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1964-02-04 第46回国会 衆議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月四日(火曜日)    午前十時七分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君    理事 櫻内 義雄君 理事 野田 卯一君    理事 松澤 雄藏君 理事 井手 以誠君    理事 川俣 清音君 理事 辻原 弘市君       相川 勝六君    荒木萬壽夫君       井出一太郎君    井村 重雄君       稻葉  修君    今松 治郎君       植木庚子郎君    江崎 真澄君       小川 半次君    川崎 秀二君      小宮山重四郎君    重政 誠之君       田澤 吉郎君    登坂重次郎君       中曽根康弘君    野呂 恭一君       橋本龍太郎君    古川 丈吉君       保科善四郎君    松浦周太郎君       松野 頼三君    水田三喜男君       山本 勝市君    淡谷 悠藏君       石田 宥全君    石野 久男君       岡田 春夫君    加藤 清二君       五島 虎雄君    河野  密君       多賀谷真稔君    堂森 芳夫君       中井徳次郎君    山花 秀雄君       横路 節雄君    小平  忠君       永末 英一君    志賀 義雄君  出席国務大臣         内閣総理大 臣 池田 勇人君         法 務 大 臣 賀屋 興宣君         外 務 大 任 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 小林 武治君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大 臣 福田  一君         運 輸 大 臣 綾部健太郎君         郵 政 大 臣 古池 信三君         労 働 大 臣 大橋 武夫君         建 設 大 臣 河野 一郎君         自 治 大 臣 早川  崇君         国 務 大 臣 佐藤 榮作君         国 務 大 臣 福田 篤泰君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君         国 務 大 臣 山村新治郎君  出席政府委員         内閣官房長官  黒金 泰美君         内閣法制局長官 林  修三君         国防会議事務局         長       北村  隆君         総理府総務長官 野田 武夫君         防衛庁参事官         (防衛局長)  海原  治君         防衛庁参事官         (装備局長)  伊藤 三郎君         防衛施設庁長官 小町  裕君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    高島 節雄君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (アメリカ局         長)      竹内 春海君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         大蔵事務官         (主計局長)  佐藤 一郎君         大蔵事務官         (主税局長)  泉 美之松君         厚生事務官         (社会局長)  牛丸 義留君  委員外出席者         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 二月四日  委員安藤覺君及び仮谷忠男辞任につき、その  補欠として小宮山重四郎君及び橋本龍太郎君が  議長指名委員に選任された。 同日  委員小宮山重四郎辞任につき、その補欠と  して安藤覺君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十九年度一般会計予算  昭和三十九年度特別会計予算  昭和三十九年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和三十九年度一般会計予算昭和三十九年度特別会計予算昭和三十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、質疑を行ないます。  淡谷悠藏君。
  3. 淡谷悠藏

    淡谷委員 きょうは池田総理に、前回特別国会質問いたしましたとおり、総理であるだけじゃなくて、国防会議議長として御質問申し上げたい。できるだけ総理みずからお答えくださいますようにお願いしておきます。  機種の選出から始まりましてさまざまな問題を起こしたロッキードF1〇4ジェット戦闘機がいよいよでき上がったのですが、その有望なパイロットとして嘱望されていました西光三等空佐が、昨年四月十日、千歳基地着陸寸前に墜落して死亡いたしました。この事件に関連してF104第二百一飛行隊長小川朗二佐が突然辞職したのであります。表向きは、部下であった西三佐の事故死の責任をとったことになっておるようでありまするが、昨年七月号の文芸春秋に載った同飛行隊長の「飛行隊長は訴える」という一文から、隊員としてふさわしくない行為として戒告処分を受けたということもあったのであります。その論文指摘されたF104ジェット戦闘機欠陥についても明らかにすべきが当然であり、 ロッキードの七人のさむらいといわれた小川二佐が、この事故は起こるべくして起こったということばも言っておるのであります。このことばにも真剣に耳を傾くべきではないかと思うのでありますが、私はそれよりも先に、池田総理国防会議議長として、小川二佐がその論文に書いた次のことばを聞いてもらいたいのであります  小川二佐はこう書いております。「目の前で部下が死に、自らもまた命を賭してF104に乗る隊、長として、生死にかかわる厳粛な職場からみたとき、航空自衛隊現状に、私は我慢ならなくなった。防衛庁重要施策の先端をゆくF104飛行隊長という職務の重要性と、隊長辞職に伴う結果のも大化と、退職後の家族扶養問題の三つとを比較したとき、私は指揮権紊乱的な現状をもっとも重いとみて、防衛庁長官に直訴を試みたのである。」というのが、その一節であります。ロッキードは、その機種選定のごたごたに関しまして当時の加藤防衛局長が辞表を出し、それは慰留されましたが、私は、ロッキードに限らず、日本防衛がいま大きな波乱と疑惑の中にあることを感ずるものであります。しかも、これは防衛庁長官に直訴して済むべきものではなく、総理は、国防会議議長池田勇人として、責任をもって解決すべきが義務であると思うのであります。すなわち、池田総理議長である国防会議は、国防基本方針を定めなければならないのであります。防衛庁長官は、内閣総則大臣指揮監督を受けるのであります。とかく、軍事は軍人以外の者のあずかり知るべからざるものという観念が軍国主義時代からどこかに残っております。これまでの防衛質問についても、池田総理は、知らぬのが当然で、あげて防衛庁長官答弁にゆだね、防衛庁長官もまた、しょっちゅうかわってばかりおりますので、事情に通ぜず、局長答弁させるのが例になっております。しかし、少なくも国防基本方針は、単なる戦争技術ではなくて、一国の運命にかかわる問題なので、総理はみずからその答弁に立つことが当然と考えます。ことに戦争技術の遊歩が、ボタン一つを押す決意一つ国民生死の大事を決定するという核戦争段階では、最高責任者任務はまことに重大であります。「遇発、誤算あるいは狂気によって、いまにも切り落とされそうなごく細い糸でつり下げられたダモクレスの核の剣のもとで、すべての男、女そして子供たちが暮らしている。」これは総理の崇敬するケネディ米前大統領が、就任してから八カ月後の一九六一年九月二十五日、第十六回国連総会で演説したときのことばでありますが、核保有国の首脳となったケネディ氏が、核戦争が荒れ狂う合い図のボタンを押すのが自分の指であることの実感から出たことばであると思います。日本は軍備を持たぬことを憲法で規定されている。しかも、その状態でこの核戦争時代のあらしの中を生き抜かねばならず、国防会議議長池田総理は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つことを目的とした防衛基本方針を立てなければならないと思うのであります。私は、こうした観点から、わが国防衛基本方針について質問をいたしますが、総理国防会議議長として、できるだけみずから立って答えられることを希望するものであります。これについての総理の御所見を伺いたい。
  4. 池田勇人

    池田国務大臣 国防会議議長として、御質問に対しましてお答えいたします。しかし、いろんなこまかい問題、具体的な問題等につきましては、防衛庁長官並びに関係職員から答弁させることにいたします。
  5. 淡谷悠藏

    淡谷委員 まず第一にお尋ねいたしたいのは、今回の米軍削減についてであります。これは前特別国会で、私から総理にも質問し、防衛庁長官並びに外務大臣にもいろいろと質問申し上げたのでありまするが、ほとんど答えられてはおりません。総理は、具体的の問題につきましては、まだどこをどうするということは聞いておりませんという答えであります。しかし、外務大臣防衛庁長官は、若干この内容についての話し合いはあるが、大平国務大臣は、「問題は米軍のことでございまして、米軍のほうから発表になるという手順になろうかと私は思います。」と答えております。さらに防衛庁長官は同じような趣旨のことを言っておるのでありまするが、この質問をしましたのは十二月の十四日です。しかも、恐れの十二月三十一日にはいち早く決定されまして、一月一日というおめでたい口に新聞に一斉にこれを発表しておる。わずか十五日余りで決定した。われわれは、国会答弁を得る前に、新聞によって知らざるを符ないのでございます。私はいま朝日新聞と読売新聞しか持っておりませんが、この両新聞記事について間違いがなければ、それでよろしい。短かい時間でやる質問でございますから、なるべく瞬間を切り詰めたいと思いますから、このまま受け取ってよければ、よろしいのでございますが、重大な誤った点がございましたら、この際総理からお答え願いたい。
  6. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 お答えいたします。  昨年淡谷委員の御質問の際は、私が答弁いたしましたとおり、日米間でいろいろ話し合いの最中でございまして、お互いの約束合意に到達するまで公表を差し控えたいという話し合いでございます。十二月三十一日に終局的に合意に到達いたしまして、日米共同声明並びに第五空軍の発表と相なったわけでございます。  なお、御指摘新聞紙報道につきましての内容でございますが、大部分事実に当たっております。
  7. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それにつきまして、総理は私に対する同じ口の答弁で、「国防会議におきましては、そういうことがきまる前後におきましてはもちろん会議を開きますが、いま国防会議を開いて防衛計画を建て直すとか、防衛計画を変更するとかなんとかいう段階まで至っておりませんので、開いておりません。」こういう答弁をしておる。この話がきまる前後において国防会議を開いたと私は思いまするが、その会議内容をおあかし願いたい。
  8. 池田勇人

    池田国務大臣 暮れの十二月二十何日かに国防会議懇談会を開きまして、いろいろ国際軍事情勢懇談をいたしました。そのときに、米軍日本での配置がえがあることが話題になりました。これは米軍の戦力を減ずるものでないというみなの意向であったので、特に国防会議として今後の防衛問題について論議することはいたしませんでした。
  9. 淡谷悠藏

    淡谷委員 国防会議国防会議懇談会では機能が違います。やはり最高の決定は国防会議を開いてなされなければならない。一体その国防会議懇談会にはだれだれが出ましたか。
  10. 池田勇人

    池田国務大臣 大体国防会議の議員ほとんど全部が集まります。しかし、懇談会として開いて、正式の国防会議ではございません。
  11. 淡谷悠藏

    淡谷委員 懇談会は決定できますか。私はできないと思う。少なくともこれくらい重大な国防に関しては、国会でもはっきり答弁をしておるのですから、なぜ国防会議をお開きにならないのか。
  12. 池田勇人

    池田国務大臣 懇談会様子によりまして、私は国防会議を開いて決定しなくてもいいという結論になったのであります。したがいまして、正式の国防会議は開きませんでした。別に変更するあれがないのでございますから……。
  13. 淡谷悠藏

    淡谷委員 国防会議懇議会を開いて、国防会議を開く必要はない、これは私ははなはだ受け取りにくいと思う。やはり正規の機関であるならば、この懇談会で必要なしと認めても、国防会議自体がどうなるかわかりませんから、これは正式に国防会議を開いて決定するのが正しい行き方だと思いますが、この点どう思われますか。
  14. 池田勇人

    池田国務大臣 それを開くか開かないかは私の考えによることでございます。したがいまして、いろいろ国際情勢を話した土、米軍配置が変更されたからといって、特に国防会議を開いて決定する要なしと私は認めたのであります。
  15. 淡谷悠藏

    淡谷委員 私はこの国会審議のあり方でさらに総理に一考をわずらわしたい。ことしの予算委員会でもおわかりのとおり、われわれは国会では十分な論議の上に立ってものをきめようと思っております。したがって、きめられた時間は正確に守る、論議十分誠意をもって尽くす、こういうやり方をとってきておるのでありまするが、それだけに、国会における答弁というものは重要視されなければならない。国会答弁が絶えず取り消されたり、行き違いを生じたり、守られなかったりしたら、これは国会正常化はだめなんであります。総理はみずから範を示されなければならない。一体それじゃなぜ答弁に、国防会議懇談会を開くと言わなかったのですか。この答弁にははっきり、国防会議を開くと言っておる。開くと言った以上は開いたらいいじゃないですか。あなたの自由だからというけれども、国会で開くと答弁しておいて、あとは気が変わったから開かぬ、これではだめです。国会答弁とは受け取れない。私は総理の明確な答弁をさらにお願いしたい。
  16. 池田勇人

    池田国務大臣 国防に重大な関係がある場合におきましては開きます。しかしその前提として、いろんな情勢を相談し合うこともあるのであります。したがいまして、相談し合ったときに国防会議を開く要なしと認めたときには開きません。だから、そのときは開くか開かぬかわからない、隣町そういうことは起こり得ることなんでございます。
  17. 淡谷悠藏

    淡谷委員 ことばはいかに自由性を持っておりましても、そのときの便宜でかってに言いくるめることは許されないと思う。あなたはそんなことは言っておりませんよ。明確に「国防会議におきましては、そういうことがきまる前後におきましてはもちろん会議を開きます」と言っておる。これが間違いだったら、間違いだと言いなさい。私は正確にこのことが解決されることを望みます。おわかりにならないようですが、速記録に正確に書いてあるのです。それで開かなかったら、総理食言でしょう。あるいは、国会答弁で何と答弁しても、あとの都合ではこれはかってに私が処理しますという気持ちなら、それでよろしい。そうでなかったら、このときの答弁は誤りですと言いなさい。
  18. 池田勇人

    池田国務大臣 このことばやりとりでどうこういうあれでございますが、米軍配置転換によって非常に重大な問題が起こりますと、国防会議を開きますと言うでしょう。しかし、その後の様子によりまして、国防会議を開くほどのこともないというときには、開かぬ場合がございます。こういう重大な問題があったら国防会議を開くか、それは開きます。要すれば、必要ならば開きます。こういうことでございますよ。だから、そういうことを言ったら、開くか開かぬかまだ事態がわからぬときに、開くか開かぬかわかりませんという答えは、私は不親切だと思う。重要な問題が起こるかもわからない、そういうときには国防会議を開くかといったら、それは開きますと言うでしょう。そのときに事柄が重要でなかったら、開くほどのことがないときに開かぬことが食言だと言うことは、どうかと私は思います。
  19. 淡谷悠藏

    淡谷委員 総理はお忘れになっておるのでしょう。大体ことばやりとりということを簡単に考えますが、国会論議ことばやりとり以外の何ものでもないじゃないですか。それ以上やったら、暴力だと言うでしょう。ことばやりとりを正確にやることが国会論議でしょう。はっきり会議録にうたってあることまで、これはことばやりとりでしようがないのだというならば、論議をしてもむだじゃないですか。たぶん総理はお忘れになっておりましょうから、私はあらためて読み上げますが、その前に私の質問としてこう言っておるのです。「これはなお論議を要する点だと思いますが、いずれにしてもアメリカとの間にもう協議が始まっておるとすれば、日本における米軍兵力削減はもはや情報の段階ではない。明らかな事実としてあらわれてまいっております。これを国防会議で議論されておるのですか。これは総理大臣にお伺いしたい。外務大臣からそのような報告があったかどうか、そしてそれに対して総理大臣はどのような対策をとっておられるか。」こういう私の賛同に対して、あなたは「いま外務大臣答えておるように、向こうの計画でございまして、まだ甘木からどれだけどうするということまでいっておりません。国防会議におきましては、そういうことがきまる前後におきましてはもちろん会議を開きますが、いま国防会議を開いて防衛計画を建て直すとか、防衛計画を変更するとかなんとかいう段階まで至っておりませんので、開いておりません。」あなたはこう言っておるのですよ。開くことがもちろんだと言っておる。それをそうでもない、こうでもないと言うならば、あなたはいたずらに詭弁を弄しているじゃないですか。まず国会における答弁責任を明らかにしてから、大事な問題の討議に入りたい。
  20. 池田勇人

    池田国務大臣 全体をお読みくださればわかると思います。そういうことが起こり、米軍配置転換がありまして、そうして重大な問題であり、国防会議を開く必要があるならば開きます。こういうことでございます。事柄が起こったら、開くか開かないかわかりませんという答えよりも、開きます。しかし、その後において懇談会を開いてみたところ、国防会議を開く要なしと認めて開かないことになった。これを食言だと言うことは、私はいかがなものかと思います。
  21. 淡谷悠藏

    淡谷委員 どうもこういうことで時間をとりたくありませんけれども、総理もやはりその当時はそう思っておったというならば、それでいいんですよ。一たん言ったことを取り消すのはいやだから何とかかんとか言うのは、あなたはことばやりとりにこだわっておるのじゃないですか。そのときにはそう思ったのでしょう。そのときにはそう思ったけれども、その後やめたのでしょう。しかも、そのときには国会答弁は頭になかった。これを私は国会軽視と言う。少なくとも国会で、国防会議はもちろん開きますと言ったら、懇談会の席上で国防会議くらい開くのに何で手間が要りますか。同じメンバー会議を切りかえたらいいじゃないですか。懇談会といっても実際は、国防会議メンバーは集まっておったでしょう。なぜやらなかったか。あなたは国会答弁忘れておった。そうじゃないですか。
  22. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど来申し上げましたように、国防会議を開く要ありやいなやということを、一応国際情勢を検討してからきめるべくやったわけであります。しこうして、懇談会におきましては、その必要なしと認めたから開かないことにきめたわけでございます。だから、国防会議を開きますということは、必要あらば開きます。こうお考えを願わなければいけません。だから、私は要がないと認めたから、開く予定であったのを開かない。それだったら食言だ、こう言うことは、私は先ほど来申し上げておるように、いかがなものかと思います。やはり一応懇談会を開いて事案の内容を十分検討して、これはやはり正式の国防会議を開く要ありやいなやということは、私の判断できめる問題でございます。開く予定であったところ、開かなくとも済むようになった。配置転換が重要な問題になるかどうか、重要な問題になれば開きます。こういうことでございます。
  23. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは食言じゃないまでも、非常にことばが足りなかったと思います。まことに残念に思っております。しかし、この会議を開いた結果、今回の米軍削減という形が国防上重大でないと考えたら、これまた違うと思います。私は非常に正大な意味を持っておると思います。この前の答弁でやはり総理は言っておるのですが、米軍削減によって甘木国防は変更する必要なしという答弁をされております。さっき防衛庁長官新聞記事がほとんど当たっておると言っておりましたが、この新聞記事によりますと、米軍板付からF102を撤退することで日本防衛の上に穴があくと言っておる。これは一体どういうことですか。米軍引き揚げによって、102が全部いなくなれば穴があくと書いてある。しかもそれは、日本で費用を全部持ちなさいということが書いてある。国会に対する報告がありませんから、新聞によるニュース以外に方法がない。これは一体どういうわけですか。
  24. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 ただいま御指摘板付の102の引き揚げの問題でありますが、これは、見ようによりましては局部的に欠陥を生ずることは事実でございます。その結果、日米間の話し合いが始まりまして、わがほうからも提案をいたしました。ちょうど104の一スコードロンが、今年の三月末日までに新田原に編成を終わります。大体地形その他の慣熟のために、これが実戦に役立つのは大体十月を見者にいたしております。したがいまして、十月までいわゆる穴のあくと申しますか、九州方面における防空体制領海侵犯に対するスクランブル意味を持っておることは、御案内のとおりであります。この点についての話し合いがまとまりまして、それは一月三十日の発表のとおりでございまして、102は引き揚げるが、横田基地から数機、十月一日までは、わがほうの航空自衛隊新田原任務達成のできるまで、その任務に服するということになりまして、この支障も解決いたしたわけであります。
  25. 淡谷悠藏

    淡谷委員 102を日本に買ってくれというようなことを言ってきたというようなことも新聞に出ておりますが、これは事実ですか。五十機あるいは七十機と言っている。価格なども一機一億三千万円から七千万円、九千万円という線まで出てきておりますが、こういう事実はありますか。
  26. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 アメリカ側からこの問題に対するある種の提案がございました。しかし、102のこの問題については、双方の合意に達するまで一切公表はしないという約束になっております。
  27. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは池田総理にまたお願いしなければならぬのですが、最近、防衛については国会自体がつんぼさじきです。国会質問しますというと、合意に達しない、軍事の秘密だ、そう言っておいて、いつの間にかさっさときまっちまっている。あなたの地元の立川で、何の騒ぎが起きておりますか、横田へ移駐ということはまだきまっておりませんといって国会答弁しておる間に、たいへんな騒ぎが起こっているじゃないですか。知っているでしょう。横川基地には来てもらいたくない、これは知りませんか、防衛庁長官。あなたの選挙区でしょう。だからろくに相談もしない、国会にはかりもしない、かってにきめちまって、事後承認の形だけで議論するということは、私は非常におもしろくないと思う。横田基地板付から来る105を来てもらいたくないという猛烈な反対運動をやっているのを、これは知らぬとは言わせませんぞ、その実態をお聞きしたい。
  28. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 まず102の問題について一言御報告申し上げておきますが、日米間で話し合いがまとまりまして、アメリカの負担で十月一日まで数機スクランブル緊急発進任務につくということに相なって、一月三十日に発表いたしたわけでございます。  なお、横田基地につきましては、昨年の御質問のときには最終的にまだきまっておりません、わがほうからも三カ条の提案をしておる最中でありまして、はっきりとお答えできなかったわけでありますが、十二月の三十一日の発表でごらんでありますとおりに、正式に105の三スコードロンは横田基地に移駐するということは決定いたしました。同時に横田基地からB57の二スコードロンは本国引き揚げと決定したとおりでございます。
  29. 淡谷悠藏

    淡谷委員 米軍の場合はそれで済んだでしょうが、移駐を受ける横田の住民はどうなっているかと私はお聞きしたい。猛烈な反対運動が起こっているんです。反対しないのは、あなたのお生まれかどらか知りませんが、福生という市だけで、あとは全部反対です。ILOの問題では、わが党の多賀谷委員質問に対してあれくらい国内出情を重視された皆さんが、この基地問題に関しては、米軍の意向は重んじますけれども、国内の事情は全然考えていない。私は、一体福田防衛庁長官並びに池田総理は、あの猛烈な横田基地における105移駐反対の運動をどうとられるか、どうされるのか、このことをお伺いしたい。
  30. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 横田基地に対しまする105移転関係について地元の昭島市の市議会が反対の決議をしたことは、御指摘のとおりであります。関係の町におきましてもそれぞれ反対の決議をとったようでありますが、この前の日曜、さらにその前の日曜に社会党並びに共産党系のいわゆる反対の集会がございました。しかしその場合でも、地元の市長なり議長、あるいは町長、議長は一人も出席いたしておりません。いわば政治的闘争には巻き込まれたくない。しかしながら、騒音によるところの地元の被害はきわめて甚大でございまして、御指摘のとおり私の選挙区でありますので、私も十数年にわたりましてこの基地問題には微力ながら全力をあげて地元の方々と努力してまいっている一人であります。したがいまして、騒音からくる被害につきましては、これは、重大な問題でございますので、イデオロギー以前の問題として、いま真剣に地元の方々とその条件につき、あるいは防音工事その他のいわば防音に対する対策、アメリカ側にとりましては有効なる消音機の設置、これも三基必ず設けるということも最近非公式に回答してまいりましたが、あらゆる点で努力をはらいまして、騒音から生ずる被害につきましては、全力をあげてこれに当たる決意でございます。
  31. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは御承知のとおり基地反対の戦い方にもいろいろなあれがありましょうけれども、この防音装置をちゃんとやって地元の態勢を固めてからということを、しばしばわれわれはこの国会でも言明を受けた。来なければ一番いいと地元は思っておるでしょう。これは総理自身も言っておられる。一体総理並びに防衛庁、長官は、地元からの具体的な要求をごらんになっていますか。
  32. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 幸いに関係の各市並びに町から全部条件が出そろいまして、先週第一回の施設庁を中心としての対策を一応案を練りまして、明日また第二回の施設庁側の具体的な対策をさらに検討いたしまして、直接、おそくとも来週あたりから関係市町村と示された条件についての具体的な話し合いを進める手順にあります。
  33. 淡谷悠藏

    淡谷委員 その要請等のうち昭島市の分を私は入手いたしましたが、一体全部の要請では予算措置はどのくらい要しますか。
  34. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 この問題につきましては各町村ごと、また市ごとに具体的な要望が出ておりますが、ただ一番大きな問題と考えられておる昭島市の堀向という一つの地区がございます。非常な騒音の被害地でございますが、これに対する具体的な案が、まだ地元の自治会その他でまとまりませんので、この点について総額がまだ決定いたしておりません。
  35. 淡谷悠藏

    淡谷委員 私は、地元の反対に対していたずらに好条件でごまかしておきながら、あとになっては何もしてやらなかったということを、内灘以来十分に知っております。横田基地に105を移駐させるということは、もともと無理であります。その無理なことから起こってきたこの反対運動をもう少し親切に取り上げて、米軍と決定する前に十分に地元の了解を得べきだと思うのですが、なぜされなかったか。地元には全然相談もなしに、了解も得ない、国会にはかるでもなし、あなた方で勝手にきめてしまうということは、これは数々ある基地闘争の最も悪例を残すと私は思う。どう思われますか。  さらにもう一つ私確かめておきたいのは、それではF102は日本で買う取ることはないんですね。買い取りませんね。はっきり伺っておきたい。
  36. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 地元に対する思いやりと申しますか、対策と申しますか、これは御指摘されるまでもなく、私は十数年来がんはっております。特にいまの立場から申しまして、全力をあげてこの懸案の解決には取り組むつもりであります。ただ、どこかで日本の国を守るという大事な任務を引き受けてもらわなければならない。この点につきましては、幸い地元のわれわれの同志の諸君は、この原則につきましてはお引き、受け願っております。したがって、条件闘争的な、いろいろな具体的な条件を提出されておるわけでございます。もちろん理想から申しますならば、まず最初にそういう手配を終えて、その上でアメリカ側の移駐を認める、これが理想的でございます。現実の問題としてはなかなかずれがありまして、困難な点もありますが、これに関して漫然として向こう側の要求をそのままのんだわけではございません。すでに九月の末に最初の申し入れがありましたときに、三カ条にわたりまして、わがほうからも防音装置の問題、あるいは駐留軍労務者の問題、さらにいま申し上げました102の問題等条件を提出いたしまして、三カ月余にわたりまして折衝して、国防省その他と話し合いがついたというのが実情でございます。
  37. 淡谷悠藏

    淡谷委員 私はなおこの問題につきましては、質問の過程でさらにお伺いいたしたいと思いますが、102のほらはどうですか、買わないんですね。
  38. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 102を買うかどらかという問題は、最初お答えいたしましたとおり、買うか買わないかはまだ決定いたしておりませんし、もちろん、これから各関係部局に十分慎重に検討させるつもりでございます。まだ決定しておりません。
  39. 淡谷悠藏

    淡谷委員 駐留軍が引き揚げるときに古自動車を売っていくような気持ちで、使い古しの102なんか売られちゃたまったものじゃないと思う。私は、これはよほど慎重に考えないと、あなたのおっしゃる国防上大きな問題を起こしますよ。私は、きょうは国防の本義についていろいろ聞きたいと思う。さらにこの問題についても関連してきますけれども、総理に伺います。これははっきり伺いますが、今度の米軍削減の理由というのは一体どうなんです。私は、報告受けてないとは言わせませんよ。国防会議懇談会も開いておるのですから。米軍日本から引き揚げるという理由は一体どうなんですか。これは私は二つあると思う。ドル防衛の立場から一つ、戦術転換が一つ、これを一体国防会議議長はどう取り上げられておるか。
  40. 池田勇人

    池田国務大臣 米軍防衛力の近代化あるいは増強等によりまして、一部のものが向こうに帰りましても、日本国防の安全性に支障ないと、こういう考え米軍も持ったのでしょう8。また日本における日本自体の防御力も相当進んでまいりましたので、いまの国際情勢から申しまして、米軍配置転換は適当である。しこうして日本の安全に何ら支障ない、こういうことで行なわれたと思います。
  41. 淡谷悠藏

    淡谷委員 私はやはり国防には、その防ぐ相手があるべきだと思うのです。相手なしに国防をやるということはあり得ませんよ。この前の質問総理はあっさり、備えあれば憂えなしと言っていましたが、何に対して備えするかが大事なんです。兵は国の大事ですよ。したがって、しばしばあなたが国会答弁されたように、共産勢力の脅威に対抗するというのが、あなたの書いたいところでしょう。共産勢力ということは何かばく然としておりますけれども、具体的にはやっぱり中国とソ連が私は目的だということを考える。これは、あなたは遠慮して言わないけれども、アメリカのほうじゃはっきり言っているのです。あなたは国連だけじゃたよりがないから、アメリカと共同防衛をするのだということをしばしば答弁されておりまするが、ここに至ったアメリカの戦術転換、これを一体どうとらえておるか、あなたの御意見を聞きたい。
  42. 池田勇人

    池田国務大臣 アメリカは世界の平和を祈念し、世界各地での安全性を確保するよう、その当該国といろいろ条約、同盟を結んでやっておるのであります。どこを敵とするとかなんとかいうことは、私の口から言うべきではないと思います。
  43. 淡谷悠藏

    淡谷委員 あなたの口から言わなければ、私のほうから言っておいてもいいのですがね。アメリカの戦略プログラムはこれまで三度変わってきたでしょう。第一回はトルーマン時代の封じ込め政策です。この封じ込めの相手はソ連でしょう。そのためには日本の軍備も増強することを望むということを言っているじゃないですか。文書的に言ったらNSC二十、NSC六十八、NSC百四十一、これはそれぞれトルーマン戦略のときに出されておる。さらにアイゼンハワーはニュールック戦略を立てた。そしてケネディになってから第三番目の戦術転換をしたのが、今回の日本米軍勢力の削減だと思うのでありますが、その点もっと詳しく総理にはお話を願いたい。
  44. 池田勇人

    池田国務大臣 アメリカの戦略転換につきましては、私は詳しく述べる材料を持っておりません。
  45. 淡谷悠藏

    淡谷委員 一体国防会議で何を議論するのですか。私は前にも言いましたけれども、文官優位の線を貫くならば、少なくともあなたは責任ある総理として、米国の戦略がどうなっておるか、ソ連がどうなっておるか、日本はどうしたら守れるか、それを具体的にすることが大臣ですよ。それがなくて国防会議議長なんてやっても、これは空位です。私はきょうは知らないと言わせない。少なくとも責任のある国防会議議長が、そういうことまで知らなかった、無関心でございますじゃ通らないと思う。どうですか、その点は。
  46. 池田勇人

    池田国務大臣 アメリカの戦略を云々しないということを言っておるのであります。日本国防につきましては、われわれはその責任の衝にありますから、随時研さんを重ねております。
  47. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それじゃ日本防衛は、アメリカにはかかわりなしに日本だけでやりますか。日本防衛日本だけでやるのですか。アメリカとの共同防衛でしょう、あなたの言うのは。共同防衛なら共同防衛の一環として、日本はどういうふうな役割りを占めるのか、全体のアメリカ作戦の中において、日本はどういうことをやるのか、このことをつかまえることが日本を守るゆえんじゃないですか。少なくとも総理に従えばです。私どもは必ずしもそうは思っていない。
  48. 池田勇人

    池田国務大臣 私は日本の防御のことを考えておるのであります。アメリカの戦略は考えておりません。
  49. 淡谷悠藏

    淡谷委員 じゃ、日本防衛考えるならば、アメリカと共同防衛をするのですか、しないのですか。共同防衛をする以上は、向こうの防衛の形を考えないで、日本防衛ができますか。
  50. 池田勇人

    池田国務大臣 日本防衛につきましてアメリカと協力をいたしておるのであります。したがいまして、日本防衛に関する限りアメリカと十分相談をしております。
  51. 淡谷悠藏

    淡谷委員 国防のことですからね。私はやっぱり慎重にまじめに答えてもらいたいと思うのです。アメリカ日本に対して軍備の増強を要求しているのじゃないですか。一九五三年に、あなたはロバートソンと会談をしておる。そのときに総理は、日本防衛力増強の義務を負う約束をした覚えはありませんか。これは文書が残っているのです。
  52. 池田勇人

    池田国務大臣 日本防衛につきましていろいろ話はいたしました。しかし、われわれはいわゆる国防会議におきまして、経済力に即応して漸増するということは、もう既定方針としてきめておるのであります。アメリカから押しつけられたというわけではございません。日本自体として考え、そうしてアメリカと協力していこう、これが安保条約を結んだゆえんであり、いまの日本国防が安全であるというもとをなすのであります。
  53. 淡谷悠藏

    淡谷委員 国防が安全であるか安全でないかは、これはあとになるとたいへんになるのです。私は今にして思い出しますけれども、最近の戦争の最後の始末です。あの世界戦争の場合、日本では日本の国の条件を全く考えませんで、クラウゼウイッツもどきの、敵を水ぎわにせん滅せんといったような勇ましいことを言ったのですが、これが惨たんたる悲劇に終わった。しかもこの惨たんたる敗戦の実態がわかると、今まで指導者みたいな顔をしておった、あるいはまた軍の秘密をたてにして、国民を全然つんぼさじきに置いた人たちが、わしも知らない、余はお飾りじゃというような調子で、全くロボットの実態を暴露したことを私は悲しく思い出すのです。笑うにも笑えず、泣くにも泣けなかったあの記憶を、私は総理にも呼び起こしてもらいたい。軍備がたよりにならないというのはおそるるに足りませんが、平和は軍備とか兵力の均衡によってのみ守られるものじゃない。その均衡平和論がすでに破綻状態になっておるということを、総理はお考えになりませんか。あなたは日本を守るには不安がないと言っておりますけれども、私たちが見ると、非常に不安なのです。国民全体も不安を感じております。それをばく然とアメリカのいうままになってたよっておれば日本の国が安全だなどというような防衛論では、私はとても満足できない。一体あなたとロバートソンと会談されましたときは、具体的に日本の軍備をどのような状態に置くといったような要求があったのですか。
  54. 池田勇人

    池田国務大臣 アメリカの正式の要求というのはございませんが、当時陸軍次官補であったナッシュ氏は、やはり一個師団三万数千人で十個師団くらいないわゆる腹案は持っておったようでございます。非公式に私に言いましたが、私はそういう考えは毛頭持ってない。一個師団三万数千という編成ならば、これは大陸作戦のような師団編成でございます。日本はそういう考えは持っていない。いかにしても陸上自衛力は最高十八万、将来いつそれを実現するか、日本としては最高十八万だ、こういうことで私は返答したのでございます。いまもその十八万という最高はずっと続けられておるのであります。また海軍のほうにいたしましても、やまやま十四、五万という考えを私は持っております。また飛行機のほらはなかなかむずかしいのでございまして、飛行機につきましては、私はこれという腹案はその当時持っておりません。この会議というのはほんの非公式のあれでございまして、私も政府代表として行ったわけではございません。当時政調会長でございましたが、出張命令その他で政府代表として行ったのではございません。単なる個人として、アイゼンハワー政権ができました関係上、新政権の意向その他を探りに行ったというので、公式の会談ではないのであります。
  55. 淡谷悠藏

    淡谷委員 さらにマクナマラ氏が、下院の演説でも日本の兵力の増強を希望しておるようであります。私はそこにいまの米軍削減の真意というものを、総理にもう少し深く認識してもらいたいと思う。これは従来の前衛基地をつくるという米軍の姿が変わったためじゃないですか。日本にもろ前衛基地としての必要は感じなくなった。特に漸次駐留軍を引き揚げて別な兵器に変えようといったような構想があるということは明らかなんですが、総理の認識はその点どうですか。
  56. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申し上げましたように、兵備の近代化等によりまして作戦様式が変わってくることは、これは自然の数だと思います。私はそういう意味で、日本の駐留軍を削減したり、あるいはまたヨーロッパ方面におきましても、そういう措置をとるようになると考えておるのでありまして、これが防衛力の削減防衛力が減ってきて危険だとか安全性が保ち得ないというふうなことにはならない。そういう前提のもとにいろいろ配置がえをすることは、これは、自然の数だと思います。
  57. 淡谷悠藏

    淡谷委員 総理はずいふん詳しいようですから、さらに私は安心して質問を続けますが、一体アメリカの核武装の量、ソ連の核武装の量、これはもろ限界飽和点を越したといったような状態になっていることは、これはお認めでしょう。したがって従来のようにせん滅作戦はやらない、都市無差別爆撃みたいなことはできない。したがって基地をたたくという方針に変わってきたのは事実でしょう。これはお認めになりますか。軍事基地をたたく、戦力を減らす、これによって戦争を抑止するといろ抑止戦略に変わってきていることは明らかなんですが、これはお認めになりますか。
  58. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申し上げましたように、アメリカとソ連との核の持ちよう、核兵器の装置場所、そして作戦等につきましては、私は寡聞にして存じません。
  59. 淡谷悠藏

    淡谷委員 国防会議議長が寡聞にして知らないというのはたいへんな重大事ですが、一体日本国防はだれがきめるのですか。国防会議議長が寡聞で向こうのほうの軍備の状態あるいは戦略、戦術を知らないということになれば、どこが一体日本国防基本方針をきめるのです。国防会議法にはちゃんと総理がきめることになっておるのですよ。それが知らないじゃ、あなたもやはり大体が余はお飾りじゃの部ですか。こんなたよりない国防がありますか。だれが基本方針をきめるのですか。
  60. 池田勇人

    池田国務大臣 日本国防につきましては、われわれはアメリカの協力を得まして安全性を保つよう努力いたしておるのであります。アメリカの軍部とソ連の軍部、その他イギリスのほうのミサイルの配置状況その他につきましては、私はここで申し上げるととはできません。
  61. 淡谷悠藏

    淡谷委員 そんなことは別に申し上げられないことでもないのです。みな大体が全部申し上げておることなんです。いま大体、しかもはっきりした数字が、これは核兵器のことですから、もうつかまらなくても一人当たり爆薬に直して二十トンくらいの保有量があるわけです。全世界の人一人に二十トン、これはもうまさに超殺人の兵器になっておる。この状態ではお互いに倒れるから何とか戦術を転換しようというのが、いまのアメリカの構想なんでしょう。こんなことどこで一体調べるのですか。国防会議ですか、あるいは防衛庁ですか、外務省ですか、幕僚会議ですか。国防基本方針がないじゃないですか。国防基本方針がなくてどうして予算を要求するのです。これは予算むだ使いですよ。備えあれば憂えなしなんというばく然とした考え方でばく大な国費を使うことは許されません。国防基本方針は一体どこできめるのか、重ねて総理にお尋ねします。
  62. 池田勇人

    池田国務大臣 日本防衛につきまして、アメリカの協力の程度を考え、そして予算を要求するのであります。そこで、各国のこまかな核装置その他につきまして私は知るよしもがな、こう言っているのであります。ただ、アメリカの協力があります関係上、随時世界情勢につきましては話し合いはしております。
  63. 淡谷悠藏

    淡谷委員 話し合いはしているのでしょう。そうしたならば、当面アメリカ日本の駐留軍を引き揚げてどういう戦術をとろうとしているか話し合いはしたんでしょう。秘密じゃないでしょう。わかっているでしょう。ビッグ・リフト作戦、輸送力の増強によって作戦は変わってきている。しかも非常に兵器が発達したので、あらわれた基地ではあぶない、だから原子力潜水艦によって海底深く沈めて秘匿された基地によって戦おうというのがアメリカの戦術じゃないですか。総理どう思います。そこに基地を撤収しても原子力潜水艦その他の秘匿された基地によって戦おうという、アメリカの戦術が転換されたのではないですか。これはどうです。
  64. 池田勇人

    池田国務大臣 それは前から言っているとおりでございます。兵備の近代化等によりまして、前線基地と申しますか、あるいはヨーロッパの基地、日本の基地に、いままでのように兵力を置かなくても輸送その他の関係で十分安全性が確保できるということでやったということは、前から言っているとおりであります。
  65. 淡谷悠藏

    淡谷委員 少なくともアメリカとの共同防衛に立って日本を守るというならば、アメリカ日本を守るためにどういう作戦をとるか、戦術をとるか、このことははっきりしておかないとわれわれは安心できない。都市の爆撃はやめて基地をねらってたたくということになった場合に、一体横田はどうなりますか、福田防衛庁長官日本は。ボラリス潜水艦を持たぬでしょう。日本の海軍は一体——海軍と言って悪ければ海上自衛隊ですが、戦う力は実際持っていないでしょう。パトロールするだけでしょう。その場合に陸上自衛隊あるいは航空自衛隊はあるでしょうが、アメリカの非常に進歩した核兵器を持った武装に対しては武力となり得ない。——なり得たらこれは憲法違反ですから、なり得ないでしょう、だんだんなるかもしれないが。そうなると、前線基地として意味を失った日本が、何か起こった場合は、アメリカ国防の前衛線として残されて、むき出しのままでたたかれるという危険性はありませんか。都市をたたかないというような方針が立ったときに、なぜわざわざ東京都の近くに新しい基地を設けようとするのですか。なぜこれを承認したんです。アメリカがほんとうに日本を守るためならば、まず日本の中心である東京都というものを敵の空襲から救わなければならない。それを最も空襲の可能性のある基地をわざわざ東京のそばに近づけるということに対して、防衛庁長官、何か話をしましたか。総理はむろん話をされなかったでしょう。全然逆行じゃないですか。アメリカ日本を守るというけれども、守っていないじゃないですか。これはどうです。
  66. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 ただいま言及されました、日本の基地がある一国からたたかれるという前提でございますが、私どもは、そういう場合は全面戦争的な様相を呈するのではないか、そういうことは考えておりません。むしろ横田基地は帝都防空の一つの中心の重要な任務を帯び、同時にまた中央部に位しますので、府中には、御承知のとおり、総体の総司令部がございます。いろいろな意味合いで、むしろ日本を守るために、自衛のためには有効であると考えております。
  67. 淡谷悠藏

    淡谷委員 おかしいですな。全面的戦争でなければたたかれない、しかし、この帝都を守るためにあそこに自衛隊を置くのだ。火事が起こるのが心配で油をそばに置くようなものじゃないですか。基地があるからたたかれる可能性がある。  一体、戦争なんというものは、そう無意味に起こるものじゃないと思う。それは核戦争時代になって、ちょっとした機械の狂いから起こることがあるかもしれませんが、つとめて警戒している。戦争が起こるのには大体三つの原因があるといわれているのです。原因なしの戦争はありはしません。一つの原因は、相手国の政治体制に求めるもの。つまり、西側では、共産主義的な独裁体制が悪いからこいつをたたきつぶすまではやるのだという全面戦争の体制。東側では、資本主義体制をぶちこわしてしまうまではやめないという戦争体制、これが一つ。もう一つは、国と国との利害関係から発生する戦争。これは話し合いでも外交交渉でもきまるでしょう。もう一つは、人間は本来戦争が好きだということがあるのですが、いまの核兵器段階では、もう少なくともなくなったでしょう。  アメリカの最初の戦術は、封じ込め作戦からニュールック作戦、ことごとくが対ソ戦争です。共産主義体制をたたこうという体制です。日本もその自由主義陣営についたんでしょう。これはどうですか。アメリカに頼ってやるというならばそれしか方法がない。総理、この点はどうですか。
  68. 池田勇人

    池田国務大臣 質問の点がはっきりいたしませんが、われわれは、自由主義陣営の一員として世界の平和を守ろうとしておるのであります。そして、世界の平和を守るのみならず、日本の安全を確保しようとしておるのであります。
  69. 淡谷悠藏

    淡谷委員 総理は、さっきからの答弁で、アメリカの戦略に頼っていさえすれば日本は安全だという迷信を、持っている。しかし、私は、ここに一九六一年の「防衛年鑑」を持っていますが、この中に、佐伯さんといういまの研修所の所長さんが書いた中立政策に対する反対論文がある。この論文を読んでみますというと、明らかにアメリカがこわいからアメリカにつくのだという論法ですよ。中立を堅持すればアメリカにたたかれるかもしれない。ユーゴの例を見てごらんなさい、それが正しい、とこういうのです。ですから、アメリカにくっついて日本防衛を完備するということが書いてある。あとでゆっくり読んでごらんなさい。もうお読みになったでしょうけれども……。アメリカにべたぼれになって、そのまま無批判にくっついていっても日本防衛は完全じゃないと私は考える。  たとえば、今度の作戦を見てごらんなさい。アメリカは駐留軍を引き揚げる。豪族を引き揚げる。つまり、この戦いは非常な縦深の深さを考えている。社会主義体制の諸国家には離れちゃう。その最も近い、縦深の浅い国はどこかというと、日本なんです。中共もしくはソ連と境を接している。少なくともアメリカの自由主義体制にくっついている以上は、ちょうど国境線なんです。そこに全面露出した日本の軍備というものがあった場合は、最もたたきやすいのじゃないですか。日本はたたかれる意味はないでしょう。アメリカ防衛にくっついて同じ軍事につながるものであれば、これはたたかれる可能性が出てくる。   〔委員長退席、青木委員長代理着席〕 その場合に、帝都を守るどころか、むしろ帝都を滅ぼすもとになるのが横田の基地だろうと私は思う。一体、日本の持っておるものでもっていまの核戦争を防げるということを考えるのですか、まじめに。何も全面的な核戦争に備えたものじゃないでしょう。全面的核戦争が起こる前に日本が爆撃される可能性がありますか、一体。総理、どうですか。私は、やはり国防の本義は、あなたがいくら知らないと言われましても、ここまで突き詰めて考えないと論議にならぬと思う。全面的な核戦争が起こらない場合日本が爆撃される可能性がありますか。ないでしょう。どらですか。
  70. 池田勇人

    池田国務大臣 そんな全面的核戦争が起こらない場合に日本が襲撃を受けることが、核兵器で襲撃を受けることがあるかないかという問題でございますが、私は、そういうことはいまここで論議してもせんないことだと思います。われわれは、そういう核戦争が起こらないように努力することがわれわれのいまのつとめでございます。
  71. 淡谷悠藏

    淡谷委員 核戦争が起こらないか、起こることは無意味だということは、どうも私は聞き取れない。起こる可能性があるから防ぐということが起こってくるのです。起こる可能性がなければ、これは防ぐ必要がない。起こるか起こらないかの論議は決してむだな論議ではありません。私は、そういう点にも非常に総理国防観念の甘さを考える。しかも、アメリカ軍が日本を撤退したあとにいまのような形の自衛隊の軍備を残し、アメリカF105爆撃機なんかを置いて、これは安全性を増すのですか、少なくするのですか。私は、少なくすると思う。アメリカは、このF105を未来永劫日本に置くつもりですか。話し合いはどうです。
  72. 池田勇人

    池田国務大臣 F105を未来永劫に置くか置かぬか、とにかくわれわれは、安保条約によりまして共同して防衛する。F105の問題ではございません。とにかくアメリカ日本と協力して日本防衛するということでございます。兵器の変化によりましては、また別の兵器が来るかもわかりません。しかし、それは日本の安全と防衛ということできまることでございます。
  73. 淡谷悠藏

    淡谷委員 総理はこのごろよく大国意識を発揮されますけれども、防衛も大国並みにやろうというお考えなんですか。私は、その点は非常に大事なことだと思うのです。憲法第九条の規定を持っておる日本と、これを持っていないほかの国々と同じ防衛観念でいったら、これはもうたいへんなことになると思う。やはり日本独自の防衛観念があるべきだ。その点はどうですか。
  74. 池田勇人

    池田国務大臣 日本独自の防衛は、いまの安保条約体制で行こうとしておるのであります。大国とかなんとかいらのは、これは軍事力だけでとやこう言うべきではないと思います。
  75. 淡谷悠藏

    淡谷委員 私は、総理ほどいまの米軍削減、戦略転換を軽く見ておりません。これはやはり戦略体形の大きな変化であり、したがって、日本防衛観念、防衛基本方針もこの辺で変わるべきだと私は思う。一体、米軍日本から随時基地を引き上げようという構想は、つまり、常時駐留から有事駐留に切りかえようという安保条約の上の動きがあるのではないですか。これはどうです。有事駐留に切りかえようという気持ちはないのですか。
  76. 池田勇人

    池田国務大臣 前から、日本の自衛力の増強に従いましてアメリカの駐留軍が減るということは、一応の目安としてはわれわれ持っておるのであります。ただ、その程度等は、やはりあくまで日本防衛の安全性ということを考える、と言っているのであります。
  77. 淡谷悠藏

    淡谷委員 そうして、いま軍が引き揚げるのは、この前の質疑応答でも明らかにされたとおり、事前協議によるのではなくて、これは随時協議の段階だ、その随時協議をされたんでしょう。一たん引き揚げ米軍がまた日本へ入ってくるときはどういう協議形態をとるのですか。かりにいま全部引き揚げまして、それがまた日本へ入ってくるときは完全に有事駐留に切りかわるのですか。この点どうですか。
  78. 池田勇人

    池田国務大臣 これは、安保条約の規定によりまして、重要な装備の変更ということになれば、もちろん事前協議になることは当然でございます。
  79. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは装備の変更ですか。出ていくときは随時協議ですよ。今度は向こうのほうが入ってくる。これは一体何によるのですか。
  80. 池田勇人

    池田国務大臣 装備並びに配置でございます。配置のほうで事前協議に相なります。しかし、それもやはり兵力の量による、数量によることでございます。大体一個師団的のものは事前協議ということに、前から申し上げているとおりであります。
  81. 淡谷悠藏

    淡谷委員 一個師団以下のものは一体どうなりますか。これは自由かってに出入りができるのですか。
  82. 池田勇人

    池田国務大臣 それは大体の目標をそうやっておるのでありまして、事前協議に相なるかならぬかということは、そのつど両者できめることと思います。大体の目標としては、重要な装備あるいは配置につきましては事前協議をする。しかし、それは重要でございますから、その点はお互いで相談し合うことになると思います。
  83. 淡谷悠藏

    淡谷委員 非常に科学的な兵器が使われて、ボタンを押してから十分か五分のうちに相手国を爆砕するというような兵器になっている場合、大体だの、およそだのではもう議論になりません。数字に詳しい総理ですから、もっとはっきりしてもらいたいのですが、一個師団以内のものはやらないという言い方をしていますが、その連中が入ってくる可能性は多分にあるでしょう、105なんかも日本に残した限りは随時入ってくるでしょう。一たん引き上げたものは随時協議、今度入ってくるときはまた随時でやりますか。やるならやるとはっきり言ってください。
  84. 池田勇人

    池田国務大臣 重要な装備・配置の場合におきましては、平面協議になる、こう言っておるのであります。こまかい問題につきましては、随時協議かどうか、そのときによってきまるべき問題で、いまの方針は先ほど申し上げたとおりであります。
  85. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それじゃ、いま日本から撤退する米軍の数というのは、大体この間新聞発表されましたように、はっきりきまったのですね。これ以上また削減しますか。
  86. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 昨年十二月三十一日、並びに本年一月三十一日の共同声明、並びに第五空軍の発表以外には、いまのところそういう話はございません。
  87. 淡谷悠藏

    淡谷委員 青森県三沢の駐留軍は撤退しまして、それにかわって別な形でまた入ってくるというのですが、これは協議したのですか。家族も全部引き揚げてしまって、飛行機を訓練するために入れてくれる。これは出入り自由ですか、往来自由なんですか。
  88. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 三沢基地のF100の問題でありますが、おそらくドル防衛というのが大きな意味合いだろうと思います。淡谷委員が御専門でよく御存じのとおりに、一年以内ですと家族の呼び寄せは禁じられておりますので、ローテーションの形でやるということになったわけであります。
  89. 淡谷悠藏

    淡谷委員 私の聞きたいのはそこじゃないのです。総理、あなたのいまの答弁に従いますと、日本の国から出るときには随時協議、出たものが入るときには事前協議。三沢の場合も、一たん出たものがまた随時入ってくるときは、これまた全部事前協議やりますか。ただし、一個師団以内だからやらなくてもいいという意味ですか。一個師団以内の兵力ならば自由かってに往来していいのですか。その点総理からはっきり聞きたい。
  90. 池田勇人

    池田国務大臣 これは、この前本委員会等でいろいろ議論になりましたように、重要な装備・配置の変更のときには事前協議でございます。ただ、日本の兵力が出ていく場合、それがたいして影響がないというときには、事前協議じゃなしに随時協議ということになるのでございます。今後日本国防その他に非常に重大な影響がありますというときには、随時とか事前ということじゃなしに、根本的にやはり十分協議しなければならぬ問題であるのであります。
  91. 淡谷悠藏

    淡谷委員 どうもその点がはっきりしないのですが、私の言うのはもっと具体的な問題ですよ。いま米軍削減によって出ていきますね。三沢でも、あるいは板付の基地からでも、三沢の場合には特にすぐ入ってくる。これは一個師団以内だから、出ても入っても、出るときには、随時でしょうが、入る場合にも事前協議でなしに随時自由かってに入ってきてよろしいという意味ですか。
  92. 池田勇人

    池田国務大臣 一部分の交代というのは、事前協議に私は入らぬと思います。そしてまた、いまのそこへ定着しておったのが随時行ったり来たりするのは、やっぱり随時協議でいいんじゃないかと思います。その方針でいっておるのであります。あなたのお聞きになろうということはどういうことなんですか。全部引き揚げるとかなんとかいうことになるとたいへんでございますから、そういう日本防衛につきまして重大関係のある配置・装備の変更につきましては、もちろん事前協議ということに相なるのであります。
  93. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは総理おわかりにならないんじゃないですか。三沢の実態というのは、新聞を読まないのじゃないですか。青森県三沢空軍基地においては これまで常駐していたF100戦闘飛行隊は米国に帰る。全面撤退です。戦術空軍指令部の非常駐戦術戦闘飛行隊がこれにかわるというのです。このかわってくるのは交代だから事前協議は要らぬというのですが、性格がかわってくるのですよ。装備がかわってくるのですよ。これでもやっぱり事前協議は要らないというのですね。
  94. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 いまお話しの三沢基地のF100戦闘機は、常時駐留の制度を改めまして、御指摘のとおり、ローテーションで、交代制でやる。これはドル防衛の見地から申し出がありました。しかし、防衛力全般には影響がない、したがって交代制をとる、そういうことでございます。
  95. 淡谷悠藏

    淡谷委員 われわれは安保条約の場合に心配したのはそこなんです。初めはいろいろなことを言いますけれども、ローテーションという形で各地にこれが行なわれましたら、これは常駐から有時駐留にかわってくるはずじゃないですか。日本を留守にしておいて、何か事があった場合にはやってくる、そういうふうな形になっていくおそれがありますが、それはどうですか。
  96. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 これも淡谷委員がよく御案内のことと思いますが、ドイツの例から見ましても、六個師団はやはりそのまま米国とドイツの話し合いで存置しております。したがいまして、兵器の発達あるいは兵力展開の非常な速度化、あらゆる条件が発展しつつありますが、日本におきましても、三沢の点は局部的なローテーションの採用でございまして、まだいわゆる全面的に常時駐留を改めて有時駐留という形には相なっていないと考えております。
  97. 淡谷悠藏

    淡谷委員 そこらが一つのわななんであります。私の心配するのは、一個師団以内だとか、兵器の発達とかという形で、ワクは同じように見えておっても、次第に、米軍日本を押える形、あるいは日本の防備の形態がかわっていくということを考えるのであります。日本は、やはり憲法第九条がありますから、防衛には限度があると思う。限度があるために米軍にたよってやろうという気持ちなんです。核武装はしないということをしばしば言いましたが、核武装はしないでしょうね。総理、あらためて私は言っておきたい。変わると困りますから。あるいは米軍が核兵器を持ち込むことを現実に断わるでしょうな。
  98. 池田勇人

    池田国務大臣 従来申し上げておるとおりであります。
  99. 淡谷悠藏

    淡谷委員 従来は、核武装はいたしませんということを言っております。しかし、いまのようにローテーションという形でいつの間にか入ってきたのでは、核武装を持ち込んでおるか持ち込んでいないかは、アメリカを信頼する以外に道はないのですね。これを調べる権利は日本にはないでしょう。日本の場合、ただアメリカを信頼しておまかせ申し上げるということですね。
  100. 池田勇人

    池田国務大臣 われわれは、条約上の義務はアメリカ日本も同様に守ることを確信いたしております。
  101. 淡谷悠藏

    淡谷委員 だから、私が言ったとおり、アメリカの核武装を持っておるか持っていないかは、これはアメリカを信頼する以外に方法はないんだというふうに考えてよろしいんですね。念のために申し上げております。
  102. 池田勇人

    池田国務大臣 そのとおりです。われわれはアメリカを条約を守る国だと考えております。
  103. 淡谷悠藏

    淡谷委員 一体、いまの核武装の兵器と、非核武装の兵器の区別はどこでつきますか。核弾頭をつけない限りは核兵器じゃないなんという解釈もあり得るのですから、だんだん両用兵器に変わりつつあるでしょう。バズーカ砲だって核弾頭を持てるでしょう。しかも、兵器の第一線には核兵器が立っておるでしょう。常識から言って、ポラリス潜水艦の例を言いましても、核弾頭を持つべきものが核弾頭を持たないということは、これで一体防備になりますか。ごまかしているんじゃないですか。そうしておけばいいという気持ちじゃないですか。
  104. 池田勇人

    池田国務大臣 何もごまかしておるわけじゃございませんよ。核武装をしないし、また、核兵器は日本に持ち込ませないということは、はっきりしておる事実でございます。
  105. 淡谷悠藏

    淡谷委員 いまの一個師団以内の兵力が自由に交代し得るというこの条約の不安、さらにまた、もう一つは、何か極東における平和と安全が脅かされた場合、軍事行動に出る場合、日本に置かれた様々な米軍の施設あるいは米軍の兵力がどこか他の一つの土地におりて、それから飛び立つんじゃ事前協議の対象にならないという一項もあります。結局、三沢でも横田でも飛行機が飛び立って、ちょっと沖繩に瞬間タッチして極東範囲に行くならば、これは自由自在に飛べるという解釈ですね。これはどうですか。非常に大事なことなんです。有事駐留に切り変わればなおさらあぶない。飛び石作戦みたいなものですね。これはどうですか。
  106. 林修三

    ○林政府委員 これは安保条約のときにずいぶんお答えしたことだと思うのでございますが、付属交換公文で、いわゆる事前協議の対象としての、日本を基地としてのいわゆる戦闘作戦行動、この意味でございますが、いま瞬間タッチとおっしゃいましたけれども、途中でたとえば給油だけしていくというものは、これはもう当然軍事行動だと考えられると思います。しかし、問題になりました、たとえば基地を移動するというようなことは、これは基地の移動でございまして、別に日本を戦闘作戦行動の基地とするということとは違うと思います。結局その実態によってきまってくることと思います。
  107. 淡谷悠藏

    淡谷委員 池田総理、一体、これからの近代戦争は、何か事が起こった場合に事前協議などやっておるひまがあると思いますか。たとえば不幸にしてソ連とアメリカの間に何か起こる。片一方がボタンを押す。そのときに、どうしても日本を通って行かなきゃならない作戦の必要があって、事前協議を求めておるひまがあるとお思いですか。常識の問題ですよ。法令でも何でもない。
  108. 池田勇人

    池田国務大臣 常識上われわれは事前協議をするものと条約できめておるのであります。それが常識外であるかどうかということは、国民全般が判断いたしましょう。
  109. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これはもう非常識な話で、常識じゃないですね。これはもういまの防衛観念の常識ですよ。だから、私は、劈頭に読んだとおり、ケネディ前大統領のことばも引いておいたんです。あなたの指一本にはかかっていないでしょう、核武装しないんだから。しかし、少なくとも核保有国では非常にその点心配しておるんです。できない約束じゃないですか。私は、できない約束だと思う。核戦争の場合、有事駐留、あるいは有事の動員の場合、事前協議なんかやっておる時間はないじゃないですか。これはもう一ぺん考えてみてください。事前協議をやるということを言ってくるかもしれません。それをやっているひまがありますか。そういう場合に、何か緊急措置でもとられるのですか、事後承認ですか。
  110. 池田勇人

    池田国務大臣 われわれは日本の平和と安全ということにつきまして非常に考え、しかも日本が作戦基地になることをわれわれは防止しようという国民的気持ちから、事前協議ということを入れておるのであります。うっかり世界戦争に巻き込まれることは、できるだけわれわれの頭の考え得るところでひとつ避けようというのが、事前協議の精神だと思います。
  111. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これ以上だめ押しをしてもしようがありませんから言いませんけれども、これは、もう少し、国防会議議長としては、現在の戦争科学なり兵器の発達なりを具体的におつかみになって、日本防衛はこれでいいかということを真剣に考え直す必要があると思う。そんな、いまの段階で、ボタンを押してから事前協議なんて段階じゃないということは、これはもうごくあたりまえな常識で、子供でも知っていますわな。総理が知らないだけの話です。知らないふりをしておるだけなんです。おわかりでしょう。これはもっと真剣にお考え願いたいと思う。  さらに、いろいろな外交政策を通じまして、総理もしばしばこの国会答弁で言いはずすことがあるように、国連だけじゃたよりがないから何らかの軍事同盟を結んでやらなければならないといったような口吻、その端的なあらわれとしては、アメリカとの間の軍事同盟みたいな安全保障条約ですが、一体、韓国に対して、いろいろ議論はありましたが、率直に申し上げますが、去年韓国に四万トン食糧供与をしましたね。これは総理はおわかりですか。無償供与で四万トン、二十億円出していますね。これは一体どういう経路で出されたのです。
  112. 池田勇人

    池田国務大臣 これは、韓国が不作によりまして食糧事情が非常に悪いということを聞きましたので、私としては隣人のよしみからそういう措置をとったのであります。
  113. 淡谷悠藏

    淡谷委員 韓国に食糧事情が悪くなったという事情は起こりましたが、おととし韓国から十万トン米を買い入れましたね。十万トン買い入れたら食糧事情が悪くなるのはわかっておったじゃないですか。自分たちが食糧を買ってきておいて、食糧が不足したからといってまた四万トンやる。一体これは何なんです。国の金というのはかってに使っていいのですか。買ってさておいて、食糧欠乏の状態を呈さしておいて、食糧が欠乏したからまた二十億円贈る、こんなことは一体許されますか。
  114. 池田勇人

    池田国務大臣 おととしは、不作でなくて、韓国の食糧事情は悪くなかったのでしょう。だから日本は輸入したのであります。しかし、その翌年に非常に不作になって困っているというときには、私はやはり日本としてはそういう措置をとることが適当じゃないかと思ってやったのであります。
  115. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは、二十億円供与するのは、どういう手続をとりましたか。食糧ですからね。
  116. 池田勇人

    池田国務大臣 これは外国から輸入するはずのものを向こうへ回したりしたと思います。詳しくは事務当局からお答えします。
  117. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 昨年の米は、韓国が非常に米の事情が悪かったので、台湾から韓国の方へ直送するというか、そういうことにいたしました。
  118. 淡谷悠藏

    淡谷委員 小麦はどうしました。米が二万トンに小麦が二万トンですよ。台湾から小麦は買わないでしょう。
  119. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 米が二万トン、小麦が一万三千五百トン、小麦粉が六千五百トン、こういうことになります。
  120. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それはどこから買ったのです。国内のものをやったのですか。
  121. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 小麦粉だけが国内のものでございました。
  122. 淡谷悠藏

    淡谷委員 小麦はどっちです。
  123. 佐藤一郎

    佐藤(一)政府委員 お答えいたします。  米は台湾から買い付ける予定のものを回しまして、それから、小麦はアメリカから買い付ける予定のものを回しました。小麦粉は日本の国内で手当てしました。
  124. 淡谷悠藏

    淡谷委員 小麦は食管を通さなければ売れないということがあって、小麦からとる小麦の粉だけは自由に売ってもいいというのは、一体どういうわけなんです。小麦の粉は自由に売ってもよろしい、小麦だけは食管法に縛られるというのです。親がいけなくて子供がいいというような気持ちなんです。これはどこにこういうことがあるのです。それはもう法律はそうなっているかもしれませんがね。趣旨はどうなんです。小麦粉は自由に売ってもよろしい、食管法に縛られない、これは、赤城さん、おかしいじゃないですか。
  125. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 お答えいたします。  小麦粉は、いまお話しのように、食糧管理法上の規制はないわけでございます。小麦については、政府で管理したのじゃなくて、日本赤十字社で買って、そうして韓国のほうに出した、こういうことになっております。
  126. 淡谷悠藏

    淡谷委員 赤十字で買ったのですか。赤十字は一体自由に外国の小麦を買えますか。これは商人ですか。しかも、私の質問は、小麦粉が自由で小麦は自由じゃないという法的根拠を問うておるのです。
  127. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 小麦につきましては、米国小麦を日本赤十字社が直接海外で買い付けまして、大韓民国へ贈与したものであります。食管法の第十一条の米穀または麦の輸入には該当しないので、この食管法十一条の統制とは関係ない、こういう見解でございます。
  128. 淡谷悠藏

    淡谷委員 赤十字社は外国の品物を外国で買って、これを自由によその国へ贈ることは許されるんですね、厚生大臣どうですか。赤十字社の規則の中にそんなことがありますか。かってにものを買い付けるという機能がありますか。
  129. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 厚生大臣、いないようですから、私の見解を申し上げますと、赤十字社が商売をするというか、買ってもうけたり損をしたりということは、これは赤十字社の本旨に反すると思いますけれども、一つの法人でございますから、権利主体として人格を持っておるのですから、買うことは差しつかえない、こう思っております。
  130. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これはまあ農林大臣の答弁ですから厚生大臣には別に聞きますが、それは赤十字社はできるというんですね、海外でものを買うということは。自由に買えるんですね。それからいろいろな管理規定もあるでしょうし、ものによっては規制もあるでしょうけれども……。
  131. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 これは、私の見解でございますけれども、私は何でも買えると言うわけではない。やっぱり赤十字の設立と言いますか、仕事の本旨に従ったことでやっていくということは、これは別に違法でもないし、あり得ることだ、こう考えます。
  132. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これはやっぱりはっきりさしておかなければいけませんから、厚生大臣をお呼び願いたいと思います。この問題をきめたいと思う。
  133. 青木正

    ○青木委員長代理 間もなく参ります。
  134. 田中角榮

    ○田中国務大臣 韓国に贈った米は、御承知のとおり、厚生大臣の請議に基づいて予備費を支出をし、厚生省から赤十字に交付をして、赤十字が物品を救恤品として購入し、韓国に交付をしたものであります。赤十字の業務は一体何でもやっていいのかというのは、御承知のとおり、赤十字法の第一条に基づきまして、その第二十七条の第四号「前各号に掲げる業務のほか、第一条の目的を達成するために必要な業務」として、物品の購入はできるわけであります。
  135. 淡谷悠藏

    淡谷委員 物品と言いますが、これは食糧に関するものですから、日本の食糧管理法の問題もありまするし、これは厚生大臣から責任のある御答弁をお願いしておきます。
  136. 林修三

    ○林政府委員 ただいまの赤十字社との業務の関係は、大蔵大臣がお答えになったとおりでございまして、要するに、これは救恤品として赤十字社がやったことでございまして、これは赤十字の業務の範囲だと思います。  それから食糧管理法との関係につきましては、先ほど来大蔵省からも答えておりますとおりに、いわゆる米と小麦を海外で赤十字が買い付けた問題でございます。小麦粉については、さっきからお話がございますように、食糧管理法上の統制物資になっておりません。そういうことになっております。   〔青木委員長代理退席、委員長着席〕
  137. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 厚生大臣、参りました。
  138. 淡谷悠藏

    淡谷委員 いま厚生大臣がお留守のとき、韓国に送った小麦と米がございますね、これはどういういきさつで送ったのかお聞きしたわけなんです。お答えを願います。
  139. 小林武治

    ○小林国務大臣 米の問題は、韓国が非常に食糧の不足を来たしておる、こういうことで、いろいろのお話がありまして、この問題は、韓国が日本のあっせんのもとに台湾から米を買われた、こういうことでこちらの手を通しておらない、こういうことであります。  なお、小麦粉の問題につきましては、これは日赤が買って入れた、これは食管会計の問題もありますが、食管会計に入れないでこういう行為をしておる、こういうことであります。われわれは食管会計違反でない、こういうことを考えておりますが、食管会計そのものにつきましては、農林省が違反するかせぬかということをお考えになる。私どもはそうでない、こういうふうに考えてやっております。
  140. 淡谷悠藏

    淡谷委員 大蔵大臣、あの二十億円の予備費は韓国へお払いになりましたか。いま厚生大臣は、韓国からあっせんを頼まれて食糧を買った、こう言うのですから、韓国が買ったことになる。
  141. 小林武治

    ○小林国務大臣 ただいまのお答えは間違えたのでありますが、韓国が台湾から買って送った、こういうことであります。
  142. 淡谷悠藏

    淡谷委員 やはり同じじゃないですか。韓国が買ったのですよ。韓国が台湾から買ったというのですよ。
  143. 小林武治

    ○小林国務大臣 日赤の間違いであります。日赤が買った。
  144. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ちょっとお待ちください。——ちょっと私が発言しますからお待ちください。ちょっと厚生大臣、聞き違いのようですが、よく聞いてひとつ答弁してください。
  145. 淡谷悠藏

    淡谷委員 私から聞くよりもあっちから聞いたほうがいいですよ、私の質問はわかっているはずだから。厚生大臣、いままで知らなかったでしょう。厚生大臣、あなたいつ聞いたのです。その話はいま聞いたんじゃないですか。前は知らなかったでしょう。
  146. 小林武治

    ○小林国務大臣 米は日赤が台湾から買って送った。小麦粉も日赤が買って——しかし、これはアメリカから買って送った。そして小麦は食管会計の中に入っておらぬ、こういうことでございます。
  147. 淡谷悠藏

    淡谷委員 小麦はカナダでしょう、アメリカでなくカナダでしょう。どっちですか。
  148. 小林武治

    ○小林国務大臣 カナダだそうでございます。
  149. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは、実際二十億という金がこう使われておるのです。一体それは赤十字が自分の資格でおやりになったのですか。それとも農林省あたりから頼まれてやったのですか。赤十字が独自の行為としてやったのですか。
  150. 小林武治

    ○小林国務大臣 日本赤十字社は、法律の第二条に、国際的な関係でもって平和とか人類の福祉に貢献する、こういうようなことはできる、こういう規定がありますので、これによって日赤が動いた、こういうことになります。
  151. 淡谷悠藏

    淡谷委員 そこで、韓国の欠糧状態がまだ続いているのですから、ことしもおやりになりますか。赤十字はことしも韓国へ米をおやりになりますか。非常に困っているらしいですから、それができるとしたら、またことしもおやりになりますか。
  152. 小林武治

    ○小林国務大臣 ただいまのところ、さような交渉、希望等もありませんので、やるということはございません。
  153. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは、それじゃ昨年韓国の希望でおやりになったのですね。赤十字は、こっちの救援じゃなくて、韓国の要請をいれたわけですね。
  154. 池田勇人

    池田国務大臣 韓国の非常にお困りの状況を見まして、われわれはやるべきだ、こういうことで赤十字のほうにお話をしたのでございます。これは向こうから要求ということはございませんが、一昨々年でしたか、一昨年でしたか、中国の食糧事情の悪いときにも、われわれはある程度考えまして、申し入れたのですが、これは断わられたような状況でございます。向こうから要求があったというわけではございません。こっちからそういう話をしたところが、向こうもありがたくちょうだいする、こういうことであるのであります。
  155. 淡谷悠藏

    淡谷委員 中国へはいつごろ申し入れられたのですか、どういうことを申し入れたのですか、内容をお聞かせ願いたい。
  156. 池田勇人

    池田国務大臣 一昨々年か一昨年かだったと思います。一応食糧不足ということを聞きまして、香港への難民等が非常に出ているということを聞いて、自分は考えまして、相談したことがございます。
  157. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それでは赤城農林大臣にひとつ確かめておきたいのですが、外国の救援のためとあれば、日本へは全然触れなければ、かってに外国で食糧を買って、かってに外国へ送ることはかまわないですね。これは常利行為でなければ、日本に全然触れなければ、自由におやりになっていいのですね、確かめておきたいと思います。
  158. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 だれがやってもいいというわけにはいかぬと思います。しかし、赤十字社の業務の趣旨に従って、そういうことはあり得るし、またやっても差しつかえない。しかしこれは、そういうときには、いろいろ日本の食糧事情や何かも考えなくちゃなりませんから、相談を受けると思いますが、だれもかれもというわけにはいきませんが、赤十字社として救恤、救援物資としての範囲ならば、ある程度は私は差しつかえないんじゃないか、こう思っています。
  159. 淡谷悠藏

    淡谷委員 赤十字社は自分で米あるいは小麦をお買いになったのですか。商社を入れましたか。買い付けのための商社が入っておりますか。
  160. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 これは厚生大臣から御答弁するのが至当かと思いますが、商社は入っておる。そしてまた、外国から外国へそういうあっせんをしているのは差しつかえない、こういうふうな見解でございます。
  161. 淡谷悠藏

    淡谷委員 商社は何という商社ですか、マージンは幾らですか。
  162. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 その点は、どうも私承知しておりませんから、調査の上でお答えいたすか、事務当局からお答えいたさせます。
  163. 淡谷悠藏

    淡谷委員 わからぬことはないじゃないですか、これは二十億の買いものをしているのですからね。これは赤十字社が自分で買うはずがない。私がこう言うのは、最近は贈与が非常にルーズだからです。はっきりさせておきたい。
  164. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 まことに残念ながら、私その詳しいことを聞いておりませんから、いま事務当局に調べさせて、後刻お答えいたします。
  165. 淡谷悠藏

    淡谷委員 政府が赤十字社を指名した。その赤十字社は厚生省の所管ですが、いつの間にか農林省に移っているのです。やはりこれは救恤品というのだけれども、食糧だから農林省が扱われたのですか。それとも、農林省が買って赤十字社の名前を使っただけにすぎないのですか。私はこんなことをあえて言うのは、最近は、国から贈与する場合に、非常にルーズですよ。たとえば、この間の質問も私は聞いておったのですが、大平外務大臣はお慰め申し上げるのに、さまざまのお答えをしているのですね。シンガポールに贈った。それから韓国は裏づけもはっきりしないのに三億ドルの無償供与、今度はまたさらに二十億の米の供与、国の金ならば自由に贈与できるんだといったようなことが、非常にこれは困ったことだと思うのです。これはおわかりなければ、分科会がありますから、あとでよろしい。  それでお聞きしたいのですが、さっきからの防衛計画でいろいろございます中に、ことしは防衛庁にバッジ・システムを入れる。これもやはりちょっとロッキードと同じように、さまざま会社の点で話し合いはあったようですが、一応まとまって、今度はバッジ・システムをつくる。この構想は一体どうなっていますか。総理お聞きになっておりますか、国防会議議長としては。
  166. 池田勇人

    池田国務大臣 バッジ・システムを日本に採用することにいたしまして、予算も組んでおります。ただ、この金はアメリカのほうからも相当出してもらうことになっておりますので、その全額につきましては、ただいま折衝中と覚えております。
  167. 淡谷悠藏

    淡谷委員 本年度の予算には盛ってありますか。
  168. 田中角榮

    ○田中国務大臣 バッジの本体及び関連機材等を含めました装備は、日本分担額は百七十五億五百万円、米側分担分が三十二億四千万円、計二百七億四千、五百万円の計画であります。三十九年度予算におきましては、とりあえず予算化を要する分としまして、歳出十七億三千四百万円、及びこのうちの十二億七千八百万円を含む国庫債務負担行為百四十四億三千九百万円を計上いたしております。それから三十九年度最終予算十七億三千四百万円と、国庫債務負担行為後年度負担金の百二十一億六千二百万円と、三十八年度の歳出予算六千百万円の合計の百四十九億五千七百万円と、日本側分担総額百七十五億五百万円との差額の二十五億四千八百万円は、四十年度以降の予算となるという見通しであります。
  169. 淡谷悠藏

    淡谷委員 アメリカの援助分は、それはどういう形で援助されるのですか。これはロッキードの問題のときにもありましたが、現金は回さない、日本へはやはり現品の供与ですか。
  170. 田中角榮

    ○田中国務大臣 こまかい内訳は防衛庁当局からお答えすると思いますが、このアメリカ分担金につきましては、製作会社に現金で給与すると、このように承知をいたしております。
  171. 淡谷悠藏

    淡谷委員 大体そうだろうと思うのです。それがロッキードを買った場合に、七千五百万ドルの供与があった。この現品の内訳は説明されません。何が入っておるかわかりません。わからないままにロッキードの製作に入った。これは週刊雑誌に小川二佐が書いておる記事を見ますと、ロッキードの部分品がなくて困っているらしいのです。この部分品がないためにああいうような事故も起こったということを、暗に書いているのです。この部分品は、おそらくはロッキード社の部分品の中に入っているのではないかと思う。七千五百万ドルという大きな金が、内容の不明のまま日本がこれを受けているのです。このバッジもそのとおりですか。これは非常に大きな問題です。しかも、この七千五百万ドルの内容を明らかにするようにここで追及しました際に、防衛庁は話してもいいと言うのです。外務省も差しつかえないと言うのです。抑えたのはマーグですよ。軍事顧問団です。軍事顧問団は、日本の政府に対して国会答弁を押さえるような権限を一体いつ持ったんですか。これは私は池田総理にお聞きしたい。日本における軍事顧問団というものは、それぐらい、国会の質疑応答にまで関与するような力を持っているのですか。
  172. 池田勇人

    池田国務大臣 交渉の経過その他につきましては、私、よく存じませんので、関係大臣より答弁させます。
  173. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 再度引用されました小川元二佐の文芸春秋の記事でありますが、いい機会でありますので具体的に御報告申し上げますが、十七項目彼は指摘しております。そのうち、正確なものは七項目だけでありまして、あとは不正確ないしは間違いであります。七項目も、幸いこの指摘がありまして、いろいろ庁内の問題になりまして、徹底的に掘り下げをいたしまして、部分品その他については、改善を加えてすでに解決をいたしております。  なお、バッジ・システムにつきましては、いまトーキング・ペーパーを交換中の段階でございまして、細部につきましては、事務当局より報告いたさせます。
  174. 淡谷悠藏

    淡谷委員 重ねてお聞きしますが、アメリカの供与分については、内容を明らかにしますか。
  175. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 アメリカ側のMAPないしMASの問題につきましては、装備局長より具体的に報告させます。
  176. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは総理にも確認しておきたいのですが、アメリカの供与分について内容を明らかにするといういまの防衛庁長官答弁ですが、これは総理もはっきり確認できるでしょうね。当然の話ですが。
  177. 池田勇人

    池田国務大臣 軍機の秘密に属するようなものがあれば、これは無理だと思います。だから、その点は先方と十分打ち合わせの上、発表し得るものは発表いたしたいと思いますが、全部発表するという約束はただいまのところできません。
  178. 淡谷悠藏

    淡谷委員 私はこれを念を押すのは、この前に軍機の秘密という形でマーグは押えなかった。ただアメリカ政府のことなんだから公表する必要はない、こういうわけなんです。私は思い出しますのは、この軍事顧問団というものの性格ですが、これも新聞記事によって知るしかしかたございませんが、南ベトナムのクーデターに関連しまして、米の軍事顧問団がベトコンから襲撃されております。一体軍事顧問団というものの任務は、日本においては何なんです。また日本防衛に対してどういう役割をするのですか。何人、どこにいるのですか、
  179. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 日本における軍事顧問団は、御案内のとおり市ケ谷にございまして、ワージングトン准将を長といたしまして現在日本におります。細部にわたりましては事務当局から報告いたさせます。
  180. 海原治

    ○海原政府委員 お答え申します。  軍事顧問団の任務は、ただいま大臣から申し上げましたように、アメリカから日本が供与あるいは貸与を受けました装備品が、その供与、貸与の目的どおりに使われておるかどうかということの状況を調査することが、現在においては主任務になっております。過去におきましては、警察予備隊創設当時に、各部隊の教育訓練、これの指導も担当しておりました。したがいまして、顧問団の人員は、そのころは総計約五百名おりましたが、現在におきましては、軍人は百二十名前後、それから軍属が三十名前後、合わせて百五十名程度でございます。このほかに、労務者としまして百六十名程度の者が雇用される、これが現在の状況でございます。
  181. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それでは、軍事顧問団の任務というのは、アメリカの供与品が供与の目的どおりに使われているかどうかということを確かめるだけ、これが大体軍事顧問団の任務なんですね。そうしますと、この軍事顧問団の任務には、その内容日本国会に明らかにすることをとめる権利なんかないはずだと思う。これは防衛庁自体も秘密のあるものじゃないから発表してもよろしいということを言っておったのですから、私は、こういうふうに、日本の安全を守るという軍備が、依然として強いアメリカの陰の勢力で押えられるということは、とうていがまんできない。  さらに、私はひとつお聞きしたいのは、バッジに関連しまして、データーリンクの調査が行なわれているはずなんですが、このデータリンクについても、各商社がしのぎを削って売り込みに奔走しているらしい。これは池田総理お聞きになっていますか。あなたは国防会議議長なんだ。いまは新しい設備ですからね、こういうものについてさまざまの商社との間に交渉が始まっておるのをお聞きになっておりますか。そういうこまかいことはお聞きになっていない……。
  182. 池田勇人

    池田国務大臣 聞いておりません。私は、そういうのは全然聞いておりません。
  183. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それじゃおわかりになっている方があったら、ひとつ御答弁願いたい。
  184. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 データリンクにつきましては、RCAで製作しておりますタイプを採用する考えでおります。直接輸入するのではなくて、できるだけ国産化をしたいと存じまして、RCAと日本の会社と技術提携をして製作することになろうと思います。これにつきまして日本側の生産会社は、数社やりたいという希望を申し出ておるのが現在の状況でございます。
  185. 淡谷悠藏

    淡谷委員 まだきめていないのですね。会社は二つ、三つ希望があるらしいのですが、どうですか。
  186. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 現在のところ、まだ決定いたしておりません。予算は三十九年度予算でございますので、決定いたしますのは、三十九年度に入ってからになると思います。
  187. 淡谷悠藏

    淡谷委員 大蔵大臣にお聞きしますが、ロッキードの継続生産のための予算を補正予算などでお組みにはならぬのでしょうな。いまから決定することがあったら、お聞かせを願いたい。F104五十機もしくは百機出産といううわさが飛んでますが、これは補正なんかで抜き打ちに出されることはないでしょうな。
  188. 田中角榮

    ○田中国務大臣 F104の継続生産の問題については、決定いたしておりません。この問題について防衛庁当局からの予算要求はございましたけれども、これはもう十二月に入ってからでありますし、かかる重大な問題を決定するために十分検討するいとまもなかったので、三十九年度には、これに対して継続生産をするというようなことは全然きめておりません。
  189. 淡谷悠藏

    淡谷委員 防衛庁はそれであきらめたのですか。さらにまた追求した場合、大蔵大臣、とりでが落ちますか、落ちませんか。これは予算が削られちゃって、防衛庁がさらに追求した場合に、これは聞きますか、聞きませんか。
  190. 田中角榮

    ○田中国務大臣 十二月に入ってから検討した問題であって、三十九年度の予算編成には時間的にも余裕なく、三十九年度予算では、継続生産をしないということでいま国会に予算案の審議をお願いをしておるのでありますから、いまの段階において、防衛庁から要求があればまた予算を組みますなどという考えは持っておりません。
  191. 淡谷悠藏

    淡谷委員 通産大臣、ひとつお答え願いたいのですが、日本軍事産業というものは、いつの間にかふくれ上がってきている。特にその中でも航空機製造事業というのは、非常に大きな幅を占めている。いま第三次防衛計画というのが立っておりませんので、ロッキードその他の飛行機生産の下請は全部手があいている、もう組み立ての段階ですから。やがてロッキードをつくる会社も、設備の手余しで困ってくるという事情はございませんか。
  192. 福田一

    福田(一)国務大臣 ロッキードの問題につきましては、これは航空機製造に関する法律が、あなたも御案内のようにあるわけであります。そうしていま、日本はいままで二百機つくるということでそれをやっておりまして、大体四十年には、これはもう全部なくなる、こういうことでありますから、その場合に、この航空関係の製造事業をやっている会社並びにその下請の工場が仕事がなくなりはしないか、こういう御質問であると私思うのでありますが、これはわれわれとしては、YS11というような、いわゆる民間航空関係の仕事をさせておりますし、そのほかにも、補修とかあるいはその他のこともあります。しかし、いずれにしてもそういうことがなくなった場合において、非常に下請関係等が困られることもあり得ると思っております。しかしながら、私はいま一番大事だと思っていることは、そういう軍事関係の飛行機の問題というよりは、航空機——いわゆる平和利用における航空機というものの生産がいまのような状態であっていいかどうか。いまあなたも御案内のように、船で非常に外貨が流れて困っているわけです。将来において、航空機の生産が非常に立ちおくれているというような場合が起きますと、今度は日本の外貨が航空関係で流れていくおそれがある、こういうこともあるのでありまして、私は、いまの御質問とはちょっと離れたお答えになっているかと思いますけれども、いわゆる民間航空という問題、それから将来の航空事業、あるいはこれから人工衛星時代がくるかもしれませんが、そういう場合も考えて、日本としていわゆる航空関係の問題は、この産業的な立場から見て、やはり非常に重要視していかなければならない、こういう感じで見ておるわけであります。
  193. 淡谷悠藏

    淡谷委員 私はあえてこういう質問をしますのは、第三次防衛計画を立てなければならないときが近づいてまいっております。私は、総理とは若干、どころじゃない、根本的に意味を異にしておりますけれども、アメリカ軍の削減アメリカの戦略、戦術の転換によりまして、日本防衛考え方も、この辺で一大転換を要すると思う。力の対抗、勢力の均衡の上に立って、核武装のせり合いで平和を維持しようという勢力の均衡論は、破れております。破綻しております。したがって、この際、日本防衛というものは、新しい観点に立って練り直さなければならない段階にきておると思う。いままでの質疑応答の中では、遺憾ながら日本国防会議というものは防衛基本方針を立てる力を持ってない。そうかといって、防衛庁にあるかというと、これはあぶないんです。幕僚会議、空幕会議というものを組合の事務所みたいだと評しておる人がおります。全然統制がとれていない。そこに小川二佐なんという優秀な。パイロットが、指導権の紊乱を嘆いた原因があると思う。私はこの際、新しい観点から平和を基礎とした日本防衛計画を立て直す必要があると思う。総理のひとつ抱負を聞きたい。これは本会議の施政方針演説も聞きましたし、ここにおいて各委員との間に取りかわされております答弁質問も聞きましたけれども、総理には、国防に関しては何ら一貫した方針がない。それでは国防会議というものをつくって、日本防衛方針に対して平和と独立を貫くような方針を立てようということが貫かれない。てんでんばらばらです。そのために大きな予算が使われるならば、これは明らかに国費のむだづかいです。目的のない国防、自信のない国防、方針のない国防、これでは国民には済まないと思う。予算解義の上からも、私は、日本防衛の目的を定め、誤らない、平和と独立のための防衛計画をはっきりお持ちになったほうがよろしいと思う。この点は、総理に方針があるならば伺いたいと思います。なかったらなかったでよろしい。
  194. 池田勇人

    池田国務大臣 われわれは、国防の重要さをひしひしと感じておるのであります。したがいまして、先ほど来申し上げましたように、最近の兵器の進歩、そうしてまた同盟国のアメリカ軍事状況等々を見まして、誤りなきを期したいと念願しておるのであります。
  195. 淡谷悠藏

    淡谷委員 最後に念を押しておきたいのですが、やはり私は、武力による平和というものは、もう限界がきていると思う。したがって、日本国防というものは、あくまでも平和を中心にした、しかも平和的手段による国防というほうに漸次切りかえていく必要がある、これが一つ。もう一つは、第九条に定められたあの平和条項は守りますというこの確言。ざらに核兵器は入れない。アメリカの核兵器も持ち込みを断わる。この三点をはっきり総理から答弁の形でお聞きしたいと思うのであります。
  196. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、武力による平和維持、武力の均衡による平和維持がだめになっとは考えておりません。しかし、お互いに世界の平和を守るために、いわゆる平和共存の線で進んでいるということは認めておるのであります。われわれも、そういう意味におきまして、平和手段によって平和的にあらゆる難問を処理していこう、こういうことはもう間違いないことでございます。なお、憲法九条の規定は、これはもう国民として当然守るべき筋合いのものでございます。核兵器の日本への持ち込みは、これは従来たびたび言っておるように、われわれ認めない、これははっきりいたしております。
  197. 淡谷悠藏

    淡谷委員 終わります。時間がきました。
  198. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 淡谷君に申し上げます。  先ほどの質問に対して農林大臣が答えます。
  199. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 先ほどの米、小麦を入れた商社はどこかということがわかりましたので、お答えいたします。  米のほうは兼松、三井、岩井、三菱、加藤、江商、金商、丸紅、住友の九社でございます。小麦のほうは住友一社、こういうことであります。
  200. 淡谷悠藏

    淡谷委員 しかし、二万トン程度の小麦や米の買い入れにずいぶん各府社の大ものどころがずらっと顔を並べたわけなのですが、うわさに聞きますと、このリベートは朴大統領の選挙の資金に充てたという話がありますが、その点はお聞きになっていませんか。これはどうです。
  201. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 全然存じておりません。
  202. 淡谷悠藏

    淡谷委員 終わります。
  203. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 以上をもちまして淡谷君の質問は終了いたしました。  午後は一時十五分から再開いたします。  午後の質疑者は志賀義雄君であります。要求大臣は、総理大臣、法務大臣、外務大臣、大蔵大臣、厚生大臣、農林大臣、建設大臣、防衛庁長官、経済企画庁長官、国家公安委員長であります。  臨時休憩します。    午後零時十六分休憩      ————◇—————    午後一時十八分開議
  204. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和三十九年度総予算に対する質疑を続行いたします。  志賀義雄君。
  205. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 まず中国問題について総理にお伺いしたいのでございますが、先ごろ、ラスク国務長官は、記者会見で、中共、これはつまり赤い中国ということばでしょうが、戦闘的、好戦的であることには疑問がないと述べ、あくまでも中国を承認しないという態度を表明しました。これはもっぱら軍事的観点から中国問題を見ていることを示すものでありますが、これは、日米合同委員会でも、それから大平さんとラスク国務長官の会談でもそういう態度であったように承っておりますが、これはアメリカが今日になってもなお相変わらず中国封じ込め政策にしがみついていることを示すものでありますが、総理はこのようなアメリカの中国封じ込め政策が今後とも通用するものと思っておられますか、その点をまず伺いたいと思う。
  206. 池田勇人

    池田国務大臣 その政策を今後ともずっと続けるか続けぬかはアメリカ考えでございまして、私は、いまのところとやこう言う筋合いではございません。
  207. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 中国封じ込め政策は、現にわれわれの目の前で毎日のようにくずれ去っております。べトナム、韓国、その他アジア至るところで、アメリカに反対して、アメリカ帝国主義に反対して、独立、平和あるいは中立、これを求める戦いが盛り上がっております。昨日の夕刊でも、南ベトナムでもうどうしようもない状態になっているのであります。そこで、最近アメリカは、日本軍が中国に侵略していたときのパルチザンに対する戦争のやり方までも新たに研究し、マレー半島のイギリスのパルチザン戦争の退治の方策が失敗したので、いまそれをあらためて研究しているようでありますが、それが失敗することは中国で失敗したことでも明らかでありますが、このように、アジアの日本の特に近隣の諸国で、アメリカの封じ込め政策、これがどんどん破れていること、これは、アメリカがどう思うということではなくて、中国封じ込め政策に関連して、その足場にされている国で、どんどんと独立、平和、こういうことを求め、あるいは中立を求める力が進出しつつありますが、この点については首相はどういうふうにごらんになるでしょうか。
  208. 池田勇人

    池田国務大臣 共産主義の浸透に対しまして、これを防ぐという努力は各国において行なわれておると思います。封じ込めか、あるいはその封じ込めの反対の共産主義浸透政策か、これは世人いろいろ見方がございましょうが、そういうトラブルがあるということは、こういう現状でございます。
  209. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 共産主義の浸透とおっしゃるのですが、南ベトナムに入っているのは、中国の軍隊でも何でもございません。また、南朝鮮でもそうであります。これは朝鮮人、ベトナム人がみずからやっていることであります。これはもうゴ・ジンジェムが仏教徒に対してとった政策以来非常にだれも明らかなことでありまして、最近はそれがますますはっきりしてきたように思うのでありますが、フランスの最近の中国承認、これが世界とアジアの情勢に与える影響、その客観的な意義と役割、これは首相としてはどういうふうに評価なさるでしょうか。
  210. 池田勇人

    池田国務大臣 この前も申し上げましたように、アジアの問題に一石を投じたということは認めますが、その結果がどうなるかということは、やはりしばらく慎重に見守っていかなければならぬ問題だと思います。
  211. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 けさほどの淡谷委員質問に対して、首相は、世界、特にアジアの平和共存の政策をとるということを言われましたが、中国が好戦的であるというラスク国務長官の意見、これに同意されるのかどうか、あるいはまた、中国を承認したフランスの行動、これは客観的には平和共存という方向へ向かっていく一つの里程標になる、このようにお考えでしょうかどうか、その点についてひとつ……。
  212. 池田勇人

    池田国務大臣 平和を望む気持ちは、私はいずれの国にもあると思います。したがいまして、アメリカ合衆国と中国とはワルシャワで大使間の会談はしておるようでございますが、なかなか解決に向かっていっておりません。それから、中共が好戦国であるかどうかという問題につきましては、アメリカはそう言っている。日本におきましても、吉田氏は、ダレスヘの書簡にそういうことを十二、三年前に言っておられました。しかし、 いまの現状を私はそのとおりかどうかと言うことは、差し控えたいと思います。いろんな議論のあるところでございますから。国連でそういう決議をしたのは、まだなくなってはおりません。
  213. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 好戦的だということは、吉田元首相は言ったけれども、自分はそういうことは口に出しては言わない、このようにおっしゃるわけでございますね。
  214. 池田勇人

    池田国務大臣 そういうことは軽々しく言うものではないと思います。しかし、世界の人は相当そういうことを言っておりますし、そうして、国連の決議はまだ取り消されておりません。
  215. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 総理は、この一月の施政方針演説の中で、中国大陸という広大な国土には六億余の民を有しておることは厳然たる群雲である、こういうふうに言っておられるのでありますが、中国大陸というと地理的概念でございまして、一つの政治的な国家的な存在ということにはあえて言及することを避けられているようでありますが、問題は、こういう地理学的な事実認証や六億という人口があるということだけでなく、いまフランスまでが中国を承認しなければならなくなったこと、ドゴールほかつては黄禍論までも言っておったが、それが承認しなければならなくなってきたのは、やはり、中国の国際的地位が向上し、この人民中国を抜きにしては、世界の平和、特にアジアの平和を語ることはできない、アジアの問題を解決することはできない、ドゴールはそういう事実認識の上に、法と事実の一致ということで中国承認に踏み切ったもの、こういうふうに認められるのでありますが、一衣帯水という中国に対して、隣国日本池田内閣は少なくともこのような中華人民共和国政府を承認できないのは、これはどういうことでございますか。それからまた、特に重要事項ということでアメリカが中華人民共和国の国連加盟を阻止しようとしたときに、重要事項指定方式に特に日本も共同提案国になられたのは一体どういうわけでございますか。その点をあわせて説明願いたいと思います。
  216. 池田勇人

    池田国務大臣 われわれは、御承知のとおり、台湾、澎湖島、その他における中華民国を承認して、これと国交を結んでおるのであります。中共も台湾も一つの中国と言っております。そして、いま中共政権を承認し国連の加盟を認めるということは、特にアジア、世界の平和に重要な関係のあることでございますので、国連において十分討議の上決定すべきものだと考えておるのであります。
  217. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 中国は国連に加盟していない。あるいは、国連で中国がかつて非難決議をされた。その席には中華人民共和国の代表も出ておりませんし、また、理事国であったソビエト連邦も出ていないのでありますが、事実、その後オランダが承認し、スカンジナビア三国が承認し、今回フランスが承認し、またこれが次々に承認されようとしているのでありますから、この国連の決議というものも事実上は次第に打ち破られつつある。だから、これはもう事実上次第にその効力を失いつつある。こういうことになっているのでありまして、ここに日本が中国に対してどういう態度をとろうかということについては、重要点はもはやないと思うのでありますが、なお、この予算委員会での質疑では、蒋介石総統に対して日本が恩義がある、こういう人情論も言われておったのでありますが、これは蒋介石がとにかく国際的に認められておった中国にある政権を代表していたときのことであって、問題は、中国のあの多くの人々が日本軍の侵略によって非常な被害を受けた、これがやはり今日日本としても十分に考えなければならないことなんでありますが、いまのお話では、やはり中華民国、台湾にある政権を正統な政権として認める、また日台条約というものが存在している、こういうことになるのでありますが、台湾が中国の不可分の領土の一部であって、台湾を含めて中国は一つである、これが歴史的な客観的な事実であります。現に、日本が中国に侵略したときに、中国政府のほうでは当時声明を発して、日清条約による台湾、澎湖島の割譲、これがもはや効力を失ったことを声明しておりますし、その後、カイロ宣言では明らかに台湾、澎湖島が中国に帰属することを言っており、ポツダム宣言はこのカイロ宣言の条項を履行することを言っているのであります。これはアメリカも含めて承認していることは、一九五〇年一月五日のトルーマン声明ではっきりとしているのであります。トルーマン声明の第二項の、「一九四五年のポツダム宣言及び日本の降伏文書によって再確認された一九四三年のカイロ宣言に従い、アメリカは台湾を中国に引き渡し、かつ台湾に対する中国の統治権の行使を認めた。」、これこそ歴史的な事実であります。第一次大戦と第二次大戦との相違は、第一次大戦のときには、ドイツ軍が無条件に降伏した、同盟国側が無条件に降伏したあとで、領土についてはベルザイユ条約で初めて問題になりましたが、第二次世界戦争は、サンフランシスコ条約で問題が初めて確定されたのではなくて、一九四一年の大西洋憲章、カイロ宣言、ポツダム宣言で領土的条項及びそれに対する確認が行なわれ、それが講和条約、こういう方向へ引き継がれることが特徴になっているのであります。いま申し上げましたとおり、台湾が中国の領土の不可分の一部であるということは、一九五〇年一月五日のトルーマン声明によっても明らかでありますが、このトルーマン声明を首相は認められるかどうか、この点を伺いたいと思います。
  218. 池田勇人

    池田国務大臣 カイロ宣言並びにそれを受け継いだ。ポツダム宣言には、お話のような点があったと記憶しておりますが、われわれは、一九五一年のサンフランシスコ平和条約に規定してあるところを守っていくよりほかにないと思います。
  219. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 サンフランシスコ条約が締結されたのは一九五一年の九月八日ですね。私がお尋ねしているのはそれよりも前のことであります。一九五〇年一月五日、約一年八カ月前にトルーマンがいま申し上げたように言っていること。もう一度繰り返しますと、「一九四五年のポツダム宣言及びの降伏文書によって再確認された一九四三年のカイロ宣言に従い、アメリカは台湾を中国に引き渡し、かつ台湾に対する中国の統治権の行使を認めた。」、このように言っている。この事実をあなたは認められますかどうか、かように申しているのであります。サンフランシスコ条約よりも一年余り前のことです。こういう事実があったことをあなたはお認めになりますかどうか、このことを伺っているのです。
  220. 池田勇人

    池田国務大臣 そういう宣言のあったことは聞いております。しかし、それが日本を拘束するものかどうかということは別問題で、私は、日本としては一九五一年のサンフランシスコ平和条約にのっとっていくということを申し上げているのであります。
  221. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 総理は少なくともそういうトルーマン声明があったことを知っておられる。トルーマン声明に基づいて、あなたがどう認められようと、また、日本の政府がどう認めようと、そういうことがアメリカによって声明され、それによって、台湾が中国の領土の一部分であるということ、不可分の領土であるということを認めているのであります。国際的にもそれに対しての反論はなかったし、当時日本においてもそれの反論はなかったのであります。問題は、つまり、このときまでには二つの中国論がなかった。あなたはサンフランシスコ条約をお出しになるのでありますが、しかし、申し上げておきますが、それはこれから私の申し上げることでかえってやぶへびになるだろうと思います。少なくとも二つの中国論というものはそのときまでなかった。日本にもなかった。このことは首相もお認めになりますね。トルーマン声明が出て、サンフランシスコ条約、これができるまでには二つの中国論は国際的にはなかった。当時日本政府もそんなことは言っておりません。中国は好戦的だなんということを言ったという吉田さんも、そのことは言っておられなかった。そのことをお認めになりますかというのです。サンフランシスコ条約のことはそのあとです。
  222. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、二つの中国ということを言ったこともございませんし、それを認めるとも考えておりません。
  223. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そのいまの語尾がはっきりしない。認めるとも、考えてもおりませんとおっしゃるのですか。
  224. 池田勇人

    池田国務大臣 二つの中国ということは全然考えておりません。
  225. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 ところが、あなたはいま、サンフランシスコ条約によって、かように言われるのでありますが、その前に、もういま申しましたトルーマン声明が実はアメリカ自身によってひっくり返されたのです。それはどういうことかと申しますと、一九五〇年一月五日にいまのような声明をトルーマンが発表したあと、一九五〇年六月二十五日、それから半年ばかりたったときに、アメリカが朝鮮戦争に口実をかりて、その六月二十七日、戦争の起こった翌々日にまたトルーマン声明を出して、第七艦隊を台湾に派遣し、武力で介入し、事実上これを占領したことになったのであります。これのあとで、その翌年の一九五一年九月八日にサンフランシスコ条約は調印され、五二年の四月二十人目に発効したことは総理も御承知のとおりでありますが、歴史的な事実は、トルーマンが台湾は中国の領土であると言いながら、そのわずか半年あとに第七艦隊で台湾に介入していった、こういう事実があったこと、これはお認めになりますか。
  226. 池田勇人

    池田国務大臣 台湾を占領したとかなんとかいうことは、私は認めません。お話は一九五〇年云々と言っておられますが、トルーマンが承認したサンフランシスコ平和条約はその後でございまして、そして、その条約には、台湾は中国に帰属するものだとは書いてないのであります。だから、あとの事実が有権的ではございますまいか。しかも、そのことはアメリカの議会で承認しておるのであります。
  227. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 総理に申し上げますが、私は歴史的事実の経過をいま追っているのです。あなたはそのように言われます。サンフランシスコ条約についてはいまあらためて質問いたしますけれども……。実は、台湾に第七艦隊を出していった。そのときに中国が参戦国になっておったというなら、百歩を譲って、戦時国際法上、中国の領土に第七艦隊が出かけていくということについては、これはアメリカの国際法学者、あるいはその他で認める者があるかもしれませんけれども、少なくとも中国が、人民解放軍が朝鮮の戦争に協力したのはそれからまたずっとあとのことでありまして、当時中国に第七艦隊が朝鮮戦争に籍口して出るべき理由はごうもなかったのであります。そのときから今日まで、アメリカが武力で人為的に、台湾は中国の不可分の領土であるものを切り離しているのであります。だから、はっきりしていることは、アメリカ政府が自分でも認めたことを、朝鮮戦争のときに武力で踏みにじった。これはあなたの解釈の問題ではなくて、歴史上の事実の経過がそれを示しているということであります。だから、本来から、言うならば、サンフランシスコ条約にもはっきりと、中国の領土の一部分であるということを、これは認めてしかるべきもの、そこのところをダレスによって認めないできた。実はサンフランシスコ条約でそういうことをやったことが、今日のアメリカの外交政策、世界はもちろんのこと、アジアにおける外交政策、これの失敗のもとであります。世界政策の失敗はパナマにもあらわれております。南ベトナムにもあらわれております。こういうことがいままた中国の問題にもあらわれてきたのであります。かりに見てきますと、サンフランシスコ条約そのものが、実は当然それまでにカイロ宣言、ポツダム宣言、それから日本の降伏条約、こういうものでも認めたことをはっきりと規定しなかった、こういうことになるのであります。それで、あなたとしては放棄したけれども、別に日本としては帰属のことには触れていない。帰属のことは、先ほど申しましたとおり、第一次大戦後の講和条約、今度の講和条約との違いは、先行して大西洋憲章以来はっきりと領土的な規定をしておったこと、これを講和条約に入れなかった。あなたは、それだから日本はいま台湾のことについては私が申すような立論は成り立たないとおっしゃるけれども、実はアメリカがそういうことをし、日本もまたその講和条約に合意したところから、今日のアメリカの抜き差しならない失敗が、歴史的事実をひん曲げて、武力によって干渉してきたこと、それが今日の問題を起こしているのであります。  そこで、私はさらに進んで伺いたいのでありますが、御承知のとおり、日華条約といわれる日本と台湾の条約の問題でありますが、いま日本が、あなたのときに、平和共存は認めると言うが、まだ世界のいろいろな国が国連でも非難決議を出しているし、承認していないので、それをも見合いながらいきたいと言われるのは、実は日本が日華条約を結んだこと、これに関係があると思うのであります。この日華条約は事実上この占領を認めて、それによってアメリカが台湾海峡に出動したこと、そしてあすこに介入したこと、台湾、澎湖島を基地にしたということ、こういうことを認めたことにあるのであります。これは日本が降伏文書の中でもはっきり認めた。ポツダム宣言の条項を誠実に履行するという、その。ポツダム宣言は明らかにカイロ宣言を履行すると言っておる。これは世界第二次大戦の戦後処理の大原則を定めたもので、カイロ宣言、ポツダム宣言に基づいていないで、そうしてとうとう日華条約を結んだ、こういうことになるのであります。この日台条約の調印は一九五二年四月二十八日になるのでありますが、サンフランシスコ条約は御承知のとおり一九五一年九月八日に調印されました。安保条約も同時に結ばれました。ところが、発効したのは翌五二年四月二十八日のことであります。サンフランシスコ条約は、先ほど申しました平和の根本原則、それまで進んできた事実を踏みにじったのであるが、しかもその条約が発効する前に、つまりポツダム宣言で日本の国家主権が占領軍のもとに置かれていたときに、外交主権がないときに、ダレスとの話し合いでこれが結ばれたのであります。これが日台条約であります。ですから、日台条約を結んでいるからといっても、当時外交主権を占領によって奪われていたときに、日本政府が蒋介石政府と結んだことが国際法上有効であるかどうか、これが重要な問題になってくるのであります。外交主権を奪われていたものが日台条約を結んだということは、これはほかでもありません。何のことはない、アメリカの第七艦隊が台湾海峡に介入したこと、この事実を認めるために無理やりに結ばれたことになるのでありますが、その点について首相はどのようにお考えでございましょうか。
  228. 池田勇人

    池田国務大臣 日本責任において結んだのでございますから、われわれはそれに拘束されることは当然だと思います。
  229. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 私の申すところは、日華条約はアメリカの台湾軍事占領を合理化するものであって、その発端から今日に至るまで、日本の中国に対する外交、台湾問題の処理、アジアの諸問題、これの解決がいろいろとちぐはぐになってきたのも、実はこの日華条約というものを結んだことにあるのであります。そこで、この日華条約を結ぶときに、一九五一年十二月二十四日に当時の首相吉田茂氏からダレス長官あてに書簡が出ております。その書簡はこのように言っておるのであります。末尾に「私は、日本政府が中国の共産政権と二国間条約を締結する意図を有しないことを確言することができます」かようにダレスあて吉田書簡の末尾に言っております。つまり、中国の共議政権と二国間条約を締結する意図を有しないことを確書することができます。こう言っております。これは日台条約と明らかに関係があるのでありますが、あなたはこの吉田首相のダレスあて書簡、これを今日お認めになりますかどうか、このことを伺いたいと思います。
  230. 池田勇人

    池田国務大臣 吉田総理がそういう書簡をお出しになった事実は知っております。しかし、これは条約でも何でもない、吉田総理の外交の方針を述べられたのであります。
  231. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 私が伺うのは、今日池田総理は、吉田総理がその当時に言ったこと、これと同じ立場をとっているかどうか。それは当時はそうであったけれども、自分はいまそうではない、中華人民共和国と時期がくれば条約を結ぶとかなんとかいうそういうことですね。つまり、吉田書簡に書かれたことを今日あなたはお認めになるかどうか、このことを言っておるのです。
  232. 池田勇人

    池田国務大臣 書かれたことは認めております。そういう事実を知っております。とこういうのです。それからいま私が中共政権を承認するかという御瞬間なら、その考えは持っておりません。
  233. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そうなりますと、吉田書簡と同じようなことになるじゃありませんか。意図は持っておりませんと。いいですか。中国の共産政権と二国間条約を日本政府は締結する意図を有しないことを確言することができます。それとあなたは同じことを言っておられることになるじゃありませんか。そういうことを当時首相が、吉田総理が言ったことは知っている。しかしそれはそれだ。では、いま意図があるかどうか聞かれるならば、自分はその意図は持っていないというんじゃ、これは同じことになりますね。
  234. 池田勇人

    池田国務大臣 同じことになるでしょう。吉田さんはこう言っておられました、池田はどうかといったら、いまのところは、私は中共政権と条約を結ぶ気持はございません。結果は同じことになります。
  235. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 ところが、あなたがそう言われても、事実はどんどん、私が最初に申しましたとおりにくずれてきているでしょう。そうしますと、あなたはいま中華人民共和国を承認する意図はない。こういうことになりますと、日台条約も破棄はできない、こういうことになりますし、私どもとしては、当時サンフランシスコ条約と同時に安保条約が締結された。その安保条約にははっきりと極東の問題があげてあります。安保条約によれば、日米双方は極東の平和と安全の維持につとめることを前文及び第四条でも誓約しているのでありますが、この極東の範囲内には明らかに台湾が入っていることは、今日までの政府の統一見解で明らかでありますが、この安保条約があるので、日台条約が破棄できないし、また中国との国交回復も日本が独自にやれない。こういうことになるのではありませんか。この点を御答弁願いたいと思います。
  236. 池田勇人

    池田国務大臣 御質問の点がわかりませんが、日本の外交方針というものは、安保条約があるから、日台条約を結んだとか、そういう問題じゃない。日本の安全とアジアの平和を守るために必要な条約は日本独自の考えで結びます。こういうことなんです。
  237. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 ところが安保条約を結ばれるとき、吉田書簡のときと、日台条約が結ばれるときとは前後みな同じときになっているのであります。私のいま言いたいことは、ここまでアジアの状態が進展してきたときに、そうして日台条約というものが国際法上の何らの基礎もないときに、この日台条約を破棄して、一つの中国という立場で中国との国交を正常化する、これが必要なときになっているんだ。ところが、首相は、いままだまだそういう意図は持っていない。世界の世論と動向を見てとか言っているのでありますが、事実はもっと進んでいるじゃありませんか。たとえばラスク国務長官は、ロストウ委員会に、金門・馬祖から国府軍を引き揚げるかどうか、引き揚げるとずればどうするか、どうやるか、台湾の政治機構に台湾住民の意思を反映させるためにどうするかということの検討を命じているということであります。つまり、アメリカが相変わらずジョンソンの口を通じて古い政策を固執しているように見えながら、実はもう南ベトナムからも退却しなければならない、その場合のことも事実上の問題として取り上げなければならなくなっているのでありますが、この五月にジョージ・ケナンが御承知のとおり日本に来ることになっているのでありますが、それは例の台湾独立、これを独立国にして、しかもアメリカが相変わらずこれを軍事戦略上、侵略の拠点としておる、こういうこともやはりいまアメリカの一部にはすでに現実の日程に裏ではのぼりつつある。池田さんはアメリカに事実上こういう働きがあることを御存じでしょうか、どうでしょうか。
  238. 池田勇人

    池田国務大臣 いろいろな動きは聞いておりますが、私が知っておるということになると、いかにもそれを裏打ちするようになりますから、そういう意味でなしに、いろいろなことは、私も寡聞ではございますが、できるだけ資料を集めております。しかし、それを是認するという意味ではもちろんございません。
  239. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 私がきょうここで伺ったことは、今日まで日台条約というものがあたかも当然であるかのように政府がずっとお考えになってきたこと、それに対して日台条約というものはきょう私が申し上げましたとおり、自民党のここにいらっしゃる方には若干おわかりにならなかったようである。   〔発言する者あり〕
  240. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 政府に質問してください。
  241. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そこでその日華条約といわれておる日台条約、これが国際法上何らの根拠のないもの、それに縛られていては日本の人民にとってはもうたいへんな迷惑だ。考えてごらんなさい。沖繩はいまアメリカに占領されていますが、日本で、一つの日本、一つの沖繩、こういうことはもう全然成立しません。沖繩は別だとは成立しないように、中国にとっては一つの中国があるだけであって、一つの中国以外にもう一つの台湾がある、あるいは二つの中国がある、そういうことは絶対にあり得ないのであります。アメリカが今後どういう陰謀をしようと、また日本でそれに対してどういう協力を、あるいは支持が行なわれようと、そういうことは絶対に成功するものではありません。南ベトナムにおいて毛南北を分けてみた。ところが、南ベトナムに中国が好戦的であるとか、共産勢力が浸透するとかと言いますけれども、あそこに出かけているのは一万五千のアメリカ軍であります。正規軍一万五千、あの重装備をしたアメリカ軍を入れればこれでもって軍事上成功するかと思っている。それは絶対に成功するものではありません。パルチザンというものは、これは武器があるときには、百人のパルチザン隊がいても十人しか鉄砲を持つ者がないような状態であっても、アメリカの独立戦争以来今日までのパルチザン戦争の歴史では、正規軍はかえって。パルチザンの二倍の兵力を持たなければ勝利することができない。現にそれが南ベトナムで立証されつつあるところであります。やがてこれはアジアの各地でそのことが証明されるでしょう。キューバでも証明されました。そういうときに、私どもはいまの日本、ことに一衣帯水と首相が言われるところで、総理がまだまだ結局いまから十数年前の吉田首相のダレスあて書簡と同じような態度でおったら、これは時代に大ズレにズレておる。時期がそれから十数年もたっておる。中国の国際的地位も非常に向上しておる。そういうときに日本が吉田首相のころと同じようなことをやられるということでは、これはもう問題になりません。池田総理は、いまから三年半くらい前の安保の反対運動を御存じでございましょう。当時に比べるならば、あの当時は、まだ今日のような経済的困難というものは日本の労働者にも人民にも感じられなかったのでありますが、今日はそれが非常に大きい重圧になっているのでありまして、あなたのような態度を続けておられますと、安保以上の問題が起こりますし、私どもはまた必ずそのように情勢を盛り上げるためにやっていくということを申し上げておきます。  次に伺うのでありますが、憲法の問題について、この予算委員会でも、憲法第九十九条の公務員が憲法尊重、擁護の義務を持つものであることは総理もお認めになったのでありますが、この点はもう一度伺いたいのでありますが、この第九十九条については、総理はやはりそれを認められ、これを……。
  242. 池田勇人

    池田国務大臣 国務大臣をはじめ国民全部が、憲法を守らなければならぬと思います。
  243. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 これは総理だけでなく、内閣全体としてもその態度でございましょうか、その点を。
  244. 池田勇人

    池田国務大臣 もちろんそうでございます。憲法を守らなくてもいいという人は、日本にはだれもいないはずでございます。あるいは中にはおるかもわかりませんが、(笑声)私は、だれもみんな守るべきだと、こう思っておると思います。
  245. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 首相は共産党を皮肉られたつもりかもしれませんが、そうはまいりませんよ。  ところが、現内閣の閣僚には、公然と憲法改正を掲げて、露骨に活動されている素心会のメンバーが二人おられますね。素心会がどういうことを言っているか、三十六年四月一日発行素心会会報第一号「新日本建成のための政府・与党に対する要望書」というものがあります。昭和三十六年と申しますと、いまから三年ばかり前のことでありますが、その中にはっきりと憲法の改正ということを言っておられます。「新日本建成の為憲法改正の気運を醸成せよ。占領政策の誤りを是正して憲法始め法律制度が、日本の伝統と国情に適応するよう改正すべきである。」、かようになっているのであります。それからなお素心会の会報第七号、これは昭和三十八年二月発行でありますが、それにこのように出ております。「我が国、内外の情勢に鑑み、素心会は、本年の目標に、(一)反共対策の推進、(二)憲法改正の実現、(三)文教刷新の徹底の三つを掲げて、行動してゆくことを申し合わせた。」、かようになっているのでありますが、こうなりますと、憲法改正の実現を昨年度も行動の目標に掲げて、そうしてその前には、そもそもの出発のときから要望書を政府に出して、憲法を改正すべし、かように言っているのでありますが、そうなりますと、素心会から出られた賀屋法務大臣、早川国務大臣は、閣僚としての立場を守られるか、憲法を改めるという素心会メンバーとしての自分の政治的信念を貫かれるか。もしそれをどこまでも政治的信念に忠実というならば、当然憲法第九十九条は守れないことになりますから、閣僚をおやめになるのかどうか、そのこと、を賀屋法務大臣と早川国務大臣に伺いたいと思います。この二人が素心会のメンバーであります。
  246. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 お答え申し上げます。憲法改正ということを考えることは、憲法を順守しないということには私はならぬと思います。それで、改正に関する条項も憲法に規定してあるわけであります。それでございますから、憲法改正ということを主張しているから、おまえは憲法を守らない、閣僚をやめろとおっしゃっても、そうはまいらない。  それから、なお申し上げておきますが、私は、いま憲法を、どこをどう改正しろという主張を持っておりません。憲法の改正の必要があるかないか、これは十分検討すべき問題だろうと思います。しかし、どの点をどう改正する、いま直ちにやる、そういう考えは固まっておりません。目下研究中でございます。
  247. 早川崇

    ○早川国務大臣 私は、素心会のあれにそういうことが書いてあるということは存じておりません。私は、憲法改正は慎重に検討すべきものだと思っております。
  248. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 賀屋さんは、いま憲法改正ということを考えていないと言われるし、早川さんは素心会がそんなことをやっていることを知らなかった、こう言われるのですが、素心会の——私でさえこうして見ればすぐわかるのに、早川さんともあろう者が、何にも知らないで素心会に入っておられたのですか。さりとは少し軽率じゃありませんか。その伝で何ですな、暴力改正なんかにあまりハッスルされちゃ困ります。  そこで、池田総理に伺いますが、賀屋、早川両大臣から、いまこのようなことを言われましたけれども、この両大臣が憲法を改正することを推進する団体の公式メンバーであること、これをどう考えられますか。私は、素心会のメンバーであることを——そういうことを素心会がやっていることを知らなかったという早川さんに対しては、素心会とはそういうものであるから、素心会から抜け出ろ、あるいは憲法改正ということを賀屋さんがいま考えていないと言われるならば、そういう団体から抜け出られるべきです。そこで私は首相に伺いたいのでありますが、素心会のメンバーであることをやめないとする場合に、両大臣を罷免するお考えでありますかどうか。その覚悟を持っておられるかどうか、それを伺いたい。
  249. 池田勇人

    池田国務大臣 どうも御質問が少しどうかしております。賀屋さんが、憲法を改正する必要なしと断言されたわけではございません。憲法については十分研究して結論を出すべきだろうと言われている。それからまた、憲法改正論をしたからといって憲法を守らぬという前提になることは、これは、国民全部がそんな議論はないと思うと思います。賀屋さんも触れられたように、憲法改正は、憲法にもその手続規定を置いておる。だから、われわれは国の基本法である憲法でも、その国内あるいは世界の情勢によって変えるか変えないかということを研究することは、これは民主主義の当然なあり方だと思います。その点が共産党と違うところなんです。われわれはあくまで憲法を守ります。しかし、その憲法について、時勢の変化で改正の要ありやいなやということをやはり国民として検討することは、何ら憲法違反とか憲法を守らぬという結論になるとは思わない。それだけ自由な、民主的な考え方でいかなければ——言論の自由、思想の自由はそこにあるのです。あなた方は——あなたはといいましょうか、言論や思想の自由があまりないようでございますが、われわれは言論、思想の自由を持っておるのですから、いろいろとその点について検討……。(笑声)
  250. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 委員長委員長、いまのあなたの、これは何ですか。
  251. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 りっぱな演説だと思って、拍手を送りたいと思いました。(笑声)
  252. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 委員長委員長としては、そういう軽率なことをされては——公平な立場をとられなければ……。
  253. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 軽率ではありません。
  254. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 軽率ですよ。
  255. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 早く質問をしてください。
  256. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 委員長、軽率ですよ。もう少し公平にやらなければいかぬ。
  257. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 公平であります。私は。
  258. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 公平でないからこれをやるのだ。(「委員長と討論してもしようがない、早くやれ」と呼ぶ者あり)  共産党は、現在の憲法の民主的条項を守るために大いに奮闘していることはあなた方も御存じのとおり、あなた方のほうで憲法改正の準備をやっておられること、そうしてそのためにいろいろと素心会のほうからも動きがある、こういうことに対して、私どもは国民全体が警戒心を持たなければならない、こういう意味でいま質問しているのであります。  そこで私は、次に経済問題について残りの時間、若干伺いたいのであります。開放経済のもとということは、総理の施政方針演説にも、田中大蔵大臣の演説にもありましたけれども、開放経済について、特にどういう点を国民全体に対して要求されるのか、その点をまず伺いたいと思うのであります。
  259. 池田勇人

    池田国務大臣 戦後の日本の状態は、国際貿易と申しましても、いわゆる自由化いたしておりません。鎖国的の貿易であったのでございます。これを自由な姿で、そうして世界と自由に経済交流をしていこう、そういう場合におきましては、やはり日本の国際競争力を強めていかなければならない。あらゆる施策をこれに向け、そうして国際収支の赤字の起こらないように、また起こってもそれが、長続きしないようにつとめると同時に、国内の産業の基盤強化、商業の基盤強化には、財政金融施策もありましょう、また国民の国産品愛用とか、あるいは貯蓄増強等の協力も必要だと思います。
  260. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 いまの池田内閣の政策については、この一月一日の「新年の経済に思う」というので、総理日本経済に論文をお書きになっていますね。その中には、三カ所にわたって結局労働力過剰の時代から労働力不足の時代に入った、これは宮澤長官も言われましたが、第二ラウンドの主要な問題だ、かように申している。結局非能率的な、生産性の低いところから労働力を解放することが主要な問題であるということが、前後三回にわたって書かれております。それと取り組むことが歴史への挑戦である、そういうことばも使われているのでありますが、事実上、農業の場面では、そういうふうになりますと、いま農村のほうでは、農業人口は、首相もたびたび臨時国会でもおっしゃった、今度の参議院の本会議質問にもお答えになっておりますが、農業の就業人口がどんどん減っている。最近八、九年の間に三七%台から二七%台までも減少している、こういうことになっておりますが、農家戸数のほうはあまり減っておりません。そのために出かせぎが多くなっている。これは一つには、いまはいいが、これでまた不景気がきて首切りが盛んになったら、自分の帰るところとして最低限のものは持っておかなければならないということもあるのでありましょうが、そのために農村では一年の半分、あるいは場合によっては——半分というのは半分ほど出かせぎに出ていると失業手当が取れる、こういうこともいわれております。それから一年の四分の三までも出かせぎに行かなければならない。そうしますと、家に残った主婦、これは半年後家、四分の三年後家というようなことばまでも使われるような状態になった。各地の公民館の館長の報告によりましても、そこからまたいろいろと新しい問題が出ていく。戦前の農家ならば、それでも封建的な道徳であきらめたろうが、いまはそういうこともできがたくなっている。いろいろ問題も起こっております。また、労働者の間でもそうでありますが、なかなか子供を生むことができない。三人生んだならば、あの人は何か特別な収入の道でもあるのだろうかと近所からうわさされるぐらいになってきている。そういうところで労働人口の問題が非常に切迫してきているといわれるのでありますが、その点について、今後のことを考えると、非常に子供を育てることが負担になっている。いまの状態では、池田首相のいつもおっしゃることは、いろいろとけちをつける者はあるが、自分がやったことでテレビがふえたじゃないか、かように言われますけれども、肝心の人口がなかなかふえない。人工流産が行なわれる。昨年の児童福祉白書によりますと、七十万件届け出によって人工流産が行なわれ、そのほかに百万件あったといわれますが、最近の統計によりますと、昨年は七十七万件ではなくて届け出だけで九十万件にふえておる。そうしてそのほかに百万件も人工流産がある。実に二百万近い人工流産が行なわれる、こういうことになっているのであります。テレビがふえるよりも、これはもっともっと大きい、重大な現象であろうと思いますが、首相はこれに対してどういうふうな対策をとられるのでありますか、それを伺いたいと思います。
  261. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、日本民族の発展を願うものでございまして、やはり人口の適度の増加は好ましいことと考えております。したがいまして、いまのお話の点につきましては、厚生省関係その他で検討を始めておるのであります。ただ幸いに、ここ一年余り前からわりに出生率はふえつつある傾向にあることを申し上げておきます。
  262. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 先ほど引用しました首相の一月一日の日本経済新聞の新年に思うという論文に、やはり農村の新しいあり方、農業及び中小企業の近代化ということをいわれているのでありますが、きょうの新聞を見ますと、新たに農業問題研究会議の代表委員になられた近藤康男博士、武蔵大学の経済学部長でありますが、この人が農業の最近の重要問題として自分がまず取り上げたいのは、千葉県成川市豊住地区の農業構造改善専業が失敗したのはなぜか、これを取り上げたい、かように近藤康男博士は言っているのでありますが、この豊住地区に最初農業構造改善事業に取りかかろうとされたのは、宏池会——池田首相の後援団体である宏池会だということでありますが、首相はその点御存じでしょうか。
  263. 池田勇人

    池田国務大臣 宏池会の代表の田村敏雄君という人は、非常に勉強家でございまして、そういうことをやってみたいがというようなことを言っておりました。御承知のとおり、私は、総理になりまして、一度も宏池会に参っておりません。どういうふうなことをやっておったかよく知らない。これは田村君が自分の考えでやっておったようでございます。
  264. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 その田村敏雄君が理事長をやり、そして所長は池本喜三夫君であった新農政研究所というのがあります。日本短波放送会館の五階というので、先日電話をかけてみましたら、もう解散しましたということであります。ところで何をやっているか御存じないということでありますが、ここにその新農政研究所の機関紙「新農政」の創刊号があります。この題字は、あなたも御記憶のとおり、あなたの書かれた題字、あなたの写真が出て、ここにあなたがちゃんとことばを寄せられております。こちらは田村敏雄君の書いたものであり、こちらは所長の池本君、これが実は成田市にやったのであります。前評判が高くて、成田には不動さんのほかに、いま豊住地区に新しい構造改善事業ができる、それができると、将来こういうものになる、こういう図まで書いてあるのであります。農村が全部こういうふうに酪農や何かと結合し、また兼業農家は農村工家、そういうものになって、そこに招致した工業で働くようになる、非常な理想図が描かれて、ここへ全国——北は北海道から南は鹿児島まで、毎日バスが二、三台ずつ行って、前後五、六万人の人が見学に行ったそうであります。私も先日見学に行きまして、何ができているかと思ったら、何もできてない。この写真のとおり。そうしていまできておるのは、初めは神戸製鋼所を呼ぶ、東洋電機を呼ぶ、あるいはコロムビアを呼ぶ、いろいろ宏池会並びに池本所長のほうで画策されたようでありますが、いまできておるのは、ボールペンの三十人ばかり雇う工場が一つ、私が行ってみたらできておりました。この池本という人については、この新農政研究所の第一号にこのようなことが書いてある。「神がその子イエスを人類に与え給うたことは全世界キリスト教徒の無限のよろこびであるという、神はまた日本全農民の為に池本喜三夫氏をこの島に恵み給うた」、こう書いてある。あなたが題字を書き、創刊号にことばを寄せたところで、これは池田首相の後援団体の宏池会がやるのだというので、何と十五億円の予算を想定し、そのほかに土地買収費、家を建てるのなんかでさらに十五億円、合わせて三十億円という予算の触れ込みでやって、そうしていまは近藤康男博士が、どうしてこんなことが失敗したか、こういうことになっておる。こうなりますと、池田首相、あなたのお考えになったことは、現実に最初に取りかかったもの、全国で最初に取りかかったものが、これは農協新聞その他でも言われておりますが、このために農家に強い不信感が巻き起こってしまった、こういう状態であります。あなたはいろいろのことを考えておられるつもりであっても、現実にはこのような失態がもう初めから起こっておるのであります。この点について、この成田市豊住地区のこういうでたらめなことですね、こういうことが行なわれていること、こういうことについて、あなたは何も御存じなかったんでしょうか。
  265. 池田勇人

    池田国務大臣 五年くらい前でございましたでしょうか、池本それがしとは一、二回会ったことがございます。そして、農業問題のやかましいときで、何か北海道出身で、実際の農業も経営したと聞いておりました。また、外国にも一、二回行かれて、事情がかなり詳しいようでございます。四、五年前。そのときに田村敏雄君が、自分は、これから農業というものが非常に大切だ、農政研究をやっていきたい、新農政の研究をしていきたいということで、私は新聞を出すとは知りませんでした、新農政ということを書いてくれというので書いた覚えはあります。彼がなくなりまして、いろいろなことを聞いてみたときに、それを非常に熱意をあげてやっておったと明いております。私は、宏池会の会計にはあまり関係しておりません。まあ私が友人から聞きますと、非常にこれのために精力を尽くして、それが命を縮めたんじゃないかということもあとから聞きましたが、私は、成田地区云々につきましては、全然関知していないのであります。
  266. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 志賀君、お約束の時間が超過しておりますから、いま五分間許します。
  267. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 この中に、成田市豊住農業協同組合長吉岡厳という人の談話で、三十七年度予算政府原案で構造改善事業が認められた。「それにつけても一番頭の痛かったのは工場誘致です。どこの会社がどんな工場を持って来るか、」これが問題だった。ところが「工場誘致については諸先生方の尽力もあり、必ずうまく行くものと確信しています。」、こういうことも言われているのです。何といっても宏池会が首相の後援団体であったということは、天下周知のことである。したがって、首相のほうでも派閥解消の精神にかんがみられたのか、これを解散するということを言われたのでありますが、そこであなたのいまお聞き及びのようなことが問題になって、これが地元でも非常にいまの農業構造改善事業その他いまの池田内閣の農政に対して不信を買っているのであります。こういうことが次から次から起こってきたら、これは開放経済か、あるいはあなたの言われる高度成長、所得倍増計画というものが、実際には国民の各場面にもどういう影響を与えるかということの一つの大きい証拠になるのであります。いまのあなたのお話を聞きますと、どうも自分は知らないが、何かやっていた。それがいま新たにできる農業問題研究会議の農業構造改善事業の失敗の、どういうことで失敗したか、最初に調べるものになっているわけでありますから、あなたが御存じないと言われるなら、これは宏池会があなたの後援会であった関係上、疑惑を残さないように、一体どうしてこんな不始末になったのか、いまはどういうふうにやられているのか、そういう点について、あなたがきょうここで知らなかった、どういうことをやるのかよく知らなかったと言われるのでありますから、その点について総理責任を持ってひとつ発表してくださることをお願いしまして、私の質問を終わります。その点について伺いたい。
  268. 池田勇人

    池田国務大臣 責任を持って発表することはできません。私に関することではございません。宏池会は、私の後援会でございます。何をやったかは田村君のあれでございます。いまのように、私が関係しておるというのならば、四、五年の間ですから、成田のほうのそういう人が私のところへ来るべかりしものじゃございますまいか。私が関係していないということは、私は、成田の人なんかもよく御存じじゃないかと思います。行ってみたこともないし、その問題で会議を開いたこともないし、私の全然関知しないところであります。
  269. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 関知しないと言われますが、宏池会が池田首相の後援団体であったということは、これは天下周知の事実ですから、関係されないなら関係されないで、なおさらその点について疑惑の残らないように、宏池会がどうなっていたかということについて、首相のほうから、はっきりその点を宏池会に対して、宏池会の責任者であった人に対して、どういうことをやったのか、あなたのほうから一言でもことばをかけられて、その点を宏池会のほうではっきりさせられるべきものだと思います。そういう意味で申しているのであります。
  270. 池田勇人

    池田国務大臣 死人にむちは当てられません。かわいそうに、なくなってしまっているのであります。私は、前からそういうことに関係しておりませんし、そうしてまた、そういう失敗があったことは、彼が死んでから聞きましたが、しかし、この失敗が将来の農村の研究のための一助になれば、その失敗もまたあきらめがつくと思います。私は、田村君の構想を実現しつつあったものが、どういうことで失敗したかということは、十分みんなで調べてみていただきたい。いまの博士の人が御研究になるということは、これは一つの布石を研究される、将来のためにあれでも役に立つことがあったとすれば、死せる田村君はほほえむと私は思います。
  271. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 成田市豊住地、区の問題につきまして、経過を御報告申し上げます。  この地区は、いまもちょっとお話がありましたが、三十、五年以来工場を誘致して、地域内の農家を自立農家群と、いまお話がありました農村工家群との二つに再編成して、自立農家群につきましては、一戸平均四町歩として、水田、酪農等の協業経営を中心に、専業的農業経営を行なうという構想のもとに、市当局、農民が一体となって計画の作成が進められておったのでございます。ところが、三十八年の二月にパイロット地区として指定を受けましたが、その後工場誘致が当初の計画どおり進捗していない、そういうこと、あるいは土地改良事業でございますが、この地区は一度区画整理をやったところでございまして、それをまた大きくしようということでございますけれども、いますぐにやるという必要もなかろうじゃないかという反対意見等も出まして、土地改良事業につきましての一部の反対がありました。そういうことのために、計画の全体についても慎重に再検討を行なわれましたがが、その結果、三十八年末、全体計画をやや縮小いたしまして実施する方向で地元の関係者一同の意見がまとまってきまして、現存県庁を中心として計画の変更が進められておる、こういう事情でございます。
  272. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて志賀君の質疑は終了いたしました。  次会は明五日午前十時より開会いたします。明日の質疑者は、川俣清音君であります。要求大臣は全国務大臣であります。  なお、本日委員会散会後直ちに理事会を開きますから、理事の方は第二委員室に御参集願います。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時三十一分散会