものは、非常に日本では弱いのは御承知のとおりでございます。大体、何らかの保護政策といいますか、あるいはまた税上の問題を考慮しなければ、約半分くらいに近い弱さで、非常に弱い、こういうことでございます。でございますので、これに対しましてはいろいろな施策を講じていかなければやっていけません。ことに、自由化に対処していくということになりますと、非常に脆弱性を暴露するわけでございます。しかしながら、農業といたしましては、もちろん米麦、ことに米を中心として日本の農業は成り立っておりますけれども、やはり、農家の所得が常時的であるというようなことから言いまして、あるいはまた、畑地の農業というもの、あるいは山林等を活用するという意味におきまして、どうしても畜産というものはこれを伸ばしていくべき農業部門だ、こういうように考えます。その反面につきましての足らぬ面は、十分これを支持しながら伸ばしていく。こういう方針を進めていきたいと思います。
  190. 石田宥全

    石田(宥)委員 一般論はその程度にいたしたいと思いますが、政府の農業に対する施策というものは全く無為無策と言わざるを得ない。私は成長作物云々でこれは何年間か議論をしてまいりましたが、いまの日本の農政というものは、選択的縮小で、八方破れの、六百万農家総貧乏農政だと言って過言ではないと思う。一体これに対して言い分があったら聞きましょう。
  191. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 他産業との関係からいろいろ問題はいま含んでおります。しかし、御承知のように、所得の面につきましても、あるいはまた経営面積を広げるという面につきましても、二町五反という経営面積はなかなか所期の目的のとおりには多くなっておりませんけれども、一町五反程度のものはふえている。生産の点におきましても、あるいは所得の点におきましても、他産業と比較いたしますならばいささか落ちますけれども、しかし、お考えのようではなく、歴史的に見ましても、明治、大正、昭和を通じて農業そのものが相当進んできている、八方破れじゃなくて、農業そのものが、農家の生活も進んでいる、こういう事実は、これはだれが見ても認めざるを得ない問題だと思います。
  192. 石田宥全

    石田(宥)委員 そういう問題で議論するのはやめますが、これは考え方の問題で、農林省の内部でも、いまの農政は六百万農家総貧乏農政だと言う人がいるわけです。だから、これはひとつ心にとめておいて、今後の政策を考えていただきたい。  次に私は農業災害についてお伺いをするわけでありますが、農業というものは気象条件に左右されることが非常に大きいのでありまして、農業の災害に対しては、やはり再生産を確保するだけのてこ入れをやらなければいけないのではないか、こう思うのであります。そこで、まず初めに、ことしは何か太陽の黒点の最大限の年であるというようなことで、春から気象異変の状態でありまして、凍霜害が相当に起こりました。ところが、九州では暖冬異変で、さらに長雨で、かなり被害が起こっている。また、新潟を含めて、北陸、東北地方では、干ばつの被害が起こっておる。ごく最近の関東における凍霜害の被害は、まだ正確な数字はわからないかもしれませんけれども、大体いま私が指摘いたしました災害の状況をこれをお答え願いたいと思います。
  193. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 いま御指摘のように、東北、北関東、この方面においては、四月中の凍霜害の被害が非常に大きい状況でございます。この被害の状況も、被害の額も、大体調査いたして、固まりつつあります。それからまた、九州方面の暖冬のために、麦あるいはなたね、その他の作物、稲もちょと穂が出たというような問題がございますが、この被害も相当大きい被害でございます。このほうの額等を追って申し上げてみたいと思います。  それから干ばつ、新潟あるいは群馬その他、干ばつといいますか、まだ稲が植えつけ前でございますけれども、植えつけができない、こういう状況のところがございます。この方面におきましては、水を引くために揚水機等の手当てをいたしましたり、あるいはこの間雨がありましたので、この植えつけ不能面積は非常に減ってはきております。相当の部分は緩和されましたけれども、まだ全部植えつけができるというような状況ではございません。そういう状況で、各方面に災害が非常に累積しているといいますか、続出しているといいますか、そういう現状でございます。
  194. 石田宥全

    石田(宥)委員 大臣はその資料をお持ちなようなんですが、凍霜害の被害、それから長雨の被害並びに干害の被害、それから同時に利根川下流のかん水逆流の問題、これらを分けてひとつ御報告願いたいと思います。
  195. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 四月下旬の凍霜害の実績について、額で言いますと、いままで判明しているところでは約八十二億円の見込みであります。被害の大きかった県は、福島県約五十億円、山形県約二十一億円、宮城県約七億円であります。それから五月中旬の凍霜害がありますが、この被害見込み総額は、約五億九千万円であります。被害の多い作物は、桑約三億円、茶が約一億円、被害の大きい県は、長野県でございます。五月下旬の凍霜害、この被害状況については、目下統計調査部において調査中でありますが、統計調査事務所との電話連絡では、約十億円を越える見通しであります。被害の大きいのは、桑、野菜で、被害の大きい県は、長野県となっております。この対策は、あとで申し上げます。  長雨の被害でございますが、九州及び中国、四国地方における高温多雨、寡照による被害でございますが、これは、中間調査におきましては、約百五十億円になっております。麦類が約百五億円、なたねが約百二十億円、野菜、果樹等二十四億円でございます。  干ばつについて申し上げますが、東北、北陸を主として十八県にわたりましての干ばつ、用水不足のため植えつけ不能または遅延の状況を呈しておりますので、先ほど申しましたように、移動揚水ポンプの動員、上流ダムの放流を実施してまいったのであります。この被害面積は、五月三十日現在で五万一千町歩に減少はしてきております。初めは十二万六千町歩くらいになっておりましたが、減少はしてきておりますが、いまのところ被害の額はちょっと不明であります。  それから利根川下流部の異常渇水によりまして発生のおそれがあった塩害の点につきましては、上流の五十里ダムの放流及び二十八日の降雨によりまして、利根川流量の増加によりまして、いまのところ解消しておると見られております。  以上が、東北、九州方面、あるいは干ばつ地帯、利根川下流の被害の状況でございます。
  196. 石田宥全

    石田(宥)委員 この被害に対する対策を承りたい。
  197. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 東北方面の凍霜害等につきましては、すでに閣議におきましても、天災融資法を適用すること、これはまだ政令は出ませんけれども、決定をいたしております。それに伴いまして異常災害の適用をしたい、それからまた、いままでのようにそれに関連した一連の対策を講じたいと思っております。  それから九州の方面につきましても、これはいろいろ基礎数字等につきまして問題がありますけれども、私は、天災融資法の適用に持っていくべきだ、こういうことで財政当局ともいま折衝中でございます。  干ばつ地帯につきましては、まだ植えつけ前の手当てを想定いたしまして、面積はいま減っておるという状態でございますので、そういうような方策を講じておる。  それから利根川のほうは、いま申し上げましたように、大体損害が解消の程度にいっておりますので、そういうふうに御了承願いたいと思います。
  198. 石田宥全

    石田(宥)委員 かなりの額にのぼるようでありますが、天災融資法については——大体天災融資法と農災法というのは、きまり文句なんでありまして、当然なことでありますが、特に天災融資法の場合には、連年災害等の場合には、まことにこれは困るのです。こういうものについて、政府はことしから無利子の融資の道を開かれたようでありますが、再建のために無利子の融資ぐらいをやられなければ、なかなか再建が困難だと思われるのでありますが、そういう点について、大蔵省と折衝をされてはどうかと思うのでありますが、いま大蔵大臣が参りますから、大蔵大臣の意向も聞きたいと思いますけれども、農林大臣の意向を承っておきたいと思います。
  199. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 異常災害として三分五厘の融資の方法は、いま強力に折衝して、それを適用するようにやっております。あるいは自作農維持資金というような面も考えておりますが、無利子というようなことは、まだそこまで折衝はいたしておりません。ちょっと無理じゃないかと思います。
  200. 石田宥全

    石田(宥)委員 大蔵大臣が見えられましたが、いま農林大臣から答弁を伺ったのでありますが、今度の春以来の被害が相当な額にのぼるわけでありまして、異常災害としての低利融資というものは当然であろうと思うのでありますけれども、連年災害等で立つあたわざるような打撃を受けておるような地帯があるわけですね、そういうところに対しては、少なくとも無利子の融資くらいをされないと、なかなか再建困難だという農家が出ておるわけです。これに対しては、異常災害については農林省から要請をしておるそうでありますけれども、無利子融資について大蔵省でひとつ考えてもらわなければならないと思うのですが、どうでしょうか。
  201. 田中角榮

    田中国務大臣 無利子の問題については、農林大臣からの御要請がまだございません。
  202. 石田宥全

    石田(宥)委員 農林大臣はまだ交渉しておらないから、ここで大蔵大臣の考えを明らかにしてもらいたいということです。
  203. 田中角榮

    田中国務大臣 私も農村の者ですから、話はよくわかります。が、なかなか無利子ということになりますと、他にも影響がありますので、御要請がありましたらひとつ検討いたすということでございます。
  204. 石田宥全

    石田(宥)委員 ことしは農林省関係で四十五億ほどの無利子融資を出しておるんです。厳密に言うと、それはほんとうは農民のための無利子融資でないのです。これは機械屋の手先になって、大半が農村に機械を売りつける予算になっているのです。こういうものよりは、農民をして再建せしめるに役立つところの無利子融資を考えてやるべきではないかということなんです。まだ農林省からも要求がないということだけれども、やはり連年災害で非常な打撃を受けておるところに対しては、当然考慮さるべきではないか、こう思うのですが、どうですか。
  205. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、まだ農林省から具体案も示されておりませんし、あなたの言うこともわからなくはありません。連年災害ということで、立ち上がることも不可能だ、こういう話を前提にしておられることでございますが、具体問題はまだ農林省から聞いておりませんので、聞いてからよく検討いたします。
  206. 石田宥全

    石田(宥)委員 農林大臣にちょっと伺いますが、利根川下流の塩害ですね。昭和三十三年にたしか相当な被害を受けた。今回幸いにしてその後雨が降りまして、大した被害を見なかったわけでありますけれども、かん水、逆流防止の固定せきの工事は、いつごろ完成の見込みでありますか。
  207. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 塩害を防ぐためのダムの工事をいたしておりますが、その完成の見込みは、いま私覚えておりませんが、建設省でいま調査中だと言いますから、できるだけ早く進めていると思います。
  208. 石田宥全

    石田(宥)委員 次に、通産大臣に伺いたいのでありますが、実は新潟県の干ばつ被害は、新潟県だけで当初五万二千町歩ほど植えつけ不能の事態が起こった。これは信濃川流域でありまして、もちろん雪の降り方が少なかったということもありますけれども一つは河川の上流の開発にあるわけです。たとえば信濃川上流の千曲川に発電の工事が進められている。あるいは小千谷で国鉄の発電所の規模が拡大された。そういうことによって、地下水の状態が変わってくるわけです。また流量も変わる。一たんダムをつくると、それを利用したものはそっくり流すようだけれども、下流の水位は変わってくるわけです。河川管理上の問題もありますけれども、そういう点でことしの信濃川流域の五万二千町歩の植えつけ不能地ができたわけです。その後雨が降って若干好戴いたしましたけれども、そこで通産大臣に伺いたいのは、せっかく奥只見で六億数千万トンの水をたたえている大きなダムがあって、そこから信濃川上流に二・四メーターのトンネルでいわゆる只見川の分流をやることにきまって、その工事が半分ほど進んだんです。ところが、これは通産省の監督下に置かれる電発会社が、不経済だからということで、工事を半分やったけれども、やめてしまった。これは田中大蔵大臣が政調会長時代で、大蔵大臣もよく御存じなんでありますが、私は、この問題は信濃川流域のかんがい用水、工業用水等にやがて重大な影響を及ぼすであろうということで、反対をしておったわけですけれども、ついに半分やった工事をやめてしまった。私は、いまのような事態から見て、この只見の分流を完成すべきだと考えるのでありますが、通産省は、そういう見地に立って、この問題を再び提起して、六億数千万トンのダムから二・四メーターの水道による分流を再検討すべきであると考えますが、通産大臣意見を承りたい。
  209. 福田一

    福田(一)国務大臣 実はあの問題を解決しますときには、大蔵大臣もあなたも御関係になっておったことは、よく了承いたしております。そうして先般も黒又の第三発電所の途中でやめになっております問題について、工事促進をしてもらいたいというような要望もあり、大蔵大臣からも実は私に御要望もございました。したがって、ただいま電発においてどういうふうに処置するかということについて調査をいたさせております。  なお、この水の問題でございますが、只見川の水を黒又川へ分流するということを取りやめましたけれども、黒又川のダムの水を渇水時には放流することにいたしまして、ことしの五月にも実行いたしておることは、御承知だと存じます。
  210. 石田宥全

    石田(宥)委員 まあ再検討するというような意味の答弁なんだけれども、せっかくあのトンネル工事が半分くらいできているわけですから、ひとつそれをも含めて再検討するということをはっきり明らかにしてもらいたい。どうですか。
  211. 福田一

    福田(一)国務大臣 実は私その経緯をただいまここでお伺いしたわけでございますが、十分調査をいたしましてお答えをいたしたいと思います。
  212. 石田宥全

    石田(宥)委員 次に、農林大臣に食管制度の問題で伺いたいのでありますが、農林大臣は、米価の算定にあたってのスライド制にだいぶ御執心のようでありまして、就任の際の記者会見でも、どうも従来の生産費及び所得補償方式では、とかく政治米価になりがちなので、これはスライド制を検討したいということを言っておられる。春の予算委員会でも、予算の分科会でも、そういうことを言っておられたのでありますが、この間、五月十四日の日には、経済同友会のある会合で、米価はスライド制をとりたいということを言っておられる。さらに十九日には、閣議後の記者会見で、スライド制をとることにしたい、そうして、それはことしの夏の米価審議会に諮問したい、こういうことを述べておられるわけであります。きのうはまた、出先で同じようなことを述べておられるようでありますが、スライド制をおとりになるおつもりなのかどうか、明らかにしていただきたい。
  213. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 ただいまお話の中にありましたが、生産者の米価を生産費及び所得補償方式をやめてスライド制にするということに私が執着を持っているかのようなおことばがありましたが、それは違います。私は、生産費及び所得補償方式をやめるということは一度も考えたこともありませんし、またそういう発言をいたしたことはございません。スライド制と申しましたのは、米の生産者価格と消費者米価との間に関連を持たせてみたらどうかという、一つの案として申し上げたわけでございます。というのは、生産者米価は、いまの方式の生産費及び所得補償方式、これでやっていくのが適当だと私は考えております。消費者米価のほうは、家計をそこなわないようにというような趣旨できめる、こういうことで、はっきりした一つの消費者米価決定の方程式じみたものはございません。そこで私は、生産者米価をかりに百円上げるということになったといたしまするならば、その中に、当然こういう制度でございますから、政府が、いわゆる赤字と称せられる金で負担すべきものがあります。それをいまのように、全部政府で負担するということにしておくか、あるいはまた米が自由化された場合におきまして、消費者として当然負担すべきような負担費目というものがあるんじゃないか。かりに自由化した場合にも負担しなければならないとすれば、統制下においても、生産者米価が上がった場合に、その一部分を消費者のほうにおいて負担してもしかるべきものが費目の中にありはしないか、経費の中にありはしないか。そういうものがあるとするならば、生産者米価と消費者米価との関連におきまして、生産者米価がかりに千円上がったとしたら、千円全部を消費者が負担するということじゃなく、政府の負担するものの一部分は負担していくというような一つの方式ができ得ないものだろうか、こういう検討を命じておるわけでございます。  これにつきましては、申し上げるまでもなく、二つの政治的な反対論があろうかと思います。一つは、生産者米価を上げたときに消費者米価を幾ぶん上げられるということで、消費者側からの反対があると思います。それから生産者側からいうと、消費者米価をそういうふうに関連づけられると、消費者米価が上げられるというような消費者全体の反対が、今度は生産者のほうにしわ寄せになって、生産者米価をなるべく上げないというような動きにまで拡大してきはしないか、こういう面があろうと思います。それからもう一つ、生産者側から見ると、一面におきましては政府でのみ負担して赤字が累積する。そうすると、やはり一つの方式で生産者米価をきめるといたしましても、あまりに赤字が膨大になり過ぎるということになると、政府の統制なんというものはやめてしまえ、自由にしてしまえというような声も一部に出ないとも限りません。数年前にはちょっと出ましたが、私はそれに反対でございます。あるいはまた、赤字の額が非常に多くなるということであるので、その一部分を消費者に負担してもらったほうが、底が上がってきて生産者の米価を上げる上においても都合がいい、こういう見方も一面にあると思います。  こういうふうに、スライドをするというようなことにつきましては、賛成あるいは反対、いろいろな面からの批評があると思います。しかし、私は、関連というものは、つかるものならばある程度合理的につけてみたらどうか。その点を事務的にも検討いたし、あるいは米価審議会等におきましても、関連がつかるものならばつける方途にいい方法があるかどうかということは、諮問してみたいという考えを持っておる次第であります。
  214. 石田宥全

    石田(宥)委員 この問題については事務当局に検討を命じてあるということでありますけれども、すでに大蔵省でも、あるいは食糧庁でも、かなり調査が進んでおるといわれておるのでありますが、その準備の、あるいは検討のと言ったほうがいいかもしれませんが、検討の進み方はどの程度まで進んでおるか。幾つものいろいろな案をつくることに食糧庁は名人で、五通り六通りもの米価の算定などをされますが、案がすでにできておるのではないかと考えますが、どうでしょうか。
  215. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 その費目をいろいろ洗って、そうしてこういう費目は、生産者米価が上がった場合に消費者米価に織り込んでもいいのではないかというような検討をいまこまかくいたしておりますので、先ほど申し上げましたように米価審議会には、私はできることならば諮問してみたいと思っておりますけれども、その前に、なお事務的にもっと事務案として固めていくように慫慂いたしておりますけれども、いま申し上げるほどには進んでおりません。しかし、着々ひとつ検討してみようというような進め方はいたしております。
  216. 石田宥全

    石田(宥)委員 農林大臣のあげ足をとるわけではありませんけれども、先ほどの答弁の中に、自由化された場合においても云々ということばがありますが、これはほかの人が言うならいざ知らず、その責任者である農林大臣が自由化されることを予想しておるのかどうか。一体、自由化することを考えておるのかどうか。経済同友会あたりでは、米は間接統制に移行すべきだ、一部は自由販売にすべきだという意見をはっきり出しておる。一体そういう下心があるからこういう答弁になるのではないかと考えますが、どうですか。
  217. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 自由化を目標としてではございません。物の価格というものは、自由価格の場合にはコスト価格といいますか、生産者から、運賃だとか保管料だとか、いろいろな費用がかさまって、そして最終的に消費者の価格というものがきまってくる。まあコスト価格といいますか、需給価格もありますけれども、コスト価格的な考えが自由経済ではあると思います。ですから、統制下におきましても、当然負担してもいいような費目があるじゃないかということで申し上げたので、私は自由化を前提とするというようなことで申し上げておるわけではございません。経済同友会等におきましては、確かに間接統制というような意見もありまして、そういう意見が出ましたときに、私はスライドの話をしましたけれども、決して自由化を前提とする、間接統制を前提とするということではないので、その点は誤解のないようにお願いいたします。
  218. 石田宥全

    石田(宥)委員 確認しておきたいと思うのですが、直接統制の現在の食管制度、これは堅持するというふうに考えておられる、こうとっていいわけですか。
  219. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 私の数年来の主張も御承知だと思いますが、私はいまの制度を堅持するという前提のもとでのいろいろな検討でございます。
  220. 石田宥全

    石田(宥)委員 いまの食管会計の赤字の関係があって、一部を消費者に負担をしてもらってもいいような費目があるのではないかということを検討しておるということでありますが、私は、その前に、いまの食管会計の中に即時これを行政費に回すべき費目があると考える。たとえば事務人件費の問題、あるいは金利の問題、あるいは産地倉庫の倉庫料の問題、こういうようなものは当然行政費でまかなうべきものであって、その負担を食管特別会計の中に入れるということは、まず、いま大臣が考えておられるようなスライド制を行なわれる前に、即時これは行ない得る問題であるし、これは赤城さんが、この前に食管会計というものを、いわゆるどんぶり勘定だといわれておったときに、これではいけないということで六つばかりの小どんぶりに分けられた、こういう経緯もありますが、私は、いま指摘したような問題は、とりあえず行政費に繰り入れてやるべきものだと思いますが、どうですか。
  221. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 深く検討いたしまするならば、いまのように特別会計でなくて、あるいは一般会計で、あるいは行政費として負担をしてしかるべきような費目があろうかと思います。こういう点につきましても、いろいろ食管会計の面からも検討をいたさしておるわけでございますが、いまのお話のとおりであるという結論をいま申し上げることはできませんけれども、検討は命じておるわけでございます。
  222. 石田宥全

    石田(宥)委員 さっき大臣も、反対論があるであろうと想定されてお話しになりましたが、スライド制あるいはコスト米価というようなことになりますと、これはもろ刃の剣になる。生産費をきめれば、おのずから消費者価格を上げなければならない。今度のように一年間消費者米価を上げないということがきまると、それが逆に生産者に対しては生産者米価を抑制する作用を起こす。消費者に対しては今度は値上げをする作用に使われる。こういう点になりますと、さっき大臣も言われたように、食管法の第三条と第四条とはたてまえがはっきり違っておる。ここには、法律の上には一貫性は全然ないわけですね。これは別個のものとして計算さるべきことに決定をされておる。ところが、いま大臣御説明のように、スライド制あるいはコスト米価ということになると、両方を、一方は押え、一方はどんどん上げていくという作用になると、現在の食糧管理法そのものを否定することになる。私は、この点については、前の重政農林大臣が食管制度について手をつけようとされたときに、臨時食管制度調査会設置法案という法案を用意されて、堂々と法律の改正について取り組もうとされたが、いま赤城さんは、何か米価の算定方式の相違のようなニュアンスで、そういう錯覚を与えつつ食管法を改変しようとする意図のように受け取れる。それはどう弁明されようとも、現在の三条と四条の規定で生産者価格と消費者価格のたてまえが違っておるのを、一貫性を持たせるということは、食管制度を改変するものと言わなければなりません。どうお考えになりますか。
  223. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 私は、私のスライド的な考え方というものが食管制度を改変するとは考えません。生産者米価がきまる、消費者米価はそれとは関連なしにいつまでも上げなくていいのだ、すべてこれは社会制度的なものだというふうによく言われておりますけれども、社会保障制度というものならば、金持ちに安い米を売っておる必要はないのでございます。そういう面から考えまするならば、これはある程度——永久に消費者米価を上げないというものじゃなかろうと思います。ある程度は、やはり流動と言いますか、上がったりする場合があると思います。その場合に、やはり生産者米価との関連というものがあるということは、私は望むべき姿と思います。全然関連がなくて、もう消費者米価は全然上げないんだ、生産者米価はいつでも上げていくんだ、その差額はいつでも政府でしょっていくんだ、これが食管制度だ、こういうことで、これは一つの社会制度だというふうにしていきますと、やはり食管制度そのものがそういう財政面からの破綻を来たすような面があり得るのじゃないか。私は、食管制度そのものがいい制度だと思いまするし、これを竪持していきたいと思えばこそ、そういう一つの弾力的な面を考えたほうが、生産者に対しても消費者に対してもいいのじゃないか。それで、いまのお話のように、もろ刃の剣で私の考え方だと、消費者米価は上げて生産者米価は上げないという作用になりはしないか、こういう見方のようにお聞きしましたが、それとはまた別の見方もあるのです。消費者米価を上げるから、幾らか上げて生産者米価も逆に上げられるんだ。ところが、いつも消費者米価は上がらないで、永久的に上げないというならば、生産者米価を上げる限度で何とか詰まってしまう。これは方式があるのですから、そういうことであってはほんとうはいけないわけです。生産費及び所得補償方式というものに当てはめていくのですから、そういう考え方であってほんとうはいけないのですけれども、やはり政治的にそういう議論もあると思います。でございますから、私がスライド制をやるということは、食管制度を破壊していく、これをなくしていくような方向へ持っていくようなことになりはしないかというふうな御指摘でございましたけれども、私はこれをよく持っていく、この制度を非常に健全に持っていくということに、この方式がうまくできれば役立つのではないかというふうに考えております。
  224. 石田宥全

    石田(宥)委員 大臣の気持ちはわかるのです。大臣の気持ちはわかるんだけれども、いやしくも法律に明記されておるたてまえをくずすということは、これは問題があろうかと思うのです。少なくとも運営の面においてどういうことをされようとも、これは別です。これは行政府が、ある考えで、政策的に消費者米価はどう扱う、生産者米価は生産費及び所得補償方式といっても、その同じ方式の中で、いろいろな要素の取り方によって違うのだから、それは別の問題として、私はここに提起したいのは、いやしくも法律で明記しておるものを、立法府で明らかにしたところの法律を、行政府がこれを無視し、改変するがごときことは許されないのではないか、これを私は指摘しておるのです。スライド制というもので生産者価格と消費者価格の問に一貫性を持たせるという考えは、この法律を改変することは間違いがない。結果においてどうなるかということは別として、少なくともこの法律を破壊することになる。それはやはり立法府にはかつて法律を改正をして、しかる後にやるべきであって、行政府が法律を破壊するような行為というものは断じて許されない。私はこの点を、農林大臣の考えのいかんにかかわらず、許しがたい点として指摘しておるわけです。どうですか。
  225. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 それはあたりまえのことなんです。だから、私はそういうものでひとつ諮問してみて、それがいいかどうか——私はいいと思っているのですが、それがだめならあれですし、またいいということならば、法律を改正するなら改正する方向へいくのが私は筋だと思います。私がかってに、スライド制がいいから、いまの家計米価をやめにしてしまってそれでやるんだというような、そういう独裁的な考えで私はものを運んでいるのではございません。ですから、これが合理的でいいんだということであって、もしも法律を改正するという必要があるならば、これはおはかりしていかなければなりませんし、また、改正しない面で、何か食管会計の面でできるというようなこと、しかし、これなどもいろいろ議論がありましょうから、とにかく問題が起きるようならば、改正しないで、ただかってにやる、こういう考えは持っておらないわけであります。私は、考え方を申し上げておるわけであります。
  226. 石田宥全

    石田(宥)委員 それが問題なんです。そのこと自体が問題なんです。あなたの意図はわかる。しかし、それを米審に諮問をする、あるいはほかの経済同友会などでその意見をどんどん述べる、あるいは農業団体の中でもこれを述べる——赤城農林大臣意見というものはわれわれにはわかる。けれども、そういうふうに法律を無視し、法律を破壊するような行為をだんだんと積み上げていくという、なしくずしにやっていくという、そういうところに危険性がある。実績をだんだん積み上げていって、そうしてついに食管法を無視するところまでいくおそれがあるので、もし食管法に違ったような諮問をされるということであるならば、重政農林大臣がかつて行なわれたように、食管制度調査会設置法案という法案を堂々と出して、そうして立法府にはかつて法律を改正してからおやりなさい。そうでなければ、これは許せない。断じて許せない。これは法律を無視し、破壊するものだ。立法府としては断じて認められない。このスライド制をとるという発言に対しては、ここで私どもは農林大臣の取り消しを求める。取り消しなさい。法律を無視し、破壊するような言動を取り消しなさい。取り消しを要求する。
  227. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 私が、今度の生産者米価あるいは消費者米価をきめるときに、かくかくの要素に従ってスライド制をとる、あるいはとったということであれば、これは取り消しする必要もあろうかと思います。しかし私は、こういう考え方がいいかどうかというものを世論あるいは米価審議会等に聞いてみようかという意向なんでございまして、私が積み上げて、そうしてそれを既成事実にしょうなんという考えじゃございません。御承知のように、新聞記者会見もすれば、外へも出ますというと、一つ新聞に出たことは、あなたのスライド制というものはどういうことなんだ、どういうことを考えておるんだということをたまたま聞かれますから、先ほど私がここで申し上げましたように、関連がつけられるものならばつける方法はないものだろうか、そういう研究をしておる。たとえば農地法の改正でも何でも、私内部で研究さしておりますよ、こういうふうなことがよかろうか、ああいうふうなことがよかろうか。それを一々私がきめたものじゃない。きめたものならば、これは忌諱に触れることもございましょうが、きめたものじゃない。研究段階において申し上げておることを一々取り消す必要はないと思います。私は、研究はますます進めたらよかろうと思います。
  228. 石田宥全

    石田(宥)委員 これはますます許しがたい。そういう法律を根本的に破壊するような言動を弄するということは、これは許しがたいことだ。しかも、近く開かれる米審にこれを諮問するというに至っては、これは絶対に許せない。もうあと時間の問題でこれは開会しなければならない。取り消しなさい。研究をするということはよろしい、これはどんなことでも研究しなさい。法律の改正も研究するがいい。しかし、厳然たる法律があるのに、法律を無視し、破壊するような言辞を弄した点については、これは取り消しなさい。取り消しなさい。
  229. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 法律を破壊した行動とか法律に違反している行動をとれば、これはまことに申しわけないわけでございます。しかし、法律に書いてあることも、法律は不磨の大典じゃございませんから、法律に書いてあることでも、研究すべきものは研究して、前進していくというか、いいほうへ持っていくということは、これは政治家としてもまた当然考えるべきことだと思います。そういう意味におきまして、御意見が、これは反対だというなら、反対のお立場をとるのもけっこうでございますが、私はこういうことを検討してやっていったらどうだろうかという、こういう検討を進めておるのでございまして、これはあえて何も取り消すとかなんとかいう必要はないと私は考えます。
  230. 石田宥全

    石田(宥)委員 法律の改正であろうが、制度の改正であろうが、政策改正であろうが、研究されることは自由ですよ。しかし、もうやがて開かれようとする米審に諮問をするということをはっきり言っている。このことについてはいまの答弁と違う。いまの答弁の範囲を逸脱しておる。その逸脱をしておる、米審に諮問をするという部分については、これはひとつ取り消しなさい、取り消しなさい。
  231. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 いま研究しているので、これなら諮問してもよかろう、こういう段階にきたら、私は米審へ諮問して、それで反対なら反対でけっこうです。賛成なら賛成でけっこうです。とにかく意見を聞くということは私は必要だと思います。これは民主主義の原則で、多くの意見を聞いてみるということは必要で、押しつけようという気持ちはございません。
  232. 石田宥全

    石田(宥)委員 私はこれを取り消さないうちはやめませんよ。大体米審のメンバーを指定するときに、これは政府の御用学者みたいな、そういうメンバーだけを集めておいて、そうしてあなたが諮問をすれば、それがいいという意見が多数にあるにきまっておる。これはそうでしょう、明らかですよ。だから、こういう関係で、米審の現在の構成からいけば、諮問をすればそれがいいという、これは農林大臣に対する賛成の意見が多いことは間違いないでしょう。しかし、今月中に開かれるところの米審に対して、これに諮問をするということは、これは行き過ぎじゃないですか。諮問をするというならば、いまの答弁と違っている。逸脱しておるのですよ。いまは検討しておる段階だと、こう言うんだから、検討しておる段階に諮問をするということは行き過ぎじゃないか。どうですか、行き過ぎでしょう。
  233. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 どうも水かけ論みたいになりますが、私が諮問すれば、みんな農林大臣に賛成するということなら、私もまことに光栄でございます。しかし、そうはなかなかいかぬようです。最近のいろいろな審議会等、たとえば畜産の審議会等におきましても、答申が三つも出るというようなかっこうでございまするし、米価審議会におきましても、価格などがそのとおりにきまるということもないような情勢でもございます。私が諮問すれば私にみんな賛成する、こういうふうにお考えなるのは、少し、何と言いますか、インフェリオリティ・コンプレックスなどと言うとおこられるかもしれませんが、そういうような感じがないわけでもございません。しかし、それと話は別に、いまの問題は、いま検討しているというのじゃないか、諮問するまでは行き過ぎだ、こういうあれだと思います。私は、いま検討いたしまして、私のほうで、これならば諮問のテーマとしてよかろうかなというようなところまでいきまするならば、私は諮問してみたいと思います。差しつかえないと思います。しかし、まだ諮問するほどの検討までいってないということなら、また延ばしてみることも考えなくちゃなりません。意見を聞く機会を持ってもらうことは、意見を出す人に対しましても私は非常にいいことじゃないか、こういうふうに考えますので、もし検討がよくできてくるようでありましたならば諮問をいたしたい、いまのところそういうふうに考えております。
  234. 石田宥全

    石田(宥)委員 まだ確信のある案ができないのに諮問をするという言い方は行き過ぎじゃないか。だから、少なくともその面については取り消すべきだ、こう言っているんです。取り消しなさい。
  235. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 まだ諮問したわけじゃございませんから、検討してよかったらば私も諮問したい、こういうことなんで、何も取り消すとか取り消さないとかいう問題ではない、あんまり固まった話じゃないんですから。
  236. 石田宥全

    石田(宥)委員 本来制度そのものを、法律の改正を米価審議会に諮問をするというようなことは、これは根本的に間違っておるんですよ。私は、その議論はさっきやったからいまここで繰り返さないけれども、少なくともまだ確信のあるものができない検討段階において、これを諮問をするという発言は取り消したらどうかと、こう言う。それを迫っておるんです。だから、やるかやらないかまだきまってないでしょう。あなたのいまの答弁ならまだきまっていないということでしょう。きまっていないのに諮問をするということは言い過ぎでしょう。これは言い過ぎでしょう。
  237. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 私は、諮問するということを公式の場合に言ったわけではございません。新聞記事等にもありまするように、こういう考え方を諮問してみたいんだ、こういうことなんです。ですから、諮問することもありましょうし、諮問しないこともありましょう。しかし、私は諮問したいという希望を新聞記者会見等においていたしたのでございます。
  238. 石田宥全

    石田(宥)委員 それは言い過ぎですよ。行き過ぎですよ。私はさっき言ったからもう繰り返さないけれども、法律に違反し、法律を破壊するようなことを行政府がその諮問機関に諮問するなんていうことは、そもそもこれは間違っておるですよ。間違っておるですよ。なぜ堂々と調査会設置法案でも出して調査会設置して、また制度それ自体の諮問機関をつくるなり、調査会をつくるなりして堂々とやりなさい。それをこそくな、米価審議会に制度そのものに対する重大な項目を諮問するなどということは、これは間違いですよ。これは間違いですよ。取り消しなさい。それは立法府軽視だ。
  239. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 ちっとも間違っておらぬです。非常に民主的で、やり方として非常に明るいやり方であり、私は民主的なやり方だと思います。
  240. 石田宥全

    石田(宥)委員 それならば、どの程度まで準備が進んでおるかということをひとつ明らかにしなさい。中間発表でいいから。
  241. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 考えが相当進んで、もしそれを聞かしてくれということならば、それを出す機会もあろうかと思います。しかし、どうなんですか。さっき言ったように、何回も何回もそういうことを言っておると積み上げられちゃうという御心配でしょうけれども、私はそういうつもりじゃございません。しかし、どういう考え方だということならば、考え方がだんだん煮詰まってくれば、その考え方につきまして公表するというか、申し上げることにはばかることはございません。
  242. 石田宥全

    石田(宥)委員 だから、いままでの検討の結果を中間報告でよろしいから示しなさい。
  243. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 まだ私、事務的に検討の報告を聞いていませんで、いまは示す時期ではございません。
  244. 石田宥全

    石田(宥)委員 諮問機関というものを本質的にどう考えておるんですか。
  245. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 諮問機関というのは、読んで字のごとしと言うと失礼かもしれませんが、いろいろな御意見をその会の意見とし、あるいはその委員意見として、まとまらぬ場合には個個的な意見として、その意見を聞きまして、それを行政の上において、あるいは政治の上において参考にすると言いますか、そういうような方法をとることだと思います。
  246. 石田宥全

    石田(宥)委員 これは読んで字のごとく、米価を審議するところなんですな。政府の諮問案について審議をするところだ。食管制度についての審議をするところは別じゃないですか。制度について審議をするのは、これは国会ですよ。制度を審議するところは国会だ。ところが国会にはかることなしに、国会議員意見を聞くことなしに、これを米価の審議会に諮問をするということは、これは本末を転倒しておる。どうですか。
  247. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 私も深く記憶していませんが、米価審議会において、生産費及び所得補償方式の方式等を諮問したことがあると思います。米価だけをきめるのじゃなくて、米価のきめ方についての問題等を諮問したことはあると思います。でございますから、いまのスライド制などというのも、これは一つのきめ方の問題でございます。これは諮問しても別にじゃまになる問題じゃないと思います。
  248. 石田宥全

    石田(宥)委員 農林大臣、それは米価の諮問機関だから、生産者米価の算定方式を諮問することは、これはいいですね。消費者米価をどうするかということを諮問するのもよろしいでしょう。これはいい。それはどんな方式でも、いろいろな方式を諮問されるのはけっこうです。ところが法律事項を諮問する、法律によるその制度を、価格を審議する審議会に諮問するということは、何としても許されない。だからこれはもっとすなおに大臣考えたらどうですか。場所が違いますよ。食管法を改正するというのなら国会審議しなさい。国会に出しなさい。それは国会でやるべきです。
  249. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 何でも食管に関係すると、いまの制度を改正するのだというふうにおとりになるかとも思いますが、   〔櫻内委員長代理退席、委員長着席〕 たとえば消費者米価は家計をそこなわないというばく然たるもの等でございますから、そういうものについてのいろいろな方法等について諮問をしたり、あるいは審議会で検討してもらうことは私はあえて差しつかえない、スライド制でも、そのスライド制の結論によっては、あるいは食管制度を改正するというようなことになるかとも思います。しかし、必ずしも法律に違反するとは考えられない面もございます。たとえば三条、四条のそれぞれの範囲内で、生産者米価は生産費及び所得補償方式、消費者米価は家計をそこなわない程度、こういう範囲内でスライド的な考え方も入れ得るということも考えられないとは限らない。生産者米価につきましては、三十九年度産につきまして諮問いたしますが。スライド制につきましては、三十九年度産米と限っておるものではございません。再々申し上げておりまするように、もしもそういうような制度をとるとしても、消費者米価を上げるということはことし考えておりませんと言っておりますように、これは三十九年度の生産者米価との関連においてということではございません。将来の問題として考えて、諮問をする機会になったならば私は諮問をしてみたい、こういうふうに考えておるのでございますので、当然食管制度でも改正するような形のものになりますならば、国会の御審議を得なくてはなりませんし、また米価審議会に諮問する場合に、決定の方法としてよりよい方法があればということで、その一つとして私が考えておるだけで、審議会のほうとしてそれが不当だ、またそういうものは諮問を受ける範囲でないということならば、これはいたしかたございません。私はもっと幅を持って、そういうことを一緒になってまた研究して、悪ければ悪いと、よければある程度いい、こういうようなことを検討するのは民主主義の制度として好ましい姿だ、私はこういうふうに考えております。
  250. 石田宥全

    石田(宥)委員 大臣、いろいろ説明されるけれども、要するに三条による生産者米価はかくかくにきめるべし、消費者米価はかようかようにきめるべしということになっておるので、生産者米価の算定方式をどうするか、パリティ方式によるか、生産費及び所得補償方式によるか、あるいはその他のものによるかというようなことを諮問され、そうしてそういうものを検討されることはけっこうですよ。また消費者米価をきめるにあたって、現在の経済情勢の中で家計を安定せしめることを旨として定めるが、どの程度上げるか、そうしてそれは何を基準として、どの程度ならば家計を安定せしめるところの消資者米価であるかというようなことについての諮問はけっこうだと思いますよ。いろいろなものをお出しになってもけっこうですよ。けれども、生産者米価と消費者米価とを一貫したところのものにしたいということになると、この食管法が破壊されることになるから、そういうものとは全然性質が違うんだということですよ。これは全然違うんですよ。米価の算定方式をどうされようとも、それを諮問されることはけっこうだけれども、生産者米価と消費者米価をつなぐということになると、この二本立てになっておる食管法を破壊することになるから、その点は許せない、こう言うのです。
  251. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 御意見は御意見として承ります。ただ、いまのお話のように、消費者米価をきめるんだ、家計の安定をそこなわないような程度、その程度についてはいろいろ問題がある。それを諮問するのはよろしい。たとえばそこで、そこなわない程度において生産者米価がこれこれに上がった場合に、何分か何厘か知らぬが、この面くらいは家計をそこなわない、消費者米価として適当なんだろうというような案ができれば、これは関連はありますけれども、消費者米価のきめ方においての内容ですから、これは何も文句を言われる筋合いのものではないと思います。ですから、この生産者米価と消費者米価を関連づけて、そうして食管法を破壊するんだ、食管法を改正するんだという頭の上でものを御判断になれば、いまのような議論、御意見のようなことになろうと思いますけれども、しかしこの運営をよりよくやっていくんだ、そうして生産者米価の決定方式もあるし、消費者米価の決定方式もあるけれども、その決定の中にスライドというような考え方をたとえば消費者米価の中に入れ得られないものだろうか、こういうことを諮問するのに、何も私は不当とか行き過ぎだとか、こういうことはないと考えるわけでございますけれども、そういうふうに御了解願いたいと思います。
  252. 石田宥全

    石田(宥)委員 これは法律事項なんだから、法律に傷のつくような考え方では困るということですね。だから生産者米価、消費者米価、それぞれその算定方式なり何なり、それは御自由でしょう。けれども、食管法を破壊するような考え方を明らかにしておる限り、これは許せないということなんです。しかも、まだ案もできないうちにこれを米審に諮問するというような言い方は、言い過ぎではないか、こう言うのです。それは言い過ぎではないですか。
  253. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 まだ諮問したわけでもございませんし、諮問すると言い切ったわけでもない。私が諮問したい、こういうことなんです。それを取り上げて言うのは少し早過ぎやしませんか。
  254. 石田宥全

    石田(宥)委員 諮問をしてしまえば終わりなんです。そうしてそれは法律に傷がつくことなんだ。だから諮問をする前にこの問題を指摘しておる。軽挙盲動をやっては困るから、食管法に穴をあけては困るから、こっちのほうでそれを言っておる。
  255. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 諮問したらば食管法に傷がつくというふうには私は考えません。諮問して適当でなかったら、これはもう適当でないということを言っていただいてもいいんだし、その諮問の審議に入らなくてもけっこうです。そういうことのほうがこれは運び方としてはいいので、何も諮問したから食管法に傷がつく、こういうふうにお考えになるのは少しどうかと思いますが、私はよかったら諮問をしてみたい、こう思っております。
  256. 石田宥全

    石田(宥)委員 諮問をしてしまえば終わりだということは、いまの米審のメンバーを見るとどうもそれに賛成になる委員の数が多いようだから、だからもちろん、それは社会党の委員やあるいは生産者代表の委員が賛成するはずがないから。けれども、最近の米審というものは、かつて私どもが米価審議会におった当時のように、幾晩でも徹夜をしてでも一本にまとめるというような審議会でなくなった。そうすると、多数意見と少数意見というようなものになって、これはいまの憲法調査会と同じですよ。そういうことで米審のメンバーの構成の状態から見て、やはり赤城農林大臣の諮問案が多数を制するというようなことが当然考えられる。だから、私はその結論を言っておるわけです。本来ならこの生産者米価を諮問をする米価審議会と消費者米価を諮問する審議会のメンバーを変えるべきだ、私はこう考えておる。少なくともいまの生産者米価の決定というものは、農民の代表と政府機関との団体交渉の場でなければならないし、そういう意味では、生産者の代表によって生産者米価を諮問する米価審議会が持たれるべきだと私は考えておる。これはしかし行政措置でそうなっておらないから、私はしいてそれをそうしなければならないとは言いませんが、そうあるべきものだ。ところがいま申し上げるような委員の構成でありまするから、だからこれは諮問をされると、われわれの反対の意見が多数を占めるおそれが十分ある。だから諮問をされればそれで終わりになるおそれがある、こういうことなんです。
  257. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 それは再々申し上げておったとおりでございます。
  258. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 この問題はどうでしょうね。結論にいかなければどうしますか。時間もきておりますが、いかが取り計らいましょうか。これは見解の相違で、結論に達しないでしょう。時間もきていることですが、どういたしましょう。
  259. 石田宥全

    石田(宥)委員 本問題はきわめて重大な問題でありまして、取り消しを要求しているわけでありますが、農林大臣の答弁はきわめて遺憾でございますが、予定の時間もまいったようでありますから質問は留保いたしまして、この程度にいたしておきたいと思います。
  260. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 石田宥全君に申し上げますが、それでは明日淡谷悠藏君の御質疑がありますから、そこで関連してもう一ぺんやってもらいますか。よろしゅうございますか。——ではさよう取り計らいます。ただし、これは政府のほうと意見が違えば幾らやっても平行線ですから、その点はひとつお含みの上お願いをいたします。  これにて石田宥全君質疑は終了いたしました。  次会は明二日午前十時より開会いたします。  先ほども理事会で御相談いただきましたとおり、山口喜久一郎君の質疑を約十五分ないし二十分許すことに、よろしゅうございますか。  明日は、質疑者は山口喜久一郎君、淡谷悠藏君、佐々木良作君、井手以誠君であります。山口君の要求大臣は、運輸大臣、郵政大臣であります。淡谷君の出席要求大臣は、大蔵大臣、農林大臣、通産大臣、及び経済企画庁長官であります。佐々木君の出席要求大臣は、内閣総理大臣、外務大臣、大蔵大臣、農林大臣通商産業大臣、運輸大臣、自治大臣及び経済企画庁長官であります。井手君の出席要求大臣は、内閣総理大臣、外務大臣、大蔵大臣、農林大臣通商産業大臣、経済企画庁長官及び防衛庁長官であります。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十六分散会