○稻村隆一君 私は、日本社会党を代表し、今回発生したる
新潟、
山形、
秋田三県の
地震による
被害に関し、
政府の
対策と決意に対し、若干の
質問を試みんとするものであり、ただいま
政府の御
報告を承り、その
災害のいかに深刻なるかを痛感したのであります。私どもの経験せる約四十年前の
関東大震災とともに、今度の
震災はまさに人類史上における最大の悲劇の一つでありまして、犠牲となられたる
方々に対し、心より哀悼の意を表するものであります。また、
被災された
方々に対し、真に同情の念禁ずあたわざるものであります。
しかしながら、われわれは現代の進歩せる科学を駆使し、政治の英知と勇気と情熱によって、国民大衆の
協力を動員し、断固として、このおそるべき自然の暴威より発展したる
災害を克服しなければならないし、またし得ると思うのであります。(
拍手)幸いに、
政府におかれましては、かつて豪雪
対策本部長として非常
災害と取り組んだ河野
建設大臣がこのたび
新潟地震非常災害対策本部長に就任され、適切に敏速に各種施策の実行に着手されつつあるのは感謝にたえざるところであります。
しかしながら、われわれの懸念するところは、過去において激甚
災害対策は常に龍頭蛇尾に終わっていることであります。かくのごときは、
政府必ずしも怠慢なるにあらず、
災害に関する法運用の誤りと現行法の不備欠陥に原因するのであります。したがって、われわれは、かかる激甚
災害の経験に徴し、国会において現行法の欠陥を
整備し、改正するのはもちろんのことでありますが、
政府においては、現行法の運用を最大限に拡大適用し、罹災民衆に失望を与えざるよう、一そうの
努力を要望するものであります。
すなわち、今回の
震災において最も有効な
法律と思われる
昭和三十七年九月六日公布の激甚
災害に対処するための特別の
財政援助等に関する
法律をすみやかに発動することであります。
政府は、この
法律を適用するにあたり、なるべく拡大解釈し、
災害地に対し広範に発動し、抜本的な
対策を講ずべきであると思うのでありますが、池田総理並びに
関係各
大臣の御所見を承りたいのであります。また、この
法律の適用は国家
財政に重大なる影響を及ぼすものなるがゆえに、田中
大蔵大臣の決意をお伺いしたいのであります。
昨年一月の北陸豪雪におきまして、衆議院は、同年二月五日、満場一致の決議をもってこの
法律を雪にも適用すべきことを
政府に要請したのであります。すなわち、衆議院は、史上まれなる豪雪の
災害に対して、この
法律は広義に解釈するならば適用可能であるとの見解に立っていたのであります。しかるに、
政府はついにこの
法律の発動をしなかったのであります。憲法上、
法律の制定は立法府に専属するものであって、いやしくも、みずからが制定したる
法律を国会が満場一致適用すべきことを決議した以上、
政府は院議を尊重し、当然この
法律を発動すべきであったのであります。ところが、
政府は、全くほおかむりをして、ついに発動しなかったのであります。かくのごときは、憲法政治、議会政治の立場から見て許すべからざる国会軽視の行為といわなければなりません。(
拍手)この
法律を雪に適用しなかったことは、主として大蔵官僚の抵抗にあったのであります。もっとも、大蔵省は国家
財政を管理する重要なる省であるから、強大な力を持つのは自然であり、国家
財政を破綻せしめるがごとき不当なる
財政の
支出に対し、制限を加えることをやむを得ないことであります。おみやげ法案や無数の陳情政治に対し、
財政を守るために、自己の良心に従って制御することは、むしろ称賛すべきことであります。しかし、官僚の狭い見解に立って、高い政治判断に従わず、はなはだしきは立法府の審議に干渉するがごとき態度が昨年の豪雪のときにあったのは、断じて黙認することができないのであります。(
拍手)しかも、
大蔵大臣の権力は、先進諸国の例によっても、それは総理
大臣の次に位するのが普通であり、この意味において田中
大蔵大臣は重要なる地位にあるのであります。この際、民生安定の立場より、重大な決意が必要であります。見解狭小なる大蔵官僚を統御し、この激甚
災害に対処するための特別の
財政援助等に関する
法律を即刻発動する意思ありやいなや、特に承りたいのであります。(
拍手)
新潟県及び
新潟市のごときは、この
法律の適用を受けることは疑問の余地はないのでありますが、
山形県、
秋田県等に対し、または市町村に対し、法を窮屈に解釈して適用の範囲外に置かんとする小細工は、決してやらぬよう御留意をお願いしたいのであります。
また、今回のごとき大
災害を克服すべき幾多の特別立法の必要ありと思うのであります。たとえば、田中
大蔵大臣が、昨日、
新潟の視察よりお帰りになり、
地震、風水害に対する
災害保険制度を強調されておりますが、これはまことに当を得た所見であって、かけ声だけでなく、直ちに立法化を実現するお考えがあるかどうか。また、道義上、
火災保険会社が類焼者に二割くらいの
見舞い金を出すべく、
政府よりアドバイスをすべきじゃないかと私は思うのであります。この点に対しまして、総理並びに
大蔵大臣のお考えをお伺いしたいのであります。(
拍手)
次に、今回直ちに
応急対策の一環として、
災害救助法が
新潟県、
山形県において発動されたことは、まことに時宜に適した
処置であったと考える次第であります。
しかしながら、この点につきましても、やはり
政府に対して強い要請を付せざるを得ないのであります。それは、従来、同法の発動におきまして、
地方公共団体は
財政面の不安から、ともすると、この
法律の精神を完全に生かすだけの十全な
措置を講ずるにちゅうちょの態度を見せたかのごとき印象をぬぐい切れないのであります。これは過去において、都道府県に対する国の補助が、はたして完全であったかどうかについて反省を促すところの現象であるといわざるを得ません。応急仮設住宅、たき出し、その他食料品、飲料水の
供給、被服、寝具等
生活必需品の給与、医療などのごとき、
災害救助法第二十三条に定める各種の救助
活動の費用の限度は著しく低く抑えられております。しかも、このようにコストを低く押えているだけでなく、国庫負担金の総額においても窮屈であるやに聞き及んでおります。
同法の目的は、必要な救助を行ない、
災害にかかった者の保護と社会の秩序の保全をはかることとされており、救助
活動は、
被災者に対して、
復旧活動に力強く立ち上がらせる勇気づけの一助となるべき最低の
措置なのであります。この点、
政府当局におかれましては、せっかくの同法発動がかけ声倒れに終わらぬよう、
被災県に対して同法
関係の十分たい
財政的裏づけも講ぜられんことを強く要望いたす次第であります。
さらに、今次のごとき大
災害に際しては、当然
被災地方公共団体の
財政負担は膨大となり、ときとして赤字団体に転落するおそれすらあるのであります。この点、当局としての
対策はどうか。
また、今回の
被災者に対し、早急に税の
減免の
措置をとる必要があると思うが、いかなる
措置を行なったか。
さらに、今日の都道府県税の減税に関する準則は、十年前にきめられたものであって、今日の
実情に沿わざるところがあり、広く
被災者に適用することが不可能であると思うが、この点の改正に関し、いかなる具体策を講じつつあるか。また、長期低利、無利子の
資金を何とか捻出する必要があるのではないか。
以上に関しまして、
赤澤自治大臣その他
関係大臣にお伺いしたいのであります。
被災住民は、いまだ
余震の続く中で、恐怖と困窮にたえつつ、早くも
復旧への第一歩を踏み出しております。この人々に対する国家の何よりの激励は、要するに、救助、
復旧の諸
活動に対する十二分なる
財政的裏づけ以外にはないと信ずるものであります。この意味におきまして、
政府は、
被害の全貌の判明次第、早急に補正予算を組む必要があり、そのために臨時国会の召集も考慮すべきであると考えるのでありますが、総理の見解をお尋ねしたいのであります。
かつて占領時代、シャウプ勧告において、
災害復旧の
資金のごときは、近代国家であるならば、決して個人の負担とすべきものにあらず、本質上、国の負担すべきものであるといっているのでありますが、全くそのとおりであって、日本の
災害対策のごときは、未開の
状態にありといっても過言ではないのであります。
以上申し述べましたこと以外にも、種々
政府に望むところ、お尋ねしたい点もございますが、最後に、重ねて、一刻も早くこの大
災害より
現地住民を救い出すことを念願するとともに、今国会冒頭において、総理が英知と勇気をもって政治を行なうと言明されたことを、この
復旧対策において事実をもって示されんことを心から要望いたしまして、この
質問を終わる次第であります。(
拍手)
〔
国務大臣池田勇人君
登壇〕