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1964-03-02 第46回国会 衆議院 予算委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月二日(月曜日)     午前十時十九分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君    理事 櫻内 義雄君 理事 野田 卯一君    理事 松澤 雄藏君 理事 井手 以誠君    理事 川俣 清音君 理事 辻原 弘市君       相川 勝六君    荒木萬壽夫君       安藤  覺君    井出一太郎君       井村 重雄君    稻葉  修君       今松 治郎君    植木庚子郎君       仮谷 忠男君    川崎 秀二君       小坂善太郎君   小宮山重四郎君       重政 誠之君    周東 英雄君       砂田 重民君    田澤 吉郎君       登坂重次郎君    中曽根康弘君       古井 喜實君    古川 丈吉君       保科善四郎君    松浦周太郎君       松野 頼三君    水田三喜男君       湊  徹郎君    山本 勝市君       淡谷 悠藏君    石田 宥全君       石野 久男君    岡田 春夫君       加藤 清二君    五島 虎雄君       河野  密君    滝井 義高君       堂森 芳夫君    中井徳次郎君       村山 喜一君    山花 秀雄君       横路 節雄君    今澄  勇君       小平  忠君    永末 英一君       加藤  進君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         法 務 大 臣 賀屋 興宣君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 小林 武治君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  福田  一君         運 輸 大 臣 綾部健太郎君         郵 政 大 臣 古池 信三君         労 働 大 臣 大橋 武夫君         建 設 大 臣 河野 一郎君         自 治 大 臣 早川  崇君         国 務 大 臣 佐藤 榮作君         国 務 大 臣 福田 篤泰君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君         国 務 大 臣 山村新治郎君  出席政府委員         内閣官房長官  黒金 泰美君         内閣法制局長官 林  修三君         総理府総務長官 町田 武夫君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    高島 節男君         総理府事務官         (経済企画庁総         合開発局長)  向坂 正男君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   島村 武久君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         大蔵事務官         (主計局長)  佐藤 一郎君         大蔵事務官         (主計局長)  泉 美之松君         大蔵事務官         (理財局長)  吉岡 英一君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君         大蔵事務官         (為替局長事務         代理)     鈴木 秀雄君         通商産業事務官         (通商局長)  山本 重信君         通商産業事務官         (鉱山保安局長)川原 英之君         運輸事務官         (鉄道監督局長)廣瀬 眞一君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       石田 礼助君         日本国有鉄道副         総裁      磯﨑  叡君         日本国有鉄道常         務理事     山田 明吉君         専  門  員 大沢  実君     ――――――――――――― 三月二日  委員荒木萬壽夫君、江崎真澄君、小川半次君、  重政誠之君、堂森芳夫君、湯山勇君及び鈴木一  君辞任につき、その補欠として田村良平君、砂  田重民君、小宮山重四郎君、湊徹郎君、村山喜  一君、淡谷悠藏君及び永末英一君が議長指名  で委員に選任された。 同日  委員小宮山重四郎君、砂田重民君、田村良平君、  湊徹郎君、滝井義高君及び村山喜一辞任につ  き、その補欠として小川半次君、江崎真澄君、  荒木萬壽夫君、重政誠之君、多賀谷真稔君及び  堂森芳夫君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和三十九年度一般会計予算  昭和三十九年度特別会計予算  昭和三十九年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和三十九年度一般会計予算昭和三十九年度特別会計予算昭和三十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、締めくくり総括質疑を続行いたします。  辻原弘市君。
  3. 辻原弘市

    辻原委員 私は、ただいまから、社会党を代表いたしまして、締めくくり総括質問を行ないたいと思います。  最初に、一昨日私が触れました問題にも関連をしまして、最近国鉄に関する大きな事故、それから昨年の十一月に起きました三井三川の大事故等、さらには去る二十七日に起きました富士航空墜落事故等々、こういった一連の大事故に関しまして、その事故防止一体総合的に、基本的にどうするのか、またそのために生ずる産業災害に対して政府としてはどういうふうに対処をしていくのか。最近の事故を考えますと、まさにこれこそわが国のひずみであり、社会の大きなゆがみからこの問題が生じているように思うのでありまして、国民の不安たるや実にたいへんなものでございます。したがって、これらの相次ぐ大災害、また同時に産業災害と申して差しつかえないでありましょうが、これら一連の問題に対して、政府としてはどういう具体策をもって国民にこたえようとするのか。緊急的な問題それからさらには恒久的な問題、いろいろあるでありましょうが、当面交通機関が毎日この激しい社会の中に動いておるわけであります。したがってこれらに対して国民安心をさせる。そういう具体的対策というものがなければならぬと私は思いますが、総理としてはこれらの対策について熱意をもって、誠意をもって国民にこたえようとされておるか、その具体策を示していただきたいと思うのであります。
  4. 池田勇人

    池田国務大臣 最近炭鉱あるいは鉄道あるいは飛行磯事故の発生したことはまことに遺憾でございます。政府といたしましては、炭鉱につきましても、また鉄道飛行機につきましてもその原因を究明いたしまして、そうして再び起こらないよういろいろ措置をいたしておるのであります。たとえば炭鉱におきましては、災害防止のためのいわゆる労務関係保安関係等につきまして、各炭鉱ごと保安の仕事の重大性を認識し、またその保安の万全を期するよういろいろ措置を講じております。また鉄道におきましてもできるだけ改良工事を進めて、そうして事故の発生を防止すると同時に、起こった事故原因を究明して、二度と繰り返さないようにいろいろ施策を講じております。また飛行機につきましても、飛行機の性能、整備の問題、また操縦者注意の点等々、原因を調べまして対策を講じつつあるのであります。
  5. 辻原弘市

    辻原委員 そこで、私は少しく具体的に伺ってまいりたいと思うのでありますが、まず、国鉄事故に対する対策であります。きょうこの席上に国鉄総裁もお見えでありますから、責任者としてお答えを願いたいと思いますが、一体最近の打ち続く国鉄による事故というもの――事故は、戦前戦後を考えてみましても、大小いろいろありますし、小さな事故については、これはあながち、ただいまでなくても、以前にもずいぶんありました。しかし最近の事故の特徴というものは、一たび起これば非常に大きな事故になって、貴重な人命が多数それによって損害を受けるという、まことに嘆かわしい状態であります。一体これらの大惨事、大事故というものは何に基因するものであるか、国鉄総裁として、この際あなたの所信をお聞かせ願いたいと思います。
  6. 石田礼助

    石田説明員 お答えいたします。  最近における大きな事故原因というものは、繰り返し申し上げておりますように、要するに細密ダイヤということが私は最大原因だと思う。要するに非常に細密なダイヤを組んでおる。だから、ダイヤどおりに順調に運行しておるときはよろしいが、一たん事故が起こると、そこに大事故になる危険というものが潜在しておる。問題はその問題だ。それではどうして一体これを解決するかということ、これはなかなか問題です。どうして一体こういう細密ダイヤをやらざるを得ないかということは、これはこの前もここで久保さんの質問に対して私がお答えいたしたのでありまするが、要するに戦争によって国鉄というものはぶちこわされた。その後昭和三十一年までというものは、その修理に対し、また輸送力の増強に対して予算というものがあまりに少なかった。一方、経済発展というものが非常なもので、輸送需要がふえてきたというようなことで、そこに細密ダイヤを組まざるを得なくなったということでありまして、これは、結局急にわれわれが是正しようと思ったってなかなかできるものじゃない。かすにやはり七、八年の時を得て、少なくとも三兆ぐらいの金をかけてやることによって細密ダイヤの是正というものができる。これができるまでは大きな事故の起こる危険というものが潜在しておる、こういうふうに考えております。
  7. 辻原弘市

    辻原委員 当面の事故は、最近の過密ダイヤの結果、きょう起きるかあした起きるかわからぬ状態であることは総裁もお認めのとおり。いまあなたがおっしゃられた過密ダイヤが今日の大被害の原因であるいうことは、全くわれわれも同感であります。しかも国鉄諮問委員会なり国鉄特別監査委員会における監査の結果報告等を見ても、異口同音にそのことを指摘しておる。ところがひるがえって、それだけの根本原因がわかっておりながら、一体それでは対策というのは何か、こういうことになれば、いま総裁は七、八年かからなければこの過密ダイヤ解消は行なわれない、しかも現在までの過小投資がその原因だと言われる。しかしそれだけで私は済む問題ではないと思う。毎日貴重な人命を乗せて走っている列車が、いつ起こるかわからないその事故防止するのに七、八年も年月がかかるなんということは、これはとうてい許さるべき問題ではないと私は思う。なぜそんなに時間をかけなければこの過密ダイヤ解消ができないのか、いま一度お答えを願いたい。
  8. 石田礼助

    石田説明員 過密ダイヤということを申しましたが、たとえばこの前起きた鶴見の問題なんかにいたしましても、一日にあそこを通過しておる列車というものは九百六十本もある。東京駅を出入りする列車というものは二千四百もある。こういうような過密ダイヤというものは世界に数がない。フランスの副総裁が数年前に来て、国鉄はまさに軽わざ芸をやっておる、こういうようなことを申したのでありまするが、しかしこれは、どうも日本財政力をもってしては、ある程度私はいかんともすべからざることであると思う。この間に立って、どうして一体安全輸送をやるかということが、われわれ国鉄人に課せられたる運命だと考えております。ではどうしてわれわれはこれをやるかというと、第一は車内警報装置の問題、それから第二は信号保安設備の問題、それから第三は踏切対策。御承知のとおり、事故の相当大きな部分踏切対策であります。フランスだとかドイツのごときは、八千メートルに一本の踏切があるのに対して、上越線のごときは三百メートルに対して踏切があるというようなことで、どうしても事故が起こりやすい。私どもとしては、車内警報装置によって運転手注意を喫起するような装置をつける。また信号保安設備というものを完備する。それからさらに踏切対策というものに対して重点を置きまして、少なくとも複線以上のところに対しては大部分は三十九年中に、そうして少なくとも四十年の三月までにはこれを完成する、こういうことにいたしまして、軽わざ芸をひとつあやまちない軽わざ芸にしたい。こういうことがいまわれわれが努力しておる点でございます。
  9. 辻原弘市

    辻原委員 さっきもあなたが申されましたが、私も委員会で聞いておりましたが、去る二月の八日の久保君に対するお答えの中で、あなたはいまのような過密ダイヤ状況ではまた事故が起こるかもしれないとこうおっしゃった。一体、また事故が起こるであろうというのは、その根本原因はどこにあるのですか。あなたがそういうふうに発言をせられた理由というのは、一体なぜ最高責任者であるあなたが事故がまた起こるだろうと言わざるを得ないその原因というものは何であるか。われわれはあなたの立場に非常に同情しておる。問題の多い国鉄を背負って民間からおいでになっていろいろ苦慮されておる事情を私どもも非常に御同情申し上げておる。だからこの機会に、一体あなたをしてそう言わしめなければならない原因というものをわれわれは突き詰めて、国民の不安も解消したいし、またあなたの言うように、世界各国から見れば日本国鉄輸送なんというのは軽わざ師みたいなものだ、こんなばかげたことを一日もすみやかに解消したい。しかしほっかっておくと七年も八年も十年もたたなければどうにもならぬというような状況だとあなたは言われておる。一体その原因というのはどこにあるのだ。何が不足している。そのことを明らかにしていただきたい。
  10. 石田礼助

    石田説明員 ただいまの御質問は、すでに私が初めに申し上げましたとおり、要するに戦争のために国鉄というものは大部分ぶちこわされた。その後における予算投資というものがいかに少なかったか。これを、つまり国鉄というものは自己資金によってまかなうべく運賃値上げというものを国会に再三要求したものであります。ところが国鉄は御承知のとおりスローモーだ。すべてのものが上がったあと値上げをされたあとにいくものだから、いつもインフレーション対策として運賃値上げというものは押えられる。その結果、今日物価指数なんというものは昭和十一年に比べて三百六十倍、三百七十倍にもなっておるにもかかわらず、国鉄のこの旅客の運賃なんというものは百五十九倍にすぎないというようなことで、予算のつまり少なかったということと、自分の収入の足らなかったということで輸送力というものを十分につけることができなかった。一方に経済発展によって輸送需要というものがふえた。その両々相まってここに過密ダイヤをやらざるを得ないようなことになった。国鉄は、つまり輸送というものに対する非常に大きな使命を持っておる。これを遂行するためには、どうしたってダイヤというものを過密にせざるを得なかった。こういうことが原因なんでありまして、これに対してはどうしても輸送力をふやす。輸送力をふやすということになると、なかなかそう急にいくものじゃない。たとえば東海道新幹線やなんかをつくるにいたしましても、初めは千九百億くらいのものが、土地の買い上げその他によってなかなかこれはむずかしい。倍もかかったというようなことでありまして、この過密ダイヤをうまく解決するということに対しては、なかなかそう一年や二年でいくものじゃない。かすにやはり数年の年月をもってして、十分の予算をいただかなければならぬ。こういう意味であります。
  11. 辻原弘市

    辻原委員 これは総裁、過去における過小投資の問題をいまここで云々しても問題になりません。一体これからどうするかということについてわれわれは前向きで検討したいということです。そうすると、さしあたって国鉄は第二次五カ年計画というものを今日実施中である。問題は、これは予算において少なくとも過密ダイヤ解消できるがごとく組まれておるかどうか、組まれておるならば、これは過去のことはいたし方がない。今日から一つ一つ積み上げて、できるだけ短い期間にこの過密ダイヤ解消に向かって全力をあげていくということであれば、われわれは了承できる。またあなたも了承できると思う。そこで第二次五カ年計画、ことしの予算について、そこまで過密ダイヤについて認識を持たれておる総裁が、一体どれだけの努力を払われたか私どもは疑わしい。第二次五カ年計画について、これをその期間内に完全にやれるだけの予算措置と万全の対策一体国鉄としてもお持ちになっておるかどうかということを、私はあなたの御答弁からあらためて伺いたい。ただこれはぶうぶう非を鳴らすだけでは事は済まない重大な問題です。一体、ことしの予算であなたはやれるのか、やれないのか。やれるならば、その予算でもってすみやかにやっていただきたい。やれないならばわれわれも考えがある。一体どうなんですか。
  12. 石田礼助

    石田説明員 過密ダイヤ解消をすべく、われわれとしてはことしは昨年に比べて改良費として思い切った予算の要求をしたのでありまするが、これが約千億切られちゃった。しかし、その後、大蔵大臣にお願いいたしまして、約五百億の追加をしていただいた、こういうようなことで、まずこれは、私から言えば、国家財政の大勢上またいかにせん。これでしかし何とかいくようにしようということで、保安対策にまず最重点を置く、事故のないようにする。それには、つまりさっき申しましたような市内警報装置完成、それから信号保安設備完成、それから最も大きな事故の数において多い踏切事故を、四十年の春までに、ぜひやる、こういうことと、そしてこの四十五万の職員の指導訓練考査というものを十分にやって、われわれの腕の見せどころをひとつやろうじゃないか、こういう決心でやっておりまして、まあさほどに御心配になるようなことは、私はないんじゃないか。私が一番心配しておるのは、東京近在通勤通学の問題、ラッシュの問題、これはあなた、新宿駅あたり行たってみますると、実におそろしい状態です。しかし、これは国鉄だけの問題じゃない。これは東京都の問題であると私は考えておりますが、このほうが一番危険です。これに対しては思い切って手を打ちまして、もうサービスよりは安全第一ということを主といたしまして、最近においてはプラットホームにおける状態を見て、とにかく出札口を閉鎖してお客を入れないというまでに思い切ったことをやっておるために非常に順調にいっておる。こういう状態であります。
  13. 辻原弘市

    辻原委員 東京近郊ラッシュについては、これはあなたから御説明を承らなくても、もうすでに限界を越しているということは、これはもうだれが考えたってわかる。問題はそれに対する対策なんです。ただ列車を少なくして安全を確保しょうというのはだれにでもできる。しかし、時代の要請に従って、進展する社会状況にマッチして不便をなからしめ、同時に安全性を確保するということに問題のむずかしさがある。あなたのいまおっしゃったようなことは、できるだけ列車運行について、多少乗客に不便であっても安全性を確保する、それも必要です。必要ですが、さっきから言っておるように、前向きでこれを解決するためにはどうするかということをお尋ねしておる。また、列車事故東京近郊だけではありません。山手線その他の問題だけではなくて、全国至るところ今日事故を発生する要因が潜在しておる。これはあなたも言われておるでしょう。だから、それらを解決するには一体具体的にどうだ。これは経費の問題なんだ。だから、三十八年から三十九年にかけて、一体国措置をした金でもって、あなたの希望するような過密ダイヤ解消について少なくとも最大限おやりになることができますかと私はお尋ねしておる。まず、過密ダイヤ解消については、何といいましてもこれは改良費重点でしょう。安全性の確保については、安全対策費重点でしょう。踏切その他の事故対策について具体的にどう措置しているか。それで少なくとも計画に従って一〇〇%ずつおやりになることができますか。できるなら、あなたが不足を言う筋合いのものではなかろう。不足をおっしゃる必要はないでしょう。しかし、あなたがいままで各委員会を通じて、予言者のように、ともかくまた事故が起きるとおっしゃっている。国民はびっくりぎょうてんしていますよ。最高責任者が、また事故が起きるかもわからぬ、これはたいへんな発言なんです。だから私はこの問題を重視して、一体あなたの心境はどうなのか、これでもって一体国鉄というものが今後国民安心を与えるようにやっていけるものかどうかをお尋ねしておる。改良費はどうなんですか。かなり満足すべき状態にありますか。安全対策費はどうですか。詳しいことは要りません。ともかくあなたから概略の説明を願いたい。
  14. 石田礼助

    石田説明員 国鉄全体における保安対策というものに対しましては、幸いに大蔵省でもよく同情してくださいまして、車内警報装置の問題、信号装置の問題、踏切問題等については、われわれの要求する予算というものは十分に下すっておりますので、これは大部分は三十九年度に、おそくも四十年の三月までには大体完成する見込みであります。ただ、私は国鉄総裁責任上からして、ここで大きな事故が起こるというようなことを申しまするのは、どうも私は商売で長くおったために、いつも問題を考えるときには最悪のことを考える。ここにおいて、つまり必ず大きな事故が起こる、こういうようなことを申したのは、少しこれは言い過ぎかもしれぬけれども、起こるチャンスはある、こういう意味なんであります。そこで、一番私が辻原さんに申し上げたいのは、その一番大きな事故が起こるもとはどこにあるかというと、東京近所にある。通勤通学の問題にあると思う。そこにわれわれはいま全力を注いでおりまして、大体において最近は非常に順調にいっておる。これは、ひとつ辻原さんがひとあさ新宿の駅へ行ってごらんになって、どういう方策をわれわれが講じておるかということをごらんになればよく御了解になることだと思う。ただ問題は、客の数はふえるが、輸送力というものは、東京近郊国鉄に関する限りは当分ふえる見込みはない。これをどうするかということで、最近におけるプラットホーム状態を見てみると――問題が起こればプラットホームなんです。あの状態を見て、とにかく出札口において客どめをするというような非常な思い切った手を打つことによって、大体においてこの輸送というものは順調にいっておるという状態であるのであります。
  15. 辻原弘市

    辻原委員 事故が起きるチャンスがあるなんということは、これはたいへんなことなんです。地震とは違うのですよ。無理に無理が重なっているということはだれも知っている。その事故が起きる原因がある。地震のように人間の知恵でもって捕捉しがたいものではない。だから、その事故が起きるチャンスがある、潜在的な理由があるとするならば、これは無理をしたって、少なくとも人命を確保するために、人命尊重立場から、その事故を除去しなければならぬのが、これが国鉄総裁のあなたの責任なんだ。また政府としての責任なんだ。これはたいへんなことですよ。その事故が起きるチャンスがあるということは、結局はあなたがさっき言われた過密ダイヤにある。過密ダイヤ解消するためには、安全対策、それから改良その他によるダイヤを緩和していくための予算措置なんだ。私の見るところでは――これはあなたが衆参の予算委員会の別の機会にも話をされておる。三十九年度の改良費はわずか千七百億円じゃありませんか。これでもって、当初計画をした第二次五カ年計画というものは四十年で終わりますか、どうなんですか。
  16. 石田礼助

    石田説明員 お答えします。  過密ダイヤ解消をすべく第二次五カ年計画を満足にやったところで、過密ダイヤ解消というものはできるものじゃない。そこで、私は総理大臣にお願いいたしまして、第二次五カ年計画というものはまず三十九年度で打ち切って、四十年からはひとつ第三次計画に移って、根本的にひとつこの過密ダイヤ解消をすべくお願いした結果、新しく、やり方をこれまでと全然変える、これまでは国鉄予算というものは国鉄だけでつくっておったのを、これからはひとつ政府予算としてある意味において予算の裏づけのある計画にしたい、こういうようなことで、過密ダイヤ解消ということはひとつ四十年から思い切った計画を立ててやりたい、こういうことに考えておりまして、大体総理の御了解を得ておる次第であります。
  17. 辻原弘市

    辻原委員 計画をいくら立てても、いままでの五カ年計画が示すとおり、やれなかったんですよ。そうでしょう。第二次五カ年計画は三十九年度の予算措置では少なくとも四千億以上残るということを、あなたは参議院の予算委員会でも答弁をしておる。そうすると、あなたがいま事故が起きる潜在的理由チャンスがあるとおっしゃったことは、そういう予算措置を完全なものにならしめて初めてそのチャンスがなくなるのです。しかし、あらためて計画を検討してみたいなんということでチャンスがなくなりますか、どうなんです。これは重要な発言ですよ。あなたは二回にわたって発言されておる。チャンスがある、事故について防止できない、潜在的な理由がある、完全な予算措置ができておらない。言いかえれば、いまの予算措置でもっては、私は事故をなからしめる、そういう潜在的要因というものをなくすことに自信がありませんということなんです。その自信のない予算を私どもはいま審議をしているのだ。あなたが自信がない、事故が起こるチャンスがある、また起こりますよと、こう言っておる、そういう予算をわれわれ国民の側に立って承認できますかということです。承認できませんよ、そういうことは。運輸大臣、どうなんですか。総裁は、これは私は二回にわたって確かめた。この間二月八日には、久保君に対してもそのことをおっしゃっておる。いまのようなこういう過去の過小投資、また現実に計画を練り直さなければならぬような予算措置、これでは潜在的な理由がありますよ。運輸大臣どうですか、所管大臣として。
  18. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 私どもといたしましては、国家財政の現状にかんがみまして、現予算におきまして最善を尽くして事故をなからしめるよう努力いたしております。さらに根本問題につきましては、本年度の予算が決定する閣議におきまして、最も早い機会に、少なくとも来年度予算を組む機会までに国鉄のあり方について全般的に検討いたしまして、あるいは公共性の問題、あるいは企業性の問題、さらに進んでは運賃の問題、さらに進んでは国家財政等の見地に立ちまして、いかにすべきであるかということを検討いたしまして善処いたしたいと思います。(「四十年度では間に合わぬ、三十九年度はどうする」と呼ぶ者あり)三十九年度は、現在の予算において輸送の安全を期する確信を持っております。国鉄総裁にその信念のあることは、私は信じて疑いません。
  19. 辻原弘市

    辻原委員 根本的検討や信念だけでは事故をなくすることはできません。  国鉄総裁、伺いますが、本年度の千七百億という改良費では、過密ダイヤ解消するための複線化、ディーゼル化あるいは電化、こういうものが全体五カ年計画の何割に相当しますか。それからもう一つ、安全対策云々を言われました。大蔵大臣が非常に努力してくれて、本年度の追加として百億の財政投融資、五百億の債務負担行為をやりました。それでもって三十九年度に五カ年計画のどれだけがやれますか、お答え願いたい。
  20. 石田礼助

    石田説明員 今年度のわれわれの二千七百三十三億という要求に対しまして、政府は、初め千七百五十四億、それに合計して約五百億の追加、そのために約五百億削られたわけでありますが、辻原さんに申し上げるが、実は国鉄としては東海道新幹線という問題がある。(辻原委員「よけいなことを言わないでください」と呼ぶ)ちょっとそれを言わぬとぐあいが悪いのです。初めあれが千七百億くらいでできるものが、結局三千四百億かかったというようなことで、政府に対して非常な大きな負担をかけておるということで、思い切ってこれは出したつもりであるが、しかし、そうもいかぬということで二千七百三十三億という予算を出したのでありますが、決してこれでもってその過密ダイヤ解消ができるとは考えられぬのです。これはさっき申した過去における過小投資の累積なので、これは一年や二年でとてもできる問題じゃありませんが、とにかく、少なくともさっき申し上げたいろいろの保安対策踏切その他によって何とか切り抜けるということはできるということに私は考えておりますので、大きな事故が起こる危険があるというようなことは、少々これは商売人的の、最悪の場合を考えた説明かもしれません、まずそう御心配になることはないと私は考えております。
  21. 辻原弘市

    辻原委員 ぼくの質問に答えてないです。総裁、私が伺ったのは、千七百億の改良費は、五カ年計画の何%が三十九年度にやれるということになるか、それから、保安対策費を追加したというが、重点を――いまあなたが、さして心配ありませんなんというようなことを言った。私は数字的に明らかにして、その上で、あなたの御答弁になったことが了承できるか、了承できないか、私がきめます。お答え願いたいと思います。保安対策費は所期の計画に対してどれだけがやれるか、改良費過密ダイヤ解消の所期の計画に対して幾らやれますか、これを明らかにしてもらいたい。
  22. 石田礼助

    石田説明員 保安対策費は、一体第二次五カ年計画からいえば、ほとんどわれわれの要求したとおりにちょうだいしております、合計でもって。(辻原委員「三十九年度に全体計画としてどれだけやれますか」と呼ぶ)保安対策費としては、大体三十九年度においては、われわれは希望どおりやれると考えております。問題は細密ダイヤの問題です。
  23. 辻原弘市

    辻原委員 それでは、五カ年計画全部やれるのなら、計画の再検討は必要ないじゃありませんか。運輸大臣どうなんですか。いま総裁がそれでもってほぼ計画の全部がやれるというなら、五カ年計画は練り直す必要はないじゃないですか。予算を見ますと、改良費は千七百億だ。五カ年計画の数字は私も知っておる。知っておるが、一体国鉄の見込みとしてはどれだけやれますかというのです。
  24. 石田礼助

    石田説明員 数字のあまりこまかいことは私はどうも――これは副総裁説明してもらいます。どうぞひとつ御了承願います。
  25. 磯﨑叡

    磯﨑説明員 数字のことでございますので、お許しを得まして私から御答弁申し上げます。  ただいま御質問の中の保安対策費でございますが、先ほど総裁が申し上げました二百七億、これは一〇〇%できます。それから保安対策費以外のものにつきましては、五カ年計画全体といたしましては五八・四%でございます。そのうちに、先生の先ほどお話しの電化、ディーゼル化という問題は、どちらかと申しますとサービスの向上の問題になりますので、これは順位をあとにいたしております。したがいまして、通勤輸送あるいは過密ダイヤ解消が一番大きな材料になりますいわゆる線路増設、複線化でございます、これは六六%ないし七〇%できることに相なります。
  26. 辻原弘市

    辻原委員 それでは少しこまかく聞きましょう。あなたは一〇〇%できると言ったが、それで、保安対策の中で国鉄があげているたとえば踏切対策、それから信号保安の設備、それから車内の警報装置、これことごとく三十九年度には完備すると理解をしてよろしいな。
  27. 石田礼助

    石田説明員 いまの保安対策でありまするが、第二次五カ年計画では合計六百二十一億になっております。そのうちでもっていままで使いましたものが二百四十九億、それから三十九年度においては二百七億、四十年度において百六十五億、こういうことになっておりまして、大体この輸送力増強以外の保安対策というものに対しては、予想どおりまいっておる次第であります。
  28. 辻原弘市

    辻原委員 三十九年度にどの程度できるかと私は尋ねた。だから、三十九年度ではなお百六十億その他の残ができる。大蔵大臣、いま言われた六百二十一億、これは四十年度に――国鉄としては当然確保されるという前提をお持ちのようだが、それはあなたがいま保証できるのですね。
  29. 田中角榮

    ○田中国務大臣 来年度の予算をいまから申し上げることは、時期的にたいへんむずかしいことだと思いますが、財政当局としてはこれが確保に全力をあげたいと思います。大体できると思います。
  30. 辻原弘市

    辻原委員 最後に大蔵大臣が小さな声で、大体できると思いますと育ったから、おそらく明年度は計画の六百二十一億は全額確保されるものと理解をいたします。こまかい点はあるが、その点については触れません。ただ問題は、先ほどの改良費の千七百億というものは全体の五八%にしか相当しておらない。これはいわゆる過密ダイヤ解消についての予算措置は半分強しかできておらぬということです。だから、危険性というものが、依然として三十九年以降においても見通しが立たぬじゃありませんか。どうなんですか。
  31. 石田礼助

    石田説明員 第二次五カ年計画をやったところで、この過密ダイヤ解消というものはできないのです。何となれば、第二次五カ年計画を立てた時分の情勢とその後の情勢とすっかり変わっておる。経済発展があまりに旺盛なるがゆえに、輸送需要というものは第二次五カ年計画をもってしては応じ切れぬ。そういうところにつまり悩みがあるので、そこで第二次五カ年計画というものは三十九年度で打ち切って、それから第三次計画というものを立てて、今日の経済情勢に即応するような輸送力をつけ、安全度をつけたい、こういうことに考えた次第であります。
  32. 辻原弘市

    辻原委員 いまの五カ年計画ではできない、計画をあらためて検討するという。それでどうしてあなたは、たいして御心配は要らぬでしょうというお答えが出るのでしょう。私はそれが納得いかない。五カ年計画を策定してあるのですよ。しかし、その五カ年計画が財政上の理由によって金が確保されてきておらない。だから残が出る。残が出たから、あらためて計画を練り直してもう一ぺんやりましょうというのは、これは計画の繰り延べ以外の何ものでもないじゃありませんか。そういうような無責任な態度でどうして一体いまの国鉄の危険性というものが去りますかと言っている。あなたが率直にこの前述べられた、また先ほど前段で率直に、危険性は去りません。僣在的要因がありますと言われたことは、全くわれわれも同感なんです。それを憂えておる。しかし、過去のことをとかく言ってもしかたがないから、せめて立てた計画が着実に行なわれているかどうかをお尋ねした。ところが、着実に行なわれておらぬじゃありませんか。五割八分しかやられてない。計画は三十九年度に五割八分しかやれない。しかたがないから、国鉄としては計画を繰り延べしよう、新しい計画を立てよう、こう言っている。どこに積極的な施策がありますかと言っている。国鉄運賃のことなんかをばらばら言うよりは、なぜ一体計画どおりを実行するための予算措置政府一体になってやらないかと私は言いたい。危険性は去らないじゃありませんか。どうなんです、去りますか。
  33. 石田礼助

    石田説明員 辻原さんに申し上げるが、御承知のとおり、私は多年商売のほうに訓練された者だ。この国鉄の仕事というものはすべて予算というものに縛れている。今日非常に輸送力がふえたからして、それに即応すべく直ちに適当な方法を講ずるということはできない。これは物産会社ならできる。国鉄にはそういうことはできない。そこにおいて第三次五カ年計画というものを立てて、おもむろということははなはだまずいですが、できるだけ早い機会においてそれぞれこの解消をしたい。そこに第三次五カ年計画を立てる。第三次五カ年計画を立てるということだって、なかなか国鉄政府の仕事としては、簡単にいくものじゃないということはひとつ御了承願わなければならぬ。まず四十年から第三次五カ年計画を立ててこの解消をやるということだけでも、ひとつ了としていただかなければならぬと私は存じております。
  34. 辻原弘市

    辻原委員 物産会社にできて国鉄ができない、その理由は、予算予算と、予算に縛られるからだ、こう言う。言っていることは、予算が足らないということなんです。いまのお答えは正直なんです。予算が足らない、計画どおり予算が組まれていない、だから幾ら声を大にして言って見たところで、一向に改良工事も進まないし、計画どおりの過密ダイヤ解消の施策もやっていけない、そういうことなんでしょう。やっていけない、だから責任が持てません、これでは事故が起きますよというあなたの率直なお答えが出た。しかし、先ほどからるる伺ってみても、ことばでは、そう御心配いただくようなことはありませんと言っているが、やはり予算が足らないからこれはどうにもなりません、物産会社の方式でやるならば私はできるけれどもとおっしゃっている。そうでしょう。お認めになりますか。
  35. 石田礼助

    石田説明員 私が申し上げることは、手っとり早くいかぬ、こういうことを申し上げているのです。決してできないということを申し上げているのではない。私は責任をとらぬとは決して言わぬ。必ず、問題があれば、大石内蔵助のつもりで腹切りますよ。ですけれども政府の仕事というものは、御承知のとおり、そう簡単にてきぱきできるものじゃない。まず四十年から第三次五カ年計画を立てるということ、そのことが相当に手っとり早い方策じゃないか、こういうことに私は考えている。
  36. 辻原弘市

    辻原委員 くどいようだけれども、これは大事な点だから総裁に私はひとつ所信をお聞かせ願いたいと思う。  それは私は商売人的感覚でけっこうだと思う。ともかくやれればいい。どういう方式でもやれればいい。あなたはいまこういうことならやれるけれどもとおっしゃった。そのあなたの腹の中にあるこういうことならやれるという方式をいまお聞かせ願いたい、どういう方式でやればできるのか、あなたの所信をお聞かせ願いたいと思います。
  37. 石田礼助

    石田説明員 たびたび申し上げますとおり、今日における輸送力の貧弱なることは、これもう終戦後から三十一年までに滞積したことなんです。これを一年や二年でやろうなんということはとてもできるものじゃない。そこにおいて、国の財政の力にも限度がありますので、四十年からひとつ思い切って三千億以上の予算を出してもらって、これを数年の間に解決したい、こういうことを考えておるのであります。
  38. 辻原弘市

    辻原委員 四十年から三千億以上の金を出せるのなら、三十九年度だって出せるはずですよ。四十年以降になればなおさら日本の財政はむずかしくなる。四十年以降に三千億の金をあなたが要求してそれがすらっと認められるという態勢ならば、なぜ一体いまの五カ年計画で、四千億残っている中で千七百億で引き下がったのですか。できるはずでしょう。なぜあなたは一年でも早くやるという決意をしないのか、なぜあなたは早く決意をして早く予算を確保するということに努力しないのかと私は言うのです。なぜ、四十年四十年と、四十年以降にこの問題を繰り延べしているのか、なぜやらないのか。
  39. 石田礼助

    石田説明員 一体国鉄のいまの細密ダイヤ解消と申しましても、ある方面においては余裕があるが、ある方面においては非常な細密になっている。一番大きな細密ダイヤの中心をなしているのは、東京と大阪であります。この計画をまずもってつくらなければならぬ。これはあなた方が考えられるようになかなかそう簡単にはいかぬのです。たとえば東京駅と御茶ノ水の間の二キロ半の線路を増設するといったって、ほとんど不可能なんです。結局、一番危険の多いところはどこであるか、それを解消するにはどうしたらいいか、こういう計画を立てるべく――これはなかなか簡単にはいかぬですよ。いまもまだ国鉄にはほんとうの案はできていない、いま作成中である。そういう次第でありますから……。私が五月に国鉄総裁に就任して、七月ごろまでには予算を出さなければならぬというのに、どうしてできますか。これはできぬですよ。まあひとつ辻原さん、その点は御了承願わなければいかぬ。
  40. 辻原弘市

    辻原委員 それじゃ運輸大臣にお尋ねいたしますが、いま重大なことを言った。確かに総裁のおっしゃったとおり、非常な高度成長というこの池田政策によってのひずみが各方面にあらわれてきている。国鉄もついていけない。全く私はそのとおりだと思う。ところが、いまだに国鉄にはそれについていけるような、根本的な、過密ダイヤ解消輸送力を増強するための計画がないと言った。監督官庁のあなたがそれをお認めになりますか。そんな怠慢なことがありますか。
  41. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 私が総裁の言うことを認めるか認めぬかということでございますが、私は予算を獲得すべく万全の努力をいたしまして、しこうして現状の国家財政の許す範囲において最善を尽くした、かように考えております。なお、非常に国鉄事故を起こしまして国民に迷惑をかけたことにつきましては、私は重々遺憾に存じ、また皆さま方を通じて国民におわびを申したいと思っております。しかし、現在の三十九年度の予算におきましては、私は総裁の言うように危険があるとか、チャンスがあるとかいうようには考えておらないで、最善を尽して、迷惑をかけないように物心両面からできるだけの努力をいたしたいという考えでおります。どうか御了承願いたいと思います。
  42. 辻原弘市

    辻原委員 そういうことは了承できません。それじゃ運輸大臣、私は国鉄総裁の率直なことばを認めておるのだ。起こる潜在的要因というものは確かにある。だから何とかしたい。そうするとあなたはいま、そういう心配は要りません、国鉄総裁はそう言っているけれども、そういう心配は要らぬと言っている。もし起こったらあなた責任とりますか。
  43. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 もちろんとります。〔「どういう責任をとる。」と呼ぶ者あり〕ただ、いま起こっておらないことにつきまして、仮定でどういう責任をとるかということはお答えできません。
  44. 辻原弘市

    辻原委員 そういうのんきなことを言っておるから、事故が頻発するのです。しかも総合的な計画が、国鉄総裁の口をもってこの公式の場で、国鉄としては計画ができておらないのだ、そういうことを言わせる。全く運輸行政、なってないですよ。ただ口先だけで答弁すべき問題じゃない。誠意をもって、当然将来予想し得ることであるならば、率直に言っていいのです。そのほうが国民の共感を呼ぶんだ。重大な発言であるけれども、しかし現実に総裁をしてそう言わしめるほど、国鉄の現在の過密ダイヤ対策というものは進展をしておらないということなんです。しかしこの問題だけにかかずらわっておりましては進行いたしませんから、とにかくただいまの私と総裁のやりとりの中で、十分大蔵大臣総理もおわかりになったであろうと思うし、また運輸大臣も、答弁をうまくやるということだけではなくて、ひとつ真剣にこの問題については、新しい五カ年計画をつくってもまたぞろ計画を練り直して延ばさなければならぬというような無責任なことにならないように、保安対策それからダイヤ対策等万全を期してもらいたいということを、私は最後に、特にこれは運輸大臣と総理に、また大蔵大臣に伺っておきたい。  同時に、いまひとつ重要な点は、これは一般の国民に対して迷惑を与え、人命を棄損する重大な問題であると同時に、そこで働く従業員の方々にこの過密ダイヤの結果、非常な過重労働を与えておるということは事実なんです。国鉄には安全運転の規則がある、あるいはその他運転についての心得等等いろいろあるようであるが、すでに私の見るところ、限界にきていると思う。だんだん労働意欲が低下して、ますます肉体的にこの大切な運転事業に支障を来たすような状況に立ち至れば、それこそたいへんなことなんです。だから計画遂行の金の問題もさることながら、同時に運転要員その他従業員に対しての労働条件の緩和、労働条件の向上、安全教育、こういうことについては万全を期すべきであろうと思う。私は、さっき言われましたけれども保安対策費については十分でないと思う。数字上十分ではありません。三十九年までには一応計画は以前よりは少し増したけれども、四十年には先ほど述べましたように、かなり金が残っておる。その金を確保しなければ、所期の計画だってやれないわけです。そういう点に十分留意をして、少なくとも今後の対策を進めていただきたい。あらためて私は、それぞれの関係大臣である大蔵、運輸両大臣と総理にもその決意のほどをひとつお示し願いたい。
  45. 田中角榮

    ○田中国務大臣 国有鉄道に対する昭和三十九年度の財投予算を組みますときには、国有鉄道の当面する事情等十分考慮しながら、可能な限り最大の努力を払ったわけであります。御承知のとおり、いま国会で議論をされております国有鉄道の五カ年計画なるものには、事実二つあるのであります。その前段の一つは、政府が承認をした五カ年計画であります。この五カ年計画昭和三十九年度の予算を対比しますときに、一体所期の工程が進んでおるかといいますと、大体数字の上では五カ年計画は十分施行せられておるのであります。しかし、その内容を見ますと、御承知の新幹線の工事費が大幅に増額をいたしましたので、国鉄の当初の五カ年計画の、新幹線を除く部分の工程がおくれておるということは言い得るわけであります。でありますから、この五カ年計画の工程を遂行できるように、財政当局としても十分な配慮をいたしておるわけであります。しかし、新しくできました事態に対処して、国鉄は新たに五カ年計画を策定をせられて、いま御発言になっておるのは第二の五カ年計画の問題であります。この五カ年計画につきましては、政府部内としては調整をして最終的に決定をしたものではないのでありますが、事故等原因にかんがみまして、国鉄の増強等に対しては十分な配慮をしなければならないわけであります。でありますから、認めてない第二の五カ年計画ではありますが、しかも、その中の保安対策費につきましては、国鉄の要求どおり二百七億を一〇〇%予算化しておるわけであります。しかし、この第二の五カ年計画だけでも、一体はたして将来に対処できるかという新しい観点に立って十分に慎重に検討する必要がありますので、三十九年度予算が最終的に決定をしますときに、閣議で国鉄の基本問題調査会を新たに設けまして、長期の見通しを立てながら新しい観点で抜本的に検討をするという配慮をしておるわけであります。この問題調査会で十分各般にわたって長期の検討が行なわれるわけでありますので、この結果つくられる五カ年計画その他国鉄に対する財政計画に沿って、財政上遺憾なきを期してまいりたい、このように考えます。
  46. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 私は最善を尽して辻原委員の要望、さらに国民の要望にこたえたいと考えております。
  47. 池田勇人

    池田国務大臣 国鉄の事情は、国鉄総裁あるいは大蔵大臣が申し上げたとおりでございます。何と申しましても、過密ダイヤ原因東京、大阪における人口の非常に急速な増加によるのでございます。したがいまして、施設の改良拡充をはかることはもちろんでございますが、私はそれと同時に、東京、大阪の人口がこのままでいいかという問題につきまして今後検討して、そうして直接に国鉄の設備を拡充することと同時に、間接には過密ダイヤ過密人口ということも一緒に考えていきたいと思っておるのであります。しかし当面の問題といたしましては、やはり設備の拡張が必要でございます。そのお金をどうするかという問題でございます。これは財政投融資あるいは鉄道債の発行によってまかなうか、あるいはある程度来年、再来年において国鉄運賃についてどう考えるか、こういう問題がくると思います。何ぶんにも戦後、過去五回ほど鉄道料金を上げております。最近におきましては三十六年、その前は三十二年、その前は二十九年、こうやっておりまするが、何と申しますか、料金を上げましても、そしてまた鉄道収入がふえましても、やはり人件費の増高は非常に大きいのでございます。昭和三十二年の計画におきまして運賃を上げましたが、相当部分がやはり給料のほうに食われておる。三十六年のときもそうでございます。しかし鉄道従業員の生活を考えると、ある程度は上げなければなりません。そうしますと、計画の立ったときとその後における人件費等とのふつり合いというものが、ある程度鉄道の設備拡充に影響しております。ことに最近は新線の建設ということが非常な重何になったので、辻原さんのおっしゃるような状態が現出しておるのでございますが、国鉄総裁大蔵大臣の言うように、できるだけ早くこのひずみを解消すべく、あらゆる検討と努力をそそぎたいと考えております。
  48. 辻原弘市

    辻原委員 総理のいまの御答弁は、新幹線を除いても、他の改良に対する大蔵大臣の言われた五カ年計画に十分な予算を確保してそういうお話をなさるのなら、一応聞きましょうが、しかしながら金を出さぬでおいて、そうしてどっちに金が要った、こっちに金が要ったと言うことは、これは当たらぬ話です。それは言いわけにすぎません。だから、そういうことをおっしゃる前に、計画どおりきちっと金を出す――過密ダイヤ解消過密ダイヤ解消と言いながら、諮問委員会監査報告も、また国鉄総裁もそれを言いながら、肝心かなめの過密ダイヤ解消のための改良費が大幅に削減されておる。しかも保安対策費が四十年度においても百六十億も残を残しておる。鶴見の事故が起きなければ、おそらく大蔵大臣も百億の追加あるいは五百億の財政投融資というような問題について踏み切らなかったであろうと私は思うのです。事故が起こってあわてて、どろなわ式にあとで金の補てんをやっておるというのが、政府のやり方の実情ですよ。  時間がありませんからこれ以上申し上げませんが、ともかくそれぞれの所管大臣の言われましたように、事態を重視して、計画がまたまた繰り延べになるようなことのないように、われわれは十分その責任を果たしてもらいたいと思います。  国鉄に関する質問はそれで終わりまして、次に私は、炭鉱の問題についてお伺いいたしたいと思うのであります。  鶴見事故と匹敵して、たまたま時期を同じくして起きました三井の事故については、その後厳な政府による調査も、また民間による調査も行なわれましたが、私はこの事故の最大の原因というものは、企業内部における保安管理、それから保安に対する教育の不徹底、いま一つは救護隊の機敏にして即時即妙な態勢がなかった点があると思います。したがっていまの中小炭鉱、これは大手もまたそれに準じて、保安管理面が十分行なわれておるとは考えられません。したがってそれぞれの炭鉱、さらには金属鉱山を含めて、企業内における保安管理というものを義務づける必要があると思うのでありますが、それについて所管大臣はどうお考えになっておるか、お答えいただきたい。
  49. 福田一

    福田(一)国務大臣 昨年の暮れ、三池において大災害を起こしまして、まことに遺憾にたえないのでございますが、ただいまの先生の御質問は、各石炭鉱山その他の関係においても、いわゆる企業内部におけるところの保安についての体制が不十分であった、だから企業に対して保安を義務づけるということを考えてはどうかということでございます。われわれとしては、いままでの法律の関係においても、ある程度の保安の義務を義務づけております。山に、それぞれこういうことをしなければならない、たとえば機械設備はこういうものをつくる必要がある、あるいはその他の面においていろいろ義務づけておるのでありますが、それが不十分であるというあなたのお考えについては、われわれとしても十分今後対策を考えて、法律の政正あるいは行政面における監督の強化等々によりまして、十分辻原委員の言われる趣旨を実現いたしてまいりたいと考えております。
  50. 辻原弘市

    辻原委員 特に管理面において三井の際にはっきりわかったことでありますが、当然備えつけておくべき簡単な救命器具、たとえば一酸化炭素自己救命器といわれるもの、これは鉱山保安法によって当然備えつけるべきものなんですが、それすら備えつけておらなかったという点が、たまたま保安管理の不十分さと相まって事故をさらに大きくしたということが報告されておる。一体こうした当然備うべき機材器具あるいは救護のために必要な警報装置等については、どういう措置をその後においてしているか、このことを承りたい。
  51. 福田一

    福田(一)国務大臣 救命器具の問題でございますが、これは備えつけるべきであるということにいたしておったのでありますが、御案内のように、生産がなかなか間に合いませんで、急に一ぺんにこれを備えつけるということができないので、順次これを備えつける方途をとってまいりました。しかしながら、これが不十分であったことはまことに遺憾でございますので、私はあの事件が起きました直後に、三池において救命器具は全部必要量を備えつけなければいけないということを厳重に指令をいたしまして、そうして大体昨年の十二月末までに三万五千個の備えつけを終わっておりますが、なお、やはり炭坑に入る場合に必ず一つずつはそれを携行できるような数字にするには、どうしてもまだ二万五千個必要でございます。その二万五千個はことしの三月までに備えつけなければいけないという措置をとりまして、その後順次これを充実をいたしておりますが、大体ただいま海外から六千五百個ばかり輸入をいたしまして、国内の生産で一万八千余を生産をいたしまして、これを備えつけるということにいたしますので、二万五千個は今月末までに備えつけることができます。したがって合計六万個備えつけることになりますので、一応炭鉱における一酸化炭素に対する救命器具の充実は完了できると考えておるところであります。
  52. 辻原弘市

    辻原委員 本年度の保安融資を見ると、十三億五千万円ですか、その程度を考えておるが、この中で具体的にどういうことをおやりになろうとしているのか、またそれで十分であるのか、この点について承りたいと思います。
  53. 福田一

    福田(一)国務大臣 お説のように十三億五千万円予定いたしておりますが、そのうちの五億五千万は、保安のための無利子の貸し付けでございます。それから八億は利子のついた融資でございますが、御案内のように、石炭というのは会社が経営をいたしまして、そうして政府がこの経営に対しまして、保安については補助をしたり、あるいはまた融資をしたりする、こういうような考え方で処理をいたしておるわけでありまして、したがって、山自体といいますか、会社自体が保安に対して一生懸命努力をしてもらうことは当然でありますが、、それのみでは足りないので、その足りない分を国で補う、こういうたてまえに相なっておるわけであります。こういう意味合いにおきまして、十三億五千万円の融資をいたしますことによってその実効をあげてまいりたい、かように考えておるところであります。
  54. 辻原弘市

    辻原委員 その機材器具なんかについては、これは三十六年度単年度で、先ほどの一酸化炭素の救命具を五割補助をしておるようでありますが、生産が間に合わぬという点もあるが、しかし事態は急を要するので、これは間に合わなければ外国から輸入することもやむを得ないでしょうが、できれば、それについて破損することもありますし、あるいは大手等については何らの配慮もなされておらない、自己でやれるということなんだが、しかし最近の炭鉱状態から見ますと、どうも経営者はそういうことにあまり力こぶを入れたがらない、したがって国としてもただ単年度で一回きり融資をしたというだけではなくて、少なくとも全炭鉱を通じて一人に一つは完全に備えつける、あるいは警報装置も万全を期しておく、あるいは救護隊の編成その他について、行動が敏活にできるように、救護隊用のそういう救命具等々も、できれば国として何らか考えるべきだと思うのです。それはどうですか。
  55. 福田一

    福田(一)国務大臣 お説のとおり、一人に一個備えつけるというのも理想でございますが、実を言いますと、一人が一個持って炭坑へ入る場合でありますが、腰につけて下げて歩きますと、どうしても坑内で仕事をいたしますから非常に動揺が起きます、それが機材器具に損傷を与えるというような事情もございますので、そこで一定の場所に置いて、いざというときにはそれをすぐかぶれるような仕組みにしておるのが、いまの炭鉱の姿でございますが、しかしできるならば、一人が持って歩いてもだいじょうぶなようにすればいいと思いまして、そういうことについては、ただいま技術的にこの面は研究をいたさせております。それからいま仰せになるように、救助隊が入るときの施設等々につきましては、これは当然もう備えつけなければいけません。救助隊が何名おるか、その山によって相違いたしておりますけれども、それはもうそれに応じた分をちゃんと――それだけでない、そんな一酸化炭素の問題だけじゃなく、救助に必要な器具は備えつけるように、これはさせておるところでございます。
  56. 辻原弘市

    辻原委員 次に、炭鉱事故の一番多いのは、六〇%を占めている落盤だと思うのですが、落盤対策についてその後どういう検討をされておるか、具体的に、たとえば測定をするための研究施設あるいは器具、そういうものを保安対策上備えつけるというような考え方はありませんか。
  57. 福田一

    福田(一)国務大臣 落盤対策についてもいろいろ施策を講じておりますが、これはいささか専門的になりますので、政府委員から答弁をいたさせたいと思います。
  58. 川原英之

    ○川原政府委員 落盤対策につきまして、ただいまお尋ねのございました点につきましての、現在行なっておりますことをお答え申し上げます。  落盤につきましては、従来までもいろいろ石炭技術研究所あるいは資源技術試験所等におきまして、落盤をいかに防止するか、それから特に支柱、自走支保その他の研究によりまして、落盤の未然に防ぎ得る方法につきまして種々検討いたしておるのでございますが、なおこの問題につきましては、今後さらに保安教育を十分徹底させていく指導方針をもちまして、落盤の防止に万全を期したい、かように存じておる次第であります。
  59. 辻原弘市

    辻原委員 事故が勃発したときの、先ほどもちょっと触れましたが、救護隊の出動がどうも敏活でないという調査の結果が出ておる。同時に、救獲隊の日常におけるいわゆる教育訓練が、当然先ほど私が指摘した機材等の問題もありますが、そういった一連の救護隊の活動が即時行なわれるという体制が、どうもいまの保安の面から考えてみても少ないんじゃないか、足りないんじゃないか、不十分じゃないか、その点について一体どういうような対策を進められておるか、教育訓練が徹底しているか、機材がどうか、もう一度お答え願っておきたいと思います。
  60. 福田一

    福田(一)国務大臣 お説のように、いざ事故が起きた場合の救命の完備というのは、救命隊の活動を充実するということが非常に大事でございます。そこで実を言いますと、三十九年度からは各山ごとに、一年間の保安対策の内容を全部きめまして、そしてそれに対してわれわれとしては抜き打ち的に監督をしていくというふうに、保安については特に力を入れて今度は充実をいたしてまいるつもりでありますが、その場合において、その一年間の保安対策の中において、いわゆる救助隊の活動についてどういうような施策をいたしておるかということも十分検討いたさせたいと思っております。いままでもちゃんとそういう救助隊というものが編成されておりますが、しかし人数の点、あるいは機械器具等の点において、あるいはそれほど十分でない面のあったものもあると思うのでありますが、こういうものについては、ひとつ今後は十分その監督を強化いたしてまいりたい、かように考えておる次第であります。
  61. 辻原弘市

    辻原委員 鉱業法、石炭鉱保安規則、それの改正をいま検討されておるやに聞いておりますが、その改正にあたってやはり必要なことは、わが国の過去におけるいろいろな経験とまた現実に起きた事故等の、そういう経験にかんがみて不備を補正していくということ、これももう当然であります。同時に、先進諸国の間では日本ほど最近頻発しておりません。一体どういう保安管理をしてやっておるかというようなことについて、あまり各国の実情調査をやったことがないように私も考える。もちろん政府としても、関係当局はある程度の調査なり派遣をやっての視察もやっておるとは思いますけれども、この際思い切って、先進諸国の最近における実情等を調べるために、海外の調査をやるというようなお考えはないかどうか、その点についてお聞かせを願いたい。
  62. 福田一

    福田(一)国務大臣 鉱業法の改正におきましては、保安の点を実は特に重要視いたしまして、いままで資力のないようなものがよく鉱山をやったりいたしますが、その結果非常に災害を起こしておるということもありますので、そういう点等も欠格条項の中に入れるというような、その他ございますが、いろいろ実は考えて、鉱業法の改正の案をただいま国会に提案をいたしたところでございます。  なお、鉱山保安のほうにつきましても、今後われわれとしてはこれが改正を意図いたしておるのでございますが、あなたの仰せになったように、いわゆる鉱山保安について海外の法制等も十分調査し、またその法制の実施状態等も十分調査をするということは、非常にけっこうなことだと考えます。政府といたしましては、大体この五月ごろに調査団を海外に派遣いたす予定で検討しておる次第であります。
  63. 辻原弘市

    辻原委員 この問題に関して、最後に労働大臣にお伺いをしておきたいと思うのでありますが、それは労働災害いわゆる産業災害についての所管は、今日労働者の立場に立つ労働省がおやりになっておる。われわれもそのことが非常に適切だと考えております。ところが鉱業法に関する、いわゆる鉱山保安に関する行政が通産省にあるために、鉱山労働者についての産業災害等は、これはひっくるめて通産省の所管になって、いわば産業災害、労働災害についての行政が二元的になっているきらいがあると思うが、私は先般、これは昨年の通常国会でありましたが、産業災害防止に関する法律案が提案されました当時、われわれもそういう主張をいたしましたが、今日においてもそのことは是正されておりません。やはり経営管理という面から所管をする通産省の労働災害の取り扱い方と、それから労働者の福祉、労働者の保障という面からこれを取り扱う労働省の立場とは、デリケートに相違が生まれてきておる。こういうことが現場の労働者の間において強く言われておるわけです。したがって私は、政府としてこれを労働省に一元化をすべきだという見解を持っておりますが、労働大臣はどういうようにお考えになりますか。
  64. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 御質問の、鉱山における保安行政の所管の問題でございますが、終戦直後におきまして労働基準法が制定されました当時は、鉱山保安をも含めまして、産業安全の問題は、労働基準法によって労働省で所管するという考え方に立っておったようでございます。しかし、わが国におきましては、戦前から鉱山保安については通産省で所管をしてまいりました沿革もございますし、新しい基準法のもとにおける保安行政をどうするかということは、いろいろな角度から検討されました。その結果、当時の石炭増産の必要性等も理由になったことと思うのでございますが、現行のように決定を見た次第なのでございます。最近におきまして、特に三井の事故を契機といたしまして、この問題について重ねて労働省に一元化してはどうかという議論が展開されておるのでございますが、この問題は、私ども労働省といたしましても十分に研究する必要のある問題である、かように考えておるのでございまして、通産省ともいろいろ相談をいたし、最終的な結論を得るようにいたしたいと思っておるのであります。ただしかし、現行法の実施にあたりましても、鉱山保安につきましては労働省に勧告権が認められておりまして、労働省といたしましても鉱山保安につきましては常に関与いたし、また、労働省の立場からする勧告をときおり実施いたしておりまして、連絡には遺憾なきを期するようにいたしておるのでございますが、今後とも一段と連携を密にいたしまして、災害の阻止に万全を期したいと考えております。
  65. 辻原弘市

    辻原委員 鉱山災害等についての私の質問はそれで終わります。  次に、外交の問題につきましてお伺をいたしてまいりたいと思います。  第一に伺っておきたいのは、時間がありませんので多くの問題をお尋ねするわけに参りませんから、日韓の交渉の問題につきまして一、二点、総理並びに外務大臣に見解を尋ねておきたいと思います。  最近伝えられる情報によりますると、どうやら漁業交渉がかなり暗礁に乗り上げて、先方の希望としても、これを政治会談に移してもらいたい、こういうことか言われておるようでありますが、政府としては政治会談を早急に開く、そういうお考えをお持ちかどうか、この点を承りたい。
  66. 大平正芳

    ○大平国務大臣 御指摘のように、一昨日先方から、ただいま行なわれておる予備交渉がどうもマンネリズムにおちいっている懸念もございまするので、より高級な会談に切りかえることを考えていただけまいかという申し入れがございましたので、政府部内におきましても、ただいまその申し入れを受けて検討いたしておるところでございます。
  67. 辻原弘市

    辻原委員 早急に応ずる用意があるかということをお尋ねしたのです。その点については検討中だということでありますが、基本的には応ずるお考えあり、こういうふうに理解をしてよろしいか。
  68. 大平正芳

    ○大平国務大臣 そのより高級の会談というのをどういう形のものにするかという点もあわせて考慮中でございまして、ただいまの予備交渉のレベルにおけるままの姿においていいとは考えておりませんで、何らかの打開を考えたいと思っておりますが、その打開の方法、時期等につきましては、せっかくいま政府部内で検討中ということでございます。
  69. 辻原弘市

    辻原委員 漁業問題はあくまで、これは現在やっておる交渉が専門委員会と名がつけられておるとおり、いわゆる専門的な事項なんだ。しかも、その中には筋の通らない李ラインの重要な問題を含んでおる。だから、われわれは専門委員会において当然このことを合理的に結論を出す。やるならば合理的にわが方の主張を通していくということが筋だろうと思う。  ところが、政治会談というようなことになりますると、何か国民に与える印象というのは、どうもまたまた日韓交渉自体が、ややこしいその政治的交渉の結果、筋の通らない、いわゆる請求権の問題の解決が出た。漁業問題もまた同じような形でうやむやに、日本国民の希望が貫かれないのじゃないかという危惧が出てきておると思うのです、そういう筋の通らないいわゆる政治会談ということは、私は慎重に考えるべきだと思う。そういう国民に対して将来不信を与えるような考えは毛頭ありませんですね。これは私は念を押しておきたいと思うのです。
  70. 大平正芳

    ○大平国務大臣 御注意を受けるまでもなく、予備交渉であろうと政治交渉であろうと、たびたび申し上げておりまするように、納得の参る合理的な内容のものでなければならぬことは当然でございまして、いまお示しの趣旨は、十分私どももそのように心得てやっておるつもりでございます。また、やってまいるつもりでございます。
  71. 辻原弘市

    辻原委員 そういうような国民に不信感を与えたり、また筋の通らないような解決をする心配はないといまおっしゃったわけなんだが、私は、そういうつもりならば、あえて政治会談などというものはやる必要がないと思うのです。その点はどうなんですか。どういう目的で、どういうつもりで一体政治会談をあなた方は検討されておるのか。検討される限りおそらく応ずると思うのですが、それは一体どうなんですか。
  72. 大平正芳

    ○大平国務大臣 会談をどういうレベルで、どういう時期に、どう行なうかということは、これは外交技術の問題でございまして、あなたが言われたのは内容の問題でございます。内容につきましては、たびたび申し上げておりますように、国民の不信を買うようなことは、御指摘を受けるまてもなく、私どもがやっちゃならないことでございますので、十分その点は心得てやるつもりでございます。  どのような会談の進め方をするかという技術問題は、政府におまかせをいただきたいと思います。
  73. 辻原弘市

    辻原委員 それでは、こういうふうに確認をしてよろしいのですね。要するに、今後の会談をどう進めるかということが政治会談の主題である。あくまでも具体的内容については当初の方針どおり専門委員会でこれを扱っていくのだ、こういうように理解してよろしいのですね。いまの外務大臣の答弁はそうですね。
  74. 大平正芳

    ○大平国務大臣 内容につきましては、たびたび申し上げますように、御納得のいく合理的なものにということを心してやってまいるわけでございます。これはどういう名前で呼ばれる会談であろうと、一貫した心がまえでなければならぬわけでございまして、それを踏みはずすようなことは絶対いたさないつもりでございます。
  75. 辻原弘市

    辻原委員 その点については、これは農林大臣が所管をされて進められておるのでありますから、いま外務大臣はおおむねの方向を言われた。今後の進め方については政府会談の議題になるであろうが、内容についてはこれはやはり専門的に検討すべきだ、ということであります。そういうような前提に立って、あなたもその検討に加わられておるのかどうか、お伺いいたしたい、農林大臣。
  76. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 外務大臣がお答えしましたように、政治会談に移すか移さないかということにつきましては、なおまた話し合いをしておりませんが、移すといたしましても、専門的な立場と同じような筋の通った立場で話をつけていかなくちゃならぬ、こう考えております。
  77. 辻原弘市

    辻原委員 いろいろお伺いいたしたいのでありますが、この問題はまた別の機会に十分ただしてまいりたいと思います。  そこで、次に私は問題を変えまして、賠償等に関する問題についてお尋ねをいたしておきたいと思うのです。  外務大臣にお尋ねをいたしますが、第二次世界大戦に関したわが国の賠償は、これはもう済んでおりますか。これは大蔵大臣にも関係あると思いますが、賠償はもう全部済んでしまったのですか。これは支払いを意味するのではなくて、賠償の交渉についてはもう全部済んでしまったのですか。
  78. 大平正芳

    ○大平国務大臣 そのように私も了解いたしております。
  79. 辻原弘市

    辻原委員 そういたしますと、いま行なわれておるマレーシアとの交渉は、これは一体何の交渉ですか。
  80. 大平正芳

    ○大平国務大臣 これは、賠償交渉ではございませんで、シンガポールと日本との間の将来の友好親善のために、いまある事態を改善するためにある程度の見舞い金的な措置を考えてはどうかという意味の交渉でございまして、あなたが言われましたいわゆる賠償交渉であるとはこちらも思っておりませんし、先方もそのようには了解いたしておりません。
  81. 辻原弘市

    辻原委員 どうもあなたのおっしゃることは常識的に理解できませんが、見舞いというのは何による見舞いなんですか。あなたはいま見舞い金的な云々と言われたが、何による見舞いですか。
  82. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私どもが了解をして行なっております交渉は、御承知のように、日英間にはいわゆる賠償問題はないわけでございまして、賠償問題は最終的に解決したということは日英間もそう了解いたしておりまするし、マレーシア連邦当局もそう了解しておりますことは、先ほど申しましたとおりでございます。いまやられておりまする交渉は、いわゆるゼスチュア・オブ・アトンメントと申しまして、アトンメントというのは何でも宗教上のことばでございまして、ある一種の罪の償い的な行ないをいうそうでございます。  私どもといたしましては、たくさんの方々がマレーシアをめぐりましてなくなられた。そして、その白骨がたくさん出たとかというような痛ましい事件がございまして、現地の華僑総会を初めといたしまして、この問題が不幸にして取り上げられた。これに対して、こういういまわしいことは双方将来のために何とかケリをつけようじゃないかというお話がございまして、どのような形のものにするか。こういうことがあることは両国の将来の親善のためによくないことでございますかう、何らか現実の問題として解決をせねばならぬ。しかし、これは賠償ではない。何らかの将来のために、両国親善のために日本はアトンメントの措置をしましょう。そして、先方もそれについて検討しよう。こういうわけでございますので、日本立場といたしましても、あるいはまた先方の立場といたしましても、あなたが御指摘のように、これは賠償ではなくて、そういう現実に不幸な感情がありますことを、将来の親善関係のために何らかの措置を講ずることによって解消しようということを話し合っておるというのが現状でございます。
  83. 辻原弘市

    辻原委員 交渉する場合に、両国の親善関係を将来に向って取り結ぶという前提のない交渉というのは私はないと思う。  問題は、私がお尋ねをした、いま行なっている交渉は一体何か。あなたはこれを見舞い金程度のことを云々と言われたが、その見舞い金をやる前提というか、いまあなたが何か英語で言われたが、そうなんでしょう、前提がある。その前提は、あなたがいまここで言われた罪の償いだ。それは何の罪の償いですか。賠償というのは、戦争によって引き起こしたその当事者に与えた被害あるいは苦痛、こういうものを償うのが賠償でしょう。いま行なわれている交渉はやっぱり罪の償いだ、こう言っている。一体何の罪ですか。同じじゃありませんか。どうなんです。お答えを願いたい。
  84. 大平正芳

    ○大平国務大臣 権利とか義務とかいう問題ではなくて、華僑の虐殺問題というようなものがずいぶん長い間たって出てまいる形跡が出てまいりまして、華僑総会等でこれが問題になりましたので、現実の問題として何とか解決せねばならぬという、現実の必要に迫られたわけでございます。賠償の権利として要求する、あるいは義務として履行する、そういう性格のものではないわけでございます。
  85. 辻原弘市

    辻原委員 確かにあなたのおっしゃるとおり、シンガポールは、当時はイギリスの保護領であったために、サンフランシスコ条約においていっておる賠償権は放棄しておる。しかしながら、その後に華僑総会から要求をしてきている事実は、これは戦後中シンガポールに駐留をした日本陸軍によって先方の国民に与えた苦痛、被害、これに対してその罪を償え、こういう趣旨のものなんでしょう。だから、法律上われわれが義務づけられた賠償ではないが、しかしながら、その行為自体は戦時中の罪に対する贖罪、すなわち賠償という形の性格をもって今日交渉を行なっているのでしょう。それはどうなんですか。
  86. 大平正芳

    ○大平国務大臣 賠償的な権利として要求されておるものでもなく、義務として感じておるわけでもございませんが、先ほど申しましたように、あの地域と日本との将来を考えて、そういう感情がいつまでもあるということはよくないことでございまして、これを現実に何とか処理しなければならぬという現実上の必要がございますので、権利義務の関係としてではなくて、現実にその事態を収拾して両国の将来の友好関係を確保しよう、こういう趣旨のものでございまして、あくまでも権利と義務の関係ではないという趣旨のものでございます。
  87. 辻原弘市

    辻原委員 私も、戦争中に日本軍及び日本人がそれぞれの国に対して、また国民に対して与えた損害というものに対しては、これは誠意をもって正当なものであれば償うべきだと考えておる。また、わが党もその考えに立っておる。しかしながら、当然それはそれぞれの国との間の折り目を正した正式な姿においてこれをやらなければならぬ。一体そのことの行為自体が、賠償であるのか、あるいは他の何であるのか不明確のままの形でやったのでは、これはどこからでもそれに類似するような文句がつく。他に波及する心配もある。したがって、そういう交渉をおやりになるときは、一体その交渉は何であるかを明らかにすべきだ。  だから、私はその意味においてお尋ねするのですが、いま、どうも賠償であるかのごときないかのごとき、権利義務はないけれども、賠償的性格を持っておる交渉のようにお話しになりました。だから、権利義務は伴わぬが、しかしながら罪を償うという意味において賠償的な交渉である、こう理解してよろしいか。ないしは、そうではないんだ、ただ将来に向かって親善関係を取り結ぶために必要な経済協力等を前提とした話し合いである、こういうようにお考えになっておるのか。私は、はっきりひとつお答えをしておいていただきたい。
  88. 大平正芳

    ○大平国務大臣 賠償的なものであるという了解でやっておるわけではございません。やらなければならぬものではございませんが、いまあなたが御指摘のように、両国の将来の親善友好関係にかんがみまして何らかの措置をしておくほうがベターであるという観点で考えておるわけでございまして、あなたが後段に言われた両国将来のために、経済協力というような形で何らかの措置をして、そして先方もそれを了解されるということになってまいりますことも一つの解決方法になると私は思います。
  89. 辻原弘市

    辻原委員 そうしますると、公式的には、両国の親善のために将来に向かって何らかの措置をしておくべき必要がある、そのための経済協力等も含んでの交渉だ、こういうことなんですね。そうだとするならば、私が先ほども言ったように、当然罪は罪として償うべきだ。あとくされがないように、当然そういう問題を両国民の感情の中に残しておくということはいけない。筋の通ったものであり、具体的事実をもって提示してくる場合は、それは当然大いにその罪を償うという態度で検討すべきだと私は思っている。しかし、いまの外務大臣のお話では、将来に向かっての話だけなんです。過去においての罪をお互い日本人がどう償うかについては何らこの問題は含まれていないというような公式的な答弁があった。そうなんですか。そういうことについては全然考慮されないんですか、公式的には。罪の償いについては一体どうなんです。罪を償うという意味において、含まれているのですか。
  90. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私どもは、第二次世界大戦という不幸な戦争を通じまして他国に与えました物心両面にわたる御迷惑ということに対しましては、十分の反俗の上に立って戦後経営に当たらなければならぬことは、あなたが御指摘のとおりでございます。ただ、このことは、平和条約等の形におきまして、権利とか義務とかいう姿においてあらわれたものはそういう姿において解決をするわけでございまするが、いま御指摘の賠償というように化体されたものにつきましては、日本政府もそのように処理をいたしまして、先ほど申しましたように全部お約束済みでございまして、すでにその約半分は支払い済みであるという状況でございます。しかし、それだけでわれわれの反省の実が満たされたかと申しますと、決してそのようには考えていないわけでございまして、私ども、この深い反省の上に立ちまして各国との新しい友好関係を打ち立ててまいることが新しい日本をつくる上においての根本であるという御指摘につきましては、全く同感に存ずる次第でございまして、そういう気持ちに立ちまして、賠償にあらざるものにつきまして具体的に現実にそういう問題が起こりました場合、最大の反省の上に立ちまして現実の処理をして、将来の友好を確保しようとせっかく考えておる次第でございます。
  91. 辻原弘市

    辻原委員 時間を多くかけるわけにいきませんから、それじゃ、いまの外務大臣の御答弁を私はこう受け取りました。それは、平和条約十四条(a)(b)に基づく権利義務を伴う賠償行為ではないけれども、いまあなたは反省ということばを使われたが、その反省の上に立ってということは、先方が要求するその具体的事実を認め、それを中心の主題として、何らかの方法で、いわゆる金を支払う方法の名目、これは何らかの方法で解決をしたいというのがマレーシア交渉である、こう理解してよろしいね。
  92. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私が申し上げておりますのは、日英間の賠償の問題は権利義務の問題としてはないということでございまして、それから、マレーシア当局も日本に賠償請求権があるとは厘毫も考えていないわけでございます。問題は、賠償にかかわる問題としてではなくて、賠償は放棄した先方の立場であるけれども、戦後になりまして、戦争中のいろいろの事件の形跡が出てまいりました等から、一部の方々によって、何らかそれに対して日本政府が反省の火を示すべきじゃないかという議論が出てきたことも事実でございます。そこで、私どもは、両国は将来長きにわたって友好関係を続けてまいらにゃならぬ間柄にあるわけでございまして、そういう感情をいつまでも残しておくことは現実の問題としてよろしくないことでございまするので、将来の友好関係を確保するために、日本として何らかなすべきことがあって、先方もまたそういった感情が解消されるような方法がありはしないかという方途につきましていま交渉をいたしつつあるわけでございまして、どうするとまだきまったわけではございませんけれども、私が申し上げるところからおくみ取りをいただきたいと思います。
  93. 辻原弘市

    辻原委員 どうも私は、あなたのように鋭敏じゃないので、持って回ったような話はなかなか理解ができません。そこで、いまあなたの言われた中で、反省すべき何らかの事実が出てまいったので云々ということは、具体的には、私どもが聞いておる、まずシンガポールにおいて華僑総会があげてまいった事実、七千五百名にわたる当時の華僑を中心とした人々に対する日本人の虐殺事件、いま一つは、当時日本軍が、これまた中国人を中心として日本に奉納金を要求をして、五千万マラヤドルの徴発をしたという事実、これが華僑総会のあげている二つの事実ですね。それが反省すべき何らかの事実でありますか。
  94. 大平正芳

    ○大平国務大臣 第二次戦争全体につきまして、この不幸な戦争がもたらしたもろもろの結果につきましては深い反省の上に立って戦後処理をやらなければならぬということを私は申し上げたわけでございまして、反省すべきことは無限にあると思いまするが、ただ、いま申し上げておりまするのは、マレーシアと日本との将来の友好親善関係を保障するために、確保するために何らかの措置をやる、そうすることによって過去のいろいろな感情というものがなくなることをわれわれは期待しつつ、そういう交渉をやってみようということを試みておるわけでございまして、ただ、まだこういうことをやるんだときまったわけじゃないのでございます。
  95. 辻原弘市

    辻原委員 それならば、ちょっと問題を私は別の角度に向けてみましょう。いまあなたは、私が、具体的に反省すべき事実が出てきたとおっしゃったら、その事実はこれですかとお尋ねをしたならば、いまのお答えは、あながちシンガポール、マレーシアに限ったことではなく、大東亜戦下各地で与えた人的、物的の被害というものはたくさんあります。いわゆる反省すべきことがたくさんございます、だから、そういう反省すべきことを、その各地にあるものをそのつど必要なものについては交渉に移していく、そういう立場から、マレーシア、シンガポールの問題もその一つとしてやるんだというふうにいまお答えになった。これは私の解釈です、あなたのことばはわかりにくいので。そうですが。だから、マレーシアの問題、シンガポールの問題だけでなくて、そういう反省すべき事項は大東亜戦下各地に存在しているという事実をあなたはお認めになっておられるのですね、それは。
  96. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私が申し上げておるのは、再びこういう戦争があっちゃならない、われわれは大いなる決断をもって平和の日本を打ち立てようという決意をしたわけでございまして、こういう戦争を再びしないために不動の決意をして、そして新しい日本の建設というものにいま当たっておるわけでございます。私が申し上げたのはその趣旨でございます。そして、いま御指摘のマレーシアに起こりました事件につきましては、賠償の問題はない。ただ、そこに戦時中に起こりましたことの形跡が出てまいりましたことにからんで、現地の一部の方々から何らかの日本側が措置をすることが望ましいという意見がございました。私どもといたしましては、マレーシアと日本との将来の友好関係を確保するためには、将来にわたって日本はこの際何か措置をする必要がありはしないか、そういう観点に立ちましていま交渉をいたしておるわけでございまして、あなたが御指摘のように、経済協力によりまして先方のそういった感情も解消するということになれば、これも一つの解決の方法であろうと存じておるわけでございまするが、まだどういう方法によるかはきまったわけではないという状況です。
  97. 辻原弘市

    辻原委員 まことに答弁があいまいでわかりませんが、何かをしたい、それは私もわかっておるのです。その何かをしたいという前提は何だ。具体的に言えば、シンガポールの虐殺事件について、あなたは一部の人だと言われておるが、すでにこれはマレーシア政府日本との正式交渉になっているでしょう。それを否定しますか。問題は、そういう事実をあげて、そういう華商総会が問題をあげて、それがシンガポール首相リー・クワンユー氏の取り上げるところとなり、問題はそれから発展したんでしょう。だから、いま交渉は一部の人と交渉をやっているんですか、どことやっているんですか。それじゃまずそのことをお伺いいたしましょう。一体交渉はだれを相手にしてやっているのか、個人を相手か、国が相手か。
  98. 大平正芳

    ○大平国務大臣 マレーシア政府とやっております。
  99. 辻原弘市

    辻原委員 そうでしょう。そうすると、マレーシア政府が取り上げて交渉が提起された、その前提があるはずなんですが、その前提は何か。私が先ほどお伺いしたように、当初提起をされた問題は、シンガポールの虐殺事件と、それから奉納金の問題ではないか。それが前提となってこの種交渉を行なうということは、反省をする必要があるということはその当時の罪に対して贖罪をするという必要があるということと同じではありませんか。そのことをあなた方は認めておるのですか、おらぬのですか。その事実をまず――それじゃもっとこまかく聞きましょう。そういう事実があったということを提起されておる。その事実に対して日本は事実があったということを認めておるのかおらないのか、これが一つ、それを答えてください。
  100. 大平正芳

    ○大平国務大臣 そういうことが先方の一部の方々によって指摘されておることは事実でございますが、それが具体的に正確にどういう事実であるかまで私どもは一々検証しておりませんが、しかし、そういう一部の方々から、こういうことがあった、こういう姿においてあったということが指摘されているということは、事実でございます。
  101. 辻原弘市

    辻原委員 非常にその点はあいまいなんです。事実が認められないものなら、私は交渉は起こってこないと思うのです。だから、事実がまだ確認できないということであれば、それは調査の段階でしょう。しかし、一般に伝えられておるところは、調査の段階ではなくて、具体的にどうするか、交渉に入っておる。あなたも言われたでしょう。どうするかが必要である。必要であるという結論を出すためには、その前提である事実が事実であると確認されなければ、何かしなければならぬという答えは出てこないじゃありませんか。事実を認められておるのですか、おらないのですか。私はこまかいことを言っているのじゃありません。七千五百名と向こうは称しておるが、いやそれは若干少ないと思うとか、金額の点について若干の相違があるとか、こういうことを言っているのではない。その事実、虐殺をした、奉納金を徴発したという事実を日本が認めておるのかどうか、こう言っておるのです。もう一度お答え願いたい。
  102. 大平正芳

    ○大平国務大臣 それは、先ほど申し上げましたように、その事実を一々検証いたしましてそれが歴史的に全部が真実であったかどうかまで、私は検証しておりませんので、日本政府として、それは事実でございますと申し上げるまでの自信はございませんが、ただ、先方の一部の方々からこういう姿において虐殺事件等が行なわれたということが言われているという事実は私ども認めておるわけでございます。そして、そういうことが先方の方々によって指摘されておる事実がございますから、そういう事実がいつまでも指摘されておるような状態ではマレーシアと日本との将来の国交関係においてよろしくありませんので、何らか現実にこの問題を処理する必要はありはしないかと考えておるわけでございます。
  103. 辻原弘市

    辻原委員 後宮局長に聞きますが、新聞に伝えられるところによると、アジア局長が現地に飛んでいって交渉に参加しているということが伝わっておる。そうすると、いま外務大臣の言われたように、この問題の段階は、先方がかくかくの事実があるということを指摘する段階であって、日本側はそのことについては検証もまた調査も確認もしておらぬ、こういうことで現地での交渉に入っておるのか、先方もそういうような態度を了解して交渉を進めておるのか、この事実を明らかにしてもらいたい。
  104. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 先ほど大臣から御答弁がございましたように、先方から残虐事件等についての戦争中の事柄について指摘がございまして、最小限度向こうがそういう主張をしている以上、そうして、そのためにああいうシンガポールにおける対日ボイコットの動き等も出てきましたために、とりあえずこれを交渉として取り上げたというのが事実でございます。
  105. 辻原弘市

    辻原委員 私は常識的に伺っておるのですよ。というのは、これは実際最終的に交渉が妥結をすれば何らかの形で金を支払うのでしょう。金を支払う場合にその事実の確認を行なわないで、これは不確かな情報でしょう。わが方がそれを確認せざれば、それは単なる情報でしょう。そういう情報に基づいて金を支払うというような交渉がありますかと言っておる。常識的には、その事実の確認が終わって、少なくともそれがあったという事実、数量があるいは人員がどの程度であったかということは別にして、その行為があったという事実の確認が双方の上にこれがはっきりして、それが前提でなければ金なんぞ払えぬじゃありませんか。われわれは罪を大いに償うべしと言っておる。はっきり罪は償うべし、しかし、その前提には、われわれは事実をすなおに率直にはっきり認めて、その上で正当な罪の償いという形における交渉をやり、妥結をするのが筋道だと言っておる。外務大臣の言っておることはまことに芒洋、芒としていますよ、あなたのは。もう一ぺんお答えを願いたい。
  106. 大平正芳

    ○大平国務大臣 全然根も葉もないところにこう問題は起こらぬと思います。いまあなたが常識的と言われたのは、先方の一部の方々がそういうことがあったということを指摘されておる以上は、何らかのことが私はあったと推定されると思うのでございます。ただ、私が申し上げているのは、そういうことが指摘されて、長くそういう状態が続いておりますことは、何国の国交から望ましくない状態でございますので、現実の問題としてこれは何とか処刑しなければならぬ、こういうことを申し上げておるわけでございます。先方も、くれぐれも申し上げておきますが、それは権利として要求するわけじゃないとはっきり申しておりまするし、マレーシアと日本との将来の上から何らかひとつ処置を考えようじゃないかと、そういう先方もきわめてもののわかった態度に出ておるわけであります。
  107. 辻原弘市

    辻原委員 それじゃもう一つ私は伺うが、先方ももののわかったと言われておるが、その事実については、推定ということで、こちらが確認もしないで、しかも、これは罪を償うもので賠償的なものではありませんと言っているあなたのそのことを先方も完全に了解をして話しを進めておる、こう理解してよろしいか。
  108. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先方も、これは日本との間の賠償問題はないということ、これははっきり了解いたしております。  それから、第二点として、何らかのその事実を一々お互いに検証してみようじゃないかというふうなことは申しておりませんで、一部の団体がそういう事実を指摘しておる、そして現にシンガポールにおいて荷役をやめる云々というような問題も起こったというようなことは、両国の関係によろしくないから、そこで、何らかの分別を出してみようじゃないかという、きわめて常識的な、きわめてもののわかった態度でおります。
  109. 辻原弘市

    辻原委員 それでは、もう一つ私はお伺いをしておきますが、シンガポールの華商総会が言ってきたことは、いま言った二つの事実、これは、外務大臣も、確認じゃないが、おおむねそういう事実があったらしいという推定の上に立って交渉に入っている、こう言われておる。そこで、現地の伝うるところによれば、当初は、先ほど私が言ったように、華商総会の問題をシンガポール市として取り上げて、これをイギリスに持っていったところが、イギリスは、あなたの言われたとおり、すでに賠償権は放棄している。請求権は放棄をしている。そこで、直接現地の総領事館との交渉という形からだんだん発展してきた。その後さらに問題は、マレーシアが独立をいたしましたという関係もあって、マレーシア政府が、いまあなたの言れたように窓口になっている。ところが、交渉をだんだん行なっていく過程に、さらに現地でもう一つの事実を指摘した。それは、ビルマからタイにわたる鉄道建設、俗にいわゆる死の鉄道建設と言われている泰緬鉄道に関する一万二千名の虐殺事件、この事件を先方が強くこれを取り上げた。この事実は一体どうなんですか。これはお認めになっておりますか、推定をしておりますか。
  110. 大平正芳

    ○大平国務大臣 マレーシア政府ができましてから、先ほど申しましたように、この問題はあげてマレーシア政府日本政府との問題になってきておるわけでございます。そして、マレーシア政府の了解といたしましては、これは賠償交渉ではないということはたびたび申し上げたとおりでございます。それから、いま御指摘のような事件を持ち出してお互いにそういうことがどういう形において現実にあったのかひとつ検証してみようじゃないかというお申し出も先方からございません。問題は、マレーシアと日本との将来のために何らか分別を出してみようというので、先ほど私がたびたび申し上げておるとおり、それ以上のものではないのでございますので、御了承いただきたいと思います。
  111. 辻原弘市

    辻原委員 そういたしますと、一万二千名の強制労働に基づく補償をせよということを現地で言っている。しかし、そういうようなことを対象にしては交渉は行なっておらないということですね、外務大臣。
  112. 大平正芳

    ○大平国務大臣 対象にしてはと申しますか、そういう一部の団体において指摘されておるようなこと、そういうことも考慮に入れてゼスチュア・オブ・アトンメントということを考えてみよう、くふうをこらしてみよう、こういうことでございます。それを対象にして、それを分析して云々と、そういう性質のものとは私は心得ておりません。
  113. 辻原弘市

    辻原委員 それならば、外務大臣、そういう事実をあげて、対日感情が非常にまずくなり両国将来の親善に非常に傷がつくといったような場合は、かりに日本側がそれを確認できずとも、現地においてそういうことを取り上げて日本政府に迫った場合は、今回のマレーシアの問題と同じように日本側としては検討に応ずる、こういう態度ですね。なぜかというと、私は、たとえは心配することが一つある。罪は罪として当然日本側は償い、親善関係を確保していくということは当然だし、われわれもそれにやぶさかではない。だれも支払っちゃいけないとか言っているわけではない。しかし、そのことは、相手国の国民にも、この金は当然戦時中にわれわれが犯したその罪の償いですよ、そういうことをはっきりさして、将来にわたっても了解をきちっとして問題を残さない処置をこういう問題についてはとるべきだ、こう考えているから、あいまいもことした形で、いわゆる日韓における政治会談のごとく、何が何だかはっきりわからぬままに何とか解決をしたという政治的解決をのみはかるものではないと言っているのです。たとえは、南ベトナムの問題については、賠償は、先ほども言われたが、終わっておる。確かに、ベトナム賠償において、これは三十五年からすでに支払いを開始しておる。当時の交換公文を見れば、賠償はすでに終わったということを同国が確認しておる。ところが、シンガポールの問題、マレーシアの問題にいたしましても、さっきからあなたの言われているように、これはいわゆる法的根拠を持たざる賠償的要求なんです。とするならば、現実の問題として、あのベトナム賠償のときにわれわれが声をすっぱくして指摘をしたように、実際私どもが罪を償うその必要のあるのは、地域的に考えれば、南ベトナムでなくて北ベトナムにある。日本人の与えた被害というもの、損害というものの高から考えてみれば、むしろ北ベトナムにそのウエートを置かなければならないが、なぜ南北統一を待たずに南ベトナム政府を相手にしての交渉でもって賠償問題を終わるのか、こうわれわれは主張したはずなのです。いまベトナムの政情というものは皆さん御存じのとおりだと思う。すでにベトコンが全デルタ地帯の三分の二を占め、現実の南ベトナム政権は点を確保しているのにすぎないとすらいわれている。もし、そういう政情の中から、具体的事実をシンガポールのごとくあげて、将来日本政府に迫ったときに、一体政府としてはどうするか。両国の親善あるいはそういう事実に対してやはり反省しなければならぬという前提でその交渉に応じますかと私は言っている。どうなんですか。
  114. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま申し上げられることは、私どもとしては、いずれの国とも、政治体制が異なろうが同一であろうが、親善友好関係を維持して、日本の安全と繁栄を確立していかなければならぬわけでございます。将来どういう問題が起こってくるかは予測できません。ただ、いま御指摘のような具体的な問題、まだ起こっていない事態に対してどう対処するかということを申し上げる段階でないと思いまするが、ただ、一点言えますことは、このシンガポールの問題を解決するにあたりましても、辻原委員が御心配のように、他の地域に問題が全然ないわけではないわけでございまするから、そういう点を頭に置いてこの解決に当たって、慎重に対処しなければならないものであると心得えておると、こういうことで、御了承をいただきたいと思います。
  115. 辻原弘市

    辻原委員 北ベトナムの問題を、私はいま例にあげましたが、大東亜戦下における最大の被害を与えたものは中国でしょう。周総理のことばをもって言うならば、当時一千万人の中国人がこの戦争によって被害を受けた。当時の金にして五百億円の損害を与えられた。いまだに日中の国交が回復しないという立場から、賠償の問題については解決をしておらない。よし賠償の問題が解決をいたしましたとしても、あの広い全中国の中に、どういった当時われわれが与えた損害がひそんでいるかもしれない。これらを取り上げてきた場合に、やはり反省すべき事項だと思います。人道上、道義上、政治上の立場に立って考えるべき事項だと思います。そのときに、シンガポールだけは、ことばのあやは別といたしまして、そうした事実によって交渉が行なわれ、事実によって金が支払われたということになれば、当然日本として甲乙をつけるわけにはいくまい。これは考慮しなければならない重要な問題でしょう。何といっても最大の被害を与えているのですから。だから、そういうことも考慮に入れて交渉をおやりになっておるのかと私は尋ねておるのです。重ねて外務大臣にお伺いいたします。
  116. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、本問題の処理は、ひとりシンガポールとの間だけの問題として解決するだけではなくて、やはりこれが将来他の地域に及ぼすべき影響等も十分考えて処置すべき大切な問題であると私ども考えております。
  117. 辻原弘市

    辻原委員 そのこと等もあわせ考慮して交渉する大切な問題であると、私は確認をいたしておきます。  そこで、これもまた未確定の問題だからと言うかもしれませんが、しかし、現実に二十六日の新聞の発表を見ましてもこういうふうに書いてある。これは先方のマレーシア大使が二十五日に帰国してクアンプールで発表しておる。すなわち、交渉妥結は間近いと言っておるのですね。近く行なわれるマレーシアの選挙、その以前か、もしくは本年半ばに訪れるマレーシア国王の来朝を機として、少なくともその以前だ、こういうことを交渉相手になっているマレーシア大使が述べておる。事態は、あなた方がここで述べられたような調査の段階であるとか云々ということではなくて、どんどん進めておるのです。そこで、賠償では一ない、また権利義務も伴わない金であるとするならば、一体その金の支払いはどこから出すのですか。外務大臣、大蔵大臣、両方からお答えを願います。この金はどこから出すのですか。
  118. 大平正芳

    ○大平国務大臣 まだ交渉中なんでございまして、金をどこから出すというようなところで政府部内でおはかりする段階にはまだ至っておりません。
  119. 辻原弘市

    辻原委員 大蔵大臣、賠償等特殊債務処理特別会計で出せますかどうか。
  120. 田中角榮

    ○田中国務大臣 まだ未確定のことでありますから、お答えをするのはどうかと思いますが、もし決定をされて、これをいよいよ支払うという場合になれば、賠特法の改正をお願いしなければならぬと思います。
  121. 辻原弘市

    辻原委員 支払うとすれば、賠特法を改正してこれを支払うというのですが、なぜ改正しなければなりませんか。
  122. 田中角榮

    ○田中国務大臣 賠特で払うことになれば賠特法を改正しなければならない、こういうふうに申し上げておるわけであります。賠特法は、御承知のとおり、この戦争の後行なわれました平和条約に関連をしまして、その戦争によって賠償をしなければならないものというワクがはまっておりますし、それから、その後、昭和二十年後に独立をした国との間に行ないました場合には、特にカッコの中で、昭和三十二年でありましたか、法律改正をお願いしたわけでありまして、非常に賠特会計の対象をしぼっておりますので、賠償にあらざるかかる支出をもし賠特で行なうとすれば、条文を追加をしなければ、現行のままでは払えない、このように考えられるわけであります。
  123. 辻原弘市

    辻原委員 そうすると、こう考えてよろしいですね。いわゆる賠特法というのは、第一条に示されておるように、明らかに賠償に伴う債務を負担した場合に支払う会計である。ところが、先ほどから外務大臣が言っているように、これは明らかに賠償じゃないのだ。その賠償でないものをそこから支払うとすれば、明らかに賠特法の性格というものはまるきり変わってしまう。言わば何でもそこからは出せる。ともかくそういう法律改正をやればどんなものだって出せる。だから、その場合には、いまや賠特法というものは賠償の債務を処理する会計ではなくなる。こういうように理解してよろしいですね。
  124. 田中角榮

    ○田中国務大臣 賠特法第一条に規定せられておりますとおり、この特別会計は賠償等債務の支払いをやるためにつくられた特別会計でありますが、しかし、その後の問題で必要ありとして条文追加を国会の議決でもってやられれば、私は、一向差しつかえない、このように考えます。しかし、これはもちろん法律論としてお話を申し上げておるわけであります。産投会計法という中でガリオア、エロア債務を支払うことに御決定をいただきましたから、産投会計法の業務の中にそういう事項を挿入されたということでありますし、特に賠償は相当支払いが進んでおりますから、新しい会計をつくるというような必要があるときに、それよりも賠特法に一条を追加して払ったほうがよろしいと、日韓交渉の問題等もありますから、こういう問題等を新しい事態に対処して国会が議決をせられる場合、一向差しつかえない、このように考えております。
  125. 辻原弘市

    辻原委員 それは今後のために承っておきます。  いろいろまだ細部の点につきまして、先方の要求してきている金額あるいは日本側の交渉過程における金額等等伺いたいのでありますが、委員長からも督促を受けておりますので、この点につきましてはこまかい点は省略をいたします。ただ、私が申し上げましたことは、罪は罪として償うという態度は日本人としてとらなければならぬが、その前提である事実の確認、これを明らかにして、そうして、すっきりした罪の償いという形においてのみ、これは国民として了承ができるものである。また、他国との間に将来不平等を来たすような取り扱いは、われわれとしては納得しがたい。このことを最後につけ加えまして、マレーシアの問題については、また別の機会に交渉の進展と相待ってお伺いをしたいと思います。  最後に一点、これは別の問題でありますが、大蔵大臣、自治大臣にひとつ承っておきたいが、それは地方財政計画についての問題であります。これは当委員会でも先般から議論をいたしましたが、オリンピックを前にして外人の料飲税を免税にいたしました。そして、予算決定後、さらに地方財政計画決定後、閣議決定によってさらに原案を修正をいたしております。その金額は、私どもの聞くところによると約三十億。ところが、予算に関連をして提出義務を持っている地方財政計画がいまだにこの点については修正をせられておらない。すでに衆議院における予算も最終段階、大詰めに来ておる。そのいまの時限においても修正をされておらぬということは、政府としてはまことに怠慢であると思うが、これは一体どうです。
  126. 田中角榮

    ○田中国務大臣 地方財政計画は、御承知のとおり、昭和三十九年の十二月三十一日までは免税をする、こういう態勢であったわけであります。それが、提出の政府原案におきましては、三月三十一日まで延びたわけでありますから、一月から三月までの三月間違うということを、言えば言い得るわけであります。しかし、御承知のとおり、今年度は九月の第一週にIMFの総会がございます。十月から十一月にかけてオリンピックがあるわけでありますから、非常に十二月以前の見積もりが大きいわけであります。一月から三月までというものを平年度に考えますと、地方財政計画を修正するほどの大きな減収になるものではない、このような考え方で、修正をしなくてもよろしい、こう考えております。
  127. 辻原弘市

    辻原委員 それじゃ自治大臣にお伺いをいたしますが、それに伴う歳入欠陥というものはいかほどになるか、お答え願いたい。
  128. 早川崇

    ○早川国務大臣 五億内外でございます。九億が十四億の減収になるだけであります。
  129. 辻原弘市

    辻原委員 それは間違いありませんね。われわれの推定によれば、少なくとも三十億程度金額が動くのではないかと考えているが、いま自治大臣の答弁によると、九億程度、それは間違いありませんな。
  130. 早川崇

    ○早川国務大臣 正確に申しますと、九億六千五百万の減収見込み額が十四億三千万の料飲税の減収、こういうことでございます。
  131. 辻原弘市

    辻原委員 金額の多寡は別といたしまして、ともかく、法律を改正するということを前提に閣議決定をされ、すでにその方針に基づいて政府としてはこの料飲税の問題を最終的にきめられておる。いまの話によれば、九億の減収が十四億三千万に増加をしておるということであれば、多寡は別として、当然、財政計画としては、計数上の整理等の問題ではなくて、明らかに政策的に変えているわけなんですから、これは財政計画の修正が必要と思うが、大蔵大臣の言ったように、その程度の金額は必要もないなんてラフな考え方で財政計画を立てておるのですか。
  132. 早川崇

    ○早川国務大臣 この程度の僅少な減収にすぎませんので、修正をするほどの問題ではないと考えております。
  133. 辻原弘市

    辻原委員 それは私は自治大臣の答弁では納得ができません。というのは、これは、当委員会で審議の過程で、前回にもわが党から、当然これは修正をしてきちっとして出すべきだという要求をしておる。ところが、いまもなおその程度の金額で修正ができないなんということは、これは予算審議を軽視するものです。これはきちっとして出すべきものなんです。それははっきりしてくれぬと困るんですよ。これは明らかに数字が違うんだから、そんなこまかい金はなんて、そんなばかなことはないです。私は、この際、地方財政計画を本委員会終了までに修正をして政府として正式に提出をしてもらいたいと思います。五億違うということがこまかい話なんということは、予算審議には通りませんよ。これは当然修正してもらう。
  134. 早川崇

    ○早川国務大臣 地方財政計画は、予算書のようなものでなくて、この地方財政を運営する一つの大綱であります。いわば参考資料。従来とも、補正予算のありましたときも直すようなことはいたしておりません。三兆円に、近い地方財政計画の中で五億弱のあれでございまするので、あえて全体の修正をいたさなかったわけでありまして、この程度のものは税務行政執行の過程において当然吸収できるものであり、三十九年度の地方財政計画を運営する間に、この程度を直ちに改正する必要はないと考えておるわけであります。
  135. 辻原弘市

    辻原委員 そういう自治大臣の説明は、われわれは了承できません。なぜならば、われわれはあえて地方財政計画のことについては、委員長も御存じのように、非常にやかましく言ったんです。非常にやかましく言って、当然法律に基づいて予算審議中に提出をすべきものなんだから提出をしなさい、しかも、あえてわれわれは説明を求めて、ここで自治大臣から説明があったんです。もっと言うならば、法案が修正されないという前提ならば、当然三十億はそのまま据え置くなら三十億の歳入欠陥になる。しかし、修正をするという前提だから、いまあなたの言われた十四億三千万円という数字が出る。しかし、かりにその金額の異同が五億であっても、これは財政計画上重大な動きです。政策的に変更しているんだから。しかも、五億というものは僅少な金額ではありません。五億程度が動いたって地方財政計画にと言って、しかも修正もしなくていいし説明もしなくていいというラフな財政計画なら、われわれは承認することができませんぞ。当然財政計画を改めて、そうしてわれわれに説明をして了承を求めるべきなんです。それが正しい態度です。五億程度のものは動いたってかまわないなんということは、われわれは了承できません。
  136. 早川崇

    ○早川国務大臣 地方財政計画の性質について少し行き違い、誤解がありまするが、あれは閣議決定というより閣議了承というので、大体の地方財政の三十九年度における歳入の見積りにすぎないわけであります。目安にすぎないのであります。ですから、これが四億ないし五億程度の三兆円の中のあれとしては、修正するほどの問題ではない、こういうことでございます。
  137. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 本問題に対しまして、関連して井手以誠君の一問だけの質問を認めます。井手以誠君。
  138. 井手以誠

    ○井手委員 ただいまの早川自治大臣の答弁では、われわれは納得できません。この予算委員会説明されたものは閣議で修正された以前の数字ですよ。もし修正されたならば、その旨をこの予算委員会では訂正の説明をすべきです。あるいは原案を修正すべきです。計画であっても、われわれはうその説明のままで通すわけにはまいりません。どうするのですか。計画を修正いたしますか、いずれにいたしますか、はっきりした答弁を願いたい。このままではわれわれは承知できません。
  139. 早川崇

    ○早川国務大臣 先ほどからたびたび申しておりますように、この程度のものは徴税過程において吸収できる。地方財政計画を修正する意思はございません。
  140. 井手以誠

    ○井手委員 早川さん、早川さん、この程度とは何ですか。あなたの説明でも五億円ですよ。五億円ですよ。五億の欠陥でこの程度とは何ですか。原案が修正されたならば、何でこの予算委員会であなたは修正を求めないのですか。説明を変えないのですか。そういうことでは私承知できません。たとえば地方財政計画であっても、前の説明と違っておるのなら、なぜ訂正いたしませんか。このままで私は通すわけにはまいりません。
  141. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 たいへんお待たせいたしました。自治大臣早川崇君。
  142. 早川崇

    ○早川国務大臣 五億円程度云々と言ったのはことばの誤りでありましたなら取り消します。地方財政計画は、その後修正によって五億円程度の欠陥になりますので、地方財政計画説明を訂正いたします。
  143. 辻原弘市

    辻原委員 自治大臣に一点質問いたしますが、五億の歳入欠陥になる点は、これは財政計画ですから、私もあまり詰めてものは言いませんが、将来必ず財政計画の上においてこれは当然補てんをさるべきもの、同時に財政計画書にはこまかい計数のいま言った異同について明確になることと同時に、計画書の説明には、たとえば電気ガス税等の税率を異同したことによっての歳入補てんについて説明がきちっとついております。これと同様に当然私は地方財政計画の中に、計数整理と、それから歳入補てんの方式、これを説明書の中につけ加えるべきであると思いますが、その点についても了承せられますか。
  144. 早川崇

    ○早川国務大臣 先ほど申しましたように、大まかな財政計画の参考資料でございますから、委員会その他の説明においては同様に補足して訂正してまいりたいと思います。
  145. 辻原弘市

    辻原委員 この際、私は総理にもはっきりしておいていただきたいと思うのでありますが、かりに金額的には少額でありましょうとも、国会に提出する書類、しかも正規の手続を経て提出する書類等については、そういうラフな取り扱いは、これは私は絶対に禁物であると思います。そういう意味で今後そういったいわゆる予算審議を軽視する、国会審議を軽視するというような態度は、政府として絶対に慎んでもらいたいと思いますが、総理の御所見をひとつ承りたいと思います。
  146. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど来お話がございましたごとく、地方財政計画は、御審議願っております予算案、法律案とは異なりまして、一応の見積もり額でございます。したがいまして、ある程度その後の法律あるいは予算措置等によりまして財政計画は変わるのでございます。補正予算その他を組んだときにももちろん財政計画は変えておりません。そしてまた、地方財政というものは地方からずっと来たものを寄せ集めたものでございまして、計画と決算とでは前年度七千億円くらいの違いがあるわけです。しかし、それだからといって見積もりのあれをおろそかにするという意味ではございません。ただ、そういうことが頭にあるものですから、いままでの御説明を変える機会がなくて今日まで過ごしたということはまことに遺憾でございます。したがいまして、いまの説明でひとつ財政計画がそれだけ変わったということを御了承願いたいということを御了承願いたいと思います。今後は、そういう計画異同がある場合には直ちに御説明を申し上げるようにつとめたいと考えております。
  147. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて辻原弘市君の質疑は終了いたしました。  これにて締めくくり総括質疑は終了いたしました。  以上をもちまして昭和三十九年度総予算に対する質疑は全部終了いたしました。  午後は三時から再会し、討論採決に入りますから御了承願います。  なお、委員会休憩後直ちに理事会を開会いたしますから、理事の方は常任委員長室に御参集願います。  暫時休憩いたします。    午後一時十六分休憩      ――――◇―――――    午後四時二十二分開議
  148. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和三十九年度一般会計予算昭和三十九年度特別会計予算昭和三十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  この際、川俣清音君外十四名より、昭和三十九年度一般会計予算昭和三十九年度特別会計予算及び昭和三十九年度政府関係機関予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議が、また、今澄勇君外二名より、昭和三十九年度一般会計予算昭和三十九年度特別会計予算及び昭和三十九年度政府関係機関予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議が、それぞれ提出されております。
  149. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより両動機について順次その趣旨弁明を求めます。  五島虎雄君。
  150. 五島虎雄

    ○五島委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、議題、昭和三十九年度一般会計予算昭和三十九年度特別会計予算及び昭和三十九年度政府関係機関予算の撤回とその編成替えを求める動議の提案理由を御説明申し上げます。  かつて池田首相は、投資がふえれば生産がふえ、生産がふえれば所得がふえる、所得がふえれば貯蓄がふえ、貯蓄がふえればまた投資がふえるという、おけ屋の思案を述べられたことがあります。これは、投資から始まってより大きな投資へと回転していく循環の中で、日本経済の規模が急速に拡大し、そうして国民の所得が倍増していくという考え方であります。この考え方に基づき、池田内閣は、対外的には、貿易・為替の大資本に有利な管理方式をとったばかりではなく、主としてアメリカから外資を借り入れ、対内的には、租税出然増収の名のもとに国民から税金を収奪し、財政投融資を通じて、国民の零細積み立て資金を政府の手にかき集め、あるいはまた、日本銀行から通貨を増発し、こうした金づくり政策でつくり出した資金を巨大独占企業の設備投資及び独占企業のための産業基盤づくりの公共投資につぎ込んできたのであります。そうしてまた、この金づくり政策の前提には、労働者への低賃金の押しつけと、大資本の製品の独占価格維持の体制があったのであります。  このような結果生み出されたのは何であったでしょうか。倍増になったのは所得ではなくて物価と格差と社会不安であったのであります。さらにまた、そこにあらわれてきたのは国際収支の構造的赤字であったのであります。まるで地獄のかまのふたが一度に開いたように、あらゆる矛盾と罪悪と病気が飛び出してきたのであります。明らかに所得倍増計画は破綻と失敗に終わったのであります。今日の所得倍増計画の失敗を認めないのは池田総理ただ一人でありましょう。池田内閣の金づくり政策のうち、外資の借り入れはアメリカのドル防衛措置によってすでに頭打ちになっております。それに加えて、過去の導入外資に対する配当や利子の支払いが膨張し、あるいは輸出入物資に対する日本船の積み取り率が低下し、海上運賃の対外支払いが膨張いたしまして、貿易外収支の赤字が累年増加しております。これが輸出を上回る輸入という矛盾と結びつきまして、わが国の国際収支は、経常収支の赤字を資本収支の黒字で埋めるという方式がいまや限界に来ておるのであります。  それに加えて、物価の異常な上昇は相変わらずのテンポで進み、国民の実質生活水準は著しく脅かされておるのであります。所得格差、産業問格差、地域間格差はさらに拡大傾向をたどり、中小企業は金詰まり、倒産のあらしに見舞われておるのであります。農漁民の経常の行き詰まりもまた深刻になる一方であります。日の当たるところと当たらないところの不公平は拡大し、国民の生活不安と不満は根強くうっせきしておるのであります。  こうした最悪の事態の中で、池田内閣は、わが国をIMF八条国へ移行させ、あるいはOECDへ加盟し、日本経済を完全自由化、すなわち開放経済体制の中へ引き入れようといたしておるのであります。この結果は、冷酷な弱肉強食の法則がまかり通り、わが国の産業と国民生活はおそるべき荒廃に見舞われるであろうことが憂慮されるのであります。  したがいまして、もし池田内閣にして一片の良心と良識があるならば、昭和三十九年度予算はこうした最悪の事態を防止することを眼目として編成すべきが当然であります。しかるに、池田内閣は、その誤った高度成長政策をいささかも反省することなしに、労働者、農漁民、中小企業者に犠牲をしわ寄せする金融引き締め措置によって、一時の事態を糊塗しようとしているばかりでなしに、三十九年度予算案では、自衛隊の核武装を目ざし、防衛費の拡大と巨大資本のための投資の拡大を最重点としているのであります。もしこの予算をこのまま成立させるならば、国際収支の赤字はいよいよ拡大し、また、物価の上昇、格差と社会不安もいよいよ激化するものと予想せざるを得ません。わが党があえてここに昭和三十九年度予算の撤回と組み替えを要求している理由はここにあるのであります。  以下わが党の組み替え案のおもなる内容を御説明申し上げます。  まず、わが党の組み替え案は、財政政策の前提といたしまして、全般的な経済政策を大きく転換することを要求いたしております。その経済政策転換の方向は、大きく三つの目標を目ざしたものであります。  その第一は、格差の解消と、もろもろの立ちおくれたものの引き上げでございます。このためには、産業合理化を名とする労働者への圧迫及び農漁民や零細商工業者の切り捨て政策を排し、労働時間を短縮して、全国一律最低賃金制を実施し、また、農林水産物の価格支持制度の確立、中小零細企業者の近代化助成、社会保障諸制度の拡充を行なわなければなりません。また、物価上昇の中で投機的利益を得た資産所得者に対しきびしい課税を行なうとともに、大衆には大幅な減税を行ない、租税負担の不公平も是正しなければなりません。さらに、巨大独占企業が成立して、それぞれの産業分野を強力に支配する体制のでき上がっている現在の姿にかんがみまして、大企業の特権的経済運営と過大経済力の乱用を防ぐために、エネルギー産業を含む主要産業と主要な金融機関の社会化を断行し、それにあわして、資金計画委員会を創設いたし、財政と民間を通ずる長期的設備資金の運用を民主的に規制・計画化し、大企業の過剰投資を制限しまして、中小零細企業者と農漁民の経営向上及び勤労者の生活環境整備のための資金供給を大幅に増額すべきであります。さらに、中小企業の事業分野を明確にいたしまして、大企業の侵入を防ぎ、あるいはまた、特に当面の金融引き締めに対し中小企業への資金供給を大幅にふやして、台風手形と呼ばれているような不健全な企業問信用の解消を促進し、また、金融機関の歩積み、両建てを厳に規制しなければなりません。地域開発関係では、公共投資重点を太平洋ベルト地帯に集中するのをやめまして、日本海沿岸及び北海道、東北あるいは南九州等のおくれた地域の開発にその重点を指向しなければならないと考えます。こうして所得の格差、産業間の格差、地域間の格差の解消を促進すること、これが政策転換の第一の目標でございます。  第二は、資金計画委員会を通じて外資の導入及び日銀貸し出し、買いオペ等を民主的に規制し、大企業の過剰設備投資を制限いたしまして、もってインフレ傾向を抑制するとともに、既存設備の操業度を高めて、物価引き下げを進め、また、生鮮食料品の流通機構を整備して、その価格を安定させることであります。物価の関係では、特に各種公共料金は当分の門引き上げを停止し、それに伴いまして、地方公営企業に対するところの赤字補てんの特別措置をとらなければなりません。さらには、各種の大衆的消費税を減税して、減税分を物価引き下げに確実に反映させることも必要であります。こうしてインフレを収束して物価を引き下げることが、政策転換の第二の目標であります。  第三は、貿易拡大と国際収支の改善であります。自民党政府の外交政策の基本は、一貫してアメリカに依存し従属するという方向で進められてきたのでありまするが、これは、いまや、フランスの中国承認、アメリカの中国封じ込め戦略の破綻という情勢に直面いたしまして、根本的な再検討を加えるべき段階に立ち至っています。いまこそ政府は勇気をふるって自主中立の立場に立ち、ソ連、中国、北朝鮮等との経済交流を積極的に拡大すべきであります。特に、中国に対しては、すみやかに国交を正常化し、あわせて政府間貿易協定を結ぶべきであります。朝鮮については、まず日韓会談を打ち切り、朝鮮民族自身の自主的な南北統一を促進しながら、南朝鮮とは特に漁業問題を切り離して解決を促進し、北朝鮮とは大いに経済交流を拡大すべきであります。そうして、東西貿易についてはすべての政治的な制限条件はこれは撤廃されなければなりません。また、国内産業と日本経済の自主性を守るために、貿易自由化計画を繰り延べ、日米通商航海条約と外資法を抜本改正し、また、OECDへの加盟は、わが国がただ欧米諸国から各種の手かせ足かせをかけられて、資本取引の自由化を迫られる結果しかもたらさぬことは明らかでございますから、これは取りやめるべきであります。そうして、すでに行なわれた自由化により圧迫されている国内産業に対しては、関税その他の方法によって保護措置をとらなければなりません。アメリカに対しては、ドル防衛を名とするシップアメリカン、バイアメリカンの政策をやめさせて、また、不当な対日輸入制限措置を撤回させるために、アメリカが日本から輸入すると同じ数量、同じ金額だけ日本もアメリカから輸入するという対等の原則を確立し、現在アメリカからの輸入超過分を、中ソを初めとするアジアの他の地域からの輸入に振りかえ、もって対米片貿易を根本的に是正すべきであります。また、飼料や砂糖などの農産物輸入が膨張いたしまして、大きな外貨を食っている現状にかんがみ、これらの農産物輸入を国家管理して、国内農業への影響を調整するとともに、これら農産物の国内自給度を高めて、輸出入の均衡の回復を促進すべきであります。こうして、貿易を拡大し、国際収支を改善することが経済政策転換の第三の目標であります。  以上のような一般経済政策の大転換を前提としつつ、昭和三十九年度予算については次のように組み替えるべきであることを主張いたします。  第一は、歳入の抜本的組み替えであります。すなわち、所得税の課税最低限度の大幅引き上げ、中小法人に対する法人税率の引き下げ、各種大衆的な消費税の大幅な減税により、大衆に対しては初年度約二千億円にのぼる大減税を行なうべきであります。また、直接に国の予算に関連するものでありませんけれども、地方税の中の住民税については、所得税に準じて基礎控除等の諸控除を引き上げ、さらに大幅な住民税減税を行なうべきであります。他方、高額所得者への累進度強化、大法人への法人税率の引き上げ、租税特別措置の改廃、広告税、ゴルフ税、富裕税、空閑地税の創設、有価証券譲渡所得課税の復活等によりまして、高額所得者と大資産所有者からは約一千九百億円の租税の増徴をはかるべきであります。こうした減税と増収の差し引き勘定、及びたばこ消費税率を三〇%に引き上げて、地方財政へたばこの税収をより多く振り向けることとしております関係上、その差し引き歳入総額は、政府予算案よりも約三百五十億膨張することとなるのであります。それに加えて、政府予算が国立学校特別会計を新設いたしまして名目的に予算規模を二百億円縮めるというごまかしをやっておりますが、このごまかしをやめることによって、さらに二百億円の規模拡大となりまするので、合わせてわが党組み替え案の予算規模は、約三兆三千一百億円となるわけでございます。  第二は、歳出予算案のうちで不当不要な支出は思い切ってこれを削減すべきであります。すなわち、憲法の平和と民主主義の精神にそむく防衛費及び公安調査庁等の反動機関の経費一千五百八十億円をそれぞれ思い切って削減するのであります。また、公共事業予算が約六千億円にも膨張し、しかもその中で地価の暴騰による用地買収費がきわめて急速に膨張しているということは、一刻も放置できません。したがいまして、投機的な土地値上がりを抑制し、あわせて入札制度を厳正に運営し、事業の効率を高めながら、予算を約五百億円節減いたします。そのほか、物件費、施設費、補助委託費等の合理化、節約等も合わせて、全体で約三千一百億円の歳出削減を行なうのであります。  第三は、歳出の増額であります。すなわち、さきに述べた政府案よりも約三百五十億円予算規模拡大となる分の資金と歳出で約三千一百億円を削減する分の資金とを合わせまして、合計約三千四百五十億円の組み替え財源があるわけでありますが、これを、社会保障拡充、公営住宅増設、教育と科学技術の振興、農林漁業と中小企業の振興、自由化に対する国内産業の保護、地方財政の強化と国民生活の安定向上を旨といたしまして、重点的に増額支出していくわけであります。  これがわが党組み替え案のごく大まかな骨組みであります。  そこで、この際特に、これから述べる二つの点について注意を喚起しておきたいのであります。  その一つは、わが党組み替え案が、格差の是正という課題と並んで、特にインフレの抑制と物価の安定に重点を置いているということでございます。  わが国経済の最大の問題の一つは、インフレ的傾向を基礎とする物価の上昇であります。そうして、その原因日本銀行の信用造出と結びついて巨大企業が無政府的な過剰設備投資を強行しているところにあるのであります。このことはすでに多くの経済政策論議を通じて明らかにされております。ところが、昭和三十九年度予算政府案においては、この点について何らの反省も対策も見られず、依然として無責任な景気刺激的性格が露骨に貫かれているのであります。わが党は、国会における予算審議を通じてこの点はきびしく批判いたしました。政府予算案に対置して国会へ提出されたこのわが党の予算組み替え案は、この問題に最も重点を置いて作成しております。  第一に、組み替え案は、全般的な経済政策を大きく転換することを要求しておるのでありますが、その中で、主要金融機関の社会化と資金計画委員会の創設により、外資導入や日銀貸し出し、買いオペを民主的に規制し、大企業の過剰設備投資を制限することを主張しております。  第二に、歳入においては、勤労大衆に対する二千億の減税を行なう反面、租税特別措置の改廃等により大企業及び高額所得者より千九百億の租税増徴を行ない、民間設備投資に向かうべき資金を大幅に国庫に吸収することといたしております。  組み替え案の予算規模は三兆三千一百億円で、政府案より約五百五十億の規模拡大となりまするが、そのうち二百億は国立学校特別会計の新設という政府案のごまかしをやめることによる拡大である。それを除いた規模拡大は三百五十億円であります。これによる租税負担率の増大はわずか〇・二%に満たないものである。しかも、この場合、租税負担がだれに対して重くだれに対して軽いかという、租税負担率の内容が質的に変化することになるのであります。  第三に、組み替え案では、歳出のうち、防衛費等の最も非生産的な支出を大きく削減し、また、最も景気刺激的性格の強い公共事業費を節減し、その前提として投機的な地価の騰貴を強力に規制することといたしております。  第四に、組み替え案では、社会保障を中心として低所得者の所得引き上げのための支出を大きく増額することといたしております。これは、景気刺激的な投資的支出と性格が違うのみならず、いわば過去の政府の誤ったインフレ政策で拡大された所得格差を是正し、憲法で保障された国民の生活権を積極的に擁護するという当然の措置でございます。  以上のような理由により、日本社会党の予算組み替え案は、もしそれが実行されるならば、インフレの収束と物価安定のためにきわめて有効な役割りを果たし得るものであることを確信いたしておるものであります。  そのもう一つは、わが党組み替え案が労働者・農民の基本的要求を支持し援護する立場に立っていることであります。  すなわち、公務員給与及び三公社五現業職員給与につきましては、すみやかにILO八十七号条約批准によってその団結権と団体交渉権を完全に保障し、その労使の交渉によって民主的に決定し、その決定された結果に対して必要な予算措置をとるべきであります。生産者米価につきましても、労働者と同じ団結権、団体交渉権を農民に保障し、そうして、民主的な交渉によってきめられた米価に対して所要の予算措置をとるべきであります。また、公共企業体等の職員の退職金につきましても、電話自動化首切り法案のようなおしきせの特別給付金ではなしに、国家公務員の退職手当法を改正して、労使の交渉によって定めることとすべきであります。  また、特に強調しなければならないのは、労働災害防止と安全の確保であります。さきの三池炭鉱の大事故、鶴見の国鉄事故に続いて、最近はまた一カ月のうちに二回も続いて航空機の事故がある。陸海空にわたって危険が充満いたし、多数の貴重な人命が失なわれておるのであります。したがいまして、災害事故防止と安全確保により、労働者及び一般国民の生命を守ることは、最も緊急なる政治的課題であり、国民世論もいまやここに集中されております。しかるに、政府予算がこの面に誠意を示していないことは、まことに遺憾とするところであります。そこで、わが党組み替え案では、一般会計において約二百億円の安全対策費を増額するとともに、財政投融資及び政府関係機関予算を通じまして資金運用の重点を安全確保に振り向け、合計して約一千億円をこのために運用すべきことを強く要求いたしておるのであります。  以上が昭和三十九年度予算の撤回と編成替えを求めるわが日本社会党の動議の趣旨でありますが、要するに、これらはすべてわが国憲法の精神から言って当然のことを主張し要求しているにすぎないものでありますから、満場諸君の御賛同を切にお願い申し上げまして、提案理由説明を終わるものであります。
  151. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 次に、永末英一君。
  152. 永末英一

    永末委員 私は、民主社会党を代表いたしまして、昭和三十九年度一般会計予算昭和三十九年度特別会計予算及び昭和三十九年度政府関係機関予算については、政府はこれを撤回し、すみやかに組み替えをいたしまして再提出することを要求する動議を提出するものであります。その要綱は別途お手元に配付いたしました別紙のとおりでありますが、その趣旨を簡単に説明いたしたいと存じます。  予算政府の政治方針を現実化するものであります。政治方針がいかに美辞麗句で飾られておりましょうとも、予算がそれに伴わなければ、から念仏にすぎません。われわれは、政府の所得倍増という名の経済成長政策と、「かつてない福祉国家の建設」という二つの柱がこの予算においてどうかみ合わされているかを、勤労者の福祉国家を福祉経済成長政策によって建設しようとする立場に立って、たんねんに検討いたしてまいりました。その結果、われわれは、政府案について次に述べる重大な欠陥を指摘し、大幅に編成替えを行なう要があると考えます。  福祉国家建設のためには、何よりも国民総生産の増加が必要であります。経済成長は、国家福祉のために必要でこそあれ、資本利潤のための道具であってはなりません。ところが、池田内閣がこれまで行なってまいりました所得倍増政策は、財政の刺激によって投資を増大し、そのささえによって経済成長を促進せしめることを本旨としてまいりました。したがって、財政は不必要に膨張し、日銀の信用創造は拡大され、消費者物価は上昇し、輸入の輸出をしのぐ増大は国際収支の悪化を招き、これを外資によって補てんしようとするやり方は、また貿易外収支の赤字を増大させるという悪循環をもたらしました。この悪循環を断ち切るためには、金融界に引き締めを要請するだけではなく、予算もまた、膨張を避け、その内容の質的転換をはからねばならないものであります。ところが、政府の三十九年度予算案は、総理のいわゆる格調の高い施政方針演説とは無関係に、諸圧力団体の圧力に屈した自民党の横車をそのまま飲み込んだ総づけ予算として編成されました。このような、これからのきびしい経済環境に対する配慮を欠いた硬直予算では、国際収支の改善も、物価の安定も、とうてい望むべくもございません。  われわれは、国民の可処分所得を増大し、さらに振りかえ所得部分を拡大することによって、国民総支出に占める消費の比率を高くする方向に予算を編成することが必要であると考えます。この方向を指向する予算こそ、完全雇用の達成、社会保障の確立、所得再分配政策の実行、教育機会の均等化を内容とする、安定した経済の上に築かれる福祉国家に至る道であります。われわれは、昭和三十九年度予算を、この方向に至る第一歩として、次のように編成替えを行なうべきであると考えます。  第一が減税であります。  政府の減税の本質は、資本蓄積のための企業減税が主目的であって、一般国民に対しては物価値上がりに伴う税法上の調整を減税と呼んでいるにすぎません。われわれは、勤労国民の生活費に課税をしないことを大原則として、標準世帯の所得月五万円まで免税を中心として、大衆酒類税、物品税、中小法人税、揮発油税等の減税を行ない、租税特別措置法の改廃、土地増価税の創設等による増収を行なおうとするものであります。  大蔵大臣は、昭和三十九年度八百億円程度の減税しか行なおうといたしませんのに、それを資本の蓄積と貯蓄の増強に役立ててほしいと要望いたしております。この二月二十六日、資本主義花と咲くアメリカのジョンソン大統領は、百十五億ドルにのぼる減税法案に署名するにあたって次のようにアメリカ国民に訴えました。減税の第一の効果は数十億ドルの金をアメリカの消費者の手に新しく握らせるというところにある、国民は小売り店でも百貨店でも好きな店でこの金を自由に使うことができる、こうすればお金は減税高の数倍にものぼる有効需要を喚起しつつアメリカ経済を流通するであろうと申しました。アメリカを福祉国家と言う者はだれもおりません。資本を中心に経済を考えるアメリカですから、減税の効用をこのように考えております。開放経済の海に日本経済の船を乗り出させようとする池田内閣は、目先の資本を強めることを考えるより、まず国民に地力をつけることを考えるべきではないかとわれわれは主張したいのであります。  第二は、振りかえ所得の増大であります。  政府の所得倍増政策は、確かに国民所得総額を増加せしめてまいりました。しかし、いわば拡大された個人消費ともいうべき振りかえ所得部分は伸び悩み、個人所得の低い層の生活水準は相対的に低下してまいりました。国民所得に対する振りかえ所得の割合は、わが国はドイツ、フランス、イタリアなどと比べましてもわずかに三分の一にすぎません。国家の所得再分配機能を大いに働かせる必要があります。  生活保護基準は、消費者物価の値上がりに基づく手直し程度ではなく、月額二万円に引き上げ、失対事業登録労務者の給与を日額七百五十円に引き上げることを軸として、最低所得階層の底辺のささえをすべきであります。さらに、老齢、母子、障害等各種国民福祉年金の増額を中軸に、これらへの福祉対策を拡充し、さらに医療保険の前進をはからなければなりません。  国民福祉について最もおくれているもののうち最大のものは住宅であります。政府の住宅政策は依然として主力を民間の自力建設に置いております。それは政策とは申せません。われわれは、住宅問題解決のためには公的住宅が建設計画の主力になり、しかも短期間に実施されなければならぬと主張いたしたいのであります。このために昭和三十九年度は三十万戸の公的住宅を建設すべきであると思います。  教育に対する政治の任務は、その環境整備にあるのであって、お説教にあるのではありません。わが国の発展は青年の創造力に待つところきわめて大であります。われわれは、このような見地から、義務教育諸学校の学級定員を減じて、教師と児童との間に人間としての触れ合いを濃厚にする場をつくり、高校施設の増大をはかって入学希望者の夢の実現をはかり、育英資金を大幅増額して、能力ある学生に勉学の機会を保障し、私学への補助を増額いたしまして、教育費負担の低下をはかろうとするものであります。  第三は、経済格差の是正であります。  日本経済の二重構造の下部にある中小企業や農林漁業への革新的施策をすると政府は看板を掲げましたが、その内容は全くおさびしい限りであります。開放経済下のわが国経済の実力は、中小企業が質的に強化されるときに初めて備わるものであります。ちょっとした金融引き締めで中小企業の倒産を続出せしめているやり方では、中小企業基本法などは全くのから念仏にしかすぎません。徹底した近代化のために、関連法規を整備するとともに、予算を増大しなければなりません。農林漁業におきましても、選挙の票田として対策を考えるやり方では、とうていこれらの人々が浮かばれるものではございません。農地報償などを考えるうしろ向きのやり方を一てきして、前向きの諸政策を実施することが必要であります。  地域格差の是正のためには、地方自治体の財政力を強めねばなりません。たばこ消費税や交付税の税率引き上げによって旧主財源を強化しなければなりませんが、外国人旅行者に対する料飲税免除によって外客誘致をはかろうというようなことは、外客業者の脱税を誘発せしめる因を招くおそれのあるものでありまして、われわれとしては、これは地方自治体の自主性に対する胃液ですらあると考えるのであります。住民税徴税方式の変化によります地方自治体の赤字補てんの特別地方債という赤字公債の発行をとりやめ、実質的な財源供与を自治体に行なうべきであります。  第四は、財政投融資計画の改正であります。  三十九年度財投計画は、対前年度比二〇・八%増の一兆三千四百億円になりました。一般会計の膨張を避けたいあまり、本質上一般会計でまかなうべきものを、理論も何もなしに財投計画に押し込んだ結果であります。産投会計への出資をてことして財投の一般会計化を促進するとともに財投計画にも硬直性を持ち込んでいる状態は、許し得ないものであります。財投原資の大部分を占める資金運用部資金や簡保資金は、もともと零細な国民大衆の金であります。これを景気刺激に使用し、それによって引き起こされる貨幣価他の低落を大衆に押しつけるということは、財投計画の乱用であります。われわれは、一般会計からの産投会計への出資をとりやめ、財投原資の性格に合った使途、すなわち、国民福祉に直接還元する方式を樹立すべきであると考えます。財投計画の使途の再編成を要求する理由であります。  以上、わが民社党の昭和三十九年度予算案組み替えの趣旨の骨子を説明申し上げました。  何とぞこの動議に質問されるよう要望いたします。
  153. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 以上をもちまして趣旨弁明は終わりました。     ―――――――――――――
  154. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより、討論に入ります。  昭和三十九年度総予算三案及びこれに対する編成替えを求めるの動議二件を一括して討論に付します。  討論の通告がありますので、順次これを許します。  松津雄藏君。
  155. 松澤雄藏

    ○松澤委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました政府提出の昭和三十九年度予算三案に賛成し、日本社会党並びに民主社会党提出の予算の編成替えを求めるの動議に反対の討倫を行なわんとするものであります。  まず、討論を進めるに先立ち、特にこの際一言強調いたしたいと思いますことは、過ぐる総選挙におきまして、わが党が国民多数の圧倒的な信頼と支持をかち得たことでありまして、まことに国家国民のため御同慶にたえないところでございます。わが党並びに政府は、このような国民の絶大なる信頼と期待にこたえるために、総選挙における公約を余すところなく実現し、なお健全均衡財政の線を守って、責任ある政党政治の真髄を発揮せられたことは向く評価すべきで、私は政府のこの努力と熱意に対し深く敬意を表する次第であります。が目標とした年率九%を達成し、国民所得はすでに四割方の増大を示し、ようやく西欧水準に接近する段階一に入り、また一方においては福祉国衣の建設も逐年着実に前進し、いまや世界の注目の的となり、わが国の国際的地位の確立に大きな貢献をなしておりますことは、すでに御承知のとおりであります。これは戦後十数年にわたる国民の勤勉と努力の結晶であると同時に、その間わが保守党政権の適切妥当なる政策のたまものであることは申すまでもないところであり、これまた国家国民のため御同慶にたえないところであります。  しかしながら、一面経済成長が予想を上回ってあまりにも急激であったため、消費者物価の値上がり等国民経済の一部に少なからずひずみを生ずるに至りましたことも率直に囲めるところでございまして、私どもは決して現実の経済動向に目をおおうことなく、すみやかにこの経済のひずみに対し、是正すべきは進んでこれを是正し、あるいは調整すべきものは調整を行なってまいらねばならないと思っておるのであります。しこうして、本年はわが国がOECDへの加盟、IMF八条国への移行、さらにまた本格的な貿易の自由化等、国際経済の開放体制に直面するのでありますから、一そう経済の健全かつ安定的成長発展が要請されるのであります。いやしくも国際経済の風波にのまれることのないような経済体質の改善と、その強化に備えるために、国際収支の改善、物価の安定こそは急務中の急務であると思うのであります。もとより開放経済体制のもとで国際収支の安定を保つことは従来よりも一そう困難が伴うことは当然覚悟しなければなりませんが、過去の趨勢から見て、輸出はおおむね政府計画の想定線を下回ることはないと思われるのでございます。輸入は増加傾向の続く可能性が大きく、貿易外収支も海運収入の赤字をはじめとして急速な改善は困難ではなかろうかと思われるのであります。しかしながら、今後輸出振興を強力に推進し、輸入の代替力を強化し、海運における船腹の拡充、航空、観光を中心として貿易外収支の改善等経常収支の均衡をはかり、さらに安定外資の導入等を円滑、強力に進めてまいりますならば、幾多の困難もやがて克服され、国際社会の有力なる一員としての地位を一そう高めることができるものと信ずるのであります。また、物価の安定も一朝一夕にはなかなか解決する問題ではありませんが、政府は、物価値上がりの諸原因をよく探究し、公共料金の一年間ストップ、流通機構の改善整備、低生産部門の強化対策、労働力の流動化等、全力を尽くしてこの問題と取り組んでいく決意のようでありまするから、この問題もやがて明るい解決を期待することができるものと思うのであります。  三十九年度予算は、かかる経済の実態と、開放体制移行後の国際的立場を深く考慮し、経済各分野の質的強化につとめ、わが国経済の長期にわたる安定的成長と均衡ある発展の基盤を充実強化することを基本として編成され、第一には、引き続き健全均衡財政の堅持と資金の効率的、重点的配分につとめている点、第二には、旺盛な財政需要の中で平年度二千百八十億円にわたる画期的大幅減税を断行し、一方近代化のおくれた農林漁業や中小企業の生産性を向上せしめ、社会保障の充実、文教及び科学技術の振興、さらに公共投資の拡大整備等、あくまでも成長政策を推進しつつ福祉国家の建設に邁進しようとしている点、私は心からの共感と賛意を表するものであります。  しかるに必見諸君は、三十九年度予算並びに財政投融資計画を評して大型予算だ、積極財政だと攻撃し、あるいは自然増収に対して減税規模が少な過ぎる、農業や中小企業対策がお粗末だなどと、しばしば当委員会でも論議が繰り返されたのでありますが、以下、私は、これらの論議を中心に予算及び財投計画の内容について申し述べてみたいと思うのであります。  三十九年度一般会計予算は、歳入歳出とも三兆二千五百五十四億三千八百余円であって、ごろ合わせでは「ミンナニイイヨサンヤ」ということになっているのであります。これを前年度当初予算に比較いたしますと四千五十四億円、一四・二%の増加であり、かりに今回の一般会計からはずして新たに設置された国立学校特別会計及び自動車検査登録特別会計、この二会計の分およそ二百五十億円を加えても、なお一五・一%の伸び率と相なるのでありまして、三十八年度の一七・四%、三十七年度の二四・三%、さらに三十六年度の二四・四%に比較いたしてみましても、はるかに下回る規模となっているのであります。  また、一般会計の予算規模を国民所得との比率で見ますと、三十九年度は約十九兆九千億の国民所得に対し一六・三%であり、これも三十八年度の一七・一%を下回る数字を示しており、さらに国民総生産二十四兆七百億円に対する一般会計の歳出規模を比較してみましても、十三・五%という低い比率を示しているのであります。これを先進欧米諸国と比較してみますると、三十八年度においてアメリカは一八・五%、イギリスは二七・三%、西ドイツは一五・九%、フランスは二〇・九%ということでございまして、わが国はこれら先進諸国よりはるかに低い数字を示しているのであります。また、財政投融資計画一兆三千四百二億円も、前年度当初計画一兆一千九十七億円に対し、その伸び率は二〇・八%であり、これも三十八年度の二二・六%を下回っているのであります。  しかして全体としての伸びは前年度を下回っておりますが、この内容を少しくしさいに検討してみますると、住宅、生活環境整備、厚生福祉施設、文教、中小企業、農林漁業等、いわゆる直接間接国民生活の改善向上のために使われるものは全体計画の五〇・八%、六千八百十二億円であり、さらに国土保全、災害復旧、道路港溝、運輸通信、地域開発等を合わせた広い意味での国民生活を中心とした部門には計画全体の約八五%、およそ一兆一千三百七十億円が投入され、これも前年度の八二%を三%も上回る内容の改善と充実がはかられているのでありまして、以上、これらの数字や内容がいずれも立証しておりますように、予算規模が前年度に比して四千億円余、財投の規模が二千三百億円余り増加し、予算が単に三兆円の大台に乗ったというきわめて単純な考えで大型だ、放漫だと騒ぐことは全くの見当違いの議論であると言うべきでありましょう。しからば、日本社会党の組みかえ予算案はどうか。三兆三千百億円で、政府原案よりも五百五十億円に近い増額であり、このような予算案は超大型と言うべきか、何と呼べばよいのか、これこそ他を見ておのれを顧みざるもはなはだしいと言わざるを得ないと思うのであります。  以下、私は、予算の内容について、特に重要施策数点について若干の意見を申し上げてみたいと思うのであります。  まず、画期的な大幅減税についてでありますが、わが党内閣は、過ぐる総選挙におきまして、国民への最大の公約として二千億円減税を打ち出したことは御承知のとおりでございますが、その公約は完全に果たされたのであります。すなわち、平年度国税において一千三百八十億円、地方税において八百億円、合計二千百八十億円、まさに公約の二千億円を百八十億円上回る大幅減税の断行と相なったわけでありまして、歳入面において前年度剰余金の大幅減少という悪条件にありながら、一方歳出面においては旺盛なる財政需要の中で、よくこれらの調和をはかり、しかもその減税規模は戦後十数回にわたって実施された税制改正の中で最も大規模なものであります。  野党諸君は、租税の自然増収に比較して減税額が少な過ぎるとか、前年度の租税負担率より高い負担率であるから、実質的には増税になっておるなどと、相変わらず難くせを吹っかけているようでありますが、これはいつも言われる野党一流の財政固有の役割を軽視した単なる減税優先論にすぎないものと私は思うのであります。もとより租税負担率が低きを望むことは与党のわれわれもひとしく望むところでありますが、本来国民所得に対する租税負担の軽重は、結果として出てきた負担率で論ずべきものではないと思うのであります。それは国民一人当たりの所得水準であるとか、財政収支を通じて国民に還元される公共サービスとの関連など、もっと広範囲な視野に立って総合的に判断すべきでありまして、野党の諸君が租税負担率の高低で論議されることは間違いではなかろうかと思うのであります。先進欧米諸国に比較いたしましても、イギリス、西ドイツの三三%、フランスの二九%、アメリカの二七・八%、イタリアの二六%というように、いずれもわが国よりも社会保障制度その他が発達している国ほど高くなっていることを思いますとき、むしろ、わが国も欧米並みの福祉国家に接近するために、租税負担率はもう少し高くてもという論すらあるのであります。今日の国民負担の現状、旺盛なる財政需要の実情などを考慮すれば、まさに適切妥当、しかも思い切った減税の断行であるというべきでありましょう。  次に農林漁業と中小企業の問題について申し上げたいと思いますが、三十九年度予算における大きな特色は、ただいま申し上げました減税の断行と同時に、経済の高度成長の過程を通じて、相対的に生産性の立ちおくれた農林漁業と中小企業の近代化、合理化を促進するため、画期的な助成と長期低利の融資を大幅に増額、拡大したことにその特徴を認めることができるのでありますが、このことは、今日経済の著しい発展に伴って、特に農業の場合は、他産業との間において生産性及び農民の生活水準の格差が拡大しつつあり、他方農産物の消費構造にも変化が生じ、また労働者の他産業への移動にも見られるのでありまして、このような事態に対処して農業の自然的、経済的、社会的制約による不制を補正し、農民の自由な意思と創意くふうを尊重しつつ農業の近代化と合理化をはかって、農民が他の国民各層と均衡のとれた発展を続け、これらとの所得格差の是正をはかり、もって健康にして文化的な生活を責めるようにしようとする農業基本法の考え方に基づくもので、これこそ昭和三十六年以来わが党がとってきた農業政策の根本であり、三十九年度における重点施策もこの農業基本法にのっとって、農家の企業家意識を高めるとともに、流通機構の改善と価格の安定に力を注いだもので、このため、まず融資面においては、農林漁業金融公庫の貸し付けワクを前年度八百七十億円から一千七十億円と飛躍的に増大し、金利体系においても、現行最高七分五厘から三分五厘までの五刻みでの九段階あったものを四段階に整備し、農業構造改善事業の融資単独事業費を一地域当たり二千万円を三千万円とし、また農業近代化資金は農協等の系統資金を活用して、前年度を八十億円上回る六百億円に増額して資金需要に応ずること、さらに無利子の農業改良資金は、前年度十八億円から一躍四十六億円に大幅増額して、貸し付け対象の拡大及び貸し付け期間の長期化をはかるなど、また新たに農業後継者養成のための新規事業者着業資金、生活改善資金への貸し付け等、現実の要請に即した改善と拡大をはかったものでありまして、私はここにあえて満腔の賛意を表するものであります。  中小企業対策につきましても、農林漁業の場合と同様、特にその実態に即して重点的施策が講ぜられているのであります。  わが国の中小企業は、近時成長経済のもとで機械工業部門の発展や中堅企業の伸長等、今後の中小企業成長の方向は明確になりつつあると思うのでありますが、他面、経済成長に伴って中小企業を取り巻く諸条件は急速に変化しつつあるのであり、これらの変化に対する中小企業経営の適応のおくれが目立ってきていることも現実の姿であろうかと思うのであります。したがって、三十九年度は、この認識に基づいて、一般会計からの予算対策はもとより、税制及び金融対策の面など、総合的な見地から中小企業の近代化と健全なる振興発展に寄与したものと思うのでありまして、まず税制面においては、先ほども減税問題の際に触れましたように、二千億を上回る減税の中で、中小企業関係の減税は、国税、地方税を通じておよそ三分の一に当たる六百億円以上という、まさに画期的ともいうべき大幅減税を実施し、金融面においては、財政投融資計画において、中小企業三公庫に対して合計一千六百十七億円を投じて融資の拡大に積極さを見せているのであります。このほか、新たに中小企業金融公庫債百億円の発行、商工中金の金利引き下げ、中小企業信用保険公庫の保証保険制度の確立等、資金の確保と助成の強化、さらに一般会計においても、前年度予算を四十七億円およそ四〇%上回る百六十六億円を計上して、中小企業の近代化促進と高度化のための施策が重点的かつ積極的に実施されております点、さきに制定された中小企業基本法にのっとったわが党の政策が着実に推進されている証拠でありまして、その効果は期して待つべきものがあると信ずるのであります。  最後に、公共投資社会保障関係について申し上げます。  公共投資の拡大による社会資本の整備と社会保障の充実については、ここ数年来特に重点的に取り上げられ、三十九年度予算においても引き続き大きな政策の柱となっているのでありますが、公共投資の総額は、一般会計における公共事業関係費六千十一億円、これに財政投融資面からの四千五百五十六億円を合わせますると、実に一兆五百七十億円という飛躍的な増大であり、前年度の八千八百五十億円をおよそ千七百億円以上上回る増額に相なるのであります。なかんずく道路、港湾については、新たな五カ年計画をもって一そうの充実をはかり、特に道路整備については、今後二十年間で欧米並みの道づくりというビジョンを掲げ、三十九年度を初年度とする新五カ年計画では、四兆一千億円をもって一級、二級国道をはじめ、おもなる地方道の舗装整備を促進するため、道路整備特別会計において三十五億円、財政投融資計画において、道路三公団に対し一千百十七億円、合わせて四千百二十二億円の予算と資金を投じて道路交通需要の緊急性にこたえているのでありますが、このことは国民生活の基盤を充実し、経済の安定成長を念願として公共社会資本を拡大しようとする年来のわが党政策に全く合致するものであり、同時に国民もひとしく期待するところであると思うのでありまして、私は進んでここに賛意を表するものであります。  社会保障の拡充についても、福祉国家の建設という大目標のもとに年々歳歳躍進を続けていることは疑う余地のないところでございますが、いま、過去の推移を見まするに、躍進のあとは明瞭にうかがうことができるのであります。すなわち、昭和三十四年度予算に占める社会保障関係費は一〇・五%でありましたが、三十九年度は一三・二%に伸びているのであります。構成比だけから見ますると、わずか二・七%の増加率でありますが、金額の面から見ると、三十九年度は実に四千三百七億円というまさに三十四年度の三倍に増大しているのでありまして、物価の値上がりその他を考慮いたしましても、その進展の増大と実績は国民各位のひとしく認めるところであると思うのであります。  このほか、一万円厚生年金の出現をはじめ、国民健康保険の家族七割給付の実現、生活保護費の一三%アップ、下水道、し尿処刑施設等生活環境の整備促進、一世帯一住宅の建設、また国民年金、福祉年金の充実など、いまや社会保障はきめこまかく改善充実されつつあるのでありますが、中でも注目すべきことは、軍度精神薄弱児について、月千円の扶養手当支給制度が創設され、また児童手当制度の創設準備に着手するなど、前者は、あの拝啓池田総理大臣殿にこたえたものであり、後者は、わが国社会保障制度の中で先進国に比べてただ一つ欠けていた制度の創設準備への着手でありまして、いずれも児童保護対策としての大きなヒットを打ち出したものとして、私はここに感謝とともに深く敬意を表するものであります。  次に私は、日本社会党並びに民主社会党の動議に対して、簡単に反対の意見を申し述べてみたいと思うのであります。  両案を一見して感じますことは、政府予算に対し抽象的な批判のみが多く、しかも総花的に理想と空想をミキサーにかけたような事項を羅列したものであり、責任ある政権を持たないものの安易さだけが感ぜられるのであり、私どものとうてい承服しがたいところであります。  日本社会党の組みかえ案は、予算規模を三兆三千百億円とし、政府案をおよそ五百五十億円上回って、しかもインフレ的性格を完全に除去できると言い、その内容は相も変わらず防衛関係費、公安調査庁関係費等を大幅に削減しております点、はなはだ非現実的であり、したがって、減税にしろ財政投融資計画にしろ、とうてい論ずるに足らないものであります。さらに支出の内容を見ましても、やたらに政府案を上回る多額の消費的支出が目立ち、これに対しいろいろ理屈はつけてはいるものの、どうしてインフレを完全に除去できるのか、さっぱりわけがわからないのであります。いずれにせよ、責任のないものが責任あるものを批判する目的のみにてつくられたものであり、国民を代表するわが党が問題にするに及ばない組みかえ案であることだけは明らかであります。  民主社会党案につきましては、幾分現実的な点もあるのでありますが、遺憾ながら全体的に見まして賛成することができません。  以上をもって、私は、政府原案に賛成し、日本社会党並びに民主社会党の両組みかえ動議に反対をいたして、討議を終わることにいたします。(拍手)
  156. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 次に加藤清二君。
  157. 加藤清二

    加藤(清)委員 委員長のお許しを得まして、私は日本社会党を代表いたしまして、政府提案の昭和三十九年度一般会計予算特別会計予算及び政府関係機関予算に反対をし、民社党の編成替えを求めるの動議に反対し、社会党提出の昭和三十九年度予算につき撤回の上編成替えを求めるの動議、これに賛成する立場から討論を行なおうとするものであります。  政府予算は、これを一言にして言えば、自民党の選挙公約とは似て非なる予算、公約裏切り予算であります。二つ目に、国民のしあわせを求むるにあらず、一部大企業にのみ奉仕するの予算でございます。第三番に、平和確立にあらず、わが国を国際破乱紛争に巻き込ませる危険性のある予算でございます。第四に、自主独立にあらざる経済外交予算、これはアメリカ及び自由陣営の自由を拡大し、日本の輸出の自由は制限させられるところの予算であります。これが通過することは、国民にとってきわめて不幸でございます。これは野党少数の今日の悲劇でございます。今日ほど野党少数の悲しさの身にしむ日はございません。にもかかわりませず、政府案が通過するのでありましょう。通過の第一の理由は原案がよいからではございません。野党少数というこの第一の理由からでございます。第二は、野党が国会正常化に心から協力しているということでございます。第三は、荒舩委員長の人格や腕のしからしむるゆえんでございます。荒舩委員長と各理事の名コンビは、もって国会正常化の範とするに足ると思うのでございます。  さて、私はこの予算案を批判する前に、みずからのえりを正してみたいと存じます。同時に、身に振りかかる火の粉は払わしてもらいたい。ただいまも社会党案を理想論とか、空論とかいう御批判がございました。その身に振りかかる火の粉を払わさしていただきます。すなわち、わが党に寄せられる世論の批判を正直に振り返った後、他を顧みるということが、政治家のとるべき正しい態度だと思うからでございます。  批判の第一は、社会党は反対が多過ぎる、何でも反対する、こういう意見でございます。そこで実はほんとうは総理にお尋ねしたいところでございまするが、おそらくお答えがないのでございましょう。あったらぜひお答えしていただきたい。(発言する者あり)それでも答えがあったらしていただきたいと言うておるんです。提出案件に対して野党の賛成、反対、この割合はどの程度ならばよろしゅうございますでしょうか。一党独裁が長期にわたりますると、必然的に守るも攻むるも一方のみ研究が積み重なり、その一方のみが得意わざとなる。その得意わざのみ宣伝されまするので、一方的偏向のように思われがちでございます。しこうして実態はそうではない。田中大蔵大臣、あなたが一番よく御存じのはずでございます。かつてあなたは商工委員長であらせられた。私はそのときに理事をいたしておりました。あのときの提出案件は一体幾つでございましたか、三十二件ございました。そのうち一体幾つ私が反対したでしょう、社会党が一体幾つ反対したでしょう、たった一つでございます。それも最後は通過を許したのでございます。あたなの記憶に新たなところです。私はいまでも名委員長だと思っております。ところで三十二分の一の反対、この歩どまりがまさに九七%以上でございます。わが党の反対は総理、中小企業の倒産指数よりははるかに少ないのでございます。どうしてしからばあのときあのような賛成が行なわれたか。それは田中委員長がわが党の意見をよく取り入れたからでございます。なぜ社会党、野党が反対するか、反対意見を取り入れないからでございます。すなわち、与党に真の寛容と忍耐のないとき、反対は必然の結果として発生するものでございまして、これはまさに自然発生的であり、突然変異ではございません。君子豹変ではございません。池田さんの台湾領土問題におけるように君子豹変するようなことは野党にはないのでございます。  批判の第二には、社会党は具体策がない、批判ばかりしているという点でございます。これは全くのぬれぎぬでございます。質問という形で具体策を述べているのが宣伝されないだけで、取り上げられないだけであって、われわれの一体質問とは何であるか、知っておって聞くということであります。聞くという形をとってあなたたちを動かすことでございます。知らぬから質問するなどと思う人がもしあったとすれば、それは学生、生徒のなせるわざであって、国会の質問ではございません。せっかく社会党が提唱した具体策を与党が多数によって名前だけ取り上げてしまう。この常套手段のおかげで、わが党案は与党とんびにさらわれてしまうということが繰り返されてきているのでございます。すなわち、中小企業に例をとりますれば、中小企業金融公庫法、下請代金支払促進法、百貨店法、中小企業団体法――組織法、中小企業基本法、ともにわが党が先によりよき原案を提出しているのでございます。それを与党が握りつぶした。しかし世論がこれに賛成しついてきた。そこで与党が、名前は同じで中身を骨抜きにして政府提案と称して通したのが前述の法律でございます。歩み寄った結果は、結局名前は同じだが、骨抜きとなってしまい、下請代金支払促進法が支払遅延防止法と名前まで塗りかえられ、罰則と団体交渉権は骨抜きにされ、その結果が、それ、いまあらわれている六十日と規定してあるにもかかわらず、台風、お産の手形で、中小企業が法律施行後もなお苦しんでいるのが今日の実態でございます。全く政府責任と言わなければなりません。社会党に政策がない、具体策がないというのは、具体的事実を故意に曲げたか、悪口せんがための悪口か、しからずんば、知らざるがゆえに発表された群盲象をなでるところの漫画風景でございます。中共貿易またしかりです。教科書無償法もしかりでございます。やがてこうなることでございましょう。この意味において、わが党は決して空理空論ではない。理事さん、わが党こそが与党の先達をつとめているのでございます。  次に、私は政府予算の誤謬をえぐり出すために、中小企業に実例をとってみたいと思うのでございます。総理、特に聞いていただきたい。二月の倒産実態はいかがでございます。まさに野党が指摘したとおりの結果を露呈いたしております。件数にして二百三十八件、金額にして三百五十一億円、不渡り枚数は七万七千余枚でございます。これは一日平均にいたしますと、二月は一日約八件になります。そうでしょう。同時に、金額にして一日十一億余でございます。これを前年同月との比率をいたしますと、二七%増と相なっておるのではございませんか。去年の十一月から記録は更新され続けでございます。戦後最高でございます。世界最大でございます。政府の打ちました緊急な施策は焼け石に水と言わなければなりません。事態はまさに深刻と言わねばなりません。一体、この予算を通すことのみにきゅうきゅうとしていて、まさに倒れていくその中小企業に対していかなる手を打とうとなされるのでございましょうか。まことに遺憾と言わなければなりません。私は本案に賛成できないところのその理由を次のようにえぐってみたいと存じます。  すなわち、中小企業の倒産につきまして、これは意見の相違でなくて、総理、あなたはその事実の誤認を押しつけていらっしゃるのでございます。原因は、いわく思惑である、こうおっしゃる。しかし、これは全くの責任転嫁もはなはだしいと言わなければならない。もしそれ、あなたのおっしゃるとおり思惑がありとするならば、それは零細、中小企業にあらずして、あなたが許可をしていらっしゃるところのデパートにあり、あなたが許していらっしゃるところの三品市場にこそ毎日思惑とギャンブルが行なわれているのでございます。この最大の原因一体どこにあるかといえば、日本経済の本質をながめてみなければなりません。それは世界でまれに見る金利が高くして賃金が安いということでございます。ところで、金利はますます高きを望むのが人情でございます。水は高きより低きにつきますが、金は金利の低きより高きにつく。人間また賃金の低きより高きを追うていく遊牧の民である。(笑声)ところで、まことに残念なことに、世界一高いという金利よりもなお高いものがある。それが日本の物価の値上がりでございます。日本の物価の値上がりが銀行預金金利に上回ることは、やがて国民の預金意欲を喪失することを総理がよく御存じでございましょう。預金していくよりは買ったほうがよろしい。  ところで、利回りを求めて、この金は金融市場から証券市場へと流れていきました。すなわち、銀行よさようなら、証券さんよ今日はでございます。ところが、証券市場に流れましたところのその金が、見ると聞くとでは大違いの証券市場、貿易の自由化の危険と、頼みにしておりましたところのアメリカ市場からの資金、すなわちこれが利子平衡税で一とんざを来たし、結局ここに思惑を生じ、やがて証券市場に流れた金が三品市場へ、三品市場へと殺到したのでございます。すなわち、糸へん、雑穀、特に大豆、小豆のごときは赤ダイヤという小説まで生んだのでございます。つなぎの場はかくして、ギャンブルの場となり、つなぎの場はやがて射幸の場とかわったのでございます。まさにあなたたちの責任でございます。生産のための原料のつなぎの場であったところの三品市場がギャンブルの場、思惑の場と変わっていったのでございます。そのために人波を食らって溺死、倒産したのが中小企業といわねばなりません。生き残ったものも、なお値ぎめのときに高くて製品を納めるときに安くなる、いわゆる原料市場の相場に左右されまして、原料高の製品安と、買いたたかれていったのでございます。これが中小企業の倒れる最大の原因と言わなければなりません。  このことは内地に悪影響を及ぼすのみならず、やがて輸出にも悪影響を及ぼしてきました。貿易収支の赤字の原因の一つがここに存すると言わねばなりません。すなわち、外国のバイヤーやインポーターは、日本製品はコストが不安定である、動揺する、短期間に動揺が激しい、安く買った予定の品もなお次の期には安くなって損をする、これが彼らのことばでございます。大量とか長期契約には不適当である。しかもその結果はスポット買いと相なり、輸出の伸び悩みの原因、時にラッシュ原因と相なっていることを知らなければなりません。はたして、この予算にこれを解決するところの方針が盛り込まれていると言えるのでございましょうか。あったらお示し願いたい。貿易の自由化は、輸入だけは増加いたします。ところが帳じりは赤でございます。金融引き締めも、この金融市場におけるところの資金の流れも、ともに悪循環を繰り返しているのが今日の実態でございましょう。  そこで池田さん、ぜひあなたにやってもらいたいことがある。しかし、はたしてやれるかやれないかを尋ねてみぬとわからぬから、尋ねてみます。池田さんは二十八日の商工委員会において、わが党の質問に答えて、中小企業向け融資量の拡大のために次のように述べておられる。すなわち商工中金、中小企業金融公庫等の金融債を大幅に拡大して、市中でその資金を調達する。二番目に、政府は、無利子貸し付けにかかわるところの中小企業近代化資金は、これをだんだんに改めて、長期にして低利融資に切りかえる、すなわち、言うなれば、これは金融ベースに乗るものを対象とするという意味でございましょう。ところが問題は、自民党の中小企業対策特別委員会にございます。なぜかならば、特別委員会の骨子は零細企業擁護でございます。金融ベースに来るものではございません。政府資金の減少ではなくして、政府資金の大量投入でございます。意見がまっこうから対立しているのではございませんか。通産省、一体これをとってどうするつもりでございましょうか。実現は非常に困難と相なると存じます。なぜかならば、今日、商工中金の金融債の発行右利回りを引き上げれば、総理の言うごとく、つまり金融ベースに乗せれば、貸し出しの金利を下げるという目的が不可能になるのでございます。一番目に、金融債を市中売りする場合、今日では皆さん御存じのとおり、ほとんどが銀行、金融機関がこれを引き受けておってくれるのでございます。ところで、市中銀行が資金難の今日、なお金融債を仰せのとおり引き受けたとするならば、一体どういう結果が生ずるか。銀行は、いままで中小企業に向けて貸し付けていたものを金融債に振り向けるだけであって、絶対量にこれがつながるということはきわめて疑問と相なるのでございます。タコが自分の足を食って生きているに似たやり方でございまして、まさに称してこれをタコ足経済と言わなければなりません。専門家の池田さんのはずでございます。どこかに間違いがあることと存じます。こんなことで中小企業の倒産がはたして救えるでございましょうか。党の意見と総理の発表が食い違う。そこで事務当局は安心して働けるでございましょうか。実現したとしても、タコ足不安がある上、その方法が対立している以上、どうしてよい案と言うことができるでございましょうか。その場限りの言いのがれであると言わなければなりません。いままさに中小企業は倒れんとしておる。倒れつつある。私がものを言うているこのときにも倒れているのです。そんなときに、こんなゆうちょうなことを言うておられて、それで助かるでございましょうか。助からないと言わなければならない。したがって、そんな予算はずさんな予算といわなければならぬわけです。  池田さん、あなたの余命は幾ばくあるかは私は存じません。しかし、市の通るところ、毎日死傷者の発生が絶えておりません。運輸大臣御存じのとおりです。産業の営まれるところ、毎日中小企業の倒産が続出していることは明らかな事実であると同時に、厳粛なる事実でございます。国民の不安、識者の憤りもまた、この事件の増大とともに伸びております。その不安のピークは、やがて中小企業倒産は五、六月、交通事故はオリンピックのころと識者の意見が一致しているようでございます。にもかかわりませず、大臣は、成長面をのみ高く大きくうたいあげて、倒れゆくものは顧みもしない。大企業は語り合い、話し合い、その恩恵に浴すれども、中小企業や労働者は、大会が行なわれ、会合が行なわれても、顔は一度も見ることができない。いわんや恩恵をや。アフターケアは公約のことばのみに終わっているようでございます。経企庁の長官、ただ一度、国民、中小企業等の店の主婦が総理の笑顔に迎えられ、やさしのことばを聞く機会がございます。それは選挙演説のときだけのようでございます。これでもなお民主政治と言うことができるでございましょうか。賛成できない理由の一つでございます。  中小企業は倒れ、農村青年がその夢と希望を喪失するような予算には、遺憾ながら良識ある者の賛成できないところでございます。資本蓄積の美名に隠れ、毎年繰り返されていくところの、その蓄積された資本は、一体だれのものとなることでございましょうか。「ミンナニイイヨ」のキャッチフレーズのもと、集められました膨大な予算、それは、ことしもまた大企業中心は投入されていくのでございます。ただ国民はそのおこぼれをいただくのみ、こんな政治をなおよいということは、総理を取り巻く一部の人か、ないしはおせじを言わねば首のあぶない人人か、それともあなたの政治によって得をする一部の企業家のみでございましょう。池田さん、いまはあなたのことばが通用するが、はたして後世に通用するでございましょうか。いまは知らず、歴史はあとに残った者が書く。後世の歴史家は必ずや、池田は、日本経済復興を急ぐのあまり、大企業家をして中小企業者のしかばねを乗り越えさせ、国民をいけにえにした。米国との交わりの深きにおそれ、中国との貿易におくれをとったと書くでございましょう。そんな予算には反対することが愛国者の責任と言わなければなりません。  人つくりを言われる池田さん、あなたの人の範疇は何でございましょうか。池田総理、あなたの人の範疇は何でございましょうか。あなたは、演説にあたっては最大級の形容詞をもってし、質問に答えるに臨んでは、時にいたけだかをもってせられるようでございます。心は、自己のものが最高だ、それを人に押しつけるということだろうと思います。あなたのモットー、寛容と忍耐とはどんな関係があるでございましょうか。寛容、忍耐とは、人の意見をしんぼうして聞いているときの状態を言うのだけではなくして、良薬は日に苦くとも、これを取り入れて消化し実行することだと思うのでございまするが、あなたの忍耐は聞くだけ、答えるだけでございましょうか。人の意見、反対派の意見を取り入れることは決してその人の恥ではないと存じます。私は、拝啓池田総理大臣殿と書いたあの作家水上氏の意見を取り入れられたところのあなたの行為はりっぱだと思っております。なぜ野党の意地は正しくとも取り入れられないのでございましょうか。寛容ではなく狭量という、またのことばは、そういう態度をイン・テイ・ズブというようでございます。訳していんぎん、丁寧、ず太いというのでございます。あなたはいずれをとられるのでございましょうか。  それにつけても惜しまれるのは高碕達之助先生でございます。あの方こそ当代一流の政治家、世界的な実業家というべきでございましょう。すなわち、人の意見を取り入れるにあたっては、人種、派閥の区別によらず、その人の誠意とその人の意見の本質によられたのでございます。たとえば私の思い出の中にもその一例がございます。日本、アメリカ、インドネシアの三角貿易によるところの日本繊維製品の輸出振興策がそれでございます。エジプトヘのプラント輸出方式がそれでございます。アメリカヘの繊維及び雑貨の輸出対策をはじめ十指に余るのでございます。その人の死後なおこのことは行なわれているのでございます。思い起こすも心あたたまる問題でございます。日本経済とともに相手国の発展にも効果の多いことでございます。統計の示すところ、高碕経済企画庁長官、高碕通産大臣のおりは、中小企業の倒産の例も少ないのでございます。中小企業者にとって、国際収支にとって、時の氏神と言うても過言でないと思います。社会党は反対のための反対はしたことはございません。政府の施策がよければよいと申します。政府の施策が誤謬に満ち、その予算がわが党の質問によってずたずたにされる、それでもなお取り入れられれば私どもは賛成にやぶさかでないのでございます。  しかし総理、もう一つ具体的な問題を申し上げまして結論にしたいと存じます。道路の速度制限が四十キロだ、そこで八十キロ、百二十キロのスピードを出した。直ちに罰金、免許状褫奪でざいましょう、運輸大臣そうでしょう。ところが、手形発行については六十日という規定があるにもかかわりませず、その三倍、四倍の台風、お産、七夕が横行しても政府は何ら手を打とうといたしません。その罪、及ぼすところ、前者より後者がより大きいにもかかわらず、前者は罰せられ、後者はその罪を問われないのは一体なぜでございましょう。前者は貧しき労働者、中小企業が多く、手形発行者には政治献金元の大企業家が多いからではないかと思いたくなるのも常です。弱き者は罪を問われ、強き者は罪を問われない、これが池田政策でございます。どうしてそんな政策に賛成することができるでございましょう。政府も中小企業対策について反省はされたようでございます。問題は実行が伴うかどうかということでございます。大蔵大臣は、手形に関する本委員会の私の質問に対しても、体罰をもって臨むと言われました。そう答弁がありました。その実行ははなはだ疑問が多いと言わねばなりません。なぜか、もし実行するとするならば、それはいつの日、いかなる方法によって行なわれんとされるのか。つまびらかでございません。もしそれを行なうとするならば、いまここでやらねばならない問題があることを申し上げたい。すなわち小切手不正発行は一体放置されたままではございませんか、なぜかならば、この規定は三十年以前からあるにもかかわらず、犯例は多くあれどもこの小切手法の適用された前例を見たことがないのでございます。すなわち小切手法第三条に規定する過振りは、担保、預金以上の振り出し発行者であり、不渡り小切手の元凶であるわけ、これは信用取引の手形を過当に発行した不渡り手形と軌を一にするものでございます。大蔵大臣よくおわかりのとおりでございます。総理もその道の専門家ですからよくおわかりでございましょう。同法七十一条では、この過振りに対して金五千円の罰則を規定しているのでございます。三十年前の五千円は今日のまさに五十万円といわなければなりません。これはこの罪を重要視した証拠でございます。にもかかわりませず、現行小切手法の昭和九年一月施行以来、この適用が一回も行なわれていないのでございます。一体どうしたことでございましょうか。当局において方法論さえ一致していないのが今日の実態でございます。大蔵大臣、御存じのとおりです。放置されたままでございます。一方受け取り手形を、今度は、銀行で割った後にこれが不渡りになった場合、発行者でなくて割った中小企業に対してはどうなるか、これがたいへんだ。当座取引と貸し出し取引が三年間停止、もちろん融資取引も停止でございます。過酷な罰が課せられていると言わなければなりません。まさにこれは閉門仰せつけと言わなければなりません。与えるものは上に厚く下に薄い、罰則は上に甘く下にきびしい。これでは百年河清を待っても、とうてい中小企業の業界は正常化することはできないと言わなければなりません。正常化する予算が組まれていないから反対でございます。手形、小切手の期間は、リセッションのたびごとに、金融引き締めのたびごとに、それがきっかけとなって期間の延長の一途をたどっているのでございます。大臣、しわの集積が延長となり、政府経済政策が期間延長の原因となっているのでございます。  池田さん、町に声がある。池田勇人鬼よりこわい、にっこり笑って税を取る。その税は一日の待ったなしでございます。延長すれば高金利を召し上げられるのでございます。大企業の手形及び小切手の延長は黙って見ておきながら、国民の納税延長は絶対に許さないというのがいまの政府であり、予算の組み方でございます。こんな予算編成には、日本国民である以上、納税者である以上は賛成できないと思うのでございます。もしこのまま放置するならば、政府はみずから責任を負うべきであり、その証拠としてやれることを申し上げてみます。納税の場合に手形や先付小切手による納税を許すべきであり、その用意があるかないかと尋ねたいのでございますが、おそらくこれも答えができぬのでございましょう。それもなし得ないならば、せめて手形発行者に発行日記入を義務づけることが、せめて今日の政府になし得るわざだと思います。口に期間短縮や刑罰を言いながら、発行者に発行期日の記入義務を免除しておって、どうしてそれができるでしょう。だからこそ、発行日の記入された手形は一枚もないのでございますよ。そんなことをして発行日の期日なくしてどうして六十日以上ということを規定することができるでございましょう。何をもって規定し、何をもって罰則を当てはめるでございましょうか。少なくとも期日記入の義務には、税金もかからなければ、予算も要らぬのでございます。あなたの腹一つでできるのでございます。刑罰を科するという勇気があるならば、まず前にこれをなすべきだと思うのでございます。しからずんば、かご抜け法と相なること、また火を見るより明らかであります。  かくて中小企業への革命的施策、企業庁長官の言うところのアフターサービスは美辞麗句と終わり、国民の夢と消え去っていったのでございます。うそを言ったことがない、うそを言わないというその総理は、この予算を通過させることによって、うそを言いましたという結果に相なるのでございます。かかる予算には私は絶対賛成できないのでございます。  これに引きかえ、わが党案のよさはいかがでございましょう。第一から第四に至るまでずらりと並べてございまするが、私はそれをいまここで申し上げることは避けます。ただ、日本社会党のこの組み替え予算が実行に移されるならば、農民、中小企業が生業に安んずることができる。農村青年は失うた夢、希望を取り戻すことができる。労働者が安心して弄んで働ける予算でございます。イギリスのごとく、アメリカとも中ソとも自由に貿易して貿易収支を黒字で埋めるということのできる予算でございます。まさにこの予算が通過することを祈念するゆえんでございます。  以上、政府案に反対、民社党案に反対、わが党案に大賛成、皆さんの賛成を求めて討論を終わるものでございます。ありがとうございました。(拍手)
  158. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 次に小平忠君。
  159. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私は、民主社会党を代表いたしまして、ただいま議題となっております昭和三十九年度予算案三案につきまして、政府案並びに社会党提出の動議に反対し、民生社会党提出の動議について賛成の趣旨を明らかにせんとするものであります。(拍手)  私が政府案に反対する第一の理由は、政府案が依然として失敗のあと歴然たる所得倍増計画に準拠して編成されている点であります。  なるほど、政府案編成の前提として、明年度の経済成長率は実質七%と想定して、本年度の実質八・二%よりも低目に押えております。消費者物価の上昇がとどまるところを知らず、かつまた、国際収支の均衡がすこぶる不安定である現在、このような経済見通しに立つことは当然でありましょう。ところが、実際の経済の動きはどうでありましょうか。  まず、去る十二月十六日預金準備率の引き上げが金融機関に指示され、いわゆる窓口規制が始められました。この金融引き締めは、金融機関の融資の資金量の引き締めであり、また窓口において融資先を選別するという形をとっておりますが、この引き締めと並行して、中小企業の倒産の増加、不渡り手形の激増となっております。政府は、池田総理をはじめとして、不健全経常や思惑がそれらの原因であると申しておられますが、もう一つの現象として見のがすことができないのは、手形サイトの長期化であります。私の手元に中小企業金融公庫の調査した資料がありますが、これによれば、百二十日以上の手形を発行していた親企業の数は、三年前の昭和三十六年の五月には全体の二六%であったのが、昨年九月には何とこれが五二%となり、年末に向かってさらに激増しております。最近公正取引委員会がついに手形サイトの調査に乗り出しましたが、この点は金融引き締めの影響を下請けの中小企業に転嫁せんとする大企業の常套手段なのであります。しかも、政府は一-三月を予定していた窓口規制を四-六月に延長するようすでに内定しております。したがって、大企業の金融操作として、中小企業圧迫はますます過酷になりましょう。  一方、大企業の設備投資活動を見ますと、鉄鋼業を例にとりますと、昨年秋より再び大手大会社の設備投資競争が再開されております。一時中止していた八幡、富士の増設工要は再開され、住友、川鉄は増資を済ませて高炉増設に踏み切っております。昨年より鉱工業生産も経済成長も低く見積もるという政府の方針に反して、鉄鋼の生産過剰体制の出現は目に見えております。どこに一体金融引き締めが行なわれているのかと思われるのが大企業の現状なのであります。  いまや、昨年末からの金融引き締めで確かに銀行貸し出しは抑制されておりますが、生産は依然として高水準にあります。したがって、輸入は増加の一途にあります。金融引き締めの効果は確かに中小企業に波及しておりますが、金融引き締めがどれだけ国際収支の改善に役立ったか、また、今後役立つかどうかは、きわめて疑わしいのであります。いまや生産過剰、供給過剰、そこで企業収益が低下し、そこから脱出するために生産を増加して再び輸入をふやすという悪循環がわが国経済の体質にしみ込んで、三十九年には再びそれが発熱、発病しかけております。したがって、政府経済見通しとは関係なしに経済の悪循環が深刻化しつつあります。  このような情勢の推移に備えるかまえも準備も政府予算編成には何ら発見し得ないのであります。  私が政府案に反対する第二の理由は、一月二十一日の総理の施政方針演説では、高度福祉国家の実現という高い目標を掲げられました。ところが、予算編成上にあらわれた福祉とは、要するに物価高に対する事後処理にすぎないのであります。  政府が二千億減税と称する税制改正の内容は、国税において差し引き八百三十六億円の減税、地方税においては差し引き三百三十八億円の減税、合計千百七十四億円の減税にすぎません。しかも、減税案の中心となっている所得税減税六百四十九億円の内容は、扶養家族四人の給与所得者については、年収約四十七万一千円までを免税にするものであります。この年収四十七万一千円という水準は、実は大蔵省が三十八年度における国民の標準家計支出規模であるとして税制調査会に正式に意見を提出しているところであります。政府みずから三十九年度には消費者物価が四・二%上昇すると見込んでいるのでありますから、三十九年度の標準家計水準はこの金額を当然に上回るものであります。すなわち、今回政府が制定せんとする所得税の免税点では、家計支出は必ず赤字にならざるを得ないことを政府自身が認めているのであります。  また、歳出面において見ますると、生活保護基準の一三%引き上げ、失対労務者の日給の四十三円九十銭の引き上げなどは、いずれも三十八年度中の消費者物価の値上がりについての物価手当にも当たらない金額なのであります。  また、住宅対策について見まするならば、公営住宅建設六万四千五百戸、住宅金融公庫住宅が十三万戸、公団住宅三万六千戸、合計二十三万戸の建設予定になっておりまして、公営住宅の占める割合は三分の一強にすぎません。いま、東京都の調査によりますならば、住宅困窮者の五一%が都営住宅すなわち公営住宅を希望しているのでありまして、住宅政策の中心は公営住宅建設でなければならないことはすでに天下周知の事実であるにもかかわらず、政府案は依然としてこの点を、無視とは言えませんが、はなはだしく軽視しておるのであります。  このように、政府案の編成を検討いたしてまいりますと、国民の日常生活の保障と、その水準引き上げに全く通り一ぺんの予算増額を計上しているにすぎないのであります。わが国の政治通念といたしましても、これをもって国民福祉を増進するものとは断じて認められないのであります。  さらに、農林漁業対策費、中小企業対策費など、いわゆる経済格差是正対策予算につきまして、私は各論的な詳細についてはここでは省略いたしますが、どうしてもここに触れておかなければならないことは、政府予算案と並行して特定産業振興臨時措置法案をすでに提案済みであることであります。  この法案は、石油化学、自動車などの三つの産業及び政府が政令で指定する産業については、企業の合併、資本の集中を促進せしめ、かつ同一産業内部の企業の共同行為を大幅に許容しようという新しい経済秩序法でありまして、政府が今後の開放経済に対処する産業体制についての基本方策であります。私どもも、今後の国際競争力強化のために大企業間においても企業合同や共同行為の必要を認めますが、これは大企業の私的独占と高利潤を保障するためではありません。さらに、大企業をしてより大きく社会責任、公共的利益へ奉仕してもらうためにその必要を認めるものであります。ところが、政府案は、格差是正予算については若干の予算増額が行なわれているだけで、政策の質的な大前進はありません。政策の質的大前進は大企業のための特振法案において果たされようとしているところに、政府の格差の是正予算の隠された本質があると思うのであります。  さて、しからば、政府案をいかに改善したらよいか。これについては、すでにわが党の組み替え動議も提出されておりますので、私はこれを繰り返し説明し紹介する重複を省略させていただきます。  私が政府並びに自民党の各位に申し上げたいことは、国民福祉予算編成は、予算編成の財政技術や人気取りのムードで終始してはならない、勇断をもって福祉増進の政策重点をつくれということであります。私は、この政策重点として、国民健康保険の世帯員に対する七割給付を四十年度までの二年間で完了すること、公営住宅建設を年間三十万戸に増加すること、この二点を国民福祉増進の当面の突破口とするよう政府と自民党の各位に強く要望するものであります。  なお、社会党案につきましては、はたして昭和三十九年度という限定された年次における政策主張とは考えられませんので、残念ながら反対いたします。  以上、政府案、社会党案に反対、民社党案に賛成いたしまして、私の討論を終わります。(拍手)
  160. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 次に加藤進君。
  161. 加藤進

    加藤(進)委員 私は、日本共産党を代表して、三十九年度政府提出の予算案に反対し、その撤回を要求するものであります。  その第一の理由は、この予算案は、日本経済をアメリカに従属させ、一そう困難におとしいれるものであるからであります。  今日、わが国の経済は逆調の一途をたどっております。それは、国際収支、外貨事情の悪化、中小企業の相次ぐ倒産などに端的にあらわれております。その原因が日米経済協力に基づいて三年にわたって強行されてきた池田内閣の高度経済成長政策の失敗にあることは、また明らかであります。しかも、池田内閣は、中小企業と一般国民に対しては、金融引き締めを口実にして、倒産、整理、合理化、首切りなどすべての犠牲を押しつけ、国家財政と金融をあげて独占資本につぎ込み、設備投資を一そうあおろうとしております。  池田内閣は、今日まで一貫して、国民に対しては財政と国家権力を使って高物価、重税、下請単価の切り下げ、低賃金など、ありとあらゆる収奪を続け、他方ではアメリカの借金にすがり、わが国の貿易、経済をアメリカに従属させながら、その高度成長、所得倍増政策を強行してきたのであります。しかし、アメリカ政府のとった新しいドル防衛措置は、対米貿易の大幅な赤字に加えて、特需、域外買い付けの減少など、容赦なく日本の国際収支、外貨事情を一段と悪化させ、いまやわが国の経済はアメリカ独占資本の直接投資やひもつき融資に依存せざるを得なくなっております。  加えて、ことし池田内閣は、IMF八条国へ移行、OECD加盟によって完全自由化を追られております。これは、日本経済を資本主義市場の激しい争奪戦のさなかに投げ込み、わが国の産業を外国商品と資本のはんらんのもとに野放しにすることを意味するものであり、わが国はこれによってその貿易、産業、経済政策を自主的に決定する権利さえ失おうとしているのであります。  こうして、池田内閣は、日本経済へのアメリカ資本の進出と支配を強め、わが国の産業と国民生活を重大な危険にさらすのであります。私は、池田内閣のこのような政策を推し進める三十九年度予算案に強く反対するものであります。  本予算案に反対する第二の理由は、政府がこの予算の実行によってわが国をますます危険な軍国主義、帝国主義復活の道に追いやろうとしているからであります。  この予算案には、二千七百五十二億に及ぶ防衛関係費をはじめ、膨大な軍事予算が組まれております。さらに、いま政府の手で立案されつつある第三次防衛計画によれば、アメリカの要求する肩がわり自主防衛の名のもとに、現在の倍をこえる軍事費が計上されることは必至であります。すでに大独占の手によって軍需生産の基盤は確立されつつあります。これにあわせて、防衛庁の強化と省への昇格、平和部隊の名による謀略ゲリラ工作の予算計上など、池田内閣の軍国主義、海外侵略を目ざす諸政策が清々と進められております。教科書の国家統制の高学年への拡大、金鵄勲章や紀元節の復活の動きなど、新暴力法、労働法の改悪、憲法改悪を目ざして一連の軍国主義政治、反動の強化に一そうの拍車が加えられております。  以上は、アメリカの侵略政策が特にアジアにおいて、破綻しつつある今日、池田内閣がアメリカの新しい核戦略に応じて自衛隊の核武装化を急ぎ、中国封じ込めを中心とするアジア諸民族抑圧の下請を買おうとするものであって、私は断じてこれを許すことはできないのであります。  反対する第三の理由は、この予算案が国民に対する大収奪予算であるからであります。本予算案の中で最大の支出を占める公共投資のほとんどは、重化学工業、独占資本のために国民の血税で需要を保証し、さらに、彼らの産業基盤をつくるために、道路、港湾、鉄道、用地用水などをつくるものであります。しかも、池田内閣は、これだけでは足りず、土地収用法で国民の財産を収奪し、地方自治体から河川の管理権を取り上げ、補助金を打ち切り、地方債の増発、受益者負担の増大など、地方自治を破壊し、国民の負担を一そう耐えがたいものにしております。  池田内閣の高度福祉国家のかけ声にもかかわらず、社会保障費の増額は物価値上がりにさえ追いつくものではありません。また、一世帯一住宅の公約は全く、捨てて顧みようともされておりません。ところが、独占資本のための支出の財源は、大増税と厚生年金掛け金の引き上げ、事実上の赤字公債の発行などによって大量にまかなわれようとしておるのであります。二千億の減税の公約の中身は、名目上の減税さえ八百億に削り、六千八百億に達する自然増収という名のもとに大増税が強行されることになっております。しかも、独占資本に対しては、自由化対策、輸出振興などを口実にして、露骨な税の減免が公然と行なわれようとしております。加えて、政府保証債の増発、地方税減税補給債などは、事実上の赤字公債の発行であって、これはインフレをあおり、一そう物価を高騰させ、国民の生活をいやが上にも苦しめるものであります。  かかる予算案に反対することは、国民のために当然の義務と考えるものであります。  最後に、私は、本予算案に織り込まれた池田内閣の政策は、わが国の現状と将来にとってきわめて危険なものであることを指摘せざるを得ないのであります。  池田内閣は、本予算案の実施によって、アメリカの中国封じ込めを軸とするアジア諸民族抑圧の政策に一そう協力しながら、同時に、日本の独占資本の南朝鮮、東南アジアに対する帝国主義的進出を助けようとしておるのであります。だが、現在の内外の事態は、このような池田内閣の政策がやすやす実行できるようななまやさしいものではありません。現在、諸国人民の戦いの前に、アメリカの侵略政策、わけても中国封じ込め政策は日一日と破綻し、アメリカ帝国主義は敗退し、孤立しつつあります。しかるに、池田内閣は、依然としてアメリカに追随し、日本と中国との国交を回復せず、日韓会談の妥結を急ぎ、アメリカ、原子力潜水艦の寄港をひそかに承認しようとしておるのであります。池田内閣の進もうとするこの道を許すならば、わが国はアメリカの侵略の道具となり、ますますアジア諸民族から見放され、日本経済国民生活もまた一そう困難な事態に立ち至ることは必要であります。すでに自民党の中にさえこの事態を憂慮する声が起こっているのも当然と言わなければなりません。  わが国民は、必ずや、団結して、この民族を破壊に導くような池田内閣の政策を打ち破り、アメリカの従属を断ち切り、独立、平和、民主の新しい日本への道を進むでありましょう。私は、日本共産党を代表して、重ねて、かかる反民族的、反人民的予算案に強く反対し、国民とともにその粉砕のために戦うものであります。  なお、民主社会党の予算組み替え案はもちろん、日本社会党の予算組み替え案さえ、政府予算原案に反対する人民の要望を必ずしも十分に満たすものではございません。よって、わが党は遺憾ながらこれにも賛成をすることができないのでございまして、私はこのような観点から池田内閣の政府原案に断乎として反対し、私の反対討論を終わるものであります。(拍手)
  162. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  まず、川俣清音君外十四名提出の昭和三十九年度一般会計予算昭和三十九年度特別会計予算及び昭和三十九年度政府関係機関予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議について採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  163. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 起立少数。よって、川俣清音君外十四名提出の動議は否決されました。  次に、今澄勇君外二名提出の昭和三十九年度一般会計予算昭和三十九度特別会計予算及び昭和三十九年度政府関係機関予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議について採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を願います。   〔賛成者起立〕
  164. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 起立少数。よって、今澄勇君外二名提出の動議は否決されました。  これより、昭和三十九年度一般会計予算昭和三十九年度特別会計予算昭和三十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  165. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 起立多数。よって、昭和三十九年度一般会計予算昭和三十九年度特別会計予算昭和三十九年度政府関係機関予算は、いずれも原案のとおり可決いたしました。(拍手)  なお、おはかりいたします。委員会報告書の作成については委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  166. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。   〔報告書は附録に掲載〕
  167. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて昭和三十九年度総予算に関する議事は全部終了いたしました。(拍手)      ――――◇―――――
  168. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 この際一言ごあいさつ申し上げます。  去る一月二十五日に総予算の審査を開始いたしまして以来、終始真摯なる論議を展開され、慎重審議を尽くし、本日ここに審査を終了するに至りましたことは、ひとえに委員各位の御理解ある御協力によるものでありまして、委員長といたしましては衷心より感謝の意を表する次第でございます。連日の審査に精励されました委員各位の御労苦に対し深く敬意を表し、ごあいさつを申し上げる次第でございます。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十五分散会