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1964-01-23 第46回国会 衆議院 本会議 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年一月二十三日(木曜日)     —————————————  議事日程 第三号   昭和三十九年一月二十三日    午後一時開議  一 国務大臣演説に対する質疑     ————————————— ○本日の会議に付した案件  国務大臣演説に対する質疑    午後一時十八分開議
  2. 船田中

    議長船田中君) これより会議を開きます。      ————◇—————  国務大臣演説に対する質疑
  3. 船田中

    議長船田中君) これより国務大臣演説に対する質疑に入ります。河野密君。   〔河野密君登壇〕
  4. 河野密

    河野密君 私は、日本社会党を代表して、当面の政治課題について、池田内閣の施策をただし、われわれの納得し得ない多くの点に関して、国民とともに政府の責任を追及せんとするものであります。(拍手)  一九六四年を迎え、早くもちまたには前途多難の声が伝えられ、内憂外患こもごも起こるのではないか、日本を取り巻く四囲の情勢は一段ときびしさを加えるのではないかとの声が高まっております。  昨年の総選挙において最大の課題となった高度成長政策是非の問題、消費者物価高騰の問題は、昭和三十九年度予算編成を通じても何ら具体的の解決を見ないまま経済情勢は刻一刻と深刻の度を加えてまいりました。(拍手)これは具体的には証券界の未曾有の不況、不渡り手形増加企業倒産増大等にあらわれていると思います。かてて加えて不安な人心動揺を反映するかのごとく人災のあとは絶えず、凶悪犯罪増大の一途をたどっております。  一方、眼を海外に転じてみますと、ケネディ米大統領の暗殺を機会として、世界は再び逆コースにあと戻りするのではないかと懸念されてまいりましな。南ベトナムのこんとんたる政治情勢アフリカ大陸における不断の動揺パナマ騒乱の勃発、特にアジア諸地域における緊張状態の持続など、一九六四年の多難を予報するかのようであります。したがって、世界経済前途も予断を許さず、ソ連圏、EEC、アメリカ経済圏と、相拮抗する経済ブロック間の競争も一段と激化してくるのではないでしょうか。かかる見地からするならば、アメリカドル防衛政策も決して偶然にあらずといわざるを得ないのであります。事態はそれほどきびしいのです。しかし、われわれは、池田首相施政演説から、残念ながらこのきびしさを看取することができませんでした。(拍手)  池田内閣は過去三カ年の施政を通じて、どこの国よりも忠実にアメリカ外交経済政策に奉仕してまいりました。ところがこれに対するアメリカ側報償は何であったでありましょうか。日本国際収支を脅かす利子平衡税の創設でありました。また、池田内閣は、米国国策の要求するまま、日韓会談を進め、台湾政権を支援し、対中国消極政策をとってまいりました。それに対する報償は何であったでありましょうか。最近における台湾政権からのボイコット、国交断絶に近い仕打ちだけではありませんか。こうした内外情勢を背景として、池田内閣それ自体も大きな曲がりかどにきたと申さなければなりますまい。(拍手)しかり、政策の大きな転換を必要とする曲がりかどにきたのです。  以下、私は、具体的の諸問題について、第三次池田内閣がいかにこの曲がりかどに対処せんとするか、質問したいと考えるものであります。  第一は、原子力潜水艦寄港問題であります。  池田内閣は、昨年度、モスクワにおいて調印された核実験停止協定を承認しました。この協定はいまだ理想的とは、言い得ないにしても、とどまるところを知らない世界軍拡競争、特に核兵器競争に抑制的な役割りを果たすものとして、われわれもまた双手をあげて賛成いたしました。しかし、これはあくまで序曲的なものであって、さらに進んで一切の核武装を禁止し、全面的な軍縮に進まなければなりません。これにこたえるように、米ソとも軍事費の削減を断行しようとしているのであります。しかるに、池田内閣は、昭和三十九年度予算において防衛費を約三百四十億円増強し、アメリカ原子力潜水艦寄港を許容しようとしているのは何ゆえでありましょうか。原子力潜水艦寄港の問題を、政府はもっぱら放射能による海水の汚染等安全性の問題のみから論議しているのでありますが、真実はもっと高いところにあるのです。これが国際関係に及ぼす影響、東西対立に与える軍事上の問題、核兵器の持ち込みを許さずというわが国国民的悲願をじゅうりんする問題等から断固として拒否すべきものと信ずるが、政府の明快なる御答弁を求めるものであります。(拍手)  政府は、原子力潜水艦核兵器でないという理由の一つとして、寄港を求められている潜水艦は、核武装可能なポラリスでなくノーチラスであると説明し、かかるがゆえに、自由主義諸国はみな寄港を認めていると申してまいりました。たとえば、昨年の解散国会において、わが党の河上委員長質問に答え、池田総理は、これは潜水艦推進力原子力であるというだけで、ポラリス潜水艦と違いまして核武装していないのでありますと述べております。しかるに、最近のアメリカ国防当局の発表によりますと、ノーテラスにもサブロックをつけて核装備をすることにしたと申しております。池田首相は、前の答弁で、核武装した、また核武装可能な潜水艦でないから寄港を認めてもいいのだと申しましたが、そこで私は池田総理質問いたします。核武装をした、もしくは核武装可能な潜水艦寄港断固として拒否される考えと思われますが、間違いありませんか。アメリカ国防当局サブロックを装備していると明言している以上、安全性問題等に立ち入るまでもなく、当然に寄港を拒否すべきものと考えますが、間違いありませんか、明快な御答弁を願います。(拍手)  さらに、池田首相は、日本安保条約に調印した以上、潜水艦寄港を認める義務があると申してまいりましたが、アメリカ太平洋艦隊司令長官は、原子力潜水艦寄港は単なるレクリエーションのためである、寄らなくてもいいのだが、日本の港の娯楽施設が完備しているから寄るのだ、こう申しているのであります。これによると、安保条約と何らの関係のないことは明瞭であります。これをしいて安保条約上の義務と結びつけ、寄港承認に踏み切ろうとあえてするのは、卑屈なる媚態外交と申すほかはありません。(拍手政府質問いたしますが、レクリエーションのため日本の港を使用する申し出を許容しなければならないということが、安保条約のどの条項にありますか、責任ある御答弁を願いたいと思います。(拍手)  なお、これに関連してこの際承りたいことがあります。先般、池田総理は、ケネディ米大統領葬儀に参列して帰国した際の記者会見において、今後の国際情勢をいかに見、いかに対処するかとの記者団質問に対し、ケネディ大統領精神が生き続けていると述べ、池田精神ケネディ精神と同様なものである、池田精神を貫いていくのだと、こう然と言い放たれました。私は寡聞にして今日まで池田精神の何たるかを聞いておりません。(拍手)いわんや、ケネディ精神特約日本版である池田精神については、全く何も知らないのであります。この際、池田精神とはそもそもいかなるものか、その具体的な内容を明らかにされたいと思います。(拍手)  ケネディ大統領のことばの中で、私の忘れ得ないものは、人類戦争を絶滅しなければ、戦争人類を絶滅するであろうという一言であります。少なくとも彼はこの信念のもとに平和共存を促進し、彼なりにそれが具体化に努力したと考えます。池田首相は、その誇示する池田精神において、どこかでその片りんでもお示しになりましたか、この際はっきりとお伺いしたいと思います。(拍手)  質問したい第二の点は、日韓会談についてであります。  日韓会談はすでに長い歴史を持ち、幾たびか失敗を重ねてまいりました。池田内閣会談の口火を切ってからでも、すでに三年の歳月をけみしております。われわれは、この日韓会談に対して、一、日韓会談によって南北朝鮮対立を激化し、極東の緊張を一そう悪化するおそれあること、二、韓国の政情がきわめて不安定であり、現朴政権前途も予測しがたいこと、三、技術的には、懸案一括解決という日本側の主張に対して、請求権のみを食い逃げされるという事態が起こる公算が大きいこと等の見地から、日韓会談反対の意思を表明してまいりましたし、現に反対をいたしております。ところが、政府は何ゆえか日韓会談を急いで進めようとするのであります。政府は、李承晩ラインの問題を含む漁業問題の解決竹島の帰属問題など、一括解決見通しがあるのでありましょうか。交渉の経過から見て、これらの一つでも解決できないならば、会談を即時打ち切るべきものと思いまするが、政府見解を尋ねたいと思います。(拍手)  政府は、最近、近隣外交を主張し、これをもって日韓会談促進の論拠としているのでありますが、近隣外交といえば、朝鮮民主主義人民共和国も当然問題となるはずであります。しかるに、北朝鮮を視野の外に置いて日韓会談を進めることは、何としてもわれわれの納得し得ないところであります。  そこで、私は、当面の日韓会談に関連して、次の諸点について政府の明快な御答弁をわずらわしたいと考えます。  第一、請求権問題が無償二億ドル、有償二億ドルにきまったと伝えられるが、いかなる根拠によってさような数字が算定されたのであるか、この請求権北朝鮮との関係はどうなるのか、植民地統治の賠償ならば、当然全朝鮮に及ぶべきものと思うが、どうであるか。第二、請求権とは別に漁業補償が問題となり、韓国側要求補償額は一億八千万ドルと伝えられておりますが、政府はこれに対していかに対処されるつもりであるか。第三、政府は、常に一括解決を主張してきたし、その方針はあくまで貫くべきものと思うが、はたして一括解決見通しが到るか。国際法違反である李承晩ラインの問題、竹島の占領問題を未解決のままに日韓会談を政治的に推進することは、われわれは絶対反対でありますが、首相の明確なる御答弁を求める次第であります。(拍手)  第三は、中国問題についてであります。  昨年末から本年初頭にかけて、中国周恩来首相は、中近東からアフリカ新興諸国に対して長途の親善旅行を行ない、多大の成果をおさめつつあるようであります。また、フランスフォール首相は、ドゴール大統領特使として昨年秋北京を訪問し、話題を投げたのでありますが、フランスは、いよいよ中国との国交回復に踏み切る外交方針を決定し、近く具体的措置に出ると伝えられております。フランス中国承認国交回復の挙に出ますならば、国際情勢が大きく変わることは必至でありまして、中国国連代表権承認の宿題も、その解決は単なる時の問題となってまいりましょう。フランスの新しい中国政策によって最も打撃を受けるのは、アメリカであります。アメリカは、中国封じ込め政策をもって唯一の対中国方針と考えて、頑強にこれを固執したばかりでなく、アメリカ援助を受ける多くの国々にも同じ態度を強要してまいりました。ケネディ大統領も、一昨年ワシントンで開かれた第二回日米貿易経済合同委員会の席上で、日本に対して中国封じ込めを強く要求したではありませんか。しかし、一方では、中国国連に入れることなしに世界の平和も軍縮の達成も望み得ないことがだんだん明らかになってまいりました。かかる情勢の中にあって、フランス中国承認態度国際政局に大きな一石を投ずることになるのは明らかであります。  そこで、私たちは池田首相に尋ねたいのでありますが、日本政府の対中国政策いかんであります。わが国は、従来、中国国連代表権問題では、終始一貫アメリカのお先棒をかつぎ、足軽の役目をつとめてまいりました。昨年はアルバニアの出した中国代表権案に対して、賛成四十一、反対五十七、棄権十一の中にあって、あえて反対態度をとりました。わが国は依然としてこの態度を続けるつもりでありますか。むしろ率先して中国国連代表権承認に一役買うべきものと思うが、どうでありましょうか。(拍手)  政府は口を開けば政経分離を言い、外交関係は別として、日中貿易拡大をはかるのだと申してまいりましたが、かかる首鼠両端を持する政策の長く許されないことは明らかであります。フォール仏首相も、その北京報告の中で、六億の人民がいるという現実は否定できないと申しておりますが、六億人民の持つ経済的な価値に着目していることは明らかであります。フランスが敢然としてとろうとしている政策こそ、わが国世界に先がけてとるべき方針ではなかったでしょうか。この際政府の考え方を聞きたいと思います。(拍手)  中国問題がこの段階にきた以上、政府は、この際政府特使中国に派遣するか、他の外交的接触をはかるか、日中国交回復の問題についてすみやかに話し合いに入るくらいの勇断を持つべであると思うが、どうでありましょうか。(拍手)  池田内閣の対中国政策はこれまでまことに因循こそくでありましたが、これはアメリカに追随した結果でありましょうか、それとも、池田内閣自体の独自の判断によるものでありましょうか。アメリカに強要された結果であるとすれば、外交権他国制肘にゆだねるゆゆしき問題であり、自主的判断によるものとすれば、池田内閣の見識のない態度を糾弾せざるを得ません。(拍手)いずれにしても、池田内閣の反省を求めつつ、はっきりとした答弁をこの際要求するのでございます。  自民党内には台湾ロビーと称する一群があり、政府中国政策をゆがめ、牽制するとのことでありますが、政府はこれと敢然と戦う勇気ありや、お尋ねしたいと思います。(拍手)  第四に、日米合同委員会について質問いたします。  近く日米合同委員会が東京で開催されようとし、そのメンバー、議題等がすでに発表されました。これによると、現下の国際情勢の変動を反映して、当面の政治的課題である日韓問題、日中問題、中国国連代表権問題などの諸懸案が当然論議されると思われます。しかも、その結論についてはきわめて重要なものがあると予想されます。  そこで政府にただしたいのでありますが、一つ、この合同委員会において、アメリカ側から日本に対して、日韓会談早期妥結日中貿易抑制等圧力が加えられる場合において、政府はこれに対していかに対処するつもりでありますか。二つ、アメリカ日本に対して貿易自由化を強く要求しながら、他方、日本の対米輸出に対してこれを制限しようとしております。政府は、アメリカの輸入制限問題に対して、合同委員会においていかなる態度をとろうとするのであるか。三つ、沖縄返還の問題、原子力潜水艦寄港問題等に対して、当然強硬なる態度で臨まれなければならないと思うが、どうでありますか。特に沖縄は、ケネディ声明以来の動きを見ても、アメリカの無期限占領方針はますます強化されるばかりで、返還見通しは暗くなるばかりでありますが、政府は、アメリカに対してどういう手を打ってきたか、また、この合同委員会を通じて打とうとするのか、伺いたいと思います。先年はスエズ事件、近くはパナマ事件に徴してみても、外国が他国の領土を永久的に、軍事的に占領するという不自然な状態は、長続きしないことは明らかであります。日本政府沖縄返還に対していかなる方策をとろうとするのか、明確にしてほしい。四つ、アメリカ海外援助の打り切りと関連して、日本防衛力の増強、低開発地域援助肩がわり等が強く要請されると思われるが、これに対して日本政府はいかに対処するつもりであるか。五つ、アメリカドル防衛政策の一環としてとられた利子平衡税の緩和についてどうするのであるか、合同委員会を通じてこれを強く要望するのか、これらの点について明快なる答弁をわずらわしたいと思います。  第五番目は、三十九年度予算問題であります。私は、昭和三十九年度予算案にあらわれた政府財政経済政策について質問いたしたいと存じます。  第三次池田内閣の編成した昭和三十九年度一般予算は、総額三兆二千五百五十数億円、前年度比一四・二%増という膨大な予算であります。しかも、これに組み込みかねた予算特別会計に回し、債務負担行為に逃げ、地方予算に移譲するというからくりまでやっておるのであります。また、財政投融資計画総額一兆三千四百余億円、前年度に比べて二〇・八%増という膨大なものであります。  問題の第一は、これがはたして国際収支改善物価の安定をはかることを目途とするという政府予算編成方針に沿い得たかの点であります。問題の第二は、一般予算における当然支出増加新規事業経費等、その財源をすべて税の自然増収に仰いでいることであります。問題の第三は、政府が呼号し、選挙を通じて公約した平年度二千億減税も、膨大な自然増収の見積もり、ガソリン税等の増徴によって、全く申しわけばかりの、影の薄いものとなったことであります。現に、昭和三十八年度の当初予算が、税の負担率二一・五%であるに対して、三十九年度は二三・五%と上昇しているのであります。問題の第四は、地方財源補てんのために、政府保証債発行を許容したことであります。地方債とはいいながら、元利保証地方債は、実質的の赤字公債であり、政府が耳をおおうて鈴を盗む態度赤字公債発行に踏み切ったことであります。(拍手)問題の第五は、自民党圧力に屈して、農地報償在外資産補償など、問題の多い国庫支出に対して、明年度以降の約束をしたことであります。  いまこれらの一つ一つについて質疑することは差し控えますが、基本的な二、三の問題について政府の所見をただしたいと思います。  その第一は、自然増収の問題であります。  逐年増大する財政支出をまかなうために、その財源として自然増収を充当することは、予算編成常套手段となっております。しこうして、この自然増収の名のもとに見積もられた歳入と見合った歳出を振り当て、これをもって健全財政と誇示してきたのであります。昭和三十九年度の三兆二千五百数十億円にのぼる予算も、これ以外の何ものでもありません。しかし、これがはたして健全財政の名に値するものでありましょうか、私は多大の疑問を持つものであります。そもそも自然増収とは何でありましょうか。もちろん、生産拡大に基づく税収の増大もありましょう。しかし、その前に、膨大な国費の支出基調とするインフレ政策の結果の租税へのはね返りではないでしょうか。(拍手)試みに逐年の自然増収の状況を見ますと、昭和三十三年度自然増収千五十一億、三十四年度千八十六億、三十五年度二千九十六億、三十六年度三千九百三十億、三十七年度四千八百七億、三十八年度三千百三十一億となっております。しこうして、三十九年度自然増収は、減税を差し引いて五千九百八十九億、約六千億となっておるのであります。ここでわれわれの直ちに気のつくことは、前年度の当初予算において三千百三十一億しか見積もらなかった自然増収を、今度の当初予算では、一躍六千億見積もっておるということであります。しかも、前年度経済成長は、名目一三・六%、実費八・二%、物価上昇は八%であったのに対して、三十九年度名目九・七%、実質七%、物価上昇四・二%だといっておるのであります。だれにもこのからくりは明白であります。もちろん、三十八年度自然増収は、その後千七、八百億円ほどふえておりまするが、それにしても、自然増収経済成長物価上昇との間に微妙な関係のあることは明らかでありましょう。  私は率直に申し上げます。自然増収六千億が可能であるためには、物価上昇も四・二%にとどまることはできません。経済成長率ももっと上げなければなりません。したがって、政府が誇示しておりまする国際収支改善物価の安定に奉仕する予算ということは、この面からくずれ、返上しなければならないと存ずるのであります。(拍手自然増収を大きくしなければ財政支出がまかなえない、自然増収を大きくするためには、財政支出を大きくして、経済成長を助けなければならない、財政支出を大きくすれば、物価上昇を避けられない、物価上昇すれば財政支出にはね返ってくる、この悪循環を繰り返しているのが現在の経済情勢であり、ここに物価騰貴の真の原因があると思うのであります。政府は、このような予算を組んでおきながら、なお物価を抑える自信がありますか、あるとすれば、その具体的な政策を示していただきたいと思います。(拍手)  さらに問題となりまするのは、自然増収七千二百億、減税分を差し引いて六千億という、まさにぎりぎりの線、満配の予算を組んでおるのであります。これによって予算弾力性は全くなくなりました。弾力をつけようとするならば、一そうのインフレ政策をとる以外にありません。  そこでお尋ねしますが、補正予算を必要としないのですか。補正予算を組む必要が生じた場合において、どこに財源を求めようとするのでありますか。田中大蔵大臣は気前よく満配の予算をお組みになりました。こんなつかみ取りの予算を組むくらいなら、田中大蔵大臣を待つまでもなく、だれにでもできることであります。ただし、これは政府の言う国際収支改善物価の安定を目標とする予算にはほど遠いものであるということを警告し、言い分があれば、承りたいと存ずるのであります。(拍手)  最後に、憲法問題並びにこれを中心とする池田内閣政治的姿勢について質問したいと存じます。  憲法調査会は、すでに発足以来八年の年月を費やし、報告書を取りまとめる最終段階に到達いたしました。憲法調査会の意見は、そのつどそのつど新聞等を通じて概要については承知いたしておりますが、改憲論者、非改憲論者それぞれに見解を表明し、なかなか結論に至らないようであります。政府は、この調査会結論が出された場合に、いかなる態度をとられんとするのでありますか。池田首相は、一昨日の施政演説において、世論の動向を十分に尊重し、慎重に対処すると述べておりますが、過去数回の選挙を通じて、護憲を旗じるしとするわれわれの得票が伸びておるという現実を何と判断いたされますか。  憲法は国権の大本を定めたもので、みだりに改憲を口にすべきものではありません。歴史を回想するまでもなく、憲法改正するときは、革命のときか、革命に準ずべき政治的変革の行なわれるときであります。したがって、憲法がしばしば改められる国は、決して政治的に歓迎すべき国だと申すことはできません。その上、現行憲法は、その基調とする民主主義、絶対的平和主義国際協調主義等諸点において、理想的と言い得ないにしても、最も高度に新しい政治理念を生かしたものと言えます。このゆえに、われわれは憲法擁護の旗じるしを政治的信条の第一に掲げているのであります。しかるに、多くの改憲論者は、現行憲法の基本である民主主義をゆがめ、絶対的平和主義を否定せんとし、その見地から憲法改正を行なわんとしておるのであります。これは全く時代の動向に逆行せんとするものであり、断じて許すことができないと存じます。(拍手)  また、与党の改憲論者の中には、憲法第一条と憲法第九条をそのままに存置するという前提のもとに改憲しようではないかと主張する者がありますが、これは憲法改正のいかに重大な意義を有するかを理解しないものであります。第二義的な改正のために憲法改正の先例を開くならば、憲法は容易に改め得るものなりとの安易感を与え、憲法軽視の風潮を助長し、ひいては政界動揺の因をなすものと思われます。かかる見地において、この議論にも同調し得ざるものであります。  われわれは、憲法調査会最終段階にきた今日、その審議経過にかんがみ、改憲問題に対して断固政府が終止符を打たれんことを待望してやみません。(拍手憲法調査会審議経過を顧みるとき、また、改憲論者が無理やりにも憲法改正を押し切らんと狂奔している姿を見るとき、本調査会に参加を拒んだわれわれの態度の正しかったことを痛感するものであります。(拍手)われわれは、池田首相改憲問題に対する率直なる態度の表明を要望してやみません。  憲法問題に関連してわれわれの銘記したいことは、国権の最高機関が国会である現政治制度のもとにおいて、選挙が重大なる国事であり、これを冒涜するものは現政治制度を冒涜するものだということであります。しかるに、昨年施行された衆議院議員の選挙は、はたしてどうであったでありましょうか。公明なる選挙と言い得たでありましょうか。私は、もちろん、枝葉末節の選挙運動の行き過ぎについてとやかく言おうとは思いません。しかし、あまりにも醜悪なる内情については、この際粛正を叫ばざるを得ないのであります。ことに、私の痛憤おくあたわざるゆえんのものは、白昼公々然と、背番号候補者というがごときものがあらわれ、これに対して一木の指も触れることができなかったという一事であります。彼らの目的とするところは、選挙運動をやゆし、選挙に対する国民の関心を失わしめ、議会政治に対する国民的不信の念を植えつけんとするにありました。しこうして、それはある程度成功をおさめたと考えられるのであります。しかし、私のさらに痛憤にたえないのは、これと与党の一部の者との間が無関係でないということであります。(拍手)先日行なわれた東京都知事選挙違反事件の公判において、にせ証紙、はがき横流し事件が自民党の最高幹部と無関係でないことを、検事みずからが論告しているではありませんか。(拍手)この事件の被告と背番号候補者とは、同一人か、もしくは同一系統の人々であります。したがって、今回の背番号候補者が自民党の最高幹部と無関係ではあり得ないと思われますが、いかがでありますか。最近、これらの人々と与党内の派閥抗争とのからみ合いが生じ、心ある人々を憂慮せしめていることは、知る人ぞ知る、まことに嘆かわしい現状ではありませんか。(拍手池田首相は、総裁としてこれらの問題をいかに考えられますか、率直なる御答弁をお願いしたいと思います。  外交方針をめぐる台湾ロビー、朝鮮ロビーの暗躍といい、右翼勢力とのからみ合いといい、どこに近代化があるでありましょうか。(拍手)与党の反省を求めるとともに、池田首相のこれらの問題に対する確固たる答弁を求めて、私の質問を終わる次第であります。(拍手)   〔国務大臣池田勇人君登壇〕
  5. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 御質問の相当の部分は、さきの所信表明で申し上げたところでおわかりいただく点も多々あると思いますが、ここにふえんしながらお答え申し上げたいと思います。  御質問の第一点は、原子力潜水艦入港の問題でございます。たびたびお答えしておりまするがごとく、安保条約の地位協定第五条によりまして、日本防衛のためにアメリカの海軍の一部隊が港に出入することは、安保条約上当然のことであるのであります。ただ問題は、原子力推進力とする潜水艦が核弾頭を備えておるときには、これは日米間の話し合いによって入港を拒否できるのであります。われわれは、それを拒否することをたびたび申し上げておるのであります。いまあらためてサブロックの問題が出てまいりましたが、これはまだ実用段階には至っておりません。また、実用するようになって、そうしていまの原子力潜水艦にそれを備えつけたならば、私はそれの入港を断わることはたびたび申し上げておるごとく、当然のことでございます。(拍手)  また、池田精神とかいうお話でございますが、私はたびたび申し上げておりますごとく、日本の外交は自由陣営とますます密接の関係になり、自由陣営の信頼を深めると同時に、共産圏の国々からは畏敬せられる外交をやり、もって世界の平和と繁栄に貢献しようというのが私の精神であるのであります。(拍手)たびたび申し上げておるとおりでございます。その考え方は、ケネディ大統領の考え方と完全に一致することを申し上げたのであります。(拍手)  次に、日韓問題につきましては、一昨年来いろいろ軍事政権とやるのはどうだとかいうお話がございました。幸いに二年七カ月ぶりに民政移管が行なわれまして、しかも世論が定まり、りっぱな政府ができまして、ただいま交渉を続けておるのでございます。したがいまして、われわれはこれまたたびたび申し上げておるがごとく、いわゆる一般請求権問題等々、漁業権あるいは竹島その他法的地位の問題等、一括して妥結する方針でいっておるのであります。その点どうぞ御安心願いたいと思います。(拍手)  次に、中共の問題でございますが、これまたさきの演説で申し上げましたごとく、アジアの平和、世界の平和のために、われわれは世界世論の動向によって慎重に対処しなければなりません。すでに御承知のごとく目撃条約がございます。われわれが中準民国を正式の政府として認めておるこの事実を忘れてはならないのであります。しこうして、また、施政演説で申し上げましたごとく、中共の政権が存在する事実も認めております。したがいまして、第十六回国連総会後、たびたび日本の立場を国連においてはっきり表明しておるのであります。アジアの繁栄と平和のために、世界の世論の動向を見ながら慎重に対処するという考え方は、従来の私の方針でございまして、わが党におきまして、この問題について議論が分かれたり何かすることはございません。一体で進んでおることをはっきり申し上げます。(拍手)  なお、北鮮問題につきましても同様でございまして、北鮮は国連加盟を拒否しております。私はそういう事態を考えまして、われわれと同じ考えであり、歴史的、地理的、経済的に非常に関係のある韓国とまずやろうというのが、年来のわれわれの主張であるのであります。  なお、フランスの中共との関係につきまして、いま政府が中共へ特使を送るという考えはございません。お答え申し上げておきます。(拍手)  次に、また、日米経済合同委員会につきまして、わが国韓国問題あるいは中共貿易について、米国より圧力を受けるとお考えになることは、占領下の日本がまだ頭にこびりついておることではございますまいか。(拍手)私は、日本国家の利益のために、独自の考えで進んでおることをはっきり申し上げて、お答えといたします。(拍手)  なお、沖縄問題につきましては、常に日本返還への要求を続けております。しこうして、また、アメリカにおきましても潜在主権を認め、いつかは日本に返ることを前提としまして、そして、その返るときに、それがスムーズにいくようにやっていこうということで、いわゆる沖縄島民の福祉の増進のために、日米琉三位一体となって交渉を続けておるのでございます。  なお、その他の問題につきましては外務大臣よりお答えさせます。  予算の問題につきまして、その規模あるいは租税負担、地方税の関係等を御質問になりましたが、私は、いまあなたがここで数字をお話しになったごとく、その数字が示すごとく、三十九年度予算は適正であり、そうして健全であり、日本の今後の経済の発展が約束され、国民の生活水準が上昇し、そうして世界における日本役割りがますます上昇していくことを結論で申し上げておきます。その内容につきましては、大蔵大臣よりるる説明することと思います。  なお、憲法問題につきましては、たびたび申し上げておりますがごとく、私は国民の理解を深め、国民の世論に従ってこの問題を解決しようとしておるのであります。こういう大きい問題は、いたずらに終止符を打つべきとかいうふうな問題ではございません。国民に十分考えてもらって、国民がその結論をお出しになることを私は期待いたしておるのであります。(拍手)  なお、選挙の公明につきましては、私もあなた以上にそれを望むものでございます。私は施政方針演説にも申しましたごとく、いわゆる議会主義、憲法主義の根本は、公明な選挙にあることはもちろんでございます。選挙の公明のために、今後とも制度の改善等努力を続けていくことをここにお答え申し上げまして、私の答弁を終わりたいと思います。(拍手)   〔国務大臣大平正芳君登壇〕
  6. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 補足して御説明申し上げます。  日韓会談につきましての北鮮の取り扱いでございますが、たびたび申し上げておりますように、私どもは大韓民国が現に支配しておる領域の問題として取り扱っております。したがいまして、北鮮につきましては白紙の状態で臨んでおります。  それから、一昨年の末に大筋において合意を見ておりまする請求権三億ドル、二億ドルの根拠でございますが、これは前の通常国会におきましても御説明申し上げましたとおり、戦後二十年近くたちまして、物理的な証拠というものはだんだん散逸いたしておりまするし、また、かりにあるものにつきましても、それをどう評価するかにつきましての判断の基準を両国は異にいたしておりますので、望ましいことではございますけれども、これを正確に、法律的根拠を見出してそれを裏づけるということは困難でございます。したがいまして、私どもとしましては、過去を分析することによって何ら値打ちのあるものを発見できませんので、将来に向かって日韓両国が経済の面で協力し合って相互の利益になるようにはかろうという、経済協力方式でこの問題を片づけることによって、平和条約第四条にいう特別取りきめができたということに合意しようとしておるものでございます。(拍手)  それから、漁業協力の性質の問題でございますが、これはいまいうところの経済協力ではございません。すなわち長期低利の資金ではなくて、通常の輸銀の融資という性質のものとして私どもは考えております。  それから、アメリカから日韓会談につきましての干渉ないし介入ということは、過去においてありませんでしたし、また、アメリカもそういう意図は持っておりません。  日米合同委の論議は、ちょうどわが国におきましても三十九年度予算ができ、経済見通しも立ちましたし、アメリカにおきましても予算教書も出てまいりましたので、そういう新しい前提で、日米間の経済貿易問題についてとくと懇談をいたしたいと思っております。したがって、貿易・為替自由化の問題は日米双方関心を持っておるわけでございまして、私どもは貿易・為替自由化のかがみに照らしまして、アメリカ側のとる措置にふに落ちないことがあれば、われわれ同僚閣僚とともに鼓を鳴らしてその非は是正を要望いたしたいと思います。(拍手)  それから利子平衡税の問題でございますが、利子平衡税はただいまアメリカの下院の歳入委員会が通ったところでございまして、まだ本会議に上程されるに至っておりません。今日まで、政府が最初発表いたしました原案に比べますと、三カ所重要な技術的な改定が施されております。これが上院に回りましていずれ成立することと思うのでございまするが、私がアメリカに参りましてその際に出しました共同声明にも盛られてありますとおり、この利子平衡税の免除の問題は、わが国国際収支が困難になりまして危機に瀕するというような状況になれば、この平衡税の免除も含めて特別に協議をしようという約束になっております。しかし幸いにいたしまして、わが国国際収支はさような困難の状況に立ち至っておりませんし、また、そういうことを私どもは希望もいたしませんし、そういう事態にならぬように、政府はいま努力しておるところでございます。(拍手)   〔国務大臣田中角榮君登壇〕
  7. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 予算に関するお答えの前に、利子平衡税問題に対してお答え申し上げます。  いま外務大臣がお答えを申し上げましたとおり、利子平衡税に対しては、これが法案の審議経過を見守っておるわけでありますが、これが日本経済及び国際収支に及ぼす影響に対しても十分の配慮をいたしております。しかも、利子平衡税の問題については、来たるべき日米経済閣僚会議の議題ともなっておりますので、十分日本の真意を伝えて、これが対日差別撤廃を求めるつもりであります。  利子平衡税後の問題としましては、御承知のとおり、世銀から道路公団に七千五百万ドルの借款をいたしましたし、なお三十九年度分として一億ドルの借款を了解いたしておるわけであります。なお、英貨債は、その後五百万ポンドの発行が終わり、十二月には民間ドル建て債二千万ドルの発行もヨーロッパにおいて行なわれ、本年一月には、御承知のとおり、一億ドイツマルク債が発行せられておりますので、逐次他の市場においても外債の発行が行なわれておるわけであります。  それから、六、七点にわたっての御質問がありましたのでお答えをいたします。  その第一点は、国際収支改善物価の安定をはかるという予算か、こういう予算に対する基本的な御質問でございますが、御承知のとおり、昭和三十六年、七、八年の予算を見ますと、対前年度の比較は、三十六年が二四%余、三十七年が二四・四%、三十八年度が一七・四%、今年度予算が対前年度比一四・二%であります。このような率から考えましても、一般会計が昨年の三月三十一日まで執行されてきた予算に一〇%も切り込んでおるのでありますから、現在の状態から考えて健全性を貫いておるということはこの数字だけでも明らかであります。(拍手)  それから、国民所得に対する一般会計の規模を見ますと、三十八年度は一七・一%であったものが一六・四%になっておるわけであります。なお、財政投融資につきましても、御承知のとおり今年度は対前年比二〇・八%の増でありますが、昨年は二四%余の増であったという事実に徴しても明らかなことであると考えるわけであります。しかも、一般会計及び財政投融資、金融政策等の適切な運用と相まちまして、国際収支改善、消費者物価等の安定に資してまいる予算にしたいと考えておるわけであります。  それから第二点の問題は、財源をすべて自然増収に求めたのは妥当なのかという御質問でございますが、一般会計予算の編成にあたりましては、御承知のとおり、財源としましては、従来とも、租税及び印紙収入のほか、いわゆる税外収入と前年度剰余金をもって充てておるのでありまして、この見積もりも過大ではありませんし、しかも、これ以外に財源を求めるとすれば、確かに健全、均衡性は破れるわけでありまして、この経常収入をもって経常支出をまかなっておるという事実は、御承知のとおりまさに健全性を貫いておるのでありまして、当然かくあるべきだと考えておるのであります。  それから昭和三十九年度の税の問題でありますが、六千八百二十六億円の自然増収を見込んでおるということでございますけれども、御承知のとおり、三十九年度予算は、先ほど申し上げましたように、経常収入以外に財源を求めておらないという事実は、十分御承知を願いたいと思います。  それから第三点は、二千億減税が貫かれておるか、それから現に昭和三十八年度予算については二一・五%の負担率が、三十九年度は二・五%というお話でございましたけれども、現在推定をいたしますと、三十九年度は二二・二%程度に推算されるわけであります。しかも、二千億減税は平年度でありまして、第一には所得税の減税、第二には開放経済体制に移行するのでありますから、これに対する企業の体質改善その他の企業減税、第三は住民税等を中心とした地方税の減税、合わせて平年度二千百八十億の減税を考えておりますので、二千億減税選挙公約は十分果たされたものと考えておるのであります。  それから来年度の税負担率の問題でありますが、現行税法によりますと、二二・八%にもなるというふうに算定をせられるわけでありまして、この問題に対して大幅減税を行ないましたために、二二・二%程度まで圧縮しておるわけであります。この率は、御承知のとおりただ数字だけでいわれるものではなく、国民一人当たりの所得水準、御承知の財政支出を通じての国民に還元される公共サービスとの関連など、広範囲に考えてきめるべき問題でありまして、これが三十八年度よりも税負担率が高くなっておるということは当たらないと考えておるのであります。  それからもう一つ地方財源補てんのために実質的な赤字公債発行したというお話でごさいますが、この問題は重要な問題でありますので、政府の考えをこの機会に明らかにいたしておきたいと思います。  御承知のごとく、今回の市町村民税の減税は、従来、ただし書き方式ないし超過税率によっていましたものを、本文方式、標準税率に改めようとする減税であることは御承知のとおりであります。これらの市町村は、地方交付税交付金によりまして所要の財源が付与されていたにもかかわらず、超過課税を行なっていたものでありますから、その他の市町村との均衡を考えれば、理論的には今回の減税のために、さらに補給金等の財源を与える必要はないものと考えておるのであります。しかし、一方におきましては、今回の減税の規模は画期的なものであり、これが当該市町村に与える影響も非常に大きいので、当面の財政運営に与える激変を緩和するための措置をとることが必要であると考えまして、今回のような画期的減税が現在の住民のみの一時的負担によって解決せられるべきものではないという考え方で、将来数年にわたって分担をさせるほうがより実際的だという考え方に立ちまして、減収額を補てんするための地方債発行をすることにいたしたわけであります。したがいまして、補給金等の財源付与を惜しんだ結果、これにかわるべきものとしての地方債発行したものではないのであります。なお、地方公共団体の場合には、御承知のとおり、各種の目的のために起債を行なうことが、現在でも認められておるのであります。しかもこの起債は、通常の地方団体における財源の一部となっておるのであります。それならなぜ元利補給をしたかという問題であります。これは、この税制改正によって減収が起こる市町村が非常に恵まれない地方であり、僻地で、一般の税率ではどうにもならないという特殊な事情にあるのでありますから、これらの地域に対して、政府がより高い立場で財源を一部持ってやろうという考えに立って行なったわけでありまして、赤字公債などの類のものではないことは、過去の例に徴しても明らかなことであります。(拍手)これは非常に大きな問題となりますので、特に率直な考え方を申し述べたわけであります。過去において北海道の固定資産税に対しても、同種のものが行なわれておるわけでありますし、それから激甚災に対しても、皆さんがかかる措置を要求せられてそういう措置を行なっておるのでありますから、赤字公債に類するものではないということだけはひとつ十分御承知願いたいと思います。(拍手)  それから、来年度以降に問題の多い農地報償とか、それから在外資産補償とか、そういう問題に対して、なぜ約束をしたかという問題でありますが、御承知のとおり、農地報償の問題に対しては、いま内閣の調査会で検討中でありますし、しかも、在外資産の問題に対しては、皆さんもいろいろお考えになっておられるように議論の多いところであり、正規の機関で調査をする必要があるという国民世論を背景にしてかかる措置に出たものでありまして、これによって歳出を約束したものではありません。  それから自然増収を過大に見積もっておるのではないか、そして経済成長率物価等を上げなければ、かかる税収は期待できないというお考えのようでありますが、第一次、第二次補正で皆さんに申し上げましたように、本年度すぐに二千億の増収が見込まれるという現在でありますので、三十八年度の決算見込み額を基準として三十九年度税収見積もりをやりますと、約四千八百億の増収にしかならないわけでありまして。この見積もりが過大であるということは絶対にないと考えます。  それからもう一つ申し上げますと、この税収は、法人税等非常に大きなものに対して考えていただけばわかるのですが、時期がずれますので、昭和三十九年度の税収は、三十八年の下期及び三十九年の上期のものが税収としてくるわけでありますので、そういうことで勘定していただくと、四千八百億が多いなどというお考えにはならぬと思います。  御質問でありますからもう一つだけ申し上げます。満配予算を組んで補正予算は一体どうするのかということでございますが、現在の段階において補正予算云々を申し上げることはできないと思います。しかし、大きな災害等が起こった場合どうするかという問題は当然申し上げなければならぬと思いますから、それらの問題につきましては、二百億の予備費を百億プラスしまして三百億円の予備費を計上いたしておりますので、これをもって対処してまいりたい。  以上、総じて申し上げますと、完全なる健全均衡予算であるということをどうぞひとつ御了承いただきたいと思います。(拍手)     —————————————
  8. 船田中

    議長船田中君) 小坂善太郎君。   〔小坂善太郎君登壇〕
  9. 小坂善太郎

    ○小坂善太郎君 私は、自由民主党を代表して、池田内閣総理大臣の施政方針演説に関し、若干の質疑を行なわんとするものであります。  池田総理が、組閣以来三年、内外の情勢に対処して、わが国の繁栄と民生の安定、国際的地位の向上について、着々治績をあげてこられましたことに対しては敬意を表するものでありますが、このたびの選挙を契機として、心を新たにして、その重責を全うされんがためには、内外の情勢に対する現状認識と、いかにこの事態に対処するかという姿勢の問題があると思うのであります。私はこれらの点について若干の質問をいたしたいと存じます。  まず、民主政治の確立と国会の正常化についてお伺いしたいと思います。  わが国の政治の進歩を考えまする場合に、政党を中軸とする議会主義の健全な進歩を考え、活力にあふれた民主政治のために、国会の正常化がなされなければならぬことは言うまでもありません。国会の正常化について、池田内閣は、組閣以来、寛容と忍耐をもってこれに当たってこられたのでありまするが、この寛容と忍耐にも、もとより一つの原則と方針がなければならぬと思うのであります。われわれ自由民主党が、常にきびしい自己反省をいたし、国民のための近代政党として前進せなければならぬことは当然でありまするが、一方、反対党の社会党の中に根強く巣くっているマルクス主義に対して、これに妥協せず、議会主義に徹した進歩のたてまえから、これを説得する態度が望ましいと思うのであります。(拍手)けだし、国の外交方針、防衛、教育、社会保障、経済の仕組み全般にわたりまして、社会党がマルクス主義によるところの社会革命思想を捨てざる限り、議会主義による正常なる国会運営は期待し得ないからであります。(拍手)しかもなお、百年前にマルクスが資本主義の崩壊理論を述べたのでありまするが、それがことごとく誤りであったことが今日証明されているからであります。(拍手)すなわち、今日の共産諸国の経済の停滞、農業の不作、人民の貧困な生活が、これを正直に証明いたしておるのであります。逆説的に言いますれば、今日、共産主義国は、マルクスがあれほど情熱を込めて非難した十九世紀の資本主義の方法をみずから推し進めているとも言えるのであります。生活水準を押えつけ、労働者から彼らの労働の所産を奪うことによって、労働階級から投下資本を搾取していると言えるのであります。  自由社会と共産社会の勝負は、ベルリンの土俵ですでに完全についております。労働者の天国と称せられる共産主義の国から命がけで西ベルリンへ逃亡する人々が、すでに四百万人をこえているという事実は、百年前のマルクスの理論が完全にくずれ去ったことを証明するものであると思うのであります。(拍手)人口の四五%を農民層に持ちまするソ連が、食糧が不足して輸入しておるのに対して、人口の八%の農民層を持つアメリカにおいて、農産物に余剰を生じておるという事実を私は興味を持ってながめたいと思うのであります。(拍手)この自由社会の進歩と繁栄の原因は、人間そのものが十九世紀以来絶えず進歩して、社会観念が変わり、資本主義が大幅に修正され、保守政治家の考え方が常に進歩しているからであります。マルクス時代の資本主義は修正され、今日世界を繁栄せしめておりまするものは混合経済ともいうべき新しい資本主義であります。フルシチョフ首相もこのことを認めまして、一九六三年の党大会の演説で、われわれも生産性の向上ということを考え、利潤を問題にすべきだと言っております。オスロに集まった四十二カ国の社会主義政党は、この新しい資本主義の進歩を認め、混合経済の長所を認めつつ、社会主義の新しい任務と進路について、共同宣言を発しておるのであります。この会議でただ一つ反対投票をしたのが実に日本社会党だけであったという事実は、注目に値することと思うのであります。(拍手)  このように世界の進歩に逆行しながら、何の革新ぞやと思うのであります。自民党を頭ごなしに保守反動ときめつけ、民社党を第二保守党などと冷評しながら、総評に言われれば、からだを張って国会に暴力をふるうことをあえてする、この今日の社会党の国会の運営に対して、切々たる信念を吐露し、世界の大勢を説いて反省を求め、国会正常化に協力を望むことは、過般の総選挙に際して自民党に託されたる国民多数の願いであると思うのでありますが、この点に関しまする総理の御所信を承っておきたいと思うのであります。(拍手)  次に、外交問題について御質問を申し上げたいと思いますが、この際、私の見る今年度国際情勢を申し上げ、総理の感想を承っておきたいと思います。  ケネディ大統領の暗殺は、平和な世界にとって一大痛恨事であったと思われます。平和共存と防衛の増強は両立し得る、米ソ間に、それぞれ相手方の力に関する誤算がない限り、世界は平和であり得るし、共存は可能であるとするケネディ大統領の強力なるリーダーシップによって、一昨年のキューバ事件を契機といたしまして平和ムードが流れ出したことは、まことに喜ばしいことでありまするが、平和戦略に関するケネディ・ラウンドは、引き続きジョンソン大統領の手によって行なわれるでありましょう。ソ連は農業問題の抜本的解決のために、原子力兵器の生産にかわって化学肥料工業に思い切った投資を行ない、ソ連も大砲よりバターへの政策に変わりつつあるやに思われます。ジョンソン大統領ケネディ大統領方針を受け継いで、軍事予算の削減を断行するという事実は、フルシチョフ首相のソ連共産党内における立場を強化し、緊張緩和という大勢にプラスするものと思われます。そして、平和共存を模索する米ソ両国の基本政策は、本年中変わりないと思われます。西側では、イギリスで総選挙が行なわれまするが、外交的には大きな変化はあるまいと思われます。ドゴールのフランスは、アメリカ、イギリスとの間に独自の道を進むでありましょう。しかし、米仏の利害関係対立は基本的なものにならないと思われます。西独は従来よりも一そう柔軟かつ現実的な外交方針をとるものと思われます。中ソ紛争も急速な解決策がなく、依然としてくすぶり続けるでありましょう。中共につきましては、このたびドゴール提案をのんだことで、中共の態度の柔軟性は見られまするが、共産主義国としての公式論を払拭することは困難と思われます。ベトナムの情勢も急には好転が望めず、ラオスも安定の道を見出しがたい情勢にあります。インドネシアの経済状態は、急に好転しそうにありません。マレーシアの問題の現実的かつ合理的解決の曙光が見えてまいりましたことはまことに喜ばしいことでありまするし、この点に関する池田総理の熱意を深く買いたいと思います。アジアにおいても共産主義が一枚岩の団結の威力を失った今日、従来の東西関係にかわって、経済援助を主軸とする南北問題がより一そう比重を重くしていくものと思われます。  このように今年の世界情勢の達観をいたしてみまするに、平和の希望はほの見えておりまするが、なお流動的であり、わが国としてはこの事態に対処して、常に国民的利益に合致した外交方針を機動的にとっていかなければならぬと思われるのであります。  社会党は、日本が中立主義をとることが世界平和並びに日本安全への道であるということをいまもって変えておりませんが、中立政策というものはあっても、中立主義というものはどこにもないのでございます。(拍手)あるいはある国の圧迫に対しまして、自国の安全を守るために中立政策あるいは非同盟政策というものをとる国は存在いたしまするが、外交政策全体を中立主義に置くものはほかにないのであります。(拍手)また、現実世界情勢から見ましても、日本が万が一にも中立と称して東西の力関係の外に立つときは、東西のバランスはアジアにおいては著しく破れまして、その結果、みずから求めて混乱を導入することとなるのであります。しかもなお、キューバ事件以後の米ソの間の平和ムードによって、共産側において従来目のかたきにしていたNATOを認め、ワルシャワ条約機構との間に不可侵の誓いが話し合われつつあるともいわれておるのであります。NATOと日米安保条約というものは同種のものであります。したがって、今日この流動する世界情勢下に立って、社会党の日米安保条約観についても十分に御研究を願いたいと思うのでございまするが、総理のこの点に関する御感想を承っておきたいと思います。  このように、社会党の言う中立主義が非現実的な幻想であることは、最近の国際情勢に関していよいよ明らかでありまするが、さて、フランスと中共との関係が大きな問題として登場してまいりました。ことに気の早い論者は、だから日本も中共を承認しなければバスに乗りおくれるということを言うのであります。日本社会党の議論を聞いておりましても、大体この論旨でありまして、国連におきまする中共の代表権問題と中共の承認問題とを混同して論じておるようであります。また、中共のみの問題を論じて、台湾における国民政府の存在を忘れているやに思われるのであります。社会党の言うがごとき国民政府抹殺論をなすことは、国家的利益を考える外交政策としてまさに百害あって一利なきものといわなければならぬと思います。(拍手ドゴール大統領の考え方にいたしましても、ここまでは考えておらぬと思われます。フランスの考え方は、中共と外交関係を結ぶ、台湾の国民政府との関係は従来のままにしておくということであって、二つの中国論に強く反発しておりました中共が、台湾のことには触れないと伝えられ、国民政府が今後どう出るかわからぬ状態といわれております。中国問題ではフランスとは比べものにならない歴史的な経緯と利害関係を持つわが国が、あたかも水鳥の羽音に驚くがごとく不用意な論議をなすことは、まさに日本政治家の国際感覚を疑われてもやむを得ないと思うのであります。(拍手)  言うまでもなく、今次大戦後に中華民国の蒋介石総統は、暴に報ゆるに徳をもってせよと言われ、この大声明のもとに日本の将兵を安全に故国に帰してくれたのであります。また、賠償を取らぬと言い、分割統治を反対されたとも伝えられております。なお、現在の国府は、台湾において一千百万人の人口を有効に支配しており、これだけでも国連加盟国中、上位に属する国であります。今日の国民政府が不遇な境地にあるということでこれを軽視したり、あるいはれんびんの情を持ったりすることは、もってのほかでありまするし、いささかでもそのようにとられる言動をなすということは、最も慎むべきことであると思うのであります。(拍手日本は忘恩の徒であってはなりません。  今日の中共、国府の関係は、第二次世界大戦とそれに続く冷戦の複雑なる結果生まれた、従来の国際法をもってしては定義しがたい新しい関係であると思うのであります。この点は非常に重要であって、ただ単に中共を承認しろ、代表権問題をどうするという議論が盛んに行なわれるのでありまするが、私は、この関係は、いま申し上げたように、従来の国際法をもってして簡単に割り切れる問題ではない、その国の利益を十分に考えて解決をしなければならぬと思うのでありまして、単純に、単独に、世界の冷戦とその緩和ということを考えないで解決できる問題ではない。すなわち、その国の利益に即しつつ解決していかなければならぬと思うのであります。  国際法上どうであるかと言いますれば、わが国国民政府を承認し、これと外交関係を持っているのであります。フランスフランスの立場でこの関係を処理し、日本日本の立場でこの問題を見ていかなければならないのであります。わが国としては、国府と十分な連絡をとりながら、国連の場と世界情勢の推移の中でこの問題を解決しなければならないと思うのであります。わが国国民政府も、ともに自由主義をもって栄えている国であり、ともに栄えんとする友好国として大目的を同じゅうしているのであります。現在の中共の教条主義的ともいわれる共産主義をいかに防止していくかということが、また方法論において問題であります。民主的な自由主義の国が繁栄していることを、日華協力して示すことも必要でありましょう。自由な政治体制のよさを、事実をもって示すことも必要でありましょう。また、貿易によって立つわが国が、隣接している中共と接触することの必要さも理解を求めねばなりません。日本の好まない全体主義下にある七億の中国民衆が、いつまでも今日のような窮乏をもたらす共産主義の体制下でがまんしているかどうかということは、中国民族がすぐれた素質を持っているだけに、いつかは変化がくるものと信じたいのであります。  わが国国民政府は、このような関係で、いかにすれば中共が平和愛好国として善隣の友好、繁栄を考えるに至るかという方法論について、ともに努力していかなければならないのでありまして、日本と国府のあつれきはそのまま中共の望むところであります。ビニロン・プラントの問題に見られるように、片方に対しては延べ払い、片方に対しては現金取引というようなことで、感情問題を惹起し、あるいは周鴻慶の問題のごときでも、あれほどやっかいな問題になり、日本の容共的行き方などと誤解を生みまするに至ったことは、最高政治指導者の接触の不足の問題として、はなはだ残念に思うところであります。このような誤解を与えたことにつきましては、大いに反省の要ありと思うのでありまするが、政府は、その長期的な見通しと所信を、説得力のある形で、無用な疑惑を生むような言動を極力避けながら、内外に表明し、国内世論の統一をはかってはいかがと思いまするが、総理大臣の御所見を承っておきたいと思うのであります。(拍手)  総理は、アジア外交、近隣外交を強調されており、私はこの点、心から敬意を表するものでありまするが、われわれがアジアの人たちと相互に持つ親近感と気安さ、あるいは説明を要せずして理解し合うこの感情は、大いに大切にしなければならぬと思うのであります。最近におきましては、一時いわれたアジアの孤児論は全く影をひそめ、特に国連の中におきましてAAの諸国からわれわれは信頼され、重きをなしてまいりましたことは御同慶にたえません。私は、国連におきましても、日本ができるだけAA的な考え方で行動いたしまして、AAの人たちの気持ちを日本の立場で表明することに心がけるのがよいと思います。このことは、ひいては対米、対欧外交に好影響を与えることになると信ずるのであります。従来国連外交の強化を心がけてきたのでありまするが、今後はこれと並びまして国連強化の外交が必要と思われるのであります。百十三の国連加盟国中、AAの国の中で先進国と称される二十七カ国の中にランクされる唯一の国でありまするわが国が、発足当時から加盟国数が二倍以上になった国連を強化し、アジア・アフリカの人たちとともにアジア・アフリカの繁栄を求むる声を世界の世論に強く反映せしむる努力をいたすべきだと思うのでありまするが、総理大臣の御所見を承っておきたいと思います。  日韓問題の解決につきましては、総理は特に強い意向を表明されました。日韓交渉に反対する社会党の諸君は、主としてこれを東西問題と見て、北鮮の側に立って反対されるようでありまするが、私は経済援助を主軸とする南北問題により重点を置いて見たいと思うのであります。ようやく独立した朝鮮が二分され、しかも、韓国において指導者の懸命なる努力にもかかわらず、経済、民生安定のために幾多の困難なる問題を内蔵しておりまするとき、これを単に遠くのアメリカまかせでなく、一衣帯水のわが国が、肉親のような気持ちで、まじめに、同じアジアの国の発展の問題として協力することは当然と思いまするが、総理の熱意のほどを承りたいと思います。  沖縄につきましては、われわれといたしましては、施政権の復帰に至るまで最大限に沖縄同胞の経済、民生の向上開発に協力していかなければならぬと思うのでありまするが、この予算におきまして十分な考慮がなされていると考えられまするか、首相のお考えを承っておきたいのであります。なお、日米協議会、日米琉技術委員会が、字句などの問題でいまだに発足しないのは遺憾であります。関係省を督促して至急に開かれるように御措置を願いたいと思います。また、マイクロ回線の問題も、いまだに料金が決定しないままに使用できないでおりまするので、この点も早急に解決をお願いしたいと思います。  われわれの住むアジアにおきましては、いまだに低い生活と疾病が多く存在するのであります。この問題を自分のこととして解決する気組みをわれわれは持たなければなりません。本年度予算におきまして、平和部隊の構想が芽ばえてまいりましたが、青年技術者の純真な手によって、農業や中小企業、また医療機関の発達が大いに促進されることを期待いたします。なお、これらの国の一次産品の買い付けにつきまして、メーズとかマイロ、あるいは綿、砂糖というようなものの開発、輸入ということにつきまして、もう少しくふうの必要があろうと思われます。ことに、今年三月ジュネーブにおいて開かれまする国連貿易開発会議の問題は重要であります。そこで、ここでは主として先進国とAAとの間に一次産品買い付けが問題になると思われまするが、AAであると同時に先進国でありまするわが国としては、いかなる態度で臨まんとするか、総理の構想を承っておきたいと思います。  日本が伸びてまいりまするために必要な輸出増進、経済外交の必要性は、いかに強調しても強調し過ぎることはないと思います。幸いにしてガット三十五条援用国は次々にこれを撤廃したのでありまするから、今後は、わが国自体の輸出体制を整備していかなければなりません。外貨不足の声が聞かれるたびに、輸出の必要性があらためて出てくるようなことではいけないのでありまして、国民全体が常に、輸出せんかなの気持ちを持つようにしなければならぬと存じます。しかも、貿易外収支の赤字がふえており、海運国日本といたしまして、自国船の積み取り率が非常に低下しているのは、この点に関する限り政策の貧困といわれてもやむを得ないと思うのであります。海運政策、観光政策等、貿易外収支の改善策に対して政府の構想を承っておきたいと思います。  なお、国際収支を考えまする場合、それが資本収支によって黒字となっておる構造上の問題に関しましては、いつかこれを打開していかなければならぬと思います。資本収支は、状況によりまして、資本の流出または利子支払いの増加等によって、急激に悪化することも考えられるのでありまするが、長期的な貝通しに立った国際収支改善策があれば承っておきたいと存じます。  次に、国内問題に入りまするが、まず当面の経済に関する諸問題、特に物価と賃金の問題についてお尋ねいたします。  現下のわが国経済が、開放体制への移行という国際的な課題と、消費者物価上昇国際収支の不安というひずみをかかえて、きびしい試練に直面していることは、何人といえども否定できない事実であると思います。これはわが国経済が先進国型の構造に成長発展する過程において、必然的に通過しなければならない一つの道程であることは、総理の言われるとおりであると思います。しかし、この試練を巧みに、しかも、筋を誤らざるように克服することが、今後の恒久的発展の道を開く前提でなければなりません。  私が特に強調したいことは、物価と賃金の関係であります。この問題が、今後のわが国物価の安定、輸出の増進、ひいては国民生活の向上の成否を決する一つのかぎであると言っても過言ではないと思うのであります。(拍手)私はもとより、わが国における賃金格差の是正の必要や生産性の向上による賃金水準の引き上げの必要を強く主張するものでありますが、しかしながら、生産性の向上は否定する、賃金は一律に二五%以上引き上げるというような、国民の常識を無視した賃上げが通るならば、賃金と物価の悪循環を招き、インフレに発展することは火を見るよりも明らかであると思うのであります。(拍手)大いに生産性を高め、賃金もその範囲で適度に向上させるとともに、製品価格を引き下げて、消費者に還元するということが、自由経済における賃金決定の大原則でなければなりません。(拍手)現在のわが国における組織労働者の賃金決定の過程を見まするに、経済事情や生産性に関係なく、スケジュール闘争によって毎年定期的に大幅な賃上げを続けており、それが惰性となっておるのが実情でありまして、かくては賃金格差の是正も困難となります。しかも、賃上げ闘争の中心に立つものは民間企業の労働者ではなくて、多くの場合に、政府関係機関職員あるいは公務員の団体であるのであります。(拍手)私は、公務員や公共企業体職員の給与改善の必要性を大いに感ずるものでありますが、これがわが国経済に及ぼす影響の重大性にかんがみて、真剣に検討すべき問題であるというのであります。私は、賃金政策におきまして、業種別、規模別あるいは年齢別、性別、そうしたものにつきまして、政府がこの統計を縦横に駆使して、賃金のあり方について長期的な見通しを立てる必要があると思いまするが、この点に対しまして御所見を承っておきたいと思います。  いま一つ、労働問題について承りたいことは、労働力の需給関係についてであります。最近の消費者物価上昇一つの要因は、生産性の低い部門、たとえば農業、中小企業、サービス業における労働力の不足、特に若年労働者の求人難による賃金の急上昇にあるといわれております。したがって、今後労働生産性の向上とともに労働力の流動化と、中高年齢層の活用ということが非常に重要なことであると思われます。この点について一そうのくふうを願いたいと存じまするが、労働大臣の御所見を承っておきたいと存じます。  次の質問は、財政に関する問題であります。昭和三十九年度予算財政投融資計画は、与党たる自由民主党の公約を忠実に盛り込んで、しかも、健全財政基調を堅持し、非常に内容の充実した予算であることは確かであります。(拍手)しかし、一部の論者はいろいろな角度から、若干の批判を加えておりまするので、私は三十九年度予算に関連して、二、三の質問をいたしたいと思います。  その一つは、減税についてであります。三十九年度は国税、地方税を通じまして、平年度計算で二千百億円以上の画期的な大幅減税を断行することといたしております。このような大幅減税にもかかわらず、一方において、消費者物価上昇等から見て、所得税の減税がなお不足であるとか、あるいは一方においては、開放体制への移行に対処する企業課税の減税とか、あるいは合理化に対する配慮が不足しておるという批判もあるのであります。また、毎年の減税にもかかわらず、国民所得に対する税負担の率が高まっているではないかという批判も、一部の論者からはあるのであります。  そこで、私は、これらの批判にこたえるために、むしろ今後の税制改正については、一定の見通し方針のもとに、体系的に長期的に実行する必要があるのではないかということを思うのであります。二千億円以上の大幅減税を実行いたしましても、部分的には不平不満はあるわけであります。しかし、それが一定の計画と目標を立てて、その一部の実行として理解されるならば、国民の大多数は納得すると思うのであります。三十九年度予算中にほ、このような意味におきましての長期計画の不足ということが、若干感ぜられるような気がいたしまするので、どうかこの三十九年度中に税制調査会におきまして、こうした問題に本格的にお取り組み願ったらいかがかと思っておるのでありまするが、御所見を承っておきたいと思います。  なお、減税に関連して承らなければならないのは、綱紀粛正と行政機構の問題であります。国民に能率よく奉仕する、いわゆるチープ・ガバメントの考え方を中央、地方を通じて、行政の能率化に反映させなければならぬと思います。臨時行政調査会がこの意味でできておるわけでありまするが、これは一体いつごろ答申を出されようと考えておられるのか、また、これが答申をした場合には、どう扱おうとしておるのか、総理並びに山村行管長官の御意見を承りたい。(拍手)  第二は、財政弾力性の問題であります。三十九年度一般会計予算が大型となり、従来以上に歳入を一ぱいに見積もっているために、大きな災害等があった場合には、補正予算財源に困るのではないかというようなお話が、いま河野君からございました。あるいはまた、後年度の歳出増加義務づけるような項目が多いので、将来の財政弾力性を失うのではないかというような議論もあるのであります。これらをさらに突き詰めてまいりますと、将来公債発行という不健全な財政に追い込まれるのではないかというような心配もあるようであります。そこで私は二つの点について御質問をいたしたいと思います。  まず私は、政府の各省におきまして、道路や港湾やあるいは住宅、社会保障あるいはまた新産業都市といったような長期計画が次々につくられておるのでありますが、これに見合う長期の歳入見積もりというのがあるかということなのであります。もちろん所得倍増計画があるわけでありまするが、いま申し上げましたような見地からいたしまして、各省庁の原局において、そうした長期計画をつくられます場合に、やはり歳入に見合った統一的な考え方の調整が必要であるのではないかということであります。この点につきまして政府の御所信を承っておきたいと思います。  その第二は、公債発行に対する考え方であります。一般会計の赤字公債発行すべきでないということは、これは論をまたないところでありますが、道路のような社会資本の建設につきましては、その一部の財源を公債に求めてもよいのではないかという議論もあるわけであります。有力にあるわけであります。私は、公債というものは一たび発行いたしますときは、その限度を押えることは非常に困難になる。その意味で非常に慎重にしなければならないと思っております。かつて高橋是清さんが大蔵大臣のときに、満州国が生命線なのか、あるいは三億の公債発行限度が生命線なのかということで、非常にがんばったのでありますが、とうとう押し切られてしまったことを思いますときに、やはりこの問題については非常に重要な、慎重な考慮が望ましいと思いますが、総理大臣、大蔵大臣の御意見を承っておきたいと思います。  次に承りたいことは、社会保障についてであります。  社会保障の充実が福祉国家建設のための大きな柱であることはいまさら言うまでもありません。三十九年度予算におきましても、これらに大きな重点が置かれておりますることはまことに御同慶にたえません。私は、今後の社会保障の課題は、現行の制度の内容をきめこまかく充実してまいりますると同時に、複雑にして非常なアンバランスになっております現行の仕組みを体系的に再編整備することにあると考えます。また、これは非常にむずかしいことでありますが、同時に非常に重要なことだと思います。この意味におきまして、三十九年度予算に社会保障総合研究機関の新設が認められましたことは意義のあることと思うのであります。しかしながら、私はこうした研究機関の研究にまつまでもなく、政府としては、ことに厚生省としては、総合的なこれらの社会保障の整備ということについて一つ見解を持たるべきであり、また、持っておられるのではないかと思うのであります。三十九年度予算にも、児童手当の創設の準備とか、あるいは重度身体障害者扶養手当制度の創設とか、いろいろ新しい構想がつくられておるのでありまするが、今後の社会保障につきまして、各種保障や年金をばらばらなものでなく計画的に整備することを考えておられるかどうか、この点厚生大臣にお伺いしておきたいと思います。  次に、教育についてお伺いいたしておきたいと思います。  それは高校生の急増に対応する大学の拡充についてであります。特に二年後には非常に急増した高校の卒業生が一挙に大学の狭き門をくぐるわけであります。これに対処して大学の拡充をはかることは国として当然なことであると思います。この場合、国立、公立大学の拡充をはかることはもとよりでありますが、この機会に私学の思い切った振興をはかることも重要であると信ずるのであります。(拍手)教育が公共的な事業であるとするならば、国はなお一そう積極的に私学を援助すべきでありますし、大学志望者の急増する機会に抜本的な私学振興対策を確立すべきであると思いまするが、この点に対する文部大臣のお考えを承っておきたいと思います。なおまた、農業近代化の大勢に応じて、農業高等専門学校を新設すべきであると思います。この点についても御所信を承っておきたいと思います。なお一点、僻地教育の振興策についてもこの機会に所信を明らかにされたいと思うのであります。  次に、農業政策につきまして若干お尋ねをいたします。  総理は、施政方針演説におきまして、農業の思い切った繁栄策を強調されましたが、農業近代化の中心的な施策は構造改善と思うのでありまするが、それには相当多額の資金を要し、その成否を決するのは国家及び地方公共団体の助成措置と長期低利資金の供給であります。三十九年度予算におきましては、それらの施策が大幅な前進を見たことは喜びにたえませんが、ほんとうに革新的な近代化を進めるためには、なお一そう積極的な配慮が必要と思うのであります。そのためには、私は、国の資金のほかに、農協系統の資金を出そう効果的に農村に還元すべきであると主張したいのであります。(拍手)農家から集めた農協系統の資金は、一兆数千億円に達しながら、農家への貸し付け金はその五割ないし六割にすぎないのであります。農林中金に預けられました資金の運用を見ましても、多いときには千数百億円の資金がコールに回されておる実情であります。私は、このような現状は、決して好ましいことではないと思います。農協系統の資金が農業振興に活用されない一つの理由は、資金コストが高いからであります。中間段階が複雑過ぎて経費がかかりまするために、そのため末端貸し出し金利が年一割といった高いものになり、農業生産にはとうてい利用できないものになっておるからであります。私は、この際、農協系統金融のあり方を再検討し、できるだけ低利で農民に資金を還元するように導く二とが、農業の近代化を促進する一つの道であると信ずるのでありまするが、農林大臣の御所見を承っておきます。(拍手)  次に、いま一点農林大臣にお伺いしたい点は、農業生産の選択的拡大についてであります。今後のわが国の農業の進むべき方向として、需要の伸びる農畜産物の増産を積極的に助長することが、農業基本法の一つの眼目となっていることは言うまでもないところであります。その代表的なものは、畜産と果樹園芸であります。三十九年度予算におきましても、これらの生産の助長と価格の安定には相当の配慮が払われておりまするが、全体的に見てきわめて低い比重を占めておるにすぎません。特に果樹の安定については、今後抜本的な施策を講じなければ、とうてい所期のような振興は期待できないと思うのであります。現在、バナナの自由化の影響もあって、一部の果樹栽培農家は、政府の施策に対してはなはだ失望しておるといっても偽らざることであります。私は、果樹につきましても、価格安定のための特別機構を整備するとか、需要の積極的開拓をはかるなど、効果的な対策の必要を痛感するものでございます。農林大臣のこの点に関する所信を承っておきたいと思います。  この際さらにお伺いいたしたいことは、多年問題点となっておりまする農地被買収者の問題についてであります。  戦後、わが国が今日の繁栄を築いたことにつきまして、農地改革の際、快く祖先伝来の農地を譲渡した旧地主各位の協力のあったことを忘れてはなりません。農地被買収者に対しまして、国家として何らかの報償措置を講ずることとしたことは、当然のことと思います。すでに政府は、三十八年度中に実態調査を実施中であり、近く完了するように承っておりまするが、私は、すみやかに必要な立法措置を講じ、この多年の問題に終止符を打つべきであると信ずるのであります。政府は、この問題をどのように処刑する決意であるか、総理の御所信を明らかにされたいと思います。  次は、中小企業対策であります。  これも、三十九年度は飛躍的な配慮が払われており、政府の強い意欲は十分にうかがわれるのでありますが、最近の経済情勢、特に金融の引き締めと開放経済への移行等の事情を考えますに、中小企業が苦境に立つことも、一面考えられるのであります。すでに昨年十二月におきまする手形の不渡りは、一昨年の十二月に比べまして、二割方増加しておるともいわれます。また、最近一部の地方では、中堅企業の倒産も伝えられております。私は、一部の論者の言うような三月危機などの心配はないと確信いたしますが、今後、細心の注意を払って、適時適切な対策を実行しないと、経済調整のしわ寄せが中小企業に集中されることを憂えるのであります。このためには、政府資金を動員して、政府関係の金融機関の融資量を増加すること、また市中金融についても、中小企業につきまして特別の配慮を払うように要請すること等が必要と思われまするが、私が特に要望いたしたいことは、中小企業者の手形割引に対する保証保険の思い切った拡充と、零細業者に対する無担保金融の実施であります。現存でも中小企業者の受け取り手形が高い金利を払って町の金融業者等によって割り引かれており、これが中小企業者の経費を大きく圧迫している例が多いのであります。今後金融事情が引き締まるにつれまして、中小企業者の手形割引が一そう困難になる場合も予想されるのであります。このような実情に対処して、中小企業者の手形割引に対する保証保険の制度を確立し、これを積極的に活用することが適切なる措置であると考えるのであります。  また、零細業者に対して国民金融公庫から一定の限度において無担保金融の道を開くことも、実情に即したあたたかい施策であると存ずるのであります。三十九年度予算におきまして、これらの点について若干の配慮がなされておりまするが、今後実情に応じてはこれを大幅に拡充することが必要と考えられます。通産大臣及び大蔵大臣の御所見を承っておきます。  さて、今日わが国の高度成長経済繁栄は世界の驚異とされておるのでありますが、開放経済への突入はまさに明治維新以来の第二の開国ともいうべき大事業でありまして、これに対しては並みたいていの覚悟ではおぼつかないのであります。一方、いわゆる安定ムードの中で国民の心の秩序がゆがめられ、凶悪犯罪や青少年の非行が社会に暗い影を投げております。悲惨な交通事故や人災といわれる災害が日ごとに報ぜられております。経済成長の中にはなやかな消費文明がつくられつつある反面、不健康な生活が芽ばえつつあります。われわれの生活をささえるもの、国を繁栄させるものは物質のみではありません。心もまた大きな要素であります。国民として喜びをともにするとともに、悲しみを分かち合う社会連帯の観念の醸成と、新時代にふさわしい国民道義の確立こそが今日ほど必要なときはなく、また、これこそが自由民主党政府に課せられたる重大なる使命であると申しても過言ではないと思うのであります。(拍手)よい個人がよい社会をつくる。よい社会がよい個人をつくる。個人と社会の相互連帯こそがわれわれの保守哲学でなければならぬと思うのであります。(拍手)われわれは社会機構のみを重視して、個人の尊厳を否定する社会主義者と、この点では明確な一線を画さなければならぬと思うのであります。(拍手池田首相の言う人つくりの根本義もまたここにあると存ずるのでありますが、総理の御所信を承っておきます。  われわれは敗戦の廃墟の中から立ち上がって十八年、りっぱな今日の日本を築き上げてきた日本国民の優秀なる素質を信じたいのであります。清潔な政治を実行し、綱紀を粛正し、物心ともにバランスのとれた社会を築き、中小小業、農業の繁栄に心を砕き、世界の中に対等に太刀打ちできる日本の企業をつくらなければなりません。完全雇用と福祉国家の建設というビジョンを明確に描きながら進まねばなりません。  このたびの選挙においては、昭和年代に生をうけた同僚諸君が多数当選されてまいったのでありますが、しかも、いずれもがことごとく自由民主党に所属されることは、私の心を明るくするものであります。(拍手)青少年の心をつかみ、婦人の気持ちをくんで、世界の中に尊重されるあすの日本人をつくり上げることは、われわれのつとめであると思うのであります。いまこそ自由民主党は、政府は、大いなる前進をなすべきときであると思います。総理の一段の精進を期待してやまない次第でありますが、御所見あらば承って、私の質問を終わります。(拍手
  10. 船田中

    議長船田中君) ただいまの小坂君の発言中、もし用語について不適当なるものがあれば、速記録を調査の上、適当の処置をとることといたします。   〔国務大臣池田勇人君登壇〕
  11. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。  御質問の第一点の国会正常化、まことに同感でございまして、私は論議を十分尽くし、そうして多数決の原則によることは年来の主張でございます。  なお、世界の社会主義国家におきまする経済政策についての御批判は、全く同感でございます。(拍手)  次に、中立主義についてのお考えも、私の申し上げております、中立主義は非現実的な幻想であるということは組閣以来たびたび言っておることでございまして、小坂君とは全くこれまた同感でございます。(拍手)  また、中共問題に対しましてのお考え方、特に最近のフランス政府のとらんとする措置に対するあなたの考え方は私も了解できる。私もそう考えております。特に中華民国に対しまするわれわれの考え方、すなわち終戦直後から今日までの中華民国のわれわれに対しまして示された好意に対して、われわれ国民全部、忘れてはおりません。私は、その意味におきまして、あらゆる誤解はこれを解消さして、今後とも両国の、中華民国とわが国との関係の増進にこん身の努力を傾けたいと考えておるのであります。(拍手)  次に、アジア外交、東南アジア外交につきましてのお考えでございまするが、今回のOECDへの加入、あるいは最近開かるべき世界貿易開発会議への日本の参加は、私は、日本世界に置かれたわれわれの使命を果たす最もいい機会であると思うのであります。われわれは軍備を持ちません。経済的には相当伸びております。この日本人の力を、いわゆる南北問題の解決に注ぐということが、日本民族の使命であると考えます。こういう考え方から、私は、アジア近隣外交あるいは東南アジア外交、AA諸国との外交を打ち立てていきたいと考えておるのであります。私が、日韓問題につきましての熱賛を示し、また、最近のマレーシア問題につきましてある程度の関与をいたそうとしておるのも、このいわゆる南北問題で日本経済力が少しでも役に立ち、世界の平和と繁栄に貢献する私の信念からきておるのでございまして、小坂君の外交理念と全く同一であるのであります。(拍手)  また、国際収支改善は、施政演説で述べたとおりでございます。  物価と賃、金との問題につきましても、これはやはり労使が話し合いによってやることは当然でございますが、その問にやはり科学的の資料が必要であることも、同様でございます。私は、単に労働者のみでなく、日本経済成長とまた国民各層の所得の上昇を見合いながら、確固たる科学的基準のもとに、労使が話し合いで進めることを期待するものでございます。  なお、中高年齢層の活用は同感でございます。  減税につきまして、一定計画をとり、体系的にやれというお話でございますが、大体その方向で税制調査会に諮問をいたしておるのであります。ただ、日本のように非常な高度成長をいたします場合におきましては、収入その他も成長の率によってよほど違いますから、やはりその場その場で適正な措置をとることが、一番国民に合った政治と私は考えておるのであります。だからといって、計画を全然持たないというわけのものではございません。  なお、臨時行政制度調査会の答申でございますが、私はおそくとも六、七月、八月ごろまでには出てくると思います。その答申を見まして、いわゆる経済上昇、国運の伸展に伴いまして、その制度と運営が合理的に行なわれるよう期待してやまないのであります。私は、この臨時行政調査会の方々が実際の問題をよく頭に入れられ、今後いかに解決したら有機的な行政組織ができるかをお考え願いたいと念願しておるのであります。  なお、公債発行につきましていろいろ議論がございますが、私は、先ほど申し上げましたごとく、三十九年度で公債を発行することは差し控えまして、しかし、公債発行につきまして小坂さんがお考えになるほど、そうかたく考えるほどのこともないんじゃないか。だといって、公債発行論にくみするわけじゃございません。やはり財政経済の事情、世界情勢を考えながら、健全財政を基本としながらやっていくことがいい。しかし、健全財政と申しましても、いま特別の公団等には公債を、政府保証債発行しておるのであります。また、世界各国の状況を見ましても、相当一流国では公債を一般会計で発行しているのが例でございます。私は、あなたのようにかたく考えなくてもいいと思いますが、できるだけ健全な方向ではいきたいと思っております。  なお、農地報償の問題でございますが、本年三月までに調査を完了いたしまして、その結果によって、できるだけ早く措置を講ずる考えでございます。  なお、国の国策のあり方、いわゆる福祉国家、私のいう高度福祉国家の建設は、お話しのように、物質面だけの問題ではございません。私は物質、経済力を伴った上に、ほんとうに豊かな情操、高い知性、たゆみなきたくましい意思を持ったりっぱな国民をつくることが最後の目的であると思うのであります。私が所得倍増を唱えたのは、その最後のりっぱな国づくり、人つくりへの手段でございまして、私は目的はりっぱな人をつくる、高度福祉国家、これが理想であると考え、全く意見を同じくするものでございます。(拍手)   〔国務大臣田中角榮君登壇〕
  12. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 小坂さんにお答えいたします。  第一は、沖縄に対する問題でございますが、御承知のとおり、三十五年一億、三十六年五億、三十七年十億、三十八年十九億というように、沖縄援助費につきましては十分な配慮をいたしてまいったわけでありますが、三十九年につきましては、二十億円の予算を組んでおるわけであります。それからマイクロの問題は、現在調整が行なわれつつありますので、近く結論が出ると思っております。  それから第二は、減税問題でございますが、減税につきましては、今後長期減税計画を立ててはどうかということでございます。御承知のとおり、歳出の面については、各省でも、また政府自体が長期計画を法律で明定をいたしましたり、いろいろつくっておりますが、税に対して相当長い期間にわたって長期的な減税計画をつくるということについては慎重に考えなければならないと考えております。税制調査会経済計画の審議会等の意見も聞きながら、安定的な経済成長に対する考え方や、また国民所得の状況等、非常に広範にわたって検討をしなければならない問題でありまして、現在すぐ長期減税計画を立て得るかどうか御答弁できないと思います。  第三点は、昭和三十九年度予算に関して、まあ大体いい予算だと思うけれども、一部の方々は財源を目一ぱいに見積もっておるので予算弾力性がなくなっておるということに対して、長期歳入見積もりをつくってはどうかという御質問でありますが、先ほどもお答え申し上げましたとおり、三十九年度は過去の実績、経済見通し等から考えまして、目一ばいというよりも、通常の見積もり内にある歳入というふうに考えておるのでありまして、正常な歳入を考えておるわけであります。長期歳入見積もりという問題に対しては、検討いたしたいと考えます。  それから、輸出体制と国際収支改善問題に対しての具体策を示せというお話でございますが、御承知のとおり、開放体制に向かいますので、今後為替制限によって国際収支を安定せしむるということができませんので、かかって輸出の振興にあるわけであります。海運対策、観光政策等に対しては、三十九年度予算で御承知のとおり、格段の施策を行ない、貿易外収支等の改善に対しても、積極的な施策を行なっておるわけであります。  第五点は、中小企業金融の拡充についてでございますが、通帳大臣からお答えがあると思いますけれども、中小企業信用保険公庫への四十五億の出資等の施策にも見らるるとおり、中小企業の金融の問題に対しては、十分なる施策を行なってまいりたいと考えます。(拍手)   〔国務大臣赤城宗徳君登壇〕
  13. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 農山漁村の体質を改善することを強力に推し進めろ、まことにそのとおりでございます。そのために予算あるいは融資ワクを広げたらいいではないか、おはかりしておる予算案等に関係してその方面も進めております。特に御指摘の面は、農協系統の資金が系統外に流れているものが多いのではないか、こういうことでございます。事実一兆四千億円ばかりの農協関係の貯金がありますが、そのうち組合員のほうへは六千五百億円でありますから、確かに系統外に流れておるのがございます。これにつきましては、御承知のように、財務処理基準令というようなものがありまして、これによって系統のほうへ流すよう極力勧奨いたしておりますが、お話でございますので、さらに一そうその点は進めていきたいと思います。  なお、農林関係に資金を還元するという意味におきまして、御承知のとおり、昭和三十六年から農業近代化資金を設けまして、ことしはそのワクを六百億円に広げたわけであります。さらに、公庫関係では千七十億、あるいは無利子の金では四十五億と、できるだけ融資のワクを広めて、構造改善を中心とした体質改善のほうへ進めていきたい、こう考えております。  第二のお尋ね、選択的拡大一つであるところのくだもの、果実の流通あるいは価格対策に欠くるところがあるんじゃないか。実は、この点につきましても私ども非常に苦心をいたしておるのでございますが、各大消費地あるいは府県等におきましても、生産調整対策協議会等を設けまして、出荷の調整等をいたしており、あるいはリンゴ等につきましては、保管、貯蔵、こういう方面のモデル施設もいたしております。また、もう一つは、海外需要の関係から、海外の市場を開拓すべきではないか、こういうことでございますので、ジェトロを通じて宣伝あるいは市場の調査等を進めておる次第でございます。なお、価格の安定、流通対策等につきましては、御趣旨の強い御意見に沿うように一そうつとめていきたいと思います。(拍手)   〔国務大臣福田一君登壇〕
  14. 福田一

    国務大臣(福田一君) お答えをいたします。  一次産品の買い付けの問題でありますが、これはことしの非常に大きな問題になろうと思うのでございまして、国連貿易開発会議等においても重要議題になる予定でございます。われわれといたしましては、鉱業品とか木材については開発事業を進めてきておりますが、今後も御趣旨に従って処理をいたしてまいりたいと思っております。  なお、輸出体制の整備の問題についてお話がございました。まことにごもっともでありまして、日本貿易の姿を見ますと、現在日本の産業が輸出しておりますものは、軽工業が四三%、重工業が四八%でございますが、しかし、諸外国の例、先進国の例は、化学重工業品が七〇%を占めておるような状況であります。こういうところから見ますと、日本の産業体制の整備ということも必要でございます。また一方、これは戦前と戦後では経済の姿も構造も違っておりますが、戦前におきましては、日本の総生産の一九%が輸出に向けられておる。ところが、今日におきましては、総生産のわずか九%前後しか輸出されておらないという姿であります。これが戦前のような姿、いわゆる二〇%前後になったら、日本経済の運営は、よほどよりよくなるものであろうとわれわれは考えるのでありまして、こういう意味合いにおいて、私たちは、国民の皆さまにも十分認識をしていただき、輸出に一そうの力を出すようにお骨折りを願いたい、かように考えておるところでございまして、実はこういう意味では六月二十八日を貿易記念日として去年からこれを実施いたしておりますが、今後ひとつ皆さん方に格段のお骨折りを願いたいと思っておるところであります。  また、金融問題でございますが、金融問題につきましては、政府関係の三機関が占めておりまする貸し付け額は、中小企業金融向け九%でありまして、残りの九一%は一般の市中銀行が貸し付けを行なっておるのであります。したがって、この中小企業に対する金融問題を論ずる場合には、この市中銀行の問題を一そう大きく取り上げていかなければなりません。私たちは、市中銀行の一そうの協力を得つつも、また、政府機関が十分そういう面に協力をするように予算措置をとってまいったつもりでございます。  なお、手形割引の保証保険の問題、また、このいわゆる無担保金融の問題については、大蔵大臣からもお話がありましたが、われわれは一そうこれを強力に進めてまいりたいと考えておるところでございます。(拍手)   〔国務大臣小林武治君登壇〕
  15. 小林武治

    国務大臣(小林武治君) わが国の社会保障の構想は一応出そろったのでありますが、そのおのおのの制度の発足がばらばらであったのでございまして、したがって、お話のとおり、各制度の間の連絡調整というものがきわめて不十分であります。私どもは、今後これらの内容を一そう充実するとともに、各制度の総合調整というものを考えることが、今後の大きな課題だと思っておるのでございます。したがいまして、社会保障研究所が発足しましたならば、これらの制度を基礎的に、総合的に、体系的に研究をしてもらいまして、今後のこれらの制度の総合調整、こういう方面に資したい、かように考えておる次第でございます。(拍手)   〔国務大臣灘尾弘吉君登壇〕
  16. 灘尾弘吉

    国務大臣(灘尾弘吉君) お答え申し上げます。  まず、大学生の急増対策、これに関連する私学振興についてのお尋ねでございますが、お話のとおりに、いわゆるベビーブームの波が大学に近く押し寄せてまいるわけでございます。文部省といたしましては、国立、公立、私学を通じましてこれが対策を樹立するために鋭意検討をいたしておるところでございます。もちろん、私学の努力に期待するところも大きいのであります。したがいまして、私学振興という問題が一そう重要性を加えてきたわけでございます。御承知のように、今日大学生の約七割は私学に籍を置いております。六十四万人といわれておるのであります。このような国民の大学教育に対する熱意ないしはこれに対する私学の役割りを考えました場合に、ただ従来のごとき私学振興方策だけで十分であるかどうかというところに大きな問題があろうと思うのであります。私ども、私学振興対策につきまして、従来の諸方策のほかにさらに基本的に考えてみたい、さように存じておる次第であります。  次に、農業高等専門学校についてのお尋ねでございます。この高等専門学校は工業高等専門学校から出発したわけであります。来年度設置せられる、予算案においてお願いをいたしておりますものを含めまして、国立の工業高等専門学校についてはどうやら大体目鼻がついたのじゃないかと思うのであります。しかし、お話のとおりに、今日の農業の近代化に伴いまして、農業方面の中級技術者を養成する、この御要望が強いのであります。われわれといたしましては、農業、さらにはまた水産、あるいは商船、こういうような要望の多い科目につきまして、これが実現について検討をいたしておるところでございます。  第三に、僻地教育振興の問題でございますが、これにつきましては、すでに十年来、僻地の学校の教育内容の改善、あるいはまた、教育条件の整備充実ということで年々努力を重ねてまいっておるところであります。最近の学力テスト等の結果によりますれば、僻地の学校においてすこぶる優秀な成績をあげておるところもあるというような事例を見まして、まことに意を強ういたしておる次第であります。一そう努力いたしまして、教育内容の改善、あるいはまた、教育条件の整備を進めてまいりたい。明年度予算におきましても、僻地の小学校に対する教員定数の配当についての改善でありますとか、あるいはまた、中学校あるいは高等学校の寄宿舎の制度についての予算でありますとか、これらは従来よりも進めておるわけでございますが、さらに今後とも努力してまいりたいと存じております。(拍手)   〔国務大臣山村新治郎君登壇〕
  17. 山村新治郎

    国務大臣(山村新治郎君) お答え申し上げます。  臨時行政調査会の委員の方々の任期は一応この三月までということになっておるのでございますが、発足が約七カ月ほどおくれた次第であります。したがいまして、このたび約六カ月延長の法案を提出いたしておる次第でございます。ことしの九月までの間には必ず答申がなされることと考えております。  なお、その答申の扱いにつきましては、法律の命ずるところによりまして、十分尊重いたしまして善処するつもりでございます。(拍手)      ————◇—————
  18. 船田中

    議長船田中君) この際、暫時休憩いたします。    午後三時三十二分休憩      ————◇—————  〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         法 務 大 臣 賀屋 興宣君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 小林 武治君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  福田  一君         運 輸 大 臣 綾部健太郎君         郵 政 大 臣 古池 信三君         労 働 大 臣 大橋 武夫君         建 設 大 臣 河野 一郎君         自 治 大 臣 早川  崇君         国 務 大 臣 佐藤 榮作君         国 務 大 臣 福田 篤泰君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君         国 務 大 臣 山村新治郎君  出席政府委員         内閣官房長官  黒金 泰美君         内閣法制局長官 林  修三君         総理府総務長官 野田 武夫君         経済企画庁調整         局長      高島 節男君