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1964-01-29 第46回国会 衆議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年一月二十九日(水曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君    理事 櫻内 義雄君 理事 野田 卯一君    理事 松澤 雄藏君 理事 井手 以誠君    理事 川俣 清音君 理事 辻原 弘市君       相川 勝六君    荒木萬壽夫君       安藤  覺君    井出一太郎君       井村 重雄君    稻葉  修君       今松 治郎君    植木庚子郎君       江崎 真澄君    小川 半次君       仮谷 忠男君    川崎 秀二君       小坂善太郎君    重政 誠之君       周東 英雄君    田澤 吉郎君       登坂重次郎君    中曽根康弘君       古井 喜實君    古川 丈吉君       保科善四郎君    松浦周太郎君       松野 頼三君    水田三喜男君       山本 勝市君    淡谷 悠藏君       石田 宥全君    石野 久男君       岡田 春夫君    加藤 清二君       五島 虎雄君    河野  密君       多賀谷真稔君    堂森 芳夫君       中井徳次郎君    山花 秀雄君       横路 節雄君    今澄  勇君       小平  忠君    永末 英一君       志賀 義雄君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         法 務 大 臣 賀屋 興宣君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 小林 武治君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大 臣 福田  一君         運 輸 大 臣 綾部健太郎君         郵 政 大 臣 古池 信三君         労 働 大 臣 大橋 武夫君         建 設 大 臣 河野 一郎君         自 治 大 臣 早川  崇君         国 務 大 臣 佐藤 榮作君         国 務 大 臣 福田 篤泰君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君         国 務 大 臣 山村新治郎君  出席政府委員         内閣官房長官  黒金 泰美君         内閣法制局長官 林  修三君         総理府総務長官 野田 武夫君         大蔵事務官         (主計局長)  佐藤 一郎君  委員外出席者         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 一月二十九日  委員羽田武嗣郎君辞任につき、その補欠として  登坂重次郎君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十九年度一般会計予算  昭和三十九年度特別会計予算  昭和三十九年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和三十九年度一般会計予算昭和三十九年度特別会計予算昭和三十九年度政府関係機関予算、以上三案をて議題とし、審議を進めます。  この際、川俣清音君より議事進行に関し発言を求められております。これを許します。川俣清音君。
  3. 川俣清音

    川俣委員 私は、この際、本委員会に付託されました予算案件を迅速にしてかつ充実した審議を行なうため、議事進行発言を求め、池田内閣並びに荒舩委員長善処を要望したいのであります。  すなわち、その一つは、各省別予算明細書をすみやかに本委員会提出すべきであるという点であります。  その二は、国は、地一方財政について、国の方針地方公共団体に対する国の財政措置等を明らかにするために、毎年地方公共団体標準的行政に必要な財源の見通しを考慮して、地方公共団体全体の歳入歳出を推計した地方財政計画提出する義務をすみやかに履行すべきである。地方財政法三十条の二に基づきその報告を求めるものであります。さらに、地方交付税法第七条に基づく書類の提出を求めるものであります。  その三は、本予算関係ある法律案はすみやかに提出をいたしまして、予算審議支障のないようにつとむべきであるという点であります。したがいまして、予算関係ある提出予定法律案件名及びその提出時期並びにその要綱を審議資料として直ちに提出すべきでありましょう。  なお、さらに、各委員より要求の審議資料に対してはすみやかに善処されて、審議促進の便を講ぜられることを要請いたします。
  4. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ただいまの川俣君の御要望の事項に関しては、政府においては特に留意して本委員会審議支障のないよう善処方を要望しておきます。     —————————————
  5. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより総括質疑に入ります。  理事会できめたお約束どおり、二時間を厳守をお願いいたします。  愛知揆一君
  6. 愛知揆一

    愛知委員 私は、きょうのこの予算委員会で与党を代表いたしまして総括質問を行なうにあたりまして、こういう質問のしかたをさせていただきたいと考えております。それは、論争のための論争とか、議論の山場をつくって盛り上げるとか、あげ足をとるとか、そういうやり方もとよりなすべきではない、大切なことは、そうしたやり方よりも、予算中心とした国政全般が論議されるこの委員会におきまして、一人でも多くの国民が、本会議での施政演説やあるいは総理その他の閣僚の御答弁だけではいろいろの関係でまだ十分に聞き取れなかったこと、そのうちで聞きたいと思っておるであろうことを、この際お聞きをいたしまして、総理はじめ閣僚からできるだけわかりやすく解明していただきたい、こういう気持ちでこれから内政外交、いろいろの問題についてお伺いいたしたいと思いますので、御了承をいただきたいと思うのであります。  さて、世の中はあげて自由化時代と言われております。わが国世界に対して開放経済時代に入った。外国との間の輸出も輸入も自由になる。お金の交流にも制限がなくなりつつある。人の往来も自由になりましょう。世界との間に公正な競争をしながらその中でわが国繁栄の道を求めていくということになったわけであります。これはなかなかきびしい時代に入ったと私は言わなければならないと思います。極端に言えば、鎖国から文明開化になった明治維新にこの時期をたとえる人もあります。あるいはまた、近くは少なくとも昭和初年の金解禁に匹敵するような大事業に当面したと言う人もあるわけでございます。それだけに、それぞれその当時の先輩、指導者たちのひたむきな指導あるいは国民の異常な努力というものをしのびながら、今日われわれとしては大きな決心をして進まなければならないと思うわけであります。今日最大のわれわれの問題は、こういうところから始めて考えていかなければならないのではなかろえかと思いますので、私は総理大臣のまず基本的なお考え方をこういう背景のもとにおいてお伺いをいたしたいのであります。  と申しますのは、私は、こうした自由化ということも、開放体制ということも、実は経済の問題だけとして取り上げるべきものではない。そういうふうな理解のしかたは私は足りないのでは本の政治あり方も、あるいは個々の国民のものの考え方も、あるいは生活のしかたも、すべてにわたって、つまり物心両面にわたって自由化開放化ということを考えわが国の特性を十分に生かしていかなければならないことはもちろんでありますけれども、世界的な感覚でもって、国際水準のものさしではかれるようにすべてのことをやってまいらなければならないかと思うのでございます。総理大臣は、今回の施政演説で、まず日本民族創造力の躍動ということをうたい上げられております。それから、個人の尊厳と自由が守られつつも、社会連帯の意識、公共奉仕精神が横溢することを強調されております。私は、こういったようなことは、世界の中の日本の発展を期する場合に、従来の所得倍増政策といったようなことはもとよりでありますけれども、こうしたいわば形而下の問題だけでなく、形而上の日本民族の心の問題を、心の再建をあらためて非常に重視せられたものにほかならないと思うのでありまして、私は、先ほど申しましたような関係からいたしまして、総理御自身としても、あらためて政治の目標をこの際一段と高めていかれる、それに向かって勇気と英知をふるっていきたい、こういうお考えで、格調の高いと評せられるところの施政演説をなされ、またそういうお気持ちでこの際政治勇気を持って当たっていきたい、こういうふうなお気持ちにあらためてかたく御決意を伺うわけでございますが、ひとつそういったような点につきまして基本的なお心がまえをお伺いいたしたいと思うのでありま
  7. 池田勇人

    池田国務大臣 戦後日本の歩んでまいりましたそのあとを顧み、将来日本がどうあるべきか、またどういうことを考え世界の平和と繁栄に貢献しなければならぬかという気持ちを私は施政方針演説で申し上げたのでございます。いろいろ表現のしかたはございましょうが、私は自分考えておることを率直に施政演説に申したのでございます。いま愛知委員お話のとおりの気持ちで進んでいく決意でございます。
  8. 愛知揆一

    愛知委員 御決意のほどを承って非常に安心をいたすわけでございますが、ここで、先ほどお断わり申しましたように、国民人たちがさらにもう少し掘り下げてお伺いしたい、さらにこういう点については大きくもっと御期待を申し上げたい、こういう気持ちをもって、もう少し掘り下げて総理のお考え伺いたいと思うのでありまして、自然にお聞き苦しいこともあろうかと思うのでありますが、その点は御了承願いたいと思います。  と申しますのは、たとえば、昨日の池田総理大臣ラスク国務長官とのお話し合い新聞にも出ておりますが、その中に、やはり総理がよく好んでお使いになるところの寛容と忍耐ということばが出ておるように拝見いたしました。私は、寛容と忍耐ということばは非常にけっこうなことば、そして、これは、たとえば国会議事の運営でありますとか、あるいは外国とのものごとの交渉の場合でありますとか、そういうときの心がまえとしてこういう気持ちでやっていかなければならない、この総理のお気持ちというものはす。しかし、その前に、ものの信念といいますか、あるいは政治指導理念と申しますか、あるいは世界観と申しますか、そういう中身が一つがっちりしておって、それをもとにした話し合いの場における心がまえ、こういうふうに理解したいと思うのでございますが、そういう点において、従来、ともすると、世間の一部の人でありましょうけれども、何か寛容と忍耐ということだけがクローズアップされて、何かたよりないのではなかろうか、よりどころが何か乏しいのではなかろうかというような、たよりなさというものを感じた向きも、私はないではなかったかと思うのであります。しかし、ただいまもお伺いいたしましたように、一段と高いお立場といいますか、御決意に立って、これから大いに国づくり人づくり、あるいは世界に畏敬され、たよられるような日本の外政を大いに推進していきたい、こういうお考えであるように考えられまするので、私はその点を非常に多とするものでありますが、まあ念のためでございますけれども、総選挙で信任を新たにされた自由民主党の総裁として、日本民族の心の再建ということを中軸にしたがっちりした指導理念によってそうしたことに邁進される御覚悟であるか、これを念のためもう一度お伺いいたしたいと思います。
  9. 池田勇人

    池田国務大臣 政治におきまして、内政におきましても外交におきましても、主義主張というものははっきりしておるのであります。それを通す方法として、やはり相手のあることでございますから、相手意見を十分聞く、そうして聞くべきものは取り入れて実行していく、これが私が申すいわゆる寛容と忍耐でございます。で、私とラスク長官との話ではございません。今回お見えになったアメリカの各長官並びにその代理の方々に、およそアジア民族に対する外交あり方は、先進国がいたずらにひとりぎめして、そうして、違った歴史と伝統考え方を持っている人に常に押しつけるという考え方は、アジア民族との協調の上によくない、やはりアジア民族気持ちを十分考えて、そうして長い気持ちで、ちょうど内政と同じように、各民族のその伝統考え方を十分寛容と忍耐で聞き入れることをしてもらいたい、えてして、自分等信念どおりにこうだああだということは、アジア民族はそれを十分受け入れられない点が多い、これを私ははっきりアメリカに言ったのであります。これは、内政におきましてもそのとおり私はやっていきたいと思います。
  10. 愛知揆一

    愛知委員 次に、総理大臣施政演説におかれましては、憲法の問題にお触れになっておられます。憲法調査会答申が行なわれた場合においては、国家と民族基本について国民理解が一そう深まることを期待するとともに、世論動向を十分に尊重して慎重に対処したい、こう述べておられるわけでございます。これはきわめて簡潔な表現でございますが、また、その限りにおいて私どももまことにそのとおりだと存じます。しかし、これもあまりに表現が簡潔でございまするから、もう一歩突き込んで、憲法という問題に対して総理大臣がどういうふうなお考えを持っておられるであろうかということは、国民としても聞きたいことの大きな一つの問題ではなかろうかと思いますので、御意見をお漏らしいただければ非常にしあわせと存じます。
  11. 池田勇人

    池田国務大臣 憲法は国の基本法でございますから、これを十分尊重しなければなりません。しかし、敗戦後につくられた憲法につきましては、いろいろな説もあります。考え方もございます。私は、こういう考え方につきまして、もう一度深く学識経験者等に御研究を願って、憲法の指向するところ、また現在の日本から言ってこの憲法改正の要ありやいなやということにつきまして十分検討を願い、その検討の結果を国民十分国民立場において研究し、そして、どうあるべきかということにつきましての理解をいろいろ議論をして深めてもらう。その結果において私は国民の向かうところに従っていきたい。私から、こうあるべき、あああるべきという、私見はございますけれども、内閣総理大臣として、いま、ここはこうだ、これはいいんだとかいうことを言うことは、私は差し控えておるのでございます。あくまで、国民憲法でございますから、国民十分理解を持ってもらい、そして国民の大多数の進むべき方向を見て、そして自分考えとどうかと合わしてみまして、もし私がやるとすればやるのであって、いま自分でどうこうという考え方は出すべきでない、あくまで、国民自分憲法として十分御研究願い、国民動向を察して政治家はきめるべきだと思います。
  12. 愛知揆一

    愛知委員 総理のお考えはよくわかります。そこで、もう一言私の考え方を申し上げて、さらに御意見を伺うこますが、まさに、ただいま総理大臣がお述べのとおり、憲法というものは、あらゆるわれわれ国民最高ルールとして、社会生活でも、政治生活でも、あるいは私生活でも律し得る根本ルールである。これはほんとう日本国民のものでなければならない。ところが、現在の憲法というものは、その制定経過に徴しましても、占領中にできたものである。当時の最高指揮官は、非常な善意によって、日本をよりよく指導したいという気持ちで、こうした憲法制定というようなことに非常な協力をしてくれた。事実これを認めるにやぶさかではございませんけれども、少なくとも、日本人がみずからの手で、いかなる外国の人へも遠慮をせずに起草をし、あるいは当時の議会におきましても何ら外国側への顧慮なしに審議されたものではないということだけは、すでに憲法調査会中間報告に出ておりまする制定経過を読めば、読む人によっては若干の受け取り方は違いましょうけれども、いま私が申したような事実を否定することはできない。そこで、リンカーンのことばを引くまでもございませんが、民主主義がオブ・ザ・ビーブル、バイ・ザ・ピーピル、フォア・ザ・ピープルだ、そうして、われわれ日本人のものであるような基本憲法日本人のものであり、日本人の手によるものであり、日本民族のためになるものだ、こういうふうに考えてまいりますと、たまたま先ほど総理の御所見にもございましたが、これから世界の中に処していく日本としては、日本民族精神の高揚あるいは日本世界に対する大きな平和の推進の心持ちというようなもの、この現代において考え得る最高のものが、この憲法というものの中にわれわれの手によって書き入れられ、あるいは自主的に書きおろされ、——そうして、これが、いまのように、現行憲法は、実は、世論調査をしてみても、読んでおりませんという国民が六〇%にも達しておる。これは、要するに、非常によいことは現行憲法にたくさん書いてあるけれども、やはり、何か日本国民になじめない、日本の国土にほんとうに植えつけられていない、われわれ国民の血となり肉となっていないということの証拠ではなかろうかとも思いますが、そういうことをもあわせまして、ひとつ、おそらくは総理の御自分のお考えはもちろんおありのことと思います。また同時に、いまの段階で総理大臣としてどうするこうするとはお話しになれないということも私はよくわかりますが、私のこういったような考え方世間の中にたくさんありますので、こういうことを十分にこの上ともにひとつ心にとめられまして、憲法問題の調査会報告書が出たあとのお取り扱い等については、全国民的なレベルで、みんなが真剣に取り組んでよりよいものがつくられるように、そういうふうな方向にこの問題を持っていっていただけるようにひとつお願いをいたしたいと思うわけでございます。重ねて何か伺えれば幸いと思います。
  13. 池田勇人

    池田国務大臣 憲法についての知識で、世論調査の結果、十分読んだことはない、知らないという人がおられるということ、これは、旧憲法時代においても、世論調査をしたらそういう数字が出るかとも思います。また、外国におきましてもそれに近い数字が出る国もあると思います。しかし、いずれにいたしましても、それは望ましいことじゃない。したがいまして、私は、憲法調査会報告が出ましたら、この調査会での御議論、いまの成立の経過からいろいろなものをよくわかるように国民PRにして、ほんとう国民憲法国民による憲法国民のための憲法ということをまず知っていただくことが、憲法改正に対するところの前提、基本的措置であると私は考えております。そういう方向で進んでいきたいと思います。
  14. 愛知揆一

    愛知委員 実は、総理大臣から、いつぞやのこの委員会あるいは本会議等でこの問題が出ましたときに、憲法調査会報告が出たらひとつ内閣法制局ででも十分研究させましょうというような御趣旨の御答弁があったのでございますが、そういうことではなしに、ただいまお漏らしいただいたようなお考え方で、この報告書中心にして十分国民的に憲法を通じて教育と申しますか啓蒙と申しますかするような方向に持っていっていただきたいということをこの際お願いをいたしておきまして、この憲法問題についての私の質疑は終わります。  その次に、今回の総理の本会議における御演説は、最後にこれをすべて取りまとめて三つの点に結ばれておるわけです。その一つ自主外交の展開、その一つ倍増政策国民生活に定着させたいということ、その一つ公党倫理性高め選挙制度を合理的に改正する、まあ大きく分けるとこの三つに集約されております。自然私もこういったような問題について順次お伺いをしていきたいと思うのであります。  まず、順序が反対になりますけれども、公党倫理性高め選挙制度を合理的に改正するということを言っておられるわけでございますが、この選挙制度公明化ということにこうした意欲をお示しいただいたことはまことにわが意を得たところでありますが、制度の合理的な改正ということについてはどういう方向にお考えなのでございましょうか、その点をお伺いいたします。
  15. 池田勇人

    池田国務大臣 この選挙制度が改善され、ほんとう公明選挙が行なわれ、そして民意がりっぱに反映されることを念願といたしまして、私は選挙制度調査会を設けまして御審議願っておるのでございます。これはいろいろのむずかしい点がございましょうが、しかし、いまのままの選挙制度でいいかと申しますと、必ずしもよくないものがございます。たとえば、いまの経済その他の変化によります定数是正、これはとりあえずやるべきことだ、そういう答申も出ておりますので、本国会で御審議を願うことにいたしております。しかし、それだけでいいかと申しますると、やはり政治資金の問題、あるいはもっと根本的、もっと重大な問題としては、区制の問題等々あると思います。こういう問題は、やはり民主主義根本である選挙制度ということにつきまして十分検討していかなければならぬ。だから、私は、今後におきましても、当面の問題を御審議願うと同時に、十分選挙制度につきまして改むべきところがあれば改めるように、研究調査会でしていただき、またわれわれとしても重要な問題であるので検討を続けていきたい、こういうことを私は言っておるのであります。
  16. 愛知揆一

    愛知委員 実は、私二、三日前に新聞で読みまして、私は私なりにびっくりしたのでありますけれども、それは、日本社会党運動方針案というものが新聞に報ぜられておる。その中にこういう一節があるのでございます。「全党員、全勤労大衆が階級的な憤りに燃えて献身的に立ち上がるための政治指導」、こういう一項がございます。それから、さらに、「われわれの目ざす社会党政権は単なる技術的な選挙の繰り返しの中で自動的に得票が伸びて獲得できるものではない。きびしく切り結ぶ階級闘争の中でこそ戦い取られるものである。」、これは私が新聞で読みました運動方針案というものでございます。そこで、選挙というものとこれを結びつけてみまして、私は自分意見からいたしまするならば、日本の二大政党なり三大政党なりというものは、私は国民政党でなければならないと考えるわけでございます。それが民主政治基本であると思うのです。そうして、その基本というものが公明な選挙で行なわれるのでございます。これが一番の基本なんです。その点から言いまして、選挙制度改正というものがどうしても必要である。それはどういう内容だったらいいだろうか。私はいまこまかい技術的な問題を申し上げませんが、まず政党本位でなければならない。国民政党ということから言って、地域社会を基盤にし対象とする選挙制度でなければならない。私はこれが一番根本に必要なことではなかろうかと思います。いま総理大臣お触れになりましたが、たとえば資金の問題その他の問題なども、やはり、この根本のそこのところが解明され、よい制度ができまするならば、おのずから解決されると思いまするし、また、先ほど私が触れましたような、「階級闘争の切り結ぶきびしい中で戦い取る」というようなおそろしいようなこともおのずからなくなって、非常になだらかなりっぱな政党政治というものが確立されると私は思うのであります。そういう点から、いまの総理の御答弁では、現在出そうとしているところの選挙制度改正案定数是正等にすぎないけれども、それに満足することなく大いに前向きに取り上げよう、こういうお話のようでございますから、それで私はけっこうなんでありますけれども、こういう情勢でもございますから、一段と選挙制度の合理的な改正ということについては意をお用いいただくようにひとつ御要請申し上げたい、こういうふうに考えるわけですが、なお御意見を承れば幸いと思います。
  17. 池田勇人

    池田国務大臣 私は民主主義政治というものは闘争政治ではないと考えております。それを階級闘争に結びつけて政治をしようとされることは、国民大多数の容認されるところではないと思います。したがいまして、民主政治というのは、あなたのおっしゃるように、国民の意思が十分に反映されるような選挙制度でなければならぬ。階級の代表であるというような選挙制度は私はとりません。大体の方向はあなたのお考えと同じと私は思います。
  18. 愛知揆一

    愛知委員 その次に自主外交の問題に移ってまいりたいと存じます。  外交の問題で、何と申しましても、今日国民の一番聞きたいところは、中国の問題、中共の問題であろうかと思います。ちょうど東京では一昨日・昨日と日米経済貿易委員会が開会せられておりました。ちょうどまたそのさなかに一昨二十七日にフランスがいわゆる中共の承認ということを発表いたしたわけでございますが、正確に申しますと、二十七日のフランスの発表というのは、フランス共和国、中華人民共和国、両国政府は、両国政府の合意によって外交関係を樹立することに決定した、この目的のために三カ月以内に大使を任命することに合意した、これが公式発表のようでありますし、これ以外いろいろの新聞情報等が出ておりますが、公式のものはこれだけであるかのように考えられるわけでございますので、これをもとにして逐次お伺いをいたしたいと思うのでございます。  私は、まず第一に、いろいろのものの考え方や見方はあろうと思いますけれども、フランスのドゴール大統領が、この時期にこの措置をどうしてこういうふうにとられることになったのであろうか、あるいはこれに対して中華人民共和国というようなところがこの公式声明にあらわれたところに合意するようになったのは一体どういうところから来ているのであろうか。一応これから日本はどういう態度をとっていくかということについても、そもそもこのことの起こってきた背景というものを知りたいというのが、まず第一の願いではなかろうかと思います。フランスという国はヨーロッパの大国である。ドゴールは当代の大政治家である。しかし、フランスという国は極東に対しては何といってもわれわれとは比べものにならないように利害が少ないと思います。そうしたフランスの地位を考えた場合に、フランスの政策の影響を過大視することは禁物だと思う。私は軽視してよいとは申しません。しかし、この際こそ冷静に慎重にかまえていく必要があると思うのでありまして、単純に、バスに乗りおくれるなとか、あるいは、単純なムード的に、周到なる考え、思慮なくして、ムードに乗って、フランスのバスに乗りおくれないようにしよう、こういうような考え方はとるべきでない。これはもうしばしば政府側も言っておられるとおりだと思いますが、それにしても、いま申しましたように、フランスがいまの時期にどうしてこういう措置をとられるようなことになったのだろうか。幸いに総理大臣はみずからもドゴール大統領とわりあい最近にお会いになっておられる。それから、外務大臣は外交演説でも指摘しておられるように、フランスとの間にも外相レベルの定期的な協議ということが実行されるようになっているということで、まことにけっこうなことであります。また、私はかねがね感心しておるのでありますけれども、いまのフランスに駐在しておる日本の大使の萩原君というのは、なかなか有能練達な士であって、ドゴール大統領とも直接話し合いのよくできる人であるようにも聞いております。こうしたような状況にあるのでありますから、フランスのドゴール大統領がこの時期にこういう措置をとられることの背景というもの、あるいは、この措置をとられるに至ったまでの間、日本がアジアの中心の国の有力なるものとして、アジア、極東の情勢というようなものを、十分彼らに、まあ教えてやったというと語弊がありますけれども、アジアの実情や日本考え方日本民族気持ちというものを十分に彼らにインフォームしておったのかどうか。これは、そういうことを伺うことは、他国のことだからどうこうというのではなくて、これからこのむずかしい問題に取り組んでいくところのいろいろのきめ手を考えていく場合に、やはり基本に必要なことだと思いますから、ひとつその間の経緯を外務大臣からでけっこうでございますが、お話し願いたいと思います。
  19. 大平正芳

    ○大平国務大臣 去年の秋口に第一回の日仏定期協議が行なわれましたが、その席上では、ただいま問題になっておる案件は討議されませんでした。しかしながら、秋ようやく濃くなりましてから、私どもとして若干そういう気配を感じましたので、パリ並びに東京の連絡を通じましてフランス政府の真意を確かめるべく努力をいたしました。その努力は、事実今日現実化したようなことがどういう姿でいつ行なわれるのか行なわれないのかという点に焦点がしぼられての努力であったわけでございますが、同時に、ようやくその可能性が濃くなりました去年の暮れからは、愛知委員の御指摘のように、もしそうなった場合のわが国の感じ方、わが国がアジアにとっておりまする既定の方針というようなものにつきましては、十分先方の政府に申し入ればいたしました。そして結果として、私どもが大体予想した時期に、こういった措置が一昨日とられたということになるわけでございます。  それから第二点といたしまして、これに対しまするわが国の態度でございまするけれども、仰せのごとく、フランスのとられた措置を受けて日本も直ちにどうこうするというふうなことは、毛頭考えておりません。フランスが投げた石の波紋というようなものもまだ見きわめがついていない段階でございますから、私どもといたしましては、この問題のこれからの成り行きということにつきましては深甚な注意を怠らないつもりでございますが、わが国の態度は、施政方針で申し上げましたとおり、慎重に対処しなければならぬと思っております。
  20. 愛知揆一

    愛知委員 その慎重にされるということは非常にけっこうで、慎重にされないと因るのでございます。たとえば先ほど申し上げましたように、バスに乗りおくれるなということばは、私の記憶ではたぶん昭和十五年ころに盛んに使われたことばで、それはちょうどヒトラー全盛になりかかったころのことばであります。バスに乗りおくれなかった結果どうなったかということはあえて申しません。思い半ばに過ぎるものがある。こういう点から申しましても、このバスに乗りおくれるなということばほんとうに警戒していただきたいと思います。  私はこれからいろいろ多少こまかいことも伺いたいと思うのですが、先ほど伺いました点もうちょっと伺いたいのは、私どもは新聞で見るだけなんですからなんでありますけれども、今回のフランスの中共承認というようなことは、たとえばアメリカとソ連というものが大きく世界政治の中にクローズアップして、そして部分的核停条約の締結というようなことにも、イギリスはお仲間には入れたけれどもわれわれはめくらさじきであったというようなこととか、あるいは中共とソ連の対立、疎隔というようなところに何か関係があるのかないのか、あるいは大ありではなかろうかというようなことも、当然日本国民新聞その他を通じて、これは非常に興味を持つというか、大いに関心の深いところであると思います。あるいはまたわれわれの最もいやな問題でありますけれども、中共の核武装の問題、フランスのこれに対応する考え方の問題、あるいは新聞にちらちら見えますが、サハラ砂漠の石油をどうするとかいうふうな問題、いろいろとそれらの問題につきましても、それこそ最初に私が指摘いたしましたように、現在の開放体制下、自由化日本というものは、ほんとう世界の中の日本なんだ。そしてこれらの関係については、日本国民人たちが、いろいろの意味で非常な関心を持ち、心配もしているところなのでありますが、そういったフランスの中共承認に象徴されておるところのごく最近における世界政治の動きというようなこと、世界情勢の転換というようなこと、これらについてこの議場を通じまして、国民考えてもらいたいというようなことをお聞かせ願うのが、私はほんとう自主外交につながる国民外交といいますか、そういう点から見ても必要なことじゃないかと思うのでございますが、これはなかなか微妙なところもあるかもしれませんが、お差しつかえのない限り、お考えがあったらお話を願いたいと思います。
  21. 大平正芳

    ○大平国務大臣 総理大臣施政方針演説で、緊張緩和問題に触れられて、その末尾のところで、そういう環境の中で、東西両陣営とも多元化の方向をたどっておるように見られる、そういう観測が述べられておりまして、中ソの間の紛争、あるいはフランスが同盟国とややニュアンスの違った政策を打ち出しておるというようなことをお示しになったことと思うのでございます。ただ、いま愛知委員がお示しになったようなことを、私どもとしてもフランスから直接フランスの意図するところを知りたいわけでございまするが、遺憾ながらただいままでのところ、的確にフランス政府の意図なるものを知るよしもございません。御承知のように、ドゴール大統領という方は、何と申しますか神秘的な方でございまして、この大統領が何をお考えになられておるのか、なかなかはかり知れないものがございます。フランス人さえ十分つかみ得ないようにいわれておりますので、ただいままでのところ、私どもも的確に把握いたしておりませんが、しかしながら、これは大事な問題点でございますので、今後あらゆる努力をいたしまして、フランスの意図するところ、それの世界政局に及ぼす影響というような点につきましては、十分われわれといたしましても究明してまいらなければならないと思います。
  22. 愛知揆一

    愛知委員 これは少しこまかくなる問題かと思いまするし、あるいは非常に仮定の事実が多いのでありますが、今回のこのフランスのいわゆる承認との文章だけでは、両国政府は、両国政府の合意による外交関係を樹立することに決定した、とあります。いわゆる政府の承認ということなんでしょうか、国の承認ということなんでしょうか。これは事務当局からでもけっこうです。
  23. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先方からの通報は、中国と再び外交関係を設定することに同意した。再び、アゲインということばを使ってあります。もともとフランスは中国と外交関係を持っておった、今度それを再開することにした、こういう表現でございます。つまり外交関係を再開、とそういうようにきわめて簡単な表現で通報を受けたわけです。
  24. 愛知揆一

    愛知委員 そこで、今度は非常に常識的にお伺いしたいのですが、一体フランスは、今度の場合は、国民政府というものの立場というものを、どういうふうに考えておるのでしょうか。
  25. 大平正芳

    ○大平国務大臣 これはフランス政府が答えなければならぬことでございますが、私どもが承知しておりますところでは、国民政府ともいま現に外交関係を持っておりますが、それをフランスの側から断つようなことはしないということを、通報を受けています。
  26. 愛知揆一

    愛知委員 フランスのほうから、国民政府に対する外交関係を切るようなことを、フランスの側からはしないということの通報を日本政府が受けているのですね。
  27. 大平正芳

    ○大平国務大臣 通報と申しますとややかた苦しくなりますが、そういう情報を受け取っております。
  28. 愛知揆一

    愛知委員 そこで、常識的に、いわゆる二つの中国ということをフランスは考えておると想像されるのでしょうか。二つの中国ということを……。
  29. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私どもの解釈ではそうではなくて、一つの中国、一つの台湾ということを考えておるとしか解釈ができないと思います。
  30. 愛知揆一

    愛知委員 そうすると、それは別に、大平外務大臣はフランスの外務大臣じゃないのですから、それを別に追及するわけではございません。ただ、われわれがお互いにいろいろこれから考えていくための資料としてお伺いしているわけでございますから、あまりかたくならずにどうぞお願いいたします。  そこで、その次の問題は、そうなりますと、この中共の承認ということは、当然にそういったようなフランス流の考え方から言うと、国連での代表権の問題、これに直接に触れてくるわけですね。やはりそう解釈せざるを得ないでしょうね。どういうふうにお考えでしょうか。
  31. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほど簡単に申し上げましたが、私ども一応そういう解釈を前提にいたしまして、それから生起する事態というもの、これはまだ未知でございまするが、また可能性の問題でございまして、いろいろな前提が要るわけでございましょうが、そういった問題はいろいろとりそろえまして、検討はいたしておりますが、こうなるというようなことをいまこの段階で申し上げるほど自信はございません。
  32. 愛知揆一

    愛知委員 それはそのとおりだと思うのです。  そこで、今度は問題を変えまして、昨年の十月の十一日の国連総会、これは例のアルバニア提案というものが行なわれました。これは国府側五十七国、中共派四十二国、棄権が十二国というような投票の結果があらわれたようでございますが、このアルバニアの提案というものは、国府を全然問題にしていないのですね。国府はもう全部排撃して、そうして、中国の正統な代表権というものは中共だけにあるのだ、ということは、ほかのサイドから見れば、台湾という土地はもう中共が支配すべきものだというような考え方に立っている考え方だと私は思います。そこで、そうすると、今度のフランスの考え方というものは、国連との関係においては、そういうアルバニア提案のような考え方に行きかねない考え方なんであろうか、そことはまだ若干の隔たりがあるのであるか、この点についてはどうお考えになっておりましょうか。
  33. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま御指摘のアルバニア提案と、ただいまフランスの考えておるところを演繹してまいりますと、必ずしも一致いたしません。
  34. 愛知揆一

    愛知委員 必ずしも一致いたしませんということでございますか。——わかりました。  それから、その次に、かりにアルバニアの提案というようなものが、この次国連の総会で同じような姿で出た場合において、これに対して、今回のフランスの措置によって賛成者が前回の五十七対四十二というようなところまで相当に変化が——かりに、仮定の場合ですがあった場合に可決されるとすると、それで今度は中共という国が代表権も持ち、そうしてまた自然にこれが安保の常任理事国にもなるのでしょうか、その辺はどうでしょうか。
  35. 大平正芳

    ○大平国務大臣 一つのこれは仮定の問題でございまして、そういう案が出るか出ないかわかりません。そういう案が出る前に、またどういう案が出るかもわかりませんし、したがいまして、この問題は、先ほど私がお答え申し上げましたように、いろいろの可能性を、これはたくさんの方程式が出てくるわけでございますから、そういった点は、私ども事務当局で十分検討をさせてみたいと思っておりますが、いまの段階で、先ほど申しましたように、こうなればこうなる、と簡単にまだ申し上げるという段階ではない、私は、もっと時間をかしていただかないといけないと思います。
  36. 愛知揆一

    愛知委員 私は、まだまだこういう点につきまして伺いたいことをたくさん持っておりますけれども、いずれこれはときが移るのを待ち、あるいは外務委員会等でさらに伺うことにいたしますが、要は、私の伺いたいことの片りんをここに申し上げましたゆえんは、外務大臣のおっしゃるとおり、あらゆるコンビネーションが考えられる、これからのやり方について。そうして、さらにその上に、日本はどうやったらばよいかということがその根本に確立されてあって、そうして、それを成就させるため他国に対する協力を求める場合、工作をするに場合等において、日本のはっきりした考え方というものが固まった場合に、これをやっていくためには、いわば国連外交というか、その前提としてたいへんなこれは英知と勇気が要ると思うのです。その一端をここに申し上げただけで、これはとにかく簡単なことではないのだぞ、そうして、ある人たちのおっしゃるようなことを考えてのような簡単な考え方からいけば、ぱっぱっと中共が安保の常任理事国になってしまって、そうして拒否権を行使するような状態にもなるのだ、それから、一方においては、国民政府というものは全然問題にされなくなって消えた存在になってしまう、台湾という島、あるいは台湾という領土——土地といいますか、あるいは台湾に住んでいる千百万人の人たちというようなものは、これがまるでどういうことになってしまうのかわからぬというような、これは国際政治の上からいっても、アジアの運命からいってもたいへんなことなんだということの一端をここに提起したわけでございますから、十分ひとつ慎重の上にも慎重にお考えをいただきたいと思います。  そこで私は、次に国民政府の問題に触れたいと思います。これは非常に率直な言い方でございますが、私もかつて蒋総統にお会いした経験がございます。これはそんたくするのに、蒋総統という人の気持ち及び国民政府人たちの気持のうちには、日本に対する最近の関係は、おそらくヤルタ会談のときから、非常に牢固たる日本に対する考え方というものがあると思う。日本側から言えば、いわば日本の間柄がそれによって維持できたのだ、それに自分は非常な力添えをしたのだという。蒋総統としては気持ちが、牢固としてあるだろうと思います。それからたとえば占領が始まってから、あるいは始まらんとしたときにも、日本の軍事占領というものがアメリカ一本で行なわれて、いわゆる連合軍の分割占領ということが行なわれなかった。この分割占領が行なわれなかったということについても、これは蒋総統としての非常な尽力があった。これを蒋総統としてはやはり自分気持ちの中に強く持っておるに違いないと思います。それからまた、これはよく人口に膾灸していることですが、日本の敗戦のときに暴に報いるに徳をもってした。さらにはまた賠償を放棄した。そして日華基本条約の締約国の相手方であるのだ。こういうふうな、これは向こうさんのお気持ちをそんたくしながら申し上げておるわけですが、そういう点から言うと、いわゆる、ビニロンの問題にいたしましても、あるいは周事件にいたしましても、あるいは総理大臣日本では来てくださらないのだというようなことから言い、これが一緒にない合わされて、この周事件後の非常に不幸な事態に私はなったと思うのでありますが、それはともかく、私はさっきから申し上げておりますように、フランスの中共承認というようなことが起こり、そして一番のその当事者というか被害者というような、しかも自由主義陣営の有力な人であり、日本としても切っても切れない関係のある、立場にある国民政府との間が、いまのようなよく話し合いもできない状態にあるというようなことになったのは、偶然の結果ではあるけれども、非常に私は残念に思うわけなんです。これは過去のことをとやかく申すわけではありませんが、第二第三の周事件というようなものだって起こらないとは保しがたい。政府におかれては、中共問題がこれだけ大きな問題になった今日において、それこそ今後十二分にこういうところも細心の注意を払っていただきたいと思います。  そこで私は、この黒人政府の地位というもの、台湾という土地なり国民なり、あるいはまた自由主義陣営の一員であるという立場、あるいはさらには自由主義全体の防衛、安全保障という点から言っても、これは非常に日本としてはバイタルな関係にあるものであるということを私は痛切に考えるのでありますが、これはむしろ総理大臣からお答えいただければ非常にありがたいと思いますが、一言お願いいたしたいと思います。
  37. 池田勇人

    池田国務大臣 台湾の問題につきましては、あなたのおっしゃるとおりでございます。われわれの中共に対しての態度も、一部には煮え切らないとかいろいろの批評がありますけれども、われわれは恩義と約束を守るという日本人の美徳は忘れないことをはっきり申し上げておきます。そうして、いろいろな事情はありましょうが、私は台湾政府日本とのなには、いずれ雨降って地固まる状態が再現することを確信し、その方向で努力しております。
  38. 愛知揆一

    愛知委員 これはぜひ一つお願いをいたしたいと思う点でございます。それからさらに、先ほど来るる申し上げておりますように、今後この中共問題の発展いかんにつきましては、ますますもって日本の、アジア外交というか——国連の場で解決しますということが政府の態度なんですけれども、国連の場で解決するについては非常な、何といいますか、選挙と同じように同調者をうんと集めなければならない。それから、ことにアジア外交の中においては、タイに対する関係、インドネシアに対する関係、あるいはマレーシアに対する関係、あるいはそのほかのところに対する関係、これは実にきめのこまかいやり方を私はやっていかなければならないと思う。それから同時にまたベトナムの問題については、南北問題というものがある。私は、先ほど、フランスのドゴールという人が一体何を考えているのだろうか、これが変なふうに南北問題などにまで発展してまいりますと、これは日本のままでの、いわゆるアジアの中心としての日本がずっと堅持してきたところの自由主義陣営、アジアの結束というような点からいいましても、これはたいへんなことになる傾向のある問題であります。それやこれやいろいろ考えますと、私は冒頭に総理にもお願いいたしましたが、こういう世界情勢のときでございますから、ほんとう信念を持って、日本のため、あるいは自由主義陣営のためということに勇気を持つと同時に、うまずたゆまざるアジア近隣外交というものに、ほんとうにいろいろ新工夫を大いに出していただきたいと考えるわけであります。  そこで、中共問題についてはまだまだ伺いたいことがたくさんございますが、あまり時間を取りますから、もう一つ近隣外交の中で日韓問題であります。日韓の国交正常化についてはいきさつが長い、そして政府も非常な努力を傾けておられる、できるならば本国会中に批准を求められるというようなお考えで進められておるのではないかと私は思うのですが、その点はいかがでございましょうか。
  39. 大平正芳

    ○大平国務大臣 御案内のように、いま漁業問題が当面のイシューになっております。これを片づけますと、自余の問題はそんなに手間取る問題ではないと考えておりますので、この漁業問題がいつ片づくかということが妥結の時期を左右する最大の要因であると考えております。そういうことでこの妥結の時期の御判断を願いたいと思います。
  40. 愛知揆一

    愛知委員 この日韓問題につきましては、やはり国民の側から見ておりますと、たとえば有償無償のいろいろの、お金を提供するという問題がある、漁業の問題がある、竹島の問題がある、李ラインの問題がある、いろいろの問題がありますが、これを一挙に全部を解決してほしい。しかし何か聞くところによると、今日では漁業問題というものが一つの山場になっているのじゃなかろうか。しかしこの漁業問題については、いわゆる専管水域の問題と、専管水域以外のところの漁業の規制の問題と、二つあるように聞いているが、それらについて実はいろいろの情報が流れているわけです。それで、それに対して仕事の関係を持つ人、あるいは地理的に比較的近い人、これらの人たちが相当に心配をしている。ある人たちはあまり譲らないでほしいと言い、ある人たちはどうしてもこれだけは政府に貫徹してもらいたいと言っているように、相当これは世間に流れている話ですから、ある意味においては対外折衝の問題で手の内はもちろん示すべきじゃないでしょうけれども、同時にまた日本国民の関心の深い向きに安心をさせるという意味で、お話を願えることがあったらこの際明らかにしておいていただいたらいいのではないか。
  41. 大平正芳

    ○大平国務大臣 漁業問題につきましての第一の点は、専管水域の問題でございますが、これは、私どもは日韓両国とも国際的に将来発展していかなければならない国として、国際的に尊重される基準はお互いの名誉において尊重しようじゃないか。したがいまして、漁業交渉において妥協するという性質のものじゃないかという態度で臨んでおります。  それから第二点の専管水域外の共同規制の問題につきましては、日本側の態度は、この規制方法は考えてよろしい。ただ、両国が平等に規制を受けるべき性質のものでなければならぬということと、そしてその規制方法は実行可能なものでないといけないということを原則に先方と交渉をいたしておるのが、ただいまの段階でございます。  第三の問題といたしまして、漁業協力の問題がございます。日韓の漁業技術は、御承知のように大きな格差がございます。これについて先方が、あるいは漁船、漁具、あるいは水産物の加工施設等に漁業協力を依頼してきております。これは、最初は長期低利の資金というように要請してまいりましたが、日韓の間の経済協力といたしましては、冒頭で御指摘のように三億ドル、二億ドルの経済協力という太い線がきまっておるわけでございますので、それ以上に特別の経済協力というのは、私どもとして考える自由を持っていない。問題は、輸出入銀行を通じての借款融資、そういうものであれば、その計画が実際的であり、償還能力もあり、わが国の融資能力もあるという範囲内においてはできるだけ考えてみよう、こういう態度でいっております。
  42. 愛知揆一

    愛知委員 次に、ほかの問題でありますが、昨年の十二月三十一日付と報ぜられてありますが、また報道によっては本年の一月四日の日付ともなっておるようでありますが、ソ連のフルシチョフ首相から池田総理大臣あてに領土紛争解決に際しての武力不行使の提案というものが出ているようでございます。その提案——もちろん正当な国境というものについて、これを今後武力を使って紛争するというようなことをやめようというようなことは、これは趣旨において異存のあるべきはずはございませんが、そのフルシチョフ首相の書簡といって伝えられておるものの中に、たとえばこういうことがございます。「第二次世界大戦において侵略国であった一部の国々の復讐主義分子の要求であります。敗戦の復讐と報復を渇望しているこれらの分子は、正当な戦後の領土処理を再検討する計画を抱いております。彼らはまず第一に、侵略の結果を解消し、将来に対する安全保障を確保するために、他の国々の手に渡った領土の奪回を望んでおります。このような領土的「要求」は、平和の利益と両立しないものとして断固排撃されなければなりません。けだしこのような要求からはただ新たな世界戦争が起こり得るだけなのであります。」こういうような一節があるわけでございまして、かねがねわが国の強い主張であるところの固有の北方領土、南千島等をここであたかも触れているかのような、あるいはもう明瞭に触れているとしか思えない文章がございます。二、三日前の新聞を見ますると、この書簡に対する総理大臣の返書が今週中にも出るというように一月二十六日には報道されておりますが、私が申し上げたいのは、こんなに明瞭な、こんなに明らかにわがほうの固有の主張とまっ正面からぶつかるようなものが突きつけられたときに、なぜもっとてきぱきと早く、歯切れのよい態度をしていただけないのであろうか。十二月三十一日付にしろ、一月四日の日付にしろ、それから二十日もたち、一月もたって、まだ今週中に出るであろうとか何とかいうようなことでは、これはとかく外交が拙劣だといわれるようなことも、こういうところからもきている。承るところによると、この手紙を持ってきた大使に対して、大平外務大臣は、さすがにその席で、口頭ではわがほうの態度というものをはっきりして、はねつけていただいたそうで、この点は敬意を表しますけれども、しかし、そのくらいならば、その日のうちにでも文書をつくって、やっぱり突きつけるぐらいのことをやらないと私はいかぬのじゃないかと思いますが、その後の措置はどういうふうになっておりましょうか。
  43. 大平正芳

    ○大平国務大臣 一月早々ビノグラードフ大使が私を訪問されまして、書簡の写しが届きまして、あとから正文が届いたわけでございます。そのときに、直ちに私どもいま御指摘のように、北方領土の問題は、ここにいうところの領土紛争というような対象ではないのだということにつきましては、先方の注意を促しておきました。その後、案文等をずっと検討いたしておりまして、もうでき上がりましたので、早急にやりたいと思っています。
  44. 愛知揆一

    愛知委員 時間があまりなくなってまいりますので、外交問題はその程度にいたしまして、次に、経済財政等の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  その第一は、総理大臣にお伺いしたいのでありますけれども、去る二十一日に、総理大臣経済審議会の会長に対しまして、こういう諮問をあらためてしておられるようでございます。「国民所得倍増計画の残された期間における中期の経済計画いかん」、読みようによっては非常にむずかしい表現になっております。その趣旨とされるところは、どういうところにあるのかしらんということをお尋ねをいたしたいわけでございます。  申すまでもなく、倍増計画は三十六年度を起点にして四十五年度まで、この十年間の計画であったわけですが、これに対して今度の諮問をされたのは、三十九年度から四十三年度を限っておられるのかと思うのでありますけれども、これはどういう経緯で、どういう御趣旨であったのでありますか。新聞などにはいろいろのとり方をしているようでございますが、総理からちょっと御諮問になったお気持ち伺いたい。
  45. 池田勇人

    池田国務大臣 お話のとおり、所得倍増計画は三十五年に立てまして、三十六年から四十五年ということになっております。しかし三十五年、六年の想像以上の上昇、ことにその前の三十四年もそうでございます、そういうことから、三十七年、三十八年にはある程度押えてきておりますが、しかし、それにいたしましても、当初予定した計画よりもよほど違ってきたわけです。経済規模が変わります、また労働条件も非常に変わってきます、それから進んだ上においてのいわゆる社会資本をどうするか、あるいは社会保障制度をどうするか、ことにまた第二次、第三次産業の分と第一次産業とのひずみ、また二、三次にいたしましても、大企業と中小企業との関係等々を見ますると、十年間の一応の計画はございますが、過去三年、四年の歩みの実績から考えて、さしむき五年間について、倍増計画の範囲内においてどういうふうにやったのが実際に合うか一もちろん倍増計画というものは各年ごとにはきめておりませんが、一応の目安があるわけでございます。それよりもよほど違ってきた——いま言ったように変化のあった上におきまして、その間の五年間について、その変化に応じてどういう計画を立てたらいいか、いわゆる中間の見直しと、そうして前向きで立ててみよう、こういうことなんでございます。
  46. 愛知揆一

    愛知委員 その御趣旨はよくわかります。要するにこういうふうに理解してよろしいのでございましょうか。倍増政策というものは、始めたところ、非常な効果があった。しかし、それのいろいろの経験に徴して、いわば第二ラウンドに入って、そうしてこの第二ラウンドでより何といいましょうか、均衡のとれた、構造の姿のよい、そういう成長の姿にしていくようにするにはどうしたらいいだろうか。これは、これから政府がいろいろとやっていかれる上にこれを指針にしていかれる、こういうお気持ちでございますね。
  47. 池田勇人

    池田国務大臣 施政方針演説の第二で書いております「経済の運営を誤らず倍増計画を国民生活に定着させる」——国民生活に倍増計画を定着させる、この意味におきましては、中間において、いままでの実績でどういうように定着させたらいいか、こういうことがいまの諮問した趣旨でございます。
  48. 愛知揆一

    愛知委員 そこで今度は次に入りまして、昭和三十九年度の経済の見通しや財政の問題やあるいは物価や国際収支の点について、逐次お伺いしてまいりたいと思います。  いままで三十二年、三十六年度等の経験に徴しまして、率直に言って思わざる過度といいますか、高度じゃなくて過度にいった、そういうときの場合にどういうふうに調整していったかというと、引き締め策をとる。そうすると、それがまた中小企業その他にも非常な影響になる、こういうふうなこともよく思い起こしながら、これからのやり方というものは、何と言いましょうか、過去の経験を生かしながらかなりでこぼこの少ないものにしていかなければならぬのではなかろうか。それについては、経済の成長が、政府の見通しは三十九年度七%となっておりますが、私は、これ以上にぐいぐい伸びるというようなことになりますと、過度になって、そしてこれが方々にまたいろいろの摩擦を起こすことになると思うのであります。したがって私は、まず、ここをひとつ腹にかっちり入れて、それよりも相当行き過ぎそうな場合、たとえば警戒信号を出す必要があるならば、率直に、そういう時期になったならばむしろ早目に警戒信号を出す。そして早目に調整措置をおやりになれば、長い目で成長政策というものがりっぱにいく。過度に、あるところがぽこっと出てまいりますと、長い目で見ると、それを調整してもとへ戻すということのためにむしろマイナスが起こる。私は、これからの経済政策については、その点を十分お考えをいただきたいと考えるわけであります。  私は、そういう希望を前提にいたしまして、以下いろいろと御質問をしたいと思いますが、その基本気持ちについては、どういうふうにお考えでございましょうか。
  49. 田中角榮

    ○田中国務大臣 御発言のとおり、今年度はIMFの八条国移行、OECDに対する正式加盟、ガットの関税引き下げに対する前向きの態度等、戦後十八年間持ってまいりました管理体制から全くの開放体制に移るわけでありますので、いままでのように、国際収支の事情が悪くなったから急激な調整ができるという機能を失うわけであります。その意味においては、在来のような基本的な考え方ではなく、将来を見通しながら、事前にあらゆる角度から検討しながら、適切なる施策をとらなければならぬことは言うをまたないわけであります。その意味におきまして、財政・金融を通じまして適切な処置を必要なときは機を失することなくとってまいるつもりであります。
  50. 愛知揆一

    愛知委員 そこで、これは大蔵大臣に引き続いてお伺いしたいのですが、昭和三十九年度予算が編成されましたときに、いろいろ新聞の切り抜きなどを見てみますと、マスコミの評判は、非常にこれは大型である、景気に対して刺激的である、ぶんどり主義であり、総花主義だといって、なかなか手きびしいのですね。しかし、私は全然そうは考えない。私は考えないことを私なりに申し上げますから、それと同意見であるかどうか伺いたい。  まず第一は、政府の説明にもありますように、予算の単純な規模を比べてみましても、三十八年度の当初の増加率よりは、ことしのほうが一般会計も財政投融資も少ないわけですね。これは明らかにされているとおりです。それから国民所得に対する比率も、三十八年度の当初の比率が一七・一%、これに対して三十九年度のものは二八・三%。経済が進んでいるのですから、それに対する伸び率、増加率が去年よりも少ないということは、これだけだって大型化でなく、小型化なんです。これは間違いないところですね。さらに私が私なりに指摘したいと思いますのは、こういう比較は、大体すべて年度当初でやっているわけです。そこで昭和三十六年度から三十九年度までを試みにとってみますと、予算編成の当初に予想されたところの国民総生産——GNPというものは、その当初に予定されているわけですね。つまりその前年に対する国民総生産が、前の年より幾ら伸びると想定していたか。三十六年度は二二・五%伸びると想像しておった。それに対して予算規模は二四・四%大きくなっていた。それが歴年そうなんです。三十七年度は一番ひどいので、GNPの増加率が二二・一%なのに対して、予算規模はほぼ倍の二四・三%になっておる。三十八年度も一五・四%が一七・四%と広がっている。しかるに、この数年来なかったことが三十九年度には起こってきた。二十四兆七百億円と想像されるGNPの昨年に対する増加率は一八%、しかし、予算の規模は一四・二%にとどめた。これは大型化どころじゃないのです。私がさっき七%に経済成長率をとどめていただきたい、そしてモデレートに、堅実な成長をやっていただきたいと言ったことは、与党と政府の合作でできたこのりっぱな予算に現実にあらわれている。これは大型化でもなければ、景気の刺激でもない、私はこういうふうに確信するのです。  さらに、これも政府の資料にも出ておりますが、三十九年度予算財政資金と対民間収支を見てくだされば、これはよく理解ができると思うのです。三十八年度は、当初は三千七百五十億円散布超過の見込みであった。ところが、それに対して今度は千二百十億円の散布超過にすぎないから、実に二千五百億円をこす散布超過の減少になるのです。もちろん、これはすべて予算編成の当初を比べておりますから、実績を見たらいろいろの変化はあります。しかし、今日この段階においては、今後こうやっていこうとする見通しと予算とを比べるよりほかに方法がないのですから、私は自分なりのこの比較は正しいと思う。こういったように、どこから見ても大型化ということはいえないと思う。それからいま言ったような点は、むしろ金融市場に対して引き締め要素になるわけです。いわんや三十九年度の公募債の発行はどうか。千八百七十六億円、三十八年度の千三百三十六億円を相当オーバーしている。これはやはり金融市場や公社債市場に対して、むしろ引き締め要因なんだ。だから私は、今度の政府の計画の中で、予算財政措置が、まずお行儀よく、そして世間の期待にこたえるようにできていると思うのです。大ざっぱに申しますと、これからむしろ物価問題とか、あるいは国際収支の問題、あるいは金融政策の問題、そういうことに十分の戒心をしていかなければならないと思いますけれども、予算については、私はもっと大蔵大臣も、総理大臣はもちろんですが、こんなにいい予算はないのだということを国民理解を求められてしかるべきだと思うのです。ことしの予算ぐらいよくできているものはないです。ことに私は、自分が言い過ぎたらいかぬかもしれませんが、私はかねがね思っておりましたが、消費者物価の問題も、今度の三十九年度予算編成を契機にしまして、かねがね私どもが指摘していたように、中小企業、農業といったような構造改善のところに大幅に補強策を講じていかなければならない、これができることによっても物価問題というものが安定するんだという、そういうわが党の考え方というものが、小型ではあるけれどもこの予算の中に手ぎわよく入っている。その点もまた、私は、国民的に政府のほうも大いに誇示されてしかるべきではなかろうかと思います。その点になりますと、先ほどこの予算全体の規模などについては、マスコミの評価が辛いのではないかということを私ちょっと申し上げましたけれども、その中身になりますと、今度は非常に評判がいいのです。たとえば農業でいってみましょう。ある新聞におきましては、農家の企業家意識を高める、労力を省く技術の革新ということ、融資拡充に重点、いずれもわれわれの意図しているところが表題に取り上げられ、しかも、その中に一々説明がついて、金額の増加までちゃんと出ている。こういうりっぱな予算になっている。そしてこれで物価対策にも大いに筋金が入ってくる。中小企業を見てみましょう。中小企業も画期的なふえ方です。大企業との格差をなくする、近代化に最も重点、合理化への手助け、金融の道も広げる、無利子の融資もできるというようなわけで、こういうことは、せっかくこういうふうないい予算をつくられたのならば、国民に、口先だけのわれわれのあれじゃなくて、これが実際に役立つように大いに啓蒙もされたらいいし、実際にこれを期待している人たちの手にしてもらうようなくふうを大いにしていただきたい。いわば財政の民主化とでも申しますか、そういう点についてうんと努力を新たにしていただきたいと私は思うわけでございますが、大蔵大臣、何か御意見がありましたら……。
  51. 田中角榮

    ○田中国務大臣 三十九年度の予算は、先ほど申し上げましたとおり、開放体制に即応した予算でなければならないわけでありまして、非常にむずかしい予算だと思います。率直に申し上げますと、開放体制に移行するのでありますから、国際競争力をつけたり、いろいろな意味において歳出要求はあるわけでありますし、同町に開放体制に移る場合には、引き締めぎみでなければ、いろいろの場合これを調整する機能がなくなるわけでありますから、この背反する二つの大きな目的を財政・金融の中で十分消化をしなければならぬというところにむずかしさがあると思います。でありますから、その意味においては、純財政論からいいますと、一〇%と当初考えたものが一四・二%になったんだから、非常に大型じゃないか、これでは危険だという議論が起こることは当然でありますし、まだまだ国際競争力に耐えなければならない日本国民全体の立場から考えますと、この予算ではまだ足らぬ、一体われわれが国際競争力に耐えていけるのかという立場から、予算の拡大を望むことは当然だと思います。そういう意味で、いろいろな御批判はありますが、いま申されたとおり、かかる事態に対処して、健全性を貫いて、しかも国民的要請に応じ得たということは、事前における政府与党である自由民主党の多大な協力によって、やっとかかる成果を得たものだと考えております。  御承知のとおり、十一月に総選挙を行なって、政党としての公約をしておるのでありますから、その直後に組まれる予算というものがそう簡単なものではないということは、政党人としてはだれでも理解できると思うわけであります。そのようないろいろな問題を含みながらも、とにかく三十六年度、三十七年度両年度は、対前年度比二四・四%、二四・三%というものであり、三十八年度が一七・四%でありましたが、それを一四・二%、一般会計から特別会計に移したものその他を入れても五%ジャストであります。これをもっと簡単に申し上げますと、去年の三月三十一日までは、対前年度比二四・三%という予算を執行してきたのであります。しかも、それが十二月までというと、約九カ月の開きしかないのでありますが、その三月三十一日まで執行してきた予算と比べまして、二四%を一四%にすれば約二千五百億一般会計で圧縮しておるのであります。そういう意味からいって、政府与党が協力をしてつくる予算としては、規模は適正なものであるというふうに考えております。  それから一般会計に引き続いて財政投融資の問題も、あなたがいま申されたとおりであります。  なお、金融の問題が一番問題だと思いますが前年度剰余金が千八百億以上も減っておるのでありますし、国庫収支の状況から見ましても、引き締まりぎみというよりも、多少きびしい金融情勢になるのではないかというふうに考えますので、財政・金融一体の原則に立ちまして、中小企業とか、設備の近代化や合理化や国際競争力に耐えるために、国民がたゆまない努力をやっておる部面に対しては、できるだけの配慮をしなければならないというぐらいな考えを持っておるのでありまして、しかもその上に、三十九年度の予算執行にあたって、名目九・七%実質七%の成長率が、一〇%になり一一%にならないように、政府が当初考えた実質七%の成長率を達成できるように、しかも名目九・七%を維持することによって、当初考えております物価問題も十分抑えていきたいという考え方で万全を期してまいりたい、このように考えます。
  52. 愛知揆一

    愛知委員 そこで私は、財政の問題については、ことしはそういうわけで非常にけっこうだと思うのですが、これを後年度以降だんだん考えてまいりますと、相当問題があると思う。そこで、大蔵大臣も硬直性というようなことばを使っておられるようですが、これは私は硬直性だから悪いという意味では決してないと思うのです。つまり財政を通すところの国家の役割りというものが、近代国家において変貌してきている。ことに高度福祉国家の建設ということはやはりわれわれの終局の目標であろうと思うのですけれども、そういう点からいって、財政の役割りというものが変わってきているわけですが、それに関連して、よく当然増とか自然増とかいう経費のことが言われますけれども、たとえば、社会保障関係でいえば、国民健康保険の給付率七割を四カ年計画でやる。あるいは年金、恩給、あるいは今度始まった重度身障者に対する手当でありますとか、こういった種類のものは、一ぺんきめれば当然来年度それ以上の程度で出ていくわけで、これはけっこうなことなんです。そういう意味で、硬直することは、私は近代国家は当然なことだと思います。しかし、それにしても、たとえば今年度の予算で申しますと、こういうふうな当然あとへ繰り越していくものは、一体どのくらいの程度のところでしょうか。
  53. 田中角榮

    ○田中国務大臣 当然増というものの範囲をどうきめるかということはなかなかむずかしいと思いますが、三十八年度の予算と九年度の予算を対比して申し上げますと、三十八年度のときに年度間を通じて実施をしなかった新規政策、それが三十九年度になりますと平年度になります。特にこの中で大きな問題は、医療費の問題等がありますが、かかるものを平年度化することによって、当初の年度と比べまして非常に大きくなるわけであります。これを厚生省にとりまして申し上げますと、厚生省関係だけで、三十八年度で新しく政策的に発足せしめて、三十九年度平年度化されたもの等当然増的経費が約五百億でありますから、厚生省の予算の一五%程度であったと思います。一般会計の全部の比率で見ますと、おおむね三分の二程度に達したのではないか。でありますから、新しく政策費として使われたものが、三分の一というわけであります。今年度に始めました問題について来年度平年度化した場合にはどうなるかという問題に対しては、いま数字がありませんが、必要があれば後ほど申し上げます。
  54. 愛知揆一

    愛知委員 それに関連して減税の問題と、それから租税の負担率が昨年よりも逆にふえているということが、これがよく世間の話題になるわけであります。この点について、一体租税の国民所得に対する負担率などというものは、私は私見を申せば、ああいうふうな取り上げ方をして大いに騒がれること自体がおかしいと思うのですけれども、しかし、大体どの程度のところが妥当とお考えでしょうか。
  55. 田中角榮

    ○田中国務大臣 税制調査会答申を尊重したということは、これは一〇〇%尊重だと考えております。税制調査会が最終段階においておまとめになれた数字答申案でありますが、九九%当時までの御意向は聞いておりまして、それは全部今年度の減税案に盛ってあります。なおその上に政府与党の意向も十分盛りましたし、なおその上、八条国移行というような新しく政府が企図しておりますことのために行なわなければならないものを加味したわけでありますので、この間にはそごはないというふうに考えております。  それから、国民の税負担率の問題でありますが、この問題につきましては、あなたがいま言われ、時間の関係上うんちくを述べられなかったわけでありますが、二二%がいいとか、二一%がいいとか、二三%じゃ高いんだとかいう考え方はちょっとおかしいと思うのです。これは、現在確かに三十八年よりも三十九年度は幾らか高くなっております。現行税率でいきますと二二・八%になりますものを、二二・二%にしたわけであります。もちろん、低いに越したことはないわけでありますが、これは理論的に考えて、そう割り切るべきでないと思う。これは、日本の税制の立場から考えますと、累進課税をとっておりますので、国民所得が上がっていきますと、税負担率が高くなる、こういうわかり切った問題が一つあります。もう一つは、減税をするか、また財政投資によってサービスをどういうふうにするかという問題がありますので、これらの問題を加味しながら考えられるべき数字でありまして、何%がいいかというようなことを数字で申し上げられる問題ではないと思います。ですが、逐年減税をやってきた日本政府でありまして、きのうなどはアメリカ政府側は、十二年に一回の減税をを行なおうとしてジロン長官自分の全時間の三分の二を費やしているけれども、なかなか通らない。減税をするよりも投資したほうがいいという議論が非常に国内で強いので、なかなか通らない。日本政府は過去十何年間にわたって逐年減税を行なっておられるけれども、一体かかることがどうして円満に国会を通るのかというお話さえあったわけでありまして、これらの問題を十分勘案しながら、負担率はできるだけ下げていくということが一番いいと思います。
  56. 愛知揆一

    愛知委員 その点についても、もう少し伺いたいのでありますが、先に飛びます。  財政の問題でもう一点だけなんでありますが、物価問題について若干のお尋ねをしたいと思うのであります。この十七日の閣僚懇談会できめられ、その後閣議決定になりましたが、この物価安定の具体策というものの中に、予算の執行は経済情勢の推移に応じて弾力的に行なうということが入っているのですが、これは実行予算かなんかでも思わせるような書き方なんですが、どういう意味ですか。
  57. 田中角榮

    ○田中国務大臣 実行予算を組むというような考え方で申し上げておるのではありません。先ほどから申し上げておりますように、財政と金融との円満な協調によって物価の安定、また正常な経済成長率を維持してまいりたいという考えでありますので、実際上予算を執行する場合の認証、また時期的に、地域的に民間投資とぶつからないように十分な配慮が必要であるという考え方を述べているにすぎないのであります。
  58. 愛知揆一

    愛知委員 物価の問題、特に消費者物価を中心にした考え方というものは、いま申しました物価対策、最近きまりましたものに相当詳細に出ているわけであります。私は、まず第一に、政府の関与する公共料金を一年間ストップするということをきめられたことは、政府の物価対策に対するなみなみならぬ決意の象徴であるというふうに理解するわけでございます。これはたびたび引いて恐縮でありますが、ある新聞によりましても、公共料金の値上げ一年ストップは最も具体的な問題であるが、政府が珍しく思い切った決意を示したというように書かれてあるとおりで、この決意に対しては国民的にも私は受けると思う。しかし、中身をいろいろこまかくやってまいりますと、これが決定されたすぐあとに水道料金の問題がある県に起こったり、あるいはバス料金についてはどうなるだろうかというような期待がまだあるやに考えられる。しかし、それらはともかくとしまして、たとえば医療費というようなものについては、これは実は支払い者側からいっても、ある程度の緊急是正というものはどうしてもやってやらなければなるまいというふうな考え方が私は支配的だと思うのですが、この物価対策の文面からはともかくとして、医療費などについてはどういうふうにお考えになりつつあるのでありましょうか。これは直接の所管は厚生大臣であられるし、それから物価対策全体を見られるのは企画庁長官でありますが、どういうふうにお考えになっておるか、お漏らしを願いたいと思います。
  59. 池田勇人

    池田国務大臣 医療費につきましては、三十九年度予算編成の際に問題になったことは御承知のとおりであります。その以前から中央医療協議会におきましてこの医療費をどうしようかということを御審議願っておるのでありますが、予算編成当時までに間に合いません。したがいまして、この問題は、財政にもまた国民の負担にも非常に影響のあることでございますので、十分御審議を願いまして、その答申を待って私は善処いたしたいと思います。じゃ、これが一年間ストップに関係するかどうかという問題でございますが、私は、この問題は必ずしも公共料金と言い得るかどうか、そんな末節よりも実態はどうあるべきかということによりまして、医療協議会の答申を待ちまして考えたいと思います。
  60. 愛知揆一

    愛知委員 一つの心配でありました医療費の問題について、総理から御答弁をいただきまして事態が明確になったのであります。先ほども予算のところでちょっと触れましたが、消費者物価全体に対しては、大企業のほうは戦後の技術革新というようなものが非常に進んだ。そして労働生産性が上がって、賃金もうんと上がる、利潤もできる。しかも製品の価格を上げないでも済んだということが卸売り物価安定であり、ほかの経済の基盤としても非常に役立った。これからは——よく管理価格などと言われて、これはどこまで管理価格対策というものがきき目があるのか私はわかり便せんが、むしろそういう面はもう少し下げるような労使両方の努力をしてもらう。ことにこれは労働組合等に対しましても、このごろは日経連、同友会等からもいろいろ筋の通った要請が出ているようですが、ここに問題がある。半面において中小企業や農業のほうにおいては、ひとつ大企業にも負けないようにうんとくふうをして、そうして労働力の不足を克服し、労賃の差が縮まること、これもけっこうなんですが、その労賃も払い得て、適正な利潤をもうけて、小売り価格をこれ以上上げないで済ませていこう、そういうことに——私は先ほどもちょっと触れましたが、物価問題と構造改善策というものとのつながりにおいて総理大臣も全面的にそういう考え方をお取り上げになって、ここしばらく後に物価を安定させよう、こういうお考えである。これは伺うまでもないと思いますが、そういう御決意であるということをおひとつ国民にもお教え願いたいと思います。
  61. 池田勇人

    池田国務大臣 お話しのとおり生産性も上がり、賃金も上がりまして、大企業のほうではよほど労使の間はうまく、結果からいえばいったと思います。ただ生産性が上がり、労賃が上がった場合に、もう一つの利潤の消費者への分配ということをなぜ考えなかったかということが言われると思います。われわれもそれは考えないわけではございませんが、何と申しましても、急速にいわゆる生産性を向上するためには設備資金というものが相当要っている、株主のほうにも増資その他で恩典はいっておりますが、そう生産性が上がったからといって配当をふやすというようなことはないのであります。どちらかというと配当は漸減しておる。今後におきましても、われわれは、相当生産規模も上昇いたしましたから、今度は第二段階として、やっぱり消費者へのことを考えてもらいたい、これを強く進めていきたいと思っております。また中小企業がこのひずみを受けて、労賃の格差縮小のために小売り物価、消費者物価が上がったということは否定のできないところでございます。しかし、今後におきましては、相当中小企業の労賃も上がってまいりましたから、これを前提といたしまして、片一方のおくれた生産性向上のためのいわゆる中小企業の近代化、合理化をはかっていって、そうして消費者物価の上がらないように、これは下げたいのですけれども、なかなか下げるということはむずかしい。上がらないように、上がっても上がり方の少ないようにという考え方でいきたいと思います。大体あなたのお考えと同じ方向で進んでいっておるのであります。
  62. 愛知揆一

    愛知委員 実は物価の問題につきましては、総理のお考え方はよく理解できるのでありますが、最近の状況を見ますと、卸売り物価のほうも、これはよほど注意していかないといけないのじゃなかろうか。これは先ほど申しました国内的な要因というよりも、最近のところはどうも輸入価格の値上がり、海外物価の値上がりというようなものも相当影響があるのじゃなかろうか。これはむしろ悲観的にとってみますと、三十七年十月の引き締めの底のときから、約一年後の三十八年の、昨年の末までを日銀の調べでとってみますと、卸売り物価が三、四%上がっている。そうしてこれのうち、海外物価の値上がりに依存しているものがおおむね七、八割ではなかろうかというような調べが出ておりますので、これは別にお答えをお求めするわけではございませんが、今後は、消費者物価はもとよりでございますけれども、卸売り物価の方面に対しましてもひとつ十分の御警戒をいただいて、先ほど申しましたように、あまり行き過ぎた変動が起こりませんように御留意を願いたいと思うのであります。  次に、金融政策についてもいろいろ伺いたいのでありますが、その中の一つといたしまして、いわゆる日銀の公定歩合の問題であります。これはいろいろとむずかしい問題であろうと思いますが、たとえばこれから伺います国際収支との関連で見てみますと、三十六年の七月ごろ経常収支で約一億ドルの赤字が出た当時に一厘引き上げたわけです。それから、その前三十四年十二月のときを見てみますと、国際収支の悪化ということは、まだ姿がはっきりしていなかったけれども、卸売り物価があの当時三カ月で二%ぐらい上がった、そのときに一厘引き上げたというような、最近においては実績があるわけですね。そういう点から見ますと、あるいはこの際が引き上げの適切な時期ではなかろうかとも考えられる。しかし、これはなかなかむずかしいところで、一方におき策しては現在の中小企業の状況、あるいは株式市場の状況、あるいはまた一方においては設備投資はそんなに増加の意欲というものがない、これは窓口の指導というようなことで相当のいわゆる金融の調節ができる。こういう面から考えればいま下げたほうがいい、こういう見方もあって、なかなかこれは当局の御心心の存するところだと思うのです。  私は、これについてはあえて御答弁を求めませんが、私が御答弁を求めたいのは、この日銀の公定歩合というようなものは、法律制度から申しましても、外国の例から申しましても、ひとつ中央銀行にほんとうに責任を持たせて、そうして機動的、中立的にやらせるのがよろしいのではなかろうか。これは何も政治の面が積極的に従来取り上げておるということを言うわけではございませんが、このごろの状況でありますと、新聞に例をとりますと、大蔵省は引き上げに反対である、日銀は引き上げを大いに望んでおるのだ、何か両方に意見の対立があるようなことがしょっちゅうおもしろおかしく出まして、これが経済界にいろいろだ意味で非常に刺激を与えると思います。イギリスのことわざを引くまでもございませんが、一面において中央銀行は弁解せずということわざがあるように、ひとつ日本銀行でもそういう趣旨をはっきり守って責任を持ってもらいたい。それからいままで以上に御注意をいただいて公定歩合の問題などが政治的な問題、あるいは対立抗争の問題の対象になるというようなことは、それこそ政治経済運営の近代化ということからいっても避けていただきたいということについての御意見をぜひ伺いたいと思うわけです。
  63. 田中角榮

    ○田中国務大臣 公定歩合操作につきましては、愛知さんが言われたとおり、日本銀行が中立性のもとにこれを弾力的に行なうということは当然のことでありまして、現在でもそのような方針を貫いておるわけであります。一部マスコミにいろいろなことが報道せられておるようでありますが、いままで私の知る限りにおいては、日銀が事前に公定歩合の問題で大蔵省に意見を求めてくるというようなことはありませんでした。きょう行ないましたからということで、この前なとは——引き下げるときだったと思いますが、参議院の予算委員会で、公定歩合の操作などは現存全然そういう意思はありません。こう答えた直後、日銀が言ってまいりましたので、その旨を報告して御了解願ったような次第でありまして、いままで事前に協議をした例はありません。今回の場合も、大蔵省が反対であり、日銀は引き上げ賛成であるというような意見が散見をせられますが、現時点までに日本銀行から公定歩合の引き上げをやりたいというような通告は一回もないことをはっきり申し上げます。
  64. 愛知揆一

    愛知委員 最後に、昨日、一昨日と行なわれました日米の経済委員会のことについてお伺いいたしたいと思ったわけでございますが、これについては問題の所在あるいは双方の主張その他は非常に詳しく新聞にも報道されておりまするし、またなまのテレビの会見その他もありまして、国民にもその問題の所在や重要性ということがよく理解されたと思いますので、あえてここにこまかく御質問申し上げません。  ただ一つだけ、決して新しい問題ではございませんが、利子平衡税の問題です。これに象徴されるところの一般国民の感覚から申しますと、日米安保条約というものを持ち出すまでもなく、日米がほんとうのパートナーであって、そうして何もかも相談し合う同盟の間柄であるはずではなかろうか。ところが、これは宮澤経済企画庁長官お話新聞にも出てておりますが、一番経済の中核であるところの、あるいは自由主義陣営の共通の通貨ともいうべきドルというお金それ自体に制限をつけておるというようなことは、これはあまりつれないことではなかろうか、これは何とか考え直してもらうことはできないものだろうか、あるいはカナダはよくて日本はいやだというのは、ほんとうにこれは情ないことじゃないか、これは私は偽らざる感情だと思います。  それからもう一つ、あえて申し上げにくいことを申し上げるようでありますけれども、私などのアメリカの友人、これはビジネスの関係その他の関係もございましょうが、アメリカの友人たち、その中には相当の実業界の知名人などもおられますが、これはもっともっとアメリカとひとつ話し合いをやる必要があるのじゃないかということを逆に応援をしてくれるような人もあるわけです。そういう点を考えました場合に、この共同声明書その他で出ております考え方はよくわかる、考え方はよくわかるのだけれども、国際収支上の危機があったときとか、日本経済が非常に因ったときは何とかいたしますよと言われても、法律の条文の上で、一体どの何条を援用してどうなるのであるかとか、これはまた逆に言えば、そういうことを聞くのはやぼなのかもしれませんけれども、どうもこういう点について、もう一歩画龍点睛を欠いたうらみがないではないような気がいたします。  そこで、たとえば国際収支の問題を詳しくお聞きする時間がなくなりましたから、やめますけれども、よく言われますように、そして総理の本会議の御答弁も、率直に言えば、経常収支についてはちょっと率直過ぎるあまり、弱気な御答弁があったように、私歯にきぬを着せずに申し上げれば言えるのじゃないかと思いますが、何といっても国際収支は当分の間外資を入れてきてつじつまを合わせなければならない、合う間にどんどんよくしていかなければならないという状況だ一思います。経常収支ではなかなか黒にならない。長期、短期の資金を入れなければならない。ところがその一番の大もとであるアメリカさんに利子平衡税をかけられたのでは、やはり日本の国際収支の対策上もどうもなかなか困ったことじゃなかろうか。一体どうして——これをやられてしまうと、もう三月にそういう法律ができてしまうとしたら、その後どういうふうな対策を講じていくのであるかというようなことにつきまして、大蔵大臣から最後にひとつ御説明いただきたいと思います。
  65. 田中角榮

    ○田中国務大臣 利子平衡税に対しての交渉は、総理大臣から前ケネディ大統領に対しての書簡、私のジロン長官にあてての書簡、また大平・ラスク共同声明、私が九月にIMFの総会に参りましたときのジロン長官との会談、今日の日米経済閣僚会議における会談等を通じて連綿として行なっております。この法律のいまの段階における見通しは、二月半ば過ぎには下院を通って、三月いっぱいには上院を通るであろうというような予測のようであります。  この利子平衡税に対して三点にわたって部面に申し上げますが、一点は、アメリカ側は日本の要求に対して次のような考え方を持っておるのです。利子平衡税というものは、国際通貨であるドルの価値を維持するために、これは共通の利益を守るためにやらなければならないことであり、それに対しては日本も協力をしてもらいたい。日本は、よしんば一%の利子平衡税がかかっても、ニューヨーク市場において起債をする場合には、一考の利子平衡税を加算しても、消化できる国は日本だと思っています、ほかの国は一%だというとなかなかできない、オーストラリアのような国ができるんじゃないかという例をあげましたが、これも金額は千五一百万ドル以内とか、非常に小さな金額でありますので、ニューヨーク市場における起債の対象は日本債がほとんどになるので、その意味においては、ほかの西欧諸国やいろいろな国々は金利が低いので、金利水準との問題がありまして、利子平衡税がなかったときこそ日本と競争をしたけれども、利子平衡税があれば、日本が主としての対象になるので、日本は十分面度の経済成長を続けておるので、また国内金利も高いから、一%程度のものではなく、日本が必要な資金をニューヨーク市場において得られるから、かえっていいのじゃないですかというような、私の表現から言うと、とぼけた発言だというようなこともありました。  第二点目の、日本側はこれに対して一体どう考えておるのかというのは、私のほうで、国際通貨であるドルをアメリカ自体が縛ることはおかしいじゃないか、実際において自由化自由化といって世界に向かっておりながら、みずからのドルを不自由化するということは、これは理論的に考えてもおかしい。もう一つは、カナダに対して特恵を与えられて、日本が特別免除を得られないということになると、精神的にも、日米友好の問題にも大きな問題があると思う、貿易及び資本の両面から差別待遇を受けておる、少なくともそのように国民考えるのだ、こういうことが日米間にどのような影響を持つかということを高度の政治的配慮の上に考えられたい、これは非常に強く言っております。  まあ二億ドルや三億ドルのものがよしんば入らなくても、日本経済というものはもうダウンしたり、破局的な状態になるとはどうしても考えられない、こういう議論に対しましては、日本がこれから低開発国の援助をやったり、またこれから対韓交渉を行ないましたり、また賠償も支払っておるのでありますし、賠償に付随する経済協力もやっておるのであって、その総額は二十億ドルをこしておるのだ、こういうことを考えるときに、日本経済がダウンすることによって東南アジア及びアジアの経済開発というもの自体にも影響があるのであって、二億ドルや三億ドルというものが日本で必要でないなどという議論を首肯するわけにはいかないと非常にきびしく言っております。  この問題に対しては、大平・ラスク声明にあるとおり、日本の国際収支上に危険がある場合には当然免除を考えます。こういうことでありますし、また日本に対しては、アメリカの利子平衡税の問題でもってニューヨーク起債市場でストップしたものが五千万ドル弱であるにもかかわらず、あなたはアメリカに来られたときに、世銀から一億ドルの借款を引き出したではないか、しかも両三年度にわたって、年間一億ドルずつ三億ドルのおおむねの了解を得ておるというようなことや、またアメリカからのローンもありますし、また世銀との借款もありますし、また特別借款のような、現在は全部返しましたが、過去において一億二千五百万ドルと二億ドル、計三億二千五百万ドルの借款があったわけですが、そういう問題もあるので、日米間の資本の交流の問題が、かかる平衡税ごときものによってそこなわれるとは思われないという議論に対しましては、日本の国際収支が悪くなってから貸してもらうというようなことでは話にならないのだ、貸さなければ悪くなるのだ、こういうことで、悪くなったらという時点ではなく、大平・ラスク共同声明の時点は現在である、こういうことを強く主張しております。  でありますから、これらの問題に対しては、日米間で特別委員会もつくりまして、事務当局で毎日のようにやっておりますし、またブリット財務次官補も、私もそのメンバーの一人でありますので、今度の会談を契機にして、さっそく具体的な問題に対して検討いたしましょうと、こういうことでありますし、きょうは訪韓を取りやめて在京してもらっておるというような事情もありますので、両国間における利子平衡税を中心とした問題に対しては、前向きというよりも、積極的に誠意を持って事実を見きわめつつ、誤りのないような方向検討を進めておるわけであります。
  66. 愛知揆一

    愛知委員 以上をもちまして私の質問を終わります。(拍手)
  67. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて愛知揆一君総括質疑は終わりました。  午後は正二時から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時四十分休憩      ————◇—————    午後二時四分開議
  68. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和三十九年度総予算に対する質疑を続行いたします。  山花秀雄君。
  69. 山花秀雄

    ○山花委員 私は、昭和三十九年度の予算審議にあたりまして、財政経済憲法問題等を中心質問をいたします。池田総理はじめ関係閣僚におかれましては、御答弁は明快にされんことを希望するものであります。  その問題に入る前に、いま重大な問題として大きく出てまいりましたフランスの中国承認問題につきまして若干お尋ねしたいと思います。もちろん、外交一般につきましては、わが党から明日横路節雄君が詳細なる質問をすると思いますので、この一点だけに限って質問をするものであります。  これはわが国経済の今後の発展とも関連いたしまして日中貿易に関係する度合いからお尋ねするのでありますが、フランスの中国承認問題についてお伺いいたしますが、アメリカは、この問題についてもちろん迷惑を感じて、日本政府に対してもいろいろ慎重な態度を要請していると思いますが、きのうの話し合いの中でもそういう要請があったかどうかという一点であります。昨日終了いたしまして経済委員会で、このフランスの中国承認に対して具体的にどんな話し合いが行なわれたか、これは国民の最も知りたいところであります。特に、外務省当局は、日本と中国との歴史的かつ民族的な特別の関係を説明し、日本と米国ではその立場が全く異なっていると強調したと伝えられておりますが、これに対して米国は具体的にそうした日本立場をどういうように理解したかという一点について、総理大臣にお伺いしたいのであります。
  70. 池田勇人

    池田国務大臣 私は日米貿易閣僚会議に出ておりませんので、その内容は存じておりません。ただ、昨日私とラスク長官との会談におきましては、フランスの中共承認に対しましての問題は話題に乗っておりません。この問題は外務大臣がよく存じておると思います。いま宮中に行っておりますから、帰りましてからお答えさすことにいたします。
  71. 山花秀雄

    ○山花委員 外務大臣はどっかに行かれたのですか。
  72. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 外務大臣は、先ほど理事の方と御相談いたしまして、宮中に行っております。(発言する者多し)二時三十分に帰る予定でございます。それまで他の質問をひとつお願いいたします。
  73. 山花秀雄

    ○山花委員 それでは、帰るのを待ちまして、一応総理にお尋ねしたいと思います。なお、総理は、経済委員会のほうに出席してなくても、出席各大臣から、重要な問題でありますから、詳細な報告を得ておると思うのです。得ていなかったら、これは怠慢だと思うのです。多分得ておると思いますので、御答弁願いたいと思います。  国際情勢の及ぼす影響をわれわれは十分注視する、こういうようによく答弁をされるのです。午前中の答弁もそういう答弁でありました。内外の世論動向検討する。相変わらずの確固たる政治家としての自信のない答弁をきれておるのであります。私は、午前、愛知委員質問に対する答弁を聞いて、はなはだ不満を感じていたものでありますが、現実の問題として、アメリカ動向に左右されたり、世論検討の上で態度をきめるというのでは、私は国民をリードできないと思うのであります。やはり、内閣総理大臣は、こういう外交問題に関係いたしましても、指導する立場としての政治家の姿勢を明らかにしていただきたいのであります。この点、総理は一体どうお考えになっておりますか。
  74. 池田勇人

    池田国務大臣 日米合同会議の問題で重要な点は、私は聞いております。しかし、その衝に直接当たった者から答えたほうがけっこうだと思って、大平大臣より答えさすことにいたしておるのであります。もちろん外交の問題は、内政もそうでございますが、一つ方針をきめまして進んでいくことは当然でございます。したがいまして、私は、米国より来られた各代表の前で、外交問題につきましては自主的にお互いにきめるべきだ、しかしいろいろ意見の交換をする必要はある、こういうことをはっきり言っておるのであります。私はその方針に変わりはございません。  世論指導するということもさることでございますが、世論が公正な判断を出してもらうようにいろいろの事象を集め、そしてこれを知ってもらうようにすることが、指導の前に尽くすべき手段だと思います。今回のフランス政府の態度につきましては、まだ非常に流動的でございますので、私はいまその問題について意見を申し上げることはまだ早過ぎると思います。
  75. 山花秀雄

    ○山花委員 米国の意思に左右されるものでない、推論を指導するためにはいろいろ示唆を与えなければならぬという総理大臣答弁でありましたが、これは日本自身の問題で、日本民族の意思できめるべきものだ、その頂点に立っておるのが、やはり指導家の立場にある総理大臣というふうに私は考えておるものであります。ここ一週間の新聞世論というものが、大体日本国民のある程度判断に対する示唆を与えておるということはいなめないと思うのであります。中国承認を現実の問題として、日本政府自身がもうこの場合一大英断をなすべき時期に来ておると私は思うのであります。  日本と中国との歴史関係は、地理的条件といたしましても、あるいは第二次大戦で中国に与えた大きな犯罪と申しましょうか、迷惑と申しましょうか、こうした点を考えても、国民の多くは、中国との正常な国交を回復して、その上で日中貿易を拡大する可能性があると考えておる。これはまた日本経済一つの進路でもあろうと私は考えております。中国の求めておる消費財は、ただいま日本にはもうごろごろしておるほど倉庫に眠っておることは、御案内のとおりであります。中国との貿易が正常化すれば、危機に瀕した日本経済、特に中小企業の多くが救われるということは、これはもう政治家の頂点に立っておる池田総理も十分御承知だと思うのであります。だから、国民は、池田内閣自分自身の判断で日中正常化を踏み切ることを願っておるのであります。日本のドゴールはどこにいる、というような声すらも聞かれておるのであります。切実な声に池田総理は耳を傾くべきであります。アメリカでさえ、ドル防衛のためには、自分の国の経済危機というこの問題に関しては、自分の国の経済中心考えておるのであります。  私は、国際政治を進める方法といたしまして、中国問題はこれからも多角的に検討だと言わないで——世界の各国から多角的な利益追求の犠牲にされ、日本だけが一人ぼっちになって取り残されると思うのであります。フランスの極東進出はEECの極東支配に発展しないとたれか言い得ることができましょう。そうなれば、自由化を一〇〇%実施して、もはや日本経済が野たれ死にするより以外にないというような状況に日本経済は追いやられておるじゃありませんか。くどいようでありますが、私は、総理はこの際ほんとうの自主的判断に立って日中関係の打開に思い切った措置をとる意思があるかどうか、もう一度お尋ねしたい。  もう一つ申し上げたい点は、これはなくなられたアメリカのケネディ大統領もそうであります。心の中では対中関係を早く解決したい。だが、お互い政治家というのは、どうも選挙に災いされまして、選挙があるのでちゅうちょしていたというのが本心だと伝えられておるのであります。私は、この際、池田総理日本の大政治家として、ひとつ率直に大胆に方針をこの場合打ち出していただきたいと思うのです。野党の立場からも望むものであります。
  76. 池田勇人

    池田国務大臣 ドゴール大統領の中共との国交を始めたことにつきましては、世界的にいろいろ議論のあるところであります。国内的にも議論は必ずしも統一しておりません。私のただいまの考えでは、直ちに中共を承認するということは、大英断でなしに大暴断だと考える。非常なむちゃなやり方だ。私は、日本外交を預かっておる関係上、そういう、何と申しますか、軽率なことは、ただいまのところ絶対にする気持ちはございません。
  77. 山花秀雄

    ○山花委員 英断と暴断は、これは歴史が証明するでしょう。後日あなたの評価をきめる一つのめどになるとお考え願いたいと思います。  池田総理は、昨年十一月、総選挙に際して、各地遊説先で、社会党は自民党が三分の二以上の議席を取れば必ず改憲の運動に乗り出すと言っておるが、私はただいまの心境は改憲は考えておりません、社会党が三分の一以上の議席を取りたいための選挙政策で、最もひきょうな態度であると、大阪あたりでののしっておられたと私は承っております。現在の心境もそれに変わりございませんか。
  78. 池田勇人

    池田国務大臣 私はうそを申しません。その心境に変わりございません。
  79. 山花秀雄

    ○山花委員 うそは申しませんということは、うそを申しますという意義にも通じておるようにわれわれは解釈していきたいと思うのであります。  選挙の結果は、御存じのように、自由民主党が三分の二以上の議席を占めることが不可能な結果となりました。これは、現実問題として、改憲問題は国会の論議としてはもう問題にならなくなったことはそのとおりであります。池田総理は、ただいままで憲法問題について改憲の意思なしと表明されるかどうか、くどいようでありますが、もう一度お伺いいたしたいと思います。
  80. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、たびたび申し上げておるごとく、三分の二以上取ったからすぐやるのだという気持ちは初めから持っていない。いたがって、三分の一以上取らなければ憲法改正するかもわからぬという社会党の考え方は誤っているということをいまでもはっきり申し上げます。しこうして、たびたび申し上げましたごとく、わが党におきましては、先般の宣言にありますごとく、これは国民憲法だから、国民検討を加え、国民の手によってやるというのであります。われわれが三分の二以上衆議院で取ったからすぐやるのだ、こういう問題では私はないということは、もう初めからたびたび申し上げているとおりであります。
  81. 山花秀雄

    ○山花委員 承りますと、本年五月ないし六月ごろに憲法調査会では調査結論を調査報告書として政府提出されるというふうに聞いております。この答申の結論によって現在の考えておられる心境に変化はございませんか。
  82. 池田勇人

    池田国務大臣 憲法調査会におきまして答申政府並びに国会に出てくるのであります。政府は、その答申を受けまして、自分としての検討を加えると同時に、国民に知ってもらうよう十分努力するつもりであります。また、わが党といたしましても、先般の大会で宣明しておりますとおり、国会答申が出ましたら、適当の機会に調査会を設けて検討すると言っておるのであります。私はこの方針に変わりはございません。
  83. 山花秀雄

    ○山花委員 私のお尋ねしたいことは、あなたは政府の首班であります。また、同時に自由民主党の総裁であります。政党政治のたてまえから総裁は首相になるというのが日本の常識であります。総裁と総理とは役目が違っておりますけれども、同じ政治意識になくてはならぬと思いますが、いかがなものでしょう。
  84. 池田勇人

    池田国務大臣 大体そういう方向であるべきものだと思います。しかし、政府案を出しましたからといって、党の総裁だから、党にそのとおりこれをみなのめ、国会審議はもう原案どおりでいいというふうなものでもございますまい。だから、少数党の意見も十分聞きながら、やはり法案に修正すべき点があれば修正するのも、私は民主主義の当然の姿と思います。
  85. 山花秀雄

    ○山花委員 そこで、さらにお尋ねしたいのでありますが、一月十七日にあなたの引率しておられる自由民主党の年度大会がありました。ここに議案書も私は持っておりますが、この大会の運動方針の三の項で、憲法問題の議題で、この方針は万場一致で決定されたのでありますが、「わが党は、昭和三十年十一月十五日結党と共に制定した党の政綱、第六章独立体制の整備の項で、現行憲法の自主的改正をはかりと規定し、憲法改正をその重要施策の一つとして公約してきた。」と方針書に書かれております。自由民主党は憲法改正は結党以来の大方針であります。しかるに、総選挙に対して改憲を考えておりませんと主張するあなたの方が、よほどわが社会党よりもひきょうなやり方じゃないかと私は思うのでありますが、あなたはどうお考えになりますか。
  86. 池田勇人

    池田国務大臣 三十年か三十一年の結党のときに、憲法改正の議を出してそういうふうに言っておりますが、そのあとのほうをずっとお読みくださったら、いまのわが党の考えておることがはっきりすると思います。
  87. 山花秀雄

    ○山花委員 私は初めからし使い左で全部読んで、そうして責任を持ってあなたに質問をしておるのであります。あなたが統率する自由民主党が改憲を堂々と結党以来の大政策としておることを、総裁のあなたが知らぬ存ぜぬという顔をして、その反対の態度を高言してはばからないというのは、政治節操として私は大へん矛盾じゃないかと思うのであります。まあこれは選挙のためにやむなくそういう態度をとられておるのじゃなかろうかと私は考えまして、これは社会党よりもあなたの方がもっとひきょうじゃないかということを言ったのです。また、一月十七日の大会では、「適当な時期に国会憲法調査の機関を設置すべきである。」とうたい、「わが党は今年こそ」、ことしこそとえらい力こぶを入れておるのです。「憲法問題の啓蒙普及のために積極的に運動を展開するであろう。」と、なかなか改憲運動に乗り出す意欲を示しておられますが、総理は、自由民主党の総裁として、この運動方針をどう処理されるお考えであるか。あなたは総理大臣でもあるけれども自由民主党の総裁でございます。今日の総理大臣の地位は、自由民主党を基盤としてあなたはなっておられるのでありますから、この処理について私はお考えがあると思うのです。お聞かせ願いたいのです。
  88. 池田勇人

    池田国務大臣 たびたび申しておりますごとく、憲法の問題は重要な問題でございますから、国民の手によって最後の決断を出してもらうことが当然でございます。したがいまして、調査会答申を見まして、国民によく理解をしてもらって、よく考えてもらって、そして、憲法改正すべきやいなや、改正するとすればどういう点を改正するかということにつきまして、国民理解を深めるために、政府におきまして努力すると同時に、わが党におきましても、国会答申がありましたときには、国会において適当な時期にそういう機関を設けて研究し、そうして国民によく知ってもらう、こういうことを私はやるべきだと考えております。これは、改正するしないの問題よりも、こういう大きい声が出てきたときに、それの結末をつけるということが政治の姿じゃないかと思います。
  89. 山花秀雄

    ○山花委員 あなたが総裁だからお尋ねするのですが、適当な時期ということについては、憲法調査会より調査報告提出されると予想せられる本年の五、六月ごろといわれておりますが、党大会決定事項ですから、総裁たるあなたからいま承ったら、あなたは、それはこの報告書に基づいて場合によれば国会内においてもこの問題を処理する機関を設けたいと答弁なすったように私は承ったのですが、そう承ってよろしゅうございますか。
  90. 池田勇人

    池田国務大臣 そういう方針で党は進むということを申し上げておるのであります。
  91. 山花秀雄

    ○山花委員 党が進むというようにことばを濁されましたが、先ほどあなたの答弁を聞いておりますと、国会内においても設置したいというふうに総理大臣としての御答弁があったように聞こえましたが、これはいかがなものでしょうか。
  92. 池田勇人

    池田国務大臣 総理大臣としてじゃございません。総裁としてです。そういうふうに党の大会できめております。また、原案につきましては、私は手を入れましたが、できれば与野党一致した調査機関にしたいという気持ちがあったのでございますが、実際問題として野党のほうでどういうお考えかもわかりませんので、与野党一致ということはやめまして、わが党の方針として書いたのであります。
  93. 山花秀雄

    ○山花委員 野党としての意向は、この質問が進むに従ってだんだんおわかりになると思います。  池田総理は、憲法調査会の自民党委員を含む十八人委員が「憲法改正方向」という意見害を昨年八月発行したことを知っておられますか、また、お読みになりましたか。
  94. 池田勇人

    池田国務大臣 読んでおりません。そういう調査というか、委員のうちでわが党の者が研究されたことを聞いております。
  95. 山花秀雄

    ○山花委員 こういう重要問題を総理大臣はまだ読んでおられないというのは、どうも私にはほんとうに聞こえませんけれども、この委員の中にはそうそうたる自由党のメンバーも入っておられることは御承知のとおりであります。自由民主党の幹部あるいは国務大臣の経験者、現在政調の副会長、午前質問した方もそのうちに該当されておりますが、この意見書によると、「祖国(または国土)防衛、あるいは国防の義務を憲法に明記すべきである。これもまた、現行憲法下でも当然みとめられているはずであるが、憲法上の明規がないため自衛意識がきわめてうすく、明規のないことを盾にとるような議論がおこなわれていることも事実である。」、「ここでいう国防(防衛)の義務というのは、軍隊による防衛という意味ばかりではなく——もちろんこれもふくまれるが——、もっと広く、国民のふだんの生活における民防」、「平和建設的な効果をねらっているものである。この義務につながるものとしては、一旦緩急あるばあいの徴発、労務の提供とか、機密保持とかが考えられる。」、また、国民の権利義務の項目に関する考え方に、「それでは具体的にどんな義務を新設すべきであろうか。第一に、国民が法律をまもる義務および国に対する忠誠の義務を明記すべきである。これは考えてみれば当然のことであり、当然だからなにもそれを規定する必要はないという意見もあるが、国民各自の健全な国家観念をやしない、国民としての自覚をたかめるという教育的・啓蒙的な意味から、やはりはっきり憲法に書いたほうがよい。」、こういう主張をされておるのであります。  そこで、ここで国民の国防の義務、忠誠の義務と明記した条文とすべきであると言っておりますが、憲法に忠誠の義務を明記すれば、それが従来の国民感情意識から徴兵制の実施が可能になるということ、憲法上の理論が自然にそうなると思うが、これは池田総理のしばしばの言明と食い違っております。また、この意見書に対して、自由民主党として何らの意思表示もしてございません。池田総裁または首相としての表明もないところを見ると、常識的に見てこれを暗黙のうちに容認しているとしか考えられない。まことに一方的でありますが、自由民主党は党大会で改正の意向を打ち出しておりますから、ここに多少の異論があるかもわかりませんけれども、改正意見は判然たるものであります。池田総理の本心も憲法改正して公然たる再軍備をして徴兵制度を復活しなければならぬと考えておるのではなかろうかとわれわれは揣摩憶測する。こういう条文を見ておると当然そうなってくるのです。この際、政治家としては、人々から揣摩憶測されるような、そういうことに対して所信を判然と表明して、世間の疑惑を一掃されたらよいと思いますが、池田総理はこれは一体どういう処置をとられますか。
  96. 池田勇人

    池田国務大臣 衆参両院合わして四百何十名の同志がおられますが、いろんな機会にいろんな意見を申し述べられることを全部私は見てこれに対して判断をする余裕を持ちません。また、憲法問題につきまして、党員の個々の人の判断について批評を加えることは、総裁としてただいまのところ慎まなければなりません。ただ揣摩憶測を起こして困るじゃないかというお話でございますが、いまあなたのお持ちになっておりますわが党の宣言のうちにも、憲法改正のところで、天皇制の復活とか、徴兵制度、旧家族制の再建なんかは毛頭考えてないということをはっきりとわが党は言っておりますから、問題として出された徴兵制度につきましては、御了承願いたいと思います。
  97. 山花秀雄

    ○山花委員 ただし、この答弁は非常に重大でありますので、私は、林法制局長官にもお尋ねいたします。  忠誠の義務という文言と徴兵制の可能性について法的見解をひとつ承りたいのです。
  98. 林修三

    ○林政府委員 これは、まあ抽象的に忠誠の義務について規定するといいましても、どういう条文になりますか、その具体的な条文の内容を見なければ直ちに御返事ができないわけでございます。忠誠の義務が直ちに徴兵制に通ずるということは、これは私はないのじゃないかと思います。それはまあいろんな条文の書き方でそういうことになるような書き方もございましょうし、そうでないような条文ももちろん書けると思います。
  99. 山花秀雄

    ○山花委員 あなたの答弁を聞いておると、竜頭蛇尾という言が最も適切にあてはまるような、何を言っているか、最後にはむにゃむにゃと言っちゃって、もっと明快に答弁をしていただきたい。  いま二つの見解を明らかにしてもらいたいことは、十八人委員会意見書にもあるように、具体的な義務のつながるものとして、一たん緩急あらば徴発、労務の提供とか機密保持とかが考えられる、こう言っておる。ここで言う徴発ということは、労務の提供ということは、単なる物資だけでなくして、人間をも含めておるようにわれわれは理解できるのでありますが、長官、一体どう理解しますか。
  100. 林修三

    ○林政府委員 どうも、これは、(発言する者あり)この十八人の委員が御意見をお出しになったわけでございまして、その内容を私直接に伺ったわけではございませんし、ただいまおっしゃっただけで、実はどういう内容のものか、これは私には答弁できないわけでございます。別のそういう委員の御意見と離れてこういうものはどうかとおっしゃれば、これは私は私の考えを申し上げますけれども、委員の御意見についてのあれは、私にはちょっと判断できません。
  101. 山花秀雄

    ○山花委員 当の原案起算者の愛知君が盛んに反対しておりましたが、これは愛知君に聞けば一番いいんですけれども、これはやはり自民党の重要なメンバーが入ってそして結論を出しておるのですから、これは当然監督責任上総理に聞いておるわけです。機密保持ということは、これは実行すれば軍機保護法というように意見が通ずると思うのですが、これは一体どうですか。
  102. 林修三

    ○林政府委員 実は、機密保持という問題、これは現在あらゆる国家について実はあるわけでございまして、軍事上の秘密のみならず、外交上の秘密あるいは財政的な秘密と、いろいろございます。現存でも、国家公務員法なんかには、もちろんその秘密漏洩の禁止の義務は規定がございます。あるいは安保条約に伴いますいわゆる米駐留軍の機密保持の義務等についても規定がございます。したがいまして、現存の法制下においても、もちろん国家的にあるいは個人的にどうしても秘密を守るべきものについて法律で規定することは可能なわけでございます。現在も可能でございます。  それから、先ほどの徴発の問題でございますが、徴発といいましても、いろいろ、もちろんこれは労務も物資もございましょう。現在の災害救助法あるいは災害対策基本法等にも、ある範囲においての人力の提供義務、あるいは地方自治法にもああいうものがみんな入っているわけであります。夫役現品というような義務も入っております。そういうものも言ってみれば一つの徴発でございますが、そういうものも、いまの憲法下において、災害時において、伝染病とかそういう非常な緊急の場合には、ある程度のことはできるわけでございます。
  103. 山花秀雄

    ○山花委員 答弁をすりかえたらだめですよ。一たん緩急あらばというこの字句に基づいていまの撤廃という文字が出てくる。災害の徴発じゃございません。そういうやぼな答弁をするものじゃありません。  私が率直に申したいことは、歴代内閣、——昭和二十六年講和会議以前の占領支配下は別として、形式的にも独立国家として発足してからの政治に、現行憲法改正するとかいなやの議論が行なわれておることは、非常に私は悲しむものであります。現行憲法の完全実施のために努力のあとがないということを非常に悲しむものであります。私は、池田内閣に望みたいことは、総理は、口を開けば、改憲を考えておりませんと、この一点ばりであります。あなたを取り巻く周囲の改憲論者は非常に横溢しておる。憲法九十九条に明記されておりますように、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」とあります。歴代内閣で真剣に擁護しようともせず、裏口から改憲論者のしり押しをしておることは、さたの限りであります。いまこそ、憲法擁護という消極的より、積極的に現憲法を完全実施に踏み切る政策、私はそれを表明されたらいかがかと思いますが、総理大臣いかがでしょう。
  104. 池田勇人

    池田国務大臣 憲法は全国民がこれを守らなければならぬことは当然でございます。しかし、憲法を守るということと、憲法がいまの実際に沿うか沿わぬか、これを検討しようということとは別問題でございます。私はそれをこんがらがらしては議論が変になってくると思います。われわれは、九千五百万国民は全部が憲法を守らなければなりません。九十九条の規定はもちろんでございます。そればかりではない。全国民が守るべきだ。しかし、憲法につきましてのいろいろ改正すべきや改正すべからずやということは、これは別個の問題として、あなたが言われるようにいろいろ問題が起こっておりますから、研究してみる必要があると言うのであります。
  105. 山花秀雄

    ○山花委員 答弁の的違いをやられたらたいへん困りますよ。九千五百が人の全人民が憲法を守る、これは当然の話であります。これは質疑する必要はございません。あたりまえの話であります。私のいま言っておるのは、政治的、指導立場に立っておるわれわれを含めてあなたも、——とにかくあなたが内閣の実験を握っておるのですから、この憲法を完全に実施する、そういう努力を払われたらどうか、そして具体的にどういうことをやったか、それをひとつ聞きたい、こう言っておる。
  106. 池田勇人

    池田国務大臣 憲法を守ってこれを実施いたしております。誠心誠意実施しております。
  107. 山花秀雄

    ○山花委員 その辺がわれわれ社会党とだいぶん見解の相違点であります。いかに憲法が理不尽にもじゅうりんされておるかということ、これは明白になっておるのです。私は一々例をあげて言いましょう。政府が改めようとしない一例をあけて、池田総理の所信をもう一度伺いたいのです。  御承知のように、現行憲法では権利義務で法のもとで平等であります。当木的人権が尊重されております。ここで言うのは一例でありますが、一番わかりやすい一例として、国民政治に関与する権利、すなわち代表者を送る選挙権の問題でありますが、人口比例による議員虚定数の問題は、ここ十数年論議されております。一向に取り上げられておりません。したがって、人口一割以上を有する私どもの住んでおる東京都のごときは、四百六十七名の衆議院議員定数が、御承知のとおりわずか二十七名であります。百二十五名の参議院議員の定数はわずか八名であります。したがって、総選挙の場合で、地方では三万票程度の得票で当選してくるのです。東京や他の大都市地域におきましては、御承知のとおり、八万票台もしくはそれに近い得票を得ても落選する。全く不合理きわまる結果が生じておることは、総理よく御存じのとおりであります。選挙制度審議会からこの不合理の人口比例による定数改正答申をなされても、実意を示すことがなく、一割以上有しておる東京都人は、三分の一の権利しか行使できないという不合理に置かれておる状態である。権利平等の憲法精神ほんとうに生かすというのだったら、一日も早く、全部が代表を選ぶ権利の平等、いわゆる定数改正選挙制度審議会のその答申を実施すべきだ。実施しようと思えばできるのです。あなたの腹一つでできるのです。国会に法案を出せばよろしいのです。そういう精神を、ひとつ今国会定数是正をやるかやらないか、これを明確に御答弁願いたいのです。
  108. 池田勇人

    池田国務大臣 選挙制度審議会の答申がありまして、その次のいわゆる最近の機会、特別国会でしたか、臨時国会に出しておるのであります。それが可決に至りませんので、今通常国会に出す予定で、いま急いでおります。
  109. 山花秀雄

    ○山花委員 私は完全実施のために一例として選挙権をあげて、いざ今国会には必ず出すということですが、出しっぱなしでは私は困ると思うのです。ひとつあなたの与党のほうも督励をしてしっかりやってもらいたいと思う。  なお二、三の例をちょっと申し上げますと、第二十五条に、御案内のように、国民の生存権の問題、第二十六条には義務教育の無償の問題、第二十八条には勤労者の諸問題等々、数えてみれば当然政府が率先して実施しなければならない憲法条項が実行していないじゃありませんか。生存権の問題では、朝日訴訟に見られるように、これを上級裁判までこう持ち上げる。世間は何と言っておりますか。鬼のような政治と言っておるじゃありませんか。教育の問題についても、義務教育は無償で全部やるという。これが文字だけ残っておるじゃありませんか。父兄がどんなに迷惑しておるか、総理はよくお考えください。よくわかっておるはずだと思う。勤労者の団結権の問題でも、何年越しのILO八十七号条約の批准がどうしてできないのですか。国際信用はゼロになっておるじゃありませんか。ただいま申しましたこと、生存権、教育、労働については全く憲法違反をやっておると極言しても私は差しつかえないと思います。池田総理は、私がいま申し上げました二十五条、二十六条、二十八条について、憲法実施について努力しておられるかどうか、もし努力しておられればどういうような具体的な努力をしたか、これをはっきり御答弁願いたいのです。
  110. 池田勇人

    池田国務大臣 基本的人権の問題は載っておりますが、その権利の乱用あるいは公共の福祉のためにある程度の制限をすることは、これも憲法が認めておるのであります。たとえば義務教育の無償という問題も、判例その他によりますと、やはり一応無償というのは授業料を免除するということでございます。しかし、それだけでは私は国の繁栄の結果としてまだ足りない、もっとその精神を広げて——当然の結果とは申しません。精神を広げて、教科書の無償配付あるいは社会保障その他の点で十分努力を毎年積み重ねていっていることは、国民が知ってくださると思います。
  111. 山花秀雄

    ○山花委員 あなたは、国民が知っておられると言っておられますけれども、国民はこの問題について怨嗟の眼をもってあなたを見ております。憲法問題の一番論議の焦点となっておりますのは、御案内のように第九条の戦争放棄の条項であります。総理も御承知のようにジョンソン米大統領は、ドル防衛の一環として、軍事費削減の方針を明らかにして、国内、国外の米軍関係要員の大幅削減計画を発表いたしました。これに伴い、在日米軍の移動と削減が実施される。横田基地の第三爆撃航空団と立川の輸送航空師団は引き揚げ、板付の戦術戦闘航空団F105水爆搭載戦闘機が約一五十機ほど横田に移動する、そのほか、現在約二万人の陸海軍部隊が駐留しておるが、これも大幅に米国に引き揚げる事情にあることは御承知のとおりである。このために極東におけるアメリカの戦略地位は大きく後退するわけでありますが、この穴埋めとなる日本の自衛隊では、実勢力、配備状況から、一時空白を埋める力がない。そこで、早急に自衛隊の配置の再検討や、自衛隊の増強が政府としては考えられると思います。また、政府は従来の考えを改めない限り、そのために自主防衛思想を一そう国民に徹底させないと抵抗が強い。そこで憲法改正とからめて防衛思想を一そう強力に国民に植え込もうとしております。同時に第二次防衛計画が着々と進行しており、一九六六年度には陸上十八万、海上二百二十九隻、十四万三千六百六十九トン、航空機一千三十六機、ほかにナイキ、ホークなどミサイル兵器等を含めた五カ年に一兆千八百億円の軍事費をつぎ込もうとしておる。日本木上の防衛という観念から見れば、通常の自衛軍備の範囲をはるかに越えた軍事力を目途としておる、これは明らかに再軍備の完成を目ざすものであり、明らかに憲法第九条に違反すると思いますが、池田総理の具体的な見解を承りたい。  同時に昨日の夕刊でありましたか、毎日新聞ワシントン駐在員の報道によりますと、米国では大体近い将来に引き揚げる、その引きかえ条件は、日本の内力による同等の力が出たときに引さ揚げる、これにちょうど関連性があって強力な防衛軍事費と申しましょうか、それを考えておられるのではないかと思いますが、ここまでくるともう単なる自衛というよりも、軍隊といっていいほどの膨大な規模になろうとしておりますが、この点について総理の見解を承りたいのです。
  112. 池田勇人

    池田国務大臣 お答えが逆になるかもわかりませんが、日本に駐留しておられる米軍の一部が引き揚げることは事実でございます。しかし、なぜそういうことになるかと申しますと、やはりアメリカ日本、ことにアメリカの軍事装備あるいは輸送等が非常に近代化、合理化せられまして、ある程度引き揚げても防衛力に欠陥は起こらない、防衛は安全だという前提のもとに、時代の進運に即して措置せられておるのであります。しこうして、これがために、日本の自衛力が戦力になるようになるということは、これは思い過ぎでございまして、たとえば陸上の十八万というのは、十年余り前から私は考えておる。そうしてそれがそのまま第二次防衛計画に乗ってきております。そうして第二次防衛計画は、たびたび言っておりますごとく、これを変更しないということを申しておるのであります。だからアメリカ軍の一部が引き揚げましても、また装備の位置を変更いたしましても、日本の日米協力による安全の保障には心配は要らない。そうして片一方でそうむちゃな計画以上の防衛力増強ということは考えておりません。
  113. 山花秀雄

    ○山花委員 陸上戦力が、時代の戦争器具、用兵あるいは戦争形態から見てだんだん影が薄くなってきておることは総理も御承知のとおり。だから十年前にたとえ今後十八万と言っても、これは別にどうこうございません。ただ航空機の問題あるいは新しい軍事力の問題について、相当大きな差異があるということだけは御確認願いたいと思います。  よく現行の憲法が占領支配下にちょうどアメリカのほうから押しつけられる憲法だ、こういうことを改憲論者は多く主張して、日本民族日本国民独自の考え方で、りっぱないい憲法をつくるべきだというようなことを改憲論者の多くは言っておる。午前中の愛知委員質問にも、そういう内容の片りんがうかがわれました。総理は一体どうお考えになりますか。これは押しつけられる憲法とお考えになりますか。
  114. 池田勇人

    池田国務大臣 いままでもいろいろ議論があったことでございます。また最近もいろいろ議論があるようでございます。こういうことに基づいて、憲法調査会におきましても議論が分かれております。私は、こういうことを答申を受けまして、はっきり国民考えてもらって、そうして国民に判断してもらうのが私のつとめだと考えます。初めから自分がこうだ、ああだということを言うべき問題じゃないと思います。
  115. 山花秀雄

    ○山花委員 さきに憲法調査会会長の高柳さんが、やはりこれは業務としてアメリカへ行かれたと思いますが、帰ってきた早々、第一声といたしまして、マッカーサー元帥とも会った、日本憲法についていろいろ話をした、現在の日本憲法は、決して占領支配下という異例の条件にあってアメリカが押しつけたものではないという確信を得て帰ってきたと会長さんが言っておられることは、総理も多分御承知だと思います。日本人の総意に基づいて作成された自主憲法であると明言されておりますが、総理はこの高柳発言に対してこれをどう考えになりますか。
  116. 池田勇人

    池田国務大臣 そういう、たとえ会長であるからといっても、正式の答申がない、また正式の答申があってもそれについての批判を総理大臣がすべきものではないと思います。
  117. 山花秀雄

    ○山花委員 憲法調査会の改憲派委員十八名の共同意見書の内容は、憲法改正の必要性を原則として認めていながら、その時期については時期尚早とか、適当な時期だとか、国民世論の成熟を待ってと言っておりますが、これは一応現実的な意見だが、こんな消極的な態度では百年河清を待っても同じ結果だ、たなからぼたもちの落ちるのを待つのでは、急テンポで流動する現段階では通用しない、このような消極論は、改正に水をさし、改正反対と同じ効果を持つ、改正の必要性を誠心誠意国民大衆に訴え、機を熟させる努力を行なえとたいへん意気込んでおられますが、政府としては、この際いろいろ伝えられておる世論に惑うことなく、確固たる信念を持って、憲法の完全実施に努力する。先ほど言ったように、やっていない点がたくさんあるのですから、これをやってみて、そこで、あなたがよく言う、お好きなことばであるひずみが出たときに再考慮すればいいんじゃないかと思う。総理大臣としては、やっぱり何といっても完全に実施する。実施するためには、この条項、この条項、この条項が一体いまどうなっておるか、そういう親切な検討をひとつやられるのが、私は総理大臣としての任務だろうと思いますが、私のただいまお尋ねいたしましたことについて御意見があれば承りたいと思います。
  118. 池田勇人

    池田国務大臣 いろいろな考え方を持っておられる人がその意見を発表なさることは、これは民主主義の原則でございまして、私は大いに発表すべきだと思います。また、第二段の憲法を守るべきじゃないか、私は憲法を誠実に守っております。そして、憲法精神をできるだけ広げて、そして国民の福祉に沿うよう努力いたしておることは、たびたび申し上げておるとおりであります。
  119. 山花秀雄

    ○山花委員 時間の関係もございますので、詳細な点については、わが党から、また一般質問で微細にわたって、これは国の基本法でありますから、また審議会の報告書が五月か六月ごろ出るという、こういう重要な段階でありますから、日をあらためて微細なる質問をやっていきたいと思います。  先ほど申し上げましたように、財政経済について私はお尋ねしたいと思いますが、池田内閣の高度成長政策の中で、総理は金づくりということをたびたび、言っておられるのであります。新しいことばを発明しましたが、それはどういう方法で金をつくるかということであります。まずアメリカから外資を借り入れるとか、あるいは租税の自然増収をねらうとか、財政投融資による国民の零細なる資金を集めるとか、あるいは日本銀行の銀行券を、通貨をどんどん増発する等々が、まあ大体金づくりの内容になると思いますが、総理はこうした金づくり政策を今後も続けておやりになるつもりでいらっしゃるかどうか。
  120. 池田勇人

    池田国務大臣 いまのあなたのお話の金づくりというのは、一つの金づくりでございましょう。しかし、これはわりにみんなにわかりやすい、そうして、やりやすい問題でございます。しかし、それだけ弊害が伴うことは承知しなければなりません。私が金づくりと言ったことは、そういうお話の点を主として言ったわけではないのであります。同じ金、同じ通貨であっても、金融制度、証券市場、その他のいわゆる有機的合理的運用によりまして、同じ金でも回転その他によって非常に信用を高めてくる。そういう金融制度、証券制度というものをもっとでっち上げなければならぬ。一人が払わないために、その関係の人みんなが困るというようでは、これは金づくりではございません、同じ金がありましても。ある金を運用して、高度な、有機的な、近代的な金融組織、金融市場というものを置いて、どんどん同じ金でもそれが有効に動くような制度をやっていくということが、私の金づくりと言ったときの主たる問題でございます。もちろん、それによりまして、外資もふえたり、あるいは日銀の信用もふえたりすることもございますが、日銀の信用をふやしたり、金を借りてくるということも金づくりでございますが、私のあのとき言った意味は、そういう意味よりもっと基本的な信用制度の拡充による機構においてやることをさして主として言ったのであります。
  121. 山花秀雄

    ○山花委員 総理のただいまの答弁を聞いておりますと、金がぐるぐる回わって、何とか流動的だとかいうようなことばを使っておられましたが、せんじ詰めますと、何か金融資本が利子でうんともうけてちょんになるような、大体そういう感じがいたしましたが、まあ余談はさておきまして、アメリカから外資導入という点、これはアメリカのドル防衛でいままでのようにいかなくなったと思いますが、これは、これからどういうお考えですか。外資借り入れは、言うまでもなく、ただいま総理も言われましたように借金ですから、元利も償還しなくちゃなりません。これが国際収支の赤字を一そう大きくさせる原因になりますが、一体いままでに導入された外資の残高はどの程度あるか、そうしてその元利の償還見込みは、一体どの程度で見込みがつくのか、これをひとつ明らかにしていただきたい。
  122. 田中角榮

    ○田中国務大臣 外資導入残高は、三十八年九月末現在で約十八億ドルであります。それから元利償還についてでございますが、大体三十七年度の償還実績は、元本で約八千万ドルであります。それから利子及び配当金等で九千万ドルでございます。三十七年度中の上記各種の外資導入額は、約四億八千万ドル。三十八年度の償還は元本につきましては大体一億七千万ドル、利子、配当金は一億一千万ドル程度になるというふうに考えております。
  123. 山花秀雄

    ○山花委員 まあ、でかい借金でもありますし、利子の支払いも相当大きな負担になっておりますから、なるべく自主的に経済を持ち直して、あまり外資を借りないようにしたい、そうなりますと、経済成長の問題にもだいぶんからんでくると思いますが、現在わが国の外貨準備中に、まあ短期決済と申しましょうか、ユーロダラーのような国際経済事情の変動ですぐにでも海外に流れていくような短期の債務が相当含まれておりますが、一体どのくらいの短期債務があるか、この際明らかにしていただきたい。同時に、こうした頼りない外資で国際収支の赤字を埋め合わせるということはあまり感心した事柄ではないと思いますが、こうした方法をどういうように解決する所存でおられますか承りたい。
  124. 田中角榮

    ○田中国務大臣 ユーロダラーは昨年の十二月末で三億六千万ドルであります。  外資導入についての基本的な御質問につきましては、いつも申し上げておりますとおり、金を借りないで済めばそれに越したことはないのであります。しかし、戦前・戦中・戦後を通じまして、長い間、貿易、為替の世界をしてようやく今日を築いてきた日本といたしましては、これから国際競争に対応していかなければならないわけでありますし、そのためには相当大きな資本が要ることは御承知のとおりであります。国際収支の安定ということは、私が申すまでもなく最重要な問題でありますし、なお経常収支が黒字になるように各般の施策を進めなければならないことも事実であります。開放経済に向かいまして、三十九年度の予算をごらんになっていただけばおわかりになるとおり、貿易外収支の改善のためには、外航船腹の拡充もはかっておりますし、海運に対しても格段の促進施策を行なっております。なお、観光収入を得るための施策もあわせて行なっておるわけであります。三十九年一ぱいの置場収支は六十二億ドルで、おおむねとんとんだというふうに見ておりますけれども、貿易外の赤字が大きいので、どうしてもこれを資本収支によってバランスをとっていかなければならないわけであります。こんなことをしていたならば元本はいつの日にか返さなければならないので、どうにもならなくなり、雪だるま式に自転車操業しているんじゃないかという議論がありますが、そういうことではないのであります。自転車操業であればいつでもやめるのですけれども、そうではなく、外資を受けて日本経済が強固になり、それによって輸出が大幅にふえるのであります。輸出基盤が強化をしていくのであります。このように貿易規模が拡大をすることにわれわれの経済的な生命がかかっておるのでありますから、このように借りてきた金も、それを投資することによって経済基盤が拡充されて、貿易規模が大きくなり、だんだんそれによってのみ経常収支が黒字になって国際収支が安定するというのでありまして、借りてきた金は国内で使うことによって倍増し、元利を払ってなお余りあるというところであるのであります。
  125. 山花秀雄

    ○山花委員 大蔵大臣答弁のように、そろばん合って金足らずで、そろばんだけはなかなかうまいことはじいておられますが、結論は日本経済がだんだんと困難になってきておる。私はそう考える。政府予算編成を見ておりますと、国際収支の改善と物価の安定という大きな目標を強く打ち出しております。目標はたいへんけっこうでございますが、提案された予算案をよく検討してみますると、この目標と全く反対に近い性格をこの予算案には織り込んでおるのであります。いやしくも財政が景気に刺激的な要因になるということは避けたいと言いながら、全然逆なことをやっております。たとえば税収の見積もりであります。自然増収というのは明らかに成長率に比例するものだと思いますが、当初名目成長率は一二%で、自然増収が六千五百億円と見込まれましたことは、これは御承知のとおりであります。ところが途中から急に方針が変更になりまして、名目成長率が一挙に九・七%に押えられてしまっている。成長率が低くなったから当然自然増収を減少すると思ったら、逆に今度は六千八百二十三億円にぐっとふくれ上がってしまっている。経済雑誌は予算編成上の七不思議の一つだと言っておられるのです。国の政治が七不思議にたとえられるようじゃ、あまり感心したのじゃございません。あまりにも作為的であり、したがって大蔵省は税収と成長とは全然関係なく、伸び縮みが自由なゴムひもだと非難されていることは、これは大蔵大臣自体がよく御存じだと思います。こうした数字の上にあらわれた矛盾は、総理は一体どう考えておられるか。これはひとつ最高責任としての総理に、この矛盾に対する考え方を明らかにしていただきたいと思います。
  126. 池田勇人

    池田国務大臣 三十九年度の経済の成長率は一二%でございますか、あるいはどういうところで一二%が出たのか知りませんが、いま政府考えておりまする総生産の九・何%、そして実質成長率七%、これは相当根拠のあるものでございます。それから租税収入の自然増収の六千八百億円、これは根拠がないといろ人は、どうでしょうか、御勉強が足りないのじゃないかと思います。政府はあれだけの機構をもちまして十分勉強しております。どうも大体自然増収の見方、そして各年度の出入り等にあまり詳しくない人が評論されておるようでございますね。私が申し上げますと、たとえば昭和三十八年の八月ごろの見込みと十二月の見込みとは、よほど十二月につくった三十九年度の見込みが違う。それは三十八年の夏から秋にかけて、そしてまたこの一月にかけての日本経済の成長率というのは非常に大きいのでございます。私は去年の一月あるいは一昨年の十二月ごろ、秋を待たずして景気は回復する。上向くと言ったところが、私がちょっと上向くと言うと非常にひどく上向くのでございます。だれが去年のいまごろ、昭和三十八年の十一月、十二月、あるいは九年の一月に一五〇の鉱工業生産があるということを想像したでしょうか。前年に対して、五月には五%でしたが、八月には一〇%増、十月には一六%の増になっているじゃありませんか。そうすると、この二八%の増が来年のいわゆる上期、そしていまごろの、あるいはことしの三月ごろの分が下期の租税収入に出てくるのであります。来年度見込んでおりまする九%というものは、昭和三十九年度ではその半分なりあるいは半分以下しか出てこない。だから昭和三十九年度の成長率を見て、そしてそれによって三十九年度の租税収入をはじくということは、年度と会社の決算と景気の上昇というものを、とにかく無理にいっぺんにしてしまうということで、動きを知らぬ計算の仕方でございます。こういうことを仕事した人は、ははあそのとおりになるのだと思うのですが、やっていない人は非常に奇異に感じられるのでございます。だからいつも議論がちぐはぐになる。しかしこの問題は、だいぶ、五、六年前から非常によくわかっていただくようになりました。詳しいことは大蔵大臣か事務当局から説明させますが、六千八百億円のものは決してそうむちゃな見積もりでない。大体いままで大蔵省は非常に石橋をたたいて渡るか渡らぬかぐらいだったのですが、今度はほんとうにより以上の勉強をして、正確に見込んでおると思っております。
  127. 山花秀雄

    ○山花委員 親が子をかばうという心理はよくわかりますが、上昇率はぐっと低い目にして、そして自然増収がぐっとふえでおるから少しおかしいのじゃないかと、私はそういう質問をしておる。池田総理大臣は、世の経済評論家は少し低級で、おれのほうが勉学は能達だと、そう自信過剰の答弁をされましたが、これが当たるか当たらないかは今後の政治の推移を見て批判するより仕方がないと思います。  そこで六千八百億円の自然増収に対して三十九年度の減税は、特に所得税の減税はわずか五百七十五億円にすぎませんが、三十九年度の国民総所得に対する租税の負担率は何%ぐらいになりますか。企画庁の発表によりましても二二・二%になるというように発表されておりますが、これは間違いございませんね。
  128. 田中角榮

    ○田中国務大臣 現行税法でいきますと二二・八%になるわけでありますが、二千億平年度大幅減税を行なうということで二二・二%になります。
  129. 山花秀雄

    ○山花委員 これは私、新聞記事をちょっと切り抜いてはっておるのでありますが、これは朝日新聞です。池田さんから見れば低能な記者が書いたかどうかわかりませんが、朝日新聞の一月二十五日の記事では、十年来最高の税負担率、こう文句にうたっております。一方では減税減税と言いながら、率は今度は最高になっておる。去年は二一・五%だと私は思います。したがいまして本年が二二・二%になるから、明らかにこれは結果的には増税になっております。これをどう説明されるかをお伺いしたい。
  130. 池田勇人

    池田国務大臣 大蔵大臣が答える筋でございますが、午前中も答えましたから、私が変わった見方で一つお答えいたしたいと思います。租税の負担率というものは低いに越したことはございません。ちょうど消費者物価が低いに越したことはないということと同じように。この租税負担というものは、国民一人当たりの所得の額がどれくらいあるかということと、片一方では減税よりもいわゆる政府の施策として高度福祉国家のほうにお金を向けていくのが、いわゆる財政国民に対するサービスのほうへお金を持っていって、減税はほどほどにすべしという考え方と、二通りございます。私はいままで両方をできるだけやってきたのであります。私は、非常に議論があるようでございますから申し上げますが、それなら先進国の租税負担はどうだろう。先進国の租税負担でいま一番高いのは、社会保障制度その他の発達しているところの、サービスの非常に行き届いた、いわゆる先進国で申しますと、イギリス、西ドイツは国民所得に対して三三%の租税負担でございます。その次はやはりフランスでございます。二九%余りの負担でございます。これは一九六一年も六二年もです。それからその次はアメリカで、相当のあれがありますが、これが二七・八%の負担。日本が大かた追いつきつつある。三、四年のうちに追いつかれると思われるイタリアが二六%余りの負担でございます。日本は、大体二二%から二一%でございます。私は、もしそれ日本が高度の福祉国家になるのならば、三〇%租税負担があっても、国民生活が非常に進んでいくことを目標にしておるのであります。だから私は、いま二一%が二二%になった、最高の負担率だとお考えになる人は、いままでの十年前のような日本でおったほうがいいか、先進国になったほうがいいかということを一ぺんお考え願いたいと思うのであります。したがいまして、社会保障をやめたり、あるいは社会資本の充実をやめたり、文教を少なくして減税に回したほうがいいか、減税はほどほどにして社会保障や社会資本や文教に力を入れたほうがいいか、これをお考えになれば、租税負担が一応解決できると思います。私は、自分の政策の根本でございますから、大蔵大臣におれに答えさせてくれというのでかわって答えておる。こういう考え方を私は持っておるのであります。しかし、あくまで低いに越したことはございません。その理想は持ちますが、低いばかりが政治の能じゃない。先進国はこうなっておるということを御参考に申し上げたいと思います。
  131. 山花秀雄

    ○山花委員 イギリスのような社会保障の完備した国の税率と比べて、日本をそういう方向に持っていきたい、だから、税率が若干上がるのはやむを得ない、こういう総理大臣答弁でございましたが、私は、その社会保障の完備のあり方と税率と比較検討いたしましても、日本は高い、こう考えておるのであります。もう一つは物価とも関連いたしますので、減税、減税というが、その消費者物価の上昇を考えれば、むしろ結果的にはまた一つ増税になっておることは御承知のとおりであります。この前の前の選挙で所得倍増を盛んに言われたときに、私は、物価安定の基礎の上に所得倍増を考えないととんでもないことになると、あのときあなたの政策を選挙で痛烈に攻撃した一人でございますが、ちょうど三十六年には六・二、三十七年には六・七、三十八年には大体八%というようにいわれておりますが、この三十八年度も、あなたの施政演説を聞いておりますと、本年度は二・八で押えると言い切ったのです。それを失敗して、ぐっと去年ああいう状態になっておる。ことしは実質三%、名目は四二%に押える、こう言っておりますが、確信はありますか。押えると言っておるが、確信があるか。去年は大失敗したのです。あなたがどのように弁解されようとも、失敗したのです。ことしはどうですか。確信がありますか。
  132. 池田勇人

    池田国務大臣 従来からの政府の一応の御説明は、こういう方針、こういう見込みでいくと言っておるのであります。ちょうどそのことは、三十五年、三十六年、三十七年がやはり九%程度でいくべきだ、こう言っても、一五、六%でいったのと同じようであります。そういうひずみが出てきますから、政治というものはだんだんおくれてくる。先にこうやってやろうとしても、それが実際は自由主義のもとではいかぬ。これは統制経済でもなかなかいきにくい。そこで、だんだんそのひずみを直していこうというのであります。ただいまの情勢では、大体昭和三十九年の三月の消費者物価を基準とすると、四十年の三月には、大体三%程度の上昇にとどまるだろう、そういう方向で、やっていきます。したがって、公共料金も、非常にドラスティックでございますが、ひとつ一年間上げないということでやっておるわけであります。ただ、年率の平均になりますと、いまの動きがあれになりますから、四・何%になります。大体その方向でいってもらうように、またいかすように政府としては施策を講じていこうというのでございます。これでいくんだ、押えるんだ、これで動かないんだ、そういう政治というものは、これは洋の東西を問わず、それはできるものじゃございません。そういうことは共産主義の国でもできないということは、皆さんもよく御存じだと思います。これが、経済は生きものだ、経済というものは長い目で見なければいかぬということであります。
  133. 山花秀雄

    ○山花委員 何だか確信のない御答弁でありましたが、これが政治だからといって、去年も——去年は、率直に申してあなたは失敗しておられる。今年は、去年の失敗の経験を生かして、三%あるいは四・二%で来年三月には押える。そのためには公共料金も一年間据え置きにした、こう言っておられますが、それは必ずできるという確言はないのです。これが政治だからというようなことで最後にことばを濁しておりますが、長い目で見てくれ、長い日で見てくれと言いますが、私もあなたも、もう六十以上ですから、そう長くお待ちしているわけには参りません。(笑声)選挙の公約で二千億減税という、これでだいぶ自民党の皆さんは粟をお集めになったと思うのですが、それはけっこうなことです。いい政策で票を集めるというのは、たいへんけっこうなことです。ところが、いよいよ実際政治に取りかかってみますと、どうも二千億減税の内容が、実質的に考えると怪しくなってきた。もう予算書が出ておりますから、どこがどのように怪しくなってきたかということはよくおわかりになると思いますが、まあ特定企業を対象とした企業減税、あるいは大企業は、財政投融資などの財政的援助に加えて大幅な企業減税を受けておられるが、国民大衆、すなわち減税と一番生活に直結しておる国民大衆には、全く申しわけ的な、言いのがれ的な減税しかあなたはやっておられない。物価は、いま言ったように三%に押えるといっても、これがどうなるか、何だかいまのお話を聞いておりますと、少したよりないような線が残っているのでありますが、そうなりますと、実質の収入が結局減るということです。間接税でもうんと減税をやってくれればまた生活費の増大を防ぐことができますが、御案内のように、一方ではガソリン税を一〇%上げる。これは他の物価のはね返りが必ずやってまいると私は思いますが、こうした二千億減税とうたいながら、一方では増税を行なって、そうして実際王化活に直結した庶民大衆に対する減税が少ない。こういうことについて、いささか政治の責任を感じられないのですか。いかがですか。
  134. 田中角榮

    ○田中国務大臣 二十億減税の公約は、平年度二千億ということであります。もう一つの公約は、中小企業に五百億以上やりたい、こういうことであったわけであります。御承知のように、今度の減税案は、平年度国・地方を通じまして二千百八十億以上になるわけでありますから、二千億の公約を果たしております。それから中小企業に対して五百億以上ということでありましたが、六百億以上ということになめましたので、第二の公約も果たしております。  それから企業減税が中心だということでありますが、内容をごらんになればわかるとおり、所得税等の減税が五六%、それから国際競争力に対応する、俗に企業に対する減税といわれるものが四四%ということでありますが、この企業減税の四四%の中には、中小企業を対象にしたいわゆる六百億以上の減税がありますので、前者の比率はさらに上がるわけでありまして、いま山花さんが言われたとおりの減税を実行しておるという考え方であります。  それから先ほどの御質問にありましたが、非常に減税額が小さいというようなお話でございましたが、これは自然増収六千八百二十六億円の中から前年度剰余金の千人百余億円を引きまして、その金額と三十八年度のいわゆる増加財源とを比較しますと、三十八年度に対して三十九年度は百六十億円しか金額はふえておりませんし、三十七年度の増加財源と比べますと八百八十億円以上減っておるのであります。この三十七年度よりも増加財源としては減っておるものの中から御承知のとおりの減税を行なったのでありますから、昭和三十二年以降最大の減税であるということは数字をもって証明されるわけであります。
  135. 山花秀雄

    ○山花委員 大蔵大臣は最大の減税と大みえを切っておられますが、それが最高の率になっておるということもお忘れないように。電力料金を全国統一料金制にする考えがあるというふうに承っておりますが、この際、家庭用の電灯料金を改定しようという動きがあるそうですが、これはいわゆる便乗値上げであると私は考えます。また、不動産価格の再評価措置は、地代や家賃の値上げムードを高めております。国民生活は一そう苦しくなっていきますが、税制はこうしたところまで十分に考慮をして、あたたかい配慮が必要ではないのでしょうか。かつて税制調査会は、租税の負担率は二〇%程度が正常である——これがいま池田総理大臣からも反論がございましたが、税制調査会では、社会保障制度その他いろいろ点を勘案して、日本の今日の状況においては二〇%程度が正常な姿である、こう私は言っておるのじゃないかと思うのですが、今後二〇%程度まで引き下げる考えがあるのか、ないのか。もしあるとすれば、どういう方策でやられるのか。ないならない、あるならある、あるならどういう方策というふうに、ないならどういう理由だということを、もう一ぺんお聞かせ願いたいのです。
  136. 池田勇人

    池田国務大臣 国民所得と租税負担の点につきましては、私は自分の経験から申しまして、何も二〇%にしなければならぬことはない。政府のいわゆる財政サービスをどう持っていくか、そして国民の所程の上身がどうあるべきか、どうなっているかということによってきめるべきだと思います。二〇%という議論は三、四年、四、五年前からあるわけでございますが、三、四年前と、四、五年前とのわが国経済国民生活状況は、現在はよほど変わってきております。したがいまして、将来の方向としては、この負担率を下げるようにしたいんだけれども、社会資本、社会保障、あるいは文教その他国のやる仕事が相当多くなってくるんではないかと思います。それで私は、所得税を負担していない方につきまして、よほどもっと考えなければならぬ点が多々あるんではありますまいか。所得税を負担しておる人を大いに減税したいのですが、その減税の金を、幾ぶんでも所得税を納められない人に持っていくのがこれからの政治じゃないかと思いますと、いまの二二・二%を二〇%にするということは、私の考えにはいまのところございません。
  137. 山花秀雄

    ○山花委員 税金を納められない低所得者に対してたいへん思いやりのあるお話がございましたが、そうなりますと、間接税の大幅減税というところでこの問題は一つ解決願いたいのです。間接税の大幅減税は、あまり姿を見せておりません。それは、言っておることとしておることと、どうもちぐはぐです。ほんとうに低所得者の生活を考慮なされたら、この際間接税をひとつ思い切って減税する措置をとられたらいかがですか。
  138. 池田勇人

    池田国務大臣 所得税をやる前に間接税の減税をやっております。私の議論をもってすれば、間接税のうち何を減税するか。お酒も飲めない、お砂糖も十分食べられない人、もちろん物品税のかかるようなものはあまり買えない人、そういう人のほうへもっと力を出すべきじゃないかというのであります。ただ、直接税を減税するか、間接税を減税するかというときには、あなたの議論が相当有力になってくると思います、ことに消費者物価が上がっておるときに。しかし、いまの財政負担、租税負担をどうするかというときには、間接税、直接税よりももっと以前の問題が、これからはますます重要になってくるんじゃないかと考えると、租税の負担率ばかりを言っておられぬということを言っておるのであります。
  139. 山花秀雄

    ○山花委員 何か総理大臣は感情的になって、しっぺい返しのような答弁をされておりましたが、お酒も飲めない、砂糖もなめられない、たばこも吸えないといったら、一体人間生活、何ができますか。塩だけですか。これは一番必要な、最後に必要なものですから。塩だけじゃ、これはもう税額にしてみれば爪のあかほどしかございません。そういう感情的にしっぺい返しのような答弁をなさらずに、私も、国民生活はどうあるべきかという謙虚な態度からあなたに質問をしておるんですから、ひとつそういう謙虚な態度で御答弁願いたいと思います。
  140. 池田勇人

    池田国務大臣 塩も専売にしておりますが、相当手数がかかって——もっと安くしたい。酒も飲めないというのは、全然飲めないというのじゃない。これも飲めない人、たばこも全然のめない——しかし、これは節約してもらわなければならぬ。しかし、節約し得る人と、節約しなくてもいい人も相当あるわけなんです。とにかく砂糖だって、なめない人ということはございません。しかし、なめるのを少なくしてもらう余地もあるわけなんです。たばこう少なくしてもらう余地がある。しかし、社会保障の生活保護のうちには、酒やたばこなんかを十分認めてはいないのでございますから、そういう方のところを、酒やたばこを減税する前に、もっと考えなければならぬのじゃないかということを私は申し上げて、飲まぬ——実際それを飲むなという意味じゃございません。飲んでもらわなければ財政はなかなか持たないわけでございますから……。
  141. 山花秀雄

    ○山花委員 まあ酒も大いに飲まないと……。池田さんの実家は、何か酒屋じゃございませんか。(笑声)  宮澤企画庁長官一つお尋ねしたいのですが、新内閣の成立直後、国際収支の悪化を防ぐために引き締め政策をやるということで、転換する必要を強調されました。そうして日本銀行は、さっそく準備預金率の引き上げをやり、景気の先行きに警戒信号を出しましたことは、御案内のとおりであります。さらに健全財政の成功のために日銀は公定歩合の引き上げを考えているようでありますが、当初、その時期は一月から二月中といわれておりました。ところが、一月七日に田中大蔵大臣は、全国銀行協会の昼飯会で、日銀はもっと政治的に考慮して、金融の引き締めをほどほどにすべきだという発言をしたと聞いておるのです。午前中の田中大蔵大臣の答弁には、日銀からそんな相談はない、こう言っておられますが、これはないのがあたりまえの話でありますが、しかし、この発言はやはり日銀当局を相当政治的に牽制しておるんじゃないかと私は考えます。また、国際収支の悪化だから金融を引き締めようと企画庁や日銀が主張しておるそばで、同じ閣僚の蔵相は、景気を刺激する大型予算を組んでおられます。この矛盾を一体総理はどうお考えになるか、御答弁願いたいのです。
  142. 池田勇人

    池田国務大臣 矛盾はないと思います。大蔵大臣がどういうことを言っておりますか、私は、財政その他のことは大蔵大臣、あるいは経済基本問題は企画庁長官、よく連絡をとりながらやっておると思います。
  143. 山花秀雄

    ○山花委員 大蔵大臣がどう言っておるか、わしは知らぬというようなお話でございましたが、銀行協会に、ただいま私が言ったような発言をされたと報道されておりますが、いかがでしょうか、大蔵大臣。
  144. 田中角榮

    ○田中国務大臣 公定歩合の問題につきましては、午前中にも申し上げたとおり、日銀が、中央銀行として中立性を保ちながら弾力的に行なうべきものであるという基本的な考えは、そのとおりであります。日銀が公定歩合を引き上げるときには、政策委員会できめまして大蔵大臣に報告をするということは、法制上のたてまえでありますから、そのとおりにやっておるわけでありますが、現時点まで、公定歩合を引き上げたいという通知を受けておりませんし、そのような意思表示があったことはありません。  それから、銀行協会の新年昼さん会で演説をいたしましたことは、あなたが御承知のとおりであります。ただそれは、公定歩合を引き上げたいということを考えておる日銀を牽制したり、経済企画庁長官を牽制したりというような考えでは絶対ありませんでした。それは、ことしは開放経済に向かうのでありますから、いままでのような状態ではたいへんであります。国際収支の長期拡大、安定的な施策に対してはあらゆる面から努力をしなければならないと思います。その面においては、財政・金融はまさに一体的に運営していきたいという考えであります。なお財政に関しましてはできるだけ切り詰めまして、多少無理であったけれども、一四・二%に押えたんだ。しかし、財政だけでもってこの難局に処していけるわけではないので、金融が財政とまさに一体的な基本的な立場で運営をしていただきたい。ころすることによって経済の正常な成長をはかりながら、国際収支の安定をはかってまいりたい。しかし、ただ過去の画一、一律的な考え方で、輸入が十二月に十億ドル近くになったからといって一ぺんに引き締めるというようなことをやると、そうでなくとも、大企業は設備が余るほど設備投資をやったというけれども、その一面、中小企業は、開放経済に対処してこれから設備の近代化をはかったり、また合理化をはかったりしなければならないと営々として努力しておる、これらの中小企業に金融引き締めのしわが寄って、すみやかに倒産が起こるというようなことは好ましいことではない。財政も十分配慮いたしますが、金融もかかることを十分配慮しながら、大企業の行き過ぎというものは窓口規制でも十分できることでもあるし、また公定歩合というような一律的なことだけではなく、昨年末に新しいオペレーション制度をとりましたときに、これが金融調節機能を遺憾なく果たせば、金融は大丈夫ですと日銀さんは言っておったのでありますから、そういうことも万般考えられながら、今後の開放経済に向かって、お互いが間違ったからでは済まない状態になるので、万遺憾なきを期してほしい、こう所管大臣としては当然言うべきことを言ったにすぎないのであって、政治的な意図を持って、いわゆる公定歩合を引き上げるというような動きに対処して、牽制をするような意図に出たものでは全然ない。それは当然言うべきことを言った、こういうことであります。
  145. 山花秀雄

    ○山花委員 あなたのいま銀行協会における昼飯会の演説の内容の御披瀝がございましたが、さすが政治家だけあって、なかなか政治的にちゃんと目的を達するような演説をやられて、たいへん敬服しております。しかし、私は、政治家演説として、その演説が言わず語らずのうちに日銀を圧迫しておることも否定できないと考えております。  金融の問題でありますが、財政投融資の原資計画の中で、公募債の借り入れ金が三十八年度に比べて三二・八%もふくらんでおります。三十九年度は国際収支が赤字の見込みだから、外貨会計は民間資本を吸い上げるということになる。そして租税もばく大な自然増収で、減税は少ないので、これも民間資本を国庫に吸い上げる結果となる。その上、財政投融資の公募債券借り入れ金で、またまた民間資金を吸い上げることになる。これに加えて金融の引き締めをやるというのだから、三十九年度は金融情勢はたいへんな引き締めになると思いますが、その影響が、具体的に、ただいま大蔵大臣も言われましたように、中小企業などの体質の弱い企業にどう及ぼすかということが、もろ判然としておりますが、これはひとつ大蔵大臣の御所見を承りたいと思います。
  146. 田中角榮

    ○田中国務大臣 いまあなたが言われたとおり、確かに三十九年度の金融の情勢を見ますと、三十八年に比べて相当な引き締め基調であります。原則的にそのような数字が出ておるのであります。そういうことを考えながら、中小企業のほうにしわが寄らないように、中小企業金融その他に対しては万全の処置をとられたい、こう私が銀行協会の昼さん会で言ったわけであります。いま財投の原資を相当見込んでおるという話でございますが、これは政府保証債等につきましては、最近では月平均百五十億円の消化ができておりますので、そのベースで考え、また資金運用審議会の議に付しましたときも、金融機関の代表が出ておりますので、これらの皆さんに、非常に預金の吸収率は戦後最大という趨勢を続けておるけれども、必要な資金は必要なときに出してもらわなければならないような開放体制に移行する重要な年でありますから、あなた方が民間の金融に支障のない範囲で引き受けられる金額として、この程度のものを考えておるがどうですかというお話をすなおな立場でやったわけでありますが、異論なくお引き受けを願ったのでありますから、これが過大な見積もりであって、民間金融を圧迫する程度のものでないということだけは申し上げられると思います。
  147. 山花秀雄

    ○山花委員 金融の急激な引き締めをやると、企業が金繰りが苦しくなって、特にまた下請企業がそのしわ寄せを相当食って、大きなショックになる。だから大蔵大臣は政治的な配慮ということを言ったと思うのでありますが、それなら何ゆえにもう少し早くこのショックに対する対策を手当をしておかなかったかという点、非常におそいと思うのです。それだからこそ、中小企業に対する政治的な配慮が欠けているのではないかと私は思います。いずれあとで中小企業関係について、時間があれば私も質問をいたしますし、また同僚議員からも特にこの問題に関して質問があると思いますが、このように、一方では財政で刺激を与えておきながら、他方では金融の引き締めをやる。これはちょうど自動車のアクセルを一ぱいにぐっと踏みながら、ブレーキをかけるようなものである。そんなことをしたら、ブレーキが焼き切れてしまうじゃありませんか。そのブレーキにはさまれてひどい目にあうのは、中小企業や勤労大衆ではないでしょうか。財政と金融は全くばらばらな方向に向いておる。ちょうど首は前に出て向こうへ行こうとしておるのに、胴体はうしろを向いてあとずさりをしておる。こういう状態を一体どうお考えになっておるか、ひとつ説明願いたいと思います。
  148. 田中角榮

    ○田中国務大臣 一般会計も財政投融資も非常に放漫であって、その財政あと始末を金融でやるという政党内閣の一番悪い面を前提にして、そうであるのだというような考え方で御質問をしておられるのですが、そうではなく、午前中に愛知さんの質問によく答えましたように、三十九年度の予算は、政府・自由民主党との合議によってできたわけでありますが、この予算は、三十八年度、七年度、六年度の過去三カ年の伸び率に比べますと、相当引き締めをやっておるのです。実際において引き締めであります。なぜかといいますと、三十七、三十六年は対前年度二四%ふえておるのであります。先ほどもちょっと御説明を申し上げましたが、六千八百二十六億といいますけれども、千八百億前年度の剰余金の受け入れが減っておりますから、そういうものを引きますと、三十八年度よりも百六十億しかふえておらないのだし、それから三十七年度の増加財源に比べますと、八百八十六億も減っておるのであります。こういう限度で予算を組んだのでありますから、一般会計が膨張しておるという考え方は、私のほうではうなずけないのであります。しかも、十ケ月前までは、対前年度比二四・四%増の予算を執行してきたのであります。一〇%というと、三カ年の平均を見ても、二千五百億一般会計財源を削っておるわけでありますから、この規模が一体大きいというお考えには、どうも賛成しがたいのであります。  財政投融資の問題も、二〇%ふえたといいますけれども、二四%ふえたこともありますし、去年度は二二・六%だと思いますし、今度は二〇%、しかも財源に無理をしておるかというと、郵便貯金も二千七百億円見てありますけれども、三十八年度実績として、三月まで二千七百億の実績があるというものを、また大蔵省は財源を隠して二千七百億しか見ないなあと、地方開発や新産業都市などの資金を要求する方々は、財源がないといったからここでやめたのだけれども、そんなにあるならもっと出せ、こういう御意見さえあるのでありますから、少なくとも一般会計・財政投融資を通じまして、相当な健全性を貫いておる、健全均衡予算であるという立場でひとつお考えになっていただくと、そうすれば金融は引き締まりぎみだなあ、その上に公定歩合というようなこともいま引き上げなければいかぬ、二、三厘というようなことも説をなす人もあるが、もしそんなことをやったら、もう中小企業はばたばた軒並み倒産するだろう、こういう御意見になるのが普通の考えじゃないかと思っておるわけでありまして、どうぞそこをひとつ数字の上で御検討願いたいと思います。
  149. 山花秀雄

    ○山花委員 何か政党政治の悪いところを勘ぐってこういう質問をしておるようなお話がございましたが、政党政治でございますから、お互いにいろいろ議論をしながらよい方向に持っていきたい、そういう建設的な意欲で質問しておりますので、その意味でひとつお答え願いたいと思います。  公定歩合の引き上げ問題についてお尋ねします。これはなぜかといいますと、これは一番国民が関心を持っておる。だれが何と言っても、疑心暗鬼と言われてもしかたがないほど関心を持っておる。企画庁や日銀では国際収支の赤字を防ぐためにどうしてもこれをやりたい。そういう腹のようですが、政府はまたいろいろ政治的事情があって、これに消極的だというふうに私は聞いております。高度成長政策の破綻、これをやったら池田内閣がぶっつぶれますから、池田内閣としてはこれは何とかしてやり遂げたいとお考えになるのは無理からぬことだと思うのであります。いろいろ複雑な事情もありましょうが、国民はこれを心配してじっと見ておるのです。国民の不安を解消するのは総理大臣の義務だと私は思うのです。そこで、ほんとうに上げるのか上げないのか、引き上げるとすればおよそいつごろか。これはやはり私は国民に対しての親切な思いやりだろうと思うのでありますが、総理大臣いかがでしょうか、御答弁願えますか。
  150. 池田勇人

    池田国務大臣 公定歩合の点につきましては、従来たびたび申しておるように、私は関知いたしておりません。ただ非常に国民の関心だと言われるそれはそのとおりでございましょう。しかし、国民の関心をわき立たすようにするのはだれかということになる。どこの国だって、公定歩合の引き上げにつきましては非常な関心がある。それをどんどん話題にのぼすのはどこからくるのだろうと私は見るのですが、まあ、そう言っちゃまたしかられるかもわかりませんが、一国の中央銀行の総裁が新聞記者と定時会見をやられるところは、イギリスにいたしましても、アメリカにいたしましても、少ないのじゃないかと思います。しかし、日本ではそれが非常に行なわれておる。毎週ぐらい行なわれております。そして、そこでどんどん質疑応答がされる。それがやはりずっとあおられてくる。こういうようなことで、寝た子を起こすとは申しませんが、とにかくいかにもひどく議論されるということは世界にも少ないじゃないか。私は門外漢でございます。最後の責任は私が負いますが、先般来の公定歩合の引き上げにつきましても、やはり新聞論調は二つに分かれておるようでございました。しかし、落ちつくところには落ちついたようでございます。私は、この問題は全然触れておりませんが、あまり騒がしいものですからちょいちょい記事を読んでおりますとわかった。しかし、私は良識に向かっていくので、大蔵大臣の考え方は大体そうだろうと思っておりましたが、きょうはっきり聞きまして感心したような次第でございます。これで私はお答えになると思います。
  151. 山花秀雄

    ○山花委員 池田総理大臣お話は、結局金融問題は流れるところへ流れて、落ちつくところへ落ちつく、こういうことですね。
  152. 池田勇人

    池田国務大臣 流れるところへ流れて落ちつくところへ落ちつくというのが原則です。しかし、大蔵大臣、日銀総裁は、流れ方につきましては、またその方向につきましては、よほど注意を要する問題だと思うのであります。いま財政がふくらんで金融が引き締まると言っておりますが、そういう議論があるようでございますが、私は、開放経済に向かい、またこういうちょっと一応的ではございますが、生産が相当伸びておるというときにつきましては財政も健全であり、金融もしばらく引き締めて健全にいくべきだと思います。ただ引き締めの仕方をもう何でもかんでも公定歩合だというずっと前からの議論は、いまの経済の実態にどうかと思います。沿わぬと言ったら、私が反対のように聞こえますからそうは申しませんが、公定歩合で何でも左右ができるという前の考え方とは違った考え方世論になりつつあるのではないかと思います。
  153. 山花秀雄

    ○山花委員 国際収支の赤字が相当あることは御承知のとおりですが、これを防ぐために相当大幅な金融の引き締めを必要とする考えが私は当然出てくると思うのです。大幅か小幅かということはいろいろ表現されておりますが、これを極端にやると中小企業が破綻するということも、これは御承知のとおりです。したがって、このかね合いは非常にむずかしい問題であると思うのです。つまり日本経済の現状は、ちょうど袋小路に追い込められた段階だと私は思うのです。そこで考えられますことは、成長率を平常に戻して、平常な姿をここ当分続けて、経済の落ちつきに努力する以外に、私は方法はないと思います。日本の場合には、成長率が、池田総理がたいへん自慢しておるように、世界でも珍しいほどぐんぐん成長してまいりました。その反面に、外国から資本がうんと入ってきたことは御承知のとおりです。成長率は、戦後すっからかんになって何もないところから立ち上がってきたのですから、これは世界先進国家と肩を並べるためには、非常に高度の成長率は、いままでは私は必要としたと思うのです。それはまたその背景には、御案内のように、講和会議の終わった後のこの成長というのは、朝鮮動乱で相当ドルが入ってまいりました。特需産業でまた相当ドルが入ってまいりました。あるいは低開発国の援助資金というような形でもドルが入っておるでしょう。また、アメリカから、特別の日本との関係で相当ドルも入ってきたでしょう。だから、今度は開放経済になりまして、特にアメリカでは、ドル防衛という形でなかなかいままでのようなドルの入る、資金の入る傾向は私は薄らいできたと思うのです。そこで、いままでのような形で、若干引き締めをやっておりますけれども、成長率を大体先進国家並み程度まで落とさないと、私はとんでもない破局にくると思うのですが、総理大臣、どうお考えになっておりますか。
  154. 池田勇人

    池田国務大臣 先進国並みに成長率を押えるとおっしゃいますと、その先進国の成長率というものはどうかということが問題になります。イギリス等におきまして大体二%から三%を目標にしておりましょうが、実際はそこまでいきません。アメリカは好景気で五%ぐらいいくと言っておりますが、それは可能かもわかりません。ドイツ、フランス、イタリアは実績が六%程度のものを二年ほど続けております。しかし、わが国がもしイギリスの二%とか、アメリカのいままでの三%というような状態であったならば、これは三十二年、三十三年のあのときのようになる。あのときも三%の成長率でございます。実質三・四%。名目は二・八%でございます。それは物価が下がりましたから、そうして失業者が出ましたから。だから、先進国並みの三%程度であったら日本国民は承知しない。だから、初めのあなたのことばのように、モデレートな私の当初の計画も、相当進んだあとでございますから、七%くらいならば、いわゆる先進国の倍くらいはいきましょうが、これ程度ならばまあまあというところではないかと思います。したがいまして、七%、八%、これも七%といっておりますが、うっかりすると、またその上をいくかもわかりません。そこで、財政も金融も引き締め基調であるということを大蔵大臣が言っておるわけなんであります。私はその程度で、日本人の力、そうして先進国並みに高度福祉国家を早くつくり得るように、そうして倍増計画よりも少し早目のようにというのでやって七%程度が適当だと思います。
  155. 山花秀雄

    ○山花委員 私は先進国並みといっても、何も極度に低いイギリス並みというようなことを言っておるわけではございません。従来日本の成長率をぐっと上げてきたこの関連性も相当考慮されなければなりません。ただ成長率が高ければどうしても輸入超過になります。赤字会計が出てまいります。いままでは貿易外収支で、いろいろな関係でいわゆるドルが入ってきました。先ほど説明したとおりです。そういう入る要因が今日なくなりました。開放経済になりました。そこで問題は、政策の転換ということをこの際私はやらなければならぬと思います。そうでないと日本経済が破滅すると思うのです。どこでその赤字の穴埋めをやるかという点、これは自己資金でまかなうか、あるいはまた外国から借りてくるかということが根本の問題になると思います。そとで、もう少し政策転換を大局から見て、開放経済移行のこの限度からお考えになったらどうだ、そこでいま言っておる七%、そうして御金も相当背負っておるこの日本経済を破局なしに進めるためには、それでいいのかどうか、こう言っておるのです。もう一回はっきりした確信をお答え願いたいのです。
  156. 田中角榮

    ○田中国務大臣 山花さん、非常に核心を突いた御発言でありがたいわけでありますが、私もあなたと同じ考え方予算編成に当たったわけであります。いままでのように、特需収入も減りますし、それから利子平衡税等もありまして、アメリカから過大の資本流入を求めるということもむずかしくなりますし、また半面開放経済に向かうという重大な関頭に立っておるわけでありますから、自己資本比率を増すためには、ほんとうに最大な施策を行なわなければならないし、また減税をやったものが、すぐこのままその大半が消費に回って、物価に一体どう響くのかという問題にも十分意を用いたわけであります。まあ結論としましては、御審議を願っておる予算提出となったわけであります。長期的に見ると財政は非常に効果がありますが、短期的な問題に対しては、金融操作、金融調整というものが特に顕著に効果をあらわすものでありますから、財政・金融の一体化論はそこで明らかにいたして、財政・金融の健全性を貫いていくことによって、国際収支の安定や輸出の振興をはかっていこうという、まず基本的な姿勢をきめたわけであります。いま急に自己資本だけでもってやれといってもできるものではありません。国際収支の改善につきまして、利子平衡税の免除を訴えたり、またヨーロッパ市場を開拓いたしましたり、いままでのように七億ドル、十億ドルという経済成長に必要な輸入資金をすべて外資に仰ぐというようなことはできませんので、一定額の優良な外資を選別しながら入れなければならない。また同時に、経常収支のうち特に輸出の振興によって、貿易外の赤字を貿易収支によってカバーできるという原則的な施策も進めなければならない。また貿易外の収支が、経済が大きくなるとだんだん大きくなりますので、これらに対しては海運、観光施策等を大いにやることによって、貿易外収支の赤字幅の拡大を防ごう、こういう三つの施策をあわせて行なっておるわけであります。そういう意味で、七%もまだ高いというふうにお考えかもわかりませんが、ここが経済論者の議論の分かれるところであります。確かにアメリカは年率四%であり、イギリスは三%ないし四%であり、西ドイツも非常に下げたようであります。フランス、イタリアもせいぜい五、六%であります。日本が七%でもまだ高いというのでありますが、そこに問題がある。あなた方がいつでも旨われておるとおり、日本には中小企業という特殊なものがあります。こういうものを、戦後十八年間の貿易・為替の管理体制から開放経済に向かうには、やはりこの中小企業がほんとうに輸出のもとになるような基盤の整備をしなければならないという問題があります。  もう一つは、完全雇用という面から考えまして、日本の失業率は非常に低いとは言えますが、しかし、私たちが静かに考えるときに、オートメーション化された企業の中で、そういうシステムの中で完全雇用が行なわれておるかというと、必ずしもそうではありません。オートメーション化されたらもう失業は——半分も整理をしなければならぬ、いわゆる潜在失業人口をうんとかかえておる日本の現状を静かに見るときには、これ以上失業者を出さないで真に完全雇用をやりながら、しかも国際競争力に耐えていくというのでありますから、そういうことを勘案しますと、所得倍増政策考えました年率平均七・二%という線は、やはり妥当な線であるという考え方に立っておるわけであります。しかし、三十九年度の七%はどのくらいになるかという、三十八年度は実質、八・一%でありますから、今年度の成長率よりもうんと押えられるわけであります。今年度の成長率においてさえもまだまだ中小企業は因っておるという事実を、あなた方も認められるし、われわれもその事実を知っております。そういう事態において、来年の成長率は今年度よりもぐんと落ちるのであります。そう押えても七%であります。またそうしなければ物価の抑制もできないのだ、こういう考え方で成長率七%、名目九・七をはじいたわけでありますから、この程度の成長率が安定成長率のめどであって、お互いがほんとうに新しい立場で努力することによって、あなたがいま指摘されたようないろいろなマイナス面をカバーしていかなければならない、こういうふうに考えておるわけであります。
  157. 山花秀雄

    ○山花委員 開放経済に伴いまして、当然自由化ということが問題になり、大体大幅にいろいろ自由化されておりますが、三十九年四月には日本はIMF八条国へ移行することになっておると聞いております。また政府はOECDに加入する予定だとも聞いております。現在九二%の貿易自由化率を今後いつごろからどの程度まで広げるつもりかお伺いしたいのです。同時に、自動車や電子工学製品などの自由化についてどのような方針で臨まれるか、お尋ねしたいのです。
  158. 福田一

    福田(一)国務大臣 お説のように、ただいま制限いたしておりますまだ自由化していない品目は百八十九品目あるわけであります。そのうちで工業関係とも回せられるものが八十前後あると思いますが、こういうものは順次IMFに移行し、あるいはまたガットの関係から、だんだん開放体制に向かっておる今日の段階では順次自由化をしていく、こういうことはわれわれとしてやっていかなければならないと思います。ただ、しかし世界の動きを見てみますと、欧州方面におきましても、日本に対して相当制限的な措置をとっておるのでありまして、また対米関係においてもそういう面も見られます。そこで、そこいろ辺の問題も、よくこれは貿易のことですから、双務にお互いがやっていくというところでなければならない。すでに日本自由化率がフランス、イタリア並みまできておるのであります。これ以上に非常に困るのにどんどん自由化する、そういうことは、私はよそからも言ってこないと思うし、われわれもまたすべきではないと思う。そこで、そうは言いながらも、だんだん貿易を自由化しながら貿易額を広げていこうということは、これは今後大いにやらなければいけないことですから、自由化できる態勢に産業を持っていくということについては、これは極力つとめていかなければなりません。そこでわれわれとしては、秋くらいまでには、多くのものについてはできるだけ自由化でき得る態勢まで持っていくようにいまやっておるわけでありますが、具体的にどれをどうして何月何日、いつ自由化をするかということまではまだきめておりません。またこれは、そのときにきめてしかるべきもので、相手のあることでもあり、そういうことを見ながらきめていいのではないか、かように考えておるのであります。  ただいま御指摘がございました自動車の問題にいたしましても、乗用車の問題に限るか、あるいはまたノック・ダウン等を考えながらやっておるところのいわゆる非自由化やり方をどう考えてみるかとか、いろいろこれは問題があると思います。また、その他の電機関係のいま御指摘のあったようなものにつきましても、いわゆる電子計算機の問題をどうするかとか、あるいはカラー・テレビはどうするかとか、これはいろいろみんなそれぞれ問題がございます。こういうことについては、一つ一つの問題についていま詳しく勉強をさせており、また産業の実態を把握しながら対処いたしてまいりたい、かように考えておる次第であります。
  159. 山花秀雄

    ○山花委員 わが国がOECDに加入したら、わが国経済に具体的にどんなプラスがあるでしょうか。
  160. 福田一

    福田(一)国務大臣 これはもう山花委員も十分御承知のところでございまして、OECDに入るということは、日本が一流のメンバーの、ある意味でいえば、これは国際会議ではございますが、一つのクラブに入っていく、これのレッテル・バリューといいますか、その持っておる看板に対して、そういうようなりっぱなものの中に入っていくということによって、日本の価値を上げていく一つの大きないわゆるPRにもなるし、また事実上情報その他もよく交換ができる、相互の間の気持ちもよくわかる、経済事情その他もよくわかるというような実質的効果があるわけでございます。しかし、それは入ったからといって、やはり会費を払うとか、あるいはそれに伴って資本の自由化もどんどんやっていかにゃいかぬということがございます。これはまああなたも御承知のとおり、十数品目の留保をつけながらわれわれは入っていくので、さしあたりどうしても困るというものについてはちゃんと留保をつけて入っておりますから、さしあたりはそれほど影響はないと思いますけれども、そういうことはないようにして入るわけでございますが、こういうようなOECDに入るというようなことによって、やはり日本は有形無形の大きな利益がそこに出てくる。そして大きな意味では、会費、経費以上の、また、私たちが負担する義務以上のプラスが出てくる、こういうふうな観点からOECD加盟に踏み切ったと御了承願いたいと思うのであります。
  161. 山花秀雄

    ○山花委員 時間も切迫しておりますので、あと二、三の点で終わりたいと思いますが、いま通産大臣の説明を聞いておりますと、まあ一流のつき合いのできる、池田さんの好きな大国意識の看板がちゃんと受け取れるというような、そういうお話でございましたが、昨年は、たいへん喜ぶべきことでありますが、日本の造船業界は、すばらしい躍進を遂げて、外国からも大きな受注がございまして、世界第一の看板を掲げたことは、これはもう同慶の至りでありますが、これに反して、長い伝統とすぐれた技術を誇るイギリスやあるいは西ドイツでは、造船企業の倒産や解散が続けられておるというふうに承っておるのです。ヨーロッパの造船業界は深刻な不況であります。こうした背景の中に、OECDの造船作業部会が、日本の業者に対して、建造数量の割り当てや最低受注単価の規制などやろうという動きがあるということをも承っておるのでございますが、これは日本の花形産業である造船産業に大きなワクをかけて、これ以上世界進出をさせまいとする手段であろうと思います。これはOECDに加入することによって起こるマイナスの面であるとも思います。入って大国の仲間入りをしたと喜んでいたら、たいへんなことになると思いますが、具体的にこういう動きに対してどう対処するのか。また、入ることによって、プラスの面とこういうマイナスの面がひょっとしたら出てくるかわかりませんが、これに対して万全の用意がおありであるかどうか、承りたいと思います。
  162. 福田篤泰

    福田国務大臣 いまOECDに入ろうとしておるこの段階において、造船業界等でも、世界の造船業界が日本の造船業を押えるような動きをしておるじゃないか、こういうことでございますが、私は、OECDに入っても入らなくても、たとえば綿製品に関する国際協定ができたように、やはりこれは相互が貿易をしてやっておるわけでございますから、そういう問題は、OECDに入る入らないの問題でない。どうしてもこういうことは起きる場合は起きてくることだと私は思います。しかしOECDに入っておれば、そういうようなことを言うておるいわゆる先進国の仲間入りをするんですから、いままでよりは、やはりしょっちゅう顔を合わせる率も多いし、まあそう無理言わぬでもいいじゃないかといって、お互いに話し合いでもって問題を解決し得るチャンスがふえてくるんじゃないか、こういう意味で、そのこと自体は決してマイナスにはならないんじゃないか、かように考えておる次第であります。
  163. 田中角榮

    ○田中国務大臣 ちょっと一つ……。OECDの加盟の利益の問題でありますが、御承知のとおり開放経済に向かいますと、これから国連における開発機構、それからIMFの場、ガットの場、EECの諸国との交渉等が非常に重大になるわけであります。しかもIMF及び国際連合等で話をする前に、いつでもこのOECDでいろいろな問題が事前協議をされて、ヨーロッパ諸国の代表案のような形で出てくるわけであります。そういう意味で非常に割りを食うというような問題があります。特にこのOECDの第三作業部会は、アメリカを除いての先進工業国の財政、金融及び国際流動性の問題等に対しては非常に強い発言力を持っておりますし、これらの問題に加入をして事前にお互いが協議できるということは、日本のこれからの開放体制に向かってもう不可欠ともいうべく、非常に重要な意義を持つものだと、こう政府は判断しておるのであります。  それから、いまお話がございました造船に対する問題というようなことがありましたが、これは外電の一部伝えるところという、いわゆる正式に申し込まれたものではなく、ヨーロッパの国々が考えておるかもわかりませんが、これはまだ申し入があったとかどうするとかという問題じゃありません。しかもOECDに入れば、入るときは非常にむずかしいのですが、入ってしまうと、非常に強大な権限を持つのであります。OECDのすべての決定は全会一致でなければならない、こういうことでありますので、日本が加入をして、日本が不利益になるような問題に対しては、事前に十分協議をしながら、日本が賛成をしなければ決定をしない仕組みになっておるのでありますから、こういう面から考えても、OECDの加盟というものは非常に重要であり必要なものだと、こう考えるわけであります。
  164. 山花秀雄

    ○山花委員 時間が参っておりますので、私は、質問はもうやめにいたします。ただ、最後に意見だけを申し上げて終わりたいと思います。  貿易の自由化を叫んでおる日本が、御案内のように、思想が違うというような理由のもとに、中国やソ連あるいは北朝鮮の貿易がきわめて不自由であります。最近、ヨーロッパの各国が中国との取引を活発にやっているようですが、このままで推移いたしますと、遠いヨーロッパに近隣の貿易が取られてしまうというような結果が私は出てくるのじゃないかという配心をしております。また、非常に親善友好関係を持っておるアメリカですら、最近は、御案内のように、日本製品を自国のドル防衛のためにボイコットしておるということは御承知のとおりです。きのうの会議でもいろいろお話し合いをなされたと思うのでありますが、特に共産圏の貿易の発言やあるいは小麦の輸出などをアメリカでもやっておることは御承知のとおりであります。だからこの際、日本は、単に思想の違いというのでなくして、貿易をやらないと日本経済は持たないのです。これはもう百言をまたなくても御承知のとおりであります。そこで私は、だれにも遠慮せずに、いい品物をつくって貿易をやる。そうでないと、また、日本経済が持たないということは、先ほど申し上げましたように、朝鮮動乱の後の、朝鮮動乱による、あるいは特需による、あるいは後進国家開発その他いろいろな関係によるドルが、大体私の計算からいたしましても、相当多く、六十億程度入っておるのじゃないかと思うのです。これからそれは入らないということになるのですから、そうなりますると、自力で立ち上がらなくちゃならないのです。自力で立ち上がるためには、経済成長率あるいはそれに伴う国民生活、まあいろいろな点をひとつ総合勘案されて、前向きの姿で経済政策を進行させていただきたい。金融、財政経済は一体のものであります。よき考えには私どもは協力いたします。しかし間違った考えには、高い視野から立って批判を続けていきます。いろいろ質問の点がたくさん残っておりますが、同僚議員から個別にまたいろいろ質問をいたすと思いますから、親切な答弁お願いいたしまして、時間が参っておりますので、これで私の質問を終わりたいと思います。
  165. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 以上をもちまして山花秀雄君の総括質疑は終わりました。  次会は明三十日午前十時から開会することといたし、なお、明日の横路節雄君の質疑に対しましては、総理大臣、外務大臣、大蔵大臣、通産大臣、防衛庁長官、運輸大臣、海上保安庁長官、官房長官、総務長官の要求がございます。念のため申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十分散会