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1964-03-19 第46回国会 衆議院 法務委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月十九日(木曜日)    午前十時二十五分開議  出席委員    委員長 濱野 清吾君    理事 唐澤 俊樹君 理事 小島 徹三君    理事 三田村武夫君 理事 神近 市子君    理事 細迫 兼光君       大竹 太郎君    亀山 孝一君       田村 良平君    千葉 三郎君       中垣 國男君    田中織之進君       松井 政吉君    山本 幸一君       横山 利秋君    竹谷源太郎君       志賀 義雄君  出席政府委員         法務政務次官  天埜 良吉君         検     事         (民事局長)  平賀 健太君         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君  委員外出席者         検     事         (民事局第三課         長)      香川 保一君         専  門  員 櫻井 芳一君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  刑法の一部を改正する法律案内閣提出第一二  八号)  不動産登記法の一部を改正する法律案内閣提  出第五八号)(参議院送付)      ――――◇―――――
  2. 濱野清吾

    濱野委員長 これより会議を開きます。  刑法の一部を改正する法律案を議題といたします。  前会に引き続き質疑を行ないます。竹谷源太郎君。
  3. 竹谷源太郎

    竹谷委員 身のしろ金目的誘拐罪頻発をする、こういう情勢下にありまして、この犯罪に対する法律整備する、また法定刑引き上げて、犯罪予防し、そして制圧しよう、こういうことはもとより必要ではありますが、いま刑法全面改正を前にして、刑法改正するというよりも、むしろ特別法をもってこれをやったらいいのではないか、道義的なこうこう法律を特につくって、このよう犯罪を防遏するのであるという態度を示すほうが、社会に対する警告の意味からも、また不安を除去する上からも、かえって効果があるのではないかとも考えられますが、符に刑法全面改正を前にして刑法そのもの改正するという手段に出たのは、どういう理由からであるか、まず、お尋ねをいたしたいと思います。
  4. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 お尋ねの点はまことにごもっともでございまして、刑法全面改正を前にいたしまして、特に刑法の一部改正をするということにつきましては、御承知のとおり事件頻発してくるというこの現状を正視する立場に立ちますことは当然でございますが、特に昨年はこの種の事件が数件集中して発生しているという実情でございまして、例の吉展ちゃん事件、これは未検挙になっておりますが、いまだに生死行くえ不明でございますが、この事件の前後、世論のこの事件に対する盛り上がりと言いますか、これは朝日、毎日、東京その他一流新聞がそれぞれ社説を掲げ、記事に取り上げ、またいろいろなコラムのところに論評をいたしておるので、世論がこの問題に関連してわき立っておるということがうかがえるばかりでなく、投書欄を見ましても、かなり国民の声がこの問題に集中しておるのでございます。もちろん、こういう事情を反映してのことでございますが、さらに国会におきましても、衆参両院におきまして非常に熱烈な私どもに対する激励のおことばがあったわけでございます。こういうものを背景といたしまして、私どもはこの立案は急速を要するといういうふうに判断をいたした次第でございます。  なお、特別法でつくることがより効果的であるかどうかという点につきまして、これも私どもとしましては慎重に検討をいたしたのでございますが、刑事罰でございますので、事は明確でなければならぬということと、この法律性質としまして、刑法に書かないで特別法に書きますことは、いわば一つの臨時法的な、また一般刑法系列の中に入れますのには、やや臨時的な意味を持った場合、そのときの特殊な情勢に対処するというものは特別法で書くというのが相当であろうと思うのでございますが、身のしろ金目的誘拐罪のごときものは、そういう臨時的な性質のものではございませんで、このよう社会情勢が複雑になってまいりますと、今後はむしろもっと規模の大きなものが予想されるよう状態でございます。そういたしますと、この種の罪は臨時的、特別的なものじゃなくて、恒久的な性質を持った犯罪だというふうに思うのでございます。そういう性質犯罪でございますれば、これは当然刑法系列に入れて、現に刑法三十三章はその趣旨規定でございますので、これの整備拡充をはかるというのが、立法政策上当を得たものであると思うのでございます。それが特別法によらないで刑法のほうへ持ってきた理由一つでございます。  それからもう一つ理由は、刑法系列の中に入れますと、多くのことをこまごまと条文を幾つも立てて実現をしませんでも、刑法の三十三章の中に入れることによって、その罪の性質というものはおのずから体系的にきまってくるわけでございまして、一部改正というよう最小限度改正にとどめます場合には、そういったよう既成の概念、既成の判例、学説、そういうものをすべて援用できるよう状態において最小限度の手直しをしていくというのが、立法政策上策を得たものである、これが第二の理由でございます。  かようにいたしまして緊急性必要性、そういうものを考えましたときに、刑法全面改正の作業は進行はしておりますものの、今後数年を要することは、これは予想にかたくないのでございまして、さように見てまいりますと、この緊急度というものも、数年を待つことはとうてい世論にこたえるゆえんではない。かよう考えまして刑法の一部改正という方法で、しかもこの罪を全面改正を待たずして規定する、こういうふうに処理をいたした次第でございます。
  5. 竹谷源太郎

    竹谷委員 この種の犯罪は臨時、一時的なものではない。現在の社会情勢から推して、社会生活が複雑になり、犯罪の態様も複雑怪奇化していく。こういう情勢下において、将来の見通しとしても恒久的な立法が必要である。したがって、刑法の一部改正としてやるほうが妥当であるという見通し、並びにその他の刑法全体の体系としての整備上必要であるというような点でよくわかりましたが、そのように将来この種犯罪が今後も頻発するおそれがある。こういう情勢下にありまして、この罪に対して、法定刑引き上げることによって、厳罰によって予防、防遏しよう、こういう目的で今回の改正がなされるように承るのであるが、しかしながら、このよう犯罪防止につきまして、これはこの種犯罪ばかりではございませんが、単に厳罰をもって臨むというだけでは、犯罪予防並びに社会の不安を除く手段としては不十分である。あらゆる刑事政策上の手段が必要であると思うのでありますが、そのためにはどのよう方策を、刑法の一部改正によって法定刑引き上げ厳罰にするというだけではなくて、もろもろの社会的、政治的、経済的、文化的な手段方法をもってこれに対処する心要があろうかと思うが、そういう点については法務省はどんなお考えを持っておるか、その点を伺いたいと思います。
  6. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 犯罪防止方法といたしまして、あらゆる施策の総合的な推進ということがきわめて緊要でございまして、ひとり刑罰引き上げというような威嚇的な方法のみが唯一のものでないことは、私どももよく承知をいたしておりますし、また、この犯罪防遏のための環境の調整とか諸施設整備というようなものは、法務省の、私ども所管外行政分野にもまたがる問題であると存じます。先般もそういう御趣旨の御質問を受けたのでございますが、まさにそのとおりでございます。  しかしながら、法務省という立場だけから見ましても、私はかねがね考えておるのでございますが、すべて犯罪というものは、すでに発生しました場合には、これをきわめてすみやかに検挙いたしまして、適正な処罪実現する。これが将来への犯罪予防に役立つのでございまして、これなくしては、どうにも犯罪に対処する最も良策とは言えないと思うのでございます。現に吉展ちゃん事件のごときものも、いまだに未検挙状態になっおりますために、世の母親の心痛の種になっておりますことは御承知のとおりでございます。こういう事件は早く犯人検挙して、適正な処罰をするということが大事でございます。しかしながら、捜査検挙と申しましても、やはりいろいろな事情がございまして、おのずから限界があると思うのでございますが、この点につきましては、検察、警察捜査機関は全力をあげまして対処してまいりたい所存でございます。  ところで、さよう努力をいたしましても、たとえばこの種の身のしろ金を要求するよう行為が、現行法のもとでは恐喝罪というようなことで処断をされておる。これは一体恐喝的なものであるかどうかというような、罪の本質について犯罪学類型的にこれを調べてみますと、とうていその恐喝罪というよう範疇ではまかない切れない罪である。最も悪質なものであるということが学問的にも実際的にも言い得るのでございます。そういたしますと、法を整備していくということもまた私ども職責であるというふうに考えるわけでございまして、犯罪防遏のためには、あらゆる施策を総合的に推進しなければなりませんが、とりわけても、犯罪そのものに対する刑罰が適正な法定刑となっておるかどうかということは、絶えず法務省という立場からいたしましては検討いたしまして、もしそれが不十分であるならば、これは十分なものに手当てをしていくということでなければならぬと思うのでございます。そのあとのほうの私ども職責の一環といたしまして、この法律の提案を考えた次第でございます。
  7. 竹谷源太郎

    竹谷委員 吉展ちゃん事件等も未検挙になっておりますが、いまの答弁にもありましたように、犯罪予防のためには、犯罪を的確敏速に検挙するのが、何といっても予防効果が非常に甚大であると思うのでありまして、昨年なども、ああした事件頻発に対処いたしまして、検察庁なりあるいは警察庁なりがどのような具体的な的確敏速なる捜査のための手段あるいは施設をしたか、そしてすみやかに検挙するよう方策を講じたのであるか。これがやはり予防の一番効果的な手段であろう。やったら、すぐ見つかってつかまるのだということになれば、非常に予防効果が大きくなるのです。具体的に捜査のための施設あるいは手段方法等について何か新しい非常に効果的な方策を講じているかどうか、また今後そういうような点についてどういうお考えを持っているか、お尋ねしておきたい。
  8. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 その問題につきましては、主として警察分野に属するのでございますが、私の仄聞しておるところによりますと、あの種の事件検挙取り締まりの諸方策につきまして、警察のほうにおきましてもきわめて反省しなければならぬ点が多々あったようでありまして、刑事警察の再認識、これの強化というようなことがその直後に打ち出されておりますし、警察研究所におきましても、誘拐罪実態を究明し、警察官にこれを徹底させる。また捜査方法犯人検挙方法等につきましても、実証的な研究並びにその指導方針といったようなものを打ち立てるべく努力をしておるということを私どもも聞いておるわけでございます。仰せように、犯罪の発生次第できるだけすみやかに犯人検挙する、これが警察としてはまずなすべきことであると存じます。これを受けて立ちます検察庁といたしましては、証拠の的確な収集をいたしまして、すみやかに処分をきめ、適正な刑の実現を裁判所を通じてはかっていく、これが検察官の任務でございます。あの事件を契機といたしまして、警察におきましては、いま申したような諸方策がとられておるのでございまして、検察庁におきましては、この種の事件実態調査並びに科刑に対する法定刑引き上げ犯罪新設等につきまして、熱心にわれわれにも要望いたしておるのでございまして、検警ともにこの種の事件につきまして熱意と意欲を燃やしておるのが現状でございます。
  9. 竹谷源太郎

    竹谷委員 何かこの種犯罪検挙のために、検察庁あるいは警察庁で新しい設備、施設考えられたかどうか、そういうのをやっているかどうか、そういういい案がありますかどうか、もう一回御答弁願いたい。
  10. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 私どもの聞いておりますのでは、警察庁の企てとしましては、この種の事件に携わります刑事さん方を集めまして、捜査上の特別訓練を施したというふうに聞いておるのでございますが、そのほか、いろいろ各県の警察におきましては、さらに検察庁などとも連絡をして、いろいろな手段刑事の再教育というような形の施策を進めてきておると思うのでございます。私の聞いておりますことはその程度でございますが、もし必要がございましたならば、警察庁からさらに詳しくお聞き取りを願いたいと思います。
  11. 竹谷源太郎

    竹谷委員 次に、今度の改正対象になっておりませんが、刑法第二百二十五条の「営利、猥褻又ハ結婚目的」もない、また二百二十六条の「国外ニ移送スル目的」もない、そして人を略取誘拐したという場合は、刑法のどこに該当しますか。
  12. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 現行法第三十三章の「略取及ヒ誘拐ノ罪」は、およそ略取誘拐はすべてこれを罰するというたてまえをとっておりませんので、未成年者につきましては、これは目的のあるなしにかかわらず誘拐罪が成立するということが二百二十四条に規定してございます。二百二十五条は、未成年者だけでなく、おとなも含むのでございますが、おとなにつきましては、営利、わいせつ、結婚の三つの目的を持ってやった場合だけでございまして、それ以外の目的はこの二百二十五条からははずしておる。もう一つは、国外移送というのが二百二十六条にございます。この目的対象の人は子供、おとなを問わないのでございますが、この四つの目的以外のおとなの拐取罪につきましては、現行法はこれを処罰の外に置いておりまして、もしそれに関連して起こってくる逮捕監禁とか、傷害とかいうことがれば、当該逮捕監禁罪傷害罪で罰すべきもの、かようにいたしておるのでございます。
  13. 竹谷源太郎

    竹谷委員 次に二百二十五条ノ二の今回の改正についてお尋ねいたしますが、これは他の委員からもすでにお尋ねがあったかもしれませんが、「近親」というものの概略を御説明願いたい。
  14. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 二百二十五条ノ二の目的罪となっておりますその目的の内容の冒頭に「近親」という字が使ってございますが、これは直系尊属直系卑属配偶者兄弟姉妹など、これに準ずる血縁の近い親族、かよう理解をいたしております。
  15. 竹谷源太郎

    竹谷委員 いまおっしゃった血縁という意味は、親族だけで、姻族は含まないのかどうか。その範疇親族姻族の者で、しかもあとの「被拐取者安否憂慮スル者」、こういう者で親族姻族にあたる者は、「近親」という字はどこまでの何等親ぐらいまで入るのか、そこをもう少しはっきり御説明を願いたい。
  16. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 その点は実はわざとはっきりしていないわけでございます。なぜ「近親其他」「其他」というのは近親以外の者でございますが、だからといっても、近親に準ずる者を言っておるのであって、全くの第三者でないという意味でこれを例示してあるわけでございますが、本来この「近親其他」という文字をごらんにならないで、つまりないものと考えて二百三十五条ノ二を読んでいただきますと、よくおわかりいただけると思うのでございますが、「被拐取者安否憂慮スル者憂慮ニジテ」取る。そういう被拐取者、つまりかどわかされた者の安否親身になって憂慮する者のその憂慮に乗じて金を取ろうという目的でやればこの罪になるのでございまして、そういう親身になって憂慮する者とはどういう者かというと、やはり親とかきょうだいとかいう親族になるわけでございます。そこで「憂慮スル者憂慮ニジテ」ということば意味からして、おのずから親族その他これに準ずる者ということば意味解釈上出てくるのでございます。これは諸外国の解釈におきましても同様でございます。そこでそういうふうに出てくるのでございますが、これは法律家解釈としてそうなるということを言うだけではわかりにくいので、その意味を明らかにしますために、その上に「近親其他」ということをつけ加えることによりまして、その解釈が、親身になって憂慮する者とは近親その他であるぞよということがわかるようにここへ加えたのでございまして、そういうふうに御理解をいただきますと、「近親其他」ということがかなりあいまいなことばであるけれども、ないよりはあったほうがなおわかりがいいじゃないかというふうにおわかりをいただけるのではないか、かよう考えておるわけでございます。
  17. 竹谷源太郎

    竹谷委員 そうすると、被拐取者安否憂慮する者、そしてそれは近親その他そうした者だ、こういうふうに解釈をするのだ、こういうわけでございますね。そうなりますと、一般の人でも被拐取者安否憂慮する者、だれでも第三者でもいい、それも含むのだ、こういうことになるわけですが、ところが、お配りを願った刑法の一部を改正する法律案逐条説明書の、この近親その他の被拐取者安否憂慮する者の説明の中に、「身のしろ金目的誘拐罪本来の性質からみて、単に被拐取者またはその近親苦境同情するにすぎない第三者がここに含まれない」、こういうのですが、同情をするのではなくて、積極的に、こういう事態があっては非常にその人にかわいそうである、非常に世人一般同情以上に憂慮をするという情勢になったときには、もうだれもがこれに入るようにも見えるのですが、その点いかがですか。
  18. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 その点でございますが、「近親其他」と書くことによって、親族だけでなくて、憂慮しておる者であれば親族でない一般第三者も入るということになるかどうかということにつきましては、これは入らないという解釈をいたしておるわけでございます。趣旨説明の際にも申し上げましたように、「近親苦境同情するにすぎない」ということばは悪いのでございますが、憂慮はみんなしておるのでございます。第三者でありましても憂慮しておるのでありますが、法律的に理解していくと、その憂慮というのは、ほんとうに憂慮しておる親族苦境同情するというふうに法律的に見たいわけでございまして、そのようにしぼって解釈されるべき性質のものだというふうに思うのでございます。そのさように思います理由は、「憂慮ニジテ」取るという、このことばからおのずからそこは限定を受けてまいりまして、単に第三者としてけしからぬ、心配だというよう意味憂慮しておられる人は、「憂慮ニジテ」取ろうという犯人の悪い心情、そういうものを罰しようとするこの規定からははずれてくるのでございまして、そういう者から取る場合は、あるいは恐喝という罪になるかもしれませんが、この二百二十五条ノ二にいう、そういう目的の中には入ってこない、かようにそこにはしぼりがかかってきておるのでございます。
  19. 竹谷源太郎

    竹谷委員 そこで「憂慮ニジテ財物交付させる。これはこの罪に該当することになるわけですが、その犯罪者が、近親でなくても、だれでもいいから金を出してくれれば被拐取者を解放するというようなことで、だれでもいいから金を持ってくれば追っ放そう、こういうふうなときにはどうなりますか。
  20. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 これは具体的な事案になりませんと、なかなか判断がむずかしいのでございますが、だれでもいいことなら近親も入るのじゃないかということになりますので、そうなりますればこれに該当する、こういうふうに考えております。
  21. 竹谷源太郎

    竹谷委員 「憂慮ニジテ其財物交付」させる憂慮した人の財物でなければならぬかどうか。憂慮をしておる人が、ここに甲なら甲という人があり、その人でない乙なり丙なりの財物交付さす。それでいいのだ、甲は金がないからどうせ出せないだろう。乙、丙、近親その他で憂慮してない者でもだれでもいいから出せばよろしいのだ、こういう場合です。
  22. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 「其財物」という「其」ということに問題があるようでございますが、この「其」はやはり憂慮しておる人、その「其」でございますから、その人からその人の大部分は所有に属する財物、こういうふうに解釈するのが普通でございます。しかしながら、所有でなければならぬかどうかということになりまして、その所有ということである場合が一般的でございますが、その所有というふうに狭く解釈する必要はないので、全く第三者が無関係に出すようなものは入らないのでございますが、憂慮しておる者が、自分が金がないからよそから借りてきて、自分がその責任を負うという立場で借りてきたその金を差し出すという場合には、「共」という中に入るという解釈をいたしております。  しかしもう一つ交付の場合はそうでございますけれども、要求する行為というのは同じ悪い行為であるという意味で、交付を受ける行為と要求する行為とを同じ列に並べて、同じ法律的評価をして、同じ刑罰を科せようとしておるのでございまして、この要求する行為という中には、相手が金持ちだと思ってやったのだけれども、金は持っていないからもらえなかったとか、あるいは第三者が持ってきて、もらうにはもらったけれども、その本人からはもらえなかったというような場合も、要求する行為のほうの中には入るわけでございますから、いまの交付のところで憂慮しておる者その人からの財物というふうに規定しておきましても、実際の運用につきましては、いまの第三者が出したような場合、犯人のほうの側から見ますと、憂慮しておる者から取ってやろうと思ってそれに要求行為をかけた、そういう要求行為がありさえすれば、それによって現実に出てきた金は第三者の金でございましても処罰されるということになるのでございます。
  23. 竹谷源太郎

    竹谷委員 第三者が出した場合に、要求行為、第二項のほうでいくわけですね。そうすると、いまの説明はどうもあまり明確でない点があったのですが、そのときには憂慮する者と因果関係のある財物ということになるのか、所有権は持っておらないという、もう少しはっきりした御説明を願いたい。
  24. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 御疑念の点を充分御説明ができなかったと思うのですが、この二百二十五条ノ二の一項と二項とで表現は同じことを書いてございますけれども、やや実際の運用にあたりましては違ってくると思うのでございまして、一方のほうは目的罪目的規定しておるのでございますから、犯人のほうにそういう交付させようという動機があれば、そういう動機でやれば一項のほうの罪になるわけでございます。それから二項は、現実憂慮に乗じて財物交付させるとか要求する行為と書いてございますので、一項は目的だけを規定しておる、二項はその目的実現行為でございますので、段階的に行為が進んでおる。その進んでおる状況の場合ででございますから、一項と二項とで、犯意もかなり不確定な状態でも、そういう動機でやるとすれば一項のほうの罪になりますが、私が先ほど申したよう説明は主として二項の説明としていたしたわけでございます。
  25. 竹谷源太郎

    竹谷委員 この財物の中には権利は入らないのですか。たとえば債務免除をさせるとか、権利を放棄させるとか、あるいは不動産譲渡登記を強要するよう行為とか、あるいはこういうものは脅迫等に基づく行為だからあとで取り消せるわけですけれども、しかしながら、犯罪人心情からいえば、債務免除をさせれば自分あとで返さなくていい財産上の利得を得ることはできる。こういうふうに確信をして、法律をよく知らないから、そういうふうな意味権利の取得あるいは債務の消滅を目的とするよう財産上の不法の利益を得るよう目的略取誘拐をやった場合はどうなりますか。これに該当しないことになりますか。
  26. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 それは該当しないという考えでございまして、財物というふうに目的をしぼっております関係から、いま仰せようなその他の財産上の利益を得るという場合の目的は、これから除外をいたしております。こういう立案をいたしましたのは、財産上の利益まで含めますことは範囲が広くなり過ぎてまいりして、実際そういう問題もあると思うのでございますが、それは恐喝罪の二項恐喝でまかなってやっていいのではないか、無期までも持っていってその罪を重く罰しようというこの罪の本来的な類型として見ますと、やはり財物そのものずばりを取ろうというところに着目をして立案するのがこの罪に最もふさわしい立案のしかたではないかというふうに、犯罪学的な類型からかよう考えておるわけであります。実際問題としても、財産上の利益を得るというようなものまで入れますと、この身のしろ金目的誘拐からはやや類型的に違ったものにまで広がっていくような感じがいたしますので、厳密にこの種の罪の範囲、性格というものを浮き彫りにいたしまして、その浮き彫りにぴしゃりと当たる場合だけが重く罰せられるというふうにいたしたわけでございます。
  27. 竹谷源太郎

    竹谷委員 そうしますと、財物に関する以外の問題は現行法でいく、こういうことでございますね。  次に二百二十八条に関連してお尋ねしたいのですが、金を出せ、出さないと略取誘拐をするぞとおどかす行為ですが、これは恐喝未遂みたいな形になりますか。金を出せ、いつ幾日までにどこへ金を置いておけ、もし置いておかなければお前の子供を通学途上において拉致するぞ、こういうおどかす行為、これは恐喝の未遂になりますか。それとも二百二十八条の未遂になるのかどうか。これはどう解釈されるのか、この点をお尋ねしたい。
  28. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 御承知ように未遂罪というのは犯罪に着手して遂げなかった場合でございまして、いま仰せの設例のような場合は恐喝罪の着手はあったと見ていい。しかしまだ金を取っておりますんので、恐喝の未遂ということになります。二百二十八条の未遂のほうは、誘拐行為に着手しなければならないわけであります。そして遂げなかったという場合でなければなりませんが、誘拐をするぞという程度のことは、これはおどしの内容ではございますが、誘拐そのものの行為に着手したとは言えないと思いますので、二百二十八条の未遂という問題は起こる余地はないというふうに考えます。
  29. 竹谷源太郎

    竹谷委員 そうしますと、私がいま例として申し上げたようなことは予備罪になる場合があろうが、まだ略取誘拐の着手がなされておらないから二百二十八条の未遂にはならない。そして恐喝に関する行為の着手があったものとして恐喝罪未遂として処罰される、こういうことになりますね。わかりました。  次上です。
  30. 濱野清吾

    濱野委員長 刑法の一部を改正する法律案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。      ――――◇―――――
  31. 濱野清吾

    濱野委員長 これより不動産登記法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑に入ります。大竹太郎君。
  32. 大竹太郎

    ○大竹委員 今度のこの不動産登記法の一部を改正する法律案の提案の趣旨説明を拝見いたしますと、不動産登記事務の適正迅速な処理ということが目的になっておるわけでありますが、もちろんこの不動産登記事務の適正迅速ということは必要なことでありまして、登記所を利用する一般の国民の便宜のためということになると思うのでありますが、とかくこういう法律を簡単にするということは、全体としてはもちろんいいと思うのでありますけれども、一部の人に対しては非常に不便とか、そういうような場合もあるのでありまして、これに関連してお聞きしたいのでありますが、今度の国会に対しましても、登記所を廃止するという問題について、廃止するのをやめてもらいたいというような請願書その他が相当出ておるのであります。こういう法律につきましては、こまかいものでも国会にかかっていろいろ議論をするのでありますけれども、登記所を廃止するというようなことは政令でやることになるわけですから、国会にかからないのであります。こういうような問題も、もちろん大きな目から見ればひまな登記所を廃止するという必要もあるかと思うのでありますが、やはりさっき申し上げたように、一部の人々には非常に不便になるという問題だろうと思うのであります。そういうようなことから関連いたしまして、この機会に、この登記所の改廃というようなことについてどういう方針で進んでおられるかということをまずひとつお伺いしたい。
  33. 天埜良吉

    天埜政府委員 いろいろ市町村の統廃合などございまして行政区画が変わってまいります。また、登記所によりましては非常に扱い件数の少ないところもありまして、これらを合理化していくために、登記所の改廃というような点を全般的に検討いたしておりますけれども、しかしまた、その地方の便益等を考えますと、なかなか数字の上だけのことでもいけません。そのような点につきましてよく地元と話し合いまして、そして納得のいくところはそれをやっていこうという考でおりますが、まあその点も、もとはと申しますと登記所の要員の十分にないというようなところにも起因をいたしておりますので、それらの整備をすることにまず重点を置いてはかっていきたい、そして地元の不便になるようなことは極力避けて、十分納得のいき、不便がそれほどに響かないというようなところから逐次進めていきたい、このような方針で進めておる次第でございます。
  34. 大竹太郎

    ○大竹委員 それでは三十九年度では、どことどこが問題になっており、そしてやめられるというような計画でもございますか。
  35. 香川保一

    ○香川説明員 三十九年度に登記所を統合するというような案は現在のところきまっておりません。これは先ほど政務次官から御答弁がありましたように、地元との交渉によりまして納得したところからやっていくということでございますから、別に確定的な案は作成いたしておりません。
  36. 大竹太郎

    ○大竹委員 それでは次の質問でありますが、登記簿の台帳は四十年の三月までに一元化をやるという方針になっておると聞いておりますが、現在の進捗状況はどうですか。
  37. 香川保一

    ○香川説明員 ただいま行なっております登記簿台帳の一元化は、昭和三十五年から始めたわけでございますが、当初できるだけ登記事務を簡素化する見地から、これを早く完成させたいということで、いま仰せられました五カ年計画ということも検討してみたのでありますが、しかし、この作業は事務量が非常に膨大でありまして、しかも平常事務をやるかたわら実施してまいります関係から、五カ年間で全国を完成させるということは、登記所側にも相当無理がございますし、また相当の経費を要しますので、財政当局とも交捗いたしまして、無理のないところで十カ年計画で完成させるというふうに変更いたしまして、昭和三十五年から十カ年ということで発足いたしておるわけであります。したがいまして、現在一元化を完了いたしておりますのは全体の四〇%、これは一登記所について二カ年計画で実施してまいっておる関係で、正確に完成しているというのは四〇%ということになるわけでございます。
  38. 大竹太郎

    ○大竹委員 それでは条文について一々お尋ねいたしたいと思います。  四十四条ノ二でありますが、いままでは保証書による登記という場合には、いずれも登記義務者に事前に通知して、虚偽の登記の発生を防止しておる。今度は所有権に関する移転の登記、あるいは合併の登記だけしか、この通知をしないということにしたわけでありますが、これであれでございましょうか、登記義務者、いわゆる不動産所有者の保護というものに万全を期せられるでありましょうか、この点をお聞きしたい。
  39. 平賀健太

    ○平賀政府委員 これは昭和三十五年の改正の際に、こういう事前通知の制度を始めたのでございますが、その後の実績に徴しますると、所有権の登記につきましては、ごくわずかではございますが返事が返ってこないケースがございまして、登記ができないという事例があるのでありますが、所有権以外の権利、ことにこれは抵当権に関する登記でありますが、これにつきましては返事が返ってこないという例は、現在までの実績に徴しますれば絶無でございます。それからさらに抵当権の設定の場合には、登記が済みませんと融資を受けられない関係で、抵当権の設定者のほうでも非常に登記を急ぐわけです。そういう関係で、現在でも返事は非常に早く返ってまいりますのみならず、事前通知をやりますと、どうしてもそれだけ登記がおくれるという関係になります。そういう関係もありまして、抵当権などにつきましては、現在までの実情から言いますと、事前通知をする必要が全然ないと言ってもいいような実情でございます。そういう関係で、非常に重要であります所有権の移転関係につきましてだけは事前通知を残しております。それ以外の権利登記、特に担保権の登記につきましては、これを廃止してもごうも所有者の権利を害するおそれがないという実情でございますので、今回のよう改正にいたした次第でございます。
  40. 大竹太郎

    ○大竹委員 いま抵当権のあれには間違いがなかったからというお話でありますが、こういうせちがらい時代になれば、いろいろ悪いことを考えるやつもありますし、それから地面師その他非常に悪らつなのがあるのでありますが、いままで通知しておったからそういうやつがなかったのでありまして、これからそういうのが出てくる可能性は非常にあるんじゃないでしょうか。その点はどういうようにお考えになりますか。
  41. 平賀健太

    ○平賀政府委員 そういうおそれは絶無とは申し上げるわけにいかぬのでございますけれども、ただいまお話のございましたいわゆる地面師は、これは他人の不動産をかってに売り飛ばすものでありまして、担保権なんかにつきましてはその例がいままでございません。なお、今回は所有権の登記だけに限りまして事前通知をいたしますが、その他の権利に関する登記につきまして、登記済証なしで保証書によって登記いたしました場合には、登記完了後登記義務者のほうに登記所からこういう登記をいたしましたという通知をする。これは省令の改正によりましていたしたいと思っております。そういうわけでありますので、もし第三者が不法に他人の不動産を担保にしまして抵当権設定の登記をするというようなことがございますれば、この通知が登記義務者のほうにすぐ参りますので、いち早く救済の措置が講ぜられるということになると思うのでございます。そういう関係所有権以外の登記につきましてはだいじょうぶだというふうに私ども考えておる次第でございます。
  42. 大竹太郎

    ○大竹委員 それでは、さっきお尋ねいたしましたが、これはおそらくは保証書でやるのでありましょうが、保証書を偽造して人の土地をあれしたといういわゆる地面師のような件数は現在どのくらいありますか。
  43. 平賀健太

    ○平賀政府委員 保証書の偽造という事件は私どもいままで承知いたしておりません。地面師がよく使います手は、登記済証、いわゆる権利書を偽造するのでございます。登記済証を偽造いたしまして、それが犯罪になり、それで起訴されたという事件が若干あるようでございます。これは刑事局のほうで調べました統計がございますが、昭和三十五年に起訴されましたのが四十四件でございます。三十六年が二十六件、三十七年が六十七件、それから三十八年は一月一日から十二月一日までの十一ヵ月分でございますが、六十五件ございます。罪名は詐欺とかあるいは文書偽造などというふうになっておるようでございます。
  44. 大竹太郎

    ○大竹委員 それでこの保証書でありますが、保証書については現行法の百五十八条で処罰することになっておるのでありますけれども、どうもいろいろ実情を聞いてみますと、これが非常にルーズになっているというように聞くわけでありますが、一体現行法の百五十八条で処罰したというような案件はありますか。
  45. 平賀健太

    ○平賀政府委員 この百五十八条違反の事件が起訴になったというケースは私どもまだ聞いておりません。この保証書がルーズではないかということでございましたが、昭和三十五年の改正以前におきましては、一部の司法書士のところでかなりルーズにこの保証書というものがつくられておった。ことにその保証人になっておる人が登記義務者と全然面識がないというケースもあったようでございますが、昭和三十五年の改正でこういう罰則もつくりまして、その後は司法書士のほうも、保証人に保証書をつくってもらうにつきましては、非常に慎重になっておるようでございまして、その後だいぶん改まりまして、以前のようなことはないというように私ども承知いたしております。
  46. 大竹太郎

    ○大竹委員 次は百十六条と百十七条についてでありますが、抵当権、質権の登記については、現在までは元本及び利息に関する弁済期の登記を必要としたのでありますけれども、今度は百十六条、百十七条においてこれを削っておるのであります。この点についてこの前も若干御説明を聞いたようでありますけれども、これは債権者の権利を害するということにならないかどうか、その点についていま一度御説明いただきたいと思います。
  47. 平賀健太

    ○平賀政府委員 元本並びに利息の弁済期の登記をやめましたのは、前回にも申し上げましたように、登記手続の面におきましては、登記事項が非常に多くなりまして、煩瑣をきわめておるのでございます。実例に徴しますと、元本につきましてはほとんど全部分割弁済の定めがしてございます。もう登記用紙の一ページあるいは二ページにもわたるという非常に長い記載になるわけでございます。それから利息につきましてもほぼ同様でございまして、非常に登記事項が長くなるのでございます。しかのみならず、この弁済期の定めにつきましては、期限の利益の喪失特約がほとんど全部にわたってついておりまして、せっかく詳細にそういう弁済期の定めを登記いたしましても、その定めどおりに動いていない。せっかく登記しましても、それが信用できないという実情なのでございます。  なお、債権者、債務者間は、当事者でございますので、何も登記がなくてもよく事情はわかっております。問題になりますのは、その不動産を譲り受けた第三取得者が、抵当権の登記のある不動産を取得するわけでございますので、弁済期がどうなっているかということが一応わかれば非常に便利なわけでございますけれども、いま申し上げますように、期限の利益の喪失約款がついております関係で、弁済期がずっと先になっておる、あるいは分割弁済ということになっておるけれども、第三の取得者がその不動産を取得します当時、すでに期限の利益を喪失いたしまして、全部について弁済期が来ておるかもしれません。また、御承知ように弁済期が来ておりませんでも、たとえばほかの債権者が競売をする、あるいは強制執行の申し立てをすることになりますと、その当該の抵当権についてもそれが実行されるということになるわけで、第三取得者にとりましても、必ずしもこういう弁済期の定めを登記しておりましても、決してそのとおりに動かないということになりますと、非常に手数をかけ、申請人にも非常に負掛をかけて、それを登記する実益は非常に薄くなる、ほとんどないといってもいい実情なのでございます。そういう関係で、この定めを登記することをやめることにいたした次第でございます。
  48. 大竹太郎

    ○大竹委員 大体いまの説明で了承いたしたのでありますが、ただ何年か据え置くというような定めがある場合も多いと思うのでありますが、そういうものについては、私はやはり弁済期というものを書いておく必要があるのではないかということを考えますことが一つ。それから特にこの百十七条の関係からいたしまして、そのうちの利息の発生期ですが、これがやはり私は必要だと思うことは、民法の三百七十四条との関係で、最後の二年分について行使できるというこの規定との関連からいたしまして、据え置き期間というような面ははっきりする意味からいって、やはり弁済期あるいは利息の発生期というものは書いておく必要がある、登記されておったほうがいいんじゃないかというふうに考えるわけです。
  49. 平賀健太

    ○平賀政府委員 第一点の利息の発生期と利息の据え置き期間の定めでございますが、それは現行法の百十六条は不動産質権に対する規定、それから百十七条は抵当権に関する規定なのでございますが、現行法自体がいささか不備なのでございまして、現行法におきましては、百十六条は「利息ニ関スル定アルトキ」ということになっておるのでございます。ところが百十七条を見ますと、「利息ニ関スル定アルトキ、其発生期若クハ支払時期ノ定アルトキ」というふうになっておりまして、どうも規定が不一致、不備なのでございます。そういう関係現行法を見ますと、百十六条には利息の発生期の定めというのがついていないのでございます。これは不動産質権と抵当権と区別あるはずはないのであります。そういう見地から申しますと、百十六条の「利息ニ関スル定」の中には利息の発生期の定めも含む趣旨ではないかというふうに解釈すべきものと思うのであります。そこで今回の改正におきましては、百十六条と百十七条のそごを正すことといたしまして、百十七条の改正におきましては、利息の発生期の定めということは削除いたしましたけれども、「利息ニ関スル定」というのを残しまして、百十六条と歩調を合わせた次第でございまして、利息の発生期、据え置き期間の定めというのは「利息ニ関スル定」というところに入るという解釈に、不動産質権も抵当権も通じてなるというふうに考える次第でございます。したがいまして、先ほど仰せの利息の発生期の定めというのは、依然として登記として残るというふうに考える次第でございます。  それから第二点は、民法三百七十四条の、最後の二年分の利息または損害は、これは問題になりますのは、遅延損害の利率でございます。これは登記事項になっておりますが、利息の延滞あるいは遅延損害がすでに発生しております限りは「弁済期ノ定」「支払時期ノ定」を削除いたしましても、これは差しつかえない。これは利率の記載がございます関係で、いささかも影響はないわけでございます。
  50. 大竹太郎

    ○大竹委員 次に抵当証券でありますが、この流通状況はどうなっておりますか。
  51. 平賀健太

    ○平賀政府委員 抵当証券法は、御承知のとおり昭和六年に制定されまして、法律としては非常に近代的な完備した制度でございますが、どうも日本の金融情勢のしからしむるところだと思うのでありますが、一般にはあまり利用されていないのでございまして、最近の統計で調べてみたのでございますが、昭和二十五年から二十八年までは一件もその抵当証券の申請がないのでございまして、二十九年に四十五件、三十年に一件、三十一年、三十二年は全然ございません。三十三年が六件、三十四年が二十五件、三十五年が十七件、三十六年が十一件、三十七年が二十一件、ほとんど利用されていないと言っていいような実情でございます。
  52. 大竹太郎

    ○大竹委員 いまお話がありましたように、非常に完備したいい法律だということでありながら、非常に利用されていないという面から言いまして、これは法そのものを全面的に検討する必要があるのではないかと考えるのでありますが、その点はどういうふうにお考えになりますか。
  53. 平賀健太

    ○平賀政府委員 ただいま申し上げましたように、この抵当証券法は、要するに債権及び抵当権に流通性を与えるということで、非常によくできたと申しますか、完備した、精密機械のような制度でございますけれども、遺憾ながら、これが行なわれていないのは、主としてこれはわが国の金融情勢のしからしめるところじゃないかと思うのでございます。したがって、どうもこの法律を変えましたならばもっと利用されるかという点は、はなはだ疑問なのでございます。法務省といたしましては、いまのところ、この抵当証券の制度を改正するという具体的なことは考えておりません。なお、これがもう少し金融情勢が変わりまして利用されるというふうなことになりますと、もっと実態がはっきりして、こういう点が不備であるというようなことも具体的に明らかになってくるであろうと思いますけれども、現在のところは、これをどう変えたらもっと行なわれるかという点について、必ずしもこれは具体的にはっきりいたしておりません。そういう関係で、いまこれを改正するという計画はございません。
  54. 大竹太郎

    ○大竹委員 それで、私抵当証券というものをよくわからないかもしれませんが、百十七条によりますと、抵当証券発行の場合には元本または利息の弁済期を記載するというふうになっていますが、これはどういうことですか。
  55. 平賀健太

    ○平賀政府委員 御承知のとおり、この抵当証券は有価証券でございまして、権利を行使します場合には、その抵当証券を呈示しまして権利を行使するわけでございます。それが転々流通します関係で、元本なりあるいは利息の弁済を債務者に対して請求します場合には、抵当証券の所持人が債務者のところに参りまして、あるいは弁済の場所に参りましてそれを呈示して請求をするという関係になるわけでございます。そういうわけで、抵当証券面上にはどうしても弁済期の定めというものを記載しておく必要があるわけでございます。さらにその抵当証券に記載します場合には、やはり登記簿に記載があるということが必要なのでございまして、登記簿に記載されてある事項を抵当証券に写してあるわけでございます。その関係で、抵当証券発行の定めがあります場合には、どうしても登記の必要が出てくる。そういう関係から、抵当証券が発行されております場合に限りまして元本、利息の弁済期も登記することにいたしたのでございます。
  56. 大竹太郎

    ○大竹委員 次に共同担保の百二十二条でございます。これについてお聞きしたい。いままでは五個以上のものを共同担保にするときに共同担保目録を出すということになっております。今度は二個以上の場合に出すということになるのだろうと思いますが、こういたしますと、申請者のほうとすれば、共同担保のときはいつでも目録を出さなければならぬということになって、申請者のほうとしては非常に手数がかかるといいますか、めんどうになると思うのでありますが、その点についてどう考えられますか。
  57. 平賀健太

    ○平賀政府委員 ただいま仰せように、現行の場合に比べまして、改正後におきましては、申請人のほうが常に共同担保の場合には目録をつけて申請しなければならぬというので、担保目録を作成しなくてはならぬ機会が多くなるわけでございますが、ただこれは、登記の申請をいたします場合に、申請人としましては、その申請書面に共同掛保の関係にある不動産を全部表示しなければならぬということになっておるわけでございます。共同担保がつきますと、個々の不動産を表示します場合に、共同担保目録記載のとおりということで引用をいたす、そういうふうに引用をすることができるようにいたしたい。これは省令のほうでそういう手当てをいたしたいと思っておるわけでございます。こういうふうに引用いたしますと、申請人の負担も現在とあまり変わりないということになるわけでございます。それよりもむしろ、すべての場合に共同担保目録を出すということによって、登記が非常に明確になりまして見やすくなるという点の実益が非常に大きいわけでありますので、申請人の負担もそれによってそうふえるわけではございませんし、全体として非常に合理的になるという関係であります。
  58. 大竹太郎

    ○大竹委員 それでは次に八十五条二項または八十七条一項のことについてお聞きいたしたいのでございますが、この場合には、登記官吏が登記をするときには、合併前の土地の所有権の登記は転写しないということになっているのでありますが、合併前の土地所有権の登記が問題になりまして、それが無効とかなんだとかということになったときには、私は非常にめんどうなことが起こるのではないかと思うのでありますが、その点の手続は一体どうなるのでありますか。
  59. 平賀健太

    ○平賀政府委員 ただいま仰せような場合はどうなるかと申しますと、数筆の土地を合併します、その合併前のある一筆の土地の所有権の取得が無効であった、その登記を抹消しなくちゃならぬという場合には、まずその部分につきまして分割の登記をいたします。さらに合併しましたその分だけ分割をいたします。その分割の登記をいたしますと、合併の登記の際にいたしました所有権に関する登記事項がそこに引き写されてくるわけでございます。合筆によって所有権が移転したという記載が引き写されてくることになるわけであります。その所有権に関する登記を抹消いたします。抹消いたしますと、合併前の土地についてなされました前の所有権の登記が生きてくることになりますので、それをさらに登記簿に写す。それが実は無効原因があるわけでそれが抹消されることになり、写してきてまたさらにそれを抹消いたしますと、その前の所有権に関する登記事項が、これはすでに閉鎖いたしました合併前の登記用紙からそれを写してきまして、それが生きてまいりましてこちらに登記される。で、その無効な所有権の登記がなされる前の、たとえば前権利者が先ほどお話の出ましたような地面師なんかで、かってに処分された、その地面師がやった登記というものが抹消になりまして、その以前の正当な権利者が所有者とされておるその登記が、閉鎖された登記以前に移されまして、それによってその土地に関する登記が正当な姿に戻る。かなりに複雑でございますが、そういう手順で正しい登記が回復されるということになるわけでございます。
  60. 大竹太郎

    ○大竹委員 九十条の三項でありますが、土地が河川敷になった場合には五十一条の三項の代位登記、それから六十五条の土地権利義務者への通知という規定を削っているのでございますが、これは私、やはりあったほうがいいのじゃないだろうかと思うのであります。
  61. 平賀健太

    ○平賀政府委員 九十条の規定は、ただいま仰せように、これは土地の一部が河川の敷地になりました場合の分筆の登記の手続に関する規定でございます。土地の一部が河川敷になりました場合には、まず分筆の登記をする必要がございます。この分筆の登記と申しますのは、これは権利に関する登記と不動産の表示に関する登記と分けておるのでございますが、その関係から言いますと、分筆の登記でございますので、不動産の表示に関する登記なのでございます。現行の九十条の三項で準用しておりますところの五十一条の三項と六十五条の規定は、いずれもそれは権利に関する登記の規定なのでございます。したがいまして、これは不動産の表示に関する登記でございますので、分筆のときにこれを準用するのは間違いでございまして、そういう関係でこれを削除いたしたのでございます。本来から申しますと、昭和三十五年の改正の際に、権利に関する登記と不動産の表示に関する登記を分けました際に、これを整理しておかなければなりませんでしたのが整理漏れになっておりました関係で、これを今回整理いたしたいと存じます。
  62. 大竹太郎

    ○大竹委員 それから百一条の二項と百四条の二項でありますが、不動産の表示の登記のない不動産について、所有権の登記または仮処分の登記の申請によって図面をつけるという規定があるのでありますが、これはなぜ必要なのですか。
  63. 平賀健太

    ○平賀政府委員 これは全然表示の登記もない、全く登記簿に載っていない不動産に関する登記の申請あるいは嘱託でございます関係で、一体どういう不動産かということを明確にいたしますために、どうしても土地の所在図とか建物の図面などを添付することが必要であるわけでございます。これは一般の場合に、たとえば建物を新築いたしまして、新たに表示の登記を一般の私人が申請することと同じでございまして、その関係一般の場合と変わりませんので、こういう土地の所在図と建物の図面というものを添付いたしまして、不動産実態を明らかにするという趣旨でございます。
  64. 大竹太郎

    ○大竹委員 最後にいま一つだけお聞きしたいのは、メートル法の実施に伴う登記簿の書きかえ、これは一体見通しというものはどうなんですか。
  65. 平賀健太

    ○平賀政府委員 メートル法につきましては計量法及び計量法施行法という法律がございまして、この計量法施行法によりますと、昭和四十一年四月一日以降、再来年の四月一日以降はメートル法が土地、建物につきましても全面的に実施されるということになっております。ただ法律のたてまえとしましては、それまでにすでに現在登記されております登記簿上に、従来の尺貫法を使って面積なんかを表示しておりますものを直ちに改める必要はないということになっております。ただ、たてまえとしまして、四十一年の四月一日以降土地、建物についてもメートル法が完全実施ということになりますと、登記簿にそういう尺貫法が残っておるのはどうも好ましくないというので、従来の方針といたしましては、四十一年四月一日以降は、すでに登記されておるものもメートル法に書きかえるということになっておるわけであります。ところが、他面現在作業を続けております登記簿と台帳の一元化作業が昭和四十六年の三月まで実ばかかるわけであります。もし書きかえをいたすといたしましても、どうしても台帳と登記簿の一元化が済みます昭和四十六年の四月一日以降でないと書きかえが非常に手数がかかることになりますので、従来の方針を変える必要があると思っておる次第でございます。昭和四十年度におきまして、その点の予算上その他の手当を考えてみたいと考えております。現在の見通しといたしましては、四十一年四月一日からメートル法に書きかえる方針でございますけれども、これは四十六年四月一日以降に延ばさざるを得ないのではないかというふうに考えております。
  66. 大竹太郎

    ○大竹委員 そうすると、一元化作業が五年おくれたからメートル法のほうも五年おくれるというふうに解釈してよろしゅうございますか。
  67. 平賀健太

    ○平賀政府委員 結論から申しますとそういうことでございますが、当初一元化の作業を五年ということで計画したものでございますから、五年たったらメートル法の書きかえをやろうということだったのでございます。ところが、十年計画ということに最終的にきまりましたものでございますから、メートル法もそのように既存の土地、建物の登記の表示を書きかえるということにいたしたいと考えております。
  68. 三田村武夫

    ○三田村委員 関連して。三十五年の法改正のときもだいぶいろいろ議論をしたのですが、これが参議院を通ってきておりますから、衆議院を上げれば四月一日施行ということになるのですね。  そこで一、二点伺っておきたいのですが、あのときだいぶん議論いたしました登記所の統廃合はどのくらい進んでおりますか。
  69. 平賀健太

    ○平賀政府委員 登記所の統廃合は昭和三十三年ごろから始めたのでございますが、ことし一月一日現在で全国で二百三十五庁統廃合が実施済みになっております。
  70. 三田村武夫

    ○三田村委員 政務次官にもぜひお聞き願いたいのですが、法務省関係の仕事で国民に直接関係のあるのは登記事務なんです。同時に国民の権利を設定し、またその権利を保護するという非常に重要な仕事が登記事務なんです。不動産登記法のたてまえからこれを新しくすることもさることながら、私は一番必要なことは登記事務の円滑化と、それからほんとうに国民の便利、利益に関しての業務だと思います。この前もやかましく言ったんですが、法務省の御意見を伺っておると、人員が足りないからとよく言われます。人手不足だからとよく言われますが、これは私は見当違いだと思うのです。人手が足りなければ人手をふやせばいいのです。御承知のとおり道路にしろ、あるいは工場の建設にしろ、土地の利用度が非常に高まってまいりまして、寸断また寸断されつつあります。そういうときに登記事務というものはますます繁雑になってくる。しかもこれは重要な権利の設定なのです。人手が足りないから、少し人員が少ないところは登記所をやめて統合するというのは、私は反対です。交通機関が便利になったから少しぐらい遠くなっても来ればいいじゃないか、この思想も間違いだと思う。幾ら山の中でも、一日に三件か五件しかない登記所でも、置いてあることが、政府のなさなければならぬ一つの方向であって、人員が足りないから、予算がないから登記事務所を減らしていくということは、私は根本から間違いだと思う。そういうことでなしに、これは必要な国民の権利の設定であり、その権利の保護ですから、登記所で確認されなければ国民の権利になりませんよ。その重要な登記事務ですから、人手が足りなかったら堂々と予算をおとりになってよろしい、人員をふやすことが必要だと思う。この点はこの前も私、やかましく言ったんですが、なぜやかましく言ったかといいますと、登記事務所が統廃合されるというので、われわれのところに陳情団が殺到してきました。ところによっては局長御存じのとおりたいへんな紛争を起こした地域もあるのです。そんなことをやらなくたって、少し人員をふやして登記所を廃止するのでなくてふやすべきだと思う。私は根本思想が違うかもわかりませんが、とにかく不動産の登記によって権利が設定され保護されていくのです。しかも今日、道路一本つけたって自分所有の土地がばらばらに切られてしまう、ますますこれが盛んになる。こういうときに、私は登記事務の簡素化、能率化も必要ですが、同時に国民の便利のために登記所というものを考えなければいけないと思う。この点についての、事務的な御判断もそうですか、ひとつ政務次官、しっかり考えていただきたいと思うのです。登記所なんて廃止するものではないですよ、統合するものじゃない。山の中でも登記所をつくってやるべきだと私は思う。幾ら山間僻地だって学校はちゃんとある。必要だからあるのです。登記所も必要だから置いてあったのです。しかも、いままでの登記所というものは、地元の人が、あるいは町役場であるいは村で町で、建物から敷地から提供してつくってきたのです。それを人員が足りないから、予算が足りないから減らすということは、私はどうも合点がいかない。政務次官、ひとつ御意見を伺っておきますが、民事局長も遠慮なく予算をとっていただく、われわれも登記事務に関する限り、お手伝いをいたしますよ。そしてもっと前向きに、いまの非常に進歩的な法律ができたと言われましたが、幾ら進歩的な法律をつくっても、国民の感覚にぴったりきませんと、だれも利用しませんよ。そこに政治があるのです。ほんとうの親切な行政があると私は思う。この点ひとつ十分お考え願いたいと思う。ひとつ局長と政務次官から御答弁を伺っておきたい。
  71. 天埜良吉

    天埜政府委員 三田村先生のいまの登記所に対する御意見まことにごもっともであります。私どももそのよう考えます。ことに人員の不足というようなことで国民の利益がそこなわれるということは、決してあるべからざることだというよう考えます。十分その点でも努力をしていきたいというふうに考えております。
  72. 田村良平

    ○田村(良)委員 関連して。三田村先生の御意見なり御質問で大体意を尽くしておりますが、ちょっといまの大竹委員に対する御答弁で、三十九年度の統廃合の計画はどのようになっているかという御質問に対して、ない、話し合いがついたところからやりたい、こういうことでありますが、高知県でもまた青森県でも、私が耳にいたしておりますのも、やはり現実に問題が起こっておるのです。そうすると、いまの御答弁で具体的な計画がないと法務省がおっしゃっているなら、かってに出先がつぶすならつぶせということをやっておるのか。どうも私の考えでは、おそらく法務省としては統廃合の基準をきめて、この個所は該当するからつぶせということをやっておられるのではないかと思うのです。いま三田村先生のお話のように、山坂何里も歩いて出てくる山間の僻地、これも国民には違いない。役人が仕事をするのに便利のいいところに来いということは、われわれ第一線の住民の立場から言いますと、いま三田村先生のような御意見ではないかと思うのです。したがって、いま統廃合の計画なしに、高知県、青森県あるいは各地でもずいぶんそういう個所が出ておりますが、やっておるとすれば、たいへんなことだと思います。やはり私は、本省の指令によって出先の統廃合が行なわれるのではないかと思うのです。  そうすると、この機会に現実に立ってお伺いしておきたいことは、どういう基準で統廃合をされようとしているのかということであります。御参考までに申し上げますと、たとえば地方建設局とか通産局あるいは農政局、あるいは工業試験所――大阪にある工業試験所を四国に持っていくとかいろいろなことをやっておるが、これは理屈はやはり国民へのサービスだと言う。片一方では権利の得喪にたいへん重大な関係のある法務局、登記所なんかは統廃合する。私は行政のあり方と言いますか、国民に対します十分の便宜、交通ないし経済的な便益を考えてサービスするということは、行政の一番中心でなければならぬから、やはり官僚独善的な考え方で、こちらに来いというような形でやるのはどうかと思います。したがって、ほんとうに三十九年度統廃合の計画を立てておられないのか、もしそうだとすると、高知県、青森県でやっておることは、出先がかってにやっておるということになる。こういうことは直ちに指示してやめていただきたいと思いますが、その真相を伺っておきたい。
  73. 平賀健太

    ○平賀政府委員 統廃合の実施計画、具体的に三十九年ではこことここをこうやるというふうに計画を立てておるわけではございません。ただ、一般的な基準といたしまして、ただいま仰せような地元の事情を十分考慮した上で、地元によくお話して納得がいけばということでありまして、具体的にどことどこをやるというふうな計画は持っておりません。そしてここを統合する予定だからこうやれというようなことを現地に指令するということももっておりません。
  74. 田村良平

    ○田村(良)委員 そうすると、いま私が申し上げた実例は出先機関のかってなお話し合いですか。法務省の指示とか計画に基づかないで、高知県なり青森県でかってにどこかの登記所を廃止するということをおやりになっておるのでしょうか。かってにやるというようなことはたいへんなことではないですか。
  75. 平賀健太

    ○平賀政府委員 かってというわけではございませんで、昭和三十三年ごろから始めます際に、一応の基準、これは交通が便利である、地元に非常に御迷惑をかけない、それから職員数が非常に少ない。たとえば職員が一人であるとか二人であるとか、あるいは同一市町村内に二カ所以上登記所がある、そういう一般的、抽象的な基準を定めまして、こういう登記所につきましては地元とお話し合いをしろという一般的な基準は与えておるわけでございます。それに基づいて、現地の法務局では事情がよくわかります関係から、その基準に該当するところの市町村当局に交渉したいということで交渉をいたしておるわけでありますが、いずれこちらのほうにもその点は報告してまいるわけでありますので、もしそれが無理だという場合には、こちらはそれはやめろというふうに指示いたします。こちらのほうで検討いたしまして、市町村と交渉することが差しつかえないと思われるところであれば、交渉してみるようにということでやっておるわけであります。
  76. 田村良平

    ○田村(良)委員 そうすると、語るに落ちたようなかっこうで、結局おやりになっておるのでしょう。やはり話しておるのじゃないですか。ひとつうまくいくなら引き揚げろ、整理統合するのだということをおやりになっておるなら、こういう事情で、人が足りない、経済環境が違ってきた、処理件数も減ってきた、そういうところに二人も置いておくのはもったいない。いままでの案件を考えた場合、事務能率の上からもこのほうがいい、住民と話したところたいして異論がないので、高知県、青森県、福島県、こういうところでは廃止する計画を進めておるのだということを率直に言っていただきたい。そうでないとむだな時間をとるのです。一生懸命法務委員会にすわっておりますけれども退屈でしょうがない。答弁は適当なことを言われて、これは地元に行ってごらんなさい、たいへんですよ。やかましいのです。あることないこと言うのではない、現実に起こっておるのです。住民に迷惑をかけないと言うあなたの口の下から高知県では起こっておる。だからわれわれは言うておるのですから、法務省としては、こういう理由でやむを得ざる段階になって、こういう計画を進めておる。それについて高知県の実情が合わない、高知県の実情にトラブルが起こっているとすれば、その問題の処理についてはすみやかに出先に指示いたしましょう、出先の詳しい報告もとりましょう、そういうのが率直な答弁であり、率直な行政じゃないか。やっていることは率直に言ってください。そうでないと要らないおしゃべりをすることになる。高知県はどうしますか。
  77. 平賀健太

    ○平賀政府委員 現在におきましても、幾つかの登記所につきまして現地で交渉をいたしておることは事実でございます。その際には現地の事情は十分聞く。それから私どもも決して無理をしてはいけないということは常々申しておることでございます。現地で反対があります限りは無理をしないようにという方針でやっております。いままででもそういうことでやってまいりましたが、今後もさらに慎重にやっていきたいと考えておる次第でございます。ただ、実情を申し上げますと、これは人員のお話も先ほどございましたが、人員のみではなくて、いろいろな面で登記所を近代化いたしますためには、少し数を減らしまして、残りの登記所をよりりっぱなものにしていくという必要がどうしてもございます関係で、個々の登記所の存廃、統合するかいなかにつきましては十分慎重にはいたしますけれども、全般の方向といたしましては、やはり統合の必要が全然なくなったというようには考えられないのでございます。
  78. 田村良平

    ○田村(良)委員 どうもだんだんいろいろとことばを濁されますが、あなたの言われておりますことと、いま現実にやろうとしておることとは食い違っておると私は思います。あなたの頭の中、腹の中では、田村良平という代議士が質問をしておるが、登記所はつぶしてやろうということなら、質問してもだめです。慎重に慎重につぶす、そういうふうに私には聞こえてなりません。人民というのはお役所には弱いのですよ。ですから、ぜひとも存続したいというならば、国家公務員、地方公務員は国民の税金でやっているのだから、あなたに銭を出してくれというのではないから、心配は要らぬ。住民の喜ぶようにできるだけ予算をとって、国民の福祉のため、あるいは便宜のためにお尽くしいただくのがあなたの職責ではないか。私の質問にうまいこと答弁をするのがあなたの職責ではない、私はかよう考える。私が高知県の実情を申し上げると、どうやら慎重に慎重に廃止するような御答弁をいただいた。何ぼ田村さんがおっしゃってもつぶしますよというならたいへんなことになりますので、御意思を尊重して現地の実情を十分調査して、これは無理だから絶対に廃止統合はいたしません、そうして住民の納得のいくようにいたしたい、こういう御答弁はいただけませんか。でなければ何ぼでもやりますよ。
  79. 平賀健太

    ○平賀政府委員 今後は統廃合は絶対いたしませんということはちょっと申し上げかねるのでございますけれども、御趣旨は私もよくわかりますのみならず、非常にごもっともだと思うのでございまして、ことに登記所は従来市町村から非常に大事にされまして、何かと便宜を受けておる関係もあるのでございます。そういう関係でございますので、私どもといたしましても統廃合をするには忍びない感じも実はいたしておるわけでございます。そういうただいまのような御意見を十分私ども体しまして、いままでもそうでございますが、今後はさらに慎重を期しまして、絶対に無理をしないようにということでやっていきたいと思います。ただ、今後は絶対に統廃合ということはいたしませんということは申し上げかねますけれども、御趣旨をよく体しまして今後の対策を立てていきたいと考える次第でございます。
  80. 田村良平

    ○田村(良)委員 私、おことばはわかりますが、いまお話の中に、私たちも実は忍びないのですとおっしゃる。忍びない、切ない思いをするなら、住民のいやがることをしなくてもいいと思うのです。だれも廃止してくれとは言っておらぬ。存続してくれと言っているのですから、あなたも忍びないなら、存続する方向に向かって努力をなさるのがあなた方のつとめだと思うのです。無理な廃止をする方向ではなくて、存続したら住民が喜ぶという頭に行政の方針を切りかえるならば、そしてそれにお金が足らぬなら予算をとってやるべきだと思うのです。忍びないことをやるというのではかわいそうだと思う。私が申し上げたように、あくまでも住民が存続を希望しておる。それにはそれの理由があるのです。一々申し上げませんが、その理由をお聞きになっていただきたい。その理由を文書で見ていても明らかに存続しろということに無理がないのです。したがって、人が少ないから、予算が足りないからということで廃山してはならぬと思います。目下は厳重に申し入れまして、長くなりますからこれでおきます。
  81. 三田村武夫

    ○三田村委員 平賀局長のおっしゃることはよくわかるのですが、実際はこれは考え直してもらいたいと思うのです。さっきちょっとお尋ねいたしますと、三十五年以来二百何カ所統廃合を完成したとおっしゃいましたが、私もよく事情は知っておりますけれども、私はいつかこの委員会で登記所増設の決議でもやろうかと思っているのです。おっしゃるように登記所の近代化、合理化ということは必要です。必要なら必要の措置をやればいいので、さっき御意見の中に、一町村内に数カ所、こういう話がありました。これは御承知のとおり甘は一つの町なら町、村なら村に置いた。町村の統廃合をやりましたから、同じ町村の中に登記所が二つも三つもあることはあり得る。町村という行政区画を単位にして登記所をまたそれに歩調を合わせていくという考え方は必ずしも妥当じゃない。だから、あくまでも国民の便利のために登記所というものを貫くのだという考えに切りかえてもらいたい。私は、法務省のやることをじっと見ておって、ある時期がきたら、ひとつ登記所増設の決議でもやろうと思っているのですが、そういうことにならないよう考えていただきたい。法務省の事務当局でお考えになっていることは筋が通っていると思います。けれども実際現場に行きますと、法務省がこういう方針だからというので無理をする。現場は数を減らさなければいけないのだという頭で一ばいなんです。私はよく知っているのです。おれのところはやったら承知せぬぞというところには手をつけませんが、そうでないところはどんどん統廃合をされるのではないかという気がする。私のところでも一ぺん手をつけましたが、私ががんがん言ったらやめましたよ。しかし、言わないところがやられてしまったら、あとみじめで困るのです。だからそういうことのないように気をつけていただきたい。近代化とか合理化とかいうのはいまはやりことばですが、これはあくまでも国民に対するサービス、法務行政の面における国民に直結した一番大事な機関だということを頭の中に置いていただいて、無理されないようにせひともひとつお願いいたします。これだけ申し上げておきます。
  82. 濱野清吾

    濱野委員長 本日の議事はこの程度といたします。  次会は来たる二十四日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十分散会