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1964-03-06 第46回国会 衆議院 法務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月六日(金曜日)    午前十時二十三分開議  出席委員    委員長 濱野 清吾君    理事 鍛冶 良作君 理事 小島 徹三君    理事 三田村武夫君 理事 坂本 泰良君    理事 細迫 兼光君       大竹 太郎君    河本 敏夫君       四宮 久吉君    千葉 三郎君       中垣 國男君    淡谷 悠藏君       井伊 誠一君    久保田鶴松君       山田 長司君    山本 幸一君       竹谷源太郎君    志賀 義雄君  出席政府委員         警  視  監         (警察庁刑事局         長)      日原 正雄君         警  視  監         (警察庁保安局         長)      大津 英男君         法務政務次官  天埜 良吉君         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君  委員外出席者         専  門  員 櫻井 芳一君     ————————————— 三月六日  委員島上善五郎君及び横山利秋辞任につき、  その補欠として山田長司君及び淡谷悠藏君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員淡谷悠藏君及び山田長司辞任につき、そ  の補欠として横山利秋君及び島上善五郎君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  逃亡犯罪人引渡法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一一四号)  刑法の一部を改正する法律案内閣提出第一二  八号)  法務行政及び検察行政に関する件  人権擁護に関する件      ————◇—————
  2. 濱野清吾

    濱野委員長 これより会議を開きます。  逃亡犯罪人引渡法の一部を改正する法律案及び刑法の一部を改正する法律案の両案を一括議題といたします。  前回に引き続き質疑を行ないます。質疑の通告がありますのでこれを許します。大竹太郎君。
  3. 大竹太郎

    大竹委員 それでは、逃亡犯罪人引渡法につきまして、前回に引き続き御質問をいたしたいと思います。  まず、お尋ねをいたしたいのでありますが、一条第二項に「請求国」とありますが、請求国意味は、いわゆる日本国に対して請求をしたすべての国をさすことでありますか。それとも外交関係のないような国まではこの法律では予想していないのでありますか。
  4. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 この条文の中にあります請求国はもちろん外国でございます。そしてまたこの外国という意味になりますと、二項のほうにございまして、外国というときには、日本施政権の及ばない地域、その地域に対して施政権を持っておる国すべてを外国ということになるのでございますけれども、昨日も御説明申し上げましたように、請求をする場合には、引渡条約の結んであります国は外交関係のある国であることはもちろんでございます。そういう条約のないその他の国につきましては、外交ルートを通じて請求手続を進めることになります。したがいまして、外交関係の樹立されていない外国、つまり未承認国、そういうものにつきましては、外交ルートを通じてということが、その点で通ずる方法がないということになると思います。それからまた、ただいまのような世界の実情から見ますと、当該国とは外交関係はございませんが、第三国を通じて話し合いをするということもあり得るわけで、そういう場合には日本政府が、つまり引き渡し請求を受けた国が、その国の判断で許否をきめる、相当するかどうかということをきめる決定権を持っているわけでございますので、そういう権限を行使して、引き渡すかどうかをきめることになると思います。したがって、外交関係の樹立されていない外国からの請求に対しましては、そういう面で制約がある。実際問題としては、この手続に寄せて引き渡しに応ずるということは起こってこないのじゃないか、予想することは困難であるというふうに考えております。
  5. 大竹太郎

    大竹委員 それでは伺いますが、いまの外交関係がなくても、外交関係がある第三国が仲に入ってやるというようなこともあって、外交関係のない国との間には、絶対にこういうことが起こらないというわけではないという御趣旨でございますか。
  6. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 条文のたてまえといたしまして、外国と書いてありますその外国の中には未承認国も入るわけでございますが、運用の面におきまして、外交関係外交ルートを通じてやるという手続の面でまず制約がありますのと、かりにその手続が先ほど申したように第三国を通じてやるという手続もあるのでありますが、そういう場合でありましても、最後のきめ手になりますのは、請求を受けました日本国判断できめることでございますので、その判断段階で、おそらくは未承認国との関係においては、引き渡しということは拒否されるというような結果になるのじゃないか。これは運用の実際でございますけれども、法律的には一応そういうことになっておるのでございます。
  7. 大竹太郎

    大竹委員 重ねてお聞きしますが、判断資料としてはいろいろここに条件があるのでありまして、同じことを向こう保証をしないとか、あるいはそのほかいろいろ条件がございますが、これに書いてある条件が備わっているといたしますならば、何も外交関係の有無について私は差別する必要はないように思うのでありますが、その点はどうですか。
  8. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 その手続に定めてあります条件が全部満たされたといたしましても、なおその日本におります日本人並びに外国人日本法権下にあります人を外国に引き渡すということは、非常に高度な政治的判断を要する問題だと思いますので、そういう政治的考慮のもとにおいてなお決定すべき余地を残しておるわけであります。したがいまして、一応条件に当たるものとして、法務大臣がこれをこの手続に乗せることを、手続の面を東京高等検察庁検事長に命ずるわけであります。検事長東京高等裁判所に対して審判をしてもらう。そして裁判所におきましてはその条件を満たすものとして決定を受ける。そういう場合でございましても、なおさらにもう一回法務大臣が、引き渡すことが相当であるかどうかということを留保しております。これは行政権といたしましては最高の政治的考慮を加えるという余地を残しておるのでございまして、したがって、条件を全部満たしておりましても、いま申しましたような未承認国とか、その他外交日本に重大な利害があるということで、引き渡さざることが相当であるという政治的判断が行なわれます場合におきましては、そういう場合でありましても引き渡さざることがあり得る、こういうふうに考えます。
  9. 大竹太郎

    大竹委員 それでは外国定義についていま一つお伺いしたいのですが、たとえば沖縄というような、これも特殊の例かもしれませんが、沖縄なんかはどうなるのでありますか。いまちょっと、新聞にこの間出ていたのを見たのでありますが、はっきりしない点もありますので、これを御説明いただきたいと思います。
  10. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 沖繩につきましては、日本において潜在主権を持っておるといわれておるのでございますけれども、現実におきましては施政権を持っていないのでございまして、沖繩地域にはアメリカ施政権と申しますか、統治権と申しますか、行政権と申しますか、そういうものが全面的に、排他的に現在行なわれておるのでございます。したがいまして、この引渡法という立場から申しますと、沖繩地域外国というふうに見ざるを得ないわけでございます。したがいまして、沖繩日本との関係におきましては、外国という扱いになるわけでございます。
  11. 大竹太郎

    大竹委員 それでは、次の点でありますが、この二十三条によりますと、条約のない国からの請求に対しては、仮拘禁を行なわないということになっておるのでありますが、この条約がある国とない国について、この仮拘禁をやる、やらないということを区別した理由をひとつ御説明願いたいと思います。
  12. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 仮拘禁制度は、引渡条約がございます場合には、すでに条件等条約の中に明記されております。したがって、正式の引き渡し請求があります前の予備段階で、日本にそういう者がいるということが確認されますと、外交ルートを通じまして、請求をするということがあらかじめ予備的に通告されてまいります。そうしますと、その条約に基づく義務を履行しますために、もしそれから以後において身柄がわからなくなってしまうというようなことを避けますために、仮拘禁というようなことで、身柄確保につとめるわけでございますが、これは手続としましてきわめて明確でございますので、そういう仮拘禁ということで身柄確保をはかっておるのでございますが、この条約のない場合、つまり相互主義に基づく保証ということで手続が進められます場合におきましては、条約相当するような手続が、身柄があるということがわかってから後に両国政府の間において行なわれるわけでございます。この手続相当時間を要することは当然でございますし、その仮拘禁というような形で、実はまだ海のものとも山のものともわからないものにつきまして、仮拘禁手続を踏ませるということは、非常に人権上重大でございますので、相互主義に基づく保証を取りつけて、事柄が条約の場合とほとんど同じ程度に明確になってまいりました場合は、仮拘禁ではなくて、そういう場合には拘禁許可状手続によりまして、仮拘禁という制度はいまの相互主義の場合にはかけないほうが相当である、かように考えまして、条約の場合とその点の取り扱いを異にして考えたのでございます。
  13. 大竹太郎

    大竹委員 この引き渡し義務請求されたときのいろいろの手続については、逃亡犯罪人引渡法による審査等手続に関する規則、このいただいた資料によってやるんだと思いますが、この規則も、この法律改正と同時に改正されると思うのでありますが、これはどういうことになっていますか。
  14. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 実体につきましては改正はないかと思いますが、この定義等を変えますことに伴いまして、一部字句の整理、修正を行なうということを最高裁のほうでなさるはずであります。
  15. 大竹太郎

    大竹委員 この手続に関して一つだけお聞きしたいのでありますが、これは先ほどちょっと見たのでありますが、わからない点があるのでお聞きしたいのですが、拘禁とか引き渡し等には相当費用もかかると思うのでありますが、こういうものの負担はどうなるのでありますか。
  16. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 原則といたしまして請求国のほうの経費負担になる、かように考えております。
  17. 大竹太郎

    大竹委員 いま一つ関連してお聞きしたいのでありますが、刑事補償法との関連におきまして、この新旧対照表によりますと、この場合の抑留、拘禁刑事補償法にいういわゆる補償対象になるというふうになっておるのでありますが、これはアメリカとの間だけでありましょうか。仮拘禁はどうなるのでありますか。
  18. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 もちろん仮拘禁の場合も含むわけでございます。この刑事補償関係は、引き渡すほうではなくて引き取る場合のことであります。アメリカとの関係において、もし日本請求しまして、アメリカが仮拘禁をいたしたとしますと、それで引き取って日本裁判で実質的に無罪の裁判になりますと、そのアメリカにおける仮拘禁勾留期間ですね、これも新法によりますと四百円以上千円の範囲内で補償される、こういうことであります。
  19. 大竹太郎

    大竹委員 だけれども、この法律新旧対照表の中には、この仮拘禁という字句はございませんから、この拘禁の中に当然含まれるものと解釈してよろしいということですね。
  20. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 仰せのとおりでございます。
  21. 大竹太郎

    大竹委員 それじゃ、この条文について一、二お聞きしたいのでありますが、第二条の第一号の「引渡犯罪政治犯罪であるとき。」は引き渡してはならないということでありますが、この「政治犯罪」ということばでありますけれども、これはもちろん、私がわからないのかどうかあれでありますが、これの一つのはっきりした国際的な定義というものはどういうふうにお考えでしょうか。
  22. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 この二条の一号に、「引渡犯罪政治犯罪であるとき。」そう書いてございますが、この政治犯罪人は、これを引き渡さないという国際的な原則があると今日一般通説では考えられておりまして、引渡法には、どこの国の引渡法にもこういう規定が置いてございます。そこで、いわゆる政治犯罪とは何であるかということでございますが、これを抽象的に申しますと、ある国の政治的な秩序を侵害する犯罪であるというふうになるのでございますけれども、政治的秩序を侵害すると申しましても、その中身各国によって違うのでございまして、学問上もいろいろ議論の存するところでございます。ただ、はっきりいたしておりますことは、そういうものの最終的な決定権と言いますか、解釈権と言いますか、そういうものは請求を受けた国がするということだけははっきりしておるのでございます。そこで請求を受けました国がどういう基準でその判断をするかということになりますと、いま申しましたように各国においてかなり考え方に相違がございまして、学問上この議論をいたしておるのを見ますと、大体政治犯罪というのは、純粋な政治犯罪と相対的な政治犯罪とがあるといわれております。純粋な政治犯罪と申しますのは、きのうも小島先生の御質問でちょっとお答えを申したのでございますが、反逆罪、つまり反逆の企図あるいは革命またはクーデターの陰謀といったような、もっぱら政治的秩序を直接侵害する行為、こういうものにつきましては、各国条約の上におきましても、いまの引き渡しの慣行の上におきましても、これは引き渡しをしないということに一致しております。これは定説と申してもよかろうかと考えます。後の相対的政治犯罪につきましては、政治的秩序の侵害に関連しまして、普通の刑法犯のようなものを犯しておる場合がそれだといわれておるのでございます。こういう場合にはおおむね引き渡しをしないのが例となっているというのがおおむねの論でございますが、そういうふうに思われるのでございます。立法例によって見ますと、相対的犯罪の中のあるものについては引き渡しを行なうことができるというふうに、ベルギー、スウェーデン等国内法では規定しておりまして、この相対的政治犯の中におきましては、その後いろいろな学会等で、ある程度これを緩和して、一般的には引き渡さないのが例でありますけれども、例外を設けてある程度引き渡していくというふうに、緩和の傾向にあるやに学者は論議しておるのでございます。こういう点につきまして実はまだはっきりした解釈を私ども持っておりませんが、決定権は被請求国、もし日本の場合でございましたら、日本引き渡し請求された場合には、日本がそれをきめることでございますので、こういう点につきまして確固たる解釈、態度をきめておく必要があるというふうに考えます。
  23. 大竹太郎

    大竹委員 それでは、やはり二条の六号でありますが、「引渡犯罪について請求国の有罪の裁判がある場合を除き、逃亡犯罪人がその引渡犯罪に係る行為を行なったことを疑うに足りる相当理由がないとき。」という項でありますが、こういうような書き方をしてありますと、結局、これは裁判がある場合のほかはほとんど引き渡さないでいいというふうに読めるのですが、これはどういう意味なんですか。
  24. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 それは、そういう意味ではございませんで、引渡犯罪は、確定判決で刑の執行のために引き渡しを求められる場合もありますし、それから現に捜査中あるいは公判係属中の場合、こういったいろいろな段階の、要するに刑事手続が現に向こうの国で行なわれておるということでございまして、確定判決で刑の執行を求めるために引き渡しを求められておるという場合には、確定判決というはっきりしたものがございますから、これは問題はないのでございますが、公判係属中であるという場合、それも一審の判決がすでにあったということになりますと、もはや犯人は一応黒と推定され得る状況になっておると思いますが、まだ一審の判決もない公判係属中でありますと、その被告人はむしろ逆に白と推定されておる状況にあろうかと思います。それから捜査中ということになりますと、なおさら海のものとも山のものともわからない、こういう状況下でございますので、諸般の資料を見まして、わが方で、 つまり引き渡しを求められた国のほうで見ましても、引渡犯罪に関連しまして、そういう犯罪が行なわれたと疑うに足りる相当理由があるということを見られ得る状況であることを要する、こういう意味でございます。
  25. 大竹太郎

    大竹委員 次に、第三条でございます。第三条二号のあとのほうの、「請求国から日本国が行なう同種の請求に応ずべき旨の保証がなされないとき。」というのでありますが、この保証形式でございます。これは特にきまっている形式はないようなのでありますが、どういうふうにお考えですか。
  26. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 この点につきましては、条約のあります場合はもちろん条約にきめてございます。条約のございません場合には、形式といたしまして特段きまったものはないのでございますが、通常書面によって、この書面外交文書でございますが、口上書と言いますか、そういう形の書面で行なわれるのでございまして、請求を受けた国の法令等で要請されておる場合には、関係資料をつけることが、同時に求められると思うのでございます。そうして、いまの相互主義に基づく保証の点でございますが、この請求する口上書外交文書の中に、同時に保証の点が述べられるというのが通常形式であろうかと思うのでございまして、現にスイスと日本との間で口上書の交換をいたしました際にもそういう形式を踏んでおります。
  27. 大竹太郎

    大竹委員 次は第四条の三号、法務大臣の措置でありますが、「引渡しの請求引渡条約に基づかないで行なわれたものである場合において、逃亡犯罪人を引き渡すことが相当でないと認めるとき。」 この「相当でないと認めるとき。」 というのは、先ほどいわゆる政治的配慮という意味のことを言われたのでありますが、そういうことをさしているのでありますか、どうですか。
  28. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 この場合では、そういう主として政治的考慮の点はこの部分ではございませんので、ここで考えますことは、請求国日本との友好関係を維持していく、あるいはそれを促進していく、あるいはこういう条約がないにしても刑事手続の面で国際協力を円滑にしていくといったような観点、それから日本の便益、犯罪人人権の保護、こういったような見地から法務大臣が具体的に検討すると思うのでございますが、法務大臣は、その場合に裁判所における審査手続を経るまでもなく、なるほどこれは事件が軽微であって、かりに引き渡しに当たるとしても、この程度のものは引き渡さぬのが相当だ、国際協力という点を十分考慮に入れても、なおかつ引き渡さぬのが相当だと判断をされる場合もあると思いますし、いろいろな具体的な事件によって中身は違ってくると思うのでございますけれども、若干の例を申し上げますと、たとえば請求国が、先ほど申しましたようにわが国にとっては未承認国であるとか、国交未回復の国であるかどうかといったようなこと、それから請求国逃亡犯罪人国籍国または当該犯罪犯罪地国かどうかということや、その犯罪日本裁判権を行使し得るものである場合に、これを行使しないことが相当であるかどうか、たとえば外国で犯しても日本刑法で処罰し得る場合があるのでございまして、そういったような裁判権を行使し得るものである場合に、これを日本で行使するよりもやはり外国引き渡したほうがいいかどうかというようなこと、それから先ほど申したように、犯罪性質はどういうことであるか、政治犯罪というふうな範疇に入るものであるかどうか、いかにも刑法犯のように言っておるが、実態は政治犯政治犯と言えば引き渡さないから刑事犯のように言ってきているのじゃないだろうかといったような考慮とか、そういったようなもの、それからまた外国法律日本法律との間で法的な評価において多少差異がある場合もありますので、そういったようなこと、それからまた、こまかく申しますならば遡及効、これはまあ刑法の大原則でございますが、ある国では遡及効を認めるような立法をして、さかのぼって罰するというようなことで刑事手続を進めている場合もないとも限らない。そういうことではないかどうかというような点などをしさいに検討いたしまして、相当でないというときには裁判手続に待つまでもなく拒否する、こういうことに相なるかと思います。
  29. 大竹太郎

    大竹委員 次にもっとお伺いしたいのであります。最近麻薬に関する犯罪というものは、ほかの犯罪と違って非常に国際的な色彩が強い犯罪でありますし、これについてはどこの国も同様非常に弱って対策に困っているのだと思いますが、こういうものについては特殊な何か国際協力方法でありますとか、そういうものはないのでございますか、考えているのでございますか、どうでございますか。
  30. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 仰せのように、麻薬犯罪はいわゆる国際犯罪と観念されておるのでございますから、この種の犯人につきましては、国際協力という点から申しましても、犯罪性質が国際的なものである点から見ましても、引渡犯罪としましては最もそれに適する犯罪一つであろうかと思うのであります。したがいまして、これは一九六一年に麻薬に関する単一条約というのが結ばれておるのでございますけれども、これはまだわが国批准をしておらないのでございまして、批准をしたいという考えのもとにおるのでございますが、これを現実批准いたします場合には、若干麻薬取締法についての改正を要する点があるやに聞いております。この単一条約に加盟をいたしまして、この条約のもとで国際的に協力することになりますと、この条約によりますと、犯罪人引渡条約における引渡犯罪とされなければなりませんし、それからまた条約の存在していない場合には相互主義によって犯罪人引き渡しをする場合にも、麻薬犯人というのは、すべてのものではございませんが、一定の麻薬犯罪犯人引き渡し対象になる犯罪、こういうことに相なっているのでございます。ただし、先ほど申しましたように、この条約は、まだ加盟し、批准している国が非常に少なく、定数に達しませんので、まだ効力を発生しておらない条約でございます。将来この条約が発効いたしますと、この条約からも当然引渡犯罪になっているのでございます。
  31. 大竹太郎

    大竹委員 いま一つお聞きしたいのでありますが、この法律と、出入国管理令という法律があると思うのでありますが、それとの関係は一体どうなっているのでございましょうか。
  32. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 これは運用の面におきまして、あるところでは双方が同じ問題を解決するのに役立っている面がありますけれども、法律といたしましては全く性質を異にしているのでございまして、まず、引渡法のほうは、規定目的からいたしまして出入国管理令とは異なっているのでございます。この引渡法は、外国犯罪を犯した者に対する処罰の実現をはかる刑事手続面における国際協力というのが目的でございます。これに反しまして管理令のほうは、出入国するすべての人の出入国の公正な管理ということを目的としております。この目的においてすでに異なっておるのであります。それからまた規制をいたします対象でございますが、これも違っている。引渡法のほうは犯罪人対象とするものでございますが、入管令のほうは出入国する者、犯罪者だけでなくて、そうでない一般の人をも対象としているのでございます。したがって、ある極端な場合を申しますと、外国において犯罪を犯した者でありましても、必ずしも強制退去対象にはならないような結果にも相なるわけでございます。それからなお、手続におきましても、非常に違っているのでございまして、引渡法におきましては、外国政府請求を待って初めて手続が開始されるのでございますが、管理令におきましては、そういうような請求を待つことなく、わが国独自の立場で手続が進められる、こういう点で違っているのでございます。なお、運用面におきましても非常に違ったものがあるのでありまして、両者は法律性質目的すべて違っているのでございますが、この両者が運用する犯罪人という観点で国から出すというような点になってまいりますと、ある面でよく似たような運用になる場合があることはございます。
  33. 大竹太郎

    大竹委員 きょうはこの程度質疑を終わりたいと思います。
  34. 濱野清吾

    濱野委員長 両案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。      ————◇—————
  35. 濱野清吾

    濱野委員長 法務行政検察行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますのでこれを許します。坂本泰良君。
  36. 坂本泰良

    ○坂本委員 本日は、先般来からお聞きしておりました近江絹絲の横領事件の問題について、政治献金についてなかなかこの捜査が進まないので、去る二月二十九日に社会党では調査団をつくりまして大阪に出かけたわけであります。そうして大阪地方検察庁並びに大阪府警の本部をたずねまして、いろいろとその捜査の進展等についてお聞きしたわけであります。まず第一に、大阪地方検察庁におきましては、正室におきまして井嶋検事正、それから次席検事、卜部特別捜査部長の三名の方の一緒なところでその捜査の進展についてお伺いしたわけでありますが、その要点は、卜部特捜部長からの説明によりますと、一億二千万余の横領の問題について、六千二百万については被告発人である丹波秀伯氏は一応の弁解はしておるが、五千八百万については、いままでわれわれが聞いておりました以外のことが言われたわけであります。それは労働関係に二千万、三千八百万円は言論関係と政治献金になっておる。労働関係のほうは、本人の自供かあるいはその他の証拠によりますか、昭和三十二年から昭和三十四年までの間に、詳しく申しますと、全繊本部幹部の有力推薦母体である某紡績会社の労働組合幹部、これらの方々に渡っておる。言論関係と政治献金のほうは、この三千八百万については被告発人がその内容について自供しない。さらに、それに裏づけになるような証拠もないからその捜査に非常に困難を来たしておる。しかしながら、もう少し捜査をすれば結論を出す段階になっておる、こういう説明であったわけであります。  そこでお聞きしたいのは、第一にこの六千二百万円の横領の金額については一応弁解はしている、こういうのでありますけれども、はたして告発によるところの横領金といわれるのか、正当な支出をしてその容疑がないか、あるいは容疑があるか、それがどうもはっきりしない。したがって、もう少しで結論を出す段階になっておる、こういうことであれば、この点についてはどんなことになっているか、それがわからない。さらに言論関係と政治献金したというだけであって、その内容が本人が自供しないのであるから、あるいはそれの裏づけとなるようなものがないから捜査に困難を来たしておる。捜査に困難を来たしているが、もう少し捜査をすれば結論を出す段階になっておる、こういうことであれば、これがどういうことになっているか、やはり労働関係のほうについても明らかにしなければなかなか迷惑だろうと思うわけです。さらにまた言論関係におきましても、政治献金におきましても、先般答弁がありましたように、あるのかないのか、なければないように、あればあるように、やはりこれをはっきりいたしませんと、相当の金額でありますから、ぜひひとつ、いかに捜査は困難であろうと、これを進行してやるべきである、こういうふうに考えるわけであります。その点についての御見解を承っておきたいと思います。
  37. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 私どもも、この事件捜査相当難航しておるように承知しておるのでございますが、万難を排してできるだけ真相を明らかにするようにということを希望し、かつ、現地のほうにも国会の御要望等も伝えまして促進方をはかっておる現状でございまして、鋭意捜査をした上で、ある程度御説明ができるような段階になるかと思いますが、現状は坂本先生も御承知のとおり捜査中でございまして、この段階でいろいろと論評的なことを私の立場から申し上げることは適当でないと考えておるのでございます。御了承願います。
  38. 坂本泰良

    ○坂本委員 もちろん捜査中でありますから、われわれも説明を聞きまして、ある程度質問はいたしましたけれども、どうもはっきりしない。しかしながら、やはりここまで公になったし、相当の金額ですから、捜査も困離であるということはわかりますけれども、これをはっきりしないことには、とかく昨年の選挙でも相当の金が使われておるといわれております。それがこういう民間会社の横領の問題から政治献金をした、あるいは言論関係に——言論関係ということは今度初めて聞いたわけでありますが、双方に三千八百万というものが流れておる。この点をぜひひとつ明瞭にしなければ、ただこのままで起訴とか不起訴とかという問題ではないじゃないか、こういうふうに思うわけです。さらにその六千二百万について一応の弁解はしておるけれども、はたして横領になるか、あるいは会社のために支出したものであって横領にはなっていないかどうか、これを明確にしなければならない、あまり長くなるからいろいろの派生的な問題も出てくると思うのです。これはあとで大阪府警の問題について他の同僚委員からも質問があると思うのですけれども、すでにもう結論を出す段階にきておるというのだから、これはぜひひとつ督励をしてもらって、何でも捜査が広範にわたるから東京都に出張すれば相当捜査費用が要る、こういうような点でもひっかかっておれば、これは何とか打開して、捜査を進めなければならぬ。捜査にはいろいろ強制捜査もあるし任意捜査もある。いままでは任意捜査でやっておられるようでありますが、そういう点について急速にやってもらいたい。これをやはり大阪地検のほうにやってもらいたいと思うのですが、いかがでございますか。
  39. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 かなり広範囲の捜査ということになると思いますが、これに対する捜査旅費とか庁費とか、そういったような予算上の点につきましては、私のほうで何ら支障のないように手当てをいたしまして、十分納得のいく捜査をやってもらいたいということを実は私も大阪の検事正に申し上げておるわけでありまして、大阪の検事正もその点はよく承知しておりますから、十分徹底した捜査をされると思います。いま、近く決定になるとかなんとかいうような話は全然聞いておりませんので、私は、もっと徹底した捜査がなお相当期間置いてもやるようにということじゃないかと思っておったわけでございます。
  40. 坂本泰良

    ○坂本委員 いわゆる六千二百万のほうもそうですか、五千八百万については二千五百万を会社に弁償した。さらに三千八百万を弁償したから、もうこれは地検も捜査は投げておる、あるいはもう問題にならない、こういうようなことを被告発人側から言っておる、こういうようなことも聞くわけでありまして、さらにまた二千五百万の金融についても、これは野村証券関係にあるいは証券法違反になりはしないかというような疑いもあるわけであります。さらにまた慰労金の総会において、武装警官三十数名を使って、この前質問しましたように、一気にこれを五分間くらいで議決をしてしまった。そしてその慰労金という名目でこの金を穴埋めする、こういうようなことも言われておりますし、また、それについては丹波秀伯氏は警察に深い関係があるから、そのほうで公の警察を使ってそういう方法をやっておる。さらにその後は松葉会の暴力団狩り——もちろんわれわれは暴力団狩りは徹底的にやってもらわなければならぬですけれども、そのことによってこの不正な一方の者の利益のために警察官を利用するという結論にでもなれば、これは重大な問題である。こういうふうに思うわけですが、この点については警察庁のほうからの所見も承っておきたいと思います。
  41. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 警察庁の意見がどういうことになっておるか私はわかりませんが、私の承知しております限りでは、なるほど業務上横領の点についての告訴は古いのでございますけれども、昨年十一月に追告訴が出ておりますし、さらに十二月には、ただいま御指摘のかなり計画的な総会荒らし的なことがあったわけでございまして、これらの事件が総合的に何らかの関連を持っておるかどうか、こういう点もおよそ検事といたしましては、捜査の過程において告訴の範囲に限定して捜査をするという性質のものではございませんで、捜査の過程において発見されました犯罪で親告罪でないものは当然やるべきものはやるという考えに立って捜査をしておると思いますので、業務上横領の事件が難航したから、それで事件全体がだめになってしまうという性質のものでも私はないと思うのでございまして、そういう点を大阪地検としては広い視野から総合的に見て、犯罪のあるところ犯罪を摘発する、こういう徹底した捜査をしたいという考えでやっておるものと私は信じております。したがいまして、たくさん御提示をされておる御疑念の点もありますし、私はできるだけ真相に触れた徹底した捜査を期待しておるのであります。御承知のように捜査にはいろいろな制約がありますので、こういう困難な制約を乗り越えてやるわけでございまして、どうかひとつ大阪地検をこの上とも激励をしていただきたいと思います。
  42. 日原正雄

    ○日原政府委員 今回の株主総会における事件は、私どものほうとしては純粋に松葉会員等による暴力事件ということで捜査をいたしておるのであります。
  43. 坂本泰良

    ○坂本委員 松葉会といえば有名ですから、暴力団の点についてやられるのは、これはわれわれも賛成なんです。しかしながら、そういう不純な総会において、どういう内容で総会荒らしだという具体的の問題がかかっておるか、その点についてはわれわれいろいろなことは聞いております。しかし、警察のほうでどういうふうにキャッチされておるか、その点はまだ知らないわけであります。しかしながら、前回も私が質問いたしましたように、もしもそういうような状況を前もってキャッチされたならば、それにならぬ前に、何も株主総会は延ばしてもいいし、未然にそれを防止するのが私は警察の職務ではないかと思う。それを朝の十時にその総会の議長が不信任を受けて、そうして中止になって、正午になって再開をする、そのときは武装警官がその廊下に入り、さらに議長席のうしろにいて、待っていましたとばかりやるだろう、しかし、やったことは、大きい声をして、何かいすを振り上げるか何かしたというふうに聞いておるわけであります。それくらいのことで、暴力団の捜査としてやられるについては、これはいかに暴力団の事件だからといって、徹底的にやらなければならぬということはわかりますけれども、そのことだけで数回府警から東京に逮捕に出てくる、その逮捕に出てきた警察官の行動についてもいろいろのことを聞いております。被告発人の丹波氏と会った、その会った際にどうかというようなことも聞いておりますが、その事件で二カ月以上もまだ保釈にもなっていないし、十数名の検挙者を出しており、まだそれを釈放しない。もちろん暴力団というのは、今度の法律も出るでしょうが、兇器を持つとかあるいはお礼まいりとか、そういうような点を防止するために法案を出そうとしており、暴力団狩りのムードが出ているのではないかと思う。われわれはこの点については、何もこの暴力法の法律改正しなくても、現行刑法でどんどんやれるという見解を持っていて、そうしてやることはできると思うのです。しかしながら、そのやることが、暴力団というような名前に立って、そうして一方のそういう総会の決議を結論的に援助した。この事件について、五千八百万という、検察庁で言われるような金がどうなっているか、その穴埋めにするのではないかといわれるような事件についてやられることが、暴力団狩りという名前である一方に警察が利用される、こういうことになったら、これは暴力団以上の暴力になるのじゃないか、こういうふうにも考えられるわけです。それで、何でしたらその内容について警察のほうでおわかりならば御説明願いたいと思います。
  44. 日原正雄

    ○日原政府委員 私ども報告を受けております状況を申し上げたいと思いますが、その前に、なるほどお話しのとおり事前に警告もできたかもしれませんが、何分にも相手の所在もはっきりしないことでもあり、あるいはまた総会において暴力事件を起こすということは、当然やってはならないことでもありますので、一応警戒のために出動したというようなかっこうであろうかと思います。当日のこの総会の会場は国際ホテルの七階の会議室でございますが、午前の七時過ぎごろから暴力団と思われる者三、四十名がすでに詰めかけているという情報がございまして、九時半ごろから東署の捜査員十五名が警戒のために現場に出動して、総会場から約三十メートルくらい離れた別室で待機したのであります。このころすでに会場では松葉会員と認められる東京弁の三、四十名の者が議長席前付近の席を占めまして、喧騒にわたり、不穏な空気に包まれていたということでございます。十時に総会が開催されると同時に、前の席の付近にありました在阪の総会屋数名が松葉会員等とともに議長、役員席前に大挙押しかけて、議長不信任、流会にしろというふうに怒号いたしました。議事の進行が不能に陥りまして、午前十時十五分ごろ、やむなく一たん休憩いたしました。役員等は役員控え室に引き揚げまして対策を協議いたしたわけでございます。その後、役員控え室には、在阪の総会屋あるいは松葉会の幹部らしい者が押しかけて部屋に入りまして、口々にきょうの総会は流せ、明春やり直せ、この状況では続行できない、続行すればどんなことになるかもしれないというふうにののしったために、約三十分後に役員控え室を四階に移したそうでございます。しばらくして、この会社の総務部長から東署の刑事課長に対しまして、役員会議の結果として、総会は正常に続行したいと思う、もし不法行為にわたった場合には、警察は阻止してほしい、こう重ねて警戒方の要請があったわけでございます。こういう状況から見まして、険悪なる情勢から、本署からさらに十名増員を受けまして待機させておったわけでございます。午前十一時五十五分、総会が再開されまして、一号議案の審議に入りますと、特に議長席前が喧騒になりまして、不法事犯の発生が予想されましたので、私服員を会場外の廊下、会場裏の控え室に警戒のために待機させたわけでございます。会場内では、議長席に押しかけて怒号する者が次第に数を増しまして、ついに議長、役員席をひっくり返し、いすを投げる等の暴力事犯が発生しました。会場内の吉田総務部長から東署の刑事課長に制止方要請の合い図がございまして、検挙に着手して、その場で暴力実行行為者の三名を現行犯逮捕いたしたわけでございます。このときはちょうど零時五分だったそうであります。その後の議場の状況でございますが、議長は、この暴力事犯が発生いたしましたために休憩を宜して退場いたしたわけであります。その後、机、いすなどを整理いたしまして、午後零時二十五分ごろ再び続行されたわけでございますが、このとき、先ほど連絡いたしました警察官十名の増援がまいりましたので、会場外の隣室の控え室に待機させた。零時三十五分に場内が喧騒をきわめましたが、会場のとびらが内側からかぎがかけられて内部の様子はうかがえなかったのであります。零時四十分に再び場内が騒然となりまして、このとき会場のとびらも開かれて内部をうかがったのでございますが、議長席にいすを投げつけた者がございまして、私服員が場内に入りましたけれども、被疑者は混乱にまぎれてしまった。こういうような状況の中で零時四十五分ごろ総会が終了した、こういうような経過の一応報告がまいっておるのであります。
  45. 坂本泰良

    ○坂本委員 われわれが大体聞いておるのとあまり差はないようでありますが、そこで私が申しますのは、これは弁護士の方もここにたくさんおられますけれども、家屋の明け渡しとか家屋の取りこわし、こういうような強制執行する場合に、やはり債務者がなかなか立ちのかない、また大ぜい大挙して反抗するという場合、執行吏は民事訴訟法に基づいて警察官の要請もできることになっております。しかし、それを要請してもなかなか警察のほうでは、民事関係にはわれわれは容喙しないといって、私なんか三十年ばかりの経験ですけれども、警察官にぜひ来てもらいたいと、ほんとに執行を二日三日延ばしてやってもなかなか出てこずに、そういう警察官要請の規定はありますけれども、一ぺんも実行したことはないわけなんです。もちろん、新聞その他では若干はそういう場合も聞かないではないのですけれども、私の経験からしては一回もないわけなんです。そして延びているうちに話し合いをつけるとか、非常な譲歩をして何とか片づけるというような状況になるのですが、このような場合でも、十時十五分に休憩して、再開する場合において、さらに総会を強行する、だから応援を頼むという場合に、私は警察において相当その時点においてやはり留意しなければならなかったと思うのです。さらに十数名を増員して、そして第一号議案から第四号議案まである、その中身は、この横領事件について穴埋めするというような、慰労金贈呈の問題等の重要議案があるのを強行する、そこに私は非常な疑問が出てくると思う。だからなぜ警察は武装警官を最初やって、休憩になったならば、その休憩の時点において、何も二時間後に強行させずにやるのが暴力団に対する取り締まりの第一の要点じゃないかと思う。もちろん総会荒らしもおるでしょう、そういうときは、あとでそういうのをどんどん検挙してやるのよりも、そういうことをさせないようにするのが警察の職務じゃないかと思う。そうせずに、会社の要請があったからそれに基づいて直ちに警官を派遣した。そしてそのあと二カ月も二カ月半もかかって強硬な方針でそれの捜査をする、そこに問題があると私は思う。何も凶器を持って行ったりしたわけではないでしょう、その点はどうですか。(発言する者あり)あなたたちもいまの報告だけでどうお考えです。
  46. 日原正雄

    ○日原政府委員 私どものほうの立場といたしましては、暴力事件があればそれを取り締まらなければならないので、それが何かためにする、自分たちのほうの主張が正しいから暴力をふるうという場合でありましても、暴力がふるわれればこれを取り締まらなければならない。総会として議事が進められるのは、平静な、平穏な状態で進められなければならない。その間に暴力が行なわれれば、私どもとして当然検挙に着手しなければならないという立場でおるわけでございます。
  47. 坂本泰良

    ○坂本委員 そこで、暴力とすぐ言うけれども、その暴力を派生させないようにすることが第一だし、凶器その他の問題等もあるわけです。  この点については、私、ちょっとほかに用がありますから、次回にもっとお聞きしたい点がある。(発言する者あり)いや、あとの捜査についてもいろいろ不純な点も聞いておりますから、次回に譲りまして、あとは同僚委員に譲りたいと思います。
  48. 濱野清吾

  49. 山田長司

    山田(長)委員 ただいま坂本委員質問に対しまして、坂本委員が所用のためにお出かけになられるので、そのあとを私が引き続いてお尋ねしたいと思います。  私も一緒に大阪へ調査に参った一人でございますが、この事件で私が不可解に思いますことは、何かしら、公平であるべき警察官が公平でない印象の調査が出てきたのです。これが事実であるとすれば、私はたいへんな問題だと思うのです。実は二月の中旬に大阪の坂本という警部補が、丹波秀伯氏のうちに相談しに来たという事実があるのです。それで、この坂本警部補なる者は大阪上六の輝扇というバーへ寄っております。そこでこの輝扇というバーで——バーの支配人は森本という、現在は新大阪ホテルにマネージャーとして勤務しておりますが、このバーで、警部補と目される者が大気炎を上げておって、常ならば支払いはいつもあと払いにかかわらず、その日は女給に一万円の札をくれておるということです。そこで、その場で見ておった人でその前後の事情を聞いた人に松田という人がおりますが、この松田という人が、実に不可解なので森本という人に話をしたわけですが、それをわれわれが耳にいたしまして、これはこの事件関係のあるものとわれわれ調査の一行は推定をいたしました。そこで今度は一部テープにもとってきてありますが、その前後の事情をもう少し調べようとして、松田という人にもう一回会おうとしましたら、今度は松田に逮捕状が出ました。松田という人は、まるきりこういうことに関係のない人のようです。正しい情報を得ようとしておりますのに、何のために松田という人に逮捕状を出したのか。これは正確な情報をわれわれが得たいので調査に行ったわけでありますが、その調査の一番のにない手である松田という人に逮捕状が出ているというので、松田という人はいまどこか逐電してしまっているそうですが、一体松田という人に逮捕状がほんとうに出ているのかどうか、どうです。名前がわからないのが残念ですが、松田という人です。
  50. 日原正雄

    ○日原政府委員 詳しく聞いておりませんので、調査いたしてからお答えいたします。
  51. 山田長司

    山田(長)委員 詳しく調べていただきたいのは、丹波秀伯なる人の自宅に警察官が実際に来たのがどうか、それでこの五千八百万円の事件というものは、政治献金として出ておるということを大阪の特捜部長がはっきり言っているのですから、これはもみ消しとしか理解できません。それで札びらを切ったということを、前後を想像いたしてみますと、この輝扇というバーへ入り込んで札びらを切ったというのが事実であれば、これは財界の人であります丹波秀伯氏から金でも出ておるのではないかという印象がわれわれは持てるわけです。先ほど坂本委員からも質問がありましたが、五千八百万円というものが政治献金として出ているということは、特捜部長ははっきり言っているし、同時に竹内刑事局長もこの間言っているわけですから、この明確な事実がわかっているのに、黙秘権を使って正確にその金をだれにやったということが口から出てないからといって、逮捕をせずにおくというのがどうしてもわれわれには理解できないのです。何としても理解できません。それで、先ほども坂本委員から質問が出ましたが、二千万円だけは特捜部長の話によりますと全繊本部の有力な労組幹部、こういうことを最初言ったのです。私はそれを控えてきました。それを新聞記者会見で発表いたしましたところが、今度は朝日の記者が特捜部長にもう一ぺん会いに行きましたら、多少内容が変わって、繊維の会社の労働組合の幹部、こういうふうに言い直してしまって、合繊とは言わなかったようでありますけれども、繊維の労働組合というとやはり全繊同盟のことなんです。これは最初私たちに言ったことと変わりない内容を持っていると思うのですけれどもいずれにしても、こういうふうに労働組合の関係の幹部にだけは二千万円出ていたということが明らかになったのに、それを今度は政治問題及び言論関係者にも出した、こう言っているということではあるが、それはおそらく追及して調べておることだと思うのでありますけれども、黙ってさえいればそれはいつまでもほうっておいていいということであるとすれば、これは相手が財界人なので、おそれをなして調べずにおくのではないかという憶測も持てるのです。こんなことがあるとすれば、私は一法の威信にゆゆしい影響を持つと思うのです。そういう点でこの問題は私たちは軽々しく見ていないのです。大阪まで調査に行ったのも、これは政界の明朗化のために、それから日本の労働運動の明朗化のためにも明らかにしなければならない内容を持っていると思うのです。それが、特捜部長も井嶋検事正も、とにかく一生懸命やっているのですからと言っているが、一生懸命やっているといっても、去年から私は三回これを聞いておるのです。大阪から実はこれだけの答えで引き揚げてきているのですけれども、何としても残念です。このままうやむやにされてしまう危険がありはしないかという印象さえ持たざるを得ないわけです。一体その間において何べん調べているのですか。私は去年の四月から言い始めまして、この間代表団として調査に行って、そのことも伺ったのですが、調査中です、こう言っているけれども、大阪地検はこの丹波秀伯なる者を一体何べん調べておるのですか。このことはおわかりになりませんか。
  52. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 丹波氏を何回大阪地検で調べたかということは、私どもにはそういうこまかい内容について報告がありませんのでお答えはできないのでございますが、山田先生の御疑念になる点は私はよくわかるのでございますけれども、一生懸命やっておるということは目でごらんになって、お会いになったそうでございますので、おわかりいただいたと思いますが、捜査にはなかなか、弁解をするわけじゃございませんが、制約された条件のもとでやる捜査でございますので、幾多の困難があると思うのでございますが、どうかひとつ大阪地検を信頼くださいまして、この手でいかなければこの手、この手でいかなければこの手というふうに、いろいろ犯罪捜査のことを考えてやっておると思うのでございまして、そういう点、御信頼いただくようにお願いをいたしたいと思っております。
  53. 山田長司

    山田(長)委員 捜査当局が懸命にその捜査をやっておるということは、まあ会って話をしているうちにも察せられないことはないのであります。しかし、この調査について大阪に行っても、かなり大きく七、八段抜きで新聞に出ました。そういうふうなことから、われわれのところへ投書やら電話やらで情報が入ってきたのですけれども、それによると、政界の三、四十人の人に金が出ておって、名前も聞いたけれども、申し上げませんが、これはしかし、やはりこの機会には言っておかなければならぬから申し上げるのですが、これは政界の人にもたくさん出ておって、政界の人たちが検察当局に圧力をかけておる。そういう関係で中へ入っておる検察当局者も丹波を呼べないのだ。一体そういう状態であなた方が調べにきたってなかなかそれは口じゃ言うはずはない。これは検挙して調べてもらうということをあなた方が言わなければ、調べる方法はないのだぞと、こういうことを力強くわれわれに示唆を与えてくれた者があります。これは政界人で何十人の人が金を丹波なる者からもらっておるかわかりませんけれども、こういう電話等が耳に入りましたり、投書等を見たりしますと、ますますその危惧の念を持つわけです。しかも、それが告発以来長い歳月がかかっておる。その間に地方選挙やら、あるいは統一選挙等があったので、多少延びたことは理解されますよ。理解されますけれども、何べん呼んで調べたのかも、行っても一言わないし——一ぺんくらい呼んだのかもしれません。あるいはまた任意出頭でどこかほかの場所へ行って話をしておるかもしれません。しかし普通の場合、もしこれが民間の人の場合には、五万か十万横領してもすぐに検挙される。それが財界人なるがゆえに一億二千万円横領しておっても、これが告発されておっても、どんな取り調べがされておるかちっともわからぬということでは、政界に身を置く者としてまことに不可解な事件として、あなた方により一そう叱咤激励をして取り調べをしてもらわなければならぬという印象になるわけです。幸いに労働組合の幹部に出た二千万の金は、この間の特捜部長のわれわれに対する発表でわかりました。しかし、もう一段のところですよ。もう少し御猶予願いたいということでありました。だが、これはやはり本省のほうから激励をしてやる必要がある段階にきておるのではないかと私は思うのです。まして有能な人かもしれません、竿山検事にも私は何べんか会いました。最初会った印象と——竿山検事の印象は容易でないような印象を受けた。おそらくあの人にも圧力がかかっているのではないかという印象を私は受けてきました。これは何としましても——これは証券法の問題にまで内容を持っているものと思います。聞くところによりますと、二回にわたって五千八百万円は昨年暮れに返済したそうであります。刑事犯罪というものは、返済したからといってそれで内容は解決するものじゃないと思います。どうかそういう点で、返済したとするならば、これはわれわれの仲間で五万、十万の横領をして検挙されて、それを返済したとするならば、その返済した金の出どころさえも常識的には聞かれるのが今日の状態だと思うのです。ところが、それがこの場合においては、五千八百万の返済がどういう内容で、証券であったのか、あるいは金であったのか、これは検察当局が協力するという筋合いは私は感じませんけれども、長引かせておいて、金のできる期間をつくってやったのではないかという印象さえ悪くすれば持つのです。これではいかぬと思うのです。長引くということについて、捜査はむずかしいと言うけれども、むずかしいからといって一年有余の歳月が過ごされておっていいという筋合いのものではないと思うのです。聞くところによると、いや、金は返しちゃっているのだからこれは不起訴になるのだ、こういうことを言いふらしているというのです。これは政治献金ということでありますから、われわれは忘れずに明らかにするために究明はいたしますけれども、かりに長引かせられますと、不起訴になってしまうのではないかという印象すら持たざるを得なくなると思うのですけれども、内容的にはタコ配の二億四千万という問題もあるのですから、この脱税問題を追及して——脱税問題も私は引っぱって調べるべき筋合いのものであると思うが、タコ配の問題では、それほど引っぱって調べるほどの内容はないのですか。
  54. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 山田先生のおことばを伺っておりますと、すべて検察を激励していただいておるおことばのように私には受け取れるわけでございまして、まことにありがたいことだと思いますし、また、現地にはきょうの会議の模様は逐一私は詳細に知らせまして、意のあるところを伝えさせていただきたいと思っております。  ただ、はっきり申し上げておきますけれども、外部でいろいろ情報をお聞きになりまして、いろいろと御心配のあまりいまのようなおことばがあったと思うのでございますが、私の承知しております限りでは、この近江絹絲の問題について政界、財界の方々から一言も要請めいたことを伺ったこともございませんし、いわんや、圧力を感ずるというようなことは私自身ないわけでございます。また、現地のほうの検察庁は、私どもとは違って、先生方がおいでになりましたから会いもしましたし、また、おそらく先生方を信頼してかなり詳しいことを述べたかもしれませんけれども、そういう方の圧力を感ずるような大阪地検だとは私は思っておりません。また、あの検事正も気骨のある方でございますし、そういう方ではございませんので、そういった意味の御心配は、この事件に関する限りは私は相愛であるというふうに確信をいたしております。でございますので、外部のそういったような情報が乱れ飛ぶというようなことになりましては、かえってまた検察の威信にも関するわけでございますので、せっかく私も督励をいたしまして、早くこれが結末を見ますように、私のほうからも努力をいたしまして御期待に沿うようにいたしたいと思っております。
  55. 山田長司

    山田(長)委員 実は特捜部長から、前回に訪問して事情を聴取したとき、政界人にばらまかれた金額と名前は、これは本人から出たのではないが、ある方面から出た情報であるというので、全部金額と名前を見せられました。私、写してきてあります。しかし、これは議員の名前と金額とにそごするようなことがあるといけないので、特捜部長は、丹波秀伯氏にこれを確かめるために、本人から言われるまではとにかくいまここで話はするけれども言わないでくれ、こう言っていた。私はその信義は守っているつもりです。しかし、やはりこれにも限度があります。これが真偽のほどを本人から確かめるまでということでありまするので、私も、名誉にかかわることでありますから、特捜部長が得た情報だけでここで申し上げることは控えます。しかしこれは、特捜部で苦労していることはわかるのです。わかるのですが、本人が口を割らないという場合に、最後へいってどういう判断をするかということにかかってくると思うのであります。これが、政治献金問題以外にタコ配の三億四千万という問題もあるのですから、私は、まさか万が一にも不起訴になるなんということはないと思っておるのでありますが、これがもし不起訴になるというようなことになれば——これはどう考えたって内容的に法律上不起訴になるべき内容じゃないです。それが本人だって一億二千万のうちの五千八百万は横領したということを認めているのです。認めていて、それが釈放されておって、しかも何回取り調べを受けたのかさっぱりわからぬという、世の中にこんな不可解な事件はないですよ、どう考えてみても。ですから、これは何としても結論を出すよう急ぐと同時に、この問題の終末をつけるために、これは司法の権威にかけても、応援者をやってでも、早く解決をつけるべき筋合いのものだと思うのです。その点いかがお考えになりますか。
  56. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 私も全く同感でございまして、大阪地検は相当な検事をかかえておる大地検でございますので、全力をあげて捜査に傾注していただくように私からも希望いたしたいと思います。
  57. 濱野清吾

    濱野委員長 志賀君。
  58. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 この前、委員長の勧告によりまして、問題を簡単にあげておいただけでありますが、そのときに警察庁のほうから、去る二月十二日十九時三十分ごろに起こった豊島区椎名町四の二一三二、東京都養育院勤務、原田与志子さんの長男博司君、中学二年生でありますが、これが切符を買って帰ってきたところ、なぜ逃げるのだ、極東紬のチンピラだろうというふうにして、結局無理に連れていかれそうになって、それに反抗したので、池袋交番所に引き込まれて、丸山今朝利、西沢享両巡査の暴行を受けたという事件がありますが、この事件についてパトロール中の二人の警官は、逃げ出したので職務質問したと言っているが、原田少年の話では、いま申しましたように、友だちを待たせて電電の切符を買いにいって帰ってきたらに、おまえ逃げただろうと言われ、おまえは極東組のチンピラだろうと言われた。こういうことになっておりますが、その後あなた方のお調べで、警察庁はどういうふうになっておりますか、それを伺いたいと思います。
  59. 大津英男

    ○大津政府委員 ただいまの御質問でございますが、この前のときにも申し上げましたとおりでございますが、丸山、西沢両巡査が二月十二日の七時半ごろから警ら勤務についたわけでございまして、池袋駅の地下道の西口から東口に向かって警らの途中におきまして、七時四十分ごろ、少年二人がこちらを振り返って突然逃げ出した。そういうことで不審を抱いてそのあとを追って職務質問をした。こういうことでございまして、そのとき付近一帯を見ておりまして一人の少年のほうを見つけまして、そこで、もう一人はどこに行ったのかと尋ねますと、あの子が逃げようと言ったので逃げたというふうに答えておる。こういうことでございます。間もなく他の少年が見つかりましたので、どうしたのだと言うたのでございますが、その際極東組の者かというようなことを言った、そういうことは出ておらない、こういうことでございます。
  60. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そうすると、あなた方のほうでは、いまのお話を聞いてまだはっきりしないのですが、警察官が暴行を働いた事実はないということをこの前言われたが、その後さらにお調べになったと思うが、そういう事実はないとおっしゃる意味でいまの御答弁をせられるのですか。
  61. 大津英男

    ○大津政府委員 その後、少年を東口の交番にまで同行いたしまして、そこでいろいろ聞いたのでございますが、その間、丸山巡査並びに西沢巡査が少年に対して暴行を働いたという事実は出ておらないわけでございます。
  62. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 事件の翌日二月十三日にとった豊島区高松町の安倍医院の安倍院長の診断書について、あなたは前回の法務委員会で、たいした傷ではないが要求があったので書いたものであると言っているが、これはどういう意味なのですか、あなたの言われる意味は、もう少し日本語でふえんすると。
  63. 大津英男

    ○大津政府委員 これは池袋警察署の警察官二名の者が安倍医師のところに参りまして、そういう抗議がございましたので参りまして、どういうことであったかということでいろいろ聞いたわけでございます。そのときに安倍医師が言いましたところでは、この辺にひっかいたような糸のような筋があったという程度であるということで、まあ治療を要するようなけがではない。それから、本人はいろいろ、母親と一緒に来ておったのでございますが、背中も痛いというようなこと、それからひざのあたりも痛いのだというようなことで、そういうところも調べたけれども、別段異常がない。というようなことで、治療を要するとは認められないということでございましたが、たって診断書を書いてくれ、どれくらいたったらもともとになるかというようなことで、十日もすればその傷のような糸筋のようなものももとのとおりになるだろうという意味で十日間くらいかかるだろうと言った。そういうことで、それじゃそれをそのとおり書いてくれということで診断雷を書いた。こういうふうな警察官からの報告書があるということでございます。
  64. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そうすると、二人の警官が行って安倍院長に聞いたというのは、何か正確な文書でも残っておりますか。
  65. 大津英男

    ○大津政府委員 これは二人の警察官から署長あてに報告をしておるということでございます。
  66. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 あなたは、報告されたのを見ると、治療の必要はないのだけれども母親よ志子さんがしいてくれと言ったから書いたのだ、治療の必要はない。こういうことを安倍院長が警官に言ったと言われましたね。それじゃ私はここでその、安倍医師の書い診断書を読み上げます。     診 断 書   住所 東京都豊島区椎名町四の二      一三二        氏名原 田 博司         昭和24年6月20日生  一 病名 頭頂部毛根部は下出血及       脱毛症及背部打撲症並顔       面切創及頸部打撲症及皮       内切創     右疾病に依り約十日間加療を     要するものと認むとあります。加療、治療を加えることを必要とするものと認む。カッコして「(但し合併症を除く)」こうなっておるのです。加療、治療を加えることを必要とすると認む、この診断書をあなたはどうお考えになりますか。医師の発行した診断書をうそだと言われるかどうか、はっきり言ってください。
  67. 大津英男

    ○大津政府委員 医師に、私直接お会いしておらないからわからないのでございますが、母親の要求がありましたのでそういう診断書を書いた。しかしながら、その場で何らの治療も加えておりません。そのままで本人も帰っておるということでありまして、もし治療を要するのであれば、その場で薬を塗るなりいろいろなことがあるべきだったと思いますが、そういうようなこともなかったように聞いております。
  68. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そうすると、あなたは、「加療を要するものと認む」、こういうふうに言ったのは治療をしなくてもいいのだというふうに警官が聞いてきたのだというようなことで、あなたの言われるところによると、警官の上司に対する報告、それをそのまま口うつしに言っておられるのですが、母親が請求するのは当然じゃないですか。未成年に対して警官から暴行を受けた、泣き寝入りせずに堂々と診断書を要求するのはあたりまえのことじゃないですか。医師がはっきりと、「加療を要するものと認む」こういうふうに言っている。これを否定なさるかどうか。それをはっきり言ってください。これをうそと言われるかどうか、はっきり言ってください。警官の報告だけではだめです。医師の診断書について、あなたの意見をはっきり述べてください。
  69. 大津英男

    ○大津政府委員 医師の診断書を書いた事情を警察官が聞きにまいりましたところが、医師自身はそういうことを申したという報告を受けておるわけでございまして、そういう事実を私から申し上げておるわけでございます。診断書を書いた状況がそこに出ておる、それで御判断がいただけるかと思います。
  70. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そんなことを私は聞いているのじゃない「十日間加療を要するものと認む」これをうそと言われるかどうか、あなたの責任ある答弁を求めるのであります。そんなよけいなことを聞いているのじゃない。あなた、がそういうことを言われるなら、「十日間加療を要するものと認む」これをうそと言われるかどうか、それをはっきり言ってください、こういうわけです。あなたに、いま答弁しているようなことを私が答弁として求めているのじゃないのです。私の言ったことにはっきりと正面から答えてください。
  71. 大津英男

    ○大津政府委員 先ほどから申し上げておりますように、診断書を書いたときの状況から申しまして、十日間もたったならばもとのとおりになるという意味で書いたのだということを医師自身が申しておる。そういうことを聞いておるわけでございまして、その意味でその診断書を書いたとしますれば、そうとれるのかどうか、その辺のところは判断の問題は私はわかりません。
  72. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 逃げちゃだめですよ。それから十三日あとに、今度は鬼子母神病院の奥保男医師が再度診断しております。それは警察との交渉の中でいまあなたの言われるようなことを警察がぬけぬけと言うから、おかあさんがもう一度連れていって受けた診断書であります。「病名 頭頂部3ヶ所経2乃至3ミリの脱毛部あり左頬部頸部に約一糎の切創瘢痕あり背部胸椎棘突究3から5及びその両側に圧痛ありレ線上骨に異常なし」こうなっております。骨に異常がないが、なおこういう傷あとが認められる、脱毛も認められる、こういうふうに書いてあるのです。十日間の期限が過ぎたあと、十三日たったときにこういうふうに別の医師も言っております。あなたは私の質問に答えないじゃないか。「十日間加療を要するものと認む」と医師が言っている。しかるに、あなたは警官からの報告でそういうことを言われるが、そうすると、医師がうそを言ったというのか。が医師から聞いてきたから加療を要するものと認めないと言われるのかどうか。それを言ってくださいというんです。逃げちゃだめですよ。あなたがまっ正面から答弁するまで私は何度でも繰り返し聞きますから、早いところ言ったほうがいいですよ。
  73. 大津英男

    ○大津政府委員 先ほど来申し上げておるとおりでございまして、それから、もう一カ所の病院のことは私はいままで何も聞いておりませんのでお答えを申し上げられないのでございますが、先ほど来申し上げておるとおりに、安倍医師自身がそういうことを申されて、安倍医師自身がお書きになった診断書でございますので、安倍医師がどういうつもりで書いたかということは、安倍医師が警察官に言ったところで判断して間違いないのではないか、かように考えるわけでございます。
  74. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 いいですか、医師は診断書というものを書くのですよ。これについて警官に医師がどう言ったかということを私は聞いているのではない。あなたの言われるところから判断するならば、この医師が出した診断書、「十日間加療を要するものと認む」というのがうそになるかどうか、その点の判断を聞いているのです。加療を要するものとはっきり診断書に書いてあるじゃないですか。母親が無理やりに書いてくれと言ったから医師がうそを書いたというのですか。その点をはっきり言ってください。警官のことを聞いているのではない。診断書のことを私は聞いているのです。診断書をどういう心境で医師が書いたか、そういうことじゃない。診断書そのものについて私は聞いているのです。それを答弁してください。あなたが逃げれば何度でも聞きますよ。
  75. 大津英男

    ○大津政府委員 別段逃げておるわけではないのでございまして、医師がそういう診断書を書きましたのでございますから、医師がそういうふうな考えで書いたということを申しておるわけでございますから、その意味でその診断書を考えればいいのではないかと思います。もとのとおりになるのが十日かかるという意味で十日間の加療を要すと書いたとすれば、それはその意味での診断書である、こういうふうに解釈できると思います。
  76. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 もとどおりになるのには十日間かかるから加療を要するものと認む、こういうふうにあなたは言われるけれども、ほっておいてもなおるのと、加療すなわち治療を加えることが必要だと認むというのは違うでしょう。
  77. 濱野清吾

    濱野委員長 志賀君、議事進行上、時間が非常に長くなってしょうがないから、もっと君のほうの聞き方もよく分けて聞いたらいいでしょう。
  78. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 こっちに言うばかりでなくて、ああいう逃げ口上を言っていてはだめなんですから、あなたはこの法務委員会の委員長なんだから、行政府を代表して来ている人に対して、もう少し誠意のある答弁をしろと言うのが先決問題ですよ。
  79. 濱野清吾

    濱野委員長 保安局長、傷害の証明をした医師の証明を信ずるかということが一つだと思う。それからもう一つは、その傷害が両巡査の暴行によるものと信ずるか、この二つをお聞きしているのだと思うんです。要点はその二つだと思いますから、ひとつお帰りになってから——時間ばかりかかってしかたがないですから。志賀君、その二つなんでしょう。
  80. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 だからそれを答弁させてください。
  81. 濱野清吾

    濱野委員長 傷害の医師の診断書が保安局長としては信ずることができるかということと、その傷害それ自体が両巡査の暴行によるものと信じておるか、これはよそでけがをしてとんでもないことをやられても困るし……。
  82. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 またやりますよ。
  83. 濱野清吾

    濱野委員長 志賀君、それではまた次の機会にやってください。警察庁の人たちは一段高いところにいるから様子がわからないかもしれないけれども、要点はこの二つだと思いますから、保安局長よく考えておいてください。
  84. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 それでは委員長の言われるとおり、この次にははっきり責任ある答弁をしていただきたいと思います。  それではあと少し質問いたします。
  85. 濱野清吾

    濱野委員長 それじゃ本会議もありますから簡単にやってください。
  86. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 私のことだ、要領が悪い長い質問はしないのだ。  ところで、事件の起こった二日あと、丸山巡査がおかあさんの勤務先東京都養育院に二度も電話をかけてきた。話をしたいと申し込んでいるのですが、これは何のための電話ですか。そういう点はお調べになっていますか。
  87. 大津英男

    ○大津政府委員 少年と母親が十二日の午後九時半ごろ目白警察書の椎名町の派出所に抗議に参りまして、十一時半ごろさらに池袋署に参りましたので、さっそく丸山、西沢両巡査はもちろん、東口の派出所に勤務しておる者について事実を調査したのでございますが、丸山巡査は、抗議を受けるようなそういう暴行の事実は覚えがないというようなことから、どうも何かの誤解ではないか、母親に事情を話して誤解があるならば解いてもらおうということで、丸山巡査自身の判断で十三日の日に母親の勤務先に電話をかけたということでございますが、母親からは話を聞く必要はないということで拒絶をされておるということでございまして、別段話し合いをしたことはない、こういうことでございます。
  88. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 一体何のために電話をかけたのかという点ですね。とにかく自分が暴行しておきながら暴行した事実はないと言う。これは丸山巡査がかってにやったことですか、署のほうで電話をかけさせたのですか。またこういう場合に、事件を起こした人が、そして暴行したという嫌疑を本人並びに母親から受けた人が電話をかけることばいいことかどうか。いままでの例としてこういう場合に電話をかけさせるものですか。
  89. 大津英男

    ○大津政府委員 これは丸山巡査の独断で電話をかけたものでございまして、ほかの者がそうしろというようなことを申したわけではないのであります。丸山巡査自身は、自分が覚えのない暴行ということで抗議を受けておるということが心外であるというために、誤解を解きたいという一念で電話をいたした、かように聞いておるわけであります。
  90. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 丸山巡査の電話は二度かかった。初めは仕事中だったので出なかった。また電話をかけてきて、その電話で「丸山巡査ですけれでも、原田よ志子さんですか、博司君のことについて、ぜひ会って話したいことがあるから、つとめているところに出向いてもいい」云々、こういうことを言っているのです。それでおかあさんのほうがおこって、「何ですか、子供をなぐったりしておいて」、と、こういうことになった。というのは、丸山巡査は検察庁へ送ってもいいのだということを言っている。子供をなぐっておいて、検察庁へ送ってもいいのだけれどもということで、話し合って取り下げれば検察庁に送らないで済ましてやるということをにおわせている。こんな電話がありますか。あなた方そんなところまで調べましたか。どういう電話をかけたか、調べがあったら言ってください。
  91. 大津英男

    ○大津政府委員 先ほど申し上げたとおりでありまして、ただいまお話しのような検察庁に送るとかなんとかいうような電話の事実については、私ども聞いておりません。
  92. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そのときにおかあさんは、警察官ならなぜあたたかい少年を導くという態度をとってくれなかったか、なぐっておいて、検察庁に持っていってもいいんだけれども、とにかくその前に話をしよう、こんなことは警察官がすべきことなんですか、と言っている。ところが二月十八日になって、警視庁の内藤重夫という人がおかあさんの勤務先に来て、管理部長の三木才次郎氏と一緒におかあさんに会っている。そして内藤という人は、だれに頼まれて新聞社に電話をしたかというようなことを聞いております。これは一体どういうつもりで聞いたのですか。
  93. 大津英男

    ○大津政府委員 だれに頼まれて新聞社に電話をしたかというようなことについては、私どもまだ報告を受けておりませんので存じません。
  94. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 大体母親に警察官が、だれに頼まれて新聞社に電話をしたか、おまけにそのときに、顔にばんそうこうを張ったのはだれかというようなことまで聞いている。おかあさんが心配して張ってやったのが何が悪い。こういうことを言うのは一種の脅迫ですよ。この事件の警察の処理のしかたはどうしても不明朗な点が多い。ところがあなたは、だれに頼まれて新聞社に電話をしたかというようなことは知らなかったと言われる。これを調べてください。われわれはこれは明らかに脅迫と見ておりますが、一般の警察行動と違って、警察による青少年の補導というのはそれ自体にも問題があります。それが行き過ぎるとたちまち人権問題が起きる。青少年補導というのは一体どういう基準で警視庁はやらせておるのですか、その点を伺いたいと思います。
  95. 大津英男

    ○大津政府委員 少年補導のあり方ということにつきましては、やはり少年に対する愛情あるいは思いやり、こういうことが根本になければならないことはもちろんのことでありまして、警察官が非行少年を発見する、あるいは少年の非行を発見しました場合において措置すべきことということにつきましては、先ほど申し上げましたような愛情、誠実ということを根本にしまして仕事をやっていかなければならない。こういうことは警察庁ばかりではございません、警視庁におきましてもこういう大方針のもとに警察官の教育を行なっておる。こういうことでありまして、警察学校の教養におきましても、そういう少年補導のあり方というような点も十分に教育を施すということでやっておる次第でございます。
  96. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 委員長からまたあらためてゆっくりやれということでありますから、委員長に何度も機会を与えられることを大いに感謝します。  簡単にもう一つだけ。頭の毛をつかまえてほかの巡査に暴行さしたときに、丸山巡査は、おれは前にも頭の毛を半分くらいむしって不良を立ち直らしたことがある、こういうことも言っている。それで、このことについて地区の労働組合協議会の代表あるいは区会議員の人が池袋署に行って鳥海次長に会ったときには、頭の毛をむしるのはけしからぬことではないかと言ったときに、それは子供が自分の頭をむしって毛を抜いたんだろうというような答弁をしているんですね。私は、まだ、自分の頭の毛を自分でむしるようなことを聞いたことがないんだ。こういうめちゃくちゃなことを言っているし、また、この抗議に行った人たちを盛んに警官がフラッシュをたいて写真をとっている。次長に対して抗議に行った人たちが、けしからぬじゃないかと言うと、上司に報告するのに必要だ。一体こういう場合に、行った人の写真をなぜとらなければいけないのですか。映像権ということがよいか悪いかということまでもいま裁判所で問題になっているときに、こういうことが警察で行なわれている。こういうことも報告がありましたかどうか。
  97. 大津英男

    ○大津政府委員 報告は聞いておりません。
  98. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 上司に報告するために写真をとったと譲っているくらいですから、そういうことも調べていただきたい。これは明らかに脅迫のためにやっている。きょうのあなたの答弁では、けがをさせたということを、加療の必要がないから、しかし母親が望むからやったという。そうなってくると、あなたは、その程度のけがをさせたということを認めることになるでしょう。そういうこともあわせてこの次によく答弁していただけませんと、こういうめちゃくゃなことが行なわれている。それに対して、一人の母子家庭の母親が、決して権力に屈しないで勇敢に戦った。そういうことをもみ消しますと、これは戦前の警察のことも私はよく知っておりますが、警察が結局、市民生活のあらゆる領域を支配する、こういうことにもなるのであります。ですから、この次私はもう一度この点について、いろいろと用意しておりますのでお聞きしますから、先ほど委員長のほうから勧告があったような諸点についてはっきりと御答弁を願った上で、またお聞きすることにします。  それから委員長、この次には警視庁の人を呼んできてください。あなたも言われるように、どうも上のほうにいるから答弁がぼうっとしているようですから、それをひとつお願いします。
  99. 濱野清吾

    濱野委員長 わかりました。
  100. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 それからもう一つ、この前人権問題で人権擁護局長に伺いました。あなたもお聞きのとおり、前もってこちらから、こういう問題について伺いますよと言ってあるのに何にも答弁しない。ああいう不勉強なことでは困ると思いますから、政務次官のほうからも人権擁護局長に御注意願いたいが、委員長のほうからもその点については御請求願いたいと思います。きょうはこれで終わります。
  101. 濱野清吾

    濱野委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十四分散会