○竹谷
委員 さて、この尽力
行為等
処罰に関する
法律は、
大正十五年に制定されましてから、
労働運動や
小作争議にきわめてしばしばたくさんの事例において
適用になっておる。それを今度は強化をする、そして
大衆運動に
弾圧を加えるための方途としてこれを使うのではないかと、こういう疑念が
労働組合の一部その他に行なわれておるのでございます。確かにこの第
一条第一項は非常にたくさん
適用されている。第二項常習のほうはあまり通用がなかった。一件もなかったというような当局の
答弁があるようでございまするが、これは過去における事例であって、この常習というものは
労働運動などにはあり得ないという先ほどの御
答弁ではございましたが、このような疑念が非常に多いのでございます。当局は、この
法律は
暴力団答を
対象にしたものであって、健全な正常なる
労働運動や
大衆運動に
適用するのではないということを口をすっぱくして
答弁されておりまするが、なかなかそういう危惧の念が去らないのである。
ところで、私は法務
大臣に伺いたいのでありますが、そのような懸念がある。むろん、
検察庁あるいは警察の人々も非常に民主化されて、だいぶん昔とは変わってまいりました。しかし、その民主化の程度が十分に徹底的に行なわれたとはまだ断じ得ないのでありまして、このような
法律の
規定が乱用せられるおそれなしとは言えないのであります。したがいまして、
政府は、
暴力団その他の悪質なるちまたの
暴力を駆逐しようとするものであって、正常なる
労働運動や
大衆運動には一指も染めるものではないということを、質問ごとにはっきりと
答弁をしておるのであるが、いざとなったらどうなるかわからぬという
心配がある。もしそういう
心配のないものであるならば、その点をひとつ明確にしたらどうか。
委員会で
答弁の中で言っただけでは不十分だ。この条文の中にそういう
意味のことを入れるほうが、むしろ、この
法律の目的とする
暴力団その他の集団的悪質な
暴力追放のための純粋の
規定だ、何ら他意はないということが明確になるのではないか、こう
考えるのです。
そこで、いろいろな
法律を調べてみますると、警察官職務執行法という
法律がある。これは
昭和二十三年にできたものであり、二十九年に
改正になっておりまするが、この警察官職務執行法という
法律の第
一条に、「この
法律は、警察官が警察法に
規定する個人の生命、身体及び財産の保護、
犯罪の予防、公安の維持並びに他の法令の執行等の職権職務を忠実に遂行するために、必要な手段を定めることを目的とする。」第一項にこう書いて、第二項には、「この
法律に
規定する手段は、前項の目的のため必要な最小の限度において用いるべきものであって、いやしくもその
適用にわたるようなことがあってはならない。」ということをきびしく訓示してあります。また破壊活動防止法、これは
昭和二十七年に制定せられたのでありますが、これの第二条、第三条にも同様の趣旨の乱用防止の
規定がある。第二条には、「この
法律は、国民の基本的人権に重大な
関係を有するものであるから、公共の安全の確保のために必要な最小限度においてのみ
適用すべきであって、いやしくもこれを拡張して
解釈するようなことがあってはならない。」
〔
委員長退席、鍛冶
委員長代理着席〕
第三条に、「この
法律による規制及び規制のための調査は、第
一条に
規定する目的を達成するために必要な最小限度においてのみ行うべきであって、いやしくも権限を逸脱して、思想、信教、
集会、結社、表現及び学問の自由並びに勤労者の団結し、及び
団体行動をする
権利その他日本国
憲法の保障する国民の自由と
権利を、不当に制限するようなことがあってはならない。」第三条の第二項には、「この
法律による規制及び規制のための調査については、いやしくもこれを
適用し、
労働組合その他の
団体の正当な活動を制限し、又はこれに介入するようなことがあってはならない。」と、このように破防法には二カ条にわたって
規定があります。また、これは成立をいたしませんでしたが、政治的
暴力行為防止
法案の第三条にも、「この
法律による規制及び規制のための調査は、第
一条の目的を達成するためにのみ行なうべきであって、日本国
憲法の保障する国民の自由と
権利を不当に制限するようなことがあってはならない。」第二項には、「この
法律による規制及び規制のための調査については、いやしくもこれを濫用し、正当な集団示威運動、集団行進、
集会その他の
団体活動及び適法な請願、陳情を制限するようなことがあってはならない。」こう
規定してある。
ところで、この三つの
法律は、いずれも
刑罰法というよりも取り締まり法、
犯罪防止法のような
規定であるから、まあ訓示
規定もよかろう。しかし、この
暴力行為処罰法は
刑法の特別法であるから、その中にこのような
規定を置くのは適当でないという
法律制定の技術上の問題があろうかと思うのでありますが、しかし、軽
犯罪法にも書いてある。軽
犯罪法は申すまでもなく
刑法の特別法であります。この軽
犯罪法第四条には、「この
法律の
適用にあたっては、国民の
権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを
適用するようなことがあってはならない。」このように軽
犯罪法にも
規定がある。このようにして、人民の自由と
権利あるいは大衆
行動に対して乱用を防止する
規定を諸般の
法律に含んでおるのでございまして、
政府の言うがごとく、この
暴力行為等処罰に関する
法律等の
改正法案が、真に
暴力団やあるいは不良少年団や町の
暴力、そして
社会生活の不安を来たすような、そういう憎むべき
暴力の予防、根絶にあるとするならば、世間の疑惑などを一掃するように、このような正常なる
労働組合の運動あるいは大衆
行動等に対しては乱用しない、また国民の自由と
権利は十分守る性質のものであるということを、この
暴力行為処罰法の中に
規定することが、国民に対してほんとうに純粋の
暴力処罰であるということの確信をはっきりここに打ち出すためにも、また、この法の施行が円滑に行なわれ、そしてこの法の目的が十分達成できるようにするためにはるかに賢明ではないか、こう私は
考えるのでありますが、
政府はこれに対してどういう御所見を持っておられるのか、ひとつ十分考慮してもらいたいと思うが、法務
大臣の御見解を承りたいと思うのであります。