○志賀(義)
委員 総理に申し上げますが、私は歴史的事実の経過をいま追っているのです。あなたはそのように言われます。サンフランシスコ条約についてはいまあらためて
質問いたしますけれども……。実は、台湾に第七艦隊を出していった。そのときに中国が参戦国になっておったというなら、百歩を譲って、戦時国際法上、中国の領土に第七艦隊が出かけていくということについては、これは
アメリカの国際法学者、あるいはその他で認める者があるかもしれませんけれども、少なくとも中国が、人民解放軍が朝鮮の戦争に協力したのはそれからまたずっと
あとのことでありまして、当時中国に第七艦隊が朝鮮戦争に籍口して出るべき理由はごうもなかったのであります。そのときから今日まで、
アメリカが武力で人為的に、台湾は中国の不可分の領土であるものを切り離しているのであります。だから、はっきりしていることは、
アメリカ政府が自分でも認めたことを、朝鮮戦争のときに武力で踏みにじった。これはあなたの解釈の問題ではなくて、歴史上の事実の経過がそれを示しているということであります。だから、本来から、言うならば、サンフランシスコ条約にもはっきりと、中国の領土の一部分であるということを、これは認めてしかるべきもの、そこのところをダレスによって認めないできた。実はサンフランシスコ条約でそういうことをやったことが、今日の
アメリカの外交政策、世界はもちろんのこと、アジアにおける外交政策、これの失敗のもとであります。世界政策の失敗はパナマにもあらわれております。南ベトナムにもあらわれております。こういうことがいままた中国の問題にもあらわれてきたのであります。かりに見てきますと、サンフランシスコ条約そのものが、実は当然それまでにカイロ宣言、ポツダム宣言、それから
日本の降伏条約、こういうものでも認めたことをはっきりと規定しなかった、こういうことになるのであります。それで、あなたとしては放棄したけれども、別に
日本としては帰属のことには触れていない。帰属のことは、先ほど申しましたとおり、第一次大戦後の講和条約、今度の講和条約との違いは、先行して大西洋憲章以来はっきりと領土的な規定をしておったこと、これを講和条約に入れなかった。あなたは、それだから
日本はいま台湾のことについては私が申すような立論は成り立たないとおっしゃるけれども、実は
アメリカがそういうことをし、
日本もまたその講和条約に
合意したところから、今日の
アメリカの抜き差しならない失敗が、歴史的事実をひん曲げて、武力によって干渉してきたこと、それが今日の問題を起こしているのであります。
そこで、私はさらに進んで伺いたいのでありますが、御承知のとおり、日華条約といわれる
日本と台湾の条約の問題でありますが、いま
日本が、あなたのときに、平和共存は認めると言うが、まだ世界のいろいろな国が国連でも非難決議を出しているし、承認していないので、それをも見合いながらいきたいと言われるのは、実は
日本が日華条約を結んだこと、これに
関係があると思うのであります。この日華条約は事実上この占領を認めて、それによって
アメリカが台湾海峡に出動したこと、そしてあすこに介入したこと、台湾、澎湖島を基地にしたということ、こういうことを認めたことにあるのであります。これは
日本が降伏文書の中でもはっきり認めた。ポツダム宣言の条項を誠実に履行するという、その。ポツダム宣言は明らかにカイロ宣言を履行すると言っておる。これは世界第二次大戦の戦後処理の大原則を定めたもので、カイロ宣言、ポツダム宣言に基づいていないで、そうしてとうとう日華条約を結んだ、こういうことになるのであります。この日台条約の調印は一九五二年四月二十八日になるのでありますが、サンフランシスコ条約は御承知のとおり一九五一年九月八日に調印されました。安保条約も同時に結ばれました。ところが、発効したのは翌五二年四月二十八日のことであります。サンフランシスコ条約は、先ほど申しました平和の根本原則、それまで進んできた事実を踏みにじったのであるが、しかもその条約が発効する前に、つまりポツダム宣言で
日本の国家主権が占領軍のもとに置かれていたときに、外交主権がないときに、ダレスとの
話し合いでこれが結ばれたのであります。これが日台条約であります。ですから、日台条約を結んでいるからといっても、当時外交主権を占領によって奪われていたときに、
日本政府が蒋介石政府と結んだことが国際法上有効であるかどうか、これが重要な問題になってくるのであります。外交主権を奪われていたものが日台条約を結んだということは、これはほかでもありません。何のことはない、
アメリカの第七艦隊が台湾海峡に介入したこと、この事実を認めるために無理やりに結ばれたことになるのでありますが、その点について首相はどのようにお
考えでございましょうか。