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1964-02-29 第46回国会 衆議院 予算委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月二十九日(土曜日)     午前十時四分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君    理事 櫻内 義雄君 理事 野田 卯一君    理事 松澤 雄藏君 理事 井手 以誠君    理事 川俣 清音君 理事 辻原 弘市君       相川 勝六君    荒木萬壽夫君       安藤  覺君    井出一太郎君       井村 重雄君    稻葉  修君       今松 治郎君    植木庚子郎君       小川 半次君    仮谷 忠男君       川崎 秀二君    小坂善太郎君       重政 誠之君    砂田 重民君       田澤 吉郎君    竹内 黎一君       塚田  徹君    登坂重次郎君       橋本龍太郎君    藤本 孝雄君       古井 喜實君    古川 丈吉君       保科善四郎君    松野 頼三君       水田三喜男君    山本 勝市君       渡辺 栄一君    淡谷 悠藏君       石田 宥全君    石野 久男君       岡田 春夫君    加藤 清二君       五島 虎雄君    河野  密君       滝井 義高君    中井徳次郎君       山花 秀雄君    湯山  勇君       横路 節雄君    今澄  勇君       小平  忠君    鈴木  一君       加藤  進君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         法 務 大 臣 賀屋 興宣君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 小林 武治君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  福田  一君         運 輸 大 臣 綾部健太郎君         郵 政 大 臣 古池 信三君         労 働 大 臣 大橋 武夫君         建 設 大 臣 河野 一郎君         自 治 大 臣 早川  崇君         国 務 大 臣 佐藤 榮作君         国 務 大 臣 福田 篤泰君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君         国 務 大 臣 山村新治郎君  出席政府委員         内閣官房長官  黒金 泰美君         内閣法制局長官 林  修三君         総理府総務長官 野田 武夫君         防衛庁参事官  麻生  茂君         防衛庁参事官         (防衛局長)  海原  治君         防衛庁参事官         (教育局長)  堀田 政孝君         防衛庁参事官         (人事局長)  小幡 久男君         防衛庁参事官         (装備局長)  伊藤 三郎君         防衛施設庁長官 小野  裕君         防衛庁事務官         (防衛施設庁労         務部長)    藤本  幹君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         外務事務官         (移住局長)  白幡 友敬君         大蔵政務次官  纐纈 彌三君         大蔵事務官         (主計局長)  佐藤 一郎君         大蔵事務官         (為替局長事務         代理)     鈴木 秀雄君         農林事務官         (農林経済局         長)      松岡  亮君         農林事務官         (農地局長)  丹羽雅次郎君         通商産業事務官         (通商局長)  山本 重信君         通商産業事務官         (重工業局長) 森崎 久壽君         通商産業事務官         (軽工業局長) 倉八  正君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      宮本  惇君         中小企業庁長官 中野 正一君         運 輸 技 官         (港湾局長)  比田  正君         運輸事務官         (航空局長)  栃内 一彦君         労働事務官         (労政局長)  三治 重信君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君         自治事務官         (選挙局長)  長野 士郎君  委員外出席者         運 輸 技 官         (東京航空保安         事務所東京国際         空港長)    岩田 勝雄君         参  考  人         (海外移住事業         団理事長)   広岡 謙二君         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 二月二十九日  委員稻葉修君、江崎真澄君、周東英雄君、中曽  根康弘君、古井喜實君、松浦周太郎君、淡谷悠  藏君及び多賀谷真稔辞任につき、その補欠と  して塚田徹君、渡辺栄一君、砂田重民君、竹内  黎一君、藤本孝雄君、橋本龍太郎君、湯山勇君  及び滝井義高君が議長指名委員に選任され  た。 同日  委員砂田重民君、竹内黎一君、塚田徹君、橋本  龍太郎君、藤本孝雄君及び渡辺栄一辞任につ  き、その補欠として周東英雄君、中曽根康弘君、  稻葉修君、松浦周太郎君、古井喜實君及び江崎  真澄君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十九年度一般会計予算  昭和三十九年度特別会計予算  昭和三十九年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和三十九年度一般会計予算昭和三十九年度特別会計予算昭和三十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  この際、申し上げます。海外移住専業団理事長広岡謙二君に参考人として御出席をいただいております。広岡参考人には、御多忙中御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。厚くお礼を申し上げます。  なお、広岡参考人の御意見は、委員質疑に対する答弁の形で承ることにいたしますので、御了承願います。  それでは、これより質疑に入ります。五島虎雄君。
  3. 五島虎雄

    五島委員 いよいよ一般質問の最終を承りまして、一時間半程度、労働問題を中心として、そして経済の見通しにわたって質問をいたしたいと思っておりましたけれども、その前に特に海外移住の問題について、外務大臣及び海外移住事業団の方々にお尋ねしておかなければならないことが出来いたしましたので、特に海外移住事業団理事長の御出席をお願いしたわけであります。  といいますのは、数日前に私の手元に、アルゼンチン計画移住として渡っていったアンデス計画移住地の第一号移住者から手紙がまいりました。そして、その手紙によりますと、何か日ア協定がそのとおりに実施されないで、行ってみてとほうにくれたというような手紙がきました。それで、この問題は特に海外移住の政策に大きな影響があろうと思いますので、この問題について若干ただし、そうして今後憂いなからしめんと考えておるものであります。手紙の主は岸本司という人であります。昨年の十一月二十九日に神戸港を出航いたしまして、今年一月十二日にブエノスアイレス到着をいたしております。そして目的地であるところのアンデス計画移住地に一月の十五日に到着をいたしております。ところが、向こうに行ってみてびっくりしたことは、日本アルゼンチン協定書に取りかわされた協定地であるにもかかわらず、向こう現地では、その計画移住地なるものがいまだ認可されていない。こういうようなことで、本人はまことにとほうにくれたということであります。そういうようなことがあっていいのだろうかどうかということについて、私は手紙を見ながら、まだその内容が明らかでないにもかかわらず、ふんまんを感じたわけであります。したがって、この第一号であるところの岸本司君を向こうあっせんをし、あるいは教育をし、そうしていろいろお世話されたところの事業団としては、どういうような気持ちでこれを向こうに派遣されたのかということであります。  第一号として津本司君は一家族だけ向こうに行っておりますけれども、間もなく、三月の上旬ごろになると十数家族がその同じ土地移住をされるということも聞いておるわけであります。そこで、この文句を読み上げましたら明らかになるわけですけれども、土地としては非常にいいところらしいのです。その一文を引例いたしますと「アンデス移住地ブエノスアイレスの西方九百キロの地点で、遠くアンデス山脈の高峰が雪をいただいて見えます。北東南はすべて地平線果てしなき大草原のまっただ中であります。この移住地四百万坪は、いまだ荒漠たる原始原野ですが、この周囲には、数十町歩にも区画された果樹園が続き、いま収穫前の加工用ブドウ、桃、スモモ等が、激しい日照りのもと、青い実をたわわにつけております。」こういうような土地らしいのであります。ところが、向こうに行ってみると、さいぜん申しましたように、協定計画移住地としてアルゼンチン政府が認可しておりませんので、計画移住者として岸本君が行きましたけれども、何も手がつけられない、こういう事実にびっくりいたしておるようであります。その間の状況について、事業団理事長から、アルゼンチンにおけるところの、この協定地である、計画地であるところの経過をお尋ねしておきたいと思うわけであります。
  4. 広岡謙二

    広岡参考人 ただいまのお尋ねに対しましてお答えをいたします。  アンデス移住地は、昭和三十三年の十一月に、ただいまお話のありましたように、当時の振興会社のほうにおきましても十分に調査をいたしまして、そのために専門の技師等も派遣いたしまして、この土地移住地として適当な土地であるということからいたしまして、この買収を決定いたしたのでありますが、その決定に基づきまして、三十四年の五月と十月の二回にわたりまして、合計千三百十二ヘクタールの土地を買収いたしたのでございます。  その間に、当事者といたしましては、アルゼンチン国のメンドーサ州の当局、これはいろいろ分担がございまして、施設局道路局かんがい排水局植民局というほうに十分なる連絡をとり、植民地としての了解を取りつけまして、そこへ水を引く、かん水するということまで、その了解をはっきりとさせた次第であります。  その後、移住協定が問題になりまして、昨年の五月十七日にアルゼンチン国日本国の間における移住協定が発効いたしました。当時大統領更迭等もございまして、その移住協定に基づきますると、両当事国から三名ずつの委員を出しまして合同協議会というものを設け、その協議会においてこまかな具体的な問題を取りきめてまいるという段取りになるのでありまするが、ただいま申しましたような、大統領がかわりましたり、いろいろな都合でもって、合同協議会がまだ設立されるまでには至っておりません。  しかしながら、在外公館におかれましても、この問題を急速に進めるという必要がございますので、アルゼンチン国におきまする農業審議会、これは日本における農林省相当するものであるようでありまするが、あるいは外務省、あるいは内務省における移民局、また関税等の問題がありまする関係において大蔵省というような機関と、それぞれ個別的に折衝を続けてまいっておる段階にあるようであります。  したがいまして、この合同委員会が結成されまして、そういう諸般準備が整いまして、合同委員会にこういう問題を取り上げることができまするならば、正式にこの協定に基づく計画移住地ということが法的にもはっきりいたすのでありまするけれども、しかしながら、御承知のとおりすでに五家族現地入植いたしております。また、ただいま御質問のありました岸本さん一家が十一月に向こうへ第一回の入植者として入った実情もございます。したがって、その間の便宜な方法といたしまして、アルゼンチンの国の中にもう一つグァラペという移住地がございますが、その例もあることでありまするので、その協定の本旨に沿って、無税通関というような取り扱いを実際上において取り扱ってもらおうというようなことで努力をいたしてまいったのであります。したがって、ただいまお尋ねの問題につきましては、以上申し上げましたことにおいて御了解を得ることと思います。
  5. 五島虎雄

    五島委員 ただいまの報告は、合同協議会を開いて一年間にわたっていろいろ協議をしているというような話がございました。在外公館において一年間も協議をしている。その間にまだ何も話がついていないのに、移住者を募集をされて、そうしてその移住者に対して、アンデス計画地はこういうような協定に基づいてこのような条件で入植ができるのだというような教育をされて、胸をとどろかせ希望にふくらませながら海外に送り出して、行ってみたら全然事実と相違をしていたということに関しては、われわれは同胞に申しわけないような気がするわけであります。  外務省予算を見ますると、海外移住事業団に今年度も十四億円の交付を行なわれておるわけです。昨年の八月に発足をいたしまして、八億円の基金と交付金によってこの運営が行なわれるわけでありますけれども、ただいまの報告によりましても、いかに海外調査がずさんであるかというようなことをことに論じなければしかたがないような気がいたすわけであります。発足間もないことでございますから、いろいろ準備その他運営も円滑を欠く点も多々あるだろうとは思います。しかし、問題は、生活を託して、海外移住事業団あっせんによって、ほんとうに今度は第二の故郷として外国で生活をしようというように考えて、希望に満ちて海外に渡航をされる移住民方たちに、ずさんなことで現地で非常にさびしい思いをさせる、こういうようなことは、事業団としてどうであろうか、このように考えられます。しかも、昭和三十六年の十二月に協定が行なわれて、フロンディシ大統領などは、国民性日本人の種によってつくりかえよう、こういうように日本を謳歌されて、そうして十二月にその協定が行なわれて、これは外務大臣が出ておられるだろうと思いますけれども、しかももう一年も過ぎたのに合同委員会が行なわれないで、そうして現実には、たった一家庭ではあるけれども、こういう問題が起きてとほうにくれさせるというようなことは、今後海外移住行政に対していかなる振興策を持っていられるかということを疑うものであります。  この一年間にどうして合同委員会協定に基づいて行なわれなかったのかということについて、外務大臣お尋ねしておきたいと思います。
  6. 大平正芳

    大平国務大臣 諸般の事情を移住局長から御報告させます。
  7. 白幡友敬

    白幡政府委員 外務大臣にかわりまして御答弁申し上げます。  お説のとおり、発効いたしましたのは昨年の五月でございます。ところが、この合同委員会の問題は、元来アルゼンチン側は、あの国情にもよるのでございますが、協定をつくります場合に、そういう機関をつくらなくても、政府機関である日本出先機関向こう政府との直接の話し合いでもってこの種のことができるじゃないか、したがって、合同委員会というものに対してそれほどアルゼンチン側は熱心でなかったわけでございます。しかし、わがほうといたしましては、この種の機関をやはりきちんとつくりまして、具体的な移住事業細目について取りきめをしなければ不安であるという考えで、この条項を中へ挿入したわけでございます。そういう背景がございまするために、アルゼンチン側ではなかなか国内機関がやはり数カ所に分かれておりますので、歩調がそろいません。そこで、わがほうの出先でも盛んに努力をしてきておったのでございますが、合同委員会というもののまとまりがつかなかったわけでございます。しかしながら、先方の政府は、こういう機関が成立する前でも実質的にはこれと同じ機能を果たせるのであるということで、出先のわがほうの大使館では、アルゼンチン外務省あるいは向こう農林省系統機関あるいは内務省系統機関と話し合ってきたわけでございます。したがって、法律的な意味の厳格な計画移住細目はできておりませんけれども、アルゼンチン側ではこれに準じてずっと日本からの移住を取り扱うということを言っておるわけでございます。したがいまして、われわれといたしましては、そこのところをあまり法的な意味で厳重に詰めませんで、実質的にこれを運営しているというのが実情でございます。
  8. 五島虎雄

    五島委員 いま移住局長が説明されましたけれども、ちょっと発音が聞き取れないわけです。ですから、この次からはもう少し大きい声でお願いをしたいと思います。  ところが、アルゼンチンはあまり熱心でなかった、熱意を持っていなかったというような発言があったようでございますが、その後、在外公館との交渉において、実質的には変わらないような取り扱いをするというような説明が行なわれたようであります。ところが、この手紙内容を見ますると、行ってみて驚いた。ブエノスアイレスに上陸すれば、第一に、携行したところのトラクター、それから携行したところの電動機——モーターですね、それからオートバイ、これを自分の財産をなげうって八十万円相当を持っていった。そうしたら、それをすべて向こう税関で、手続上ということで税関に保留されてしまった、こういうことです。ひいては、一月十五日に現地に着いたけれども、トラクターなど耕作機械などもらえないから生活計画というものができない、こういうことです。この協定の第五条を読んでみますると、「計画移住者は、自用品組立家屋原動機付車両一般を含む車両トラクター農業機械及び農産加工用資材並びに種子、肥料及び家畜を持ち込む場合に、各家族ごとに一万合衆国ドル又はこれに相当する価額の範囲内の品目につき、統計税関税及び為替課徴金を免除される。これらの財産は、各家族日本国出発前三十日以内又は出発後百五十日以内に船積みするものとする。」こういうようなことで、特別に便宜を与えるという協定ができておるわけです。そういうような教育を受けて本人は行ったんです。そうして、アメリカの一万米ドル以下の八十万円相当品物を持っていけば無税になるだろう、通関手続等々は非常に楽になるだろうということが協定内容である。その内容どおり向こうに行ったところが、全然内容と食い違ってきた。そうして、からだだけが計画移住地に行った。だから、もう三十年も五十年も前から入植しているところのわが国の同胞は大歓迎をしたけれども、さて困ったことは生活の問題である、こういうように言っておるわけです。  だから、これに準ずるというようなことを、在外公館がどういうようにしてこれに準じたのか。少しも準じていないのです。呼び寄せ移民みたいなかっこうで移民しているのです。こういうことで、協定というものが——われわれは協定に批准をしているわけです。そしてこれが発効しているわけです。そうして私たち海外移住の問題は非常に円滑にいっているだろうと思っている。人口問題からもこの問題は解決しなければならないと私たちは考えておる。しかも、技術や能力を海外に輸出しなければならないと考えておる。そうして日本国民のいいところを全世界に高揚しなければならないと思っております。しかし、在外公館がこういうような状態では、安心して国民移住に応ずるわけにはいきません。したがって、昭和三十五年ころまでは非常に海外移住民の数が多かったわけですけれども、ここ二、三年来非常に数が減少しているという理由は一体どこにあるのですか。そうして、在外公館はこれに準ずるというようなことは、どういうように取り計らっておりますか。三月初旬に十数家族がまた同じ地に向かって出発されるわけですけれども、こういう人々も、やはりこれに準ずるという処遇をして、一万米ドル以下の品物を持っていって税関で没収されてもいいとお思いになるのですか。これは外務大臣どうお思いになりますか。
  9. 大平正芳

    大平国務大臣 この移住協定は、いま五島先生がお読み上げいただいたようになっておることは事実でございまするし、いまあなたが御指摘の事実が移住協定にかかわるものでありますれば、事は重大でございまするが、いま御指摘の事実は、そういう計画移住者向こう移住した場合に携行いたしました荷物に対しては関税をとらないという趣旨のものでございまして、そしてこのことは、アルゼンチン政府は、移住協定ができる前からもそういうたてまえでずっと親切にやってきてくれておりまするし、移住協定が締結されまして以後一そう注意をしていただいておるわけでございまして、その限りにおきましては、私はアルゼンチン政府を非難するに当らぬと思うのでございます。ただ、いまあなたが御指摘の事実は、携行いたしましたトラクター通関する場合の若干の通関手数料が問題になっておったようでございます。そのこと自体は、私は移住協定に触れるものではないと思うのでございます。しかし、これも現実に問題になった以上は、この問題は円滑に解決して差し上げるのがわれわれの任務だと思うわけでございまして、私が申し上げたいのは、移住協定に即してアルゼンチン政府が非常に何か不親切である、あるいはわれわれの在外公館事業団が非常に手落ちだという御非難でございましたが、そういう携行荷物につきましての通関手数料の問題がたまたま出てきたということでございますので、そういった問題については早急に解決するように努力いたしたいと思います。
  10. 五島虎雄

    五島委員 大平外務大臣は、ただ単に通関の問題だけで解決したいというように考えられているということです。この手紙内容は、はたしてどうかわかりませんけれども、向こう現地に行ってみたところが、日本政府から聞いてきたのと現地では大違いである。協定地域であるそこに移住するのだといって私は考えて現地に着いたところが、アルゼンチン国ではその現地がいまだ認可されていないと、こういうようなことです。これは本人にとっては非常に重大問題であろうと思う。  それから、第五条によりましても、いま読み上げたとおり、日用品あるいは携行品、一万米ドル以下の品物だったら関税無税とすると、こう書いてある。ところが、向こう税関はこれを保留してしまった。しかも、日用品とかその他雑貨ものに対して、別途に関税とかなんとかが、向こう事業団の係員の手を通じて四万五千円が税金として支払わされた状態であります。   〔委員長退席櫻内委員長代理着席〕  だから、そういうような問題を一括しまして、故郷はるかに外地にこれから住まなければならない人々に対して、こういうような安心できないような世話をしてよかろうかどうだろうか。アルゼンチンアルゼンチン国内情勢によっていろいろ変動するでしょう。それについては在外公館が常時その情勢を把握していなければなりません。したがって、その協定がうまく円滑にいかなければ、移住民に対しましてもよく教育をし、そうして移住民としてやってはいけないわけなんです。とにかく安心して移住日本を立たしめるのが事業団任務であり、それを監督するのが外務省任務である。そして在外公館ではよく他国の情勢を把握するとともに、それらの問題を円滑に世話をし、移住民が安心して当該地においてその国民と相協力して、日本国民の意思あるいは意気あるいは知能を発揚するのが移住の行政でなければならぬと私は考えておるわけです。そうすると、大体協定がそのまま行なわれていないということになります。したがって、私はこの手紙を見て、大平さんというしっかりした外務大臣がおるのに、外地ではこんなずさんなことがあるのかと、ちょっとふしぎになったものですから、これを明らかにしておいて、今後安心してアルゼンチン等々に出かけていく移住民になってもらわなければならないと思うわけです。したがって、これを税関の問題が間違ってとられたんだったたらそれは解決しますというようなことばかりでなくて、在外公館に直ちに連絡をされまして、こういう問題を早く具体的に協定の趣旨に沿ってアルゼンチン努力するように、そしてそれに基づいてわが国同胞も安心して向こうの地で雄飛ができるように努力してもらわなければならぬと思います。多くの、十数億円の予算をかけて事業団がやっと発足をいたしました。ことしも十数億円の金が事業団に投下されるわけです。もちろんこの金は、もっともっとわが国が全世界に飛躍しなければなりませんから、その金額の多寡を私は論ずるものではありません。しかし、金をかけたならば、それにマッチするようにりっぱな、優秀な成績をあげてもらわなければならない。金をかけながら国民に心配をかけるというような予算は使ってはならない、こう私は考えている。  そういうような意味で、外務大臣はこの問題について——これは単にたった一人の問題ではないのです。事業団あっせんによって、これからどんどん計画移住地家族が派遣されるでしょう。そういう人々のためにも明らかにしておかなければなりません。ドミニカ問題やいろいろな問題が、いままで調査不十分なるがゆえに、向こうに出かけていって、失敗して帰って、まことに悲惨な海外の話もたくさんあります。こういうようなことがあってはなりませんから、特に私は個人岸本司さんのこういうような一片の手紙を取り上げ、わざわざ外務大臣に国際的な問題を質問いたしているゆえんのものはそこにあるわけです。どうですか。
  11. 大平正芳

    大平国務大臣 五島委員の仰せになりましたことは、まことにごもっともでございます。協定の実施はもとよりでございますが、協定にうたわれてないことで実際上問題になることもあり得ることでございますので、そういった点につきましては、専業団並びに在外公館を督励いたしまして、移住者の諸君が不安を感じないように処置をしてまいりたいと思います。  なお、先ほど御質問がございました移住不振の原因につきましては、三十五年をピークといたしまして、その後移住がきわめて不振でございまするが、これは海外から引き揚げてまいりました方々、いわゆる潜在移住層がだんだんなくなってまいりましたというようなこと、国内経済が成長いたしまして労働力の不足を来たしておるような事情に加えて、いま御指摘のように、ドミニカその他の不始末もございましたし、移住行政全体が活発に行なわれることによって解消しなければならぬ面も多々あることと思うのでございまして、その点は私どもも責任を痛感いたしまして、一そう努力いたしたいと存じます。
  12. 五島虎雄

    五島委員 蛇足ですけれども、この間新聞を騒がせました、一女性が結婚資金のために五十万円を銀行からおろして、いろいろ海外に行く品物をそろえようとして買いものをしているやさきに、それをすりにすられてしまった、こういうような新聞記事がありました。そうして、きょうですか、香川県知事の媒酌によって集団結婚が行なわれる。その人たちは結婚のあとには、春に入って三月にアルゼンチンに渡航をする。同じところに渡航をされるわけです。  ですから、いま外務大臣が善処をするということにつきましては、私は信頼したいと思います。今後こういうことのないように、事業団も十分気をつけて指導あっせんをし、現地の把握を完全にされたいと思っております。  ただいま移住者がここ二、三年来少なくなった理由というものは、高度経済成長政策に基づくところの労働力の不足とか、あるいはいろいろの問題があったという説明でございますけれども、今後は、戦前のように人口があふれて余っているからただ人民を捨てるのだという、いわゆる棄民思想に基づいて海外移住の政策を行なってはならないと思います。さいぜんから触れるように、私はしっかりした国民、ほんとうに外国人に対して恥ずかしくないような国民、しかも、移住せしめるためには安心していろいろの生活計画ができるというようなあっせんを親身になって行なわれなければならないと思うのです。したがいまして、事業団はいまなお半年もたっていない事業団ですから、いろいろ不十分な点もあるでしょうけれども、しかし、理事長もあるいは専務理事も、理事も、首脳部には非常に優秀な人が行っておられると思います。しかしながら、全体的に現地の把握ができなければいかに国内で優秀であるからといっても、同胞に対して迷惑をかけます。したがって、私はこの際、三月に行かれる十家族の人たちに対しましてもほんとうに安心して、こういうことが再びないように努力をしてもらいたいと思うのです。その決意のほどを事業団理事長お尋ねしておきたいと思います。いかがですか。
  13. 広岡謙二

    広岡参考人 お答えいたします。  ただいま五島委員からお話のありましたごとく、戦後再開されました移住の問題につきましては、移住審議会においての答申の趣旨に沿ってこの事業団というものができたということも、私、十分承知いたしております。また、その向こうべき理念、考え方、あり方というものにつきましても、従前のようないわゆる口べらしのための移民というようなものであってはならないということも私ども十分に考えておるところであります。それだけに、移民という問題が終始人と人との問題でありまして、常に人を相手にしている問題、したがってその人たちの将来あるいは運命を左右するという事態でございますし、単に形式的にうわべばかりで糊塗しようというような考え方は、これは私ども決して持っておるわけでございません。しかも遠く離れた異郷の土地における問題でございますし、また相手国におきます条件、環境等も常に変化いたしておりまして、それの影響も考えていかなければなりませんから、今後移住地移住の全般の問題におきましても十分なる総合的考慮のもとに周密なる計画を必要とすることは申すまでもないと思います。私、昨年、南米をかけ足でございましたけれども、一巡いたしまして各移住地を見まして、従前のあり方を反省すべき点もあると考えました。したがって今後は移住者のためになる、移住者の身になってすべてを考えていくという計画と考慮を必要とすると思うのであります。今後その意味において、移住振興のために、またそれがみんなから十分納得されるような移住でありたい、こう考えておる次第であります。  ついでにちょっと先ほどの御質問に触れておきたいと思うのでございますが、実はこの問題につきましては、数日前に五島委員からお話がございましたので、私どものほうにおきましてはさっそく電報でもって現地に照会をいたしております。まだその回答が参っておりませんが、ただいまの御文面で税金を課せられた。先ほど外務大臣、局長、私からも申し上げましたように、移住協定は発効されてはおりますけれども、まだこまかなことの取りきめはできていない。したがって、事実上においてこれを解決していくという方向で、しかもその本旨に沿ってやっていくということに努力をいたしておるのでありまして、これが税金で一万五千ペソ、四万五千相当のものであるとは考えられないのでありまして、これは追って現地から詳細な報告がありましたならばまた御連結いたしたいと思うのでありますが、そういうように私はいま考えておらないのであります。現地におきましても、在外公館におきましても、そういうことで無税と同様の措置になるように努力をいたしておるのであります。そういうこともあるかと思いまして、私のほうでも数次にわたり、最近におきましても昨年の十一月に、これはごらんに入れてもいいのでありますが、念のために各都道府県の地方海外協会にその注意を喚起する書面を出しておるのでありまして、その中にも、移住協定がまだ発効されていない、したがって協定の中にあります一万ドル以内における無税の措置もまだ未解決である、したがってこういう点については渡航者に誤解のないように十分に説明するようにということも申し加えておるのであります。また、ただいまお話のありましたように、倉庫に一応入っておりますが、これはどこでも一応倉庫に入るのでありまして、長い場合におきましては二カ月三カ月倉庫の中に保管されているという実情も前例に徴してございます。これは、やはり原動機取りつけ等によります車両トラクター、そういうようなものは、現地におけるプレートの取りかえというような問題もあるということです。しかし、それが三カ月も入っているということは、これはどうもあまり長過ぎる。したがって、こういうものもできるだけ早く出すようにというように、現地においても常時極力努力いたしておるようであります。したがって、そういうものを盛り込みました長い具体的な問題を洗いざらい昨年の十一月出しまして、念のために兵庫県の海外協会に問い合わせてみましたところが、岸本さんにもこの連絡の趣旨は十分徹底してある、一応倉庫に入るということもあり得るんだ、だから、そういう点についてはよく了承してもらったほうがいいし、何ぶん税関に関する査定等の問題は、これはだいぶ裁量の問題にかかることでありますから、あまりそれに触れないようなものを十分注意して携行していったほうがいいというようなことまで、念を押して岸本さんに申し伝えたということを言っておりますが、しかし、この事案自体はまだ現地から詳細な報告に接しませんので、これがわかり次第五島委員のところまで御連絡申し上げたいと思っております。以上です。
  14. 五島虎雄

    五島委員 ただいまの理事長の付帯的な説明はわかりました。だから、要は外務省もそして事業団も今後現地において、外国において、いろいろ事が行き違って、そうしてわれわれの同胞に迷惑をかけないように十分注意してもらいたいということです。ですから電報で問い合わせたというようなことの行為については、私個人としては感謝したいと思うのです。そこで現地に行っているところの人々、そうして今後行く人々、そういう人たちには安心をさせ、そうして今後も安心をもって外国に移住させる、こういうような親心を外務省事業団もよく持ってもらいたいということです。  私は質問を次に移します。きのうの夕刊によりますと、一月中の信用状なしの輸出入為替収支は、輸出が七千七百万ドル、輸入が二億二千万ドル、そこで全輸出に占める比重は二〇・六%だ、輸入に占める比重は四三・五%だ、そうして差し引き赤字の幅は一億四千三百万ドルと、従来の最高になった、こういうように報道をしておるわけであります。そうすると、経済見通しによりますと三十八年度の実績見込みは、貿易収支で二億五千万ドルの赤字である、貿易外収支では四億一千万ドルの赤字であるとその経済見通しの説明にはなっております。ところが、今日のような状態では、貿易収支は三月の年度末にはさらにふえるような情勢にある。貿易外収支も実績見込みよりも上回るのではないかと、いろいろ経済誌等々には報道をされておるわけです。そこで、三月末の経常収支じりは一体どうなっていくのであろうか、こういうようなことが疑問になってまいるわけです。そこで今日まで説明を受けましたところの昭和三十九年の経済見通しの報告の中と少々食い違ってくるのではないか、このように考えられますが、経済企画庁長官の御説明を求めたいと思います。
  15. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御説のように、輸入の水準が予測いたしておりましたより高いようでございます。したがって、三十八年度に五十七億五千万ドルと一応推定いたしました数字は、おそらく多少上回るであろう、ほぼ上回ることに間違いがないと思います。しかし、どの程度に上回るかということにつきましては、なおいろいろな推測がございまして、ただいま数字をもってお答え申し上げることができないように思います。貿易外につきましては、多少輸出入貿易量がふえておりますから、多少の変動はございましょうけれども、大きな変動はないと思います。
  16. 櫻内義雄

    櫻内委員長代理 この際、広岡海外移住事業団理事長にお礼を申し上げます。  理事長には参考人として出席をいただき、長時間にわたり答弁をいただき、ありがとうございました。御礼を申し上げます。
  17. 五島虎雄

    五島委員 上回るだろうということはわかりました。そうすると、資本収支の見込みはどうでしょうか。当初の見込みの六億七千万ドルをどのくらい上回る見通しかということについて、企画庁長官にお尋ねしておきたいと思います。もしも上回るとするならば、どういう要因があるかということです。
  18. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは、詳しくは大蔵大臣からお答えをいただいたほうがよろしいかと思いますが、資本収支の見通しは悪くございませんで、先般御説明申し上げました程度のものは確かだと思います。あるいは多少上回ることがあるのではないか。それで、一般的に上回る要因といたしましては、米国で利子平衡税の法案がああいう気迷い状態にございますけれども、しかし商行為はやはり商行為として、そう長いこととまっておるわけにもいかないというようなことがございまして、かりにあの法案が成立いたしましても、適用を受けないような範囲でのインパクト・ローンのようなものが多少ずつ入っておるようでございます。それから短資のほうは、特に私ども非常に短い金を歓迎するというつもりはございませんけれども、まずまずのことのようでございますから、両者合わせまして、資本取引のほうは先般申し上げました見通し、あるいはそれを幾らか上回るものがあるかと思います。
  19. 五島虎雄

    五島委員 去る二月二十七日の新聞報道によれば、イギリスはいよいよ公定歩合の引き上げを実施したようであります。それは四%を五%として一%引き上げを発表いたしておるようでありますが、これは日本にどういう影響がございますか。
  20. 田中角榮

    ○田中国務大臣 イギリスが公定歩合の引き上げをやりましたことに対して日本にどのような影響があるか、あまり影響がない、このような考え方であります。
  21. 五島虎雄

    五島委員 これはあまり影響がないというような自信のほどは、大蔵大臣のことばとしてそのとおりに受けておきたいと思います。  次に、年度末の総合収支じりはこういうような要因の中で一体幾らになるでしょうか。経済見通しにいうところの九千九百万ドルではおさまらないのではないかというように思いますが、総合収支じりについての見通しを……。
  22. 田中角榮

    ○田中国務大臣 昭和三十九年一月の改定見通しによりますと九千九百万ドル、期末の外貨準備高が十七億六千四百万ドルと発表いたしておるわけでありますが、おおむねこの九千九百万ドルないし一億ドルと、このように考えております。
  23. 五島虎雄

    五島委員 次に同じく大蔵大臣に、一月末の外貨準備高が十八億五千五百万ドルといわれております。そうすると、この調子で推移いたしますと、三月末の準備高は大体幾らになりますか。準備高がだんだん減ってきている傾向にあります。
  24. 田中角榮

    ○田中国務大臣 一月末の外貨準備高は十八億五千五百万ドルでございます。三月期末の外貨準備高は先ほど申し上げましたとおり、一月の改定見通しでは十七億六千四百万ドルということでありますが、政府が見通した十七億六千四百万ドルないし十八億ドルの間だろうという見通しでございます。
  25. 五島虎雄

    五島委員 それくらいでとどまりますか。貿易収支が一月から三月まで二億ドル以上の赤字となることは確実だというように報道をされております。この報道を私たちは信用したいと思いますが、大蔵大臣はそのくらいの赤字にはならないとお思いになりますか。そうすると、このように二億ドル以上の赤字になると、外貨準備高は十六億ドル台になるのではないかというようにいわれておりますが、その間の考え方を……。
  26. 田中角榮

    ○田中国務大臣 御承知のとおり、貿易収支はわれわれが考えたよりも多少赤字が大きくなるようであります。貿易外もそのとおりでございます。大きくなる要因につきましては、経済企画庁長官から申し上げましたからお答えを差し控えますが、しかし、その半面、資本収支はわれわれが当初考えたよりも大きくなっておるわけであります。三十八年の一月に見込みました資本収支は三億ドルということでございましたが、三十九年一月には六億七千万ドル、倍以上に見ておるわけであります。いまの状態では資本の流入もありますし、長短資金——短期に対しては輸入ユーザンス等の問題がありますので、期末の外貨は十七億六千四百万ドルを割るようなことはないという見通しであります。
  27. 五島虎雄

    五島委員 これから総括の締めくくり質問にわが党は入っていくわけでありますけれども、この問題については具体的にもっといろいろ底深くわが党の委員質問することになっておりますから、私はこの問題についてはこれで終わります。  ところが昭和三十九年度の経済見通しでは輸出六十二億ドル、輸入六十二億ドル、とんとんと出されました。そしてそれははなはだむずかしいのではないかと私たちは考えております。しかも貿易外収支五億五千万ドルの赤字だと説明されております。そしてそのかわりに資本収支が四億ドルの黒字になるから、総計一億五千万ドルの赤字である、したがって、大蔵大臣などは常に言われるように、この五億五千万ドルの貿易外収支をいかに狭めていくかということが今後の経済努力であるというように言われていると思うわけであります。そうすると、五億五千万ドルという貿易外収支の赤字は例年にない大きな数であります。そうすると、少し私、何というか、経済に弱いのです。ですから五億五千万ドルの赤字の内容というものは、それぞれどういうところに要因があるのかということをちょっと説明していただきたいと思います。
  28. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 経常収支の五億五千万ドルの要因は主としてどこにあるかというお尋ねでございました。そこで、貿易のほうは、先刻御指摘のように均衡するという考え方に立っておりますので、五億五千万ドルは全部貿易外の収支から出るということになるわけでございます。そこで、やはり貿易外の収支で一番目に見えて大きな項目は、運輸収入でございます。これは、海運の運賃収入の差と港湾経費等々の差、それを差し引きまして二億六千万ドルくらいあると存じます。その他投資収益の送金関係の差が一億ドルがらみ、一般にその他サービスといわれますものはいろいろな項目を含んでおりますが、その中で特許料の支払いによる差額が一億余りございます。その他サービスというのは実はいろいろな項目がございまして、手数料でありますとか、ただいま申しました特許権の使用料でございますとか、商社の交互計算でありますとか、フィルムの賃貸料とか、幾つかございますが、これらがすべて赤字、こちらの出でございます。それを合わせまして、その一つの項目でほぼ五億近くございます。
  29. 五島虎雄

    五島委員 そうすると、貿易外収支の内訳というものはいま説明されたとおりでありますが、その中に港湾関係の赤字が非常に大きなウエートを持ってきておるわけであります。その港湾関係の中には、港湾費用とかあるいは港湾に働く労働者の港湾運送事業料とか、そういうようなものが貿易外収支の赤字となってあらわれてきておるわけです。かねて私は港湾労働問題には非常に大きな関心を持っているものであります。そうして港湾行政が近代化されなければ、貿易の発展もなかなかそこには阻害の要因を来たすであろうと私は考えておるものです。したがって、今日まで港湾労働の近代化のために若干努力をいたしてまいりました。しかしながら、なかなか近代化されてない。しかし、今回の予算の仕組みにおきましても港湾整備五カ年計画なるものが発表されておりまして、着々港湾施設の面においては高度経済成長に伴うところの施設の改善が行なわれるというところで、大きな財政がそれに投入されるということであります。しかし、ここに見忘れているのではなかろうかとかねて疑問に思っておるものでございまするけれども、ここで働く労働者に対するところの施策というものは一体どういうぐあいになっていくであろうか、こういうように思います。港に働く労働者諸君は、このように非常に好況であって労働力不足のときは、長時間労働をさせられます。そうして非常にはなはだ危険な作業に従事させられます。ところが、一たびわが国の経済事情が不況に向かいますると、今度はあぶれあぶれで生活の脅威を受けるような状態であるわけです。いずれにしても、彼ら港湾に働くところの労働者諸君は、景気につけても不況につけてもまことに苦難な生活を送らなければならないといわなければなりません。したがって、かねて私たちは不況になっても彼ら港湾労働者の生活が安定することが必要ではなかろうか、その中に港の近代化があるのだと、こう考えておる。しかし、いろいろな施策が行なわれませんから、依然として、この昭和の三十九年度台に入ってきましても、わが国の港のありさまというものははなはだ前近代的な様相であります。そうして、その中に労働力が不足だ、その中に手配師というものがばっこするのだということで、暴力事犯さえも非常に大きく行なわれているのが港の状況であると、こういうように考えます。ところが、彼らが働くところの労働賃金というものはどこに一体関連をするのか、こういうように分析しますと、大きく貿易外収支に関連があるということであります。したがって、この問題について運輸大臣にお尋ねをいたしておきたいと思いますけれども、港湾運送事業者なるものが、この前港湾運送事業法の改正によって認可が変えられました。しかも統計を見ますと相当に多くの業者がおられるわけです。六大港をはじめ、全国では数千軒あるだろうと思うのです。そういうような状態の運送事業者が、中小零細の業者が少数の労働者をかかえて、そうして過当競争をしている、こういうような状態で港の近代化ができるとお思いになるかということについて運輸大臣にお聞きしたいと思います。
  30. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 港湾荷役の現状につきましての御意見は、私どもさように感じております。そこで、私どもといたしましては、いまの港湾業者を、まずいままでのただの届け出の方針を許可制に直すようにいたしまして、そのほうをまず整理します。それから港湾荷役等につきましては、なるべく機械化をするような方途で、今回その予算も若干出ました。それからいろいろな環境をよくしてまいりまして、港湾労働者がなるべく定着するように、また安んじて仕事につくように努力をいたしてまいりたいと思っております。現在そういう届け出から認可の方途に変わりました途中でございまして、現在は約六割がおのおの決定いたしておりまして、全国で大体たしか千八百、そういう業者が新方式によって認められておるような状態でございまして、必ずしも過当とは申しませんが、零細企業でありますので、私どもそれをどういうふうにまとめていくかということについて鋭意研究いたしておるような状況でございます。
  31. 五島虎雄

    五島委員 過当でないとおっしゃったわけです。過当でないとおっしゃった。そうすると、全国の港湾に働く港の労働者はどのくらいの数がおりますか。これは大橋労働大臣にお尋ねしたほうがいいと思います。
  32. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 港湾労働者の数についてのお尋ねでございますが、六大港におきましては七万八千八百五十九人、うち常用労働者五万六千八百十三人、登録日雇い労働者二万一千九百九十六人、それから、これは六大港を含んだ全国の常用労働者数だけが出ておりますが、八万七千五百三人、三十八年の調査でございます。
  33. 五島虎雄

    五島委員 いま大橋労働大臣が説明されました六大港におけるところの常用と日雇いの数というものは、労働省から発表されたのですからそのとおりに受けておかなければならないとは思いますけれども、大体七対三の常用と日雇いのバランスであると私は考えております。ですから、労働省においての五万六千とそれから日雇いが二万一千であれば七対三の逆になる。私は特に横浜や神戸に比較いたしますと、常用が三〇%で日雇いが七〇%ではなかろうかと思います。そうすると、私が考えておるようなことであるならば、これは六大港におけるところの港湾における労働の雇用の安定というものははなはだ不安定であるといわなければならないわけです。しかも、さいぜん運輸大臣が言われましたように、非常に労働力が不足しておる。労働力が不足しているのにこの港湾の作業は非常に重作業であるといわなければならない。非常に危険作業であるといわなければなりません。一体この港湾に働く労働者諸君は全国の労働者諸君におけるところの災害の数と比較してどのように違いますか。
  34. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 ただいま五島委員の言われました七対三というのは、神戸港におきまする船内荷役の数字がございますが、それは常用二六・六%、日雇いは七三・四%。しかしながら全国の、単に船内ばかりでなく港湾荷役全体の統計について申し上げますと、先ほど私の申し上げた数字でございます。
  35. 五島虎雄

    五島委員 その数字は大橋労働大臣が言われたようにまあまあ了承しましょう。  そうすると、この危険作業のことについては説明がありませんでした。非常に危険である、そうして、他の産業に比較して死亡率なんかぐっと違うというように私は認識をいたしておるわけです。そうするとその中に、労働賃金というものは一体どのくらいを占めるのか、こういうようなこと。労働時間は一体どのくらいになりますか。それから運輸大臣に次にはこれに関係して質問をいたしておきたいと思います。
  36. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 種々の統計を申し上げますと、港湾運送業におきます労働時間でございますが、三十七年の八月の調査によりますと、常用労働者は九・三時間、日雇いが八・九時間でございます。これに比較すべき全産業男子労働者の一日平均労働時間は八・四時間となっております。それから同じく三十七年八月の調査でございますが、賃金につきましては、一人一日平均現金給与額が、常用は千二百二円、日雇いが千七十三円、平均いたしまして千百七十六円ということでございます。  それから最後に港湾荷役の死傷件数並びに死傷千人率でございますが、昭和三十七年には、港湾荷役業が一万二千六百九十三件、死傷千人率は一二一・三人でございます。これに対する全港業統計は、死傷件数四十六万六千百二十六件、死傷年千人率は二一・三人でございます。かくのごとく、港湾荷役におきましては、死傷率は大体全産業の五倍以上というような、年々大体そういう数字が出ております。
  37. 五島虎雄

    五島委員 いま大橋労相が数字的に説明されましたように、港湾労働者は非常に危険作業に従事しているといわなければなりません。それからまた労働時間のことを言われましたけれども、現地でよく話を聞きますと、九・三時間どころの労働時間ではない。月末集中の非常に多忙な時期には、八時間労働から今度は居残りをし、そうして徹夜をし、そうしてそれでもまだなお貨物を運搬できないからということで、その次の日も何か名前を変えて仕事をさせられる、こういうような状況の中に、危険な作業も手伝い、重労働という要因もあって、そうしてこのように災害というものが多くなるというようなことも聞いております。したがって、運輸省も労働省もこれが実態をさらに把握することが必要であろうと思います。  それはそれなりにいたしまして、賃金の問題についていま説明を受けたのですけれども、その賃金はどこから払われるかというと、公示料金の中から払われるわけであります。公示料金は、あの船内荷役の作業料とかなんとかは、いま大体幾らぐらいになっていますか、運輸大臣にお尋ねしたいと思います。
  38. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 こまかい数字でございますから、事務当局からお答えいたさせます。
  39. 比田正

    比田政府委員 平均いたしまして百六十円ぐらいでございます。
  40. 五島虎雄

    五島委員 一トンについて一時間百六十円ですか。
  41. 比田正

    比田政府委員 お答えいたします。ただいま申し上げましたのは揚げでございまして、揚げは一日百六十円、これはいろいろの品目がございまして、品目によって全部違いますので、全部平均した数でございます。それから、積みのほうはトン当たり一日二百十円から二十円ぐらいのところになっておると思います。
  42. 五島虎雄

    五島委員 そうするとこれを、たとえばアメリカとかヨーロッパとか、あるいはその他の地域について、その国々の公示料金というものがそれぞれあると思うのです、この国々と比較して、一トン当たり一口についてわが国が百六十円であり、積みが二百四十円ですか。そうすると外国は一体どのくらいになっておりますか。
  43. 比田正

    比田政府委員 賃金は各国その国情、あるいは経済状態、あるいは港の地理的条件等によりましていろいろ異なっておりますけれども、平均いたしまして日本の、たとえば横浜を一といたしますと、世界のおもなる国の平均は三倍半ぐらいになっております。
  44. 五島虎雄

    五島委員 三倍半と、こう一括されないで、アメリカの太平洋側やら大西洋側やらあるいはヨーロッパの各国やら、それぞれあるでしょう。ちょっと……。
  45. 比田正

    比田政府委員 ニューヨークは横浜に比較しまして六・七倍になっております。ロサンゼルスは七・四倍でございます。ロンドンは二・七倍でございます。ハンブルクは二・八倍、ロッテルダムは二・五倍、ボンベイは一・二倍、シンガポールは一・七倍、バンコクは〇・六倍、香港は〇・八倍、大体そういうようなことでございます。
  46. 五島虎雄

    五島委員 そうするとその海上の貨物輸送というものは、すなわちひいては直ちに貿易に関係するわけです。そうするとその六十二億ドルの想定あるいは貿易外収支五億五千万ドルの赤字に関連するだろうと思う。ところがいま運輸大臣のところには、業者からこの公示料金の改定の申請が行なわれているということは、当初のわが党の堂森委員質問によって明らかとなっております。この点について、さらに私は堂森委員と角度を変えてお尋ねしたいと思うのですけれども、公共料金は一年間ストップとなったわけですが、そこで私もそれには賛成である。わが党も大賛成である。それを実現しなければならない、こういうように考える。物価を抑制しなければなりません。これは国民大衆に直接影響があって直ちにそれが関連をして物価が上昇し、生活を苦しめる、こういうようなことに相なりますから、一年間ストップをし、その間にいろいろの施策を行なわなければならないと主張するものであります。ところが、この公示料金によって港湾労働者は低賃金と危険作業、重労働に従事をいたしておるわけであります。この公示料金によって一トン当たりの積み荷の料金を取ることによって企業が成立をしております。しかもその中で中小零細企業は、若干の労働者をかかえて、そうしてその労働賃金と、それから収入、何というか総掛かり費ですか、そういうようなバランスというものは、これは一般の企業経営ですか、そういうような事態と特に変わっているように考えられるわけです。したがって、いうならば、この港湾運送事業料すなわち賃金、こういうようになっていると解釈しても差しつかえないのではないかと思うのです。しかもこの公示料金を払う人はだれかというと、船主であり荷主である。ですから、直ちに一般大衆に還元されないのじゃないか。そうすると、外国の品物をわが国の労働者が荷揚げをする。同じ品物を、アメリカの労働者が六・七倍ですか——六・七倍では少ないと思うのです。アメリカの港の労働者の作業料はもっと高いのではないかと思うのです。その高い作業料で積み荷されてきた品物が横浜あるいは神戸に着いて、日本の労働者がこれを船内荷役とか沿岸作業をする、その労働賃金は十分の一で同じ品物を運んでいるということです。十分の一と表現しましょう。十分の一で運んでその料金がとられた中に、労働者は八五%とか九〇%の比率でその中から賃金をとって生活をしているというのです。そうしてその非近代的な施設の中に働き、危険作業と重労働に従事している。これは労働省としても運輸省としても考えなければならない問題ではないかと私は考えるのです。そうすると、諸外国の荷役作業料金等々とできるだけ匹敵するような作業料金にまで追いついていくということが、ひいては経済企画庁やあるいは大蔵省に影響のあるこの五億五千万ドルの貿易外収支の赤字を解消していく方途ではなかろうかとも考えられる。こういうことについてどう考えられますか。そうして公示料金のことについて運輸大臣はどう考えられますか。
  47. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 御承知のように、この荷役料金を公共料金と見るかどうかということも問題があると思いますが、公共料金にいたすといたしまして、御承知のような内閣の物価に対する方針がございますから、それに従って——荷役労働者の賃金が安いということも私は認めております。そうして何とかして上げる方途を考えておりますが、ただいま申しました物価抑制策の根本方針に沿っておりまして、なるべくしんぼうしてくれということを、いま業者に、何と申しますか、行政指導をしているような次第でございます。しかし、あの閣議の申し合わせの中にも、中小企業が特に危殆に瀕する場合には、その例外たり得るという規定がございますから、もう少し考えまして、どうしてもやっていかれぬということであれば、船内業者は、御承知のように大部分、九九%が中小企業でございますから、その例外の適用を受けまして、あなたのお説のように——その荷役料金が物価に影響しないとおっしゃいますが、私は若干違った感覚を持っておりますけれども、とにかく、あなたのお説に従って、何か上げるような方途を考えていきたい、かように考えております。
  48. 五島虎雄

    五島委員 私の舌足らずでした。私はすべてを上げる必要がないかという質問を運輸大臣にするつもりはなかったのです。というのは、わが国の労働者は、外国の貨物を運んでおるということです。外国の貨物を取り扱っておるということであります。ですから、国内貨物はそのままにしておいても差しつかえないんじゃないか。それは一般に影響があるからなんです。国内品物に影響がある。しかし、外国の労働者が高い賃金で作業したものが、同じ品物日本に来て、日本の労働者がその十分の一とか五分の一とか、三分の一で作業する理屈はあるまい、こういうように思っておるのです。したがって、外国貨物だけでも上げないか、こういうのです。これは港湾局長に聞きたいと思いますけれども、わが国の国内国外の総輸送量が港においてどのくらいの貨物量になるのか、その中に外国貨物はどのくらいになるのか。そうすると、たった一ドル——たったと言ったら語弊がありますが、一ドル値上げしても、相当の外貨を確保することができるのではないか、こういうように思うのです。そのうちに港が近代化されていくのではないかと私は考えておるから、特に運輸大臣にそのことを聞いておるわけです。ですから、港湾局長と運輸大臣の考えをさらに聞いておきたいと思います。   〔櫻内委員長代理退席、委員長着席〕
  49. 比田正

    比田政府委員 お答えいたします。  船内の荷役の実績は、昭和三十七年度におきまして一億七千二百万ドルでございます。そのうちおおむね半分が外国船によるものということになっております。
  50. 五島虎雄

    五島委員 運輸大臣、外国貨物に対するところの作業料、荷役料、この料率の変更ですね。
  51. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 それは分けることはなかなか困難だと思います。荷役料金は、外貨獲得の手段として、諸外国等のいろいろな事例を参照いたしまして、順次上げていく方向にはありますが、あなたのおっしゃる、そういうことをやっておるから、外国と日本の貨物を分けて荷役料をきめろということは、現時点においては私どもとしてはちょっとむずかしいという気がいたします。
  52. 五島虎雄

    五島委員 むずかしいからやらない、こういうのです。しかし、私が資料をちょっと手に入れたところによれば、港湾経費の内訳で、受け取りと支払いはどのくらいの収差があるか、差し引き支払い超過であるかということは、この港湾経費で九千九百万ドルあるわけです。それはもう運輸大臣が御承知のとおりです。そうすると、私がいま論じていることは、受け取りが五千五百万ドルあって支払いが一億五千四百万ドルある。その差し引きが九千九百万ドルの支払い超過になるんだ。ところが、私が言うところの港湾作業料でもどうなっておるかというと、受け取りが一千六百万ドル、これは労働者の作業料だけではない、その他の、岸壁使用料とかなんとかを入れて一千六百万ドル、外国に支払っているのは六千万ドル、そうすると、四千四百万ドルが支払い超となるということです。それがわかって、五億五千万ドルが非常に困った困った、今後五億五千万ドルを何とかしなければならぬということがわが国の経済の基調とするならば、このことに努力しなければいけないのではないかと私は言うのです。それはできないということはないと思うのです。外国の品物だけですからね。そういうように私は考えて、運輸大臣に特に明らかにしてもらいたい、こういうように言っているわけであります。
  53. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 お答えいたします。  それは外国に対する影響が非常にありまして、できないということが一つ考えられます。それから港湾運送法によりまして、外国の荷物日本荷物を分けることはできないという法律の規定があるのでございます。それから五島さんは、それは輸入する貨物であって、上げたって物価に、輸入業者にそう影響がないじゃないかとおっしゃいますが、やはり物価には若干影響してくると思うのです。そこで反動がきて——いまわれわれは、反動がこないように順次上げていっておるのです。ところが、これをイギリス並み、アメリカ並みその他にすると、また報復の手段を向こうにやられまして、そうしてより日本に不幸を招くということに相なるので、いま順次そういうことのないように上げつつあるのが現状でございます。
  54. 五島虎雄

    五島委員 何か経済封鎖みたいな重大なことになったようですが、私の考え方は、いま運輸大臣に聞いたような考え方を私は持っておるということです。しかし、報復されるということはたいへんなことです。それは、大平さんがいないけれども、外交手段によらなければなりません。外務省があるのですから、そういうような報復なんかないように、そうして貿易外収支の赤字をできるだけ減少していかなければ、大蔵大臣の田中さんは編成ができないということになるわけです。  そういうようなことになるから、私は特にこの予算の問題でいろいろの問題について聞いておきたかったわけです。しかし、いままで質問をいたしました港湾労働者を中心とするところの、港湾労働者の待遇、条件あるいは港湾の施設の問題、それから港湾運送事業者の運送事業量の問題、それは非常に大きに国際的な問題を含んでいるということ、したがって、わが国が全世界に大国であるというようなことに雄飛せしめるためには、この港の整備に重点をそそがなければならないとともに、労働者に対するところのいろいろの処遇の問題を並行的に考えていかなければならぬと思う。総理府におきましては、おととしあたりに港湾労働等対策審議会が発足いたしまして、港湾の船込みの問題をどうするか あるいは為替の問題をどうするか、あるいは港の時間をどうするか、通関の問題をどうするか、労働者の雇用の安定をどうするかということの結論を早く出してもらいたかったのですが、もう二年になるけれどもまだその結論が出ない。したがって、きょうは野田総務長官がおいででございますから、この審議会の経過をお尋ねしておきたいと思うわけです。
  55. 野田武夫

    野田政府委員 お尋ねの審議会は、総理大臣から、お話しのとおり一昨年の八月に諮問をいたしております。内容はもちろん御存じと思いますが、港湾労働の改善、港湾の運営事業の改善、これに対する対策を諮問いたしております。大体経過といたしましては、総会が十四回やっておりまして、小委員会が二十四回開いております。それから実際に横浜、名古屋、神戸に実地調査をいたしております。非常に熱心に審議を続けておられますが、おそらくきわめて近い機会に第十五回の総会を開きまして、そこで答申案が出る、私どももそれを期待いたしております。
  56. 五島虎雄

    五島委員 きわめて近い将来において——将来というと、ずいぶん長いみたいですね。きわめて近い時期にその結論が出るということを期待いたしましょう。そうしてその結論は前向きであることを期待するわけです。そうしてこの審議会の結論が出たら、運輸大臣も労働大臣も、あるいは各関係大臣も、その答申についてそれを十分誠意をもってすみやかに実現されるように努力されますか。
  57. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 来月早々には答申が出るとか承っております。この答申は、港湾労働につきましては画期的な施策を含んでおると存じますが、労働省といたしましては、ぜひこれを検討の上、必ず実現するべく努力をいたしたいと思います。
  58. 五島虎雄

    五島委員 時間がきたようで、あと一点、駐留軍問題について質疑を取りかわしたかったのですが、私が計画をしている質問内容を見ると、あと三十分くらい必要です。これは委員長はお許しにならないですか。
  59. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 申し上げます。理事会の話し合いで、時間は厳格に守ろうという話し合いでございますので、次の機会にひとつお譲り願いたいと思います。
  60. 五島虎雄

    五島委員 それでは、理事会の申し合わせだったら、申し合わせを破るわけにはいきません。ですから、あと二つばかりお願いしたいと思うのです。
  61. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 よろしゅうございます。
  62. 五島虎雄

    五島委員 できるだけ要領よくやります。  防衛庁長官が来ておられますので、いろいろ質問をすると時間がございませんから、私は簡単に一、二問お尋ねしておきたいと思います。関連して大橋労働大臣にも及ぶかもしれません。及ばないかもしれません。  とにかく昨年の十二月に、アメリカ軍が撤退をするという、軍事戦略の変更、戦術の変更が行なわれました。したがって撤退をされるわけです。それに基づいて駐留軍労務者の首切りが始まります。そうすると、いまこの結論に対して、明らかに何名の駐留軍労務者がやめなければならないかということがわかっていたら、はっきりここに御答弁願いたいと思います。
  63. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 確定的な最後の減員数はまだ出ておりません。米軍といま折衝中でございます。大体の推定は約六千名、そのうち空軍二千五百と相なっております。ただ、各基地におけるいろいろな情報もいま集めておりますが、最後の具体的な数字は米軍との折衝で確定いたしておりません。ただ、この六千と申しましても、欠員の関係、あるいは自己便宜退職者もございますので、実数は下回るのではないか、こういう推定でございます。
  64. 五島虎雄

    五島委員 そうすると、これが六千名という予定があるということは、明らかに事前協議は行なわれたわけですか。
  65. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 これは、事前協議はございません。
  66. 五島虎雄

    五島委員 そうすると、アメリカが戦術変更をすれば、直ちに自動的に労働者は首切りになるということなんですか。
  67. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 配置の転換、あるいは一部の駐留軍の撤退、そういう場合には、やはり職場の減少になりまして、減員あるいは整理ということに相なろうと思います。
  68. 五島虎雄

    五島委員 そうすると、駐留軍労働者は政府直用であります。政府の労働者であります。アメリカ軍が撤退をすればそこに仕事がなくなりますから、したがって、政府雇用の労働者として政府はどうこれについて対処するかという問題が出てきます。直ちに君たちはやめてくれ、仕事がなくなったから、あすから来ぬでもいいということにはまいらないと思うのです、労働大臣はどうお思いになりますか。
  69. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 離職される労働者に対しましては、その雇用主になっております防衛施設庁におきまして、いろいろ職場の転換その他できるだけの努力をされることと思いまするが、しかし、それでもやむを得ず離職せざるを得ない方が相当に出るものと思います。これに対しましては、労働省といたしましても、その再就職につきまして万全の措置を講じたいと思います。
  70. 五島虎雄

    五島委員 やめていくであろう駐留軍労働者に対するところの万全の処置を労働大臣が保障されるということは心強いわけです。ところが、いかにしてその万全の処置が行なわれるかという具体的な方策がわからない。というのは、駐留軍労働者諸君は、この基地があるということと、仕事をするということと、わが国が平和になるということとの考え方が矛盾対立する中に仕事をしている、そうしていつまでも駐留軍に使われておりたいと思っている労働者はない、こういうように私は私なりに判断をする。しかしながら、彼らは終戦面後から駐留軍に駐留軍基地労働者として働いておる。彼らの賃金は、すなわち、さいぜんも申し上げたように、くどいようですけれども、これも貿易外収支というようなものに関連があるのじゃないか。ですから、三十八年度一年間であっても、大体の計算によると、六千万ドル程度の貿易外収支を彼らは獲得したということになっている。非常にわが国の経済にとっては功労がある、こう考えなければならぬと思うのです。こういうことが言い得るかどうかということは別問題として、私はそう考える。しかも、駐留軍が作戦戦略上撤退をするからといって直ちに首になるということは、彼ら駐留軍労働者にまことにお気の毒であると思う。去年おととしから、炭鉱労働者諸君に非常にお気の毒だということで、不十分ではあるけれども、いろいろの施策が行なわれてきました。ところが、炭鉱労働者諸君とともに同じ宿命を持っているのが、この駐留軍労働者にほかならないと私たちは解釈しておるのです。したがって、駐留軍労務者諸君に対するところの失業後の生活の保障等々は、政府としては、特に政府の労働者ですから、特に考えてやらなければならないのではないかと考えるのです。ところが、それに対するところの待遇の個々にわたって分析をいたしますると、非常に不十分です。このことについては防衛庁長官もお気づきになっておるだろうし、労働大臣もお気づきになっているだろうと思うのです。たとえば特別給付金にいたしましても、法律があるけれども、その基準は政令をもってきめるとなっている。そして現実に一万円とかあるいは一万五千円程度で、やめていく人にお涙金が出るということです。炭鉱労働者諸君にはどれだけ出ますか。そういうようなことで、炭鉱労働者諸君にこう出るから、駐留軍労働者諸君にもこうなければならないと私は理論を持っていくつもりはないのですけれども、彼らは必然的に失業者の宿命をになって働いているものですから、したがって、彼らには政府は責任を持ってそれを保障してやらなければならないのではないかと私は主張いたしたいと思うのです。この点について防衛庁長官は万全の措置をもって、この駐留軍のやめていかなければならないであろうところの彼らに対して、どうされるおつもりか、この所信をここに聞いておきたいと思うのです。  時間がございませんから、これをもって終わるかもしれません。
  71. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 駐留軍労務者の方々が、生活環境も違い、また不安定な客観情勢のもとにあるということはお説のとおりでございます。政府といたしましても、万全の措置を講じてあらゆる手を打つことも、これまた当然のことだと思います。御承知のとおり、駐留軍関係臨時措置法もございますし、総理府の中に中央駐留軍関係離職者等対策協議会もございまして、これを中心にいたしまして、各関係各省が寄り寄り協議し対策を練っております。また、先般、退職手当につきましても、日米合同委員会に正式に議題として提案いたして、増額を交渉中でございます。べースアップの遡及につきましては、幸い米軍側の同意を取りつけました。なお、特別給付金につきましては、各五千円ずつの、額は決して満足すべきではありませんが、三十九年度の予算に増額を要求し、御審議を願うことに相なっております。今後あらゆる手段を講じまして、全力を尽くしてその処置に尽くしたいと考えております。
  72. 五島虎雄

    五島委員 実はいろいろの予算上に盛られたところの施策があります。しかし、私が主張したところと、あるいは大橋労働大臣が万全の措置をとると言われたことと、防衛庁長官が万全の措置を講ずると言われたこと等に関連をすれば、これは私はあなたたちを信頼したいと思うのです。ところが、予算上の問題が出てくるのではなかろうかと思う。そのときも、万全の措置を講じ、十分なる努力をしてもらわなければならない、こういうように思う。大蔵大臣に私はこの質問の席上から、陳情めいたことではないけれども、要望をいたしておきますから、十分な理解を持って万全の措置にこたえてやっていただきたいということを要望いたしまして、質問を終わります。
  73. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 五島虎雄君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、昭和三十九年度総予算に対する一般質疑は終了いたしました。  午後は二時三十分から再開し、締めくくりの総括質疑に入ります。まず第一番に岡田春夫君、二番目に鈴木一君、続いて辻原弘市君の順序であります。  委員会休憩後直ちに理事会を開きますから、理事の方は常任委員長室に御参集願います。  暫時休憩いたします。    午前十一時四十八分休憩      ————◇—————    午後二時四十分開議
  74. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和三十九年度一般会計予算昭和三十九年度特別会計予算昭和三十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、締めくくりの総括質疑に入ります。  岡田春夫君。
  75. 岡田春夫

    ○岡田委員 私は、社会党を代表して、総括的な質問を池田総理大臣をはじめ各大臣にいたしたいと思います。私の質問を大別いたしますと、第一に池田外交の基本方針、第二に日中関係の諸問題、第三に日韓会談について質問をいたしてまいりたいと思います。  まず第一の点は、最近の世界情勢と池田外交の基本方針について総理大臣の御意見をお伺いいたしたいと思いますが、総理大臣は、過般の施政演説の中におきまして、国際情勢は今後変転を予想されると述べておられます。今日の世界情勢は確かに流動的でありまして、変転を予想されるということは、私も御意見のとおりであると思いますけれども、その中で最も象徴的なのは、世界においてアメリカの地位が急速に低下をして孤立を深めつつあるというのが基本的な特徴であると私は考えております。たとえば、具体的な例をあげてみました場合において、本年に入りましてからも、パナマ事件、南ベトナム、あるいはカンボジア、キューバのような、いろいろな事件が起こっておりますし、その間に中仏問題、これらの問題は、一つ一つが、アメリカの地位を高めるのではなくて、逆に低下させているというのが、本年起こってまいりました具体的なあらわれであり、この点についてはジョンソン大統領もことしの二月の十一日ワシントンの演説におきましてもその事実を否定はいたしておらないのであります。私は、戦後一九五〇年代までの世界におけるアメリカの輝かしい地位と対比いたしてまいりました場合において、今日のアメリカの地位の低下というものはだれの目にも明らかに映っていることであり、一九六〇年代以降というのは、アメリカにとってはゴールデン・エージではなくて低下と転落の段階に入ったものと私は考えております。  そこで、総理大臣にお伺いをしたいことは、世界情勢におけるアメリカの地位の低下をお認めになるかどうか、今後のアメリカの動向をどのようにお考えになるか、この点をまず第一点としてお伺いをいたしたいと思います。
  76. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私はどこの国の外交上における地位の低下とかいう問題を考えたことはございません。それは、従来えてして米国とソ連の二大勢力としての状態が、多元的になり流動的になったということであるのであります。どこの地位が低下した——たとえば国際共産主義のもとに立っておったソ連、中共のあの問題のごとく、また自由国家群におけるドゴール大統領の態度のごとく、これは、どこの地位が弱くなったということでなしに、多元、流動的になった現象であると考えます。
  77. 岡田春夫

    ○岡田委員 いま総理大臣は、多元的になったと、このように御答弁になったわけでありますが、ドゴールの場合に見られるように、それぞれの国が多元的な態度をとっております。私の見方から言うならば、ヨーロッパやカナダなど西欧の諸国がアメリカに対して相対的な自立の態度を明確にしてきたこと、このことが今日のアメリカの地位の低下をもたらした大きな原因の一つになっていると思う。そこで、こういうようなドゴールその他における対米自立の態度というものが非常に明確になってきたことについて、日本の場合を顧みてみまするならば、池田総理大臣は、いままで国会の答弁において、再三、日本の外交はアメリカに追随はいたしておりません、このように答弁をしておられますし、なるほど、日中問題などについて見まするならば、若干の意見の食い違いがあったようにも私は見受けております。しかし、池田外交の対米自立の態度は、率直に申し上げて、程度が知れている。換言するならば、底が浅い、底が見えているというのが、これが池田外交の対米自立の基本である。だから、いよいよ肝心な段階になるならば、結局アメリカの言うなりになって、それに妥協してしまうというのが、池田外交の対米自立の本質であると思う。だから、日本国民は、池田外交に対しては、自立外交、自主外交として池田外交を見ないで、対米追随外交として考えているわけであります。  私はこの際池田総理大臣に特に御意見を伺いたいのでありますが、ドゴールに見習って、もっと雄大な構想で、日本外交の基調として対米自立の態勢というものを明確にされる必要があると思いますが、この点はいかがでございますか。
  78. 池田勇人

    ○池田国務大臣 たびたび申し上げておりますごとく、アメリカに追随する外交は一切とっておりません。われわれは、自主的に、何を日本国のためにやるべきか、また、それがアジア世界の平和に役立つか、これを考えておるのであります。たまたま、考え方、利害関係が相類似するところが多い関係上、結果が一緒になることがあるということだけでございまして、これは決して自立外交を害するものではございません。たとえばイギリスの外交がそれであるがごとく、またドイツの、イタリアの外交がそれであるがごとく、お互いに自分の国の利益を守りながら、そして関係の深い共同的に立つ国の外交が自然的に一致するということは、これは自然の数だと思います。これが従属関係とかなんとかいう関係ではないと私は考えております。
  79. 岡田春夫

    ○岡田委員 まあ自立外交の点について御答弁があったわけでございますが、私は、アメリカの政策の根幹というのは、ドルの支配と、アメリカを中心とする全世界の軍事同盟体制にすべてを依存さしているのがアメリカの世界政策の根幹であると思う。だから、このアメリカの支配体制に対する抵抗が、ヨーロッパにおいてはドゴールにあらわれたように、対米自立という形であらわれる。あるいはまた、アジア、アフリカ、ラテン・アメリカにおいては、この抵抗が民族解放運動としてあらわれているのだと思う。特に民族解放闘争地域におけるアメリカのやり方というのは、あまりにも見えすいております。これはアジアの最近の情勢を考えるならば明確であります。すなわち、ドルと兵器を使ってかいらい政権を擁立する。このかいらい政権をあやつって、それを通じてその国とその民族を政治的、経済的、軍事的に支配し、弾圧し、収奪をする。しかも、それでも使えなくなった場合には、南ベトナムにおいてあらわれているがごとく、CIAなどを使ってクーデターをやらせて馬を乗り変えるというのが、アメリカのアジアその他における基本政策である。こういう点については私は詳細を申し上げることを避けますけれども、しかし、このようなアメリカの政策は、結果において、やがて必ずアジアにおいても失敗することは明らかであると私は思う。この間第三回日米経済協力会議において池田総理大臣は、アジアはアジア人の手で解決すべきだという趣旨のことを述べられたと言われておりますが、もし池田総理大臣がアメリカに対する友好信義をお考えになるならば、ただいまの御発言から竿頭一歩を進めて、アジアからアメリカは手を引くべきである、アジアに対する軍事干渉をやめるべきである、中国の封じ込め政策をやめろと主張するのが、三本柱を自負する保守党の総理大臣としてとるべき態度であると私は思う。これがほんとうの意味でアメリカの今後アジアにおける孤立と失敗を救う唯一の道であると思うが、この点について総理大臣の御意見を伺いたいと思います。
  80. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私はラスク長官にアジアから手を引けとは言っておりません。アメリカはアジアのことを考える場合においてアジア人の気持ち、アジア人の伝統、これを十分味わって、寛容と忍耐の気持ちでお互いの立場を尊重しながらいくべきだ、ことに日本という国はアジアに対しましてアメリカ以上の関係を持っておる、アジア問題については十分話し合っていこう、こういうことを言っておるのであります。しこうして、その前におきまして、私は、日米はいわゆるパートナーシップの関係にある、しかし、それはお互いに自主独立の外交政策をとる、ただ、願わくば、この自主独立の外交政策をとる両国が相反し相争うということはやめて、あくまで協議をし意思の疎通をはかっていこうということであるのであります。アメリカにこういう態度をとれとか、ああいう態度をとれという命令が私にできぬがごとく、アメリカも日本に命令はできない。お互いにパートナーシップとして協議していこうということでございます。私は、アメリカのアジアに対する考え方でわれわれが間違っていると思うことならば、十分これは蒙を開くべく努力をすることが、アジアの平和を念願しておるわれわれの当然のつとめであると思うのであります。この点につきましては、アメリカばかりではございません。イギリス、フランスにつきましても、われわれはアジアの問題につきましては自分らの考え方を十分述べて、そうしてアジアの繁栄と平和に努力していこうというのが、われわれ日本人のいわゆる立場であるのであります。
  81. 岡田春夫

    ○岡田委員 いま総理大臣はアメリカとのパートナーシップを主張された。アジアの平和のためにアメリカとの真の意味のパートナーシップというものは、アジアの平和の最も大きな平和を撹乱する根源になっているところの、アメリカがアジアに対して軍事介入をやっていることをおやめなさいということを主張するのが、真の意味のパートナーシップだと思う。私はそうだと思うが、これからもう一歩進めていきますけれども、具体的にこの点を伺いたいと思う。  たとえば、中仏問題以来、アメリカの中国封じ込め政策というものは破綻したといわれている。特に明らかになってきているのは、南ベトナムの情勢が、最近の報道によると、アメリカにとって憂慮すべき状態になってきている。昨日の外電によると、ラスク国務長官も情勢の悪化を認めているといわれております。おそらくこのままの状態では南ベトナムにおいては半年以内にアメリカは最悪の事態に逢着せざるを得ないだろうと思います。こういう情勢について総理大臣はどのようにお考えになっているか、まずこの点を伺いたいと思います。
  82. 池田勇人

    ○池田国務大臣 南ベトナムの状態、すなわちベトコンの侵攻は相当強くなってきつつあります。これはあなたも御存じ、われわれもいろいろ新聞その他で聞いております。しかし、これに対しましての態度は、アメリカはいまどう出るか、われわれの知るよしもございませんが、非常にアメリカとしては心配しておる状況であろうと思うのであります。これはアメリカのみならず、イギリスにおきましてもそういう心配をしていることは当然でございます。
  83. 岡田春夫

    ○岡田委員 そこで、いま総理大臣のお答えになったように、南ベトナムの情勢はアメリカにとって非常に憂慮すべき状態になっている。これはお認めになった。そういう危機を回避するために、最近の新聞報道によると、アメリカが直接北ベトナムを攻撃するというような、そういう構想をアメリカの政府の一部の部内で考えているといわれている。昨日の外電によりますと、ラスク長官も、北進は将来の問題であると答えて、これを完全に否定はいたしておりません。  そこで、私の伺いたいことは、もしこのようなことが、すなわち北ベトナムに対する攻撃がアメリカによって行なわれるとするならば、これは明らかにアメリカの侵略行為であると思う。この点については、イギリスもフランスも、このような侵略行為については認められないという否定的な態度をとっているのであるが、日本政府としては、アメリカがこのような行動をもしとるとするならば、これについてはどういう態度をおとりになりますか。これは、先ほどあなたのお答えになりましたように、アジアの平和の問題につきまして最も重大な問題でございますので、率直な御答弁を伺いたいと思います。
  84. 池田勇人

    ○池田国務大臣 このような措置をとるということは、アジアの平和に重大な関係がある、このような措置とはどういうことでございますか。
  85. 岡田春夫

    ○岡田委員 たいへん失礼ですが、よくお聞きください。このようなというのは、アメリカが北ベトナムを攻撃するというような措置ということです。
  86. 池田勇人

    ○池田国務大臣 だれがそういうことを言っておりますか。私はまだ寡聞にして聞いておりません。
  87. 岡田春夫

    ○岡田委員 それはよく新聞をお読みいただけばおわかりになるはずでありますが、アメリカ政府の部内の一部においてそのように言われておりますし、昨日の外電によると、ラスク国務長官もこれを否定いたしておらないのであります。将来の問題であると言って、否定いたしておらないのであります。これについて御意見を伺いたい。よく新聞をごらんいただきたいと思います。
  88. 池田勇人

    ○池田国務大臣 新聞は見ております。しかし、アメリカの政府の一部の人か、あるいは政府の一部の人もどの一部の人かわかりません。しこうして、ラスク長官も、いま言われたようなことのうちには、そういうことはまだまだ先のことだ、いま考えていないのじゃないかというふうな電報もあるのであります。そんな問題につきまして、最も関係の深い日本がいまどうこう言うことは、かえってアジアの平和を害するものであります。私は、アメリカの政策が重要な問題につきましてあれのときには事前の相談があると思います。もしどういう措置をとるということにつきまして確固たる見通しがつきましたならば、これはわれわれとしてそれに対しての態度を言うべきですが、一部の人の、何も権威があるかないかわからぬ人の想像によって、こういう重大問題を、いわゆる仮定の事実のところまでもいかぬものを私が議論することは、少しどうかと思います。
  89. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは、総理大臣の御答弁は、アメリカの内部ではそういうことをやっておらない、こうおっしゃるのですか。
  90. 池田勇人

    ○池田国務大臣 やっておらぬの問題ではない。そういうふうないろいろな議論あるいは想像があるということだけでございます。
  91. 岡田春夫

    ○岡田委員 そういう議論があるならば、その議論についてはどうですかと伺っておる。
  92. 池田勇人

    ○池田国務大臣 議論につきまして、ここで日本の総理大臣が答えるということは、不見識でございます。
  93. 岡田春夫

    ○岡田委員 不見識ではないのです。もしこういう事実が起こった場合、あなたはどういう態度をおとりになるのですか。
  94. 池田勇人

    ○池田国務大臣 起こるか起こらぬかわからぬ場合に、そうしてまた、その結果の見通しも何もつかぬ場合にとやこう言うことは、私は、外交上とるべき態度でも、いわゆることばでもないと思います。
  95. 岡田春夫

    ○岡田委員 アメリカに対してはなかなか、自主性ある態度というのがそういう態度でございましょう。アメリカに対してはなかなか自主性がありますからね。だから、不見識なことだと言って、おっしゃらない。行動をとってしまってからそれに追随するのが日本政府の態度であると解釈せざるを得ない。もしそういう事態が起こったならば日本政府はこれに対して積極的に消極的に協力するということですか。
  96. 池田勇人

    ○池田国務大臣 何がアジアの平和のために一番いいかということを考えて日本は意見を述べます。
  97. 岡田春夫

    ○岡田委員 総理大臣、伺いますが、日本は南ベトナムの戦争に協力していますね。そうではございませんか。
  98. 池田勇人

    ○池田国務大臣 南ベトナムの戦争ということがわかりませんが、南ベトナムに対しましては、国会で承認を受けました賠償協定で、南ベトナム国民の福祉の増進と生活の安定に寄与いたしております。
  99. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは、総理大臣、もっと具体的に伺います。現在南ベトナムで紛争の起こっているのは御存じですね。先ほどあなたが御答弁になったように、いわゆるベトコン、私はベトコンということばは使いません。南ベトナム民族解放統一戦線と言います。ベトコンとは言いません。しかし、それとアメリカの軍隊との間に紛争のあるのは御存じでございましょう。
  100. 池田勇人

    ○池田国務大臣 紛争のあることは聞いております。それだから先ほど来の問題があるのであります。非常に形勢が変わりつつあるとか、非常に南ベトナムの国民が塗炭の苦しみにあるということを聞いております。
  101. 岡田春夫

    ○岡田委員 その紛争の中で日本がアメリカ側に協力をしているのは事実ではありませんか。
  102. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私は、ベトナムのためにやっておるので、アメリカの軍事行動その他に協力しておるとは思いません。
  103. 岡田春夫

    ○岡田委員 その紛争の一方の側についているということは、南ベトナムの政府であろうが、それと一緒になっているアメリカであろうが、その一方の側についてそれに協力をしているという事実はあるのじゃありませんか。
  104. 池田勇人

    ○池田国務大臣 われわれは南ベトナムを独立国として認めております。しこうして、南ベトナムの国民の福祉の増進、生活の安定につきまして経済協力はいたしております。
  105. 岡田春夫

    ○岡田委員 軍事的に協力しているのじゃありませんか。
  106. 池田勇人

    ○池田国務大臣 軍事的に協力しておりません。
  107. 岡田春夫

    ○岡田委員 おりませんと総理大臣がおっしゃったのだが、事実がある。  運輸大臣、伺います。これは運輸大臣御存じのはずだが、日本のある船舶会社がアメリカから古いLST十三隻を買い入れて、このLSTによって、日本−南ベトナム、これはフィリピンを経由しているのですが、日本から軍需品を積んで南ベトナムに送っているという事実がある。しかもこれは一航海三カ月の航程で日本から軍需品を積み出して、そしてその十三隻の船によって南ベトナムの戦線に軍需品を送っている。しかもこの乗り組み員は全員日本人である。一つの船に四十三名の日本人が乗り組んで、十三隻の船が就航している。この事実を運輸大臣御存じでございましょう。
  108. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 そういう事実は私は認めませんが、アメリカから終戦直後アメリカの船を日本が委託されまして、アメリカの物資を送ったことはあります。その会社は米船運航株式会社と申しまして、昭和二十七年四月一日に発足しまして、昭和三十七年七月二十一日に解散をしております。その間、初め船舶保有公団でやるように言われましたがそれはいかぬというので、アメリカの船をチャーターいたしまして、チャーターというより委託を受けまして、委託運航した会社がそれです。それが、今日はもう解散して、ありません。そういう事実はありますが、あなたのおっしゃるようななには、運輸省としては関知いたしておりません。
  109. 岡田春夫

    ○岡田委員 関知とおっしゃることがおかしいので、船舶局というのがあるのですから、船は当然関知してもらわないと困るのです。現在私は具体的に十三隻で一つの船の乗り組み員が日本人四十三名であるということまで申し上げているのですから、これはあとで必要があれば会社の名前を全部お教えいたします。これはひとつ厳重にお調べをいただきたい。よろしゅうございますか。
  110. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 そういう調べた結果が、ただいま申しましたように、設立はそうであって、解散して、ありませんということを申し上げております。
  111. 岡田春夫

    ○岡田委員 運輸大臣の調べは不十分です。もっとお調べをいただきたい。
  112. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 私はそういう調べをしてまいったのですが、海運局長がおりますから、答弁させます。
  113. 岡田春夫

    ○岡田委員 これにこだわっていると、まだたくさん軍事協力の事実があるので、時間がかかりますから、次に進みます。総理大臣、まだ軍事協力の事実があるから、一つ一つあげます。運輸大臣、あとで調べてくださいよ。
  114. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 調べてあります。
  115. 岡田春夫

    ○岡田委員 その次、昨年の九月の三日、これは航空局長が来ているはずですが、九月三日、羽田に南ベトナムの軍用機が事前連絡なしに着陸をしている。搭乗員は南ベトナムの軍人十七名、しかもこの軍人は入国の査証を持っておらない。したがって、羽田においてこれがそのまま差しとめられて、南ベトナムの大使館を通じて外務省に入国の査証の依頼があって、外務省は南ベトナムの大使館に対して厳重注意を喚起してビザを発給したという事実がある。しかも、その目的は、十七名の南ベトナムの軍人の軍事訓練が目的である。こういう事実があったかどうか。私は、あった事実に立って言っているのですが、確認をしておきたいのだが、外務大臣、入国の目的、これはどういう目的になってビザが発給されたか。滞在の期間は何日間であったか、外務大臣からお答えをいただきたいと思う。
  116. 大平正芳

    大平国務大臣 そういう事実は承知いたしております。査証を持ちまして入って参りますのが普通の状態でございますが、間々査証を携帯せずに入る場合がありますので、そういう場合におきましては、外務省のほうで、友好国のたてまえ上、——これを認めるか認めないかは日本政府の判断に待つわけでございますが、友好国のたてまえ上これを許したという事実は承知いたしております。どういう目的、期間ということにつきましては、事務当局から説明させます。
  117. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 さっき仰せになりましたこのビザ、ベトナムから参りました軍人のビザと申しますか、正確に申しますと入国許可の期間は、十月の三日から六日まででございます。そして、ビザの申請でございませんでしたので、いわゆる入国目的というのはしるしてございません。
  118. 岡田春夫

    ○岡田委員 これは運輸省の航空局長が調べているはずです。軍事目的で入国したということは明らかだ。軍事訓練の目的です。これをひとつ御答弁願いたい。
  119. 栃内一彦

    ○栃内政府委員 南ベトナムの軍用機が羽田に昨年秋に飛来したという事実は承知しておりますが、何日に着いたという点につきましては、いまはっきり記憶しておりません。ベトナムからの軍用機の入国につきましては、外務省のほうに申し入れがございまして、外務省のほうから航空局のほうに連絡がございまして、そして、日本に参るという点につきまして外務省協議の上許可を与える、こういうことでやっておりますが、現在、何のために来たかということは、私は記憶をいたしておりません。
  120. 岡田春夫

    ○岡田委員 あなたは全然知らないらしいんだが、あなたは答弁を聞いたでしょう。アジア局長が九月の三日から来たということを言っていますからね。だから、それは事実なんですよ。羽田の空港長もここに来ているはずですがね。うそじゃないでしょう。この問題だけじゃないのです。まだ言うのです。栃内さん、これは先ほど秋であるがとおっしゃいましたが、秋にこの一機だけではないのですよ。昨年の十月の中旬に、これは前のと別ですよ。中旬に南ベトナムの軍用機がまた来て、それには搭乗員は南ベトナムの海軍士官八名、これには入国の許可は現地日本の大使館で許可を発給している。目的はこれもまた軍事訓練が目的である。横須賀の米軍基地で訓練を受けるためである。滞在期間は二カ月。帰りは立川の米軍基地から帰国している。この事実があるはずだ。あなたはもし御存じなかったら、羽田の空港長も来ているはずですから、空港長から、——先ほどのと違いますよ。これは別口ですよ。もう一つ別口についても御答弁ください。アジア局長知っているなら、アジア局長お答えください。
  121. 栃内一彦

    ○栃内政府委員 ただいま申し上げましたように、昨年の秋にベトナム機が来たということ、これは一機でなかったという記憶もございます。しかし、何日に羽田に着いたかという日にちの点まで現在記憶しておりません。
  122. 岡田春夫

    ○岡田委員 あなたは何機じゃなかったとおっしゃるけれども、一機来たということはアジア局長認めたのです。また十月のやつがもう一機あるんですよ。ですから、羽田の空港長来ているでしょう。来ていますね。空港長に答弁してもらってください。はっきりしているはずですから。
  123. 岩田勝雄

    ○岩田説明員 昨年の十月にベトナムの飛行機が来たというお話でしたけれども、私のほうの調べでは、ございませんでした。
  124. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃ伺いますが、九月の三日は来ているのですか。
  125. 岩田勝雄

    ○岩田説明員 私の調べております調書には、九月に出ておりません。
  126. 岡田春夫

    ○岡田委員 委員長、これは事実をはっきりしてください。アジア局長は九月の三日は入りましたと言いました。そして、その滞在期間は数日間の滞在期間ということも明らかにしました。一番知っているはずの羽田の空港長がそれを知らないと言う。リストを調べればわかるはずなんです。十月の分も知らないというのは、おそらく入っているのは事実なんだけれども、羽田の空港長が知らないのです。こういう政府の答弁のあいまいなのでは、私は質問は続行できません。これははっきりしてください。
  127. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 答弁をしっかりしてください。
  128. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 私のほうで承知しております限りのベトナム軍用機の来日いたしましたデータを申し上げますと、八月に一機、立川でございます。それから九月に、さっき申しましたこれは一機、羽田。それから、十月三日から六日に一機、羽田。それから同じく十月九日から二十日まで羽田、二機。それから、あともう一つ、十月十五日から十七日まで羽田、一機。こういうことでございます。
  129. 岡田春夫

    ○岡田委員 これは国会の審議で重大な問題だと思います。羽田空港の管理をしているのは空港長の責任のはずだ。ところが外務省アジア局長は、私がいま言ったように、十月の分もはっきり来ているということを認めている。羽田空港長は知らないと言う。これは、運輸省並びに航空局長もいるのだが、航空局長は全然知らないらしい。一体どれがほんとうなのか、運輸大臣、はっきり御答弁ください。
  130. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 お答えいたします。  私は一々どういう飛行機が何時にどこに着いたかという報告を受けておりません。私は、常識的に言って、知らぬのがあたりまえであると思います。と申しますのは、毎日飛行機が何機着いて、何時に着いたということは、実際知らぬですよ。ですから、空港長の言うことを信用するよりほかしようがありません。
  131. 岡田春夫

    ○岡田委員 大臣、そういう言い方をしてはだめです。民間飛行機が何時に入って何時に来るということまであなたは知らなくてもいいです。羽田というのは民間航空のICAOの国際空港ですよ。そこに軍用機が来ているのですよ。軍用機が来たのは知らないでいいですなんとあなたは言う。それでは伺いますが、羽田空港長のほうが正しいと思うなら、アジア局長の答弁は間違いだとお考えになるのですか。その点をはっきりお答えください。アジア局長のは違うのですか。
  132. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 空港長の言うことを、私は飛行機の発着は何時だと——信用するよりしようがありません。
  133. 岡田春夫

    ○岡田委員 大臣、大臣、それじゃ、アジア局長の言ったのをいまお聞きになった。それを事実だと言ったのだが、初めてそれは事実だということがおわかりになりましたね。入ったという事実ははっきりおわかりになりましたね。どうですか、その点はっきりしてください。
  134. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 それは、そういう事実があるかないかを詳細調べてお返事します。
  135. 岡田春夫

    ○岡田委員 これは、総理大臣、お答えください。それは、総理大臣のもとにおける外務省の局長はそれを認めている。ところが、運輸大臣はこれを認めておらない。これでは質問にならない。総理大臣、これはだめです。   〔「統一しなさい」、「休憩、休憩」と呼び、その他発言する者あり〕
  136. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 休憩はいたしません。御静粛に願います。
  137. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 先ほど申し上げましたデータは、ビザの申請がございます関係で、それからとった資料でございます。十月三日から六日までのものは、ビザがなかったので、入国許可はショアー・パス発給でやったわけでございます。
  138. 岡田春夫

    ○岡田委員 しかし、ビザの申請があったから認めたのじゃないですか。入国したのじゃないですか。ビザがあったから入国したのじゃないですか。あなた、それはだめですよ。それでは答弁になりませんよ。   〔「休憩休憩」と呼び、その他発言する者、離席する者あり〕
  139. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 休憩はいたしません。いま答弁をちゃんといたさせますから……。   〔「このままで休憩ですか」と呼ぶ者あり〕
  140. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 いや、そうじゃありません。休憩はいたしません。
  141. 栃内一彦

    ○栃内政府委員 羽田に現実に何月の何日に入ったかという点におきまして、いま調査をいたしております。  先ほど空港長がベトナム軍用機が羽田に入った事実はないと申しましたが、これは誤りでございますので、私から訂正いたします。  なお、何月何日に入ったかという月日の点につきましては、いま調査中でございます。
  142. 岡田春夫

    ○岡田委員 それは私は了解できません。少なくとも九月三日に入ったことをアジア局長は認めておりますから、直接の管理担当者である羽田の空港長並びに航空局長がそれを知らないという話はないはずです。私はいまの答弁では了解いたしません。アジア局長ははっきり九月三日と言っております。
  143. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 もう一ぺん答弁を願います。   〔「運輸大臣、うそ言っちゃだめだよ、全部新聞に出ているんだから」と呼び、その他発言する者、離席する者あり〕
  144. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 お答えいたします。  飛行機の発着は確かにここに記録してありますが、ベトナムの飛行機が入ったかいなやは、さらに調査してみないとわかりかねますから、調査をいたします。
  145. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃ問題になりません。   〔「そんな答弁じゃだめだ、ちゃんとこの新聞に出ているのだ」と呼び、その他発言する者あり〕
  146. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 いろいろ誤解もあるようでございますから、あらためて私から御答弁申し上げます。  外務省が入国の査証を与えたのは事実であります。しかし、実際に何日何時に羽田へ着いたかということにつきましては、いま帳簿その他を——抜粋だけであって詳細がわかりませんから、さらに調査をいたしてお返事いたします。
  147. 岡田春夫

    ○岡田委員 私はただいまの御答弁では了解いたしません。なぜならば、第一点は、アジア局長は先ほど私の事実を認めた。羽田に着いて、その羽田に着いてから入国の許可を与えたと言った。これは九月の三日なんです。ところが、あなたはまだわからないとおっしゃる。もし運輸省の羽田の空港におけるリストにそれが載ってないというなら、なおさら重大問題です。リストに載ってない南ベトナム軍用機がこっそり入ってきたんだ。それをアジア局長は認めているんだ。運輸省のほうはリストに載せてないとすれば、載せてないことこそ重大問題じゃありませんか。それでは、あなた、答弁に了解できません。しかも、九月三日に入ったことは新聞にも出ている。ジャパンタイムズ、それ以外にも出ている。これははっきりしているのです。あなたはその事実をはっきりお認めなさい。   〔「休憩休憩」と呼び、その他発言する者あり〕
  148. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 休憩はいたしません。いま調べている最中です。(「鳴くまで待とう」と呼び、その他発言する者多し)いま連絡しておりますから、あまりせっかちにならないで、しばらくお待ちください。
  149. 岡田春夫

    ○岡田委員 見通しを言いなさい。
  150. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 見通しは、もう数分間でございます。
  151. 岡田春夫

    ○岡田委員 あしたまでこうして待っているわけにはいかぬ。
  152. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 調べはつきましたか。答弁はしっかりしてください。——わかりましたか。栃内航空局長
  153. 栃内一彦

    ○栃内政府委員 羽田に入りましたベトナムの飛行機は、九月三日に入りまして七日に出ております。それから、十月三日に入りましたのが六日に出ております。そのほか十月九日に入りましたのが二機ございますが、これが二十日に出ております。
  154. 岡田春夫

    ○岡田委員 航空局長に伺いますが、アジア局長は八日にも入っていると言っている。これはございますかどうですか。それから、先ほどの栃内航空局長の御答弁では、ベトナムの飛行機がとおっしゃったが、軍用機でしょう。軍用機であるかどうかはっきりしてください。八日もあるはずですよ。
  155. 栃内一彦

    ○栃内政府委員 ベトナムの飛行機と申し上げましたのは、軍用機でございます。  なお、八日の分につきましては、いま外務省の局長に伺いましたところ、これは立川に入っておるということでございます。
  156. 岡田春夫

    ○岡田委員 その点は、立川に入ったのなら運輸省はわからないかもしれないけれども、それ以外に入っているでしょう。去年の九月と十月だけでないでしょう。ほとんど毎日入っているでしょう。あなた、この前羽田の空港の記者諸君に言っているじゃないですか。毎月一機や二機入っているからたいした問題じゃないと言っているじゃないですか。毎月入っているでしょう。全部御報告しなさいよ、去年一年間の。
  157. 栃内一彦

    ○栃内政府委員 ベトナムの軍用機が毎月入っているという事実はございませんし、また、私がそういうようなことを新聞記者に語ったこともございません。
  158. 岡田春夫

    ○岡田委員 事実はございませんというのは間違いないのでございますか。私は信用できない。先ほどから私は九月の三日、十月入っていると言うのを、あなたはそういう事実はないと言っておったが、あなたはいま調べもしないで、羽田に聞きもしないで、事実はございませんなんて言ったって、私は了解できませんよ。事実がないのならないと、具体的にどういうリストにおいてないということをはっきりおっしゃい。そしてあなたのほうの計算では、昨年何機南ベトナムの軍用機が入ったのか、合計の機数までおっしゃってください。
  159. 栃内一彦

    ○栃内政府委員 先ほど私は、秋に入った記憶はある、一機ではなく、もっと入った記憶があるということを申し上げましたが、そのときは、何月何日に入ったかということを覚えておりませんでしたので、はっきりした御答弁をできなかったわけでございます。この点は陳謝いたします。なお、資料によりましていまお答えしたわけでございまして、そのほかにベトナム軍用機が昨年羽田に入ったという事実はございません。
  160. 岡田春夫

    ○岡田委員 春にも入っているはずです。それはあなたはいま現在御存じないから、航空局長は知らなくとも、空港長は知っているでしょう。空港長、もういなくなったのですか。合計何機入っているのですか、合計だけでもおっしゃってください。
  161. 栃内一彦

    ○栃内政府委員 ただいま申し上げましたとおり、合計で四機ということになります。
  162. 岡田春夫

    ○岡田委員 立川を別にして四機だとおっしゃるのだろうと思いますが、私は、この点についてはまだ了解をしませんけれども、運輸大臣、どうですか。いま航空局長の寄ったとおりなんですが、この事実をお認めになるとするならば、先ほどの答弁はお取り消しになるのでしょうね。この点、念を押しておきます。
  163. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 局長の言ったこと以外に、あなたのおっしゃるようなことがあるかないかは、調査をしてお答えいたします。
  164. 岡田春夫

    ○岡田委員 調査をしてお答えになるのはけっこうですが、先ほどの運輸大臣の御答弁は、航空局長がいま答えたことと食い違っている。先ほどのは、入っておらないとおっしゃった。それをお取り消しになるのですかと、私は伺っている。
  165. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 さっき申しましたように、私はどういう飛行機がいつ何時に着いたかというのはつまびらかにいたしません。そこで、航空局長の言うことを信用してさようにお答えしたのでございますが、いま書類、問い合わせ等によって調べた結果、ただいま航空局長が申したことが事実である、私はかように思っております。なおさらにいろんな、何機が着いて何機どうしたというようなことは、調査をしなければ私はわからぬということを申し上げたのであります。
  166. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは運輸大臣、質問を続けますが、去年初めて四機入ったのじゃないのですよ。毎年入っているのです。しかも去年も、秋に四機なんであって、春にもその点入っているのです。お調べください。いいですか、お調べになって御答弁いただけますか。きょう御答弁ください。
  167. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 なかなか古い書類であるから、きょういますぐと申しましてもですが、調査をして返事いたします。適当な機会に返事します。
  168. 岡田春夫

    ○岡田委員 古い資料といったって、ことしの資料だから、古くないですよ。春は、あなた、古くないです。去年の資料だって古くないです。それはきょうお答えがいただけるかどうか。そんなことを答えられないことはないでしょう。古くないですよ。それはすぐ調べて、いま直ちに御答弁がなくてもいいから、私の質問が終わるまでに御答弁くださいよ。どうですか。
  169. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 なるべく御要望に沿うようにいたします。
  170. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは、続いて次の問題に入ります。  総理大臣おわかりのように、軍事協力はこういう形で進んでいるのです。もう一つ軍事協力の例をあげます。ことしの一月三十一日、防衛庁統合幕僚部海将補伍賀という人がいるはずだ、伍賀海将補、市来一等陸佐その他合計四名の自衛隊の幹部は、自衛隊の飛行機に搭乗して、当時沖繩で行なわれておりましたクイック・リリースの作戦に参加している事実がある。これは海外派兵の第一歩だと思うが、どうですか。
  171. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 岡田委員もよく御存じのとおり、一月二十五日から二月二十六日まで行なわれましたいわゆるクイック・リリースに対しまして、わがほうといたしましては見学をいたしたわけでございます。四名だけわずか五日間滞在いたしまして、見学いたしました。最近報告を受けたわけでありまして、海外派兵でもなければ何でもございません。
  172. 岡田春夫

    ○岡田委員 見学という名目は、どういうことで名目が明らかになるのですか。あなたは、この点は閣議で了承をとっておりますね。池田総理大臣も御存じのはずですよ。閣議で自衛隊の幹部を自衛隊の飛行機でクイック・リリースに参加させるということを承認しているはずだ。参加しているじゃないか。参加しているのを認めたじゃないか。総理大臣どうですか、そういう事実がありましょうが。
  173. 池田勇人

    ○池田国務大臣 自衛隊の職員が、沖繩のみならず、アメリカ等にも見学にたびたび行っております。
  174. 岡田春夫

    ○岡田委員 見学ではない——これは見学であるかどうかは私は見たわけでないからわからないけれども、クィック・リリースの作戦に参加しているのは事実です。作戦に参加しているのは、福田防衛庁長官が答えたとおりです。その参加した内容が、見学であるかどうかは別問題です。明らかにこれは参加しているのじゃありませんか。しかもこれはパスポートでも持って行っているのですか、どうなんですか。
  175. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 わずか四名の者が数日間現地を見学したことが参加になるということは、私はどうも考えられない次第であります。
  176. 岡田春夫

    ○岡田委員 クイック・リリースだけではないのですよ。総理大臣が先ほどおっしゃったとおりに、あらゆる演習に日本の自衛隊の幹部が参加しているのですよ。アメリカにもね、そういう形で参加している。これは、ですから海外派兵の第一歩になる。そういう形で既成事実をつくっていくのです。既成事実をつくりつつ海外派兵の道を開いていくのです。どういうパスポートをお持ちになりましたか。
  177. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 総理府内にあります特連事務局からパスポートを正式にとって、見学に行っております。
  178. 岡田春夫

    ○岡田委員 私は次の問題に進んでまいりますが、こういう幾つかの一連の事実を私はあげました。LSTの問題、南ベトナムの軍用機の問題、クイック・リリースの問題、まだほかにもありますけれども、きょうはよしておきます。防衛大学の内部の問題があるでしょう。私はもう一つ言いましょうか。防衛大学の内部の問題。防衛大学にタイ国バンコックから、タイ国の軍人がいま来ているでしょう、どうですか。
  179. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 これは岡田委員よく御存じと思いますが、自衛隊法第百条の二の規定によりまして、昭和三十三年から昭和三十五年までタイ国人二名を防衛大学で委託教育いたしております。なお、もう一つの例は、同じく昭和三十三年と記憶いたしますが、フィリピンの空軍関係、たしか六名と記憶いたしておりますが、これも委託教育をいたしております。これは第百条の二の規定による正式の委託教育であります。
  180. 岡田春夫

    ○岡田委員 稲川さんに伺いますが、その法律の第百条の二は、いま国会に提出しているのですよ。まだ成立していないのですよ。成立していないのにやっているじゃありませんか。あなたは事実を認めているじゃないですか。入ったことは事実でしょう。百条の二は、改正案を出しているのであって、まだ成立していないでしょう。
  181. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 すでに制定されたものに入っております。なお、こまかい法制的の面につきましては、政府委員から答弁させます。
  182. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 参事官より答弁をいたさせます。麻生参事官。
  183. 麻生茂

    ○麻生政府委員 お答えいたします。  今回提案しております、自衛隊の学校におきまして外国人の訓練を委託を受けて行ないますのは、いままでやっておるのではまかない切れない分を追加しようという趣旨でございます。先ほど大臣から御答弁申し上げました、防衛大学校で外国人の委託教育をやることにつきましては、もうすでに法律で規定されておるわけでございます。なお、先ほど防衛大学校以外に賠償にいたします飛行機の操縦訓練についての規定がありましたが、これは一般的に、技術的な教育につきましては自衛隊の学校で行なえるようにすでに規定がなっておりますので、その規定に基づいてやったものでございまして、別に法律の規定がないのにやったというわけではないわけでございます。
  184. 岡田春夫

    ○岡田委員 ここに法律案がありますが、いま国会に出されている法律案で防衛大学に入るということになるのですよ。ところが、あなたはいままでの規定では入り切れないからというのは、新規に増員されるのですか。タイ国だけでなく、どこかほかの国からも入れるというお考えなんですか。その点伺っておきたいと思います。
  185. 麻生茂

    ○麻生政府委員 お答えいたします。  成文でお答えいたしたほうがはっきりいたしますので、現在防衛庁設置法の第三十三条の第三項に「防衛大学校は、自衛隊法第百条の二の規定により長官が第一項に規定する者に準ずる外国人の教育訓練を受託した場合においては、当該教育訓練を実施する。」こう明文があるわけでございまして、この規定に基づいてやっておるわけでございます、それから百条の二につきましては、現在教育訓練を技術的な訓練に限定しておるわけでございます。今回の改正は、先ほど大臣から御答弁いたしましたタイ国から入学しておりますのが、陸上自衛隊の幹部候補生学校で訓練を受けておるわけであります。幹部候補生学校の訓練は技術的教育とは必ずしも言いがたいので、今回追加いたしまして国会の御承認を得よう、こういう趣旨のものでございます。
  186. 岡田春夫

    ○岡田委員 私は、それでは了解できないのです。それはあなたのほうで御提出になっている法律案の改正の要綱の中に、「自衛隊の学校において外国人について教育訓練を実施することの委託を受けることができることとすること。」というのがございますね。これは防衛大学校なんです。幹部学校ならね、防衛大学は幹部の学校でないのですか。あれは兵隊の学校ですか。防衛大学は幹部の学校ですよ。そういう意味で、これは防衛大学の場合でしょう。新規に防衛大学にまだ追加して入れるという意味で、こういう法律をお出しになっているわけでしょう。
  187. 麻生茂

    ○麻生政府委員 お答えいたします。  先ほど申しましたように、防衛大学校につきましては、もうすでに規定があるわけでございます。それから今回追加しますのは、幹部候補生学校でございます。ちょうど防衛大学校を卒業いたしまして約一年間近くそこで教育を受けまして、そうして初めて昔の将校、幹部になるわけでございますが、その学校に入れて教育訓練をすることを受託しよう、こういうわけでございます。
  188. 岡田春夫

    ○岡田委員 こればかりやっているとほかの質問を私はやれませんから、続けてまいりますが、ただいまの答弁では私はまだまだ了解できない。防衛大学並びに幹部学校に、タイ国以外の国々からも留学生をスカウトしておる。私はもっと事実を明らかにしてもいいんですが、ともかくも以上の事実から、これは本論から離れているからもとへ戻るのですが、南ベトナムを中心とするインドシナ地域に対して、日本の国が直接、間接に軍事協力をやっているのは、いまの事実を見ても明らかです。これが安保体制なんですよ。こういう安保体制に基づいて日本が以上のような軍事協力をやっているのは、私はやめるべきだと思いますが、総理大臣どうですか。
  189. 池田勇人

    ○池田国務大臣 わが国と交際しておる国の軍用機がこちらに来ること、これを軍事協力ということはいかがかと思います。ちょうどいまの沖繩での演習に対して見学しておるのを、作戦行動に参加しているというふうな議論と同じことで、少し行き過ぎた議論と私は考えます。
  190. 岡田春夫

    ○岡田委員 総理大臣の御答弁では、私は満足いたしません。これは国民の常識としてから、いま幾つか私の並べました事実は、明らかに今日南ベトナムにおいては緊張した戦争状態が続いているのですから、それに対して日本の国が軍事協力をやっているというのは、だれが見ても明らかであります。私はそういうような答弁では了解をいたしません。こういう点について、もう一度伺っておきたいと思います。
  191. 池田勇人

    ○池田国務大臣 先ほど申し上げたとおりでございます。ベトナムにおきまするのは、戦争とは認めておりません。内乱と私は認めておるのであります。決して、日本がそういうものに対して戦争行為に参加しておるとか、これを援助しておるとか言うべきではないと思います。
  192. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは続いて第二の問題に入ってまいりたいと思います。  私の第二の質問は、中国問題です。特に日中関係について、政府の御意見を伺いたいと思う。中仏間の国交回復が行なわれましてから、中国問題が世界の関心の的となっておりますが、これは言うまでもないことだが、この点で最も重要な点は、第一点、一つの中国か、二つの中国か、またはその変種である、民社党なんかがよく言うのですが、一つの中国、一つの台湾。この一つの中国か、二つの中国か、その変種か、この問題が非常に重要な点の一つである。第二の点は、一つの中国であるとするならば、台湾を含めた全中国を代表する唯一、正統な合法政府というものが、中華人民共和国政府であるか、台湾のいわゆる中華民国政府であるかという点が、第二の重要な点です。私はこういう点で質問を進めてまいりますが、そのために、私は、日中問題でいままで国会で政府が答弁をされた点について、一応整理をしておく必要があると思う。そこでこの整理に基づいて総理大臣並びに外務大臣に確認をいたしてまいりたいのでございますが、この間の予算委員会その他、たとえば今澄質問、横路質問その他におきまして、総理大臣はこのように答弁をいたされております。これは速記録もここにございますので、それに基づいて私は読んでまいります。総理大臣、これは今澄質問に対する答弁です。二つの中国または一つの中国、一つの台湾はあり得ない。日本政府は、そういうことは言も言ったことがないし、考えてもいない。それから横路質問に答えて、民社党などの言う一つの中国、一つの台湾などは念仏であるとまで言われた。そして、日本政府の態度としては、中国は一つであると答弁をされておりますが、これは間違いございませんか。
  193. 池田勇人

    ○池田国務大臣 間違いはございません。たびたび言っておることでございます。
  194. 岡田春夫

    ○岡田委員 その次。総理大臣は、台湾の帰属についても再三答弁をされております。その答弁は、帰属未確定という立場に立っておられます。たとえば、一月三十日の横路質問に答えて、「カイロあるいはポツダム宣言においては中国に入れるということに一応の話はなっておりますが、日本との平和条約で、日本は放棄したということだけで、どこに帰属するともきまっていないのが実情でございます。」このように御答弁になっておられます。以上の論拠に立って、台湾の帰属は条約上未確定であるという見解が、政府の見解でございますが、これは間違いございませんか。
  195. 池田勇人

    ○池田国務大臣 日本は放棄しただけでございます、連合国に対しまして。したがって、これを客観的に、連合国が確定しておりませんから、未確定と言い得ましょう。日本は放棄しただけ、これが法律上の日本の立場でございます。
  196. 岡田春夫

    ○岡田委員 放棄したということは、それは、台湾は日本にあった、いわゆる盗取した、清国から盗取した地域なんです。台湾は盗取、盗み取った、とカイロ宣言にあるのです。これはカイロ宣言にあるから、「盗取した」ということばを使ってあるので、盗み取った地域になっている。その日本が盗み取った台湾、澎湖島の権利権原一切を放棄したわけです。したがって、現在は台湾の帰属は未確定であるということは、先ほど横路質問に対しても、どこに帰属するともきまっていないのが実情である、こう総理大臣は答えておられるのだから、そういうわけでございましょう。
  197. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私は、日本人といたしまして、台湾を盗み取ったということは絶対に考えておりません。れっきとした下関条約によって、法律上、国際上、当然に日本のものになったのでございます。私は盗取したということは認めません。平和条約で日本は台湾と澎湖島を放棄したということは、事実でございます。
  198. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは池田総理大臣は、カイロ宣言にある「盗取した」ということばをお認めにならないというのですか。カイロ宣言並びにポツダム宣言に基づいて、降伏文書について日本は受諾したのでしょう。カイロ宣言を認めないのですか、あなたは。
  199. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私は、カイロ宣言、それからきたポツダム宣言の趣旨は認めますけれども、ことば全部を認めたわけではございません。
  200. 岡田春夫

    ○岡田委員 降伏文書には、カイロ宣言そのものを受諾したのですよ。趣旨ではないのですよ。カイロ宣言それ自体です。あなた、そんなこと言っちゃだめですよ。
  201. 池田勇人

    ○池田国務大臣 ポツダム宣言の趣旨を受諾したのでございます。
  202. 岡田春夫

    ○岡田委員 あなたは降伏文書をお読みになったことがございましょうか。降伏文書には「下名ハ茲ニ「ポツダム」宣言ノ條項ヲ誠実ニ履行スル」こう書いてあるじゃないですか。「条項ヲ誠実ニ履行スル」、それは趣旨ではないですよ。条項はなんです。文章そのものです。あなた、そんなこと言っちゃだめです。
  203. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私は、ポツダム宣言の趣旨、条項を忠実に受諾するということは、その精神を——ポツダム宣言の考えていることを言っておるのでございまして、日本人として一々盗み取ったということを認めたわけではございません。
  204. 岡田春夫

    ○岡田委員 その問題だけでこだわって本論に入れないでは困るが、カイロ宣言には盗取したということを書いてある事実は御存じでしょう。カイロ宣言には書いてあるでしょう。ないですか。
  205. 池田勇人

    ○池田国務大臣 カイロ宣言にそういう字句のあることは知っております。しかし、われわれは、あれを盗取したという前提でおるのではありません。ポツダム宣言の趣旨をわれわれは忠実に守るということを言っているのであります。
  206. 岡田春夫

    ○岡田委員 これは何度言ってもきりがない。ポツダム宣言の趣旨を忠実に履行するとは書いてない。降伏文書には、「「ポツダム」宣言ノ条項ヲ誠実ニ履行スル」と書いてある。趣旨ではないのです。条項そのものです。これはいつまで意見を言い合ってもしようがありませんが、続いてそれは外務大臣に伺います。   〔発言する者あり〕
  207. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 自由民主党のほうはうるさい。静かにしてください。   〔発言する者あり〕
  208. 岡田春夫

    ○岡田委員 委員長、注意してください。
  209. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 自由民主党は御静粛に願います。
  210. 岡田春夫

    ○岡田委員 外務大臣は、台湾の帰属未確定をさらに裏づけるために、日華平和条約において、これは二月十二日の参議院の予算委員会で、戸叶武委員質問に答えて、このように答えている。これは速記録をそのまま読んだほうが——いまの総理大臣のようにあいまいなことを言うから、速記録をそのまま読みます。大平外務大臣は「日華平和条約の適用される地域は、仰せのように、中華民国政府現実に支配する地域に限る意味でございます。台湾につきましても、中国大陸につきましても、本件交換公文は中華民国の領土権の問題には全然無関係のたてまえをとっております。」というように答え、また、そのほかにもあります。これは同じく戸叶質問に答えて、「これらの地域に領土権を有することを意味するものでないことは明らかであります。」政府がこういうように戸叶委員に対して答えております。これは事実ですね。
  211. 大平正芳

    大平国務大臣 そのとおりでございます。
  212. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは私、少し意見をまじえながら申し上げてまいりたいと思いますが、いまの政府の答弁が確認をされましたので、われわれ社会党の見解と対比してこの事実を明らかにしてみたい。  われわれ社会党は、まず第一に、一つの中国の立場を堅持する。この点は、池田総理大臣の一つの中国論と同じ立場であります。  第二は、われわれ社会党は、台湾、澎湖島は、中国の不可分の領土の一部である。この点については、政府の意見と違っております。この点については、政府は、台湾、澎湖島の帰属は未確定である、領土を明確にしたものでない。いま大平さんも言ったとおりである。  第三、社会党の見解は、台湾を含めた全中国とその人民を代表する唯一、正統の合法政府は、中華人民共和国政府であると規定しております。あなた方政府は、中国の正統政府として中華民国政府は、国民政府であるという見解、こういう点で違っております。  第四点。いわゆる日華平和条約、カッコつきなんです。「日華平和条約」は、われわれ社会党としては、唯一、正統の合法政府ではない蒋介石の一派と結ばれたものであるから、これは無効である。したがって、直ちに破棄すべきである。これがわれわれ社会党の態度である。ところが、あなた方政府並びに自民党の考えは、この点政府は、日華平和条約は有効であるという観点に立っている。この点が違う。  この四つの点は非常に重要ですから、これは外務大臣に伺っておきたいのですが、わが社会党と自民党、あるいは政府でもけっこうですが、こういう点で意見の相違が明確にあるということは、外務大臣もお認めになりましょう。いかがです。
  213. 大平正芳

    大平国務大臣 遺憾ながら、御指摘のように意見の相違があるということを承知しています。
  214. 岡田春夫

    ○岡田委員 遺憾であるかどうかは主観の問題であるから、それは別問題です。違うという事実。  そこで私は、外務大臣に伺ってまいりたいのですが、昨日の新聞報道に、政府は中国問題について統一見解をまとめたというが、その中で、ことしの秋の国連総会には、中国問題について、日本の代表は重要事項方式をとることにきめたと伝えられておりますが、そういうことがございますか。そういう事実があるなら、その理由は、どういう点にどういう理由があるのですか。
  215. 大平正芳

    大平国務大臣 第一に、政府が統一見解をきめたという事実はございません。第二に、重要事項指定方式を踏襲するという国連対策をきめたこともございません。
  216. 岡田春夫

    ○岡田委員 統一見解ということばが不十分であるならば、政府の意思統一を外務省が中心になって総理官邸できめた、こういう事実がございますね。
  217. 大平正芳

    大平国務大臣 総理官邸で行なわれたことは、この国会におきまして私どもが行ないました答弁を総理に御報告しただけでございます。政府の統一見解、あるいは政府の意思統一という大げさなものではございませんで、いまの段階におきまして、外務委員会等におきまして私はこのように答えましたという答弁の要領を御報告申し上げただけです。
  218. 岡田春夫

    ○岡田委員 その場合に、ことしの秋の国連総会で中国問題に対しては重要事項指定方式をとるということを日本政府の態度とするということがきめられたと伝えられておりますが、これはどうですか。
  219. 大平正芳

    大平国務大臣 それは先ほど私が否定いたしましたように、そういう事実はございません。本委員会におきましても、外務委員会でも、たびたび私が申し上げておりますとおり、来たるべき国連総会に対するわが国の国連対策というものをきめるには、まだ時期尚早でございまするし、十分の材料をまだ用意できない状態でございます。これは岡田さんもよく御承知のとおりだと思います。
  220. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは、現在はまだその態度はきまっておらないと解釈してよろしゅうございますか。
  221. 池田勇人

    ○池田国務大臣 政府の意思統一というようなお話でございますが、政府の意思統一は閣議できめますから、これは閣僚全部で重要問題を相談していく。えてして各省の考え方とかあるいは研究が政府のものと思われるようでございますが、誤解のないように。私の主宰する池田内閣の全閣僚で政府の方針をきめるということを、はっきり申し上げておきます。
  222. 岡田春夫

    ○岡田委員 答弁が漏れております。それじゃ、重要事項指定方式その他国連総会の問題については——総理大臣がお答えなさい、総理大臣がわざわざ買っておいでになったのだから。国連総会で日本政府の態度はきまっているのですか。
  223. 池田勇人

    ○池田国務大臣 それは外務大臣が答えたとおりでございます。
  224. 岡田春夫

    ○岡田委員 きまっていないのでございますか。
  225. 池田勇人

    ○池田国務大臣 もうたびたびここでも申し上げますように、非常に流動性のあることであるし、そうしてまた、フランスもああいうふうにしておりますし、またブラザビルの動向もわかりませんし、まだまだ先のことで、しかも重要問題でございますから、慎重に検討しなければならぬということは、たびたび言っておることでございます。あれだけ御勉強なさっておれば、言わなくてもおわかりと思います。
  226. 岡田春夫

    ○岡田委員 先ほど新聞に出ていることさえしらをお切りになる総理大臣ですから、私だってそういうことはひとつ念を押しておかなければなりません。総理大臣、念には念を入れてということばもございますから、十分御注意ください。  外務大臣、中華人民共和国政府が、国連において新規加盟をするというような場合もあり得るのかどうか。
  227. 大平正芳

    大平国務大臣 そういうことはまだわかりません。
  228. 岡田春夫

    ○岡田委員 わかりませんということは、そういう措置をとるという場合もあるわけですか。そこの点、重要な点なんですが、条約局長も心配しておられるようですけれども、そういうこともあり得るのですか。
  229. 大平正芳

    大平国務大臣 これは全く先のことで、どういうようになりますか、予言者でございませんからわかりません。
  230. 岡田春夫

    ○岡田委員 私は、入るかどうかを聞いているのじゃないのです。新規加盟という措置を政府が支持されるという場合があるのかということを聞いている。
  231. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しましたように、国連対策はまだきめていないということでございます。
  232. 岡田春夫

    ○岡田委員 新規加盟ということばになると、非常に重要なんです。そこでもう一点、意思の統一——総理大臣は政府と言ってはいけないそうですから、意思の統一を行なった、こういうことならばいいでしょう。外務大臣は、この間二十五日総理官邸で報告をされた中で、いろいろ意見についての話し合いが出たそうですが、その中で、過日の外務委員会で社会党の穗積七郎君の質問に答えて、大平外務大臣は、中国が国連で正当なメンバ一として祝福されるような事態になれば、国交の正常化を考えなければならないのは当然だという趣旨を答弁されておる。ところが、この、祝福されるような事態、についてという意味、これについて意思統一をしておこうじゃないかということになったそうでありますが、この、祝福されるような事態、とは、具体的にどういうことになったのですか。
  233. 大平正芳

    大平国務大臣 読んで字のごとき状態でございます。
  234. 岡田春夫

    ○岡田委員 これは読んで字のごときでも、わからないから聞いておるのです。なぜならば、新聞においては、祝福されるような事態、というのは、昨年の国連総会でアルバニアの決議案が通るような、あのようなことではなくて、いわゆる国民政府の議席が何らかの形で確保されて、中共——私は中国と言うのだが、政府が中共と言うのだから、中共と言っておきましょう。中共も国連に加盟するというようなことが、祝福されるような事態、である、このようにきまったのだと聞いておりますが、それはどうでございますか。
  235. 大平正芳

    大平国務大臣 すべて未見の問題と申しますか、仮定の問題と申しますか、そういう問題でございまして、祝福されたというものを規定する内容はわからぬわけでございます。したがいまして、私がいま読んで字のごとくと申し上げたのは、祝福された状態、いわばこういう状態を申し上げたにすぎないわけでございます。
  236. 岡田春夫

    ○岡田委員 大平さんの御答弁を聞いておると、この間、あなたはドゴールが神秘的な人だと言ったが、大平さんほど神秘的な人はあまりないですよ。神秘的な発言で、むしろそういう幻想的なことばをお使いになる方なんで、それはそれなりに私は質問を続けていきますが、きわめて幻想的な御答弁、ニュアンスであいまいにされるという点は、今後国会審議の上に有害でございますので、御注意を願いたい。  そこで次に、総理大臣に伺います。先ほど大平外務大臣も明確にされましたが、台湾の帰属は未確定である。というのは、条約上そういうふうになっている。あなたもそういう趣旨で答弁をされておる。ところが、私は、この台湾の帰属未確定論ほど危険なものはないと思っております。これが二つの中国に通ずる法的な基礎なんです。これが、かつてのダレスの陰謀なんです。ここに二つの中国論の法的な基礎がある。そういう意味で、台湾の帰属未確定論というものは、私は絶対に承服できない。だから、われわれ社会党は、先ほど申し上げたように、台湾は中国の不可分な領土の一部であるという観点をとっている。あなたのほうは一つの中国論という立場をおとりになるが、実際には台湾の帰属未確定という形で、二つの中国論的態度をおとりになろうとしている。ここに問題がある。そこで伺いますが、台湾の帰属が未確定で、法律的には中国の領土ではないと大平外務大臣は言いましたね。とおっしゃるなら蒋介石のいわゆる中華民国政府というものは、具体的にどこを代表しておるのですか。中国大陸を代表しておるのですか。
  237. 池田勇人

    ○池田国務大臣 現に台湾政府の支配している国、土地は、台湾あるいは澎湖島、金門、馬祖でございます。しかし、中国本土に全然ないというわけでもございません。われわれは中華民国、いわゆる蒋介石政権、中華民国と戦い、そうして中華民国と戦争を終結し、そうして賠償も放棄さした、こういうことであるのであります。したがいまして、あなた方のように、安保条約も認めない、平和条約も反対だ、日華条約もこれは破棄しろと——まあ破棄しろと言うのは、認めているから破棄しろと言うんでしょうが、そういう考え方では、どうもなかなか話が合わないわけです。私は、既存の条約を尊重しながら、今後いかにこういう問題をアジアの重要問題として、世界の大問題として考えていこうかとやっているのであります。
  238. 岡田春夫

    ○岡田委員 総理大臣、そういう言い方をしてはだめですよ。われわれ認めていないのですよ。政府が認めているから破棄しろと言っているのですよ。われわれは認めていないのですよ。しかし、あなたは先ほどからちょっとあいまいな御答弁ですが、それでは蒋介石のいわゆる国民政府というのは、どこを代表しているのですか。台湾ですか、中国大陸ですか。中国大陸にも一部あるなどという御答弁ですが、どこなんですか。
  239. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私は、中国を代表しておると思います。ただ、現に施政権が北京や上海に及んでいないということだけでございます。
  240. 岡田春夫

    ○岡田委員 その中国とは、どういう地域でございますか。
  241. 池田勇人

    ○池田国務大臣 昔の中華民国のやっておったあの中国をさしておるのであります。ただ、現に施政権が及んでいるか及んでいないかという事実問題につきましては、及んでいないと認めておりますが、われわれはあくまで大束亜戦争のあの中華民国との戦争は、中国を代表しておるものとやっておるのであります。
  242. 岡田春夫

    ○岡田委員 では、はっきりさしておきますが、かつての中国を支配しておったところということになりますと、中国大陸を代表している。台湾は帰属未確定だが、台湾は入っていない、こういうことでございますね。
  243. 池田勇人

    ○池田国務大臣 大陸を含めた中国を代表しております。しこうして、台湾は、平和条約の面から申しますると、当然の中国の領土ではないが、一応のいわゆるカイロ、ポツダム宣言の趣旨は、われわれも認めておるのであります。しかし、法律的には、日本から申しますと、中国の領土ではない、こう考えます。
  244. 岡田春夫

    ○岡田委員 いや、法律的な点を私伺っているんです。したがって、それでは、いわゆる中華民国政府というものは、台湾は中国領土ではない、中国大陸を代表しているんだ、昔の中国ですからね、そういうことになりますね。それでは総理大臣、もう一つ伺います。  現在、日本と中国、あなたのおっしゃった中国、観念的に昔あった中国、そういう中国を含めて結ばれている条約というものは、幾つかこまかい条約はありますが、基本条約は、いわゆる日華条約しかないわけですね。このいわゆる日華平和条約並びにサンフランシスコ条約によって、台湾の帰属、領土権が確定されておらない。それでは、中国大陸の帰属は確定されておりますか、どうですか。
  245. 池田勇人

    ○池田国務大臣 われわれは、蒋介石政権が一応中国を代表するものとして平和条約を結んで、戦争を終結した。現に、先ほど申し上げましたように、金門、馬祖は大陸に属するでしょうが、大陸のほとんどの部分は施政権が及んでいないということも、事実として認めておるのであります。
  246. 岡田春夫

    ○岡田委員 施政権が及んでいないという事実をお認めになった。しかも、大平外務大臣は戸叶質問に答えて、いわゆる日華平和条約の交換公文では、台湾についても、中国大陸についても、領土権の問題については触れていない。すなわち、法的には、台湾にも、中国大陸にも、いわゆる中華民国の領土権は——いわゆる日華平和条約においては領土権の確定がない。とするならば、総理大臣の施政演説の中で、あなたはこうおっしゃいました。中華人民共和国政権が——これは中共政権と言われた。「広大な国土に六億余の民を擁しておることは厳然たる事実であり、」これは事実問題、先ほども言われたとおり。そうすると、現実には、中華人民共和国政府が中国を支配しているということは明らかである。しかも、先ほど大平外務大臣の言っているとおりに、法的にも中国大陸は、いわゆる中華民国政府の帰属にないという、この事実も明らかであります。それでは蒋介石のいわゆる中華民国政府の領土は、一体この地上のどこにあるか。台湾にもないし、大陸にもなかったら、どこにあるのか。宇宙の他の星の中にあるのか。地上にないのだったら、どこにあるのですか。あなたのおっしゃるのは、これこそ蒋介石のいわゆる政権というのは、砂上の楼閣か、あるいは宇宙人の政府か、どっちかでなければならぬ、地上に領土がないんだから。一体どこにあるのですか。
  247. 池田勇人

    ○池田国務大臣 先ほど来申し上げましたごとく、蒋政権が中国大陸を支配しておるときに戦争を始めました。そうしてその支配しておった蒋政権と平和条約を結んだのであります。たまたま、ただいまの状態において、金門、馬祖以外に施政権がないということは事実でございますが、法律的にはわれわれはいまの中共政権を認めておりませんので、観念上は中国を支配しておった蒋政権と条約を結ぶことが、あの当時から一番法律上至当なものだと考え、現実の問題は、これからいかに処理するかということを考えていこうというのであります。
  248. 岡田春夫

    ○岡田委員 いや、現実に今後いかに処理するかということは、われわれのこれからいろいろ伺う問題です。実際の現実のいまの状態ですよ。あなたの御答弁を聞いておると、蒋介石のいわゆる政府の領土というものは、金門、馬祖しかないということになる。それ以外にどこにあるのですか。現実にも法的にもないじゃありませんか。
  249. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私は、領土という問題を言っておるのじゃございませんよ。中国を代表するものは蒋政権だ、こう言っておるわけです。そうしてその領土は、中国を代表するものが中国大陸を持っておったが、現実の問題として、それには別の政権が出ておるということであるのであります。したがいまして、台湾政府というものは、しいていえば、昔の状態からいけば、金門、馬祖にはまだあるということであります。観念上の問題であります。
  250. 岡田春夫

    ○岡田委員 しいておっしゃらなくとも、現実には——昔はあったのです。それは私だって認めますよ。昔はあったのだけれども、現在は、いわゆる蒋介石政権の領土はどこにあるかということを、私は聞いておるのですよ。
  251. 池田勇人

    ○池田国務大臣 領土という問題を言っておるのじゃございません。それは、領土というものは、私は蒋介石政権が従来持っておったものが、観念上の領土であると思う。しかし、現実の問題としては、中共政権が出ておる。それなら、中共政権の領土はどこかということになりますと、中共政権は台湾までもそうだと言っておるし、蒋政権は本土までもそうだと言っておるのであります。だから、領土がどうだということではない。政権の問題、政府の問題を言っておるのであります。
  252. 岡田春夫

    ○岡田委員 総理大臣は政権の問題をお答えになっておるのですが、私は領土の問題を聞いておる。領土はどこですかと、さっきから聞いておる。だから、昔の領土はあなたのおっしゃるとおりです。現在のいわゆる蒋介石政権の領土はどこかと聞いておるのです。どうなんです。
  253. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私は、領土という問題になれば、中華民国政府が観念上中国大陸も持っておるものと解釈いたします。
  254. 岡田春夫

    ○岡田委員 それは観念でしょう。現実にはどうなんですかと伺っておる。
  255. 池田勇人

    ○池田国務大臣 現実には、北京政府が支配しておるのであります。それを北京政府の領土とは、私はまだ認めておりません。こういう問題は、今後アジアの問題として考えていくべきであります。
  256. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃその点はあとで伺います。  それでは、台湾、澎湖島について、領土は帰属未確定だとおっしゃいますけれども、アメリカは、台湾、澎湖島は中華民国の領土であると確定しております。池田さんは首をひねっておいでになりますが、条約を御説明申し上げます。それは米華相互防衛条約の第六条、ここにこう書いてあります。第六条に、「第二条及び第五条の規定の適用上、領土及び領域とは、中華民国については、台湾、澎湖諸島をいう。アメリカ合衆国については、その管轄権下にある西太平洋の属領諸島をいう」となっている。いわゆる中華民国の領土は台湾、澎湖島だとある。台湾帰属未確定と違うじゃありませんか、どうですか。
  257. 池田勇人

    ○池田国務大臣 米華条約につきましては、専門的なあれでございますから、条約局長より答えさせます。
  258. 中川融

    ○中川政府委員 お答え申し上げます。  米華相互防衛条約、領土及び領域とは何々という規定があるわけでございますが、これは領土及び領域というような字句を使っておることから見ましても、主権のある領土ということ、あるいは主権のある地域ということを予想しているわけじゃないのでありまして、現実のコントロールにある地域という意味であるのでございまして、これは、この条約がアメリカの上院で批准されます際に、上院のほうの意思表明がはっきりしておるのであります。附帯決議さえついておるのでございまして、この条約によって、何ら台湾、澎湖島の領土権について規定したものではないと了解する、こういうはっきりした了解事項がついておるのであります。
  259. 岡田春夫

    ○岡田委員 付帯条項については、私も知っております。しかし、ただ条約上の解釈からいって、主権のある領土と主権のない領土と、そんなのはあるのですか。そんなものは、私はあまり聞いたことがないのですが。領土というもの、あるいは領域というものは、本来主権なり支配権というものがあることなんですよ。主権が及ばない、支配権が及ばない領土、領域というものは、あり得ないじゃありませんか。——林さん、ちょっとお待ちなさいよ。林さんに聞いているんじゃないのです。条約局長に聞いているんです。条約局長の御答弁を私は伺っておるのですから……。
  260. 中川融

    ○中川政府委員 領土という場合には、もちろん通例主権のある場合を当然の予想としておるわけでございますが、この米華条約では、岡田先生御指摘になりましたとおり、領土及び領域という、わざわざ領域という字句も使っておるのでございまして、領域という字句を使う際には、むしろ主権云云の問題を離れて、現実に支配するところ、こういう意味も含めてわざわざ領域という字句を使っておるわけでございまして、この米華条約については、決して主権というものを前提とした規定ではない、かように解釈するのが自然ではなかろうかと思います。
  261. 岡田春夫

    ○岡田委員 もう一度条約局長に伺っておきますが、それじゃ領域と領土とは違うのですね。あなたの御答弁では、領土の場合には主権の行使を伴うが、領域の場合には主権の行使は伴わないかのごとき——あえて、ごときと言いますが、御答弁でありますが、領域というのは領土、領海、領空を含むものを領域だと思っておるのですが、その解釈ではないのでございますか。あまり私も条約局長に法律問答ばかりいたしませんけれども、どうですか。
  262. 中川融

    ○中川政府委員 お答えいたします。  領土、領域ということばの使い方は、条約に出た場合のことでございますが、必ずしも一定しておりません。いろいろの字句に使っております。現に日華平和条約で、この条約の適用地域はどこどこというあの付属の交換公文は、日本語では領域でございますが、漢文では領土という字句を使っておるのでございまして、こういう使い方はいろいろまちまちでございます。要するに、その条約の趣旨からこれは判断すべきものであると考えるのでございまして、必ずしも一つの字句だから一つの意味だということは言えないと思う次第でございます。
  263. 岡田春夫

    ○岡田委員 条約局長、先にかぶとをお脱ぎになったようですね。かぶとは先にお脱ぎにならなくても、いずれ脱がしてあげますから、ちょっとお待ちください。  それよりも、総理大臣に伺います。条約問答ばかりで退屈でしょうから、総理大臣に伺いますが、それでは台湾の領土が未確定であるとするならば、総理大臣に伺いたいのは、終戦以来、特にサンフランシスコ条約の発効以来、いわゆる中華民国政府が台湾を支配しておるというのは、法的に何と説明しますか。不法占拠以外に説明ができないじゃありませんか。不法占拠でしょう、法律上。
  264. 池田勇人

    ○池田国務大臣 日本が放棄してまだ帰属はきまっていない。しかし、カイロあるいは。ポツダム宣言によりまして、将来は中華民国の領土になるべきものだというふうな一応の観念は、あったかもわかりません。しかし、そういう中華民国に帰るべきだというふうな気持ちはありましたでしょうが、法律的には帰っていない、こういうことでございます。だから、これは不法占拠と申しますか、私は未確定の問題で、一応観念上あそこを支配しておるぞと、こう考えております。
  265. 岡田春夫

    ○岡田委員 前段の御答弁は、ちょっとあとに置きます。それよりも後段は、その地域は未確定なんでしょう。そこに台湾政府がおるということですね。それは台湾の本来の領土でないところにいたのですから、これは不法なる占拠でしょう。法律的にはそう解釈せざるを得ないではありませんか。どうですか。
  266. 池田勇人

    ○池田国務大臣 それは、法律上は、先ほど申し上げたとおりでございますが、カイロ、ポツダム宣言等がございまして、国際通念的には、これを不法にやっておるということに断定するわけにもいきますまい。これがいまの困る、アジアにおいて解決しなければならないむずかしい問題だと、私は言っておるのであります。
  267. 岡田春夫

    ○岡田委員 国際通念はいいです。日本政府の見解はどうです、法律上の。
  268. 池田勇人

    ○池田国務大臣 法律的には、中華民国の領土ではない。しかし、施政は現実にしておると考えます。
  269. 岡田春夫

    ○岡田委員 だから、現実に施政というものをやっておる政府というものは、領土が未確定なら、占拠しておるのは不法ではありませんか。どうですか。
  270. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私は、不法占拠とまで言う必要はないと思います。カイロ、ポツダム宣言から、あるいは世界の人が、一応これを、大陸を支配していないのに国連の代表として取り扱っておるときに、これは占拠しておるとは言えません。施政をしておるとは言えましょうが、不法ということをつけ加えることは、国際通念ではないと思います。
  271. 岡田春夫

    ○岡田委員 国際通念の問題ではないのです。法律解釈の問題です。法律解釈の問題では、総理大臣、あなたは法に沿わない措置を行なっておるでしょう。法に沿っていますか。法に沿わないならば、不法ではありませんか。
  272. 池田勇人

    ○池田国務大臣 日本が放棄したものをカイロ、ポツダム宣言等によって中華民国に返すべかりしものという観念がありますので、私は、不法というところまでいかずに、一応施政権を行なっておる。これは、いまの違法かどうかという問題が、不法かどうかという問題がありますが、これは通念上、みな世界が認めておるのではございますまいか。認めていないのは、一部の国と思います。
  273. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃ法律的に認めておるという立場をおとりになるのですか。
  274. 池田勇人

    ○池田国務大臣 領土権を認めておると言っておるのではございません。施政をしておるということを認めておるのであります。
  275. 岡田春夫

    ○岡田委員 それならなおさらうまくないですよ。総理大臣、領土でないところで施政を認めておるなら、領土権のないところにおるのだから、法律上違法ですよ。そうでしょう。そういうことをおっしゃるから、かえってわからなくなるのですよ。
  276. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これは、第二次大戦後のまだ結末のつかないところで、法律的にどうこう割り切るべき問題ではございません。そうすると、われわれは北のほうを向かっていえば、日本の固有の領土があるのをやっておる。この現実がこういうように合わない。法律と現実が合っていないところに、われわれのいわゆる悩みがあるわけでございます。それを解決しようということでございます。
  277. 岡田春夫

    ○岡田委員 私は、これから言う意見について、賛成ではないのですが、総理大臣、政府側の見解を例にあげて申し上げます。北のほうの地域、千島のことを言っておるのでしょう。千島は、領土権がないのにソビエトが不法占拠しておると、政府が言ったじゃないですか。台湾については、領土権がないのに、不法占拠とは言えないというのですか。これは一体どうなんですか。
  278. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これは全然違います。台湾は、われわれ固有の領土ではないのでございます。しかし、択捉、国後は固有の領土です。そこが違います。そこをはっきりしてもらわなければなりません。
  279. 岡田春夫

    ○岡田委員 固有の領土問題以前です。サンフランシスコ条約の中で、権利権原その他一切を放棄しておるという点では同じでしょう。だから、同じことではありませんか。
  280. 池田勇人

    ○池田国務大臣 そういうことをおっしゃるから、私は一昨年も本会議で言っておるのであります。いまの樺太と千島の交換の問題のときも、あの交換は択捉、国後は入っていないのでございます。そうして、われわれはサンフランシスコ講和条約におきましても、これは留保しておるのであります。千島とはそういうものではない、中千島、北千島だとはっきり言っている。だから、台湾のように下関条約によってわれわれが譲与を受けた土地とは違う。それをお考えにならぬと私は誤りだと思います。だから、択捉、国後の問題と台湾の問題とは全然違うことを御了承願います。
  281. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃもう一歩進めます。それでは国際通念上台湾をいわゆる中華民国の領域と認めるものではなくて、あなたのおっしゃったのは、将来認めるべきものと、そういう意味に解釈をしているのだ、これが政府の見解である、こういうようにとってよろしゅうございますか。
  282. 池田勇人

    ○池田国務大臣 認めるべき問題と言っておるのじゃございません。経過がこうなっております。将来これは連合国できめるべき問題、ただ経過的には中華民国に属すべきものであるということの一応の合意はできておったが、その後にできたサンフランシスコ講和条約ではそれをきめていない。しかし、いま現に施政しております中華民国のものとして——法律的ではない、領土権の問題ではなく、施政は一応は妥当と申しますか、一時的な便法措置と考えております。
  283. 岡田春夫

    ○岡田委員 ちょっとその点では了解しないのですが、重要な点を御発言になっているので伺いますが、連合国が台湾の帰属を決定するものなのですか。日本政府の見解はそうなのですか。それを伺っておきます。
  284. 池田勇人

    ○池田国務大臣 日本は放棄したのでございますから、その放棄の相手は調印した連合国でございます。
  285. 岡田春夫

    ○岡田委員 しかし、連合国がきめるべきものと先ほど御答弁になりましたね。ですから、そうでございますか、これは重要な点です。
  286. 池田勇人

    ○池田国務大臣 そのとおりでございます。調印した連合国がきめるべきものであります。
  287. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃ、これは蒋介石にも聞こえることなのですが、台湾の帰属は連合国がその帰属をきめるべきものであって、いわゆる中華民国の本来領土ではない、こういうことですね、日本政府の見解は。
  288. 池田勇人

    ○池田国務大臣 法律的にはそのとおりでございます。しかし、政治的の問題は、先ほど申しましたように、中華民国が現に施政をしておるということは忘れることはできますまい。
  289. 岡田春夫

    ○岡田委員 現実の問題は知っております。法律的な問題を明確にしておかなければならない。法律的にはそういう解釈をおとりになっているという点は私は非常に重大だと思う。中国の内部——あなたは観念的にと、お話しになった。先ほど観念的に中国大陸を含めたその地域を代表する。いわゆるチャイナということばも使われた。その中の問題であるというのに、その台湾は法律的には中国の人によってきめられるのではなくて、外国人である連合国によってきめるのだ、こういう解釈をおとりになった。これは非常に重大な問題ですが、もう一度確認しておきます。
  290. 池田勇人

    ○池田国務大臣 当然のことではございますまいか。サンフランシスコ条約はそういうふうになっておるのでございますから、あなた方認めないかもわかりませんが、サンフランシスコ条約をわれわれは認めている。日本国としてあれしているのであります。その解釈としては、法律的には中華民国のものではない、しかし、事実の問題としては、現に施政しているということはみんなが認めておる、こう言っておるわけであります。
  291. 岡田春夫

    ○岡田委員 しかし法律的に重大なんですよ。それじゃ連合国がきめるという場合に、中国にあらざるものとしてきめる場合もあり得るわけでしょう。それは、二つの中国という形になるのですよ。あなたのおっしゃったように、一つの中国、一つの台湾なんか念仏だと言っていることを、あなたは連合国によってきめさして、その念仏が実現する危険性があるのですよ。そういうことじゃありませんか。
  292. 池田勇人

    ○池田国務大臣 それは、あなたのドグマでありまして、私が先ほどから申し上げておるように、中華民国というものはチャイナの代表である、シナの代表である。ただ現に大陸のほうを支配していないということだけなんです。それだけ言っておるのでございます。中国全体を中華民国は代表しておるものとわれわれはいまは考えているのですが、しかし現実の問題として別だ、こう言っておるのであります。
  293. 岡田春夫

    ○岡田委員 現実の問題は知っていますよ。連合国は法律的にきめられる権限を持っているというのですから、中国にあらざるものとして決定する場合はあり得るのですよ。これは連合国の権限でしょう。その場合においては明らかにあなたが反対している一つの中国、一つの台湾の場合もあるし、二つの中国論の場合もあるじゃありませんか。
  294. 池田勇人

    ○池田国務大臣 ちょうど北千島、中千島、樺太はソ連にやっておるのじゃございません。連合国が樺太、中・北千島はソ連のものにあらずと決定することがあると同じように、台湾につきましても、連合国がきめるべき筋合いのものでございます、法律は。
  295. 岡田春夫

    ○岡田委員 それではもう一点伺いますが、それでは連合国が中国にあらざる地域としてきめるということに対しては、あなたは一つの中国論の態度を貫徹する限り、そういう態度については連合国に反対しなければならない立場があるわけですね。そうでしょう。
  296. 池田勇人

    ○池田国務大臣 そんな仮定の問題について答えるわけにいきません。これはどうきまるかわからないのでございます。
  297. 岡田春夫

    ○岡田委員 総理大臣、その点について私は了解しません。しかし、この点は次に進めますが、台湾の帰属は、いわゆる日華条約によって明確になっていると私は解釈している。これはいわゆる日華条約の第四条です。具体的な例を申し上げます。第一点、あなたがさつき言ったとおりです。明治二十八年、台湾、澎湖島は下関条約第二条によって、当時の中国である清国政府から日本が割譲を受けた。これは事実ですね。その次、第二、昭和十六年十二月九日、当時重慶にあった中華民国政府日本に対して正式な宣戦を布告した、と同時に日中間のそれまでの一切の条約の撤廃を宣言した。第三、カイロ宣言において、いま自民党の人のきらいな、台湾、澎湖島のような日本国が清国人かう盗取した、盗み取ったという意味です、盗取したすべての地域を中華民国に返還すると規定され、ポツダム宣言、降伏文書によって日本政府はこれを受諾した。サンフランシスコ条約においては一切の権利、権原、請求権を放棄した。ところがいわゆる日華条約第四条において、日本と中国の間で戦争前に締結をされた一切の条約は無効になったことを承認された。したがって、明治二十八年、台湾、澎湖島を日本に割譲した下関条約は無効になった。したがって、その第二条も無効になったと解釈せざるを得ない。したがって、法的には明らかに中国領域に帰属するということになっているじゃないか、第四条で。どうです。
  298. 池田勇人

    ○池田国務大臣 そんな条約上の解釈は、あなた一人じゃないかと思います。第四条の規定は、将来に向かって無効になったというのでありまして、下関条約の分が初めからなかったものとするというのじゃないと私は考えております。将来においての無効であります。
  299. 岡田春夫

    ○岡田委員 その将来というのは何ですか。将来というのを、林さんもっと正確に教えないと間違えますよ。そんなことではだめです。いいですか。もう一回、第四条を読みます。「千九百四十一年十二月九日前に日本国と中国との間で締結されたすべての条約、協約及び協定は、戦争の結果として無効となったことが承認される。」この中に下関条約が入っているじゃありませんか。それじゃ無効になった。将来とは何ですか。林さん待ってください、総理大臣に伺う。将来とは何のことですか。はっきり下関約条が無効になったと書いてあるじゃありませんか。
  300. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私は、宣戦布告があった昭和十六年から後の無効を言っておるのでございまして、明治二十九年ですか、三十年の分を無効だと言っておるのではない、そう解釈しております。
  301. 岡田春夫

    ○岡田委員 それなら、宣戦布告があった以降、一九四一年以降と条約に書くべきですよ。それなのに、一九四一年十二月九日以前と書いてある。以前ならずっと向こうです。どうしたのです。
  302. 池田勇人

    ○池田国務大臣 条文の解釈ですから、条約局長あるいは法制局長官から答弁させます。
  303. 中川融

    ○中川政府委員 日華平和条約第四条に、岡田先生御指摘のような条項があるわけでございますが、これは、要するに開戦以前に日華間に結ばれた条約が、戦争の結果無効になったことを承認するという規定でございます。しかし、その条約にもいろいろあるわけでございまして、昔つくった条約が現在比きておる。つまり内容が現在にまで継続しておる条約もございます。こういう条約は当然その内容がなくなるということでございますが、一回で内容が済んでしまった条約もあるわけでございます。台湾割譲条約などは、その台湾を割譲したことによってその目的を果たしたというのでございまして、あと形式的にはその効力が残っておるわけでございますが、それはすでに処分済みの条約でございまして、その後これを廃棄いたしましても、それはその形骸だけが廃棄されるわけでございまして、もと処分したことがもとへ戻るということはないのでございます。これは条約の廃棄の効果ということで、国際法上非常に重要な問題でございますが、国際法学者の一致した見解がかようなことでございます。さようなことでありまして、そうでなければ国際間の安定というものはあり得ないわけでございまして、領土を割譲して、戦争に負けたらすっかりもとへ戻ってそれが無効になるというようなことはとうていあり得ない。一つの例をとってみますと、下関条約で賠償金を日本は受け取っております。その賠償金を返せということになるのでございまして、とうていそういう不合理な解釈はできないわけでございます。
  304. 岡田春夫

    ○岡田委員 ただいまの答弁では私は了解いたしません。総理大臣も了解しないでしょう。なぜ了解しないといったら、さっきの総理大臣の答弁と条約局長の答弁と違うから。それじゃ総理大臣は条約局長の答弁が正しい、逆に言ったら総理大臣の答弁は間違いだ、そういうことですね。
  305. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私の答弁も条約局長の答弁も同じです。ただ長く話したか短く話したかです。(笑声)
  306. 岡田春夫

    ○岡田委員 総理大臣だいぶかぶとをぬぎかかっておりますね。そこでかぶとをぬぎかかっておるなら、もっと続いて伺いましょう。いわゆる日華平和条約によると、第三条の請求権、第十条の国籍、議定書の2の船舶、産品の問題については、先ほどからこれは御答弁があった。明らかに台湾などに対する国民政府の支配権を認めている、これはそのとおりですね。いいですか、そうすると一つの政府の実効的な支配が国際法上適法として認められている地域は、この国の領土、領域外にはありません。たとえば沖繩についての例を逆にお考えなさい。実効的に実効支配が適法であるということは、その国の領土以外にありません。したがって、日本は法的にも台湾などを中国の領域と認めて、いわゆる日華平和条約を結んだと言わざるを得ないではないか。これは法律的にそう言わざるを得ないということです。総理大臣どうですか。
  307. 池田勇人

    ○池田国務大臣 概念法学的にいろいろのお説でございますが、第二次世界大戦後のいまの状態は、あなたのような考え方では説明できない、現実の問題を。それで法律的に申しますと、いままでの私のとおりでございます。そして、また日華条約の解釈も、私が申し上げたとおりでございます。そういう概念的な問題でなしに、いまひずみのある状態であるのであります。だから戦後におきまして、領土がはっきりしていないが、施政権を行なっておる事実上のもとに、事実を認めた上においての条約を結ぶことはあり得るのであります。そこで、あなたは、台湾、澎湖島というものが中共のものだと言いたいのでございましょうが、そうは世間では認めておりません。イギリスにいたしましても、アメリカにいたしましても、台湾というものが中華人民共和国の領土であるということは、あなたの同志か、あるいは一部の人が認めておるだけで、台湾というものの解釈は、いま私が申し上げたとおりに世界の大勢はきておると思います。
  308. 岡田春夫

    ○岡田委員 そういう解釈は全然間違いです。そういう解釈は池田さんとその他数人くらいでしょう。その証拠にフランスが中国を承認した。ドゴールは、台湾は中国の不可分の領土であるという意味で承認した。見なさい、ドゴールだって認めておるじゃないか。あなただけが認められない、これは悲劇ですよ、あなたの。日本国民にとって悲劇ですよ。日本の総理大臣がそれを認められないというのは悲劇ですよ、あなた。私は悲しむものです。まさにこういう悲劇は繰り返さないほうがいいですよ。どうです。
  309. 池田勇人

    ○池田国務大臣 アメリカの政府もそうでございますし、私はイギリスの政府もそうだと言っております。どちらが悲劇かまだわかりません。この悲劇を悲劇でないようにしようとするのが、日本民族のいわゆる努力目標でございます。
  310. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは続いて伺います。  いわゆる日華平和条約の十条、これによると、台湾の住民に対していわゆる中華民国の法令を実施する、これは先ほどのいわゆる施政権ですね。その法令に基づいて取得した国籍は中国の国籍になっておる。すなわち、日本はあのいわゆる日華平和条約によって、台湾における中国の対人主権を認めた。いわゆる中華民国政府に対して認めたことになる。対人主権を認めた。この基礎になっておるのは、台湾が中国領域であるという前提でなければ対人主権を認めるわけにいかない。条約上そうじゃありませんか。あなた違いますか。
  311. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これはみなす規定でございまして、詳しくは、交換公文その他の点から条約局長からひとつお答えさせまして、あなたの言うとおりにならないということを申し上げます。
  312. 中川融

    ○中川政府委員 日華平和条約を締結いたします際に、先方との交渉で一番困難いたしました点は、法律的に最終帰属がきまっていない地域に現実に統治権を及ぼしておる当局、政府、これといろいろなことをきめなければならぬという点が一番苦労したのでございまして、その点で国籍の問題も、これは何とかきめなければならぬわけでございます。したがって、いま総理が言われましたように、台湾の住民で、中華民国の国籍法によって中華民国の国籍を持つ権利のある者は中華民国人であるとみなしたわけでございます。みなしたのでございまして、これはやはり法的に最終的にきまっていないということから、こういう規定をしたわけであります。
  313. 岡田春夫

    ○岡田委員 みなすといったって法律的に認めたことです。法律的に認めたことと、法律の条文でみなしたことと同じことじゃありませんか。総理大臣、そんなこと違うと言うのですか、どういうように違うのですか。
  314. 池田勇人

    ○池田国務大臣 先ほど来申し上げましたごとく、領土権のないところに一つの施政権の存在が現実の問題としてあるのであります。したがいまして、そのときにほんとうの国籍はない、法律上はないものをあるかのごとくするから、みなすということになる。本質的にはないということを言っておるのであります。
  315. 岡田春夫

    ○岡田委員 理事からもいろいろ御注意がありましたので進めますが、あなたも事実上も法律的にも、あなた自身がお認めになっておるのですよ。台湾、澎湖島を中国の領域であるとみなしておるのですよ。認めておるのですよ。それはたとえば、事実をあげましょうか。移住局長来ておられますね。  外務大臣、だいぶ答弁がないのでのんびりしておられるが、今度は外務大臣にお伺いしましょう。外務大臣、あなたがサインされる。パスポートには、台北に行くときには何と書きますか。いわゆる中華民国と書くでしょう。法的にも認められておるじゃないですか。そればかりじゃありませんよ。これは総理大臣だってやるでしょう。公文書にあて名を書くときに何と書きますか、いわゆる中華民国台湾省、台北市、中華民国政府蒋介石大統領と書くんでしょう。あなた、この間、吉田さんに書簡を渡したときに、そういうふうに書いたんじゃないですか。書簡のあて名、住所まで書かなかったかもしれないけれども、住所を書けといったらそういうことになるじゃありませんか。いわゆる中華民国台北市か、中華民国台湾省台北市か、どっちかしか書けぬじゃないですか。これは事実上も、法的にも、日本政府が、台湾を中国の領域と認めているという事実上、法的な根拠です。これは明らかです。外務大臣、どうです。総理大臣はだいぶ疲れたようだから、外務大臣ひとつ……。
  316. 大平正芳

    大平国務大臣 現実に政権を持っておる政権と日華条約を結びまして、もろもろの取りきめをいたしておるわけでございまして、いま御指摘のような表現を用いておることは事実と思います。
  317. 岡田春夫

    ○岡田委員 それではその表現は、日本政府はそう思わなくても、向こうのほうは、手紙をもらった蒋介石のほうは、日本の国は台湾を中国領土であると、こういうように解釈をしているんだと解釈をしてもいいわけですね。
  318. 大平正芳

    大平国務大臣 それは先方に聞いてみなければわかりません。(笑声)
  319. 岡田春夫

    ○岡田委員 聞いてみなければわかりませんが、あなた自身はどうですか。そういう書き方をしたらあなた自身もそう思うじゃありませんか。
  320. 大平正芳

    大平国務大臣 やはり現実の問題として処理しなければならない事実上の問題がございますので、そのような処理をいたさざるを得ないということでございます。
  321. 岡田春夫

    ○岡田委員 なぜそういうようにお書きになるのですか。あなたの趣旨で、総理大臣の趣旨でいったら、台湾と書いて、(帰属未確定)台北市中華民国政府蒋介石大総統と書くのが正確じゃありませんか。公文書には正確にお書きなさいよ。正確に書いたらいいじゃないですか。正確にお書きなさい。公文書はそうじゃありませんか。公文書というのは、法的に違法であってはならない、(「ばかなことを言うな」と呼ぶ者あり)ばかなことを言うなと言うけれども、その人はわからないからそう言っておる。公文書というものは法的に違法のことを書いてはいけない。公文書は、当然法的に適法なものを書かなければならない。帰属未確定ならば、台湾(帰属未確定)台北市中華民国政府蒋介石大総統と書いたらいいでしょう。公文書は適法でなければならないとすれば、当然そうじゃありませんか。あなたはあいまいに、どう解釈するか、向こうに聞いてみなければわかりませんなんて、そんな無責任な外務大臣は困りますよ。自分が責任を持ってはっきり書いてください。はっきり書くんなら、未確定とお書きなさいよ。公文書は適法でなければならないです。外務大臣、はっきりお答えください。
  322. 大平正芳

    大平国務大臣 中華民国政府と日華条約を結びまして、現実の問題は処理いたしておるわけでございまして、私どももいままで、そのように平穏にやってまいって痛痒を感じていない次第でございます。
  323. 岡田春夫

    ○岡田委員 この問題も、あなたの答弁はきわめてあいまいです。これは先ほどから総理大臣の答弁も、それぞれ全部あいまいです。たとえば、国際通念でそういうことは認められません、法律的には明確に言えません、そういうことばかりじゃありませんか。最後には、それは岡田君とその程度の人たち何人かきまっていると言ったでしょう。それこそ、この間あなたの言いかけた、何かのなに、という、それと同じ考え方じゃないですか。何かのなに、というのは、池田さんのことですよ。何かのなに、というのは、池田さんとアメリカのジョンソンぐらいですよ。わかったですか。いいですか。  それよりも話を進めます。いわゆる日華条約で、台湾というものが中国の領土であるということをきめてあるんですよ。交換公文をごらんなさい。条約局長は正直な人だから、さっき半分言いかけたのです。外務大臣に聞きますがね、交換公文の中でこういうように書いてあります。「中華民国政府の支配下に現にあり、又は今後入るすべての領域に適用がある。」いいですか。これをもっと具体的に言うと、「今後入る」というようなややっこやしいことを抜きます。これによると、いわゆる中華民国政府の支配下に現にあるすべての領域なんです。地域ではないのですよ。領域なんです。領域というのは領土なんです。領土、領海、領空を含む領域なんです。これはいわゆる中華民国の領土であるということは、ここに明らかになっているのです。そうでないと池田総理は笑っておられるけれども、そうではないという証拠に華文のほうをごらんなさいよ。中国文のほうには、その「制空下全部領土」となっている。「領土」になっている。領土権なんです。(「さっき言ったよ」と呼ぶ者あり)さっき言った、言っていないの問題じゃないですよ。領土権を認めているのです。総理大臣どうです。領土権ははっきり認められているじゃありませんか。——ちょっとお待ちください。領土権ははっきり認められているという事実、いわゆる日華条約で領土権がはっきり認められているという事実をお認めにならないですか。
  324. 池田勇人

    ○池田国務大臣 先ほど条約局長が答えたとおり、領土、領域、いろいろ問題がございますが、そのときその衝には当たっておりませんが、いろいろ考えた上で、いわゆるこの条約の施行地域を現に支配し、今後支配すべき領域としておるのであって、領土権を認めた条文ではないと日本政府は考えております。詳しくは条約局長からお答えいたします。
  325. 岡田春夫

    ○岡田委員 いや、支配しているというのはあなたのおっしゃるとおりです。支配しているのはこの領土であるとあなたは答弁している。領土なんですよ。中国の領土なんです。中国の領土だということですよ。はっきり書いてあるじゃありませんか。それは英語の文章——これはうしろで小坂前外務大臣が言っておられますがね。これはやはりそこにいる雑言言う人と違って、学問的な答弁を小坂氏は言っておられるのですがね。英文の場合にはテリトリーということばになっている。これは領土なんです。領域なんです。領域というのは領土、領空、領海を含むことなんです。明らかじゃありませんか。いわゆる中華民国の領土なんです。そういう解釈はできませんか。
  326. 池田勇人

    ○池田国務大臣 たびたび申し上げていろように、条約局長が言ったとおりであります。テリトリーは領土なりというわけにはまいらない。領域の場合もあるのであります。詳しくは条約局長から……。
  327. 中川融

    ○中川政府委員 この問題、この領域という字句を日本文では使い、中国語のほうでは領土ということばを使っておるわけでございますが、要するに領土、領域と申しましても、どういう趣旨で使ったか、その条約全体の精神を勘案して考えるべきでございまして、それから見まして、このサンフランシスコ条約で、すでに日本はあらゆる権利、権原を放棄しておる台湾、澎湖島を、あらためて中華民国のものにするということは、法律的に不可能事でございます。そういうことができないから、苦心していろいろなさっきのような規矩、みなす規定も置いたのでございまして、そういうことからいって、これは主権を中華民国に認めたと解釈することは論理上合わないわけでございまして、日本政府の解釈は、その交渉の当時から、日華間の交渉でもその点は明らかにしているわけでございますが、交渉の当時からはっきり主権問題とは別だ、切り離しているんだということを、一貫してそういう解釈できておるわけでございます。   〔「明快」と呼ぶ者あり〕
  328. 岡田春夫

    ○岡田委員 明快ではありません。明確になっていますのは、領土、領海、領空を含めて領域なんです。中国文の場合には領土となっている。これは中国の領土です。総理大臣、どうですか。総理大臣はいまだに帰属未確定論をおとりになっているが、あなたは昭和三十六年三月二十九日、衆議院の外務委員会で、われわれ社会党の黒田さんの質問に答えてこう答弁している。「沿革的にいえば、カイロ宣言あるいはポツダム宣言によりまして、われわれが受諾した関係上、われわれは台湾は中国である、こう見ておるのであります。」このようにあなたは言っているじゃありませんか。中国であると法律的に認めているんだと言っているじゃありませんか。帰属未確定と、明らかに総理大臣の答弁は食い違っているじゃありませんか。あなたはこれをどういうようにあれするのですか。私は、総理大臣が二つの答弁、食い違っている答弁を出されたのを、これを明確にしてもらわないと困る。先ほどからいろいろ触れてきたように、いわゆる日華平和条約その他において事実上法律的にも中国の領域になっている。総理大臣はその事実を認めておる。ところが、一方において台湾の帰属は未確定であるということを言い、矛盾した答弁が二つ出ている。あなたはこう答えている。この二つの点について矛盾を感じませんか。
  329. 池田勇人

    ○池田国務大臣 御引用になった私の答弁は、速記録を見てみますが、これは先ほど来申し上げておりますごとく、平和条約の規定によってはっきりしていることでございます。はっきりしている。領土権はないのだ。ただ領域として中華民国がそこを支配しておる。そして、日華条約の分はその支配の地域に有効に適用される、こういうことを言っておるのであります。
  330. 岡田春夫

    ○岡田委員 あなたのおっしゃるように平和条約では帰属未確定がはっきりしている。ところが総理大臣、いわゆる日華平和条約というのはサンフランシスコ条約のあとに結ばれた。それによって帰属が明確になった。それならはっきりしているじゃありませんか。中国の領域にはっきりしているじゃありませんか。あとできめたのですもの、はっきりしているじゃありませんか。
  331. 池田勇人

    ○池田国務大臣 大体平和条約できまっておる問題を、日華条約で中華民国の領土であるときめ得られるものじゃございません。それはもう平和条約が前提でございますから、平和条約に反することをきめるわけにはまいりません。したがいまして、われわれはサンフランシスコ講和条約によりまして、台湾というものは日本が放棄した。日本が放棄したものを、いや、日本はどこにやろうなんということを言うほどわれわれはやぼな国民ではないのであります。ただ領域と言ったのは、日華条約によりましていろいろ条約を結んだ、その条約がその領域内に及ぶということを私は答えておるのでございます。これには私の考え方は前からも変わっておりません。
  332. 岡田春夫

    ○岡田委員 サンフランシスコ条約においてきまっているから、そのあといわゆる日華条約で変えられない、そんなことはないでしょう。あなたは事実知っておるでしょう。サンフランシスコ条約のときに、中国を参加させるかどうかでイギリスとアメリカの意見が違ったでしょう。イギリスのほうは中華人民共和国政権を代表とする。アメリカはいわゆる蒋介石政府を代表とするとして、きまらなかったでしょう。領土の選択権、領土についての規定権まで含めて中国との平和条約の交渉は日本政府にまかしたじゃありませんか。いわゆる日華平和条約において領土の帰属は明らかになったって、それはかまわないのです。平和条約できまってないから、そのあとできめるわけにはいかないというのは、それは間違いです。しかもあとできめることはできるのです。そんなことを言ったら、サンフランシスコ条約をきめたら一切がっさい永久にきめられないのですか。わかり切っているじゃありませんか。そのあとで日本と中国との関係は平和条約に基づいてきめるのじゃありませんか。その他の例幾つもございます。日本とインドの平和条約、日本とビルマの平和条約に基づいて、サンフランシスコ条約に基づくそれ以上のことがきまっておるじゃありませんか。池田さんのそういう答弁ではきわめて不十分です。一国の総理大臣ですから、もっとそういう点をはっきりしてもらわないと困りますよ。
  333. 池田勇人

    ○池田国務大臣 はっきりしておるのであります。平和条約でわれわれは放棄したのであります。日本はこれにとやこう言う筋合いのものじゃございません。だから、平和条約の規定によりまして、その規定を守りつつ新たに日華条約を結んだわけでございます。日華条約におきましても、これを、サンフランシスコできめた、日本が放棄したということに反するようなことはできないのであります。きめる場合におきましても、中華民国が台湾に対して領土権があるという頭でわれわれが条約を結んでいないことは、条約局長からたびたび申しておるとおりで、われわれはそういう考え方でいまも日華条約を運用しておるのであります。
  334. 岡田春夫

    ○岡田委員 あなたは先ほど答弁されたじゃありませんか。国際通念では中国の領域であるという観念でやっているのだ、連合国もそういう観念になっておるのだと言われたじゃないですか。それならば、法律上そういうようにきめたって何も違法じゃないじゃありませんか。それよりも、あなた、そらされては困りますよ。これはどうぞお聞きください、重大な問題です。総理大臣は昭和三十六年三月二十九日においては「われわれは台湾は中国である、こう見ておるのであります。」こうはっきり言っている。ところが、先ほどまでの御答弁を伺うと、台湾の帰属は未確定であると答えられた。これははっきり食い違っている。こういう点について明確にしていただかぬ限りは私は了解ができません。これははっきりしている。
  335. 池田勇人

    ○池田国務大臣 領土権はございませんが、施政権をいま行使しているということを言ったものでございます。
  336. 岡田春夫

    ○岡田委員 そういうことではありません。はっきりそう言っていないじゃないですか。「台湾は中国である、こう見ておるのであります。」それ以外に言ってますよ、あちらこちらで。中国ということばは使わないが、チャイナということばは使っていますよ。私はいま黒田質問だけしか持ってきてないが、たくさんあります。意見は完全に食い違っていますよ。施政権の問題ではありません。領土権の問題です。領土は明らかであります。あなたの答弁ははっきり食い違っている。私はそれでは了解できません。了解できないです、これは。施政権の問題じゃありません。これは領土権を明確にしていることです。
  337. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私は、いま日本政府の考え方をはっきり申し上げておるのであります。過去において中国が支配しておるということを認めたことばはたくさんございます。ただ法律的に条約上どう解釈するかといったら、先ほど来申し上げておるとおりであります。これは納得できぬ、あなたの意見に従わぬ、こうおっしゃっても、それは従うわけにはまいりません、私の信念で、日本政府の根本的考え方でございますから。
  338. 岡田春夫

    ○岡田委員 総理大臣、だめですよ。私は中国は、かつて中国大陸を蒋介石が支配した、そんなことはわかっていますよ。「台湾は中国である、」と言っているのですよ、あなたが。だから食い違っている。台湾の施政権は中華民国にありますと言っているのじゃない、台湾は中国であります、こう見ております、こう言っている。またそれ以外に、台湾は中国に属する、こう言っている。この点は明らかに食い違っております。施政権の問題ではありません。
  339. 池田勇人

    ○池田国務大臣 それはそのときに、領土権はどうかという問題と、だれが支配しているかという問題を区別しての御質問ならば、いまのようにはっきり答えます。だから、もしそういうように言っておるとすれば、ここではっきり申し上げますが、台湾は中華民国政府が現に支配しておる、そして日華条約はここに適用になる、こういう意味でございます。領土権はどうかといったら、これは、日本が放棄しただけで、中華民国の領土権はカイロあるいはポツダム宣言にはそういうことを予定してきめておりまするが、この規定は、われわれの調印したサンフランシスコ平和条約の規定とは違います。われわれ平和条約によって日本の外交をやっていくのであります。これが私の考えであります。
  340. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは前の答弁はお取り消しになるということですね。
  341. 池田勇人

    ○池田国務大臣 前の答弁は、御質問その他によりまして法律的、政治的に区別して答弁しようといったら、なかなかむずかしゅうございますので、前の答弁はいまの答弁のごとく御解釈を願います。
  342. 岡田春夫

    ○岡田委員 そんなことはありません。法律的、現実的な問題ではないのです。あなたは、台湾は中国のものであるとはっきり言っている。チャイナのものであるとはっきり言っている。これが現実の問題ではない、法律的にもそれは一致しなければならない。これは前の点をお取り消しになるなら私は了解してもよろしい。前の点をお取り消しにならないで、それは同じことであるというような解釈は、私は総理大臣の答弁としてそういうように軽々に言われるのは困ります。私はそういうようには受け取れません。
  343. 池田勇人

    ○池田国務大臣 あなたが、前の答弁は領土権も中華民国が持っておったのだと御解釈になるならば、それは、私の考えとは違いますから取り消します。私があのとき申し上げたことは、あくまで中華民国が施政権を持って政治をしておるという意味で言っておるのでございます。領土問題につきましては、先ほど来申し上げておるとおりでございます。だから、そういうふうに御了解願いたい。したがいまして、あなたが領土まで持っているのだと御解釈になるならば、これは私は取り消しますが、私の真意はそうでなかったのだ、こういうことをはっきり申し上げます。
  344. 岡田春夫

    ○岡田委員 いやいや、先ほどから前に持っておったかどうかなんて、台湾は前から蒋介石が持っておったわけじゃないのですからね。そんな解釈の現実問題ではない。じゃ、お取り消しになったというように解釈してよろしいですね。
  345. 池田勇人

    ○池田国務大臣 あなたの解釈が領土権ありと認めた解釈に受け取っておられたら、そういうことを言うのは本意ではございませんから、取り消します。しかし、私があのとき言ったことは、ただいま申し上げたことと何ら変わりがないつもりで言っておるのであります。その意味においては取り消す必要はないと思います。
  346. 岡田春夫

    ○岡田委員 それは、あなたの気持ちの、主観の問題などというのは、私はわかりません。大平さんの言うとおり、聞いてみなければわかりません。主観の中の問題でないのです。発言の結論ですよ。速記録に出ている事実の問題です。速記録の事実においては、これは取り消していただくのがあたりまえじゃありませんか、事実じゃありませんか。
  347. 池田勇人

    ○池田国務大臣 先ほど答えたとおりでございます。
  348. 岡田春夫

    ○岡田委員 それではもう一度、昭和三十六年三月二十九日、外務委員会において黒田質問に答えて、「そこで沿革的に申しますると、カイロ宣言あるいはポツダム宣言によりまして、われわれが受諾した関係上、われわれは台湾は中国である、こう見ておるのであります。」こう言っているじゃありませんか。これは台湾の帰属未確定という答弁と明らかに食い違っているじゃありませんか。この点は、前のあれがあなたのお考えと違っているというのなら、ここではっきりお取り消しをいただきたいと思います。
  349. 池田勇人

    ○池田国務大臣 先ほど来たびたび申し上げますがごとく、サンフランシスコ講和条約の文面から法律的に解釈すれば、台湾は中華民国のものではございません。しかし、カイロ宣言、またそれを受けたポツダム宣言等から考えますと、日本は放棄いたしまして、帰属は連合国できまるべき問題でございますが、中華民国政府が現に台湾を支配しております。しこうして、これは各国もその支配を一応経過的のものと申しますか、いまの世界の現状からいって一応認めて施政権がありと解釈しております。したがって、私は、台湾は中華民国のものなりと言ったのは施政権を持っておるということを意味したものでございます。もしそれ、あなたがカイロ宣言、ポツダム宣言等からいって、台湾が中華民国政府の領土であるとお考えになるのならば、それは私の本意ではございません。そういう解釈をされるのならば私は取り消しますが、私の真意はそうではないので、平和条約を守り、日華条約につきましては、施政権を持っておるということで中国のものなりと言っておるのでございます。
  350. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは総理大臣の前の答弁は領土権という意味で言われた、そのことについてはお取り消しになった。私は、このカイロ宣言その他先ほどからずっと順次述べてまいりました規定に基づいて、台湾は当然中国の領域である、こういう解釈をとっております。あなたはそういう解釈、私の解釈に同調するような答弁をしておられたから、それはわが意を得たりであるといって私はこれを取り上げた。しかし、今度はそういう意味でないというなら、これはお取り消しになってもいいですと、こういうお話ですから、それはお取り消しになったと思って、私は依然としてあなたと私の意見の食い違いがある。あなたはお取り消しになった。したがって施政権の問題である。私たちは領土権の問題である。しかし、あなたのここに出てきた答弁は、前の答弁は、これは領土権という意味ではなかったのだ、そういう意味におとりになるなら取り消してもいいですと先ほど御答弁があった。だから、これは取り消されたんだと私は思います。そういう意味で進めてまいりたいと思いますが、委員長いいですね、進めてまいります。
  351. 池田勇人

    ○池田国務大臣 はっきりしておきます。あなたが私のことばを領土権ありと御解釈になったとすれば、それは誤解を招きますから取り消します。私の申し上げておることは、施政権があることを意味しておるのでございます。
  352. 岡田春夫

    ○岡田委員 これは最後にあれしますが、この池田さんの態度が二つの中国への逆なんです。
  353. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ちょっと待ってください。
  354. 岡田春夫

    ○岡田委員 いや、これでおわりますから。いいですか、台湾の帰属未確定、連合国がこれをきめる。したがって、中国の中に連合国である外国が干渉してこれをきめる。それによって中国にあらざる国に台湾がなる可能性がある。これは二つの中国論の発想です。これはダレスの陰謀に池田さんもひっかかっているのです。一つの中国論の立場はそこでくずれている。池田さんは一つの中国論なんて前向きのことを表面で言いながら、実際には二つの中国論に協力しているじゃありませんか。池田さん、なぜこの態度を明確にしないのです。ほんとうに中国の人民のことを考えるならば、あなたは一つの中国の観点を貫徹して、台湾は中国の領域でありますという三十六年のときの答弁を明確に貫徹すべきです。あなたは、そういうような観点をお持ちにならないところに二つの中国論への道がある。この点は、私はこの委員会を通じて国民の前に明確にしておきます。これはなぜ私がこれほど主張するかというのは、これからアメリカが台湾共和国という陰謀をしようとしているからです。そういう危険性が非常にあるからです。二つの中国へ持っていく危険性があるからです。だから私は初めから終わりまでこの問題を聞いている。池田さん、こういう点については十分御注意を願いたいと思う。二つの中国の陰謀にあなたが加担するならば、あなたがいかに日中の国交回復をしようとしたって、それはできません。これははっきり言っておきます。一つの中国の観点に立たない限りは、池田さんの手によって日中の国交回復はできないということを明らかにしておきます。そこに佐藤さんもいますから、よく聞いておいてください。
  355. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 岡田君に申し上げます。岡田君に申し上げます。
  356. 岡田春夫

    ○岡田委員 いや、これで終わります。  中国と日本の国交回復のために大使級会談まであなたは提唱しようとしているでしょう、佐藤さん。それならば、一つの中国の観点に立って、それを貫徹されることを、佐藤さんも含めて私は希望して、私の質問を終わります。
  357. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 岡田君に申し上げます。先ほど運輸大臣に質問がございましたが、これをこの際答弁をいたします。
  358. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 羽田に到着いたしましたベトナムの軍用機は、三十六年四月二十四日着、三十六年四月二十七日発四機。三十七年なし。三十八年九月三日着、三十八年九月七日発一機。三十八年十月三日着、三十八年十月六日発一機。三十八年十月九日着、三十八年十月二十日発二機。以上四機であります。たいへんおくれましたが御報告申し上げます。
  359. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて岡田君の質疑は終了いたしました。  次に鈴木一君の質疑を許します。  鈴木一君。
  360. 鈴木一

    鈴木(一)委員 私は、去る一月二十一日の本会議におきます首相の施政方針演説の中で、特に政界の道義確立ということがうたわれておるわけでございますが、それに関連いたしまして御質問申し上げたいと思うのでございます。   〔委員長退席、松澤委員長代理着   席〕  この際、このことは単に政府与党に関することだけではなしに、われわれ自身にも相当関係があることでございますので、できるだけ懇切丁寧な答弁をお願いしたいと思います。  まず首相にお尋ねいたします。いま申し上げましたように、本会議における首相の施政方針演説は、国民一人一人のあり方、また同時に社会の秩序、政治の目標、選挙のあり方、また自民党の近代化などと、すべて高い倫理性に貫かれておるわけでございます。いわゆる格調の高い演説であったと思うのでございます。私は、これまで衆参両院を通じまして八年近く議席を国会に有しておったのでございますが、たびたび施政方針演説も伺いました。しかし、そのほとんどが形而下的な問題を一方的に強がりでまくしたてるというようなことで、心にはあまり残っておらなかったのでございますが、このたびの首相の演説は、何か私の心に残り、感銘を覚えておるものでございます。このことは日本の政治の一つの進歩、前進だというふうに、私はあくまでも善意にとるものでございます。けれども、そのことは、言うことはまことに簡単でございますけれども、行なうことは非常にむずかしいのが世の常でございます。また特に指導的立場にある者は、寝ていて人を起こすということであってはならないと思うのでございますが、私はそういうふうな観点から首相にお伺いしたいのでございます。  これは取るに足らないことかもしれませんけれども、せっかくあのような倫理性の高い演説をされたのでございますが、去る二月十九日の朝日新聞に、これは投書欄で、国民の声としてお受け取り願いたいと思うのでございますが、若い二十五歳の方でございます。三十八年度の競輪の日本選手権大会に、首相やあるいは衆議院議長の賞品まで出ておったというふうなことが出ておるわけでございます。そして、競輪がいかに家庭悪、社会悪として有力な原因になっておるかということはたびたび言われておるわけでございますが、このようなものに対して公人である首相がこのような賞品を出すということは、はなはだ問題だ、こういうようなことが出ておるわけでございますが、私はこれをいま追究しようとは思っておりません。しかし、せっかくいいことを言っても、事実こういうふうなことがあれば、国民も失望するわけでございますから、今後——もちろんこれは首相が命令してやったわけでもないし、また議長が命令してやったわけでもないと思いますけれども、何かの間違いだと、これは善意に解釈いたしますけれども、そういう点も十分ひとつ気をつけてもらいたいと思うのでございます。  私は、日本のいまのお互いが関係しております民主政治の最大の欠陥は、その民主政治の基礎をなす選挙そのものに多くの欠陥があると思うのでございます。首相もおそらく私と認識を同じくするがゆえに、この施政方針演説におきましても、「政治の基盤をなす選挙制度についても合理的な改正を行ない、議会政治に対する国民諸君の信頼にこたえる」ということを言われておるわけでございますが、これに対して首相の所見をまず承りたいと思います。
  361. 池田勇人

    ○池田国務大臣 民主政治の根本をなす議会制度、この議会制度をよりりっぱにするためには、そのもとの選挙制度が公明に行なわれなければならぬことは当然でございます。しかるに、いまの実情を見ますと、必ずしも全部が全部公明どころか、不公明なものが相当いまなおあるということはまことに遺憾でございます。したがいまして、私は、りっぱな民主政治のもとのりっぱな議会政治を達成するためには、今後におきましても選挙の公明化につきまして制度の法的改正、また国民の公明選挙に対するより強い理解をいただくよう努力していきたいと考えております。
  362. 鈴木一

    鈴木(一)委員 首相もいまの選挙が公明選挙の趣旨と反するものであるということを十分お認めになっておるわけでございますが、政治の出発点であり、またその源であるところの選挙が正しくない、こういうところに、先ほど申し上げましたように、われわれは多くの是正をしなければならないものを持っておると思うのでございます。  そこで、これまでの各級の選挙が回を重ねるごとに悪くなっており、酒と金とに汚されておるという事実をお互いが直視して問題の解決に当たり、抜本的な対策をいまここで講じなければ、結局日本の、せっかくここまでお互いが育ててきた民主政治というふうなものが左右の暴力にその座を譲るということを、私は決してないとは断言できないと思うのでございます。  また、公明選挙の趣旨から、取り締まりに当たる官憲のほうの意見を聞いてみましても、幾ら自分たちがやってみても、太平洋の水を手おけでかくようなものだ、どうにもならないと、こういう絶望的な気持ちさえ持っておるわけでございます。  そこで、私は、ただ抽象的に抜本的な改正をするとかそういうことではなしに、いまここでお互いがやるならば、実行できる可能性があるという問題について、首相の所見を承ってみたいと思うのでございます。  まず第一に罰則を強化する。これは、人を罪におとしいれるということは必ずしもいいことではないと私思います。しかしこの時点におきましては、やはりやむを得ない措置として、そういう措置を講じなければならないときに来ておると私は思うのでございます。候補者にも、また有権者にも、勝てば官軍だ、もう手段は選ばない、こういう風潮がびまんしておると私思うのでございます。しかし選挙違反というふうなものは、いわば社会公共に対する重大な犯罪だ、こういうような認識を国民に深める。ただしかし、公明選挙で、鳴りもの入りで深めるというだけではなしに、これを裏づけるために罰則を強化するということが必要であろうと私は思うのでございます。ソ連ではやみ取引をした者は、最高の刑は死刑だということがいわれておるわけでございますが、私はこの趣旨はよくわかると思うのでございます。やはり先ほど申し上げましたような、国家公共に対する重大な犯罪だという、そういう罪悪意識だと私思うのでございます。したがって公民権を、違反をした者に対しては相当長期にわたってこれを停止いたしまして、政治的な生命をなくするというところまで踏み込んでいっても私はいいと思うのでございます。また連座制も強化する、また実刑もやむを得ない場合は科する、こういうふうな対策というものが、この腐敗墜落した選挙を直すためには、やむを得ない措置として必要だと私は考えるものでございますが、首相の所見はいかがでございますか。
  363. 池田勇人

    ○池田国務大臣 お考えの点は十分わかりますが、実際問題といたしましては、なかなか議論のあるところでございます。先般の改正におきましても、連座制の問題で相当議論がございました。私は、こういうものは中立的な方々の公正な、またりっぱな判断によることが一番近道と思いまして、そして選挙制度審議会を設けまして、十分審議していただくことにいたしておるのであります。
  364. 鈴木一

    鈴木(一)委員 まことにお説のとおりで、それは重大問題でございますから、慎重に検討することは必要だと思いますが、しかし、いままで全然やらなかったわけではないので、相当長期にわたって慎重に検討もし、また審議会でもいろいろの意見があるわけでございます。しかし、いまここまでくるならば、そういうものを待っていられない、やはりここで総理みずからが、一党の総裁としてあるいはまた日本国の最高の指導者として、そこまで踏み込む必要があるのではないか、こういう意味で首相の所信をもう一度承りたいと思います。
  365. 池田勇人

    ○池田国務大臣 先ほど来申し上げましたごとく、最も重要な問題でございます。したがいまして、最も関心を持ちますから、今年も昨年も、施政演説で選挙のことははっきり言っておるのでございます。具体的に罰則を強化するとかどうこうということは、私はいま軽々しく言えない問題と思います。罰則の点につきましても、日本相当重い罰則をやっておるのでございますが、それによってそれじゃ各国よりも選挙違反が少ないかというと、必ずしもそうでない。そこで、制度をりっぱにすると同時に、国民にそういう気持ちになってもらうことが一番大切だと思いまして、昨年の地方選挙、あるいは一昨年の参議院の選挙のときから、公明運動につきましては相当力を尽くしたのでございますが、なかなかそれがいかない。先般の本会議におきましても、民社党の佐々木君のあの切々たるお考えは、私は、議員のみならず国民大多数に非常な感銘を与えたと思うのであります。ああいうこともやはり選挙制度の粛正に非常に役立つと考えておるのであります。あらゆる方法を講じまして、選挙の公明化につきましては今後とも努力いたしたいと思います。
  366. 鈴木一

    鈴木(一)委員 これ以上深くお尋ねしても、いまみたいな答弁を繰り返されると思いますので、はなはだ残念でございますけれども、次に進みたいと思います。  そこで私は、制度を改めるという問題とはまた別に、お互い政党間が話し合ってやればできるという問題についてお尋ねしてみたいと思います。これは非常に抽象的になりますけれども、悪質な事犯に対しましては、この程度がどこまでが悪質でどこまでが悪質でないかという判断はなかなかむずかしいと思いますが、一応これは常識にまかせることにいたしまして、こういう候補者に対しては政党は公認しない。しかし立候補は自由でございますから、無所属で出る場合もあると思いますが、たとえ出たとしても、その政党に対して復帰は認めない、こういうふうなことで、お互いがただ公明選挙だ、あるいは施政方針演説で、りっぱな選挙をやりましょうということだけでは実効が上がらないわけでございますから、まず隗より始めよで、お互いがそういうふうな自粛をする、こういうふうなことを私は考えておるものでございますが、これは、各党間の党首の間で、そういう申し合わせをするということも一つの方法と思いますが、それに対して首相はどういうふうなお考えを持っておられますか、所信を承りたいと思います。
  367. 池田勇人

    ○池田国務大臣 いろいろ議論があり、また沿革もあることでございますが、われわれは一応検挙せられましても、裁判が最終的に確定しない者までも党からはずすということはいかがなものかと思います。しかし、公認の場合におきましては、一応一審、二審有罪の判決がありまして、最終的には確定しなくても、有罪の判決があった場合におきましては、公認しないことを厳に守っておるのであります。係属中のものにつきましても、いろいろ議論がございますが、私は一審で係属中の者、また一審で無罪で二審で係属中の者も、これを公認しないということは少しいまのところでは行き過ぎじゃないかと思います。しこうして、また最終判決のない者であって、そうして公認はしなかったがやはり当選してこられた人は、公認しなかったから入党を拒否するということは、私はいまの状態ではまだそこまではいかないのじゃないか、やはり民意の尊重、政策の尊重ということも考えなければならぬと思います。
  368. 鈴木一

    鈴木(一)委員 非常に私はそういう点では、この首相の答弁が、施政方針演説と違って格調が低いので失望するわけでございますが、なるほど法律に基づいて最終的な審判がなされない者については、考えなければならぬというお話しでございますが、法律は御承知のように一つの最低のお互いの規範というふうに私は考え、道徳はもっと私は高いものだと思うのでございますが、いま日本の政治が、選挙も比較的問題なく公明に行なわれておるということであれば、何も私はこういうことを申しませんけれども、実際このような腐敗、堕落が加速度的に加わっておるという現状でございますので、もう一回私はそういうふうな立場から、もっと高い道義的な立場から首相の所信を承っておるわけでございますが、あらためてもう一回御答弁願いたいと思います。
  369. 池田勇人

    ○池田国務大臣 選挙違反をなくすることは、やはり当選者も入党ささないとかいうようなことはいかがなものかと思います。したがいまして、われわれとしては、有罪の判決を受けた人で最終判決のきまっていない者も、有罪の判決ならば公認はしないという原則は貫いておるのであります。
  370. 鈴木一

    鈴木(一)委員 まあその程度のお答えしかできないと思います、はなはだ残念に思いますが……。  なお、もう一つお伺いしたいことは、これもいろいろ論議があったところでございますが、俗に言う高級官僚でございますが、憲法上いろいろ問題があるかと思いますけれども、先ほど申しましたような趣旨から、ある一定の期間は立候補はできないというふうな規則を——なぜ私はこんなことを申し上げますかというと、いままで選挙を見ますと、悪質事犯のあったのは大かたこういう人たちであります。しかも在職中にちゃんと選挙の手を打っておいて、そうして立候補と同時にせんべつとか、そういうふうな形で関係団体、取引先とかその他から、相当多額の政治献金を受けて、そうして選挙に入る。そうしてその結果が自殺者まで出すというふうな悪質な選挙をやっておるわけでございますが、もしこれ法律で立候補を禁止することができないということであるならば、少なくとも政党としてはこの入党は三年間なら三年間認めない、こういうようなほんとうにみずからが公明選挙を、つらいところもあるけれども実施しておるというような姿勢を、国民に私は示す必要があろうと思うのでございます。来春はまた参議院の選挙でございますし、特にこういう問題についてはお互い自粛をしなければならぬというふうに考えまして、この点も首相の考えをお伺いしたいと思います。
  371. 池田勇人

    ○池田国務大臣 先般の選挙法改正につきましても、高級官吏の立候補につきまして、いろいろ問題があったのでございます。憲法上の問題等、また高級官吏とはいかなるものか、たいへんむずかしい問題でございます。しかし要は、在職中職権を乱用いたしまして選挙の事前運動その他をやるということがよくない、そういうことにつきましては、われわれといたしましても十分注意いたしまして、そういうことのないようにしなければならぬと思います。
  372. 鈴木一

    鈴木(一)委員 在職中にいろいろ職権を利用して選挙運動をやっちゃいけないということでございますけれども、大部分の人はやっておるわけでご、さいます。橋をかけるとか、あるいは港を直してやるとか、さまざまな形で直接政府あ6いはまた地方自治体の機構を通じ、あるいはまた関係団体を通じて相当深く浸透しておるわけでございます。ですから、私は特にこのことを首相に尋ねておるわけでございますが、何となく首相のほうからの答えがあまり気が進まないような答えでございますので、時間の関係もございますから、先に進みたいと思います。  なお一つ選挙のことでお伺いしたいことは、政治献金の問題でございますが、この団体とかあるいは法人の政治献金は一切認めない、あくまでも政治献金は個人の。ポケット・マネーからしか認めない、こういうふうにすることによって、選挙に多額の金を使うということがなくなってくると私は思うのでございますが、もちろん、やる気であればいろいろ方法もあるかもしれませんが、やはり政党としては、そういうような自粛をしていくということも私は必要じゃないか。これは法律的に、はっきりこの問題くらいはきめても決して問題じゃないのじゃないかというようにも考えますが、これもやはり何となくおっくうですか。
  373. 池田勇人

    ○池田国務大臣 選挙の粛正については、やはり政治献金というものが問題になるのであります。したがいまして、私は政党本位の選挙であらねばならぬという考えのもとに、三年前から国民協会をわが党では組織いたしましてやっておるのでございます。またいろいろの党内の派閥関係等もありますので、政治献金のためのいわゆる一般政治家の政治結社というものにつきまして、政治献金は遠慮するようにというふうな申し合わせでいま進んでおるわけでございます。私は、各政党ともやはり政党資金を集めるということを主題にして、個人の政治献金はなるべく、一ぺんに全部やめてしまうというわけにもいきません。また会社の献金にいたしましても、いまの日本の税法では、またいまの日本の一般の所得から、なかなか個人からだけというわけにはまいらないと思います。法人からを除いて、二百七、八十万も、三百万前後の政治資金を個人から出すということになると、たいへんなことになります。結局集まりっこないということにならざるを得ない。弊害をためつつ、政党本位の選挙に持っていくようにしなければいかぬと思います。
  374. 鈴木一

    鈴木(一)委員 私が申し上げたいのは、政党の発達をお互いが促したい。そうして各党とも党員はおるわけでございますが、党費を納めて、ほんとうに党員になっておるというような者は数えるくらいしかないと私は思うわけでございます。ですからたとえ政党であっても、法人の寄付ということは認めずに、あくまでも個人の寄付でやっていく、これはつらいことかもしれませんけれども、そういうふうな癖をつけていかなければ−総理の考えでは、あくまでも選挙には金がかかるのだという前提に立ってのお話のように思いますし、かかる分は、これこそ公営でやってもいいと私は思います。とにかく法人とかそういうところから金を出すことは認めない、そして個人が金を出し合って、政党を大きくしていって、そこが主体となって選挙をやる。また法定費用は三百万とか四百万とかありますけれども、こういうものは公営としてやっていく、こういうふうな形で選挙の粛正をしたい、私はこういうように考えておるわけでございます。その点いかがですか。
  375. 池田勇人

    ○池田国務大臣 方向としてはそういう方向だと思います。ただ、それをいかなる時期に、いかなる程度にやっていくかというのが問題で、方向としては全く同感でございます。
  376. 鈴木一

    鈴木(一)委員 この点だけは賛成を得たようでございますが、次に進みたいと思います。  冒頭に申し上げましたように、政治の秩序を正す、まず選挙を直していきたい、と同時に、これは民主政治でございますから、いろいろな国民から、さまざまな形で政治的要求のあることは当然でございます。しかし、その要求が間違っておるというふうな場合は、これはお互いが高度の政治的な判断に基づいて、押えるものは抑えなければならないというふうに私は考えるわけでございますが、いまここで首相にそういう観点からお伺いしたいことは、先般来いろいろ新聞をにぎわしておりますところの農地報償、この報償ということばは、田中大蔵大臣の昨年の本予算委員会における定義を聞きますと、非常に含みのあることばになっておるわけでございますが、最近自民党のほうから明らかにされたこれは新聞の記事を通じてでございますけれども、私は再補償だと思うわけでございます。この問題は相当重要な問題だと思いますので、政府としてはやる気があるのか、やるのかやらないのか、まずその点をお伺いしてみたいと思います。
  377. 池田勇人

    ○池田国務大臣 戦後多年にわたる重要な問題でございまして、われわれはいま実態調査をいたしておるのであります。したがいまして、その調査の結果を見まして、お気の毒な方々には何とか措置をしなきゃならぬのじゃないかというので、研究を続けておるのであります。
  378. 鈴木一

    鈴木(一)委員 おそらくそういう御答弁だと思いました。調査の結果に基づいてだというふうな御答弁だと思っておったのでございますが、しかしこの間の自民党三役会議でも、この問題は本国会中に結末をつける、こういうことが発表されておるわけでございます。新聞の記事は、一々そんなものは知らないとおっしゃればそれまででございますが、おそらく大体間違いのないところを報道されていると私思うわけでございますが、決着をつけるということは、やらないというのか、私はやらないというのじゃなくて、必ずやる、やるように決着をつけるというふうに受け取っておるわけでございますが、その点はいかがですか。
  379. 池田勇人

    ○池田国務大臣 三月末までに調査を完了いたしまして、そして何とかしなきゃなるまいというのでございます。党のほうでは、今国会中に結末をつけたいという強い希望があることも聞いておりますが、内閣のほうには正式にそういう申し出はまだないようでございます。しかし、私自身は、やはりこういう問題は、調査が完了いたしますれば、良識をもって早く結末をつけるべきものだと考えておるのであります。
  380. 鈴木一

    鈴木(一)委員 これは、調査の事務は総理府が所管しておるようでありますが、総理府の世論調査、約一万人に対して調査をした、その結果も新聞に出ておるわけでございます。これを見ますと、私資料を提出いただいて調べたわけでございません、これもまた新聞を通じての私の判断でございますが、やってもいいというような空気が意外に多かった、こういうふうに聞いておるわけでございます。この結果は、農地補償問題のおおよその性格を理解している人は、よく知らない人よりも多かった、こういうことが出ておるわけであります。そうして、農地報償をすべきである、してもいいという意見が、しないほうがよい、すべきでないというほうよりも多かった、こういうことが新聞に出ておるわけでございます。と同時に、つけ加えて、報償の財源を国民の税金に求めるものでなければ、多少の国費支出は認めるとのニュアンスが出ている。これはどういうふうな聞き方をしたのかわかりませんが、結局これは、財源はどこからくるものでもありませんし、国民の直接税、間接税等にかかってくると私は思うわけでございますが、多少の支出を認めるとのニュアンスが出ておる。その次が、これは問題でございますが、最高裁の判決が出ているが、それはもちろん御承知の農地補償はこれにする必要はないんだという判決であるわけでありますが、それでも報償に賛成するか。こういうふうに知識を導入して質問をしてみると、わからないと答える人が多いと書いてあるわけでございます。この世論調査を見てみても、ほんとうに事情を説明してみれば、戦争であるいは終戦処理で被害をこうむった者は、何も地主ばかりではないんだ、こういうことから、必ずしも世論はこの報償を支持していないと私は思うわけでございます。と同時に、私が申し上げたいことは、農地被買収者問題調査会の答申、これは総理府から昭和三十七年五月二十日に出ている資料でございますが、これを見ますと、地主の生活の実態というものは、いわれるほど悪くはない。一般の人と比べて悪くはない。したがって、いまここで巨額な金品を地主に交付するということは、諸般情勢上適当ではないという見解が多かった、こういうことが報告されておるわけでございます。この委員は総計十八名でございます。この中で報償することに対して反対の人が、これは私が個別にいろいろ聞いたところでございますが、大体十二人、報償すべしというふうな意見の方が三人、これは報償獲得の同盟の代表でございます。あとはまあどちらでもいいという方が三人でございます。しかもこのメンバーから見てみますと、必ずしも革新政党を支持する人ではなくて、どちらかというと、ふだんは池田さんに協力する立場の人が多いと思うわけでございますが、こういう権威のある、公正な、中立な人たちの意見ですら、この際報償することはまずいということが多数意見として出ておる今日、なおかつ利害関係者の圧力であるか、党内事情であるか、私はわかりませんけれども、これに報償するということは、先ほどから申し上げました政治の倫理性を貫く、公平の原則を貫くという立場からいたしましても問題があると私は思うのでございますが、その点総理の御所見を私は承りたいと思います。
  381. 池田勇人

    ○池田国務大臣 いろいろ問題がありますから、いままでやかましく論議されたのでございます。したがいまして、こういう問題をそのまま未解決でおくことは、私は適当でないと考えます。そして前の調査員ももっと拡大し、深く世論調査をいたしまして、その結果を見まして自分は決断をいたしたいと思います。私の決断が出れば、これはもちろん皆さん方に御審議願うことと思います。
  382. 鈴木一

    鈴木(一)委員 私自身は地主ではございませんが、私の親戚とかあるいは縁戚にも相当土地を解放した者があるわけでございます。したがって、決して地主の困っておる者に対して冷たくしろとかそういう趣旨で私は申し上げているわけでないのでございますが、とにかくやはり一般世論の調査も、詳しく先ほど申し上げましたように、知識を導入していくとわからないということでもあり、またいま申し上げましたような権威のある学者たちの答申を、いまさらやる必要はないじゃないかということが言われておるし、工藤昭四郎さんが審議会の会長でありますが、工藤さんの答申で、大体この問題は決着がついているものだと私は思います。またつけるべきものであると思いますが、まだなおかつ問題が尼を引いて、そうして調査の結果を得たなければできない。しかし一方では、この国会中にやるというニュアンスが、非常に強い態度が出て、また自民党には法案の準備さえできておる、こういうふうに言われておるわけでございます。やはりこの際無理なことはなさらないということのほうが、長い目で見れば正しいことだと私は思うのでございますが、重ねて首相の所見を承りたいと思います。
  383. 池田勇人

    ○池田国務大臣 どちらが無理かということが問題なんです。無理なことはなるべくしないつもりでおりますが、報償するのが無理か、しないのが無理かという間に入っておりまして、十分検討いたします。私も実情はよく知っております。知人のうちに相当農地被買収者で困っておられる人もありますし、またあまり困っておられない人もあります。そういう点は十分考えまして結論を出したいと思います。
  384. 鈴木一

    鈴木(一)委員 困っている人があるということでございますが、調査の結果でもそんなに困ってない、現在の社会通念からするならば、中から上の生活を旧地主は大体しておるのだ。やはりこれは能力の問題もあるでしょうし、また無形の財産もあったと思うわけでございますが、そういうふうな実際の事情であると私は判断しております。また一般の世論というものを私なりに調査してみますと、結局商売をやって金がもうかった、肥料商をやったとか、酒屋をやったとか、あるいはまた金貸しをやった、そして投資の対象としては土地が一番いいというので土地を買った。結局、みずからは勤労することなしに、相当ここから利益は上がっておって、それだけの高い生活をしながら恩典には十分あずかっておるのだ。だから適正な価格で買い取ってもらったのだから、いまさらまた政治的な圧力をかけて、国から金を引き出す必要はないのではないかというのが大かたの常識だと私は思っておるわけでございます。首相はたびたびの答弁で、調査の結果、無理のないようにきめたいというふうなことでございますが、この問題に対して私の考え方を具体的に申し上げまして、首相の考え方を個々にひとつ承ってみたいと思います。御承知のように、憲法には財産権の不可侵が規定されておるわけでございます。同時に、しかしまた私有財産を正当な補償のもとに公共のために用いることができるということを規定しておるわけでございます。農地解放が最高裁において、その合憲性が最終的に確認されておるわけでございますから、私はそれ自体すでに完結した行為であろうと思います。これに対してさらに報償という名において金を再補償するというふうなことは、法律の上からいたしましても、また常識的な面からいたしましても、私は不当だと考えるものでございますが、その点いかがでございますか。
  385. 池田勇人

    ○池田国務大臣 いろいろ解釈はございましょうけれども、今回報償するとすれば、やはり法律を設けて予算上の措置もしなければなりません。だから、最高裁の判決がこうだから、あとは何もしなくてもいいんだ、またそれをやるということは不当であるという問題につきましては、議論のあるところでございます。
  386. 鈴木一

    鈴木(一)委員 私いまのこの問題をお聞きする前に申し上げたように、それほど困っていないというのが実情だ。もちろんこれは調査の結果を待たなければならないかもしれませんけれども、前の農地被買収者問題調査会で調査した結果でも、そういう結果、困ってないというあれが出ておるわけでございますから、それに対して再補償するということはあくまでも私は不当だというふうに考えております。どうかひとつこの点も十分頭に入れて御判断を願いたいと思うのでございます。憲法ではさらに生存権の保障と社会福祉、社会保障について国の責任をはっきり規定しておるわけでございます。これに伴って各種の社会保障立法が積み上げられて、不十分な面も現段階には多々あるわけでございますが、一応社会保障制度が実施されておるわけでございます。したがって、この地主の中に生活困窮者があるということであるならば、この制度のワク内で救済していくというのが私は妥当な考え方だと思うのでございますが、これについて首相の考え方をもう一回承りたいと思います。
  387. 池田勇人

    ○池田国務大臣 いろいろな問題を社会保障制度にみな押し込んでいけばいいのだと、そう簡単にいくものじゃないと思います。やはり人というものは過去の生活、そしてその後の法律的、社会的状況の変化等によりまして、いろいろの考え方が出てくるものでございます。したがいまして、そういう考え方が出た場合にいかに措置すべきかということは、やはり政策上の問題でございます。そういう点を世論調査の結果によって私は結論を出したいとしておるのであります。
  388. 鈴木一

    鈴木(一)委員 さらに憲法ではすべての国民は法のもとに平等である。人種とか信条とか、性別とか、社会的身分とか、そういうものによって政治的な経済的なあるいはまた社会的な関係において差別されないということがはっきりとうたわれておるわけでございますが、この旧地主のいま問題になっております補償というものは、あたかも昔の地主であったという身分に対する一つの差別的な処置だというふうにしか私には思われないわけでございます。しかもその地主は、何回も私が繰り返して申し上げますように、それほど困っていないんだ、こういう調査の結果が出ておるのになおかつ補償するというようなことは、私はどうしても納得のいかないところであるわけでございますが、首相の考えはいかがなものですか。
  389. 池田勇人

    ○池田国務大臣 先ほど来申し上げましたごとく、今度の報償は、身分上の関係での措置ではないのでございます。過去の財産権に対します政府の措置に対しましてどうするかという問題でございます。事実に対しての認識をどう解決するかということでございます。身分上の措置の問題ではないと考えております。
  390. 鈴木一

    鈴木(一)委員 それじゃお伺いしますが、補償と報償というものはどういうふうに違うのか承りたいと思います。このほうは田中さんが得意だから田中さんに答弁してもらってもいいです。
  391. 田中角榮

    ○田中国務大臣 私は法律の専門家ではありませんから、法制局長官から答えたほうがいいかとも思いますが、去年の予算委員会でお答えを申し上げましたから、もう一応申し上げておきたいと思います。  補償とは、国がある債務に似たものを持っておりまして、当然これに対して国に責任が存するというものに対しては補償することになる。報償とは、国に対して過去においていろいろな貢献をされた、国に対して犠牲を払ったというような方々に対して、国の財政事情その他の状況を十分勘案して、何らかこの功績や犠牲に対して報いたいという国の一方的な考えによって、金品を差し上げる場合もあるでありましょうし、勲章等をやる場合もあるでしょうし、いろいろな措置があるわけであります。いずれにしましても、補償と報償との違いは、補償とは国に義務が存するもの、報償とは、義務は存しないけれども何らか措置をするというような考え方に立っておるわけであります。
  392. 鈴木一

    鈴木(一)委員 去年の二月十一日の予算委員会の議事録でございますが、それに、田中さんは、「必ずしも金銭の給付を意味せず、物品の提供、表彰等も報償の中に含まれる」こういうふうに言われておるわけでございますが、最近報償として問題になっているのは、交付公債を出すとか、はっきり金品を渡すのだと言う。有価証券になると思いますが、そういうふうになっておるわけでございますが、私は、非常に御苦労したということで、いま必ずしも金品を出すのではなくて、物品の提供とか表彰するということならば、これは別に問題もないし、ここで長々と論議する必要はごうもないと思いますけれども、そうじゃなくて、いま農業がますます一般産業との格差が開き、やれ構造改革だ何だかんだといろいろ言っているが、なかなか実効があがらない。そして、農業をやる者がだんだん農業に対して疑いを持ち始めて、何かほかの仕事に転換しようというふうな状態に現在なっておるわけでございます。ですから、たとえ交付公債であっても、将来はこれは国の財政負担になると思うわけでございますから、それだけの思いやりがあるならば、むしろもっと前向きの方面に向かって、この問題を補償よりも農業の構造改善に、首相が言うような、革新的と申しましたか、そういう抜本的な対策を講ずるような方向に農政を持っていくのが、私は国の現段階における施策としては正しい方法だと思うわけでございます。  この所管をめぐって、これも新聞で承ったのでございますが、農林省のほうでは、まっぴらだ、これは社会保障の観点だから厚生省がやるべきだとか、いや総理府だというふうな話になり、また、黒金さんのほうでは、農地解放のあと始末だから、何とかひとつ農林省でやってもらいたいというようなことで、お互いに責任の分担をいやがった経過もあるわけでございますが、お役所の方々は、むしろ仕事が好きで、なるべくかっ込むようにするのがお役所の一つの傾向だと思いますが、そういうお役所が、おれのほうはごめんだということで、みなそれぞれ断わったというふうないきさつからしてみても、政府部内においても、あるいはまた自民党の中においても、必ずしもこのことについては諸般の事情から、みんながみんな賛成ではないのではないかというふうな感じもするわけでございますが、それでもなおかっこの問題については、前向きの姿勢で首相は問題の解決をはかろうとされるのか、あくまでも高度の政治的な判断に基づいて、だめならだめ、さっぱりとリーダーシップを発揮するのかどうか、その点首相の決意を承っておきたいと思います。
  393. 池田勇人

    ○池田国務大臣 前向きの姿勢で、高度の政治的判断によって措置いたしたいと思います。措置のいろいろ内容をおっしゃったようでございますが、まだ結論を出しておりませんので、具体的な問題につきましては、やるかやらぬかがきまってから考えるべき問題が多かったと思います。十分前向きに、高度の政治的判断によって措置いたしたいと思います。
  394. 鈴木一

    鈴木(一)委員 ついででございますから、赤城さんもだいぶ退屈しておるようでありますから、赤城さんにひとつこの問題を伺ってみたいと思いますが、いま農業改善がなかなか進まないという段階において、この問題をやったほうが政府としてはいいのか、あるいはこういうことは一応将来の問題として検討することにいたしまして、この国会で結末をつけるなんてあわてないでも、もっと前向きの問題についてやったほうが、国民のためにもなり、政府与党のためにもなる、そういう点で、赤城さん、どういうふうにお考えになっておるか、お伺いしたいと思います。
  395. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 前向きで農政を推進することは、私ども一番気乗りもいたしまするし、力強くそういたしたいと思います。この被買収者の報償の問題は、総理がたびたび申し上げておりますように、三月の調査を待って措置を講ずるということでございまして、措置の内容等もまだ聞いておりません。その結果どういうふうにやるかは、そのときにまた私ども考えなくちゃならぬと思いますが、いま関知しておりません。
  396. 鈴木一

    鈴木(一)委員 関知していないというと、まるっきりもう取りつく島もないわけでありますけれども、農林省のほうとしては、私の知るところではまっぴらごめんだ、迷惑な話だということで、この問題の所管を断わったというわけでございますが、もしここで御答弁できるならば、その間のいきさつを具体的にひとつお話し願いたいと思います。詳しくお話し願いたいと思います。決してあなたのあげ足をとって困らせるとか、そういう気はさらさらございませんから……。
  397. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 二、三年総理府で調査をずっと続けてきておりましたので、それを継続して総理府のほうでやってもらったほうがいいんじゃないか、私のほうの行政組織法といいますか、農林省設置法にも別にそういうことを規定してありませんから、いままでのいきさつからやってもらったほうがいいんじゃないか、こう考えたわけでございます。
  398. 鈴木一

    鈴木(一)委員 やっぱりだいぶ御迷惑そうな顔ですから、これ以上うしろ向きの話は聞かないで、あとでまたお伺いしたいと思います。  しつこいようでございますが、この問題について、もうちょっとお尋ねしてみたいと思いますけれども、戦争の犠牲あるいはまた戦後処理の犠牲に対して報償するんだということであれば、単に地主ばかりではないと私は思うのでございます。ほかにもたくさん私はあると思います。まず戦時補償特別措置法によって請求権が打ち切られたものがたくさんございます。軍需会社等に対する補償金、陸海軍納入物資の代金、土木請負業者の工事代金、沈没した船舶に対する補償金、個人や法人の企業整備の補償金、五万円をこえる建物疎開の補償金、五万円をこえる戦争保険金、銀行等の命令融資等による損失の補償金、社債等の元利補償金、こういうものがたくさん出てくるわけでございます。ただ残念ながら——残念と言うと語弊もあるかもしれませんが、この人たちはお互いが補償の団体をつくって政府に陳情したりあるいは政党を動かすだけの立場に現在いないというだけで泣き寝入りをしている。黙っている。これはやはり私は声なき声だと思うのであります。ですから、こういう声を大にした者だけに恩典を与えて、黙っている者に対しては何もしないというようなことでは民主政治は保たれないし、政治の公平の原則も保たれないと私は思うのでございますが、その点は首相はどうお考えでございますか。
  399. 池田勇人

    ○池田国務大臣 戦争によりまして犠牲を受けられた人は数多く、またいろいろな種類がございます。引き揚げ者に対しましてはすでに昭和三十二年に措置いたしました。しかし地主の問題は、御承知のとおりたいへんな問題でありまして、いろいろ論議されておるのであります。少なくともいまの情勢ではいろいろ問題がありますが、地主の問題は一番大きい問題であり、しかも一番影響することが多い問題でございますので、世論その他をいま調べておるところでございます。
  400. 鈴木一

    鈴木(一)委員 首相は、いま地主の問題が一番大きい問題だと言われたわけでございますが、これはやはり団体をつくって、そうして大会を開き、あらゆる運動をして圧力をかけてくるから、大きな問題としてこれは目に映ると私は思うのでございます。しかし、いま私がここで列挙しましたもっとたくさんの、もっと零細な人たちの犠牲も、陰にひそんでおるわけでございます。ただ先ほど申し上げましたように、この人たちが、お互いが組合をつくるとか団体をつくるとかして、声を大にしないというだけだと私は思うのでございます。ですからこういうことに対しては、もう少し慎重に、政治的な、それこそ高度の前向きの判断をしていただくことを強く要請いたしまして、一応この問題は私は打ち切りたいと思いますが、あらためてひとつもう一回、しつこいようでありますが、首相から所見を承っておきたいと思います。
  401. 池田勇人

    ○池田国務大臣 重大な問題でございますから、十分調査をした上で、前向きに高度の政治的判断で処理いたしたいと思います。
  402. 鈴木一

    鈴木(一)委員 前向きというのは、私がいまるる説明申し上げました民主的な、公正な判断のほうに前向きだというふうに一応私は解釈して、この問題は打ち切りたいと思うのでございます。  次に、ILO八十七号条約の問題につきまして、若干御意見を承ってみたいと思います。この条約の批准案並びに関係法案は、十二月の二十日に国会に政府から提出されておるわけでございます。しかし、いまだ一度の審議もされずに、今日までじんぜん日を経過しておるわけでございます。しかも、新聞ではこれが今度の国会の最大の問題の一つであるというふうなことが毎日のようにいろんな角度から報道されて、そして河野・倉石案がどうだとか、さまざまなことが詳しく報道されておるわけでございますが、国民は一体どういうわけで審議もされずに、しかも重大な問題なのかということが、ほとんど大部分の国民がわからないでおるのが現状であろうと私思うのでございます。なぜこの法案が審議がされないのか、もちろん国会でやってくれないからだと言えばそれまででございますけれども、私は首相がこの審議ができない問題について、どういうふうな感想を持っておられるのか、またこれに対してどのような高度の政治的な判断で対処されるのか承りたいと思います。
  403. 池田勇人

    ○池田国務大臣 内閣といたしましては、国会に御審議願うべく提案いたしておるのであります。国会のいろいろの事情があることと思います。予算委員会のほうに没頭せられておる点もございましょう。予算委員会のほうに主たる勢力がいっておる関係上もあるやに聞いておりますが、しかし、いずれにいたしましても、今国会におきましてはぜひこれは通過させていただきたい、こういう考えでおります。
  404. 鈴木一

    鈴木(一)委員 もう七十日もたっても審議もされない、しかも政府与党の幹事長が、会期を延長してもこの問題は処理したい、——会期を延長すれば、それだけ相当多額の国費もかかるわけでございます。しかもなぜ一体今日まで七十日間も放置されておるのか、私はまことに遺憾だと思うのでございます。このために、先般青木大使の国会における答弁でも、日本がこれを批准しないということは、何かそこに前時代的な問題があるのではないか、団結権の保障もないところで日本は物を生産して、そうして貿易をしておるのではないかというような、事実でもないようなことが日本のために悪宣伝されて、貿易にも影響するのだ、国際的信用を失墜することも非常に大だということを青木大使も言っておりますし、また経営者側の代表も、また労働者側の代表も、ひとしくそのことを言うておるわけであります。ですから事ここに至っては、やはりすみやかに国会の審議に乗せるように格別の努力を払う必要があるのではないか、こういうふうに私は考えるものでございます。  この審議が促進されない原因は、直接この批准に関係のない、回り回ればあると言うかもしれませんけれども、直接ない法案の問題の処理が片づかないということで審議が進まないように私承って、想像しておるわけでございますが、これは私まことに遺憾だと思います。むしろこの案件を、お互いが国会の場で十分審議をして、その上で決着をつける。もちろんつかないものは、無理をしてまでこれを強行する必要はない。直接関係のないものは、いまここで無理して決着をつける必要はない。このことで国会がもめたり、あるいは乱闘になったり——残念ながら現在そういうふうな可能性はないと私言いません。しかしそのために、さらに国際的に恥の上塗りをするような、そういう結果になることを私はおそれますので、通せる主たる部分は通し、関係法案については無理はしないというふうな態度で国会の審議に臨むならば、この問題について、それほど国際的信用云々ということで大騒ぎをする必要はない問題だと私思うのでございますが、首相のお考えを承りたいと思います。
  405. 池田勇人

    ○池田国務大臣 無理はいけません。無理は絶対に民主主義から排除しなければなりません。しかし、多数決の原則はあくまで守らなければならぬ。したがいまして、今国会におきましても十分討議し、そうして問題点を国民によくわかってもらい、どう措置するかということを勇敢に結論を出す、こういうことで私は審議をお願いしたいと思います。
  406. 鈴木一

    鈴木(一)委員 十分に討議をするということは、私も賛成でございます。しかし一向に、とにかく審議されないということに対して、政府与党の責任者でもあり、また法案提出の責任者である総理の所見を承りたいと思います。
  407. 池田勇人

    ○池田国務大臣 だからこそ施政演説におきましても、また国会の答弁におきましても、たびたび早く御審議願いたい、こう言っておるのであります。
  408. 鈴木一

    鈴木(一)委員 願いたいだけでは問題が解決しないで、今日まできておるわけでございます。そのために、われわれ国民の国際的な信用の失墜も、相当大なるものがあるというふうにいわれておるわけでございますから、少なくとも審議に乗せるというふうなことに対しては、もっと国会の一切の運営の責任をしょって、各種の機関を全部掌握された自民党としては、当然これはなさなければならない責務だと私は思うわけでございます。その点はいかがですか。
  409. 池田勇人

    ○池田国務大臣 そういう方向で党のほうもいると思います。ただ具体的にいま出ていないというだけで、法案につきましても、暴力法等につきましてもまだ審議が行なわれておらぬようでありますが、やはりいま論議の中心が予算総会にあるからおくれやすいのが実情なんじゃないかと思います。
  410. 鈴木一

    鈴木(一)委員 予算委員会をやっているから、ほかの委員会が開かれないなんということは全然ないので、いままでずっとほかの委員会を開いて、ただこれだけが開かれない。もちろん委員会の設置もできずに今日までだらだらきているということであるわけでございます。ですから、予算委員会に主力を注いでおるから審議ができないなんということは、私は納得はいきません。何かほかにこの問題について原因があるからできないのだと思いますが、首相の判断はいかがですか。
  411. 池田勇人

    ○池田国務大臣 もうずっと以前からこの問題はなかなか審議に入りにくい、私から言わなくても鈴木さんはよく御存じのとおりだと思います。
  412. 鈴木一

    鈴木(一)委員 落選していて知らないのです。
  413. 池田勇人

    ○池田国務大臣 落選して御存じなければ、党のほうでお聞きになったらよくわかると思います。そういうふうないわゆる五つの法案、鉄道営業法を入れると六つでございますが、これをどういう委員会にかけるかというので非常にもましておるのであります。いま最後の結論を出す場合の静けさではないかと思います。いまに出てくると思います。
  414. 鈴木一

    鈴木(一)委員 あらしの前の静けさかもしれませんが、私たちはあらしはまことに迷惑です。これはあくまでも堂々と国会の場で審議をして、そうして結論を出していきたいというのが私たちの立場であります。ですから、あらしをだれも好きこのんで呼ぶものはないと思います。やはり偶発的にそういう空気になると思いますので、そのあらしを回避して十分審議ができて、そうして労働者にも、あるいはまた使用者にも、また政府与党にも非常に好都合だという審議の方法を私これから首相に提案しますから、できるならばひとつこういう方向でやってもらいたいと思います。  まず特別委員会の設置については、私たちはこれはけっこうだと思います。ただしかし、その委員会で審議するものは、ILO八十七号条約と公労法の改正と地公労法の改正のこの三つをやる、おそらくこの委員会は、そうもめることなく話がつくだろうと思います。これはおそらくだれも異論がないと思います。しかし、この問題になる国家公務員法、地方公務員法、鉄道営業法のこの三つにつきましては、いろいろ問題もあり、もしあらしを呼ぶとすればここにあると私は思いますので、これは、それぞれ現在ある委員会に付託して、そこで十分審議をする。そうして、どうしても一致点が見出し得ないというようなことであるならば、その際混乱を避ける意味で継続審議に持っていくことも必要でしょうし、あるいはその間審議会のようなものをつくり、それこそ公正な第三者の意見を聞いていくということも私はいいと思いますが、こういうふうに分けて審査することによって問題の解決は非常に私はしいいのではないかというふうに考えます。何もかも一緒にやって、盆も正月もみな一緒にやるのだというような欲ばった考え方が問題をただ混乱におとしいれて、その結果国際的信用を落とす結果になると思うのでございますが、いま私が首相に申し上げたわが党の態度につきまして、どのような御所見を持っておられるのか、また、私たちはただここでいま質問にかこつけて申し上げているのではなくて、過日船田議長に対しましても、そろそろこの際議長あっせんをして問題の推進をはかるべきではないかという申し入れもしているわけでございます。私たちは労働者のためにも、あるいはまた経営者のためにも、日本国全体のためを思えばこそこういうふうな提案をしておるわけでございますが、首相の御意見を承りたいと思います。
  415. 池田勇人

    ○池田国務大臣 お考えの点は承っておきますが、この前の通常国会では、たぶん全部一緒の特別委員会だったかと思います。この前の通常国会には鈴木さんおいでにならなかったようでございますが、この面は全部一緒でございました。今回はなぜ三つだけを別になさるか、御意見のほどは承りましたが、こういうことは、主としてわが党では国会対策委員会等々でいま検討していることでございます。内閣といたしましては、いかようにも御審議願いたい、こういうことでございます。
  416. 鈴木一

    鈴木(一)委員 いま首相が言われましたように、この前は一括審議であったと思います。それは、前提があったと私思います。要するに、倉石・河野会談というものがあって、大体話し合いがついたというところで一括審議をしたと思いますが、その際も、わが党としてはあくまでもいま申し上げた趣旨で、あとで鉄道営業法、それから国家公務員法、地方公務員法は分離すべきだという主張をいたしまして、議運で採決で敗れておるわけでございますが、しかし、その後自民党の内部にもいろいろと情勢の変化があって、今日ここまできておると私思うわけでございます。ですから、その自民党の党内事情の変化というものもわれわれ十分参酌して考えてみた場合に、やはり私がいま申し上げたような審議の方法が最も妥当だと思いますので、ひとつ総理は、これも勇断をもって高度の政治性を発揮して、少なくともこの問題でこの国会が混乱するようなことがないような最善の措置を考えてもらいたい。そして、すみやかに審議を促進していただきたいということを私たち希望いたしまして、この問題に対する質疑を終わりたいと思います。
  417. 池田勇人

    ○池田国務大臣 何も混乱を予想しておるわけではございません。どうぞひとつ十分討議されまして、適当な結論を出していただきたいと内閣は念願しておるのでございます。
  418. 鈴木一

    鈴木(一)委員 私は、何も混乱云々というわけではなくて、首相みずからが予算の衆議院通過も終わるところだ、ひとつ一気かせいにやるのだ、その前にいま兵器弾薬をたくわえて、静かに鳴りをひそめているのだというようなことを言われるから、私はいまそういうふうに申し上げたので、どうかひとつ、そういうふうなことがないように万全の考慮をめぐらし、すみやかに批准ができるように政府与党を取りまとめる必要があると思います。日本政府、与党さえ態度がはっきりするならば、私はこの問題の解決はそう至難ではないといま考えておるわけでございます。  それから、時間も少なくなりましたので、二、三農業問題についてお聞きしたいと思いますが、これは赤城さんにお伺いいたしますが、いろいろ問題がありました肥料二法もことしで一応期限が切れるわけでございますが、その後どのような対策を立てられるのか、野放しにしておくのか、何らかの措置を講ずるのか、その点をお伺いしたいと思います。
  419. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 野放しせいという意見の人もあります。しかし、私は全然野放しにすべきではない、こういう観点から、消費者あるいは生産者あるいは肥料審議会の委員、学識経験者等と、通産大臣とともに集まったり、あるいは個々的に意見を聞きまして、法律を提案したい、こういうことで進めております。だいぶ前に二法ができた当時とは情勢が変わっておりますが、しかし、内需を優先し、あるいは輸出の承認制というようなものを設けたり、価格の安定をもちろん考えなくてはなりません。そういう点で、できるだけやはりこまかい規制はいたしませんけれども、どうしても法律が必要だと、こういう観点に立ちまして研究を進めています。
  420. 鈴木一

    鈴木(一)委員 よくわかりました。ただしかし、この肥料は農林省と通産省の両方に所管がまたがっておるわけでございますが、長々と福田さんをそこへとめておいてまことに申しわけなかったわけでありますが、福田さんのひとつ通産大臣としてのお考え方を承りたいと思います。赤城さんと同じようなら同じで、それでけっこうです、時間がございませんから。
  421. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいま農林大臣がお答えいたしましたとおりでございます。
  422. 鈴木一

    鈴木(一)委員 いま農林大臣が言われましたように情勢がかなり変わっております。メーカーのほうが輸出の増大その他で優位な立場に立っておりますので、弱い生産者を擁護するという立場から、いま御答弁になった趣旨によって十分なる立法措置ができますように、そうしてまた、すみやかに本国会に提出されることを希望する次第でございます。  なお、もう一つ赤城さんにお伺いしたいのでございますが、この戦後、米ばかりの農業ではだめだということで、相当政府も畜産に熱を入れたわけでございます。しかし、この畜産が一向に伸びない。成長産業といわれながら、加工業者は別といたしまして、生産者である農民は必ずしも私はよかったということはなかった。一時はよかった場合もありますけれども、すぐそのあとは価格の暴落というようなことで、決して私は、この生産農民がよかったというふうなことはいえないと思います。成長産業といわれながら、依然として私は不振の状態にあると思うわけでございますが、その原因は那辺にあるのか、農林大臣の御所見を承りたいと思います。
  423. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 年産基盤といいますか、飼料の問題とかありまして、自給飼料を十分に生産する基盤ができておらない、また、自給飼料が足らない、こういう面があります。それからまた、酪農等におきまして、牛乳の価格の問題もございますが、消費面がそれほどふえておらぬ。ことに豚等におきましては、価格の不安定が非常にございますから、あるときは進み、あるときは後退する、こういう不安定があります。鶏のほうは大体順調に進んでおるようでございますけれども、これも、ブロイラーなんかの問題もいまから出てくる問題でありますが、要は、まだ前途に対しての安定性が少し欠けておる、こういう点にあろうと思います。
  424. 鈴木一

    鈴木(一)委員 私のこれに対する所見を申し上げてみたいと思うわけでございますが、やはり私は、全体的に見まして、まず価格に対する対策ができていない、私は何でもかんでも政府が全部引き受けろという議論はいたしません。やはり出産者である農民がみずからつくったものはなるべく有利に売るというふうな根性を持って、農業協同組合が中心になって働きかけていく、と同時に、価格調整も含めた保管調整機能というものを農業協同組合が持っていない、生産者が持っていないというところに大きな問題がある。したがって、まず生産者の団体で自主的に価格調整をやって、それを上回るものについては政府が救済していく、こういう措置がないところに最大の問題点があると私は思うわけでございます。農協が、いろいろと問題点があるわけでございますが、かつてはつぶれかかった農協が、今日あれだけ大きな事業分量をこなしておるわけでございます。これは、見方によってはいろいろの批判もあると思いますが、とにかくこの事実だけは相当のものであると私は思うわけでございます。こういうふうなことができる原因はどこにあるかといえば、やはり産業組合当時から調整保管機能として農協が米の倉庫を持っておるというために、今日これだけの事業分量がこなせるところまできておると思うわけでございますが、畜産に関してはほとんどそれがない。ぼつぼつそれができておるわけでございますが、まだ全国的な一つのそういう機構ができていないというところに私は最大の問題点があると思うのでございます。ですから、農協も農林省の所管ではありますけれども、そうまたこまかいことについていろいろと指図もできないかもしれませんけれども、各連合会は膨大な建物を建てている。また今度は中央団体が四十億もするようなりっぱなビルを東京に建てている。こういうふうなことも、それは必要かもしれません、事務能率を上げる意味で。しかし、もっと農協の本来の使命にかんがみて、もっともっと先に、いま言ったような、やるべきことは多々あると私は思うわけでございます。そういうことができていない。今日成長産業といわれているこの畜産が伸び悩んでいるのは、そこに私は原因があると思うのでございます。なお、先ほど農林大臣が乳牛の話をされたわけでございますが、私は、これは国の指導も悪いと思います。草も何もないところに牛を飼わせるなんてばかげた話でございます。牛は御承知のように胃を見ても、四つも胃があって、いい草を食べて乳を出すようになっておるわけであります。それを、成長産業だということで、どこでもここでも準備もなしに牛を飼わせる、こういうところに行政指導の最大の欠陥がある。そうして、牛がよくいこうがいくまいが、指導するほうは、ほかから月給をもらっておる。最後の損をするのは、責任を負うのは農民だ。ですから、せっかく国がいろんなものを奨励しても、最後には引き合わないということでみなやめてしまう、こういうことでございます。もっと牛を、畜産をやるならば、その立地状況を十分考えた上で指導する必要があると私は思うのでございます。牛は、御承知のように山野に昔はおったと思います。これを、草を食わさずに、外国から買った濃厚飼料を胃の中に詰めるからこの畜産は伸びない。牢屋という字を見ましても、ウ冠に牛でございます。家の中に牛を入れることは、自然の山野におるものをうちの中に引っぱってきて、食うべからざる濃厚飼料を食わせるからこれはうまくいかない。一事が万事、こういうのが私は農林省のいままでの農政、畜産の指導であったと思うわけでございますが、そういう点についても十分ひとつ考えていただきたいと思います。この点については、おそらく赤城さんも農業の事情には詳しいわけでございますから、異論がないと思いますが、いかがですか。
  425. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 お話は一々ごもっともでございます。農協等の自主的な動きをまた働かしたり、保管あるいは調整、そういう面もなお力を入れたいと思います。また指導の面におきましても、万全を期したいと思っております。たいへん貴重な御意見でございます。   〔松澤委員長代理退席、委員長着席〕
  426. 鈴木一

    鈴木(一)委員 以上をもって終わります。
  427. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて鈴木一君の質疑は終了いたしました。  次会は、来たる三月二日月曜日午前十時より開会し、辻原弘市君の締めくくりの総括質疑を続行いたします。  なお、三月二日正午に理事会を開きたいと思いますが、御了承願います。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時五十九分散会