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1964-02-28 第46回国会 衆議院 法務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月二十八日(金曜日)    午前十時二十六分開議  出席委員    委員長 濱野 清吾君    理事 鍛冶 良作君 理事 唐津 俊樹君    理事 小島 徹三君 理事 三田村武夫君    理事 坂本 泰良君       大竹 太郎君    河本 敏夫君       四宮 久吉君    田村 良平君       千葉 三郎君    中村 梅吉君       馬場 元治君    久保田鶴松君       松井 政吉君    志賀 義雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 賀屋 興宣君  出席政府委員         警  視  監         (警察庁保安局         長)      大津 英男君         法務政務次官  天埜 良吉君         検     事         (民事局長)  平賀 健太君         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君         法務事務官         (人権擁護局         長)      鈴木信次郎君         運輸事務官         (自動車局長) 木村 睦男君  委員外出席者         検     事         (大臣官房経理         部営繕課長)  住吉 君彦君         検     事         (刑事局総務課         長)      辻 辰三郎君         大蔵事務官         (国税庁直税部         資産税課長)  吉田富士雄君         自治事務官         (財政局公営企         業課長)    近藤 隆之君         判     事         (最高裁判所事         務総局人事局         長)      守田  直君         判     事         (最高裁判所事         務総局人事局給         与課長)    宮崎 啓一君         専  門  員 櫻井 芳一君     ————————————— 二月二十八日  委員山木幸一辞任につき、その補欠として和  田博雄君が議長指名委員に選任された。 同日  委員和田博雄辞任につき、その補欠として山  本幸一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 二月二十七日  逃亡犯罪人引渡法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一一四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  刑事補償法の一部を改正する法律案内閣提出  第四一号)  法務行政及び人権擁護に関する件      ————◇—————
  2. 濱野清吾

    濱野委員長 これより会議を開きます。  法務行政に関する件、人権擁護に関する件及び裁判所司法行政に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますからこれを許します。志賀義雄君。
  3. 志賀義雄

    志賀(義)委員 去る二月十六日の各新聞日本弁護士連合会人権擁護委員会で、バス会社など、バス電車従業員身体検査にからむ人権侵害問題の調査をやった結果を発表して、車掌身体検査憲法違反である、こういう結論が出されたということでありますが、これは法務当局のほうに、この結論についての連絡がありましたかどうか、それをまず伺いたいと思います。当委員会でも三回にわたってこのことは問題になっております。
  4. 鈴木信次郎

    鈴木(信)政府委員 ただいま御質問にありましたような新聞記事は拝見したのでありますが、この問題につきまして、日本弁護士連合会から、このような結論出したという通知にはいまだ接しておりません。
  5. 志賀義雄

    志賀(義)委員 問題の発端は、昨年の六月神戸交通局松原営業所若林栄子さんというバス車掌が不当な検査を受けて、しかも自宅にまで、親のところにまで来ていろいろと問いただしたということで、翌早朝国鉄灘駅付近で鉄道自殺をしたのでありますが、それがこの法務委員会でも三回にわたって問題にされて、明らかに行き過ぎであるということが当時の稲川人権擁護局長からも言明がありました。野本政務次官からも同様の趣旨説明がありました。その結果、法務省自治省並び運輸省それぞれ通達を出されたそうでありますが、その通達法務省自治省及び運輸省からおのおの同様趣旨通達を出されたかどうか、私どもわかりませんので、言っていただきたいと思います。
  6. 鈴木信次郎

    鈴木(信)政府委員 まず昨年の八月二十七日、神戸のこの事件を所管いたします神戸地方法務局長から神戸市の交通局長あて勧告出しました。同日さらに法務省人権擁護局長より、労働省労働基準局長運輸省自動車局長自治省財政局長あてに、バス乗務員に対する所持品及び服装検査等に関し、人権侵害となるような検査程度検査方法改善につき指導監督方を要請いたしました。その内容は相当長文にわたっておりますが、その要点を申しますと、「地方公営企業は、常に企業経済性を発揮するとともに、その本来の目的である公共の福祉を増進するように運営されなければならないとされ、このような基本原則に沿った企業の運営をするため管理規程を定めることができるとされています。この趣旨から服務規定就業規則などに、乗車券売上金についての不正行為防止に関する規定が設けられ、その方法として、多くの場合、乗務員所持品および服装等検査が行なわれているのであります。しかしながらかかる検査実施は、人権に対する制約を伴う場合が多く、その程度方法いかんによっては、憲法に定める人権保障趣旨に反する場合も少なくないのであります。したがって、このような乗務員不正防止措置については、企業管理方式などについて十分検討を加え、人権制約を伴わない他の方法を採り得るならば、これによることが望ましいと考えます。しかし、やむを得ない措置として乗務員所持品および服装等検査方法をとる場合においては、その方法程度行き過ぎにならないよう必要最小限度に止め、いやしくも乗務員人権侵害となるような検査が行なわれてはならないことは申すまでもありません。服務規定などに基づいて所持品および服装等検査を行なう場合において、たとえば、乗務員の肉体に直接手を触れるようないわゆる身体検査はもちろんのこと、服装検査でも下着姿になるまで着衣を脱がせたり、みだりに身体を露出させるなど乗務員に羞恥または屈辱感を与えるような方法によって検査すること、本人を入浴させその間に着衣等検査すること、本人の不知の間に所持品着衣等検査すること、本人明示意思に反して検査すること、あるいは犯罪捜査に類するような方法によって調査すること等は、検査限度を越えるものであって、人権擁護上許されないものと考えます。よって、これらの問題の防止改善等につき、今後とも関係企業管理者指導監督(助言)に十分の御配慮を煩わしたく、参考までに通報します。」という内評でございます。
  7. 志賀義雄

    志賀(義)委員 この通達労働省運輸省自治省になされたものですか、あて名はどこになっておりますか。
  8. 鈴木信次郎

    鈴木(信)政府委員 労働省労働基準局長運輸省自動車局長自治省財政局長あて、こういうふうになっております。
  9. 志賀義雄

    志賀(義)委員 運輸省自治省の方に伺いたいのでありますが、この通達に基づいて実施状況はどうなっておりますか。この制度が廃止されたところがあるかどうか、そういう点について。
  10. 近藤隆之

    近藤説明員 自治省でございますが、人権擁護局からのこの通達に基づきまして、十月二十九日に各都道府県あて同様の趣旨通達出しまして、所持品検査服装検査等人権に対する制約を伴う場合があると考えられるので、検査にあたってはその方法程度行き過ぎにならないよう慎重に配慮する旨の通牒を出したような次第でございます。これに基づきまして各事業所では組合等といろいろ相談をして、従来の方法について検討を加えておるということは聞いておりますが、廃止したところということは開いておりません。何かそれにかわる方法としていろいろ検討したけれども、かわる方法が見つからなくて、従来のやり方を非常に簡素化する等人権侵害にわたらないような方法で簡素に実施しておるというふうに聞いております。
  11. 志賀義雄

    志賀(義)委員 いままでの方法は、この通達に基づいて人権侵害のおそれがある、かわる方法を考えているが、それがまだ労働組合その他と折り合いがつかない、あるいはよい方法が見つからない、こういうことでございますね。
  12. 近藤隆之

    近藤説明員 全部について調査したわけではございませんが、たとえばこの問題を起こしております神戸市等におきまして調べましたところ、従来の検査方法を非常に簡素化した方法でやっておるというようなことでございます。組合との関係で三十数回にわたりまして、いろいろ他の方法等を考えたけれども、両者ともこれにかわる方法がいま直ちに考えられないということで、従来の定期検査をやめて臨時検査等にするというような方法でやっておるということを聞いております。
  13. 志賀義雄

    志賀(義)委員 ところが、二月十六日の新聞に、当の法務委員会で取り上げるきっかけになった神戸交通局長藤原潔君の話では、こういうことがあるのですね。「われわれは身体検査をしているのではなく、所持品検査をしているわけで、人権侵害にならぬようとくに配慮して来たつもりだ。」こういうことを言っているのです。そうすると、若林栄子さんという娘さんが自殺したときも、人権侵害にわたるようなことをしなかったと言っている。しかるに、いま読み上げられた法務省通達によりますと、昭和三十八年八月二十七日、神戸交通局長に対し、人権擁護上の問題点を指摘し、このような事態が再び発生しないよう十分な配慮改善方勧告しましたとありますが、いまの藤原神戸交通局長新聞に出た意見によりますと、これは全然無視されておりますね。それでいいのですか。法務省人権擁護局長、お答え願います。
  14. 鈴木信次郎

    鈴木(信)政府委員 私どものほうに入りました報告では、無視されているというのではありませんので、神戸市の交通局におきましても、神戸地方法務局長勧告に従いまして、適正な検査方法を定めるために現在労使間で交渉を重ねており、近く決定される見通しである、こういうふうに報告を受けております。
  15. 志賀義雄

    志賀(義)委員 それは話が違います。いま言われたことは、前置きにこう書いてあるのです。「車掌自殺事件があって以来、労組側とも団体交渉を続け、交通局としても検討しているが、いまのところまだ結論は出ていない。」これが前置きになって、私がいま読み上げたように、「人権侵害にならぬようとくに配慮して来たつもりだ。」と言っているのです。なるほど通達があったからその点について労働組合交渉はしているが、これまでやったことは何ら人権侵害をやったことはない、こういうふうに書いてある。はっきり言っておる。そうするとあなた方が出され、労働基準局それから運輸省自治省に出されて、そこから通達が出されている。これは全然無視されているということになりますが、それでいいのですかとお伺いしているのです。労働組合といま交渉中ということを私は聞いているのじゃないのですよ。人権上の問題については十分配慮してきたつもりだ、こう言っている。そうしますと、この若林栄子さんの自殺に追いやられた事件まで人権上のことは配慮してきたつもりだ、こういうふうに言っている。この検査は市の規則でもはっきりきめられている、こういうふうに言っています。これでいいのですかと伺っているのです。
  16. 鈴木信次郎

    鈴木(信)政府委員 ただいまの御質問新聞記事を基礎にしてお尋ねになったようでございますが、その点課長が申しました以上に私のほうではまだ詳しい報告を受けておりませんので、はたしてそういうことがあるかどうか、さらに事実を調査いたしました上でお答えいたしたいと思います。
  17. 志賀義雄

    志賀(義)委員 これはもう去年の八月の事件ですよ。その当時神戸市にある法務局人権擁護課からはちゃんと回答があったはずです。もうそれから何カ月たっておりますか。追って調査をいたしまして、じゃ困ります。そうすると全くいままでほうっておかれたことになりますか。
  18. 鈴木信次郎

    鈴木(信)政府委員 なるほど御質問のように、昨年の八月二十七日に神戸地方法務局長から神戸市の交通局長勧告したわけでございますが、ただいまのお話は最近のことじゃありませんか。
  19. 志賀義雄

    志賀(義)委員 二月十六日の新聞に、日本弁護士連合会人権擁護委員会のほうから、明らかに憲法違反だというふうに言われたことについて、もう一度読みますが、「われわれは身体検査をしているのではなく、所持品検査をしているわけで、人権侵害にならぬようとくに配慮して来たつもりだ。」と言っている。これでいいのですかというのです。
  20. 鈴木信次郎

    鈴木(信)政府委員 という発言は二月十六日の新聞ですから、その二月十六日の新聞に記載されたような事実が前是としてあるかどうか、神戸交通局長がそういうふうに発言されたかどうか、その事実を確かめた上で、さらにその真意を確かめた上で回答したい、こういうわけです。
  21. 志賀義雄

    志賀(義)委員 それではいけないと言うのです。新聞にこういうふうに出ている。それが事実かどうかとおっしゃるのですが、しかし、この出た限りでは——またいま労働組合とは七つの場合をあげてそのやり方について交渉しているのです。何とかしてこれをやりたい、続けてやりたいと考えている。しかもここにあるように、「配慮して来たつもりだ」というのですからね。去年の若林車掌自殺したことも含めて人権上のことは全部考慮してきた、こういうふうに考えているのです。この法務委員会で私が問題にしましたのは、かつおぶしを削るより少し大きい箱に赤いビー玉二つ、青いビー玉を四つ入れて前に引っ張りますと、一つその中から出てくるわけです。前にもここで説明しましたような確率で青が二回なら赤が一回、三回に一度は赤玉で、赤玉が出ると入浴して検査を受ける。青玉が出たときには手を触れて、あるいは上着をとって探す。これから私触れますが、まだ方々事件が起こっているのです。岩手県でも起こっている。大阪でも事件が起こった。私は将来の革命博物館のためにこのビー玉出しの箱を保存しておこうと思っているのです。こういうことが昭和三十八年の日本で行なわれておったというのですからね。これは私、神戸交通当局に申し入れてその箱の譲り受けをいま交渉しているわけです。そして将来の革命博物館に保存しようと思っている。それぐらいのものです。そういうことまでもやっておいて、そのことも含めてこういうことを言っている。全然無視されているのです。こういうことが新聞に出たあげくに、別にも問題が起こっているわけです。あなたは調べてまた答弁をなさるとおっしゃった。  そこで二つの問題を出したいと思うのです。交通関係企業——公営民間とも含めて乗務員服務規程就業規則労働協約及びその実施状況、特に身体検査服装検査についての資料人権擁護局ではお集めになりましたか。日本弁護士連合会人権擁護委員会民間の組織であるにもかかわらず、努力をして全国でいろいろとこういう問題があると具体的にあげているのであります。その日本弁護士連合会調査及びそれから憲法違反という結論が出たその文書を至急日本弁護士連合会に連絡して入手されてこの法務委員会に配付されるとともに、日弁連調べられたような全国のいろいろの身体服装検査についてのものを提出していただけますか。これが第一点。第二点は、あなたは調べると言われるが、私どももずいぶん神戸交通局については調べておるが、こういうことを言っておるところを見ると、いまだに改俊の情がないものと見える。あなた方がお調べになるだけではなく、国政調査方法に基づいて当法務委員会調べたい。調べることについて委員長のほうから適当の方法を講じていただきたい。
  22. 濱野清吾

    濱野委員長 政府機関がそういう資料を出せるかどうか、政府機関からそのことについて答弁してもらって、法務委員会の問題はあとにしましょう。
  23. 鈴木信次郎

    鈴木(信)政府委員 日本弁護士連合会の件につきましては、先ほど申しましたようにまだ決議文を入手しておりませんので、早急にこれを提出してもらいまして、内容をよく検討いたしました上で次の方法をとりたいと思います。  それから、神戸で一向改善あとがないじゃないか、あるいは現在に至っても何か非常に人をばかにしたような方法でやっておるという御発言でございますが、そういった事実はまだ私どもの耳には入っておりませんので、ただいまの御発言に基づきましてさらに具体的にそういう事実があるかどうか調査した上で結論出したい、かように考えております。
  24. 志賀義雄

    志賀(義)委員 また問題が出てきました。あなたはいま日弁連の書類を慎重に調べた上でと言われましたが、調べてぐあいが悪かったらここに出されないのか、入手したらそのまま忠実にここにお出しくださるのか、どちらなんですか。
  25. 鈴木信次郎

    鈴木(信)政府委員 御要望がありますから、そのもの自体はすぐ提出いたします。ただ、それに基づきまして私どもがどうするかということにつきましては、内容いかんによることでありますから、それに基づいて十分に研究した上で次の対策を立てたい、こういうことであります。
  26. 志賀義雄

    志賀(義)委員 出すか出さぬかは調べてからとおっしゃるのですが、何かぐあいが悪いことでも予想されるのですか。
  27. 鈴木信次郎

    鈴木(信)政府委員 最初にお答えいたしましたように、日弁連決議文自体は入手次第直ちに提出いたします。
  28. 志賀義雄

    志賀(義)委員 もう一つ日弁連でもせっかく調べておられるが、方々でこういうことが行なわれておる。そして法務委員会で問題になったのでありますから、本来ならば人権擁護局でも直ちに——あなたが今度着任されてから法務委員会でお初にお目にかかるのですが、それならば仕事初めに全国のこういうバスだの電車だの服装身体検査、それも日弁連調べではこういう例が幾つかある。中には服の上からさわって調べるという御丁寧なことまで書いたものがあるということでございますが、そういうこともひとつ、あなたのほうから運輸省及び、自治省労働基準局にもああいうふうな勧告をお出しになったのですが、何らかの方法をもって資料をお集めになって、私ども出していただけませんでしょうか。そうしませんと、委員長は、そういうものが出たら、神戸市の交通局長を呼ぶかどうかきめる材料になるからと言っておられるのですから、その点まず前の、端から確かめていかないと、委員長答弁がはっきりしませんから、そこをひとつ言うていただきたいと思います。
  29. 鈴木信次郎

    鈴木(信)政府委員 御要望趣旨に沿うように今後いたしたいと思います。
  30. 志賀義雄

    志賀(義)委員 そうしてくださるのですね。——神戸交通局でいま団体交渉中であります。団交の過程で、市交通局側は七項目の提案を出しているようです。ここでは普通検査を廃して、臨時検査を強化しようとして、検査係員の人員を増す要求を出しておる。また、特別の場合は七項目以外のところも調べられるという案になっておるのであります。そしてその七項目の中にも、上着ポケットには係員が手を入れて調べることができるというようなことがありますが、これはよろしいのでございますか。
  31. 鈴木信次郎

    鈴木(信)政府委員 ただいまの問題は、現在、神戸交通局労使間で交渉中の問題のようでございまして、交渉中に、そのことがいいか悪いかと言うことは、私どもでその意見を出すというのは、はたしていかがなものか。むしろ、その結果どういうふうになったかというところまでいったところで、もしそれが人権侵犯になるということになれば、これは私どものほうで取り上げて検討したい。途中で、私どもがそこに口を入れるということは、また別の意味で好ましくないことではないか、そのように考えます。
  32. 志賀義雄

    志賀(義)委員 人権擁護というのは、何ですか、それを侵害する場合に、侵害するようなことがまた新たに行なわれようとするときには、その点についてそういうことのないようにと、あらかじめ予防的な勧告などは、人権擁護局はしてはいけないのですか。何か事件が起こって初めてそれを、これは人件擁護上、人権侵害である、こういうことになるのでございますか。人権擁護局は、その点どういうふうになさるのでしょう。
  33. 鈴木信次郎

    鈴木(信)政府委員 すでにこの問題につきましては、人権擁護局意見出してあるわけでありまして、おそらくこれを尊重しながら、神戸で現在労使間で交渉中だろうと思われるわけです。その途中でさらに私ども意見を出すという必要もないし、また労使間の交渉、これが公平に行なわれるという意味でもはたしていかがなものか。おそらくこの時点で意見を出すということは差し控えたほうがいい、かように考えます。
  34. 志賀義雄

    志賀(義)委員 法務省のほうは、警察のほうとともに、一番よく御存じだろうと思いますがね。あやしげな喫茶店では、そこに出てくる婦人のポケットに手を入れさせてサービスをするということもあるんですよ。大体係員が女の子のポケットに手を突っ込む、これすらが問題なんですよ。そういうことをやろうとする。そうして特別の場合は七項目以外のことでもいい、調査をする、こういうことになっておるんですがね。そうしますと、特別の場合という理由でどういうことでもやれるということになります。神戸市の交通局長は、あれほどの事件を引き起こしていながら、いまだに、人権上には特に配慮してきたつもりだと、しゃあしゃあと言っておるんですからね。そういう交通当局ですよ。あなたのほうではそれを見守っていると言われるなら、運輸省及び自治省では、行政指導上、こういう問題についてどういうふうに見ておられますか、御答弁を願いたいと思います。
  35. 木村睦男

    木村(睦)政府委員 運輸省自動車局長でございます。この事件につきましては、当時、服装検査程度方法行き過ぎであるという人権擁護局の判定をわれわれ十分考えまして、それまでにも行き過ぎのおそれのあるようなことも二、三あったわけでございます。あれを機会に、全国交通関係業者陸運局長を通じて厳重に注意を喚起いたしまして、いやしくも身体検査につきましては、程度方法において行き過ぎがないように厳重に注意を喚起しておるわけでございます。本来、不正防止のために服装検査をすると申しますか、身体検査をすると申しますか、そういうことは服務規程に従い、あるいは労使の約束によってやっておるわけでございますが、問題は、その方法程度行き過ぎがいけないのでありまして、昨年の六月のこの事件を契機といたしまして厳重に注意をいたし、その後、各企業体におきましてもそれを受けまして、慎重に改善方等も現在考究しておるようでございます。いま先生のお話労使交渉もその一つのあらわれであろう、かように考えております。
  36. 志賀義雄

    志賀(義)委員 自治省の方。
  37. 近藤隆之

    近藤説明員 自治省のほうも、先ほど申しましたように、運輸省と同様、人権擁護局通知を受けて示達し、各企業体もそれに沿っていろいろ努力しておるという状況でございまして、一々の問題につきましてそれを報告をとる、そういうことは現在やっておりません。
  38. 志賀義雄

    志賀(義)委員 先ほど人権擁護局長説明なさいましたところにこういうことがあります。「本人明示意思に反して検査すること、あるいは、犯罪捜査に類するような方法によって調査すること等は、検査限度を越えるものであって、人権擁護上許されないものと考えます。」こういうふうになっております。本人明示意思に反して検査することも、これは人権擁護上許されない、こういうふうに書いてございます。それに間違いございませんね。
  39. 鈴木信次郎

    鈴木(信)政府委員 間違いございません。
  40. 志賀義雄

    志賀(義)委員 ではその後、そういうことについて、法務省運輸省自治省では、それに明らかに違反するようなことが新聞紙上に出て、それを調べられたような事件はございますかどうか。これは簡単にあるかないかだけでもおっしゃっていただきたいと思います。
  41. 鈴木信次郎

    鈴木(信)政府委員 一件ございます。
  42. 志賀義雄

    志賀(義)委員 どこでですか。ついでにそれもおっしゃってください。
  43. 鈴木信次郎

    鈴木(信)政府委員 広島です。広島郊外バス株式会社という会社のバス車掌に関する問題でございます。
  44. 志賀義雄

    志賀(義)委員 そうですか。それは私もうかつで知らなかった。そうすると、ほかにまだありますね。運輸省自治省のほうひとつ……。もうけものと言っちゃ語弊があるかもしれませんが、運輸省自治省のほうで……。
  45. 木村睦男

    木村(睦)政府委員 その後厳重に注意を励行するように監督をいたしておりますが、いま私の聞いておる範囲では、その後特に問題になった事実については聞き及んでおりません。
  46. 近藤隆之

    近藤説明員 自治省のほうへの連絡がありました事項は、現在のところ、私の承知しておる限りではございません。
  47. 志賀義雄

    志賀(義)委員 これは大阪市東住吉区にある大阪市交通局市営バス東住吉営業所で昨年十二月二十四日午後九時ごろに起こったことでありますが、大阪ではこういうことが行なわれているのです。ペンキをつけた五十円を置いておいて、それでこちらから監視員が見ている。それを拾わせておいて検査をする。それでもって首を切られた人が一人大阪市交通局巽営業所にありますが、いま申しました事件はごく最近のことでありまして、山下志津子という娘さんです。これはどういうことをしたかというと、自分の勤務に急ぐ途中ポケットから手袋を出そうとしたところが、名札とかぎが飛び出したのです。それをすぐ拾い集めて手に持って走ったのです。そこを検査員に見つかったのです。検査員はちり紙に包んだ五百円をそこに置いておいたのです。それでひっかけようと思った。山下という娘さんがいまのようなことで疑われて引っぱられた。ここに一々そのときの問答も書いてありますが、「あなた、ちょっと待ちなさい。」といきなり手をとり、そでを引っぱって、それが指導員という検査員であります。「あなた、ちょっと来なさい、なぜ逃げるの。」こういうことで、放せ、放さないの問答であります。「あなた何か拾ったでしょう。とにかく一緒に来てください。」こういうことで三分ばかりもみ合い、検査室へ引っぱっていかれたわけです。そこで「あなた、なぜ逃げるの。呼びとめられたら、逃げたりしないで立ちどまるのが常識でしょう。来なさいと言ったら、なぜすなおに来ないの。何もなかったら平気で来れるはずです。」こういうことです。本人意思に反してこういう検査が行なわれるばかりか、ちり紙に五百円を包んでおいて、あるいは五十円の硬貨にペンキをつけてやった——これは数年前の事件でありますが、こういう事件があります。あなた方の出された勧告に対してこういう事実がある。これは大阪の新聞にも出ておりました。私も現にその新聞を見ました。あなた方が勧告を出されたあと、こういう事態が起こっている。これは運輸省自治省も御存じないようだし、人権擁護局長も御存じないようですが、先ほどの勧告によりますと、これは明らかにとんでもないことであります。いかがでしょうか。
  48. 鈴木信次郎

    鈴木(信)政府委員 さっそく所轄の大阪法務局に命じて調査をいたさせたいと思いますが、いまの監視員の名前はおわかりでしょうか。
  49. 志賀義雄

    志賀(義)委員 私は言いませんから、あなたのほうでお調べなさい。当然のことじゃないですか。これは事実あったか、あなたのほうでは調査してお答えしますとおっしゃるのでしょう。かりにこういう事実があったとしたら、これは人権上問題になるかどうか。前の稲川局長は、入浴させて、その間に衣類を調べるということは明らかにいけないことだと明言されました。あなたは、こういうことがかりにあったとしたら、これは人権擁護上いいことか悪いことか、一般論として言っていただきたいと思います。
  50. 鈴木信次郎

    鈴木(信)政府委員 仮定の問題にはお答えできませんが、さっそくそういった事実があったかどうか取り調べまして、その上でお答えをしたいと思います。
  51. 志賀義雄

    志賀(義)委員 吉田前首相のようなことを言う。あまりえらそうなことを言うものではないですよ。あとで恥をかきますよ。前の稲川局長は、入浴させてやることは悪い。あなたが読み上げられたのも、本人明示意思に反して検査することは悪い、こういうふうに書いてある。人権擁護局長勧告として、本人明示意思に反して検査すること、これはよろしいか悪いか、もう一度聞きます。
  52. 鈴木信次郎

    鈴木(信)政府委員 それはよろしくないことはお答えするまでもないと思います。
  53. 志賀義雄

    志賀(義)委員 では、ただいまのようなことが大阪市交通局東住吉営業所に勤務する山下志津子という車掌に対して行なわれております。私ども相当資料はここに持っておりますが、これについてあなた方のほうでさっそく人権擁護局として調査してくださるかどうか。それで必要ならば、こういう勧告にもかかわらず、またこういう事実が行なわれていることをどういうふうに見ますか、そういう点についてまで考えて調査してくださるかどうか、その点を伺いたい。
  54. 鈴木信次郎

    鈴木(信)政府委員 先ほどもお答えしましたとおり、さっそく調査をいたさせます。
  55. 志賀義雄

    志賀(義)委員 先ほども日弁連のことを申しましたが、全国日弁連調べられたときには、必要に応じて身体に触れることがあってもこれを拒むことができないとか、服の上から手でさわるなどというような具体的なことまで書いたものまであります。神戸交通局の場合は、ただ所持品検査をしただけだ、こういうふうに言っておりますが、ここに神戸交通局から出している「昭和三十八年五月改訂、自動車職員運輸のしおり」というものがあります。これの十五条に「乗務員は、終業の際、係員から服装および携帯品その他の検査をうけなければ退出することができない。」こうなっております。藤原神戸交通局長は、所持品検査をしただけで、人権上の配慮は十分にしたつもりだ、こう言っている。これは交通局から出した乗合自動車職員服務規程の第十五条に出ているのであります。決して神戸市の交通局長が言うように、携帯品つまり所持品検査だけでなく、「服装およびその他」となっているのです。「その他」となっている以上、何でもその他に含まれるでしょう。こういう規定ですね。こういう規程が実は人権擁護上の問題になっているのです。これは日弁連でも問題にされているところであります。ですから、神戸市の交通局長がこの二月十六日の新聞に、人権擁護上の問題はない、所持品検査だけだと言っているが、規則にちゃんと書いてある。これに従って、とうとう若林栄子という娘さんを自殺にまで追いやっておるのです。ひどいことには、このときにはうちへまで行って、親にまでいろいろと尋問しておる。めちゃくちゃです。それは明らかに行き過ぎであると当時言われておったのです。こういう規則があるのです。だから私は、こういう問題について十分調べていただきませんと、刑事訴訟法で身体検査ということについては非常にやかましい規定がございますね。これは私が申すまでもありませんが、第十章の検証のところでは「身体検査については、これを受ける者の性別、健康状態その他の事情を考慮した上、特にその方法注意し、その者の名誉を害しないように注意しなければならない。」二項には「女子の身体検査する場合には、医師又は成年の女子をこれに立ち会わせなければならない。」こういうふうになっております。そこで人権擁護局長に伺いますが、いまの神戸交通局の乗合自動車職員服務規程、この第十五条にいまのようなことが書いてあるのです。「服装および携帯品その他の検査をうけなければ退出することができない。」、いまの刑事訴訟法には、国家の職権をもってやる場合にもあれほど厳重に規定があるのに、こういう交通局の規程でもってこんなことをやる。ここから間違いが起こるのですが、この点についてはどうお考えでしょう。
  56. 鈴木信次郎

    鈴木(信)政府委員 ちょっとよくわからないのでありますが、ただいまの規程は、私どものほうで昨年の八月二十七日に勧告出したその前でございますか。
  57. 志賀義雄

    志賀(義)委員 これは三十八年五月に改訂して現に実行されておるものです。これに基づいて先ほどの検査が行なわれ、そして若林事件が起こった。そのあと、これに基づいて方法を変えようというのですね、先ほどの七つの特別の場合というのは。あなたもお持ちですね、その八ページのところに第十五条というのがありますが、これがまだいま効力を持っているのです。刑事訴訟法も場合によっては無視するようなこういう規程をそのまま生かしておいては、先ほどの交通局長のような、日弁連出したところで、こっちは人権上十分配慮したつもりだなんとぬけぬけとしたことを言う根拠ができるわけです。市の規則にも書いてあると交通局長は言っているじゃありませんか。市の規則とはこのことです。これを見てあなたはどうお考えになりますかというのです。
  58. 鈴木信次郎

    鈴木(信)政府委員 現在この規則がそのまま行なわれておるかどうか、また実情はどういうふうに運用されておるかというふうなことを調査いたしました上で、意見を述べたいと思います。
  59. 志賀義雄

    志賀(義)委員 現に新聞にも、市の規則に従ってと出ておりますよ。この規則がいいかどうか、これを私は聞いておるのですよ。
  60. 鈴木信次郎

    鈴木(信)政府委員 研究いたしました上でお答えいたしたいと思います。
  61. 志賀義雄

    志賀(義)委員 そんなことで人権擁護ができますか、人権擁護というのは大切なことなんですよ。  もう一つ、これは岩手県に事件が起こっておりますが、やはり四時間にわたって尋問めいたことをやっているのです。こういうことについてこの上私が聞きましても、あなたのほうでは調査した上でと言われますけれども、とにかく身体検査服装検査所持品検査というようなことは非常に問題になっているのです。もう一度伺いますが、身体検査服装検査所持品検査はどこでどういう違いがあるのか、どういう関係があるのか。それを伺っておきませんと、限界概念でもってまた何とでも逃げられるのですから、あなた方は身体検査服装検査所持品検査人権擁護上どういうように法律上のこととして観念してお考えですか。
  62. 鈴木信次郎

    鈴木(信)政府委員 突然そういうふうに御質問になりましても、どういうふうにお答えしてよいかちょっとわかりません。もう少し具体的にこういうのはいいか悪いか、こういう事件はどうだということになれば、また別問題であります。
  63. 志賀義雄

    志賀(義)委員 前の稲川さんのときには、突然聞いても、身体検査のことはちゃんと刑事訴訟法のことでお答えがあった。服装検査のことについては、少し私から突っ込んで聞きましたら、これは通俗のことばでございまして法律上の規定がございませんので、こういうことでございました。所持品検査ということも、事実上こういう服装検査所持品検査ということで、刑事訴訟法でさえ厳重に規定してある身体検査まがいのことですね。何といっても服装というものは身体につけているのですから、服装検査身体検査はやりません、そうはいかないんですよ。東住吉の場合だって、着ているもの、マフラーまでもとられる、そういうことになっておるのです。とにかくあなたは、いろいろ調査してということでありますが、委員長もお聞きのとおり、人権擁護のことについては一向御熱心でないようだ、しかし今後の人権擁護局長はこれでは困る。だから、その調査のなにに基づいたときには、神戸交通局長を呼ぶかどうか、こういうことも法務委員会理事会でひとつよく御相談なさって、その手続をして、はっきりと人権擁護局長の前で事態を明らかにする必要があると思いますから、その点御考慮願いたいと思います。  それで大臣に伺いますが、これは昨年来神戸交通局行き過ぎ検査をやりまして、何だか五百円ほど余分の金を持っていたそうです。それが手袋の中に入っていたので、えらく責められて、七時間ばかり置かれて調べられた。その上自宅に行って父親にまで金の出所、それから平生の金づかいのことなんかについて聞き、翌朝未明にこの若林という婚約中の娘さんが鉄道自殺をしたのです。それで今日まで法務委員会で三回も問題になり、きょうで四回目であります。ところが、大阪市東住吉区にある大阪市交通局バスの営業所で、山下志津子という娘さんの車掌に、またぞろそこに五百円ちり紙にはさんで置いておいて、それを拾ったというので、別に自分のかぎを落としたのを拾ったのを、そのまま引っぱって調べた。夜九時ごろですが、暗いところで調べた。そろいう事件があったのです。それからまた岩手県にも四時間半にわたって調べ事件が起きた。また広島でも擁護局長のお話では事件があった。最近ひんぴんとしてこういうことが起こっているのです。人権擁護上重大な問題であるために、去る二月十六日の新聞には、前日日本弁護士連合会人権擁護委員会でこういう車掌身体検査憲法違反である、こういう声明を出しております。このことについて大臣のほうから人権擁護局を督励して、こういう不祥事の起こらないように、それからまた日弁連調査したのによりますと、全国の交通産業のバス電車、いろいろと実例があるようでございます。そういうものも調べて、そうしてこの際、こういうことを根絶するためにひとつ御努力願いたいのでありますが、大臣の御見解いかがでしょう。それを伺いたいと思います。
  64. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 バスの営業に従事しております婦人等に対しましていろいろ検査をする、それで問題が起こっているということは私も最近聞かされております。そういう事件があることは承知いたしております。人権の尊重特に個人の尊厳に対してこれを害しないような取り扱いということはきわめて必要だと思います。ことにそれが婦人の場合には、いろいろ精神的にもその他の面におきましてもデリケートな面があって、特に注意すべきものだと思っております。いまも神戸でございましたか、バス企業体検査の規程についてのお話がございました。一番バス営業なんかで問題が起こっておるようでございますから、これから全国的に取り調べることにいたします。そういうことに関する各企業体の規程等、また実行の状態も至急地方の法務局を通じて調べまして、それから一方各企業体も取り締まり的に何もできないのだということも常識的にどうかと思います。それらの限界が非常に大事な点だと思いますから、こういうことにつきまして十分研究もし、その結果人権擁護局としてなすべきことを十分にするということにいたすことを申し上げておきます。
  65. 志賀義雄

    志賀(義)委員 あなたは常識的にと言われましたが、つまりこれを全廃することですね。ただし、大臣もよく御存じでございましょうが、現金を自分の責任において取り扱う者は、これは商店の会計係からいろいろ集金人等がございますね。こういう人たちは別に服装検査身体検査所持品検査、こういう規定はないのでございます。なぜバス電車車掌だけが現金取り扱いの上においてこういう法律上不平等な取り扱いを受けなければならないかということは、これはもうできないことであります。しかも法律でもない、一営利事業のおのおのの規則によってこういうことをきめるということ、これはもう大問題なんです。ですから、その点もあわせてよく大臣のほうから御研究の上指示なさって、こういう不祥なことが起こらないようにやっていただきたいと思うのであります。それだけ申し添えておきまして、なおもうちょっとの時間だけ池袋警察暴行事件……。
  66. 濱野清吾

    濱野委員長 志賀君に申し上げます。ただいまのあなたの発言はわれわれも大きな関心を持っておりますので、神戸市の交通局規則人権擁護関係をどう見るかの問題は、十分検討して次の機会に答弁させるようにいたします。
  67. 志賀義雄

    志賀(義)委員 ちょっと問題だけを提起したい。というのは、おかあさんの原田よ志子さんというところにいろいろ脅迫状がくるのですね。おまえのむすこは大ばかだとか、そういうふうなこともあるから……
  68. 濱野清吾

    濱野委員長 大臣がおいでになったならば、法案質疑に入るということですから……。
  69. 志賀義雄

    志賀(義)委員 すぐ終わるから……。
  70. 濱野清吾

    濱野委員長 簡潔にやってください。
  71. 志賀義雄

    志賀(義)委員 簡潔にやります。  池袋警察署で、中学二年生十四歳の原田博司君とその同級生が、パトロール中の池袋署の警察官丸山今朝利、西沢亨両巡査によって暴行を受けたということです。これは新聞にも出ておりましたが、この点について警察庁はお調べになったかどうか。
  72. 大津英男

    ○大津政府委員 ただいま御質問がございました池袋警察署におけるところの問題でございますが、まだ最終結論ということではないそうでございますが、大体調査しましたところは私どものほうへ報告を受けております。
  73. 志賀義雄

    志賀(義)委員 そういう事実があるのか、それとも警官は何もやっていないとおっしゃるのか、少年がつくりごとを言ったとでもおっしゃるのか、そういう点だけ簡単にちょっと。
  74. 大津英男

    ○大津政府委員 では申し上げます。  時日はこの二月の十二日の午後の七時四十分から八時十分までの間でございまして、池袋の警察署勤務の丸山巡査それから西沢巡査、この二名が池袋駅の地下道を警ら中におきまして、二人の少年を発見いたしましたが、警察官の姿を見るとやにわに逃げ出すというようなことから不審を抱きまして、その少年につきまして職務質問を行ない、東口の派出所に同行を求めまして、それからその派出所におきまして、大体八時十分まで、約三十分間でございますが、休憩室においていろいろ質問しましたが、その結果は別に不審の点がなかったということで、その少年を帰した、こういうことでございます。その間警察官が暴行を働き、少年に負傷さした、こういうような新聞記事でございますが、警察官は暴行を働いた、こういう事実は出ておらないということでございます。
  75. 志賀義雄

    志賀(義)委員 東京都豊島区高松町二丁目の安倍医院の医師の安倍厚作という人の診断書で、十日間の加療を必要とする、こういう診断書が出ております。しかもその巡査が調べる場合に、極東組のチンピラだろう、こう言って、それから本人は切符を買って友だちのところにかけ出した。それを逃げるものと認めた、こういうようなことになっておりますが、この診断書は虚偽の記載とおっしゃるのですか。
  76. 大津英男

    ○大津政府委員 本人が翌日の午後四時ごろ、医師のところに参りまして、それで診断を受けたのでございますが、医師は別段治療を要するというほどのものではないということでございますが、しいてどれくらいかかったらなおるのかということで、何かちょっと傷あとのようなものがあるということですが、あれが完全に見えなくなるというようなことには十日間くらいかかるだろう、それではそれを書いてもらいたいということで、医師としては別段治療を要するとは認めなかったけれども、要求があったので診断書を書いた、こういうふうに言っております。
  77. 志賀義雄

    志賀(義)委員 しかし、診断書が出て、ここに十日間の加療を要するものと認むと書いてあります。あなたは加療は必要ないと言われる。そうすると、あなたのおっしゃることだと、医師があなたのほうには何でもないことのように報告したことになりますが、そういうことでは困りますな。事実、善良な市民、しかも少年に警官がこういうことをやられると非常に困る。なお最終結論が出ていないということでありますが、もう少しその点をはっきりさしていただきたい。少年が極東組のチンピラだろうと言われたというような虚偽を言うわけがない。しかも、これについて脅迫文までおかあさんのところに来ている。こういうことになりますとほうっておけませんから、この次にこの脅迫文その他のこともはっきりしてひとつ法務委員会でやっていただきたいと思います。
  78. 濱野清吾

    濱野委員長 法務行政等の調査は暫時中止することといたします。      ————◇—————
  79. 濱野清吾

    濱野委員長 これより刑事補償法の一部を改正する法律案を議題といたします。  前会に引き続き質疑を行ないます。坂本泰良君。
  80. 坂本泰良

    ○坂本委員 今回の刑事補償法の改正は、その内容の特徴として金額の増額の点が主であるようでございますが、大臣のおいでを願いまして御所見を一、二お伺いいたしたいのであります。  それは御存じのように刑事補償というものは、憲法第四十条の人身の自由の保障が基本となりまして、冤罪者の救済のためにできたのでありますが、昭和二十四年に新憲法に基づきまして刑事補償法の大改正が行なわれておるわけであります。そこで、その際の刑事補償の本質について述べられておることは、速記録によりますと、「刑事補償の本質について簡単に申し述べておきたい」ということで、「この問題は、刑事補償が国家賠償とその本質を異にするかどうかという面から論じられていたのでありますが、本案においては、刑事補償はそれが損害の填補である点において国家賠償とその本質を同じくするものといたしました。」こういうような本質を述べておりますが、これはやはりそのとおりだと思いますか、大臣の御所見をまず承っておきたいと思います。
  81. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 刑事補償の性質についての御質問ですが、やはりこれは国家の補償でございますから国家賠償の性質を持っておる。ただ一定の範囲内で金額が法定されるものでございますから、そういう意味において定型化しておるという特性を持っております。なお、これにつきましては、故意、過失を要件としない、こういう性質が同時に伴っておると存じております。
  82. 坂本泰良

    ○坂本委員 本件刑事補償法と、それから国家機関の故意または過失による場合の国家賠償、これは違っておりまして、両方請求できる、こういうふうにも考えられますが、昭和二十四年にこの法律が施行になりましたけれども、施行後そういうような実例があるかどうか、その点をまず伺いたい。
  83. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 この法律の規定によります補償以外に、関係の国家機関と申しますか、つまり役人のほうにおきまして故意あるいは過失があって損害を生じました場合には、それはこれと別にやはりその個人に対し損害の賠償の請求ができる、かように考えておる次第でございます。
  84. 坂本泰良

    ○坂本委員 そこで実例があるかどうか、事務当局に伺います。
  85. 竹内壽平

    ○竹内(壽)政府委員 お答え申し上げます。私どもの承知しております限りでは、昭和二十五年に四件、昭和二十六年に一件ございます。
  86. 坂本泰良

    ○坂本委員 この点資料が出ていないようですが、できましたらあと資料の提出をお願いします。
  87. 竹内壽平

    ○竹内(壽)政府委員 十分ではございませんけれども、お手元に差し上げてあります資料の第十一表の下のほうに、昭和二十五年と二十六年の年次記載のところの右のところに、人員が二十五年に二十三、二十六年に一、こうございますが、この人員の二十三の中に旧法を適用されているものが含まれておりますので、二十三のうち四が現行法で支給されたものでございまして、これは国家賠償と刑事補償法の両方の支給を受けたのでございますけれども、逆に刑事補償法のほうが高い金額になりまして差し引かれている、こういう形のケースでございます。
  88. 坂本泰良

    ○坂本委員 そういたしますと、刑事補償法の金額が高いから国家賠償のほうは結局金額は支払えなかった、こういうことになるのですか。
  89. 竹内壽平

    ○竹内(壽)政府委員 もらえなかったというのじゃなくて、もらえたのでございますが、刑事補償法のほうから国家賠償でもらう分を差し引きまして、正確に申しますと、ここに「法第五条第二項後段の場合」と書いてございますように、五条二項によりますと、「補償を受けるべき者が同一の原因について他の法律によって損害賠償を受けた場合において、その損害賠償の額がこの法律によって受けるべき補償金の額に等しいか、又はこれを越える場合には、補償をしない。」と書いてございます。その後段でございますが、「その損害賠償の額がこの法律によって受けるべき補償金の額より少いときは、損害賠償の額を差し引いて補償金の額を定めなければない。」とあります。そのあとのほうの適用を受けた例といたしましてここで書いてあるわけでございます。
  90. 坂本泰良

    ○坂本委員 そうしますと、この四件のケースは刑事補償請求者のほうに故意、過失があって、国家に賠償するというケースだから、差し引いて払わないでいい。その点ちょっと了解しにくいのですが……。
  91. 辻辰三郎

    ○辻説明員 ただいまのお尋ねの点でございますが、国家賠償を受けました者と刑事補償を受けました者とが同一人ということでございますので、故意、過失があったというのは、国または地方公共団体側に故意、過失があったという場合になるわけでございます。
  92. 坂本泰良

    ○坂本委員 刑事補償のほうは故意、過失がなくても本法に定められた額で補償をもらえるのですね。そのほかに故意、過失が国家側にあって、国家が賠償するということになれば、先ほど大臣も説明されたように全然違うのです。加えて支給すべきじゃないか、こういうふうに思うのですが、その点いかがですか。
  93. 竹内壽平

    ○竹内(壽)政府委員 本質が同じでございまするし、原因が同じでございまして、片一方は定型化された国家賠償でございますので、一定の金額の範囲内で裁判所の認定によって額がきまるものであります。それから国家賠償のほうは、公務執行中に公務員が故意または過失によって生じた損害でございます。したがいまして、中身は一つことなんであります。したがって、両方とも請求できるわけでございますけれども、二重に取るということは、国家賠償の性質からいっておかしいのであって、もし両者の間に差異がありますならば、差し引いて受けるべきものを受ける。こういうことが五条の規定によって明らかになっておるのでございます。
  94. 坂本泰良

    ○坂本委員 そこで問題は、冒頭に申しましたように、刑事補償が国家賠償とその本質を異にするかどうかというのが問題になって、昭和二十四年にこの法律ができたのですね。したがって、この法律の本質は、刑事補償はもちろん大きくやれば国家が出すから国家賠償に入るでしょうが、この刑事補償というのは、人身の自由の保障という憲法上の目的からできたものであるから、当然これを支給しなければならぬ。さらに加えて、故意、過失によって国家が賠償する場合は、これとは別に支給すべきじゃないか。こういうふうに考えるわけですが、この点が昭和二十四年の本法の審議の際には明瞭になっていないから、この際、刑事補償のほかに、国家賠償の故意、過失による責任が生じたら、それは別個に加算と言っちゃ観念が多少違うのですが、別に支給すべきである。いまの法第五条二項の問題ですね。これによって差し引くということになれば本質と違うのじゃないか。そうすれば、法第五条二項の点で、刑事補償と故意、過失による同家賠償と本質が異なる。こういうふうに解しましたならば、これは抹消しなければならぬのじゃないか。そうしなければほんとうの刑事補償の憲法に基づくところの本質に合わぬのじゃないか、こういうふうに考えるわけなんです。そこでこの質問をいたしまして、大臣にその本質を最初にお聞きをしたわけなんですが、その点大臣いかがですか。
  95. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 ただいまの坂本さんのお説は一つの大きな御議論であろうと思うのであります。ただ刑事補償のほうは、関係の検察官とかその他の者に過失があるか、あるいは故意にそういう被告と申しますか、そういう人に不利益なことをしようという考えがあるなしにかかわらず、判決の結果、その人に対する拘禁が不当であった場合国家補償をしよう。そうなった場合には、必ずしも関係の検察官等の故意、過失にはかかわらない。検察官は検察官で最善を尽くしてやる。もちろん裁判所の判定は違ったという場合、故意、過失、それとはそういう場合は違うと思うのです。しかし、違うからといってすべての点においてこれは全然別ものだ、賠償金額を両方にそのままを置くものだというと、ここに私は議論があると思う。不当拘禁ということは一つのことなんですから、故意、過失があって、それによって起こった損害と、故意、過失があるないにかかわらず、いわゆる刑事補償によってもらうその拘禁という損失の起こった補償すべき対象は、同じことなんでございます。そこでそういう場合に、金額として一方少ないほうを差し引いていくということも、また一つ条理があるのじゃないかと思う次第です。政府委員がお答えを申し上げましたのは、その意味でそういうふうになっておるのだと思います。規定の上においても、立法の上においてもそれが認められまして書いてある、こういうことだろうと思うのでございます。
  96. 坂本泰良

    ○坂本委員 一般に故意、過失による損害賠償、これは当然この規定がなくても、民法その他の規定で国家は賠償しなければならぬ。ところが刑事補償のほうは、判決が無罪だという結果が出れば、それによって人身の自由を奪われた、いわゆる拘禁された日数その他について、これは故意、過失を問わず国家が賠償する。こういうことになりますから、もちろん故意、過失を問わずに国家が賠償するという点について、民法上の場合は、訴訟を起こして、その故意、過失であるかどうかによって賠償の額を算定しますから、その原因を追及するという手続が省かれるという点はあるけれども、それを除きますと、刑事補償法の恩典と言いますか、効果というのが非常に少なくなる。したがって、鳴りもの入りで刑事補償をやるんだ、こういう本案の刑事補償法という法律をつくったその効果がまことにないじゃないか、こういうふうに考えられます。ですから、これは私の意見にもなるわけですが、やはり刑事補償の場合と民法その他の規定によるところの国家賠償の場合は、これは金額は結論的に加算されるということになりますけれども、別個のものであるから別個に払うべきである、こういうふうに考えられますけれども、この点いかがでございますか。
  97. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 刑事補償の場合は、故意、過失がなければ刑事補償をしないということになりますと、無罪判決あるいはそれと同じような決定を受けた人に対してたいへん気の毒と申しますか、結果から見たら不当に拘禁されたわけでございます。抑留されたわけでございますから、それに対して支払う。そういう場合には、逆に言うと、故意、過失があるかというと、そうじゃない場合があるわけです。そこで故意、過失がない場合にも補償しようということを考えなければならぬ。裁判の場合には特別の原因があると思うので、それができたことは正当であり、非常によろしいことだと思うのであります。しかし、故意、過失が一方にあり、刑事補償がある場合に、国が補償するというその対象になるのは不当なる抑留、拘禁なんです。それは二重に存在しないのです。だから、それに対する補償が必ず別にあわせてやらなければならぬ、こういうことにはならぬと私は思うのでございます。現行法もそれでできておると思うのであります。それに対しまして、坂本委員のお考えは、お説としては違った立場をおとりになっておりますが、私どもの解釈は、いまのように故意、過失以外の場合にも補償することを認めることは正しいんだ、やるべきことだということはよろしゅうございますが、それじゃ同じ原因の事実に対して二重にすることはまた適当でない。これは率直に申しますれば、やはり国民の負担によってできました財源であるわけですから、その点につきましては、やはりそういう考慮を払っていくほうがよろしいのじゃないか、こういう考え方でございます。
  98. 坂本泰良

    ○坂本委員 その点は刑事補償という本質からいって、現行法は非常に不満ですけれども、時間がありませんから次に移りますが、今度の改正、ことに金額を増額したという点については、資料にもありますように、物価の高騰その他いろいろ社会条件の変更、そういう点を参考にされておるわけですが、そうしますと、昭和二十四年から本年まではもう十五、六年になるわけですね。そこでこの法律の施行期日との関連もあるのですが、すでに物価が上がってしまって、最高限に——これ以上上がるかもしれない。大臣と違って私は経済上の知識はありませんが、上がっておる。上がったところで金額を上げて支給するということになれば、この四月一日前の関係者ですね、この十四、五年間の関係者、ことに近時五、六年ないし十年以内の物価の高騰等をこの表によって見ますと、相当差があるようですが、この施行について、経過規定か何かを設けて五、六年前までさかのぼって適用をする、こういうようなことが考えられるわけですが、そういう点についてのお考えはないかどうか。
  99. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 ただいまの御質問でございますが、金額でございますから、やはり経済事情の、そのときの状態に児合っていくということが大事でございまして、いまお話しのように、物価ということは大きな参考にすべき事実だと思うのでございます。同時に物価ばかりではございません。経済の進歩に伴いまして、平均的に申せば、物価が上がった以上に所得も増加しておる、それも見なければならぬ。そのほかこの人の健康——この場合は証人の出頭の手当でございますが、そういうことが参考にしてあるようでございますが、いろいろのものを総合して判断をしてああいうものをきめたわけでございます。物価にスライドしていくという観念ではないのであります。こまかく申し上げますれば、実はこの前に法律がきまりました約十四、五年前と比べて、物価は一般的にいえば今回の引き上げ率ほど上がっていないと思います。所得がむしろ伸びておる。それを総合してみてこのぐらいの程度の引き上げが妥当であるという観点に立っておりますので、必ずしも物価にスライド的になにするという考え方ではないのでありまして、これは他の給与につきましてもそういうような考え方がとられておると思うのでございます。そこで一つの問題としまして、この法律の施行後の判決を目安としてやったら、その前の判決の人は気の毒じゃないか、こういうお説が一口に申し上げてございます。これは私も相当に同感申し上げる面がないことはないと思います。しかしながら、法律的に申しまして、常に物価にスライドしていくものだという、法律的のきまった決定要素でもないわけでありますから、そういうことをすべて被告と申しますか、そういうほうで法律的にはっきり期待権があるわけでもないわけです。それからまた実際の問題としまして、遡及いたしますと、物価にしましても、所得にしましても、前にいくにしたがって大体は上がり方が少ない。そうすると、同じ率で遡及しても、またそこでたいへんな都合のいい得な人と損な人もできるわけです。それからいつで切れば妥当になるか、どこで切りましてもその前後でそういう見地からしての相当な不公平というものがあるわけでございます。そこで、大体給与というものは遡及しないということが原則になっておるのです。遡及でやる場合には非常に例外で、いろいろなことでほとんど共通の方針だと思うのであります。それで、遡及をしたいという気持ちの起こることをわれわれは決して否定するわけではございませんが、どうもそういうわけにいかない。やはり法の施行のときに限るよりほかはない。むしろ問題は、施行のときに限りましても、拘禁されたときは古いときならば古いときの金額でいいのじゃないかという議論も、正しいかどうか知らぬけれども起こる余地もないこともないと思うのであります。しかし、それはあまり酷で、いまもらうのだからいまの貨幣価値というものを主として考えていこう、これは二十五年の、初めの立法もそうなっておるのでございますから、そういう意味においては、古い拘禁されたものでもいまの計算でまいりますが、判決はどうも施行のときで切るほかしようがないじゃないかという次第で、その考え方によりまして立案をいたした次第でございます。
  100. 坂本泰良

    ○坂本委員 もちろん、自然法理念からいきますと、法の不遡及の原則は理解せぬでもないですが、社会法的意味を持つところのこの刑事補償法の問題については、やはり直ちに法の不遡及の原則を持ってくるわけにもまいらぬと思いますし、なお、この刑事補償の適用を受けるような場合は長期にわたる場合が非常に多いと思うのです。それでもう一つお伺いする前に事務当局にお聞きしたいのですが、十五、六年間の法の適用で、ほんのわずかの拘留その他について賠償された場合、あるいは長期にわたって賠償された場合、長期にわたって賠償されたのは、有名な事件、そういうものだと思いますが、その点についての何か表はここに出ていますか。
  101. 竹内壽平

    ○竹内(壽)政府委員 先ほど御指摘申し上げました第十一表でございますが、補償の決定のあったものについての補償金額等の調べ、これが昭和二十五年から三十七年までの抑留、拘禁の補償と、それから同じ年次の懲役刑の執行による補償、この二つを表であらわしておるのでありますが、抑留、拘禁につきましては、ごらんのようにカッコの中に平均日数が出ております。昭和二十五年のところを見ますと、平均日数としましては百・四日、二十九年には百二十五・五日、多いのでは昭和三十六年の百九十三・七日、こういう日数のものを左の人員とかけました金額がここに出ておるのでございまして、一番右の欄には、四百円から二百円までの範囲内でございますが、それを平均いたしますと——四百円のもありますし、二百円のもありますし、三百五十円のもありますが、平均をいたしました補償金額をここで右のほうに示しております。これによってごらんになるとわかりますが、昭和二十五年には二百二十八円というような、下のほうのところに平均がありますが、三十五年、六年、七年となりますと、三百十円、三百十九円、三十七年には三百二十九円、こういうふうに数字が上がってきております。現実に支給した例から申しますと、四百円という最高額を支給しましたのが約半数くらい最近はあるように思われます。それは十二表のところをごらんいただきますとわかるのでございます。
  102. 坂本泰良

    ○坂本委員 この表を見ますと、刑の執行による補償、これはたいへん有名な吉田がんくつ王の補償とか、今度の松川事件、こういうものはまだきまっておらぬようですが、こういうような大事件についての表はこれには入っていないようですね。このいわゆる吉田がんくつ王のような事件が何件くらいあったか、その点……。
  103. 竹内壽平

    ○竹内(壽)政府委員 これは統計のとり方が三十七年までで、三十八年はまだ資料が十分集まりませんでしたので出せなかったのでありますが、御承知のように昭和三十八年には古田石松氏の再審無罪というので、これが七千八百八十九日の補償になっております。一日四百円という最高額で補償されておりますので、その合計は三百十五万五千六百円でございます。それからまた松川事件が全員無罪になっておりまして、これが全員で寄せますと、三万七千八百二十四日、一日が四百円ということでございますので、その総金額は千五百十二万九千六百円というのが補償額になっております。
  104. 坂本泰良

    ○坂本委員 こういう大事件は、いまも数件あるようですが、少ないと思います。ことに松川事件なんかは被告も多いし、十数年かかっているわけですが、こういう長期にわたるものに対しては、これは憲法四十条等から考えまして、ほんとうに半生を拘禁されてきた、こういうような点から考えると、こういう点についても、もっと十分考慮しなければならぬのではないかというふうにも考えられるわけですが、どうも私は刑事補償法の本質からしまして、やはり人権の問題が十五年前の人権に対する一般国民の社会的な認識、それから大臣は所得と言われましたが、所得、物価の高騰、そういう点から考えると、もっと補償してやらなければならぬのではないか、こういうことが痛切に考えられるわけであります。短かい期間の百日とか百五十日とかいうのは別ですが、こういう松川事件のようなものを考えますと、もちろん総額においては相当の額のようではありますけれども、被告も多数だし、ことに半生あそこにいわゆる無罪の事件で拘禁されていた、こういう前提に立ちますと、もっと考慮をしなければならぬのではないか、こういう点もうかがわれるわけであります。こういう問題について大臣としては何か考えられていることがあるかどうか、その点を最後に承っておきたい。
  105. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 この憲法四十条によります刑事補償というのは、非常に基本的に重大な問題でございますから、したがって、補償の金額も司法行政一つの処分として決定するということはよくないのではないか。国会の御承認を得まして最高、最低を決定して厳正に施行するということは、この重大なる問題に対しまして正しい処置ではないか。国会でもさようにお考えになられまして法律がきまっているわけでございます。その法律の範囲内において裁判所が事態によって決定する、これが一番正しい道でございまして、それ以外に出ないほうがあたりまえじゃないか、かように考えられる次第でございます。  ところで、松川事件におきまして、検察当同等にあるいは刑事過失等の別の損害賠償をしなければならぬような要因があれば別でございますが、そうでなければ、いま申し上げたような点で、法定の限度がございますから、その範囲内において裁判所がきめられるというのが一番正しいことではないか。法定限度がだんだん時勢に合わなくなるという場合には、今回のごとく限度の改定案を出しまして、国会の御承認を経ていく、かようなことが適当ではないか。それで松川事件につきましては、いまお尋ねの趣旨にすぐ合うことではないかもしれませんが、検察当局といたしましては最善を尽くしてその訴訟の維持にもつとめましたが、いわば判決がございました以上は、その判決に従うことが当然であり、またその判決と違うような主張をしたことにつきましては、過去にとりました行動について反省すべき点は十分に反省する必要がある次第でございます。ただいま最高検察庁におきましても主任者を定めまして、そういう点について十分に調査をいたしておるという次第でございます。
  106. 坂本泰良

    ○坂本委員 松川事件については、真犯人の問題、それから検察官あるいは当時の検事正等々に対する損害賠償の問題等はまた別個に考えられる問題であろうかと思いますが、本件の法律のあれとしてはこれで打ち切りたいと思います。  これは大臣でなくていいのですが、もう一つだけお聞きしたいのです。この刑事補償は相続と非常に関連が多いわけですが、この相続というような問題について紛糾のあった実例等はあったかなかったか。あったならばその件数をお聞きしたい。
  107. 竹内壽平

    ○竹内(壽)政府委員 詳細なことはわかりませんが、私どもの承知しております限りでは、相続争いによって補償金が問題になったということはないように承知いたしております。
  108. 濱野清吾

    濱野委員長 この際おはかりいたします。  本案に対する質疑はこれにて終了いたしたいと存じますが、これに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  109. 濱野清吾

    濱野委員長 御異議なしと認めます。よって、本案の質疑を終局いたしました。      ————◇—————
  110. 濱野清吾

    濱野委員長 次に、法務行政に関する件、人権擁護に関する件及び裁判所司法行政に関する件について調査を進めます。四宮久吉君。
  111. 四宮久吉

    ○四宮委員 もう時間もたいへんおそいので簡潔に関係当局並びに大臣に承っておきたいと思います。  それは徳島の刑務所の移転の件です。御承知のように徳島の刑務所というのは全国でも珍しいように、駅の南側は徳島市では最も中心の目抜きの場所で、北側は刑務所であります。こういう場所は、私も弁護士をやって方々刑務所を回っておりますが、おそらくかつてない場所であります。戦前からもう相当長い間、この移転問題は県並びに市当局から運動をやって、ぜひひとつあれを換地してもらいたい、それには市当局もこれに大いに協力するといって盛んに運動が続けられておる。私もやはり郷里があちらにありましたので、昭和三十二年のころに、ちょうど岸内閣の中村梅古氏が法務大臣のときに、この問題をぜひ実現するようにと言ったら、閣議は決定されたと聞いておる。きのうも閣議決定したかと言ったら、あの当時閣議決定したという話を承っておるのですが、ああいう目抜きの場所で移転すれば、そこの敷地を処分しても相半大きな額になって、おそらく法務省にも国家の財政にも迷惑がかからぬ。聞くところによると、もとの入田村という、やはり市内に入っているのですけれども、この移転の候補地もいろいろ準備しておるということを聞いておるのだが、いまだにその実現を見ないのです。昭和三十二年に閣議決定して今日までもう七年になるのですが、この問題に対してはどういういままでの経過であるか、一応承って、あと質問を続けたいと思います。
  112. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 巣鴨の移転問題につきましては、いまお話のありましたように、あの場所をあのままにしておきますことはたいへんにいろいろな意味で適当でない、もっと世間のためになるように利用すべきものでほかへ移転ずるべきものだと前から私も考えておりまして、私は法務省に参ります前にもそのお話を伺い、御相談を受けたということでもございまして、同感をいたしております。それは法務省へ参りましてもやはり同じ考えでございます。問題は結局かわり地が適当なところがあるかないか。財源の点が大事でございますが、これはおそらくあそこを処分すれば、もう繁華街になっておりますので十分得られるのじゃないかと思います。それで結局かわり地が適当な所と財源関係、また、そうしますと引き移りに際しましてだれが責任を持ってやるか、こういうふうな事務的ないろいろ手続がございまして目下研究中でございます。そういう点について研究し、適当な措置がとられるように私も関係局に指示をいたしておる次第でございます。最近どこまでいっておりますかはちょっと存じませんから、その点は必要があれば事務当局からお答え申し上げることといたします。
  113. 四宮久吉

    ○四宮委員 徳島市からこの間も市長が参りましていろいろ話を聞きました。かえ地に対しては市も全力をあげて用意をするように努力する、それにどうも閣議決定されて——閣議の決定はあったのですか。
  114. 住吉君彦

    ○住吉説明員 いまの先生の御質問と大臣の御答弁はちょっと施設が違いまして、たいへん恐縮でございますが、先生の御質問の徳島の刑務所でございますが、これにつきましては別段閣議で問題になったことはございません。  それから先ほど大臣が巣鴨のことをおっしゃいましたが、巣鴨につきましては……。
  115. 四宮久吉

    ○四宮委員 巣鴨はあとで聞こうと思って……。
  116. 住吉君彦

    ○住吉説明員 それでは、いまの徳島刑務所の移転計画の現段階における事情を申し上げますと、三十八年度予算で土地の購入費が三千万円計上されてございます。それから三十九年度において、いま国会のほうに御審議をいただいております予算の中で、まず第一年度の建物の建築費として約三千五百万円ばかり計上されておりまして、徳島刑務所の移転計画が緒についた、こう申し上げてよろしかろうと思います。
  117. 四宮久吉

    ○四宮委員 そうすると、大体いつごろまでにこれは完了するのです。
  118. 住吉君彦

    ○住吉説明員 これは全体の計画につきましては先生も御存じかと思いますが、大体刑務所の工事は特殊な工事でございますので、私どものところでは直営と言っておりますが、受刑者を使いまして工事をするのが原則になっております。しかし、徳島市の御要望としては、これを請負工事にしましてできるだけ早く完成してほしい、こういう御要請がございますので、初年度一応三千五百万計上してございますが、これは移転候補地の取得とその造成に相当期間がかかりますもので、建物の建築費を計上いたしましても工期的に若干消化不良を起こす可能性もございます。第一年度予算として三千五百万円でございますが、次年度以降につきましては、市の御要請も承りまして、できるだけ早急に移転ができますように、事務局のほうでも鋭意大蔵省と協議をしております。
  119. 四宮久吉

    ○四宮委員 あれを完成すると、交通関係でも二十分違うのです。産業の上にも相当大きな影響があるので、地元民は一日も早く完成することを希望しておる。これに対して先ほど私が言ったのは、中村法相の時代に、いやもうそれはすぐに完成するようになっているという回答で、私たちもそれを大いに期待しておったのだが、ある程度の締についたことは非常にいいのですが、これをだらだらやられたのでは市民も非常に困るので、ひとつこれを一挙に解決するように御配慮を願いたい。  それからいまの巣鴨の拘置所は、委員長もいるようですから、私は中村君にきのうも話したので、私が申すまでもないのですけれども、私もすぐ隣ですから非常に関係が深くて、この問題は何とか早く処理ができぬかという要望があるのですが、巣鴨のほうはもう閣議決定はあったのですね。
  120. 住吉君彦

    ○住吉説明員 ただいま手元に書類がございませんので、正確な年月日は記憶しておりませんが、たしか昭和三十四年でございましたか、閣議了解ということで、いまお話の巣鴨の拘置所をしかるべき地に移転するという了解事項はございます。
  121. 四宮久吉

    ○四宮委員 委員長がいるのだから、私があまり質問しなくても、もう大いに期待しているところですが、あのままで長く置かれると非常に皆さん迷惑する。長いこと地元では陳情を続けているのですけれども、いまだに実現しないので困っているのでありますが、ひとつこの問題についてはこの際大英断をもって処置してもらいたいということを特に私は要望しておきたいと思います。
  122. 田村良平

    ○田村(良)委員 ちょっと関連して。いま徳島刑務所について営繕課長から意外なことを聞いたのですが、あなたは受刑者にやらすのが原則だと言われたが、何ぼ何でも受刑者に自分の拘置されるところをつくらすなんて、万が一抜け穴でもつくられたらどうしますか。営繕課長管理できますか。ただでさえ刑務所の場所はきらわれるのですよ。こんなものは市が協力するなりして、一番進んだ建築様式で早く近代的なものをつくられていくのが、むしろ、いまも問題になっている人権尊重の上からいっても当然ではないかと私は思うのですが、どうでしょうか。
  123. 住吉君彦

    ○住吉説明員 刑務所の工事は直営がであると申し上げましたのは、沿革からくることでございまして、従前木造建築が主でございましたものですから、それと受刑者の中にもそういう技能を持っておる者がおりましたから、戦前は受刑者を使ってやっておりましたが、最近特に耐火構造、鉄筋構造になりましてからは、受刑者を使用する部分は全体的に見ますとごくわずかでございます。特に設備関係、給排水、暖房、衛生工事関係、これは一切請負でやっております。ただ基礎まわり、たとえば根切りをするとか、簡単な仮設材をつくるという程度でございますので、ちょっと用語が適切ではございませんが、十の工事を十全部受刑者の手でやるというわけではございませんので、御了承いただきたいと思います。
  124. 四宮久吉

    ○四宮委員 ちょっと結論だけ。そうすると徳島の刑務所は、大体完成の時期はいつということですか。私は盛んにそれを聞かれるので……。
  125. 住吉君彦

    ○住吉説明員 先ほども申し上げましたように、実は私ども法務省といたしましても、完成の時期が早ければ早いほど、それにこしたことはございません。その意味では地元の御希望と私どもの念願とは合致するわけでございますけれども、何ぶんにも刑務所といいますと御存じのように大世帯でございますので、これの基本設計の検討に相当の日時を要する。それから職員の宿舎、日常生活をするところ、それに刑務所では御存じのように刑務作業ということをやっておりますので、いろいろ動力関係、水の関係、そういうことがございまして、そういう準備期間を若干いただきたいということで、先ほど申し上げましたように、初年度三千五百万円、次年度以降の全体計画につきましては大蔵省と詰めた話をしておりませんので、たとえば継続費のような形で予算要求するならともかくも、現在は施設費という法務省のワク予算の中からこれをやっているということでございますので、これから全体計画を、何年工率でこれをやっていくかという話になろうと思います。したがいまして、今日それを何年でやるかという御質問を受けましても、われわれ事務としまして、何年以内に必ず実現いたしますというような確約はちょっといたしかねる状況でございます。
  126. 四宮久吉

    ○四宮委員 しかし、あらかじめ見通しがつかずに——いま言うように、中村法務大臣のときに、よろしい、さっそくかかることにすると言ったのが、ようやくいま着手しておるのだから、相当期間がたっておりますが、ここ三年とか五年とか、あらかじめあなたのほうで計画をしてやるのが当然で、ただ成り行きにまかしてやるというような移転計画はないだろうと思うのです。それは予算の関係もあろう。あろうけれども、いつごろ大体見通しがつくのだというくらいの考え方に立って仕事をやらなければ、これから十年先か二十年先か見通しがつかぬなんという考え方では、どうもはなはだ困るのです。
  127. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 いまの四宮委員お話、まことにごもっともなんです。営繕当局では片づけたいのです。ところが、いろいろこまかいことを申し上げますと、財源はどこでもあるのです。あるけれども、土地を得るのが先なんですよ。立てかえて地方団体が出さなければならない。ことしも新潟と徳島を入れるのに実は骨を折ったのです。実際骨を折ってうまく入ったというようなところなんでございまして、立てかえであるから財源はあるのですけれども、ほんとうに金を払うのは先なものですから、起債の問題もあり、その他いろいろ問題があります。それから法務省としましては、結局法務省の姿勢としたら、刑務所とか検察庁などの建物が主で、非常に数が多いのでございます。老朽をしているものだから、小さい予算ですが、営繕費が一番よけいかかるのです。そのような関係でなかなか骨が折れるのですが、全国的に刑務所の移転を希望しておるのが非常に多いわけですね。だんだん繁華になりまして、初めはそうでなかったのですけれども、場所が不適当なところばかりになるものですから、当局者としては早く片づけたいということで一生懸命にやっておる次第であります。お話しのように、見込みが立つかどうかわからぬというのはほんとうにおかしいので、これからもひとつ全力を尽くして早く仕上げるようにいたします。ちょっと事情を御説明いたしました。
  128. 四宮久吉

    ○四宮委員 法務省は非常に予算のとり方がへたで、どうもいつも失敗ばかりしているという話も、かねがね私は、まだ議員にならないうちから始終聞いておるのです。ひとつ本腰を入れてやっていただきたいと思います。
  129. 濱野清吾

    濱野委員長 坂本泰良君。
  130. 坂本泰良

    ○坂本委員 法務行政で、法務省関係でだいぶありますけれども、時間がありませんから一つだけお聞きしておきたいと思います。  所有権移転登記事項を税務署に対して通知する業務、これを法務局、登記所がやっておるわけですが、それは一般に税通といわれておるのですが、これはいかなる根拠に基づいてやっておられるか。法務省の事務事項か、あるいは大蔵省の事務事項か、その点をまずお聞きしたいと思います。
  131. 平賀健太

    ○平賀政府委員 ただいま仰せの点は、昭和三十六年から、不動産の所有権移転登記をします場合に、その事項を法務局——登記所でございますね、登記所から税務署に通知いたします。国の行政機関相互にその所管事項につきまして通知をするということは、国の行政機関相互間の義務だろうと思うのでございます。そういう根拠に基づいて実施をいたしておるのでございます。
  132. 坂本泰良

    ○坂本委員 しかし、国の行政機関相互の義務だとおっしゃるけれども、そこにはやはり各行政機関の事務の範囲等があると思うのです。ただ、国の行政機関の協力だといってやれば、そこに働く公務員のいわゆる仕事の過重の問題にも直ちに影響してくると思います。したがって、この問題については、やはりただ行政機関同士だから協力する義務があるというのでなくて、やはり何か根拠がなければそういうことはすべきではないと思うのです。法のもとにおける根拠があってその事務がとられ、また根拠があって行政官庁相互間の協力の問題もそこへ出てくる。その点がはっきりせずにこれはやるべきではない、そう思うのですが、何か根拠があるかと思いますが、その点いかがですか。
  133. 平賀健太

    ○平賀政府委員 ただいま申し上げましたように、国の行政機関それぞれ所管の業務があるわけでございますが、その所管の業務につきまして、他官庁から照会を受けました場合には、その照会に応じるというのが一般原則であろうと思うのでありますが、特に法律の明文はございませんけれども、当然協力可能なものにつきましては協力すべきであるということで通知をいたしておるのでございます。なお、これはひとり税務署に対する関係だけではございませんで、市町村に対しても通知することになっておりますが、これは地方税法に特に法律の規定がございます。その規定趣旨から言いまして毛、税務署から照会がありました場合にはそれに回答するということは当然のことであろうと考えておる次第でございます。
  134. 坂本泰良

    ○坂本委員 当然の義務なんていうことでやたらこれをやるべきものではないと思うのです。たとえば裁判所においても証人調べなんかは、遠くに行くときにはそこに嘱託をする。それはやはり民事訴訟法に嘱託の規定があるわけです。それに基づいてやるわけなんです。したがって、事務の内容についてはあとで聞きますが、いやしくも行政官庁相互間において協力をするという場合は、具体的に、あるケース、ケースによって、そうしてその照会があればその照会に対しては行政官庁の本質、あるいは事務の範囲内において回答をする義務があると思うのです。ところが、いま問題になっておる税通の問題というのも包括的にあっているかいないかわからぬですが、昭和二十六年以来これを実行しているわけでしょう。全国の各登記所が実行しておる。そうするのにはやはり法的の根処がなければいかぬ。大蔵省あるいは市町村は包括的の照会をしておけば、それに対して日常所有権が移転するたびにそれを通知するというように、やはり法の根拠がなければいけないと思うのです。それがなくしてやるということは、やはり違法であるし、その事務を担当する者に対する事務の強化にもなる。こう思うのですが、その点についての御見解はいかがですか。
  135. 平賀健太

    ○平賀政府委員 これは私どもの日常の業務で始終起こることでございますが、他官庁から私どもの所管事項について照会がございます。また私どものほうでも他官庁の所管事項について照会を発することがしばしばあるのでありまして、事柄はただいま仰せのようにある特定の具体的な問題については多うございますけれども、これは必ずしもそういうものだけに限られるという趣旨ではございませんで、一般的な事項について照会をすることも、これはあり得ることなのでございます。そういう照会をし、回答をするという関係につきましては、何も法律の明文はないわけでございますが、やはり国家機関相互間の協力ということで行なわれておるわけでございます。ただ、この税務署に対する通知ということになりますと、これは事務量も相当の量にのぼりますし、これが経常的に行なわれるということになりますと、登記所で所管しておりますところの他の業務にも影響があることでございますので、私どもといたしましては、法務局の現状、予算の状況、それから職員の事務負担の量、そういうものすべてを勘案いたしまして、国税庁の依頼に応じても差しつかえないという判断に基づきまして、その協力をいたしておるのでございます。ただいま昭和二十六年からというお説でございますが、先ほど申しましたように昭和三十六年から実施をいたしておるのであります。
  136. 坂本泰良

    ○坂本委員 大蔵省のほうはどういう法に基づいて、どういう根拠に基づいて協力方を要請しておられるのか、その協力はどういうような内容の協力ですか、それを承りたい。
  137. 吉田富士雄

    ○吉田説明員 お答えいたします。国税庁のほうから昭和三十六年からただいまお願いいたしております。税通の問題についてお願いしておるわけですが、それはただいま法務省のほうからお答えがありましたように、われわれの一般的な照会に対して御回答をいただきたいということでお願いいたし、それで御回答をいただいておるということでございます。
  138. 坂本泰良

    ○坂本委員 いや、一般的な回答というのが、これは全国の登記所において所有権移転が毎日行なわれておるわけですね。その毎日行なわれたのを回答する、こういうことになれば、たとえば一般的なあれにしても、各ケース、ケースによって回答を求めてその官庁に照会をして、その官庁から回答する、これは私たちもそれは行政官庁閥の協力として認める。しかしながら、所有権あるいは所有権移転登記というのは、相当数の移転登記が行なわれておるもので、したがってそれに要する回答というのは相当なものであろう。したがってこの法務省の職員は、登記事務は職員として当然なことですけれども、それに加えて国税庁あるいは市町村に対する同等の事務をやるというのについては、あまりにもこれは数も多いし、やはり毎年繰り返されるもので相当大量なものだ、こういうふうに思うわけです。ですから、そういうものは単なる概念的な官庁の協力ということで、その職務に当たる職員、公務員の事務について、これは過重になるかどうか考えなければならない。ただ所有権移転登記があれば当然これはやれといっても、何ら法の根拠もなくてやることはできないと思うのです。ですから、民事局長にお聞きしたいのは、この事務は一年間で相当多数にのぼると思うのですが、昭和三十六年からやっておられれば、もう三、四年間実施しておられるわけですけれども、一年間に何件くらいあるのですか。その点、いかがですか。
  139. 平賀健太

    ○平賀政府委員 年間通知します件数は、全国で約三百五、六十万件でございます。このように相当の量にのぼりますので、ただいま坂本先生のおっしゃることは非常にごもっともだと思うのですが、実は先ほど申し上げましたように地方税法の規定がございまして、市町村に対してはすでに通知をいたしておるわけでございます。国の税務署に対する通知も全く同一内容のものでございまして、様式なんかもきめまして、通知書一枚つくるのを二枚よけいつくる、複写紙のカーボン印紙を使っておりますので、特に国の税務署に対する通知をするためにそれだけよけいに手数がかかるというものではなくて、市町村に対してつくりますところの通知書と同じ内容のものをもう一通よけいにつくるというだけの手続なのでございます。そういう関係で、国の税務署に対する通知をいたしましても、そのために特に登記所の負担が非常に増大することはないというのが真相なのでございます。なお、法務局から通知をいたさないということになりますと、これは税務署のほうから職員を登記所に派遣されまして、税務署の職員が登記所にやってまいりまして、登記の申請書を調べて抜き書きをしていくということになるわけでございますけれども、国の財政全般の問題としまして、効率的に国の事務を処理していくという見地からいきますと、税務署からおいでになって写してもらうよりも、こちらで登記の際にその書類を市町村に対してする通知と一緒につくって送ったほうがより能率的であり、経費もより少なくて済むということでもって、法務省におきましても国税庁の依頼に応じようということになったわけでございます。
  140. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 政府委員から大体お答え申し上げましたが、私も多少補充して申し上げておきたいと思うのですが、坂本委員も、個々の要求があれば官庁相互の協力としてこたえるということは御容認になっておると思います。それで能率から申しますと、いま民事局長が申しましたように写しを全部送るほうがよほど簡略なんです。というのは、いま三百五十万と申しますが、その中で税務署が利用するものが五千か一万で、大体がむだになるものならばこういうやり方はむだと思うのです。ところが、不動産の移転ですから、いまどきは税務署で調べなければならぬものの数が非常に多いのですから、三百何十万という非常にたくさんな数を調べなければならない。それでこちらから送れば、いま言ったようにどうせ市町村役場にやらなければならぬものですから、一枚書くものを二枚、新たに一枚つくるのではないから楽なんですから、たいへん手数が違うのですから、複写でその一枚をやるのですから、それをやらぬとすると、税務署のほうから一々個々にあとから照会されたら、それこそ何日か前のものを、また新たに照会して帳面をひっくり返して写しをやるとなったら、そのほうがよほど手間がかかる。ところが税務書では、そういう書面照会で出す以外に何があるかわからぬから行ってみたいと考える。そうすると、いま民事局長が申しましたように、少ない件数ならいいが、全体に大きい件数ですから、税務署員が一々法務局の出張所まで出張してくるということは非常に非能率で経費もよけいかかる。来て帳簿をひっくり返されると応待しなければならぬ。これは複写を一枚やるどころの騒ぎじゃない。だからむしろ、いまのような個々の照会を包括的にあらかじめやっておいたほうが双方が非常に簡略でかつまた便利である。それを、いま申し上げたように何百万枚のうち五千枚か三千枚利用されるものならこういうことは申しませんが、大部分が利用されて、やらなければあとから調べにこなければならぬものですから、そういう実務上のことを聞きますと、このやり方が一番なにである。それでまた一面は、お話しのように登記所の事務に従事しておる人の仕事がそれだけあるわけですから、それに対しましては相当の人数の臨時雇いその他を入れまして負担の軽減の道も講じておるわけでございまして、どうも実際はこのやり方が、税務署にとりましても登記所にとりましても一番いわゆる仕事の簡素化にはまっておるのじゃないかと思う次第でございます。
  141. 坂本泰良

    ○坂本委員 御病気の大臣から答弁を承るとは思っていませんでしたが、けっこうでした。  そこで問題は、事務の簡素化、そういう問題等もあるし、またこれは脱税等の問題もあると思う。そこで全国の登記所に、三百六十万件ですよ、一万件とか二万件ではなくて、三百六十万件ものこの事務をやらせるなら、これまた時間がありませんからあとで詳しく聞きますが、臨時雇いの問題も多少考えておるようです、しかしこの臨時雇いの人数なんかもごく少数でありまして、私なんかが見ましても、これではやはりまだ登記所の職員の事務の非常な過重になるじゃないか、こういうふうに考えられますから、ここに法務行政として私は問題を提起しているわけなんです。何でも大蔵省のほうでは千二百万を昨年の予算には組まれたと聞きますが、それはほんとうかどうか。それはどういう費目で組まれておるかどうか、そしてそれはどういうふうにして処置されておるか、その点を承っておきたい。
  142. 平賀健太

    ○平賀政府委員 ただいまのお尋ねの件でございますが、昭和三十八年度におきましては、国税庁のほうから予算の支出の委任を法務省が受けまして、これを処理しているのでありますが、支出委任を受けましたのは、ただいま仰せのとおり千百万でございます。その内訳を申しますと、用紙代が約三百十三万、賃金予算が約九百万でございます。これは支出委任を受けてやっておるのでございます。  なお補足して申し上げますと、地方税法に基づきまして市町村に登記所から通知をすることになっておるのでございますが、この関係の予算が実は合わせて五十万円前後しか入ってないのでございます。これは地方税法施行以来ずっとやっておるのでございますが、単に用紙代だけでありまして、五十万円の予算しか実は入ってないのでございます。この地方税法に基づく市町村に対する通知は、やはり税務署に対する通知と同じ内容のものでございます。これが相当手数がかかるのにわずかに用紙代の五十万円前後しか予算がついてないというのが現在の実情なのでございます。
  143. 坂本泰良

    ○坂本委員 大蔵省のほうは……。
  144. 吉田富士雄

    ○吉田説明員 ただいま法務省のおっしゃいましたと同じ数字でございます。
  145. 坂本泰良

    ○坂本委員 この予算は大蔵省の予算でしょう、いまの千二百万というのは。大蔵省の予算であれば、どういう費目で出してどういうふうにやっておられるのか、それをお聞きしたい。
  146. 吉田富士雄

    ○吉田説明員 大蔵省の国税庁の予算で、法務省のほうに支出委任をした経費でございまして、内容は、ただいま法務省がおっしゃいましたと同様に、九百万がアルバイトでございます。三百万が紙代でございます。
  147. 坂本泰良

    ○坂本委員 この問題はもう少し資料もありますから留保しておきまして、次の機会に譲りたいと思います。裁判所のほうもこの次に……。
  148. 濱野清吾

    濱野委員長 本日の議事はこの程度にとどめます。  次会は来たる三月三日午前十時に理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十九分散会